「タコ」の版間の差分
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|色 = 動物界 |
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|画像キャプション = [[マダコ]] {{Snamei||Octopus vulgaris}} |
|画像キャプション = 様々なタコ。<br />[[チチュウカイマダコ]] {{ Snamei||Octopus vulgaris}}<br/>[[ミズダコ]] {{snamei||Enteroctopus dofleini}}<br />[[アオイガイ]] {{Snamei||Argonauta argo}}<br />[[オオメンダコ]] {{Snamei||Opisthoteuthis californiana}} |
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|学名 = '''Octopoda''' {{AUY|[[ |
|学名 = '''{{Sname|Octopoda}}''' {{Small|{{AUY|[[:en:William Elford Leach|Leach]]|1818}}}} |
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* {{Sname|Octopoida}} {{Small|{{AUY|[[:en:William Elford Leach|Leach]]|1817}}}} |
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|下位分類 = |
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* [[ |
* [[有触毛亜目]] {{sname||Cirrata}} |
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* [[無触毛亜目]] {{sname||Incirrata}} |
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<center>詳しくは[[#分類|本文]]を参照 |
<center>詳しくは[[#分類|本文]]を参照 |
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}} |
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'''タコ'''(蛸、鮹、章魚、鱆、{{lang-en-short|octopus}})は、[[頭足類|頭足綱]]{{仮リンク|鞘形類|en|Coleoidea|label=鞘形亜綱}}[[八腕形類|八腕形上目]]の'''八腕形目'''(八腕目、[[学名]]:{{sname||Octopoda}})に分類される[[軟体動物]]の総称である{{Sfn|奥谷|1988|pp=253–254}}{{Sfn|前田|2005|p=709}}。[[角質環]]や柄のない吸盤を付けた、多様な機能を持つ筋肉に富んだ8本の[[腕 (頭足類)|腕]]と、脊椎動物に匹敵する大きな[[脳]]を持つ頭部を前方にそなえ、厚い[[外套膜]]に覆われた[[頭足類の体|内臓塊]]からなる胴を後方に持つことを特徴とする。 |
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{{栄養価 | name=タコ、生| water =80.25 g| kJ =343| protein =14.91 g| fat =1.04 g| carbs =2.2 g| fiber =0 g| sugars =0 g| calcium_mg =53| iron_mg =5.3| magnesium_mg =30| phosphorus_mg =186| potassium_mg =350| sodium_mg =230| zinc_mg =1.68| copper_mg=0.435| manganese_mg =0.025| selenium_μg =44.8| vitC_mg =5| thiamin_mg =0.03| riboflavin_mg =0.04| niacin_mg =2.1| pantothenic_mg =0.5| vitB6_mg=0.36| folate_ug =16| choline_mg =65| vitB12_ug =20| vitA_ug =45| betacarotene_ug =0| lutein_ug =0| vitE_mg =1.2| vitD_iu =0| vitK_ug =0.1| satfat =0.227 g| monofat =0.162 g| polyfat =0.239 g| tryptophan =0.167 g| threonine =0.642 g| isoleucine =0.649 g| leucine =1.049 g| lysine =1.114 g| methionine =0.336 g| cystine =0.196 g| phenylalanine =0.534 g| tyrosine =0.477 g| valine =0.651 g| arginine =1.088 g| histidine =0.286 g| alanine =0.902 g| aspartic acid =1.438 g| glutamic acid =2.027 g| glycine =0.933 g| proline =0.608 g| serine =0.668 g| taurine =0.520 g|right=1 | source_usda=1 }} |
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'''タコ'''([[wikt:蛸|蛸]]、[[wikt:鮹|鮹]]、[[wikt:章魚|章魚]]、[[wikt:鱆|鱆]]、[[学名]]:{{sname||octopoda}})は、[[頭足類|頭足綱]] - {{仮リンク|鞘形類|en|Coleoidea|label=鞘形亜綱}} - [[八腕形類|八腕形上目]]の'''タコ目'''に分類される[[軟体動物]]の総称。 |
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== 呼称 == |
== 呼称 == |
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=== 和名と漢名 === |
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英名 {{lang|en|[[w:Octopus|octopus]]}} は、直接的にはラテン語 {{lang|la|[[wikt:en:octopus#Latin|octopus]]}}(オクトープースまたはオクトープス)の借用であり、その元は[[古典ギリシア語]]の「8本足」{{lang|el|[[wikt:en:ὀκτώπους|ὀκτώπους]]}}({{lang|el-latn|oktōpous}})から来ている。日本語では、標準和名の他に'''たこ'''、'''蛸'''、'''鮹'''、'''章魚'''、'''鱆'''とも記す。中国語では通称として{{lang|zh|章魚}}、古称として{{lang|zh|蛸}}、ほか別名として{{lang|zh|八爪魚、八帶魚}}<ref>{{Cite web|title=“八帶魚”字的解释 {{!}} 汉典|url=https://www.zdic.net/hans/%E5%85%AB%E5%B8%B6%E9%AD%9A|website=www.zdic.net|accessdate=2021-06-10|language=zh-cn}}</ref>などと呼ばれている。 |
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日本語では、'''たこ'''、'''[[:wikt:蛸|蛸]]'''{{Sfn|前田|2005|p=709}}{{Sfn|藤堂ほか|2011|p=1396}}{{Sfn|奥谷|2002|p=148}}{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=2}}、'''[[:wikt:鮹|鮹]]'''{{Sfn|前田|2005|p=709}}{{Sfn|奥谷|2002|p=148}}{{Sfn|藤堂ほか|2011|p=1826}}{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=2}}、'''[[:wikt:章魚|章魚]]'''{{Sfn|前田|2005|p=709}}{{Sfn|奥谷|2002|p=148}}{{Sfn|藤堂ほか|2011|p=1832}}{{Sfn|加納|2007|p=228}}、'''[[:wikt:鱆|鱆]]'''{{Sfn|藤堂ほか|2011|p=1832}}{{Sfn|加納|2007|p=227}}とも記す。「多古」{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=2}}、「多胡」{{Sfn|杉本|2005|p=385}}{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=2}}、「太古」{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=2}}{{Sfn|杉本|2005|p=385}}<ref name="wamyosho"/>のような[[万葉仮名|音写]]のほか、「潮魚」{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=2}}、「八梢」{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=2}}{{Efn|なお、「八梢魚」は特に[[クモダコ]]を表すとされる<ref name="tessai">[[平瀬徹斎]] (1754)『[[日本山海名物図会]]』</ref>。}}、「章挙」{{Sfn|加納|2007|p=228}}{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=2}}、「章拒」{{Sfn|加納|2007|p=228}}{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=2}}、「章巨」{{Sfn|加納|2007|p=228}}、「章花魚」{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=2}}{{Efn|なお、「章花魚」は[[イイダコ]]とも読む<ref>{{Cite book ja|editor=三省堂編修所|title=何でも読める難読漢字辞典|publisher=三省堂|date=1995-09-10|isbn=4385135916|page=40}}</ref>。}}、「海蛸」{{Sfn|加納|2007|p=72}}{{Sfn|杉本|2005|p=385}}、「海蛸子」{{Sfn|加納|2007|p=190}}{{Sfn|杉本|2005|p=385}}{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}<ref name="wamyosho">[[源順]]([[承平 (日本)|承平]])『[[和名類聚抄]]』</ref>、「海和魚」{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=2}}<ref>{{Cite book ja |title=難訓辞典 |editor=井上頼圀 等|year=1907 |publisher=啓成社}}</ref>、「海肌子」{{Sfn|杉本|2005|p=385}}{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=2}}<ref name="wamyosho"/>、「小鮹魚」{{Sfn|加納|2007|p=190}}、「望潮魚」{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=2}}{{Efn|なお、「望潮魚」は普通[[イイダコ]]を表すとされる{{Sfn|奥谷|2002|p=148}}<ref name="tessai"/>。}}、「望潮」{{Sfn|加納|2007|p=228}}{{Efn|なお、「望潮」は[[シオマネキ]]とも訓ずる<ref>{{Cite book ja|editor=三省堂編修所|title=何でも読める難読漢字辞典|publisher=三省堂|date=1995-09-10|isbn=4385135916|page=38}}</ref>。}}、「𠑃魚」{{Efn|1文字目「[[:wikt:zh:𠑃|𠑃]]」は⿰亻⿱吉鳥。[[毛利梅園]]『梅園魚品図正』で臨海志を引用して{{Sfn|下中|1994|p=334}}。}}、「䖣」{{Sfn|杉本|2005|p=385}}など、約30表記が知られる{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=2}}。 |
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タコの語源は以下のような様々な説が知られる{{Sfn|前田|2005|p=709}}。多くの説で、8本の腕を持つ様子に由来すると考えられている{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}。 |
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== 生物的特徴 == |
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# タは[[手]]を示し、コは「[[:wikt:許多|許多]](ここら)」<ref name="shakumyo">[[貝原益軒]] (1699)『[[日本釈名]]』</ref><ref name="daigenkai">[[大槻文彦]] (1932)『[[大言海]]』</ref>または助語(子)で、手が多いことからの命名<ref>[[新井白石]] (1717)『[[東雅]]』</ref>{{Sfn|前田|2005|p=709}}{{Sfn|加納|2007|p=228}}{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}。 |
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主に[[岩礁]]や砂地に生息する。海洋棲で、[[淡水]]を嫌うため[[河口]]などの[[汽水域]]には棲息しない。 |
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# タは手を示し、コは[[:wikt:海鼠|海鼠]](こ、[[ナマコ]])の義<ref name="daigenkai"/><ref>賀茂百樹 (1943)『日本語源』</ref>、または[[ナマコ]]や[[カイコ]]のコに通じ、手を持った[[動物]]の意<ref>[[坂部甲次郎]] (1962)『たべもの語源抄』</ref>{{Sfn|前田|2005|p=709}}{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}。 |
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# 動詞「[[:wikt:綰|綰く]](たく)」に由来し、手を縦横に動かすことから<ref>[[吉田金彦]] (2001)『語源辞典 動物編』</ref>{{Sfn|前田|2005|p=709}}{{Sfn|奥谷|2002|p=148}}。 |
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# 「手長(テナガ)」の略転<ref name="shakumyo"/>。 |
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# 「手瘤(テコブ)」の義<ref>[[松永貞徳]] (1662)『[[和句解]]』</ref><ref>[[和泉屋吉兵衛]] (1835)『[[名言通]]』</ref><ref>[[林甕臣]] (1932)『[[日本語原学]]』</ref>{{Sfn|前田|2005|p=709}}。 |
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# タは[[手]]を示し、コはコ(凝)の義で、手が物に凝りつくことから<ref>[[菅泰翁]](江戸後期)『紫門和語類集』</ref>{{Sfn|前田|2005|p=709}}。 |
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# 「膚魚(ハタコ)」の義で、鱗のない魚であることから<ref>[[大石千引]] (1830–1834)『[[言元梯]]』</ref>{{Sfn|前田|2005|p=709}}。 |
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# 「多股(タコ)」の義で、足が多いところから<ref>『[[和語私臆鈔]]』</ref>{{Sfn|前田|2005|p=709}}{{Sfn|奥谷|2002|p=148}}{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=1}}。 |
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# 「足る(たる)」と「壺(こ)」を意味する「タルコ」の略転で、丸く膨れた腹に餌をため込み満足する様子から{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=1}}。 |
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[[種 (分類学)|種]]の判別はイカよりも難しいことから、地方名は少ない{{Sfn|奥谷|2002|p=147}}。その地域の最有力種は「真」を冠して「まだこ」と呼ばれる{{Sfn|奥谷|2002|p=147}}。標準和名[[ヤナギダコ]]や[[クモダコ]]は方言名に由来するものである{{Sfn|奥谷|2002|p=147}}。 |
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複数の[[吸盤#動物の例|吸盤]]がついた8本の[[腕 (頭足類)|腕]]を特徴とする。[[動物学]]的には足であり、一般には「[[足]]」と呼ばれるが、物を掴む機能などにより、特に[[頭足類]]における足は「[[腕 (頭足類)|腕]]」とも表現される(英語でも {{lang|en|arm}} [[腕]]と呼ぶ)。 |
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[[中国語]]では通称として{{lang|zh|章魚}}、古称として{{lang|zh|蛸}}、ほか別名として{{lang|zh|[[:wikt:zh:八爪魚|八爪魚]]、[[:wikt:zh:八帶魚|八帶魚]]}}{{Sfn|加納|2007|p=228}}<ref>{{Cite web|title=“八帶魚”字的解释 {{!}} 汉典|url=https://www.zdic.net/hans/%E5%85%AB%E5%B8%B6%E9%AD%9A|website=www.zdic.net |accessdate=2021-06-10|language=zh-cn}}</ref>などと呼ばれている。漢字「[[:wikt:蛸|蛸]]」は「[[wikt:zh:蠨蛸|蠨蛸]]」で[[アシナガグモ]] {{Snamei||Tetragnatha predonia}} を指す{{Sfn|藤堂ほか|2011|p=1396}}{{Sfn|加納|2007|p=72}}。日本では『[[本草和名]]』でタコを「海蛸」と表記したことで、以降タコを意味する漢字として用いられるようになった{{Sfn|加納|2007|p=72}}。この海蛸は、[[コウイカ]]の[[甲 (頭足類)|甲]]を本草で「[[:wikt:zh:海螵蛸|海螵蛸]]」と表記することと混同したとも、8本の足を[[クモ]]に見立てて海のクモの意に由来するとも説明される{{Sfn|加納|2007|p=72}}。また、漢字「[[:wikt:鮹|鮹]]」がタコを表すのは日本での用例(半[[国字]])で、中国では[[ヤガラ]]([[アカヤガラ]] {{snamei||Fistularia petimba}})を示す{{Sfn|藤堂ほか|2011|p=1826}}{{Sfn|加納|2007|p=190}}。 |
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見た目で頭部に見える丸く大きな部位は実際には胴部であり、本当の頭は腕の基部に位置して、[[目|眼]]や[[口|口器]]が集まっている部分である。すなわち、頭から足(腕)が生えているのであり、同じ構造を持つ[[イカ]]の仲間とともに「'''[[頭足類]]'''」の名で呼ばれる理由である。 |
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=== octopus === |
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イカの仲間との違いは腕の数(タコは4対8本なのに対し、イカは触腕1対2本を加えた5対10本)のほか、ミミ(鰭)がないことであるが、これらには例外もある(腕が8本のタコイカやミミのある[[メンダコ]]など)<ref name="vol8">{{Cite web|和書|url= http://taste.marinelearning.org/wp-content/themes/taste/pdf/umimon/08taco.pdf |title=vol8.タコ - 南三陸味わい開発室 |publisher=海の自然史研究所 |accessdate=2019-10-18 |format=PDF }}</ref>。このほか吸盤の構造もイカの仲間とは異なる(後述)。 |
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英名 {{En|[[:en:Octopus|octopus]]}}(オクトパス)は、直接的には[[新ラテン語]] {{lang|la|[[wikt:en:octopus#Latin|octōpūs]]}}(オクトープース)の借用であり、その元は[[古典ギリシア語]]の {{lang|grc|[[wikt:en:ὀκτώπους|ὀκτώπους]]}}({{lang|grc-Latn|oktōpous}})、{{lang|grc|ὀκτώ}} ({{Fontsize|smaller|{{script|grc-Latn|oktṓ}}}})「8」 + {{lang|grc|πούς}} ({{lang|grc-Latn|poús}}) 「足」に由来する{{Sfn|カレッジ|2014|p=10}}{{Sfn|千葉・荒俣|1988|p=254}}。[[ラテン語]]の {{en|octōpūs}} の[[複数]]形は {{en|octōpodēs}} であり、英語の {{en|octopus}} の複数形は {{En|octopuses}} である{{Sfn|カレッジ|2014|p=10}}。時に、ラテン語の第2変化名詞の語尾と誤解釈されて {{En|octopi}} という複数形が用いられることもあるが、これは正しくない{{Sfn|カレッジ|2014|p=10}}{{Sfn|モンゴメリー|2017|p=7}}{{Efn|ラテン語の男性第2変化名詞は {{La|[[:wikt:en:focus#Latin|focus]]}} のように {{La|-us}} という語尾で終わり、複数形は {{La|foci}} のように {{La|-i}} で終わる{{Sfn|田中|2002|p=12}}。{{en|octōpūs}} は[[ギリシア語]]由来の第3変化名詞であり、これとは異なる変化を持つ。}}。 |
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{{Snamei||Octopus}} は[[マダコ属]]の学名としても用いられる。{{snamei||Octopus}} {{Small|{{AUY|Cuvier|1797}}}} は、[[ジョルジュ・キュヴィエ]]が1797年に ''{{lang|fr|Tableau Elémentaire de l’Histoire Naturelle des Animaux}}'', 380. 中で記載したものである{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=40}}。[[タイプ種]]は日本の[[マダコ]] {{Snamei||Octopus sinensis}} {{Small|{{AUY|d'Orbigny|1841}}}} に近縁な地中海の種[[チチュウカイマダコ]] {{Snamei||Octopus vulgaris}} {{Small|{{AUY|Cuvier|1979}}}} である{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=40}}。[[分類学]]の父、[[カール・フォン・リンネ]]はタコを認識していたが、[[1758年]]の ''{{La|Systema Naturæ}}''『[[自然の体系]]』第10版では、[[コウイカ属]]の一種 {{snamei||Sepia octopodia}} {{small|{{AUY|Linnaeus|1758}}}} としていた。 |
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その柔軟な体のほとんどは[[筋肉]]であり、ときには強い力を発揮する。体の中で固い部分は眼球の間に存在する脳を包む軟骨とクチバシのみである<ref name="natio201611" />。そのため非常に狭い空間を通り抜ける事ができ、[[水族館]]で飼育する場合は逃走対策が必要である<ref name="natio201611">ナショナルジオグラフィック 2016年11月号</ref>。 |
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== 外部形態 == |
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血液中には[[ヘモシアニン]]という緑色の色素が含まれており、そのため血液は青く見える。ヘモシアニンは魚類のもつ[[ヘモグロビン]]に比べ[[酸素]]運搬能力に劣るため、長距離を高速で移動し続けることができない{{sfn|Schweid|2014|p=18}}。さらに、海水のpH濃度にも影響を受けやすく、海水が酸性化すると酸素運搬能力が低下する{{sfn|Katherine|2014|p=79}}。 |
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{{Multiple image |
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|align=center |
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|total_width=750 |
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|image1=Schematic lateral aspect of octopod features.jpg |
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|caption1=タコの外部形態 |
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|footer=<hr />eye: 眼, outer gill lamellae: 鰓葉, aperture: 外套開口, funnel: [[漏斗 (頭足類)|漏斗]], ocellus: 眼状紋, web: 傘膜, arms: 腕, dorsal: [[体軸#背腹軸|背側]], suckers: 吸盤, hectocotylus: 交接腕, ligula: 舌状片 |
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|image2=Octopus vulgaris2.jpg |
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|caption2=[[チチュウカイマダコ]] {{Snamei||Octopus vulgaris}} の体。 |
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}} |
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{{See also|頭足類の体}} |
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タコやイカなどの[[頭足類の体]]は、頭足部(頭足塊)と胴部(内臓塊)からなる{{Sfn|土屋|2002|p=6}}{{Sfn|佐々木|2008|pp=86–95}}{{Sfn|佐々木|2010|p=182}}{{Sfn|上島|2000|p=169}}。タコの内臓塊は[[外套膜]]に覆われた[[外套腔]]と呼ばれる空所に取り囲まれる{{Sfn|土屋|2002|p=6}}{{Sfn|佐々木|2010|p=189}}。また、タコの外套縁は背側で頭部と癒合するのに対し、外套膜の腹縁は大きく開口し、外套開口 ({{En|pallial aperture, mantle opening}}) となって外套腔内に海水を取り込む{{Sfn|瀧|1999|p=329}}。頭足塊は'''腕'''と'''頭部'''からなり、前方にある{{Sfn|佐々木|2010|p=189}}。内臓は後方に偏っている{{Sfn|佐々木|2010|p=189}}。見た目で頭部に見える丸く大きな部位は実際には胴部であり{{Sfn|前田|2005|p=709}}{{Sfn|奥谷|2013|p=3}}、本当の頭は腕の基部に位置して、[[目|眼]]や[[口|口器]]が集まっている部分である{{Sfn|奥谷|1994|pp=21–23|loc=第1章}}。すなわち、頭から足(腕)が生えているのであり、同じ構造を持つ[[イカ]]の仲間とともに「'''[[頭足類]]'''」の名で呼ばれる理由である{{Sfn|奥谷|2013|p=3}}{{Sfn|土屋|2002|p=6}}{{Sfn|池田|2020|p=28}}。底生のタコでは、生時は普通眼を最も高いところに位置させており、胴体は下に提げた姿勢を取っている{{Sfn|奥谷|1994|p=26|loc=第1章}}。 |
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体サイズは種によって異なり、最大のものは全長3 m{{small|([[メートル]])}}に達する[[ミズダコ]] {{Snamei||Enteroctopus dofleini}} やその近縁種である{{Sfn|土屋|2002|p=94}}。これまでの確実な記録では生きているミズダコで、全長4 m、体重71 kg{{Small|([[キログラム]])}}のものが知られる{{Sfn|カレッジ|2014|p=83}}<ref name="Guinness">{{Cite web|url=https://www.guinnessworldrecords.jp/world-records/79291-largest-octopus|title=Largest octopus|website=Guinness World Records Limited 2024|accessdate=2024-08-24}}</ref>。あくまで説話上であるが、腕を広げた長さが9.75 m、重さは272 kg のミズダコの逸話もある{{Sfn|カレッジ|2014|p=83}}<ref name="Guinness"/>{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=235}}。それに次いで大きいのは、2002年に[[ニュージーランド]]沖で引き揚げられた[[カンテンダコ]] {{Snamei||Haliphron atlanticus}} の死骸で、体重60 kg、全長2.9 m であった{{Sfn|カレッジ|2014|p=83}}。 |
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[[鰓]]は[[外套膜]]内に格納されており、[[漏斗 (頭足類)|漏斗]]のポンプで海水を取り入れて鰓に当てることにより酸素と[[二酸化炭素]]の交換をする。漏斗から噴き出す水は遊泳時の主な推進力となるほか、二酸化炭素のみならず排泄物や後述の墨の排出に利用される。 |
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小型のタコはピグミーオクトパス "{{En|pygmy octopus}}" と総称される{{Sfn|小野|2013|p=176}}{{Sfn|土屋|2002|p=94}}{{Efn|ピグミー・オクトパスと呼ばれる {{snamei|Paroctopus digueti}} は外套長 74 mm、全長22 cm になる{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=160}}。}}。記載されている種では、[[琉球列島]]の[[コツブハナダコ]] {{Snamei||Octopus wolfi|'Octopus' wolfi}} が最小とされる<ref name="natgeo_2024-05"/>{{Sfn|小野|2013|p=175}}{{Efn|{{Harvtxt|土屋|2002|p=94}}では、最小クラスのものとして熱帯のピグミーオクトパスが外套長2 cm{{small|([[センチメートル]])}}程度で成熟するとされ、本種のことを指していると考えられる。}}。日本近海産のものではほかに、全長15 cm 程度の[[マメダコ]] {{Snamei||Octopus parvus|'Octopus' parvus}} が知られ{{Sfn|小野|2013|p=175}}、かつては日本最小とされたこともある{{Sfn|奥谷|1988|pp=253–254}}{{Sfn|土屋|2002|p=94}}{{Efn|なお[[種小名]]の {{Snamei|parvus}} はラテン語で「小さい」を意味する形容詞である{{Sfn|田中|2002|p=204}}。}}。同様に、海外では全長11.5 cm の[[カリビアン・ドワーフ・オクトパス]] {{snamei|Paroctopus mercatoris}} が最小の種とされることがある{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=157}}。 |
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墨を墨汁嚢に蓄えており危険を感じると括約筋を使って[[漏斗 (頭足類)|漏斗]]から黒い墨を吐き姿をくらます<ref name="vol8" /><ref name="natio201611" />。タコ墨はイカ墨よりアミノ酸や多糖類、脂質が少なくさらさらしている<ref name="vol8" />。タコはさらさらの墨を[[煙幕]]のように利用しており敵を一時的に[[麻痺]]させる成分を含んでいる(イカの場合は墨の塊を出現させ敵から逃げる)<ref name="vol8" />。タコ墨が料理にあまり用いられないのは、イカ墨と比べて墨汁嚢が取り出しにくく、さらに1匹から採れる量もごく少量であることが理由である<ref name="ameba">[http://news.ameba.jp/20140204-456/ もしもタコ墨パスタを作るなら「1人前7,200円超」] アメーバニュース、2014年2月4日</ref>。 |
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=== 腕 === |
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外敵に襲われた際、捕らえられた腕を切り離して逃げることができ、その後、腕は再生するが、切り口によって2本に分かれて生えることもあり、8本以上の腕を持つタコも存在する。極端なものでは、日本で96本足のあるタコが捕獲されたことがあり、三重県の[[志摩マリンランド]]に標本として展示されていた。志摩マリンランドの休館により2022年現在では同県の[[鳥羽水族館]]で展示されている。 |
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{{Multiple image |
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|image1=Octopus Arm Slice.png |
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|caption1=タコの腕の横断面。複数の筋肉層からなる。<hr />EP: 表皮; LM: 縦走筋繊維; TR: 小柱(縦走筋束の隙間に広がる横走筋繊維の束); CT: 結合組織; CM: 輪走筋層; TM: 横走筋繊維; ANC: 軸神経索(腕神経{{Sfn|広島大学生物学会|1971|loc=Plate 80}}); OME: 外側斜走筋層; OMM: 中間斜走筋層; OMI: 内側斜走筋層; SU: 吸盤。 |
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|image2=Suckers of octopus by steve lodefink.jpg |
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|caption2=マダコ類の吸盤。2列に並んでいる。 |
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}} |
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{{See also|腕 (頭足類)}} |
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複数の[[腕 (頭足類)#吸盤|吸盤]]がついた8本の'''[[腕 (頭足類)|腕]]'''(うで、{{En|arm}})を特徴とする{{Sfn|佐々木|2010|p=190}}{{Sfn|池田|2020|p=21}}。ほかの[[軟体動物]]における「[[足]]」に相当すると考えられているが{{Sfn|佐々木|2010|p=190}}、物を掴む機能などにより、特に[[頭足類]]における足は学術的には「腕」と呼ばれる{{Sfn|奥谷|2013|p=6}}{{Sfn|佐々木|2010|p=189}}{{Sfn|小西|2010|p=21}}。[[イカ]]では普通、タコの持つ8本の腕に加えて[[触腕]]と呼ばれる2本の腕を持つため、合わせて10本の腕を持つ{{Sfn|佐々木|2010|p=190}}{{Sfn|奥谷|2013|p=6}}{{Efn|しかし、イカ類でも[[ヤツデイカ]]や[[タコイカ]]の成体では触腕を失い、8本の腕を持つ{{Sfn|佐々木|2010|p=190}}{{Sfn|土屋|2002|p=117}}。}}。8本の腕は左右相称で、背側中央から外に向かって順に左右第1腕から第4腕までが数えられる{{Sfn|池田|2020|p=21}}{{Sfn|佐々木|2010|p=190}}{{Sfn|奥谷|2013|p=6}}。ただし、雄はある決まった腕の一部が変形し、[[交接腕]]になる{{Sfn|池田|2020|p=21}}(「[[#生殖]]」節も参照)。 |
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腕の間には'''[[傘膜]]'''(腕間膜)と呼ばれる広い膜が発達する{{Sfn|佐々木|2010|p=190}}。捕食の際には、この傘膜で獲物を包み、捕らえる{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=152}}。深海性の[[ジュウモンジダコ属]]などの[[有触毛亜目]]では、傘膜を翻して腕の口側を外に向け、外套膜を覆うような行動が知られている{{Sfn|Collins|Villaneuva|2006|p=314}}。 |
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[[マダコ]]では自分の腕を食べる行動が観察されている。この行動は何らかの病原体によって引き起こされると考えられており、腕を食べ始めたタコは数日以内に死亡する<ref>{{cite journal|title=Autophagy in octopus|author=Budelmann BU|journal=South African Journal of Marine Science|volume=20|issue=1|pages=101-108|year=1998|doi=10.2989/025776198784126502}}</ref>。 |
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=== 吸盤 === |
==== 吸盤 ==== |
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[[File:Octopus sucker operation EN.svg|thumb|250px|left|タコの吸盤の断面の模式図。]] |
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'''吸盤'''(きゅうばん、{{En|sucker}})の構造はイカ類とは異なり、柄や[[角質環]]を欠く{{Sfn|佐々木|2010|p=192}}{{Sfn|池田|2020|p=24}}{{Sfn|奥谷|2013|p=7}}。これがイカとタコを区別する、もっとも重要で確実な違いである{{Sfn|佐々木|2010|p=192}}{{Sfn|土屋|2002|p=46}}{{Efn|腕の本数や{{Sfn|佐々木|2010|p=190}}、鰭の有無には例外もある{{Sfn|瀧|1999|p=331}}。}}。 |
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オスは4本の腕の吸盤の大きさが、メスに比べてばらつきがある。タコの吸盤は、たいていのものには吸着できる。切断された腕であってもその活動は約1時間続く。しかし、タコの吸盤は切断されたものであっても、自分の体には吸着することはなく、この原理については判明していない。ただしタコの皮膚を取り除き、同じタコの腕を切断して近づけると、その腕の吸盤は皮膚を除去した部分に吸着する。また皮膚を貼り付けた物体に、切断されたタコの腕を近づけると、その部分にはくっつかず、皮膚のない場所にはくっつくという現象が確認できることから、皮膚に何らかの自己認識機構が存在するという説がある<ref>{{cite news |title=タコの腕はなぜ絡まってしまわないのか |newspaper=[[ナショナルジオグラフィック (雑誌)|ナショナルジオグラフィック]] |date=2014-5-16 |url=https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/9241/ | author = Jane J. Lee |accessdate=2014-5-17}}</ref>。吸盤には味覚を司る感覚器があるとされる<ref name="natio201611" />。吸盤の表面は古くなると剥がれて更新される。古い吸盤表面を剥がすために激しく腕をくねらせて互いにこすり合わせることがある。[[ファイル:Octopus marginatus.jpg|thumb|180px|種類の異なる2枚の貝殻を組み合わせ、護身用として持ち歩くメジロダコ<br />[[東ティモール]]の[[ディリ県]]近海にて[[2006年]]撮影。]]タコの吸盤は主に筋肉の収縮を利用しており、歯の付いた角質の環を利用することで張り付くイカの吸盤とは構造が異なる<ref name="vol8" />。 |
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タコの吸盤は非常に多機能であり、移動や体の固定、餌の捕獲などに用いられる{{Sfn|佐々木|2010|p=192}}。タコの吸盤の付着面には筋肉が放射状と同心円状に配置しており、放射状筋の上にさらに微小な吸盤が並ぶ{{Sfn|奥谷|2013|p=6}}。タコの吸盤は外側の'''外環部'''(がいかんぶ、{{En|infundibulum}})と呼ばれる付着部と内側の半球状のくぼみである'''内環部'''(ないかんぶ、{{En|acetabulum}})の2領域からなる{{Sfn|佐々木|2010|p=192}}。内環部が他物に密着した時の[[陰圧]]により吸着を行う{{Sfn|佐々木|2010|p=192}}。 |
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=== 生殖と寿命 === |
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8本の触腕のうち1本は[[交接腕]]と呼ばれ、先端が[[生殖器]]になっている。これがメスの体内に挿入され[[精莢]]が受け渡されることで[[受精]]が成立する{{sfn|Schweid|2014|p=19}}。たいていのタコの雌は、生涯に1回のみ産卵し<ref name="natio201611"/>、卵が孵化したのちに死んでしまう<ref name="natio201611"/>。タコでは平衡石を用いた年齢推定が行えないため、一部の種を除いて、どれくらい生きるのかはわかっていない{{Sfn|奥谷|2013|p=21}}。 |
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この構造の違いは、生態を反映していると考えられている{{Sfn|池田|2020|p=24}}。遊泳性の餌を捕らえ、暴れる餌を抑え込む必要があるイカに対し、タコは待ち伏せ型の狩猟を行うため、角質環のような爪が不要であると考えられる{{Sfn|池田|2020|pp=25–26}}{{Sfn|奥谷|2013|p=7}}。また、タコは底生であるため、海底を移動する際に引っかかることを避ける必要があり、角質環は邪魔になると考えられている{{Sfn|池田|2020|pp=25–26}}。 |
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=== 認知能力・感受性 === |
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タコの脳には 5 億個の[[ニューロン]]があり、犬や 3 歳の子供と同じくらいの知能で<ref>{{Cite web |url=https://www.scotsman.com/news/opinion/columnists/octopus-farming-is-immoral-given-everything-we-know-about-this-highly-intelligent-and-solitary-animal-philip-lymbery-3412887 |title=Octopus farming is immoral, given everything we know about this highly intelligent and solitary animal – Philip Lymbery |access-date=20221125}}</ref>、一説には最も賢い[[無脊椎動物]]であるとされている{{sfn|Schweid|2014|p=44}}{{sfn|Katherine|2014|p=134}}。形を認識することや、問題を学習し解決することができる。例として、密閉されたねじぶた式のガラスびんに入った餌を[[視覚]]で認識し、ビンの蓋をねじって餌を取ることができる。また、白い物体に強い興味を示す。身を守るためには、[[保護色]]に変色し、地形に合わせて体形を変える、その色や形を2年ほど記憶できることが知られている。また、[[1998年]]には、[[インドネシア]]近海に棲息する[[メジロダコ]]([[w:Amphioctopus marginatus|en]]。右列に関連する画像あり)が、人間が割って捨てた[[ココナッツ]]の殻を組み合わせて防御に使っていることが確認され<ref name="natio201611" />、[[2009年]]12月、「無脊椎動物の中で[[道具]]を使っていることが判明した初めての例」として、[[イギリス]]の[[科学雑誌]]『カレント・バイオロジー ({{lang|en|''Current Biology''}}) 』に特集され<ref>{{cite journal|author=Julian K. Finn, Tom Tregenza, and Mark D. Norman|year=2009|title=Defensive tool use in a coconut-carrying octopus|journal=Current Biology|volume=19|issue=23|pages=1069-70}} {{doi|10.1016/j.cub.2009.10.052}}</ref><ref>Finn, Julian K.; Tregenza, Tom; Norman, Mark D. (2009), "Defensive tool use in a coconut-carrying octopus", Curr. Biol. 19 (23): R1069–R1070 http://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(09)01914-9</ref><ref>{{cite news |title=Aussie scientists find coconut-carrying octopus |url=https://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5jfq6qUad8oMqjmm0UKjxvMrFGaaAD9CJIGO80 |first=Kristen |last=Gelineau |date=2009-12-15 |accessdate=2009-12-15 |publisher=The Associated Press}}</ref><ref>{{cite news |title=A tool-wielding octopus? This invertebrate builds armor from coconut halves |url=http://www.scientificamerican.com/blog/post.cfm?id=a-tool-wielding-octopus-this-invert-2009-12-14 |date=2009-12-14 |publisher=Scientific American |first=Katherine |last=Harmon}}</ref>、[[二枚貝]]の[[貝殻]]や持ち運び可能な人工物を利用して身を守る様子が詳しく紹介された。(動物の道具使用については別項「[[文化 (動物)]]」も参照のこと)。 |
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また、吸盤には感覚細胞(受容体細胞)が分布し、全部の腕を合わせると2億4000万個になる{{Sfn|奥谷|2013|p=6}}{{Sfn|池田|2020|p=167}}。物の形状が識別できる[[触覚]](機械刺激受容)と[[化学受容器]]による[[味覚]]を持つ{{Sfn|奥谷|2013|p=6}}{{Sfn|池田|2020|p=167}}。 |
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2021年、イギリスの専門家チームは、300以上の科学的研究を調査に、タコは「感性のある存在」であり、喜び、興奮だけでなく、痛み、苦痛、害も経験できるという「強力な科学的証拠」があると結論付けた<ref>{{Cite web|url=https://www.lse.ac.uk/News/News-Assets/PDFs/2021/Sentience-in-Cephalopod-Molluscs-and-Decapod-Crustaceans-Final-Report-November-2021.pdf|title=Review of the Evidence of Sentience in Cephalopod Molluscs and Decapod Crustaceans|accessdate=20211227|format=PDF}}</ref>。この調査を受け、2021年11月に、イギリス政府の審査委員会は「タコやカニや大型エビにも苦痛の感覚がある」として、同国で審議されている動物福祉法案の保護対象に感覚をもつ動物として追加した<ref name=":0">{{Cite web|url=https://www.bbc.com/news/science-environment-59667645|title=The world's first octopus farm - should it go ahead?|accessdate=20211227}}</ref>。 |
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吸盤列は1列のものと2列のものが知られる{{Sfn|佐々木|2010|p=56}}{{Sfn|土屋|2002|p=87}}。[[ジャコウダコ属]] {{snamei||Eledone}} や [[ナンキョクイチレツダコ属]] {{Snamei||Pareledone}} といったイチレツダコ類は吸盤列が1列である{{Sfn|瀧|1999|p=379}}。[[メンダコ科]]、[[ジュウモンジダコ科]]、[[ヒゲダコ科]]からなる[[有触毛亜目]]では、吸盤列が1列であるが、代わりに腕に'''{{Vanchor|触毛}}'''(しょくもう、{{lang|en|cirrus}})が生えている{{Sfn|佐々木|2010|p=56}}{{Sfn|土屋|2002|p=119}}。白亜紀の[[ムカシダコ]] {{snamei||Palaeoctopus newboldii}} も触毛を持ち、吸盤列が1列である{{Sfn|瀧|1999|p=374}}。 |
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前述の報告書の著者らは、次のように述べ、高い動物福祉が要求されるタコ養殖は「不可能」としている<ref>{{Cite web |url=https://www.bbc.co.uk/news/science-environment-64814781 |title=World's first octopus farm proposals alarm scientists |access-date=20230326}}</ref>。<blockquote>大量のタコは決して近接して一緒に飼うべきではありません。これをすると、ストレス、衝突、高い死亡率につながります...死亡率10~15%という数字は、どんな種類の養殖でも受け入れられるものではありません。</blockquote>また、タコの商業養殖の実現が間近となっていることを受け、[[イギリス政府]]は将来「輸入養殖タコの禁止を検討する可能性がある」ともいう<ref name=":0">{{Cite web|url=https://www.bbc.com/news/science-environment-59667645|title=The world's first octopus farm - should it go ahead?|accessdate=20211227}}</ref>。アメリカのワシントン州は世界で初めてタコ養殖を法的に禁止<ref>{{Cite web |url=https://ali.fish/blog/washington-state-prohibits-octopus-farming-a-major-victory-for-animals |title=Washington State Prohibits Octopus Farming: A Major Victory for Animals |access-date=20240321}}</ref>。[[カリフォルニア州]]、[[ハワイ州]]では、タコの養殖を禁止する法案が提出されている<ref>{{Cite web |url=https://aldf.org/article/octopus-farming-ban-introduced-in-california/ |title=Octopus Farming Ban Introduced in California |access-date=20240223}}</ref>。 |
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タコの吸盤は切断されたものであっても、自分の体には吸着することはなく、この原理については判明していない。ただしタコの皮膚を取り除き、同じタコの腕を切断して近づけると、その腕の吸盤は皮膚を除去した部分に吸着する。また皮膚を貼り付けた物体に、切断されたタコの腕を近づけると、その部分にはくっつかず、皮膚のない場所にはくっつくという現象が確認できることから、皮膚に何らかの自己認識機構が存在するという説がある<ref>{{cite news ja |title=タコの腕はなぜ絡まってしまわないのか |newspaper=[[ナショナルジオグラフィック (雑誌)|ナショナルジオグラフィック]] |date=2014-5-16 |url=https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/9241/ | author = Jane J. Lee |accessdate=2014-5-17}}</ref>。吸盤の表面は古くなると剥がれて更新される<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.sankei.com/article/20220625-GBB5KFOJNJNJ7LMSMI4ZLOEOOE/|title=吸着力が命 脱皮するマダコの吸盤|date=2022-06-25|author=海遊館魚類担当飼育員 井上智子|website=産経新聞||publisher=産業経済新聞社|accessdate=2024-09-12}}</ref>。古い吸盤表面を剥がすために激しく腕をくねらせて互いにこすり合わせることがある。 |
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=== 鰭 === |
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[[File:Dumbo-hires (cropped).jpg|thumb|200px|1対の鰭を持つ[[ジュウモンジダコ属]] {{snamei||Grimpoteuthis}} の1種。]] |
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タコ類の多く(無触毛亜目)は、イカが持つような'''[[鰭]]'''(肉鰭、{{En|fin}}{{Sfn|瀧|1999|p=331}})を欠く{{Sfn|土屋|2002|p=6}}。有触毛亜目(有鰭亜目)に属する[[ヒゲダコ科]]や[[メンダコ科]]([[メンダコ]]など)には鰭がある{{Sfn|土屋|2002|p=119}}{{Sfn|池田|2020|p=17}}。この鰭は俗に「ミミ(耳)」と呼ばれる{{Sfn|土屋|2002|p=119}}。鰭は筋肉からなり、水中で機動力を生み出す器官である{{Sfn|池田|2020|p=17}}。 |
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=== 漏斗 === |
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腹側には'''[[漏斗 (頭足類)|漏斗]]'''と呼ばれるチューブ状の構造がある{{Sfn|佐々木|2010|p=192}}。これは漫画では口のように描かれるが、実際の口は上述するように腕の付け根に存在する{{Sfn|池田|2020|p=28}}。漏斗から外套腔内の海水を強く噴き出して、ジェット推進により移動する{{Sfn|佐々木|2010|p=192}}{{Sfn|池田|2020|p=28}}。漏斗を自在に動かし、その向きを変えることで泳ぐ方向を調節する{{Sfn|佐々木|2010|p=192}}。また、漏斗からは、雄は精包を放出し、雌は産卵の際、卵を放出する{{Sfn|池田|2020|p=28}}。墨や排泄物も漏斗を通じて放出される{{Sfn|池田|2020|p=28}}。 |
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漏斗は発生の過程では左右2[[葉 (解剖学)|葉]]に開いた構図をしており、それが癒合して形成される{{Sfn|佐々木|2010|p=192}}。 |
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漏斗の左右には漏斗軟骨器と呼ばれる構造があり、外套膜と頸部を固定している{{Sfn|佐々木|2010|p=192}}。 |
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=== 眼 === |
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{{Multiple image |
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|total_width=400 |
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|image1=Evolution eye 2.svg |
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|caption1=脊椎動物の眼とタコの眼の比較。<hr />1. 網膜、2. 神経束、3. 視神経、4. 盲点 |
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|image2=Octopusv cropped.JPG |
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|caption2=[[チチュウカイマダコ]] {{Snamei||Octopus vulgaris}} の眼。 |
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タコの眼は[[解剖学]]的に[[脊椎動物]]のものに似た[[レンズ眼]]であり、非常に発達している{{Sfn|池田|2020|p=50}}{{Sfn|佐々木|2010|p=250}}{{Sfn|土屋|2002|p=123}}。これは[[発生学]]的には異なるもので{{Sfn|池田|2020|p=50}}、相似である{{Sfn|佐々木|2010|p=250}}。発生の際、眼胞が発達して完全に閉じ、前方にレンズを生じる{{Sfn|瀧|1999|p=349}}。レンズを連ねる[[虹彩]]を持ち{{Sfn|瀧|1999|p=349}}、そのため様々な表情を示す{{Sfn|土屋|2002|p=123}}。後方には[[硝子体]]を持ち、これらは[[角膜]]によって包まれる{{Sfn|瀧|1999|p=349}}。ほかの軟体動物と異なり、眼には[[動眼筋]]が付着する{{Sfn|佐々木|2010|p=250}}。そのため眼を筋肉で動かすことができる{{Sfn|佐々木|2010|p=250}}。中央部は[[コウイカ目]]、[[閉眼類]]と同様に完全に閉じる{{Sfn|瀧|1999|p=350}}{{Efn|例外もあり、[[ヤワハダダコ]]などでは開眼となる{{Sfn|瀧|1999|p=350}}。}}。その外側には1枚の[[眼瞼]]ができる{{Sfn|瀧|1999|p=350}}。 |
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頭足類のレンズは[[外胚葉]]に由来し、[[視神経]]が[[網膜]]の外側から伸びるため、[[盲点]]が存在しない{{Sfn|佐々木|2010|p=250}}。眼のレンズは前後に仕切られ{{Sfn|佐々木|2010|p=250}}、2枚が貼り合わさった構造となっている{{Sfn|土屋|2002|p=123}}。ヒトの[[視細胞]]は光の入射方向とは反対を向き、神経節細胞などのいくつかの細胞層を通って光を受容するが、タコの視細胞は頭部が光の入射方向を向いている{{sfn|池田|2020|p=155}}。また、脊椎動物の眼とは違い、[[正立像]]が得られる{{Sfn|土屋|2002|p=123}}。 |
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視細胞には[[桿体]]や[[錐体]]のような区別はなく、単一の種類の細胞である{{sfn|池田|2020|p=155}}。その[[視物質]]は[[ロドプシン]]のみであり、そのため[[色覚]]を欠くとされる{{sfn|池田|2020|pp=157–159}}。視覚情報を利用した実験などから、コントラストは見分けることができると考えられる{{sfn|池田|2020|pp=157–159}}。タコの視細胞の分光感度は、マダコ{{Efn|なお、本項における「マダコ」は[[日本]]近海の[[マダコ]] {{Snamei||Octopus sinensis}} であることもあれば、[[地中海]]の[[チチュウカイマダコ]] {{snamei|ja|Octopus vulgaris|Octopus vulgaris}} や[[アメリカ]]東海岸の {{snamei||Octopus americanus}} である場合も含まれると考えられる。何れも {{snamei|O. vulgaris}} 種群に含まれ、かつては汎存種とされていたが、近年は分類の整理が進み、隠蔽種が分離された{{Sfn|Avendaño ''et al.''|2020|pp=909–925}}。元の出典でマダコや {{Snamei|O. vulgais}} と表記されている種は、生息海域等により適宜正しいと考えられる方を用いているが、長らく同種とされてきたことからどちらか不明な曖昧もある。}}で475 nm{{small|([[ナノメートル]])}}、[[イイダコ]]で477 nm、[[ジャコウダコ]]で470 nm であることが分かっており、何れも青色に相当する{{sfn|池田|2020|pp=157–159}}。これはタコが底生であるため、海中で光が減衰し、海底では短波長の青や紫が届くことと整合的である{{sfn|池田|2020|pp=157–159}}。視細胞の頭部には[[偏光]]の受容に関与する'''感桿'''という微絨毛が整列した構造を持つ{{sfn|池田|2020|p=155}}。 |
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[[ヒゲダコ属]] {{Snamei||Cirrothauma}} の眼は単純なカップ状で、角膜と[[瞳孔]]は持つが、[[虹彩]]とレンズを欠く{{Sfn|佐々木|2010|p=250}}。[[ボルケーノ・オクトパス]] {{snamei||Vulcanoctopus hydrothermalis}} の眼は皮膚下に埋没し、視覚機能をほとんど欠く{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=247}}。[[スカシダコ]] {{Snamei||Vitreledonella richardi}} の眼球は楕円形の凸レンズで、体の横方向に伸びる長い柄を持つ{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=188}}。[[クラゲダコ]] {{Snamei||Amphitretus pelagicus}} の眼は球面レンズを持ち、赤褐色の眼が望遠鏡のように背面に隣り合って並ぶ{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=190}}。 |
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{{-}} |
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== 内部形態 == |
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=== 消化器官 === |
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[[消化器官]]は[[消化管]]とそれに付属する腺組織からなる{{Sfn|佐々木|2010|p=214}}。タコの消化管は口-食道-胃-腸-肛門のように連続し{{Sfn|佐々木|2010|p=214}}、背腹方向に折れ曲がったU字状の構造で、墨汁嚢が付属する{{Sfn|佐々木|2010|p=221}}。 |
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=== 口 === |
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{{Multiple image |
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|total_width=500 |
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|image1=Boca polp. 2016-02-24-2303.jpg |
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|caption1=腕に囲まれた中央に口がある。 |
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|image2=Enteroctopus? (YPM IZ 056705) 003.jpeg |
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|caption2=[[ミズダコ属]] {{Snamei||Enteroctopus}} の顎板を取り出した様子。 |
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|image3=Octopus vulgaris (YPM IZ 096646).jpeg |
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|caption3=[[チチュウカイマダコ]] {{snamei||Octopus vulgaris}} の歯舌。9本の歯舌が並ぶ。 |
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}} |
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'''[[口]]'''は腕に囲まれた内側の付け根に存在する{{Sfn|奥谷|2013|p=3}}{{Sfn|池田|2020|p=28}}。口にはよく発達した口球(こうきゅう、{{En|buccal bulb}})を持ち、その中に上下1対の嘴状の[[顎板]]と[[歯舌]]を具える{{Sfn|上島|2000|p=183}}{{Sfn|佐々木|2010|p=221}}{{Sfn|池田|2020|p=28}}。 |
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'''顎板'''(がくばん、{{en|jaw plate}})は嘴(くちばし、{{En|beak}})とも呼ばれ<ref name="natgeo_2024-05">{{Cite journal ja|author=EVE CONANT, NGM STAFF|date=May 2024|title=あなたの知らないオクトパス: 並外れた能力|journal=ナショナル ジオグラフィック日本版|volume=30|issue=5|pages=16–23|translator=黒田眞知|publisher=日経ナショナルジオグラフィック|issn=1340-8399}}</ref>、俗に'''[[カラストンビ]]'''と呼ばれる{{Sfn|佐々木|2010|p=221}}{{Sfn|池田|2020|p=28}}{{Sfn|小西|2010|p=23}}。背腹が対になっており、構造はほかの軟体動物が持つものとは異なっている{{Sfn|佐々木|2010|p=221}}。背側の顎板を上顎板、腹側の顎板を下顎板と区別し、それぞれカラスとトンビと呼び分けられる{{Sfn|小西|2010|p=23}}。下顎板が上顎板より突出している{{Sfn|瀧|1999|p=336}}。顎板の先端は鋭く、餌を咬み切るために用いられる{{Sfn|佐々木|2010|p=221}}{{Sfn|瀧|1999|p=336}}。 |
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'''歯舌'''(しぜつ、{{En|radula}})は餌を引きちぎり、食物を運搬するために用いられる{{Sfn|佐々木|2010|p=222}}。タコの歯舌はイカやアンモナイトと同様に、1本の[[中歯]]({{En|central tooth}})に加え2対の[[側歯]]({{En|laterl tooth}})、1対の[[縁歯]]({{En|marginal tooth}})と1対の縁板{{Efn|内側の縁歯とまとめて2対の縁歯を持つとされることもある{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=585g}}。}}の9本の[[小歯]]を持つ{{Sfn|佐々木|2010|p=221}}{{Sfn|瀧|1999|p=337}}。タコの歯舌は三叉状、五叉状のものもみられ、特にフクロダコ科では櫛状の歯尖(しせん、{{En|cusp}})を持つ{{Sfn|瀧|1999|p=337}}。 |
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=== 消化管 === |
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[[File:Eledone Fig.17.png|thumb|300px|[[イチレツダコ]] {{Snamei||Eledone cirrosa}} の消化管。<hr />''m.'' 口; ''J.'' 上顎板; ''J.''' 下顎板; ''r.s.g.'' (右)前唾腺; ''B.M.'' 口球; ''r.b.'' 歯舌嚢の基部; ''r.s<sub>1</sub>g<sub>1</sub>'' (右)後唾腺; ''cr.'' 嗉嚢; ''oes.'' 食道; ''St.'' 胃; ''Liv.'' 肝臓 (中腸線); ''l.h.d.'' 左肝膵管; ''r.h.d.'' 右肝膵管; ''Sp.Coe'' 胃盲嚢(螺旋盲嚢); ''int.'' 腸; ''i.s.'' 墨汁嚢; ''i.d.'' 墨汁管; ''an.'' 肛門{{Efn|省略した各部の略称は次の通り:''r.s.g.d.'' 右の前唾腺管; ''s<sub>1</sub>g<sub>1</sub>d<sub>1</sub>'' 後唾腺管; ''r.s<sub>1</sub>g<sub>1</sub>d<sub>1</sub>'' 右の後唾腺管}}]] |
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[[食道]]({{En|oesophagus}})は脳軟骨と脳を貫通する単純な管状の構造である{{Sfn|佐々木|2010|p=222}}{{Efn|ほかの軟体動物でも食道が食道神経環を貫いている{{Sfn|佐々木|2010|p=222}}。}}。食道中央部は膨らみ、[[嗉嚢]](そのう、{{En| |
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crop, proventriculus}})となる{{Sfn|佐々木|2010|p=222}}{{Sfn|瀧|1999|p=339}}{{Sfn|Kozloff|1990|pp=447–462}}。[[胃]]は単純だが大きく発達し、2巻きの螺旋状の[[盲嚢]](胃盲嚢、{{En|spiral caerum, gastric diverticulum}})が付属する{{Sfn|佐々木|2010|p=222}}{{Sfn|瀧|1999|p=339}}。腸は単純で短く、胃の後部から外套腔の開口部に向けてまっすぐ伸びる{{Sfn|佐々木|2010|p=223}}。 |
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[[中腸腺]]({{En|midgut gland}})は1対で部分的に癒合し、卵形の一塊となっている{{Sfn|瀧|1999|p=339}}。中腸腺はよく発達し、[[肝臓]]域と[[膵臓]]域が分化する{{Sfn|上島|2000|p=183}}。タコの膵臓は中腸腺(肝臓)に埋没し、切り離せない構造となっている{{Sfn|瀧|1999|p=339}}{{Sfn|広島大学生物学会|1971|loc=Plate 79}}。中腸腺は1対の輸管(肝膵管、{{En|hepatic duct, hepatopancreatic duct}})を持ち、合一して胃に開口する{{Sfn|瀧|1999|p=339}}{{Sfn|広島大学生物学会|1971|loc=Plate 79}}。 |
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==== 唾液腺 ==== |
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[[File:Hapalochlaena lunulata.JPG|thumb|200px|left|後唾液腺に強い毒を持つ[[オオマルモンダコ]] {{snamei||Hapalochlaena lunulata}}([[ヒョウモンダコ属]])。]] |
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[[唾液腺]]は2種類あり、口球の側方に1対の'''前唾液腺'''(前唾腺、{{En|anterior salivary gland}})、口球の後方に毒が含まれる'''後唾液腺'''(後唾腺、{{En|posterior salivary gland}}、[[毒腺]])を持つ{{Sfn|佐々木|2010|p=222}}{{Sfn|瀧|1999|p=337}}。この後唾液腺から分泌される[[セファロトキシン]]を用いて餌を[[麻痺]]させる{{Sfn|佐々木|2010|p=222}}{{Sfn|土屋|2002|p=120}}{{Sfn|瀧|1999|p=338}}{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=241}}。ほぼ全てのタコは毒を持っているとされ{{sfn|カレッジ|2014|p=225}}、[[マダコ]]、[[サメハダテナガダコ]] {{Snamei||Callistoctopus luteus}} や[[ワモンダコ]]から[[セファロトキシン]]が検出されている{{Sfn|土屋|2002|p=93}}{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=241}}。この毒は人間に対しても患部に麻痺症状や炎症を引き起こすが{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=241}}<ref>{{Cite journal ja|author1=島袋晃一|author2=金城政樹|author3=白瀬統星|author4=大中敬子|author5=仲宗根素子|author6=大久保宏貴|author7=赤嶺良幸|author8=西田康太郎|title=タコ咬傷による難治性潰瘍を形成した3例|journal=整形外科と災害外科|volume=72|issue=1|date=2023|pages=112-114|doi=10.5035/nishiseisai.72.112}}</ref>、命に別状はない程度である{{sfn|カレッジ|2014|p=225}}。 |
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[[ヒョウモンダコ属]]のタコは例外で、分泌腺内に住むバクテリアに由来する[[テトロドトキシン]]を持っており、人間でも噛まれると命を落とすことがある{{Sfn|土屋|2002|p=87}}{{Sfn|瀧|1999|p=353}}{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=242}}。毒の産生は分泌腺内に共生するバクテリアが行っている{{sfn|カレッジ|2014|p=226}}。孵化前の幼生もバクテリアによって雌から毒が受け渡されるため、毒を持っている{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=241}}。これは解毒剤は見つかっていない{{sfn|シュヴァイド|2014|p=179}}{{sfn|カレッジ|2014|p=226}}。 |
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また、タコは口球の腹側に筋肉質の[[唾液乳頭]]が突出し、その下に'''下顎腺'''がある{{Sfn|佐々木|2010|p=222}}。唾液乳頭は動かすことができ、二次的な歯舌として機能し、貝殻に穿孔して貝類を捕食する{{Sfn|佐々木|2010|p=222}}{{sfn|カレッジ|2014|p=225}}([[#食性]]も参照)。 |
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==== 墨汁腺 ==== |
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{{See also|#墨による防衛}} |
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タコは危険を感じると[[漏斗 (頭足類)|漏斗]]を通じて墨を吐きだすが、これは[[直腸]]に付属する[[墨汁腺]]から分泌される{{Sfn|上島|2000|p=183}}{{Sfn|佐々木|2010|p=223}}。墨汁は[[墨汁嚢]]に蓄えられ、墨汁管と肛門を通って漏斗から体外へ放出される{{Sfn|上島|2000|p=183}}{{Sfn|佐々木|2010|p=223}}。深海性の[[ホッキョクワタゾコダコ]] {{snamei||Bathypolypus arcticus}} などでは墨汁嚢を欠く{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=256}}。 |
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=== 神経系 === |
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[[File:Main features of the anatomy of Octopus vulgaris in relation to the pallial nerve.webp|thumb|200px|[[チチュウカイマダコ]]の神経系。頭部の脳(灰色)、外套にある星状神経節(赤色)。左右の星状神経節の分布により、外套膜を左右で別の体色に変化させることができる。]] |
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軟体動物の[[神経系]]の中心は[[脳神経節]]、[[側神経節]]、[[足神経節]]が食道を囲むように位置してできた[[食道神経環]]である{{Sfn|佐々木|2010|p=239}}。とくに頭足類では食道神経環が発達し、[[内臓神経節]]とも癒合して'''[[脳]]'''を形成する{{Sfn|佐々木|2010|p=242}}。脳は頭蓋軟骨(脳軟骨)により取り囲まれており、白く硬い塊を形成する{{Sfn|佐々木|2010|p=242}}。この頭蓋軟骨は脳を保護するためのものであり{{Sfn|奥谷|2013|p=3}}、[[中胚葉]]組織から発達する{{Sfn|瀧|1999|p=350}}。 |
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脳は食道上脳塊と食道下脳塊の2つからなり、それぞれが側方で縦連合によって連結される{{Sfn|佐々木|2010|p=242}}。また脳は、24個の[[脳葉]]と呼ばれる瘤状の領域から構成されており、更に細分すると36–37個が数えられる{{Sfn|佐々木|2010|p=242}}。タコ類の脳葉には名前が付けられており、[[頭頂葉]]、上位前額葉、下位前額葉、上位口球葉、視柄下葉、内臓葉、外套葉、後部色素胞葉、前部色素胞葉などが区別される{{Sfn|佐々木|2010|p=242}}。眼の基部にある脳葉は'''[[視葉]]'''で、眼の発達と関連し、脳葉中で最大である{{Sfn|佐々木|2010|p=242}}{{Sfn|池田|2020|p=30}}。視葉以外の脳葉は中央部分に集まっている{{Sfn|池田|2020|p=30}}。また、学習能力は'''垂直葉'''とその周辺の脳葉が担っている{{Sfn|池田|2020|p=71}}。 |
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また、脳以外にも小規模な[[神経節]]が9つ存在する{{Sfn|佐々木|2010|p=243}}。[[星状神経節]]は鰓の基部付近から外套膜に神経を放射状に伸ばす神経節であり、頭足類にのみ知られる{{Sfn|佐々木|2010|p=243}}{{Sfn|瀧|1999|p=342}}。 |
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平衡器の近くに生じた足神経節からは、[[腕神経節]]が前方の先から分岐して生じ、後部からは[[漏斗神経節]]が対をなして形成される{{Sfn|瀧|1999|p=350}}。腕神経節から伸びる[[腕神経]](神経束)はそれぞれの腕の中央を貫通する{{Sfn|カレッジ|2014|p=184}}。腕には脳の2倍以上のニューロンが分布し<ref name="natgeo_2024-05"/>、それぞれの腕を伸ばす動作は脳による指令ではなく、腕そのものの神経によりコントロールされている{{Sfn|カレッジ|2014|p=184}}。この神経系の分散が、タコの柔軟性や動きの調整能力、高い適応力を生み出していると考えられている<ref name="natgeo_2024-05"/>。 |
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=== 筋系 === |
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その柔軟な体のほとんどは、他の多くの動物と同様に、[[筋肉]]組織が占めている{{Sfn|池田|2020|p=19}}{{Sfn|佐々木|2010|p=211}}。タコの主要な筋肉はイカに比べて多く、[[頭部牽引筋]]、[[漏斗牽引筋]]、外套収縮筋、中央外套収縮筋を持つ{{Sfn|佐々木|2010|p=212}}。漏斗から噴き出される水によるジェット推進は外套膜の筋肉の運動が大きな影響を与えており{{Sfn|佐々木|2010|p=212}}。放射状筋が弛緩して環状筋が収縮することにより体の直径が小さくなって水が噴出され、環状筋が弛緩して放射状筋が収縮すると外套腔へ水が取り入れられる{{Sfn|佐々木|2010|p=212}}。 |
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またタコの腕は異なった向きに配向する3–4層の筋肉組織からなり、収縮と弛緩を組み合わせて向きを自在に変形する{{Sfn|Kier|2016|pp=6–8}}{{Sfn|佐々木|2010|p=190}}。 |
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=== 循環系 === |
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[[File:Eledone Fig.11.png|thumb|250px|[[イチレツダコ]] {{Snamei||Eledone cirrosa}} の外套膜の腹側を開いた様子。<hr />''f.ant.'' 漏斗開口部; ''F.'' 漏斗; ''M<sub>l</sub>'' 外套膜; ''h.'' 頭部; ''coll.'' 襟(外套膜縁辺部); ''an.'' 肛門; ''F.D.'' 漏斗下制筋; ''g.'' 鰓; ''od.ap.'' 輸卵管開口部; ''Ur.p.'' 尿乳頭(腎門); ''Br.ht.'' 鰓心臓; ''G.'' 生殖腺{{Efn|省略した各部の略称は次の通り:''m.s.'', ''e.m.'' 筋性の隔膜; ''m<sub>1</sub>'', ''m.l.'', ''m.p.'', ''m.p.ex.'' 筋膜; ''P.C.'' 外套腔の後方連絡部; ''M.ep.'' 外套膜内面上皮; ''m.s.a.'' 隔膜の付属体; ''L.M.'' 側筋}}]] |
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[[循環系]]はよく発達してほぼ[[閉鎖血管系]]となる{{Sfn|上島|2000|p=183}}{{Sfn|佐々木|2010|p=237}}{{Sfn|Schmidt-Nielsen|1997|p=117}}。それに対し、頭足類以外の軟体動物は開放血管系である{{Sfn|Schmidt-Nielsen|1997|p=117}}。収縮して血流を送る器官は[[心臓]]だけでなく、1対の[[鰓心臓]]を持つ{{Sfn|上島|2000|p=183}}{{Sfn|佐々木|2010|p=237}}。そのため「3つの心臓を持つ」と言われる<ref name="natgeo_2024-05"/>。心房の数は1対で、心室が発達し、内部の弁により隔てられる{{Sfn|佐々木|2010|p=237}}。 |
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血管は外皮・中皮・内皮の3層構造である{{Sfn|佐々木|2010|p=237}}。頭部と外套膜に血液を送る前大動脈、内臓の後方に血液を送る後大動脈、前側から腎嚢に伸びる[[腎動脈]]、心房の前側から心臓を横切る形で[[生殖器官]]に向かう動脈を持つ{{Sfn|佐々木|2010|p=237}}。[[血圧]]は比較的高く、活動時は10 [[kPa]] (75 [[mmHg]]) 以上となる{{Sfn|Schmidt-Nielsen|1997|p=117}}。 |
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血液中には[[ヘモシアニン]]という[[呼吸色素]]が含まれており、そのため血液は青く見える。ヘモシアニンは鰓の付着膜と入鰓血管の間にある'''鰓腺'''で合成される{{Sfn|佐々木|2010|p=208}}。ヘモシアニンは[[ヘモグロビン]]に比べ[[酸素]]運搬能力に劣るため、長距離を高速で移動し続けることができない{{sfn|シュヴァイド|2014|p=18}}。さらに、海水の pH 濃度にも影響を受けやすく、海水が酸性化すると酸素運搬能力が低下する{{sfn|カレッジ|2014|p=79}}。 |
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=== 鰓 === |
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[[鰓]]はほかの軟体動物と同様に[[櫛鰓]]で、1つの鰓は1対の鰓軸から鰓葉が交互に突出した構造をしている{{Sfn|佐々木|2010|p=203}}。鰓は1対で{{Sfn|佐々木|2010|p=206}}{{Sfn|瀧|1999|p=350}}、それゆえ鞘形類は[[二鰓類]] {{Sname||Dibranchia}} とも呼ばれた{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=988d}}。[[背側]]に入鰓血管、[[腹側]]に出鰓血管が走るため、鰓葉内部では腹から背側に向かって血流が流れる{{Sfn|佐々木|2010|p=206}}。鰓は付着膜({{En|gill ligament, dorsal membrane}})によって外套膜から吊り下げられ{{Sfn|佐々木|2010|p=206}}、[[外套腔]]にある{{Sfn|瀧|1999|p=350}}。 |
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発生においては初め、外套膜原基の隆起の前方に1対の乳頭状突起として生じるが、外套膜の発達とともに外套腔内に入って前後に伸び、櫛鰓となる{{Sfn|瀧|1999|p=350}}。 |
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=== 排出器官 === |
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[[File:Dicyema japonicum.png|thumb|150px|left|[[マダコ]] {{Snamei||Octopus sinensis}} の腎嚢に生息する[[ヤマトニハイチュウ]] {{Snamei||Dicyema japonicum}}(染色)。]] |
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タコは1対の'''腎嚢'''(じんのう、{{En|renal sac}})と呼ばれる袋状の排出器官を持ち、その内部にある大静脈が膨出してできた腎嚢付属体(腎臓)が腎嚢内に血中の老廃物を排出する{{Sfn|佐々木|2010|p=233}}。原尿は鰓心臓後端に付属する囲心嚢腺で濾過され、腎囲心嚢連絡管を通じ、腎嚢から体外に排出する{{Sfn|佐々木|2010|p=233}}。外套腔内に開いた腎嚢の出口は腎門(腎口{{Sfn|瀧|1999|p=350}}、尿乳頭{{Sfn|広島大学生物学会|1971|loc=Plate 80}}、{{en|urinary papilla}})と呼ばれる{{Sfn|瀧|1999|p=341}}{{Sfn|広島大学生物学会|1971|loc=Plate 80}}。 |
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腎嚢内には、[[ニハイチュウ]]が寄生している{{Sfn|古屋|1996|pp=209–218}}。これは1787年にイタリアの博物学者[[フィリッポ・カヴォリーニ]]により発見された{{Sfn|カレッジ|2014|p=80}}<ref>{{cite journal ja|author=古屋秀隆|author-link=古屋秀隆|title=中生動物ニハイチュウの形態と生活史の適応|date=2004a|publisher= 日本比較生理生化学会|journal=比較生理生化学|volume=21|number=3|pages=128–134|doi=10.3330/hikakuseiriseika.21.128}}</ref>。ニハイチュウは体皮細胞の表面にある繊毛の[[繊毛運動]]により、尿中を遊泳したり腎嚢内の腔所を移動する{{Sfn|古屋|1996|pp=209–218}}。ニハイチュウ類の寄生率は、温帯海域の砂泥に生息するタコで高く、成熟したマダコやイイダコではほぼすべての個体に寄生している{{Sfn|古屋|2010|pp=128–134}}{{Sfn|古屋|2020|pp=3–12}}。ニハイチュウは宿主特異性を持ち、ほぼ全ての場合において、異なる種の宿主には異なる種のニハイチュウが寄生している{{Sfn|古屋|2020|pp=3–12}}。 |
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=== 貝殻 === |
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[[File:Argonauta nodosus 139081161.jpg|thumb|200px|貝殻(卵殻)を持つ[[チリメンアオイガイ]] {{Snamei||Argonauta nodosus}}の雌。]] |
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また、[[頭足類]]は[[貝類]]であり、内在性の[[甲 (頭足類)|貝殻]]を持つが、タコ類では完全に退化するか、軟骨質(寒天質)になる{{Sfn|佐々木|2010|p=56}}{{Sfn|上島|2000|p=183}}{{Sfn|瀧|1999|p=374}}。軟骨質の貝殻は'''スタイレット'''{{Sfn|奥谷|2013|p=2}}(棒状軟骨、{{En|stylet}}{{Sfn|瀧|1999|p=336}})と呼ばれ、棒状かU字状、H字状をしている{{Sfn|佐々木|2010|p=149}}。この貝殻の喪失は、体色変化による隠蔽、墨の利用、ジェット推進による遊泳、強い腕や顎の獲得などと関連していると考えられている{{Sfn|佐々木|2010|p=175}}。また、脳の発達による学習や記憶などもこの貝殻の喪失の影響があると推測されている{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=92}}。大きな鰭を遊泳に利用する[[ヒゲダコ科]]ではスタイレットがこれを支えている{{Sfn|Collins|Villaneuva|2006|p=310}}。 |
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タコでも[[アオイガイ]] {{snamei||Argonauta argo}} や[[タコブネ]] {{snamei||Argonauta hians|A. hians}} などの[[アオイガイ科]]は螺旋状の外在性で[[炭酸カルシウム|石灰質]]の貝殻をもつが、これは雌の第1腕から分泌されたものであり、オウムガイなどの貝殻とは直接的な起源が異なる{{Sfn|上島|2000|p=183}}{{Sfn|佐々木|2010|p=149}}。また、アオイガイ属の貝殻は内部に隔壁を持たない{{Sfn|佐々木|2010|p=149}}。この貝殻は卵を保持する機能を持ち、雄は形成しない{{Sfn|佐々木|2010|p=149}}。 |
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{{-}} |
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== 生態と行動 == |
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[[File:Tuberculate Pelagic Octopus.jpg|thumb|200px|left|[[サルパ]]内に住む[[アミダコ]] {{Snamei||Ocythoe tuberculata}}]] |
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{| class="wikitable" style="font-size:smaller" align="right" |
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|+ 分類群とその主な生息域{{Sfn|奥谷|1994|p=38|loc=第2章}} |
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! colspan="2" | 生態と生息域 !! 分類群(科) |
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| rowspan="11"| 浮遊性 |
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| rowspan="3"| 表層遊泳性 |
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|ムラサキダコ科 |
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|アミダコ科 |
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|アオイガイ科 |
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| rowspan="4"| 中層浮遊性 |
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|フクロダコ科 |
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|クラゲダコ科 |
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|スカシダコ科 |
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|カンテンダコ科 |
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| rowspan="4"| 深海・近底層浮遊性 |
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|ヒゲダコ科 |
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|{{sname|Stauroteuthidae}} |
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|- |
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|メンダコ科 |
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|- |
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|{{sname|Cirroctopodidae}} |
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|- |
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| rowspan="6" | 底生性 |
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| rowspan="3" | 浅海性 |
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|マダコ科 |
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|- |
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|ジャコウダコ科 |
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|- |
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|ミズダコ科(ミズダコ属) |
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|- |
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| rowspan="3" | 深海性 |
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|ミズダコ科(その他) |
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|- |
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|{{sname|Megaleledonidae}} |
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|- |
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|{{sname|Bathypolypodidae}} |
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|} |
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ほかの軟体動物は間隙性や付着性など海底面に接して生活するものが多いのに対し{{Sfn|佐々木|2010|p=295}}{{Sfn|土屋|2002|p=8}}、タコはイカとともに海面直下から[[深海]]域までの3次元的な生息域を持っている{{Sfn|土屋|2002|p=8}}。特にタコ類は[[潮間帯]]から水深6000 m 以深まで幅広く分布する{{Sfn|土屋|2002|p=87}}。最大水深は8,100 m とも言われる{{Sfn|奥谷|2013|p=8}}。しかし[[淡水]]生のものは知られておらず{{Sfn|土屋|2002|p=8}}、[[狭鹹度性]]で塩分は30‰以上を求める{{Sfn|瀧|1999|p=354}}。そのため、「蛸の[[真水]]嫌い」や「[[梅雨]]時に雨の多い年は蛸、烏賊が少ない」と言われる<ref name="kaiseiken">{{Cite web|和書|url=https://www.kaiseiken.or.jp/umimame/lib/umimame_02.pdf|title=海の豆知識 Vol. 2 魚のことわざ〈その1〉|publisher=海洋生物環境研究所|date=1999-12-01|accessdate=2024-08-24}}</ref>。また、[[夜行性]]のものが多いとされる{{Sfn|窪寺|2014|p=48}}{{Sfn|奥谷|2013|p=9}}。 |
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[[マダコ]] {{snamei||Octopus sinensis}} などタコ類の大半は底生で、腕が発達し匍匐生活を送る{{Sfn|佐々木|2010|p=56}}{{Sfn|土屋|2002|p=87}}{{Sfn|池田|2020|p=18}}。底生のものでも、好む底質などの生息環境は種によって異なる{{Sfn|奥谷|2013|p=8}}。岩礁にあるクレバスや転石の間隙には底生のタコ類が生育し{{Sfn|土屋|2002|p=9}}、マダコなどが巣穴として利用する{{Sfn|奥谷|2013|p=8}}。潮間帯にできる[[タイドプール]]には小型のタコ類がみられ、昼間はクレバスに身を隠している{{Sfn|土屋|2002|p=8}}。[[カジメ]]の根元には[[マメダコ]]などの小形のタコ類が生息する{{Sfn|土屋|2002|p=8}}。[[イイダコ]] {{Snamei||Amphioctopus fangsiao}} や[[ミミックオクトパス]] {{Snamei||Thaumoctopus mimicus}} などでは内湾寄りの砂泥地に落ちている貝殻や甲殻類が形成する穴などを棲み家として生息する{{Sfn|土屋|2002|p=9}}{{Sfn|奥谷|2013|p=8}}。[[サメハダテナガダコ]] {{Snamei||Callistoctopus luteus}} では砂底中に埋没して隠れている{{Sfn|奥谷|2013|p=8}}。[[珊瑚礁]]棲の[[ワモンダコ]] {{snamei||Octopus cyanea|'Octopus' cyanea}} などは、その複雑な地形を利用し身を隠している{{Sfn|奥谷|2013|p=8}}。深海性の底生のタコは巣穴などを利用せずに、泥質の海底を匍匐していると考えられる{{Sfn|奥谷|2013|p=8}}。 |
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その一方で漂泳性の種も多く知られている{{Sfn|佐々木|2010|p=295}}。[[ムラサキダコ]] {{snamei||Tremoctopus violaceus}}([[ムラサキダコ科]])は表中層を浮遊する{{Sfn|土屋|2002|p=87}}{{Sfn|佐々木|2010|p=295}}。[[アミダコ科]]も浮遊性で、雄は[[サルパ]]の皮殻内に入る{{Sfn|佐々木|2010|p=56}}{{Sfn|佐々木|2010|p=295}}。[[クラゲダコ]] {{Snamei||Amphitretus pelagicus}}([[クラゲダコ科]])、[[カンテンダコ]] {{Snamei||Haliphron atlanticus}}(カンテンダコ科)、[[ナツメダコ]] {{snamei||Japetella diaphana}}([[フクロダコ科]])などは中層を浮遊する{{Sfn|奥谷|1994|p=38|loc=第2章}}{{Sfn|佐々木|2010|p=296}}。クラゲダコや[[スカシダコ]] {{Snamei||Vitreledonella richardi}} が透明であるのは、隠れる場所が少ない海の水柱の中層で、影を消したりクラゲへのカモフラージュによって捕食者に見つかりにくくする効果があると考えられている{{Sfn|窪寺|峯水|2014|pp=188–190}}。[[アオイガイ科]]も浮遊生活を送り、雌は卵を保護するための貝殻を作る{{Sfn|佐々木|2010|p=56}}。 |
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=== 巣と移動 === |
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多くのタコ類で鉛直方向または水平方向の移動を行うことが知られている{{Sfn|瀧|1999|p=354}}。ただし、温暖な地域のものは定着性が強いと言われる{{Sfn|坂口|2013|p=54}}。 |
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[[マダコ科|マダコ類]]の多くは海底に巣穴(デン、{{En|den}}、蛸穴{{Sfn|新村|1998|p=1641}})を持つ{{Sfn|土屋|2002|p=104}}{{Sfn|池田|2020|p=73}}{{Sfn|奥谷|2013|p=23}}。[[マダコ]]や[[ワモンダコ]]は岩の隙間や礫の下に巣穴を持つ{{Sfn|土屋|2002|p=104}}。 |
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マダコは単独で行動し、海底の巣穴を[[塒]]として、夜になると[[索餌]]のために海底を這って動き回り、[[帰巣]]する{{Sfn|池田|2020|p=73}}{{Sfn|奥谷|2013|p=23}}。この際に学習や[[記憶]]を行っていると考えられている{{Sfn|池田|2020|p=73}}。[[バミューダ諸島|バミューダ]]のマダコ{{Efn|恐らく {{snamei||Octopus americanus}}。}}では、巣穴から出て2 m 以上の移動を10分以上かけて行い、往復路で違う道を用いて帰巣した{{Sfn|池田|2020|p=74}}<ref>{{Cite journal2|df=ymd|last1=Mather |first1=J.A. |title=Navigation by spatial memory and use of visual landmarks in octopuses |journal=J. Comp. Physiol. A |volume=168 |pages=491–497 |date=1991|doi=10.1007/BF00199609|issn = 0340-7594 }}</ref>。これは[[池田譲]]によると、全く同じ道を戻る[[トレイル・フォロー]]ではなく海底の岩などを道標として、景観を見て帰巣しているのだと考えられている{{Sfn|池田|2020|p=75}}{{Sfn|奥谷|2013|p=14}}。索餌には1日のうちの5–6時間を費やしており、残りの時間は巣穴の中で睡眠またはハウスキーピングを行っている{{Sfn|奥谷|2013|p=9}}。 |
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マダコ漁業に用いられる[[蛸壺]]はこの巣穴に隠れる習性を利用したものである{{Sfn|奥谷|2013|p=23}}。自分の巣穴から遠く離れた場所で餌を捕まえた場合、運搬の途中で隠れ場所を見つけるとそこに持ち込んで食べる{{Sfn|奥谷|2013|p=23}}。自分の巣穴まで持ち帰るにはコストがかかり、その低減のために行う行動であるが、巣穴からどれだけ離れているかという判断も行ったうえで、蛸壺を利用することが知られている{{Sfn|奥谷|2013|p=23}}。またタコは食べ残しやゴミを取り除き、巣穴の外に運ぶことが知られている{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=120}}{{Sfn|荒俣|1994|p=243}}。そのため、蛸壺の内部は綺麗でないと入らないとされる{{Sfn|奥谷|2013|p=23}}{{Sfn|石田|2017|pp=56–58}}{{Sfn|神崎|1994|p=114|loc=第7章}}。 |
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小形のタコは[[サザエ]]や[[アカガイ]]、[[ヒメスダレガイ]]などの[[貝殻]]を用いて巣穴とする{{Sfn|土屋|2002|p=104}}。[[スナダコ]] {{Snamei||Amphioctopus kagoshimensis}} は様々なものを巣穴といて利用し、時には人工物をも用いる{{Sfn|土屋|2002|p=104}}。[[イイダコ]]でも、二枚貝の貝殻を2つ合わせて身を隠し、その中で抱卵する{{Sfn|池田|2020|p=82}}{{Sfn|土屋|2002|p=100}}{{Sfn|瀬川|2013|p=131}}。[[メジロダコ]] {{Snamei||Amphioctopus marginatus|A. marginatus}} は[[サツマアカガイ]]などの二枚貝を腕に挟んで海底を移動し、「貝持ち行動」として知られている{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=265}}([[#道具の使用]]も参照)。 |
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[[インドネシア]]の[[ウデナガカクレダコ]] {{Snamei||Abdopus aculeatus}} では、「[[二足歩行]] {{En|bipedal walking}}」をとることが[[クリスティン・ハッファード]]により報告されている{{Sfn|池田|2020|p=171}}{{Sfn|小野|2013|p=173}}<ref>{{Cite journal2|df=ymd |last1=Huffard|first1=C. L. |title=Locomotion by ''Abdopus aculeatus'' (Cephalopoda: Octopodidae): walking the line between primary and secondary defenses |journal=J. Exp. Biol. |date=2006|volume=209 |issue=19|pages=3697–3707|doi=10.1242/jeb.02435}}</ref>。メジロダコも二足歩行を行う事が知られている{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=65}}。タコの二足歩行では、胴体をボール状に丸くし、腕のうち2本を用いて交互に動かし、移動する{{Sfn|池田|2020|p=171}}。これは防衛行動の一種や{{Sfn|池田|2020|p=172}}、体力を温存して行動するためだと考えられている<ref name="natgeo_2024-05"/>。 |
