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'''シオングアンロン'''([[学名]]:'''{{snamei|Xiongguanlong}}''')は、現在の[[中華人民共和国]][[甘粛省]][[嘉峪関市]]で[[化石]]が発見された<ref name=松田2017>{{Cite book|和書|title=語源が分かる 恐竜学名辞典 |page=150 |publisher=[[北隆館]] |author=松田眞由美 |others=[[小林快次]]、藤原慎一 監修 |date=2017-01-20 |isbn=978-4-8326-0734-7}}</ref>、[[ティラノサウルス上科]]に属する[[獣脚類]]の[[恐竜]]の[[属 (分類学)|属]]<ref name="ポール2020">{{Cite book|和書|title=グレゴリー・ポール恐竜事典 原著第2版 |page=116 |author=[[グレゴリー・ポール]] |translator=[[東洋一]]、今井拓哉、河部壮一郎、柴田正輝、関谷透、服部創紀 |date=2020-08-30 |publisher=[[共立出版]] |isbn=978-4-320-04738-9}}</ref><ref name=松田2017/>。タイプ種シオングアンロン・バイモエンシス({{snamei|Xiongguanlong baimoensis}})が命名されている<ref name="ポール2020" />。属名は「雄關龍」を、種小名は「白魔」を意味し、後者は発見地が奇岩の存在する景勝地であったことに由来する<ref name=松田2017/>。'''シャンガンロング'''<ref name="恐竜博2011">{{Cite book|和書|title=恐竜博2011 |page=82 |editor=[[朝日新聞社]] |others=[[真鍋真]] 監修、坂田智佐子 編集協力|publisher=[[朝日新聞社]] |year=2011 |chapter=エッセイ9 ティラノサウルス類の進化 |author=[[對比地孝亘]]}}</ref>のカナ転写表記もある。
'''シオングアンロン'''([[学名]]:'''''Xiongguanlong''''')は、現在の[[中華人民共和国]]に[[前期白亜紀]]に生息していた[[ティラノサウルス上科]]に属する[[恐竜]]の属。模式種はシオングアンロン・バイオメンシスで、[[2009年]]に中国と[[アメリカ合衆国]]の研究者らがオンラインで記載し、[[2010年]]1月に公式に発表された。属名は中国北西部の都市[[嘉峪関市]]に由来する。種小名は「白い魔物」を意味する bai mo (白魔)にちなみ、化石の発見場所に近い岩石層である白魔城に由来する。標本には下顎を欠いた頭骨・[[頚椎]]・[[脊椎]]・右の[[腸骨]]・右の[[大腿骨]]が含まれる。シオングアンロンが発見された岩石は白亜紀前期の[[アプチアン]]から[[アルビアン]]にあたり、1億2500万年前から1億年前である<ref name="Lietal2010">{{cite journal | last1 = Li | first1 = Daqing | last2 = Norell | first2 = Mark A. | last3 = Gao | first3 = Ke-Qin | last4 = Smith | first4 = Nathan D. | last5 = Makovicky | first5 = Peter J. | year = 2010 | title = A longirostrine tyrannosauroid from the Early Cretaceous of China | url = http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/277/1679/183.full | journal = Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences | volume = 277 | issue = 1679 | pages = 183–190 | doi = 10.1098/rspb.2009.0249 | pmid = 19386654 | pmc = 2842666 }}</ref>。


[[グレゴリー・ポール]]の推定では全長5メートルに達し、[[白亜紀]]中ごろのティラノサウルス上科の一部が大型化していたことが示唆される<ref name="ポール2020"/>。確認されている化石は変形した頭蓋骨と一部の体骨格であり、頭部は吻部が長く伸び、上下の幅が狭いことを特徴とする<ref name="ポール2020"/>。下[[側頭窓]]がB字型で、[[軸椎]]の[[神経棘]]が先端で左右方向に拡大しており、派生的なティラノサウルス類の特徴も持つ<ref name="恐竜博2011"/>。
== 記載 ==
[[File:Xiongguanlong size 01.jpg|thumb|left|ヒトとの大きさ比較]]
[[File:Xiongguanlong baimoensis.png|thumb|left|復元図]]
シオングアンロンは他の[[獣脚類]]と同様に長い尾で体のバランスを取った二足歩行の動物である。白亜紀前期[[バレミアン]]の初期ティラノサウルス上科とティラノサウルスのような白亜紀後期の[[ティラノサウルス科]]との中間型の体躯をしており、体重は300キログラムと推定されている。椎骨は他の基盤的ティラノサウルス上科よりも頑丈で、巨大な頭骨を支えるのに適していた可能性がある<ref>Livescience: [http://www.livescience.com/animals/090422-china-dinosaurs.html ”T. Rex Relative Fills Evolutionary Gap”], 22-4-2009.</ref>。頭骨の鼻口部は[[アリオラムス]]と同様に細長く、ティラノサウルス上科が単純に重厚な形態へ進化するよりも複雑な過程を辿ったことが示唆されている<ref name="Lietal2010"/>。


産出層準は新民堡層群で、その地質年代層序は[[前期白亜紀|下部白亜系]][[アプチアン]]階あるいは[[アルビアン]]階と考えられている<ref name="ポール2020"/>。共存した動物として[[オルニトミモサウルス類]]の[[ベイシャンロン]]がおり、本属はこれを捕食対象にしていたと推測される<ref name="ポール2020"/>。
頭頂部の矢状面上には鋭い隆起が存在し、後眼窩部位をはじめとする基底頭蓋骨は箱型で広かった。[[方形骨]]には突出した背側の突起と湾曲した尾側の縁が存在した。[[前眼窩窓]]は[[上顎骨]]に明確に定義され、白亜紀後期のティラノサウルス科と同様に上昇する上顎骨の部位まで前方へ伸びていた。[[前上顎骨]]の歯は中央で隆起し、明瞭な突起に覆われた軸方向の神経棘が存在した。また、[[ディロング]]や[[エオティラヌス]]および[[ゴルゴサウルス]]などと異なり、[[前上顎骨]]の歯に鋸歯状構造が確認されなかった<ref name="Lietal2010"/>。


== 系統 ==
== 発見 ==
[[File:Xiongguanlong NT.jpg|thumb|復元図]]
[[File:Xiongguanlong remains 01.png|thumb|left|骨格ダイアグラム]]
シオングアンロンは、[[中華人民共和国]][[甘粛省]]の「白魔城」という名称で知られる産地において、{{仮リンク|新民堡層群|en|Xinminbao Group}}{{仮リンク|下沟層|en|Xiagou Formation}}の上部の部層で発見された<ref name=pbdb>{{cite web |url=https://paleobiodb.org/classic/basicCollectionSearch?collection_no=88840&is_real_user=1 |title=White Ghost Castle (Cretaceous of China) Also known as Yujingzi Basin |last=Carrano |first=Matthew |date=2009 |website=The Paleobiology Database |access-date=2023-08-15 |quote=Where: Gansu, China (40.5° N, 98.1° E: paleocoordinates 40.0° N, 98.6° E); When: Upper Member (Xiagou Formation), Aptian (125.0 - 113.0 Ma); Saurischia - Xiongguanlong baimoensis n. gen. n. sp.}}</ref>。産地は[[オルニトミモサウルス類]]の[[ベイシャンロン]]のホロタイプ標本が回収された産地と同一であった<ref name=pbdb /><ref name=beishanlong />。発見後、2006年から2007年にかけて[[マーク・ノレル]]とピーター・マコヴィッキーおよび[[北京大学]]の科学者のチームがプレパレーションを実施した<ref name=fauna />。原記載においてシオングアンロンの化石はアプチアン階あるいはアルビアン階のいずれかに由来するものと仮定されているが{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}、その後上部の部層は特にアプチアン階に限定されている<ref name=fauna>{{cite journal |url=https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/02724634.2017.1396995 |last1=You|first1=H.|last2=Morschhauser|first2=E. M.|last3=Li|first3=D.|last4=Dodson|first4=P.|date=2018|title=Introducing the Mazongshan Dinosaur Fauna|journal=Journal of Vertebrate Paleontology|volume=38|issue=sup. 1|pages=1−11|doi=10.1080/02724634.2017.1396995|s2cid=202867591}}</ref>。
[[File:Xiongguanlong remains 01.png|thumb|発見部位のダイアグラム]]
記載者は、シオングアンロンを[[アパラチオサウルス]]以前にティラノサウルス上科の主要な枝から零れ落ちた属とし、アパラチオサウルスとティラノサウルス科から構成される分類群の姉妹群と結論付けた。[[アレクトロサウルス]]に近縁であることが判明している<ref name=Loewen13>{{Cite journal | last1 = Loewen | first1 = M.A. | last2 = Irmis | first2 = R.B. | last3 = Sertich | first3 = J.J.W.| last4 = Currie | first4 = P. J. | authorlink4 = フィリップ・J・カリー| last5 = Sampson | first5 = S. D. | year = 2013| title = Tyrant Dinosaur Evolution Tracks the Rise and Fall of Late Cretaceous Oceans | url = http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0079420| editor-last = Evans | editor-first = David C| journal = [[PLoS ONE]] | volume = 8 | issue = 11 | pages = e79420 | doi = 10.1371/journal.pone.0079420 | pmid = 24223179| pmc = 3819173| ref = {{sfnRef|Loewen ''et al.''|2013}}}}</ref>。


