熊本地震 (2016年)
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熊本地震(2016年4月16日) | |
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地震の震央の位置を示した地図 | |
本震 | |
発生日 | 2016年4月16日 |
発生時刻 |
気象庁発表 1時25分 5.4秒(JST) 米国地質調査所発表 1時25分 6.3秒(JST)[1] |
持続時間 | 約20秒[1][2] |
震央 | 日本 熊本県熊本地方 |
座標 |
気象庁発表 北緯32度45.2分 東経130度45.7分 / 北緯32.7533度 東経130.7617度 米国地質調査所発表 北緯32度46分55秒 東経130度43分34秒 / 北緯32.782度 東経130.726度[1] |
震源の深さ | 12 km |
規模 | 気象庁マグニチュード Mj7.3モーメントマグニチュード Mw7.0 |
最大震度 | 震度7:熊本県熊本地方(益城町、西原村)[資料 1][資料 2] |
津波 | なし |
地震の種類 |
右横ずれ断層[3] 大陸プレート内地震 |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
平成28年(2016年)熊本地震(へいせい28ねんくまもとじしん)は、2016年(平成28年)4月14日21時26分(JST)以降、熊本県を中心に連続して発生した一連の地震である[4]。まず4月14日21時26分頃に、熊本県熊本地方を震源とする、マグニチュード6.5(暫定値)の地震が発生し、最大震度7が観測された[資料 5]。さらに、その28時間後の4月16日1時25分頃には、同じく熊本県熊本地方を震源とする、マグニチュード7.3(暫定値)の地震が発生し[資料 3]、再び最大震度7が観測された[注釈 1][資料 1]。気象庁は同日、後者(16日未明)の地震が本震で、前者(14日)の地震は前震であったと考えられるとする見解を発表している[6][7]。また本震以降、熊本県阿蘇地方および大分県においても規模の大きな地震が相次いで発生した(詳細は後述)。
概要
4月14日21時26分、熊本県熊本地方を震源とする、震源の深さ11km、気象庁マグニチュード(Mj)6.5[資料 5]、モーメントマグニチュード(Mw)6.2[資料 6]の地震(前震)が発生。熊本県益城町で震度7を観測した[資料 5]。気象庁が1949年(昭和24年)に震度7の震度階級を設定して以降[資料 7]、日本国内における震度7の観測は、2011年(平成23年)3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)に続いて4回目であり[8][9]、九州地方では初の観測であった[9]。
続いて28時間後の4月16日1時25分頃には、熊本県熊本地方を震源とする、震源の深さ12km、Mj7.3[資料 3]、Mw7.0[資料 4]の地震(本震)が発生。熊本県益城町と西原村で震度7を観測した[資料 1]。Mj7.3 は1995年(平成7年)に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)と同規模の大地震である。これらの地震を含めた熊本地方における一連の地震活動は、布田川・日奈久断層帯の活動によって引き起こされたものと考えられている。
当初、14日に発生したマグニチュード6.5の地震が本震で、その後に発生するものは余震でありマグニチュードが上回るとは想定されていなかった。しかし、16日になって上記のようにマグニチュード7.3の地震が発生したため、気象庁は14日のものを前震、16日のものを本震と修正した。過去に当初の発表から訂正され、本震と余震が入れ替わる事態は海溝型地震の東北地方太平洋沖地震においても起こっているが、内陸型(活断層型)地震でマグニチュード6.5以上の地震の後にさらに大きな地震が発生するのは地震の観測が日本において開始された1885年(明治18年)以降で初めてのケースであり、また一連の地震活動において震度7が2回観測されるのも初めてのことであった[10][11]。このことについて東京大学地震研究所教授の纐纈一起は、「活発な断層帯が隣り合う特別な条件下において一連の地震が発生した」と指摘している[10]。一方で、「14日と16日の地震の仕組みは異なっており、それぞれ独立した活動と見るべき」とする意見もある[12]。
さらに16日の本震以降、熊本県熊本地方の北東側に位置する同県阿蘇地方〜大分県西部と大分県中部(別府-万年山断層帯周辺)においても地震が相次ぎ、熊本地方と合わせて3地域で活発な地震活動がみられた。熊本地方の大地震が離れた地域の地震活動を誘発した可能性が考えられているが、このような現象は日本の近代観測史上に例がない[13]。これらの理由により、前震・本震・余震の区別が難しいとされ[12]、気象庁は「16日のものが本震とも言えるが、3種の区別をせずに見ていきたい」と説明している[10]。
名称
気象庁は、最初の4月14日21時26分の地震を「平成28年(2016年)熊本地震」(英語: The 2016 Kumamoto Earthquake)と命名し、4月15日に発表した[資料 8]。しかし16日にさらに規模が大きい地震が発生。同庁は4月17日、今後の状況を見た上で再検討する意向を表明していた[14]。しかし、4月18日に気象庁地震津波監視課課長:青木元は記者会見で一連の地震について「熊本地震と引き続く地震活動と捉えている」との見解を示し、名称を変更しない考えを明らかにした[15]。4月21日、気象庁は、「平成28年(2016年)熊本地震」は「4月14日21時26分以降に発生した熊本県を中心とする一連の地震活動」を指すと説明した[4][16]。
主な地震の一覧
前震
4月14日21時26分の地震
熊本地震(2016年4月14日) | |
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地震の震央の位置を示した地図(気象庁) | |
本震 | |
発生日 | 2016年 | 4月14日
発生時刻 |
気象庁発表 21時26分34.4秒(JST) 米国地質調査所発表 21時26分36.4秒(JST)[19] |
震央 | 日本 熊本県熊本地方 |
座標 |
気象庁発表 北緯32度44.5分 東経130度48.5分 / 北緯32.7417度 東経130.8083度 米国地質調査所発表 北緯32度50分56秒 東経130度38分06秒 / 北緯32.849度 東経130.635度[19] |
震源の深さ | 11 km |
規模 | 気象庁マグニチュード Mj6.5モーメントマグニチュード Mw6.2 |
最大震度 | 震度7:熊本県熊本地方(益城町)[資料 53] |
津波 | なし |
地震の種類 |
右横ずれ断層[20] 大陸プレート内地震 |
余震 | |
最大余震 |
[注釈 2] (日本標準時 JST) 震央 熊本県熊本地方 気象庁マグニチュード Mj6.4 モーメントマグニチュード Mw6.0 最大震度6強[資料 54] | 4月15日 0時 3分46.4秒
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
4月14日21時26分頃に発生した地震で震度4以上が観測された市町村は以下の通り[資料 10]。このほか、熊本県の嘉島町では震度5弱以上と推定されている[21]。
震度 | 都道府県 | 市町村[注釈 3][資料 10] |
---|---|---|
7 | 熊本県 | 益城町 |
6弱 | 熊本県 | 玉名市 西原村 宇城市 熊本市 |
5強 | 熊本県 | 菊池市 宇土市 大津町 菊陽町 御船町 美里町 山都町 氷川町 合志市 |
5弱 | 熊本県 | 高森町 阿蘇市 南阿蘇村 八代市 長洲町 甲佐町 和水町 上天草市 天草市 |
宮崎県 | 椎葉村 | |
4 | 山口県 | 下関市 |
福岡県 | 福岡市 大野城市 宗像市 新宮町 古賀市 粕屋町 みやこ町 大牟田市 久留米市 柳川市 八女市 筑後市 大川市 小郡市 大木町 広川町 筑前町 朝倉市 みやま市 | |
佐賀県 | 唐津市 佐賀市 上峰町 江北町 白石町 みやき町 小城市 嬉野市 吉野ヶ里町 神埼市 | |
長崎県 | 諫早市 島原市 雲仙市 南島原市 | |
熊本県 | 産山村 荒尾市 山鹿市 玉東町 南関町 人吉市 あさぎり町 多良木町 山江村 水俣市 芦北町 津奈木町 苓北町 | |
大分県 | 臼杵市 津久見市 佐伯市 豊後大野市 日田市 竹田市 九重町 | |
宮崎県 | 延岡市 西都市 川南町 高千穂町 日之影町 小林市 | |
鹿児島県 | 阿久根市 長島町 薩摩川内市 さつま町 湧水町 霧島市 伊佐市 |
気象庁は地震検知の3.7秒後の21時26分42.5秒に第1報の深さ10km、マグニチュード6.5、最大震度は6強程度という緊急地震速報の警報を九州全域などに発表した[資料 55][資料 56]。
