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「青ヶ島」の版間の差分

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{{Pathnav|世界|アジア|東アジア|日本|伊豆諸島|frame=1}}
{{Infobox 島
{{Infobox 島
|島名=青ヶ島
| 島名 = 青ヶ島
|画像=[[画像:Aogashima01.jpg|250px]]<br/>上空からの青ヶ島北部
| 画像 = [[File:青ヶ島.jpg|300px]]
| 画像説明 = 航空写真
|座標={{ウィキ座標2段度分秒|32|27|28|N|139|45|33|E|region:JP-13}}
| 座標 = {{ウィキ座標2段度分秒|32|27|28|N|139|45|33|E|region:JP-13}}
|面積=5.97<ref>{{cite web
| 面積 = 5.97
| authorlink = 国土地理院 平成21年4月1日
| date = 2009-04-01
| 周囲 = 9
| 標高 = 423
| url = http://www.gsi.go.jp/KOKUJYOHO/MENCHO/200904/shima/shima-hon.htm
| 最高峰 = 大凸部
| title = 本州の島面積
| 最大都市 =
|accessdate=2011年12月22日
| 諸島 = [[伊豆諸島]]
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| 海域 = [[太平洋]]([[フィリピン海]])
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|標高=423
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|海域=[[太平洋]]([[フィリピン海]])
| 地図2 = Japan
|国={{JPN}} [[東京都]][[青ヶ島村]]}}
| 人口 = 162人
[[ファイル:Aogasima maruyama.jpg|thumb|250px|尾山展望公園から見る丸山]]
| 人口密度 = 35.8人 / km{{sup|2}}
[[ファイル:Landsat Aogashima Island.jpg|250px|thumb|衛星写真]]
}}
'''青ヶ島'''(あおがしま)は、[[伊豆諸島]]に属する[[火山島]]で、本諸島の有人島としては最南端にある。


== 概要 ==
'''青ヶ島'''(あおがしま)は、[[伊豆諸島]]の[[島]]。行政区分としては島全体が[[東京都]][[青ヶ島村]]に属し、[[2016年]]1月1日時点での人口は166人である<ref>[http://www.vill.aogashima.tokyo.jp/press/koho1601.pdf 広報あおがしま 2016年1月15日号]</ref>。[[火山噴火予知連絡会]]によって火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山に選定されている<ref>{{Cite web |url = http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/47volcanoes.pdf|title = 火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山|publisher = 気象庁|accessdate = 2016-02-25}}</ref>。伊豆諸島の有人島としては最も南に位置する。日本の[[気象庁]]によって火山活動度ランクCの[[活火山]]に指定されている。
{{See also|青ヶ島村}}

全島が[[東京都]][[青ヶ島村]]に属し、[[住所]]は全[[世帯]]で[[番外地|無番地]]である。[[産業]]に乏しく[[本土]]との往来も難しいため、人口減少が続いており、2024年5月1日現在の人口は162人<ref>{{Cite web2 |df=ja |url=https://www.tokyo-np.co.jp/article/328820 |title=人口162人 青ケ島に「留学」を/来春から通う小中学生募集/里親・山田さん「体験発信して」 |website=東京新聞 TOKYO Web |publisher=中日新聞社 |date=2024-05-23 |accessdate=2024-08-12}}『[[東京新聞]]』2024年5月23日、朝刊、都心面。</ref>{{efn2|日本国政府の[[実効支配]]していない[[北方地域|北方領土]]、[[福島第一原子力発電所事故]]による避難対象地域を除く。}}、世帯数は113世帯である<ref>{{Cite web|和書|title=青ヶ島について 青ヶ島の概要|url=http://www.vill.aogashima.tokyo.jp/office/outline.html|website=青ヶ島村ホームページ|access-date=2020-08-16|publisher=青ヶ島村|archiveurl=http://www.vill.aogashima.tokyo.jp/office/outline.html|archive-date=2020-08-16}}</ref>。現在、青ヶ島村は[[日本]]の[[市町村]]の中で最も[[人口]]が少ない。島内に[[青ヶ島村立青ヶ島小中学校|青ヶ島小中学校]]が存在するが、高校以上の教育機関が存在しないため、進学する生徒は島を離れなければならない。また、全人口が島の高地である外輪山側に住み、そのほぼ全員が標高100メートル以上の海を見渡す高台に居住していることから、「'''海上のマチュピチュ'''」や「'''東洋のマチュピチュ'''」などと呼ばれることがある。

「青酎(あおちゅう)」という島特産の[[焼酎]]があり、[[杜氏]]の数だけ個性がある。青酎のなかには杜氏の高齢化、後継者不在によって製造継続が不可となり、現存しないものもある。

=== インフラストラクチャー ===
{{See also|あおがしま丸|東京愛らんどシャトル}}
[[File:Aogashima heliport.jpg|thumb|left|青ヶ島の[[ヘリポート]]上の「[[東京愛らんどシャトル]]」。]]

島までの交通機関はすべて[[八丈島]]を経由して発着する、いわゆる「[[二次離島]]」である。連絡船の[[あおがしま丸]]や<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.izu-syotou.jp/route01/index.html|title=八丈島⇔青ヶ島|accessdate=2016-07-01|publisher=[[伊豆諸島開発]]}}</ref>、くろしお丸(2022年2月から就航)は悪天候による欠航が多く、[[ヘリコミューター]]の[[東京愛らんどシャトル]]は<ref name="東京愛らんどシャトル">{{Cite web|和書|url=http://tohoair-tal.jp/top.html|title=東京愛らんどシャトル -予約・空席照会・運航情報-|accessdate=2016-07-01|publisher=[[東邦航空]]}}</ref>、船より速いものの定員が少ないという往来の困難さゆえに、観光目的で島を訪れる人は、年間 900 - 1,800人程度である。

