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2020年7月4日 (土) 05:13時点における版

 藤井 聡太 七段
藤井聡太 2019
名前 藤井 聡太
生年月日 (2006-07-19) 2006年7月19日(18歳)
プロ入り年月日 2016年10月1日(14歳)
棋士番号 307
出身地 愛知県瀬戸市
師匠 杉本昌隆
段位 七段
棋士DB 藤井 聡太
戦績
一般棋戦優勝回数 3回
2019年2月16日現在
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藤井 聡太(ふじい そうた、2002年7月19日 - )は将棋棋士[1]杉本昌隆八段門下[1]。棋士番号は307[1]愛知県瀬戸市出身[1]名古屋大学教育学部附属高等学校在学中(2018年4月 - )[2][3]

2016年に史上最年少(14歳2か月)で四段昇段(プロ入り)を果たすと、プロ入りから無敗のまま公式戦最多連勝記録(29連勝)を樹立した。その後、一般棋戦優勝・タイトル挑戦など多くの最年少記録を更新している。

アマチュア時代

幼少時代

5歳であった2007年の夏、母方の祖父母から将棋の手ほどきを受けた[4]。藤井の祖母は、3人の娘のところに生まれた孫たちに囲碁と将棋のルールを順番に教えていた(祖母自身はルールを知る程度)[4]。藤井は瞬く間に将棋のルールを覚え、将棋を指せる祖父が相手をしたが、秋になると、祖父は藤井に歯が立たなくなった[4]

同年の12月、瀬戸市内の将棋教室に入会[4]。入会時に師範から渡された、500ページ近い厚さの所司和晴『駒落ち定跡』(日本将棋連盟、ISBN 4819702092)を、まだ読み書きができない藤井は符号を頼りに読み進め、1年後には完全に理解・記憶した[5]

研修会

2010年3月、小学校1年生で東海研修会に入会[6]

2011年8月、小学校3年生で第10回全国小学生倉敷王将戦・低学年の部で優勝[7]。同年10月にJT将棋日本シリーズ東海大会の低学年の部で優勝[8]

2012年6月に研修会B1に昇級し、同年9月、小学校4年生で新進棋士奨励会(以下「奨励会」)に入会(6級)[9][注釈 1]

奨励会

中学1年生であった2015年10月18日に、史上最年少(13歳2か月)で奨励会三段に昇段し、複数のマスコミで報じられた[注釈 2][12][13]。ただし、その2週間前、同年10月3日に開幕した第58回奨励会三段リーグ戦(2015年度後期)[14]には間に合わず、半年近く足止めとなった[15]

中学2年生で迎えた第59回奨励会三段リーグ戦(2016年度前期)[16]で、2016年9月3日の最終局に勝ち、同年10月1日付・14歳2か月での四段昇段=プロ入りを決め[注釈 3]、最年少棋士記録を62年ぶりに更新した(加藤一二三が1954年8月1日に14歳7か月で四段昇段)[9][17]。中学生棋士は、加藤一二三谷川浩司羽生善治渡辺明に続いて5人目[9][17]、三段リーグを1期抜けしたのは、小倉久史屋敷伸之川上猛松尾歩三枚堂達也に続いて6人目であった[注釈 4][9]

プロ棋士としての棋歴

2016年度

2016年12月24日に行われた第30期竜王戦6組ランキング戦、加藤一二三との対局が、プロデビュー戦となった[18]。両棋士の年齢差は62歳6か月であり、記録に残っているプロ棋士の公式戦では最多年齢差の対局となった[18]。藤井が更新するまで最年少棋士記録を保持していた加藤を110手で破った藤井は、公式戦勝利の史上最年少記録を更新した(14歳5か月)[18]

2017年度

4月4日、王将戦1次予選で小林裕士に勝ち、プロデビューからの連勝記録を更新した(11連勝)[19][20] [注釈 5]。その後も連勝は続き、6月26日に行われた竜王戦本戦1回戦で5組優勝の増田康宏に勝ち、神谷広志が30年近く保持していた28連勝の記録を抜き、デビューから無敗のまま歴代最多連勝記録を更新した(29連勝)[22]。しかし、連勝記録更新の6日後の7月2日に行われた竜王戦本戦2回戦での佐々木勇気との対局で、プロデビュー後初の負けを喫して連勝が止まった[23]。藤井の連勝中は各メディアが広く取り上げ、大きな注目を浴びた[24][25][26][27]

