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ポール・モリター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ポール・モリター
Paul Molitor
ブリュワーズでの現役当時
基本情報
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
出身地 ミネソタ州セントポール
生年月日 (1956-08-22) 1956年8月22日(68歳)
身長
体重
6' 0" =約182.9 cm
185 lb =約83.9 kg
選手情報
投球・打席 右投右打
ポジション 指名打者三塁手二塁手
プロ入り 1977年 ドラフト1巡目(全体3位)でミルウォーキー・ブルワーズから指名
初出場 1978年4月7日
最終出場 1998年9月27日
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)
選手歴
監督・コーチ歴
殿堂表彰者
選出年 2004年
得票率 85.2%
選出方法 BBWAA選出

ポール・レオ・モリターPaul Leo Molitor, 1956年8月22日 - )は、アメリカ合衆国ミネソタ州セントポール出身のプロ野球監督、元プロ野球選手指名打者三塁手二塁手)。

ニックネームは、「The Ignitor」。

経歴

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プロ入り前

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1974年MLBドラフトセントルイス・カージナルスから28巡目(全体587位)に指名を受けるが契約せず、ミネソタ大学に進学。

プロ入りとブルワーズ時代

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1977年MLBドラフトミルウォーキー・ブルワーズから1巡目(全体3位)に指名を受け入団。同年はA級バーリントン・ビーズ英語版で64試合に出場し、打率.346、8本塁打、50打点、14盗塁を記録する[1]

1978年は、開幕メジャー入りを果たし、4月7日のボルチモア・オリオールズ戦でメジャーデビュー[2]。翌日の同カードではメジャー初本塁打を含む5打点を記録[2]。当初は遊撃手、5月途中から二塁手に回り[2]、前半戦で打率.296、6本塁打、22盗塁を記録[3]。後半戦は打率.242、本塁打0と調子を落とすが[3]、打率.273、142安打、30盗塁の好成績で新人王の投票ではルー・ウィテカーに次ぐ2位に入った[4]

1979年は、打率.322、188安打、33盗塁、リーグ2位の16三塁打と成績を伸ばす。

1980年は、開幕から好調を維持したが、6月に故障で1ヶ月以上離脱[5]オールスターゲームに初選出されたが辞退した。復帰後は調子を落とし、打率.304、34盗塁の成績だった。

1981年は、主に中堅手で出場するが[6]、5月にまたも故障で離脱。50日間に及ぶストライキでシーズンが中断・短縮されたこともあって64試合の出場に留まり、打率.267、2本塁打、19打点に終わる。同年は前後期制の変則日程となり、チームは後期優勝。ニューヨーク・ヤンキースとのディビジョンシリーズでは第3戦でトミー・ジョンから勝ち越し本塁打を放つが[7]他の試合では振るわず、チームは2勝3敗で敗退した。

1982年は、三塁手コンバートされ[8]5月12日カンザスシティ・ロイヤルズ戦で先頭打者本塁打を含む3本塁打を放つ[9]。打率.302、19本塁打、71打点、41盗塁、201安打、リーグ1位の136得点を記録し、チームは1969年の球団創設以来初の地区優勝。カリフォルニア・エンゼルスとのリーグチャンピオンシップシリーズでは打率.316、2本塁打を記録。チームは2連敗の後3連勝でリーグ優勝。カージナルスとのワールドシリーズでは第1戦で5安打を放つなど打率.355を記録するが、チームは3勝4敗で敗退した。

1983年は、打率.270と成績を落とした。

1984年は、故障で僅か13試合の出場に終わる。

1985年は、5年ぶりのオールスターゲームに選出される。

1986年は105試合の出場に留まった。

1987年は、開幕13連勝を記録したチームと共に好調なスタートを切る。7月16日から8月25日にかけて39試合連続安打(後述)を記録する。118試合の出場ながらいずれもキャリアハイの打率.353、45盗塁、出塁率.438、長打率.566、リーグ1位の114得点、41二塁打を記録し、シルバースラッガー賞(指名打者部門)を初受賞した。

1988年1989年は共に打率3割、190安打以上を記録。

1991年は指名打者としての出場が増加[10]。5月15日のミネソタ・ツインズ戦でサイクル安打を達成[11]するなど打率.325、いずれもリーグ1位の216安打、13三塁打、133得点の好成績を記録。