本属唯一の標本でもあるホロタイプ標本 FRDC-GS JB16-2-1 は中国の[[蘭州市]]に位置する甘粛省地質探査鉱物開発局の化石研究開発センターに所蔵されている<ref name=beishanlong>{{cite journal |doi=10.1098/rspb.2009.0236 |title=A giant ornithomimosaur from the Early Cretaceous of China |date=2010 |last1=Makovicky |first1=Peter J. |last2=Li |first2=Daqing |last3=Gao |first3=Ke-Qin |last4=Lewin |first4=Matthew |last5=Erickson |first5=Gregory M. |last6=Norell |first6=Mark A. |journal=Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences |volume=277 |issue=1679 |pages=191–198 |pmid=19386658 |pmc=2842665 }}</ref>。標本は下顎を欠く完全な頭蓋骨、完全な一連の[[頸椎]]と[[胴椎]]、部分的な右[[腸骨]]、および右[[大腿骨]]からなる。2000年代前半に発見されたが、記載が行われたのは2009年であり、学術雑誌 ''Proceedings of the Royal Society'' に論文が掲載された{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}{{Efn|なお、オンラインでの発行は2009年、''Proc Biol Sci.'' 誌の発行は翌年2010年{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}。}}。原記載と後続研究では、[[ジュラ紀]]の基盤的[[ティラノサウルス上科]]から[[後期白亜紀]]の派生的な[[ティラノサウルス科]]へ至る[[ミッシングリンク]]として注目されている{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}{{Sfn|Brusatte ''et al.''|2016|pp=3447–3452}}{{Sfn|Naish|Cau|2022|ps=. e12727}}。
以下のクラドグラムは大半のティラノサウルス上科を含み、Loewen らの[[2013年]]の研究に基づく<ref name="Loewen13"/>。

{{clade| style=font-size:90%; line-height:80%
== 特徴 ==
[[File:Xiongguanlong_size_01.jpg|thumb|right|推定される体サイズと[[ヒト]]との比較]]
記載を行った {{Harvtxt|Li ''et al.''|2009}} はシオングアンロンの全長を約5メートルと推定しており、[[回帰分析]]を用いて体重を272キログラムと推定した{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}<ref>{{cite journal |doi=10.1080/08912960412331284313 |url=https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/08912960412331284313 |title=Mass Prediction in Theropod Dinosaurs |date=2004 |last1=Christiansen |first1=P. |last2=Fariña |first2=R.A. |journal=Historical Biology |volume=16 |issue=2–4 |pages=85–92 |s2cid=84322349 }}</ref>。[[グレゴリー・ポール]]による体重推定値はそれよりも小さく、約200キログラムとされる<ref name="ポール2020"/>。一連の椎骨において神経弓と椎体の縫合線がほぼ完全に閉鎖していることから、当該個体はほぼ完全に成長しきっていたと推測されている。[[ディロング]]や[[グアンロン]]といったより初期のティラノサウルス類よりも推定される体サイズが大きいことから、記載論文の著者らはティラノサウルス上科の大型化が[[白亜紀]]を通じた連続的過程であったことを示唆している。足と尾の大部分は保存されていないが、体のプロポーションは[[アリオラムス]]に近いものであったと考えられている{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}。

本属の[[固有派生形質]]としては、非常に長い前眼窩域、前後長が左右幅を上回る頭蓋底、外側縁に含気孔を欠く[[鼻骨]]、中部に稜を持つ[[前上顎骨]]歯、[[軸椎]]の神経棘の外側突起が挙げられる。また、[[方形骨]]の含気要素を欠くことや、鼻骨の凹凸を欠くことは、本属をより後の時代のティラノサウルス上科から区別する形質状態である{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}。

=== 頭蓋骨 ===
ホロタイプ標本の頭蓋骨はほぼ完全に保存されており、[[口蓋]]や[[神経頭蓋]]が含まれるが、[[下顎]]を欠く。他の[[ティラノサウルス上科]]の属種の大部分と比較して頭蓋骨は長く、前眼窩域の長さは後眼窩域の長さの2倍を超過する。ただし頭蓋骨は比較的完全である一方、その保存状態は良好でない。標本は鉱化した[[ノジュール]]内で化石化したため、母岩と骨を区別することが困難であった。これにより頭蓋骨の全体的な形態の決定が困難であり、また上顎窓の存在も曖昧になっている{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}。

シオングアンロンは大半のテキラノサウルス上科の明瞭な特徴である癒合した[[鼻骨]]を持つが、その一方で派生的なティラノサウルス科に存在する正中線に沿った鼻骨上の凹凸を持たない。また鼻骨は外側に含気要素という派生的特徴が存在しておらず、これは[[ディロング]]や[[エオティラヌス]]といった基盤的な属と共通する{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}。頭蓋骨の残りの部位はコンパクトである。[[前前頭骨]]は小型の三角形状であり、[[眼窩]]と接触しない。[[頭頂骨]]は癒合しており、咬筋の接触部として機能する窪んだ短い矢状稜を持つ。[[方形骨]]は大型で、顎の筋肉との関連が示唆される外側顆が拡大する。[[後眼窩骨]]は上[[側頭窓]]との関連で前後・背腹方向に伸びており、これは派生的なティラノサウルス科と類似する。[[口蓋骨]]は深いブレード状の[[鋤骨]]や大型でブロック状の[[外翼状骨]]が存在するため非常に頑強である{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}。

歯の幾つかは保存が良好でないが、[[歯槽]]を認めることができる。このことから、記載論文の著者らはシオングアンロンに4本の[[前上顎骨]]歯と15本の[[上顎骨]]歯が生えていたと判断した。前上顎骨歯は断面がD字型であり、また縁に鋸歯が存在しており、他のティラノサウルス上科と同様である。しかし、上顎骨歯は内外側に狭くブレード状である点でより派生的なティラノサウルス上科と異なる{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}。

=== 体骨格 ===
[[File:Xiongguanlong baimoensis.png|thumb|right|[[羽毛]]を伴う復元図]]
シオングアンロンの保存された体骨格には一連の[[頸椎]]・[[胴椎]]と部分的な[[腸骨]]および1本の[[大腿骨]]が含まれる。複数の骨格要素は他のティラノサウルス上科やそれ以外の[[獣脚類]]との類似点を持つ{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}。

頸椎の[[椎体]]は強固に骨化して[[神経弓]]と癒合しており、また前凹型である。椎体には1対の含気孔が存在しており、2対の含気孔を持つ[[アルバートサウルス]]や[[ダスプレトサウルス]]や[[ティラノサウルス]]と異なる。胴椎は神経弓が幅広く背側で完全に椎体と重なるが、頸椎の神経弓はそうでなく、[[ディロング]]に見られるものと類似する。神経弓は後側ほど高くなるが、後側の胴椎は化石化の過程でひどく損傷したためその正確な高さは不明である{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}。

保存された臀部は[[オルニトミモサウルス類]]のものと類似する。大腿骨も[[第四転子]]の位置と発達の度合いが派生的なティラノサウルス上科と非常に類似する。骨格の残りの部分と共に1本の[[脛骨]]も発見されたが、比較的小型であったため、記載論文の著者らは異なる動物に由来するものであろうと結論した{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}。