観測点名 | 観測点コード | 最大加速度 Gal | 計測震度 | |
---|---|---|---|---|
1 | KiK-net益城 | KMMH16 | 1580 | 6.4 |
2 | K-NET矢部 | KMM009 | 669 | 5.3 |
3 | K-NET熊本 | KMM006 | 604 | 5.9 |
4 | K-NET砥用 | KMM011 | 491 | 5.2 |
5 | KiK-net豊野 | KMMH14 | 357 | 5.4 |
気象庁はこの14日の地震について、この地方で一般的な[24]「右横ずれ断層」だと説明している[資料 5]。また、この地震は布田川・日奈久断層帯や近くの小規模活断層の活動が原因である可能性が指摘されている[25]。15日政府の地震調査委員会は、日奈久断層帯(約81km)の高野-白旗区間(約16km)が動いたという見解を発表した[26][27][28]。
その他の前震
4月15日0時3分頃の地震(M6.4、最大震度6強)では、気象庁が2013年3月に長周期地震動の観測情報の提供を開始して以来初めて、長周期地震動階級が最大の階級4を記録した。ただし、事後的なデータ分析によれば、2004年の新潟県中越地震や2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)でも、階級4相当の長周期地震動が生じていたとされる[29][30]。
本震
最初の地震から約28時間後の4月16日午前1時25分頃に、Mj7.3[資料 3]、Mw7.0[資料 4]、最大震度7[資料 1]の地震が発生した。最大震度は当初、震度6強とされていたが、熊本県益城町と熊本県西原村の震度計に記録されたものの不具合が発生して送られなかったデータを、気象庁が解析した結果、震度7の観測が判明した[5]。地震発生直後には有明海と八代海の沿岸に津波注意報が発表されたが[31]、2時14分に解除された[32]。
気象庁は地震検知の3.8秒後の01時25分14.0秒に第1報の深さ10km、マグニチュード5.9、最大震度は5強程度以上という緊急地震速報の警報を九州全域などに発表した[資料 57]。さらに、地震検知の8.5秒後の01時25分18.7秒に第1報の深さ10km、マグニチュード6.9、最大震度は震度6弱から6強程度という緊急地震速報の警報を九州全域などに発表した[資料 57]。
各地の震度
なお、大韓民国釜山広域市では改正メルカリ震度階級IIIと推定されている[1][33]。
メカニズム
この地震は、南北方向に張力軸を持つ、横ずれ断層型の内陸地殻内地震である[34]。政府の地震調査委員会は発生翌日の17日、布田川断層帯(約64km以上)の北東端に当たる布田川区間(約19km)がこの地震の震源断層で、同区間を含む約27kmが動いたという見解を発表した[3][28][35]。同区間で将来的に発生する地震はマグニチュード7.0程度と推定されていたが[36]、今回の地震で動いた断層の範囲は調査委の想定よりも東西に数kmずつ長く、東側は阿蘇山のカルデラまで達していた[28]。また、この付近では前震の震源域とされる日奈久断層帯と布田川断層帯が交差しており、これらの断層帯が連動して動いたことで、前震と本震を中心とした熊本地方における一連の地震活動が引き起こされた可能性が指摘されている[28][37][38]。
国土地理院による衛星画像の解析によると、この地震で、布田川断層帯の北側では最大1m以上の沈降、南側では最大30cm以上の隆起が起きたと見られる。また、水平方向には、布田川断層帯の北側で東向きに最大1m以上、南側で西向きに最大50cm以上ずれたと見られる[39][40]。益城町では、地表に断層のずれが現れ、水平方向に約2m食い違っている様子が確認された[41]。
余震・関連地震活動
4月16日1時25分頃の熊本地方(布田川・日奈久断層帯周辺)の地震以降、阿蘇地方および大分県(別府-万年山断層帯周辺)においても地震活動が活発化した。気象庁は阿蘇地方と大分県の地震について、熊本地方における一連の地震の震源域からは離れており別の地震活動と見ている[42]。一連の地震は九州中部の北東から南西にかけて広がる別府‐島原地溝帯に沿って発生しており、専門家らは本震 (Mj7.3) によってこれらの地域の地震が誘発された可能性を指摘している[43][44][45]。
4月14日21時26分頃の地震以降、4月23日10時までに、震度1以上の地震(有感地震)は熊本県熊本地方、熊本県阿蘇地方、大分県西部、大分県中部において802回観測された[注釈 4][資料 58]。気象庁は通常、大きな規模の地震の後には余震の発生確率を発表しているが、熊本地震では「過去の経験則があてはめられない」として、発表を取りやめた[46]。
離れた地域で地震活動が活発化したことで、専門家らも、これまでに経験したことのない地震活動であるとして、さらに地震活動が広がる可能性も指摘している[47]。大分県で大きな地震が発生する可能性や、さらに東隣の中央構造線に影響が及ぶ可能性を指摘する専門家もいる[44]。1596年(文禄5年)には慶長伊予地震、慶長豊後地震、慶長伏見地震が、数日の間に連続して発生した例がある。ただ、1596年の地震によって中央構造線にたまったひずみは解消されており、中央構造線が地震を起こす可能性は低いと見る専門家もいる[44]。一方、まだ大きな地震の起きていない、断層の南西側延長上へ地震活動が広がる可能性も指摘されている[44][48]。気象庁も4月17日、地震活動が南西側に広がっているとして注意を呼び掛けた[49]。
また、国際日本文化研究センター准教授の磯田道史は、約400年前の元和5年 (1619年) 3月17日に熊本県八代地方で今回の熊本地震と似たケースの地震が起こっていたことを指摘しており、古文書によると余震は長期間続き、現在の大分県にあたる豊後地方も大きく揺れたとの記述があり、さらに度重なる地震で熊本城も崩れたという[50][51]。
日 | 最大震度 | 合計 | 累計 | 出典 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 - 3 | 4 | 5弱 | 5強 | 6弱 | 6強 | 7 | ||||
4月14日(木) (21時以降) |
28 | 9 | 1 | 1 | 1 | 40 | 40 | [資料 58] | ||
4月15日(金) | 100 | 10 | 1 | 1 | 112 | 152 | ||||
4月16日(土) | 157 | 36 | 4 | 1 | 2 | 1 | 1 | 202 | 354 | |
4月17日(日) | 127 | 11 | 138 | 492 | ||||||
4月18日(月) | 74 | 4 | 1 | 79 | 571 | |||||
4月19日(火) | 77 | 2 | 1 | 1 | 81 | 652 | ||||
4月20日(水) | 73 | 1 | 74 | 726 | ||||||
4月21日(木) | 46 | 2 | 48 | 774 | ||||||
4月22日(金) | 40 | 1 | 41 | 815 | ||||||
4月23日(土) (10時まで) |
13 | 13 | 828 | [資料 58] | ||||||
合計 | 735 | 76 | 7 | 3 | 3 | 2 | 2 | 828 | [資料 58] |
その後の天候による影響
前震の発生から1週間後には九州全域が強い風雨に見舞われたことから、地震により地盤が緩んだ地域での土砂災害が警戒され[52]、4月21日11時35分、熊本県と熊本地方気象台は共同で、上天草市と天草市東部に土砂災害警戒情報を発表した[資料 59]。
12時30分現在で最大8万5000世帯以上、約21万人以上に避難指示または勧告が出された[53]ほか、南阿蘇村で捜索活動中だった自衛隊が天候不良により捜索中止を決定するなどさまざまな影響を与えている[52]。なお、被災地である熊本県周辺の降雨量は21日16時54分時点で100ミリ前後に達しており、土砂災害警戒情報が出ている地域があるほか、気象庁からは落雷、竜巻に注意するよう呼びかけが続いている[54]。
また、21日時点で大分県内でも1700余人が自主的に避難を行っている[53]。
阿蘇山への影響
16日午前8時30分ごろに阿蘇山の中岳第一火口で小規模な噴火が発生し火口から噴煙が上空100mにまで上がった[資料 60]。 気象庁は一連の地震との関連性は分からないとしながらも[55]、九州大学教授であり火山噴火予知連絡会の副会長でもある清水洋は、「阿蘇山のかなり近い場所で大規模な地震が発生したことで今後の火山活動に影響なしとは言い切れない」と発言した[56]。
被害・影響
放送番組への影響について、本記事での記載は出典付きであってもご遠慮ください。2016年のテレビ (日本)・2016年のテレビドラマ (日本)・2016年のテレビ特別番組一覧および当該番組の個別記事等において、WP:JPE/Bに抵触しない形で記載するようにしてください。詳細はノート:熊本地震 (2016年)#放送の節は記述過剰ではありませんか?を参照してください。(2016年4月) |
