「2022年ロシアのウクライナ侵攻のタイムライン (2023年9月 - 12月)」の版間の差分
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* 米[[シンクタンク]]「[[戦争研究所]]」は、ロシア軍内部で足並みの乱れが顕著になっていると分析した<ref name=":9"/>。 |
* 米[[シンクタンク]]「[[戦争研究所]]」は、ロシア軍内部で足並みの乱れが顕著になっていると分析した<ref name=":9"/>。 |
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* ゼレンスキー大統領は、[[オレクシー・レズニコウ]]国防相の[[更迭]]を決めたと明らかにした<ref |
* ゼレンスキー大統領は、[[オレクシー・レズニコウ]]国防相の[[更迭]]を決めたと明らかにした<ref name=":11“">“[https://www.jiji.com/sp/article?k=2023090400103 ウクライナ大統領、レズニコフ国防相解任 後任にタタール系ウメロフ氏]”. ''時事ドットコム''. 時事通信社 (2023年9月4日). 2023年9月4日閲覧。</ref><ref name=":10">“[https://www.yomiuri.co.jp/world/20230904-OYT1T50032/ ウクライナ国防相を交代、ゼレンスキー大統領が方針…不正や汚職の疑惑も]”. ''読売新聞オンライン''. 読売新聞社 (2023年9月4日). 2023年9月4日閲覧。</ref><ref name=":12">“[https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-defence-zelenskiy-idJPKBN3090EB ウクライナ大統領が国防相更迭、後任は国有財産基金トップに]”. ''Reuters'' (2023年9月3日). 2023年9月3日閲覧。</ref><ref name=":13">“[https://www.sankei.com/article/20230904-FETWB3ULI5MWDB2RKHMUEDL4EQ/ ウクライナ国防相交代へ ゼレンスキー氏発表]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月4日). 2023年9月4日閲覧。</ref>。理由については「レズニコフ氏は550日間以上、全面戦争に向き合った。国防省は、軍と社会全体の双方との関係について、新しいアプローチを必要としている」と説明した<ref name=":10"/><ref name=":13"/>。[[ウクライナ国防省]]では食料調達などの発注を巡り、不正や汚職の疑惑が相次いで指摘されるうちにレズニコフの監督責任も問題視され<ref name=":12"/>[[綱紀粛正]]で交代に踏み切った可能性がある<ref name=":10"/>。後任には、ロシアに併合されている南部のクリミア半島の先住民族にあたるタタール系の政治家で[[ウクライナ最高会議]]議員などを歴任し、2022年9月から国有財産基金トップを務めている[[ルステム・ウメロウ]]を充てるように議会に承認を求めるとした<ref name=":11“" /><ref name=":12"/>。 |
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* ウクライナ軍の報道官は、東部のドネツク州と[[ルハンスク州]]の一部において、ロシア軍とウクライナ軍によって、激しい戦闘が継続していることを明らかにした<ref name="CNN_20230904">“[https://www.cnn.co.jp/world/35208606.html ウクライナ東部で激しい戦闘、ロシア軍が追加戦力を投入]”. ''CNN.co.jp'' (2023年9月4日). 2023年9月4日閲覧。</ref>。ウクライナ軍では、この地域の2つの主な都市にちなんで、戦闘が実施されている場所を「クピャンスク・リマン区域」としている<ref name="CNN_20230904"/>。ロシア軍では、ウクライナ軍の反転攻勢を撃退するために、数千人の兵士を追加で投入しており、9月2日にウクライナ軍の陣地に対して、570回の砲撃と航空機による攻撃をそれそれ実施したが、ロシア軍は、過去24時間に5回の銃撃戦を行ったが、いずれも成功せず、ロシア軍の兵士126人が死亡したほか、7機の無人機や弾薬庫が破壊されたと説明している<ref name="CNN_20230904"/>。 |
* ウクライナ軍の報道官は、東部のドネツク州と[[ルハンスク州]]の一部において、ロシア軍とウクライナ軍によって、激しい戦闘が継続していることを明らかにした<ref name="CNN_20230904">“[https://www.cnn.co.jp/world/35208606.html ウクライナ東部で激しい戦闘、ロシア軍が追加戦力を投入]”. ''CNN.co.jp'' (2023年9月4日). 2023年9月4日閲覧。</ref>。ウクライナ軍では、この地域の2つの主な都市にちなんで、戦闘が実施されている場所を「クピャンスク・リマン区域」としている<ref name="CNN_20230904"/>。ロシア軍では、ウクライナ軍の反転攻勢を撃退するために、数千人の兵士を追加で投入しており、9月2日にウクライナ軍の陣地に対して、570回の砲撃と航空機による攻撃をそれそれ実施したが、ロシア軍は、過去24時間に5回の銃撃戦を行ったが、いずれも成功せず、ロシア軍の兵士126人が死亡したほか、7機の無人機や弾薬庫が破壊されたと説明している<ref name="CNN_20230904"/>。 |
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* ウクライナ軍部隊のシュトゥピン報道官は、反転攻勢に関して、ロシア軍の第2・第3の防衛線は第1防衛線に比べると、脆弱だと指摘し、更なる前進に自信を示しているという<ref name="sankei_20230904">“[https://www.sankei.com/article/20230904-WRYCJOAI75MP5HU5WHJIMX6CZE/ 露第第2・第3防衛線は脆弱 ウクライナ軍、突破に自信]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月4日). 2023年9月4日閲覧。</ref>。ロシア軍が構築した3層の防衛線について、全体の強固さを100として、「第1防衛線は60、第2防衛線は20、第3防衛線は20だ」と指摘し、第1防衛線の突破の場合、地雷除去車が砲撃の標的にされ、その地雷の除去を手作業で実施したものの、比較的脆弱となっている第2防衛線以降においては、地雷除去車や部隊の運用が容易になるとして、前進の速度が上がる可能性を示した<ref name="sankei_20230904"/>。ロシア軍が第1防衛線を突破され、本来は攻撃用の精鋭の空挺部隊を防衛に回している状態には、ロシア軍の予備兵力が減りつつある表れという認識を示した<ref name="sankei_20230904"/>。「わが軍の弾薬量や露軍の出方などにもよるが、われわれはさらに前進し、[[アゾフ海]]まで南下できると期待している」とも述た<ref name="sankei_20230904"/>。 |
* ウクライナ軍部隊のシュトゥピン報道官は、反転攻勢に関して、ロシア軍の第2・第3の防衛線は第1防衛線に比べると、脆弱だと指摘し、更なる前進に自信を示しているという<ref name="sankei_20230904">“[https://www.sankei.com/article/20230904-WRYCJOAI75MP5HU5WHJIMX6CZE/ 露第第2・第3防衛線は脆弱 ウクライナ軍、突破に自信]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月4日). 2023年9月4日閲覧。</ref>。ロシア軍が構築した3層の防衛線について、全体の強固さを100として、「第1防衛線は60、第2防衛線は20、第3防衛線は20だ」と指摘し、第1防衛線の突破の場合、地雷除去車が砲撃の標的にされ、その地雷の除去を手作業で実施したものの、比較的脆弱となっている第2防衛線以降においては、地雷除去車や部隊の運用が容易になるとして、前進の速度が上がる可能性を示した<ref name="sankei_20230904"/>。ロシア軍が第1防衛線を突破され、本来は攻撃用の精鋭の空挺部隊を防衛に回している状態には、ロシア軍の予備兵力が減りつつある表れという認識を示した<ref name="sankei_20230904"/>。「わが軍の弾薬量や露軍の出方などにもよるが、われわれはさらに前進し、[[アゾフ海]]まで南下できると期待している」とも述た<ref name="sankei_20230904"/>。 |
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* ゼレンスキー大統領は、ビデオ演説で、同盟国がロシアに対しての制裁の手を緩めていることを理由に、ロシアに対する制裁を強めるように要求した上で、「制裁を逃れようとするロシアの動きは非常に活発」だと指摘して「世界の制裁攻勢は再開されなければならない」とした<ref name="reuters_20230909">“[https://jp.reuters.com/world/ukraine/6Y35R6SWJJIL5I2ISUSHU5SPXM-2023-09-08/ ウクライナ大統領、対ロシア制裁の強化を同盟国に呼びかけ]”. ''Reuters'' (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref>。また「とりわけロシアのエネルギー部門や[[マイクロエレクトロニクス]]へのアクセス、金融部門に圧力をかけることに焦点を当てるべき」とも述べている<ref name="reuters_20230909"/>。 |
* ゼレンスキー大統領は、ビデオ演説で、同盟国がロシアに対しての制裁の手を緩めていることを理由に、ロシアに対する制裁を強めるように要求した上で、「制裁を逃れようとするロシアの動きは非常に活発」だと指摘して「世界の制裁攻勢は再開されなければならない」とした<ref name="reuters_20230909">“[https://jp.reuters.com/world/ukraine/6Y35R6SWJJIL5I2ISUSHU5SPXM-2023-09-08/ ウクライナ大統領、対ロシア制裁の強化を同盟国に呼びかけ]”. ''Reuters'' (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref>。また「とりわけロシアのエネルギー部門や[[マイクロエレクトロニクス]]へのアクセス、金融部門に圧力をかけることに焦点を当てるべき」とも述べている<ref name="reuters_20230909"/>。 |
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* ロシア外務省は、[[アルメニア]]の駐ロシア大使を呼び、アルメニア側で[[非友好的な国と地域のリスト|非友好的]]な動きが続いているとして抗議の意思を伝えたと発表した<ref name="09/08_ar">“[https://www.sankei.com/article/20230909-HU67JV5WPVMWJD2NBGP5BYSRRU/ アルメニア大使呼び抗議 ロシア外務省「非友好的」]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref>。アルメニア政府が議会に対し、ウクライナ侵攻に絡んでロシアのプーチン大統領に逮捕状を出した[[国際刑事裁判所]](ICC)加盟条約の批准を提案したことなどを挙げ、旧[[ソビエト連邦構成共和国|ソ連]]諸国でつくる[[集団安全保障条約機構]](CSTO)加盟国にふさわしいか「疑問を抱かせる」と不快感を表明した<ref name="09/08_ar"/>。 |
* ロシア外務省は、[[アルメニア]]の駐ロシア大使を呼び、アルメニア側で[[非友好的な国と地域のリスト|非友好的]]な動きが続いているとして抗議の意思を伝えたと発表した<ref name="09/08_ar">“[https://www.sankei.com/article/20230909-HU67JV5WPVMWJD2NBGP5BYSRRU/ アルメニア大使呼び抗議 ロシア外務省「非友好的」]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref>。アルメニア政府が議会に対し、ウクライナ侵攻に絡んでロシアのプーチン大統領に逮捕状を出した[[国際刑事裁判所]](ICC)加盟条約の批准を提案したことなどを挙げ、旧[[ソビエト連邦構成共和国|ソ連]]諸国でつくる[[集団安全保障条約機構]](CSTO)加盟国にふさわしいか「疑問を抱かせる」と不快感を表明した<ref name="09/08_ar"/>。 |
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* [[国際連合安全保障理事会]]は、ロシアが一方的に「併合」したウクライナ東部・南部4州で統一地方選を強行していることを受け、アメリカなどの要請で公開会合を開いた<ref name="09/ |
* [[国際連合安全保障理事会]]は、ロシアが一方的に「併合」したウクライナ東部・南部4州で統一地方選を強行していることを受け、アメリカなどの要請で公開会合を開いた<ref name="09/08_un">“[https://www.jiji.com/jc/article?k=2023090900209 ウクライナ「併合」州で選挙 ロシアに非難―国連安保理]”. ''時事ドットコム''. 時事通信社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref><ref name="09/08_un2">“[https://www.sankei.com/article/20230909-HZKMHOF7O5MPJIMGBVAM7UVTYM/ 併合4州の露議会選批判 安保理で日米欧「茶番」]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref>。出席した国連高官が「占領地での選挙に法的根拠はない」と述べるなど、非難が相次いだ<ref name="09/08_un" />。ウッド米国連代理大使は「ロシアは偽の選挙を通じて、占領地での支配を誇示することを望んでいる」と述べ、併合の既成事実化を図る試みだと糾弾した<ref name="09/08_un" />。ウッドワード英国連大使も「選挙結果はあらかじめ決められているとの情報がある」と指摘し、「他人の国で選挙を実施することはできない」と批判した<ref name="09/08_un" />。ドリビエール仏国連大使は、「茶番だ」と批判した<ref name="09/08_un2"/>。日本の[[石兼公博]]国連大使も「全く受け入れられない」と語った<ref name="09/08_un2"/>。これに対し、ネベンジャ露国連大使は、4州の住民は「脅威にさらされ続けている」と主張し「[[ロシア占領下のウクライナでの2022年の併合住民投票|2022年の住民投票]]の結果は市民の自決権の表れだ」と述べ<ref name="09/08_un2"/>「住民をウクライナの政権から解放し保護するためには、ロシアに所属するという法的地位を明確にすることが唯一の方法だ」と正当化した<ref name="09/08_un" />。 |
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* [[国際原子力機関]](IAEA)の専門家は過去1週間、欧州最大のウクライナ南部[[ザポリージャ原子力発電所]]周辺で攻撃が増加しており「核の安全への潜在的な脅威」が増したと改めて警告した<ref name="09/07_IAEA">“[https://www.sankei.com/article/20230909-U6JQNYYEAVI6VPQ2YUTBMCWJDM/ ザポロジエ原発周辺で攻撃増加 IAEAが「核安全脅威」で再警告]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref>。[[ラファエル・グロッシー]]IAEA事務局長は声明で、専門家は「過去1週間にわたり、多数の爆発音を聞いた」と指摘した<ref name="09/07_IAEA"/>。 |
* [[国際原子力機関]](IAEA)の専門家は過去1週間、欧州最大のウクライナ南部[[ザポリージャ原子力発電所]]周辺で攻撃が増加しており「核の安全への潜在的な脅威」が増したと改めて警告した<ref name="09/07_IAEA">“[https://www.sankei.com/article/20230909-U6JQNYYEAVI6VPQ2YUTBMCWJDM/ ザポロジエ原発周辺で攻撃増加 IAEAが「核安全脅威」で再警告]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref>。[[ラファエル・グロッシー]]IAEA事務局長は声明で、専門家は「過去1週間にわたり、多数の爆発音を聞いた」と指摘した<ref name="09/07_IAEA"/>。 |
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* [[岸田文雄]][[内閣総理大臣|首相]]は、訪問先の[[インド]]でトルコのエルドアン大統領と会談した<ref name="09/07in">“[https://www.sankei.com/article/20230909-YBEI3LDVXNPNZMYCAKCTQH6USA/ EPA早期締結へ協議確認 日トルコ首脳会談]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref>。岸田首相は、ロシアのウクライナ侵攻に関し「力による一方的な現状変更の試みは世界のどこであれ認められない」と強調し、エルドアン大統領に「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化の必要性を、国際社会が一致して訴えることが重要だ」と伝えた<ref name="09/07in"/>。 |
* [[岸田文雄]][[内閣総理大臣|首相]]は、訪問先の[[インド]]でトルコのエルドアン大統領と会談した<ref name="09/07in">“[https://www.sankei.com/article/20230909-YBEI3LDVXNPNZMYCAKCTQH6USA/ EPA早期締結へ協議確認 日トルコ首脳会談]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref>。岸田首相は、ロシアのウクライナ侵攻に関し「力による一方的な現状変更の試みは世界のどこであれ認められない」と強調し、エルドアン大統領に「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化の必要性を、国際社会が一致して訴えることが重要だ」と伝えた<ref name="09/07in"/>。 |
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* ウクライナ外務省のニコレンコ報道官は、G20首脳会議で採択された首脳宣言について「ロシアのウクライナ侵略に関する限り、G20が誇れるものは何もない」と不満を表明した<ref name="09/09_G20/4">“[https://www.jiji.com/jc/article?k=2023090900682 「誇れる内容ではない」 G20首脳宣言に不満表明―ウクライナ]”. ''時事ドットコム''. 時事通信社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref>。ウクライナ侵攻に関し「あらゆる国家は領土獲得のための武力行使を控えなければならない」などと訴える宣言を採択したG20に対し「強い表現を盛り込もうと努めたパートナー各国には感謝している」と述べつつ、宣言中の「あらゆる国家」を「ロシア」に赤字で変更するなどした修正案の画像を添付した<ref name="09/09_G20/4"/>。 |
* ウクライナ外務省のニコレンコ報道官は、G20首脳会議で採択された首脳宣言について「ロシアのウクライナ侵略に関する限り、G20が誇れるものは何もない」と不満を表明した<ref name="09/09_G20/4">“[https://www.jiji.com/jc/article?k=2023090900682 「誇れる内容ではない」 G20首脳宣言に不満表明―ウクライナ]”. ''時事ドットコム''. 時事通信社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref>。ウクライナ侵攻に関し「あらゆる国家は領土獲得のための武力行使を控えなければならない」などと訴える宣言を採択したG20に対し「強い表現を盛り込もうと努めたパートナー各国には感謝している」と述べつつ、宣言中の「あらゆる国家」を「ロシア」に赤字で変更するなどした修正案の画像を添付した<ref name="09/09_G20/4"/>。 |
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* 林芳正外相は、ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナの東部と南部の4州で始まった議会選について、「ウクライナの主権と領土一体性を侵害する明らかな国際法違反だ。決して認められず強く非難する」との談話<ref>“[https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page1_001808.html ロシアが違法に「併合」したウクライナ国内の地域における「地方議会選挙」等の実施について(外務大臣談話)]”. 外務省 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref>を発表した<ref name="09/09dannwa">“[https://www.sankei.com/article/20230909-GDGQG5HWZJOFJOT7DZTFRA47VY/ 「主権侵害」林外相が談話 ロシア併合4州議会選で]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref>。談話で、ロシアによるウクライナ侵略を「国際秩序の根幹を揺るがす暴挙だ。日本は、力による一方的な現状変更の試みに決して看過しない」と非難した<ref name="09/09dannwa"/>。ロシアに対し即時に侵略を停止し、部隊をロシア国内に撤収するよう改めて求め、「一日も早くウクライナに公正かつ永続的な平和を実現する」として、G7など国際社会と連携し、厳しい対露制裁と強力なウクライナ支援を続ける考えを示した<ref name="09/09dannwa"/>。 |
* 林芳正外相は、ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナの東部と南部の4州で始まった議会選について、「ウクライナの主権と領土一体性を侵害する明らかな国際法違反だ。決して認められず強く非難する」との談話<ref>“[https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page1_001808.html ロシアが違法に「併合」したウクライナ国内の地域における「地方議会選挙」等の実施について(外務大臣談話)]”. 外務省 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref>を発表した<ref name="09/09dannwa">“[https://www.sankei.com/article/20230909-GDGQG5HWZJOFJOT7DZTFRA47VY/ 「主権侵害」林外相が談話 ロシア併合4州議会選で]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref>。談話で、ロシアによるウクライナ侵略を「国際秩序の根幹を揺るがす暴挙だ。日本は、力による一方的な現状変更の試みに決して看過しない」と非難した<ref name="09/09dannwa"/>。ロシアに対し即時に侵略を停止し、部隊をロシア国内に撤収するよう改めて求め、「一日も早くウクライナに公正かつ永続的な平和を実現する」として、G7など国際社会と連携し、厳しい対露制裁と強力なウクライナ支援を続ける考えを示した<ref name="09/09dannwa"/>。 |
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* 林芳正外相は、[[楽天グループ]]の[[三木谷浩史]]会長兼社長{{Refnest|group="注"|楽天の子会社が運営を行うコミュニケーションアプリ[[Viber]]は、ウクライナ国内の[[スマートフォン]]の97%にインストールされており、日常で使われているアプリである<ref name="rakuten1">“[https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2202/25/news183.html 楽天、自社の「Viber」でウクライナ支援策を展開 三木谷氏「本当に心が痛む」]”. ''[[ITmedia|ITmedia NEWS]]''. アイティメディア株式会社 (2022年2月25日). 2023年9月9日閲覧。</ref><ref name="rakuten2">“[https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1391121.html 楽天の「Viber」、ウクライナでサービス提供中]”. ''[[ケータイ Watch]]''. [[インプレス]] (2022年2月25日). 2023年9月9日閲覧。</ref>。侵攻を受けて、ウクライナ国内でのアプリ外の音声通話を無料にする措置を取っている<ref name="rakuten1"/><ref name="rakuten2"/>。また、三木谷自身がウクライナに10億円の寄付を行ったり<ref>“[https://www.oricon.co.jp/news/2226039/full/ 楽天・三木谷浩史会長、ウクライナを支援「10億円を寄付」 ゼレンスキー大統領との2ショットも投稿]”. ''ORICON NEWS''. [[オリコン]] (2022年2月27日). 2023年9月9日閲覧。</ref>、侵攻前にはゼレンスキー大統領との対面を行ったりしている<ref>三木谷浩史 Hiroshi (Mickey) Mikitani [@hmikitani] "[https://twitter.com/hmikitani/status/1497093172761018371 2022年2月25日午後3:16の投稿]" X(旧Twitter)の短文投稿より2023年9月9日閲覧。</ref>。}}や[[ディー・エヌ・エー]]子会社で医療関連事業を手掛ける[[アルム]]の坂野哲平社長などの[[日本経済団体連合会]]会員企業を含む数社の日本企業関係者とともに、初めてウクライナを訪問した<ref>Nobuhiro Kubo (2023年9月9日) “[https://jp.reuters.com/world/russia/CKYQIS7P3BIHFGESD3OKCZ6LZ4-2023-09-09/ 林外相がウクライナ訪問へ、楽天Gの三木谷社長ら同行]”. ''Reuters'' . 2023年9月9日閲覧。</ref><ref>“[https://www.sankei.com/article/20230909-PXTZIWRKQFLIJJRWEYJPKMZXL4/ 林外相、ウクライナ初訪問 復興支援協議へ 楽天・三木谷会長ら同行]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref><ref>“[https://www.yomiuri.co.jp/politics/20230909-OYT1T50128/ 林外相がウクライナ訪問、復興支援本格化…民間投資促進へ楽天の三木谷会長も同行]”. ''読売新聞オンライン''. 読売新聞社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref><ref>“[https://www.jiji.com/jc/article?k=2023090900281 林外相、ウクライナ入り 閣僚で初、クレバ氏と会談へ]”. ''時事ドットコム''. 時事通信社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref>。今年のG7議長国として、年内に予定する外相会合を前に、引き続きウクライナ支援に取り組む姿勢をアピールする狙いがある<ref name="09/09_ukuhomon">“[https://www.jiji.com/jc/article?k=2023090900435 安保協定、交渉開始へ 官民連携で復興支援―林外相がウクライナ訪問]”. ''時事ドットコム''. 時事通信社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref><ref name="09/ |
