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「日本のヘイトスピーチ」の版間の差分

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'''日本のヘイトスピーチ'''(にほんのヘイトスピーチ)では、[[日本]]における[[ヘイトスピーチ]](憎悪表現)について述べる。
'''日本のヘイトスピーチ'''(にほんのヘイトスピーチ)では、[[日本]]における[[ヘイトスピーチ]](憎悪表現)について述べる。

== 定義と様態 ==
[[ヘイトスピーチ]](<span lang="en">hate speech</span>)とは、[[人種]]、[[宗教]]、[[性的指向]]、[[性別]]、[[思想]]、[[障害]]、[[職業]]、などを誹謗、中傷、差別などし、さらには他人をそのように煽動する言論であるとされるが<ref name=kotan09/><ref>[https://kotobank.jp/word/%E3%83%98%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%81-190641 知恵蔵mini]</ref>、紛れのない判定基準は存在しない<ref>[http://www.sankei.com/column/news/150212/clm1502120001-n1.html 雰囲気「迎合」が言論の衰退招く 青山学院大学特任教授・猪木武徳] 産経新聞 2015.2.12 05:01</ref>。[[日本語]]では「憎悪表現」<ref>「憎悪表現とは何か」菊池久一(頸草書房2001)</ref><ref>「ヘイト・スピーチと「表現」の境界」梶原健祐(九大法学2007.2.26)[https://qir.kyushu-u.ac.jp/dspace/bitstream/2324/11004/1/KJ00004858554.pdf]P.67,脚注10,PDF-P.20</ref><ref name=kotan09/>「憎悪宣伝」「差別的表現」「差別表現」<ref name=kotan09>小谷順子「[http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/bitstream/10297/3884/1/091007001.pdf Hate Speech規制をめぐる憲法論の展開―1970年代までのアメリカにおける議論]」『静岡大学法政研究』第14巻1号(2009)</ref><ref name=akedo>明戸隆浩「[http://www.keiho-u.ac.jp/research/asia-pacific/pdf/review_2014-03.pdf アメリカにおけるヘイトスピーチ規制論の歴史的文脈]」『アジア太平洋レビュー』第11号、[[大阪経済法科大学]],2014年</ref>「差別言論」<ref name=akedo/>「差別煽動」{{Sfn|有田|2013|p=vi 師岡康子が提示した意訳。}}{{Sfn|安田|2015|p=85}}{{Sfn|中村|2014|p=75}}、「差別煽動表現」{{Sfn|前田|2013|p=19}}{{Sfn|野間|2015|p=205 「有田芳生などが提唱している」と記述。}}などと訳される。

=== 様態 ===
憎悪表現が”[[地域]]の平穏を乱すことをもって規制されるべき”と議論する場合には「憎悪を煽る表現」とも呼ばれる<ref>「憲法理論Ⅲ」阪本昌成(成文堂1995,P.63)</ref><ref>梶原健祐(九大法学2007.2.26)P.67,脚注10,PDF-P.20</ref>。「[[:en:Fighting words|喧嘩言葉]]」<ref>喧嘩言葉(Fighting words)は口に出すだけで治安の紊乱を煽る言論。「ユダヤ人を殺せ」などと煽り、破壊行為を生じさせた1946年の事件では、シカゴ市が起訴、100ドルの罰金刑とし、上訴裁判所、州裁判所は支持、連邦最高裁は5対4で破棄した。(ブライシュ.2014. p.121-122)</ref>と同様に相手方の内部に憎悪を生み出すような言論(表現)類型と考えられており、話者(表現者)の側の憎悪感情が問題とされる<ref>梶原健祐(九大法学2007.2.26)P.67,脚注10,PDF-P.20</ref>。また、「憎悪と敵意に満ちた言論」<ref name=naragakuen>小林直樹「[http://www.naragakuen-u.jp/social_science/pdfs/jss01_kobayashi.pdf 差別的表現の規制問題―日本・アメリカ合衆国の比較から―]」『社会科学雑誌』創刊号、2008年12月、奈良産業大学社会科学学会 87-148頁</ref>、「憎悪にもとづく発言」とも解説される<ref name="tiezoumini"/>。

国外ではヘイトスピーチ規制の対象は言論(speech)以外に表現(expression)全般に及び<ref>「人種差別的ヘイトスピーチ」長峯信彦(早稲田法学1997.1.30)[http://jairo.nii.ac.jp/0069/00003529][http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/2270/1/A03890546-00-072020177.pdf]P.186、PDF-P.10</ref>、例えば宗教的象徴を[[誹謗中傷|中傷]]する[[漫画]]や動画の公開や<ref>「デンマークの風刺画事件2005年-2006年」ニルス・ヘンリック・グレーガーゼン(一神教学際研究5,2010年2月,同志社大学)[http://www.cismor.jp/jp/publication/jismor/documents/JISMOR5jp_Gregersen.pdf][http://www.cismor.jp/jp/publication/jismor/index.html]、脚注20</ref>、歴史的経緯を踏まえた上で民家の庭先で[[十字架]]を焼却する行為<ref> 「米国におけるヘイト・スピーチ規制の背景」榎透(専修法学論集 2006-03-00)</ref>、[[国旗]]の焼却行為や[[反戦運動|反戦]]の腕章を身につけること、[[デモ活動|デモ行進]]、[[チラシ|ビラ]]配布行為といった非言語による意思表示形態<ref name=naragakuen/>なども「スピーチ」に含まれるとされ、議論の対象となっている。

『[[知恵蔵|知恵蔵mini]]』([[朝日新聞出版]])では「匿名化され、[[インターネット]]などの世界で発信されることが多い。定義は固まっていないが、主に[[人種]]、[[国籍]]、[[思想]]、[[性別]]、[[障害]]、[[職業]]、外見など、個人や集団が抱える欠点と思われるものを誹謗・中傷、貶す、差別するなどし、さらには他人をそのように煽動する発言(書き込み)のこと」を指すとされ、インターネットにおける書き込みも「スピーチ」に含むと解説している<ref name="tiezoumini"/>。それに続けて「ヘイトスピーチを行う目的は自分の」表現を挑発的に押し付ける「ことにあり、あらゆる手法を用いて他者を低めようとし」、表現に対する批判「にまともに耳を貸すことはない。」「憎悪、無力感、不信などを[[被害者]]に引き起こし、相互理解を深めようとする努力を無にする、不毛かつ有害な行為」と解説する。ヘイトスピーチ規制は全世界的に広がっているが、規制の少ない国として[[アメリカ合衆国|アメリカ]]と[[日本]]が列挙されている<ref name="tiezoumini">『[[知恵蔵|知恵蔵mini]]』[[朝日新聞出版]][[コトバンク]]、2013年2月21日、2013年5月13日更新。[http://kotobank.jp/word/%E3%83%98%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%81]</ref>。また、同辞典[[2013年]][[5月13日]]更新では「憎悪に基づく差別的な言動」であり、「人種や[[宗教]]、性別、[[性的指向]]など自ら能動的に変えることが不可能な、あるいは困難な特質を理由に、特定の個人や集団をおとしめ、暴力や差別をあおるような主張をすることが特徴」と解説された<ref name="tiezoumini"/>。また[[朝日新聞]][[2013年]][[10月7日]]夕刊では「特定の人種や民族への憎しみをあおるような差別的表現」と定義され、[[在日韓国・朝鮮人]]への街頭活動が例とされた<ref name="tiezoumini"/>。

憎悪バイアスをもたらす表現形態として、[[ジェンダー]]論の立場からは、[[ポルノグラフィ#ポルノ規制論・批判運動|ポルノグラフィ規制論]]とも関係する<ref>「ヘイト・スピーチと「表現」の境界」梶原健佑(九大法学2007)</ref>。個人に対する[[嫌がらせ]]表現などは[[侮辱罪]]や[[ストーカー行為等の規制等に関する法律|ストーカー規制法]]などの対象となる。ほかに差別や偏見を動機した暴行等の[[犯罪]]を[[ヘイトクライム]]といい、これも問題となっている<ref name=naragakuen/>。日本の市民団体によると、日本におけるヘイトスピーチの対象は[[在日]]、反原発運動、広島の平和運動、生活保護など多岐にわたるとする<ref>2013年の日本国内におけるレイシズム活動「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」[http://www.norikoenet.org/fact.html]。同様の記事は朝日新聞2014年8月18日20時13分配信記事にもあり。「ヘイトスピーチ、在特会など提訴 在日朝鮮人女性」[http://www.asahi.com/articles/ASG8L4RH7G8LPTIL00V.html]</ref>。

反ヘイトスピーチを掲げる一部論者は、ヘイトスピーチとなる要素として、マイノリティに向けられていること{{Sfn|師岡|2013|p=ii}}{{Sfn|野間|2015|p=7}}{{Sfn|神原|2014|p=49}}{{Sfn|安田|2015|pp=77-78}}、個人では変更困難な属性に基づくこと{{Sfn|神原|2014|p=49}}{{Sfn|ブライシュ|2014|p=282(訳者解説:明戸隆浩)}}{{Sfn|安田|2015|pp=77-78}}、表現の暴力であること{{Sfn|神原|2014|p=49}}といった点を挙げている。
ヘイトスピーチという語が新聞に掲載されたのは[[2012年]]には1回だったとされるが{{Sfn|野間|2015|p=204}}、[[2013年]]に反[[人種差別|レイシズム]]運動(カウンター)や西欧の法規制をメディアが取り上げ{{Sfn|前田|2013|pp=17-18}}<ref>[[朝日新聞]]3月16日、[[毎日新聞]]3月18日夕刊、[[東京新聞]]3月29日</ref>、国会の質疑にかけられ<ref name=asahi20130507 /><ref name=yomiori20130507 /><ref name=asahi20130509 /><ref name=sankei20130510 />認知が高まり、2013年の[[新語・流行語大賞]]トップテンに選ばれた{{Sfn|野間|2015|p=204}}<ref>{{Cite web|url=http://singo.jiyu.co.jp/nendo/2013.html |title=第30回 2013年 - 新語・流行語大賞 |accessdate=2015-04}}</ref>。


== 法規定 ==
== 法規定 ==
2014年現在、日本は、ヘイトスピーチ(憎悪表現)自体を取り締まることを対象とした一般法、特別法、[[条例]]は制定されていない[[差別]]<ref>[[人種]][[民]]、[[思想|条]][[性別]]、[[社会]]的身分、門地、[[障害者|障害]][[病気|疾病]]又は[[性的指向]]に対する差別。</ref>・[[人権蹂躙|人権侵害]]的言論を規制する意図を背景に、[[権擁護法案]]等で諸々の検討がなされているが「[[言論の自由]]侵害の危険性」など、法案の合憲性、内容や運用方法、制度の必要性など巡って議論となってい。[[日本国憲法第21条]]では[[表現自由]]保証されており、ヘイトスピーチについては[[アメリカ合衆国|米国]]ととも国際的に規制のゆるやかな地域となっている。
2015年現在、[[日本]]では、ヘイトスピーチ自体を取り締まる一般法、特別法、[[条例]]は制定されていないが、[[民法]]上の[[不法行為]]などに問われる。[[b:法第709条|民法709条]]、[[b:民法第1条|民法1条]](信義則)や[[b:民法第90条|民法90条]](公序良俗)の判断基準として[[日本国憲法第14条|憲法14条]][[あらゆ形態の人種差別の撤廃に関する国際条約|種差別撤廃条約]]、自由権規約趣旨考慮するのが判例の立場である([[私人間効力]]におけ間接適用説))


[[差別]]<ref>[[人種]]、[[民族]]、[[思想|信条]]、[[性別]]、[[社会]]的身分、門地、[[障害者|障害]]、[[病気|疾病]]又は[[性的指向]]に対する差別。</ref>・[[人権蹂躙|人権侵害]]的言論を規制する意図を背景に、[[人権擁護法案]]等で諸々の検討がなされているが、[[言論の自由]]の侵害の危険性、国家による[[言論統制]]の危険性<ref name="猪木武徳150212">[http://www.sankei.com/column/news/150212/clm1502120001-n1.html 雰囲気「迎合」が言論の衰退招く 青山学院大学特任教授・猪木武徳] 産経新聞 2015.2.12 05:01更新</ref>、世論やメディアの行き過ぎた「自己検閲」の危険性<ref name="猪木武徳150212"/>など、法案の合憲性、内容や運用方法、制度の必要性や危険性などを巡って議論となっている。[[日本国憲法第21条]]では[[表現の自由]]が保障されており、ヘイトスピーチ法規制については[[アメリカ合衆国|米国]]とともに国際的に規制のゆるやかな地域となっている<ref name="tiezoumini" />。
[[刑法 (日本)|日本の刑法]]では「特定人物や特定団体に対する[[偏見]]に基づく差別的言動」は[[侮辱罪]]や[[名誉毀損罪]]の対象であり、差別的言動の被害が具体的になれば、事例によっては[[脅迫罪]]や[[業務妨害罪]]の対象となる<ref name="synodos"> [http://webronza.asahi.com/synodos/2013072300004.html ヘイト・スピーチ規制論について――言論の自由と反人種主義との相克 桧垣伸次] シノドス・ジャーナル 2013年7月24日</ref><ref name="synodos20130523">[http://webronza.asahi.com/synodos/2013052300001.html 憎悪表現(ヘイト・スピーチ)の規制の合憲性をめぐる議論 小谷順子] シノドス・ジャーナル 2013年5月23日</ref><ref name="kyotoshinbun">[http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20131007000205 「表現の自由」割れる賛否 ヘイトスピーチ規制] 京都新聞 2013年10月7日</ref>。しかし、ヘイトスピーチであっても、特定しきれない漠然とした集団([[民族]]・[[国籍]]・[[宗教]]・性的指向等)に対するものについては、侮辱罪や名誉毀損罪には該当しない<ref name="synodos"/><ref name="kyotoshinbun"/>。


また、[[刑法 (日本)|日本の刑法]]では「特定人物や特定団体に対する[[偏見]]に基づく差別的言動」は[[侮辱罪]]や[[名誉毀損罪]]の対象であり、差別的言動の被害が具体的になれば、事例によっては[[脅迫罪]]や[[信用毀損罪・業務妨害罪|業務妨害罪]]の対象となるが<ref name="kyotoshinbun">[http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20131007000205 「表現の自由」割れる賛否 ヘイトスピーチ規制] 京都新聞 2013年10月7日</ref>、特定しきれない漠然とした集団([[民族]]・[[国籍]]・[[宗教]]・性的指向等)に対するものについては、侮辱罪や名誉毀損罪には該当しない<ref name="kyotoshinbun"/>。
[[民事裁判]]においては[[被告]]の不法行為に対する[[損害賠償]]請求が一般的な[[訴訟]]手段であり([[b:民法第709条|民法709条]])、[[b:民法第1条|民法1条]](信義則)や[[b:民法第90条|民法90条]](公序良俗)の判断基準として[[日本国憲法第14条|憲法14条]]や人種差別撤廃条約、自由権規約の趣旨を考慮するのが判例の立場である([[私人間効力]]における間接適用説)。


日本国憲法や条約(批准済み)の中には以下のように人権保護を目的とした規定が複数存在するが、これらはいずれも直接的には行政府を拘束し規制するのが主目的であり、私人間には民法709条等の個別の規定の解釈適用を通じてその趣旨を実現するとする解釈が判例・通説の立場である<ref>「人種差別撤廃条約は、国法の一形式として国内法的効力を有するとしても、その規定内容に照らしてみれば、国家の国際責任を規定するとともに、憲法13条、14条1項と同様、公権力と個人との関係を規律するものである。すなわち、本件における被控訴人と控訴人らとの間のような私人相互の関係を直接規律するものではなく、私人相互の関係に適用又は類推適用されるものでもないから、その趣旨は、民法709条等の個別の規定の解釈適用を通じて、他の憲法原理や私的自治の原則との調和を図りながら実現されるべきものであると解される。」平成26年7月8日大阪高等裁判所判決</ref>。また、日本政府も私人間については「私人間の関係において差別行為が生じた場合には、法務省の人権擁護機関において、その救済のため速やかに適切な措置がとられることとなっている。また、私法的関係については、民法により、不法行為が成立する場合は、このような行為を行った者に損害賠償責任が発生するほか、差別行為は、私的自治に対する一般的制限規定である民法第90条にいう公序良俗に反する場合には、無効とされる場合がある。更に、差別行為が刑罰法令に触れる場合は、当該刑罰法令に違反した者は処罰されることとなっている。 」としている([[児童の権利に関する条約]]締結時日本政府回答)<ref>[http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jido/pdfs/0804_kj03.pdf 児童の権利に関する条約 第3回日本政府報告(日本語仮訳)]</ref>。
1965年に[[国際連合総会|国連総会]]で採択された[[あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約|人種差別撤廃条約]]第4条では「人種的優越または憎悪に基く思想のあらゆる流布、人種差別の扇動を『法律で処罰すべき[[犯罪]]であること』を宣言すること」(a項)と、「[[人種差別]]を助長し及び扇動する団体、及び組織的宣伝活動その他のすべての宣伝活動を、『違法であるとして禁止するもの』とすること」(b項)を明記している。また1966年に国連で採択された[[市民的及び政治的権利に関する国際規約]]が第20条第2項で、「差別扇動の言動は法を以って禁止する<!--処罰ではなく、禁止としか書かれていない。また第20条第2項は「差別扇動」の規定-->」、同規約第2条第2項は「規約締結各国は規約で認められる権利を実現するために適切な国内法制がない場合は整備する」と定める。


*1979年に批准した[[市民的及び政治的権利に関する国際規約]]が第20条第2項で、「差別扇動の言動は法を以って禁止する<!--処罰ではなく、禁止としか書かれていない。また第20条第2項は「差別扇動」の規定-->」、同規約第2条第2項は「規約締結各国は規約で認められる権利を実現するために適切な国内法制がない場合は整備する」とあるが、日本では既に憲法第14条第1項にて人種、信条、性別、社会的身分または門地により差別されないと定めているというのが日本政府の立場である<ref>[http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000031106.pdf 市民的及び政治的権利に関する委員会からの質問事項に対する日本政府回答(仮訳)]</ref>。
日本は[[市民的及び政治的権利に関する国際規約]]を1979年に批准し、また、[[あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約|人種差別撤廃条約]]にアメリカが1994年に批准した<ref name="synodos"/>翌年の[[1995年]][[12月15日]]には日本も[[加入]]書を寄託し、加盟国となった。ただし、「[[日本国憲法]]の下における『[[集会の自由|集会]]、[[結社の自由|結社]]及び表現の自由その他の権利』の保障に抵触しない限度において、これらの規定に基く義務を履行する」という[[留保]]の宣言を行なっている。


*1995年に批准した[[あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約|人種差別撤廃条約]]第4条では「人種的優越または憎悪に基く思想のあらゆる流布、人種差別の扇動を『法律で処罰すべき[[犯罪]]であること』を宣言すること」(a項)と、「[[人種差別]]を助長し及び扇動する団体、及び組織的宣伝活動その他のすべての宣伝活動を、『違法であるとして禁止するもの』とすること」(b項)とされているが、日本では憲法の保障する集会、結社、表現の自由等を不当に制約するおそれ、言論を不当に萎縮させるおそれ、刑罰の構成要件とするには刑罰の対象となる行為とそうでないものの境界がはっきりしないなどの点から憲法に抵触しない限度において義務を履行する旨留保を行っている。日本のほかにも[[アメリカ合衆国|アメリカ]]、[[スイス]]が留保を付しており、[[イギリス]]、[[フランス]]では解釈宣言を行っている<ref>[http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/top.html 人種差別撤廃条約 Q&A] 外務省</ref>。
[[日本国憲法第14条]]第1項では「すべて[[国民]]は、法の下に平等であって、[[人種]]、[[信条]]、[[性別]]、[[社会]]的身分又は門地により、[[政治]]的、[[経済]]的又は社会的関係において、[[差別]]されない。」と、国民([[日本国民]])の平等権について明記されているが、この条文は私人間に直接適用されないとするのが判例の立場である。


*[[日本国憲法第14条]]第1項では「'''すべて[[国民]]は'''、法の下に平等であって、[[人種]]、[[信条]]、[[性別]]、[[社会]]的身分又は門地により、[[政治]]的、[[経済]]的又は社会的関係において、[[差別]]されない。」と、国民([[日本国籍|日本国民]])の平等権について明記されているが、この条文は直接的には私人間に適用されず、その趣旨は、民法709条等の個別の規定の解釈適用を通じて、他の憲法原理や私的自治の原則との調和を図りながら実現されるべきものであると解されるとされている<ref>平成26年7月8日大阪高等裁判所判決</ref>。
[[国際連合|国連]]の人種差別撤廃委員会は2014年8月29日ヘイトスピーチを法律で規制するよう[[日本政府]]に勧告した。街宣活動やインターネット上で人種差別をあおる行為に対する[[捜査]]や訴追が不十分であると指摘。①街宣活動でも差別行為への断固とした対応、②ヘイトスピーチに関わった個人や組織の訴追、③ヘイトスピーチや憎悪を広めた[[政治家]]や[[公務員]]の処罰などを勧告した<ref>2014年8月31日中日新聞朝刊3面</ref>。


