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ヴァリボナヴェナトリクス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヴァリボナヴェナトリクス
Vallibonavenatrix
生息年代: 前期白亜紀, バレミアン期
129.4–125 Ma
ヴァリボナヴェナトリクスの化石と近縁種の化石に基づく想像図
地質時代
前期白亜紀
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
階級なし : 真竜盤類 Eusaurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
階級なし : 新獣脚類 Neotheropoda
階級なし : 鳥吻類 Averostra
下目 : 堅尾下目 Tetanurae
階級なし : 鳥獣脚類 Avetheropoda
階級なし : 肉竜類 (?) Carnosauria
上科 : メガロサウルス上科 Megalosauroidea
: スピノサウルス科 Spinosauridae
: ヴァリボナヴェナトリクス属 Vallibonavenatrix
学名
Vallibonavenatrix
Malafaia et al., 2019

ヴァリボナヴェナトリクス学名 Vallibonavenatrix、「バリボナ英語版の狩人」の意味)は、スペインカステリョン県にあるアルシリャス・デ・モレーリャ累層英語版バリボナ英語版1980年終盤から1990年初めにかけて発見された[1]スピノサウルス科恐竜タイプ種及び唯一のは部分骨格から知られるヴァリボナヴェナトリクス・カニVallibonavenatrix cani)のみである[2]。同じく部分化石のみ発見され、同時期・付近に生息していたプロタスリティスとヴァリボナヴェナトリクスは同一種である可能性がある[3]

発見と命名

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1980年代後半から1990年代前半にかけて、アマチュア化石収集英語版家のフアン・カノ・フォルナーは、スペインカステリョン県にあるエルス・ポルツ自然公園英語版の様々な場所で化石を採集していた。そのうちの一つ、バリボナ英語版地域にあるサンタ・アゲダ地区では、中生代脊椎動物の化石が多数発掘され、その中には恐竜の化石も含まれていた。フォルナーはこれらの化石をサント・マテウ英語版地域のコレクションとして所持していたが、後の1994年ヘネラリタ・バレンシアーナ英語版博物館学標本として認定した。2007年、スペインの古生物学者フェルナンド・ゴメス=フェルナンデスらが、フォルナー所蔵の獣脚類骨盤に関する予備記載を発表した。標本からはさらに、頸椎1個、胴椎6個、ほぼ完全な仙骨、neurapophyses片1個、尾椎4個、肋骨と肋骨の部分片10個、不完全な血道弓3個、ほぼ完全な左腸骨(主な腰骨)、右腸骨の腹側部分の断片、不完全な左右の坐骨(腰骨の下部と最後部)、恥骨の近位部に属すると解釈される断片が発見された[2]

2019年、エリザベーテ・マラファイアらは、部分骨格をホロタイプ標本としてスピノサウルス科の新属・新種であるヴァリボナヴェナトリクス・カニ(Vallibonavenatrix cani)を記載した。属名バリボナ英語版の町を指し、ラテン語の接尾辞"-venatrix "(ヴェナトリクス)は "(女性の)狩人"を意味する。種小名は、ヴァリボナヴェナトリクスの化石の発見者であるカノ・フォルナーに献ぜられたものである。ヴァリボナヴェナトリクスは、イベリア半島から産出されたスピノサウルス科の中で最も完全な標本である[2]。イベリア半島のスピノサウルス科には、ヴァリボナヴェナトリクスの他にプロタスリティスカマリラサウルスイベロスピナスがいる[4]

記載

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を食べるヴァリボナヴェナトリクスの想像図

ヴァリボナヴェナトリクスは中型の二足歩行捕食動物であった。胴椎の上方に突き出た神経棘は中程度の高さがあり、知られている神経棘の1本は扇状に下から上に広がった台形をしており、これはスピノサウルス科のイクティオヴェナトルに似ている。これら2属の神経棘の形態間の類似性は、他のスピノサウルス類に見られるように、ヴァリボナヴェナトリクスの背中にを形成する細長い神経棘が存在していたことを示しているのかもしれない。ヴァリボナヴェナトリクスの仙骨には深い胸骨窩(くぼみ)と骨格の含気性英語版があった。骨盤腸骨も非常に骨格の含気性が多く、内側に大きな空隙を持っていた[2]。推定全長は約8メートルと考えられている[5]

分類

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国立科学博物館所蔵のスピノサウルス亜科イリタトルの復元骨格