* 林芳正外相は、[[楽天グループ]]の[[三木谷浩史]]会長兼社長{{Refnest|group="注"|楽天の子会社が運営を行うコミュニケーションアプリ[[Viber]]は、ウクライナ国内の[[スマートフォン]]の97%にインストールされており、日常で使われているアプリである<ref name="rakuten1">“[https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2202/25/news183.html 楽天、自社の「Viber」でウクライナ支援策を展開 三木谷氏「本当に心が痛む」]”. ''[[ITmedia|ITmedia NEWS]]''. アイティメディア株式会社 (2022年2月25日). 2023年9月9日閲覧。</ref><ref name="rakuten2">“[https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1391121.html 楽天の「Viber」、ウクライナでサービス提供中]”. ''[[ケータイ Watch]]''. [[インプレス]] (2022年2月25日). 2023年9月9日閲覧。</ref>。侵攻を受けて、ウクライナ国内でのアプリ外の音声通話を無料にする措置を取っている<ref name="rakuten1"/><ref name="rakuten2"/>。また、三木谷自身がウクライナに10億円の寄付を行ったり<ref>“[https://www.oricon.co.jp/news/2226039/full/ 楽天・三木谷浩史会長、ウクライナを支援「10億円を寄付」 ゼレンスキー大統領との2ショットも投稿]”. ''ORICON NEWS''. [[オリコン]] (2022年2月27日). 2023年9月9日閲覧。</ref>、侵攻前にはゼレンスキー大統領との対面を行ったりしている<ref>三木谷浩史 Hiroshi (Mickey) Mikitani [@hmikitani] "[https://twitter.com/hmikitani/status/1497093172761018371 2022年2月25日午後3:16の投稿]" X(旧Twitter)の短文投稿より2023年9月9日閲覧。</ref>。}}や[[ディー・エヌ・エー]]子会社で医療関連事業を手掛ける[[アルム]]の坂野哲平社長などの[[日本経済団体連合会]]会員企業を含む数社の日本企業関係者とともに、初めてウクライナを訪問した<ref>Nobuhiro Kubo (2023年9月9日) “[https://jp.reuters.com/world/russia/CKYQIS7P3BIHFGESD3OKCZ6LZ4-2023-09-09/ 林外相がウクライナ訪問へ、楽天Gの三木谷社長ら同行]”. ''Reuters'' . 2023年9月9日閲覧。</ref><ref>“[https://www.sankei.com/article/20230909-PXTZIWRKQFLIJJRWEYJPKMZXL4/ 林外相、ウクライナ初訪問 復興支援協議へ 楽天・三木谷会長ら同行]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref><ref>“[https://www.yomiuri.co.jp/politics/20230909-OYT1T50128/ 林外相がウクライナ訪問、復興支援本格化…民間投資促進へ楽天の三木谷会長も同行]”. ''読売新聞オンライン''. 読売新聞社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref><ref>“[https://www.jiji.com/jc/article?k=2023090900281 林外相、ウクライナ入り 閣僚で初、クレバ氏と会談へ]”. ''時事ドットコム''. 時事通信社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref>。今年のG7議長国として、年内に予定する外相会合を前に、引き続きウクライナ支援に取り組む姿勢をアピールする狙いがある<ref name="09/09_ukuhomon">“[https://www.jiji.com/jc/article?k=2023090900435 安保協定、交渉開始へ 官民連携で復興支援―林外相がウクライナ訪問]”. ''時事ドットコム''. 時事通信社 (2023年9月9日). 2023年9月9日閲覧。</ref><ref name="09/09_ukuhomon2">原川貴郎 (2023年9月9日) “[https://www.sankei.com/article/20230909-H6DMOSQ7YVIA5A6EOFRHUVCU4Q/ ウクライナ電撃訪問の林外相、民間投資の拡大促す]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社. 2023年9月9日閲覧。</ref>。日本企業関係者が今回の訪問に同行したことには、日本政府は総額約76億ドルの支援を表明しているが、外務省幹部は「需要は膨大で、官の資金だけではまかなえない」と指摘し、民間投資拡大を期待するウクライナ側と官民連携に関するすり合わせを進め、ウクライナ側の具体的なニーズに合わせ、民間投資の拡大を促す狙いがある<ref name="09/09_ukuhomon2" />。まず最初に、ロシア軍が[[ブチャの虐殺|民間人の大量虐殺]]を行ったキーウ近郊[[ブチャ]]を視察し、ブチャの[[聖アンドリーイ教会]]を訪れ、集団埋葬地で献花した<ref>原川貴郎 (2023年9月9日) “[https://www.sankei.com/article/20230909-R7KHCUWRXNIS3JNMFDUZZQFJKE/ ウクライナ訪問の林外相 ブチャの集団埋葬地で献花]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社. 2023年9月9日閲覧。</ref>。関係者から虐殺の状況を聞き、「残虐な行為ですね」と応じた<ref name="09/09_ukuhomon2" />。続いて、首都キーウに移動し[[デニス・シュミハリ]][[ウクライナの首相|首相]]やゼレンスキー大統領と面会した<ref name="09/09_ukuhomon3">原川貴郎 (2023年9月9日) “[https://www.sankei.com/article/20230909-MIM63RAMGBKQLO6AK5NQ4FFHF4/ 林外相、ウクライナ首相と面会 三木谷氏ら復旧・復興支援策説明]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社. 2023年9月9日閲覧。</ref><ref>原川貴郎 (2023年9月9日) “[https://www.sankei.com/article/20230909-H6P2Q57L7VKCJLAIDO3I4P6RW4/ ウクライナ訪問の林外相、ゼレンスキー氏と面会]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社. 2023年9月9日閲覧。</ref>。林外相は、ブチャを視察したことに触れ、「ウクライナの美しい大地に平和が戻るまで、日本はウクライナと共に歩んでいく」と決意を語った<ref name="09/09_ukuhomon3"/>。今後のウクライナの復旧・復興支援への日本企業の関与を深めたいとの意向を伝達し、日本企業関係者は、復旧・復興に各社が果たしうる役割について説明した<ref name="09/09_ukuhomon3"/>。シュミハリ首相は、G7議長国の日本による支援に謝意を述べ、今後も日本のリーダーシップに期待する考えを伝えた<ref name="09/09_ukuhomon"/>。ゼレンスキー大統領は、林芳正外相のウクライナ訪問を歓迎し、日本は「アジアでの主要なパートナー」だとして支援への謝意を表明した<ref>原川貴郎 (2023年9月9日) “[https://www.sankei.com/article/20230909-RF6CK6OOHJNZ5GX6S3QNK7NTYE/ ゼレンスキー氏、林外相のウクライナ訪問を歓迎]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社. 2023年9月9日閲覧。</ref><ref>Volodymyr Zelenskyy / Володимир Зеленський [@ZelenskyyUa] “[https://twitter.com/ZelenskyyUa/status/1700473518436000074 2023年9月9日午後8:37の投稿]” X(旧Twitter)の短文投稿より2023年9月9日閲覧。</ref>。クレーバ外相と会談を行い、共同記者会見を開いた<ref name="09/09_ukuhomon4">原川貴郎 (2023年9月9日) “[https://www.sankei.com/article/20230909-X4LJKBPII5OZBOCYATFUSKCLXA/ ウクライナ支援へ「復興推進室」新設 日ウ外相が共同記者会見]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社. 2023年9月9日閲覧。</ref>。林外相は、ウクライナの復旧・復興を支援するため、2024年初頭に東京で「日ウクライナ経済復興推進会議」を開く方針を伝達し<ref name="09/09_ukuhomon"/>、外務省内に「ウクライナ経済復興推進室」を新設すると表明した<ref name="09/09_ukuhomon4"/><ref name="09/09_ukuhomon5">原川貴郎 (2023年9月9日) “[https://www.sankei.com/article/20230910-JHBUZSKQDBNOZBOCXTGZYAX4F4/ 林外相とゼレンスキー大統領、2国間文書の交渉開始で一致]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社. 2023年9月10日閲覧。</ref>。G7が7月に発表した「ウクライナ支援に関する共同宣言」<ref>“[https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100527901.pdf ウクライナ支援に関する共同宣言(仮訳)]”. 外務省 (2023年7月12日). 2023年9月9日閲覧。</ref>に基づき、日ウクライナの2国間文書の交渉を開始することで一致したことも明らかにした<ref name="09/09_ukuhomon4"/><ref name="09/09_ukuhomon5"/>。不発弾運搬用のクレーン付きトラック24台を供与することも明らかにし<ref name="09/09_ukuhomon"/>、会談後に供与式を行った<ref name="09/09_ukuhomon5"/>。電力不足の中で厳しい冬を迎えるウクライナに対し、9月中にも大型[[変圧器]]施設2基を供与する予定だと伝えた<ref name="09/09_ukuhomon4"/><ref name="09/09_ukuhomon5"/>。日本の企業関係者らが同行したことについては「ウクライナの実情、要望について企業関係者に把握してもらった。復旧・復興に向けた出発点になる。さらなる協力を進めていく」と述べた<ref>“[https://www.jiji.com/jc/article?k=2023090900474 楽天・三木谷氏、林外相に同行 ウクライナ復興、日本企業参入狙う]”. ''時事ドットコム''. 時事通信社 (2023年9月9日). 2023年9月10日閲覧。</ref>。クレーバ外相は、日本に対しロシアの侵攻を受けるウクライナへのこれまでの人道支援や、戦禍からの復興に向けた支援に前向きな姿勢を示していることに謝意を示し「ウクライナ国民は人道支援を受けたことを覚えており、決して忘れないであろうということを、林氏そして日本の皆さんに知っていただきたい」と語った<ref name="09/09_ukuhomon6">“[https://www.afpbb.com/articles/-/3480905 「日本の支援忘れない」 ウクライナ訪問の林外相に謝意]”. ''AFPBB News''. フランス通信社 (2023年9月10日). 2023年9月10日閲覧。</ref>。また、日本は「戦後のウクライナ復興に参画する準備をしている」とし、「他国も追随してほしい」と述べた<ref name="09/09_ukuhomon6"/>。ウクライナはこれまでに日本から人道支援などで総額76億ドルを受け取ったとした<ref name="09/09_ukuhomon6"/>。 |
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* ウクライナ軍は、首都キーウとその周辺に一晩でイラン製ドローン「シャヘド」32機が飛来し、うち25機を防空部隊が撃墜したと発表した<ref name="09/09-10"/><ref name="09/10">“[https://www.afpbb.com/articles/-/3480921 一晩でキーウに無人機32機飛来、25機撃墜 ウクライナ軍]”. ''AFPBB News''. フランス通信社 (2023年9月10日). 2023年9月10日閲覧。</ref>{{Refnest|group="注"|ドローン33機が飛来し、26機を撃墜したとの出典もある<ref name="09/10_1">Tom Balmforth (2023年9月11日) “[https://jp.reuters.com/world/ukraine/U6OHLXTZRVLYBEADUIGOBQV7BQ-2023-09-11/ キーウに無人機攻撃、ウクライナ軍「26機を破壊」]”. ''Reuters''. 2023年9月11日閲覧。</ref>。}}。キーウ市軍政当局のトップ、セルヒー・ポプコは、「まとまった数の無人機が多方向から首都に飛来した」とし、「防空部隊は無人航空機20数機の撃墜に成功した」と述べた<ref name="09/10"/>。[[キーウ州]]のクラフチェンコ知事は、インフラ施設1か所と住宅8棟が被害を受けたと発表した<ref name="09/10_1"/>。キーウ市の[[ビタリ・クリチコ]]市長は、市内の集合住宅に被害が出た他、公園で火災が発生し、残骸の多くは未開発地域に落下したが、車両やトロリーバスの送電線、道路などへの被害も確認されたと発表した<ref name="09/10"/>。 |
* ウクライナ軍は、首都キーウとその周辺に一晩でイラン製ドローン「シャヘド」32機が飛来し、うち25機を防空部隊が撃墜したと発表した<ref name="09/09-10"/><ref name="09/10">“[https://www.afpbb.com/articles/-/3480921 一晩でキーウに無人機32機飛来、25機撃墜 ウクライナ軍]”. ''AFPBB News''. フランス通信社 (2023年9月10日). 2023年9月10日閲覧。</ref>{{Refnest|group="注"|ドローン33機が飛来し、26機を撃墜したとの出典もある<ref name="09/10_1">Tom Balmforth (2023年9月11日) “[https://jp.reuters.com/world/ukraine/U6OHLXTZRVLYBEADUIGOBQV7BQ-2023-09-11/ キーウに無人機攻撃、ウクライナ軍「26機を破壊」]”. ''Reuters''. 2023年9月11日閲覧。</ref>。}}。キーウ市軍政当局のトップ、セルヒー・ポプコは、「まとまった数の無人機が多方向から首都に飛来した」とし、「防空部隊は無人航空機20数機の撃墜に成功した」と述べた<ref name="09/10"/>。[[キーウ州]]のクラフチェンコ知事は、インフラ施設1か所と住宅8棟が被害を受けたと発表した<ref name="09/10_1"/>。キーウ市の[[ビタリ・クリチコ]]市長は、市内の集合住宅に被害が出た他、公園で火災が発生し、残骸の多くは未開発地域に落下したが、車両やトロリーバスの送電線、道路などへの被害も確認されたと発表した<ref name="09/10"/>。 |
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=== 9月14日 === |
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* ウクライナは、夜間に22機のロシアの無人機の攻撃を受けて、このうち17機を撃墜したと発表した<ref name="reuters_20230914">“[https://jp.reuters.com/world/ukraine/5F4VM6ZBQRIJBEZTM5BDRFJCJ4-2023-09-14/ ウクライナ、ロシアの無人機22機を撃墜 砲撃で子供死亡]”. ''Reuters'' (2023年9月14日). 2023年9月14日閲覧。</ref>。ウクライナの検察総長事務所は、南部ヘルソン州の村において、6歳の子供が死亡、4人が負傷したと明らかにした<ref name="reuters_20230914"/>。 |
* ウクライナは、夜間に22機のロシアの無人機の攻撃を受けて、このうち17機を撃墜したと発表した<ref name="reuters_20230914">“[https://jp.reuters.com/world/ukraine/5F4VM6ZBQRIJBEZTM5BDRFJCJ4-2023-09-14/ ウクライナ、ロシアの無人機22機を撃墜 砲撃で子供死亡]”. ''Reuters'' (2023年9月14日). 2023年9月14日閲覧。</ref>。ウクライナの検察総長事務所は、南部ヘルソン州の村において、6歳の子供が死亡、4人が負傷したと明らかにした<ref name="reuters_20230914"/>。 |
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* ウクライナ軍は、クリミアに基地がある黒海艦隊所属のワシリイ・ブイコフ級哨戒艦「セルゲイ・コトフ」2隻を攻撃し、「一定の損傷」を与えたと発表した<ref>“[https://www.sankei.com/article/20230915-WP5MGTMZWZKGLLZVZLANOWA2ZY/ 露軍哨戒艦2隻損傷か 2日連続 ウクライナの攻撃激化]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月15日). 2023年9月15日閲覧。</ref><ref name="09/14">Tom Balmforth、Yuliia Dysa (2023年9月15日). “[https://jp.reuters.com/world/ukraine/ZZDVTOFFWZLKHK24KRXVOCJKZI-2023-09-14/ ウクライナ軍、黒海のロシア艦艇やクリミアの防空システム攻撃]”. ''Reuters''. 2023年9月15日閲覧。</ref>。夜間にはクリミア半島の西にある町[[イェウパトーリヤ]]付近のロシア防空システムにも長距離攻撃を行ったとした<ref name="09/ |
* ウクライナ軍は、クリミアに基地がある黒海艦隊所属のワシリイ・ブイコフ級哨戒艦「セルゲイ・コトフ」2隻を攻撃し、「一定の損傷」を与えたと発表した<ref>“[https://www.sankei.com/article/20230915-WP5MGTMZWZKGLLZVZLANOWA2ZY/ 露軍哨戒艦2隻損傷か 2日連続 ウクライナの攻撃激化]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月15日). 2023年9月15日閲覧。</ref><ref name="09/14">Tom Balmforth、Yuliia Dysa (2023年9月15日). “[https://jp.reuters.com/world/ukraine/ZZDVTOFFWZLKHK24KRXVOCJKZI-2023-09-14/ ウクライナ軍、黒海のロシア艦艇やクリミアの防空システム攻撃]”. ''Reuters''. 2023年9月15日閲覧。</ref>。夜間にはクリミア半島の西にある町[[イェウパトーリヤ]]付近のロシア防空システムにも長距離攻撃を行ったとした<ref name="09/14_2">“[https://www.jiji.com/jc/article?k=2023091400983 クリミアで防空システム破壊 ウクライナ軍、攻撃継続]”. ''時事ドットコム''. 時事通信社 (2023年9月15日). 2023年9月14日閲覧。</ref>。[[ウクライナ保安庁]](SBU)の情報当局筋は、SBUの軍事防諜部門とウクライナ海軍が合同でイェウパトーリヤ近くで特殊な特別作戦を実行したと述べ、ドローンがレーダーとアンテナを攻撃した後に、ウクライナ海軍がウクライナ製巡航ミサイル「[[ネプチューン (巡航ミサイル)|ネプチューン]]」2発を打ち込み、ロシアの防空システム「[[S-400 (ミサイル)|トリウームフ]]」を破壊したと明らかにした<ref name="09/14"/><ref name="09/14_2" /><ref>“[https://www.cnn.co.jp/world/35209134.html クリミア半島でロシア軍の防空システム破壊 ウクライナ保安局]”. ''CNN.co.jp'' (2023年9月15日). 2023年9月15日閲覧。</ref>。一方、ロシア国防省は、クリミア上空でドローン11機を防空システムによって撃墜したと発表し<ref name="09/14"/>、「テロ攻撃の試みは失敗した」と表明した<ref name="09/14_2" />。セルゲイ・コトフについては、ウクライナが水上ドローン5隻による攻撃を仕掛けようとしたが撃退したとも主張した<ref name="09/14"/><ref>“[https://www.sankei.com/article/20230914-B2ETR4SIJBO4LL5MUY7N4Z25AQ/ クリミアに連日攻撃「露の防空システム破壊」]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月14日). 2023年9月15日閲覧。</ref>。 |
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* ウクライナ南部クリミア半島セヴァストポリの港湾入り口で、ウクライナの海上無人偵察が、ロシアの小型ミサイル艦「サムーム」の後部右側を攻撃して、「大きな損傷」を与えた<ref name="reuters_20230916_2">“[https://jp.reuters.com/world/ukraine/SAHKVO6RARPAZEZ44VTDOVWF3M-2023-09-15/ ウクライナの海上ドローン、ロシアのミサイル艦を攻撃=関係筋]”. ''Reuters'' (2023年9月16日). 2023年9月16日閲覧。</ref>。この攻撃を受けたミサイル艦は、片側に傾いて、修理のためにえい航されたとされる<ref name="reuters_20230916_2"/>。ロシア国防省は、声明でサムームに対するウクライナの攻撃を認め、海上ドローンを迎撃し破壊したと発表した<ref name="reuters_20230916_2"/>。 |
* ウクライナ南部クリミア半島セヴァストポリの港湾入り口で、ウクライナの海上無人偵察が、ロシアの小型ミサイル艦「サムーム」の後部右側を攻撃して、「大きな損傷」を与えた<ref name="reuters_20230916_2">“[https://jp.reuters.com/world/ukraine/SAHKVO6RARPAZEZ44VTDOVWF3M-2023-09-15/ ウクライナの海上ドローン、ロシアのミサイル艦を攻撃=関係筋]”. ''Reuters'' (2023年9月16日). 2023年9月16日閲覧。</ref>。この攻撃を受けたミサイル艦は、片側に傾いて、修理のためにえい航されたとされる<ref name="reuters_20230916_2"/>。ロシア国防省は、声明でサムームに対するウクライナの攻撃を認め、海上ドローンを迎撃し破壊したと発表した<ref name="reuters_20230916_2"/>。 |
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* ウクライナのマリャル国防次官は、東部ドネツク州バフムト南方にある3つの村の周辺で進展を遂げ、主要な町への攻撃でロシア軍が「大きな損失」を被り、「自衛能力が著しく低下した」と述べた<ref>“[https://jp.reuters.com/world/ukraine/GMSGSWDI5NN3LHZFXS5PLTJFXI-2023-09-15/ ウクライナ反転攻勢、東部で激戦続く 南部のロ軍に「大きな損失」]”. ''Reuters'' (2023年9月15日). 2023年9月15日閲覧。</ref>。 |
* ウクライナのマリャル国防次官は、東部ドネツク州バフムト南方にある3つの村の周辺で進展を遂げ、主要な町への攻撃でロシア軍が「大きな損失」を被り、「自衛能力が著しく低下した」と述べた<ref>“[https://jp.reuters.com/world/ukraine/GMSGSWDI5NN3LHZFXS5PLTJFXI-2023-09-15/ ウクライナ反転攻勢、東部で激戦続く 南部のロ軍に「大きな損失」]”. ''Reuters'' (2023年9月15日). 2023年9月15日閲覧。</ref>。 |
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* 米紙[[ウォール・ストリート・ジャーナル]](WSJ)は、ウクライナ南部ザポリージャ州で、ウクライナ軍の反転攻勢により装甲車両が初めてロシアの主要防衛線を通過したと報じた<ref name="09/21_WSJ">“[https://www.jiji.com/jc/article?k=2023092201081 装甲車、防衛線を初通過 南下作戦「重大な節目」―ウクライナ軍]”. ''時事ドットコム''. 時事通信社 (2023年9月22日). 2023年9月23日閲覧。</ref>。一方で突破口は小さく、ロシア軍の激しい抵抗を受けているといい、南部戦線では、塹壕や「竜の歯」と呼ばれる対戦車障害物による防衛網の先に戦闘車両を運べず、ウクライナの進軍ペースが上がっていないと指摘した<ref name="09/21_WSJ"/>。今回の成果はクリミア半島とロシア本土を分断する南下作戦の「重大な節目」になると分析した<ref name="09/21_WSJ"/>。 |
