「乗鞍岳」の版間の差分
m →外部リンク |
m 外部リンクの修正 (ci.nii.ac.jp) (Botによる編集) |
||
(93人の利用者による、間の161版が非表示) | |||
1行目: | 1行目: | ||
{{Otheruses| |
{{Otheruses|長野県と岐阜県の境にある、北アルプス南部の乗鞍岳|その他の乗鞍岳|乗鞍岳 (曖昧さ回避)}} |
||
{{Infobox 山 |
{{Infobox 山 |
||
|名称=乗鞍岳 |
|||
|画像=[[ファイル:Norikura-air.jpg|300px]] |
|||
|画像キャプション = 信州側の[[奈川渡ダム]]上空から |
|||
|標高=3,025.<small>64</small><ref name="kijyun">{{Cite web |url=http://sokuseikagis1.gsi.go.jp/ |title=基準点成果等閲覧サービス |publisher=[[国土地理院]] |accessdate=2011-06-11}}</ref> |
|||
|標高=3,025.<small>73</small><ref name="kijyun">{{Cite web|和書|url=https://sokuseikagis1.gsi.go.jp/top.html |title=基準点成果等閲覧サービス |publisher=[[国土地理院]] |accessdate=2016-09-08}}</ref> |
|||
| 緯度度 = 36 | 緯度分 = 6 | 緯度秒 = 23 |
|||
|所在地=[[長野県]][[松本市]]・[[岐阜県]][[高山市]] |
|||
| 経度度 = 137 |経度分 = 33 | 経度秒 = 13 |
|||
|山系=[[飛騨山脈]] |
|||
|所在地={{JPN}} |
|||
|種類=[[活火山]]ランクC |
|||
{{flatlist|class=hlist-comma| |
|||
|初登頂=1680年代([[円空]]上人) |
|||
; [[長野県]] |
|||
: [[松本市]] |
|||
; [[岐阜県]] |
|||
: [[高山市]] |
|||
}} |
|||
|山系=[[飛騨山脈]] |
|||
|種類=複合火山<ref>[[#乗鞍岳自然観察ガイド|乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、18-19頁]]</ref>([[活火山]]ランクC<ref name="活火山ランク分け">{{Cite web|和書|url=https://www.jma.go.jp/jma/press/0301/21a/yochiren.pdf |title=火山噴火予知連絡会による活火山の選定及び火山活動度による分類(ランク分け)について |publisher=[[気象庁]] |format=PDF |pages=4 |date=2003-01-21 |accessdate=2013-09-04}}</ref>)<br />[[噴火警戒レベル]]1(活火山であることに留意)<ref name="乗鞍岳の噴火警戒レベル">{{Cite web|和書|url=https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/311_Norikuradake/311_index.html |format=PDF |title=乗鞍岳の噴火警戒レベル |publisher=気象庁地震火山部火山監視・情報センター |date=2013-07 |accessdate=2020-09-08}}</ref>・常時観測火山 |
|||
|初登頂=[[1683年]]([[円空]]上人) |
|||
|地図 = {{location map |
|||
|Japan#Japan Nagano Prefecture#Japan Gifu Prefecture |
|||
|lat_deg= 36|lat_min= 6|lat_sec= 23|lat_dir=N |
|||
|lon_deg= 137|lon_min= 33|lon_sec= 13|lon_dir=E |
|||
|width=300 |
|||
|relief=1 |
|||
}} |
|||
}} |
}} |
||
{{mapplot|137.5536|36.1064|乗鞍岳の位置}} |
|||
'''乗鞍岳'''(のりくらだけ)は、[[飛騨山脈]] |
'''乗鞍岳'''(のりくらだけ)は、[[飛騨山脈]]南部の[[長野県]][[松本市]]と[[岐阜県]][[高山市]]にまたがる[[剣ヶ峰]]([[標高]]3,026 [[メートル|m]])を主峰とする山々の総称。山頂部の権現池火口の[[外輪山]]に位置する[[最高峰]]の剣ヶ峰、[[朝日岳 (乗鞍岳)|朝日岳]]などの8峰を含め、[[摩利支天]]岳、[[富士見岳]]など23の峰があり、高山市[[奥飛騨温泉郷]]、高山市[[丹生川村 (岐阜県)|丹生川町]]、高山市[[朝日村 (岐阜県)|朝日町]]、高山市[[高根村 (岐阜県)|高根町]]、[[長野県]][[安曇村|松本市安曇]]にまたがる広大な裾野をもつ。[[飛騨国|飛騨]]側の高山市街地などから大きな山容を望むことができ、親しまれてきた[[山]]である<ref name="垣外富士男 (2002)、186頁">[[#乗鞍・御岳・霧ガ峰|垣外富士男 (2002)、186頁]]</ref><ref name="takayama100">{{Cite web|和書|url=http://www.city.takayama.lg.jp/toshiseibi/100keiichiran.html |title=新高山市100景一覧表 |publisher=高山市 |accessdate=2013-09-11 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20140812140614/http://www.city.takayama.lg.jp/toshiseibi/100keiichiran.html |archivedate=2014-08-12 }}</ref>。剣ヶ峰は、[[本州]]を[[太平洋]]側と[[日本海]]側に分ける[[分水界]]上の最高峰でもある。 |
||
== 概要 == |
== 概要 == |
||
[[File:Norikura Volcano Relief Map, SRTM-1.jpg|thumb|乗鞍火山の火山体地形図]] |
|||
[[中部山岳国立公園]]内の[[岐阜県]]と[[長野県]]にまたがっており、長野県側の麓には[[乗鞍高原]]が広がっている。山名の由来は、古くは「鞍ヶ嶺」と呼ばれ、姿が[[ウマ|馬]]の[[鞍]]に似ている事から名付けられたとされている。[[平安時代]]には「位山」と呼ばれ、[[1645年]]([[正保]]2年)頃の乗鞍岳と呼ばれるようになったとされている(幕府に提出された絵図に山名が記載されている)<ref>『日本二百名山』[[昭文社]]、ISBN 4-398-22001-1、P165</ref>。 |
|||
山体は岐阜県と長野県に跨がる[[活火山]]で[[日本の山一覧 (高さ順)|日本で19番目に高い山]]<ref>[[#山の便利手帳|山の便利手帳 (2010)、330頁]]</ref>。活火山ランクC<ref name="活火山ランク分け" />気象庁による常時観測対象の47火山に含まれる<ref name="volcano47">[https://www.jma.go.jp/jma/kishou/intro/gyomu/index92.html 火山監視・情報センターにおいて火山活動を24時間体制で監視している火山(常時観測火山)] 気象庁</ref>が山頂部に噴気地帯は存在しない<ref name="火山・乗鞍岳">{{Cite web|和書|url=https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/311_Norikuradake/311_index.html |title=火山・乗鞍岳 |publisher=気象庁 |accessdate=2013-09-04}}</ref>。比較的新しい火山であることから穏やかな山容が特徴で、最新の噴火は2000年前の恵比寿岳での噴火とされている。乗鞍岳を含む飛騨山脈の主な山域は1934年(昭和9年)12月4日に[[中部山岳国立公園]]の指定を受け<ref group="注釈">十石岳から剣ヶ峰にかけての高山帯付近の区域はその特別保護地区、[[安房峠]]、[[乗鞍高原]]周辺などの中腹区域はその特別地域、それらの周辺の山域は普通地域の指定を受けている。</ref><ref name="park">{{Cite web|和書|url=https://www.env.go.jp/park/chubu/intro/index.html |title=中部山岳国立公園区域の概要 |publisher=[[環境省]] |accessdate=2013-09-04}}</ref>。長野県側の麓には溶岩流で形成された[[乗鞍高原]]が広がる。1949年に岐阜県道の観光道路で標高2,702 mの畳平まで[[バス (交通機関)|バス]]が運行されるようになると、[[大衆化]]し「雲上銀座」と呼ばれ[[観光地]]として賑わった<ref name="平田謙一 (2000)、139頁">[[#上高地・乗鞍岳を歩く|平田謙一 (2000)、139頁]]</ref>。長野県側からも畳平まで乗鞍エコーラインが開通し山麓には[[スキー場]]が建設され周辺には[[温泉地]]があり、[[四季]]を通じて美しい景観に恵まれ、乗鞍岳の山域は観光地、保養地として発展している<ref name="平田謙一 (2000)、139頁" />。[[日本百名山]]<ref name="深田久弥 (1982)、223-226頁">[[#深田久弥|深田久弥 (1982)、223-226頁]]</ref>、[[新日本百名山]]<ref>[[#新日本百名山|岩崎元郎 (2006)、56-57頁]]</ref>、[[信州百名山]]<ref>[[#信州百名山|清水榮一 (1990)]]</ref>、[[ぎふ百山]]<ref>[[#ぎふ百山|岐阜県山岳連盟 (1987)]]</ref>、[[一等三角点百名山]]<ref>[[#一等三角点百名山|一等三角点研究会 (1988)]]</ref>に選定されている。 |
|||
== 山名の由来と変遷 == |
|||
== 自然 == |
|||
[[ファイル:Mount Norikura from Takayama.jpg|250px|サムネイル|麓の高山市から望む雲の上の峰々が南北に連なる乗鞍岳]]<!-- 麓からの暫定画像 高山市からの乗鞍岳の大きな山容が分かる画像を募集中 --> |
|||
日本の[[火山]]としては[[富士山]]、[[御嶽山 (長野県)|御嶽山]]に次ぐ高さである。火山体のほとんどは古期火山体で、新期の火山体は山頂付近に分布する火山体や山腹に分布する[[溶岩ドーム]]と[[溶岩流]]からなる大規模な[[成層火山]]。裾野が広いのが特徴で、8つの[[平野|平原]]がある。12の[[火山湖]](池)があり、山頂直下西にある権現池は日本有数の高所にある池である。山頂付近の積雪が多く、[[乗鞍スカイライン]]の開通のために長期間の除雪が必要となる。夏でも一部の北東斜面などには、雪渓が残り夏山での[[スキー]]が可能となっている。 |
|||
[[873年]]([[貞観 (日本)|貞観]]15年)の[[日本三代実録]]で、[[飛騨国|飛騨]]の[[国司]]の言葉{{Quotation|大野郡愛宝山に三度紫雲がたなびくの見たとの[[瑞兆]]を[[朝廷 (日本)|朝廷]]に言上した|『日本三代実録』(873年)}}が残されており、「愛宝山(あぼうやま)」と呼ばれその当時から[[霊山]]として崇拝されていた<ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁">[[#新日本山岳誌|日本山岳会 (2005)、967-969頁]]</ref><ref name="深田クラブ (1987)、165頁">[[#日本200名山|深田クラブ (1987)、165頁]]</ref>。[[平安時代]]から[[室町時代]]にかけて古歌で「位山」と呼ばれ、1645年([[正保]]2年)頃に乗鞍岳と呼ばれるようになったとされている<ref group="注釈">[[江戸幕府]]に提出された絵図に乗鞍岳の山名が記載されている。</ref><ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" /><ref name="深田クラブ (1987)、165頁" />。[[1829年]]([[文政]]12年)の『飛州誌』では、「騎鞍ヶ嶽」と記されていた<ref name="平田謙一 (2000)、139頁" />。飛騨側から眺めた山容が[[ウマ|馬]]の[[鞍]]のように見えることから、「鞍ヶ嶺(鞍ヶ峰)」と呼ばれていた<ref name="深田久弥 (1982)、223-226頁" /><ref name="日本の山1000 (1992)、348-349頁">[[#日本の山1000|日本の山1000 (1992)、348-349頁]]</ref>。日本には同じ飛騨山脈に属する[[白馬連峰]]の[[乗鞍岳 (白馬連峰)|乗鞍岳]]をはじめとして[[乗鞍岳 (曖昧さ回避)|同名の乗鞍岳]]が複数あり、「乗鞍」は馬の背に鞍を置いた山容に由来している<ref name="日本山名辞典 (1992)、407頁">[[#日本山名辞典|日本山名辞典 (1992)、407頁]]</ref>。[[信濃国|信州]]では最初に朝日が当たる山であることから「朝日岳」と呼ばれていた<ref group="注釈">[[朝日岳 (乗鞍岳)|朝日岳]]の山名は、山頂八峰の一つとして残されている。</ref><ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" /><ref name="日本三百名山 (1997)、172頁">[[#日本三百名山|日本三百名山 (1997)、172頁]]</ref>。[[最高峰]]の[[剣ヶ峰]]の別称が、「権現岳」<ref group="注釈">乗鞍[[講]]の創始者である重明[[行者]]が命名したとされている。</ref><ref name="日本三百名山 (1997)、172頁" />。魔王岳と摩利支天岳は[[円空]]が命名して[[開山 (仏教)|開山]]したとされている<ref name="日本三百名山 (1997)、172頁" />。1963年(昭和38年)11月に乗鞍[[国民休暇村]](休暇村乗鞍高原)の開設に伴い、番所平と金山平と呼ばれていた周辺一帯が乗鞍高原と呼ばれるようになっていった<ref>[[#乗鞍岳自然観察ガイド|乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、115頁]]</ref>。南北に多数の峰が連なることから「乗鞍連峰」と呼ばれることもある<ref name="垣外富士男 (2002)、186頁" />。 |
|||
== 火山・地勢 == |
|||
[[ファイル:Gongen pond of Mount Norikura.jpg|200px|サムネイル|山頂直下西にある火口湖の権現池]] |
|||
マグマに伴う噴火活動は、9600年前頃と9200年前頃に剣ヶ峰で起こり、火山灰の噴出と溶岩流の流出があった。また、約2000年前には恵比寿岳で発生し、火山灰の噴出と溶岩の流出を起こしている。火山性の地震群発は現在でも観測されている<ref>[http://www.seisvol.kishou.go.jp/tokyo/311_Norikuradake/311_index.html 気象庁 | 乗鞍岳]</ref>。活火山としての活動力を失っているが、湯川([[梓川]]の[[支流]])の最上流部では、[[火山ガス]]が発生している<ref name="jiten">『コンサイス日本山名辞典』[[三省堂]]、ISBN 4-385-15403-1、P407</ref>。周辺の山麓には[[温泉街|温泉地]]が多い。 |
|||
[[火山の一覧 (日本)|日本の火山]]としては[[富士山]]、[[御嶽山]]に次ぐ高さである<ref group="注釈">日本で3,000mを超える火山は、富士山・御嶽山・乗鞍岳だけである。</ref><ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、6-8頁">[[#乗鞍岳自然観察ガイド|乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、6-8頁]]</ref>。乗鞍岳は複数の火山が南北に並ぶ複合火山である。千町火山体(せんちょうかざんたい、128-86万年前に活動した'''古期乗鞍火山''')と烏帽子火山体、四ッ岳火山体、恵比寿火山体、権現池・高天ヶ原火山体(32万年前に活動を開始した'''新期乗鞍火山''')で構成されている<ref name="火山・乗鞍岳" /><ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、6-8頁" /><ref name="高橋正樹 (2000)、35頁">[[#中部・近畿・中国の火山|高橋正樹 (2000)、35頁]]</ref>。古い火山体の千町火山体と烏帽子火山体では、[[浸食]]と[[斜面崩壊|崩壊]]が進んでいる<ref name="高橋正樹 (2000)、35頁" />。新期の火山体は山頂付近に分布する火山体や山腹に分布する[[溶岩ドーム]]と[[溶岩流]]からなる大規模な[[成層火山]]。剣ヶ峰の噴火での直下西に権現池の[[火口湖]]が形成された<ref name="日本の山1000 (1992)、348-349頁" />。約9000年前に現在の乗鞍岳の山容が形成された<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、22-23頁">[[#乗鞍岳自然観察ガイド|乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、22-23頁]]</ref>。 |
|||
山頂部は南北6 [[キロメートル|km]]、山体は北の[[安房峠]]から南の[[野麦峠]]まで南北15 km、東西に30 km、山域の面積は約250 [[平方キロメートル|km<sup>2</sup>]]と裾野が広いのが特徴で<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、6-8頁" />、飛騨山脈の中では最も広い山域を持つ<ref name="日本の山1000 (1992)、348-349頁" />。[[乗鞍高原]]などの8つの[[平野|平原]]がある。[[火山湖]]と[[堰止湖]]の12の池があり、山頂直下西にある権現池は、日本では[[御嶽山]]の二ノ池に次いで2番目の高所にある湖沼。[[梓川]]、[[神通川]]、[[飛騨川]]の源流となる山で、それらの[[分水嶺]]となっている<ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" />。山頂付近の積雪が多く、[[乗鞍スカイライン]]の開通のために長期間の除雪が必要となる。夏でも一部の北東斜面などには雪渓が残り、夏山での[[スキー]]が可能となっている。西山腹の千町火山体の溶岩台地上の千町ヶ原から奥千町にかけては、[[池塘]]が点在する[[高層湿原]]となっている<ref name="平田謙一 (2000)、115-120頁">[[#上高地・乗鞍岳を歩く|平田謙一 (2000)、115-120頁]]</ref>。 |
|||
=== 動植物 === |
|||
[[イワヒバリ]]や[[イワツバメ]]、[[天然記念物]]に指定されている[[ライチョウ]]が生息するほか、[[コイワカガミ]]、[[シャクナゲ|キバナシャクナゲ]]、[[ミヤマキンバイ]]、[[クロユリ]]、[[コマクサ]]、[[イワギキョウ]]、[[ヨツバシオガマ]]などの植物が見られ、高山ならではの自然を堪能する事ができる。[[畳平]]には、[[高山植物]]のお花畑があり、木道の遊歩道が整備されている。 |
|||
雄大な広がりを持つ乗鞍岳はコニーデ型の火山で、新生代の第四紀(洪積世・沖積世)、地球全体で火山活動が極めて活発だった時代に誕生したといわれる。乗鞍岳の表面は火成岩に覆われ、山頂部一帯には爆発の傷跡を残す火口壁や火口湖が点在している。現在は活火山としての活動力は失われているが、湯川の上流で吹き出すガスや山ふところの温泉群は、往時の火山活動の名残をとどめるものである<ref>{{Cite web|和書|title=乗鞍岳の魅力と自然|url=https://yamatabitabi.com/archives/102116/|website=山旅旅|accessdate=2020-10-15|language=ja|last=登山ルート・山旅スポット}}</ref>。 |
|||
=== 活火山 === |
|||
==== 火山史 ==== |
|||
{{underline|古期乗鞍火山}} |
|||
* 128-125万年前 - 千町火山体の乗鞍火山の噴火が始まり、千町北溶岩と黍生溶岩を流出し、黍生[[火砕岩]]を噴出した<ref name="高橋正樹 (2000)、37頁">[[#中部・近畿・中国の火山|高橋正樹 (2000)、37頁]]</ref>。 |
|||
* 92-86万年前 - 千町火山体で活発に活動し、ダナの岩溶岩、神立原溶岩、千町溶岩、朝日滝溶岩、大峰溶岩、県境溶岩を流出した<ref name="高橋正樹 (2000)、37頁" />。この活動で権現池付近を中心にほぼ[[円錐]]形の山容が形成された<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、22-23頁" />。 |
|||
* 50万年ほど火山活動は休止しその間に、大規模な[[山体崩壊]]により千町火山体の北側は崩れ去った<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、22-23頁" />。 |
|||
{{underline|新期乗鞍火山}} |
|||
* 32-12万年前 - 千町火山体の北部の崩壊・浸食された烏帽子火山体で火山活動が始まり、烏帽子溶岩、富士見溶岩、桔梗ヶ原溶岩、摩利支天溶岩、前川溶岩、大黒溶岩を流出した<ref name="高橋正樹 (2000)、37頁" />。12万年に二つの火口を持つ[[成層火山]]が形成された<ref group="注釈">烏帽子火山体は山体崩壊と激しい浸食により、4万年前までにその3分の1が崩れ去った。</ref><ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、22-23頁" />。 |
|||
* 10万年前 - 権現池・高天ヶ原火山体で火山活動が始まりで、濁川溶岩、番所溶岩、ダナ新谷溶岩、平金溶岩、位ヶ原溶岩、嶽谷溶岩、ダナ東谷溶岩を流出し、前川本谷火砕流堆積物が形成され、高天ヶ原火砕岩と屏風岳火砕岩を噴出した<ref name="高橋正樹 (2000)、37頁" />。 |
|||
* 4万3千年前 - 膨大な番所溶岩流により乗鞍高原の原型が形成された<ref name="NorikuraLight">{{Cite web|和書|url=http://www.norikura.gr.jp/uploads/NorikuraLight8P.pdf |title=乗鞍岳と乗鞍高原 |publisher=乗鞍観光協会 |format=PDF |pages=2 |accessdate=2013-09-04 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20140619200912/http://norikura.gr.jp/uploads/NorikuraLight8P.pdf |archivedate=2014-06-19 }}</ref>。 |
|||
* 4万年前 - 浸食された烏帽子火山体上の四ツ岳火山体で火山活動が始まり、四ツ岳溶岩を流出した<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、22-23頁" /><ref name="高橋正樹 (2000)、37頁" />。 |
|||
* 2万年前 - 浸食された烏帽子火山体の上で恵比寿火山体の火山活動が始まり、恵比寿溶岩を流出した<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、22-23頁" />。 |
|||
* 9600年前 - 権現池火口で断続的に[[ブルカノ式噴火]]([[:en:Vulcanian eruption|Vulcanian eruption]])がはじまり、[[火山灰]](剣ヶ峰火山砂)を噴出した<ref name="火山・乗鞍岳" /><ref name="高橋正樹 (2000)、37頁" />。 |
|||
* 9200年前 - 権現池火口の噴火により、位ヶ原[[テフラ]](水蒸気噴火により[[火山灰]]を噴出、位ヶ原火山灰が形成され、その後[[スコリア]]噴火により位ヶ原スコリが形成された。)を放出し、岩井谷溶岩が西側に流出した<ref name="火山・乗鞍岳" /><ref name="高橋正樹 (2000)、37頁" />。 |
|||
* 以後 - 何回かの[[水蒸気爆発]]を起こした<ref name="火山・乗鞍岳" /><ref group="注釈">これらの水蒸気噴火テフラには、九州の[[鬼界カルデラ]]から飛来した[[鬼界アカホヤ火山灰]]が混じっている。</ref><ref>[[#中部・近畿・中国の火山|高橋正樹 (2000)、37-39頁]]</ref>。 |
|||
[[ファイル:Mount Ebisu and Kamega pond.jpg|200px|サムネイル|恵比寿岳直下東にある火口湖の亀ヶ池]] |
|||
<!-- 及川ほか (2018)では、恵比須岳の最新活動は完新世以前(2万年前?)とされている。 |
|||
* 2000年前 - 恵比寿火山体水蒸気爆発噴火後、恵比寿岳第1テフラが形成され、その後の穏やかな噴煙活動噴火により恵比寿岳第2テフラが形成されたが、併せて発生した激しいブルカノ式噴火により恵比寿岳第3テフラを形成する<ref>[[#中部・近畿・中国の火山|高橋正樹 (2000)、39頁]]</ref>。--> |
|||
* 約500年前 - 権現池火口で水蒸気爆発。(確認される最新噴火イベント)<ref>{{cite journal |author=及川 輝樹 ほか |date=2018 |url=https://confit.atlas.jp/guide/event/jpgu2018/subject/SVC43-11/detail?lang=ja |title=乗鞍火山、完新世の噴火史 |journal=地球惑星科学連合大会要旨 |accessdate=2020-11-24}}</ref> |
|||
{{underline|有史以降}} |
|||
* 1990年(平成2年)1月24日 - 南南西約10 kmで[[マグニチュード|M]]4.2の[[群発地震]]が発生<ref name="火山・乗鞍岳" />。 |
|||
* 1991年(平成3年)1月23日 - M4.2の地震が発生、前年から地震が、1992年末まで減少しつつ継続した<ref name="火山・乗鞍岳" />。 |
|||
* 1995年(平成7年)8月 - 南西約2 kmで地震が多発した<ref name="火山・乗鞍岳" />。 |
|||
* 2011年(平成23年)3月13日20時23分 - M3.1([[震度]]2)の地震が発生、[[東北地方太平洋沖地震]]以降に北麓2-8 km付近で地震が活発化している<ref name="火山・乗鞍岳" />。 |
|||
==== 現在の状況 ==== |
|||
100年活動指数と1万年活動指数がともに低い火山であることから、「[[活火山]]ランクC」の指定を受けている<ref name="活火山ランク分け" />。2009年(平成21年)6月に[[火山噴火予知連絡会]]により、山体浅い部に地震活動が認められていることから、過去100年以内に火山活動の高まりが認められている火山として、火山防災のために監視・観測体制等の必要がある火山の一つの指定を受けている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/kaisetsu/CCPVE/hyoka/hyoka_houkoku.pdf |title=中長期的な噴火の可能性評価について -監視・観測体制の充実等の必要な火山の選定- |publisher=火山噴火予知連絡会、火山活動評価検討会 |format=PDF |pages=8 |date=2009-06 |accessdate=2016-11-16 }}</ref>。火山性の地震群発は現在でも観測されている<ref name="乗鞍岳の火山活動解説資料">{{Cite web|和書|url=https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/monthly_v-act_doc/tokyo/13m07/311_13m07.pdf |format=PDF |title=乗鞍岳の火山活動解説資料(平成25年7月) |publisher=気象庁地震火山部火山監視・情報センター |date=2013-07 |accessdate=2013-09-04}}</ref>。活火山としての活動力を失っていて山頂部に噴気地帯はないが、湯川([[梓川]]の[[支流]])の最上流部では[[火山ガス]]が発生している<ref name="日本山名辞典 (1992)、407頁" />。周辺では気象庁、[[国土地理院]]、[[防災科学技術研究所]]、[[名古屋大学]]により[[地震計]]、[[傾斜計]]、空振計、[[グローバル・ポジショニング・システム|GPS]]、遠望[[カメラ]]が設置され火山活動の監視と観測が行われている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/311_Norikuradake/311_Obs_points.html |title=乗鞍岳 観測点配置 |publisher=気象庁 |accessdate=2013-09-04}}</ref>。気象庁は2007年(平成19年)12月1日に噴火予報で「平常」を発表しており、「[[噴火警戒レベル]]対象外火山」であり、2013年7月度の気象庁火山部火山監視・情報センターの月例報告で、「火山活動に特段の変化はなく、静穏に経過し噴火の兆候は認められない」と発表している<ref name="乗鞍岳の火山活動解説資料" />。しかし、1000年以上噴火しておらず、そろそろ噴火をしても良い時期と考える火山学者もいる<ref>[https://hdl.handle.net/2237/13245 守屋以智雄(1994):火山層序学的調査に基く噴火の長期予測] 名古屋大学加速器質量分析計業績報告書. v.5, 1994, p.121-133</ref>。2014年の木曽御嶽山噴火災害をうけて、[[ハザードマップ]]が作成されていない状態の解消を目指し、乗鞍防災協議会設置のための火山対策検討会議が行われた<ref>{{Cite news |url=http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20141114/201411140915_23712.shtml |title=乗鞍防災協議会設置へ 県が火山対策検討会議 |newspaper=岐阜新聞 |date=2014-11-14 |accessdate=2015-02-14 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20150214082125/http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20141114/201411140915_23712.shtml |archivedate=2015-02-14 }}</ref>。 |
|||
=== 乗鞍岳の峰々 === |
|||
[[ファイル:Norikuradake from Kuraiyama 2005-3-21 add.jpg|200px|サムネイル|飛騨側の[[位山]]から望む乗鞍岳の主な峰々]] |
|||
[[ファイル:Mount Norikura Kengamine.jpg|200px|サムネイル|山頂部には権現池を[[火口湖]]とする[[カルデラ]]があり、水分岳、朝日岳、蚕玉岳(こだまだけ)、雪山岳、剣ヶ峰(最高峰、標高3,026 m)、大日岳、薬師岳、屏風岳の8峰から構成される(権現池・高天ヶ原火山体)。]] |
|||
山頂部には北から順番に以下の峰が連なり、乗鞍23峰と呼ばれている。その他の峰として、'''高天ヶ原'''(たかまがはら、2,829 m)と'''金山岩'''(かなやまいわ、2,532 m)がある。最高峰の剣ヶ峰には一等[[三角点]]が設置されている<ref name="kijyun" />。多くの峰は登山規制が行われていて、立ち入りが禁止されている<ref name="伊部高夫 (2006)、33-35頁">[[#長野県中信・南信日帰りの山|伊部高夫 (2006)、33-35頁]]</ref>。 |
