コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

飯石郡

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
島根県飯石郡の位置(緑:飯南町 薄黄:後に他郡に編入された区域 薄緑:後に他郡から編入した区域)

飯石郡(いいしぐん)は、島根県出雲国)の

人口4,198人、面積242.88km²、人口密度17.3人/km²。(2024年11月1日、推計人口

以下の1町を含む。

郡域

[編集]

1879年明治12年)に行政区画として発足した当時の郡域は、下記の区域にあたる。

  • 出雲市の一部(西谷町・佐田町須佐・佐田町朝原・佐田町原田・佐田町反邊・佐田町大呂)
  • 雲南市の一部(三刀屋町各町・吉田町各町・掛合町各町・木次町下熊谷・木次町上熊谷)
  • 飯南町の大部分(塩谷・井戸谷・畑田を除く)

歴史

[編集]

古代

[編集]

律令制の施行により制定されたと考えられる。郡名は『出雲国風土記』によれば、伊毘志都幣命(いひしつべのみこと)という神がこの地に鎮座していたことに因むという。郡家は多禰郷にあった。

郷里

[編集]

天平5年(733年2月30日に成立したとされる『出雲国風土記』には7つのの内に19の里があったと記され、以下の郷の記載がある[注釈 1]。波多郷と来嶋郷にはそれぞれ2つの里が、他の5つの郷にはそれぞれ3つの里があった。

  • 熊谷郷 - 現在の雲南市三刀屋町上熊谷、下熊谷、木次町上熊谷、下熊谷辺り。
  • 三屋郷 - 三刀矢郷から神亀3年(726年)に改名した。現在の雲南市三刀屋町三刀屋、伊萱、給下、古城、高窪、里房、殿河内、粟谷、根波別所辺り。
  • 飯石郷 - 伊鼻志郷から神亀3年(726年)に改名した。現在の雲南市三刀屋町多久和、神代、中野、六重、吉田町川手、深野、曽木辺り。
  • 多禰郷 - 種郷から神亀3年(726年)に改名した。現在の雲南市三刀屋町乙加宮、坂本、須所、掛合町多根、松笠、掛合、入間、吉田町吉田辺り。
  • 須佐郷 - 現在の出雲市佐田町須佐、反辺、原田、大呂、大川、雲南市掛合町穴見辺り。
  • 波多郷 - 現在の雲南市掛合町波多、飯石郡飯南町志津見、八神、角井、獅子、長谷辺り。
  • 来嶋郷 - 現在の飯石郡飯南町頓原、上来島、下来島、佐見、野萱、真木、赤名、上赤名、下赤名辺り。

式内社

[編集]

延喜式神名帳に記される郡内の式内社

神名帳 比定社 集成
社名 読み 付記 社名 所在地 備考
飯石郡 5座(並小)
三屋神社 ミトヤノ
ミヤケ
三屋神社 島根県雲南市三刀屋町給下865
多倍神社 タヘノ 多倍神社 島根県出雲市佐田町反辺1064
飯石神社 イヒシ 飯石神社 島根県雲南市三刀屋町多久和1065
須佐神社 スサノ 須佐神社 島根県出雲市佐田町宮内730
川辺神社 カハヘノ 川辺神社 島根県雲南市木次町上熊谷中の段1462-1
凡例を表示