* 米紙[[ウォール・ストリート・ジャーナル]](WSJ)は、ウクライナ南部ザポリージャ州で、ウクライナ軍の反転攻勢により装甲車両が初めてロシアの主要防衛線を通過したと報じた<ref name="09/21_WSJ">“[https://www.jiji.com/jc/article?k=2023092201081 装甲車、防衛線を初通過 南下作戦「重大な節目」―ウクライナ軍]”. ''時事ドットコム''. 時事通信社 (2023年9月22日). 2023年9月23日閲覧。</ref>。一方で突破口は小さく、ロシア軍の激しい抵抗を受けているといい、南部戦線では、塹壕や「竜の歯」と呼ばれる対戦車障害物による防衛網の先に戦闘車両を運べず、ウクライナの進軍ペースが上がっていないと指摘した<ref name="09/21_WSJ"/>。今回の成果はクリミア半島とロシア本土を分断する南下作戦の「重大な節目」になると分析した<ref name="09/21_WSJ"/>。 |
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* ウクライナ軍は、南部クリミア半島セヴァストポリにあるロシア黒海艦隊司令部の攻撃に成功したと発表した<ref>“[https://www.jiji.com/jc/article?k=2023092300299 ウクライナ、「攻撃成功」と発表 ロシア黒海艦隊司令部が損傷]”. ''時事ドットコム''. 時事通信社 (2023年9月23日). 2023年9月23日閲覧。</ref><ref name="09/22_kogeki">“[https://jp.reuters.com/world/ukraine/CBMJKMBI6FLVBGPREO25WEAHME-2023-09-22/ ウクライナ、クリミアのロシア黒海艦隊司令部をミサイル攻撃]”. ''Reuters'' (2023年9月22日). 2023年9月23日閲覧。</ref><ref name="kogeki2">“[https://www.sankei.com/article/20230923-4VPYL6B5JJIO7DQ4KNKVQBTI2I/ 黒海艦隊司令部攻撃を表明 ウクライナ軍「成功」]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月23日). 2023年9月23日閲覧。</ref>。ロシア国防省は、ロシア南部[[クラスノダール]]地方でとウクライナ南部クリミア半島の南東岸付近の黒海上空で、防空システムがウクライナのドローンを1機ずつ撃墜したと明らかにした<ref>“[https://www.cnn.co.jp/world/35209422.html ロシア、ウクライナのドローン攻撃を阻止 国防省]”. ''CNN.co.jp'' (2023年9月22日). 2023年9月22日閲覧。</ref><ref name=" |
* ウクライナ軍は、南部クリミア半島セヴァストポリにあるロシア黒海艦隊司令部の攻撃に成功したと発表した<ref>“[https://www.jiji.com/jc/article?k=2023092300299 ウクライナ、「攻撃成功」と発表 ロシア黒海艦隊司令部が損傷]”. ''時事ドットコム''. 時事通信社 (2023年9月23日). 2023年9月23日閲覧。</ref><ref name="09/22_kogeki">“[https://jp.reuters.com/world/ukraine/CBMJKMBI6FLVBGPREO25WEAHME-2023-09-22/ ウクライナ、クリミアのロシア黒海艦隊司令部をミサイル攻撃]”. ''Reuters'' (2023年9月22日). 2023年9月23日閲覧。</ref><ref name="kogeki2">“[https://www.sankei.com/article/20230923-4VPYL6B5JJIO7DQ4KNKVQBTI2I/ 黒海艦隊司令部攻撃を表明 ウクライナ軍「成功」]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月23日). 2023年9月23日閲覧。</ref>。ロシア国防省は、ロシア南部[[クラスノダール]]地方でとウクライナ南部クリミア半島の南東岸付近の黒海上空で、防空システムがウクライナのドローンを1機ずつ撃墜したと明らかにした<ref>“[https://www.cnn.co.jp/world/35209422.html ロシア、ウクライナのドローン攻撃を阻止 国防省]”. ''CNN.co.jp'' (2023年9月22日). 2023年9月22日閲覧。</ref><ref name="kogeki3">“[https://www.sankei.com/article/20230922-DDHPECGVEJPXHKMZZ2DBAKV4YU/ 露黒海艦隊本部、ミサイル攻撃で損傷 防空網弱体化か]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月22日). 2023年9月23日閲覧。</ref>。合計5発のミサイルも迎撃した<ref name="kogeki3" />が、少なくとも1発のウクライナ軍のミサイル攻撃を受け、軍人1人が行方不明になったことも発表した<ref name="09/22_kogeki"/>。ウクライナ南部クリミア半島セヴァストポリ特別市のロシアに任命されたミハイル・ラズボジャエフ「知事」は、黒海艦隊司令部に黒煙が上がったが、死傷者はいないと明らかにした<ref>“[https://www.jiji.com/jc/article?k=2023092201159 ロシア黒海艦隊司令部にミサイル攻撃 クリミア半島、黒煙上る]”. ''時事ドットコム''. 時事通信社 (2023年9月22日). 2023年9月22日閲覧。</ref>。23日、[[ウクライナ特殊作戦軍]]は、この攻撃が「Crab Trap」と名付けられた特別作戦だったと明らかにし、ロシア海軍上層部の会合に合わせて行われ上層部を含む数十人の死傷者が出たと発表した<ref name="kogeki3">“[https://www.cnn.co.jp/world/35209442.html ロシア黒海艦隊司令部への攻撃、上層部含む数十人が死傷 ウクライナ特殊作戦軍が発表]”. ''CNN.co.jp'' (2023年9月23日). 2023年9月23日閲覧。</ref>。ウクライナ軍の「大胆で念入りな仕事」により「時間を合わせた精密な攻撃」が可能になったと述べた<ref name="kogeki3"/>。25日、ウクライナ特殊作戦軍は、声明で「黒海艦隊の[[ビクトル・ニコラエヴィッチ・ソコロフ]]司令官を含む将校34人を殺害した。その他に105人を負傷させた。司令部は修理不能だ」と主張した<ref>“[https://www.jiji.com/jc/article?k=2023092501044 ロシア黒海艦隊司令官を「殺害」 22日の攻撃で―ウクライナ]”. ''時事ドットコム''. 時事通信社 (2023年9月25日). 2023年9月25日閲覧。</ref><ref>“[https://www.sankei.com/article/20230925-DLXPDPC62VL7ROFGOGPFOMVZKY/ 「露黒海艦隊司令官ら死亡」ウクライナ主張 22日のミサイル攻撃で]”. ''産経ニュース''. 産業経済新聞社 (2023年9月25日). 2023年9月26日閲覧。</ref><ref>“[https://jp.reuters.com/world/ukraine/UJLMLHA6TNKKRALAUZGL4S5T4I-2023-09-25/ ロシア黒海艦隊司令官を「殺害」、先週の攻撃で=ウクライナ特殊部隊]”. ''Reuters'' (2023年9月26日). 2023年9月26日閲覧。</ref></ref><ref>“[https://www.cnn.co.jp/world/35209493.html ウクライナ、ロシア黒海艦隊の司令官死亡と発表]”. ''CNN.co.jp'' (2023年9月26日). 2023年9月26日閲覧。</ref><ref name="09/22-25">“[https://www.yomiuri.co.jp/world/20230925-OYT1T50193/ クリミアのロシア軍黒海艦隊への攻撃、司令官ら死者34人・負傷者105人]”. ''読売新聞オンライン''. 読売新聞社 (2023年9月26日). 2023年9月26日閲覧。</ref><ref>“[https://www.afpbb.com/articles/-/3483273 ロシア黒海艦隊司令官「殺害」 ウクライナ軍]”. ''AFPBB News''. フランス通信社 (2023年9月26日). 2023年9月26日閲覧。</ref>。27日、ロシア外務省のザハロワ報道官は「あの攻撃が、西側の情報網やNATOの人工衛星機器、偵察機を用いて事前に計画されていたことには、ほんのわずかな疑いの余地もない」と断定し、「米英の情報機関との緊密な調整の下に」実行されたとの見方を示した<ref>“[https://www.afpbb.com/articles/-/3483619 黒海艦隊司令部攻撃、米英がウクライナ支援 ロシア外務省]”. ''AFPBB News''. フランス通信社 (2023年9月27日). 2023年9月27日閲覧。</ref>。 |
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* ウクライナ中部ポルタワ州の[[ドミトロ・ルーニン]]知事は、ロシア軍がポルタワ州クレメンチュクの民間施設をミサイル攻撃し、1人が死亡、31人が負傷したと明らかにした<ref name="kogeki2"/>。 |
* ウクライナ中部ポルタワ州の[[ドミトロ・ルーニン]]知事は、ロシア軍がポルタワ州クレメンチュクの民間施設をミサイル攻撃し、1人が死亡、31人が負傷したと明らかにした<ref name="kogeki2"/>。 |
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* サイバー防衛を担当する[[ウクライナ国家特殊通信庁]]国家特殊通信・情報保護局(SSSCIP)のユーリ・シチホリ局長は、ロシア軍の情報機関[[ロシア連邦軍参謀本部情報総局]](GRU)や[[ロシア連邦保安庁]](FSB)によるハッカー攻撃が「エネルギー施設に焦点を当てたものから、以前はそれほど標的にされなかった法執行機関へと方向性が変わってきている」と指摘し、「こうした裁判所、検察、法執行機関へのシフトは、ハッカーがウクライナにおけるロシアの戦争犯罪に関する証拠を集めていることを示している」と述べた<ref>Tom Balmforth、James Pearson (2023年9月23日).“[https://jp.reuters.com/world/ukraine/L6G4A7VVKFO4HGC3V3ZI2KR2ZE-2023-09-22/ ロシア当局、ハッカー使い戦争犯罪の証拠模索=ウクライナ高官]”. ''Reuters''. 2023年9月23日閲覧。</ref>。 |
* サイバー防衛を担当する[[ウクライナ国家特殊通信庁]]国家特殊通信・情報保護局(SSSCIP)のユーリ・シチホリ局長は、ロシア軍の情報機関[[ロシア連邦軍参謀本部情報総局]](GRU)や[[ロシア連邦保安庁]](FSB)によるハッカー攻撃が「エネルギー施設に焦点を当てたものから、以前はそれほど標的にされなかった法執行機関へと方向性が変わってきている」と指摘し、「こうした裁判所、検察、法執行機関へのシフトは、ハッカーがウクライナにおけるロシアの戦争犯罪に関する証拠を集めていることを示している」と述べた<ref>Tom Balmforth、James Pearson (2023年9月23日).“[https://jp.reuters.com/world/ukraine/L6G4A7VVKFO4HGC3V3ZI2KR2ZE-2023-09-22/ ロシア当局、ハッカー使い戦争犯罪の証拠模索=ウクライナ高官]”. ''Reuters''. 2023年9月23日閲覧。</ref>。 |
2023年9月29日 (金) 00:17時点における版
2022年ロシアのウクライナ侵攻のタイムライン (2023年9月 - 12月)(2022ねんロシアのウクライナしんこうのタイムライン 2023年9月 - 12月)では、2022年2月24日に開始されたロシアのウクライナ侵攻の経過の2023年9月から12月について述べる。
2023年9月
9月1日
- ウクライナのキリーロ・ブダノフ情報局長は、8月30日のロシア西部プスコフ州の空港に対する無人機攻撃について「プスコフの空軍基地への攻撃に使われた無人機はロシア国内から離陸していた」とし[1]「ロシア軍の輸送機、IL76が4機攻撃を受けた。2機は破壊され、もう2機も大きく損壊した」と主張した[2]。さらに「燃料タンクと、機体上部にある翼桁の重要部分が攻撃目標になった」とも明らかにした[3]。
- 午前、ロシア西部クルスク州のスタロボイト知事は、クルスク原子力発電所から数キロメートル離れたクルチャトフに対し、ウクライナ製の無人機の攻撃を受けたことを明らかにした[4]。この攻撃で、建物1棟が損傷する被害があったが、人的被害は確認されていない[4]。
- ロシアの首都モスクワ州モスクワ市のセルゲイ・ソビャーニン市長は、モスクワに近づいた無人機を撃墜したと明らかにし、この影響でブヌコボ空港の業務が一時的に混乱したという[4]。
- ロシア国営宇宙機関「ロスコスモス」のユーリー・ボリソフ社長は、射程1万1000キロメートル以上で、10以上の核弾頭が搭載可能とされる大型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「サルマート」が実戦配備されたと明らかにした[5][6]。ロシアとしてはウクライナ侵攻を続ける中、ゼレンスキー政権を支援する西側諸国に対して核の威嚇を強め、ウクライナへの支援をけん制する狙いがある[6]。配備の場所など詳細は明らかにされていない[5]。
- ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、2022年9月にロシアが一方的に併合したウクライナ東・南部のドネツク州、ルガンスク州、ザポリージャ州、ヘルソン州の開発に向け、今後2年半にロシア連邦予算から1兆9000億ルーブルを充てる方針を表明した[7]。
- ウクライナ軍参謀本部は、ウクライナ軍が南部ザポリージャ州で前進したと発表した[8]。
- ウクライナのハンナ・マリャル国防次官は、ウクライナ軍が南下を図る「ザポリージャ戦線」に兵力を集中させた成果が出始め、一部に数か所ではウクライナ軍がロシア軍の第1防衛線を突破したことを明らかにした[9][10]。その一方で、「第1防衛線の後方にもロシア軍の地雷原やコンクリート製の要塞が控えている」として「わが軍はさらなる前進のために多くの障壁を乗り越えなければならない」と述べた[8][10]。また、「地域によって状況は異なる」とも述べ、苦戦が続く地域があることも示唆した[9]。
- 米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は、ロシアが新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「サルマート」を実戦配備したとの情報について、確認する立場にないと述べた[11]。ウクライナ軍の南部での反攻が3か月たってもあまり進展していないとの批判について問われると、ウクライナ側の予想よりペースが遅いことを認めた[12]上で、「過去72時間でザポリージャ地域の進撃線でウクライナ側に進展があったことに注目している」と述べ[8][9][11]、ウクライナ軍が南に向かって反転攻勢を進める中で、「ロシア軍の2番目の防衛ラインに対して、いくつかの戦果を挙げた」としている[13]。この成功をどう生かすかはウクライナ次第だとし「ウクライナ軍がさらに南に進軍するには厳しい戦いが待ち受けている」と語った[8][11]。
- バイデン米政権は、劣化ウラン弾を含む徹甲弾をウクライナに初めて供給する見込みと報じられた[14][15]。来週発表される2億4000万-3億7500万ドル相当の新たな軍事支援に含まれるという[14]。弾薬は米国製戦車「M1エイブラムス」からの発射が可能で、数週間以内にウクライナに届けられるという[14]。イギリスは、3月に主力戦車「チャレンジャー2」の弾薬の一部には劣化ウラン弾が含まれると表明し[14]既に供与している[15]。劣化ウラン弾は貫通力に優れているが、使用された場合に劣化ウランの粉塵が、肺などの臓器に入り込み健康被害が出たり、環境への影響で懸念の恐れがある[14][15]。
- ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、訪米したウクライナ国家汚職防止庁のトップ、セメン・クリボノスらと会談した[16]。ウクライナが進める汚職撲滅に向けた改革について、改めて支持を表明した[16]。サリバン大統領補佐官は、独立した司法機関による汚職追及の重要性を強調した。ウクライナでは今年に入り、軍の食料調達を巡る汚職疑惑が報じられた国防省次官や、人道支援用の自動車を私的流用したと批判された大統領府副長官が解任されるなどした[16]。
- ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領府長官顧問は、ロシア国内でのドローン攻撃は増加していくとの見方を示し、こうした攻撃が頻発していることはウクライナの戦争が徐々にロシア国内に移行していることを示していると述べた[17]。ウクライナはロシア軍に占領された地域への攻撃を強化しているとし、ロシア国内でも「工作員」や「パルチザン」による攻撃が増加すると指摘した上で「敵対行為が徐々にロシアの領土に移行する段階に入っている」と語った[17]。その上で、ウクライナ軍は前進を続けているとし、欧米からの軍事援助が今後も継続されることを望んでいると述べた[17]。ロシアと和平交渉については、現時点で行わないと表明し「いかなる交渉もウクライナの屈服、そして民主主義世界全体の屈服を意味する」とし、ウクライナに多額の兵器を供与してきた西側の同盟国はロシアに対する妥協はあり得ないと理解していると確信していると語った[17]。
9月2日
- ウクライナのゼレンスキー大統領は、ウクライナ軍が進展を続けていると述べ、6月に始まった反転攻勢で一定の成果が出ていることを明らかにした[18]。X(旧Twitter)には、「誰が何と言おうと軍は前進している。われわれは活発に動いている」と投稿し、反転攻勢の遅れについて反論している[19]。。
- ロシア国防省は、前夜から未明にかけて、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミアとロシア本土を結ぶクリミア大橋を狙って、ウクライナが水上無人機3隻を使い攻撃を仕掛けたが、黒海ですべて破壊したと発表した[20][21][22]。
- ロシア国防省によれば、ウクライナと国境を接しているロシア西部のベルゴロド州に無人機が仕掛けられたが、それについても阻止している[22]。
- ウクライナ南部ヘルソン州のプロクディン知事は、ヘルソン州の村にロシア軍の攻撃によって、誘導弾が民家に当たって、1人が死亡、負傷者が出たと明らかにした[19]。
- ウクライナのメディアは、北東部スームィ州でロシア軍の攻撃によって警察官1人が、東部ドネツク州で攻撃によって夫婦2人がそれぞれ死亡したと報じた[19]。
- 英紙オブザーバーは、戦線を指揮するウクライナのオレクサンドル・タルナフスキー司令官が「我々は第1防衛線と第2防衛線の間にいる」と述べたと報じた[23]。ロシア軍は地雷原などで何重にも防衛線をめぐらせているが、ウクライナ軍が一部で最前線の第1防衛線を突破したことを示す[23]。第2防衛線の地雷原はそれほど整備されていないとも述べたという[23]。
- 米シンクタンク「戦争研究所」は、ロシア軍内部で足並みの乱れが顕著になっていると分析した[23]。
9月3日
- ゼレンスキー大統領は、オレクシー・レズニコウ国防相の更迭を決めたと明らかにした[24][25][26][27]。理由については「レズニコフ氏は550日間以上、全面戦争に向き合った。国防省は、軍と社会全体の双方との関係について、新しいアプローチを必要としている」と説明した[25][27]。ウクライナ国防省では食料調達などの発注を巡り、不正や汚職の疑惑が相次いで指摘されるうちにレズニコフの監督責任も問題視され[26]綱紀粛正で交代に踏み切った可能性がある[25]。後任には、ロシアに併合されている南部のクリミア半島の先住民族にあたるタタール系の政治家でウクライナ最高会議議員などを歴任し、2022年9月から国有財産基金トップを務めているルステム・ウメロウを充てるように議会に承認を求めるとした[24][26]。
- ウクライナ軍の報道官は、東部のドネツク州とルハンスク州の一部において、ロシア軍とウクライナ軍によって、激しい戦闘が継続していることを明らかにした[28]。ウクライナ軍では、この地域の2つの主な都市にちなんで、戦闘が実施されている場所を「クピャンスク・リマン区域」としている[28]。ロシア軍では、ウクライナ軍の反転攻勢を撃退するために、数千人の兵士を追加で投入しており、9月2日にウクライナ軍の陣地に対して、570回の砲撃と航空機による攻撃をそれそれ実施したが、ロシア軍は、過去24時間に5回の銃撃戦を行ったが、いずれも成功せず、ロシア軍の兵士126人が死亡したほか、7機の無人機や弾薬庫が破壊されたと説明している[28]。
- ウクライナ軍部隊のシュトゥピン報道官は、反転攻勢に関して、ロシア軍の第2・第3の防衛線は第1防衛線に比べると、脆弱だと指摘し、更なる前進に自信を示しているという[29]。ロシア軍が構築した3層の防衛線について、全体の強固さを100として、「第1防衛線は60、第2防衛線は20、第3防衛線は20だ」と指摘し、第1防衛線の突破の場合、地雷除去車が砲撃の標的にされ、その地雷の除去を手作業で実施したものの、比較的脆弱となっている第2防衛線以降においては、地雷除去車や部隊の運用が容易になるとして、前進の速度が上がる可能性を示した[29]。ロシア軍が第1防衛線を突破され、本来は攻撃用の精鋭の空挺部隊を防衛に回している状態には、ロシア軍の予備兵力が減りつつある表れという認識を示した[29]。「わが軍の弾薬量や露軍の出方などにもよるが、われわれはさらに前進し、アゾフ海まで南下できると期待している」とも述た[29]。
- ウクライナ軍は、未明にロシア軍がウクライナ南部オデーサ州南部において、3時間半にわたって、無人機を用いて攻撃を行ったと発表した[30]。ウクライナ軍は、通信アプリテレグラムに、イラン製ドローン「シャヘド」が、この攻撃に投入した25機のうち22機を撃墜したと投稿した[30]。この攻撃でドナウ川の港湾インフラが被害を受けて、少なくとも民間人2人が負傷したという[30]。ウクライナの一部のメディアは、ドナウ川沿いのレニ港で爆発があったと報じた[30]。ウクライナのアンドリー・イェルマーク大統領府長官は「ロシアのテロリストは世界に食糧危機と飢餓を引き起こそうとしている」と非難した[30][31]。
- ウクライナ国防省は、南部ヘルソン州にある黒海の海岸において、ウクライナ海軍がロシア軍の高速艇を攻撃した[32]。この攻撃で、ロシア兵の6人が死亡し、2人が負傷した[32]。
- ウクライナの公共放送は、南部のザポリージャ州にいるロシア軍が、ウクライナ軍の反転攻勢を防止するため、ロシア空挺軍の精鋭部隊を最前線に投入し始めたと報じた[33]。これは、ロシア軍がウクライナ軍に対して、防衛線を突破された為に、応急的な対応をしている可能性があるという[33]。ウクライナ軍の報道官の談話として「いわゆるエリート部隊を防御戦に使っているとすれば、何かがうまくいっていないに違いない」とも報じた[33]。
- 米シンクタンク「戦争研究所」は、報告書で「ロシア空挺軍の部隊がザポリージャ戦線上の集落ロボティネ近辺に再配置された」と分析した[33]。
- ロシア民間防衛問題・非常事態・自然災害復旧省は、西部レニングラード州のサンクトペテルブルクにある石油貯蔵施設で火災が発生し、午前10時59分ごろに火災の通報があったと発表した[34]。消防士およそ100人が出動して消火にあたり、既に鎮火した。80メートル×10メートルの格納庫が炎上し、焼失面積は約800平方メートルに及んだ[34]。これまでのところ死傷者は報告されていない[34]。出火原因は不明だが、過去にはロシアの石油貯蔵施設のようなインフラが、ロシアのウクライナ侵攻に関連して標的とされていた[34]。
- 諜報機関の情報を相互に提供しあっている「ファイブアイズ」は、3日までに、ロシア軍のハッカーが、ウクライナ軍の兵士が持っているモバイル機器に対し、戦闘作戦などの情報を盗む目的で工作を仕掛けていると警告した[35]。この盗み取った情報は、ロシアにおいてのウクライナの戦略を支えている可能性があり、ウクライナ軍の反転攻勢の進展が遅く、戦いが熾烈を増す時期とも重なっているため、複数のアメリカ政府当局者は、「反攻が数か月経過しても戦場で重要な突破が実現していない」と懸念を示しているという[35]。また、イギリスの国家サイバーセキュリティーセンターの幹部は、このハッキング攻勢について「ロシアがウクライナに仕掛けた不法な戦争がサイバー空間で展開し続けていることを明示している」という声明を明らかにしている[35]。
- ロシア前大統領のドミートリー・メドヴェージェフ安全保障会議副議長は、極東ロシアのサハリン州ユジノサハリンスクでの式典で、2023年のロシア軍への入隊者が約28万人に上り[23][36]、「一部は予備役、残りは志願兵その他」だと述べた[37]。ロシア軍は、兵員数を30%超増やして150万人にする目標を掲げ[36]、兵員を補充するため、志願を前提にした契約軍人の獲得を急いでいる[23]。
- エマニュエル・マクロン仏大統領は、ゼレンスキー大統領と電話会談を行い、ウクライナの穀物輸出の安全性向上に向け協力を強化することで合意した[38]。マクロン大統領は、ウクライナが完全な主権を回復できるよう長期に支援する決意を表明した[38]。ゼレンスキー大統領は、電話会談後「我々は、穀物回廊の機能を確保し、オデーサ州の安全保障を強化する方法についても協議した」と述べた[39]。新鋭戦闘機に関する協力関係が強まっているとし、フランス国内でのパイロット訓練について重要な合意に達したと明らかにした[40]。
9月4日
- ウクライナ政府は、ゼレンスキー大統領が2つの前線地域を視察する中、ロシア軍への反攻により東部戦線でさらに領土を奪還し、南部でも前進していると表明した[41]。マリャル国防次官は、ウクライナ軍はこの1週間で、東部ドネツク州バフムト周辺の約3平方キロメートルを奪還し、南部ザポリージャ州のノボダニリフカ村とノボプロコピフカ村の方面で「成果」があったと述べ、6月上旬に反攻を開始して以来、バフムト周辺の約47平方キロメートルの領土を奪還したという[41]。
- ウクライナ当局は、未明にロシアが南部のオデーサ州のドナウ川沿いにあるイズマイル港を空爆したことを明らかにした[42]。その際に、そのロシアの無人機が北大西洋条約機構(NATO)加盟国のルーマニアの領土に落下して、爆発したことをウクライナが発表した[43]。ウクライナ外務省のニコレンコ報道官はFacebookに、「ウクライナ国境警備隊によると、ロシアが昨夜、イズマイル港付近で大規模な攻撃を行った際、ロシアのイラン製ドローン『シャヘド』がルーマニア領土に落下し爆発した」と投稿し、「これは、ロシアのミサイルによるテロ行為がウクライナの安全保障だけでなく、NATO加盟国を含む近隣諸国の安全保障にも大きな脅威をもたらしていることを裏付ける」と述べた[43]。しかし、ルーマニア国防省は「ルーマニアは攻撃を受けていない」と表明した上でロシアの無人機がルーマニアの領土に落下した情報を「断固否定する」と述べ、「ロシアの攻撃手段がルーマニアの領土や領海に直接軍事的脅威を与えたことはない」とした[43]。これに対し、ウクライナの国営通信社ウクルインフォルムによれば、ウクライナのドミトロ・クレーバ外相は、その「証拠写真がある」と主張した[44]。