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また、種によってはタコも'''[[渡り]]'''を行うことが知られている{{Sfn|池田|2020|p=39}}。[[津軽海峡]]の[[ミズダコ]]で渡りが観察されており、海底を移動し、水深200 m に達する津軽海峡を越えて[[北海道]]と[[青森県]]を行き来する個体が報告されている{{Sfn|池田|2020|pp=40–41}}。日本の[[マダコ]]も渡りを行い、渡り群と地着き群が存在することが知られている{{Sfn|水口|出月|2016|pp=1–68}}{{Sfn|土屋|2002|p=90}}。特に[[いわき市|常磐]]地方のマダコで渡りが知られ、多数のタコが群れを成して南北移動を行う{{Sfn|奥谷|1991|p=28}}{{Sfn|瀧|1999|p=354}}。[[イギリス海峡]]の[[チチュウカイマダコ]] {{Snamei||Octopus vulgaris}} も冬場の低水温を嫌って南方に回遊するといわれる{{Sfn|坂口|2013|p=54}}。 |
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=== 平衡感覚と聴覚 === |
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タコは軟骨でできた'''[[平衡胞]]'''と呼ばれる器官を左右1対持ち、中に[[炭酸カルシウム]]でできた[[平衡石]]を具える{{Sfn|池田|2020|p=65}}。平衡胞内壁表面に生える[[微絨毛]]に平衡石が触れることで姿勢を認識する{{Sfn|池田|2020|p=65}}。移動の際は[[加速度]]も検知することができる{{Sfn|池田|2020|p=66}}。 |
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また、平衡胞内の多数の毛を使って狭い範囲の[[音]](振動)を[[聴覚|感知]]している{{Sfn|カレッジ|2014|p=219}}。外洋に生息する[[イカ]]に比べて聴力は弱く、底生のマダコでは400–1,000 Hz{{Small|([[ヘルツ]])}}の音しか知覚できない{{Sfn|カレッジ|2014|p=219}}。これは水深1–2 m 以深では高周波の音は伝わりにくく、凹凸の多い海底では障害物に吸収され知覚できる可能性が低いためとも考えられる{{Sfn|カレッジ|2014|p=219}}。 |
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平衡胞を[[外科]]的に破壊すると、[[平衡感覚]]が失われる{{Sfn|池田|2020|p=66}}。タコの眼の向きは体の向きにかかわらず常に水平方向を向くようになっているが、平衡胞を破壊するとタコの向きに依存して眼の向きが変化してしまう{{Sfn|池田|2020|p=67}}。平衡胞を破壊したタコでも「回り道」の認識には大きな影響がないが、図形の向きの認識には支障を来す{{Sfn|池田|2020|p=66}}。また、平衡胞は50–400 [[ヘルツ|Hz]] の[[低周波]]の音によっても損傷を受けることが分かっている{{Sfn|カレッジ|2014|p=220}}。 |
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=== 食物網 === |
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==== 食性 ==== |
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[[File:Veined Octopus - Amphioctopus Marginatus eating a Crab.jpg|thumb|300px|カニを食べる[[メジロダコ]] {{Snamei||Amphioctopus marginatus}}。]] |
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鞘形類はイカもタコも大型[[肉食性]]の[[捕食者]]で、[[魚]]や[[甲殻類]]を食べる{{Sfn|上島|2000|p=185}}{{Sfn|佐々木|2010|p=229}}{{Sfn|瀧|1999|p=351}}。特に底生のタコは[[カニ]]や[[二枚貝]]を好んで捕食する{{Sfn|佐々木|2010|p=229}}。タコはカニにとっての天敵であり、カニの一種 {{snamei||Carcinus maenas}} では、[[歩脚]]を木製ピンセットをつまんでも起こらないが、タコの腕を吸いつかせると直ちに[[自切反射]]が起こることが知られている{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=585h}}。イギリスではタコの急激な増加によりエビ漁業が脅かされる現象が起こり、オクトパス・プレイグ({{en|octopus plague}}、「タコによる[[ペスト]]」)と呼ばれた{{Sfn|奥谷|2013|p=9}}{{Sfn|奥谷|1994|p=43|loc=第2章}}。マダコやイイダコでは貝類を食べる際、まずは[[腕 (頭足類)|腕]]の力でこじ開けを行い、それで開けられなかった場合、歯舌で貝殻に穿孔して唾液腺の毒([[チラミン]]{{Sfn|奥谷|2013|p=9}})を注入し、餌を麻痺させてから捕食する{{Sfn|佐々木|2010|pp=229–230}}{{Sfn|瀬川|2013|p=138}}。海底に落ちている魚の死骸を食べることもあり{{Sfn|土屋|2002|p=121}}、[[イチレツダコ]] {{snamei||Eledone cirrhosa}} は生きた甲殻類だけでなく死んだ魚を食べる{{Sfn|瀧|1999|p=351}}。 |
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吸盤には[[化学受容]]細胞が分布し、[[触覚]]により餌を探ることができる{{Sfn|佐々木|2010|p=230}}。[[テナガダコ]] {{Snamei||Callistoctopus minor}} は海底の泥中に埋没して、[[第1腕]]を水中に伸ばして餌を捕獲する{{Sfn|佐々木|2010|p=230}}。[[ホワイト・ブイ・オクトパス]]と通称される未記載種{{Efn|{{Snamei||Macrotritopus}} 属であることが示唆されている{{Sfn|Leite ''et al.''|2021|p=6}}。}}は、他の生物の巣穴に腕を差し込んで捕食する{{Sfn|土屋|2002|p=109}}。 |
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深海棲の[[ホッキョクワタゾコダコ]] {{snamei||Bathypolypus arcticus}} では、胃内容物から大量の[[後鰓類|有殻翼足類]]と少量の甲殻類が見つかっている{{Sfn|瀧|1999|p=351}}。遊泳性の[[アオイガイ属]] {{snamei||Argonauta}} は小型甲殻類や魚類を捕食する{{Sfn|瀧|1999|p=351}}。中でも[[チヂミタコブネ]] {{snamei||Argonauta boettgeri}} は浮遊性[[翼足類]]の[[カメガイ]]を捕食することが観察されている{{Sfn|瀧|1999|p=351}}。南極海に棲む[[オオイチレツダコ]] {{snamei||Megaleledone setebos}} (≡{{Snamei|Graneledone setebos}} ={{snamei|Megaleledone senoi}}) は胃内容物からは、由来不明の固形内容物のほか[[クモヒトデ]]の骨格も見つかっており、別の記録では例外的に大量の[[海藻]]が占めていた{{Sfn|瀧|1999|p=351}}。{{Snamei||Octopus filamentosus|'Octopus' filamentosus}} では干潮時に半海洋性の[[ウシオグモ]]類 {{snamei||Desis (spider)|Desis martensi}} を捕食しているのを観察されたこともある{{Sfn|瀧|1999|p=351}}。漂泳性で歯舌が消失している[[ヒゲダコ科]]は[[デトリタス|微小物]]食性となっている{{Sfn|瀧|1999|p=351}}。 |
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漂泳性のムラサキダコは、若齢時に表層を漂う猛毒の[[カツオノエボシ]]を好んで捕食し、その[[刺胞]]を含む触手を第1腕から第2腕の吸盤に付着させる[[盗刺胞]]を行い、武器として利用する{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=210}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=39}}。この刺胞は天敵からの防御や捕食の際に用いられる{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=210}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=39}}。 |
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[[ワモンダコ]] {{snamei||Octopus cyanea|'Octopus' cyanea}} は、[[バラハタ]] {{snamei||Variola louti}} などの魚類と協力して狩りを行い、群れのリーダーとしての役割を担っていることが知られている{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=163}}。バラハタは30 m 先の獲物を見つけることができ、ワモンダコに微妙な頭の揺れで合図を送る{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=163}}。それを見たワモンダコは岩の隙間に隠れる獲物を追い出して捕らえ、バラハタと分け合う{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=163}}。その際[[アカハタ]] {{Snamei||Epinephelus fasciatus}} などの狩りに協力しない他種の魚が餌の横取りを狙うことがあり、腕を鞭のようにしならせた「タコパンチ」によりそれを追い払う{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=163}}<ref>{{Cite web |author=Helena Kudiabor|url=https://www.nature.com/articles/d41586-024-03127-5 |title=Octopuses and fish caught on camera hunting as a team |website=Nature News|date=2024-09-23|access-date=2024-09-29}}</ref><ref>{{Cite journal|last1=Sampaio|first1=E. |last2=Sridhar |first2=V.H. |last3=Francisco |first3=F.A. |last4=Nagy|first4=M. |last5=Sacchi|first5=A. |last6=Strandburg-Peshkin|first6=A. |last7=Nührenberg|first7=P. |last8=Rosa|first8=R |last9=Couzin|first9=I.D. |last10=Gingins|first10=S. |title=Multidimensional social influence drives leadership and composition-dependent success in octopus–fish hunting groups |journal=Nat. Ecol. Evol. |date=2024|doi=10.1038/s41559-024-02525-2}}</ref>。 |
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==== 共食いと自食 ==== |
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鞘形類では[[共食い]](カニバリズム)も一般に観察され{{Sfn|瀧|1999|p=351}}、特に珍しいことではないとされる{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=179}}。そのため、同類のものが互いに食い合うことを喩えて「蛸の共食い」という{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|新村|1998|p=1641}}{{Efn|僧侶が蛸を食うことの隠語ともされる{{Sfn|木村|小出|2000|p=702|loc=「たこのともぐひ【蛸の共食ひ】」『隠し言葉の字引』 (1929)}}{{Sfn|木村|小出|2000|p=702|loc=「たこのともぐい【蛸の共食い】」『符牒六千語 芸者からスリまで』 (1955)}}。}}{{Sfn|牧村|1979|p=405}}。明石のマダコでは胃内容物の6.0% が同種である{{Sfn|奥谷|2013|p=9}}。ミズダコの胃内容物中には一定の割合で同種と考えられるタコの断片が見つかり{{Sfn|佐野|2013|p=120}}、シアトル水族館の水槽などでも交接後に雌が雄を捕食した例が観察されている{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=112}}。ワモンダコでも、野生下で雌が交接後の雄に襲い掛かり、捕食することが観察されている{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=112}}。 |
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[[チチュウカイマダコ]]や[[マダコ]]、[[カリフォルニアツースポットダコ]] {{Snamei||Octopus bimaculoides}} では自分の腕を食べる行動(自己共食い、セルフカニバリズム)が観察されている{{Sfn|瀧|1999|p=353}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=151}}{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=179}}。かつては空腹の際に自分の腕を食べるという俗信があり、「タコは身を食う」や「タコの手食い」という表現も生まれた{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}。しかし[[瀧巌]]の観察によると、[[アサリ]]などの餌生物を与えていても起こるため飢餓ではないことが分かっている{{Sfn|瀧|1999|p=353}}。この行動は何らかの病原体によって引き起こされる感染性の致死的疾患であると考えられている{{Sfn|Budelmann|1998|pp=101–108}}。腕を食べ始めたタコは数日以内に死亡する{{Sfn|瀧|1999|p=353}}。消化管内には腸内で消化されておらず、小肉片となって腸内を充填してしまう{{Sfn|瀧|1999|p=353}}。この行動の多くはストレスによるものではないと考えられることもある一方{{Sfn|Budelmann|1998|pp=101–108}}、精神の異常によるものだと考えられることもある{{Sfn|瀧|1999|p=353}}{{Sfn|奥谷|1994|p=43|loc=第2章}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=151}}。例えば、豊かな環境の水槽とごく普通の水槽にカリフォルニアツースポットダコを入れて行動を比較した研究では、後者でのみ自食行動が観察された{{Sfn|カレッジ|2014|p=151}}。またこの種では、産卵後の雌で自分の腕の先端を食べる行動も観察されている{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=179}}。こういった行動をとる雌では、視柄腺から[[コレステロール]]前駆体である[[7-デヒドロコレステロール]](7-DHC)が分泌されていることが分かっている{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=179}}{{Efn|ヒトでは高濃度の 7-DHC は、自傷行為を引き起こす{{仮リンク|スミス-レムリ-オピッツ症候群|en|Smith–Lemli–Opitz syndrome}}の原因物質であると考えられている{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=179}}。}}。 |
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==== 被食者として ==== |
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[[食物連鎖|食物網]]の中でのタコは[[捕食|捕食者]]であると同時に[[捕食-被食関係|被食者]]でもあり、[[海洋生態系]]中で非常に重要な餌生物となっている{{Sfn|土屋|2002|p=122}}。人間にとってタコは食品として利用されているが、海洋の捕食者にとっても優れた餌となる{{Sfn|土屋|2002|p=122}}。硬い殻や骨を持たず、ほぼすべて消化可能であり、効率が良い{{Sfn|土屋|2002|p=122}}。そのため、[[カマス]]、[[ハタ (魚類)|ハタ]]、[[フエダイ]]、[[イットウダイ]]、[[アイナメ]]、[[カサゴ]]、[[サメ]]といった魚類だけでなく、[[ラッコ]]、[[アザラシ]]、[[シャチ]]といった海棲哺乳類、鳥類もタコの天敵である{{Sfn|カレッジ|2014|p=38}}。ただし[[クジラ]]や[[マグロ]]などの重要な餌生物であるイカに比べると、タコは底生で隠れ家を持つものが多く、被食されにくい{{Sfn|土屋|2002|p=122}}。 |
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タコの[[天敵]]として最もよく知られているのは[[ウツボ]]である{{Sfn|土屋|2002|p=122}}{{Sfn|瀧|1999|p=352}}。ウツボは大型の底生魚類であり、クレバスの奥にも潜り込めるため、タコの捕食者になりやすい{{Sfn|土屋|2002|p=122}}。また、鱗がなく皮膚が強靭で硬く、歯も鋭いためマダコと格闘し腕などを食いちぎる様子がよく観察されている{{Sfn|瀧|1999|p=352}}。マダコはウツボに襲われると、腕を翻して丸まり、防御の姿勢を取る{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=269}}。そしてその後隙を見て逃走を図るが、腕の先を咬まれ腕を失うこともある{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=269}}。[[アナゴ]]などほかの[[ウナギ目|ウナギ類]]もタコの天敵となる{{Sfn|カレッジ|2014|p=36}}。 |
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ほかの魚種からも報告があり、[[ホッキョクワタゾコダコ]] {{snamei||Bathypolypus arcticus}} が[[タイセイヨウオヒョウ]] {{snamei||Hippoglossus hippoglossus}} の胃内容物から見つかっている{{Sfn|瀧|1999|p=352}}。またイギリスでは、[[イチレツダコ]] {{snamei||Eledone cirrhosa}} が[[タラ]]類や[[アンコウ]]類に捕食されていることが知られているほか、水槽で飼育されている卵はカニに捕食されている{{Sfn|瀧|1999|p=352}}。孵化したばかりの稚仔(擬幼生)は[[プランクトン]]として、[[ヒゲクジラ]]や[[オニイトマキエイ]]、[[ジンベエザメ]]などの濾過摂食者に捕食される{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=54}}。 |
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大型のタコや有触毛亜目のタコは[[サメ]]や[[アザラシ]]、[[鯨類]]に捕食される{{Sfn|瀧|1999|p=352}}{{Sfn|Collins|Villaneuva|2006|p=310}}{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=55}}。そのため、[[青森県]][[下北半島]]では「[[アシカ|海驢]]は蛸の群れについて来る」という[[諺]]が伝わる<ref name="kaiseiken"/>。似た言い伝えとして、[[島根半島]]では「[[アオイガイ]]が来ると[[マグロ]]が獲れる」と伝わる{{Sfn|荒俣|1994|p=256}}。しかしこの[[捕食-被食関係]]も一方的なものではなく、稀にではあるが、大型のタコが小型のサメを捕食することがある。また[[シアトル水族館]]では、[[ミズダコ]]が同じ[[水槽]]で飼われていた[[アブラツノザメ]]を攻撃し、死亡させた例もある{{Sfn|カレッジ|2014|p=38}}{{Sfn|モンゴメリー|2017|p=220}}<ref>{{Cite AV media ja |url=https://www.youtube.com/watch?v=RdILQ5BBg_8 |title=サメを喰らうミズダコ {{!}} ナショジオ |date=2020-04-17 |medium=YouTube |access-date=2023-11-29}}</ref><ref>{{Cite tweet ja|user=natgeotv_jp|author=ナショナル ジオグラフィック TV|number=1159237787452956674|title=サメを襲うタコ|date=2019-08-08|access-date=2023-11-29}}</ref>{{Sfn|土屋|2002|p=120}}。 |
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深海棲の有触毛亜目では天敵となる捕食者の記録は少ないが、これは食べられていないというわけではなく、[[カラストンビ|顎板]]から種を見分けるのが難しいためであると考えられている{{Sfn|Collins|Villaneuva|2006|p=310}}。漂泳性の種も重要な餌生物となっていることが知られており、[[ナツメダコ]] {{snamei||Japetella diaphana}} は寒天質にも拘らず、[[マグロ]]類や[[ミズウオ]]の胃の内容物から頻繁に見つかる{{Sfn|土屋|2002|p=88}}。 |
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ミズダコのような最大のタコでも、大抵は臆病で[[潜水士|ダイバー]]を見ると墨を吐いて逃げるが、その力は強く、もし絡まれると危険な目に遭う可能性もある{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=236}}。特に、年老いたタコでは攻撃的になることが知られ、[[ブリティッシュコロンビア州]]の[[パシフィック・アンダーシー・ガーデンズ]]で飼われていたミズダコが死ぬ数週間前に[[レギュレータ (ダイビング)|レギュレータ]]に腕を絡ませ、ダイバーの呼吸を阻害した事例も知られている{{Sfn|モンゴメリー|2017|p=81}}。 |
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=== 腕の自切と再生 === |
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[[File:Octopus with 60 arm branches (1).jpg|thumb|300px|多腕の奇形マダコ。]] |
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{{See|腕 (頭足類)#腕の再生と奇形}} |
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頭足類の腕は捕食や移動、[[自切]]、交接や競争に加え、攻撃や共食いにより傷つくことがあり、再生能力を持つ{{Sfn|Zullo|Impedadore|2019|pp=193–199}}{{Sfn|野呂|2017|pp=131–133}}。体が損傷すると、それに応答して再生を始める{{Sfn|Zullo|Impedadore|2019|pp=193–199}}。 |
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[[カクレダコ属]] {{Snamei||Abdopus}} は捕食者に襲われると腕を自切し、[[デコイ]]として利用してその隙に逃げることが知られている{{sfn|土屋|2002|p=10}}。[[テギレダコ]] {{snamei||Callistoctopus mutilans}} は捕らえようとすると腕を自切して逃げることから、その和名や学名が名付けられた{{sfn|土屋|2002|p=94}}{{Efn|種小名 {{Snamei|mutilans}} は手足の切断を示すラテン語の[[分詞]]である{{sfn|土屋|2002|p=94}}。}}。 |
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傷ついた腕が再生する際、2叉または3叉に分枝し異常な腕となることがある{{Sfn|Zullo|Impedadore|2019|pp=193–199}}。[[鳥羽水族館]]には[[三重県]]沖から漁獲された多腕となった[[マダコ]]が度々持ち込まれ、うち85本のものは[[1955年]]の開館直後から展示されている<ref>{{Cite web|和書|title=あわせて141本足!「多足ダコ」の標本展示再開 |url=https://www.aquarium.co.jp/topics/index.php?id=62&archive=2012 |publisher=鳥羽水族館|date=2012-04-29 |accessdate=2020-03-31|archiveurl=https://web.archive.org/web/20211027034253/https://www.aquarium.co.jp/topics/index.php?id=62&archive=2012 |archivedate=2021-10-27}}</ref>。 |
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=== 墨による防衛 === |
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危険を感じると、[[漏斗 (頭足類)|漏斗]]を通じて墨汁(墨)を吐き出す{{Sfn|佐々木|2010|p=223}}。 |
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タコの墨は、一般的に食用に供される[[イカ墨|イカの墨]]とほぼ同じ成分であり、タンパク質、セピア[[メラニン]]、多糖類、脂質を含む<ref name="TBS">{{Cite web|和書|author=奥谷喬司|title=(3)【タコの墨と、イカの墨】この差って何?|website=この差って何ですか?|publisher=TBSテレビ.html|url=https://www.tbs.co.jp/konosa/old/20150816.html|date=2015-08-16|archiveurl=https://web.archive.org/web/20240810150704/https://www.tbs.co.jp/konosa/old/20150816.html|archivedate=2024-08-10|accessdate=2024-08-11}}</ref>。しかし、タコの墨はイカのものに比べ、粘液物質である[[ムコ多糖]]や脂質が少ないため、さらさらとしている{{Sfn|土屋|2002|p=92}}<ref name="TBS"/>。そのためタコは墨を[[煙幕]]として拡散させ敵から逃げる{{Sfn|佐々木|2010|p=223}}{{Sfn|土屋|2002|p=92}}<ref name="TBS"/>{{Efn|それに対し、イカの墨は拡散しにくく、墨の塊を「ダミー」として捕食者の眼を逸らせ、敵から逃げる{{Sfn|佐々木|2010|p=223}}{{Sfn|土屋|2002|p=92}}。}}。遊泳性のイカに比べ、底生のタコは隠れ場所に困らないため、このような戦略を用いていると考えられる{{Sfn|土屋|2002|p=92}}。 |
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また、この墨には[[モノフェノールモノオキシゲナーゼ|チロシナーゼ]]が含まれ、敵の眼や受容器を刺激する機能もある{{Sfn|カレッジ|2014|p=38}}{{Sfn|モンゴメリー|2017|p=222}}。チロシナーゼは[[オキシトシン]]や[[バソプレシン]]を阻害する[[酵素]]である{{Sfn|モンゴメリー|2017|p=222}}。また魚の鰓などに絡まってダメージを与える働きもあると考えられている{{Sfn|カレッジ|2014|p=39}}。人間がタコを搬送中に墨を吐くと、自分の墨が鰓に絡まって死んでしまうこともよく知られている{{Sfn|モンゴメリー|2017|p=232}}。 |
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タコ墨が料理にあまり用いられないのはイカ墨と比べて絡まりにくいためであり{{Sfn|奥谷|2013|p=27}}、料理に不向きとされることもあるが{{Sfn|土屋|2002|p=92}}、一方成分はほぼ同じであることから美味ともされる<ref name="TBS"/>。墨汁嚢が肝臓(中腸腺)中に埋没するため取り出しにくく、さらに1匹から採れる量もごく少量であることが、タコ墨が料理にあまり用いられない真の理由だとされる{{Sfn|奥谷|2013|p=26}}<ref name="TBS"/>。 |
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漂泳性のムラサキダコの墨は粘り気が強く、イカのものに類似している{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=207}}。 |
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=== 擬態とコミュニケーション === |
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[[File:Mimic Octopus 5.jpg|thumb|200px|擬態中の[[ミミックオクトパス]] {{Snamei||Thaumoctopus mimicus}}。]] |
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頭足類は[[聴覚]]が発達しないことから、視覚情報を重要なコミュニケーションの方法として用いている{{Sfn|土屋|2002|p=124}}。 |
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タコの体表には体表の色彩を変化させる'''色素胞器官'''を持つ{{Sfn|佐々木|2010|p=192}}{{Sfn|土屋|2002|p=124}}{{Sfn|瀧|1999|p=352}}。これは黄、橙、赤、茶、黒と様々に色を変化させる色素細胞と放射状の筋肉、神経などのいくつかの異なる細胞からなる複合体である{{Sfn|佐々木|2010|p=192}}{{Sfn|瀧|1999|p=352}}。神経によって直接支配されるため、内分泌系に制御される魚類の色素胞とは異なり機敏に体色を変化させることができる{{Sfn|土屋|2002|p=101}}{{Sfn|土屋|2002|p=124}}。単に色だけでなく、反射性や質感、明るさを周囲の環境に合わせて変化させることができる{{Sfn|カレッジ|2014|p=96}}。また、眼にある[[視物質]]は[[ロドプシン]]のみであるため[[色覚]]を欠くとされるが{{sfn|池田|2020|pp=157–159}}、皮膚にも視物質である[[オプシン]]を持つことがわかっており{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=73}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=116}}、色素胞を透過させ[[カラーフィルター]]として用いることで色の判別に役立てていると推測する研究者もいる{{Sfn|カレッジ|2014|p=119}}。この色素胞は、擬態(カモフラージュ)と意思疎通(コミュニケーション)に機能すると考えられている{{Sfn|土屋|2002|p=124}}。 |
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また色素胞だけでなく[[虹色素胞]] (虹色胞、{{en|iridophore}}) を持つ{{Sfn|カレッジ|2014|p=110}}{{Sfn|奥谷|1994|p=98|loc=第6章}}。これは光の干渉による構造色を呈し、様々な色の光や偏光を反射している{{Sfn|カレッジ|2014|p=111}}。虹色素胞は仲間とのコミュニケーションに用いていると推測されている{{Sfn|カレッジ|2014|p=111}}。また色素胞、虹色素胞に加え白色素胞(白色胞、{{en|leucophore}})も持ち、変化する色素胞の色の下地を作っている{{Sfn|カレッジ|2014|p=111}}{{Sfn|奥谷|1994|p=98|loc=第6章}}{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=59}}。 |
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また、タコはイカに比べ、表皮層が厚く、肌の凹凸を変えることができ、これも体色の変化に加え背景に溶け込む隠蔽的擬態に寄与する{{Sfn|佐々木|2010|p=192}}{{Sfn|土屋|2002|p=101}}。単に背景と同じ模様にするというより、目印を選んで擬態することが明らかになっている{{Sfn|カレッジ|2014|p=105}}。例えば、[[ヘアリーオクトパス]]と呼ばれる未記載種は、体表の突起を分枝させて伸ばし、海藻の生えた石に擬態する行動が知られている{{Sfn|土屋|2002|p=101}}{{Sfn|土屋|2002|p=108}}{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=175}}。 |
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また、有毒生物などに似せて身を守る[[標識的擬態]]を行うものも知られている{{Sfn|土屋|2002|p=101}}。[[ホワイト・ブイ・オクトパス]]と通称される未記載種は[[カレイ目|カレイ類]]に擬態する{{Sfn|土屋|2002|p=109}}。[[ミミックオクトパス]] {{Snamei||Thaumoctopus mimics}} は[[ウシノシタ]]や[[ミノカサゴ]]、[[ウミヘビ]]などの有毒生物に擬態([[ベイツ型擬態]])し、動きを似せることが知られる{{Sfn|土屋|2002|p=112}}{{Sfn|土屋|2002|p=101}}{{Sfn|池田|2020|p=33}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=107}}{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=50}}。[[ブンダープス]] {{snamei||Wunderpus photogenicus}} は15種以上の生物に擬態することができる{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=51}}。これは捕食者の種類に合わせて何に擬態するか選択を行っていると考えられるため、[[チンパンジー]]や[[カラス科]]と同様に他者視点を獲得しているとされる{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=54}}。また、多くの種で第1腕を持ち上げ腕の先端を丸めて体全体を漂わせる姿勢を取るフランボワイヤン・ディスプレー ({{En|flamboyant display}}) を行うが、これも標識的擬態であると考えられる{{Sfn|土屋|2002|p=126}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=156}}。 |
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沿岸域に生息する種では、[[眼状紋]](眼紋、{{En|ocellate pattern}})を[[威嚇]]行動に用いる{{Sfn|土屋|2002|p=124}}{{Sfn|瀧|1999|p=353}}。イイダコは会敵した際、外套膜背面に4縦帯、各腕の両側に黒帯、第2腕・第3腕の基部に眼状紋を生じる{{Sfn|瀧|1999|p=352}}。同属の[[ヨツメダコ]] {{Snamei||Amphioctopus areolatus}} も同様の眼状紋を生じ、会敵の際に眼をカモフラージュするのに用いると考えられている{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=226}}。また、横縞(暗色の波形)を体表を流れるように[[ネオンサイン|ネオン]]状に前後に動かす「行雲」と呼ばれる行動を行う種も多く知られ、この行動は警戒行動に用いたり、採餌中の興奮状態に現れる{{Sfn|土屋|2002|p=124}}{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=46}}。これは動きながら自分の居場所を悟られることなくカニなどの獲物を誘い寄せるためであるといわれる{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=46}}。 |
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=== 認知能力と学習 === |
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タコは脳が発達し、視覚や触覚、遊泳能力などに優れる{{Sfn|佐々木|2010|p=242}}。また、[[学習]]能力さえ持っている{{Sfn|佐々木|2010|p=242}}。頭足類の神経系と感覚器官は[[無脊椎動物]]の中で最も発達し、全体重に対する脳の重量の割合は[[爬虫類]]も上回っている{{Sfn|佐々木|2010|p=242}}。 |
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タコの脳には5億個の[[ニューロン]]があり<ref name="natgeo_2024-05"/>、犬や3歳の子供と同じくらいの知能で<ref>{{Cite web |url=https://www.scotsman.com/news/opinion/columnists/octopus-farming-is-immoral-given-everything-we-know-about-this-highly-intelligent-and-solitary-animal-philip-lymbery-3412887 |title=Octopus farming is immoral, given everything we know about this highly intelligent and solitary animal – Philip Lymbery |access-date=2022-11-25}}</ref>、一説には最も賢い[[無脊椎動物]]であるとされている{{sfn|シュヴァイド|2014|p=44}}{{sfn|カレッジ|2014|p=134}}。 |
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タコは物体の形や大きさ、色の明暗を区別し、学習することができる{{Sfn|池田|2020|pp=59–61}}。{{仮リンク|ジョン・ザッカリー・ヤング|en|John Zachary Young}} ([[1963年|1963]]) は[[チチュウカイマダコ]] {{Snamei|ja|Octopus vulgaris|Octopus vulgaris}} に白い玉に触れた場合に餌という報酬を与える[[オペラント条件付け]]による学習訓練を行った{{Sfn|池田|2020|p=60}}<ref>{{Cite journal2|df=ymd |last1=Young|first=J.Z.|date=1963|title=Some essentials of neural memory systems. Paired centres that regulate and address the signals of the results of action |journal=Nature |volume=198|issue=626–630|doi=10.1038/198626a0}}</ref>。これにより、タコは白い玉が現れると触るようになる{{Sfn|池田|2020|p=60}}。そのうえで白い玉と赤い玉を提示すると、白い玉を触る行動をとる{{Sfn|池田|2020|p=59}}。大きさが異なる玉も区別することができる{{Sfn|池田|2020|p=60}}。また、図形も区別することができる{{Sfn|池田|2020|p=61}}。[[正方形]]を選ぶように訓練されたタコは、[[菱形]]と正方形を提示すると正方形を選ぶことができる{{Sfn|池田|2020|p=61}}。これは三角形や十字形でも同様に学習でき、枝分かれや、向きについても見分けることができる{{Sfn|池田|2020|p=61}}。ただし、十字形と十字にさらに線が交差した図形や、円と正方形の区別は苦手とする{{Sfn|池田|2020|p=61}}。また、形状は視覚だけでなく触覚によっても学習することができ、溝を刻んだ物体と滑らかな表面の物体を区別できる{{Sfn|池田|2020|p=61}}{{Sfn|奥谷|2013|p=14}}。重さについては識別できないと考えられている{{Sfn|池田|2020|p=62}}。 |
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また、新規の課題を学習し解決することができる{{Sfn|池田|2020|p=63}}。例えば、密閉されたねじ蓋式のガラス瓶に入った餌を[[視覚]]で認識し、瓶の蓋をねじって餌を取ることができる{{Sfn|池田|2020|p=62}}。ほかにも、「回り道」が理解できる実験結果が得られている{{Sfn|池田|2020|p=64}}。チチュウカイマダコに餌のカニ入りガラス瓶がある部屋とカニ無し部屋の二枚のガラスの壁が提示され、通路を進み突き当りを曲がらなければ餌に辿り着けない状況が与えられた{{Sfn|池田|2020|p=64}}。29個体中8個体が初回の施行で餌まで到達できた{{Sfn|池田|2020|p=64}}。さらに、10回正解したタコに対し餌の瓶を煉瓦で遮蔽して課題を与えたところ、ガラス越しに餌を見ながら進み、同様に餌に辿り着くことができた{{Sfn|池田|2020|p=64}}。外科手術により片眼を除去すると誤った部屋に入ることや、振動や臭いの影響をなくした実験を行っても正しい部屋に辿り着けたことから、視覚情報を指標として課題を解決したことが示された{{Sfn|池田|2020|p=65}}。 |
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社会性行動を行う[[シドニーダコ]] {{Snamei||Octopus tetricus}} は、同種他個体を識別していると考えられている{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=121}}。飼育されているタコでは、人間の顔の見分けがついていると考えられる経験による実例がいくつか知られ、人間の行動に応じて状況を判断し、行動していると言われる{{Sfn|カレッジ|2014|p=136}}。[[シアトル水族館]]で飼われていたミズダコに対し、2週間「良い警官」役が餌を与え、「悪い警官」役が棒でいじめると、それに慣れたタコは前者には近寄ってきて餌をもらえる体勢を取ったのに対し、後者には敵意を示す体色を示したり、水を噴きかける行動を取るようになった{{Sfn|カレッジ|2014|p=138}} |
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=== 道具の使用 === |
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[[File:Octopus marginatus.jpg|thumb|300px|種類の異なる2枚の貝殻を組み合わせ、護身用として持ち歩く[[メジロダコ]]<br />[[東ティモール]]の[[ディリ県]]近海にて[[2006年]]撮影。]] |
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[[1998年]]には、[[インドネシア]]近海に棲息する[[メジロダコ]] {{Snamei||Amphioctopus marginatus}} が、人間が割って捨てた[[ココナッツ]]の殻を持ち運び、組み合わせて防御に使っていることが確認され、[[2009年]]12月、「無脊椎動物の中で[[道具]]を使っていることが判明した初めての例」として、[[二枚貝]]の[[貝殻]]や持ち運び可能な人工物を利用して身を守る様子が[[ジュリアン・フィン]]らにより[[イギリス]]の[[科学雑誌]]『カレント・バイオロジー ({{lang|en|''Current Biology''}}) 』で報告された{{Sfn|池田|2020|pp=81–82}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=154}}<ref>{{Cite journal2 |df=ymd |last1=Finn |first1=J. K. |last2=Tregenza |first2=T. |last3=Norman |first3=M. D. |date=2009|title=Defensive tool use in a coconut-carrying octopus|journal=Curr. Biol. |volume=19 |issue=23|pages=R1069–R1070|url=http://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(09)01914-9}}</ref><ref>{{cite news2 |df=ymd |title=Aussie scientists find coconut-carrying octopus |url=https://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5jfq6qUad8oMqjmm0UKjxvMrFGaaAD9CJIGO80 |first=Kristen |last=Gelineau |date=2009-12-15 |accessdate=2009-12-15 |publisher=The Associated Press}}</ref><ref>{{cite news2 |df=ymd |title=A tool-wielding octopus? This invertebrate builds armor from coconut halves |url=http://www.scientificamerican.com/blog/post.cfm?id=a-tool-wielding-octopus-this-invert-2009-12-14 |date=2009-12-14 |publisher=Scientific American |first=Katherine Harmon |last=Courage |archiveurl=https://web.archive.org/web/20091217043236/http://www.scientificamerican.com/blog/post.cfm?id=a-tool-wielding-octopus-this-invert-2009-12-14 |archivedate=2009-12-17}}</ref>(動物の道具使用については別項「[[文化 (動物)]]」も参照)。これは「タコの貝持ち行動」と呼ばれている二枚貝を用いて身を守る行動の転用だと考えられている{{Sfn|池田|2020|pp=81–82}}{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=265}}。二枚貝を用いる行動自体は[[イイダコ]] {{Snamei||Amphioctopus fangsiao|A. fangsiao}} において以前から知られていた{{Sfn|池田|2020|pp=81–82}}。 |
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=== 好奇心と遊び === |
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[[アリストテレス]]の『[[動物誌 (アリストテレス)|動物誌]]』には、タコは水の中に下ろした人の手の方に歩み寄ってくるため捕獲しやすく、「利口ではない」と記述されている{{Sfn|カレッジ|2014|p=144}}。この行動はアリストテレスが考えたように愚かであるわけではなく、その好奇心故に水中に現れた人間の手に興味を持ったことによる行動だと考えられている{{Sfn|カレッジ|2014|p=144}}。目新しいものが現れると、腕やその吸盤、口などで「調べる」行動をとる{{Sfn|カレッジ|2014|p=144}}。水中を泳ぐ人についても近づいて絡みつき、「身体検査」を行う{{Sfn|カレッジ|2014|p=144}}。 |
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好奇心には同種内でも個体差が存在する{{sfn|池田|2020|p=144}}。[[タムセン・デヴィッド]]が[[スミソニアン国立動物園]]のタコに様々なおもちゃを与えたところ、個体によってその好みが異なることが観察されている{{Sfn|カレッジ|2014|p=145}}。目新しいものにすぐ飽きてしまう個体もいれば、しばらく同じものにずっと興味を示す個体も存在する{{Sfn|カレッジ|2014|p=146}}。 |
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タコは「遊び」をすることが知られている{{Sfn|池田|2020|p=85}}。タコの遊びはジェニファー・メイザーとロナルド・アンダーソンにより[[ミズダコ]] {{snamei||Enteroctopus dofleini}} で最初に報告された{{Sfn|池田|2020|p=85}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=146}}<ref>{{Cite journal2 |df=ymd |last1=Mather |first1=J. A. |last2=Anderson|first2=R. C. |date=1999|title=Exploration, Play, and Habituation in Octopuses (''Octopus dofleini'')|journal=Journal of Comparative Psychology |volume=113|issue=3|pages=333–338|doi=10.1037/0735-7036.113.3.333}}</ref>。水槽内で飼育されていたミズダコが、自分の近くにある物体を漏斗から海水を噴出して吹き飛ばす行動をとった{{Sfn|池田|2020|p=85}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=146}}。飛ばされた物体が水槽内の水流によりタコの近くに戻ってくると、タコは再び海水を噴出した{{Sfn|池田|2020|p=85}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=146}}。この個体は何日も定期的に同じ行動をとっていた{{Sfn|カレッジ|2014|p=147}}。 |
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メイザーとミカエル・クバらにより、さらに高度な遊びが[[チチュウカイマダコ]] {{Snamei|ja|Octopus vulgaris|Octopus vulgaris}} で観察されている{{Sfn|池田|2020|p=85}}<ref>{{Cite journal2 |df=ymd |last1=Kuba |first1=M. J. |last2=Byrne|first2=R. A. |last3=Meisel|first3=D. V. |last4=Mather |first4=J. A. |title=When do octopuses play? Effects of repeated testing, object type, age, and food deprivation on object play in ''Octopus vulgaris''|journal=J. Comp. Psychol. |date=2006 |volume=120|issue=3|pages=184–190|doi=10.1037/0735-7036.120.3.184}}</ref>。タコに[[レゴブロック]]を与えると、それを掴んで移動したり、腕を使って近付けたり遠ざけたりする行動を繰り返す{{Sfn|池田|2020|p=86}}。タコはレゴブロックを餌とは認識せず、捕食や生残に関係なく「遊び」の行動をとる{{Sfn|池田|2020|p=86}}。日本の[[ソデフリダコ]]類似種「トロピダコ」 {{Snamei|'Octopus'}} {{la|aff.}} {{snamei|laqueus}} では、[[番 (動物学)|番]]でない2個体が抱き着いたり振り払ったりしてじゃれ合う様子が観察されている{{Sfn|池田|2020|pp=87–88}}。 |
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=== 睡眠 === |
=== 睡眠 === |
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タコは2つの睡眠段階を持ち、そのうちの1つは[[レム睡眠]]に相当することが発見された<ref name="nature">{{cite |
タコは2つの睡眠段階を持ち、そのうちの1つは[[レム睡眠]]に相当することが発見された<ref name="nature">{{cite journal |author=Shamini Bundell|url=https://www.nature.com/articles/d41586-023-02198-0 |title=First glimpses inside octopus’s sleeping brains reveals human-like patterns |journal=Nature Video |date=2023-06-30 |accessdate=2023-07-02| doi=10.1038/d41586-023-02198-0}}</ref><ref name="sciencedaily">{{cite web |url=https://www.sciencedaily.com/releases/2023/06/230628130356.htm |title=Octopus sleep is surprisingly similar to humans and contains a wake-like stage |author=Okinawa Institute of Science and Technology (OIST) Graduate University |date=2023-06-28 |accessdate=2023-07-02}}</ref><ref name="nature2">{{cite web |url=https://www.nature.com/articles/d41586-023-02169-5 |title=Do octopuses dream? Neural activity resembles human sleep patterns |author=Elizabeth Gibney |date=2023-06-28 |accessdate=2023-07-02}}</ref>。この段階では、タコは体色や筋肉の動きを変えることがあり、「夢」を見ている可能性がある<ref name="nature" /><ref name="sciencedaily" /><ref name="nature2" />。これはレム睡眠が認知能力や進化に関係する一般的な特徴である可能性を示唆している<ref name="nature" /><ref name="sciencedaily" /><ref name="nature2" />。 |
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=== 社会性 === |
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== 食物網における位置 == |
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[[File:Larger Pacific Striped Octopus.jpg|thumb|250px|社会性を持つと言われるオオシマダコ。]] |
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[[食物連鎖|食物網]]の中でのタコの位置(cf. [[生態ピラミッド]]、[[捕食-被食関係]])は、おおむね中間位の[[捕食|捕食者]]である。タコの[[天敵]]として最もよく知られているのは[[ウツボ]]であるが、[[サメ]]や[[鯛|タイ]]の仲間もタコを好む。しかしこの捕食-被食関係も一方的なものではなく、稀にではあるが、大型のタコが小型のサメを捕食することがある。また水族館では、[[ミズダコ]]が同じ[[水槽]]で飼われていた[[アブラツノザメ]]を攻撃し、死亡させた例もある<ref>{{Cite AV media ja |url=https://www.youtube.com/watch?v=RdILQ5BBg_8 |title=サメを喰らうミズダコ {{!}} ナショジオ |date=2020-04-17 |medium=YouTube |access-date=2023-11-29}}</ref><ref>{{Cite tweet ja|user=natgeotv_jp|author=ナショナル ジオグラフィック TV|number=1159237787452956674|title=サメを襲うタコ|date=2019-08-08|access-date=2023-11-29}}</ref>。 |
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[[アオリイカ]]などのイカが群れで行動し、社会性を持つのに対し{{Sfn|池田|2020|p=106}}、多くのタコは単独で行動する{{Sfn|カレッジ|2014|p=17}}{{Sfn|池田|2020|p=107}}。飼育されている[[マダコ]]では、等間隔に環状に配置された巣穴の鉢をある個体がずらすと、残りの個体はそれから遠ざかるようにずらし、再び鉢が等間隔に移動する行動が観察されている{{Sfn|池田|2020|p=109}}。しかし、種によっては社会性を示すものも知られている{{Sfn|池田|2020|p=110}}。 |
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[[マーティン・モイニハン]]と[[アラディオ・ロダニーチェ]]は、1982年、{{仮リンク|オオシマダコ|en|larger Pacific striped octopus}}{{Efn|{{En|larger Pacific striped octopus}}(大型の太平洋シマダコ)または {{En|Harlequin octopus}}(道化ダコ)という英名から、{{Harvtxt|池田|2020|p=110}} で用いられた和名。}}と呼ばれる未記載種が社会性を持つ例を報告した{{Sfn|池田|2020|p=110}}<ref>{{Cite book2|df=ymd |last=Moynihan |first=Martin|date=1982|title=The Behavior and Natural History of the Caribbean Reef Squid, ''Sepioteuthis Sepioidea'', With a Consideration of Social, Signal, and Defensive Patterns for Difficult and Dangerous Environments|publisher=P. Parey |isbn=9783489619369}}</ref>。オオシマダコは30–40匹が集団で生息し、1 m 程度の間隔を空けた巣穴で暮らしている{{Sfn|池田|2020|p=110}}。3つの巣穴を2匹が共同で利用している様子も見られた{{Sfn|池田|2020|p=110}}。 |
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他方、タコは[[甲殻類]]や[[二枚貝]]にとっての天敵であり、好んで捕食する傾向が強い。獲物に比して体格で勝るタコであれば、腕が持つ強靭な筋力によって甲殻類の殻を砕き、きつく閉じた二枚貝の殻をこじ開けることができる。 |
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また、[[シドニーダコ]]でも狭い範囲に多くの個体が巣穴を作っていることが観察され、[[デイビッド・シール]]や[[ピーター・ゴドフリー=スミス]]らにより報告されている{{Sfn|池田|2020|p=111}}<ref>{{Cite journal2 |df=ymd |last1=Scheel |first1=D. |last2=Chancellor |first2=S. |last3=Hing |first3=M. |last4=Lawrence |first4=M. |last5=Linquist |first5=S. |last6=Godfrey-Smith |first6=P. |date=2017 |title=A second site occupied by ''Octopus tetricus'' at high densities, with notes on their ecology and behavior |journal=Marine and Freshwater Behaviour and Physiology |volume=50|issue=4|pages=285–291|doi=10.1080/10236244.2017.1369851}}</ref>。巣穴外で他個体に遭遇した場合、互いに威嚇したりする[[社会的干渉]]が観察された{{Sfn|池田|2020|p=111}}。ゴドフリー=スミスはこの集団を「[[オクトポリス]] ({{En|Octopolis}})」と表現している{{Sfn|池田|2020|p=112}}{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=120}}。この種の別の集団はまた、「オクトランティス ({{en|Octlantis}})」と呼ばれている{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=125}}。 |
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人間もタコの天敵であるが、人間を見たことがない大型のタコは、潜水中の人<!--潜水士に限定はおかしい-->を[[威嚇]]したり、[[潜水士|ダイバー]]の[[レギュレータ (ダイビング)|レギュレーター]]に腕をからませ、結果としてダイバーの呼吸を阻害することもある。 |
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[[ソデフリダコ]] {{Snamei||Octopus laqueus|'Octopus' laqueus}} はタコ類では珍しく、水槽内で他個体間で身体を密着させる行動を示し、[[愛着行動]]の一種であると考えられている{{sfn|池田|2020|p=119}}。こういった行動は人為的にも引き起こされ、[[カリフォルニアツースポットダコ]] {{Snamei||Octopus bimaculoides}} は単独性が強いタコであるが、[[MDMA]]を投与すると行動が社会的なものに変化し、腕を伸ばして他個体に触れる行動を示した{{Sfn|池田|2020|pp=115–116}}<ref>{{Cite journal2 |df=ymd |last1= Edsinger |first1=E. |last2=Dölen|first2=Gül |title=A Conserved Role for Serotonergic Neurotransmission in Mediating Social Behavior in Octopus|journal=Current Biology|volume=28|issue=19|date=2018|pages=3136–3142|doi=10.1016/j.cub.2018.07.061}}</ref>。これは[[セロトニントランスポーター]]に MDMA が結合し、過剰に放出された[[セロトニン]]が同種他個体への強い関心を引き起こしたと解釈されている{{Sfn|池田|2020|pp=115–116}}。 |
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ほぼ全てのタコは毒を持っているが、人間には無害である{{sfn|Katherine|2014|p=72}}。ただし、[[マダコ]]の唾液はヒトにもかなりの毒性を発揮し、咬まれた場合は相当な期間、痛みが続くことがあるという。さらに[[ヒョウモンダコ]]属のタコは例外で、分泌腺内に住むバクテリアに由来する[[テトロドトキシン]]を持っており、人間でも噛まれると命を落とすことがある。解毒剤は見つかっていない{{sfn|Schweid|2014|p=179}}{{sfn|Katherine|2014|p=225}}。 |
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=== 発光と燐光 === |
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[[File:Callistoctopus macropus en colère (photo de nuit).jpg|thumb|250px|(発光ではなく)燐光する性質を持つ白点に覆われた[[シマダコ]]。[[レユニオン島]]にて。]] |
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現生種はヒゲダコ亜目、マダコ亜目の2亜目に大別される<ref>{{cite web|url=http://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=11718|title=Octopoda in WoRMS|accessdate=2014-1-12}}</ref>。300種類を超えるタコが見つかっているが、約半数は分類が確定しておらず{{Sfn|奥谷|2013|p=179}}、DNAを用いた[[分子系統学|分子系統分類]]が待たれる。 |
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イカは多くのものが発光し、約半数にあたる210種程度に知られているが、タコでは以下の3種しか知られておらず、何れも漂泳性である{{Sfn|奥谷|2013|p=14}}{{Sfn|大場|2015|pp=102–103}}。中層浮遊性のエビや魚類では([[カウンターシェーディング|カウンターイルミネーション]]を行うため{{Sfn|大場|2015|p=9}})発光するものが多いが、タコは底生のものが多いため、発光する種が少ないと考えられる{{Sfn|奥谷|2013|p=15}}。なお、タコに近縁な[[コウモリダコ]]では鰭の後ろに[[発光器]]を持つ{{Sfn|大場|2015|p=100}}。 |
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[[イイジマフクロダコ]](フクロダコ) {{Snamei||Bolitaena pygmaea}} の成熟雌の口の周りを[[過酸化水素]]で刺激すると発光する{{Sfn|奥谷|2013|p=14}}{{Sfn|大場|2015|p=103}}。イイジマフクロダコの発光器は黄緑色に光り、雄を誘引するためであると考えられている{{Sfn|大場|2015|p=103}}。同じ[[フクロダコ科]]の[[ナツメダコ]] {{snamei||Japetella diaphana}} でも、同じく雌の口の周りが[[ドーナツ]]状に発光する{{Sfn|大場|2015|p=103}}。このような発光器を持つのはこの2種のみである{{Sfn|大場|2015|p=103}}。 |
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=== ヒゲダコ亜目 === |
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ヒゲダコ亜目(有触毛亜目) {{sname||Cirrina}} <small>Grimpe, [[1916年|1916]] ''[[sensu]]'' [[w:Felley|Felley]] ''et al.'', [[2001年|2001]]</small> |
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* {{Sname||Cirroctopodidae}} - 1属4種 |
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* [[ヒゲダコ科]] {{sname||Cirroteuthidae}} - 3属6種 |
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* [[ジュウモンジダコ属]] {{sname||Grimpoteuthididae}} - [[ジュウモンジダコ]]等3属20種 |
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* [[メンダコ科]] {{sname||Opisthoteuthidae}} - [[メンダコ]]等1属20種 |
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また、[[ヒカリジュウモンジダコ]] {{Snamei||Stauroteuthis syrtensis}} では雌雄ともに吸盤が発光するという報告がある{{Sfn|奥谷|2013|p=15}}{{Sfn|大場|2015|p=102}}。刺激により、比較的明るい青緑色(最大波長 470 nm)の発光を行う{{Sfn|Johnsen ''et al.''|1999|pp=113–114}}{{Sfn|大場|2015|p=102}}。光は1–2秒おきに点滅したり、5分間発光し続けることが観察されている{{Sfn|大場|2015|p=102}}。雌雄ともに発光するのはタコで唯一である{{Sfn|大場|2015|p=102}}。 |
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=== マダコ亜目 === |
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マダコ亜目(無触毛亜目) {{sname||Incirrina}} <small>Grimpe, [[1916年|1916]] ''[[sensu]]'' Felley ''et al.'', [[2001年|2001]]</small> |
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* マダコ上科 {{Sname|Octopodoidea}} |
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** クラゲダコ科 {{Sname||Amphitretidae}} - [[クラゲダコ属]][[クラゲダコ]]、[[スカシダコ属]][[スカシダコ]]等5属7種 |
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** [[マダコ科]] {{sname||Octopodidae}} - [[マダコ]]、[[ミズダコ]]、[[イイダコ]]、{{仮リンク|メジロダコ|en|Octopus marginatus}}、[[ヒョウモンダコ]]、[[ミミックオクトパス|ゼブラオクトパス]]、等。 |
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* アオイガイ上科 {{Sname||Argonautoidea}} |
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** カンテンダコ科 {{Sname||Alloposidae}} - 1属1種 [[カンテンダコ]] |
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** [[アオイガイ科]] {{Sname||Argonautidae}} - 現生種は[[アオイガイ]](カイダコ)等1属4種 |
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** アミダコ科 {{Sname||Ocythoidae}} - 1属1種 [[アミダコ]] |
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** [[ムラサキダコ科]] {{Sname||Tremoctopodidae}} - 1属4種 [[ムラサキダコ属]] |
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発光ではなく[[燐光]]を発することは底生のタコ類で知られている{{Sfn|瀧|1999|p=354}}。[[シマダコ]] {{snamei||Callistoctopus ornatus}} は刺激を受けると燐光を発することが飼育水槽下で観察された{{Sfn|瀧|1999|p=354}}。燐光細胞を持っていると考えられ、生時は淡い虹色の斑紋として現れる{{Sfn|瀧|1999|p=354}}。 |
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== 食文化におけるタコ == |
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{{節スタブ}} |
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タコは手近で美味な[[タンパク質]]の供給源として、世界各地の沿岸地方で食用されている。[[ユダヤ教]]では食の規定[[カシュルート]]によって、タコは食べてはいけないとされる「[[鱗]]の無い魚」に該当する。[[イスラム教]]や[[キリスト教]]の一部の教派でも類似の規定によって、タコを食べることが[[タブー|禁忌]]に触れると考えられている。 |
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[[ヒョウモンダコ]]など小型で毒を持つ種も知られているが、これらは人間の生活に深く関わることはない。 |
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== 生活環 == |
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=== 発生 === |
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[[File:Fish3566 - Flickr - NOAA Photo Library.jpg|thumb|left|200px|タコの稚仔 (paralarva)。]] |
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[[ファイル:Octopuses in Tsukiji.JPG|thumb|260px|日本の[[築地市場]]に並べられたタコ([[茹で物|茹で蛸]])]] |
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[[卵割]]は[[部分卵割]]で、[[盤割]]を行う{{Sfn|瀧|1999|p=346}}。 |
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軟体動物は一般的に[[トロコフォア幼生]]や[[ベリジャー幼生]]を経て成体に成長するが、タコは直接親と似た姿の稚仔になる'''[[直達発生]]'''を行う{{Sfn|池田|2020|p=36}}{{Sfn|瀧|1999|p=349}}。タコの稚仔は[[一時プランクトン]]として生活し{{Sfn|池田|2020|p=36}}、このような稚仔を特に'''擬幼生'''(ぎようせい、{{En|paralarva}})という{{Sfn|土屋|2002|p=130}}{{Efn|これは Young & Harman (1988) により提唱された用語である{{Sfn|瀧|1999|p=349}}{{Sfn|奥谷|2013|p=20}}。{{En|paralarva}} は定訳がなく、パララーバ{{Sfn|奥谷|2013|p=20}}、稚仔、稚ダコ{{Sfn|土屋|2002|p=90}}、浮遊幼生{{Sfn|水口|出月|2016|p=76}}、仔稚期<ref>{{Cite journal ja|author=奥谷喬司 |title=頭足類の仔稚期 Paralarva とその周辺|journal=海洋と生物|volume=11|issue=3|pages=192–195|date=1989}}</ref>などとも訳される。}}。孵化したてのタコは腕は8本揃っているものの、外套膜長に対する相対的な腕の長さは短い{{Sfn|池田|2020|p=37}}。また、最初は1本の腕当り3個ずつしか吸盤を持たない{{Sfn|奥谷|1991|p=38}}。成長とともに次第に腕は伸長し、海底に着底する{{Sfn|池田|2020|p=37}}。マダコでは、孵化してから着底するまでに15–30日の期間を要する{{Sfn|池田|2020|p=37}}。 |
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タコは日本の食生活に深く根付いている。[[2000年]]前後の時代<!--「近年」は「WP:DATED」に抵触。-->には[[北アフリカ]]の[[モロッコ]]からの輸入が増加し、全体の6割を超えていたが、[[乱獲]]による生物量の減少を受けてたびたび禁漁が行われ([[2003年]]9月からの8ヶ月間、等)、他産地からの輸入が増加している<ref name="科技振.blog">[http://www.kagakunavi.jp/document/show/131/news かがくナビ]([[科学技術振興機構]]ブログ)</ref>。 |
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タコ類は多様な種が知られているが、日本では一般的に「タコ」と言えば、食用などで馴染み深い[[マダコ]]を指す場合が多い。日本人とタコの関係は古く、[[池上・曽根遺跡]]などの[[大阪府]]下の[[弥生時代]]の遺跡からは、[[蛸壺]]形の[[土器]]が複数出土している<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.kannousuiken-osaka.or.jp/zukan/station/osakawan/tako.html|title=大阪湾の生き物カタログ マダコ|publisher=大阪府立環境農林水産総合研究所|accessdate=2014-1-12}}</ref>。 |
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[[イイダコ]]や[[テナガダコ]]のように大きな卵を少数産む種では、孵化した稚仔はプランクトンを経ずそのまま匍匐生活に入る{{Sfn|土屋|2002|pp=129–130}}{{Sfn|奥谷|1991|p=39}}{{Sfn|大久保|1994|p=58}}。イイダコの稚仔は孵化直後でも1本の腕当り20個以上の吸盤を持つ{{Sfn|奥谷|1991|p=39}}。 |
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加熱調理されることが多く、多くの種は茹でると[[紅色|鮮紅色]]を呈する。[[料理]]では[[刺身]]、[[寿司]]、煮だこ、[[酢蛸]]、酢味噌あえ、[[おでん]]の具材などに用いられる。[[たこ焼き]]やその原形とされる[[玉子焼 (明石市)|明石焼き]]の具材としても親しまれている。また、[[瀬戸内海]]周辺地域などでは[[たこめし|蛸飯]]に供される。なお、下処理として表面のぬめりを取るために塩もみされることも多い。低カロリーで、[[タンパク質]]、特に[[タウリン]]が豊富である。また、[[亜鉛]]も多く含む。夏場のものが特に美味とされる。[[関西]]地方には、[[半夏 (仏教)|半夏]]<!--現状「半夏」は生薬「半夏」に飛び、不適当。-->{{efn|ここで言う「半夏」は[[仏教]][[専門用語|用語]]の「半夏(はんげ)」。90日にわたる[[安居|夏安居]](げあんご)の中間。45日目のことを言う。}}にタコを食べる習慣があるが、これはタウリンを補給して[[夏バテ]]を防ぐと言われる。秋口にメスの体内にある[[卵]]は[[アイボリー|象牙色]]の袋に包まれており、タコの袋児(ふくろご)と呼ばれ、[[煮る|煮付けて]]食べる。また、産卵後の卵はその形状から[[海藤花]](かいとうげ)と呼ばれ、[[塩漬け]]にする。なお、[[イカ]]の吸盤が環状に並んだ微細で鋭利な歯を持つのに対してタコの吸盤にはそれが無く、大きく肉付きも良いため、それ自体の食感が喜ばれる。この他、[[青森県]]の[[下北半島]]ではタコの内臓を茹でたものを「道具」の愛称で呼び、刺身や鍋の具などにして食べている<ref>『[[秘密のケンミンSHOW]]』の2015年2月5日放送分より。{{信頼性要検証|date=2016-01-14|title=事実確認の機能を欠く情報源}}</ref>。 |
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=== 生殖 === |
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タコの繊維は切れやすく、茹でる前に[[ダイコン]]で叩いたり[[日本酒]]に漬けておくと茹でた後も柔らかいままとなる。また、茹でる際[[茶葉]]をひとつまみ入れると臭みがとれるとされている<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.hakatanoshio.co.jp/contents/recommended-recipe/page_532.html|title=蛸(たこ)のゆで方|publisher=伯方塩業|accessdate=2017-1-6}}</ref>。 |
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{{Multiple image |
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|total_width=350 |
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|align=right |
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|image1=Hectocotylized arm of an octopod.jpg |
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|caption1=タコの交接腕の模式図<hr />ligule: 舌状片、calamus: 円錐体、succer: 吸盤。 |
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|image2=Argonauta bottgeri hectocotylus-2.jpg |
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|caption2=[[チヂミタコブネ]] {{snamei||Argonauta bottgeri}} の交接腕 |
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}} |
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タコは[[雌雄異体]]で、体の後部に単一の[[生殖巣]]を持つ{{Sfn|佐々木|2010|p=261}}{{Sfn|瀧|1999|p=341}}{{Sfn|大久保|1994|p=48}}。卵は大型であるため、発達した[[卵巣]]と[[精巣]]ははっきりと区別できる{{Sfn|佐々木|2010|p=261}}。 |
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==== 日本以外の東アジア、東南アジア ==== |
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[[大韓民国|韓国]]<!--北も含み「朝鮮」ではないの?-->、[[タイ王国|タイ]]では日常的な食材である。特に、[[テナガダコ]](Octopus minor)を生きたままぶつ切りにし、塩と[[ごま油|胡麻油]]および[[ゴマ|胡麻]]と和えて[[踊り食い]]にする[[サンナクチ]]({{lang-ko-short|산낙지}}(語義:活きたテナガダコ)、{{lang-en-short|sannakji}})は有名である。[[台湾]]や[[中華人民共和国|中国]]で消費されるタコは、大部分が現地の日本料理店や朝鮮料理店の食材であり、[[中華料理]]の伝統食に蛸料理は無い。 |
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[[輸精管]]は左側にのみある{{Sfn|佐々木|2010|p=261}}。[[輸卵管]]は無触毛亜目のタコでは対になるが{{Sfn|佐々木|2010|p=261}}、有触毛亜目のタコでは左側にしかない{{Sfn|佐々木|2010|p=262}}。輸卵管の末端には輸卵管腺が付属し、[[卵殻]]を分泌する{{Sfn|佐々木|2010|p=262}}。 |
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なお、中国や[[ベトナム]]は、乱獲によって漁獲量を減らしたモロッコに替わって日本向けの漁獲量を増やしている<ref name="科技振.blog"/>。 |
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雄の[[精子]]は、'''[[精包]]'''(精莢)として雌に渡される{{Sfn|佐々木|2010|p=262}}{{Sfn|土屋|2002|p=107}}。精包は精包腺からの分泌物で精子が固められて形成され、輸精管末端の[[精包嚢]](精莢嚢{{Sfn|広島大学生物学会|1971|loc=Plate 80}}、ニーダム嚢{{Sfn|佐々木|2010|p=262}})に貯蓄される{{Sfn|佐々木|2010|p=262}}{{Sfn|瀧|1999|p=342}}。集められた精包は陰茎から発射される{{Sfn|瀧|1999|p=342}}。精包は包膜の中に精子の塊が螺旋状に畳まれて入っており、受精時に飛び出す{{Sfn|佐々木|2010|p=263}}。 |
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==== インド、中東 ==== |
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[[File:Coucous au poulpe, Sayada, Tunisia.jpg|thumb|250px|[[チュニジア]]のタコの[[クスクス]]]] |
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[[インド]]ではタコを食べる文化は無い。[[ユダヤ教]]ではタコなど軟体動物を食べることが禁じられているため、[[イスラエル]]ではタコは食べない。[[イスラム圏]]では[[モルディブ]]、[[チュニジア]]、[[トルコ]]などでタコが食べられている。 |
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また、タコの雄は腕の1本が変形して[[交接腕]](生殖腕、{{En|hectocotylus}})となり{{Sfn|佐々木|2010|p=263}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=452b}}{{Sfn|奥谷|2013|p=16}}{{Sfn|池田|2020|p=21}}、先端に舌状片と円錐体(交接基、交接翮{{Sfn|広島大学生物学会|1971|loc=Plate 80}})を持つ{{Sfn|奥谷|1991|p=35}}{{Sfn|奥谷|2013|p=16}}。舌状片に至るまでには細く狭い溝が通っており、これを精莢溝(精溝{{Sfn|瀧|1999|p=344}}{{Sfn|広島大学生物学会|1971|loc=Plate 80}})という{{Sfn|奥谷|2013|p=16}}{{Sfn|奥谷|1991|p=35}}。この交接腕を雌の外套腔に挿入し、精包を渡す{{Sfn|佐々木|2010|p=263}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=452b}}{{Sfn|土屋|2002|p=107}}{{sfn|シュヴァイド|2014|p=19}}。この行動を'''交接'''という{{Sfn|池田|2020|p=21}}{{Sfn|土屋|2002|p=107}}{{Sfn|奥谷|1991|p=36}}。[[マダコ]]などでは右[[第3腕]]が交接腕となるが{{Sfn|佐々木|2010|p=263}}{{Sfn|窪寺|2014|p=51}}、[[オオメダコ]] {{snamei||Octopus megalops|'Octopus' megalops}} などでは左第3腕が交接腕となる{{Sfn|池田|2020|p=23}}。テナガダコは交接腕が匙状となることから、「しゃくしだこ」と呼ばれた{{Sfn|奥谷|2002|p=147}}。 |
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=== ヨーロッパ === |
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[[ファイル: Naxos port4.JPG|thumb|[[ナクソス島|ナクソス港]]の店先に吊されたタコ]] |
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[[ファイル:Octopus and Ouzo.jpg|thumb|タコの脚を使った[[メゼ]]と[[ウーゾ]]]] |
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南欧・地中海沿岸地域([[スペイン]]、[[イタリア]]、[[ポルトガル]]、[[ギリシア]]、[[プロヴァンス]]地方など[[フランス]]南部の一部)ではタコを伝統的な食品としている。ギリシア等の正教徒の多い地域の場合、[[東方正教会]]では[[正教会#斎(ものいみ)について|斎]]の間は肉を、[[大斎]]の際には魚をも食べるのを禁じてきたが、タコや[[イカ]]、貝類などは問題が無いとされてきたため、これらを使った伝統料理が多い。東地中海では[[メゼ]]としてグリルしたタコの足が出される。 |
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[[アオイガイ科]]、[[アミダコ科]]、[[ムラサキダコ科]]の交接腕は千切れ、雌の外套腔内に残される{{Sfn|佐々木|2010|p=263}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=452b}}{{Sfn|瀧|1999|p=343}}。そのため、[[アオイガイ]] {{Snamei|Argonauta argo}} の交接腕断片は[[寄生虫]]と誤解されて、1825年に[[ステファーノ・デッレ・チアジェ]]により {{snamei||Trichocephalus acetabularis}} として記載された{{Sfn|瀧|1999|p=343}}。同様に[[アミダコ]]の雌の体内に残された交接腕は[[ジョルジュ・キュヴィエ]]に[[寄生虫]]と誤解されて、1829年、[[ヘクトコチルス]] {{Snamei||Hectocotylus octopodis}} として「記載」された{{Sfn|佐々木|2010|p=263}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=452b}}{{Sfn|瀧|1999|p=343}}。 |
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一方、アルプス以北のヨーロッパ諸国では、漁業が盛んな局所をのぞいて、伝統的には食用にはされてこなかった。例えば[[ドイツ]]や[[スイス]]、[[フランス]]の大部分では、伝統料理にタコを見ることはまずない。また、イギリスでは「悪魔の魚 {{lang|en|devilfish}}」などと呼ばれ、避けられていたことは良く知られている。しかし、これらの地域でも、現代では南欧料理やアジアの料理(日本の寿司など)が入ってきており、タコを食べる機会は増えてきている。 |
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[[File:FMIB 48548 Egg capsules of A, Sepia elegans Org, and B, Octopus vulgaris Lam.jpeg|thumb|200px|[[ヨーロッパヒメコウイカ]] {{snamei||Sepia elegans}} (左、イカ類)と[[チチュウカイマダコ]] {{Snamei||Octopus vulgaris}} (右、タコ類)の卵塊。]] |
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=== アフリカ === |
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たいていのタコの雌は、生涯に1回のみ産卵し、卵が孵化したのちに死んでしまう{{Sfn|池田|2020|p=35}}{{Sfn|土屋|2002|p=90}}。人為的に卵塊を取り除くと抱卵している雌は死んでしまうことが経験則から知られており{{Sfn|大久保|1994|p=54}}、雌が抱卵する期間は「オーバータイム」であるとされる{{Sfn|奥谷|2013|p=21}}。卵サイズは種によって多様である{{Sfn|土屋|2002|p=128}}。卵は卵黄に富み、卵嚢に包まれる{{Sfn|佐々木|2010|p=263}}。卵殻には柄があって、房状の卵塊をまとめて産み付ける{{Sfn|佐々木|2010|p=263}}{{Sfn|池田|2020|p=35}}{{Sfn|土屋|2002|p=128}}。多くのタコの雌は、卵塊を岩棚などに産み付ける、基質産卵型の産卵を行う{{Sfn|池田|2020|p=35}}。この卵塊は藤の花序のように房状となり、'''[[海藤花]]'''と呼ばれる{{Sfn|土屋|2002|p=129}}{{Sfn|大久保|1994|p=52}}{{Sfn|瀬川|2013|p=130}}。これは江戸時代の儒者である[[梁田蛻巌]]によって名付けられたとされる{{Sfn|瀬川|2013|p=130}}。雌は卵塊を抱き、汚れを吸盤で掃除したり、海水を吹きかけたりして[[動物の子育て|世話]](抱卵)をする{{Sfn|池田|2020|p=35}}{{Sfn|大久保|1994|p=54}}。 |
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[[ファイル:Drying octopus.jpeg|thumb|250px|海辺で[[乾物]]加工されるタコ([[アフリカ大陸]]東岸、[[タンザニア]]の[[ペンバ島]]近隣のミサリ島)]] |
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[[ファイル:TAKOTSUBO.JPG|thumb|250px|木製の蛸箱<br />(日本、[[北海道]]稚内市宗谷漁港[[[宗谷岬]]])]]<!--「日本のタコ漁」に係る--> |
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<!--[[ファイル:Takotubo_akasi-si_PC012375.jpg|thumb|180px|[[蛸壺]]の並ぶ夕方の漁港<br />([[明石市]]、[[二見港]])]]--> |
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[[北アフリカ]]西部の[[モロッコ]]では1980年代後半から日本向け輸出産物として[[マダコ]]漁が盛んである。しかし、乱獲による漁獲量の減少が問題視されている<ref>[http://www.wwf.or.jp/activities/2009/09/623914.html 魚種別にみる水産資源の現状と問題/タコ WWFジャパン]</ref>。 |
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また、[[モーリタニア]]では[[1990年代]]半ば<!--「2009年の約13年前」を基に換算-->に日本企業の経済援助等によって港湾が整備され、以後、日本向け輸出用のマダコ漁が行われるようになった<ref name=TBS2009/>。日本のタコ壺漁の技法が導入されているものの、現地の一般消費者にはタコを食べる習慣が無く、タコについて問い合わせても通じないことが多い。現地の漁業関係者の間でタコは「プルプル」と呼ばれている<ref name=Maeno2017>{{Cite book|和書|author=前野ウルド浩太郎 |authorlink=前野ウルド浩太郎 |title=バッタを倒しにアフリカへ |publisher=[[光文社]] |year=2017 |page=246 |isbn=978-4-334-03989-9}}</ref>。モーリタニア産のタコはもっぱら日本で消費されている。[[2009年]](平成21年)時点で、日本にて消費されるタコの約7割がアフリカ産であり、そのうちの5割がモーリタニア産となっている<ref name=TBS2009>モーリタニア産、および、アフリカ産の割合については、[[TBSテレビ|TBS]]『[[情報7days ニュースキャスター]]』 2009年12月26日放送回に基づく。{{信頼性要検証|date=2016-01-14|title=事実確認の機能を欠く情報源}}</ref>。財務省が公表した2015年の貿易統計によれば、日本のタコ輸入先第1位はモーリタニアの36%、第2位はモロッコの34%、第3位は中国の16%となっている。 |
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漂泳性の[[ムラサキダコ]] {{snamei||Tremoctopus violaceus}} や[[ナツメダコ]] {{snamei||Japetella diaphana}} は基質産卵型ではなく、口を膜で覆って卵塊を腕で包み込み、保持し続ける{{Sfn|池田|2020|p=35}}{{Sfn|土屋|2002|p=88}}{{Sfn|土屋|2002|p=129}}{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=201}}。 |
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== 漁業 == |
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=== 漁法 === |
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狭い岩の隙間に潜り込む習性を利用した[[蛸壺]]、蛸箱漁業<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.fishexp.hro.or.jp/shidousyo/fishery/gyogyou/takohako/takohako.htm|title=北海道の漁業図鑑 たこ漁業 (たこ箱)|accessdate=2014-1-12}}</ref>は、タコ漁業独特のものである。 |
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;日本のタコ漁<!--日本限定の記述は区別あるべし。--> |
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日本には<!--朝鮮・中国などにもあるなら「日本」の節から繰り上げに。以下、イイダコ漁(遊漁含む)についても同様。-->餌をつけない[[針金]]で引っ掛ける「から釣り漁法」<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.fishexp.hro.or.jp/shidousyo/fishery/gyogyou/yanagikara/yanagikara.htm|title=(やなぎだこ空釣り縄))|accessdate=2014-1-12}}</ref>も存在する。空の蛸壺が浜辺に積まれている光景は、一部の地域では漁村景観の一つともなっている。また、[[イイダコ]]は白色を好む傾向が強く、[[ラッキョウ]]、豚肉の白身等の白色の物体に[[釣り針]]をつけ、それに抱きつくイイダコを釣る変形の[[ルアー]]釣りも有名である。 |
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タコには性差があることも多く、一般に雌の方が大型になる{{Sfn|佐々木|2010|p=263}}。[[ムラサキダコ]]では雌は全長56 cm であるが、[[矮雄|雄]]は3 cm より小さい{{Sfn|佐々木|2010|p=263}}。ムラサキダコの雄の交接腕は発達する{{Sfn|奥谷|1991|p=39}}。この'''[[性的二形]]'''は交接時に泳ぐ抵抗を減らし、捕食などのリスクを減らす効果があると説明される{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=205}}。[[アミダコ]] {{Snamei||Ocythoe tuberculata}} でも雌は全長52 cm であるが、雄は 16 cm 程度である{{Sfn|佐々木|2010|p=263}}。[[マダコ]]では、雄の成熟すると特定の吸盤が平たく大きくなり、雌と区別する特徴となる{{Sfn|土屋|2002|p=90}}。{{Snamei|Octopus vulgaris}} 種群の他の種である、[[チチュウカイマダコ]] {{Snamei|Octopus vulgaris}} や {{Snamei|Octopus americanus}} でも吸盤が大きくなるが、大きくなる吸盤の位置は異なる{{Sfn|Avendaño ''et al.''|2020|pp=909–925}}。 |
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=== 日本の陸揚げ漁港 === |
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第1種共同[[漁業権]]の対象魚種である。 |
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=== 寿命 === |
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* [[2002年]]度 |
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成長は迅速で、寿命も比較的短い{{Sfn|瀧|1999|p=351}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=232}}。これを形容し、「タコは太く短く生きる」{{Sfn|カレッジ|2014|p=232}}や"{{en|live fast die young}}". と言われる{{Sfn|池田|2020|p=38}}。 |
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: 第1位 - [[松川浦漁港]]([[福島県]][[相馬市]]) |
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: 第2位 - [[宗谷漁港]]([[北海道]][[稚内市]][[宗谷岬]]) |
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変温動物であるタコは取り込んだエネルギーを成長に回すことができるため、成長は非常に早い{{Sfn|カレッジ|2014|p=82}}。[[瀬戸内海]]の[[マダコ]]では生後4か月で体重が1 kg、1–2年後には3 kg にまで成長する{{Sfn|カレッジ|2014|p=83}}。最大の種であるミズダコも、米粒サイズの幼生期から3–5年で腕を広げた長さが3.6 m にも達する{{Sfn|カレッジ|2014|p=83}}。ワモンダコの稚仔では毎日4%ずつ体重が増加し、8.6 kg にも達する{{Sfn|カレッジ|2014|p=83}}。[[ピグミー・オクトパス]] {{Snamei||Paroctopus digueti}} では0.04 g から 40 g まで1000倍に成長する{{Sfn|カレッジ|2014|p=84}}。 |
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: 第3位 - [[落石漁港]](北海道[[根室市]]落石) |
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: 第4位 - [[八戸漁港]]([[青森県]][[八戸市]]) |
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タコでは[[平衡石]]を用いた年齢推定が行えないため、一部の種を除いて、どれくらい生きるのかはわかっていないことが多い{{Sfn|奥谷|2013|p=21}}{{Sfn|池田|2020|p=38}}{{Sfn|土屋|2002|p=86}}。タコの平衡石は層の重なり方が魚と比べて不規則であるためである{{sfn|カレッジ|2014|p=258}}。{{Snamei||Octopus pallidus|'Octopus' pallidus}} や[[ワモンダコ]] {{snamei||Octopus cyanea|'O.' cyanea}} を用いた研究により、外套膜に埋没する棒状軟骨(貝殻)に日縞が見られることが分かり、これを用いた齢査定が行われている{{Sfn|池田|2020|p=38}}。その他、飼育や統計学的な手法でも推定されている{{Sfn|土屋|2002|p=86}}。 |
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: 第5位 - [[庶野漁港]](北海道[[幌泉郡]][[えりも町]]庶野) |
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熱帯性のものより寒冷性のものが長寿であるという傾向が知られている{{Sfn|土屋|2002|p=86}}。タコ類の寿命は[[マダコ]] {{Snamei||Octopus sinensis}} は1年から1年半、熱帯性のワモンダコで1年など、1年とされることが多い{{Sfn|土屋|2002|p=86}}。それに対し、[[ミズダコ]]は2–3年と推定されている{{Sfn|土屋|2002|p=86}}。更に高緯度深海性の[[ホッキョクワタゾコダコ]] {{Snamei||Bathypolypus arcticus}} では産卵するまで約4年、寿命は5年程度だと考えられている{{Sfn|土屋|2002|p=86}}。飼育下の[[チチュウカイマダコ]] {{Snamei|ja|Octopus vulgaris|O. vulgaris}} では、ドイツの[[水族館]][[シー・ライフ]]で飼育された[[パウル (タコ)|パウル]]の3年などの例がある{{Sfn|池田|2020|p=39}}。 |
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== 分類と系統 == |
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=== 分類群名と学名 === |
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一般的な分類体系では、タコ類は全て'''八腕形目'''(はちわんけいもく){{Sname|Octopoda}} という[[目 (分類学)|目]]に含まれる{{Sfn|佐々木|2010|p=56}}{{Sfn|池田|2020|p=16}}。目の和名は'''八腕目'''{{Sfn|瀧|1935|pp=141–145}}{{Sfn|佐々木|2010|p=54}}、'''タコ目'''{{Sfn|大場|2015|p=102}}ともされる。古くは「八脚類」とも表記された{{Sfn|池田|1890|pp=479–482}}ただし、腕に触毛を持つ有触毛亜目を除いたタコからなる単系統群、無触毛亜目について {{Sname|Octopoda}} の名前が使われることもある{{Sfn|Kröger ''et al.''|2011}}{{Sfn|Sanchez ''et al.''|2018|ps=: e4331}}。 |
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また、八腕形目は[[コウモリダコ目]] {{sname||Vampyromorpha}} と合わせて、[[八腕形上目]] {{Sname||Octopodiformes}}(八腕型上目、八腕形類{{Sfn|佐々木|2010|p=54}})という単系統群を構成する{{Sfn|池田|2020|p=15}}。 |
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=== 系統関係 === |
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分子系統解析と化石記録に基づいた、{{Harvtxt|Kröger ''et al.''|2011}} による頭足類の系統樹を示す{{Efn|ただし、{{Harvtxt|Kröger ''et al.''|2011}} では八腕形上目の学名は {{sname||Vampyropoda}}、有触毛亜目は {{sname||Cirroctopoda}}、無触毛亜目は {{Sname||Octopoda}} となっている。また下記では、近年の分子系統解析で分離されるヒメイカ目を分離している。}}。[[多分岐]]となっている部分の系統関係は解けておらず、用いるデータセットや解析方法により、様々な分岐順序の系統樹が得られている。八腕類と十腕類はそれぞれ単系統群であるが、内部の系統関係やさまざまな化石鞘形類との類縁関係は十分に理解されていない。 |
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{{Clade |
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|label1=[[頭足綱]] |
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|sublabel1={{Sname||Cephalopoda}} |
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|1={{Clade |
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|1=[[絶滅|†]][[エレスメロケラス目]] {{Sname||Ellesmerocerida}} |
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|2=†[[オンコケラス目]] {{Sname||Oncocerida}} |
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|3={{Clade |
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|label1=[[オウムガイ亜綱]] |
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|sublabel1={{sname||Nautloidea}} |
|||
|1=[[オウムガイ目]] {{sname||Nautilida}} |
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|2={{clade |
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|1=†[[直角石目]] {{sname||Orthocerida}} |
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|2={{clade |
