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X線分光撮像衛星

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
X線分光撮像衛星[1][2]
XRISM[1][2]
所属 宇宙科学研究所 (ISAS)/宇宙航空研究開発機構 (JAXA)
主製造業者 NECスペーステクノロジー[2]
公式ページ XRISM X線分光撮像衛星|JAXA
国際標識番号 2023-137A
カタログ番号 57800
状態 運用中
目的 宇宙の構造形成と銀河団の進化、宇宙の物質循環の歴史、宇宙のエネルギー輸送と循環の研究
超高分解能X 線分光による新しいサイエンスの開拓
設計寿命 3年[2]
打上げ機 H-IIA 47号機[3][4][5]
打上げ日時 2023年9月7日 午前8時42分11秒[5]
物理的特長
最大寸法 7.9m x 9.2m x 3.1m[2]
質量 2.3トン[2]
軌道要素
周回対象 地球
軌道 円軌道[2]
高度 (h) 550 ± 50 km[2]
軌道傾斜角 (i) 31度[2]
軌道周期 (P) 約96分[6]
観測機器[2]
Resolve 軟X線分光検出器
soft X-ray spectrometer (SXS)
Xtend 軟X線撮像検出器
soft X-ray imager (SXI)
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X線分光撮像衛星[1][2](えっくすせんぶんこうさつぞうえいせい)、XRISM[1][2](クリズム[7][8]、X-Ray Imaging and Spectroscopy Mission)は、2016年に姿勢制御系の不具合のため短期間で運用終了したX線天文衛星ひとみ」の代替機として、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 宇宙科学研究所 (ISAS) が開発したX線天文衛星[9]。「ひとみ」と同じく、アメリカ航空宇宙局 (NASA)、欧州宇宙機関 (ESA) との国際協力ミッションである[10]。特にNASAではJAXA主導の下に行うジョイント・プロジェクトとして位置付けしている[10]H-IIAロケット47号機で2023年9月7日午前8時42分11秒に鹿児島県、種子島宇宙センターから打ち上げられた[5][11]

概要

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プリプロジェクトの段階では「X線天文衛星代替機 (X-ray Astronomy Recovery Mission: XARM)」という仮称で呼ばれていた[12]が、プロジェクト移行時に「X線分光撮像衛星」と変更された[2]。他の日本の人工衛星と同様に名称を公募するかについては未定[13]

ひとみ」に搭載されていた硬X線関連や軟ガンマ線の観測機器は搭載されず、軟X線に絞った構成となっている[13]

ミッションの目的

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銀河団の圧力のバランスがどのように釣り合っているかを調べて銀河団の構造形成の歴史を調べること,宇宙の化学組成の進化を調べること,ブラックホール周辺の物質の動きを調べることで一般相対論的時空構造を解明することの3点を主な目的としている。[14]

設計

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観測機器

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2台の軟X線反射鏡の焦点面に、それぞれX線マイクロカロリメータ分光撮像器 (Resolve) と広視野のX線CCDカメラ (Xtend) を搭載する[10]。観測機器のうち、Resolveは、NASA、ESA、オランダ宇宙研究機関 (SRON) が開発する[2]

スラスタ噴射異常発生時の対策 

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XRISMは、「ひとみ」で発生した異常に対しては様々な対策が講じられており、直接の原因となったスラスタ噴射異常についても異常発生を防止する対策が講じられていた[15]。しかし、スラスタ噴射異常が発生した場合の対策を講じるようNASAからの要請があったため、「設計範囲内では想定できない要因」によってスラスタ噴射異常が生じた場合の対策として、衛星の回転が閾値を超えた場合はスラスタ噴射を停止する機能を追加することで衛星のロバスト性と信頼性の向上を目指すこととなった[15]

ミッション機器の不明事象

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ミッション機器の試験中に不明事象が生じ、原因究明と対策検討に時間を要していた[15]

打ち上げ

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2021年度中に、小型月着陸実証機SLIMを相乗りさせてH-IIAロケットで打ち上げることが予定されていた[16][注 1]が、2020年になって以下の理由により打ち上げを2022年度に延期[15]、さらに2023年5月に再延期とされた[17]。しかし、2023年3月7日に行われたH3ロケット試験機1号機の打ち上げが失敗し、その原因がH-IIAロケットと共通している部品とみられたため[18]、その対策を行う影響で最終的には2023年8月26日が打ち上げ予定となっていた[5][19]

しかし、天候不良のために同月27日、28日と次々に延期され、最終的に同月28日の上空の強風のために打ち上げ中止となり、打ち上げは再々延期となった[20]

その後、打ち上げ予定が9月7日午前8時42分11秒 (JST)、予備期間が9月8日から15日までとして発表された[21]

9月7日、予定どおり午前8時42分11秒に種子島宇宙センターから打ち上げられ、搭載していたXRISMを14分後に軌道に投入し、打ち上げは成功した(月面着陸を目指す小型実証機SLIMも打ち上げ48分後に軌道に投入)[22]

運用状況

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画像外部リンク
XRISMが撮影したSN1006 2024年3月4日
2023年
  • 9月11日、クリティカル運用期間の終了を発表[23]し、コミッショニング期間(衛星の基本機能性能確認)[24]に移行。
2024年
  • 1月5日、試験運用による初観測(ファーストライト)のデータを公開[25]。Resolveの検出器のX線入射部に取り付けた保護膜が閉じた状態で当初の予定性能が出せない。
  • 9月20、観測成果の報告とともに、未だResolveの保護膜が閉じた状態で当初の予定性能が出せないままであることが説明された[26][27]

