第36独立海兵旅団 (ウクライナ海兵隊)
第36独立海兵旅団 | |
---|---|
創設 | 2003年12月1日 |
所属政体 | ウクライナ |
所属組織 | ウクライナ海兵隊 |
部隊編制単位 | 旅団 |
兵科 | 海兵隊 |
兵種/任務 | 水陸両用作戦 |
人員 | 2,000人[1] |
所在地 | ムィコラーイウ州ムィコラーイウ |
通称号/略称 | A2802 |
愛称 | ミハイロ・ビリンシキー |
標語 | 神と勝利が私たちと共にある |
上級単位 | 海兵隊司令部 |
戦歴 |
ロシアのクリミア侵攻 ドンバス戦争 ロシアのウクライナ侵攻 |
指揮官 | ミキタ・ヴィテク大佐 |
第36独立海兵旅団(だい36どくりつかいへいりょだん、ウクライナ語: 36-та окрема бригада морської піхоти)は、ウクライナ海兵隊の旅団。海兵隊司令部隷下。
概要
[編集]ウクライナ海軍
[編集]2003年12月1日、ウクライナ海軍第32軍団隷下の第73独立機械化大隊、第501独立機械化大隊、第406砲兵連隊(第406旅団砲兵群に改編)、第22独立高射ミサイル大隊を基幹に第36独立沿岸防衛旅団としてクリミア自治共和国シンフェロポリで創設された[2]。
2004年3月、第4独立海軍歩兵旅団隷下の第1独立海軍歩兵大隊が配属された。
2006年10月、第406旅団砲兵群がウクライナ海軍司令部隷下に転属した[3]。
2007年6月、第1独立海軍歩兵大隊がウクライナ海軍司令部隷下に転属した。
2008年3月、第501独立機械化大隊がウクライナ海軍司令部隷下に転属した。
ロシアのクリミア侵攻
[編集]2014年2月27日、ロシアのクリミア侵攻ではセルゲイ・ストロジェンコ旅団長がロシア連邦軍に寝返り、部隊は戦わずに降伏して、クリミア半島は陥落した。裏切らずにウクライナ本土に退却した団員達がウクライナ国民への忠誠を宣誓して、2015年7月に第1独立海軍歩兵大隊、第501独立海軍歩兵大隊を基幹に第36独立海軍歩兵旅団としてムィコラーイウ州で再編された。また裏切者を中心にロシア海軍黒海艦隊隷下に第126独立沿岸防衛旅団が再編された[2][4]。
2017年6月、第1海軍歩兵大隊を基幹に第503独立海軍歩兵大隊が創設された[2][5]。
2019年7月7日、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領より、名誉称号「ミハイロ・ビリンシキー」を授与された[6]。
ロシアのウクライナ侵攻
[編集]南部・ムィコラーイウ戦線
[編集]2022年2月24日、ロシアのウクライナ侵攻で旅団司令部、旅団砲兵群、防空大隊、後方部隊が南部ムィコラーイウ州ムィコラーイウに配備され、4月にロシア軍を撃退した[7][8]。
東部・マリウポリ戦線
[編集]2022年2月24日、第503独立海軍歩兵大隊が東部ドネツィク州ヴォルノヴァーハに配備され、第53独立機械化旅団を救援したが、パベル・スビトフ大隊長が戦死して3月中旬にヴォルノヴァーハは陥落した[9]。
2022年2月24日、旅団の大部分が南東部の要衝とされる東部ドネツィク州マリウポリ地区に配備され、26日には第1独立海軍歩兵大隊が防御していたフヌートヴェの防衛線を突破され、マリウポリ郊外に撤退した。ロシア軍の攻勢を数週間食い止めるも、戦車大隊が壊滅するなど大損害を出し、3月にはマリウポリ市内まで撤退してイリイチ製鉄所を陣地とした[10]。
2022年4月4日、イリイチ製鉄所の北部を防御していた第503独立海軍歩兵大隊の兵士267名が投降したとロシア側が発表した[11]。しかし部隊はこれを否定し、証拠として公開された映像が検証された結果、投降したのは第501独立海軍歩兵大隊だったことが判明した[12]。
2022年4月10日、部隊に撤退命令が出され、76人の兵士がマリウポリから脱出したが、前線のウクライナ軍陣地まで無事に辿り着けたのは7人だけで、多くが道中に殺されるか捕虜となった[13]。
2022年4月11日-12日、市内中心部のイリイチ製鉄所から市内南東部のアゾフスタリ製鉄所を陣地にしていたアゾフ連隊と合流する際に、ウォロディミル・バラニュク旅団長を含む、兵士50名が戦死、42名が投降したとロシア側が発表した[14]。
2022年4月13日、イリイチ製鉄所に留まっていた旅団の100名以上の負傷兵を含む、兵士1,026名が投降したとロシア側が発表し、イリイチ製鉄所の陣地を失った[15]。
