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オレニフカ捕虜収容所爆発

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
オレニフカ捕虜収容所爆発
2022年ロシアのウクライナ侵攻
場所 ウクライナの旗 ウクライナ
ドネツィク州Kalmiuske Raion Molodizhneウクライナ語版
Filtration camp on the territory of the former Volnovakha corrective colony (№120)
座標 北緯47度49分42秒 東経37度42分39秒 / 北緯47.82846度 東経37.71093度 / 47.82846; 37.71093座標: 北緯47度49分42秒 東経37度42分39秒 / 北緯47.82846度 東経37.71093度 / 47.82846; 37.71093
日付 2022年7月29日
攻撃手段 不明
(建物内の爆発あるいは砲撃と推定される)
死亡者 53人以上
負傷者 75人以上
犯人

論争中

地図
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100 m
The bombed-out barracks where the captured Ukrainian soldiers who defended Mariupol and left Azovstal were kept
Filtration camp
The bombed-out barracks where the captured Ukrainian soldiers who defended Mariupol and left Azovstal were kept
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オレニフカ捕虜収容所爆発(オレニフカほりょしゅうようじょばくはつ)は、2022年ロシアのウクライナ侵攻中の2022年7月29日に、ウクライナオレニフカ付近にあるロシア軍捕虜収容所爆発した出来事[1]

捕虜53人が死亡、75人が負傷した[1]

ウクライナとロシアは、収容所への攻撃で互いに非難している[2][3]ウクライナ軍参謀本部は収容所で行われていたウクライナの捕虜への拷問と殺害を隠蔽するためにロシア軍が砲撃したと発言し、ウクライナ当局はロシアに責任があることを示す通信を傍受したものを公開したが[4]、ロシアはウクライナ領からHIMARSロケット弾が発射されたとしている[5]。7月30日時点で、何が起こったか、第三者により検証されてはいない[6]

爆発

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7月29日夜、ウクライナのオレニフカ付近にあった収容所(親ロシア派のDPRが運営)が破壊された。ロシアとDPRによれば、ウクライナの捕虜53人が死亡し、75人が負傷したとされるが[7](当初、ロシアの公式声明では、看守8人に加えて、40人が死亡、75人が負傷したとしていた)[8]、ウクライナ側は、およそ40人が死亡、130人が死亡したとしていた[9]。両陣営ともに、事件が発生する数日前にアゾフ大隊の捕虜が連行され、収容されていたことで見解が一致している。DPRの首長デニス・プシーリンは、収容所には193人の捕虜がいたとし、外国人は不在だったが、捕虜になったウクライナ人の人数は特定されていなかったと発言した[7]

ウクライナは事件についてロシアの責任としており、ウクライナ保安庁は、電話によるロシア兵士の会話を傍受した録音記録(ロシアが爆発物を建物内に置いたことを示唆する)を公開した上で、入手可能な映像の証拠から、一部の窓が無傷のままであり、目撃証言では通常は砲撃あるいは付随する音に言及されておらず、建物へのロケット攻撃が行われていないことを示唆しているとした[10]ウクライナ国防省情報総局によれば、ワグネル・グループ(ロシアを後ろ楯とする民間軍事会社で、アフリカシリア、ウクライナにおける戦争犯罪で非難された)がロシア国防省との事前協議なく爆発を引き起こしたとされる[3][11]

ロシアは、ウクライナがアメリカ合衆国から供給されたHIMARSロケット砲で収容所を攻撃したと主張した[5]。同日、ロンドンのロシア大使館は、「アゾフ大隊の兵士は死刑、正規の兵士ではないので銃殺刑ではなく絞首刑に値する。屈辱的な死がふさわしい」といった内容のツイートを投稿した。Twitterヘイトスピーチというフラグを立てツイートの拡散を制限したが、公衆の面前から隠されてはいなかった[12]

それぞれの陣営の話の信憑性について、第三者による検証はほとんどなされていない。アメリカのシンクタンク戦争研究所は、入手可能な証拠により爆発の性質がHIMARSの攻撃と一致しないのでウクライナ側の話の方がより信憑性が高いことが示唆されているが、どちらに責任があるか確実に言うことはできないだろうと発言した[13]。ウクライナのボランティアイニシアチブInformNapalmもまた同様の発言を行ったが、ロシア軍がRPOロケットランチャーあるいはMRO-Aを使い、遺体が火あぶりにされるのを待っていたことを示唆して、ロシアの責任であるとした[14]イスラエル人のウクライナ軍士官は、ロシア兵士に拷問を恐れさせ、ヘルソン地域に進軍するウクライナ軍への降伏を抑止するためにロシア軍が収容所を攻撃したと主張した[15]

