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[[西日本旅客鉄道|JR西日本]]や[[東武鉄道]]など、全体の駅数に比べてホームドア設置数が極端に少ない事業者(路線)は、TASCやATOを車両に設置するよりも運転士の技量で停車位置を合わせる方が遥かにコストがかからないため、これらの補助装置無しで使用する場合も多く、その場合、運転士の技量、体調、天候などの環境条件によって停止位置がずれることがあるので可動部の幅がTASCやATOを採用している路線よりもやや広めに設けていることが多い<ref>[http://web.archive.org/web/20110924223444/http://kyoto-np.co.jp/top/article/20110924000050 安全と費用、悩む 地下鉄京都駅、国基準ホームに柵] - [[京都新聞]] 2011年9月24日(2011年9月24日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。この時乗務員はホームドア側と車両ドア側両方をそれぞれ別々に操作して開閉することになる。先述の通りホームドアと車両側が連動している場合は開閉の優先順位があるが、連動していないこの場合は開閉の順序を乗務員が決めることができ(無論ほとんどの事業者では社内規定により開け閉めの順序が決まっているが)、例として[[北新地駅]]などでは、ドアを閉める際もホームドア側を先に閉める方式を採っている。
[[西日本旅客鉄道|JR西日本]]や[[東武鉄道]]など、全体の駅数に比べてホームドア設置数が極端に少ない事業者(路線)は、TASCやATOを車両に設置するよりも運転士の技量で停車位置を合わせる方が遥かにコストがかからないため、これらの補助装置無しで使用する場合も多く、その場合、運転士の技量、体調、天候などの環境条件によって停止位置がずれることがあるので可動部の幅がTASCやATOを採用している路線よりもやや広めに設けていることが多い<ref>[http://web.archive.org/web/20110924223444/http://kyoto-np.co.jp/top/article/20110924000050 安全と費用、悩む 地下鉄京都駅、国基準ホームに柵] - [[京都新聞]] 2011年9月24日(2011年9月24日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。この時乗務員はホームドア側と車両ドア側両方をそれぞれ別々に操作して開閉することになる。先述の通りホームドアと車両側が連動している場合は開閉の優先順位があるが、連動していないこの場合は開閉の順序を乗務員が決めることができ(無論ほとんどの事業者では社内規定により開け閉めの順序が決まっているが)、例として[[北新地駅]]などでは、ドアを閉める際もホームドア側を先に閉める方式を採っている。


近年は、地下鉄などの既存路線で[[ワンマン運転]]を導入する際などにも設置されるようになっている<ref>{{PDFlink|[http://www.mtwa.or.jp/kaiindayori/09_02sapporo.pdf 地下鉄東西線ワンマン運転の開始について]}} - 社団法人 公営交通事業協会</ref>。これは、ATO がワンマン化による乗務員の業務増や安全監視の低下を代替でき、導入費用を負担すれば長期的な人件費削減が期待できるためである。
近年は、地下鉄などの既存路線で[[ワンマン運転]]を導入する際などにも設置されるようになっている<ref>{{PDFlink|[http://www.mtwa.or.jp/kaiindayori/09_02sapporo.pdf 地下鉄東西線ワンマン運転の開始について]}} - 社団法人 公営交通事業協会</ref>。これは、ATO がワンマン化による乗務員の業務増や安全監視の低下を代替でき、導入費用を負担すれば長期的な人件費削減が期待できるためである。
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* [[西日本旅客鉄道]](JR西日本)
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** [[JR東西線]]・[[片町線]](学研都市線)
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*** 2011年[[3月27日]]に[[北新地駅]]でJR西日本の在来線では初めてホームドアが設置された<ref>[http://web.archive.org/web/20100418125413/http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/dassen/20100408-OYO8T00321.htm 安全投資1,000億円 新車両を投入…JR西社長表明] - 読売新聞 2010年4月8日(2010年4月18日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref><ref>[http://www.47news.jp/CN/201005/CN2010052801000878.html 来春、大阪・北新地駅にホーム柵 JR西在来線で初]</ref>。
*** 2011年[[3月27日]]に[[北新地駅]]でJR西日本の在来線では初めてホームドアが設置された<ref>[http://web.archive.org/web/20100418125413/http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/dassen/20100408-OYO8T00321.htm 安全投資1,000億円 新車両を投入…JR西社長表明] - 読売新聞 2010年4月8日(2010年4月18日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref><ref>[http://www.47news.jp/CN/201005/CN2010052801000878.html 来春、大阪・北新地駅にホーム柵 JR西在来線で初]</ref>。
*** 2012年[[3月28日]]に[[大阪天満宮駅]]、2015年度から2016年度にかけて[[京橋駅 (大阪府)|京橋駅]]に設置された(1番のりばは2016年3月、2番のりばは2017年2月設置)<ref>[http://www.westjr.co.jp/press/article/2012/03/page_1552.html 大阪天満宮駅の可動式ホーム柵使用開始について] - JR西日本 プレスリリース 2012年3月5日</ref><ref name=kyobashi,takatsuki,shin-kobe>[http://www.westjr.co.jp/press/article/2016/03/page_8417.html 京橋駅で可動式ホーム柵を使用開始します。高槻駅で昇降式ホーム柵を使用開始します。新神戸駅で新しい可動式ホーム柵を試行開始します。] - JR西日本プレスリリース</ref><ref>[http://www.westjr.co.jp/press/article/2017/02/page_9958.html 京橋駅2番のりばで可動式ホーム柵を使用開始します。] - JR西日本 プレスリリース 2017年2月16日</ref>。
*** 2012年[[3月28日]]に[[大阪天満宮駅]]、2015年度から2016年度にかけて[[京橋駅 (大阪府)|京橋駅]]に設置された(1番のりばは2016年3月、2番のりばは2017年2月設置)<ref>[http://www.westjr.co.jp/press/article/2012/03/page_1552.html 大阪天満宮駅の可動式ホーム柵使用開始について] - JR西日本 プレスリリース 2012年3月5日</ref><ref name=kyobashi,takatsuki,shin-kobe>[http://www.westjr.co.jp/press/article/2016/03/page_8417.html 京橋駅で可動式ホーム柵を使用開始します。高槻駅で昇降式ホーム柵を使用開始します。新神戸駅で新しい可動式ホーム柵を試行開始します。] - JR西日本プレスリリース</ref><ref>[http://www.westjr.co.jp/press/article/2017/02/page_9958.html 京橋駅2番のりばで可動式ホーム柵を使用開始します。] - JR西日本 プレスリリース 2017年2月16日</ref>。
** 東海道本線([[JR神戸線]]・[[JR京都線]])
** 東海道本線([[JR神戸線]]・[[JR京都線]])

