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連隊区

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

連隊区(れんたいく)は、大日本帝国陸軍の陸軍管区の一つ。師管または師管区内を数個の連隊区に分けて置かれた。各連隊区は地名を冠した名称で、連隊区司令部を有し、この司令部が区域内の徴兵召集在郷軍人会に関する事務を所掌した。

元の用字は「聯隊區」であり、「連」は代用表記による書換えたもの。防衛庁防衛研究所による戦史叢書等、幾つかの史料・書籍は一貫して旧表記を用いている。

概要

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初期

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前身は、1888年に大隊区司令部条例(明治21年勅令第29号)によって置かれた大隊区である。明治21年鎮台が廃止され師団が創設されたときに、それまでの鎮台の衛戍地域を大隊区に分けた。大隊区は歩兵大隊に対応し、大隊区司令部が置かれたが、これは部隊としての大隊とは異なる役所である。この当時すでに連隊はあり、1個連隊が2個大隊を管掌したが、連隊に対応する管区はなかった。

大隊区は、1896年(明治29年)3月の連隊区司令部条例(明治29年勅令第56号)によって連隊区と改められた。このとき陸軍は部隊をほぼ倍増したので、大隊区のままなら管区の数も倍増するはずであったが、対応する部隊のレベルを一つ引き上げることで、新設の連隊区に既存の大隊区の区割りをそのまま引き継がせた。

連隊区には連隊区司令部が設けられ、おおむね歩兵連隊の所在地に置かれた。これも部隊を指揮する連隊司令部とは別組織である。連隊区の管轄区域は「陸軍管区表」(明治29年勅令第24号)に依って定められた。師管はおおむね4個連隊区に分けられ、離島等の一部区域には警備隊区警備隊については警備隊司令部条例(明治29年勅令第55号)他別個の法令による。置かれた警備隊の例としては対馬警備隊などがある。)が設置された。

連隊区の名称は、連隊区司令部所在地の地名をとった。このとき日本は台湾を植民地として手に入れていたが、連隊区は置かなかった。

旅管の設立

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1907年(明治40年)に連隊区司令部条例(明治40年軍令陸第6号)・陸軍管区表(明治40年軍令陸第3号)が発せられると、新たに連隊区と師管の間に位置する旅管が設けられる。東京を中心に関東を区域とする第一師管は第一旅管と第二旅管に分けられ、第一旅管は麻布連隊区甲府連隊区に分かれた。1師管4連隊区ルールは健在で、間に旅管が加わり1師管2旅管4連隊区となり、1旅管は2連隊区を擁した。

改正前の警備隊区は小笠原島・佐渡・隠岐・大島・五島・対馬の6個であったが、今次の改正によって、沖縄・対馬の2個となり、他は連隊区に編入された。台湾の他、樺太もまた領土に加わったが、この時も管区は設定されなかった。

再改正

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連隊区司令部令(大正12年勅令第267号)によって連隊区司令部条例は全部改正され、陸軍管区表(大正14年軍令陸第2号)により再び管区構成が改められる。旅管と警備隊区は廃され、内地はすべて連隊区に区分された。樺太は第七師管旭川連隊区に編入、台湾・朝鮮は管区に編入されていない。以下に、参考として昭和5年時点の連隊区一覧[1]を示す。なお、表中の脚注が示す市名、郡名は、昭和5年当時のものである。