|||
{| class="wikitable" |
{| class="wikitable" |
||
!山名 |
|||
!よみ |
|||
!標高<br />(m)<br /><ref name="kijyun" /><ref name="watchizu" /> |
|||
!剣ヶ峰からの<br />方角と距離(km) |
|||
!火山体名 |
|||
!備考 |
|||
|- |
|- |
||
|'''安房山''' |
|||
! [[ライチョウ]](冬毛) !! [[イワヒバリ]] !! [[クロユリ]] !! [[コマクサ]] |
|||
|<small>あぼうさん</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,220 |
|||
|{{direction2|NNE}} 10.1 |
|||
|ジュラ紀付加体 |
|||
|[[安房トンネル]] |
|||
|- |
|- |
||
|'''十石山''' |
|||
|[[File:Ptarmigan Raicyou Male in kamikouchidake 2003 11 23.jpg|150px]] |
|||
|<small>じゅっこくやま</small> |
|||
|[[File:Prunella collaris.jpg|150px]] |
|||
|style="text-align:right;"|2,525 |
|||
|[[File:Fritillaria camschatcensis Kuroyuri in hakusan 2002-7-25.jpg|150px]] |
|||
|{{direction2|NNE}} 7.2 |
|||
|[[File:Dicentra peregrina Komakusa in Enzanso 2002-7-27.jpg|150px]] |
|||
| |
|||
| |
|||
|- |
|||
|'''大崩山''' |
|||
|<small>おおくえやま</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,523 |
|||
|{{direction2|N}} 5.7 |
|||
| |
|||
| |
|||
|- |
|||
|'''猫岳''' |
|||
|<small>ねこだけ</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,581 |
|||
|{{direction2|N}} 5.2 |
|||
| |
|||
| |
|||
|- |
|||
|'''硫黄岳''' |
|||
|<small>いおうだけ</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,554 |
|||
|{{direction2|NNE}} 4.8 |
|||
| |
|||
| |
|||
|- |
|||
|'''四ツ岳''' |
|||
|<small>よつだけ</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,751 |
|||
|{{direction2|N}} 4.5 |
|||
|四ッ岳火山体 |
|||
| |
|||
|- |
|||
|'''烏帽子岳''' |
|||
|<small>えぼしだけ</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,692 |
|||
|{{direction2|N}} 3.9 |
|||
|烏帽子火山体 |
|||
| |
|||
|- |
|||
|'''大丹生岳''' |
|||
|<small>おおにゅうだけ</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,698 |
|||
|{{direction2|N}} 3.7 |
|||
| |
|||
| |
|||
|- |
|||
|'''大黒岳''' |
|||
|<small>だいこくだけ</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,772 |
|||
|{{direction2|NNE}} 2.4 |
|||
|| |
|||
| |
|||
|- |
|||
|'''恵比寿岳''' |
|||
|<small>えびすだけ</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,831 |
|||
|{{direction2|N}} 2.3 |
|||
|rowspan="2"|恵比寿火山体 |
|||
|遊歩道 |
|||
|- |
|||
|'''魔王岳''' |
|||
|<small>まおうだけ</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,760 |
|||
|{{direction2|N}} 2.2 |
|||
|遊歩道 |
|||
|- |
|||
|'''富士見岳''' |
|||
|<small>ふじみだけ</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,817 |
|||
|{{direction2|N}} 1.7 |
|||
| |
|||
|登山道 |
|||
|- |
|||
|'''里見岳''' |
|||
|<small>さとみだけ</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,824 |
|||
|{{direction2|NNW}} 1.9 |
|||
| |
|||
| |
|||
|- |
|||
|'''不動岳''' |
|||
|<small>ふどうだけ</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,875 |
|||
|{{direction2|N}} 1.5 |
|||
| |
|||
| |
|||
|- |
|||
|'''摩利支天岳''' |
|||
|<small>まりしてんだけ</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,872 |
|||
|{{direction2|N}} 1.2 |
|||
| |
|||
|[[乗鞍コロナ観測所]] |
|||
|- |
|||
|'''水分岳''' |
|||
|<small>みくまりだけ</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,896 |
|||
|{{direction2|NW}} 0.6 |
|||
|rowspan="8"|権現池・<br />高天ヶ原<br />火山体 |
|||
| |
|||
|- |
|||
|'''朝日岳''' |
|||
|<small>あさひだけ</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,975 |
|||
|{{direction2|NNW}} 0.4 |
|||
| |
|||
|- |
|||
|'''蚕玉岳''' |
|||
|<small>こだまだけ</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,979 |
|||
|{{direction2|NNW}} 0.2 |
|||
|登山道 |
|||
|- |
|||
|'''雪山岳''' |
|||
|<small>せつざんだけ</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,891 |
|||
|{{direction2|W}} 0.7 |
|||
| |
|||
|- style="background-color:#ccc" |
|||
|'''[[剣ヶ峰]]''' |
|||
|<small>けんがみね</small> |
|||
|style="text-align:right;"|3,026 |
|||
|{{direction2|O}} 0 |
|||
|乗鞍岳の[[最高峰]] |
|||
|- |
|||
|'''大日岳''' |
|||
|<small>だいにち</small> |
|||
|style="text-align:right;"|3,014 |
|||
|{{direction2|SSW}} 0.3 |
|||
| |
|||
|- |
|||
|'''薬師岳''' |
|||
|<small>やくしだけ</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,950 |
|||
|{{direction2|WSW}} 0.7 |
|||
| |
|||
|- |
|||
|'''屏風岳''' |
|||
|<small>びょうぶだけ</small> |
|||
|style="text-align:right;"|2,968 |
|||
|{{direction2|SW}} 0.6 |
|||
| |
|||
|} |
|} |
||
<gallery> |
|||
ファイル:Mount Yotsu of Mount Norikura from Norikura Skyline s3.jpg|四ツ岳 (2,751m) |
|||
ファイル:Mount Eboshi of Mount Norikura from Norikura Skyline.JPG|烏帽子岳 (2,692m) |
|||
ファイル:Mount Daikoku of Mount Norikura from Mount Fujimi.jpg|大黒岳 (2,772m) |
|||
ファイル:210811 Mount Fujimi of Mount Norikura.jpg|富士見岳 (2,817m) |
|||
ファイル:Kengamine of Mount Norikura from Mount Kodama s1.jpg|剣ヶ峰 (3,026m)<br />乗鞍岳の[[最高峰]] |
|||
</gallery> |
|||
=== 山頂部の池=== |
|||
{{Commonscat|Pond of Mount Norikura|乗鞍岳の池}} |
|||
[[ファイル:Kiezuga pond and Tsuruga pond.jpg|200px|サムネイル|山上部にある不消ヶ池(手前)と鶴ヶ池(奥)]] |
|||
山頂付近には、以下の8箇所に12個の火口湖と堰止湖がある<ref name="watchizu">{{Cite web|和書|url=http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html?longitude=137.55043886111&latitude=36.108279027778 |title=地図閲覧サービス「乗鞍岳」 |publisher=国土地理院 |accessdate=2013-09-06}}</ref><ref name="垣外富士男 (2002)、186頁" />。 |
|||
* '''権現池''' - 山頂直下西にある権現池・高天ヶ原火山体の活動終期に形成されたコバルトブルーの火口湖<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、26-27頁">[[#乗鞍岳自然観察ガイド|乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、26-27頁]]</ref>。御嶽山のニノ池に次いで日本で2番目の高所にある[[湖沼]]<ref name="平田謙一 (2000)、66-69頁">[[#上高地・乗鞍岳を歩く|平田謙一 (2000)、66-69頁]]</ref>。 |
|||
* '''五ノ池''' - 里見岳の南にある溶岩流による堰止湖<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、26-27頁" />。 |
|||
* '''不消ヶ池'''(きえずがいけ) - 富士見岳と摩利支天岳の間にあり、真夏でも[[雪]]が残ることがある<ref group="注釈">不消ヶ池は火口湖であるとすることもあるが、そうではないとする説もある。</ref><ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、26-27頁" />。 |
|||
* '''鶴ヶ池''' - 畳平の東にあり、名称は[[ツル|鶴]]の形状に似ていることに因む<ref group="注釈">鶴ヶ池は火口湖であるとすることもあるが、そうではないとする説もある。</ref>。 |
|||
* '''亀ヶ池''' - 恵比寿岳と魔王岳との間にある恵比寿火口、名称は周氷河地形の構造土が発見されたことに因む<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、26-27頁" />。 |
|||
* '''大丹生池''' - 大丹生池に西にある溶岩流による堰止湖<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、26-27頁" />。 |
|||
* '''土樋池''' - 烏帽子岳の西にある溶岩流による堰止湖<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、26-27頁" />。 |
|||
* 無名の池 - 四ツ岳と硫黄岳の間。 |
|||
=== 地質 === |
|||
古生層の[[安山岩]]類や[[花崗岩]]類、[[デイサイト]]質の溶岩などで構成されている<ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" /><ref name="日本山名辞典 (1992)、407頁" />。乗鞍岳ではパン皮状[[火山弾]](breadcrust bomb)が見られ、火口付近では吹き飛ばされた古い岩石の破片、スコリア、[[軽石]]なども見られる<ref>[[#乗鞍岳自然観察ガイド|乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、24-25頁]]</ref>。山頂付近には亀甲砂礫や条線砂礫などの[[構造土]]が見られ<ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" />、[[地理学者]]の[[田中阿歌麿]]が日本の[[周氷河地形]]として初めて亀ヶ池で構造土を発見した<ref name="日本山名辞典 (1992)、407頁" />。乗鞍高原の鈴蘭には[[武田信玄]]によって開発されたとされる大樋[[鉱山]]があって、1640年([[寛永]]17年)から1697年([[元禄]]10年)にかけて盛んに[[銀]]が産出されていた<ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" /><ref name="NorikuraLight" />。東山腹の梓川の[[支流]]湯川沿いの[[白骨温泉]]では石灰華([[炭酸カルシウム]])の沈殿物が見られ、「白骨温泉の噴湯丘と球状石灰石」が1952年(昭和27年)3月29日に国の[[特別天然記念物]]の指定を受けた<ref>{{Cite web|和書|url=http://takara.city.matsumoto.nagano.jp/national/018.html |title=白骨温泉の噴湯丘と球状石灰石 |publisher=松本市教育委員会 |accessdate=2013-09-04}}</ref>。 |
|||
== 環境 == |
|||
[[ファイル:Mount Onyu and Yotsu of Mount Norikura from Mount Fujimi.jpg|200px|サムネイル|右|マイカー規制が行われている乗鞍スカイラインと乗鞍エコーライン]] |
|||
[[ファイル:Temperature of Mount Norikura.png|250px|サムネイル|右|[[乗鞍コロナ観測所]]で観測された月ごとの平均気温(1971-2000年)]] |
|||
自然保護の観点から[[乗鞍スカイライン]]と[[乗鞍エコーライン]]で2003年から[[マイカー規制]]が実施され、[[バス (交通機関)|バス]]と[[タクシー]]を除き一般車両の通行が禁止されるようになった。これらの山岳道路では麓の[[山地|山地帯]]、亜高山帯、高山帯へと植生の[[垂直分布]]の移行を観察することができる<ref name="平田謙一 (2000)、66-69頁" />。東側の乗鞍高原の山麓では明治時代に[[牛]]の[[放牧]]と[[ソバ]]畑の開拓が行われた<ref name="NorikuraLight" />。 |
|||
=== 気候 === |
|||
山頂付近の摩利支天岳(標高2,872 m)頂上の乗鞍コロナ観測所で観測された、毎日の平均気温、最低気温、最高気温の月ごとの1971年(昭和46年)から2000年(平成12年)までの30年間の平均値を下表に示す<ref name="乗鞍コロナ観測所における気象観測">{{Cite journal |date=2002-03-29 |author=斎藤守也、入江誠 |url=https://www.nao.ac.jp/contents/about-naoj/reports/report-naoj/6-1-4.pdf |title=乗鞍コロナ観測所における気象観測 |format=PDF |journal=国立天文台報 |issue=第6巻 |pages=37-47 |publisher=[[国立天文台]] |accessdate=2013-09-08}}</ref>。1月下旬から2月上旬にかけてが最も寒く、8月初旬が最も暑い<ref name="乗鞍コロナ観測所における気象観測" />。畳平へのシャトルバスの夏の早朝便ではカーエアコンで暖房される。 |
|||
{| class="wikitable" style="text-align:right" |
|||
|+月別の平均気温、最低気温、最高気温 (1971-2000年の平均値) |
|||
! 月 || 1月 || 2月 || 3月 || 4月 || 5月 || 6月 || 7月 || 8月 || 9月 || 10月 || 11月 || 12月 || 年平均 |
|||
|- |
|||
! 平均気温([[セルシウス度|℃]]) |
|||
| -15 || -15 || -11 || -5 || 1 || 6 || 9 || 11 || 7 || 0 || -6 || -12 |
|||
! -3 |
|||
|- style="background-color:#bee" |
|||
!最低気温(℃) |
|||
| -17 || -17 || -14 || -8 || -2 || 1 || 6 || 8 || 4 || -2 || -8 || -14 |
|||
! -5 |
|||
|- style="background-color:#fa7" |
|||
!最高気温(℃) |
|||
| -13 || -12 || -8 || -1 || 4 || 9 || 12 || 14 || 9 || 3 || -4 || -10 |
|||
! 0 |
|||
|} |
|||
また、年間平均気温、および最低気温、最高気温の年間平均値を下表に示す<ref name="乗鞍コロナ観測所における気象観測" />。年間の平均気温の最低値は1986年の-4.1℃、最高値は1998年の-0.5℃。 |
|||
{| class="wikitable" style="text-align:right" |
|||
|+年間の平均気温、最低気温、最高気温 (1968-2000年の平均値) |
|||
! 年 |
|||
! 平均<br />気温<br />(℃) |
|||
! 最低<br />気温<br />(℃) |
|||
! 最高<br />気温<br />(℃) |
|||
! 年 |
|||
! 平均<br />気温<br />(℃) |
|||
! 最低<br />気温<br />(℃) |
|||
! 最高<br />気温<br />(℃) |
|||
! 年 |
|||
! 平均<br />気温<br />(℃) |
|||
! 最低<br />気温<br />(℃) |
|||
! 最高<br />気温<br />(℃) |
|||
|- |
|||
! 1968年 |
|||
| -0.8 || -4.7 || 3.2 |
|||
! 1979年 |
|||
| -1.9 || -4.8 || 1.0 |
|||
! 1990年 |
|||
| -1.6 || -3.9 || 1.2 |
|||
|- |
|||
! 1969年 |
|||
| -2.2 || -5.5 || 2.3 |
|||
! 1980年 |
|||
| -3.0 || -5.5 || -0.5 |
|||
! 1991年 |
|||
| -2.1 || -4.5 || 0.4 |
|||
|- |
|||
! 1970年 |
|||
| -1.4 || -4.5 || 1.8 |
|||
! 1981年 |
|||
| -2.6 || -5.0 || -0.2 |
|||
! 1992年 |
|||
| -2.4 || -4.8 || 0.1 |
|||
|- |
|||
! 1971年 |
|||
| -2.8 || -6.1 || 0.5 |
|||
! 1982年 |
|||
| -2.4 || -5.1 || 0.5 |
|||
! 1993年 |
|||
| -3.0 || -5.0 || -0.7 |
|||
|- |
|||
! 1972年 |
|||
| -2.2 || -5.7 || 1.3 |
|||
! 1983年 |
|||
| -2.8 || -5.1 || -0.4 |
|||
! 1994年 |
|||
| -2.3 || || 0.2 |
|||
|- |
|||
! 1973年 |
|||
| -2.0 || -5.5 || 1.5 |
|||
! 1984年 |
|||
| -3.3 || -5.5 || -1.0 |
|||
! 1995年 |
|||
| -3.7 || -5.9 || -1.5 |
|||
|- |
|||
! 1974年 |
|||
| -2.5|| -5.7 || 0.7 |
|||
! 1985年 |
|||
| -2.7 || -4.9 || -0.6 |
|||
! 1996年 |
|||
| -2.6 || -5.2 || -0.1 |
|||
|- |
|||
! 1975年 |
|||
| -2.2 || -5.5 || 1.3 |
|||
!style="background-color:#bee"| 1986年 |
|||
|style="background-color:#bee"|-4.1 ||style="background-color:#bee"| -6.6 ||style="background-color:#bee"| -1.6 |
|||
! 1997年 |
|||
| -2.3 || -4.7 || 0.1 |
|||
|- |
|||
! 1976年 |
|||
| -3.2 || -6.3 || -0.1 |
|||
! 1987年 |
|||
| -2.0 || -4.6 || 0.6 |
|||
!style="background-color:#fa7"| 1998年 |
|||
|style="background-color:#fa7"| -0.5 ||style="background-color:#fa7"| -3.4 ||style="background-color:#fa7"| 2.3 |
|||
|- |
|||
! 1977年 |
|||
| -2.1 || -5.2 || 1.0 |
|||
! 1988年 |
|||
| -3.5 || -5.7 || -1.1 |
|||
! 1999年 |
|||
| -2.4 || -5.1 || 0.3 |
|||
|- |
|||
! 1978年 |
|||
| -2.3 || -5.3 || 0.8 |
|||
! 1989年 |
|||
| -2.3 || -4.7 || 0.3 |
|||
! 2000年 |
|||
| -2.6 || -5.3 || -0.7 |
|||
|} |
|||
9時と15時における[[風力]]の月ごとの1989年(平成元年)から1997年(平成9年)までの9年間の平均値を下表に示す<ref name="nkrclimate">{{Cite web|和書|url=https://solarwww.mtk.nao.ac.jp/jp/nkrclimate/top.html |title=乗鞍コロナ観測所の気象観測 |publisher=国立天文台 |accessdate=2013-09-04}}</ref>。[[風向|風向き]]は年間を通じて北西が主流となっている<ref name="乗鞍コロナ観測所における気象観測" />。冬期に風が強い日が多く、9時、15時の区別なく1-2月には風力4.9-5.2([[風速]]換算で約10 [[メートル毎秒|m/s]])<ref name="乗鞍コロナ観測所における気象観測" />。 |
|||
{| class="wikitable" style="text-align:right" |
|||
|+月別の風力([[メートル毎秒|m/s]]) (1989-1997年の平均値) |
|||
! 月 || 1月 || 2月 || 3月 || 4月 || 5月 || 6月 || 7月 || 8月 || 9月 || 10月 || 11月 || 12月 || 年平均 |
|||
|- |
|||
! 9時 |
|||
| 5.0 || 5.1 || 4.6 || 3.8 || 3.1 || 2.9 || 2.7 || 2.5 || 2.7 || 2.9 || 3.8 || 4.6 |
|||
! 3.6 |
|||
|- |
|||
! 15時 |
|||
| 5.2 || 4.9 || 4.4 || 3.6 || 2.8 || 2.7 || 2.6 || 2.4 || 2.6 || 2.8 || 3.7 || 4.5 |
|||
! 3.5 |
|||
|} |
|||
[[ファイル:Snow wall Norikura Echoline.jpg|200px|サムネイル|右|乗鞍エコーラインの畳平付近(標高約2,700 m)の[[除雪]]部の雪壁(2013年5月21日)]] |
|||
9時と15時における月別天気出現率([[パーセント|%]])(1968-1997年の平均値)を下表に示す<ref name="nkrclimate" />。乗鞍岳では夏に午後になると[[霧]]や雲の発生が活発になることが多く、他の山岳地帯と同様に午前中の方が天候が安定している<ref name="乗鞍コロナ観測所における気象観測" />。畳平では濃霧で視界不良となることもある<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.hida-norikura.com/category/info/ |title=乗鞍岳の天気 |publisher=高山市観光課|accessdate=2013-09-11}}</ref>。例年9月末-10月にかけて山頂部で初冠雪し、6月にも雪が降ることがある<ref name="nkrclimate" />。 |
|||
{| class="wikitable" style="text-align:right" |
|||
|+9時の月別天気出現率([[パーセント|%]])(1968-1997年の平均値) |
|||
! 月 || 1月 || 2月 || 3月 || 4月 || 5月 || 6月 || 7月 || 8月 || 9月 || 10月 || 11月 || 12月 |
|||
|- |
|||
! 快晴 |
|||
| 21 || 20 || 25 || 26 || 22 || 11 || 11 || 19 || 18 || 32 || 32 || 28 |
|||
|- |
|||
! 晴 |
|||
| 5 || 7 || 9 || 11 || 13 || 15 || 17 || 18 || 13 || 11 || 7 || 7 |
|||
|- |
|||
! 曇 |
|||
| 9 || 14 || 18 || 22 || 27 || 30 || 20 || 17 || 23 || 18 || 13 || 9 |
|||
|- |
|||
! 雨 |
|||
| 0 || 0 || 1 || 6 || 12 || 19 || 21 || 15 || 9 || 9 || 4 || 0 |
|||
|- |
|||
! 雪 |
|||
| 42 || 36 || 26 || 13 || 4 || 1 || 0 || 0 || 0 || 5 || 19 || 36 |
|||
|} |
|||
{| class="wikitable" style="text-align:right" |
|||
|+15時の月別天気出現率(%)(1968-1997年の平均値) |
|||
! 月 || 1月 || 2月 || 3月 || 4月 || 5月 || 6月 || 7月 || 8月 || 9月 || 10月 || 11月 || 12月 |
|||
|- |
|||
! 快晴 |
|||
| 15 || 13 || 14 || 14 || 9 || 2 || 2 || 2 || 5 || 18 || 24 || 24 |
|||
|- |
|||
! 晴 |
|||
| 7 || 7 || 10 || 14 || 14 || 10 || 11 || 14 || 12 || 13 || 8 || 8 |
|||
|- |
|||
! 曇 |
|||
| 13 || 16 || 20 || 28 || 35 || 33 || 25 || 29 || 30 || 23 || 17 || 9 |
|||
|- |
|||
! 雨 |
|||
| 0 || 0 || 1 || 6 || 12 || 21 || 25 || 18 || 21 || 9 || 4 || 0 |
|||
|- |
|||
! 雪 |
|||
| 50 || 43 || 33 || 17 || 6 || 1 || 0 || 0 || 0 || 8 || 21 || 38 |
|||
|} |
|||
=== 動物 === |
|||
山域には[[オコジョ]]、[[ニホンノウサギ|トウホクノウサギ]]、[[ニホンカモシカ]]、[[ツキノワグマ]]<ref group="注釈">畳平周辺でも、しばしばツキノワグマが目撃されている。</ref><ref>{{Cite web|和書|url=http://www.pref.gifu.lg.jp/kurashi/kankyo/kankyo-hozen/c11265/norikura-kuma.html |title=乗鞍畳平付近でのクマ目撃情報 |publisher=岐阜県 |date=2016-09-10 |accessdate=2016-11-16 }}</ref>、[[イワヒバリ]]、[[ホシガラス]]、国の特別[[天然記念物]]に指定されている[[ライチョウ]]など生息する<ref name="日本山名辞典 (1992)、407頁" />。 |
|||
ツキノワグマについては2009年に、畳平でバスターミナル周辺を襲う事件があり、9人の観光客がクマの攻撃を受ける騒動となった事例がある。 |
|||
{{Main|乗鞍岳クマ襲撃事故}} |
|||
ライチョウに関しては、[[長野大学]]生態学研究室により詳細な生息調査が行われている<ref>[[#雷鳥が語りかけるもの|中村浩志 (2006)]]</ref>。ライチョウの乗鞍岳における総個体数は1983年の調査では130羽、1994年の調査では109羽と減少傾向にある(環境省の[[レッドリスト]]の絶滅危惧IB類の指定を受けている[[種 (分類学)|種]])<ref name="乗鞍地区の自然の状況">{{Cite web|和書|url=http://www.pref.gifu.lg.jp/kurashi/zeikin/kenzei/11110/norikuratiku.html |title=検討結果(乗鞍地区の自然の状況) |publisher=岐阜県 |accessdate=2016-11-16 }}</ref>。[[イワツバメ]]、イワヒバリ、[[カヤクグリ]]、ライチョウ、[[ルリビタキ]]の繁殖が確認されていて<ref name="乗鞍地区の自然の状況" />、[[カラ類]]、[[キセキレイ]]、ホシガラスなど多くの野鳥が生息している<ref name="日本山名辞典 (1992)、407頁" />。 |
|||
