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「フランケル (競走馬)」の版間の差分

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'''フランケル '''(''{{lang|en|Frankel}}'', [[2008年]][[2月11日]] - )は、[[イギリス]]の元[[競走馬]]である。おもな勝ち鞍は[[2010年]]の[[デューハーストステークス]]、[[2011年]]の[[2000ギニー]]、[[セントジェームズパレスステークス]]、[[サセックスステークス]]、[[クイーンエリザベス2世ステークス]]、[[2012年]]の[[ロッキンジステークス]]、[[クイーンアンステークス]]、サセックスステークス、[[インターナショナルステークス]]、[[チャンピオンステークス]]。
'''フランケル'''(欧字名:{{lang|en|Frankel}}、[[2008年]][[2月11日]] - )は、[[イギリス]]の[[競走馬]]、[[種牡馬]]である<ref name="Racing Post">{{Cite web |title=Frankel {{!}} Race Record & Form |url=https://www.racingpost.com/profile/horse/763453/frankel/form |website=www.racingpost.com |accessdate=2022-04-08 |publisher=[[レーシング・ポスト|Racing Post]]}}</ref>。

== 概要 ==
[[競走馬]]として、[[競馬の競走格付け|G1]]競走10勝を含む14戦14勝の生涯成績を残し、2年連続で[[カルティエ賞|ヨーロッパ年度代表馬]]となった<ref name="van">{{Cite web|和書|title=フランケル(Frankel) {{!}} 競馬データベース |url=https://world.jra-van.jp/db/horse/H613/ |website=JRA-VAN ver.World |accessdate=2022-04-08 |language=ja |archive-url=https://archive.ph/wip/bD9t1 |archive-date=2022-4-27}}</ref>。2着馬につけた[[着差 (競馬)|着差]]の合計は76馬身1/4に及び<ref name="van" />、特に2012年の[[クイーンアンステークス]]および[[インターナショナルステークス]]の圧勝は、[[ワールド・ベスト・レースホース・ランキング|ワールドサラブレッドランキング]]<ref group="注" name="WTR"/>で史上最高の評価を受けている<ref name="jairs20130320">{{Cite web|和書|title=フランケル首位のワールドサラブレッドランキングに様々な意見(イギリス)【その他】 |url=https://www.jairs.jp/contents/w_news/2013/3/4.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |accessdate=2022-04-08}}</ref>。クイーンアンステークスの勝利は、[[タイムフォーム・レーティング|タイムフォームレーティング]]においても平地競馬史上最高の評価である<ref name="Prosser201340">[[フランケル (競走馬)#プロッサー2013|プロッサー2013、40頁。]]</ref><ref name="TR2">{{Cite web |title=Timeform Top Horses of All Time {{!}} Greatest Racehorses |url=https://www.timeform.com/horse-racing/features/top-horses/timeforms |website=Timeform |date=2021-12-24 |accessdate=2022-04-08 |language=en-GB}}</ref>。<!-- プロッサー2013は、タイムフォームでもインターナショナルステークスとクイーンアンステークスが同評価であると読み取ることが可能な記述をしているが、これはタイムフォームが発表したほかの情報(例:https://twitter.com/Timeform/status/1359941532351094785)と矛盾するためひとまず記載せず -->

主な勝ち鞍は[[2010年]]の[[デューハーストステークス]]、[[2011年]]の[[2000ギニー]]、[[セントジェームズパレスステークス]]、[[サセックスステークス]]、[[クイーンエリザベス2世ステークス]]、[[2012年]]の[[ロッキンジステークス]]、クイーンアンステークス、サセックスステークス、インターナショナルステークス、[[チャンピオンステークス]]<ref name="jbis">{{Cite web |title=Frankel(GB) |url=https://www.jbis.or.jp/horse/0001161935/ |website=www.jbis.or.jp |accessdate=2022-04-08 |publisher=JBISサーチ}}</ref>。[[カルティエ賞]]では2011年・2012年度代表馬のほか、2010年最優秀2歳牡馬、2011年最優秀3歳牡馬、2012年最優秀古馬を受賞した<ref name="Cooper341" /><ref name="Cooper342" />。

[[種牡馬]]としても成功し、産駒の[[クラックスマン]]、[[クアドリラテラル]]、[[インスパイラル]]がカルティエ賞を受賞。[[ソウルスターリング]]が[[JRA賞]]を受賞。また、[[アダイヤー]]が[[ダービーステークス|ダービー]]を優勝、[[アルピニスタ]]が[[凱旋門賞]]を優勝している。[[イギリス]]・[[アイルランド]]の[[リーディングサイアー]](2021年)<ref name="Sire">{{Cite web |title=Frankel {{!}} Weatherbys Overview |url=https://www.racingpost.com/profile/horse/763453/frankel/weatherbys-overview |website=www.racingpost.com |accessdate=2022-04-08 |publisher=[[レーシング・ポスト|Racing Post]]}}</ref><ref name="Juddmonte Stallion">{{Cite web |title=Frankel - Juddmonte Stallion |url=https://stallions.juddmonte.com/stallion/frankel/ |website=Stallions |access-date=2022-04-27 |archive-url=https://archive.ph/WIoMR |archive-date=2022-4-27}}</ref>。


== 生い立ち ==
== 生い立ち ==

[[2008年]]2月に[[イギリス]]の[[ジュドモントファーム]]で生まれる。父はイギリス・[[アイルランド]]2か国の[[ダービー (競馬)|ダービー]]に勝ち、[[種牡馬]]としてもイギリス・アイルランドの[[チャンピオンサイアー]]になった[[ガリレオ (競走馬)|ガリレオ]]。母は現役時代[[リステッド競走]]を2勝したカインド。この2頭の交配の背景には、[[クールモア]]とジュドモントという、欧州競馬界におけるトップグループ同士による生産上の協定があった<ref>{{Cite web|url=http://www.racingpost.com/horses/home.sd?story=853112&argument=723473|title=Coolmore, Juddmonte unite for Dawn success|publisher=[[レーシング・ポスト|RACING POST.com]]|language=英語|accessdate=2011年8月12日}}</ref>。それはジュドモントの繁殖牝馬10頭をクールモアの種牡馬と交配し、生まれた仔馬達を両者で分け合うというものであり、ジュドモントの繁殖牝馬カインドはその10頭の内の1頭として、クールモアの種牡馬ガリレオと交配されたのである。どの仔馬をどちらが所有するかは、両者が順番に好きな馬を選択していく形で決められており、本馬はジュドモント側に選択され、所有されることが決まった。ジュドモントの代表である[[ハーリド・ビン・アブドゥッラー]]王子は、懇意にしていた[[アメリカ合衆国]]の名調教師であった[[ロバート・フランケル]]が[[2009年]]に死亡したことをうけ、この仔馬をフランケル (Frankel) と名付けた<ref>{{Cite web|url=http://www.the-racehorse.com/racing/news/frankel_earns_classic_favouritism_with_13_length_win|title=Frankel earns Classic favouritism with 13 length win|publisher=the-racehorse.com|language=英語|accessdate=2010年10月16日}}</ref>。フランケルはイギリスの[[ヘンリー・セシル]]調教師に預けられ、競走生活を送ることになった。
=== 誕生 ===
2008年2月11日午後11時40分、[[イギリス]]・[[ニューマーケット (サフォーク州)|ニューマーケット]]の近郊、[[ハーリド・ビン・アブドゥッラー]]率いる組織[[ジャドモントファーム]]のヨーロッパにおける生産拠点である[[バンステッドマナースタッド]]で生まれる<ref name="Cooper56">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.56]]</ref><ref name="Prosser59" /><ref name="Rushmer154">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、154頁。]]</ref>。バンステッドマナーの場長サイモン・モックリッジによると、「驚くぐらいバランスの良い体」をしていて、「生まれた瞬間から、既に生後1週間が経過した馬」のようだったという<ref name="Prosser59" />。アブドゥッラーのレーシングマネージャーを務めるグリムソープは、本馬について「生まれて間もない頃から、これは特別な馬であると私たちは思っていました」と振り返っている<ref name="Rushmer155">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、155頁。]]</ref>。

父は、現役時代[[ダービーステークス|エプソムダービー]]、[[アイリッシュダービー]]という2か国の[[ダービー (競馬)|ダービー]]および[[キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス]]に勝った[[クールモアスタッド|クールモア]]の[[種牡馬]][[ガリレオ (競走馬)|ガリレオ]]<ref name="Pennington41">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.41]]</ref>。大種牡馬[[サドラーズウェルズ]]の後継種牡馬として後にイギリス・[[アイルランド]]の[[リーディングサイアー]]に計12回就き、ヨーロッパ州最高の種牡馬と認識されるようになるガリレオだが、フランケルの世代のために交配が行われた2007年春の時点では、その初年度産駒が4歳を迎えたばかりであったために、すでに複数の活躍馬{{Refnest|クラシック勝ち馬の{{仮リンク|ナイタイム|en|Nightime}}および{{仮リンク|シクスティーズアイコン|en|Sixties Icon}}、最優秀2歳牡馬[[テオフィロ (競走馬)|テオフィロ]]など<ref name="Pennington34">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.34]]</ref>。|group=注}}を出していたものの、その評価は定まっていなかった<ref name="Prosser59">[[#プロッサー2012|プロッサー2012、59頁。]]</ref><ref name="jairs20210719">{{Cite web|和書|title=欧州最強種牡馬ガリレオが23歳で死亡(アイルランド)【生産】 |url=https://www.jairs.jp/contents/w_news/2021/7/1.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |access-date=2022-05-01}}</ref>。

母は、現役時代[[リステッド競走]]を2勝した[[ジャドモントファーム|ジャドモント]]の[[繁殖牝馬]][[カインド (競走馬)|カインド]]<ref name="Pennington41" />。1983年、アブドゥッラーが[[アメリカ合衆国]]の生産者[[ジャック・ホイットニー]]から複数の繁殖牝馬を直接交渉で購入し、{{仮リンク|リングフィールドオークストライアル|en|Lingfield Oaks Trial}}2着の実績を持つ{{仮リンク|ステージドアジョニー|en|Stage Door Johnny}}牝駒のロックフェストも繁殖牝馬としてジャドモントへ渡ると、これから3代先のフランケルにも及ぶジャドモントにおける同馬の牝系が始まった<ref name="Pennington35">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.35]]</ref><ref name="Pennington36">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.36]]</ref><ref name="Pennington37">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.37]]</ref>。ロックフェストが[[レインボウクエスト]]と交配されて1990年に生産した牝馬レインボウレイクは、現役時は[[調教師]]の[[ヘンリー・セシル]]に手掛けられて1993年の{{仮リンク|ランカシャーオークス|en|Lancashire Oaks}}を勝利し、その後繁殖入りすると、サドラーズウェルズと交配されて2000年にG1競走2勝馬{{仮リンク|パワーズコート (競走馬)|en|Powerscourt (horse)|label=パワーズコート}}を、さらに[[デインヒル]]と交配されて翌2001年に牝馬カインドを生産した<ref name="Pennington41" /><ref name="hiraide201917" />。カインドは現役時に気性難を抱えながら短距離で競走したスプリンターで、繁殖入り後は初めサドラーズウェルズと交配されて2007年にブレットトレインを、そしてガリレオと交配されると2008年に本馬を生産した<ref name="Pennington35" /><ref name="Pennington36" /><ref name="hiraide201917" />。競走馬としてのフランケルは、母カインドや母父デインヒルからスピードや気性を受け継いだとされる<ref name="tsuji2017163">[[フランケル (競走馬)#辻2017|辻2017、163頁。]]</ref><ref name="goda201744" />。

=== 育成期 ===
2008年生まれの「カインドの牡馬」<ref name="Cooper61">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.61]]</ref>は、当歳時、1年の大半をアイルランドで過ごした<ref name="Cooper70">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.70]]</ref>。2008年3月7日、再びガリレオと交配される母カインドとともにクールモアのレイクビューヤードへ渡り、5月12日にはジャドモントのニューアビースタッドに移った<ref name="Cooper67">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.67]]</ref><ref name="Cooper339">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.339]]</ref>。これ以後、本馬はジャドモントの擁する約170頭の仔馬の中でトップクラスの成績を残すことになる<ref name="Pennington43">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.43]]</ref>。病気や怪我などの問題が無かったため、スタッフの間では手のかからない印象があったという<ref name="Pennington44">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.44]]</ref>。

同年6月25日にはイギリスに戻ってバンステッドマナースタッドで6週間を過ごし、その間の7月17日、生後5か月を迎えた本馬はカインドからの離乳が行われた<ref name="Prosser59" /><ref name="Cooper339" /><ref name="Cooper73">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.73]]</ref>。9月17日には再びアイルランドに渡り、ニューアビースタッドで育成された<ref name="Prosser59" /><ref name="Cooper74">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.74]]</ref>。アブドゥッラーのマネージャーであるロリー・メイホンは、歩様、脚元、気性のいずれにも優れた本馬を高く評価し、1から10までの値で与えられるジャドモントの仔馬の評価において「7++」{{Refnest|8以上の評価は「極めて稀」であった<ref name="Prosser59"/>。|group=注}}の査定を与えた<ref name="Pennington44" /><ref name="Cooper59">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.59]]</ref>。11月になるとニューアビーが満員となったため、優れた25頭の若駒が収められるグリーンフィールドヤードに移された<ref name="Cooper79">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.79]]</ref>。

=== 所有者の決定 ===
[[ファイル:Racing silks of Khalid Abdullah.svg|サムネイル|ハーリド・ビン・アブドゥッラーの勝負服]]1歳を迎えるまでの「カインドの牡馬」は、基本的にジャドモントによって育成されたにもかかわらず、実際には所有者が確定されていない状態であった<ref name="Cooper83">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.83]]</ref>。

本馬の誕生を導いたガリレオとカインドの交配の背景には、クールモアとジャドモントという、ヨーロッパ競馬界におけるトップグループ同士による生産上のフォール・シェアの契約があった<ref name="Pennington34" /><ref name="Pennington35" /><ref name="Rushmer155" />。それはジャドモントの繁殖牝馬を、クールモアの優れた種牡馬と交配し、生まれた仔馬達を両者で分け合うというものであり、ジャドモントの繁殖牝馬カインドはその10頭の内の1頭として、クールモアの種牡馬ガリレオと交配されたのである<ref name="Pennington35" />。どの仔馬をどちらが所有するかは、両者が順番に好きな馬を選択していく形で決められており、これによって実際に生産された7頭のうち、両グループにとって第一優先指名であった本馬は、同年に最初の選択権を持っていたジャドモント側に所有されることが決まった<ref name="Pennington35" /><ref name="Cooper85">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.85]]</ref>。

2009年4月21日、本馬はアイルランドのフェランズに移り、より発展的な育成が行われた<ref name="Cooper339" /><ref name="Cooper89">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.89]]</ref>。同年9月9月には1歳馬としての騎乗馴致が始まり、10月頃には競走への意欲を示し始めたという<ref name="Rushmer155" /><ref name="Cooper339" />。ただし、この時点でも本馬の見せる気性は平静なものであった<ref name="Pennington44" />。

=== 入厩 ===
調教拠点をウォーレンプレイスに置く調教師のヘンリー・セシルは、1976年から93年までにイギリスのチャンピオントレーナーの地位に10度就くなど活躍した人物であったが、[[ゴドルフィン]]の[[シェイク・モハメド]]と決別して21世紀を迎えると、その成績は下降の一途を辿り、2005年には年間勝利が12勝となるまで低迷、さらに2006年からは[[悪性腫瘍|癌]]との闘病生活を送っていた<ref name="Rushmer1">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、1頁。]]</ref><ref name="RushmerI">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、I頁。]]</ref><ref name="motomura244">[[フランケル (競走馬)#本村2016|本村2016、p.244]]</ref>。しかしこの困難な時期にも、アブドゥッラーと[[ニアルコスファミリー]]による二つの大きな生産組織は彼を支援していた<ref name="Rushmer3">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、3頁。]]</ref>。

当時アブドゥッラーの所有馬を手掛けていた調教師としては、ほかに[[マイケル・スタウト]]、[[アンドレ・ファーブル]]、[[ジョン・ゴスデン]]、[[ダーモット・ウェルド]]などがいたが、アブドゥッラーは、{{仮リンク|トゥワイスオーヴァー|en|Twice Over}}や[[ミッデイ]]などを管理して復調の兆しを見せていたセシルのもとに本馬を預託することを決定、かくして「カインドの牡馬」は、2010年1月14日にセシル厩舎へ入厩した<ref name="Rushmer156">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、156頁。]]</ref><ref name="Rushmer158">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、158頁。]]</ref>。厩舎の[[装蹄師]]はスティーヴン・キールトである<ref name="Rushmer368" />。そしてアブドゥッラーは、収得賞金の面でもG1競走勝利の面でも最も自らに貢献していたアメリカ合衆国の名調教師[[ロバート・フランケル]]が2009年11月に死亡したことを受けて、当時ジャドモントの同世代で最も優れていたこの仔馬に対して'''フランケル'''(Frankel)という、後年にグリムソープの振り返るところによれば、不確実性の高い競馬において「なかなかに勇気ある命名」<ref name="Rushmer158" />を行ったのである<ref name="Rushmer157">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、157頁。]]</ref>。

厩舎のフランケルは、すでにデビュー勝ちを収めていた3歳馬ブレットトレインの半弟としても注目された<ref name="Rushmer158" />。しかし、これまで気性難を見出されなかった本馬は、入厩すると早い段階で旺盛な「行く気」を発揮し、無理に抑えようとすると制御が効かなくなるという強情なところを見せた<ref name="Pennington44" /><ref name="Rushmer160" />。このため騎乗技術に優れたダン・デ・ハーンが指名されて乗り込まれることになり、セシルの方針のもとで調教を段階的に積まれていった<ref name="Rushmer160">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、160頁。]]</ref><ref name="Rushmer161">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、161頁。]]</ref>。


== 競走馬時代 ==
== 競走馬時代 ==
=== 2歳時(2010年)===
=== 2歳時(2010年)===

8月の[[ニューマーケット競馬場]]のメイドンでデビューし、後に[[キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス]]、[[エクリプスステークス]]を勝つ[[ナサニエル (競走馬)|ナサニエル]]との争いを半馬身差で制する。翌9月には、[[ドンカスター競馬場]]の条件戦に出走し、ほとんど馬なりのまま2着馬に13馬身の差をつけて優勝。続くロイヤルロッジステークスも圧巻のレース振りを見せ、2着馬に10馬身、翌年に[[アイリッシュダービー]]と[[セクレタリアトステークス]]を勝つ3着の{{仮リンク|トレジャービーチ|en|Treasure Beach (horse)}}には11馬身の差をつけて優勝した。この連勝で、早くも翌年の[[2000ギニー]]、[[ダービーステークス|ダービー]]の前売りで圧倒的な一番人気となっていた<ref>{{Cite web|url=http://www.racingpost.com/horses/home.sd?story=771594&argument=763453|title=Fantastic Frankel slashed for Guineas and Derby|publisher=[[レーシング・ポスト|RACING POST.com]]|language=英語|accessdate=2010年10月16日}}</ref>。一躍注目の的となったフランケルの2歳シーズン最終戦は10月の[[デューハーストステークス]]。このレースには、[[シャンペンステークス (イギリス)|シャンペンステークス]]を含む2戦2勝のサーミッド、[[ミドルパークステークス]]を9馬身差で優勝した3戦3勝の[[ドリームアヘッド]]らも出走し、3強の対決に大いに注目が集まった<ref>{{Cite web|url=http://www.racingpost.com/horses/home.sd?story=778128&argument=763453|title=Prepare to savour an epic Dewhurst clash|publisher=[[レーシング・ポスト|RACING POST.com]]|language=英語|accessdate=2010年10月16日}}</ref>。レースでは、ライバル2頭が伸びあぐねる中、1頭だけ楽々と抜け出し、翌年に[[アイリッシュ2000ギニー]]を制する{{仮リンク|ロデリックオコナー|en|Roderic O'Connor (horse)}}に2馬身1/4の差をつけて優勝した。このシーズンを4戦4勝で終えたフランケルは[[カルティエ賞]]最優秀2歳牡馬に選出され、[[タイムフォーム]]誌のレイティングでは133ポンドという2歳馬としては破格の評価を受けた。
==== 未勝利戦 ====
{{External media|width=300px|video1=[https://www.youtube.com/watch?v=pJvKmL_Ti6Y 2010年未勝利戦 Juddmonte]}}
2010年に[[クラシックトライアル]]を制した半兄のブレットトレインによっても知られていた2歳新馬のフランケルは、[[デューハーストステークス]]、[[レーシングポストトロフィー]]、[[ダービーステークス]]に登録された後、同2010年の8月13日、[[ニューマーケット競馬場]]のジュライコースで行われる1[[マイル]]のメイドン(未勝利戦)で[[トム・クウィリー]]騎手を鞍上にデビューした<ref name="Pennington49">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.49]]</ref>。フランケルは、これを控えた追い切りで3歳馬{{Refnest|馬名はキングスバヨネット<ref name="Rushmer163"/>。当時のレーティングは80台<ref name="Rushmer163"/>。スティーヴン・キールトによれば、この際に併せた距離7ハロンを最も得意とする競走馬で、調教駆けすることでも知られていた<ref name="Rushmer163"/>。|group=注}}に対して持ったまま20馬身先着する圧巻の内容を見せ、これによって本馬が1番人気に支持された<ref name="Rushmer163">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、163頁。]]</ref><ref name="Rushmer164">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、164頁。]]</ref>。本馬の単勝人気が7対4(2.75倍)と、圧倒的な支持に至らなかった理由は、[[ジョン・ゴスデン]]調教師の新馬[[ナサニエル (競走馬)|ナサニエル]]も同競走に出走していたからであり、そのナサニエルが3対1(4倍)で2番人気、続いてジーニアスビーストとドルトムントが15対2(8.5倍)の3番人気で並んだ<ref name="Rushmer164" /><ref name="Pennington51">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.51]]</ref>。降り続いた雨によってSoft(重)まで悪化した[[馬場状態]]のなか、競走が始まるとまずドルトムントが緩いペースで馬群を先導し、やがて数頭が追い出されるにつれてペースが上がりだした<ref name="Rushmer164" /><ref name="Rushmer167">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、167頁。]]</ref>。残り2[[ハロン (単位)|ハロン]]地点に入ってナサニエルとその後方にいるフランケルも追い出されると、優勝争いは2頭の勝負となり、残り1ハロン地点で先頭に立ったフランケルが、最後まで食い下がったナサニエルを1/2馬身差抑えて勝利した<ref name="Rushmer167" /><ref name="Rushmer168">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、168頁。]]</ref>。

同競走の相手関係は一般的なデビュー戦の水準を超えるもので、2着馬ナサニエルは後に勝ち上がって[[キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス]]、[[エクリプスステークス]]に優勝し、またナサニエルから5馬身離された3番人気の3着馬ジーニアスビーストも翌年のクラシックトライアルを勝利している<ref>{{Cite web |title=Genius Beast {{!}} Race Record & Form |url=https://www.racingpost.com/profile/horse/763265/genius-beast/form |website=www.racingpost.com |accessdate=2022-04-08 |publisher=[[レーシング・ポスト|Racing Post]]}}</ref>ほか、8番人気の11着馬は後の[[ゴールドカップ]]勝ち馬カラーヴィジョンであった<ref name="Prosser59" /><ref name="Pennington51"/>。競走後、セシルは「このまま順調にいって欲しいし、もっと良くなってもらいたい」と発言した<ref name="Prosser60">[[#プロッサー2012|プロッサー2012、60頁。]]</ref>。

==== 条件戦 ====
{{External media|width=300px|video1=[https://www.youtube.com/watch?v=_Jx6Ul9kqwY 2010年フラックウィットルパートナーシップ条件ステークス Juddmonte]}}
[[ファイル:Frankel the horse winning at Doncaster (2010).jpg|サムネイル|フランクウィットルパートナーシップ条件ステークス]]
デビュー勝ちを収めたフランケルの目標には、9月の[[アスコット競馬場]]で行われるG2競走{{仮リンク|ロイヤルロッジステークス|en|Royal Lodge Stakes}}が据えられた<ref name="Rushmer173"/>。若駒に大きな負担を掛ける方針を取らないセシルは、段階的に競走の経験を積ませるため、[[ドンカスター競馬場]]のセントレジャーフェスティバルの3日目であり、ロイヤルロッジステークスを2週間前に控えた2010年9月10日、7ハロン戦のフランクウィットルパートナーシップ条件ステークスに本馬を出走させた<ref name="Pennington53">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.53]]</ref><ref name="Rushmer173">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、173頁。]]</ref><ref name="Rushmer174">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、174頁。]]</ref>。4頭立てという少頭数のなか、フランケルが1対2(1.5倍)の1番人気に支持され、1戦1勝の[[ゴドルフィン]]の素質馬{{仮リンク|ファー (競走馬)|en|Farhh|label=ファー}}が対抗の2番人気となったが、ファーはゲートで暴れて発走除外となったため、さらに相手関係の易しい3頭立てで行われることになった<ref name="Rushmer174" /><ref name="Rushmer175" /><ref name="Pennington55">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.55]]</ref>。アスコットのG2競走を意識して、先頭に立つ競馬を行わないようにと指示されていたクウィリーの騎乗のもと、フランケルは逃げるダイアモンドジーザーの2番手を緩やかに追走し、残り1ハロン辺りから後続を引き離すと、最後はほとんど馬なりのまま2着馬レインボースプリングス{{Refnest|1か月後に[[マルセルブサック賞]]で3着<ref name="Moubray201162">[[フランケル (競走馬)#モーブレイ2011|ラシュマー2011、62頁。]]</ref>。|group=注}}に13馬身の大差を付けて優勝した<ref name="Rushmer175">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、175頁。]]</ref><ref name="Pennington55" /><ref name="Rushmer176">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、176頁。]]</ref>。

競走後のセシルは「私にとっても、彼ほどの将来性を持った2歳馬に巡り合ったのは久しぶりのことです」と述べ、「特別な馬になる可能性があります。でも、特別な能力を既に発揮したわけではありません」と付言した<ref name="Pennington54">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.54]]</ref><ref name="Rushmer176" />。

==== ロイヤルロッジステークス ====
{{External media|width=300px|video1=[https://www.youtube.com/watch?v=Jf8kP9ljjjI 2010年ロイヤルロッジステークス Juddmonte]}}
2010年9月25日、フランケルはアスコット競馬場の周回コースで行われるロイヤルロッジステークスに出走し、他にも素質馬が出走した5頭立てのなかで30対100(1.3倍)の一番人気に支持された<ref name="Rushmer177">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、177頁。]]</ref><ref name="Pennington63">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.63]]</ref>。発走すると、本馬は前半の1/2マイルを最後方の位置で追走し、クウィリーによって馬群の外に持ち出されると、ほとんど持ったままで数完歩の間に他馬を抜き去って先頭に立ち、直線に入ると差を広げる一方の競馬となり、最後は2着馬クラマー{{Refnest|次走で同年のG3ホーリスヒルステークスを勝利<ref name="Pennington63"/>。|group=注}}に10馬身、3着の{{仮リンク|トレジャービーチ|en|Treasure Beach (horse)}}{{Refnest|翌年に[[アイリッシュダービー]]と[[セクレタリアトステークス]]に優勝し、ダービーでは[[プールモア]]のアタマ差2着<ref name="Pennington63"/>。|group=注}}には11馬身の差を付けて優勝した<ref name="Rushmer177" /><ref name="Pennington63" /><ref name="Pennington57">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.57]]</ref>。

競走後のクウィリーは本馬を「モンスター」と評し<ref name="Pennington58" />、この勝利には競馬関係者からも高評価が相次いだ{{Refnest|BBC放送の実況アナウンサーである{{仮リンク|ジム・A・マクグラス (競馬)|en|Jim McGrath (Australian commentator)|label=ジム・マクグラス}}はこれを「何ということだ。これはチャンピオンの競馬だ」と実況し、クラマーを管理する{{仮リンク|ジェーン・チャップルハイアム|en|Jane Chapple-Hyam}}は「[[セクレタリアト]]以来」の圧倒的勝利と振り返り、トレジャービーチらを管理する[[エイダン・オブライエン]]は「アンビリーバブル」と形容した<ref name="Pennington58" /><ref name="Rushmer178" /><ref name="Rushmer179">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、179頁。]]</ref>。|group=注}}。セシルは妻ジェーンに対して本馬こそ「自分が手掛けた最強馬」であるとの見解を打ち明けたが、競馬記者たちに対しては「これほどの2歳馬を手掛けるのは、1975年の2歳チャンピオンでその後[[2000ギニーステークス|2000ギニー]]を制した[[ウォロー]]以来である」という言及に留めた<ref name="Rushmer178">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、178頁。]]</ref><ref name="Pennington58">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.58]]</ref>。レーティングは、過去20年間の同競走優勝に対するものとしては1994年のエルティッシュ(121)を凌ぐ最高評価の123ポンドとなり、後のダービー馬[[ベニーザディップ]](113)や2000ギニー馬{{仮リンク|ミスターベイリーズ|en|Mister Baileys}}(115)の当時における評価も大きく上回った<ref name="BHA2010-07-28">{{Cite web |title=FRANKEL RATED THE BEST ROYAL LODGE WINNER FOR 20 YEARS |url=https://www.britishhorseracing.com/press_releases/frankel-rated-the-best-royal-lodge-winner-for-20-years/ |website=www.britishhorseracing.com/ |date=2010-07-28 |access-date=2022-11-12 |publisher=[[英国競馬統括機構|British Horseracing Authority]] |archive-url=https://archive.ph/wip/2luBD |archive-date=2022-11-12}}</ref>。

本馬はこの3連勝によって「怪物」として話題になり、早くも翌年の2000ギニー、ダービーの前売りで一番人気となった<ref name="Pennington58" /><ref name="Rushmer179" />。競馬ジャーナリストのリー・モターズヘッドやトニー・ラシュマーは、本馬が同競走で見せた走りを、1991年の[[ブリーダーズカップ・ジュヴェナイル]]で[[アラジ]]が見せた大捲りに例えている<ref name="Rushmer178" /><ref name="Pennington58" />。

==== デューハーストステークス ====
{{External media|width=300px|video1=[https://www.youtube.com/watch?v=yEsTMIHU00o 2010年デューハーストステークス Juddmonte]}}ロイヤルロッジステークスの後のセシルは、フランケルの終盤シーズンの目標をレーシングポストトロフィーとデューハーストステークスとの両にらみであるとしていたが、最終的にデューハーストステークスに出走することを表明した<ref name="Pennington59">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.59]]</ref><ref name="Pennington65">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.65]]</ref>。

ヨーロッパ2歳路線の最重要競走に位置づけられるデューハーストステークスには、一躍注目の的となったフランケルに加えて、9馬身差で圧勝した[[ミドルパークステークス]]など3戦3勝の[[ドリームアヘッド]]、ゴドルフィンに「[[ペーガソス|ペガサス]]」と称された[[シャンペンステークス (イギリス)|シャンペンステークス]]など2戦2勝のサーミッドが出走、無敗馬3頭の対決に大いに注目が集まり、[[レーシングポスト]]紙はこれを「世紀の2歳戦」<ref name="Pennington66">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.66]]</ref><ref name="Cooper169">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.169]]</ref>と称した<ref name="Rushmer182">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、182頁。]]</ref><ref name="Rushmer183">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、183頁。]]</ref>。人気順は、調教で3歳馬{{Refnest|馬名はキャピタルアトラクション<ref name="Rushmer201"/>。当時のレーティングは100で、これはフランケルより23低かった<ref name="Rushmer201"/>。|group=注}}に10馬身差先着する内容を見せたフランケルが4対6(約1.67倍)で1番人気、出走馬中唯一のG1馬ドリームアヘッドが5対2(3.5倍)で2番人気、サーミッドが7対1(8倍)で3番人気となり、以下25対1(26倍)の4番人気{{仮リンク|ロデリックオコナー|en|Roderic O'Connor (horse)}}などが続いた<ref name="Rushmer183" /><ref name="Pennington75">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.75]]</ref><ref name="Cooper170">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.170]]</ref>。

発走すると、フランケルは序盤に両脇の馬に寄られて衝突する不利を受け、最後方の位置取りとなった<ref name="Cooper171">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.171]]</ref><ref name="motoki2010117">[[フランケル (競走馬)#本木2010|本木2010、117頁。]]</ref>。そしてこれまでの落ち着きを失い、行きたがる素ぶりを見せたため、鞍上クウィリーは馬群の右後方で本馬をなだめることを余儀なくされた<ref name="Pennington71">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.71]]</ref><ref name="Cooper172">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.172]]</ref><ref name="Rushmer184">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、184頁。]]</ref>。残り2ハロン地点でクウィリーが手綱を緩めると、これに応じて脚を伸ばした本馬は、馬群を先導していたロデリックオコナーとの距離を急速に詰めた<ref name="Rushmer184" /><ref name="Cooper172" />。ライバル2頭が伸びあぐねる中、残り1ハロン地点でフランケルが先頭に立って抜け出すと、右によれる走りを見せながらも、最後まで一度も鞭が入ることなくロデリックオコナーに2馬身1/4差を付けて優勝した<ref name="Rushmer185">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、185頁。]]</ref><ref name="Pennington68">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.68]]</ref><ref name="Dewhurst Stakes">{{Cite web |title=Full Result 2.25 Newmarket {{!}} 16 October 2010 {{!}} Racing Post |url=https://www.racingpost.com/results/38/newmarket/2010-10-16/511544 |website=www.racingpost.com |accessdate=2022-04-08}}</ref>。勝ち時計の1分25秒73は、同日に行われた[[チャレンジステークス]]より0秒31速い好時計であった<ref name="Pennington68" /><ref name="Pennington75" />。セシルは、発馬後の不利とスローペースが無ければ、より印象的な勝利になったかもしれないと言及し<ref name="Pennington69">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.69]]</ref>、またその翌日には、本馬のダービー出走の可能性は「50%以下」であると表明した<ref name="Pennington73" />。

サーミッドおよびドリームアヘッドの凡走や、1勝馬ロデリックオコナーの入着などによって、当初発表されたフランケルの同競走優勝によるレーティングは、前走のロイヤルロッジステークスの勝利を1ポンド上回ったものの、ミドルパークステークスを勝った時のドリームアヘッド(126)よりも2ポンド低い124ポンドの評価に留まった<ref>{{Cite web |title=Dream Ahead still officially better than Frankel despite Dewhurst flop |url=http://www.theguardian.com/sport/2010/oct/18/dream-ahead-better-than-frankel |website=the Guardian |date=2010-10-18 |access-date=2022-12-26 |language=en |publisher=[[ザ・ガーディアン|the Guardian]] |last=Wood |first=Greg}}</ref><ref name="BHA2010-08-18">{{Cite web |title=FRANKEL OFFICIAL RATING BOOSTED BY DEWHURST SUCCESS |url=https://www.britishhorseracing.com/press_releases/frankel-official-rating-boosted-by-dewhurst-success/ |website=www.britishhorseracing.com/ |date=2010-08-18 |access-date=2022-11-12 |last=Gardiner-Hill |first=Dominic |publisher=[[英国競馬統括機構|British Horseracing Authority]] |archive-url=https://archive.ph/wip/tkc52 |archive-date=2022-11-12}}</ref>。その後、同競走の2着馬ロデリックオコナーは同年の[[クリテリウム・アンテルナシオナル|クリテリウムアンテルナシオナル]]、翌年の[[アイリッシュ2000ギニー]]を制しており<ref name="Pennington753">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.75]]</ref>、ドリームアヘッドも翌年の[[ジュライカップ]]、[[スプリントカップ]]、[[フォレ賞]]に優勝している<ref name="scott201117">[[フランケル (競走馬)#Scott2011|Scott2011, p.17]]</ref>。

==== 最優秀2歳牡馬とレーティング ====
このシーズンを4戦4勝で終えたフランケルは、ロデリックオコナーがクリテリウムアンテルナシオナルを勝つとさらに評判を高め<ref name="Pennington74">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.74]]</ref>、11月16日、ヨーロッパの年度代表表彰である第20回[[カルティエ賞]]で最優秀2歳牡馬に選出された<ref name="yushun201101116">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2011年1月号116-117|『優駿』2011年1月号、116頁。]]</ref>。[[タイムフォーム]]誌のレイティングでは133ポンドという、1990年以降では[[セルティックスウィング|ケルティックスウィング]](138)、アラジ(135)に次ぐ高評価を受けた<ref>{{Cite web|和書|title=タイムフォームレーティング確定、欧州最強馬はハービンジャー |url=https://p.keibabook.co.jp/news/detail/53510 |website=競馬ブック |access-date=2022-08-01}}</ref>。レーシングポストレーティングでも127が与えられ、アラジ(133)、ケルティックスウィング(133)に続く史上3位の2歳馬という評価であった<ref name="Pennington73">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.73]]</ref>。

そして、2011年の1月11日に発表された2010年度の公式のヨーロッパ2歳ランキングにおいて、ロイヤルロッジステークスを圧勝したフランケルは、ミドルパークステークスを圧勝したドリームアヘッドと同率首位でのレーティング126ポンドという確定評価を与えられ、2010年のヨーロッパの2歳馬における共同チャンピオンとして扱われた<ref>{{Cite web |title=World Thoroughbred Rankings: Harbinger rated best in world by 6lb |url=http://www.theguardian.com/sport/blog/2011/jan/11/international-ratings-2010-harbinger |website=the Guardian |date=2011-01-11 |access-date=2022-12-26 |language=en |publisher=[[ザ・ガーディアン|the Guardian]] |last=Hayler |first=Will}}</ref><ref>{{Cite web |title=WORLD THOROUGHBRED RANKINGS 2010 - THE OFFICIAL LISTING OF THE TOP HORSES IN THE WORLD IN 2010 |url=https://www.britishhorseracing.com/press_releases/world-thoroughbred-rankings-2010-the-official-listing-of-the-top-horses-in-the-world-in-2010/ |website=The British Horseracing Authority |access-date=2022-11-12 |language=en-GB |publisher=[[英国競馬統括機構|British Horseracing Authority]] |archive-url=https://archive.ph/wip/AVzff |archive-date=2022-11-22}}</ref>。この126ポンドという2歳時のレーティングは、2001年に4か国の2歳G1競走を含む7連勝を達成した[[ヨハネスブルグ (競走馬)|ヨハネスブルグ]]、2007年に2か国の2歳G1競走を含む4連勝を達成した[[ニューアプローチ]]の2頭<ref name="goda20110118">{{Cite web|和書|title=おおいに物議を醸している2歳ランキング |url=https://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=16441 |website=netkeiba.com |access-date=2022-07-30 |language=ja |publisher=[[netkeiba]] |author=[[合田直弘]]}}</ref>、後年では2018年の[[トゥーダーンホット]]と並ぶ評価であり、2019年に[[ピナトゥボ]]が[[ナショナルステークス]]の9馬身差勝利によって128ポンドのレーティングを得て記録を更新するまでは、2歳馬に対して与えられたレーティングとして21世紀最高の評価であった{{Refnest|なお、20世紀では、1978年の{{仮リンク|トロモス|en|Tromos}}(131)、1994年のセルティックスウィング(130)、1991年の[[アラジ]](130)、1980年の[[ストームバード]](128)、1981年の[[グリーンフォレスト]](128)、1983年の[[エルグランセニョール]](128)、1982年の[[ダイイシス]](127)、1986年の[[リファレンスポイント]](127)、1997年のザール(127)らが、ヨーロッパの2歳チャンピオンとして126ポンドを超過するレーティングを与えられている<ref>{{Cite web |url=https://www.ihrb.ie/pdf.php?f=IrishClassification2011.pdf |title=IrishClassification2011 |access-date=2022-12-19}}</ref>。|group=注}}<ref name="goda2020-01-29">{{Cite web|和書|title=ヨーロッパ2歳ランキングが発表 |url=https://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=45836 |website=netkeiba.com |access-date=2022-12-19 |language=ja |author=[[合田直弘]]}}</ref>。

公式の格付けで、フランケルとドリームアヘッドが同じ評価に相当すると発表されたことは、直接対決で明確に優劣のついた2頭を同等に扱ったものとして物議を醸す結果にもなった<ref name="goda20110118" /><ref name="Pennington143">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.143]]</ref>。[[英国競馬統括機構]]のジュベナイルハンデキャッパーを務めるマシュー・テスターは、フランケルとドリームアヘッドを共同チャンピオンとして並べた自身の裁定を擁護しつつ、ドリームアヘッドが3歳馬としてレーティング126に相当することは信じがたいことであるとは認めた<ref name="Pennington79">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.79]]</ref>。これについてセシルは「全ては考え方の問題である」と述べた<ref name="Pennington79" />。


=== 3歳時(2011年)===
=== 3歳時(2011年)===
2000ギニーに前哨戦なしで挑むのを好まない調教師の意向により、フランケルのシーズン初戦には[[グリーナムステークス]]が選ばれた<ref>{{Cite web|url=http://www.racingpost.com/horses/home.sd?story=833520&argument=763453|title=Cecil eyes possible tilt at Dante Stakes for Frankel|publisher=[[レーシング・ポスト|RACING POST.com]]|language=英語|accessdate=2011年8月12日}}</ref>。この前哨戦で、のちに5回にわたって対戦する[[エクセレブレーション]]に4馬身差をつけて優勝したフランケルは、5戦5勝という完璧な成績で[[イギリスクラシック三冠]]第1戦の2000ギニーに出走した。フランケルの単勝オッズは1-2(1.5倍)というレース史上稀に見る低さ<ref>{{Cite web|url=http://www.racingpost.com/horses/home.sd?story=850446&argument=763453|title=Frankel team prepare for Guineas coronation|publisher=[[レーシング・ポスト|RACING POST.com]]|language=英語|accessdate=2011年8月12日}}</ref>となった。レースでは、好スタートから自厩舎のペースメーカーを置き去りにして逃げ、一時は大差をつけるほどに加速。そのまま後続を寄せ付けることなく6馬身差で優勝した。


==== グリーナムステークス ====
2000ギニーのレース内容次第では、二冠を目指してダービーに出走する計画もあったが<ref>{{Cite web|url=http://www.racingpost.com/horses/home.sd?story=835345&argument=763453|title=Frankel could test Derby credentials in Dante|publisher=[[レーシング・ポスト|RACING POST.com]]|language=英語|accessdate=2011年8月12日}}</ref>、結局それは実現せず、次走にはマイルのG1[[セントジェームズパレスステークス]]が選ばれた。日本から[[グランプリボス]]も出走した同レースでは前走とは異なりスタート直後は三番手に控えると、残り5[[ハロン (単位)|ハロン]]の辺りから前方に進出を開始するという驚異的なロングスパートを見せた。さすがにゴール前では失速し、一時は5馬身程あったリードも3/4馬身まで縮まったが、そのまま押し切って優勝した。勝ちはしたものの、鞍上[[トム・クウィリー]]は仕掛けが早すぎたとしてレース後非難の対象となった<ref>{{Cite web|url=http://www.racingpost.com/horses/home.sd?story=873893&argument=763453|title=Queally insists he was riding to instructions|publisher=[[レーシング・ポスト|RACING POST.com]]|language=英語|accessdate=2011年8月12日}}</ref>。
{{External media|width=300px|video1=[https://www.youtube.com/watch?v=1XrwIXFtdoU 2011年グリーナムステークス Juddmonte]}}
これまで、2010年のシーズンを通じてフランケルの調教助手の役はダン・デ・ハーンが務めていたが、大柄なデ・ハーンには重い体重という懸案事項があった<ref name="Rushmer190">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、190頁。]]</ref>。折から騎手クウィリーが{{仮リンク|トゥワイスオーヴァー|en|Twice Over}}のドバイ遠征に帯同してニューマーケットを留守にしていたなか、より軽量な人物にフランケルの調教を行わせたいと考えていたセシルは、新たにシェーン・フェザーストンハウを毎朝の調教に乗る調教助手に任命した<ref name="Rushmer190" /><ref name="Rushmer191">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、191頁。]]</ref>。そして以後2年間にわたってフランケルの調教に騎乗することになるフェザーストンハウは、本馬引退後のセシルが語ったところによれば、調教師との共同で本馬を手掛ける重要な役割を果たす<ref name="Rushmer368">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、368頁。]]</ref><ref name="Rushmer332">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、332頁。]]</ref>。