連隊区一覧
師管名 連隊区名 1 2 3 4 5
第1師管 連隊区名 麻布 甲府 本郷 佐倉
連隊区に属した府県 東京[2]、(埼玉[3] 山梨神奈川 (東京[4])、(埼玉[5] 千葉
第2師管 連隊区名 仙台 福島 新発田 高田
連隊区に属した府県 宮城 福島 新潟[6] (新潟[7]
第3師管 連隊区名 名古屋 岐阜 豊橋 静岡
連隊区に属した府県 愛知[8] 岐阜[9] (愛知[10])、(静岡[11] (静岡[12]
第4師管 連隊区名 大阪 神戸 和歌山
連隊区に属した府県 大阪[13])、(兵庫[14] (兵庫[15] (大阪[16] 和歌山
第5師管 連隊区名 広島 福山 浜田 山口
連隊区に属した府県 広島[17] (広島[18] 島根[19] 山口[20]
第6師管 連隊区名 熊本 大分 都城 鹿児島 沖縄
連隊区に属した府県 熊本 大分[21] 宮崎 鹿児島 沖縄
第7師管 連隊区名 札幌 函館 釧路 旭川
連隊区に属した庁府県 北海道[22] (北海道[23] (北海道[24] (北海道[25])、樺太
第8師管 連隊区名 青森 盛岡 秋田 山形
連隊区に属した府県 青森 岩手 秋田 山形
第9師管 連隊区名 金沢 富山 敦賀 鯖江
連隊区に属した府県 石川 富山、(岐阜[26] 福井 [27])、(滋賀 [28])、(岐阜[29] (福井[30]
第10師管 連隊区名 姫路 鳥取 岡山 松江
連隊区に属した府県 兵庫[31] 鳥取[32])、(兵庫[33] 岡山 島根[34])、(鳥取[35]
第11師管 連隊区名 丸亀 松山 徳島 高知
連隊区に属した府県 香川 愛媛 徳島 高知
第12師管 連隊区名 小倉 福岡 大村 久留米
連隊区に属した府県 福岡[36])、(山口 [37] (福岡[38] 長崎 (福岡[39])、佐賀、(大分 [40]
第14師管 連隊区名 水戸 宇都宮 高崎 松本
連隊区に属した府県 茨城 栃木 群馬 長野
第16師管 連隊区名 京都 福知山 奈良
連隊区に属した府県 京都[41])、(滋賀[42] (京都[43] 三重 奈良
  • 注1 - 見出しの数字は便宜上付与したもの
  • 注2 - 府県名がカッコにくくられたものはその一部が連隊区に属していたことを示す

兵事区の設立

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1939年(昭和14年)、陸軍兵事部令が制定され、朝鮮と台湾にそれぞれ兵事区が設けられた。法令の名称にもある通り兵事区の官衙は兵事部で、長は兵事部長。所掌事務はおおむね連隊区司令部と同様であったが、住民が兵役の対象にならない植民地では、内地に本籍を持ちつつ植民地に居住する人が対象であった。朝鮮は羅南・京城・平壌・大邱など6兵事区に、台湾は台北・台南の2兵事区に分かれた。

1940年(昭和15年)8月1日から、師管の名称を改め、それまで師団番号と同じ番号であったのをやめて所在値の地名からとった[44]1941年(昭和16年)11月1日、陸軍管区表(昭和16年軍令陸第20号)により、管区範囲が改められ、北海道を除き1府県1連隊区となった。兵事事務の複雑化から陸軍兵務部令(昭和16年勅令第790号)を制定し、軍・師団司令部に兵務部を設けた。兵務部は召募・在郷軍人・国防思想の普及・学校教練・軍人援護・職業補導を所掌し、連隊区司令官及び兵事部長に指示を与え査察を行った。また、満州に於ける在留邦人の増加とそれに伴う徴兵事務体制として関東軍管区を設け、管区内を兵事区に分けた。兵事区は新京・奉天・大連・哈爾賓・牡丹江・斉斉哈爾・錦州に設けた。

本土決戦に向けた改正

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1945年(昭和20年)3月それまでの連隊区司令部は全て閉鎖、新たに臨時編成の連隊区司令部が設置された。同じ範囲で地区司令部を併置し、連隊区司令官が地区司令官を兼務。地区司令部は同地域の防衛を担任した。司令部要員の若干名は双方を兼ねた。司令官は中将又は少将で、6大都府県の司令官は中将が任ぜられた。

終戦に伴い「第一復員官署官制」(昭和20年勅令第676号)により連隊区司令部令が、「昭和二十年勅令第六百三十二号陸海軍ノ復員ニ伴ヒ不要ト為ルベキ勅令ノ廃止ニ関スル件ニ基ク陸軍兵事部令廃止等ノ件」(昭和21年第一復員省令第6号)により、陸軍兵事部令は廃止された。

