アロー便
アロー便(アローびん)とは、日本通運が取り扱う、特別積合せ(混載便・貨物)サービスの名称。「アロー便」では商標登録されていないが、「特急アロー便」が同社によって商標登録されている(第4830516号)。
沿革・全国ネットワークの確立まで
[編集]日本通運は「通運」の社名の通り、鉄道貨物輸送の取扱駅における集荷・配送業務を行う、通運業を主な目的として設立された企業である。旧国鉄において、鉄道貨物輸送ではチッキと呼ばれる、鉄道を利用した小口混載貨物輸送の定期便も取扱われており、これらの集荷・配送も日本通運の主要な業務であった。
昭和30年代から昭和40年代にかけ、全国的な道路網の整備、高速道路の拡充に伴い、東京のヤマト運輸、岐阜の西濃運輸、京都の佐川急便、広島の福山通運、富山のトナミ運輸など、各地のトラック輸送業者がこれら全国的な道路網を利用し、小口混載貨物の全国輸送ネットワークを形成するようになると、操車場中継方式を採用しているためリードタイムがトラック輸送に劣り、集配と長距離輸送が別業者に分離している旧国鉄の小口貨物混載輸送は、自社で一貫したサービスを提供する各地の新興小口貨物トラック輸送業者との競争に敗れ、取扱いを減少させていった。
この時期、日本通運は業務における旧国鉄との密接な関係から、小口鉄道貨物とライバル関係にあった小口貨物トラック輸送への設備投資を控えていたため、この分野では同業他社に大きく後れを取ることとなる。しかし、1972年(昭和47年)、旧国鉄が鉄道による小口貨物混載輸送の定期便を廃止したことから、これを利用していた荷主の輸送の受け皿として、本格的にトラックによる特別積合せ輸送に参入することとなる。この時点での業界シェアは9位、売上高76億円であった。
1976年(昭和51年)、特別積合せ事業に注力するため、日本通運に「自動車事業部」が設けられると同時に「特急アロー便」がスタート。小口貨物輸送の商品化が開始される。
1982年(昭和57年)には、自動車事業部を発展的に解消し、トラック輸送を全国の店所で横断的に取扱う体制となり、「通運」からトラック輸送へとシフトチェンジが明確化された。この結果、業界シェアは5位まで上昇した。
1988年(昭和63年)には、経営計画において「路線事業の拡充」が明記され、質量ともに大規模な投資が実施された。質の面では、自社のトラックターミナルを新規に大幅増設する事で、集配エリアの細分化とターミナル間輸送での拠点間直行便の増便を実現し、これまで連絡運輸などの貨物中継によって発生していた、リードタイムの伸びを改善したこと。量の面では、トラックターミナルの建設計画を本社直轄の下におき、地方支店の営業成績に捉われず、大胆に設備投資を行ったことがあげられる。具体的には、昭和63年の単年度だけで、関東地区において11ヶ所のトラックターミナル建設を決定したことが代表例である。このような、質量ともに大規模な設備投資が行われた1988年を日本通運では「路線トラック元年」と位置付けている。
昭和後期から平成初期に展開された急激な全国ネットワーク整備の結果、日本通運の特別積合せ輸送売上高は、1984年(昭和59年)の745億円から1995年(平成7年)には2225億円へと、約10年で3倍の成長を遂げることとなった。
サービス概要
[編集]元々は、JPエクスプレスへ移管した「ペリカン便」では扱えない大型サイズの貨物や30万円を超える商品の輸送を扱うサービス。
※但し、JPEX移行後のペリカン便では、80サイズに収まるものであれば、申告により50万円までの補償がある「セキュリティサービス」というカテゴリが存在する。
なお、現在アロー便は企業間輸送というサービスであり、企業から企業、または企業から個人の取り扱いであり、個人から個人への輸送は基本的にできない。
JPEXが日本郵便に移管後、日通のアローセンター(2009年3月以前は、ペリカン・アロー支店)の担当部門となった。その後、拠点により改組されたり、拠点名変更が行われたりするなどしており、「アローセンター」ではない名称になったところも存在する。
集配・路線業務の一部において、関連会社の日通トランスポートや備後通運等に委託している地域がある。
また、最近では名鉄運輸との協業によって小口貨物の配送を委託しているエリアが増えている。
脚注
[編集]取り扱い可能なサイズ
[編集]サイズは縦×横×高さ≦500cmで、かつ幅の長いほうが220cm以下・高さが200cm以下であり、加えて、重量が1口2t以内かつ1個につき1t以内であることが条件となっている。
なお、籠台車を利用したアローBOXというサービスも行っており、発・着のいずれかが沖縄県または島嶼でなければ全国で利用可能。
料金体系
[編集]運賃計算重量と、発送元から発送先までの距離程(一部地方、離島に関しては離島料や連絡中継料等が別途諸料金として掛かる)に応じて運賃を決定する。運賃計算重量は、実重量と容積換算重量のいずれか大きい方を適用する(容積換算重量=縦(m)×横(m)×高さ(m)×280kg)。
但し、発送店と配達店のそれぞれによって料金体系が異なるとして運賃表は基本的に公表されてはおらず、細かい運賃は出荷の際に担当の発送店に問い合わせが必要となる。
いずれの輸送方法の場合であっても、輸送物品に応じた保険料が別途加算される。
時間指定
[編集]「午前」・「午後」の2つからしか指定できない。なお、指定できない場合がある。
アローBOXの場合は、「午前(9:00 - 12:00)」・「午後(12:00 - 18:00)」のみの指定だが、Lサイズを利用した場合に限り、「午前」・「12:00 - 14:00」・「14:00 - 16:00」・「16:00 - 18:00」の4区分から指定できる。
アローインターナショナル
[編集]日通の国際海上輸送である「アローインターナショナル」では、小口の輸出入海上貨物の集荷・配送業務を、アロー便の集配ネットワークを用いて行っている。
例えば、小口国際海上貨物における輸出の場合は、集荷後、アロー便のネットワークを利用して東京港、横浜港、大阪港、神戸港、博多港、門司港などの港湾のコンテナターミナルへ搬入。通関後、海上コンテナへ混載貨物として仕立てられ、世界各国へ輸出される。また、アローインターナショナルでは、アローBOX(籠台車)単位での輸出入も可能である。
特別積合せ貨物運送と国際海上輸送を組み合わせた一貫輸送サービスは珍しく、リードタイムは航空貨物に劣るものの、比較的低コストで輸出入を行うことが出来る。
WEBアロー
[編集]アロー便を利用する法人荷主を対象とした、物流情報サービス。
送り状発行ソフト,出荷貨物の運賃検索,まとめ出荷機能(同一の送り先に複数の貨物をまとめて出荷した場合、大口出荷割引きが適用されるサービス),送り状番号入力不要の輸送状況検索,ネットによる集荷依頼機能が利用できる。