シーズン最初の大目標である2000ギニーに前哨戦なしで挑むのを好まないセシルの意向により、ヨーロッパの2歳王者としては珍しく直行の[[ローテーション (競馬)|ローテーション]]を取らず、フランケルのシーズン初戦には[[ニューベリー競馬場]]のG3競走[[グリーナムステークス]]が選ばれた<ref name="Rushmer192">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、192頁。]]</ref><ref name="Cooper183">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.183]]</ref>。4月16日に施行された同競走では、セシルの用意したペースメーカーのピクチャーエディターがやや遅いペースで逃げを打ったなか、気負ったフランケルは折り合いを欠いて行きたがったため、最初の2ハロン地点まではクウィリーがこれを抑え込むことになった<ref name="Rushmer194">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、194頁。]]</ref><ref name="Pennington84">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.84]]</ref>。フランケルは残り2ハロンで先頭に立つと、一旦は反応の悪いところを見せたが、この時初めて競走中での鞭を受けると、残り1ハロンから再加速し、最後は粘り込んだ[[エクセレブレーション]]に4馬身差をつけて優勝した<ref name="Rushmer194" /><ref name="Pennington84"/>。前年[[コヴェントリーステークス]]を制して本馬の対抗馬と目されていたストロングスートは最下位に敗退<ref name="Moubray201162" />。この競走時に25対1(26倍)の5番人気という人気薄であったエクセレブレーションは、後に本馬と5回にわたって対戦し、本馬に次ぐマイラーとしての活躍を見せることになる<ref name="Pennington87">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.87]]</ref><ref name="Excelebration">{{Cite web |title=Excelebration {{!}} Race Record & Form |url=https://www.racingpost.com/profile/horse/749313/excelebration/form |website=www.racingpost.com |accessdate=2022-04-08 |publisher=[[レーシング・ポスト|Racing Post]]}}</ref>。
フランケルが次に向かったのは上半期のイギリスマイル王決定戦[[サセックスステークス]]であった。ここではマイルG1を5連勝中、前走の[[クイーンアンステークス]]でG1を13勝していた[[ゴルディコヴァ]]を下したことで古馬最強マイラーと目されていた[[キャンフォードクリフス]]との対戦となった。この2強に恐れをなした他陣営の多くは出走を敬遠し、レースはわずか4頭立てとなった<ref>{{Cite web| url=http://www.racingpost.com/horses/home.sd?story=889704&argument=763453|title=Four in Sussex Stakes as big two scare off rivals|publisher=[[レーシング・ポスト|RACING POST.com]]|language=英語|accessdate=2011年8月12日}}</ref>。実質2頭の[[一騎討ち]]の様相を呈したこのレースは、「デュエル・オン・ザ・ダウンズ」と呼ばれ、最大級の注目を集めた<ref>{{Cite web| url=http://www.racingpost.com/horses/home.sd?story=890499&argument=763453|title=Frankel and Canford Cliffs set for Sussex duel|publisher=[[レーシング・ポスト|RACING POST.com]]|language=英語|accessdate=2011年8月12日}}</ref>。この大一番でフランケルは終始先頭に立ちレースを牽引、ゴール前でキャンフォードクリフスら後続馬を一気に突き放し、5馬身差で優勝した。


グリーナムステークスと2000ギニーの中間日、フェザーストンハウは、同日に行われた調教の内容として、「フランケルが前半から行きたがってどうしようもなく、持てる全ての技術を駆使して抑える必要があったこと」および「ようやく落ち着いてストライドを伸ばせるようにになり、リードホースを追い抜くと、彼は更にリラックスした」ことをセシルに報告すると、フランケル陣営の間では2000ギニーを逃げ切りで勝利する作戦が考えられ始めた<ref name="Rushmer195">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、195頁。]]</ref><ref name="Rushmer196" />。その翌週には半兄ブレットトレインとのキャンターで、フランケルを先導させる形式の調教が初めて行われた<ref name="Rushmer196">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、196頁。]]</ref><ref name="Cooper195">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.195]]</ref>。当初は{{仮リンク|タタソールズステークス|en|Somerville Tattersall Stakes}}優勝などの実績がある短距離馬リルーテッドが同馬主の本馬のためにペースメーカーとして出走し、速いペースを作る予定であったが<ref name="Cooper195" /><ref name="goda20110504" />、競走の2日前に2000ギニーの枠順が発表され、フランケルが最内1番、リルーテッドが大外13番と、離れた枠番によってフランケルの前に壁としてリルーテッドを置くことを望めないことが判明すると、逃げる計画はさらに現実味を帯びた<ref name="Rushmer196" /><ref name="Rushmer197">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、197頁。]]</ref><ref name="Pennington94" />。
3歳シーズン最終戦は、この年から始まった[[ブリティッシュ・チャンピオンズシリーズ]]のマイル部門最終戦として新装された[[クイーンエリザベス2世ステークス]]。フランケルはここでも圧倒的な強さを見せて4馬身差で優勝。2着に[[ムーラン・ド・ロンシャン賞]]勝ち馬エクセレブレーション、3着に[[ジャックルマロワ賞]]勝ち馬[[イモータルヴァース]]が入り、この年の欧州マイル路線を象徴するような結果となった。このシーズンを5戦5勝で終えたフランケルは、2011年度の[[カルティエ賞]]年度代表馬、最優秀3歳牡馬に選出された<ref>[http://www.zakzak.co.jp/race/horse/news/20111116/hrs1111161528003-n1.htm 欧州年度代表馬にフランケル デインドリームは“3歳女王”に(ZAKZAK、日本語)]</ref>。同年の[[ワールド・サラブレッド・ランキング]]では、サセックスステークスとクイーンエリザベス2世ステークスでのパフォーマンスに対し、[[2009年]]の[[シーザスターズ]]と並ぶ、今世紀最高の136のレイティングを与えられた<ref>[http://www.horseracingintfed.com/resources/2011Rankings/2011_WorldRankings.asp 2011 WORLD THOROUGHBRED RANKINGS] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20120818150731/http://www.horseracingintfed.com/resources/2011Rankings/2011_WorldRankings.asp |date=2012年8月18日 }}</ref>。民間レイティング各社の評価はさらに高く、レーシングポストレイティングは、同レイティングが[[1988年]]に始まって以来最高評価の[[ドバイミレニアム]]と並ぶ139ポンド<ref>{{Cite web| url=http://www.racingpost.com/horses/home.sd?story=933324&argument=763453|title=Fantastic Frankel equals highest RPR in history|publisher=[[レーシング・ポスト|RACING POST.com]]|language=英語|accessdate=2012年5月19日}}</ref>、最も歴史の古いタイムフォーム誌のレイティングは、[[シーバード]] (145) 、[[ブリガディアジェラード]] (144) 、[[テューダーミンストレル]] (144) に次いで歴代4位となる143ポンドであった<ref>{{Cite web| url=http://www1.skysports.com/horse-racing/news/12426/7419800/Timeform-Frankel-rated-143|title=Timeform: Frankel rated 143|publisher=sky SPORTS|language=英語|accessdate=2012年7月4日}}</ref>。

==== 2000ギニー ====
{{External media|width=300px|video1=[https://www.youtube.com/watch?v=Yg--FSBJ_hQ 2011年2000ギニー Juddmonte]}}2011年4月30日、フランケルが[[イギリスクラシック三冠|イギリスクラシック]]競走の制覇を狙って出走する2000ギニーは、同年新たに発足した[[ブリティッシュ・チャンピオンズシリーズ]]の第1戦であることでも注目され、ニューマーケットには前年比11%増となる1万6000人の観客が集まった<ref name="Rushmer198">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、198頁。]]</ref>。ゴドルフィン所有の素質馬ドバイプリンスの故障、ドリームアヘッドや[[ジャン・リュック・ラガルデール賞]]勝ち馬[[ウートンバセット]]の2000ギニー回避などによって本命馬の地位を補強したフランケルは、5戦5勝という完璧な成績でこれに出走し、1対2(1.5倍)の1番人気という高い支持率{{Refnest|同競走では1974年の{{仮リンク|アパラチー (競走馬)|en|Apalachee (horse)|label=アパラチー}}以来となる<ref name="Guardian2011430">{{Cite web |title=Frankel reaches superstar status after 2,000 Guineas win at Newmarket |url=http://www.theguardian.com/sport/2011/apr/30/frankel-henry-cecil-2000-guineas-newmarket |website=the Guardian |date=2011-04-30 |access-date=2022-08-02 |language=en}}</ref>。|group=注}}を記録した<ref name="Pennington65" /><ref name="yushun201106140" /><ref name="Pennington89">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.89]]</ref>。本馬に続く人気順は、デューハーストステークスから巻き返してクリテリウムアンテルナシオナルを勝ったロデリックオコナーが8対1(9倍)、[[ナショナルステークス]]など3戦3勝の{{仮リンク|パスフォーク|en|Pathfork}}が8対1と並んだ2番人気タイ、レーシングポストトロフィー優勝馬{{仮リンク|カサメント|en|Casamento}}が11対1(12倍)の4番人気と、2歳G1馬が上位を形成した<ref>{{Cite web|和書|title=英ギニー開催展望 |url=https://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=16971 |website=netkeiba.com |access-date=2022-08-02 |language=ja |publisher=[[netkeiba]] |author=[[合田直弘]]}}</ref><ref name="Rushmer199">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、199頁。]]</ref><ref name="Pennington101">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.101]]</ref>。

競走が始まり、好発を決めたフランケルは、クウィリーに抑えられることなく先頭に立つと、自厩舎のペースメーカーを含む後続馬を置き去りにして突き放していった<ref name="Pennington94" /><ref name="Rushmer199" />。強い向かい風が吹いていたローリーマイルで、本馬は発馬から5ハロンまでの間を58秒5というスプリントG1戦並みの時計で走り、一時は10馬身差以上{{Refnest|残り2.5ハロン辺りの「ザ・ブッシュ」という地点で、実況アナウンサーのイアン・バートレットはこれを「15馬身のリード」と実況した<ref name="yushun201106140">[[#『優駿』2011年6月号140-141|『優駿』2011年6月号、140頁。]]</ref><ref name="Rushmer201">[[#ラシュマー2020|ラシュマー2020、201頁。]]</ref><ref>{{Cite web |title=Let’s talk about… I was there moments on the racecourse |url=https://www.sportinglife.com/racing/news/lets-talk-about-i-was-there-moment/178461 |website=www.sportinglife.com |access-date=2022-11-12 |language=en-GB}}</ref>。ニューマーケット競馬場の競馬担当責任者マイケル・プロッサーは10馬身程度<ref name="Rushmer201"/>、競馬ジャーナリストのエドワード・プロッサーは最大で12馬身差としている<ref name="Prosser60" />。|group=注}}という大差をつけるほどに加速、残りの3ハロンでは12秒5、12秒8、13秒5と次第に減速しながらもそのまま後続を寄せ付けることなく、2着にドバウィゴールドが入るのを後目に6馬身差を付けて優勝した<ref name="Prosser60" /><ref name="Pennington94" /><ref name="scott201113">[[フランケル (競走馬)#Scott2011|Scott2011, p.13]]</ref>。ドバウィゴールドに僅差の3着でネイティヴカーンが続き、4着スリムシャディ以下は3着からさらに10馬身以上後方に置かれていた<ref name="Moubray201163">[[フランケル (競走馬)#モーブレイ2011|モーブレイ2011、63頁。]]</ref>。

勝ち時計の1分37秒3は標準よりも1秒8遅かったが、このラップタイムを評価したデイヴ・エドワーズによれば、風の影響を考慮するとこの内容は驚異的なものであった<ref name="scott201113" />。タイムフォームによるタイム指数でも、この走りは21世紀に入ってから最速{{Refnest|21世紀の範囲では、[[ハービンジャー]]のキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス勝利による135がこれに次ぐ記録だった<ref name="timeform2020-5-12"/>。|group=注}}、また2000ギニー史上ではエルグランセニョールの139以来最速となる136という評価を受けた<ref name="Timeform201314">[[フランケル (競走馬)#Timeform2013|Timeform2013, p.14]]</ref><ref name="timeform2020-5-12">{{Cite web |title=Best racehorse performances{{!}} the best Timefigures this century, including Frankel and Sea The Stars |url=https://www.timeform.com/horse-racing/features/generic-feature/top-on-time-the-horses-with-the-best-efforts-on-the-clock-this-century-1252020 |website=Timeform |date=2020-05-12 |access-date=2022-11-12 |language=en-GB |publisher=[[タイムフォーム|Timeform]]}}</ref>。道中2番手を追走したカサメント、3番手追走のロデリックオコナーはそのペースに潰れてそれぞれ10着、11着に沈んだ<ref name="goda20110504">{{Cite web|和書|title=英2000ギニー回顧 |url=https://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=17047 |website=netkeiba.com |access-date=2022-07-30 |language=ja |publisher=[[netkeiba]] |author=[[合田直弘]]}}</ref>。本馬の対抗に挙げられた2歳G1馬3頭では7着パスフォークが最先着で、いずれも25馬身以上の大差を付けられる結果であった<ref name="Moubray201163" /><ref name="Pennington101" />。この2着に付けた6馬身という着差は、1947年の[[テューダーミンストレル]]が達成した8馬身差に次ぐ同競走における歴代2位の大きさであり、またこの単勝配当は、1934年の{{仮リンク|コロンボ (競走馬)|en|Colombo (horse)|label=コロンボ}}が達成した2対7(約1.29倍)以来となる低さであった<ref name="Pennington94">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.94]]</ref>。

これにより、セシルは3度目の2000ギニー勝利、25度目にして結果的に生涯最後となるイギリスクラシック勝利を挙げ、クウィリーは同クラシック競走初勝利となった<ref name="Pennington91">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.91]]</ref><ref name="Rushmer203">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、203頁。]]</ref>。[[ガーディアン]]紙は「イギリスの競馬場史上最も偉大な展示の1つ」<ref name="Racing's New Superstar" /><ref name="Guardian2011430" />と評し、[[レーシング・ポスト]]紙は「ビヨンド・ビリーフ」の見出しで、[[ニュース・オブ・ザ・ワールド]]紙は「フランケルシュタイン」の形容でこの勝利を報道した<ref name="Prosser60" />。

[[ワールド・サラブレッド・ランキング|ワールドサラブレッドランキング]]では、フランケルは2000ギニーの優勝に対する評価として1993年の[[ザフォニック]]以来となる130のレーティングを与えられ、この時点で、2011年初から世界最高レーティングを保持していた無敗の牝馬[[ブラックキャビア]]に並ぶ世界1位の評価を得た<ref>{{Cite web |title=WORLD THOROUGHBRED RANKINGS |url=https://www.ifhaonline.org/resources/WTRRankings/LWBRR_PressRelease.asp?pid=19 |website=www.ifhaonline.org |access-date=2022-08-01 |publisher=[[国際競馬統括機関連盟|International Federation of Horseracing Authorities]] |date=2011-5-26}}</ref>。3歳のイギリス調教馬がレーティング130ポンドを得るのは1996年[[マークオブエスティーム]](133)および[[ボスラシャム]](131)以来初めてのことであり、これはフランケル以降、2015年にダービー馬[[ゴールデンホーン]]がエクリプスステークスを勝利するまで再び達成されることがなかった<ref name="BHA2015-07-07">{{Cite web |title=Golden Horn joins the 130 Club |url=https://www.britishhorseracing.com/golden-horn-joins-the-130-club/ |website=www.britishhorseracing.com/ |date=2015-07-07 |access-date=2022-11-12 |archive-url=https://archive.ph/38q6w |archive-date=2022-11-12}}</ref><ref name="1977-2012ranking">{{Cite web |title=THE LEVELS OF THE RATINGS IN THE INTERNATIONAL CLASSIFICATIONS AND WORLD THOROUGHBRED RANKINGS 1977-2012 |url=https://web.archive.org/web/20130124072310/http://www.ifhaonline.org:80/resources/2012Rankings/WTR2012_RecalibrationPaper.pdf |website=web.archive.org |date=2013-01-24 |access-date=2022-12-05}}</ref>。日本の軍土門隼夫は、圧倒的なスピードで逃げてそのまま圧勝した点で、1998年の[[金鯱賞]]、[[宝塚記念]]、[[第49回毎日王冠|毎日王冠]]などの勝ち馬[[サイレンススズカ]]が見せた競馬との類似を指摘している<ref name="yushun20150326">[[#『優駿』2015年3月号|『優駿』2015年3月号、26頁。]]</ref>。一方、本馬が「型破り」な競走運びを行った点に対する否定的見解もある{{Refnest|ジョセリン・ド・モーブレイは、セオリー通りに競馬をしたならばフランケルの評価はいっそう高くなったことろうと述べ、本馬が単騎駆けした競走の展開を、競走馬としての能力を測る上では「残念だったと言わざるを得ない」とした<ref name="Moubray201163"/>。同氏は、次走のセントジェームズパレスステークスの競走結果について、本馬がロイヤルロッジステークス以来の「4番手で折り合う」競馬が出来たことは、「後続と僅差であったという結果よりずっと重要なことである」と評価している<ref name="Moubray201163"/>。|group=注}}。

フェザーストンハウによれば、フランケルが競走馬として完成するためには2000ギニーが必要不可欠な要素であった<ref name="Rushmer205" />。同競走で全力の競馬を行った本馬は、以後これまでよりも振る舞いが行儀よくなり、調教でも行きたがらなくなったのだという<ref name="Rushmer205">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、205頁。]]</ref><ref name="Rushmer206">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、206頁。]]</ref>。

==== マイル路線の決定 ====
イギリスの春クラシックは基本的に1マイルのギニー戦線と1マイル半のダービー戦線で分かれており、この距離差を克服してクラシック二冠を目指すことは少なかった{{Refnest|当時、21世紀でイギリスクラシック二冠を達成した競走馬は2009年の[[シーザスターズ]]1頭のみであった<ref name="motomura226"/>。一方で、マイル路線を進んだイギリスの2000ギニー馬としては、2002年の[[ロックオブジブラルタル]]がマイルG1競走を多く勝ち、このほかにも2007年の[[コックニーレベル]]、2008年の[[ヘンリーザナヴィゲーター]]がアイリッシュ2000ギニーに転戦しての連勝を達成していた<ref name="motomura226">[[#本村2016|本村2016、p.226]]</ref>。|group=注}}<ref name="motomura225">[[フランケル (競走馬)#本村2016|本村2016、p.225]]</ref><ref name="tis62">[[フランケル (競走馬)#サラブレッドインフォメーションシステム他2002|サラブレッドインフォメーションシステム他2002、62頁。]]</ref>。セシルは前年から本馬が1マイル半を走ることができるかを疑問視していたが、いまだダービー参戦への可能性は残しており、ブックメーカーでは実際に1番人気に推されていた{{Refnest|例えば、ロイヤルロッジステークスの後には、コーラルとパディパワーが5対2、ラドブロークス、トートスポート、ベット365が4対1<ref name="Pennington65"/>、デューハーストステークスの後にはウィリアム・ヒルが3対1<ref name="Pennington69"/>、2000ギニーの後には、ヴィクター・チャンドラーが7対2、ウィリアム・ヒルとベット365が6対4を掲げた<ref name="Pennington95">[[#Pennington2012|Pennington2012, p.95]]</ref>。|group=注}}<ref name="Pennington65" />。この間競馬サークルにおける話題を見ると、次走に関してマイル路線のほかに、ダービー、6ハロンのジュライカップなどが指摘されている<ref name="Pennington101" /><ref name="Rushmer207">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、207頁。]]</ref>。最終的にフランケルは、アブドゥッラーとグリムソープとセシルの協議の結果、ダービーを回避してマイル路線を進み、[[ロイヤルアスコット開催]]の3歳マイルG1競走である[[セントジェームズパレスステークス]]に出走することが当面の目標となった<ref name="Rushmer208">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、208頁。]]</ref>。セシルはダービー不参戦の理由として、フランケルが[[エプソム競馬場]]で競走するならば[[ダンテステークス]]を使うことが絶対条件であるが、2000ギニーからダンテステークスへの連戦は日程が厳しすぎるという点を挙げた<ref name="Rushmer209">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、209頁。]]</ref>。また、10ハロンへの距離延長は問題ないだろうとの見解も示したが、現段階ではマイル戦に特化することが理にかなっているとした<ref name="Rushmer209" />。

==== セントジェームズパレスステークス ====
{{External media|width=300px|video1=[https://www.youtube.com/watch?v=c5GN-69rCuA 2011年セントジェームズパレスステークス Juddmonte]}}2011年6月14日のセントジェームズパレスステークスは9頭立てで行われ、2000ギニーを「破壊的」<ref name="Pennington972">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.97]]</ref><ref name="Cooper198">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.198]]</ref>に勝利したフランケルが30対100(1.3倍)の1番人気、グリーナムステークス2着の後にドイツ2000ギニーを7馬身差で勝利したエクセレブレーションが10対1(11倍)の2番人気、イギリスとアイルランドの2000ギニーでともに2着のドバウィゴールドが12対1(13倍)、休み明けのフランス2000ギニーを5着としたウートンバセットが12対1と並んで3番人気タイになった<ref name="Pennington111">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.111]]</ref><ref name="goda20110608">{{Cite web|和書|title=セントジェームスパレスS展望 |url=https://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=17395 |website=netkeiba.com |access-date=2022-07-30 |language=ja |publisher=[[netkeiba]] |author=[[合田直弘]]}}</ref>。このほか、日本の[[矢作芳人]]厩舎から[[朝日杯フューチュリティステークス]]および[[NHKマイルカップ]]の勝ち馬[[グランプリボス]]が出走し<ref name="yushun20110874">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2011年8月号74-75|『優駿』2011年8月号、74頁。]]</ref>、日本の報道陣も集まった<ref name="van" />。2歳時に[[フィーニクスステークス]]を勝利していた[[ゾファニー (アイルランドの競走馬)|ゾファニー]]は20対1(21倍)の7番人気であった<ref name="Moubray201164">[[フランケル (競走馬)#モーブレイ2011|モーブレイ2011、64頁。]]</ref><ref name="Pennington111" />。

競走が発走すると、今回のリルーテッドはペースメーカーとして大逃げを打ち、ハイペースで馬群を先導した<!-- 前走とは異なりスタート直後は三番手に控えると --><ref name="Rushmer209" /><ref name="Rushmer210">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、210頁。]]</ref>。クウィリーは残り5ハロンの辺りから、前方のリルーテッド目掛けてフランケルを追い出した<ref name="Pennington104">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.104]]</ref><ref name="Pennington107">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.107]]</ref>。競走を約5ハロン残している時点で前方に進出を開始したフランケルは、オールドマイルの中盤でありながら、3ハロン地点以降の3ハロン間で34秒2という脚を使い始めると、まもなく先頭に立って後続を突き放した<ref name="Pennington110">[[#Pennington2012|Pennington2012, p.110]]</ref>。本馬は2ハロン地点で6馬身のリードを作ったが、さすがに決勝線の前では失速し、後方馬群から追い込んだゾファニーに3/4馬身まで迫られたものの、そのまま押し切って優勝した<ref name="Rushmer210" /><ref name="Pennington108">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.108]]</ref>。

これまでのフランケルの成績と比べて同競走での内容が辛勝であった理由については様々な意見があり、騎手や戦術のミス、ペースメーカーの作り出したハイペースなどが挙げられる<ref name="Rushmer210" /><ref name="Cooper203">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.203]]</ref>。競走後のセシルはメディアに対して、あまりにも早く先頭に立ったためにソラを使ったのだと語った<ref name="Rushmer210" /><ref name="Rushmer211">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、211頁。]]</ref>。クウィリーは仕掛けが早すぎたとして競走後非難の対象となったが{{Refnest|ただし、2011年上半期の競馬をレポートしたジョセリン・ド・モーブレイは、セントジェームズパレスステークスではフランケルが集中力も体力も切らすことなく折り合いを付けて勝利することができたとして、同競走におけるクウィリーの競走運びを高く評価している<ref name="Moubray201164"/>。|group=注}}、本人はセシルによる「コーナーの前で仕掛けるよう」との指示に従ったまでと主張した<ref name="Pennington114" /><ref name="jairs201107142">{{Cite web|和書|title=怪物フランケルの騎手、指示通りに騎乗したと主張(イギリス)[その他] |url=https://www.jairs.jp/contents/newsprot/2011/28/2.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |accessdate=2022-04-08}}</ref>。また、セシル厩舎のマイケル・マクゴーワンやディー・ディーコンなどによって、当時のフランケルを始めとする同厩舎の管理馬が軽度の[[ウイルス]]感染症によって調子を落としていた可能性も指摘されており、トニー・ラシュマー著のヘンリー・セシル公式伝記『凱歌』ではこれが有力説として示されている<ref name="Rushmer211" /><ref name="Rushmer212">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、212頁。]]</ref><ref name="Cooper205"/>。

競走後、レーシング・ポスト紙のアラステア・ダウンは、「無敵のマントが少し擦り切れ、これからは対抗馬が増えるだろう」という意見を示した{{Refnest|実際に、ラドブロークスなど一部のブックメーカーは、後述のサセックスステークスの前売りでキャンフォードクリフスを1番人気に掲げた<ref name="Pennington108"/><ref name="Cooper205">[[#Cooper2021|Cooper2021, p.205]]</ref>
。|group=注}}<ref name="Pennington109">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.109]]</ref>。同競走1着によるレーティングは、過去10年の同競走で2006年の{{仮リンク|アラーファ|en|Araafa}}(125)、2002年の[[ロックオブジブラルタル]](124)、2008年の[[ヘンリーザナビゲーター|ヘンリーザナヴィゲーター]](123)の3頭や、同日の[[クイーンアンステークス]]で[[ゴルディコヴァ]]を破った[[キャンフォードクリフス]](127)を下回る122ポンドとなった<ref name="Gardiner-Hill2011-6-21" />。公式ハンデキャッパーのドミニク・ガーディナー=ヒルは少々落胆する結果だったと振り返ったが、この翌日に[[ソーユーシンク]]が敗れたことを踏まえると、同馬の名声を傷つけない優れたパフォーマンスだったと述べた<ref name="Gardiner-Hill2011-6-21">{{Cite web |title=21st June 2011 - ROYAL ASCOT |url=https://web.archive.org/web/20110818095730/http://feeds.feedburner.com/BritishHorseracingAuthorityHandicappersBlog |website=web.archive.org |date=2011-08-18 |access-date=2022-11-12 |last=Gardiner-Hill |first=Dominic}}</ref>。後年の評価としては、セシル厩舎のマイク・マーシャルによる「最高のレース」<ref name="Cooper204">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.204]]</ref>、エドワード・プロッサーによる「いささか相手を侮り過ぎた感もあった」<ref name="Prosser60" />、トニー・ラシュマーによる「最も不満足なパフォーマンス」{{Refnest|次走のサセックスステークスを「最も印象の強いレースの一つ」として導く形で、対比的に述べたもの<ref name="Rushmer212"/>。|group=注}}<ref name="Rushmer212" />、[[JRA-VAN]] ver.Worldコラム''による''「様々な意味で伝説的なレース」<ref name="van" />などがある。

==== サセックスステークス ====
{{External media|width=300px|video1=[https://www.youtube.com/watch?v=Gmfw8wZSNKg 2011年サセックスステークス Juddmonte]}}セントジェームズパレスステークスで後続の追撃を振り切ったフランケルは、僚馬のトゥワイスオーヴァーや[[ミッデイ]]らと同じく[[ヨーク競馬場]]の10ハロン戦である[[インターナショナルステークス]]にも登録されていたが、現段階ではマイル路線を堅持するというセシルの方針のもと、<!-- 上半期のイギリスマイル王決定戦(要出典) -->[[グッドウッド競馬場]]の[[サセックスステークス]]に出走し、ここで初めて古馬と対戦することとなった<ref name="okuno2012322">[[フランケル (競走馬)#奥野2012|奥野2012、322頁。]]</ref><ref name="Rushmer212" />。2011年7月27日に行われた同競走では、G1競走を5連勝して4歳世代の最強マイラーと目されていた<!-- マイルG1を5連勝中、前走のクイーンアンステークスでG1を13勝していたゴルディコヴァを下したことで古馬最強マイラーと目されていた(要出典) -->キャンフォードクリフスとの対戦となり、<!-- この2強に恐れをなした他陣営の多くは出走を敬遠し、(要出典) -->4頭立てのなかで、フランケルが8対13(約1.62倍)、キャンフォードクリフスが7対4(2.75倍)の支持を受け、残る2頭のリオデラプラタとラジサマンがオッズ23倍という人気順となった<ref name="Rushmer215">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、215頁。]]</ref>。このように実質2頭の[[一騎討ち]]の様相を呈したこの競走は、「'''[[デュエル・オン・ザ・ダウンズ]]'''」と呼ばれて注目を集めた<ref name="Rushmer215" /><ref name="Pennington113">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.113]]</ref>。

ここでのフランケルとクウィリーは、他3頭に対して控える競馬をせずに、終始コントロールの効いた逃げで競走を牽引し、残り1ハロン地点でキャンフォードクリフスら後続馬を一気に突き放すと、1949年以来の大差となる5馬身差で優勝<ref name="Pennington114">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.114]]</ref><ref name="Rushmer215" />。2着馬キャンフォードクリフスはフランケルを追跡した際に故障を発生したため、最終的にこれが引退戦となった<ref>{{Cite web|和書|title=一流マイラーのキャンフォードクリフス、引退して種牡馬入り(イギリス)[その他] |url=https://www.jairs.jp/contents/newsprot/2011/34/3.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |accessdate=2022-04-08}}</ref>。後方から進んだ3着リオデラプラタはフランケルから7馬身1/2差、同じく4着ラジサマンは10馬身差遅れて入線した{{Refnest|2011年の競馬をレポートしたジョセリン・ド・モーブレイは、リオデラプラタ、ラジサマンの2頭を「例年なら欧州のベストマイラーと評されてもおかしくないほどの力」を持っていたと述べている<ref name="Moubray201210">[[#モーブレイ2012|モーブレイ2012、10頁。]]</ref>。2011年のリオデラプラタは、サセックスステークスの競走後に3戦してすべて2着<ref name="Moubray201211"/>。前走の[[イスパーン賞]]でゴルディコヴァの3着であったラジサマンは、後に[[ダニエルウィルデンシュタイン賞]]でリオデラプラタを破って勝利した<ref name="Moubray201211"/>。なお、この2頭が出走して2着、3着となったムーラン・ド・ロンシャン賞では、エクセレブレーションが勝利を収めている<ref name="Moubray201211"/>。|group=注}}<ref name="Moubray201211">[[フランケル (競走馬)#モーブレイ2012|モーブレイ2012、11頁。]]</ref>。

競走後のセシルはメディアに対し、[[ブラッシンググルーム]]と[[シャーガー]]を引き合いに出しながら、本馬を「これまで目撃した最強馬」であると評した<ref name="Rushmer217">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、217頁。]]</ref><ref name="Pennington115">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.115]]</ref>。また、セシルとアブドゥッラーは、フランケルが2012年シーズンも現役に留まる可能性を示唆した<ref name="Rushmer218">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、218頁。]]</ref>。

レーティングでは、これまでマイルでレーティング118ポンドを上回ったことのない3着馬リオデラプラタが基準に据えられ、この結果キャンフォードクリフスが同競走2着によって123ポンド、そして同馬に5馬身差を付けたフランケルが135ポンドという評価となった<ref name="Gardiner-Hill2011-8-2" />。これは、マイル部門では[[ジルザル]](134{{Refnest|2013年にレーティングの下方修正が行われた結果、このレーティングは133ポンドに修正されている<ref name="1977-2012ranking"/>。|group=注}})、[[マークオブエスティーム]](133)、{{仮リンク|ホークウイング|en|Hawk Wing}}(133)、[[ウォーニング (競走馬)|ウォーニング]](133)、[[ミエスク]](132)、[[ペブルス]](132)、{{仮リンク|シャディード|en|Shadeed}}(131)などを上回り、唯一エルグランセニョール(138{{Refnest|2013年にレーティングの下方修正が行われた結果、このレーティングは135ポンドに修正されている<ref name="1977-2012ranking"/>。|group=注|name=El Gran Senor135}})にのみ及ばなかった高い評価である<ref name="Gardiner-Hill2011-8-2" />。これによってワールドサラブレッドランキングにおける本馬は、ブラックキャビアを超えて同年単独世界1位の地位に就くとともに、2004年に同制度が開始されて以降のマイル部門における最高評価を更新した<ref name="Gardiner-Hill2011-8-2">{{Cite web |title=2nd August 2011 - WORLD BEATER? |url=https://web.archive.org/web/20110818095730/http://feeds.feedburner.com/BritishHorseracingAuthorityHandicappersBlog |website=web.archive.org |date=2011-08-18 |access-date=2022-11-12 |last=Gardiner-Hill |first=Dominic}}</ref><ref>{{Cite web |title=The Top Ranked Horses in the World |url=https://www.ifhaonline.org/resources/WTRRankings/LWBRR_PressRelease.asp?pid=21 |website=www.ifhaonline.org |access-date=2022-08-01 |publisher=[[国際競馬統括機関連盟|International Federation of Horseracing Authorities]] |date=2011-8-4}}</ref>。

==== クイーンエリザベス2世ステークス ====
{{External media|width=300px|video1=[https://www.youtube.com/watch?v=pX675vwMEUI 2011年クイーンエリザベス2世ステークス Juddmonte]}}キャンフォードクリフスを一蹴して最強マイラーの地位を確立したフランケルは、インターナショナルステークスを回避し、ブリティッシュ・チャンピオンズシリーズの最後を締めくくる10月15日のブリティッシュ・チャンピオンズデーまで休養<ref name="okuno2012322" /><ref name="Pennington121"/>。3歳シーズン最終戦は、同シリーズのマイル部門最終戦として新装された同日準メイン競走の[[クイーンエリザベス2世ステークス]]となり、本馬はアスコット競馬場のストレートマイルで初めて競走することになった<ref name="Rushmer227">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、227頁。]]</ref><ref name="yushun201112140">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2011年12月号140-141|『優駿』2011年12月号、140頁。]]</ref>。人気順は、フランケルが4対11(約1.36倍)の1番人気で、セントジェームズパレスステークス3着の後に[[ハンガーフォードステークス]]、[[ムーラン・ド・ロンシャン賞]]を勝ったエクセレブレーションが6対1(7倍)の2番人気、[[コロネーションステークス]]および[[ジャック・ル・マロワ賞]]を勝った[[イモータルヴァース]]が7対1(8倍)の3番人気となった<ref name="Pennington121">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.121]]</ref><ref name="Pennington139">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.139]]</ref>。同厩舎からは、本馬の半兄ブレットトレンが、競走の前半の流れが極端にスローとなり終盤でスプリント勝負となってしまう状況を避けるために、しかるべきペースで競走を進行させるペースメーカーとして出走した<ref name="Rushmer227" />。

発走すると、イアン・モンガン騎乗のブレットトレインが素早く行って大逃げを打ち、フランケルは最初の2ハロンまでクウィリーに抑え込まれた<ref name="Rushmer227" /><ref name="Rushmer228">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、228頁。]]</ref>。本馬は中間点あたりから10馬身先のブレットトレイン目掛けて進出を開始し、残り2ハロン辺りでこれを交わすと、最後まで速度を持続させ、後続に4馬身差を付けて優勝<ref name="Rushmer228" /><ref name="Pennington135">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.135]]</ref>。2着にエクセレブレーション、3着にイモータルヴァースが入<!--り、この年の欧州マイル路線を象徴するような結果とな(要出典)-->った<ref name="Pennington139"/>。

レーティングは、これまでレーティング117ポンドを上回っていなかった4着馬ドバウィゴールドが基準となり、フランケルは出走前と同様の135ポンドに据え置かれた<ref name="Smith2011-10-18">{{Cite web |title=18th October 2011 - BRITISH CHAMPIONS DAY |url=https://web.archive.org/web/20111111234053/http://feeds.feedburner.com/BritishHorseracingAuthorityHandicappersBlog |website=web.archive.org |date=2011-11-11 |access-date=2022-11-12 |first=Graeme |last=Smith}}</ref>。公式ハンデキャッパーのドミニク・ガーディナー=ヒルは、年末の会議でこの値が上方修正される可能性を示しつつ、ハンデキャップ上の評価では同競走の勝利がサセックスステークスの勝利を超えることはできないという見解を述べた<ref name="Smith2011-10-18" />。

==== 最優秀3歳牡馬および年度代表馬 ====
クイーンエリザベス2世ステークスの競走後、フランケルが2012年も現役に留まることが正式に発表された<ref name="Rushmer228" />。このシーズンを5戦5勝で終えたフランケルは、2011年度のカルティエ賞年度代表馬、最優秀3歳牡馬に選出された<ref name="Pennington138">[[#Pennington2012|Pennington2012, p.138]]</ref><ref name="yushun201201140">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2012年1月号140-141|『優駿』2012年1月号、140頁。]]</ref>。セシルは、「どの[[スポーツ]]にもチャンピオンは必要であり、今年はフランケルでした。最初はちょっと予想がつきませんでしたが、流れがフランケルに落ち着き、最終的に決しました」と語った<ref name="jairs20111215">{{Cite web|和書|title=フランケル、ヨーロッパ年度代表馬に(欧州)[その他] |url=https://www.jairs.jp/contents/newsprot/2011/50/1.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |accessdate=2022-04-08}}</ref>。翌シーズンの予定では距離延長が指向され、芝10ハロンのエクリプスステークスが示唆されたほか、ダート競走の[[ブリーダーズカップ・クラシック]]も視野に入れられた<ref name="yushun201201140" />。

2011年度のワールドサラブレッドランキングでは、サセックスステークスとクイーンエリザベス2世ステークスでのパフォーマンスに対して、いずれも楽勝であったことから中間発表の値に1ポンドの上方修正が行われ、136ポンドの評価に改められた<ref name="huruhashietal201258">[[フランケル (競走馬)#古橋他2012|古橋他2012、58頁。]]</ref>。本馬の同評価は、ワールドサラブレッドランキングの制度が開始された以後では、距離部門の異なる2006年のシーザスターズと同等であると判断された歴代最高評価であり<ref name="huruhashietal201258" />、国際クラシフィケーションの時代を含めても、マイル部門では1984年のエルグランセニョール(138<ref group="注" name="El Gran Senor135" />)以来の高評価であった<ref>{{Cite web |title=The 2011 World Thoroughbred Rankings |url=https://www.ifhaonline.org/resources/WTRRankings/LWBRR_PressRelease.asp?pid=24 |website=www.ifhaonline.org |access-date=2022-08-01 |publisher=[[国際競馬統括機関連盟|International Federation of Horseracing Authorities]] |date=2012-1-10}}</ref>。

民間レーティング各社の評価はさらに高く、レーシングポストレーティングは、本馬のクイーンエリザベス2世ステークス圧勝に対して同レーティングが1986年に始まって以来最高評価の[[ドバイミレニアム]]と並ぶ139ポンド<ref name="Pennington57" /><ref name="Pennington139" />、タイムフォーム誌のレーティングは、[[シーバード]](145)、[[ブリガディアジェラード]](144)、テューダーミンストレル(144)に次いで歴代4位となる143ポンドであった<ref>{{Cite web |url=http://www1.skysports.com/horse-racing/news/12426/7419800/Timeform-Frankel-rated-143 |title=Timeform: Frankel rated 143 |publisher=sky SPORTS |language=英語 |accessdate=2012年7月4日}}</ref>。


=== 4歳時(2012年) ===
=== 4歳時(2012年) ===
初戦を[[ロッキンジステークス]]に定めて調教を積まれていたが、4月の調教中、後肢を前肢にぶつけて負傷する<ref>[http://www.drf.com/news/frankel-suffers-superficial-injury-workout Frankel suffers 'superficial' injury in workout]</ref>。結果的に外傷のみで腱などへの異常はなかったが、検査を待つ間に一部メディアが[[引退]]の速報を流したため、馬主側が否定の声明を発表するという“[[誤報]]騒動”に発展している<ref>[http://www.espn.co.uk/horseracing/sport/story/146071.html Frankel retirement talk quashed]</ref>。外傷の程度は軽く、すぐに調教を再開できたため、当初の予定どおりロッキンジステークスに向かうこととなった。


==== 負傷 ====
ロッキンジステークスでは、エクセレブレーションとの4度目の対戦となった。前年、三度フランケルの後塵を拝したエクセレブレーションは、この年からクールモアグループの所有となり、数々の名馬を手がけた[[エイダン・オブライエン]]厩舎に転厩していた<ref>{{Cite web|url=http://www.racingpost.com/horses/home.sd?story=953987&argument=749313|title=Excelebration misses HK and will join O'Brien|publisher= [[レーシング・ポスト|RACING POST.com]]|language=英語|accessdate=2012年6月24日}}</ref>。そして移籍初戦を勝利で飾り、万全の態勢でフランケルを待ち構えていたのである。しかし古馬になって心身共に成長していたフランケルは、この同期のライバルの4度目の挑戦をあっさりと退け、5馬身差で優勝した。昨期までの最大の課題であった折り合い面の不安は見られず、全く隙のないレース振りであった。このレースで公式レート138ポンドを獲得し<ref>{{Cite web|url=http://www.bbc.co.uk/sport/0/horse-racing/18154303|title=Frankel ranked as world's best for at least 25 years|publisher=BBC Sport|language=英語|accessdate=2012年7月4日}}</ref>、フランケルは今期初戦にして早くも前年を上回る評価を得ることになった。しかし調教師のセシルは「次は更に(3〜4馬身程)良くなるのではないか」「多くの調教師がそうであるように、私達も初戦で100パーセントの力を出させることはしない」<ref>{{Cite web|url=http://www.racingpost.com/horses/home.sd?story=1049080&argument=763453|title=Cecil keen to let Frankel take on Camelot|publisher=[[レーシング・ポスト|RACING POST.com]]|language=英語|accessdate=2012年6月24日}}</ref>と、次走で更にパフォーマンスを上げることに自信を見せていた。
セシル厩舎の優れた競走馬は4月中旬のニューマーケットやニューベリーで始動する場合もあるが、フランケルの場合は5月19日のロッキンジステークスを目標に調整が進められた<ref name="Rushmer233">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、233頁。]]</ref>。しかし4月11日、朝の調教を終え、厩舎の馬房に戻って[[バンテージ]]を取り外されたフランケルの右前肢に、熱感、腫脹、疼痛が認められることが判明し、本馬が[[屈腱炎]]を患ったのではないかという可能性が浮上した<ref name="Rushmer234">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、234頁。]]</ref><ref name="Rushmer235">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、235頁。]]</ref>。担当獣医チャーリー・スミスによってスキャン検査が行われた結果、断裂はしていないながらも表皮内側の周辺に炎症があることが確認された<ref name="Rushmer235" /><ref name="Rushmer232">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、232頁。]]</ref>。セシルは脚が交錯してぶつかったのだろうと推測し、その翌朝にジャドモントファームが声明を発表、翌4月12日の[[ガーディアン]]紙には、自分で自分の脚を蹴る「交突」<ref>{{Cite web|和書|title=フランケル引退騒動も現役続行へゴーサイン |url=https://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=19932 |website=netkeiba.com |access-date=2022-08-01 |language=ja |publisher=[[netkeiba]] |author=[[合田直弘]]}}</ref>を起こしたのだろうというセシルのコメントが引用された<ref name="Rushmer236">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、236頁。]]</ref><ref name="Pennington145">[[#Pennington2012|Pennington2012, p.145]]</ref><ref>{{Cite web |title=Frankel set to miss Lockinge Stakes comeback at Newbury after injury |url=http://www.theguardian.com/sport/2012/apr/13/frankel-second-scan-on-injury |website=the Guardian |date=2012-04-13 |accessdate=2022-04-08 |language=en}}</ref>。