== 分類 ==
=== 系統 ===
[[File:Tyrannosauroidea size 01.jpg|thumb|left|300px|小型のティラノサウルス上科の大きさ比較。シオングアンロンは2。]]
2009年のシオングアンロンの記載では[[ティラノサウルス上科]]の[[#系統樹|系統解析]]が行われた。解析の結果として、シオングアンロンの[[共有派生形質]]は[[腸骨]]に存在する垂直な稜、腸骨の背側縁に存在する切痕、上顎骨歯よりも遥かに小型の前上顎骨歯とされた{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}。

また、この解析では記載当時まだ公式に命名されていなかったティラノサウルス上科内の複数の分岐群が復元された。これらの分岐群の最初のもの(下記分岐図におけるクレード1)は[[プロケラトサウルス科]]を除く全てのティラノサウルス上科を含むものであり、共有派生形質として[[砂時計]]型の鼻骨、孔の拡大した[[方形骨]]、幅広な[[後眼窩骨]]のバーが挙げられる{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}。当該の分岐群は {{Harvtxt|Delcourt|Grillo|2018}} の系統解析でも復元されたが{{Sfn|Delcourt|Grillo|2018|pp=379–387}}、{{Harvtxt|Delcourt|Grillo|2018}} での共有派生形質は主に腸骨と[[坐骨]]に関連したものであり、統一的な頭蓋骨の特徴<!-- ? -->には言及がない。 なお、当該分岐群は {{Harvtxt|Delcourt|Grillo|2018}} で {{sname|Pantyrannosauria}} として命名された{{Sfn|Delcourt|Grillo|2018|pp=379–387}}。

シオングアンロンは、[[ティラノサウルス科]]により近縁な分類群を含む、[[ディロング]]と[[エオティラヌス]]を除外したより派生的な分岐群(クレード2)に属する。当該クレードの共有派生形質には、前上顎骨歯の内側稜、外側に広がる[[方形頬骨]]、前後長を左右幅が上回る基蝶形骨、軸椎の神経棘に存在する外側突起がある{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}。当該分岐群は後続研究の著者による言及・命名が無い{{Sfn|Brusatte ''et al.''|2016|pp=3447–3452}}{{Sfn|Naish|Cau|2022|ps=. e12727}}{{Sfn|Delcourt|Grillo|2018|pp=379–387}}{{Sfn|Loewen ''et al.''|2013|ps=. e79420}}。

シオングアンロンを除く排他的分岐群(クレード3)は、よりティラノサウルス科に近縁な属種を包含する。共有派生形質には[[鼻骨]]最上部に存在する凹凸、[[神経頭蓋]]に存在する subcondylar recesses があり、これにより本属は当該分岐群から除外されている。これ以外にも共有派生形質は存在するが、上述した明らかな共有派生形質と比較すると強く支持されない{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}。{{Harvtxt|Delcourt|Grillo|2018}} は当該分岐群を "{{sname|Eutyrannosauria}}" と命名したが、この分岐群を支持する共有派生形質は体骨格に関連するものに限られている{{Sfn|Delcourt|Grillo|2018|pp=379–387}}。

原記載における系統解析の結果を以下に示す{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}。後続研究でも {{Harvtxt|Xu ''et al.''|2012}} や {{Harvtxt|Brusatte ''et al.''|2016}}、{{Harvtxt|Brusatte|Carr|2016}}、{{Harvtxt|Delcourt|Grillo|2018}}、{{Harvtxt|Zanno ''et al.''|2019}}、{{Harvtxt|Wolfe ''et al.''|2019}} でシオングアンロンは同様の位置に置かれている。
{{Cladogram |align=center
|title={{Harvtxt|Li ''et al.''|2009}}における{{Vanchor|系統樹}}
|cladogram={{clade
|label1='''[[ティラノサウルス上科]]'''
|1={{clade
|1={{snamei|ja|グアンロン|Guanlong}}
|2={{snamei|ja|プロケラトサウルス|Proceratosaurus}}
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|3={{clade
|1={{snamei|ja|ディロング|Dilong}}
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|3={{clade
|1='''{{snamei|Xiongguanlong}}'''
|label2=クレード3
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}}
}}
}}
}}
}}
}}

2013年にマーク・ローウェンらの研究者チームはティラノサウルス科の新属[[リトロナクス]]を記載し、また[[テラトフォネウス]]を再評価した。54分類群(うち26分類群がティラノサウルス上科)と300を超える形質を用いた彼らの系統解析では、{{Harvtxt|Loewen ''et al.''|2013}} 以前では最新のものであった {{Harvtxt|Brusatte ''et al.''|2010}} や {{Harvtxt|Carr|Williamson|2010}} の結果と矛盾する、比較的独特な樹形が得られた。この解析でシオングアンロンは[[アレクトロサウルス]]との姉妹群とされ、また[[ドリプトサウルス]]よりも派生的な位置に置かれた{{Sfn|Loewen ''et al.''|2013|ps=. e79420}}。この解析結果の省略版を以下に示す{{Sfn|Loewen ''et al.''|2013|ps=. e79420}}。
{{clade
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|label1=[[ティラノサウルス上科]]
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|1={{clade
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|2={{clade
|1={{clade
|1={{snamei|ja|アリオラムス|Alioramus}} [[File:Alioramus Life Restoration.jpg|90px]]
|1=[[アリオス|アリオラムス・アルタイ]]
|2=[[ティノサウル科]] <div style="{{mirrorH}}">[[File:Tyrannosaurus-rex-Profile-steveoc86 (coloured).png|120px]]</div>
}} }} }} }} }} }} }} }} }} }}
|2=[[アリオラムス|アリオラムス・レモトゥス]] }}
|2=[[ティラノサウルス科]] }} }} }} }} }} }} }} }} }} }}
== 出典 ==
{{Reflist}}


2022年に[[ダレン・ナイシュ]]と{{仮リンク|アンドレア・カウ|en|Andrea Cau}}は[[エオティラヌス]]の再記載を行い、系統解析の結果を掲載した。当該の解析は83分類群と1100形態形質を用いており、複数の新たな系統仮説を導き出している。この解析結果でシオングアンロンは[[メガラプトル類]]とエウティラノサウルス類を加えた分岐群との姉妹群に位置付けられているが、当該分岐群の共有派生形質は掲載されていない。{{Harvtxt|Naish|Cau|2022}} はこの結果がティラノサウルス上科の古生物地理へおよぼす影響を議論し、彼らの起源がユーラシア大陸にあった可能性が高いことに触れている。得られた分岐図を省略したもの以下に示す{{Sfn|Naish|Cau|2022|ps=. e12727}}。
{{獣脚類}}
{{clade
|label1='''[[ティラノサウルス上科]]'''
|1={{clade
|1={{clade
|1={{snamei|ja|ジュラティラント|Juratyrant}}
|2={{snamei|ja|ストケソサウルス|Stokesosaurus}} <div style="{{mirrorH}}">[[File:Stokesosaurus by Tom Parker.png|70px]]</div>
}}
|2={{clade
|label1=[[コエルルス科]]
|1={{clade
|1={{snamei|ja|トゥグルサウルス|Tugulusaurus}}
|2={{clade
|1={{snamei|ja|タニコラグレウス|Tanycolagreus}} [[File:Tanycolagreus reconstruction.png|70px]]
|2={{snamei|ja|コエルルス|Coelurus}} [[File:Coelurus figure 47.JPG|70px]]
}}
}}
|2={{clade
|label1=[[プロケラトサウルス科]]
|sublabel1={{sname|Proceratosauridae}}
|1={{clade
|1={{snamei|ja|ディロング|Dilong}} [[File:Dilong scratching 02.png|70px]]
|2={{clade
|1={{snamei|ja|グアンロン|Guanlong}} [[File:Guanlong wucaii by durbed.jpg|70px]]
|2={{clade
|1={{snamei|ja|プロケラトサウルス|Proceratosaurus}}
|2={{snamei|ja|シノティラヌス|Sinotyrannus}}
}}
}}
}}
|label2=[[パンティラノサウルス類]]
|2={{clade
|1={{snamei|ja|ユウティラヌス|Yutyrannus}} [[File:Yutyrannus huali (flipped).png|80px]]
|2={{clade
|1={{snamei|ja|エオティラヌス|Eotyrannus}} <div style="{{mirrorH}}">[[File:Eotyrannus 1 NT.jpg|70px]]</div>
|2={{clade
|1='''{{snamei|Xiongguanlong}}''' [[File:Xiongguanlong baimoensis.png|90px]]
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|label1=[[メガラプトル類]]
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|1={{snamei|ja|シアッツ|Siats}} [[File:Siats reconstruction.png|100px]]
|2={{clade
|1={{snamei|ja|アニクソサウルス|Aniksosaurus}}
|2={{clade
|1={{snamei|ja|キランタイサウルス|Chilantaisaurus}} [[File:Chilantaisaurus.jpg|100px]]
|2={{clade
|1={{snamei|ja|フクイラプトル|Fukuiraptor}}
|2=[[メガラプトル科]] [[File:Australovenator reconstruction.jpg|70px]]
}}
}}
}}
}}
|label2=[[エウティラノサウルス類]]
|2={{clade
|1={{snamei|ja|ドリプトサウルス|Dryptosaurus}}
|2={{clade
|1={{snamei|ja|アパラチオサウルス|Appalachiosaurus}} [[File:Appalachiosaurus montgomeriensis.jpg|90px]]
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|1={{clade
|1={{snamei|ja|ビスタヒエヴェルソル|Bistahieversor}}
|2={{snamei|ja|テラトフォネウス|Teratophoneus}}
}}
|2=[[ティラノサウルス科]] <div style="{{mirrorH}}">[[File:Tyrannosaurus-rex-Profile-steveoc86 (coloured).png|120px]]</div>
}}
}}
}}
}}
}}
}}
}}
}}
}}
}}
}}


