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オオイチレツダコ属

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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オオイチレツダコ属
分類
: 動物界 Animalia
: 軟体動物門 Mollusca
: 頭足綱 Cephalopoda
亜綱 : 鞘形亜綱 Coleoidea
上目 : 八腕形上目 Octopodiformes
: 八腕形目 Octopoda
上科 : マダコ上科 Octopodoidea
: Megaleledonidae
Iw. Taki1961
: オオイチレツダコ属 Megaleledone
学名
Megaleledone
Iw. Taki1961
タイプ種
Megaleledone senoi
Iw. Taki1961
英名
giant Antarctic octopus
下位分類群(
  • オオイチレツダコ Megaleledone setebos (Robson1932)

オオイチレツダコ属[1] (genus Megaleledone) は、八腕形目(タコ目)マダコ上科 Megaleledonidae 科に属するである[2][3]南極海に生息するタコオオイチレツダコ[4] Megaleledone setebos 一種のみを含む単型の属である[5]瀧 (1999)オオヒトエダコ属と呼んだ[6]

形態

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大型で、外套膜は長さより幅が広い[6]。体は半ゼラチン状である[5]外套長は少なくとも280 mm、全長900 mmミリメートルになる[5][7]

は短く、外套長の2–3倍程度[5]。腕はほぼ等長で、第1腕のみやや短い(腕長式 4=3=2>1)[5]傘膜は広く、腕の40%に達する[5]。吸盤は各腕に1列に並ぶ[5]。大きい個体では、通常腕に40–69個の吸盤が並ぶ[5]。雄は右第3腕交接腕となり、通常腕の90–95%の長さとなる[5]舌状片は小さく、腕長の3–4%[5]円錐体の大きさは普通で、舌状片の40%程度[5]。交接腕は35–40個の吸盤を持つ[5]

墨汁嚢は持つが、小型[6][5]。食道はやや膨大するのみで、嗉嚢を欠く[6][5]歯舌は7本の小歯からなり、縁板を欠く[5]。中歯は左右相称的で、単歯尖を持つ[6]

は半鰓当たり10–13枚の鰓葉を持つ[5]漏斗は V V 形[5]

卵は大型である[6][5]精莢も大きく、150–235 mm で、外套長の95%に達する[5]

食性

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一般に、タコは貝殻に小孔を開け、有毒の唾液を注入することにより貝類を捕食するが[8]、本種の毒は氷点下であっても作用する[9][10]。瀧 (1961) によると、胃中内容物は由来不明のものが多かったが、3種のクモヒトデ類の骨片も見つかっている[8]。また、1916年の記録では胃中からは大量の海藻が見つかっているが、これはタコでは例外的だと考えられている[8]

分布

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南極種で、-1.4℃から-1.9℃の南極大陸棚に分布し、亜南極には分布しない[5]。水深32–850 mメートルから記録がある[5]。生息環境は礫を含む泥質から砂質の海底で、海綿動物コケムシがみられる[5]

採集記録

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Robson (1932) による Graneledone setebos の記載では、南極のドロンニング・モード・ランド沖から採集されている[5]。1961年の瀧巌による Megaleledone senoi の記載 (Taki 1961, pp. 297–316) の際は、南極昭和基地付近の水深630–680 m の深海から見つかっている[6]

1982年から1985年にかけて海洋水産資源開発センターが行った底曳網による調査では、アルゼンチン南東沖(南極半島付近)、ニュージーランド南東沖、クローゼー諸島周辺の水深107–972 m から44個体の底生タコ類が得られたが、その中に本属のタコが確認された[1]。オオイチレツダコ(文献中には Megaleledone senoiとして記録)は水深120–803 m から雄5個体、雌3個体の計8個体見つかっており、外套長は雄で110-145 mm、雌では105-120 mm であった[1]。最初の個体は1982年、吉野丸により南緯62度59分 西経62度9分 / 南緯62.983度 西経62.150度 / -62.983; -62.150、水深803 m から獲られた雄1個体のみであり、残りの個体は全て1985年、播州丸により獲られたものである[1]。そのうち雄4個体は何れも南緯61度10分 西経55度55分 / 南緯61.167度 西経55.917度 / -61.167; -55.917、水深120 m から得られ、雌3個体は南緯63度28分 西経62度58分 / 南緯63.467度 西経62.967度 / -63.467; -62.967、水深475 m から得られている[1]

分類

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本属の属する Megaleledonidae は、瀧巖によって属と同じ1961年に設立されたものである[2]。以下、Sanchez et al. (2018) に基づく MegaleledonidaeVelodonaThaumeledone を除く)内部の系統関係を示す。