翌週に行われる更なる検査まで運動再開を待つべきであることが分かり、調教の予定は一旦白紙となったが、始動戦まで1か月余りを控えたなか、セシルはウォーレンプレイスの覆馬場で常歩とダクを行わせることで体を動かさせることにした<ref name="Rushmer236" /><ref name="Rushmer238">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、238頁。]]</ref>。この間、4月14日頃からフランケルが引退するのではないかという噂が流れだし、[[グランドナショナル]]当日の[[英国放送協会|BBC]]でこの話題が言及されたことより、多くのメディアがこれを紹介するまでに至ったため、グリムソープが噂を完全否定する声明を発表するという「[[誤報]]騒動」に発展している<ref name="Pennington145" /><ref name="Rushmer240">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、240頁。]]</ref><ref name="Rushmer241">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、241頁。]]</ref>。この時点では、本馬のロッキンジステークス出走は難しいと判断された<ref name="Pennington145" />。更なる検査が行われた結果、腱に損傷は無く、現役続行に問題がないことが判明したため、当初の予定通りロッキンジステークスに向かうこととなった<ref name="Pennington146">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.146]]</ref><ref name="Rushmer242">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、242頁。]]</ref><ref name="Rushmer243">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、243頁。]]</ref>。2000ギニーが行われた5月5日のニューマーケット競馬場では、レースコース・ギャロップという公開調教も行われ、本馬が[[ライアン・ムーア]]騎乗のブレットトレインらを圧倒する走りを見せてセシルを満足させた<ref name="Rushmer243" /><ref name="Rushmer244">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、244頁。]]</ref><ref>{{Cite web|和書|title=フランケル、猛烈リハで復活の狼煙 |url=https://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=20055 |website=netkeiba.com |access-date=2022-07-31 |language=ja |publisher=[[netkeiba]] |author=[[合田直弘]]}}</ref>。ロッキンジステークスの前日には、早い段階で戦闘態勢に入った本馬が壁を蹴ったはずみで[[蹄鉄]]を外してしまい陣営は対処に迫られたが、これを除けばシーズン初戦への調整は順調に進んでいった<ref name="Rushmer244" /><ref name="Rushmer245">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、245頁。]]</ref>。

==== ロッキンジステークス ====
{{External media|width=300px|video1=[https://www.youtube.com/watch?v=G558sUgYxxU 2012年ロッキンジステークス Juddmonte]}}2012年5月19日、ニューベリー競馬場の6頭立てで行われたロッキンジステークスは、フランケルが2対7(約1.29倍)で1番人気、[[ジョセフ・オブライエン]]騎乗のエクセレブレーションが10対3(約4.33倍)で2番人気、ドバウィゴールドが16対1(17倍)で3番人気という人気順となった<ref name="Pennington143" /><ref name="Pennington153">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.153]]</ref>。特に、前年、三度フランケルの後塵を拝したエクセレブレーションは、この年からクールモアグループの所有となり、数々の名馬を手がけた[[エイダン・オブライエン]]厩舎に転厩していた<ref name="Excelebration" /><ref name="Rushmer247">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、247頁。]]</ref><ref name="Pennington149">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.149]]</ref>。そして移籍初戦のG3競走を勝利で飾り、万全の態勢でフランケルを待ち構えていたのである<ref name="Rushmer247" />。セシルは「まともな馬場であればロッキンジに出走する予定です」と述べていたが、実際に同競走の芝は硬すぎず軟らかすぎないGoodの馬場状態で行われた<ref name="Pennington147">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.147]]</ref><ref name="Rushmer246" />。

発走すると、クイーンエリザベス2世ステークスに引き続き本馬のペースメーカーとして出走したブレットトレインがスムーズに先頭に立ち、同馬は前走のような大逃げを打たず、「フランケルにブレットトレインの後ろを追走させる」ことを意識したイアン・モンガンの騎乗のもとで後方を確認しながらペースを作った<ref name="Rushmer247" /><ref name="Rushmer246">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、246頁。]]</ref>。フランケルは初めに掛かるとこを見せながらもその背後で2番手を追走、さらにその後ろにエクセレブレーションが続いた<ref name="Rushmer247" /><ref name="Pennington148">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.148]]</ref>。フランケルは残り2ハロン地点でブレットトレインに並び掛け、数完歩で交わすと、その後も持続的に後続を引き離し、エクセレブレーションの4度目の挑戦をあっさりと退け、最後は5馬身差を付けて優勝した<ref name="Rushmer247" /><ref name="Rushmer248">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、248頁。]]</ref><ref name="Pennington152">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.152]]</ref><!-- 昨期までの最大の課題であった折り合い面の不安は見られず、全く隙のないレース振りであった。(要出典) -->。

同競走において、2着馬エクセレブレーション(イギリスでは前年のレーティング125)は3着馬ドバウィゴールド(前年のレーティング117)に力通りの4馬身差を付けており、レーティングではこの入着馬2頭が前年のトップパフォーマンスを再現したと見なされた<ref name="Gardiner-Hill2012-10-30" />。これによって、エクセレブレーションに5馬身差を付けたフランケルのレーティングは138ポンドとなり、本馬は今シーズン初戦にして前年を上回る評価を記録し、また2004年のワールドサラブレッドランキング創設以来では最も高い評価を得る結果となった<ref name="Gardiner-Hill2012-10-30">{{Cite web |title=30th October 2012 - EXCELEBRATION IMPRESSES AT ASCOT (PART TWO) |url=https://web.archive.org/web/20121030145646/http://www.bhb.co.uk/goracing/blogs/handicappers.asp |website=web.archive.org |date=2012-10-30 |access-date=2022-11-12 |last=Gardiner-Hill |first=Dominic}}</ref><ref>{{Cite web |title=WORLD THOROUGHBRED RANKINGS |url=https://www.ifhaonline.org/resources/WTRRankings/LWBRR_PressRelease.asp?pid=26 |website=www.ifhaonline.org |access-date=2022-07-31 |publisher=[[国際競馬統括機関連盟|International Federation of Horseracing Authorities]] |date=2012-5-31}}</ref>。フェザーストンハウは、フランケルが前年からの成長を証明し、怪我を克服して優勝したこの競走を自らが見たベストレースの最終候補に挙げている<ref name="Rushmer248" /><ref name="Rushmer249">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、249頁。]]</ref>。

セシルは、本馬が始動戦を叩かれてさらに良化するということを理由に、「次は更に(3〜4馬身程)良くなるのではないか」「多くの調教師がそうであるように、私達も初戦で100パーセントの力を出させることはしない」と、次走で更にパフォーマンスを上げることに自信を見せていた<ref name="Pennington151">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.151]]</ref><ref name="Pennington155">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.155]]</ref><!--そして次走のクイーンアンステークスで、フランケルはそのセシルの言葉を見事に証明してみせる。(要出典)-->。
==== クイーンアンステークス ====
{{External media|width=300px|video1=[https://www.youtube.com/watch?v=RRfzInhA72w 2012年クイーンアンステークス Juddmonte]}}ブリティッシュ・チャンピオンズシリーズの[[最高経営責任者]]ロッド・ストリートの消費需要調査によれば、フランケルが10連勝を達成して連勝記録を二桁の大台に乗せた4歳春頃から、本馬の名は一般にも響き渡るようになっていた<ref name="Rushmer198" /><ref name="Rushmer327">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、327頁。]]</ref>。2012年6月19日、ロイヤルアスコット開催初日のクイーンアンステークスは、フランケルの出走した競走の割には多頭数となる11頭が揃ったが、新興勢力の台頭は無かった<ref name="yushun20120872" /><ref name="Pennington165" />。人気順は、フランケルが1対10(1.1倍)という圧倒的な1番人気{{Refnest|これは、「ロイヤルアスコット開催史上最も低いオッズの一つ」と紹介される場合がある<ref name="Pennington167"/><ref name="Racing's New Superstar">{{Cite web |title=FRANKEL Horse Racing's New Superstar |url=https://web.archive.org/web/20130110091032/http://frankel.juddmonte.com/ |website=web.archive.org |date=2013-01-10 |access-date=2022-08-15}}</ref>。実際には、これを下回るものとして、[[ゴールドカップ]]では1917年の[[ゲイクルセイダー]](8対100)<ref name="Abelson91">[[#Abelson et al.1993|Abelson et al.1993, p.69]]</ref>、[[キングズスタンドステークス]]では1877年のロリーポップ(8対100)<ref name="Abelson101">[[#Abelson et al.1993|Abelson et al.1993, p.101]]</ref>、[[プリンスオブウェールズステークス (イギリス)|プリンスオブウェールズステークス]]では1897年の[[ガルティーモア]](1対33)<ref name="Abelson67">[[#Abelson et al.1993|Abelson et al.1993, p.67]]</ref>、セントジェームズパレスステークスでは1867年の[[ハーミット]](1対20)<ref name="Abelson69">[[#Abelson et al.1993|Abelson et al.1993, p.69]]</ref>
、1881年の{{仮リンク|イロコイ (競走馬)|label=イロコイ|en|Iroquois (horse)}}(9対100)<ref name="Abelson69"/>、1891年の[[コモン (競走馬)|コモン]](1対40)<ref name="Abelson69"/>、1903年の[[ロックサンド]](7対100)<ref name="Abelson70">[[#Abelson et al.1993|Abelson et al.1993, p.70]]</ref>、1905年の{{仮リンク|チェリーラス|en|Cherry Lass}}(6対100)<ref name="Abelson70"/>、1907年の{{仮リンク|スリーヴガリオン (競走馬)|label=スリーヴガリオン|en|Slieve Gallion (horse)}}(1対20)<ref name="Abelson70"/>、1947年のテューダーミンストレル(6対100)<ref name="Abelson70"/>、1960年のヴェンチャー(1対33)<ref name="Abelson70"/>などがある。|group=注}}、そしてエクセレブレーションが5対1(6倍)で2番人気、ストロングスートが10対1(11倍)で3番人気となった<ref name="Pennington165">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.165]]</ref>。

競走の発走に伴ってブレットトレインが先頭に立つと、フランケルはその背後に入って追走し、競走前半の4ハロンを50秒96、次いで各1ハロンを11秒26、さらに10秒58と加速、同日の[[キングズスタンドステークス]]の出走馬を凌ぐ瞬発力で走行した<ref name="Rushmer256">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、256頁。]]</ref><ref name="Pennington164">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.164]]</ref>。残り3ハロン辺りでエクセレブレーションに並び掛け、まもなく交わした本馬は、次の2ハロン間ではエクセレブレーションより1秒18速く走行、最後の1ハロンでも同馬より0秒69速く走行するという圧倒的な末脚を発揮し、最後は同馬に11馬身の大差を付けて優勝<ref name="Pennington164" /><ref name="Rushmer257">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、257頁。]]</ref><ref name="Pennington162">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.162]]</ref>。馬場状態は稍重ながら、勝ち時計の1分37秒85はレコードタイムに0秒69迫るものであった<ref name="Pennington158">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.158]]</ref>。

競走後、表彰のためにパドックへ帰るまでの間、カメラマンに囲まれたフランケルは蹄鉄を一つ落とした<ref name="Rushmer254">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、254頁。]]</ref><ref name="Cooper241">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.241]]</ref>。翌日セシルは競走中に落鉄した旨を報告、本馬に異常は無かったものの、念のため右前肢に[[湿布]]が貼られ、後にこの蹄鉄は[[競売|オークション]]に出品された<ref name="yushun20120872" /><ref name="Cooper241" /><ref name="Pennington167" />。

セシル、クウィリーが口を揃えて「これまでのベストパフォーマンス」<ref>{{Cite web |url=http://www.bloodhorse.com/horse-racing/articles/70659/undefeated-frankel-wins-queen-anne-by-11 |title=Undefeated Frankel Wins Queen Anne by 11 |publisher=BloodHorse.com |language=英語 |accessdate=2012年6月24日}}</ref>と認め、騎手の間では「同一年にジュライカップと[[凱旋門賞]]を勝てるのではないか」<ref name="yushun20120872">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2012年8月号72-75|『優駿』2012年8月号、72頁。]]</ref>との声も上ったこの競走振りに、タイムフォーム誌は歴代1位のシーバードを上回る147ポンドという評価を、またレーシングポスト誌は初めて140の壁を超える142ポンドという評価を与えた<ref name="Pennington167">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.167]]</ref><ref>{{Cite web |url=http://www.sportinglife.com/racing/news/article/2/7828365/timeform-frankel-best-ever |title=TIMEFORM: FRANKEL BEST EVER |publisher=sportinglife.com |language=英語 |accessdate=2012年7月4日}}</ref>。公式のレーティングでは、国際クラシフィケーション時代にレーティングの基本的な最高値が140であったなかで1986年の[[ダンシングブレーヴ]]に対して例外的に141ポンドの評価が与えられていたが、ワールドサラブレッドランキングにおけるフランケルはこの歴代1位に1ポンド差までせまる140ポンドとなった<ref name="tis8">[[フランケル (競走馬)#サラブレッドインフォメーションシステム他2002|サラブレッドインフォメーションシステム他2002、8頁。]]</ref><ref>{{Cite web |title=WORLD THOROUGHBRED RANKINGS |url=https://www.ifhaonline.org/resources/WTRRankings/LWBRR_PressRelease.asp?pid=27 |website=www.ifhaonline.org |access-date=2022-08-08 |publisher=[[国際競馬統括機関連盟|International Federation of Horseracing Authorities]] |date=2012-7-5}}</ref>。後続馬に差を詰められた2着馬エクセレブレーション、近走がやや低調だった3着馬サイドグランス(前年のレーティング115)の両馬は自己最高の走りを実現できなかったと見なされたため、当シーズンの始動戦で当時ドイツ最高マイラーのアリアンサスに半馬身差迫る走りを見せていた4着馬のインドミトがレーティング112に設定され、これを出発点にしてサイドグランスが114ポンド、エクセレブレーションが115ポンド、そしてフランケルが140ポンドと算出されたものである<ref name="Gardiner-Hill2012-6-26">{{Cite web |title=Tueday 26th June 2012 - FRANKEL'S ON THE UP|url=https://web.archive.org/web/20120703004230/http://www.bhb.co.uk/goracing/blogs/handicappers.asp |website=web.archive.org |date=2012-7-3 |access-date=2022-11-12 |last=Gardiner-Hill |first=Dominic}}</ref>。同レーティングを踏まえて、公式ハンデキャッパーのドミニク・ガーディナー=ヒルは、ダンシングブレーヴが勝利した1986年の凱旋門賞における出走馬の質の高さを引き合いに出し、凡走したエクセレブレーションを除けば多くが格下馬であったこのクイーンアンステークスの勝利をもって本馬が過去最高であると断定することはできないと述べた<ref name="Gardiner-Hill2012-6-26" />。しかしその後、歴代レーティングの見直しがあり、1977年から1991年までのレーティングが一律で引き下げられ、このうち、ダンシングブレーヴのいた1986年は3ポンドの引き下げとなったため、今日では公式のレーティングにおいても、フランケルが当時の同競走で歴代単独1位のパフォーマンスを示したことになっている<ref>『競馬ブック』2013年3月2・3日号p88-89</ref><ref name="goda201744" />。これらの査定は、各団体がその尺度において本馬を最も高い評価に位置づけ、いわば「史上最強馬」であると認めたものであった<ref name="Prosser201340" /><ref name="goda201744" />。

==== サセックスステークス ====
{{External media|width=300px|video1=[https://www.youtube.com/watch?v=j0rzAVY8DIM 2012年サセックスステークス Juddmonte]}}リンパ腫が進行していたセシルはインターナショナルステークスを最優先に治療のスケジュールを組み、7月頃から集中的な化学療法を受けることになったため、8月1日のサセックスステークスでは、本馬のデビュー以来初めて、管理調教師が競馬場に臨場せずに欠席する事態となった<ref name="Rushmer269">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、269頁。]]</ref><ref name="Rushmer272">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、272頁。]]</ref>。出走馬はわずか4頭立てとなり、本馬の単勝人気は1対20(1.05倍)という生涯最小のオッズを記録、エクリプスステークス2着馬のファーが対抗で11対1(12倍)となった<ref name="Rushmer273">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、273頁。]]</ref><ref name="Pennington175">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.175]]</ref>。

競走ではフランケルはブレットトレインの後ろを折り合いながら追走し、直線に入ると残り2ハロン余りでブレットトレインを交わした<ref name="Rushmer273" />。最後はこれまでと同様に右によれるところを見せながらも、2着ファーに対し手綱を控えながら6馬身差を付けて優勝<ref name="Rushmer273" /><ref name="Pennington169">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.169]]</ref><ref name="Pennington172">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.172]]</ref>。これによって史上初となる同競走の連覇を達成した<ref name="Pennington175" />。この単勝配当は、第二次世界大戦後の同競走では1959年の[[プチトエトワール]]の1対10を超える最少記録であった<ref name="Pennington168">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.168]]</ref>。

競走後のセシルによって、フランケルは10ハロン程度までの距離延長によってインターナショナルステークスに出走し、さらにチャンピオンステークスまたはクイーンエリザベス2世ステークスで現役を終えることが示唆された<ref name="Rushmer273" />。また予定された両競走の間隔が2か月と長いことから、グリムソープはこの間にフランスへ遠征して9月16日のムーラン・ド・ロンシャン賞を使う可能性を表明したが、セシルはこれの実現性について疑問を呈した<ref name="Rushmer273" /><ref name="Pennington168" /><ref name="Pennington173">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.173]]</ref>。

==== インターナショナルステークス ====
{{External media|width=300px|video1=[https://www.youtube.com/watch?v=Uh8StaAB4-c 2012年インターナショナルステークス Juddmonte]}}
[[ファイル:Frankel_at_York,_2013.jpg|サムネイル|インターナショナルステークス:発走前]]
サセックスステークスの連覇を果たしたことで、陣営は早い段階から4歳夏での参戦を予定していた中距離のインターナショナルステークスにフランケルを出走させた<ref name="Rushmer273" /><ref name="Rushmer271">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、271頁。]]</ref>。本馬がニューマーケット以北の競走に出走するのは2歳時ドンカスターの条件戦以来で<ref name="Pennington182">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.182]]</ref>、[[ITV (イギリス)|ITV]]の[[ヨークシャー]]区域の放送では主役として取り上げられ、またブリティッシュ・チャンピオンズシリーズの主催者によってコマーシャル映像が作られて宣伝された<ref name="Rushmer268">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、268頁。]]</ref>。この影響もあり、当日、ヨーク競馬場には、前年比50%以上増となる3万163人の観客が集まり、[[パドック]]に入ったフランケルには護衛の[[警察官|警官]]が2人つけられた<ref name="Prosser60" /><ref name="Rushmer268" />。

インターナショナルステークスでは、[[コロネーションカップ]]2回、[[ブリーダーズカップターフ]]{{Refnest|後にフェザーストンハウは、同競走におけるセントニコラスアビーの末脚を見て、「フランケルに勝つ馬が現れるとすれば、それはセントニコラスアビーだろうと思っていました」と認識していたと振り返っている<ref name="Rushmer284">[[#ラシュマー2020|ラシュマー2020、284頁。]]</ref><ref name="Rushmer285">[[#ラシュマー2020|ラシュマー2020、285頁。]]</ref>。|group=注}}などG1競走4勝の[[セントニコラスアビー]]<ref>{{Cite web |title=St Nicholas Abbey {{!}} Race Record & Form |url=https://www.racingpost.com/profile/horse/733779/st-nicholas-abbey/form |website=www.racingpost.com |access-date=2022-08-13 |publisher=[[レーシング・ポスト|Racing Post]]}}</ref>、サセックスステークス2着のファー、チャンピオンステークス2回、エクリプスステークスを勝利し、さらに同競走の連覇を懸けていた僚馬トゥワイスオーヴァーの3頭が対抗馬と目された<ref name="Pennington179" />。人気順は、フランケルがキャリア最長であった1マイルから500メートル近くの距離延長ながら1対10(1.1倍)と圧倒的な形勢となり、セントニコラスアビーが5対1(6倍)、ファーが10対1(11倍)、トゥワイスオーヴァーが12対1(13倍)、さらに前走のG2ヨークステークスを勝利したスリプトラが20対1(21倍)<ref>{{Cite web |title=Sri Putra {{!}} Race Record & Form |url=https://www.racingpost.com/profile/horse/705439/sri-putra/form |website=www.racingpost.com |access-date=2022-08-09 |publisher=[[レーシング・ポスト|Racing Post]]}}</ref>、[[ガネー賞]]勝ち馬プラントゥールが25対1(26倍)などで続いた<ref name="Rushmer287">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、287頁。]]</ref><ref name="Pennington187">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.187]]</ref>。モンガンはトゥワイスオーヴァーに騎乗し、ブレットトレインの鞍上は[[エディ・アハーン]]となった<ref name="Rushmer275">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、275頁。]]</ref>。この勢力図のうえで、同競走はブリガディアジェラードが[[ロベルト (競走馬)|ロベルト]]に唯一の敗北を喫した「チャンピオンの墓場」であることによっても注目された<ref name="Rushmer284" /><ref name="Pennington180">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.180]]</ref>。

発走すると、フランケルは出遅れ、<!-- 普段追い込みを見せるセントニコラスアビーのさらに後ろからというこれまでにない展開となった。(要出典) -->最後方の2頭に並ぶ形で折り合った<ref name="Rushmer288">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、288頁。]]</ref>。初めはブレットトレインが先頭に立ったが、ロビンフッドとウィンザーパレスが主張して前に行く展開となり、残り5ハロン地点でもフランケルは先頭ロビンフッドから1秒38遅れた7番手の位置にあった<ref name="Rushmer288" /><ref name="Pennington186">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.186]]</ref>。出走馬9頭が直線に入ると、フランケルは外ラチ側に寄せられ、残り3ハロン辺りで内側のセントニコラスアビーと併せ馬の態勢となった<ref name="Rushmer288" />。フランケルは残り2ハロン地点にさしかかると前方に進出し始め、馬場中央でセントニコラスアビー、トゥワイスオーヴァー、ファーなどが激しく追われるなか、本馬はその外ラチ側を馬なりのままで抜け出した<ref name="goda201744" /><ref name="Rushmer289" />。残り4ハロン地点から3回連続で1ハロン当たり12秒未満のラップタイムを記録したフランケルは、残り1ハロンで手綱を扱かれると馬体を沈め、さらにストライドを広げるという圧倒的な走りを見せ、上がり1ハロンを12秒1でまとめて最後は2着ファーと3着セントニコラスアビーの両馬に7馬身差を付けて優勝した<ref name="Rushmer289">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、289頁。]]</ref><ref name="Rushmer290">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、290頁。]]</ref><ref>{{Cite web |title=Juddmonte International Stakes 2020 Betting Tips and Trends by Simon Rowlands {{!}} York |url=https://www.timeform.com/horse-racing/features/rowley/rowleyfile-preview-juddmonte-international-1582020 |website=Timeform |date=2020-08-15 |access-date=2022-11-16 |language=en-GB |publisher=[[タイムフォーム|Timeform]]}}</ref>。勝ち時計の2分06秒59は標準タイムより0秒9速い結果であった<ref name="yushun201210164">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2012年10月号164-165|『優駿』2012年10月号、164頁。]]</ref>。これでデビューからの連勝は13、連続するG1競走8連勝を達成し、これまでロックオブジブラルタルが保持していたヨーロッパにおけるG1競走の連勝記録を更新した<ref name="yushun201210164" />。

競走後、ロイヤルアスコット開催以来競馬場に訪れていなかったセシルは[[チャンネル4]]のインタビューに対して「これで20歳若返ったよ」<ref name="yushun201210164" />と語り、また、フランスのムーラン・ド・ロンシャン賞に出走する可能性は低く、チャンピオンスステークスが現役最後の一戦となることを示唆した<ref name="Rushmer296">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、296頁。]]</ref><ref name="Pennington181" />。

ワールドサラブレッドランキングではこの圧勝が評価され、当該の7馬身差が16ポンド差に相当するという判断のもと、フランケルは中距離部門でもクイーンアンステークスでの圧勝と同等とされるレーティング140ポンドを得た{{Refnest|当時の21世紀に入ってからの同競走におけるレーティングとしては、[[サキー]](133)、シーザスターズ(129)、[[オーソライズド]](128)がこれに続く<ref name="Gardiner-Hill2017-08-312">{{Cite web |title=Handicappers Blog  Ebor Festival |url=https://www.britishhorseracing.com/handicappers-blog-ebor-festival/ |website=www.britishhorseracing.com/ |date=2017-08-31 |access-date=2022-11-12 |last=Gardiner-Hill |first=Dominic |publisher=[[英国競馬統括機構|British Horseracing Authority]] |archive-url=https://archive.ph/OuvV7 |archive-date=2022-11-12}}</ref>。|group=注}}<ref name="ootaetal201361">[[フランケル (競走馬)#大田他2013|大田他2013、61頁。]]</ref><ref>{{Cite web |title=Baaeed – the best since Frankel? |url=https://www.britishhorseracing.com/baaeed-the-best-since-frankel/ |website=The British Horseracing Authority |date=2022-08-23 |access-date=2022-11-12 |language=en-GB |first=The British Horseracing |last=Authority |publisher=[[英国競馬統括機構|British Horseracing Authority]] |archive-url=https://archive.ph/wip/aE1d5 |archive-date=2022-11-12}}</ref>。以下、ファーの2着に対してはエクリプスステークス2着と同等の124ポンド、セントニコラスアビーの3着に対してはコロネーションカップ1着と同等の124ポンドとする評価が行われている<ref name="ootaetal201360">[[フランケル (競走馬)#大田他2013|大田他2013、60頁。]]</ref>。レーシングポストレーティングによる評価は、クイーンアンステークスの勝利と同等とされる143ポンド<ref name="Racing Post" />。タイムフォームのレーティングによる評価は143ポンド<ref>{{Cite web |title=Juddmonte International Stakes winners |url=https://www.timeform.com/horse-racing/features/previews/juddmonte-international-stakes-the-three-best-winners-this-century-1782015 |website=Timeform |date=2015-08-17 |access-date=2022-11-16 |language=en-GB |publisher=[[タイムフォーム|Timeform]] |last=McFadden |first=Tony}}</ref>。また、タイムフォームのタイム指数は136となり、前年の2000ギニー勝利と並ぶ21世紀最速の評価となった<ref name="timeform2020-5-12" />。

==== チャンピオンステークス ====
{{External media|width=300px|video1=[https://www.youtube.com/watch?v=qD4cCfuCfVg 2012年チャンピオンステークス Juddmonte]}}
ヨークで勝利したフランケルの存在は、病魔に侵されながらも低迷期からの復活を果たした[[カリスマ]]的な調教師セシルの物語とともに、一般大衆の話題として受容されるまでになっていた<ref name="Rushmer327" /><ref name="Prosser58">[[フランケル (競走馬)#プロッサー2012|プロッサー2012、58頁。]]</ref>。

フランケルが500メートル近い距離延長を難なくこなしたことは、12ハロンの[[第91回凱旋門賞|凱旋門賞]]出走の憶測を呼び、ブックメーカーもこれに反応した{{Refnest|コーラル、ウィリアムヒルは1対4、ラドブロークス、ベット365は1対2を掲げた<ref name="Pennington181"/>。|group=注}}<ref name="yushun201210164" /><ref name="Pennington181">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.181]]</ref>。その後、公式に陣営が<!-- 英国平地競馬の一年の総決算 -->ブリティッシュ・チャンピオンズデーのチャンピオンステークスへの出走を表明し、この時点では未確定ながらこれが本馬の引退戦であると一般的に確実視されるようになると、同競走はイギリスにおける平地競馬としては最大級の注目を集めることになった<ref name="Rushmer299">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、299頁。]]</ref><ref name="Pennington191">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.191]]</ref>。<!--フランケルの引退レースに強力なライバルが集まったこともあり、(要出典)-->10月20日に競走が開催されるアスコット競馬場のプレミアエンクロージャーの入場券は9月3日時点で完売したという<ref name="yushun201210145">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2012年10月号145|『優駿』2012年10月号、145頁。]]</ref>

競走開催週は週間総雨量約1.5インチという降雨が続き、当日の馬場は「ところにより不良(Heavy)」という但し書きの付いた重馬場(Soft)となった<ref name="Rushmer301">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、301頁。]]</ref><ref name="Rushmer311">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、311頁。]]</ref>。この競走には、同年のガネー賞と[[ドラール賞]]を勝って当時の中距離部門世界2位であった[[シリュスデゼーグル]]、同じくエクリプスステークスを勝って中距離部門3位タイであったナサニエルが参戦し、10ハロンにも重馬場にも適正を持つ両頭が強敵となった<ref>{{Cite web |url=https://www.ifhaonline.org/resources/WTRRankings/LWBRR.asp?pid=30 |website=www.ifhaonline.org |access-date=2022-08-06 |title=The World Thoroughbred Rankings |publisher=[[国際競馬統括機関連盟|International Federation of Horseracing Authorities]] |date=2012-10-11}}</ref><ref name="Rushmer304"/>。特に前年のチャンピオンステークス優勝馬シリュスデゼーグルは重馬場巧者と定評があった<ref name="Rushmer302" />。一方でこの馬場は、フランケルにとっては辛勝を収めたデビュー戦の1回しか経験していなかったものであり、本馬の重馬場適正が注目された<ref name="Rushmer302" /><ref name="yushun201212164" />。セシルが馬場状態を理由に管理馬の出走を取り消すことのほとんどない調教師であるということもあり、グリムソープがアスコットの馬場管理責任者クリス・スティッケルスと相談して実際に馬場を歩いて確かめたことを決め手に、フランケルの出走は決定された<ref name="Rushmer311" />。人気順はフランケルが2対11(約1.18倍)という圧倒的な支持を受け、シリュスデゼーグルが9対2(5.5倍)、ナサニエルが9対1(10倍)となり、この後に[[ドイチェスダービー]]と[[バイエルンツフトレネン|ダルマイヤー大賞]]を連勝した3歳馬パストリアスが33対1(34倍)、同年の[[ジェベルハッタ]]勝ち馬マスターオブハウンズが80対1(81倍)で続いた<ref name="Rushmer315"/><ref name="Pennington205">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.205]]</ref><ref>{{Cite web|和書|title=ラストランに向かう無敗のフランケル |url=https://www.keibalab.jp/topics/14840/ |website=www.keibalab.jp |access-date=2022-08-13 |language=ja |publisher=競馬ラボ |author=和田栄司}}</ref>。


競走でフランケルは発走後もしばらくゲートに留まり、前走よりも程度の酷い約2馬身差の出遅れを見せたため、手綱を扱かれて前方馬群へと追い立てられた<ref name="Rushmer315">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、315頁。]]</ref><ref name="yushun201212164" />。競走前にセシルからムラの無いラップを刻むようにと指示を受けていたブレットトレイン鞍上のモンガンは、フランケルが想定外に出遅れたため、急遽一度控える作戦を取り、同馬が直後に付けられるところまで位置を下げた<ref name="Rushmer315" /><ref name="Rushmer316">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、316頁。]]</ref>。この結果、シリュスデゼーグルが先頭に立ち、徐々に進出したフランケルはナサニエルの背後となる4番手で落ち着いた<ref name="Rushmer316" />。中盤に入ると、フランケルの位置取りを確認したモンガンはブレットトレインを押して進出し、外のシリュスデゼーグルと内に入ったブレットトレインが2頭並んで馬群を先導する形となった<ref name="Rushmer316" />。シリュスデゼーグルがスムーズに直線に入り、ブレットトレインが後退をし始めた頃、外からウィリアム・ビュイックに追われたナサニエル、さらにその外から持ったままのフランケルも進出を開始した<ref name="Rushmer317">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、317頁。]]</ref>。フランケルは残り1ハロン地点でシリュスデゼーグルに並び掛けて先頭に立ち、さらに鞭を受けたが、シリュスデゼーグルも頑強に抵抗したため、その後も両馬は一杯に追われ続けた<ref name="Rushmer318">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、318頁。]]</ref><ref name="Rushmer319">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、319頁。]]</ref>。しかし決勝線が近づくにつれてフランケルのシリュスデゼーグルに対する優勢が示されていき、本馬が余裕を持って最終的に1馬身3/4差を2着馬との間に空けて優勝した<ref name="Pennington197">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.197]]</ref><ref name="Rushmer319" />。シリュスデゼーグルから2馬身1/2差遅れて3着に入ったのがナサニエルであり、以下も全く人気通りの着順となった<ref name="Pennington205" />。この際に実況アナウンサーのリチャード・ホイルスが発した「誰が相手でも、どんな馬場でも、彼は負けない!」(All comers, all grounds, all beaten!)<ref name="Powell20121026">{{Cite web |url=https://www.bloodhorse.com/horse-racing/articles/125454/handicapping-insights |website=www.bloodhorse.com |access-date=2022-08-02 |title=Handicapping Insights |last=Powell |first=Dick}}</ref>という実況は、この11か月後に行われた亡きセシルをしのぶ式典でも引用されている<ref name="Rushmer319" /><ref name="Rushmer320">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、320頁。]]</ref>。これでデビューからの連勝は14、連続するG1競走9連勝を達成<ref name="yushun201301164" />。これまでアメリカの[[ゼニヤッタ]]が単独で保持していたG1競走の連勝記録に並び、その後、2018年オーストラリアの[[ウィンクス (競走馬)|ウィンクス]]によって更新されるまでフランケルはこの世界タイ記録を保持することになる<ref name="yushun201301164" /><ref name="yushun20190253">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2019年2月号|『優駿』2019年2月号、53頁。]]</ref>。
そして次走の[[クイーンアンステークス]]で、フランケルはそのセシルの言葉を見事に証明してみせる。前走に続いて5度目の対戦となったエクセレブレーションに対し、今度は11馬身もの差をつけて優勝したのである。セシル、クウィリーが口を揃えて「これまでのベストパフォーマンス」<ref>{{Cite web|url= http://www.bloodhorse.com/horse-racing/articles/70659/undefeated-frankel-wins-queen-anne-by-11| title= Undefeated Frankel Wins Queen Anne by 11|publisher=BloodHorse.com|language=英語|accessdate=2012年6月24日}}</ref>と認めたこのレース振りに、タイムフォーム誌は歴代1位のシーバードを上回る147ポンドという評価を与えた<ref>{{Cite web|url=http://www.sportinglife.com/racing/news/article/2/7828365/timeform-frankel-best-ever|title=TIMEFORM: FRANKEL BEST EVER|publisher=sportinglife.com|language=英語|accessdate=2012年7月4日}}</ref>。公式レートは歴代1位の[[ダンシングブレーヴ]]に1ポンド差までせまる140ポンドとなった<ref>{{Cite web|url=http://www.sportinglife.com/racing/news/article/465/7833218/frankel-rating-pegged-at-140|title=FRANKEL RATING PEGGED AT 140|publisher=sportinglife.com|language=英語|accessdate=2012年7月4日}}</ref>が、後に歴代レーティングの見直しがあり、1977年から1991年までのレーティングが一律で引き下げられた。このうち、ダンシングブレーヴのいた1986年は3ポンドの引き下げとなり、その結果フランケルが歴代単独1位となった<ref>『競馬ブック』2013年3月2・3日号p88-89</ref>。また、エクセレブレーションとはこれが最後の対戦となったが、この後、エクセレブレーションは[[ジャック・ル・マロワ賞]]、クイーンエリザベス2世ステークスという英仏のマイルのG1を勝って2012年シーズンで引退した。


競走後、クウィリーは、「馬場を気にして、いつものように弾けなかったけど、滅多に使わないムチを1回入れたら、ギアを替えてくれました」と語った<ref name="yushun201212164">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2012年12月号164-165|『優駿』2012年12月号、164頁。]]</ref>。早い段階からフランケルの素質に気付いていながら、それを吹聴することは慎んでいたセシルも、本馬の現役引退が正式に決定されると「フランケルほどの馬はこれまで調教したことも見たこともない。今後これ以上の馬が現れるとしたら驚きだ」と評価している<ref name="Prosser58" /><ref name="yushun201212164" />。本馬の同競走優勝によるレーティングは135ポンド<ref name="Gardiner-Hill2016-10-20">{{Cite web |title=Champions all |url=https://www.britishhorseracing.com/champions-all/ |website=www.britishhorseracing.com/ |date=2016-10-20 |access-date=2022-11-12 |last=Gardiner-Hill |first=Dominic}}</ref>。以下、シリュスデゼーグルの2着に対してはガネー賞およびドラール賞の圧勝と同等の131ポンド、ナサニエルの3着に対してはこれまでの同シーズン3戦全てと同等の126ポンドとする評価が行われている<ref name="ootaetal201361" /><ref name="ootaetal201360" /><ref>{{Cite web |title=The Top Ranked Horses in the World |url=https://ifhaonline.org/resources/WTRRankings/LWBRR_PressRelease.asp?pid=31 |website=ifhaonline.org |access-date=2022-11-12 |publisher=[[国際競馬統括機関連盟|International Federation of Horseracing Authorities]]}}</ref>。
2年連続の出走となったサセックスステークスは、前年に続いて4頭立ての少頭数となった。有力な対戦相手は、重賞未勝利ながら前前走の[[プリンスオブウェールズステークス (イギリス)|プリンスオブウェールズステークス]]で[[ソーユーシンク]]の3着、前走のエクリプスステークスでナサニエルの2着と健闘した{{仮リンク|ファー (競走馬)|en|Farhh|label=ファー}}(翌2013年にロッキンジステークスとチャンピオンステークスのG1競走を2勝)のみで、レースではそのファーに対しわずかに追って6馬身差をつけ快勝した。これによって同レースの2連覇とデビューからの無敗の12連勝、連続するG1競走7連勝を達成した。


==== 現役引退 ====
サセックスステークスの連覇を果たしたことで、陣営は3歳時から予定を表明していた中距離の[[インターナショナルステークス]]にフランケルを出走させた。有力な相手と目されるのは、ここまでG1を4勝しているものの、うち3勝は12ハロンで中距離がベストとはいえない[[セントニコラスアビー]]と、前走で圧勝したファーの2頭という顔ぶれとなり、初の距離延長ながらここでも圧倒的な一番人気に支持された。レースでは、スタートで出遅れ、普段追い込みを見せるセントニコラスアビーのさらに後ろからというこれまでにない展開となった。しかし直線で他馬が一杯に追われる中クウィリーがほとんど手を動かすこともなくマークするかたちとなったセントニコラスアビーを交わし先頭に立つと、2着ファー以下に悠々と7馬身差をつける完勝を見せた。これでデビューからの連勝は13、連続するG1競走8連勝を達成した。
チャンピオンステークスより数週間前から、一般的に同競走がフランケルのラストランであると解されてたが、この件は馬主側から公式な声明によって発表されておらず、グリムソープも今後の去就については知らされていなかった<ref name="Rushmer322">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、322頁。]]</ref>。またセシルは、自身の病状が悪化しているなかでも、調教師の健康状態を理由にフランケルの引退を決定しないようにとグリムソープに懇願し、本馬の翌2013年での現役続行と、それに伴うキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス、凱旋門賞など12ハロン戦への参戦を望んでいた<ref name="goda2020">[[フランケル (競走馬)#合田2020|合田2020、122頁。]]</ref><ref name="Rushmer323">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、323頁。]]</ref><ref name="Cooper256">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.256]]</ref>。BBCによる最後の平地競馬中継となった番組{{Refnest|翌年以降の主要競馬開催の放映権を、新たにチャンネル4が獲得したため<ref name="Rushmer325"/>。|group=注}}で、リポーターのリッシ・パーサドが「殿下、彼は現役を続けるのか、それとも引退するのか、既にお決めになっていらっしゃいますか?」とアブドゥッラーに問うと、アブドゥッラーは一言「これで終わりです」と語り、その20秒後、パーサドによってフランケル引退の第一報が伝えられた<ref name="goda2020" /><ref name="Rushmer325">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、325頁。]]</ref>。なお、セシルはこの翌2013年の6月11日に死去することになる<ref name="Rushmer350">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、350頁。]]</ref>。


==== 最優秀古馬および年度代表馬 ====
陣営はフランケルの引退レースとして、英国平地競馬の一年の総決算となるブリティッシュチャンピオンズデーのメインレースとなる[[チャンピオンステークス]]への出走を表明した。このレースには、同年の公式レーティング中距離部門世界2位となる前年の優勝馬[[シリュスデゼーグル]]、同じく中距離部門3位で当年の[[エクリプスステークス]]を勝ち、デビュー戦以来の再戦となるナサニエルが参戦し、同1位のフランケルと三つ巴の構図となった。フランケルの引退レースに強力なライバルが集まったこともあり、レースが開催される[[アスコット競馬場]]の前売り券は早々に完売した。
フランケルは、全てイギリスの競走に出走し、4歳の8月までに7ハロン戦で3勝、8ハロン戦で9勝を挙げ、最後に10ハロン88ヤード戦と10ハロン戦を勝利した<ref name="yushun201301164" /><ref name="goda2020" />。最終的に、デビューから14戦無敗(うちG1競走は通算10勝、9連勝)という無傷の戦績で引退した<ref name="yushun201301164" />。タイムフォームは、イギリスにおいて2歳、3歳、4歳の3シーズン全てでチャンピオンとなったのはスプリンターの[[アバーナント]]以来のことであり、またこれほど記録的な無敗の平地競走馬は19世紀の16戦16勝馬[[オーモンド]]以来であったとしている<ref name="Timeform201317">[[#Timeform2013|Timeform2013, p.17]]</ref><ref name="Timeform201327">[[フランケル (競走馬)#Timeform2013|Timeform2013, p.27]]</ref>。また、同シーズンをG1競走の5戦5勝で終え、11月13日には、2012年度のカルティエ賞最優秀古馬、そして前年に続き年度代表馬に選出された<ref name="yushun201301164" />。種付け料は12万5000ポンドと発表され、種牡馬価値は1億2500万ポンドが見込まれた{{Refnest|イギリスの種牡馬価値は、「初年度交配料×年間交配100頭分×10年」で算出される<ref name="yushun201301164" />。|group=注}}<ref name="yushun201301164" />。
レース開催週は雨が続き、馬場はシリュスデゼーグルが大の得意とする重馬場となった。レースでは前走同様スタートでやや後手を踏み位置取りにやや手間取るところもあったが、陣営が用意したペースメーカーのアシストで流れを作ると直線では余裕のある手応えを見せ、シリュスデゼーグルに1馬身3/4を付け勝利した。


公式レーティングは、同年度末の会議では141という上方修正案も出されたが、最終的に中間発表と同一の値140ポンドで確定された<ref name="ootaetal201361" /><ref name="ootaetal201360" />。なお、140の大台に乗った首位のフランケルに続いて、チャンピオンステークス2着などで自己最高の評価を更新したシリュスデゼーグルが131ポンドで2位、フランケルの後塵を5度拝したエクセレブレーションが130ポンドで3位タイという内容となったが、130ポンド以上の評価を得た競走馬が4頭いるという同年の結果は、ワールドサラブレッドランキングの創設された2004年以来初めてのことであった<ref name="ootaetal201361" /><ref name="ifha2012" />。
フランケルはデビューから14戦無敗(うちGIは通算10勝、9連勝)という無傷の戦績で引退した。また、シーズンを5戦5勝で終え、前年に続き2012年度のカルティエ賞年度代表馬に選出された。