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|1=†[[アンモナイト亜綱]] {{sname||Ammonoidea}} |
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|2={{clade |
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|1=†[[バクトリテス目]] {{sname||Bactritida}} |
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|2=†{{sname||Hematitida}} |
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|3=†{{sname||Donovaniconida}} |
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|4=†{{sname||Aulacocerida}} |
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|label5=[[鞘形亜綱]] |
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|sublabel5={{Sname||Coleoidea}} |
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|5={{clade |
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|label1=[[八腕形上目]] |
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|sublabel1={{Sname||Octopodiformes}} |
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|1={{clade |
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|1=[[コウモリダコ目]] {{sname||Vampyromorpha}} |
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|label2='''八腕形目''' |
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|sublabel2={{sname||Octopoda}} |
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|2={{clade |
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|1=[[有触毛亜目]] {{sname||Cirrata}} |
|||
|2=[[無触毛亜目]] {{Sname||Incirrata}} |
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}} |
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}} |
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|2=†[[フラグモテウチス目]] {{sname||Phragmoteuthida}} |
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|3=†[[ベレムナイト目]] {{sname||Belemnitida}} |
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|4=†{{Sname||Diplobelida}} |
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|label5=[[十腕形上目]] |
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|sublabel5={{sname||Decabrachia}} |
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|5={{clade |
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|1=[[開眼目]] {{sname||Oegopsida}} |
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|2=[[閉眼目]] {{sname||Myopsida}} |
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|3=[[コウイカ目]] {{Sname||Sepiida}} |
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|4=[[ダンゴイカ目]] {{Sname||Sepolida}} |
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|5=[[ヒメイカ目]] {{Sname||Idiosepiida}} |
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|6=[[トグロコウイカ目]] {{Sname||Spirulida}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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=== 下位分類 === |
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現生種は'''有触毛亜目'''と'''無触毛亜目'''の2亜目に大別される{{Sfn|佐々木|2010|p=56}}<ref>{{cite web|url=http://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=11718|title=Octopoda in WoRMS|accessdate=2014-1-12}}</ref>。250種{{Sfn|池田|2020|p=17}}から300種類を超えるタコが見つかっているが、未記載種も多く{{Sfn|土屋|2002|p=87}}、約半数は分類が確定していない{{Sfn|小野|2013|p=179}}。 |
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以下、{{Harvtxt|Sanchez ''et al.''|2018}} による分子系統樹を示す。ほかの解析では、[[有触毛亜目]]や[[カイダコ上科]]が単系統群となる結果も得られている。 |
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{{Clade |
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|label1=八腕形目 |
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|sublabel1={{Sname||Octopoda}} |
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|1={{clade |
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|1={{Clade |
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|1={{clade |
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|barbegin1=black |
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|barlabel1= [[有触毛亜目]] {{sname||Cirrata}} |
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|1=[[ヒゲダコ科]] {{sname||Cirroteuthidae}} |
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|2={{sname||Stauroteuthidae}} |
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|barend2=black |
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}}}} |
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|2={{clade |
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|1={{clade |
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|barbegin1=black |
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|barlabel1= 有触毛亜目 {{sname||Cirrata}} |
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|1=[[メンダコ科]] {{sname||Opisthoteuthidae}} |
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|2={{sname||Cirroctopodidae}} |
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|barend2=black |
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}} |
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|label2=無触毛亜目 |
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|sublabel2={{Sname||Incirrata}} |
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|2={{clade |
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|1={{sname||Eledonidae}} |
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|2={{clade |
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|1={{clade |
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|barbegin1=green |
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|barlabel1=[[カイダコ上科]] {{Sname||Argonautoidea}} |
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|barend2=green |
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|1=[[ムラサキダコ科]] {{Sname||Tremoctopodidae}} |
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|2=[[カンテンダコ科]] {{Sname||Alloposidae}} |
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}} |
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|2={{clade |
|||
|1={{clade |
|||
|1=[[フクロダコ科]] {{Sname||Bolitaenidae}} |
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|2={{clade |
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|1=[[スカシダコ科]] {{sname||Vitreledonellidae}} |
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|2=[[クラゲダコ科]] {{Sname||Amphitretidae}} |
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}} |
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}} |
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|2={{clade |
|||
|1={{Sname||Megaleledonidae}} |
|||
|2={{clade |
|||
|1=[[マダコ科]] {{sname||Octopodidae}} |
|||
|2={{clade |
|||
|1={{clade |
|||
|barbegin1=blue |
|||
|barlabel1="Megaleledonidae" |
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|barend2=blue |
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|1={{Snamei||Velodona}} |
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|2={{Snamei||Thaumeledone}} |
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}} |
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|2={{clade |
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|1={{sname||Bathypolypodidae}} |
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|2={{clade |
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|1=[[ミズダコ科]] {{sname||Enteroctopodidae}} |
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|2={{clade |
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|barbegin1=green |
|||
|barlabel1=[[カイダコ上科]] {{Sname||Argonautoidea}} |
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|barend2=green |
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|1=[[アミダコ科]] {{Sname||Ocythoidae}} |
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|2=[[アオイガイ科]] {{Sname||Argonautidae}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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==== 有触毛亜目 ==== |
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[[File:Expn3476.jpg|thumb|250px|水深3,874 m から見つかった[[ヒゲナガダコ]] {{snamei||Cirrothauma murrayi}}([[ヒゲダコ属]])]] |
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[[File:Opisthoteuthis depressa Sunshine3.jpg|thumb|250px|[[メンダコ]] {{Snamei||Opisthoteuthis depressa}}([[メンダコ属]])]] |
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{{see|有触毛亜目}} |
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'''有触毛亜目'''{{Sfn|佐々木|2010|p=56}}(有触毛類{{Sfn|瀧|1970|pp=72–73}}{{Sfn|奥谷|1988|p=254}})は、腕に吸盤だけでなく触毛の列を持つ特徴がある{{Sfn|佐々木|2010|p=56}}。何れも[[深海]]棲で、寒天質の体からなる{{Sfn|佐々木|2010|p=56}}。外套膜の側方に鰭を持ち、有鰭亜目{{Sfn|池田|2020|p=16}}(有鰭類{{Sfn|奥谷|1988|p=254}})とも呼ばれる。{{Harvtxt|Sanchez ''et al.''|2018}} による[[分子系統解析]]の結果、有触毛亜目は側系統群であることが示唆されていたが{{Sfn|Sanchez ''et al.''|2018|ps=: e4331}}、多くの種と遺伝子を含めたその後の解析では、再び単系統性が支持されている{{Sfn|Taite ''et al.''|2023|ps=: 107729}}。 |
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学名は研究者によりさまざまなものが用いられる。{{Harvtxt|瀧|1935}}、{{Harvtxt|土屋|2002}} や {{Harvtxt|佐々木|2010}} では、{{sname||Cirrata}} {{small|{{AUY|Grimpe|1916}}}} が用いられる。{{Harvtxt|Strugnell ''et al.''|2013}} でも {{sname||Cirrata}} の学名が用いられるが、階級は目に置かれる。{{Harvtxt|Sanchez ''et al.''|2018}} では目の階級に置かれ、{{Sname||Cirromorphida}} という学名が用いられる。{{Harvtxt|Kröger ''et al.''|2011}} では {{Sname||Cirroctopoda}} {{small|{{AUY|Young|1989}}}} が用いられる。 |
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以下、科や属は {{Harvtxt|Verhoeff|2023}} に基づく。学名の[[著者名の引用 (動物学)|著者]]等は {{Harvtxt|Hochberg ''et al.''|2016}} に基づく。 |
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;'''有触毛亜目''' {{sname||Cirrata}} {{small|{{AUY|Grimpe|1916}}}} |
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* 上科 {{Sname||Cirroteuthoidea}} {{small|{{AUY|Verhoeff|2023}}}} |
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** [[ヒゲダコ科]]{{Sfn|窪寺|2017|p=1143}}{{Sfn|佐々木|2010|p=56}}(ヒゲナガダコ科{{Sfn|瀧|1999|p=374}}) {{sname||Cirroteuthidae}} {{Small|{{AUY|Keferstein|1866}}}} |
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*** [[ヒゲダコ属]]{{Sfn|佐々木|2010|p=250}} {{Snamei||Cirrothauma}} {{Small|{{AUY|Chun|1911}}}} - [[ヒゲナガダコ]] {{Snamei||Cirrothauma murrayi|C. murrayi}}{{Sfn|土屋|2002|p=135}} |
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*** {{snamei||Cirroteuthis}} {{Small|{{AUY|Eschricht|1836}}}} - {{Snamei||Cirroteuthis muelleri|C. muelleri}}{{Sfn|Verhoeff|2023|pp=175–196}} |
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*** {{Snamei||Stauroteuthis}} {{Small|{{AUY|Verrill|1879}}}} - [[ヒカリジュウモンジダコ]] {{Snamei||Stauroteuthis syrtensis|S. syrtensis}}{{Sfn|大場|2015|p=102}}<ref name="natgeo_2024-05"/>{{Efn|かつては {{Sname||Stauroteuthidae}} {{Small|{{AUY|Grimpe|1916}}}} と呼ばれる科を構成していたが、{{Harvtxt|Verhoeff|2023}} ではヒゲダコ科に内包される。また、{{Harvtxt|瀧|1999}} ではこの種が「ジュウモンジダコ」と呼ばれた{{Sfn|瀧|1999|p=374}}。そのためこの科は和名ではジュウモンジダコ科と呼ばれたが{{Sfn|瀧|1999|p=374}}{{Sfn|窪寺|2013|p=269}}{{Sfn|佐々木|2010|p=56}}、ジュウモンジダコが {{Snamei||Grimpoteuthis hippocrepium}} を指す和名となり{{Sfn|窪寺|2013|p=269}}、[[ジュウモンジダコ属]]は {{snamei||Grimpoteuthis}} を指す<ref name="natgeo_2024-05"/>和名となったため、ジュウモンジダコ属やジュウモンジダコが所属しないにも拘わらずジュウモンジダコ科と呼ばれていた。}} |
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* 上科 {{Sname||Opisthoteuthoidea}} {{small|{{AUY|Verhoeff|2023}}}} |
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** [[メンダコ科]]{{Sfn|窪寺|2017|p=1144}}{{Sfn|佐々木|2010|p=56}} {{sname||Opisthoteuthidae}} {{Small|{{AUY|Verrill|1896}}}} |
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*** [[メンダコ属]] {{Snamei||Opisthoteuthis}} {{Small|{{AUY|Verrill|1883}}}} - [[メンダコ]] {{Snamei||Opisthoteuthis depressa|O. depressa}}、[[オオメンダコ]] {{Snamei||Opisthoteuthis californiana|O. californiana}}、[[センベイダコ]] {{Snamei||Opisthoteuthis japonica|O. japonica}}、[[オオクラゲダコ]] {{Snamei||Opisthoteuthis albatrossi|O. albatrossi}}{{Sfn|窪寺|2017|p=1144}}{{Sfn|土屋|2002|p=135}} |
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** 科 {{sname||Grimpoteuthididae}}{{Efn|{{Harvtxt|Sanchez ''et al.''|2018}} ではジュウモンジダコ属 {{Snamei|Grimpoteuthis}} と {{snamei||Luteuthis}} はメンダコ科に内包されるが、{{Harvtxt|Piertney ''et al.''|2003}} では、ジュウモンジダコ属 {{Snamei|Grimpoteuthis}} と {{snamei||Luteuthis}}、{{snamei||Enigmatiteuthis}} の3属が {{sname||Grimpoteuthidae}} に含められた{{Sfn|Collins|Villaneuva|2006|p=293}}{{Sfn|Piertney ''et al.''|2003|pp=348–353}}。{{snamei||Enigmatiteuthis}} は {{Snamei|Grimpoteuthis}} に内包される{{Sfn|Verhoeff|2023|pp=175–196}}。}} |
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*** [[ジュウモンジダコ属]]<ref name="natgeo_2024-05"/> {{snamei||Grimpoteuthis}} {{Small|{{AUY|Verrill|1883}}}} - [[ジュウモンジダコ]] {{Snamei||Grimpoteuthis hippocrepium|G. hippocrepium}}{{Sfn|窪寺|2013|p=269}}{{Sfn|窪寺|2017|p=1144}} |
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*** {{Snamei||Luteuthis}} {{Small|{{AUY|O'Shea|1999}}}} - {{Snamei||Luteuthis dentatus|L. dentatus}}{{Sfn|Verhoeff|2023|pp=175–196}} |
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*** {{Snamei||Cryptoteuthis}} {{Small|{{AUY|Collins|2004}}}} - {{Snamei|Cryptoteuthis brevibracchiata|C. brevibracchiata}}{{Sfn|Verhoeff|2023|pp=175–196}} |
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** 科 {{Sname||Cirroctopodidae}} {{Small|{{AU|Collins}} & {{AUY|Villanueva|2008}}}} |
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*** {{Snamei||Cirroctopus}} {{Small|{{AUY|Naef|1923}}}} - {{Snamei||Cirroctopus glacialis|C. glacialis}}、{{Snamei||Cirroctopus mawsoni|C. mawsoni}}{{Sfn|Verhoeff|2023|pp=175–196}} |
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==== 無触毛亜目 ==== |
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[[File:Japetella diaphana2.jpg|thumb|300px|[[ナツメダコ]] {{snamei||Japetella diaphana}}([[フクロダコ科]])]] |
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[[File:Enteroctopus dolfeini.jpg|thumb|300px|[[カリフォルニア州]]の海中に生息する[[ミズダコ]] {{Snamei||Enteroctopus dolfeini}}([[ミズダコ科]])]] |
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[[File:Octopus (Graneledone boreopacifica) Monterey Bay National Marine Sanctuary (43101889980).jpg|thumb|300px|水深1,972 m で発見された[[ホクヨウイボダコ]] {{snamei||Graneledone boreopacifica}}([[イボダコ属]])]] |
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[[File:Eledone schultzei.jpg|thumb|300px|{{snamei||Eledone schultzei}}([[ジャコウダコ属]])]] |
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'''無触毛亜目'''{{Sfn|佐々木|2010|p=56}}{{Sfn|瀧|1999|p=374}}(無触毛類{{Sfn|瀧|1970|pp=72–73}}{{Sfn|奥谷|1988|p=254}})は、無毛亜目{{Sfn|瀧|1935|pp=141–145}}{{small|または}}無鰭亜目{{Sfn|池田|2020|p=16}}(無鰭類{{Sfn|奥谷|1988|p=254}})ともよばれ、腕に触毛を持たない{{Sfn|佐々木|2010|p=56}}。普通目にするタコは無触毛亜目の[[マダコ科]]に属するものが殆どである{{Sfn|佐々木|2010|p=56}}。かつては底生のタコは全てマダコ科であるとされていたが{{Sfn|奥谷|1994|p=38|loc=第2章}}、分子系統解析の結果単系統群ではないことが分かり、分割されている{{Sfn|Strugnell ''et al.''|2013|pp=215–235}}。[[上部白亜系]]の[[ムカシダコ]]{{Sfn|瀧|1970|pp=72–73}} {{snamei||Palaeoctopus}} は無触毛亜目の側系統群とされる{{Sfn|Sutton ''et al.''|2016|pp=297–307}}。{{Harvtxt|瀧|1935}}、{{Harvtxt|土屋|2002}} や {{Harvtxt|佐々木|2010}} では、{{sname||Incirrata}} {{small|{{AUY|Grimpe|1916}}}} が用いられる。{{Harvtxt|Strugnell ''et al.''|2013}} でも {{sname||Incirrata}} の学名が用いられるが、階級は目に置かれる。{{Harvtxt|Kröger ''et al.''|2011}} では {{Sname||Octopoda}} が用いられる。{{Harvtxt|Sanchez ''et al.''|2018}} でも目の階級に置かれ、{{Sname||Octopodida}} という学名が用いられる。 |
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以下、分類体系は主に {{Harvtxt|Strugnell ''et al.''|2013}} に基づく{{Efn|{{Harvtxt|Sanchez ''et al.''|2018}}、{{Harvtxt|Ibáñez ''et al.''|2020}} および {{Harvtxt|Leite ''et al.''|2021}} による情報も加味している。}}。学名の[[著者名の引用 (動物学)|著者]]等は {{Harvtxt|Norman ''et al.''|2016}} に基づく。 |
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;[[無触毛亜目]] {{sname||Incirrata}} {{small|{{AUY|Grimpe|1916}}}} |
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* [[マダコ上科]] {{Sname|Octopodoidea}} {{Small|{{AUY|d'Orbigny|1839}}}} |
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** [[クラゲダコ科]]{{Sfn|窪寺|2017|p=1144}} {{Sname||Amphitretidae}} {{Small|{{AUY|Hoyle|1886}}}}{{Efn|クラゲダコ科に含まれる3亜科は{{Harvtxt|瀧|1999}} や {{Harvtxt|窪寺|2013}}、{{Harvtxt|Norman ''et al.''|2016}} のように、旧来はクラゲダコ科、[[スカシダコ科]] {{Sname||Vitreledonellidae}} {{Small|{{AUY|Robson|1932}}}}、[[フクロダコ科]]{{Sfn|窪寺|2017|p=1144}} {{Sname||Bolitaenidae}} {{Small|{{AUY|Chun|1911}}}} と独立した科として扱われ、 {{Harvtxt|Sanchez ''et al.''|2018}} でも踏襲されていたが、{{Harvtxt|Strugnell ''et al.''|2013}} 以降の研究ではスカシダコ科、フクロダコ科を内包した1科として扱われることが多い{{Sfn|Strugnell ''et al.''|2013|pp=215–235}}{{Sfn|Ibáñez ''et al.''|2020|pp=1–13}}{{Sfn|Taite ''et al.''|2023|ps=: 107729}}。この広義のクラゲダコ科は櫛歯族 {{sname||Ctenoglossa}} と呼ばれることもあった{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=216}}{{Sfn|瀧|1999|p=337}}{{Sfn|Strugnell ''et al.''|2013|pp=215–235}}。}} |
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*** <!-- クラゲダコ -->亜科 {{Sname||Amphitretinae}} {{Small|{{AUY|Hoyle|1886}}}} |
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**** [[クラゲダコ属]] {{snamei||Amphitretus}} {{Small|{{AUY|Hoyle|1885}}}} - [[クラゲダコ]] {{Snamei||Amphitretus pelagicus|A. pelagicus}}{{Sfn|窪寺|2017|p=1144}}、[[テナガヤワラダコ]] "{{Snamei||Idioctopus gracilipes|I. gracilipes}}"{{Efn|[[テナガヤワラダコ科]] {{sname||Idioctopodidae}} {{Small|{{AUY|Iw. Taki|1962}}}} [[テナガヤワラダコ属]] {{snamei||Idioctopus}} {{Small|{{AUY|Iw. Taki|1962}}}} を内包し、クラゲダコとテナガヤワラダコは同種とされることもある<ref>{{Cite web|url=https://marinespecies.org/urmo/aphia.php?p=taxdetails&id=341433|title=''Idioctopus'' Iw. Taki, 1962|website=UNESCO-IOC Register of Marine Organisms (URMO)|accessdate=2024-08-27}}</ref>。}} |
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*** <!-- フクロダコ -->亜科 {{Sname||Bolitaeninae}} {{Small|{{AUY|Chun|1911}}}} |
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**** {{Snamei||Bolitaena}} {{Small|{{AUY|Steenstrup|1859}}}} (={{Snamei||Eledonella}}) - [[イイジマフクロダコ]](サヤナガフクロダコ{{Sfn|瀧|1999|p=377}}) {{Snamei||Bolitaena pygmaea|B. pygmaea}}{{Efn|フクロダコ{{Sfn|瀧|1999|p=377}} {{snamei|Bolitaena microcotyla}} はシノニム<ref>{{Cite web|url=https://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=1259152|title=''Bolitaena microcotyla'' Steenstrup, 1886|website=WoRMS|accessdate=2024-08-09}}</ref>。}} |
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**** {{Snamei||Japetella}} {{Small|{{AUY|Hoyle|1885}}}} - [[ナツメダコ]] {{Snamei||Japetella diaphana|J. diaphana}}{{Sfn|瀧|1999|p=377}} |
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*** <!-- スカシダコ -->亜科 {{Sname||Vitreledonellinae}} {{Small|{{AUY|G. C. Robson|1932}}}} |
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**** [[スカシダコ属]] {{Snamei||Vitreledonella}} {{Small|{{AUY|Joubin|1918}}}} - [[スカシダコ]] {{Snamei||Vitreledonella richardi|V. richardi}}{{Sfn|瀧|1999|p=377}} |
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** [[マダコ科]]{{Sfn|窪寺|2017|p=1145}} {{sname||Octopodidae}} {{Small|{{AUY|d'Orbigny|1840}}}} |
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*** [[マダコ属]] {{Snamei||Octopus}} {{Small|{{AUY|Cuvier|1797}}}} - [[マダコ]] {{Snamei||Octopus sinensis|O. sinensis}}{{Sfn|吉郷|2024|pp=36–43}}、[[チチュウカイマダコ]] {{Snamei||Octopus vulgaris|O. vulgaris}}{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=152}}、[[マヤダコ]] {{Snamei||Octopus maya|O. maya}}{{Sfn|土屋|2002|p=94}}、[[シドニーダコ]] {{snamei||Octopus tetricus|O. tetricus}}{{Sfn|池田|2020|p=111}}、[[ブラジル・リーフ・オクトパス]] {{snamei||Octopus insularis|O. insularis}}{{Sfn|Leite ''et al.''|2008|pp=63–74}}{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=101}}、[[ウデブトダコ]] {{Snamei||Octopus briareus|O. briareus}}{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=261}}{{Sfn|Leite ''et al.''|2021|p=6}}、{{Sfn|窪寺|2013|p=218}}{{Efn|かつては[[イイダコ]]や[[テナガダコ]]など、本項で[[マダコ科]]とされる属の多くがマダコ属に含まれ、本項ではミズダコ科に置かれる[[ミズダコ]]でさえこの属に入れられていたが、分子系統解析の結果[[多系統]]であることが明らかとなった{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=40}}。そのため分割され、{{Harvtxt|Norman ''et al.''|2016}} などでは、マダコ近縁種群のみを含む属として扱われる{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=40}}。しかし、このように取り扱うと、分子データのない種がどの属に含まれるか分からないほか、分類学的取扱いがなされていない種が生じるため、{{Harvtxt|Norman ''et al.''|2016}} では所属不明の旧マダコ属を {{Snamei|'Octopus'}} と表記している{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=40}}。}} |
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*** [[イイダコ属]]{{Sfn|吉郷|2024|pp=36–43}} {{Snamei||Amphioctopus}} {{Small|{{AUY|Fischer|1882}}}} - [[イイダコ]] {{Snamei|en|Amphioctopus fangsiao|A. fangsiao}}{{Sfn|窪寺|2013|p=229}}、[[イイダコモドキ]] {{Snamei|en|Amphioctopus ovulum|A. ovulum}}{{Sfn|窪寺|2013|p=231}}、[[ヨツメダコ]] {{Snamei|en|Amphioctopus areolatus|A. areolatus}}{{Sfn|窪寺|2013|p=230}}、[[スナダコ]] {{Snamei|en|Amphioctopus kagoshimensis|A. kagoshimensis}}{{Sfn|窪寺|2013|p=228}}、[[メジロダコ]] {{Snamei|en|Amphioctopus marginatus|A. marginatus}}{{Sfn|窪寺|2013|p=232}}、[[ベニツケダコ]] {{Snamei|en|Amphioctopus mototi|A. mototi}}{{Sfn|窪寺|2013|p=233}} |
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*** [[ヒョウモンダコ属]]{{Sfn|瀧|1999|p=378}} {{Snamei||Hapalochlaena}} {{Small|{{AUY||}}}} - [[ヒョウモンダコ]] {{Snamei|en|Hapalochlaena fasciata|H. fasciata}}{{Sfn|瀧|1999|p=379}}、[[オオマルモンダコ]] {{Snamei|en|Hapalochlaena lunulata|H. lunulata}}{{Sfn|瀧|1999|p=378}}{{Sfn|土屋|2002|p=136}}、[[コマルモンダコ]] {{Snamei|en|Hapalochlaena maculosa|H. maculosa}}{{Sfn|瀧|1999|p=378}} |
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*** {{Snamei||Ameloctopus}} {{Small|{{AUY|Norman|1992}}}} - {{Snamei||Ameloctopus|A. litoralis}}<ref>{{Cite journal2 |df=ymd |last=Norman |first=M. D. |date=1992 |title=''Ameloctopus litoralis'' gen. et sp. nov. (Cephalopoda: Octopodidae), a new shallow-water octopus from tropical Australian waters |journal=Invertebrate Taxonomy |volume=6 |pages=567–582|doi=10.1071/it9920567}}</ref> |
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*** {{Snamei||Cistopus}} {{Small|{{AUY|[[ジョン・エドワード・グレイ|Gray]]|1849}}}} - [[インドダコ]] {{Snamei|en|Cistopus indicus|C. indicus}}{{Sfn|瀧|1999|p=378}} |
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*** [[カクレダコ属]]{{Sfn|金子|窪寺|2007|pp=38–43}} {{Snamei||Abdopus}} {{Small|{{AU|Norman}} & {{AUY|Finn|2001}}}} - [[カクレダコ]] {{snamei||Abdopus abaculus|A. abaculus}}{{Sfn|金子|窪寺|2007|pp=38–43}}、[[ウデナガカクレダコ]] {{Snamei||Abdopus aculeatus|A. aculeatus}}{{Sfn|金子|窪寺|2007|pp=38–43}} |
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*** [[マクロトリトプス属]]{{Sfn|奥谷|1994|p=79}} {{Snamei||Macrotritopus}} {{Small|{{AUY|Grimpe|1922}}}} - [[アトランティック・ロングアーム・オクトパス]] {{Snamei||Macrotritopus defilippi|M. defilippi}}{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=30}} |
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*** {{Snamei||Thaumoctopus}} {{Small|{{AU|Norman}} & {{AUY|Hochberg|2005}}}} - [[ミミックオクトパス]] {{snamei||Thaumoctopus mimicus|T. mimicus}}{{Sfn|窪寺|2017|p=1148}} |
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*** {{Snamei||Wunderpus}} {{Small|{{AU|Hochberg}}, {{AU|Norman}} & {{AUY|Finn|2006}}}} - [[ブンダープス]]{{sfn|モンゴメリー|2024|p=29}}{{Efn|ワンダーパス{{Sfn|カレッジ|2014|p=86}}、ワンダーパス・オクトパス{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=247}}とも。}} {{snamei||Wunderpus photogenicus|W. photogenicus}} |
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*** [[シマダコ属]]{{Sfn|瀧|1999|p=379}}(テナガダコ属{{Sfn|倉持|倉持|2019|pp=110–112}}) {{Snamei||Callistoctopus}} {{Small|{{AUY|Iw. Taki|1964}}}} - [[サメハダテナガダコ]] {{Snamei||Callistoctopus luteus|C. luteus}}{{Sfn|窪寺|2013|p=225}}、[[シマダコ]] {{Snamei||Callistoctopus ornatus|C. ornatus}}{{Sfn|窪寺|2013|p=224}}、[[ヒラオリダコ]] {{Snamei||Callistoctopus aspilosomatis|C. aspilosomatis}}{{Sfn|池田|2020|p=127}}、[[テナガダコ]] {{Snamei||Octopus minor|C. minor}}{{Sfn|窪寺|2013|p=226}}{{Efn|{{Harvtxt|Norman ''et al.''|2016}} では {{Snamei|'Octopus' minor}} とされるが、{{Harvtxt|Kaneko ''et al.''|2011}} および {{Harvtxt|Ibáñez ''et al.''|2020}} によりシマダコ属に内包されることが示されている。}}、[[テギレダコ]] {{Snamei|nl|Octopus mutilans|C. mutilans}}{{Sfn|窪寺|2013|p=227}}{{Sfn|吉郷|2024|pp=36–43}}{{Efn|テギレダコは {{Harvtxt|土屋|2002}} ではカクレダコ属 {{snamei||Abdopus}} に含められ、{{Snamei|Abdopus mutilans}} とされた。{{Harvtxt|Norman ''et al.''|2016}} では {{Snamei|'Octopus' mutilans}} とされる{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=213}}。}}、[[タイセイヨウテナガダコ]] {{snamei||Callistoctopus macropus|C. macropus}}{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=106}}<ref>{{Cite web|url=https://jamarc.fra.affrc.go.jp/database/zukan/c/c-2/c-m058/c-232.htm|title=タイセイヨウテナガダコ(新称)|website=デジタル図鑑 スリナム・ギアナ沖の甲殻類および軟体類|publisher=国立研究開発法人 水産研究・教育機構 開発調査センター|accessdate=2024-09-15}}</ref> |
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*** [[パロクトプス属]]{{Sfn|奥谷|1994|p=39}}{{Efn|かつてミズダコは {{snamei|Paroctopus}} に分類されたため、この属がミズダコ属と呼ばれたこともある{{Sfn|瀧|1999|p=378}}。}} {{Snamei||Paroctopus}} {{Small|{{AUY|Naef|1923}}}} - [[ピグミー・オクトパス]] {{Snamei||Paroctopus digueti|P. digueti}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=84}}、[[カリビアン・ドワーフ・オクトパス]] {{snamei|Paroctopus mercatoris|P. mercatoris}}{{Sfn|Leite ''et al.''|2021|p=6}}{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=156}}、[[メキシコマメダコ]] {{snamei||Paroctopus joubini|P. joubini}}{{Sfn|Leite ''et al.''|2008|pp=63–74}}{{sfn|シュヴァイド|2014|p=10}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://jamarc.fra.affrc.go.jp/database/zukan/c/c-2/c-m058/c-233.htm|title=メキシコマメダコ(新称)(Joubin's octopus)|website=デジタル図鑑 スリナム・ギアナ沖の甲殻類および軟体類|publisher=国立研究開発法人 水産研究・教育機構 開発調査センター|accessdate=2024-09-16}}</ref>{{Efn|ほかにも日本近海の大卵性のクモダコ、ヤナギダコやオオメダコ、エンドウダコなどがこの属に分類されたが{{Sfn|窪寺|2013|pp=235–239}}、{{Harvtxt|Norman ''et al.''|2016}} などではこれらは除外されている{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=159}}。}} |
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*** {{Snamei||Macroctopus}} {{Small|{{AUY|Robson|1928}}}} - [[マオリタコ]] {{Snamei||Macroctopus maorum|M. maorum}}{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=79}} |
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*** {{Snamei||Robsonella}} {{Small|{{AUY|Adam|1938}}}} - {{snamei||Robsonella fontanianus|R. fontanianus}}{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|pp=166–167}} |
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*** {{Snamei||Grimpella}} {{Small|{{AUY|Robson|1928}}}} - {{Snamei||Grimpella|G. thaumastocheir}}{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=135}} |
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*** {{Snamei||Pinnoctopus}} {{Small|{{AUY|d'Orbigny|1845}}}} |
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*** [[イッカクダコ属]]{{Sfn|瀧|1999|p=378}} {{Snamei||Scaeurgus}} {{Small|{{AUY|Troschel|1857}}}} - [[イッカクダコ]] {{Snamei||Scaeurgus patagiatus|S. patagiatus}}{{Sfn|窪寺|2013|p=243}}{{Sfn|窪寺|2017|p=1149}}{{Efn|{{Harvtxt|瀧|1999}} ではイッカクダコは {{Snamei||Scaeurgus unicirrhus}} とされた{{Sfn|瀧|1999|p=378}}。}} |
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*** {{Snamei||Pteroctopus}} {{Small|{{AUY|Fischer|1882}}}}{{Efn|{{Harvtxt|Strugnell ''et al.''|2013}}、{{Harvtxt|Sanchez ''et al.''|2018}} および {{Harvtxt|Leite ''et al.''|2021}} では解析に含まれていないが、{{Harvtxt|Norman ''et al.''|2016}} に認められている。また、{{Harvtxt|Sánchez-Márquez ''et al.''|2022}} の解析には含まれ、イッカクダコ属に近縁だとされる{{Sfn|Sánchez-Márquez ''et al.''|2022|pp=221–239}}。}}(=[[ヤワハダダコ属]] {{snamei|Berrya}}{{Efn|{{Harvtxt|瀧|1999}} ではヤワハダダコ属は {{snamei|Berrya}} とされた{{Sfn|瀧|1999|p=379}}。}}) - [[ヤワハダダコ]] {{Snamei||Pteroctopus hoylei|P. hoylei}}{{Sfn|窪寺|2013|p=241}}、[[セビロダコ]] {{Snamei||Pteroctopus eurycephala|P. eurycephala}}{{Sfn|窪寺|2013|p=240}}{{Efn|{{Harvtxt|瀧|1999}} では[[セビロダコ属]] {{snamei|Sasakinella}} に属し、{{snamei|Sasakinella eurycephala}} とされた{{Sfn|瀧|1999|p=379}}。}} |
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*** {{Snamei|'Octopus'}} - かつてはマダコ属とされたが、マダコ近縁種ではない種を表現するために {{Harvtxt|Norman ''et al.''|2016}} などにより行われている便宜的な表記。[[ワモンダコ]] {{Snamei||Octopus cyanea|'O.' cyanea}}{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=196}}、[[アナダコ]] {{Snamei||Octopus oliveri|'O.' oliveri}}{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=213}}、[[マメダコ]] {{Snamei||Octopus parvus|'O.' parvus}}{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=214}}{{Sfn|窪寺|2013|p=213}}、[[マツバダコ]] {{snamei||Octopus sasakii|'O.' sasakii}}{{Efn|{{Harvtxt|Norman ''et al.''|2016}} には収録されないが、日本では認識され{{Sfn|窪寺|2013|p=216}}、独自のニハイチュウ相を持つ{{Sfn|古屋|2020|pp=3–12}}。}}、[[ソデフリダコ]] {{Snamei||Octopus laqueus|'O.' laqueus}}{{Sfn|Leite ''et al.''|2021|p=6}}{{Sfn|窪寺|2013|p=217}}、[[コツブハナダコ]] {{Snamei||Octopus wolfi|'O.' wolfi}}{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=215}}{{Sfn|窪寺|2013|p=219}}、[[ツノナガコダコ]] {{Snamei||Octopus diminutus|'O.' diminutus}}{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=209}}{{Sfn|窪寺|2013|p=221}}、[[ナギサアナダコ]] {{Snamei||Octopus incella|'O.' incella}} |
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** [[ミズダコ科]]{{Sfn|吉郷|2024|pp=36–43}} {{Sname||Enteroctopodidae}} {{Small|{{AUY|Strugnell ''et al.''|2013}}}}{{efn|旧来マダコ科に含まれていたが、{{Harvtxt|Strugnell ''et al.''|2013}} により独立させられた{{Sfn|吉郷|2024|pp=36–43}}。}} |
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*** [[ミズダコ属]] {{Snamei||Enteroctopus}} {{Small|{{AU|Rochebrune}} & {{AUY|Mabille|1889}}}} - [[ミズダコ]] {{Snamei||Enteroctopus dofleini|E. dofleini}}、[[サザン・レッド・オクトパス]] {{snamei||Enteroctopus megalocyathus|E. megalocyathus}}{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=8}} |
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*** {{Snamei||Muusoctopus}} {{Small|{{AUY|Gleadall|2004}}}}(=[[チヒロダコ属]]{{Sfn|瀧|1999|p=379}} {{Snamei||Benthoctopus}}{{Efn|{{Harvtxt|窪寺|2013}} では下記の種は全て {{Snamei||Benthoctopus}} とされるが、この属は命名上の問題から {{Harvtxt|Gleadall|2004}} により {{Snamei||Muusoctopus}} が設立され、{{Harvtxt|Gleadall ''et al.''|2010}} により多くの種が本属に置き換えられた。}}) - [[チヒロダコ]] {{Snamei||Muusoctopus profundorum|M. profundorum}}{{Sfn|窪寺|2013|p=249}}、[[エゾダコ]] {{Snamei||Muusoctopus hokkaidensis|M. hokkaidensis}}{{Sfn|窪寺|2013|p=250}}、[[スミレダコ]] {{Snamei||Muusoctopus violescens|M. violescens}}{{Sfn|窪寺|2013|p=253}}{{Efn|{{Harvtxt|Gleadall ''et al.''|2010}} によりエゾダコの[[新参異名]](ジュニアシノニム)とされたが、日本では普通独立種として扱われる{{Sfn|窪寺|2013|p=253}}{{Sfn|窪寺|2017|p=1150}}{{Sfn|土屋|2002|p=136}}。}}、[[クロダコ]] {{Snamei||Muusoctopus fuscus|M. fuscus}}{{Sfn|窪寺|2013|p=252}}、[[キシュウチヒロダコ]] {{snamei||Muusoctopus abruptus|M. abruptus}}{{Sfn|窪寺|2013|p=251}}{{Efn|MolluscaBase は {{Harvtxt|Gleadall ''et al.''|2010}} を引用し、{{snamei|Muusoctopus abruptus}} は {{snamei|Muusoctopus abruptus}} に組み替えられたとするが<ref>{{Cite web|和書|url=https://molluscabase.org/aphia.php?p=sourcedetails&id=145429|title=source details: Gleadall I.G., Guerrero-Kommritz J., Hochberg F.G. & Laptikhovsky V.V. (2010) The inkless octopuses (Cephalopoda: Octopodidae) of the Southwest Atlantic. ''Zoological Science'' '''27''':528-553.|website=MolluscaBase |accessdate=2024-09-14}}</ref>、{{Harvtxt|Gleadall ''et al.''|2010}} では言及されない。}} |
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*** {{Snamei||Vulcanoctopus}} {{Small|{{AUY|González ''et al.''|1998}}}} - [[ボルケーノ・オクトパス]]{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=247}}(ウルカノクトプス・ヒュドロテルマリス{{Sfn|カレッジ|2014|p=21}}) {{snamei||Vulcanoctopus|V. hydrothermalis}}{{Efn|分子系統解析に基づくと、[[チヒロダコ属]] {{Snamei||Benthoctopus}} (={{Snamei||Muusoctopus}}) に内包される<ref>{{Cite journal2 |df=ymd |last1=Strugnell |first1=J, |last2=Voight |first2=J.R. |last3=Collins |first3=P.C. |last4=Allcock |first4=A.L. |date=2009|title=Molecular phylogenetic analysis of a known and a new hydrothermal vent octopod: their relationship with the genus ''Benthoctopus'' (Cephalopoda: Octopodidae) |journal=Zootaxa |volume=2096 |pages=442–459|doi=10.11646/zootaxa.2096.1.27}}</ref>。}} |
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*** {{Snamei||Sasakiopus}} {{Small|{{AUY|Jorgensen|2009}}}} - [[ワタゾコダコ]] {{Snamei||Sasakiopus salebrosus|S. salebrosus}} |
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*** {{Snamei|'Octopus'}} - 上記の旧マダコ属において、{{Harvtxt|Kaneko ''et al.''|2011}} および {{Harvtxt|Ibáñez ''et al.''|2020}} によりミズダコ科と示唆されているものと、その近縁種をここに示す{{Efn|以下の種は何れも、かつてはパロクトプス属 {{Snamei|Paroctopus}} とされていた。[[パロクトプス属]]も参照。}}。[[アマダコ]] {{snamei||Octopus hongkongensis|'O.' hongkongensis}}{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=210}}、[[ヤナギダコ]] {{Snamei||Octopus conispadiceus|'O.' conispadiceus}}、[[クモダコ]] {{Snamei||Octopus longispadiceus|'O.' longispadiceus}}{{Sfn|Gleadall|2004|pp=99–112}}、[[オオメダコ]] {{snamei||Octopus megalops|'O.' megalops}}、[[エンドウダコ]] {{Snamei||Octopus yendoi|'O.' yendoi}}、[[ツノモチダコ]] {{snamei||Octopus tenuicirrus|'O.' tenuicirrus}}{{Efn|{{Harvtxt|Norman ''et al.''|2016}} ではアマダコ {{snamei|'Octopus' hongkongensis}} のシノニムとされるが{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=210}}、日本では普通独立種とされ{{Sfn|窪寺|2013|p=220}}、宿主特異性を持つニハイチュウ相も異なる{{Sfn|古屋|2020|pp=3–12}}。}} |
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** {{sname||Bathypolypodidae}} {{Small|{{AUY|G. C. Robson|1929}}}} |
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*** {{Snamei||Bathypolypus}} {{small|{{AUY|Grimpe|1921}}}}{{Efn|ワタゾコダコ {{Snamei||Sasakiopus salebrosus}} が {{Snamei||Bathypolypus}} 属に所属していたときは、本属がワタゾコダコ属と呼ばれた{{Sfn|瀧|1999|p=379}}。}} - [[ホッキョクワタゾコダコ]] {{Snamei||Bathypolypus arcticus|B. arcticus}}{{Sfn|窪寺|峯水|2014|p=256}}、[[オグラグンパイダコ]] {{Snamei||Bathypolypus rubrostictus|B. rubrostictus}}{{Sfn|窪寺|2013|p=248}}、[[コシキワタゾコダコ]] {{Snamei||Bathypolypus validus|B. validus}}{{Sfn|土屋|2002|p=136}}{{Efn|ただし、{{Harvtxt|Norman ''et al.''|2016}} では、[[佐々木望 (動物学者)|佐々木望]]の記載したコシキワタゾコダコ {{Snamei|Polypus validus}} {{Small|{{AUY|[[佐々木望 (動物学者)|Sasaki]]|1920}}}}(={{Snamei||Bathypolypus validus}} ({{Small|{{AUY|[[佐々木望 (動物学者)|Sasaki]]|1920}}}})) はホッキョクワタゾコダコとワタゾコダコのどちらに近いのかはさらなる研究が必要とされる。}} |
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** {{Sname||Megaleledonidae}} {{Small|{{AUY|Iw. Taki|1961}}}}{{Efn|多系統であることが示唆されている{{Sfn|Sanchez ''et al.''|2018|ps=: e4331}}。別の解析では単系統となることもある{{Sfn|Díaz-Santana-Iturrios ''et al.''|2019|ps=: e8118 }}。}} |
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*** [[オオイチレツダコ属]]{{Sfn|窪寺|奥谷|1993|pp=70–71}}(オオヒトエダコ属{{Sfn|瀧|1999|p=379}}) {{snamei||Megaleledone}} {{Small|{{AUY|Iw. Taki|1961}}}} - [[オオイチレツダコ]] {{Snamei||Megaleledone setebos|M. setebos}}{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|pp=148–149}} |
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*** {{Snamei||Adelieledone}} {{Small|{{AU|Allcock}}, {{AU|Hochberg}}, {{AU|Rodhouse}} & {{AUY|Thorpe|2003}}}} |
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*** [[ナンキョクイチレツダコ属]]{{Sfn|窪寺|奥谷|1993|pp=70–71}} {{Snamei||Pareledone}} {{Small|{{AUY|Robson|1932}}}} - [[パレレドネ・トゥルクエティ]] {{Snamei||Pareledone turqueti|P. turqueti}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=21}} |
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*** {{Snamei||Praealtus}} {{Small|{{AU|Allcock}}, {{AU|Collins}}, {{AU|Piatkowski}} & {{AUY|Vecchione|2004}}}} - {{snamei||Praealtus|P. paralbida}}{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=162}} |
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*** [[イボダコ属]]{{Sfn|窪寺|奥谷|1993|pp=70–71}}{{Sfn|窪寺|2013|p=255}} {{Snamei||Graneledone}} {{Small|{{AUY|Joubin|1918}}}} - [[ホクヨウイボダコ]] {{snamei||Graneledone boreopacifica|G. boreopacifica}}{{Sfn|窪寺|2013|p=254}}{{Sfn|窪寺|2017|p=1150}}、[[サンリクイボダコ]]{{Sfn|窪寺|2017|p=1150}} |
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*** {{Snamei||Thaumeledone}} {{Small|{{AUY|Robson|1930}}}}{{Efn|{{Harvtxt|Sanchez ''et al.''|2018}} では科を構成するほかの属とは異なる系統で、{{Snamei||Velodona}} と姉妹群をなすことが示唆されている{{Sfn|Sanchez ''et al.''|2018|ps=: e4331}}。別の解析では、オオイチレツダコ属と姉妹群をなすこともある{{Sfn|Díaz-Santana-Iturrios ''et al.''|2019|ps=: e8118 }}。}} - {{Snamei||Thaumeledone brevis|T. brevis}}{{Sfn|瀧|1999|p=379}} |
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*** {{Snamei||Velodona}} {{Small|{{AUY|Chun|1915}}}}{{Efn|{{Harvtxt|Sanchez ''et al.''|2018}} では科を構成するほかの属とは異なる系統で、{{Snamei||Thaumeledone}} と姉妹群をなすことが示唆されている{{Sfn|Sanchez ''et al.''|2018|ps=: e4331}}。別の解析では、本属と {{Snamei||Adelieledone}} を除くほかの {{Sname||Megaleledonidae}} をまとめたクレードと姉妹群をなす{{Sfn|Díaz-Santana-Iturrios ''et al.''|2019|ps=: e8118 }}。}} - {{Snamei||Velodona togata|V. togata}}{{Sfn|瀧|1999|p=379}} |
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** [[ジャコウダコ科]]{{Sfn|守安|1984|pp=189–192}} {{Sname||Eledonidae}} {{Small|{{AUY|Rochebrune|1884}}}} |
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*** [[ジャコウダコ属]]<ref>{{Cite report|和書|url=https://openjicareport.jica.go.jp/pdf/11130713_01.pdf |title=トルコ共和国水産資源調査報告書|date=1993-11|publisher=[[国際協力事業団]]|accessdate=2024-08-07}}</ref> {{snamei||Eledone}} {{Small|{{AUY|[[:en:William Elford Leach|Leach]]|1817}}}} - [[ジャコウダコ]] {{Snamei||Eledone moschata|E. moschata}}{{Sfn|瀧|1999|p=379}}、[[イチレツダコ]] {{snamei||Eledone cirrhosa|E. cirrhosa}}{{Sfn|守安|1984|pp=189–192}}、{{snamei||Eledone schultzei|E. schultzei}}{{Efn|{{Harvtxt|Strugnell ''et al.''|2013}} の解析には {{Snamei||Aphrodoctopus}} {{Small|{{AU|Roper}} & {{AUY|Mangold|1992}}}} が含まれるが、{{Harvtxt|Norman ''et al.''|2016}} では {{snamei||Eledone}} に内包され、{{snamei||Aphrodoctopus schultzei}} は {{snamei||E. schultzei}} として収録される{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=121}}。}} |
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* [[カイダコ上科]] {{Sname||Argonautoidea}} {{Small|{{AUY|Cantraine|1841}}}}{{Efn|{{Harvtxt|Sanchez ''et al.''|2018}} では側系統であることが示唆されている。}} |
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** [[アオイガイ科]]{{Sfn|佐々木|2010|p=56}}(カイダコ科{{Sfn|窪寺|2017|p=1150}}) {{Sname||Argonautidae}} {{Small|{{AUY|Tryon|1879}}}} |
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*** [[アオイガイ属]](カイダコ属){{snamei||Argonauta}} {{Small|{{AUY|Linnaeus|1758}}}} - [[アオイガイ]] {{snamei||Argonauta argo|A. argo}}、[[タコブネ]] {{snamei||Argonauta hians|A. hians}}、[[チヂミタコブネ]] {{snamei||Argonauta boettgeri|A. boettgeri}}{{Sfn|土屋|2002|p=136}}{{Efn|{{Harvtxt|Norman ''et al.''|2016}} では {{snamei||Argonauta boettgeri}} は {{snamei|A. hians}} のシノニムとされる{{Sfn|Norman ''et al.''|2016|p=232}}。}}、[[チリメンアオイガイ]] {{snamei||Argonauta nodosus|A. nodosus}}{{Sfn|荒俣|1994|p=255}} |
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** [[アミダコ科]]{{Sfn|窪寺|2017|p=1150}}{{Sfn|佐々木|2010|p=56}} {{Sname||Ocythoidae}} {{Small|{{AUY|[[ジョン・エドワード・グレイ|Gray]]|1849}}}} |
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*** [[アミダコ属]] {{Snamei||Ocythoe}} {{Small|{{AUY|Rafinesque|1814}}}} - [[アミダコ]] {{Snamei||Ocythoe tuberculata|O. tuberculata}}{{Sfn|土屋|2002|p=136}} |
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** [[カンテンダコ科]]{{Sfn|窪寺|2017|p=1150}} {{Sname||Alloposidae}} {{Small|{{AUY|Verrill|1881}}}} (={{Sname||Haliphronidae}}{{Sfn|窪寺|2017|p=1150}} {{Small|{{AUY|Hochberg ''et al.''|1992}}}}) |
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*** [[カンテンダコ属]]{{Sfn|窪寺|2017|p=1150}} {{Snamei||Haliphron}} {{Small|{{AUY|Steenstrup|1859}}}} (={{snamei||Alloposus}}) - [[カンテンダコ]] {{Snamei||Haliphron atlanticus|H. atlanticus}}{{Sfn|瀧|1999|p=380}} |
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** [[ムラサキダコ科]]{{Sfn|窪寺|2017|p=1150}}{{Sfn|佐々木|2010|p=56}} {{Sname||Tremoctopodidae}} {{Small|{{AUY|Tryon|1879}}}} |
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*** [[ムラサキダコ属]] {{snamei||Tremoctopus}} {{Small|{{AUY|Delle Chiaje|1830}}}} - [[ムラサキダコ]] {{snamei||Tremoctopus violaceus|T. violaceus}}{{Sfn|土屋|2002|p=136}} |
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=== 化石記録 === |
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[[File:Muensterella_scutellaris_348.jpg|thumb|300px|ジュラ紀の {{snamei||Muensterella scutellaris}} の化石。]] |
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これまでに記載されている最古の化石記録は、[[ジュラ紀]]のものである{{Sfn|Fuchs|Günter|2018|pp=203–217}}{{Sfn|Fuchs ''et al.''|2019|pp=31–92}}。 |
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[[中部ジュラ系]][[カロビアン]]階の[[オックスフォード]]粘土層 ([[:en:Oxford Clay|Oxford Clay Fm.]]) から {{snamei||Muensterellina johnjagti}} や {{Snamei||Pearceiteuthis buyi}} などが記載されている{{Sfn|Fuchs ''et al.''|2019|pp=31–92}}。それよりやや後の[[上部ジュラ系]][[キンメリッジアン]]階の{{仮リンク|ヌスプリンゲン|de|Nusplingen}}石灰岩 ([[:en:Nusplingen Limestone|Nusplingen Plattenkalk]]) からは、{{snamei||Patelloctopus ilgi}} が記載されている{{Sfn|Fuchs|Günter|2018|pp=203–217}}。 |
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また、[[白亜紀]]の[[ムカシダコ科]] {{Sname||Palaeoctopodidae}} がよく知られる{{Sfn|瀧|1999|p=374}}。[[ムカシダコ]] {{snamei||Palaeoctopus newboldi}} は[[レバノン]]の[[上部白亜系]]の[[石灰岩]]から知られ、現生の両亜目の中間的な形質状態であるとされる{{Sfn|瀧|1999|p=374}}。同じくレバノンのムカシダコ科にはほかに[[ケウピア]] {{snamei||Keuppia}} が知られ、墨汁嚢の痕跡が観察される{{Sfn|Fuchs ''et al.''|2009|pp=65–81}}{{Sfn|土屋|2023|pp=130–131}}。また同じ産地から[[マダコ科]]とされる[[スティレトオクトプス]] {{Snamei||Styletoctopus}} が発見されており、腕の筋肉組織が保存されている{{Sfn|Fuchs ''et al.''|2009|pp=65–81}}{{Sfn|土屋|2023|pp=130–131}}。 |
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これらより古い[[古生代]][[石炭紀]]には、[[アメリカ合衆国]][[イリノイ州]]の[[ラーゲルシュテッテン]]である[[メゾンクリーク]]から[[ポルセピア]] {{Snamei|Pohlsepia}} が知られ、最古のタコの化石だとされたこともあるが{{Sfn|カレッジ|2014|p=14}}<ref>{{Cite journal2 |df=ymd |last1=Kluessendorf|first1=J. |last2=Doyle |first2=P. |date=2000|title=''Pohlsepia mazonensis'', An Early 'Octopus' From The Carboniferous Of Illinois, USA|journal=Palaeontology |volume=43 |issue=5|pages=919–926|doi=10.1111/1475-4983.00155}}</ref>、近年の見解では支持されない<ref>{{Cite journal2 |df=ymd |last1=Klug |first1=C. |last2=Landman |first2=N. H. |last3=Fuchs |first3=D. |last4=Mapes |first4=R. H. |last5=Pohle |first5=A. |last6=Guériau |first6=P. |last7=Reguer |first7=S.|last8=Hoffmann |first8=R. |date=2019|title=Anatomy and evolution of the first Coleoidea in the Carboniferous |journal=Communications Biology |volume=2|pages=280|doi=10.1038/s42003-019-0523-2}}</ref><ref>{{Cite journal2 |df=ymd |last1=Whalen |first1=C. D. |last2=Landman |first2=N. H. |date=2022|title=Fossil coleoid cephalopod from the Mississippian Bear Gulch Lagerstätte sheds light on early vampyropod evolution |journal=Nature Communications |volume=13 |pages=1107|doi=10.1038/s41467-022-28333-5}}</ref>。 |
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== 食文化と調理法 == |
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{{See also|:en:Octopus as food}} |
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{{栄養価 | name=タコ、生| water =80.25 g| kJ =343| protein =14.91 g| fat =1.04 g| carbs =2.2 g| fiber =0 g| sugars =0 g| calcium_mg =53| iron_mg =5.3| magnesium_mg =30| phosphorus_mg =186| potassium_mg =350| sodium_mg =230| zinc_mg =1.68| copper_mg=0.435| manganese_mg =0.025| selenium_μg =44.8| vitC_mg =5| thiamin_mg =0.03| riboflavin_mg =0.04| niacin_mg =2.1| pantothenic_mg =0.5| vitB6_mg=0.36| folate_ug =16| choline_mg =65| vitB12_ug =20| vitA_ug =45| betacarotene_ug =0| lutein_ug =0| vitE_mg =1.2| vitD_iu =0| vitK_ug =0.1| satfat =0.227 g| monofat =0.162 g| polyfat =0.239 g| tryptophan =0.167 g| threonine =0.642 g| isoleucine =0.649 g| leucine =1.049 g| lysine =1.114 g| methionine =0.336 g| cystine =0.196 g| phenylalanine =0.534 g| tyrosine =0.477 g| valine =0.651 g| arginine =1.088 g| histidine =0.286 g| alanine =0.902 g| aspartic acid =1.438 g| glutamic acid =2.027 g| glycine =0.933 g| proline =0.608 g| serine =0.668 g| taurine =0.520 g|right=1 | source_usda=1 }} |
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タコは手近で美味な[[タンパク質]]の供給源として{{Sfn|土屋|2002|p=122}}、世界各地の沿岸地方で食用とされ、特にアジアや地中海では古くから定番料理として供される{{Sfn|カレッジ|2014|p=43}}。日本、イタリアやスペインなどの地中海、ポリネシアを除いてはほとんど食べられないとする文献もあるが、実際は多くの国で食べられている{{Sfn|畑中|1994|p=82}}。一方で、[[ユダヤ教]]では食の規定[[カシュルート]]によって、タコは食べてはいけないとされる「[[鱗]]の無い魚」に該当するなど<ref>{{Cite journal ja|author=山我哲雄|title=旧約聖書とユダヤ教における食物規定(カシュルート)|journal=宗教研究|volume=90|issue=2|date=2016|pages=183–207|doi=10.20716/rsjars.90.2_183}}</ref>、禁忌とされている地域もある。 |
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タコの身85 g は139 calと低カロリーで、[[脂肪]]は鶏肉では3 g なのに対し、タコでは2 g しかない{{Sfn|カレッジ|2014|p=54}}。[[タンパク質]]は25 g 含み{{Sfn|カレッジ|2014|p=54}}、全体の約20%である{{Sfn|カレッジ|2014|p=43}}{{Sfn|奥谷|2013|p=25}}。[[鉄分]]は1日の摂取目安量の45%、[[銅#摂取|銅]]も1日の摂取目安量の19%であり、それぞれ6%と3%の鶏肉を大きく上回る{{Sfn|カレッジ|2014|p=54}}。[[ビタミンB12|ビタミンB<sub>12</sub>]]に関しては1日の摂取目安量の510%に達する{{Sfn|カレッジ|2014|p=54}}。また、特に[[タウリン]]が豊富であるとされる{{Sfn|土屋|2002|p=122}}<ref name="Akashi"/><ref name="saijiki">{{Cite book ja|author1=四釜裕子|author2=長尾美穂|author3=内山さつき|title=12か月のきまりごと歳時記 五感でたのしむ季節の事典|series=現代用語の基礎知識 2008年版別冊付録|date=2008-01-01|publisher=株式会社[[自由国民社]]|page=65}}</ref><ref name="hokuei">{{Cite web|和書|url=https://www.hokuei.or.jp/hotnews/detail/00000204.html|title=たこザンギ|website=公益社団法人 北海道栄養士会|accessdate=2024-08-26}}</ref>。ただし、茹でて食べるとタウリンが茹で汁に溶出してしまうと言われる{{Sfn|奥谷|2013|p=26}}。[[亜鉛]]も多く含む<ref name="hokuei"/>。イカに多く含まれる[[グリシン]]、[[アラニン]]、[[プロリン]]などの甘味成分は少ない{{Sfn|奥谷|2013|p=26}}。 |
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タコの絞め方は地域によって異なるが、主に脳軟骨を破壊することによって行われる{{Sfn|小西|2010|p=206}}。日本では胴を掴み、眉間に手鉤や目打ちを打ち込んで絞めることが多い{{Sfn|小西|2010|p=206}}{{Sfn|小西|2010|p=217}}。ただし北海道の市場では、ミズダコやヤナギダコは氷水に漬けて絞める{{Sfn|小西|2010|p=212}}。[[スペイン]]の[[ガリシア]]ではタコの口に白いプラスチック製の長い棒状の道具を差し込み絞める{{Sfn|小西|2010|p=206}}。[[イタリア]]の[[プッリャ州]]や[[キリバス]]の[[ギルバート諸島]]では、頭を噛んでタコを絞める{{Sfn|カレッジ|2014|p=57}}{{Sfn|畑中|1994|p=83}}。 |
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身は噛み切りにくいことから、日本では歯のない人は食べるのを苦戦するという意から「歯なしの大ダコ」という表現が知られる{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}。そのため、様々な地域で叩いて柔らかくして下処理されてきた{{Sfn|カレッジ|2014|p=54}}。昔ながらの方法は形がなくなるまで岩に叩きつけるという方法で、[[スペイン]]の[[ビーゴ (スペイン)|ビーゴ]]ではタコを捕まえると「石で30–40回叩くべきだ」と言われる{{Sfn|カレッジ|2014|p=55}}。また、日本では「女と蛸は叩けば叩くほどよくなる」の言い回しが知られ<ref name="reference1000083735">{{Cite web|和書|url=https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000083735|title=食べ物のタコ、イカにまつわることわざやそれを詠んだ和歌、俳句、川柳などがあれば何でも知りたい|website=レファレンス協同データベース|date=2011-04-01|publisher=国立国会図書館|accessdate=2024-08-26}}</ref>、[[ダイコン]]で叩いてタコの筋線維を切るとよいとされる{{Sfn|神崎|1994|p=128|loc=第8章}}{{Sfn|荒俣|1994|p=245}}<ref name="hakatanoshio_532">{{Cite web|和書|url=http://www.hakatanoshio.co.jp/contents/recommended-recipe/page_532.html|title=蛸(たこ)のゆで方|publisher=伯方塩業|accessdate=2017-01-06|archiveurl=https://web.archive.org/web/20121014222620/http://www.hakatanoshio.co.jp/contents/recommended-recipe/page_532.html|archivedate=2012-10-14}}</ref>。業務用のタンブラーを用いて機械化されることもある{{Sfn|カレッジ|2014|p=54}}。近年では冷凍技術が普及し、凍結により細胞組織を破壊することで身を柔らかくすることも多い{{Sfn|カレッジ|2014|p=55}}。 |
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また、表面のぬめりを取り柔らかくするために、塩もみをして下処理される{{Sfn|神崎|1994|p=126|loc=第8章}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.hakatanoshio.co.jp/recipe/%E3%82%BF%E3%82%B3%E3%81%AE%E8%8C%B9%E3%81%A7%E6%96%B9/|title=タコの茹で方|website=伯方塩業株式会社|accessdate=2024-08-26}}</ref>。調理の際、「砂ずり」と俗称される腕の先端は切り落とされることもある<ref name="saijiki"/>{{Sfn|荒俣|1994|p=247}}。ここには毒が含まれるという俗説があった{{Sfn|荒俣|1994|p=247}}。 |
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タコは加熱調理されることが多く、多くの種は茹でると[[紅色|鮮紅色]]を呈する<ref name="kotobank-651999">{{Cite Kotobank|word=茹で蛸|encyclopedia=デジタル大辞泉|accessdate=2024-08-27}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://umito.maruha-nichiro.co.jp/article41/|title=かつては悪魔の魚と呼ばれていたタコ 今では世界の人気食材に|website=umito.|publisher=[[マルハニチロ]]|accessdate=2024-08-24}}</ref>。茹ですぎると固くなるので、手早く茹でるべきだとされる{{Sfn|神崎|1994|p=127|loc=第8章}}{{Sfn|荒俣|1994|p=245}}。また、[[日本酒]]に漬けておくと茹でた後も柔らかいままとなると言われる{{Sfn|神崎|1994|p=128|loc=第8章}}<ref name="hakatanoshio_532"/>。また、茹でる際[[番茶]]の[[茶葉]]をひとつまみ入れると臭みがとれるとされている<ref name="hakatanoshio_532"/>。ほかにも、[[柚子]]の皮、[[酢]]、[[重曹]]、[[ハマグリ]]の殻、[[甘草]]なども効果があるとされる{{Sfn|神崎|1994|p=128|loc=第8章}}{{Sfn|荒俣|1994|p=245}}。 |
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=== 日本 === |
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{{multiple image |
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|align=center |
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|total_width=700 |
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|image1=Octopuses in Tsukiji.JPG |
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|caption1=日本の[[築地市場]]に並べられたタコ([[茹で物|茹で蛸]]) |
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|image2=Akashi Octopus fried.JPG |
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|caption2=タコの[[唐揚げ]] |
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|image3=Homemade takoyaki 2.jpg |
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|caption3=代表的なタコ料理、[[たこ焼き]]を作っている様子。 |
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}} |
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タコは日本の食生活に深く根付いている{{Sfn|池田|2020|p=13}}。タコ類は多様な種が知られているが、日本では一般的に「タコ」と言えば、食用などで馴染み深い[[マダコ]] {{snamei|Octopus sinensis}} を指す場合が多い{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=2}}。ただし、マダコが分布しない[[北海道]]では、「マダコ」は[[ミズダコ]] {{snamei||Enteroctopus dofleini}} や[[ヤナギダコ]] {{Snamei|en|Octopus conispadiceus|'Octopus' conispadiceus}} の地方名である{{Sfn|奥谷|1991|pp=27–28}}{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=283}}{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=2}}。特に雌をマダコと呼び、雄は肉質が水っぽいことからミズダコと呼ぶ{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=283}}{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=2}}。[[福島県]]の[[いわき市|いわき地区]]([[小名浜地区|小名浜]]など)では、ミズダコを「アマダコ」、ヤナギダコを「ミズダコ」と呼ぶ{{Sfn|石田|遠藤|2003|pp=27–48}}。これらに加えて[[イイダコ]] {{Snamei||Amphioctopus fangsiao}} や[[テナガダコ]] {{Snamei||Callistoctopus minor}} が食用となる代表的な種である{{Sfn|奥谷|1988|p=254}}{{Sfn|鈴木|1978|p=9}}{{Sfn|武田|2013|p=184}}。ほかの種も各地で食用として流通することがあり、[[伊予灘]]では[[マツバダコ]]{{Sfn|坂口|2013|p=42}} {{snamei||Octopus sasakii|'O.' sasakii}} が「松葉ダコ」として[[愛媛県]][[松山市]]のスーパーに並ぶ{{Sfn|坂口|2013|p=42}}。沖縄では[[ワモンダコ]] {{snamei|en|Octopus cyanea|'O.' cyanea}} や[[ウデナガカクレダコ]] {{Snamei||Abdopus aculeatus}} が自給的に漁獲され、食用となっている{{Sfn|小野|2013|pp=161–164}}。 |
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日本人とタコの関係は古く、[[池上・曽根遺跡]]などの[[大阪府]][[堺市]]にある[[弥生時代]]の遺跡からは、[[イイダコ]]を獲る[[蛸壺]]形の[[土器]]が複数出土している{{Sfn|奥谷|2013|p=22}}{{Sfn|神崎|1994|p=112|loc=第7章}}<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.kannousuiken-osaka.or.jp/zukan/station/osakawan/tako.html|title=大阪湾の生き物カタログ マダコ|publisher=大阪府立環境農林水産総合研究所|accessdate=2014-1-12}}</ref>{{Efn|[[明石海峡]]以西の瀬戸内海でも、[[溝之口遺跡]]([[加古川市]])、[[大中遺跡]]([[播磨町]])、[[玉津田中遺跡]]・[[池上口ノ池遺跡]](神戸市)などでも弥生時代の蛸壺が出土している{{Sfn|神崎|1994|p=112|loc=第7章}}。}}。[[三重県]][[桑名市]]の[[蛎塚新田]]にある[[古墳時代]]の[[貝塚]]からも蛸壺が出土している{{Sfn|神崎|1994|p=113|loc=第7章}}<ref name="maff_mie">{{Cite web|和書|url=https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/tako_meshi_mie.html|title=たこ飯 三重県|website=うちの郷土料理|publisher=農林水産省|accessdate=2024-08-26}}</ref>。733年の『[[出雲国風土記]]』にもタコの名が記されている{{Sfn|鈴木|1988|p=254}}。また、[[967年]]の『[[延喜式]]』には乾蛸{{small|(ほかしたこ)}}や蛸[[:wikt:腊|腊]]{{small|(たこのきたい)}}が[[肥後国|肥後]]・[[讃岐]]から献納されていた記録がある{{Sfn|奥谷|2013|p=22}}{{Sfn|鈴木|1988|p=254}}{{Sfn|神崎|1994|p=129|loc=第8章}}。 |
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[[平安時代]]以降、タコは焼蛸として饗膳の献立に現れる{{Sfn|鈴木|1988|p=254}}。日本最古の料理書である『[[厨事類記]]』には、焼蛸はタコを石焼にして干し、削って食べるものであると記されている{{Sfn|鈴木|1988|p=254}}。文禄4年(1595年)に[[徳川家康]]が[[豊臣秀吉]]を迎えた御膳にはタコがあった{{Sfn|奥谷|2013|p=22}}。神事にも用いられ、[[伊勢神宮]][[式年遷宮]]の一つである[[山口祭]]の饗膳には、干しサメやエビとともに供される<ref name="maff_mie"/>。[[津八幡宮]]の10月の祭礼にも[[里芋]]とともにを炊き合わせた料理が神饌として供えられ、現在でも[[八幡町 (津市) |八幡町]]の古い氏子の家では祭にこれを調える<ref name="maff_mie"/>。漁法や輸送手段、冷蔵技術が未発達な時代には、山村ではタコを含む魚介類は貴重な食べ物であり、[[ハレとケ|ハレの日]]のご馳走であった{{Sfn|神崎|1994|p=123|loc=第8章}}。 |
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夏場のものが特に美味とされ、[[旬]]の梅雨時から7月下旬にかけてのものは「麦わらダコ(麦藁蛸)」と俗称される<ref name="Akashi"/>{{Sfn|神崎|1994|p=132|loc=第8章}}{{Efn|麦藁蛸は新ダコや梅雨ダコとも呼ばれる{{Sfn|神崎|1994|p=132|loc=第8章}}。}}。7月25日の[[大阪天満宮]]の[[天神祭]]では「天神蛸」として[[ハモ]]とともに食され{{Sfn|神崎|1994|p=128|loc=第8章}}<ref name="weathernews">{{Cite web|和書|title=「半夏生」ってどんな日か知ってる? 関西で半夏生にタコを食べる人が多い理由|url=https://weathernews.jp/s/topics/202406/260165/|website=ウェザーニュース|date=2024-07-01|accessdate=2024-08-23}}</ref>、この旬は「麦藁蛸に祭鱧」(むぎわらだこにまつりはも)という成句でも知られる<ref>{{Cite report|和書|url=https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/19717/00-00.pdf|title=序章 大阪エコライフ(魚庭(なにわ)の水編)|publisher=大阪府|accessdate=2024-08-23}}</ref>。[[関西]]地方には、稲の成長を祈り[[半夏生]]にタコを食べる「半夏蛸」の習慣がある{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}<ref name="Akashi"/><ref name="saijiki"/>([[#信仰と行事]]も参照)。また同時に、半夏蛸はタウリンを補給して[[夏バテ]]を防ぐと言われる<ref name="Akashi"/><ref name="saijiki"/><ref name="weathernews"/>。そのため、[[7月2日]]は蛸研究会により[[日本記念日協会]]が認定する「タコの日」に制定されている{{Sfn|武田|2013|p=192}}{{Efn|name="Aug8"|蛸研究会により制定された7月2日のタコの日とは別に、三原観光協会により8月8日もタコの日として制定されている<ref name="mihara">{{Cite web|和書|url=https://www.mihara-kankou.com/fp-sp-tako|title=【特集】名物!たこと地酒|website=三原観光navi|publisher=一般社団法人 三原観光協会|accessdate=2024-09-14}}</ref>。}}。また、夏の土用のころのタコは特に美味で、ほかの誰にも食べさせるわけにはいかないとの意から「土用の蛸は親にも食わすな」{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}<ref name="kaiseiken"/><ref name="saijiki"/>や「[[アカエイ]]の[[吸い物]]蛸の足」という格言も知られる<ref name="kaiseiken"/>。[[愛媛県]]では春先に200–400 g の小さいタコが漁獲され、「木の芽だこ」と呼ばれて出回る<ref name="maff_ehime">{{Cite web|和書|url=https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/tako_meshi_ehime.html|title=たこめし 愛媛県 |website=うちの郷土料理|publisher=農林水産省|accessdate=2024-08-26}}</ref>。京都では10月の十夜のころのタコが美味として小型の「十夜ダコ」を食べる習わしがある{{Sfn|荒俣|1994|p=245}}。 |
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[[料理]]では[[刺身]]{{Sfn|小西|2010|p=208}}{{sfn|平野|2000|p=212}}{{Sfn|神崎|1994|p=128|loc=第8章}}、[[寿司]]{{Sfn|カレッジ|2014|p=11}}、煮だこ{{Sfn|神崎|1994|p=128|loc=第8章}}(煮付け{{sfn|平野|2000|p=212}})、[[酢蛸]]{{Sfn|小西|2010|p=214}}、酢味噌和え<ref name="weathernews"/>、[[天婦羅]]{{sfn|平野|2000|p=212}}{{Sfn|神崎|1994|p=128|loc=第8章}}、[[揚げ物]]{{sfn|平野|2000|p=212}}、[[塩辛]]{{sfn|平野|2000|p=212}}、[[おでん]]の具材{{Sfn|奥谷|1991|p=27}}{{sfn|平野|2000|p=212}}{{Sfn|神崎|1994|p=128|loc=第8章}}など様々に用いられる。タコの刺身には普通茹で蛸が用いられ、生食は西日本のごく一部の地域に限られる{{Sfn|神崎|1994|p=124|loc=第8章}}。 |