- プーチン露大統領とトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、[[南部連邦管区|ロシア南部ソチで会談し、ウクライナ情勢などを巡り意見交換した[45][46][47][48][49]。ロシアが7月に離脱した黒海穀物イニシアティブの復活の成否が焦点だったが、具体的な進展は見られなかった[45][46]。会談後に共同記者会見を開き、プーチン大統領は、米欧による農耕機械・部品の供給制限やロシア船舶の寄港制限に加え金融・保険サービスの制限制裁の解除[49]などによって「ロシアは合意離脱を余儀なくされた」と主張し[45]、ロシア産穀物の輸出拡大などが実現すれば「すぐ復帰を検討する」と改めて訴えた[46]。また、ロシアが黒海穀物イニシアティブの履行を停止することで食料危機を煽ったという西側の主張は間違っているとし「穀物黒海穀物イニシアティブの停止は、世界の食料市場に影響を与えていない。穀物価格は下がり続けている。物理的な食料不足はない」とした[47][48]。さらに「西側諸国はロシアから世界市場への穀物と肥料の供給を妨害し続けている」と指摘し、黒海穀物イニシアティブに基づいて輸出された穀物の70%以上が富裕国に供給されており、西側諸国は黒海穀物イニシアティブを巡りロシアを騙したと非難した[48]。最大100万トンのロシア産穀物をトルコに低価格で供給してトルコ国内で加工し、最も必要としているアフリカの国々に供給する計画について、黒海穀物イニシアティブに代わるものではないかと説明し、カタールの支援を受けてロシア産穀物をトルコに輸出し、加工後に開発途上国に供給する代替案を協議したとも明かした[46][48]。「アフリカ6か国[注 1]に対するそれぞれ最大5万トンの穀物供給の合意が間もなく締結され、ロシアが食料を無償で提供し、輸送も無償で行う。輸送は数週間以内に始まるだろう」と話した[47][48][49]。エルドアン大統領は、国際連合と共に合意の復活を目指す姿勢を強調し「進展は可能だ。短期間で見解の相違を埋め、(ロシアを復帰させる)解決策に達することができると信じている」と訴えた[45][46][47][48]。ウクライナのクレーバ外相は、会談を受け、ウクライナが立場を変えることはないが、首脳会談に関するトルコの報告に留意すると述べた[48]。
- 米シンクタンク「戦争研究所」は、ウクライナ軍はザポリージャ州西部での作戦で戦術的に重要な進展を得て、2か所で前進したと分析した[50]。
- キューバ外務省は、ロシアによるウクライナ侵攻に参加させるためにキューバ人を勧誘している人身売買ネットワークを特定したと発表し、「キューバはウクライナでの戦争に参加していない」と強調し「いかなる形であっても、他国に対して武器を使わせたり、傭兵(ようへい)にさせたりする目的でキューバ人の人身売買に関わった者」に対する取り締まりを続けると述べた[51][52]。キューバ政府は、声明で「この人身売買ネットワークは、ロシアや自国在住のキューバ人をロシアのウクライナ軍事作戦に参加させるため活動していた。キューバ内務省は、ネットワークの無力化と解散に尽力している」と述べた[51][52][53]。また、人身売買に関与した容疑者らに対する起訴手続きも開始したと発表した[51]。反米のキューバは、ロシアによるウクライナ侵攻を擁護してきた[52]。
- 日本の松野博一官房長官は、ウクライナのレズニコフ国防相が汚職疑惑に関連して更迭されたことを巡り、ウクライナの復興に際し、汚職対策は復興資源の公平・公正な分配、日本を含む民間の積極的な投資など「経済活動の活発化のためにも極めて重要」とし、取り組みを支援していく考えを示し、汚職対策は「法の支配に基づく社会を実現する前提となるもので、あらゆる経済活動の基盤になる」と語った[54]。
9月5日
- ウクライナ軍は、南部ザポリージャ州のアゾフ海付近の重要都市メリトーポリ方面に向かう攻撃作戦を継続していると発表した[50]。
- ウクライナ南部ザポリージャ州ロシア側「幹部」ロゴフは、イギリスがウクライナに供与した主力戦車チャレンジャー2をザポリージャ州ロボティネ近郊で破壊したと主張した[55]。事実とすれば1994年の初配備以降、チャレンジャー2が戦闘で破壊されるのは初めての可能性が高いとした[55]。なお、この戦車に乗っていた4人は無事だという[55]。
- ロシア国防省は、未明に首都モスクワで少なくともウクライナのドローン3機を撃墜したと発表した[56]。モスクワ州に隣接するカルーガ州とトベリ州の上空で2機、首都に近いイストラ地区の上空で1機を撃墜した[56]。モスクワ市のソビャーニン市長は、ウクライナが「モスクワに対する攻撃を企てた」と主張[57]し、イストラ地区で施設に被害が出たとした[56]。国防省は、他の場所で物的・人的被害はないとしている[56]。
- ウクライナに接するロシア西部ベルゴロド州のグラトコフ知事は、「グライボロン地区のコジンカ村が繰り返し砲撃を受け、同村に住む民間人1人が死亡した」と述べた[58]。犠牲者は、救急車の到着前に現場で死亡が確認され、別の女性1人も砲弾の破片で太ももを負傷して入院した[58]。
- ウクライナ南東部ザポリージャ州のロシアに任命されたバリツキー「知事代行」は、ロシア軍はウクライナ軍にロボティネ村を明け渡した後、村から戦術的に撤退したとの認識を示し、ロボティネは「大規模な長期の戦闘の結果、もうほとんど存在していない」と指摘し「この集落が残っているのは地図上だけだ」と述べた[59]。更地となった村を守るのは得策ではないため、ロシア軍は高さで優位に立てる丘に退却したという[59]。ロボティネ村がウクライナの南部反攻に持つ戦略的重要性については多くの指摘がある[59]。
- ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は、「ウクライナ軍はどの戦線でも目標を達成していない。最も緊迫しているのはザポリージャの戦線だ」と述べ、ウクライナの反転攻勢は完全に失敗しているものの、ロシア軍が占領する南部ザポリージャ州の一部で情勢が緊迫していると指摘した[60]。
- 米シンクタンク「戦争研究所」は、ウクライナ軍は南部ザポリージャ州で前進し、軽歩兵がロシア軍の塹壕や竜の歯と呼ばれる対戦車障害物を越えたと分析したが、ロシア軍の防衛線を突破したと言えるかどうかは判断できないとした[57]。
- ウクライナの参謀本部は、「ウクライナ軍が南部ザポリージャ州で8月末に奪還したロボティネから要衝トクマクの途上にある集落ノボプロコピフカに向けて前進している」ことを明らかにした[61]。また、「東部ドネツク州での反転攻勢も継続し、バフムト南方で戦果をあげた」ことも明らかにしている[61]。CNNは、「ザポリージャ州で数十の建物やインフラへの攻撃があって住民1人が死亡し、ドネツク州でも2人が負傷した」と報じた[61]。
- 非政府組織(NGO)の「クラスター弾連合」は、ウクライナでクラスター爆弾によって2022年に604人が負傷し、312人が死亡したとの報告書をまとめた[62][63]。2022年のクラスター爆弾の被害者のうちウクライナが8割弱を占め、死傷者の数は2021年比で8倍になり、2010年にクラスター弾に関する条約を発効し年次報告書の作成を開始して以来、最悪の水準となった[62][63]。死傷者の95%は民間人で、4分の3が子供だといい、不発弾で遊んでいて被害に遭うケースが多いという[62][63]。報告書によると、ウクライナではロシアが繰り返しクラスター爆弾を使用し、ウクライナもクラスター爆弾を使用しているが頻度は相対的に少ないという[63]。
- ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、ウクライナがオーストラリア製の無人機を使用して、ロシア領内の標的を攻撃していることを明らかにした[64]。その上で、「オーストラリアのドローンが実際にロシアの標的を攻撃するために使われている」と指摘している[64]。オーストラリア紙シドニー・モーニング・ヘラルドは「ウクライナがオーストラリアのドローンを使ってロシアのクルスク市の飛行場を攻撃した」と伝えている[64]。
- サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、北朝鮮はこれまでロシアには武器を供給しないと公約してきたとし、その約束を守らずに武器を提供すれば「国際社会で代償を払うことになるだろう」と追加制裁を示唆し、同盟諸国と連携して圧力を強化すると警告した。[65][66][67]。アメリカ政府によると、ロシアが西側の制裁によって防衛産業基盤の制約を受けているとし、武器や弾薬のあらゆる調達先を模索していると指摘[65]し、北朝鮮に弾薬を含む武器の供与を働き掛けている[66]。サリバン大統領補佐官は「ロ朝間で活発に話し合いが進められている」と指摘し「金正恩は首脳間の対面での会談も含め、今後も話し合いが続くことを期待しているとの情報もある」と明らかにした[66][67]。
- アメリカ合衆国上院は、民主党と共和党のトップが共にウクライナへの支援継続を表明した[68]。民主党のチャック・シューマー院内総務は「ロシア軍に対する反転攻勢が本格化している今こそ、われわれはウクライナの友人たちと闘い続ける必要がある」と強調した[68]。共和党のミッチ・マコーネル院内総務も「上院の最優先課題はアメリカ国民の安全を守ることだ。今月には国家安全保障の緊急課題と災害救援の補正予算でそれを実現する機会がある」と語った[68]。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、年末までの予算を確保する措置で上下両院と緊密に協力していると説明した[68]。
- ウクライナ西部リヴィウ州の州都リヴィウ市のアンドリー・サドビー市長は、東京都内で記者会見を行い、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化で、東・南部の前線などから負傷者の搬送が増えており、医療現場が切迫しているため[69]、「外科病棟の拡張計画が進んでおり、日本からの支援に期待する」と述べた[70]。
9月6日
- ゼレンスキー大統領は、前線に近い東部ドネツク州の工業都市コンスタンチノフカでロシアの攻撃があり、市場や薬局などが被害に遭い17人が死亡したと明らかにした[71][72][73][74]。「何の罪もない人々が死傷した。ロシアと何らかの取引を試みようとする人々がなお世界にいるとすれば、それはこの現実や邪悪さから目をそらすことだ。このロシアの悪は一刻も早く打ち負かさなければならない」と述べた[71][72][73]。その後のキーウでの記者会見で「平和な都市」に対する意図的な攻撃だったと考えているとし、「これはロシア連邦による新たなテロ攻撃だ。彼らは意図的に市場を襲撃した」と語った[73]。クリメンコ内相は、少なくとも28人が負傷したと述べた[74]。ウクライナ軍には、攻撃がロシア軍の防空システム「S300」から発射されたミサイルによるものだとするの見方もある[72]。
- ゼレンスキー大統領は、ルーマニアの首都ブカレストで開かれた地域協力会合でオンライン演説し、東欧5か国[注 2]によるウクライナ産穀物の輸入規制を念頭に「これ以上の制限に強く反対する」と述べ、規制解除を求めた[75]。ウクライナは欧州が共有する価値観を守るために戦っているとして「いかなる制限も今は問題だ」と強調し、団結してロシアに対抗すべきだと訴えた[75]。5か国は9月15日までを期限に安価なウクライナ産穀物の流入を警戒し、輸入を規制しているが、期限延長することを欧州連合(EU)に提案している[75]。
- ウクライナ空軍は、ロシア軍が一晩で短距離弾道ミサイル「イスカンデル」[71]計8発と無人機25機を発射したと発表した[76]。ミサイル8発全てと無人機15機を迎撃したとしている[76]。南部オデーサ州のオレフ・キペル知事は、未明にドナウ川河口に近い港湾都市イズマイルが約3時間にわたりロシア軍のドローン攻撃があり、港湾や農業関連のインフラが被害を受け、1人が死亡したと発表した[71][76]。
- ウクライナの首都キーウは、前夜から朝の時間帯にかけ、ロシア軍のミサイル攻撃を受けたものの、キーウ市の軍当局は、攻撃を受けたミサイルを全て撃墜したとを明らかにした[76]。
- ウクライナ陸軍のオレクサンドル・シルスキー司令官は、東部の戦況について「依然として厳しい」と述べ、ロシア軍がドネツク、ルガンスク両州の州境まで到達する計画を維持しているとの認識を示した[76]。
- ウクライナ最高会議は、ウクライナ国有財産基金トップのウメロウを国防相に就任させるゼレンスキー大統領の提案を賛成多数で承認した[77]。承認後、ウメロウ国防相は、全ての領土と全ての人々を解放するため、ウクライナの勝利のために、可能なことも不可能なことも全てを行うとし「不幸にも一時的に捕虜となっている人々を全員帰国させる。子ども、戦争捕虜、政治犯、民間人、全員を」と述べた[78]。
- ロシアのグルシコ外務次官は、カタールの資金援助を受けて100万トンのロシア産穀物をトルコで加工し、アフリカなどの貧困国に送るロシアの新提案について、関係国が「基本的合意に達した」と表明し、間もなく技術面の協議が始まると述べた[79][80]。新提案はロシアが7月に離脱した黒海穀物イニシアティブに代わるもので、ラブロフ外相が8月25日にトルコのフィダン外相に説明し、4日に行われたプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領の会談でも基本的に一致した[79][80]。
- ルーマニアのティルバル国防相は、ドナウ川沿いのウクライナ国境近くの領土内で、詳細については調査中としながら、ロシア軍が発射したドローンの可能性があり「ドローンの破片とみられる物が見つかったことを確認した」と述べた[81][82]。破片とみられる物の発見地点周辺に差し迫った危険はなく、近隣住民に避難は要請していないと語った[81]。ルーマニア国防省は、ドナウ川を挟んでイズマイルの対岸に位置するプラウル村の付近で「調査班が5日夜、無人機の破片らしきものを発見した」と発表した[82]。クラウス・ヨハニス大統領は、「破片がロシアの無人機のものであることが確認された場合、到底許されることではなく、NATO加盟国であるルーマニアの主権および領土の保全に対する重大な侵害となる」と強調した[82]。
- アントニー・ブリンケン米国務長官は、1年ぶり侵攻開始後3回目[注 3]となるウクライナの首都キーウを訪問した[85][86][87][88][89]。ブリンケン国務長官は、今回の訪問について「アメリカの支援をあらためて強調するためにバイデン大統領は私を派遣した。今回の訪問には、アメリカ及びその他の国による取り組みの最大化を確認する目的がある。これらの取り組みは、ウクライナが反攻をかける上での当面の課題や、今後いかなる侵略も抑止して自国を守ることができる戦力の構築に向けた長期的な支援を念頭に置く」と述べ[90]「ウクライナの反転攻勢や今後の支援、復興について話し合う」とした[85]。クレーバ外相と会談を行い、ウクライナ軍がロシア軍に対して進める反転攻勢について「進展は順調だ」と評価した[87]。また「ウクライナが必要とするものを確保したい。反攻の成功のみならず長期的に必要とするものを整え、強固な抑止力を有することを希望する」とも述べ、ウクライナの経済、民主主義の復興を有志国とともに支援する方針を示した[85]。ブリンケン国務長官がキーウ市内の戦死者墓地で弔意を示し献花した[88]ことに対し、クレーバ外相は「自由のために命をささげた全ての戦士に対する敬意の表れだ」と歓迎した[85]。射程約300キロの地対地ミサイル「ATACMS」の供与に関して協議したことも明らかにし、前向きな決定を望むと表明し、ウクライナへの武器供与は、ロシアの侵略から世界を守ることになると訴えた[88]。デンマークのフレデリクセン首相も同じくウクライナを訪問しており、キーウに向かう電車でブリンケン国務長官はデンマークのF16戦闘機の供与に謝意を示した[88]。ゼレンスキー大統領との会談では、ウクライナ軍の「反転攻勢に重要な進展がみられる」と指摘し、反攻を支える兵器供与とともに、総額10億ドル(約1470億円)以上の追加支援を発表し、ウクライナの反攻という喫緊の課題のみならず、将来的な侵略の抑止などウクライナ軍の防衛力強化に向けた長期的支援を継続することを強調した[91][92][93]。また、すでに供与を表明している主力戦車「M1A1エイブラムス」が今秋にウクライナに到着すると述べた[92]。ゼレンスキー氏は「アメリカ高官の訪問は常に、重要な支援の証しとなる。アメリカは戦場における支援のリーダーだ」と述べ、改めて謝意を示した[91][92]。支援の中身は最大1億7500万ドルの兵器供与のほか、1億ドルの「対外軍事融資(FMF)」や約2億ドルの人道的援助などとなる[91][92]。
- アメリカ国防総省は、ウクライナに対する最大1億7500万ドル相当の新たな安全保障支援策を発表した[93][94]。主力戦車「M1A1エイブラムス」に搭載する劣化ウラン弾が含まれる[94]。この支援は、ブリンケン米国務長官が、前述のウクライナ訪問中に発表した総額10億ドル超のウクライナ追加支援策の一角となり、6億6500万ドル超の新たな軍事・民生安全保障支援やウクライナの防空向け支援などが含まれる[94]。劣化ウラン弾の供与は、イギリスに続く2か国目となる[94]。ホワイトハウスのジャンピエール報道官は、このほか高機動ロケット砲システム「HIMARS」や携帯型対戦車ミサイル「ジャベリン」も含まれるとした[88]。
- 在アメリカ合衆国ロシア連邦大使館は、アメリカのウクライナに対する劣化ウラン弾供与を巡り「明らかに非人道的だ」と批判した[95]。劣化ウラン弾は高い貫通力を持つが、放射性物質を拡散させる可能性が指摘される[95]。
- ウクライナ西部リヴィウ州リヴィウ市のサドビー市長らは兵庫県神戸市にある神戸市役所を訪問し、久元喜造市長と面会した[96]。ウクライナの現状などについて意見交換した[96]。リヴィウ・神戸両市はロシアによるウクライナ侵攻前から交流があり、5月には市長同士がオンラインで初めて対談していた[96]。神戸で開かれる国際フロンティア産業メッセにウクライナ・パビリオンの開設が決まり、リヴィウなどの企業が出展するのに合わせて訪問団が神戸を訪問した[96]。サドビー市長は、リヴィウはロシアの占領地から約15万人が避難し、リヴィウの市立病院では約1万3千人の負傷者を受け入れているとし、義肢を必要とする人々は約4万人に上ると述べた[96]。リヴィウの市立病院では、世界的建築家である坂茂がリハビリ施設を拡張するプロジェクトを進めていて「完成すれば病院からあふれている患者の受け皿になる」と期待を寄せた[96]。7日には神戸の医療産業都市を視察し、坂らと共にプロジェクトの詳細を紹介する[96]。久元市長は「義肢の装具の提供が求められている状況を再認識した。神戸市も必要な支援が得られるよう国に働きかけたい」と話した[96]。サドビー市長は、神戸市内で講演も行い、ロシアによるウクライナ侵攻後、世界中からの支援によってリヴィウで医療施設が次々と整備されていると謝意を表明した[97]。義肢の不足など課題を指摘し「問題を共に乗り越えて前に進みたい」と語り、寄付など一層の支援を要請した[97]。
9月7日
- ウクライナ当局は、南部オデーサ州のドナウ川沿いにあるイズマイル港がロシア軍の無人機による攻撃によって、穀物の貯蔵施設などが被害を受けたことを明かした[98]。3時間の攻撃で、2人のトラック運転手が負傷し、爆風の影響で数軒の家屋も損傷した[98]。ウクライナ軍は、ロシア軍の33機の無人機の内、25機を撃墜したと発表した[98]。今回の無人機攻撃は、その大部分をオデーサを標的にしていたものの、その一部は、北部スームィを標的としており、当局は、1機の無人機による攻撃で民間の住宅や商店が被害を受けたが、死傷者は出ていないという[98]。
- ウクライナ南部ヘルソン州のプロクディン知事は、ヘルソン州の集落オドラドカミャンカが、朝の時間帯にロシア軍の攻撃を受け、1人の男性が死亡したと発表した[98]。
- ウクライナ軍参謀本部は、東部ドネツク州バフムト周辺やザポリージャ州ベルボベ周辺で前進したと発表した[99]。ブリンケン米国務長官も、ウクライナの反転攻勢について「この数週間で具体的な進展があった」と述べた[99]。
- ゼレンスキー大統領は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談し、ロシアの侵攻を受けるウクライナをイスラエルがどのように支援できるかについて話し合い、ウクライナの主権と領土の一体性に対するイスラエルの支援の重要性を指摘したという[100]。イスラエルはウクライナに人道・外交的支援を提供しているが、兵器は供与していない。イスラエル首相府は、ゼレンスキー大統領との会談ではイスラエルのウクライナ人難民の受け入れを含む支援の継続や、民間防空システムの開発支援の進展について協議したと発表した[100]。
- ゼレンスキー大統領は、「東部と南部の軍部隊の戦闘状況を挙げてロシア占領地奪還作戦で一定の成果を上げた」と述べているが、その作戦の詳細については踏み込まないで、兵士の奮闘を称えるにとどまった[101]。
- ウクライナのマリャル国防次官は、「先週奪還した南部ザポリージャ州ロボティネから軍が南下している」と説明し、クリミア半島とウクライナの東部のロシア占領地域の間に、ロシアが設置している陸橋を切断しようとしているといい、いわゆる南部戦線について、「事態は急速に進展している」とした[101]。
- ウクライナ国境警備隊の報道担当者は、「(7日の)現段階でロシアは交代制で派遣していた部隊を含めほぼ全ての兵員をベラルーシから撤収させた」と述べ、「ベラルーシからウクライナへ地上戦を仕掛けられるほどの十分な兵力の準備はもはやない」という見方を明らかにした[102]。新たな部隊の到着もないとも述べてた[102]。「ロシア軍は(ベラルーシ東部と国境を接している)北部チェルニーヒウ州、北東部スームィ州やハルキウ州へ頻繁に砲撃を浴びせている」と指摘し、ウクライナとロシアとの北部の国境線沿いにも位置しているという[102]。これらの州では「敵側はウクライナ領への侵入を試みる破壊工作や偵察の要員集団を動かそうとしている」とした上で「これら謀略の大半はスーミ州で起きている」とも話している[102]。また、一部の中立的な立場を取っている軍事アナリストらは「ベラルーシにいた部隊はウクライナの北東部の前線へ送られた」と説明し、その転戦の地として北東部ハルキウ州クプヤンシク市と東部ルハンスク州クレミンナ市の間と示した[102]。* ウクライナと国境を接しているロシア南部ロストフ州のロストフ・ナ・ドヌにあるロシア軍司令部近くで、ドローン攻撃による爆発があった[103]。ゴルベフ州知事は、防空隊がロストフナドヌー上空でドローン2機を迎撃し、1人が負傷、車数台が損傷したと明らかにした。残骸が墜落した現場周辺では非常事態モードが発令され、100人近い住人に一時的な滞在先が案内されたという[103]。
- 米シンクタンク「戦争研究所」は、ウクライナ軍が既に奪還したロボティネ村の東方にあるベルボベ村を北西に進み[104]、戦術的な成功を得るとともに、ロシア軍の戦力をそいでいるとの分析を発表した[99]。ただ「ロシア軍の防衛陣地は依然としてウクライナ軍にとって重大な問題だ」と指摘した[99]。
- モスクワ市のソビャーニン市長は、モスクワ近くで防空システムが作動して、無人機が迎撃されたことを明らかにした[103]。被害や死傷者はなかったとした[103]。
- ロシアのリャブコフ外務次官は、アメリカのウクライナに対する劣化ウラン弾供与を「犯罪行為」だと非難した。劣化ウラン弾の供与は6日発表された[105]。核不拡散に関するセミナーの後で劣化ウラン弾の供与に触れ「この種の兵器の戦場での使用がもたらす環境への影響をあからさまに無視するアメリカ政府の姿勢の表れ」だと主張した[105]。さらに「誰がそれを吸い込むのか、どこに積もるのかを気にかけていないことは明白だ。現在戦闘中の者にどのような影響があるか、今後この地で生活していく世代に何が起きるのかも考慮されていない」と指摘した[105]。ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官も、「非常に悪い知らせだ」と反発し「これらの砲弾を使用したことが、がん患者の急増を引き起こしてきた。これらが使用されるウクライナ領も、間違いなく同様の状況に陥る。責任を負うことになるのは米国だ」と述べた[106]。
- イェンス・ストルテンベルグNATO事務総長は、ブリュッセルで開かれた欧州議会の外交委員会に出席し、ウクライナ軍によるロシアへの反転攻勢について、「期待したほどではないかもしれないが、1日に数百メートルほど、徐々に足掛かりを得ている」と指摘し「激しく困難な戦いだが、前進している」と述べた[107][108]。ウクライナ支援はわれわれの責任だとも訴え、西側諸国による支援の重要性を改めて強調した[107]。ルーマニアでドローンの破片とみられる物体が見つかったことにも言及し、NATOとしても警戒を強める一方で「ロシアによる意図的な攻撃を示す情報はなく、現在行われている調査の結果を待っている」と説明した[107]上で、ロシアの空爆がNATO加盟国のすぐ近くで行われる危険性を強調し「これは事件や事故が起きるリスクを示している」と述べた[109]。
- アメリカとイギリスは、ロシアに拠点を置きロシアの情報機関とつながりがあるとされるサイバー犯罪組織「トリックボット」で指揮や調達を担う主要人物や開発やプログラム作成の担当者の11人に制裁を科したと発表した[110]。米財務省は、ロシアによるウクライナ侵攻を真っ先に支持した組織のひとつであり、ロシア情報機関からの任務を請け負い続けているとした[110]。
- 米財務省は、ロシア政府関係者や新興財閥オリガルヒらへの制裁を強化するため、G7・EU及びオーストラリアが事務レベルによる作業部会を開いたと発表した[111]。情報共有の強化などを通じ、凍結対象の資産把握を進め、ロシアがウクライナに賠償するまで凍結を続けることで一致した[111]。作業部会は、対象資産は約2800億ドル(約41兆円)に上ると推計し、その多くはEU内にあるという[111]。各国は、銀行口座や豪華船、不動産などの資産を差し押さえてきたが、制裁対象者が資産を親族に譲渡するなどの制裁逃れへの対応が課題となっている[111]。
- 米国防総省は、ウクライナに対し、防空システム維持に必要な装置や高機動ロケット砲システム「HIMARS」用弾薬、地雷除去装置などを含む最大6億ドル(約883億円)の追加軍事支援を発表した[112]。
- 米国防総省傘下の国防情報局(DIA)幹部は、ウクライナ南部ザポリージャ州でロシア軍の第1防衛線を突破したウクライナ軍が「第2防衛線を破るのは大いにありうる」と期待を示した[113]。反転攻勢によるウクライナ軍の前進を評価し、2023年末までに残りのロシア軍の防衛線を破る「現実的な可能性」があるとの見方を示した。不足気味の砲弾や兵器と、今後悪化するとみられる天候が懸念材料だと指摘した[113]。
- アメリカのカマラ・ハリス副大統領は、北朝鮮がロシアに軍事支援を提供することは「大きな間違い」とし、「ロシアにとっても北朝鮮にとっても、孤立を深めることになると確信している」とも述べた[114]。さらに、ロシアのウクライナ侵攻が短期間で終了するいった見方が台頭していたことを指摘し、「ロシアが必死になっているのは明らかだ。すでに戦略的な失敗を味わっている」とも述べている[114]。
- アントニオ・グテーレス事務総長は、ロシアに黒海穀物イニシアティブに復帰してもらうため、ロシア産の穀物・肥料の輸出状況改善に向けて「積極的な働きかけをしている」と明らかにし「相互保証の仕組みを創設する必要があるとわれわれは考えている」と語り、「われわれが直面している困難は、ロシアがウクライナ側の港湾施設や穀物貯蔵庫を爆撃し、双方の誠意を獲得することがどんどん難しくなっているという点にある」と課題を指摘した[115]。
- 細田博之衆議院議長は、衆議院議長公邸でウクライナ最高会議のステファンチュク議長と会談した[116]。8日に日本が議長国として開くG7下院議長会議に向け、連携を確認した[116]。細田議長は「厳しい戦況だと承知している。支援を惜しまない」と申し出た[116]。ステファンチュク議長は8日の会議を念頭に「ロシアの戦争犯罪を批判してほしい」と強調した[116]。