== 競走成績 ==
== 競走成績 ==
以下の内容は、[[英国競馬統括機構|BHA]]<ref>{{Cite web |title=Frankel (GB) |url=https://www.britishhorseracing.com/racing/horses/horse/#!/2013800 |website=The British Horseracing Authority |access-date=2022-04-27 |language=en-GB |publisher=[[英国競馬統括機構|British Horseracing Authority]]}}</ref>の情報に基づく。
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size: smaller;"
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size: smaller;"
!出走日!!競馬場!!競走名!!格!!頭数!!人気!!着順!!騎手!!斤量!!style="white-space: nowrap;"|距離(馬場)!!タイム!!着差!!1着(2着)馬
!出走日!!競馬場!!競走名!!格!!頭数!!オッズ(人気!!着順!!騎手!!斤量!! style="white-space: nowrap;" |距離(馬場)!!タイム
! colspan="2" |着差!!1着(2着)馬
|-
|-
|[[2010年|2010]].{{0}}8.13||style="white-space: nowrap;"|[[ニューマーケット競馬場|ニューマーケット]]||メイドン||||12||style="white-space: nowrap;"|1人||style="white-space: nowrap;"|{{color|darkred|1着}}||style="white-space: nowrap;"|[[トム・クウィリー|T.クウィリー]]||129[[ポンド (質量)|lb]]||style="white-space: nowrap;"|芝8[[ハロン (単位)|f]] (Sft) ||1:43.69||1/2馬身|| ([[ナサニエル (競走馬)|Nathaniel]])
|[[2010年|2010]].[[8月13日|{{0}}8.13]]|| style="white-space: nowrap;" |[[ニューマーケット競馬場|ニューマーケット]]||メイドン|| ||12|| style="white-space: nowrap;" |2.75(1|| style="white-space: nowrap;" |{{color|darkred|1着}}|| style="white-space: nowrap;" |[[トム・クウィリー|T.クウィリー]]||129[[ポンド (質量)|lb]]|| style="white-space: nowrap;" |芝8[[ハロン (単位)|f]] (Sft) ||{{0}}1:43.69
| -0.07[[秒|s]]||1/2馬身|| ([[ナサニエル (競走馬)|Nathaniel]])
|-
|-
|{{0|0000.}}{{0}}9.10||[[ドンカスター競馬場|ドンカスター]]||条件戦||||3||1人||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||128lb||芝7f (Gd) ||1:24.83||13馬身|| (Rainbow Springs)
|{{0|0000.}}[[9月10日|{{0}}9.10]]||[[ドンカスター競馬場|ドンカスター]]||条件戦|| ||3||1.5{{0}}(1||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||128lb||芝7f (Gd) ||{{0}}1:24.83
| -2.18s||13馬身|| (Rainbow Springs)
|-
|-
|{{0|0000.}}{{0}}9.25||[[アスコット競馬場|アスコット]]||ロイヤルロッジS||{{G2}}||5||1人||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||124lb||style="white-space: nowrap;"|芝8f (GS) ||1:41.73||10馬身|| (Klammer)
|{{0|0000.}}[[9月25日|{{0}}9.25]]||[[アスコット競馬場|アスコット]]||ロイヤルロッジS||{{G2}}||5||1.3{{0}}(1||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||124lb|| style="white-space: nowrap;" |芝8f (GS) ||{{0}}1:41.73
| -1.76s||10馬身|| (Klammer)
|-
|-
|{{0|0000.}}10.16||ニューマーケット||[[デューハーストステークス|デューハーストS]]||{{G1}}||6||1人||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||127lb||芝7f (GS) ||1:25.73||style="white-space: nowrap;"|2 1/4馬身||style="white-space: nowrap;"|([[ロデリックオコナー (競走馬)|Roderic O'Connor]])
|{{0|0000.}}[[10月16日|10.16]]||ニューマーケット||[[デューハーストステークス|デューハーストS]]||{{G1}}||6||1.67(1||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||127lb||芝7f (GS) ||{{0}}1:25.73
| -0.43s|| style="white-space: nowrap;" |2 1/4馬身|| style="white-space: nowrap;" |([[ロデリックオコナー (競走馬)|Roderic O'Connor]])
|-
|-
|[[2011年|2011]].{{0}}4.16||[[ニューベリー競馬場|ニューベリー]]||グリーナムS||{{G3}}||6||1人||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||126lb||芝7f (GF) ||1:24.60||4馬身|| ([[エクセレブレーション|Excelebration]])
|[[2011年|2011]].{{0}}[[4月16日|4.16]]||[[ニューベリー競馬場|ニューベリー]]||[[グリーナムステークス|グリーナムS]]||{{G3}}||6||1.25(1||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||126lb||芝7f (GF) ||{{0}}1:24.60
| -0.65s||4馬身|| ([[エクセレブレーション|Excelebration]])
|-
|-
|{{0|0000.}}{{0}}4.30||ニューマーケット||[[2000ギニー]]||{{G1}}||13||1人||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||126lb||芝8f (GF) ||1:37.30||6馬身|| (Dubawi Gold)
|{{0|0000.}}{{0}}[[4月30日|4.30]]||ニューマーケット||[[2000ギニー]]||{{G1}}||13||1.5{{0}}(1||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||126lb||芝8f (GF) ||{{0}}1:37.30
| -0.94s||6馬身|| (Dubawi Gold)
|-
|-
|{{0|0000.}}{{0}}6.14||アスコット||style="white-space: nowrap;"|[[セントジェームズパレスステークス|セントジェームズパレスS]]||{{G1}}||9||1人||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||126lb||芝8f (Gd) ||1:39.24||3/4馬身|| (Zoffany)
|{{0|0000.}}{{0}}[[6月14日|6.14]]||アスコット|| style="white-space: nowrap;" |[[セントジェームズパレスステークス|セントジェームズパレスS]]||{{G1}}||9||1.3{{0}}(1||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||126lb||芝8f (Gd) ||{{0}}1:39.24
| -0.15s||3/4馬身|| ([[ゾファニー (アイルランドの競走馬)|Zoffany]])
|-
|-
|{{0|0000.}}{{0}}7.27||[[グッドウッド競馬場|グッドウッド]]|| [[サセックスステークス|サセックスS]]||{{G1}}||4||1人||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||125lb||芝8f (Gd) ||1:37.47||5馬身|| ([[キャンフォードクリフス|Canford Cliffs]])
|[[7月27日|{{0|0000.}}{{0}}7.27]]||[[グッドウッド競馬場|グッドウッド]]|| [[サセックスステークス|サセックスS]]||{{G1}}||4||1.62(1||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||125lb||芝8f (Gd) ||{{0}}1:37.47
| -0.84s||5馬身|| ([[キャンフォードクリフス|Canford Cliffs]])
|-
|-
|{{0|0000.}}10.15||アスコット||[[クイーンエリザベス2世ステークス|クイーンエリザベス2世S]]||{{G1}}||8||1人||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||126lb||芝8f (Gd) ||1:39.45||4馬身|| (Excelebration)
|{{0|0000.}}[[10.19|10.15]]||アスコット||[[クイーンエリザベス2世ステークス|クイーンエリザベス2世S]]||{{G1}}||8||1.36(1||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||126lb||芝8f (Gd) ||{{0}}1:39.45
| -0.71s||4馬身|| (Excelebration)
|-
|-
|[[2012年|2012]].{{0}}5.19||ニューベリー||[[ロッキンジステークス|ロッキンジS]]||{{G1}}||6||1人||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||126lb||芝8f (Gd) ||1:38.14||5馬身|| (Excelebration)
|[[2012年|2012]].{{0}}[[5月19日|5.19]]||ニューベリー||[[ロッキンジステークス|ロッキンジS]]||{{G1}}||6||1.29(1||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||126lb||芝8f (Gd) ||{{0}}1:38.14
| -0.86s||5馬身|| (Excelebration)
|-
|-
|{{0|0000.}}{{0}}6.19||アスコット||[[クイーンアンステークス|クイーンアンS]]||{{G1}}||11||1人||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||126lb||芝8f (GS) ||1:37.85||11馬身|| (Excelebration)
|{{0|0000.}}{{0}}[[6月19日|6.19]]||アスコット||[[クイーンアンステークス|クイーンアンS]]||{{G1}}||11||1.1{{0}}(1||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||126lb||芝8f (GS) ||{{0}}1:37.85
| -1.92s||11馬身|| (Excelebration)
|-
|-
|{{0|0000.}}{{0}}8.{{0}}1||グッドウッド||サセックスS||{{G1}}||4||1人||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||133lb||芝8f (Gd) ||1:37.56||6馬身|| ([[ファー (競走馬)|Farhh]])
|{{0|0000.}}{{0}}[[8月1日|8.{{0}}1]]||グッドウッド||サセックスS||{{G1}}||4||1.05(1||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||133lb||芝8f (Gd) ||{{0}}1:37.56
| -1.08s||6馬身|| ([[ファー (競走馬)|Farhh]])
|-
|-
|{{0|0000.}}{{0}}8.22||[[ヨーク競馬場|ヨーク]]||[[インターナショナルステークス|インターナショナルS]]||{{G1}}||9||1人||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||131lb|| style="white-space: nowrap;"|芝10f88[[ヤード|y]] (GF) ||2:06.59||7馬身|| (Farhh)
|{{0|0000.}}[[8月22日|{{0}}8.22]]||[[ヨーク競馬場|ヨーク]]||[[インターナショナルステークス|インターナショナルS]]||{{G1}}||9||1.1{{0}}(1||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||131lb|| style="white-space: nowrap;" |芝10f88[[ヤード|y]] (GF) ||{{0}}2:06.59
| -1.14s||7馬身|| (Farhh)
|-
|-
|{{0|0000.}}10.20||アスコット||[[チャンピオンステークス|チャンピオンS]]||{{G1}}||6||1人||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||129lb||芝10f (Sft) ||2:10.22||1 3/4馬身|| ([[シリュスデゼーグル|Cirrus des Aigles]])
|[[10月20日|{{0|0000.}}10.20]]||アスコット||[[チャンピオンステークス|チャンピオンS]]||{{G1}}||6||1.18(1||{{color|darkred|1着}}||T.クウィリー||129lb||芝10f (Sft) ||{{0}}2:10.22
| -0.28s||1 3/4馬身|| ([[シリュスデゼーグル|Cirrus des Aigles]])
|}
|}
*[[馬場状態]]:GF=Good to Firm(良)、Gd=Good(良)、GS=Good to Soft(稍重)、Sft=Soft(重)<ref>{{Cite web|和書|title=イギリス競馬のルール:イギリス競馬 各国の競馬 海外競馬発売 JRA#馬場状態 |url=https://jra.jp/keiba/overseas/country/gbr/rule.html#r8 |website=jra.jp |access-date=2022-04-27 |archive-url=https://archive.ph/wip/kU2HS |archive-date=2022-4-27}}</ref>
*馬場状態: GF=Good to Firm, Gd=Good, GS=Good to Soft, Sft=Soft
* lb:[[ポンド (質量)|ポンド]](≒0.4536 kg)、f:[[ハロン (単位)|ハロン]](≒201.2 m)


== 種牡馬時代 ==
== 種牡馬時代 ==
[[2013年]]からフランケルは、イギリス・サフォーク州・ニューマーケット郊外の[[バンステッドマナースタッド]]で種牡馬として繋養された。初年度の種付け料は12万5000ポンド(発表当時のレートで約1600万円)と設定された。現役時代に引き続きフランケルを所有するジュドモントの「高い種付け料を支払った生産者にとって、競走馬市場にフランケル産駒が多く流れるのは好ましくない」との考えから、フランケルに初年度に配合される牝馬の数は、21世紀の軽種馬生産では決して多いとはいえない130頭に設定された<ref>[http://www.jairs.jp/contents/newsprot/2012/53/1.html 供用1年目のフランケルの種付頭数は130頭] ジャパンスタッドブックインターナショナル海外競馬ニュース 2012年11月23日 2014年10月19日閲覧</ref>が、そのうちG1優勝馬が38頭、G1優勝馬の母馬が26頭を占めた(双方にあてはまる牝馬が2頭いる)。G1優勝馬の中には[[アレクサンダーゴールドラン]]、[[ダーレミ]]、[[デインドリーム]]、[[フィンシャルベオ]]、[[ミッデイ]]、[[スタセリタ]]、[[ザゴラ]]などが含まれる。最終的には133頭の牝馬に種付けして126頭の受胎が確認され、不受胎馬7頭のうち6頭も受胎後の胎児死亡が確認されたことで、種牡馬としての高い受胎成功率を示した<ref>[http://www.jairs.jp/contents/newsprot/2013/31/1.html フランケル、初供用で高い受胎率を示す] ジャパンスタッドブックインターナショナル海外競馬ニュース 2013年8月1日 2014年10月19日閲覧</ref>。ジュドモント自らが保有する繁殖牝馬への種付けは24頭となり、残り109頭は外部の繁殖牝馬への種付けとなった。北米からも[[ゼニヤッタ]]の半姉バランスなど複数のG1優勝牝馬やG1馬の母馬が種付けのために大西洋を渡り<ref>[http://www.jairs.jp/contents/newsprot/2013/12/1.html 米国で、種牡馬としてのフランケルに幅広い人気] ジャパンスタッドブックインターナショナル海外競馬ニュース 2013年3月21日 2016年8月2日閲覧</ref>、また、秋にも南半球から来た繁殖牝馬21頭に限定的に種付けを行った<ref>[http://www.jairs.jp/contents/newsprot/2015/50/3.html 南半球で初めてフランケル産駒が上場される] ジャパンスタッドブックインターナショナル海外競馬ニュース 2015年12月17日 2016年8月1日閲覧</ref>。2014年シーズンの種付け料も2013年と同じ12万5000ポンドの設定となった<ref>[http://www.jairs.jp/contents/newsprot/2013/52/1.html フランケルの種付料、2014年も変わらず] ジャパンスタッドブックインターナショナル海外競馬ニュース 2013年12月26日 2014年10月19日閲覧</ref>。


=== 産駒デビューまで(2013年 - 2015年) ===
初年度産駒は2016年にデビューし高い勝ち上がり率を見せて順調なスタートを切ると、日本で誕生した母スタセリタの[[ソウルスターリング]]が[[阪神ジュベナイルフィリーズ]]を制して産駒の初G1勝利を上げた。初年度産駒が一定の実績を収めた後の供用5年目となる2017年シーズンの種付け料も、従来と変わらず12万5000ポンドの設定となった<ref>[http://www.jairs.jp/contents/newsprot/2016/47/2.html フランケルの種付料、来年も12万5000ポンド] ジャパンスタッドブックインターナショナル海外競馬ニュース 2016年11月24日 2016年12月13日閲覧</ref>。初年度産駒は3歳になっても好成績をあげ、産駒の2シーズン目終了時には勝ち上がり43頭でうち31頭がステークス競走に勝利した。この実績から2018年の種付け料は17万5000ポンド(2018年のレートで約2600万円)に引き上げられた<ref>[http://www.jairs.jp/contents/w_news/2017/11/4.html フランケル、驚異的な成績で種付料上昇]ジャパンスタッドブックインターナショナル海外競馬ニュース 2017
年11月20日 2018年2月13日閲覧</ref>。


==== 2013年 ====
2020年9月にカラハラがフランスのG3ダレンベルグ賞を勝ったことで、「[[競馬の競走格付け#グループ制|グループ制]]の導入以降史上最速での産駒の重賞40勝」を達成した<ref>[https://www.thoroughbredracing.com/articles/frankel-remarkable-success-story-just-keeps-reading-better-and-better/ Frankel: The remarkable success story just keeps reading better and better] Thoroughbred Racing Commentary 2020年10月27日 2021年5月25日閲覧</ref>。2021年9月に[[インスパイラル]]がイギリスのG2メイヒルステークスを勝ったことで、「欧州に拠点を置く種牡馬として史上最速の北半球産産駒の重賞50勝」を達成した<ref>[https://stallions.juddmonte.com/post/frankels-50th-group-winner-favourite-for-1000-guineas Frankel's 50th Group winner favourite for 1000 Guineas] Juddmonte 2021年9月10日 2021年10月4日閲覧</ref>。
[[2013年]]からフランケルは、イギリス・サフォーク州・ニューマーケット郊外の[[バンステッドマナースタッド]]で種牡馬として繋養された。初年度の種付け料は12万5000ポンド(発表当時のレートで約1600万円)と設定された。現役時代に引き続きフランケルを所有するジャドモントの「高い種付け料を支払った生産者にとって、競走馬市場にフランケル産駒が多く流れるのは好ましくない」との考えから、フランケルに初年度に配合される牝馬の数は、21世紀の軽種馬生産では決して多いとはいえない130頭に設定された<ref>[http://www.jairs.jp/contents/newsprot/2012/53/1.html 供用1年目のフランケルの種付頭数は130頭] ジャパンスタッドブックインターナショナル海外競馬ニュース 2012年11月23日 2014年10月19日閲覧</ref>が、そのうちG1優勝馬が38頭、G1優勝馬の母馬が26頭を占めた(双方にあてはまる牝馬が2頭いる)。G1優勝馬の中には[[アレクサンダーゴールドラン]]、[[ダーレミ]]、[[デインドリーム]]、[[フィンシャルベオ]]、[[ミッデイ]]、[[スタセリタ]]、[[ザゴラ]]などが含まれる<ref>{{Cite web|和書|title=フランケルの供用1年目と2年目の統計(イギリス)【生産】 |url=https://www.jairs.jp/contents/w_news/2014/7/5.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |access-date=2022-05-01}}</ref>。最終的には133頭の牝馬に種付けして126頭の受胎が確認され、不受胎馬7頭のうち6頭も受胎後の胎児死亡が確認されたことで、種牡馬としての高い受胎成功率を示した<ref>[http://www.jairs.jp/contents/newsprot/2013/31/1.html フランケル、初供用で高い受胎率を示す] ジャパンスタッドブックインターナショナル海外競馬ニュース 2013年8月1日 2014年10月19日閲覧</ref>。ジャドモント自らが保有する繁殖牝馬への種付けは24頭となり、残り109頭は外部の繁殖牝馬への種付けとなった。北米からも[[ゼニヤッタ]]の半姉バランスなど複数のG1優勝牝馬やG1馬の母馬が種付けのために大西洋を渡り<ref>[http://www.jairs.jp/contents/newsprot/2013/12/1.html 米国で、種牡馬としてのフランケルに幅広い人気] ジャパンスタッドブックインターナショナル海外競馬ニュース 2013年3月21日 2016年8月2日閲覧</ref>、また、秋にも南半球から来た繁殖牝馬21頭に限定的に種付けを行った<ref>[http://www.jairs.jp/contents/newsprot/2015/50/3.html 南半球で初めてフランケル産駒が上場される] ジャパンスタッドブックインターナショナル海外競馬ニュース 2015年12月17日 2016年8月1日閲覧</ref>。


==== 2014年 - 2016年 ====
2021年には[[アダイヤー]]([[ダービーステークス]]、[[キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス]])、[[ハリケーンレーン]]([[アイリッシュダービー]]、[[パリ大賞典]]、[[セントレジャーステークス]])の両馬を筆頭に欧米各国で年齢、性別・距離を問わない複数の活躍馬が現れ、同年に死亡した父ガリレオの有力後継馬としての地位を高めた。産駒がデビューして6年目となるこの年、初めて英愛リーディングサイアーの座に就いている<ref>{{Cite web|title=【コラム】フランケル&ガンランナーの年 今年の欧米生産界を振り返る|極ウマ・プレミアム|url=https://p.nikkansports.com/goku-uma/news/article.zpl?topic_id=1&id=202112220000132&year=2021&month=12&day=22|website=p.nikkansports.com|accessdate=2021-12-22|language=ja}}</ref>。英国に繋養されている種牡馬が英愛リーディングサイアーとなるのは、[[ミルリーフ]]以来34年ぶりである。また、賞金額ベースでの欧州リーディングサイアーにも輝いた。これによって2022年の種付け料は20万ポンド(2021年のレートで約3100万円)に増額されることになった<ref>{{Cite web|title=ジャドモントのエース種牡馬フランケル、来年種付け料は3000万円超え|url=https://world.jra-van.jp/news/N0010004/|website=JRA-VAN ver.World|accessdate=2021-11-09|language=ja}}</ref>。
初年度産駒が生まれた当初は、フランケル産駒は馬産地において「ばらつきがある」という評判を与えられた<ref name="goda201745">[[#合田2017|合田2017、45頁。]]</ref>。しかし初年度産駒が1歳を迎えると筋骨隆々の父親に似る仔も多く現れ、2015年秋のイギリスおよびアイルランドの1歳市場では、11頭の同産駒が平均価格48万6914ギニーという高値で購買された<ref name="goda201745" />。2014年以後も種付け料は12万5000ポンドに維持された<ref>[http://www.jairs.jp/contents/newsprot/2013/52/1.html フランケルの種付料、2014年も変わらず] ジャパンスタッドブックインターナショナル海外競馬ニュース 2013年12月26日 2014年10月19日閲覧</ref><ref name=":0" />。本格的な調教を迎えた初年度産駒は、各所から「仕上げに時間がかかりそうだ」という指摘がなされた<ref name="goda201745" />。


=== 主な産駒 ===
=== 産駒デビュー後(2016年 - ) ===

==== 2016年 ====
初年度産駒は2016年にデビューすると、イギリス・アイルランドのみでも、デビューした28頭のうち15頭が勝ち上がって通算22勝という高い勝ち上がり率を見せた<ref name="goda201745" />。イギリスで2頭、フランスで2頭、日本で2頭が重賞を勝つという順調なスタートを切り、とりわけ日本で誕生した母スタセリタの[[ソウルスターリング]]は[[阪神ジュベナイルフィリーズ]]を制して産駒の初G1勝利を挙げ、[[JRA賞最優秀2歳牝馬]]に選出された<ref name="tsuji2017163"/><ref name="yushun20170293">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2017年2月号|『優駿』2017年2月号、93頁。]]</ref>。初年度産駒が一定の実績を収めた後の供用5年目となる2017年シーズンの種付け料も、従来と変わらず12万5000ポンドの設定となった<ref name=":0">[http://www.jairs.jp/contents/newsprot/2016/47/2.html フランケルの種付料、来年も12万5000ポンド] ジャパンスタッドブックインターナショナル海外競馬ニュース 2016年11月24日 2016年12月13日閲覧</ref>。

==== 2017年 ====
翌2017年には、日本のソウルスターリングが引き続き[[優駿牝馬]]を勝利して同年の[[JRA賞最優秀3歳牝馬]]に選ばれることになる活躍を見せると、ヨーロッパでも[[クラックスマン]]が[[ダービーステークス|ダービー]]3着、[[アイリッシュダービー]]2着など好走<ref name="yushun20170797">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2017年7月号|『優駿』2017年7月号、97頁。]]</ref><ref name="kato2018354">[[フランケル (競走馬)#加藤2018|加藤2018、354頁。]]</ref><ref name="yushun20180229">[[#『優駿』2018年2月号|『優駿』2018年2月号、29頁。]]</ref>。シーズン終盤に入るとクラックスマンが[[チャンピオンステークス]]を同年のヨーロッパ最高かつ世界3位の評価となる7馬身差の圧勝によって制し、重賞3連勝で産駒のヨーロッパG1初勝利を挙げて[[カルティエ賞]]最優秀3歳牡馬に選出されるなど、初年度産駒は3歳になっても好成績を挙げ、産駒の2シーズン目終了時には勝ち上がり43頭でうち31頭がステークス競走に勝利し、イギリス・アイルランドの種牡馬ランキングではガリレオ、[[ダークエンジェル (競走馬)|ダークエンジェル]]、[[ドバウィ]]に続く4位という好成績を残した<ref name="okuno2018318">[[フランケル (競走馬)#奥野2018|奥野2018、318頁。]]</ref><ref name="kato2018354" /><ref>{{Cite web|和書|title=フランケル、驚異的な成績で種付料上昇(イギリス)【生産】 |url=https://www.jairs.jp/contents/w_news/2017/11/4.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |access-date=2022-04-28}}</ref>。この実績から2018年の種付け料は17万5000ポンド<!-- (2018年のレートで約2600万円)(要出典) -->に引き上げられた<ref name="kato20183542">[[フランケル (競走馬)#加藤2018|加藤2018、354頁。]]</ref>。

==== 2018年 ====
2018年にはクラックスマンがヨーロッパ古馬中距離戦線の主軸を担い、[[ガネー賞]]と[[コロネーションカップ]]を制し、さらにチャンピオンステークスを6馬身差の圧勝で連覇するという成績を残し、同年世界1位の評価を得て種牡馬入りした<ref name="okuno2019316">[[フランケル (競走馬)#奥野2019|奥野2019、316頁。]]</ref><ref>{{Cite web|和書|title=クラックスマン、英チャンピオンSを6馬身差で圧勝して引退(イギリス)[その他] |url=https://www.jairs.jp/contents/newsprot/2018/41/2.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |access-date=2022-08-03}}</ref>。さらに日本でも、同国における初年度産駒10頭の中からソウルスターリングに続いて[[モズアスコット]]が台頭、[[安田記念]]を優勝し、世界で3頭目かつ日本で2頭目となる産駒のG1馬となった<ref name="yushun20180897">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2018年8月号|『優駿』2018年8月号、97頁。]]</ref><ref>{{Cite web|和書|title=モズアスコットが安田記念を制しG1優勝のフランケル産駒は3頭に(日本)[生産] |url=https://www.jairs.jp/contents/newsprot/2018/21/3.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |access-date=2022-08-03}}</ref>。このほかイギリス・アイルランドでは、{{仮リンク|ウィズアウトパロール|en|Without Parole}}が[[セントジェームズパレスステークス]]を制するなどして[[ロイヤルアスコット開催]]のトップサイアーとなり、また同地域の種牡馬ランキングではガリレオ、ドバウィに続く第3位の地位に就いた<ref>{{Cite web|和書|title=フランケル、ロイヤルアスコット開催のトップサイアーとなる(イギリス)[生産] |url=https://www.jairs.jp/contents/newsprot/2018/24/3.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |access-date=2022-08-03}}</ref><ref name="yushun201902117">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2019年2月号|『優駿』2019年2月号、117頁。]]</ref>。またフランスでもコールザウィンドが4000メートルの長距離G1競走[[カドラン賞]]を制し、ヨーロッパで3頭目のG1馬となった<ref name="goda2020" /><ref name="kato2019356">[[フランケル (競走馬)#加藤2019|加藤2019、356頁。]]</ref>。

==== 2019年 ====
2019年には[[イギリスクラシック三冠|イギリスクラシック]]競走の勝ち馬も現れ、初めに[[アナプルナ]]が[[オークスステークス]]を制し<ref>{{Cite web|和書|title=アナプルナがフランケル産駒として英クラシック競走を初制覇(イギリス)[生産] |url=https://www.jairs.jp/contents/newsprot/2019/21/3.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |access-date=2022-04-28}}</ref>、さらに[[ロジシャン]]が[[セントレジャーステークス]]をコースレコードで勝利した<ref name="jairs20191121">{{Cite web|和書|title=初年度産駒が大活躍のキングマンの種付料が大幅引上げ(イギリス)【生産】 |url=https://www.jairs.jp/contents/w_news/2019/11/5.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |access-date=2022-04-28}}</ref>。[[クアドリラテラル]]はデビューから3連勝で[[フィリーズマイル]]を制し、カルティエ賞最優秀2歳牝馬に選出<ref name="yushun20200197">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2020年1月号|『優駿』2020年1月号、97頁。]]</ref>。G1競走優勝馬を5頭送り出し、イギリス・アイルランドの種牡馬ランキングでもガリレオ、[[シーザスターズ]]、[[シャマルダル|シャマーダル]]に続く第4位に付けた<ref name="jairs20191121" /><ref name="yushun20202102">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2020年2月号|『優駿』2020年2月号、102頁。]]</ref>。

==== 2020年 ====
2020年には、日本でモズアスコットが[[ダート]]競走2連勝で[[フェブラリーステークス]]を制し、同産駒としては初めての[[ダートグレード競走]]優勝、また同国調教馬として史上初となる芝とダートの国際{{GI}}競走両制覇を達成<ref name="yushun202004113">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2020年4月号|『優駿』2020年4月号、113頁。]]</ref>。同年9月にはカラハラがフランスのG3ダレンベルグ賞を勝ったことで、「[[競馬の競走格付け#グループ制|グループ制]]の導入以降史上最速での産駒の重賞40勝」を達成した<ref>[https://www.thoroughbredracing.com/articles/frankel-remarkable-success-story-just-keeps-reading-better-and-better/ Frankel: The remarkable success story just keeps reading better and better] Thoroughbred Racing Commentary 2020年10月27日 2021年5月25日閲覧</ref>。イギリス・アイルランドの種牡馬ランキングでは、G1競走制覇を欠いて第12位まで後退したが、同年にデビューした2歳産駒は同地域で19頭勝ち上がり、2歳産駒勝利数の自己最多を更新<ref name="jaris20210122">{{Cite web|和書|title=2021年はフランケルの優良産駒が活躍しそうな年(イギリス)【生産】 |url=https://www.jairs.jp/contents/w_news/2021/1/3.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |access-date=2022-08-08}}</ref>、12月には日本の[[グレナディアガーズ (競走馬)|グレナディアガーズ]]が[[朝日杯フューチュリティステークス]]をレースレコードで勝利し、翌年クラシック世代の「当たり年」の先鞭をつけた<ref name="yushunbib202102162">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2021年2月号|『優駿 Book in Book』2021年2月号、16頁。]]</ref><ref name="yushun2022021132">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2022年2月号|『優駿』2022年2月号、113頁。]]</ref>。

==== 2021年 ====
2021年には[[アダイヤー]](ダービーステークス、[[キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス]])、[[ハリケーンレーン]](アイリッシュダービー、[[パリ大賞典]]、セントレジャーステークス)の両馬を筆頭に欧米各国で年齢、性別・距離を問わない複数の活躍馬{{Refnest|ダービー馬2頭・オークス馬1頭・2歳G1馬3頭<ref name="jairs20211111"/>。北半球のほか、母父デインヒルの血統を背景に([[#血統背景]]を参照)、早熟スプリンターを重視する南半球でも人気を博した<ref>{{Cite web|和書|title=南半球の生産者の間でフランケルが大人気(オーストラリア)【生産】 |url=https://www.jairs.jp/contents/w_news/2021/8/3.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |access-date=2022-04-28}}</ref>。|group=注}}が現れ、同年に死亡した父ガリレオの有力後継馬としての地位を高めた<ref name="jairs20211111">{{Cite web|和書|title=フランケルの種付料が20万ポンドに到達(イギリス)[生産] |url=https://www.jairs.jp/contents/newsprot/2021/42/4.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |access-date=2022-04-28}}</ref><ref name="kato2022332">[[フランケル (競走馬)#加藤2022|加藤2022、332頁。]]</ref>。同年9月に[[インスパイラル]]がイギリスのG2メイヒルステークスを勝ったことで、「ヨーロッパに拠点を置く種牡馬として史上最速の北半球産産駒の重賞50勝」を達成<ref>[https://stallions.juddmonte.com/post/frankels-50th-group-winner-favourite-for-1000-guineas Frankel's 50th Group winner favourite for 1000 Guineas] Juddmonte 2021年9月10日 2021年10月4日閲覧</ref>、同馬はさらにフィリーズマイルを制してカルティエ賞最優秀2歳牝馬に選出された<ref name="okuno2022293">[[フランケル (競走馬)#奥野2022|奥野2022、293頁。]]</ref>。イギリス・アイルランドの種牡馬ランキングでも、これまではガリレオなどに引けを取る成績であったが、産駒がデビューして6年目となるこの年、前年のガリレオと同水準の賞金526万ポンド余りを収得し、初めてリーディングサイアーの座に就いている<ref name="kato2022332" />。英国に繋養されている種牡馬が英愛リーディングサイアーとなるのは、[[ミルリーフ]]以来34年ぶりであり、また、フランスでもリーディング第5位に入るなどして、賞金額ベースでのヨーロッパリーディングサイアーにも輝いた<ref name="Juddmonte Stallion" /><ref name="yushun202202108">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2022年2月号|『優駿』2022年2月号、108頁。]]</ref>。これによって2022年の種付け料は20万ポンド(2021年のレートで約3100万円)に増額されることになった<ref>{{Cite web|和書|title=ジャドモントのエース種牡馬フランケル、来年種付け料は3000万円超え|url=https://world.jra-van.jp/news/N0010004/|website=JRA-VAN ver.World|accessdate=2021-11-09|language=ja}}</ref>。

==== 2022年 ====
2022年7月30日、エモーションが[[ニューマーケット競馬場|ニューマーケット]]のリステッドレースを勝利して、100頭目の[[ステークス方式|ステークス]]ウィナーとなった。初年度産駒が競走年齢(2歳)に達した年の1月1日から数えて2402日目での記録であり、これは[[デインヒル]]と並んで過去最速タイの記録である<ref>{{Cite web|和書|title=フランケル、ステークス優勝産駒が100頭に到達(イギリス)[生産] |url=https://www.jairs.jp/contents/newsprot/2022/28/1.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |access-date=2022-08-04}}</ref>。

そして10月の凱旋門賞では[[アルピニスタ]]が凱旋門賞を優勝し、産駒による凱旋門賞制覇が成し遂げられた<ref>{{Cite web|和書|title=凱旋門賞馬アルピニスタはロマン満載の血統 血が持つドラマ、奥深さを感じたレース|極ウマ・プレミアム |url=https://p.nikkansports.com/goku-uma/news/article.zpl?topic_id=1&id=202210040000494&year=2022&month=10&day=04 |website=p.nikkansports.com |access-date=2023-06-29 |language=ja}}</ref>。

==== 2023年 ====
2023年は11頭の産駒がG1を勝利<ref name=":1">{{Cite web |title=名種牡馬フランケル、来年の種付け料は約6500万円 {{!}} JRA-VAN World - 海外競馬情報サイト |url=https://world.jra-van.jp/news/N0013914/ |website=JRA-VAN Ver.World - 海外競馬 |access-date=2023-11-07 |language=ja}}</ref>、これは北半球の種牡馬で最多である<ref>{{Cite web |title=フランケル、種付料が自己ベストの35万ポンドに到達(イギリス)[生産] |url=https://www.jairs.jp/contents/newsprot/2023/43/3.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |access-date=2023-11-09}}</ref>。2024年度の種付け料は35万ポンド(約6500万)に設定され、これは[[ドバウィ]]と並んで欧州最高額となる<ref name=":1" />。

==== 2024年 ====
8月10日のスイートソレラステークスをレイクヴィクトリアが勝利して、100頭目の重賞馬を輩出。父ガリレオやデインヒル、ドバウィ、[[ディープインパクト (競走馬)|ディープインパクト]]を上回る史上最速の3144日で達成した<ref>{{Cite web |title=フランケルが100頭目の重賞勝ち馬輩出、ガリレオやディープ超えの最速記録 {{!}} JRA-VAN World - 海外競馬情報サイト |url=https://world.jra-van.jp/news/N0015337/ |website=JRA-VAN Ver.World - 海外競馬 |access-date=2024-08-13 |language=ja}}</ref>。

=== 主な産駒<!-- https://stallions.juddmonte.com/stallion/frankel/performersの頁は網羅的だが、出典の形式へ組み込むことについて有用ではない --> ===
*2014年産
*2014年産
**[[ソウルスターリング]] - {{flagicon|JPN}}'''[[阪神ジュベナイルフィリーズ]]'''、{{flagicon|JPN}}'''[[優駿牝馬]]'''、[[チューリップ賞]](日G3)
**[[ソウルスターリング]] - {{flagicon|JPN}}'''[[阪神ジュベナイルフィリーズ]]'''、{{flagicon|JPN}}'''[[優駿牝馬]]'''、[[チューリップ賞]](日G3)
**[[クラックスマン|Cracksman]] - {{flagicon|GBR}}'''[[チャンピオンステークス]]'''(2017年・2018年)、{{flagicon|FRA}}'''[[ガネー賞]]'''、{{flagicon|GBR}}'''[[コロネーションカップ]]'''、[[グレートヴォルティジュールステークス]](英G2)、[[ニエル賞]](仏G2)
**[[クラックスマン|Cracksman]] - {{flagicon|GBR}}'''[[チャンピオンステークス]]'''(2017年・2018年)、{{flagicon|FRA}}'''[[ガネー賞]]'''、{{flagicon|GBR}}'''[[コロネーションカップ]]'''、[[グレートヴォルティジュールステークス]](英G2)、[[ニエル賞]](仏G2)
**[[モズアスコット]] - {{flagicon|JPN}}'''[[安田記念]]'''<ref>{{Cite web|和書|url=https://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=137995 |title=モズアスコットが連闘でGI制覇! スワーヴリチャードは2階級制覇ならず3着/安田記念 |publisher=netkeiba.com|date=2018-06-03|accessdate=2018-06-03}}</ref>、{{flagicon|JPN}}'''[[フェブラリーステークス]]'''、[[根岸ステークス]](日G3)
**Call the Wind - {{flagicon|FRA}}'''[[カドラン賞]]'''、[[:en:Prix Kergorlay|Prix Kergorlay]](仏G2)、[[:en:Prix de Barbeville|Prix de Barbeville]](仏G3)
**Call the Wind - {{flagicon|FRA}}'''[[カドラン賞]]'''、[[:en:Prix Kergorlay|Prix Kergorlay]](仏G2)、[[:en:Prix de Barbeville|Prix de Barbeville]](仏G3)
**Dream Castle - {{flagicon|UAE}}'''[[ジェベルハッタ]]'''、[[:en:Al Rashidiya|Al Rashidiya]](唖G2)、[[:en:Singspiel Stakes|Singspiel Stakes]](唖G3)
**Dream Castle - {{flagicon|UAE}}'''[[ジェベルハッタ]]'''、[[:en:Al Rashidiya|Al Rashidiya]](唖G2)、[[:en:Singspiel Stakes|Singspiel Stakes]](唖G3)
**Mirage Dancer - {{flagicon|AUS}}'''[[メトロポリタンハンデキャップ_(オーストラリア)|メトロポリタンハンデキャップ]]'''、[[:en:Glorious Stakes|Glorious Stakes]](英G3)
**[[モズアスコット]] - {{flagicon|JPN}}'''[[安田記念]]'''<ref>{{Cite web|url=http://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=137995 |title=モズアスコットが連闘でGI制覇! スワーヴリチャードは2階級制覇ならず3着/安田記念 |publisher=netkeiba.com|date=2018-06-03|accessdate=2018-06-03}}</ref>、{{flagicon|JPN}}'''[[フェブラリーステークス]]'''、[[根岸ステークス]](日G3)
**Mirage Dancer - {{flagicon|AUS}}'''[[メトロポリタンハンデキャップ_(オーストラリア)|ザ・メトロポリタン]]'''、[[:en:Glorious Stakes|Glorious Stakes]](英G3)
**Queen Kindly - [[:en:Lowther Stakes|Lowther Stakes]](英G2)
**Queen Kindly - [[:en:Lowther Stakes|Lowther Stakes]](英G2)
**Finche - [[:en:Prix Eugène Adam|Prix Eugène Adam]](仏G2)、[[:en:Prix de Reux|Prix de Reux]](仏G3)、[[:en:Kingston Town Stakes|Kingston Town Stakes]](豪G3)
**Finche - [[:en:Prix Eugène Adam|Prix Eugène Adam]](仏G2)、[[:en:Prix de Reux|Prix de Reux]](仏G3)、[[:en:Kingston Town Stakes|Kingston Town Stakes]](豪G3)
120行目: 351行目:
**Fashion Business - [[:en:Del Mar Handicap|Del Mar Handicap]](米G2)
**Fashion Business - [[:en:Del Mar Handicap|Del Mar Handicap]](米G2)
**Fair Eva - [[:en:Princess Margaret Stakes|Princess Margaret Stakes]](英G3)
**Fair Eva - [[:en:Princess Margaret Stakes|Princess Margaret Stakes]](英G3)
**Cunco - [[クラシックトライアル]](英G3)
**Monarchs Glen - [[:en:Darley Club Stakes|Darley Club Stakes]](英G3)
**Frankuus - [[:en:Prix de Condé|Prix de Condé]](仏G3)、[[:en:Rose of Lancaster Stakes|Rose of Lancaster Stakes]](英G3)
**Toulifaut - [[:en:Prix d'Aumale|Prix d'Aumale]] (仏G3)
**Last Kingdom - [[:en:Prix Daphnis|Prix Daphnis]] (仏G3)
**Last Kingdom - [[:en:Prix Daphnis|Prix Daphnis]] (仏G3)
**Lady Frankel - [[:en:Prix de Lieurey|Prix de Lieurey]](仏G3)
**Frankuus - [[:en:Prix de Condé|Prix de Condé]](仏G3)、[[:en:Rose of Lancaster Stakes|Rose of Lancaster Stakes]](英G3)
**[[ミスエルテ]] - [[ファンタジーステークス]](日G3)
**[[ミスエルテ]] - [[ファンタジーステークス]](日G3)
**Cunco - [[クラシックトライアル]](英G3)
**Lady Frankel - [[:en:Prix de Lieurey|Prix de Lieurey]](仏G3)
**Toulifaut - [[:en:Prix d'Aumale|Prix d'Aumale]] (仏G3)
**Monarchs Glen - [[:en:Darley Stakes|Darley Club Stakes]](英G3)
**Simply Brilliant - [[:en:January Cup|January Cup]](香G3)
**Simply Brilliant - [[:en:January Cup|January Cup]](香G3)