一方、2017年3月から4月にかけてAbemaTV 将棋チャンネルで配信された非公式戦「藤井聡太四段 炎の七番勝負 - New Generation Story - 」では、増田康宏(2016年新人王)、永瀬拓矢(2016年棋聖戦挑戦者)、斎藤慎太郎(2016年度勝率1位)、中村太地(2012年棋聖戦・2013年王座戦挑戦者)、深浦康市(A級在位中)、佐藤康光(A級在位中・将棋連盟会長)、羽生善治(タイトル三冠保持中・A級在位中)の7人と対戦した[28]共同通信社観戦記者である津江章二は、この企画を知った時に、若手強豪からトップ棋士までが揃う藤井の対戦相手があまりに強すぎ、新人棋士を起用して何と無謀な企画を立てるものか、と驚愕し、藤井が2勝できれば上出来、藤井の全敗でも仕方ないと予想した[28]。しかし、藤井は永瀬に1敗したのみの6勝1敗でこの企画を終えた[29]

特に4月23日放送(収録日は2月18日[29])の羽生戦での勝利は、非公式戦にもかかわらず、主催社(AbemaTV)以外のマスコミで広く報道された[29][30][31][32]。藤井と同じく中学生棋士としてプロ入りした羽生は、AbemaTVの取材に対し、デビュー当時の自分と比べても藤井の将棋は完成度が高く、今後の成長に大いに期待できるとコメントした[33]

11月21日、中学生棋士の中での通算50勝[注釈 6]の史上最年少記録を更新した(15歳4か月)[35][注釈 7]

2018年2月1日、第76期順位戦C級2組の9回戦で梶浦宏孝に勝ち、成績を単独1位の9勝0敗として、最終戦(10回戦)を待たずにC級2組1位を確定させ[36]、C級1組への昇級 [注釈 8]を決め、同日付で五段に昇段した[36][37]。さらに同年3月15日の10回戦で三枚堂達也に勝ち、10戦全勝での昇級を果たした[38]。C級2組を初参加で全勝したのは藤井が6人目であり、中学生では初[38]。中学生での五段昇段・C級1組昇級は、いずれも藤井が史上初[37][注釈 9]

第11回朝日杯将棋オープン戦では一次予選・二次予選を勝ち上がって本戦に出場し、2018年1月14日の準々決勝で佐藤天彦名人に勝った[39] [注釈 10]。2月17日午前の準決勝で羽生善治竜王に勝ち、同日午後の決勝戦で広瀬章人(A級在位中)を破って優勝した[40]。藤井は「五段昇段後全棋士参加棋戦優勝」の昇段規定により、同日付で六段に昇段した[41]。藤井は、一般棋戦優勝[40]・全棋士参加棋戦優勝[42]・六段昇段[40]の、3つの最年少記録を更新した(15歳6か月)[注釈 11]。藤井が五段であったのはわずか16日間であり[43]、藤井の昇段の速度に日本将棋連盟機関誌将棋世界』の編集が追い付かないほどであった[44]。中学生での六段昇段・一般棋戦優勝は、いずれも藤井が史上初[43]

2月26日、愛知県は、藤井の最年少棋士記録更新・最多連勝記録更新・最年少棋戦優勝記録更新などの業績に対し、愛知県特別表彰を行うことを発表した[45]。同年3月23日、愛知県瀬戸市は、藤井の最年少棋士記録更新・最多連勝記録更新・最年少棋戦優勝記録更新などの業績に対し、瀬戸市民栄誉賞を贈ることを発表した[46]。瀬戸市民栄誉賞は新設されたもので、藤井は受賞第一号となる[46]

4月2日に発表された第45回将棋大賞(2017年度)では、特別賞・新人賞・最多対局賞(73対局)・最多勝利賞(61勝)・勝率1位賞(.836)・連勝賞(29連勝)・名局賞特別賞(第11回朝日杯将棋オープン戦本戦決勝、対 広瀬章人)を受賞した[47]。将棋大賞選考委員会では羽生と藤井のどちらに最優秀棋士賞を授与するかで意見が分かれた[48]。投票結果は羽生が9票、藤井が4票となり、最優秀棋士賞は羽生が受賞し、特別賞(最優秀棋士賞と同等[49])を藤井が受賞した[50]。連盟で確認できた1967年(昭和42年)度以降では[51]、記録4部門を独占したのは内藤國雄(1969年度)、羽生(1988・89・92・2000年度)に次いで3人目[52]

2018年度

5月18日第31期竜王戦5組ランキング戦準決勝で船江恒平を破り、4組への昇級を決めると共に、「竜王ランキング戦連続昇級」の昇段規定により、同日付で七段に昇段し、七段昇段の最年少記録を更新した(15歳9か月)[53][54][注釈 12]。1年間に3回昇段したのは、現行制度では藤井が唯一の事例[56]