2022年4月14日、合流したアゾフ連隊と合同でアゾフスタリ製鉄所を陣地に、マリウポリの防衛任務を継続すると宣言した[16]。
2022年4月20日、市内南西部の港湾地区で戦闘していた第12特務旅団、国境警備隊、警察官など500名と合流したが、港湾地区の陣地を失った[17]。
2022年5月16日、ロシア国防省がアゾフスタリ製鉄所の負傷兵を避難に合意したと発表し、ウクライナ軍参謀本部も「マリウポリ守備隊は司令部が命じた全ての任務を完遂した」と発表し、マリウポリ守備隊に撤退を命令した[18]。ウクライナ国防省は人道回廊が設置され、53名の負傷兵を含む、260名以上のウクライナ兵が製鉄所から避難したと発表した。ただし、投降した捕虜扱いでロシア軍の支配地域に移送された[19][20]。
マリウポリの戦いで死傷者1,000人以上の大損害を出して部隊が壊滅したため、NATO加盟国の退役軍人や退役警官の新兵訓練を受けた動員兵で再編された[21]。
南部・ヘルソン戦線
[編集]2022年6月、旅団砲兵群が南部ヘルソン州ベリスラウ地区に再配置され、友軍を火力支援した。8月には全隊が再配置されて攻勢を開始し、11月にヘルソンを解放してロシア軍はドニエプル川西岸から撤退した[22][23][24]。
東部・バフムート戦線
[編集]2022年10月、第1独立海軍歩兵大隊が激戦地の東部ドネツィク州バフムート地区に再配置された[25][26]。
東部・南ドネツク戦線
[編集]2022年11月、東部ドネツィク州ポクロウシク地区に再配置され、アウディーイウカ方面に展開した[27][28]。
2023年5月23日、ウクライナ海軍からの独立で創設されたウクライナ海兵隊に編入された[29]。
2023年7月、東部ドネツィク州ヴォルノヴァーハ地区ヴェリカ・ノヴォシルカ方面で攻勢を開始した[1]。
南部・ドニエプル川戦線
[編集]2023年10月、南部ヘルソン州ベリスラウ地区に再配置され、渡河作戦を開始して第501独立海兵大隊がドニエプル川東岸のクリンキに上陸した[30][31]。
北東部・ハルキウ戦線
[編集]2024年5月、ロシアと国境を接する北東部ハルキウ州チュフイウ地区に再配置され、第501独立海兵大隊、第2海兵大隊が友軍の救援でヴォウチャンシク方面に展開した[32][33]。
ロシア・クルスク戦線
[編集]2024年8月、第501独立海兵大隊がロシア・クルスク州に再配置され、スジャ方面に展開した[33]。
編制
[編集]- 旅団司令部(ムィコラーイウ)
- 第1独立海兵大隊(ムィコラーイウ)
- 第501独立海兵大隊(ベルジャーンシク)
- 第2海兵大隊
- 戦車大隊
- 旅団砲兵群
- 本部中隊
- 自走砲大隊
- ロケット砲大隊
- 対戦車砲大隊
- 防空大隊
2017年編制
[編集]- 旅団司令部(ムィコラーイウ)
- 第1独立海軍歩兵大隊(ムィコラーイウ)
- 第501独立海軍歩兵大隊(ベルジャーンシク)
- 第503独立海軍歩兵大隊(マリウポリ)
- 戦車大隊
- 旅団砲兵群
- 本部中隊
- 自走砲大隊
- ロケット砲大隊
- 対戦車砲大隊
- 防空大隊
- 工兵大隊
- 整備大隊
- 兵站大隊
- 偵察中隊
- 狙撃中隊
- 電子戦中隊
- 通信中隊
- レーダー中隊
- NBC防護中隊
- 衛生中隊
第36独立沿岸防衛旅団編制
[編集]- 旅団司令部(シンフェロポリ)
- 第73独立機械化大隊
- 第84独立機械化大隊
- 第501独立機械化大隊
- 第1独立海軍歩兵大隊
- 第406旅団砲兵群
- 第22独立高射ミサイル大隊
- 第29独立整備大隊
- 第809独立補給大隊
ギャラリー
[編集]出身者
[編集]脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b ウクライナ軍、全海兵旅団を16kmの狭い範囲に集中投入 フォーブス・ジャパン
- ^ a b c “36 окрема бригада морської піхоти імені контр-адмірала Михайла Білинського”. Ukrainian Military Pages
- ^ “32 РЕАП: Обрані долею. Історія тільки починається”. Ukrainian Military Pages
- ^ “ハリネズミのように要塞化されるクリミア半島”. Yahoo!ニュース
- ^ “海兵隊の第503大隊に関するTOP-10の事実”. 陸軍通信