=== ヘイトスピーチ規制とデモ規制 ===
=== ヘイトスピーチ規制とデモ規制 ===
{{See also|公安条例}}
ヘイトスピーチ関連デモを規制する法はないが、日本における[[デモ活動|デモ]]規制に関する法令としては、[[静穏保持法]]、[[騒音規制法]]など[[拡声機]]による騒音等を規制するもの、また[[地方公共団体]]では[[公安条例]]、また[[拡声機暴騒音規制条例]]が制定されている。2005年に[[広島県]]では[[広島県不当な街宣行為等の規制に関する条例|不当街宣行為規制条例]]が成立している。公衆に著しく迷惑をかける暴力的行為については[[迷惑防止条例]]が全[[都道府県]]で制定されている。また[[破壊活動防止法]]では破壊的団体に対して6ヶ月間以内の期限と地域を定めてデモ活動を禁止させることができる規定が存在する。
ヘイトスピーチ関連デモに特化して規制をする法はないが、日本における[[デモ活動|デモ]]規制に関する法令としては、[[国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律|静穏保持法]]、[[騒音規制法]]など[[メガホン|拡声機]]による騒音等を規制するもの、また[[地方公共団体]]では[[公安条例]]、また[[拡声機暴騒音規制条例]]が制定されている。2005年に[[広島県]]では[[広島県不当な街宣行為等の規制に関する条例|不当街宣行為規制条例]]が成立している。公衆に著しく迷惑をかける暴力的行為については[[迷惑防止条例]]が全[[都道府県]]で制定されている。また[[破壊活動防止法]]では破壊的団体に対して6ヶ月間以内の期限と地域を定めてデモ活動を禁止させることができる規定が存在する。
{{See|公安条例|静穏保持法}}


== 法理上の議論 ==
== 法理上の議論 ==
憎悪表現の法規制の必要性の是非については、ヘイトスピーチが「[[表現の自由]]」を逸脱した人権侵害に当たるとして法規制が必要であるとする意見がある一方で「表現の自由」に基づく正当な言論活動が規制される可能への懸念から法規制は不要あるとする意見<ref name="bengo4com20130523">{{cite web |title=敵意をむき出しにした「ヘイトスピーチ」 新たな法律で規制すべきか? |work=弁護士ドットコム |publisher=[[法律事務所オーセンス]] |date=2013-05-23|url=http://www.bengo4.com/topics/404/ |accessdate=2013-12-22 }}</ref>や、国政に関する情報が社会全体に流通することの必要性、思想の自由市場へ政府が介入することは避けるべきとするといった見解が出されている<ref name="synodos20130523"/>。
憎悪表現の法規制の必要性の是非については、ヘイトスピーチが憲法上保護されるべき「[[表現の自由]]」の域超えた人権侵害に当たるとして法規制が必要であるとする意見がある一方で「表現の自由」に基づく正当な言論活動までもが規制される危険性から法規制はすべきはなく、現行法カウンターデモで対処べきであという意見が出されている<ref name="bengo4com20130523">{{cite web |title=敵意をむき出しにした「ヘイトスピーチ」 新たな法律で規制すべきか? |work=弁護士ドットコム |publisher=[[法律事務所オーセンス]] |date=2013-05-23|url=http://www.bengo4.com/topics/404/ |accessdate=2013-12-22 }}</ref>。


=== 表現の自由の優越的地位と関連法理 ===
=== 表現の自由の優越的地位と関連法理 ===
''海外の法理上の議論については[[ヘイトスピーチ#論争]]を参照。''
{{See also|ヘイトスピーチ#論争}}
{{See|表現の自由|差別}}


日本の法学では、差別的表現に対する表現の自由の優越的地位に関連する法理として以下のものが検討されている。
日本の法学では、[[差別]]的表現に対する[[表現の自由]]の優越的地位に関連する法理として以下のものが検討されている。
*[[明白かつ現在の危険]]の法理(ブランデンバーグ原則)
*[[明白かつ現在の危険]]の法理(ブランデンバーグ原則)
*言論には言論で対抗する[[対抗言論]]の原則<ref name=ichikawa/>
*言論には言論で対抗する[[対抗言論]]の原則<ref name=ichikawa/>
39行目: 55行目:
[[憲法]]学者の[[長谷部恭男]]は、特定の[[民族]]や社会階層等に関する差別的言論への規制について、言論内容の外延を規定することの困難、従属的地位にあるとされる人々の表現活動が直接に抑圧されるわけではないこと、従属性の固定化という観念が不明確であること、差別的言論の範囲が拡大しかねない懸念等から一般的支持を得ていないと指摘している<ref>長谷部恭男『憲法・第五版』新世社、2011年p205-206</ref>。
[[憲法]]学者の[[長谷部恭男]]は、特定の[[民族]]や社会階層等に関する差別的言論への規制について、言論内容の外延を規定することの困難、従属的地位にあるとされる人々の表現活動が直接に抑圧されるわけではないこと、従属性の固定化という観念が不明確であること、差別的言論の範囲が拡大しかねない懸念等から一般的支持を得ていないと指摘している<ref>長谷部恭男『憲法・第五版』新世社、2011年p205-206</ref>。


=== 差別的表現の自由 ===
=== 表現の自由」萎縮の危険性 ===
憲法学者の[[赤坂正浩]]は、[[明白かつ現在の危険]]の法理やブランデンバーグ原則を踏まえて、「犯罪や違法行為を煽動する表現を[[国家]]から妨害されない[[市民]]の権利」としての'''煽動的表現の自由'''、および「マイノリティに対する差別・排斥・憎悪・侮辱等を内容とする表現を国家から妨害されない市民の権利」としての'''差別的表現の自由'''を論じ、特に日本では[[マスメディア|メディア]]の過度の自主規制が表現の自由に対して萎縮効果を及ぼす面があることにも注意すべきであると論じている<ref>赤坂正浩『憲法講義(人権)』信山社、2011年、p71-72</ref>。
憲法学者の[[赤坂正浩]]は、[[明白かつ現在の危険]]の法理やブランデンバーグ原則を踏まえて、「犯罪や違法行為を煽動する表現を[[国家]]から妨害されない[[市民]]の権利」としての煽動的表現の自由、および「マイノリティに対する差別・排斥・憎悪・侮辱等を内容とする表現を国家から妨害されない市民の権利」としての差別的表現の自由を論じ、特に日本では[[マスメディア|メディア]]の過度の自主規制が表現の自由に対して萎縮効果を及ぼす面があることにも注意すべきであると論じている<ref>赤坂正浩『憲法講義(人権)』信山社、2011年、p71-72</ref>。

=== 言論の衰退を招く危険性 ===
[[青山学院大学]]特任教授の[[猪木武徳]]は、ヘイトスピーチには紛れのない基準が存在せず、一般的に被害者とされる少数の暴力的な集団が多数の普通の社会生活を送る人々を脅す例もあり、ヘイトスピーチ規制による国家による言論統制も警戒する必要があるとしている。また、はっきり意識されないまま、社会が醸し出す「空気」によって言論の自由が侵される危険性を指摘。異論を唱えにくい雰囲気が、「正義」の装いをまとって国民を知らず知らずのうちに思わぬ方向へと誘い込んでしまうこともありうると述べている。さらに、「合法的な仮面をかぶった専制精神」により、「「世論」とそれに迎合するメディアが、いつの間にか「力ある立場の人」の意向を忖度し、その反応を事前に予想して、自ら進んで「自己検閲」をしてしまう」危険性をあげている<ref name="猪木武徳150212"/>。


== 判例 ==
== 判例 ==
{{Main|京都朝鮮学校公園占用抗議事件}}
2009年に発生した[[京都朝鮮学校公園占用抗議事件]]において、刑事事件として[[侮辱罪]]、[[信用毀損罪・業務妨害罪#業務妨害罪|威力業務妨害罪]]、および[[器物損壊罪]]の成否が[[裁判]]で争われた。[[被告人|被告]]4名のうち3名については[[2011年]]([[平成]]23年)[[4月21日]][[京都地方裁判所|京都地裁]][[判決 (日本法)|判決]]での有罪が確定、1名については[[2012年]](平成24年)[[2月23日]][[最高裁判所 (日本)|最高裁]][[上告]][[棄却]]により刑が確定した。
2009年に発生した[[京都朝鮮学校公園占用抗議事件]]において、刑事事件として[[侮辱罪]]、[[信用毀損罪・業務妨害罪#業務妨害罪|威力業務妨害罪]]、および[[器物損壊罪]]の成否が[[裁判]]で争われた。[[被告人|被告]]4名のうち3名については[[2011年]]([[平成]]23年)[[4月21日]][[京都地方裁判所|京都地裁]][[判決 (日本法)|判決]]での有罪が確定、1名については[[2012年]](平成24年)[[2月23日]][[最高裁判所 (日本)|最高裁]][[上告]][[棄却]]により刑が確定した。


一方民事裁判の中では、判決理由において[[京都地方裁判所]]が[[在日特権を許さない市民の会]](在特会)・[[主権回復を目指す会]](主権会)の街宣を、[[原告]](注:朝鮮学校側)の[[教育]]事業を妨害し、原告の名誉を毀損する不法行為に該当し、かつ、[[人種差別撤廃条約]]上の「[[人種差別]]」に該当すると言及しており、判決では[[被告]]ら(注:在特会・主権会)に対する[[損害賠償]]請求を一部容する判決を出している<ref>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=83675  裁判所公式サイト  平成22(ワ)2655 事件名  街頭宣伝差止め等請求事件]</ref>。なお、判決では「[[民法 (日本)|民法]]に基づき、具体的な損害が発生して初めて賠償を科すことが可能」とし、現行法では損害賠償及び街宣差し止めは具体的な被害者及び具体的な損害を立証することが必要とされた。2014年7月には[[大阪高等裁判所]]において1審を支持する判決が言い渡され、被告側が上告したが、2014年12月に最高裁は上告棄却し、1審・2審判決が確定した。
一方民事裁判の中では、判決理由において[[京都地方裁判所]]が[[在日特権を許さない市民の会]](在特会)・[[主権回復を目指す会]](主権会)の街宣を、[[原告]](注:朝鮮学校側)の[[教育]]事業を妨害し、原告の名誉を毀損する不法行為に該当し、かつ、[[あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約|人種差別撤廃条約]]上の「[[人種差別]]」に該当すると言及しており、判決では[[被告]]ら(注:在特会・主権会)に対する[[損害賠償]]請求を認る判決を出している<ref>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=83675  裁判所公式サイト  平成22(ワ)2655 事件名  街頭宣伝差止め等請求事件]</ref>。判決では「[[民法 (日本)|民法]]に基づき、具体的な損害が発生して初めて賠償を科すことが可能」とし、現行法では損害賠償及び街宣差し止めは具体的な被害者及び具体的な損害を立証することが必要とされた。ただし、具体的な損害には無形損害も含まれるとされ、2014年7月には[[大阪高等裁判所]]において1審を支持する判決が言い渡され、被告側が上告したが、2014年12月に最高裁は上告棄却し、1審・2審判決が確定した。

{{Main|京都朝鮮学校公園占用抗議事件}}

[[週刊朝日]]が[[橋下徹]][[大阪市長]]に関する連載記事の第1回において、橋下の父が[[大阪府]][[八尾市]]の[[部落問題|被差別部落]]出身であるという情報を掲載した問題について、[[2015年]][[2月18日]]、大阪地裁における損害賠償請求訴訟で原告(橋下徹)と被告([[朝日新聞出版]]・[[佐野眞一]])の間に和解が成立した<ref>{{cite news |title=橋下氏、朝日新聞出版と和解 「週刊朝日」連載めぐる訴訟、解決金とおわび文書交付|newspaper=[[産経新聞]] |date=2015-02-18|url=http://www.sankei.com/west/news/150218/wst1502180054-n1.html|accessdate=2015-02-18}}</ref>。橋下に対して朝日新聞出版が解決金を支払う内容で、この件は橋下が自身に対して向けられたヘイトスピーチであるとしていた<ref name=hashimoto20140919/>。

{{Main|週刊朝日による橋下徹特集記事問題}}


== 各所の見解・対応 ==
== 各所の見解・対応 ==
=== 国連 ===
[[国際連合|国連]]人権委は[[ジュネーヴ]]で2014年7月15日、16日に対日審査が行われ、日本社会で韓国人や[[中国人]]への人種差別的な言動が広がっていることについて現行の刑法や民法で防ぐのは難しいとの認識を示し、法的整備を求め2014年7月24日差別をあおるすべての宣伝活動の禁止を勧告した<ref>2014年7月25日中日新聞朝刊3面</ref>。

人種差別撤廃委員会は2014年8月29日ヘイトスピーチを法律で規制するよう[[日本国政府]]に勧告した。街宣活動やインターネット上で人種差別をあおる行為に対する[[捜査]]や訴追が不十分であると指摘。(1)街宣活動での差別行為への断固とした対応、(2)ヘイトスピーチに関わった個人や組織の訴追、(3)ヘイトスピーチや憎悪を広めた[[政治家]]や[[公務員]]の処罰、(4)教育などを通じた人種差別問題への取り組みなどを勧告した<ref>2014年8月31日中日新聞朝刊3面</ref><ref>{{Cite web|url=http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-08-31/2014083101_02_1.html |title=国連差別撤廃委 ヘイトスピーチ 法規制を |publisher=しんぶん赤旗 |date=2014-08-31 |accessdate=2015-05}}</ref>。

=== 行政府 ===
=== 行政府 ===
==== 閣僚 ====
==== 閣僚 ====
[[2013年]][[5月7日]]と[[5月9日]]にかけて[[参議院]]でヘイトスピーチについて問われ、[[安倍晋三]][[内閣総理大臣|首相]]は「一部の国、民族を排除する言動があるのは極めて残念なことだ。[[日本人]]は和を重んじ、排他的な国民ではなかったはず。どんなときも礼儀正しく、寛容で謙虚でなければならないと考えるのが日本人だ」<ref>[http://www.asahi.com/politics/update/0507/TKY201305070355.html 安倍首相、ヘイトスピーチに「極めて残念」 参院予算委]](朝日新聞) 2013年5月7日 [ンク切れ]</ref>と、[[法務大臣]]の[[谷垣禎一]]は「憂慮に堪えない。品格ある国家という方向に真っ向から反する」<ref>[http://www.asahi.com/national/update/0509/TKY201305090289.html ヘイトスピーチ「憂慮に堪えない」 谷垣法相](朝日新聞) 2013年5月9日[リンク切れ]</ref>とそれぞれ語った。さらに谷垣は[[5月10日]]の記者会見で、ヘイトスピーチについて「人々に不安感や嫌悪感を与えるというだけでなく、差別意識を生じさせることにもつながりかねない。甚だ残念だ。差別のない社会の実現に向け、一層積極的に取り組んでいきたい」と述べた<ref>[http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130510/plc13051011430016-n1.htm ヘイトスピーチ「残念」 谷垣法相](産経新聞) 2013年5月10 [リンク切れ]</ref>。こういった批判の声に対し、在特会側は「1万3000人に増えた会員数がその成果だ。」と反論した<ref>[http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130511-00000008-jij-soci 「皆殺し」「追放」と過激化=ヘイトスピーチに非難強まる―コリアンタウン排斥デモ](時事通信) 2013年5月11日[リンク切れ]</ref>。[[2013年]][[10月7日]]、[[菅義偉]][[内閣官房長官|官房長官]]は、[[在特会]]・[[主権会]]に関する[[朝鮮学校]][[訴訟]]の判決についての質問で「最近、ヘイトスピーチと呼ばれる差別的発言で商店の営業や学校の授業などが妨害されていることは、極めて憂慮すべきものがある」と述べた<ref>[http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201310/07_p.html 内閣官房長官記者会見・2分50秒以降] 2013年10月7日</ref>。
[[2013年]][[5月7日]]と[[5月9日]]にかけて[[参議院]]でヘイトスピーチについて問われ、[[安倍晋三]][[内閣総理大臣|首相]]は「一部の国、民族を排除する言動があるのは極めて残念なことだ。[[日本人]]は和を重んじ、排他的な国民ではなかったはず。どんなときも礼儀正しく、寛容で謙虚でなければならないと考えるのが日本人だ」<ref name=asahi20130507>[http://web.archive.org/web/20130508124117/http://www.asahi.com/politics/update/0507/TKY201305070355.html 安倍首相、ヘイトスピーチに「極めて残念」 参院予算委]](朝日新聞) 2013年5月7日</ref>、「日本の国旗がある国で焼かれようとも、我々はその国の国旗を焼くべきではないし、その国のーダーの写真を辱めるべきではない。そが私たちの誇りではないか」<ref name=yomiori20130507>[http://web.archive.org/web/20130507112955/http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130507-OYT1T00902.htm 在日韓国人らをネット中傷・排斥、控えよ…首相](読売新聞) 2013年5月7日</ref>と語り、[[法務大臣]]の[[谷垣禎一]]は「憂慮に堪えない。品格ある国家という方向に真っ向から反する」<ref name=asahi20130509>[http://web.archive.org/web/20130510183356/http://www.asahi.com/national/update/0509/TKY201305090289.html ヘイトスピーチ「憂慮に堪えない」 谷垣法相](朝日新聞) 2013年5月9日</ref>と語った。さらに谷垣は[[5月10日]]の記者会見で、ヘイトスピーチについて「人々に不安感や嫌悪感を与えるというだけでなく、差別意識を生じさせることにもつながりかねない。甚だ残念だ。差別のない社会の実現に向け、一層積極的に取り組んでいきたい」と述べた<ref name=sankei20130510>{{Cite news|url=http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130510/plc13051011430016-n1.htm |archiveurl=http://web.archive.org/web/20130512023602/http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130510/plc13051011430016-n1.htm |title=ヘイトスピーチ「残念」 谷垣法相 |newspaper=産経新聞 |date=2013-05-10 |archivedate=2013-05-12}}</ref>。
れらに対し、在特会側は「1万3000人に増えた会員数がその成果だ。」と反論した<ref>[http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130511-00000008-jij-soci 「皆殺し」「追放」と過激化=ヘイトスピーチに非難強まる―コリアンタウン排斥デモ](時事通信) 2013年5月11日[リンク切れ]</ref>。一方で、「安倍首相が言いたいのは<あの連中は、日本の国旗を焼く連中だ、日本の敵だ、しかし、私たち日本人は、そんな低レベルに合わせるべきでない>ということです。5月7日の発言は、ヘイト・スピーチを批判するのではなく、かえって差別や偏見を助長するものと多くの被害者が受け止めています。」という在日の見解も生じた{{Sfn|神原|2014|p=141}}。
[[2013年]][[10月7日]]、[[菅義偉]][[内閣官房長官|官房長官]]は、[[在日特権を許さない市民の会|在特会]]・[[主権回復を目指す会|主権会]]に関する[[朝鮮学校]][[訴訟]]の判決についての質問で「最近、ヘイトスピーチと呼ばれる差別的発言で商店の営業や学校の授業などが妨害されていることは、極めて憂慮すべきものがある」と述べた<ref>[http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201310/07_p.html 内閣官房長官記者会見・2分50秒以降] 2013年10月7日</ref>。


==== 外務省 ====
==== 外務省 ====
2013年1月、[[外務省]]は[[人種差別撤廃条約]]の第4条、「人種的優越又は憎悪に基づく思想の流布、人種差別の扇動等の処罰義務」の(a)(b)の留保について、「人種差別思想の流布等に対し、正当な言論までも不当に萎縮させる危険を冒してまで処罰立法措置をとることを検討しなければならないほど、現在の日本が人種差別思想の流布や人種差別の煽動が行われている状況にあるとは考えていない」との見解を発表している<ref>[http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000023044.pdf 人種差別撤廃条約第7回・第8回・第9回政府報告 ]</ref>。
2013年1月、[[外務省]]は[[あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約|人種差別撤廃条約]]の第4条、「人種的優越又は憎悪に基づく思想の流布、人種差別の扇動等の処罰義務」の(a)(b)の留保について、「人種差別思想の流布等に対し、正当な言論までも不当に萎縮させる危険を冒してまで処罰立法措置をとることを検討しなければならないほど、現在の日本が人種差別思想の流布や人種差別の煽動が行われている状況にあるとは考えていない」との見解を発表している<ref>[http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000023044.pdf 人種差別撤廃条約第7回・第8回・第9回政府報告 ]</ref>。