近世以降の沿革

[編集]
知行 村数 村名
藩領 出雲松江藩[注釈 3] 36村 三刀屋村、萱原村、粟谷村[注釈 4]、掛合村[注釈 5]、給下村、案田村、大谷村、尾崎村、屋内村、法師田村、伊萱村[注釈 6]、殿河内村、掛合宮内村、加食田村、根波別所村、里坊村、乙多田村、坂本村、松笠村、下熊谷村、上熊谷村、神代村、川手村、深野村、上山村、曽木村、多久和村、須所村、六重村、中野村、吉田村、朝原村、反辺村、宮内村、原田村、民谷村[注釈 7]
出雲広瀬藩 24村 民谷宇山村、上赤名村[注釈 8]、下赤名村[注釈 8]、下来島村、志津見村、花栗村、獅子村、都加賀村、畑村、大路村、八幡村[注釈 9]、入間村、竹尾村、穴見村、小田村[注釈 10][注釈 11]、真木村[注釈 10]、野萱村[注釈 10]、上来島村、八神村、角井村、長谷村、佐見村、頓原村[注釈 12]、刀根村[注釈 13]
松江藩・広瀬藩 1村 多根村
  • 明治4年
  • 明治8年(1875年9月5日[1](52村)
    • 案田村・大谷村および尾崎村の一部(本郷地区)が合併して古城村となる。
    • 屋内村・法師田村が合併して高窪村となる。
    • 掛合宮内村・加食田村・乙多田村が合併して乙加宮村となる。
    • 大路村・八幡村が合併して大呂村となる。
    • 畑村・刀根村が合併して波多村となる。
    • 萱原村および尾崎村の残部(字三谷後浜)が三刀屋村に、竹尾村が入間村にそれぞれ合併。
  • 明治12年(1879年1月12日 - 郡区町村編制法の島根県での施行により行政区画としての飯石郡が発足。郡役所が掛合村に設置。

町村制以降の沿革

[編集]
1.一宮村 2.三刀屋村 3.鍋山村 4.飯石村 5.中野村 6.松笠村 7.多根村 8.田井村 9.吉田村 10.掛合村 11.須佐村 12.波多村 13.志々村 14.頓原村 15.来島村 16.赤名村(桃:出雲市 赤:雲南市 橙:飯南町)
  • 明治22年(1889年4月1日 - 町村制の施行により、下記の各村が発足。特記以外は現・雲南市。(16村)
    • 一宮村 ← 給下村、伊萱村、古城村(現・雲南市)、高窪村(現・雲南市、出雲市)
    • 三刀屋村 ← 三刀屋村、三刀屋町[注釈 14]、下熊谷村
    • 鍋山村 ← 殿河内村、乙加宮村、里坊村、根波別所村
    • 飯石村 ← 粟谷村、多久和村、上熊谷村
    • 中野村 ← 六重村、神代村、中野村、須所村、坂本村
    • 松笠村(単独村制)
    • 多根村(単独村制)
    • 田井村 ← 曽木村、上山村、深野村、川手村
    • 吉田村 ← 吉田村、吉田町[注釈 14]、民谷村
    • 掛合村 ← 掛合村、懸合町[注釈 15]
    • 須佐村 ← 宮内村、朝原村、原田村、反辺村、大呂村(現・出雲市)
    • 波多村 ← 波多村、入間村、穴見村
    • 志々村 ← 八神村、志津見村、獅子村、角井村(現・飯南町)
    • 頓原村 ← 都加賀村、頓原村、頓原町[注釈 14]、花栗村、佐見村、長谷村(現・飯南町)
    • 来島村 ← 小田村、真木村、上来島村、野萱村、下来島村(現・飯南町)
    • 赤名村 ← 上赤名村、赤名町[注釈 16]、下赤名村(現・飯南町)
  • 明治29年(1896年2月20日 - 須佐村が分割し、一部(宮内・原田・朝原)に東須佐村、残部(大呂・反辺)に西須佐村がそれぞれ発足。(17村)
  • 明治29年(1896年8月1日 - 郡制を施行。
  • 大正12年(1923年)4月1日 - 郡会が廃止。郡役所は存続。
  • 大正15年(1926年7月1日 - 郡役所が廃止。以降は地域区分名称となる。
  • 昭和3年(1928年11月1日 - 三刀屋村が町制施行して三刀屋町となる。(1町16村)
  • 昭和9年(1934年)8月1日 - 赤名村が町制施行して赤名町となる。(2町15村)
  • 昭和16年(1941年11月3日
    • 一宮村の一部(高窪のうち字西谷)が簸川郡上津村に編入。
    • 三刀屋町・一宮村が合併し、改めて三刀屋町が発足。[2](2町14村)
  • 昭和24年(1949年4月29日 - 頓原村が町制施行して頓原町となる。(3町13村)
  • 昭和26年(1951年
    • 4月1日 - 掛合村・多根村・松笠村が合併し、改めて掛合村が発足。(3町11村)
    • 8月1日 - 掛合村が町制施行して掛合町となる。(4町10村)
  • 昭和28年(1953年
    • 4月1日 - 赤名町と邑智郡谷村が合併し、改めて赤名町が発足。
    • 11月10日 - 東須佐村・西須佐村が合併して須佐村が発足。(4町9村)
  • 昭和29年(1954年
    • 1月20日 - 三刀屋町・飯石村・鍋山村・中野村が合併し、改めて三刀屋町が発足。(4町6村)
    • 11月3日 - 吉田村・田井村が合併し、改めて吉田村が発足。(4町5村)
  • 昭和30年(1955年)4月1日 - 掛合町・波多村が合併し、改めて掛合町が発足。(4町4村)
  • 昭和31年(1956年6月10日 - 須佐村が簸川郡窪田村と合併して簸川郡佐田村が発足。(4町3村)
  • 昭和32年(1957年
    • 1月1日 - 来島村・赤名町が合併して赤来町が発足。(4町2村)
    • 2月1日 - 志々村・頓原町が合併し、改めて頓原町が発足。(4町1村)
    • 6月1日 - 三刀屋町の一部(上熊谷・下熊谷の各一部)が大原郡木次町に編入。
  • 平成16年(2004年)11月1日 - 三刀屋町・吉田村・掛合町が大原郡大東町加茂町・木次町と合併して雲南市が発足し、郡より離脱。(2町)
  • 平成17年(2005年)1月1日 - 頓原町・赤来町が合併して飯南町が発足。(1町)