脚注

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注釈

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  1. ^ ひとみの不具合はちょうど小型月着陸実証機SLIMがプロジェクトに移行した時期と重なったため、SLIMも運用計画が見直された。その結果、H-IIAでXRISMに相乗りして打ち上げるほうが探査機重量を増やせるなどの利点があることから、相乗りが妥当と判断された[16]

出典

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  1. ^ a b c d XRISM X線分光撮像衛星|JAXA”. ISAS/JAXA. 2019年12月11日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n X線分光撮像衛星(XRISM) プロジェクト移行審査の結果について』(PDF)(プレスリリース)ISAS/JAXA、2018年8月2日https://www.jaxa.jp/press/2018/08/files/20180802_XRISM.pdf2018年12月8日閲覧 
  3. ^ 日本の打ち上げ予定”. 宇宙技術開発. 2019年10月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年12月11日閲覧。
  4. ^ X-ray Imaging and Spectroscopy Mission (XRISM)”. ゴダード宇宙センター. 2018年12月8日閲覧。
  5. ^ a b c d X線分光撮像衛星(XRISM)および小型月着陸実証機(SLIM)の打上げについて”. 宇宙航空研究開発機構 (2023年7月11日). 2023年7月11日閲覧。
  6. ^ XRISM プレスキット” (PDF). 宇宙航空研究開発機構. 2024年7月22日閲覧。
  7. ^ 平成30年7月理事長定例記者会見”. 宇宙航空研究開発機構. 2018年12月8日閲覧。
  8. ^ H2A打ち上げ成功 探査機SLIM搭載、日本初の月面着陸なるか”. 毎日新聞. 2023年9月7日閲覧。
  9. ^ 松村武宏. “JAXAが開発中の科学衛星・探査機のうち3機の打ち上げ時期が変更される”. sorae 宇宙へのポータルサイト. 2021年6月20日閲覧。
  10. ^ a b c 宇宙科学技術ロードマップ(2/2)”. ISAS/JAXA (2019年3月29日). 2019年12月11日閲覧。
  11. ^ 三菱重工 | H-IIAロケット47号機による「X線分光撮像衛星(XRISM)」及び「小型月着陸実証機(SLIM)」の打上げ日時について”. 三菱重工 (2023年9月4日). 2023年9月6日閲覧。
  12. ^ 田代信、前島弘則、戸田謙一[他], 「X線天文衛星代替機の現状」 『日本物理学会講演概要集』 2018年 73.1巻, セッションID 25pK307-8, p.494, doi:10.11316/jpsgaiyo.73.1.0_494
  13. ^ a b 宇宙開発利用部会(第43回) 議事録:文部科学省”. 文部科学省. 2018年12月8日閲覧。
  14. ^ 取り組む謎│XRISM X線分光撮像衛星│JAXA 宇宙科学研究所”. xrism.isas.jaxa.jp. 2020年6月22日閲覧。
  15. ^ a b c d 國中均 (19 May 2020). 資料56-6 宇宙科学ミッション打上げ計画について (PDF). 第56回宇宙開発利用部会. 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所. 2020年5月20日閲覧
  16. ^ a b 小型月着陸実証機(SLIM)の画見直しについて』(PDF)(プレスリリース)ISAS/JAXA、2018年8月2日https://www.jaxa.jp/press/2018/08/files/20180802_SLIM.pdf2019年11月7日閲覧 
  17. ^ 宇宙基本計画工程表(令和4年度改訂案)”. 宇宙開発戦略本部 (2022年12月23日). 2022年12月28日閲覧。
  18. ^ H2A打ち上げ延期、国産主力ロケット全停止 H3失敗で”. 日本経済新聞 (2023年3月31日). 2023年8月18日閲覧。
  19. ^ “月探査機8月26日打ち上げ H2Aロケット47号機”. 共同通信社. (2023年7月11日). https://nordot.app/1051349628167602832?c=302675738515047521 2023年7月11日閲覧。 
  20. ^ 三菱重工 | H-IIAロケット47号機による「X線分光撮像衛星(XRISM)」及び「小型月着陸実証機(SLIM)」の本日の打上げ中止について”. 三菱重工 (2023年8月28日). 2023年8月29日閲覧。
  21. ^ "X線分光撮像衛星(XRISM)および小型月着陸実証機(SLIM)の打上げ日時について[再設定]" (Press release). JAXA. 4 September 2023. 2023年9月6日閲覧
  22. ^ MBCニュース | H2A47号機打ち上げ成功 日本初の月面着陸目指す小型実証機「SLIM」など軌道投入 鹿児島”. www.mbc.co.jp. 2023年9月7日閲覧。
  23. ^ X線分光撮像衛星(XRISM)のクリティカル運用期間の終了について”. JAXA (2023年9月11日). 2023年9月17日閲覧。
  24. ^ X線分光撮像衛星(XRISM)” (PDF). JAXA (2023年7月21日). 2023年12月27日閲覧。
  25. ^ JAXAの天文衛星「XRISM」がファーストライト 銀河団と超新星残骸の観測データを公開”. sorae (2024年1月5日). 2024年1月6日閲覧。
  26. ^ XRISMの初期科学成果 | 科学成果 | X線分光撮像衛星XRISM | JAXA”. X線分光撮像衛星XRISM │ JAXA (2024年9月20日). 2024年9月20日閲覧。
  27. ^ (日本語) X線分光撮像衛星(XRISM)の記者説明会, https://www.youtube.com/live/qgapFfAdzIg?si=wkdNRAfz-NzOcxHh&t=723 2024年9月20日閲覧。 

外部リンク

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