7月31日、第77期順位戦C級1組の対局により、通算100局の最年少記録を更新した(16歳0か月)[57][注釈 13]。藤井のこの時点での勝敗数(85勝15敗)と勝率(0.850)は、中原誠十六世名人と並ぶ歴代1位タイ記録[57]

第1回AbemaTVトーナメント(非公式戦)の決勝3番勝負(9月9日AbemaTV 将棋チャンネルで配信)で佐々木勇気を2勝1敗で下し、優勝した[58]

10月17日、第49期新人王戦決勝三番勝負第2局で出口若武三段[注釈 14]に勝ち、通算成績を2勝0敗として優勝した[61][注釈 15][注釈 16]

12月12日、第27期銀河戦阿部健治郎に勝ち、永世称号獲得者・中学生棋士の中での通算100勝の最年少記録を、歴代最速・歴代最高勝率で更新した(16歳4か月)[63][64][注釈 17][注釈 18][注釈 19]

第12回朝日杯将棋オープン戦では、前年度優勝のため本戦シードで出場し[65]2019年2月16日午前の準決勝で行方尚史に勝ち、同日午後の決勝戦で渡辺明棋王を破って優勝し、2連覇を達成[66]。一般棋戦連覇の最年少記録を更新した(16歳6か月)[67][注釈 20]

第77期順位戦C級1組では、2019年2月5日の対局で近藤誠也に敗れ[68]、3月5日の最終戦を8勝1敗で迎えた[69]。このとき、8勝1敗が4名おり、藤井は4名の中で順位が最も下であるため、B級2組への昇級に関しては不利な立場 (藤井が勝利し、他の3名のうち2名が敗れると昇級)にあった[69]。藤井は都成竜馬に勝利して最終成績を9勝1敗としたが、他の3名(近藤誠也・杉本昌隆船江恒平)も全て勝利して9勝1敗の成績で並んだため、藤井は順位の差で昇級を逃した[69]。藤井は師匠の杉本と同時にB級2組への昇級を果たす可能性があり、実現すれば32年ぶりの「師匠と弟子の順位戦同組への同時昇級」となるため社会の注目を集めたが、杉本のみの昇級に終わった[70]

藤井の2018年の獲得賞金・対局料ランキングは12位(2031万円[71])であり、2019年度の第40回将棋日本シリーズ・JTプロ公式戦への出場権を初めて獲得した[72][注釈 21]

4月1日に発表された第46回将棋大賞(2018年度)では、勝率1位賞・升田幸三賞を受賞した[74]。勝率1位賞(.849)は、歴代1位の中原誠(.855、1967年度)・同2位の中村太地(.851、2011年度)に次ぐ歴代3位の記録[75]。2年連続での勝率8割超は中原と藤井の2名のみ[76]。升田幸三賞は、2018年6月5日の第31期竜王戦5組ランキング戦(対・石田直裕)の終盤に指して「AIを超えた『神の一手』」と評された「△7七同飛成」に対するもの[77]

2019年度

4月24日、第32期竜王戦4組ランキング戦準決勝で高見泰地叡王に勝利して3組への昇級が確定し、プロデビュー後の初参加(第30期)からの3期連続昇級を達成した[78]。続く5月31日の4組ランキング戦決勝で菅井竜也に勝ち、4組優勝[79]。竜王戦ランキング戦における3期連続優勝を果たしたのは、木村一基永瀬拓矢に続く3人目であり、プロデビュー後の初参加からの達成は史上初[79]

第2回AbemaTVトーナメント(非公式戦)の決勝3番勝負(7月21日にAbemaTV 将棋チャンネルで配信)で糸谷哲郎を2勝1敗で下し、2連覇を達成した[80][81]

第69期王将戦では初の挑戦者決定リーグ入りを果たし[82]、11月19日の最終局一斉対局を4勝1敗で迎え[83]、同じく4勝1敗の広瀬章人竜王と、勝った方がタイトル挑戦となる直接対決をした[83]。藤井はこの対局に敗れ、タイトル初挑戦、ならびにタイトル挑戦最年少記録の更新を逸した[84][85][注釈 22]

第78期順位戦C級1組では、開幕から8連勝して迎えた2020年2月4日の9回戦で高野秀行に勝利して成績を9勝0敗とし、最終局の10回戦を待たずに上位2名の昇級枠に入ることが確定し、B級2組への昇級を決めた[86]

藤井の2019年の獲得賞金・対局料ランキングは9位(2108万円)であった[71]