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[[たこ焼き]]やその原形とされる[[玉子焼 (明石市)|明石焼き]]の具材としても親しまれている{{Sfn|池田|2020|p=11}}{{Sfn|神崎|1994|p=133|loc=第8章}}。たこ焼きは大阪から広まり、全国的に食される{{Sfn|池田|2020|p=11}}{{Sfn|新村|1998|p=1642}}。小麦粉と卵を混ぜた生地の中にタコの小片を入れて球形に焼き上げたものである{{Sfn|池田|2020|p=11}}{{Sfn|新村|1998|p=1642}}。たこ焼きは高市の[[屋台|露店]]の定番としても親しまれている{{Sfn|神崎|1994|p=135|loc=第8章}}。明石焼きは地元明石では玉子焼と呼ばれる{{Sfn|池田|2020|p=11}}{{Sfn|神崎|1994|p=134|loc=第8章}}。 |
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[[File:Octopus rice (8191066778).jpg|thumb|left|200px|たこ飯の弁当。]] |
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また、[[瀬戸内海]]地域([[兵庫県]]{{Sfn|神崎|1994|p=131|loc=第8章}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/40_27_hyogo.html|title=たこめし 兵庫県 |website=うちの郷土料理|publisher=農林水産省|accessdate=2024-08-26}}</ref>・[[愛媛県]]<ref name="maff_ehime"/>・[[香川県]]<ref name="maff_aichi">{{Cite web|和書|url=https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/takomeshi_aichi.html|title=たこ飯 愛知県 |website=うちの郷土料理|publisher=農林水産省|accessdate=2024-08-26}}</ref>・[[広島県]]<ref name="maff_hiroshima">{{Cite web|和書|url=https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/42_18_hiroshima.html|title=たこめし 広島県 |website=うちの郷土料理|publisher=農林水産省|accessdate=2024-08-26}}</ref>・[[岡山県]]<ref name="maff_okayama">{{Cite web|和書|url=https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/41_10_okayama.html|title=たこめし 岡山県 |website=うちの郷土料理|publisher=農林水産省|accessdate=2024-08-26}}</ref>)や[[伊勢湾]]([[三重県]]<ref name="maff_mie"/>・[[愛知県]]<ref name="maff_aichi"/>)、[[熊本県]][[天草諸島]]<ref name="maff_kumamoto">{{Cite web|和書|url=https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/tako_meshi_kumamoto.html|title=たこ飯 熊本県 |website=うちの郷土料理|publisher=農林水産省|accessdate=2024-08-26}}</ref>では[[たこめし|蛸飯]](たこ飯、たこめし)に供される<ref name="maff_aichi"/>{{Sfn|神崎|1994|p=131|loc=第8章}}。地域や店によって、作り方や具材、味付け等が異なる{{Sfn|神崎|1994|p=131|loc=第8章}}<ref name="maff_aichi"/><ref name="maff_okayama"/>。愛知県のたこ飯は茹で蛸ではなく生のタコを米と一緒に炊き込むことで[[桜色]]に染まるため「桜飯」とも呼ばれる<ref name="maff_aichi"/><ref name="prefaichi">{{Cite web|和書|url=https://www.pref.aichi.jp/shokuiku/shokuikunet/mind/recipe/recipe001.html|title=たこ飯|website=食育ネットあいち|publisher=農業水産局農政部食育消費流通課|accessdate=2024-08-26}}</ref>。広島県の瀬戸田や愛媛県でも生タコが用いられる{{Sfn|神崎|1994|pp=131–132|loc=第8章}}。天草諸島では干しダコをたこ飯に用いる<ref name="maff_kumamoto"/>。江戸時代には[[雑炊]]に薄く切った茹で蛸とネギを加えて煮たタコ雑炊があった{{Sfn|神崎|1994|p=132|loc=第8章}}。 |
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関西では[[タコぶつ]]として[[わさび醤油]]や[[酢味噌]]をつけたり、タコと[[キュウリ]]の[[酢もみ]]などとして食される<ref name="weathernews"/>。[[奈良県]]ではタコとキュウリの酢もみは「蛸もみうり」と呼ばれ、[[早苗饗]]に稲の成長を願って食される<ref name="maff_nara">{{Cite web|和書|url=https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/tako_momiuri_nara.html|title=蛸もみうり 奈良県 |website=うちの郷土料理|publisher=農林水産省|accessdate=2024-08-26}}</ref>。マダコの皮は茹でてキュウリと和え、酢味噌をかけて[[ぬた]]として食される{{Sfn|小西|2010|p=211}}。[[因島]]では魚介類を入れた鍋である[[水軍鍋]]が食されるが、これは八方の敵を喰うという験を担ぎ必ずタコが入れられる{{Sfn|神崎|1994|p=133|loc=第8章}}。[[薩摩国|薩摩]]の郷土料理には、小口切りにしたタコを[[ゴボウ]]やネギ、サトイモや[[豆腐]]などとともに薄味噌で煮た「薩摩芋たこ汁」があり、のちに各地に広まった{{Sfn|神崎|1994|p=127|loc=第8章}}。 |
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タコは癖がないため煮物(煮だこ)に適するとされ、様々なバリエーションの料理が存在する{{Sfn|神崎|1994|p=128|loc=第8章}}。出汁に[[たまり醤油|たまり]]を合わせただしたまりに酢を加えたものの中で、良く洗ったタコを疣が抜けるまでよく煮たものを「[[駿河煮]](黒煮)」という{{Sfn|神崎|1994|p=128|loc=第8章}}{{Sfn|荒俣|1994|p=245}}{{Sfn|鈴木|1988|p=254}}。[[江戸]]では「蛸の[[桜煮]]」が食べられる{{Sfn|大久保|木下|2014|p=594}}。桜煮は、味噌をだし汁で溶いたたれ味噌(またはだしたまり)で薄く切ったタコを柔らかく煮た料理で、桜熬(桜煎、さくらいり)とも呼ばれる{{Sfn|大久保|木下|2014|p=594}}{{Sfn|荒俣|1994|p=245}}{{Sfn|鈴木|1988|p=254}}。焙じ茶、砂糖、醬油で煮るともされる{{Sfn|神崎|1994|p=128|loc=第8章}}。タコを酒と水分を加えた中に入れてとろ火で半日煮込んでから、醤油を加えて煮ることで柔らかく炊いた料理は「関東煮(かんとうだき)」と呼ばれる{{Sfn|荒俣|1994|p=245}}。単に酒で煮込んだものも柔らかくなり、「酒煮」と呼ばれる{{Sfn|神崎|1994|p=128|loc=第8章}}。[[香川県]]ではテナガダコやイイダコを[[里芋]]などとともに煮た「いもたこ」が作られ、かつては[[正月]]や[[婚礼]]などの[[ハレの日]]に用意されていたが、現在は日常的に食べられる{{Sfn|神崎|1994|p=128|loc=第8章}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/imotako_kagawa.html|title=いもたこ 香川県 |website=うちの郷土料理|publisher=農林水産省|accessdate=2024-08-26}}</ref>。 |
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ミズダコのように筋肉が柔らかい種は[[酢蛸]]などに加工して用いられることが多い{{Sfn|土屋|2002|p=99}}{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=279}}。また、冷凍したミズダコの腕は[[しゃぶしゃぶ]]として商品化されている{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=279}}{{Sfn|神崎|1994|p=132|loc=第8章}}。ヤナギダコの小さいものは1匹まるごと「一杯ダコ」に加工され、珍味として食される{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=283}}。またミズダコは北海道では郷土料理の揚げ物であるたこ[[から揚げ#ザンギ|ザンギ]]としても食される<ref name="hokuei"/>。 |
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[[File:It seems to dry the octopus.JPG|thumb|left|200px|[[下津井地区|下津井]]の干しダコ」]] |
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また、[[保存食]]として'''{{Vanchor|干しダコ}}'''(乾ダコ、干ダコ)に加工される{{Sfn|神崎|1994|p=129|loc=第8章}}<ref name="maff_kumamoto"/><ref name="hyogo-nourinsuisangc">{{Cite web|和書|author=水産技術センター|url=https://hyogo-nourinsuisangc.jp/kenmin_minasama/mame/suisan_mame/02/18/969/|title=干しダコの作りかた|webiste=兵庫県⽴農林⽔産技術総合センター|accessdate=2024-08-26}}</ref>。[[兵庫県]][[明石市]][[二見町 (明石市)|二見町]]周辺{{Sfn|神崎|1994|p=129|loc=第8章}}<ref name="hyogo-nourinsuisangc"/>や[[岡山県]][[倉敷市]][[下津井地区]]{{Sfn|神崎|1994|p=129|loc=第8章}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.okayama-kanko.jp/gourmet/10253|title=下津井のたこ・干しだこ|website=岡山観光WEB|accessdate=2024-08-26}}</ref>、[[広島県]][[尾道市]][[因島]]・[[瀬戸田町]]{{Sfn|神崎|1994|p=129|loc=第8章}}、[[三重県]][[鳥羽市]]<ref name="maff_mie"/><ref name="toba">{{Cite web|和書|url=https://jf-tiss.net/tako.html|title=海産物_たこ|website=鳥羽磯部漁業協同組合|accessdate=2024-08-26}}</ref>、[[熊本県]][[天草市]][[有明町 (熊本県)|有明町]]<ref name="maff_kumamoto"/>のものがよく知られる。かつては夏場に大量にとれた安価なマダコを加工し、魚の水揚げが少ない冬の保存食として利用していたが<ref name="maff_kumamoto"/><ref name="hyogo-nourinsuisangc"/>、最近では作る漁家が減少している<ref name="hyogo-nourinsuisangc"/>。腕一本ずつを洗濯バサミに吊して干す場合もあるが<ref name="hyogo-nourinsuisangc"/>、多くはいわゆる「ひっぱりだこ」の姿である<ref name="himaka">{{Cite web|和書|url=https://www.himaka.net/sightseeing/m15|title=ひっぱりだこ|website=日間賀島観光ナビ|accessdate=2024-08-26}}</ref>、竹串で足をぴんと張って干した「真蛸張乾」に加工される<ref name="hyogo-nourinsuisangc"/>{{Sfn|神崎|1994|p=129|loc=第8章}}。干しダコは薄く花のように削り、「削りダコ(タコの花)」として食べられる{{Sfn|神崎|1994|p=131|loc=第8章}}。 |
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{{要出典範囲|秋口に雌の体内にある[[卵巣]]は[[アイボリー|象牙色]]の袋に包まれており、タコの袋児(ふくろご)と呼ばれ、[[煮る|煮付けて]]食べる|date=2024-09}}。梅雨時のマダコ「麦わらダコ」にはこぶし大の卵巣があり、膜を傷つけないように取り出して茹で、茹で上がったものに[[ポン酢]]をかけて食べられる{{Sfn|神崎|1994|p=132|loc=第8章}}。3月前後の産卵期が近づいた雌の[[イイダコ]]は卵巣が重要な部分として食され{{Sfn|神崎|1994|p=128|loc=第8章}}{{Sfn|瀬川|2013|p=132}}、[[イイダコ]]の和名は外套腔に米粒状の卵が含まれる卵巣を持つことからとされる{{Sfn|奥谷|2002|p=147}}{{Sfn|神崎|1994|p=129|loc=第8章}}。[[ミズダコ]]の卵巣も取り出されて販売される{{Sfn|土屋|2002|p=84}}。また、マダコの産卵後の卵塊はその形状から[[フジ (植物)|フジ]]の花序に喩えて「藤の花」と呼ばれ、[[塩漬け]]にした[[海藤花]](かいとうげ)が明石の名産として食される{{Sfn|鈴木|1988|p=254}}{{Sfn|神崎|1994|p=132|loc=第8章}}{{Sfn|荒俣|1994|p=246}}。海藤花は椀種や酢の物にして食されるほか{{Sfn|鈴木|1988|p=254}}{{Sfn|神崎|1994|p=132|loc=第8章}}、丸ごと煮付けにして食べられる{{Sfn|神崎|1994|p=132|loc=第8章}}。 |
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[[青森県]][[下北半島]]では魚介類の内臓を「生きるための道具」の意から「道具」と呼ぶ<ref name="ATV">{{Cite web|和書|url=https://newsdig.tbs.co.jp/articles/atv/340338?display=1|title=タコのホルモン!?「タコの道具」知ってますか?見た目のインパクト大!その味と食感を大学生が体験|website=ATV|date=2023-02-21|accessdate=2024-08-26}}</ref>。タコの内臓は「タコの道具」の愛称で食用にされ、野菜とともに煮た「道具汁」などの郷土料理として食べられる<ref name="ATV"/>。 |
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また、現代では問題とされないが、かつては[[合食禁|食い合わせが悪いもの]]として「蛸と[[柿]]」と言われた{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}。柿だけでなく、[[スイカ]]や[[梅干し]]などが挙げられることもある{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}。これは輸送手段や冷蔵技術が未発達な時代に海から離れた農村では新鮮な魚介類が入手できず、タコは何と食べ合わせても腹具合が良くなかったのであろうと説明される{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}。また、美味いからといって食べ過ぎるとよくないとして、「タコ食って[[反吐]]をはく」という表現がある{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}。イイダコの卵で腹痛を起こす者がいるとも、テナガダコは食べると中毒を起こすなどともいわれ、前者は[[生姜]]や[[酢]]で和えると良く、後者は[[ソラマメ]]を用いて直すと良いとされる{{Sfn|荒俣|1994|p=247}}。また、テナガダコの腹痛には[[ウツギ]]が効くとされる{{Sfn|荒俣|1994|p=247}}。 |
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{{-}} |
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=== 東アジア・東南アジア === |
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[[File:Korean.cuisine-Sannakji.hoe-01.jpg|thumb|180px|テナガダコの踊り食いである[[サンナクチ]]。]] |
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[[File:Wiki Loves Folklore 2020 in Thailand 19.jpg|thumb|180px|[[タイ料理]]のプラームックヤーン。タイの[[イカ焼き]]と言われるが、タコが用いられることもある。]] |
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[[朝鮮半島]]ではタコは日常的な食材であり{{Sfn|カレッジ|2014|p=181}}、生食の文化がある{{Sfn|神崎|1994|p=124|loc=第8章}}。特に、[[テナガダコ]]はナクチ({{lang-ko-short|낙지}})と呼ばれ、生きたままぶつ切りにし、塩と[[ごま油|胡麻油]]および[[ゴマ|胡麻]]と和えて[[踊り食い]]にする[[サンナクチ]]({{lang-ko-short|산낙지}}「活きたテナガダコ」、{{lang|ko-Latn|sannakji}})は有名である{{Sfn|カレッジ|2014|p=181}}{{Sfn|小西|2010|p=144}}。イイダコはチュクミ({{lang|ko|주꾸미}}、{{lang|ko-Latn|jukkumi}})と呼ばれ、[[コチュジャン]]で炒めたチュクミ{{仮リンク|ポックム|en|Bokkeum}}({{lang|ko|주꾸미 볶음}}、{{lang|ko-Latn|jukkumi-bokkeum}})などにして食される<ref>{{Cite web|url=https://gwangjunewsgic.com/food-drink/recipe/jjukkumi-bokkeum/|title=Jjukkumi Bokkeum: Stir-Fried Baby Octopus |website=Gwangju News |date=2021-03-10|accessdate=2024-09-13}}</ref>。また、タコ(特に[[ミズダコ]])はムノ({{lang|ko|문어}}、{{lang|ko-Latn|Muneo}}、文魚)といい、[[ニンニク]]、[[ワケギ]]、[[ニンジン]]や[[ごま油]]とともに[[粥]]にしたムノチュク({{lang|ko|문어 죽}}、{{lang|ko-Latn|Muneo-juk}})にしても食される<ref>{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/muneo-juk|title=Octopus Porridge (Muneo-juk)|website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。 |
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[[台湾]]の[[澎湖諸島]]では、テナガダコに近縁な「{{lang|zh|[[:zh:澎湖章鱼|澎湖章魚]]}}」や「{{lang|zh|石鮔}}」と呼ばれる未記載種<ref>{{Cite journal2 |df=ja |first1=Chuan-Wen |last1=Ho|first2=Chen-Cheng |last2=Cheng|first3=Chung-Cheng |last3=Lu |title=Species complex of ''Octopus minor'' (Cephalopoda: Octopodidae) from Taiwan waters, including two new species |journal=Cephalopod International Advisory Council Symposium 2006|page=36|date=2006|url=https://cephalopod.wordpress.com/wp-content/uploads/2017/03/2006-hobart-program.pdf}}</ref>が食用とされ、干しダコに加工される<ref name="newsmarket">{{Cite web|url=https://www.newsmarket.com.tw/blog/116932/|title=在地澎湖味─石鮔燉排骨湯|author=Chiamer|date=2019-02-14|website=上下游News&Market|accessdate=2024-08-26}}</ref>。「{{lang|zh|石鮔排骨湯}}」や「{{lang|zh|石鮔五花肉}}」と呼ばれる伝統料理となる<ref name="newsmarket"/>。 |
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[[中華人民共和国]]では、タコを食用としないと書かれている本もあるが、地域によっては食用にされる{{Sfn|畑中|1994|p=82}}。例えば、[[香港]]の市場では普通に売られている{{Sfn|畑中|1994|p=82}}。また、[[唐]]代の劉恂『嶺表録異』では、生で食べるとクラゲのような味がするので、生姜や酢につけて食べたとある{{Sfn|荒俣|1994|p=244}}。[[蘇頌]]『[[図経本草]]』では、マダコとテナガダコが珍味として食されるとある{{Sfn|荒俣|1994|p=244}}。[[明]]代の[[福建省]]でも、種々のタコが食され、卵巣も食用とされた{{Sfn|荒俣|1994|p=244}}。現在でも福建省[[廈門市|廈門]]などではタコが食用とされ、茹でて氷水で締めた「{{lang|zh|白灼章鱼(白灼八爪鱼)}}」として消費される<ref>{{Cite web|和書|url=https://w-foods.com/asia/china/bai_zhuo_zhang_yu.html|title=白灼章魚 bái zhuó zhāng yú [ゆでだこ]|website=世界の食べ物|accessdate=2024-08-26}}</ref>。 |
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[[フィリピン]]ではタコを食用とする{{Sfn|畑中|1994|p=82}}{{Sfn|神崎|1994|p=10|loc=はじめに}}。フィリピンの[[ミンドロ島]]では、タコは[[アドボ]] ({{lang|tl|Adobong pugita}}) として食べられる<ref name="adobong-pugita">{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/adobong-pugita|title=Adobong pugita |website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。酢と醤油の組み合わせで煮込んで作られる<ref name="adobong-pugita"/>。 |
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[[タイ王国|タイ]]でもタコが食用とされる{{Sfn|奥谷|2013|p=22}}{{Sfn|神崎|1994|p=10|loc=はじめに}}。ただし、普通[[イカ]]とは区別されず、{{lang|th|ปลาหมึก}}(プラームック、{{lang|th-Latn|plaa mɯ̀k}})と総称される<ref>{{Cite book ja|editor1=冨田竹二郎|editor2=赤木攻|title=タイ日大辞典 改訂版|publisher=株式会社めこん|page=819|isbn=978-4839603342}}</ref>。屋台料理としてプラームックヤーン({{lang|th|ปลาหมึกย่าง}}、{{lang|th-Latn|plaa mɯ̀k yâaŋ}})が食される<ref>{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/pla-muek-yang|title=Pla muek yang|website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。 |
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=== 地中海 === |
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|image1=Festa da Istoria 2011 (6089203513).jpg |
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|caption1=[[ガリシア州]]の伝統料理、[[ポルボ・ア・フェイラ]] |
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|image2=Naxos port4.JPG |
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|caption2=[[ギリシャ]]、[[ナクソス島|ナクソス港]]の店先に吊されたタコ |
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|image3=Ahtapot Salatası Octopus salad.JPG |
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|caption3=[[トルコ]]のタコの冷製メゼ。[[イスタンブール]]にて。 |
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[[南欧]]・地中海沿岸地域([[スペイン]]、[[イタリア]]、[[ポルトガル]]、[[ギリシャ]]、[[プロヴァンス]]地方など[[フランス]]南部の一部、[[トルコ]]、[[チュニジア]]、[[エジプト]]など)ではタコを伝統的な食品としている{{Sfn|瀧|1999|p=329}}{{Sfn|奥谷|2013|p=22}}{{Sfn|Pita ''et al.''|2021|ps=: 105820}}{{Sfn|畑中|1994|p=82}}。古くから食用とされ、古代地中海では外套膜に薬味を詰めてパイのように焼く料理が食べられ、鉄の臭いを避けて鉄のナイフが使われなかったという記録が残っている{{Sfn|畑中|1994|p=83}}。 |
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スペインでは一般的に食され、レストランではシェフのおすすめ料理として丸のままの茹で蛸を供したり、バルにぶつ切りにした酢蛸が供されることもある{{Sfn|畑中|1994|p=83}}。[[ガリシア州]]では、「お祭り風のタコ」を意味する[[ポルボ・ア・フェイラ]](プルポ・ア・フェイラ)と呼ばれる伝統料理が食され、「タコのガリシア風」の名でも知られる{{Sfn|池田|2020|p=212}}{{Sfn|カレッジ|2014|pp=22–24}}。タコをジャガイモとともに煮て、パプリカを加え、オリーブオイルと塩で味付けした料理である。腕は[[鉄板焼き]] ({{lang|es|Pulpo a la plancha}}) にも料理される{{Sfn|カレッジ|2014|p=25}}。[[スペイン料理]]の[[パエリア]]にもタコが用いられる{{Sfn|池田|2020|p=212}}。 |
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イタリア[[カンパーニャ州]][[ナポリ]]の[[サンタルチア地区]]では[[トマト煮]]にされ、[[ポルピ・アッラ・ルチャーナ]]({{lang|it|Polpi alla Luciana, Polpo alla luciana}})と呼ばれる<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.sankei.com/article/20160831-IFDMUMC4IFOMNLHX4SWTUCOBZI/|title=伊サンタルチアの伝統料理 タコのマリネ ポルピ・アッラ・ルチャーナ|date=2016-08-31|author=速水裕樹|website=産経新聞|publisher=産業経済新聞社|accessdate=2024-08-26}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/polpo-alla-luciana|title=Polpo alla luciana|website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。「溺れたダコ」({{lang|it|polpo affogato}}、ポルポ・アッフォガート)とも呼ばれる{{Sfn|荒俣|1994|p=244}}。イタリアではトマト煮がもっともポピュラーである{{Sfn|神崎|1994|p=137|loc=第8章}}。ほかに、{{仮リンク|ソプレッサータ|en|Soppressata}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=256}}や[[テリーヌ]]{{Sfn|カレッジ|2014|p=11}}などに調理することもある。[[モリーゼ州]]では、仔ダコを辛いソースで煮込んだ[[ポルピ・イン・プルガトリオ]] ({{lang|it|Polpi in purgatorio}}「煉獄のタコ」、{{仮リンク|モリーゼ方言|it|Dialetti molisani}}:{{lang|it|i pulepe 'npregatorie}})が食べられ、タコの墨の色と唐辛子([[ペペロンチーニ|ペペロンチーノ]])が特徴的な料理である<ref>{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/polpi-in-purgatorio|title=Polpi in purgatorio |website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.peperosso.co.jp/blog/20190315/8822/|title=Cucina molisana Ricette della Cucina molisana|date=2019-03-15|website=池ノ上のイタリアン「ペペロッソ(PepeRosso)」|accessdate=2024-08-26}}</ref>。 |
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[[ポルトガル]]では、タコを茹でてからぶつ切りにしてグリルし、[[オリーブオイル]]を塗った[[ポルボ・ア・ラガレイロ]]({{lang|pt|Polvo à Lagareiro}})が食べられる<ref>{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/polvo-a-lagareiro |title=Polvo à Lagareiro|website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。 |
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[[マルタ]]では、[[ピザ]]の具材となる{{Sfn|カレッジ|2014|p=11}}。また、[[マルタ料理|マルタの伝統料理]] {{lang|mt|Quarnita-bit-tewm}} では、細かく切った茹でタコを[[ネギ]]、[[ニンニク]]、[[パプリカ]]などとともに[[オリーブオイル]]でソテーし、冷やして食べられる<ref>{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/quarnita-bit-tewm|title=Quarnita-bit-tewm|website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。 |
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フランスの[[ラングドック=ルシヨン地域圏|ラングドック=ルシヨン]]では、[[ジャガイモ]]や[[タマネギ]]、[[ウイキョウ]]や[[パセリ]]とともに[[サラダ]] ({{lang|fr|Salade de poulpe}}) にして食される<ref>{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/salade-de-poulpe-languedoc|title=Salade de poulpe|website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。 |
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ギリシャ等の正教徒の多い地域の場合、[[東方正教会]]では[[正教会#斎(ものいみ)について|斎]]の間は肉を、[[大斎 (正教会)|大斎]]の際には魚をも食べるのを禁じてきたが<ref>{{Cite web|和書|author=パウエル中西裕一|title=キリスト教の原点「ギリシャ正教」ってどんな宗教?|url=https://www.gentosha.jp/article/19106/ |website=幻冬舎plus|publisher=[[幻冬舎]] |date=2021-09-03 |accessdate=2024-09-13}}</ref>、タコや[[イカ]]、貝類などは問題が無いとされてきたため<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.romaniatabi.jp/more/orthodox/religion7.php |title=正教について 第七章 |website=ルーマニア観光局 |accessdate=2024-09-13}}</ref>、これらを使った伝統料理が多い。特に[[ペロポネソス半島]]の{{仮リンク|ギシオ|en|Gytheio}}は「ギリシャのタコの都」とも称され、レストランの店先の綱にタコをぶら下げて[[干しダコ]]を作っている様子がよく見られる{{Sfn|カレッジ|2014|p=62}}。ギシオでは[[トマト]]や[[チーズ]]、[[ハーブ]]とともに一口大に切ったタコがギリシャ風サラダにして食べられることもある{{Sfn|カレッジ|2014|p=65}}。東地中海では[[メゼ]]としてグリルしたタコの腕が出され、ギリシャでは[[フタポディ・スティ・スハラ]]({{lang-el-short|χταποδι στη σχαρα}}、{{lang|el-Latn|Chtapodi sti schara}})と呼ばれる{{Sfn|カレッジ|2014|p=65}}<ref>{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/chtapodi-sti-schara|title=Grilled Octopus (Chtapodi sti schara)|website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。[[トルコ]]ではタコはギリシア語起源のアフポット({{lang|tu|ahtapot}})と呼ばれ、かつてのトルコ系ムスリムはあまり食べなかったが<ref>{{cite book ja|author=鈴木董|title=世界の食文化―⑨ トルコ|date=2003-10-23|publisher=農山漁村文化協会|page=95|isbn=4540032186}}</ref>、現在のトルコでは食用となる{{Sfn|畑中|1994|p=82}}。[[トルコ料理]]としてはタコの冷製メゼ({{lang|tu|[[:tr:ahtapot salatası|ahtapot salatası]]}})が知られる<ref>{{Cite book2|df=ja|first=François |last=Rémillard|title=New York City 2000-2001|url=https://books.google.com/books?id=V90uJa1dn-8C|date=2000|publisher=Ulysses Travel Guides|isbn=978-2-89464-236-8}}</ref>。 |
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[[File:Hobotnica na salatu 0909.jpg|thumb|left|200px|[[ダルマチア]]のタコのサラダ({{lang|hr|Salata od hobotnice}})]] |
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[[クロアチア]]でも干しダコ({{lang|hr|Štokalj}})が作られる<ref name="stokalj-s-jajima">{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/stokalj-s-jajima|title=Štokalj s jajima|website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。[[ラブ島]]で作られる[[ボーラ]]で乾かした干しダコは、{{lang|hr|Sušeni štokalj}} と呼ばれる<ref name="suseni-stokalj">{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/suseni-stokalj|title=Sušeni štokalj|website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。{{lang|hr|Sušeni štokalj}} は{{仮リンク|フリターヤ|en|Fritaja}} {{lang|hr|Fritaja}} などにして食べられる<ref name="suseni-stokalj"/>。[[クヴァルネル湾]]に面した[[プリモリェ=ゴルスキ・コタル郡]]では、干しダコにオリーブオイルで炒めた卵と玉ねぎを混ぜ合わせ、卵が好みの固さになるまで煮込んだ {{lang|hr|Štokalj s jajima}} が作られる<ref name="stokalj-s-jajima"/>。{{lang|hr|Hobotnica na novaljski}} は、[[パグ島]]にある[[ノヴァリャ]]発祥の[[クロアチア料理]]である<ref name="hobotnica-na-novaljski">{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/hobotnica-na-novaljski|title=Hobotnica na novaljski|website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。柔らかく煮たタコを適当な大きさに切り、煮汁にオリーブオイルと少しマッシュしたジャガイモを合わせて作られる<ref name="hobotnica-na-novaljski"/>。[[ダルマチア]]地方では、大きな鐘のような蓋を被せ、新鮮なタコを丸ごと野菜とともに暖炉で煮込んだ鍋料理である {{lang|hr|Hobotnica ispod peke}} や<ref>{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/hobotnica-ispod-peke|title=Octopus under the bell (Hobotnica ispod peke) |website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>、タコのサラダ({{lang|hr|Salata od hobotnice}})が食される<ref>{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/salata-od-hobotnice|title=Octopus salad (Salata od hobotnice)|website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。[[コルチュラ島]]では、タコを[[ニンニク]]や[[タマネギ]]などとともに[[白ワイン]]で煮込んだ {{lang|hr|Pijana hobotnica}} (「酔っ払いタコ」)が食べられる<ref>{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/pijana-hobotnica|title=Pijana hobotnica|website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。 |
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[[File:Coucous au poulpe, Sayada, Tunisia.jpg|thumb|200px|[[チュニジア]]のタコの[[クスクス]]]] |
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[[チュニジア]]でもタコは[[クスクス]]などにして食される<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.asahi.com/and/article/20190702/400672442/|title=スープもタコのクスクスも濃厚。太陽のようなチュニジア食堂「Tounsia」|date=2019-07-02|author=川村明子・室田万央里|website=朝日新聞デジタル|accessdate=2024-08-23}}</ref>。[[カンモーニーヤ]] ({{lang|fr|Kamounia au poulpe}}) と呼ばれる煮込み料理でも食べられる。 |
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仔ダコは[[オクオパス・ガーデン・カクテル]] ({{en|Octopus's Garden Cocktail}}) に利用され、[[ジン (蒸留酒)|ジン]]とドライ[[ベルモット]]を 3:4 で[[シェイカー (調理器具)|シェイク]]したものに、焦げ目をつけた仔ダコとブラック[[オリーブ]]を添えて供される{{Sfn|カレッジ|2014|p=9}}。 |
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[[イチレツダコ類]]はスペインやイタリアでは底曳網で混獲されて利用されるが、積極的に漁獲されることはない{{Sfn|窪寺|奥谷|1993|pp=70–71}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=20}}。スペインでは[[イチレツダコ]] {{snamei||Eledone cirrhosa}} はマダコの「不肖の弟」と表現される{{Sfn|カレッジ|2014|p=20}}。ガリシアではイチレツダコは缶詰に加工し、海外向けに輸出される{{Sfn|カレッジ|2014|p=20}}。[[ヴェネツィア]]では[[ジャコウダコ]] {{Snamei||Eledone moschata}} は {{It|Folpetti}} と呼ばれ、茹でたり、衣をつけて揚げたり、焼いたりと、さまざまな調理法で調理される<ref>{{Cite web|url=https://www.greatitalianchefs.com/recipes/folpetti-recipe|author=Valeria Necchio|title=Folpetti Recipe |date=2017|website=Great Italian Chefs|accessdate=2024-08-23}}</ref>。 |
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=== ゲルマン・スラヴ諸国 === |
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一方、アルプス以北のヨーロッパ諸国では、漁業が盛んな局所を除いて、伝統的には食用にはされてこなかった{{Sfn|瀧|1999|p=330}}。例えば[[ドイツ]]や[[スイス]]、[[フランス]]の大部分では、蛋白源を獣肉に頼る地域では伝統料理にタコを見ることはまずない{{Sfn|奥谷|2013|p=22}}。また、[[イギリス]]では「悪魔の魚 {{lang|en|devilfish}}」などと呼ばれ、避けられていたことは良く知られている{{Sfn|池田|2020|p=91}}。例えば、イギリスの[[王立協会フェロー]]である[[マルコム・R・クラーク]]は1963年に、タンパク質含量は魚と比べても申し分なく、理論的には食用となっての良いものの、こんな奇妙な生き物が食卓に忍び寄ってくるのは気が進まないという人もいるかもしれないと述べている{{Sfn|カレッジ|2014|p=44}}。しかし、これらの地域でも、現代では南欧料理やアジアの料理(日本の寿司など)が入ってきており、タコを食べる機会は増えてきている{{Sfn|奥谷|2013|p=22}}。 |
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=== インド洋 === |
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[[File:Drying octopus.jpeg|thumb|250px|left|[[タンザニア]][[ザンジバル諸島]]{{Efn|[[ペンバ島]]近隣のミサリ島}}で作られる干しダコ]] |
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[[東アフリカ]]の海岸地域の集落、特に[[タンザニア]]沿岸([[ザンジバル]])では、タコの零細漁業が経済的に、また生計的に重要となっている{{Sfn|Guard|Mgaya|2002|pp=528–536}}。[[スワヒリ語]]ではタコは pweza と呼ばれる{{Sfn|Guard|Mgaya|2002|pp=528–536}}{{Sfn|竹村|2004|pp=31–65}}。漁獲されるのは主に[[ワモンダコ]] {{snamei|en|Octopus cyanea|'Octopus' cyanea}} で、[[潮間帯]]や[[潮下帯]]から[[シュノーケリング]]などで巣穴に隠れているタコに銛を掴ませ、引き抜いて採集される{{Sfn|Guard|Mgaya|2002|pp=528–536}}。伝統的には、女性と子供を中心とした漁が行われていたが、近年では、需要が高まり、男性もタコ漁に参加するようになっている{{Sfn|Guard|Mgaya|2002|pp=528–536}}。タコは主にあぶり焼き ({{lang|sw|Pweza wa kuchoma}}) やから揚げ ({{lang|sw|Pweza wa kukayanga}})、[[シチュー]] ({{lang|sw|Mchuzi wa maji wa pweza}}) などにして食される。屋根の上で天日干しにして[[干しダコ]] ({{lang|sw|Pweza mkavu}}) にしたものなども食べられる{{Sfn|竹村|2004|pp=31–65}}。巻き網漁では小さなタコが混獲されることもあり、各家庭で晩御飯のおかずなどに利用される<ref>{{Cite journal ja|author=藤本麻里子|date=2017|title=ザンジバルの漁村で出会える極上おやつ|journal=フィールドで出会う風と人と土|pages=65–70|publisher=総合地球環境学研究所|url=https://chikyu.repo.nii.ac.jp/record/1115/files/kaze_hito_tsuchi_15.pdf}}</ref>。 |
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[[モーリシャス]]や[[セーシェル]]ではインドやフランスの影響を受けた[[クレオール料理]]が食され、タコはオクトパスカレーや{{仮リンク|ヴィンダイ|fr|Vindaye}} ({{lang|mfe|Vindaye ourite}}) などの{{仮リンク|モーリシャス料理|en|Mauritian cuisine|label=料理}}で食される<ref>{{Cite report|和書|url=https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000480555.pdf |title=セーシェル共和国|publisher=外務省 |pages=7|accessdate=2024-08-23}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://e-food.jp/map/nation/mauritius.html|title=モーリシャスの料理|website=e-food.jp|author=青木ゆり子|accessdate=2024-08-23}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://chefsimon.com/gourmets/chef-papounet/recettes/vindaye-ourite-mauricien|title=Vindaye ourite mauricien|website=Chef Simon.com|author=Chef Papounet|accessdate=2024-08-23}}</ref><ref name="Kari">{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/kari-koko-zourit|title=Kari koko zourit|website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。[[ココナッツ]]を加えたセーシェルのオクトパスカレーは {{lang|crs|Kari koko zourit}} と呼ばれる<ref name="Kari"/>。 |
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[[マダガスカル]]でも小さなタコの1種をホリタ (horita) と呼び、ご馳走とされる{{Sfn|荒俣|1994|p=244}}。 |
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[[モルディヴ]]ではタコの腕をカレー風味の {{lang|dv|[[:en:Miruhulee boava|Miruhulee boava]]}} にして食す<ref>{{Cite book2|df=ja|last=Masters |first=Tom |date=2006 |title=Maldives |publisher=Lonely Planet |isbn= 978-1-74059-977-1}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/miruhulee-boava|title=Miruhulee boava|website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。 |
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=== オセアニア === |
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[[File:Kimchee-Tako-Da-Poke.jpg|thumb|200px|[[キムチ]]風味のタコのポキ]] |
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[[ミクロネシア]]([[グアム]]や[[ギルバート諸島]])、[[ポリネシア]]([[ハワイ]]や[[タヒチ]])、[[メラネシア]]([[フィジー]]など)ではタコを食べる文化がある{{Sfn|奥谷|2013|p=22}}{{Sfn|畑中|1994|p=82}}。またこの地域では、[[ワモンダコ]] {{snamei|en|Octopus cyanea|'Octopus' cyanea}} は[[南西諸島]]以南の[[太平洋]]-[[インド洋]]全域に分布し、分布域では広く食用として用いられている{{Sfn|土屋|2002|p=96}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=46}}{{Sfn|Willer ''et al.''|2023|pp=179–189}}。ワモンダコとともに[[シマダコ]] {{Snamei|en|Callistoctopus ornatus|C. ornatus}} も重要な種である{{Sfn|Willer ''et al.''|2023|pp=179–189}}。 |
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ポリネシアでは干しダコが好まれ、[[カレー]]料理や[[ココナッツミルク]]で煮たり、葉で包んで焼いたりして食べる{{Sfn|神崎|1994|p=137|loc=第8章}}。[[ハワイ諸島]]では一口大に切って野菜サラダと和えた[[ポキ]]として調理されたり、干物や冷凍、燻製などの調理をされたりして食べられる{{Sfn|カレッジ|2014|p=46}}。 |
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[[グアム]]では、タコをぶつ切りにし、微塵切りにした[[タマネギ]]や[[ミニトマト]]とともに鍋に入れ、[[ココナッツミルク]]を加えた[[チャモロ族]]の伝統料理 {{lang|ch|Kadon gamson}} として食べられる<ref>{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/kadon_gamson|title=Kadon gamson|website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。 |
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=== アメリカ === |
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[[File:Wood grilled octopus tostadas (28953812153).jpg|thumb|200px|[[メキシコ]]の{{仮リンク|バジェ・デ・グアダルーペ|en|Valle de Guadalupe}}で食べられるタコの[[トスターダ]]]] |
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[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の食卓には滅多に登場せず{{Sfn|カレッジ|2014|p=43}}、身近な存在ではない{{Sfn|カレッジ|2014|p=16}}。しかしやはり近年では高タンパク質食品として人気が現れ{{Sfn|カレッジ|2014|p=44}}、主に[[フィリピン]]から年間3750 t 程度、タコを輸入している{{Sfn|カレッジ|2014|p=46}}。しかし種の識別はされず、まとめて「タコ」とのみ表示されて流通する{{Sfn|カレッジ|2014|p=46}}。 |
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[[カナダ]]の太平洋岸([[ヴァンクーヴァー島]])の[[アメリカ先住民]]はタコを食用としてきた{{Sfn|畑中|1994|p=82}}{{Sfn|荒俣|1994|p=244}}。 |
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[[プエルトリコ]]では、タコはありふれた食材として流通する{{Sfn|カレッジ|2014|p=60}}。腕のぶつ切りが加熱済みの冷凍食品として販売されるが、中には[[チリ]]産のイカがそれに交じって出回っている{{Sfn|カレッジ|2014|p=60}}。[[マリネ]]([[セビチェ]])などにして食べられる{{Sfn|カレッジ|2014|p=255}}。 |
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[[メキシコ]]をはじめとする[[中南米]]の全ての国では、タコを食べる文化がある{{Sfn|奥谷|2013|p=22}}{{Sfn|畑中|1994|p=82}}。メキシコでは、熱帯地域で最大のタコ漁獲量(42,400 t)を誇るが、消費量(49,900 t、いずれも2017年)もそれを上回る値を示す{{Sfn|Willer ''et al.''|2023|pp=179–189}}。メキシコ湾周辺の伝統料理では、アーモンドソースとともに火を通した {{lang|es|Pulpo almendrado}} が知られる<ref>{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/pulpo-almendrado|title=Octopus in Almond Sauce (Pulpo almendrado)|website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。 |
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[[南アメリカ]]の[[ブラジル]]と[[コロンビア]]では、タコは輸出されず輸入のみであり、食品として消費される量は漁獲量を上回っている{{Sfn|Willer ''et al.''|2023|pp=179–189}}。ブラジルでは、2017年に783.7 t のタコが漁獲されているが、消費量は3,192 t である{{Sfn|Willer ''et al.''|2023|pp=179–189}}。コロンビアでも153.1 t の漁獲量に対し534.5 t のタコが消費されている{{Sfn|Willer ''et al.''|2023|pp=179–189}}。[[ブラジル料理]]では、タコは[[ムケッカ]] ({{lang|pt-BR|Moqueca}}) と呼ばれる海鮮シチューにして食される<ref name="brasilagosto">{{Cite web|url=https://www.brasilagosto.org/en/octopus/|title=Octopus|website=Instituto Brasil a Gosto|accessdate=2024-08-26}}</ref>。[[ヴィネグレットソース]]を和えたり、[[カルパッチョ]]にして前菜としても食べられる<ref name="brasilagosto"/>。 |
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[[ペルー]]や[[エクアドル]]では、生のタコに[[タマネギ]]を加え、[[ライム]]汁、[[コリアンダー]]、油や塩、[[唐辛子]]などの調味料と混ぜてタコの[[セビチェ]] ({{lang|es|Ceviche de pulpo}}) にして食べられる<ref>{{Cite book ja|author=小西紀郎|chapter=ペルー海岸地域|pages=173–181|title=世界の食文化⑬ 中南米|date=2007-03-15|publisher=農山漁村文化協会|editor=山本紀夫|isbn=978-4-540-07001-3}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/ceviche-de-pulpo|title=Octopus ceviche (Ceviche de pulpo)|website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。ペルーではタコの[[アンティクーチョ]] ({{lang|es|Anticuchos de pulpo}}) と呼ばれる[[串焼き]]でも振舞われる<ref>{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/anticucho-de-pulpo|title=Anticuchos de pulpo|website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。調味料に漬けたタコに[[小麦粉]]をまぶし、高温の油でカリカリになるまで揚げたタコの{{仮リンク|チチャロン|en|Chicharrón}} ({{lang|es|Chicharrón de pulpo}}) もペルーの伝統料理である<ref>{{Cite web|url=https://www.tasteatlas.com/chicharron-de-pulpo|title=Chicharrón de pulpo|website=tasteatlas|publisher=AtlasMedia Ltd.|accessdate=2024-08-26}}</ref>。 |
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{{-}} |
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== 各地の漁業 == |
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タコ漁には何千年もの歴史があり、2014年現在の漁獲量は世界全体で30 t{{Small|([[トン]])}}に及んでいる{{Sfn|カレッジ|2014|p=11}}。漁法も様々で、[[蛸壺|壺]]、網、[[ルアー]]や[[銛|ヤス]]といった道具を用いるほか、素手で獲られることもある{{Sfn|カレッジ|2014|p=11}}。 |
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=== 日本の漁業 === |
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[[ファイル:Takotubo_akasi-si_PC012375.jpg|thumb|180px|[[蛸壺]]の並ぶ夕方の漁港<br />([[明石市]]、[[二見港 (兵庫県)|二見港]])]] |
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[[ファイル:TAKO Ferry 01.JPG|thumb|230px|明石淡路フェリーの「あさしお丸」<br />[[明石港]]、2008年5月撮影。]] |
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タコは定着性の水産動物で水産資源として有用なものとして、第1種共同[[漁業権]]の対象魚種となっている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202107/2.html|title=自分で食べるだけなら・・・レジャー感覚でも「密漁」に!?知っておきたい遊漁のルール|website=政府広報オンライン|date=2023-08-01|accessdate=2024-09-12}}</ref>。2018年(平成30年)では、日本の海面漁業でタコは36,100 t が漁獲されている{{Sfn|池田|2020|p=11}}。半数は蛸壺や蛸箱による罠漁、1/3は曳網漁、残りは空釣りや定置網漁などにより漁獲されている{{Sfn|奥谷|2013|p=24}}。 |
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日本のタコ漁獲量は[[北海道]]が突出し{{Sfn|池田|2020|p=11}}、例年12,000–25,000 tのタコが漁獲されている{{Sfn|佐野|2013|p=120}}。2023年の漁獲量は7,526 t であった<ref name="jafic2023"/>。この値には世界最大級のタコである[[ミズダコ]] {{snamei||Enteroctopus dofleini}} や[[ヤナギダコ]] {{Snamei|en|Octopus conispadiceus|'Octopus' conispadiceus}} の水揚げが反映されている{{Sfn|池田|2020|p=11}}{{Sfn|奥谷|2013|p=24}}{{Sfn|佐野|2013|p=93}}。北海道でのタコ漁業の歴史は古く、明治中期には[[渡島総合振興局]]や[[檜山振興局|檜山]]、[[後志総合振興局|後志]]などで副業としてヤス突き、鉤、銛や延縄によるタコ漁が行われていた{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=271}}。1906年に[[浦河町]]の漁業者によって空釣り延縄によるタコ漁が始められ{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=282}}、[[大正時代]]には[[#空釣り|空釣り縄]]が普及した{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=271}}。道南では明治末期では[[甕]]が用いられていたが、それに代わって蛸箱が使われる等になり、昭和以降[[網走支庁|網走]]や[[日高振興局|日高]]沿岸などの各地に広まった{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=271}}。ミズダコの漁獲量は津軽海峡を含む日本海側に多く、[[宗谷総合振興局|宗谷]]・[[留萌振興局|留萌]]管内で約半分を占める{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=277}}。市町村では[[羽幌町]]([[天売焼尻漁港]]<ref>{{Cite web|和書|url=https://hokkaido-gyokou.jp/fishing_port/haboro/|title=羽幌町 北海道の漁港 |website=北海道漁港漁場協会|accessdate=2024-09-13}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://haboro.tv/wp/wp-content/uploads/2024/05/islandfun.pdf|title=「釣りをする。」|publisher=羽幌町観光協会|accessdate=2024-09-13}}</ref>)、[[稚内市]]、[[増毛町]]([[別苅漁港|別苅]]・[[雄冬漁港]])、[[礼文町]]、[[函館市]](旧[[戸井町]])などで良く獲れる{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=277}}。太平洋側の[[根室市]]では、[[落石漁港]]でよく漁獲されるほか<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.ochiishi.or.jp/html/ochiishigyokyou.html|title=落石漁協の概要 |website=落石漁業協同組合|accessdate=2024-09-13}}</ref>、[[歯舞漁港]]では「金たこ」としてブランド化が試みられている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.yomiuri.co.jp/local/hokkaido/news/20240809-OYTNT50264/|title=「金たこ」今季初出荷 歯舞漁協 ブランド化目指す|date=2024-08-10|website=読売新聞オンライン|publisher=読売新聞社|accessdate=2024-09-13}}</ref>。一方ヤナギダコは太平洋側で漁獲量が多く{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=281}}、日高・十勝・釧路管内で空釣り延縄によって漁獲される{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=282}}。[[白糠町]]では1965年から[[人工魚礁|人工産卵礁]]の設置を進め、各地に広がった{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=283}}。 |
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[[瀬戸内地方|瀬戸内海区]]では、1990年(平成2年)では漁獲量23,925 t と北海道に次いで多かったが{{Sfn|神崎|1994|p=104|loc=第7章}}、2023年現在の漁獲量はわずか47 t であった<ref name="jafic2023"/>。[[瀬戸内海]]では主に[[マダコ]]や[[イイダコ]]が獲られ{{Sfn|神崎|1994|p=104|loc=第7章}}、古くから蛸壺漁が行われてきた{{Sfn|石田|2017|pp=56–58}}。[[瀬戸内海]]や[[有明湾]]、[[房総半島]]、[[能登半島]]など潮流が速く岩礁帯が分布する海域では網の使用や潜水に適さないため、釣りによる漁獲も盛んである{{Sfn|神崎|1994|p=106|loc=第7章}}。[[岡山県]][[倉敷市]][[下津井地区]]では漁家の7割が一本釣りを行うと言われる{{Sfn|神崎|1994|p=106|loc=第7章}}。[[広島県]][[尾道市]]の[[因島]]でも古くからタコの一本釣りが行われている{{Sfn|神崎|1994|p=106|loc=第7章}}。また、漁獲高では北海道に次いで[[兵庫県]]が第2位であり、[[明石市]]で獲れるマダコはブランド「[[明石ダコ]]」として知られる{{Sfn|池田|2020|p=12}}{{Sfn|武田|2013|p=182}}<ref name="Akashi">{{Cite web|和書|url=http://www.akashi-cci.or.jp/event/takoma.pdf|title=「明石だこ」と半夏生|website=明石商工会議所|accessdate=2024-08-23}}</ref>。明石市では「明石・タコ検定」が行われ、[[明石駅]]付近の商店街「[[魚の棚]](うおんたな)」では「タコが立って歩いている」の謳い文句で知られる{{Sfn|武田|2013|p=182}}。また明石ダコに因み、[[明石淡路フェリー]]が「たこフェリー」という愛称で運行されていた{{Sfn|武田|2013|p=182}}<ref>{{cite web|和書|url=https://www.kobe-np.co.jp/news/awaji/202107/0014505671.shtml|title=海賊気分で明石海峡を周遊 旧たこフェリー乗り場発着、16日就航|date=2021-07-16|website=神戸新聞NEXT|publisher=[[神戸新聞社]]|accessdate=2024-08-26}}</ref>。なお、明石のタコは[[昭和38年1月豪雪|三八大冷害]]により多くが死滅してしまったため、天草から雌4000匹を買って放流したものが増えたという経緯がある{{Sfn|神崎|1994|p=113|loc=第7章}}。これ以降明石ダコの形態(腕の比率)や生態(産卵期)が変化したと言われる{{Sfn|武田|2013|p=193}}。[[広島県]]の[[三原市]]漁業協同組合では、地元の伝統行事「[[三原やっさ祭り]]」に因んで「三原やっさタコ」と名付け、ブランド化している<ref name="mihara"/><ref name="maff_hiroshima"/>{{Efn|name="Aug8"}}。 |
|||
[[青森県]]から[[茨城県]]までの太平洋北区は、2023年では北海道に次ぐ漁獲量を持つ<ref name="jafic2023"/>。1990年(平成2年)でも北海道、瀬戸内海区に次ぐ漁獲量を誇り、3海区合わせて日本全体の85%を占めていた{{Sfn|神崎|1994|p=104|loc=第7章}}。[[福島県]]の[[いわき市]]や[[相馬市]]で獲られる魚介類は「常磐もの」と呼ばれ<ref>{{Cite web|和書|url=https://news.ntv.co.jp/n/fct/category/life/fc81ca4a066c1748369dcb63663e5c23cb|title=夏においしい“常磐もの” 別名…デビルフィッシュ? 豆知識と共に海の恵みを召し上がれ【福島県】|date=2024-07-16|website=中テレNEWS NNN|accessdate=2024-09-12}}</ref><ref name="uopochi">{{Cite web|和書|url=https://fish.uopochi.jp/2019/10/31/fukushima-souma/|title=「ふくしま常磐もの」を知る、出張レポート <相馬編>|website=さかな通信 by UOPOCHI|date=2019-10-31|accessdate=2024-09-12}}</ref>、特にミズダコとヤナギダコが重要な魚種として漁獲される{{Sfn|石田|遠藤|2003|pp=27–48}}。[[久之浜漁港]](いわき市)や[[松川浦漁港]](相馬市)でよく水揚げされる<ref name="uopochi"/><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/10279.pdf|title=2006 福島県の漁港|publisher=福島県|date=2006|accessdate=2024-09-12}}</ref>。[[宮城県]][[南三陸町]][[志津川湾]]に産するタコも名産であり<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.khb-tv.co.jp/news/14947405|title=ミズダコ初水揚げ 全国的に有名な宮城・南三陸町|website=[[東日本放送|khb東日本放送]]|date=2023-07-03|accessdate=2024-09-12}}</ref>、「西の明石、東の志津川」と呼ばれる<ref>{{Cite web|和書|url=https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/814059|title=「西の明石、東の志津川」といえば_マダコ_初水揚げ 「順調に大きく育ってる」大ぶりマダコが次々続々、地元は豊漁に期待 宮城・南三陸町|website=[[TBS NEWS DIG]]|publisher=[[ジャパン・ニュース・ネットワーク|JNN]]|date=2023-11-02|accessdate=2024-09-12}}</ref>。 |
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千葉県から三重県までの太平洋沿岸である太平洋中区は、2023年のタコ漁獲量はわずか192 t で、他地域に及ばないものの<ref name="jafic2023"/>、岩礁に富んだ潮流の激しい湾はマダコの良い生息地となっていた{{Sfn|神崎|1994|p=104|loc=第7章}}。[[神奈川県]][[横須賀市]]の[[佐島 (横須賀市)|佐島]]は古くより「西の明石、東の佐島」と呼ばれ、上質なタコで知られた<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.tv-asahi.co.jp/gohan-japan_ar/sphone/backnumber/?f=0012|title=涼を呼ぶ 酸味で食す極上タコ|website=ごはんジャパン|publisher=テレビ朝日|date=2015-07-11|accessdate=2024-09-12}}</ref>。[[伊良湖水道]]で獲られた[[三重県]][[鳥羽市]]にある[[神島 (三重県)|神島]]のマダコはブランド「潮騒タコ」として知られる<ref name="maff_mie"/><ref name="toba"/>。[[愛知県]][[知多郡]][[南知多町]]の[[日間賀島]]はかつてはタコ漁が盛んで{{Sfn|神崎|1994|pp=117–120|loc=日間賀島の蛸祭り タコの神事}}、「タコの島」と呼ばれる<ref name="maff_aichi"/><ref name="prefaichi"/>。 |
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水産庁により「たこ類」として統計されており、漁港別の漁獲量は次の通りである{{Efn|この統計は、全国の漁業地区のうち、総水揚量が海面漁業生産量の約7割を占めるもののうち、対象品目ごとに上場水揚量の上位20漁業地区を選定し、そのうち調査該当品目が5品目以上ある漁業地区について調査されており、この調査区が便宜的に「漁港」として表示されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.market.jafic.or.jp/contents/sanchi.html|title=産地水産物調査概要|website=水産物流通調査|publisher=水産庁|accessdate=2024-09-13}}</ref>。そのため、実際の「漁港」とは異なることに注意。}}。 |
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{| class="wikitable" |
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|+ 日本の上場水揚げ量上位漁港とその漁獲量 |
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|- |
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!rowspan="2" style="text-align:center;" | 順位 |
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!colspan="2" style="text-align:center;" | 2003年<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500228&tstat=000001015640&cycle=7&tclass1=000001019834&tclass2=000001033338&stat_infid=000005537884&cycle_facet=tclass1%3Atclass2&tclass3val=0|title=平成15年水産物流通統計年報|website=e-Stat 政府統計の総合窓口|publisher=独立行政法人統計センター|accessdate=2024-09-13}}</ref> |
|||
!colspan="2" style="text-align:center;" | 2013年<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.market.jafic.or.jp/file/sanchi/2013/05_gyokouhinmoku_2013.htm |title=水産物流通調査(2013年)1産地上場水揚量・卸売価格(211漁港)(2)漁港別品目別上場水揚量・卸売価格|website=水産物流通調査|publisher=[[水産庁]]|accessdate=2024-09-13}}</ref> |
|||
!colspan="2" style="text-align:center;" | 2023年<ref name="jafic2023">{{Cite web|和書|url=https://www.market.jafic.or.jp/file/sanchi/2023/05_gyokouhinmoku_2023.htm |title=水産物流通調査(2023年)1産地上場水揚量・卸売価格(147漁港)(2)漁港別品目別上場水揚量・卸売価格|website=水産物流通調査|publisher=[[水産庁]]|accessdate=2024-09-13}}</ref> |
|||
|- |
|||
! style="text-align:center;" |漁港(自治体) |
|||
! style="text-align:center;" |漁獲量 [t] |
|||
! style="text-align:center;" |漁港(自治体) |
|||
! style="text-align:center;" |漁獲量 [t] |
|||
! style="text-align:center;" |漁港(自治体) |
|||
! style="text-align:center;" |漁獲量 [t] |
|||
|- |
|||
|1位 |
|||
|[[相馬双葉漁業協同組合|相馬原釜]]([[福島県]][[相馬市]]) |
|||
|style="text-align:right;" |2,082 |
|||
|根室([[北海道]][[根室市]]) |
|||
|style="text-align:right;" |974 |
|||
|羽幌(北海道[[羽幌町]]) |
|||
|style="text-align:right;" |1,556 |
|||
|- |
|||
|2位 |
|||
|[[石巻漁港|石巻]]([[宮城県]][[石巻市]]) |
|||
|style="text-align:right;" |1,442 |
|||
|羽幌(北海道羽幌町) |
|||
|style="text-align:right;" |899 |
|||
|根室(北海道根室市) |
|||
|style="text-align:right;" |1,079 |
|||
|- |
|||
|3位 |
|||
|枝幸(北海道[[枝幸町]]) |
|||
|style="text-align:right;" |1,099 |
|||
|宮古([[岩手県]][[宮古市]]) |
|||
|style="text-align:right;" |616 |
|||
|石巻(宮城県石巻市) |
|||
|style="text-align:right;" |767 |
|||
|- |
|||
|4位 |
|||
|増毛(北海道[[増毛町]]) |
|||
|style="text-align:right;" |967 |
|||
|増毛(北海道増毛町) |
|||
|style="text-align:right;" |527 |
|||
|枝幸(北海道枝幸町) |
|||
|style="text-align:right;" |661 |
|||
|- |
|||
|5位 |
|||
|宮古(岩手県宮古市) |
|||
|style="text-align:right;" |837 |
|||
|[[釜石漁港|釜石]](岩手県[[釜石市]]) |
|||
|style="text-align:right;" |473 |
|||
|宮古(岩手県宮古市) |
|||
|style="text-align:right;" |465 |
|||
|- |
|||
|6位 |
|||
|浦河(北海道[[浦河町]]) |
|||
|style="text-align:right;" |813 |
|||
|枝幸(北海道枝幸町) |
|||
|style="text-align:right;" |454 |
|||
|[[歯舞漁港|歯舞]](北海道根室市) |
|||
|style="text-align:right;" |461 |
|||
|- |
|||
|7位 |
|||
|小名浜(福島県[[いわき市]]) |
|||
|style="text-align:right;" |758 |
|||
|浦河(北海道浦河町) |
|||
|style="text-align:right;" |451 |
|||
|増毛(北海道増毛町) |
|||
|style="text-align:right;" |424 |
|||
|- |
|||
|8位 |
|||
|小樽(北海道[[小樽市]]) |
|||
|style="text-align:right;" |750 |
|||
|小樽(北海道小樽市) |
|||
|style="text-align:right;" |413 |
|||
|相馬原釜(福島県相馬市) |
|||
|style="text-align:right;" |376 |
|||
|- |
|||
|9位 |
|||
|[[八戸漁港|八戸]]([[青森県]][[八戸市]]) |
|||
|style="text-align:right;" |733 |
|||
|石巻(宮城県[[石巻市]]) |
|||
|style="text-align:right;" |395 |
|||
|白糠(北海道[[白糠町]]) |
|||
|style="text-align:right;" |366 |
|||
|- |
|||
|10位 |
|||
|稚内(北海道[[稚内市]]) |
|||
|style="text-align:right;" |701 |
|||
|歯舞(北海道根室市) |
|||
|style="text-align:right;" |333 |
|||
|網走(北海道[[網走市]]) |
|||
|style="text-align:right;" |354 |
|||
|- |
|||
!総計 |
|||
!colspan="2" style="text-align:right;" | 24,357 |
|||
!colspan="2" style="text-align:right;" | 13,886 |
|||
!colspan="2" style="text-align:right;" | 12,016 |
|||
|} |
|||
日本近海では1960年から1980年代にかけてタコの漁獲量がピーク時の半分にまで激減し、これを改善するため国を挙げて長期プロジェクトが行われた{{Sfn|カレッジ|2014|p=45}}。産卵海域の環境を改善し、個体数を増やすため、瀬戸内海を中心に増殖事業が行われ、毎年12,000–17,000個の産卵用の蛸壺や[[魚礁|岩]]が沈められている{{Sfn|カレッジ|2014|p=45}}<ref name="Akashi"/>{{Sfn|竹内ほか|2004|p=192}}。兵庫県では漁業者に対し、100 g 以下のタコの禁漁や共同漁業権区域内の禁漁を定めた兵庫県漁業調整規制が敷かれている{{Sfn|武田|2013|p=189}}<ref name="Akashi"/>。明石商工会議所では一般遊漁者に対しても釣り具の数や形状の規制のタコ釣りルールの周知や、釣り過ぎたタコの放流によるタコマイレージ制度などの導入が行われている<ref name="Akashi"/>。福岡県、長崎県、熊本県、大分県でも100 g 以下のタコの禁漁を行っている{{Sfn|武田|2013|p=189}}。 |
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ミズダコはやや増加傾向にある{{Sfn|竹内ほか|2004|p=192}}。資源管理策としては成長乱獲を防ぐために3歳以上の個体を漁獲することが好ましい{{Sfn|竹内ほか|2004|p=192}}。北海道のミズダコ漁では、各地で2 kg 以下のものは海にリリースするように取り決められている{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=272}}。青森県でも自主規制として3 kg 未満の個体は水揚げせず、放流している{{Sfn|竹内ほか|2004|p=192}}。 |
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[[山形県]]や[[新潟県]]では、タコが住む巣穴である'''[[#巣と移動|蛸穴]]'''の一つ一つに権利の占有があった{{Sfn|新村|1998|p=1641}}{{Sfn|神崎|1994|p=110|loc=第7章}}。山形県の[[飛島 (山形県)|飛島]]では蛸穴が1種の私有財産として認められており、売買や相続が行われるほか、その占有権を持って嫁ぐこともあったとされる{{Sfn|新村|1998|p=1641}}{{Sfn|神崎|1994|p=110|loc=第7章}}。新潟県の[[粟島 (新潟県)|粟島]]では、村共同で使う「むら穴」や仲間だけで共有する「なかま穴」、個人がこっそり獲りに行く「銭箱」などがあった{{Sfn|神崎|1994|p=110|loc=第7章}}。また、[[琉球列島]]の[[珊瑚礁]]にある蛸穴はそれぞれの人が秘密にして所有してきた{{Sfn|神崎|1994|p=109|loc=第7章}}。皆が漁に出る大潮の際はわざと別の穴を突くこともあり{{Sfn|神崎|1994|p=109|loc=第7章}}、自分の子にも死ぬ間際まで教えないと言われる{{Sfn|神崎|1994|p=110|loc=第7章}}。 |
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[[愛媛県]][[今治市]]の[[大三島]]では、タコ漁専用の生簀を備えた船を「章魚船(たこぶね)」と呼んだ{{Sfn|荒俣|1994|p=245}}。章魚船の[[帆柱]]にはペンドロと呼ばれる錘が付けられており、揺すって舟を揺らすことで生簀のタコ同士を喧嘩させないようにする{{Sfn|荒俣|1994|p=245}}。 |
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=== アジアの漁業 === |
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[[東アジア]]では、2010年に[[中華人民共和国|中国]]が125,776 t、[[大韓民国|韓国]]が20,759 t のタコを漁獲している{{Sfn|Norman|Finn|2016|p=11}}。[[台湾]]では前記の未記載種「{{lang|zh|[[:zh:澎湖章鱼|澎湖章魚]]}}」のほか、[[マダコ]]、[[イイダコ]]、{{snamei|Cistopus taiwanicus}}、{{snamei||Amphioctopus neglectus}}「[[:zh:忽蛸|忽蛸]]」、[[スナダコ]] {{snamei||Amphioctopus kagoshimensis}}、スナダコ近縁種 {{snamei|Amphioctopus aegina}}「[[:zh:白線章魚|白線章魚]]」などが漁獲される{{Sfn|FAO|2016|pp=15–17}}。{{snamei|Amphioctopus exannulatus}} なども混獲される{{Sfn|FAO|2016|pp=15–17}}。 |
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[[東南アジア]]では主に[[ワモンダコ]] {{snamei|en|Octopus cyanea|'Octopus' cyanea}} が漁獲される{{Sfn|Willer ''et al.''|2023|pp=179–189}}{{Sfn|FAO|2016|pp=15–17}}。[[タイ王国|タイ]]では {{snamei||Amphioctopus neglectus}}、{{snamei||Amphioctopus rex}}、{{snamei||Amphioctopus siamensis}}、{{snamei|Amphioctopus aegina}}、[[サメハダテナガダコ]] {{snamei|Callistoctopus luteus}} が主要な[[底曳網]]漁によって漁獲される{{Sfn|FAO|2016|pp=15–17}}。[[フィリピン]]でもワモンダコ、サメハダテナガダコや[[インドダコ]] {{Snamei||Cistopus indicus}} が漁獲されるほか、市場で {{Snamei||Callistoctopus nocturnus}} が売られていた記録がある{{Sfn|FAO|2016|pp=15–17}}。熱帯[[インド洋]]地域では[[シマダコ]] {{snamei||Callistoctopus ornatus}} が漁獲される{{Sfn|FAO|2016|pp=15–17}}。 |
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[[インドネシア]]の[[水産業]]は中国に次ぐ世界第2位漁獲量を持つ大規模なものである{{Sfn|Willer ''et al.''|2023|pp=179–189}}。また、タコの漁獲量は2017年の小規模タコ漁獲量は17,900 t であり、メキシコに次ぐ第2位である{{Sfn|Willer ''et al.''|2023|pp=179–189}}。そのうち食料として消費される量は4,970 t、輸出量は13,200 tである{{Sfn|Willer ''et al.''|2023|pp=179–189}}。インドネシアにおいてタコの販売と輸出は経済的に重要であり、2017年12月の平均所得は漁師1人当たり150,000 [[インドネシア・ルピア|IDR]]/日 であり、平均純賃金96,000 IDR/日 を上回る{{Sfn|Willer ''et al.''|2023|pp=179–189}}。2010年の漁獲量はインドネシアが10,860 t、タイが10,315 t、フィリピンが5,506 t、そして[[マレーシア]]が1,936 t であった{{Sfn|Norman|Finn|2016|p=11}}。 |
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=== ヨーロッパの漁業 === |
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[[File:Octopus catching pots,Tavira, Portugal (14419911279).jpg|thumb|200px|[[ポルトガル]]で用いられる蛸壺。]] |
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[[ポルトガル]]の[[アルガルヴェ]]、[[スペイン]]の[[アンダルシア州|アンダルシア]]や[[ガリシア州|ガリシア]]、[[イタリア]]の[[サルデーニャ]]、[[ギリシャ]]の[[トラキア海]]([[トラキア]]付近の[[エーゲ海]])で、小規模な沿岸漁業により[[チチュウカイマダコ]]が盛んに漁獲される{{Sfn|Pita ''et al.''|2021|ps=: 105820}}。多くの地域では[[蛸壺]]を用いるが{{Sfn|カレッジ|2014|p=18}}、イタリアでは[[筌]]を用いる地域もある{{Sfn|神崎|1994|p=116|loc=第7章}}。 |
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ヨーロッパ諸国では、自国の漁業水域には比較的厳しい規制をかけており、450 g 未満のタコの捕獲は禁止されている{{Sfn|カレッジ|2014|p=48}}。国によってはさらに厳しい制限が設けられている場合もある{{Sfn|カレッジ|2014|p=49}}。[[スペイン]]の[[ガリシア州]]では、蛸籠漁で捕獲できるタコが750 g から1 kg に引き上げられ、更に厳格なローカルルールが定められている{{Sfn|カレッジ|2014|p=49}}。これにより多くの雌が生き延び、新たな世代の生産を可能にしている{{Sfn|カレッジ|2014|p=49}}。 |
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ガリシアでは大規模なタコ漁が行われるが、その漁獲高の大半は小さな漁村の漁船により獲られたものである{{Sfn|カレッジ|2014|p=26}}。中でも[[ビーゴ (スペイン)|ビーゴ]]と呼ばれる町は[[リアス海岸]]の[[入江]]にあり、深層海水が湧昇流によって沿岸に流れ、豊かな漁場が形成されている{{Sfn|カレッジ|2014|p=26}}。この地域では、生き餌を入れた蛸籠による漁が行われている{{Sfn|カレッジ|2014|p=27}}。 |
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イタリアの[[プッリャ州]]で行われる零細漁業では、素潜りやヤスによるタコ漁を行っている{{Sfn|カレッジ|2014|p=57}}。地中海沿岸の漁師は、蛸穴の入口で葉の付いた[[オリーブ]]の枝をゆすり、おびき出して捕獲する{{Sfn|荒俣|1994|p=244}}。また岩に吸い付いたタコは[[オグルマ属]]の一種や{{仮リンク|ムカシヨモギ属|en|Erigeron}}の一種(いずれも[[キク科]])を用いて剥がされる{{Sfn|荒俣|1994|p=244}}。 |
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=== 北西アフリカの漁業 === |
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[[File:Octopus capture.png|thumb|200px|left|世界全体の[[チチュウカイマダコ]] {{snamei|Octopus vulgaris}} の漁獲量の推移。]] |
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[[File:Back from octopus fishing - Mauritania.jpg|thumb|200px|left|[[モーリタニア]]でタコ漁を終えた舟と漁師。]] |
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[[北西アフリカ]]では長年魚を中心とした漁業が行われていたが、1960年代以降標的を転換し、頭足類の商業的な漁業が盛んとなっている{{Sfn|カレッジ|2014|p=47}}{{Sfn|畑中|1994|p=85}}。1989年には116,564 t のタコが漁獲され{{Sfn|畑中|1994|p=84}}、当時世界最大のタコ漁場となっていた{{Sfn|畑中|1994|p=85}}。2017年現在でも、27,075 t のタコが商業的に漁獲されている{{Sfn|Willer ''et al.''|2023|pp=179–189}}。[[モロッコ]]、[[モーリタニア]]、[[セネガル]]などが[[チチュウカイマダコ]] {{Snamei|ja|Octopus vulgaris|Octopus vulgaris}} の供給元となっている{{Sfn|カレッジ|2014|p=47}}。{{Snamei||Amphioctopus burryi}} も小規模に混獲されている{{Sfn|FAO|2016|pp=15–17}}。[[ヌアディブ|現地]]の漁業関係者の間でタコは「プルプル」と呼ばれている<ref name=Maeno2017>{{Cite book ja|author=前野ウルド浩太郎 |authorlink=前野ウルド浩太郎 |title=バッタを倒しにアフリカへ |publisher=[[光文社]] |year=2017 |page=246 |isbn=978-4-334-03989-9}}</ref>。 |
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北西アフリカにおけるタコ漁の開発は日本人漁業者によって行われ、[[トロール漁船]]により漁獲されていた{{Sfn|畑中|1994|p=85}}。1952年に[[マッカーサー・ライン]]が撤廃され、日本漁船が海外に進出するようになった{{Sfn|畑中|1994|p=86}}。1959年には、スペイン人から「[[鯛]]の海岸」と呼ばれていた北西アフリカ漁場を日本人が発見した{{Sfn|畑中|1994|p=86}}。当時は[[ヨーロッパマダイ|タイ]]を狙っていたが、「[[もんごういか]]」と呼ばれる[[ヨーロッパコウイカ]]も高値で取引されるようになり、1965年にはタコが最も重要な水産物となった{{Sfn|畑中|1994|p=86}}。のちにスペインの漁船や日本の商社によってバックアップされた韓国漁船による漁獲が行われるようになった{{Sfn|畑中|1994|p=86}}。しかし1977年の[[排他的経済水域|200海里水域]]制限により締め出されたものの、モーリタニアとの協定により操業を続けていたが、1982年には完全に日本漁船が撤退し、その後は沿岸国が漁獲したタコを輸入するようになった{{Sfn|畑中|1994|p=86}}{{Sfn|奥谷|2013|p=25}}。 |
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[[モロッコ]]では、1960年代に他の魚が乱獲や海洋環境の変化により獲れなくなり、タコ漁が盛んとなった{{Sfn|カレッジ|2014|p=47}}。モロッコのタコは1970年代ごろから日本に輸出されるようになった<ref name="NHK240121">{{Cite web|和書|url=https://www.nhk.or.jp/radio/magazine/article/gr/cik20240121.html|title=【モーリタニア】実は日本から伝わった!? モーリタニアのタコ漁|website=ちきゅうラジオ|publisher=NHK|date=2024-01-21|accessdate=2024-08-24}}</ref>。乱獲により[[1980年]]代から漁獲量が激減し、規制や外国漁船の締め出しが行われるようになった{{Sfn|カレッジ|2014|p=47}}。一時的に回復したものの、20世紀末に再び年間5万 t を超える水揚げが行われ、[[国際連合食糧農業機関]](FAO)により[[乱獲]]地域に指定された{{Sfn|カレッジ|2014|p=47}}。それ以降規制が厳しくなり、漁獲割当量が年間2.5万 t に制限されたほか、禁漁区域の指定や450 g 以下の稚ダコの捕獲禁止などが定められた{{Sfn|カレッジ|2014|p=47}}。近年ではやや回復傾向にあるとされる{{Sfn|カレッジ|2014|p=47}}。2017年では9,884 t のタコが漁獲されている{{Sfn|Willer ''et al.''|2023|pp=179–189}}。 |
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[[モーリタニア]]では水産物を食べる文化はほとんどなかったが<ref name="NHK240121"/>{{Sfn|畑中|1994|p=85}}、モロッコのタコ資源の激減以降、タコの漁獲量を増やし始めた{{Sfn|カレッジ|2014|p=47}}。[[国際協力機構]](JICA)によって派遣された[[中村正明]]により蛸壺漁が伝えられ<ref name="NHK240121"/>、それが普及している<ref name="mofa">{{Cite report|和書|url=https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/kuni/12_databook/pdfs/05-45.pdf |format=PDF |title=政府開発援助(ODA)国別データブック 2012|publisher=外務省 |pages=659–665 |accessdate=2024-08-23 }}</ref>。今ではタコ漁に使われる蛸壺はモーリタニア国内で生産されており、[[ピローグ]]と呼ばれるカヌーで漁が行われる<ref name="NHK240121"/>。2017年では、11,679 t のタコが漁獲されている{{Sfn|Willer ''et al.''|2023|pp=179–189}}。最盛期には年間約2–3万 t が日本へ輸出されていたが<ref name="NHK240121"/>、2000年代半ばに日本向けの輸出が25%減少し{{Sfn|カレッジ|2014|p=48}}、2024年現在ではその6割程度となっている<ref name="NHK240121"/>。[[2012年]]現在、モーリタニア産のタコの約6割が日本に輸出され、日本へ輸入されているタコの約4割がモーリタニア産である<ref name="mofa"/>。モーリタニアでも監督当局の取り締まりが甘いこともあり、乱獲されている{{Sfn|カレッジ|2014|p=48}}。ヨーロッパの漁船ではトロール漁が行われ、基準未満のタコの捕獲や、漁獲量の詐称が行われているとされる{{Sfn|カレッジ|2014|p=48}}。しかしモーリタニアは2006年に補償金86,000,000[[ユーロ]]で[[欧州連合]]と漁業協定を結び、ヨーロッパ船籍の漁船の操業を認めている{{Sfn|カレッジ|2014|p=48}}。{{仮リンク|モントレー湾水族館|en|Monterey Bay Aquarium}}が行っている[[シーフードウォッチ]]では、モーリタニアの状況は危機的であるとされ、モーリタニア産のタコは食べないことを推奨している{{Sfn|カレッジ|2014|p=48}}。 |
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2国のタコ漁獲量の減少により、[[セネガル]]でもタコ漁が行われるようになっている{{Sfn|カレッジ|2014|p=48}}。ただし、サイズ制限や休漁期間の設定など既に資源管理が行われている{{Sfn|カレッジ|2014|p=48}}。 |
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=== オセアニアの漁業 === |
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オセアニア地域では、タコは自給的に獲られ消費されている{{Sfn|畑中|1994|p=85}}。 |
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メラネシアの[[ニューカレドニア]]、[[ロイヤルティ諸島]]、ミクロネシアの[[マーシャル諸島]]、[[マリアナ諸島]]、ポリネシアの[[トンガ]]や[[サモア]]などでは、[[ネズミ]]形の漁具「マカフェケ(蛸石)」を用いて、タコを獲る漁法が行われている{{Sfn|畑中|1994|p=83}}{{Sfn|神崎|1994|p=108|loc=第7章}}{{Sfn|塚本|2014|pp=45–56}}<ref name="Akimichi">{{Cite journal ja|author=秋道智彌|title=漁具―海のアートを探る|journal=月刊みんぱく|volume=46|issue=10|date=2022-10-01|pages=6–7|publisher=国立民族学博物館|url=https://www.r.minpaku.ac.jp/gekkan_minpaku/pdf/MP2210.pdf}}</ref>。これは、タコがネズミに恨みがあるという伝承に由来する{{Sfn|畑中|1994|p=83}}{{Sfn|神崎|1994|p=108|loc=第7章}}{{Sfn|塚本|2014|pp=45–56}}<ref name="Akimichi"/>。マカフェケは貝殻や石を円錐形に磨き、タカラガイの貝殻に付けてその上に[[ヤシ]]の[[葉柄]]を使ってネズミを模して作られる{{Sfn|神崎|1994|p=108|loc=第7章}}<ref name="Akimichi"/>。マカフェケを水中で上下に揺らすとタコが飛びかかる{{Sfn|神崎|1994|p=108|loc=第7章}}<ref name="Akimichi"/>。主に女性がマカフェケによるタコ漁を行い、5月頃が盛んである{{Sfn|神崎|1994|p=108|loc=第7章}}。 |
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[[ハワイ]]では、「ヘエ ({{lang|haw|He`e}})」(タコの意)や"イカ"と呼ばれ、主にワモンダコなどが漁獲される{{Sfn|カレッジ|2014|p=46}}。ただし漁業としては小規模で、ヤスやジグにより捕獲され、2000年の漁獲量は11.7 t{{Small|([[トン]])}}程度である{{Sfn|カレッジ|2014|p=46}}。ハワイ諸島でも円錐形の石に大型のタカラガイの貝殻片を取りつけ、植物繊維で尻尾を取り付けたネズミ型の疑似餌を用いた釣りが行われている{{Sfn|神崎|1994|p=108|loc=第7章}}。 |
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[[ミクロネシア連邦]]では、タコが年間5 t 漁獲されている<ref>{{Cite report|和書|url=https://www.maff.go.jp/j/budget/yosan_kansi/sikkou/tokutei_keihi/seika_h22/suisan_ippan/pdf/60100139_10.pdf|title=ミクロネシア連邦水産業の現状|publisher=農林水産省|page=4}}</ref>。[[ギルバート諸島]]では、2人組でタコ漁を行い、1人が囮としてタコに体を纏わりつかせ、もう一人がタコの脳を噛み潰して絞める{{Sfn|畑中|1994|p=83}}。 |
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[[オーストラリア]]や[[ニュージーランド]]では、[[マオリタコ]] {{Snamei||Macroctopus maorum}} や[[シドニーダコ]] {{Snamei||Octopus tetricus}} が混獲されたり、一部は食用のために漁獲される{{Sfn|FAO|2016|pp=15–17}}。オーストラリアではほかに、{{Snamei||Octopus berrima|'Octopus' berrima}} や {{Snamei||Octopus pallidus|'Octopus' pallidus}} が小規模な蛸壺漁で獲られる{{Sfn|FAO|2016|pp=15–17}}。[[スター・オクトパス]] {{Snamei||Octopus djinda}} は[[ロブスター漁]]で混獲され、{{Snamei||Octopus australis|'Octopus' australis}} や {{snamei|Amphioctopus siamensis}}、{{snamei|Amphioctopus exannulatus}} は底曳網で混獲、{{snamei|Callistoctopus graptus}} は[[ルアー]]で釣られたり、底曳網で混獲される{{Sfn|FAO|2016|pp=15–17}}。 |
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=== アメリカの漁業 === |
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[[File:Common octopus Octopus vulgaris (4681010396).jpg|thumb|250px|アメリカ大陸で食用とされる[[ブラジル・リーフ・オクトパス]] {{snamei||Octopus insularis}}。傘膜を拡げている。]] |
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北アメリカではタコ漁の伝統は古いわけではないが、比較的大きな漁場がいくつかある{{Sfn|カレッジ|2014|p=45}}。南北アメリカ、特に[[ブラジル]]では、主に[[マダコ属]]の {{snamei||Octopus insularis}} と {{snamei||Octopus americanus|O. americanus}} が漁獲される{{Sfn|Willer ''et al.''|2023|pp=179–189}}<ref name="brasilagosto"/>{{Efn|原文では {{snamei|Octopus vulgaris}} であるが、細分化された {{snamei|O. vulgaris}} のうち、アメリカ大陸近海には {{snamei||O. americanus}} が分布する{{Sfn|Avendaño ''et al.''|2020|pp=909–925}}。}}{{Sfn|FAO|2016|pp=15–17}}。[[アメリカ合衆国]]では南東部の沿岸にはマダコ属の1種 {{snamei||Octopus americanus}}、太平洋岸の北西部にはミズダコが分布しているが、漁業としてはあまり整備されていない{{Sfn|カレッジ|2014|p=46}}。 |
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カナダの先住民はカヌーに乗って[[槍]]を用いた漁を行う{{Sfn|荒俣|1994|p=244}}。 |
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[[メキシコ]]は2017年のタコ漁獲量が42,400 t で、熱帯地域の中で最大である{{Sfn|Willer ''et al.''|2023|pp=179–189}}{{Efn|順に[[インドネシア]]、[[モーリタニア]]、[[モロッコ]]がそれに次いで多いタコの漁獲量となっている{{Sfn|Willer ''et al.''|2023|pp=179–189}}。}}。輸出量も6,700 t と高い値を示す{{Sfn|Willer ''et al.''|2023|pp=179–189}}。[[カリフォルニア湾]]を含むメキシコ西海岸では、マダコ属の {{snamei||Octopus hubbsorum}} および {{snamei||Octopus bimaculatus}} が零細漁業により一般的に漁獲される{{Sfn|FAO|2016|pp=15–17}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=45}}。2–3人の漁師がパンガと呼ばれる小舟で出航し、1人が舟に残り、もう1人が長いホースで圧縮空気を送り込む潜水で、素手によりタコを捕獲する{{Sfn|カレッジ|2014|p=45}}。[[ハリスコ州]]北部、[[ナヤリット州]]、[[シナロア州]]、[[ソノラ州]]などの浅瀬ではダイバーが[[ギャフ]](魚鉤)でひっかけてタコを捕獲する{{Sfn|カレッジ|2014|p=45}}。[[バハ・カリフォルニア・スル州]]では、水深20–50 m の岩場に5–50個の罠を仕掛ける漁が行われる{{Sfn|カレッジ|2014|p=45}}。カニを付けた30本の引き縄を小舟で曳き、タコが上ってきた際に網で掬って獲る漁法も行われる{{Sfn|川上|1975|pp=143–147}}。 |