- ウクライナ最高議会のステファンチュク議長は、東京都内の日本記者クラブで記者会見を行い、日本政府の財政的な支援やウクライナからの避難者の受け入れに対し謝意を示したうえで、ロシアによる侵攻の終結に向け、国際社会の支持を改めて求め「今年の議長国である日本をはじめとするG7諸国が、我が国の領土の一体性と主権を支持してくださることに心から感謝します」と述べた[117]。また、長距離射程の兵器や戦闘機兵器の供与やパイロットの訓練などが勝利を加速させるとし、欧米諸国の継続的な軍事的支援が今後の反転攻勢において不可欠だと改めて訴え[118]、日本にも防空システムや砲弾の供与をお願いするつもりだと話しました[117]。直近の世論調査で国民の8割超が領土奪還まで戦い続ける意志を示したといい、戦争長期化への覚悟があることも付け加えた[118]。第二次世界大戦後に作られた国連の安全保障メカニズムが「機能していない」と主張し、戦争を起こさない体制や侵略国を処罰する仕組みを作るなど改革の必要性を訴えた[118]。北朝鮮の金正恩総書記とロシアのプーチン大統領が近く会談を行う可能性について「いま繰り広げられているのは独裁国家と民主主義国家の戦いで、勝った方が次の100年の流れを決めることになる」として、この戦いに勝利する必要性を強調した[117][118]。戒厳令下における議会や大統領選選挙の実施について「課題を解決して初めて、実施されるかどうかという質問に答えられる」と述べ、現状では困難という見方を示した[119]。ロシアによる侵攻下での選挙実現の条件として、戦場にいる兵士や国外に避難している国民の選挙権の問題、予算の捻出、公平性確保などの課題を列挙し、「国内で猛烈に討論されている」と語った[119]。汚職対策については「汚職が深刻な国という恥ずかしいラベルを外すため社会全体で取り組んでいる。国際社会の信頼を裏切らないため、解決しなければならない」と述べた[118]。ワグネルの反乱などでロシアで混乱が生じ、ロシア軍が訓練をろくに受けていない兵士を盾にウクライナ軍を食い止める作戦を取り、全体の士気が低下しているとも指摘した[118]。
9月8日
- 朝、ウクライナ南部クリブイリフの政府関連庁舎に、ロシア軍の攻撃があり、1人が死亡、54人が負傷した。南部ヘルソン州でも、ロシア軍の攻撃で3人が死亡した[99]。北東部スームィ州や南部ザポリージャ州でもミサイルなどによる攻撃があり、数人が負傷した[99]。
- ゼレンスキー大統領は、ウクライナの首都キーウでの会合で、ロシアのプーチン大統領が民間軍事会社[[[ワグネル・グループ
|ワグネル]]の創設者エフゲニー・プリゴジンを殺害したとし「プーチンは人として、政治家として心を失った」と批判し「少なくとも、われわれは全ての情報を持っている」と語った[120]。また、「ロシア軍を撃退するための武器の確保が困難かつ、ペースが遅くなっている」と指摘し「戦争は減速している」との認識を示し「ウクライナ軍がより強力な武器を入手できれば、南部と東部における戦闘でより迅速に前進することが可能」と述べた[121]。
- ゼレンスキー大統領は、ビデオ演説で、同盟国がロシアに対しての制裁の手を緩めていることを理由に、ロシアに対する制裁を強めるように要求した上で、「制裁を逃れようとするロシアの動きは非常に活発」だと指摘して「世界の制裁攻勢は再開されなければならない」とした[121]。また「とりわけロシアのエネルギー部門やマイクロエレクトロニクスへのアクセス、金融部門に圧力をかけることに焦点を当てるべき」とも述べている[121]。
- ロシア外務省は、アルメニアの駐ロシア大使を呼び、アルメニア側で非友好的な動きが続いているとして抗議の意思を伝えたと発表した[122]。アルメニア政府が議会に対し、ウクライナ侵攻に絡んでロシアのプーチン大統領に逮捕状を出した国際刑事裁判所(ICC)加盟条約の批准を提案したことなどを挙げ、旧ソ連諸国でつくる集団安全保障条約機構(CSTO)加盟国にふさわしいか「疑問を抱かせる」と不快感を表明した[122]。
- 国際連合安全保障理事会は、ロシアが一方的に「併合」したウクライナ東部・南部4州で統一地方選を強行していることを受け、アメリカなどの要請で公開会合を開いた[123][124]。出席した国連高官が「占領地での選挙に法的根拠はない」と述べるなど、非難が相次いだ[123]。ウッド米国連代理大使は「ロシアは偽の選挙を通じて、占領地での支配を誇示することを望んでいる」と述べ、併合の既成事実化を図る試みだと糾弾した[123]。ウッドワード英国連大使も「選挙結果はあらかじめ決められているとの情報がある」と指摘し、「他人の国で選挙を実施することはできない」と批判した[123]。ドリビエール仏国連大使は、「茶番だ」と批判した[124]。日本の石兼公博国連大使も「全く受け入れられない」と語った[124]。これに対し、ネベンジャ露国連大使は、4州の住民は「脅威にさらされ続けている」と主張し「2022年の住民投票の結果は市民の自決権の表れだ」と述べ[124]「住民をウクライナの政権から解放し保護するためには、ロシアに所属するという法的地位を明確にすることが唯一の方法だ」と正当化した[123]。
- 国際原子力機関(IAEA)の専門家は過去1週間、欧州最大のウクライナ南部ザポリージャ原子力発電所周辺で攻撃が増加しており「核の安全への潜在的な脅威」が増したと改めて警告した[125]。ラファエル・グロッシーIAEA事務局長は声明で、専門家は「過去1週間にわたり、多数の爆発音を聞いた」と指摘した[125]。
- 岸田文雄首相は、訪問先のインドでトルコのエルドアン大統領と会談した[126]。岸田首相は、ロシアのウクライナ侵攻に関し「力による一方的な現状変更の試みは世界のどこであれ認められない」と強調し、エルドアン大統領に「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化の必要性を、国際社会が一致して訴えることが重要だ」と伝えた[126]。
- 林芳正外相は、ポーランドの首都ワルシャワを訪問し、ズビグニェフ・ラウ外相と会談した[127]。ロシアの侵略が続くウクライナへの支援をめぐり両国の官民連携が重要との認識で一致した[127]。ウクライナと国境を接するポーランドは、現在も約100万人の避難民を受け入れているほか、米軍の支援物資の約9割が通過するなど、軍事・人道支援の拠点として大きな役割を担っている[127]。
- G7下院議長会議が、国会議事堂で開かれ、ロシアによるウクライナ侵攻などについて討議した[128]。海江田万里副議長[注 4]は、「ロシアが部隊を撤収させるまで支援を続けなければならない」と呼び掛けた[128][130]。共同声明で、ロシアによる核威嚇を批判し「議会でもロシアの核使用のリスクを最小化させる努力を行う」と明記した[131]。また、ロシアが黒海穀物イニシアティブから離脱したことを非難し「世界の食料安全保障を脅かし、最も弱い立場の人々を飢餓の深刻な危険にさらす」とした[131]。ロシアによる偽情報の流布が民主主義に脅威を与えているとし「偽情報やフェイクニュースと積極的に闘う」と盛り込んだ[131]。ウクライナ最高会議のステファンチュク議長も参加した[128]。
- 天皇陛下は、皇居・宮殿「連翠」で、G7各国の下院議長らと面会した[132][133]。ウクライナ最高会議議長のルスラン・ステファンチュクは「2千人以上の避難民を受け入れていただいている。日本政府のみならず、国民の皆さんに感謝したい」と話し、陛下は「ウクライナ国民は大変困難な状況に置かれていると思います。一日も早く平和が回復されることを祈っています」と応じた[132][133]。ロシアによるウクライナへの侵攻後、陛下のウクライナの要人と会うのは初めてとなる[132][133]。
9月9日
- 午前、ウクライナで避難民を支援する国際NGO団体「ロード・トゥ・リリーフ」のメンバー4人を乗せた車両が、ウクライナ東部スラビャンスクからバフムート方面へ向かう途中、ロシアの飛翔体に直撃され、車両が反転・炎上し、責任者のスペイン人女性活動家エマ・イグアルが死亡した[134]。スペインのホセ・マヌエル・アルバレス外務・欧州連合・協力大臣は「口頭で死亡の連絡を受け、ウクライナ当局に確認を求めている」と述べた[134]。カナダ人のアンソニー・イナットも死亡し、ドイツ人の医療ボランティアとスウェーデン人ボランティアが、破片による傷ややけどを負った[134]。翌10日、ゼレンスキー大統領は、犠牲者に追悼の意を示し「人命を尊重し、テロを阻止して悪に打ち勝つことが人類共通の道徳的義務と考える世界の人々にとって、ウクライナに対する戦争がいかに身近なものであるかを、このロシアによる攻撃は示している」と述べた[135]。
- ルーマニア国防省は、ウクライナとの国境付近でロシアの無人機のものとみられる残骸を新たに発見したと発表した[136]。海軍部隊が地元当局からの情報提供を受けて東部トゥルチャ県プラウル一帯を捜索したところ「ロシア軍が使用しているものに類似した無人機の一部残骸が見つかった」とした[136]。これを受け、ヨハニス大統領はストルテンベルグNATO事務総長に報告するとともに、「領空侵犯」だと非難した[136]。ストルテンベルク事務総長は、NATOへの攻撃意図は見受けられないとしながらも、無人機攻撃は「不安定化」をもたらすと警告した[136]。
- 英国防省は、ウクライナ軍が、ウクライナ南部ザポリージャ州ロボティネ東方で「何層にも重なったロシアの主要防衛線に進入した」とし「徐々に前進しながらロシア軍を消耗させている」と分析した[137][138]。ロシア軍は他の地域からロボティネ周辺に兵力を向かわせ、部隊を再配置しているという[137]。ウクライナ軍がウクライナ東部ドネツク州バフムト南方でも部隊を維持しているとし、南部でのロシア軍の再配置は別の地域での攻撃能力を制限する可能性があると分析した[137]。
- G20首脳会議は、インドの首都ニューデリーで開幕し、首脳宣言を採択した[139][140]。宣言では、ウクライナを侵略するロシアを名指しで非難するのは避け、「全ての国は領土獲得のため武力を行使してはならない」と明記し、「核使用の脅しは許容できない」と訴え、食料・エネルギーの関連施設への攻撃をやめるよう求めた[139][140]。また、ロシアが一方的に停止しているウクライナ産穀物を黒海経由で輸出する合意について、途上国の需要を満たすため、「完全かつ即時的で効果的な実施を求める」と指摘した[140]。バイデン米大統領は「ロシアによる残虐な戦争は多くの国々に被害をもたらしている」と厳しく批判した[139]。岸田文雄首相は、「一日も早くロシアが部隊を撤退させ、公正かつ永続的な平和を実現することが重要だ」と強調した[139]。ロシアによる核の威嚇については「断じて受け入れられない」と非難した[141]。また、ウクライナ侵略が「G20の協力の基盤を揺るがしている」と述べ「ロシアの侵略により食料、エネルギーを含めた世界経済の混乱が深刻化している」と強調した[141]。ロシアが世界的な食料危機を招いていると指摘し、対露制裁が原因だとするロシアの情報宣伝工作に反論し、世界の食料安全保障を確保するため、ウクライナ産穀物を黒海経由で輸出する合意への早期復帰をロシアに促した[141]。
- ウクライナ外務省のニコレンコ報道官は、G20首脳会議で採択された首脳宣言について「ロシアのウクライナ侵略に関する限り、G20が誇れるものは何もない」と不満を表明した[142]。ウクライナ侵攻に関し「あらゆる国家は領土獲得のための武力行使を控えなければならない」などと訴える宣言を採択したG20に対し「強い表現を盛り込もうと努めたパートナー各国には感謝している」と述べつつ、宣言中の「あらゆる国家」を「ロシア」に赤字で変更するなどした修正案の画像を添付した[142]。
- 林芳正外相は、ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナの東部と南部の4州で始まった議会選について、「ウクライナの主権と領土一体性を侵害する明らかな国際法違反だ。決して認められず強く非難する」との談話[143]を発表した[144]。談話で、ロシアによるウクライナ侵略を「国際秩序の根幹を揺るがす暴挙だ。日本は、力による一方的な現状変更の試みに決して看過しない」と非難した[144]。ロシアに対し即時に侵略を停止し、部隊をロシア国内に撤収するよう改めて求め、「一日も早くウクライナに公正かつ永続的な平和を実現する」として、G7など国際社会と連携し、厳しい対露制裁と強力なウクライナ支援を続ける考えを示した[144]。
- 林芳正外相は、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長[注 5]やディー・エヌ・エー子会社で医療関連事業を手掛けるアルムの坂野哲平社長などの日本経済団体連合会会員企業を含む数社の日本企業関係者とともに、初めてウクライナを訪問した[149][150][151][152]。今年のG7議長国として、年内に予定する外相会合を前に、引き続きウクライナ支援に取り組む姿勢をアピールする狙いがある[153][154]。日本企業関係者が今回の訪問に同行したことには、日本政府は総額約76億ドルの支援を表明しているが、外務省幹部は「需要は膨大で、官の資金だけではまかなえない」と指摘し、民間投資拡大を期待するウクライナ側と官民連携に関するすり合わせを進め、ウクライナ側の具体的なニーズに合わせ、民間投資の拡大を促す狙いがある[154]。まず最初に、ロシア軍が民間人の大量虐殺を行ったキーウ近郊ブチャを視察し、ブチャの聖アンドリーイ教会を訪れ、集団埋葬地で献花した[155]。関係者から虐殺の状況を聞き、「残虐な行為ですね」と応じた[154]。続いて、首都キーウに移動しデニス・シュミハリ首相やゼレンスキー大統領と面会した[156][157]。林外相は、ブチャを視察したことに触れ、「ウクライナの美しい大地に平和が戻るまで、日本はウクライナと共に歩んでいく」と決意を語った[156]。今後のウクライナの復旧・復興支援への日本企業の関与を深めたいとの意向を伝達し、日本企業関係者は、復旧・復興に各社が果たしうる役割について説明した[156]。シュミハリ首相は、G7議長国の日本による支援に謝意を述べ、今後も日本のリーダーシップに期待する考えを伝えた[153]。ゼレンスキー大統領は、林芳正外相のウクライナ訪問を歓迎し、日本は「アジアでの主要なパートナー」だとして支援への謝意を表明した[158][159]。クレーバ外相と会談を行い、共同記者会見を開いた[160]。林外相は、ウクライナの復旧・復興を支援するため、2024年初頭に東京で「日ウクライナ経済復興推進会議」を開く方針を伝達し[153]、外務省内に「ウクライナ経済復興推進室」を新設すると表明した[160][161]。G7が7月に発表した「ウクライナ支援に関する共同宣言」[162]に基づき、日ウクライナの2国間文書の交渉を開始することで一致したことも明らかにした[160][161]。不発弾運搬用のクレーン付きトラック24台を供与することも明らかにし[153]、会談後に供与式を行った[161]。電力不足の中で厳しい冬を迎えるウクライナに対し、9月中にも大型変圧器施設2基を供与する予定だと伝えた[160][161]。日本の企業関係者らが同行したことについては「ウクライナの実情、要望について企業関係者に把握してもらった。復旧・復興に向けた出発点になる。さらなる協力を進めていく」と述べた[163]。クレーバ外相は、日本に対しロシアの侵攻を受けるウクライナへのこれまでの人道支援や、戦禍からの復興に向けた支援に前向きな姿勢を示していることに謝意を示し「ウクライナ国民は人道支援を受けたことを覚えており、決して忘れないであろうということを、林氏そして日本の皆さんに知っていただきたい」と語った[164]。また、日本は「戦後のウクライナ復興に参画する準備をしている」とし、「他国も追随してほしい」と述べた[164]。ウクライナはこれまでに日本から人道支援などで総額76億ドルを受け取ったとした[164]。
9月10日
- ウクライナ軍は、首都キーウとその周辺に一晩でイラン製ドローン「シャヘド」32機が飛来し、うち25機を防空部隊が撃墜したと発表した[138][165][注 6]。キーウ市軍政当局のトップ、セルヒー・ポプコは、「まとまった数の無人機が多方向から首都に飛来した」とし、「防空部隊は無人航空機20数機の撃墜に成功した」と述べた[165]。キーウ州のクラフチェンコ知事は、インフラ施設1か所と住宅8棟が被害を受けたと発表した[166]。キーウ市のビタリ・クリチコ市長は、市内の集合住宅に被害が出た他、公園で火災が発生し、残骸の多くは未開発地域に落下したが、車両やトロリーバスの送電線、道路などへの被害も確認されたと発表した[165]。
- ゼレンスキー大統領は、ウクライナの東部と南部の前線において「過去7日間、私たちは前進した」とし、ウクライナ軍の反転攻勢の成果を強調した上で、東部ドネツク州バフムト方面など、2つの方面において、「動きがある」とも述べた[167]。
- ウクライナのスビリデンコ経済相は、ルーマニアの首都ブカレストで開かれた「三海域イニシアチブ」の首脳会合に出席し、アドリア海に面するクロアチアの港湾を通じてウクライナ産穀物の輸出が既に始まったと明らかにし、「国産の穀物はクロアチアの港から既に輸出されている。この機会を与えられたことに感謝する。この交易路は最適となっている」などと述べた[168]。ロシア軍は黒海沿岸にある穀物関連施設へのミサイル攻撃を続け、結果的に輸出能力が大幅にそがれていると指摘した[168]。クロアチアの港湾利用について開発を準備しており、輸送能力を拡大する可能性にも言及し、ウクライナでの戦争が終結しても、両国間の貿易で重要な役割を果たし得るとの見通しも示した[168]。
- ウクライナのコスチン検事総長は、ロシア軍の捕虜の経験を持つウクライナ軍の兵士のおよそ9割が「拷問、レイプ、性的暴行の脅し」に加え、「他の非人道的な処遇の被害を受けていた」ことを明らかにした[169]。このうち、「南部ヘルソン州だけで11の拷問用の部屋を発見した」と指摘した[169]。また、「北東部ハルキウ州では約100件の拷問事件への捜査に踏み切った」としたうえで、「700人以上の被害者も特定した」とも述べた[169]。コスチン検事総長は、「様々な形態の拷問に関与した156人の容疑者を割り出した」とし、このうち114人を訴追したことを明らかにした[169]。また、その114人のうち35人が「戦争犯罪としての拷問と虐待の罪」によって、有罪判決を受けたことも明らかにしている[169]。
- ウクライナの軍事情報機関は、ロシアは占領している地域に「42万人を超える兵士を駐留させ、ウクライナ軍による領土奪還を阻止」しようとしていると明らかにした[170]。42万人には「ロシアが置いた占領当局の警備をサポートする特殊部隊は含まれていない」と説明した[170]。
- 米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は、戦闘の妨げとなる冬の到来までに残された期間は「あと約30-45日」とし、これを過ぎると気象条件は悪化し、泥と雨が戦場での機動性に影響を及ぼすようになるという見方を示した[171][172]。また、バイデン米政権の立場にたって、この作戦は6月初めに開始して以降「着実な進展」をしてきたと主張し、「ウクライナはまだ戦いを終えていない。終わり方を語るのは時期尚早だ」と強調した[171]。一方で、ウクライナ軍幹部は、秋以降も反転攻勢を継続すると強調し、ゼレンスキー大統領は「長期戦に備える必要がある」と述べた[173]。
9月11日
- ゼレンスキー大統領は、ウクライナ軍の反転攻勢が遅れが出ているとの声が出る中、「ロシアとの戦争は565日目を迎えたが、引き続き国家の防衛に集中しなければならない」と強調し「ロシアは勝利を望んでいない。敵が期待しているのはわれわれが耐えられなくなることだ。ウクライナを誰にも弱体化させない」と述べた[174]。
- ウクライナのマリャル国防次官は、ウクライナ軍の反転攻勢で前進を続け、東部ドネツク州で2平方キロメートルの領土を新たに奪還し中部オピトネ村を一部解放したと明らかにした[173][175]。また、南部ザポリージャ州方面において、過去1週間において、4.8平方キロメートルの領土を奪還したことを明らかにした[175]。これにより、ウクライナ軍の反転攻勢での奪還面積が256平方キロメートルになった[175]。
- ウクライナ国防省情報総局(GUR)は、ロシアに2015年から占拠され、2022年2月にロシアがウクライナへ本格的な侵攻を開始してからは軍事目的で使用されているクリミア半島とウクライナ南西部オデーサ州の中間付近に位置する複数のガス・石油掘削海洋プラットフォーム「ボイコ・タワーズ」の支配権を、GURの特殊部隊がユニークな作戦でロシアから奪還したと発表した[175][176][177]。また、プラットフォーム内部からロシア軍のヘリコプター用のミサイルやレーダーを押収し[175]、支配権を取り戻すことは戦略的に重要だとし、「ロシアは黒海海域を完全に支配する能力を奪われ、これによりウクライナはクリミア奪還に大きく近付いた」とした[176]。さらに、「作戦のある段階で、船に乗ったウクライナの特殊部隊とロシアの戦闘機スホイ30の間で戦闘が起きた」とし、戦闘機は「被弾して退却を余儀なくされた」と明らかにした[177]。
- ロイド・オースティン米国防長官は、ウクライナのウメロウ国防相と初の電話協議を行い、ウクライナ軍の反転攻勢を進展させるために必要な支援内容について意見交換した[178]。オースティン国防長官はアメリカによる最新のウクライナ支援の検討状況を説明し、戦場において「すぐに必要な支援」に加え、「長期的な観点で必要な装備」について、と意見交換を行った[178]。また、19日にドイツでウクライナ支援国による会合についても協議を行い、対面で会談することも確認した[178]。アメリカ政府は、射程約300キロの地対地ミサイル「ATACMS」の供与を検討していて、この電話協議においても話し合われた可能性があり、ウクライナのイェルマーク大統領府長官は、ATACMSの供与が「間もなく認められる」と強い期待を表明した[173]。
- バイデン米政権は、ウクライナ軍の反転攻勢に進展の兆しが見え重大局面となる中、ウクライナ軍がロシア軍に大打撃を与えられるような支援措置に積極的になっており、長距離ミサイル「ATACMS」と長距離ロケット「GMLRS」のどちらか、あるいは両方にクラスター爆弾を搭載して供与するための大詰めの調整段階に入った[179][180]。以前から米国務省と米国防総省がウクライナ側の数か月にわたる要請を受けて推奨していたが、この数週間で相当に勢いを増しており、実現する可能性は以前より格段に高まっているという[179]。既にウクライナに提供された155ミリ砲搭載のクラスター爆弾がここ数か月で戦果を上げているためで、ウクライナが現在装備している155ミリ砲に搭載可能なのは最大48発の子弾だが、ATACMSなら約300発以上、GMLRSでは最大404発を打ち出すことが可能とされる[180]。ウクライナ軍がロシア軍を分断し、主要な補給線に脅威を与える狙いでウクライナ南部オリヒウ南方のロシア軍前線の突破を試みている今こそ、供与のタイミングだとし、ATACMSないしGMLRSの能力であれば、ウクライナ軍の士気を高めるだけでなく、必要とされる戦術的な打撃を実行できると付け加えた[180]。ただ、ATACMSやGMLRSの供与がまだ正式に決まったわけではなく、見送られる可能性もあるとした[180]。
- 米国務省のマシュー・ミラー報道官は、「北朝鮮からロシアへの武器の移転は複数の国連安保理決議に違反する」として「われわれはロシアの戦争に資金を提供する団体に対する制裁を積極的に実施してきた。これらの制裁を引き続き実施し、新たな制裁を適切に課すことも躊躇しない」と述べた[181][182][183]。プーチン大統領を「物乞い」だと批判し、ウクライナとの戦いで苦境にあるロシアの戦力維持が困難になり「北朝鮮に軍事支援を乞うことは、制裁と輸出規制の有効性を物語る」と指摘した[183]。
- 米NSCのエイドリアン・ワトソン報道官は、北朝鮮に対して、所持している武器をロシアに売却しないように求めた上で「公的に警告してきたように、金正恩氏のロシア訪問中もロシアと北朝鮮の武器に関する話し合いは続くと予想される。われわれは北朝鮮に対し、ロシアに武器を提供しない、あるいは売らないという公約を守るよう求める」とも述べている[184]。
- EUは、ロシアが一方的に併合したウクライナ東・南部のドネツク州、ルガンスク州、ザポリージャ州、ヘルソン州で行われた違法な選挙について強く非難した[185]。ジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表は、声明で「ウクライナでのこうした違法ないわゆる『選挙』は、子どもへのものも含む強制的かつ違法なパスポートの付与や、強制移住と国外退去、広範かつ組織的な人権侵害、ロシアやウクライナの一時的な占領地域で不法に任命された当局によるウクライナ市民に対する脅迫と増大する弾圧のなかで実施された」と述べた[185]。
- リシ・スナク英首相は、イギリス議会で「機密情報が解除されたことにより、ロシア軍が8月24日に黒海で民間貨物船を複数のミサイルで標的にしたことが分かった」ことを明らかにした[186]。また、外務・英連邦・開発省は、声明で「ミサイルは港に停泊していたリベリア船籍の貨物船を標的としていたが、撃墜に成功した」とを明らかにし、「ミサイルにはロシア海軍の黒海艦隊のミサイル母艦から発射された巡航ミサイル「カリブル」2発が含まれていた」とも明らかにした[186]。ジェームズ・クレバリー外務・英連邦・開発大臣は「プーチン氏は勝てない戦争に勝とうとしており、これらの攻撃はプーチン氏がいかに必死かを示している」とし「貨物船とウクライナのインフラを標的にすることで、ロシアは世界の他の国々を傷つけている」と指摘した[186]。
- アンナレーナ・ベアボック独外相は、ウクライナの首都キーウを訪問し、クレーバ外相と会談した[187]。共同記者会見に開き、空中発射巡航ミサイル「タウルス」の供与を改めてドイツに要請した[187]。クレーバ外相は「なぜ時間を無駄にしているのか理解できない。ウクライナに既にタウルスがあれば、もっと多くの戦果を上げられ、ウクライナの兵士や市民の命をもっと救えていただろう」と訴えた[187]。タウルス供与に関するドイツ政府の判断について、「あなた方の手順は尊重するが、タウルスに関するウクライナの知識から言えば、供与に反対する客観的な論拠は一つもない」と主張した[187]。ベアボック外相は、タウルスについて「これまでの武器供与と同様、さまざまな問題をクリアしなければならない」と答えた[187]。一方で、ドイツはウクライナに対する「支援の手を緩めるつもりはない」と明言し[187]、2000万ユーロの追加の人道支援を実施することを明らかにした[188]。ロシアが冬季にインフラ攻撃を強める可能性があるとして「人々を飢えさせ、凍死させようとしている」と批判した[189]。2023年のドイツによるウクライナへの支援の総額は3億8000万ユーロに上る[188]。また、ウクライナのEU加盟について、「汚職問題の解決に向けて一段の取り組みが必要」との認識を示し「司法とメディア法制分野における改革の成果はすでに目覚ましいが、反オリガルヒ法の実施や汚職との闘いではまだ長い道のりがある」とも述べた[188]。
9月12日
- ウクライナ軍参謀本部は、東部ドネツク州と南部ザポリージャ州の前線で、ロシア軍が空爆やミサイルを含む激しい攻撃を行ったが撃退したと発表した[190]。
- ウクライナ海軍は、11日に奪還した南部クリミア半島とウクライナ南西部オデーサ州の中間付近に位置する複数のガス・石油掘削海洋プラットフォーム「ボイコ・タワーズ」の周辺で、ロシア軍の黒海艦隊が活動できなくなっていると明らかにした[191]。プレテンチュク報道官は、ロシアの航空機は依然として現地で存在感を示し、空からの脅威がまだあるが、ウクライナ軍が沿岸に配備している大砲や携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)により、ロシア軍の艦隊はタワーに近づくことができないという[191]。
- GURは、南部ザポリージャ原子力発電所が立地するエネルホダルのロシア側拠点を無人機で攻撃を行い、ロシア旅券を発行する施設に損害を与え、無線通信拠点を無力化したと発表した[192]。