=== 進化的暗示 ===
{{DEFAULTSORT:しおんくあんろん}}
ティラノサウルス上科の進化に関する情報は20世紀初頭に命名されて以降比較的曖昧であった。ティラノサウルス上科には[[中期ジュラ紀]]の[[基盤的]]分類群(例:[[グアンロン]]、[[キレスクス]]、[[プロケラトサウルス]])や、[[前期白亜紀]]の中間的なもの(例:[[ユウティラヌス]]、[[ディロング]]、[[エオティラヌス]])、[[カンパニアン]]期から[[マーストリヒチアン]]期にかけての超肉食性のメガファウナ(例:[[ティラノサウルス]]、[[アルバートサウルス]]、[[ダスプレトサウルス]])が知られている。研究者らは白亜紀中ごろの分類群としてシオングアンロン{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}や[[ティムルレンギア]]{{Sfn|Brusatte ''et al.''|2016|pp=3447–3452}}、[[モロス (恐竜)|モロス]]{{Sfn|Zanno ''et al.''|2019}}、[[ススキティラヌス]]{{Sfn|Wolfe ''et al.''|2019|pp=892–899}}を記載し、これらの分類群が白亜紀のティラノサウルス類の空白を部分的に埋めるものであると指摘した{{Sfn|Naish|Cau|2022|ps=. e12727}}<ref name=migrations>{{cite journal |doi=10.1080/08912963.2010.543952 |url=https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/08912963.2010.543952 |title=On the earliest record of Cretaceous tyrannosauroids in western North America: Implications for an Early Cretaceous Laurasian interchange event |date=2011 |last1=Zanno |first1=Lindsay E. |last2=Makovicky |first2=Peter J. |journal=Historical Biology |volume=23 |issue=4 |pages=317–325 |s2cid=140721871 }}</ref>。


白亜紀中ごろのティラノサウルス上科の生物地理には諸説ある。[[前期白亜紀]]の間に[[ローラシア大陸]]は分裂を終え、[[大西洋]]は狭くなっていた。エオティラヌスのように前期白亜紀のヨーロッパから知られるティラノサウルス上科の属がいることから、彼らが流れを下ったか[[陸橋 (生物地理)|陸橋]]を介してヨーロッパから北アメリカへ渡ったと考える研究者もいる<ref name=migrations />。

また[[ベーリング地峡]]がこの時代までに形成されており、動物がアジアから[[ララミディア大陸]]へ渡ることも可能になっていたことが示唆されている。この見解は[[エオランビア]]や[[ミクロヴェナトル]]といったアジア系の祖先をもつ動物が北アメリカに出現していることから裏付けられている{{Sfn|Delcourt|Grillo|2018|pp=379–387}}{{Sfn|Wolfe ''et al.''|2019|pp=892–899}}<ref name=migrations />。[[アプチアン]]階から[[アルビアン]]階にあたる[[ワイオミング州]]の Cloverly 層からはティラノサウルス上科の歯が知られており、これは約1億800万年前の北アメリカ大陸にティラノサウルス上科が渡っていた可能性が高いことを意味する<ref name=migrations />。あるいはティラノサウルス上科が既に[[後期ジュラ紀]]の時点で世界的に分布していたと考える研究者もいるが{{Sfn|Delcourt|Grillo|2018|pp=379–387}}、ティラノサウルス上科の進化あるいは拡散について具体的推論を行うには当該地域の化石記録が乏しいと指摘する研究者もいる{{Sfn|Brusatte|Carr|2016|ps=. 20252}}。

== 古生態 ==
[[File:XiongguanlongBeishanlong01.jpg|thumb|right|[[ベイシャンロン]]と並び、捕食-被食関係を示すシオングアンロンの骨格]]
=== 食性 ===
シオングアンロンは下沟層で発見された最大の捕食動物である。当該地域で発見されたより大型の獣脚類として[[ベイシャンロン]]と[[スジョウサウルス]]がおり、これらはいずれも植物食恐竜であったと考えられている<ref name=fauna />{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}<ref name=beishanlong />。

シオングアンロンは他の既知のティラノサウルス上科の属種と同様に確実な肉食動物であった<ref name=niches>{{cite journal |doi=10.1139/cjes-2020-0174 |url=https://cdnsciencepub.com/doi/10.1139/cjes-2020-0174 |title=Theropod guild structure and the tyrannosaurid niche assimilation hypothesis: Implications for predatory dinosaur macroecology and ontogeny in later Late Cretaceous Asiamerica<sup>1</sup> |date=2021 |last1=Holtz |first1=Thomas R. |journal=Canadian Journal of Earth Sciences |volume=58 |issue=9 |pages=778–795 |hdl=1903/28566 |hdl-access=free }}</ref>。しかし、派生的な[[ティラノサウルス科]]に見られる強力な[[咬合力]]への適応は遂げていない{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}。[[ススキティラヌス]]のような同様の属はその生態系における中型の捕食動物であったと考えられているが、同地域で大型獣脚類が発見されておらず<ref name=niches />、これはアプチアン期後期の中国において進化的遷移が発生・進行していたことを示唆する可能性がある{{Sfn|Brusatte|Carr|2016|ps=. 20252}}。

=== 環境 ===
下沟層は新民堡層群で2番目に新しい層であり、上位層に中沟層、下位層に赤金堡層を持ち、いずれも[[甘粛省]]に分布する。現代において当該地域は[[ゴビ砂漠]]の一部であるが、[[前期白亜紀]]においてあまり乾燥した環境ではなく、また[[テチス海]]の海岸あるいはその付近に位置していた可能性が高い<ref name=gansus>{{cite journal|last1=You |first1=Hai-lu |last2=Lamanna |first2=Matthew C. |last3=Harris |first3=Jerald D. |last4=Chiappe |first4=Luis M. |last5=O'Connor |first5=Jingmai |last6=Ji |first6=Shu-an |last7=Lü |first7=Jun-chang |last8=Yuan |first8=Chong-xi |last9=Li; Zhang, Xing; Lacovara, Kenneth J.; Dodson, Peter and Ji, Qiang |first9=Da-qing |year=2006 |title=A Nearly Modern Amphibious Bird from the Early Cretaceous of Northwestern China |url=https://www.researchgate.net/publication/7005790 |journal=Science |volume=312 |issue=5780 |pages=1640–1643|doi=10.1126/science.1126377 |pmid=16778053 |bibcode=2006Sci...312.1640Y |s2cid=42723583 }}</ref>。下沟層の堆積物は[[泥岩]]と[[シルト岩]]から構成され、[[砂岩]]と[[礫岩]]を伴う<ref name=chemoage>{{Cite journal |last1=Suarez |first1=Marina B. |last2=Milder |first2=Timothy |last3=Peng |first3=Nan |last4=Suarez |first4=Celina A. |last5=You |first5=Hailu |last6=Li |first6=Daqing |last7=Dodson |first7=Peter |date=2018-12-13 |title=Chemostratigraphy of the Lower Cretaceous dinosaur-bearing Xiagou and Zhonggou formations, Yujingzi Basin, northwest China |journal=Journal of Vertebrate Paleontology |volume=38 |issue=sup1 |pages=12–21 |doi=10.1080/02724634.2018.1510412 |s2cid=202865132 |issn=0272-4634}}</ref>。堆積構造からは、狭い丘陵に囲まれた低地が存在し、恐竜の動物相が地理的な障壁を受けることなく地域内を移動できた可能性が高いことが示唆される。[[蹼]]や羽毛といった軟組織を保存した水鳥の化石が保存されており、無酸素水塊を湖底に持つ湖も存在したと結論されている<ref name=gansus />。