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人的被害
地域 | 人数 | 出典 |
益城町 | 20 | [57] |
南阿蘇村 | 14 | [57] |
西原村 | 5 | [57] |
熊本市 | 4 | [57] |
嘉島町 | 3 | [57] |
御船町 | 1 | [57] |
八代市 | 1 | [57] |
2016年4月20日現在 |
熊本県内では14日の前震により、益城町と熊本市で計9人の死亡が確認されている[58]。熊本市によると、同市内の病院には同日23時頃現在、地震で重軽傷を負った70人以上が運ばれているという[8]。16日の本震では、4月20日までに39人の死亡が確認され、前震とあわせて48人の死亡が確認された[57]。また、避難生活によるストレスや病気などの震災関連死により亡くなったと見られる人は2016年4月23日現在12人に上っている[59]。
前震・本震・余震、合わせての死傷者は1100人を超えている[60]。負傷者は熊本県内だけでなく、佐賀県、大分県、福岡県、宮崎県でも出ている[61]。
16日未明の地震後、避難者は最多で18万3882人に上った[62]。19日12時現在、熊本県の避難者は計約11万6900人、大分県の避難者は812人となった[63]。衛生管理が悪い避難所もあり、また損傷でガスや水道が使えない一部の病院もあるといわれる[64]
地獄温泉の清風荘で51名、垂玉温泉で17名が道路寸断の影響で孤立しており、宿泊客は建物外に避難し炊き出しを受けている[65][66]。
阿蘇市には避難所が26個所あり、農村環境改善センターの避難所には16日から避難者が急増し約1300人となった[67]。同避難所で17日、77歳の女性が死亡し、ストレス等による災害関連死とみられる[67]。
地震後に車中泊で避難生活を送る被災者もおり、理由として避難所では他人に気を使うこと、車だとすぐに逃げられること、余震で避難施設が損壊することがある[68]。益城町のグランメッセ熊本の駐車場では18日現在、数千人が車中泊している[68]。しかし、避難所の外で車中泊していた50 - 60代の女性3人が静脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)で意識不明の重体となり救急搬送され、他6人が同症候群と診断された[68]。19日、車中泊をしていた50代の女性1人がエコノミークラス症候群で死亡し[69]、19日までに同症候群とみられるのは18人となった[70]。
建物・施設
- 熊本市立熊本市民病院では建物が傾き、倒壊の恐れがあるとして自衛隊などにより患者の移送がなされた[71]。また、御船町の希望ヶ丘病院でも倒壊の恐れが出ている他、益城病院や益城中央病院でも停電などが発生しており、患者を避難させるなどの対応を取っている[72]。
- 藤崎台県営野球場は、バックスクリーンの壁の一部がはがれ落ちる被害があった[73]。その後の調査では、内野観覧席の破損、外野グラウンドの隆起、照明灯の落下といった被害も明らかとなった[74]。なお、この影響で4月19日に藤崎台で行われる予定だったセントラル・リーグ公式戦・読売ジャイアンツVS中日ドラゴンズ戦が中止となった[75][76]。
- 宇土市では、市役所の庁舎が半壊した[77]。
- 西原村の農業用ダム・大切畑ダムでは大量の漏水が確認され、800人に避難指示が出された[78]。
- 熊本競輪場では特別観覧席にある配水管が損傷し床が水浸しになったほか、窓ガラスが全て破損したためバンク内にも破片が飛び散った。この影響で同競輪場に於ける他場開催の場外車券発売を中止し[79]、施設を暫定的に4月29日まで閉場した[80]。すべてを復旧させるには数か月の期間を要することから5月に予定されていた開催は中止となる見込み[81]。
- 八代市では、市役所の本庁舎に亀裂が入り、倒壊する恐れが出てきたため、市の機能を千丁支所と鏡支所に移転した[82]。
- 熊本城では、天守閣の屋根瓦が崩れた上に屋上にあったしゃちほこが落下し[83]、石垣が少なくとも6か所で崩れ、塀が100mに渡って倒壊した[84]。さらに16日の本震で、築城当初から残っていた重要文化財の東十八間櫓・北十八間櫓が倒壊し、隣の熊本大神宮の社務所を押し潰した[85][86]。
- 熊本洋学校教師館ジェーンズ邸は、14日の前震で壁が崩壊する被害があり16日の本震では建物が崩落した[87]。
- 阿蘇神社では、重要文化財の楼門と拝殿が全壊した[88]。
- アクシオン福岡メインアリーナが地震の影響で施設の一部破損が生じたことにより、日本プロバスケットボールリーグのライジング福岡は4月23日・24日にアクシオン福岡で開催する予定であったバンビシャス奈良とのホームゲーム二連戦について会場を北九州市立総合体育館に変更して開催することを決定した[89]。
- グランメッセ熊本が地震の影響で著しい破損を生じたこと、および観衆の安全確保上の理由などから新日本プロレスは同会場で4月29日に興行を予定していた『レスリング火の国2016』熊本大会の開催中止を決定した[90]。
交通機関
道路
九州自動車道では、14日の地震直後、南関ICとえびのICの間で通行止めとなり[91]、高速バスの運休が相次いだ[92]。西日本高速道路(NEXCO西日本)によると、益城熊本空港ICから松橋ICの間でのり面崩落、路面陥没、ひび割れ等が発生していたが、それ以外の区間では15日深夜の時点で、通行止めは解除されていた[93][94]。
16日未明の本震により、阿蘇大橋(国道325号)や俵山トンネル(熊本県道28号熊本高森線)が崩壊、国道57号も寸断された[95]。大分自動車道も湯布院ICから日出JCTの間でのり面崩落が発生している[96]。九州道でも緑川PA付近の跨道橋が崩れるなど、さらなる被害が発生[97]し、21日0時00分時点で、九州自動車道は植木IC - 八代IC間で、大分自動車道は湯布院IC - 日出JCT間で通行止めとなっている[98]。なお、植木IC - 益城熊本空港IC間(ただし熊本ICはランプウェイの損傷のため引き続き閉鎖)と松橋IC - 八代IC間は、緊急車両に限って通行可となっている[99]。23日0時からは高速バスも植木IC - 益城熊本空港IC間の通行を許可されることとなった[100][101]。
高速バス
高速道路の通行止めに伴って、運行を見合わせているか、または運行を見合わせていたのは次の路線。
- 福岡発着
福岡 - 黒川温泉 | - | 福岡 - 黒川温泉線 | - | 4月23日から運行再開予定。[102]当初は、4月21日から運転再開の予定[103]だったが、当日の大雨のため延期となった。 | |
福岡 - 大分 | - | とよのくに号 | - | 4月19日午後からスーパーノンストップ便と別府線・湯布院線で運行を再開[104]。 | |
福岡 - 熊本 | - | ひのくに号 | - | 4月21日から益城インター経由のスーパーノンストップ便ベースで1時間に1本の暫定ダイヤで運行再開(通行止め区間にあたる西合志・武蔵ヶ丘バス停は通過)[105]。 | |
福岡 - 高千穂・延岡 | - | ごかせ号 | - | 4月22日から大分自動車道・東九州自動車道経由で運行を再開[106]。当面は福岡朝発・延岡夕方発の2往復のみ[107]。 | |
福岡 - 延岡 | - | ハッコーライナー | - | 4月23日から大分道・東九州道経由で運行を再開。所要時間が30分程度伸びる[108]。 | |
福岡 - 宮崎 | - | フェニックス号 | - | 4月22日から大分道・東九州道経由で運行を再開[109]。ただし、本数は24往復→10往復のみで、所要時間も2時間程度伸びる予定[107]。 | |
福岡 - 宮崎 | - | サンマリンライナー | - | 4月23日から大分道・東九州道経由で運行を再開。本数は3往復→1往復のみ[110]。 | |
福岡 - 宮崎 | - | みとシティライナー | - | 4月22日から大分道・東九州道経由で運行を再開[111]。 | |
福岡 - 鹿児島 | - | 桜島号 | - | 4月22日から夜行便のみ運行再開[107]。 | |
福岡 - 鹿児島 | - | 南九号 | - | 4月23日から運行再開[112]。 |
- 大分・熊本・宮崎・鹿児島発着(福岡市内・本州発着以外のもの)
熊本 - 小倉 | - | ぎんなん号 | - | 4月25日から運行再開予定[113]。当面は1往復。 | |
熊本 - 長崎 | - | りんどう号 | - | 4月23日から運行再開予定[113] なお、23日と24日は長崎県営バスの1往復のみ、25日からは九州産交も1往復運転。 | |
熊本 - 高千穂・延岡 | - | たかちほ号 | - | 4月22日から運行再開[114]。なお、22日と23日は宮崎交通の1往復のみ。24日から九州産交便も運転再開。また、迂回運行で高森町を経由しない[115]。 | |
熊本 - 宮崎 | - | なんぷう号 | - | 4月22日から14往復を6往復に減便して運行再開[116]。 | |
