保守王国
保守王国(ほしゅおうこく)は、日本の国政選挙や地方選挙において、保守勢力の候補が強い地域のことである。主に自由民主党への支持が強い都道府県や選挙区を指すことが多い[1]。関連語に民主王国がある。
概説
[編集]自由民主党のような保守勢力が選挙に強い地域を指す。西日本の地方部、すなわち北陸地方・中国地方・四国地方・九州地方に多く、特に富山県・石川県・福井県・岡山県・山口県・鳥取県・島根県・愛媛県・宮崎県などが保守王国と呼ばれている[2][3][4]。近年では、日本維新の会の伸長を受けて単に自民党が強い地域の場合には「自民王国」と呼ばれることがある[5]。
東日本の地方部は、小沢一郎が自民を抜けてからは非自民が強くなっているが、北関東特に群馬県では自民が強い。また、西日本でも近畿寄りの中四国東部や福岡都市圏では無党派が多い。中日本はトヨタに代表される大企業の労組票や輿石東・羽田孜・岡田克也の存在があり自民は弱いが、前述の北陸3県は自民党王国である。
自民党が惨敗した2009年の第45回衆議院議員総選挙でも、福井県・鳥取県・島根県・高知県は小選挙区で自民党候補が独占(高知県に至っては全小選挙区で自民党候補が比例復活も許さないほどの大差で勝利)し、富山県・島根県は比例区で自民党の得票数が民主党を上回るなど、特に西日本の地方部では自民党への支持の厚さが現れた。
第22回参議院議員通常選挙・第46回衆議院議員総選挙・第23回参議院議員通常選挙の三つの選挙において青森県・群馬県・富山県・石川県・福井県・鳥取県・島根県・山口県・徳島県・宮崎県は自民党が衆参すべての議席を独占し、他党に所属する議員が0になった。
最も強固な保守王国とされ、総理経験者を8人輩出した山口県においては2021年現在衆議院4議席全てと参議院2議席全てを独占するだけでなく、知事の村岡嗣政[注釈 1][注釈 2]及び県内全19市町の首長全員が自民党所属である。自治体の首長は一般的にさまざまな政治的考えの住民に配慮し、党籍を外すか無所属となるケースも多い中でこのような例は極めて珍しく、県内での自民党の強さを表している(しかし全員が自民党公認で首長選に立候補した者ではなく、自民党推薦の無所属候補が後に自民党所属になった例、保守分裂の関係で自民党推薦を得られなかったものの選挙後に自民党所属になった例、中には自民党の推薦候補を破った民主党系無所属の候補者が後に自民党に入党したケース(柳井市長の井原健太郎)もある)[7][6]。
また、参議院では和歌山県で、2019年の第25回、2022年の第26回において自民党公認候補が選挙区で70%を超える全国トップの得票率を2回連続で記録している(第26回で得票率70%超えは和歌山県のみである)。
主な選挙区
[編集]衆議院選挙区
[編集]小選挙区制を導入以後、自民党系候補が独占している選挙区を以下に列挙する。
参議院選挙区
[編集]現在、自民党系候補が独占している選挙区を以下に列挙する。
選挙区 | 当選議員 | 党派 |
---|---|---|
福島県選挙区(2) | 森まさこ、星北斗 | 自由民主党 |
栃木県選挙区(2) | 高橋克法、上野通子 | 自由民主党 |
群馬県選挙区(2) | 清水真人、中曽根弘文 | 自由民主党 |
富山県選挙区(2) | 堂故茂、野上浩太郎 | 自由民主党 |
石川県選挙区(2) | 宮本周司、岡田直樹 | 自由民主党 |
福井県選挙区(2) | 滝波宏文、山崎正昭 | 自由民主党 |
山梨県選挙区(2) | 森屋宏、永井学 | 自由民主党 |
岐阜県選挙区(2) | 大野泰正、渡辺猛之 | 自由民主党 |
三重県選挙区(2) | 吉川有美、山本佐知子 | 自由民主党 |
奈良県選挙区(2) | 堀井巌、佐藤啓 | 自由民主党 |
和歌山県選挙区(2) | 世耕弘成、鶴保庸介 | 自由民主党 |
岡山県選挙区(2) | 石井正弘、小野田紀美 | 自由民主党 |
鳥取県・島根県選挙区(2) | 舞立昇治、青木一彦 | 自由民主党 |
山口県選挙区(2) | 北村経夫、江島潔 | 自由民主党 |
香川県選挙区(2) | 三宅伸吾、磯﨑仁彦 | 自由民主党 |
佐賀県選挙区(2) | 山下雄平、福岡資麿 | 自由民主党 |
長崎県選挙区(2) | 古賀友一郎、山本啓介 | 自由民主党 |
大分県選挙区(2) | 白坂亜紀、古庄玄知 | 自由民主党 |
熊本県選挙区(2) | 馬場成志、松村祥史 | 自由民主党 |
宮崎県選挙区(2) | 長峯誠、松下新平 | 自由民主党 |
鹿児島県選挙区(2) | 尾辻秀久、野村哲郎 | 自由民主党 |
富山県選挙区、石川県選挙区、福井県選挙区、山梨県選挙区、三重県選挙区、奈良県選挙区、和歌山県選挙区、香川県選挙区、山口県選挙区、佐賀県選挙区、長崎県選挙区、大分県選挙区、宮崎県選挙区の改選数は1947年より一貫して1。岡山県選挙区、熊本県選挙区、鹿児島県選挙区は1998年まで改選数2、2001年より改選数1、鹿児島県選挙区は1998年以降自民党系候補が独占している。栃木県選挙区、群馬県選挙区は2004年まで改選数2、2007年より改選数1。岐阜県選挙区、福島県選挙区は2010年まで改選数2、2013年より改選数1。2016年から鳥取県選挙区と島根県選挙区は鳥取県・島根県選挙区、徳島県選挙区と高知県選挙区は徳島県・高知県選挙区。
脚注
[編集]注釈
[編集]脚注
[編集]- ^ 『保守王国』 - コトバンク
- ^ 富山県知事選挙 保守王国の分裂 勝敗の分岐点 | 特集記事 | NHK政治マガジン
- ^ “保守王国”が大分裂? 28年ぶりの新知事は誰に~石川県知事選挙2022年~ | NHK政治マガジン
- ^ 保守王国4知事選「分裂」様相 福井、徳島、福岡、島根:総合:統一地方選2019:中日新聞 (CHUNICHI Web)
- ^ 日本海側で伸長する維新 「自民王国」北陸からも代表選に名乗り 維新:朝日新聞デジタル
- ^ a b “山口県内の首長、全て自民党員 入党相次ぐ「保守王国」 首長「仕事進めやすい」/野党「多様さ反映せず”. 中国新聞. (2018年12月26日) 2021年12月9日閲覧。
- ^ <1> 自民にあらずんば 力を背景、実利がつなぐ