脚注

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  1. ^ 作表は昌弘社 編輯部「最新百科知識精講」昌弘社、1930年(昭和5年)、747~751頁の資料に基づいた。
  2. ^ 麹町区神田区日本橋区京橋区芝区麻布区赤坂区四谷区牛込区小石川区八王子市荏原郡豊多摩郡西多摩郡南多摩郡北多摩郡大島八丈島、小笠原島(現在の小笠原支庁
  3. ^ 川越市入間郡比企郡秩父郡
  4. ^ 本郷区下谷区浅草区本所区深川区北豊島郡南足立郡南葛飾郡
  5. ^ 北足立郡南埼玉郡北埼玉郡北葛飾郡大里郡児玉郡
  6. ^ 新潟市長岡市岩船郡北蒲原郡東蒲原郡中蒲原郡西蒲原郡南蒲原郡古志郡佐渡郡
  7. ^ 高田市三島郡 (新潟県)刈羽郡北魚沼郡南魚沼郡中魚沼郡中頸城郡東頸城郡西頸城郡
  8. ^ 名古屋市一宮市愛知郡 (愛知県)東春日井郡西春日井郡丹羽郡葉栗郡中島郡海部郡(愛知県)知多郡
  9. ^ 岐阜市稲葉郡本巣郡山県郡 (岐阜県)武儀郡羽島郡郡上郡加茂郡可児郡土岐郡恵那郡
  10. ^ 豊橋市岡崎市渥美郡宝飯郡八名郡北設楽郡南設楽郡東加茂郡西加茂郡額田郡碧海郡幡豆郡
  11. ^ 浜松市浜名郡引佐郡磐田郡榛原郡小笠郡周智郡
  12. ^ 静岡市沼津市清水市安倍郡庵原郡富士郡駿東郡田方郡賀茂郡志太郡
  13. ^ 西区北区此花区港区東成区東淀川区西淀川区三島郡(大阪府)豊能郡
  14. ^ 津名郡三原郡
  15. ^ 神戸市尼崎市武庫郡川辺郡西宮市有馬郡多紀郡氷上郡
  16. ^ 東区南区天王寺区浪速区西成区住吉区堺市岸和田市北河内郡南河内郡中河内郡泉北郡泉南郡
  17. ^ 広島市呉市安芸郡(広島県)安佐郡佐伯郡高田郡双三郡山県郡(広島県)
  18. ^ 福山市尾道市深安郡神石郡比婆郡甲奴郡芦品郡沼隈郡世羅郡御調郡豊田郡賀茂郡(広島県)
  19. ^ 鹿足郡美濃郡那賀郡邑智郡邇摩郡安濃郡飯石郡簸川郡
  20. ^ 宇部市厚狭郡美祢郡大津郡吉敷郡阿武郡佐波郡(山口県)都濃郡熊毛郡(山口県)玖珂郡大島郡(山口県)
  21. ^ 大分市別府市大分郡北海部郡南海部郡大野郡(大分県)直入郡下毛郡宇佐郡西国東郡東国東郡速見郡玖珠郡
  22. ^ 札幌市室蘭市石狩支庁胆振支庁浦河支庁空知支庁
  23. ^ 函館市小樽市渡島支庁桧山支庁後志支庁
  24. ^ 釧路市河西支庁網走支庁釧路国支庁根室支庁
  25. ^ 旭川市上川支庁宗谷支庁留萌支庁
  26. ^ 吉城郡大野郡(岐阜県)益田郡
  27. ^ 敦賀郡三方郡遠敷郡大飯郡
  28. ^ 高島郡伊香郡犬上郡愛知郡(滋賀県)東浅井郡坂田郡
  29. ^ 大垣市安八郡海津郡揖斐郡養老郡
  30. ^ 福井市坂井郡丹生郡大野郡(福井県)吉田郡足羽郡今立郡南条郡
  31. ^ 明石市姫路市明石郡加古郡印南郡加東郡美嚢郡飾磨郡揖保郡佐用郡赤穂郡多可郡加西郡
  32. ^ 鳥取市岩美郡八頭郡
  33. ^ 美方郡城崎郡養父郡(兵庫県)出石郡朝来郡宍粟郡神崎郡(兵庫県)
  34. ^ 松江市八束郡能義郡大原郡仁多郡隠岐島
  35. ^ 気高郡東伯郡西伯郡日野郡
  36. ^ 門司市小倉市八幡市若松市戸畑市企救郡京都郡築上郡田川郡遠賀郡
  37. ^ 下関市豊浦郡
  38. ^ 福岡市筑紫郡早良郡糸島郡糟屋郡嘉穂郡鞍手郡宗像郡朝倉郡
  39. ^ 久留米市大牟田市三池郡山門郡八女郡三潴郡三井郡浮羽郡
  40. ^ 日田郡
  41. ^ 京都市愛宕郡紀伊郡宇治郡綴喜郡相楽郡久世郡
  42. ^ 大津市滋賀郡栗太郡野洲郡甲賀郡蒲生郡神崎郡(滋賀県)
  43. ^ 乙訓郡葛野郡南桑田郡船井郡何鹿郡北桑田郡天田郡加佐郡与謝郡中郡(京都府)竹野郡(京都府)熊野郡
  44. ^ 陸軍管区表(昭和15年7月24日軍令陸第20号)

関連項目

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