3月24日に行われた第61期王位戦挑戦者決定リーグ白組で稲葉陽に勝ち、史上初の3年連続勝率8割以上を達成した[87][注釈 23]。同時に年度最多勝を確定させ[87]、3年連続の勝率1位も確定させた[88]

4月1日に発表された第47回将棋大賞(2019年度)では、最多勝利賞・勝率1位賞・名局賞特別賞を受賞した[89]。名局賞特別賞は、第69期王将戦挑戦者決定リーグ・対 広瀬章人戦に対するもの[89]

2020年度

4月3日、第33期竜王戦3組ランキング戦準決勝で千田翔太を破り、2組昇級を確定させた[90]。続く6月20日の3組ランキング戦決勝で師匠の杉本昌隆に勝ち、3組優勝[91]。史上初の竜王戦ランキング戦で4期連続優勝を達成した[91]

新型コロナウイルスの影響により対局が延期となっていた第91期棋聖戦では、6月4日の挑戦者決定戦で永瀬拓矢二冠に勝利。6月8日に第1局が行われたため、タイトル挑戦最年少記録を更新した(17歳10か月20日)[92][注釈 24]

第61期王位戦では、6月23日の挑戦者決定戦で永瀬拓矢二冠に勝ち、二度目のタイトル挑戦を決めた[94]

6月28日、棋聖戦第2局で、渡辺明棋聖に勝利し、2連勝とし、タイトル獲得に王手とした藤井聡太七段が渡辺明棋聖を破り2勝0敗、初タイトル獲得まであと1勝 第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局”. 2020年7月4日閲覧。

7月2日、王位戦第1局で、木村一基王位に勝利した神童・藤井聡太七段(17)パーフェクトゲームで王位戦第1局勝利 木村一基王位(47)の粘りを押し切る”. 2020年7月4日閲覧。

棋風

居飛車党[95]。得意戦法は角換わりで、角の使い方が独特である[96]

渡辺弥生は、藤井の将棋については終盤力が注目されているが、と前置きした上で、「これまでの将棋を見ると、手厚く指して中盤で優位を築き、最後は相手の攻めをきっちり一手余して勝つパターンが多い。」また「藤井は、双方攻めたり受けたりの接戦を、わかりやすい一手勝ちの局面に持っていくのが実にうまい。」と評した[97]

羽生善治は、2017年1月4日、藤井の29連勝が話題になる前、谷川浩司とのトークショーで「元々名をはせたのは詰将棋だが、順調に成長している。最短コースで寄せ切る(詰ませる)のは谷川先生の“光速の寄せ”に似ている。」と評した[98]。また、藤井の29連勝が注目を浴びていた2017年6月15日にも、羽生は、藤井の将棋は「光速の寄せ」を思わせるとコメントした[99]

増田康宏は、藤井の序盤力について、「研究してるからではなく、その場で考えてうまく指しているので、それはなかなかマネできないですね。」と語った[100]

2019年2月16日の第12回朝日杯将棋オープン戦決勝で藤井と初対局し[101]、敗れた渡辺明は、「読みが深く、序盤の理解も優れており、(現時点では)弱点を見つけることができない」という趣旨を、対局直後に自らのブログで述べた[102]。渡辺はさらに「藤井の棋風は谷川に似た終盤型であり、序盤型の棋士が増えている現状を考えると、藤井のような終盤型の棋士は貴重になっていくかもしれない」という趣旨を、インタビューで述べた[103]

詰将棋

藤井は詰将棋でも早くから頭角を現し、多数のプロ棋士や奨励会員を含む参加者が、若いプロ棋士でも見た瞬間に解くのが嫌になるような難問に挑む[104]詰将棋解答選手権チャンピオン戦には2011年の第8回大会(大阪会場)[注釈 25]に8歳で初参加し、23人中13位の成績を残した[105]。5回目の出場となった2015年の第12回大会では、10問全てを正解して史上初の小学生による優勝を達成した[106]

森下卓深浦康市、津江章二(共同通信社観戦記者)は、この報に接した時の衝撃を次のように語っている[104]

6年生で詰将棋選手権優勝は……とても現実とは思えないですね。(森下)
僕はその話を聞いた時、心臓が止まるかと思いましたから。(津江)
それぐらいのことですよね。(深浦) — [104]

その後、2019年の第16回大会まで5連覇を続けている[107]。5連覇は歴代1位[107]。優勝回数5回は宮田敦史の6回に次ぐ歴代2位[107]。2017年7月16日、全日本詰将棋連盟は歴代1位タイ記録(当時)となる3連覇を果たした藤井と宮田敦史の両名に門脇芳雄賞[注釈 26]を贈った[108]