1992年も打率.320、195安打を記録した。オフにFAとなった。

1987年に記録した39試合連続安打は、2015年現在でも大リーグ歴代7位で、ブルワーズ球団記録である。20世紀以後に限れば5位で、第二次大戦後ではピート・ローズの44試合連続安打(1978年)に次ぐ記録である。8月26日の本拠地ミルウォーキー・カウンティ・スタジアムでのクリーブランド・インディアンス戦でジョン・ファレル(現ボストン・レッドソックス監督)の前に無安打に終わり、延長10回裏に次打者席にいるモリターの前の打者、リック・マニングがサヨナラ安打を放って試合が終わり、モリターの連続試合安打がストップすると、一部のファンからはブーイングも起こった。

ブルージェイズ時代

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1992年12月7日にトロント・ブルージェイズと契約を結んだ。移籍後は背番号をブルワーズ時代のチームメイトだったロビン・ヨーントと同じ「19」に変更。

1993年は後半戦で打率.361[12]と調子を上げ、打率.332、22本塁打、111打点を記録し、チームの地区優勝に貢献。シカゴ・ホワイトソックスとのリーグチャンピオンシップシリーズでは第1戦で本塁打を含む4安打、3打点を記録[13]するなど打率.391の活躍で、チームはリーグ連覇。フィラデルフィア・フィリーズとのワールドシリーズでは打率.500、2本塁打、8打点を記録してチームのシリーズ連覇に大きく貢献し、シリーズMVPを受賞。最優秀指名打者賞も獲得した。これが自身にとって最後のポストシーズンの出場となったが、通算で29試合に出場し、打率.368、6本塁打、22打点、5二塁打、3三塁打、28得点などの素晴らしい成績を残した[14]

1994年も好調を維持し、打率.341、14本塁打、75打点を記録するが、232日間に及ぶ長期ストライキでシーズンが打ち切られた。

1995年は平凡な成績に終わる。オフにFAとなった。

ツインズ時代

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1995年12月5日に故郷のツインズと契約を結んだ。

1996年9月16日のロイヤルズ戦でセンターオーバーの三塁打を放ち、通算3000安打を達成。3000安打目を三塁打で達成したのは史上初。40歳にして打率.341、9本塁打、キャリアハイの113打点、リーグ最多の225安打を記録し、2度目の最優秀指名打者賞を獲得。なお、「1桁本塁打で100打点」は20世紀以後に限ると、1985年のトム・ハーセントルイス・カージナルス)の8本塁打、110打点に次いで2度目で、モリター以後2021年までは達成者がいない。

1998年は8月8日のオリオールズ戦で通算500盗塁を達成し、同年限りで現役を引退。

引退後

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モリターのブルワーズ在籍時の背番号「4」。
ミルウォーキー・ブルワーズの永久欠番1999年指定。

引退の翌1999年7月11日、ブルワーズ在籍時の背番号4』がブルワーズの永久欠番に指定された[15]

2000年からの2年間はツインズで打撃コーチを務める。

2004年1月6日、資格初年度でアメリカ野球殿堂入り。主な守備ポジションは三塁手であったが、指名打者としては初の選出となった。同年シアトル・マリナーズの打撃コーチに就任したが、チームは打撃不振で打率こそリーグ7位であったが、得点がリーグ最下位[16]であったことが響き、順位も地区最下位に終わり、監督のボブ・メルビンらと共に解任された。

2014年よりツインズのコーチに復帰し、同年のシーズン終了後には2015年シーズンより監督に就任することが発表された[17]

2015年のウィンターミーティングにて
(2015年12月7日)

2015年、過去4シーズンで地区の順位が5→5→4→5と低迷していたチームを見事に立て直し、ワイルドカード獲得までわずか3ゲーム差となる、地区2位の83勝を挙げた。2017年にはチームをワイルドカードで7年ぶりのポストシーズンへ導き、最優秀監督賞を受賞した[18]。しかし2018年チームはポストシーズンに進出できずシーズン終了後、監督を退任となった。

選手としての特徴

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類稀なバットコントロールと強靭なリストを武器とした好打者であり、打率と長打力を両立させた上、スピードと走塁技術を持ち合わせた出群の走者でもあった[19][20]。主に一番打者として、33本の先頭打者本塁打(歴代10位)を記録するなど、打線の火付け役を務めたことから"The Ignitor"イグナイター点火装置)の異名を持ち[20]、21シーズンに及ぶ現役生活において通算3319安打(歴代9位)、234本塁打、504盗塁の数字を積み上げた。3000本安打・200本塁打・500盗塁をクリアしているのは他にリッキー・ヘンダーソンのみであり、「MLB史上最も洗練された攻撃型プレーヤーの1人」と評される[20]。守備は打撃ほどよくないが、投手捕手を除く7ポジションでの出場経験がある[21]。歴代順位はいずれも2015年シーズン終了時点。