=== 同時代の動物相 ===
{{multiple image
| align = right
| direction = vertical
| width = 200
| header =
| image2 = Gansus zheni - early cretaceous Liaoning IMG 5188 Beijing Museum of Natural History.jpg
| caption2 = Two well-preserved birds from the Xiagou Formation: {{snamei|Avimaia}}(上)と {{snamei|Gansus}}(下)
| image1 = Fossil-AvimaiaSchweitzerae-PhotoPartialSkeleton-LineDrawing.png
| caption1 =
}}
[[新民堡層群]]の動物相は[[バレミアン]]期から[[アプチアン]]期にかけて中国に存在した{{仮リンク|熱河生物群|en|Jehol biota}}の生態学的後継にあたるものと考える研究者もいる。新民堡層群の動物相は何人かの研究者から "{{lang|en|Mazongshan fauna}}" と呼称されており、主に[[恐竜]]から構成されている。これは、下沟層が主に大型脊椎動物の化石を保存しているためである<ref name=fauna />。この傾向の主要な例外が[[鳥類]]である。当該動物相には無数の鳥類化石がよく保存されており、その多くは[[エナンティオルニス類]]であるが、[[真鳥類]]の {{sname|Ornithuromorpha}} も含まれている。また数種類の[[魚類]]<ref name=Murray2010>Murray, A. M.; You, H. L. and Peng, C. (2010). A New Cretaceous Osteoglossomorph Fish from Gansu Province, China. ''Journal of Vertebrate Paleontology'' '''30''' (2): 322–332</ref>や[[節足動物]]<ref name=Wang2013>{{cite journal|last1=Wang|first1=Y.|last2=O'Connor|first2=J. K.|last3=Li|first3=D.|last4=You|first4=H.|date=2013|title=Previously Unrecognized Ornithuromorph Bird Diversity in the Early Cretaceous Changma Basin, Gansu Province, Northwestern China|journal=PLOS ONE|volume=8|issue=10|pages=e77693|bibcode=2013PLoSO...877693W|doi=10.1371/journal.pone.0077693|doi-access=free|pmc=3795672|pmid=24147058}}</ref>の化石も保存されている。

最も数の多い化石は非鳥類型恐竜である。小型の[[角竜類]]が最も多産しており、基盤的[[ハドロサウルス上科]]や[[ティタノサウルス形類]]の[[竜脚類]]、大型の[[オルニトミモサウルス類]]や[[テリジノサウルス類]]も知られている。他の断片化石として[[オヴィラプトロサウルス類]]に分類されているものもあるが、これは複数の研究者から疑問視されている<ref name=fauna />。

シオングアンロンは大型のオルニトミモサウルス類である[[ベイシャンロン]]と共存したことが知られており{{Sfn|Li ''et al.''|2009|pp=183–190}}、両者は同一の産地で発見されている<ref name=pbdb />。他の同時代の動物には[[鳥脚類]]の[[シュウーロン]]や {{snamei|Jintasaurus}}{{enlink|Jintasaurus|a=on}}、{{仮リンク|エウヘロプス科|en|Euhelopodidae}}の {{snamei|Qiaowanlong}}{{enlink|Qiaowanlong|a=on}}、テリジノサウルス類の[[スジョウサウルス]]、小型の[[ネオケラトプス類]]の[[アーケオケラトプス]]が知られている<ref name=fauna />。エナンティオルニス類の鳥類も豊富であり、{{snamei|Avimaia}}{{enlink|Avimaia|a=on}}、{{snamei|Feitianius}}{{enlink|Feitianius|a=on}}、および未命名のものが含まれる。また、アヒルに類似する{{仮リンク|ガンスス|en|Gansus}}や歯の生えた {{snamei|Brevidentavis}}{{enlink|Brevidentavis|a=on}}といった初期の真鳥類が産出している<ref name=Wang2013 />。複数のカメ類の骨格も発見されている<ref name=fauna />。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{notelist}}
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}

== 参考文献 ==
=== 記載論文 ===
* {{cite journal |last1=Li |first1=Daqing |last2=Norell |first2=Mark A. |last3=Gao |first3=Ke-Qin |last4=Smith |first4=Nathan D. |last5=Makovicky |first5=Peter J. |year=2009 |title=A longirostrine tyrannosauroid from the Early Cretaceous of China |journal=Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences |volume=277 |issue=1679 |pages=183–190 |doi=10.1098/rspb.2009.0249 |pmc=2842666 |pmid=19386654 |ref={{SfnRef|Li ''et al.''|2009}} }}