132行目: 363行目:
**Without Parole - {{flagicon|GBR}}'''[[セントジェームズパレスステークス]]'''
**Without Parole - {{flagicon|GBR}}'''[[セントジェームズパレスステークス]]'''
**Veracious - {{flagicon|GBR}}'''[[ファルマスステークス]]'''、[[:en:Atalanta Stakes|Atalanta Stakes]](英G3)
**Veracious - {{flagicon|GBR}}'''[[ファルマスステークス]]'''、[[:en:Atalanta Stakes|Atalanta Stakes]](英G3)
**Outbox - [[ジョッキークラブステークス]](英G2)
**Rostropovich - [[:en:Futurity Stakes (Ireland)|Futurity Stakes]](愛G2)、[[:en:Club Stakes|Club Stakes]](愛G3)
**Rostropovich - [[:en:Futurity Stakes (Ireland)|Futurity Stakes]](愛G2)、[[:en:Club Stakes|Club Stakes]](愛G3)
**Elarqam - [[:en:York Stakes|York Stakes]](英G2)、[[:en:Somerville Tattersall Stakes|Somerville Tattersall Stakes]](英G3)、[[アークトライアル]](英G3)
**Elarqam - [[:en:York Stakes|York Stakes]](英G2)、[[:en:Somerville Tattersall Stakes|Somerville Tattersall Stakes]](英G3)、[[アークトライアル]](英G3)
153行目: 385行目:
**[[クアドリラテラル|Quadrilateral]] - {{flagicon|GBR}}'''[[フィリーズマイル]]'''
**[[クアドリラテラル|Quadrilateral]] - {{flagicon|GBR}}'''[[フィリーズマイル]]'''
**Hungry Heart - {{flagicon|AUS}}'''[[ストームクイーンステークス|ヴァイナリースタッドステークス]]'''、{{flagicon|AUS}}'''[[オーストラリアンオークス]]'''、[[:en:Sweet Embrace Stakes|Sweet Embrace Stakes]](豪G2)、[[:en:Phar Lap Stakes|Phar Lap Stakes]](豪G2)
**Hungry Heart - {{flagicon|AUS}}'''[[ストームクイーンステークス|ヴァイナリースタッドステークス]]'''、{{flagicon|AUS}}'''[[オーストラリアンオークス]]'''、[[:en:Sweet Embrace Stakes|Sweet Embrace Stakes]](豪G2)、[[:en:Phar Lap Stakes|Phar Lap Stakes]](豪G2)
**[[アルピニスタ|Alpinista]] - {{Flagicon|GER}}'''[[ベルリン大賞]]'''、{{Flagicon|GER}}'''[[オイロパ賞]]'''、{{Flagicon|DEU}}'''[[バイエルン大賞]]'''、 [[:en:Lancashire Oaks|Lancashire Oaks]](英G2)
**[[アルピニスタ|Alpinista]] - {{Flagicon|GER}}'''[[ベルリン大賞]]'''、{{Flagicon|GER}}'''[[オイロパ賞]]'''、{{Flagicon|DEU}}'''[[バイエルン大賞]]'''、{{Flagicon|FRA}} '''[[サンクルー大賞]]'''、{{Flagicon|GBR}}'''[[ヨークシャーオークス]]'''、{{Flagicon|FRA}}'''[[凱旋門賞]]'''、 [[:en:Lancashire Oaks|Lancashire Oaks]](英G2)
**Frankly Darling - [[:en:Ribblesdale Stakes|Ribblesdale Stakes]](英G2)
**Frankly Darling - [[:en:Ribblesdale Stakes|Ribblesdale Stakes]](英G2)
**Steinem - [[:en:Summoned_Stakes|Summoned Stakes]](豪G3)
**Steinem - [[:en:Peter Young Stakes|Peter Young Stakes]](豪G2)、[[:en:Summoned_Stakes|Summoned Stakes]](豪G3)
**Spirit Sancer - [[:en:Bahrain_International_Trophy|Bahrain International Trophy]](罵G2)、[[ネオムターフカップ]](沙G2)、[[:en:Strensall_Stakes|Strensall Stakes]](英G3)


*2018年産
*2018年産
**[[グレナディアガーズ (競走馬)|グレナディアガーズ]] - {{flagicon|JPN}}'''[[朝日杯フューチュリティステークス]]'''、[[阪神カップ]](日G2)
**[[グレナディアガーズ (競走馬)|グレナディアガーズ]] - {{flagicon|JPN}}'''[[朝日杯フューチュリティステークス]]'''、[[阪神カップ]](日G2)
**[[アダイヤー|Adayar]] - {{flagicon|GBR}}'''[[ダービーステークス]]'''、{{Flagicon|GBR}}'''[[キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス]]'''
**[[アダイヤー|Adayar]] - {{flagicon|GBR}}'''[[ダービーステークス]]'''、{{Flagicon|GBR}}'''[[キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス]]'''、[[ゴードンリチャーズステークス]](英G3)
**Converge - {{Flagicon|AUS}}'''[[ザTJスミス|J.J.アトキンス]]'''、{{Flagicon|AUS}}'''[[ランドウィックギニーズ]]'''
**Converge - {{Flagicon|AUS}}'''[[ザTJスミス|J.J.アトキンス]]'''、{{Flagicon|AUS}}'''[[ランドウィックギニーズ]]'''
**[[ハリケーンレーン|Hurricane Lane]] - {{Flagicon|IRL}}'''[[アイリッシュダービー]]'''、{{flagicon|FRA}}'''[[パリ大賞典]]'''、 {{flagicon|GBR}}'''セントレジャーステークス'''、[[ダンテステークス]](英G2)
**[[ハリケーンレーン|Hurricane Lane]] - {{Flagicon|IRL}}'''[[アイリッシュダービー]]'''、{{flagicon|FRA}}'''[[パリ大賞典]]'''、 {{flagicon|GBR}}'''セントレジャーステークス'''、[[ダンテステークス]](英G2)、ジョッキークラブステークス(英G2)
**Snow Lantern - {{Flagicon|GBR}}'''[[ファルマスステークス]]'''
**Snow Lantern - {{Flagicon|GBR}}'''[[ファルマスステークス]]'''
**[[モスターダフ|Mostahdaf]] - {{Flagicon|GBR}}'''[[プリンスオブウェールズステークス (イギリス)|プリンスオブウェールズステークス]]'''、{{Flagicon|GBR}}'''[[インターナショナルステークス]]'''、[[:en:Darley Stakes|Darley Stakes]](英G3)、ゴードンリチャーズステークス(英G3)、[[:en:September Stakes|September Stakes]](英G3)、ネオムターフカップ(沙G3)
**Kalahara - [[:en:Prix d'Arenberg|Prix d'Arenberg]](仏G3)
**Rumi - [[:en:Prix de la Nonette|Prix de la Nonette]](仏G2)、[[:en:Prix Vanteaux|Prix Vanteaux]](仏G3)
**Rumi - [[:en:Prix de la Nonette|Prix de la Nonette]](仏G2)、[[:en:Prix Vanteaux|Prix Vanteaux]](仏G3)
**Sibila Spain - [[:en:Prix du Muguet|Prix du Muguet]](仏G2)
**Francesco Guardi - [[:en:Moonee Valley Gold Cup|Moonee Valley Gold Cup]](豪G2)
**Kalahara - [[:en:Prix d'Arenberg|Prix d'Arenberg]](仏G3)
**Mohaafeth - [[ハンプトンコートステークス]](英G3)
**Mohaafeth - [[ハンプトンコートステークス]](英G3)
**Light Refrain - [[:en:Summer Stakes|Summer Stakes]](英G3)
**Light Refrain - [[:en:Summer Stakes|Summer Stakes]](英G3)
**Mostahdaf - [[:en:Darley Stakes|Darley Stakes]](G3)
**Argentia - [[:en:Kevin Hayes Stakes|Kevin Hayes Stakes]](豪G3)、Rising Fast Stakes(豪G3)
**My Whisper - [[:en:Auraria Stakes|Auraria Stakes]](豪G3)、[[:en:Tesio Stakes|Tesio Stakes]](豪G3)[[:en:Summoned Stakes|Summoned Stakes]](豪G3)
**Dajraan - [[:en:Festival Stakes (ATC)|Festival Stakes]](豪G3)


*2019年産
*2019年産
**Wild Beauty - {{Flagicon|CAN}}'''[[ナタルマステークス]]'''
**Wild Beauty - {{Flagicon|CAN}}'''[[ナタルマステークス]]'''、[[:en:Fred Darling Stakes|Fred Darling Stakes]](英G3)
**[[インスパイラル|Inspiral]] - {{Flagicon|GBR}}'''フィリーズマイル'''、[[:en:May Hill Stakes|May Hill Stakes]](英G2)
**[[インスパイラル|Inspiral]] - {{Flagicon|GBR}}'''フィリーズマイル'''、{{flagicon|GBR}}'''[[コロネーションステークス]]'''、{{Flagicon|FRA}}'''[[ジャック・ル・マロワ賞]]'''(2022年・2023年)、{{Flagicon|GBR}}'''[[サンチャリオットステークス]]'''、{{Flagicon|USA}}'''[[ブリーダーズカップフィリー&メアターフ]]'''、[[:en:May Hill Stakes|May Hill Stakes]](英G2)
**Homeless Songs - {{Flagicon|IRL}}'''[[アイリッシュ1000ギニー]]'''、[[レパーズタウン1000ギニートライアルステークス]](愛G3)
**[[ナシュワ|Nashwa]] - {{Flagicon|FRA}}'''[[ディアヌ賞]]'''、{{Flagicon|GBR}}'''[[ナッソーステークス]]'''、{{Flagicon|GBR}}'''ファルマスステークス'''
**[[ウエストオーバー (競走馬)|Westover]] - {{Flagicon|IRL}}'''アイリッシュダービー'''、{{Flagicon|FRA}}'''サンクルー大賞'''、クラシックトライアル(英G3)
**McKulick - {{Flagicon|USA}}'''[[ベルモントオークスインビテーショナルステークス]]'''、[[:en:Glens_Falls_Stakes|Glens Falls Stakes]](米G2・連覇)、[[ジョッキークラブオークス]](米G3)、[[:en:Waya_Stakes|Waya Stakes]](米G3)、[[:en:Orchid_Stakes|Orchid Stakes]](米G3)
**[[オネスト|Onesto]] - {{Flagicon|FRA}}'''パリ大賞典'''、[[グレフュール賞]](仏G2)
**Triple Time - {{Flagicon|GBR}}'''[[クイーンアンステークス]]'''、[[:en:Superior Mile Stakes|Superior Mile Stakes]](英G3)
**Courage Mon Ami - {{Flagicon|GBR}}'''[[ゴールドカップ]]'''
**L’Astronome - [[オカール賞]](仏G2)
**Raclette - [[:en:Prix de Malleret|Prix de Malleret]](仏G2)
**Skims - [[:en:Sands Point Stakes|Sands Point Stakes]](米G2)
**Darkaniya - [[:en:Baden_Racing_Stuten-Preis|Baden Racing Stuten-Preis]](独G2)
**With The Moonlight - [[ケープヴェルディステークス]](唖G2)、[[バランシーンステークス]](唖G2)、[[サラトガオークス]](米G3)
**Majestic Glory - [[:en:Sweet_Solera_Stakes|Sweet Solera Stakes]](英G3)
**Majestic Glory - [[:en:Sweet_Solera_Stakes|Sweet Solera Stakes]](英G3)
**Dreamflight - [[:en:Prix Thomas Bryon|Prix Thomas Bryon]](仏G3)
**Dreamflight - [[:en:Prix Thomas Bryon|Prix Thomas Bryon]](仏G3)
**Eternal Pearl - [[:en:Prix Minerve|Prix Minerve]](仏G3)、[[:en:Dubai Stakes|Dubai Stakes]](英G3)
**Perfect News - [[:en:Ballyogan Stakes|Ballyogan Stakes]](愛G3)
**Soulcombe - [[:en:Queen's Cup (horse race)|Queen's Cup]](豪G3)
**Let'sbefrankbaby - [[:en:SA Fillies Classic|SA Fillies Classic]](豪G3)
**One For Bobby - [[:en:Grand_Prix_de_Vichy|Grand Prix de Vichy]](仏G3)
**Time Lock - Dubai Stakes(英G3)

*2020年産
**[[シャルディーン (競走馬)|Chaldean]] - {{Flagicon|GBR}}'''[[デューハーストステークス]]'''、{{Flagicon|GBR}}'''[[2000ギニーステークス]]'''、[[シャンペンステークス (イギリス)|シャンペンステークス]](英G2)、[[:en:Acomb Stakes|Acomb Stakes]](英G3)
**Jannah Rose - {{Flagicon|FRA}}'''[[サンタラリ賞]]'''、[[:en:Prix de la Nonette|Prix de la Nonette]](仏G2)、Prix Vanteaux(仏G3)
**[[ソウルシスター (競走馬)|Soul Sister]] - {{Flagicon|GBR}}'''オークスステークス'''、[[:en:Musidora_Stakes|Musidora Stakes]](英G3)
**Kelina - {{Flagicon|FRA}}'''[[フォレ賞]]'''、[[:en:Prix de Sandringham|Prix de Sandringham]](仏G2)
**Measured Time - {{Flagicon|UAE}}'''ジェベルハッタ'''、{{Flagicon|USA}}'''[[マンハッタンステークス]]'''、Al Rashidiya(唖G2)
**English Rose - バランシーン(唖G2)
**Hans Andersen - [[:en:Leopardstown_2,000_Guineas_Trial_Stakes|Leopardstown 2,000 Guineas Trial Stakes]](愛G3)
**Flight Leader -[[ノアイユ賞]](仏G3)
**Arrest - [[チェスターヴェース]](英G3)、[[ジェフリーフリアステークス]](英G3)
**Maxux - [[:en:Denny_Cordell_Lavarack_Fillies_Stakes|Denny Cordell Lavarack Fillies Stakes]](愛G3)
**Military Order - [[:en:Winter_Derby|Winter Derby]](英G3)
*2021年産
**Ylang Ylang - {{Flagicon|GBR}}'''フィリーズマイル'''、[[:en:Silver_Flash_Stakes|Silver Flash Stakes]](愛G3)
**Diego Velazquez - [[:en:Champions_Juvenile_Stakes|Champions Juvenile Stakes]](愛G2)、[[:en:Solonaway_Stakes|Solonaway Stakes]](愛G2)、[[:en:Meld_Stakes|Meld Stakes]](愛G3)
**Penalty - [[:en:Oettingen-Rennen|Oettingen-Rennen]](独G2)、[[:en:Grosser_Preis_der_Wirtschaft|Grosser Preis der Wirtschaft]](独G3)
**Candala - [[:en:Prix_de_la_Grotte|Prix de la Grotte]](仏G3)
**Delius - [[:en:Prix_du_Lys|Prix du Lys]](仏G3)
*2022年産
**[[レイクヴィクトリア|Lake Victoria]] - {{Flagicon|IRE}}'''[[モイグレアスタッドステークス]]'''、{{Flagicon|GBR}}'''[[チェヴァリーパークステークス]]'''、{{Flagicon|USA}}'''[[ブリーダーズカップ・ジュヴェナイルフィリーズターフ]]'''、Sweet Solera Stakes(英G3)
**Bedtime Story - [[デビュタントステークス (アイルランド)|デビュタントステークス]](愛G2)、Silver Flash Stakes(愛G3)


※太字はG1競走
※太字はG1競走
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File:Mozu Ascot February Stakes 2020(IMG3).jpg|モズアスコット(2014年産)
File:Mozu Ascot February Stakes 2020(IMG3).jpg|モズアスコット(2014年産)
</gallery>
</gallery>

=== 母の父としての主な産駒 ===
==== グレード制重賞優勝馬 ====
*2020年産
**[[モズメイメイ]](2023年[[チューリップ賞]]、[[葵ステークス]]、2024年[[アイビスサマーダッシュ]])- 父[[リアルインパクト]]<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.jbis.or.jp/horse/0001325799/|title=モズメイメイ|work=JBISサーチ|publisher=公益財団法人[[日本軽種馬協会]]|accessdate=2023-05-27}}</ref>

== 主な対戦馬 ==
{| class="wikitable" style="float:right; font-size: smaller;"
|+フランケルとエクセレブレーションの対戦<ref name="Racing Post" /><ref name="Excelebration" />
!歳
!フランケル
!競走名
!エクセレブレーション
!差
|-
! rowspan="3" |3歳
|'''{{0}}{{color|darkred|1着}}'''
|グリーナムS
|{{0}}{{color|darkblue|2着}}
|4馬身
|-
|'''{{0}}{{color|darkred|1着}}'''
|セントジェームズパレスS
|{{0}}{{color|green|3着}}
|2馬身 1/4
|-
|'''{{0}}{{color|darkred|1着}}'''
|クイーンエリザベス2世S
|{{0}}{{color|darkblue|2着}}
|4馬身
|-
! rowspan="2" |4歳
|'''{{0}}{{color|darkred|1着}}'''
|ロッキンジS
|{{0}}{{color|darkblue|2着}}
|5馬身
|-
|'''{{0}}{{color|darkred|1着}}'''
|クイーンアンS
|{{0}}{{color|darkblue|2着}}
|11馬身
|}

=== エクセレブレーション ===
[[エクセレブレーション]]は、同じ2008年生まれの[[牡馬]]である。3歳時に[[ムーラン・ド・ロンシャン賞]]、4歳時に[[ジャック・ル・マロワ賞]]および[[クイーンエリザベス2世ステークス]]を勝利してG1競走3勝を挙げた<ref name="Excelebration" />。この勝ち鞍のほかに、無敗馬フランケルに対する2着が4回あるため、「生まれた年が違っていたら、この馬が「歴史的名マイラー」と讃えられていた可能性も充分にあった」([[合田直弘]])という旨の指摘もなされている<ref name="goda20130213">{{Cite web|和書|title=フランケルなど新種牡馬の種付け料は!? |url=https://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=22451 |website=netkeiba.com |access-date=2022-07-30 |language=ja |publisher=[[netkeiba]] |author=[[合田直弘]]}}</ref><ref name="Cooper221">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.221]]</ref>。特に2011年8月のハンガーフォードステークス以降、2012年のクイーンエリザベス2世ステークスまで8戦したが、この間フランケル以外の競走馬に対しては全勝した<ref>{{Cite web|和書|title=全米年度代表馬のゆくえは!? |url=https://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=21647 |website=netkeiba.com |access-date=2022-07-30 |language=ja |publisher=[[netkeiba]] |author=[[合田直弘]]}}</ref>。フランケルの評価は、G1競走3勝馬エクセレブレーションを通じて与えられたものでもあるが、これは11馬身の力量差が現れた[[クイーンアンステークス]]などでの直接対決のみならず<ref>{{Cite web|和書|title=故アブドゥラ殿下の名馬10頭(国際)[生産] |url=https://www.jairs.jp/contents/newsprot/2021/2/2.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |access-date=2022-08-01}}</ref>、エクセレブレーションが本馬不在のジャック・ル・マロワ賞においてG1競走計13勝の出走馬を相手に優勝したことなど間接的な結果も影響している<ref name="Pennington179">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.179]]</ref><ref name="Pennington178">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.178]]</ref>。ただし、公式ハンデキャッパーのドミニク・ガーディナー=ヒルによれば、クイーンエリザベス2世ステークスの圧勝は、エクセレブレーション自身の成長によって達成されたものであり、当シーズン前半に対戦したフランケルの公式レーティングを殊更に高めるものではなかった<ref name="Gardiner-Hill2012-10-30" />。その後はフランケルに次ぐヨーロッパのマイラーとして、アメリカの[[ブリーダーズカップ・マイル]]に出走したが、[[ワイズダン]]の4着に敗れて引退した<ref>{{Cite web|和書|title=ブリーダーズカップの芝競走で米国馬が優勝し、威信を回復(アメリカ)【その他】 |url=https://www.jairs.jp/contents/w_news/2012/12/4.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |access-date=2022-07-30}}</ref>。公式レーティングの年間最高値は、3歳時に126、4歳時に130であり、それぞれ同年のフランケルと比べて10ポンド低い<ref name="Gardiner-Hill2012-10-30" />。
{| class="wikitable" style="float:right; font-size: smaller;"
|+フランケルとファーの対戦<ref name="Racing Post" /><ref name="Farhh">{{Cite web |title=Farhh {{!}} Race Record & Form |url=https://www.racingpost.com/profile/horse/762158/farhh/form |website=www.racingpost.com |accessdate=2022-04-08 |publisher=[[レーシング・ポスト|Racing Post]]}}</ref>
!歳
!フランケル
!競走名
!ファー
!差
|-
!2歳
|'''{{0}}{{color|darkred|1着}}'''
|条件戦
|取消
| -
|-
! rowspan="2" |4歳
|'''{{0}}{{color|darkred|1着}}'''
|サセックスS
|{{0}}{{color|darkblue|2着}}
|6馬身
|-
|'''{{0}}{{color|darkred|1着}}'''
|インターナショナルS
|{{0}}{{color|darkblue|2着}}
|7馬身
|}

=== ファー ===
{{仮リンク|ファー (競走馬)|en|Farhh|label=ファー}}は、同じ2008年生まれの牡馬である。G1競走2勝のゴンバルダを母に持つ良血馬<ref name="book59122" />で、ニューマーケット競馬場の未勝利戦を6馬身差で勝ち上がり、2歳時のフランクウィットルパートナーシップ条件ステークスではフランケルの対抗馬と目されたが、この時はゲートで暴れてしまったために発走除外となった<ref name="Pennington53" /><ref name="Rushmer174" /><ref name="Rushmer175" />。その後、4歳時の[[サセックスステークス]]および[[インターナショナルステークス]]でフランケルの2着に入るなど、マイルから中距離で善戦すると、5歳時には脚部不安の影響下にありながら[[ロッキンジステークス]]および[[チャンピオンステークス]]とG1競走を2連勝して引退した<ref name="book59122">{{Cite web|和書|title=ゴドルフィンの良血馬ファー、有終の美を飾って種牡馬入り |url=https://p.keibabook.co.jp/news/detail/59122 |website=競馬ブック |access-date=2022-08-01}}</ref><ref name="Farhh" />。

{| class="wikitable" style="float:right; font-size: smaller;"
|+フランケルとナサニエルの対戦<ref name="Racing Post" /><ref name="Nathaniel">{{Cite web |title=Nathaniel {{!}} Race Record & Form |url=https://www.racingpost.com/profile/horse/748243/nathaniel/form |website=www.racingpost.com |accessdate=2022-04-08 |publisher=[[レーシング・ポスト|Racing Post]]}}</ref>
!歳
!フランケル
!競走名
!ナサニエル
!差
|-
!2歳
|'''{{0}}{{color|darkred|1着}}'''
|メイドン
|{{0}}{{color|darkblue|2着}}
|1/2馬身
|-
!4歳
|'''{{0}}{{color|darkred|1着}}'''
|チャンピオンS
|{{0}}{{color|green|3着}}
|4馬身 1/4
|}

=== ナサニエル ===
[[ナサニエル (競走馬)|ナサニエル]]は、同じ2008年生まれの牡馬である。3歳時に[[キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス]]、4歳時に[[エクリプスステークス]]を勝利してG1競走2勝を挙げた<ref name="Nathaniel" />。ナサニエルは2歳時に2戦して未勝利と勝ち上がれなかったが、そのうちデビュー戦での優勝馬がフランケルであったことはよく知られた<ref name="yushun20121037">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2012年10月号34-39|『優駿』2012年10月号、37頁。]]</ref>。この際、フランケルに対して最も近い1/2馬身差まで詰め寄ったことから、同馬に「最も近づいた馬」とも称された<ref name="yushun20121037" />。その後キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス、エクリプスステークスを勝利すると、さらにチャンピオンステークスに参戦し、デビュー戦と同様にその引退戦においてもフランケルの対抗馬となった<ref name="Pennington192">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.192]]</ref><ref name="Cooper143">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.143]]</ref>。

{| class="wikitable" style="float:right; font-size: smaller;"
|+フランケルとブレットトレインの対戦<ref name="Racing Post" /><ref name="Bullet Train">{{Cite web |title=Bullet Train {{!}} Race Record & Form |url=https://www.racingpost.com/profile/horse/743738/bullet-train/form |website=www.racingpost.com |access-date=2022-08-03 |publisher=[[レーシング・ポスト|Racing Post]]}}</ref>
!歳
!フランケル
!競走名
!ブレットトレイン
!差
|-
!3歳
|'''{{0}}{{color|darkred|1着}}'''
|クイーンエリザベス2世S
|{{0}}8着
|12馬身
|-
! rowspan="5" |4歳
|'''{{0}}{{color|darkred|1着}}'''
|ロッキンジS
|{{0}}4着
|12馬身
|-
|'''{{0}}{{color|darkred|1着}}'''
|クイーンアンS
|{{0}}6着
|16馬身
|-
|'''{{0}}{{color|darkred|1着}}'''
|サセックスS
|{{0}}4着
|9馬身 3/4
|-
|'''{{0}}{{color|darkred|1着}}'''
|インターナショナルS
|{{0}}5着
|13馬身 1/2
|-
|'''{{0}}{{color|darkred|1着}}'''
|チャンピオンS
|{{0}}6着
|14馬身 1/2
|}

=== ブレットトレイン ===
ブレットトレインは、2007年の牡馬で、本馬と3/4同血の半兄である。3歳時に[[クラシックトライアル]]を勝利<ref name="Bullet Train" />。2年間に渡って、毎朝の調教ではフランケルの先導役を務め、そして複数の競走ではペースメーカーとしての役割を担った<ref name="Rushmer337">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、337頁。]]</ref>。初めクイーンアンステークスでは大逃げを見せたが、その後は陣営間で相談がなされた結果、フランケルの能力を最大限引き出すため、引き付ける逃げで半弟を追走させながらペースを作る戦法が採られた<ref name="Rushmer246" />。ブレットトレインの主戦イアン・モンガンによれば、基本的に残り3ハロン時点で追い始め、残り2ハロン地点をゴールとする意識で競走を牽引したという<ref name="Rushmer256" /><ref name="Rushmer257" />。インターナショナルステークスでは[[エディ・アハーン]]が騎乗した{{Refnest|なお、これを控えたフランケルの追い切りでは、アハーンの遅刻のためにスムーズさを欠く事態も起こっている<ref name="Rushmer276">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、276頁。]]</ref>。|group=注}}<ref name="Rushmer275" />。チャンピオンステークスではフランケルの出遅れに伴い、一旦控えて同馬を待ち、その後先頭のシリュスデゼーグルに絡んでいくという積極的な競馬を行った<ref name="Rushmer316" />。公式ハンデキャッパーのフィル・スミスは、自身が45年以上競馬を見てきたなかで、最も効果的なペースメークを実現したのがブレットトレインの手綱を取ったモンガン騎手であると評している<ref name="Phil Smith2015-08-08">{{Cite web |title=A GOLDEN SEASON |url=https://www.britishhorseracing.com/a-golden-season/ |website=www.britishhorseracing.com/ |date= |access-date=2022-11-12 |last=Smith |first=Phil |publisher=[[英国競馬統括機構|British Horseracing Authority]] |archive-url=https://archive.ph/wip/f2U58 |archive-date=2022-11-12}}</ref>。公式レーティングの最高値は、インターナショナルステークスの5着による113ポンド<ref>{{Cite web |title=Bullet Train (GB) |url=https://www.britishhorseracing.com/racing/horses/horse/#!/1935168 |website=The British Horseracing Authority |access-date=2022-08-05 |language=en-GB |publisher=[[英国競馬統括機構|British Horseracing Authority]]}}</ref>。

== 競走馬としての特徴・評価 ==

=== 身体的特徴 ===
体高は5フィート4.5インチ(約163.8cm)<ref name="bbc1" /><ref name="scott201221">[[フランケル (競走馬)#Scott2012|Scott2012, p.21]]</ref>。[[体重]]は出生時123ポンド(約56kg){{Refnest|同年のジャドモント生産馬の平均出生時体重は126ポンド<ref name="Cooper63">[[#Cooper2021|Cooper2021, p.63]]</ref>。|group=注}}、引退時は約500キログラムであった<ref name="bbc1" />。日本・[[社台ファーム]]の[[吉田照哉]]はその馬体を「全身[[尻|お尻]]」と表現している<ref>{{Cite web|和書|title=新種牡馬フランケルの綺羅星のような花嫁候補たち - 合田直弘 {{!}} 競馬コラム |url=https://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=21852 |website=netkeiba.com |access-date=2022-08-02 |language=ja}}</ref>。

担当獣医のチャーリー・スミスによれば、2012年シーズン開幕を控えた際の故障の疑いを別にすると、フランケルは基本的に頑健な競走馬であり、自身が診た中で最も力強い[[サラブレッド]]であったという<ref name="Rushmer2322">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、232頁。]]</ref>。

[[蹄#ウマの蹄|蹄]]と[[歩行#基本動作|ストライド]]が一般的な他馬よりも大きく、蹄は前肢7.5インチ(約19.1cm)、後肢7インチ(約17.8cm){{Refnest|平均は5インチ<ref name="bbc1"/>。|group=注}}で、ストライドも約22フィート(約6.7m){{Refnest|平均は20から21フィート<ref name="bbc1"/>。|group=注}}であった<ref name="bbc1" /><ref name="scott2012202">[[フランケル (競走馬)#Scott2012|Scott2012, p.20]]</ref>。フランケルの装蹄を担当したスティーヴン・キールトによれば、本馬の大柄な馬体から、その前肢の[[蹄鉄]]を12日ないし13日に一度は履き替える必要があったという<ref name="Rushmer239">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、239頁。]]</ref>。

=== 精神的特徴 ===
気性から我慢の効かない面があり、これは3歳時までのフランケルがマイル以下の距離でしか走らなかったことに影響した<ref name="goda2020" /><ref name="Rushmer2092">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、209頁。]]</ref>。前進気勢の強い本馬は、セシルに彼が基本的に好まない逃げ戦法を実行させ、実際に2011年の[[2000ギニーステークス|2000ギニー]]<ref name="Pennington97">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.97]]</ref>、[[サセックスステークス]]<ref name="Pennington114" />の競走では一貫して先頭にあり続けた<ref name="Rushmer196" />。また2010年の[[デューハーストステークス]]<ref name="Pennington71" />、2011年の[[グリーナムステークス]]<ref name="Pennington84" />、2012年の[[ロッキンジステークス]]<ref name="Pennington148" />では、競走の序盤に掛かって折り合いを欠くところを見せている。

調教助手フェザーストンハウを筆頭とする関係者の努力により、2012年の[[クイーンアンステークス]]の頃には、競走の途中で「闘争心に火がついてしまうようなところ」は全く無くなった<ref name="Rushmer258">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、258頁。]]</ref>。セシルは、本馬が4歳シーズンの競走で勝つたびにフェザーストンハウの名を挙げて彼を称賛している<ref name="Rushmer258"/>。

本馬引退後のセシルが執筆したところによれば、本馬は成長するごとに平静な気性を得て、これに伴って距離延長をこなすようになった<ref name="Rushmer334" />。そして調教師をして「もし彼がもう1年現役に留まっていたら、[[キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス|キングジョージVI世&クイーンエリザベスS]]や[[ブリーダーズカップ・ワールド・サラブレッド・チャンピオンシップ|ブリーダーズC]]のマイル・アンド・ア・ハーフあたりを彼は掌中にすることになったのではないか」と感じさせている<ref name="goda2020" /><ref name="Rushmer334">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、334頁。]]</ref>。なお、逆に短距離路線を選択しなかった理由については、ここで「もしそういう意図を持って彼を調教していたら、彼のメンタルの部分が長続きはしなかったであろうという感触は持っています」と説明している<ref name="Rushmer334" />。

=== 走行 ===
その圧倒的な競走能力から、「5ハロンないし6ハロンのG1競走を勝てるスピードで10ハロンを走行した」という旨で評される<ref name="goda201744">[[#合田2017|合田2017、44頁。]]</ref><ref name="goda2020" />。ラップタイム{{Refnest|なお、当時のイギリスではラップタイム計測はさほど普及しておらず、例えば2011年のサセックスステークスをフランケルが優勝した際のラップタイムは不明である<ref>{{Cite web|和書|title=英国競馬でのラップタイム導入について(イギリス)【その他】 |url=https://www.jairs.jp/contents/w_news/2014/2/3.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |access-date=2022-08-11}}</ref>。|group=注}}の計測記録によれば、2000ギニー<ref name="Cooper199">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.199]]</ref>やセントジェームズパレスステークス<ref name="Pennington110" />では、本馬は競走中盤の数ハロンをスプリンター並の速度で走行したにもかかわらず、最後まで押し切って優勝している。11馬身差で勝利したクイーンアンステークスでは、その大きいストライドをもって、稍重馬場ながら6ハロンから7ハロン地点までの1ハロンを10秒58で走行して話題となった<ref name="yushun201301164">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2013年1月号164-165|『優駿』2013年1月号、164頁。]]</ref>。同競走後のセシルは、本馬は大飛びであるために「トップスピードに乗るのに数完歩は必要」であるが、その後、他馬には不可能な「そのスピードを維持し続ける」能力を発揮することで誰も追いつけなくなるのだと説明している<ref name="Rushmer257" /><ref name="Rushmer258" />。

道悪は不得手であるとされる。[[石灰岩]]を路盤とするジュライコースで行われた夏季のデビュー戦では重馬場をよくこなしたフランケルだが、秋季のアスコット競馬場で行われるために持久力をより問われることになるチャンピオンステークスを控えると、セシルは「彼の走法、彼が持つ瞬発力を考えると、彼がそういう馬場を好むと確信できる人はいないと思います」として、本馬の不良馬場適正への不安を述べている<ref name="Rushmer302">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、302頁。]]</ref><ref name="Rushmer303">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、303頁。]]</ref><ref name="Rushmer304">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、304頁。]]</ref>。そして実際に道悪となった同競走の後、セシル、クウィリーはともに本馬が馬場に苦労したことについて言及した<ref name="Pennington197" />。
=== レーティング ===
{| class="wikitable" style="float:right; font-size: smaller;"
|+ワールドサラブレッドランキング(2013年時点) <ref name="1977-2012ranking" />
!順位
!RAT.
!馬名
|-
!1位
|140
|'''フランケル'''
|-
!2位
|138
|[[ダンシングブレーヴ]]
|-
!3位
|137
|[[パントレセレブル]]
|-
!4位
|136
|[[ジェネラス]]<br/>[[シャーガー]]<br/>[[シーザスターズ]]
|}

==== ワールドサラブレッドランキング ====
国際クラシフィケーション時代を含めれば1977年以来競走馬の格付けを行っている[[ワールド・ベスト・レースホース・ランキング|ワールドサラブレッドランキング]]{{Refnest|[[国際競馬統括機関連盟]]が発表する競走馬の世界ランキング<ref name="yushun201308158"/>。2013年、[[ロンジン]]社がオフィシャルパートナーとなるに伴い、「ロンジンワールドベストレースホースランキング」へ改称した<ref name="yushun201308158">[[#『優駿』2013年8月号153-159|『優駿』2013年8月号、158頁。]]</ref>。|group=注|name=WTR}}は、2012年のクイーンアンステークスおよび[[インターナショナルステークス]]を勝利したフランケルに対して140ポンドのレーティングを与えた<ref name="jairs20130320" /><ref name="ifha2012">{{Cite web |title=The 2012 World Thoroughbred Rankings |url=https://www.ifhaonline.org/resources/WTRRankings/LWBRR_PressRelease.asp?pid=32 |website=www.ifhaonline.org |access-date=2022-08-02 |publisher=[[国際競馬統括機関連盟|International Federation of Horseracing Authorities]] |date=2013-1-15}}</ref>。公式のプレスリリースでは、140ポンドという評価のみならず、出走した競走のうち8回で130ポンド以上、さらにうち5回で135ポンド以上の評価を得ていることが「極めて驚異的」であるだろうと評されている<ref name="ifha2012" />。

その翌2013年1月15日、過去の競走馬に対する評価の修正{{Refnest|[[ダンシングブレーヴ]](141→138)、[[シャーガー]](140→136)、[[アレッジド]](140→134)など<ref name="jairs20130320" />。|group=注}}が実施されると、サラブレッドランキングには様々な意見が寄せられたが、ともあれ同ランキングにおけるフランケルのレーティングは、単独かつ史上最高の評価となった<ref name="jairs20130320" />。ワールドサラブレッドランキングの共同会長ギャリー・オゴーマンは、「フランケルは最高の競走馬としての新基準となる」と言明<ref name="jairs20130320" />。レーティングの見直しを行ったフィル・スミスは、フランケルが古馬でも現役を続行したこと{{Refnest|フランケルは4歳馬として、レーティングを3歳時の136ポンドから、140ポンドの評価まで更新した<ref name="jairs20130320" />。「もしダンシングブレーヴが4歳でも現役を続行し、フランケルのように4ポンド加算していたなら、レーティングは145となり、今般142に格下げされたでしょう」(スミス)<ref name="jairs20130320" />|group=注}}、また、最後まで無敗でいたことに触れた<ref name="jairs20130320" />。

ヨーロッパに限定すると、1977年以降からフランケルの現役時まで、8頭の競走馬が2歳および3歳時の両方で公式レーティングの最高馬となっていたが、このうえで本馬は、このうち2歳、3歳、4歳時の全てで公式レーティングの最高馬になった史上初の競走馬となった<ref name="ifha2012" />。年度毎のランキングでフランケルの次点になった競走馬は、2011年の[[ブラックキャビア]]、2012年のシリュスデゼーグルである<ref>{{Cite web |title=The 2011 World Thoroughbred Rankings |url=https://www.ifhaonline.org/resources/WTRRankings/2011_WorldRankings.asp |website=www.ifhaonline.org |access-date=2022-04-19}}</ref><ref>{{Cite web |title=The 2012 World Thoroughbred Rankings |url=https://www.ifhaonline.org/resources/WTRRankings/2012_WorldRankings.asp |website=www.ifhaonline.org |access-date=2022-04-19}}</ref>。
{| class="wikitable" style="float:right; font-size: smaller;"
|+タイムフォームグローバルランキング
(2013年時点) <ref name="Timeform201330">[[フランケル (競走馬)#Timeform2013|Timeform2013, p.30]]</ref>
!順位
!RAT.
!馬名
|-
!1位
|147
|'''フランケル'''
|-
!2位
|145
|[[シーバード]]
|-
!3位
|144
|[[ブリガディアジェラード]]<br />[[テューダーミンストレル]]
|-
!5位
|142
|[[アバーナント]]<br/>[[リボー]]<br/>{{仮リンク|ウインディシティ (競走馬)|en|Windy City (horse)|label=ウインディシティ}}
|}

==== タイムフォームレーティング ====
1948年以来競走馬の格付けを行っている[[タイムフォーム]]社は、2012年のクイーンアンステークスを勝利したフランケルに対して147ポンドのレーティングを与えたが、これは[[シーバード]]、[[ブリガディアジェラード]]などを上回る史上最高の評価であった<ref name="Prosser201340" /><ref name="TR2" />。同紙のジェイミー・リンチは、「フランケルは、競走馬の能力を量る上での新たな基準となります」と語った<ref name="Prosser61">[[#プロッサー2012|プロッサー2012、61頁。]]</ref>。同氏は、レースレーティングとプレレーティングに基づく一般的な方法によって147の数字を算出し、競走成績における2着馬との着差やスピード指数などのツールを用いて分析した結果、本馬が1965年にダービーと凱旋門賞を制したシーバードも凌駕する史上最強馬であるという確信的な判断を下したのだと説明した<ref name="Prosser201340" />。

=== 選定 ===
1991年以来ヨーロッパの年度代表表彰を行っている[[カルティエ賞]]の受賞は、2010年の最優秀2歳牡馬、2011年の最優秀3歳牡馬および年度代表馬、2012年の最優秀古馬および年度代表馬<ref name="Cooper341" /><ref name="Cooper342" /><ref name="tis206">[[フランケル (競走馬)#サラブレッドインフォメーションシステム他2002|サラブレッドインフォメーションシステム他2002、206頁。]]</ref>。最優秀2歳牡馬による翌年の年度代表馬選出<ref>{{Cite web|和書|title=2011年カルティエ賞が決定、欧州年度代表馬にフランケル |url=https://p.keibabook.co.jp/news/detail/55433 |website=競馬ブック |access-date=2022-08-10}}</ref>、2年連続での年度代表馬選出{{Refnest|隔年で2度年度代表馬になった競走馬には、[[ウィジャボード (競走馬)|ウィジャボード]]と[[エネイブル]]がいる<ref>{{Cite web|和書|title=エネイブル、2度目のヨーロッパ年度代表馬に輝く(欧州)[その他] |url=https://www.jairs.jp/contents/newsprot/2019/44/1.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |access-date=2022-05-01}}</ref>。|group=注}}<ref>{{Cite web|和書|title=フランケル、2年連続の欧州年度代表馬が確実(欧州)[その他] |url=https://www.jairs.jp/contents/newsprot/2012/46/3.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |access-date=2022-05-01}}</ref>、同賞の五部門受賞{{Refnest|後述の功労賞「チーム・フランケル」を含めると六部門となる<ref name="yushun201301164"/>。|group=注}}<ref name="yushun201301164" />などは同賞史上初のことであった。また、年度代表馬選出の際、フランケルを除いた候補馬としては、2011年にはシリュスデゼーグル、[[ソーユーシンク]]、[[デインドリーム]]、[[ゴルディコヴァ]]らがおり<ref>{{Cite news|title=Frankel named horse of the year|url=https://www.bbc.com/sport/horse-racing/15740773|work=BBC Sport|access-date=2022-05-01|language=en-GB}}</ref>、2012年には[[キャメロット (競走馬)|キャメロット]]、シリュスデゼーグル、[[エクセレブレーション]]、[[ナサニエル (競走馬)|ナサニエル]]らがいた<ref>{{Cite web |url=https://www.bloodhorse.com/horse-racing/articles/124882/frankel-wins-cartier-horse-of-the-year-again |website=www.bloodhorse.com |access-date=2022-05-01 |title=Frankel wins Cartier Horse of the Year again}}</ref>。2012年には、本馬の調教師ヘンリー・セシルおよび生産者ジャドモントファームなどにも、「チーム・フランケル」としてカルティエ賞特別功労賞が贈られている<ref name="bbc4">{{Cite news|title=Frankel named horse of the year|url=https://www.bbc.com/sport/horse-racing/20320210|work=BBC Sport|access-date=2022-05-01|language=en-GB}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=2012年カルティエ賞【功労賞】 |url=https://p.keibabook.co.jp/news/detail/57360 |website=競馬ブック |access-date=2022-08-02}}</ref>。

このほか、{{仮リンク|馬主協会|en|Racehorse Owners Association}}からは2010年の最優秀2歳牡馬、2011年の最優秀3歳牡馬および年度代表馬、2012年の最優秀マイラーおよび最優秀中距離馬を受賞<ref name="Cooper341" /><ref name="Cooper342" />。また、タイムフォーム社の2010年の最優秀2歳牡馬、2011年の最優秀3歳牡馬および最優秀マイラー、2012年の最優秀古馬および最優秀中距離馬<ref name="Cooper341" /><ref name="Cooper342" />。レーシングポスト紙の2012年の平地年度代表馬<ref name="RacingPostAnnual2013140">[[フランケル (競走馬)#Racing Post Annual 2013.140-141|Racing Post Annual 2013. p.140]]</ref>。

2021年には、新たに創設された[[ブリティッシュ・チャンピオンズシリーズ名誉の殿堂]]の最初の選出者として、[[レスター・ピゴット]]騎手とともに列された<ref name="Hall of Fame">{{Cite web |title=Frankel first horse to be inducted into new Hall of Fame |url=https://juddmonte.com/post/frankel-first-horse-to-be-inducted-into-new-hall-of-fame/ |website=Juddmonte |date=2021-04-26 |access-date=2022-04-27 |archive-url=https://archive.ph/7ibM8 |archive-date=2022-4-27}}</ref><ref>{{Cite web |title=Lester Piggott and Frankel the first racing greats inducted into Hall of Fame {{!}} Horse Racing News {{!}} Racing Post |url=https://www.racingpost.com/news/lester-piggott-and-frankel-the-first-racing-greats-inducted-into-hall-of-fame/486363 |website=www.racingpost.com |access-date=2022-04-27}}</ref>。

=== ブリティッシュ・チャンピオンズスリーズへの影響 ===
[[ブリティッシュ・チャンピオンズシリーズ]]は、ロッド・ストリートの構想によってイギリスの平地競馬をさらに振興するために主要35競走の構成で2011年に発足した<ref name="Rushmer1982">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、198頁。]]</ref>。そして、これを締めくくるブリティッシュ・チャンピオンズデーは、[[凱旋門賞ウィークエンド]]やブリーダーズカップ開催に対抗する呼び物として期待された<ref name="Pennington121" />。その中でフランケルは、ブリティッシュ・チャンピオンズスリーズのこけら落としとなった2011年の2000ギニーを皮切りに、凱旋門賞やブリーダーズカップを回避して臨んだ2012年のチャンピオンステークスに至るまで、同シリーズの対象競走を9つ制した<ref name="Rushmer327" /><ref name="Pennington189">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.189]]</ref>。本馬はこの過程で多くの快挙を達成し、その旗印として開催の基礎を築いたとされる<ref name="Rushmer327" />。ロッド・ストリートの消費需要調査によると、一般市民がよく知る競走馬には[[レッドラム]]、[[デザートオーキッド]]、[[シャーガー]]などがいたが、フランケルは新しくこれに加わったのだという<ref name="Rushmer326">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、326頁。]]</ref>。

