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白山

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
加賀禅定道から転送)
白山
大汝峰から望む白山(剣ヶ峰と御前峰)と火口湖
標高 2,702.14[1] m
所在地 日本の旗 日本
石川県白山市
岐阜県大野郡白川村
位置 北緯36度09分18秒 東経136度46分17秒 / 北緯36.15500度 東経136.77139度 / 36.15500; 136.77139座標: 北緯36度09分18秒 東経136度46分17秒 / 北緯36.15500度 東経136.77139度 / 36.15500; 136.77139[2]
山系 両白山地
種類 成層火山活火山ランクC)
初登頂 717年 (泰澄上人)
白山の位置(日本内)
白山
白山
地図白山の位置
プロジェクト 山
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白山(はくさん)は、日本北陸地方白山国立公園[注 1]石川県白山市岐阜県大野郡白川村にまたがる標高2,702m活火山[3]両白山地の北部に位置する加越山地(加賀山地)の最高峰である[4]富士山立山とともに日本三霊山の一つである[注 2][3]日本百名山[5]新日本百名山[6]花の百名山[7]および新・花の百名山[8]に選定されている。

概要

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白山の地形図

白山は、富山県石川県福井県岐阜県の4県にまたがる[9][10]。山頂周辺は、成層火山となっている[11]。30万年から40万年前から火山活動を始め1659年万治2年)の噴火が最も新しい[3]。白山とは、最高峰の御前峰(標高2,702m)・剣ヶ峰(2,677m)・大汝峰(2,684m)の「白山三峰(白山三山)」を中心とした周辺の山峰の総称である[3][10][12]。よって厳密には単独峰ではないため、単に「白山」と称した場合は、その跨ぐ県境は石川・福井・岐阜・富山各県に及ぶ。また、別山三ノ峰を加えて「白山五峰」という。「白山連峰」と呼ばれることもある。

三主峰

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白山の山頂部は先述の御前峰、剣ヶ峰、大汝峰の三つの峰で形成されている[13]。このうち大汝峰は古白山火山の噴出物、御前峰と剣ヶ峰は新白山火山の噴出物からなる[13]

最高点の御前峰(ごぜんがみね)には、一等三角点白山比咩神社奥宮がある。1873年(明治6年)に白山山頂の社殿を白山比咩神社奥宮とし、1951年(昭和26年)に白山山頂部は白山比咩神社の境内地となった[14]

白山山頂には1937年(昭和12年)に矢作水力が奉納した方位盤があったが、2007年(平成19年)に落雷で破損したため工務店の倉庫で保管されていた[15]。この方位盤は2023年(令和5年)12月に白山比咩神社境内の白山奥宮遥拝所に移設された[15]

山名の由来

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「白山」の名は一年の大半を雪に覆われていることに由来するという[16]。古くは都人から「越のしらね」あるいは「越のしらやま」と称され、『古今和歌集』の中でも「しらやま」として詠われた(凡河内躬恒「消えはつる 時しなければ 越路なる しら山の名は 雪にぞありける」など)[16]

歴史

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室堂から望む白山神社と御前峰

白山を霊峰とする白山信仰は古くからあり、中世には白山は白山修験の霊山として栄え、登山口には修験の道場がひらかれて白山信仰の全国的広がりのもととなった[注 3]。日本各地に約2,700社の白山神社があり、白山比咩神社(石川県白山市)がその総本宮となっている[11][17]

白山頂上の一等三角点

地学

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大汝峰から望む火の御子峰
(古白山火山の浸食跡)
山頂部の火口湖の翠ヶ池
(新火山白山)

活火山

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白山はランクCの活火山である[32]。山頂部には、約15個の爆裂火口があり、一部が翠ヶ池などの火口湖となっている。翠ヶ池の南隣りにある鍛冶屋地獄火口が、最も新しい1659年の噴火で形成されたものと考えられている。

  • 約40万年前 - 加賀禅定道の加賀室跡に成層火山の加賀室火山があったと推定されている[33]
  • 約10万年前 - 山頂北側の地獄谷(手取川水系中川の源流部)付近に、古白山火山が形成された。山体の大部分は浸食で失われ、地獄谷の東側の火の御子峰の荒れた岩肌にその一部を見ることができる。その地獄谷の下流には岩間の噴泉塔群がある。
  • 約3 - 4万年前 - 現在の山頂部に新白山火山が形成された[9]
  • 約4,400年前 - 御前峰と剣ヶ峰にあった円錐形の火山は、東側に大崩落して、白水湖まで岩屑崩れが発生した。
  • 約2,000年前 - 剣ヶ峰の溶岩ドームが形成された。
  • 706年慶雲3年) - 『続日本紀』に越前国での山火事の発生の記事がある(白山の噴火によるものとの見方もある)[13]
  • 1042年長久3年) - 『白山之記』に加賀室(大汝峰と千蛇ヶ峰の間にあった室堂)に1人僧が残っていたところ、土砂が降ってきて室堂が埋まるのを目撃する記述がある(水蒸気爆発とみられる)[13]
  • 1547年天文16年) - 5月末から頂上で焼出し、火煙や土砂が噴き出した(「猿丸又右ェ門家景由緒書」)[13]
  • 1554年(天文23年) - 2年間にわたって活発な火山活動が続いた[3]。『白山荘厳講中記録』などに詳しい火山活動の様子が記録されている。
  • 1659年万治2年) - 白山が噴火、これが最も新しい噴火である[3]