=== ===
==== 法務省 ====
[[法務省]]は2015年1月よりヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動を展開している。具体的には「ヘイトスピーチ、許さない。」「特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動を見聞きしたことがありますか。こうした言動は、人としての尊厳を傷つけたり、差別意識を生じさせることになりかねず、許されるものではありません」と呼びかける内容のポスターを約16,000枚作成・配布するほか、学校や企業などでの啓発機会の拡大に努めるとしている<ref>{{Cite web |url=http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00108.html |title=ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動 |accessdate=2015-02-11 |publisher=[[法務省]] }}</ref><ref>{{Cite news |title=法務省、ヘイトスピーチ許さない ポスターで啓発強化 |newspaper=[[共同通信社|共同通信]] |date=2015-01-17 |url=http://www.47news.jp/CN/201501/CN2015011701001597.html |accessdate=2015-02-11 }}</ref>。
==== 自民党ヘイトスピーチ対策検討プロジェクトチーム ====
2014年8月28日、[[自由民主党 (日本)|自民党]]はヘイトスピーチ対策等に関する検討プロジェクトチームの第一回会合をおこない、「国連人種差別撤廃委員会の対日審査について外務省よりヒアリング」「国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律について警察庁よりヒアリング」を議題とした<ref>自民党「2014年08月25日(月)~2014年08月31日(日)までの会議情報」より</ref>。


[[公安調査庁]]では、2011年(平成23年)度版「[[内外情勢の回顧と展望]]」にて、集会やデモで差別的な罵倒や誹謗中傷を行う市民団体を「[[排外主義|排外]]主張を掲げ執拗な糾弾活動を展開する右派系グループ」と位置づけ、動向を監視していることを明らかにしている{{Sfn|公安調査庁|2011|p=60}}。2014年(平成24年)度版では、「右派系グループを「レイシスト」(差別主義者)、その訴えを「ヘイトスピーチ」と非難する「対抗勢力」」との小競り合いが掲載された{{Sfn|公安調査庁|2014|p=65}}。2015年(平成27年度)では、「右派系グループは,人種差別的な言動などを用いて在日外国人排斥を主張する活動が,いわゆる「ヘイトスピーチ」(憎悪表現)であるとして社会的批判が高まっため,こうした言動を控えつつ,日韓国交断絶」を訴える活動を活発化させた。」とした{{Sfn|公安調査庁|2015|p=68}}。
ヘイトスピーチ規制とデモ規制の関連については''[[国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律#ヘイトスピーチ規制とデモ規制の関連]]''を参照。

==== 日本学術会議 ====
内閣府の特別機関である[[日本学術会議]]は、2014年9月、「最近の対外的緊張関係の解消と日本における多文化共生の確立に向けて」と題した報告のなかで、ヘイトスピーチは国際関係悪化の原因だと指摘、在日外国人らへの差別をあおるヘイトスピーチなどの排外的言動を問題視する報告を発表した<ref>[http://digital.asahi.com/articles/DA3S11412515.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11412515 「ヘイトスピーチ『普遍的価値観に反する』日本学術会議が報告」朝日新聞、2014年10月21日]</ref><ref>[http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-h140922-1.pdf 「最近の対外的緊張関係の解消と日本における多文化共生の確立に向けて」日本学術会議、2014年9月11日]</ref>。

=== 立法府 ===
==== 自由民主党 ====
2014年8月28日、[[自由民主党 (日本)|自民党]]はヘイトスピーチ対策等に関する検討プロジェクトチームの第一回会合をおこない、「国連人種差別撤廃委員会の対日審査について外務省よりヒアリング」「[[国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律]]について警察庁よりヒアリング」を議題とした<ref>自民党「2014年08月25日(月)~2014年08月31日(日)までの会議情報」より</ref>。


2014年10月15日の会合では「いわゆる京都朝鮮第一初級学校事件について」「自由権規約委員会及び人種差別撤廃委員会による対日政府報告審査に対する最終見解について」を議題とした<ref>自民党「2014年10月13日(月)~2014年10月19日(日)までの会議情報」より</ref>。
2014年10月15日の会合では「いわゆる京都朝鮮第一初級学校事件について」「自由権規約委員会及び人種差別撤廃委員会による対日政府報告審査に対する最終見解について」を議題とした<ref>自民党「2014年10月13日(月)~2014年10月19日(日)までの会議情報」より</ref>。
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2014年11月4日の会合では「前回からの課題について 警察庁・外務省より説明」を議題とし<ref>自民党「2014年11月03日(月)~2014年11月09日(日)までの会議情報」より</ref>、[[毎日新聞]]は「韓国での対日ヘイトスピーチの実態や韓国政府による規制の検討状況を調査するよう関係省庁に求めた」と[[報道]]し、「韓国政府に対日ヘイトスピーチ対策を促す狙い」と判断した<ref>[http://mainichi.jp/select/news/20141105k0000m010081000c.html ヘイトスピーチ:韓国での実態など調査求める 自民党PT](毎日新聞) 2014年11月4日</ref>。
2014年11月4日の会合では「前回からの課題について 警察庁・外務省より説明」を議題とし<ref>自民党「2014年11月03日(月)~2014年11月09日(日)までの会議情報」より</ref>、[[毎日新聞]]は「韓国での対日ヘイトスピーチの実態や韓国政府による規制の検討状況を調査するよう関係省庁に求めた」と[[報道]]し、「韓国政府に対日ヘイトスピーチ対策を促す狙い」と判断した<ref>[http://mainichi.jp/select/news/20141105k0000m010081000c.html ヘイトスピーチ:韓国での実態など調査求める 自民党PT](毎日新聞) 2014年11月4日</ref>。


自民党の「ヘイトスピーチ対策等に関する検討プロジェクトチーム」は日本国内での規制を検討するにあたり、韓国での対日ヘイトスピーチの実態や韓国政府による規制の検討状況を調査するよう関係省庁に求めている。座長の[[平沢勝栄]]は「(韓国側が)自分のことを棚に上げて日本にだけ(批判を)言うのは理屈に合わない」と語った<ref>{{cite news|title=韓国での実態など調査求める 自民党PT|newspaper=[[毎日新聞]] |date=2014/11/4|url=http://mainichi.jp/select/news/20141105k0000m010081000c.html|accessdate=2014-11-04|archiveurl=http://web.archive.org/web/20141104132157/http://mainichi.jp/select/news/20141105k0000m010081000c.html|date=2014-11-04|archivedate=2014-11-04}}</ref>。
==== 第47回総選挙の候補者アンケート ====
[[2014年]][[12月14日]]に執行された[[第47回衆議院議員総選挙|第47回総選挙]]に際して[[毎日新聞]]が全候補者を対象に行った候補者アンケートにおいて、「特定の民族や人種に対する憎悪表現(ヘイトスピーチ)を法律で規制することに賛成ですか、反対ですか。」という設問が用意された。


==== 民主党・社民党 ====
当選者475人の回答は賛成282人(59.4%)、反対81人(17.1%)、非該当・無回答112人(23.6%)に分かれた。党派別の回答状況は以下の通りである。
2015年5月22日、[[民主党 (日本 1998-)|民主党]]は「人種等を理由とする不当な行為」を禁止(罰則なし)、実態を調査し、首相に意見、勧告できる審議会を内閣府に設置、国や地方自治体に差別防止策の実施を求める、人種差別的な街宣活動を規制する「人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律案」を社民党と共同で参議院に提出した<ref>{{Cite news|url=http://www.sankei.com/politics/news/150522/plt1505220031-n1.html |title=ヘイトスピーチ規制を 民・社など参院に法案提出 |newspaper=[[産経新聞]] |date=2015-05-22|accessdate=2015-05}}</ref><ref>{{Cite web|url=http://www.dpj.or.jp/article/106750 |title=ヘイトスピーチを禁ずる法律案を参院に提出 |author=民主党 |date=2015-05-22 |accessdate=2015-05}}</ref>。


==== 公明党 ====
{|class="wikitable" style="text-align:right;"
2014年9月30日、[[公明党]]はヘイトスピーチ問題対策プロジェクトチームを発足させた。座長の[[遠山清彦]]は「複雑な要素が入った難しい問題だが、人権を重視する公明党の立場から、さまざまな観点で検討を進めたい」としている<ref>{{Cite web|url=https://www.komei.or.jp/news/detail/20141001_15064 |title=「憎悪表現」の対策検討 |publisher=[[公明党]] |date=2014-10-01|accessdate=2015-05}}</ref>。2015年2月6日、プロジェクトチームの[[遠山清彦]]、[[高木美智代]]、[[國重徹]]らが、新大久保の韓国料理店経営者や[[在日本大韓民国民団]]東京本部の関係者と面会し、嫌韓デモによる被害の実態聴取を行った<ref>{{Cite news|url=http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2015/02/06/0200000000AJP20150206002300882.HTML |title=公明党議員 新大久保で嫌韓デモの被害実態を聴取 |newspaper=[[聯合ニュース]] |date=2015-02-06 |accessdate=2015-05}}</ref>。党代表の[[山口那津男]]は基本的人権、特に表現の自由や思想信条の自由は日本国民に限らず広く外国人にも認められている、との認識を示している<ref>{{Cite journal|url=http://g2.kodansha.co.jp/27047/27158/27967/27969.html|title=「公明党の考え」|journal=G2|accessdate=2015-05}}</ref>。
|- style="text-align:center;"
!rowspan="2"|党派
!colspan="2"|賛成
!colspan="2"|反対
!colspan="2"|非該当<br />無回答
!rowspan="2"|合計
|- style="text-align:center;"
!人数
!比率
!人数
!比率
!人数
!比率
|-
!style="text-align:center;"|[[自由民主党 (日本)|自由民主党]]
|129||44.3%||73||25.1%||89||30.6%||291
|-
!style="text-align:center;"|[[民主党 (日本 1998-)|民主党]]
|60||82.2%||4||5.5%||9||12.3%||73
|-
!style="text-align:center;"|[[維新の党]]
|35||85.4%||2||4.9%||4||9.8%||41
|-
!style="text-align:center;"|[[公明党]]
|27||77.1%||1||2.9%||7||17.1%||35
|-
!style="text-align:center;"|[[日本共産党]]
|20||95.2%||0||0.0%||1||4.8%||21
|-
!style="text-align:center;"|[[次世代の党]]
|1||50.0%||1||50.0%||0||0.0%||2
|-
!style="text-align:center;"|[[社会民主党 (日本 1996-)|社会民主党]]
|1||50.0%||0||0.0%||1||50.0%||2
|-
!style="text-align:center;"|[[生活の党]]
|2||100.0%||0||0.0%||0||0.0%||2
|-
!style="text-align:center;"|[[無所属]]
|7||87.5%||0||0.0%||1||12.5%||8
|-
!style="text-align:center;"|合計
|282||59.4%||81||17.1%||112||23.6%||475
|}


==== 日本共産党 ====
;出典
[[日本共産党]]は、「ヘイトスピーチを許さないために、人種差別禁止を明確にした理念法としての[[一般法・特別法|特別法]]の制定をめざす」としている<ref name=kyosan2014>{{Cite web|url=http://www.jcp.or.jp/web_policy/2014/11/post-666.html |title=2014年総選挙各分野政策 44、ヘイトスピーチ 民族差別をあおるヘイトスピーチを許さない |publisher=[[日本共産党]] |date=2014-11 |accessdate=2014-12-19}}</ref>。また、[[安倍晋三]]、[[橋下徹]]らの「侵略戦争美化・合理化の歴史認識」や<ref name=kyosan2013>{{Cite web |url=http://www.jcp.or.jp/web_policy/2013/06/2013-27.html |title=2013年参議院選挙各分野政策 41、いのち・人権の保障 |publisher=[[日本共産党]] |date=2013-06 |accessdate=2014-12-19}}</ref>、2009年2月に[[在日特権を許さない市民の会]]の関西支部長らと共に写真に写った[[山谷えり子]]、2011年に[[ネオナチ]]の団体の代表と共に写真に写った[[高市早苗]]、[[稲田朋美]]ら、「ヘイトスピーチに関連する勢力や極右勢力と政権与党幹部との〝癒着〟がヘイトスピーチの温床になってい」ると主張している<ref name=kyosan2014 />。
* {{Cite news|title=2014衆院選 当選者 - 毎日新聞 |url=http://senkyo.mainichi.jp/47shu/kaihyo_timeline_ichigyo_all.html |newspaper=[[毎日新聞]] |date=2014-12-15 |accessdate=2014-12-26 }}

==== 政党別アンケート ====
[[2014年]][[12月14日]]に執行された[[第47回衆議院議員総選挙|第47回総選挙]]に際して[[毎日新聞]]が全候補者を対象に行った候補者アンケートにおいて、「特定の民族や人種に対する憎悪表現(ヘイトスピーチ)を法律で規制することに賛成ですか、反対ですか。」という設問が用意された。「賛成」と回答したのは候補者の70%、当選者の60%だったのに対し、「反対」と回答したのは候補者の16%、当選者の17%だった。また当該アンケートに基づく[[ボートマッチ]]「えらぼーと」の利用者181,575人の回答は「賛成」が55%、「反対」が32%となった<ref>{{Cite news |title=えらぼーと:2014年衆院選ボートマッチ、検証座談会 利用者、12日間で18万1575人 低関心、与野党に責任 |newspaper=[[毎日新聞]] |date=2014-12-21 |url=http://senkyo.mainichi.jp/news/20141221ddm010010032000c7.html |accessdate=2015-02-21 }}</ref>。

[[2014年]][[11月29日]]、「外国人人権法連絡会」が、各党に行ったアンケートにおいて、「国としてヘイトスピーチ対策を取る必要性について」聞いた。回答結果は、「人種差別撤廃基本法」などの法整備については、生活の党と新党改革は回答無し。自民は「検討中」、公明は「どちらでもない」。維新と次世代は「未定」。共産、社民、民主が「賛成」<ref>{{Cite news|title=選挙毎日 2014衆院選 |url=http://senkyo.mainichi.jp/news/20141130k0000m040032000c.html |newspaper=[[毎日新聞]] |date=2014-11-29 |accessdate=2014-12-26 | archiveurl = http://web.archive.org/web/20150213155824/http://senkyo.mainichi.jp/news/20141130k0000m040032000c.html | archivedate =2014-12-26}}</ref>。