=== ローテーションに関する評価 ===
フランケルは現役時、[[イギリスの競馬|イギリス競馬]]の芝コース7ハロンから10ハロンまでの舞台以外で競走することはなかった<ref name="Timeform201327" /><ref name="bbc1" />。その結果、ヨーロッパのクラシック距離路線にあるダービー、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス、凱旋門賞などの有名な競走には出走していない<ref name="Timeform201327" />。もとより積極的に海外遠征を行う人物でないイギリスの調教師セシルが、加えて6年来の胃癌によって衰弱していたためにフランス遠征すら困難であったことも関係し、最長の輸送距離はニューマーケットからヨークまでの170マイルに留まった<ref name="Timeform201318">[[フランケル (競走馬)#Timeform2013|Timeform2013, p.18]]</ref>。

[[英国放送協会|BBC]]は、本馬と同じ2000ギニー馬でダービーと凱旋門賞も制した[[シーザスターズ]]を例に挙げ、フランケルの場合は出走した競走条件が幅広くないことから、本馬を真に偉大な競走馬とみなさないとする批評家の意見を紹介している<ref name="bbc1" />。

タイムフォームは、世界競馬の秋シーズンで権威のある凱旋門賞やブリーダーズカップに出走しなかったことに触れ、国際的な活躍が無かったことによって関係者の業績が低く評価されていると指摘した<ref name="Timeform201318" />。同社によれば、同時期には、1万500マイル離れたオーストラリアからアスコット競馬場に至りイギリスの一線級スプリンターと対決することで人気を博したブラックキャビアや、日本の[[中央競馬クラシック三冠|三冠]]を達成したうえでヨーロッパの最高賞金競走である凱旋門賞に出走して国際的な名声を求めた[[オルフェーヴル]]などがいる<ref name="Timeform201318" />。


=== ラビットに関する評価 ===
ブラッドホース紙のディック・パウエルは、本馬がラビットを必要とする競走馬であり、特にチャンピオンステークスではラビットのブレットトレインが対抗馬のシリュスデゼーグルを苦しませた点に触れて、「ラビットを用いることは勝利の助けになるかもしれないが、史上最高と評価される可能性を損なうものである」と指摘している<ref name="Powell20121026" />。

=== その他 ===
同馬の強さを表す異名として、「monster」<ref name="Pennington58" /><ref name="goda20110608" />「freak」<ref name="The Frankel Story">{{Cite web |title=The Frankel Story |url=https://web.archive.org/web/20121023101147/http://frankel.juddmonte.com/frankel-story/default.aspx |website=web.archive.org |date=2012-10-23 |access-date=2022-08-15}}</ref>「phenomenon」<ref name="bbc1" /><ref name="In-depth analysis
">{{Cite web |title=In Depth Analysis {{!}} Frankel - Juddmonte Stallion |url=https://stallions.juddmonte.com/stallion/frankel/in-depth-analysis |website=Stallions |access-date=2022-04-27}}</ref>などの表現が用いられることがある。日本語では一般的に「[[怪物]]」と呼ばれる<ref name="van" /><ref name="goda201744" /><ref name="Prosser58" />。

== 逸話 ==

=== 馬房へのこだわり ===
ウォーレンプレイスのフランケルは、入厩直後、セシルの自宅から数ヤード離れた「ハウス・バーン」という厩舎に入っていたが、不良な素行を見せたため、2週間経過すると「ガレージ」と呼ばれる厩舎に移された<ref name="Rushmer179" /><ref name="Rushmer180">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、180頁。]]</ref>。すると本馬は、内側を向けば僚馬を見ることが出来、外側に顔を出せば外界をよく観察できる同地の環境を非常に気に入った<ref name="Rushmer180" /><ref name="Cooper117">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.117]]</ref>。ただし、ガレージは決して環境が優れている馬房ではなく、またセシルの自宅から厩舎の様子を見ることが出来ないという問題があっため、2010年のロイヤルロッジステークスが終わった直後、本馬はウォーレンプレイスで最も優れた「メインヤード」と呼ばれる厩舎に移ることとなった<ref name="Rushmer180" /><ref name="Cooper115">[[フランケル (競走馬)#Cooper2021|Cooper2021, p.115]]</ref>。しかし、新居に移ったフランケルは同馬房への拒否反応を見せ、毎朝蹄鉄が外れた状態になっていたり、また馬房で旋回したり、扉を蹴る仕草を続けるなど、新しい環境に馴染む様子を一向に見せなかった<ref name="Rushmer181">[[フランケル (競走馬)#ラシュマー2020|ラシュマー2020、181頁。]]</ref>。結局、一週間を経過しないうちにフランケルはガレージの馬房に戻ることになり、そしてまもなく本馬は古巣で以前の平静さを取り戻した<ref name="Rushmer181" />。その後もフランケルは転厩に対しての不快感を示したため、最終的に、ウォーレンプレイスの本馬はずっとガレージに居住することになった<ref name="Rushmer182" />。

=== ブラックキャビアとの対戦の可能性 ===
2011年の世界競馬は、マイル路線でデビューから無敗の9連勝を達成したフランケルと、短距離路線でデビューから無敗の16連勝を達成した[[ブラックキャビア]]を中心に推移した<ref name="okuno2012320">[[フランケル (競走馬)#奥野2012|奥野2012、320頁。]]</ref><ref name="okuno201234">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2012年2月号34-35|『優駿』2012年2月号、34頁。]]</ref>。そして2012年シーズンを迎えると、両馬が連勝記録をどれほど伸ばすかという現実的な観点とともに、距離適性の異なる両馬が同年内に対決する空想的な可能性についても関心されるに至った<ref name="Pennington143" /><ref name="goda20120411">{{Cite web|和書|title=今季最大の関心事フランケルvsブラックキャヴィア |url=https://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=19831 |website=netkeiba.com |access-date=2022-08-08 |language=ja |publisher=[[netkeiba]] |author=[[合田直弘]]}}</ref>。2012年3月初旬のセシルは、フランケルの距離短縮による1400メートル戦での対決はありえないとしながらも、[[サセックスステークス]]にブラックキャビアが出走するなら受けて立つ旨を言及<ref name="goda20120411" />。これにはQIPCO社も反応し、両馬がともに出走した場合に同競走の賞金を30万ポンドから100万ポンドへと増額することを発表している<ref name="goda20120411" />。結局、サセックスステークスはブラックキャビアが不出走となり<ref name="Pennington155" />、また[[クイーンアンステークス]]でも両馬が同競走に出走する可能性がオーストラリアのメディアを中心に取り沙汰されたが、ブラックキャビアは[[ダイヤモンドジュビリーステークス]]に出走、この無敗対決は実現しなかった<ref name="yushun201204165">[[フランケル (競走馬)#『優駿』2012年4月号164-165|『優駿』2012年4月号、165頁。]]</ref><ref name="Pennington1582">[[フランケル (競走馬)#Pennington2012|Pennington2012, p.158]]</ref>。

=== その他 ===
* 競馬場の入場者数を20%以上増加させた<ref name="bbc3">{{Cite news|title=Frankel ends glorious career unbeaten|url=https://www.bbc.com/sport/horse-racing/19819948|work=BBC Sport|access-date=2022-04-28|language=en-GB}}</ref>。
* [[ジャマイカ]]のスプリンター・[[ウサイン・ボルト]]に準えられ<!-- この発想は少なくとも2000ギニー後からあったらしい https://www.bbc.com/sport/horse-racing/13757079の検索結果のキャプションは「Ascot ready for Frankel – the equine Usain Bolt」 -->、「ウサイン・[[コルト]]」と呼ばれた<ref name="bbc1">{{Cite news|title=Frankel - story of a wonder horse|url=https://www.bbc.com/sport/horse-racing/19948839|work=BBC Sport|accessdate=2022-04-08|language=en-GB|date=2012-10-20|archive-url=https://archive.ph/wip/yJbwU|archive-date=2022-4-27}}</ref>。同時期に同じく距離延長に挑戦したことも比較された<ref>{{Cite news|title=Frankel, the 'Usain Bolt' of horse racing wins again - CBBC Newsround|url=https://www.bbc.co.uk/newsround/19347971|access-date=2022-04-28|language=en-GB}}</ref>。
* この引退戦の前後には「1億ポンドの価値がある奇跡の馬」と称され、イギリスの一般紙の一面に取り上げられ<ref name="Prosser58" />、[[NBC]]、[[CNN]]、[[ESPN]]、[[アルジャジーラ]]などの放送局が放送した<ref name="Prosser60" />。
* 種牡馬入りのために厩舎を離れるにあたって、[[ロイズ]]の普通保険市場がフランケルのリスクを引き受けることができないことが判明するなど、そのあまりの評価額の高さのために保険市場が混乱した<ref>{{Cite web|和書|title=フランケルの評価額の高さに保険市場が混乱(イギリス)[その他] |url=https://www.jairs.jp/contents/newsprot/2012/51/3.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |accessdate=2022-04-08}}</ref>。
* 2013年夏に実施された[[ファン]]の訪問ツアーで、亡きセシルの遺志に沿って約3000ポンド(約48万円)の[[寄付]]を集めた<ref>{{Cite web|和書|title=フランケル、慈善活動に貢献(イギリス)[その他] |url=https://www.jairs.jp/contents/newsprot/2013/41/2.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |accessdate=2022-04-08}}</ref>
* 2020年、バーチャルG1競走の「グレーテスト・エバー・コックスプレート」でフランケル号が優勝。この結果は物議を醸した<ref>{{Cite web|和書|title=ディープインパクトが12着? 夢のバーチャルGI開催で日本馬の活躍が見られるか(片山良三) |url=https://number.bunshun.jp/articles/-/846177 |website=Number Web - ナンバー |access-date=2022-11-16 |language=ja |archive-url=https://archive.ph/OrBV0 |archive-date=2022-11-14}}</ref><ref>{{Cite web |title='Frankel has beaten Secretariat!' - virtual Cox Plate result upsets home fans |url=https://www.racingpost.com/news/and-its-frankel-from-secretariat-virtual-cox-plate-proves-a-thriller/456039 |website=www.racingpost.com |access-date=2022-11-16 |archive-url=https://archive.ph/Zlcn1 |archive-date=2022-11-14}}</ref>。


== 血統表 ==
== 血統表 ==
{{競走馬血統表
{{競走馬血統表
|name = フランケル
|name = フランケル
|inf = ([[サドラーズウェルズ系]] / Northern Dancer 3×4=18.75%、Natalma4×5・5=12.50%、Buckpasser5×5=6.25%)
|f = [[ガリレオ (競走馬)|Galileo]]<br />1998 鹿毛
|f = [[ガリレオ (競走馬)|Galileo]]<br />1998 鹿毛
|m = Kind<br />2001 鹿毛
|m = [[カインド (競走馬)|Kind]]<br />2001 鹿毛
|ff = [[サドラーズウェルズ|Sadler's Wells]]<br />1981 鹿毛
|ff = [[サドラーズウェルズ|Sadler's Wells]]<br />1981 鹿毛
|fm = [[アーバンシー|Urban Sea]]<br />1989 栗毛
|fm = [[アーバンシー|Urban Sea]]<br />1989 栗毛
|mf = *[[デインヒル|Danehill]]<br />1986 鹿毛
|mf = *[[デインヒル]]<br />1986 鹿毛
|mm = Rainbow Lake<br />1990 鹿毛
|mm = Rainbow Lake<br />1990 鹿毛
|fff = '''[[ノーザンダンサー|Northern Dancer]]'''
|fff = '''[[ノーザンダンサー|Northern Dancer]]'''
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|mmff = [[ブラッシンググルーム|Blushing Groom]]
|mmff = [[ブラッシンググルーム|Blushing Groom]]
|mmfm = I Will Follow
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|mmmf = Stage Door Johnny
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|mmmm = Rock Garden [[ファミリーナンバー|F-No]].[[1号族|1-k]]
|mmmm = Rock Garden
|inbr=Northern Dancer 3×4=18.75%、Natalma 4×5・5=12.50%、[[バックパサー|Buckpasser]] 5×5=6.25%|mlin=[[サドラーズウェルズ系]]|ref1=<ref name="ped">{{Cite web|和書|title=血統情報:5代血統表|Frankel(GB)|JBISサーチ(JBIS-Search) |url=https://www.jbis.or.jp/horse/0001161935/pedigree/ |website=www.jbis.or.jp |access-date=2022-04-27}}</ref>|ref3=<ref name="hiraide201916"/>|ref4=<ref name="ped"/>|FN=[[1号族|1-k]]|flin=Circassia系}}
}}


=== 血統背景 ===
=== 血統背景 ===
*父[[ガリレオ (競走馬)|ガリレオ]]は競走馬として英愛両ダービーとキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスを制し、種牡馬としても11年連続を含む12回ヨーロッパのリーディングサイアーを獲得<ref>{{Cite web |title=In Depth Analysis {{!}} Frankel - Juddmonte Stallion |url=https://archive.ph/fq7A0 |website=archive.ph |date=2022-04-27 |access-date=2022-04-27}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=ガリレオ(Galileo) {{!}} 競馬データベース |url=https://world.jra-van.jp/db/horse/202605/ |website=JRA-VAN ver.World |access-date=2022-04-27 |language=ja |archive-url=https://archive.ph/wip/QnSSL |archive-date=2022-4-27}}</ref>。マイル前後から長距離まで様々な距離でのG1ウィナーを輩出している。[[ノーザンダンサー]]による[[奇跡の血量]]を生ずる[[デインヒル]]牝駒との配合は[[ニックス (競馬)|ニックス]]{{Refnest|同配合の産駒による[[アーニングインデックス]]が、父ガリレオおよび母父デインヒル単体によるものを上回っている<ref>{{Cite web |url=http://www.equineline.com/Free-5X-Pedigree.cfm/=Frankel%20(GB)?page_state=VERIFY&reference_number=8333732&registry=T&horse_name==Frankel%20(GB)&dam_name==Kind%20(IRE)&foaling_year=2008&include_sire_line=Y&include_truenick=Y&CFID=151628735&CFTOKEN=c053b0befd97c4b4-2E686755-5056-BE2F-78E5F005373C7FBB |website=www.equineline.com |access-date=2022-04-27 |title==Frankel (GB)}}</ref>。|group=注}}で、同父中で最も多くの勝ち馬を輩出し<ref>{{Cite web |title=Galileo {{!}} Nicks |url=https://www.racingpost.com/profile/horse/531769/galileo/nicks |website=www.racingpost.com |access-date=2022-04-27 |publisher=[[レーシング・ポスト|Racing Post]]}}</ref>、フランケルのほかに複数のG1馬がいる<ref>{{Cite web|和書|title=ガリレオ、G1優勝産駒84頭でデインヒルの記録に並ぶ(国際)【生産】 |url=https://www.jairs.jp/contents/w_news/2019/11/2.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |access-date=2022-04-28}}</ref>。
*父ガリレオは競走馬として英愛両ダービーとKGVI&QESを制し、種牡馬としても6年連続を含む7回英愛リーディングサイアーを獲得。マイル前後から長距離まで様々な距離でのG1ウィナーを輩出している。
*母[[カインド (競走馬)|カインド]]は5から6ハロンの準重賞を2勝したスプリンターで、牡駒5頭は全て種牡馬入りしている<ref name="jairs20210311">{{Cite web|和書|title=フランケルの母、優良牝馬カインドが20歳で死亡(イギリス)[生産] |url=https://www.jairs.jp/contents/newsprot/2021/9/3.html |website=公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル |accessdate=2022-04-08}}</ref><ref name="In-depth analysis2">{{Cite web |title=In Depth Analysis {{!}} Frankel - Juddmonte Stallion |url=https://stallions.juddmonte.com/stallion/frankel/in-depth-analysis |website=Stallions |access-date=2022-04-27}}</ref>。フランケルは母の第2子。
*母Kindは5〜6ハロンの準重賞を2勝。本馬は母の第2子。
**半兄Bullet Train(Sadler's Wells)は母の第1子で、2010年の[[ダービートライアルステークス]] ([[イギリス|英]]G3) 勝ち馬。フランケルとは同馬主・同厩で、クイーンエリザベス2世ステークス以降すべてのフランケルのレースでペースメーカーをつとめた。同じタイミングで引退し、アメリカで種牡馬となった。
**半兄ブレットトレイン(:サドラーズウェルズ)は母の第1子で、2010年の[[ダービートライアルステークス]] ([[イギリス|英]]G3) 勝ち馬。フランケルとは同馬主・同厩で、クイーンエリザベス2世ステークス以降すべてのフランケルのレースでペースメーカーをつとめた<ref name="Bullet Train" />。同じタイミングで引退し、種牡馬として当初アメリカ、その後アイルランド繋養され<ref name="jairs20210311" />
**全弟[[ノーブルミッション]](Noble Mission)は母の第3子で、2014年の[[タタソールズゴールドカップ]]([[アイルランド|愛]]G1)、[[サンクルー大賞]]([[フランス|仏G1]]、2着からの繰り上がり)、[[チャンピオンステークス]](フランケルとの兄弟制覇)のG13勝を含む重賞6勝。
**全弟[[ノーブルミッション]](Noble Mission)は母の第3子で、2014年の[[タタソールズゴールドカップ]]([[アイルランド|愛]]G1)、[[サンクルー大賞]]([[フランス|仏]]G1、2着からの繰り上がり)、[[チャンピオンステークス]](フランケルとの兄弟制覇)のG13勝を含む重賞6勝<ref>{{Cite web |title=Noble Mission {{!}} Race Record & Form |url=https://www.racingpost.com/profile/horse/790331/noble-mission/form |website=www.racingpost.com |access-date=2022-04-27 |publisher=[[レーシング・ポスト|Racing Post]]}}</ref>
*2代母Rainbow Lakeはランカシャーオークス(英G3)勝ち馬。産駒にKindのほか、その半兄にタターソールズゴールドカップと[[アーリントンミリオン]]([[アメリカ合衆国|米]]G1)の中距離芝G1を2勝し、[[2004年]]の[[ジャパンカップ]]にも出走した(10着)パワーズコート(父:Sadler's Wells)
*2代母レインボーレイクはランカシャーオークス(英G3)勝ち馬<ref name="hiraide201917">[[フランケル (競走馬)#平出2019|平出2019、17頁。]]</ref>。産駒にカインドのほか、その半兄にタターソールズゴールドカップと[[アーリントンミリオン]]([[アメリカ合衆国|米]]G1)の中距離芝G1を2勝し、[[2004年]]の[[ジャパンカップ]]にも出走した(10着)パワーズコート(父:サドラーズウェルズ)<ref>{{Cite web |title=Powerscourt {{!}} Race Record & Form |url=https://www.racingpost.com/profile/horse/566435/powerscourt/form |website=www.racingpost.com |access-date=2022-04-27 |publisher=[[レーシング・ポスト|Racing Post]]}}</ref>
*[[1号族|1-k]]に属する同[[ファミリーライン|牝系]]の競走馬には、6代母サーカシアを共有するものに1987年の英愛2000ギニー馬{{仮リンク|ドントフォゲットミー (競走馬)|en|Don't Forget Me (horse)|label=ドントフォゲットミー}}、1997年の愛二冠馬[[デザートキング]]などがいる<ref name="hiraide201917" /><ref name="hiraide201916">[[フランケル (競走馬)#平出2019|平出2019、16頁。]]</ref>。このほか、7代母サモワールを共有するものに[[ムトト]]<ref name="hiraide201916" />、9代母ジョージアを共有するものに[[ハービンジャー]]などがいる<ref>{{Cite web|和書|title=血統情報:5代血統表|ハービンジャー(GB) |url=https://www.jbis.or.jp/horse/0001115148/pedigree/ |website=www.jbis.or.jp |access-date=2022-04-27 |publisher=JBISサーチ}}</ref>。
*1-kに属する同牝系(9代母Georgiaを共有)には、[[ドントフォーゲットミー]]、[[デザートキング]]、[[ムトト]]、[[ハービンジャー]]などの活躍馬がいる。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
=== 注釈 ===
<references group="注" />
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=== 出典 ===
=== 出典 ===
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==

* {{Cite web
=== 書籍 ===
|author =
* {{Cite book|和書|title=海外競馬完全読本|author=サラブレッドインフォメーションシステム|author2=石川ワタル|author3=奥野庸介|author4=[[合田直弘]]|publisher=[[東邦出版]]|date=2002-4-10|ref=サラブレッドインフォメーションシステム他2002|isbn=978-4809402616}}
|url = http://www.racingpost.com/horses/horse_home.sd?horse_id=763453
* {{Cite book|和書|title=覚えておきたい世界の牝系100|date=2019-10-31|year=2019|publisher=[[主婦の友社]]|author=平出貴昭|ref=平出2019|isbn=978-4073411499}}
|title = Horse Frankel
* {{Cite book|和書|title=競馬の世界史 - サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで|date=2016-8-25|year=2016|publisher=[[中央公論社]]|author=[[本村凌二]]|isbn=9784121023919|ref=本村2016}}
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* {{Cite book|和書|title=凱歌 - ヘンリー・セシル 公式バイオグラフィー|year=2020|date=2020-3|author=トニー・ラシュマー|translator=合田直弘|publisher=日本競走馬協会|ref=ラシュマー2020|isbn=}}
|publisher = RACING POST.com
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|language = 英語
* {{Cite book|洋書|title=Frankel: The Greatest Racehorse of All Time and the Sport That Made Him|date=2021|publisher=WILLIAM COLLINS|author=Simon Cooper|language=en|isbn=978-0008307073|ref=Cooper2021}}
|accessdate = 2010年10月16日
* {{Cite book|洋書|title=Frankel: The Wonder Horse|year=2012|editor=Andrew Pennington|publisher=[[レーシングポスト|racing post]]|language=en|ref=Pennington2012|isbn=978-1908216632}}
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* {{Cite book|洋書|title=Modern Greats: A Timeform Racing Publication|date=2013-12-14|year=2013|author=[[タイムフォーム|Timeform]]|publisher=Portway Press Ltd|language=en|ref=Timeform2013|isbn=978-1901570922}}
* {{Cite web

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=== 雑誌記事 ===
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|title = Frankel
*{{Cite journal|和書|author=石川ワタル|year=2011|title=[ワールド・レーシング・ニュース] 英2000ギニー、ほか|journal=優駿|issue=2011年6月号|pages=140-141|publisher=中央競馬ピーアール・センター|ref=『優駿』2011年6月号140-141}}
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*{{Cite journal|和書|author=石川ワタル|year=2011|title=[ワールド・レーシング・ニュース] 2011カルティエ賞発表、ほか|journal=優駿|issue=2012年1月号|pages=140-141|publisher=中央競馬ピーアール・センター|ref=『優駿』2012年1月号140-141}}
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*{{Cite journal|和書|author=石川ワタル|year=2012|title=[ワールド・レーシング・ニュース] 2012年世界競馬の見どころ、ほか|journal=優駿|issue=2012年4月号|pages=164-165|publisher=中央競馬ピーアール・センター|ref=『優駿』2012年4月号164-165}}
|accessdate = 2010年10月16日
*{{Cite journal|和書|author=石川ワタル|year=2012|title=[ワールド・レーシング・ニュース] 英インターナショナルS、ほか|journal=優駿|issue=2012年10月号|pages=164-165|publisher=中央競馬ピーアール・センター|ref=『優駿』2012年10月号164-165}}
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*{{Cite journal|和書|author=石川ワタル|year=2012|title=[ワールド・レーシング・ニュース] 英チャンピオンS、ほか|journal=優駿|issue=2012年12月号|pages=164-165|publisher=中央競馬ピーアール・センター|ref=『優駿』2012年12月号164-165}}
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*{{Cite journal|和書|author=奥野庸介|year=2012|title=[欧州のマイル王者と、豪州のスプリント女王]フランケル&ブラックキャビア デビューから無傷の連勝街道をひた走る|journal=[[優駿]]|issue=2012年2月号|pages=34-35|publisher=[[中央競馬ピーアール・センター]]|ref=『優駿』2012年2月号34-35}}
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*{{Cite journal|和書|author=[[平松さとし]]|year=2011|title=[クローズアップ]矢作芳人調教師の挑戦と使命感 グランプリボスがセントジェームズパレスS(英{{GI}})に出走|journal=優駿|issue=2011年8月号|pages=74-75|publisher=中央競馬ピーアール・センター|ref=『優駿』2011年8月号74-75}}
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*{{Cite journal|洋書|editor=Nick Pulford|year=2012|date=2012-11-08|journal=Racing Post Annual 2013|publisher=Racing Post|ref=Scott2012|isbn=978-1908216250|first=Brough|last=Scott|pages=12-22|title=Frankel: The story of Sir Henry Cecil's wonder horse at the end of his perfect 14-race career}}
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

[[無敗馬一覧]]
* [[無敗馬一覧]]


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* {{競走馬成績|netkeiba=000a01239b|jbis=0001161935|racingpost=763453}}
* {{競走馬成績|netkeiba=000a01239b|jbis=0001161935|racingpost=763453|racingpostname=frankel}}


{{カルティエ賞年度代表馬}}
{{カルティエ賞年度代表馬}}
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270行目: 848行目:
[[Category:イギリス調教の競走馬]]
[[Category:イギリス調教の競走馬]]
[[Category:イギリス供用種牡馬]]
[[Category:イギリス供用種牡馬]]
[[Category:競馬殿堂]]

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フランケル
2012年8月22日 ヨーク競馬場
現役期間 2010年 - 2012年[1]
欧字表記 Frankel[2]
品種 サラブレッド[3]
性別 [3]
毛色 鹿毛[3]
白斑 [4]
四白[4]
生誕 2008年2月11日(16歳)[2]
Galileo[2]
Kind[2]
母の父 Danehill[2]
生国 イギリスの旗 イギリス[2]
生産者 Juddmonte Farms Ltd[2]
馬主 Khaled Abdullah[2]
調教師 Sir Henry R. A. CecilUK[2]
調教助手 Dan de Haan[5]
→Shane Fetherstonhaugh[5]
厩務員 Sandeep Gauravaram[6]
装蹄師 Stephen Kielt[7]
競走成績
タイトル カルティエ賞
最優秀2歳牡馬(2010年)[8]
最優秀3歳牡馬(2011年)[8]
最優秀古馬(2012年)[9]
年度代表馬(2011年・2012年)[8][9]
英競馬殿堂(2021年選出)[10]
生涯成績 14戦14勝[2]
獲得賞金 2,998,301ポンド[2]
WTR

TR
M136 / 2011年[11]
M140 - I140 / 2012年[12]
133p / 2010年[13]
143 / 2011年[13]
147 / 2012年[13]
勝ち鞍
G1 デューハーストS 2010年
G1 2000ギニー 2011年
G1 セントジェームズパレスS 2011年
G1 サセックスステークス 2011年・2012年
G1 クイーンエリザベスII世S 2011年
G1 ロッキンジステークス 2012年
G1 クイーンアンS 2012年
G1 インターナショナルS 2012年
G1 チャンピオンS 2012年
G2 ロイヤルロッジS 2010年
G3 グリーナムステークス 2011年
繁殖成績
タイトル 英愛リーディングサイアー(2021年・2023年)[14]
仏リーディングサイアー(2022年)[14]
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フランケル(欧字名:Frankel2008年2月11日 - )は、イギリス競走馬種牡馬である[2]

概要

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競走馬として、G1競走10勝を含む14戦14勝の生涯成績を残し、2年連続でヨーロッパ年度代表馬となった[15]。2着馬につけた着差の合計は76馬身1/4に及び[15]、特に2012年のクイーンアンステークスおよびインターナショナルステークスの圧勝は、ワールドサラブレッドランキング[注 1]で史上最高の評価を受けている[16]。クイーンアンステークスの勝利は、タイムフォームレーティングにおいても平地競馬史上最高の評価である[17][18]

主な勝ち鞍は2010年デューハーストステークス2011年2000ギニーセントジェームズパレスステークスサセックスステークスクイーンエリザベス2世ステークス2012年ロッキンジステークス、クイーンアンステークス、サセックスステークス、インターナショナルステークス、チャンピオンステークス[3]カルティエ賞では2011年・2012年度代表馬のほか、2010年最優秀2歳牡馬、2011年最優秀3歳牡馬、2012年最優秀古馬を受賞した[8][9]

種牡馬としても成功し、産駒のクラックスマンクアドリラテラルインスパイラルがカルティエ賞を受賞。ソウルスターリングJRA賞を受賞。また、アダイヤーダービーを優勝、アルピニスタ凱旋門賞を優勝している。イギリスアイルランドリーディングサイアー(2021年)[14][19]

生い立ち

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誕生

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2008年2月11日午後11時40分、イギリスニューマーケットの近郊、ハーリド・ビン・アブドゥッラー率いる組織ジャドモントファームのヨーロッパにおける生産拠点であるバンステッドマナースタッドで生まれる[20][21][22]。バンステッドマナーの場長サイモン・モックリッジによると、「驚くぐらいバランスの良い体」をしていて、「生まれた瞬間から、既に生後1週間が経過した馬」のようだったという[21]。アブドゥッラーのレーシングマネージャーを務めるグリムソープは、本馬について「生まれて間もない頃から、これは特別な馬であると私たちは思っていました」と振り返っている[23]

父は、現役時代エプソムダービーアイリッシュダービーという2か国のダービーおよびキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスに勝ったクールモア種牡馬ガリレオ[24]。大種牡馬サドラーズウェルズの後継種牡馬として後にイギリス・アイルランドリーディングサイアーに計12回就き、ヨーロッパ州最高の種牡馬と認識されるようになるガリレオだが、フランケルの世代のために交配が行われた2007年春の時点では、その初年度産駒が4歳を迎えたばかりであったために、すでに複数の活躍馬[注 2]を出していたものの、その評価は定まっていなかった[21][26]

母は、現役時代リステッド競走を2勝したジャドモント繁殖牝馬カインド[24]。1983年、アブドゥッラーがアメリカ合衆国の生産者ジャック・ホイットニーから複数の繁殖牝馬を直接交渉で購入し、リングフィールドオークストライアル英語版2着の実績を持つステージドアジョニー英語版牝駒のロックフェストも繁殖牝馬としてジャドモントへ渡ると、これから3代先のフランケルにも及ぶジャドモントにおける同馬の牝系が始まった[27][28][29]。ロックフェストがレインボウクエストと交配されて1990年に生産した牝馬レインボウレイクは、現役時は調教師ヘンリー・セシルに手掛けられて1993年のランカシャーオークス英語版を勝利し、その後繁殖入りすると、サドラーズウェルズと交配されて2000年にG1競走2勝馬パワーズコート英語版を、さらにデインヒルと交配されて翌2001年に牝馬カインドを生産した[24][30]。カインドは現役時に気性難を抱えながら短距離で競走したスプリンターで、繁殖入り後は初めサドラーズウェルズと交配されて2007年にブレットトレインを、そしてガリレオと交配されると2008年に本馬を生産した[27][28][30]。競走馬としてのフランケルは、母カインドや母父デインヒルからスピードや気性を受け継いだとされる[31][32]

育成期

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2008年生まれの「カインドの牡馬」[33]は、当歳時、1年の大半をアイルランドで過ごした[34]。2008年3月7日、再びガリレオと交配される母カインドとともにクールモアのレイクビューヤードへ渡り、5月12日にはジャドモントのニューアビースタッドに移った[35][36]。これ以後、本馬はジャドモントの擁する約170頭の仔馬の中でトップクラスの成績を残すことになる[37]。病気や怪我などの問題が無かったため、スタッフの間では手のかからない印象があったという[38]

同年6月25日にはイギリスに戻ってバンステッドマナースタッドで6週間を過ごし、その間の7月17日、生後5か月を迎えた本馬はカインドからの離乳が行われた[21][36][39]。9月17日には再びアイルランドに渡り、ニューアビースタッドで育成された[21][40]。アブドゥッラーのマネージャーであるロリー・メイホンは、歩様、脚元、気性のいずれにも優れた本馬を高く評価し、1から10までの値で与えられるジャドモントの仔馬の評価において「7++」[注 3]の査定を与えた[38][41]。11月になるとニューアビーが満員となったため、優れた25頭の若駒が収められるグリーンフィールドヤードに移された[42]

所有者の決定

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ハーリド・ビン・アブドゥッラーの勝負服

1歳を迎えるまでの「カインドの牡馬」は、基本的にジャドモントによって育成されたにもかかわらず、実際には所有者が確定されていない状態であった[43]

本馬の誕生を導いたガリレオとカインドの交配の背景には、クールモアとジャドモントという、ヨーロッパ競馬界におけるトップグループ同士による生産上のフォール・シェアの契約があった[25][27][23]。それはジャドモントの繁殖牝馬を、クールモアの優れた種牡馬と交配し、生まれた仔馬達を両者で分け合うというものであり、ジャドモントの繁殖牝馬カインドはその10頭の内の1頭として、クールモアの種牡馬ガリレオと交配されたのである[27]。どの仔馬をどちらが所有するかは、両者が順番に好きな馬を選択していく形で決められており、これによって実際に生産された7頭のうち、両グループにとって第一優先指名であった本馬は、同年に最初の選択権を持っていたジャドモント側に所有されることが決まった[27][44]

2009年4月21日、本馬はアイルランドのフェランズに移り、より発展的な育成が行われた[36][45]。同年9月9月には1歳馬としての騎乗馴致が始まり、10月頃には競走への意欲を示し始めたという[23][36]。ただし、この時点でも本馬の見せる気性は平静なものであった[38]

入厩

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調教拠点をウォーレンプレイスに置く調教師のヘンリー・セシルは、1976年から93年までにイギリスのチャンピオントレーナーの地位に10度就くなど活躍した人物であったが、ゴドルフィンシェイク・モハメドと決別して21世紀を迎えると、その成績は下降の一途を辿り、2005年には年間勝利が12勝となるまで低迷、さらに2006年からはとの闘病生活を送っていた[46][47][48]。しかしこの困難な時期にも、アブドゥッラーとニアルコスファミリーによる二つの大きな生産組織は彼を支援していた[49]

当時アブドゥッラーの所有馬を手掛けていた調教師としては、ほかにマイケル・スタウトアンドレ・ファーブルジョン・ゴスデンダーモット・ウェルドなどがいたが、アブドゥッラーは、トゥワイスオーヴァー英語版ミッデイなどを管理して復調の兆しを見せていたセシルのもとに本馬を預託することを決定、かくして「カインドの牡馬」は、2010年1月14日にセシル厩舎へ入厩した[50][51]。厩舎の装蹄師はスティーヴン・キールトである[52]。そしてアブドゥッラーは、収得賞金の面でもG1競走勝利の面でも最も自らに貢献していたアメリカ合衆国の名調教師ロバート・フランケルが2009年11月に死亡したことを受けて、当時ジャドモントの同世代で最も優れていたこの仔馬に対してフランケル(Frankel)という、後年にグリムソープの振り返るところによれば、不確実性の高い競馬において「なかなかに勇気ある命名」[51]を行ったのである[53]

厩舎のフランケルは、すでにデビュー勝ちを収めていた3歳馬ブレットトレインの半弟としても注目された[51]。しかし、これまで気性難を見出されなかった本馬は、入厩すると早い段階で旺盛な「行く気」を発揮し、無理に抑えようとすると制御が効かなくなるという強情なところを見せた[38][54]。このため騎乗技術に優れたダン・デ・ハーンが指名されて乗り込まれることになり、セシルの方針のもとで調教を段階的に積まれていった[54][55]

競走馬時代

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2歳時(2010年)

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未勝利戦

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映像外部リンク
2010年未勝利戦 Juddmonte

2010年にクラシックトライアルを制した半兄のブレットトレインによっても知られていた2歳新馬のフランケルは、デューハーストステークスレーシングポストトロフィーダービーステークスに登録された後、同2010年の8月13日、ニューマーケット競馬場のジュライコースで行われる1マイルのメイドン(未勝利戦)でトム・クウィリー騎手を鞍上にデビューした[56]。フランケルは、これを控えた追い切りで3歳馬[注 4]に対して持ったまま20馬身先着する圧巻の内容を見せ、これによって本馬が1番人気に支持された[57][58]。本馬の単勝人気が7対4(2.75倍)と、圧倒的な支持に至らなかった理由は、ジョン・ゴスデン調教師の新馬ナサニエルも同競走に出走していたからであり、そのナサニエルが3対1(4倍)で2番人気、続いてジーニアスビーストとドルトムントが15対2(8.5倍)の3番人気で並んだ[58][59]。降り続いた雨によってSoft(重)まで悪化した馬場状態のなか、競走が始まるとまずドルトムントが緩いペースで馬群を先導し、やがて数頭が追い出されるにつれてペースが上がりだした[58][60]。残り2ハロン地点に入ってナサニエルとその後方にいるフランケルも追い出されると、優勝争いは2頭の勝負となり、残り1ハロン地点で先頭に立ったフランケルが、最後まで食い下がったナサニエルを1/2馬身差抑えて勝利した[60][61]

同競走の相手関係は一般的なデビュー戦の水準を超えるもので、2着馬ナサニエルは後に勝ち上がってキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスエクリプスステークスに優勝し、またナサニエルから5馬身離された3番人気の3着馬ジーニアスビーストも翌年のクラシックトライアルを勝利している[62]ほか、8番人気の11着馬は後のゴールドカップ勝ち馬カラーヴィジョンであった[21][59]。競走後、セシルは「このまま順調にいって欲しいし、もっと良くなってもらいたい」と発言した[63]

条件戦

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2010年フラックウィットルパートナーシップ条件ステークス Juddmonte
フランクウィットルパートナーシップ条件ステークス

デビュー勝ちを収めたフランケルの目標には、9月のアスコット競馬場で行われるG2競走ロイヤルロッジステークス英語版が据えられた[64]。若駒に大きな負担を掛ける方針を取らないセシルは、段階的に競走の経験を積ませるため、ドンカスター競馬場のセントレジャーフェスティバルの3日目であり、ロイヤルロッジステークスを2週間前に控えた2010年9月10日、7ハロン戦のフランクウィットルパートナーシップ条件ステークスに本馬を出走させた[65][64][66]。4頭立てという少頭数のなか、フランケルが1対2(1.5倍)の1番人気に支持され、1戦1勝のゴドルフィンの素質馬ファー英語版が対抗の2番人気となったが、ファーはゲートで暴れて発走除外となったため、さらに相手関係の易しい3頭立てで行われることになった[66][67][68]。アスコットのG2競走を意識して、先頭に立つ競馬を行わないようにと指示されていたクウィリーの騎乗のもと、フランケルは逃げるダイアモンドジーザーの2番手を緩やかに追走し、残り1ハロン辺りから後続を引き離すと、最後はほとんど馬なりのまま2着馬レインボースプリングス[注 5]に13馬身の大差を付けて優勝した[67][68][70]

競走後のセシルは「私にとっても、彼ほどの将来性を持った2歳馬に巡り合ったのは久しぶりのことです」と述べ、「特別な馬になる可能性があります。でも、特別な能力を既に発揮したわけではありません」と付言した[71][70]

ロイヤルロッジステークス

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2010年ロイヤルロッジステークス Juddmonte

2010年9月25日、フランケルはアスコット競馬場の周回コースで行われるロイヤルロッジステークスに出走し、他にも素質馬が出走した5頭立てのなかで30対100(1.3倍)の一番人気に支持された[72][73]。発走すると、本馬は前半の1/2マイルを最後方の位置で追走し、クウィリーによって馬群の外に持ち出されると、ほとんど持ったままで数完歩の間に他馬を抜き去って先頭に立ち、直線に入ると差を広げる一方の競馬となり、最後は2着馬クラマー[注 6]に10馬身、3着のトレジャービーチ英語版[注 7]には11馬身の差を付けて優勝した[72][73][74]

競走後のクウィリーは本馬を「モンスター」と評し[75]、この勝利には競馬関係者からも高評価が相次いだ[注 8]。セシルは妻ジェーンに対して本馬こそ「自分が手掛けた最強馬」であるとの見解を打ち明けたが、競馬記者たちに対しては「これほどの2歳馬を手掛けるのは、1975年の2歳チャンピオンでその後2000ギニーを制したウォロー以来である」という言及に留めた[76][75]。レーティングは、過去20年間の同競走優勝に対するものとしては1994年のエルティッシュ(121)を凌ぐ最高評価の123ポンドとなり、後のダービー馬ベニーザディップ(113)や2000ギニー馬ミスターベイリーズ英語版(115)の当時における評価も大きく上回った[78]

本馬はこの3連勝によって「怪物」として話題になり、早くも翌年の2000ギニー、ダービーの前売りで一番人気となった[75][77]。競馬ジャーナリストのリー・モターズヘッドやトニー・ラシュマーは、本馬が同競走で見せた走りを、1991年のブリーダーズカップ・ジュヴェナイルアラジが見せた大捲りに例えている[76][75]

デューハーストステークス

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2010年デューハーストステークス Juddmonte

ロイヤルロッジステークスの後のセシルは、フランケルの終盤シーズンの目標をレーシングポストトロフィーとデューハーストステークスとの両にらみであるとしていたが、最終的にデューハーストステークスに出走することを表明した[79][80]

ヨーロッパ2歳路線の最重要競走に位置づけられるデューハーストステークスには、一躍注目の的となったフランケルに加えて、9馬身差で圧勝したミドルパークステークスなど3戦3勝のドリームアヘッド、ゴドルフィンに「ペガサス」と称されたシャンペンステークスなど2戦2勝のサーミッドが出走、無敗馬3頭の対決に大いに注目が集まり、レーシングポスト紙はこれを「世紀の2歳戦」[81][82]と称した[83][84]。人気順は、調教で3歳馬[注 9]に10馬身差先着する内容を見せたフランケルが4対6(約1.67倍)で1番人気、出走馬中唯一のG1馬ドリームアヘッドが5対2(3.5倍)で2番人気、サーミッドが7対1(8倍)で3番人気となり、以下25対1(26倍)の4番人気ロデリックオコナー英語版などが続いた[84][86][87]

発走すると、フランケルは序盤に両脇の馬に寄られて衝突する不利を受け、最後方の位置取りとなった[88][89]。そしてこれまでの落ち着きを失い、行きたがる素ぶりを見せたため、鞍上クウィリーは馬群の右後方で本馬をなだめることを余儀なくされた[90][91][92]。残り2ハロン地点でクウィリーが手綱を緩めると、これに応じて脚を伸ばした本馬は、馬群を先導していたロデリックオコナーとの距離を急速に詰めた[92][91]。ライバル2頭が伸びあぐねる中、残り1ハロン地点でフランケルが先頭に立って抜け出すと、右によれる走りを見せながらも、最後まで一度も鞭が入ることなくロデリックオコナーに2馬身1/4差を付けて優勝した[93][94][95]。勝ち時計の1分25秒73は、同日に行われたチャレンジステークスより0秒31速い好時計であった[94][86]。セシルは、発馬後の不利とスローペースが無ければ、より印象的な勝利になったかもしれないと言及し[96]、またその翌日には、本馬のダービー出走の可能性は「50%以下」であると表明した[97]

サーミッドおよびドリームアヘッドの凡走や、1勝馬ロデリックオコナーの入着などによって、当初発表されたフランケルの同競走優勝によるレーティングは、前走のロイヤルロッジステークスの勝利を1ポンド上回ったものの、ミドルパークステークスを勝った時のドリームアヘッド(126)よりも2ポンド低い124ポンドの評価に留まった[98][99]。その後、同競走の2着馬ロデリックオコナーは同年のクリテリウムアンテルナシオナル、翌年のアイリッシュ2000ギニーを制しており[100]、ドリームアヘッドも翌年のジュライカップスプリントカップフォレ賞に優勝している[101]

