「重要伝統的建造物群保存地区」の版間の差分
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2023年12月23日 (土) 00:33時点における版
重要伝統的建造物群保存地区(じゅうようでんとうてきけんぞうぶつぐんほぞんちく)は、日本の文化財保護法に規定する文化財種別のひとつ。日本の市町村が条例などにより決定した伝統的建造物群保存地区のうち、文化財保護法第144条の規定に基づき、特に価値が高いものとして国(文部科学大臣)が選定したものを指す。略称は重伝建地区(じゅうでんけんちく)、重伝建(じゅうでんけん)。
概要
文化財保護法でいう伝統的建造物群保存地区とは、城下町・宿場町・門前町・寺内町・港町・農村・漁村などの伝統的建造物群およびこれと一体をなして歴史的風致を形成している環境を保存するために市町村が定める地区を指す。この制度は、文化財としての建造物を「点」(単体)ではなく「面」(群)で保存しようとするもので、保存地区内では社寺・民家・蔵などの「建築物」はもちろん、門・土塀・石垣・水路・墓・石塔・石仏・燈籠などの「工作物」、庭園・生垣・樹木・水路などの「環境物件」を特定し保存措置を図ることとされている。
市町村は都市計画法に基づく都市計画または条例により伝統的建造物群保存地区を定め、文部科学大臣は市町村の申し出に基づき、その価値が特に高いものを重要伝統的建造物群保存地区として選定することとされ、広報普及を担う全国伝統的建造物群保存地区協議会を置く[注釈 1]。
2023年12月時点(令和5年)で山形、東京、神奈川、熊本を除く43道府県、105市町村の127地区が選定されており[注釈 2]、合計面積は4034haである[要出典]。
選定基準
「重要伝統的建造物群保存地区選定基準」(昭和50年文部省告示第157号)では、選定する保存地区の基準[5]を次のように定めている。
- 伝統的建造物群が全体として意匠的に優秀なもの
- 伝統的建造物群及び地割がよく旧態を保持しているもの
- 伝統的建造物群及びその周囲の環境が地域的特色を顕著に示しているもの
一覧
- 2023年12月現在のもの。
- 市町村合併に伴い保存地区の名称が改称されたものについては、改称後の名称を表示した。
- 「重要伝統的建造物群保存地区一覧[6]」の示す指定地区名称は「○○市/町/村△△(町)」であるが、本表では市区町村名の「○○市/町/村」と「△△(町)」の部分を分けて記載する。
- 種別は上記の「重要伝統的建造物群保存地区一覧」による[6]。
課題
重伝建に選定される地域の道路形態は、自動車交通に対応していないところが多い。これはインフラ整備などによる開発から取り残されたり、元々交通の不便な島嶼や山村であったりしたために、結果的に伝統的な建造物が残ったケースが多いからであるが、重伝建選定時の伝統的建造物と都市計画決定済みの道路との関係や観光客の増加に伴う自動車交通への対応などが課題になることが多い。その他にも、歴史的風致に関わる建造物の外観・外構について増改築に制約が掛かるほか、観光客のマナー問題(騒音やごみ、私有地への無断立ち入りなど)によって、そこで生活する住民にとってマイナス要素となることがある。
その一方で、制約がかかる部分の修理には8割前後の市町村補助が有り、ほとんどが伝統木造建築であることから防災事業が行われることが多い。国は市町村補助・事業の5割(場合によってはそれ以上)を負担する。また、伝統的建造物及びその土地については、相続税と固定資産税に一定の優遇措置がとられる。したがって、伝統的な町並みや建物を活かしたいと考える自治体・住民にとっては、プラス要素が大きい制度である。
参考文献
脚注に使用。主な執筆者の順。
- 文化財保護法研究会 監修『文化財保護関係法令集』(第3次改訂)ぎょうせい、2009年。国立国会図書館書誌ID:000010269466、全国書誌番号:21617379、ISBN 978-4-324-08773-2。(第2次改訂版は2006年刊)
- 「重要文化的景観選定基準(平成17年文部科学省告示第47号)2240頁。
- 「重要伝統的建造物群保存地区選定基準(昭和50年文部省告示第157号)2240頁。
- 「選定保存技術の選定並びに保持者及び保存団体の認定の基準」