=== 地方自治体 ===
=== 地方自治体 ===
==== 首長等 ====
==== 首長等 ====
* 現[[沖縄県]][[都道府県知事|知事]]の[[翁長雄志]]は、[[那覇市|那覇市長]]時代の2013年10月9日の[[記者会見]]の中で、2014年1月27日の[[オスプレイ]]配備抗議行動の際にヘイトスピーチを受けたということと関連して「琉球人は出て行け、[[中華人民共和国|中国]]の[[スパイ]]、翁長出てこい」と言われた、と語り、「[[政治]]の世界にいる人間には慣れているが、一般県民はびっくりして大変な状況でした」と語った。また「周辺を見渡しましたら、そこで買い物をしている人たちは一顧だにしない。まったく正常な中に異常な行動の姿があるのを見て、何かわけのわからない、嫌な予感がありました」と語った。また京都地裁の判決と関連して、ヘイトスピーチについて「それぞれいろいろな思いがあるんでしょうけれども」と留意しながら「日本の国の品位という意味でも、[[国民]]一人一人の品位という意味でも、慎んでやるべきだと」と語った。また「[[表現の自由]]との関連もあるし、今の[[民主主義]]というか、[[法律]]ではなかなか解決しにくい分野だな」と語り、市庁の周りでの[[市長]]に対する抗議行動に関して、周辺[[住民]]の迷惑と関連して「激しい行動とともにスピーカーでやるやりかた、そこまで来ることの原因も含めて、今の現状は憂うべきところがある」と語った。<ref>[https://www.youtube.com/watch?v=Bid_Bwq-zbQ 翁長雄志那覇市長 定例記者会見 全編]24分30秒以降</ref><ref>[http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-213616-storytopic-1.html 「現状憂うところある」 ヘイトスピーチで那覇市長 2013年10月10日 ]琉球新報</ref>。
* 現[[沖縄県]][[都道府県知事|知事]]の[[翁長雄志]]は、[[那覇市|那覇市長]]時代の2013年10月9日の[[記者会見]]の中で、2014年1月27日の[[V-22 (航空機)|オスプレイ]]配備抗議行動の際にヘイトスピーチを受けたということと関連して「琉球人は出て行け、[[中華人民共和国|中国]]の[[スパイ]]、翁長出てこい」と言われた、と語り、「[[政治]]の世界にいる人間には慣れているが、一般県民はびっくりして大変な状況でした」と語った。また「周辺を見渡しましたら、そこで買い物をしている人たちは一顧だにしない。まったく正常な中に異常な行動の姿があるのを見て、何かわけのわからない、嫌な予感がありました」と語った。また京都地裁の判決と関連して、ヘイトスピーチについて「それぞれいろいろな思いがあるんでしょうけれども」と留意しながら「日本の国の品位という意味でも、[[国民]]一人一人の品位という意味でも、慎んでやるべきだと」と語った。また「[[表現の自由]]との関連もあるし、今の[[民主主義]]というか、[[法律]]ではなかなか解決しにくい分野だな」と語り、市庁の周りでの[[市町村長|市長]]に対する抗議行動に関して、周辺[[住民]]の迷惑と関連して「激しい行動とともにスピーカーでやるやりかた、そこまで来ることの原因も含めて、今の現状は憂うべきところがある」と語った<ref>[http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-213616-storytopic-1.html 「現状憂うところある」 ヘイトスピーチで那覇市長 2013年10月10日 ]琉球新報</ref>。
* [[大阪府]][[門真市]]は、特定の[[人種]]への[[差別]]を扇動するヘイトスピーチを繰り返す[[排外主義]]団体には、既存[[条例]]を活用し、[[公民館]]や[[公園]]など市[[施設]]を使わせない方針を明らかにしていると2014年4月9日の「毎日新聞」は報道した<ref>毎日新聞 2014年04月09日 地方版</ref>。しかし、「市の考え方と異なる表現や誤解を招く紙面構成」であるとして同市は[[毎日新聞社]]に対して申し入れを行った。市の公式見解としては「[[日本国憲法]]を擁護する立場として、表現の自由は保障すべきものと考えており、市内[[施設#公共施設|公共施設]]の使用について、原則的には団体や個人を特定し、使用制限を行うものではありません。そのような中、[[市民]]の安全と尊厳を守ることを土台として、公共施設の使用の許可申請書の内容等を総合的に判断し、各施設の管理に関する条例及び規則等に抵触する場合については、不許可とします」と記している<ref>http://www.city.kadoma.osaka.jp/news/201404_49.html 毎日新聞4月9日付け朝刊掲載の報道について</ref>。<!-- (ヘイトスピーチ規制との関係が曖昧なのでコメントアウトします) なお、2013年6月には[[山形県]]が在特会側が[[桜井誠 (活動家)|桜井誠]]の講演会を行うため「県生涯学習センターを借りたい」として施設使用許可を求めた事に対して、県側が「図書館が併設され児童生徒が出入りする施設」であることを理由に不許可とした例もある -->
* [[大阪府]][[門真市]]は、特定の[[人種]]への[[差別]]を扇動するヘイトスピーチを繰り返す[[排外主義]]団体には、既存[[条例]]を活用し、[[公民館]]や[[公園]]など市[[施設]]を使わせない方針を明らかにしていると2014年4月9日の「毎日新聞」は報道した<ref>毎日新聞 2014年04月09日 地方版</ref>。しかし、「市の考え方と異なる表現や誤解を招く紙面構成」であるとして同市は[[毎日新聞社]]に対して申し入れを行った。市の公式見解としては「[[日本国憲法]]を擁護する立場として、表現の自由は保障すべきものと考えており、市内[[施設#公共施設|公共施設]]の使用について、原則的には団体や個人を特定し、使用制限を行うものではありません。そのような中、[[市民]]の安全と尊厳を守ることを土台として、公共施設の使用の許可申請書の内容等を総合的に判断し、各施設の管理に関する条例及び規則等に抵触する場合については、不許可とします」と記している<ref>[http://www.city.kadoma.osaka.jp/news/201404_49.html 毎日新聞4月9日付け朝刊掲載の報道について]</ref>。
* [[神奈川県]][[川崎市]]の市長[[福田紀彦]]は、2014年5月31日の住民座談会の中で、ヘイトスピーチを伴うデモに対して、「ヘイトスピーチの話って聞くたびに、なんていうのか、怒りを通り越して情けないという思いがいたします」と語り、「昔からこういう風に続いてきている差別というのもしっかりと根絶していくには、子どもたちの教育というものもしっかりやっていくということも、私は重要なことだと思っていますので、そういう風に進めていきたいと思っています」と語った<ref>http://www.city.kawasaki.jp/160/cmsfiles/contents/0000054/54988/saiwai_gizi.pdf 第5回区民車座集会意見交換内容</ref>。
* [[神奈川県]][[川崎市]]の市長[[福田紀彦]]は、2014年5月31日の住民座談会の中で、ヘイトスピーチを伴うデモに対して、「ヘイトスピーチの話って聞くたびに、なんていうのか、怒りを通り越して情けないという思いがいたします」と語り、「昔からこういう風に続いてきている差別というのもしっかりと根絶していくには、子どもたちの教育というものもしっかりやっていくということも、私は重要なことだと思っていますので、そういう風に進めていきたいと思っています」と語った<ref>[http://www.city.kawasaki.jp/160/cmsfiles/contents/0000054/54988/saiwai_gizi.pdf 第5回区民車座集会意見交換内容]</ref>。
* [[大阪市]]の[[大阪市長|市長]][[橋下徹]]は、2014年7月10日の記者会見で、ヘイトスピーチを伴うデモに対して「表現の自由もあり、スピーチ自体の制限や罰則は難しい」としながらも「やり過ぎで問題だ。言葉が表現の自由をこえている」「発言内容を[[証拠]]保全し、表現について第三者委員会で議論し、結果を公表する」という考えを示した<ref>[http://www.asahi.com/articles/ASG7B5T81G7BPTIL01D.html 「ヘイトスピーチ、やり過ぎで問題」橋下市長が対策指示[http://www.kanaloco.jp/article/72279/cms_id/83867 中学校給食の自校方式「可能性あれば検討」 区民車座集会で川崎・福田市長 2014.06.01 ]神奈川新聞</ref>。
* [[大阪市]]の[[大阪市長|市長]][[橋下徹]]は、2014年7月10日の記者会見で、ヘイトスピーチを伴うデモに対して「表現の自由もあり、スピーチ自体の制限や罰則は難しい」としながらも「やり過ぎで問題だ。言葉が表現の自由をこえている」「発言内容を[[証拠]]保全し、表現について第三者委員会で議論し、結果を公表する」という考えを示した<ref>{{Cite news|url=http://www.asahi.com/articles/ASG7B5T81G7BPTIL01D.html |title=「ヘイトスピーチ、やり過ぎで問題」橋下市長が対策指示|publisher=朝日新聞 |date=2014-07-11}}</ref><ref>{{Cite news|url=http://www.kanaloco.jp/article/72279/cms_id/83867 |title=中学校給食の自校方式「可能性あれば検討」 区民車座集会で川崎・福田市長 |date=2014-06-01 |publisher=神奈川新聞|archiveurl=http://web.archive.org/web/20140602055707/http://www.kanaloco.jp/article/72279/cms_id/83867 |archivedate=2014-06-02}}</ref>。
** 2014年9月19日の記者会見で橋下は、「日本人に対するヘイトスピーチについても同じような態度で臨むのかと言いますけど、そりゃ臨みますよ。日本人に対するヘイトスピーチなんていうのは[[週刊朝日]]が僕に対してやったじゃないですか。同じように週刊朝日や[[朝日新聞]]に対しても徹底的に抗議してね、謝らせましたよ。今訴訟をやってますが。だから日本人に対するヘイトスピーチにも僕は同じ姿勢でやってるつもりですよ」と述べ、日本人によるヘイトスピーチだけではなく日本人に対するヘイトスピーチも存在することを前提に、規制の必要性について語った<ref name=hashimoto20140919>[https://www.youtube.com/watch?v=jvEqgCTnhuc 2014年9年19日(金)橋下徹市長登庁会見「文書通信交通滞在費の公開他について」]YouTube 日本維新の会配信 17分10秒頃から。</ref>。
* [[東京都知事]]の[[舛添要一]]は、2014年7月18日の記者会見で、ヘイトスピーチに関して「根本的に人権に対する挑戦」と語り、「人権啓発キャンペーンのようなところで徹底的にこれは、そういうことは止めるべきである」と語った。また「[[言論の自由]]はめちゃくちゃ重い」ということに留意しながらも、ヘイトスピーチの規制については、「大体の国民のコンセンサスが生まれれば、これはむしろ、[[東京都]]が条例ということよりも国権の最高機関である国会できちんと法律をつくるなり、[[刑法 (日本)|刑法]]を改正するなりやっていただくと良いと思います」と語った<ref>[http://www.metro.tokyo.jp/GOVERNOR/KAIKEN/TEXT/2014/140718.htm ヘイトスピーチ「基本的人権に対する挑戦だ」 舛添知事定例記者会見平成26年7月18日</ref>。
** 2014年9月25日、橋下は「特別永住者制度がおかしいと言うなら日本政府に言うべきだ。公権力を持たない人たちを攻撃するのは、ひきょうで格好悪い」と発言した<ref>{{Cite news|url=http://www.asahi.com/articles/ASG9T65T6G9TPTIL01P.html |title=橋下市長がヘイトスピーチ批判「ひきょうで格好悪い」 |newspaper=朝日新聞 |date=2014-09-26}}</ref>。
** [[毎日新聞]]が2014年8月5日に行った[[インタビュー]]記事では、舛添要一は「頻発する[[在日韓国・朝鮮人|在日コリアン]]らに対するヘイトスピーチ(憎悪表現)を巡り、自民党の政調会で立法措置を含めた対策を検討するよう同党側に要請した」と報道し、「[[国会 (日本)|国会]]できちんと法律を作ることが、問題に対応することになる」「そういう動きを加速化させるよう仲間の国会議員に言ってある。全体で網をかけた方がいい」と舛添要一の発言を引用し、「表現の自由に抵触しない範囲で法整備が必要との見解を示した」と報道した<ref>[http://mainichi.jp/select/news/20140806k0000m010082000c.html 舛添都知事:ヘイトスピーチ「立法含めた対策」自民に要請 2014年08月05日]毎日新聞</ref>。
*2014年10月20日、大阪市の市長橋下は[[在日特権を許さない会]]会長の桜井誠との会見<ref>{{Cite news | url = http://www.47news.jp/CN/201410/CN2014102001001764.html | title = 互いに暴言、面談は10分足らず 橋下大阪市長と在特会 | agency = [[共同通信社]] | publisher = [[47NEWS]] | date = 2014-10-20 | accessdate = 2014-10-26 }}</ref><ref>[http://newsonjapan.com/html/newsdesk/article/109934.php Osaka mayor engages in shouting match with head of anti-Korean group -'''[[Kyodo]]''' -- Oct 21](written in English)</ref><ref>[https://www.youtube.com/watch?v=hohthiDi4RY 橋下×在特会 桜井誠「飛田新地に帰れ」意見交換会フルバージョン]</ref>の後、ヘイトスピーチや差別をなくす方法として在日韓国・朝鮮人らの[[特別永住者|特別永住者制度]]を見直す考えを示した<ref>「橋下徹「在日の特別永住者制度を見直す」 これでヘイトスピーチも差別もなくなる?」『JCastニュース』(2014.10.26)</ref>。
** 2014年10月20日、橋下は[[在日特権を許さない市民の会]]会長(当時)[[桜井誠 (活動家)|桜井誠]]との会見<ref>{{Cite news | url = http://www.47news.jp/CN/201410/CN2014102001001764.html | title = 互いに暴言、面談は10分足らず 橋下大阪市長と在特会 | agency = [[共同通信社]] | publisher = [[47NEWS]] | date = 2014-10-20 | accessdate = 2014-10-26 }}</ref><ref>[http://newsonjapan.com/html/newsdesk/article/109934.php Osaka mayor engages in shouting match with head of anti-Korean group -'''[[Kyodo]]''' -- Oct 21](written in English)</ref><ref>[https://www.youtube.com/watch?v=hohthiDi4RY 橋下×在特会 桜井誠「飛田新地に帰れ」意見交換会フルバージョン]</ref>の後、ヘイトスピーチや差別をなくす方法として在日韓国・朝鮮人らの[[特別永住者|特別永住者制度]]を見直す考えを示した<ref>「橋下徹「在日の特別永住者制度を見直す」 これでヘイトスピーチも差別もなくなる?」『JCastニュース』(2014.10.26)</ref>。
* [[東京都知事]]の[[舛添要一]]は、2014年7月18日の記者会見で、ヘイトスピーチに関して「根本的に人権に対する挑戦」と語り、「人権啓発キャンペーンのようなところで徹底的にこれは、そういうことは止めるべきである」と語った。また「[[言論の自由]]はめちゃくちゃ重い」ということに留意しながらも、ヘイトスピーチの規制については、「大体の国民のコンセンサスが生まれれば、これはむしろ、[[東京都]]が条例ということよりも国権の最高機関である国会できちんと法律をつくるなり、[[刑法 (日本)|刑法]]を改正するなりやっていただくと良いと思います」と語った<ref>[http://www.metro.tokyo.jp/GOVERNOR/KAIKEN/TEXT/2014/140718.htm ヘイトスピーチ「基本的人権に対する挑戦だ」] 舛添知事定例記者会見平成26年7月18日</ref>。
**韓国外遊から帰国した[[舛添要一]]は記者会見での質疑応答で「そもそも論ですが、韓国の反日運動というのがありまして、例えば[[今上天皇]]や[[昭和天皇]]の張りぼてを作って侮辱する、肖像画を踏みつける、国旗を国会議員が踏みつける。デモでも、「キルジャップ」ということをやっている。日本に[[核爆弾]]を落とすと、こういうことがかなりある。これがまず反韓国感情の源と言っても過言ではない。(中略)知事にお聞きしたいのですが、天皇陛下や国旗が侮辱されていることについてどう思われるのか、これがヘイトスピーチじゃないかと」と、ヘイトスピーチ対策に関して質問され、「よその国が反日運動し、われわれを、[[ジャップ]]という言葉で呼ぶということに対しては極めて不快で、快く思いません。どの国の国民も同じことをやられると不快だと思いますから、たとえばこういうことについて野放しにしてよいのだろうかと。韓国は韓国のやることですから、われわれがどうこう言う話ではありません。これは韓国が法律でやればよい」と答えている<ref>{{cite news |title=【舛添知事定例会見詳報】(上)訪韓への反対の声「何件来たから全部反対とか、何件来たからどう、という問題ではない」 |newspaper=産経新聞 |date=2014-08-02 |url=http://www.sankei.com/politics/news/140802/plt1408020029-n1.html|accessdate=2015-01-29}}</ref>。
** [[毎日新聞]]が2014年8月5日に行った[[インタビュー]]記事では、舛添は「頻発する[[在日韓国・朝鮮人|在日コリアン]]らに対するヘイトスピーチ(憎悪表現)を巡り、自民党の政調会で立法措置を含めた対策を検討するよう同党側に要請した」と報道し、「[[国会 (日本)|国会]]できちんと法律を作ることが、問題に対応することになる」「そういう動きを加速化させるよう仲間の国会議員に言ってある。全体で網をかけた方がいい」との舛添の発言を引用し、「表現の自由に抵触しない範囲で法整備が必要との見解を示した」と報道した<ref>[http://mainichi.jp/select/news/20140806k0000m010082000c.html 舛添都知事:ヘイトスピーチ「立法含めた対策」自民に要請 2014年08月05日]毎日新聞</ref>。


==== 地方議会 ====
==== 地方議会 ====
[[2014年]]に入ってから各地の地方議会で、ヘイトスピーチの国による法規制などを求める意見書の採択が行われるようになっている。1227日時点で、都道府県議会では[[奈県議会|奈県]]・[[長野県議会|長野県]]・[[福岡県議会|福岡県]]・[[鳥取県議会|鳥取県]]・[[神奈川県議会|神奈川県]]で、政令指定都市議会では[[名古屋市]]・[[さいたま市]]・[[市]]・[[京都市]]で、一般区町村議会では[[国立市]]・[[宮代町]]・[[葛飾区]]・[[向日市]]・[[東村山市]]・[[東久留米市]]でそれぞれ意見書が採択されている(いずれも並びは採択順)<ref>{{Cite news |title=ヘイトスピーチ:法規制求める意見書 地方議会続々採択 |newspaper=[[毎日新聞]] |date=2014-12-20 |url=http://mainichi.jp/select/news/20141220k0000e040211000c.html |accessdate=2014-12-28 }}</ref><ref>{{Cite news |title=ヘイトスピーチ、地方議会がNO 対策求め意見書相次ぐ |newspaper=[[朝日新聞]] |date=2014-12-27 |url=http://www.asahi.com/articles/ASGDV7G40GDVUTIL04Y.html |accessdate=2014-12-28 }}</ref>。
[[2014年]]に入ってから各地の地方議会で、ヘイトスピーチの国による法規制などを求める意見書の採択が行われるようになっている。[[2015]]2月時点で、都道府県議会では[[県議会|県]]・[[長野県議会|長野県]]・[[奈良県議会|奈良県]]・[[鳥取県議会|鳥取県]]・[[福岡県議会|福岡県]]で、市区町村議会では[[さいたま市議会|さいたま市]]・[[上尾市]]・[[宮代町]](以上[[埼玉県]])・[[葛飾区]]・[[東村山市]]・[[国立市]]・[[東久留米市]](以上[[東京都]])・[[須坂市]]・[[塩尻]]・[[佐久市]]・[[東御市]]・[[安曇野市]](以上[[長野県]])・[[名古屋市会|名古屋市]]([[愛知県]])・[[京都市]]・[[向日市]](以上[[京都府]])・[[堺市議会|堺市]]([[大阪府]])・[[三郷町]]([[奈良県]])・[[美波町]]([[徳島県]])・[[土佐清水市]]([[高知県]])それぞれ意見書が採択されている<ref>{{Cite news |title=ヘイトスピーチ:法規制求める意見書 地方議会続々採択 |newspaper=[[毎日新聞]] |date=2014-12-20 |url=http://mainichi.jp/select/news/20141220k0000e040211000c.html |accessdate=2014-12-28 }}</ref><ref>{{Cite news |title=ヘイトスピーチ、地方議会がNO 対策求め意見書相次ぐ |newspaper=[[朝日新聞]] |date=2014-12-27 |url=http://www.asahi.com/articles/ASGDV7G40GDVUTIL04Y.html |accessdate=2014-12-28 }}</ref>。

2015年5月22日、大阪市は「人種・民族に係る特定の属性を有する個人・集団を、社会から排除すること」を審査会が問題行為として認定すれば、個人名、団体名を公表、また訴訟費用の貸付を行うとしたヘイトスピーチ抑止条例案を市議会に提出した<ref>{{Cite news|url=http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150523-OYT1T50077.html |title=ヘイトスピーチ抑止条例案提出…全国初、大阪市 |newspaper=読売新聞 |date=2015-05-23 |accessdate=2015-05}}</ref>。

=== 弁護士 ===
[[2013年]][[3月29日]]、[[日本弁護士連合会]]前会長の[[宇都宮健児]]ら有志の[[弁護士]]12人が、[[新大久保駅#駅周辺|新大久保]]での[[反韓デモ]]に対して「これ以上放置できない」として[[東京弁護士会]]に人権救済を申し立てた。また弁護士らは「[[日本の警察|警察]]には[[外国人]]の安全を守る責任があるというのに、適切な対策を取っていない」として、[[警視庁]]に対して周辺[[住民]]の安全確保を申し入れた<ref>[http://www.asahi.com/special/news/articles/TKY201303290464.html 朝日新聞デジタル:新大久保の反韓デモ、救済申し立て 「身に危険の恐れ」]2013年3月29日21時59分</ref>。

2013年7月26日には、[[第二東京弁護士会]]が「現代日本のヘイトスピーチ」というシンポジウムを開催している<ref>[http://niben.jp/news/ippan/2013/130726162548.html シンポジウム「現代日本のヘイトスピーチ」 東京第二弁護士会公式サイト]</ref>。

2013年7月には、[[大阪弁護士会]]がヘイトスピーチを伴う[[デモ活動|デモ]]に対して、「[[日本国憲法第13条|憲法第13条]]が保障する[[個人の尊厳]]や[[人格権]]を根本から傷つける」と批判する声明を発表している<ref>[http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2013/07/03/0200000000AJP20130703003600882.HTML ヘイトスピーチは表現の自由を逸脱=大阪弁護士会声明 2013年7月3日]聯合ニュース</ref>。ただし日本国憲法が保障しているのは当然ながら日本国民の権利である。大阪弁護士会が、2014年5月に発行した「大阪地域司法計画 2014」の中でヘイトスピーチについて「外国人に対する誹謗中傷を含んだ街宣活動が頻繁に行われている」「[[子供|子ども]]の成長に極めて深刻な悪影響を及ぼす」「表現の自由との関係に配慮しつつも、法規制についての検討・研究を行う」と言及している<ref>[http://www.osakaben.or.jp/05_menu/01_tiikishihou/pdf/tiikishihou_2014.pdf 「大阪地域司法計画2014」について(PDF)]大阪弁護士会公式サイト</ref>。

[[日本弁護士連合会]]は、2015年5月13日、「人種的憎悪や人種的差別を煽動・助長する言動(ヘイトスピーチ)など人種差別の実態調査」「人種差別禁止の理念などを定めた「基本法」の制定」「人権侵害からの救済などを目的とする「国内人権機関」と、個人が国際機関に人権救済を求める「個人通報制度」の創設」の3点を求める意見書を国に提出した<ref>{{Cite web|title=「ヘイトスピーチは許されない」日弁連が「人種差別禁止」基本法の制定を国に要望|url=http://www.bengo4.com/topics/3096/|publisher=弁護士ドットコム|date=2015-05-13|accessdate=2015-05-14}}</ref>。


=== 学識経験者 ===
=== 学識経験者 ===
ミルドベリー大学教授のエリック・ブライシュは「反マイノリティの発言を標的にして精緻に作られた法制度が、むしろ人種的・宗教的マジョリティの支配を批判するマイノリティに適用されてしまう、というものがある。(中略)しかし、最悪のシナリオは、最も可能性の高いシナリオというわけではない。」とし{{Sfn|ブライシュ|2014|p=53-54}}、「どの程度の[[自由]]を[[人種差別|レイシスト]]に与えるべきなのか。その最終的な答えはこれである。歴史を見て、文脈と影響に注意せよ。原則を練り上げ、友人を説得し、議員に訴えよ。そして、うまくつきあっていける[[価値]]と[[バランス]]とともに歩んで行くのだ。」と結論した{{Sfn|ブライシュ|2014|p=352}}。
[[社会学]]者の[[明戸隆浩]]は、[[日本]]では[[戦中]]の[[言論統制]]の反省から[[表現の自由]]が支持されることが多いが、「日本では[[アメリカ]]と違って反[[人種差別]]にかかわる規範がほとんど形成されてこなかった」ことを確認すべきであると主張している<ref name=akedo>明戸隆浩「[http://www.keiho-u.ac.jp/research/asia-pacific/pdf/review_2014-03.pdf アメリカにおけるヘイトスピーチ規制論の歴史的文脈]」『アジア太平洋レビュー』第11号、[[大阪経済法科大学]],2014年</ref>。


[[バード大学]]教授でジャーナリストのイアン・ブルマはヘイトスピーチの規制は間違っていると主張、「法律で特定の意見を禁止することが賢明だろうか。特定の意見の表明を禁じても、その意見はなくならない。水面下で表現され続け、さらに有害なものになる。中東やほかの地域でテロの社会的・政治的基盤を成すものは、外国人差別的な言論を公的に禁じただけでは、決して消えない」とした<ref>[http://toyokeizai.net/articles/-/61632 ヘイトスピーチの法的規制は間違っている 「自由」という名の下の言論統制に過ぎない]2015年2月28日 週刊東洋経済2015年2月28日号</ref>。
また、学者らが政策を提言する政府の特別機関である[[日本学術会議]]は、2014年9月、在日外国人らへの差別をあおるヘイトスピーチなどの排外的言動を問題視する報告を発表している<ref>[http://digital.asahi.com/articles/DA3S11412515.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11412515 「ヘイトスピーチ『普遍的価値観に反する』日本学術会議が報告」朝日新聞、2014年10月21日]</ref><ref>[http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-h140922-1.pdf 「最近の対外的緊張関係の解消と日本における多文化共生の確立に向けて」日本学術会議、2014年9月11日]</ref>。