- ^ “УКАЗ ПРЕЗИДЕНТА УКРАЇНИ №495/2019” (ウクライナ語). ウクライナ大統領府
- ^ “Proud Band of Ukrainian Troops Holds Russian Assault at Bay — for Now”. ニューヨーク・タイムズ
- ^ “UNITREP – 36th Marine Brigade”. ミリタリー・ランド
- ^ “Ukrainian marine commander killed fighting Russian invaders” (英語). Newsweek (2022年3月12日). 2022年3月14日閲覧。
- ^ “Russian invasion update: Ukraine repels tank attack, captures six Russians in Mariupol”. ウクルインフォルム
- ^ “Кадыров сообщил, что в Мариуполе сдались более 250 украинских морпехов” (ウクライナ語). RIAノーボスチ
- ^ “В РФ заявляют о взятии в плен украинских морпехов в Мариуполе: что известно (фото)” (ウクライナ語). フォーカス
- ^ “Пішки з оточеного міста. Невідома історія виходу морпіхів із Маріуполя” (ウクライナ語). ウクラインスカヤ・プラウダ
- ^ “マリウポリでウクライナ第36海兵旅団の司令官を殲滅=ドネツク人民共和国民警”. スプートニク
- ^ “ウクライナ兵1000人超、マリウポリで投降 ロシア国防省”. フランス通信社
- ^ “マリウポリ防衛に参加する部隊指揮官2名、共同で呼びかけ動画公開”. ウクルインフォルム
- ^ “Морпехи и "Азов" спасли полтысячи бойцов из порта Мариуполя – СМИ” (ウクライナ語). ウクラインシカ・プラウダ
- ^ “ウクライナ軍、全任務を達成したマリウポリ部隊に「兵士の命を救え」と命令”. grandfleet.info (2022年5月17日). 2022年5月17日閲覧。
- ^ “マリウポリの製鉄所、負傷兵の退避始まる ロシア国防省発表”. CNN
- ^ “マリウポリ製鉄所からウクライナ兵退避開始、捕虜交換へ”. ロイター
- ^ “U.S. Veterans Race to Train Ukrainians as Marines; ‘Time Is Not on Their Side’”. ウォール・ストリート・ジャーナル
- ^ “Ukrainian Artillery Reportedly Takes Out Russian Troops in Kherson Region”. ニューズウィーク
- ^ “Ukraine Is Attacking Everywhere”. フォーブス
- ^ “動画:火囲み歌い踊るヘルソン市民 ウクライナ軍が公開”. フランス通信社
- ^ “Морпіхи 36 бригади знищили «Урал» з окупантами на Донеччині (ВІДЕО)”. ShoTam
- ^ “Терору треба відповідати силою на всіх рівнях: і на полі бою, і санкційно, і юридично – звернення Президента України”. ウクライナ大統領府
- ^ “Морпіхи 501 батальйону знищили позицію окупантів на Донеччині (ВІДЕО)” (ウクライナ語). ShoTam
- ^ “侵略370日目 – まとめ”. ミリタリー・ランド
- ^ “ウクライナ軍に海兵隊創設へ”. ミリタルヌイ
- ^ “ロシアのドローンをハックして基地の場所特定、砲撃で爆破 ウクライナ”. フォーブス・ジャパン
- ^ “Морпіхи ЗСУ відбили російський штурм на Кринки”. ミリタルヌイ
- ^ “DeepState UA”. Telegram
- ^ a b ウクライナのクルスク侵攻に海兵隊部隊も参加 投降2度の大隊、名誉挽回なるか フォーブス・ジャパン