最優秀2歳牡馬とレーティング

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このシーズンを4戦4勝で終えたフランケルは、ロデリックオコナーがクリテリウムアンテルナシオナルを勝つとさらに評判を高め[102]、11月16日、ヨーロッパの年度代表表彰である第20回カルティエ賞で最優秀2歳牡馬に選出された[103]タイムフォーム誌のレイティングでは133ポンドという、1990年以降ではケルティックスウィング(138)、アラジ(135)に次ぐ高評価を受けた[104]。レーシングポストレーティングでも127が与えられ、アラジ(133)、ケルティックスウィング(133)に続く史上3位の2歳馬という評価であった[97]

そして、2011年の1月11日に発表された2010年度の公式のヨーロッパ2歳ランキングにおいて、ロイヤルロッジステークスを圧勝したフランケルは、ミドルパークステークスを圧勝したドリームアヘッドと同率首位でのレーティング126ポンドという確定評価を与えられ、2010年のヨーロッパの2歳馬における共同チャンピオンとして扱われた[105][106]。この126ポンドという2歳時のレーティングは、2001年に4か国の2歳G1競走を含む7連勝を達成したヨハネスブルグ、2007年に2か国の2歳G1競走を含む4連勝を達成したニューアプローチの2頭[107]、後年では2018年のトゥーダーンホットと並ぶ評価であり、2019年にピナトゥボナショナルステークスの9馬身差勝利によって128ポンドのレーティングを得て記録を更新するまでは、2歳馬に対して与えられたレーティングとして21世紀最高の評価であった[注 10][109]

公式の格付けで、フランケルとドリームアヘッドが同じ評価に相当すると発表されたことは、直接対決で明確に優劣のついた2頭を同等に扱ったものとして物議を醸す結果にもなった[107][110]英国競馬統括機構のジュベナイルハンデキャッパーを務めるマシュー・テスターは、フランケルとドリームアヘッドを共同チャンピオンとして並べた自身の裁定を擁護しつつ、ドリームアヘッドが3歳馬としてレーティング126に相当することは信じがたいことであるとは認めた[111]。これについてセシルは「全ては考え方の問題である」と述べた[111]

3歳時(2011年)

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グリーナムステークス

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2011年グリーナムステークス Juddmonte

これまで、2010年のシーズンを通じてフランケルの調教助手の役はダン・デ・ハーンが務めていたが、大柄なデ・ハーンには重い体重という懸案事項があった[112]。折から騎手クウィリーがトゥワイスオーヴァー英語版のドバイ遠征に帯同してニューマーケットを留守にしていたなか、より軽量な人物にフランケルの調教を行わせたいと考えていたセシルは、新たにシェーン・フェザーストンハウを毎朝の調教に乗る調教助手に任命した[112][113]。そして以後2年間にわたってフランケルの調教に騎乗することになるフェザーストンハウは、本馬引退後のセシルが語ったところによれば、調教師との共同で本馬を手掛ける重要な役割を果たす[52][114]

シーズン最初の大目標である2000ギニーに前哨戦なしで挑むのを好まないセシルの意向により、ヨーロッパの2歳王者としては珍しく直行のローテーションを取らず、フランケルのシーズン初戦にはニューベリー競馬場のG3競走グリーナムステークスが選ばれた[115][116]。4月16日に施行された同競走では、セシルの用意したペースメーカーのピクチャーエディターがやや遅いペースで逃げを打ったなか、気負ったフランケルは折り合いを欠いて行きたがったため、最初の2ハロン地点まではクウィリーがこれを抑え込むことになった[117][118]。フランケルは残り2ハロンで先頭に立つと、一旦は反応の悪いところを見せたが、この時初めて競走中での鞭を受けると、残り1ハロンから再加速し、最後は粘り込んだエクセレブレーションに4馬身差をつけて優勝した[117][118]。前年コヴェントリーステークスを制して本馬の対抗馬と目されていたストロングスートは最下位に敗退[69]。この競走時に25対1(26倍)の5番人気という人気薄であったエクセレブレーションは、後に本馬と5回にわたって対戦し、本馬に次ぐマイラーとしての活躍を見せることになる[119][120]

グリーナムステークスと2000ギニーの中間日、フェザーストンハウは、同日に行われた調教の内容として、「フランケルが前半から行きたがってどうしようもなく、持てる全ての技術を駆使して抑える必要があったこと」および「ようやく落ち着いてストライドを伸ばせるようにになり、リードホースを追い抜くと、彼は更にリラックスした」ことをセシルに報告すると、フランケル陣営の間では2000ギニーを逃げ切りで勝利する作戦が考えられ始めた[121][122]。その翌週には半兄ブレットトレインとのキャンターで、フランケルを先導させる形式の調教が初めて行われた[122][123]。当初はタタソールズステークス英語版優勝などの実績がある短距離馬リルーテッドが同馬主の本馬のためにペースメーカーとして出走し、速いペースを作る予定であったが[123][124]、競走の2日前に2000ギニーの枠順が発表され、フランケルが最内1番、リルーテッドが大外13番と、離れた枠番によってフランケルの前に壁としてリルーテッドを置くことを望めないことが判明すると、逃げる計画はさらに現実味を帯びた[122][125][126]

2000ギニー

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2011年2000ギニー Juddmonte

2011年4月30日、フランケルがイギリスクラシック競走の制覇を狙って出走する2000ギニーは、同年新たに発足したブリティッシュ・チャンピオンズシリーズの第1戦であることでも注目され、ニューマーケットには前年比11%増となる1万6000人の観客が集まった[127]。ゴドルフィン所有の素質馬ドバイプリンスの故障、ドリームアヘッドやジャン・リュック・ラガルデール賞勝ち馬ウートンバセットの2000ギニー回避などによって本命馬の地位を補強したフランケルは、5戦5勝という完璧な成績でこれに出走し、1対2(1.5倍)の1番人気という高い支持率[注 11]を記録した[80][129][130]。本馬に続く人気順は、デューハーストステークスから巻き返してクリテリウムアンテルナシオナルを勝ったロデリックオコナーが8対1(9倍)、ナショナルステークスなど3戦3勝のパスフォーク英語版が8対1と並んだ2番人気タイ、レーシングポストトロフィー優勝馬カサメント英語版が11対1(12倍)の4番人気と、2歳G1馬が上位を形成した[131][132][133]

競走が始まり、好発を決めたフランケルは、クウィリーに抑えられることなく先頭に立つと、自厩舎のペースメーカーを含む後続馬を置き去りにして突き放していった[126][132]。強い向かい風が吹いていたローリーマイルで、本馬は発馬から5ハロンまでの間を58秒5というスプリントG1戦並みの時計で走り、一時は10馬身差以上[注 12]という大差をつけるほどに加速、残りの3ハロンでは12秒5、12秒8、13秒5と次第に減速しながらもそのまま後続を寄せ付けることなく、2着にドバウィゴールドが入るのを後目に6馬身差を付けて優勝した[63][126][135]。ドバウィゴールドに僅差の3着でネイティヴカーンが続き、4着スリムシャディ以下は3着からさらに10馬身以上後方に置かれていた[136]

勝ち時計の1分37秒3は標準よりも1秒8遅かったが、このラップタイムを評価したデイヴ・エドワーズによれば、風の影響を考慮するとこの内容は驚異的なものであった[135]。タイムフォームによるタイム指数でも、この走りは21世紀に入ってから最速[注 13]、また2000ギニー史上ではエルグランセニョールの139以来最速となる136という評価を受けた[138][137]。道中2番手を追走したカサメント、3番手追走のロデリックオコナーはそのペースに潰れてそれぞれ10着、11着に沈んだ[124]。本馬の対抗に挙げられた2歳G1馬3頭では7着パスフォークが最先着で、いずれも25馬身以上の大差を付けられる結果であった[136][133]。この2着に付けた6馬身という着差は、1947年のテューダーミンストレルが達成した8馬身差に次ぐ同競走における歴代2位の大きさであり、またこの単勝配当は、1934年のコロンボ英語版が達成した2対7(約1.29倍)以来となる低さであった[126]

これにより、セシルは3度目の2000ギニー勝利、25度目にして結果的に生涯最後となるイギリスクラシック勝利を挙げ、クウィリーは同クラシック競走初勝利となった[139][140]ガーディアン紙は「イギリスの競馬場史上最も偉大な展示の1つ」[141][128]と評し、レーシング・ポスト紙は「ビヨンド・ビリーフ」の見出しで、ニュース・オブ・ザ・ワールド紙は「フランケルシュタイン」の形容でこの勝利を報道した[63]

ワールドサラブレッドランキングでは、フランケルは2000ギニーの優勝に対する評価として1993年のザフォニック以来となる130のレーティングを与えられ、この時点で、2011年初から世界最高レーティングを保持していた無敗の牝馬ブラックキャビアに並ぶ世界1位の評価を得た[142]。3歳のイギリス調教馬がレーティング130ポンドを得るのは1996年マークオブエスティーム(133)およびボスラシャム(131)以来初めてのことであり、これはフランケル以降、2015年にダービー馬ゴールデンホーンがエクリプスステークスを勝利するまで再び達成されることがなかった[143][144]。日本の軍土門隼夫は、圧倒的なスピードで逃げてそのまま圧勝した点で、1998年の金鯱賞宝塚記念毎日王冠などの勝ち馬サイレンススズカが見せた競馬との類似を指摘している[145]。一方、本馬が「型破り」な競走運びを行った点に対する否定的見解もある[注 14]

フェザーストンハウによれば、フランケルが競走馬として完成するためには2000ギニーが必要不可欠な要素であった[146]。同競走で全力の競馬を行った本馬は、以後これまでよりも振る舞いが行儀よくなり、調教でも行きたがらなくなったのだという[146][147]

マイル路線の決定

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イギリスの春クラシックは基本的に1マイルのギニー戦線と1マイル半のダービー戦線で分かれており、この距離差を克服してクラシック二冠を目指すことは少なかった[注 15][149][150]。セシルは前年から本馬が1マイル半を走ることができるかを疑問視していたが、いまだダービー参戦への可能性は残しており、ブックメーカーでは実際に1番人気に推されていた[注 16][80]。この間競馬サークルにおける話題を見ると、次走に関してマイル路線のほかに、ダービー、6ハロンのジュライカップなどが指摘されている[133][152]。最終的にフランケルは、アブドゥッラーとグリムソープとセシルの協議の結果、ダービーを回避してマイル路線を進み、ロイヤルアスコット開催の3歳マイルG1競走であるセントジェームズパレスステークスに出走することが当面の目標となった[153]。セシルはダービー不参戦の理由として、フランケルがエプソム競馬場で競走するならばダンテステークスを使うことが絶対条件であるが、2000ギニーからダンテステークスへの連戦は日程が厳しすぎるという点を挙げた[154]。また、10ハロンへの距離延長は問題ないだろうとの見解も示したが、現段階ではマイル戦に特化することが理にかなっているとした[154]

セントジェームズパレスステークス

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2011年セントジェームズパレスステークス Juddmonte

2011年6月14日のセントジェームズパレスステークスは9頭立てで行われ、2000ギニーを「破壊的」[155][156]に勝利したフランケルが30対100(1.3倍)の1番人気、グリーナムステークス2着の後にドイツ2000ギニーを7馬身差で勝利したエクセレブレーションが10対1(11倍)の2番人気、イギリスとアイルランドの2000ギニーでともに2着のドバウィゴールドが12対1(13倍)、休み明けのフランス2000ギニーを5着としたウートンバセットが12対1と並んで3番人気タイになった[157][158]。このほか、日本の矢作芳人厩舎から朝日杯フューチュリティステークスおよびNHKマイルカップの勝ち馬グランプリボスが出走し[159]、日本の報道陣も集まった[15]。2歳時にフィーニクスステークスを勝利していたゾファニーは20対1(21倍)の7番人気であった[160][157]

競走が発走すると、今回のリルーテッドはペースメーカーとして大逃げを打ち、ハイペースで馬群を先導した[154][161]。クウィリーは残り5ハロンの辺りから、前方のリルーテッド目掛けてフランケルを追い出した[162][163]。競走を約5ハロン残している時点で前方に進出を開始したフランケルは、オールドマイルの中盤でありながら、3ハロン地点以降の3ハロン間で34秒2という脚を使い始めると、まもなく先頭に立って後続を突き放した[164]。本馬は2ハロン地点で6馬身のリードを作ったが、さすがに決勝線の前では失速し、後方馬群から追い込んだゾファニーに3/4馬身まで迫られたものの、そのまま押し切って優勝した[161][165]

これまでのフランケルの成績と比べて同競走での内容が辛勝であった理由については様々な意見があり、騎手や戦術のミス、ペースメーカーの作り出したハイペースなどが挙げられる[161][166]。競走後のセシルはメディアに対して、あまりにも早く先頭に立ったためにソラを使ったのだと語った[161][167]。クウィリーは仕掛けが早すぎたとして競走後非難の対象となったが[注 17]、本人はセシルによる「コーナーの前で仕掛けるよう」との指示に従ったまでと主張した[168][169]。また、セシル厩舎のマイケル・マクゴーワンやディー・ディーコンなどによって、当時のフランケルを始めとする同厩舎の管理馬が軽度のウイルス感染症によって調子を落としていた可能性も指摘されており、トニー・ラシュマー著のヘンリー・セシル公式伝記『凱歌』ではこれが有力説として示されている[167][170][171]

競走後、レーシング・ポスト紙のアラステア・ダウンは、「無敵のマントが少し擦り切れ、これからは対抗馬が増えるだろう」という意見を示した[注 18][172]。同競走1着によるレーティングは、過去10年の同競走で2006年のアラーファ英語版(125)、2002年のロックオブジブラルタル(124)、2008年のヘンリーザナヴィゲーター(123)の3頭や、同日のクイーンアンステークスゴルディコヴァを破ったキャンフォードクリフス(127)を下回る122ポンドとなった[173]。公式ハンデキャッパーのドミニク・ガーディナー=ヒルは少々落胆する結果だったと振り返ったが、この翌日にソーユーシンクが敗れたことを踏まえると、同馬の名声を傷つけない優れたパフォーマンスだったと述べた[173]。後年の評価としては、セシル厩舎のマイク・マーシャルによる「最高のレース」[174]、エドワード・プロッサーによる「いささか相手を侮り過ぎた感もあった」[63]、トニー・ラシュマーによる「最も不満足なパフォーマンス」[注 19][170]JRA-VAN ver.Worldコラムによる「様々な意味で伝説的なレース」[15]などがある。

サセックスステークス

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2011年サセックスステークス Juddmonte

セントジェームズパレスステークスで後続の追撃を振り切ったフランケルは、僚馬のトゥワイスオーヴァーやミッデイらと同じくヨーク競馬場の10ハロン戦であるインターナショナルステークスにも登録されていたが、現段階ではマイル路線を堅持するというセシルの方針のもと、グッドウッド競馬場サセックスステークスに出走し、ここで初めて古馬と対戦することとなった[175][170]。2011年7月27日に行われた同競走では、G1競走を5連勝して4歳世代の最強マイラーと目されていたキャンフォードクリフスとの対戦となり、4頭立てのなかで、フランケルが8対13(約1.62倍)、キャンフォードクリフスが7対4(2.75倍)の支持を受け、残る2頭のリオデラプラタとラジサマンがオッズ23倍という人気順となった[176]。このように実質2頭の一騎討ちの様相を呈したこの競走は、「デュエル・オン・ザ・ダウンズ」と呼ばれて注目を集めた[176][177]

ここでのフランケルとクウィリーは、他3頭に対して控える競馬をせずに、終始コントロールの効いた逃げで競走を牽引し、残り1ハロン地点でキャンフォードクリフスら後続馬を一気に突き放すと、1949年以来の大差となる5馬身差で優勝[168][176]。2着馬キャンフォードクリフスはフランケルを追跡した際に故障を発生したため、最終的にこれが引退戦となった[178]。後方から進んだ3着リオデラプラタはフランケルから7馬身1/2差、同じく4着ラジサマンは10馬身差遅れて入線した[注 20][180]

競走後のセシルはメディアに対し、ブラッシンググルームシャーガーを引き合いに出しながら、本馬を「これまで目撃した最強馬」であると評した[181][182]。また、セシルとアブドゥッラーは、フランケルが2012年シーズンも現役に留まる可能性を示唆した[183]

レーティングでは、これまでマイルでレーティング118ポンドを上回ったことのない3着馬リオデラプラタが基準に据えられ、この結果キャンフォードクリフスが同競走2着によって123ポンド、そして同馬に5馬身差を付けたフランケルが135ポンドという評価となった[184]。これは、マイル部門ではジルザル(134[注 21])、マークオブエスティーム(133)、ホークウイング英語版(133)、ウォーニング(133)、ミエスク(132)、ペブルス(132)、シャディード英語版(131)などを上回り、唯一エルグランセニョール(138[注 22])にのみ及ばなかった高い評価である[184]。これによってワールドサラブレッドランキングにおける本馬は、ブラックキャビアを超えて同年単独世界1位の地位に就くとともに、2004年に同制度が開始されて以降のマイル部門における最高評価を更新した[184][185]

クイーンエリザベス2世ステークス

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2011年クイーンエリザベス2世ステークス Juddmonte

キャンフォードクリフスを一蹴して最強マイラーの地位を確立したフランケルは、インターナショナルステークスを回避し、ブリティッシュ・チャンピオンズシリーズの最後を締めくくる10月15日のブリティッシュ・チャンピオンズデーまで休養[175][186]。3歳シーズン最終戦は、同シリーズのマイル部門最終戦として新装された同日準メイン競走のクイーンエリザベス2世ステークスとなり、本馬はアスコット競馬場のストレートマイルで初めて競走することになった[187][188]。人気順は、フランケルが4対11(約1.36倍)の1番人気で、セントジェームズパレスステークス3着の後にハンガーフォードステークスムーラン・ド・ロンシャン賞を勝ったエクセレブレーションが6対1(7倍)の2番人気、コロネーションステークスおよびジャック・ル・マロワ賞を勝ったイモータルヴァースが7対1(8倍)の3番人気となった[186][189]。同厩舎からは、本馬の半兄ブレットトレンが、競走の前半の流れが極端にスローとなり終盤でスプリント勝負となってしまう状況を避けるために、しかるべきペースで競走を進行させるペースメーカーとして出走した[187]

発走すると、イアン・モンガン騎乗のブレットトレインが素早く行って大逃げを打ち、フランケルは最初の2ハロンまでクウィリーに抑え込まれた[187][190]。本馬は中間点あたりから10馬身先のブレットトレイン目掛けて進出を開始し、残り2ハロン辺りでこれを交わすと、最後まで速度を持続させ、後続に4馬身差を付けて優勝[190][191]。2着にエクセレブレーション、3着にイモータルヴァースが入った[189]

レーティングは、これまでレーティング117ポンドを上回っていなかった4着馬ドバウィゴールドが基準となり、フランケルは出走前と同様の135ポンドに据え置かれた[192]。公式ハンデキャッパーのドミニク・ガーディナー=ヒルは、年末の会議でこの値が上方修正される可能性を示しつつ、ハンデキャップ上の評価では同競走の勝利がサセックスステークスの勝利を超えることはできないという見解を述べた[192]

最優秀3歳牡馬および年度代表馬

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クイーンエリザベス2世ステークスの競走後、フランケルが2012年も現役に留まることが正式に発表された[190]。このシーズンを5戦5勝で終えたフランケルは、2011年度のカルティエ賞年度代表馬、最優秀3歳牡馬に選出された[193][194]。セシルは、「どのスポーツにもチャンピオンは必要であり、今年はフランケルでした。最初はちょっと予想がつきませんでしたが、流れがフランケルに落ち着き、最終的に決しました」と語った[195]。翌シーズンの予定では距離延長が指向され、芝10ハロンのエクリプスステークスが示唆されたほか、ダート競走のブリーダーズカップ・クラシックも視野に入れられた[194]

2011年度のワールドサラブレッドランキングでは、サセックスステークスとクイーンエリザベス2世ステークスでのパフォーマンスに対して、いずれも楽勝であったことから中間発表の値に1ポンドの上方修正が行われ、136ポンドの評価に改められた[196]。本馬の同評価は、ワールドサラブレッドランキングの制度が開始された以後では、距離部門の異なる2006年のシーザスターズと同等であると判断された歴代最高評価であり[196]、国際クラシフィケーションの時代を含めても、マイル部門では1984年のエルグランセニョール(138[注 22])以来の高評価であった[197]

民間レーティング各社の評価はさらに高く、レーシングポストレーティングは、本馬のクイーンエリザベス2世ステークス圧勝に対して同レーティングが1986年に始まって以来最高評価のドバイミレニアムと並ぶ139ポンド[74][189]、タイムフォーム誌のレーティングは、シーバード(145)、ブリガディアジェラード(144)、テューダーミンストレル(144)に次いで歴代4位となる143ポンドであった[198]

4歳時(2012年)

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負傷

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セシル厩舎の優れた競走馬は4月中旬のニューマーケットやニューベリーで始動する場合もあるが、フランケルの場合は5月19日のロッキンジステークスを目標に調整が進められた[199]。しかし4月11日、朝の調教を終え、厩舎の馬房に戻ってバンテージを取り外されたフランケルの右前肢に、熱感、腫脹、疼痛が認められることが判明し、本馬が屈腱炎を患ったのではないかという可能性が浮上した[200][201]。担当獣医チャーリー・スミスによってスキャン検査が行われた結果、断裂はしていないながらも表皮内側の周辺に炎症があることが確認された[201][202]。セシルは脚が交錯してぶつかったのだろうと推測し、その翌朝にジャドモントファームが声明を発表、翌4月12日のガーディアン紙には、自分で自分の脚を蹴る「交突」[203]を起こしたのだろうというセシルのコメントが引用された[204][205][206]

翌週に行われる更なる検査まで運動再開を待つべきであることが分かり、調教の予定は一旦白紙となったが、始動戦まで1か月余りを控えたなか、セシルはウォーレンプレイスの覆馬場で常歩とダクを行わせることで体を動かさせることにした[204][207]。この間、4月14日頃からフランケルが引退するのではないかという噂が流れだし、グランドナショナル当日のBBCでこの話題が言及されたことより、多くのメディアがこれを紹介するまでに至ったため、グリムソープが噂を完全否定する声明を発表するという「誤報騒動」に発展している[205][208][209]。この時点では、本馬のロッキンジステークス出走は難しいと判断された[205]。更なる検査が行われた結果、腱に損傷は無く、現役続行に問題がないことが判明したため、当初の予定通りロッキンジステークスに向かうこととなった[210][211][212]。2000ギニーが行われた5月5日のニューマーケット競馬場では、レースコース・ギャロップという公開調教も行われ、本馬がライアン・ムーア騎乗のブレットトレインらを圧倒する走りを見せてセシルを満足させた[212][213][214]。ロッキンジステークスの前日には、早い段階で戦闘態勢に入った本馬が壁を蹴ったはずみで蹄鉄を外してしまい陣営は対処に迫られたが、これを除けばシーズン初戦への調整は順調に進んでいった[213][215]

ロッキンジステークス

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2012年ロッキンジステークス Juddmonte

2012年5月19日、ニューベリー競馬場の6頭立てで行われたロッキンジステークスは、フランケルが2対7(約1.29倍)で1番人気、ジョセフ・オブライエン騎乗のエクセレブレーションが10対3(約4.33倍)で2番人気、ドバウィゴールドが16対1(17倍)で3番人気という人気順となった[110][216]。特に、前年、三度フランケルの後塵を拝したエクセレブレーションは、この年からクールモアグループの所有となり、数々の名馬を手がけたエイダン・オブライエン厩舎に転厩していた[120][217][218]。そして移籍初戦のG3競走を勝利で飾り、万全の態勢でフランケルを待ち構えていたのである[217]。セシルは「まともな馬場であればロッキンジに出走する予定です」と述べていたが、実際に同競走の芝は硬すぎず軟らかすぎないGoodの馬場状態で行われた[219][220]

発走すると、クイーンエリザベス2世ステークスに引き続き本馬のペースメーカーとして出走したブレットトレインがスムーズに先頭に立ち、同馬は前走のような大逃げを打たず、「フランケルにブレットトレインの後ろを追走させる」ことを意識したイアン・モンガンの騎乗のもとで後方を確認しながらペースを作った[217][220]。フランケルは初めに掛かるとこを見せながらもその背後で2番手を追走、さらにその後ろにエクセレブレーションが続いた[217][221]。フランケルは残り2ハロン地点でブレットトレインに並び掛け、数完歩で交わすと、その後も持続的に後続を引き離し、エクセレブレーションの4度目の挑戦をあっさりと退け、最後は5馬身差を付けて優勝した[217][222][223]

同競走において、2着馬エクセレブレーション(イギリスでは前年のレーティング125)は3着馬ドバウィゴールド(前年のレーティング117)に力通りの4馬身差を付けており、レーティングではこの入着馬2頭が前年のトップパフォーマンスを再現したと見なされた[224]。これによって、エクセレブレーションに5馬身差を付けたフランケルのレーティングは138ポンドとなり、本馬は今シーズン初戦にして前年を上回る評価を記録し、また2004年のワールドサラブレッドランキング創設以来では最も高い評価を得る結果となった[224][225]。フェザーストンハウは、フランケルが前年からの成長を証明し、怪我を克服して優勝したこの競走を自らが見たベストレースの最終候補に挙げている[222][226]

セシルは、本馬が始動戦を叩かれてさらに良化するということを理由に、「次は更に(3〜4馬身程)良くなるのではないか」「多くの調教師がそうであるように、私達も初戦で100パーセントの力を出させることはしない」と、次走で更にパフォーマンスを上げることに自信を見せていた[227][228]

クイーンアンステークス

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2012年クイーンアンステークス Juddmonte

ブリティッシュ・チャンピオンズシリーズの最高経営責任者ロッド・ストリートの消費需要調査によれば、フランケルが10連勝を達成して連勝記録を二桁の大台に乗せた4歳春頃から、本馬の名は一般にも響き渡るようになっていた[127][229]。2012年6月19日、ロイヤルアスコット開催初日のクイーンアンステークスは、フランケルの出走した競走の割には多頭数となる11頭が揃ったが、新興勢力の台頭は無かった[230][231]。人気順は、フランケルが1対10(1.1倍)という圧倒的な1番人気[注 23]、そしてエクセレブレーションが5対1(6倍)で2番人気、ストロングスートが10対1(11倍)で3番人気となった[231]

競走の発走に伴ってブレットトレインが先頭に立つと、フランケルはその背後に入って追走し、競走前半の4ハロンを50秒96、次いで各1ハロンを11秒26、さらに10秒58と加速、同日のキングズスタンドステークスの出走馬を凌ぐ瞬発力で走行した[238][239]。残り3ハロン辺りでエクセレブレーションに並び掛け、まもなく交わした本馬は、次の2ハロン間ではエクセレブレーションより1秒18速く走行、最後の1ハロンでも同馬より0秒69速く走行するという圧倒的な末脚を発揮し、最後は同馬に11馬身の大差を付けて優勝[239][240][241]。馬場状態は稍重ながら、勝ち時計の1分37秒85はレコードタイムに0秒69迫るものであった[242]

競走後、表彰のためにパドックへ帰るまでの間、カメラマンに囲まれたフランケルは蹄鉄を一つ落とした[243][244]。翌日セシルは競走中に落鉄した旨を報告、本馬に異常は無かったものの、念のため右前肢に湿布が貼られ、後にこの蹄鉄はオークションに出品された[230][244][232]

セシル、クウィリーが口を揃えて「これまでのベストパフォーマンス」[245]と認め、騎手の間では「同一年にジュライカップと凱旋門賞を勝てるのではないか」[230]との声も上ったこの競走振りに、タイムフォーム誌は歴代1位のシーバードを上回る147ポンドという評価を、またレーシングポスト誌は初めて140の壁を超える142ポンドという評価を与えた[232][246]。公式のレーティングでは、国際クラシフィケーション時代にレーティングの基本的な最高値が140であったなかで1986年のダンシングブレーヴに対して例外的に141ポンドの評価が与えられていたが、ワールドサラブレッドランキングにおけるフランケルはこの歴代1位に1ポンド差までせまる140ポンドとなった[247][248]。後続馬に差を詰められた2着馬エクセレブレーション、近走がやや低調だった3着馬サイドグランス(前年のレーティング115)の両馬は自己最高の走りを実現できなかったと見なされたため、当シーズンの始動戦で当時ドイツ最高マイラーのアリアンサスに半馬身差迫る走りを見せていた4着馬のインドミトがレーティング112に設定され、これを出発点にしてサイドグランスが114ポンド、エクセレブレーションが115ポンド、そしてフランケルが140ポンドと算出されたものである[249]。同レーティングを踏まえて、公式ハンデキャッパーのドミニク・ガーディナー=ヒルは、ダンシングブレーヴが勝利した1986年の凱旋門賞における出走馬の質の高さを引き合いに出し、凡走したエクセレブレーションを除けば多くが格下馬であったこのクイーンアンステークスの勝利をもって本馬が過去最高であると断定することはできないと述べた[249]。しかしその後、歴代レーティングの見直しがあり、1977年から1991年までのレーティングが一律で引き下げられ、このうち、ダンシングブレーヴのいた1986年は3ポンドの引き下げとなったため、今日では公式のレーティングにおいても、フランケルが当時の同競走で歴代単独1位のパフォーマンスを示したことになっている[250][32]。これらの査定は、各団体がその尺度において本馬を最も高い評価に位置づけ、いわば「史上最強馬」であると認めたものであった[17][32]

サセックスステークス

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2012年サセックスステークス Juddmonte

リンパ腫が進行していたセシルはインターナショナルステークスを最優先に治療のスケジュールを組み、7月頃から集中的な化学療法を受けることになったため、8月1日のサセックスステークスでは、本馬のデビュー以来初めて、管理調教師が競馬場に臨場せずに欠席する事態となった[251][252]。出走馬はわずか4頭立てとなり、本馬の単勝人気は1対20(1.05倍)という生涯最小のオッズを記録、エクリプスステークス2着馬のファーが対抗で11対1(12倍)となった[253][254]

競走ではフランケルはブレットトレインの後ろを折り合いながら追走し、直線に入ると残り2ハロン余りでブレットトレインを交わした[253]。最後はこれまでと同様に右によれるところを見せながらも、2着ファーに対し手綱を控えながら6馬身差を付けて優勝[253][255][256]。これによって史上初となる同競走の連覇を達成した[254]。この単勝配当は、第二次世界大戦後の同競走では1959年のプチトエトワールの1対10を超える最少記録であった[257]

競走後のセシルによって、フランケルは10ハロン程度までの距離延長によってインターナショナルステークスに出走し、さらにチャンピオンステークスまたはクイーンエリザベス2世ステークスで現役を終えることが示唆された[253]。また予定された両競走の間隔が2か月と長いことから、グリムソープはこの間にフランスへ遠征して9月16日のムーラン・ド・ロンシャン賞を使う可能性を表明したが、セシルはこれの実現性について疑問を呈した[253][257][258]

インターナショナルステークス

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2012年インターナショナルステークス Juddmonte
インターナショナルステークス:発走前

サセックスステークスの連覇を果たしたことで、陣営は早い段階から4歳夏での参戦を予定していた中距離のインターナショナルステークスにフランケルを出走させた[253][259]。本馬がニューマーケット以北の競走に出走するのは2歳時ドンカスターの条件戦以来で[260]ITVヨークシャー区域の放送では主役として取り上げられ、またブリティッシュ・チャンピオンズシリーズの主催者によってコマーシャル映像が作られて宣伝された[261]。この影響もあり、当日、ヨーク競馬場には、前年比50%以上増となる3万163人の観客が集まり、パドックに入ったフランケルには護衛の警官が2人つけられた[63][261]

インターナショナルステークスでは、コロネーションカップ2回、ブリーダーズカップターフ[注 24]などG1競走4勝のセントニコラスアビー[264]、サセックスステークス2着のファー、チャンピオンステークス2回、エクリプスステークスを勝利し、さらに同競走の連覇を懸けていた僚馬トゥワイスオーヴァーの3頭が対抗馬と目された[265]。人気順は、フランケルがキャリア最長であった1マイルから500メートル近くの距離延長ながら1対10(1.1倍)と圧倒的な形勢となり、セントニコラスアビーが5対1(6倍)、ファーが10対1(11倍)、トゥワイスオーヴァーが12対1(13倍)、さらに前走のG2ヨークステークスを勝利したスリプトラが20対1(21倍)[266]ガネー賞勝ち馬プラントゥールが25対1(26倍)などで続いた[267][268]。モンガンはトゥワイスオーヴァーに騎乗し、ブレットトレインの鞍上はエディ・アハーンとなった[269]。この勢力図のうえで、同競走はブリガディアジェラードがロベルトに唯一の敗北を喫した「チャンピオンの墓場」であることによっても注目された[262][270]

発走すると、フランケルは出遅れ、最後方の2頭に並ぶ形で折り合った[271]。初めはブレットトレインが先頭に立ったが、ロビンフッドとウィンザーパレスが主張して前に行く展開となり、残り5ハロン地点でもフランケルは先頭ロビンフッドから1秒38遅れた7番手の位置にあった[271][272]。出走馬9頭が直線に入ると、フランケルは外ラチ側に寄せられ、残り3ハロン辺りで内側のセントニコラスアビーと併せ馬の態勢となった[271]。フランケルは残り2ハロン地点にさしかかると前方に進出し始め、馬場中央でセントニコラスアビー、トゥワイスオーヴァー、ファーなどが激しく追われるなか、本馬はその外ラチ側を馬なりのままで抜け出した[32][273]。残り4ハロン地点から3回連続で1ハロン当たり12秒未満のラップタイムを記録したフランケルは、残り1ハロンで手綱を扱かれると馬体を沈め、さらにストライドを広げるという圧倒的な走りを見せ、上がり1ハロンを12秒1でまとめて最後は2着ファーと3着セントニコラスアビーの両馬に7馬身差を付けて優勝した[273][274][275]。勝ち時計の2分06秒59は標準タイムより0秒9速い結果であった[276]。これでデビューからの連勝は13、連続するG1競走8連勝を達成し、これまでロックオブジブラルタルが保持していたヨーロッパにおけるG1競走の連勝記録を更新した[276]

競走後、ロイヤルアスコット開催以来競馬場に訪れていなかったセシルはチャンネル4のインタビューに対して「これで20歳若返ったよ」[276]と語り、また、フランスのムーラン・ド・ロンシャン賞に出走する可能性は低く、チャンピオンスステークスが現役最後の一戦となることを示唆した[277][278]

ワールドサラブレッドランキングではこの圧勝が評価され、当該の7馬身差が16ポンド差に相当するという判断のもと、フランケルは中距離部門でもクイーンアンステークスでの圧勝と同等とされるレーティング140ポンドを得た[注 25][280][281]。以下、ファーの2着に対してはエクリプスステークス2着と同等の124ポンド、セントニコラスアビーの3着に対してはコロネーションカップ1着と同等の124ポンドとする評価が行われている[282]。レーシングポストレーティングによる評価は、クイーンアンステークスの勝利と同等とされる143ポンド[2]。タイムフォームのレーティングによる評価は143ポンド[283]。また、タイムフォームのタイム指数は136となり、前年の2000ギニー勝利と並ぶ21世紀最速の評価となった[137]

チャンピオンステークス

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映像外部リンク
2012年チャンピオンステークス Juddmonte

ヨークで勝利したフランケルの存在は、病魔に侵されながらも低迷期からの復活を果たしたカリスマ的な調教師セシルの物語とともに、一般大衆の話題として受容されるまでになっていた[229][284]

フランケルが500メートル近い距離延長を難なくこなしたことは、12ハロンの凱旋門賞出走の憶測を呼び、ブックメーカーもこれに反応した[注 26][276][278]。その後、公式に陣営がブリティッシュ・チャンピオンズデーのチャンピオンステークスへの出走を表明し、この時点では未確定ながらこれが本馬の引退戦であると一般的に確実視されるようになると、同競走はイギリスにおける平地競馬としては最大級の注目を集めることになった[285][286]。10月20日に競走が開催されるアスコット競馬場のプレミアエンクロージャーの入場券は9月3日時点で完売したという[287]

競走開催週は週間総雨量約1.5インチという降雨が続き、当日の馬場は「ところにより不良(Heavy)」という但し書きの付いた重馬場(Soft)となった[288][289]。この競走には、同年のガネー賞とドラール賞を勝って当時の中距離部門世界2位であったシリュスデゼーグル、同じくエクリプスステークスを勝って中距離部門3位タイであったナサニエルが参戦し、10ハロンにも重馬場にも適正を持つ両頭が強敵となった[290][291]。特に前年のチャンピオンステークス優勝馬シリュスデゼーグルは重馬場巧者と定評があった[292]。一方でこの馬場は、フランケルにとっては辛勝を収めたデビュー戦の1回しか経験していなかったものであり、本馬の重馬場適正が注目された[292][293]。セシルが馬場状態を理由に管理馬の出走を取り消すことのほとんどない調教師であるということもあり、グリムソープがアスコットの馬場管理責任者クリス・スティッケルスと相談して実際に馬場を歩いて確かめたことを決め手に、フランケルの出走は決定された[289]。人気順はフランケルが2対11(約1.18倍)という圧倒的な支持を受け、シリュスデゼーグルが9対2(5.5倍)、ナサニエルが9対1(10倍)となり、この後にドイチェスダービーダルマイヤー大賞を連勝した3歳馬パストリアスが33対1(34倍)、同年のジェベルハッタ勝ち馬マスターオブハウンズが80対1(81倍)で続いた[294][295][296]

競走でフランケルは発走後もしばらくゲートに留まり、前走よりも程度の酷い約2馬身差の出遅れを見せたため、手綱を扱かれて前方馬群へと追い立てられた[294][293]。競走前にセシルからムラの無いラップを刻むようにと指示を受けていたブレットトレイン鞍上のモンガンは、フランケルが想定外に出遅れたため、急遽一度控える作戦を取り、同馬が直後に付けられるところまで位置を下げた[294][297]。この結果、シリュスデゼーグルが先頭に立ち、徐々に進出したフランケルはナサニエルの背後となる4番手で落ち着いた[297]。中盤に入ると、フランケルの位置取りを確認したモンガンはブレットトレインを押して進出し、外のシリュスデゼーグルと内に入ったブレットトレインが2頭並んで馬群を先導する形となった[297]。シリュスデゼーグルがスムーズに直線に入り、ブレットトレインが後退をし始めた頃、外からウィリアム・ビュイックに追われたナサニエル、さらにその外から持ったままのフランケルも進出を開始した[298]。フランケルは残り1ハロン地点でシリュスデゼーグルに並び掛けて先頭に立ち、さらに鞭を受けたが、シリュスデゼーグルも頑強に抵抗したため、その後も両馬は一杯に追われ続けた[299][300]。しかし決勝線が近づくにつれてフランケルのシリュスデゼーグルに対する優勢が示されていき、本馬が余裕を持って最終的に1馬身3/4差を2着馬との間に空けて優勝した[301][300]。シリュスデゼーグルから2馬身1/2差遅れて3着に入ったのがナサニエルであり、以下も全く人気通りの着順となった[295]。この際に実況アナウンサーのリチャード・ホイルスが発した「誰が相手でも、どんな馬場でも、彼は負けない!」(All comers, all grounds, all beaten!)[302]という実況は、この11か月後に行われた亡きセシルをしのぶ式典でも引用されている[300][303]。これでデビューからの連勝は14、連続するG1競走9連勝を達成[304]。これまでアメリカのゼニヤッタが単独で保持していたG1競走の連勝記録に並び、その後、2018年オーストラリアのウィンクスによって更新されるまでフランケルはこの世界タイ記録を保持することになる[304][305]

競走後、クウィリーは、「馬場を気にして、いつものように弾けなかったけど、滅多に使わないムチを1回入れたら、ギアを替えてくれました」と語った[293]。早い段階からフランケルの素質に気付いていながら、それを吹聴することは慎んでいたセシルも、本馬の現役引退が正式に決定されると「フランケルほどの馬はこれまで調教したことも見たこともない。今後これ以上の馬が現れるとしたら驚きだ」と評価している[284][293]。本馬の同競走優勝によるレーティングは135ポンド[306]。以下、シリュスデゼーグルの2着に対してはガネー賞およびドラール賞の圧勝と同等の131ポンド、ナサニエルの3着に対してはこれまでの同シーズン3戦全てと同等の126ポンドとする評価が行われている[280][282][307]

現役引退

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チャンピオンステークスより数週間前から、一般的に同競走がフランケルのラストランであると解されてたが、この件は馬主側から公式な声明によって発表されておらず、グリムソープも今後の去就については知らされていなかった[308]。またセシルは、自身の病状が悪化しているなかでも、調教師の健康状態を理由にフランケルの引退を決定しないようにとグリムソープに懇願し、本馬の翌2013年での現役続行と、それに伴うキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス、凱旋門賞など12ハロン戦への参戦を望んでいた[309][310][311]。BBCによる最後の平地競馬中継となった番組[注 27]で、リポーターのリッシ・パーサドが「殿下、彼は現役を続けるのか、それとも引退するのか、既にお決めになっていらっしゃいますか?」とアブドゥッラーに問うと、アブドゥッラーは一言「これで終わりです」と語り、その20秒後、パーサドによってフランケル引退の第一報が伝えられた[309][312]。なお、セシルはこの翌2013年の6月11日に死去することになる[313]

最優秀古馬および年度代表馬

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フランケルは、全てイギリスの競走に出走し、4歳の8月までに7ハロン戦で3勝、8ハロン戦で9勝を挙げ、最後に10ハロン88ヤード戦と10ハロン戦を勝利した[304][309]。最終的に、デビューから14戦無敗(うちG1競走は通算10勝、9連勝)という無傷の戦績で引退した[304]。タイムフォームは、イギリスにおいて2歳、3歳、4歳の3シーズン全てでチャンピオンとなったのはスプリンターのアバーナント以来のことであり、またこれほど記録的な無敗の平地競走馬は19世紀の16戦16勝馬オーモンド以来であったとしている[314][315]。また、同シーズンをG1競走の5戦5勝で終え、11月13日には、2012年度のカルティエ賞最優秀古馬、そして前年に続き年度代表馬に選出された[304]。種付け料は12万5000ポンドと発表され、種牡馬価値は1億2500万ポンドが見込まれた[注 28][304]

公式レーティングは、同年度末の会議では141という上方修正案も出されたが、最終的に中間発表と同一の値140ポンドで確定された[280][282]。なお、140の大台に乗った首位のフランケルに続いて、チャンピオンステークス2着などで自己最高の評価を更新したシリュスデゼーグルが131ポンドで2位、フランケルの後塵を5度拝したエクセレブレーションが130ポンドで3位タイという内容となったが、130ポンド以上の評価を得た競走馬が4頭いるという同年の結果は、ワールドサラブレッドランキングの創設された2004年以来初めてのことであった[280][316]