反応

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ウクライナ外務省国際司法裁判所に提訴し[16]、ロシアもまた独自に調査を開始したとした[7]。また、ウクライナ当局は赤十字国際委員会国際連合に対して介入を依頼し[17]、少し遅れて、7月30日夜に、ロシアは両組織の代表の敷地内への立ち入りを許可した[18][19]

7月29日の声明において、欧州連合外務・安全保障政策上級代表ジョセップ・ボレルは、ロシアを非難した上で、攻撃を「恐ろしい残虐行為」かつ「蛮行」と呼び、また、証拠として親ロシア派のソーシャルメディアでシェアされ始めていたウクライナの捕虜への悪質な残虐行為(拷問と去勢)を実行していたロシア兵士[20][21][22]の映像に言及した[23][24]エストニア[25]イギリスフランス[26]もまた同様の態度を示している。

8月にはグテーレス事務局長によって調査団が設置されたが、ロシア当局が協力を拒否したため解散された[27]

2024年にAP通信が入手した内部分析報告書は事件の責任はロシアにあると示唆しており、ウクライナ検察総局は刑務所長と副官を指名手配した[28]。同年12月、元刑務所長はロシア占領下のウクライナ東部ドネツクで仕掛けられた自動車爆弾の爆発により死亡している[29][30]。元刑務所長には、2万1500ドルの懸賞金がかけられていたという[31]