[[九州大学]]准教授の[[施光恒]]は安倍政権が「ヘイトスピーチ」規制に力を入れる理由として、近い将来の移民受け入れのための条件整備の側面を指摘している<ref>[http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/01/23/se-51/ 【施 光恒】ヘイトスピーチ規制の本末転倒] 2015年1月23日 三橋貴明の「新」日本経済新聞</ref>。また「ヘイトスピーチ」という英語(カタカナ語)を使うのでなく、「何が不当なのか」という問題の本質に目を向けるためにも、日本語で正確に表現したほうがいいとも主張している。例を挙げれば「ジャパニーズ・オンリー」は飲食店などで掲示されればヘイトスピーチとなりうるが、その印象が[[外国人地方参政権]]の問題を巡り対立する一方の側に不当に有利に働きかねない、と危惧している<ref>[http://www.sankei.com/region/news/150122/rgn1501220036-n1.html 【国家を哲学する 施光恒の一筆両断】「ヘイトスピーチ」] 2015年1月22日 [[産経新聞]](九州山口版)</ref>。
== 日本におけるヘイトスピーチの現状 ==
=== 在特会などの右派系市民団体について ===
[[在日特権を許さない市民の会]](在特会)など、「[[行動する保守]]」と言われる[[右派]]系[[市民団体]]が主催する[[反韓デモ]]において、過激なプラカードや過激なコールが頻繁に行われている。[[李明博竹島上陸]]事件や[[対馬仏像盗難事件]]以降、在日を含む[[韓国人]]に対する抗議デモの側面が強まってからはこの傾向は特に顕著になり、在特会会長の[[桜井誠 (活動家)|桜井誠]]自ら「在日韓国人を[[テポドン (ミサイル)|テポドン]]にくくりつけ、[[大韓民国|韓国]]に打ち込みましょう!」とデモの最中に叫んで<ref>朝日新聞2013年4月28日朝刊、35面「敵がいる」</ref>おり、これが「[[ヘイトスピーチ]]」であると非難されることがある。


[[青山学院大学]]教授の福井義高は、[[慰安婦]]や[[南京事件 (1937年)|南京事件]]で日本を擁護する歴史認識までがヘイトスピーチだとして処罰されうる欧州のようなヘイト規制を、日本で招いてはならないとした<ref name=sankei20141202>{{Cite news|url=http://www.sankei.com/column/news/141202/clm1412020008-n1.html |title=正論1月号 安易な法規制は許さない安易な法規制は許さない |newspaper=産経ニュース |date=2014-12-02}}</ref>。
なお、桜井誠は2011年5月に[[京都市]]内で開催した、在特会の講演会の中で[[阪神教育事件]]などの在日朝鮮人が[[戦後]]直後に起こした事件などを例にあげ「必ずこの国には殺戮戦が訪れる。在日韓国人・朝鮮人・そして[[反日]][[極左]]、今ここで工作活動やってるバカとね、本気で命のやりとをやって叩き殺さなきゃいけない時が 必ず来るんです」「泣いて許しを乞う相手を貴方達本当に一刀両断で斬り捨てることが出来るか?と。大変厳しい選択です。朝鮮人であってもまだ[[子供]]です。この子供をでも生かしておいたらね、また同じ事を繰り返される」など、[[ジェノサイド]]を煽る発言まで行っている<ref>安田浩一 『ネットと愛国――在特会の「闇」を追いかけて』 講談社〈g2 book〉、2012年4月17日。ISBN 978-4-06-217112-0</ref>。


政治学者の[[五野井郁夫]]は「なぜヘイトスピーチは蔓延するのか?」と題し、「架空の「在日特権」」等「「抽象的な言葉が人を傷つけるとき、それが可能になるのは」、わたしたちの日本語として流通している言葉の体系が蔑視表現や差別を「まさに人を傷つける力を蓄積し、かつ隠蔽している」ものとなっているためである。それゆえ「人種差別的な誹謗をする人は、そういった誹謗を引用し、言語を介してそのような発言をしてきた人たちの仲間になっていく」というサイクルが出来上がるのだ。」と論じた<ref>{{Cite journal|和書|url=http://webronza.asahi.com/politics/articles/2013101800004.html |title=[1]なぜヘイトスピーチは蔓延するのか? |author=[[五野井郁夫]] |date=2013-10-19 |accessdate=2015-09 |journal=WEBRONZA}}</ref>。
2009年12月24日には、在特会・主権会会員らが[[京都朝鮮第一初級学校]]([[京都市]][[南区 (京都市)|南区]])の[[勧進橋児童公園]]の不正占用に抗議するとして、同校校門前で街宣を行った。抗議者側のメンバーらは学校に向けて「日本から出て行け。何が子供じゃ、こんなもん、お前、スパイの子供やないか」「約束というものは人間同士がするものなんですよ。人間と朝鮮人では約束は成立しません」等と叫んだ。初級学校側は街宣を行った在特会・主権会側のメンバーを[[刑事告訴]]し、抗議者側のメンバーは[[逮捕]]された。桜井誠の自宅も[[家宅捜索]]を受けている。


社会学者の明戸隆浩は、ブライシュ著書の訳者解説において、[[日本]]では[[戦中]]の[[言論統制]]の反省から[[表現の自由]]が支持されることが多いが、「日本では[[アメリカ合衆国|アメリカ]]と違って反[[人種差別]]にかかわる規範がほとんど形成されてこなかった」ことを確認すべきであると主張している<ref name=akedo>明戸隆浩「[http://www.keiho-u.ac.jp/research/asia-pacific/pdf/review_2014-03.pdf アメリカにおけるヘイトスピーチ規制論の歴史的文脈]」『アジア太平洋レビュー』第11号、[[大阪経済法科大学]],2014年</ref>。また、[[ヘイトスピーチ]]の日本における文脈として、[[京都朝鮮学校公園占用抗議事件|京都朝鮮学校事件]]等における[[在日特権を許さない市民の会|在特会]]による[[ヘイトスピーチ]]と[[あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約|人種差別撤廃条約]]に対する日本政府の「消極的な姿勢」を挙げた{{Sfn|ブライシュ|2014|pp=284-291}}。
2011年4月21日には、[[京都地裁]]で街宣を行った在特会・主権会側のメンバー4名に[[執行猶予]]付きの[[実刑]][[判決 (日本法)|判決]]を言い渡している。
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=== 論者 ===
[[野村旗守]]は、[[京都朝鮮学校公園占用抗議事件]]で「在日韓国朝鮮人であるという属性を、まるで犯罪であるかのようにあげつら」った在特会のヘイトスピーチは「凶器の域にまで達し」ており、表現の自由を理由に法規制を回避し難いまでになったとしつつ、差別撤廃基本法は「「差別」と「人権」のプロ」の利権となり、特権となり、嫉妬を誘発し憎悪を再生産すると論じ、法に頼らず、全社会の圧力をもってヘイトスピーチを規制し在特会を解体すべきであるとした<ref>{{Cite journal|url=http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141016-00010000-willk-pol&p=3|title=「ヘイトスピーチ」法規制に異議あり!【野村旗守】|author=[[野村旗守]] |journal=WILL |publisher=Yahoo! Japan|date=2014-10-16|accessdate=2015-04-19}}</ref>。


[[古谷経衡]]は「在特会の過激なヘイトスピーチやレイシズム的表現を問題にしている」文脈の中で「彼らが本当に問題にしているのは「嫌韓」(この“韓”には在日を含む)そのものである。」とし、「このサヨク・リベラルに蔓延する韓国=善(その批判はタブー)の思想こそ、この国の戦後メディアが基調としてきた寡占体制である。」と述べた{{Sfn|安田、岩田、古谷、森|2013|pp=62-63}}。在特会以外の保守も「例えば韓国を批判するときに、一体自分は韓国政府を批判したいのか、韓国人(民族)を批判したいのか、どっちなのかがよく分かっていない」と指摘、血統主義を「完全否定していくのが僕の保守としての立場」であるとしている{{Sfn|安田、岩田、古谷、森|2013|pp=190-191}}。
また、朝鮮学校側は在特会・主権会のメンバーらを相手に[[民事裁判]]を行い、[[京都地裁]]が2013年10月7日に[[原告]](初級学校側)の主張を認め、街宣禁止(移転後の所在地を中心とした半径200メートル以内も含めて)と1225万円[[賠償]](仮執行宣言付き)を在特会・主権会側に命令した。なお京都地裁判決は、[[裁判所]]が[[人種差別撤廃条約]]の直接の名宛人として国際法上の義務を負うとの解釈を示した初めての事例であった<ref>『このように、人種差別撤廃条約2条1項は、締結国に対し、人種差別を禁止し終了させる措置を求めているし、人種差別撤廃条約6条は、締結国に対し、裁判所を通じて、人種差別に対する効果的な救済措置を確保するよう求めている。これらは、締結国に対し、国家として[[国際法]]上の義務を負わせるというにとどまらず、締結国の裁判所に対し、その名宛人として直接に義務を負わせる規定であると解される。このことから、わが国の裁判所は、人種差別撤廃条約上、法律を同条約の定めに適合するように解釈する責務を負うものというべきである』平成25年10月7日京都地方裁判所判決</ref>が、[[大阪高裁]]ではこの判断は覆され[[私人間効力|間接適用説]]から判決理由が判示された<ref>『人種差別撤廃条約は、国法の一形式として国内法的効力を有するとしても、その規定内容に照らしてみれば、[[国家]]の国際責任を規定するとともに、憲法13条、14条1項と同様、[[公権力]]と個人との関係を規律するものである。すなわち、本件における被控訴人と[[控訴]]人らとの間のような私人相互の関係を直接規律するものではなく、私人相互の関係に適用又は類推適用されるものでもないから、その趣旨は、民法709条等の個別の規定の解釈適用を通じて、他の憲法原理や私的自治の原則との調和を図りながら実現されるべきものであると解される。したがって、一般に私人の表現行為は憲法21条1項の表現の自由として保障されるものであるが、私人間において一定の集団に属する者の全体に対する人種差別的な発言が行われた場合には、上記発言が、憲法13条、14条1項や人種差別撤廃条約の趣旨に照らし、合理的理由を欠き、社会的に許容し得る範囲を超えて、他人の法的利益を侵害すると認められるときは、民法709条にいう「他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」との要件を満たすと解すべきであり、これによって生じた損害を[[加害者]]に賠償させることを通じて、人種差別を撤廃すべきものとする人種差別撤廃条約の趣旨を私人聞においても実現すべきものである』平成26年7月8日大阪高等裁判所判決</ref>。


[[安田浩一]]は「抗弁不可能な、あるいは自分の努力だけでは変更不可能な出自や属性、あるいは身体的特徴に対して侮辱的、攻撃的、あるいは侮蔑的な言葉を投げかける」「しかも、それを取り巻く社会的な力関係を利用した上で言」う在特会の主張としてのヘイトスピーチに対し「そこに腹が立つ」と述べ、対抗言論が生まれようもない[[スティグマ]]、「いわゆる正当な言論が出てこない、いやそれを障害として正当な議論が成立しなくなるということに、保守派は危機感というものを抱くべきだ」と論じた{{Sfn|安田、岩田、古谷、森|2013|pp=194-195}}。
この事件については、国際連合人種差別撤廃委員会が取り上げ、また2011年4月8日に[[アメリカ合衆国国務省|アメリカ国務省]]が発表した「2010年国別人権報告書」で言及された。
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== 日本においてヘイトスピーチとされた事例および様態 ==
=== 在特会などの右派系市民団体 ===
{{see also|京都朝鮮学校公園占用抗議事件|水平社博物館前差別街宣事件}}
[[在日特権を許さない市民の会]](在特会)など、「[[行動する保守]]」と言われる[[右翼|右派]]系[[市民団体]]が主催する[[反韓デモ]]において、過激なプラカードや過激なコールが頻繁に行われている。[[李明博竹島上陸]]事件や[[対馬仏像盗難事件]]以降、在日を含む[[大韓民国#国民|韓国人]]に対する抗議デモの側面が強まってからはこの傾向は特に顕著になり、在特会会長の[[桜井誠 (活動家)|桜井誠]]自ら「在日韓国人を[[テポドン (ミサイル)|テポドン]]にくくりつけ、[[大韓民国|韓国]]に打ち込みましょう!」とデモの最中に叫んだ<ref>朝日新聞2013年4月28日朝刊、35面「敵がいる」</ref>。


なお、桜井誠は2011年5月に[[京都市]]内で開催した、在特会の講演会の中で[[阪神教育事件]]などの在日朝鮮人が[[戦後]]直後に起こした事件などを例にあげ「必ずこの国には殺戮戦が訪れる。在日韓国人・朝鮮人・そして[[反日]][[極左]]、今ここで工作活動やってるバカとね、本気で命のやりとをやって叩き殺さなきゃいけない時が 必ず来るんです」「泣いて許しを乞う相手を貴方達本当に一刀両断で斬り捨てることが出来るか?と。大変厳しい選択です。朝鮮人であってもまだ[[子供]]です。この子供をでも生かしておいたらね、また同じ事を繰り返される」など、[[ジェノサイド]]を煽る発言まで行っている<ref>安田浩一 『ネットと愛国――在特会の「闇」を追いかけて』 講談社〈g2 book〉、2012年4月17日。ISBN 978-4-06-217112-0</ref>。
なお、在特会側も初級学校側を[[告訴・告発|告発]]し、初級学校の前校長が、京都市が管理する公園を無許可で占用したとして、[[都市公園法]]違反で[[書類送検]]されている。


2009年4月11日、埼玉県蕨市で「カルデロン一家追放デモ」が行われた。[[中村一成]]や[[安田浩一]]はこの事件が差別デモが深刻化した端緒として捉えている{{Sfn|中村2014|p=20-22}}{{Sfn|安田|2015|pp=24-28}}<ref>[http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200904120944090 「在特会」ら、ノリコさんが通う中学前でデモ行進 「カルデロン一家を日本から追放しろ!」2009年04月12日]日刊ベリタ</ref>。
{{Main|[[京都朝鮮学校公園占用抗議事件]]}}


2009年12月4日には、在特会・主権会会員らが[[京都朝鮮第一初級学校]]([[京都市]][[南区 (京都市)|南区]])の[[勧進橋児童公園]]の不正占用に抗議するとして、同校校門前で街宣を行った。抗議者側のメンバーらは学校に向けて「北朝鮮のスパイ養成機関、朝鮮学校を日本から叩き出せ~」「約束というものは人間同士がするものなんですよ。人間と朝鮮人では約束は成立しません」等と叫んだ。アボジ会(父親会)副会長は「非常に断片的で、それゆえに相手を傷つける言葉を、ある意味的確なタイミングで使うわけです。もっと怖かったのは言葉と言葉が通じ合わない。人間としての会話が成立していないということでした」と語っている{{Sfn|中村|2014|pp=8-10}}。初級学校側は街宣を行った在特会・主権会側のメンバーを[[告訴・告発|刑事告訴]]し{{Sfn|中村|2014|pp=107-110}}、抗議者側のメンバーは[[逮捕]]された。桜井誠の自宅も[[捜索|家宅捜索]]を受けている<ref>{{cite news |title=「在特会」初摘発、4人を逮捕 「日本からたたき出せ」…朝鮮学校に拡声器で抗議 |url=http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100810/crm1008101147006-n1.htm |newspaper=[[産経新聞]] |date=2010-08-10 |accessdate=2013-04-28 |archiveurl=http://web.archive.org/web/20100811004332/http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100810/crm1008101147006-n1.htm |archivedate=2010-08-11 }}</ref><ref>{{cite news |title=会長宅からパソコンを押収 在特会事件 |url=http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201008110047.html |newspaper=朝日新聞 |date=2010-08-11 |accessdate=2013-04-28 |archiveurl=http://megalodon.jp/2010-0811-1152-32/www.asahi.com/kansai/news/OSK201008110047.html |archivedate=2010-08-11 }}</ref>。
2013年[[2月9日]]に[[東京都]][[新宿区]][[新大久保]]で実施された、行動する[[保守]]系の団体が主催した[[李明博竹島上陸]]事件への抗議デモでは、参加者に、「[[朝鮮民主主義人民共和国#国民|朝鮮人]]([[韓国人]])をガス室に送れ」というシュプレヒコールや「朝鮮人 首吊レ 毒飲メ 飛ビ降リロ」と書かれたプラカードを掲げる者が出た<ref>[http://www.news-postseven.com/archives/20130316_177289.html NEWSポストセブン|続く「嫌韓デモ」 国会で排外・人種侮蔑デモ抗議集会開催]</ref>。別の日の新大久保のデモでは「朝鮮恥獣密集地帯」「韓国人女性=腐れ売春婦」など侮辱的なプラカードが掲げられた<ref>[http://iwj.co.jp/wj/open/archives/73144 2013/04/07 IWJ特報 81号 ― 【IWJルポルタージュ】「『射殺せよ!』と叫ぶデモが吹き荒れたあとの街で」(後編)]</ref>。


2011年4月21日には、[[京都地方裁判所|京都地裁]]で街宣を行った在特会・主権会側のメンバー4名に[[執行猶予]]付きの[[実刑]][[判決 (日本法)|判決]]を言い渡している<ref>{{Cite news|url=http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110421-OYT1T00798.htm |archiveurl=http://web.archive.org/web/20110424142956/http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110421-OYT1T00798.htm |title=在特会事件、幹部ら4人に有罪判決…京都地裁 |newspaper=読売新聞 |date=2011-04-22 |archivedate=2011-04-24}}</ref>。
2013年2月24日には、在特会らが[[大阪市]][[生野区]]の鶴橋で行った街宣の中で女子中学生が登場し「まず[[日本人]]の人に聞きます。ここにいる[[チョン (蔑称)|チョンコ]]が、憎くて憎くてたまらない人は何人いますかーっ!手ぇ挙げてくださーいっ!」「[[南京大虐殺]]ではなく『鶴橋大虐殺』を実行しますよ」などと叫んだ<ref>[http://www.asiapress.org/apn/archives/2013/04/02154620.php 東京・大阪の「差別憎悪扇動行動」の現場を行く1 2013年4月 2日 15:46]アジアプレス・ネットワーク</ref>。この件に関しては、[[英国]]の大衆紙「[[デイリー・メール]]」<ref>[http://www.dailymail.co.uk/news/article-2305900/Japanese-girls-anti-North-Korea-rant-goes-viral-rogue-state-threatens-nuke-West.html I hate Koreans so much! Japanese girl's anti-North Korea rant goes viral after rogue state threatens to nuke the West]2013年4月8日 [[デイリー・メール]]</ref>や[[台湾]]の大手ニュースサイトの「東森新聞雲」<ref>[http://www.ettoday.net/news/20130403/188011.htm 「像南京大屠殺一樣」 日高中妹大阪街頭嗆殺韓國移民 ]2013年04月3日 東森新聞雲</ref>など、海外でも報じられた。


また、朝鮮学校側は在特会・主権会のメンバーらを相手に[[裁判|民事裁判]]を行い、[[京都地方裁判所|京都地裁]]が2013年10月7日に[[原告]](初級学校側)の主張を認め、街宣禁止(移転後の所在地を中心とした半径200メートル以内も含めて)と1225万円[[損害賠償|賠償]](仮執行宣言付き)を在特会・主権会側に命令した。なお京都地裁判決は、[[裁判所]]が[[あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約|人種差別撤廃条約]]の直接の名宛人として国際法上の義務を負うとの解釈を示した初めての事例であった<ref>『このように、人種差別撤廃条約2条1項は、締結国に対し、人種差別を禁止し終了させる措置を求めているし、人種差別撤廃条約6条は、締結国に対し、裁判所を通じて、人種差別に対する効果的な救済措置を確保するよう求めている。これらは、締結国に対し、国家として[[国際法]]上の義務を負わせるというにとどまらず、締結国の裁判所に対し、その名宛人として直接に義務を負わせる規定であると解される。このことから、わが国の裁判所は、人種差別撤廃条約上、法律を同条約の定めに適合するように解釈する責務を負うものというべきである』平成25年10月7日京都地方裁判所判決</ref>が、[[大阪高等裁判所|大阪高裁]]ではこの判断は覆され[[私人間効力|間接適用説]]から判決理由が判示された<ref>『人種差別撤廃条約は、国法の一形式として国内法的効力を有するとしても、その規定内容に照らしてみれば、[[国家]]の国際責任を規定するとともに、憲法13条、14条1項と同様、[[公権力]]と個人との関係を規律するものである。すなわち、本件における被控訴人と[[控訴]]人らとの間のような私人相互の関係を直接規律するものではなく、私人相互の関係に適用又は類推適用されるものでもないから、その趣旨は、民法709条等の個別の規定の解釈適用を通じて、他の憲法原理や私的自治の原則との調和を図りながら実現されるべきものであると解される。したがって、一般に私人の表現行為は憲法21条1項の表現の自由として保障されるものであるが、私人間において一定の集団に属する者の全体に対する人種差別的な発言が行われた場合には、上記発言が、憲法13条、14条1項や人種差別撤廃条約の趣旨に照らし、合理的理由を欠き、社会的に許容し得る範囲を超えて、他人の法的利益を侵害すると認められるときは、民法709条にいう「他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」との要件を満たすと解すべきであり、これによって生じた損害を[[加害者]]に賠償させることを通じて、人種差別を撤廃すべきものとする人種差別撤廃条約の趣旨を私人聞においても実現すべきものである』平成26年7月8日大阪高等裁判所判決</ref>。この事件については、[[国際連合]][[人種差別撤廃委員会]]が取り上げ、また2011年4月8日に[[アメリカ合衆国国務省|アメリカ国務省]]が発表した「2010年国別人権報告書」で言及された<ref>米国国務省民主主義・人権・労働局、2010年国別人権報告書</ref>。
行動する保守系の団体が2013年3月に大阪市内で行った[[日韓国交断絶国民大行進]]というデモではコーラーが「街中で韓国・朝鮮人を見かけたら、石を投げつけ、朝鮮人の女は[[強姦|レイプ]]してもいいんですよ! 我々がやられてきたことです。朝鮮人をぶち殺しましょう! 」と叫んでいる。このことは日本では勿論、韓国国内でも報じられ、強い非難の声が上がった<ref>[http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0403&f=national_0403_012.shtml 日本の嫌韓デモで衝撃発言「韓国人女性を強姦してもいい」=韓国] 2013/04/03(水) サーチナ</ref>。