藤井は詰将棋作家としても評価されている[6]。2012年に、将棋世界詰将棋サロンに投稿して2回目の入選作となった作品が谷川賞を受賞した[109][110]大崎善生作家、『将棋世界』元・編集長)は「わずか9歳での受賞というのにも驚く。奇跡としかいいようがない。」と語った[110]

2013年には『詰将棋パラダイス』での初入選作(2013年8月号短大)が看寿賞の候補作となった[110][注釈 27]。詰将棋作家として著名な浦野真彦は、当時小学6年生の藤井を「信頼している詰将棋作家の作品はできる限り解くようにしている。藤井聡太くんもその一人。彼は作家としても一流。」と評した[111]

奨励会員時代に谷川浩司(当時は日本将棋連盟会長、詰将棋作家として著名)から、藤井の師匠の杉本を通じて「詰将棋創作は控えた方が良い」と助言があり、杉本の判断で2014年頃から詰将棋創作を封印して奨励会に集中したという(藤井が奨励会二段であった、2015年4月の報道による)[6]。詰将棋作家として著名な伊藤果は、詰将棋作家としての藤井を高く評価しているが、「タイトルを獲るくらいまで、詰将棋創作は控えた方が良い」という旨を、藤井の師匠の杉本に話したと述べている[112]。2017年、藤井は「対局で多忙なので、詰将棋の創作は控えている」という旨を、観戦記者の保坂勝吾に述べた[113]

人物

エピソード

憧れの棋士であった谷川浩司に、2010年の将棋の日イベントで、二枚落ちで指導対局を受けた[127]。谷川の入玉模様となり、谷川の勝勢となったため、谷川は引き分けを提案した[127]。すると藤井は猛烈に泣き始めて将棋盤から離れなくなってしまい、ちょうど居合わせた棋士の杉本昌隆(後に藤井の師匠となる)が取り成しても効果がなく、母親が飛んできてようやく収まった[127]。8年後の2018年、既にプロ七段になっていた藤井は、この時の心境について「子ども心にまだ勝てるチャンスがあると思っていたのか、泣きだしてしまった。悔しいという気持ちをうまくコントロールできなかった。」と語っている[128]。2019年9月1日、王将戦2次予選決勝で谷川とプロになってから初めて対局し、57手で勝利した[129]

2018年6月29日、インターネットテレビで中継されていた[130]、第31期竜王戦増田康宏との対局(決勝トーナメント2回戦[131])で、藤井の終盤での指し手が、反則負けとなる「待った」のように見えるとインターネット上で指摘された[132]。なお、対局相手の増田からの指摘はなく、そのまま対局が進行して増田が勝利した[132]。また、対局当日である6月29日付の本局についての報道には[131]、反則を疑われる指し手があったという言及はない。7月2日、日本将棋連盟は、(1)連盟の常務理事などが対局の映像を確認して「藤井の指し手は『待った』にあたらない。対局マナーの問題」と判定したこと、(2)師匠の杉本昌隆が対局マナーについて藤井に注意すること、の2点を発表した[132]

キュボロ
モンテッソーリの木製教具

藤井が3歳の頃に良く遊んだというキュボロ[133][134]、藤井が将棋を覚えるのに使った「NEWスタディ将棋」(くもん出版[134]、藤井が幼稚園で受けたイタリアで発祥の「モンテッソーリ教育」が[135]、2017年度の藤井の活躍により脚光を浴びた。

藤井は名古屋大学教育学部附属中学校2年で棋士となったが[9]義務教育最後の年度である2017年度の活躍により藤井の日程は過密となった[136]。藤井は高校に進学するか否かを悩み、社会も藤井の決断に注目した[137]。2017年10月25日、藤井が名古屋大学教育学部附属高等学校への内部進学を決断したことが日本将棋連盟から発表された[138]

2018年のバレンタインデーに先立ち、日本将棋連盟関西本部は、当日に対局する藤井へのチョコレートの手渡しを謝絶し、事前に関西将棋会館まで送付するよう公式Twitterを通じてファンに要請し[139][140]、藤井宛に大量のチョコが届いた[141]。「棋士宛のチョコは連盟に送付すればよい」と周知されたことで、他の棋士にもファンからチョコが届く結果となり、渡辺明段ボール箱1つ分のチョコを連盟経由で受け取った[142]