2017年9月4日 (月) 13:54時点における版

1961年に完成したサンクトペテルブルク地下鉄2号線勝利公園駅にある世界初のホームドア

ホームドア又はスクリーンドアとは、プラットホームの線路に面する部分に設置される、可動式の開口部を持った仕切りである。

ホームからの転落や列車との接触事故防止などを目的とした安全対策の一つである。なお、「ホームドア」は和製英語であり、英語では Platform screen door またはAutomatic platform gate と呼ばれる。

概要

ホームドアは人・荷物と列車の接触による人身事故を防ぐことができ、安全に列車を運行することができる。また高さが天井まである場合、ホームにおける空調を効率的に行えるほか、列車風や騒音を遮りホームの環境を改善することができる。更に、ホーム端部ギリギリに三脚を構えて撮影するなどの危険な行為をする悪質な鉄道ファンを物理的に排除できるという利点もある。しかし、ホームドアの位置と列車のドアの位置を正確に合わせなければ乗降ができないので、すべての乗り入れ車両のすべてのドア配置(数・大きさなど)を統一し、自動列車運転装置 (ATO) や定位置停止装置 (TASC) などの定位置停止装置を設置して、停車位置制御を行い停車位置の誤差を小さくする必要がある。一般的にホームドアの幅は、車両のドアより1mほど広い。これは車両側の停止精度のズレを考慮してのことであり、また、ホームドアで人や物が挟まれた場合には、それをセンサーで検知して[注 1]、ドアを開かせるシステムが備えられており、乗降の安全を確保している。

ドアは列車の到着に合わせ、係員の操作や車両のドアに連動して自動で開閉する。手順としては、東京地下鉄南北線9000系の場合、列車が停止位置に停止した時にATOの定位置停止地上子(P3地上子とも呼ばれている)から信号を発信して、車両側はそれを車上子を経由して受信したのち、停止位置に停車したことを確認できたら運転席のホームドア表示灯が点灯する。ドアが開く際には、車両側から開指令の信号が車上子から地上子を介してホームドア側に送信され、ホームドアから先に開き、その後、ホームドア側から返信の信号が地上子と車上子を介して車両側に送信され、車両側のドアが開き始める。ドアが閉まる際には、車両側から閉指令の信号が車上子と地上子を介してホームドア側に送信され、車両側のドアが先に閉まり始めてからその後にホームドアが閉まり始める。ホームドアが全閉になった時にホームドア側から返信の信号が地上子と車上子を介して車両側に送信され、ホームドア表示灯を消灯させる仕組みになっており、これにより乗客が車両とホームドアの間に閉じ込められないようにしている[1]