一方で、在特会側も初級学校側を[[告訴・告発|告発]]し、初級学校の前校長が、京都市が管理する公園を無許可で占用したとして、[[都市公園法]]違反で[[書類送検]]されている<ref>{{cite news |title=朝鮮学校前校長を書類送検 無許可で公園占用容疑 |url=http://www.47news.jp/CN/201008/CN2010082701000845.html |newspaper=共同通信 |date=2010-08-27 |accessdate=2013-04-28 }}</ref>。
2013年7月には、在日朝鮮人の[[フリーライター]]の女性に対して、[[インターネット]]の掲示板に「良い朝鮮人も悪い朝鮮人も追い出そう。女性は殺そう」などと書き込んだ在特会の会員の男が[[脅迫罪|脅迫]]容疑で[[逮捕]]された。後日、[[書類送検]]されている<ref>[http://getnews.jp/archives/402097 差別はネットの娯楽なのか(15)――「良い朝鮮人も悪い朝鮮人も追い出そう。女性は殺そう」ツイートによる沖縄男性の書類送検について 2013.08.21]ガシェット通信</ref>。


2013年[[2月9日]]に[[東京都]][[新宿区]][[新大久保駅#駅周辺|新大久保]]で実施された、行動する[[保守]]系の団体が主催した[[李明博竹島上陸]]事件への抗議デモでは、参加者に、「[[朝鮮民主主義人民共和国#国民|朝鮮人]]をガス室に送れ」というシュプレヒコールや「朝鮮人 首吊レ 毒飲メ 飛ビ降リロ」「犯罪民族朝鮮人は日本から出て行け」「よい韓国人も悪い韓国人もどちらも殺せ」「畜生、ケダモノ。人非人の言葉がこれほど当てはまる民族は、朝鮮民族以外にありません」「朝鮮人をガス室に送れ」「在日韓国人をテポドンにくくりつけて、韓国に打ち込みましょう!」と書かれたプラカードを掲げる者が出た<ref>[http://www.news-postseven.com/archives/20130316_177289.html NEWSポストセブン|続く「嫌韓デモ」 国会で排外・人種侮蔑デモ抗議集会開催]</ref>{{Sfn|有田|2013|pp=3-5}}。
なお、在特会のヘイトスピーチの対象は在日韓国人だけでなく、[[被差別部落]]出身者にも向けられている。在特会副会長の男が2011年に[[奈良県]][[御所市]]の[[全国水平社|水平社]]博物館の前で街宣と称して「この目の前にある[[穢多]]博物館ですか、[[非人]]博物館ですか、水平社博物館ですか、なんかねえ、よく分からんこの博物館」「いい加減出てきたらどうだ、穢多ども」と叫んだ際には、水平社博物館側が後日に[[民事訴訟]]を起こして、在特会側が[[敗訴]]している。[[裁判所]]は副会長の男に対して、水平社博物館に[[慰謝料]]150万円を支払うよう命じた。


2013年2月24日には、在特会らが[[大阪市]][[生野区]]の鶴橋で行った街宣の中で女子中学生が登場し「まず[[日本人]]の人に聞きます。ここにいる[[チョン (蔑称)|チョンコ]]が、憎くて憎くてたまらない人は何人いますかーっ!手ぇ挙げてくださーいっ!」「もう殺してあげたい/いつまでも調子にのっとったら/[[南京事件 (1937年)|南京大虐殺]]じゃなくて鶴橋大虐殺を実行しますよ!/日本人の怒りが爆発したら、それくらいしますよ!/大虐殺を実行しますよ/実行される前に自国に戻ってください/ここは日本です。朝鮮半島じゃありません/いいかげん、帰れ!」などと叫んだ{{Sfn|有田|2013|p=6}}<ref>[http://www.asiapress.org/apn/archives/2013/04/02154620.php 東京・大阪の「差別憎悪扇動行動」の現場を行く1 2013年4月 2日 15:46]アジアプレス・ネットワーク</ref>。この件に関しては、[[イギリス|英国]]の大衆紙「[[デイリー・メール]]」<ref>[http://www.dailymail.co.uk/news/article-2305900/Japanese-girls-anti-North-Korea-rant-goes-viral-rogue-state-threatens-nuke-West.html I hate Koreans so much! Japanese girl's anti-North Korea rant goes viral after rogue state threatens to nuke the West]2013年4月8日 [[デイリー・メール]]</ref>や[[台湾]]の大手ニュースサイトの「東森新聞雲」<ref>[http://www.ettoday.net/news/20130403/188011.htm 「像南京大屠殺一樣」 日高中妹大阪街頭嗆殺韓國移民 ]2013年04月3日 東森新聞雲</ref>など、海外でも報じられた。
{{Main|[[水平社博物館前差別街宣事件]]}}


行動する保守系の団体が2013年3月に大阪市内で行った[[日韓国交断絶国民大行進]]というデモではコーラーが「街中で韓国・朝鮮人を見かけたら、石を投げつけ、朝鮮人の女は[[強姦|レイプ]]してもいいんですよ! 我々がやられてきたことです。朝鮮人をぶち殺しましょう! 」と叫んでいる。このことは日本では勿論、韓国国内でも報じられ、強い非難の声が上がった<ref>[http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0403&f=national_0403_012.shtml 日本の嫌韓デモで衝撃発言「韓国人女性を強姦してもいい」=韓国] 2013/04/03(水) サーチナ</ref>。
また、在特会は[[在日中国人]]に対するヘイトスピーチを行っているとも指摘される。2012年10月には在特会らは「史上最大の反中デモ」と称して[[池袋]]でデモを行っているが、参加者の中には「[[ゴキブリ]]シナ人を日本から叩き出せ」などと叫ぶ者もいた。[[デモ活動|デモ]]終了後に桜井誠らは「パトロール」と称して、[[華僑]]の商店の多い一角に向かって、そこで「日本が[[戦前]][[大陸]]に行ったことが侵略なら、てめえらが日本にいること自体が侵略なんだよ!」と叫んでいる<ref>[http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?tag=%E5%9C%A8%E7%89%B9%E4%BC%9A 在日中国人に罵詈雑言を展開するも取材は拒否――在特会が池袋で「反中デモ」2012年10月17日]</ref>。


なお、在特会のヘイトスピーチの対象は在日韓国人だけでなく、[[部落問題|被差別部落]]出身者にも向けられている。在特会副会長の男が2011年に[[奈良県]][[御所市]]の[[全国水平社|水平社]]博物館の前で街宣と称して「この目の前にある[[穢多]]博物館ですか、[[非人]]博物館ですか、水平社博物館ですか、なんかねえ、よく分からんこの博物館」「いい加減出てきたらどうだ、穢多ども」と叫んだ際には、水平社博物館側が後日に[[民事訴訟]]を起こして、在特会側が[[敗訴]]している。[[裁判所]]は副会長の男に対して、水平社博物館に[[損害賠償|慰謝料]]150万円を支払うよう命じた<ref>奈良地方裁判所平成23年(ワ)第686号 平成24年6月25日民事部判決・判決文本文</ref>。
2009年4月には、[[埼玉県]][[蕨市]]では、在特会が[[フィリピン]]出身の[[不法入国]]者の家族に対して、その家族の娘が通う中学校前でデモ行進を行い「[[犯罪]][[フィリピン人]]○○一家を叩き出せ」などと集団でシュプレヒコールをあげている。これに関してはデモの主催者側は「差別」ではないと主張するが、異論の声もある<ref>[http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200904120944090 「在特会」ら、ノリコさんが通う中学前でデモ行進 「カルデロン一家を日本から追放しろ!」2009年04月12日]日刊ベリタ</ref>。


また、在特会は[[在日中国人]]に対するヘイトスピーチを行っているとも指摘される。2012年10月には在特会らは「史上最大の反中デモ」と称して[[池袋]]でデモを行っているが、参加者の中には「[[ゴキブリ]]シナ人を日本から叩き出せ」などと叫ぶ者もいた。[[デモ活動|デモ]]終了後に桜井誠らは「パトロール」と称して、[[華僑]]の商店の多い一角に向かって、そこで「日本が[[戦前]][[大陸]]に行ったことが侵略なら、てめえらが日本にいること自体が侵略なんだよ!」と叫んでいる<ref>[http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?tag=%E5%9C%A8%E7%89%B9%E4%BC%9A 在日中国人に罵詈雑言を展開するも取材は拒否――在特会が池袋で「反中デモ」2012年10月17日]</ref>。
[[公安調査庁]]は『[[内外情勢の回顧と展望]](平成23年1月)』において、「排外的主張を掲げ執拗な糾弾活動を展開する右派系グループ」とするコラムにおいてこれらの動きを紹介している<ref>{{PDFlink|[http://www.moj.go.jp/content/000060342.pdf 『内外情勢の回顧と展望(平成23年1月)』]}}[[公安調査庁]]</ref>。


[[公安調査庁]]は『[[内外情勢の回顧と展望]](平成23年1月)』において、「排外的主張を掲げ執拗な糾弾活動を展開する[[右派系市民グループ|右派系グループ]]」とするコラムにおいてこれらの動きを紹介している<ref>{{PDFlink|[http://www.moj.go.jp/content/000060342.pdf 『内外情勢の回顧と展望(平成23年1月)』]}}[[公安調査庁]]</ref>。
{{Main|[[行動する保守]]|[[在日特権を許さない市民の会]]|[[チーム関西]]|[[神鷲皇國會]]}}
<!-- (池田香代子氏の発言を「ヘイトスピーチ」と称しているのは「J-CASTニュース」中の出所不明な人間による1ツイートでしかなく、「物議を醸した」というレベルではないので一旦コメントアウトします。復活の要件として「信頼できる情報源」の明示をお願いします) ==== 池田香代子 ====
[[2014年]]4月、ドイツ文学翻訳家で[[平和運動家]]の[[池田香代子]]が、[[Twitter]]に「あ べ し ね」と[[安倍晋三]]首相を批判するツイートを投稿した。フォロワーなどからの批判を受けてこのツイートは削除されたが、後日、「おはようございます。反省してます。これからは[[甘党]]を目指し、[[Sugar_(日本のコーラスグループ)|シュガー]]の『[[ウエディング・ベル|ウエディングベル]]』で行きます。♪くたばっちまえ アーベ」と、再び安倍首相を揶揄するツイートを投稿。[[仮名_(文字)|仮名]]表記でこそあるが、公然と「死ね」「くたばれ」と発言したことが単なる[[権力]]批判を越えた憎悪表現、すなわちヘイトスピーチにあたるのではないかと物議を醸した<ref>[http://www.j-cast.com/2014/04/18202606.html?p=all 「ソフィーの世界」翻訳者が「あ べ し ね」ツイートで炎上 反省口にした後も「くたばっちまえ アーベ」] [[J-CASTニュース]] 2014年4月18日</ref>。{{要出典}} -->


=== その他の韓国人、中国人に対するヘイトスピーチ ===
==== ヘイトスピーチ運動に対する在特会側の反応 ====
在特会は、2013年4月26日に「[[日本の警察|警察]]に許可を得たデモであるにもかかわらず、デモに抗議する者たちから妨害を受けた」とされることや、妨害者に自らが「ヘイト」「レイシスト」と批判されたことが、[[人権蹂躙|人権侵害]]に当たるなどと主張し、[[日本弁護士連合会]]に[[人権]]救済を申し立てた<ref>[http://www.asahi.com/national/update/0426/TKY201304260220.html?ref=recc 在特会、人権救済申し立て「デモで抗議側から妨害受け」] 2013年4月28日閲覧</ref>。
世界遺産[[吉水神社]]が、ブログ等を通して宮司が「中国人、韓国人は日本に来るな!」「世界から嫌われるシナ人の下品さ!」「韓国人は整形しても心の汚さは変わらない!」といった主張を行っており、ヘイトスピーチであるとの批判がある<ref>「世界遺産・吉水神社の宮司がブログでヘイトスピーチ? 『中国人、韓国人は日本に来るな!』...ネットで話題に」 J-CASTニュース 2014年10月4日</ref>。
[[国際連合|国連]]人権委は[[ジュネーブ]]で2014年7月15日、16日に対日審査が行われ、日本社会で韓国人や[[中国人]]への人種差別的な言動が広がっていることについて現行の刑法や民法で防ぐのは難しいとの認識を示し、法的整備を求め2014年7月24日差別をあおるすべての宣伝活動の禁止を勧告した<ref>2014年7月25日中日新聞朝刊3面</ref>。


=== 日系ブラジル人について ===
90年代には[[右翼団体]]の[[街宣車]]が[[日系ブラジル人]]が多く住む[[団地]]に押し掛けたり<ref>[[SAPIO]]2014年6月号</ref>、1997年には[[愛知県]][[小牧市]]で日系ブラジル人の少年が[[日本人]]少年グループから集団[[私刑|リンチ]]をされて、殺害された事件(エルクラノ事件)<ref>[[西野瑠美子]]『エルクラノはなぜ殺されたのか』 明石書店、[[1999年]]、ISBN 9784750311647</ref>が確認されている。
また、[[行動する保守]]の活動家である[[有門大輔]]は、日系ブラジル人に対して「今のうちに極力叩き出さなければならない」と表明している<ref>[http://blog.livedoor.jp/samuraiari/archives/51948034.html 在日ブラジル人急増の脅威 2014年07月19日]有門大輔公式ブログ</ref>。
=== アイヌ民族について ===
=== アイヌ民族について ===
[[北海道]]の[[アイヌ]]民族に属する5名が原告、アイヌ民族に関する資料を出版した出版社を[[被告]]とした判例がある。出版社が発行した資料にはアイヌ民族に対する差別表現や個人の病歴などの[[医療]]情報が実名とともに掲載されていた。[[原告]]らは民族的マイノリティとしての人格と名誉、名誉感情を侵害されたとして、原告らが名誉棄損に基づく謝罪と[[慰謝料]]を請求した事例である([[アイヌ差別図書事件]])。
[[北海道]]の[[アイヌ]]民族に属する5名が原告、アイヌ民族に関する資料を出版した出版社を[[被告]]とした判例がある。出版社が発行した資料にはアイヌ民族に対する差別表現や個人の病歴などの[[医療]]情報が実名とともに掲載されていた。[[原告]]らは民族的マイノリティとしての人格と名誉、名誉感情を侵害されたとして、原告らが名誉棄損に基づく謝罪と[[損害賠償|慰謝料]]を請求した事例である([[アイヌ差別図書事件]])。


当事件は「民族的少数者としての[[人格権]]」は不法行為に基づく[[損害賠償]]請求等による法的救済の対象となるかが争われた事件である。[[札幌地裁]]は「本件各図書の編集、出版、発行によって、作成当時のみならず現在に至るまでのアイヌ民族全体に対する差別表現がされたとみる余地があるとしても、その対象は、[[原告]]ら個人でなく、アイヌ民族全体である」「原告らは、これらの直接の[[被害者]]に対する権利侵害があったことによって、人格権の侵害を受けたというものであって、民族的少数者としての人格権の侵害は間接的被害にすぎない」として、原告らが主張する「民族的少数者としての人格権」を否定した<ref>師岡康子「ヘイト・スピーチとは何か」p177~p178</ref>
当事件は「民族的少数者としての[[人格権]]」は不法行為に基づく[[損害賠償]]請求等による法的救済の対象となるかが争われた事件である。[[札幌地方裁判所|札幌地裁]]は「本件各図書の編集、出版、発行によって、作成当時のみならず現在に至るまでのアイヌ民族全体に対する差別表現がされたとみる余地があるとしても、その対象は、[[原告]]ら個人でなく、アイヌ民族全体である」「原告らは、これらの直接の[[被害者]]に対する権利侵害があったことによって、人格権の侵害を受けたというものであって、民族的少数者としての人格権の侵害は間接的被害にすぎない」として、原告らが主張する「民族的少数者としての人格権」を否定した{{Sfn|師岡|2013|p=177-178}}


=== 沖縄在日米軍に係るヘイトスピーチ、ヘイトクライム ===
=== 長崎県対馬島について ===
米軍の軍用機[[V-22 (航空機)|オスプレイ]]の[[沖縄県]]の米軍基地配備に反対する者らに向けられたヘイトスピーチが行われているという指摘もある。[[那覇市|那覇市長]]の[[翁長雄志]]は、2013年10月の[[記者会見]]の中で、[[東京]]で行われた反オスプレイデモに自身も参加した際に沿道から「琉球人出ていけ。[[中華人民共和国|中国]]の[[スパイ]]。オナガ、出て来い」という暴言、ヘイトスピーチを自分に向けられたと語っている<ref>[http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-213616-storytopic-1.html 「現状憂うところある」 ヘイトスピーチで那覇市長 2013年10月10日] [[琉球新報]]</ref>。
[[長崎県]]の[[対馬]]では、[[韓国人]]が神社の絵馬に「[[地震]]起きて死ね」「[[津波]]がまた来ますように」「日本征伐」といった落書きをする事例が後を絶たない<ref>[http://www.j-cast.com/2014/05/23205613.html 対馬の神社で奉納絵馬に韓国人が反日落書き 「地震起きて死ね」「対馬まで韓国領土」「慰安婦に謝罪せよ」…] [[J-CASTニュース]] 2014年5月23日</ref>。


[[無防備地域宣言]]沖縄ネットワークの事務局長、西岡信之は、オスプレイ東京行動に対する行動する保守の「中国、韓国のスパイ、反日左翼を東京湾に沈めろ!」「沖縄土人ではなく沖縄を守れ!」などの言論による攻撃を「沖縄における憎悪犯罪」として挙げている{{Sfn|前田|2014|pp=107-118}}。
=== 沖縄県について ===
[[沖縄県]]では、[[在日米軍]]基地に反対する団体の一部構成員が、[[アメリカ軍]]兵士やその家族、子供に対して「[[ファック|ファック・ユー!]](「くたばれ」の意。元々は「お前を[[強姦]]してやるぞ」という意。)や、「[[ヤンキー・ゴー・ホーム]]!(1952年の[[流行語]])」などの罵声を浴びせる活動を続けているとされる。これは米軍兵だけではなくその家族に対しても向けられているとされ、この行動に対して[[沖縄県警察|沖縄の警察]]は対処していないという<ref name="zakzak20131119">{{cite news |author=[[大高未貴]]|title=【暗躍列島を暴く】沖縄の自称・市民活動家たちが展開する常軌を逸したヘイトスピーチ |newspaper=[[夕刊フジ]] |date=2013-11-19|url=http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20131119/dms1311190734004-n1.htm |accessdate=2013-11-22}}</ref><ref name="bengo4com20130523">{{cite news |title=敵意をむき出しにした「ヘイトスピーチ」 新たな法律で規制すべきか?|date=2013-05-23|url=http://www.bengo4.com/topics/404/ |accessdate=2013-12-22}}</ref>。この件に関して、[[ジャーナリスト]]の[[大高未貴]]は、[[反韓デモ]]が盛んになるにつれて「ヘイトスピーチ」という言葉はマスコミにより盛んに使用されるようになった(2013年の[[新語・流行語大賞]]でトップテンになる<ref>[http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2013/12/03/0200000000AJP20131203001400882.HTML 嫌韓デモの「ヘイトスピーチ」日本の流行語トップ10に]-[[聯合ニュース]]2013年12月03日閲覧 </ref>)が、その一方、それ以前からあった沖縄の米軍兵士やその家族・子供に対するヘイトスピーチやヘイトクライムについては、そういったマスコミが取り上げることはないと、その偏向ぶりを指摘している<ref name="zakzak20131119"/>。在沖縄海兵隊バトラー基地の政務外交部の次長は大高の取材に対し、基地のゲートを通過する車両に向けヘイトスピーチを繰り返す抗議団体の実情を見せた上で「われわれは兵士ですから耐えられます。しかし、家族はそうではありません。勤務地更新のとき、妻や子供たちに『もう日本は嫌だ』とせがまれる兵士が増え、沖縄での更新を希望する兵士は激減しています」と述べた<ref name="zakzak20131119"/>。