=== その他 ===
* {{cite journal |title=The phylogeny and evolutionary history of tyrannosauroid dinosaurs |date=2016 |last1=Brusatte |first1=Stephen L. |last2=Carr |first2=Thomas D. |journal=Scientific Reports |volume=6 |page=20252 |doi=10.1038/srep20252 |pmid=26830019 |pmc=4735739 |bibcode=2016NatSR...620252B |ref={{SfnRef|Brusatte|Carr|2016}} }}
* {{Cite journal|last1=Brusatte |first1=S.L. |last2=Norell |first2=M.A. |last3=Carr |first3=T.D. |last4=Erickson |first4=G.M. |last5=Hutchinson |first5=J.R. |last6=Balanoff |first6=A. M. |last7=Bever |first7=G. S. |last8=Choiniere |first8=J. N. |last9=Makovicky |first9=P. J. |last10=Xu |first10=X. |date=2010 |title=Tyrannosaur paleobiology: new research on ancient exemplar organisms |journal=Science |volume=329 |issue=5998 |pages=1481–1485 |doi=10.1126/science.1193304 |ref={{SfnRef|Brusatte ''et al.''|2010}} }}
* {{Cite journal|last1=Brusatte |first1=Stephen L. |last2=Averianov |first2=Alexander |last3=Sues |first3=Hans-Dieter |last4=Muir |first4=Amy |last5=Butler |first5=Ian B. |year=2016 |title=New tyrannosaur from the mid-Cretaceous of Uzbekistan clarifies evolution of giant body sizes and advanced senses in tyrant dinosaurs |journal=Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America |volume= 113|issue= 13|pages= 3447–3452 |doi=10.1073/pnas.1600140113 |pmid=26976562 |pmc=4822578|bibcode=2016PNAS..113.3447B |doi-access=free |ref={{SfnRef|Brusatte ''et al.''|2016}} }}
* {{Cite journal |last1=Carr |first1=T.D. |last2=Williamson |first2=T.E |date=2010 |title=''Bistahieversor sealeyi'', gen. et sp. nov., a new tyrannosauroid from New Mexico and the origin of deep snouts in Tyrannosauroidea |journal=J. Vertebr. Paleontol. |volume=30 |pages=1–16 |doi=10.1080/02724630903413032 |ref=harv }}
* {{cite journal |title=Tyrannosauroids from the Southern Hemisphere: Implications for biogeography, evolution, and taxonomy |date=2018 |last1=Delcourt |first1=Rafael |last2=Grillo |first2=Orlando Nelson |journal=Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology |volume=511 |pages=379–387 |bibcode=2018PPP...511..379D |s2cid=133830150 |doi=10.1016/j.palaeo.2018.09.003 |url=https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0031018218302566 |ref={{SfnRef|Delcourt|Grillo|2018}} }}
* {{Cite journal | last1 = Loewen | first1 = M.A. |last2 = Irmis | first2 = R.B.| last3 = Sertich | first3 = J.J.W. | last4 = Currie | first4 = P. J. | last5 = Sampson | first5 = S. D. | year = 2013| title = Tyrant Dinosaur Evolution Tracks the Rise and Fall of Late Cretaceous Oceans | editor-last = Evans | editor-first = David C| journal = [[PLoS ONE]] | volume = 8 | issue = 11 | pages = e79420 | doi = 10.1371/journal.pone.0079420 | doi-access = free | pmid = 24223179| pmc = 3819173| bibcode = 2013PLoSO...879420L | ref = {{SfnRef|Loewen ''et al.''|2013}} }}
* {{cite journal |last1= Naish |first1= D. |last2= Cau |first2= A. |date= July 2022 |title= The osteology and affinities of ''Eotyrannus lengi'', a tyrannosauroid theropod from the Wealden Supergroup of southern England |journal= PeerJ |volume= 10 |pages= e12727 |doi= 10.7717/peerj.12727|pmid= 35821895 |pmc= 9271276 |doi-access= free |ref={{SfnRef|Naish|Cau|2022}} }}
* {{Cite journal |last1=Wolfe |first1=D.G. |last2=McDonald |first2=A.T. |last3=Kirkland |first3=J.I. |last4=Turner |first4=A.H. |last5=Smith |first5=N.D. |last6=Brusatte |first6=S.L. |last7=Loewen |first7=M.A. |last8=Denton |first8=R.K. |last9=Nesbitt |first9=S.J. |date=6 May 2019 |title=A mid-Cretaceous tyrannosauroid and the origin of North American end-Cretaceous dinosaur assemblages|journal=Nature Ecology & Evolution |volume=3 |issue=6 |pages=892–899 |doi=10.1038/s41559-019-0888-0 |pmid=31061476 |url=https://www.pure.ed.ac.uk/ws/files/82474043/82473554._Brusatte._AAM.pdf |hdl=20.500.11820/a6709b34-e3ab-416e-a866-03ba1162b23d |s2cid=256707614 |hdl-access=free |ref={{SfnRef|Wolfe ''et al.''|2019}} }}
* {{cite journal |title=A gigantic feathered dinosaur from the Lower Cretaceous of China |date=2012 |last1=Xu |first1=Xing |author1-link=徐星 |last2=Wang |first2=Kebai |last3=Zhang |first3=Ke |last4=Ma |first4=Qingyu |last5=Xing |first5=Lida |last6=Sullivan |first6=Corwin |last7=Hu |first7=Dongyu |last8=Cheng |first8=Shuqing |last9=Wang |first9=Shuo |journal=Nature |volume=484 |issue=7392 |pages=92–95 |pmid=22481363 |bibcode=2012Natur.484...92X |s2cid=29689629 |url=https://www.nature.com/articles/nature10906 |doi=10.1038/nature10906 |ref={{SfnRef|Xu ''et al.''|2012}} }}
* {{cite journal |title=Diminutive fleet-footed tyrannosauroid narrows the 70-million-year gap in the North American fossil record |date=2019 |last1=Zanno |first1=Lindsay E. |last2=Tucker |first2=Ryan T. |last3=Canoville |first3=Aurore |last4=Avrahami |first4=Haviv M. |last5=Gates |first5=Terry A. |last6=Makovicky |first6=Peter J. |journal=Communications Biology |volume=2 |page=64 |pmid=30820466 |pmc=6385174 |doi=10.1038/s42003-019-0308-7 |ref={{SfnRef|Zanno ''et al.''|2019}} }}

== 外部リンク ==
* [https://www.tambaryu.com/TDFL/tenji_kyouryu/113.html シオングアンロン] - 丹波竜.com([[丹波市教育委員会]])
{{Commonscat-inline|Xiongguanlong}}

{{獣脚類}}
{{Taxonbar|from=Q134320}}
{{DEFAULTSORT:しおんくあんろん}}
[[Category:ティラノサウルス上科]]
[[Category:ティラノサウルス上科]]
[[Category:アジアの恐竜]]
[[Category:アジアの恐竜]]
[[Category:中国産の化石]]
[[Category:中国産の化石]]
[[Category:2010年に記載された化石分類群]]
[[Category:白亜紀の恐竜]]
[[Category:2009年に記載された化石分類群]]

[[Category:アプチアンの生物]]
{{Dinosaur-stub}}

2024年7月26日 (金) 07:15時点における最新版

シオングアンロン
生息年代: 前期白亜紀アプチアン
Aptian
骨格
地質時代
前期白亜紀アプチアン[1]
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
階級なし : 鳥吻類 Averostra
下目 : テタヌラ下目 Tetanurae
階級なし : コエルロサウルス類 Coelurosauria
階級なし : ティラノラプトラ Tyrannoraptora
上科 : ティラノサウルス上科 Tyrannosauroidea
: シオングアンロン属 Xiongguanlong
学名
Xiongguanlong
Li et al.2009

シオングアンロン学名Xiongguanlong)は、現在の中華人民共和国甘粛省嘉峪関市化石が発見された[2]ティラノサウルス上科に属する獣脚類恐竜[3][2]。タイプ種シオングアンロン・バイモエンシス(Xiongguanlong baimoensis)が命名されている[3]。属名は「雄關龍」を、種小名は「白魔」を意味し、後者は発見地が奇岩の存在する景勝地であったことに由来する[2]シャンガンロング[4]のカナ転写表記もある。

グレゴリー・ポールの推定では全長5メートルに達し、白亜紀中ごろのティラノサウルス上科の一部が大型化していたことが示唆される[3]。確認されている化石は変形した頭蓋骨と一部の体骨格であり、頭部は吻部が長く伸び、上下の幅が狭いことを特徴とする[3]。下側頭窓がB字型で、軸椎神経棘が先端で左右方向に拡大しており、派生的なティラノサウルス類の特徴も持つ[4]

産出層準は新民堡層群で、その地質年代層序は下部白亜系アプチアン階あるいはアルビアン階と考えられている[3]。共存した動物としてオルニトミモサウルス類ベイシャンロンがおり、本属はこれを捕食対象にしていたと推測される[3]

発見

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骨格ダイアグラム

シオングアンロンは、中華人民共和国甘粛省の「白魔城」という名称で知られる産地において、新民堡層群英語版下沟層英語版の上部の部層で発見された[5]。産地はオルニトミモサウルス類ベイシャンロンのホロタイプ標本が回収された産地と同一であった[5][6]。発見後、2006年から2007年にかけてマーク・ノレルとピーター・マコヴィッキーおよび北京大学の科学者のチームがプレパレーションを実施した[1]。原記載においてシオングアンロンの化石はアプチアン階あるいはアルビアン階のいずれかに由来するものと仮定されているが[7]、その後上部の部層は特にアプチアン階に限定されている[1]

本属唯一の標本でもあるホロタイプ標本 FRDC-GS JB16-2-1 は中国の蘭州市に位置する甘粛省地質探査鉱物開発局の化石研究開発センターに所蔵されている[6]。標本は下顎を欠く完全な頭蓋骨、完全な一連の頸椎胴椎、部分的な右腸骨、および右大腿骨からなる。2000年代前半に発見されたが、記載が行われたのは2009年であり、学術雑誌 Proceedings of the Royal Society に論文が掲載された[7][注釈 1]。原記載と後続研究では、ジュラ紀の基盤的ティラノサウルス上科から後期白亜紀の派生的なティラノサウルス科へ至るミッシングリンクとして注目されている[7][8][9]

特徴

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推定される体サイズとヒトとの比較

記載を行った Li et al. (2009) はシオングアンロンの全長を約5メートルと推定しており、回帰分析を用いて体重を272キログラムと推定した[7][10]グレゴリー・ポールによる体重推定値はそれよりも小さく、約200キログラムとされる[3]。一連の椎骨において神経弓と椎体の縫合線がほぼ完全に閉鎖していることから、当該個体はほぼ完全に成長しきっていたと推測されている。ディロンググアンロンといったより初期のティラノサウルス類よりも推定される体サイズが大きいことから、記載論文の著者らはティラノサウルス上科の大型化が白亜紀を通じた連続的過程であったことを示唆している。足と尾の大部分は保存されていないが、体のプロポーションはアリオラムスに近いものであったと考えられている[7]