詳細情報

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年度別打撃成績

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O
P
S
1978 MIL 125 556 521 73 142 26 4 6 194 45 30 12 7 5 19 2 4 54 6 .273 .301 .372 .673
1979 140 645 584 88 188 27 16 9 274 62 33 13 6 5 48 5 2 48 9 .322 .372 .469 .841
1980 111 512 450 81 137 29 2 9 197 37 34 7 6 5 48 4 3 48 9 .304 .372 .438 .810
1981 64 284 251 45 67 11 0 2 84 19 10 6 5 0 25 1 3 29 3 .267 .341 .335 .676
1982 160 751 666 136 201 26 8 19 300 71 41 9 10 5 69 1 1 93 9 .302 .366 .450 .816
1983 152 682 608 95 164 28 6 15 249 47 41 8 7 6 59 4 2 74 12 .270 .333 .410 .743
1984 13 49 46 3 10 1 0 0 11 6 1 0 0 1 2 0 0 8 0 .217 .245 .239 .484
1985 140 642 576 93 171 28 3 10 235 48 21 7 7 4 54 6 1 80 12 .297 .356 .408 .764
1986 105 482 437 62 123 24 6 9 186 55 20 5 2 3 40 0 0 81 9 .281 .340 .426 .766
1987 118 542 465 114 164 41 5 16 263 75 45 10 5 1 69 2 2 67 4 .353 .438 .566 1.004
1988 154 690 609 115 190 34 6 13 275 60 41 10 5 3 71 8 2 54 10 .312 .384 .452 .836
1989 155 696 615 84 194 35 4 11 270 56 27 11 4 9 64 4 4 67 11 .315 .379 .439 .818
1990 103 458 418 64 119 27 6 12 194 45 18 3 0 2 37 4 1 51 7 .285 .343 .464 .807
1991 158 749 665 133 216 32 13 17 325 75 19 8 0 1 77 16 6 62 11 .325 .399 .489 .888
1992 158 700 609 89 195 36 7 12 281 89 31 6 4 11 73 12 3 66 13 .320 .389 .461 .850
1993 TOR 160 725 636 121 211 37 5 22 324 111 22 4 1 8 77 3 3 71 13 .332 .402 .509 .911
1994 115 515 454 86 155 30 4 14 235 75 20 0 0 5 55 4 1 48 13 .341 .410 .518 .928
1995 130 598 525 63 142 31 2 15 222 60 12 0 3 4 61 1 5 57 10 .270 .350 .423 .773
1996 MIN 161 728 660 99 225 41 8 9 309 113 18 6 0 9 56 10 3 72 21 .341 .390 .468 .858
1997 135 597 538 63 164 32 4 10 234 89 11 4 2 12 45 8 0 73 8 .305 .351 .435 .786
1998 126 559 502 75 141 29 5 4 192 69 9 2 1 10 45 5 1 41 19 .281 .335 .382 .717
MLB:21年 2683 12160 10835 1782 3319 605 114 234 4854 1307 504 131 75 109 1094 100 47 1244 209 .306 .369 .448 .817
  • 各年度の太字はリーグ最高

年度別守備成績

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内野守備


一塁(1B) 二塁(2B) 三塁(3B) 遊撃(SS)
















































1978 MIL - 91 197 283 12 57 .976 1 2 0 0 0 1.000 31 54 118 10 17 .945
1979 - 122 289 413 15 81 .979 - 10 20 27 1 3 .979
1980 - 91 240 294 16 80 .971 1 1 1 0 0 1.000 12 19 41 4 10 .938
1982 - - 150 128 340 29 48 .942 4 6 10 3 0 .842
1983 - - 146 105 343 16 37 .966 -
1984 - - 7 7 21 2 3 .933 -
1985 - - 135 126 263 19 30 .953 -
1986 - - 91 82 170 15 25 .944 -
1987 - 19 35 49 0 16 1.000 41 25 64 5 8 .947 -
1988 - 1 1 1 0 0 1.000 105 86 187 17 15 .941 -
1989 - 16 28 44 1 9 .986 112 78 243 17 18 .950 -
1990 37 325 25 5 28 .986 60 136 190 4 36 .988 2 2 7 1 1 .900 -
1991 46 389 32 6 52 .986 - - -
1992 48 461 26 2 44 .996 - - -
1993 TOR 23 178 14 3 16 .985 - - -
1994 5 47 3 0 6 1.000 - - -
1996 MIN 17 138 13 1 13 .993 - - -
1997 12 99 7 1 6 .991 - - -
1998 9 79 7 0 4 1.000 - - -
MLB 197 1716 127 18 169 .990 400 926 1274 48 279 .979 791 642 1639 121 185 .950 57 99 196 18 30 .942
外野守備