- 文化庁文化財部 監修『文化財保護関係法令集』文化庁、2008年。国立国会図書館書誌ID:000010023909、全国書誌番号:21547633。
- 「重要文化的景観選定基準(平成17年文部科学省告示第47号)」2480頁。
- 「重要伝統的建造物群保存地区選定基準(昭和50年文部省告示第157号)」2480頁。
- 「選定保存技術の選定並びに保持者及び保存団体の認定の基準」
- 文化庁文化財部参事官(建造物担当)『伝統的建造物群保存地区制度関係法令集』文化庁、2008年。国立国会図書館書誌ID:000010269466、全国書誌番号:21617379。
- 「伝統的建造物群保存地区保存計画(作成例)」27頁。
- 2省令「(4)伝統的建造物群保存地区に関する条例の制定等の場合の報告に関する規則(昭和50年文部省令31号)」196頁。
- 2省令「(6)重要伝統的建造物群保存地区の選定の申出に関する規則(昭和50年文部省令第32号)」198頁。
- 告示「○重要伝統的建造物群保存地区選定基準(昭和50年文部省告示第157)」224頁。
- 文化庁文化財部参事官(建造物担当)『歴史を活かしたまちづくり : 重要伝統的建造物群保存地区109』文化庁、2015年。国立国会図書館書誌ID:026643392、全国書誌番号:22625544。伝統的建造物群保存地区制度40周年。
- 「重要伝統的建造物群保存地区一覧」6頁。
- 「伝建制度の40年(文化庁文化財部参事官伝統的建造物群部門)」11頁。
- 「II 重要伝統的建造物群保存地区の概要」
- 「1 函館市元町末広町(港町 北海道)」(18頁)から「109 竹富町竹富島(島の農村集落 沖縄)」(234頁)。
- 「III 資料編」
- 「重要伝統的建造物群保存地区一覧(選定順)」245頁。
- 「重要伝統的建造物群保存地区選定数の推移」249頁。
- 「文化庁予算の推移(伝統的建造物群)」249頁。
- 「伝統的建造物群保存地区制度フローチャート」262頁。
- 「文化財保護法(抄)」263頁。
- 「文化財保護法施行令(抄)」266頁。
- 「重要伝統的建造物群保存地区選定基準」267頁。
- 「伝統的建造物群保存地区の現状変更規制の概要」268頁。
- 「年表」269頁。
脚注
注釈
出典
- ^ 「重要伝統的建造物群保存地区の新規選定、名称:宇和島市津島町岩松伝統的建造物群保存地区(うわじまし・つしまちょう・いわまつ)、所在地:愛媛県宇和島市」『文化審議会の答申(重要伝統的建造物群保存地区の選定)』、文化庁、2023年11月24日。「官報告示を経て、重要伝統的建造物群保存地区は127地区となる予定」
- ^ 文化財保護法研究会(3改) 2009, p. 2240
- ^ 文化庁文化財部参事官(建造物担当) 2008, p. 224
- ^ 文化庁文化財部参事官(建造物担当) 2015, p. 267
- ^ 2009年文化財保護法研究会[2]ほか、文化庁文化財部参事官2008年[3]、同2015年[4]による発表。
- ^ a b “[「重要伝統的建造物群保存地区一覧」と「各地区の保存・活用の取組み」”. 文化庁 (2021年8月2日). 2023年12月23日閲覧。
関連項目
関連資料
脚注に使っていない資料。発行年順。
- 文化庁『文化財保護法五十年史』ぎょうせい、2001年。国立国会図書館書誌ID:000003012629、全国書誌番号:20203741。
- 「第3章 伝統的建造物群の保護」184頁。
- 「第3編 資料・統計 §3 指定等基準」
- 「特別史跡名勝天然記念物及び史跡名勝天然記念物指定基準」580(9)
- 「(10)重要伝統的建造物群保存地区選定基準」581
- 「(10)重要伝統的建造物群保存地区選定一覧」592
- 「選定保存技術の選定並びに保持者及び保存団体の認定の基準」581(4)
- 「10 伝統的建造物群関係資料 §(1)伝統的建造物群保存地区原因別被害棟数」614
外部リンク
- 公式ウェブサイト 重要伝統的建造物群保存地区一覧 - 文化庁
- 全国の重要伝統的建造物群保存地区一覧 - 篠山市教育委員会
- 保存整備の急がれる保存地区 全国伝統的建造物群保存地区協議会(略号:伝建協 でんけんきょう)