変遷表

[編集]
自治体の変遷
明治以前 明治8年9月5日 明治22年
4月1日
町村制施行
明治22年 - 大正15年 昭和元年 - 昭和29年 昭和30年- 昭和39年 昭和40年- 昭和64年 平成元年 - 現在 現在
懸合町 懸合町 掛合村 掛合村 昭和26年4月1日
掛合村
昭和26年8月1日
町制 掛合町
昭和30年4月1日
掛合町
掛合町 平成16年11月1日
雲南市の一部
雲南市
掛合村 掛合村
多根村 多根村 多根村 多根村
松笠村 松笠村 松笠村 松笠村
畑村 波多村 波多村 波多村 波多村
刀根村
入間村 入間村
竹尾村
穴見村 穴見村
吉田町 吉田町 吉田村 吉田村 吉田村 昭和29年11月3日
吉田村
吉田村 吉田村
吉田村 吉田村
民谷村 民谷村
曽木村 曽木村 田井村 田井村 田井村
上山村 上山村
深野村 深野村
川手村 川手村
六重村 六重村 中野村 中野村 中野村 昭和29年1月20日
三刀屋町
三刀屋町 三刀屋町
神代村 神代村
中野村 中野村
須所村 須所村
坂本村 坂本村
殿河内村 殿河内村 鍋山村 鍋山村 鍋山村
掛合宮内村 乙加宮村
加食田村
乙多田村
里坊村 里坊村
根波別所村 根波別所村
粟谷村 粟谷村 飯石村 飯石村 飯石村
多久和村 多久和村
上熊谷村 一部 上熊谷村
一部 昭和32年6月1日
大原郡木次町に編入
大原郡木次町
下熊谷村 一部 下熊谷村 三刀屋村 三刀屋村 昭和3年11月1日
町制 三刀屋町
一部 三刀屋町 三刀屋町
三刀屋町 三刀屋町
三刀屋村 三刀屋村
萱原村
尾崎村 (字三谷後浜)
(本郷地区) 古城村 一宮村 一宮村 昭和16年11月3日
三刀屋町に編入
案田村
大谷村
伊萱村 伊萱村
給下村 給下村
屋内村 高窪村
法師田村 一部[注釈 17]を除く
一部[注釈 17] 昭和16年11月3日
簸川郡上津村に編入
昭和30年3月22日
出雲市に編入
出雲市 平成17年3月22日
出雲市の一部
出雲市
宮内村 宮内村 須佐村 明治29年2月20日
東須佐村
東須佐村 昭和28年11月10日
須佐村
昭和31年6月10日
簸川郡佐田村の一部
昭和44年11月3日
町制 簸川郡
佐田町の一部
朝原村 朝原村
原田村 原田村
反辺村 反辺村 明治29年2月20日
西須佐村
西須佐村
大路村 大呂村
八幡村
頓原町 頓原町 頓原村 頓原村 昭和24年4月29日
町制 頓原町
昭和32年2月1日
頓原町
頓原町 平成17年1月1日
飯南町
飯南町
頓原村 頓原村
都加賀村 都加賀村
花栗村 花栗村
佐見村 佐見村
長谷村 長谷村
八神村 八神村 志々村 志々村 志々村
志津見村 志津見村
獅子村 獅子村
角井村 角井村
小田村 小田村 来島村 来島村 来島村 昭和32年1月1日
赤来町
赤来町
上来島村 上来島村
下来島村 下来島村
野萱村 野萱村
真木村 真木村
赤名町 赤名町 赤名村 赤名村 昭和9年8月1日
町制 赤名町
昭和28年4月1日
赤名町
上赤名村 上赤名村
下赤名村 下赤名村
邑智郡塩谷村 塩谷村 邑智郡
谷村
邑智郡
谷村
邑智郡
谷村
邑智郡井戸谷村 井戸谷村
邑智郡畑田村 畑田村

