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メラクセス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
メラクセス
頭蓋骨の復元
地質時代
後期白亜紀セノマニアン
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
下目 : テタヌラ下目 Tetanurae
階級なし : カルノサウルス類 Carnosauria
上科 : アロサウルス上科 Allosauroidea
: カルカロドントサウルス科 Carcharodontosauridae
: ギガノトサウルス族 Giganotosaurini
: メラクセス属 Meraxes
学名
Meraxes
Canale et al., 2022
タイプ種
Meraxes gigas
下位分類(
  • メラクセス・ギガス
    Meraxes gigas Canale et al., 2022

メラクセス学名Meraxes)は、現在のアルゼンチンパタゴニア地方に生息していた、カルカロドントサウルス科に属する獣脚類恐竜。体重は4トン以上、全長は約11メートルと推定される。ティラノサウルスと同様に前肢が小型化しているが、ティラノサウルス科とは異なる系統に属する[1]。また生息した時代もより数千万年スケールでティラノサウルスよりも早い[1]

約9600万 - 9300万年前に相当する地層であるフインクル層から化石が産出しており、長さ約127センチメートルの頭蓋骨、3本の末節骨を伴う前肢後肢尾椎などが発見されている[2]。2022年時点で、タイプ種メラクセス・ギガスMeraxes gigas)が命名されている。属名はアメリカファンタジー小説『氷と炎の歌』に登場するドラゴンに由来する[1][2]

発見と命名

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かつて "Campanas carcharodontosaurid" と呼称されていたメラクセスのホロタイプ標本 MMCh-PV 65 が発見されたのは2012年のことであった[3]。発見された骨には、ほぼ完全な頭蓋骨肩帯腰帯の要素、部分的な前肢、完全な後肢、断片的な肋骨頸椎胴椎仙椎および複数の完全な尾椎が含まれる。これは南半球から発見されたカルカロドントサウルス科の骨格としては最も完全なものである[4]

これらの骨に基づき、メラクセス・ギガスは2022年に Canale ほかにより記載された。属名である "Meraxes" はジョージ・R・R・マーティンのファンタジー小説シリーズ『氷と炎の歌』に登場するドラゴンを讃えたものである。種小名 "gigas" は「巨大な」を意味するギリシア語に由来し、その体サイズを反映している[4]

説明

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ヒトとの大きさ比較

メラクセスは非常に大型の獣脚類であり、体重は約4.26トンに達する。頭蓋骨は単体で長さ1.27メートルに達し、頭蓋骨長1.23メートルのアクロカントサウルスのものに匹敵する。様々な骨(頭蓋骨・肩甲骨・中手骨坐骨体・など)の形状とプロポーションからは、メラクセスとアクロカントサウルスが類似するプロポーションと体サイズを有していたことが示唆される。またメラクセスの前肢は小型であり、これはカルカロドントサウルス科アベリサウルス科ティラノサウルス科アルヴァレスサウルス科という4つの異なる系統で独立して発生した収斂進化の例である[4]

生体復元図

ホロタイプの骨組織学的分析からは、当該個体が死亡時に年齢53歳であり、その死から約4年前の時点で骨格が成熟していたことが示唆された。このため、メラクセスのホロタイプは2022年時点で知られている非鳥類型獣脚類としては最高齢の個体のものとなる。また、ティラノサウルスのように成長速度を変化させて急成長を遂げたのではなく、成長期を長く伸ばすことにより大型の体サイズに成長したことが判明した[4][3]

分類

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メラクセスはカルカロドントサウルス科の派生的なギガノトサウルス族のうち、もっとも初期のメンバーを代表する。以下のクラドグラムは Canale et al. による系統解析の結果を示す[4]

カルカロドントサウルス科

Neovenator

Concavenator

Eocarcharia

Lajasbenator

Lusovenator

Acrocanthosaurus

Shaochilong

カルカロドントサウルス亜科

Carcharodontosaurus spp.