昇段履歴

主な成績

タイトル・永世称号

タイトル戦登場

  • 棋聖 1回(2020年度 = 第91期)
  • 王位 1回(2020年度 = 第61期)
登場回数2回

一般棋戦優勝

非公式戦優勝

在籍クラス

竜王戦と順位戦のクラスは、将棋棋士の在籍クラスを参照。

将棋大賞

※ 最優秀棋士賞、それと同等の賞は太字。

  • 第45回(2017年度)特別賞・新人賞・最多対局賞(73局)・最多勝利賞(61勝)・勝率1位賞(.836)・連勝賞(29連勝)・名局賞特別賞
  • 第46回(2018年度)勝率1位賞(.849)・升田幸三賞[145]
  • 第47回(2019年度)最多勝利賞(53勝)・勝率1位賞(.815)・名局賞特別賞[89]

記録

最年少記録

  • 四段昇段(プロ入り) - 14歳2か月[9]
  • 初勝利 - 14歳5か月[18]
  • 中学生棋士の中での通算50勝 - 15歳4か月[35]
  • 一般棋戦優勝 - 15歳6か月[40]
  • 全棋士参加棋戦優勝 - 15歳6か月[42]
  • 六段昇段 - 15歳6か月[41][40]
  • 七段昇段 - 15歳9か月[53][54]
  • 通算100局 - 16歳0か月[57]
  • 永世称号獲得者・中学生棋士の中での通算100勝 - 16歳4か月[63][64]
  • 一般棋戦連覇 - 16歳6か月[67]
  • タイトル挑戦 - 17歳10か月20日[92]

その他記録

  • 最多連勝 - 29連勝[146][147][148]
  • 勝率8割以上 - 3年連続(史上初)[87][88]
  • 竜王戦ランキング戦優勝 - 4期連続(史上初)[91]
日付 棋戦
対局相手[注釈 29]

(公式戦対戦数)
藤井の
手番・手数・勝敗
備考
四段昇段 2016年10月01日 - - -



初勝利
2016年12月24日 第30期竜王戦 6組1回戦 加藤一二三 九段 △後手 110手 勝ち
2連勝
2017年01月26日 第43期棋王戦 予選2回戦 豊川孝弘 七段 ▲先手 085手 勝ち
3連勝
2017年02月09日 第30期竜王戦 6組2回戦 浦野真彦 八段 △後手 048手 勝ち
4連勝
2017年02月23日 第67回NHK杯 予選1回戦 浦野真彦 八段(2度目) ▲先手 087手 勝ち
5連勝
2017年02月23日 第67回NHK杯 予選2回戦 北浜健介 八段 ▲先手 127手 勝ち
6連勝
2017年02月23日 第67回NHK杯 予選決勝 竹内雄悟 四段 ▲先手 111手 勝ち
7連勝
2017年03月01日 第67期王将戦 1次予選1回戦 有森浩三 七段 △後手 072手 勝ち
8連勝
2017年03月10日 第48期新人王戦 2回戦 大橋貴洸 四段 △後手 144手 勝ち
9連勝
2017年03月16日 第30期竜王戦 6組3回戦 所司和晴 七段 ▲先手 107手 勝ち
10連勝
2017年03月23日 第43期棋王戦 予選3回戦 大橋貴洸 四段(2度目) ▲先手 127手 勝ち
11連勝
2017年04月04日 第67期王将戦 1次予選2回戦 小林裕士 七段 △後手 104手 勝ち プロデビューからの連勝記録を更新[注釈 30]
12連勝
2017年04月13日 第30期竜王戦 6組4回戦 星野良生 四段 ▲先手 127手 勝ち
13連勝
2017年04月17日 第67回NHK杯 1回戦 千田翔太 六段 △後手 090手 勝ち 2017年5月14日放送(NHK Eテレ)。
14連勝
2017年04月26日 第43期棋王戦 予選4回戦 平藤眞吾 七段 △後手 140手 勝ち
15連勝
2017年05月01日 第30期竜王戦 6組準決勝 金井恒太 六段 △後手 090手 勝ち
16連勝
2017年05月04日 第48期新人王戦 3回戦 横山大樹 アマ[注釈 31] △後手 100手 勝ち
17連勝
2017年05月12日 第67期王将戦 1次予選3回戦 西川和宏 六段 △後手 084手 勝ち
18連勝
2017年05月18日 第7期加古川青流戦 2回戦 竹内雄悟 四段(2度目) △後手 120手 勝ち
19連勝
2017年05月25日 第30期竜王戦 6組決勝 近藤誠也 五段 △後手 102手 勝ち
-
2017年06月02日 第43期棋王戦 予選決勝(千日手局) 澤田真吾 六段 △後手 061手 千日手
20連勝
2017年06月02日 第43期棋王戦 予選決勝(指直し局) ▲先手 155手 勝ち 千日手[注釈 32]による指し直し局。
21連勝
2017年06月07日 第2回上州YAMADAチャレンジ杯 1回戦 都成竜馬 四段 ▲先手 093手 勝ち
22連勝
2017年06月07日 第2回上州YAMADAチャレンジ杯 2回戦 阪口悟 五段 ▲先手 139手 勝ち
23連勝
2017年06月07日 第2回上州YAMADAチャレンジ杯 3回戦 宮本広志 五段 ▲先手 141手 勝ち 連勝記録3位[注釈 33]
24連勝
2017年06月10日 第3期叡王戦 予選1回戦 梶浦宏孝 四段 △後手 108手 勝ち
25連勝
2017年06月10日 第3期叡王戦 予選2回戦 都成竜馬 四段(2度目) △後手 108手 勝ち 連勝記録2位[注釈 34]
26連勝
2017年06月15日 第76期順位戦 C級2組1回戦 瀬川晶司 五段 △後手 108手 勝ち
27連勝
2017年06月17日 第11回朝日杯将棋 オープン戦 1次予選 藤岡隼太 アマ[注釈 35] △後手 106手 勝ち
28連勝
2017年06月21日 第67期王将戦 1次予選4回戦 澤田真吾 六段(2度目) ▲先手 099手 勝ち 連勝記録1位に並ぶ[注釈 36]
29連勝
2017年06月26日 第30期竜王戦 決勝トーナメント1回戦 増田康宏 四段 ▲先手 091手 勝ち 連勝記録を更新。
2017年07月02日 第30期竜王戦 決勝トーナメント2回戦 佐々木勇気 五段 △後手 101手 負け 連勝記録かつプロデビュー以来の連勝記録が29で止まる。