JR西日本ではホームドアから先に閉める
北新地駅

JR西日本東武鉄道など、全体の駅数に比べてホームドア設置数が極端に少ない事業者(路線)は、TASCやATOを車両に設置するよりも運転士の技量で停車位置を合わせる方が遥かにコストがかからないため、これらの補助装置無しで使用する場合も多く、その場合、運転士の技量、体調、天候などの環境条件によって停止位置がずれることがあるので可動部の幅がTASCやATOを採用している路線よりもやや広めに設けていることが多い[2]。この時乗務員はホームドア側と車両ドア側両方をそれぞれ別々に操作して開閉することになる。先述の通りホームドアと車両側が連動している場合は開閉の優先順位があるが、連動していないこの場合は開閉の順序を乗務員が決めることができ(無論ほとんどの事業者では社内規定により開け閉めの順序が決まっているが)、例として北新地駅などでは、ドアを閉める際もホームドア側を先に閉める方式を採っている。

近年は、地下鉄などの既存路線でワンマン運転を導入する際などにも設置されるようになっている[3]。これは、ATO がワンマン化による乗務員の業務増や安全監視の低下を代替でき、導入費用を負担すれば長期的な人件費削減が期待できるためである。

なお、東京地下鉄丸ノ内線中野富士見町駅など一部の駅において、ホームドアと連動してホーム側から可動ステップをせり出し、車両とホームとの隙間を減らす試みも行われている[4](この時、運転席のATCの車内信号は「01」(速度ゼロ)を表示して発車できない状態にする)これは世界初の試みとされる。ただし、可動ステップをせり出す構造自体は1940年代からニューヨーク市地下鉄で実施されている(参考 : Gap filler)。

地下駅で後付けの場合、ホームドア本体は、日中帯に車庫で営業用の車両に積み込み、終電後にその車両で設置駅まで運ぶ方法を取っている。

一方、ホームドアは装置自体や車両限界・安全対策の関係からある程度の設置スペースが必要であるため、ホーム幅が極端に狭い部分がある駅には設置することが構造上不可能である。

多様なホームドアの開発

従来のホームドアでは車両側のドア位置を統一する必要があったが、東京大学では扉の位置や数が異なる車両に対応する可変式ホーム柵の開発がなされており、試作機まで登場している[5]。2011年11月16日には、三菱重工業子会社の三菱重工交通機器エンジニアリングは透明タイプで扉数の異なる車両に対応した透過型マルチドア対応プラットホームドアシステムを開発し、同日から運転を開始すると発表した[6]。このホームドアは透明なため視認性が向上し、複数のタイプのドアを組み合わせることによって2ドア車・3ドア車・4ドア車のいずれにも対応することができる。

その他には、東京大学生産技術研究所と神戸製鋼所とが共同開発した「戸袋移動型ホーム柵 どこでも柵」が、3ドア車又は4ドア車が運行される、西武新宿線新所沢駅下り1番線ホーム後端部に1両分を設置して2013年8月31日から6か月間の実地試験をしていた。これは、ホーム端に設置された2本のレールの上に、個別移動する長さ1.4mの「戸袋」が設置されており、そこに長さ1.1mの「扉」が「戸袋」の両側に収納されている。列車情報装置の車種データを活用して前駅からの車種情報を元に、「戸袋」の移動と「扉」の出入りを開始してホームドアの配列を行い、列車到着後は線路脇のレーザーによる位置検知センサーにより停止位置を確認し、正位置の場合は扉を開き、オーバーランなどで位置が異なる場合は、ホームドアの再配列を行い、その後に扉が開く。ただし、ホームドアの開閉は、今の所は車掌が停止位置を確認した後に、ホームドア側に設置されたボタンにより手動で開閉している。また、今までのホームドアとは違い、設置の際に必要だったATOやTASCなどの定位置停止装置が不要となり、ホームドア設置に掛かるコストの低減が可能となる[7]。JR西日本も同様のホームドアを三菱電機とともに開発していたが[8]、計画の変更により試験設置には至らず、この開発も中止し、その後は自社独自でロープ昇降式のホームドアも開発している[9]