一方で、[[沖縄県]]では市民活動家を自称する者によって、[[在日米軍]]基地に反対する団体の一部構成員が、[[アメリカ軍]]兵士やその家族、子供に対して「[[ファック|ファック・ユー!]](「くたばれ」の意。元々は「お前を[[強姦]]してやるぞ」という意。)や、「[[反米|ヤンキー・ゴー・ホーム]]!(1952年の[[流行語]])」などの罵声を浴びせるヘイトスピーチが続いているとされる。ヘイトスピーチは米軍兵だけではなくその家族に対しても向けられているとされ、この様子を評して夕刊フジでは常軌を逸しているとしている。この事態に対して[[沖縄県警察|沖縄の警察]]は対処していないという。<ref name="zakzak20131119">{{cite news |author=[[大高未貴]]|title=【暗躍列島を暴く】沖縄の自称・市民活動家たちが展開する常軌を逸したヘイトスピーチ |newspaper=[[夕刊フジ]] |date=2013-11-19|url=http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20131119/dms1311190734004-n1.htm |accessdate=2013-11-22}}</ref><ref name="bengo4com20130523">{{cite news |title=敵意をむき出しにした「ヘイトスピーチ」 新たな法律で規制すべきか?|date=2013-05-23|url=http://www.bengo4.com/topics/404/ |accessdate=2013-12-22}}</ref>。この件に関して、[[ジャーナリスト]]の[[大高未貴]]は、[[反韓デモ]]が盛んになるにつれて「ヘイトスピーチ」という言葉はマスコミにより盛んに使用されるようになったが、その一方、それ以前からあった沖縄の米軍兵士やその家族・子供に対するヘイトスピーチやヘイトクライムについては、そういったマスコミが取り上げることはないと、その偏向ぶりを指摘している<ref name="zakzak20131119"/>。在沖縄海兵隊バトラー基地の政務外交部の次長は大高の取材に対し、基地のゲートを通過する車両に向けヘイトスピーチを繰り返す抗議団体の実情を見せた上で「われわれは兵士ですから耐えられます。しかし、家族はそうではありません。勤務地更新のとき、妻や子供たちに『もう日本は嫌だ』とせがまれる兵士が増え、沖縄での更新を希望する兵士は激減しています」と述べた<ref name="zakzak20131119"/>。
一方、米軍の軍用機[[オスプレイ]]の[[沖縄県]]の米軍基地配備に反対する者らに向けられたヘイトスピーチが行われているという指摘もある。[[那覇市|那覇市長]]の[[翁長雄志]]は、2013年10月の[[記者会見]]の中で、[[東京]]で行われた反オスプレイデモに自身も参加した際に沿道から「琉球人出ていけ。[[中華人民共和国|中国]]の[[スパイ]]。オナガ、出て来い」という暴言、ヘイトスピーチを自分に向けられたと語っている<ref>[http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-213616-storytopic-1.html 「現状憂うところある」 ヘイトスピーチで那覇市長 2013年10月10日 ]琉球新報</ref>。


在沖縄米軍海兵隊のロバート・エルドリッジ政務外交部次長は、[[普天間飛行場]]周辺で行われている辺野古移設反対運動はヘイトスピーチであるとの認識を示している。エルドリッジはインターネット番組「[[日本文化チャンネル桜|チャンネル桜]]」に出演。反対運動について「県民、日本国民を代表しているとは思っていないので安心してください」と述べた上で、「ご存じのように普天間周辺でいろいろなヘイトスピーチをされている方がいる」と指摘。反対運動を批判した。[[琉球新報]]はこれを「抗議行動は「ヘイトスピーチ」 海兵隊幹部、また暴言」という見出しで報じた<ref>[http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-239002-storytopic-271.html 抗議行動は「ヘイトスピーチ」 海兵隊幹部、また暴言] 2015年2月17日 [[琉球新報]]</ref>。
=== マスメディアとヘイトスピーチ ===
2010年代以降、[[嫌韓]]的な指向を持つ読者を取り込むべく、[[反日]]的な[[大韓民国|韓国]]の姿を強く批判・非難するような書籍が相次いで書店に並ぶようになった。これらの書籍は「嫌韓本」と呼ばれており、元[[時事通信]][[ソウル]]特派員の[[室谷克実]]が書いた『呆韓論』は発売2か月で20万部を超えるベストセラーになり、韓国人歯科医師[[シンシアリー]]が書いた『韓国人による恥韓論』は10万部を超えた<ref name=litera/>。雑誌も「嫌韓」記事を掲載すると、売り上げが2割アップするという話もある<ref name=litera/>。


==== 沖縄米軍基地反対派によるヘイトクライム ====
このような動きに対して[[衆議院議員]]の[[山内康一]]([[みんなの党]])は「不健全で[[排外主義|排外]]的な[[ナショナリズム]]の現れ」として、強く非難している<ref>[http://blogos.com/article/88679/ 嫌韓・反韓本への対抗 2014年06月18日]BLOGOS</ref>。
「テキサス親父」の通称で知られる米国人[[トニー・マラーノ]]も[[普天間飛行場]]や辺野古周辺を自ら取材している。「そこには60~70代とみられる数人の左翼活動家が『[[オスプレイ]]配備反対』というパネルを首からブラ下げて、赤いメガホンで大声で叫んでいた。近づくと、手も触れていないのに、『助けてください』『暴力を受けています』などと事実無根の被害を訴え始めた。表向き、彼らは『平和』や『人権』を主張していたが、まったく対話も会話もできない連中だった」「えたいの知れない死体写真を車のガラスに押し付ける者もいるという」「これは完全な『ヘイトスピーチ』だ。いや、それ以上の『ヘイトクライム』といったレベル」であるという。前述のエルドリッジ政務外交部次長が一部のメディアからの批判に晒されていることにも触れ、事実を指摘したエルドリッジを批判するのはおかしいと主張している<ref>[http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150227/dms1502271140009-n1.htm 【痛快!テキサス親父】沖縄の左翼活動家のヘイトスピーチ 米兵家族への攻撃は犯罪レベル] 2015年2月27日 [[夕刊フジ]]</ref>。


[[2015年]][[3月27日]]、[[沖縄県]][[読谷村]]で公園で遊んでいた6歳のアメリカ人と日本人のハーフの女児がマスクとサングラスをした5人の男に押し倒され、腹部を踏みつけられるなどの暴行を受けた。男たちは「なんでこんなところにアメリカ人がおる?」と凄んだという。沖縄教育オンブズマン協会会長は「米軍基地に対する怒りのはけ口がハーフの女の子に向けられたのかも知れない。平和運動の名のもとに事実上のヘイトスピーチが横行している実態がある。」と語っている<ref>2015年4月3日 [[八重山日報]]「背景に反基地感情 ハーフ女児押し倒す」</ref>。
一部の出版業界の関係者は2013年3月に「[[ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会]]」(出版社の編集・営業、フリーの編集者、書店員など約20人)を設立したが、「ヘイト」かどうかの線引きに難しさも感じていると言う<ref>[http://www.asahi.com/articles/ASG506GZRG50UCVL00C.html?iref=comtop_6_04 これでいいのか「嫌中憎韓」ブームの出版界に疑問の声 2014年6月18日]朝日新聞</ref><ref name=mindan/>。また[[河出書房新社]]は[[北原みのり]]、[[朴順梨]]、[[雨宮処凛]]、[[野間易通]]などの協力をもとに、2014年5月に「今、この国を考える ―『嫌』でもなく『呆』でもなく―」という選書フェアを開催して、「近隣諸国をあげつらうばかり」の出版界の流れに対抗していくという<ref>[http://www.magazine9.jp/article/biboroku/12676/ 出版界のヘイト傾向に抗する 河出書房新社の選書フェア 2014年5月21日]マガジン9条</ref>。[[民団新聞]]によれば、「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」は、[[河出書房新社]]の選書フェアと呼応しつつ、[[日本出版労働組合連合会]]と共闘している<ref name=mindan>民団新聞2014年8月15日 製造者責任を自問…「反ヘイト出版会」立ち上げ</ref>。


=== メディアとヘイトスピーチ ===
[[保守]]系の言論人で[[産経新聞]]の論説委員である[[黒田勝弘]]は「韓国では以前から『日本の失敗は韓国の喜び』だった。これがいまや『韓国の失敗は日本の喜び』になったようだ。私はそういう風景をユーモアで『日本の韓国化』と言うのだが、このような日本の言論の低質化は見るに耐えない」とコメントしている<ref name=litera>[http://lite-ra.com/2014/07/post-219.html 「嫌韓は日本の韓国化」産経の保守派論説委員が嫌韓ブームを批判 2014.07.10]LITERA</ref>。また、[[古谷経衡]]は「最初は読者も真面目に驚いていたのが、やがてネタは消費しつくされてしまうし、話自体も検証の仕様もないもの」とコメントしている<ref>[http://www.j-cast.com/2014/08/02212002.html 「嫌韓」の人は日本を過小評価 逆に韓国をあまりに肥大視している 評論家・古谷経衡さんに聞く 2014/8/ 2 17:30]J-CASTニュース</ref>。
[[2008年]]には[[毎日新聞社]]の英語版メディアが、[[日本人]]の文化について、[[毎日デイリーニューズWaiWai問題|低俗及び誇張や虚構に基づく「日本人差別的」な配信を行っていたこと]]が発覚している。


戦後70年に際して予定される首相談話に関連して、[[東京新聞]]、[[朝日新聞]]、[[毎日新聞]]各紙は、「侵略の定義は定まっていない」と国会で答弁した安倍首相を牽制する社説を掲載した。阿比留瑠比はこれらを取り上げ、安倍首相と同趣旨の発言が過去に社民党の[[村山富市]]首相(当時)や民主党の[[玄葉光一郎]]外相(当時)等によってもなされているにもかかわらず、三紙が安倍首相だけを執拗に攻撃するのは「偏見や無知に基づく不公正で不適切な見解」であると批判し、「特定個人を標的にした悪意ある[[ヘイトスピーチ]](憎悪表現)だといわれても仕方あるまい」と結んでいる<ref>{{cite news |title=これではメディアのヘイトスピーチだ…『東京』『朝日』『毎日』偏見・無知に基づく不公正・不適切な見解|newspaper=[[産経新聞]] |date=2015-1-29 |url=http://www.sankei.com/politics/news/150129/plt1501290005-n1.html |accessdate=2015-1-29 }}</ref>。
一方、産経新聞の[[阿比留瑠比]]は嫌韓本について、日本社会の右傾化や排外主義の高まりだと戒める向きがあるが、それは違い、むしろ韓国に対する関心と認識が深まったがゆえのものであり、嫌韓本が売れる理由は韓国の反日の正体を知り、適切に付き合い、適度に距離を置くためのヒントが提供されているからではないか、としている<ref>「知れば知るほど…「嫌韓本」に学ぶ韓国対応法」産経新聞 2014年4月10日</ref>。


[[朝日新聞]]3月16日、[[毎日新聞]]3月18日夕刊、[[東京新聞]]3月29日でヘイトスピーチの語と共に西欧では犯罪であることを報道した{{Sfn|前田|2013|pp=17-18}}。
2014年9月には、[[桜井誠 (活動家)|桜井誠]]の『大嫌韓時代』が発売されたが、これを[[書泉|書泉グランデ]]が「隣国が嫌いな方、なぜ嫌われているのか気になる方や、[[植民地]]支配、[[戦勝国]]気取り、[[領土問題]]、反日、それらについて疑問をお持ちの方にオススメです」と宣伝。これに対し「[[対レイシスト行動集団]](代表:[[野間易通]])らが、「ヘイトで儲ける書泉グランデ」などと主張して抗議活動を展開し、不買運動をtwitter上で呼びかけた<ref>[https://twitter.com/cracjpn/status/515368080461930496 [BOYCOTT SHOSEN] ヘイト書店での買い物をやめよう]2014年9月24日「C.R.A.C.」twitter</ref>。これを受けて書泉グランデは「特定の主張を支持するかのような表現があったことは(中略)反省している」と謝罪した(販売は継続)<ref>[http://megalodon.jp/2014-1005-0337-01/news.livedoor.com/article/detail/9298489/ 書泉グランデ公式Twitterが嫌韓本をPRし炎上 公式サイトで謝罪へ]livedoorニュース 2014年9月27日</ref>。この出来事に対し、[[共産党]]擁護に特化した書店や逆に[[国粋主義]]に特化した書店も実際に存在し営業しており、民間企業(人)が特定の思想を擁護したとしても何の問題もなく、書泉グランデが謝罪する必要はなかったとする意見や<ref>[http://megalodon.jp/2014-1005-0405-10/blogos.com/article/95366/ 書泉グランデのツイートは特定の主張を支持していたのか]2014年09月28日 BROGOS</ref>、書泉グランデは、[[革マル派]]系の[[こぶし書房]]が出版している本の「記念フェア」を開催しておススメしているが、それに対立する勢力から抗議するという話は聞かず、自身の気に入らない表現に対して、それをおススメしている流通サイドに圧力をかけて潰していくという手法は、「[[表現の自由]]」に関わる由々しき問題であり、これを許せば「泥試合」になるだけで、もはや混迷の中で「反ヘイトスピーチ」を唱える人々はミイラ取りがミイラとなっている状態であるとの批判の声も出た<ref>[http://megalodon.jp/2014-1005-0422-02/otapol.jp/2014/10/post-1676.html?utm_source=nikkan&utm_medium=tab&utm_campaign=ctr 書泉グランデの騒動から見える、新たな「表現の自由」をめぐる問題]2014年10月1日 おたぽる</ref>。こうした騒動の中「大嫌韓時代」は発売後一定期間、アマゾンの本ランキングで1位を獲得した<ref>amaran[http://www.rankbank.net/amaran/history/?date=14100503&cat=book&asin=4792605024]</ref><ref>2014年10月01日 池田信夫 blog「本書は在特会の会長の本だが、ここ5日ほど、ずっとアマゾンのベストセラーのトップだ」[http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51913758.html]</ref>。


[[産経新聞]]は[[2015年]][[2月11日]]朝刊7面の[[曽野綾子]]の連載コラム欄で「労働力不足と移民「適度な距離」保ち受け入れを」と題し「[[南アフリカ共和国]]の実情を知って以来、私は、居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった。」とする記事を掲載<ref>[[産経新聞]]2015年2月11日朝刊7面</ref>、「[[ロイター]]」や「[[ウォール・ストリート・ジャーナル]]」が批判的に報じ、[[アフリカ日本協議会]]や南アフリカのモハウ・ペコ駐日大使が抗議文を送るなど、非難が集まった<ref>{{Cite web|url=http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/archives/sonoayako-sankei20150211.html |title=産経新聞 曽野綾子さんのコラムへの抗議文 |author=アフリカ日本協議会|date=2015-02-13|accessdate=2015-04}}</ref><ref name=huffpost20150203>{{Cite news|url=http://www.huffingtonpost.jp/2015/02/13/sono-ayako-column_n_6677760.html|title=曽野綾子氏コラムに「アパルトヘイトを賛美し、首相に恥をかかせる」海外メディア報じる|date=2015-02-13}}</ref><ref name=sankei20150215/><ref name=WSJ20150213/>。産経新聞執行役員東京編集局長の小林毅は「当該記事は曽野綾子氏の常設コラムで、曽野氏ご本人の意見として掲載しました。コラムについてさまざまなご意見があるのは当然のことと考えております。産経新聞は、一貫してアパルトヘイトはもとより、人種差別などあらゆる差別は許されるものではないとの考えです」とコメントした<ref name=sankei20150215>{{Cite news|url=http://www.sankei.com/life/news/150215/lif1502150017-n1.html|title=曽野氏コラムで南ア駐日大使が本紙に抗議|newspaper=[[産経新聞]]|date=2015-02-14}}</ref>。曽野がブログで「もし記事に誤りがあるなら、私はそれを正します。私も人間ですから、過ちを犯します。しかしこの記事について、誤りがあるとは私は思いません」と書いたことは[[ウォール・ストリート・ジャーナル]]で報じられた<ref name=huffpost20150203 /><ref name=WSJ20150213>{{Cite news|url=http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2015/02/13/author-causes-row-with-remarks-on-immigration-segregation/ |title=Author Causes Row With Remarks on Immigration, Segregation |newspaper=THE WALL STREET JOURNAL|date=2015-02-13|accessdate=2015-04}}</ref><ref>{{Cite news|http://www.reuters.com/article/2015/02/13/us-japan-apartheid-idUSKBN0LH0M420150213 |title=Japan PM ex-adviser praises apartheid in embarrassment for Abe|newspaper=Reuter|date=2015-02-13}}</ref>。曽野は『[[新潮45]]』2015年4月号の連載コラムで「第四十七回 『たかが』の精神」の題で、たかが一作家の自分の考えに対して「肩書一つ正確には書けなかった新聞や通信社が、こうやってヘイト・スピーチを繰り返し、そこに覆面のツイッターが群衆として加わって圧力をかけ、どれだけの人数か知らないが、無記名という卑怯さを利用して、自分たちは人道主義者、曽野綾子は人種差別主義者、というレッテルを貼ることに無駄な時間を費やしている、その仕組みを今度初めて見せてもらって大変ためになった。私は覆面でものを言う人とは無関係でいるくらいの自由はあるだろう。」と綴った<ref name=shincho201504>『[[新潮45]]』2015年4月号 pp.12-26</ref>。
なお、[[2008年]]には[[毎日新聞社]]の英語版メディアが、[[日本人]]の文化について、低俗及び誇張や虚構に基づく「日本人差別的」な配信を行っていたことが発覚している。こちらについては「[[毎日デイリーニューズWaiWai問題]]」「[[ライアン・コネル]]」を参照せよ。


[[大江健三郎]]の言説は[[産経新聞]]により批判されている。特集記事で拓殖大客員研究員の岩田温が在特会がヘイトなら日本人を醜いとした大江の演説も「紛れもなくヘイトスピーチ」でダブルスタンダートであるとし<ref name=sankei20141202 />、2015年の[[憲法記念日]]に[[横浜]]で開かれた「護憲集会」で演壇に上った際、批判の矛先を向けた[[安倍晋三]]を「安倍」と呼び捨てにしたこと対し、編集長の乾正人は「どんなに相手の考え方や性格が嫌いでも、一国の首相を呼び捨てで非難するのは、大江さんが大嫌いなはずの「ヘイトスピーチ」そのものです。」と評した<ref>[http://www.sankei.com/column/news/150508/clm1505080006-n1.html 【編集日誌】大江健三郎氏の“熱弁”は…] [[産経新聞]] 2015年5月8日</ref>。
=== 反ヘイトスピーチを掲げ罵声や暴力を以って対抗する運動 ===
==== レイシストをしばき隊 ====
[[在特会]]などの[[行動する保守]]のデモが表出してきたことに対し、それらをヘイトスピーチとして位置付け、対抗しようとする行動団体が活発化している。2013年2月に結成された[[野間易通]]が主宰する「[[レイシストをしばき隊]](現・対レイシスト行動集団)」は「死ね」等の罵声のみならず掴み掛かったりなどの暴力を用いて保守系デモへの過激な対抗運動を行っている。汚い罵倒の応酬ではなく他の手段を取るべきとの指摘に対し、野間は差別的表現に対しては上品で冷静な議論ではなく怒りを持って叫ぶのが正常であるとしてこのような運動の正当性を主張している<ref name="asahi20130809">[http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201308090479.html (インタビュー)ヘイトスピーチをたたく 「レイシストをしばき隊」野間易通さん] 朝日新聞 2013年8月10日朝刊</ref>。
{{Main|[[対レイシスト行動集団]]}}