新八代駅 - 宮崎 | - | B&Sみやざき号 | - | 4月23日から運行再開予定[113]。 | |
熊本 - 鹿児島 | - | きりしま号 | - | 4月24日から運行再開予定[113]。なお、8往復から4往復に減便した暫定ダイヤ。 | |
大分 - 長崎 | - | サンライト号 | - | 4月23日から運転再開予定[117]。 | |
宮崎 - 長崎 | - | ブルーロマン号 | - | 4月27日までの運休を発表。[118]。 | |
鹿児島 - 長崎 | - | ランタン号 | - | 4月27日までの運休を発表[119]。 |
- 本州発、大分・熊本・宮崎・鹿児島線
名古屋 - 熊本 | - | 不知火号 | - | 4月27日から運行再開予定[113]。 | |
京都・大阪・神戸 - 大分 | - | SORIN号 | - | 隔日運転[120]。 | |
京都・大阪・神戸 - 熊本 | - | サンライズ号・あそ☆くま号 | - | 4月27日までの運休を発表[120]。 | |
京都・大阪・神戸 - 北九州・福岡・久留米・熊本 | - | ロイヤルエクスプレス | - | 4月25日まで京都行きのみ西鉄久留米始発で運行[121] | |
京都・大阪・神戸 - 宮崎 | - | おひさま号 | - | 4月27日までの運休を発表[120]。 | |
大阪 - 鹿児島 | - | トロピカル号 | - | 4月27日までの運休を発表[120]。 | |
広島 - 鹿児島 | - | 鹿児島ドリーム広島号 | - | 4月14日から5月8日に運行する予定だった便を取りやめ[122]。 |
鉄道
4月14日の地震直後には西日本旅客鉄道(JR西日本)では山陽新幹線の小倉 - 博多間、九州旅客鉄道(JR九州)では九州新幹線と在来線全線で運転を見合わせた[123]。その後、順次運転を再開し、翌4月15日夕方の時点での運転見合わせ区間は、九州新幹線全線と、鹿児島本線の宇土 - 八代間、豊肥本線の熊本 - 宮地間、肥薩線の八代 - 吉松間[124]となっている。
九州新幹線では、下りの800系6両編成の回送列車が熊本駅から熊本総合車両所へ向かう途中に脱線した[125][126]。この回送列車は地震発生時時速80kmで走行中で、運転士が強い揺れを感じて非常ブレーキをかけたが全車両が脱線した[126]。脱線現場は熊本駅から南に約1.3kmの本線上で、4月15日現在復旧の見通しは立っていない[126]。このため、九州新幹線は全線で運転を見合わせとなり[124]、山陽新幹線から九州新幹線へ直通する「みずほ」「さくら」は博多 - 鹿児島中央間で運転を見合わせていた[127]。地震による新幹線の脱線は、新潟県中越地震、東日本大震災によるものに続き3回目である。4月20日に新水俣 - 鹿児島中央間で運転を再開したが、新水俣駅以北では防音壁の落下が約80か所、高架橋の柱に亀裂が入っているのが25か所以上で見つかった[128]。4月23日昼前に博多 - 熊本間で運転を再開[129]、全線再開は4月中を見込んでいる[130]。
4月16日の本震により、豊肥本線でも赤水駅を出発した回送列車が脱線したが、負傷者はなかった[131]。また赤水駅 - 立野駅間で土砂崩れも発生し、線路内に土砂が流入した[132]。熊本県内の在来線では鹿児島本線や豊肥本線、肥薩線、三角線、くま川鉄道湯前線、南阿蘇鉄道高森線、肥薩おれんじ鉄道線が運休した[133]。
その後の復旧工事の進捗にともない、4月18日には、鹿児島本線のうち熊本駅以北の区間については運転を再開[134]、4月21日には、残った熊本駅 - 八代駅間についても運転を再開[135] して、18日までに運転を再開した[136]肥薩おれんじ鉄道の区間を含む形ではあるが、在来線経由で福岡 - 熊本 - 鹿児島間がつながった。
熊本電鉄は4月16日・17日は全線で運転を見合わせ、4月18日に藤崎宮前駅 - 御代志駅間で運転を再開した。引き続き、北熊本駅 - 上熊本駅間は池田駅構内でのホーム一部倒壊で運転を見合わせている。[137][138]
熊本市内の路面電車(熊本市交通局)は4月16日 - 4月18日は全線で運休。19日始発から神水・市民病院前停留場以西での折り返し運転で運行再開。引き続き神水・市民病院前停留場 - 健軍町停留場間は運転を見合わせていたが[139][140]復旧工事が完了し、20日の始発から全線運行(但し徐行運転)を再開した[141][142]。また、福岡県の私鉄・西日本鉄道(西鉄)でも、16日の本震では、天神大牟田線と貝塚線の運転を一時見合わせ。同日午前の復旧まで両路線で合わせて138本が運休。利用客の約2万4800人に影響が出た[143]。
航空
熊本空港(熊本県益城町)では、ターミナルビルが、4月16日未明の地震によって天井板の一部が落下するなどして[144]損傷したため[145]、同日から18日まで閉鎖された[145][146]。
翌4月19日午前にターミナルビルの運用が一部再開され、初めは到着便のみ、15時以降は出発便も運航されて[145]、同日中に25便が発着した[146]。同日現在、ビル内で利用できる箇所や搭乗口は限られている[145]。
4月19日現在、同空港は24日7時30分までの予定で航空保安業務を提供中で、救援業務などに従事する航空機を中心に利用されている[145]。
ライフライン
水道
18日午後7時現在、熊本市で断水していた32万戸のうち26万戸へ試験給水が開始された[147]。
また、熊本市内では水道水が濁り飲用できない地域もある[148]。
電気
九州電力によれば、15日13時の時点で、益城町や嘉島町、熊本市南区などで1万1700戸が停電している[149]。16日9時の時点では、同日未明の地震により熊本県、大分県、宮崎県で合計16万9600戸が停電している[150]。停電の影響により携帯電話各社は携帯電話充電のために電源車を派遣した[151]。
なお、九州電力の川内原子力発電所は地震の影響はなく通常運転を行っており[123]、鹿児島県は「九電から『異常なし』との連絡が午後9時44分に入った」としている[8]。玄海原子力発電所では、地震による被害は確認されていないという[8]。
ガス
西部ガスによると、熊本県エリアのガス供給を担う熊本工場の安全に問題はないとした[152]が、熊本地区供給エリアのガス供給停止戸数は、益城町や熊本市などを中心に1123戸、ガス漏れの通報は66件(15日午前11時の時点)[153][154]。
教育機関
地震発生の翌日の15日、熊本県内にある公私立の幼稚園や小中高校などのうち計342校が休校の措置をとり、短縮授業とする措置をとった学校は29校(文部科学省調べ)[155]。また、文部科学省の調べで、県内の公立高校8校と特別支援学校2校の計10校に天井やガラスが破損するなどの被害があったこともわかった。大学でも熊本大学[156]、熊本県立大学[157]、熊本学園大学[158]などで休講となった。
東海大学は、熊本県内に在所する熊本キャンパス・阿蘇キャンパスでの授業などについて4月17日から24日まで休講とする措置を執った[159]。16日未明の本震により、南阿蘇村の阿蘇キャンパス付近に所在する学生アパートが倒壊し、一時同大学に在籍する農学部生12名が生き埋めになり[160]、16日午前9時には全員が救助されたものの[65]、その後2名の死亡が確認された[131]。
4月17日開催予定の情報処理技術者試験(初回となる情報セキュリティマネジメント試験を含む)は、九州地区のみ中止の措置をとり次回試験への振り替えまたは受験料の返金で対応することになった(ただし、沖縄県の那覇試験地は通常どおり試験実施)[161]。
4月19日実施の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)は問題冊子を配送できなかったため、熊本県の全小中学校と宮崎県と大分県の一部の学校でテスト実施が中止となった[162]。
経済活動
一連の地震による被害地域の生産活動に与えた影響は深刻で、余震が続くため工場内に及んだ地震の被害を正確に把握するに至らず生産再開がままならない状況に追い込まれている企業が多数に及んでおり、自動車部品などの製造分野、食料品、飲料水メーカーなどが4月16日 - 19日時点で操業を停止したままになっている[163][164]。
これらの現地生産活動への影響により、被害地域周辺に複数の画像用半導体製造工場があったソニーのラインは一部および全面停止、九州唯一の精油所であるJXエネルギー大分精油所の出荷停止および道路事情による輸送遅延から被害地域への燃料遅配など影響が波及している[163]。
2016年4月18日の東京株式市場では熊本地震による生産停滞の懸念が強まり、日経平均株価は大きな値下がりとなり終値572円安となった[165]。
政府は4月21日、月例経済報告にてこれらの被害地域における生産活動の停滞について言及した[166]。
民間企業