新所沢駅に設置された「戸袋移動型ホーム柵 どこでも柵」

ロープ昇降式ドアは、ホームに柱を10m間隔に設置して、その間に何本かのワイヤロープを1.36mの高さまで張り、列車が接近すると柵から離れるようアナウンスが流れ、列車が停車直前になると電子音が鳴り、3.5秒でそれが上昇する「昇降スクリーン式」[10]を日本信号が開発して、4ドアと6ドアが混在する東急田園都市線つきみ野駅に設置していた[注 2]。また、ホームに柱を列車の扉の付近に設置して、その間に3つの遮断棒を30cm間隔で取付け、列車が到着すると間隔を詰めながら遮断棒がせり上がる「昇降バー式」を高見沢サイバネティックスが開発して、11000系とそれ以外の形式で乗務員室直後の扉の位置が違う相鉄いずみ野線弥生台駅に設置して試験を行い、データを採取する[12]

ただし、これらの新型ホームドアにはフレキシブル性を重視した半面で昇降式はホーム上の密閉度が下がることにより転落防止効果に、可変式はホーム上に可動部分が出現することに伴い利用者の接触危険度が高まることに対してそれぞれ疑問を唱える声も多く、とくに視覚障害者の支援団体などからは導入に反対する意見も出されており、現時点で正式採用されたのはJR西日本高槻駅のみである。

歴史

世界初のホームドアは1961年に完成したソビエト連邦のレニングラード地下鉄(現・ロシアサンクトペテルブルク地下鉄2号線勝利公園駅とされる。 日本の鉄道で初めてホームドア(可動式ホーム柵)が採用されたのは東海道新幹線熱海駅である。同駅は開業当初から通過列車があったものの、土地の問題で待避線が設置できなかったため、列車の通過時は列車風で危険な状態にあった。このため、同駅は列車の到着・発車時以外はホームを締め切りにする措置を採っていたものの、運転本数や利用客の増加によりそれも困難になり、可動式ホーム柵が導入される運びとなった。後に設置された山陽新幹線新神戸駅も同様の経緯をたどっている。

新幹線以外では新交通システム神戸新交通ポートアイランド線が初めての導入路線であり、日本の鉄道で初めてフルスクリーン型ホームドアが採用された。無人運転を採用している新交通システムは、乗客の安全を確保するためにすべての路線で開業時からフルスクリーン型ホームドアを導入している。

新幹線以外の普通鉄道で初めて導入されたのは営団地下鉄南北線(現:東京メトロ南北線)であり、フルスクリーン型ホームドアが採用された。2000年(平成12年)以降は既存路線にもホームドアを設置する動きが見られているが、車体長、ドア数、ドア位置、ドア開口有効幅が異なる車両が同一ホームに停車する駅では導入できないことが普及する上で大きな障壁となっている。

2013年(平成25年)に、この課題を解決するために戸袋移動型ホーム柵や昇降式ホーム柵が開発され、関東地方大手私鉄3駅で実証実験が行われた。

種類

フルスクリーンタイプ

フルスクリーンタイプ(パリメトロ14号線・サン・ラザール駅

天井までを完全にホームを被うことができるタイプであり、狭義のホームドアはこのタイプを指す。フルハイトタイプとも言う。さらに分類して、完全に天井まで覆っている密閉式と、天井との隙間が少し空いている半密閉式がある。ホームを完全に密閉することにより、空調効果の効率化・列車風対策・線路への突き落とし事件や飛び込み自殺に対する抑止効果は大きく、構造上から無謀な行為をする者を排除することもできる。しかし導入にはこれらの種類の中で最も高額である上、既存路線での建設は旅客上屋や躯体強度の問題から困難を要する。そのため日本の各鉄道事業者はこのタイプの導入には極めて消極的である。

このタイプが最初に導入されたのは前述のとおり、サンクトペテルブルク地下鉄2号線勝利公園駅英語版であり、ホームドアとしても世界初である。

日本では新交通システムで導入されるケースにほぼ限られる。通常の鉄道の例では1990年代に新規開業した地下鉄である東京メトロ南北線京都市営地下鉄東西線はこのタイプが採用されたが、1998年に開通した多摩都市モノレール以降では、より安価な可動式ホーム柵に取って代わられ、2000年代以降に新規開業した路線では採用実績がない。一方、韓国では既存路線でもこのタイプを導入する場合が多く、またほとんどは密閉式となっている[18]。その他の国でも、新規路線にはこのタイプを導入することが多い。応用としては、バスターミナルでの排気ガス対策としても採用されている。

2015年現在、日本の鉄道でフルスクリーンタイプのホームドアを稼働している駅は下表の14路線、143駅である。このうち8路線、102駅が新交通システムの駅である。詳細は#設置路線を参照のこと。