[[2010年代]]に入って、インターネット経由で世界的に存在が認知されたことで、島内の許容範囲を超える観光客が押し寄せている。特に、[[2014年]]から[[2016年]]までに掛けて[[アメリカ合衆国]]の著名な組織のWebサイトで記事が相次いで掲載されたことで<ref>{{Cite web2 |df=ja |first=Victoria |last=Wilson |title=13 Amazing Natural Wonders You Should See Before You Die |url=https://www.onegreenplanet.org/animalsandnature/amazing-natural-wonders-photos/ |website=One Green Planet |date=2014-10-30 |accessdate=2019-08-25 |language=en}}</ref><ref>{{Cite web2 |df=ja |first=Jennifer |last=Nalewicki |title=The Sleepy Japanese Town Built Inside an Active Volcano |url=https://www.smithsonianmag.com/travel/japanese-town-aogashima-active-volcano-180959153/ |website=Smithsonian |date=2016-07-05 |access-date=2019-08-25 |language=en}}</ref>、世界中から取材班や観光客が集まるようになり、数少ない交通機関の予約(特に東京愛らんどシャトル)はさらに困難になった。愛らんどシャトルは島民の生活にも欠かせない手段であり、予約が取りにくくなったことで、島民の往来にも支障が発生している。また、青ヶ島村において外国語での電話取材や外国人観光客への対応で問題が発生している<ref>{{Cite web|和書|title=日本一小さな村「青ヶ島」が外国人観光客に大人気 人口170人の島は大混乱…|url=https://news.livedoor.com/article/detail/16930671/|website=ライブドアニュース|date=2019-08-15|access-date=2019-08-25|archiveurl=https://web.archive.org/web/20191211051807/https://news.livedoor.com/article/detail/16930671/|archive-date=2019-12-11|language=ja-JP}}</ref>。

島内の電力は、島北部の集落にただ1つ存在する東京電力パワーグリッドの[[内燃力発電]]により供給されている。


== 地理 ==
== 地理 ==
{{See also|青ヶ島村#地理}}
{{See also|日本の秘境100選}}


本州から遥か南方の[[太平洋]]上に位置する。最も近い[[八丈島]]からは南へ約60キロメートルほど離れている。気候は[[温暖湿潤気候|温暖湿潤気候(Cfa)]]。本州よりは暖かい[[気候]]であるが、沖縄やハワイ等と比較して緯度が高いため、常夏の島といえるほど暖かくはない。孤島であるため、天候が変化しやすいほかに、海からの強風に常に晒され続けており、自動車が飛ばされるほどの風が吹くこともある。日本の[[気象庁]]によって[[火山]]活動度ランクCの[[活火山]]に指定されており<ref>{{Cite press release|和書|title=火山噴火予知連絡会による活火山の選定及び火山活動度による分類(ランク分け)について|publisher=[[気象庁]]|date=2003-01-21|format=PDF|url=https://www.jma.go.jp/jma/press/0301/21a/yochiren.pdf}}</ref>、[[常時観測火山]]にも選定されている<ref>{{Cite press release|和書|title=火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山|publisher=[[気象庁]]|date=2009-06-30|format=PDF|url=https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/47volcanoes.pdf}}</ref><ref>{{Cite press release|和書|title=中長期的な噴火の可能性の評価について -監視・観測体制の充実等の必要な火山の選定-|publisher=[[気象庁]] 火山噴火予知連絡会・火山活動評価検討会|date=2009-06-30|format=PDF|url=https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/kaisetsu/CCPVE/hyoka/hyoka_houkoku.pdf}}</ref>。[[外輪山]]によって周囲の海から隔てられ、カルデラ底が陸上に露出しているという特異な[[地形]]を持つ。
[[東京]]の南358[[キロメートル]]、[[八丈島]]の南方65キロメートルにある周囲約9キロメートルの火山島。


=== 地形 ===
青ヶ島は典型的な二重式カルデラ火山<ref name="kaiho">http://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/kaiikiDB/kaiyo13-2.htm 青ヶ島,海域火山データベース 海上保安庁海洋情報部</ref>で、島の南部に直径1.5キロメートルのカルデラ(池之沢火口)があり、その中に「丸山(別名オフジサマ)」という中央火口丘があるが、島自体はより大きな海中[[カルデラ]]全体の高まりのひとつにすぎず、第1東青ヶ島海丘・第2東青ヶ島海丘・第3東青ヶ島海丘などとともに島の北東にある海中カルデラの[[外輪山]]となっている<ref name="kaiho"/>。なお、第2青ケ島海丘と第3青ケ島海丘の間にも、更にカルデラがあると考えられている(つまり、青ヶ島と周辺海域には火口・カルデラ地形が幾つも重なっている)。島の最高点はこの丸山を取り囲んでいる外輪山の北西部分に当たる「大凸部(おおとんぶ)」にある。外輪山の外側斜面は急な崖となって[[海岸|海岸線]]に続く。このため、海沿いには殆ど平坦地が無く、高さ50-200メートルほどの直立する海食崖になっており、[[砂浜]]は無い。
[[Image:Aogashima01.jpg|thumb|北端部]]
海面上の本島は北北西-南南東3.5キロメートル、西南西-東北東2.5キロメートルであるが、これは海面下の基底15キロメートル×8キロメートル、海底からの比高は1,100メートルの火山の頂上部である<ref>[https://gbank.gsj.jp/volcano/Act_Vol/aogashima/text/exp07-1.html 青ヶ島火山および伊豆諸島南方海底火山地質図] - 産業技術総合研究所 地質調査総合センター</ref>。