本属の固有派生形質としては、非常に長い前眼窩域、前後長が左右幅を上回る頭蓋底、外側縁に含気孔を欠く鼻骨、中部に稜を持つ前上顎骨歯、軸椎の神経棘の外側突起が挙げられる。また、方形骨の含気要素を欠くことや、鼻骨の凹凸を欠くことは、本属をより後の時代のティラノサウルス上科から区別する形質状態である[7]

頭蓋骨

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ホロタイプ標本の頭蓋骨はほぼ完全に保存されており、口蓋神経頭蓋が含まれるが、下顎を欠く。他のティラノサウルス上科の属種の大部分と比較して頭蓋骨は長く、前眼窩域の長さは後眼窩域の長さの2倍を超過する。ただし頭蓋骨は比較的完全である一方、その保存状態は良好でない。標本は鉱化したノジュール内で化石化したため、母岩と骨を区別することが困難であった。これにより頭蓋骨の全体的な形態の決定が困難であり、また上顎窓の存在も曖昧になっている[7]

シオングアンロンは大半のテキラノサウルス上科の明瞭な特徴である癒合した鼻骨を持つが、その一方で派生的なティラノサウルス科に存在する正中線に沿った鼻骨上の凹凸を持たない。また鼻骨は外側に含気要素という派生的特徴が存在しておらず、これはディロングエオティラヌスといった基盤的な属と共通する[7]。頭蓋骨の残りの部位はコンパクトである。前前頭骨は小型の三角形状であり、眼窩と接触しない。頭頂骨は癒合しており、咬筋の接触部として機能する窪んだ短い矢状稜を持つ。方形骨は大型で、顎の筋肉との関連が示唆される外側顆が拡大する。後眼窩骨は上側頭窓との関連で前後・背腹方向に伸びており、これは派生的なティラノサウルス科と類似する。口蓋骨は深いブレード状の鋤骨や大型でブロック状の外翼状骨が存在するため非常に頑強である[7]

歯の幾つかは保存が良好でないが、歯槽を認めることができる。このことから、記載論文の著者らはシオングアンロンに4本の前上顎骨歯と15本の上顎骨歯が生えていたと判断した。前上顎骨歯は断面がD字型であり、また縁に鋸歯が存在しており、他のティラノサウルス上科と同様である。しかし、上顎骨歯は内外側に狭くブレード状である点でより派生的なティラノサウルス上科と異なる[7]

体骨格

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羽毛を伴う復元図

シオングアンロンの保存された体骨格には一連の頸椎胴椎と部分的な腸骨および1本の大腿骨が含まれる。複数の骨格要素は他のティラノサウルス上科やそれ以外の獣脚類との類似点を持つ[7]

頸椎の椎体は強固に骨化して神経弓と癒合しており、また前凹型である。椎体には1対の含気孔が存在しており、2対の含気孔を持つアルバートサウルスダスプレトサウルスティラノサウルスと異なる。胴椎は神経弓が幅広く背側で完全に椎体と重なるが、頸椎の神経弓はそうでなく、ディロングに見られるものと類似する。神経弓は後側ほど高くなるが、後側の胴椎は化石化の過程でひどく損傷したためその正確な高さは不明である[7]

保存された臀部はオルニトミモサウルス類のものと類似する。大腿骨も第四転子の位置と発達の度合いが派生的なティラノサウルス上科と非常に類似する。骨格の残りの部分と共に1本の脛骨も発見されたが、比較的小型であったため、記載論文の著者らは異なる動物に由来するものであろうと結論した[7]

分類

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系統

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小型のティラノサウルス上科の大きさ比較。シオングアンロンは2。

2009年のシオングアンロンの記載ではティラノサウルス上科系統解析が行われた。解析の結果として、シオングアンロンの共有派生形質腸骨に存在する垂直な稜、腸骨の背側縁に存在する切痕、上顎骨歯よりも遥かに小型の前上顎骨歯とされた[7]

また、この解析では記載当時まだ公式に命名されていなかったティラノサウルス上科内の複数の分岐群が復元された。これらの分岐群の最初のもの(下記分岐図におけるクレード1)はプロケラトサウルス科を除く全てのティラノサウルス上科を含むものであり、共有派生形質として砂時計型の鼻骨、孔の拡大した方形骨、幅広な後眼窩骨のバーが挙げられる[7]。当該の分岐群は Delcourt & Grillo (2018) の系統解析でも復元されたが[11]Delcourt & Grillo (2018) での共有派生形質は主に腸骨と坐骨に関連したものであり、統一的な頭蓋骨の特徴には言及がない。 なお、当該分岐群は Delcourt & Grillo (2018)Pantyrannosauria として命名された[11]

シオングアンロンは、ティラノサウルス科により近縁な分類群を含む、ディロングエオティラヌスを除外したより派生的な分岐群(クレード2)に属する。当該クレードの共有派生形質には、前上顎骨歯の内側稜、外側に広がる方形頬骨、前後長を左右幅が上回る基蝶形骨、軸椎の神経棘に存在する外側突起がある[7]。当該分岐群は後続研究の著者による言及・命名が無い[8][9][11][12]

シオングアンロンを除く排他的分岐群(クレード3)は、よりティラノサウルス科に近縁な属種を包含する。共有派生形質には鼻骨最上部に存在する凹凸、神経頭蓋に存在する subcondylar recesses があり、これにより本属は当該分岐群から除外されている。これ以外にも共有派生形質は存在するが、上述した明らかな共有派生形質と比較すると強く支持されない[7]Delcourt & Grillo (2018) は当該分岐群を "Eutyrannosauria" と命名したが、この分岐群を支持する共有派生形質は体骨格に関連するものに限られている[11]

原記載における系統解析の結果を以下に示す[7]。後続研究でも Xu et al. (2012)Brusatte et al. (2016)Brusatte & Carr (2016)Delcourt & Grillo (2018)Zanno et al. (2019)Wolfe et al. (2019) でシオングアンロンは同様の位置に置かれている。

Li et al. (2009)における系統樹
ティラノサウルス上科

Guanlong

Proceratosaurus

クレード1

Dilong

Eotyrannus

クレード2

Xiongguanlong

クレード3

Appalachiosaurus

ティラノサウルス科

2013年にマーク・ローウェンらの研究者チームはティラノサウルス科の新属リトロナクスを記載し、またテラトフォネウスを再評価した。54分類群(うち26分類群がティラノサウルス上科)と300を超える形質を用いた彼らの系統解析では、Loewen et al. (2013) 以前では最新のものであった Brusatte et al. (2010)Carr & Williamson (2010) の結果と矛盾する、比較的独特な樹形が得られた。この解析でシオングアンロンはアレクトロサウルスとの姉妹群とされ、またドリプトサウルスよりも派生的な位置に置かれた[12]。この解析結果の省略版を以下に示す[12]

ティラノサウルス上科

プロケラトサウルス科

パンティラノサウルス類

Dilong

Eotyrannus

Bagaraatan

Raptorex

エウティラノサウルス類

Dryptosaurus

Alectrosaurus

Xiongguanlong

Appalachiosaurus

Alioramus

ティラノサウルス科

2022年にダレン・ナイシュアンドレア・カウ英語版エオティラヌスの再記載を行い、系統解析の結果を掲載した。当該の解析は83分類群と1100形態形質を用いており、複数の新たな系統仮説を導き出している。この解析結果でシオングアンロンはメガラプトル類とエウティラノサウルス類を加えた分岐群との姉妹群に位置付けられているが、当該分岐群の共有派生形質は掲載されていない。Naish & Cau (2022) はこの結果がティラノサウルス上科の古生物地理へおよぼす影響を議論し、彼らの起源がユーラシア大陸にあった可能性が高いことに触れている。得られた分岐図を省略したもの以下に示す[9]