可動式ホーム柵

フィンランドの可動式ホーム柵(ヘルシンキ地下鉄ヴオサーリ駅フィンランド語版

高さが腰高以下のホームドアである。ハーフハイトタイプとも言う[19]。フルスクリーンタイプよりは安く導入できることから、建設費を削減したい新規路線や元々ホームドアを設置していなかった既存路線へのワンマン運転化や安全対策により導入される場合も多い。ホームからの転落防止・車両との接触防止には一定の効果があるものの、ホームドアを乗り越えたり手荷物が落下する危険性があるため、飛び込み自殺[20]や線路への突き落とし・手荷物との接触に対する抑止効果は完全ではないが、柵を越えるのにそれなりの身体能力や道具が必要であるため、衝動的な自殺や突き落とし・酔客の転落の防止などには高い効果が見込まれる[注 4]

世界の大半の国ではガラスを多く使用した可動式ホーム柵が多く導入されており、日本のようにガラスの使用部分が少ない・もしくは全くない可動式ホーム柵は世界的に見て少数である。また、世界的に、日本の可動式ホーム柵は高さが若干低めとなっている。バンコク・スカイトレインの一部の駅で設置されている可動式ホーム柵の支柱部分にはデジタルサイネージが設置されており、動画による広告が表示されている。

日本で可動式ホーム柵を本格的に採用したのは1998年に開業した多摩都市モノレールである(それまでは新幹線の新横浜駅・熱海駅・新神戸駅程度しか採用されていなかった)。

昇降式ホーム柵

高槻駅
ホームドアが閉じた状態
開いた状態
鹿洞駅
初の昇降ロープ柵設置駅(現在は置き換え済)

ロープバーなどが昇降するホームドア。ホームドアとしては最も安く導入でき、ドアの位置や車両の長さの異なる車両にも柔軟に対応する[9]。また、メンテナンスの費用も安いので、乗降の少ないに向いている。しかしロープやバーをステップにして乗り越えてしまうことが可能なため、事故の抑止効果は他の方式に比べると高くない。

ロープ式のものは、2004年 - 2005年に韓国のSKD HI-TEC社が開発し[2]、2006年10月に光州都市鉄道1号線鹿洞駅に初めて設置された(2016年にフルスクリーンタイプに置き換え)。2013年には大邱都市鉄道2号線陽駅に2例目が設置された。2017年4月中に湖南線論山駅でこの方式のホームドアが試験設置され、順次拡大予定である[21]

日本では2012年11月、JR西日本がこの方式のホームドアの設置を検討していることを発表した[9]。また、国土交通省により2013年7月頃から同様のロープ式ホームドアを東京急行電鉄田園都市線つきみ野駅に設置し、現地試験を実施することを同年3月5日に発表し[22][23]、10月11日から試験運用を開始した[24]。なお、この試験は2014年9月7日をもって終了しロープ柵も撤去された。その後東急では田園都市線には通常方式のホームドアを主として設置することが発表されている。

引き続き昇降式ホーム柵を検討しているJR西日本では、2013年10月24日にワイヤーの両端にあるポスト自体も伸縮する昇降式ホーム柵の試験機を公開し[25]、12月5日からJRゆめ咲線桜島駅で試験運用を開始した[26][27](同駅では2014年3月までで試験は終了したため既に撤去済み)。前述の桜島駅での試験運用の結果を踏まえた上で、2014年12月より六甲道駅3番のりばにて試験運用が行われていた[28]。ポストそのものが伸縮するホームドアは世界初となる[25]。JR西日本では六甲道駅の設置を継続するとともに高槻駅の改良工事にあわせて2016年3月26日に導入されている[29][30]。小田急でも試験導入される[31]

台湾では、日本の在来線と同じように、同じ線路をドアの位置や車両の長さの異なる通勤電車と優等列車が走っているため(通勤電車は3ドア、対号列車は2ドア)、どの車両にも柔軟に対応できる昇降式ホーム柵が検討されている[32]

また、近鉄大阪阿部野橋駅にも2017年中に試験運転されることになった。扉の位置が違う車両があるため、この昇降式を採用する。

設置路線

ホームドアが設置されている路線の例を以下に挙げる。日本以外の事例については英語版に詳しい。

日本

ATOによる無人運転を行う新交通システムでは開業当初から設置されている。戦前から島秀雄などが設置を主張していた[33]

2000年の交通バリアフリー法施行により、新設の鉄道路線に設置が原則義務付けられた。既存の路線については努力義務とされたが、2001年に起きたJR山手線新大久保駅での転落事故や、2011年1月の山手線目白駅で起きた視覚障害者の転落事故によって、多方面からホームドア設置推進を求める声が上がり、国土交通省が一定数以上の利用者(乗降客)の駅に対してホームドア設置を求める方針[34]の検討を開始した。