海面上の青ヶ島火山は、北部の黒崎火山とそれを覆う南部の主成層火山の2つの火山体で構成されている<ref name="GSJ" >[https://gbank.gsj.jp/volcano/Act_Vol/aogashima/text/exp07-2.html 青ヶ島火山および伊豆諸島南方海底火山地質図] 産業技術総合研究所 地質調査総合センター</ref>。主成層火山の頂部には直径約1.7×1.5キロメートルの小カルデラ(池之沢火口)があり、その中に[[中央火口丘]]の丸山[[火砕丘]]がある。
島の北端やカルデラ内の数か所では噴気孔があり、黒崎海岸には海中温泉も在る<ref name="kaiho"/>。


この島における最高地点は丸山を取り囲んでいる[[外輪山]]の北西部分に当たる'''大凸部'''(おおとんぶ)で、標高423メートルである。島の外周部は、高さが50メートルから200メートル程度の切り立った海食崖でとり囲まれている。[[砂浜]]は無い。
集落はカルデラの外・島の北部にあり、村役場を中心に「休戸郷(やすんどごう)」と「西郷(にしごう)」の2つが存在する。ただし、集落名に関係なく公的な住所は島内全て「青ヶ島村無番地」である。


== 地名 ==
=== 地名など ===
[[File:Aogasima maruyama.jpg|thumb|尾山展望公園から見る丸山。]]
前述のとおり、島内の公的な住所はすべて無番地であり、[[大字]]等の土地登記上の行政地名は存在しないが、集落、山、海岸、岩礁等には地名が付けられている。
[[File:Sanpoport old wharf.jpg|thumb|三宝港の旧埠頭。]]
[[File:Trace of ochiyoport.jpg|thumb|使用中止となっている大千代港。]]


本島の北部でカルデラの外側の'''岡部'''に、'''休戸郷'''(やすんどごう)と'''西郷'''(にしごう)の2つの集落が存在する。また、本島の北端部やカルデラ内の数か所には多数の地熱蒸気噴気孔『ひんぎゃ(火の際、ひのきわ)』が在り、'''黒崎海岸'''には海中温泉がある<ref name="海域火山データベース">{{Cite web|和書|url=https://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/kaiikiDB/kaiyo13-2.htm|title=青ヶ島|accessdate=2016-07-01|publisher=[[海上保安庁]] 海洋情報部}}(海域火山データベース)</ref>。なお、[[住所]]上はこれらの地名は表記されず、島内全域が「東京都青ヶ島村[[無番地]]」である。
*休戸郷、西郷 - 島北部の集落の地名。住宅、公共施設等はすべてこの地区に集中している。島の大部分を占める二重式火山の部分に対し、北側の人の住む地区を「岡部」と呼ぶこともある。東の休戸郷と西の西郷の中間の地区を「中原」ともいい、村営住宅の名称等に「中原」が使われている。

*池之沢 - 二重式火山のカルデラ部分の総称的地名。天明の噴火(後述)以前には大小2つの池があったことからこの名がある。カルデラ内には「恋ヶ奥」・「金土ヶ平」などの地名がある。
; 池之沢
*大凸部 - 外輪山の北西に位置する、島の最高地点(標高423メートル)。
: カルデラ内の領域。この地名は天明の大噴火以前には大小2つの池があったことに由来する。池之沢内は「金土ヶ平」や、樹齢230年を越える[[スギ]]「大杉」が茂る「恋ヶ奥」などに細分化される。火口付近であることからひんぎゃが多く存在し、[[絶滅危惧種]]の[[オオタニワタリ]]が群生している。
*大人ヶ凸部(おおじんがとんぶ) - 外輪山東南に位置する。標高334メートル。
; 浜路ヶ平
*丸山 - カルデラ中央の火口丘の名称。標高223メートル。
: 天明の大噴火以前に池之沢の東南部に集落を有した狭隘な平坦地で、現在は無人である。
*尾山 - 外輪山北側、標高400メートル地点の名称で、展望公園として整備されている。
; 岡部
*浜路ヶ平 - 島の東南部にあるわずかな平坦地で、現在は無住だが、天明の噴火以前はここに集落があった。
: 休戸郷と西郷の集落がある青ヶ島北部。東側が休戸郷で西側が西郷である。また、それらの中間は「中原」とも呼ばれることもあり、村営住宅の名称などに使われている。[[住宅]]や公共施設等はここに集中している。ここは、島の大部分を占める二重式火山の池之沢に対して、「岡部」と呼ばれることもある。
*神子ノ浦(みこのうら) - 島の北端、東寄りの海岸の呼称。断崖の下の岩場であるが、集落から距離的には近く、20世紀半ばまでは船着場としても使われていた。現在は途中の展望台までは道があるものの、先は断崖絶壁で道も崩落しており近づけない。
; 神子ノ浦(みこのうら)
*大千代 - 島の南東部にある岬の呼称。港が存在するが、[[1994年]]頃に付近の斜面が崩落して道路が寸断されてしまったため、現在は近づくことが出来ない。
: 岡部の東側の断崖の下の[[岩石海岸]]。集落から平面距離的には近いため、20世紀半ばまで船着場として使われていた。当地まで断崖絶壁を降りる道が崩落しており、現在は通行不可能。断崖の上には展望台が建設されている。
; 大凸部(おおとんぶ)
: 外輪山の北西に位置する標高423メートルの山で、青ヶ島の最高地点でもある。
; 大人ヶ凸部(おおじんがとんぶ)
: 外輪山東南部に位置する標高334メートルの山。
; 丸山
: 1785年の天明の大噴火で形成された標高223メートルの[[内輪山]](火口丘)。内輪山を一周することができるように整備された丸山遊歩道の途中には、富士様と呼ばれる神社がある。
; 尾山
: 外輪山北側の展望公園として整備されている標高400メートルの頂。
; 大千代
: 島の南東部にある岬。三宝港を補うために埠頭が建設されたが、1994年9月27日に付近の斜面が崩落し、村道18号線(大千代港線)が寸断されてしまったため、現在は埠頭に行くことは不可能。東京都は「大千代港への取付道路の整備は課題であるが、崩落の改修は技術的にも相当困難な状況である」<ref>[https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/09hatijou/g/kankoubutu/25jigyougaiyou.pdf]</ref>と結論しており、事実上放棄されている。