Megaleledonidae

Adelieledone

ナンキョクイチレツダコ属 Pareledone

オオイチレツダコ属 Megaleledone

イボダコ属 Graneledone

Bentheledone

タイプ種

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本属は瀧巖によって Megaleledone senoi Iw. Taki1961 1種が属する属として1961年に設立された[11]。しかし2003年に、この種は1932年に Robson によりイボダコ属の1種として、Graneledone setebos Robson1932 と名付けられていたものと同じであったと報告された[7]。そのため、国際動物命名規約の定める先取権によりこの種は Megaleledone setebos (Robson1932) となった。ただしタイプ種は設立時の名義種となるので Megaleledone senoi Iw. Taki1961 である[11]

脚注

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  1. ^ a b c d e 窪寺 & 奥谷 1993, pp. 1–2.
  2. ^ a b Sanchez et al. 2018: e4331
  3. ^ Strugnell et al. 2013, pp. 1–21.
  4. ^ 神秘、オーロラ映像「南極・北極科学館」 写真特集”. 時事ドットコム. 時事通信社 (2010年8月20日). 2010年8月20日閲覧。[リンク切れ] 「南極海に生息するオオイチレツダコ(2010年08月20日) 【時事ドットコム編集部撮影】」
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w Norman et al. 2016, pp. 148–149.
  6. ^ a b c d e f g 瀧 1999, p. 379.
  7. ^ a b Allcock et al. 2003, pp. 319–328.
  8. ^ a b c 瀧 1999, p. 351.
  9. ^ Undheim, E.A.B.; Georgieva, D.N.; Thoen, H.H.; Norman, J.A.; Mork, J. (2010). “Venom on ice: First insights into Antarctic octopus venoms”. Toxicon 56 (6): 897–913. doi:10.1016/j.toxicon.2010.06.013. 
  10. ^ Antarctic octopuses found with cold-resistant venom”. Reuters (2010年7月22日). 2019年9月28日閲覧。
  11. ^ a b Medaleledone Iw. Taki, 1961”. WoRMS. 2019年9月28日閲覧。

参考文献

[編集]
  • Allcock, A.L.; Hochberg, F.G; Stranks, T.N. (2003). “Re-evaluation of Graneledone setebos (Cephalopoda: Octopodidae) and allocation to the genus Megaleledone”. Journal of the Marine Biological Association of the UK 83 (2): 319–328. doi:10.1017/S0025315403007148h. 
  • Norman, M.D.; Finn, J. K.; Hochberg, F.G. (2016). “Family Octopodidae”. In Jereb, P.; Roper, C.F.E.; Norman, M.D.; Finn, J.K.. Cephalopods of the world. An annotated and illustrated catalogue of cephalopod species known to date. Volume 3. Octopods and Vampire Squids. FAO Species Catalogue for Fishery Purposes. No. 4, Vol. 3. Rome: Food and Agriculture Organization of the United Nations. pp. 36–215. ISBN 978-92-5-107989-8 
  • Robson, G. C. (1932). A Monograph of the Recent Cephalopoda. Part II. Octopoda. London: British Museum (Natural History). p. 313 
  • Sanchez, G.; Setiamarga, D. H. E.; Tuanapaya, S.; Tongtherm, K.; Winkelmann, I. E.; Schmidbaur, H.; Umino, T. (2018). “Genus-level phylogeny of cephalopods using molecular markers: current status and problematic areas”. PeerJ: e4331. doi:10.7717/peerj.4331. 
  • Strugnell, J. M.; Norman, M.D.; Vecchione, M,; Guzik, M.; Allcock, A. L. (2013). “The ink sac clouds octopod evolutionary history”. Hydrobiologia 725 (1). doi:10.1007/s10750-013-1517-6. 
  • Taki, I. (1961). “On two new eledonid octopods from the Antarctic Sea”. Journal of the Faculty of Fisheries and Animal Husbandry, Hiroshima University 3: 297–316. 
  • 窪寺恒己; 奥谷喬司 (1993). “南大洋産イチレツダコ類の分類及び分布”. 平成5年度 イカ類資源・漁海況検討会議 24: 1-2. http://jsnfri.fra.affrc.go.jp/shigen/ika_kaigi/contents/H5/H5-11.pdf. 
  • 瀧巌「第8綱 頭足類」『動物系統分類学 第5巻上 軟体動物(I)』内山亨・山田真弓 監修、中山書店、1999年1月30日、327–391頁。ISBN 4521072313