詰将棋の記録・表彰

  • 詰将棋解答選手権チャンピオン戦 5連覇(歴代1位):第12回(2015年) - 第16回(2019年)
  • 第6回門脇芳雄賞(2017年)

その他表彰

出演

テレビ

インターネットテレビ

  • 藤井聡太四段 炎の七番勝負 〜New Generation Story〜(AbemaTV 将棋チャンネル)
    • 第一局(2017年3月12日(日))
    • 第二局(2017年3月19日(日))
    • 第三局(2017年3月26日(日))
    • 第四局(2017年4月02日(日))
    • 第五局(2017年4月09日(日))
    • 第六局(2017年4月16日(日))
    • 第七局(2017年4月23日(日))
  • 第零期獅子王戦(niconico動画)
    • 準決勝(2017年3月26日(日))
    • 決勝(2017年3月26日(日))
  • 若手VSトップ棋士 魂の七番勝負(AbemaTV 将棋チャンネル)
    • 第三局(2017年10月14日(土))

ゲームソフト

脚注

注釈

  1. ^ 多くの棋士は小学生将棋名人戦で活躍した履歴を持つが、藤井は違う[10]。小学校4年生の夏に奨励会に入り、アマチュアの大会に出場できなくなったため[10]
  2. ^ それまでの最年少三段は、佐々木勇気が2008年に記録した13歳8か月[11][12]
  3. ^ 藤井の第59回奨励会三段リーグ戦における最終成績は、13勝5敗・1位[9]
  4. ^ 全員が初参加の第1回三段リーグで四段昇段した、中川大輔先崎学を除く。
  5. ^ それまでの中学生棋士4名(加藤一二三谷川浩司羽生善治渡辺明)のプロデビューからの連勝記録は、羽生善治および渡辺明の6連勝であった[21]
  6. ^ 日本将棋連盟公式サイトに2017年2017年11月22日に掲載された『藤井聡太四段、最年少50勝を達成』では、「藤井聡太四段が11月21日、関西将棋会館で行われた第66期王座戦一次予選で平藤真吾七段に勝ち、史上最年少(15歳4か月)での公式戦通算50勝を達成いたしました。」と記しているが、その次に「中学生棋士の50勝達成時点での最速記録」と記し、中学生棋士5名(加藤一二三・谷川浩司・羽生善治・渡辺明・藤井)の50勝達成状況の一覧表を示しているのみである[34]
  7. ^ 中学生棋士の中での通算50勝のそれまでの最年少記録は、羽生善治が1987年4月に記録した16歳6か月であった[34]
  8. ^ C級2組からC級1組に昇級するのは上位3名[36]
  9. ^ 加藤一二三の保持する最年少五段昇段記録(15歳3か月)の更新はならなかった[37]
  10. ^ 2018年1月14日の第11回朝日杯将棋オープン戦準々決勝で佐藤天彦名人を破った藤井は、最年少で名人に勝利した記録を更新した(15歳5か月)[39]
  11. ^ それまでの記録は以下の通り。(1)一般棋戦最年少優勝記録は、加藤一二三が1955年(昭和30年)に六、五、四段戦優勝で記録した15歳10か月[40]。(2)全棋士参加棋戦最年少優勝記録は、羽生善治が1987年(昭和62年)に天王戦優勝で記録した17歳2か月[42][43]。(3)最年少六段記録は、加藤一二三が1956年(昭和31年)に記録した16歳3か月[40]
  12. ^ 七段昇段のそれまでの最年少記録は、加藤一二三が1957年4月に記録した[55]17歳3か月であった[54]
  13. ^ 通算100局のそれまでの最年少記録は、羽生善治が記録した17歳0か月であった[57]