地質

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山域の南東部は中生代ジュラ紀の手取層群の角閃石安山岩輝石安山岩などからなり[34]、北西部は古第三紀から白亜紀後期の新期花崗岩類と濃飛流紋岩類などからなり、山頂付近は白山火山噴出物からなる[35]

化石

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白山山麓周辺には、日本で数少ない中生代ジュラ紀の古い地層が分布し、日本を代表する恐竜化石の出土地となっている[9]1874年(明治7年)にヨハネス・ユストゥス・ラインが、白山周辺で植物化石の採集を行った。桑島地区には化石でできた露頭があり、1957年(昭和37年)7月10日桑島化石壁が国の天然記念物に指定された[36]

山頂部の池

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白山の山頂部には複数の池があり、周辺を散策する登山道が山頂のお池めぐりコースとして整備されている[10][37]。翠ヶ池と紺屋ヶ池は火口湖[37]

画像 名称 よみ 説明
翠ヶ池[11][10] みどりがいけ 1042年の噴火で形成された火口湖。
岐阜県側にある周辺で最大の池[38]
紺屋ヶ池 こんやがいけ 剣ヶ峰直下西にある火口湖。
油ヶ池[11] あぶらがいけ 御前峰の御宝庫直下北にある。
血ノ池 ちのいけ 御前峰と大汝峰との間にある。
千蛇ヶ池 せんじゃがいけ 千蛇ヶ池雪渓(多年性雪渓)の雪解け後に現れる池。
白山を開山した泰澄の千蛇ヶ池の伝説が伝えられている。
百姓池 ひゃくしょういけ 池の周辺に高山植物が群生する。
五色池 ごしきいけ 百姓池のすぐ北にある。

自然

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白山一帯は国立公園(白山国立公園)に指定されている。白山の中腹は急峻なところが多く、道路もほとんどないため人跡未踏の場所も少なくない。また、国指定白山鳥獣保護区(大規模生息地)に指定されている(面積38,061ha)。周辺は豪雪地帯で[9]、冬には山全体が真白になる。

山域の白山市と白川村は、「豪雪地帯対策特別措置法」により、特別豪雪地帯に指定されている。また山頂部には、カンクラ雪渓、水屋尻雪渓、千蛇ヶ池雪渓、ヒルバオ雪渓などの雪渓があり、夏の終わりまで雪が残っていて、万年雪となる所もある[39]。室堂の下部付近から上は、森林限界ハイマツ帯となっている。山頂付近には、最大の翠ヶ池(みどりがいけ)、紺屋ヶ池(こんやがいけ)、油ヶ池、血の池、千蛇ヶ池(せんじゃがいけ)、五色池、百姓池の7つの火口湖がある。

植物

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白山の高山植物

白山は日本有数の花の山としても知られ、砂防新道を登る場合、甚ノ助小屋を越えた辺りから、さまざまな高山植物の花畑が広がる。中でもクロユリは日本一の個体数と言われ、群生するさまはみごとである。クロユリは石川県の郷土の花にもなっている[40]。白山の中腹にはブナ原生林が広がり、巨大なブナが林立し、中宮道では幹周5mを越えると言う、日本有数の巨木もある。近年、もともと白山には植生しないコマクサが見られるようになり、生態系を乱す行為として種の持ちこみが懸念されている[41]

「ハクサン」を冠する和名の植物の種

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ハクサンコザクラ[9]ハクサンフウロハクサンチドリハクサンシャクナゲハクサンイチゲ[9](右画像の上段)をはじめ「ハクサン」を冠する植物名は多く[11][9]ゴゼンタチバナも最高峰・御前峰に由来している。白山は日本で高山帯を有する山岳としてはもっとも西に位置している。

そのため早くから植物の研究が進み、「ハクサン」の名が付く植物が多い[11]。別名を含め20種以上のハクサンを冠する種が自生している[42]

2010年に石川県環境安全部自然保護課は石川県の絶滅危惧種情報として、ハクサンイチゲハクサンオオバコ、ハクサンスゲを絶滅危惧II類(Vulnerable, VU)に指定し、ハクサンイチゴツナギ、ハクサンコザクラハクサンサイコハクサンチドリ、ハクサンハタザオを準絶滅危惧(Near Threatened, NT)に指定している[43]。岐阜県は、ハクサンアザミとハクサンオミナエシを準絶滅危惧に指定している。

環境省がレッドリストに指定している種はない[44]