- ペスコフ露大統領報道官は、アメリカが北朝鮮によるロシアへの武器売却をけん制していることについて、ロシアと北朝鮮は関心はないとし、北朝鮮と関係を築く上で「両国の利益が重要で、アメリカからの警告は重要ではない」と語り、「われわれは2国の国益に重点を置く」とした[193]。
- 英国防省は、ロシアがモスクワの官庁など重要施設の屋上に近距離・中距離対空防衛システムを配備したと指摘し、相次ぐ無人機による攻撃から防御を強化するとともに、脅威へ対処できていると国民に示す狙いがあると分析した[190]。
- デンマーク国防省は、今後3年かけてウクライナに対し戦車や装甲車両などが含む総額58億デンマーククローネの軍事支援を実施すると発表した[190]。
- 仏外務省のアンヌクレール・ルジャンドル報道官は、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記がロシアを訪問しプーチン大統領と会談するとみられていることについて、ウクライナ侵攻に伴うロシアの孤立化を浮き彫りにしているにすぎないとの見方を示し、ロシアは「北朝鮮に頼らざるを得なくなっている」と指摘し、「このことは国際社会で孤立化していることを鮮明にしている」と語った[194]。
- G7外相は、ロシアが一方的に併合したウクライナ東・南部のドネツク州、ルガンスク州、ザポリージャ州、ヘルソン州で行われた違法な選挙を強行したことを受け、「ウクライナ領土の違法な占拠を正当化しようとするための喧伝工作」であり、「ウクライナの主権的な領土であるドネツク州、へルソン州、ルガンスク州、ザポロジエ州、クリミアでロシアが実施した見せかけの『選挙』を明確に非難する」との声明を出し、「こうした見せかけの『選挙』は、国際的に承認された領土を取り戻すために戦っているウクライナに対するわれわれのアプローチや支援を変えるものではない」とし、財政面や安全保障分野などでの支援継続を強調した[195][196][197]。
- 松野博一官房長官は、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記がロシアを訪問しプーチン大統領と会談するとみられていることに関し「北朝鮮からの武器などの調達を全面禁止している国連安全保障理事会決議違反につながる可能性や、ロシアのウクライナ侵略に与える影響も含め、懸念を持って注視している」と述べ「関連情報の収集・分析を行い、米韓両国をはじめ国際社会と緊密に連携する」と強調した[198]。
9月13日
- 早朝、ウクライナ南部オデッサ州の港湾都市イズマイルなどに、ロシア軍がドローン攻撃を行い、港のインフラ施設が被害を受け、負傷者も出た[199]。ウクライナ空軍は、攻撃は4時間半に及び、飛来したイラン製ドローン「シャヘド」44機のうち32機をウクライナの防空システムが撃墜したが、火災が発生し7人が負傷、建物が損傷した[199]。
- ウクライナ南部クリミア半島セヴァストポリ特別市のロシアに任命されたミハイル・ラズボジャエフ「知事」は、午前、造船所がウクライナ軍のミサイル攻撃を受け、キレン・バルカ地区にある非民間施設で火災が発生し、少なくとも24人が負傷したと明らかにした[199][200][201][202]。ロシア国防省は、ロシア軍艦艇2隻が損傷し、24人が負傷したと発表した[203]。また、ウクライナが巡航ミサイル10発と海上ドローン3機を使用し、うちミサイル7発と海上ドローン3機を防いだが、一部が工場に着弾したとした[203]。GURの当局者は攻撃を認め、ロシア軍の大型揚陸艦と潜水艦を損傷させたことを確認した[203]。ウクライナ空軍のミコラ・オレシチュク司令官は、空軍パイロットの「素晴らしい戦闘行為」に感謝の意を表明し「占領者は今もセヴァストポリへの夜間爆撃から立ち直ろうとしているところだ」とも述べた[204]。ウクライナ軍情報機関のアンドリー・ユソフ報道官は、「大型揚陸艦『ミンスク』と潜水艦『ロストフ・ナ・ドヌー』が打撃を受けたことを確認した。攻撃に使用された手段についてはコメントしない」とし、「かなりの被害が生じており、修理できる可能性は低いと言える」と述べた[205][206]。ミンスクの破壊について、ロシアはもうこの種の艦艇を生産していないことから、ロシアの艦隊にとって「取り返しのつかない損失」になったとの見方を示した[206]。英国防省は、セヴァストポリに司令部を置くロシア黒海艦隊にとってこの攻撃の影響は大きいと指摘し、ロシア軍の大型揚陸艦と潜水艦の損傷程度は甚大だと分析した[207]。
- ウクライナのマリャル国防次官は、反転攻勢を進めるウクライナ軍の部隊が東部戦線でロシア軍の新たな攻撃に直面していると明らかにした[208]。ウクライナ軍は、数か月にわたり防衛を続けてきた東部アブデーフカと近郊のマリンカに対し、ロシア軍が砲撃を強めており、「マリンカの状況はかなり厳しくなっている」と述べた[208]。バフムト奪還作戦では「安定した成功」を収めていると述べた[208]。南部については、ロボティネを確実に支配下に置きつつ、周辺では非常に激しい戦闘が続いていると指摘し、前進を遂げているとも述べた[208]。
- ウクライナのクブラコフ復興担当副首相は、穀物輸出の代替ルートとなっているウクライナ南部ドナウ川沿いの港が早朝にロシア軍のドローンによる大規模な攻撃を受け、港湾インフラに被害が出たと明らかにした[209]。攻撃は4時間半にわたり続き、イズマイル港とレニ港が攻撃を受け、穀物貯蔵倉庫のほか、石油タンクや行政庁舎などが被害を受けたと述べた[209]。ロシアが黒海穀物イニシアティブから離脱した翌日の7月18日以降、ウクライナ国内の105の港湾施設が被害を受け、ウクライナ産穀物のアジア、アフリカ、欧州向けの輸出が月次ベースで約300万トン減少しているといい、「ウクライナの港湾施設に対する攻撃は、世界の食料安全保障に対する攻撃でもある」とも述べた[209]。ウクライナ空軍は、ロシア軍が今回の攻撃に投入したイラン製ドローン「シャヘド」44機のうち32機を撃墜したと発表した[209]。
- ルーマニア国防省は、ルーマニア領内でドローンの破片が発見されたと明らかにした[210]。「空軍のヘリコプターの乗組員が数十メートルの範囲に分散したドローンの破片を確認した」と表明し、破片はルーマニア東部のトゥルチャ県で発見されたとした[210]。ドローンの破片がルーマニア領内で発見されるのはここ10日間で3回目となるが、最初の2件のドローン破片の分析によると、ルーマニア領内で爆発したものではなく、爆発物も搭載されていなかった[210]。ルーマニアのチョラク首相は「誰もルーマニアを攻撃していない。ウクライナ軍が撃墜したドローンの破片が落下したにすぎず、爆発物は搭載されていなかった」と述べた[210]。
- 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は、極東ロシアのアムール州ボストチヌイ宇宙基地を訪問し、プーチン大統領と会談した[211]。一部は非公開で行われ、ロシアのウクライナ侵攻を背景に、北朝鮮からロシアへの武器供与が主要議題となった可能性があるが、プーチン大統領は「あらゆる問題を話し合う」としたのみで、武器供与についての明言を避けた[211]。ペスコフ露大統領報道官は「公表の対象とならないデリケートな分野」も協議されると説明した[211]。金総書記は、ロシアのウクライナ侵攻を念頭に「ロシアは主権と安全を守るため主導的な国々との戦いに立ち上がった。ロシアの決定を全面的に支持する」と応じた[211]。両国は敵対する欧米を視野に結束を確認した形だ。脱北して韓国で研究者として活動する世界北朝鮮研究センターの安燦一は、ロシア側は北朝鮮が備蓄している砲弾の供与を、北朝鮮側は衛星技術や旧ソ連時代の軍事装備を刷新するための支援を求めていると語り、「北朝鮮の多連装ロケット砲などがロシアに大量に提供されれば、ウクライナ戦争に大きな影響を与える可能性がある」と警告した[212]。
- 米NSCのカービー戦略広報調整官は、前述の露朝首脳会談について「非常に注意深く見守っている」と警戒感を示し、「もし彼らが何らかの武器取引に踏み切るのであれば、適切に対処する」と強調した[213]。実際にロシアと北朝鮮の軍事協力強化につながったかについては「現時点では確たることは言えない」と語った[214]。
- 米紙ニューヨーク・タイムズは、ウクライナ侵攻を続けるロシアが、密輸や第三国を経由する貿易網の構築により欧米の制裁を回避しながら兵器の生産を拡大していると報じた[215]。昨年2月の侵攻開始前の倍に当たる年間200万発の砲弾を製造し、戦車の生産量も倍の200両だという[215]。ロシアの現在の砲弾生産量は西側諸国の7倍に上るとされ、ウクライナへの攻撃が今後数か月で激化する可能性が高いとの見方がある一方、生産量は消耗のペースに追いついておらず、北朝鮮から協力を得ようとしていると指摘した[215]。
9月14日
- ウクライナは、夜間に22機のロシアの無人機の攻撃を受けて、このうち17機を撃墜したと発表した[216]。ウクライナの検察総長事務所は、南部ヘルソン州の村において、6歳の子供が死亡、4人が負傷したと明らかにした[216]。
- ウクライナ軍は、クリミアに基地がある黒海艦隊所属のワシリイ・ブイコフ級哨戒艦「セルゲイ・コトフ」2隻を攻撃し、「一定の損傷」を与えたと発表した[217][218]。夜間にはクリミア半島の西にある町イェウパトーリヤ付近のロシア防空システムにも長距離攻撃を行ったとした[219]。ウクライナ保安庁(SBU)の情報当局筋は、SBUの軍事防諜部門とウクライナ海軍が合同でイェウパトーリヤ近くで特殊な特別作戦を実行したと述べ、ドローンがレーダーとアンテナを攻撃した後に、ウクライナ海軍がウクライナ製巡航ミサイル「ネプチューン」2発を打ち込み、ロシアの防空システム「トリウームフ」を破壊したと明らかにした[218][219][220]。一方、ロシア国防省は、クリミア上空でドローン11機を防空システムによって撃墜したと発表し[218]、「テロ攻撃の試みは失敗した」と表明した[219]。セルゲイ・コトフについては、ウクライナが水上ドローン5隻による攻撃を仕掛けようとしたが撃退したとも主張した[218][221]。
- ウクライナ南部クリミア半島セヴァストポリの港湾入り口で、ウクライナの海上無人偵察が、ロシアの小型ミサイル艦「サムーム」の後部右側を攻撃して、「大きな損傷」を与えた[222]。この攻撃を受けたミサイル艦は、片側に傾いて、修理のためにえい航されたとされる[222]。ロシア国防省は、声明でサムームに対するウクライナの攻撃を認め、海上ドローンを迎撃し破壊したと発表した[222]。
- ウクライナのマリャル国防次官は、東部ドネツク州バフムト南方にある3つの村の周辺で進展を遂げ、主要な町への攻撃でロシア軍が「大きな損失」を被り、「自衛能力が著しく低下した」と述べた[223]。
- ウクライナ空軍は、前夜から未明にかけ、イラン製ドローン「シャヘド136」と「シャヘド131」の複数の編隊が3方向から攻撃を仕掛けてきたが、ウクライナ南部と北部の複数の地域で撃墜したと発表した[216]。
- ウクライナ南東部ドニプロペトロウシク州のリサク知事は、無人機3機がドニエプロペトロフスク州上空を通過し、複数の建物に損害を与えたとし、別の地域でも大砲とロケット弾の攻撃を受けたと明らかにした[216]。
- ウクライナのユリヤ・ラプチナ退役軍人相は、軍除隊者や戦没者遺族らが国民の1割にあたる400万人以上に膨らむと明らかにし、「戦線の軍人は国を守ることで自由や尊厳、信頼、責任といったウクライナ社会の価値観を体現している」とし、「退役軍人を効果的に民間社会へ統合し、国の再建に生かすことがきわめて重要だ。彼らの潜在力は大きい」と述べた[224]。
- GURのアンドリー・ユーソフ報道官は、ロシアが北朝鮮に大砲やMLRSに使用する発射物を供給するように要請し、北朝鮮が既にロシアへ武器を供給していると主張した[225]。
- ICCは、ロシアによる戦争犯罪の捜査でウクライナと連携強化を図るため、ウクライナの首都キーウに事務所を開設したと発表した[226][227]。
- ロシア外務省は、ウクライナ侵攻と部分動員令に関する情報収集に関与したとして在ロシア米大使館の外交官2人を「ペルソナ・ノン・グラータ」に指定した[228][229]。米国務省のミラー報道官は「いわれのないものだ。ロシアがまたしても建設的な外交よりも対立を選択した」と批判し、遺憾を表明した[229][230]。合法的な仕事をしていただけだと強調し、ロシアが米大使館員への嫌がらせを続けているとし「適切に対応する」と述べた[229][230]。
- 米財務省は、ロシアのウクライナ侵攻に加担したとして、150を超える個人・団体を制裁対象に指定したと発表した[231][232]。軍用車両の部品製造を請け負ったとされる鉄道車両メーカーやその経営者などを務めたロシアのオリガルヒのほか、軍事転用可能な部品をロシア企業に供与したとされるトルコ企業や無人機のカメラやリチウム電池などをロシアに出荷したなどとしたフィンランド企業や同社を所有するフランス人らも制裁対象にした[231][232]。イエレン米財務長官は、声明で「ロシアの軍事サプライチェーンを標的とし、ウクライナでの野蛮な戦争を遂行するのに必要な装備や技術をプーチンから取り上げる」と強調した[231]。米国務省も70以上の個人・団体に制裁を科し[232]、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と三井物産が共同出資会社を通じ10%出資し権益を持つ北極圏のロシア液化天然ガス(LNG)プロジェクト「アークティックLNG2」に建設やエンジニアリングサービスを提供しているロシア企業も対象となった[233][234]。日本政府は、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの制裁で国際社会と共同歩調を取る中でも、アークティックLNG2はエネルギー安全保障を確保する上で重要として、権益を維持する方針を示してきたが裏目に出た[233]。日本政府関係者は「影響が出るかもしれない」と話し、出荷開始時期も2023年内から遅れる可能性があるとした[234]。三井物産は「新たな米国追加制裁対象が発表されたことは認識している。制裁措置の順守を前提として、日本政府などの関係者と連携しながら対応していく」と述べた[234]。
9月15日
- ウクライナ軍参謀本部とゼレンスキー大統領は、東部ドネツク州バフムト南方約15キロに位置する集落アンドリーフカを奪還したと明らかにした[235][236][237]。ウクライナ軍は、ロシア側は多数の犠牲者を出し装備も失ったとし、一部地域を要塞化していると述べた[235]。クリシチウカにおいても「部分的な成功」を収めたと明らかにした[235]。ウクライナ軍部隊は「バフムトの東側への突破口になる」と奪還の意義を説明した[237]。ゼレンスキー大統領は「ウクライナにとって切望されていた重要な成果だ」と強調し、バフムト南方にある別の集落クリシチウカ、クルデュミウカの周辺でも「ウクライナ軍の活発な行動が続いている」と指摘した[238]。
- プーチン露大統領は、契約した志願兵が30万人に上ると述べ、十分な兵員を確保できたという認識を示し、北朝鮮が義勇兵を派遣するのではないかとの一部報道については「ばかげている」と否定した[239]。
- サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、前述の露朝首脳会談後、北朝鮮によるロシアへの武器提供を巡る協議が進展していると明らかにした[240]。ロシアの声明について問われると「われわれは彼らの言葉をうのみにするつもりはない。今、具体的な事例を挙げることはできないが、彼らの発言は大幅に割り引いて聞いている」と述べた[240]。さらに、「ロシアが安保理常任理事国としての基本的責任を果たそうとしているのかどうか、われわれはロシアの行動を見て非常に現実的な懸念を抱いている」と述べた[240]。
- ブリンケン米国務長官は、ワシントンでベアボック独外相と会談し、ロシアの侵攻が続くウクライナへの支援強化で一致し、黒海穀物イニシアティブをロシアに求めていくことを確認した[241]。ウクライナが両国に求めるロシア領内に到達可能な長射程ミサイル供与についても協議したとみられる[241]。ブリンケン国務長官は「効果的な追加支援を常に検討している」とし「ウクライナ領外への使用は可能にはしない」と強調した[241]。ベアボック外相は「何ができるか見極めている」と語った[241]。
- 欧州委員会は、東欧5か国[注 2]に対するウクライナ産穀物の輸入規制の期限を迎えたが、市場のゆがみは解消したとして延長せず解除すると発表した[242][243]。一方で5か国のうちポーランド、スロバキア、ハンガリーの3か国は、ウクライナ産穀物の輸入を独自に制限すると表明した[244]。ゼレンスキー大統領は、ウクライナはロシアとの戦争が続く間、隣国の支援を必要としているおり、欧州の結束に隣国と二国間レベルで協力することが重要になっていると指摘し「隣国が隣人らしくない決定を行った場合、ウクライナは文化的な方法で対応する」と語った[244]。シュミハリ首相は「EU加盟各国に対し、ウクライナの農産物に対する違法かつ一方的な規制を控えるよう呼びかける。こうした規制は世界貿易機関(WTO)の仲裁の対象になる可能性がある」とし、ウクライナには欧州委員会や近隣諸国と協力する用意があり「共通ビジョンと互恵的な対応」を見出すことができると確信していると述べた[244]。
- 世界遺産委員会は、ウクライナの文化遺産「キエフの聖ソフィア大聖堂と関連する修道院群及びキエフ・ペチェールシク大修道院」と「リヴィウ歴史地区」について、ロシアによる爆撃などの危機にさらされているため「危機遺産」に指定した[245][246]。ロシアを含む全ての加盟国には、ウクライナの危機遺産などに「損害を与える行為の自粛」を求めた[246]。2023年1月にも、同様の理由によりオデーサ歴史地区が世界遺産と同時に危機遺産に登録されており、ウクライナの危機遺産は今回の決定で3件となった[245][246]。
9月16日
- ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は、南部クリミア半島を奪還するために注力するとした三つの主要な作戦に言及した[247]。まず、ロシア軍の軍事インフラなどの無力化を活発に進めるためにクリミア半島の制空権の確保が必要と主張し、この狙いに沿って半島のエフパトリア町近くに据えられるミサイル迎撃手段や防空網の壊滅を図る作戦が遂行されているとした[247]。次に、交戦が多い地域への大規模な予備役兵や資源の投入の続行を断ち切ることが重要であるため「クリミア半島とロシアに挟まれたケルチ海峡上に架かる橋など兵站を支える輸送網が破壊されている」と説明した[247]。最後に、ロシア海軍の黒海艦隊の残存勢力をクリミア半島の領海や以遠の海域から追い出し、黒海を国際的な管轄権が及ぶ場所として改めて位置づけることだと強調し、ロシア海軍の戦闘艦船や修理施設を標的にしていると明らかにした[247]。
- ウクライナ東部ハルキウ州の村落で、ロシア軍の対戦車ミサイルが乗用車を直撃し、市民2人が死亡、1人が負傷した[248]。ハルキウ州の別の地域では、ロシア軍の短距離弾道ミサイル「イスカンデル」の攻撃で、民間人5人が負傷した[248]。
- ウクライナのマリャル国防次官は、東部ドネツク州バフムト南方の集落クリシチウカとクルデュミウカでロシア軍との激しい戦闘が続いていると明らかにし、クリシチウカ周辺で攻撃に「成功した」と述べた[249]。
- 英国防省は、ロシア軍が巡航ミサイルの生産を増強しているが発射を減らしていると指摘し、今冬にウクライナの電力インフラを攻撃するため巡航ミサイルを備蓄している可能性があると分析した[248]。
- 米シンクタンク「戦争研究所」は、ウクライナ軍はバフムト方面での作戦を継続し前進を続けているほか、南部ザポリージャ州でも攻勢を続けていると分析した[249]。
9月17日
- ウクライナ陸軍のシルスキー司令官は、廃墟と化した建物にウクライナの国旗を掲げ「兵士は毎日、多大な努力と果敢さを発揮し、わが国の領土のために戦っている」をSNSに投稿し、東部ドネツク州バフムト南方約9キロにある集落クリシチウカからロシア軍を一掃し、クリシチウカを奪還したと明らかにした[250][251][252][253]。ウクライナ軍東部作戦管区のエブラシュ報道官は、クリシチウカ奪還がロシア側に大きな打撃を与えバフムト包囲に役立つと強調し「われわれは攻撃を継続し、侵略者から領土を解放する足場を得た」と述べた[250]。ゼレンスキー大統領は、数週間にわたる激しい戦闘の中、ウクライナ軍がクリシチウカを奪還したと発表し「きょう私は特に、ウクライナのバフムト地域を少しずつ奪還している兵士たちを称賛したい」と述べた[251]。ウクライナは、15日にバフムト近郊の集落アンドレエフカの奪還を発表しており、ウクライナ軍が東部でも一定の前進に成功し続けている[252]。
- ウクライナ軍は、ロシア軍が10発のミサイルと6発の無人機による攻撃を行い、南部オデーサ州の農業用倉庫が被害を受けたと明らかにした[254]。
- ゼレンスキー大統領は、ウクライナが敗北すればロシアはポーランドやバルト三国に迫り、第三次世界大戦に発展しかねないと警告し「プーチンを食い止めるか、世界大戦を始めるか、全世界が選ばなければならない」と述べた[255]。これまでのアメリカの支援に感謝を表明し、追加の軍事支援に対する消極的な意見がアメリカ国内で広がっているのを念頭に、世界を守るため「最も高い代償を払っているのは実際に戦い、死んでいくウクライナ人だ」と訴えた[255]。
- ロシア国防省は、未明にモスクワの北西と南の近郊において、無人機による攻撃がそれぞれ仕掛けられたが、いずれも撃墜したと明らかにした[254]。モスクワ市のソビャーニン市長は「これまでのところけが人の情報はない説明した[254]。また、ウクライナ南部クリミア半島で、ウクライナの無人機6機による攻撃が行われたが、防空システムによって、撃墜したと明らかにし[254]、「攻撃の試みは失敗に終わった」とした[253]。
- ストルテンベルグNATO事務総長は、「戦争の大部分は、始まった当初に予想されていたよりも長く続く。したがって、我々はウクライナでの長期戦に備える必要がある。我々はみな、一刻も早い平和を望んでいる。しかし、同時に、次のことも認識しなければならない。もし、ゼレンスキー大統領とウクライナの人々が戦いを放棄すれば、彼らの国はもはや存在しなくなる。もし、プーチン大統領とロシアが武器を置けば、平和が訪れる。この戦争を終わらせる最も簡単な方法は、プーチン氏が軍を撤退させることだ」と述べ、ロシアのウクライナ侵攻について長期化する可能性があると警告した[256]。
- 英国防省は、ロシアが占領しているウクライナ南部ザポリージャ州トクマク周辺において、ロシア軍が対戦車用の障害物や新たな 塹壕を設置し、防衛態勢を強化していると分析した[253]。
- 米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は、ウクライナ軍の反転攻勢について「計画よりは遅いが着実に進展している」と指摘し「失敗しているとの批判は承知しているが、失敗はしていない」とし、ウクライナ軍には「かなりの戦闘力が残っている。消耗していない」と述べた[257]。また「被占領地から20万人以上のロシア兵を軍事的に排除するには相当な時間がかかる。非常に高いハードルだ」との認識を示した[257]。武器供与のペースが遅いとウクライナ側から批判が出ていることに関しては、兵站にも左右される問題だとし、「魔法の粉をまけば物資が直ちに現れるというわけにはいかない」と強調した[257]。
- ポーランドは、欧州委員会が8日に公表した指針でロシアで登録された車のEU入境を禁じたことを受け、ロシアで登録された乗用車の入国を禁止した[258][259]。既にロシアと国境を接するEU加盟国フィンランドとバルト三国のリトアニア、ラトビア、エストニアは同様の措置をとった[259]が、EU非加盟国でシェンゲン圏の一部であるノルウェーはこの措置を導入していない。マリウシュ・カミンスキ内務・行政相は「ウクライナでの残忍な戦争に伴うロシアとその国民へのさらなる制裁の一環であり、ロシアが国際安全保障への脅威になっているという事実によるものだ」と述べた[258]。
9月18日
- ウクライナ陸軍のシルスキー司令官は、ウクライナが奪還した東部ドネツク州バフムト南方の集落アンドレーエフカとクレシチェエフカで「敵はさまざまな方向から反撃して失地を取り戻そうとしているが、失敗している」と指摘し、ロシア軍は防衛線を守ろうとして予備兵力を投入しが、戦闘の結果、最も訓練されたロシア軍部隊の一部が戦闘能力を完全に失ったとした[260][261]。共に前線にいるという兵士らに対して感謝を表明し、着実な前進を果たしクリシチウカとアンドリーウカの2つの村を解放したと称賛した[261]。ロシア軍について、「様々な方向から数多くの反撃」を仕掛けたが、ウクライナ軍の行動により防衛線が崩壊したが、失った領土の奪還をあきらめてはおらず、「東部戦域の全体的な状況は依然として困難だ」と警告した。ロシア軍はクピャンスクとリマンに向けた攻撃の再開を図っている[261]。この2つの町はロシア軍が6か月にわたり掌握したが、1年近く前にウクライナ軍によって解放された[261]。
- ウクライナ政府は、ロシアによるウクライナ侵攻を報告してきたマリャル国防次官を含む国防次官6人全員を解任することを決定した[262][263][264]。3日に国防大臣が解任されたおり、国防大臣が解任された場合は次官も解任されるとするウクライナの法律に基づく措置だとした[262]。ウクライナ国防省を巡っては1月以降、軍の物品納入や徴兵逃れを巡る汚職問題が浮上したため、ゼレンスキー政権は人事を刷新し、国民や欧米諸国からの信頼回復を図る構えだとみられ[262]、ウクライナ国防省内では「抜本的な大改革が進行中」という[263]。
- ゼレンスキー大統領は、アメリカ北東部ニューヨーク州ニューヨーク市を訪問し、病院で治療を受けているウクライナ兵を慰問した[265]。その際、安保理常任理事国のロシアが拒否権を有していることについて問われ、国連は今なお「ロシアのテロリストに居場所」を提供していると非難した[265]。
- ウクライナのユリヤ・スヴィリデンコ第一副首相兼経済発展貿易相は、ウクライナ産穀物の輸入を制限するポーランドとハンガリー、スロバキアの東欧3か国をWTOに提訴したと発表した[266][267][268]。ウクライナ政府は、声明で「個々の加盟国がウクライナ製品の輸入を禁止できないと証明することが非常に重要だ。そのためWTOを通じて提訴した」と指摘[266]し、禁輸により「ウクライナの輸出業者は既に多大な損失を被っている」と批判した[267]。3か国は第三国への輸送には協力しつつ、安価な穀物の流入による国内農家への悪影響を懸念している[267]。ウクライナのタラス・カチカ通商代表は、3か国の措置が「法的に誤っていることを証明することが重要だ」と指摘した[268]。特に影響が大きいポーランドの措置が撤廃されなければ「報復を余儀なくされる」と述べ、ポーランド産の果物や野菜のウクライナへの輸入を規制する可能性を示唆した[268]。ポーランド政府報道官は提訴を受け「われわれの行動は正当だ。輸入規制を撤回するつもりはない」と述べた[268]。ウクライナ産の農作物は主に黒海経由で輸出されてきたが、ロシアによる侵攻で停滞し、EUが陸路での輸出促進のため関税を撤廃した結果、東欧諸国に大量の穀物が流入した[267]。ポーランドのテルス農相は「ウクライナがポーランドを訴えると言っている以上、われわれは将来に目を向けなければならない。このプラットフォームでのわれわれの発言は全て、われわれに不利に働く可能性がある」と語った[266]。
- 国際連合人権理事会が任命したロシアの人権問題の特別報告者マリアナ・カツァロバは、ロシアのウクライナ侵攻開始後、ロシアでの人権抑圧が一層悪化していると危機感を示し、ロシア政府に改善を求める報告書を公表した[269][270]。報告書は、ロシアで2022年3月に、軍に関する偽情報を拡散した場合は最長15年の懲役を科せるようにした法が成立したと指摘し、撤回を要求した[269]。この法はしばしば暴力的な執行で、市民社会組織を組織的に弾圧し、市民的な空間や独立系メディアを閉鎖しているという[270]。また、ロシア当局が反戦派を大量に恣意的に逮捕し、拘束された人は市民社会に対する「組織的な弾圧」により「執拗な拷問や虐待」で命の危険にさらされ[270]、表現の自由や平和裏に自由に集会を行う権利なども侵害されているとした[269]。反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイら政治犯の釈放も求めた[269]。