ギガノトサウルス族

Meraxes

Tyrannotitan

Giganotosaurus

Mapusaurus

古環境

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フインクル層から産出した複数の恐竜。メラクセスは暗い青色で示されている。

メラクセスの化石はフインクル層から収集された。この古環境には多数の分類群が生息していたことが判明している。この地域の獣脚類は鳥群オヴェロラプトル英語版、エラフロサウルス亜科のフインクルサウルス英語版、アベリサウルス類のスコルピオヴェナトルトラルカサウルス英語版、およびイロケレシア、巨大なカルカロドントサウルス科のマプサウルスメガラプトル類アオニラプトルに代表される[5][6]。しかし、メラクセスはマプサウルスよりも古い年代の岩層から発見されており、おそらく共存していたわけではない[4]

この地域の植物食恐竜はレバッキサウルス科竜脚類であるカタルテサウラ英語版リメイサウルス英語版ティタノサウルス類アルゼンチノサウルスココンサウルス英語版、および未同定のイグアノドン科に代表される[7][8]

出典

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  1. ^ a b c ティラノサウルス似の大型肉食恐竜を発見、別グループの新種”. ナショナルジオグラフィック. ナショナルジオグラフィック協会 (2022年7月13日). 2022年10月18日閲覧。
  2. ^ a b 小堀龍之「「巨大ドラゴン」にちなみ命名 アルゼンチンで見つかった新種恐竜」『朝日新聞』2022年7月8日。2022年10月18日閲覧。
  3. ^ a b Cullen, Thomas M.; Canale, Juan I.; Apesteguía, Sebastián; Smith, Nathan D.; Hu, Dongyu; Makovicky, Peter J. (2020-11-25). “Osteohistological analyses reveal diverse strategies of theropod dinosaur body-size evolution”. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences 287 (1939): 20202258. doi:10.1098/rspb.2020.2258. PMC 7739506. PMID 33234083. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7739506/. 
  4. ^ a b c d e f Canale, J.I.; Apesteguía, S.; Gallina, P.A.; Mitchell, J.; Smith, N.D.; Cullen, T.M.; Shinya, A.; Haluza, A. et al. (2022-07-07). “New giant carnivorous dinosaur reveals convergent evolutionary trends in theropod arm reduction”. Current Biology. doi:10.1016/j.cub.2022.05.057. PMID 35803271. https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(22)00860-0?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0960982222008600%3Fshowall%3Dtrue. 
  5. ^ Matías J. Motta; Federico L. Agnolín; Federico Brissón Egli; Fernando E. Novas (2020). “New theropod dinosaur from the Upper Cretaceous of Patagonia sheds light on the paravian radiation in Gondwana”. The Science of Nature 107 (3): Article number 24. Bibcode2020SciNa.107...24M. doi:10.1007/s00114-020-01682-1. hdl:11336/135530. PMID 32468191. 
  6. ^ Cerroni, M.A.; Motta, M.J.; Agnolín, F.L.; Aranciaga Rolando, A.M.; Brissón Egli, F.; Novas, F.E. (2020). “A new abelisaurid from the Huincul Formation (Cenomanian-Turonian; Upper Cretaceous) of Río Negro province, Argentina”. Journal of South American Earth Sciences 98: 102445. doi:10.1016/j.jsames.2019.102445. 
  7. ^ Calvo, J. O. and Salgado, L. (1995). "Rebbachisaurus tessonei sp. nov. A new sauropod from the Albian-Cenomanian of Argentina; new evidence on the origin of the Diplodocidae." Gaia, 11: 13-33.
  8. ^ Baiano, Mattia; Coria, Rodolfo; Cau, Andrea (2020). “A new abelisauroid (Dinosauria: Theropoda) from the Huincul formation (lower upper Cretaceous, Neuquén Basin) of Patagonia, Argentina”. Cretaceous Research 110: 104408. doi:10.1016/j.cretres.2020.104408. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0195667119301880.