2019年、マラファイアとそのチームは、2つの亜科スピノサウルス亜科バリオニクス亜科)に分かれている大型のテタヌラ類恐竜であるスピノサウルス科に、ヴァリボナヴェナトリクスを分類した。ヴァリボナヴェナトリクスは、スペインイングランドバレミアン期に生息していたバリオニクスなどのヨーロッパのバリオニクス亜科に近いものの、南半球の超大陸であるゴンドワナ大陸に生息するスピノサウルスイリタトルアジアのイクティオヴェナトルなどのスピノサウルス亜科により近縁であることが判明した。そのためマラファイアらはこのをスピノサウルス亜科に分類した。マラファイアらの分析結果は以下のクラドグラムに示されている:[2]

スピノサウルス科
スピノサウルス亜科
アンガトラマ
イクティオヴェナトル

スピノサウルス (MSNM V4047)

スピノサウルス (holotype)
ヴァリボナヴェナトリクス
バリオニクス亜科

バリオニクス

シギルマッササウルス
スコミムス

しかし2021年、クリス・バーカーらは、彼らが行った分析の種類(最大節約法ベイズ法)により、ヴァリボナヴェナトリクスがスピノサウルス亜科でもバリオニクス亜科でもない最も基盤的(最も特殊化していない)スピノサウルス科であるか、またはバリオニクス亜科の一員であるかの2つのうちどちらかであるとした。また、バーカーらはその系統学的位置は未確定であると結論づけた[6]

バーカーらの結果と同様に、オクタヴィオ・マテウス英語版とダリオ・エストラビス=ロペスによる2022年の研究でも、ヴァリボナヴェナトリクスはスピノサウルス亜科であるとの結果は得られなかった。ただし、ある種の解剖学的特徴はバリオニクス亜科ではなくスピノサウルス亜科との親和性を示している可能性がある[4]

古環境

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ヴァリボナヴェナトリクスは、前期白亜紀バレミアン期、1億2940万年前から1億2500万年前とされるアルシリャス・デ・モレーリャ累層英語版から産出した[2]。ヴァリボナヴェナトリクスが生息していた当時の環境では、鳥盤類イグアノドン・ベルニサルテンシスモレラドン・ベルトラニ英語版、未同定の竜脚類スピノサウルス科プロタスリティスなどの恐竜と共存していた[7][8]

脚注

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  1. ^ 3/28 ニュースなスペイン語 La Rioja:ラ・リオハ州”. note. 2023年11月25日閲覧。
  2. ^ a b c d e f Malafaia, E.; Miguel Gasulla, J.; Escaso, F.; Narváez, I.; Luis Sanz, J.; Ortega, F. (2019). “A new spinosaurid theropod (Dinosauria: Megalosauroidea) from the late Barremian of Vallibona, Spain: Implications for spinosaurid diversity in the Early Cretaceous of the Iberian Peninsula”. Cretaceous Research 106: 104221. doi:10.1016/j.cretres.2019.104221. 
  3. ^ スピノサウルス類の新種を発見、最古級、起源解明に新たな鍵”. ナショナル ジオグラフィック. 2023年11月25日閲覧。
  4. ^ a b Mateus, Octávio; Estraviz-López, Darío (2022-02-16). “A new theropod dinosaur from the early cretaceous (Barremian) of Cabo Espichel, Portugal: Implications for spinosaurid evolution” (英語). PLOS ONE 17 (2): e0262614. Bibcode2022PLoSO..1762614M. doi:10.1371/journal.pone.0262614. ISSN 1932-6203. PMC 8849621. PMID 35171930. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8849621/. 
  5. ^ 『新発見の恐竜大集合』小林快次監修、講談社、2020年、17頁。 
  6. ^ Barker, C.T.; Hone, D.; Naish, D.; Cau, A.; Lockwood, J.; Foster, B.; Clarkin, C.; Schneider, P. et al. (2021). “New spinosaurids from the Wessex Formation (Early Cretaceous, UK) and the European origins of Spinosauridae”. Scientific Reports 11 (1): 19340. Bibcode2021NatSR..1119340B. doi:10.1038/s41598-021-97870-8. PMC 8481559. PMID 34588472. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8481559/. 
  7. ^ Weishampel, David B; et al. (2004). "Dinosaur distribution (Early Cretaceous, Europe)." In: Weishampel, David B.; Dodson, Peter; and Osmólska, Halszka (eds.): The Dinosauria, 2nd, Berkeley: University of California Press. Pp. 562. ISBN 0-520-24209-2.
  8. ^ Verdú, F.J.; Godefroit, P.; Royo-Torres, R.; Cobos, A.; Alcalá, L. (2017). “Individual variation in the postcranial skeleton of the Early Cretaceous Iguanodon bernissartensis (Dinosauria: Ornithopoda)”. Cretaceous Research 74: 65–86. doi:10.1016/j.cretres.2017.02.006. 

関連項目

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