脚注

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  1. ^ a b В ДНР заявили об ударе ВСУ по колонии с военнопленными в Еленовке. Сообщается о 53 погибших” [The DPR announced the strike of the Armed Forces of Ukraine on the colony with prisoners of war in Yelenovka. 53 deaths reported] (ロシア語). Meduza. 2022年7月29日閲覧。
  2. ^ “Масова загибель українських полонених в Оленівці. Що відомо [Mass death of Ukrainian prisoners in Olenivka. What is known]” (ウクライナ語). BBC News Україна. https://www.bbc.com/ukrainian/news-62339684 2022年7月29日閲覧。 
  3. ^ a b Ukrainian President Volodymyr Zelensky says prison attack 'deliberate war crime by the Russians,' as Russia blames Ukraine” (英語). CNN News (2022年7月30日). 2022年7月30日閲覧。
  4. ^ Russians struck Olenivka to cover up the torture and execution of prisoners General Staff of the Armed Forces of Ukraine” (英語). news.yahoo.com. 2022年7月29日閲覧。
  5. ^ a b Reuters (2022年7月29日). “Russia says Ukraine struck prison in Donetsk region, killing 40” (英語). Reuters. https://www.reuters.com/world/europe/russia-40-ukrainian-pows-killed-by-ukrainian-missile-strike-donetsk-prison-2022-07-29/ 2022年7月29日閲覧。 
  6. ^ Украина обвиняет Россию в ударе по колонии в Еленовке и гибели пленных” [Ukraine accuses Russia of attacking the colony in Yelenovka and killing prisoners] (ロシア語). Радио Свобода. 2022年7月29日閲覧。
  7. ^ a b c Russia, Ukraine trade blame for deadly attack on POW prison” (英語). AP NEWS (2022年7月29日). 2022年7月30日閲覧。
  8. ^ Russia accuses Ukraine of killing POWs with HIMARS system” (英語). www.aljazeera.com. 2022年7月30日閲覧。
  9. ^ Внаслідок обстрілу Оленівки близько 40 осіб загинуло, 130 поранено – розпочато провадження” [As a result of the shelling of Olenivka, about 40 people died, 130 were injured - proceedings have been initiated] (ウクライナ語). armyinform.com.ua. 2022年7月30日閲覧。
  10. ^ Tyshchenko, Kateryna (2022年7月29日). “Explosion in the Olenivka penal colony planned and executed by the Russian Federation - conversation intercepted by SSU” (英語). Ukrainska Pravda. 2022年7月29日閲覧。
  11. ^ Intelligence: Russia's Wagner Group behind attack on Olenivka penal colony” (29 July 2022). 2022年7月29日閲覧。
  12. ^ Zelenskyy condemns 'deliberate Russian war crime' after POW bombing” (英語). Euronews (2022年7月30日). 2022年7月30日閲覧。
  13. ^ Russian offensive campaign assessment: 29 July” (英語). Institute for the Study of War. 2022年7月30日閲覧。
  14. ^ Россия сожгла украинских военнопленных во сне с помощью термобарического оружия – InformNapalm” [Russia burned Ukrainian prisoners of war in their sleep with thermobaric weapons - InformNapalm]. Зеркало недели. 2022年7月30日閲覧。
  15. ^ Ponomarenko, Illia (2022年7月29日). “Over 50 Ukrainian prisoners of war killed in Russian captivity”. The Kyiv Independent. 2022年7月30日閲覧。
  16. ^ Reuters (2022年7月29日). “Ukraine appeals to International Criminal Court after prison attack” (英語). Reuters. https://www.reuters.com/world/europe/ukraine-appeals-international-criminal-court-after-prison-attack-2022-07-29/ 2022年7月30日閲覧。 
  17. ^ AFU General Staff, SBU, Main Intelligence Agency and Rada Commissioner for Human Rights demand that UN, ICRC immediately respond to terrorist attack of Russia on Olenivka – statement” (英語). Interfax-Ukraine. 2022年7月30日閲覧。
  18. ^ Война в Украине: Россия согласилась показать ООН и Красному Кресту Еленовку, в Севастополе пять человек ранены при атаке беспилотника - Новости на русском языке” (ロシア語). BBC News Русская служба. 2022年7月31日閲覧。
  19. ^ Latest Developments in Ukraine: July 30” (英語). VOA. 2022年7月30日閲覧。
  20. ^ Дело в шляпе. Cадистом, истязавшим украинского военнопленного, оказался наемник из батальона «Ахмат» Очур-Суге Монгуш” (ロシア語). The Insider (2022年8月6日). 2022年8月12日閲覧。
  21. ^ Tracking the Faceless Killers who Mutilated and Executed a Ukrainian POW” (英語). bellingcat (2022年8月5日). 2022年8月12日閲覧。
  22. ^ ベリングキャットザ・インサイダーは、調査の結果、残虐行為を行った兵士をアフマト・カディロフ名称特別任務民警連隊傭兵オチュル・シュゲ・モングシュ(1993年生まれ、トゥヴァ出身)としている。モングシュ本人は否定したが、発言内容を確認したところ虚偽が判明したこと、写っているのが自身であると認めたことやロシア連邦保安庁(FSB)に拘束されたと自ら話していることなどから、ザ・インサイダーは「判明」であると結論した。
  23. ^ 'Sickening' video shows gagged Ukrainian POW being castrated” (29 July 2022). 30 July 2022閲覧。
  24. ^ Ukraine: Statement by the High Representative Josep Borrell on the latest Russian atrocities | EEAS Website”. www.eeas.europa.eu. 2022年7月30日閲覧。
  25. ^ Estonian politicians condemn Olenivka prison attack” (英語). ERR (2022年7月30日). 2022年7月30日閲覧。
  26. ^ Ukraine : Paris exprime son "horreur" après le bombardement d'une prison” (フランス語). TF1 INFO (2022年7月30日). 2022年7月30日閲覧。
  27. ^ Stewart, Will (2024年12月9日). “Notorious Russian jailer who ran 'torture prison' killed by car bomb in Ukraine” (英語). The Mirror US. 2024年12月10日閲覧。
  28. ^ Служба безпеки України”. Telegram (2024年7月29日). 2024年12月10日閲覧。
  29. ^ Mash”. Telegram. 2024年12月10日閲覧。
  30. ^ Car bomb in occupied Donetsk kills former prison director wanted in Ukraine”. Novaya Gazeta Europe (2088年10月6日). 2024年12月10日閲覧。
  31. ^ Revenge of the APU: In the center of Donetsk, the head of the Yelenovskaya colony was blown up in his car” (英語). EADaily (2024年12月9日). 2024年12月10日閲覧。

外部リンク

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