競走成績

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以下の内容は、BHA[317]の情報に基づく。

出走日 競馬場 競走名 頭数 オッズ(人気) 着順 騎手 斤量 距離(馬場) タイム 着差 1着(2着)馬
2010.08.13 ニューマーケット メイドン 12 2.75(1人) 1着 T.クウィリー 129lb 芝8f (Sft) 01:43.69 -0.07s 1/2馬身 (Nathaniel)
0000.09.10 ドンカスター 条件戦 3 1.50(1人) 1着 T.クウィリー 128lb 芝7f (Gd) 01:24.83 -2.18s 13馬身 (Rainbow Springs)
0000.09.25 アスコット ロイヤルロッジS G2 5 1.30(1人) 1着 T.クウィリー 124lb 芝8f (GS) 01:41.73 -1.76s 10馬身 (Klammer)
0000.10.16 ニューマーケット デューハーストS G1 6 1.67(1人) 1着 T.クウィリー 127lb 芝7f (GS) 01:25.73 -0.43s 2 1/4馬身 Roderic O'Connor
2011.04.16 ニューベリー グリーナムS G3 6 1.25(1人) 1着 T.クウィリー 126lb 芝7f (GF) 01:24.60 -0.65s 4馬身 (Excelebration)
0000.04.30 ニューマーケット 2000ギニー G1 13 1.50(1人) 1着 T.クウィリー 126lb 芝8f (GF) 01:37.30 -0.94s 6馬身 (Dubawi Gold)
0000.06.14 アスコット セントジェームズパレスS G1 9 1.30(1人) 1着 T.クウィリー 126lb 芝8f (Gd) 01:39.24 -0.15s 3/4馬身 (Zoffany)
0000.07.27 グッドウッド サセックスS G1 4 1.62(1人) 1着 T.クウィリー 125lb 芝8f (Gd) 01:37.47 -0.84s 5馬身 (Canford Cliffs)
0000.10.15 アスコット クイーンエリザベス2世S G1 8 1.36(1人) 1着 T.クウィリー 126lb 芝8f (Gd) 01:39.45 -0.71s 4馬身 (Excelebration)
2012.05.19 ニューベリー ロッキンジS G1 6 1.29(1人) 1着 T.クウィリー 126lb 芝8f (Gd) 01:38.14 -0.86s 5馬身 (Excelebration)
0000.06.19 アスコット クイーンアンS G1 11 1.10(1人) 1着 T.クウィリー 126lb 芝8f (GS) 01:37.85 -1.92s 11馬身 (Excelebration)
0000.08.01 グッドウッド サセックスS G1 4 1.05(1人) 1着 T.クウィリー 133lb 芝8f (Gd) 01:37.56 -1.08s 6馬身 (Farhh)
0000.08.22 ヨーク インターナショナルS G1 9 1.10(1人) 1着 T.クウィリー 131lb 芝10f88y (GF) 02:06.59 -1.14s 7馬身 (Farhh)
0000.10.20 アスコット チャンピオンS G1 6 1.18(1人) 1着 T.クウィリー 129lb 芝10f (Sft) 02:10.22 -0.28s 1 3/4馬身 (Cirrus des Aigles)
  • 馬場状態:GF=Good to Firm(良)、Gd=Good(良)、GS=Good to Soft(稍重)、Sft=Soft(重)[318]
  • lb:ポンド(≒0.4536 kg)、f:ハロン(≒201.2 m)

種牡馬時代

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産駒デビューまで(2013年 - 2015年)

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2013年

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2013年からフランケルは、イギリス・サフォーク州・ニューマーケット郊外のバンステッドマナースタッドで種牡馬として繋養された。初年度の種付け料は12万5000ポンド(発表当時のレートで約1600万円)と設定された。現役時代に引き続きフランケルを所有するジャドモントの「高い種付け料を支払った生産者にとって、競走馬市場にフランケル産駒が多く流れるのは好ましくない」との考えから、フランケルに初年度に配合される牝馬の数は、21世紀の軽種馬生産では決して多いとはいえない130頭に設定された[319]が、そのうちG1優勝馬が38頭、G1優勝馬の母馬が26頭を占めた(双方にあてはまる牝馬が2頭いる)。G1優勝馬の中にはアレクサンダーゴールドランダーレミデインドリームフィンシャルベオミッデイスタセリタザゴラなどが含まれる[320]。最終的には133頭の牝馬に種付けして126頭の受胎が確認され、不受胎馬7頭のうち6頭も受胎後の胎児死亡が確認されたことで、種牡馬としての高い受胎成功率を示した[321]。ジャドモント自らが保有する繁殖牝馬への種付けは24頭となり、残り109頭は外部の繁殖牝馬への種付けとなった。北米からもゼニヤッタの半姉バランスなど複数のG1優勝牝馬やG1馬の母馬が種付けのために大西洋を渡り[322]、また、秋にも南半球から来た繁殖牝馬21頭に限定的に種付けを行った[323]

2014年 - 2016年

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初年度産駒が生まれた当初は、フランケル産駒は馬産地において「ばらつきがある」という評判を与えられた[324]。しかし初年度産駒が1歳を迎えると筋骨隆々の父親に似る仔も多く現れ、2015年秋のイギリスおよびアイルランドの1歳市場では、11頭の同産駒が平均価格48万6914ギニーという高値で購買された[324]。2014年以後も種付け料は12万5000ポンドに維持された[325][326]。本格的な調教を迎えた初年度産駒は、各所から「仕上げに時間がかかりそうだ」という指摘がなされた[324]

産駒デビュー後(2016年 - )

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2016年

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初年度産駒は2016年にデビューすると、イギリス・アイルランドのみでも、デビューした28頭のうち15頭が勝ち上がって通算22勝という高い勝ち上がり率を見せた[324]。イギリスで2頭、フランスで2頭、日本で2頭が重賞を勝つという順調なスタートを切り、とりわけ日本で誕生した母スタセリタのソウルスターリング阪神ジュベナイルフィリーズを制して産駒の初G1勝利を挙げ、JRA賞最優秀2歳牝馬に選出された[31][327]。初年度産駒が一定の実績を収めた後の供用5年目となる2017年シーズンの種付け料も、従来と変わらず12万5000ポンドの設定となった[326]

2017年

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翌2017年には、日本のソウルスターリングが引き続き優駿牝馬を勝利して同年のJRA賞最優秀3歳牝馬に選ばれることになる活躍を見せると、ヨーロッパでもクラックスマンダービー3着、アイリッシュダービー2着など好走[328][329][330]。シーズン終盤に入るとクラックスマンがチャンピオンステークスを同年のヨーロッパ最高かつ世界3位の評価となる7馬身差の圧勝によって制し、重賞3連勝で産駒のヨーロッパG1初勝利を挙げてカルティエ賞最優秀3歳牡馬に選出されるなど、初年度産駒は3歳になっても好成績を挙げ、産駒の2シーズン目終了時には勝ち上がり43頭でうち31頭がステークス競走に勝利し、イギリス・アイルランドの種牡馬ランキングではガリレオ、ダークエンジェルドバウィに続く4位という好成績を残した[331][329][332]。この実績から2018年の種付け料は17万5000ポンドに引き上げられた[333]

2018年

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2018年にはクラックスマンがヨーロッパ古馬中距離戦線の主軸を担い、ガネー賞コロネーションカップを制し、さらにチャンピオンステークスを6馬身差の圧勝で連覇するという成績を残し、同年世界1位の評価を得て種牡馬入りした[334][335]。さらに日本でも、同国における初年度産駒10頭の中からソウルスターリングに続いてモズアスコットが台頭、安田記念を優勝し、世界で3頭目かつ日本で2頭目となる産駒のG1馬となった[336][337]。このほかイギリス・アイルランドでは、ウィズアウトパロール英語版セントジェームズパレスステークスを制するなどしてロイヤルアスコット開催のトップサイアーとなり、また同地域の種牡馬ランキングではガリレオ、ドバウィに続く第3位の地位に就いた[338][339]。またフランスでもコールザウィンドが4000メートルの長距離G1競走カドラン賞を制し、ヨーロッパで3頭目のG1馬となった[309][340]

2019年

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2019年にはイギリスクラシック競走の勝ち馬も現れ、初めにアナプルナオークスステークスを制し[341]、さらにロジシャンセントレジャーステークスをコースレコードで勝利した[342]クアドリラテラルはデビューから3連勝でフィリーズマイルを制し、カルティエ賞最優秀2歳牝馬に選出[343]。G1競走優勝馬を5頭送り出し、イギリス・アイルランドの種牡馬ランキングでもガリレオ、シーザスターズシャマーダルに続く第4位に付けた[342][344]

2020年

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2020年には、日本でモズアスコットがダート競走2連勝でフェブラリーステークスを制し、同産駒としては初めてのダートグレード競走優勝、また同国調教馬として史上初となる芝とダートの国際GI競走両制覇を達成[345]。同年9月にはカラハラがフランスのG3ダレンベルグ賞を勝ったことで、「グループ制の導入以降史上最速での産駒の重賞40勝」を達成した[346]。イギリス・アイルランドの種牡馬ランキングでは、G1競走制覇を欠いて第12位まで後退したが、同年にデビューした2歳産駒は同地域で19頭勝ち上がり、2歳産駒勝利数の自己最多を更新[347]、12月には日本のグレナディアガーズ朝日杯フューチュリティステークスをレースレコードで勝利し、翌年クラシック世代の「当たり年」の先鞭をつけた[348][349]

2021年

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2021年にはアダイヤー(ダービーステークス、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス)、ハリケーンレーン(アイリッシュダービー、パリ大賞典、セントレジャーステークス)の両馬を筆頭に欧米各国で年齢、性別・距離を問わない複数の活躍馬[注 29]が現れ、同年に死亡した父ガリレオの有力後継馬としての地位を高めた[350][352]。同年9月にインスパイラルがイギリスのG2メイヒルステークスを勝ったことで、「ヨーロッパに拠点を置く種牡馬として史上最速の北半球産産駒の重賞50勝」を達成[353]、同馬はさらにフィリーズマイルを制してカルティエ賞最優秀2歳牝馬に選出された[354]。イギリス・アイルランドの種牡馬ランキングでも、これまではガリレオなどに引けを取る成績であったが、産駒がデビューして6年目となるこの年、前年のガリレオと同水準の賞金526万ポンド余りを収得し、初めてリーディングサイアーの座に就いている[352]。英国に繋養されている種牡馬が英愛リーディングサイアーとなるのは、ミルリーフ以来34年ぶりであり、また、フランスでもリーディング第5位に入るなどして、賞金額ベースでのヨーロッパリーディングサイアーにも輝いた[19][355]。これによって2022年の種付け料は20万ポンド(2021年のレートで約3100万円)に増額されることになった[356]

2022年

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2022年7月30日、エモーションがニューマーケットのリステッドレースを勝利して、100頭目のステークスウィナーとなった。初年度産駒が競走年齢(2歳)に達した年の1月1日から数えて2402日目での記録であり、これはデインヒルと並んで過去最速タイの記録である[357]

そして10月の凱旋門賞ではアルピニスタが凱旋門賞を優勝し、産駒による凱旋門賞制覇が成し遂げられた[358]

2023年

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2023年は11頭の産駒がG1を勝利[359]、これは北半球の種牡馬で最多である[360]。2024年度の種付け料は35万ポンド(約6500万)に設定され、これはドバウィと並んで欧州最高額となる[359]

2024年

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8月10日のスイートソレラステークスをレイクヴィクトリアが勝利して、100頭目の重賞馬を輩出。父ガリレオやデインヒル、ドバウィ、ディープインパクトを上回る史上最速の3144日で達成した[361]

主な産駒

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※太字はG1競走

母の父としての主な産駒

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グレード制重賞優勝馬

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主な対戦馬

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フランケルとエクセレブレーションの対戦[2][120]
フランケル 競走名 エクセレブレーション
3歳 01着 グリーナムS 02着 4馬身
01着 セントジェームズパレスS 03着 2馬身 1/4
01着 クイーンエリザベス2世S 02着 4馬身
4歳 01着 ロッキンジS 02着 5馬身
01着 クイーンアンS 02着 11馬身

エクセレブレーション

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エクセレブレーションは、同じ2008年生まれの牡馬である。3歳時にムーラン・ド・ロンシャン賞、4歳時にジャック・ル・マロワ賞およびクイーンエリザベス2世ステークスを勝利してG1競走3勝を挙げた[120]。この勝ち鞍のほかに、無敗馬フランケルに対する2着が4回あるため、「生まれた年が違っていたら、この馬が「歴史的名マイラー」と讃えられていた可能性も充分にあった」(合田直弘)という旨の指摘もなされている[364][365]。特に2011年8月のハンガーフォードステークス以降、2012年のクイーンエリザベス2世ステークスまで8戦したが、この間フランケル以外の競走馬に対しては全勝した[366]。フランケルの評価は、G1競走3勝馬エクセレブレーションを通じて与えられたものでもあるが、これは11馬身の力量差が現れたクイーンアンステークスなどでの直接対決のみならず[367]、エクセレブレーションが本馬不在のジャック・ル・マロワ賞においてG1競走計13勝の出走馬を相手に優勝したことなど間接的な結果も影響している[265][368]。ただし、公式ハンデキャッパーのドミニク・ガーディナー=ヒルによれば、クイーンエリザベス2世ステークスの圧勝は、エクセレブレーション自身の成長によって達成されたものであり、当シーズン前半に対戦したフランケルの公式レーティングを殊更に高めるものではなかった[224]。その後はフランケルに次ぐヨーロッパのマイラーとして、アメリカのブリーダーズカップ・マイルに出走したが、ワイズダンの4着に敗れて引退した[369]。公式レーティングの年間最高値は、3歳時に126、4歳時に130であり、それぞれ同年のフランケルと比べて10ポンド低い[224]

フランケルとファーの対戦[2][370]
フランケル 競走名 ファー
2歳 01着 条件戦 取消 -
4歳 01着 サセックスS 02着 6馬身
01着 インターナショナルS 02着 7馬身

ファー

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ファー英語版は、同じ2008年生まれの牡馬である。G1競走2勝のゴンバルダを母に持つ良血馬[371]で、ニューマーケット競馬場の未勝利戦を6馬身差で勝ち上がり、2歳時のフランクウィットルパートナーシップ条件ステークスではフランケルの対抗馬と目されたが、この時はゲートで暴れてしまったために発走除外となった[65][66][67]。その後、4歳時のサセックスステークスおよびインターナショナルステークスでフランケルの2着に入るなど、マイルから中距離で善戦すると、5歳時には脚部不安の影響下にありながらロッキンジステークスおよびチャンピオンステークスとG1競走を2連勝して引退した[371][370]

フランケルとナサニエルの対戦[2][372]
フランケル 競走名 ナサニエル
2歳 01着 メイドン 02着 1/2馬身
4歳 01着 チャンピオンS 03着 4馬身 1/4

ナサニエル

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ナサニエルは、同じ2008年生まれの牡馬である。3歳時にキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス、4歳時にエクリプスステークスを勝利してG1競走2勝を挙げた[372]。ナサニエルは2歳時に2戦して未勝利と勝ち上がれなかったが、そのうちデビュー戦での優勝馬がフランケルであったことはよく知られた[373]。この際、フランケルに対して最も近い1/2馬身差まで詰め寄ったことから、同馬に「最も近づいた馬」とも称された[373]。その後キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス、エクリプスステークスを勝利すると、さらにチャンピオンステークスに参戦し、デビュー戦と同様にその引退戦においてもフランケルの対抗馬となった[374][375]

フランケルとブレットトレインの対戦[2][376]
フランケル 競走名 ブレットトレイン
3歳 01着 クイーンエリザベス2世S 08着 12馬身
4歳 01着 ロッキンジS 04着 12馬身
01着 クイーンアンS 06着 16馬身
01着 サセックスS 04着 9馬身 3/4
01着 インターナショナルS 05着 13馬身 1/2
01着 チャンピオンS 06着 14馬身 1/2

ブレットトレイン

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ブレットトレインは、2007年の牡馬で、本馬と3/4同血の半兄である。3歳時にクラシックトライアルを勝利[376]。2年間に渡って、毎朝の調教ではフランケルの先導役を務め、そして複数の競走ではペースメーカーとしての役割を担った[377]。初めクイーンアンステークスでは大逃げを見せたが、その後は陣営間で相談がなされた結果、フランケルの能力を最大限引き出すため、引き付ける逃げで半弟を追走させながらペースを作る戦法が採られた[220]。ブレットトレインの主戦イアン・モンガンによれば、基本的に残り3ハロン時点で追い始め、残り2ハロン地点をゴールとする意識で競走を牽引したという[238][240]。インターナショナルステークスではエディ・アハーンが騎乗した[注 30][269]。チャンピオンステークスではフランケルの出遅れに伴い、一旦控えて同馬を待ち、その後先頭のシリュスデゼーグルに絡んでいくという積極的な競馬を行った[297]。公式ハンデキャッパーのフィル・スミスは、自身が45年以上競馬を見てきたなかで、最も効果的なペースメークを実現したのがブレットトレインの手綱を取ったモンガン騎手であると評している[379]。公式レーティングの最高値は、インターナショナルステークスの5着による113ポンド[380]

競走馬としての特徴・評価

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身体的特徴

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体高は5フィート4.5インチ(約163.8cm)[4][381]体重は出生時123ポンド(約56kg)[注 31]、引退時は約500キログラムであった[4]。日本・社台ファーム吉田照哉はその馬体を「全身お尻」と表現している[383]

担当獣医のチャーリー・スミスによれば、2012年シーズン開幕を控えた際の故障の疑いを別にすると、フランケルは基本的に頑健な競走馬であり、自身が診た中で最も力強いサラブレッドであったという[384]

ストライドが一般的な他馬よりも大きく、蹄は前肢7.5インチ(約19.1cm)、後肢7インチ(約17.8cm)[注 32]で、ストライドも約22フィート(約6.7m)[注 33]であった[4][385]。フランケルの装蹄を担当したスティーヴン・キールトによれば、本馬の大柄な馬体から、その前肢の蹄鉄を12日ないし13日に一度は履き替える必要があったという[386]

精神的特徴

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気性から我慢の効かない面があり、これは3歳時までのフランケルがマイル以下の距離でしか走らなかったことに影響した[309][387]。前進気勢の強い本馬は、セシルに彼が基本的に好まない逃げ戦法を実行させ、実際に2011年の2000ギニー[388]サセックスステークス[168]の競走では一貫して先頭にあり続けた[122]。また2010年のデューハーストステークス[90]、2011年のグリーナムステークス[118]、2012年のロッキンジステークス[221]では、競走の序盤に掛かって折り合いを欠くところを見せている。

調教助手フェザーストンハウを筆頭とする関係者の努力により、2012年のクイーンアンステークスの頃には、競走の途中で「闘争心に火がついてしまうようなところ」は全く無くなった[389]。セシルは、本馬が4歳シーズンの競走で勝つたびにフェザーストンハウの名を挙げて彼を称賛している[389]

本馬引退後のセシルが執筆したところによれば、本馬は成長するごとに平静な気性を得て、これに伴って距離延長をこなすようになった[390]。そして調教師をして「もし彼がもう1年現役に留まっていたら、キングジョージVI世&クイーンエリザベスSブリーダーズCのマイル・アンド・ア・ハーフあたりを彼は掌中にすることになったのではないか」と感じさせている[309][390]。なお、逆に短距離路線を選択しなかった理由については、ここで「もしそういう意図を持って彼を調教していたら、彼のメンタルの部分が長続きはしなかったであろうという感触は持っています」と説明している[390]

走行

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その圧倒的な競走能力から、「5ハロンないし6ハロンのG1競走を勝てるスピードで10ハロンを走行した」という旨で評される[32][309]。ラップタイム[注 34]の計測記録によれば、2000ギニー[392]やセントジェームズパレスステークス[164]では、本馬は競走中盤の数ハロンをスプリンター並の速度で走行したにもかかわらず、最後まで押し切って優勝している。11馬身差で勝利したクイーンアンステークスでは、その大きいストライドをもって、稍重馬場ながら6ハロンから7ハロン地点までの1ハロンを10秒58で走行して話題となった[304]。同競走後のセシルは、本馬は大飛びであるために「トップスピードに乗るのに数完歩は必要」であるが、その後、他馬には不可能な「そのスピードを維持し続ける」能力を発揮することで誰も追いつけなくなるのだと説明している[240][389]

道悪は不得手であるとされる。石灰岩を路盤とするジュライコースで行われた夏季のデビュー戦では重馬場をよくこなしたフランケルだが、秋季のアスコット競馬場で行われるために持久力をより問われることになるチャンピオンステークスを控えると、セシルは「彼の走法、彼が持つ瞬発力を考えると、彼がそういう馬場を好むと確信できる人はいないと思います」として、本馬の不良馬場適正への不安を述べている[292][393][291]。そして実際に道悪となった同競走の後、セシル、クウィリーはともに本馬が馬場に苦労したことについて言及した[301]

レーティング

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ワールドサラブレッドランキング(2013年時点) [144]
順位 RAT. 馬名
1位 140 フランケル
2位 138 ダンシングブレーヴ
3位 137 パントレセレブル
4位 136 ジェネラス
シャーガー
シーザスターズ

ワールドサラブレッドランキング

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国際クラシフィケーション時代を含めれば1977年以来競走馬の格付けを行っているワールドサラブレッドランキング[注 1]は、2012年のクイーンアンステークスおよびインターナショナルステークスを勝利したフランケルに対して140ポンドのレーティングを与えた[16][316]。公式のプレスリリースでは、140ポンドという評価のみならず、出走した競走のうち8回で130ポンド以上、さらにうち5回で135ポンド以上の評価を得ていることが「極めて驚異的」であるだろうと評されている[316]

その翌2013年1月15日、過去の競走馬に対する評価の修正[注 35]が実施されると、サラブレッドランキングには様々な意見が寄せられたが、ともあれ同ランキングにおけるフランケルのレーティングは、単独かつ史上最高の評価となった[16]。ワールドサラブレッドランキングの共同会長ギャリー・オゴーマンは、「フランケルは最高の競走馬としての新基準となる」と言明[16]。レーティングの見直しを行ったフィル・スミスは、フランケルが古馬でも現役を続行したこと[注 36]、また、最後まで無敗でいたことに触れた[16]

ヨーロッパに限定すると、1977年以降からフランケルの現役時まで、8頭の競走馬が2歳および3歳時の両方で公式レーティングの最高馬となっていたが、このうえで本馬は、このうち2歳、3歳、4歳時の全てで公式レーティングの最高馬になった史上初の競走馬となった[316]。年度毎のランキングでフランケルの次点になった競走馬は、2011年のブラックキャビア、2012年のシリュスデゼーグルである[395][396]

タイムフォームグローバルランキング (2013年時点) [397]
順位 RAT. 馬名
1位 147 フランケル
2位 145 シーバード
3位 144 ブリガディアジェラード
テューダーミンストレル
5位 142 アバーナント
リボー
ウインディシティ英語版

タイムフォームレーティング

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1948年以来競走馬の格付けを行っているタイムフォーム社は、2012年のクイーンアンステークスを勝利したフランケルに対して147ポンドのレーティングを与えたが、これはシーバードブリガディアジェラードなどを上回る史上最高の評価であった[17][18]。同紙のジェイミー・リンチは、「フランケルは、競走馬の能力を量る上での新たな基準となります」と語った[398]。同氏は、レースレーティングとプレレーティングに基づく一般的な方法によって147の数字を算出し、競走成績における2着馬との着差やスピード指数などのツールを用いて分析した結果、本馬が1965年にダービーと凱旋門賞を制したシーバードも凌駕する史上最強馬であるという確信的な判断を下したのだと説明した[17]

選定

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1991年以来ヨーロッパの年度代表表彰を行っているカルティエ賞の受賞は、2010年の最優秀2歳牡馬、2011年の最優秀3歳牡馬および年度代表馬、2012年の最優秀古馬および年度代表馬[8][9][399]。最優秀2歳牡馬による翌年の年度代表馬選出[400]、2年連続での年度代表馬選出[注 37][402]、同賞の五部門受賞[注 38][304]などは同賞史上初のことであった。また、年度代表馬選出の際、フランケルを除いた候補馬としては、2011年にはシリュスデゼーグル、ソーユーシンクデインドリームゴルディコヴァらがおり[403]、2012年にはキャメロット、シリュスデゼーグル、エクセレブレーションナサニエルらがいた[404]。2012年には、本馬の調教師ヘンリー・セシルおよび生産者ジャドモントファームなどにも、「チーム・フランケル」としてカルティエ賞特別功労賞が贈られている[405][406]

このほか、馬主協会英語版からは2010年の最優秀2歳牡馬、2011年の最優秀3歳牡馬および年度代表馬、2012年の最優秀マイラーおよび最優秀中距離馬を受賞[8][9]。また、タイムフォーム社の2010年の最優秀2歳牡馬、2011年の最優秀3歳牡馬および最優秀マイラー、2012年の最優秀古馬および最優秀中距離馬[8][9]。レーシングポスト紙の2012年の平地年度代表馬[407]

2021年には、新たに創設されたブリティッシュ・チャンピオンズシリーズ名誉の殿堂の最初の選出者として、レスター・ピゴット騎手とともに列された[10][408]

ブリティッシュ・チャンピオンズスリーズへの影響

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ブリティッシュ・チャンピオンズシリーズは、ロッド・ストリートの構想によってイギリスの平地競馬をさらに振興するために主要35競走の構成で2011年に発足した[409]。そして、これを締めくくるブリティッシュ・チャンピオンズデーは、凱旋門賞ウィークエンドやブリーダーズカップ開催に対抗する呼び物として期待された[186]。その中でフランケルは、ブリティッシュ・チャンピオンズスリーズのこけら落としとなった2011年の2000ギニーを皮切りに、凱旋門賞やブリーダーズカップを回避して臨んだ2012年のチャンピオンステークスに至るまで、同シリーズの対象競走を9つ制した[229][410]。本馬はこの過程で多くの快挙を達成し、その旗印として開催の基礎を築いたとされる[229]。ロッド・ストリートの消費需要調査によると、一般市民がよく知る競走馬にはレッドラムデザートオーキッドシャーガーなどがいたが、フランケルは新しくこれに加わったのだという[411]

ローテーションに関する評価

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フランケルは現役時、イギリス競馬の芝コース7ハロンから10ハロンまでの舞台以外で競走することはなかった[315][4]。その結果、ヨーロッパのクラシック距離路線にあるダービー、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス、凱旋門賞などの有名な競走には出走していない[315]。もとより積極的に海外遠征を行う人物でないイギリスの調教師セシルが、加えて6年来の胃癌によって衰弱していたためにフランス遠征すら困難であったことも関係し、最長の輸送距離はニューマーケットからヨークまでの170マイルに留まった[412]

BBCは、本馬と同じ2000ギニー馬でダービーと凱旋門賞も制したシーザスターズを例に挙げ、フランケルの場合は出走した競走条件が幅広くないことから、本馬を真に偉大な競走馬とみなさないとする批評家の意見を紹介している[4]

タイムフォームは、世界競馬の秋シーズンで権威のある凱旋門賞やブリーダーズカップに出走しなかったことに触れ、国際的な活躍が無かったことによって関係者の業績が低く評価されていると指摘した[412]。同社によれば、同時期には、1万500マイル離れたオーストラリアからアスコット競馬場に至りイギリスの一線級スプリンターと対決することで人気を博したブラックキャビアや、日本の三冠を達成したうえでヨーロッパの最高賞金競走である凱旋門賞に出走して国際的な名声を求めたオルフェーヴルなどがいる[412]


ラビットに関する評価

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ブラッドホース紙のディック・パウエルは、本馬がラビットを必要とする競走馬であり、特にチャンピオンステークスではラビットのブレットトレインが対抗馬のシリュスデゼーグルを苦しませた点に触れて、「ラビットを用いることは勝利の助けになるかもしれないが、史上最高と評価される可能性を損なうものである」と指摘している[302]

その他

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同馬の強さを表す異名として、「monster」[75][158]「freak」[413]「phenomenon」[4][414]などの表現が用いられることがある。日本語では一般的に「怪物」と呼ばれる[15][32][284]

逸話

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馬房へのこだわり

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ウォーレンプレイスのフランケルは、入厩直後、セシルの自宅から数ヤード離れた「ハウス・バーン」という厩舎に入っていたが、不良な素行を見せたため、2週間経過すると「ガレージ」と呼ばれる厩舎に移された[77][415]。すると本馬は、内側を向けば僚馬を見ることが出来、外側に顔を出せば外界をよく観察できる同地の環境を非常に気に入った[415][416]。ただし、ガレージは決して環境が優れている馬房ではなく、またセシルの自宅から厩舎の様子を見ることが出来ないという問題があっため、2010年のロイヤルロッジステークスが終わった直後、本馬はウォーレンプレイスで最も優れた「メインヤード」と呼ばれる厩舎に移ることとなった[415][417]。しかし、新居に移ったフランケルは同馬房への拒否反応を見せ、毎朝蹄鉄が外れた状態になっていたり、また馬房で旋回したり、扉を蹴る仕草を続けるなど、新しい環境に馴染む様子を一向に見せなかった[418]。結局、一週間を経過しないうちにフランケルはガレージの馬房に戻ることになり、そしてまもなく本馬は古巣で以前の平静さを取り戻した[418]。その後もフランケルは転厩に対しての不快感を示したため、最終的に、ウォーレンプレイスの本馬はずっとガレージに居住することになった[83]

ブラックキャビアとの対戦の可能性

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2011年の世界競馬は、マイル路線でデビューから無敗の9連勝を達成したフランケルと、短距離路線でデビューから無敗の16連勝を達成したブラックキャビアを中心に推移した[419][420]。そして2012年シーズンを迎えると、両馬が連勝記録をどれほど伸ばすかという現実的な観点とともに、距離適性の異なる両馬が同年内に対決する空想的な可能性についても関心されるに至った[110][421]。2012年3月初旬のセシルは、フランケルの距離短縮による1400メートル戦での対決はありえないとしながらも、サセックスステークスにブラックキャビアが出走するなら受けて立つ旨を言及[421]。これにはQIPCO社も反応し、両馬がともに出走した場合に同競走の賞金を30万ポンドから100万ポンドへと増額することを発表している[421]。結局、サセックスステークスはブラックキャビアが不出走となり[228]、またクイーンアンステークスでも両馬が同競走に出走する可能性がオーストラリアのメディアを中心に取り沙汰されたが、ブラックキャビアはダイヤモンドジュビリーステークスに出走、この無敗対決は実現しなかった[422][423]

その他

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  • 競馬場の入場者数を20%以上増加させた[424]
  • ジャマイカのスプリンター・ウサイン・ボルトに準えられ、「ウサイン・コルト」と呼ばれた[4]。同時期に同じく距離延長に挑戦したことも比較された[425]
  • この引退戦の前後には「1億ポンドの価値がある奇跡の馬」と称され、イギリスの一般紙の一面に取り上げられ[284]NBCCNNESPNアルジャジーラなどの放送局が放送した[63]
  • 種牡馬入りのために厩舎を離れるにあたって、ロイズの普通保険市場がフランケルのリスクを引き受けることができないことが判明するなど、そのあまりの評価額の高さのために保険市場が混乱した[426]
  • 2013年夏に実施されたファンの訪問ツアーで、亡きセシルの遺志に沿って約3000ポンド(約48万円)の寄付を集めた[427]
  • 2020年、バーチャルG1競走の「グレーテスト・エバー・コックスプレート」でフランケル号が優勝。この結果は物議を醸した[428][429]

血統表

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フランケル血統 (血統表の出典)[§ 1]
父系 サドラーズウェルズ系

Galileo
1998 鹿毛
父の父
Sadler's Wells
1981 鹿毛
Northern Dancer Nearctic
Natalma
Fairy Bridge Bold Reason
Special
父の母
Urban Sea
1989 栗毛
Miswaki Mr. Prospector
Hopespringseternal
Allegretta Lombard
Anatevka

Kind
2001 鹿毛
*デインヒル
1986 鹿毛
Danzig Northern Dancer
Pas de Nom
Razyana His Majesty
Spring Adieu
母の母
Rainbow Lake
1990 鹿毛
Rainbow Quest Blushing Groom
I Will Follow
Rockfest Stage Door Johnny
Rock Garden
母系(F-No.) Circassia系(FN:1-k) [§ 2]
5代内の近親交配 Northern Dancer 3×4=18.75%、Natalma 4×5・5=12.50%、Buckpasser 5×5=6.25% [§ 3]
出典
  1. ^ [430]
  2. ^ [431]
  3. ^ [430]


血統背景

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脚注

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注釈

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  1. ^ a b 国際競馬統括機関連盟が発表する競走馬の世界ランキング[394]。2013年、ロンジン社がオフィシャルパートナーとなるに伴い、「ロンジンワールドベストレースホースランキング」へ改称した[394]
  2. ^ クラシック勝ち馬のナイタイム英語版およびシクスティーズアイコン英語版、最優秀2歳牡馬テオフィロなど[25]
  3. ^ 8以上の評価は「極めて稀」であった[21]
  4. ^ 馬名はキングスバヨネット[57]。当時のレーティングは80台[57]。スティーヴン・キールトによれば、この際に併せた距離7ハロンを最も得意とする競走馬で、調教駆けすることでも知られていた[57]
  5. ^ 1か月後にマルセルブサック賞で3着[69]
  6. ^ 次走で同年のG3ホーリスヒルステークスを勝利[73]
  7. ^ 翌年にアイリッシュダービーセクレタリアトステークスに優勝し、ダービーではプールモアのアタマ差2着[73]
  8. ^ BBC放送の実況アナウンサーであるジム・マクグラス英語版はこれを「何ということだ。これはチャンピオンの競馬だ」と実況し、クラマーを管理するジェーン・チャップルハイアム英語版は「セクレタリアト以来」の圧倒的勝利と振り返り、トレジャービーチらを管理するエイダン・オブライエンは「アンビリーバブル」と形容した[75][76][77]
  9. ^ 馬名はキャピタルアトラクション[85]。当時のレーティングは100で、これはフランケルより23低かった[85]
  10. ^ なお、20世紀では、1978年のトロモス英語版(131)、1994年のセルティックスウィング(130)、1991年のアラジ(130)、1980年のストームバード(128)、1981年のグリーンフォレスト(128)、1983年のエルグランセニョール(128)、1982年のダイイシス(127)、1986年のリファレンスポイント(127)、1997年のザール(127)らが、ヨーロッパの2歳チャンピオンとして126ポンドを超過するレーティングを与えられている[108]
  11. ^ 同競走では1974年のアパラチー英語版以来となる[128]
  12. ^ 残り2.5ハロン辺りの「ザ・ブッシュ」という地点で、実況アナウンサーのイアン・バートレットはこれを「15馬身のリード」と実況した[129][85][134]。ニューマーケット競馬場の競馬担当責任者マイケル・プロッサーは10馬身程度[85]、競馬ジャーナリストのエドワード・プロッサーは最大で12馬身差としている[63]
  13. ^ 21世紀の範囲では、ハービンジャーのキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス勝利による135がこれに次ぐ記録だった[137]
  14. ^ ジョセリン・ド・モーブレイは、セオリー通りに競馬をしたならばフランケルの評価はいっそう高くなったことろうと述べ、本馬が単騎駆けした競走の展開を、競走馬としての能力を測る上では「残念だったと言わざるを得ない」とした[136]。同氏は、次走のセントジェームズパレスステークスの競走結果について、本馬がロイヤルロッジステークス以来の「4番手で折り合う」競馬が出来たことは、「後続と僅差であったという結果よりずっと重要なことである」と評価している[136]
  15. ^ 当時、21世紀でイギリスクラシック二冠を達成した競走馬は2009年のシーザスターズ1頭のみであった[148]。一方で、マイル路線を進んだイギリスの2000ギニー馬としては、2002年のロックオブジブラルタルがマイルG1競走を多く勝ち、このほかにも2007年のコックニーレベル、2008年のヘンリーザナヴィゲーターがアイリッシュ2000ギニーに転戦しての連勝を達成していた[148]
  16. ^ 例えば、ロイヤルロッジステークスの後には、コーラルとパディパワーが5対2、ラドブロークス、トートスポート、ベット365が4対1[80]、デューハーストステークスの後にはウィリアム・ヒルが3対1[96]、2000ギニーの後には、ヴィクター・チャンドラーが7対2、ウィリアム・ヒルとベット365が6対4を掲げた[151]
  17. ^ ただし、2011年上半期の競馬をレポートしたジョセリン・ド・モーブレイは、セントジェームズパレスステークスではフランケルが集中力も体力も切らすことなく折り合いを付けて勝利することができたとして、同競走におけるクウィリーの競走運びを高く評価している[160]
  18. ^ 実際に、ラドブロークスなど一部のブックメーカーは、後述のサセックスステークスの前売りでキャンフォードクリフスを1番人気に掲げた[165][171]
  19. ^ 次走のサセックスステークスを「最も印象の強いレースの一つ」として導く形で、対比的に述べたもの[170]
  20. ^ 2011年の競馬をレポートしたジョセリン・ド・モーブレイは、リオデラプラタ、ラジサマンの2頭を「例年なら欧州のベストマイラーと評されてもおかしくないほどの力」を持っていたと述べている[179]。2011年のリオデラプラタは、サセックスステークスの競走後に3戦してすべて2着[180]。前走のイスパーン賞でゴルディコヴァの3着であったラジサマンは、後にダニエルウィルデンシュタイン賞でリオデラプラタを破って勝利した[180]。なお、この2頭が出走して2着、3着となったムーラン・ド・ロンシャン賞では、エクセレブレーションが勝利を収めている[180]
  21. ^ 2013年にレーティングの下方修正が行われた結果、このレーティングは133ポンドに修正されている[144]
  22. ^ a b 2013年にレーティングの下方修正が行われた結果、このレーティングは135ポンドに修正されている[144]
  23. ^ これは、「ロイヤルアスコット開催史上最も低いオッズの一つ」と紹介される場合がある[232][141]。実際には、これを下回るものとして、ゴールドカップでは1917年のゲイクルセイダー(8対100)[233]キングズスタンドステークスでは1877年のロリーポップ(8対100)[234]プリンスオブウェールズステークスでは1897年のガルティーモア(1対33)[235]、セントジェームズパレスステークスでは1867年のハーミット(1対20)[236] 、1881年のイロコイ英語版(9対100)[236]、1891年のコモン(1対40)[236]、1903年のロックサンド(7対100)[237]、1905年のチェリーラス英語版(6対100)[237]、1907年のスリーヴガリオン英語版(1対20)[237]、1947年のテューダーミンストレル(6対100)[237]、1960年のヴェンチャー(1対33)[237]などがある。
  24. ^ 後にフェザーストンハウは、同競走におけるセントニコラスアビーの末脚を見て、「フランケルに勝つ馬が現れるとすれば、それはセントニコラスアビーだろうと思っていました」と認識していたと振り返っている[262][263]
  25. ^ 当時の21世紀に入ってからの同競走におけるレーティングとしては、サキー(133)、シーザスターズ(129)、オーソライズド(128)がこれに続く[279]
  26. ^ コーラル、ウィリアムヒルは1対4、ラドブロークス、ベット365は1対2を掲げた[278]
  27. ^ 翌年以降の主要競馬開催の放映権を、新たにチャンネル4が獲得したため[312]
  28. ^ イギリスの種牡馬価値は、「初年度交配料×年間交配100頭分×10年」で算出される[304]
  29. ^ ダービー馬2頭・オークス馬1頭・2歳G1馬3頭[350]。北半球のほか、母父デインヒルの血統を背景に(#血統背景を参照)、早熟スプリンターを重視する南半球でも人気を博した[351]
  30. ^ なお、これを控えたフランケルの追い切りでは、アハーンの遅刻のためにスムーズさを欠く事態も起こっている[378]
  31. ^ 同年のジャドモント生産馬の平均出生時体重は126ポンド[382]
  32. ^ 平均は5インチ[4]
  33. ^ 平均は20から21フィート[4]
  34. ^ なお、当時のイギリスではラップタイム計測はさほど普及しておらず、例えば2011年のサセックスステークスをフランケルが優勝した際のラップタイムは不明である[391]
  35. ^ ダンシングブレーヴ(141→138)、シャーガー(140→136)、アレッジド(140→134)など[16]
  36. ^ フランケルは4歳馬として、レーティングを3歳時の136ポンドから、140ポンドの評価まで更新した[16]。「もしダンシングブレーヴが4歳でも現役を続行し、フランケルのように4ポンド加算していたなら、レーティングは145となり、今般142に格下げされたでしょう」(スミス)[16]
  37. ^ 隔年で2度年度代表馬になった競走馬には、ウィジャボードエネイブルがいる[401]
  38. ^ 後述の功労賞「チーム・フランケル」を含めると六部門となる[304]
  39. ^ 同配合の産駒によるアーニングインデックスが、父ガリレオおよび母父デインヒル単体によるものを上回っている[434]

出典

[編集]
  1. ^ Cooper2021, p.340
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参考文献

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書籍

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  • 平松さとし「[クローズアップ]矢作芳人調教師の挑戦と使命感 グランプリボスがセントジェームズパレスS(英GI)に出走」『優駿』2011年8月号、中央競馬ピーアール・センター、2011年、74-75頁。 
  • 古橋明、大田康二、又野一仁、高木辰夫、青木裕之、山室賢治、宇野高宏、宇都宮秀樹、橋本真一、佐藤宏昭、秋元稔弥、相川貴志、小林光治「2011年JPNサラブレッドランキング発表!」『優駿』2012年2月号、中央競馬ピーアール・センター、2012年、58-65頁。 
  • エドワード・プロッサー「[特別読物]無敗の怪物フランケル 英国競馬史に刻んだ最も素晴らしい物語」『優駿』2012年12月号、中央競馬ピーアール・センター、2012年、58-61頁。 
  • エドワード・プロッサー「[英タイムフォーム誌が"歴代最強馬と評価"]フランケル 歴史的名馬を凌駕する圧倒的なパフォーマンス」『優駿』2013年2月号、中央競馬ピーアール・センター、2013年、40頁。 
  • 本木剛介「[ワールド・レーシング・コラム] シーザスターズ超えも期待したい「フランケル」」『優駿』2010年12月号、中央競馬ピーアール・センター、2010年、117頁。 
  • ジョセリン・ド・モーブレイ「クラシックレポート (欧州) 欧州3歳最強はマイル王フランケル 女王悲願の英ダービーはプールモアが制す」『フューチュリティ』vol.48、ジェイエス、2011年、62-67頁。 
  • ジョセリン・ド・モーブレイ「2011・欧州競馬レヴュー」『フューチュリティ』vol.49、ジェイエス、2012年、10-15頁。 
  • 「[ニュース & トピックス] サマーシーズンがスタート、ほか」『優駿』2013年8月号、中央競馬ピーアール・センター、2013年、153-159頁。 
  • Scott, Brough (2011-10-28). Nick Pulford. ed. “Frankel the wonder horse: Brough Scott tells the inside story of Sir Henry Cecil's world champion”. Racing Post Annual 2012 (Racing Post): 6-18. ISBN 978-1905156986. 
  • Scott, Brough (2012-11-08). Nick Pulford. ed. “Frankel: The story of Sir Henry Cecil's wonder horse at the end of his perfect 14-race career”. Racing Post Annual 2013 (Racing Post): 12-22. ISBN 978-1908216250. 
  • Nick Pulford, ed (2012-11-08). “The Annual Awards: Our choice of the best of the year - plus the alternative awards”. Racing Post Annual 2013 (Racing Post): 140-141. ISBN 978-1908216250. 
  • 『優駿』2015年3月号、中央競馬ピーアール・センター、2013年。 
  • 『優駿』2017年2月号、中央競馬ピーアール・センター、2017年。 
  • 『優駿』2017年7月号、中央競馬ピーアール・センター、2017年。 
  • 『優駿』2018年2月号、中央競馬ピーアール・センター、2017年。 
  • 『優駿』2018年8月号、中央競馬ピーアール・センター、2017年。 
  • 『優駿』2019年2月号、中央競馬ピーアール・センター、2019年。 
  • 『優駿』2020年1月号、中央競馬ピーアール・センター、2020年。 
  • 『優駿』2020年2月号、中央競馬ピーアール・センター、2020年。 
  • 『優駿』2020年4月号、中央競馬ピーアール・センター、2020年。 
  • 『優駿』2021年2月号、中央競馬ピーアール・センター、2021年。 
  • 『優駿』2022年2月号、中央競馬ピーアール・センター、2022年。 

関連項目

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外部リンク

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