== 歴史 ==
== 歴史 ==
島の名前の由来は[[八丈島]]から島を見ると海の上に青々として見えることによるという。いつから人が定住するようになったかについては不明<ref name="villoutline">[http://www.vill.aogashima.tokyo.jp/office/outline.html 青ヶ島について | 青ヶ島村ホームページ]</ref>だが、島の伝説([[徐福]]伝説によると、男女が同じ島に住むと神の祟りがあると信じられた時代があり、[[女人禁制]]の島だったとされる。歴史上に表れるのは[[15世紀]]頃からであるが、[[海難事故]]を記録したものがほとんどである<ref name="villoutline"/>。
いつから人が本島に定住するようになったかについては不明であるが、[[徐福|徐福伝説]]によれば、男女が同じ島に住むと神の祟りがあると信じられた時代があり、[[女人禁制]]の島だったとされる。本島が歴史上に表れるのは[[15世紀]]頃からであるが、[[海難事故]]を記録したものがほとんどである<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.vill.aogashima.tokyo.jp/office/outline.html|title=青ヶ島について|accessdate=2016-07-01|publisher=青ヶ島村役場}}</ref>。『[[保元物語]]』に登場する[[源為朝]]が訪れた[[鬼ヶ島|鬼島]]を青ヶ島とする説がある


=== 火山活動史 ===
青ヶ島は[[第四紀]]火山として知られている。約3000年前には、大規模なマグマ水蒸気爆発が発生し、[[火砕サージ]]が全島を覆った。その後、3000-2400年前の間に、島の南東部にあった火口状の凹地を埋める溶岩流と降下[[スコリア]]が噴出、また島の東部および北部に多量のスコリアが降下する噴火も発生した。その後岩屑雪崩が発生し、最終的に池の沢火口が形成された<ref>[http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/322_Aogashima/322_index.html 青ヶ島]</ref>。
{{See also|還住 (青ヶ島)|海底火山}}
[[File:Hingya cauldron.jpg|thumb|噴気熱(ひんぎゃ)を利用した釜。]]


青ヶ島は[[第四紀]]火山である。最近1万年間の活動は主成層火山で発生している。約3,600年前に北西山腹で[[割れ目噴火]]があった。
記録に残っているものでは、『八丈島年代記』に[[慶安]]5年([[1652年]])に噴煙があがったことが記録されているほか、『南方海島志』には、[[寛文]]10年([[1670年]])より約10年間大池より火山灰が噴出したとされる。
* 約3,000年前 - 大規模なマグマ水蒸気爆発が発生し、[[火砕サージ]]が全島を覆った。3,000年前から2,400年前までの間に、本島の南東部にあった火口状の凹地を埋める[[溶岩流]]と[[スコリア]]が噴出し、東部や北部に多量のスコリアが降下する噴火も発生した。その後、岩屑雪崩が発生して、最終的には池之沢火口が形成された<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/322_Aogashima/322_index.html|title=青ヶ島|accessdate=2016-07-01|publisher=[[気象庁]]}}</ref>。
* [[1652年]] - [[噴煙]]が上がり<ref>{{Cite book|和書|title=八丈島年代記|year=1854|publisher=安田存政}}</ref>、1670年から約10年間にわたって大池から[[火山灰]]が噴出した<ref>{{Cite book|和書|title=南方海島志|year=1791|publisher=秋山富南}}</ref>。
* [[1780年]]7月 - [[群発地震]]が発生し、8月に大池・小池の水位と水温が上昇した。
* [[1781年]][[5月3日 (旧暦)|5月3日]] - 地震が群発し、翌日には降灰が起こった。
* [[1785年]][[4月18日 (旧暦)|4月18日]] - 発生した火山活動により全家屋63戸が焼失した<ref name="海域火山データベース" />。火口内に溶岩流とスコリアによる丸山火砕丘が形成され、翌年の噴火に掛けて成長した。この天明の大噴火は5月末まで続いたとされる。このとき、島民327人のうち[[八丈島]]への避難が間に合わなかった約130人が死亡したと考えられており{{efn2|{{Quotation|しかしその翌1785年(天明5年)、2年前と1日違いの3月10日午前、新たな噴火に見舞われた。今まで経験したどれより更に激烈で、昼でも真っ暗な日が8日間続いた。島民はいよいよ踏みとどまっていることが出来なくなった。〈中略〉当時の青ヶ島の人口は、安永3年の記録によれば家数53軒、男161女166、合わせて327人ほか流人1人とのことである。これから6年目が最初の噴火だから、ほぼこの数のままとみてよいだろう。4月11日に45人、27日に…108人、3月終りに名主らと共に来た者を合わせると脱出者は202人である。残された島民の大部分は2 度の助け舟を待てなかったと思われる。|小山茂{{sfn|小山|2012|pp=31-32|loc=【天明の別れ】}} }} }}、1824年に[[名主]]の[[佐々木次郎太夫]]らが[[還住 (青ヶ島)|還住]](全島帰還)を果たすまでの約40年間にわたって無人島となった。