2011年2月8日の国土交通省の発表によると、14事業者285駅に新たにホームドアが設置される予定で、既設の駅との合計は783駅になるが、これはバリアフリー新法が設置を求める約2800駅の3割弱である[35]。国は1日10万人以上が利用する駅で優先的に整備することが望ましいとしている[36]。2012年9月現在でも設置駅は536駅で、国土交通省が設置を求める235駅の中では34駅に留まっている[37]。これにはホームの強度が足りず補強や建て替えが必要となるケース・中長距離路線を中心に列車のドアの位置が異なるケース・他社との直通運転を実施している場合で乗り入れる全ての事業者間にて車両の規格を合わせる必要が生じるケース[注 5]・極小ホームで設置スペース不足など、クリアすべき課題が多数残っていることが背景にある。特に補強工事を要する場合、1駅あたり数億円〜十数億円という莫大な費用がかかることもホームドアの設置がなかなか進まない大きな要因となっている。またホームドア設置に伴い規格に合わなくなることから、耐用年数を残していながら他線区への転属[注 6]やさらには廃車[注 7]に追い込まれた車両も出てきている。

また、ホームドア設置に関しては国や地方自治体などが補助金を交付する場合がある。

近年のホームドア設置数の推移は下表のとおりである。ただし、同一事業者の複数路線が連絡する駅[注 8]は、最初に導入された路線の駅のみカウントする。

ホームドア設置数の推移[38][39]
年度 設置数 主な設置路線(全駅に設置) 主な設置路線(一部駅に設置)
2001年(平成13年) 180 舞浜リゾートラインディズニーリゾートライン
2002年(平成14年) 196 東京モノレール羽田空港線
2003年(平成15年) 230 福岡市地下鉄空港線沖縄都市モノレール線
2004年(平成16年) 273 名古屋臨海高速鉄道西名古屋港線福岡市地下鉄七隈線
2005年(平成17年) 306 首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス福岡市地下鉄箱崎線 西武新宿線高田馬場駅[40]
2006年(平成18年) 318[41] 大阪市営地下鉄今里筋線
2007年(平成19年) 394 横浜市営地下鉄ブルーライン日暮里・舎人ライナー
2008年(平成20年) 424 東京メトロ副都心線札幌市営地下鉄東西線
2009年(平成21年) 441 仙台市地下鉄南北線
2010年(平成22年) 484 大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線[42]名古屋市営地下鉄桜通線[43] 山手線恵比寿駅など)[44]JR東西線北新地駅
2011年(平成23年) 519 都営地下鉄大江戸線[45] 東急大井町線大井町駅
2012年(平成24年) 564 札幌市営地下鉄南北線 京王線調布駅など)、小田急小田原線新宿駅
2013年(平成25年) 583[46] 東急東横線中目黒駅など)、東武野田線船橋駅
2014年(平成26年) 615 大阪市営地下鉄千日前線 大阪市営地下鉄御堂筋線天王寺駅など)
2015年(平成27年) 665 名古屋市営地下鉄東山線仙台市地下鉄東西線 東急田園都市線宮前平駅[47]JR京都線高槻駅
2016年(平成28年) 686 札幌市営地下鉄東豊線 京浜東北線赤羽駅

JR

新幹線
東北新幹線でのホームドア設置例(新青森駅)
ホームドアと車両は密接していない

新幹線の駅では、原則として通過線を設け、列車がホームに面する線路を高速で通過しないようにしている。しかし、高速で列車が通過する新幹線の駅で通過線がない場合、主本線にホームが面する駅では必ずホームドアが設置されている。この場合、列車と乗客の距離を確保して風圧による事故を防止するため、ホーム端部から数mほど内側に設置される。ホームドアがない場合、ホームに面した線路を通過する列車は安全のため減速する(例 : 上野大宮など)。品川駅ではホームドアの開口幅を大きくとり、車両ごとにドアの位置が異なっても対応できる設計としている。このため、新幹線は停車位置を高度に制御する必要がなく、ATOやTASCを設置する必要がない[注 9]。なお、ホームドアの開閉操作は駅員が列車の到着前・発車後に実施し、列車側から行うことはできない。なお、上越新幹線では新潟駅ガーラ湯沢駅は通過線はないが始発・終着駅で全列車が停車するため、また、この2駅を除く上越新幹線の全ての駅には通過線があるため、設置されていない。

在来線

JRの在来線では、2010年6月26日にJR東日本山手線恵比寿駅で初めて運用が始まった[50]。以下の設置事例と設置計画がある。

私鉄・第三セクター

北越急行ほくほく線 美佐島駅のホームドア

地下鉄

日本の地下鉄では、2000年代以降に設置が進んでいる。多くの路線で可動式ホーム柵タイプのホームドアが全駅に設置され、ワンマン運転ATOまたはTASCも同時に導入されている(例外は備考の欄に記述)。