白樺峠は、乗鞍高原一帯を通過していく[[タカ目|タカ]]の渡りの観察地として知られていて、9月下旬には[[サシバ]]、[[ハチクマ]]、10月中旬には[[ノスリ]]、[[ツミ]]などの渡りが見られる<ref>[[#乗鞍岳自然観察ガイド|乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、105-106頁]]</ref>。乗鞍高原では7種の[[コウモリ]]の生息が確認されていて、日本の[[固有種]]である[[クビワコウモリ]]の繁殖が日本で初めて乗鞍高原で確認された<ref>[[#上高地・乗鞍岳を歩く|平田謙一 (2000)、140頁]]</ref>。長野県の天然記念物の指定種の高山[[チョウ|蝶]]の[[クモマベニヒカゲ]]と[[ミヤマモンキチョウ]]や[[クジャクチョウ]]、[[コヒオドシ]]などの蝶が生息し<ref name="乗鞍地区の自然の状況" />、岐阜県のレッドリストで指定を受けている高山[[ガ|蛾]]の[[アルプスカバナミシャク]]、[[アルプスギンウワバ]]、[[アルプスヤガ]]、[[アルプスクロヨトウ]]、[[オオギンスジコウモリ]]、[[クモマウスグロヤガ]]、[[サザナミナミシャク]]、[[タカネモンヤガ]]、[[ナカトビヤガ]]、[[ヤツガダケヤガ]]などの確認記録がある<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.pref.gifu.lg.jp/kurashi/kankyo/shizenhogo/c11265/index_17434.html |title=岐阜県レッドデータブック(改定版)・昆虫類|publisher=岐阜県 |date=2010-08 |accessdate=2016-11-16 }}</ref>。 |
|||
<gallery> |
|||
ファイル:Ursus thibetanus japonicus eating plants.JPG|[[ツキノワグマ]] |
|||
ファイル:Lagopus muta japonica female in Mount Norikura.JPG|乗鞍岳で100羽程が生息している国の特別天然記念物の[[ライチョウ]] |
|||
ファイル:Prunella rubida in Mount Norikura s2.JPG|高山帯で繁殖を行っている[[カヤクグリ]] |
|||
ファイル:Erebia ligea takanonis on Arnica unalaschensis var. tschonoskyi.JPG|高山帯で[[ウサギギク]]を吸蜜する高山蝶の[[クモマベニヒカゲ]] |
|||
乗鞍岳のホシガラス.jpg|乗鞍岳の[[ホシガラス]] |
|||
</gallery> |
|||
=== 植物 === |
|||
{{Commonscat|Flora in Mount Norikura|乗鞍岳の植物}} |
|||
[[志村烏嶺]]が乗鞍岳で[[高山植物]]の採集と研究を行っている。位ヶ原と桔梗ヶ原では大規模な[[ハイマツ]]の群生地となっている<ref name="日本山名辞典 (1992)、407頁" />。[[コイワカガミ]]、[[シャクナゲ|キバナシャクナゲ]]、[[ミヤマキンバイ]]、[[クロユリ]]、[[コマクサ]]、[[イワギキョウ]]、[[ヨツバシオガマ]]などの植物が見られ、高山ならではの自然を堪能する事ができる。富士見岳、魔王岳などの風衝地にはコマクサの群落が広がっている。大黒岳は山全体にコマクサが分布していたが、人の増加に伴い踏み荒らされ大幅に減少した<ref>[[#乗鞍・御岳・霧ガ峰|垣外富士男 (2002)、196頁]]</ref>。雪解けとともに開花が始まり、秋には[[コケモモ]]、[[ダケカンバ]]、[[チングルマ]]、[[ナナカマド]]などの[[紅葉]]が見られる。[[江戸時代]]大樋鉱山で銀を抽出する際に[[薪]]や[[炭]]を作るために乗鞍高原周辺の[[原生林]]の[[シラビソ]]や[[ブナ]]が切り尽くされた<ref name="NorikuraLight" />。その結果乗鞍高原鈴蘭付近は、[[シラカバ]]などの[[二次林]]と[[スズラン]]、[[ヤナギラン]]などの[[草原]]となりっており、[[ミズバショウ]]などの高原植物も分布している<ref name="日本山名辞典 (1992)、407頁" />。乗鞍高原には湿原があり、「乗鞍岳湿原」として[[日本の重要湿地500]]の一つに選定されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.env.go.jp/nature/important_wetland/wetland/w242.html |title=乗鞍岳湿原 |publisher=環境省 自然環境局 |accessdate=2016-11-16 }}</ref>。子ノ原高原は[[レンゲツツジ]]の名所として知られていて<ref name="島田靖 (1998)、117頁">[[#分県登山ガイド岐阜県の山|島田靖 (1998)、117頁]]</ref>、「子ノ原高原レンゲツツジ群落」が1969年(昭和44年)8月5日に高山市の天然記念物の指定を受けている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.pref.gifu.lg.jp/kyoiku/bunka/bunkazai/17768/tennen/nenoharakougenn.html |title=子ノ原高原レンゲツツジ群落 |publisher=岐阜県 |accessdate=2016-11-16 }}</ref>。西面中腹の千町ヶ原の[[湿原]]には、[[キソチドリ]]、[[コバイケイソウ]]、[[モウセンゴケ]]などが分布する<ref name="垣外富士男 (2002)、209頁">[[#乗鞍・御岳・霧ガ峰|垣外富士男 (2002)、209頁]]</ref>。東面中腹の位ヶ原では、9月下旬-10月上旬ごろに[[ナナカマド]]と[[ダケカンバ]]が[[紅葉]]する<ref>[[#上高地・乗鞍岳を歩く|平田謙一 (2000)、15頁]]</ref>。乗鞍岳では山麓から山上部にかけて以下の植物の垂直分布が見られる<ref>[[#花かおる乗鞍岳|小野木三郎 (2005)、2-3頁]]</ref>。山岳道路開通に伴い[[帰化植物]]が侵入し、[[飛騨山脈]]原産の[[オオハンゴンソウ]]が乗鞍スカイラインの旧料金所の上部の亜高山帯で、[[セイヨウタンポポ]]が畳平の駐車場で、[[ムラサキツメクサ]]が鶴ヶ池付近で確認されている<ref>[[#花かおる乗鞍岳|小野木三郎 (2005)、20頁]]</ref>。乗鞍スカイライン沿いでは針葉樹の立ち枯れが確認されている<ref name="乗鞍地区の自然の状況" /><ref>[[#花かおる乗鞍岳|小野木三郎 (2005)、22頁]]</ref>。 |
|||
* 山地(山麓 - 標高1,500 m付近) - [[ブナ]]、[[ミズナラ]]などの落葉広葉樹 |
|||
* 亜高山帯(標高1,500-2,500 m付近) - [[トウヒ]]、[[シラビソ]]、[[コメツガ]]などの常緑針葉樹 |
|||
* 高山帯(2,500 m付近から上部) - ハイマツ、高山植物 |
|||
<gallery> |
|||
ファイル:Dicentra peregrina 01s Mount Norikura.JPG|山頂付近の風衝地に自生する高山植物の女王と呼ばれる[[コマクサ]] |
|||
ファイル:Fritillaria camtschatcensis in Mount Norikura.JPG|畳平のお花畑に群生する[[クロユリ|ミヤマクロユリ]] |
|||
ファイル:Veratrum stamineum in Mount Norikura.JPG|[[コバイケイソウ]]の群落 |
|||
ファイル:Gentiana algida on Mount Norikura.jpg|[[トウヤクリンドウ]] |
|||
</gallery> |
|||
=== 乗鞍自然観察教育林 === |
|||
[[File:Tatamidaira flower garden.jpg|200px|サムネイル|畳平の乗鞍自然観察教育林のお花畑に整備された[[木道]]]] |
|||
乗鞍岳の高山帯と大部分の山域は[[日本の国有林|国有林]]であり、[[林野庁]][[中部森林管理局]]飛騨森林管理署内にある<ref name="自然観察教育林">{{Cite web|和書|url=http://www.rinya.maff.go.jp/chubu/policy/business/invitation/rekumori/sizenkansatu/index.html |title=自然観察教育林 |publisher=林野庁 |accessdate=2013-09-08}}</ref>。畳平周辺の多くの高山植物が分布するハイマツ帯は、林野庁によりレクリエーションの森の「'''乗鞍自然観察教育林'''」の指定を受けている<ref name="自然観察教育林" />。畳平には飛騨森林管理署詰所があり、その南側のお花畑には観察用の木道が整備されている。 |
|||
=== 岐阜県乗鞍環境保全税 === |
|||
乗鞍地域の環境保全を目的として2002年(平成14年)10月9日に[[岐阜県議会]]で「'''岐阜県乗鞍環境保全税条例'''」が可決され、2003年(平成15年)5月15日のマイカー規制開始時から乗鞍スカイラインに乗り入れる自動車に対して課税と徴収が行われるようになった<ref name="岐阜県乗鞍環境保全税">{{Cite web|和書|url=http://www.pref.gifu.lg.jp/kurashi/zeikin/kenzei/11110/norikura.html |title=岐阜県乗鞍環境保全税 |publisher=岐阜県 |accessdate=2016-11-16 }}</ref>。税収は環境影響評価調査や環境パトロール員の配置などの乗鞍環境保全施策に使われている<ref name="岐阜県乗鞍環境保全税" />。課税標準は以下である<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.pref.gifu.lg.jp/kurashi/zeikin/kenzei/11110/gaiyou.html |title=乗鞍環境保全税の概要 |publisher=岐阜県 |accessdate=2016-11-16 }}</ref>。 |
|||
* [[観光バス]](乗車定員が30人以上) - 3,000[[円 (通貨)|円]] |
|||
* 一般[[乗合バス]](乗車定員が30人以上) - 2,000円、濃飛バスのシャトルバスが該当する。 |
|||
* 自動車(乗車定員が11人以上29人以下) - 1,500円 |
|||
* 自動車(乗車定員が10人以下) - 300円、タクシーなどが該当する。 |
|||
== 歴史 == |
== 歴史 == |
||
=== 信仰 === |
|||
* [[807年]]([[大同 (日本)|大同]]2年)に、[[坂上田村麻呂|田村将軍]]が乗鞍三座の[[神]]に祈願をして[[開山]]したとされる(『乗鞍山縁起』)<ref>『日本の山1000』[[山と渓谷社]]、ISBN 4-635-09025-6、P348</ref>。 |
|||
[[ファイル:Norikurahongu Okumiya.jpg|thumb|200px|right|山頂の剣ヶ峰にある岐阜県側の[[神社]](乗鞍本宮[[奥宮]])]] |
|||
* [[1212年]]([[建暦]]2年)に、社殿が建造されたが、その後荒廃した<ref>[[深田久弥]]の著書『日本百名山』([[朝日新聞社]]、ISBN 4-02-260871-4)、P225</ref>。 |
|||
古くは「位山」と呼ばれ、山麓から遥拝されていた<ref name="平田謙一 (2000)、139頁" /><ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、116-117頁">[[#乗鞍岳自然観察ガイド|乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、116-117頁]]</ref>。飛騨側では大丹生池付近、信州側では乗鞍高原山麓の梓水神社付近に遥拝所があったとみられている<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、116-117頁" />。[[仁徳天皇]]65年(伝[[377年]])[[両面宿儺]]が開山した[[千光寺 (高山市)|千光寺]]も元々乗鞍岳や[[御嶽山|御嶽]]の[[山岳信仰]]の遙拝所であったとされる。 |
|||
* 1680年代([[天和 (日本)|天和]]年間)に、[[円空]]上人が、岐阜県側の平湯から初登頂したとされている。 |
|||
* [[1878年]]([[明治]]11年)に、[[ウィリアム・ゴーランド]]が地質調査を兼ねて登頂<ref>『日本アルプスの登山と探検』ウォルター・ウェストン(著)、青木枝朗(訳)、[[岩波文庫]]、ISBN 4-00-334741-2、P370</ref>。 |
|||
* [[1891年]](明治24年)に、小杉復堂が平湯から登頂<ref name="jiten" />。 |
|||
* [[1892年]](明治25年)に、[[ウォルター・ウェストン]]が登頂。 |
|||
[[ファイル:Norikura Solar Observatory、乗鞍コロナ観測所、8128356.JPG|thumb|240px|right|[[乗鞍コロナ観測所]]]] |
|||
* [[1922年]]([[大正]]11年)3月に、[[早稲田大学]]山学部の東条義人が番所から[[スキー]]登山をした。 |
|||
* [[1948年]]([[昭和]]23年)に、[[高山市]]から畳平まで乗鞍登山バスの運行開始。 |
|||
* [[1949年]](昭和24年)に、[[東京大学]]東京天文台の附属施設として摩利支天岳の山頂に[[乗鞍コロナ観測所]]が建設された。建物の老朽化により[[2010年]](平成22年)3月末をもって閉鎖された。 |
|||
* [[1973年]](昭和48年)に、[[乗鞍スカイライン]]が開通し、マイカーや観光バス多くの人が観光や登山で訪れるようになった。 |
|||
* [[2003年]]([[平成]]15年)[[5月15日]]に、自然保護の観点から乗鞍スカイラインなどで[[マイカー規制]]により、一般車両の通行が禁止された<ref>[http://www.hida.jp/norikura/index.shtml 高山市HP・観光情報(乗鞍スカイライン)] </ref>。 |
|||
* [[2004年]](平成16年)7月に、[[五色ヶ原 (乗鞍岳)|五色ヶ原]]に、完全予約制ガイド付きの自然散策コースが開設された<ref name="goshiki">[http://www.hida.jp/goshiki/ 乗鞍山麓 五色ヶ原]</ref>。 |
|||
* [[2005年]](平成17年)夏に、マイカー規制を機に整備を始めた[[平湯温泉]]からの[[登山道]]が完成<ref>以前は、[[平湯大滝]]から谷沿いの登山道があったが、途中崩落のため通行禁止になっていた。新しい登山道は、[[平湯温泉]]スキー場から尾根伝いに桔梗ヶ原までの9.6kmで、登り5時間、下り3時間半を要する。これで、登りは登山道を歩き、下りはバスといったことが可能になった。</ref>。 |
|||
[[修験者]]が登頂するようになると、山頂の飛騨側に乗鞍大権現、信州側に朝日権現神社が祀られ、[[霊山]]としての修行の場であった<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、116-117頁" />。同じ飛騨地方にある[[白山]]や[[御嶽山]]と比較すると宗教的な意味合いが薄い山であった<ref name="日本の山1000 (1992)、348-349頁" />。 |
|||
== 観光・登山 == |
|||
[[ファイル:South Alps from Norikuradake 1998-05-16.jpg|thumb|240px|right|[[乗鞍エコーライン]]]] |
|||
2,700m付近にある駐車場('''[[畳平]]''')まで[[岐阜県道5号乗鞍公園線|乗鞍スカイライン]](岐阜県側)や[[長野県道84号乗鞍岳線|乗鞍エコーライン]](長野県側)といった自動車道が通じていることもあり、「日本で最も登りやすい[[日本の山一覧 (3000m峰)|3,000m超級の山]]」「[[ハイヒール]]でも上れる山」とも称されてきた。しかし自家用車で畳平の駐車場まで乗り入れのできた以前とは異なり、マイカー規制により[[2010年]](平成22年10月)現在、麓にある専用駐車場などから[[シャトルバス]]又は[[タクシー]]の利用が必要となった。 |
|||
飛騨側にはいくつもの信仰の道が作られ、麓には乗鞍[[神社]]が建立され、乗鞍信仰が盛んであった<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、116-117頁" />。[[円空]]上人と[[木喰]]上人が修行のために登ったと伝えられている<ref name="平田謙一 (2000)、139頁" /><ref name="日本の山1000 (1992)、348-349頁" />。 |
|||
=== マイカー規制(岐阜県側) === |
|||
* [[乗鞍スカイライン]]の[[平湯峠]]ゲートより上部 |
|||
** 乗換駐車場:アカンダナ駐車場(平湯温泉)、朴の木平駐車場 |
|||
信州側では[[奈良時代]]と[[室町時代]]には[[水神]]の霊山として、[[江戸時代]]にかけては戦の神としての信仰の山であった<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、116-117頁" />。東面標高2,100 mの冷泉小屋脇には、乗鞍修験者の行場であった霊泉の[[湧水]]がある<ref>[[#上高地・乗鞍岳を歩く|平田謙一 (2000)、83頁]]</ref>。1600年代後半頃には大樋銀山の[[鎮守神]]として信仰された<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、116-117頁" />。冷泉小屋上部の大雪渓下には、江戸時代に乗鞍岳を開山した宝徳霊神の[[碑]]がある<ref name="深田クラブ (1987)、165頁" />。[[18世紀]]末には山頂の朝日権現神社で[[ご来光]]を拝んだものにはご利益があるとれ、ご来光詣でが盛んに行われるようになった<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、116-117頁" />。 |
|||
=== マイカー規制(長野県側) === |
|||
* [[長野県道84号乗鞍岳線|乗鞍エコーライン]]の[[三本滝]]ゲートより上部 |
|||
=== 開発史 === |
|||
** 乗換駐車場:乗鞍高原内の第1駐車場、第2駐車場、第3駐車場、三本滝駐車場 |
|||
* [[807年]]([[大同 (日本)|大同]]2年) - [[坂上田村麻呂|田村将軍]]が乗鞍三座の[[神]]に祈願をして[[開山 (仏教)|開山]]したとされる(『乗鞍山縁起』)<ref name="日本の山1000 (1992)、348-349頁" />。 |
|||
* 1183年([[寿永]]2年) - [[源義仲|木曽義仲]]に命じられた太夫坊覚明が、乗鞍岳奥ノ院に[[大日如来]]を安置した<ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" />。 |
|||
* 1212年([[建暦]]2年) - 社殿が建造されたが、その後荒廃した<ref name="深田久弥 (1982)、223-226頁" />。 |
|||
* 1683年([[天和 (日本)|天和]]3年) - [[円空]]上人が岐阜県側の平湯から初登頂し、魔王岳と摩利支天岳を開山したとされている<ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" />。乗鞍岳の山頂部の大丹生池に[[魔神]]が棲むと恐れられていた伝説を払拭するために、千体仏を彫り池に沈めて祈祷してその[[迷信]]を封じたと伝えられている<ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" />。 |
|||
* 1878年([[明治]]11年) - [[ウィリアム・ゴーランド]]が地質調査を兼ねて平湯大滝口から登頂<ref>[[#日本アルプスの登山と探検|ウォルター・ウェストン (1997)、370頁]]</ref>。 |
|||
* 1889年(明治22年) - [[陸地測量部]]が[[三角点]]選定のために南山麓の高山市高根町野麦から登頂<ref name="日本山名辞典 (1992)、407頁" />。 |
|||
* 1891年(明治24年) - 小杉復堂が平湯から登頂<ref name="日本山名辞典 (1992)、407頁" />。 |
|||
* 1892年(明治25年) - [[ウォルター・ウェストン]]が平湯大滝口から登頂<ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" /><ref>[[#日本アルプスの登山と探検|ウォルター・ウェストン (1997)、372頁]]</ref> |
|||
* 1895年(明治28年) - 1905年(明治38年)にかけて、高山市朝日町の行者である上牧太郎之助が青屋口を開設し、石仏を80体ほどを安置した<ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" />。 |
|||
* 1905年(明治38年)8月 - 登山中であった2グループ13名が風雨に巻き込まれて遭難し、うち4名が死亡する。記録に残る北アルプス最古の山岳遭難事故でもある([[乗鞍岳大量遭難事故]])<ref>春日俊吉『山と雪の墓標 松本深志高校生徒落雷遭難の記録』有峰書店、1970年7月 pp239-241.</ref><ref>春日俊吉「行者の言葉(乗鞍岳)」『山の遭難譜』二見書房、1973年、pp.6-17.</ref>。 |
|||
* 1922年(大正11年)3月 - [[早稲田大学]]山岳部の東条義人が番所から[[スキー]]登山をした<ref name="日本山名辞典 (1992)、407頁" />。 |
|||
* 1924年(大正13年) - 丹生川村青年団により乗鞍登山道が完成<ref name="news2019">{{Cite web|和書|url=https://hidageo.com/wp-content/uploads/2020/02/84cd20bb2f6b88add46fcff36becf232.pdf|title=岐阜県中部山岳国立公園活性化ニュースレター創刊号|publisher=中部山岳国立公園活性化推進協議会|date=2019-11-20|accessdate=2022-08-08}}</ref>。高山測候所が乗鞍気象観測所を設置<ref name="news2019" />。 |
|||
* 1934年(昭和9年)12月4日 - 周辺の山域は[[中部山岳国立公園]]の指定を受けた<ref name="park" />。 |
|||
* 1942年(昭和17年) - [[大日本帝国陸軍|旧陸軍]]が、畳平に[[飛行機]]の[[エンジン]]の研究を行う[[航空研究所]]を建設するために軍用道路を開設した<ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" /><ref name="垣外富士男 (2002)、187-188頁">[[#乗鞍・御岳・霧ガ峰|垣外富士男 (2002)、187-188頁]]</ref><ref group="注釈">敗戦により航空研究所は建設されず、軍用道路は岐阜県の県道に編入され山岳観光道路として利用されるようになった。</ref>。 |
|||
* 1948年(昭和23年) - [[高山市]]から畳平まで乗鞍登山バスの運行開始。 |
|||
[[ファイル:Norikura Solar Observatory、乗鞍コロナ観測所、8128356.JPG|thumb|200px|right|[[乗鞍コロナ観測所]]]] |
|||
* 1949年(昭和24年) - [[東京大学]]東京天文台の附属施設として摩利支天岳の山頂に[[乗鞍コロナ観測所]]が建設され、翌年[[萩原雄祐]]により[[コロナグラフ]]が設置された。建物の老朽化により2010年(平成22年)3月末をもって、乗鞍コロナ観測所は閉鎖された。2011年(平成23年)に[[自然科学研究機構]]本部に移管され、共同研究利用施設「'''乗鞍観測所'''」として利用されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://solarwww.mtk.nao.ac.jp/jp/norikura/norikura.html |title=乗鞍コロナ観測所 |publisher=[[国立天文台]]太陽観測所 |date=2010-10-01 |accessdate=2013-09-08 }}</ref>。 |
|||
* 1953年(昭和28年)8月1日 - [[東京大学宇宙線研究所]]が、乗鞍肩ノ小屋の西隣に開設された<ref group="注釈">東京大学宇宙線研究所の前身は、1950年(昭和25年)に朝日学術奨励金によって建てられた朝日の小屋。</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/norikura/about.html |title=乗鞍観測所について |publisher=東京大学宇宙線研究所 |accessdate=2016-11-16 }}</ref>。当時の初代所長は[[平田森三]]。 |
|||
* 1963年(昭和38年) - [[長野県道84号乗鞍岳線|乗鞍エコーライン]]が畳平まで開通し<ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" />、1979年(昭和54年)には全区間の舗装化された<ref name="柳原修一 (1990)、61-66頁">[[#北アルプス山小屋物語|柳原修一 (1990)、61-66頁]]</ref>。 |
|||
* 1968年(昭和43年) - 乗鞍山頂簡易郵便局開設<ref name="news2019" />。 |
|||
* 1973年(昭和48年) - 乗鞍スカイラインの2車線の[[舗装道路]]が開通し<ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" />、マイカーや観光バス多くの人が観光や登山で訪れるようになった。 |
|||
* 2003年(平成15年)5月15日 - 自然保護の観点から乗鞍スカイラインなどでマイカー規制により、一般車両の通行が禁止された<ref>[http://www.hida.jp/norikura/index.shtml 高山市HP・観光情報(乗鞍スカイライン)] </ref>。 |
|||
* 2004年(平成16年)7月 - [[五色ヶ原 (乗鞍岳)|五色ヶ原]]に、完全予約制ガイド付きの自然散策コースが開設された<ref name="goshiki">{{Cite web|和書|url=http://goshiki2004.com |title=乗鞍山麓五色ヶ原 |publisher=五色ヶ原の森運営共同事業体 |accessdate=2016-11-16 }}</ref>。 |
|||
* 2005年(平成17年)夏 - マイカー規制を機に整備を始めた[[平湯温泉]]からの[[登山道]]が完成<ref group="注釈">以前は、[[平湯大滝]]から谷沿いの登山道があったが、途中崩落のため通行禁止になっていた。新しい登山道は、[[平湯温泉]]スキー場から尾根伝いに桔梗ヶ原までの9.6kmで、登り5時間、下り3時間半を要する。これで、登りは登山道を歩き、下りはバスといったことが可能になった。</ref>。 |
|||
== 登山 == |
|||
[[ファイル:Hiking for Mount Norikura.jpg|thumb|200px|right|肩の小屋から山頂を目指す登山者]] |
|||
古くから高山市高根町野麦からの野麦口が[[猟師]]やコマクサ採りの人々により利用されていた<ref name="柳原修一 (1990)、61-66頁" />。近代登山の黎明期には地元のガイドとともに、[[ウィリアム・ゴーランド]]、[[アーネスト・サトウ]]、[[ウォルター・ウェストン]]らが登頂した<ref name="柳原修一 (1990)、61-66頁" />。[[富山藩]]の[[漢学|漢学者]]小杉復堂が[[平湯温泉|平湯]]から、[[植物学者]]の[[河野齢蔵]]と[[矢澤米三郎]]が信州側から登頂している<ref name="柳原修一 (1990)、61-66頁" />。[[陸地測量部]]の[[館潔彦|舘潔彦]]らが測量登山のために[[1894年]](明治27年)に野麦口から登頂している<ref name="柳原修一 (1990)、61-66頁" />。本格的な[[登山道]]と[[山小屋]]が開設されたのは明治末期から大正中期以降であった<ref name="柳原修一 (1990)、61-66頁" />。1973年(昭和48年)に[[乗鞍スカイライン]]の開通<ref>[[乗鞍スカイライン#沿革]]</ref>などにより、標高2,702 mの畳平までバスや自動車で上がれるようになってからは、[[登山]]対象の山というよりも「観光客の山」という意味合いが強くなった<ref name="日本山名辞典 (1992)、407頁" />。 |
|||
* 山開き - 例年乗鞍スカイラインが開通する5月15日に、畳平で乗鞍岳[[開山祭|山開き祭]]が行われている。山開き直後には登山道には多くの残雪があり[[クラスト]]していることもあり、[[アイゼン]]、[[ピッケル]]、[[ストック]]などの雪山装備が必要となる<ref name="平田謙一 (2000)、66-69頁" />。 |
|||
* 山頂 - 直下北には頂上小屋(売店のみ)があり、山頂には[[一等三角点]]と北側に朝日権現社、南側に乗鞍本宮奥宮(鞍ヶ嶺神社)の2つの[[神社]]がある<ref name="平田謙一 (2005)、155-157頁">[[#日本百名山地図帳|平田謙一 (2005)、155-157頁]]</ref>。岩場の山頂は見晴らしが良く360度の展望がある。畳平と肩の小屋に西側に[[公衆便所|公衆トイレ]]が設置されている。畳平付近にある魔王岳、大黒岳、富士見岳には遊歩道が整備されている<ref name="伊部高夫 (2006)、33-35頁" /><ref>[[#上高地・乗鞍岳を歩く|平田謙一 (2000)、76-77頁]]</ref>。富士見岳からは[[木曽山脈]]越し([[仙丈ヶ岳]]と[[北岳]]との間)に、富士山の山頂部の南側の最高点である[[剣ヶ峰 (富士山)|剣ヶ峰]]をわずかに望むことができる。 |
|||
* '''[[学校登山]]''' - 夏になると麓の[[中学校]]などの行事として、中学生の学校登山が行われているので、山頂は大変な賑わいを見せる<ref>[[岐阜県#教育]]</ref><ref>[[長野県#学校登山]]</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.sangakusogocenter.com/shudantozan/shudantozan.html|title=学校集団登山 |publisher=長野県山岳総合センター|date=|accessdate=2023-07-18}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.sangakusogocenter.com/chousa/docs/25tyousa.pdf|title=「長野県中学校集団登山動向調査」のまとめ |format=pdf |publisher=長野県山岳総合センター|date=2013|accessdate=2023-07-18}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.shimintimes.co.jp/news/2023/07/post-22616.php|title=学校登山で「行くぞ乗鞍岳」 開成中1年生が日帰りで登る |publisher=株式会社 市民タイムス|date=2023-07-22|accessdate=2023-07-22}}</ref>。 |
|||
: [[松本市立丸ノ内中学校]]は身体面で不安がある生徒も皆と活動できる形にしたが、一度中止した学校登山を再開することは大変なことである。乗鞍岳の東麓に位置する[[松本市立大野川小学校・中学校]]と[[松本市立安曇小中学校]]は登頂組と周遊組に分けて[[奥穂高岳]]に2泊3日で実施した<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.shimintimes.co.jp/news/2023/07/post-22543.php|title=松本市内中学校の登山離れ加速 | 教育・子育て |publisher=株式会社 市民タイムス|date=2023-07-15|accessdate=2023-07-22}}</ref>。 |
|||
=== 登山コース === |
=== 登山コース === |
||
[[ファイル: |
[[ファイル:Top of Mount Norikura Kengamine.jpg|thumb|200px|right|山頂の剣ヶ峰(標高3,026 m)北側からの展望、左遠景は[[御嶽山]]]] |