18世紀の活動以降、顕著な[[火山活動]]は無い。[[噴気]]活動も少なく、池の沢火口内壁と丸山周辺に水蒸気を主成分とする噴気が見られるだけである<ref name="GSJ" />。
[[1780年]]7月には[[群発地震]]が発生し、8月に大池・小池の水位と水温が上昇。[[天明]]元年([[1781年]])[[5月3日 (旧暦)|5月3日]]に地震が群発し、翌日には降灰。天明3年[[1785年]][[4月18日 (旧暦)|4月18日]]頃に発生した火山活動により全家屋63戸が焼失した<ref name="kaiho"/>。火口内に[[溶岩流]]とスコリアによる丸山火砕丘が形成され、翌年の噴火に掛けて成長した。


== 作品 ==
いわゆる'''天明の大噴火'''は5月末まで続いたとされる。このとき、島民327人のうち[[八丈島]]への避難が間に合わなかった130-140人が死亡したと考えられており、[[文政]]7年([[1824年]])に[[名主]]の[[佐々木次郎太夫]]らが[[還住]](全島帰還)を果たすまでの約40年間無人島になる。島ではその後噴火は発生していない。
{{Dl2
| 映画 |
* [[青ヶ島の子供たち 女教師の記録]]<ref>{{Cite video|和書|people=[[中川信夫]](監督)、[[左幸子]]・[[宇野重吉]]・[[杉村春子]]・[[沼田曜一]](出演)|date=1955-11-29|title=青ヶ島の子供たち 女教師の記録|medium=映画|publisher=[[新東宝]]}}</ref>
* アイランドタイムズ<ref>{{Cite video|和書|people=[[深川栄洋]](監督)、[[柳沢太介]]・[[仲里依紗]]・[[児島美ゆき]]・[[寺田農]](出演)|date=2007-02-21|title=アイランドタイムズ|medium=映画|publisher=[[フジテレビジョン]]}}</ref>
| 小説 |
* アイランドタイムズ<ref>{{Cite book|和書|author=深川栄洋|authorlink=深川栄洋|title=アイランドタイムズ|date=2007-02-21|publisher=フジテレビ出版|isbn=978-4-594-05324-6}}</ref>
| 漫画 |
* [[鬼虫]]<ref>{{Cite book|和書|author=柏木ハルコ|authorlink=柏木ハルコ|title=鬼虫|publisher=[[小学館]]|series=[[ビッグコミックスピリッツ]]}}</ref>
* [[今日からここで暮らシマす!?]]<ref>{{Cite book|和書|author=樋渡りん|authorlink=樋渡りん|title=今日からここで暮らシマす!?|publisher=[[KADOKAWA]]|series=[[MFコミックス]]}}</ref>
| ノンフィクション |
* [[三田村信行]]『火の島に生きる 悲劇の島・青ヶ島の記録』(1987年7月、偕成社、{{ISBN2|4-0363-4210-X}})
}}


== 関連画像 ==
{{Main|還住}}
<gallery widths="180" heights="160px">

Seiho tonnel open scenery.jpg|青宝トンネルの出口。
== 社寺 ==
Aogashima's only traffic light.jpg|島内唯一の[[交通信号機|信号機]]。
*大里神社 - 集落の南西、外輪山上にある、青ヶ島の総鎮守。参道は急斜面に丸石を300段に敷き詰めたものである。
Aochu aogashima.jpg|[[青酎]]のラインナップ。
*東台所神社(とうだいしょじんじゃ) - 集落の南にあり、祟り神を祀る神社である。江戸時代の宝暦7年(1757年)、名主の息子の浅之助なる者が、色恋沙汰で錯乱した挙句、島民7名を斧で殺害し自らも入水したが、その浅之助が祟り神として祀られている。参道は急斜面に丸石を石段状に積み上げたもので、通行困難であるが、これとは別に尾山展望台からの道もある。
Gray Whale, Aogashima, March 11, 2017 by Aurora Chihiro.jpg|青ヶ島で観察された[[絶滅危惧種]]の[[コククジラ]]。
*金比羅神社 - 集落の北部のヘリポートの近くにある小祠で、還住(全島帰還)を果たした際の船頭岩松なる者が航海無事の報恩のため金比羅神を祀ったものという。
</gallery>
*渡海神社 - 集落近くにある小祠で、天明の噴火の犠牲者を祀る。
*清受寺 - 集落から南東方向にある島で唯一の寺院。[[浄土宗]]に属し、[[八丈島]]大賀郷の宗福寺の末寺とされているが、無住の堂が建つのみである。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{reflist}}
{{Notelist2}}
=== 出典 ===
{{Reflist|30em}}