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大西洋側の[[カリブ海]]や[[メキシコ湾]]では蛸壺による漁が行われている{{Sfn|川上|1975|pp=143–147}}。メキシコ湾のユカタン半島沖合では[[マヤダコ]] {{Snamei|Octopus maya}} が[[疑似餌]]による[[延縄]]漁で主要な魚種として獲られ{{Sfn|FAO|2016|pp=15–17}}、1970年頃には10,000 t を超える漁獲量があった{{Sfn|畑中|1994|p=89}}。 |
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== 漁法 == |
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=== 蛸壺漁法 === |
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[[File:二枚貝のイイダコ仕掛けP9166509.JPG|thumb|200px|イイダコ漁に用いられる貝殻を利用した「蛸壺」。]] |
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[[File:TAKOTSUBO.JPG|thumb|200px|[[北海道]]稚内市[[宗谷岬|宗谷漁港]]で積まれる木製の蛸箱。]] |
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現代では[[ヨーロッパ]]の西海岸から[[東アジア]]にかけて、広く'''[[蛸壺]]'''(たこ壺、タコつぼ)を用いたタコ漁が行われている{{Sfn|カレッジ|2014|p=18}}。これには4000年以上の歴史があり、[[古代エジプト]]でも海中に沈めた[[素焼き]]の壺を用いてタコを漁獲していたことが知られている{{Sfn|カレッジ|2014|p=18}}。古くは陶器であり、プラスチック製の蛸壺に置き換わったが、さらに近年では軽くて扱いやすい籠罠(蛸籠)に移行しつつある{{Sfn|石田|2017|pp=56–58}}。 |
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日本で漁獲されるタコの半分は蛸壺または蛸箱などトラップによる漁法で漁獲されたものである{{Sfn|奥谷|2013|p=24}}。狭い岩の隙間に潜り込む習性を利用した[[蛸壺]]漁業や蛸箱漁業は、タコ漁業独特のものである。蛸壺の内部が汚れていると入らないため、内部の付着生物や餌の残滓を清掃して用いる{{Sfn|奥谷|2013|p=23}}{{Sfn|石田|2017|pp=56–58}}{{Sfn|神崎|1994|p=114|loc=第7章}}。同様に、潮流が激しく石の表面が掃除されるような環境を好むため、北海道では「あぶら石のあるところには蛸がいる」といわれる<ref name="kaiseiken"/>。蛸壺漁は1500 m 程度の[[延縄]]に、約150個の壺を吊るして行われる{{Sfn|奥谷|2013|p=24}}。そのうち1割程度に入っていれば大漁であるとされる{{Sfn|奥谷|2013|p=24}}。[[マダコ]]漁に用いる蛸壺は伝統的には素焼きの壺であったが、戦後から[[かまぼこ]]型の[[セメント]]製蓋付きトラップや、[[硬質ビニル]]製トラップも用いられるようになった{{Sfn|奥谷|2013|p=24}}{{Sfn|石田|2017|pp=56–58}}。蛸壺には地域性があり、瀬戸内海東部では素焼きのものであるが、[[周防灘]]では[[釉薬]]をかけたものが用いられる{{Sfn|石田|2017|pp=56–58}}。 |
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[[イイダコ]] {{Snamei||Amphioctopus fangsiao}} のような小型のタコには、小型の蛸壺のような人工物だけでなく、[[アカニシ]]などの[[腹足類]]や大型[[二枚貝]]の貝殻も利用される{{Sfn|奥谷|2013|p=24}}{{Sfn|石田|2017|pp=56–58}}{{Sfn|瀬川|2013|p=131}}。インドや[[マレー半島]]でも巻貝の貝殻を用いたタコ漁が行われ{{Sfn|川上|1975|pp=143–147}}、特に南インドでは[[クモガイ]]の貝殻を用いることが知られている{{Sfn|神崎|1994|p=116|loc=第7章}}。 |
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[[ミズダコ]]のような大型のタコには蛸箱(タコ箱)が用いられる{{Sfn|奥谷|2013|p=24}}{{Sfn|佐野ほか|2017|pp=361–366}}。蛸箱は縦45 cm、横33 cm、高さ19 cm の箱に、16×12 cm の楕円か一辺19 cm の正方形の穴が開いた構造をしており、餌などは用いられない{{Sfn|佐野ほか|2017|pp=361–366}}。木製だけでなくポリエチレン製の蛸箱もある{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=272}}。ミズダコはそのほか、[[#樽流し|樽流し]]や蛸籠(たこ篭)などでも漁獲される{{Sfn|佐野ほか|2017|pp=361–366}}。 |
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海外では、[[筌]]を用いる地域もある{{Sfn|神崎|1994|p=116|loc=第7章}}。イタリアでは蛸壺だけでなく、[[長方形]]の筌も用いられる{{Sfn|神崎|1994|p=116|loc=第7章}}。[[北アフリカ]]の[[チュニジア]]では、[[ナツメヤシ]]の枝で編んだ釣鐘型の筌が用いられている{{Sfn|神崎|1994|p=116|loc=第7章}}。 |
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=== 曳網漁 === |
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近代的なタコ漁では、[[底曳網]]によるタコ漁も行われる{{Sfn|カレッジ|2014|p=19}}。しかし、目的外の生物の混獲や、[[珊瑚]]や[[海藻]]などの損傷など、底生生物の生息環境を攪乱してしまうため、不買運動や規制が行われている{{Sfn|カレッジ|2014|pp=19–20}}。また、幼いタコも捕獲してしまい、リリースされたとしてもダメージを受け死んでしまうことが多い{{Sfn|カレッジ|2014|p=49}}。 |
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日本で漁獲されるタコの1/3は[[曳網]]漁で獲られたものである{{Sfn|奥谷|2013|p=24}}。これには沿岸の小型底曳網、沖合底曳網、船曳網などが含まれる{{Sfn|奥谷|2013|p=24}}。[[福島県]]では、[[ミズダコ]] {{snamei||Enteroctopus dofleini}} や[[ヤナギダコ]] {{Snamei|en|Octopus conispadiceus|'Octopus' conispadiceus}} はほとんどが底曳網により漁獲されている{{Sfn|石田|遠藤|2003|pp=27–48}}。 |
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=== 釣り === |
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[[File:Octopus ocellatus (catch).jpg|thumb|200px|テンヤで釣られる[[イイダコ]]。明石市にて。]] |
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古くから釣りによるタコ漁(蛸釣{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}})も行われている。古代ギリシアでは生き餌を用いた釣りが行われており、[[梁 (漁具)|簗]]による漁とともに[[アリストテレス]]による記録がある{{Sfn|カレッジ|2014|p=19}}。 |
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日本では伝統的に'''蛸賺し'''(たこすかし)と呼ばれる漁法が行われ、竿の先に餌や疑似餌をつけて誘い寄せてタコを獲った{{Sfn|新村|1998|p=1642}}{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}。蛸賺しは蛸おらぎや蛸さぶき、蛸ねりなどとも呼ばれる{{Sfn|新村|1998|p=1642}}{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}。[[伊予国]][[長浜町 (愛媛県)|長浜]](現在の愛媛県[[大洲市]])では、6寸程度の板に甲羅を剥がしたカニと釣り針を付けた「スイチョウ」と呼ばれる道具を用いてタコを釣った{{Sfn|荒俣|1994|p=245}}。 |
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[[イイダコ]]は釣りで漁獲され、イイダコ[[テンヤ]]と呼ばれるおもりのついた針を用いる方法が一般的である{{sfn|平野|2000|p=50}}{{Sfn|瀬川|2013|p=130}}<ref name="yomiuri201005">{{Cite web|和書|title=イイダコ漁獲量、10年前の1割以下に激減…釣り客にも注意呼びかけ|url=https://www.yomiuri.co.jp/national/20201004-OYT1T50054/|website=読売新聞オンライン|publisher=読売新聞社|date=2020-10-05|archivedate=2020-10-05|archiveurl=https://web.archive.org/web/20201005000601/https://www.yomiuri.co.jp/national/20201004-OYT1T50054/|accessdate=2024-08-11}}</ref>。イイダコは好物の二枚貝と似た白色のものを好む傾向があるとされ、テンヤには[[ラッキョウ]]や白いラッキョウ形の陶器を用いるのが主流である{{sfn|平野|2000|p=50}}{{Sfn|小西|2010|p=139}}{{Sfn|瀬川|2013|p=130}}。前者は特に関東地方、後者は関西から[[中国地方]]にかけてで一般的である{{sfn|平野|2000|p=50}}。[[ネギ]]の白い部分、[[豚肉|豚]]の脂身などが用いられることもある{{sfn|平野|2000|p=50}}{{Sfn|瀬川|2013|p=130}}。[[香川県]]ではテンヤが底曳網に絡まり、漁業に支障を来す被害が続いているほか、漁獲量の激減により、釣り客への呼びかけが行われている<ref name="yomiuri201005"/>。 |
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沖縄では[[ワモンダコ]]が「島だこ」と呼ばれて親しまれ、釣りなどで漁獲される{{Sfn|小西|2010|p=163}}{{Efn|沖縄のワモンダコは銛を使った漁でも漁獲される{{Sfn|小野|2013|p=161}}。}}。対し、同音の標準和名を持つ[[シマダコ]] {{snamei||Callistoctopus ornatus}} は「しがや」や「しーがい」と呼ばれ、こちらも釣りで捕獲される{{Sfn|小西|2010|p=161}}。[[平安座島]]では[[ウデナガカクレダコ]]が「ンヌジグワァ」と呼ばれ{{Sfn|小野|2013|p=168}}、釣り糸にイモガイを等間隔に括りつけた「ンヌジベント」と呼ばれる仕掛けを用い、手繰り寄せておびき寄せた後に掴んで捕らえられる{{Sfn|小野|2013|p=163}}。 |
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ハワイ近海では疑似餌を用いたタコ漁が行われる{{Sfn|カレッジ|2014|p=19}}{{Sfn|神崎|1994|p=108|loc=第7章}}。古くはタカラガイの貝殻をルアーとして用いており、現代ではカニを模したルアーを用いる{{Sfn|カレッジ|2014|p=19}}。長い釣り糸に疑似餌を取りつけて海底近くを這わせ、返しのない針数本で引き揚げる{{Sfn|カレッジ|2014|p=19}}。 |
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=== 流し釣り === |
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餌をつけない[[針金]]で引っ掛ける'''{{Vanchor|空釣り}}'''(からづり)漁法も行われる{{Sfn|奥谷|2013|p=24}}。[[北海道]]の太平洋沿岸(主に[[道東]])では、冬から春にかけて、[[ヤナギダコ]]が空釣り縄で漁獲される{{Sfn|安東|2023|pp=10–13}}<ref name="hro">{{Cite web|和書|url=https://www.hro.or.jp/fisheries/h3mfcd0000000gsj/marine/o7u1kr000000019q/o7u1kr000000d0kz/o7u1kr000000d4fu/o7u1kr000000cxgq.html|title=ヤナギダコ:たこ漁業(やなぎだこ空釣り縄)|website=地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 水産研究本部|date=2013-03-01|accessdate=2024-08-11}}</ref>。これは餌の付いていない針を海底に這わせ、移動するタコを引っ掛けることにより漁獲する漁法である{{Sfn|安東|2023|pp=10–13}}。空釣り縄では、ヤメと呼ばれる針と枝縄のセットが笊に100本分ずつ仕掛けられ、縄を繋いで投縄される<ref name="hro"/>。1放しの縄(約1,800 m)には笊50鉢分の仕掛けが取り付けられ、両端にはボンデンと呼ばれる浮標が立てられる<ref name="hro"/>。 |
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'''{{Vanchor|いさりびき}}'''では、「イサリ」と呼ばれる鉤が付いた漁具に餌を付けてタコのいる海底を曳き、釣り上げる{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=278}}{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=1}}{{Sfn|神崎|1994|p=107|loc=第7章}}。北海道[[古平町]]では、明治45年([[1912年]])に自家用としていさりびきの記録が残っている{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=1}}。[[北海道におけるニシン漁史|ニシン漁]]の終わるころから出漁し、それぞれの漁期のつなぎ漁として漁獲されていた{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=1}}。盛漁期は5–6月{{Sfn|『せたかむい』12月号|2004|p=1}}。手釣りのいさりびきは明治時代から行われていたが、1958年に[[茨城県]]の漁法を改良した'''{{Vanchor|樽流し}}'''が北海道のタコ漁に導入された{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=278}}。樽流しは[[宗谷総合振興局|宗谷]]北部や道南日本海の主要な漁法となっている{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=278}}。海底を引きずる長さの釣り糸の先に樽といさりを1個ずつ付け、小型船から20個ほど流す{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=278}}。 |
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また、北海道で[[アブラツノザメ]]や[[シャコ]]などを餌とした[[延縄]]漁が空釣りに並び盛んに行われていたが、1955年以降にはほとんど行われなくなった{{Sfn|北海道立水産試験場研究員|1991|p=272}}。 |
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=== 銛 === |
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[[File:Octopus Fishing In Malindi, Kenya.jpg|thumb|200px|[[ケニア]]でタコを棒で捕えている様子。]] |
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[[銛]]やヤス(簎)、鉤による漁も行われる{{Sfn|川上|1975|pp=143–147}}。これが最も古い漁法であるとされ、熱帯地域で行われる{{Sfn|川上|1975|pp=143–147}}。例えば、[[モーリシャス]]などでは銛や徒手によりタコを捕獲する{{Sfn|カレッジ|2014|p=19}}。珊瑚礁が分布する[[琉球列島]]でも、その隙間に隠れるタコを狙った銛による漁が行われる{{Sfn|神崎|1994|p=109|loc=第7章}}{{Sfn|小野|2013|p=161}}。日本ではほかに、山陰の[[但馬海岸]]や[[若狭湾]]、新潟県の[[佐渡島]]や[[粟島 (新潟県)|粟島]]、山形県の[[飛島 (山形県)|飛島]]、北海道の[[留萌振興局|留萌]]・[[天塩国|天塩]]の海岸でタコの突き漁が行われる{{Sfn|神崎|1994|p=110|loc=第7章}}。 |
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タコを捕らえるのに用いる鉤は'''蛸鉤'''(たこかぎ)と呼ばれ、長い竿の先に鉤を取り付けて用いられる{{Sfn|新村|1998|p=1641}}{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}。佐渡では「タカカギ」と呼ばれ、長さ約9 m、先端が10本程度に分かれている道具を用いた{{Sfn|神崎|1994|p=110|loc=第7章}}。飛島では蛸穴の中のタコにはマガリヤス(曲がり簎)、出ているタコには直線状のノヤスを用いた{{Sfn|神崎|1994|p=110|loc=第7章}}。[[八重山諸島]]では、イグン(イングン)と呼ばれる、僅かに曲線を描いた棒状の1本歯を持つ銛を用いて蛸穴のタコを突く{{Sfn|神崎|1994|p=109|loc=第7章}}。琉球列島の他の地域ではウギンやウジムと呼ばれ、16世紀の文献『[[おもろそうし]]』にも「いぎょも」と呼ばれる漁具が登場する{{Sfn|神崎|1994|p=109|loc=第7章}}。 |
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[[但馬海岸]](兵庫県)や[[赤間関]](現[[山口県]][[下関市]])では、夜に舟で[[篝火]]や[[松明]]を焚き、集まったタコを捕獲したと伝わる{{Sfn|神崎|1994|p=110|loc=第7章}}{{Sfn|荒俣|1994|p=245}}。但馬海岸ではヤスで突き{{Sfn|神崎|1994|p=110|loc=第7章}}、赤間関では徒手や打ち鉤によりタコを捕らえた{{Sfn|荒俣|1994|p=245}}。 |
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=== その他のタコ漁 === |
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[[定置網]]漁も行われる{{Sfn|奥谷|2013|p=24}}。 |
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[[長崎県]][[五島市]]の[[福江島]]では、干潮の時に、岩礁に生息する[[マメダコ]] {{Snamei|en|Octopus parvus|'Octopus' parvus}} に塩を吹きかけて捕らえるマメダコ捕りが行われる<ref name="NHK230919">{{Cite web|和書|url=https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20230919/5030019027.html|title=“塩を吹きかけ捕まえる”「マメダコ」漁が シーズン 五島市|date=2023-09-19|website=長崎 NEWS WEB|publisher=NHK|archiveurl=https://web.archive.org/web/20230927003351/https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20230919/5030019027.html|archivedate=2023-09-27|accessdate=2024-08-11}}</ref>。かつては家庭の竈から出た[[灰]]を吹きかけて捕まえられ、「灰吹きダコ」や「ヒャーダコ」などの方言名で知られる<ref name="NHK230919"/>。 |
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タコを穴から引きずり出す方法は各地で様々なものが用いられ、日本や[[オセアニア]]では天敵である[[ウツボ]]の死骸を投げ入れたり、[[ナマコ]]の毒や[[石灰]]などを用いた{{Sfn|神崎|1994|p=111|loc=第7章}}。地中海ではキク科植物を用いた{{Sfn|荒俣|1994|p=244}}。アリストテレスの『[[動物誌 (アリストテレス)|動物誌]]』にも言及があり、ギリシャの漁師は現在でも[[ムカシヨモギ属]]を用いてタコを捕らえるとされる{{Sfn|荒俣|1994|p=244}}。[[タバコ]]でも同様にタコが岩から離れるとされる{{Sfn|荒俣|1994|p=244}}。また、[[バミューダ諸島]]では蛸穴に[[パン粉]]と大量の塩を混ぜた団子を差し込み、タコを穴から出して捕らえる{{Sfn|荒俣|1994|p=244}}。 |
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=== 養殖 === |
=== 養殖 === |
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[[日本]]、[[オーストラリア]]、[[スペイン]]、[[メキシコ]]、[[イタリア]]、[[中華人民共和国|中国]]など、世界中で養殖の研究が行われているが、商業用の養殖には長年にわたって成功していなかった{{sfn| |
漁獲圧が高まってタコが減少し、{{ill2|タコ養殖|en|Octopus aquaculture}}への関心が高まった{{sfn|カレッジ|2014|p=257}}。[[日本]]、[[オーストラリア]]、[[スペイン]]、[[メキシコ]]、[[イタリア]]、[[中華人民共和国|中国]]など、世界中で養殖の研究が行われているが、商業用の養殖には長年にわたって成功していなかった{{sfn|シュヴァイド|2014|p=103}}{{sfn|カレッジ|2014|p=257}}。稚ダコの成長には生き餌が必要であり、養殖には場所も人手もかかるためである{{sfn|カレッジ|2014|p=85}}{{Sfn|池田|2020|p=216}}。また、稚ダコは[[ヤムシ]]や[[カイアシ類]]など小型の[[動物プランクトン]]に襲われ、傷ついて死滅してしまうこともある{{Sfn|坂口|2013|p=49}}。 |
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メキシコでは[[オクトパス・マヤ]]という種類のタコの養殖が試みられており一定の成果が上がっている<ref>{{Cite web|url=http://blogs.scientificamerican.com/octopus-chronicles/first-octopus-farms-get-growing/|title=First Octopus Farms Get Growing|accessdate=2015-06-16}}</ref>。日本では2017年に世界で2番目に[[ニッスイ]](当時の旧日本水産)がマダコの完全養殖に成功している<ref>[http://www.nissui.co.jp/news/20170608.html マダコの完全養殖の技術構築に成功]</ref><ref>[https://mainichi.jp/articles/20170609/ddm/008/020/024000c 日本水産 マダコの完全養殖成功 事業化目指す]</ref><ref>[https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1706/08/news136.html 日本水産、世界で類を見ない「マダコの完全養殖」に成功]</ref><ref name="TSURINEWS20211221">{{Cite web |author=脇本哲朗 |url=https://tsurinews.jp/120924/ |title=タコの養殖が商業的に成功していないワケ 技術自体は確立されている? |website=TSURINEWS |publisher=[[週刊つりニュース#発行会社|株式会社週刊つりニュース]] |language=ja |date=2020-08-13 |accessdate=2024-07-27}}</ref>。しかし、後述のように倫理的問題もあることから、いずれも2020年代に入るまで商業ベースには到達していなかった。 |
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養殖にかかわる一つ目の課題は孵化後の餌の供給であり、これは日本で[[1960年代]]に解決された{{Sfn|池田|2020|p=214}}{{Sfn|伊丹ほか|1963|pp=514–520}}。[[マダコ]]の稚仔に甲殻類の幼生を餌として与えると、浮遊期の幼生を着底まで育てることができる{{Sfn|池田|2020|p=214}}{{Sfn|伊丹ほか|1963|pp=514–520}}{{Sfn|竹内ほか|2004|p=352}}。しかし、甲殻類の幼生の親を野外で捕獲して利用する天然頼みのもので、多くの餌生物を必要とし、完全養殖には至らなかった{{Sfn|池田|2020|p=214}}{{Sfn|伊丹ほか|1963|pp=514–520}}{{Sfn|竹内ほか|2004|p=352}}。 |
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=== 養殖にかかる倫理的問題と保全活動 === |
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タコの商業的な養殖は2021年から世界で初めて[[カナリア諸島]]において、{{仮リンク|ヌエバペスカノバ|en|Nueva Pescanova}}により行われている<ref>{{Cite web |author= |url=https://gigazine.net/news/20211221-world-first-octopus-farm/ |title=世界初のタコ養殖場がオープンしたというニュースに「知性を持つ生き物が食用に養殖されるべきではない」と科学者が落胆 |publisher=[[GIGAZINE]] |language=ja |date=2021-12-21 |accessdate=2024-07-27}}</ref>。タコの完全養殖に成功し、養殖は技術的には確立されていたが、高い知能を持つとされていることから、倫理的問題が指摘されていて、商業化には単に技術的な問題だけでなく、なお高いハードルが存在していた<ref name="TSURINEWS20211221" />。実際に商業的な養殖がおこなわれるようになったことを受けて、[[2024年]][[7月25日]]にはアメリカ合衆国議会において、「非倫理的な方法で生産されたタコの養殖および取引に反対する法律(Opposing the Cultivation and Trade of Octopus Produced through Unethical Strategies Act、略してOCTPUS Actでタコ法)」案が提出された。これは[[絶滅危惧種]]の保護のように天然漁業を規制するものではなく、[[動物の権利]]の観点からアメリカにおける商業的なタコ養殖事業を禁止したり、[[アメリカ海洋大気庁]]にタコの漁獲方法に関するデータの収集を義務づけることなどが盛り込まれている<ref>{{Cite web |author= |url=https://gigazine.net/news/20240726-octopus-farming-ban-us/ |title=タコの養殖を禁止する「オクトパス法案」がアメリカ議会に提出される、「タコに自由を」と科学者 |publisher=[[GIGAZINE]] |language=ja |date=2024-07-26 |accessdate=2024-07-27}}</ref>。 |
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また、稚ダコの安定した飼育法はタコの養殖のボトルネックの一つであり、活発に研究されてきた{{Sfn|池田|2020|p=215}}。1960年代以降の研究では人工的に孵化させた[[アルテミア]]でも飼育できるようになった{{Sfn|池田|2020|p=214}}。アルテミア単体では必要な栄養素が不足するため、[[ドコサヘキサエン酸]]や[[エイコサペンタエン酸]]をアルテミア幼生に与えてからそれを食べさせることで、大量培養可能な飼料での育成が可能になった{{Sfn|池田|2020|p=214}}。2000年代の日本では、[[浜崎活幸]]と[[竹内俊郎]]らにより、浮遊期の生残率と成長率を上げる研究が行われた{{Sfn|池田|2020|p=215}}。餌としてアルテミア以外に[[イカナゴ]]のスライスを与え、飼育水に[[ナンノクロロプシス]] {{Snamei||Nannochloropsis}} を添加することでマダコが摂取する餌の栄養価を高めることに成功した{{Sfn|池田|2020|p=215}}。 |
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世界初のタコの完全養殖は2004年に[[チチュウカイマダコ]] {{snamei|[[Octopus vulgaris]]}} で、8か月を経て孵化から成体までの飼育成功が報告された{{Sfn|池田|2020|p=215}}<ref>{{Cite journal2 |df=ja |last1=Iglesias|first1=J. |last2=Otero|first2=J.J. |last3=Moxica|first3=C. |last4=Fuentes|first4=L. |last5=Sánchez|first5=F.J. |date=2004|title=The Completed Life Cycle of the Octopus (''Octopus vulgaris'', Cuvier) under Culture Conditions: Paralarval Rearing using Artemia and Zoeae, and First Data on Juvenile Growth up to 8 Months of Age|journal=Aquaculture International|volume=12 |pages= 481–487|doi=10.1023/B:AQUI.0000042142.88449.bc}}</ref>。日本では2017年に世界で2番目に[[ニッスイ]](当時の旧日本水産)がマダコの完全養殖に成功している{{Sfn|池田|2020|p=216}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP447502_Y7A600C1000000/ |title=日本水産、マダコの完全養殖の技術構築に成功|website=日本経済新聞|date=2017-06-08|accessdate=2024-08-23}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1706/08/news136.html |title=日本水産、世界で類を見ない「マダコの完全養殖」に成功|website=ITmedia ビジネスオンライン|date=2017-06-08|accessdate=2024-08-30}}</ref><ref name="TSURINEWS20211221">{{Cite web |author=脇本哲朗 |url=https://tsurinews.jp/120924/ |title=タコの養殖が商業的に成功していないワケ 技術自体は確立されている? |website=TSURINEWS |publisher=[[週刊つりニュース#発行会社|株式会社週刊つりニュース]] |language=ja |date=2020-08-13 |accessdate=2024-07-27}}</ref>。しかし、いずれも2020年代に入るまで商業ベースには到達していなかった。 |
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浮遊期から着床期に至るまでの生残率は低いままで{{Sfn|池田|2020|p=216}}、餌以外の要因が考えられた{{Sfn|池田|2020|p=217}}。[[團重樹]]らは水槽内のマダコ稚仔を観察し、[[エアレーション]]による下降流が稚仔の成長を妨げていることを明らかにし{{Sfn|池田|2020|p=217}}、2018年にこれを改善する設計の水槽を発表した{{Sfn|池田|2020|p=218}}。浮遊期の擬幼生は外套腔の海水を漏斗から噴出して得られるジェット推進により水中に留まっている{{Sfn|池田|2020|p=217}}。餌を捕獲して水槽の底に運ばれた擬幼生は浮上するために餌を捨てて上昇を試みるが、餌を十分に摂取できず衰弱してしまう{{Sfn|池田|2020|p=217}}。そこで、水槽の中央にパイプを設置して水槽底面から水流を生み出すことで{{Sfn|池田|2020|p=217}}、水槽内に[[湧昇流]]を生み、生残率が格段に上昇した{{Sfn|池田|2020|p=218}}。 |
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メキシコではマダコ属の[[マヤダコ]] {{snamei||Octopus maya}} の養殖が試みられており一定の成果が上がっている<ref>{{Cite web|url=http://blogs.scientificamerican.com/octopus-chronicles/first-octopus-farms-get-growing/|title=First Octopus Farms Get Growing|accessdate=2015-06-16}}</ref>。タコの養殖は技術的には確立されていたが、商業的には高い知能を持つタコの養殖はハードルが高かったが<ref name="TSURINEWS20211221" />、2021年、世界で初めて[[カナリア諸島]]において、[[スペイン]]の水産会社{{仮リンク|ヌエバペスカノバ|en|Nueva Pescanova}}によりタコの商業的な養殖がはじまった<ref>{{Cite web |author= |url=https://gigazine.net/news/20211221-world-first-octopus-farm/ |title=世界初のタコ養殖場がオープンしたというニュースに「知性を持つ生き物が食用に養殖されるべきではない」と科学者が落胆 |publisher=[[GIGAZINE]] |language=ja |date=2021-12-21 |accessdate=2024-07-27}}</ref>。 |
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==== 養殖反対活動 ==== |
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タコを食べる文化がない英米圏では、研究における規制や養殖の禁止を求める動きが相次いだ。 |
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2012年に国際的な脳科学者のグループが発表した「ケンブリッジ意識宣言 (''{{En|The Cambridge Declaration on Consciousness}}'')」では、タコの神経系は、鳥類や哺乳類と同様に意識と看做すのに十分な主観的体験ができると明記された{{Sfn|カレッジ|2014|p=178}}<ref>{{Cite book2 |df=ja |last=Low |first=P. |title=''The Cambridge Declaration on Consciousness''. Proceedings of the Francis Crick Memorial Conference|place=Churchill College, Cambridge University|date=2012-07-07|pages=1–2|url=https://fcmconference.org/img/CambridgeDeclarationOnConsciousness.pdf|accessdate=2024-09-14}}</ref>。イギリスでは、タコを含む頭足類は研究対象としては脊椎動物と同様に扱われ、「痛み、苦しみ、ストレス、持続する苦痛」を与えかねない実験から法的に保護された動物となっており、EUも脊椎動物と同様の規制を求めている{{Sfn|カレッジ|2014|p=178}}。タコは高等動物として配慮を要するとする頭足類の研究者がいるいっぽうで{{Sfn|カレッジ|2014|p=177}}、タコの神経系や痛覚の経路の仕組みは完全には理解されておらず、どのように扱えば実験条件として適切かや、実際にタコの不快感を和らげるのに効果があるのかすら分からないという指摘もあった{{Sfn|カレッジ|2014|p=178}}。 |
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2021年になると、イギリスの Jonathan Birch らは、300以上の科学的研究を調査に、タコは「感性のある存在」であり、喜び、興奮だけでなく、痛み、苦痛、害も経験できるという「強力な科学的証拠」があると結論付けた<ref>{{Cite web|url=https://www.lse.ac.uk/News/News-Assets/PDFs/2021/Sentience-in-Cephalopod-Molluscs-and-Decapod-Crustaceans-Final-Report-November-2021.pdf|title=Review of the Evidence of Sentience in Cephalopod Molluscs and Decapod Crustaceans|accessdate=2021-12-27|format=PDF}}</ref>。この調査を受け、2021年11月に、イギリス政府の審査委員会は「タコやカニや大型エビにも苦痛の感覚がある」として、同国で審議されている動物福祉法案の保護対象に感覚をもつ動物として追加した<ref name=":0">{{Cite web|url=https://www.bbc.com/news/science-environment-59667645|title=The world's first octopus farm - should it go ahead?|accessdate=2021-12-27}}</ref>。前述の報告書の著者らは、大量のタコを近接して飼うと、ストレスや衝突を生み、10–15%という高い死亡率に繋がるため、容認出来ないと述べ、高い動物福祉が要求されるタコ養殖は「不可能」と論じている<ref>{{Cite web |url=https://www.bbc.co.uk/news/science-environment-64814781 |title=World's first octopus farm proposals alarm scientists |access-date=2023-03-26}}</ref>。 |
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また、タコの商業養殖の実現が間近となっていることを受け、[[イギリス政府]]は将来「輸入養殖タコの禁止を検討する可能性がある」ともいう<ref name=":0">{{Cite web|url=https://www.bbc.com/news/science-environment-59667645|title=The world's first octopus farm - should it go ahead?|accessdate=2021-12-27}}</ref>。 |
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実際に商業的な養殖がおこなわれるようになったことを受けて、[[2024年]][[7月25日]]にはアメリカ合衆国議会において、「非倫理的な方法で生産されたタコの養殖および取引に反対する法律 (Opposing the Cultivation and Trade of Octopus Produced through Unethical Strategies Act{{Efn|略してOCTPUS Actで「タコ法」}})」案が提出された<ref>{{Cite web |url=https://www.whitehouse.senate.gov/news/release/whitehouse-murkowski-introduce-bipartisan-bill-banning-commercial-octopus-farming/ |title=Whitehouse, Murkowski Introduce Bipartisan Bill Banning Commercial Octopus Farming |access-date=2024-09-28 |website=Senator Sheldon Whitehouse |language=en-US}}</ref>。これは[[絶滅危惧種]]の保護のように天然漁業を規制するものではなく、[[動物の権利]]や[[動物福祉]]<ref>{{Cite web |url=https://news.ntv.co.jp/category/international/e30b89f070eb4f928cb7df2a0ffb7222 |title=世界で需要増加も…米で「タコ養殖禁止法」成立 ナゼ? |date=2024-09-28 |access-date=2024-10-06 |publisher=日本テレビ |website=日テレNEWS NNN |language=ja}}</ref>の観点からアメリカにおける商業的なタコ養殖事業を禁止したり、[[アメリカ海洋大気庁]]にタコの漁獲方法に関するデータの収集を義務づけることなどが盛り込まれている<ref>{{Cite web |author= |url=https://gigazine.net/news/20240726-octopus-farming-ban-us/ |title=タコの養殖を禁止する「オクトパス法案」がアメリカ議会に提出される、「タコに自由を」と科学者 |publisher=[[GIGAZINE]] |language=ja |date=2024-07-26 |accessdate=2024-07-27}}</ref>。アメリカの[[ワシントン州]]は世界で初めてタコ養殖を法的に禁止した<ref>{{Cite web |url=https://ali.fish/blog/washington-state-prohibits-octopus-farming-a-major-victory-for-animals |title=Washington State Prohibits Octopus Farming: A Major Victory for Animals |access-date=2024-03-21}}</ref>。2024年9月27日には、全米で2番目に[[カリフォルニア州]]でタコの養殖や養殖タコの輸入を禁止する法律が成立した<ref>{{Cite web |url=https://news.ntv.co.jp/category/international/da380c3699bd434fa2d2e012d1afd268 |title=タコ養殖反対派の急先鋒 米・マイアミ大学ジャクエット教授に聞く|日テレNEWS NNN |access-date=2024-09-28 |last=日本テレビ |website=日テレNEWS NNN |language=ja-JP}}</ref><ref>{{Cite web |author= |url=https://www.sankei.com/article/20241003-65PKXTEVRRGWVH522DSTBOKPBI/ |title=「知的な生物」米カリフォルニア州でタコ養殖禁止法が成立「社会的な絆を大切にする」 |publisher=産経新聞社 |website=産経新聞 |language=ja |date=2024-10-03 |accessdate=2024-10-06}}</ref>。[[ハワイ州]]では、タコの養殖を禁止する法案が提出されている<ref>{{Cite web |url=https://aldf.org/article/octopus-farming-ban-introduced-in-california/ |title=Octopus Farming Ban Introduced in California |access-date=2024-02-23}}</ref>。 |
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== 利用 == |
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=== 飼育と展示 === |
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[[File:Paul the Octopus 1.jpg|thumb|200px|南アフリカワールドカップ準決勝のドイツ対スペイン戦の結果を予言するパウル]] |
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水質に敏感であり、濾過循環し続けた海水では長生きできないとされる{{Sfn|鈴木|1978|p=7}}。 |
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底生の無触毛亜目のタコは、日本では[[マダコ]]<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.kaiyukan.com/area/exhibition/067.html|title=マダコ|常設展示|展示・館内紹介|website=海遊館|accessdate=2024-08-29}}</ref><ref name="shikoku">{{Cite web|和書|url=https://shikoku-aquarium.jp/kannai/exhibition/creature/213.html|title=マダコ - いきもの紹介|website=[[四国水族館]]|accessdate=2024-08-27}}</ref>や[[ミズダコ]]<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.kaiyukan.com/connect/blog/2015/02/post-640.html|title=ミズダコを展示しています|website=海遊館|date=2015-02-19 |accessdate=2024-08-29}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.muromin.jp/news.php?id=87714|title=「吸盤くっついた」 ミズダコ触って観察、むろみん水族館|website=Webむろみん 電子版|publisher=室蘭民報社|date=2023-06-05|accessdate=2024-08-27}}</ref><ref name="yomiuri240129">{{Cite web|和書|url=https://www.yomiuri.co.jp/national/20240128-OYT1T50133/|title=水族館にミズダコ専門館、1億2000万円で建設した施設は巨大なタコが侵入してくるデザイン|website=読売新聞オンライン|publisher=読売新聞社|date=2024-01-29|accessdate=2024-08-27}}</ref>などが、海外でも[[チチュウカイマダコ]]<ref>{{Cite web|url=https://www.visitsealife.com/london/explore/creatures/octopus/|title=Octopus|website=SEA LiFE London Aquarium|accessdate=2023-11-22}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.visitsealife.com/paris/en/whats-inside/our-animals/octopus/|title=Octopus|website=SEA LiFE Paris|accessdate=2023-11-22}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://tonmo.com/threads/octopus-vulgaris-cognitive-expriment-tank-in-austria-europe.81063/|title=Octopus vulgaris cognitive expriment tank in Austria (Europe)|author=Wolfgang_Slany|website=TONMO: The Octopus News Magazine Online|date=2023-09-18|accessdate=2023-11-22}}</ref> や[[カリフォルニアツースポットダコ]]<ref>{{Cite web|url=https://www.aquariumofpacific.org/onlinelearningcenter/species/california_two_spot_octopus|title=California Two-spot Octopus|website=Online Learning Center|publisher=Aquarium of the Pacific|accessdate=2024-08-28}}</ref>が[[水族館]]でよく飼育される。[[ドイツ]]・[[オーバーハウゼン]]の水族館 {{lang|en|Sea Life Oberhausen}} では、「タコの[[パウル (タコ)|パウル]] ({{lang|de|Paul der Krake}})」と呼ばれる {{snamei|Octopus vulgaris}} が飼育され、[[2010 FIFAワールドカップ]] の結果の「予言」を行ったことでよく知られている{{sfn|池田|2020|p=39}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=138}}。[[ヒョウモンダコ]]も長期間ではないが、飼育されることがある<ref>{{Cite web|和書|url=https://aquarium.co.jp/diary/2022/01/56930|title=ヒョウモンダコを展示しています|date=2022-01-25|author=森滝丈也|website=鳥羽水族館 飼育日記|accessdate=2024-08-29}}</ref>。ほかに[[ウデナガカクレダコ]]、[[ミミックオクトパス]]、[[ブンダープス]] {{snamei||Wunderpus photogenicus}} などが水族館での飼育のために生きたまま捕獲された記録がある{{Sfn|FAO|2016|pp=15–17}}。 |
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それに対し、浮遊性の無触毛亜目や深海性の有触毛亜目のタコの飼育例は少なく、前者では[[アオイガイ]]や[[タコブネ]]<ref>{{Cite web|和書|url=https://mainichi.jp/articles/20191108/k00/00m/040/067000c|title=貝かぶったタコ 貴重なお披露目 「アオイガイ」・新潟の水族館|website=毎日新聞|date=2019-11-08|accessdate=2024-08-29}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://aquarium.co.jp/diary/2016/09/26600|title=タコブネを展示しました|date=2016-09-27|author=森滝丈也|website=鳥羽水族館 飼育日記|accessdate=2024-08-29}}</ref>が、後者では[[メンダコ]]や[[オオメンダコ]]がごく短期間飼育されるのみである<ref>{{Cite web|和書|url=https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1607/01/news123.html|title=沼津港深海水族館が”メンダコ”展示の世界記録更新中 カメラを向け続けると死ぬくらい繊細、記録更新の秘訣は?|website=ねとらぼ|date=2016-07-01|accessdate=2024-08-29}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000624.000020364.html|title=サンシャイン水族館飼育「メンダコ」死亡のお知らせ 国内最長展示76日間|author=株式会社サンシャインシティ|website=PR TIMES|date=2022-03-15|accessdate=2024-08-29}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst&link_num=26367|title=世界初! メンダコが孵化する瞬間の撮影に成功!! 葛西|website=東京ズーネット|date=2020-08-20|accessdate=2024-08-29}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20231221/6050024852.html|title=いわき市の水族館の「オオメンダコ」飼育が国内最長記録を更新|website=福島 NEWS WEB|publisher=NHK|date=2023-12-21|accessdate=2024-08-29}}</ref>。 |
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しかし、前述の通りマダコでも完全養殖は難しく、稚仔の飼育の難易度が高いため、ミズダコなどでは世代を回した飼育は行われていない<ref name="yomiuri240129"/>。 |
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哺乳類の動物飼育の現場では、その飼育環境を良くする「エンリッチメント」が叫ばれているが、タコについても知能が高いため、退屈しないように刺激を絶やさないようにする工夫が行われることがある{{Sfn|カレッジ|2014|p=145}}。 |
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タコは[[脊椎動物]]のような[[骨]]を持たず柔軟であるため{{Sfn|池田|2020|p=19}}、口器が通る大きさなら非常に狭い空間でも通り抜ける事ができ{{Sfn|カレッジ|2014|p=73}}、水族館で飼育されているタコが脱走することもある{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=79}}<ref name="shikoku"/><ref>{{Cite web|和書|author=Wajeeha Malik|translator=三枝小夜子|url=https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/041800141/|title=水族館脱走タコ、愛嬌ある性格で人気の若者だった|website=ナショナルジオグラフィック日本版|date=2016-04-19|accessdate=2024-08-07}}</ref>。脱走の最中に死んでしまうこともままある{{Sfn|鈴木|1978|p=7}}。 |
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=== バイオミメティクス === |
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タコの腕はあらゆる方向に自在に曲げることができ、2倍にも伸長することができるうえ、失っても完全に再生する能力を持つため、[[神経学]]の研究やロボットのモデルにも用いられている{{Sfn|カレッジ|2014|p=180}}。しなやかに曲がり、吸盤を具えたタコの腕に着想を得た、あらゆるものを掴むことのできるソフトロボットなどが開発されている{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=70}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2006/10/news040.html|title=タコのように曲がり吸盤を駆使する触手ロボット ハーバード大など開発|date=2020-06-10|website=ITmedia NEWS|accessdate=2024-08-29}}</ref>。 |
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腕は脳神経節がすべて制御しているわけではなく、それぞれの腕の先端にまで神経索が通り、脳と無関係に運動できる{{Sfn|カレッジ|2014|p=180}}。また、繊細な作業も力強い行動も行うことができ、それぞれの腕同士を連携させることもできる{{Sfn|カレッジ|2014|p=180}}。この腕同士のコミュニケーションや分散知能システムについても自律型ロボットへの応用が期待され、研究されている{{Sfn|カレッジ|2014|p=180}}。 |
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腕に並んだ吸盤も工学的に研究され、ロボットのモデルとなっている。吸盤はそれぞれに思い思いに伸びたり、物を撮んだり放したりすることができる{{Sfn|カレッジ|2014|p=180}}。タコの吸盤を模倣したロボットハンド(真空グリッパ)が開発されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www2.itc.kansai-u.ac.jp/~t100051/r_gripper_j.html|title=タコの吸盤を模倣したロボットハンド|website=関西大学システム理工学部 機械工学科 ロボット・マイクロシステム研究室|accessdate=2024-08-29}}</ref> |
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また、タコは素早く精巧な体色変化を行い、反射性や質感、明るさを周囲の環境に合わせて変化させることができる{{Sfn|カレッジ|2014|p=96}}。[[超音波]]による探知器は古くから軍事的な研究がなされてきたため、それを回避する技術の開発が進められている{{Sfn|カレッジ|2014|p=123}}。しかし、そういった仕組みを用いないタコの擬態も軍事利用を目指して、[[アメリカ海軍]]などから資金提供を受けた研究が進んでいる{{Sfn|カレッジ|2014|p=124}}。タコは瞬時に周囲の背景に合わせた体色変化ができるため、眼を経由した視覚情報以外にも、皮膚で光や色を感知できる仕組みがあるのではないかと考えられている{{Sfn|カレッジ|2014|p=127}}。タコの擬態の仕組みを[[バイオミメティクス|模倣]]し、色や光を感じ取ってその通りに模倣できる新素材の開発が進められている{{Sfn|カレッジ|2014|p=124}}。 |
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== 文化 == |
== 文化 == |
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{{雑多な内容の箇条書き|section=1|date=2013年9月21日 (土) 05:43 (UTC)}} |
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[[ファイル:AMI - Oktopusvase.jpg|thumb|200px|タコが描かれた前期[[ミノア文明]]の[[土器]]<br />[[クレタ島]][[イラクリオン]]にて[[紀元前1500年]]の地層より出土。ギリシャ、[[アテネ国立考古学博物館]]所蔵。]] |
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|total_width=350 |
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日本ではその形態、生態がきわめて特徴的でユーモラスでもあり、また、茹でると真っ赤になるなどといった性質から、漫画・映画・テレビ番組などでキャラクター化されることが多い(茹でたあとの赤色で表現されることがほとんど。しばしば、胴体を頭部になぞらえ、目や突き出た口を持ち、足は極端に短く、額に当たる部分に[[鉢巻]]を巻いた姿で描かれる)。足の数である八が縁起がよいとされ、「多幸」との字を当てて縁起物としても扱われた。単純に馬鹿にする言葉としても「タコ」という呼称が使われ、転じて、[[馬鹿]]や[[初心者]]、ハゲを指して「タコ」という表現もあちこちで見られる。同じ墨を吐く動物として、[[イカ]]と対比されることが多い。 |
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|image1=AMI - Oktopusvase.jpg |
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|caption1=タコが描かれた前期[[ミノア文明]]の[[土器]]{{Efn|[[クレタ島]][[イラクリオン]]にて[[紀元前1500年]]の地層より出土。ギリシャ、[[アテネ国立考古学博物館]]所蔵。}}。 |
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|image2=Octopus @ Asukayama Park @ Oji (9531916664).jpg |
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|caption2=[[飛鳥山公園]]にある鉢巻を巻いたタコの[[遊具]]。 |
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[[File:Kisaburō Ohara, Europe and Asia Octopus Map, 1904 Cornell CUL PJM 1145 01.jpg|thumb|250px|[[小原喜三郎]]の『滑稽欧亜外交地図』。ロシアが黒蛸に描かれる。]] |
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タコはその見た目から、世界各地でキャラクターのモチーフとなっており、神話や伝承にも登場する。 |
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地中海沿岸諸国では古来、タコは食用であり、身近な存在であった{{Sfn|瀧|1999|p=329}}。例えば、[[紀元前16世紀|紀元前1,600年頃]]の[[クレタ文明]]や[[ミノア文明]]では[[貨幣]]にタコが描かれ、[[紀元前12世紀|紀元前1,200年頃]]の[[ミケーネ文明]]でも[[鐙壺]]の図案に用いられた{{Sfn|カレッジ|2014|p=14}}。[[キプロス]]や[[クノッソス]]の古陶にもタコが描かれる{{Sfn|鈴木|1978|p=8}}。また、[[アリストテレス]]([[紀元前384年]] - [[紀元前322年]])は著作『[[動物誌 (アリストテレス)|動物誌]]』 (''Historia Animalium'') の中で[[アオイガイ属]] {{snamei||Argonauta}} や[[イチレツダコ]] {{Snamei||Eledone}} について述べている{{Sfn|瀧|1999|p=329}}。 |
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先述([[#ヨーロッパ]])のとおり、地中海沿岸諸国では古来、タコは食用であり、身近な存在であった。しかし、ヨーロッパ中北部では「悪魔の魚」とも呼ばれ、忌み嫌われてきた。タコは潜水夫を丸飲みにするともいわれる{{誰2|title=主語が無い。それを言っているのはどの範囲の人々なのか。|date=2009年10月}}。イラストに描かれる際も、足を強調してグロテスクに描かれ、紫色に塗られることが多い。 |
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日本では食材としての身近さから、「タコ文化」が根付いている{{Sfn|池田|2020|p=13}}。その形態がユーモラスであり、様々なキャラクターに用いられる{{Sfn|池田|2020|p=13}}。漫画の主人公として登場するほか、玩具や商品キャラクターにもなっている{{Sfn|奥谷|1994|p=35|loc=第2章}}。茹でると真っ赤になるなどといった性質から、茹でたあとの赤色で表現されることがほとんどで{{Sfn|鈴木|1978|p=8}}、しばしば、胴体を「頭」に、漏斗を突き出た「口」に準え、額に当たる部分に[[鉢巻]]を巻いた姿で描かれ{{Sfn|鈴木|1978|p=8}}{{Sfn|奥谷|1994|pp=21–23|loc=第1章}}、しばしば[[擬人化]]される{{Sfn|千葉・荒俣|1988|p=254}}。例えば、[[歌川貞秀]]『[[新板化物づくし]]』には鉢巻をした巨大な蛸が舟を襲う様子が描かれている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.nichibun.ac.jp/cgi-bin/YoukaiGazou/card.cgi?identifier=U426_nichibunken_0227_0009_0000|title=蛸;タコ,鉢巻き;ハチマキ|website=怪異・妖怪画像データベース|publisher=国際日本文化研究センター|accessdate=2024-08-26}}</ref>。タコの姿を模した[[公園]]の[[遊具]]([[すべり台|滑り台]])は「[[タコの山|タコ滑り台]]」や「タコ遊具」と呼ばれ、日本各地に200基ほど見られる<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.yomiuri.co.jp/national/20220501-OYT1T50206/|title=タコ滑り台の「聖地」足立区、誕生のきっかけは区担当者の「頭をつけてタコにしろ」|date=2022-05-02|website=読売新聞オンライン|publisher=[[読売新聞社]]|accessdate=2024-08-26}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000759428.pdf|title=タコ遊具がある公園|publisher=北九州市|accessdate=2024-08-26}}</ref>。また、飾り切りをした[[ソーセージ]]は「[[たこさんウィンナー]]」と呼ばれ、しばしば[[弁当]]に入れて親しまれる{{Sfn|池田|2020|p=3}}。 |
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日本ではタコは縁起物として用いられ、[[おせち料理]]などにも入れられる<ref name="japanpost">{{Cite web|和書|url=https://www.shop.post.japanpost.jp/column/osechi/osechi_iware17.html|title=「酢だこ」の意味・いわれ|website=おせちの豆知識 - 郵便局のネットショップ|publisher=日本郵政グループ|accessdate=2024-08-24}}</ref><ref name="sanspo230518">{{Cite web|和書|url=https://www.sanspo.com/article/20230518-S2WY4VESVRLM5EUDP2MXVU4NAY/|title=若元春が初の無傷5連勝 染め抜きのデザインを「蛸」に 凧のように舞い上がる?/夏場所|date=2023-05-18|website=[[サンケイスポーツ]]|publisher=産業経済新聞社|accessdate=2024-08-26}}</ref>。茹で上げると赤くなり、めでたい紅白模様であるとされるほか、赤は魔除けの意味があり、墨を吐く生態を「苦難を煙に巻く」と捉え、また名は「多幸」に通ずるとされる<ref name="japanpost"/><ref name="sanspo230518"/>。 |
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それに対し、ヨーロッパ中北部では「悪魔の魚 ({{En|devilfish}})」とも呼ばれ、忌み嫌われてきた{{Sfn|池田|2020|p=91}}{{Sfn|新村|1998|p=1641}}{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}{{Sfn|千葉・荒俣|1988|p=254}}。これはタコは近づく魚を引き寄せて捕食するため、誘惑者や裏切り者、悪魔と同一視されたことによるとされる{{Sfn|荒俣|1994|p=244}}。[[#神話・伝承|下記]]のクラーケンが船を襲うとされるように{{Sfn|カレッジ|2014|p=68}}、西洋文学ではタコは海の悪魔として描かれてきた{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=20}}。日本でのタコのイメージとは違い、8本の腕とそれについた吸盤が強調されて描かれる傾向がある{{Sfn|奥谷|1994|p=96|loc=第6章}}。また、多くの長い腕を持つ姿から、1877年に[[イギリス]]の[[フレデリック・ローズ]]により敵国である[[ロシア]]を巨大なタコの姿に描いた[[風刺画|風刺地図]]が描かれた<ref name="natgeo161006">{{Cite web|和書|url=https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/100500377/|title=20世紀の戦争プロパガンダ地図12点、敵はタコ|date=2016-10-06|website=ナショナルジオグラフィック日本版|accessdate=2024-08-27}}</ref>。それを基にフランスや日本、[[ナチス政権]]下のドイツなどで、多くの地図製作者に踏襲され、[[プロパガンダ]]の意図を持ち侵略者をタコに準えた地図が制作された<ref name="natgeo161006"/>。日本でも、[[日露戦争]]開戦直後の1904年に発行された『[[滑稽欧亜外交地図]]』がよく知られる<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.library.pref.gifu.lg.jp/uploads/2019/10/11.pdf|format=pdf|title=授業で使える当館所蔵地図 ・ No.11 『滑稽欧亜外交地図』|website=岐阜県図書館|accessdate=2024-08-27}}</ref>。 |
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しかし、近年ではそういった国でも多くのタコをテーマとした商品が急増し、受け入れられている{{Sfn|カレッジ|2014|p=14}}{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=33}}。[[帽子]]、[[スカーフ]]や[[ネクタイ]]、[[Tシャツ]]、[[クッション]]などの柄だけでなく、マウスパッドや携帯電話のケースなどコンピューターアクセサリ、マグカップや皿などの食器など、タコをモチーフとした様々な製品が作られている{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=30}}。[[入れ墨|タトゥー]]の図案にもなっている{{Sfn|カレッジ|2014|p=14}}。2015年には[[ユニコードコンソーシアム]]により、国際的な[[文字コード]]の[[業界標準規格]]である [[Unicode]] にタコの[[Emoji|絵文字]](🐙、U+1F419)が追加された{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=29}}。 |
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{{Multiple image |
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|align=center |
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|header=様々な環境下でのタコの絵文字 |
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|total_width=360 |
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|image1=Noto Emoji KitKat 1f419.svg |
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|caption1=[[Noto]] Emoji KitKat |
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|image2=Noto Emoji Oreo 1f419.svg |
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|caption2=Noto Emoji KitKat |
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|image3=Noto Emoji v2.034 1f419.svg |
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|caption3=Noto Emoji v2.034 |
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|image4=Twemoji 1f419.svg |
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|caption4=[[Twitter|Twemoji]] |
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|image5=Phantom Open Emoji 1f419.svg |
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|caption5=Phantom Open Emoji |
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|image6=Android Emoji 1f419.svg |
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|caption6=[[Android]] Emoji |
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}} |
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=== 神話・伝承 === |
=== 神話・伝承 === |
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[[File:Naturalistslibra25-p326a-kraken.jpg|thumb|300px|船を襲う[[クラーケン]]。「巨大タコ」と呼ばれるもの。]] |
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[[ファイル:Hunting the Giant Octopus of Namekawa in Etchu Province (orange).jpg|サムネイル|[[滑川市|滑川]]の大蛸([[歌川広重 (3代目)|三代広重]]作「大日本物産図会」から)]] |
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[[File:Hunting the Giant Octopus of Namekawa in Etchu Province (orange).jpg|thumb|250px|[[歌川広重 (3代目)|三代広重]]『大日本物産図会』に描かれる[[滑川市|滑川]]の大蛸]] |
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; 日本 |
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その特徴的な姿は人間の想像力をかきたて、世界各地の様々な伝承に登場し、またモチーフとされる{{Sfn|カレッジ|2014|p=10}}{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}。 |
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* 蛸神社(たこじんじゃ) :明浜の蛸神社。[[愛媛県]][[西予市]]明浜町にある。cf. [[明浜町#文化]]。 |
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* [[衣蛸]](ころもだこ) :[[京都府]]に伝わる蛸の[[妖怪]]。大蛸に変化して舟を海中に引きずり込むとして恐れられる。 |
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* ヤザイモン蛸(やざいもんだこ) :[[香川県]]に伝わる大蛸の[[怪物|怪]]。八左兵門という男が昼寝している大蛸の足を1日1本ずつ足を切って持って帰っていた。あと1本というときに、大蛸が八左兵門を海に引き込んだという<ref>{{Cite journal|和書|author=北條令子|year=1985|title=海と山の妖怪話|journal=香川の民俗|issue=通巻44号|pages=4頁|publisher=香川民俗学会}}</ref>。 |
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* [[蛸地蔵]](たこじぞう) :[[天性寺 (岸和田市)|天性寺]]。[[大阪府]][[岸和田市]]にあり、[[岸和田城]]落城の危機に、大蛸に乗った地蔵の化身が城を救ったという伝説がある。又、[[南海本線]][[蛸地蔵駅]]の由来にもなっている。 |
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* [[蛸薬師]](たこやくし) :[[永福寺 (京都市)|永福寺]]。[[京都市]][[中京区]]に所在。僧が病の母を思って、母の好物のタコを戒律を破ってまで買ってきたところ、そのタコが池に飛び込んで光明を放ち、病がたちまち快癒したとの伝承があり、この異名で知られる。[[蛸薬師通]]の由来にもなった。 |
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* タコは芋が好物で、海から上がってイモ畑のイモを盗むという俗説があった。 |
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* [[アイヌ]]の伝承には[[ラートシカムイ]]と呼ばれる巨大な蛸が登場する。 |
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例えば、何本もの腕を持つ[[北ヨーロッパ|北欧]]の[[伝説]]に登場する海の[[怪物]]、[[クラーケン]]はよく知られ、文学や伝説、絵画や映画の至る所に登場する{{Sfn|カレッジ|2014|p=10}}。巨大なタコとイカを合体させたような姿で描かれ、深海に潜んで船を追いかけ、船員を貪り食うとされる{{Sfn|カレッジ|2014|p=68}}。これは[[13世紀]]の[[アイスランド]]の伝説上の生物[[ハーヴグーヴァ]]が基になったと考えられており{{Sfn|モンゴメリー|2017|p=14}}、[[古代]]の[[北欧神話]]には登場しない。フランスの船乗りたちが[[アンゴラ]]沖で巨大なタコに襲われたという話が伝わり、[[ピエール・ドニ・ド・モンフォール]]により「巨大タコ ({{Fr|Le Poulpe Colossal}})」の仕業とされ、1810年に著作中で描かれた{{Sfn|モンゴメリー|2017|p=14}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=68}}{{Sfn|荒俣|1994|p=248}}。モンフォールは巨大タコとクラーケンの2種の大蛸を区別したが{{Sfn|モンゴメリー|2017|p=14}}{{Sfn|荒俣|1994|p=248}}、後世には同一視されることもあった<ref>{{Cite book2|df=ja|last=Hamilton |first=Robert|date=1839|title=The Naturalist's Library|volume=25}}</ref>。 |
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; 日本以外 |
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* [[クラーケン]] :[[北ヨーロッパ|北欧]]の[[伝説]]に登場する海の[[怪物]]。[[中世]]から[[近代]]にかけて語られた怪物であり、[[古代]]の[[北欧神話]]には登場しない。 |
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* [[カナロア]] :[[ハワイ]]の[[創造神話]]に登場する[[海神]]<ref name=Dixon>{{cite book | title = The Mythology of All Races | subtitle = Oceanic | volume = 9 | last = Dixon | first = Roland Burrage | year = 1916 | publisher = Marshall Jones | page = 15 | authorlink = :en:Roland Burrage Dixon}}</ref>。 |
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またタコは、『[[オデュッセイア]]』に登場する12本足6頭の怪物[[スキュラ]]と混同されることもあった{{Sfn|千葉・荒俣|1988|p=254}}。[[ダニエル・コーエン]]は[[ギリシア神話]]の[[ヒュドラ]]はタコがモチーフとしている{{Sfn|荒俣|1994|p=246}}。 |
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=== 言語 === |
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; 故事成語 |
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* 土用の蛸は親にも食わすな |
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* 麦わらダコ(蛸)に祭りハモ |
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[[大プリニウス]](紀元[[23年]]–[[79年]])の『[[博物誌]]』には、270 kg 以上の体重を持ち、村人から魚を奪う巨大な蛸についての記述もある{{Sfn|カレッジ|2014|p=10}}。また、ここにはタコは自分の腕を食べて、再生するとも書かれ、それゆえ[[キリスト教]]世界では守銭奴の象徴ともされた{{Sfn|千葉・荒俣|1988|p=254}}。 |
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;タコのつく言葉<!--並びはおおよそで歴史の古い順--> |
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* [[蛸壺]] |
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* {{Anchors|ひっぱりだこ}}ひっぱりだこ - 人気のある人物や物が多くの人に求められる状態を言う日本語。また、[[近世]]以前は、[[磔|磔刑]]およびその受刑者を意味する[[転義法|比喩表現]]であった。「引っ張り蛸」とも「引っ張り[[凧]]」とも記すが、語源は、タコの乾物を作る際に足を四方八方に広げて干す、その形に由来しており、したがって、前者が本来の用法と言える。 |
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* 蛸入道(たこにゅうどう) - 【[[仏教]]関連用語、ほか】 仏教における[[入道|入道者]]に対して、強いからかいの意を持って用いられる[[侮蔑#侮蔑表現の分類と種類|蔑称]]。[[頭髪]]を剃り上げた[[スキンヘッド|坊主頭]]がタコの胴と似ていることから呼ばれる。転じて、ファッションとしてのスキンヘッドや、薄毛の人に対しても言う。これらは事実上、男性に対してのみ用いられる。また、動物のタコを[[愛称]]的含みを持ってそのように呼ぶこともある。 |
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* 蛸、たこ、タコ - 【[[土木工学|土木]]用語・[[農業]]用語】 重さをもって地面等の基盤を突き固める道具([[棍棒]]・[[槌]]などといった突き棒)、すなわち、撞槌(とうつい)などの俗称的呼称。蛸木(たこぎ。たこ木、タコ木)の略称。名の由来は、大型で専用の撞槌には数本の持ち手が付いていて、形状全体が複数の足を持つタコの姿に似ていることにある。[[英語]]で {{lang-en-short|rammer}}<ref>{{cite encyclopedia|year=1960|edition=4|title=ram|page=1472|encyclopedia=新英和大辞典|publisher=研究社}}</ref>及び{{lang-en-short|punner}}<ref>{{cite encyclopedia|year=1960|edition=4|title=punner|page=1442|encyclopedia=新英和大辞典|publisher=研究社}}</ref> (その一語義)と同義であり、よって、「ランマー」「ラマー」「ラム」「プンナー」とも呼ぶ。 |
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* すかんたこ - 【[[方言]]】 好かん蛸。[[京都弁|京言葉]]で「好きではない人」「好きになれない人」の意。[[関西弁]]で言う「すかんたれ(好かん垂れ)」の異形。漫画『[[ドラえもん]]』にも「[[ドラえもんのひみつ道具_(す)#スカンタコ|スカンタコ]]」というひみつ道具がある。 |
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* [[タコ部屋労働]] |
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* タコ棒 - 【[[内燃機関]]】 [[ポペットバルブ]]の[[気密]]を保つために研磨を行う際、持ち手として取り付ける棒。先端に吸盤があり、これでバルブを吸いつけて作業する。 |
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* 蛸足(たこあし) |
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** 【電気関連用語】 [[たこ足配線|蛸足配線]]。原型は[[二股ソケット]]。 |
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** 【動力機械関連、俗語】 等長化された[[エキゾーストマニホールド]]を指す俗称。等長化のためタコの足のようにうねっている。 |
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** 【建築関連用語】 施設が分散している形態。 |
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* [[蛸足大学]] |
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* [[蛸配当]] - 【[[株式]]用語】 自らの足を食うタコになぞらえて、経営状況の悪化を取り[[wikt:繕|繕い]]ごまかすことを目的とした「株主への自殺的な[[配当]]行為」を言う。 |
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* タコ[[麻雀]] - 漫画『[[ぎゅわんぶらあ自己中心派]]』で挙げられていた奇怪な打ち筋、言動など。 |
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* タコ - 【[[野球]]用語】 [[安打]]が打てないことを指す言葉として使われる。例えば、4[[打席]]4[[打数]]無安打の場合は「'''4タコ'''」と言う。 |
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[[イタリア]][[リグーリア州]]の{{仮リンク|テッラーロ|en|Tellaro}}では、巨大蛸が[[教会]]の鐘を鳴らして迫りくる敵の侵攻を報せ、村を救ったと伝わる{{Sfn|カレッジ|2014|p=10}}。そのため、テッラーロではドアの装飾など様々なところでそのオマージュが見られる{{Sfn|カレッジ|2014|p=10}}。 |
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=== 派生した俗語 === |
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*タコになる |
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:[[大相撲]]の[[隠語]]で、思い上がって[[天狗]]になり周囲の言うことを聞かなくなること。若いうちに[[関取]]になったり[[三役]]・[[横綱]]に昇進した場合に、兄弟子や[[年寄|親方]]のいうことを聞かなくなったりする[[力士]]のことを指す。「タコ釣る」ともいう。 |
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*タコ殴り |
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:日本の[[俗語]]で、袋叩きにすること、または原型をとどめないほどにボコボコに数多く殴ることを指す。「タコにする」ともいう。 |
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*ゆでダコのようになって怒る |
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:顔を真っ赤にして怒っている様子から、茹でて赤くなったタコを連想してこう言われる。 |
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[[西インド諸島]]の[[アンドロス島 (バハマ)|アンドロス島]]では、多くの巻いた腕で人間を捕える「ルクサ (Lucsa)」と呼ばれる怪物が伝えられ、これは巨大なタコともされる{{Sfn|荒俣|1994|p=249}}。 |
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=== 因んだ名称 === |
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[[ファイル:TAKO Ferry 01.JPG|thumb|230px|明石淡路フェリーの「あさしお丸」<br />[[明石港]]、2008年5月撮影。]] |
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;生物 |
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* [[タコノキ]]などのタコノキ類([[タコノキ目]]):タコが足を伸ばすように[[根#さまざまな根|気根]]を伸ばして立つ姿から、「蛸の木」の意で呼ばれる。 |
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; 人物 |
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* [[たこ八郎]] |
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* [[横山ノック]]:禿げ上がった頭から[[漫才]](漫画トリオ)で「タコ」と呼ばれた。 |
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* タコ社長:[[日本映画]]『[[男はつらいよ]]』に登場する[[太宰久雄]]が演じた零細企業の[[社長]](cf. [[男はつらいよ#レギュラー|男はつらいよの主要人物]])の[[愛称]]。 |
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* [[中河美芳]]:[[日本プロ野球|プロ野球]]選手。一塁守備で足を大きく前後に開くさまと、どんな送球も吸い付くように捕球することから、「タコ足」「タコの中河」と呼ばれていた。 |
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* [[新海幸藏]]:[[力士]]。足癖を得意としたため、「タコ足の新海」のあだ名が付いた。 |
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* [[工藤由愛]]:[[ハロー!プロジェクト]]の女性アイドルグループ・[[Juice=Juice]]のメンバー。無類のタコ好きで、自ら「タコ(ちゃん)」という愛称を付けている<ref>[https://ameblo.jp/juicejuice-official/entry-12493114761.html 初めまして!工藤由愛] - [[Juice=Juice]]オフィシャルブログ([[サイバーエージェント]]) 2019年7月12日</ref>。 |
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[[ハワイ]]の神話では、タコは神代の唯一の生き残りとされる{{Sfn|カレッジ|2014|p=10}}。ハワイの[[創造神話]]に登場する[[海神]]は[[カナロア]]と呼ばれる<ref name=Dixon>{{cite book2 |df=ja |last=Dixon|first=Roland Burrage |authorlink=:en:Roland Burrage Dixon |title=The Mythology of All Races - Oceanic - |volume=9 |date=1916 |publisher=Marshall Jones |page=15}}</ref>。[[キリバス]]の[[ギルバート諸島]]では、タコの神[[ナ・キカ]]が海底から島々を強く押し上げたと伝わる{{Sfn|カレッジ|2014|p=10}}。 |
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; 地名 |
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* [[三重県]][[鳥羽市]]畦蛸(あだこ)町:田んぼの畦道にタコが歩いていたことに由来する。 |
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==== ネズミとタコ ==== |
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; その他 |
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オセアニアの各地では、「ネズミとタコ」の伝説が知られ、タコは[[ネズミ]]に深い恨みを持っているとされる{{Sfn|畑中|1994|p=83}}{{Sfn|神崎|1994|p=108|loc=第7章}}{{Sfn|塚本|2014|pp=45–56}}。地域によっては詳細が異なり、様々なバリエーションが存在する。ネズミと小鳥とタコが[[ココヤシ]]の殻を舟にして海へ出た{{Sfn|神崎|1994|p=108|loc=第7章}}。しかし、小鳥がココヤシの殻をつついて舟に穴を開けて沈んでしまった{{Sfn|神崎|1994|p=108|loc=第7章}}。小鳥は翼で飛び立ってしまったが、親切なタコは泳ぎの苦手なネズミを乗せて岸まで運んであげた{{Sfn|神崎|1994|p=108|loc=第7章}}。しかし、ネズミは礼を言うどころかタコを「禿げ頭!」と罵って立ち去った{{Sfn|神崎|1994|p=108|loc=第7章}}。そのためタコは憤慨し、ネズミを恨み続けるようになったため、タコは[[マカフェケ]]と呼ばれるネズミを模した漁具で捕獲されると伝わる{{Sfn|神崎|1994|p=108|loc=第7章}}。 |
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* 蛸[[唐草模様|唐草]]:[[陶磁器]]の[[文様]]。 |
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* 蛸阿弥陀如来:[[曹洞宗]][[安楽寺 (愛知県南知多町)|安楽寺]]([[愛知県]]知多郡南知多町[[日間賀島]])にある。cf. [[安楽寺 (愛知県南知多町)#たこ阿弥陀]]。 |
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[[ニューカレドニア島]][[イヤンゲーヌ]]に伝わる話「ネズミとサギ」では、登場する鳥は[[サギ]]であり、ネズミと二人で[[サトウキビ]]でできた舟に乗って魚を捕りに行く{{Sfn|塚本|2014|pp=45–56}}。サギが魚を捕っている間、空腹のネズミが[[サトウキビ]]でできた舟をかじって無くなってしまった{{Sfn|塚本|2014|pp=45–56}}。呆れたサギが飛んで帰ってしまい、泣いたネズミの涙がタコに届いた{{Sfn|塚本|2014|pp=45–56}}。タコは親切にネズミを運ぶが、この話でもやはり「禿げ頭」と罵られて逃げられ憤慨する{{Sfn|塚本|2014|pp=45–56}}。 |
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* [[蛸の吸出し]]:[[町田製薬]]の[[軟膏]]([[医薬品]])。 |
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* たこフェリー:かつて運行されていた[[明石淡路フェリー]]の通称。[[明石市|明石]]の名物に因む(写真)。 |
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[[サモア]]では鳥は[[クイナ]]であり、ヤドカリとクイナとネズミの3匹が舟で旅に出る{{Sfn|荒俣|1994|p=252}}。舟は嵐で沈んでしまい、ヤドカリは潜って、クイナは飛んで去ってしまう{{Sfn|荒俣|1994|p=252}}。ネズミは現れたタコに浜まで運んでもらうが、ネズミは途中でこっそりタコの頭に糞をして、陸に着くとそれを馬鹿にした{{Sfn|荒俣|1994|p=252}}。[[マーシャル諸島]]では同様の言い伝えからタコの墨汁嚢の内容物を「ネズミの糞」と呼び、これを食べる人間は卑しまれる{{Sfn|荒俣|1994|p=252}}。 |
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* [[卍固め]](オクトパス・ホールド):アントニオ猪木の必殺技。タコが絡みつくように固める。 |
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* [[水銀整流器]]:多陽極式水銀整流器は胴部(冷却部)と多足(多陽極)の形状からタコと呼ばれることがある。 |
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==== 日本の大蛸 ==== |
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* [[クレクレタコラ]]:公害によって[[怪獣]]化し陸に上がったフテクサレタコ、という設定。[[1973年]]にぬいぐるみ劇として放送された。 |
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日本でも、古くから[[大蛸]]の伝説などの説話や俗信が伝わる{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}{{Sfn|荒俣|1994|p=249}}。多くの場合、巨大な蛸入道の姿で波打ち際や海上の船の前に現れる<ref name="Hirokawa2013">{{Cite book ja|author=広川英一郎|chapter=たこ【蛸、章魚】|pages=343–344|title=日本怪異妖怪大事典|date=2013-07-20|others=[[小松和彦]] 監修|publisher=東京堂出版|isbn=978-4490108378}}</ref>。牛馬や[[猿]]を驚かせたり捕らえたりすることもあれば、人を海中に引き込む話も多い<ref name="Hirokawa2013"/>。例えば、[[津軽]]では大蛸が牛を捕えた伝承が伝わる{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}。『[[大和本草]]』には、夜に海辺に忍び込んで牛馬を攫う大蛸が巨大な[[蟒蛇]]と格闘し、海中に引き込んだという伝説が記される{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}。また、江戸中期の『[[日本山海名産図会]]』では、「[[滑川市|滑川]]の大蛸」と呼ばれるタコが描かれる<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.city.namerikawa.toyama.jp/soshiki/35/introduction/479.html|title=所蔵資料紹介 Vol.2 滑川の大蛸|date=2024-01-24|website=滑川市|publisher=滑川市役所|accessdate=2024-09-09}}</ref>{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}。 |
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* たこルカ:[[巡音ルカ]]の頭部だけをデフォルメし、髪の毛を脚に見立てたキャラクター(cf. [[VOCALOIDの派生キャラクター#巡音ルカをモチーフとしたキャラクター|巡音ルカをモチーフとしたキャラクター]])。 |
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* [[たこさんウィンナー]]:ウィンナーの飾り切りの一種。 |
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人間が捕らえられる伝承の多くは、昼寝をしている大蛸の足(腕)を1日1本ずつ切り取って食べたところで欲が出て、最後の日に残った足で海中に引き込まれるというものである{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}<ref name="Hirokawa2013"/>。[[香川県]]には、「[[ヤザイモン蛸]]」という大蛸の[[怪物|怪]]が伝わる<ref name="kagawa">{{Cite journal ja|author=北條令子|year=1985|title=海と山の妖怪話|journal=香川の民俗|issue=通巻44号|page=4|publisher=香川民俗学会}}</ref>。八左兵門という男が昼寝している大蛸の足を1日1本ずつ足を切って持って帰り、あと1本というときに、大蛸が八左兵門を海に引き込んだという<ref name="kagawa"/>。同様に[[神奈川県]]旧[[北下浦村]](現[[横須賀市]])でも、漁師が磯で大蛸を見つけ、1本で桶がいっぱいになる大きな腕を一本ずつ切っていったところ、8日目に海に引きずり込まれたという話が伝わり、この場所を七桶の里という<ref name="Hirokawa2013"/>。[[千葉県]]南部では、タコは恐ろしい動物で人の命を取ると言われ、次のような話が伝わる{{Sfn|荒俣|1994|p=246}}。千葉県[[館山市]][[布良]]の番太の女房が海辺にいた大蛸の足を毎日1本ずつ切っては帰り、食べていたところ、8日目に最後の1本を切ろうとしたときに高波に呑まれ、タコの足に巻かれて沖に連れ去られた{{Sfn|荒俣|1994|p=246}}。 |
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* タコ(土木) : 土を突き固めるのに使う[[槌]]の一種。4人で使うために持ち手が4つあり、4人で使うと脚が8本で移動する事になる事から。 |
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* [[タコの山]] : タコの形を模した[[公園]][[遊具]]。[[すべり台|滑り台]]・[[迷路]]・[[秘密基地]]の要素を兼ね備えている。 |
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[[愛媛県]][[今治市]]の[[大三島]]では、大蛸の足という話が伝わる<ref name="Mizuki">{{Cite book ja|author=水木しげる|title=水木しげるの妖怪事典|date=1981-08-30|publisher=東京堂出版|isbn=449010149X|page=72}}</ref>。大三島の沖のじじ岩、ばば岩(婆ヶ岩<ref name="Hirokawa2013"/>)の名で知られる二つ岩の近くに[[潮干狩り]]に出かけた17歳の娘、お浜が二つ岩の主の大蛸に見つめられて逃げ帰ったところ、後日大蛸が家を訪れて婚姻を迫った<ref name="Mizuki"/>。返事をしなかったところ大蛸が暴れて暴風を起こしたので、嫁に行くことになったが、その際大蛸の8本足が2本足になるまで足を切り落とさせてくれと約束した<ref name="Mizuki"/>。毎日1本ずつ切っていったが、6本目を切り終えた次の日に残りの足も切ろうとしたところ、大蛸はお浜を攫って海へ消えて行った<ref name="Mizuki"/>。 |
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[[福井県]]旧[[東浦村]](現[[敦賀市]])に伝わる話では、貝を採るために潜った孫介がなかなか浮き上がってこないので探してみると、水面下三尺のところを回っており、周囲五尺の柱に繋がれていた<ref name="Hirokawa2013"/>。引き上げてみると柱と思っていたのは大蛸の足だった<ref name="Hirokawa2013"/>。 |
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[[兵庫県]][[明石市]]では、蛸壺漁の由来に関して「明石の大ダコ」の言い伝えがある{{Sfn|荒俣|1994|p=245}}<ref name="rekihaku">{{Cite web|和書|url=https://rekihaku.pref.hyogo.lg.jp/digital_museum/legend3/story18/|title=明石の大ダコ 三郎左衛門の知恵|website=兵庫県立歴史博物館|publisher=兵庫県教育委員会|accessdate=2024-09-13}}</ref>。[[林崎村|林崎]]に西窓后と東窓后の2人の[[后]]が住んでいたが、8–12 km の腕を持つ明石の海にすむ大蛸が后たちに思いを寄せ、毎晩腕を伸ばしてちょっかいをかけた{{Sfn|荒俣|1994|p=245}}<ref name="rekihaku"/>。[[二見浦]]の武士、浮須三郎左衛門が退治しようと追いかけると、大蛸は壺に隠れてしまった{{Sfn|荒俣|1994|p=245}}<ref name="rekihaku"/>。蛸壺に隠れた大蛸を陸に引き上げ、生捕りにしたものの腕を伸ばして暴れたので、三郎左衛門は一本ずつ刀で切り落としたが、大蛸が暴れて蛸壺をひっくり返してしまった<ref name="rekihaku"/>。大蛸は山伏に姿を変え遁走したが、[[林神社 (明石市)|林神社]]のあたりで追いつめ、4つに叩き切ると、そのまま大きな石になった<ref name="rekihaku"/>。これが元となり、蛸壺漁が始まったと伝わる{{Sfn|荒俣|1994|p=245}}<ref name="rekihaku"/>。 |
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[[新潟県]][[佐渡島]]の[[相川町|相川]]では、大蛸が馬を捕えて乗り回して暴れていたので獲らえたところ、町内全戸に配っても余るほどだったと書かれた「蛸配帳(たこくばりちょう)」が[[明和]]まで伝えられていたとされる{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://minwanoheya.jp/area/niigata_051/|title=蛸配り帳 - 新潟県の昔話|website=民話の部屋|accessdate=2024-09-09}}</ref>。また、佐渡では天保8年に、眼が3寸の大蛸を退治対峙した記録があり、眼は金色に光り、頭はカボチャ大で怒ると朱くなったとされる{{Sfn|荒俣|1994|p=249}}。[[越後国|越後]]や[[佐渡国|佐渡]]では、[[海坊主]]は大蛸が変化したものだという俗説が伝わる{{Sfn|荒俣|1994|p=249}}。 |
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[[京都府]][[与謝郡]]には、「[[衣蛸]]」(ころもだこ)という蛸の[[妖怪]]が伝わる<ref name="kotobank-1696245">{{Cite Kotobank|word=衣蛸|encyclopedia=デジタル大辞泉プラス|accessdate=2024-08-27}}</ref>。船が近づくと、大蛸に変化して海中に引きずり込むとして恐れられる<ref name="kotobank-1696245"/>。 |
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[[アイヌ]]の伝承には[[ラートシカムイ]]や[[アッコロカムイ|アッコㇿカムイ]]と呼ばれる巨大な蛸が登場する<ref>{{Cite book ja|author=松谷みよ子|authorlink=松谷みよ子|title=松谷みよ子の本 第9巻 伝説・神話|year=1995|publisher=[[講談社]]|isbn=978-4-06-251209-1}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://ainugo.nam.go.jp/siror/dictionary/detail_sp.php?book_id=A0258|title=アイヌ語辞典 動物編 §258 タコ|webiste=アイヌと自然 デジタル図鑑|publisher=[[アイヌ民族博物館]]|accessdate=2024-08-27}}</ref><ref>{{Cite book ja|author=遠藤志保|chapter=アッコㇿカムイ|page=11|title=日本怪異妖怪大事典|date=2013-07-20|others=[[小松和彦]] 監修|publisher=東京堂出版|isbn=978-4490108378}}</ref>。 |
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==== 蛇蛸 ==== |
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蛇が水際で蛸に変わる「[[蛇蛸]](蛇だこ{{Sfn|荒俣|1994|p=246}}、へびだこ)」の伝説も各地に伝わる<ref name="Hirokawa2013"/><ref name="Hirokawa2013b">{{Cite book ja|author=広川英一郎|chapter=へびだこ【蛇蛸】|pages=502|title=日本怪異妖怪大事典|date=2013-07-20|others=[[小松和彦]] 監修|publisher=東京堂出版|isbn=978-4490108378}}</ref>。こうして変化したタコは7本足で人を襲うとも言われ、北陸から北日本にかけて広まる{{Sfn|千葉・荒俣|1988|p=254}}{{Sfn|荒俣|1994|p=246}}。『[[笈埃随筆]]』には、蛇が蛸に変化する伝説が記されている{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}。[[越前国|越前]]に行った商人が、地元の人々が誘い合わせて蛇が蛸になるのを見に行くのを耳にしてついていった{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}。すると山の裾から蛇が現れて海へ泳ぎ出て、尾で何度か水面を叩くと、尾が裂けて脚のようになった{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}。やがて半身が蛇、半身が蛸になり、完全に蛸に変化した{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}。[[壱岐]]でも[[カラスヘビ]]が海辺で尾を石に打ち付けて割き、海に入ってタコになるのを見たと伝わる{{Sfn|荒俣|1994|p=246}}。[[若狭国|若狭]]の[[小浜市|小浜]]では、[[梅雨]]になると蛇が海でタコになるとされ、住民はそれを見分けて蛇のほうは食べなかったとされる{{Sfn|荒俣|1994|p=246}}。佐渡ではこれを蛇だこと呼び、その正体は[[ムラサキダコ]]ではないかともいわれる{{Sfn|荒俣|1994|p=246}}。 |