||
各方面から |
各方面から登山道が開設されている<ref name="島田靖 (2009)、27-29頁">[[#岐阜県の山|島田靖 (2009)、27-29頁]]</ref>。大多数の観光客や[[ハイカー]]は、畳平から周辺や山頂を散策している。一部登山道は閉鎖や通行禁止状態になり、安房口、白骨口、野麦口は廃道になりつつある<ref name="深田クラブ (1987)、165頁" />。なお、[[2009年]]には畳平にて[[乗鞍岳クマ襲撃事件]]が発生しており、野生動物への警戒を怠ってはならない地域である<ref>{{Cite web |url=https://www.ben54.jp/news/1416 |title=突如現れた「クマ」に逃げ惑う観光客…「怒号・悲鳴・クラクション」バスターミナルをパニックに陥れた“襲撃事件” |publisher=弁護士JPニュース |date=2024-08-17 |accessdate=2024-08-23}}</ref>。 |
||
; 畳平からのコース |
|||
: 登山道の一部は未舗装の道路で、蚕玉岳から剣ヶ峰までの最後の登りは岩混じりの急登となる<ref name="平田謙一 (2000)、66-69頁" />。家族連れ、老若男女を問わず大勢の人で賑わい、シーズン最盛期には山頂へ向かう登山道が渋滞することもある。 |
|||
* [[乗鞍高原]]からのコース |
|||
: (行程):畳平 - (富士見岳<ref group="注釈">富士見岳の西側を巻く道路もあり、旧乗鞍コロナ観測所へ向かう道路は摩利支天岳山頂で行止りとなっている。</ref>) - 肩の小屋 - 蚕玉岳 - (頂上小屋<ref group="注釈">頂上小屋を経由しない西側のコースもある。</ref>) - 剣ヶ峰 |
|||
* 平湯口コース |
|||
; 乗鞍高原からのコース(番所口) |
|||
* 日陰平口コース(乗鞍青年の家の登山口から丸黒尾根を経由) |
|||
: 冷泉小屋の脇には湧水がある。戦後の登山ブーム時には乗鞍高原からのコースが利用され、雪山登山者には上部の冷泉小屋と位ヶ原山荘が前進基地として利用された<ref name="柳原修一 (1990)、61-66頁" />。 |
|||
* 青屋口コース |
|||
: (行程):乗鞍高原 - [[三本滝]]分岐 - 冷泉小屋 - 位ヶ原山荘 - 位ヶ原 - 肩の小屋口 - 肩の小屋 - 蚕玉岳 - (頂上小屋) - 剣ヶ峰<ref name="平田謙一 (2005)、155-157頁" /> |
|||
* 阿多野口コース |
|||
; 丸尾尾根日陰平口コース |
|||
: 神通川水系小八賀川と飛騨川との分水嶺の丸黒尾根<ref>[[#新日本山岳誌|日本山岳会 (2005)、969-970頁]]</ref><ref>[[#分県登山ガイド岐阜県の山|島田靖 (1998)、58-59頁]]</ref>と千町尾根のコース<ref name="平田謙一 (2005)、155-157頁" /><ref name="平田謙一 (2000)、115-120頁" />。千町ヶ原には[[オオシラビソ]]の森の中に[[湿原]]がある。大正時代に行者が利用した信仰の道で、コース上には百体以上の[[石仏]]が設置されている<ref>[[#乗鞍岳自然観察ガイド|乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、46頁]]</ref>。丸黒山は穂高岳などの見晴らし良い広い山頂で小さな祠がある<ref name="平田謙一 (2000)、115-120頁" />。[[池塘]]が点在する千町ヶ原では1994年(平成6年)[[木道]]が整備された<ref name="島田靖 (1998)、117頁" /><ref name="垣外富士男 (2002)、209頁" />。コース上に水場はない<ref name="平田謙一 (2000)、115-120頁" />。国立乗鞍青年の家からは、日陰平山(1,595 m)とかぶと山(1,545 m)を周回するハイキングコースが整備されている<ref>[[#岐阜県の山|島田靖 (2009)、38-39頁]]</ref>。 |
|||
他に、西麓には[[五色ヶ原 (乗鞍岳)|五色ヶ原]]があり、[[インタープリター (自然)|インタープリター]]同行でのガイドツアーが行われている<ref name="goshiki" /><ref name="gifuken" />。完全予約制で、滝や自然林を巡る登山道が整備されている。 |
|||
: (行程):国立乗鞍青年の家 - 日陰峠 - 枯松平山(1,694 m) - 枯松平避難小屋 - 丸黒山(1,956 m) - 千町ヶ原 - 奥千町避難小屋 - 中洞権現 - 剣ヶ峰 |
|||
; 平湯口コース |
|||
: (行程):国道158号の平湯大滝入口 - アンバ山 - 猿飛八丁 - 姫ヶ原(湿原) - 乗鞍スカイライン - 畳平 - (富士見岳) - 肩の小屋 - 蚕玉岳 - (頂上小屋) - 剣ヶ峰<ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" /><ref group="注釈">平湯口コースは、平湯大滝から姫ヶ原までの区間が2005年の時点で通行禁止となっている。</ref><ref name="平田謙一 (2005)、155-157頁" /> |
|||
; 白骨口コース |
|||
: (行程):白骨温泉 - 遊歩道 - 東尾根 - 十石小屋 - 十石山 - 硫黄岳 - 乗鞍スカイライン - 畳平 - (富士見岳) - 肩の小屋 - 蚕玉岳 - (頂上小屋) - 剣ヶ峰<ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" /><ref name="平田謙一 (2005)、155-157頁" /> |
|||
; 青屋口コース |
|||
: [[1896年]](明治29年)から3年かけて青屋村(現在の高山市朝日町)の上牧太郎之助が開拓したコースで<ref name="平田謙一 (2000)、115-120頁" /><ref>[[#飛騨の山|飛騨山岳会 (2010)、40-41頁]]</ref>、廃道となっていたが地元有志により再整備された<ref name="平田謙一 (2005)、155-157頁" />。 |
|||
: (行程):青屋口 千町ヶ原 - 奥千町避難小屋 - 中洞権現 - 剣ヶ峰<ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" /> |
|||
; 子ノ原口コース |
|||
: (行程):南乗鞍キャンプ場 - 林道 - 尾根 - 奥千町避難小屋 - 中洞権現 - 剣ヶ峰<ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" /><ref>[[#上高地・乗鞍岳を歩く|平田謙一 (2000)、121頁]]</ref><ref group="注釈">子ノ原口コースは、2005年の時点で閉鎖されている。</ref><ref name="平田謙一 (2005)、155-157頁" /> |
|||
; 阿多野口コース |
|||
: (行程):アイミックスキャンプ場 - 林道 - 尾根 - 中洞権現 - 剣ヶ峰<ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" /> |
|||
; 野麦口コース |
|||
: (行程):高根町野麦 - 焼石原 - 高天ヶ原 - 剣ヶ峰<ref group="注釈">野麦口コースは、2005年の時点で通行禁止となっている。</ref><ref name="平田謙一 (2005)、155-157頁" /> |
|||
=== 山小屋・宿泊施設 === |
=== 山小屋・宿泊施設 === |
||
[[ファイル:Mount Asahi of Mount Norikura from Mount Marishiten.jpg|thumb|200px|right|1920年に建造された奥左端の山頂と摩利支天岳との鞍部にある[[山小屋]](左側:肩の小屋)、右側は[[東京大学宇宙線研究所]]乗鞍観測所]] |
|||
[[ファイル:Norikuradake_kata-no-koya_P8128492.jpg|thumb|240px|乗鞍肩ノ小屋]] |
|||
1919年(大正8年)に[[南安曇郡]][[安曇村]]により乗鞍岳で最初に登山者用の[[山小屋]]の建設が進められていたが、完成間近に突風で倒壊した<ref name="柳原修一 (1990)、61-66頁" />。翌年麓の安曇野村議会議員の筒期音弥により、現在の肩の小屋の位置に間口6[[間]]、奥行3間の小さな山小屋が建てられた<ref name="柳原修一 (1990)、61-66頁" />。当時は「乗鞍小屋」や「筒木小屋」と呼ばれていて、この山小屋の開設により次第に登山者が増加していった<ref name="柳原修一 (1990)、61-66頁" />。1926年(大正15年)番所大滝付近の麓に鈴蘭小屋が建てられスキー客の宿として利用され、1929年(昭和4年)に現在の位置に移設して通年営業の山小屋として開業した<ref name="柳原修一 (1990)、61-66頁" />。その後山頂周辺に岐阜県山岳会の小屋など4軒の山小屋が建てられ、大衆登山の山となった<ref name="柳原修一 (1990)、61-66頁" />。鈴蘭小屋の少し上部に1927年(昭和2年)に冷泉小屋が建てられた。乗鞍岳の東面は溶岩流のなだらかな斜面でスキーに適した地形で全国の注目を集めた。これらの山小屋により乗鞍高原からの登山ルートが築かれていった。肩の小屋は1961年(昭和36年)に増築され収容能力を増し、登山者の増加に対応した<ref name="柳原修一 (1990)、61-66頁" />。登山者用の山小屋が山頂周辺などにある<ref>[[#山の便利手帳|山の便利手帳 (2010)、166頁]]</ref>。山頂直下北には1931年(昭和6年)に建てられた売店営業のみの頂上小屋がある。山頂直下の摩利支天岳との鞍部には肩ノ小屋がある。畳平には、一般観光客向けの[[旅館]]タイプの[[宿泊施設]]である乗鞍山頂銀嶺荘と、乗鞍白雲荘(畳平駐車場に隣接しており、個室もあり一般観光客の利用も多いが、[[ドミトリー|相部屋]]中心で、付近の残雪が少なくなると入浴ができなくなるなど、設備的には山小屋である。)がある。乗鞍高原からコースの乗鞍エコーライン沿いの位ヶ原には、山スキーなどに利用される位ヶ原山荘がある。南山麓の野麦峠には野麦峠お助け小屋がある。東山麓の乗鞍高原には[[乗鞍高原温泉ユースホステル]]の宿泊施設がある。千町尾根の登山道には1999年(平成11年)に建てられた奥千町避難小屋<ref name="垣外富士男 (2002)、209頁" />、丸尾尾根には枯松平避難小屋、猫岳の北西には猫の小屋、十石山頂上直下には十石小屋の[[避難小屋]]がある。 |
|||
登山者用の[[山小屋]]が山頂周辺にある。 |
|||
* 乗鞍肩ノ小屋 |
|||
* 白雲荘(白雲荘は畳平駐車場に隣接しており、個室もあり一般観光客の利用も多いが、[[ドミトリー|相部屋]]中心で、付近の残雪が少なくなると入浴ができなくなるなど、設備的には山小屋である。) |
|||
* 乗鞍岳頂上小屋(売店のみで宿泊はできない。) |
|||
* 位ヶ原山荘 |
|||
* 奥千町避難小屋(千町尾根の登山道上にある[[避難小屋]]) |
|||
[[畳平]]には、一般観光客向けの[[旅館]]タイプの[[宿泊施設]]ある。 |
|||
* 乗鞍山頂銀嶺荘 |
|||
* 乗鞍岳山頂乗鞍山荘 |
|||
* [[乗鞍高原温泉ユースホステル]] |
|||
{| class="wikitable" |
|||
[[ファイル:Norikuramountaincycling.jpg|thumb|240px|ゴール地点の様子]] |
|||
|- |
|||
=== 全日本マウンテンサイクリングin乗鞍 === |
|||
!画像 |
|||
{{Main|全日本マウンテンサイクリングin乗鞍}} |
|||
!名称 |
|||
毎年8月の最終日曜に開催される[[自転車]][[ヒルクライム]]レース。乗鞍エコーラインの鈴蘭から長野・岐阜県境までの区間、全長約20km、標高差1,258m(スタート地点1,458m, ゴール地点2,716m)(大会主催者側の公称値は全長22km、標高差1,400m、恐らく[[東京大学宇宙線研究所|宇宙線観測所]]までの数値)のコースをひたすら登り続ける。[[1986年]]([[昭和]]61年)から実施されており2011年大会で実に26回目を数える、日本のヒルクライムレースの草分け的存在である。最近の自転車人気の復活も手伝ってか近年の参加者数は3,000名を大きく超える規模となっている。 |
|||
!所在地 |
|||
![[標高]]<br />([[メートル|m]]) |
|||
!剣ヶ峰からの<br />方角と距離(km)<br /><ref group="注釈">剣ヶ峰(乗鞍岳の山頂)からの山小屋までの距離は、登山経路上の距離ではなく、2地点の直線距離。</ref> |
|||
!収容<br />人数 |
|||
!備考 |
|||
|- |
|||
|[[ファイル:Norikura Hakuunso.jpg|100px|畳平の駐車場脇にある2013年に改築された乗鞍白雲荘]] |
|||
|乗鞍白雲荘 |
|||
|畳平と鶴ヶ池北西 |
|||
|2,704 |
|||
|{{direction2|N}} 2.1 |
|||
|style="text-align:right;"|60 |
|||
|2013年に改築 |
|||
|- |
|||
|[[ファイル:Kuraigahara sanso s3.JPG|100px|乗鞍岳から見下ろす乗鞍エコーライン沿いにある位ヶ原山荘]] |
|||
|位ヶ原山荘 |
|||
|位ヶ原<br />乗鞍エコーライン沿い |
|||
|2,350 |
|||
|{{direction2|NE}} 2.1 |
|||
|style="text-align:right;"|50 |
|||
|1940年建造<br />山スキーなどに利用される |
|||
|- |
|||
|[[ファイル:Norikudake Chojogoya.jpg|100px|山頂直下北にある頂上小屋(売店のみ)]] |
|||
|頂上小屋 |
|||
|山頂直下北 |
|||
|2,800 |
|||
|{{direction2|N}} 0.1 |
|||
| |
|||
|1931年建造<br />山頂に最も近いが、売店のみ |
|||
|- |
|||
|[[ファイル:Katanokoya in Mount Norikura.jpg|100px|南側登山道からの肩ノ小屋]] |
|||
|肩ノ小屋 |
|||
|山頂直下北<br />大雪渓上部 |
|||
|2,800 |
|||
|{{direction2|N}} 0.9 |
|||
|style="text-align:right;"|200 |
|||
|1920年建造<br />山頂に最寄りの宿泊可能な山小屋<br>[[交通困難地]](毎年[[11月1日]]~翌6月末日)<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.post.japanpost.jp/about/yakkan/1-7.pdf |title=別冊(内国郵便約款第79条及び第97条関係) 交通困難地・速達取扱地域外一覧 |accessdate=2022-05-01 |publisher=[[日本郵便]] |date=2022-02-21}}</ref> |
|||
|- |
|||
|[[File:野麦峠のお救い小屋.JPG|100px|お救い小屋]] |
|||
|野麦峠お助け小屋 |
|||
|[[野麦峠]] |
|||
|1,672 |
|||
|{{direction2|SE}} 7.2 |
|||
|style="text-align:right;"|50 |
|||
|1841年建造<br />郡代が設置。昭和に復元 |
|||
|} |
|||
== 地理 == |
== 地理 == |
||
飛騨山脈南部の主稜線にあり、主峰の剣ヶ峰から北に硫黄岳、十石岳を経て十石尾根が安房峠まで延び[[焼岳]]につながる、南に高天ヶ原と戸鞍を経て県界尾根が野麦峠まで延び、[[鎌ヶ峰]]につながる<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、6-8頁" />。 |
|||
[[ファイル:Ontakesan and Dinichidake from norikuradake 1998-05-16.jpg|thumb|240px|剣ヶ峰から望む大日岳と[[御嶽山 (長野県)|御嶽山]]]] |
|||
[[ファイル:Norikuradake from Kisokomagatake 7th 2007-4-29.JPG|thumb|240px|[[木曽駒ヶ岳]]から望む乗鞍岳の峰々]] |
|||
=== 乗鞍岳の峰々 === |
|||
* '''剣ヶ峰'''(けんがみね)…乗鞍岳の主峰 権現池火山体の[[外輪山]] 3,026m |
|||
* '''大日岳'''(だいにちだけ)…権現池火山体の外輪山 奥ノ院 3,014m |
|||
* '''屏風岳'''(びょうぶだけ)…権現池火山体の外輪山 2,968m |
|||
* '''薬師岳'''(やくしだけ)…権現池火山体の外輪山 2,950m |
|||
* '''雪山岳'''(せつざんだけ)…権現池火山体の外輪山 2,891m |
|||
* '''水分岳'''(みくまりだけ)…権現池火山体の外輪山 2,896m |
|||
* '''朝日岳'''(あさひだけ)…権現池火山体の外輪山 2,975m |
|||
* '''蚕玉岳'''(こだまだけ)…権現池火山体の外輪山 2,979m |
|||
* '''摩利支天岳'''(まりしてんだけ)…[[コロナ]]観測所設置 2,872m |
|||
* '''不動岳'''(ふどうだけ)…2,875m |
|||
* '''里見岳'''(さとみだけ)…2,824m |
|||
* '''富士見岳'''(ふじみだけ)…2,817m |
|||
* '''恵比寿岳'''(えびすだけ)…2,831m |
|||
* '''魔王岳'''(まおうだけ)…2,760m |
|||
* '''大黒岳'''(だいこくだけ)…2,772m |
|||
* '''大丹生岳'''(おおにゅうだけ)…2,698m |
|||
* '''烏帽子岳'''(えぼしだけ)…2,692m |
|||
* '''四ツ岳'''(よつだけ)…2,751m |
|||
* '''猫岳'''(ねこだけ)…2,581m |
|||
* '''大崩山'''(おおくえやま)…2,523m |
|||
* '''硫黄岳'''(いおうだけ)…2,554m |
|||
* '''十石山'''(じゅっこくやま)…2,525m |
|||
* '''安房山'''(あぼうさん)…2,220m |
|||
以上は、乗鞍23峰と言われている。その他の峰として、'''高天ヶ原'''(たかまがはら、2,829m)と'''金山岩'''(かなやまいわ、2,532m)がある。 |
|||
=== 山頂付近の池 === |
|||
山頂付近には12個の[[火口湖]]の池がある。 |
|||
* 権現池 |
|||
* 五ノ池 |
|||
* 不消ヶ池(きえずがいけ) |
|||
* 鶴ヶ池 |
|||
* 亀ヶ池 |
|||
* 大丹生池 |
|||
* 土樋池 |
|||
* 無名池(四ツ岳と硫黄岳の間) |
|||
=== 周辺の山 === |
=== 周辺の山 === |
||
飛騨山脈南端の山で、[[野麦峠]]付近までが中部山岳国立公園の指定範囲である<ref name="park" />。 |
|||
[[ファイル: |
[[ファイル:20101130木曽山脈.jpg|thumb|240px|赤石山脈上空から望む乗鞍岳と周辺の山、手前に[[木曽山脈]]、遠景が左から御嶽山と中央の乗鞍岳から北へ延びる飛騨山脈]] |
||
[[ファイル:19 Norikuradake from Nishihotakadake 2000-4-17.jpg|thumb|240px|[[西穂高岳]]から望む乗鞍岳]] |
|||
{| class="wikitable" |
{| class="wikitable" |
||
!山容 |
!山容 |
||
!名 |
!山名 |
||
!標高<ref name="kijyun" /><ref name="kokudo">{{Cite web|和書|url=https://www.gsi.go.jp/kihonjohochousa/kihonjohochousa41139.html |title=日本の主な山岳標高(岐阜県の山) |publisher=国土地理院 |accessdate=2011-06-11}}</ref><br />(m) |
|||
!標高<br>([[メートル|m]]) |
|||
! |
!三角点等級<br />基準点名<ref name="kijyun" /> |
||
!乗鞍岳からの<br />方角と距離( |
!乗鞍岳からの<br />方角と距離(km) |
||
!備考 |
!備考 |
||
|- |
|- |
||
|[[ |
|[[ファイル:Mount Haku from Mount Norikura s2.jpg|80px|乗鞍岳から望む白山]] |
||
|[[白山]] |
|[[白山]] |
||
|2,702.<small>17</small> |
|2,702.<small>17</small> |
||
| |
| 一等<br />「白山」 |
||
|{{direction2|W}} 70.6 |
|||
|<Div Align="center"> 西 70.6</Div> |
|||
|[[両白山地]]の[[最高峰]]<br /><small>[[日本百名山]]</small> |
|[[両白山地]]の[[最高峰]]<br /><small>[[日本百名山]]</small> |
||
|- |
|- |
||
|[[ |
|[[ファイル:Mount Hotaka from Mount Norikura s2.jpg|80px|乗鞍岳から望む穂高岳]] |
||
|[[ |
|[[穂高岳]] |
||
|3,190 |
|3,190 |
||
| |
| |
||
|{{direction2|NNE}} 22.0 |
|||
|<Div Align="center"> 北 22.0</Div> |
|||
|[[飛騨山脈 |
|[[飛騨山脈]]の最高峰<br /><small>日本百名山</small> |
||
|- |
|- |
||
|[[ |
|[[ファイル:Mount Yake from Mount Norikura.jpg|80px|乗鞍岳から望む焼岳]] |
||
|[[焼岳]] |
|[[焼岳]] |
||
|2,455.<small>37</small> |
|2,455.<small>37</small> |
||
| |
| 二等<br />「焼岳」 |
||
|{{direction2|NNE}} 13.7 |
|||
|<Div Align="center"> 北 13.7</Div> |
|||
|<small>日本百名山</small> |
|<small>日本百名山</small> |
||
|- style="background-color:#ccc" |
|- style="background-color:#ccc" |
||
|[[ |
|[[ファイル:19 Norikuradake from Nishihotakadake 2000-4-17.jpg|80px|西穂高岳から望む乗鞍岳]] |
||
| |
|'''乗鞍岳''' |
||
|3,025.<small> |
|3,025.<small>73</small> |
||
| |
| 一等<br />「乗鞍岳」 |
||
|{{direction2|O}} 0 |
|||
|<Div Align="center">0</Div> |
|||
|<small>日本百名山</small> |
|<small>日本百名山</small> |
||
|- |
|- |
||
|[[ |
|[[ファイル:Mount Kama from Mount Norikura.jpg|80px|乗鞍岳から望む鎌ヶ峰]] |
||
|[[鎌ヶ峰]] |
|[[鎌ヶ峰]] |
||
|2,121.<small>10</small> |
|2,121.<small>10</small> |
||
| |
| 二等<br />「鎌ケ岳」 |
||
|{{direction2|SSE}} 9.8 |
|||
|<Div Align="center"> 南 9.8</Div> |
|||
| |
| |
||
|- |
|- |
||
|[[ファイル:Norikura Plateau from Mount Norikura.jpg|80px|乗鞍岳から望む鉢盛山と乗鞍高原]] |
|||
|[[File:Kohatimori yama from hatimori 2008 4 25.JPG|80px]] |
|||
|[[鉢盛山]] |
|[[鉢盛山]] |
||
|2,446.<small>43</small> |
|2,446.<small>43</small> |
||
| |
| 一等<br />「鉢盛山」 |
||
|{{direction2|E}} 18.2 |
|||
|<Div Align="center"> 東 18.2</Div> |
|||
|<small>[[日本三百名山]]</small> |
|<small>[[日本三百名山]]</small> |
||
|- |
|- |
||
|[[ |
|[[ファイル:Mount Ontake from Mount Norikura s2.jpg|80px|乗鞍岳から望む御嶽山]] |
||
|[[ |
|[[御嶽山]] |
||
|3,067 |
|3,067 |
||
|(一等)「御嶽山」<br />(3,063.<small>41</small> m) |
|(一等)「御嶽山」<br />(3,063.<small>41</small> m) |
||
|{{direction2|SSW}} 24.6 |
|||
|<Div Align="center"> 南 24.6</Div> |
|||
|独立峰<br /><small>日本百名山</small> |
|独立峰<br /><small>日本百名山</small> |
||
|- style="white-space:nowrap" |
|- style="white-space:nowrap" |
||
|[[ファイル:Kiso Mountains from Mount Norikura s2.jpg|80px|乗鞍岳から望む木曽駒ヶ岳周辺の木曽山脈の山並]] |
|||
|[[File:Kisokomagatake from Shogigashirayama 2007-5-28.JPG|80px]] |
|||
|[[木曽駒ヶ岳]] |
|[[木曽駒ヶ岳]] |
||
|2,955.<small>95</small> |
|2,955.<small>95</small> |
||
| |
| 一等<br />「信駒ケ岳」 |
||
|{{direction2|SE}} 41.8 |
|||
|<Div Align="center">南東 41.8</Div> |
|||
|[[木曽山脈 |
|[[木曽山脈]]の最高峰<br /><small>日本百名山</small> |
||
|} |
|} |
||
=== 源流の河川 === |
=== 源流の河川 === |
||
[[本州]]における[[太平洋]]側([[木曽川]])と[[日本海]]側([[信濃川]]、[[神通川]])の中央[[分水界|分水嶺]]が剣ヶ峰を通っており、この分水嶺の最高所となっている。 |
[[本州]]における[[太平洋]]側([[木曽川]])と[[日本海]]側([[信濃川]]、[[神通川]])の中央[[分水界|分水嶺]]が剣ヶ峰を通っており、この分水嶺の最高所となっている。 |
||
* [[高原川]] |
* [[高原川]] - 神通川の[[支流]]、日本海へ流れる。 |
||
* [[梓川]]、[[小大野川]] |
* [[梓川]]、[[小大野川]] - 信濃川の支流、日本海へ流れる。 |
||
* [[飛騨川]] |
* [[飛騨川]] - 木曽川の支流、[[伊勢湾]]から太平洋へ流れる。 |
||
=== 周辺の峠 === |
=== 周辺の峠 === |
||
* [[平湯峠]] |
* [[平湯峠]] - 標高1,684 m。山頂の北北西8.5 km。[[国道158号]]の平湯トンネルが下を通る。輝山と大崩山との鞍部、神通川の支流である久手川と高原川の支流であるトヤ谷との分水嶺。岐阜県道5号乗鞍公園線が通り、岐阜県道485号平湯久手線の終点。 |
||
* [[安房峠]] |
* [[安房峠]] - 標高1,790 m。山頂の北北東10.1 km。国道158号が通り、飛騨山脈主稜線の白倉山と安房山との鞍部、高原川の支流である安房谷と梓川との分水嶺、岐阜県と長野県との[[県境]]。 |
||
* [[野麦峠]] |
* [[野麦峠]] - 標高1,672 m。山頂の南東7.2 km。[[長野県道・岐阜県道39号奈川野麦高根線]]が通り、戸蔵と[[鎌ヶ峰]]との鞍部、飛騨川の支流である益田川と梓川の支流である奈川との分水嶺、岐阜県と長野県との県境<ref name="山と高原地図 (2013)">[[#山と高原地図|山と高原地図 (2013)]]</ref>。野麦峠お助け小屋があり、1979年(昭和54年)の[[映画]]『[[あゝ野麦峠 (1979年の映画)|あゝ野麦峠]]』で広く知られるようになった。 |
||
* [[白樺峠]] - 標高約1,620 m。山頂の東9.6 km。上高地乗鞍スーパー林道が通り、タカの渡りの観察地として知られている。 |
|||
[[ファイル:Sanbon Falls panorama.jpg|200px|サムネイル|乗鞍高原の[[梓川]]支流の小大野川にある[[三本滝]]]] |
|||
=== 周辺の滝 === |
=== 周辺の滝 === |
||
* [[平湯大滝]] |
* [[平湯大滝]] - 高原川の源流部 |
||
* '''乗鞍三名滝''' |
* '''乗鞍三名滝''' - [[三本滝]]、[[善五郎の滝]]、[[番所大滝]]が梓川支流の小大野川にある。 |
||
* 布引滝 |
* 布引滝 - 五色ヶ原<ref name="takayama100" /> |
||
* 岳谷滝 |
* 岳谷滝 - 飛騨川の支流である益田川の源流部 |
||
* 青垂滝、御越滝 |
* 青垂滝、御越滝 - 神通川の支流である小八賀川の源流部 |
||
== 観光 == |
|||
畳平まで[[岐阜県道5号乗鞍公園線|乗鞍スカイライン]](岐阜県側)や[[長野県道84号乗鞍岳線|乗鞍エコーライン]](長野県側)といった自動車道が通じていることもあり、「日本で最も登りやすい[[日本の山一覧 (3000m峰)|3,000m超級の山]]<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、6-8頁" />、「[[ハイヒール]]でも上れる山」とも称されてきた。しかし自家用車で畳平の駐車場まで乗り入れのできた以前とは異なり、マイカー規制により麓にある専用駐車場などから[[シャトルバス]]又は[[タクシー]]の利用が必要となった。高山市は、江名子町より望む乗鞍岳、夕焼けの乗鞍岳、朝の乗鞍岳、桔梗ヶ原より望む乗鞍烏帽子岳、布引滝(五色ヶ原)、五色ヶ原の森雄池、[[十二ヶ岳 (岐阜県)|十二ヶ岳]]付近より望む乗鞍岳、舟山山頂道路より望む乗鞍岳、日和田高原から望む[[レンゲツツジ|レンゲつつじ]]と乗鞍岳、野麦峠より望む乗鞍岳、野麦峠の池より望む乗鞍岳を「新高山市100景」の一つとして選定している<ref name="takayama100" />。 |
|||
[[ファイル:Tatamidaira.jpg|thumb|200px|right|乗鞍スカイライン終点の畳平(標高2,702 m、岐阜県高山市丹生川町)、駐車場、宿泊施設、山小屋、郵便局、神社などがある。]] |
|||
=== 畳平 === |
|||