左翼(LF) 中堅(CF) 右翼(RF)




































1981 MIL - 42 112 4 2 1 .983 4 8 0 1 0 .889
1986 4 4 1 0 0 1.000 - -
MLB 4 4 1 0 0 1.000 42 112 4 2 1 .983 4 8 0 1 0 .889
  • 各年度の太字はリーグ最高

年度別監督成績

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年度 球団 地区 年齢[22] 試合 勝利 敗戦 勝率 順位/チーム数 備考 ポストシーズン
勝敗
2015 MIN AL 中 59 162 83 79 .512 2 / 5
2016 60 162 59 103 .364 5 / 5
2017 61 162 85 77 .525 2 / 5 ALWC敗退 0勝1敗
2018 62 162 78 84 .481 2 / 5
通算:4年 648 305 343 .471 0勝1敗

表彰

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記録

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背番号

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脚注

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  1. ^ Paul Molitor Minor League Statistics & History” (英語). Baseball-Reference.com. 2013年2月27日閲覧。
  2. ^ a b c 1978 Batting Gamelogs” (英語). Baseball-Reference.com. 2013年2月27日閲覧。
  3. ^ a b 1978 Batting Splits” (英語). Baseball-Reference.com. 2013年2月27日閲覧。
  4. ^ AL Rookie of the Year Voting” (英語). Baseball-Reference.com. 2013年2月27日閲覧。
  5. ^ 1980 Batting Gamelogs” (英語). Baseball-Reference.com. 2013年2月28日閲覧。
  6. ^ 1981 Batting Gamelogs” (英語). Baseball-Reference.com. 2013年2月28日閲覧。
  7. ^ Oct 9, 1981, Brewers at Yankees Play by Play and Box Score” (英語). Baseball-Reference.com. 2013年2月27日閲覧。
  8. ^ 1982 Batting Gamelogs” (英語). Baseball-Reference.com. 2013年2月27日閲覧。
  9. ^ May 12, 1982, Brewers at Royals Box Score and Play by Play” (英語). Baseball-Reference.com. 2013年2月28日閲覧。
  10. ^ 1991 Batting Gamelogs” (英語). Baseball-Reference.com. 2013年2月27日閲覧。
  11. ^ May 15, 1991, Brewers at Twins Play by Play and Box Score” (英語). Baseball-Reference.com. 2013年2月27日閲覧。
  12. ^ 1993 Batting Splits” (英語). Baseball-Reference.com. 2013年2月27日閲覧。
  13. ^ Postseason Batting Gamelogs” (英語). Baseball-Reference.com. 2013年2月27日閲覧。
  14. ^ Postseason Batting” (英語). Baseball-Reference.com. 2015年11月14日閲覧。
  15. ^ Brewers Retired Numbers” (英語). MLB.com. 2013年3月9日閲覧。
  16. ^ 2004 American League Team Statistics and Standings” (英語). Baseball-Reference.com. 2015年11月14日閲覧。
  17. ^ http://m.mlb.com/news/article/100281190/report-twins-to-name-paul-molitor-manager-monday
  18. ^ Torey Lovullo, Paul Molitor win manager honors MLB.com (英語) (2017年11月14日) 2017年11月15日閲覧
  19. ^ Paul Molitor” (英語). The Baseball Page.com. 2009年6月21日閲覧。
  20. ^ a b c Mario Ziino (2007年2月15日). “Paul Molitor's Sweet Swing of Success” (英語). National Baseball Hall of Fame and Museum. 2009年6月21日閲覧。
  21. ^ Standard Fielding” (英語). Baseball-Reference.com. 2015年11月14日閲覧。
  22. ^ 年齢は、その年の満年齢で表記。

関連項目

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外部リンク

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