地下鉄のホームドア設置状況(新交通システム路線除く)
設置路線 未設置路線 備考
札幌市営地下鉄
札幌市交通局[104]
東西線
南北線
東豊線
仙台市地下鉄
仙台市交通局
南北線
東西線
埼玉高速鉄道 埼玉高速鉄道線 赤羽岩淵駅(東京メトロが管理・施工)はフルスクリーンタイプを使用
東京地下鉄
(東京メトロ)
銀座線(順次設置中)
丸ノ内線本線・方南町支線
千代田線北綾瀬支線
有楽町線[105]
南北線
副都心線
銀座線(大規模工事中の渋谷駅新橋駅1番線を除き2018年度上期までに順次設置)
日比谷線03系東武20000系運用終了→13000系東武70000系に置き換え完了後の2020年度から2022年度に全駅設置予定[106]。18m3・5ドア8両から20m4ドア7両に変更)
東西線(2重引き戸式大開口ホームドアの試験を九段下駅で実施中[107]。2025年度までに全駅に設置予定[108]
千代田線本線(2018年度から2020年度に設置予定)
半蔵門線(2023年度までに全駅設置予定[109]
南北線は目黒駅を除きフルスクリーンタイプ
有楽町線は小竹向原駅-新木場駅間でツーマン運転
都営地下鉄
東京都交通局[110]
三田線
大江戸線
浅草線(2020年までに泉岳寺駅、大門駅に設置予定[111]
新宿線(2019年度までに設置予定[112]
東京都交通局では公式には「ホームゲート」と呼称
三田線白金台駅白金高輪駅はフルスクリーンタイプで東京地下鉄が施工
都営新宿線の新宿駅は京王電鉄が施工[112]
都営三田線の目黒駅は東京急行電鉄が施工
横浜市営地下鉄
横浜市交通局[113]
ブルーライン
グリーンライン
名古屋市営地下鉄
名古屋市交通局[114]
上飯田線
桜通線
東山線
名城線(2020年度に設置予定)
名港線(2020年度に設置予定)
鶴舞線
上飯田線はATO/TASC非設置・ワンマン運転
京都市営地下鉄
京都市交通局
東西線
烏丸線烏丸御池駅四条駅京都駅
烏丸線(烏丸御池駅・四条駅京都駅を除く[115]、全駅設置に向けて新型車両導入計画あり[116]) 東西線はフルスクリーンタイプ
烏丸線はATO/TASC未設置・ツーマン運転
大阪市営地下鉄
大阪市交通局[117]
今里筋線
長堀鶴見緑地線
千日前線
御堂筋線天王寺駅心斎橋駅
御堂筋線(天王寺駅・心斎橋駅を除く)
谷町線東梅田駅に2019年度に設置予定)[118]
四つ橋線
中央線
堺筋線堺筋本町駅に2019年度に設置予定)[118]
御堂筋線はATO/TASC未設置・ツーマン運転
大阪市交通局では公式には「ホーム柵」と呼称
神戸市営地下鉄
神戸市交通局
西神・山手線(三宮駅に2017年度に設置予定、2023年度までに全駅設置を計画[119])
海岸線
福岡市地下鉄
(福岡市交通局)[120]
空港線[注 10]
箱崎線
七隈線

モノレール・案内軌条式鉄道

モノレールや新交通システムでは、安全上の理由からその多くが全駅にホームドアを設置している。一方で、北九州モノレールや新交通システムのレオライナーのように全く設置されていない路線もある。

(各路線とも全駅)

中華人民共和国

上海軌道交通淞虹路駅のホームドア

香港

大韓民国

韓国で設置されているホームドアの大半はフルスクリーンタイプとなっており、可動式ホーム柵はソウル地下鉄2号線江辺駅建大入口駅釜山都市鉄道4号線安平基地簡易乗降場、大邱都市鉄道3号線の全駅に設置されている。

フルスクリーンタイプのものは、ドア上部に列車内に設置されている車内案内表示装置と同等のものが取り付けられており、駅名・方面などの案内を韓国語と英語(駅によってはさらに中国語と日本語)で表示する。

シンガポール

地下区間ではフルスクリーンタイプ、地上区間では可動式ホーム柵を使用している。当初は地下区間の駅のみで設置されていたが、地上区間の駅でもホームドアの設置が進み、2012年3月14日、最後まで残っていたクランジ駅にホームドアが設置され、全駅へのホームドア設置が完了した。