'''畳平'''(たたみだいら、岐阜県高山市丹生川町)は乗鞍岳山頂部にある恵比寿火山体の火口原<ref>[[#日本山名辞典|日本山名辞典 (1992)、324頁]]</ref>。標高は白山と同じ2,702 mで、日本最高所の路線バスのバス停がある。乗鞍スカイラインの終点であり、観光バスやタクシーが駐停車する[[駐車場]]がある。[[高山植物]]のお花畑には[[木道]]の遊歩道が整備され観光スポットとなっている。高山植物の見頃は6月下旬-8月中旬ごろ<ref>[[#上高地・乗鞍岳を歩く|平田謙一 (2000)、77頁]]</ref>。乗鞍自然観察指導員による自然観察教室が開催されている。周辺には山小屋などの宿泊施設と宇宙線研究所などの観測施設があり、乗鞍岳[[天体観測|星空観察]]会が行われている。また[[売店]]、[[食堂]]、自然観察指導所、[[乗鞍山頂簡易郵便局]]<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2013/08_tokai/0605_01_01.pdf |title=簡易郵便局の業務の開始(乗鞍山頂簡易郵便局) |publisher=日本郵政東海支社 |format=PDF |date=2013-06-05 |accessdate=2013-09-05}}</ref>、乗鞍本宮[[神社]]がある。乗鞍スカイライン開通後しばらくの間、鶴ヶ池周辺では[[立山黒部アルペンルート]]の雪の大谷のような雪の回廊が見られる。駐車場の500 mほど東の乗鞍エコーラインの峠部(長野県と岐阜県との県境)、大黒岳、富士見岳などがご来光スポットとなっている<ref>[[#上高地 乗鞍|小林俊樹 (1996)、28頁]]</ref>。畳平への[[ペット]]の持ち込みは禁止されている<ref name="mycar">{{Cite web|和書|url=http://www.hida-norikura.com/mycar/ |title=マイカー規制のご案内 |publisher=飛騨乗鞍観光協会 |accessdate=2013-09-11}}</ref>。 |
|||
=== 乗鞍高原 === |
|||
[[ファイル:Norikuradake.jpg|thumb|200px|right|乗鞍高原から望む乗鞍岳]] |
|||
乗鞍岳の東麓に広がる標高1,200-1,800 mの溶岩流の岩原で、三本滝、[[牛留池]]、湿原など景観に恵まれた環境である。4月上旬-5月上旬にはミズバショウが開花し、5月に入るとシラカバや[[カラマツ]]が芽吹き始める<ref>[[#上高地・乗鞍岳を歩く|平田謙一 (2000)、70-71頁]]</ref>。牛留池や[[一ノ瀬園地]]などからは乗鞍岳を望むことができる<ref>[[#分県登山ガイド長野県の山|垣外富士男 (1998)、86-87頁]]</ref>。古くは修験者の登路となり、江戸時代には大樋銀山で銀の産出が行われていた<ref>[[#乗鞍岳自然観察ガイド|乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、76-77頁]]</ref>。一ノ瀬園地ではソバの栽培が盛んに行われている。Mt.乗鞍(旧称の乗鞍高原温泉スキー場と旧[[乗鞍高原いがやスキー場]]のMt.乗鞍スノースマイルエリア)のスキー場がある。鈴蘭には[[長野県乗鞍自然保護センター]]がある。湯川から源泉を[[引湯]]している[[乗鞍高原温泉]](のりくら温泉)がある。乗鞍高原温泉、すずらん温泉、安曇乗鞍温泉、わさび沢温泉の総称として、[[のりくら温泉郷]]と呼ばれている。 |
|||
{{Main|乗鞍高原}} |
|||
=== サイクリング === |
|||
乗鞍スカイラインが2003年にマイカー規制される以前の有料道路であった時期には、[[自転車]]の通行が禁止されていた。マイカー規制後は自転車の通行が許可された。畳平付近の乗鞍エコーラインの標高2,716 m地点(大黒岳と富士見岳との鞍部、長野県と岐阜県との県境)は、日本で自転車で走行できる最も標高の高い県道の地点である。毎年夏に、[[乗鞍スカイライン・サイクルヒルクライム]]と[[全日本マウンテンサイクリングin乗鞍]]の[[自転車レース]]が開催されている。 |
|||
==== 乗鞍スカイライン・サイクルヒルクライム ==== |
|||
毎年7月の第1日曜日に開催される乗鞍スカイラインをメインコースとした自転車[[ヒルクライム]]レース。岐阜県高山市丹生川町久手の殿下平交流ターミナル(標高1,360m)を起点として、平湯峠を経由して畳平の鶴ヶ池駐車場(標高2,702 m)を終点とする全長18.8 km(標高差1,642 m)のコース。乗鞍スカイラインがマイカー規制された翌年の2004年から始まり、2013年のエントリー数は1,011名であった。 |
|||
{{Main|乗鞍スカイライン・サイクルヒルクライム}} |
|||
[[ファイル:Norikuramountaincycling.jpg|thumb|200px|全日本マウンテンサイクリングin乗鞍のゴール地点の様子]] |
|||
==== 全日本マウンテンサイクリングin乗鞍 ==== |
|||
毎年8月の最終日曜に開催される自転車ヒルクライムレース。乗鞍エコーラインの鈴蘭から長野・岐阜県境までの区間、全長約20.5km、標高差1,260m(スタート地点1,458m, ゴール地点2,716m)(大会主催者側の公称値)のコースをひたすら登り続ける。1986年(昭和61年)から実施されており2014年大会で実に29回目を数える、日本のヒルクライムレースの草分け的存在である<ref>{{Cite web|和書|url=http://j-cycling.org/norikura/index.html |title=全日本マウンテンサイクリングin乗鞍 |publisher=[[日本サイクリング協会]] |accessdate=2013-09-05}}</ref>。最近の自転車人気の復活も手伝ってか近年の参加者数は3,000名を大きく超える規模となっている。 |
|||
{{Main|全日本マウンテンサイクリングin乗鞍}} |
|||
[[ファイル:Norikura Kogen Snow + Spa Resort.jpg|200px|サムネイル|東山腹の[[乗鞍高原]]にある[[スキー場]]の[[Mt.乗鞍]]]] |
|||
=== スキー === |
|||
国内では[[月山]]、[[立山]]とともに夏スキーができる山として知られている。冬に積雪が多く夏でも山頂付近の各所に雪渓が残り、剣ヶ峰の北東面の大雪渓と魔王岳北東面の鶴ヶ池雪渓がスキー指定地とされ夏スキーや[[スノーボード]]で賑わっている<ref name="日本山名辞典 (1992)、407頁" />。環境保護の意識が低かった1960年代には、某大学のスキー部が雪面を固めるためトラックで4トン近くの塩を運びこび散布。大雪渓周辺の高山植物が極端に衰退する出来事もあった<ref>「お花畑でバーベキュー 悪質な高山植物荒らし」『朝日新聞』昭和44年(1969年)8月27日朝刊、12版、15面</ref>。 |
|||
山麓には以下の[[スキー場]]がある。1934年(昭和9年)1月に開業したリフトなどがない「飛騨乗鞍スキー場」が飛騨側の大尾根にあった<ref>[[#飛騨の山|飛騨山岳会 (2010)、273頁]]</ref>。1997年(平成9年)に岐阜県[[大野郡]][[丹生川村 (岐阜県)|丹生川村]]の村営スキー場として開業した「ひだ乗鞍ペンタピアスノーワールド」は、2007年1月に廃止となった。南西山麓の子ノ原高原には1972年(昭和47年)に開業した「子ノ原高原スキー場」があった<ref>[[#飛騨の山|飛騨山岳会 (2010)、274頁]]</ref>。 |
|||
* [[Mt.乗鞍]](旧称の乗鞍高原温泉スキー場と旧[[乗鞍高原いがやスキー場]]のMt.乗鞍スノースマイルエリア) |
|||
* [[飛騨高山スキー場]] |
|||
* [[飛騨ほおのき平スキー場]] |
|||
=== 五色ヶ原 === |
|||
乗鞍岳の西麓の3,000 [[ヘクタール|ha]]ほどの[[ブナ]]と[[ミズナラ]]などの[[広葉樹]]と[[コメツガ]]と[[シラビソ]]などの[[針葉樹]]の森林地帯で、溶岩台地周辺の地形に[[池]]、[[湿原]]、[[滝]]などが点在する<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、10-11頁">[[#乗鞍岳自然観察ガイド|乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、10-11頁]]</ref>。588[[種 (分類学)|種]]の[[植物]]が確認され<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、10-11頁" />、多くの環境省の[[レッドリスト]]指定種が含まれている<ref>[[#乗鞍岳自然観察ガイド|乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、54-55頁]]</ref>。多くの自然が残されていて、一般の入山が規制され<ref group="注釈">五色ヶ原内への入山には認定ガイド同伴が必要となっている。</ref>完全予約制で[[インタープリター (自然)|インタープリター]]<ref group="注釈">インタープリター制度は、日本では五色ヶ原で最初に導入された。</ref>による周辺の遊歩道でガイドが行われている<ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、48-49頁">[[#乗鞍岳自然観察ガイド|乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、48-49頁]]</ref>。2004年(平成16年)7月に整備された周辺の滝巡りをするカモシカコースと池や湿地などを巡るシラビソコースがある<ref name="goshiki" /><ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、48-49頁" /><ref>[[#岐阜県の山|島田靖 (2009)、34-37頁]]</ref>。「高山市乗鞍山麓五色ヶ原の森」が、2013年(平成25年)3月21日に「第8回エコツーリズム大賞」の優秀賞を受賞した<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.ecotourism.gr.jp/index.php/events/award/ |title=エコツーリズム大賞 |publisher=日本エコツーリズム協会 |accessdate=2013-09-05}}</ref>。 |
|||
{{Main|五色ヶ原 (乗鞍岳)}} |
|||
[[ファイル:Sirahone spa kyoudou-noten-buro 2008.jpg|200px|サムネイル|[[白骨温泉]]の共同[[露天風呂]]]] |
|||
=== 周辺の温泉 === |
=== 周辺の温泉 === |
||
229行目: | 740行目: | ||
* 湯川源泉 |
* 湯川源泉 |
||
== 交通・アクセス == |
|||
東麓では1929年(昭和4年)に大野川まで自動車道が通り、1940年(昭和15年)には幅員4.5 mの車道が乗鞍高原鈴蘭まで開通した<ref name="柳原修一 (1990)、61-66頁" />。山域の北端を[[国道158号]]が通り、その安房峠の下部を1997年(平成9年)に開通した[[安房峠道路]]の[[トンネル]]が貫通している。国道158号の高山市側から[[平湯峠]]を経由して山上部の畳平まで[[岐阜県道5号乗鞍公園線]]が通じており、上部の区間は「乗鞍スカイライン」と呼ばれている。国道158号の[[平湯温泉]]側からは、平湯峠まで[[岐阜県道485号平湯久手線]]が通じている。山頂の北2 kmの畳平(標高2,702 m)には、日本で最高所の乗鞍バスターミナルがある。長野県の乗鞍高原側からは、[[長野県道84号乗鞍岳線]]が畳平まで通じ、その県道の上部の区間が「乗鞍エコーライン」と呼ばれている。1973年(昭和48年)に上高地方面から[[白骨温泉]]、乗鞍高原、白樺峠を経由して奈川温泉までの[[上高地乗鞍林道|上高地乗鞍スーパー林道]]の有料道路が開通し、2008年(平成20年)に無料開放された。山域の南端の野麦峠を[[長野県道・岐阜県道39号奈川野麦高根線]]が通る。 |
|||
山麓には4つの[[スキー場]]がある。 |
|||
[[ファイル:Norikura Skyline and Hida Mountains.jpg|サムネイル|乗鞍スカイラインを畳平から[[平湯峠]]方面に走行する[[濃飛乗合自動車|濃飛バス]]の[[シャトルバス]]、遠景は[[飛騨山脈]]の山並み]] |
|||
* [[Mt.乗鞍]] |
|||
* [[乗鞍高原いがやスキー場]] |
|||
* [[飛騨高山スキー場]] |
|||
* ほおのき平スキー場 |
|||
=== |
=== マイカー規制とシャトルバス === |
||
[[1973年]](昭和48年)に岐阜県初の[[有料道路]]として開通した乗鞍スカイラインは一般車両が通行できる日本最高所の有料道路であり、終点は収容台数230台の畳平駐車場と210台の鶴ヶ池駐車場があった<ref name="平田謙一 (2000)、66-69頁" />。乗鞍スカイラインと乗鞍エコーラインから畳平まで乗り入れる車両は年間20万台を越えていた<ref>[[#花の乗鞍岳|田中豊雄 (1999)、2頁]]</ref>。2003年から乗鞍スカイラインの[[平湯峠]]ゲートより上部及び[[長野県道84号乗鞍岳線|乗鞍エコーライン]]の[[三本滝]]ゲートより上部で[[マイカー規制]]が実施されている<ref name="mycar" />。岐阜県側では、[[濃飛乗合自動車|濃飛バス]]によりアカンダナ駐車場(平湯温泉)と朴の木平駐車場から畳平行きの専用[[シャトルバス]]が運行されている(例年除雪後に冬期閉鎖が解除され、5月15日に開通する。)。長野県側では、[[アルピコ交通]]の[[松本電鉄バス]]により乗鞍高原内の第1駐車場、第2駐車場、第3駐車場、三本滝駐車場から畳平行きのシャトルバスが運行されている(例年除雪後に冬期閉鎖が解除され、7月初旬に畳平までの全区間が開通する。)。7-9月の夏期シーズンには[[ご来光]]時に合わせた早朝便が運行されている。 |
|||
*最寄りの[[インターチェンジ]]は、[[中部縦貫自動車道]]の[[高山インターチェンジ (岐阜県)|高山インターチェンジ]]または[[長野自動車道]]の[[松本インターチェンジ]]である。松本方面からは[[安房峠道路]]が利用できる。[[上高地乗鞍林道|上高地乗鞍スーパー林道]]を利用することもできる。乗換駐車場から、畳平行きの専用[[シャトルバス]]を利用することになる。 |
|||
*最寄りの駅は、高山側は[[東海旅客鉄道|JR東海]][[高山本線]]の[[高山駅]]で、松本側は[[アルピコ交通上高地線]]の[[新島々駅]]である。 |
|||
=== 主要地点からの距離 === |
|||
* [[松本空港]]の西34 kmに位置する。 |
|||
* [[東海旅客鉄道|JR東海]][[高山本線]][[高山駅]]の東27 kmに位置し<ref name="日本山名辞典 (1992)、407頁" />、JR東海[[高山本線]][[飛騨小坂駅]]の東南東21.2 kmに位置し、[[アルピコ交通上高地線]]の[[新島々駅]]の西南西21 kmに位置する。 |
|||
* [[中部縦貫自動車道]](高山清見道路)[[高山インターチェンジ (岐阜県)|高山インターチェンジ]]の東南東30 kmに位置し、安房峠道路[[平湯インターチェンジ]]の南9 kmに位置する。 |
|||
== 乗鞍岳の風景 == |
== 乗鞍岳の風景 == |
||
=== 乗鞍岳の近景 === |
|||
麓の乗鞍高原からはその山容を望むことができ<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.sizenken.biodic.go.jp/view.php?camera_no=85 |title=乗鞍高原からみた乗鞍岳 |publisher=環境省・インターネット自然研究所 |accessdate=2016-11-17 }}</ref>、高山市街からは大きな山容を見渡すことができ、高山市などの山麓の多くの学校の[[校歌]]で歌われている<ref>[[#飛騨の山|飛騨山岳会 (2010)、4頁]]</ref>。 |
|||
<gallery> |
<gallery> |
||
ファイル:Norikuradake.jpg|<small>乗鞍岳</small> |
|||
ファイル:Norikura-dake.JPG|<small>乗鞍岳</small> |
|||
ファイル:Sunrise_Mt_Fujima_Norikura.jpg|<small>富士見岳からご来光と[[雲海]]</small> |
ファイル:Sunrise_Mt_Fujima_Norikura.jpg|<small>富士見岳からご来光と[[雲海]]</small> |
||
ファイル: |
ファイル:Natural flower garden in Tatamidaira of Mount Norikura.jpg|<small>恵比寿岳と畳平</small> |
||
ファイル:Norikura_tatamidaira.jpg|<small>乗鞍畳平</small> |
|||
ファイル:Norikura_tsurugaike1.jpg|<small>乗鞍 畳平 鶴ヶ池</small> |
|||
ファイル:Norikura_tsurugaike2.jpg|<small>乗鞍 畳平 鶴ヶ池</small> |
|||
ファイル:Norikura_tsurugaike4.jpg|<small>乗鞍 畳平 鶴ヶ池</small> |
|||
ファイル:Norikura_tsurugaike5.jpg|<small>鶴ヶ池から夏の星空</small> |
|||
ファイル:Norikura_tsurugaike3.jpg|<small>鶴ヶ池からのオリオン座</small> |
ファイル:Norikura_tsurugaike3.jpg|<small>鶴ヶ池からのオリオン座</small> |
||
ファイル: |
ファイル:Norikura_tsurugaike4.jpg|<small>乗鞍 畳平 鶴ヶ池</small> |
||
ファイル:Mount Norikura 01.jpg|<small>肩の小屋付近から望む乗鞍岳</small> |
|||
ファイル:Norikura_sunrise.jpg|<small>乗鞍岳からの日の出</small> |
|||
乗鞍岳の歩きやすい登山道.jpg|<small>乗鞍岳の歩きやすい登山道</small> |
|||
乗鞍岳での山スキー.jpg|<small>乗鞍岳での山スキー</small> |
|||
雪解けの権現池.jpg|<small>雪解けの権現池</small> |
|||
肩ノ小屋と気象観測所.jpg|<small>肩ノ小屋と気象観測所</small> |
|||
畳平と穂高連峰.jpg|<small>畳平と[[穂高連峰]]</small> |
|||
秋の乗鞍エコーライン.jpg|<small>秋の乗鞍エコーライン</small> |
|||
</gallery> |
</gallery> |
||
=== 乗鞍岳の遠景 === |
|||
[[ファイル:Mount Norikura and Ontake from Mount Haku.jpg|200px|サムネイル|右|西の[[白山]]から望む乗鞍岳(左)と御嶽山(右)]] |
|||
比較的新しい火山であることからなだらかな女性的な山容で<ref name="日本三百名山 (1997)、172頁" /><ref name="乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、6-8頁" />、御嶽山と同様に遠くから眺めると[[独立峰]]のように大きくその裾野を広げている。明治の[[歌人]]の[[長塚節]]が{{Quotation|うるはしみ 見し乗鞍は 遠くして 一目といえど ながくほこらむ|長塚節}}の[[短歌]]を残している<ref name="深田久弥 (1982)、223-226頁" />。[[深田久弥]]は「日本百名山」の著書で、「乗鞍の姿を一度見たらその山を忘れることができないだろう。」と記している<ref name="深田久弥 (1982)、223-226頁" />。麓の高山市の歌人[[福田夕咲]]は{{Quotation|み仏の 思惟の姿に 似たらずや 静けきかもよ 岳の夕ばえ|福田夕咲}}の短歌を残し、乗鞍岳の山容を[[仏]]の[[仰臥位|仰臥]]に見立てている<ref name="日本山岳会 (2005)、967-969頁" />。また飛騨の山の特徴を「乗鞍の雄大、[[槍ヶ岳]]の険峻、御嶽の壮厳、[[錫杖岳|錫杖]]の奇観、白山の崇高」と表現している<ref>[[#飛騨の山|飛騨山岳会 (2010)、2頁]]</ref>。松本市などの学校でも校歌に歌われている。乗鞍岳を背景として[[ゲンゲ]]と[[ギフチョウ]]を描いた[[ふるさと切手]](50円郵便切手)の『国土緑化・岐阜県』が、2006年(平成18年)5月19日に、[[日本郵政|郵便局]]から発売された<ref>[[#切手と風景印でたどる百名山|桜田隆範 (2007)、303頁]]</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.post.japanpost.jp/kitte_hagaki/stamp/furusato/2006/h180519_f.html |title=ふるさと切手「国土緑化」の発行 |publisher=日本郵政 |accessdate=2013-09-11}}</ref>。 |
|||
<gallery widths="150"> |
|||
Norikuradake from Kisokomagatake 7th 2 2007-4-29.JPG|東の[[木曽駒ヶ岳]]より |
|||
Mount Norikura and Ontake from Oiwa.jpg|南の[[濃尾平野]]より |
|||
Mount Norikura from Mount Kurai.jpg|西の[[位山]]より |
|||
Norikuradake from nishiho 1995 10 7.jpg|北の[[西穂高岳]]より |
|||
</gallery> |
|||
=== 乗鞍岳からの眺望 === |
|||
<gallery widths="150"> |
|||
Mount Fuji and Mount Kita from Mount Fujimi of Mount Norikura.jpg|富士見岳から望む[[赤石山脈|赤石山脈(南アルプス)]]越しにわずかに見える富士山 |
|||
Mount Ontake from Mount Norikura.jpg|御嶽山 |
|||
Mount Haku and Takayama from Mount Norikura.jpg|[[両白山地]]と高山市 |
|||
Mount Yari and Mount Hotaka from Mount Norikura s2.jpg|[[飛騨山脈]]の[[槍ヶ岳|槍]]・[[穂高岳|穂高連峰]] |
|||
</gallery> |
|||
== メディア == |
|||
=== 関連書籍 === |
|||
* {{Cite book|和書 |author= |date=1978 |title=乗鞍スカイライン沿線植物群落の変遷学術調査報告書 |publisher=岐阜県 |pages=ASIN B000J8CZBK}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=福島立実 |date=2001-12-20 |title=「岳」はおれの学舎―乗鞍岳を知りつくした男の物語 |publisher=[[河出書房新社]] |isbn=4309265103}} |
|||
=== 文献 === |
|||
* {{Cite journal |date=2002-03-29 |author=斎藤守也、入江誠 |url=https://www.nao.ac.jp/contents/about-naoj/reports/report-naoj/6-1-4.pdf |title=乗鞍コロナ観測所における気象観測 |format=PDF |journal=国立天文台報 |issue=第6巻 |pages=37-47頁 |publisher=[[国立天文台]]}} |
|||
* {{citation |author=中下留美子 |author2=鈴木彌生子 |author3=林秀剛 |author4=[[泉山茂之]] |coauthors=中川恒祐; 八代田千鶴; 淺野玄; [[鈴木正嗣]] |title=乗鞍岳畳平で人身事故を引き起こしたツキノワグマの食性履歴の推定 : 安定同位体分析による食性解析 |journal=哺乳類科学 |publisher=[[日本哺乳類学会]] |year=2010 |volume=50 |issue=1 |pages=43-48頁 |url=https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282679701087744}} |
|||
=== 絵画 === |
|||
* 『新雪の乗鞍岳』 - [[青地秀太郎]]の作品 |
|||
=== 写真集 === |
|||
* {{Cite book|和書 |author=山岸仁史 |date=2003-02 |title=よあけ乗鞍―山岸仁史写真集 |publisher=[[日本カメラ社]] |isbn=4817920599}} |
|||
=== テレビ番組 === |
|||
[[日本放送協会|NHK]]などにより、乗鞍岳を主題とした以下の[[テレビ番組]]などが放送されている。 |
|||
* 『日本百名山 乗鞍岳』 [[NHK衛星第2テレビジョン]]、1994年11月2日放送<ref>{{Cite web|和書|url=http://nhk.jp/chronicle/?0001000000000000%40000000000000000000000013-44-2F00000000000000000300 |title=NHKアーカイブス保存番組詳細 日本百名山 乗鞍岳(1994年11月2日放送) |publisher=[[日本放送協会|NHK]] |accessdate=2016-11-17 }}</ref> |
|||
* 『北アルプス 乗鞍岳』 [[さわやか自然百景]]、[[NHK総合テレビジョン|NHK総合テレビ]]、2000年1月16日放送<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.nhk.or.jp/sawayaka/norikura.html |title=北アルプス 乗鞍岳 |publisher=NHK |accessdate=2013-09-08}}</ref> |
|||
* 『週刊 日本の名峰 乗鞍岳』 [[日本の名峰]]、[[NHKデジタル衛星ハイビジョン]]、2009年1月30日放送<ref>{{Cite web|和書|url=http://nhk.jp/chronicle/?0001000000000000%40000000000000000000000050-061800000000000000000200 |title=NHKアーカイブス保存番組詳細「週刊 日本の名峰 乗鞍岳(2009年1月30日放送)」 |publisher=NHK |accessdate=2016-11-17 }}</ref> |
|||
* 『日帰り3026メートル 北アルプス 乗鞍岳』 [[小さな旅]]、NHK総合テレビ、2009年9月13日放送<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.nhk.or.jp/kotabi/archive/2009/20090913.html |title=日帰り3026メートル 北アルプス 乗鞍岳 |publisher=NHK |accessdate=2013-09-08}}</ref> |
|||
* 『北アルプス・乗鞍岳 〜標高3026m 雲上の別天地〜』 [[大人の山歩き-自分に出会える百名山-]]、[[テレビ朝日]]、2013年9月7日放送<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.tv-asahi.co.jp/yama/story/045/ |title=大人の山歩き~自分に出会える百名山~ 過去の放送内容 |publisher=テレビ朝日 |accessdate=2013-09-11 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20160418185033/http://www.tv-asahi.co.jp/yama/story/045/ |archivedate=2016-04-18 }}</ref> |
|||
== 脚注 == |
== 脚注 == |
||
{{脚注ヘルプ}} |
{{脚注ヘルプ}} |
||
=== 注釈 === |
|||
{{reflist}} |
|||
{{Notelist|2}} |
|||
=== 出典 === |
|||
{{Reflist|3}} |
|||
== 参考文献 == |
|||
* {{Cite book|和書 |author=一等三角点研究会 |year=1988 |month=11 |title=[[一等三角点百名山]] |publisher=[[山と溪谷社]] |isbn=9784635330008 |ref=一等三角点百名山}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=伊藤茂 |date=1983-06-20 |title=槍・穂高と南部北アルプス |series=日本の名山9 |publisher=[[ぎょうせい]] |pages=[[ASIN]] B000J7D48O |ref=槍・穂高と南部北アルプス}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=伊部高夫 |year=2006 |month=09 |title=長野県中信・南信日帰りの山―120山/188コース |publisher=[[章文館]] |isbn=4901742051 |ref=長野県中信・南信日帰りの山}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=岩崎元郎|authorlink=岩崎元郎 |year=2006 |month=3 |title=[[新日本百名山]]登山ガイド〈下〉 |publisher=山と溪谷社 |isbn=4635530477 |ref=新日本百名山}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=ウォルター・ウェストン|authorlink=ウォルター・ウェストン |translator=青木枝朗 |year=1997 |month=6 |title=日本アルプスの登山と探検 |publisher=[[岩波文庫]] |isbn=4003347412 |ref=日本アルプスの登山と探検}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=小野木三郎 |date=2005-05-27 |title=花かおる乗鞍岳 |publisher=[[ほおずき書籍]] |isbn=4434059513 |ref=花かおる乗鞍岳}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=垣外富士男、島田靖 |date=2002-04 |title=乗鞍・御岳・霧ガ峰 |series=ヤマケイアルペンガイド17 |publisher=山と溪谷社 |isbn=4635013170 |ref=乗鞍・御岳・霧ガ峰}} |
|||
* {{Cite book|和書 |date=1998-09-15 |author=垣外富士男、津野祐司、池上立、中山秀幸 |title=長野県の山 |series=分県登山ガイド |publisher=山と溪谷社 |isbn=4635021750 |ref=分県登山ガイド長野県の山}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=岐阜県山岳連盟 |year=1987 |month=7 |title=ぎふ百山 |publisher=[[岐阜新聞社]] |isbn=4905958474 |ref=ぎふ百山}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=小林俊樹 |date=1996-06 |title=上高地 乗鞍 |series=地球の風14 |publisher=[[日地出版]] |isbn=4527014137 |ref=上高地 乗鞍}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=桜田隆範 |year=2007 |month=6 |title=切手と風景印でたどる百名山 |publisher=[[ふくろう舎]] |isbn=4898062768 |ref=切手と風景印でたどる百名山}} |
|||
* {{Cite book|和書 |editor=徳久球雄 |date=1992-10 |title=コンサイス日本山名辞典 |publisher=[[三省堂]] |isbn=4-385-15403-1 |edition=修訂版 |ref=日本山名辞典}} |
|||