ティラノサウルス上科

Juratyrant

Stokesosaurus
コエルルス科

Tugulusaurus

Tanycolagreus

Coelurus

プロケラトサウルス科

Dilong

Guanlong

Proceratosaurus

Sinotyrannus

Proceratosauridae
パンティラノサウルス類

Yutyrannus

Eotyrannus

Xiongguanlong

メガラプトル類

Siats

Aniksosaurus

Chilantaisaurus

Fukuiraptor

メガラプトル科

エウティラノサウルス類

Dryptosaurus

Appalachiosaurus

Bistahieversor

Teratophoneus

ティラノサウルス科

進化的暗示

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ティラノサウルス上科の進化に関する情報は20世紀初頭に命名されて以降比較的曖昧であった。ティラノサウルス上科には中期ジュラ紀基盤的分類群(例:グアンロンキレスクスプロケラトサウルス)や、前期白亜紀の中間的なもの(例:ユウティラヌスディロングエオティラヌス)、カンパニアン期からマーストリヒチアン期にかけての超肉食性のメガファウナ(例:ティラノサウルスアルバートサウルスダスプレトサウルス)が知られている。研究者らは白亜紀中ごろの分類群としてシオングアンロン[7]ティムルレンギア[8]モロス[13]ススキティラヌス[14]を記載し、これらの分類群が白亜紀のティラノサウルス類の空白を部分的に埋めるものであると指摘した[9][15]

白亜紀中ごろのティラノサウルス上科の生物地理には諸説ある。前期白亜紀の間にローラシア大陸は分裂を終え、大西洋は狭くなっていた。エオティラヌスのように前期白亜紀のヨーロッパから知られるティラノサウルス上科の属がいることから、彼らが流れを下ったか陸橋を介してヨーロッパから北アメリカへ渡ったと考える研究者もいる[15]

またベーリング地峡がこの時代までに形成されており、動物がアジアからララミディア大陸へ渡ることも可能になっていたことが示唆されている。この見解はエオランビアミクロヴェナトルといったアジア系の祖先をもつ動物が北アメリカに出現していることから裏付けられている[11][14][15]アプチアン階からアルビアン階にあたるワイオミング州の Cloverly 層からはティラノサウルス上科の歯が知られており、これは約1億800万年前の北アメリカ大陸にティラノサウルス上科が渡っていた可能性が高いことを意味する[15]。あるいはティラノサウルス上科が既に後期ジュラ紀の時点で世界的に分布していたと考える研究者もいるが[11]、ティラノサウルス上科の進化あるいは拡散について具体的推論を行うには当該地域の化石記録が乏しいと指摘する研究者もいる[16]

古生態

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ベイシャンロンと並び、捕食-被食関係を示すシオングアンロンの骨格

食性

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シオングアンロンは下沟層で発見された最大の捕食動物である。当該地域で発見されたより大型の獣脚類としてベイシャンロンスジョウサウルスがおり、これらはいずれも植物食恐竜であったと考えられている[1][7][6]

シオングアンロンは他の既知のティラノサウルス上科の属種と同様に確実な肉食動物であった[17]。しかし、派生的なティラノサウルス科に見られる強力な咬合力への適応は遂げていない[7]ススキティラヌスのような同様の属はその生態系における中型の捕食動物であったと考えられているが、同地域で大型獣脚類が発見されておらず[17]、これはアプチアン期後期の中国において進化的遷移が発生・進行していたことを示唆する可能性がある[16]

環境

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下沟層は新民堡層群で2番目に新しい層であり、上位層に中沟層、下位層に赤金堡層を持ち、いずれも甘粛省に分布する。現代において当該地域はゴビ砂漠の一部であるが、前期白亜紀においてあまり乾燥した環境ではなく、またテチス海の海岸あるいはその付近に位置していた可能性が高い[18]。下沟層の堆積物は泥岩シルト岩から構成され、砂岩礫岩を伴う[19]。堆積構造からは、狭い丘陵に囲まれた低地が存在し、恐竜の動物相が地理的な障壁を受けることなく地域内を移動できた可能性が高いことが示唆される。や羽毛といった軟組織を保存した水鳥の化石が保存されており、無酸素水塊を湖底に持つ湖も存在したと結論されている[18]

同時代の動物相

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Two well-preserved birds from the Xiagou Formation: Avimaia(上)と Gansus(下)

新民堡層群の動物相はバレミアン期からアプチアン期にかけて中国に存在した熱河生物群英語版の生態学的後継にあたるものと考える研究者もいる。新民堡層群の動物相は何人かの研究者から "Mazongshan fauna" と呼称されており、主に恐竜から構成されている。これは、下沟層が主に大型脊椎動物の化石を保存しているためである[1]。この傾向の主要な例外が鳥類である。当該動物相には無数の鳥類化石がよく保存されており、その多くはエナンティオルニス類であるが、真鳥類Ornithuromorpha も含まれている。また数種類の魚類[20]節足動物[21]の化石も保存されている。

最も数の多い化石は非鳥類型恐竜である。小型の角竜類が最も多産しており、基盤的ハドロサウルス上科ティタノサウルス形類竜脚類、大型のオルニトミモサウルス類テリジノサウルス類も知られている。他の断片化石としてオヴィラプトロサウルス類に分類されているものもあるが、これは複数の研究者から疑問視されている[1]

シオングアンロンは大型のオルニトミモサウルス類であるベイシャンロンと共存したことが知られており[7]、両者は同一の産地で発見されている[5]。他の同時代の動物には鳥脚類シュウーロンJintasaurus (enエウヘロプス科英語版Qiaowanlong (en、テリジノサウルス類のスジョウサウルス、小型のネオケラトプス類アーケオケラトプスが知られている[1]。エナンティオルニス類の鳥類も豊富であり、Avimaia (enFeitianius (en、および未命名のものが含まれる。また、アヒルに類似するガンスス英語版や歯の生えた Brevidentavis (enといった初期の真鳥類が産出している[21]。複数のカメ類の骨格も発見されている[1]

脚注

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注釈

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  1. ^ なお、オンラインでの発行は2009年、Proc Biol Sci. 誌の発行は翌年2010年[7]

出典

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  1. ^ a b c d e f g h You, H.; Morschhauser, E. M.; Li, D.; Dodson, P. (2018). “Introducing the Mazongshan Dinosaur Fauna”. Journal of Vertebrate Paleontology 38 (sup. 1): 1−11. doi:10.1080/02724634.2017.1396995. https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/02724634.2017.1396995. 
  2. ^ a b c 松田眞由美『語源が分かる 恐竜学名辞典』小林快次、藤原慎一 監修、北隆館、2017年1月20日、150頁。ISBN 978-4-8326-0734-7 
  3. ^ a b c d e f g グレゴリー・ポール 著、東洋一、今井拓哉、河部壮一郎、柴田正輝、関谷透、服部創紀 訳『グレゴリー・ポール恐竜事典 原著第2版』共立出版、2020年8月30日、116頁。ISBN 978-4-320-04738-9 
  4. ^ a b 對比地孝亘 著「エッセイ9 ティラノサウルス類の進化」、朝日新聞社 編『恐竜博2011』真鍋真 監修、坂田智佐子 編集協力、朝日新聞社、2011年、82頁。 
  5. ^ a b c Carrano, Matthew (2009年). “White Ghost Castle (Cretaceous of China) Also known as Yujingzi Basin”. The Paleobiology Database. 2023年8月15日閲覧。 “Where: Gansu, China (40.5° N, 98.1° E: paleocoordinates 40.0° N, 98.6° E); When: Upper Member (Xiagou Formation), Aptian (125.0 - 113.0 Ma); Saurischia - Xiongguanlong baimoensis n. gen. n. sp.”
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  9. ^ a b c d Naish & Cau 2022. e12727
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  11. ^ a b c d e f Delcourt & Grillo 2018, pp. 379–387.
  12. ^ a b c Loewen et al. 2013. e79420
  13. ^ Zanno et al. 2019.
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  15. ^ a b c d Zanno, Lindsay E.; Makovicky, Peter J. (2011). “On the earliest record of Cretaceous tyrannosauroids in western North America: Implications for an Early Cretaceous Laurasian interchange event”. Historical Biology 23 (4): 317–325. doi:10.1080/08912963.2010.543952. https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/08912963.2010.543952. 
  16. ^ a b Brusatte & Carr 2016. 20252
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参考文献

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記載論文

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その他

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外部リンク

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