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==== 竜宮伝説 ==== |
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タコにまつわる[[竜宮伝説]]も各地に伝わる{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}。宮城県[[南三陸町]]の[[志津川湾]]に浮かぶ[[竹島 (宮城県)|竹島]]にも竜宮伝説が知られる{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}。浜の若者が次々行方不明になり、不審に思った気丈夫な男が月下に海を見張ると、音楽が聞こえてきた{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}。小舟で音楽の方へ向かうと御殿があり、美女に馳走を振舞われた{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}。美女の視線が冷たいことを怪しみ懐の小刀で突いたところ、気を失ってしまい目が覚めると散乱する白骨の脇でタコが死んでいたと伝わる{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}。 |
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==== 松前のカッパ ==== |
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[[北海道]][[松前郡]]では、海中で婦人がタコの足に触れると妊娠するという迷信がある<ref name="Fukase">{{Cite journal ja|author=深瀬春一|title=松前怪談十種|journal=旅と伝説|volume=3|issue=10|publisher=三元社|date=1930-10-01|pages=74–85|url=https://www.nichibun.ac.jp/cgi-bin/YoukaiDB3/youkai_card.cgi?ID=1230110}}</ref>。医者が婦人の難産を治療したところ、タコの足が2本現れたので切断したが、残りの部分は出てこず、産婦は死んでしまった<ref name="Fukase"/>。タコが腹に吸いついて出てこなかったのだという<ref name="Fukase"/>。松前ではこのような異形を「カッパ」と呼び、それが海に入ると「ヤドリ」になるという<ref name="Hirokawa2013"/><ref name="Fukase"/>。 |
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==== 上陸するタコ ==== |
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タコは陸上でも30分以上動き回ることができるため、「夜中に畑の[[大根]]を盗む」という逸話が知られる{{Sfn|奥谷|2013|p=10}}<ref name="Akashi"/>。畑の芋を掘って食べたり、墓地に埋葬されたばかりの新仏を盗み海へ逃げ帰ったりする例も知られる<ref name="Hirokawa2013"/>。 |
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タコは里芋を好むともされ、6本の足で陸上を歩み、2本の腕で土を掘って芋を盗むとされる{{Sfn|千葉・荒俣|1988|p=254}}。これは里芋と煮た料理が親しまれることからと考えられている{{Sfn|千葉・荒俣|1988|p=254}}。漫画家の[[小野佐世男]]はタコが掘った芋を抱えて浜へ戻るのを見たという話をラジオ番組などで語っている<ref name="Hirokawa2013"/>。 |
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[[伊勢国|伊勢]]の[[飯野郡]]では、知恵を持ち力が強い7本足のタコがおり、悪行をなすため忌まれていた{{Sfn|荒俣|1994|p=246}}。しかし悪い餌を食べていたため人が食べるわけにもいかず、年を経て化物になった{{Sfn|荒俣|1994|p=247}}。7本足のタコは時々陸に上がって野の墓に行き、新仏を盗んでいくとされた{{Sfn|荒俣|1994|p=247}}。また、[[青森県]]旧[[岩崎村 (青森県)|岩崎村]](現[[深浦町]])では、[[文化 (元号)|文化]]3–4年に病没者を[[火葬]]している際に沖から大蛸が現れて火を消し埋葬者を搦めて持ち出そうとしたが、村人が切り殺すと中から人馬の骨が見つかったと伝わる<ref name="Hirokawa2013"/>。 |
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[[三重県]][[鳥羽市]]にある[[畦蛸]](あだこ)では、「嵐の日に大波に乗って蛸が[[田圃]]の畦にやってきた」や「月夜になると蛸が畦の水路まで泳ぎ登ってきた」などの伝承が伝わり、その地名に名を残している<ref name="maff_mie"/><ref name="toba"/>。 |
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[[2002年]]に放送されたテレビ番組『[[フューチャー・イズ・ワイルド]]』では、空想上の1億年後の未来の生物として「[[フューチャー・イズ・ワイルドの生物一覧#ベンガル沼地|スワンパス]] ({{En|swampus}})」と呼ばれる半陸生のタコが登場する<ref>{{Cite web|url=https://www.bbc.co.uk/programmes/b0078sp5|title=The Future is Wild, Waterland|website=BBC Two|accessdate=2024-08-27}}</ref>。 |
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=== 信仰と行事 === |
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[[File:蛸薬師堂永福寺 - なで蛸.JPG|thumb|250px|京都、[[新京極]]の[[永福寺 (京都市)|永福寺]](蛸薬師堂)にあるなで蛸。]] |
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[[File:Himakajima Anrakuji 2019-06 ac (2).jpg|thumb|250px|[[愛知県]][[日間賀島]]の[[安楽寺 (愛知県南知多町)|安楽寺]]。タコの絵馬が奉納されている。]] |
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日本では古くからタコが民間療法にまつわる信仰対象とされてきた{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}。そのため、日本各地に蛸薬師や蛸地蔵が存在する{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}。 |
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'''[[蛸薬師]]'''(たこやくし) は、祈願すると[[禿頭]]{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|荒俣|1994|p=247}}や[[腫れ物]]などに霊験があると信じられている{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}。蛸薬師には、タコを食べないと誓ったり、蛸の絵の[[絵馬]]を上げたりして祈願される{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}{{Sfn|大久保|木下|2014|p=594}}。[[京都市]][[中京区]]に所在する[[新京極]]の[[永福寺 (京都市)|永福寺]]や、[[東京都]][[目黒区]]の[[秋葉権現|秋葉山]][[成就院 (目黒区)|成就院]]がよく知られる{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}{{Sfn|荒俣|1994|p=247}}。京都のものは、タコを禁食して祈れば疣や痔がすぐに治癒するとされ、『[[本朝俗諺志]]』(1746年)にも見える{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}。また、婦人病にも霊験あらたかとされる{{Sfn|奥谷|神崎|1994|p=5}}{{Sfn|千葉・荒俣|1988|p=254}}。[[蛸薬師通]]の由来にもなった。目黒のものは薬師如来がタコに乗って海を渡ってきたと伝えられ、やはりタコを断って祈願すれば眼病や腫れ物に霊験があるとされる{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}。[[淡路島]]旧[[三原町]]にある薬師堂でも、絵馬にタコが描かれ、由来書には「漁夫の間には風習迷信があって、病を治すためには薬師如来に祈願し、ある期間や一生蛸を禁食するとか蛸を生け捕らない等の誓いを立てたものである」と書かれる{{Sfn|奥谷|神崎|1994|p=5}}。 |
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[[町田製薬]]の[[軟膏]]「吸出し青膏」は、「まるで蛸が吸い付くように[[癤|おでき]]の膿を吸い出す」というイメージから「たこの吸出し」の愛称が付けられている{{Sfn|奥谷|神崎|1994|p=7}}{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.hmaj.com/kateiyaku/matida/|title=たこの吸出し|website=家庭薬ロングセラー物語|publisher=日本家庭薬協会|accessdate=2024-08-27}}</ref><ref name="machida">{{Cite web|url=https://machidaseiyaku.co.jp|title=町田製薬公式サイト|website=町田製薬|accessdate=2024-08-27}}</ref>。たこ美とたこ之助という2匹のキャラクターが作られている<ref name="machida"/>。 |
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[[大阪府]][[岸和田市]]にある[[天性寺 (岸和田市)|天性寺]]は'''[[蛸地蔵]]'''(たこじぞう)と呼ばれる{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}<ref name="Kishiwada">{{Cite web|和書|url=https://www.city.kishiwada.osaka.jp/site/kishiwada-side/tensyouji.html|title=天性寺|website=きしわだSIDE|publisher=岸和田市|author=観光課 観光振興担当|date=2009-03-03|accessdate=2024-08-26}}</ref>。[[岸和田城]]落城の危機に、大蛸に乗った法師が数千のタコを従えて現れ、城を救ったという伝説がある{{Sfn|荒俣|1994|p=247}}<ref name="Kishiwada"/>。この法師は地蔵の化身であり、後日城の堀から矢傷・玉傷を無数に負った地蔵が発見されたと言われる<ref name="Kishiwada"/>。タコの絵馬が多く奉納され、家内安全や商売繁盛、安産などが祈願される{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}。また、[[南海本線]][[蛸地蔵駅]]の由来にもなっている{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.nankai.co.jp/traffic/station/takojizo.html|title=蛸地蔵駅 |website=[[南海電鉄]]|accessdate=2024-08-26}}</ref>。 |
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[[愛媛県]][[西予市]][[明浜町]](旧[[狩江村]])にある[[明浜町#文化|春日神社]]では、あるとき御神体が上方に移そうと船で盗み出された際、[[三崎村 (愛媛県)|三崎村]]名取で神罰を受けて難破し、御神体を海中に落してしまったところ、それを大蛸が海上に持ちあげ、地元の住民が拾って海岸に祀り、翌年狩江村民が現存する元の所に祀ったという伝承がある{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}<ref name="Kasuga">{{Cite web|和書|url=http://ehime-jinjacho.jp/jinja/?p=1254|title=春日神社|website=愛媛県神社庁|accessdate=2024-08-21}}</ref>。そのため狩江村民は蛸を捕まえず、今日に至るもタコを食べない習慣が残っている、と伝わる{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}<ref name="Kasuga"/>。愛媛県三崎町[[正野]]の[[野坂権現]]でも同様の伝承が伝わり、[[海人]]はタコを口にしないと言われる{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}。[[岩手県]][[久慈市]][[宇部町]]でも漁師の守り神として「タコ神」が祀られ、漁師は決してタコを口にしない伝統が伝わる{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}。 |
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[[愛知県]][[知多郡]][[南知多町]]の[[三河湾]]に浮かぶ[[日間賀島]]は「タコの島(多幸の島)」と呼ばれる<ref name="maff_aichi"/><ref name="himaka"/><ref name="prefaichi"/>。日間賀島にはモニュメントや[[マンホール]]の蓋など、至る所でタコのキャラクターが見られる<ref name="maff_aichi"/>。旧来タコ漁が盛んで、干ダコを作る伝統がある{{Sfn|神崎|1994|pp=117–120|loc=日間賀島の蛸祭り タコの神事}}<ref name="Suzuki&Nozaki">{{Cite journal ja|author1=鈴木利奈|author2=野崎健太郎|title=三河湾内の日間賀島(愛知県南知多町)の伝統的な食生活|journal=矢作川研究|volume=11|pages=5–12|date=2007|url=https://www.yahagigawa.jp/archives/004/201509/fd9d241f9376b6ccd395956cc6a79ce9.pdf}}</ref>。日間賀島では[[貞観 (日本)|貞観]]4年の大[[地震]]で沈んだ寺の仏像が漁師によって引き上げられた時、仏像を守るように一匹の大蛸が巻きついていたという逸話があり<ref name="maff_aichi"/>{{Sfn|神崎|1994|pp=117–120|loc=日間賀島の蛸祭り タコの神事}}、それを[[曹洞宗]][[安楽寺 (愛知県南知多町)|安楽寺]]の阿弥陀座像の胎内仏として祀ったとされる{{Sfn|神崎|1994|pp=117–120|loc=日間賀島の蛸祭り タコの神事}}<ref name="nagoya-u">{{Cite web|和書|url=https://www.gensai.nagoya-u.ac.jp/rekishijishin/common/pdf/2017/vol40.pdf|title=見てみよう!歴史災害記録と旬のあいち2017年8月|date=2017-08|publisher=[[名古屋大学]] 減災連携研究センター|accessdate=2024-09-09}}</ref>。そのため安楽寺は「たこ阿弥陀(章魚阿弥陀)」と通称される<ref name="maff_aichi"/><ref name="Suzuki&Nozaki"/><ref name="nagoya-u"/>。それ以来、旧暦正月3日に安楽寺にタコを供えて「'''蛸祭り'''」を行うようになった{{Sfn|神崎|1994|pp=117–120|loc=日間賀島の蛸祭り タコの神事}}<ref name="nagoya-u"/>。明治維新以降、この祭りは元日に[[日間賀神社]]で行われるようになり、同時に島にあるもう一社の八幡社にも干ダコが祀られる{{Sfn|神崎|1994|pp=117–120|loc=日間賀島の蛸祭り タコの神事}}。干ダコは蒸してから短冊状に切る「タコさばき」が行われ、[[神饌]]とされる{{Sfn|神崎|1994|pp=117–120|loc=日間賀島の蛸祭り タコの神事}}<ref name="Suzuki&Nozaki"/>。もとは大漁祈願、安全長寿を祈る正月行事があり、それに安楽寺の由緒なども加わり発展したものだと考えられている{{Sfn|神崎|1994|pp=117–120|loc=日間賀島の蛸祭り タコの神事}}<ref name="Suzuki&Nozaki"/>。昭和30年代まではこれが島の主要な行事であったが、現在ではタコ漁が衰退するとともに観光化が進み、夏(8月)に観光行事として、タコの供養と豊漁を祈願する「たこ祭り」が行われる<ref name="maff_aichi"/>{{Sfn|神崎|1994|pp=117–120|loc=日間賀島の蛸祭り タコの神事}}<ref name="nagoya-u"/>。ここでは、子供たちを対象とした蛸ダンスや蛸のつかみ取りなど娯楽イベントが行われる{{Sfn|神崎|1994|pp=117–120|loc=日間賀島の蛸祭り タコの神事}}<ref name="nagoya-u"/>。 |
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『[[出雲国風土記]]』には、[[出雲国]][[出雲大社|杵築]]御崎にいたタコを天羽々鷲(あめのはばわし)は捕らえ、運んで行った島を「蜛蝫島(たこしま)」{{Efn|[[:wikt:zh:蜛|蜛]][[:wikt:zh:蝫|蝫]]は⿰虫居、⿰虫者}}と呼んだとある{{Sfn|荒俣|1994|p=245}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://kankou-daikonshima.jp/origin|title=大根島の由来|website=大根島|accessdate=2024-09-13}}</ref>。蜛蝫島は現在の[[大根島]]とされ、「[[蜛蝫神社]](たこじんじゃ)」がある<ref>{{Cite web|和書|url=https://kankou-daikonshima.jp/see/shrine|title=大根島・江島の神社|website=大根島|accessdate=2024-09-13}}</ref> |
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タコは[[稲]]の成長の祈願にも関連している{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}。[[関西]]地方には[[半夏生]]にタコを食べる「半夏蛸」の習慣がある{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}<ref name="Edo">{{Cite book ja|author1=狩野博幸|author2=並木誠士|author3=今橋理子|title=江戸の美術 大図鑑|date=2017-06-30|publisher=河出書房新社|page=240|isbn=978-4309255767}}</ref><ref name="Akashi"/>。これはタコの腕を伸ばす様子を発育の良い稲に見立てたとも{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}、大地にタコのように吸い付いて<ref name="Edo"/>、稲の根が蛸足のようにしっかり根付くようにともされる<ref name="Akashi"/><ref name="Edo"/>。[[愛媛県]]にも[[田植え]]の[[サンバイオロシ]](田の神降ろし)の際に、タコの吸い付く習性に肖り苗の活着が早くなることを祈って、タコを供える呪術的風習が知られる{{Sfn|神崎|1994|pp=62–64|loc=タコのいぼも信心から タコと信仰}}。 |
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また、[[浴衣]]地に網目文を施した上にタコを描き、[[大漁]]を意図した図柄が用いられることもある<ref name="Edo"/>。[[歌川豊国]]『江戸名所百人美女 薬けんぼり』などに描かれる<ref name="Edo"/>。 |
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日本では、タコを食べると瘧([[マラリア]])が再発するが、マラリア患者が1杯食べつくせば完治するという迷信があった{{Sfn|荒俣|1994|p=246}}。また、[[山田 (伊勢市)|伊勢山田]]では[[痰]]の薬に、沖縄には頭痛や虫下しの薬に用いた{{Sfn|荒俣|1994|p=246}}。[[福岡県]]の[[玄界灘]]沿岸では「コヤスノガイ」と呼ばれる[[アオイガイ]]の殻に水や湯を入れて妊婦に呑ませ、安産祈願を行う{{Sfn|荒俣|1994|p=256}}。 |
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[[愛媛県]]では、[[妊婦]]がタコの足を食べると生まれてくる子の髪の毛が縮れるという俗信があった{{Sfn|荒俣|1994|p=246}}。[[朝鮮]]の俗信では、妊婦がタコを食べると骨のない子が生まれるとされた{{Sfn|荒俣|1994|p=244}}。[[和歌山県]]では、タコを煮ている傍で笑うと顔が赤くなると言われた{{Sfn|荒俣|1994|p=246}}。 |
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かつて大阪では、春の[[彼岸]]と秋の彼岸に[[四天王寺]]境内に「蛸蛸(蛸々、たこたこ)」と呼ばれる[[大道芸人]]がいた{{Sfn|牧村|1979|p=405}}<ref name="japan-toy-museum">{{Cite web|和書|url=https://japan-toy-museum.org/archives/27040|title=「蛸々眼鏡」で戦前大阪の風を見る|date=2023-05-29 |website=日本玩具博物館|accessdate=2024-09-09}}</ref>。一人は[[張りぼて]]の大きな蛸を頭から被り、もう一人は[[えびす|戎]]の被り物をして張りぼての[[鯛]]を持ち踊った{{Sfn|牧村|1979|p=405}}。[[日清戦争]]以降は腰に張りぼての馬をつけ、玩具の剣を振り回す剣劇を行うようになった{{Sfn|牧村|1979|p=405}}<ref name="japan-toy-museum"/>。中国兵の首が落ちると「コレ一銭の泣き別れ」と言って入れ替りとなる{{Sfn|牧村|1979|p=405}}。それを「蛸々眼鏡」と呼ばれる[[万華鏡]]で覗かせ、見物料を稼いだ{{Sfn|牧村|1979|p=405}}<ref name="japan-toy-museum"/>。初めは1銭であったが、2銭、3銭となり、最後は5銭となって滅びた{{Sfn|牧村|1979|p=405}}。「天王寺名物、たこたこ眼鏡じゃい」{{Sfn|牧村|1979|p=405}}「とうさん、ぼんさん、眼鏡をお目々にしっかりつけて、ハイヨウ蛸ぢやいな、蛸ぢやいな」などの声で知られた<ref name="japan-toy-museum"/>。 |
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=== 作品 === |
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[[File:Cthulhu sketch by Lovecraft.jpg|thumb|200px|ラヴクラフトによる[[クトゥルフ]]のスケッチ。]] |
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{{See also|Category:タコを題材とした作品}} |
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日本ではタコは多くの場合、コミカルで親しみやすいキャラクターとして描かれる{{Sfn|奥谷|1991|p=27}}。タコはそのものでなくても様々なキャラクターのモチーフとして登場する。例えば、日本では[[田河水泡]]の漫画『[[蛸の八ちゃん]]』や[[古谷三敏]]の『[[ダメおやじ]]』のキャラクター「タコ坊」などが挙げられる{{Sfn|池田|2020|p=13}}。『蛸の八ちゃん』は海底から人間世界にやってきたタコの物語を描いた作品である{{Sfn|奥谷|神崎|1994|p=7}}。[[1973年]]にぬいぐるみ劇として放送された日本の[[特撮]]テレビ番組『[[クレクレタコラ]]』では、公害によって[[怪獣]]化し陸に上がったフテクサレタコ「タコラ」が登場する<ref>{{Cite web|和書|url=https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000351.000009136.html|title=特撮TV番組『クレクレタコラ』CROSSクラウドファンディングより手帳型スマートフォンケース、トートバッグ、Tシャツの申込受付スタート!|author=そらゆめ|website=PR TIMES|date=2016-11-28|accessdate=2024-08-27}}</ref>。[[巡音ルカ]]の頭部だけをデフォルメし、髪の毛を脚に見立てたキャラクターは「[[VOCALOIDの派生キャラクター#巡音ルカをモチーフとしたキャラクター|たこルカ]]」と呼ばれる<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.itmedia.co.jp/news/articles/0902/09/news105.html|title=巡音ルカが“たこ化”「たこルカ」人気|author=[[ねとらぼ]]|website=ITmedia|date=2009-02-09|accessdate=2024-08-26}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1310/29/news058.html|title=「たこルカのガチャガチャ作ってみた」がかわいすぎて生きるのがつらいレベル ロット買いしたいくらい。|date=2013-10-29|author=haruYasy.|website=ねとらぼ|accessdate=2024-08-26}}</ref>。 |
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[[ハワード・フィリップス・ラヴクラフト]]の[[クトゥルフ神話]]描かれる邪神[[クトゥルフ]]はタコの頭部に[[コウモリ]]の翼を持った巨大な軟体動物のような姿をしている{{Sfn|カレッジ|2014|p=10}}。これは他の作品にもオマージュされ、『[[サウスパーク]]』でもネタとして取り上げられている{{Sfn|カレッジ|2014|p=10}}。 |
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==== 小説・映画 ==== |
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西洋文学において、タコは長らく海の悪魔として描かれてきた{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=20}}。かつては悪役であったタコは、現在では主人公としての立場を獲得することもある{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=32}}。 |
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[[ヴィクトル・ユゴー]]はクラーケンのイメージから、『[[海に働く人々]]』(1866年)で人間を襲うタコを描いた{{Sfn|千葉・荒俣|1988|p=254}}。[[ジュール・ヴェルヌ]]のSF小説『[[海底二万里]]』(1870年)では、タコが人間の太刀打ちできない敵として登場する{{Sfn|モンゴメリー|2017|p=14}}{{Sfn|荒俣|1994|p=252}}{{Efn|ヴェルヌの『海底二万里』に登場する頭足類はタコではなくイカだとされることもある{{Sfn|カレッジ|2014|p=67}}。}}。それを基に制作された映画『[[海底六万哩]]』(1916年)では同様に敵はタコであったが、『[[海底二万哩]]』(1956年)ではイカをモチーフとしたクラーケンに変更されている{{Sfn|モンゴメリー|2017|p=14}}。『[[水爆と深海の怪物]]』(''It Came from Beneath the Sea'', 1955)でもジェット推進する巨大なタコが描かれている{{Sfn|カレッジ|2014|p=87}}。映画『[[テンタクルズ]]』(''Tentacles'', 1977)もクラーケンの伝説に由来し、大蛸が登場する{{Sfn|奥谷|1994|p=42|loc=第2章}}。アメリカのパニック映画『[[オクトパス (映画)|オクトパス]]』(''Octopus'', 2000)では、船や潜水艦を襲い、恐ろしい歯が生えた口に取り込むクラーケンが登場する{{Sfn|カレッジ|2014|p=83}}。[[ジェムソン・アイリッシュ・ウイスキー]]のコマーシャル映像でも巨大な酒好きのタコが登場する{{Sfn|カレッジ|2014|p=83}}。『[[メガ・シャークVSジャイアント・オクトパス]]』(''Mega Shark vs Giant Octopus'', 2009)では巨大なタコがサメをも仕留めている{{Sfn|カレッジ|2014|p=55}}。 |
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2009年の[[アカデミー賞]]短編アニメ賞にノミネートされた『[[オクタポディ]]』(''[[:en:Oktapodi|Oktapodi]]'', 2007)では、タコの[[番 (動物学)|番]]が登場する{{Sfn|カレッジ|2014|p=15}}。2003年のディズニー映画『[[ファインディング・ニモ]]』には[[オオメンダコ]]のパールが{{Sfn|カレッジ|2014|p=70}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://kids.disney.co.jp/character/pearl|title=パール|website=ディズニーキッズ|accessdate=2024-08-27}}</ref>、『[[ファインディング・ドリー]]』には[[ミズダコ]]のハンクが登場する{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=32}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.disney.co.jp/movie/dory/character/character04|title=ハンク|ファインディング・ドリー|website=ディズニー|accessdate=2024-08-27}}</ref>。ハンクは主人公ドリーの見方として、家族と再会させるべく人間を出し抜こうとする{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=32}}。[[ニコロデオン]]のアニメ『[[スポンジ・ボブ]]』シリーズに登場するキャラクター「[[イカルド・テンタクルズ]] ({{en|Squidward J. Q. Tentacles}})」は、どの言語でも名前からイカに間違われるが、タコがモチーフである<ref>{{Cite web|url=https://www.nick.com/info-page/c2e5s0/squidward-j-q-tentacles|title=SQUIDWARD J. Q. TENTACLES|website=Nickelodeon|archiveurl=https://web.archive.org/web/20240809204755/https://www.nick.com/info-page/c2e5s0/squidward-j-q-tentacles|archivedate=2024-08-09|accessdate=2024-08-27}}</ref>。2010年の『[[トイ・ストーリー3]]』では「ストレッチ ({{En|strech}})」という名の紫色のタコのおもちゃが登場し、腕を伸ばしてお金をかき集める{{Sfn|カレッジ|2014|p=73}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://kids.disney.co.jp/character/stretch|title=ストレッチ - トイ・ストーリー|website=ディズニーキッズ|accessdate=2024-08-29}}</ref>。 |
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映画「[[ジェームズ・ボンド]]」シリーズの『[[007/オクトパシー]]』には、女性窃盗密輸団の古い秘密指令の印に[[ヒョウモンダコ]]が用いられている{{Sfn|カレッジ|2014|p=71}}。シカゴ・フード映画祭で2011年に最優秀フード・ポルノ映画賞を受賞した短編映画『アモール・プルポ』(''Amor pulpo'', 2011)は女性がデートの支度をする場面の合間にタコが捕獲され調理されるシーンが映され、レストランにて供されるという作品である{{Sfn|カレッジ|2014|p=59}}。 |
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1989年に[[ディズニー]]が制作した映画『[[リトル・マーメイド]]』では、魔女アースラというキャラクターが登場するが、その動きは[[ジャック・クストー]]が撮影したタコの動きがモデルであると言われる{{Sfn|カレッジ|2014|p=76}}。モバイルゲーム「[[ディズニー ツイステッドワンダーランド]]」では、『リトル・マーメイド』をテーマとした寮オクタヴィネルに、アースラのように[[ディズニー ツイステッドワンダーランドの登場キャラクター|アズール・アーシェングロット]]というタコ脚(オクトピット)のキャラクターが登場する<ref>{{Cite web|和書|url=https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000063.000018639.html|title=『ディズニー ツイステッドワンダーランド』コレクションジュエリー第6弾☆「オクタヴィネル寮」「スカラビア寮」の寮生たちをイメージしたリングが登場!|author=株式会社テイクアップ|website=PR TIMES|date=2023-10-26|accessdate=2024-08-27}}</ref>。 |
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==== 俳句と詩 ==== |
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「蛸」や「章魚」は夏(三夏)の[[季語]]、「麦藁章魚」は[[仲夏]]の季語となっている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.thr.mlit.go.jp/miharu/introduction/region/Files/2021/10/27/99ec02b6e3854c3bb8ed859babcb62ebada4b8a2.pdf|title=~5000季語 一覧集~|website=[[国土交通省]] [[東北地方整備局]]|format=pdf|accessdate=2024-08-27}}</ref>。 |
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江戸時代の俳人である[[松尾芭蕉]]は、明石にて「蛸壺や はかなき夢を 夏の月」という[[俳句]]を詠み、[[柿本神社 (明石市)|柿本神社]]にその句碑が残っている{{Sfn|武田|2013|p=183}}<ref name="Akashi"/>。出典は『[[猿蓑]]』で、「笈の小文」に収録されている<ref name="reference1000083735"/>。[[正岡子規]]は「飯蛸の 手をひろげたる [[:wikt:檐|檐]]端哉」や「冬枯や 蛸ぶら下る 煮賣茶屋」の句を詠み、『寒山落木』に収録される<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.aozora.gr.jp/cards/000305/files/1896.html|title=寒山落木 卷一|author=正岡子規|website=青空文庫|accessdate=2024-08-27}}</ref>。[[熊本県]]の俳人[[上村占魚]]は「章魚沈む そのとき海の 色をして」という句を詠んだ<ref name="reference1000083735"/>。 |
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[[萩原朔太郎]]の[[散文詩]]に「死なない蛸」がある<ref>{{Cite web|和書|title=宿命|author=萩原朔太郎|website=[[青空文庫]]|url=https://www.aozora.gr.jp/cards/000067/files/1790.html|accessdate=2024-09-09}}</ref>{{Sfn|荒俣|1994|p=252}}。水槽で餌を与えられないタコが自分の体を全て食べてしまい、意識だけの存在になって生き続ける{{Sfn|荒俣|1994|p=252}}。 |
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イギリスの詩では、やはりタコは恐ろしい存在として表現される。[[アルフレッド・テニスン]]は[[ソネット]] ''The Kraken''(1830年)を詠み、「数知れない巨大な突起 まどろむ青い海を巨大な腕でかき乱す (Unnumbered and enormous polypi Winnow with giant arms the slumbering green.)」と表現した{{Sfn|モンゴメリー|2017|p=14}}。 |
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==== 楽曲 ==== |
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1969年の『[[アビー・ロード]]』に収録された[[ビートルズ]]の「[[オクトパス・ガーデン]]」はタコが蒐集したものを巣穴の周りに並べる様子がきっかけに生まれた楽曲である{{Sfn|カレッジ|2014|p=152}}。[[リンゴ・スター]]は『[[ビートルズアンソロジー]]』の中で当時を振り返り、[[サルデーニャ島]]での休暇中に船長から聞いた話を基に歌詞を書いたと語っている{{Sfn|カレッジ|2014|p=153}}。 |
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日本では、「湖畔の宿」の替え歌として『タコ八の歌』が知られる{{Sfn|武田|2013|p=205}}。 |
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==== 美術 ==== |
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[[File:Fontana della Ninfa, Bologna.jpg|thumb|200px|[[ボローニャ]]のモンタニョーラ公園にあるニンフの噴水の彫刻。]] |
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[[File:Ryuko tako no asobi 流行蛸のあそび (Fashionable Octopus Games) (BM 2008,3037.21402 1).jpg|thumb|200px|[[歌川国芳]]『流行蛸のあそび』]] |
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{{See also|#腕と触手}} |
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[[伊藤若冲]]の『[[動植綵絵]]』「群魚図」には、様々な魚種に紛れて大きな泳ぐタコが描かれており、その一本の腕の先端にはもう1匹の小さなタコがしがみついている様子が描かれる{{Sfn|モンゴメリー|2017|p=341|loc=訳者あとがき}}{{Sfn|奥谷|神崎|1994|p=4}}。[[歌川国芳]]の[[浮世絵]]『流行蛸のあそび』には、擬人化された様々なタコの様子が描かれる<ref>{{Cite web|和書|url=https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0032016|title=C0032016 流行蛸の遊び|website=[[東京国立博物館]]画像検索|accessdate=2024-09-10}}</ref>。 |
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タコの姿は[[パブリックアート]]のモチーフとしても見ることができる{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=29}}。[[イタリア]][[ボローニャ]]の{{仮リンク|モンタニョーラ公園|en|Park of Montagnola, Bologna}}にある[[ニンフ]]の噴水の彫刻には、乙女の[[太腿]]に腕を巻き付かせるタコが彫られている{{Sfn|カレッジ|2014|p=239}}。スペインの[[ビーゴ (スペイン)|ビーゴ]]には、前述の『海底二万里』を書いたヴェルヌとタコの銅像が設置されている{{Sfn|カレッジ|2014|p=23}}。[[テキサス州]][[オースティン (テキサス州)|イーストオースティン]]の公園([[ジェシー・アンドリュース]]・パーク)には、6 m の高さの紫色のタコの彫刻「オチョ (Ocho)」がある{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=29}}。 |
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==== ドキュメンタリー ==== |
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{{仮リンク|ジャン・パンルヴェ|en|Jean Painlevé}}は、海洋生物のドキュメンタリーを得意としていた映画監督であり、タコを主題としたドキュメンタリーを制作している{{Sfn|カレッジ|2014|p=73}}。パンルヴェはタコの特性をしなやかな[[チューインガム]]のようだと形容した{{Sfn|カレッジ|2014|p=73}}。彼の処女作はまさに、『タコ』(''{{Fr|La Pieuvre}}'', 1928)であり、10分間の[[シュールレアリスム]]風な[[モノクロ]]の短編[[サイレント映画]]であった{{Sfn|カレッジ|2014|p=73}}。パンルヴェによる短編映画『[[タコの性生活]]』(''Les amours de la pieuvre'', 1967)では、雄が雌の漏斗に交接腕を挿入する様子が描かれる{{Sfn|カレッジ|2014|p=235}}。 |
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[[ドイツ]]・[[オーバーハウゼン]]の水族館 {{lang|en|Sea Life Oberhausen}} で飼われていた{{snamei|[[Octopus vulgaris]]}} の「タコの[[パウル (タコ)|パウル]] ({{lang|de|Paul der Krake}})」を主題とした長編ドキュメンタリー『[[超能力タコ、パウルの生涯]]』(''The Life and Times of Paul the Psychic Octopus'', 2012)が制作されている{{Sfn|カレッジ|2014|p=12}}。 |
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2019年に[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[公共放送サービス|PBS]]が放映した ''Octopus: Making Contact'' は、生態学者のシールがタコを家に招待するドキュメンタリーである{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=32}}。最初の放送で190万人に視聴され、インターネット上で大きな反響を得た{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=32}}。 |
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『[[オクトパスの神秘: 海の賢者は語る]]』(''My Octopus Teacher'', 2020)は、[[Netflix]]で配信されたドキュメンタリー映画で、[[南アフリカ]]の[[ケルプの森]]([[ジャイアントケルプ]]などからなる[[藻場]])で野生の {{snamei|[[Octopus vulgaris|O. vulgaris]]}} との信頼関係を築こうとする様子が描かれている{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=32}}。この作品は2021年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を獲得した{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=32}}。 |
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2024年には[[ナショナル・ジオグラフィック]]が制作した『[[解明!神秘なるオクトパスの世界]]』(''Secrets of the Octopus'', 2024)が[[ディズニープラス]]で配信されている{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=32}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/secrets-of-the-octopus/35g7M6ZQocXU|title=解明!神秘なるオクトパスの世界を視聴|website=Disney+(ディズニープラス)|date=2024|accessdate=2024-09-08}}</ref>。水中で2年もの期間撮影され、知性を示すタコの姿が捉えられている{{Sfn|モンゴメリー|2024|p=33}}。 |
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=== タコをモチーフとしたキャラクター === |
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また、企業や自治体のキャラクターとなることもある。宮城県の[[南三陸町|南三陸]]復興ダコの会では、タコをモチーフにした「オクトパス君」という[[ゆるキャラ]]が存在する<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.yurugp.jp/jp/vote/detail.php?id=00000471|title=オクトパス君|website=ゆるキャラグランプリ公式サイト|accessdate=2024-08-27}}</ref>。北海道[[函館市]][[戸井町|戸井地区]]では道内有数のミズダコ漁獲量を誇ることから、1988年の戸井町時代にタコが町魚に制定され{{Sfn|神崎|1994|p=132|loc=第8章}}、合併後の現在もイメージキャラクター「トーパスちゃん」が親しまれる<ref>{{Cite web|和書|author=戸井支所 地域振興課|url=https://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2024013100067/|title=戸井地区イメージキャラクター「トーパスちゃん」|website=函館市|date=2024-02-01|accessdate=2024-09-11}}</ref>。 |
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[[サンリオ]]のキャラクターには「[[チューチューターコ]]」がおり、ボーイフレンドはイカのコータくんである<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.sanrio.co.jp/characters/chuchutaako/|title=チューチューターコ|website=サンリオ|accessdate=2024-08-27}}</ref>。 |
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ゲーム「[[ポケットモンスター]]」のシリーズでは、『[[ポケットモンスター 金・銀]]』から[[オクタン (ポケモン)|オクタン]]が登場する<ref name="inside">{{Cite web|和書|url=https://www.inside-games.jp/article/2022/04/11/137676.html|title=『ポケモン』史上最も不可解!?魚からタコに進化するテッポウオとオクタンの謎|date=2022-04-11|website=インサイド|accessdate=2024-08-27}}</ref>。オクタンの名はオクトパスと[[戦車|タンク]]を掛け合わせたものだとされる<ref name="inside"/>。また、『[[ポケットモンスター ソード・シールド]]』には、[[タタッコ]]と、それが[[ポケットモンスター (架空の生物)#進化|進化]]した[[オトスパス]]が登場する<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.pokemon-card.com/card-search/details.php/card/38561/regu/all|title=タタッコ|website=ポケモンカードゲーム公式ホームページ|accessdate=2024-08-29}}</ref><ref name="pokemon-card38745">{{Cite web|和書|url=https://www.pokemon-card.com/card-search/details.php/card/38745/regu/all|title=オトスパス|website=ポケモンカードゲーム公式ホームページ|accessdate=2024-08-29}}</ref>。オトスパスは[[ポケットモンスター (架空の生物)#わざ|わざ]]「たこがため」を使う<ref name="pokemon-card38745"/>。 |
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=== 腕と触手 === |
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{{Multiple image |
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|align=right |
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|total_width=400 |
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|image1=Tako to ama (detail).jpg |
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|caption1=葛飾北斎の描いた春画『[[蛸と海女]]』の一部。 |
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|image2=Spicy-Adventure Stories August 1936.jpg |
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|caption2=''Spicy-Adventure Stories'' (August 1936) の表紙。 |
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タコの腕はスーパーヒーローや悪役のモデルになっている{{Sfn|カレッジ|2014|p=180}}。[[マーベル・コミック]]の作品にシリーズに登場する[[スパイダーマン]]の宿敵、[[ドクター・オクトパス]]は独立して動く腕を駆使する様子が描かれる{{Sfn|カレッジ|2014|p=184}}。この腕は3 t の物を持ち上げられるという設定がある{{Sfn|カレッジ|2014|p=221}}。 |
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[[香港]]の公共交通機関が発行している[[ICカード]]は[[八達通]](オクトパスカード)と名付けられ、様々な機能を持ち、タコの長く便利な腕を想起させるネーミングとなっている{{Sfn|カレッジ|2014|p=184}}。[[ポペットバルブ]]の[[気密]]を保つために研磨を行う際、持ち手として取り付ける[[バルブラッパー]](工具)はタコ棒という俗称で呼ばれる。先端にタコのような吸盤があり、これでバルブを吸いつけて作業する<ref>{{Cite web|和書|url=https://news.webike.net/maintenance/80856/|title=吸排気バルブ分解時はクリーニング。「タコ棒」使って擦り合わせよう|website=Webikeプラス|date=2021-10-29|accessdate=2024-08-26}}</ref>。 |
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また、タコの腕はしばしば淫らなイメージを持って扱われ、「[[触手責め|触手もの]]」という一大ジャンルとなっている{{Sfn|カレッジ|2014|p=238}}。触手もののはじまりは19世紀初頭の日本の[[木版画]]である{{Sfn|カレッジ|2014|p=238}}。[[葛飾北斎]]の作とされる文化11年([[1814年]])に刊行された[[春画]]『[[喜能会之故真通]]』「[[蛸と海女]]」には女体に絡みつくタコが描かれている{{Sfn|奥谷|1991|p=27}}{{Sfn|カレッジ|2014|p=238}}{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}{{Sfn|荒俣|1994|p=246}}{{efn|『喜能会之故真通』は一般的には北斎作とされるが、美術史家の間での見解に差異があり、[[林美一]]や[[辻惟雄]]は、筆致が異なるとして北斎作ではなく、三女のお栄([[葛飾応為]])か門人[[渓斎英泉]]の作であろうという立場を取っている{{Sfn|林|2011|p=127}}{{Sfn|浅野|2005|p=12}}。一方で[[浅野秀剛]]は画の緩みや弟子任せの箇所があったとしても部分的であり、北斎構想による高い完成度を示した作品であるとしている{{Sfn|浅野|2005|p=13}}。}}。「蛸と海女」では[[海人|海女]]が岩場で仰向けになり、両脚の間に大蛸が、口元には小蛸が、乳首や肢体には蛸の腕の先が巻き付いており、海女の両腕は大蛸の2本の腕を握りしめている{{Sfn|カレッジ|2014|p=238}}。昔の西洋の研究者はこれを凌辱の場面と誤解したが、合意のうえでの快楽を描いている{{Sfn|カレッジ|2014|p=238}}。これは[[根付]]のモチーフなどにもなっている{{Sfn|カレッジ|2014|p=238}}。現代でも、[[佐伯俊男]]や[[寺岡政美]]などの作品に受け継がれている{{Sfn|カレッジ|2014|p=239}}。 |
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20世紀半ばにはアメリカの[[パルプマガジン]]や[[アメコミ|コミック]]の表紙にタコが用いられるようになった{{Sfn|カレッジ|2014|p=238}}。1936年8月号の[[スパイシー・アドベンチャーズ]]誌の表紙には赤い水着姿の女性に腕を巻き付けるタコが描かれている{{Sfn|カレッジ|2014|p=238}}。 |
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[[漫画]]や[[アニメーション]]の世界でも触手ものは広がり、[[ロボット]]の腕が登場することもある{{Sfn|カレッジ|2014|p=239}}。更に暴力的な表現は「[[触手責め]]」と呼ばれ、[[フェティシズム]]の一つとなっている{{Sfn|カレッジ|2014|p=239}}。これは[[男性器]]を直接描写できない検閲規制から発展したと考えられることもある{{Sfn|カレッジ|2014|p=239}}。 |
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吸盤を具えた腕で抱きしめ吸い上げるイメージから、タコそのものも好色的で淫らなイメージを持たれる{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}{{Sfn|千葉・荒俣|1988|p=254}}{{Sfn|鈴木|1978|p=8}}。そのため、西洋では食べると催淫作用があるという俗信があった{{Sfn|荒俣|1994|p=244}}。 日本語の「蛸」は[[女性器|女陰]]の特殊なものを指す[[隠語]]として用い{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|藤木|1958|pp=46–55}}{{Sfn|木村|小出|2000|p=701|loc=「たこ⑧」『日本性語大辞典』 (1928)}}、タコの吸盤のように引き付けるものを指す{{Sfn|大久保|木下|2014|p=594}}。「[[蛸つび]](蛸玉門)」{{Sfn|木村|小出|2000|p=701|loc=「たこつび」『日本性語大辞典』 (1928)}}や「蛸壺」ともいう{{Sfn|大久保|木下|2014|p=594}}。 |
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「蛸」は[[私娼]]を指す例もある{{Sfn|藤木|1958|pp=46–55}}。江戸中期の[[菅江眞澄]]の寄稿日記には、[[南部地方]]では古く[[遊女]]のことをタコと言った、と記される{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}。また、「閨中に入って[[妾]]はタコになる」や「章魚と麩を出してもてなす[[待合|出合茶屋]]」などといった[[破礼句]]も知られる{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}{{Sfn|大久保|木下|2014|p=594}}。タコのように吸い付いて傍を離れない女郎を「蛸女郎(たこじょろう)」という{{Sfn|大久保|木下|2014|p=594}}。日本以外でも、[[フランス]]の[[ノルマンディー]]では、漁師の間での隠語として、タコは男性の持つ全ての力を吸い取る強欲な女を意味する{{Sfn|神崎|1994|pp=28–30|loc=異形とひとびとの想像力 タコの語源と伝説}}。 |
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=== タコと火星人 === |
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フィクションにおける[[火星人]]の姿はしばしば頭が大きく手足は細長く描かれ、「タコ型」と言及される<ref name="honda__mars">{{Cite web|和書|url=https://www.honda.co.jp/kids/explore/mars/|title=火星人はなぜタコ型? 最接近はいつ? ふしぎな惑星「火星」のナゾ |website=Honda Kids|publisher=[[本田技研工業]]|accessdate=2024-08-27}}</ref><ref name="kahaku">{{Cite web|url=https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/space/mars/mars05.html|title= 宇宙の質問箱 火星編 V. 火星人はいるのですか?|website=[[国立科学博物館]]|accessdate=2024-08-27}}</ref>。これは[[イギリス]]の[[ハーバート・ジョージ・ウェルズ|ウェルズ]]が書いた1898年の[[サイエンス・フィクション|SF]]小説『[[宇宙戦争 (H・G・ウェルズ)|宇宙戦争]]』の挿絵に由来するとされる<ref name="honda__mars"/><ref name="kahaku"/>。 |
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タコ型宇宙人は後世の様々な作品に転用されている。例えば、1939年の[[海野十三]]『[[火星兵団]]』に登場する火星人は「大蛸のような」と形容されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.aozora.gr.jp/cards/000160/files/3368_25725.html|author=海野十三|title=火星兵団|website=青空文庫|accessdate=2024-08-27}}</ref>。昭和30年代に少年雑誌「[[ぼくら]]』に連載された[[前谷惟光]]による「[[火星の八ちゃん]]」もタコをイメージした火星人が描かれている{{Sfn|奥谷|神崎|1994|p=7}}。2021年の[[タイザン5]]の漫画『[[タコピーの原罪]]』に登場するキャラクター「タコピー」などにもその影響がみられる<ref>{{Cite web|和書|author=足立守正|url=https://qjweb.jp/column/71029/|title=タイザン5『タコピーの原罪』が導く、正解のない人生|website=クイック・ジャパン・ウェブ|date=2022-05-28|accessdate=2024-08-27}}</ref>。 |
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=== 日本語とタコ === |
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[[File:EYE Film Institute Netherlands - Main building with octopus kites - 2017.jpg|thumb|250px|「蛸」の「凧」。[[オランダ]]にて。]] |
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タコは特徴的な姿や生態を持つため、様々な物事がタコに喩えられて用いられてきた。[[玩具]]の「'''[[凧]]'''(たこ)」は、長い尻尾を付けた様がタコに似ることから名付けられたとされる{{Sfn|前田|2005|p=708}}{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}。凧は上方では、「いか」や「いかのぼり」とも呼ばれる{{Sfn|新村|1998|p=1641}}{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}。また、上代の[[旗]]には'''蛸旗'''(鮹旗、たこはた)と呼ばれるものがあり、[[吹流し]]に類するもので、こちらも旗の足が割れている様子をタコの腕が垂れている様子に喩えたものであるとされる{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|新村|1998|p=1642}}。 |
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体にできる「[[胼胝]](たこ)」も一説にはタコの手の裏に似ていることからともされる{{Sfn|前田|2005|p=709}}。 |
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また、日本語にはタコを冠する言葉やタコに関する[[諺]]も数多く知られる{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}。例えば、タコは骨を持たないことから、有り得ないことの喩えとして「タコのあら汁」、当たり前のこととして「タコに骨なし、[[クラゲ|海月]]に目なし」と言われる{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}。 |
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==== 胴体に由来する表現 ==== |
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蛸の「頭(胴体)」が[[坊主頭]]に似ていることから、坊主頭の者を嘲り、'''蛸入道'''や'''蛸坊主'''(たこ坊主)という{{Sfn|新村|1998|p=1642}}{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|藤木|1958|pp=46–55}}{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}。蛸入道はタコそのものを指すこともあり{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}、[[坊主]]を[[侮蔑#侮蔑表現の分類と種類|蔑んで]]「蛸」ということもある{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|木村|小出|2000|p=701|loc=「たこ②」」}}{{Sfn|大久保|木下|2014|p=594}}{{Sfn|牧村|1979|p=405}}。蛸入道を略して「蛸入(たこにゅう)」ということもある{{Sfn|木村|小出|2000|p=702|loc=「たこにゅう」『東京語辞典』 (1917)}}{{Sfn|米川|2021|p=219}}。「たこにゅう」は戦前の[[女性語|女学生ことば]]であるとされる{{Sfn|米川|2021|p=219}}。なお、タコは料理をしても骨が残らず、魚臭もしないため、肉食をする「[[生臭坊主]]」でなくとも僧侶の間で重宝がられたという流言が伝わる{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}。また、大阪弁では値が張ることを「高うつく」というが、「坊主のはりつけでタコつく(蛸突く)」という[[駄洒落]]も知られる{{Sfn|牧村|1979|p=405}}。 |
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また、タコの胴のように頂辺を丸く縫い上げた[[頭巾]]を'''蛸頭巾'''(たこずきん)という{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|新村|1998|p=1642}}{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}。蛸頭巾には紫色を用いた{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}。[[オーバーコート]]や[[レインコート]]に付けて頭に被るフードを「蛸」ということもある{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}。 |
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==== 姿に由来する表現 ==== |
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[[File:JapanHomes005 POUNDING DOWN FOUNDATION STONES.jpg|thumb|200px|蛸胴突による礎石搗き固め。]] |
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[[杭]]を打ったり土や割栗石を突き固めるのに用いる[[道具]]([[撞槌|胴突き]])は'''蛸'''(たこ、'''タコ''')または'''蛸胴突'''(たこどうつき)と呼ばれる{{Sfn|新村|1998|pp=1641–1642}}{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}。'''蛸搗'''(たこつき)とも呼ばれる{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547|loc=「蛸搗」}}<ref name="岡本2021">{{Cite journal ja|author=岡本直樹|title=締固め機械史 2:突固め系の機械化|journal=建設機械施工 |volume=73 |issue=1 |date=2021|pages=78–85 |url=https://jcmanet.or.jp/bunken/kikanshi/2021/1/078.pdf}}</ref><ref name="房前・竹林1995">{{Cite journal ja|author1=房前和朋|author2=竹林征三|date=1995|title=労働歌 ・どんつき節の変遷からみる築堤工法の土木史|journal=土木史研究|volume=15|pages=491–498}}</ref>。直径30–40 cm の[[樫]]や[[欅]]の材を円筒形の棒にし、2–4本の把手を付け、先端に金輪をはめてできる{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Efn|[[英語]]では {{lang|en|rammer}}<ref>{{cite encyclopedia|year=1960|edition=4|title=ram|page=1472|encyclopedia=新英和大辞典|publisher=研究社}}</ref>及び {{lang|en|punner}}<ref>{{cite encyclopedia|year=1960|edition=4|title=punner|page=1442|encyclopedia=新英和大辞典|publisher=研究社}}</ref> と呼ばれ、日本語でも「ランマー(ランマ<ref name="岡本2021"/>・ラマー・ラム)」や「プンナー」とも呼ばれることもある。}}。数人で持ち上げるため柄が多くついており、それをタコに喩えたものであるとされる{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547|loc=「蛸搗」}}。そのようにして搗き固める仕事を指して「蛸搗き(たこつき)」ということもある{{Sfn|米川|2021|p=89}}{{Sfn|木村|小出|2000|p=701|loc=「タコツキ」『続労働用語集』 (1932)}}。石製の土搗きの道具は「石蛸」と呼ばれる<ref name="岡本2021"/><ref name="房前・竹林1995"/>。 |
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着物の[[裾]]の周囲をまくり上げることを'''蛸絡'''(蛸絡げ、たこからげ)という{{Sfn|新村|1998|p=1641}}{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}。蛸が腕を広げた姿に喩えたものである{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}。また、古くは蛸(章魚)は[[脚絆]](股引)を指すこともあり{{Sfn|木村|小出|2000|p=700|loc=「たこ①」}}{{Sfn|藤木|1958|pp=46–55}}、'''蛸片'''(蛸衣、たこびら)と呼ばれた{{Sfn|藤木|1958|pp=46–55}}{{Sfn|木村|小出|2000|p=702|loc=「たこびら②」}}。蛸片は[[囚人服|獄衣]]を指すこともある{{Sfn|藤木|1958|pp=46–55}}{{Sfn|木村|小出|2000|p=702|loc=「たこびら⓪」}}{{Sfn|木村|小出|2000|p=702|loc=「たこびら①」}}。 |
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一つ(または少ない)ものを手に入れようと四方八方から争って引っ張るさまや、人気のある人物や物が多くの人に求められる状態を'''{{Vanchor|ひっぱりだこ}}'''(引っ張り蛸、引張蛸)と言うが<ref name="kotobank_2077617">{{Cite Kotobank|encyclopedia=精選版 日本国語大辞典|word=引っ張り蛸|accessdate=2024-08-26}}</ref>、これは腕を竹串で張って干される[[干しダコ]]の姿に由来するとされる<ref name="himaka"/><ref name="kotobank_2077617"/>。また、[[近世]]以前は、「ひっぱりだこ」は[[磔|磔刑]]およびその受刑者を意味する[[転義法|比喩表現]]であり、[[1687年]]の[[浮世草子]]『[[色道大皷]]』に見られる「三人の女房の敵おぼへたるかとひっはり蛸にして突通し捨ぬ」のように[[17世紀]]に用例が知られる<ref name="kotobank_2077617"/>。前者の初出の実例は[[1802年]]の『[[俳諧觿]]』で、「引はり凧に風邪の流行医」の[[雑俳]]が知られる<ref name="kotobank_2077617"/>。このように「引っ張り[[凧]](引張凧)」と表記されることもある<ref name="kotobank_2077617"/>。 |
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[[大阪市]][[北区 (大阪市)|北区]][[中之島 (大阪府)]]の[[堂島川]]に面して生えていた[[クロマツ]]は、タコが泳ぐ姿に似ていることから「[[蛸の松]]」という愛称で呼ばれている<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.takonomatu.jp/towa.htm|title=「蛸の松」の由来|website=「蛸の松」HP|accessdate=2024-08-27}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.yomiuri.co.jp/local/osaka/feature/CO033271/20180518-OYTAT50043/|title=〈6〉蛸の松 1世紀経て「二代目」|date=2018-05-19|website=読売新聞オンライン|publisher=読売新聞社|accessdate=2024-08-27}}</ref>。 |
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==== 腕に由来する表現 ==== |
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器物の足が蛸の足(腕)のような形になっているものや、1箇所からいくつも分岐している形をタコの腕に喩えて、'''蛸足'''(タコ足、たこあし)という{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|新村|1998|p=1641}}。特に1つのコンセントから多数のコードを引き、電気器具を接続することを[[たこ足配線|蛸足配線]]という{{Sfn|新村|1998|p=1641}}。また、[[内燃機関]]において、等長化された[[エキゾーストマニホールド]]は俗にタコ足と呼ばれる<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.automesseweb.jp/2022/03/01/932107/2#/2|title=「鬼キャン」「タコ足」「USDM」! もはや「暗号化」された自動車カスタム用語7つ|date=2022-03-01|author=土田康弘|website=Auto Messe Web|publisher=株式会社交通タイムス社|accessdate=2024-08-27}}</ref>。[[キャンパス]]が複数の箇所に分散している[[大学]]は[[蛸足大学]]と揶揄される{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}。[[腎臓]]の[[糸球体]]にある[[足細胞]] ({{En|podocyte}}) は、数本の突起を放射状に[[毛細血管]]壁へ伸ばしていることから、「タコ足細胞」とも呼ばれている<ref>{{Cite journal ja|author1=藤田恒夫|author2=徳永純一|author3=三好萬佐行|title=走査電子鏡による腎糸球体のタコ足細胞の観察|journal=Archivum histologicum japonicum|date=1970|volume=32|issue=2|pages=99–113|doi=10.1679/aohc1950.32.99}}</ref><ref>{{Cite web|和書|author=矢尾板永信|url=https://www.med.niigata-u.ac.jp/contents/info/news_topics/66_index.html|title=腎臓のタコ足細胞を培養で再現することに成功 -糸球体濾過調節の研究に新たな道を拓く|date=2017-10-30|publisher=新潟大学医学部医学科 大学院医歯学総合研究科|accessdate=2024-08-27}}</ref>。 |
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また、[[伊万里焼|古伊万里]][[唐草模様|唐草]]に見られる、蔓に突起状の葉を加えた蛸の腕のような文様は、「蛸唐草」と呼ばれる<ref>{{Cite press release ja|url=https://www.toguri-museum.or.jp/tenrankai/pdf/pdf_42.pdf|title=古伊万里唐草 -暮らしのうつわ- 展|publisher=[[戸栗美術館]]|date=2016-07-02|accessdate=2024-08-27}}</ref>。 |
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タコは[[#共食いと自食|自分の腕を食べる]]という逸話から、[[株主]]が自分の資本を食いつぶすことをそれに準えて、配当するだけの利益を上げていない[[株式会社]]が架空の利益を計上して資産から不当に株主へ配当することを「[[蛸配当]]」という{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|新村|1998|p=1642}}{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}{{Sfn|木村|小出|2000|p=702|loc=「たこはいとう」}}。「蛸配」や単に「蛸」ともいう{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|新村|1998|p=1642}}{{Sfn|木村|小出|2000|p=702|loc=「たこはい」}}。また、自分の財産を食いつぶすことを「タコは身を食う」という{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}。 |
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同様に自分の腕を食べるという逸話から、会食などで各自で持ち寄ったものを全て食べ終え、もう何も食べられるものがない状態を「タコの手食い」という{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}。 |
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==== 蛸壺に由来する表現 ==== |
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蛸を捕らえる蛸壺を元にした言葉もある。「[[蛸壺壕|蛸壺]]」は原義から転じ、戦場で兵士が一人だけ立ったまま潜み、そこから射撃できるように掘った[[塹壕]]を指す語としても用いられる{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|新村|1998|p=1642}}。 |
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また、[[第二次世界大戦]]前に北海道や[[樺太]]の[[炭鉱]]に見られた、労働所を収容して重労働を強制した部屋を「[[タコ部屋労働|蛸部屋]](タコ部屋)」と呼ぶ{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}。これは蛸壺のタコのように抜け出せないことからと言われる{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}{{Sfn|荒俣|1994|p=249}}。蛸部屋は単に「蛸」とも呼ばれ、そこで働かされる人のことも「たこ」という{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|新村|1998|p=1642}}{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}{{Sfn|木村|小出|2000|p=701|loc=「たこ⑩」『警察隠語類集』 (1956)}}。 |
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==== 侮蔑語としてのタコ ==== |
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「タコ」は、バカやアホに類する、相手を蔑む悪口にも用いられる<ref name="sanseido">{{Cite book ja|editor1=見坊豪紀|editor2=市川孝|editor3=飛田良文|editor4=山崎誠|editor5=飯間浩明|editor6=塩田雄大|title=三省堂国語辞典 第八版|publisher=株式会社三省堂|date=2021-12-20|isbn=978-4-385-13928-9|page=891}}</ref><ref name="reference1000306036">{{Cite web|和書|url=https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000306036 |title=悪口で「タコ」と言うのはなぜか。|date=2021-10-23|website=レファレンス協同データベース|publisher=国立国会図書館|accessdate=2024-08-26}}</ref>。この悪口の由来は諸説あり、[[江戸時代]]に[[将軍]]に謁見できない「御目見以下」である[[御家人]]のことを揶揄して[[旗本]]の子が「以下」と言ったことに対して、御家人の子が「タコ」と言い返したことから来た、という説明がなされることがある<ref name="reference1000306036"/><ref>{{Cite book ja|author=大野敏明|title=知って合点江戸ことば|series=文春新書 145|publisher=文藝春秋|date=2000-12-01|pages=32–35|isbn=978-4166601455}}</ref>。 |
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[[野球]]では、[[安打]]が打てずに([[凡打]]のみで)、[[:wikt:凡退|凡退]]することを「タコ」という{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}<ref name="sanseido"/><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.nikkansports.com/baseball/news/202401210001063.html|title=【DeNA】 たこ焼き大好き平良拳太郎、マウンドでは「27タコ」目標に凡打の山築く|date=2024-01-21|website=日刊スポーツ|author=小早川宗一郎|accessdate=2024-08-26}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.sanspo.com/article/20170331-TOLHWUSTZFJGXCOLNSLYXY42KY/|title=ヤクルト・真中監督、「験担ぎしないことが験担ぎ」もタコは×|date=2017-03-31|website=[[サンケイスポーツ]]|publisher=産業経済新聞社|accessdate=2024-08-26}}</ref>。例えば、4[[打席]]4[[打数]]無安打の場合は「4タコ」と言う<ref name="soso-gyokyo">{{Cite web|和書|url=https://soso-gyokyo.jp/landnews/3747|title=(2021/01/13)本日の水揚&「〇タコ」の語源について。|date=2021-01-13|website=水揚げNews|publisher=相馬双葉漁業協同組合|accessdate=2024-08-26}}</ref>。相手[[投手|ピッチャー]]の手玉に取られ、骨抜きにされることを骨を持たない「タコ」に喩えたものだとされる{{Sfn|神崎|1994|pp=44–46|loc=タコを冠する ことばとことわざ}}<ref name="soso-gyokyo"/>。 |
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また、悪口、野球用語ともにタコは自分の腕を食べるという逸話に基づくという説もある<ref name="soso-gyokyo"/><ref name="reference1000306036"/>。 |
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京都では「いけ好かない人」を「好かん蛸(すかんたこ)」という{{Sfn|牧村|1979|p=349}}。なお同じ語を[[大阪弁]]では「スカンタレ」という{{Sfn|牧村|1979|p=349}}。 |
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[[麻雀]]においても、下手な人を「[[麻雀用語一覧#た行|タコ]]」という<ref name="mj-news">{{Cite web|和書|author=麻雀ウォッチ編集部|url=https://mj-news.net/column/tsuchida-mjall/tsuchida_dictionary/2016091140820 |title=麻雀用語辞典 78.卓割れ、竹屋の火事、タコ、タコ和了、タコツッパ、タコ鳴き|website=麻雀ウォッチ|date=2016-09-11|accessdate=2024-08-26}}</ref>{{Efn|漫画『[[ぎゅわんぶらあ自己中心派]]』でも「日本タコ友の会」が登場する。}}。同様に、自分の順位のことを考えないで[[和了]]ることを「タコ和了」、根拠なしにただ要らない牌を切っていくことを「タコツッパ」、考えが全くない[[副露]]を「タコ鳴き」という<ref name="mj-news"/>。 |
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==== その他 ==== |
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風呂に入ったり、酒に酔ったりして赤くなる様子を、茹でて赤くなったタコに喩えて「茹で蛸」と表現する<ref name="kotobank-651999"/>{{Sfn|千葉・荒俣|1988|p=254}}。「怒って茹で蛸になる」という表現も用いられる<ref name="kotobank-651999"/>。また、叱責する(される)ことを「蛸釣る(蛸吊る、たこつる)」、「蛸を釣る(章魚を釣る)」という{{Sfn|前田|2005|p=709}}{{Sfn|藤木|1958|pp=46–55}}{{Sfn|木村|小出|2000|p=701|loc=「たこをつる」}}{{Sfn|木村|小出|2000|p=702|loc=「たこつる」『隠語輯覧』 (1915)}}{{Sfn|木村|小出|2000|p=702|loc=「たこつる【蛸釣】」『隠語構成の様式并其語集』 (1935)}}{{Sfn|牧村|1979|p=405}}。これは叱られた者が茹で蛸を吊るしたように赤くなることからと考えられている{{Sfn|前田|2005|p=709}}。兵舎の窓から[[おでん]]屋の煮蛸を釣り上げるところを見つかって叱られたことに起因するという談もある{{Sfn|前田|2005|p=709}}。叱責されることを「たこつられた」や「たこ」ともいう{{Sfn|木村|小出|2000|p=702|loc=「たこつる【蛸釣】」『隠語構成の様式并其語集』 (1935)}}。もとは大阪の[[第4師団 (日本軍)|第四師団]]管下の兵卒の隠語として発生したといわれる{{Sfn|牧村|1979|p=405}}。 |
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また「[[下着泥棒|蛸釣]](章魚釣り、たこつり)」は、先端に鉤を付けた竹竿で外から[[格子窓]]などを通じて室内の衣類などを盗み出すことを指す{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|新村|1998|p=1642}}{{Sfn|木村|小出|2000|p=702|loc=「たこつり②」}}。その犯人のこともいう{{Sfn|木村|小出|2000|p=701|loc=「たこつり⓪」}}。似た語に「たこなり」があり、[[江差]]では窓から棒を利用して衣類を盗む賊をいう{{Sfn|木村|小出|2000|p=702|loc=「たこなり」『隠語符牒集』 (1948)}}。また持っているものを後ろから盗み取ることを蛸釣(たこつり)ということもある{{Sfn|木村|小出|2000|p=702|loc=「たこつり①」}}。盗賊が住居に侵入するために使う縄梯子を「蛸」ということもある{{Sfn|木村|小出|2000|p=701|loc=「たこ⑦」『隠語輯覧』 (1915)}}{{Sfn|木村|小出|2000|p=701|loc=「たこ【蛸】」」『隠語構成の様式并其語集』 (1935)}}。 |
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[[大相撲]]の[[隠語]]で、思い上がって[[天狗#日本における展開|天狗]]になり、周囲の意見に聞く耳を持たなくなることを「タコになる」という{{Sfn|米川|2021|p=87}}{{Sfn|木村|小出|2000|p=702|loc=「タコニナル」『なんでもわかる相撲百科〈「相撲」別冊〉』 (1962)}}{{Sfn|木村|小出|2000|p=702|loc=「たこになる」『生きている隠語と符牒〈週刊読売〉』 (1968)}}<ref name="sanspo230518"/>。自惚れて得意顔でいるが、他人からは卑しめられていることを「蛸の糞で頭へ上がる(たこのくそであたまへあがる)」という表現を用いる{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|新村|1998|p=1641}}{{Sfn|大久保|木下|2014|p=594}}。これは、タコの胴が頭と誤られていたので、糞が頭の方にあることから{{Sfn|大久保|木下|2014|p=594}}。 |
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[[大根#葉|大根の葉]]を「蛸巣(たこのす)」という{{Sfn|木村|小出|2000|p=702|loc=「たこのす」}}。[[富山県]]ではタコノテと呼ばれる{{Sfn|木村|小出|2000|p=702|loc=「タコノテ」『日本隠語集』 (1892)}}。 |
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タコのようになるまで殴ることを俗に「タコ殴り」という<ref name="sanseido"/>。また、痛めつけることを「タコ」といい、「タコにしたろか」などとして用いる<ref>{{Cite book ja|author=大迫秀樹|title=消えゆく日本の俗語・流行語辞典|page=177|others=[[テリー伊藤]] 監修|date=2004-08-15|publisher=東方出版株式会社|isbn=4809403874}}</ref>。 |
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==== タコに因んだ生物 ==== |
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[[File:Labidiaster annulatus 59636276.jpg|thumb|250px|[[タコヒトデ科]]の1種 {{snamei||Labidiaster annulatus}}。]] |
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タコはまた、その姿に喩えて他の生物の和名にも用いられる。下記のものが挙げられる。 |
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* [[タコノキ]] {{snamei||Pandanus boninensis}} などのタコノキ類([[タコノキ目]]):[[単子葉植物]]。「蛸ノ木」の意で、茎の下部から[[根#さまざまな根|気根]]斜めに出す様子をタコの腕に見立てたもの{{Sfn|新村|1998|p=1642}}<ref>{{Cite book ja|author=牧野富太郎|title=原色牧野植物大圖鑑 続編|editor=本田正次|publisher=北隆館|date=1987-10-31|edition=3版|page=234}}</ref>。 |
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* [[タコノアシ]] {{Snamei||Penthorum chinense}}([[ユキノシタ目]]):「蛸ノ足」の意で、[[花序]]に花が並んだ様子をタコの足(腕)に吸盤が並ぶ様子に見立てたもの{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}{{Sfn|新村|1998|p=1642}}<ref>{{Cite book ja|author=牧野富太郎|title=原色牧野植物大圖鑑|editor=本田正次|publisher=北隆館|date=1986-10-30|edition=5版|page=161}}</ref>。 |
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* [[タコヒトデ]] {{Snamei||Plazaster borealis}}([[マヒトデ目]]):22–39本のタコの腕を思わせる細長い腕を持つことから<ref>{{Cite Kotobank|author=今島実|word=タコヒトデ|encyclopedia=改訂新版 世界大百科事典|publisher=平凡社|accessdate=2024-08-11}}</ref>。 |
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* [[タコクラゲ]] {{Snamei||Mastigias papua}}([[根口クラゲ目]]):口腕と付属器が8本あり、外見がタコに似ていることから<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.kaiyukan.com/connect/news/202208_post-499.html|title=タコ?クラゲ?「タコクラゲ」を展示中!|website=海遊館ニュース|publisher=[[海遊館]]|date=2022-08-24|accessdate=2024-08-11}}</ref><ref>{{cite web|和書|url=https://www.asahi.com/articles/ASPC53QDMPC4TIPE00K.html|author=島崎周|title=タコクラゲ、桜島を背にゆらり 鹿児島湾近くで大量発生|date=2021-11-05|website=朝日新聞デジタル|publisher=朝日新聞社|accessdate=2024-08-11}}</ref>。 |
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[[タコノマクラ目]]の不正形[[ウニ]]の1種である[[タコノマクラ]] {{Snamei||Clypeaster japonicus}} は、タコが枕にして寝るだろうという想像からの名であるとされる{{Sfn|尚学図書|1981|p=1547}}。この名はかつては[[ヒトデ]]類を指し、『[[訓蒙図彙]]』などに用例がみられる<ref name="Isono">{{Cite journal ja|author=磯野直秀|date=2006|title=タコノマクラ考 : ウニやヒトデの古名|journal=[[慶應義塾大学]]日吉紀要. 自然科学|volume=39 |pages=53–79}}</ref>。その後[[クモヒトデ]]類や[[カシパン]]類を指したが、1883年の『普通動物学』で同属の {{Snamei|Clypeaster subdepressus}} を指す和名として扱われた<ref name="Isono"/>。それが[[飯島魁]] (1890)『中等教育 動物学教科書』により本種の名に用いられ、[[標準和名]]として広まった<ref name="Isono"/>。 |
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== 脚注 == |
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=== 注釈 === |
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=== 出典 === |
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== 参考文献 == |
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* {{Cite journal2 |df=ymd |last1=Avendaño |first1=O. |last2=Roura |first2=Á. |last3=Cedillo-Robles |first3=C.E. |last4=Rodríguez-Canul |first4=R. |last5=Velázquez-Abunader |first5=I. |last6=Guerra |first6=Á |title=''Octopus americanus'': a cryptic species of the ''O. vulgaris'' species complex redescribed from the Caribbean |journal=Aquat. Ecol. |volume=54 |pages=909–925 |date=2020 |doi=10.1007/s10452-020-09778-6|ref={{SfnRef|Avendaño ''et al.''|2020}} }} |
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* {{Cite book |和書 |title=タコの教科書 |author=リチャード・シュヴァイド |translator=土屋晶子 |publisher=[[エクスナレッジ (出版社)|エクスナレッジ]] |year=2014 |isbn=978-4-7678-1824-5 |ref={{SfnRef|Schweid|2014}} }} |
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* {{cite journal2 |df=ymd |last=Budelmann |first=B.U.|title=Autophagy in ''Octopus''|journal=South African Journal of Marine Science|volume=20|issue=1|pages=101–108 |year=1998 |doi=10.2989/025776198784126502}} |
|||
* {{Cite book |和書 |title=タコの才能─いちばん賢い無脊椎動物 |author=キャサリン・ハーモン・カレッジ |translator=高瀬素子 |publisher=[[太田出版]] |year=2014 |isbn=978-4-7783-1402-6 |ref={{SfnRef|Katherine|2014}} }} |
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* {{Cite book2|df=ymd|last1=Collins |first1=M.A. |last2=Villaneuva|first2=R. |date=2006|url=https://books.google.com/books?id=R7-TfdYeLEgC&pg=PA308 |chapter=Taxonomy, ecology and behaviour of the cirrate octopods |editor=Gibson, R.N., R.J.A. Atkinson & J.D.M. Gordon |title=Oceanography and Marine Biology: An Annual Review|volume= 44|publisher=Taylor and Francis |place=London|pages=277–322}} |
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* {{Cite book |和書 |title=日本のタコ学 |author1=奥谷喬司 |author2=小野奈都美 |publisher=[[東海大学出版部|東海大学出版会]] |year=2013 |isbn=978-4486019411 |ref={{SfnRef|奥谷|2013}} }} |
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* {{Cite book2|df=ymd|author=FAO |date=2016|title=Cephalopods of the world. An annotated and illustrated catalogue of cephalopod species known to date. Volume 3. Octopods and Vampire Squids |editor1=Jereb, P. |editor2=Roper, C.F.E. |editor3=Norman, M.D. |editor4=Finn, J.K. |series=FAO Species Catalogue for Fishery Purposes. No. 4, Vol. 3 |place=[[ローマ|Rome]]|publisher=[[国際連合食糧農業機関|Food and Agriculture Organization of the United Nations]]|isbn=978-92-5-107989-8|url=https://www.fao.org/4/i3489e/i3489e.pdf|ref={{SfnRef|FAO|2016}} }} |
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* {{Cite journal |last1=Fuchs |first1=D. |last2=Günter |first2=S. |year=2018 |title=First Middle–Late Jurassic gladius vestiges provide new evidence on the detailed origin of incirrate and cirrate octopuses (Coleoidea) |journal=PalZ |volume=92 |issue=2 |pages=203–217 |doi=10.1007/s12542-017-0399-8 |issn=0031-0220|ref=harv}} |
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* {{Cite journal2 |df=ymd |first1=W. M.|last1=Kier|date=2016-02-18|title=The Musculature of Coleoid Cephalopod Arms and Tentacles|journal=Front. Cell Dev. Biol.|volume=4|number=10|pages=1–16|doi=10.3389/fcell.2016.00010}} |
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* {{Cite journal2 |df=ymd |last=Verhoeff|first=T. J. |date=2023|title=The molecular phylogeny of cirrate octopods (Cephalopoda: Octopoda: Cirrata) using COI and 16S Sequences|journal=Folia Malacol. |volume=31|issue=4|pages=175–196|doi=10.12657/folmal.031.026}} |
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* {{Cite journal ja|author=安東祐太郎|title=空釣り縄漁場の海洋環境とヤナギダコの移動実態|journal=北水試だより|volume=107|pages=10–13|date=2023|publisher=北海道立総合研究機構|url=https://www.hro.or.jp/upload/41446/dayori1073_tako.pdf|ref={{SfnRef|安東|2023}} }} |
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* {{Cite book ja|author=池田譲|title=タコは海のスーパーインテリジェンス 海底の賢者が見せる驚異の知性|series=DOJIN 選書 08|publisher=化学同人|date=2020-12-25|isbn=978-4-7598-1688-4|ref={{SfnRef|池田|2020}} }} |
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* {{Cite book ja|author=石田惣|chapter=3 蛸つぼを使ったタコ漁|pages=56–58|title=瀬戸内海の自然を楽しむ|series=第48回特別展「瀬戸内海の自然を楽しむ」解説書|editor=大阪市立自然史博物館|editor-link=大阪市立自然史博物館|publisher=大阪市立自然史博物館|date=2017-07-15|ref={{SfnRef|石田|2017}} }} |
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* {{Cite journal ja|author1=石田敏則|author2=遠藤克彦|title=常磐海域におけるミズダコ及びヤナギダコについて|journal=福島水試研報|volume=11|date=2003|pages=27–48|url=https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/38096.pdf|ref={{SfnRef|石田|遠藤|2003}} }} |
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* {{Cite journal ja|author1=伊丹宏三|author2=井沢康夫|author3=前田三郎|author4=中井昊三|date=1963|title=マダコ稚仔の飼育について|journal=日本水産学会誌|volume=29|issue=6|pages=514–520|doi=10.2331/suisan.29.514|ref={{SfnRef|伊丹ほか|1963}} }} |
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* {{Cite book ja|author=大場裕一|title=光る生き物 DVD付|series=学研の図鑑LITE|publisher=学研プラス|isbn=978-4054061712|date=2015-11-27|ref={{SfnRef|大場|2015}} }} |
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** {{Cite book ja|author=窪寺恒己|author-link=窪寺恒己 |chapter=第9章 日本のタコ図鑑|pages=211–269 |title=日本のタコ学 |editor=奥谷喬司|editor-link=奥谷喬司|publisher=[[東海大学出版部|東海大学出版会]] |date=2013-06-05 |isbn=978-4486019411 |ref={{SfnRef|窪寺|2013}} }} |
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* {{Cite journal ja|author1=金子奈都美|author1-link=小野奈都美|author2=窪寺恒己|author2-link=窪寺恒己|title=マダコ科カクレダコ属(新称)''Abdopus'' の2種カクレダコ(新称)''A. abaculus'' (Norman and Sweeney, 1997) とウデナガカクレダコ(新称)''A. aculeatus'' (d'Orbigny, 1834) の日本からの初記録|journal=タクサ|date=2007|volume=22|pages=38–43|ref={{SfnRef|金子|窪寺|2007}} }} |
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* {{Cite book ja |author=キャサリン・ハーモン・カレッジ|title=タコの才能─いちばん賢い無脊椎動物 |translator=高瀬素子|series=ヒストリカル・スタディーズ10|publisher=[[太田出版]] |date=2014-04-30 |isbn=978-4-7783-1402-6 |ref={{SfnRef|カレッジ|2014}} }} |
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* {{Cite journal ja|author=川上武彦|date=1975|title=世界のイカ・タコ|journal=水産海洋研究会報|volume=26|pages=143–147|url=https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010111564.pdf|ref={{SfnRef|川上|1975}} }} |
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* {{Cite book ja|author=窪寺恒己|author-link=窪寺恒己|chapter=頭足類|pages=48–51|title=標本学 第2版 自然史標本の収集と管理|editor=松浦啓一|publisher=東海大学出版会|date=2014-01-20|isbn=9784486020196|ref={{SfnRef|窪寺|2014}} }} |
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* {{Cite book ja|author=窪寺恒己|author-link=窪寺恒己|chapter=頭足綱|pages=1131–1151|editor=奥谷喬司|editor-link=奥谷喬司 |title=日本近海産貝類図鑑 第二版 |publisher=[[東海大学出版部|東海大学出版会]] |date=2017-01-26 |isbn=978-4486019848|ref={{SfnRef|窪寺|2017}} }} |