* {{Cite book|和書 |date=1981-10 |author=島田靖、堀井啓介、木下喜代男 |title=岐阜県の山 |series=分県登山ガイド |publisher=山と溪谷社 |isbn=4635021807 |ref=分県登山ガイド岐阜県の山}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=島田靖、堀井啓介 |year=2009 |month=12 |title=改訂版 岐阜県の山 |series=新・分県登山ガイド・改訂版 |publisher=山と溪谷社 |isbn=9784635023702 |ref=岐阜県の山}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=清水榮一 |year=1990 |month=5 |title=決定版 信州百名山 |publisher=[[桐原書店]] |edition=改訂版 |isbn=4342752700 |ref=信州百名山}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=田中豊雄 |date=1999-04-29 |title=花の乗鞍岳 |series=フラワーウォッチング・ハンドブック16 |publisher=ほおずき書籍 |isbn=4795286388 |ref=花の乗鞍岳}} |
|||
* {{Cite book|和書 |editor1=高橋正樹|editor1-link=高橋正樹 (火山学者)|editor2=小林哲夫|editor2-link=小林哲夫 (地球科学者) |year=2000 |month=04 |title=中部・近畿・中国の火山 |series=フィールドガイド日本の火山⑥ |publisher=[[築地書館]] |isbn=4806711993 |ref=中部・近畿・中国の火山}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=豊国秀夫|authorlink=豊国秀夫 |year=1988 |month=9 |title=日本の高山植物 |series=山溪カラー名鑑 |publisher=山と溪谷社 |isbn=4-635-09019-1 |ref=日本の高山植物}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=中村浩志|authorlink=中村浩志 |date=2006-08 |title=雷鳥が語りかけるもの |publisher=山と溪谷社 |isbn=4635230066 |ref=雷鳥が語りかけるもの}} |
|||
* {{Cite book|和書 |date=1997-03 |title=[[日本三百名山]] |publisher=[[毎日新聞社]] |isbn=4620605247 |ref=日本三百名山}} |
|||
* {{Cite book|和書 |editor=日本山岳会|editor-link=日本山岳会 |year=2005 |month=11 |title=新日本山岳誌 |publisher=[[ナカニシヤ出版]] |isbn=4-779-50000-1|ref=新日本山岳誌}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author= |year=1992 |month=8 |title=日本の山1000 |publisher=山と溪谷社 |isbn=4635090256 |ref=日本の山1000}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author= |date=2013-03-15 |title=乗鞍高原 |series=山と高原地図2013年版 |publisher=昭文社 |isbn=978-4398758965 |ref=山と高原地図}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author= |date=2005-04-01 |title=乗鞍岳自然観察ガイド |publisher=山と溪谷社 |isbn=4635420299 |ref=乗鞍岳自然観察ガイド}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=平田謙一 |date=2000-08-20 |title=上高地・乗鞍岳を歩く |series=フルカラー特選ガイド |publisher=山と溪谷社 |isbn=463517154X |ref=上高地・乗鞍岳を歩く}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=平田謙一 |year=2005 |month=7 |title=日本百名山地図帳 |publisher=山と溪谷社 |isbn=4-635-92203-0 |ref=日本百名山地図帳}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=飛騨山岳会 |year=2010 |month=12 |title=飛騨の山 |publisher=ナカニシヤ出版 |isbn=978-4-779-50504-1 |pages=298-301 |ref=飛騨の山}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=深田久弥|authorlink=深田久弥 |year=1982 |month=7 |title=日本百名山 |publisher=朝日新聞社 |isbn=4-02-260871-4 |ref=深田久弥}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=深田クラブ |year=1987 |title=[[日本二百名山|日本200名山]] |publisher=[[昭文社]] |pages= |isbn=4398220011 |ref=日本200名山}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author= |year=2005 |month=10 |title=目で見る日本登山史・日本登山史年表 |publisher=山と溪谷社 |isbn=4635178145 |ref=目で見る日本登山史・日本登山史年表}} |
|||
* {{Cite book|和書 |author=柳原修一 |year=1990 |month=6 |title=北アルプス山小屋物語 |publisher=[[東京新聞]]出版局 |isbn=4808303744 |ref=北アルプス山小屋物語}} |
|||
* {{Cite book|和書 |year=2010 |month=12 |title=山と溪谷2011年1月号付録 |series=山の便利手帳2011 |publisher=山と溪谷社 |pages=[[ASIN]] B004DPEH6G |ref=山の便利手帳}} |
|||
== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
||
{{ |
{{commons&cat|Mount Norikura|Mount Norikura}} |
||
* [[飛騨山脈]](北アルプス)、[[中部山岳国立公園]] |
* [[飛騨山脈]](北アルプス)、[[中部山岳国立公園]] |
||
* [[日本百名山]]、[[新日本百名山]]、[[一等三角点百名山]]、[[ぎふ百山]] |
* [[日本百名山]]、[[新日本百名山]]、[[一等三角点百名山]]、[[ぎふ百山]] |
||
268行目: | 859行目: | ||
* [[乗鞍高原]]、[[乗鞍高原温泉]]、[[のりくら温泉郷]]、[[乗鞍高原温泉ユースホステル]]、[[Mt.乗鞍]] |
* [[乗鞍高原]]、[[乗鞍高原温泉]]、[[のりくら温泉郷]]、[[乗鞍高原温泉ユースホステル]]、[[Mt.乗鞍]] |
||
* [[五色ヶ原 (乗鞍岳)|五色ヶ原]] |
* [[五色ヶ原 (乗鞍岳)|五色ヶ原]] |
||
* [[乗鞍山頂簡易郵便局]] |
|||
* [[乗鞍コロナ観測所]](平成22年3月末に閉鎖) |
* [[乗鞍コロナ観測所]](平成22年3月末に閉鎖) |
||
* [[ヒルクライム]]レース |
* [[ヒルクライム]]レース |
||
273行目: | 865行目: | ||
== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
||
* [https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/311_Norikuradake/311_index.html 乗鞍岳] 気象庁 |
|||
* [http://www.j-cycling.org/NORIKURA2005/ (財)日本サイクリング協会 全日本マウンテンサイクリングin乗鞍 公式サイト] |
|||
*[https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/open-data/open-data.php?id=311 乗鞍岳の火山観測データ] 気象庁 |
|||
* [http://www.sizenken.biodic.go.jp/pc/live/cgi-bin/live.cgi?camera=23&area=04 乗鞍高原からの乗鞍岳ライブカメラ【環境省・インターネット自然研究所】] |
|||
**[https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/monthly_v-act_doc/monthly_vact_vol.php?id=311 乗鞍岳の臨時及び過去の詳細月別火山概況・火山活動解説資料] 気象庁 |
|||
* [http://solarwww.mtk.nao.ac.jp/jp/norikura.html 乗鞍コロナ観測所][[国立天文台]] 太陽観測所 |
|||
* |
**[https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/open-data/data/eq_num_311.html 乗鞍岳の最近(2ヶ月間)の日別地震回数表] 気象庁 |
||
* [http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html?longitude=137.5536&latitude=36.1064 地図閲覧サービス・乗鞍岳] 国土地理院 |
|||
* [http://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/about/fac_norikura.html 東京大学宇宙線研究所:乗鞍観測所] [[東京大学]] |
|||
* [https://gbank.gsj.jp/geonavi/geonavi.php 地質図ナビ] 産業技術総合研究所 |
|||
* [https://gakuen.gifu-net.ed.jp/~contents/kou_chigaku/norikura/index.html 乗鞍岳の形成(高校地学コンテンツ)] 岐阜県 |
|||
* [http://www.hida.jp/norikura/index.shtml#cam1 ライブカメラ(高山市観光情報)] 高山市 |
|||
* [https://tenki.jp/lite/mountain/famous100/5/24/166.html 山の天気・乗鞍岳] [[日本気象協会]] |
|||
* [https://www.youtube.com/watch?v=Pz9yxmUCVLI&t=318s 空から見た日本(8)北アルプス・前編] SCIENCE CHANNEL(JST) |
|||
{{日本百名山}} |
{{日本百名山}} |
||
{{日本の山一覧 (3000m峰)}} |
{{日本の山一覧 (3000m峰)}} |
||
{{一等三角点百名山}} |
{{一等三角点百名山}} |
||
{{信州百名山}} |
|||
{{ぎふ百山}} |
|||
{{日本の活火山}} |
|||
{{日本の山脈と山地}} |
|||
{{Normdaten}} |
|||
{{Good article}} |
|||
{{DEFAULTSORT:のりくらたけ}} |
{{DEFAULTSORT:のりくらたけ}} |
||
[[Category:山岳名目録]] |
|||
{{mountain-stub|pref=長野県|pref2=岐阜県}} |
|||
[[Category:日本百名山]] |
|||
[[Category:日本の火山]] |
|||
[[Category:北アルプスの山]] |
|||
[[Category:3000メートル峰]] |
|||
[[Category:長野県の山]] |
[[Category:長野県の山]] |
||
[[Category:岐阜県の山]] |
[[Category:岐阜県の山]] |
||
[[Category:北アルプスの山]] |
|||
[[Category:日本3000メートル峰]] |
|||
[[Category:日本の火山]] |
|||
[[Category:日本百名山]] |
|||
[[Category:長野県の自然景勝地]] |
[[Category:長野県の自然景勝地]] |
||
[[Category:岐阜県の自然景勝地]] |
[[Category:岐阜県の自然景勝地]] |
||
[[Category:松本市の地理]] |
|||
[[Category:高山市の地理]] |
|||
[[Category:県境]] |
|||
[[Category:交通困難地]] |
2024年10月22日 (火) 17:52時点における最新版
乗鞍岳 | |
---|---|
信州側の奈川渡ダム上空から | |
標高 | 3,025.73[1] m |
所在地 | |
位置 | 北緯36度6分23秒 東経137度33分13秒 / 北緯36.10639度 東経137.55361度座標: 北緯36度6分23秒 東経137度33分13秒 / 北緯36.10639度 東経137.55361度 |
山系 | 飛騨山脈 |
種類 |
複合火山[2](活火山ランクC[3]) 噴火警戒レベル1(活火山であることに留意)[4]・常時観測火山 |
初登頂 | 1683年(円空上人) |
プロジェクト 山 |
乗鞍岳(のりくらだけ)は、飛騨山脈南部の長野県松本市と岐阜県高山市にまたがる剣ヶ峰(標高3,026 m)を主峰とする山々の総称。山頂部の権現池火口の外輪山に位置する最高峰の剣ヶ峰、朝日岳などの8峰を含め、摩利支天岳、富士見岳など23の峰があり、高山市奥飛騨温泉郷、高山市丹生川町、高山市朝日町、高山市高根町、長野県松本市安曇にまたがる広大な裾野をもつ。飛騨側の高山市街地などから大きな山容を望むことができ、親しまれてきた山である[5][6]。剣ヶ峰は、本州を太平洋側と日本海側に分ける分水界上の最高峰でもある。
概要
[編集]山体は岐阜県と長野県に跨がる活火山で日本で19番目に高い山[7]。活火山ランクC[3]気象庁による常時観測対象の47火山に含まれる[8]が山頂部に噴気地帯は存在しない[9]。比較的新しい火山であることから穏やかな山容が特徴で、最新の噴火は2000年前の恵比寿岳での噴火とされている。乗鞍岳を含む飛騨山脈の主な山域は1934年(昭和9年)12月4日に中部山岳国立公園の指定を受け[注釈 1][10]。長野県側の麓には溶岩流で形成された乗鞍高原が広がる。1949年に岐阜県道の観光道路で標高2,702 mの畳平までバスが運行されるようになると、大衆化し「雲上銀座」と呼ばれ観光地として賑わった[11]。長野県側からも畳平まで乗鞍エコーラインが開通し山麓にはスキー場が建設され周辺には温泉地があり、四季を通じて美しい景観に恵まれ、乗鞍岳の山域は観光地、保養地として発展している[11]。日本百名山[12]、新日本百名山[13]、信州百名山[14]、ぎふ百山[15]、一等三角点百名山[16]に選定されている。
山名の由来と変遷
[編集]が残されており、「愛宝山(あぼうやま)」と呼ばれその当時から霊山として崇拝されていた[17][18]。平安時代から室町時代にかけて古歌で「位山」と呼ばれ、1645年(正保2年)頃に乗鞍岳と呼ばれるようになったとされている[注釈 2][17][18]。1829年(文政12年)の『飛州誌』では、「騎鞍ヶ嶽」と記されていた[11]。飛騨側から眺めた山容が馬の鞍のように見えることから、「鞍ヶ嶺(鞍ヶ峰)」と呼ばれていた[12][19]。日本には同じ飛騨山脈に属する白馬連峰の乗鞍岳をはじめとして同名の乗鞍岳が複数あり、「乗鞍」は馬の背に鞍を置いた山容に由来している[20]。信州では最初に朝日が当たる山であることから「朝日岳」と呼ばれていた[注釈 3][17][21]。最高峰の剣ヶ峰の別称が、「権現岳」[注釈 4][21]。魔王岳と摩利支天岳は円空が命名して開山したとされている[21]。1963年(昭和38年)11月に乗鞍国民休暇村(休暇村乗鞍高原)の開設に伴い、番所平と金山平と呼ばれていた周辺一帯が乗鞍高原と呼ばれるようになっていった[22]。南北に多数の峰が連なることから「乗鞍連峰」と呼ばれることもある[5]。
火山・地勢
[編集]日本の火山としては富士山、御嶽山に次ぐ高さである[注釈 5][23]。乗鞍岳は複数の火山が南北に並ぶ複合火山である。千町火山体(せんちょうかざんたい、128-86万年前に活動した古期乗鞍火山)と烏帽子火山体、四ッ岳火山体、恵比寿火山体、権現池・高天ヶ原火山体(32万年前に活動を開始した新期乗鞍火山)で構成されている[9][23][24]。古い火山体の千町火山体と烏帽子火山体では、浸食と崩壊が進んでいる[24]。新期の火山体は山頂付近に分布する火山体や山腹に分布する溶岩ドームと溶岩流からなる大規模な成層火山。剣ヶ峰の噴火での直下西に権現池の火口湖が形成された[19]。約9000年前に現在の乗鞍岳の山容が形成された[25]。
山頂部は南北6 km、山体は北の安房峠から南の野麦峠まで南北15 km、東西に30 km、山域の面積は約250 km2と裾野が広いのが特徴で[23]、飛騨山脈の中では最も広い山域を持つ[19]。乗鞍高原などの8つの平原がある。火山湖と堰止湖の12の池があり、山頂直下西にある権現池は、日本では御嶽山の二ノ池に次いで2番目の高所にある湖沼。梓川、神通川、飛騨川の源流となる山で、それらの分水嶺となっている[17]。山頂付近の積雪が多く、乗鞍スカイラインの開通のために長期間の除雪が必要となる。夏でも一部の北東斜面などには雪渓が残り、夏山でのスキーが可能となっている。西山腹の千町火山体の溶岩台地上の千町ヶ原から奥千町にかけては、池塘が点在する高層湿原となっている[26]。
雄大な広がりを持つ乗鞍岳はコニーデ型の火山で、新生代の第四紀(洪積世・沖積世)、地球全体で火山活動が極めて活発だった時代に誕生したといわれる。乗鞍岳の表面は火成岩に覆われ、山頂部一帯には爆発の傷跡を残す火口壁や火口湖が点在している。現在は活火山としての活動力は失われているが、湯川の上流で吹き出すガスや山ふところの温泉群は、往時の火山活動の名残をとどめるものである[27]。
活火山
[編集]火山史
[編集]古期乗鞍火山
- 128-125万年前 - 千町火山体の乗鞍火山の噴火が始まり、千町北溶岩と黍生溶岩を流出し、黍生火砕岩を噴出した[28]。
- 92-86万年前 - 千町火山体で活発に活動し、ダナの岩溶岩、神立原溶岩、千町溶岩、朝日滝溶岩、大峰溶岩、県境溶岩を流出した[28]。この活動で権現池付近を中心にほぼ円錐形の山容が形成された[25]。
- 50万年ほど火山活動は休止しその間に、大規模な山体崩壊により千町火山体の北側は崩れ去った[25]。
新期乗鞍火山
- 32-12万年前 - 千町火山体の北部の崩壊・浸食された烏帽子火山体で火山活動が始まり、烏帽子溶岩、富士見溶岩、桔梗ヶ原溶岩、摩利支天溶岩、前川溶岩、大黒溶岩を流出した[28]。12万年に二つの火口を持つ成層火山が形成された[注釈 6][25]。
- 10万年前 - 権現池・高天ヶ原火山体で火山活動が始まりで、濁川溶岩、番所溶岩、ダナ新谷溶岩、平金溶岩、位ヶ原溶岩、嶽谷溶岩、ダナ東谷溶岩を流出し、前川本谷火砕流堆積物が形成され、高天ヶ原火砕岩と屏風岳火砕岩を噴出した[28]。
- 4万3千年前 - 膨大な番所溶岩流により乗鞍高原の原型が形成された[29]。
- 4万年前 - 浸食された烏帽子火山体上の四ツ岳火山体で火山活動が始まり、四ツ岳溶岩を流出した[25][28]。
- 2万年前 - 浸食された烏帽子火山体の上で恵比寿火山体の火山活動が始まり、恵比寿溶岩を流出した[25]。
- 9600年前 - 権現池火口で断続的にブルカノ式噴火(Vulcanian eruption)がはじまり、火山灰(剣ヶ峰火山砂)を噴出した[9][28]。
- 9200年前 - 権現池火口の噴火により、位ヶ原テフラ(水蒸気噴火により火山灰を噴出、位ヶ原火山灰が形成され、その後スコリア噴火により位ヶ原スコリが形成された。)を放出し、岩井谷溶岩が西側に流出した[9][28]。
- 以後 - 何回かの水蒸気爆発を起こした[9][注釈 7][30]。
- 約500年前 - 権現池火口で水蒸気爆発。(確認される最新噴火イベント)[31]
有史以降
- 1990年(平成2年)1月24日 - 南南西約10 kmでM4.2の群発地震が発生[9]。
- 1991年(平成3年)1月23日 - M4.2の地震が発生、前年から地震が、1992年末まで減少しつつ継続した[9]。
- 1995年(平成7年)8月 - 南西約2 kmで地震が多発した[9]。
- 2011年(平成23年)3月13日20時23分 - M3.1(震度2)の地震が発生、東北地方太平洋沖地震以降に北麓2-8 km付近で地震が活発化している[9]。
現在の状況
[編集]100年活動指数と1万年活動指数がともに低い火山であることから、「活火山ランクC」の指定を受けている[3]。2009年(平成21年)6月に火山噴火予知連絡会により、山体浅い部に地震活動が認められていることから、過去100年以内に火山活動の高まりが認められている火山として、火山防災のために監視・観測体制等の必要がある火山の一つの指定を受けている[32]。火山性の地震群発は現在でも観測されている[33]。活火山としての活動力を失っていて山頂部に噴気地帯はないが、湯川(梓川の支流)の最上流部では火山ガスが発生している[20]。周辺では気象庁、国土地理院、防災科学技術研究所、名古屋大学により地震計、傾斜計、空振計、GPS、遠望カメラが設置され火山活動の監視と観測が行われている[34]。気象庁は2007年(平成19年)12月1日に噴火予報で「平常」を発表しており、「噴火警戒レベル対象外火山」であり、2013年7月度の気象庁火山部火山監視・情報センターの月例報告で、「火山活動に特段の変化はなく、静穏に経過し噴火の兆候は認められない」と発表している[33]。しかし、1000年以上噴火しておらず、そろそろ噴火をしても良い時期と考える火山学者もいる[35]。2014年の木曽御嶽山噴火災害をうけて、ハザードマップが作成されていない状態の解消を目指し、乗鞍防災協議会設置のための火山対策検討会議が行われた[36]。
乗鞍岳の峰々
[編集]山頂部には北から順番に以下の峰が連なり、乗鞍23峰と呼ばれている。その他の峰として、高天ヶ原(たかまがはら、2,829 m)と金山岩(かなやまいわ、2,532 m)がある。最高峰の剣ヶ峰には一等三角点が設置されている[1]。多くの峰は登山規制が行われていて、立ち入りが禁止されている[37]。
山名 | よみ | 標高 (m) [1][38] |
剣ヶ峰からの 方角と距離(km) |
火山体名 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
安房山 | あぼうさん | 2,220 | 北北東 10.1 | ジュラ紀付加体 | 安房トンネル |
十石山 | じゅっこくやま | 2,525 | 北北東 7.2 | ||
大崩山 | おおくえやま | 2,523 | 北 5.7 | ||
猫岳 | ねこだけ | 2,581 | 北 5.2 | ||
硫黄岳 | いおうだけ | 2,554 | 北北東 4.8 | ||
四ツ岳 | よつだけ | 2,751 | 北 4.5 | 四ッ岳火山体 | |
烏帽子岳 | えぼしだけ | 2,692 | 北 3.9 | 烏帽子火山体 | |
大丹生岳 | おおにゅうだけ | 2,698 | 北 3.7 | ||
大黒岳 | だいこくだけ | 2,772 | 北北東 2.4 | ||
恵比寿岳 | えびすだけ | 2,831 | 北 2.3 | 恵比寿火山体 | 遊歩道 |
魔王岳 | まおうだけ | 2,760 | 北 2.2 | 遊歩道 | |
富士見岳 | ふじみだけ | 2,817 | 北 1.7 | 登山道 | |
里見岳 | さとみだけ | 2,824 | 北北西 1.9 | ||
不動岳 | ふどうだけ | 2,875 | 北 1.5 | ||
摩利支天岳 | まりしてんだけ | 2,872 | 北 1.2 | 乗鞍コロナ観測所 | |
水分岳 | みくまりだけ | 2,896 | 北西 0.6 | 権現池・ 高天ヶ原 火山体 |
|
朝日岳 | あさひだけ | 2,975 | 北北西 0.4 | ||
蚕玉岳 | こだまだけ | 2,979 | 北北西 0.2 | 登山道 | |
雪山岳 | せつざんだけ | 2,891 | 西 0.7 | ||
剣ヶ峰 | けんがみね | 3,026 | 0 | 乗鞍岳の最高峰 | |
大日岳 | だいにち | 3,014 | 南南西 0.3 | ||
薬師岳 | やくしだけ | 2,950 | 西南西 0.7 | ||
屏風岳 | びょうぶだけ | 2,968 | 南西 0.6 |
-
四ツ岳 (2,751m)
-
烏帽子岳 (2,692m)
-
大黒岳 (2,772m)
-
富士見岳 (2,817m)
-
剣ヶ峰 (3,026m)
乗鞍岳の最高峰
山頂部の池
[編集]山頂付近には、以下の8箇所に12個の火口湖と堰止湖がある[38][5]。
- 権現池 - 山頂直下西にある権現池・高天ヶ原火山体の活動終期に形成されたコバルトブルーの火口湖[39]。御嶽山のニノ池に次いで日本で2番目の高所にある湖沼[40]。
- 五ノ池 - 里見岳の南にある溶岩流による堰止湖[39]。
- 不消ヶ池(きえずがいけ) - 富士見岳と摩利支天岳の間にあり、真夏でも雪が残ることがある[注釈 8][39]。
- 鶴ヶ池 - 畳平の東にあり、名称は鶴の形状に似ていることに因む[注釈 9]。
- 亀ヶ池 - 恵比寿岳と魔王岳との間にある恵比寿火口、名称は周氷河地形の構造土が発見されたことに因む[39]。
- 大丹生池 - 大丹生池に西にある溶岩流による堰止湖[39]。
- 土樋池 - 烏帽子岳の西にある溶岩流による堰止湖[39]。
- 無名の池 - 四ツ岳と硫黄岳の間。
地質
[編集]古生層の安山岩類や花崗岩類、デイサイト質の溶岩などで構成されている[17][20]。乗鞍岳ではパン皮状火山弾(breadcrust bomb)が見られ、火口付近では吹き飛ばされた古い岩石の破片、スコリア、軽石なども見られる[41]。山頂付近には亀甲砂礫や条線砂礫などの構造土が見られ[17]、地理学者の田中阿歌麿が日本の周氷河地形として初めて亀ヶ池で構造土を発見した[20]。乗鞍高原の鈴蘭には武田信玄によって開発されたとされる大樋鉱山があって、1640年(寛永17年)から1697年(元禄10年)にかけて盛んに銀が産出されていた[17][29]。東山腹の梓川の支流湯川沿いの白骨温泉では石灰華(炭酸カルシウム)の沈殿物が見られ、「白骨温泉の噴湯丘と球状石灰石」が1952年(昭和27年)3月29日に国の特別天然記念物の指定を受けた[42]。
環境
[編集]自然保護の観点から乗鞍スカイラインと乗鞍エコーラインで2003年からマイカー規制が実施され、バスとタクシーを除き一般車両の通行が禁止されるようになった。これらの山岳道路では麓の山地帯、亜高山帯、高山帯へと植生の垂直分布の移行を観察することができる[40]。東側の乗鞍高原の山麓では明治時代に牛の放牧とソバ畑の開拓が行われた[29]。
気候
[編集]山頂付近の摩利支天岳(標高2,872 m)頂上の乗鞍コロナ観測所で観測された、毎日の平均気温、最低気温、最高気温の月ごとの1971年(昭和46年)から2000年(平成12年)までの30年間の平均値を下表に示す[43]。1月下旬から2月上旬にかけてが最も寒く、8月初旬が最も暑い[43]。畳平へのシャトルバスの夏の早朝便ではカーエアコンで暖房される。
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 年平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
平均気温(℃) | -15 | -15 | -11 | -5 | 1 | 6 | 9 | 11 | 7 | 0 | -6 | -12 | -3 |
最低気温(℃) | -17 | -17 | -14 | -8 | -2 | 1 | 6 | 8 | 4 | -2 | -8 | -14 | -5 |
最高気温(℃) | -13 | -12 | -8 | -1 | 4 | 9 | 12 | 14 | 9 | 3 | -4 | -10 | 0 |
また、年間平均気温、および最低気温、最高気温の年間平均値を下表に示す[43]。年間の平均気温の最低値は1986年の-4.1℃、最高値は1998年の-0.5℃。
年 | 平均 気温 (℃) |
最低 気温 (℃) |
最高 気温 (℃) |
年 | 平均 気温 (℃) |
最低 気温 (℃) |
最高 気温 (℃) |
年 | 平均 気温 (℃) |
最低 気温 (℃) |
最高 気温 (℃) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1968年 | -0.8 | -4.7 | 3.2 | 1979年 | -1.9 | -4.8 | 1.0 | 1990年 | -1.6 | -3.9 | 1.2 |
1969年 | -2.2 | -5.5 | 2.3 | 1980年 | -3.0 | -5.5 | -0.5 | 1991年 | -2.1 | -4.5 | 0.4 |
1970年 | -1.4 | -4.5 | 1.8 | 1981年 | -2.6 | -5.0 | -0.2 | 1992年 | -2.4 | -4.8 | 0.1 |
1971年 | -2.8 | -6.1 | 0.5 | 1982年 | -2.4 | -5.1 | 0.5 | 1993年 | -3.0 | -5.0 | -0.7 |
1972年 | -2.2 | -5.7 | 1.3 | 1983年 | -2.8 | -5.1 | -0.4 | 1994年 | -2.3 | 0.2 | |
1973年 | -2.0 | -5.5 | 1.5 | 1984年 | -3.3 | -5.5 | -1.0 | 1995年 | -3.7 | -5.9 | -1.5 |
1974年 | -2.5 | -5.7 | 0.7 | 1985年 | -2.7 | -4.9 | -0.6 | 1996年 | -2.6 | -5.2 | -0.1 |
1975年 | -2.2 | -5.5 | 1.3 | 1986年 | -4.1 | -6.6 | -1.6 | 1997年 | -2.3 | -4.7 | 0.1 |
1976年 | -3.2 | -6.3 | -0.1 | 1987年 | -2.0 | -4.6 | 0.6 | 1998年 | -0.5 | -3.4 | 2.3 |
1977年 | -2.1 | -5.2 | 1.0 | 1988年 | -3.5 | -5.7 | -1.1 | 1999年 | -2.4 | -5.1 | 0.3 |
1978年 | -2.3 | -5.3 | 0.8 | 1989年 | -2.3 | -4.7 | 0.3 | 2000年 | -2.6 | -5.3 | -0.7 |
9時と15時における風力の月ごとの1989年(平成元年)から1997年(平成9年)までの9年間の平均値を下表に示す[44]。風向きは年間を通じて北西が主流となっている[43]。冬期に風が強い日が多く、9時、15時の区別なく1-2月には風力4.9-5.2(風速換算で約10 m/s)[43]。
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 年平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
9時 | 5.0 | 5.1 | 4.6 | 3.8 | 3.1 | 2.9 | 2.7 | 2.5 | 2.7 | 2.9 | 3.8 | 4.6 | 3.6 |
15時 | 5.2 | 4.9 | 4.4 | 3.6 | 2.8 | 2.7 | 2.6 | 2.4 | 2.6 | 2.8 | 3.7 | 4.5 | 3.5 |
9時と15時における月別天気出現率(%)(1968-1997年の平均値)を下表に示す[44]。乗鞍岳では夏に午後になると霧や雲の発生が活発になることが多く、他の山岳地帯と同様に午前中の方が天候が安定している[43]。畳平では濃霧で視界不良となることもある[45]。例年9月末-10月にかけて山頂部で初冠雪し、6月にも雪が降ることがある[44]。
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
快晴 | 21 | 20 | 25 | 26 | 22 | 11 | 11 | 19 | 18 | 32 | 32 | 28 |
晴 | 5 | 7 | 9 | 11 | 13 | 15 | 17 | 18 | 13 | 11 | 7 | 7 |