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* {{Cite journal|和書|author=小山茂 |year=2012 |title=天明の別れと青ヶ島のモーゼ |journal=島しょ医療研究会誌 |volume=4 |issue=1 |pages=28-35 |publisher=島しょ医療研究会 |doi=10.34610/tousho.4.1_28 |ref={{sfnref|小山|2012}} }}
*『青ヶ島』 青ヶ島村役場編(チクマ離島シリーズ)千曲秀版社 1986年
*『青ヶ島』 青ヶ島村役場編(チクマ離島シリーズ)千曲秀版社 1992年

== 関連項目 ==
*[[海底火山]]
*[[日本の秘境100選]]
*[[篠原ともえ]] - 母親の出身地であり祖母が在住。青ヶ島村公式サイトにおいて「[http://www.vill.aogashima.tokyo.jp/star/s_tomoe/ 篠原ともえ 青ヶ島 星の魅力を語る]」の特集コーナーが開設されている。


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* [http://www.vill.aogashima.tokyo.jp/top.html 青ヶ島村公式サイト]
* [https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/322_Aogashima/322_index.html 青ヶ島] - 気象庁
* [http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/322_Aogashima/322_index.html 青ヶ島] - 気象庁
* [https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/open-data/open-data.php?id=322 青ヶ島の火山観測データ] 気象庁
* {{PDF|[http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/souran/main/65_Aogashima.pdf 日本活火山総覧(第4版)Web掲載版 青ヶ島]}} - 気象庁
** [https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/monthly_v-act_doc/monthly_vact_vol.php?id=322 青ヶ島の臨時及び過去の詳細月別火山概況・火山活動解説資料] 気象庁
** [https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/open-data/data/eq_num_322.html 青ヶ島の最近(2ヶ月間)の日別地震回数表] 気象庁
* [http://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/kaiikiDB/kaiyo13-2.htm 海域火山データベース 青ヶ島] - 海上保安庁
* {{PDF|[https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/souran/main/65_Aogashima.pdf 日本活火山総覧(第4版)Web掲載版 青ヶ島]}} - 気象庁
* [https://gbank.gsj.jp/volcano/Quat_Vol/volcano_data/G12.html 青ヶ島] - 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
* [https://gbank.gsj.jp/volcano/Act_Vol/aogashima/text/exp07-1.html 青ヶ島 解説] - 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
* [https://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/kaiikiDB/kaiyo13-2.htm 海域火山データベース 青ヶ島] - 海上保安庁海洋情報部
* [http://www.vill.aogashima.tokyo.jp/top.html 青ヶ島村]
* {{Kotobank}}
* '''[https://www.youtube.com/c/aogashimachannel 青ヶ島ちゃんねる AOGASHIMA Channel]'''


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2024年11月30日 (土) 06:14時点における最新版

青ヶ島
航空写真
所在地 日本の旗 日本 東京都青ヶ島村
所在海域 太平洋(フィリピン海)
所属諸島 伊豆諸島
座標 北緯32度27分28秒 東経139度45分33秒 / 北緯32.45778度 東経139.75917度 / 32.45778; 139.75917
面積 5.97 km²
海岸線長 9 km
最高標高 423 m
最高峰 大凸部
人口 162人
人口密度 35.8人 / km2
青ヶ島の位置(日本内)
青ヶ島
     
プロジェクト 地形
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青ヶ島(あおがしま)は、伊豆諸島に属する火山島で、本諸島の有人島としては最南端にある。

概要

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全島が東京都青ヶ島村に属し、住所は全世帯無番地である。産業に乏しく本土との往来も難しいため、人口減少が続いており、2024年5月1日現在の人口は162人[1][注 1]、世帯数は113世帯である[2]。現在、青ヶ島村は日本市町村の中で最も人口が少ない。島内に青ヶ島小中学校が存在するが、高校以上の教育機関が存在しないため、進学する生徒は島を離れなければならない。また、全人口が島の高地である外輪山側に住み、そのほぼ全員が標高100メートル以上の海を見渡す高台に居住していることから、「海上のマチュピチュ」や「東洋のマチュピチュ」などと呼ばれることがある。

「青酎(あおちゅう)」という島特産の焼酎があり、杜氏の数だけ個性がある。青酎のなかには杜氏の高齢化、後継者不在によって製造継続が不可となり、現存しないものもある。

インフラストラクチャー

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青ヶ島のヘリポート上の「東京愛らんどシャトル」。

島までの交通機関はすべて八丈島を経由して発着する、いわゆる「二次離島」である。連絡船のあおがしま丸[3]、くろしお丸(2022年2月から就航)は悪天候による欠航が多く、ヘリコミューター東京愛らんどシャトル[4]、船より速いものの定員が少ないという往来の困難さゆえに、観光目的で島を訪れる人は、年間 900 - 1,800人程度である。

2010年代に入って、インターネット経由で世界的に存在が認知されたことで、島内の許容範囲を超える観光客が押し寄せている。特に、2014年から2016年までに掛けてアメリカ合衆国の著名な組織のWebサイトで記事が相次いで掲載されたことで[5][6]、世界中から取材班や観光客が集まるようになり、数少ない交通機関の予約(特に東京愛らんどシャトル)はさらに困難になった。愛らんどシャトルは島民の生活にも欠かせない手段であり、予約が取りにくくなったことで、島民の往来にも支障が発生している。また、青ヶ島村において外国語での電話取材や外国人観光客への対応で問題が発生している[7]