地元・熊本を拠点に展開するデパートの鶴屋百貨店では、鶴屋本館・東館・WING館、New-S館、ラン・マルシェ、地方各店(荒尾店を除く)等で地震発生翌日の15日からの営業を取りやめ、臨時休業日とした[167]。熊本市中心部の店舗のうち、ラン・マルシェは4月22日[167]、東館・WING館1階及びNew-S館は23日から営業を再開した[168]。熊本市外においては、八代市の2店(八代店及び生活彩館)を除き、22日までに営業を再開している。一方、鶴屋本館の隣に店を構える熊本パルコは、地震の翌日(15日)は臨時休業日としたものの、翌々日(16日)には、一部フロアを除いて営業を再開[169]。
イオン九州では、嘉島町のイオンモール熊本と宇城市のイオンモール宇城が被災、外壁および天井の一部が破損・崩落などの被害が発生した[170]。4月19日現在は前述の2店舗に加え熊本市のイオン熊本中央店と大津町のイオン大津店・菊陽町のイオン菊陽店・八代市のイオン八代店イオン6店舗は店舗施設の臨時休業または食料品売場以外のフロアの閉鎖・敷地内の仮説店舗での営業(後述)を決めている。それ以外の店舗(ホームワイド・ワイドマート4店舗とイオンバイク3店舗)でも営業時間を変更したり安全点検を理由に一部店舗の店舗営業を停止する措置を取っている[171][172]また、福岡県大牟田市のイオン大牟田店においても2階売り場の営業時間を変更している[173]。また、マックスバリュ九州の店舗では、地震の影響で19日現在熊本県内にあるマックスバリュ3店舗の営業を停止している[174]その他の熊本県内のマックスバリュ(エクスプレス)・ザ・ビッグ店舗では営業時間を変更して運営している。スーパーチェーンイズミは、熊本市内の「ゆめタウンはません」と「ゆめマート」の4店が休業[175]。サンリブ・マルショクグループでは、熊本県内の20店舗のうち15店舗が休業[176]したものの順次再開、半壊となったサンリブ健軍店[177]を含めて、4月23日時点で引き続きサンリブ4店舗が休業[178]。
益城町にある井関農機の井関熊本製造所で被害が出た他、パナソニック、本田技研工業、トヨタ自動車九州の各工場は操業を停止した[179]。窓が割れる被害が出たアイシン精機の2子会社も操業を停止し、スズケンも宇土市の子会社の操業を停止した[180]。なおこの地震に伴いトヨタ自動車をはじめ、日野自動車・ダイハツらトヨタグループは、1週間程度にわたり、国内のすべての工場の操業停止を決定[181]。
熊本県宇城市にある山崎製パンの熊本工場は、14日の余震の影響で一度生産をストップしていたが、1日で復旧。しかし、16日の本震で再び生産がストップ[182]。また、16日の本震では熊本県内のみならず、大分県内にある工場にも被害が及び、大分県日田市にあるサッポロビールの工場では停電が発生。なお、操業はしておらず、建物の大きな被害もなく従業員への被害もなかった。ブリヂストンの熊本工場(熊本県玉名市)では、14日の地震で停止していた生産の再開準備のため出勤していた従業員全員が作業を中止し帰宅した。新日鉄住金の大分製鉄所(大分市)は、地震直後に操業を一時停止した後、安全確認ができた設備から順次再開した[183]。
上益城郡嘉島町にビールと飲料の製造拠点を持つサントリーホールディングスは、工場の操業を停止し、製造設備の確認作業が続いており、稼働のめどはたっていない。なお復旧までには1カ月以上かかるとされている[184]。コカ・コーラウエストの熊本工場(熊本市)も、18日の完全復旧を予定していたが、余震などにより設備の損傷などで引き続き生産停止、サントリー同様復旧のめどは立っていない[185]。
菊陽町にあるソニーのデジタルカメラ向けのイメージセンサーなどを生産しているソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社熊本テクノロジーセンターが地震の影響で生産活動を停止した。生産再開は未定であるという。また、同様にスマートフォン向けのイメージセンサー開発の主力工場である長崎や大分のテクノロジーセンターも生産活動を停止していたが、4月17日に生産再開した[186][187]。三菱電機は菊池市の液晶パネル部品の工場と合志市の自動車向け半導体の工場で、ルネサスエレクトロニクスは熊本市南区の自動車向けの半導体の工場で、それぞれ生産を停止。熊本県益城町に本社や工場がある化粧品メーカーの再春館製薬所も被災し工場の操業を停止、再開のメドは立っていない[188]。
日本郵政では、この地震により熊本市や南阿蘇村などにある16か所の郵便局が被災。これにより、被災した郵便局は窓口業務を停止している[189]。一方、地震直後は熊本県内宛てのゆうパックの業務を一時停止していたが、震源に近い市町村宛てや、保冷が必要なものを除き19日の朝から再開[190]。佐川急便も地震直後は、熊本県内宛ての配送業務を一時取りやめていたが、18日より被害の大きい一部地域を除いて配送を再開[191]。ヤマト運輸も、19日午後5時より地震の影響で休止していた熊本県での配達と集荷を再開(被害の大きい一部地域を除く)。なお、前述のゆうパックとは違い、保冷輸送「クール宅急便」を含め対応することとしている[192]。
日本国内の対応
皇室
4月15日午前、宮内庁は天皇・皇后が同日に予定していた「第18回日本・スペイン・シンポジウム in 静岡」(4月14日 - 16日)に伴う静岡市視察を取りやめると発表した[193]。 4月22日、天皇、皇后が熊本県に対して見舞金として金一封を贈ったことを宮内庁が発表した[194][195]。
政府・国会・政党
- 4月14日
-
- 21時31分 - 政府は首相官邸の危機管理センターに官邸対策室を設置[196]。
- 21時36分 - 安倍晋三首相が、被害状況の把握や災害応急対策に全力を尽くすこと、さらに国民への情報提供を指示した[197]。地震発生時安倍首相は東京の猿楽町で会食中であったが、途中で退席し21時50分過ぎには官邸に入った[198]。
- 21時40分 - 蒲島郁夫熊本県知事は陸上自衛隊第8師団長に対して災害派遣を要請した[199][200]。また、22時05分に総務省消防庁に緊急消防援助隊出動を要請した[201]。これにより、自衛隊350人、警察が県外から200人、消防200人が派遣された[198]。
- 22時10分 - 災害対策基本法に基づく非常災害対策本部設置[202]。
- 22時10分過ぎ - 菅義偉官房長官は緊急の記者会見を行い、原子力施設の被害情報はないことを発表した[198]。
- 4月14日夜、自民党・公明党・民進党の3党は、党幹部を各々の党本部に招集し、独自に対策本部や緊急情報連絡室を設置[203]。後日共産党[204]・おおさか維新の会[205]・社民党も災害対策本部を設置[206]。
- 4月15日
-
- 10時40分 - 災害対策基本法に基づき熊本県庁内に非常災害現地対策本部設置[202]。
- 国会では4月15日から環太平洋パートナーシップ協定(TPP)承認案と関連法案の衆議院特別委員会審議再開が予定されていたが、安倍首相は委員会冒頭で地震対応の状況説明を行った上で退席し、審議は18日以降に持ち越された。自民・民進両党の国会対策委員長は当面災害対応を優先させることで合意した[207]。
- 4月16日
総務省
4月14日21時33分に総務省非常災害対策本部を設置。職員派遣のほか、総務省災害対策用移動通信機器、移動電源車を貸与。また所管する独立行政法人情報通信研究機構などがICTユニット及び車載衛星地球局を被災地に搬送し無線LANサービス(衛星経由)を提供[214]。
消防庁
- 4月14日21時36分に消防庁災害対策本部を設置し、22時05分に熊本県知事の要請のより九州地区の消防と捜索救助活動に対して緊急消防援助隊出動を要請した[215]。
- 4月16日、各地の緊急消防援助隊陸上部隊と消防局防災航空隊ヘリコプターが被災地に派遣された。京都府114名[216]、大阪府274名[216]、兵庫県172名[217]、福岡県222名[216]をはじめ広島[216]、鳥取[218]、島根[218]、山口[216]、愛媛[216]、徳島[219]、高知[216]、佐賀[220]、長崎[216]、宮崎[221]、鹿児島[216]、沖縄[222]などから派遣された。なお、大分県でも緊急消防援助隊陸上部隊を派遣したが16日の地震により県内対応のために帰県した[216]。
警察庁
- 4月14日21時31分、非常災害警備本部を設置し[223]、九州管内の警察から熊本県内にヘリコプターや部隊を派遣[224]。
- 4月15日、高知県警は広域緊急援助隊ヘリコプターを[225]、大分県警は同隊を派遣[226]。
- 4月16日、警察庁の要請を受けて埼玉県警は広域緊急援助隊隊員78人を[227]、静岡県警も同隊(県警機動隊と関東管区機動隊77人)と航空隊を[228]。愛知県は同部隊140人と広域警察航空隊5人を派遣[229]、滋賀県警は同隊員・交通部隊36人を[230]、和歌山県警も同隊[231]を、兵庫県警察は機動隊約100人を[217]、広島県警察は74人を[232]、鳥取県警も同隊[218]を、島根県警も同隊68人を[218]、徳島県警も同隊・緊急災害警備隊計28人を[219]、高知県警も同隊を[225]、宮崎県も警察災害派遣隊を[221]、派遣した。
文部科学省