台湾

淡水線と南港線は可動式ホーム柵(南港展覧館駅頂埔駅にはフルスクリーンタイプ)、それ以外はフルスクリーンタイプを使用している。 近年、ホームからの転落事故が多発している台鉄でも、ホームドアの設置が検討されている。

タイ

ロシア

イギリス

スペイン

デンマーク

フランス

フィンランド

ブラジル

効果と安全性

2010年6月からホームドアの設置を開始した東日本旅客鉄道山手線では、ホームドアを設置した23駅での人身事故が、設置前の74件から設置後は0件に大幅に減少した[125]

2005年の開業時よりホームドアを設置している首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス線では、乗客の所持品や体の一部をドアに挟んだまま走行するという事故が、2016年度だけで22件発生している[126]。これは、同路線におけるホームドアのセンサーの検知範囲が狭いという構造上の欠陥が原因とされるが、検知範囲を広げた「三次元センサー」への交換は10億円以上の費用が見込まれるため、解決のめどは立っていない。

2010年までに全駅にホームドアを設置したソウルメトロソウル特別市都市鉄道公社では、設置前は毎年20-30件の自殺事故が発生していたが、全駅設置後は2015年2月までの間に1件までに減少した[127]。一方、両社では、設置後にホームドアの作業員[128][129]や乗客[130][131]が巻き込まれる事故が発生している。

脚注

注釈

  1. ^ ホームドアの戸先にテープスイッチを取り付けて、それにより人や物の衝突を検知する戸先センサー。ホームドアに人や物が衝突した際に、ホームドアを可動させるモーターに負荷がかかる為、それを検知する戸当たり吸込み検知。ホームドアの車両側にセンサーの発光部と受光部を取り付けて、ホームドアが閉まった際に戸先センサー等では検知できない物を検知する戸挟みセンサー。ホームドアの車両側にビーム式のセンサーを取り付けて、車両とホームドアの間に取り残された人を検知する支障物センサーなどがある。
  2. ^ その後、東急田園都市線については「可動式ホーム柵」を設置することになったため、4ドアへの置き換えが完了するまでの暫定措置として、ホームドアの位置を通常よりも内側に設置することになっている[11]
  3. ^ 2016年1月現在では同路線の他に札幌市営地下鉄東西線札幌市営地下鉄南北線仙台市地下鉄南北線東京メトロ丸ノ内線東京メトロ有楽町線都営地下鉄大江戸線横浜市営地下鉄ブルーライン名古屋市営地下鉄桜通線大阪市営地下鉄千日前線大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線福岡市地下鉄空港線福岡市地下鉄箱崎線が既存路線の全線でホームドアが設置され供用中
  4. ^ それでも利用者がホーム柵に寄りかかったり、また線路側に身や手荷物を乗り出したり手などを出したりすることによる接触事故の危険性は残る。東京メトロ副都心線など、このことに関する注意放送の流れる路線がある。
  5. ^ 場合によっては直接自社に乗り入れている事業者のみでなく、乗り入れている事業者に直通運転をしている事業者も規格を合わせなければならなくなる。
  6. ^ 例としては東京メトロ07系電車副都心線開業に伴い東西線へ転出)やJR東西線JR西日本223系6000番台北新地駅のホームドアが4ドア用となったため乗り入れを終了)など。
  7. ^ 例としてはJR東日本サハE230形500番台(再利用可能な部品を供出し解体)、横浜市営地下鉄2000形電車(ホームドア対応の3000R形へ主要機器を提供)など。
  8. ^ 例としては東京メトロ丸ノ内線有楽町線副都心線の乗換駅である池袋駅。東京メトロではすべての路線で可動式ホーム柵を設置している。
  9. ^ そもそも新幹線の運転士は、運転士の中でも優秀な者のみが選抜されており、なおかつ新幹線の場合は停止範囲が在来線よりも厳しく設定されていることが多い。
  10. ^ 2015年3月まで乗り入れていたJR九州103系はATO/TASC未導入・ツーマン運転だったため、ホーム柵の開口部が他の路線に比べて広くとられている。また、103系を運行する際は扉も非連動となり、車掌がホーム柵側のボタンを操作して扉を開閉していた。

出典

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  42. ^ 門真南駅のみ2011年度に設置。
  43. ^ 同年度から2011年度にかけて設置。
  44. ^ 2011年10月まで、6ドア車にあたる7号車と10号車以外に設置された。
  45. ^ 同年度から2013年度にかけて設置。
  46. ^ 同一駅とみなしていた溜池山王駅国会議事堂前駅を別カウントとしたことによる計上を含む。
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関連項目

外部リンク