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* {{Cite journal ja|author1=窪寺恒己|author1-link=窪寺恒己|author2=奥谷喬司|author2-link=奥谷喬司|title=南大洋産イチレツダコ類の分類および分布|journal=平成5年度 イカ類資源・漁海況検討会議|pages=70–71|url=https://jsnfri.fra.affrc.go.jp/shigen/ika_kaigi/contents/H5/H5-11.pdf|ref={{SfnRef|窪寺|奥谷|1993}} }} |
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* {{Cite book ja|author1=窪寺恒己|author1-link=窪寺恒己|author2=峯水亮|title=世界で一番美しいイカとタコの図鑑|publisher=株式会社エクスナレッジ|date=2014-06-30|isbn=978-4-7678-1804-7|ref={{SfnRef|窪寺|峯水|2014}} }} |
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* {{Cite journal |author1=倉持卓司|author2=倉持敦子|title=相模湾から採集されたサメハダテナガダコ ''Callistoctopus luteus''(軟体動物門,マダコ科,テナガダコ属)の記録|journal=南紀生物|volume=61|issue=2|date=2019|pages=110–112|ref={{SfnRef|倉持|倉持|2019}} }} |
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* {{Cite book ja|author=小西英人|others=土屋光太郎 監修・西潟正人 料理|title=イカ・タコ識別図鑑|series=釣り人のための遊遊さかなシリーズ|publisher=株式会社エンターブレイン|date=2010-08-18|isbn=978-4047267169|ref={{SfnRef|小西|2010}} }} |
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* {{Cite journal ja|author=佐々木猛智 |author-link=佐々木猛智 |date=2008 |title=軟体動物の解剖 : コウイカ・サザエ・ホタテガイ |url=https://doi.org/10.14825/kaseki.84.0_86 |journal=化石 |volume=84 |pages=86–95 |publisher=日本古生物学会 |doi=10.14825/kaseki.84.0_86|ref={{SfnRef|佐々木|2008}} }} |
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* {{Cite book ja |author=佐々木猛智 |author-link=佐々木猛智 |date=2010-08-10 |title=貝類学 |publisher=東京大学出版会 |isbn=978-4-13-060190-0 |ref={{SfnRef|佐々木|2010}} }} |
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* {{Cite journal ja|author1=佐野稔|author2=梅田有宏|author3=佐々木隆浩 |date=2017|title=北海道北部日本海沿岸のたこ箱漁場におけるミズダコの鉛直分布の季節変化|journal=日本水産学会誌|volume=83 |issue=3 |pages=361–366 |doi=10.2331/suisan.16-00058|ref={{SfnRef|佐野ほか|2017}} }} |
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* {{Cite book ja|editor=下中弘|title=[[世界大百科事典]] 17|publisher=[[平凡社]]|edition=1988年版|isbn=4582027008|date=1988-04-28}} |
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** {{Cite book ja|author=奥谷喬司|author-link=奥谷喬司|chapter=タコ [構造・生態・分類]|pages=253–254|editor=下中弘|title=世界大百科事典 17|publisher=平凡社|date=1988-04-28|ref={{SfnRef|奥谷|1988}} }} |
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* {{Cite book ja|title=タコの教科書 |author=リチャード・シュヴァイド |translator=土屋晶子 |publisher=[[エクスナレッジ (出版社)|エクスナレッジ]] |date=2014-07-04 |isbn=978-4-7678-1824-5 |ref={{SfnRef|シュヴァイド|2014}} }} |
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* {{Cite book ja|author=鈴木克美|title=イタリアの蛸壺 海とさかなの随筆|date=1978-09-20|publisher=東海大学出版会|asin=B000J8M8GC|ref={{SfnRef|鈴木|1978}} }} |
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* {{Cite journal ja|author=瀧巌|author-link=瀧巌|date=1935|title=日本産頭足類屬名表 |journal=Venus|volume=5|issue=2–3 |pages=141–145|ref={{SfnRef|瀧|1935}} }} |
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* {{Cite journal ja|author=瀧巌|author-link=瀧巌|date=1970|title=抄録と紹介 ジェレツキー 1966. 化石鞘形類の比較形態・系統と分類|journal=Venus|volume=29|issue=2|pages=72–73|ref={{SfnRef|瀧|1970}} }} |
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* {{Cite book ja|editor1=竹内俊郎|editor2=中田英昭|editor3=和田時夫|editor4=上田宏|editor5=有元貴文|editor6=渡部終五|editor7=中前明|title=水産海洋ハンドブック|date=2004-05-31|publisher=株式会社生物研究社|isbn=4915342441|ref={{SfnRef|竹内ほか|2004}} }} |
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* {{Cite book ja |author=土屋光太郎 |author-link=土屋光太郎 |title=イカ・タコガイドブック |date=2002-4-27 |publisher=株式会社阪急コミュニケーションズ |isbn=978-4-484-02403-5 |pages=|others=山本典瑛・阿部秀樹(写真) |ref={{SfnRef|土屋|2002}} }} |
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* {{Cite book ja|author=土屋健|title=生物ミステリープロ 地球生命 無脊椎の興亡史|date=2023-08-05|publisher=技術評論社|isbn=978-4-297136123|pages=130–131 |ref={{SfnRef|土屋|2023}} }} |
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* {{Cite journal ja|author=野呂恭成|title=腕の一部が短いミズダコの形態観察|journal=平成27年度青森県産業技術センター水産総合研究所事業報告|date=2017|pages=131–133|ref={{SfnRef|野呂|2017}} }} |
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* {{Citation|和書|last=林|first=美一|author-mask=林美一|year=2011 |title=【江戸艶本集成】第九巻 葛飾北斎|others=中野三敏・小林忠監修 |publisher=河出書房新社 |isbn=978-4-309-71269-7|ref={{SfnRef|林|2011}} }} |
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* {{Cite news ja|publisher=[[古平町]]史編纂室|title=古平のタコ漁 {{!}} 年表で読む古平の歴史|newspaper=せたかむい |edition=12月号|volume=183|date=2004-12-01|ref={{SfnRef|『せたかむい』12月号|2004}} }} |
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* {{cite journal ja|author=古屋秀隆|author-link=古屋秀隆|title=ニハイチュウ(中生動物)の生物学|date=1996|publisher= 日本比較生理生化学会|journal=比較生理生化学|volume=13|number=3|pages=209–218|doi=10.3330/hikakuseiriseika.13.209|ref={{SfnRef|古屋|1996}} }} |
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* {{Cite book ja|author=北海道立水産試験場研究員|title=漁業生物図鑑 北のさかなたち|date=1991-06-12|editor=長澤和也・鳥澤雅|publisher=北日本海洋センター|ref=harv}} |
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* {{Cite book ja|author1=水口憲哉|author2=出月浩夫|title=マダコの地着きと渡り|publisher=東京水産振興会|date=2016-08-01|issn=1343-6074 |url=https://www.suisan-shinkou.or.jp/promotion/pdf/SuisanShinkou_584.pdf|ref={{SfnRef|水口|出月|2016}} }} |
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* {{cite journal ja|author=守安実己郎|title=地中海北西域で採集されたイチレツダコ (''Eledone cirrhosa'') の産卵中雌の胃中から出た卵嚢について|journal=貝類学雑誌|date=1984|volume=43|issue=2|pages=189–192|ref={{SfnRef|守安|1984}} }} |
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* {{Cite book ja|author=サイ・モンゴメリー|author-link=:en:Sy Montgomery|title=愛しのオクトパス ー海の賢者が誘う意識と生命の神秘の世界|date=2017-03-01|publisher=株式会社亜紀書房|translator=小林由香利|isbn=978-4-7505-1503-8|ref={{SfnRef|モンゴメリー|2017}} }} |
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* {{Cite book ja|author=サイ・モンゴメリー|author-link=:en:Sy Montgomery|title=神秘なるオクトパスの世界|translator=定木大介|others=池田譲 日本語版監修|date=2024-04-15|editor1=尾崎憲和|editor2=川端麻里子|publisher=日経ナショナル ジオグラフィック|isbn=9784863136106|ref={{SfnRef|モンゴメリー|2024}} }} |
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* {{Cite journal ja|author=吉郷英範|title=ご近所の生物誌②:八元八凱,備後地域で見られるタコ類)|journal=びんごの自然誌|volume=2|date=2024|pages=36–43 |url=https://www.researchgate.net/publication/377777247_Natural_History_of_Neighborhoods_2_Octopus_of_the_Bingo_area_Hiroshima_Pref_Japan_In_Japanese_gojinsuonoshengwuzhibayuanbakaibeihoudeyudejianrarerutakolei |ref={{SfnRef|吉郷|2024}} }} |
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=== 言語に関するもの === |
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* {{Cite book ja|editor1=大久保忠国|editor2=木下和子|title=江戸語辞典|edition=新装普及|publisher=東京堂出版|date=2014-09-20|isbn=978-4490108514|ref={{SfnRef|大久保|木下|2014}} }} |
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* {{cite book ja|author=加納喜光|author-link=加納喜光|title=動物の漢字語源辞典|publisher=[[東京堂出版]]|date=2007-10-25|isbn=978-4-490-10731-9|ref={{SfnRef|加納|2007}} }} |
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* {{Cite book ja|editor1=木村義之|editor2=小出美河子|title=隠語大辞典|publisher=皓星社|date=2000-04-15|isbn=4774402850|ref={{SfnRef|木村|小出|2000}} }} |
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* {{Cite book ja|editor=尚学図書|title=国語大辞典|publisher=[[小学館]]|date=1981-12-10|ref={{SfnRef|尚学図書|1981}} }} |
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* {{Cite book ja|editor=新村出|editor-link=新村出|title=広辞苑 第五版|publisher=[[岩波書店]]|date=1998-11-11|isbn=4000801112|ref={{SfnRef|新村|1998}} }} |
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* {{cite book ja|author=杉本つとむ|title=語源海|date=2005-03-01|publisher=東京書籍株式会社|isbn=4487797438|ref={{SfnRef|杉本|2005}} }} |
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* {{cite book ja|author1=藤堂明保|author1-link=藤堂明保|author2=松本昭|author3=竹田晃|author3-link=竹田晃|author4=加納喜光|author4-link=加納喜光|title=漢字源|publisher=[[学研教育出版]]|edition=改訂第5|date=2011-01-01|isbn=9784053031013|ref={{SfnRef|藤堂ほか|2011}} }} |
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* {{Cite book ja|author=田中利光|title=ラテン語初歩 改訂版|publisher=[[岩波書店]]|origdate=1990-02-26|date=2002-03-20|isbn=4-00-002412-4|ref={{SfnRef|田中|2002}} }} |
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* {{Cite journal ja|author=藤木三郎|title=還俗 ―元禄五年の路通に就て|journal=連歌俳諧研究|issue=17|date=1958|pages=46–55|doi=10.11180/haibun1951.1958.17_46|ref={{SfnRef|藤木|1958}} }} |
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* {{Cite book ja|author=前田富祺|title=日本語源大辞典|publisher=小学館|date=2005-04-01|isbn=4095011815|ref={{SfnRef|前田|2005}} }} |
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* {{Cite book ja|editor=牧村史陽|title=大阪ことば事典|publisher=講談社|date=1979-07-15|ref={{SfnRef|牧村|1979}} }} |
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* {{Cite book ja|author=米川明彦|title=俗語百科事典|date=2021-07-01|publisher=朝倉書店|isbn=978-4254510683|ref={{SfnRef|米川|2021}} }} |
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=== 文化に関するもの === |
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* {{Citation ja|last=浅野|first=秀剛|author-mask=浅野秀剛|year=2005 |title=葛飾北斎・春画の世界 |publisher=洋泉社 |isbn=4-89691-903-3|ref={{SfnRef|浅野|2005}}}} |
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* {{Cite book ja|editor=下中弘|title=彩色 江戸博物学集成|publisher=平凡社|date=1994-08-25|isbn=4582515045|ref={{SfnRef|下中|1994}} }} |
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* {{Cite journal ja|author=竹村景子|title=チャアニ村の食生活 : 一家族における献立とその食材|journal=スワヒリ&アフリカ研究|volume=14|publisher=大阪外国語大学地域文化学科 スワヒリ語・アフリカ地域文化研究室|url=https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/71108/|pages=31–65|date=2004|ref={{SfnRef|竹村|2004}} }} |
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* {{Cite journal ja|author=塚本晃久|title=ネズミとタコ―ニューカレドニア島イヤンゲーヌの民話―|journal=南半球評論|date=2014|pages=45–56|url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/anzshr/30/0/30_45/_pdf/-char/ja|ref={{SfnRef|塚本|2014}} }} |
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== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
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* [[オウムガイ]] |
* [[オウムガイ]] |
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* [[アンモナイト]] |
* [[アンモナイト]] |
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* [[アッコロカムイ]] |
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* [[クラーケン]] |
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* [[パウル (タコ)|パウル]] |
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* [[たこ焼き]] |
* [[たこ焼き]] |
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; 人物 |
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* [[たこ八郎]] |
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* [[横山ノック]] - 禿げ上がった頭から[[漫才]](漫画トリオ)で「タコ」と呼ばれた。 |
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* タコ社長 - [[日本映画]]『[[男はつらいよ]]』に登場する[[太宰久雄]]が演じた零細企業の[[社長]](cf. [[男はつらいよ#レギュラー|男はつらいよの主要人物]])の[[愛称]]。 |
|||
* [[中河美芳]] - [[日本プロ野球|プロ野球]]選手。一塁守備で足を大きく前後に開くさまと、どんな送球も吸い付くように捕球することから、「タコ足」「タコの中河」と呼ばれていた。 |
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* [[新海幸藏]] - [[力士]]。足癖を得意としたため、「タコ足の新海」のあだ名が付いた。 |
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* [[工藤由愛]] - [[ハロー!プロジェクト]]の女性アイドルグループ・[[Juice=Juice]]のメンバー。無類のタコ好きで、自ら「タコ(ちゃん)」という愛称を付けている<!-- <ref>[https://ameblo.jp/juicejuice-official/entry-12493114761.html 初めまして!工藤由愛] - [[Juice=Juice]]オフィシャルブログ([[サイバーエージェント]]) 2019年7月12日</ref> -->。 |
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;その他 |
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* [[卍固め]](オクトパス・ホールド) - アントニオ猪木の必殺技。タコが絡みつくように固める。 |
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* [[水銀整流器]] - 多陽極式水銀整流器は胴部(冷却部)と多足(多陽極)の形状からタコと呼ばれることがある。 |
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* [[ドラえもんのひみつ道具_(す)#スカンタコ|スカンタコ]] - 『[[ドラえもん]]』のひみつ道具。[[京都弁|京言葉]]の「好かん蛸」から。 |
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2024年12月10日 (火) 03:54時点における最新版
タコ | |||||||||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||
学名 | |||||||||||||||||||||
Octopoda Leach, 1818 | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
八腕形目 八腕目 タコ目 | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
octopus | |||||||||||||||||||||
亜目 | |||||||||||||||||||||
|
タコ(蛸、鮹、章魚、鱆、英: octopus)は、頭足綱鞘形亜綱八腕形上目の八腕形目(八腕目、学名:Octopoda)に分類される軟体動物の総称である[1][2]。角質環や柄のない吸盤を付けた、多様な機能を持つ筋肉に富んだ8本の腕と、脊椎動物に匹敵する大きな脳を持つ頭部を前方にそなえ、厚い外套膜に覆われた内臓塊からなる胴を後方に持つことを特徴とする。
呼称
[編集]和名と漢名
[編集]日本語では、たこ、蛸[2][3][4][5]、鮹[2][4][6][5]、章魚[2][4][7][8]、鱆[7][9]とも記す。「多古」[5]、「多胡」[10][5]、「太古」[5][10][11]のような音写のほか、「潮魚」[5]、「八梢」[5][注釈 1]、「章挙」[8][5]、「章拒」[8][5]、「章巨」[8]、「章花魚」[5][注釈 2]、「海蛸」[14][10]、「海蛸子」[15][10][16][11]、「海和魚」[5][17]、「海肌子」[10][5][11]、「小鮹魚」[15]、「望潮魚」[5][注釈 3]、「望潮」[8][注釈 4]、「𠑃魚」[注釈 5]、「䖣」[10]など、約30表記が知られる[5]。
タコの語源は以下のような様々な説が知られる[2]。多くの説で、8本の腕を持つ様子に由来すると考えられている[16]。
- タは手を示し、コは「許多(ここら)」[20][21]または助語(子)で、手が多いことからの命名[22][2][8][16]。
- タは手を示し、コは海鼠(こ、ナマコ)の義[21][23]、またはナマコやカイコのコに通じ、手を持った動物の意[24][2][16]。
- 動詞「綰く(たく)」に由来し、手を縦横に動かすことから[25][2][4]。
- 「手長(テナガ)」の略転[20]。
- 「手瘤(テコブ)」の義[26][27][28][2]。
- タは手を示し、コはコ(凝)の義で、手が物に凝りつくことから[29][2]。
- 「膚魚(ハタコ)」の義で、鱗のない魚であることから[30][2]。
- 「多股(タコ)」の義で、足が多いところから[31][2][4][16][32]。
- 「足る(たる)」と「壺(こ)」を意味する「タルコ」の略転で、丸く膨れた腹に餌をため込み満足する様子から[32]。
種の判別はイカよりも難しいことから、地方名は少ない[33]。その地域の最有力種は「真」を冠して「まだこ」と呼ばれる[33]。標準和名ヤナギダコやクモダコは方言名に由来するものである[33]。
中国語では通称として章魚、古称として蛸、ほか別名として八爪魚、八帶魚[8][34]などと呼ばれている。漢字「蛸」は「蠨蛸」でアシナガグモ Tetragnatha predonia を指す[3][14]。日本では『本草和名』でタコを「海蛸」と表記したことで、以降タコを意味する漢字として用いられるようになった[14]。この海蛸は、コウイカの甲を本草で「海螵蛸」と表記することと混同したとも、8本の足をクモに見立てて海のクモの意に由来するとも説明される[14]。また、漢字「鮹」がタコを表すのは日本での用例(半国字)で、中国ではヤガラ(アカヤガラ Fistularia petimba)を示す[6][15]。
octopus
[編集]英名 octopus(オクトパス)は、直接的には新ラテン語 octōpūs(オクトープース)の借用であり、その元は古典ギリシア語の ὀκτώπους(oktōpous)、ὀκτώ (oktṓ)「8」 + πούς (poús) 「足」に由来する[35][36]。ラテン語の octōpūs の複数形は octōpodēs であり、英語の octopus の複数形は octopuses である[35]。時に、ラテン語の第2変化名詞の語尾と誤解釈されて octopi という複数形が用いられることもあるが、これは正しくない[35][37][注釈 6]。
Octopus はマダコ属の学名としても用いられる。Octopus Cuvier, 1797 は、ジョルジュ・キュヴィエが1797年に Tableau Elémentaire de l’Histoire Naturelle des Animaux, 380. 中で記載したものである[39]。タイプ種は日本のマダコ Octopus sinensis d'Orbigny, 1841 に近縁な地中海の種チチュウカイマダコ Octopus vulgaris Cuvier, 1979 である[39]。分類学の父、カール・フォン・リンネはタコを認識していたが、1758年の Systema Naturæ『自然の体系』第10版では、コウイカ属の一種 Sepia octopodia Linnaeus, 1758 としていた。
外部形態
[編集]タコやイカなどの頭足類の体は、頭足部(頭足塊)と胴部(内臓塊)からなる[40][41][42][43]。タコの内臓塊は外套膜に覆われた外套腔と呼ばれる空所に取り囲まれる[40][44]。また、タコの外套縁は背側で頭部と癒合するのに対し、外套膜の腹縁は大きく開口し、外套開口 (pallial aperture, mantle opening) となって外套腔内に海水を取り込む[45]。頭足塊は腕と頭部からなり、前方にある[44]。内臓は後方に偏っている[44]。見た目で頭部に見える丸く大きな部位は実際には胴部であり[2][46]、本当の頭は腕の基部に位置して、眼や口器が集まっている部分である[47]。すなわち、頭から足(腕)が生えているのであり、同じ構造を持つイカの仲間とともに「頭足類」の名で呼ばれる理由である[46][40][48]。底生のタコでは、生時は普通眼を最も高いところに位置させており、胴体は下に提げた姿勢を取っている[49]。
体サイズは種によって異なり、最大のものは全長3 m(メートル)に達するミズダコ Enteroctopus dofleini やその近縁種である[50]。これまでの確実な記録では生きているミズダコで、全長4 m、体重71 kg(キログラム)のものが知られる[51][52]。あくまで説話上であるが、腕を広げた長さが9.75 m、重さは272 kg のミズダコの逸話もある[51][52][53]。それに次いで大きいのは、2002年にニュージーランド沖で引き揚げられたカンテンダコ Haliphron atlanticus の死骸で、体重60 kg、全長2.9 m であった[51]。
小型のタコはピグミーオクトパス "pygmy octopus" と総称される[54][50][注釈 7]。記載されている種では、琉球列島のコツブハナダコ 'Octopus' wolfi が最小とされる[56][57][注釈 8]。日本近海産のものではほかに、全長15 cm 程度のマメダコ 'Octopus' parvus が知られ[57]、かつては日本最小とされたこともある[1][50][注釈 9]。同様に、海外では全長11.5 cm のカリビアン・ドワーフ・オクトパス Paroctopus mercatoris が最小の種とされることがある[59]。
腕
[編集]複数の吸盤がついた8本の腕(うで、arm)を特徴とする[61][62]。ほかの軟体動物における「足」に相当すると考えられているが[61]、物を掴む機能などにより、特に頭足類における足は学術的には「腕」と呼ばれる[63][44][64]。イカでは普通、タコの持つ8本の腕に加えて触腕と呼ばれる2本の腕を持つため、合わせて10本の腕を持つ[61][63][注釈 10]。8本の腕は左右相称で、背側中央から外に向かって順に左右第1腕から第4腕までが数えられる[62][61][63]。ただし、雄はある決まった腕の一部が変形し、交接腕になる[62](「#生殖」節も参照)。
腕の間には傘膜(腕間膜)と呼ばれる広い膜が発達する[61]。捕食の際には、この傘膜で獲物を包み、捕らえる[66]。深海性のジュウモンジダコ属などの有触毛亜目では、傘膜を翻して腕の口側を外に向け、外套膜を覆うような行動が知られている[67]。
吸盤
[編集]吸盤(きゅうばん、sucker)の構造はイカ類とは異なり、柄や角質環を欠く[68][69][70]。これがイカとタコを区別する、もっとも重要で確実な違いである[68][71][注釈 11]。
タコの吸盤は非常に多機能であり、移動や体の固定、餌の捕獲などに用いられる[68]。タコの吸盤の付着面には筋肉が放射状と同心円状に配置しており、放射状筋の上にさらに微小な吸盤が並ぶ[63]。タコの吸盤は外側の外環部(がいかんぶ、infundibulum)と呼ばれる付着部と内側の半球状のくぼみである内環部(ないかんぶ、acetabulum)の2領域からなる[68]。内環部が他物に密着した時の陰圧により吸着を行う[68]。
この構造の違いは、生態を反映していると考えられている[69]。遊泳性の餌を捕らえ、暴れる餌を抑え込む必要があるイカに対し、タコは待ち伏せ型の狩猟を行うため、角質環のような爪が不要であると考えられる[73][70]。また、タコは底生であるため、海底を移動する際に引っかかることを避ける必要があり、角質環は邪魔になると考えられている[73]。
また、吸盤には感覚細胞(受容体細胞)が分布し、全部の腕を合わせると2億4000万個になる[63][74]。物の形状が識別できる触覚(機械刺激受容)と化学受容器による味覚を持つ[63][74]。
吸盤列は1列のものと2列のものが知られる[75][76]。ジャコウダコ属 Eledone や ナンキョクイチレツダコ属 Pareledone といったイチレツダコ類は吸盤列が1列である[77]。メンダコ科、ジュウモンジダコ科、ヒゲダコ科からなる有触毛亜目では、吸盤列が1列であるが、代わりに腕に触毛(しょくもう、cirrus)が生えている[75][78]。白亜紀のムカシダコ Palaeoctopus newboldii も触毛を持ち、吸盤列が1列である[79]。
タコの吸盤は切断されたものであっても、自分の体には吸着することはなく、この原理については判明していない。ただしタコの皮膚を取り除き、同じタコの腕を切断して近づけると、その腕の吸盤は皮膚を除去した部分に吸着する。また皮膚を貼り付けた物体に、切断されたタコの腕を近づけると、その部分にはくっつかず、皮膚のない場所にはくっつくという現象が確認できることから、皮膚に何らかの自己認識機構が存在するという説がある[80]。吸盤の表面は古くなると剥がれて更新される[81]。古い吸盤表面を剥がすために激しく腕をくねらせて互いにこすり合わせることがある。
鰭
[編集]タコ類の多く(無触毛亜目)は、イカが持つような鰭(肉鰭、fin[72])を欠く[40]。有触毛亜目(有鰭亜目)に属するヒゲダコ科やメンダコ科(メンダコなど)には鰭がある[78][82]。この鰭は俗に「ミミ(耳)」と呼ばれる[78]。鰭は筋肉からなり、水中で機動力を生み出す器官である[82]。
漏斗
[編集]腹側には漏斗と呼ばれるチューブ状の構造がある[68]。これは漫画では口のように描かれるが、実際の口は上述するように腕の付け根に存在する[48]。漏斗から外套腔内の海水を強く噴き出して、ジェット推進により移動する[68][48]。漏斗を自在に動かし、その向きを変えることで泳ぐ方向を調節する[68]。また、漏斗からは、雄は精包を放出し、雌は産卵の際、卵を放出する[48]。墨や排泄物も漏斗を通じて放出される[48]。
漏斗は発生の過程では左右2葉に開いた構図をしており、それが癒合して形成される[68]。
漏斗の左右には漏斗軟骨器と呼ばれる構造があり、外套膜と頸部を固定している[68]。
眼
[編集]タコの眼は解剖学的に脊椎動物のものに似たレンズ眼であり、非常に発達している[83][84][85]。これは発生学的には異なるもので[83]、相似である[84]。発生の際、眼胞が発達して完全に閉じ、前方にレンズを生じる[86]。レンズを連ねる虹彩を持ち[86]、そのため様々な表情を示す[85]。後方には硝子体を持ち、これらは角膜によって包まれる[86]。ほかの軟体動物と異なり、眼には動眼筋が付着する[84]。そのため眼を筋肉で動かすことができる[84]。中央部はコウイカ目、閉眼類と同様に完全に閉じる[87][注釈 12]。その外側には1枚の眼瞼ができる[87]。
頭足類のレンズは外胚葉に由来し、視神経が網膜の外側から伸びるため、盲点が存在しない[84]。眼のレンズは前後に仕切られ[84]、2枚が貼り合わさった構造となっている[85]。ヒトの視細胞は光の入射方向とは反対を向き、神経節細胞などのいくつかの細胞層を通って光を受容するが、タコの視細胞は頭部が光の入射方向を向いている[88]。また、脊椎動物の眼とは違い、正立像が得られる[85]。
視細胞には桿体や錐体のような区別はなく、単一の種類の細胞である[88]。その視物質はロドプシンのみであり、そのため色覚を欠くとされる[89]。視覚情報を利用した実験などから、コントラストは見分けることができると考えられる[89]。タコの視細胞の分光感度は、マダコ[注釈 13]で475 nm(ナノメートル)、イイダコで477 nm、ジャコウダコで470 nm であることが分かっており、何れも青色に相当する[89]。これはタコが底生であるため、海中で光が減衰し、海底では短波長の青や紫が届くことと整合的である[89]。視細胞の頭部には偏光の受容に関与する感桿という微絨毛が整列した構造を持つ[88]。
ヒゲダコ属 Cirrothauma の眼は単純なカップ状で、角膜と瞳孔は持つが、虹彩とレンズを欠く[84]。ボルケーノ・オクトパス Vulcanoctopus hydrothermalis の眼は皮膚下に埋没し、視覚機能をほとんど欠く[91]。スカシダコ Vitreledonella richardi の眼球は楕円形の凸レンズで、体の横方向に伸びる長い柄を持つ[92]。クラゲダコ Amphitretus pelagicus の眼は球面レンズを持ち、赤褐色の眼が望遠鏡のように背面に隣り合って並ぶ[93]。
内部形態
[編集]消化器官
[編集]消化器官は消化管とそれに付属する腺組織からなる[94]。タコの消化管は口-食道-胃-腸-肛門のように連続し[94]、背腹方向に折れ曲がったU字状の構造で、墨汁嚢が付属する[95]。
口
[編集]口は腕に囲まれた内側の付け根に存在する[46][48]。口にはよく発達した口球(こうきゅう、buccal bulb)を持ち、その中に上下1対の嘴状の顎板と歯舌を具える[96][95][48]。
顎板(がくばん、jaw plate)は嘴(くちばし、beak)とも呼ばれ[56]、俗にカラストンビと呼ばれる[95][48][97]。背腹が対になっており、構造はほかの軟体動物が持つものとは異なっている[95]。背側の顎板を上顎板、腹側の顎板を下顎板と区別し、それぞれカラスとトンビと呼び分けられる[97]。下顎板が上顎板より突出している[98]。顎板の先端は鋭く、餌を咬み切るために用いられる[95][98]。
歯舌(しぜつ、radula)は餌を引きちぎり、食物を運搬するために用いられる[99]。タコの歯舌はイカやアンモナイトと同様に、1本の中歯(central tooth)に加え2対の側歯(laterl tooth)、1対の縁歯(marginal tooth)と1対の縁板[注釈 14]の9本の小歯を持つ[95][101]。タコの歯舌は三叉状、五叉状のものもみられ、特にフクロダコ科では櫛状の歯尖(しせん、cusp)を持つ[101]。
消化管
[編集]食道(oesophagus)は脳軟骨と脳を貫通する単純な管状の構造である[99][注釈 16]。食道中央部は膨らみ、嗉嚢(そのう、 crop, proventriculus)となる[99][102][103]。胃は単純だが大きく発達し、2巻きの螺旋状の盲嚢(胃盲嚢、spiral caerum, gastric diverticulum)が付属する[99][102]。腸は単純で短く、胃の後部から外套腔の開口部に向けてまっすぐ伸びる[104]。
中腸腺(midgut gland)は1対で部分的に癒合し、卵形の一塊となっている[102]。中腸腺はよく発達し、肝臓域と膵臓域が分化する[96]。タコの膵臓は中腸腺(肝臓)に埋没し、切り離せない構造となっている[102][105]。中腸腺は1対の輸管(肝膵管、hepatic duct, hepatopancreatic duct)を持ち、合一して胃に開口する[102][105]。
唾液腺
[編集]唾液腺は2種類あり、口球の側方に1対の前唾液腺(前唾腺、anterior salivary gland)、口球の後方に毒が含まれる後唾液腺(後唾腺、posterior salivary gland、毒腺)を持つ[99][101]。この後唾液腺から分泌されるセファロトキシンを用いて餌を麻痺させる[99][106][107][108]。ほぼ全てのタコは毒を持っているとされ[109]、マダコ、サメハダテナガダコ Callistoctopus luteus やワモンダコからセファロトキシンが検出されている[110][108]。この毒は人間に対しても患部に麻痺症状や炎症を引き起こすが[108][111]、命に別状はない程度である[109]。
ヒョウモンダコ属のタコは例外で、分泌腺内に住むバクテリアに由来するテトロドトキシンを持っており、人間でも噛まれると命を落とすことがある[76][112][113]。毒の産生は分泌腺内に共生するバクテリアが行っている[114]。孵化前の幼生もバクテリアによって雌から毒が受け渡されるため、毒を持っている[108]。これは解毒剤は見つかっていない[115][114]。
また、タコは口球の腹側に筋肉質の唾液乳頭が突出し、その下に下顎腺がある[99]。唾液乳頭は動かすことができ、二次的な歯舌として機能し、貝殻に穿孔して貝類を捕食する[99][109](#食性も参照)。
墨汁腺
[編集]タコは危険を感じると漏斗を通じて墨を吐きだすが、これは直腸に付属する墨汁腺から分泌される[96][104]。墨汁は墨汁嚢に蓄えられ、墨汁管と肛門を通って漏斗から体外へ放出される[96][104]。深海性のホッキョクワタゾコダコ Bathypolypus arcticus などでは墨汁嚢を欠く[116]。
神経系
[編集]軟体動物の神経系の中心は脳神経節、側神経節、足神経節が食道を囲むように位置してできた食道神経環である[117]。とくに頭足類では食道神経環が発達し、内臓神経節とも癒合して脳を形成する[118]。脳は頭蓋軟骨(脳軟骨)により取り囲まれており、白く硬い塊を形成する[118]。この頭蓋軟骨は脳を保護するためのものであり[46]、中胚葉組織から発達する[87]。
脳は食道上脳塊と食道下脳塊の2つからなり、それぞれが側方で縦連合によって連結される[118]。また脳は、24個の脳葉と呼ばれる瘤状の領域から構成されており、更に細分すると36–37個が数えられる[118]。タコ類の脳葉には名前が付けられており、頭頂葉、上位前額葉、下位前額葉、上位口球葉、視柄下葉、内臓葉、外套葉、後部色素胞葉、前部色素胞葉などが区別される[118]。眼の基部にある脳葉は視葉で、眼の発達と関連し、脳葉中で最大である[118][119]。視葉以外の脳葉は中央部分に集まっている[119]。また、学習能力は垂直葉とその周辺の脳葉が担っている[120]。
また、脳以外にも小規模な神経節が9つ存在する[121]。星状神経節は鰓の基部付近から外套膜に神経を放射状に伸ばす神経節であり、頭足類にのみ知られる[121][122]。
平衡器の近くに生じた足神経節からは、腕神経節が前方の先から分岐して生じ、後部からは漏斗神経節が対をなして形成される[87]。腕神経節から伸びる腕神経(神経束)はそれぞれの腕の中央を貫通する[123]。腕には脳の2倍以上のニューロンが分布し[56]、それぞれの腕を伸ばす動作は脳による指令ではなく、腕そのものの神経によりコントロールされている[123]。この神経系の分散が、タコの柔軟性や動きの調整能力、高い適応力を生み出していると考えられている[56]。
筋系
[編集]その柔軟な体のほとんどは、他の多くの動物と同様に、筋肉組織が占めている[124][125]。タコの主要な筋肉はイカに比べて多く、頭部牽引筋、漏斗牽引筋、外套収縮筋、中央外套収縮筋を持つ[126]。漏斗から噴き出される水によるジェット推進は外套膜の筋肉の運動が大きな影響を与えており[126]。放射状筋が弛緩して環状筋が収縮することにより体の直径が小さくなって水が噴出され、環状筋が弛緩して放射状筋が収縮すると外套腔へ水が取り入れられる[126]。
またタコの腕は異なった向きに配向する3–4層の筋肉組織からなり、収縮と弛緩を組み合わせて向きを自在に変形する[127][61]。
循環系
[編集]循環系はよく発達してほぼ閉鎖血管系となる[96][128][129]。それに対し、頭足類以外の軟体動物は開放血管系である[129]。収縮して血流を送る器官は心臓だけでなく、1対の鰓心臓を持つ[96][128]。そのため「3つの心臓を持つ」と言われる[56]。心房の数は1対で、心室が発達し、内部の弁により隔てられる[128]。
血管は外皮・中皮・内皮の3層構造である[128]。頭部と外套膜に血液を送る前大動脈、内臓の後方に血液を送る後大動脈、前側から腎嚢に伸びる腎動脈、心房の前側から心臓を横切る形で生殖器官に向かう動脈を持つ[128]。血圧は比較的高く、活動時は10 kPa (75 mmHg) 以上となる[129]。
血液中にはヘモシアニンという呼吸色素が含まれており、そのため血液は青く見える。ヘモシアニンは鰓の付着膜と入鰓血管の間にある鰓腺で合成される[130]。ヘモシアニンはヘモグロビンに比べ酸素運搬能力に劣るため、長距離を高速で移動し続けることができない[131]。さらに、海水の pH 濃度にも影響を受けやすく、海水が酸性化すると酸素運搬能力が低下する[132]。
鰓
[編集]鰓はほかの軟体動物と同様に櫛鰓で、1つの鰓は1対の鰓軸から鰓葉が交互に突出した構造をしている[133]。鰓は1対で[134][87]、それゆえ鞘形類は二鰓類 Dibranchia とも呼ばれた[135]。背側に入鰓血管、腹側に出鰓血管が走るため、鰓葉内部では腹から背側に向かって血流が流れる[134]。鰓は付着膜(gill ligament, dorsal membrane)によって外套膜から吊り下げられ[134]、外套腔にある[87]。
発生においては初め、外套膜原基の隆起の前方に1対の乳頭状突起として生じるが、外套膜の発達とともに外套腔内に入って前後に伸び、櫛鰓となる[87]。
排出器官
[編集]タコは1対の腎嚢(じんのう、renal sac)と呼ばれる袋状の排出器官を持ち、その内部にある大静脈が膨出してできた腎嚢付属体(腎臓)が腎嚢内に血中の老廃物を排出する[136]。原尿は鰓心臓後端に付属する囲心嚢腺で濾過され、腎囲心嚢連絡管を通じ、腎嚢から体外に排出する[136]。外套腔内に開いた腎嚢の出口は腎門(腎口[87]、尿乳頭[60]、urinary papilla)と呼ばれる[137][60]。
腎嚢内には、ニハイチュウが寄生している[138]。これは1787年にイタリアの博物学者フィリッポ・カヴォリーニにより発見された[139][140]。ニハイチュウは体皮細胞の表面にある繊毛の繊毛運動により、尿中を遊泳したり腎嚢内の腔所を移動する[138]。ニハイチュウ類の寄生率は、温帯海域の砂泥に生息するタコで高く、成熟したマダコやイイダコではほぼすべての個体に寄生している[141][142]。ニハイチュウは宿主特異性を持ち、ほぼ全ての場合において、異なる種の宿主には異なる種のニハイチュウが寄生している[142]。
貝殻
[編集]また、頭足類は貝類であり、内在性の貝殻を持つが、タコ類では完全に退化するか、軟骨質(寒天質)になる[75][96][79]。軟骨質の貝殻はスタイレット[143](棒状軟骨、stylet[98])と呼ばれ、棒状かU字状、H字状をしている[144]。この貝殻の喪失は、体色変化による隠蔽、墨の利用、ジェット推進による遊泳、強い腕や顎の獲得などと関連していると考えられている[145]。また、脳の発達による学習や記憶などもこの貝殻の喪失の影響があると推測されている[146]。大きな鰭を遊泳に利用するヒゲダコ科ではスタイレットがこれを支えている[147]。
タコでもアオイガイ Argonauta argo やタコブネ A. hians などのアオイガイ科は螺旋状の外在性で石灰質の貝殻をもつが、これは雌の第1腕から分泌されたものであり、オウムガイなどの貝殻とは直接的な起源が異なる[96][144]。また、アオイガイ属の貝殻は内部に隔壁を持たない[144]。この貝殻は卵を保持する機能を持ち、雄は形成しない[144]。
生態と行動
[編集]生態と生息域 | 分類群(科) | |
---|---|---|
浮遊性 | 表層遊泳性 | ムラサキダコ科 |
アミダコ科 | ||
アオイガイ科 | ||
中層浮遊性 | フクロダコ科 | |
クラゲダコ科 | ||
スカシダコ科 | ||
カンテンダコ科 | ||
深海・近底層浮遊性 | ヒゲダコ科 | |
Stauroteuthidae | ||
メンダコ科 | ||
Cirroctopodidae | ||
底生性 | 浅海性 | マダコ科 |
ジャコウダコ科 | ||
ミズダコ科(ミズダコ属) | ||
深海性 | ミズダコ科(その他) | |
Megaleledonidae | ||
Bathypolypodidae |
ほかの軟体動物は間隙性や付着性など海底面に接して生活するものが多いのに対し[149][150]、タコはイカとともに海面直下から深海域までの3次元的な生息域を持っている[150]。特にタコ類は潮間帯から水深6000 m 以深まで幅広く分布する[76]。最大水深は8,100 m とも言われる[151]。しかし淡水生のものは知られておらず[150]、狭鹹度性で塩分は30‰以上を求める[152]。そのため、「蛸の真水嫌い」や「梅雨時に雨の多い年は蛸、烏賊が少ない」と言われる[153]。また、夜行性のものが多いとされる[154][155]。
マダコ Octopus sinensis などタコ類の大半は底生で、腕が発達し匍匐生活を送る[75][76][156]。底生のものでも、好む底質などの生息環境は種によって異なる[151]。岩礁にあるクレバスや転石の間隙には底生のタコ類が生育し[157]、マダコなどが巣穴として利用する[151]。潮間帯にできるタイドプールには小型のタコ類がみられ、昼間はクレバスに身を隠している[150]。カジメの根元にはマメダコなどの小形のタコ類が生息する[150]。イイダコ Amphioctopus fangsiao やミミックオクトパス Thaumoctopus mimicus などでは内湾寄りの砂泥地に落ちている貝殻や甲殻類が形成する穴などを棲み家として生息する[157][151]。サメハダテナガダコ Callistoctopus luteus では砂底中に埋没して隠れている[151]。珊瑚礁棲のワモンダコ 'Octopus' cyanea などは、その複雑な地形を利用し身を隠している[151]。深海性の底生のタコは巣穴などを利用せずに、泥質の海底を匍匐していると考えられる[151]。
その一方で漂泳性の種も多く知られている[149]。ムラサキダコ Tremoctopus violaceus(ムラサキダコ科)は表中層を浮遊する[76][149]。アミダコ科も浮遊性で、雄はサルパの皮殻内に入る[75][149]。クラゲダコ Amphitretus pelagicus(クラゲダコ科)、カンテンダコ Haliphron atlanticus(カンテンダコ科)、ナツメダコ Japetella diaphana(フクロダコ科)などは中層を浮遊する[148][158]。クラゲダコやスカシダコ Vitreledonella richardi が透明であるのは、隠れる場所が少ない海の水柱の中層で、影を消したりクラゲへのカモフラージュによって捕食者に見つかりにくくする効果があると考えられている[159]。アオイガイ科も浮遊生活を送り、雌は卵を保護するための貝殻を作る[75]。
巣と移動
[編集]多くのタコ類で鉛直方向または水平方向の移動を行うことが知られている[152]。ただし、温暖な地域のものは定着性が強いと言われる[160]。
マダコ類の多くは海底に巣穴(デン、den、蛸穴[161])を持つ[162][163][164]。マダコやワモンダコは岩の隙間や礫の下に巣穴を持つ[162]。
マダコは単独で行動し、海底の巣穴を塒として、夜になると索餌のために海底を這って動き回り、帰巣する[163][164]。この際に学習や記憶を行っていると考えられている[163]。バミューダのマダコ[注釈 18]では、巣穴から出て2 m 以上の移動を10分以上かけて行い、往復路で違う道を用いて帰巣した[165][166]。これは池田譲によると、全く同じ道を戻るトレイル・フォローではなく海底の岩などを道標として、景観を見て帰巣しているのだと考えられている[167][168]。索餌には1日のうちの5–6時間を費やしており、残りの時間は巣穴の中で睡眠またはハウスキーピングを行っている[155]。
マダコ漁業に用いられる蛸壺はこの巣穴に隠れる習性を利用したものである[164]。自分の巣穴から遠く離れた場所で餌を捕まえた場合、運搬の途中で隠れ場所を見つけるとそこに持ち込んで食べる[164]。自分の巣穴まで持ち帰るにはコストがかかり、その低減のために行う行動であるが、巣穴からどれだけ離れているかという判断も行ったうえで、蛸壺を利用することが知られている[164]。またタコは食べ残しやゴミを取り除き、巣穴の外に運ぶことが知られている[169][170]。そのため、蛸壺の内部は綺麗でないと入らないとされる[164][171][172]。
小形のタコはサザエやアカガイ、ヒメスダレガイなどの貝殻を用いて巣穴とする[162]。スナダコ Amphioctopus kagoshimensis は様々なものを巣穴といて利用し、時には人工物をも用いる[162]。イイダコでも、二枚貝の貝殻を2つ合わせて身を隠し、その中で抱卵する[173][174][175]。メジロダコ A. marginatus はサツマアカガイなどの二枚貝を腕に挟んで海底を移動し、「貝持ち行動」として知られている[176](#道具の使用も参照)。
インドネシアのウデナガカクレダコ Abdopus aculeatus では、「二足歩行 bipedal walking」をとることがクリスティン・ハッファードにより報告されている[177][178][179]。メジロダコも二足歩行を行う事が知られている[180]。タコの二足歩行では、胴体をボール状に丸くし、腕のうち2本を用いて交互に動かし、移動する[177]。これは防衛行動の一種や[181]、体力を温存して行動するためだと考えられている[56]。
また、種によってはタコも渡りを行うことが知られている[182]。津軽海峡のミズダコで渡りが観察されており、海底を移動し、水深200 m に達する津軽海峡を越えて北海道と青森県を行き来する個体が報告されている[183]。日本のマダコも渡りを行い、渡り群と地着き群が存在することが知られている[184][185]。特に常磐地方のマダコで渡りが知られ、多数のタコが群れを成して南北移動を行う[186][152]。イギリス海峡のチチュウカイマダコ Octopus vulgaris も冬場の低水温を嫌って南方に回遊するといわれる[160]。
平衡感覚と聴覚
[編集]タコは軟骨でできた平衡胞と呼ばれる器官を左右1対持ち、中に炭酸カルシウムでできた平衡石を具える[187]。平衡胞内壁表面に生える微絨毛に平衡石が触れることで姿勢を認識する[187]。移動の際は加速度も検知することができる[188]。
また、平衡胞内の多数の毛を使って狭い範囲の音(振動)を感知している[189]。外洋に生息するイカに比べて聴力は弱く、底生のマダコでは400–1,000 Hz(ヘルツ)の音しか知覚できない[189]。これは水深1–2 m 以深では高周波の音は伝わりにくく、凹凸の多い海底では障害物に吸収され知覚できる可能性が低いためとも考えられる[189]。
平衡胞を外科的に破壊すると、平衡感覚が失われる[188]。タコの眼の向きは体の向きにかかわらず常に水平方向を向くようになっているが、平衡胞を破壊するとタコの向きに依存して眼の向きが変化してしまう[190]。平衡胞を破壊したタコでも「回り道」の認識には大きな影響がないが、図形の向きの認識には支障を来す[188]。また、平衡胞は50–400 Hz の低周波の音によっても損傷を受けることが分かっている[191]。
食物網
[編集]食性
[編集]鞘形類はイカもタコも大型肉食性の捕食者で、魚や甲殻類を食べる[192][193][194]。特に底生のタコはカニや二枚貝を好んで捕食する[193]。タコはカニにとっての天敵であり、カニの一種 Carcinus maenas では、歩脚を木製ピンセットをつまんでも起こらないが、タコの腕を吸いつかせると直ちに自切反射が起こることが知られている[195]。イギリスではタコの急激な増加によりエビ漁業が脅かされる現象が起こり、オクトパス・プレイグ(octopus plague、「タコによるペスト」)と呼ばれた[155][196]。マダコやイイダコでは貝類を食べる際、まずは腕の力でこじ開けを行い、それで開けられなかった場合、歯舌で貝殻に穿孔して唾液腺の毒(チラミン[155])を注入し、餌を麻痺させてから捕食する[197][198]。海底に落ちている魚の死骸を食べることもあり[199]、イチレツダコ Eledone cirrhosa は生きた甲殻類だけでなく死んだ魚を食べる[194]。
吸盤には化学受容細胞が分布し、触覚により餌を探ることができる[200]。テナガダコ Callistoctopus minor は海底の泥中に埋没して、第1腕を水中に伸ばして餌を捕獲する[200]。ホワイト・ブイ・オクトパスと通称される未記載種[注釈 19]は、他の生物の巣穴に腕を差し込んで捕食する[202]。
深海棲のホッキョクワタゾコダコ Bathypolypus arcticus では、胃内容物から大量の有殻翼足類と少量の甲殻類が見つかっている[194]。遊泳性のアオイガイ属 Argonauta は小型甲殻類や魚類を捕食する[194]。中でもチヂミタコブネ Argonauta boettgeri は浮遊性翼足類のカメガイを捕食することが観察されている[194]。南極海に棲むオオイチレツダコ Megaleledone setebos (≡Graneledone setebos =Megaleledone senoi) は胃内容物からは、由来不明の固形内容物のほかクモヒトデの骨格も見つかっており、別の記録では例外的に大量の海藻が占めていた[194]。'Octopus' filamentosus では干潮時に半海洋性のウシオグモ類 Desis martensi を捕食しているのを観察されたこともある[194]。漂泳性で歯舌が消失しているヒゲダコ科は微小物食性となっている[194]。
漂泳性のムラサキダコは、若齢時に表層を漂う猛毒のカツオノエボシを好んで捕食し、その刺胞を含む触手を第1腕から第2腕の吸盤に付着させる盗刺胞を行い、武器として利用する[203][204]。この刺胞は天敵からの防御や捕食の際に用いられる[203][204]。
ワモンダコ 'Octopus' cyanea は、バラハタ Variola louti などの魚類と協力して狩りを行い、群れのリーダーとしての役割を担っていることが知られている[205]。バラハタは30 m 先の獲物を見つけることができ、ワモンダコに微妙な頭の揺れで合図を送る[205]。それを見たワモンダコは岩の隙間に隠れる獲物を追い出して捕らえ、バラハタと分け合う[205]。その際アカハタ Epinephelus fasciatus などの狩りに協力しない他種の魚が餌の横取りを狙うことがあり、腕を鞭のようにしならせた「タコパンチ」によりそれを追い払う[205][206][207]。
共食いと自食
[編集]鞘形類では共食い(カニバリズム)も一般に観察され[194]、特に珍しいことではないとされる[208]。そのため、同類のものが互いに食い合うことを喩えて「蛸の共食い」という[209][161][注釈 20][212]。明石のマダコでは胃内容物の6.0% が同種である[155]。ミズダコの胃内容物中には一定の割合で同種と考えられるタコの断片が見つかり[213]、シアトル水族館の水槽などでも交接後に雌が雄を捕食した例が観察されている[214]。ワモンダコでも、野生下で雌が交接後の雄に襲い掛かり、捕食することが観察されている[214]。
チチュウカイマダコやマダコ、カリフォルニアツースポットダコ Octopus bimaculoides では自分の腕を食べる行動(自己共食い、セルフカニバリズム)が観察されている[112][215][208]。かつては空腹の際に自分の腕を食べるという俗信があり、「タコは身を食う」や「タコの手食い」という表現も生まれた[216]。しかし瀧巌の観察によると、アサリなどの餌生物を与えていても起こるため飢餓ではないことが分かっている[112]。この行動は何らかの病原体によって引き起こされる感染性の致死的疾患であると考えられている[217]。腕を食べ始めたタコは数日以内に死亡する[112]。消化管内には腸内で消化されておらず、小肉片となって腸内を充填してしまう[112]。この行動の多くはストレスによるものではないと考えられることもある一方[217]、精神の異常によるものだと考えられることもある[112][196][215]。例えば、豊かな環境の水槽とごく普通の水槽にカリフォルニアツースポットダコを入れて行動を比較した研究では、後者でのみ自食行動が観察された[215]。またこの種では、産卵後の雌で自分の腕の先端を食べる行動も観察されている[208]。こういった行動をとる雌では、視柄腺からコレステロール前駆体である7-デヒドロコレステロール(7-DHC)が分泌されていることが分かっている[208][注釈 21]。
被食者として
[編集]食物網の中でのタコは捕食者であると同時に被食者でもあり、海洋生態系中で非常に重要な餌生物となっている[218]。人間にとってタコは食品として利用されているが、海洋の捕食者にとっても優れた餌となる[218]。硬い殻や骨を持たず、ほぼすべて消化可能であり、効率が良い[218]。そのため、カマス、ハタ、フエダイ、イットウダイ、アイナメ、カサゴ、サメといった魚類だけでなく、ラッコ、アザラシ、シャチといった海棲哺乳類、鳥類もタコの天敵である[219]。ただしクジラやマグロなどの重要な餌生物であるイカに比べると、タコは底生で隠れ家を持つものが多く、被食されにくい[218]。
タコの天敵として最もよく知られているのはウツボである[218][220]。ウツボは大型の底生魚類であり、クレバスの奥にも潜り込めるため、タコの捕食者になりやすい[218]。また、鱗がなく皮膚が強靭で硬く、歯も鋭いためマダコと格闘し腕などを食いちぎる様子がよく観察されている[220]。マダコはウツボに襲われると、腕を翻して丸まり、防御の姿勢を取る[221]。そしてその後隙を見て逃走を図るが、腕の先を咬まれ腕を失うこともある[221]。アナゴなどほかのウナギ類もタコの天敵となる[222]。
ほかの魚種からも報告があり、ホッキョクワタゾコダコ Bathypolypus arcticus がタイセイヨウオヒョウ Hippoglossus hippoglossus の胃内容物から見つかっている[220]。またイギリスでは、イチレツダコ Eledone cirrhosa がタラ類やアンコウ類に捕食されていることが知られているほか、水槽で飼育されている卵はカニに捕食されている[220]。孵化したばかりの稚仔(擬幼生)はプランクトンとして、ヒゲクジラやオニイトマキエイ、ジンベエザメなどの濾過摂食者に捕食される[223]。
大型のタコや有触毛亜目のタコはサメやアザラシ、鯨類に捕食される[220][147][224]。そのため、青森県下北半島では「海驢は蛸の群れについて来る」という諺が伝わる[153]。似た言い伝えとして、島根半島では「アオイガイが来るとマグロが獲れる」と伝わる[225]。しかしこの捕食-被食関係も一方的なものではなく、稀にではあるが、大型のタコが小型のサメを捕食することがある。またシアトル水族館では、ミズダコが同じ水槽で飼われていたアブラツノザメを攻撃し、死亡させた例もある[219][226][227][228][106]。
深海棲の有触毛亜目では天敵となる捕食者の記録は少ないが、これは食べられていないというわけではなく、顎板から種を見分けるのが難しいためであると考えられている[147]。漂泳性の種も重要な餌生物となっていることが知られており、ナツメダコ Japetella diaphana は寒天質にも拘らず、マグロ類やミズウオの胃の内容物から頻繁に見つかる[229]。
ミズダコのような最大のタコでも、大抵は臆病でダイバーを見ると墨を吐いて逃げるが、その力は強く、もし絡まれると危険な目に遭う可能性もある[230]。特に、年老いたタコでは攻撃的になることが知られ、ブリティッシュコロンビア州のパシフィック・アンダーシー・ガーデンズで飼われていたミズダコが死ぬ数週間前にレギュレータに腕を絡ませ、ダイバーの呼吸を阻害した事例も知られている[231]。
腕の自切と再生
[編集]頭足類の腕は捕食や移動、自切、交接や競争に加え、攻撃や共食いにより傷つくことがあり、再生能力を持つ[232][233]。体が損傷すると、それに応答して再生を始める[232]。
カクレダコ属 Abdopus は捕食者に襲われると腕を自切し、デコイとして利用してその隙に逃げることが知られている[234]。テギレダコ Callistoctopus mutilans は捕らえようとすると腕を自切して逃げることから、その和名や学名が名付けられた[50][注釈 22]。
傷ついた腕が再生する際、2叉または3叉に分枝し異常な腕となることがある[232]。鳥羽水族館には三重県沖から漁獲された多腕となったマダコが度々持ち込まれ、うち85本のものは1955年の開館直後から展示されている[235]。
墨による防衛
[編集]危険を感じると、漏斗を通じて墨汁(墨)を吐き出す[104]。
タコの墨は、一般的に食用に供されるイカの墨とほぼ同じ成分であり、タンパク質、セピアメラニン、多糖類、脂質を含む[236]。しかし、タコの墨はイカのものに比べ、粘液物質であるムコ多糖や脂質が少ないため、さらさらとしている[237][236]。そのためタコは墨を煙幕として拡散させ敵から逃げる[104][237][236][注釈 23]。遊泳性のイカに比べ、底生のタコは隠れ場所に困らないため、このような戦略を用いていると考えられる[237]。
また、この墨にはチロシナーゼが含まれ、敵の眼や受容器を刺激する機能もある[219][238]。チロシナーゼはオキシトシンやバソプレシンを阻害する酵素である[238]。また魚の鰓などに絡まってダメージを与える働きもあると考えられている[204]。人間がタコを搬送中に墨を吐くと、自分の墨が鰓に絡まって死んでしまうこともよく知られている[239]。
タコ墨が料理にあまり用いられないのはイカ墨と比べて絡まりにくいためであり[240]、料理に不向きとされることもあるが[237]、一方成分はほぼ同じであることから美味ともされる[236]。墨汁嚢が肝臓(中腸腺)中に埋没するため取り出しにくく、さらに1匹から採れる量もごく少量であることが、タコ墨が料理にあまり用いられない真の理由だとされる[241][236]。
漂泳性のムラサキダコの墨は粘り気が強く、イカのものに類似している[242]。
擬態とコミュニケーション
[編集]頭足類は聴覚が発達しないことから、視覚情報を重要なコミュニケーションの方法として用いている[243]。
タコの体表には体表の色彩を変化させる色素胞器官を持つ[68][243][220]。これは黄、橙、赤、茶、黒と様々に色を変化させる色素細胞と放射状の筋肉、神経などのいくつかの異なる細胞からなる複合体である[68][220]。神経によって直接支配されるため、内分泌系に制御される魚類の色素胞とは異なり機敏に体色を変化させることができる[244][243]。単に色だけでなく、反射性や質感、明るさを周囲の環境に合わせて変化させることができる[245]。また、眼にある視物質はロドプシンのみであるため色覚を欠くとされるが[89]、皮膚にも視物質であるオプシンを持つことがわかっており[246][247]、色素胞を透過させカラーフィルターとして用いることで色の判別に役立てていると推測する研究者もいる[248]。この色素胞は、擬態(カモフラージュ)と意思疎通(コミュニケーション)に機能すると考えられている[243]。
また色素胞だけでなく虹色素胞 (虹色胞、iridophore) を持つ[249][250]。これは光の干渉による構造色を呈し、様々な色の光や偏光を反射している[251]。虹色素胞は仲間とのコミュニケーションに用いていると推測されている[251]。また色素胞、虹色素胞に加え白色素胞(白色胞、leucophore)も持ち、変化する色素胞の色の下地を作っている[251][250][252]。
また、タコはイカに比べ、表皮層が厚く、肌の凹凸を変えることができ、これも体色の変化に加え背景に溶け込む隠蔽的擬態に寄与する[68][244]。単に背景と同じ模様にするというより、目印を選んで擬態することが明らかになっている[253]。例えば、ヘアリーオクトパスと呼ばれる未記載種は、体表の突起を分枝させて伸ばし、海藻の生えた石に擬態する行動が知られている[244][254][255]。
また、有毒生物などに似せて身を守る標識的擬態を行うものも知られている[244]。ホワイト・ブイ・オクトパスと通称される未記載種はカレイ類に擬態する[202]。ミミックオクトパス Thaumoctopus mimics はウシノシタやミノカサゴ、ウミヘビなどの有毒生物に擬態(ベイツ型擬態)し、動きを似せることが知られる[256][244][257][258][259]。ブンダープス Wunderpus photogenicus は15種以上の生物に擬態することができる[260]。これは捕食者の種類に合わせて何に擬態するか選択を行っていると考えられるため、チンパンジーやカラス科と同様に他者視点を獲得しているとされる[223]。また、多くの種で第1腕を持ち上げ腕の先端を丸めて体全体を漂わせる姿勢を取るフランボワイヤン・ディスプレー (flamboyant display) を行うが、これも標識的擬態であると考えられる[261][262]。
沿岸域に生息する種では、眼状紋(眼紋、ocellate pattern)を威嚇行動に用いる[243][112]。イイダコは会敵した際、外套膜背面に4縦帯、各腕の両側に黒帯、第2腕・第3腕の基部に眼状紋を生じる[220]。同属のヨツメダコ Amphioctopus areolatus も同様の眼状紋を生じ、会敵の際に眼をカモフラージュするのに用いると考えられている[263]。また、横縞(暗色の波形)を体表を流れるようにネオン状に前後に動かす「行雲」と呼ばれる行動を行う種も多く知られ、この行動は警戒行動に用いたり、採餌中の興奮状態に現れる[243][264]。これは動きながら自分の居場所を悟られることなくカニなどの獲物を誘い寄せるためであるといわれる[264]。
認知能力と学習
[編集]タコは脳が発達し、視覚や触覚、遊泳能力などに優れる[118]。また、学習能力さえ持っている[118]。頭足類の神経系と感覚器官は無脊椎動物の中で最も発達し、全体重に対する脳の重量の割合は爬虫類も上回っている[118]。
タコの脳には5億個のニューロンがあり[56]、犬や3歳の子供と同じくらいの知能で[265]、一説には最も賢い無脊椎動物であるとされている[266][267]。
タコは物体の形や大きさ、色の明暗を区別し、学習することができる[268]。ジョン・ザッカリー・ヤング (1963) はチチュウカイマダコ Octopus vulgaris に白い玉に触れた場合に餌という報酬を与えるオペラント条件付けによる学習訓練を行った[269][270]。これにより、タコは白い玉が現れると触るようになる[269]。そのうえで白い玉と赤い玉を提示すると、白い玉を触る行動をとる[271]。大きさが異なる玉も区別することができる[269]。また、図形も区別することができる[272]。正方形を選ぶように訓練されたタコは、菱形と正方形を提示すると正方形を選ぶことができる[272]。これは三角形や十字形でも同様に学習でき、枝分かれや、向きについても見分けることができる[272]。ただし、十字形と十字にさらに線が交差した図形や、円と正方形の区別は苦手とする[272]。また、形状は視覚だけでなく触覚によっても学習することができ、溝を刻んだ物体と滑らかな表面の物体を区別できる[272][168]。重さについては識別できないと考えられている[273]。
また、新規の課題を学習し解決することができる[274]。例えば、密閉されたねじ蓋式のガラス瓶に入った餌を視覚で認識し、瓶の蓋をねじって餌を取ることができる[273]。ほかにも、「回り道」が理解できる実験結果が得られている[275]。チチュウカイマダコに餌のカニ入りガラス瓶がある部屋とカニ無し部屋の二枚のガラスの壁が提示され、通路を進み突き当りを曲がらなければ餌に辿り着けない状況が与えられた[275]。29個体中8個体が初回の施行で餌まで到達できた[275]。さらに、10回正解したタコに対し餌の瓶を煉瓦で遮蔽して課題を与えたところ、ガラス越しに餌を見ながら進み、同様に餌に辿り着くことができた[275]。外科手術により片眼を除去すると誤った部屋に入ることや、振動や臭いの影響をなくした実験を行っても正しい部屋に辿り着けたことから、視覚情報を指標として課題を解決したことが示された[187]。
社会性行動を行うシドニーダコ Octopus tetricus は、同種他個体を識別していると考えられている[276]。飼育されているタコでは、人間の顔の見分けがついていると考えられる経験による実例がいくつか知られ、人間の行動に応じて状況を判断し、行動していると言われる[277]。シアトル水族館で飼われていたミズダコに対し、2週間「良い警官」役が餌を与え、「悪い警官」役が棒でいじめると、それに慣れたタコは前者には近寄ってきて餌をもらえる体勢を取ったのに対し、後者には敵意を示す体色を示したり、水を噴きかける行動を取るようになった[278]
道具の使用
[編集]1998年には、インドネシア近海に棲息するメジロダコ Amphioctopus marginatus が、人間が割って捨てたココナッツの殻を持ち運び、組み合わせて防御に使っていることが確認され、2009年12月、「無脊椎動物の中で道具を使っていることが判明した初めての例」として、二枚貝の貝殻や持ち運び可能な人工物を利用して身を守る様子がジュリアン・フィンらによりイギリスの科学雑誌『カレント・バイオロジー (Current Biology) 』で報告された[279][280][281][282][283](動物の道具使用については別項「文化 (動物)」も参照)。これは「タコの貝持ち行動」と呼ばれている二枚貝を用いて身を守る行動の転用だと考えられている[279][176]。二枚貝を用いる行動自体はイイダコ A. fangsiao において以前から知られていた[279]。
好奇心と遊び
[編集]アリストテレスの『動物誌』には、タコは水の中に下ろした人の手の方に歩み寄ってくるため捕獲しやすく、「利口ではない」と記述されている[284]。この行動はアリストテレスが考えたように愚かであるわけではなく、その好奇心故に水中に現れた人間の手に興味を持ったことによる行動だと考えられている[284]。目新しいものが現れると、腕やその吸盤、口などで「調べる」行動をとる[284]。水中を泳ぐ人についても近づいて絡みつき、「身体検査」を行う[284]。
好奇心には同種内でも個体差が存在する[285]。タムセン・デヴィッドがスミソニアン国立動物園のタコに様々なおもちゃを与えたところ、個体によってその好みが異なることが観察されている[286]。目新しいものにすぐ飽きてしまう個体もいれば、しばらく同じものにずっと興味を示す個体も存在する[287]。
タコは「遊び」をすることが知られている[288]。タコの遊びはジェニファー・メイザーとロナルド・アンダーソンによりミズダコ Enteroctopus dofleini で最初に報告された[288][287][289]。水槽内で飼育されていたミズダコが、自分の近くにある物体を漏斗から海水を噴出して吹き飛ばす行動をとった[288][287]。飛ばされた物体が水槽内の水流によりタコの近くに戻ってくると、タコは再び海水を噴出した[288][287]。この個体は何日も定期的に同じ行動をとっていた[290]。
メイザーとミカエル・クバらにより、さらに高度な遊びがチチュウカイマダコ Octopus vulgaris で観察されている[288][291]。タコにレゴブロックを与えると、それを掴んで移動したり、腕を使って近付けたり遠ざけたりする行動を繰り返す[292]。タコはレゴブロックを餌とは認識せず、捕食や生残に関係なく「遊び」の行動をとる[292]。日本のソデフリダコ類似種「トロピダコ」 'Octopus' aff. laqueus では、番でない2個体が抱き着いたり振り払ったりしてじゃれ合う様子が観察されている[293]。
睡眠
[編集]タコは2つの睡眠段階を持ち、そのうちの1つはレム睡眠に相当することが発見された[294][295][296]。この段階では、タコは体色や筋肉の動きを変えることがあり、「夢」を見ている可能性がある[294][295][296]。これはレム睡眠が認知能力や進化に関係する一般的な特徴である可能性を示唆している[294][295][296]。
社会性
[編集]アオリイカなどのイカが群れで行動し、社会性を持つのに対し[297]、多くのタコは単独で行動する[298][299]。飼育されているマダコでは、等間隔に環状に配置された巣穴の鉢をある個体がずらすと、残りの個体はそれから遠ざかるようにずらし、再び鉢が等間隔に移動する行動が観察されている[300]。しかし、種によっては社会性を示すものも知られている[301]。
マーティン・モイニハンとアラディオ・ロダニーチェは、1982年、オオシマダコ[注釈 24]と呼ばれる未記載種が社会性を持つ例を報告した[301][302]。オオシマダコは30–40匹が集団で生息し、1 m 程度の間隔を空けた巣穴で暮らしている[301]。3つの巣穴を2匹が共同で利用している様子も見られた[301]。
また、シドニーダコでも狭い範囲に多くの個体が巣穴を作っていることが観察され、デイビッド・シールやピーター・ゴドフリー=スミスらにより報告されている[303][304]。巣穴外で他個体に遭遇した場合、互いに威嚇したりする社会的干渉が観察された[303]。ゴドフリー=スミスはこの集団を「オクトポリス (Octopolis)」と表現している[305][169]。この種の別の集団はまた、「オクトランティス (Octlantis)」と呼ばれている[306]。
ソデフリダコ 'Octopus' laqueus はタコ類では珍しく、水槽内で他個体間で身体を密着させる行動を示し、愛着行動の一種であると考えられている[307]。こういった行動は人為的にも引き起こされ、カリフォルニアツースポットダコ Octopus bimaculoides は単独性が強いタコであるが、MDMAを投与すると行動が社会的なものに変化し、腕を伸ばして他個体に触れる行動を示した[308][309]。これはセロトニントランスポーターに MDMA が結合し、過剰に放出されたセロトニンが同種他個体への強い関心を引き起こしたと解釈されている[308]。
発光と燐光
[編集]イカは多くのものが発光し、約半数にあたる210種程度に知られているが、タコでは以下の3種しか知られておらず、何れも漂泳性である[168][310]。中層浮遊性のエビや魚類では(カウンターイルミネーションを行うため[311])発光するものが多いが、タコは底生のものが多いため、発光する種が少ないと考えられる[312]。なお、タコに近縁なコウモリダコでは鰭の後ろに発光器を持つ[313]。
イイジマフクロダコ(フクロダコ) Bolitaena pygmaea の成熟雌の口の周りを過酸化水素で刺激すると発光する[168][314]。イイジマフクロダコの発光器は黄緑色に光り、雄を誘引するためであると考えられている[314]。同じフクロダコ科のナツメダコ Japetella diaphana でも、同じく雌の口の周りがドーナツ状に発光する[314]。このような発光器を持つのはこの2種のみである[314]。
また、ヒカリジュウモンジダコ Stauroteuthis syrtensis では雌雄ともに吸盤が発光するという報告がある[312][315]。刺激により、比較的明るい青緑色(最大波長 470 nm)の発光を行う[316][315]。光は1–2秒おきに点滅したり、5分間発光し続けることが観察されている[315]。雌雄ともに発光するのはタコで唯一である[315]。
発光ではなく燐光を発することは底生のタコ類で知られている[152]。シマダコ Callistoctopus ornatus は刺激を受けると燐光を発することが飼育水槽下で観察された[152]。燐光細胞を持っていると考えられ、生時は淡い虹色の斑紋として現れる[152]。
生活環
[編集]発生
[編集]軟体動物は一般的にトロコフォア幼生やベリジャー幼生を経て成体に成長するが、タコは直接親と似た姿の稚仔になる直達発生を行う[318][86]。タコの稚仔は一時プランクトンとして生活し[318]、このような稚仔を特に擬幼生(ぎようせい、paralarva)という[319][注釈 25]。孵化したてのタコは腕は8本揃っているものの、外套膜長に対する相対的な腕の長さは短い[323]。また、最初は1本の腕当り3個ずつしか吸盤を持たない[324]。成長とともに次第に腕は伸長し、海底に着底する[323]。マダコでは、孵化してから着底するまでに15–30日の期間を要する[323]。
イイダコやテナガダコのように大きな卵を少数産む種では、孵化した稚仔はプランクトンを経ずそのまま匍匐生活に入る[325][326][327]。イイダコの稚仔は孵化直後でも1本の腕当り20個以上の吸盤を持つ[326]。
生殖
[編集]タコは雌雄異体で、体の後部に単一の生殖巣を持つ[328][137][329]。卵は大型であるため、発達した卵巣と精巣ははっきりと区別できる[328]。
輸精管は左側にのみある[328]。輸卵管は無触毛亜目のタコでは対になるが[328]、有触毛亜目のタコでは左側にしかない[330]。輸卵管の末端には輸卵管腺が付属し、卵殻を分泌する[330]。
雄の精子は、精包(精莢)として雌に渡される[330][331]。精包は精包腺からの分泌物で精子が固められて形成され、輸精管末端の精包嚢(精莢嚢[60]、ニーダム嚢[330])に貯蓄される[330][122]。集められた精包は陰茎から発射される[122]。精包は包膜の中に精子の塊が螺旋状に畳まれて入っており、受精時に飛び出す[332]。
また、タコの雄は腕の1本が変形して交接腕(生殖腕、hectocotylus)となり[332][333][334][62]、先端に舌状片と円錐体(交接基、交接翮[60])を持つ[335][334]。舌状片に至るまでには細く狭い溝が通っており、これを精莢溝(精溝[336][60])という[334][335]。この交接腕を雌の外套腔に挿入し、精包を渡す[332][333][331][337]。この行動を交接という[62][331][338]。マダコなどでは右第3腕が交接腕となるが[332][339]、オオメダコ 'Octopus' megalops などでは左第3腕が交接腕となる[340]。テナガダコは交接腕が匙状となることから、「しゃくしだこ」と呼ばれた[33]。
アオイガイ科、アミダコ科、ムラサキダコ科の交接腕は千切れ、雌の外套腔内に残される[332][333][341]。そのため、アオイガイ Argonauta argo の交接腕断片は寄生虫と誤解されて、1825年にステファーノ・デッレ・チアジェにより Trichocephalus acetabularis として記載された[341]。同様にアミダコの雌の体内に残された交接腕はジョルジュ・キュヴィエに寄生虫と誤解されて、1829年、ヘクトコチルス Hectocotylus octopodis として「記載」された[332][333][341]。
たいていのタコの雌は、生涯に1回のみ産卵し、卵が孵化したのちに死んでしまう[342][185]。人為的に卵塊を取り除くと抱卵している雌は死んでしまうことが経験則から知られており[343]、雌が抱卵する期間は「オーバータイム」であるとされる[344]。卵サイズは種によって多様である[345]。卵は卵黄に富み、卵嚢に包まれる[332]。卵殻には柄があって、房状の卵塊をまとめて産み付ける[332][342][345]。多くのタコの雌は、卵塊を岩棚などに産み付ける、基質産卵型の産卵を行う[342]。この卵塊は藤の花序のように房状となり、海藤花と呼ばれる[346][347][348]。これは江戸時代の儒者である梁田蛻巌によって名付けられたとされる[348]。雌は卵塊を抱き、汚れを吸盤で掃除したり、海水を吹きかけたりして世話(抱卵)をする[342][343]。
漂泳性のムラサキダコ Tremoctopus violaceus やナツメダコ Japetella diaphana は基質産卵型ではなく、口を膜で覆って卵塊を腕で包み込み、保持し続ける[342][229][346][349]。
タコには性差があることも多く、一般に雌の方が大型になる[332]。ムラサキダコでは雌は全長56 cm であるが、雄は3 cm より小さい[332]。ムラサキダコの雄の交接腕は発達する[326]。この性的二形は交接時に泳ぐ抵抗を減らし、捕食などのリスクを減らす効果があると説明される[350]。アミダコ Ocythoe tuberculata でも雌は全長52 cm であるが、雄は 16 cm 程度である[332]。マダコでは、雄の成熟すると特定の吸盤が平たく大きくなり、雌と区別する特徴となる[185]。Octopus vulgaris 種群の他の種である、チチュウカイマダコ Octopus vulgaris や Octopus americanus でも吸盤が大きくなるが、大きくなる吸盤の位置は異なる[90]。
寿命
[編集]成長は迅速で、寿命も比較的短い[194][351]。これを形容し、「タコは太く短く生きる」[351]や"live fast die young". と言われる[352]。
変温動物であるタコは取り込んだエネルギーを成長に回すことができるため、成長は非常に早い[353]。瀬戸内海のマダコでは生後4か月で体重が1 kg、1–2年後には3 kg にまで成長する[51]。最大の種であるミズダコも、米粒サイズの幼生期から3–5年で腕を広げた長さが3.6 m にも達する[51]。ワモンダコの稚仔では毎日4%ずつ体重が増加し、8.6 kg にも達する[51]。ピグミー・オクトパス Paroctopus digueti では0.04 g から 40 g まで1000倍に成長する[354]。
タコでは平衡石を用いた年齢推定が行えないため、一部の種を除いて、どれくらい生きるのかはわかっていないことが多い[344][352][355]。タコの平衡石は層の重なり方が魚と比べて不規則であるためである[356]。'Octopus' pallidus やワモンダコ 'O.' cyanea を用いた研究により、外套膜に埋没する棒状軟骨(貝殻)に日縞が見られることが分かり、これを用いた齢査定が行われている[352]。その他、飼育や統計学的な手法でも推定されている[355]。
熱帯性のものより寒冷性のものが長寿であるという傾向が知られている[355]。タコ類の寿命はマダコ Octopus sinensis は1年から1年半、熱帯性のワモンダコで1年など、1年とされることが多い[355]。それに対し、ミズダコは2–3年と推定されている[355]。更に高緯度深海性のホッキョクワタゾコダコ Bathypolypus arcticus では産卵するまで約4年、寿命は5年程度だと考えられている[355]。飼育下のチチュウカイマダコ O. vulgaris では、ドイツの水族館シー・ライフで飼育されたパウルの3年などの例がある[182]。
分類と系統
[編集]分類群名と学名
[編集]一般的な分類体系では、タコ類は全て八腕形目(はちわんけいもく)Octopoda という目に含まれる[75][357]。目の和名は八腕目[358][359]、タコ目[315]ともされる。古くは「八脚類」とも表記された[360]ただし、腕に触毛を持つ有触毛亜目を除いたタコからなる単系統群、無触毛亜目について Octopoda の名前が使われることもある[361][362]。
また、八腕形目はコウモリダコ目 Vampyromorpha と合わせて、八腕形上目 Octopodiformes(八腕型上目、八腕形類[359])という単系統群を構成する[363]。
系統関係
[編集]分子系統解析と化石記録に基づいた、Kröger et al. (2011) による頭足類の系統樹を示す[注釈 26]。多分岐となっている部分の系統関係は解けておらず、用いるデータセットや解析方法により、様々な分岐順序の系統樹が得られている。八腕類と十腕類はそれぞれ単系統群であるが、内部の系統関係やさまざまな化石鞘形類との類縁関係は十分に理解されていない。
頭足綱 |
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Cephalopoda |
下位分類
[編集]現生種は有触毛亜目と無触毛亜目の2亜目に大別される[75][364]。250種[82]から300種類を超えるタコが見つかっているが、未記載種も多く[76]、約半数は分類が確定していない[365]。
以下、Sanchez et al. (2018) による分子系統樹を示す。ほかの解析では、有触毛亜目やカイダコ上科が単系統群となる結果も得られている。
八腕形目 |
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Octopoda |
有触毛亜目
[編集]有触毛亜目[75](有触毛類[366][367])は、腕に吸盤だけでなく触毛の列を持つ特徴がある[75]。何れも深海棲で、寒天質の体からなる[75]。外套膜の側方に鰭を持ち、有鰭亜目[357](有鰭類[367])とも呼ばれる。Sanchez et al. (2018) による分子系統解析の結果、有触毛亜目は側系統群であることが示唆されていたが[362]、多くの種と遺伝子を含めたその後の解析では、再び単系統性が支持されている[368]。
学名は研究者によりさまざまなものが用いられる。瀧 (1935)、土屋 (2002) や 佐々木 (2010) では、Cirrata Grimpe, 1916 が用いられる。Strugnell et al. (2013) でも Cirrata の学名が用いられるが、階級は目に置かれる。Sanchez et al. (2018) では目の階級に置かれ、Cirromorphida という学名が用いられる。Kröger et al. (2011) では Cirroctopoda Young, 1989 が用いられる。
以下、科や属は Verhoeff (2023) に基づく。学名の著者等は Hochberg et al. (2016) に基づく。
- 上科 Cirroteuthoidea Verhoeff, 2023
- 上科 Opisthoteuthoidea Verhoeff, 2023
- メンダコ科[373][75] Opisthoteuthidae Verrill, 1896
- 科 Grimpoteuthididae[注釈 28]
- ジュウモンジダコ属[56] Grimpoteuthis Verrill, 1883 - ジュウモンジダコ G. hippocrepium[372][373]
- Luteuthis O'Shea, 1999 - L. dentatus[371]
- Cryptoteuthis Collins, 2004 - C. brevibracchiata[371]
- 科 Cirroctopodidae Collins & Villanueva, 2008
無触毛亜目
[編集]無触毛亜目[75][79](無触毛類[366][367])は、無毛亜目[358]または無鰭亜目[357](無鰭類[367])ともよばれ、腕に触毛を持たない[75]。普通目にするタコは無触毛亜目のマダコ科に属するものが殆どである[75]。かつては底生のタコは全てマダコ科であるとされていたが[148]、分子系統解析の結果単系統群ではないことが分かり、分割されている[376]。上部白亜系のムカシダコ[366] Palaeoctopus は無触毛亜目の側系統群とされる[377]。瀧 (1935)、土屋 (2002) や 佐々木 (2010) では、Incirrata Grimpe, 1916 が用いられる。Strugnell et al. (2013) でも Incirrata の学名が用いられるが、階級は目に置かれる。Kröger et al. (2011) では Octopoda が用いられる。Sanchez et al. (2018) でも目の階級に置かれ、Octopodida という学名が用いられる。
以下、分類体系は主に Strugnell et al. (2013) に基づく[注釈 29]。学名の著者等は Norman et al. (2016) に基づく。
- マダコ上科 Octopodoidea d'Orbigny, 1839
- クラゲダコ科[373] Amphitretidae Hoyle, 1886[注釈 30]
- 亜科 Amphitretinae Hoyle, 1886
- 亜科 Bolitaeninae Chun, 1911
- Bolitaena Steenstrup, 1859 (=Eledonella) - イイジマフクロダコ(サヤナガフクロダコ[381]) B. pygmaea[注釈 32]
- Japetella Hoyle, 1885 - ナツメダコ J. diaphana[381]
- 亜科 Vitreledonellinae G. C. Robson, 1932
- スカシダコ属 Vitreledonella Joubin, 1918 - スカシダコ V. richardi[381]
- マダコ科[383] Octopodidae d'Orbigny, 1840
- マダコ属 Octopus Cuvier, 1797 - マダコ O. sinensis[384]、チチュウカイマダコ O. vulgaris[66]、マヤダコ O. maya[50]、シドニーダコ O. tetricus[303]、ブラジル・リーフ・オクトパス O. insularis[385][386]、ウデブトダコ O. briareus[387][201]、[388][注釈 33]
- イイダコ属[384] Amphioctopus Fischer, 1882 - イイダコ A. fangsiao[389]、イイダコモドキ A. ovulum[390]、ヨツメダコ A. areolatus[391]、スナダコ A. kagoshimensis[392]、メジロダコ A. marginatus[393]、ベニツケダコ A. mototi[394]
- ヒョウモンダコ属[395] Hapalochlaena - ヒョウモンダコ H. fasciata[77]、オオマルモンダコ H. lunulata[395][396]、コマルモンダコ H. maculosa[395]
- Ameloctopus Norman, 1992 - A. litoralis[397]
- Cistopus Gray, 1849 - インドダコ C. indicus[395]
- カクレダコ属[398] Abdopus Norman & Finn, 2001 - カクレダコ A. abaculus[398]、ウデナガカクレダコ A. aculeatus[398]
- マクロトリトプス属[399] Macrotritopus Grimpe, 1922 - アトランティック・ロングアーム・オクトパス M. defilippi[400]
- Thaumoctopus Norman & Hochberg, 2005 - ミミックオクトパス T. mimicus[401]
- Wunderpus Hochberg, Norman & Finn, 2006 - ブンダープス[402][注釈 34] W. photogenicus
- シマダコ属[77](テナガダコ属[404]) Callistoctopus Iw. Taki, 1964 - サメハダテナガダコ C. luteus[405]、シマダコ C. ornatus[406]、ヒラオリダコ C. aspilosomatis[407]、テナガダコ C. minor[408][注釈 35]、テギレダコ C. mutilans[409][384][注釈 36]、タイセイヨウテナガダコ C. macropus[411][412]
- パロクトプス属[413][注釈 37] Paroctopus Naef, 1923 - ピグミー・オクトパス P. digueti[354]、カリビアン・ドワーフ・オクトパス P. mercatoris[201][414]、メキシコマメダコ P. joubini[385][415][416][注釈 38]
- Macroctopus Robson, 1928 - マオリタコ M. maorum[419]
- Robsonella Adam, 1938 - R. fontanianus[420]
- Grimpella Robson, 1928 - G. thaumastocheir[421]
- Pinnoctopus d'Orbigny, 1845
- イッカクダコ属[395] Scaeurgus Troschel, 1857 - イッカクダコ S. patagiatus[422][423][注釈 39]
- Pteroctopus Fischer, 1882[注釈 40](=ヤワハダダコ属 Berrya[注釈 41]) - ヤワハダダコ P. hoylei[425]、セビロダコ P. eurycephala[426][注釈 42]
- 'Octopus' - かつてはマダコ属とされたが、マダコ近縁種ではない種を表現するために Norman et al. (2016) などにより行われている便宜的な表記。ワモンダコ 'O.' cyanea[427]、アナダコ 'O.' oliveri[410]、マメダコ 'O.' parvus[428][429]、マツバダコ 'O.' sasakii[注釈 43]、ソデフリダコ 'O.' laqueus[201][431]、コツブハナダコ 'O.' wolfi[432][433]、ツノナガコダコ 'O.' diminutus[434][435]、ナギサアナダコ 'O.' incella
- ミズダコ科[384] Enteroctopodidae Strugnell et al., 2013[注釈 44]
- ミズダコ属 Enteroctopus Rochebrune & Mabille, 1889 - ミズダコ E. dofleini、サザン・レッド・オクトパス E. megalocyathus[436]
- Muusoctopus Gleadall, 2004(=チヒロダコ属[77] Benthoctopus[注釈 45]) - チヒロダコ M. profundorum[437]、エゾダコ M. hokkaidensis[438]、スミレダコ M. violescens[439][注釈 46]、クロダコ M. fuscus[441]、キシュウチヒロダコ M. abruptus[442][注釈 47]
- Vulcanoctopus González et al., 1998 - ボルケーノ・オクトパス[91](ウルカノクトプス・ヒュドロテルマリス[444]) V. hydrothermalis[注釈 48]
- Sasakiopus Jorgensen, 2009 - ワタゾコダコ S. salebrosus
- 'Octopus' - 上記の旧マダコ属において、Kaneko et al. (2011) および Ibáñez et al. (2020) によりミズダコ科と示唆されているものと、その近縁種をここに示す[注釈 49]。アマダコ 'O.' hongkongensis[446]、ヤナギダコ 'O.' conispadiceus、クモダコ 'O.' longispadiceus[447]、オオメダコ 'O.' megalops、エンドウダコ 'O.' yendoi、ツノモチダコ 'O.' tenuicirrus[注釈 50]
- Bathypolypodidae G. C. Robson, 1929
- Megaleledonidae Iw. Taki, 1961[注釈 53]
- オオイチレツダコ属[451](オオヒトエダコ属[77]) Megaleledone Iw. Taki, 1961 - オオイチレツダコ M. setebos[452]
- Adelieledone Allcock, Hochberg, Rodhouse & Thorpe, 2003
- ナンキョクイチレツダコ属[451] Pareledone Robson, 1932 - パレレドネ・トゥルクエティ P. turqueti[444]
- Praealtus Allcock, Collins, Piatkowski & Vecchione, 2004 - P. paralbida[453]
- イボダコ属[451][454] Graneledone Joubin, 1918 - ホクヨウイボダコ G. boreopacifica[455][440]、サンリクイボダコ[440]
- Thaumeledone Robson, 1930[注釈 54] - T. brevis[77]
- Velodona Chun, 1915[注釈 55] - V. togata[77]
- ジャコウダコ科[456] Eledonidae Rochebrune, 1884
- クラゲダコ科[373] Amphitretidae Hoyle, 1886[注釈 30]
- カイダコ上科 Argonautoidea Cantraine, 1841[注釈 57]
- アオイガイ科[75](カイダコ科[440]) Argonautidae Tryon, 1879
- アミダコ科[440][75] Ocythoidae Gray, 1849
- カンテンダコ科[440] Alloposidae Verrill, 1881 (=Haliphronidae[440] Hochberg et al., 1992)
- ムラサキダコ科[440][75] Tremoctopodidae Tryon, 1879
化石記録
[編集]これまでに記載されている最古の化石記録は、ジュラ紀のものである[462][463]。
中部ジュラ系カロビアン階のオックスフォード粘土層 (Oxford Clay Fm.) から Muensterellina johnjagti や Pearceiteuthis buyi などが記載されている[463]。それよりやや後の上部ジュラ系キンメリッジアン階のヌスプリンゲン石灰岩 (Nusplingen Plattenkalk) からは、Patelloctopus ilgi が記載されている[462]。
また、白亜紀のムカシダコ科 Palaeoctopodidae がよく知られる[79]。ムカシダコ Palaeoctopus newboldi はレバノンの上部白亜系の石灰岩から知られ、現生の両亜目の中間的な形質状態であるとされる[79]。同じくレバノンのムカシダコ科にはほかにケウピア Keuppia が知られ、墨汁嚢の痕跡が観察される[464][465]。また同じ産地からマダコ科とされるスティレトオクトプス Styletoctopus が発見されており、腕の筋肉組織が保存されている[464][465]。
これらより古い古生代石炭紀には、アメリカ合衆国イリノイ州のラーゲルシュテッテンであるメゾンクリークからポルセピア Pohlsepia が知られ、最古のタコの化石だとされたこともあるが[466][467]、近年の見解では支持されない[468][469]。
食文化と調理法
[編集]100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 343 kJ (82 kcal) |
2.2 g | |
糖類 | 0 g |
食物繊維 | 0 g |
1.04 g | |
飽和脂肪酸 | 0.227 g |
一価不飽和 | 0.162 g |
多価不飽和 | 0.239 g |
14.91 g | |
トリプトファン | 0.167 g |
トレオニン | 0.642 g |
イソロイシン | 0.649 g |
ロイシン | 1.049 g |
リシン | 1.114 g |
メチオニン | 0.336 g |
シスチン | 0.196 g |
フェニルアラニン | 0.534 g |
チロシン | 0.477 g |
バリン | 0.651 g |
アルギニン | 1.088 g |
ヒスチジン | 0.286 g |
アラニン | 0.902 g |
アスパラギン酸 | 1.438 g |
グルタミン酸 | 2.027 g |
グリシン | 0.933 g |
プロリン | 0.608 g |
セリン | 0.668 g |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(6%) 45 µg(0%) 0 µg0 µg |
チアミン (B1) |
(3%) 0.03 mg |
リボフラビン (B2) |
(3%) 0.04 mg |
ナイアシン (B3) |
(14%) 2.1 mg |
パントテン酸 (B5) |
(10%) 0.5 mg |
ビタミンB6 |
(28%) 0.36 mg |
葉酸 (B9) |
(4%) 16 µg |
ビタミンB12 |
(833%) 20 µg |
コリン |
(13%) 65 mg |
ビタミンC |
(6%) 5 mg |
ビタミンD |
(0%) 0 IU |
ビタミンE |
(8%) 1.2 mg |
ビタミンK |
(0%) 0.1 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(15%) 230 mg |
カリウム |
(7%) 350 mg |
カルシウム |
(5%) 53 mg |
マグネシウム |
(8%) 30 mg |
リン |
(27%) 186 mg |
鉄分 |
(41%) 5.3 mg |
亜鉛 |
(18%) 1.68 mg |
銅 |
(22%) 0.435 mg |
マンガン |
(1%) 0.025 mg |
セレン |
(64%) 44.8 µg |
他の成分 | |
水分 | 80.25 g |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 出典: USDA栄養データベース |
タコは手近で美味なタンパク質の供給源として[218]、世界各地の沿岸地方で食用とされ、特にアジアや地中海では古くから定番料理として供される[470]。日本、イタリアやスペインなどの地中海、ポリネシアを除いてはほとんど食べられないとする文献もあるが、実際は多くの国で食べられている[471]。一方で、ユダヤ教では食の規定カシュルートによって、タコは食べてはいけないとされる「鱗の無い魚」に該当するなど[472]、禁忌とされている地域もある。
タコの身85 g は139 calと低カロリーで、脂肪は鶏肉では3 g なのに対し、タコでは2 g しかない[473]。タンパク質は25 g 含み[473]、全体の約20%である[470][474]。鉄分は1日の摂取目安量の45%、銅も1日の摂取目安量の19%であり、それぞれ6%と3%の鶏肉を大きく上回る[473]。ビタミンB12に関しては1日の摂取目安量の510%に達する[473]。また、特にタウリンが豊富であるとされる[218][475][476][477]。ただし、茹でて食べるとタウリンが茹で汁に溶出してしまうと言われる[241]。亜鉛も多く含む[477]。イカに多く含まれるグリシン、アラニン、プロリンなどの甘味成分は少ない[241]。
タコの絞め方は地域によって異なるが、主に脳軟骨を破壊することによって行われる[478]。日本では胴を掴み、眉間に手鉤や目打ちを打ち込んで絞めることが多い[478][479]。ただし北海道の市場では、ミズダコやヤナギダコは氷水に漬けて絞める[480]。スペインのガリシアではタコの口に白いプラスチック製の長い棒状の道具を差し込み絞める[478]。イタリアのプッリャ州やキリバスのギルバート諸島では、頭を噛んでタコを絞める[481][482]。
身は噛み切りにくいことから、日本では歯のない人は食べるのを苦戦するという意から「歯なしの大ダコ」という表現が知られる[216]。そのため、様々な地域で叩いて柔らかくして下処理されてきた[473]。昔ながらの方法は形がなくなるまで岩に叩きつけるという方法で、スペインのビーゴではタコを捕まえると「石で30–40回叩くべきだ」と言われる[483]。また、日本では「女と蛸は叩けば叩くほどよくなる」の言い回しが知られ[484]、ダイコンで叩いてタコの筋線維を切るとよいとされる[485][486][487]。業務用のタンブラーを用いて機械化されることもある[473]。近年では冷凍技術が普及し、凍結により細胞組織を破壊することで身を柔らかくすることも多い[483]。
また、表面のぬめりを取り柔らかくするために、塩もみをして下処理される[488][489]。調理の際、「砂ずり」と俗称される腕の先端は切り落とされることもある[476][490]。ここには毒が含まれるという俗説があった[490]。
タコは加熱調理されることが多く、多くの種は茹でると鮮紅色を呈する[491][492]。茹ですぎると固くなるので、手早く茹でるべきだとされる[493][486]。また、日本酒に漬けておくと茹でた後も柔らかいままとなると言われる[485][487]。また、茹でる際番茶の茶葉をひとつまみ入れると臭みがとれるとされている[487]。ほかにも、柚子の皮、酢、重曹、ハマグリの殻、甘草なども効果があるとされる[485][486]。
日本
[編集]タコは日本の食生活に深く根付いている[494]。タコ類は多様な種が知られているが、日本では一般的に「タコ」と言えば、食用などで馴染み深いマダコ Octopus sinensis を指す場合が多い[5]。ただし、マダコが分布しない北海道では、「マダコ」はミズダコ Enteroctopus dofleini やヤナギダコ 'Octopus' conispadiceus の地方名である[495][496][5]。特に雌をマダコと呼び、雄は肉質が水っぽいことからミズダコと呼ぶ[496][5]。福島県のいわき地区(小名浜など)では、ミズダコを「アマダコ」、ヤナギダコを「ミズダコ」と呼ぶ[497]。これらに加えてイイダコ Amphioctopus fangsiao やテナガダコ Callistoctopus minor が食用となる代表的な種である[367][498][499]。ほかの種も各地で食用として流通することがあり、伊予灘ではマツバダコ[500] 'O.' sasakii が「松葉ダコ」として愛媛県松山市のスーパーに並ぶ[500]。沖縄ではワモンダコ 'O.' cyanea やウデナガカクレダコ Abdopus aculeatus が自給的に漁獲され、食用となっている[501]。
日本人とタコの関係は古く、池上・曽根遺跡などの大阪府堺市にある弥生時代の遺跡からは、イイダコを獲る蛸壺形の土器が複数出土している[502][503][504][注釈 59]。三重県桑名市の蛎塚新田にある古墳時代の貝塚からも蛸壺が出土している[505][506]。733年の『出雲国風土記』にもタコの名が記されている[507]。また、967年の『延喜式』には乾蛸(ほかしたこ)や蛸腊(たこのきたい)が肥後・讃岐から献納されていた記録がある[502][507][508]。
平安時代以降、タコは焼蛸として饗膳の献立に現れる[507]。日本最古の料理書である『厨事類記』には、焼蛸はタコを石焼にして干し、削って食べるものであると記されている[507]。文禄4年(1595年)に徳川家康が豊臣秀吉を迎えた御膳にはタコがあった[502]。神事にも用いられ、伊勢神宮式年遷宮の一つである山口祭の饗膳には、干しサメやエビとともに供される[506]。津八幡宮の10月の祭礼にも里芋とともにを炊き合わせた料理が神饌として供えられ、現在でも八幡町の古い氏子の家では祭にこれを調える[506]。漁法や輸送手段、冷蔵技術が未発達な時代には、山村ではタコを含む魚介類は貴重な食べ物であり、ハレの日のご馳走であった[509]。
夏場のものが特に美味とされ、旬の梅雨時から7月下旬にかけてのものは「麦わらダコ(麦藁蛸)」と俗称される[475][510][注釈 60]。7月25日の大阪天満宮の天神祭では「天神蛸」としてハモとともに食され[485][511]、この旬は「麦藁蛸に祭鱧」(むぎわらだこにまつりはも)という成句でも知られる[512]。関西地方には、稲の成長を祈り半夏生にタコを食べる「半夏蛸」の習慣がある[513][475][476](#信仰と行事も参照)。また同時に、半夏蛸はタウリンを補給して夏バテを防ぐと言われる[475][476][511]。そのため、7月2日は蛸研究会により日本記念日協会が認定する「タコの日」に制定されている[514][注釈 61]。また、夏の土用のころのタコは特に美味で、ほかの誰にも食べさせるわけにはいかないとの意から「土用の蛸は親にも食わすな」[216][153][476]や「アカエイの吸い物蛸の足」という格言も知られる[153]。愛媛県では春先に200–400 g の小さいタコが漁獲され、「木の芽だこ」と呼ばれて出回る[516]。京都では10月の十夜のころのタコが美味として小型の「十夜ダコ」を食べる習わしがある[486]。
料理では刺身[517][518][485]、寿司[519]、煮だこ[485](煮付け[518])、酢蛸[520]、酢味噌和え[511]、天婦羅[518][485]、揚げ物[518]、塩辛[518]、おでんの具材[521][518][485]など様々に用いられる。タコの刺身には普通茹で蛸が用いられ、生食は西日本のごく一部の地域に限られる[522]。
たこ焼きやその原形とされる明石焼きの具材としても親しまれている[523][524]。たこ焼きは大阪から広まり、全国的に食される[523][525]。小麦粉と卵を混ぜた生地の中にタコの小片を入れて球形に焼き上げたものである[523][525]。たこ焼きは高市の露店の定番としても親しまれている[526]。明石焼きは地元明石では玉子焼と呼ばれる[523][527]。
また、瀬戸内海地域(兵庫県[528][529]・愛媛県[516]・香川県[530]・広島県[531]・岡山県[532])や伊勢湾(三重県[506]・愛知県[530])、熊本県天草諸島[533]では蛸飯(たこ飯、たこめし)に供される[530][528]。地域や店によって、作り方や具材、味付け等が異なる[528][530][532]。愛知県のたこ飯は茹で蛸ではなく生のタコを米と一緒に炊き込むことで桜色に染まるため「桜飯」とも呼ばれる[530][534]。広島県の瀬戸田や愛媛県でも生タコが用いられる[535]。天草諸島では干しダコをたこ飯に用いる[533]。江戸時代には雑炊に薄く切った茹で蛸とネギを加えて煮たタコ雑炊があった[510]。
関西ではタコぶつとしてわさび醤油や酢味噌をつけたり、タコとキュウリの酢もみなどとして食される[511]。奈良県ではタコとキュウリの酢もみは「蛸もみうり」と呼ばれ、早苗饗に稲の成長を願って食される[536]。マダコの皮は茹でてキュウリと和え、酢味噌をかけてぬたとして食される[537]。因島では魚介類を入れた鍋である水軍鍋が食されるが、これは八方の敵を喰うという験を担ぎ必ずタコが入れられる[524]。薩摩の郷土料理には、小口切りにしたタコをゴボウやネギ、サトイモや豆腐などとともに薄味噌で煮た「薩摩芋たこ汁」があり、のちに各地に広まった[493]。
タコは癖がないため煮物(煮だこ)に適するとされ、様々なバリエーションの料理が存在する[485]。出汁にたまりを合わせただしたまりに酢を加えたものの中で、良く洗ったタコを疣が抜けるまでよく煮たものを「駿河煮(黒煮)」という[485][486][507]。江戸では「蛸の桜煮」が食べられる[538]。桜煮は、味噌をだし汁で溶いたたれ味噌(またはだしたまり)で薄く切ったタコを柔らかく煮た料理で、桜熬(桜煎、さくらいり)とも呼ばれる[538][486][507]。焙じ茶、砂糖、醬油で煮るともされる[485]。タコを酒と水分を加えた中に入れてとろ火で半日煮込んでから、醤油を加えて煮ることで柔らかく炊いた料理は「関東煮(かんとうだき)」と呼ばれる[486]。単に酒で煮込んだものも柔らかくなり、「酒煮」と呼ばれる[485]。香川県ではテナガダコやイイダコを里芋などとともに煮た「いもたこ」が作られ、かつては正月や婚礼などのハレの日に用意されていたが、現在は日常的に食べられる[485][539]。