- ブルガリア国防省は、17日にブルガリア北東部ドブリチ州シャブラ市の黒海に面した町チュレノボのホテル関係者から、大型の無人機のような物体が打ち上げられていると通報があり、ブルガリア海軍の専門班が爆破処理を行ったと発表した[271]。砲弾の様子から動かすのは不可能と判断されたことから、現場で制御爆破処理を実施し、「調査の結果、無人機の残骸に82ミリ迫撃砲弾が取り付けられているのが見つかった」という[271]。トドル・タガレフ国防相は「われわれは当然、ロシアがウクライナに仕掛けた戦争に関連するものだとみている」と述べ「この戦争はいや応なしに、われわれの安全保障にとってのリスク増大を招いている」と指摘した[271]。ウクライナ侵攻開始以降、ブルガリア海軍は領海内で見つかった四つの機雷の爆破処理を行っているが、爆発物を搭載した無人機が発見されたのは今回が初めてとなる[271]。
- ボリス・ピストリウス独国防相は、ウクライナに弾薬や地雷除去システムなど4億ユーロ規模の追加軍事支援を明らかにした[272]。冬に向けた衣類や発電機などの支援含まれるという[272]。ウクライナが強く求めている長射程の巡航ミサイル「タウルス」については未定だとした[272]。ピストリウス国防相は「武器供与を慎重に検討するのは政府の義務だ。政府はタウルスを提供するかどうかをまだ決定しない」と述べた[272]。
- 中国の王毅共産党政治局員兼外相は、ロシアを訪問し、ラブロフ外相と会談した[273]。ウクライナ情勢について「ロシアの利益、とりわけロシアの参加を考慮せずに危機を解決しようとする試みは無益だ」と指摘し、ウクライナ危機の解決に向けたいかなる試みもロシアの利益を考慮しなければならないとの認識で一致した[273]。
- 韓国政府は、戦闘工兵車「K600」2両をウクライナに供与する方針を固めた[274]。韓国政府筋は「韓国政府はウクライナに旧式の地雷探知機をすでに提供しているが、これに加えて2両の戦闘工兵車も早期に提供することが先日事実上決まったようだ。これはウクライナ政府の強い要請と尹錫悦大統領によるウクライナ支援の約束によるものだ」と述べた[274]。殺傷能力はないものの、必要な場合は敵の防衛ライン突破に使用されることから、韓国がウクライナに供与した軍用車両の中では最も強力となる[274]。尹大統領は、5月のG7広島サミットや7月のウクライナ訪問でゼレンスキー大統領と首脳会談を行い、地雷除去車両など非殺傷兵器の提供や戦後の復興支援などを約束していた[274]。
9月19日
- ロシア軍は、未明から早朝にかけ、ウクライナ西部や南部の広範囲でドローンや砲弾によるの大規模な攻撃を行った[275]。ウクライナ空軍は、飛来したドローン計30機のうち27機を防空システムで撃墜した[275]。南部ヘルソン州では、警察官1人が死亡、住民2人が負傷した。西部リヴィウ州のコジツキー知事は、州都リヴィウ市へ向かっていたロシア軍がドローン攻撃15機を撃墜したが、残る3機が防空網を逃れ、複数の軍用品は一切保管していない一般の産業用倉庫に命中したと発表した[276]。攻撃による火災の焼失面積は9000平方メートルに及び、少なくとも2人が負傷したと述べた[276]。州都リヴィウ市のサドビー市長は、倉庫の作業員1人が死亡し、保管されていた数百万ドルに相当する約300トンの人道支援物資や車両が焼失したと明らかにした[276]。攻撃で大規模な火災が起きた現場に立ち、NGO国際カリタスの倉庫が攻撃を受けたと述べた[276]。国際カリタスの責任者は、最近リヴィウに届いたばかりで国内各地へ送る予定だった冬物の衣類や靴、発電機、食料、軽工業品が燃えていると語った[276]。
- ウクライナのクブラコフ副首相兼インフラ相は、南部オデーサ州のチョルノモルスク港から小麦を積んだ民間貨物船が黒海に出港したと明らかにした[277]。ロシアの黒海穀物イニシアティブ離脱後、ウクライナが設けた臨時回廊を通じて入港した貨物船が穀物を積んで出港するのは初めてとなる[277]。この間、ロシア軍は、オデーサ州の港湾施設を無人機などで攻撃した[277]。
- アメリカ北東部ニューヨーク州にある国際連合本部ビルで第78回国際連合総会の一般討論演説が行われた[278][279]。長期化するロシアのウクライナ侵攻は大きな焦点となった[278]。グテーレス事務総長は、核の脅威をちらつかせながら侵略を続けるロシアを平和を乱す「代表例」とみなし、ウクライナの領土保全とロシア軍の即時撤退を求める2023年2月の国連総会決議[280]に沿った「公正な和平」の実現を呼びかけた[278]。また、ロシアが離脱した黒海穀物イニシアティブ再開へ努力を続ける決意も表明した[278]。ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領は「世界は疲れ果てている」と述べ、早期和平の実現を訴えた[278]。バイデン米大統領は、「私たちはむき出しの侵略に立ち向かい、明日の侵略者を抑止しなければならない。ロシアは、世界が疲れ果て、自らがその結果を負うことなくウクライナを残忍に扱うことが許されると信じている」と指摘した[279][281]。「ロシアだけがこの戦争の責任を負い、平和への道を阻んでいる」と批判し「もしウクライナを切り分けることを許せば、どの国の独立も安全だろうか」と問いかけた[279][281]。国家による武力行使を原則禁じる国連憲章の堅持を呼びかけ、ウクライナを「世界中の同盟国やパートナーと共に支え続ける」とも訴えた[279]。ゼレンスキー大統領は、侵攻後初の対面で一般討論演説に参加し、議場の各国代表から拍手で迎えられた[282][283][284]。「戦争犯罪は処罰され、送還された人々は家に戻り、占領者は自分の土地に戻らなければならない。私たちはそれを達成するために、団結して行動しなくてはならない」と呼び掛け、ロシアが食料やエネルギーなど「あらゆるものを武器化」し、世界各国を脅かしていると強調した[282][284][285]。ロシアは「ウクライナ産穀物の輸送拠点への攻撃」を繰り返し、食料価格の高騰を武器としてアフリカやアジアに「脅威を与えた」と指摘[284]し、ロシアが黒海穀物イニシアティブを離脱した後も、ウクライナは食料の安定供給の確保に努めていると訴えた[283]。ザポリージャ原子力発電所を占領したロシアが「放射能が漏れると脅しをかけている」と訴え、平和利用が目的の核エネルギーを武器化していると主張し「テロリストに核兵器を持つ資格はない」とも述べた[283][284]。ロシアがウクライナから連れ去った子どもたちが「ウクライナを憎むように教え込まれ、家族との絆は断ち切られている」と語り「これはジェノサイドだ」と糾弾した[283][284][285]。2022年11月に提示した「10項目の和平案[注 7]」については「140以上の国や機関が全面的か部分的に支持している」と浸透ぶりをアピールした[284]。「ロシアがこの戦争に勝てば、この議場の多くの席が空席になるかもしれない」と警告を発した[282]。イランのエブラーヒーム・ライースィー大統領は、アフリカがウクライナで「暴力の炎を燃え立たせている」と非難した[286]。「ありとあらゆる形式での暴力の炎が、ウクライナで燃え立っている。米国がそれを燃え立たせている。欧州諸国を弱体化する目的で。残念ながら、これは長期的な計画に他ならない」との認識を示し「我々はどのようなものであれ、戦争の激化に歯止めをかける構想を支持する。あらゆる政治的な措置を支持する。そうした構想への支持を全面的に表明する」と強調した[286]。岸田文雄首相は、ロシアについて「国際法、法の支配を 蹂躙じゅうりん している」と名指しで非難し、「力や威圧による一方的な現状変更は認められない」と強調した[287]。ロシアは2022年2月の安保理で、ウクライナ侵攻への非難決議案に拒否権を行使したことを踏まえ、ロシアのウクライナ侵攻に対し安全保障理事会が役割を十分果たせていない点を踏まえ、常任理事国だけが持つ拒否権の行使抑制や、常任・非常任理事国の拡大を主張し、「具体的な行動に移る機会が今だ」と訴えた[288]。
- ウクライナのオレーナ・ゼレンシカ大統領夫人は、国連本部で開かれた国連総会の関連行事に出席し、ロシアに連れ去られて洗脳を受け、国民としてのアイデンティティーを奪われているウクライナの子どもたちが帰国できるよう、各国首脳に支援を要請した[289]。これまでにウクライナの子どもたち計1万9000人以上が、強制連行されたり、ロシアの本国や占領地に送られたりしており、このうち帰国を果たしたのはわずか386人だと説明した[289]。連れ去られた子どもたちはロシアで、「両親も国もあなたたちを必要としていない、誰も帰りを待っていないと言われている。もうウクライナの子ではなく、ロシアの子なのだと教え込まれている」と訴えた[289]。
- 国際司法裁判所(ICJ)は、ウクライナがロシアの軍事行動停止などを求めた訴訟の口頭弁論があり、ウクライナの代表がロシアに対して賠償金の支払いを命じるようICJに求めた[290]。ロシアは、ICJに裁判権がないとして請求棄却を求めたが、ウクライナの代表は「全面的な裁判権を有する」と強調した[290]。ウクライナ東部の親露派地域でのウクライナによるジェノサイドから住民を保護することが侵攻理由だったとのロシアの主張に対して「ひどいうそだ」と反論した[290]。ウクライナはロシアによる侵攻直後の2022年2月末にICJに提訴し、ICJは2022年3月に侵攻に深い懸念を表明し、仮処分として請求通り侵攻を停止するよう命じたが、ロシアは従っていない[290]。
- グロッシーIAEA事務局長は、ロシアの占領下にあるウクライナ南部ザポリージャ原子力発電所の安全性について「これまでにやや改善が見られているが、状況は依然として極めて不安定だ」と述べた[291]。ロシアとウクライナは原発周辺での砲撃を巡り非難の応酬を繰り広げているが、IAEAは事故防止に向け安全確保を目指している[291]。
- ロシア国防省は、ウクライナに近いベルゴロド州とオリョール州にドローンが飛来し、いずれも撃墜したと発表した[292]。
- ロシアのショイグ国防相は、イランの首都テヘランを訪問し、イラン・イスラム共和国軍のバゲリ参謀総長と会談した[293]。ウクライナ侵攻を続けるロシアは、イランから自爆ドローンなどの兵器供与を受けており、戦争の長期化を見据えて軍事協力を推進する可能性がある[293]。
- オースティン米国防長官は、ドイツのラムシュタイン空軍基地で開かれたウクライナ支援国で構成する「ウクライナ防衛コンタクトグループ(UDCG)」の会議に出席し、既にウクライナへの供与を表明した主力戦車「M1A1エイブラムス」が劣化ウラン弾と共に間もなく引き渡されると述べた[294]。ウクライナ軍の反転攻勢については「着実に前進している」と強調した[295].。また、これまでに欧米などによるウクライナへの軍事支援は、総額760億ドル以上に上ると述べ、ロシアが穀物輸出のための港湾インフラを攻撃していることを受け、防空システム強化へさらなる支援が必要だと訴えた[295]。米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長もUDCGに出席し、ウクライナ軍の反転攻勢を評価しつつも「(ウクライナ軍は)54%の占領地域を解放し、戦略的な主導権も維持しているが、まだ先には多くの仕事が残っている」と指摘し「占領地域に展開する20万-30万人のロシア兵を追い出すのは、ウクライナ軍にとって厳しい仕事だ」と述べた[296][297]。
- デンマークとオランダ、チェコの国防省は、各国産業界の在庫や製造による物資の継続的な提供がウクライナの軍事力にとって極めて重要であるとの認識を共有しているという共同声明を出した[298]。この声明に基づき、デンマーク国防省は、ウクライナに近代化された「T-72」戦車15両と「レオパルト1」戦車30両の計45両の戦車を追加供与すると明らかにした。追加の兵器や弾薬、地雷除去装置も提供する[298]。
- ノルウェー政府は、ウクライナに車輪のついた車両ではアクセスできない地形でも運転でき、弾薬や水、食料、兵士を輸送できる貨物運搬車を約50両を提供する予定だと明らかにした[298]。
- ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領は、ロシアの侵攻からウクライナを守るために西側諸国がウクライナを支援することは世界的に重要な結果をもたらすとの認識を示し、ウクライナの支援国に対して揺るぎない姿勢を保つよう促した[299]。「ロシアが欧州の国境を強制的に動かすことを合法的にできないようにすることだ」とし「これが将来の和平を保証するものであり、アメリカにとってもそうだ」と述べた[299]。「ロシアを止めることができるのは、ロシアが敗北したときだけだ。ウクライナが占領地からロシア軍を追い出し、西側諸国の援助のおかげで、ウクライナが国際的に承認された国境を再び支配できるようになったとき、ロシアは敗北する。そのとき初めて、ロシア帝国主義が敗北したと言うことができる」と述べた[299]。
- 韓国外務省は、クリク在韓国ロシア大使を呼び出し、露朝首脳会談を契機とした北朝鮮との軍事協力の動きを直ちに中断するよう求めたと明らかにした[300]。張虎鎮外務第1次官は、韓国の安全保障を脅かすいかなる行為に対しても「国際社会と協力し、明らかな代価が伴うよう強く対処していく」と強調し、国連安全保障理事会決議に違反するロシアの対北協力は「韓露関係にも否定的な影響を及ぼす」と警告した[300]。
- G7外相会合をアメリカ北東部ニューヨーク州ニューヨーク市で開催し、ロシアの侵攻を受けるウクライナ支援継続を確認し、ロシアと北朝鮮の関係強化に懸念を示した[301][302]。日本からは上川陽子外相が出席した[303]。日本政府は、「G7はロシアによる侵略戦争を可能な限り最も強い言葉で非難する」とした議長声明[304][305]を発表した[301]。米国務省の高官は、この会談で「ロシアが中長期的にこの戦争に落ち着くとの認識があった」とし、これは西側諸国によるウクライナへの支援継続と中期的な安全保障支援および経済支援の確保を意味するとした[306]。
- 松野博一官房長官は、ロシアによるウクライナ侵略を巡り「中国に対して、ロシアが軍事的侵略を停止するよう圧力をかけることを求める」とし、ロシアへの経済制裁を効果的にするために「第三国を通じた制裁の迂回・回避を防ぐことが重要だ。国連総会の場も含めて、さまざまな国との間で協力を確認する」と述べた[307]。
9月20日
- ウクライナ軍は、ウクライナ南部クリミア半島セヴァストポリ近郊にあるロシア黒海艦隊の司令部を攻撃し、成功したと発表した[308][309][310]。一方でロシアに任命されたミハイル・ラズボジャエフ「知事」は、セヴァストポリに対するミサイル攻撃を阻止したと表明した[308]。
- GURは、18日にロシアの首都モスクワから北東に30キロ離れたところにあるチカロフスキー空軍基地の飛行場が攻撃を受け「未確認の工作員が航空機2機とヘリコプター1機を爆破した」と明らかにした[311]。「ロシア連邦捜査委員会がチカロフスキー空軍基地の飛行場での破壊工作を調べている」と明らかにした[311]。「未確認の人物が厳重に警備されている飛行場に爆発物を仕掛け、ロシア空軍第354特殊部隊連隊に所属するアントノフ148型機とイリューシン20型機に加えモスクワ州上空で攻撃ドローンの撃墜を積極的に行っていたMI-28Nヘリコプターを爆破した」と説明し、機体の損傷の程度から早期の修復は見込めないとの見方を示した[311]。
- ウクライナ軍参謀本部は、前夜から朝にかけてロシア軍がドローン攻撃を仕掛け、ウクライナ空軍が領内に飛来した24機のうち17機を破壊したと発表した[292]。ドローンは中部ポルタワ州、北東部スームィ州、南東部ドニプロペトロウシク州などに到達し、ポルタワ州では製油所で被害が出た[292]。ポルタワ州の当局高官は「ロシアは繰り返しポルタワを攻撃した」とし「防空システムがロシアのドローン攻撃にうまく対応した」ものの、クレメンチュクの製油所で火災が発生したと明らかにした[292]。
- 国連安全保障理事会のロシアによるウクライナ侵攻を巡り国連憲章の原則を討議する首脳級の公開会合が開かれた[312]。グテーレス事務総長は「国連憲章は、より平和な世界に向かうためのロードマップだ」と強調し、ロシアのウクライナ侵攻は「憲章の明確な違反だ」と非難した[312]。国際情勢がこれ以上悪化しないよう、各国がそれぞれできることに取り組むよう求めた[312]。ゼレンスキー大統領は「ウクライナは自衛権を行使している」とし、ウクライナへの軍事支援や対露制裁、国連でのロシア非難決議は「国連憲章を守ることに資する」などと訴えた[313]。ロシアの侵攻開始以降「我々は苦痛を感じている」と述べ、「世界のほぼ全てがロシアの犯罪を理解している。この国家(ロシア)は侵略を行うことによって、国際規範を損なおうとしている」と非難し、「10項目の和平案[注 7]」について説明した[314]。ロシアのワシリー・ネベンジャ国連大使は、ゼレンスキー大統領がグテーレス事務総長に続き2番目に発言することに対し「ウクライナの大統領が理事国より先に発言することは受け入れられない。西側の一方的なルールだ」と批判した[314]が、議長であるアルバニアのエディ・ラマ首相が「ロシアが戦争をやめれば問題は解決する」と一蹴した[312]。カナダのジャスティン・トルドー首相は、ロシアのウクライナ侵攻に対して行動を起こすよう呼び掛け「今何が起きているのか、100%明確にする必要がある。常任理事国のロシアが違法な戦争を開始し、今も続けている」と述べ、ロシアが安保理で拒否権を行使し、ウクライナでの戦争と国連の原則の侵害を助長していると指摘した[315]。ゼレンスキー大統領も、「侵略者が拒否権を握っていることが、国連を行き詰まりに追い込んでいる」と述べ[316]、ロシアによる拒否権が戦争を止めることを不可能にしているとして、ロシアから拒否権をはく奪するよう求めた[315][317][318]。ラブロフ露外相は、ゼレンスキー大統領が退席した後に出席し、西側諸国が「偏狭な地政学的ニーズのみに基づきケースバイケースで国連憲章を利用している」と非難し、「これは世界の安定を揺るがし、新たな緊張の温床を悪化させ助長する結果となった。世界的な紛争のリスクが高まった」と主張した[318]。岸田文雄首相は、ウクライナ侵攻を続けるロシアが「世界中で無法の支配への懸念を深刻化させている」と述べ、即時かつ無条件の撤退を要求し、ウクライナの平和実現に積極的に貢献する意向も示した[319][320]。ロシアからベラルーシへの核兵器配備、ウクライナ南部ザポリージャ原発の占拠に関し「世界の平和と安定を脅かしている。ロシアによる核の威嚇と使用は断じて受け入れられない」と反発し、侵攻が難民、食料・エネルギー安全保障、原子力安全の問題を引き起こし「世界中で多くの人々を苦しめている」と非難した[319]。
- 国連総会の一般討論演説は続き、韓国の尹錫悦大統領は、ウクライナを侵攻するロシアと北朝鮮の軍事協力について「韓国と同盟国、友好国はこれを座視しない」と表明し「ウクライナだけでなく韓国の安全保障と平和を直接的に狙った挑発になる」と批判した[321][322][323]。
- 英国防省は、東部ドネツク州の要衝バフムト近郊での前進を「戦術的成功」と評価し、「南側からバフムトに通じる主要補給路の一つにウクライナ軍は近づくことになる」と分析した[292]。
- ポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相は、「もうウクライナに武器は送らない。我々はいま自国の武装を進めているからだ」と宣言した[324][325][326]。ウクライナの隣国ポーランドは、最も強力な支援国の一つだが、ウクライナ産穀物の受け入れを巡り、ウクライナとの対立が激化していた[324]。ウクライナを危険にさらすつもりはないとし、安全保障上の協調は維持する姿勢を示した[324]。21日、政府のピオトル・ミュラー報道官は、「ポーランドは、合意済みの武器・弾薬の供与のみ履行する。これにはウクライナとの合意に基づくものも含まれる」と説明した[327][328][329]。22日、ドゥダ大統領は、首相の発言について、「最悪の形で解釈された。ポーランド軍を近代化するために現在購入している新しい兵器は、ウクライナに供与しないという趣旨だったのだろう」として「米国と韓国から新兵器を受け取れば、ポーランド軍が現在使用している兵器を放出することになる。おそらくウクライナに供与することになるだろう」と述べた[327][328][330]。
- ゼレンスキー大統領とブラジルのルーラ大統領は、ニューヨークで会談し、ウクライナとロシアの紛争の平和的な解決策を見いだすことが重要との認識で一致した[331][332]。和平の仲介に意欲を示すルーラ大統領が、ゼレンスキー氏と対面で会ったのは初めてとなる[331]。ルーラ大統領は「われわれの国の間で対話を維持することが重要だ」とし、ゼレンスキー大統領は「誠実で建設的な議論だった」と応じた[331]。
- ゼレンスキー大統領は、ニューヨークにあるウクライナの国連代表部で、金融最大手JPモルガン・チェースが主催する会合[注 8]に出席し、戦争で荒廃した国と経済の再建策について協議を行い、ウクライナへの資金援助を訴えた[333][334]。
- 上川陽子外相とクレーバ外相は、ニューヨークで会談し、「公正かつ永続的な平和」の実現に向け、緊密に連携することを確認した[335][336]。 上川外相は、ロシアを非難し「一日も早くウクライナに公正かつ永続的な平和が実現するよう緊密に連携したい」と呼びかけ、越冬対策として9月中にウクライナに大型変圧施設2機の供与を行うなど、今後も支援を継続する考えの伝達も行った[335][336]。クレーバ外相は「今後協力していくことを楽しみにしている」と述べ、日ウクライナ両国がウクライナ支援に向けた2国間文書の作成のための交渉開始で一致していることを念頭に、日本の支援に謝意を示した[336]。
9月21日
- ウクライナの当局者は、ウクライナ軍の部隊がロシア軍の防御を突破して深く入り込むなど南部ザポリージャ州で進展があったと明らかにした[337]。国家警備隊の高官はメリトーポリの戦況について「ロシア軍の強い抵抗にもかかわらず、攻撃部隊がロシア軍を追い出し、陣地を固めている」と報告し、多くの地雷が埋められている中、一部でロシア軍の防御を突破して前進していると述べた[337]。一方、ウクライナ南部ザポリージャ州ロシア側「幹部」ロゴフは、ロボティネ村とベルボベ村の間に位置するオリヒフ方面で、ロシア軍のドローンが突破を試みたウクライナ軍の襲撃グループを攻撃したと明らかにし、ウクライナ軍は多大な損失を被り、撤退を余儀なくされたと主張した[337]。ザポリージャ州のロシアに任命されたバリツキー「知事代行」は、ウクライナ軍がロボティネ地域で部隊の再配置を完了しつつあると述べ、ロボティネとベルボベの一帯では状況は悪化するとの見通しを示した[337]。
- ロシア軍は、ウクライナの首都キーウなど各地に大規模な空爆を行い、インフラ施設が被害に遭った[338][339][340]。暖房需要が高まる冬場を前に、エネルギー施設への攻撃を強化した可能性があり[341]、「電力インフラ攻撃は6か月ぶりだ」と指摘した[342]。シュミハリ首相は、少なくとも20人が負傷したと明らかにした[341]。ウクライナ空軍はミサイル43発のうち36発を撃墜したと発表した[341]。クリメンコ内相は、北部キーウ州、中部チェルカスイ州、東部ハリコフ市で負傷者が出たとし、多数の州で爆発音が聞こえたとも述べた[338]。キーウ市のクリチコ市長は、市中心部にはミサイルの破片が落下し、インフラ施設や数軒のビルが損傷し、7人が市内で負傷したと明らかにした[338][341]。西部リヴィウ州のコジツキー知事は、ポーランドとの国境から約60キロのドロホビッチ市にロシア軍が発射したミサイル3発が着弾したと述べた[338]。中部チェルカーシではホテルや商店などが被害を受け、11人が負傷した[341]。内務省や地方当局は、東部ハルキウ州、西部のフメリニツキー、リブネ、リビウ、イワノフランコフスクの4州、中部ビンニツァ州で爆発があった他、南部ヘルソン州のプロクジン知事は夜間にヘルソン市の寮がロシア軍の砲撃を受け、2人が死亡したと明らかにした[338]。
- SBUは、ウクライナ軍が南部クリミア半島のサーキ飛行場を攻撃し、ロシア側の戦闘機が少なくとも12機やドローンの関連施設に「深刻な打撃」を与えたと明らかにした[343]。一方で、ロシア国防省は、対空部隊が黒海とクリミア半島上空でウクライナのドローン19機を破壊し、ロシア中南部クルスク、ベルゴロド、オルロフの地域上空でも3機を破壊したとし、ウクライナによる「テロ攻撃の試み」を阻止したと説明した[344]。
- スロバキア政府は、停止しているウクライナ産穀物の受け入れについて、ウクライナと取引許可制度の創設で合意したと発表した[345][346][347]。スロバキア農業省は「ライセンスの発行と管理に基づく穀物取引制度」を設けることでウクライナと合意したと発表し、制度創設後にウクライナ産農産物の禁輸を解除すると述べた[346]。ウクライナはスロバキアとのWTOでの係争を中断する方針で、禁輸を巡り対立が先鋭化するポーランドとの間でも和解を模索する動きがあり、紛争緩和の兆しが出ている[345]。
- ウクライナとポーランドの農業担当相は電話会談し、近く輸出問題での協力策など具体的な解決策を協議ウクライナ産穀物の輸出を巡る通商摩擦の解決を目指すことで一致した[347]。
- ウクライナ南部オデーサの港を出航し、黒海のルーマニア、ブルガリア沖合を南下していた穀物船が、トルコの最大都市イスタンブールのボスポラス海峡付近に黒海穀物イニシアティブ停止以降初めて到着し、穀物船はイスラエルに向かっているという[348]。
- ゼレンスキー大統領は、ワシントンD.C.にあるアメリカ合衆国議会で共和党のマッカーシー下院議長ら下院指導部と会談した。民主・共和両党の上院議員との会合に出席し、「支援を受けなければ、われわれは戦争に負ける」などと訴えた[349]。その後、ホワイトハウスでバイデン米大統領と会談し、ウクライナ軍の反転攻勢がロシア軍の第一防衛線を突破するなど徐々に戦果を挙げていると説明し支援継続を訴えた[349]。「子供や家族、自由と民主主義を守る連帯を強めたい」と表明した[349]。ロシア軍が国民の戦意喪失を狙いインフラ施設の爆撃を激化する冬季を控え、「防空システム増強が急務」と訴えた[349]。バイデン大統領は、クラスター弾や防空能力を向上させる砲弾など3億2500万ドルの追加軍事支援を発表するなどウクライナの長期的な安全保障を支える立場を強調し、「ウクライナの主権と領土の一体性を尊重し公正で恒久的な和平を支持する」と述べた[349]。また、射程約300キロの地対地ミサイル「ATACMS」のクラスター爆弾を使うタイプを少数供与する方針を伝達した[350][351][352][353]。
- ゼレンスキー大統領は、ワシントンD.C.の国立公文書館で演説し「ウクライナと米国の間に、これほど強力な結束があったことはかつてなかった」と述べ、支援に繰り返し謝意を示した[354]。「アメリカが(支援によって)何百万人ものウクライナ人の命を救ったことを知ってほしい」と語り、「ウクライナは常に感謝している」と強調し「ウクライナは共通の勝利によって、この戦争を終わらせることができる」とも語り、ロシアに対する勝利を誓った[354]。
- チャールズ英国王は、元老院で演説し、ロシアの侵攻を受けたウクライナの勝利に向け、英仏両国の団結を訴えた[355]。第二次世界大戦でのイギリスと自由フランス軍の団結を引き合いに出し「あれから80年以上が経過した今われわれは再び不当な侵略に直面している」と指摘し、ロシアのウクライナ侵攻に「共に立ち向かわなければならない」と述べた[355]。
- 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、ウクライナ南部ザポリージャ州で、ウクライナ軍の反転攻勢により装甲車両が初めてロシアの主要防衛線を通過したと報じた[356]。一方で突破口は小さく、ロシア軍の激しい抵抗を受けているといい、南部戦線では、塹壕や「竜の歯」と呼ばれる対戦車障害物による防衛網の先に戦闘車両を運べず、ウクライナの進軍ペースが上がっていないと指摘した[356]。今回の成果はクリミア半島とロシア本土を分断する南下作戦の「重大な節目」になると分析した[356]。
9月22日
