ウクライナの英雄都市
歴史
[編集]ソビエト連邦
[編集]ソ連時代、12の都市が英雄都市の称号を授与された。この称号は、住民が大祖国戦争で際立った決意と勇気を示した都市に与えられる栄誉であり、ソ連で最高の栄誉であるソ連邦英雄賞に関連している。称号を授与された12都市のうち、4都市(オデッサ、セヴァストポリ、キーウ、ケルチ)は、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国に位置しており、これらの都市の地位は、後継国のウクライナに引き継がれた。これらの4都市はすべて、ウクライナの国際的に認められた国境内に位置しているが、セヴァストポリとケルチの都市は、クリミア共和国とセヴァストポリ連邦市の事実上の領土であり、2014年のロシアのクリミア併合後、どちらもロシア連邦によって管理されている。
英雄都市という用語の使用は、1942年のプラウダの記事までさかのぼる。この称号が最初に公式に使用されたのは、1945年5月1日にヨシフ・スターリンが「英雄都市レニングラード、スターリングラード、セヴァストポリおよびオデッサ」で礼砲を放つよう命じた最高司令官命令第20号を発行したときである[3]。1961年6月22日 (大祖国戦争開始の20周年記念) 、レーニン勲章のキーウへの授与とキーウ防衛記章の導入を定めたウカセ(法令)において、キーウに英雄都市」という用語が適用された。
ソビエト連邦の英雄都市の称号は、1965年5月8日に大祖国戦争の勝利20周年を記念して、ソビエト連邦最高会議幹部会のウカセで正式に導入された。1988年、称号の発行は正式に中止された。
ウクライナ
[編集]ウクライナの英雄都市の現代的な称号は、2022年のロシアのウクライナ侵攻を受けて、同年3月6日にヴォロディミル・ゼレンスキー大統領による2022年の政令第111号によって導入された[2]。この賞は、現代のウクライナの称号「ウクライナ英雄」に関連する。
キーウ、オデッサ、セヴァストポリ、ケルチの地位を更新することに加えて、政令第111号は、チェルニーヒウ、ホストメリ、ハルキウ、ヘルソン、マリウポリ、ヴォルノヴァーハの都市にに英雄都市の称号を与えた[4][5]。
2022年3月25日、ゼレンスキーは2022年の政令第164号により、別の4都市(ブチャ、イルピン、アフトゥイルカ、ムィコラーイウ)に英雄都市の称号を授与した[6]。
英雄都市の一覧
[編集]チェルニーヒウ
[編集]チェルニーヒウ包囲戦は、2022年2月24日にロシア軍が開始した。イギリス国防省によると、ロシア軍は都市の占領に失敗し、代わりにキーウへの代替ルートを通って都市を迂回することを選択した[7][8]。ウクライナ当局は、ロシア軍が付近のセドニフとセメニフカに向かっていると報告した。伝えられるところによると、ウクライナ軍はロシアの装備や文書を相当数押収した。包囲は3月31日に解除された。
ホストメリ
[編集]アントノフ国際空港の戦いは、2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻時に始まった。ロシア空挺部隊からの最初の攻撃はウクライナ軍によって撃退されたが、空港は最終的に、第二波のロシア軍部隊により2月25日に陥落した。しかし、ロシアが空港を支配しているにもかかわらず、ウクライナ軍はロシア軍との交戦を続けている。
世界最大の航空機An-225は、戦闘の開始段階で空港に駐機していた。戦闘にもかかわらず、アントノフのパイロットによって無傷であることが最初に確認された[9]。しかし、2月27日、ウクライナ当局はAn-225がロシアの空爆によって破壊されたと報じた[10]。3月4日、ロシアの国営テレビチャンネル「チャンネル1」は、An-225が破壊されたことを示す映像を放映した[11]。4月2日までに、ロシア軍は撤退し、ホストメリはウクライナ軍に奪還された[12]。
ハルキウ
[編集]ハルキウの戦いは、ロシアのウクライナ東部攻勢の一環として2月24日に始まった。ロシアとウクライナの国境の南32kmに位置し、ロシア語話者が多いハルキウは、ウクライナ第二の都市であり、最初からロシアの攻撃の主要な標的と見なされていた[13]。ウクライナの頑強な抵抗でロシアのハルキウ市への進軍は失敗に終わり、戦闘は5月14日に終了し、すべてのロシア軍は都市からロシア国境に向かって撤退した。ウクライナの大統領顧問は、この戦いを「21世紀のスターリングラード」と呼んだ。
ヘルソン
[編集]ヘルソンの戦いは2022年2月24日に始まり、ロシアの地上部隊と空挺部隊がクリミア半島から攻撃を開始し、ドニエプル川を渡って 2022年3月2日に都市自体を占領した。ヘルソンは、 2022年のロシアのウクライナ侵攻でロシア軍が占領した最初のウクライナの主要都市であった。
マリウポリ
[編集]マリウポリ包囲戦は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻中のウクライナでの軍事行動であり、ロシアと分離主義勢力ドネツク人民共和国(DPR)の軍隊がマリウポリでウクライナ軍と交戦した。ロシアのウクライナ東部攻勢の一部であったこの戦闘は、2022年2月24日に始まり、マリウポリに残っていたウクライナ軍が戦闘停止を命じられた後[14]、降伏したとロシアが発表した2022年5月20日に終了した[15]。
ヴォルノヴァーハ
[編集]ヴォルノヴァーハの戦い、2022年のウクライナ侵攻のウクライナ東部攻勢の一環として、ロシア軍とDPR軍が2022年2月25日に始めた戦いである。戦闘の結果、2022年3月12日にDPR軍が街を占領した。ドネツク州知事のパブロ・キリレンコは、街は大部分が破壊されたと述べた[16][17]。AP通信は、街が親ロシア派の分離主義者に占領され、町の大半が戦闘で破壊されたことを独自に確認した[18]。
イルピン
[編集]イルピンの戦いは2022年2月27日に始まり、ロシアの地上部隊が街に進入し、3月14日までにイルピンの半分を占領した。1か月にわたる戦闘の末、3月28日にウクライナ軍がイルピンを奪還した。
ブチャ
[編集]ブチャの戦いは2022年2月27日に始まり、ロシア陸軍部隊が町に進入した。一か月に及ぶ戦闘の末、3月31日にウクライナ軍がブチャを奪還した。その後、町内に掘られた集団墓地の証拠により、戦闘中に、ブチャに駐留していたロシア陸軍の部隊員が行った「ブチャの虐殺」として知られる、町の住民と軍隊の職員に対するロシア陸軍が関与した戦争犯罪があったという事実が明らかになった。ウクライナ軍が奪還する前のロシア支配下のブチャで、ロシア陸軍の軍人が町の住民を殺害していた事実は、国際社会に衝撃を与えた。