- 4月14日21時53分、事務次官を本部長とする非常災害対策本部を設置。文教施設の被害情報収集のほか、被災した熊本大学に対し九州大学・長崎大学などから物資を支援。また厚生労働省の要請により大学付属病院から災害派遣医療チーム(DMAT)を派遣。ほか陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)による取得画像を関係機関に提供[233]。
厚生労働省
- 4月14日22時30分、厚生労働省災害対策本部を設置。九州ブロックを皮切りに順次広範囲に災害派遣医療チーム(DMAT)の派遣を要請。県外患者搬送については、航空搬送拠点臨時医療施設(SCU)を立ち上げて患者搬送を実施。その後順次日本医師会災害医療チーム(JMAT)、全日本病院協会災害時医療支援活動班(AMAT)などに業務を引き継ぐ[234]。
- 災害派遣精神医療チーム(DPAT)調整本部を熊本県内で立ち上げ入院患者の転院支援や避難所の巡回を実施[235]。
- 九州全域及び中四国地域のドクターヘリに出動要請。熊本、福岡、長崎、鹿児島、山口、岡山、高知の7機を熊本に配備し、佐賀、大分、宮崎の3機が九州全域を、広島、島根、徳島の3機が中四国全域をバックアップする体制を構築[236]。
- 水道に関しては職員派遣のほか、全国管工事業共同組合連合会及び日本水道協会に職員派遣を要請[235]。
国土交通省
- 4月14日21時26分に非常体制をとり22時10分非常災害対策本部を設置。自治体支援のため、17日5時時点で大津町役場に照明車など計43台の災害対策用機械を派遣し、併せてリエゾン災害対策現地情報連絡員を2県16市町村に派遣[237]。九州地方整備局は15日までにブルーシートや防寒用の毛布などの救援物資を益城町、西原村に届けている[238]。16日、中部地方整備局からは緊急災害対策派遣隊13人が派遣された[229]。
- 港湾局は所属船舶(大型浚渫兼油回収船「清龍丸」「白山」、海面清掃兼油回収船「おんど2000」「いしづち」、港湾業務艇「りゅうせい」「くるしま」ほか)により水や食料などの支援物資の緊急輸送を実施[239]。
- 九州地方整備局は調査観測兼清掃船「海輝」「海煌」により熊本港で飲料水の提供を実施[240]。
- 被災車両の自動車検査証有効期限について、道路運送車両法第61条の2の規定を適用し伸長を決定[241]。
海上保安庁
- 4月14日9時半前に鹿児島県に災害対策本部を設置。巡視船21隻と航空機3機により、港湾や沿岸部などの被害状況調査に着手[242]。
- 15日6時半までには巡視船41隻と航空機8機に増強。特殊救難隊と機動救難士を派遣した[243]。また、三角港に巡視船2隻を派遣し、給水作業を実施[244]。17日より八代港、熊本港で巡視船4隻により給水・食料支援、入浴提供、携帯電話充電等の住民支援等を実施[245]。
気象庁
- 4月14日に気象庁 機動調査班(JMA-MOT)を派遣(ヘリ調査:1班2名、地上調査4班11名)[資料 61][資料 5]。
- 4月15日には揺れの大きかった熊本県の16市町村について、暫定的に大雨警報・注意報基準、土砂災害警戒警報基準の土壌雨量指数基準値を[246]。
- 4月16日01時25分の地震の発生を受け、同日に熊本県、大分県、福岡県、佐賀県、長崎県、宮崎県で震度5強以上を観測した市町村について、暫定的に大雨警報・注意報基準、土砂災害警戒警報基準の土壌雨量指数基準値を引き下げて運用する[資料 62][資料 63]。加えて、洪水警報・注意報発表の基準となる流域雨量指数の基準値を引き下げて運用する[資料 64]。
- 4月20日、平成28年熊本地震については余震の発生確率の発表を取りやめると表明した。『今回は過去の経験則が当てはめられず、発表できない』とのこと[46]。
- 4月21日、『震源が広域に広がる過去に例がない地震で、今後の予測は難しい』と大きな規模の地震の後に出していた余震の発生確率をこれからは発表しないことを決めた[247]。
環境省
防衛省
自衛隊
- 4月14日夜、防衛省は初動対処部隊「ファストフォース」を派遣、航空自衛隊は「F2戦闘機」2機、海上自衛隊は「P3C哨戒機」1機、陸上自衛隊は多用途ヘリコプター「UH-1」1機を派遣し情報収集に当たった[249]。
- 4月14日21時26分、熊本県知事より陸上自衛隊第8師団長に、16日1時25分、大分県知事より西部方面特科隊長にそれぞれ人命救助に係る災害派遣要請[250]。
- 4月16日2時45分、中谷元防衛大臣より、陸上自衛隊西部方面総監(小川清史 陸将)を指揮官とする陸海空3自衛隊による統合任務部隊を編成するための自衛隊行動命令が発令された[251]。同日4時55分に陸災部隊(人員約13,000名)、海災部隊(人員約1,000名)、空災部隊(人員約1,000名)の部隊を編成し活動開始[252]。
- 4月17日より、自衛隊は2万人を対応に投入する[253]。28日までに陸上自衛隊は被災地の九州を管轄する西部方面隊を中心に北部・東北・東部・中部すべての方面隊が部隊を派遣したほか中央即応集団の第1ヘリコプター団や大臣直轄の航空学校も投入された。また、海上自衛隊は護衛艦「ひゅうが」「いずも」「やまぎり」「あたご」「きりさめ」などの艦艇や救難飛行隊を有する航空部隊など、航空自衛隊は航空隊や救難隊などを投入し、総数は約24,000人となった[254]。
- 即応予備自衛官の招集を17日午後の持ち回り閣議で決定し、防衛大臣より招集命令が発令。規模は最大300人程度で、招集は東日本大震災以来2回目[255]。
地方公共団体
- 宮城県石巻市
- 東日本大震災被災の経験から、飲料水約1,200L、備蓄用のパン約2.4kgなどの支援物資と職員3人を派遣した[256]。
- 岩手県遠野市
- 17日、友好都市の熊本県菊池市などに向けて2L飲料水5,484本、ブルーシート595枚、毛布200枚、卓上用こんろ7セット、ご飯600食を発送した(同市はこれと別に災害時相互応援協定を結ぶ愛知県大府市を通じ水2,304本とブルーシート100枚も発送)[257]。
- 福島県
- 東日本大震災に伴う原発事故等を原因とし熊本県に避難している県民の安否確認や現地の情報収集のため15日に県職員3人を派遣、19日に交替として新たに3人を派遣した。全33世帯の避難者を訪問確認し、20日に71人全員の無事を確認した。
- 厚生労働省の要請により16日に福島県立医科大学附属病院よりDMATを、21日に県立矢吹病院よりDPATを1チーム派遣した。
- 熊本県と災害時相互協定を結んでいる静岡県からの要請により20日に応急危険度判定等の被害状況の把握や避難所の運営、支援物資のコントロールのために職員5人を派遣した。また、熊本県、及び嘉島町からの要請により22日に医療チーム1班を派遣し避難所用仮説パーティション203セットと小型テント16張を送付、24日には避難所運営、支援物資コントロールと調整のため県職員8人を派遣した。[258]。
- 栃木県内の自治体
- 小山市は飲料水3,600Lと毛布300枚を発送した[259]。17日、鹿沼市は500mL飲料水2,016本、毛布500枚を大津町に発送。日光市も1.5L飲料水3,000本、米5,000食、粉ミルク缶50個などを発送した[260]。矢板市は19日に米4,000食、簡易トイレキット3,000回分などを宇土市へ発送した。さくら市は19日に500mL飲料水2,256本、米2,500食、紙おむつや消毒液などを大津町に発送。21日、栃木市は被災者からの要請を受け、低家賃で市営住宅を貸す住宅支援策の実施を決定[261]。
- 茨城県
- 16日、毛布3,000枚、水3,000L、簡易トイレ100個を提供[262]。
- 東京都
- 公益社団法人日本水道協会の依頼で水道局職員10人[263]。総合防災部職員2名[264]、医療救護班、DMAT10チームを派遣し、毛布1,700枚、簡易トイレ2,000個を支援した[265]。
- 神奈川県横浜市
- 水缶36万缶、食料31.5万食、トイレパック40万個などを発送。また保健師2人、職員21人を派遣[266]。
- 福井県福井市
- 熊本市と1994年来友好姉妹都市で1997年に同市と災害時応援協定を締結している福井市は、非常食や飲料水、毛布等の支援物資を被災地に届けた[267]。
- 新潟県
- 新潟県は、熊本県の要請を受けて家屋の倒壊危険度を診断する職員を派遣したほか、県内では、長岡市が応援職員6名を派遣。新潟県中越地震の経験を基に開発した組立式の「避難所用更衣室&授乳室」30台を送った。三条市も救援物資を送った[268]。
- 関西広域連合
- 関西広域連合は、家屋被害調査の体制づくりを支援する先遣隊を派遣[217]。
- 兵庫県
- 16日、兵庫県内の13医療機関からDMATが派遣[217]。
- 指定都市市長会
- 指定都市市長会は現地支援本部の設置を決定。先遣隊として岡山市、広島市、北九州市、福岡市の職員を派遣、避難所運営や救援物資の方策を検討[269]。17日夜、さいたま市が市長会の要請を受け、備蓄庫に保管されていた支援物資を熊本県に発送した。18日、札幌市は市長会の要請を受け、札幌市の応急救援備蓄物資を提供した[270]。
- 福岡県