ミズダコのように筋肉が柔らかい種は酢蛸などに加工して用いられることが多い[540][541]。また、冷凍したミズダコの腕はしゃぶしゃぶとして商品化されている[541][510]。ヤナギダコの小さいものは1匹まるごと「一杯ダコ」に加工され、珍味として食される[496]。またミズダコは北海道では郷土料理の揚げ物であるたこザンギとしても食される[477]。
また、保存食として干しダコ(乾ダコ、干ダコ)に加工される[508][533][542]。兵庫県明石市二見町周辺[508][542]や岡山県倉敷市下津井地区[508][543]、広島県尾道市因島・瀬戸田町[508]、三重県鳥羽市[506][544]、熊本県天草市有明町[533]のものがよく知られる。かつては夏場に大量にとれた安価なマダコを加工し、魚の水揚げが少ない冬の保存食として利用していたが[533][542]、最近では作る漁家が減少している[542]。腕一本ずつを洗濯バサミに吊して干す場合もあるが[542]、多くはいわゆる「ひっぱりだこ」の姿である[545]、竹串で足をぴんと張って干した「真蛸張乾」に加工される[542][508]。干しダコは薄く花のように削り、「削りダコ(タコの花)」として食べられる[528]。
秋口に雌の体内にある卵巣は象牙色の袋に包まれており、タコの袋児(ふくろご)と呼ばれ、煮付けて食べる[要出典]。梅雨時のマダコ「麦わらダコ」にはこぶし大の卵巣があり、膜を傷つけないように取り出して茹で、茹で上がったものにポン酢をかけて食べられる[510]。3月前後の産卵期が近づいた雌のイイダコは卵巣が重要な部分として食され[485][546]、イイダコの和名は外套腔に米粒状の卵が含まれる卵巣を持つことからとされる[33][508]。ミズダコの卵巣も取り出されて販売される[547]。また、マダコの産卵後の卵塊はその形状からフジの花序に喩えて「藤の花」と呼ばれ、塩漬けにした海藤花(かいとうげ)が明石の名産として食される[507][510][548]。海藤花は椀種や酢の物にして食されるほか[507][510]、丸ごと煮付けにして食べられる[510]。
青森県下北半島では魚介類の内臓を「生きるための道具」の意から「道具」と呼ぶ[549]。タコの内臓は「タコの道具」の愛称で食用にされ、野菜とともに煮た「道具汁」などの郷土料理として食べられる[549]。
また、現代では問題とされないが、かつては食い合わせが悪いものとして「蛸と柿」と言われた[216]。柿だけでなく、スイカや梅干しなどが挙げられることもある[216]。これは輸送手段や冷蔵技術が未発達な時代に海から離れた農村では新鮮な魚介類が入手できず、タコは何と食べ合わせても腹具合が良くなかったのであろうと説明される[216]。また、美味いからといって食べ過ぎるとよくないとして、「タコ食って反吐をはく」という表現がある[216]。イイダコの卵で腹痛を起こす者がいるとも、テナガダコは食べると中毒を起こすなどともいわれ、前者は生姜や酢で和えると良く、後者はソラマメを用いて直すと良いとされる[490]。また、テナガダコの腹痛にはウツギが効くとされる[490]。
東アジア・東南アジア
[編集]朝鮮半島ではタコは日常的な食材であり[550]、生食の文化がある[522]。特に、テナガダコはナクチ(朝: 낙지)と呼ばれ、生きたままぶつ切りにし、塩と胡麻油および胡麻と和えて踊り食いにするサンナクチ(朝: 산낙지「活きたテナガダコ」、sannakji)は有名である[550][551]。イイダコはチュクミ(주꾸미、jukkumi)と呼ばれ、コチュジャンで炒めたチュクミポックム(주꾸미 볶음、jukkumi-bokkeum)などにして食される[552]。また、タコ(特にミズダコ)はムノ(문어、Muneo、文魚)といい、ニンニク、ワケギ、ニンジンやごま油とともに粥にしたムノチュク(문어 죽、Muneo-juk)にしても食される[553]。
台湾の澎湖諸島では、テナガダコに近縁な「澎湖章魚」や「石鮔」と呼ばれる未記載種[554]が食用とされ、干しダコに加工される[555]。「石鮔排骨湯」や「石鮔五花肉」と呼ばれる伝統料理となる[555]。
中華人民共和国では、タコを食用としないと書かれている本もあるが、地域によっては食用にされる[471]。例えば、香港の市場では普通に売られている[471]。また、唐代の劉恂『嶺表録異』では、生で食べるとクラゲのような味がするので、生姜や酢につけて食べたとある[556]。蘇頌『図経本草』では、マダコとテナガダコが珍味として食されるとある[556]。明代の福建省でも、種々のタコが食され、卵巣も食用とされた[556]。現在でも福建省廈門などではタコが食用とされ、茹でて氷水で締めた「白灼章鱼(白灼八爪鱼)」として消費される[557]。
フィリピンではタコを食用とする[471][558]。フィリピンのミンドロ島では、タコはアドボ (Adobong pugita) として食べられる[559]。酢と醤油の組み合わせで煮込んで作られる[559]。
タイでもタコが食用とされる[502][558]。ただし、普通イカとは区別されず、ปลาหมึก(プラームック、plaa mɯ̀k)と総称される[560]。屋台料理としてプラームックヤーン(ปลาหมึกย่าง、plaa mɯ̀k yâaŋ)が食される[561]。
地中海
[編集]南欧・地中海沿岸地域(スペイン、イタリア、ポルトガル、ギリシャ、プロヴァンス地方などフランス南部の一部、トルコ、チュニジア、エジプトなど)ではタコを伝統的な食品としている[45][502][562][471]。古くから食用とされ、古代地中海では外套膜に薬味を詰めてパイのように焼く料理が食べられ、鉄の臭いを避けて鉄のナイフが使われなかったという記録が残っている[482]。
スペインでは一般的に食され、レストランではシェフのおすすめ料理として丸のままの茹で蛸を供したり、バルにぶつ切りにした酢蛸が供されることもある[482]。ガリシア州では、「お祭り風のタコ」を意味するポルボ・ア・フェイラ(プルポ・ア・フェイラ)と呼ばれる伝統料理が食され、「タコのガリシア風」の名でも知られる[563][564]。タコをジャガイモとともに煮て、パプリカを加え、オリーブオイルと塩で味付けした料理である。腕は鉄板焼き (Pulpo a la plancha) にも料理される[565]。スペイン料理のパエリアにもタコが用いられる[563]。
イタリアカンパーニャ州ナポリのサンタルチア地区ではトマト煮にされ、ポルピ・アッラ・ルチャーナ(Polpi alla Luciana, Polpo alla luciana)と呼ばれる[566][567]。「溺れたダコ」(polpo affogato、ポルポ・アッフォガート)とも呼ばれる[556]。イタリアではトマト煮がもっともポピュラーである[568]。ほかに、ソプレッサータ[569]やテリーヌ[519]などに調理することもある。モリーゼ州では、仔ダコを辛いソースで煮込んだポルピ・イン・プルガトリオ (Polpi in purgatorio「煉獄のタコ」、モリーゼ方言:i pulepe 'npregatorie)が食べられ、タコの墨の色と唐辛子(ペペロンチーノ)が特徴的な料理である[570][571]。
ポルトガルでは、タコを茹でてからぶつ切りにしてグリルし、オリーブオイルを塗ったポルボ・ア・ラガレイロ(Polvo à Lagareiro)が食べられる[572]。
マルタでは、ピザの具材となる[519]。また、マルタの伝統料理 Quarnita-bit-tewm では、細かく切った茹でタコをネギ、ニンニク、パプリカなどとともにオリーブオイルでソテーし、冷やして食べられる[573]。
フランスのラングドック=ルシヨンでは、ジャガイモやタマネギ、ウイキョウやパセリとともにサラダ (Salade de poulpe) にして食される[574]。
ギリシャ等の正教徒の多い地域の場合、東方正教会では斎の間は肉を、大斎の際には魚をも食べるのを禁じてきたが[575]、タコやイカ、貝類などは問題が無いとされてきたため[576]、これらを使った伝統料理が多い。特にペロポネソス半島のギシオは「ギリシャのタコの都」とも称され、レストランの店先の綱にタコをぶら下げて干しダコを作っている様子がよく見られる[577]。ギシオではトマトやチーズ、ハーブとともに一口大に切ったタコがギリシャ風サラダにして食べられることもある[578]。東地中海ではメゼとしてグリルしたタコの腕が出され、ギリシャではフタポディ・スティ・スハラ(希: χταποδι στη σχαρα、Chtapodi sti schara)と呼ばれる[578][579]。トルコではタコはギリシア語起源のアフポット(ahtapot)と呼ばれ、かつてのトルコ系ムスリムはあまり食べなかったが[580]、現在のトルコでは食用となる[471]。トルコ料理としてはタコの冷製メゼ(ahtapot salatası)が知られる[581]。
クロアチアでも干しダコ(Štokalj)が作られる[582]。ラブ島で作られるボーラで乾かした干しダコは、Sušeni štokalj と呼ばれる[583]。Sušeni štokalj はフリターヤ Fritaja などにして食べられる[583]。クヴァルネル湾に面したプリモリェ=ゴルスキ・コタル郡では、干しダコにオリーブオイルで炒めた卵と玉ねぎを混ぜ合わせ、卵が好みの固さになるまで煮込んだ Štokalj s jajima が作られる[582]。Hobotnica na novaljski は、パグ島にあるノヴァリャ発祥のクロアチア料理である[584]。柔らかく煮たタコを適当な大きさに切り、煮汁にオリーブオイルと少しマッシュしたジャガイモを合わせて作られる[584]。ダルマチア地方では、大きな鐘のような蓋を被せ、新鮮なタコを丸ごと野菜とともに暖炉で煮込んだ鍋料理である Hobotnica ispod peke や[585]、タコのサラダ(Salata od hobotnice)が食される[586]。コルチュラ島では、タコをニンニクやタマネギなどとともに白ワインで煮込んだ Pijana hobotnica (「酔っ払いタコ」)が食べられる[587]。
チュニジアでもタコはクスクスなどにして食される[588]。カンモーニーヤ (Kamounia au poulpe) と呼ばれる煮込み料理でも食べられる。
仔ダコはオクオパス・ガーデン・カクテル (Octopus's Garden Cocktail) に利用され、ジンとドライベルモットを 3:4 でシェイクしたものに、焦げ目をつけた仔ダコとブラックオリーブを添えて供される[589]。
イチレツダコ類はスペインやイタリアでは底曳網で混獲されて利用されるが、積極的に漁獲されることはない[451][590]。スペインではイチレツダコ Eledone cirrhosa はマダコの「不肖の弟」と表現される[590]。ガリシアではイチレツダコは缶詰に加工し、海外向けに輸出される[590]。ヴェネツィアではジャコウダコ Eledone moschata は Folpetti と呼ばれ、茹でたり、衣をつけて揚げたり、焼いたりと、さまざまな調理法で調理される[591]。
ゲルマン・スラヴ諸国
[編集]一方、アルプス以北のヨーロッパ諸国では、漁業が盛んな局所を除いて、伝統的には食用にはされてこなかった[592]。例えばドイツやスイス、フランスの大部分では、蛋白源を獣肉に頼る地域では伝統料理にタコを見ることはまずない[502]。また、イギリスでは「悪魔の魚 devilfish」などと呼ばれ、避けられていたことは良く知られている[593]。例えば、イギリスの王立協会フェローであるマルコム・R・クラークは1963年に、タンパク質含量は魚と比べても申し分なく、理論的には食用となっての良いものの、こんな奇妙な生き物が食卓に忍び寄ってくるのは気が進まないという人もいるかもしれないと述べている[594]。しかし、これらの地域でも、現代では南欧料理やアジアの料理(日本の寿司など)が入ってきており、タコを食べる機会は増えてきている[502]。
インド洋
[編集]東アフリカの海岸地域の集落、特にタンザニア沿岸(ザンジバル)では、タコの零細漁業が経済的に、また生計的に重要となっている[595]。スワヒリ語ではタコは pweza と呼ばれる[595][596]。漁獲されるのは主にワモンダコ 'Octopus' cyanea で、潮間帯や潮下帯からシュノーケリングなどで巣穴に隠れているタコに銛を掴ませ、引き抜いて採集される[595]。伝統的には、女性と子供を中心とした漁が行われていたが、近年では、需要が高まり、男性もタコ漁に参加するようになっている[595]。タコは主にあぶり焼き (Pweza wa kuchoma) やから揚げ (Pweza wa kukayanga)、シチュー (Mchuzi wa maji wa pweza) などにして食される。屋根の上で天日干しにして干しダコ (Pweza mkavu) にしたものなども食べられる[596]。巻き網漁では小さなタコが混獲されることもあり、各家庭で晩御飯のおかずなどに利用される[597]。
モーリシャスやセーシェルではインドやフランスの影響を受けたクレオール料理が食され、タコはオクトパスカレーやヴィンダイ (Vindaye ourite) などの料理で食される[598][599][600][601]。ココナッツを加えたセーシェルのオクトパスカレーは Kari koko zourit と呼ばれる[601]。
マダガスカルでも小さなタコの1種をホリタ (horita) と呼び、ご馳走とされる[556]。
モルディヴではタコの腕をカレー風味の Miruhulee boava にして食す[602][603]。
オセアニア
[編集]ミクロネシア(グアムやギルバート諸島)、ポリネシア(ハワイやタヒチ)、メラネシア(フィジーなど)ではタコを食べる文化がある[502][471]。またこの地域では、ワモンダコ 'Octopus' cyanea は南西諸島以南の太平洋-インド洋全域に分布し、分布域では広く食用として用いられている[604][605][606]。ワモンダコとともにシマダコ C. ornatus も重要な種である[606]。
ポリネシアでは干しダコが好まれ、カレー料理やココナッツミルクで煮たり、葉で包んで焼いたりして食べる[568]。ハワイ諸島では一口大に切って野菜サラダと和えたポキとして調理されたり、干物や冷凍、燻製などの調理をされたりして食べられる[605]。
グアムでは、タコをぶつ切りにし、微塵切りにしたタマネギやミニトマトとともに鍋に入れ、ココナッツミルクを加えたチャモロ族の伝統料理 Kadon gamson として食べられる[607]。
アメリカ
[編集]アメリカの食卓には滅多に登場せず[470]、身近な存在ではない[608]。しかしやはり近年では高タンパク質食品として人気が現れ[594]、主にフィリピンから年間3750 t 程度、タコを輸入している[605]。しかし種の識別はされず、まとめて「タコ」とのみ表示されて流通する[605]。
カナダの太平洋岸(ヴァンクーヴァー島)のアメリカ先住民はタコを食用としてきた[471][556]。
プエルトリコでは、タコはありふれた食材として流通する[609]。腕のぶつ切りが加熱済みの冷凍食品として販売されるが、中にはチリ産のイカがそれに交じって出回っている[609]。マリネ(セビチェ)などにして食べられる[610]。
メキシコをはじめとする中南米の全ての国では、タコを食べる文化がある[502][471]。メキシコでは、熱帯地域で最大のタコ漁獲量(42,400 t)を誇るが、消費量(49,900 t、いずれも2017年)もそれを上回る値を示す[606]。メキシコ湾周辺の伝統料理では、アーモンドソースとともに火を通した Pulpo almendrado が知られる[611]。
南アメリカのブラジルとコロンビアでは、タコは輸出されず輸入のみであり、食品として消費される量は漁獲量を上回っている[606]。ブラジルでは、2017年に783.7 t のタコが漁獲されているが、消費量は3,192 t である[606]。コロンビアでも153.1 t の漁獲量に対し534.5 t のタコが消費されている[606]。ブラジル料理では、タコはムケッカ (Moqueca) と呼ばれる海鮮シチューにして食される[612]。ヴィネグレットソースを和えたり、カルパッチョにして前菜としても食べられる[612]。
ペルーやエクアドルでは、生のタコにタマネギを加え、ライム汁、コリアンダー、油や塩、唐辛子などの調味料と混ぜてタコのセビチェ (Ceviche de pulpo) にして食べられる[613][614]。ペルーではタコのアンティクーチョ (Anticuchos de pulpo) と呼ばれる串焼きでも振舞われる[615]。調味料に漬けたタコに小麦粉をまぶし、高温の油でカリカリになるまで揚げたタコのチチャロン (Chicharrón de pulpo) もペルーの伝統料理である[616]。
各地の漁業
[編集]タコ漁には何千年もの歴史があり、2014年現在の漁獲量は世界全体で30 t(トン)に及んでいる[519]。漁法も様々で、壺、網、ルアーやヤスといった道具を用いるほか、素手で獲られることもある[519]。
日本の漁業
[編集]タコは定着性の水産動物で水産資源として有用なものとして、第1種共同漁業権の対象魚種となっている[617]。2018年(平成30年)では、日本の海面漁業でタコは36,100 t が漁獲されている[523]。半数は蛸壺や蛸箱による罠漁、1/3は曳網漁、残りは空釣りや定置網漁などにより漁獲されている[618]。
日本のタコ漁獲量は北海道が突出し[523]、例年12,000–25,000 tのタコが漁獲されている[213]。2023年の漁獲量は7,526 t であった[619]。この値には世界最大級のタコであるミズダコ Enteroctopus dofleini やヤナギダコ 'Octopus' conispadiceus の水揚げが反映されている[523][618][620]。北海道でのタコ漁業の歴史は古く、明治中期には渡島総合振興局や檜山、後志などで副業としてヤス突き、鉤、銛や延縄によるタコ漁が行われていた[621]。1906年に浦河町の漁業者によって空釣り延縄によるタコ漁が始められ[622]、大正時代には空釣り縄が普及した[621]。道南では明治末期では甕が用いられていたが、それに代わって蛸箱が使われる等になり、昭和以降網走や日高沿岸などの各地に広まった[621]。ミズダコの漁獲量は津軽海峡を含む日本海側に多く、宗谷・留萌管内で約半分を占める[623]。市町村では羽幌町(天売焼尻漁港[624][625])、稚内市、増毛町(別苅・雄冬漁港)、礼文町、函館市(旧戸井町)などで良く獲れる[623]。太平洋側の根室市では、落石漁港でよく漁獲されるほか[626]、歯舞漁港では「金たこ」としてブランド化が試みられている[627]。一方ヤナギダコは太平洋側で漁獲量が多く[628]、日高・十勝・釧路管内で空釣り延縄によって漁獲される[622]。白糠町では1965年から人工産卵礁の設置を進め、各地に広がった[496]。
瀬戸内海区では、1990年(平成2年)では漁獲量23,925 t と北海道に次いで多かったが[629]、2023年現在の漁獲量はわずか47 t であった[619]。瀬戸内海では主にマダコやイイダコが獲られ[629]、古くから蛸壺漁が行われてきた[171]。瀬戸内海や有明湾、房総半島、能登半島など潮流が速く岩礁帯が分布する海域では網の使用や潜水に適さないため、釣りによる漁獲も盛んである[630]。岡山県倉敷市下津井地区では漁家の7割が一本釣りを行うと言われる[630]。広島県尾道市の因島でも古くからタコの一本釣りが行われている[630]。また、漁獲高では北海道に次いで兵庫県が第2位であり、明石市で獲れるマダコはブランド「明石ダコ」として知られる[631][632][475]。明石市では「明石・タコ検定」が行われ、明石駅付近の商店街「魚の棚(うおんたな)」では「タコが立って歩いている」の謳い文句で知られる[632]。また明石ダコに因み、明石淡路フェリーが「たこフェリー」という愛称で運行されていた[632][633]。なお、明石のタコは三八大冷害により多くが死滅してしまったため、天草から雌4000匹を買って放流したものが増えたという経緯がある[505]。これ以降明石ダコの形態(腕の比率)や生態(産卵期)が変化したと言われる[634]。広島県の三原市漁業協同組合では、地元の伝統行事「三原やっさ祭り」に因んで「三原やっさタコ」と名付け、ブランド化している[515][531][注釈 61]。
青森県から茨城県までの太平洋北区は、2023年では北海道に次ぐ漁獲量を持つ[619]。1990年(平成2年)でも北海道、瀬戸内海区に次ぐ漁獲量を誇り、3海区合わせて日本全体の85%を占めていた[629]。福島県のいわき市や相馬市で獲られる魚介類は「常磐もの」と呼ばれ[635][636]、特にミズダコとヤナギダコが重要な魚種として漁獲される[497]。久之浜漁港(いわき市)や松川浦漁港(相馬市)でよく水揚げされる[636][637]。宮城県南三陸町志津川湾に産するタコも名産であり[638]、「西の明石、東の志津川」と呼ばれる[639]。
千葉県から三重県までの太平洋沿岸である太平洋中区は、2023年のタコ漁獲量はわずか192 t で、他地域に及ばないものの[619]、岩礁に富んだ潮流の激しい湾はマダコの良い生息地となっていた[629]。神奈川県横須賀市の佐島は古くより「西の明石、東の佐島」と呼ばれ、上質なタコで知られた[640]。伊良湖水道で獲られた三重県鳥羽市にある神島のマダコはブランド「潮騒タコ」として知られる[506][544]。愛知県知多郡南知多町の日間賀島はかつてはタコ漁が盛んで[641]、「タコの島」と呼ばれる[530][534]。
水産庁により「たこ類」として統計されており、漁港別の漁獲量は次の通りである[注釈 63]。
順位 | 2003年[643] | 2013年[644] | 2023年[619] | |||
---|---|---|---|---|---|---|
漁港(自治体) | 漁獲量 [t] | 漁港(自治体) | 漁獲量 [t] | 漁港(自治体) | 漁獲量 [t] | |
1位 | 相馬原釜(福島県相馬市) | 2,082 | 根室(北海道根室市) | 974 | 羽幌(北海道羽幌町) | 1,556 |
2位 | 石巻(宮城県石巻市) | 1,442 | 羽幌(北海道羽幌町) | 899 | 根室(北海道根室市) | 1,079 |
3位 | 枝幸(北海道枝幸町) | 1,099 | 宮古(岩手県宮古市) | 616 | 石巻(宮城県石巻市) | 767 |
4位 | 増毛(北海道増毛町) | 967 | 増毛(北海道増毛町) | 527 | 枝幸(北海道枝幸町) | 661 |
5位 | 宮古(岩手県宮古市) | 837 | 釜石(岩手県釜石市) | 473 | 宮古(岩手県宮古市) | 465 |
6位 | 浦河(北海道浦河町) | 813 | 枝幸(北海道枝幸町) | 454 | 歯舞(北海道根室市) | 461 |
7位 | 小名浜(福島県いわき市) | 758 | 浦河(北海道浦河町) | 451 | 増毛(北海道増毛町) | 424 |
8位 | 小樽(北海道小樽市) | 750 | 小樽(北海道小樽市) | 413 | 相馬原釜(福島県相馬市) | 376 |
9位 | 八戸(青森県八戸市) | 733 | 石巻(宮城県石巻市) | 395 | 白糠(北海道白糠町) | 366 |
10位 | 稚内(北海道稚内市) | 701 | 歯舞(北海道根室市) | 333 | 網走(北海道網走市) | 354 |
総計 | 24,357 | 13,886 | 12,016 |
日本近海では1960年から1980年代にかけてタコの漁獲量がピーク時の半分にまで激減し、これを改善するため国を挙げて長期プロジェクトが行われた[645]。産卵海域の環境を改善し、個体数を増やすため、瀬戸内海を中心に増殖事業が行われ、毎年12,000–17,000個の産卵用の蛸壺や岩が沈められている[645][475][646]。兵庫県では漁業者に対し、100 g 以下のタコの禁漁や共同漁業権区域内の禁漁を定めた兵庫県漁業調整規制が敷かれている[647][475]。明石商工会議所では一般遊漁者に対しても釣り具の数や形状の規制のタコ釣りルールの周知や、釣り過ぎたタコの放流によるタコマイレージ制度などの導入が行われている[475]。福岡県、長崎県、熊本県、大分県でも100 g 以下のタコの禁漁を行っている[647]。
ミズダコはやや増加傾向にある[646]。資源管理策としては成長乱獲を防ぐために3歳以上の個体を漁獲することが好ましい[646]。北海道のミズダコ漁では、各地で2 kg 以下のものは海にリリースするように取り決められている[648]。青森県でも自主規制として3 kg 未満の個体は水揚げせず、放流している[646]。
山形県や新潟県では、タコが住む巣穴である蛸穴の一つ一つに権利の占有があった[161][649]。山形県の飛島では蛸穴が1種の私有財産として認められており、売買や相続が行われるほか、その占有権を持って嫁ぐこともあったとされる[161][649]。新潟県の粟島では、村共同で使う「むら穴」や仲間だけで共有する「なかま穴」、個人がこっそり獲りに行く「銭箱」などがあった[649]。また、琉球列島の珊瑚礁にある蛸穴はそれぞれの人が秘密にして所有してきた[650]。皆が漁に出る大潮の際はわざと別の穴を突くこともあり[650]、自分の子にも死ぬ間際まで教えないと言われる[649]。
愛媛県今治市の大三島では、タコ漁専用の生簀を備えた船を「章魚船(たこぶね)」と呼んだ[486]。章魚船の帆柱にはペンドロと呼ばれる錘が付けられており、揺すって舟を揺らすことで生簀のタコ同士を喧嘩させないようにする[486]。
アジアの漁業
[編集]東アジアでは、2010年に中国が125,776 t、韓国が20,759 t のタコを漁獲している[651]。台湾では前記の未記載種「澎湖章魚」のほか、マダコ、イイダコ、Cistopus taiwanicus、Amphioctopus neglectus「忽蛸」、スナダコ Amphioctopus kagoshimensis、スナダコ近縁種 Amphioctopus aegina「白線章魚」などが漁獲される[652]。Amphioctopus exannulatus なども混獲される[652]。
東南アジアでは主にワモンダコ 'Octopus' cyanea が漁獲される[606][652]。タイでは Amphioctopus neglectus、Amphioctopus rex、Amphioctopus siamensis、Amphioctopus aegina、サメハダテナガダコ Callistoctopus luteus が主要な底曳網漁によって漁獲される[652]。フィリピンでもワモンダコ、サメハダテナガダコやインドダコ Cistopus indicus が漁獲されるほか、市場で Callistoctopus nocturnus が売られていた記録がある[652]。熱帯インド洋地域ではシマダコ Callistoctopus ornatus が漁獲される[652]。
インドネシアの水産業は中国に次ぐ世界第2位漁獲量を持つ大規模なものである[606]。また、タコの漁獲量は2017年の小規模タコ漁獲量は17,900 t であり、メキシコに次ぐ第2位である[606]。そのうち食料として消費される量は4,970 t、輸出量は13,200 tである[606]。インドネシアにおいてタコの販売と輸出は経済的に重要であり、2017年12月の平均所得は漁師1人当たり150,000 IDR/日 であり、平均純賃金96,000 IDR/日 を上回る[606]。2010年の漁獲量はインドネシアが10,860 t、タイが10,315 t、フィリピンが5,506 t、そしてマレーシアが1,936 t であった[651]。
ヨーロッパの漁業
[編集]ポルトガルのアルガルヴェ、スペインのアンダルシアやガリシア、イタリアのサルデーニャ、ギリシャのトラキア海(トラキア付近のエーゲ海)で、小規模な沿岸漁業によりチチュウカイマダコが盛んに漁獲される[562]。多くの地域では蛸壺を用いるが[653]、イタリアでは筌を用いる地域もある[654]。
ヨーロッパ諸国では、自国の漁業水域には比較的厳しい規制をかけており、450 g 未満のタコの捕獲は禁止されている[655]。国によってはさらに厳しい制限が設けられている場合もある[656]。スペインのガリシア州では、蛸籠漁で捕獲できるタコが750 g から1 kg に引き上げられ、更に厳格なローカルルールが定められている[656]。これにより多くの雌が生き延び、新たな世代の生産を可能にしている[656]。
ガリシアでは大規模なタコ漁が行われるが、その漁獲高の大半は小さな漁村の漁船により獲られたものである[657]。中でもビーゴと呼ばれる町はリアス海岸の入江にあり、深層海水が湧昇流によって沿岸に流れ、豊かな漁場が形成されている[657]。この地域では、生き餌を入れた蛸籠による漁が行われている[658]。
イタリアのプッリャ州で行われる零細漁業では、素潜りやヤスによるタコ漁を行っている[481]。地中海沿岸の漁師は、蛸穴の入口で葉の付いたオリーブの枝をゆすり、おびき出して捕獲する[556]。また岩に吸い付いたタコはオグルマ属の一種やムカシヨモギ属の一種(いずれもキク科)を用いて剥がされる[556]。
北西アフリカの漁業
[編集]北西アフリカでは長年魚を中心とした漁業が行われていたが、1960年代以降標的を転換し、頭足類の商業的な漁業が盛んとなっている[659][660]。1989年には116,564 t のタコが漁獲され[661]、当時世界最大のタコ漁場となっていた[660]。2017年現在でも、27,075 t のタコが商業的に漁獲されている[606]。モロッコ、モーリタニア、セネガルなどがチチュウカイマダコ Octopus vulgaris の供給元となっている[659]。Amphioctopus burryi も小規模に混獲されている[652]。現地の漁業関係者の間でタコは「プルプル」と呼ばれている[662]。
北西アフリカにおけるタコ漁の開発は日本人漁業者によって行われ、トロール漁船により漁獲されていた[660]。1952年にマッカーサー・ラインが撤廃され、日本漁船が海外に進出するようになった[663]。1959年には、スペイン人から「鯛の海岸」と呼ばれていた北西アフリカ漁場を日本人が発見した[663]。当時はタイを狙っていたが、「もんごういか」と呼ばれるヨーロッパコウイカも高値で取引されるようになり、1965年にはタコが最も重要な水産物となった[663]。のちにスペインの漁船や日本の商社によってバックアップされた韓国漁船による漁獲が行われるようになった[663]。しかし1977年の200海里水域制限により締め出されたものの、モーリタニアとの協定により操業を続けていたが、1982年には完全に日本漁船が撤退し、その後は沿岸国が漁獲したタコを輸入するようになった[663][474]。
モロッコでは、1960年代に他の魚が乱獲や海洋環境の変化により獲れなくなり、タコ漁が盛んとなった[659]。モロッコのタコは1970年代ごろから日本に輸出されるようになった[664]。乱獲により1980年代から漁獲量が激減し、規制や外国漁船の締め出しが行われるようになった[659]。一時的に回復したものの、20世紀末に再び年間5万 t を超える水揚げが行われ、国際連合食糧農業機関(FAO)により乱獲地域に指定された[659]。それ以降規制が厳しくなり、漁獲割当量が年間2.5万 t に制限されたほか、禁漁区域の指定や450 g 以下の稚ダコの捕獲禁止などが定められた[659]。近年ではやや回復傾向にあるとされる[659]。2017年では9,884 t のタコが漁獲されている[606]。
モーリタニアでは水産物を食べる文化はほとんどなかったが[664][660]、モロッコのタコ資源の激減以降、タコの漁獲量を増やし始めた[659]。国際協力機構(JICA)によって派遣された中村正明により蛸壺漁が伝えられ[664]、それが普及している[665]。今ではタコ漁に使われる蛸壺はモーリタニア国内で生産されており、ピローグと呼ばれるカヌーで漁が行われる[664]。2017年では、11,679 t のタコが漁獲されている[606]。最盛期には年間約2–3万 t が日本へ輸出されていたが[664]、2000年代半ばに日本向けの輸出が25%減少し[655]、2024年現在ではその6割程度となっている[664]。2012年現在、モーリタニア産のタコの約6割が日本に輸出され、日本へ輸入されているタコの約4割がモーリタニア産である[665]。モーリタニアでも監督当局の取り締まりが甘いこともあり、乱獲されている[655]。ヨーロッパの漁船ではトロール漁が行われ、基準未満のタコの捕獲や、漁獲量の詐称が行われているとされる[655]。しかしモーリタニアは2006年に補償金86,000,000ユーロで欧州連合と漁業協定を結び、ヨーロッパ船籍の漁船の操業を認めている[655]。モントレー湾水族館が行っているシーフードウォッチでは、モーリタニアの状況は危機的であるとされ、モーリタニア産のタコは食べないことを推奨している[655]。
2国のタコ漁獲量の減少により、セネガルでもタコ漁が行われるようになっている[655]。ただし、サイズ制限や休漁期間の設定など既に資源管理が行われている[655]。
オセアニアの漁業
[編集]オセアニア地域では、タコは自給的に獲られ消費されている[660]。
メラネシアのニューカレドニア、ロイヤルティ諸島、ミクロネシアのマーシャル諸島、マリアナ諸島、ポリネシアのトンガやサモアなどでは、ネズミ形の漁具「マカフェケ(蛸石)」を用いて、タコを獲る漁法が行われている[482][666][667][668]。これは、タコがネズミに恨みがあるという伝承に由来する[482][666][667][668]。マカフェケは貝殻や石を円錐形に磨き、タカラガイの貝殻に付けてその上にヤシの葉柄を使ってネズミを模して作られる[666][668]。マカフェケを水中で上下に揺らすとタコが飛びかかる[666][668]。主に女性がマカフェケによるタコ漁を行い、5月頃が盛んである[666]。
ハワイでは、「ヘエ (He`e)」(タコの意)や"イカ"と呼ばれ、主にワモンダコなどが漁獲される[605]。ただし漁業としては小規模で、ヤスやジグにより捕獲され、2000年の漁獲量は11.7 t(トン)程度である[605]。ハワイ諸島でも円錐形の石に大型のタカラガイの貝殻片を取りつけ、植物繊維で尻尾を取り付けたネズミ型の疑似餌を用いた釣りが行われている[666]。
ミクロネシア連邦では、タコが年間5 t 漁獲されている[669]。ギルバート諸島では、2人組でタコ漁を行い、1人が囮としてタコに体を纏わりつかせ、もう一人がタコの脳を噛み潰して絞める[482]。
オーストラリアやニュージーランドでは、マオリタコ Macroctopus maorum やシドニーダコ Octopus tetricus が混獲されたり、一部は食用のために漁獲される[652]。オーストラリアではほかに、'Octopus' berrima や 'Octopus' pallidus が小規模な蛸壺漁で獲られる[652]。スター・オクトパス Octopus djinda はロブスター漁で混獲され、'Octopus' australis や Amphioctopus siamensis、Amphioctopus exannulatus は底曳網で混獲、Callistoctopus graptus はルアーで釣られたり、底曳網で混獲される[652]。
アメリカの漁業
[編集]北アメリカではタコ漁の伝統は古いわけではないが、比較的大きな漁場がいくつかある[645]。南北アメリカ、特にブラジルでは、主にマダコ属の Octopus insularis と O. americanus が漁獲される[606][612][注釈 64][652]。アメリカ合衆国では南東部の沿岸にはマダコ属の1種 Octopus americanus、太平洋岸の北西部にはミズダコが分布しているが、漁業としてはあまり整備されていない[605]。
カナダの先住民はカヌーに乗って槍を用いた漁を行う[556]。
メキシコは2017年のタコ漁獲量が42,400 t で、熱帯地域の中で最大である[606][注釈 65]。輸出量も6,700 t と高い値を示す[606]。カリフォルニア湾を含むメキシコ西海岸では、マダコ属の Octopus hubbsorum および Octopus bimaculatus が零細漁業により一般的に漁獲される[652][645]。2–3人の漁師がパンガと呼ばれる小舟で出航し、1人が舟に残り、もう1人が長いホースで圧縮空気を送り込む潜水で、素手によりタコを捕獲する[645]。ハリスコ州北部、ナヤリット州、シナロア州、ソノラ州などの浅瀬ではダイバーがギャフ(魚鉤)でひっかけてタコを捕獲する[645]。バハ・カリフォルニア・スル州では、水深20–50 m の岩場に5–50個の罠を仕掛ける漁が行われる[645]。カニを付けた30本の引き縄を小舟で曳き、タコが上ってきた際に網で掬って獲る漁法も行われる[670]。
大西洋側のカリブ海やメキシコ湾では蛸壺による漁が行われている[670]。メキシコ湾のユカタン半島沖合ではマヤダコ Octopus maya が疑似餌による延縄漁で主要な魚種として獲られ[652]、1970年頃には10,000 t を超える漁獲量があった[671]。
漁法
[編集]蛸壺漁法
[編集]現代ではヨーロッパの西海岸から東アジアにかけて、広く蛸壺(たこ壺、タコつぼ)を用いたタコ漁が行われている[653]。これには4000年以上の歴史があり、古代エジプトでも海中に沈めた素焼きの壺を用いてタコを漁獲していたことが知られている[653]。古くは陶器であり、プラスチック製の蛸壺に置き換わったが、さらに近年では軽くて扱いやすい籠罠(蛸籠)に移行しつつある[171]。
日本で漁獲されるタコの半分は蛸壺または蛸箱などトラップによる漁法で漁獲されたものである[618]。狭い岩の隙間に潜り込む習性を利用した蛸壺漁業や蛸箱漁業は、タコ漁業独特のものである。蛸壺の内部が汚れていると入らないため、内部の付着生物や餌の残滓を清掃して用いる[164][171][172]。同様に、潮流が激しく石の表面が掃除されるような環境を好むため、北海道では「あぶら石のあるところには蛸がいる」といわれる[153]。蛸壺漁は1500 m 程度の延縄に、約150個の壺を吊るして行われる[618]。そのうち1割程度に入っていれば大漁であるとされる[618]。マダコ漁に用いる蛸壺は伝統的には素焼きの壺であったが、戦後からかまぼこ型のセメント製蓋付きトラップや、硬質ビニル製トラップも用いられるようになった[618][171]。蛸壺には地域性があり、瀬戸内海東部では素焼きのものであるが、周防灘では釉薬をかけたものが用いられる[171]。
イイダコ Amphioctopus fangsiao のような小型のタコには、小型の蛸壺のような人工物だけでなく、アカニシなどの腹足類や大型二枚貝の貝殻も利用される[618][171][175]。インドやマレー半島でも巻貝の貝殻を用いたタコ漁が行われ[670]、特に南インドではクモガイの貝殻を用いることが知られている[654]。
ミズダコのような大型のタコには蛸箱(タコ箱)が用いられる[618][672]。蛸箱は縦45 cm、横33 cm、高さ19 cm の箱に、16×12 cm の楕円か一辺19 cm の正方形の穴が開いた構造をしており、餌などは用いられない[672]。木製だけでなくポリエチレン製の蛸箱もある[648]。ミズダコはそのほか、樽流しや蛸籠(たこ篭)などでも漁獲される[672]。
海外では、筌を用いる地域もある[654]。イタリアでは蛸壺だけでなく、長方形の筌も用いられる[654]。北アフリカのチュニジアでは、ナツメヤシの枝で編んだ釣鐘型の筌が用いられている[654]。
曳網漁
[編集]近代的なタコ漁では、底曳網によるタコ漁も行われる[673]。しかし、目的外の生物の混獲や、珊瑚や海藻などの損傷など、底生生物の生息環境を攪乱してしまうため、不買運動や規制が行われている[674]。また、幼いタコも捕獲してしまい、リリースされたとしてもダメージを受け死んでしまうことが多い[656]。
日本で漁獲されるタコの1/3は曳網漁で獲られたものである[618]。これには沿岸の小型底曳網、沖合底曳網、船曳網などが含まれる[618]。福島県では、ミズダコ Enteroctopus dofleini やヤナギダコ 'Octopus' conispadiceus はほとんどが底曳網により漁獲されている[497]。
釣り
[編集]古くから釣りによるタコ漁(蛸釣[209])も行われている。古代ギリシアでは生き餌を用いた釣りが行われており、簗による漁とともにアリストテレスによる記録がある[673]。
日本では伝統的に蛸賺し(たこすかし)と呼ばれる漁法が行われ、竿の先に餌や疑似餌をつけて誘い寄せてタコを獲った[525][209]。蛸賺しは蛸おらぎや蛸さぶき、蛸ねりなどとも呼ばれる[525][209]。伊予国長浜(現在の愛媛県大洲市)では、6寸程度の板に甲羅を剥がしたカニと釣り針を付けた「スイチョウ」と呼ばれる道具を用いてタコを釣った[486]。
イイダコは釣りで漁獲され、イイダコテンヤと呼ばれるおもりのついた針を用いる方法が一般的である[675][348][676]。イイダコは好物の二枚貝と似た白色のものを好む傾向があるとされ、テンヤにはラッキョウや白いラッキョウ形の陶器を用いるのが主流である[675][677][348]。前者は特に関東地方、後者は関西から中国地方にかけてで一般的である[675]。ネギの白い部分、豚の脂身などが用いられることもある[675][348]。香川県ではテンヤが底曳網に絡まり、漁業に支障を来す被害が続いているほか、漁獲量の激減により、釣り客への呼びかけが行われている[676]。
沖縄ではワモンダコが「島だこ」と呼ばれて親しまれ、釣りなどで漁獲される[678][注釈 66]。対し、同音の標準和名を持つシマダコ Callistoctopus ornatus は「しがや」や「しーがい」と呼ばれ、こちらも釣りで捕獲される[680]。平安座島ではウデナガカクレダコが「ンヌジグワァ」と呼ばれ[681]、釣り糸にイモガイを等間隔に括りつけた「ンヌジベント」と呼ばれる仕掛けを用い、手繰り寄せておびき寄せた後に掴んで捕らえられる[682]。
ハワイ近海では疑似餌を用いたタコ漁が行われる[673][666]。古くはタカラガイの貝殻をルアーとして用いており、現代ではカニを模したルアーを用いる[673]。長い釣り糸に疑似餌を取りつけて海底近くを這わせ、返しのない針数本で引き揚げる[673]。
流し釣り
[編集]餌をつけない針金で引っ掛ける空釣り(からづり)漁法も行われる[618]。北海道の太平洋沿岸(主に道東)では、冬から春にかけて、ヤナギダコが空釣り縄で漁獲される[683][684]。これは餌の付いていない針を海底に這わせ、移動するタコを引っ掛けることにより漁獲する漁法である[683]。空釣り縄では、ヤメと呼ばれる針と枝縄のセットが笊に100本分ずつ仕掛けられ、縄を繋いで投縄される[684]。1放しの縄(約1,800 m)には笊50鉢分の仕掛けが取り付けられ、両端にはボンデンと呼ばれる浮標が立てられる[684]。
いさりびきでは、「イサリ」と呼ばれる鉤が付いた漁具に餌を付けてタコのいる海底を曳き、釣り上げる[685][32][686]。北海道古平町では、明治45年(1912年)に自家用としていさりびきの記録が残っている[32]。ニシン漁の終わるころから出漁し、それぞれの漁期のつなぎ漁として漁獲されていた[32]。盛漁期は5–6月[32]。手釣りのいさりびきは明治時代から行われていたが、1958年に茨城県の漁法を改良した樽流しが北海道のタコ漁に導入された[685]。樽流しは宗谷北部や道南日本海の主要な漁法となっている[685]。海底を引きずる長さの釣り糸の先に樽といさりを1個ずつ付け、小型船から20個ほど流す[685]。
また、北海道でアブラツノザメやシャコなどを餌とした延縄漁が空釣りに並び盛んに行われていたが、1955年以降にはほとんど行われなくなった[648]。
銛
[編集]銛やヤス(簎)、鉤による漁も行われる[670]。これが最も古い漁法であるとされ、熱帯地域で行われる[670]。例えば、モーリシャスなどでは銛や徒手によりタコを捕獲する[673]。珊瑚礁が分布する琉球列島でも、その隙間に隠れるタコを狙った銛による漁が行われる[650][679]。日本ではほかに、山陰の但馬海岸や若狭湾、新潟県の佐渡島や粟島、山形県の飛島、北海道の留萌・天塩の海岸でタコの突き漁が行われる[649]。
タコを捕らえるのに用いる鉤は蛸鉤(たこかぎ)と呼ばれ、長い竿の先に鉤を取り付けて用いられる[161][209]。佐渡では「タカカギ」と呼ばれ、長さ約9 m、先端が10本程度に分かれている道具を用いた[649]。飛島では蛸穴の中のタコにはマガリヤス(曲がり簎)、出ているタコには直線状のノヤスを用いた[649]。八重山諸島では、イグン(イングン)と呼ばれる、僅かに曲線を描いた棒状の1本歯を持つ銛を用いて蛸穴のタコを突く[650]。琉球列島の他の地域ではウギンやウジムと呼ばれ、16世紀の文献『おもろそうし』にも「いぎょも」と呼ばれる漁具が登場する[650]。
但馬海岸(兵庫県)や赤間関(現山口県下関市)では、夜に舟で篝火や松明を焚き、集まったタコを捕獲したと伝わる[649][486]。但馬海岸ではヤスで突き[649]、赤間関では徒手や打ち鉤によりタコを捕らえた[486]。
その他のタコ漁
[編集]長崎県五島市の福江島では、干潮の時に、岩礁に生息するマメダコ 'Octopus' parvus に塩を吹きかけて捕らえるマメダコ捕りが行われる[687]。かつては家庭の竈から出た灰を吹きかけて捕まえられ、「灰吹きダコ」や「ヒャーダコ」などの方言名で知られる[687]。
タコを穴から引きずり出す方法は各地で様々なものが用いられ、日本やオセアニアでは天敵であるウツボの死骸を投げ入れたり、ナマコの毒や石灰などを用いた[688]。地中海ではキク科植物を用いた[556]。アリストテレスの『動物誌』にも言及があり、ギリシャの漁師は現在でもムカシヨモギ属を用いてタコを捕らえるとされる[556]。タバコでも同様にタコが岩から離れるとされる[556]。また、バミューダ諸島では蛸穴にパン粉と大量の塩を混ぜた団子を差し込み、タコを穴から出して捕らえる[556]。
養殖
[編集]漁獲圧が高まってタコが減少し、タコ養殖への関心が高まった[689]。日本、オーストラリア、スペイン、メキシコ、イタリア、中国など、世界中で養殖の研究が行われているが、商業用の養殖には長年にわたって成功していなかった[690][689]。稚ダコの成長には生き餌が必要であり、養殖には場所も人手もかかるためである[691][692]。また、稚ダコはヤムシやカイアシ類など小型の動物プランクトンに襲われ、傷ついて死滅してしまうこともある[693]。
養殖にかかわる一つ目の課題は孵化後の餌の供給であり、これは日本で1960年代に解決された[694][695]。マダコの稚仔に甲殻類の幼生を餌として与えると、浮遊期の幼生を着底まで育てることができる[694][695][696]。しかし、甲殻類の幼生の親を野外で捕獲して利用する天然頼みのもので、多くの餌生物を必要とし、完全養殖には至らなかった[694][695][696]。
また、稚ダコの安定した飼育法はタコの養殖のボトルネックの一つであり、活発に研究されてきた[697]。1960年代以降の研究では人工的に孵化させたアルテミアでも飼育できるようになった[694]。アルテミア単体では必要な栄養素が不足するため、ドコサヘキサエン酸やエイコサペンタエン酸をアルテミア幼生に与えてからそれを食べさせることで、大量培養可能な飼料での育成が可能になった[694]。2000年代の日本では、浜崎活幸と竹内俊郎らにより、浮遊期の生残率と成長率を上げる研究が行われた[697]。餌としてアルテミア以外にイカナゴのスライスを与え、飼育水にナンノクロロプシス Nannochloropsis を添加することでマダコが摂取する餌の栄養価を高めることに成功した[697]。
世界初のタコの完全養殖は2004年にチチュウカイマダコ Octopus vulgaris で、8か月を経て孵化から成体までの飼育成功が報告された[697][698]。日本では2017年に世界で2番目にニッスイ(当時の旧日本水産)がマダコの完全養殖に成功している[692][699][700][701]。しかし、いずれも2020年代に入るまで商業ベースには到達していなかった。
浮遊期から着床期に至るまでの生残率は低いままで[692]、餌以外の要因が考えられた[702]。團重樹らは水槽内のマダコ稚仔を観察し、エアレーションによる下降流が稚仔の成長を妨げていることを明らかにし[702]、2018年にこれを改善する設計の水槽を発表した[703]。浮遊期の擬幼生は外套腔の海水を漏斗から噴出して得られるジェット推進により水中に留まっている[702]。餌を捕獲して水槽の底に運ばれた擬幼生は浮上するために餌を捨てて上昇を試みるが、餌を十分に摂取できず衰弱してしまう[702]。そこで、水槽の中央にパイプを設置して水槽底面から水流を生み出すことで[702]、水槽内に湧昇流を生み、生残率が格段に上昇した[703]。
メキシコではマダコ属のマヤダコ Octopus maya の養殖が試みられており一定の成果が上がっている[704]。タコの養殖は技術的には確立されていたが、商業的には高い知能を持つタコの養殖はハードルが高かったが[701]、2021年、世界で初めてカナリア諸島において、スペインの水産会社ヌエバペスカノバによりタコの商業的な養殖がはじまった[705]。
養殖反対活動
[編集]タコを食べる文化がない英米圏では、研究における規制や養殖の禁止を求める動きが相次いだ。
2012年に国際的な脳科学者のグループが発表した「ケンブリッジ意識宣言 (The Cambridge Declaration on Consciousness)」では、タコの神経系は、鳥類や哺乳類と同様に意識と看做すのに十分な主観的体験ができると明記された[706][707]。イギリスでは、タコを含む頭足類は研究対象としては脊椎動物と同様に扱われ、「痛み、苦しみ、ストレス、持続する苦痛」を与えかねない実験から法的に保護された動物となっており、EUも脊椎動物と同様の規制を求めている[706]。タコは高等動物として配慮を要するとする頭足類の研究者がいるいっぽうで[708]、タコの神経系や痛覚の経路の仕組みは完全には理解されておらず、どのように扱えば実験条件として適切かや、実際にタコの不快感を和らげるのに効果があるのかすら分からないという指摘もあった[706]。
2021年になると、イギリスの Jonathan Birch らは、300以上の科学的研究を調査に、タコは「感性のある存在」であり、喜び、興奮だけでなく、痛み、苦痛、害も経験できるという「強力な科学的証拠」があると結論付けた[709]。この調査を受け、2021年11月に、イギリス政府の審査委員会は「タコやカニや大型エビにも苦痛の感覚がある」として、同国で審議されている動物福祉法案の保護対象に感覚をもつ動物として追加した[710]。前述の報告書の著者らは、大量のタコを近接して飼うと、ストレスや衝突を生み、10–15%という高い死亡率に繋がるため、容認出来ないと述べ、高い動物福祉が要求されるタコ養殖は「不可能」と論じている[711]。 また、タコの商業養殖の実現が間近となっていることを受け、イギリス政府は将来「輸入養殖タコの禁止を検討する可能性がある」ともいう[710]。
実際に商業的な養殖がおこなわれるようになったことを受けて、2024年7月25日にはアメリカ合衆国議会において、「非倫理的な方法で生産されたタコの養殖および取引に反対する法律 (Opposing the Cultivation and Trade of Octopus Produced through Unethical Strategies Act[注釈 67])」案が提出された[712]。これは絶滅危惧種の保護のように天然漁業を規制するものではなく、動物の権利や動物福祉[713]の観点からアメリカにおける商業的なタコ養殖事業を禁止したり、アメリカ海洋大気庁にタコの漁獲方法に関するデータの収集を義務づけることなどが盛り込まれている[714]。アメリカのワシントン州は世界で初めてタコ養殖を法的に禁止した[715]。2024年9月27日には、全米で2番目にカリフォルニア州でタコの養殖や養殖タコの輸入を禁止する法律が成立した[716][717]。ハワイ州では、タコの養殖を禁止する法案が提出されている[718]。
利用
[編集]飼育と展示
[編集]水質に敏感であり、濾過循環し続けた海水では長生きできないとされる[719]。
底生の無触毛亜目のタコは、日本ではマダコ[720][721]やミズダコ[722][723][724]などが、海外でもチチュウカイマダコ[725][726][727] やカリフォルニアツースポットダコ[728]が水族館でよく飼育される。ドイツ・オーバーハウゼンの水族館 Sea Life Oberhausen では、「タコのパウル (Paul der Krake)」と呼ばれる Octopus vulgaris が飼育され、2010 FIFAワールドカップ の結果の「予言」を行ったことでよく知られている[182][278]。ヒョウモンダコも長期間ではないが、飼育されることがある[729]。ほかにウデナガカクレダコ、ミミックオクトパス、ブンダープス Wunderpus photogenicus などが水族館での飼育のために生きたまま捕獲された記録がある[652]。
それに対し、浮遊性の無触毛亜目や深海性の有触毛亜目のタコの飼育例は少なく、前者ではアオイガイやタコブネ[730][731]が、後者ではメンダコやオオメンダコがごく短期間飼育されるのみである[732][733][734][735]。
しかし、前述の通りマダコでも完全養殖は難しく、稚仔の飼育の難易度が高いため、ミズダコなどでは世代を回した飼育は行われていない[724]。
哺乳類の動物飼育の現場では、その飼育環境を良くする「エンリッチメント」が叫ばれているが、タコについても知能が高いため、退屈しないように刺激を絶やさないようにする工夫が行われることがある[286]。
タコは脊椎動物のような骨を持たず柔軟であるため[124]、口器が通る大きさなら非常に狭い空間でも通り抜ける事ができ[736]、水族館で飼育されているタコが脱走することもある[419][721][737]。脱走の最中に死んでしまうこともままある[719]。
バイオミメティクス
[編集]タコの腕はあらゆる方向に自在に曲げることができ、2倍にも伸長することができるうえ、失っても完全に再生する能力を持つため、神経学の研究やロボットのモデルにも用いられている[738]。しなやかに曲がり、吸盤を具えたタコの腕に着想を得た、あらゆるものを掴むことのできるソフトロボットなどが開発されている[739][740]。
腕は脳神経節がすべて制御しているわけではなく、それぞれの腕の先端にまで神経索が通り、脳と無関係に運動できる[738]。また、繊細な作業も力強い行動も行うことができ、それぞれの腕同士を連携させることもできる[738]。この腕同士のコミュニケーションや分散知能システムについても自律型ロボットへの応用が期待され、研究されている[738]。
腕に並んだ吸盤も工学的に研究され、ロボットのモデルとなっている。吸盤はそれぞれに思い思いに伸びたり、物を撮んだり放したりすることができる[738]。タコの吸盤を模倣したロボットハンド(真空グリッパ)が開発されている[741]
また、タコは素早く精巧な体色変化を行い、反射性や質感、明るさを周囲の環境に合わせて変化させることができる[245]。超音波による探知器は古くから軍事的な研究がなされてきたため、それを回避する技術の開発が進められている[742]。しかし、そういった仕組みを用いないタコの擬態も軍事利用を目指して、アメリカ海軍などから資金提供を受けた研究が進んでいる[743]。タコは瞬時に周囲の背景に合わせた体色変化ができるため、眼を経由した視覚情報以外にも、皮膚で光や色を感知できる仕組みがあるのではないかと考えられている[744]。タコの擬態の仕組みを模倣し、色や光を感じ取ってその通りに模倣できる新素材の開発が進められている[743]。
文化
[編集]タコはその見た目から、世界各地でキャラクターのモチーフとなっており、神話や伝承にも登場する。
地中海沿岸諸国では古来、タコは食用であり、身近な存在であった[45]。例えば、紀元前1,600年頃のクレタ文明やミノア文明では貨幣にタコが描かれ、紀元前1,200年頃のミケーネ文明でも鐙壺の図案に用いられた[466]。キプロスやクノッソスの古陶にもタコが描かれる[745]。また、アリストテレス(紀元前384年 - 紀元前322年)は著作『動物誌』 (Historia Animalium) の中でアオイガイ属 Argonauta やイチレツダコ Eledone について述べている[45]。
日本では食材としての身近さから、「タコ文化」が根付いている[494]。その形態がユーモラスであり、様々なキャラクターに用いられる[494]。漫画の主人公として登場するほか、玩具や商品キャラクターにもなっている[746]。茹でると真っ赤になるなどといった性質から、茹でたあとの赤色で表現されることがほとんどで[745]、しばしば、胴体を「頭」に、漏斗を突き出た「口」に準え、額に当たる部分に鉢巻を巻いた姿で描かれ[745][47]、しばしば擬人化される[36]。例えば、歌川貞秀『新板化物づくし』には鉢巻をした巨大な蛸が舟を襲う様子が描かれている[747]。タコの姿を模した公園の遊具(滑り台)は「タコ滑り台」や「タコ遊具」と呼ばれ、日本各地に200基ほど見られる[748][749]。また、飾り切りをしたソーセージは「たこさんウィンナー」と呼ばれ、しばしば弁当に入れて親しまれる[750]。
日本ではタコは縁起物として用いられ、おせち料理などにも入れられる[751][752]。茹で上げると赤くなり、めでたい紅白模様であるとされるほか、赤は魔除けの意味があり、墨を吐く生態を「苦難を煙に巻く」と捉え、また名は「多幸」に通ずるとされる[751][752]。
それに対し、ヨーロッパ中北部では「悪魔の魚 (devilfish)」とも呼ばれ、忌み嫌われてきた[593][161][16][36]。これはタコは近づく魚を引き寄せて捕食するため、誘惑者や裏切り者、悪魔と同一視されたことによるとされる[556]。下記のクラーケンが船を襲うとされるように[753]、西洋文学ではタコは海の悪魔として描かれてきた[754]。日本でのタコのイメージとは違い、8本の腕とそれについた吸盤が強調されて描かれる傾向がある[755]。また、多くの長い腕を持つ姿から、1877年にイギリスのフレデリック・ローズにより敵国であるロシアを巨大なタコの姿に描いた風刺地図が描かれた[756]。それを基にフランスや日本、ナチス政権下のドイツなどで、多くの地図製作者に踏襲され、プロパガンダの意図を持ち侵略者をタコに準えた地図が制作された[756]。日本でも、日露戦争開戦直後の1904年に発行された『滑稽欧亜外交地図』がよく知られる[757]。
しかし、近年ではそういった国でも多くのタコをテーマとした商品が急増し、受け入れられている[466][758]。帽子、スカーフやネクタイ、Tシャツ、クッションなどの柄だけでなく、マウスパッドや携帯電話のケースなどコンピューターアクセサリ、マグカップや皿などの食器など、タコをモチーフとした様々な製品が作られている[400]。タトゥーの図案にもなっている[466]。2015年にはユニコードコンソーシアムにより、国際的な文字コードの業界標準規格である Unicode にタコの絵文字(🐙、U+1F419)が追加された[402]。
神話・伝承
[編集]その特徴的な姿は人間の想像力をかきたて、世界各地の様々な伝承に登場し、またモチーフとされる[35][16]。
例えば、何本もの腕を持つ北欧の伝説に登場する海の怪物、クラーケンはよく知られ、文学や伝説、絵画や映画の至る所に登場する[35]。巨大なタコとイカを合体させたような姿で描かれ、深海に潜んで船を追いかけ、船員を貪り食うとされる[753]。これは13世紀のアイスランドの伝説上の生物ハーヴグーヴァが基になったと考えられており[759]、古代の北欧神話には登場しない。フランスの船乗りたちがアンゴラ沖で巨大なタコに襲われたという話が伝わり、ピエール・ドニ・ド・モンフォールにより「巨大タコ (Le Poulpe Colossal)」の仕業とされ、1810年に著作中で描かれた[759][753][760]。モンフォールは巨大タコとクラーケンの2種の大蛸を区別したが[759][760]、後世には同一視されることもあった[761]。
またタコは、『オデュッセイア』に登場する12本足6頭の怪物スキュラと混同されることもあった[36]。ダニエル・コーエンはギリシア神話のヒュドラはタコがモチーフとしている[548]。
大プリニウス(紀元23年–79年)の『博物誌』には、270 kg 以上の体重を持ち、村人から魚を奪う巨大な蛸についての記述もある[35]。また、ここにはタコは自分の腕を食べて、再生するとも書かれ、それゆえキリスト教世界では守銭奴の象徴ともされた[36]。
イタリアリグーリア州のテッラーロでは、巨大蛸が教会の鐘を鳴らして迫りくる敵の侵攻を報せ、村を救ったと伝わる[35]。そのため、テッラーロではドアの装飾など様々なところでそのオマージュが見られる[35]。
西インド諸島のアンドロス島では、多くの巻いた腕で人間を捕える「ルクサ (Lucsa)」と呼ばれる怪物が伝えられ、これは巨大なタコともされる[762]。
ハワイの神話では、タコは神代の唯一の生き残りとされる[35]。ハワイの創造神話に登場する海神はカナロアと呼ばれる[763]。キリバスのギルバート諸島では、タコの神ナ・キカが海底から島々を強く押し上げたと伝わる[35]。
ネズミとタコ
[編集]オセアニアの各地では、「ネズミとタコ」の伝説が知られ、タコはネズミに深い恨みを持っているとされる[482][666][667]。地域によっては詳細が異なり、様々なバリエーションが存在する。ネズミと小鳥とタコがココヤシの殻を舟にして海へ出た[666]。しかし、小鳥がココヤシの殻をつついて舟に穴を開けて沈んでしまった[666]。小鳥は翼で飛び立ってしまったが、親切なタコは泳ぎの苦手なネズミを乗せて岸まで運んであげた[666]。しかし、ネズミは礼を言うどころかタコを「禿げ頭!」と罵って立ち去った[666]。そのためタコは憤慨し、ネズミを恨み続けるようになったため、タコはマカフェケと呼ばれるネズミを模した漁具で捕獲されると伝わる[666]。
ニューカレドニア島イヤンゲーヌに伝わる話「ネズミとサギ」では、登場する鳥はサギであり、ネズミと二人でサトウキビでできた舟に乗って魚を捕りに行く[667]。サギが魚を捕っている間、空腹のネズミがサトウキビでできた舟をかじって無くなってしまった[667]。呆れたサギが飛んで帰ってしまい、泣いたネズミの涙がタコに届いた[667]。タコは親切にネズミを運ぶが、この話でもやはり「禿げ頭」と罵られて逃げられ憤慨する[667]。
サモアでは鳥はクイナであり、ヤドカリとクイナとネズミの3匹が舟で旅に出る[764]。舟は嵐で沈んでしまい、ヤドカリは潜って、クイナは飛んで去ってしまう[764]。ネズミは現れたタコに浜まで運んでもらうが、ネズミは途中でこっそりタコの頭に糞をして、陸に着くとそれを馬鹿にした[764]。マーシャル諸島では同様の言い伝えからタコの墨汁嚢の内容物を「ネズミの糞」と呼び、これを食べる人間は卑しまれる[764]。
日本の大蛸
[編集]日本でも、古くから大蛸の伝説などの説話や俗信が伝わる[209][16][762]。多くの場合、巨大な蛸入道の姿で波打ち際や海上の船の前に現れる[765]。牛馬や猿を驚かせたり捕らえたりすることもあれば、人を海中に引き込む話も多い[765]。例えば、津軽では大蛸が牛を捕えた伝承が伝わる[16]。『大和本草』には、夜に海辺に忍び込んで牛馬を攫う大蛸が巨大な蟒蛇と格闘し、海中に引き込んだという伝説が記される[16]。また、江戸中期の『日本山海名産図会』では、「滑川の大蛸」と呼ばれるタコが描かれる[766][16]。
人間が捕らえられる伝承の多くは、昼寝をしている大蛸の足(腕)を1日1本ずつ切り取って食べたところで欲が出て、最後の日に残った足で海中に引き込まれるというものである[16][765]。香川県には、「ヤザイモン蛸」という大蛸の怪が伝わる[767]。八左兵門という男が昼寝している大蛸の足を1日1本ずつ足を切って持って帰り、あと1本というときに、大蛸が八左兵門を海に引き込んだという[767]。同様に神奈川県旧北下浦村(現横須賀市)でも、漁師が磯で大蛸を見つけ、1本で桶がいっぱいになる大きな腕を一本ずつ切っていったところ、8日目に海に引きずり込まれたという話が伝わり、この場所を七桶の里という[765]。千葉県南部では、タコは恐ろしい動物で人の命を取ると言われ、次のような話が伝わる[548]。千葉県館山市布良の番太の女房が海辺にいた大蛸の足を毎日1本ずつ切っては帰り、食べていたところ、8日目に最後の1本を切ろうとしたときに高波に呑まれ、タコの足に巻かれて沖に連れ去られた[548]。
愛媛県今治市の大三島では、大蛸の足という話が伝わる[768]。大三島の沖のじじ岩、ばば岩(婆ヶ岩[765])の名で知られる二つ岩の近くに潮干狩りに出かけた17歳の娘、お浜が二つ岩の主の大蛸に見つめられて逃げ帰ったところ、後日大蛸が家を訪れて婚姻を迫った[768]。返事をしなかったところ大蛸が暴れて暴風を起こしたので、嫁に行くことになったが、その際大蛸の8本足が2本足になるまで足を切り落とさせてくれと約束した[768]。毎日1本ずつ切っていったが、6本目を切り終えた次の日に残りの足も切ろうとしたところ、大蛸はお浜を攫って海へ消えて行った[768]。
福井県旧東浦村(現敦賀市)に伝わる話では、貝を採るために潜った孫介がなかなか浮き上がってこないので探してみると、水面下三尺のところを回っており、周囲五尺の柱に繋がれていた[765]。引き上げてみると柱と思っていたのは大蛸の足だった[765]。
兵庫県明石市では、蛸壺漁の由来に関して「明石の大ダコ」の言い伝えがある[486][769]。林崎に西窓后と東窓后の2人の后が住んでいたが、8–12 km の腕を持つ明石の海にすむ大蛸が后たちに思いを寄せ、毎晩腕を伸ばしてちょっかいをかけた[486][769]。二見浦の武士、浮須三郎左衛門が退治しようと追いかけると、大蛸は壺に隠れてしまった[486][769]。蛸壺に隠れた大蛸を陸に引き上げ、生捕りにしたものの腕を伸ばして暴れたので、三郎左衛門は一本ずつ刀で切り落としたが、大蛸が暴れて蛸壺をひっくり返してしまった[769]。大蛸は山伏に姿を変え遁走したが、林神社のあたりで追いつめ、4つに叩き切ると、そのまま大きな石になった[769]。これが元となり、蛸壺漁が始まったと伝わる[486][769]。
新潟県佐渡島の相川では、大蛸が馬を捕えて乗り回して暴れていたので獲らえたところ、町内全戸に配っても余るほどだったと書かれた「蛸配帳(たこくばりちょう)」が明和まで伝えられていたとされる[16][770]。また、佐渡では天保8年に、眼が3寸の大蛸を退治対峙した記録があり、眼は金色に光り、頭はカボチャ大で怒ると朱くなったとされる[762]。越後や佐渡では、海坊主は大蛸が変化したものだという俗説が伝わる[762]。
京都府与謝郡には、「衣蛸」(ころもだこ)という蛸の妖怪が伝わる[771]。船が近づくと、大蛸に変化して海中に引きずり込むとして恐れられる[771]。
アイヌの伝承にはラートシカムイやアッコㇿカムイと呼ばれる巨大な蛸が登場する[772][773][774]。
蛇蛸
[編集]蛇が水際で蛸に変わる「蛇蛸(蛇だこ[548]、へびだこ)」の伝説も各地に伝わる[765][775]。こうして変化したタコは7本足で人を襲うとも言われ、北陸から北日本にかけて広まる[36][548]。『笈埃随筆』には、蛇が蛸に変化する伝説が記されている[16]。越前に行った商人が、地元の人々が誘い合わせて蛇が蛸になるのを見に行くのを耳にしてついていった[16]。すると山の裾から蛇が現れて海へ泳ぎ出て、尾で何度か水面を叩くと、尾が裂けて脚のようになった[16]。やがて半身が蛇、半身が蛸になり、完全に蛸に変化した[16]。壱岐でもカラスヘビが海辺で尾を石に打ち付けて割き、海に入ってタコになるのを見たと伝わる[548]。若狭の小浜では、梅雨になると蛇が海でタコになるとされ、住民はそれを見分けて蛇のほうは食べなかったとされる[548]。佐渡ではこれを蛇だこと呼び、その正体はムラサキダコではないかともいわれる[548]。
竜宮伝説
[編集]タコにまつわる竜宮伝説も各地に伝わる[16]。宮城県南三陸町の志津川湾に浮かぶ竹島にも竜宮伝説が知られる[16]。浜の若者が次々行方不明になり、不審に思った気丈夫な男が月下に海を見張ると、音楽が聞こえてきた[16]。小舟で音楽の方へ向かうと御殿があり、美女に馳走を振舞われた[16]。美女の視線が冷たいことを怪しみ懐の小刀で突いたところ、気を失ってしまい目が覚めると散乱する白骨の脇でタコが死んでいたと伝わる[16]。
松前のカッパ
[編集]北海道松前郡では、海中で婦人がタコの足に触れると妊娠するという迷信がある[776]。医者が婦人の難産を治療したところ、タコの足が2本現れたので切断したが、残りの部分は出てこず、産婦は死んでしまった[776]。タコが腹に吸いついて出てこなかったのだという[776]。松前ではこのような異形を「カッパ」と呼び、それが海に入ると「ヤドリ」になるという[765][776]。
上陸するタコ
[編集]タコは陸上でも30分以上動き回ることができるため、「夜中に畑の大根を盗む」という逸話が知られる[777][475]。畑の芋を掘って食べたり、墓地に埋葬されたばかりの新仏を盗み海へ逃げ帰ったりする例も知られる[765]。
タコは里芋を好むともされ、6本の足で陸上を歩み、2本の腕で土を掘って芋を盗むとされる[36]。これは里芋と煮た料理が親しまれることからと考えられている[36]。漫画家の小野佐世男はタコが掘った芋を抱えて浜へ戻るのを見たという話をラジオ番組などで語っている[765]。
伊勢の飯野郡では、知恵を持ち力が強い7本足のタコがおり、悪行をなすため忌まれていた[548]。しかし悪い餌を食べていたため人が食べるわけにもいかず、年を経て化物になった[490]。7本足のタコは時々陸に上がって野の墓に行き、新仏を盗んでいくとされた[490]。また、青森県旧岩崎村(現深浦町)では、文化3–4年に病没者を火葬している際に沖から大蛸が現れて火を消し埋葬者を搦めて持ち出そうとしたが、村人が切り殺すと中から人馬の骨が見つかったと伝わる[765]。
三重県鳥羽市にある畦蛸(あだこ)では、「嵐の日に大波に乗って蛸が田圃の畦にやってきた」や「月夜になると蛸が畦の水路まで泳ぎ登ってきた」などの伝承が伝わり、その地名に名を残している[506][544]。
2002年に放送されたテレビ番組『フューチャー・イズ・ワイルド』では、空想上の1億年後の未来の生物として「スワンパス (swampus)」と呼ばれる半陸生のタコが登場する[778]。
信仰と行事
[編集]日本では古くからタコが民間療法にまつわる信仰対象とされてきた[513]。そのため、日本各地に蛸薬師や蛸地蔵が存在する[513]。
蛸薬師(たこやくし) は、祈願すると禿頭[209][490]や腫れ物などに霊験があると信じられている[513]。蛸薬師には、タコを食べないと誓ったり、蛸の絵の絵馬を上げたりして祈願される[209][513][538]。京都市中京区に所在する新京極の永福寺や、東京都目黒区の秋葉山成就院がよく知られる[209][513][490]。京都のものは、タコを禁食して祈れば疣や痔がすぐに治癒するとされ、『本朝俗諺志』(1746年)にも見える[513]。また、婦人病にも霊験あらたかとされる[779][36]。蛸薬師通の由来にもなった。目黒のものは薬師如来がタコに乗って海を渡ってきたと伝えられ、やはりタコを断って祈願すれば眼病や腫れ物に霊験があるとされる[513]。淡路島旧三原町にある薬師堂でも、絵馬にタコが描かれ、由来書には「漁夫の間には風習迷信があって、病を治すためには薬師如来に祈願し、ある期間や一生蛸を禁食するとか蛸を生け捕らない等の誓いを立てたものである」と書かれる[779]。
町田製薬の軟膏「吸出し青膏」は、「まるで蛸が吸い付くようにおできの膿を吸い出す」というイメージから「たこの吸出し」の愛称が付けられている[780][513][781][782]。たこ美とたこ之助という2匹のキャラクターが作られている[782]。
大阪府岸和田市にある天性寺は蛸地蔵(たこじぞう)と呼ばれる[513][783]。岸和田城落城の危機に、大蛸に乗った法師が数千のタコを従えて現れ、城を救ったという伝説がある[490][783]。この法師は地蔵の化身であり、後日城の堀から矢傷・玉傷を無数に負った地蔵が発見されたと言われる[783]。タコの絵馬が多く奉納され、家内安全や商売繁盛、安産などが祈願される[513]。また、南海本線蛸地蔵駅の由来にもなっている[513][784]。
愛媛県西予市明浜町(旧狩江村)にある春日神社では、あるとき御神体が上方に移そうと船で盗み出された際、三崎村名取で神罰を受けて難破し、御神体を海中に落してしまったところ、それを大蛸が海上に持ちあげ、地元の住民が拾って海岸に祀り、翌年狩江村民が現存する元の所に祀ったという伝承がある[513][785]。そのため狩江村民は蛸を捕まえず、今日に至るもタコを食べない習慣が残っている、と伝わる[513][785]。愛媛県三崎町正野の野坂権現でも同様の伝承が伝わり、海人はタコを口にしないと言われる[513]。岩手県久慈市宇部町でも漁師の守り神として「タコ神」が祀られ、漁師は決してタコを口にしない伝統が伝わる[513]。
愛知県知多郡南知多町の三河湾に浮かぶ日間賀島は「タコの島(多幸の島)」と呼ばれる[530][545][534]。日間賀島にはモニュメントやマンホールの蓋など、至る所でタコのキャラクターが見られる[530]。旧来タコ漁が盛んで、干ダコを作る伝統がある[641][786]。日間賀島では貞観4年の大地震で沈んだ寺の仏像が漁師によって引き上げられた時、仏像を守るように一匹の大蛸が巻きついていたという逸話があり[530][641]、それを曹洞宗安楽寺の阿弥陀座像の胎内仏として祀ったとされる[641][787]。そのため安楽寺は「たこ阿弥陀(章魚阿弥陀)」と通称される[530][786][787]。それ以来、旧暦正月3日に安楽寺にタコを供えて「蛸祭り」を行うようになった[641][787]。明治維新以降、この祭りは元日に日間賀神社で行われるようになり、同時に島にあるもう一社の八幡社にも干ダコが祀られる[641]。干ダコは蒸してから短冊状に切る「タコさばき」が行われ、神饌とされる[641][786]。もとは大漁祈願、安全長寿を祈る正月行事があり、それに安楽寺の由緒なども加わり発展したものだと考えられている[641][786]。昭和30年代まではこれが島の主要な行事であったが、現在ではタコ漁が衰退するとともに観光化が進み、夏(8月)に観光行事として、タコの供養と豊漁を祈願する「たこ祭り」が行われる[530][641][787]。ここでは、子供たちを対象とした蛸ダンスや蛸のつかみ取りなど娯楽イベントが行われる[641][787]。
『出雲国風土記』には、出雲国杵築御崎にいたタコを天羽々鷲(あめのはばわし)は捕らえ、運んで行った島を「蜛蝫島(たこしま)」[注釈 69]と呼んだとある[486][788]。蜛蝫島は現在の大根島とされ、「蜛蝫神社(たこじんじゃ)」がある[789]
タコは稲の成長の祈願にも関連している[513]。関西地方には半夏生にタコを食べる「半夏蛸」の習慣がある[513][790][475]。これはタコの腕を伸ばす様子を発育の良い稲に見立てたとも[513]、大地にタコのように吸い付いて[790]、稲の根が蛸足のようにしっかり根付くようにともされる[475][790]。愛媛県にも田植えのサンバイオロシ(田の神降ろし)の際に、タコの吸い付く習性に肖り苗の活着が早くなることを祈って、タコを供える呪術的風習が知られる[513]。
また、浴衣地に網目文を施した上にタコを描き、大漁を意図した図柄が用いられることもある[790]。歌川豊国『江戸名所百人美女 薬けんぼり』などに描かれる[790]。
日本では、タコを食べると瘧(マラリア)が再発するが、マラリア患者が1杯食べつくせば完治するという迷信があった[548]。また、伊勢山田では痰の薬に、沖縄には頭痛や虫下しの薬に用いた[548]。福岡県の玄界灘沿岸では「コヤスノガイ」と呼ばれるアオイガイの殻に水や湯を入れて妊婦に呑ませ、安産祈願を行う[225]。
愛媛県では、妊婦がタコの足を食べると生まれてくる子の髪の毛が縮れるという俗信があった[548]。朝鮮の俗信では、妊婦がタコを食べると骨のない子が生まれるとされた[556]。和歌山県では、タコを煮ている傍で笑うと顔が赤くなると言われた[548]。
かつて大阪では、春の彼岸と秋の彼岸に四天王寺境内に「蛸蛸(蛸々、たこたこ)」と呼ばれる大道芸人がいた[212][791]。一人は張りぼての大きな蛸を頭から被り、もう一人は戎の被り物をして張りぼての鯛を持ち踊った[212]。日清戦争以降は腰に張りぼての馬をつけ、玩具の剣を振り回す剣劇を行うようになった[212][791]。中国兵の首が落ちると「コレ一銭の泣き別れ」と言って入れ替りとなる[212]。それを「蛸々眼鏡」と呼ばれる万華鏡で覗かせ、見物料を稼いだ[212][791]。初めは1銭であったが、2銭、3銭となり、最後は5銭となって滅びた[212]。「天王寺名物、たこたこ眼鏡じゃい」[212]「とうさん、ぼんさん、眼鏡をお目々にしっかりつけて、ハイヨウ蛸ぢやいな、蛸ぢやいな」などの声で知られた[791]。
作品
[編集]日本ではタコは多くの場合、コミカルで親しみやすいキャラクターとして描かれる[521]。タコはそのものでなくても様々なキャラクターのモチーフとして登場する。例えば、日本では田河水泡の漫画『蛸の八ちゃん』や古谷三敏の『ダメおやじ』のキャラクター「タコ坊」などが挙げられる[494]。『蛸の八ちゃん』は海底から人間世界にやってきたタコの物語を描いた作品である[780]。1973年にぬいぐるみ劇として放送された日本の特撮テレビ番組『クレクレタコラ』では、公害によって怪獣化し陸に上がったフテクサレタコ「タコラ」が登場する[792]。巡音ルカの頭部だけをデフォルメし、髪の毛を脚に見立てたキャラクターは「たこルカ」と呼ばれる[793][794]。
ハワード・フィリップス・ラヴクラフトのクトゥルフ神話描かれる邪神クトゥルフはタコの頭部にコウモリの翼を持った巨大な軟体動物のような姿をしている[35]。これは他の作品にもオマージュされ、『サウスパーク』でもネタとして取り上げられている[35]。
小説・映画
[編集]西洋文学において、タコは長らく海の悪魔として描かれてきた[754]。かつては悪役であったタコは、現在では主人公としての立場を獲得することもある[795]。
ヴィクトル・ユゴーはクラーケンのイメージから、『海に働く人々』(1866年)で人間を襲うタコを描いた[36]。ジュール・ヴェルヌのSF小説『海底二万里』(1870年)では、タコが人間の太刀打ちできない敵として登場する[759][764][注釈 70]。それを基に制作された映画『海底六万哩』(1916年)では同様に敵はタコであったが、『海底二万哩』(1956年)ではイカをモチーフとしたクラーケンに変更されている[759]。『水爆と深海の怪物』(It Came from Beneath the Sea, 1955)でもジェット推進する巨大なタコが描かれている[797]。映画『テンタクルズ』(Tentacles, 1977)もクラーケンの伝説に由来し、大蛸が登場する[798]。アメリカのパニック映画『オクトパス』(Octopus, 2000)では、船や潜水艦を襲い、恐ろしい歯が生えた口に取り込むクラーケンが登場する[51]。ジェムソン・アイリッシュ・ウイスキーのコマーシャル映像でも巨大な酒好きのタコが登場する[51]。『メガ・シャークVSジャイアント・オクトパス』(Mega Shark vs Giant Octopus, 2009)では巨大なタコがサメをも仕留めている[483]。
2009年のアカデミー賞短編アニメ賞にノミネートされた『オクタポディ』(Oktapodi, 2007)では、タコの番が登場する[799]。2003年のディズニー映画『ファインディング・ニモ』にはオオメンダコのパールが[800][801]、『ファインディング・ドリー』にはミズダコのハンクが登場する[795][802]。ハンクは主人公ドリーの見方として、家族と再会させるべく人間を出し抜こうとする[795]。ニコロデオンのアニメ『スポンジ・ボブ』シリーズに登場するキャラクター「イカルド・テンタクルズ (Squidward J. Q. Tentacles)」は、どの言語でも名前からイカに間違われるが、タコがモチーフである[803]。2010年の『トイ・ストーリー3』では「ストレッチ (strech)」という名の紫色のタコのおもちゃが登場し、腕を伸ばしてお金をかき集める[736][804]。
映画「ジェームズ・ボンド」シリーズの『007/オクトパシー』には、女性窃盗密輸団の古い秘密指令の印にヒョウモンダコが用いられている[805]。シカゴ・フード映画祭で2011年に最優秀フード・ポルノ映画賞を受賞した短編映画『アモール・プルポ』(Amor pulpo, 2011)は女性がデートの支度をする場面の合間にタコが捕獲され調理されるシーンが映され、レストランにて供されるという作品である[806]。
1989年にディズニーが制作した映画『リトル・マーメイド』では、魔女アースラというキャラクターが登場するが、その動きはジャック・クストーが撮影したタコの動きがモデルであると言われる[807]。モバイルゲーム「ディズニー ツイステッドワンダーランド」では、『リトル・マーメイド』をテーマとした寮オクタヴィネルに、アースラのようにアズール・アーシェングロットというタコ脚(オクトピット)のキャラクターが登場する[808]。
俳句と詩
[編集]「蛸」や「章魚」は夏(三夏)の季語、「麦藁章魚」は仲夏の季語となっている[809]。
江戸時代の俳人である松尾芭蕉は、明石にて「蛸壺や はかなき夢を 夏の月」という俳句を詠み、柿本神社にその句碑が残っている[810][475]。出典は『猿蓑』で、「笈の小文」に収録されている[484]。正岡子規は「飯蛸の 手をひろげたる 檐端哉」や「冬枯や 蛸ぶら下る 煮賣茶屋」の句を詠み、『寒山落木』に収録される[811]。熊本県の俳人上村占魚は「章魚沈む そのとき海の 色をして」という句を詠んだ[484]。
萩原朔太郎の散文詩に「死なない蛸」がある[812][764]。水槽で餌を与えられないタコが自分の体を全て食べてしまい、意識だけの存在になって生き続ける[764]。
イギリスの詩では、やはりタコは恐ろしい存在として表現される。アルフレッド・テニスンはソネット The Kraken(1830年)を詠み、「数知れない巨大な突起 まどろむ青い海を巨大な腕でかき乱す (Unnumbered and enormous polypi Winnow with giant arms the slumbering green.)」と表現した[759]。
楽曲
[編集]1969年の『アビー・ロード』に収録されたビートルズの「オクトパス・ガーデン」はタコが蒐集したものを巣穴の周りに並べる様子がきっかけに生まれた楽曲である[813]。リンゴ・スターは『ビートルズアンソロジー』の中で当時を振り返り、サルデーニャ島での休暇中に船長から聞いた話を基に歌詞を書いたと語っている[814]。
日本では、「湖畔の宿」の替え歌として『タコ八の歌』が知られる[815]。
美術
[編集]伊藤若冲の『動植綵絵』「群魚図」には、様々な魚種に紛れて大きな泳ぐタコが描かれており、その一本の腕の先端にはもう1匹の小さなタコがしがみついている様子が描かれる[816][817]。歌川国芳の浮世絵『流行蛸のあそび』には、擬人化された様々なタコの様子が描かれる[818]。
タコの姿はパブリックアートのモチーフとしても見ることができる[402]。イタリアボローニャのモンタニョーラ公園にあるニンフの噴水の彫刻には、乙女の太腿に腕を巻き付かせるタコが彫られている[819]。スペインのビーゴには、前述の『海底二万里』を書いたヴェルヌとタコの銅像が設置されている[820]。テキサス州イーストオースティンの公園(ジェシー・アンドリュース・パーク)には、6 m の高さの紫色のタコの彫刻「オチョ (Ocho)」がある[402]。
ドキュメンタリー
[編集]ジャン・パンルヴェは、海洋生物のドキュメンタリーを得意としていた映画監督であり、タコを主題としたドキュメンタリーを制作している[736]。パンルヴェはタコの特性をしなやかなチューインガムのようだと形容した[736]。彼の処女作はまさに、『タコ』(La Pieuvre, 1928)であり、10分間のシュールレアリスム風なモノクロの短編サイレント映画であった[736]。パンルヴェによる短編映画『タコの性生活』(Les amours de la pieuvre, 1967)では、雄が雌の漏斗に交接腕を挿入する様子が描かれる[821]。
ドイツ・オーバーハウゼンの水族館 Sea Life Oberhausen で飼われていたOctopus vulgaris の「タコのパウル (Paul der Krake)」を主題とした長編ドキュメンタリー『超能力タコ、パウルの生涯』(The Life and Times of Paul the Psychic Octopus, 2012)が制作されている[822]。
2019年にアメリカのPBSが放映した Octopus: Making Contact は、生態学者のシールがタコを家に招待するドキュメンタリーである[795]。最初の放送で190万人に視聴され、インターネット上で大きな反響を得た[795]。
『オクトパスの神秘: 海の賢者は語る』(My Octopus Teacher, 2020)は、Netflixで配信されたドキュメンタリー映画で、南アフリカのケルプの森(ジャイアントケルプなどからなる藻場)で野生の O. vulgaris との信頼関係を築こうとする様子が描かれている[795]。この作品は2021年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を獲得した[795]。
2024年にはナショナル・ジオグラフィックが制作した『解明!神秘なるオクトパスの世界』(Secrets of the Octopus, 2024)がディズニープラスで配信されている[795][823]。水中で2年もの期間撮影され、知性を示すタコの姿が捉えられている[758]。
タコをモチーフとしたキャラクター
[編集]また、企業や自治体のキャラクターとなることもある。宮城県の南三陸復興ダコの会では、タコをモチーフにした「オクトパス君」というゆるキャラが存在する[824]。北海道函館市戸井地区では道内有数のミズダコ漁獲量を誇ることから、1988年の戸井町時代にタコが町魚に制定され[510]、合併後の現在もイメージキャラクター「トーパスちゃん」が親しまれる[825]。
サンリオのキャラクターには「チューチューターコ」がおり、ボーイフレンドはイカのコータくんである[826]。
ゲーム「ポケットモンスター」のシリーズでは、『ポケットモンスター 金・銀』からオクタンが登場する[827]。オクタンの名はオクトパスとタンクを掛け合わせたものだとされる[827]。また、『ポケットモンスター ソード・シールド』には、タタッコと、それが進化したオトスパスが登場する[828][829]。オトスパスはわざ「たこがため」を使う[829]。
腕と触手
[編集]タコの腕はスーパーヒーローや悪役のモデルになっている[738]。マーベル・コミックの作品にシリーズに登場するスパイダーマンの宿敵、ドクター・オクトパスは独立して動く腕を駆使する様子が描かれる[123]。この腕は3 t の物を持ち上げられるという設定がある[830]。
香港の公共交通機関が発行しているICカードは八達通(オクトパスカード)と名付けられ、様々な機能を持ち、タコの長く便利な腕を想起させるネーミングとなっている[123]。ポペットバルブの気密を保つために研磨を行う際、持ち手として取り付けるバルブラッパー(工具)はタコ棒という俗称で呼ばれる。先端にタコのような吸盤があり、これでバルブを吸いつけて作業する[831]。
また、タコの腕はしばしば淫らなイメージを持って扱われ、「触手もの」という一大ジャンルとなっている[832]。触手もののはじまりは19世紀初頭の日本の木版画である[832]。葛飾北斎の作とされる文化11年(1814年)に刊行された春画『喜能会之故真通』「蛸と海女」には女体に絡みつくタコが描かれている[521][832][16][548][注釈 71]。「蛸と海女」では海女が岩場で仰向けになり、両脚の間に大蛸が、口元には小蛸が、乳首や肢体には蛸の腕の先が巻き付いており、海女の両腕は大蛸の2本の腕を握りしめている[832]。昔の西洋の研究者はこれを凌辱の場面と誤解したが、合意のうえでの快楽を描いている[832]。これは根付のモチーフなどにもなっている[832]。現代でも、佐伯俊男や寺岡政美などの作品に受け継がれている[819]。
20世紀半ばにはアメリカのパルプマガジンやコミックの表紙にタコが用いられるようになった[832]。1936年8月号のスパイシー・アドベンチャーズ誌の表紙には赤い水着姿の女性に腕を巻き付けるタコが描かれている[832]。
漫画やアニメーションの世界でも触手ものは広がり、ロボットの腕が登場することもある[819]。更に暴力的な表現は「触手責め」と呼ばれ、フェティシズムの一つとなっている[819]。これは男性器を直接描写できない検閲規制から発展したと考えられることもある[819]。
吸盤を具えた腕で抱きしめ吸い上げるイメージから、タコそのものも好色的で淫らなイメージを持たれる[16][36][745]。そのため、西洋では食べると催淫作用があるという俗信があった[556]。 日本語の「蛸」は女陰の特殊なものを指す隠語として用い[209][836][837]、タコの吸盤のように引き付けるものを指す[538]。「蛸つび(蛸玉門)」[838]や「蛸壺」ともいう[538]。
「蛸」は私娼を指す例もある[836]。江戸中期の菅江眞澄の寄稿日記には、南部地方では古く遊女のことをタコと言った、と記される[16]。また、「閨中に入って妾はタコになる」や「章魚と麩を出してもてなす出合茶屋」などといった破礼句も知られる[16][538]。タコのように吸い付いて傍を離れない女郎を「蛸女郎(たこじょろう)」という[538]。日本以外でも、フランスのノルマンディーでは、漁師の間での隠語として、タコは男性の持つ全ての力を吸い取る強欲な女を意味する[16]。
タコと火星人
[編集]フィクションにおける火星人の姿はしばしば頭が大きく手足は細長く描かれ、「タコ型」と言及される[839][840]。これはイギリスのウェルズが書いた1898年のSF小説『宇宙戦争』の挿絵に由来するとされる[839][840]。
タコ型宇宙人は後世の様々な作品に転用されている。例えば、1939年の海野十三『火星兵団』に登場する火星人は「大蛸のような」と形容されている[841]。昭和30年代に少年雑誌「ぼくら』に連載された前谷惟光による「火星の八ちゃん」もタコをイメージした火星人が描かれている[780]。2021年のタイザン5の漫画『タコピーの原罪』に登場するキャラクター「タコピー」などにもその影響がみられる[842]。
日本語とタコ
[編集]タコは特徴的な姿や生態を持つため、様々な物事がタコに喩えられて用いられてきた。玩具の「凧(たこ)」は、長い尻尾を付けた様がタコに似ることから名付けられたとされる[843][216]。凧は上方では、「いか」や「いかのぼり」とも呼ばれる[161][216]。また、上代の旗には蛸旗(鮹旗、たこはた)と呼ばれるものがあり、吹流しに類するもので、こちらも旗の足が割れている様子をタコの腕が垂れている様子に喩えたものであるとされる[209][525]。
体にできる「胼胝(たこ)」も一説にはタコの手の裏に似ていることからともされる[2]。
また、日本語にはタコを冠する言葉やタコに関する諺も数多く知られる[216]。例えば、タコは骨を持たないことから、有り得ないことの喩えとして「タコのあら汁」、当たり前のこととして「タコに骨なし、海月に目なし」と言われる[216]。
胴体に由来する表現
[編集]蛸の「頭(胴体)」が坊主頭に似ていることから、坊主頭の者を嘲り、蛸入道や蛸坊主(たこ坊主)という[525][209][836][216]。蛸入道はタコそのものを指すこともあり[209]、坊主を蔑んで「蛸」ということもある[209][844][538][212]。蛸入道を略して「蛸入(たこにゅう)」ということもある[845][846]。「たこにゅう」は戦前の女学生ことばであるとされる[846]。なお、タコは料理をしても骨が残らず、魚臭もしないため、肉食をする「生臭坊主」でなくとも僧侶の間で重宝がられたという流言が伝わる[216]。また、大阪弁では値が張ることを「高うつく」というが、「坊主のはりつけでタコつく(蛸突く)」という駄洒落も知られる[212]。
また、タコの胴のように頂辺を丸く縫い上げた頭巾を蛸頭巾(たこずきん)という[209][525][216]。蛸頭巾には紫色を用いた[209]。オーバーコートやレインコートに付けて頭に被るフードを「蛸」ということもある[209]。
姿に由来する表現
[編集]杭を打ったり土や割栗石を突き固めるのに用いる道具(胴突き)は蛸(たこ、タコ)または蛸胴突(たこどうつき)と呼ばれる[847][209]。蛸搗(たこつき)とも呼ばれる[848][849][850]。直径30–40 cm の樫や欅の材を円筒形の棒にし、2–4本の把手を付け、先端に金輪をはめてできる[209][注釈 72]。数人で持ち上げるため柄が多くついており、それをタコに喩えたものであるとされる[848]。そのようにして搗き固める仕事を指して「蛸搗き(たこつき)」ということもある[853][854]。石製の土搗きの道具は「石蛸」と呼ばれる[849][850]。
着物の裾の周囲をまくり上げることを蛸絡(蛸絡げ、たこからげ)という[161][209][216]。蛸が腕を広げた姿に喩えたものである[216]。また、古くは蛸(章魚)は脚絆(股引)を指すこともあり[855][836]、蛸片(蛸衣、たこびら)と呼ばれた[836][856]。蛸片は獄衣を指すこともある[836][857][858]。
一つ(または少ない)ものを手に入れようと四方八方から争って引っ張るさまや、人気のある人物や物が多くの人に求められる状態をひっぱりだこ(引っ張り蛸、引張蛸)と言うが[859]、これは腕を竹串で張って干される干しダコの姿に由来するとされる[545][859]。また、近世以前は、「ひっぱりだこ」は磔刑およびその受刑者を意味する比喩表現であり、1687年の浮世草子『色道大皷』に見られる「三人の女房の敵おぼへたるかとひっはり蛸にして突通し捨ぬ」のように17世紀に用例が知られる[859]。前者の初出の実例は1802年の『俳諧觿』で、「引はり凧に風邪の流行医」の雑俳が知られる[859]。このように「引っ張り凧(引張凧)」と表記されることもある[859]。
大阪市北区中之島 (大阪府)の堂島川に面して生えていたクロマツは、タコが泳ぐ姿に似ていることから「蛸の松」という愛称で呼ばれている[860][861]。
腕に由来する表現
[編集]器物の足が蛸の足(腕)のような形になっているものや、1箇所からいくつも分岐している形をタコの腕に喩えて、蛸足(タコ足、たこあし)という[209][161]。特に1つのコンセントから多数のコードを引き、電気器具を接続することを蛸足配線という[161]。また、内燃機関において、等長化されたエキゾーストマニホールドは俗にタコ足と呼ばれる[862]。キャンパスが複数の箇所に分散している大学は蛸足大学と揶揄される[216]。腎臓の糸球体にある足細胞 (podocyte) は、数本の突起を放射状に毛細血管壁へ伸ばしていることから、「タコ足細胞」とも呼ばれている[863][864]。
また、古伊万里唐草に見られる、蔓に突起状の葉を加えた蛸の腕のような文様は、「蛸唐草」と呼ばれる[865]。
タコは自分の腕を食べるという逸話から、株主が自分の資本を食いつぶすことをそれに準えて、配当するだけの利益を上げていない株式会社が架空の利益を計上して資産から不当に株主へ配当することを「蛸配当」という[209][525][216][866]。「蛸配」や単に「蛸」ともいう[209][525][867]。また、自分の財産を食いつぶすことを「タコは身を食う」という[216]。
同様に自分の腕を食べるという逸話から、会食などで各自で持ち寄ったものを全て食べ終え、もう何も食べられるものがない状態を「タコの手食い」という[216]。
蛸壺に由来する表現
[編集]蛸を捕らえる蛸壺を元にした言葉もある。「蛸壺」は原義から転じ、戦場で兵士が一人だけ立ったまま潜み、そこから射撃できるように掘った塹壕を指す語としても用いられる[209][525]。
また、第二次世界大戦前に北海道や樺太の炭鉱に見られた、労働所を収容して重労働を強制した部屋を「蛸部屋(タコ部屋)」と呼ぶ[209][216]。これは蛸壺のタコのように抜け出せないことからと言われる[209][216][762]。蛸部屋は単に「蛸」とも呼ばれ、そこで働かされる人のことも「たこ」という[209][525][216][868]。
侮蔑語としてのタコ
[編集]「タコ」は、バカやアホに類する、相手を蔑む悪口にも用いられる[869][870]。この悪口の由来は諸説あり、江戸時代に将軍に謁見できない「御目見以下」である御家人のことを揶揄して旗本の子が「以下」と言ったことに対して、御家人の子が「タコ」と言い返したことから来た、という説明がなされることがある[870][871]。
野球では、安打が打てずに(凡打のみで)、凡退することを「タコ」という[216][869][872][873]。例えば、4打席4打数無安打の場合は「4タコ」と言う[874]。相手ピッチャーの手玉に取られ、骨抜きにされることを骨を持たない「タコ」に喩えたものだとされる[216][874]。
また、悪口、野球用語ともにタコは自分の腕を食べるという逸話に基づくという説もある[874][870]。
京都では「いけ好かない人」を「好かん蛸(すかんたこ)」という[875]。なお同じ語を大阪弁では「スカンタレ」という[875]。
麻雀においても、下手な人を「タコ」という[876][注釈 73]。同様に、自分の順位のことを考えないで和了ることを「タコ和了」、根拠なしにただ要らない牌を切っていくことを「タコツッパ」、考えが全くない副露を「タコ鳴き」という[876]。
その他
[編集]風呂に入ったり、酒に酔ったりして赤くなる様子を、茹でて赤くなったタコに喩えて「茹で蛸」と表現する[491][36]。「怒って茹で蛸になる」という表現も用いられる[491]。また、叱責する(される)ことを「蛸釣る(蛸吊る、たこつる)」、「蛸を釣る(章魚を釣る)」という[2][836][877][878][879][212]。これは叱られた者が茹で蛸を吊るしたように赤くなることからと考えられている[2]。兵舎の窓からおでん屋の煮蛸を釣り上げるところを見つかって叱られたことに起因するという談もある[2]。叱責されることを「たこつられた」や「たこ」ともいう[879]。もとは大阪の第四師団管下の兵卒の隠語として発生したといわれる[212]。
また「蛸釣(章魚釣り、たこつり)」は、先端に鉤を付けた竹竿で外から格子窓などを通じて室内の衣類などを盗み出すことを指す[209][525][880]。その犯人のこともいう[881]。似た語に「たこなり」があり、江差では窓から棒を利用して衣類を盗む賊をいう[882]。また持っているものを後ろから盗み取ることを蛸釣(たこつり)ということもある[883]。盗賊が住居に侵入するために使う縄梯子を「蛸」ということもある[884][885]。
大相撲の隠語で、思い上がって天狗になり、周囲の意見に聞く耳を持たなくなることを「タコになる」という[886][887][888][752]。自惚れて得意顔でいるが、他人からは卑しめられていることを「蛸の糞で頭へ上がる(たこのくそであたまへあがる)」という表現を用いる[209][161][538]。これは、タコの胴が頭と誤られていたので、糞が頭の方にあることから[538]。
大根の葉を「蛸巣(たこのす)」という[889]。富山県ではタコノテと呼ばれる[890]。
タコのようになるまで殴ることを俗に「タコ殴り」という[869]。また、痛めつけることを「タコ」といい、「タコにしたろか」などとして用いる[891]。
タコに因んだ生物
[編集]タコはまた、その姿に喩えて他の生物の和名にも用いられる。下記のものが挙げられる。
- タコノキ Pandanus boninensis などのタコノキ類(タコノキ目):単子葉植物。「蛸ノ木」の意で、茎の下部から気根斜めに出す様子をタコの腕に見立てたもの[525][892]。
- タコノアシ Penthorum chinense(ユキノシタ目):「蛸ノ足」の意で、花序に花が並んだ様子をタコの足(腕)に吸盤が並ぶ様子に見立てたもの[209][525][893]。
- タコヒトデ Plazaster borealis(マヒトデ目):22–39本のタコの腕を思わせる細長い腕を持つことから[894]。
- タコクラゲ Mastigias papua(根口クラゲ目):口腕と付属器が8本あり、外見がタコに似ていることから[895][896]。
タコノマクラ目の不正形ウニの1種であるタコノマクラ Clypeaster japonicus は、タコが枕にして寝るだろうという想像からの名であるとされる[209]。この名はかつてはヒトデ類を指し、『訓蒙図彙』などに用例がみられる[897]。その後クモヒトデ類やカシパン類を指したが、1883年の『普通動物学』で同属の Clypeaster subdepressus を指す和名として扱われた[897]。それが飯島魁 (1890)『中等教育 動物学教科書』により本種の名に用いられ、標準和名として広まった[897]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ なお、「八梢魚」は特にクモダコを表すとされる[12]。
- ^ なお、「章花魚」はイイダコとも読む[13]。
- ^ なお、「望潮魚」は普通イイダコを表すとされる[4][12]。
- ^ なお、「望潮」はシオマネキとも訓ずる[18]。
- ^ 1文字目「𠑃」は⿰亻⿱吉鳥。毛利梅園『梅園魚品図正』で臨海志を引用して[19]。
- ^ ラテン語の男性第2変化名詞は focus のように -us という語尾で終わり、複数形は foci のように -i で終わる[38]。octōpūs はギリシア語由来の第3変化名詞であり、これとは異なる変化を持つ。
- ^ ピグミー・オクトパスと呼ばれる Paroctopus digueti は外套長 74 mm、全長22 cm になる[55]。
- ^ 土屋 (2002, p. 94)では、最小クラスのものとして熱帯のピグミーオクトパスが外套長2 cm(センチメートル)程度で成熟するとされ、本種のことを指していると考えられる。
- ^ なお種小名の parvus はラテン語で「小さい」を意味する形容詞である[58]。
- ^ しかし、イカ類でもヤツデイカやタコイカの成体では触腕を失い、8本の腕を持つ[61][65]。
- ^ 腕の本数や[61]、鰭の有無には例外もある[72]。
- ^ 例外もあり、ヤワハダダコなどでは開眼となる[87]。
- ^ なお、本項における「マダコ」は日本近海のマダコ Octopus sinensis であることもあれば、地中海のチチュウカイマダコ Octopus vulgaris やアメリカ東海岸の Octopus americanus である場合も含まれると考えられる。何れも O. vulgaris 種群に含まれ、かつては汎存種とされていたが、近年は分類の整理が進み、隠蔽種が分離された[90]。元の出典でマダコや O. vulgais と表記されている種は、生息海域等により適宜正しいと考えられる方を用いているが、長らく同種とされてきたことからどちらか不明な曖昧もある。
- ^ 内側の縁歯とまとめて2対の縁歯を持つとされることもある[100]。
- ^ 省略した各部の略称は次の通り:r.s.g.d. 右の前唾腺管; s1g1d1 後唾腺管; r.s1g1d1 右の後唾腺管
- ^ ほかの軟体動物でも食道が食道神経環を貫いている[99]。
- ^ 省略した各部の略称は次の通り:m.s., e.m. 筋性の隔膜; m1, m.l., m.p., m.p.ex. 筋膜; P.C. 外套腔の後方連絡部; M.ep. 外套膜内面上皮; m.s.a. 隔膜の付属体; L.M. 側筋
- ^ 恐らく Octopus americanus。
- ^ Macrotritopus 属であることが示唆されている[201]。
- ^ 僧侶が蛸を食うことの隠語ともされる[210][211]。
- ^ ヒトでは高濃度の 7-DHC は、自傷行為を引き起こすスミス-レムリ-オピッツ症候群の原因物質であると考えられている[208]。
- ^ 種小名 mutilans は手足の切断を示すラテン語の分詞である[50]。
- ^ それに対し、イカの墨は拡散しにくく、墨の塊を「ダミー」として捕食者の眼を逸らせ、敵から逃げる[104][237]。
- ^ larger Pacific striped octopus(大型の太平洋シマダコ)または Harlequin octopus(道化ダコ)という英名から、池田 (2020, p. 110) で用いられた和名。
- ^ これは Young & Harman (1988) により提唱された用語である[86][320]。paralarva は定訳がなく、パララーバ[320]、稚仔、稚ダコ[185]、浮遊幼生[321]、仔稚期[322]などとも訳される。
- ^ ただし、Kröger et al. (2011) では八腕形上目の学名は Vampyropoda、有触毛亜目は Cirroctopoda、無触毛亜目は Octopoda となっている。また下記では、近年の分子系統解析で分離されるヒメイカ目を分離している。
- ^ かつては Stauroteuthidae Grimpe, 1916 と呼ばれる科を構成していたが、Verhoeff (2023) ではヒゲダコ科に内包される。また、瀧 (1999) ではこの種が「ジュウモンジダコ」と呼ばれた[79]。そのためこの科は和名ではジュウモンジダコ科と呼ばれたが[79][372][75]、ジュウモンジダコが Grimpoteuthis hippocrepium を指す和名となり[372]、ジュウモンジダコ属は Grimpoteuthis を指す[56]和名となったため、ジュウモンジダコ属やジュウモンジダコが所属しないにも拘わらずジュウモンジダコ科と呼ばれていた。
- ^ Sanchez et al. (2018) ではジュウモンジダコ属 Grimpoteuthis と Luteuthis はメンダコ科に内包されるが、Piertney et al. (2003) では、ジュウモンジダコ属 Grimpoteuthis と Luteuthis、Enigmatiteuthis の3属が Grimpoteuthidae に含められた[374][375]。Enigmatiteuthis は Grimpoteuthis に内包される[371]。
- ^ Sanchez et al. (2018)、Ibáñez et al. (2020) および Leite et al. (2021) による情報も加味している。
- ^ クラゲダコ科に含まれる3亜科は瀧 (1999) や 窪寺 (2013)、Norman et al. (2016) のように、旧来はクラゲダコ科、スカシダコ科 Vitreledonellidae Robson, 1932、フクロダコ科[373] Bolitaenidae Chun, 1911 と独立した科として扱われ、 Sanchez et al. (2018) でも踏襲されていたが、Strugnell et al. (2013) 以降の研究ではスカシダコ科、フクロダコ科を内包した1科として扱われることが多い[376][378][368]。この広義のクラゲダコ科は櫛歯族 Ctenoglossa と呼ばれることもあった[379][101][376]。
- ^ テナガヤワラダコ科 Idioctopodidae Iw. Taki, 1962 テナガヤワラダコ属 Idioctopus Iw. Taki, 1962 を内包し、クラゲダコとテナガヤワラダコは同種とされることもある[380]。
- ^ フクロダコ[381] Bolitaena microcotyla はシノニム[382]。
- ^ かつてはイイダコやテナガダコなど、本項でマダコ科とされる属の多くがマダコ属に含まれ、本項ではミズダコ科に置かれるミズダコでさえこの属に入れられていたが、分子系統解析の結果多系統であることが明らかとなった[39]。そのため分割され、Norman et al. (2016) などでは、マダコ近縁種群のみを含む属として扱われる[39]。しかし、このように取り扱うと、分子データのない種がどの属に含まれるか分からないほか、分類学的取扱いがなされていない種が生じるため、Norman et al. (2016) では所属不明の旧マダコ属を 'Octopus' と表記している[39]。
- ^ ワンダーパス[403]、ワンダーパス・オクトパス[91]とも。
- ^ Norman et al. (2016) では 'Octopus' minor とされるが、Kaneko et al. (2011) および Ibáñez et al. (2020) によりシマダコ属に内包されることが示されている。
- ^ テギレダコは 土屋 (2002) ではカクレダコ属 Abdopus に含められ、Abdopus mutilans とされた。Norman et al. (2016) では 'Octopus' mutilans とされる[410]。
- ^ かつてミズダコは Paroctopus に分類されたため、この属がミズダコ属と呼ばれたこともある[395]。
- ^ ほかにも日本近海の大卵性のクモダコ、ヤナギダコやオオメダコ、エンドウダコなどがこの属に分類されたが[417]、Norman et al. (2016) などではこれらは除外されている[418]。
- ^ 瀧 (1999) ではイッカクダコは Scaeurgus unicirrhus とされた[395]。
- ^ Strugnell et al. (2013)、Sanchez et al. (2018) および Leite et al. (2021) では解析に含まれていないが、Norman et al. (2016) に認められている。また、Sánchez-Márquez et al. (2022) の解析には含まれ、イッカクダコ属に近縁だとされる[424]。
- ^ 瀧 (1999) ではヤワハダダコ属は Berrya とされた[77]。
- ^ 瀧 (1999) ではセビロダコ属 Sasakinella に属し、Sasakinella eurycephala とされた[77]。
- ^ Norman et al. (2016) には収録されないが、日本では認識され[430]、独自のニハイチュウ相を持つ[142]。
- ^ 旧来マダコ科に含まれていたが、Strugnell et al. (2013) により独立させられた[384]。
- ^ 窪寺 (2013) では下記の種は全て Benthoctopus とされるが、この属は命名上の問題から Gleadall (2004) により Muusoctopus が設立され、Gleadall et al. (2010) により多くの種が本属に置き換えられた。
- ^ Gleadall et al. (2010) によりエゾダコの新参異名(ジュニアシノニム)とされたが、日本では普通独立種として扱われる[439][440][396]。
- ^ MolluscaBase は Gleadall et al. (2010) を引用し、Muusoctopus abruptus は Muusoctopus abruptus に組み替えられたとするが[443]、Gleadall et al. (2010) では言及されない。
- ^ 分子系統解析に基づくと、チヒロダコ属 Benthoctopus (=Muusoctopus) に内包される[445]。
- ^ 以下の種は何れも、かつてはパロクトプス属 Paroctopus とされていた。パロクトプス属も参照。
- ^ Norman et al. (2016) ではアマダコ 'Octopus' hongkongensis のシノニムとされるが[446]、日本では普通独立種とされ[448]、宿主特異性を持つニハイチュウ相も異なる[142]。
- ^ ワタゾコダコ Sasakiopus salebrosus が Bathypolypus 属に所属していたときは、本属がワタゾコダコ属と呼ばれた[77]。
- ^ ただし、Norman et al. (2016) では、佐々木望の記載したコシキワタゾコダコ Polypus validus Sasaki, 1920(=Bathypolypus validus (Sasaki, 1920)) はホッキョクワタゾコダコとワタゾコダコのどちらに近いのかはさらなる研究が必要とされる。
- ^ 多系統であることが示唆されている[362]。別の解析では単系統となることもある[450]。
- ^ Sanchez et al. (2018) では科を構成するほかの属とは異なる系統で、Velodona と姉妹群をなすことが示唆されている[362]。別の解析では、オオイチレツダコ属と姉妹群をなすこともある[450]。
- ^ Sanchez et al. (2018) では科を構成するほかの属とは異なる系統で、Thaumeledone と姉妹群をなすことが示唆されている[362]。別の解析では、本属と Adelieledone を除くほかの Megaleledonidae をまとめたクレードと姉妹群をなす[450]。
- ^ Strugnell et al. (2013) の解析には Aphrodoctopus Roper & Mangold, 1992 が含まれるが、Norman et al. (2016) では Eledone に内包され、Aphrodoctopus schultzei は E. schultzei として収録される[458]。
- ^ Sanchez et al. (2018) では側系統であることが示唆されている。
- ^ Norman et al. (2016) では Argonauta boettgeri は A. hians のシノニムとされる[459]。
- ^ 明石海峡以西の瀬戸内海でも、溝之口遺跡(加古川市)、大中遺跡(播磨町)、玉津田中遺跡・池上口ノ池遺跡(神戸市)などでも弥生時代の蛸壺が出土している[503]。
- ^ 麦藁蛸は新ダコや梅雨ダコとも呼ばれる[510]。
- ^ a b 蛸研究会により制定された7月2日のタコの日とは別に、三原観光協会により8月8日もタコの日として制定されている[515]。
- ^ ペンバ島近隣のミサリ島
- ^ この統計は、全国の漁業地区のうち、総水揚量が海面漁業生産量の約7割を占めるもののうち、対象品目ごとに上場水揚量の上位20漁業地区を選定し、そのうち調査該当品目が5品目以上ある漁業地区について調査されており、この調査区が便宜的に「漁港」として表示されている[642]。そのため、実際の「漁港」とは異なることに注意。
- ^ 原文では Octopus vulgaris であるが、細分化された O. vulgaris のうち、アメリカ大陸近海には O. americanus が分布する[90]。
- ^ 順にインドネシア、モーリタニア、モロッコがそれに次いで多いタコの漁獲量となっている[606]。
- ^ 沖縄のワモンダコは銛を使った漁でも漁獲される[679]。
- ^ 略してOCTPUS Actで「タコ法」
- ^ クレタ島イラクリオンにて紀元前1500年の地層より出土。ギリシャ、アテネ国立考古学博物館所蔵。
- ^ 蜛蝫は⿰虫居、⿰虫者
- ^ ヴェルヌの『海底二万里』に登場する頭足類はタコではなくイカだとされることもある[796]。
- ^ 『喜能会之故真通』は一般的には北斎作とされるが、美術史家の間での見解に差異があり、林美一や辻惟雄は、筆致が異なるとして北斎作ではなく、三女のお栄(葛飾応為)か門人渓斎英泉の作であろうという立場を取っている[833][834]。一方で浅野秀剛は画の緩みや弟子任せの箇所があったとしても部分的であり、北斎構想による高い完成度を示した作品であるとしている[835]。
- ^ 英語では rammer[851]及び punner[852] と呼ばれ、日本語でも「ランマー(ランマ[849]・ラマー・ラム)」や「プンナー」とも呼ばれることもある。
- ^ 漫画『ぎゅわんぶらあ自己中心派』でも「日本タコ友の会」が登場する。
出典
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- 牧村史陽(編)、1979年7月15日『大阪ことば事典』講談社。
- 米川明彦『俗語百科事典』朝倉書店、2021年7月1日。ISBN 978-4254510683。
文化に関するもの
[編集]- 浅野秀剛『葛飾北斎・春画の世界』洋泉社、2005年。ISBN 4-89691-903-3。
- 下中弘(編)、1994年8月25日『彩色 江戸博物学集成』平凡社。ISBN 4582515045。
- 竹村景子「チャアニ村の食生活 : 一家族における献立とその食材」『スワヒリ&アフリカ研究』第14巻、大阪外国語大学地域文化学科 スワヒリ語・アフリカ地域文化研究室、2004年、31–65頁。
- 塚本晃久「ネズミとタコ―ニューカレドニア島イヤンゲーヌの民話―」『南半球評論』2014年、45–56頁。
関連項目
[編集]- 人物
- たこ八郎
- 横山ノック - 禿げ上がった頭から漫才(漫画トリオ)で「タコ」と呼ばれた。
- タコ社長 - 日本映画『男はつらいよ』に登場する太宰久雄が演じた零細企業の社長(cf. 男はつらいよの主要人物)の愛称。
- 中河美芳 - プロ野球選手。一塁守備で足を大きく前後に開くさまと、どんな送球も吸い付くように捕球することから、「タコ足」「タコの中河」と呼ばれていた。
- 新海幸藏 - 力士。足癖を得意としたため、「タコ足の新海」のあだ名が付いた。
- 工藤由愛 - ハロー!プロジェクトの女性アイドルグループ・Juice=Juiceのメンバー。無類のタコ好きで、自ら「タコ(ちゃん)」という愛称を付けている。
- その他
- 卍固め(オクトパス・ホールド) - アントニオ猪木の必殺技。タコが絡みつくように固める。
- 水銀整流器 - 多陽極式水銀整流器は胴部(冷却部)と多足(多陽極)の形状からタコと呼ばれることがある。
- スカンタコ - 『ドラえもん』のひみつ道具。京言葉の「好かん蛸」から。