アフトゥイルカ
[編集]アフトゥイルカの戦いは2022年2月24日に始まり、ロシアの地上部隊が都市への進入を試みた。3月26日までに、ロシア軍は市から撤退したが、砲撃は続いた。
ムィコラーイウ
[編集]ムィコラーイウの戦いは2022年2月26日に始まり、ロシアの地上部隊が都市への進入を試みた。 4月8日にロシア軍は市から撤退したが、砲撃は続いた。
関連項目
[編集]脚注
[編集]出典
[編集]- ^ ウクライナ語ラテン翻字: Misto-heroi Ukrainy
- ^ a b Zelenskyy (March 6, 2022). “УКАЗ ПРЕЗИДЕНТА УКРАЇНИ №111/2022” (ウクライナ語). Офіційне інтернет-представництво Президента України. March 7, 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。March 9, 2022閲覧。
- ^ Sudakov (May 8, 2015). “Hero Cities still victorious and heroic, despite squabble” (英語). PravdaReport. 2022年3月13日閲覧。
- ^ “Zelensky gives the honorary title 'Hero City' to Kharkiv, Chernihiv, Mariupol, Kherson, Hostomel, and Volnovakha.”. The Kyiv Independent news desk (March 6, 2022). 2022年10月9日閲覧。
- ^ “Zelensky awards Hero City title to Kharkiv, Chernihiv, Mariupol, Kherson, Hostomel and Volnovakha”. Interfax-Ukraine. March 7, 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月9日閲覧。
- ^ “УКАЗ ПРЕЗИДЕНТА УКРАЇНИ №164/2022” (ウクライナ語). Офіційне інтернет-представництво Президента України. 2022年3月30日閲覧。
- ^ Channon (February 25, 2022). “Ukraine 'halts Russian advance' on city, reports UK MoD” (英語). WalesOnline. 2022年3月13日閲覧。
- ^ “Ukraine crisis: Russia has failed to take any of its major objectives, lost 450 personnel and made 'limited progress', Ministry of Defence says” (英語). Sky News. 2022年3月13日閲覧。
- ^ “Antonov An-225 reported safe” (英語). www.key.aero. 2022年3月13日閲覧。
- ^ Tabahriti. “World's largest cargo aircraft was destroyed during a Russian attack on an airfield, Ukrainian minister says” (英語). Business Insider. 2022年3月13日閲覧。
- ^ Jankowicz. “Video shows charred wreck of world's biggest airplane, the Antonov AN-225, after it was destroyed in Russian invasion of Ukraine” (英語). Business Insider. 2022年3月13日閲覧。
- ^ Reuters (April 2, 2022). “Ukrainian troops have retaken full control of Kyiv region, says deputy defence minister” (英語). Reuters 2022年4月3日閲覧。
- ^ Higgins, Andrew (February 24, 2022). “Kharkiv, Ukraine's second-largest city, is a major target of Russia. Here's why.” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331 2022年3月13日閲覧。
- ^ Ukraine war: Last Ukrainian troops in Mariupol told to stop defence of city
- ^ “Russia says remaining 531 Azovstal defenders surrender, steelworks siege over” (May 20, 2022). 2022年10月9日閲覧。
- ^ “Eastern Ukrainian town of Volnovakha destroyed after Russia invasion, local governor says” (英語). Reuters. (March 12, 2022) 2022年3月13日閲覧。
- ^ Kyiv, Richard Spencer. “Putin wipes out entire Ukrainian city of Volnovakha” (英語). The Times. ISSN 0140-0460 2022年3月13日閲覧。
- ^ “Heavy fighting leaves much of Volnovakha in ruins” (英語). euronews (March 12, 2022). 2022年3月13日閲覧。