- 飯塚市上下水道局は、日本水道協会九州地方支部の要請を受け、1トンタンクを備えた給水車1台と職員4人を派遣。筑豊地区と北九州市消防局、遠賀、京築地区の10消防本部は後方支援部隊を結成。田川市は市営住宅に10世帯の被災者受け入れを決定[271]。
- 宮崎県
- 保健師、職員、DMAT、DPATを派遣し、また宮崎県内の病院に被災者を受け入れた[221]。
- 鹿児島県鹿児島市
- 鹿児島市立病院DMAT・水道局給水車・応急危険度判定士を派遣、食糧・水・生活用品などの救援物資を八代市・宇土市・宇城市・人吉市、水道局からペットボトル1万本・給水袋を熊本市に輸送、鹿児島市立病院にてドクターヘリ及び新生児ドクターカーにより新生児4名、妊婦1名を受け入れた[272]。
- 長崎県
- 長崎県は4月16日夜、トラック2台分の食料、水、毛布、簡易トイレなどを熊本県へ発送した[273]。翌17日には保健師4人を派遣[273]。
上記のほか、北海道から沖縄まで各地の自治体から、災害派遣医療チーム(DMAT)・災害派遣精神医療チーム(DPAT)、支援物資、給水車、応急危険度判定士職員などが派遣された。
上記以外の公共機関
- 日本赤十字社
- 16日、茨城県支部はブルーシート700枚を提供[262]。高知県支部も救護班を[225]、鳥取県県支部も救護班9人を派遣した[218]。秋田県支部は18日、救護班派遣を決定[274]。滋賀県支部は医療救護班17人を[230]、名古屋市からは日赤医療救護班が[229]派遣された。
- 在日米軍
- 17日、在日米軍普天間飛行場からオスプレイ2機が向かい[275]、岩国基地経由で陸上自衛隊高遊原分屯地で物資を積み、18日午後5時過ぎ南阿蘇村の白水運動公園に着陸。オスプレイは日本の災害支援への初参加となった[276]
- 通信
- 無線LANビジネス推進連絡会が2014年に5月に制定した[277]、大規模災害時に運用される公衆無線LANの共通Wi-Fiアカウント、
00000JAPAN
の運用を開始した。世界初の試みで[278]、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの携帯電話各社、ワイヤ・アンド・ワイヤレス、熊本県などが提供している[279][280]。 - またNTT西日本は、熊本県・大分県の全域で公衆電話の無料化を行い、硬貨を使わなくても電話をかけられるようにした[281]。
- メディア
- テレビはNHK・各民放テレビ局とも4月14日21時26分の地震発生から順次、放送中の番組を中断・休止し、緊急報道特別番組を熊本や福岡にある系列局からのレポートを交えて放送した[282]。NHKはインターネット(NHKの公式サイト)でテレビの報道特番を同時配信した[283]。テレビ朝日は同社が関係するAbemaTV(同年4月11日に開局)に報道特番を同時配信した[284]。ただし、熊本県に系列局の置局がないテレビ東京は地震関連の緊急特番を組まず、通常放送する番組をそのまま放送していた[285]。
- ラジオでもNHK・民放ともに地震関連の報道特番に切り替えた[286]。このうち地元AM局・熊本放送(RKKラジオ)はJNNとのサイマル放送(RKKテレビと同じ内容の放送を行う)に切り替え、翌15日の午前中のワイド番組をすべて中止し、正午まで地震関連の報道特番として放送。なお、この間CMは一切放映されなかった。地元FM局・エフエム熊本(FMK)は、TOKYOFMをキー局とするJFNの報道特別番組を放送した[287]。また、熊本市内を放送エリアとするコミュニティFM局・熊本シティエフエムは、臨時災害放送局「くまもとさいがいエフエム」を、局内に開設した。熊本市内や益城町の一部を放送エリアとし、避難所や給水所、銭湯、交通機関などの生活情報を断続的に伝えている(30日まで)[288][289]。
- 新聞は、朝日新聞がオンライン有料サービス「朝日新聞デジタル」を無料開放した[290]。また毎日新聞も、購読者限定の紙面イメージ閲覧(有料)を西部本社発行版[注釈 5](朝刊のみ)に限り無料開放した。この他、読売新聞では西部本社発行の朝刊1面と総合面、社会面および熊本県版の紙面イメージを公式サイト「YOMIURI ONLINE」で臨時公開している。
民間企業
大手コンビニエンスストアチェーン各社では緊急の支援物資として、セブン-イレブンはおにぎりと2リットル入り飲料水のペットボトルをそれぞれ1000個ずつ、ファミリーマートは555ミリリットル入り飲料水のペットボトルとおにぎりをそれぞれ500個ずつ、ともに益城町役場に、ローソンは500ミリリットル入りのペットボトルの水、カップ麺、割り箸などを熊本市の熊本県民総合運動公園陸上競技場に配送[291]。
イオン九州の熊本県内の店舗では、店内が使えず臨時休業となっている代わりに、食料や飲料水を駐車場の臨時売り場で販売する措置を取っている[292]。また、自治体からの要望に応える形で食料品や毛布などの物資提供を親会社のイオンやイオンリテールと共同で行っている。物資輸送は日本航空(JAL)との緊急輸送協定に基づき、発送地から長崎空港までの輸送はJALが、長崎空港から御船町の集積地までは陸上自衛隊が輸送を担当している[293]。また、災害用大型テントの設置を陸上自衛隊やJALと共同で実施している[294]。集積先はローソンと同様、熊本県民総合運動公園陸上競技場となっている。
牛丼チェーンの『すき家』を運営するゼンショーホールディングスは、熊本県益城町の避難所で、自社が所有するキッチンカーによる炊き出しを行い、牛丼のミニサイズを約1000食ほど被災者に提供した[295]。非常用缶詰パンを販売している株式会社パン・アキモトは日本国際飢餓対策機構と連携して小規模な避難所を中心に回り、3600食分の缶詰を提供した[296]。
北海道札幌市に本社を置く大手インテリアチェーンのニトリは、毛布500枚・座布団300枚を宇土市に提供[297]。民放ラジオ局・ニッポン放送は、被災地に対してラジオ500台を提供することを発表。なお、地元のラジオ局・熊本放送(RKKラジオ)を通じて、被災地に配布される[298]。
美容外科・高須クリニックは、水など支援物資を自社が所有するヘリコプターを使い、被災地に輸送。なお、救援物資は同クリニックの高須克弥院長自らのポケットマネーによるものである[299]。通信販売大手のジャパネットたかたは、テレビ・ラジオ等で4月21日に紹介した通販のうち、4つの商品の売上金を全額被災地への支援金として寄付することを、高田明前社長が発表[300]。
インターネット・サービス
「Facebook」では、Facebookの友人に安否を知らせられる災害用サービス「災害時情報センター」を熊本県全域と九州地方の一部で提供開始した[301][302]。
「Airbnb」では、被災者に宿泊場所を無料で提供できる緊急災害支援を発表した [303]。
「LINE」は、固定・携帯電話回線向けの電話サービス「LINE Out」を1回あたり10分間無料で解放。「Viber」も同様のサービス「Viber Out」を同じく1回あたり10分間無料で解放したが、「電話回線の混雑を助長するものではないか」と指摘された[304][305]。なお、LINEでは「熊本地震 被災地支援スタンプ」を販売し、売上金全額を日本赤十字社を通じて義援金として寄付することも発表している[306]。
世界各国の対応
- アメリカ合衆国
- 国務省のジョン・カービー報道官は4月14日の記者会見で「我々は熊本の人たちと共にある」と語り、今回の地震で日本政府よりアメリカへ支援要請があった場合には「受け入れる用意がある」との意思を明らかにした[307]。
- 中華民国 (台湾)
- 14日夜、次期総統である民主進歩党の蔡英文主席は、「被害が最小限に抑えられ、日本の友人たちが無事であるよう願います」とのコメントを発表、15日に馬英九総統は、安倍首相に見舞いの書簡を送った[308]。台北市の柯文哲市長は哀悼の意を表明、基隆市、新北市などと共同で救助隊派遣の用意を完了。高雄市の陳菊市長は給与1か月分を寄附、支援に備えるよう指示。それに続いて台南市の頼清徳市長、台中市の林佳龍市長、桃園市の鄭文燦市長もそれぞれ給与1か月分を寄附することを表明している。中華民国政府は16日までに6500万円、民主進歩党は1000万円[309]の寄附を表明、外交部は約1500人の九州旅行の台湾人観光客の無事を確認した[310]。
- ロシア
- 訪日中のセルゲイ・ラブロフ外務大臣は15日、岸田文雄外務大臣との記者会見において「地震被害と犠牲者に心からお見舞いを申し上げる」と述べるとともに、「日本の要請があれば、こうした事態に支援に駆け付ける用意がある」と表明、緊急援助隊派遣の用意があることを明らかにした[311]。ウラジミール・プーチン大統領は16日、安倍首相に哀悼の意を表明する書簡を送った[312]。
- フランス
- フランス外務・国際開発省は15日、哀悼と連帯の意を表し、在日フランス人に警戒を呼びかけた[313][314]。
- 大韓民国