曇 | 9 | 14 | 18 | 22 | 27 | 30 | 20 | 17 | 23 | 18 | 13 | 9 |
雨 | 0 | 0 | 1 | 6 | 12 | 19 | 21 | 15 | 9 | 9 | 4 | 0 |
雪 | 42 | 36 | 26 | 13 | 4 | 1 | 0 | 0 | 0 | 5 | 19 | 36 |
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
快晴 | 15 | 13 | 14 | 14 | 9 | 2 | 2 | 2 | 5 | 18 | 24 | 24 |
晴 | 7 | 7 | 10 | 14 | 14 | 10 | 11 | 14 | 12 | 13 | 8 | 8 |
曇 | 13 | 16 | 20 | 28 | 35 | 33 | 25 | 29 | 30 | 23 | 17 | 9 |
雨 | 0 | 0 | 1 | 6 | 12 | 21 | 25 | 18 | 21 | 9 | 4 | 0 |
雪 | 50 | 43 | 33 | 17 | 6 | 1 | 0 | 0 | 0 | 8 | 21 | 38 |
動物
[編集]山域にはオコジョ、トウホクノウサギ、ニホンカモシカ、ツキノワグマ[注釈 10][46]、イワヒバリ、ホシガラス、国の特別天然記念物に指定されているライチョウなど生息する[20]。
ツキノワグマについては2009年に、畳平でバスターミナル周辺を襲う事件があり、9人の観光客がクマの攻撃を受ける騒動となった事例がある。
ライチョウに関しては、長野大学生態学研究室により詳細な生息調査が行われている[47]。ライチョウの乗鞍岳における総個体数は1983年の調査では130羽、1994年の調査では109羽と減少傾向にある(環境省のレッドリストの絶滅危惧IB類の指定を受けている種)[48]。イワツバメ、イワヒバリ、カヤクグリ、ライチョウ、ルリビタキの繁殖が確認されていて[48]、カラ類、キセキレイ、ホシガラスなど多くの野鳥が生息している[20]。
白樺峠は、乗鞍高原一帯を通過していくタカの渡りの観察地として知られていて、9月下旬にはサシバ、ハチクマ、10月中旬にはノスリ、ツミなどの渡りが見られる[49]。乗鞍高原では7種のコウモリの生息が確認されていて、日本の固有種であるクビワコウモリの繁殖が日本で初めて乗鞍高原で確認された[50]。長野県の天然記念物の指定種の高山蝶のクモマベニヒカゲとミヤマモンキチョウやクジャクチョウ、コヒオドシなどの蝶が生息し[48]、岐阜県のレッドリストで指定を受けている高山蛾のアルプスカバナミシャク、アルプスギンウワバ、アルプスヤガ、アルプスクロヨトウ、オオギンスジコウモリ、クモマウスグロヤガ、サザナミナミシャク、タカネモンヤガ、ナカトビヤガ、ヤツガダケヤガなどの確認記録がある[51]。
植物
[編集]志村烏嶺が乗鞍岳で高山植物の採集と研究を行っている。位ヶ原と桔梗ヶ原では大規模なハイマツの群生地となっている[20]。コイワカガミ、キバナシャクナゲ、ミヤマキンバイ、クロユリ、コマクサ、イワギキョウ、ヨツバシオガマなどの植物が見られ、高山ならではの自然を堪能する事ができる。富士見岳、魔王岳などの風衝地にはコマクサの群落が広がっている。大黒岳は山全体にコマクサが分布していたが、人の増加に伴い踏み荒らされ大幅に減少した[52]。雪解けとともに開花が始まり、秋にはコケモモ、ダケカンバ、チングルマ、ナナカマドなどの紅葉が見られる。江戸時代大樋鉱山で銀を抽出する際に薪や炭を作るために乗鞍高原周辺の原生林のシラビソやブナが切り尽くされた[29]。その結果乗鞍高原鈴蘭付近は、シラカバなどの二次林とスズラン、ヤナギランなどの草原となりっており、ミズバショウなどの高原植物も分布している[20]。乗鞍高原には湿原があり、「乗鞍岳湿原」として日本の重要湿地500の一つに選定されている[53]。子ノ原高原はレンゲツツジの名所として知られていて[54]、「子ノ原高原レンゲツツジ群落」が1969年(昭和44年)8月5日に高山市の天然記念物の指定を受けている[55]。西面中腹の千町ヶ原の湿原には、キソチドリ、コバイケイソウ、モウセンゴケなどが分布する[56]。東面中腹の位ヶ原では、9月下旬-10月上旬ごろにナナカマドとダケカンバが紅葉する[57]。乗鞍岳では山麓から山上部にかけて以下の植物の垂直分布が見られる[58]。山岳道路開通に伴い帰化植物が侵入し、飛騨山脈原産のオオハンゴンソウが乗鞍スカイラインの旧料金所の上部の亜高山帯で、セイヨウタンポポが畳平の駐車場で、ムラサキツメクサが鶴ヶ池付近で確認されている[59]。乗鞍スカイライン沿いでは針葉樹の立ち枯れが確認されている[48][60]。
- 山地(山麓 - 標高1,500 m付近) - ブナ、ミズナラなどの落葉広葉樹
- 亜高山帯(標高1,500-2,500 m付近) - トウヒ、シラビソ、コメツガなどの常緑針葉樹
- 高山帯(2,500 m付近から上部) - ハイマツ、高山植物
乗鞍自然観察教育林
[編集]乗鞍岳の高山帯と大部分の山域は国有林であり、林野庁中部森林管理局飛騨森林管理署内にある[61]。畳平周辺の多くの高山植物が分布するハイマツ帯は、林野庁によりレクリエーションの森の「乗鞍自然観察教育林」の指定を受けている[61]。畳平には飛騨森林管理署詰所があり、その南側のお花畑には観察用の木道が整備されている。
岐阜県乗鞍環境保全税
[編集]乗鞍地域の環境保全を目的として2002年(平成14年)10月9日に岐阜県議会で「岐阜県乗鞍環境保全税条例」が可決され、2003年(平成15年)5月15日のマイカー規制開始時から乗鞍スカイラインに乗り入れる自動車に対して課税と徴収が行われるようになった[62]。税収は環境影響評価調査や環境パトロール員の配置などの乗鞍環境保全施策に使われている[62]。課税標準は以下である[63]。
- 観光バス(乗車定員が30人以上) - 3,000円
- 一般乗合バス(乗車定員が30人以上) - 2,000円、濃飛バスのシャトルバスが該当する。
- 自動車(乗車定員が11人以上29人以下) - 1,500円
- 自動車(乗車定員が10人以下) - 300円、タクシーなどが該当する。
歴史
[編集]信仰
[編集]古くは「位山」と呼ばれ、山麓から遥拝されていた[11][64]。飛騨側では大丹生池付近、信州側では乗鞍高原山麓の梓水神社付近に遥拝所があったとみられている[64]。仁徳天皇65年(伝377年)両面宿儺が開山した千光寺も元々乗鞍岳や御嶽の山岳信仰の遙拝所であったとされる。
修験者が登頂するようになると、山頂の飛騨側に乗鞍大権現、信州側に朝日権現神社が祀られ、霊山としての修行の場であった[64]。同じ飛騨地方にある白山や御嶽山と比較すると宗教的な意味合いが薄い山であった[19]。
飛騨側にはいくつもの信仰の道が作られ、麓には乗鞍神社が建立され、乗鞍信仰が盛んであった[64]。円空上人と木喰上人が修行のために登ったと伝えられている[11][19]。
信州側では奈良時代と室町時代には水神の霊山として、江戸時代にかけては戦の神としての信仰の山であった[64]。東面標高2,100 mの冷泉小屋脇には、乗鞍修験者の行場であった霊泉の湧水がある[65]。1600年代後半頃には大樋銀山の鎮守神として信仰された[64]。冷泉小屋上部の大雪渓下には、江戸時代に乗鞍岳を開山した宝徳霊神の碑がある[18]。18世紀末には山頂の朝日権現神社でご来光を拝んだものにはご利益があるとれ、ご来光詣でが盛んに行われるようになった[64]。
開発史
[編集]- 807年(大同2年) - 田村将軍が乗鞍三座の神に祈願をして開山したとされる(『乗鞍山縁起』)[19]。
- 1183年(寿永2年) - 木曽義仲に命じられた太夫坊覚明が、乗鞍岳奥ノ院に大日如来を安置した[17]。
- 1212年(建暦2年) - 社殿が建造されたが、その後荒廃した[12]。
- 1683年(天和3年) - 円空上人が岐阜県側の平湯から初登頂し、魔王岳と摩利支天岳を開山したとされている[17]。乗鞍岳の山頂部の大丹生池に魔神が棲むと恐れられていた伝説を払拭するために、千体仏を彫り池に沈めて祈祷してその迷信を封じたと伝えられている[17]。
- 1878年(明治11年) - ウィリアム・ゴーランドが地質調査を兼ねて平湯大滝口から登頂[66]。
- 1889年(明治22年) - 陸地測量部が三角点選定のために南山麓の高山市高根町野麦から登頂[20]。
- 1891年(明治24年) - 小杉復堂が平湯から登頂[20]。
- 1892年(明治25年) - ウォルター・ウェストンが平湯大滝口から登頂[17][67]
- 1895年(明治28年) - 1905年(明治38年)にかけて、高山市朝日町の行者である上牧太郎之助が青屋口を開設し、石仏を80体ほどを安置した[17]。
- 1905年(明治38年)8月 - 登山中であった2グループ13名が風雨に巻き込まれて遭難し、うち4名が死亡する。記録に残る北アルプス最古の山岳遭難事故でもある(乗鞍岳大量遭難事故)[68][69]。
- 1922年(大正11年)3月 - 早稲田大学山岳部の東条義人が番所からスキー登山をした[20]。
- 1924年(大正13年) - 丹生川村青年団により乗鞍登山道が完成[70]。高山測候所が乗鞍気象観測所を設置[70]。
- 1934年(昭和9年)12月4日 - 周辺の山域は中部山岳国立公園の指定を受けた[10]。
- 1942年(昭和17年) - 旧陸軍が、畳平に飛行機のエンジンの研究を行う航空研究所を建設するために軍用道路を開設した[17][71][注釈 11]。
- 1948年(昭和23年) - 高山市から畳平まで乗鞍登山バスの運行開始。
- 1949年(昭和24年) - 東京大学東京天文台の附属施設として摩利支天岳の山頂に乗鞍コロナ観測所が建設され、翌年萩原雄祐によりコロナグラフが設置された。建物の老朽化により2010年(平成22年)3月末をもって、乗鞍コロナ観測所は閉鎖された。2011年(平成23年)に自然科学研究機構本部に移管され、共同研究利用施設「乗鞍観測所」として利用されている[72]。
- 1953年(昭和28年)8月1日 - 東京大学宇宙線研究所が、乗鞍肩ノ小屋の西隣に開設された[注釈 12][73]。当時の初代所長は平田森三。
- 1963年(昭和38年) - 乗鞍エコーラインが畳平まで開通し[17]、1979年(昭和54年)には全区間の舗装化された[74]。
- 1968年(昭和43年) - 乗鞍山頂簡易郵便局開設[70]。
- 1973年(昭和48年) - 乗鞍スカイラインの2車線の舗装道路が開通し[17]、マイカーや観光バス多くの人が観光や登山で訪れるようになった。
- 2003年(平成15年)5月15日 - 自然保護の観点から乗鞍スカイラインなどでマイカー規制により、一般車両の通行が禁止された[75]。
- 2004年(平成16年)7月 - 五色ヶ原に、完全予約制ガイド付きの自然散策コースが開設された[76]。
- 2005年(平成17年)夏 - マイカー規制を機に整備を始めた平湯温泉からの登山道が完成[注釈 13]。
登山
[編集]古くから高山市高根町野麦からの野麦口が猟師やコマクサ採りの人々により利用されていた[74]。近代登山の黎明期には地元のガイドとともに、ウィリアム・ゴーランド、アーネスト・サトウ、ウォルター・ウェストンらが登頂した[74]。富山藩の漢学者小杉復堂が平湯から、植物学者の河野齢蔵と矢澤米三郎が信州側から登頂している[74]。陸地測量部の舘潔彦らが測量登山のために1894年(明治27年)に野麦口から登頂している[74]。本格的な登山道と山小屋が開設されたのは明治末期から大正中期以降であった[74]。1973年(昭和48年)に乗鞍スカイラインの開通[77]などにより、標高2,702 mの畳平までバスや自動車で上がれるようになってからは、登山対象の山というよりも「観光客の山」という意味合いが強くなった[20]。
- 山開き - 例年乗鞍スカイラインが開通する5月15日に、畳平で乗鞍岳山開き祭が行われている。山開き直後には登山道には多くの残雪がありクラストしていることもあり、アイゼン、ピッケル、ストックなどの雪山装備が必要となる[40]。
- 山頂 - 直下北には頂上小屋(売店のみ)があり、山頂には一等三角点と北側に朝日権現社、南側に乗鞍本宮奥宮(鞍ヶ嶺神社)の2つの神社がある[78]。岩場の山頂は見晴らしが良く360度の展望がある。畳平と肩の小屋に西側に公衆トイレが設置されている。畳平付近にある魔王岳、大黒岳、富士見岳には遊歩道が整備されている[37][79]。富士見岳からは木曽山脈越し(仙丈ヶ岳と北岳との間)に、富士山の山頂部の南側の最高点である剣ヶ峰をわずかに望むことができる。
- 学校登山 - 夏になると麓の中学校などの行事として、中学生の学校登山が行われているので、山頂は大変な賑わいを見せる[80][81][82][83][84]。
- 松本市立丸ノ内中学校は身体面で不安がある生徒も皆と活動できる形にしたが、一度中止した学校登山を再開することは大変なことである。乗鞍岳の東麓に位置する松本市立大野川小学校・中学校と松本市立安曇小中学校は登頂組と周遊組に分けて奥穂高岳に2泊3日で実施した[85]。
登山コース
[編集]各方面から登山道が開設されている[86]。大多数の観光客やハイカーは、畳平から周辺や山頂を散策している。一部登山道は閉鎖や通行禁止状態になり、安房口、白骨口、野麦口は廃道になりつつある[18]。なお、2009年には畳平にて乗鞍岳クマ襲撃事件が発生しており、野生動物への警戒を怠ってはならない地域である[87]。
- 畳平からのコース
- 登山道の一部は未舗装の道路で、蚕玉岳から剣ヶ峰までの最後の登りは岩混じりの急登となる[40]。家族連れ、老若男女を問わず大勢の人で賑わい、シーズン最盛期には山頂へ向かう登山道が渋滞することもある。
- (行程):畳平 - (富士見岳[注釈 14]) - 肩の小屋 - 蚕玉岳 - (頂上小屋[注釈 15]) - 剣ヶ峰
- 乗鞍高原からのコース(番所口)
- 冷泉小屋の脇には湧水がある。戦後の登山ブーム時には乗鞍高原からのコースが利用され、雪山登山者には上部の冷泉小屋と位ヶ原山荘が前進基地として利用された[74]。
- (行程):乗鞍高原 - 三本滝分岐 - 冷泉小屋 - 位ヶ原山荘 - 位ヶ原 - 肩の小屋口 - 肩の小屋 - 蚕玉岳 - (頂上小屋) - 剣ヶ峰[78]
- 丸尾尾根日陰平口コース
- 神通川水系小八賀川と飛騨川との分水嶺の丸黒尾根[88][89]と千町尾根のコース[78][26]。千町ヶ原にはオオシラビソの森の中に湿原がある。大正時代に行者が利用した信仰の道で、コース上には百体以上の石仏が設置されている[90]。丸黒山は穂高岳などの見晴らし良い広い山頂で小さな祠がある[26]。池塘が点在する千町ヶ原では1994年(平成6年)木道が整備された[54][56]。コース上に水場はない[26]。国立乗鞍青年の家からは、日陰平山(1,595 m)とかぶと山(1,545 m)を周回するハイキングコースが整備されている[91]。
- (行程):国立乗鞍青年の家 - 日陰峠 - 枯松平山(1,694 m) - 枯松平避難小屋 - 丸黒山(1,956 m) - 千町ヶ原 - 奥千町避難小屋 - 中洞権現 - 剣ヶ峰
- 平湯口コース
- (行程):国道158号の平湯大滝入口 - アンバ山 - 猿飛八丁 - 姫ヶ原(湿原) - 乗鞍スカイライン - 畳平 - (富士見岳) - 肩の小屋 - 蚕玉岳 - (頂上小屋) - 剣ヶ峰[17][注釈 16][78]
- 白骨口コース
- (行程):白骨温泉 - 遊歩道 - 東尾根 - 十石小屋 - 十石山 - 硫黄岳 - 乗鞍スカイライン - 畳平 - (富士見岳) - 肩の小屋 - 蚕玉岳 - (頂上小屋) - 剣ヶ峰[17][78]
- 青屋口コース
- 1896年(明治29年)から3年かけて青屋村(現在の高山市朝日町)の上牧太郎之助が開拓したコースで[26][92]、廃道となっていたが地元有志により再整備された[78]。
- (行程):青屋口 千町ヶ原 - 奥千町避難小屋 - 中洞権現 - 剣ヶ峰[17]
- 子ノ原口コース
- (行程):南乗鞍キャンプ場 - 林道 - 尾根 - 奥千町避難小屋 - 中洞権現 - 剣ヶ峰[17][93][注釈 17][78]
- 阿多野口コース
- (行程):アイミックスキャンプ場 - 林道 - 尾根 - 中洞権現 - 剣ヶ峰[17]
- 野麦口コース
- (行程):高根町野麦 - 焼石原 - 高天ヶ原 - 剣ヶ峰[注釈 18][78]
山小屋・宿泊施設
[編集]1919年(大正8年)に南安曇郡安曇村により乗鞍岳で最初に登山者用の山小屋の建設が進められていたが、完成間近に突風で倒壊した[74]。翌年麓の安曇野村議会議員の筒期音弥により、現在の肩の小屋の位置に間口6間、奥行3間の小さな山小屋が建てられた[74]。当時は「乗鞍小屋」や「筒木小屋」と呼ばれていて、この山小屋の開設により次第に登山者が増加していった[74]。1926年(大正15年)番所大滝付近の麓に鈴蘭小屋が建てられスキー客の宿として利用され、1929年(昭和4年)に現在の位置に移設して通年営業の山小屋として開業した[74]。その後山頂周辺に岐阜県山岳会の小屋など4軒の山小屋が建てられ、大衆登山の山となった[74]。鈴蘭小屋の少し上部に1927年(昭和2年)に冷泉小屋が建てられた。乗鞍岳の東面は溶岩流のなだらかな斜面でスキーに適した地形で全国の注目を集めた。これらの山小屋により乗鞍高原からの登山ルートが築かれていった。肩の小屋は1961年(昭和36年)に増築され収容能力を増し、登山者の増加に対応した[74]。登山者用の山小屋が山頂周辺などにある[94]。山頂直下北には1931年(昭和6年)に建てられた売店営業のみの頂上小屋がある。山頂直下の摩利支天岳との鞍部には肩ノ小屋がある。畳平には、一般観光客向けの旅館タイプの宿泊施設である乗鞍山頂銀嶺荘と、乗鞍白雲荘(畳平駐車場に隣接しており、個室もあり一般観光客の利用も多いが、相部屋中心で、付近の残雪が少なくなると入浴ができなくなるなど、設備的には山小屋である。)がある。乗鞍高原からコースの乗鞍エコーライン沿いの位ヶ原には、山スキーなどに利用される位ヶ原山荘がある。南山麓の野麦峠には野麦峠お助け小屋がある。東山麓の乗鞍高原には乗鞍高原温泉ユースホステルの宿泊施設がある。千町尾根の登山道には1999年(平成11年)に建てられた奥千町避難小屋[56]、丸尾尾根には枯松平避難小屋、猫岳の北西には猫の小屋、十石山頂上直下には十石小屋の避難小屋がある。
画像 | 名称 | 所在地 | 標高 (m) |
剣ヶ峰からの 方角と距離(km) [注釈 19] |
収容 人数 |
備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
乗鞍白雲荘 | 畳平と鶴ヶ池北西 | 2,704 | 北 2.1 | 60 | 2013年に改築 | |
位ヶ原山荘 | 位ヶ原 乗鞍エコーライン沿い |
2,350 | 北東 2.1 | 50 | 1940年建造 山スキーなどに利用される | |
頂上小屋 | 山頂直下北 | 2,800 | 北 0.1 | 1931年建造 山頂に最も近いが、売店のみ | ||
肩ノ小屋 | 山頂直下北 大雪渓上部 |
2,800 | 北 0.9 | 200 | 1920年建造 山頂に最寄りの宿泊可能な山小屋 交通困難地(毎年11月1日~翌6月末日)[95] | |
野麦峠お助け小屋 | 野麦峠 | 1,672 | 南東 7.2 | 50 | 1841年建造 郡代が設置。昭和に復元 |
地理
[編集]飛騨山脈南部の主稜線にあり、主峰の剣ヶ峰から北に硫黄岳、十石岳を経て十石尾根が安房峠まで延び焼岳につながる、南に高天ヶ原と戸鞍を経て県界尾根が野麦峠まで延び、鎌ヶ峰につながる[23]。
周辺の山
[編集]飛騨山脈南端の山で、野麦峠付近までが中部山岳国立公園の指定範囲である[10]。
山容 | 山名 | 標高[1][96] (m) |
三角点等級 基準点名[1] |
乗鞍岳からの 方角と距離(km) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
白山 | 2,702.17 | 一等 「白山」 |
西 70.6 | 両白山地の最高峰 日本百名山 | |
穂高岳 | 3,190 | 北北東 22.0 | 飛騨山脈の最高峰 日本百名山 | ||
焼岳 | 2,455.37 | 二等 「焼岳」 |
北北東 13.7 | 日本百名山 | |
乗鞍岳 | 3,025.73 | 一等 「乗鞍岳」 |
0 | 日本百名山 | |
鎌ヶ峰 | 2,121.10 | 二等 「鎌ケ岳」 |
南南東 9.8 | ||
鉢盛山 | 2,446.43 | 一等 「鉢盛山」 |
東 18.2 | 日本三百名山 | |
御嶽山 | 3,067 | (一等)「御嶽山」 (3,063.41 m) |
南南西 24.6 | 独立峰 日本百名山 | |
木曽駒ヶ岳 | 2,955.95 | 一等 「信駒ケ岳」 |
南東 41.8 | 木曽山脈の最高峰 日本百名山 |
源流の河川
[編集]本州における太平洋側(木曽川)と日本海側(信濃川、神通川)の中央分水嶺が剣ヶ峰を通っており、この分水嶺の最高所となっている。
周辺の峠
[編集]- 平湯峠 - 標高1,684 m。山頂の北北西8.5 km。国道158号の平湯トンネルが下を通る。輝山と大崩山との鞍部、神通川の支流である久手川と高原川の支流であるトヤ谷との分水嶺。岐阜県道5号乗鞍公園線が通り、岐阜県道485号平湯久手線の終点。
- 安房峠 - 標高1,790 m。山頂の北北東10.1 km。国道158号が通り、飛騨山脈主稜線の白倉山と安房山との鞍部、高原川の支流である安房谷と梓川との分水嶺、岐阜県と長野県との県境。
- 野麦峠 - 標高1,672 m。山頂の南東7.2 km。長野県道・岐阜県道39号奈川野麦高根線が通り、戸蔵と鎌ヶ峰との鞍部、飛騨川の支流である益田川と梓川の支流である奈川との分水嶺、岐阜県と長野県との県境[97]。野麦峠お助け小屋があり、1979年(昭和54年)の映画『あゝ野麦峠』で広く知られるようになった。
- 白樺峠 - 標高約1,620 m。山頂の東9.6 km。上高地乗鞍スーパー林道が通り、タカの渡りの観察地として知られている。
周辺の滝
[編集]- 平湯大滝 - 高原川の源流部
- 乗鞍三名滝 - 三本滝、善五郎の滝、番所大滝が梓川支流の小大野川にある。
- 布引滝 - 五色ヶ原[6]
- 岳谷滝 - 飛騨川の支流である益田川の源流部
- 青垂滝、御越滝 - 神通川の支流である小八賀川の源流部
観光
[編集]畳平まで乗鞍スカイライン(岐阜県側)や乗鞍エコーライン(長野県側)といった自動車道が通じていることもあり、「日本で最も登りやすい3,000m超級の山[23]、「ハイヒールでも上れる山」とも称されてきた。しかし自家用車で畳平の駐車場まで乗り入れのできた以前とは異なり、マイカー規制により麓にある専用駐車場などからシャトルバス又はタクシーの利用が必要となった。高山市は、江名子町より望む乗鞍岳、夕焼けの乗鞍岳、朝の乗鞍岳、桔梗ヶ原より望む乗鞍烏帽子岳、布引滝(五色ヶ原)、五色ヶ原の森雄池、十二ヶ岳付近より望む乗鞍岳、舟山山頂道路より望む乗鞍岳、日和田高原から望むレンゲつつじと乗鞍岳、野麦峠より望む乗鞍岳、野麦峠の池より望む乗鞍岳を「新高山市100景」の一つとして選定している[6]。
畳平
[編集]畳平(たたみだいら、岐阜県高山市丹生川町)は乗鞍岳山頂部にある恵比寿火山体の火口原[98]。標高は白山と同じ2,702 mで、日本最高所の路線バスのバス停がある。乗鞍スカイラインの終点であり、観光バスやタクシーが駐停車する駐車場がある。高山植物のお花畑には木道の遊歩道が整備され観光スポットとなっている。高山植物の見頃は6月下旬-8月中旬ごろ[99]。乗鞍自然観察指導員による自然観察教室が開催されている。周辺には山小屋などの宿泊施設と宇宙線研究所などの観測施設があり、乗鞍岳星空観察会が行われている。また売店、食堂、自然観察指導所、乗鞍山頂簡易郵便局[100]、乗鞍本宮神社がある。乗鞍スカイライン開通後しばらくの間、鶴ヶ池周辺では立山黒部アルペンルートの雪の大谷のような雪の回廊が見られる。駐車場の500 mほど東の乗鞍エコーラインの峠部(長野県と岐阜県との県境)、大黒岳、富士見岳などがご来光スポットとなっている[101]。畳平へのペットの持ち込みは禁止されている[102]。
乗鞍高原
[編集]乗鞍岳の東麓に広がる標高1,200-1,800 mの溶岩流の岩原で、三本滝、牛留池、湿原など景観に恵まれた環境である。4月上旬-5月上旬にはミズバショウが開花し、5月に入るとシラカバやカラマツが芽吹き始める[103]。牛留池や一ノ瀬園地などからは乗鞍岳を望むことができる[104]。古くは修験者の登路となり、江戸時代には大樋銀山で銀の産出が行われていた[105]。一ノ瀬園地ではソバの栽培が盛んに行われている。Mt.乗鞍(旧称の乗鞍高原温泉スキー場と旧乗鞍高原いがやスキー場のMt.乗鞍スノースマイルエリア)のスキー場がある。鈴蘭には長野県乗鞍自然保護センターがある。湯川から源泉を引湯している乗鞍高原温泉(のりくら温泉)がある。乗鞍高原温泉、すずらん温泉、安曇乗鞍温泉、わさび沢温泉の総称として、のりくら温泉郷と呼ばれている。
サイクリング
[編集]乗鞍スカイラインが2003年にマイカー規制される以前の有料道路であった時期には、自転車の通行が禁止されていた。マイカー規制後は自転車の通行が許可された。畳平付近の乗鞍エコーラインの標高2,716 m地点(大黒岳と富士見岳との鞍部、長野県と岐阜県との県境)は、日本で自転車で走行できる最も標高の高い県道の地点である。毎年夏に、乗鞍スカイライン・サイクルヒルクライムと全日本マウンテンサイクリングin乗鞍の自転車レースが開催されている。
乗鞍スカイライン・サイクルヒルクライム
[編集]毎年7月の第1日曜日に開催される乗鞍スカイラインをメインコースとした自転車ヒルクライムレース。岐阜県高山市丹生川町久手の殿下平交流ターミナル(標高1,360m)を起点として、平湯峠を経由して畳平の鶴ヶ池駐車場(標高2,702 m)を終点とする全長18.8 km(標高差1,642 m)のコース。乗鞍スカイラインがマイカー規制された翌年の2004年から始まり、2013年のエントリー数は1,011名であった。
全日本マウンテンサイクリングin乗鞍
[編集]毎年8月の最終日曜に開催される自転車ヒルクライムレース。乗鞍エコーラインの鈴蘭から長野・岐阜県境までの区間、全長約20.5km、標高差1,260m(スタート地点1,458m, ゴール地点2,716m)(大会主催者側の公称値)のコースをひたすら登り続ける。1986年(昭和61年)から実施されており2014年大会で実に29回目を数える、日本のヒルクライムレースの草分け的存在である[106]。最近の自転車人気の復活も手伝ってか近年の参加者数は3,000名を大きく超える規模となっている。
スキー
[編集]国内では月山、立山とともに夏スキーができる山として知られている。冬に積雪が多く夏でも山頂付近の各所に雪渓が残り、剣ヶ峰の北東面の大雪渓と魔王岳北東面の鶴ヶ池雪渓がスキー指定地とされ夏スキーやスノーボードで賑わっている[20]。環境保護の意識が低かった1960年代には、某大学のスキー部が雪面を固めるためトラックで4トン近くの塩を運びこび散布。大雪渓周辺の高山植物が極端に衰退する出来事もあった[107]。
山麓には以下のスキー場がある。1934年(昭和9年)1月に開業したリフトなどがない「飛騨乗鞍スキー場」が飛騨側の大尾根にあった[108]。1997年(平成9年)に岐阜県大野郡丹生川村の村営スキー場として開業した「ひだ乗鞍ペンタピアスノーワールド」は、2007年1月に廃止となった。南西山麓の子ノ原高原には1972年(昭和47年)に開業した「子ノ原高原スキー場」があった[109]。
- Mt.乗鞍(旧称の乗鞍高原温泉スキー場と旧乗鞍高原いがやスキー場のMt.乗鞍スノースマイルエリア)
- 飛騨高山スキー場
- 飛騨ほおのき平スキー場
五色ヶ原
[編集]乗鞍岳の西麓の3,000 haほどのブナとミズナラなどの広葉樹とコメツガとシラビソなどの針葉樹の森林地帯で、溶岩台地周辺の地形に池、湿原、滝などが点在する[110]。588種の植物が確認され[110]、多くの環境省のレッドリスト指定種が含まれている[111]。多くの自然が残されていて、一般の入山が規制され[注釈 20]完全予約制でインタープリター[注釈 21]による周辺の遊歩道でガイドが行われている[112]。2004年(平成16年)7月に整備された周辺の滝巡りをするカモシカコースと池や湿地などを巡るシラビソコースがある[76][112][113]。「高山市乗鞍山麓五色ヶ原の森」が、2013年(平成25年)3月21日に「第8回エコツーリズム大賞」の優秀賞を受賞した[114]。
周辺の温泉
[編集]交通・アクセス
[編集]東麓では1929年(昭和4年)に大野川まで自動車道が通り、1940年(昭和15年)には幅員4.5 mの車道が乗鞍高原鈴蘭まで開通した[74]。山域の北端を国道158号が通り、その安房峠の下部を1997年(平成9年)に開通した安房峠道路のトンネルが貫通している。国道158号の高山市側から平湯峠を経由して山上部の畳平まで岐阜県道5号乗鞍公園線が通じており、上部の区間は「乗鞍スカイライン」と呼ばれている。国道158号の平湯温泉側からは、平湯峠まで岐阜県道485号平湯久手線が通じている。山頂の北2 kmの畳平(標高2,702 m)には、日本で最高所の乗鞍バスターミナルがある。長野県の乗鞍高原側からは、長野県道84号乗鞍岳線が畳平まで通じ、その県道の上部の区間が「乗鞍エコーライン」と呼ばれている。1973年(昭和48年)に上高地方面から白骨温泉、乗鞍高原、白樺峠を経由して奈川温泉までの上高地乗鞍スーパー林道の有料道路が開通し、2008年(平成20年)に無料開放された。山域の南端の野麦峠を長野県道・岐阜県道39号奈川野麦高根線が通る。
マイカー規制とシャトルバス
[編集]1973年(昭和48年)に岐阜県初の有料道路として開通した乗鞍スカイラインは一般車両が通行できる日本最高所の有料道路であり、終点は収容台数230台の畳平駐車場と210台の鶴ヶ池駐車場があった[40]。乗鞍スカイラインと乗鞍エコーラインから畳平まで乗り入れる車両は年間20万台を越えていた[115]。2003年から乗鞍スカイラインの平湯峠ゲートより上部及び乗鞍エコーラインの三本滝ゲートより上部でマイカー規制が実施されている[102]。岐阜県側では、濃飛バスによりアカンダナ駐車場(平湯温泉)と朴の木平駐車場から畳平行きの専用シャトルバスが運行されている(例年除雪後に冬期閉鎖が解除され、5月15日に開通する。)。長野県側では、アルピコ交通の松本電鉄バスにより乗鞍高原内の第1駐車場、第2駐車場、第3駐車場、三本滝駐車場から畳平行きのシャトルバスが運行されている(例年除雪後に冬期閉鎖が解除され、7月初旬に畳平までの全区間が開通する。)。7-9月の夏期シーズンにはご来光時に合わせた早朝便が運行されている。
主要地点からの距離
[編集]- 松本空港の西34 kmに位置する。
- JR東海高山本線高山駅の東27 kmに位置し[20]、JR東海高山本線飛騨小坂駅の東南東21.2 kmに位置し、アルピコ交通上高地線の新島々駅の西南西21 kmに位置する。
- 中部縦貫自動車道(高山清見道路)高山インターチェンジの東南東30 kmに位置し、安房峠道路平湯インターチェンジの南9 kmに位置する。
乗鞍岳の風景
[編集]乗鞍岳の近景
[編集]麓の乗鞍高原からはその山容を望むことができ[116]、高山市街からは大きな山容を見渡すことができ、高山市などの山麓の多くの学校の校歌で歌われている[117]。
-
富士見岳からご来光と雲海
-
恵比寿岳と畳平
-
鶴ヶ池からのオリオン座
-
乗鞍 畳平 鶴ヶ池
-
肩の小屋付近から望む乗鞍岳
-
乗鞍岳からの日の出
-
乗鞍岳の歩きやすい登山道
-
乗鞍岳での山スキー
-
雪解けの権現池
-
肩ノ小屋と気象観測所
-
畳平と穂高連峰
-
秋の乗鞍エコーライン
乗鞍岳の遠景
[編集]比較的新しい火山であることからなだらかな女性的な山容で[21][23]、御嶽山と同様に遠くから眺めると独立峰のように大きくその裾野を広げている。明治の歌人の長塚節が
うるはしみ 見し乗鞍は 遠くして 一目といえど ながくほこらむ — 長塚節
の短歌を残している[12]。深田久弥は「日本百名山」の著書で、「乗鞍の姿を一度見たらその山を忘れることができないだろう。」と記している[12]。麓の高山市の歌人福田夕咲は
み仏の 思惟の姿に 似たらずや 静けきかもよ 岳の夕ばえ — 福田夕咲
の短歌を残し、乗鞍岳の山容を仏の仰臥に見立てている[17]。また飛騨の山の特徴を「乗鞍の雄大、槍ヶ岳の険峻、御嶽の壮厳、錫杖の奇観、白山の崇高」と表現している[118]。松本市などの学校でも校歌に歌われている。乗鞍岳を背景としてゲンゲとギフチョウを描いたふるさと切手(50円郵便切手)の『国土緑化・岐阜県』が、2006年(平成18年)5月19日に、郵便局から発売された[119][120]。
乗鞍岳からの眺望
[編集]-
富士見岳から望む赤石山脈(南アルプス)越しにわずかに見える富士山
-
御嶽山
-
両白山地と高山市
メディア
[編集]関連書籍
[編集]- 『乗鞍スカイライン沿線植物群落の変遷学術調査報告書』岐阜県、1978年、ASIN B000J8CZBK頁。
- 福島立実『「岳」はおれの学舎―乗鞍岳を知りつくした男の物語』河出書房新社、2001年12月20日。ISBN 4309265103。
文献
[編集]- 斎藤守也、入江誠 (2002-03-29). “乗鞍コロナ観測所における気象観測” (PDF). 国立天文台報 (国立天文台) (第6巻): 37-47頁 .