- ウクライナ軍は、南部クリミア半島セヴァストポリにあるロシア黒海艦隊司令部の攻撃に成功したと発表した[357][358][359]。ロシア国防省は、ロシア南部クラスノダール地方でとウクライナ南部クリミア半島の南東岸付近の黒海上空で、防空システムがウクライナのドローンを1機ずつ撃墜したと明らかにした[360][361]。合計5発のミサイルも迎撃した[361]が、少なくとも1発のウクライナ軍のミサイル攻撃を受け、軍人1人が行方不明になったことも発表した[358]。ウクライナ南部クリミア半島セヴァストポリ特別市のロシアに任命されたミハイル・ラズボジャエフ「知事」は、黒海艦隊司令部に黒煙が上がったが、死傷者はいないと明らかにした[362]。23日、ウクライナ特殊作戦軍は、この攻撃が「Crab Trap」と名付けられた特別作戦だったと明らかにし、ロシア海軍上層部の会合に合わせて行われ上層部を含む数十人の死傷者が出たと発表した[361]。ウクライナ軍の「大胆で念入りな仕事」により「時間を合わせた精密な攻撃」が可能になったと述べた[361]。25日、ウクライナ特殊作戦軍は、声明で「黒海艦隊のビクトル・ニコラエヴィッチ・ソコロフ司令官を含む将校34人を殺害した。その他に105人を負傷させた。司令部は修理不能だ」と主張した[363][364][365]</ref>[366][367][368]。27日、ロシア外務省のザハロワ報道官は「あの攻撃が、西側の情報網やNATOの人工衛星機器、偵察機を用いて事前に計画されていたことには、ほんのわずかな疑いの余地もない」と断定し、「米英の情報機関との緊密な調整の下に」実行されたとの見方を示した[369]。
- ウクライナ中部ポルタワ州のドミトロ・ルーニン知事は、ロシア軍がポルタワ州クレメンチュクの民間施設をミサイル攻撃し、1人が死亡、31人が負傷したと明らかにした[359]。
- サイバー防衛を担当するウクライナ国家特殊通信庁国家特殊通信・情報保護局(SSSCIP)のユーリ・シチホリ局長は、ロシア軍の情報機関ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)やロシア連邦保安庁(FSB)によるハッカー攻撃が「エネルギー施設に焦点を当てたものから、以前はそれほど標的にされなかった法執行機関へと方向性が変わってきている」と指摘し、「こうした裁判所、検察、法執行機関へのシフトは、ハッカーがウクライナにおけるロシアの戦争犯罪に関する証拠を集めていることを示している」と述べた[370]。
- 戦線を指揮するウクライナのタルナフスキー司令官は、「天候は前進時の深刻な障害となりうるが、我々が車両をほぼ使わずに前進していることを踏まえると、反攻に大きく影響するとは思えない」との見通しを示し、ウクライナ軍に最大の突破口が開けるのはこれからになると指摘した[371]。現在のロシア軍はトクマクの防衛線の深さに頼っている状況であり、突破口が開けるのは「トクマクの後になるだろう」とも指摘した[371]。小規模で有害な敵の防衛グループの組み合わせが細かく巧みに配置されているが、ウクライナの急襲部隊と向かい合えば「彼らは徐々に後退せざる得ない」状況だとも説明した[371]。最終結果については自信を示しつつも、反転攻勢を成功させるには少なくともトクマクに到達する必要があるとし、「トクマクは最低限の目標に過ぎない。全体の目標は国境に到達することだ」とした[371]。
- ゼレンスキー大統領は、カナダの首都オタワを訪問し、カナダ議会に集まったカナダ議員らから満場の拍手で歓迎を受け演説を行った[372][373][374]。カナダの支援により「何千もの命が救われた」と謝意を表明し「ロシアの侵略はわれわれの勝利で終わらなければならない」と述べ、さらなる連帯や支援の継続を訴えた[372]。トルドー首相は、今後3年間でカナダ国内で製造される装甲車50台の提供を含む6億5000万カナダドル相当の追加支援を供与すると発表した[372][373]。また「カナダによるウクライナへの支援は揺るぎなく、今後も変わることはない」と改めて表明し「ウクライナはわれわれ全てを守るルールに基づく秩序のために立ち上がり、戦い、命を落としている。ウクライナがこの戦争に勝利することはカナダ国民の利益になる」と述べた[374]。63のロシアの個人と団体を制裁対象に新たに加え、ウクライナと共同で中央銀行資産を含むロシアの資産の差し押さえと没収について、政策決定者に助言を行う専門家チームの設立を支援することも明らかにした[374]。
- ペスコフ露大統領報道官は「ポーランドとウクライナの間には間違いなくあつれきがある。われわれは、こうした両国のあつれきが増大するとみている。ウクライナと他の欧州諸国とのあつれきも時間とともに増大するだろう。これは避けられない」と述べた[375]。また「当然ながら、わが国はこれを注視していく」として、ウクライナとポーランドを「反ロシア」の中心地であり、ポーランドを「かなり攻撃的な」国と呼び、「破壊工作」を行っていると非難し、ロシアと同盟国ベラルーシは「ポーランドから来る可能性のあるあらゆる潜在的脅威」を「警戒」していると述べた[375]。
- ポーランドのドゥダ大統領は、「ウクライナからポーランド市場への穀物供給を巡る対立がポーランドとウクライナの全体的な関係の一欠片であることに疑いの余地はない」と指摘し、ウクライナとポーランドの良好な二国間関係に「大きな影響を与えるとは思えず、この問題はわれわれの間で解決する必要がある」とした[376]。また、ポーランドのラウ外相は、ポーランドは「この戦争から活気に満ちた経済を伴った力強いウクライナ国家が誕生する」ことを望んでいるとし、ポーランドは「NATOとEU加盟に向けたウクライナの取り組みを支援し続ける」とした[376]。
- 松野博一官房長官は、ウクライナ産穀物を巡る対立に関して「ウクライナと東欧諸国の連携はこれまで極めて重要な機能を果たしてきており、今後も重要性は不変であると認識している」と述べ「今後の事態の推移を注意深く見守っていきたい」とした[377][378]。
9月23日
- ゼレンスキー大統領は、アイルランド西部クレア県にあるシャノン空港で、アフリカ北東部スーダン人民解放軍トップのアブドゥルファッターハ・アブドッラフマーン・ブルハーン主権評議会議長とロシアが資金援助している「非合法の武装集団」について会談し、ロシアの資金源を断つために協力を要請した[379]。
- ゼレンスキー大統領は、ウクライナと国境を接するポーランド東部ルブリン県ルブリンを訪れ、「これほど強い隣国があることを誇りに思う」と述べて良好な両国関係をアピールした[380]。また、ウクライナ支援に関わったポーランド人ジャーナリストやボランティアを表彰した[380]。
- ウクライナのイリーナ・ベレシチュク副首相は、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島に住むウクライナ人に避難を呼びかけた[381]。ウクライナはクリミア半島奪還を目指し、クリミアのロシア軍拠点への攻撃を強化しているためで、住民に「ウクライナ側の地域か第三国で半島の解放を待ってほしい」と訴えた[381]。
- 戦線を指揮するウクライナのタルナフスキー司令官は、ロシアの民間軍事企業「ワグネル」が南部ヘルソン州に再配備されたとの情報の真偽について尋ねられ、「一部の方面に出現している。ヘルソン州なのかは言えない」とし、「事実は彼らのバッジがあちこちで見られるということだ。絶え間なくだ」と続けた[382]。敵側が戦術的などによりこなれた動きを示し始めた時、自らの部下はワグネルの戦闘員の存在を常に疑っているとも指摘し「我々の攻撃が、通常ではなく注意を引くような手立てなどで阻止された時、ワグネルの介在を疑っている」と主張した[382]。また、ウクライナ軍が南部ザポリージャ州ロボティネ近郊の村ベルボベでの戦闘でロシア軍の「第3防衛線」を破ったと明かし、「大きな突破口になる」との見方を示した[383]。
- ラブロフ露外相は、ウクライナが提唱する「10項目の和平案[注 7]」について「完全に実現不可能だ」と述べ、「(和平計画は)非現実的だと誰もが分かっているにもかかわらず(ウクライナや西側諸国は)交渉の唯一の土台だと言っている」と非難した[384][385][386][387]。ウクライナがこの姿勢を変えない限り、戦闘は続くと主張した[384]。ロシアが離脱した黒海穀物イニシアティブについては、ロシア産穀物の輸出正常化の約束が果たされなかったと主張し、復帰は「現実的でない」と否定した[385][386]。侵攻開始以降ウクライナに数十億ドル規模の武器を供与し続けている西側諸国と「われわれと真っ向から戦っている」とし、「どのように表現しても構わない。われわれはハイブリッド戦争と呼ぶが、(ロシアと戦っているという)事実は変わらない」と述べ、ロシアと「事実上の」戦闘を行っていると非難した[388][389]。特に米英については情報活動面でも支援しており、西側の軍事顧問も存在すると述べた[388][389]。国連総会一般討論演説では、ウクライナを支援する西側諸国などを「うその帝国」などと批判[385]し、「世界を民主主義と専制主義に分断し、自分たちの新植民地主義的なルールだけを全ての人に指示している」と非難し、国際的な議論の議題を「ウクライナ化」する試みは「西側の利己主義」だと指摘した[387]。
- ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナ南部ザポリージャ州のロシア側「議会」は、2022年4月からロシア側行政府トップを務めているエフゲニー・バリツキーを「州知事」に選出した[390]。
- カトリック教会のフランシスコ教皇は、「今、一部の国が前言を取り消し、武器を供与しないことを目の当たりにしている。殉教者がウクライナ国民となる過程が始まっており、これはひどいことだ」と述べ、ウクライナへの武器供与を保留することでウクライナの人々が殉教者となるした[391]。また、各国がウクライナに対して武器を供与しながら、それを奪うという「矛盾」により、ウクライナの人々が殉教者のままとなっていると述べた[391]。武器を売買する人々は自分の選択の結果について報いを受けることは決していないが、ウクライナの人々のような殉教者がその報いを受けるという[391]。バチカンの報道官は、フランシスコ教皇は各国がウクライナに武器を供与し続けるべきか、あるいはやめるべきかについて、一定の立場を示しているものではないと指摘し、むしろ軍需産業がもたらした結果についての考えだと説明した[391]。
9月24日
- ロシア軍は、 ウクライナ南部ヘルソン州の各地に爆撃を行い、少なくとも2人が死亡、8人が負傷した[392]。ドニプロ川西岸地域では、ロシア軍が占拠する東岸から攻撃があった。
- ゼレンスキー大統領は「アメリカと兵器や対空防衛システムを共同生産する歴史的な決定があった」と明らかにし「防衛産業を強靱にし、経済や都市の防衛につながる」と期待を示した[393]。実現すれば前線への兵器供給拡大や、自爆無人機やミサイルによる攻撃を受け続けているインフラ施設の防衛能力が大幅に向上するとみられる[393]。
- ウクライナ東部ドネツク州の一部を占領する自称「ドネツク人民共和国」のデニス・プシーリン「首長」が18日に署名した平日の午後11時から午前4時までを外出禁止とする法令が施行された[394]。FSBやドネツク人民共和国の「情報省」による郵便物やインターネット通信、電話での会話に対して軍事的な検閲も始まった[394]。
- ロシア西部クルスク州当局は、FSBの施設がウクライナの無人機攻撃を受け、屋根を損傷したと明らかにした[392]。
- ロシア軍は、東部ドネツク州の戦線で失地を回復しようと攻勢を強めた[395]。
- グラント・シャップス英国防相は、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援を巡り、2024年アメリカ合衆国大統領選挙の結果にかかわらず「われわれは引き続き支援する」と表明した[395][396]。米共和党の一部に支援継続への懐疑論が広がっていることを問われ、イギリスの「揺るぎない支援」継続の立場を改めて説明し、「ゼレンスキー大統領が言うように、ウクライナが民主国家であり続けることが、アメリカにとっても世界にとっても利益になる」と強調した[395][396]。
- ポーランドのドゥダ大統領は、ウクライナ産穀物がポーランドを通過し、最も必要としている国々に届くことを可能とする輸送経路の準備を進めていると明らかにした[397]。ポーランドが国内市場でウクライナ産穀物の販売禁止を維持したことについて正しい判断だとの認識を示した上で、穀物が国内を通過できるようあらゆる措置を取らなければならないと述べた[397]。
9月25日
- ウクライナ軍は、南部のオデーサ港がロシアによるミサイルやドローン攻撃を受け、女性1人が負傷し、ホテルで火災が発生するなど建物や港湾インフラが大きな被害を受けたと発表した[398]。ウクライナ空軍は、ロシアが夜間にオデーサを中心とするウクライナに向けて展開させたイラン製ドローン「シャヘド」19機、巡航ミサイル「カリブル」11発[注 9]、極超音速ミサイル「オーニクス」2発を防空システムが破壊したと明らかにした[398][399]。破壊された施設には約1000トンの穀物が貯蔵されていたといい、ウクライナ国防省は、22日の黒海艦隊司令部攻撃への「哀れな報復の試みだ」との見方を示した[367]。
- ロシア国防省は、防空システムが黒海北西部とクリミア半島上空でウクライナのドローン4機を、ロシア西部クルスクとベルゴロド地方上空でウクライナのドローン4機をそれぞれ破壊したと発表した[398]。一方、ベルゴロド州のグラドコフ知事は、ベルゴロド州南部上空でロシアの防空部隊がウクライナのドローン7機を撃墜したと明らかにした[400]。
- ゼレンスキー大統領は「朗報だ。エイブラムスが到着し、部隊増強のための準備に入っている」と述べ、米主力戦車「M1A1エイブラムス」がウクライナに到着したと明らかにした[367][401][402][403][404]。アメリカはM1A1エイブラムスを31両供与すると表明しており、米国防総省はその第1陣がウクライナに到着したことを確認した。[403]。米当局者は、「2個小隊程度」の同戦車の引き渡しが完了し、今後数か月以内に追加の引き渡しが行われると述べた[404]。
- ウクライナは国内のエネルギーシステムを強化するため、アメリカから新規のエネルギー支援4億2200万ドルを受け取るほか、改革など一定の措置の履行を条件に追加で1億ドルを受け取る了解覚書に調印した[405]。ウクライナでは発電所や変電所がロシアの空爆を受けており、重要インフラの復旧を支援する[405]。電力部門の改革も支援し、EUと統合された競争力のある低炭素エネルギー経済への移行を促す[405]。
- ロシア内務省は、ICCの所長ピョートル・ホフマンスキと副所長ルス・デル・カルメン・イバニェス・カランサと裁判官バートラム・シュミットの3人を指名手配したと発表した[406][407][408][409]。容疑の詳細には言及していない[406][407][408]。ICCは3月、ウクライナの子どもたちを国外へ違法連行した戦争犯罪の疑いで、プーチン大統領に逮捕状を出した[406][407][408][406][407][408][409]。
- 国連のウクライナ調査委員会は、ロシア軍が占拠した地域で残酷な拷問を行い、死者が出ていると報告した[410]。エリック・モーセ委員長は、人権理事会で「占拠地域におけるロシア軍の拷問が広範かつ組織的に行われていたことを示すさらなる証拠を得た」と説明し、「被害者を死に至らしめるほどの残虐な拷問も行われた」と述べた[410]。また、ヘルソン州の占領地域で「ロシア兵は19歳から83歳までの女性に性的暴行を加えた」と述べた[410]。多くの場合、家族は隣の部屋に監禁され、暴行の様子を聞かされていたという[410]。ウクライナ軍による違反行為も少数あったと指摘し、無差別攻撃やロシア人拘束者に対する不当な扱いに関するものだと述べた[410]。
- 松野博一官房長官は、ロシアが離脱した黒海穀物イニシアティブについて「引き続き国際社会と連携し、ロシアが国際的な枠組みに復帰しウクライナから穀物輸出が再開されるよう強く求めていく」と述べ、復帰を否定していることについては「極めて遺憾で、世界の食料安全保障に与える影響を懸念している」と非難した[411]。
9月26日
- ウクライナ軍の当局者は、ドナウ川の港湾インフラが夜間にロシアのドローン攻撃を受け、トラックの運転手2人が負傷したと明らかにした[412]。ウクライナ南部オデーサ州のキペル知事は「ロシアのテロリストは2時間にわたり攻撃ドローンでオデーサ州を襲った」と説明し、イズマイール地区への攻撃で渡河点や倉庫、トラック約30台が損傷する被害が出たと述べた。大半の無人機はウクライナの防空システムが撃墜したとも述べた[412]。
- ウクライナ南部オデッサ州にあるルーマニアとの国境に位置する唯一のフェリー検問所であるオルリフカ検問所がロシア軍の無人機攻撃を受け、2人が負傷し、トラック数十台に被害が出た[413][414]。ルーマニア国防省は、声明で「不当かつ違法な攻撃を非難する」とした[413][414]。
- ゼレンスキー大統領は、前線から「良い詳細」について報告があり、ウクライナ軍はロシアに圧力をかけるべき場所を明確に把握していると明らかにした[415]。「侵略を続ける限り、ロシアは損失を感じなければならない」と強調し、「制裁だけでは十分ではない。テロ国家に対するわれわれの行動が増える」と述べた[415]。ウクライナ東部軍の報道官は、ウクライナ軍が東部ドネツク州バフムト近郊の村で「成功を収めた」と述べた[415]。ウクライナ南部部隊の報道官は、アゾフ海への進軍の一環として、南部ザポリージャ州ベルボベへの進軍態勢を整えており「間もなく良い知らせがあると信じている」と述べた[415]。
- ノルウェー政府は、ウクライナに対する人道支援として10億ノルウェー・クローネを拠出すると明らかにした[416]。今回の拠出資金について、最も弱い立場にある子どもたちや難民、国内の避難民が、シェルターをはじめ、食料や水、衛生設備、教育、医療、心理的な支援、性的な暴力やジェンダーに基づく暴力からの保護などの重要な支援を受けられるようにすることを目的としていると説明した[416]。ウィットフェルト外相は「ロシアの残忍な戦争がウクライナの市民に多大な苦しみをもたらしている」とし、ウクライナの人々が再び戦争の冬を乗り越えるためにはノルウェーの支援が必要だと述べた[416]。
- ロシアの液化石油ガス生産業者が、西側諸国からの制裁を受け2015年から停止していたクリミア半島ケルチ港を経由するプロパンとブタンの定期輸出を再開した[417]。
- ペスコフ露大統領報道官は、米主力戦車「M1A1エイブラムス」がウクライナに到着したことについて、他の兵器と同じようにエイブラムスも燃やされ、紛争地帯の状況を変えることはないと述べた[418]。エイブラムス戦車は重大な兵器だとし、プーチン大統領が外国製の戦車について簡単に燃えてしまうと発言したことを思い出してほしいと述べ、エイブラムス戦車も同じように燃えるだろうとの認識を示した[418]。エイブラムス戦車の存在は重要ではあるものの、1種類の兵器が戦場の力関係を変えたり、戦争の行方や結果を変更したりすることはできないと指摘し、「これらすべてが『特別軍事作戦』の本質やその結果に影響を与えることは決してない」と述べた[418]。
- ロシア国防省は、ロシア軍の高官会議をモスクワで開き、ショイグ国防相ともに、ウクライナ軍が死亡させたと主張したロシア海軍黒海艦隊のソコロフ司令官が映っているオンライン会議の映像を公開した[419][420]。ただ映像では、ソコロフ司令官に発言はなく、映像の信憑性は低い[420]。
- 英国防省は、連日のウクライナ軍による攻撃で被害を受けたロシア海軍黒海艦隊について、一帯での広範な警備活動や港湾封鎖能力が低下する公算が大きいという見方を示し、ロシアの被害は深刻ながらも限定的だと分析した[421][422]。艦隊は巡航ミサイル発射など中核任務の遂行能力を残している半面、ウクライナ軍にとっては「ロシアの象徴的、戦略的な戦力を弱体化できる」証明になったと指摘し[421]、「これまでで最も損傷を与え、連携の取れたものだった」と評価した[422]。
- ヒラリー・クリントン元米国務長官は、ロシアによるウクライナ侵攻開始以降、NATO拡大が進んでいることについて、「おあいにくさま、ウラジーミル、自業自得だ。争点になっているが、以前から言い続けてきた通り、NATO加盟は強制ではない。自ら望んで選択する人々がいるのだ」と述べた[423]。
- 木原稔防衛相は、ウクライナの負傷兵2人を治療のため自衛隊中央病院で新たに受け入れたと明らかにし、「ウクライナから遠く離れた日本での治療であり、憲法上の問題は生じないと考えている。何より人道的な観点から(受け入れは)意義がある。今後もできる限り支援したい」と述べた[424][425]。2人はいずれも片脚を切断しており、9月21日に入院し義足の製作やリハビリ治療を受けている[424][425]。6月8日から7月29日にも2人のウクライナ兵を受け入れおり、第2陣となる[424][425]。
9月27日
- ウクライナ南部ザポリージャ州のマラシコ知事は、ザポリージャ州は直近24時間にロシア軍から130回の攻撃を受け、オリヒウではロシア軍の砲撃で66歳の住民が死亡し、別の村でも56歳の男性が負傷したと述べた[426]。また、ロシア軍は数か所の村に空爆4回とドローン、MLRSによる攻撃を仕掛け、住宅やインフラ施設を破壊したと述べた[426]。
- ウクライナ東部ハルキウ州のシネフボウ知事は、州都ハルキウとボホドヒウ、チュフイフ、クプヤンシク、イジュームの各地区がロシア軍に攻撃されたと述べた[426]。チュフイウ地区の街ボウチャンスクでは複数の建物が損壊して火災が発生し、65歳の男性が負傷した[426]。イジューム地区の村ボロバでも砲撃で火災が発生し、その近くの村では小麦畑が被害を受けた。クピャンスクでは火災でインフラ施設が損壊した[426]。
- ウクライナ中部ドニプロペトロウスク州のリサク知事は、ドニプロペトロウスク州で2人の男性が負傷し、複数の建物に被害が出たと述べた[426]。
- ウクライナ東部ドネツク州の村オルリウカで、住民少なくとも1人が負傷した[426]。
- ウクライナ軍東部作戦管区のセルヒイ・チェレバティ報道官は「われわれはアンドリーフカとクリシチウカ付近で、敵の激しい攻撃を撃退し続けている」と述べ「敵は失った占領地を奪還しようと攻撃しているが、成功していない」とした[427]。一方、ロシア国防省は、ウクライナ東部ドネツク州クリシチウカ付近などでロシア軍がウクライナ軍による10回の攻撃を撃退したと明らかにした[427]。また、チェレバティ報道官は「最大数百人の元ワグネル戦闘員の存在を確認している」としながらも、さまざまな場所に散らばっており、一体化した組織的な部隊を構成していないため、戦況に大きな影響は出ていないと述べた[428][429]。ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は、ワグネルはもはや存在しないと指摘し、元ワグネル戦闘員はアフリカに渡航したり、ロシア国内で分散したり、ロシア国防省と契約してウクライナ東部のバフムト方面で戦っていたりしているとの見方を示した[428]。
- ロシアのウクライナ侵攻を受け、2022年4月に国連人権理事会の理事国を追放されたロシアが、2024年からの理事国復帰に向けて立候補した[430]。
- 米財務省は、イラン政府が、ウクライナ侵攻で使用する目的でロシアにドローンを供給していると非難し、イラン製ドローン向け部品調達網を対象に制裁を課すと発表した[431]。この調達網は、イランのイスラム革命防衛隊がイラン製ドローン「シャヘド」に使用される重要部品を調達するための出荷や金融取引を支援した[431]。
- アメリカのウクライナ経済復興担当特別代表ペニー・プリツカーは、現在はまだ戦闘が続いているものの、米民間企業は戦後のウクライナの再建に向けた準備にすぐにも着手しなければならないと指摘し、「ウクライナは大きな可能性を秘めている。農業、エネルギー、金属、鉱業、重要鉱物などの多岐にわたる分野で大きな機会がある」とした。同時に、復興は透明性と説明責任の改善を含む改革と同時に進められる必要があるとの考えを示した[432]。
- ポーランドのテルス農業相は、ウクライナのソルスキー農業政策・食料相とオンラインで会談を行い、ウクライナ産穀物を巡るウクライナとの対立について解決に向けた協議を行ったと明らかにし「将来についての協議を喜ばしく思う。お互い冷静になり、対話は恐らく良い方向に向かっている」と述べた[433]。ウクライナのカチカ通商代表はポーランドとの協議を建設的だと評価し、穀物輸入に対するこうした制限措置が今後繰り返されない保証を望むと述べた[433]。
- 警察庁は、10月2-6日にウクライナ国家警察の鑑識担当警察官ら15人が来日し、東京都内で福島県警や警視庁から多くの遺体の身元を効率的に特定する手法を学ぶ研修を受けると明らかにした[434]。7月に幹部10人が来日したのに続き2回目となる[434]。福島県警察科学捜査研究所や警視庁の職員から研修を受け、前回より実務的な内容になるという[434]。
9月28日
- ウクライナ軍は、南部ザポリージャ州の集落ノボプロコポフカ付近に到達したと明らかにした[435]。
- シャップス英国防相は、ウクライナの首都キーウを訪問し、ゼレンスキー大統領と防空強化について協議した[436]。ゼレンスキー大統領は「全国民を代表して、イギリスの軍事的、財政的、人道的支援に感謝する」と表明し、防衛分野の協力により、長距離兵器を通じて戦闘能力を大幅に強化できたと述べた[436]。ウクライナのウメロウ国防相とも会談し、戦況やウクライナが緊急に必要としていることの説明を受けた[436]。ウメロウ国防相は「防空、大砲、対ドローンシステムを重視する。冬が来るが、準備はできている。一緒に強くなろう」と述べた[436]。
- NATOのストルテンベルグ事務総長はウクライナのキーウを電撃訪問し、「ウクライナの反転攻勢は徐々に進展している」とした上で「NATO同盟国に防空システムの納入を早めるよう働きかけている」ことを明らかにした[437]。ストルテンベルグ事務総長はウクライナのゼレンスキー大統領と行った共同記者会見で、「ウクライナ軍が1メートル前進するたびに、ロシア軍は1メートル後退する」とし、「ウクライナは家族のため、未来のため、自由のために戦っている。対照的にロシアは帝国的な妄想のために戦っている」と述べた[437]。ゼレンスキー大統領は「ウクライナの防空を強化する」必要性について強調した上で「世界の食料安全保障に重要なウクライナの都市や港湾施設に対する攻撃が行われている」ことについて指摘して「ロシアに対する圧力を高めると同時に、ウクライナの防空を強化する必要がある」と強調した[437]。
脚注
注釈
- ^ 中央アフリカ、マリ、ブルキナファソ、ソマリア、ジンバブエ、エリトリア
- ^ a b ポーランド、ハンガリー、スロバキア、ルーマニア、ブルガリア
- ^ 2022年4月24日に初訪問[83]。9月9日に2度目の訪問[84]。
- ^ 衆議院議長である細田博之は、7日に体調不良を訴え、入院しているため副議長が代理出席した[129]。
- ^ 楽天の子会社が運営を行うコミュニケーションアプリViberは、ウクライナ国内のスマートフォンの97%にインストールされており、日常で使われているアプリである[145][146]。侵攻を受けて、ウクライナ国内でのアプリ外の音声通話を無料にする措置を取っている[145][146]。また、三木谷自身がウクライナに10億円の寄付を行ったり[147]、侵攻前にはゼレンスキー大統領との対面を行ったりしている[148]。
- ^ ドローン33機が飛来し、26機を撃墜したとの出典もある[166]。
- ^ a b c 原子力の安全、食料安全保障、エネルギー安全保障、捕虜と送還者の解放、ウクライナの領土回復、ロシア軍の撤退、ロシアの戦争犯罪の訴追、環境保全、紛争拡大の防止、安全保障体制の構築、戦争終結の確認
- ^ ヘンリー・キッシンジャー元国務長官、マイケル・ブルームバーグ元ニューヨーク市長、Googleの最高経営責任者を務めたエリック・シュミット、NFLのニューイングランド・ペイトリオッツのオーナーであるロバート・クラフト、ヘッジファンド創設者のビル・アックマン、富豪のバリー・スターンリヒトらが出席した。
- ^ 12発との出典もある。[399]。
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