- 尹炳世外交部長官は15日、地震犠牲者への哀悼の意を示すメッセージを岸田文雄外務大臣に送った[315]。また、外交部は、在留韓国人のための支援チーム派遣を決定。在福岡韓国総領事館は、熊本県や大分県内で足止めされている韓国人観光客らを福岡空港に移送するバス6台を用意[316]。18日、朴槿恵大統領は安倍晋三首相にお見舞いの電報を送った[317]。
- 中華人民共和国
- 外交部の陸慷報道局長は16日、「死亡した人への哀悼と、遺族や負傷者へのお見舞いを示す」とする談話を公表。日本政府にも見舞いを伝達[318]。 習近平国家主席は18日、天皇に「犠牲者への深い哀悼と遺族や負傷者への心からのお見舞い」を伝える電報を送った[317][319]。20日、李克強首相は安倍晋三首相にお見舞いの電報を送った[320]。
- 欧州連合
- フェデリカ・モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表 (外相)は、16日、「日本は天災に際しても常に復興を遂げる力を証明してきた」と指摘し、哀悼の意を示すとともに、「あらゆる支援を提供する用意」があるとする声明を発表[321]。
- タイ
- 国王ラーマ9世は16日、「悲劇的な地震の報告に心を痛めている」と声明[322]。プラユット・チャンオチャ暫定首相は、安倍首相に見舞いの書簡の中で「要請があれば日本に支援を提供する用意がある」と伝えた[323]。
- マレーシア
- ナジブ・ラザク首相は16日、「日本の皆さま、特に地震の犠牲者とご家族に哀悼と同情の意を表す」とTwitterに投稿した[324]。
- インド
- ナレンドラ・モディ首相は16日、「多大な犠牲と損害に心を痛めている。私の心は犠牲者遺族と共にある」とTwitterに投稿した[325]。
- イギリス
- デーヴィッド・キャメロン首相は16日、「熊本からのニュースを聞き悲しんでいる。私の気持ちは日本で地震の影響を受けたすべての人々と共にある」、「われわれは支援のため、できることは何でもする」とTwitterに投稿した[326]。
- ドイツ
- ドイツ外務省は熊本大分両県を訪れないよう、また日本の警察などの指示に従うようドイツ国民に勧告した[314][327]。
- ウクライナ
- ウクライナ首脳はTwitterに哀悼の意を表明した[314]。
- バチカン
- ローマ教皇フランシスコは17日、バチカンで開催した正午の祈りの集会の席上、日本・熊本地震及びエクアドル地震の為に「神のご加護を祈ろう」と語り、地震被災者のための祈りを捧げた[328]。
- オーストラリア
- ジュリー・ビショップ外相は17日、「われわれの心は日本の皆さんと共にある。必要なら、あらゆる支援を提供する用意がある」との声明を発表した[329]。
- パラオ
- トミー・レメンゲサウ大統領は18日、犠牲者や遺族に「心よりお悔やみを申し上げる」とした書簡を安倍首相に送った[330]。
- 駐日外国政府観光局協議会(ANTOR-JAPAN)
- ANTOR-JAPANは「熊本地震募金・救援物資支援」の活動を開始。会員である各国の政府観光局へ募金と救援物資の協力を呼びかけ、特に海外からの訪日旅行中に被災し、生活物資の不足に陥っている旅行者を支援すると発表した[331]。
インターネットの反応
「Twitter」では、商品が散乱するコンビニエンスストアの店内や、自宅の家具が倒れた様子を撮影したとする画像、本が落ちて本棚が空っぽになった様子や、隆起した道路、倒れた電柱などの画像などが相次いでアップロードされた[332]。Twitterや無料通話アプリ「LINE」などのSNS運営側、あるいは公的機関、また東日本大震災を体験した人や著名人などから被災地の人々へのアドバイスや情報提供も多数寄せられた[333]。
- デマ拡散
「動物園からライオンが逃亡した」「朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ」(関東大震災の際のデマを真似たものとみられる)などの悪質なデマ投稿も行われ、拡散した[334]。
批判を浴びた政治家の言動
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原発関連
民進党の公式Twitterが東日本大震災の際に「一部の自民党の有力議員が原発対応についてデマを流して(民主党)政権の足を引っ張ったのも有名な話」などと書き込み多くの非難を浴びた[335][336]。後日枝野幸男幹事長が「党の公式見解でないものを職員が書き込んだ」と弁明し[337]、謝罪した上で投稿は削除された[336]。自民党の二階俊博総務会長はインターネットでぶつぶつ言うよりも、党として現地に行くべきだと助言した[338]。
社民党の増山麗奈参議院予定候補がTwitterにて「九州電力に電話で原発を止めるよう陳情した」とツイート。ネット上では「復旧で忙しい電力会社に余計な手間をかけるな」と非難された[339]。
共産党の池内沙織衆議院議員がTwitterにて被災者に対し「熊本のみなさん、九州のみなさん、安らかな場所にいてください。どうか皆さんご無事でいてください」、「川内原発今すぐ止めよ。正気の沙汰か」といった投稿を行い、当該の投稿を後に削除したことが産経新聞などにより指摘された[340][339]。
募金偽装疑惑
共産党の香西克介衆議院東京3区立候補予定者は16日に救援募金を呼びかけ、17日には募金が37万円集まったため「熊本の被災地救援」「北海道5区補選への支援」「党躍進」の3項目に均等に分割し使用すると投稿した。しかし、募金を装った党運営資金目的ではないかという批判が寄せられ、香西は順次当該ツイートを削除した。香西は義援金と党への寄付金と同じ封筒を使用したことは認めたが運営資金目的は否定し、18日には被災地に全額送金したと発言した。小池晃書記局長は不適切であったと認めた[341][342][343]。
不適切発言
おおさか維新の会共同代表の片山虎之助参院議員が4月19日の両院議員懇談会で、熊本地震に関して「政局の動向に影響を加えることは確かだ。大変タイミングのいい地震だ」と発言した。この後、片山氏はコメントを発表し、「政局的な節目に重なってしまった、という趣旨で発言した。言葉の使い方が不適切だった」として陳謝した。[344]
松本文明・内閣府副大臣は15日から現地対策本部長として熊本に入り県との調整役を務めていたが、政府と本部とのテレビ会議で自身を含む対策本部に対し差し入れを要求したり、地元の自治体職員に声を荒らげたりするなど県との連携を円滑に行えておらず、20日に事実上更迭された[345][346]。
脚注
注釈
出典
気象庁の資料
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デマツイートにご注意を!「ライオンが逃亡」…ご丁寧にニセ写真付き 「朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ」など悪質(2/2) 産経新聞 2016年4月15日12時19分 - ^ 災害最中に民進党公式ツイッターで自民党批判!? 東日本大震災時に「自民議員がデマ流して政権引っ張った」 産経新聞 2016年4月15日2時3分
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- ^ 熊本地震「タイミングいい」=おおさか維新・片山氏が発言撤回 2016/04/19 時事通信
- ^ 政府現地本部長交代 暴言続き地元が『NO』、事実上更迭西日本新聞経済電子版 - 2016年04月21日
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関連項目
- 地震の年表 (日本)
- 熊本地震 (1889年) - 1889年にほぼ同位置で発生した大きな地震
- 本地震以外で震度7が記録された地震
- 兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災) - 1995年1月17日発生
- 新潟県中越地震 - 2004年10月23日発生
- 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災) - 2011年3月11日発生
- 本地震以外で複数の断層が連動したと推定される大陸プレート内地震(直下型地震)
- 本地震以外で前震が M6 を超えた大陸プレート内地震(直下型地震)
- 大町地震(大正大町地震) - 1918年11月11日発生、同日に M6.1 の前震と M6.5 の本震が起きたいわゆる双子地震
- 連動型地震 / 誘発地震
- 布田川・日奈久断層帯 / 別府‐島原地溝帯
外部リンク
政府
自治体
研究機関
- 平成28年(2016年)熊本地震[2016年4月14日] 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
- 平成28年(2016年)熊本地震 防災科学技術研究所 高感度地震観測網(Hi-net)
- 平成28年(2016年)熊本地震 防災科学技術研究所 自然災害情報室
- 2016年4月14日熊本地震 東京大学地震研究所
- 2016年 熊本地震についての災害調査報告 京都大学防災研究所
- 平成28年(2016年)熊本地震 東北大学災害科学国際研究所