- 中下留美子; 鈴木彌生子; 林秀剛; 泉山茂之; 中川恒祐; 八代田千鶴; 淺野玄; 鈴木正嗣 (2010), “乗鞍岳畳平で人身事故を引き起こしたツキノワグマの食性履歴の推定 : 安定同位体分析による食性解析”, 哺乳類科学 (日本哺乳類学会) 50 (1): 43-48頁
絵画
[編集]- 『新雪の乗鞍岳』 - 青地秀太郎の作品
写真集
[編集]- 山岸仁史『よあけ乗鞍―山岸仁史写真集』日本カメラ社、2003年2月。ISBN 4817920599。
テレビ番組
[編集]NHKなどにより、乗鞍岳を主題とした以下のテレビ番組などが放送されている。
- 『日本百名山 乗鞍岳』 NHK衛星第2テレビジョン、1994年11月2日放送[121]
- 『北アルプス 乗鞍岳』 さわやか自然百景、NHK総合テレビ、2000年1月16日放送[122]
- 『週刊 日本の名峰 乗鞍岳』 日本の名峰、NHKデジタル衛星ハイビジョン、2009年1月30日放送[123]
- 『日帰り3026メートル 北アルプス 乗鞍岳』 小さな旅、NHK総合テレビ、2009年9月13日放送[124]
- 『北アルプス・乗鞍岳 〜標高3026m 雲上の別天地〜』 大人の山歩き-自分に出会える百名山-、テレビ朝日、2013年9月7日放送[125]
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 十石岳から剣ヶ峰にかけての高山帯付近の区域はその特別保護地区、安房峠、乗鞍高原周辺などの中腹区域はその特別地域、それらの周辺の山域は普通地域の指定を受けている。
- ^ 江戸幕府に提出された絵図に乗鞍岳の山名が記載されている。
- ^ 朝日岳の山名は、山頂八峰の一つとして残されている。
- ^ 乗鞍講の創始者である重明行者が命名したとされている。
- ^ 日本で3,000mを超える火山は、富士山・御嶽山・乗鞍岳だけである。
- ^ 烏帽子火山体は山体崩壊と激しい浸食により、4万年前までにその3分の1が崩れ去った。
- ^ これらの水蒸気噴火テフラには、九州の鬼界カルデラから飛来した鬼界アカホヤ火山灰が混じっている。
- ^ 不消ヶ池は火口湖であるとすることもあるが、そうではないとする説もある。
- ^ 鶴ヶ池は火口湖であるとすることもあるが、そうではないとする説もある。
- ^ 畳平周辺でも、しばしばツキノワグマが目撃されている。
- ^ 敗戦により航空研究所は建設されず、軍用道路は岐阜県の県道に編入され山岳観光道路として利用されるようになった。
- ^ 東京大学宇宙線研究所の前身は、1950年(昭和25年)に朝日学術奨励金によって建てられた朝日の小屋。
- ^ 以前は、平湯大滝から谷沿いの登山道があったが、途中崩落のため通行禁止になっていた。新しい登山道は、平湯温泉スキー場から尾根伝いに桔梗ヶ原までの9.6kmで、登り5時間、下り3時間半を要する。これで、登りは登山道を歩き、下りはバスといったことが可能になった。
- ^ 富士見岳の西側を巻く道路もあり、旧乗鞍コロナ観測所へ向かう道路は摩利支天岳山頂で行止りとなっている。
- ^ 頂上小屋を経由しない西側のコースもある。
- ^ 平湯口コースは、平湯大滝から姫ヶ原までの区間が2005年の時点で通行禁止となっている。
- ^ 子ノ原口コースは、2005年の時点で閉鎖されている。
- ^ 野麦口コースは、2005年の時点で通行禁止となっている。
- ^ 剣ヶ峰(乗鞍岳の山頂)からの山小屋までの距離は、登山経路上の距離ではなく、2地点の直線距離。
- ^ 五色ヶ原内への入山には認定ガイド同伴が必要となっている。
- ^ インタープリター制度は、日本では五色ヶ原で最初に導入された。
出典
[編集]- ^ a b c d e “基準点成果等閲覧サービス”. 国土地理院. 2016年9月8日閲覧。
- ^ 乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、18-19頁
- ^ a b c “火山噴火予知連絡会による活火山の選定及び火山活動度による分類(ランク分け)について” (PDF). 気象庁. pp. 4 (2003年1月21日). 2013年9月4日閲覧。
- ^ “乗鞍岳の噴火警戒レベル” (PDF). 気象庁地震火山部火山監視・情報センター (2013年7月). 2020年9月8日閲覧。
- ^ a b c 垣外富士男 (2002)、186頁
- ^ a b c “新高山市100景一覧表”. 高山市. 2014年8月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年9月11日閲覧。
- ^ 山の便利手帳 (2010)、330頁
- ^ 火山監視・情報センターにおいて火山活動を24時間体制で監視している火山(常時観測火山) 気象庁
- ^ a b c d e f g h i “火山・乗鞍岳”. 気象庁. 2013年9月4日閲覧。
- ^ a b c “中部山岳国立公園区域の概要”. 環境省. 2013年9月4日閲覧。
- ^ a b c d e 平田謙一 (2000)、139頁
- ^ a b c d e 深田久弥 (1982)、223-226頁
- ^ 岩崎元郎 (2006)、56-57頁
- ^ 清水榮一 (1990)
- ^ 岐阜県山岳連盟 (1987)
- ^ 一等三角点研究会 (1988)
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 日本山岳会 (2005)、967-969頁
- ^ a b c d 深田クラブ (1987)、165頁
- ^ a b c d e f 日本の山1000 (1992)、348-349頁
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 日本山名辞典 (1992)、407頁
- ^ a b c d 日本三百名山 (1997)、172頁
- ^ 乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、115頁
- ^ a b c d e f 乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、6-8頁
- ^ a b 高橋正樹 (2000)、35頁
- ^ a b c d e f 乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、22-23頁
- ^ a b c d e 平田謙一 (2000)、115-120頁
- ^ 登山ルート・山旅スポット. “乗鞍岳の魅力と自然”. 山旅旅. 2020年10月15日閲覧。
- ^ a b c d e f g 高橋正樹 (2000)、37頁
- ^ a b c d “乗鞍岳と乗鞍高原” (PDF). 乗鞍観光協会. pp. 2. 2014年6月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年9月4日閲覧。
- ^ 高橋正樹 (2000)、37-39頁
- ^ 及川 輝樹 ほか (2018). “乗鞍火山、完新世の噴火史”. 地球惑星科学連合大会要旨 2020年11月24日閲覧。.
- ^ “中長期的な噴火の可能性評価について -監視・観測体制の充実等の必要な火山の選定-” (PDF). 火山噴火予知連絡会、火山活動評価検討会. pp. 8 (2009年6月). 2016年11月16日閲覧。
- ^ a b “乗鞍岳の火山活動解説資料(平成25年7月)” (PDF). 気象庁地震火山部火山監視・情報センター (2013年7月). 2013年9月4日閲覧。
- ^ “乗鞍岳 観測点配置”. 気象庁. 2013年9月4日閲覧。
- ^ 守屋以智雄(1994):火山層序学的調査に基く噴火の長期予測 名古屋大学加速器質量分析計業績報告書. v.5, 1994, p.121-133
- ^ “乗鞍防災協議会設置へ 県が火山対策検討会議”. 岐阜新聞. (2014年11月14日). オリジナルの2015年2月14日時点におけるアーカイブ。 2015年2月14日閲覧。
- ^ a b 伊部高夫 (2006)、33-35頁
- ^ a b “地図閲覧サービス「乗鞍岳」”. 国土地理院. 2013年9月6日閲覧。
- ^ a b c d e f 乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、26-27頁
- ^ a b c d e 平田謙一 (2000)、66-69頁
- ^ 乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、24-25頁
- ^ “白骨温泉の噴湯丘と球状石灰石”. 松本市教育委員会. 2013年9月4日閲覧。
- ^ a b c d e f 斎藤守也、入江誠 (2002-03-29). “乗鞍コロナ観測所における気象観測” (PDF). 国立天文台報 (国立天文台) (第6巻): 37-47 2013年9月8日閲覧。.
- ^ a b c “乗鞍コロナ観測所の気象観測”. 国立天文台. 2013年9月4日閲覧。
- ^ “乗鞍岳の天気”. 高山市観光課. 2013年9月11日閲覧。
- ^ “乗鞍畳平付近でのクマ目撃情報”. 岐阜県 (2016年9月10日). 2016年11月16日閲覧。
- ^ 中村浩志 (2006)
- ^ a b c d “検討結果(乗鞍地区の自然の状況)”. 岐阜県. 2016年11月16日閲覧。
- ^ 乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、105-106頁
- ^ 平田謙一 (2000)、140頁
- ^ “岐阜県レッドデータブック(改定版)・昆虫類”. 岐阜県 (2010年8月). 2016年11月16日閲覧。
- ^ 垣外富士男 (2002)、196頁
- ^ “乗鞍岳湿原”. 環境省 自然環境局. 2016年11月16日閲覧。
- ^ a b 島田靖 (1998)、117頁
- ^ “子ノ原高原レンゲツツジ群落”. 岐阜県. 2016年11月16日閲覧。
- ^ a b c 垣外富士男 (2002)、209頁
- ^ 平田謙一 (2000)、15頁
- ^ 小野木三郎 (2005)、2-3頁
- ^ 小野木三郎 (2005)、20頁
- ^ 小野木三郎 (2005)、22頁
- ^ a b “自然観察教育林”. 林野庁. 2013年9月8日閲覧。
- ^ a b “岐阜県乗鞍環境保全税”. 岐阜県. 2016年11月16日閲覧。
- ^ “乗鞍環境保全税の概要”. 岐阜県. 2016年11月16日閲覧。
- ^ a b c d e f g 乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、116-117頁
- ^ 平田謙一 (2000)、83頁
- ^ ウォルター・ウェストン (1997)、370頁
- ^ ウォルター・ウェストン (1997)、372頁
- ^ 春日俊吉『山と雪の墓標 松本深志高校生徒落雷遭難の記録』有峰書店、1970年7月 pp239-241.
- ^ 春日俊吉「行者の言葉(乗鞍岳)」『山の遭難譜』二見書房、1973年、pp.6-17.
- ^ a b c “岐阜県中部山岳国立公園活性化ニュースレター創刊号”. 中部山岳国立公園活性化推進協議会 (2019年11月20日). 2022年8月8日閲覧。
- ^ 垣外富士男 (2002)、187-188頁
- ^ “乗鞍コロナ観測所”. 国立天文台太陽観測所 (2010年10月1日). 2013年9月8日閲覧。
- ^ “乗鞍観測所について”. 東京大学宇宙線研究所. 2016年11月16日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 柳原修一 (1990)、61-66頁
- ^ 高山市HP・観光情報(乗鞍スカイライン)
- ^ a b “乗鞍山麓五色ヶ原”. 五色ヶ原の森運営共同事業体. 2016年11月16日閲覧。
- ^ 乗鞍スカイライン#沿革
- ^ a b c d e f g h 平田謙一 (2005)、155-157頁
- ^ 平田謙一 (2000)、76-77頁
- ^ 岐阜県#教育
- ^ 長野県#学校登山
- ^ “学校集団登山”. 長野県山岳総合センター. 2023年7月18日閲覧。
- ^ “「長野県中学校集団登山動向調査」のまとめ” (pdf). 長野県山岳総合センター (2013年). 2023年7月18日閲覧。
- ^ “学校登山で「行くぞ乗鞍岳」 開成中1年生が日帰りで登る”. 株式会社 市民タイムス (2023年7月22日). 2023年7月22日閲覧。
- ^ “松本市内中学校の登山離れ加速”. 株式会社 市民タイムス (2023年7月15日). 2023年7月22日閲覧。
- ^ 島田靖 (2009)、27-29頁
- ^ “突如現れた「クマ」に逃げ惑う観光客…「怒号・悲鳴・クラクション」バスターミナルをパニックに陥れた“襲撃事件””. 弁護士JPニュース (2024年8月17日). 2024年8月23日閲覧。
- ^ 日本山岳会 (2005)、969-970頁
- ^ 島田靖 (1998)、58-59頁
- ^ 乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、46頁
- ^ 島田靖 (2009)、38-39頁
- ^ 飛騨山岳会 (2010)、40-41頁
- ^ 平田謙一 (2000)、121頁
- ^ 山の便利手帳 (2010)、166頁
- ^ “別冊(内国郵便約款第79条及び第97条関係) 交通困難地・速達取扱地域外一覧”. 日本郵便 (2022年2月21日). 2022年5月1日閲覧。
- ^ “日本の主な山岳標高(岐阜県の山)”. 国土地理院. 2011年6月11日閲覧。
- ^ 山と高原地図 (2013)
- ^ 日本山名辞典 (1992)、324頁
- ^ 平田謙一 (2000)、77頁
- ^ “簡易郵便局の業務の開始(乗鞍山頂簡易郵便局)” (PDF). 日本郵政東海支社 (2013年6月5日). 2013年9月5日閲覧。
- ^ 小林俊樹 (1996)、28頁
- ^ a b “マイカー規制のご案内”. 飛騨乗鞍観光協会. 2013年9月11日閲覧。
- ^ 平田謙一 (2000)、70-71頁
- ^ 垣外富士男 (1998)、86-87頁
- ^ 乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、76-77頁
- ^ “全日本マウンテンサイクリングin乗鞍”. 日本サイクリング協会. 2013年9月5日閲覧。
- ^ 「お花畑でバーベキュー 悪質な高山植物荒らし」『朝日新聞』昭和44年(1969年)8月27日朝刊、12版、15面
- ^ 飛騨山岳会 (2010)、273頁
- ^ 飛騨山岳会 (2010)、274頁
- ^ a b 乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、10-11頁
- ^ 乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、54-55頁
- ^ a b 乗鞍岳自然観察ガイド (2005)、48-49頁
- ^ 島田靖 (2009)、34-37頁
- ^ “エコツーリズム大賞”. 日本エコツーリズム協会. 2013年9月5日閲覧。
- ^ 田中豊雄 (1999)、2頁
- ^ “乗鞍高原からみた乗鞍岳”. 環境省・インターネット自然研究所. 2016年11月17日閲覧。
- ^ 飛騨山岳会 (2010)、4頁
- ^ 飛騨山岳会 (2010)、2頁
- ^ 桜田隆範 (2007)、303頁
- ^ “ふるさと切手「国土緑化」の発行”. 日本郵政. 2013年9月11日閲覧。
- ^ “NHKアーカイブス保存番組詳細 日本百名山 乗鞍岳(1994年11月2日放送)”. NHK. 2016年11月17日閲覧。
- ^ “北アルプス 乗鞍岳”. NHK. 2013年9月8日閲覧。
- ^ “NHKアーカイブス保存番組詳細「週刊 日本の名峰 乗鞍岳(2009年1月30日放送)」”. NHK. 2016年11月17日閲覧。
- ^ “日帰り3026メートル 北アルプス 乗鞍岳”. NHK. 2013年9月8日閲覧。
- ^ “大人の山歩き~自分に出会える百名山~ 過去の放送内容”. テレビ朝日. 2016年4月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年9月11日閲覧。
参考文献
[編集]- 一等三角点研究会『一等三角点百名山』山と溪谷社、1988年11月。ISBN 9784635330008。
- 伊藤茂『槍・穂高と南部北アルプス』ぎょうせい〈日本の名山9〉、1983年6月20日、ASIN B000J7D48O頁。
- 伊部高夫『長野県中信・南信日帰りの山―120山/188コース』章文館、2006年9月。ISBN 4901742051。
- 岩崎元郎『新日本百名山登山ガイド〈下〉』山と溪谷社、2006年3月。ISBN 4635530477。
- ウォルター・ウェストン 著、青木枝朗 訳『日本アルプスの登山と探検』岩波文庫、1997年6月。ISBN 4003347412。
- 小野木三郎『花かおる乗鞍岳』ほおずき書籍、2005年5月27日。ISBN 4434059513。
- 垣外富士男、島田靖『乗鞍・御岳・霧ガ峰』山と溪谷社〈ヤマケイアルペンガイド17〉、2002年4月。ISBN 4635013170。
- 垣外富士男、津野祐司、池上立、中山秀幸『長野県の山』山と溪谷社〈分県登山ガイド〉、1998年9月15日。ISBN 4635021750。
- 岐阜県山岳連盟『ぎふ百山』岐阜新聞社、1987年7月。ISBN 4905958474。
- 小林俊樹『上高地 乗鞍』日地出版〈地球の風14〉、1996年6月。ISBN 4527014137。
- 桜田隆範『切手と風景印でたどる百名山』ふくろう舎、2007年6月。ISBN 4898062768。
- 徳久球雄 編『コンサイス日本山名辞典』(修訂版)三省堂、1992年10月。ISBN 4-385-15403-1。
- 島田靖、堀井啓介、木下喜代男『岐阜県の山』山と溪谷社〈分県登山ガイド〉、1981年10月。ISBN 4635021807。
- 島田靖、堀井啓介『改訂版 岐阜県の山』山と溪谷社〈新・分県登山ガイド・改訂版〉、2009年12月。ISBN 9784635023702。
- 清水榮一『決定版 信州百名山』(改訂版)桐原書店、1990年5月。ISBN 4342752700。
- 田中豊雄『花の乗鞍岳』ほおずき書籍〈フラワーウォッチング・ハンドブック16〉、1999年4月29日。ISBN 4795286388。
- 高橋正樹、小林哲夫 編『中部・近畿・中国の火山』築地書館〈フィールドガイド日本の火山⑥〉、2000年4月。ISBN 4806711993。
- 豊国秀夫『日本の高山植物』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1988年9月。ISBN 4-635-09019-1。
- 中村浩志『雷鳥が語りかけるもの』山と溪谷社、2006年8月。ISBN 4635230066。
- 『日本三百名山』毎日新聞社、1997年3月。ISBN 4620605247。
- 日本山岳会 編『新日本山岳誌』ナカニシヤ出版、2005年11月。ISBN 4-779-50000-1。
- 『日本の山1000』山と溪谷社、1992年8月。ISBN 4635090256。
- 『乗鞍高原』昭文社〈山と高原地図2013年版〉、2013年3月15日。ISBN 978-4398758965。
- 『乗鞍岳自然観察ガイド』山と溪谷社、2005年4月1日。ISBN 4635420299。
- 平田謙一『上高地・乗鞍岳を歩く』山と溪谷社〈フルカラー特選ガイド〉、2000年8月20日。ISBN 463517154X。
- 平田謙一『日本百名山地図帳』山と溪谷社、2005年7月。ISBN 4-635-92203-0。
- 飛騨山岳会『飛騨の山』ナカニシヤ出版、2010年12月、298-301頁。ISBN 978-4-779-50504-1。
- 深田久弥『日本百名山』朝日新聞社、1982年7月。ISBN 4-02-260871-4。
- 深田クラブ『日本200名山』昭文社、1987年。ISBN 4398220011。
- 『目で見る日本登山史・日本登山史年表』山と溪谷社、2005年10月。ISBN 4635178145。
- 柳原修一『北アルプス山小屋物語』東京新聞出版局、1990年6月。ISBN 4808303744。
- 『山と溪谷2011年1月号付録』山と溪谷社〈山の便利手帳2011〉、2010年12月、ASIN B004DPEH6G頁。
関連項目
[編集]- 飛騨山脈(北アルプス)、中部山岳国立公園
- 日本百名山、新日本百名山、一等三角点百名山、ぎふ百山
- 日本の山一覧 (高さ順)・第19位、日本の山一覧 (3000m峰)
- 乗鞍スカイライン、乗鞍エコーライン、上高地乗鞍スーパー林道、マイカー規制、平湯バスターミナル
- 乗鞍火山帯
- 乗鞍高原、乗鞍高原温泉、のりくら温泉郷、乗鞍高原温泉ユースホステル、Mt.乗鞍
- 五色ヶ原
- 乗鞍山頂簡易郵便局
- 乗鞍コロナ観測所(平成22年3月末に閉鎖)
- ヒルクライムレース
- ひだ (列車)・・・これを由来とした列車愛称として、国鉄・JR東海が高山本線を運行する急行列車「のりくら」について記されている。
外部リンク
[編集]- 乗鞍岳 気象庁
- 乗鞍岳の火山観測データ 気象庁
- 地図閲覧サービス・乗鞍岳 国土地理院
- 地質図ナビ 産業技術総合研究所
- 乗鞍岳の形成(高校地学コンテンツ) 岐阜県
- ライブカメラ(高山市観光情報) 高山市
- 山の天気・乗鞍岳 日本気象協会
- 空から見た日本(8)北アルプス・前編 SCIENCE CHANNEL(JST)