  14. ^ 出口若武は三段で2018年度の第49期新人王戦で準優勝し[59]、同年度後期の第64回奨励会三段リーグ戦で1位となって2019年4月1日付で四段[60]
  15. ^ 藤井は新人王の最年少記録を更新した(16歳2か月)[61]。新人王のそれまでの最年少記録は、森内俊之が1987年に記録した17歳0か月であった[61]
  16. ^ 藤井は2018年5月に七段に昇段しているため、新人王戦に出場できるのは、第49期が最後であった[62]
  17. ^ 永世称号獲得者・中学生棋士の中での通算100勝のそれまでの最年少記録は、羽生善治が1988年4月に記録した17歳6か月であった[64]
  18. ^ 藤井はプロデビューから2年2か月で通算100勝を達成した。永世称号獲得者・中学生棋士の中での通算100勝のそれまでの最速記録は、羽生善治が1988年4月に記録した2年3か月であった[64]
  19. ^ 藤井は100勝18敗で通算100勝を達成した。永世称号獲得者・中学生棋士の中での通算100勝のそれまでの歴代最高勝率は、中原誠が1968年7月に記録した100勝21敗であった[64]
  20. ^ 一般棋戦連覇のそれまでの最年少記録は、羽生善治が1987年度 - 88年度に天王戦で記録した18歳2か月であった[67]
  21. ^ 将棋日本シリーズ・JTプロ公式戦への出場棋士は計12名で、(1)前年優勝者 (2)2月22日時点のタイトルホルダー (3)前年度賞金ランキング上位者 の順に選出される[73]
  22. ^ タイトル挑戦の最年少記録は、1989年屋敷伸之棋聖戦で記録した17歳10か月[83]
  23. ^ 複数回と2年連続での達成も藤井、羽生善治、中原誠の3名のみである[87]
  24. ^ それまでのタイトル挑戦の最年少記録は、1989年屋敷伸之棋聖戦で記録した17歳10か月24日[93]
  25. ^ 東日本大震災の影響を考慮し、2011年の詰将棋解答選手権チャンピオン戦は、東京と大阪で個別に開催された。
  26. ^ 全日本詰将棋連盟が制定し、詰将棋の普及・発展に貢献された者に贈られる。
  27. ^ 看寿賞は、『詰将棋パラダイス』誌上で候補作と発表されるだけで、大変な名誉である[110]文壇における芥川賞直木賞と同様。
  28. ^ 産経新聞[12]朝日新聞[13]が、いずれも藤井の三段昇段を2015年10月18日付と報じており、かつ、日本将棋連盟公式サイトの2016年3月29日付の記事において「藤井聡太 奨励会三段」と表記されている[143]ことによる。日本将棋連盟の藤井のプロフィールの「2016年4月 - 三段」[144]は三段リーグの参加時期を示している。
  29. ^ 段位は対局当時。
  30. ^ それまでのプロデビューからの連勝記録は、松本佳介近藤正和の10連勝[19]
  31. ^ 横山大樹アマは、第53回(2016年)赤旗名人として出場。第46回(2017年)支部名人、第40期(2017年)朝日アマチュア将棋名人。
  32. ^ 千日手局は指し直しとなり、一局として数えない。
  33. ^ それまでの3位タイ記録(22連勝)保持者は羽生善治塚田泰明山崎隆之の3名[146]
  34. ^ それまでの2位記録(24連勝)保持者は丸山忠久[146]
  35. ^ 藤岡隼太アマは、第73回(2017年)学生名人。
  36. ^ それまでの1位記録(28連勝)保持者は神谷広志[146]

出典

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参考文献

  • 津江章二『藤井聡太 名人をこす少年』日本文芸社、2017年。