島内の電力は、島北部の集落にただ1つ存在する東京電力パワーグリッドの内燃力発電により供給されている。

地理

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本州から遥か南方の太平洋上に位置する。最も近い八丈島からは南へ約60キロメートルほど離れている。気候は温暖湿潤気候(Cfa)。本州よりは暖かい気候であるが、沖縄やハワイ等と比較して緯度が高いため、常夏の島といえるほど暖かくはない。孤島であるため、天候が変化しやすいほかに、海からの強風に常に晒され続けており、自動車が飛ばされるほどの風が吹くこともある。日本の気象庁によって火山活動度ランクCの活火山に指定されており[8]常時観測火山にも選定されている[9][10]外輪山によって周囲の海から隔てられ、カルデラ底が陸上に露出しているという特異な地形を持つ。

地形

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北端部

海面上の本島は北北西-南南東3.5キロメートル、西南西-東北東2.5キロメートルであるが、これは海面下の基底15キロメートル×8キロメートル、海底からの比高は1,100メートルの火山の頂上部である[11]

海面上の青ヶ島火山は、北部の黒崎火山とそれを覆う南部の主成層火山の2つの火山体で構成されている[12]。主成層火山の頂部には直径約1.7×1.5キロメートルの小カルデラ(池之沢火口)があり、その中に中央火口丘の丸山火砕丘がある。

この島における最高地点は丸山を取り囲んでいる外輪山の北西部分に当たる大凸部(おおとんぶ)で、標高423メートルである。島の外周部は、高さが50メートルから200メートル程度の切り立った海食崖でとり囲まれている。砂浜は無い。

地名など

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尾山展望公園から見る丸山。
三宝港の旧埠頭。
使用中止となっている大千代港。

本島の北部でカルデラの外側の岡部に、休戸郷(やすんどごう)と西郷(にしごう)の2つの集落が存在する。また、本島の北端部やカルデラ内の数か所には多数の地熱蒸気噴気孔『ひんぎゃ(火の際、ひのきわ)』が在り、黒崎海岸には海中温泉がある[13]。なお、住所上はこれらの地名は表記されず、島内全域が「東京都青ヶ島村無番地」である。

池之沢
カルデラ内の領域。この地名は天明の大噴火以前には大小2つの池があったことに由来する。池之沢内は「金土ヶ平」や、樹齢230年を越えるスギ「大杉」が茂る「恋ヶ奥」などに細分化される。火口付近であることからひんぎゃが多く存在し、絶滅危惧種オオタニワタリが群生している。
浜路ヶ平
天明の大噴火以前に池之沢の東南部に集落を有した狭隘な平坦地で、現在は無人である。
岡部
休戸郷と西郷の集落がある青ヶ島北部。東側が休戸郷で西側が西郷である。また、それらの中間は「中原」とも呼ばれることもあり、村営住宅の名称などに使われている。住宅や公共施設等はここに集中している。ここは、島の大部分を占める二重式火山の池之沢に対して、「岡部」と呼ばれることもある。
神子ノ浦(みこのうら)
岡部の東側の断崖の下の岩石海岸。集落から平面距離的には近いため、20世紀半ばまで船着場として使われていた。当地まで断崖絶壁を降りる道が崩落しており、現在は通行不可能。断崖の上には展望台が建設されている。
大凸部(おおとんぶ)
外輪山の北西に位置する標高423メートルの山で、青ヶ島の最高地点でもある。
大人ヶ凸部(おおじんがとんぶ)
外輪山東南部に位置する標高334メートルの山。
丸山
1785年の天明の大噴火で形成された標高223メートルの内輪山(火口丘)。内輪山を一周することができるように整備された丸山遊歩道の途中には、富士様と呼ばれる神社がある。
尾山
外輪山北側の展望公園として整備されている標高400メートルの頂。
大千代
島の南東部にある岬。三宝港を補うために埠頭が建設されたが、1994年9月27日に付近の斜面が崩落し、村道18号線(大千代港線)が寸断されてしまったため、現在は埠頭に行くことは不可能。東京都は「大千代港への取付道路の整備は課題であるが、崩落の改修は技術的にも相当困難な状況である」[14]と結論しており、事実上放棄されている。

歴史

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いつから人が本島に定住するようになったかについては不明であるが、徐福伝説によれば、男女が同じ島に住むと神の祟りがあると信じられた時代があり、女人禁制の島だったとされる。本島が歴史上に表れるのは15世紀頃からであるが、海難事故を記録したものがほとんどである[15]。『保元物語』に登場する源為朝が訪れた鬼島を青ヶ島とする説がある。

火山活動史

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噴気熱(ひんぎゃ)を利用した釜。

青ヶ島は第四紀火山である。最近1万年間の活動は主成層火山で発生している。約3,600年前に北西山腹で割れ目噴火があった。

  • 約3,000年前 - 大規模なマグマ水蒸気爆発が発生し、火砕サージが全島を覆った。3,000年前から2,400年前までの間に、本島の南東部にあった火口状の凹地を埋める溶岩流スコリアが噴出し、東部や北部に多量のスコリアが降下する噴火も発生した。その後、岩屑雪崩が発生して、最終的には池之沢火口が形成された[16]
  • 1652年 - 噴煙が上がり[17]、1670年から約10年間にわたって大池から火山灰が噴出した[18]
  • 1780年7月 - 群発地震が発生し、8月に大池・小池の水位と水温が上昇した。
  • 1781年5月3日 - 地震が群発し、翌日には降灰が起こった。
  • 1785年4月18日 - 発生した火山活動により全家屋63戸が焼失した[13]。火口内に溶岩流とスコリアによる丸山火砕丘が形成され、翌年の噴火に掛けて成長した。この天明の大噴火は5月末まで続いたとされる。このとき、島民327人のうち八丈島への避難が間に合わなかった約130人が死亡したと考えられており[注 2]、1824年に名主佐々木次郎太夫らが還住(全島帰還)を果たすまでの約40年間にわたって無人島となった。