行政

[編集]
歴代郡長
氏名 就任年月日 退任年月日 備考
1 明治12年(1879年)1月12日
大正15年(1926年)6月30日 郡役所廃止により、廃官

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 比定地名は2009年現在のもの。郷域の比定は関(2006)を参考にした。
  2. ^ 旧高旧領取調帳」は出雲国分が欠けているため、木村礎の手により「天保郷帳」をもとに作成され、「日本史料選書16 旧高旧領取調帳 中国四国編」(近藤出版社、1978年)に掲載されたデータが国立歴史民俗博物館によりデータベース化されている。
  3. ^ 右記のほか水越村、本郷上村、本郷下村が記載されているが詳細不明。
  4. ^ 記載は三刀屋粟谷村。
  5. ^ 掛合粟谷村として記載されているとみられるが石高は異なる。
  6. ^ 伊萱村・西三代村に分かれて記載されているとみられる。
  7. ^ 民谷宇山村のうちとして記載されているが誤記と思われる。
  8. ^ a b 赤名村1村として記載。
  9. ^ 記載は大路村のうち。
  10. ^ a b c 中来島村1村として記載。
  11. ^ 以下9村は神門郡として記載。
  12. ^ 和泉村・頓原村に分かれて記載。
  13. ^ 「旧高旧領取調帳データベース」には記載なし。
  14. ^ a b c 同名の村のうち町分。本項では町数に数えない。
  15. ^ 掛合村のうち町分。本項では町数に数えない。
  16. ^ 下赤名村のうち町分。本項では町数に数えない。
  17. ^ a b 字西谷[1]。現在の西谷町。かつては法師田村であった[3]

出典

[編集]
  1. ^ a b 島根県の地名鑑” (pdf). 島根県. 2023年5月21日閲覧。
  2. ^ 官報第四四四七号(昭和十六年十一月四日) https://dl.ndl.go.jp/pid/2960946/1/14
  3. ^ 日本歴史地名大系『法師田村』 - コトバンク

参考文献

[編集]
  • 沖森卓也、佐藤信、矢嶋泉 編著『出雲国風土記』 2005年 山川出版社 ISBN 978-4-634-59390-9
  • 島根県地域振興部市町村課編『島根県の地名鑑』第8次改訂版 2007年 ハーベスト出版
  • 関和彦『『出雲国風土記』註論』 2006年 明石書店 ISBN 4-7503-2376-4
  • 「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『角川日本地名大辞典』 32 島根県、角川書店、1979年7月1日。ISBN 4040013204 
  • 旧高旧領取調帳データベース
  • 島根県内市町村その他情報