18世紀の活動以降、顕著な火山活動は無い。噴気活動も少なく、池の沢火口内壁と丸山周辺に水蒸気を主成分とする噴気が見られるだけである[12]

作品

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映画
小説
  • アイランドタイムズ[22]
漫画
ノンフィクション
  • 三田村信行『火の島に生きる 悲劇の島・青ヶ島の記録』(1987年7月、偕成社、ISBN 4-0363-4210-X

関連画像

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脚注

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注釈

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  1. ^ 日本国政府の実効支配していない北方領土福島第一原子力発電所事故による避難対象地域を除く。
  2. ^
    しかしその翌1785年(天明5年)、2年前と1日違いの3月10日午前、新たな噴火に見舞われた。今まで経験したどれより更に激烈で、昼でも真っ暗な日が8日間続いた。島民はいよいよ踏みとどまっていることが出来なくなった。〈中略〉当時の青ヶ島の人口は、安永3年の記録によれば家数53軒、男161女166、合わせて327人ほか流人1人とのことである。これから6年目が最初の噴火だから、ほぼこの数のままとみてよいだろう。4月11日に45人、27日に…108人、3月終りに名主らと共に来た者を合わせると脱出者は202人である。残された島民の大部分は2 度の助け舟を待てなかったと思われる。 — 小山茂[19]

出典

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  1. ^ "人口162人 青ケ島に「留学」を/来春から通う小中学生募集/里親・山田さん「体験発信して」". 東京新聞 TOKYO Web. 中日新聞社. 2024年5月23日. 2024年8月12日閲覧東京新聞』2024年5月23日、朝刊、都心面。
  2. ^ 青ヶ島について 青ヶ島の概要”. 青ヶ島村ホームページ. 青ヶ島村. 2020年8月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月16日閲覧。
  3. ^ 八丈島⇔青ヶ島”. 伊豆諸島開発. 2016年7月1日閲覧。
  4. ^ 東京愛らんどシャトル -予約・空席照会・運航情報-”. 東邦航空. 2016年7月1日閲覧。
  5. ^ Wilson, Victoria (2014年10月30日). "13 Amazing Natural Wonders You Should See Before You Die". One Green Planet (英語). 2019年8月25日閲覧
  6. ^ Nalewicki, Jennifer (2016年7月5日). "The Sleepy Japanese Town Built Inside an Active Volcano". Smithsonian (英語). 2019年8月25日閲覧
  7. ^ 日本一小さな村「青ヶ島」が外国人観光客に大人気 人口170人の島は大混乱…”. ライブドアニュース (2019年8月15日). 2019年12月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月25日閲覧。
  8. ^ 火山噴火予知連絡会による活火山の選定及び火山活動度による分類(ランク分け)について』(PDF)(プレスリリース)気象庁、2003年1月21日https://www.jma.go.jp/jma/press/0301/21a/yochiren.pdf 
  9. ^ 火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山』(PDF)(プレスリリース)気象庁、2009年6月30日https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/47volcanoes.pdf 
  10. ^ 中長期的な噴火の可能性の評価について -監視・観測体制の充実等の必要な火山の選定-』(PDF)(プレスリリース)気象庁 火山噴火予知連絡会・火山活動評価検討会、2009年6月30日https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/kaisetsu/CCPVE/hyoka/hyoka_houkoku.pdf 
  11. ^ 青ヶ島火山および伊豆諸島南方海底火山地質図 - 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
  12. ^ a b 青ヶ島火山および伊豆諸島南方海底火山地質図 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
  13. ^ a b 青ヶ島”. 海上保安庁 海洋情報部. 2016年7月1日閲覧。(海域火山データベース)
  14. ^ [1]
  15. ^ 青ヶ島について”. 青ヶ島村役場. 2016年7月1日閲覧。
  16. ^ 青ヶ島”. 気象庁. 2016年7月1日閲覧。
  17. ^ 『八丈島年代記』安田存政、1854年。 
  18. ^ 『南方海島志』秋山富南、1791年。 
  19. ^ 小山 2012, pp. 31–32, 【天明の別れ】.
  20. ^ 中川信夫(監督)、左幸子宇野重吉杉村春子沼田曜一(出演)『青ヶ島の子供たち 女教師の記録』(映画)新東宝、1955年11月29日。 
  21. ^ 深川栄洋(監督)、柳沢太介仲里依紗児島美ゆき寺田農(出演)『アイランドタイムズ』(映画)フジテレビジョン、2007年2月21日。 
  22. ^ 深川栄洋『アイランドタイムズ』フジテレビ出版、2007年2月21日。ISBN 978-4-594-05324-6 
  23. ^ 柏木ハルコ『鬼虫』小学館ビッグコミックスピリッツ〉。 
  24. ^ 樋渡りん『今日からここで暮らシマす!?』KADOKAWAMFコミックス〉。 

参考文献

[編集]
  • 小山茂「天明の別れと青ヶ島のモーゼ」『島しょ医療研究会誌』第4巻第1号、島しょ医療研究会、2012年、28-35頁、doi:10.34610/tousho.4.1_28 

外部リンク

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