==== 男組 ====
==== 慰安婦問題とヘイトスピーチ ====
元東京大学教授の[[酒井信彦]]は、「[[朝日新聞]]では最近、『[[ヘイトスピーチ]](憎悪表現)』『[[排外主義]]』といった言葉が頻繁に使われている。私の印象では、同紙が[[慰安婦]]問題の大誤報を認めたあたりから目立ち始めた気がする」と指摘し、「ヘイトスピーチも問題だが、一連のヘイトスピーチ批判にも、自分たちと異なる意見に対して、レッテルを貼って封殺しようとする危険性を感じている」と警戒をあらわにしている<ref name=fuji20150218>[http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150218/dms1502180830004-n1.htm 【朝日新聞研究】ヘイトスピーチと慰安婦報道 憎悪表現で損なわれた国益は大きい] 2015年2月18日 [[夕刊フジ]]</ref>(時期については[[#国連]]も参照のこと)。また、「韓国では日本に対するヘイトスピーチが、以前から盛大に行われている」ことを朝日新聞はほとんど報道していないと指摘した上で、「朝日新聞は、慰安婦問題の大誤報で、日本にとんでもない冤罪をなすりつけたのだから、これも明らかな日本と日本民族に対するヘイトスピーチである」と述べている<ref name=zakzak20141106>[http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20141106/dms1411061550005-n1.htm 【朝日新聞研究】朝日こそ「あべこべ」 慰安婦大誤報こそヘイトスピーチ] [[夕刊フジ]] 2014年11月6日</ref>。
{{Infobox 組織
| 名称 = 男組
| 画像 =
| 画像サイズ = 250px
| 画像説明 =
| 略称 =
| 設立 = [[2013年]]6月
| 廃止 =
| 種類 =
| 地位 =
| 目的 =
| 本部 = [[東京都]]
| 位置 = 反人種差別、暴力的手段による行動する保守の活動への妨害
| 貢献 =
| メンバー =
| 言語 = [[日本語]]
| リーダー(組長) = 高橋直輝
| 人物 = 高橋直輝、木本拓史ら
| 機関紙 =
| 設立者 =
| 関連組織 = [[対レイシスト行動集団]]、女組
| スタッフ =
| ボランティア =
| 予算 =
| ウェブサイト = [http://otokogumi.org/# 男組公式サイト]
| }}
'''男組'''(おとこぐみ)とは、{{要出典範囲|しばき隊より分派した|date=2014年10月}}[[高橋直輝]]主宰の政治運動団体である。「日本の反レイシズム運動のフロントに立つべく志を持つ男が結集した集団」と称し<ref>[http://otokogumi.org/# 男組とは? 男組公式サイト]</ref>、暴行・傷害などの[[犯罪]]を犯しながら「『男組はレイシストに合法的手段で「超圧力」をかけ続ける』という方針を取る」と公式サイトで主張している。


『朝日新聞』の慰安婦誤報問題に関連し、2015年1月26日、「(朝日新聞の報道により)誤った事実が国際社会に広まり、日本国民の人格権や名誉を著しく傷つけられた」として、自民党の[[長尾敬]]衆院議員や、上智大学の[[渡部昇一]]名誉教授(原告団長)、作曲家の[[すぎやまこういち]]らの著名人、一般市民ら約8700人が、[[朝日新聞]]社に1人当たり1万円の慰謝料と謝罪広告を求める訴訟を東京地裁に起こした。原告団の一人で拓殖大学の[[藤岡信勝]]客員教授は「日本や日本人全体が傷つけられ、侮辱され、道徳性を踏みにじられ、精神的苦痛を味わっている。海外でイジメられている子供もいる。裁判という手段を使って、朝日に対して、日本人全体への謝罪を要求したい」と述べた<ref>[http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150127/dms1501271525009-n1.htm 8700人が朝日に謝罪広告など求める 慰安婦報道で戦後最大級の集団訴訟] [[夕刊フジ]] 2015年1月27日</ref>。
肩書に「組長」「[[若頭]]」等の呼称を使用し、「'''超圧力'''」を標榜してしばき隊以上に暴力的な手段に訴える点に特徴がある。組旗として、黒字に白塗りの髑髏を浮き出させ、バックに[[韓国刀]]と[[日本刀]]をクロスさせた意匠の旗を掲げ<ref>[http://a0.img.mobypicture.com/5051e3e368237f9a01161d3bcb231abd_view.jpg 画像]</ref>隊列を組み、ときには刺青を顕示して周囲を威圧し、恐怖心で相手方の意志を消滅せしめるスタイルのデモを行う<ref name="otokogumi-top">男組公式ページ(http://otokogumi.org/) 「構成員一覧」に組長・若頭など肩書きとメンバーの名前。「活動履歴」には逮捕や刑事裁判のことも書かれている。</ref><ref>週刊金曜日 2013年9月27日号 見開きp10-11 右上に高橋他3人が上半身裸で刺青を誇示するポーズを取る写真。左上に注釈『入れ墨を入れた「男組」。「在特会は肉弾戦でぶっつぶす」』</ref>。野間は男組のような団体の[[暴力]]性が対抗運動には必要であるとし、運動により多くの暴力的団体が現れるべきと指摘している<ref>[http://otokogumi.org/wp/?p=44 男組Webへの感想] 男組 公式サイト アナウンスページ 2013-11-09</ref>。


2015年2月18日には、朝日報道によって「嫌がらせを受けるなど精神的苦痛を負った」などとして、在米邦人ら2000人が[[朝日新聞]]に慰謝料などを求める訴訟を東京地裁に起こした。米国で聞き取り調査を行った[[高橋史朗]]明星大学教授は記者会見で「いじめの具体例は私が聴いただけでも10件以上ある」と説明した。日本人子弟が学校で中国系の生徒から日本人であることを責められたり、韓国人の男子から顔につばを吐きかけられたりしているという<ref>[http://www.sankei.com/politics/news/150219/plt1502190042-n1.html 「強制連行プロパガンダ」の海外への影響を直視せよ 独立検証委報告書 第三者委との違いくっきり] [[産経新聞]] 2015年2月19日</ref>。
[[2013年]][[9月29日]]には、同月8日に新大久保で行われたデモ<ref>[http://calendar.zaitokukai.info/skantou/scheduler.cgi?mode=view&no=308 東京韓国学校無償化撤廃デモin新大久保]</ref>において在特会側のデモ参加者の顔を叩き首を絞めたとして、同組の「組長」高橋直輝と「本部長」木本拓史の2名が[[暴行罪]]で[[逮捕]]され、[[罰金]]20万円と罰金10万円の[[略式命令]]が下された<ref>[http://www.peeep.us/60e5d732 嫌韓デモに暴行容疑、対立グループの2人逮捕] サンスポ 2013-09-29</ref><ref>[http://www.peeep.us/6254354e 反ヘイトスピーチの男ら逮捕 デモ参加者暴行容疑]テレ朝news 2013-09-29</ref><ref>[http://www.peeep.us/54e059e3 排外デモ参加者に暴行=容疑で反対グループ男ら逮捕-警視庁]時事ドットコム 2013-09-29</ref><ref>[http://www.peeep.us/756a9bd0 在特会デモ:参加者に暴行の2容疑者逮捕 警視庁]毎日新聞 2013-09-29</ref><ref>[http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130929/crm13092913560003-n1.htm 在日排斥デモ参加者に暴行容疑 反対グループ男ら逮捕 警視庁公安部] [[産経新聞]]ニュース2013年9月29日</ref>。


==== 出版業界 ====
また11月18日には、前述の同組の2名が、11月1日に行われた「[[山本太郎]]抗議デモ」の際にデモ参加者の在特会関係者に執拗に付きまとい、殴るなどの暴行を振るったとして逮捕され<ref>[http://www.peeep.us/35e28e4d 在特会VS反在特会:山本議員抗議デモでトラブル3人逮捕] 毎日新聞 2013-11-18</ref><ref>[https://web.archive.org/web/20131118231005/http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00258064.html 山本太郎参院議員の辞職求める抗議行動の際に殴り合い 3人逮捕] FNNニュース 2013-11-18</ref><ref>[http://otokogumi.org/wp/?p=168 男組組長 高橋直輝、本部長 木本拓史の公判における弁護側弁論要旨] 男組 公式サイト アナウンスページ</ref><ref name="otokogumi-top"/>、[[傷害罪]]で[[懲役]]10ヶ月・[[執行猶予]]3年の[[判決 (日本法)|判決]]が下された<ref>[https://twitter.com/nippondanji8/status/437891082630602752 私どもの傷害事件について本日、東京地方裁判所において実刑10ヶ月、執行猶予3年の判決が下されました。]</ref>。
2010年代以降、[[嫌韓]]的な指向を持つ読者を取り込むべく、[[反日]]的な[[大韓民国|韓国]]の姿を強く批判・非難するような書籍が相次いで書店に並ぶようになった。これらの書籍は「[[嫌韓本]]」と呼ばれており、元[[時事通信社|時事通信]][[ソウル]]特派員の[[室谷克実]]が書いた『呆韓論』は発売2か月で20万部を超えるベストセラーになり、韓国人歯科医師[[シンシアリー]]が書いた『韓国人による恥韓論』は10万部を超えた<ref name=litera/>。雑誌も「嫌韓」記事を掲載すると、売り上げが2割アップするという話もある<ref name=litera/>。


一部の出版業界の関係者は2013年3月に「[[ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会]]」(出版社の編集・営業、フリーの編集者、書店員など約20人)を設立したが、「ヘイト」かどうかの線引きに難しさも感じていると言う<ref name=asahi20140618>[http://www.asahi.com/articles/ASG506GZRG50UCVL00C.html?iref=comtop_6_04 これでいいのか「嫌中憎韓」ブームの出版界に疑問の声 2014年6月18日]朝日新聞</ref><ref name=mindan/>。また[[河出書房新社]]は[[北原みのり]]、[[朴順梨]]、[[雨宮処凛]]、[[野間易通]]などの協力をもとに、2014年5月に「今、この国を考える ―『嫌』でもなく『呆』でもなく―」という選書フェアを開催して、「近隣諸国をあげつらうばかり」の出版界の流れに対抗していくという<ref>[http://www.magazine9.jp/article/biboroku/12676/ 出版界のヘイト傾向に抗する 河出書房新社の選書フェア 2014年5月21日]マガジン9条</ref>。[[民団新聞]]によれば、「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」は、[[河出書房新社]]の選書フェアと呼応しつつ、[[日本出版労働組合連合会]]と共闘している<ref name=mindan>民団新聞2014年8月15日 製造者責任を自問…「反ヘイト出版会」立ち上げ</ref>。関東大震災での朝鮮人虐殺をテーマにした『九月、東京の路上で』{{Sfn|加藤|2014}}は初版2200部が、発売2カ月で3刷となった<ref name=asahi20140618 />。
[[2014年]][[1月18日]]には、別の男組の1名が在特会のデモ参加者に[[自転車]]等で体当たりしたとして暴行容疑で逮捕された<ref>[http://megalodon.jp/2014-0415-2135-39/sankei.jp.msn.com/affairs/news/140118/crm14011821090009-n1.htm 在特会デモに突入、東大生を逮捕 暴行容疑で警視庁] [[産経新聞]] 2014年1月18日</ref>。2014年[[5月25日]]には男組のメンバー10名がJR[[西川口駅]]([[埼玉県]][[川口市]])の[[改札]]前で、在特会の移民受け入れ反対デモに参加しようとした在特会の会員1名を取り囲み、そのうち1名が在特会会員の顔面を殴って骨折させたとして、殴られた在特会会員とともに暴行容疑で逮捕された<ref>[http://mainichi.jp/select/news/20140527k0000m040057000c.html ヘイトスピーチ:埼玉でデモ もみ合いで2人に暴行容疑] 毎日新聞 2014年5月26日</ref><ref>[http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140526/crm14052619000026-n1.htm デモで2人逮捕 対立グループ同士がけんか 埼玉県警](産経新聞 2014年5月26日配信)</ref><ref>[http://otokogumi.org/wp/?p=232 男組公式サイト アンチレイシズムを共に闘う皆様へ(2014年5月28日 AT 1:49 PM)]</ref>。


[[産経新聞]]論説委員の[[黒田勝弘]]は「『韓国たたき』が流行っている。『韓国は売春大国であり、強姦天国』だとか『不良食品があふれる国』『トイレにいって手を洗わない男が多い』『課外地獄で子どもたちの自殺が急増』『サムソンも危ない』など、悪い点だけ指摘する本が次々にベストセラーになっている」一方、「僕は30年以上、韓国に住んでいますけれども、一般の人々は反日の感情は後退していますね。」と、韓国の反日の高まりを否定し「韓国では以前から『日本の失敗は韓国の喜び』だった。これがいまや『韓国の失敗は日本の喜び』になったようだ。私はそういう風景をユーモアで『日本の韓国化』と言うのだが、このような日本の言論の低質化は見るに耐えない」と述べた<ref name=litera>[http://lite-ra.com/2014/07/post-219.html 「嫌韓は日本の韓国化」産経の保守派論説委員が嫌韓ブームを批判 2014.07.10]LITERA</ref>。また、[[古谷経衡]]は「韓国は「反日」というのは僕も否定しないが、実際には憧れ・関心半分、嫌い半分の「半日」だと思う。」とコメント。「『日本は韓国・在日に乗っ取られている』と主張する彼らこそ、日本を過小評価する『反日』なのではないか」とした。「嫌韓本」はブームについて「最初は読者も真面目に驚いていたのが、やがてネタは消費しつくされてしまうし、話自体も検証の仕様もないもの」とコメントしている<ref>[http://www.j-cast.com/2014/08/02212002.html 「嫌韓」の人は日本を過小評価 逆に韓国をあまりに肥大視している 評論家・古谷経衡さんに聞く 2014/8/ 2 17:30]J-CASTニュース</ref>。
2014年7月16日、高橋、木本ら主要構成員8名が、[[大阪市]]内の駅構内で、デモに参加しようとしていた男性を集団で取り囲んで壁に押し付け、大声で恫喝するなど暴行や[[脅迫]]を加えたとし、[[暴力行為処罰法]]違反容疑で[[大阪府警察|大阪府警]][[警備部]]などに逮捕された。また、府警はメンバーの自宅などの関係先である[[大阪府]]、[[東京都]]、[[静岡県]]など7都府県10カ所を[[家宅捜索]]した<ref>[https://web.archive.org/web/20140716045823/http://webnews.asahi.co.jp/abc_1_001_20140716002.html 【逮捕】ヘイトスピーチ参加者を暴行容疑] 朝日放送 2014-07-16</ref><ref>[http://megalodon.jp/2014-0716-1646-26/headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140716-00000071-mai-soci <暴行容疑>嫌韓デモ反対団体8容疑者を逮捕 大阪府警] 毎日新聞 2014-07-16</ref><ref>[http://news.livedoor.com/article/detail/9049224/]</ref>。その後、4名が同罪で起訴され有罪となった<ref>[http://otokogumi.org/wp/?p=276 男組公式サイト 2014年7月25日 ]</ref><ref>[http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140731-00000141-san-soci ヘイトスピーチ、法規制に慎重論 「表現の自由」侵害懸念、海外で見直しも] 産経新聞 2014-07-31</ref>。逮捕された高橋と木本は3度目の逮捕であり、執行猶予期間中であった<ref>[http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140716/waf14071611500020-n1.htm 反ヘイト名乗る「男組」幹部ら8人逮捕 右派系男性への暴行容疑] 産経ニュース 2014年7月16日</ref>。


産経新聞の[[阿比留瑠比]]は嫌韓本について、日本社会の右傾化や排外主義の高まりだと戒める向きがあるが、それは違い、むしろ韓国に対する関心と認識が深まったがゆえのものであり、嫌韓本が売れる理由は韓国の反日の正体を知り、適切に付き合い、適度に距離を置くためのヒントが提供されているからではないか、としている<ref>「知れば知るほど…「嫌韓本」に学ぶ韓国対応法」産経新聞 2014年4月10日</ref>。
==== 友だち守る団 ====
2013年5月、[[戦争]]中の[[慰安婦]]をめぐる[[橋下徹|橋下]][[大阪市長|市長]]の発言を支持する団体が街宣活動をしていたところに、対抗運動団体「友だち守る団」がヘイトスピーチだと言いがかりをつけてメンバー20人で襲い掛かり、そのうち1人が[[警備]]にあたっていた[[日本の警察官|警察官]]ともみ合いになり、逮捕される。<ref>[http://megalodon.jp/2013-0527-0723-20/www3.nhk.or.jp/kansai-news/20130526/4852851.html 慰安婦問題街宣で小競り合い]NHK ONLINE</ref>それを受けて同月に団体は解散。


=== その他 ===
2014年6月には「凛七星」を名乗る元代表の[[韓国人]]の男性が大阪市内で集会をしていた在特会メンバーに「この世におれんようになるぞ」と脅した<ref>[https://web.archive.org/web/20140605112201/http://www.saga-s.co.jp/news/national/10203/70786 「反差別」元代表を再逮捕] 佐賀新聞 2014年06月04日</ref><ref>[http://www.peeep.us/08bc8ab7 【脅迫】ヘイトスピーチした男性を脅した男を逮捕] 朝日放送 2014年6月5日</ref>として、脅迫の疑いで再逮捕された。その後、[[脅迫罪|脅迫の罪]]で[[起訴]]され<ref>[http://www.yamatopress.com/c/35/183/9081/ 大阪地裁で在日韓国人生活保護不正受給詐欺裁判即日結審判決は8月8日] やまと新聞 2014-07-11</ref>、有罪となった<ref name="otokogumi-ann-geillrim">[http://otokogumi.org/wp/?p=408 凛七星氏の裁判に対する声明] 2014年9月8日</ref>。
[[辛淑玉]]は「最近、あちこちで文句を言うと、『出てけ』とか『帰れ』と言われる。『ハイわかりました。朝鮮人はみんな帰ります。天皇つれて帰ります』と言ってやる。だけど、アイツ働かないからな(笑)」「自衛官は普通の仕事に就けなかった人たちなので、治安維持をまかせると危険」などの差別的発言を過去に行っている。その後も、暴力事件で逮捕された男組メンバーを擁護した際には「男は生物学的に不良品の率が高いと思っている」と性差別的な意見を述べた。(詳細は[[辛淑玉#発言]]参照)
この男性のそもそもの逮捕容疑が[[生活保護]]の不正受給であったことに対して[[桜井誠 (活動家)|桜井誠]]は、[[在特会]]の活動に[[人種差別]]だと言いがかりをつけるのは、いわゆる[[在日特権]]を死守するための[[言論弾圧]]が目的ではないのかと非難している。


[[吉水神社]]の宮司が、自身のブログ等を通して中国人のマナーの悪さや韓国が日本の悪口外交を展開している点、また、韓国における整形美容広告の問題点を報じた記事などをもとに「中国人、韓国人は日本に来るな!」「世界から嫌われるシナ人の下品さ!」「韓国人は整形しても心の汚さは変わらない!」といった主張を行っており、ヘイトスピーチであるとの批判がある<ref>[http://www.j-cast.com/2014/10/14218329.html?p=all 世界遺産・吉水神社の宮司がブログでヘイトスピーチ? 『中国人、韓国人は日本に来るな!』...ネットで話題に] J-CASTニュース 2014年10月4日</ref>。
==== 有田芳生ら対抗運動関係者からの賛同・支援 ====
ヘイトスピーチに対して、法規制の実現を目指す[[参議院議員]]の[[有田芳生]]は、既存の運動体・[[政党]]を「合法主義(法規に反しない手段で社会変革を成す立場)の余り闘わない」「きれい事と口先だけの[[人権派]]」と批判し、「ぎりぎりまでやってくれる」としばき隊らを称賛している<ref name="newsweek20140624">ニューズウィーク日本版 2014年6月24日号 p32-35「反差別」という差別が暴走する</ref>。


=== 日本に対する国外のヘイトスピーチ ===
2014年6月、運動団体のりこえねっとの集会に参加した男組の高橋は「逮捕上等」「([[日本の警察|警察]]の判断によって)[[逮捕]]されるかもしれないので支援をお願いします」などと語った。集会の司会を務めるのりこえねっと共同代表[[辛淑玉]]は笑い出し、司会者としても聴衆に男組への支援を求めた<ref>ニューズウィーク日本版 2014年6月24日号 p68</ref><ref>[http://www.youtube.com/watch?v=1hDrNHfR6Tk 2014 06 11 のりこえシンポ 男組の高橋]</ref>。
カタールのドーハで行なわれた[[AFCアジアカップ2011]]準決勝の日本対韓国戦で、韓国代表の[[奇誠庸]]が前半にPKで得点した後、ゴールパフォーマンスで「[[サル|猿]]」の物真似を行った。「猿」は近年の韓国社会において日本人を侮辱するときに多用される蔑称であることから、その行為が内外で波紋を呼んだ。(詳細は[[奇誠庸#猿真似パフォーマンス騒動]]参照)


韓国の[[全州ワールドカップ競技場]]で行われた[[AFCチャンピオンズリーグ2011]]準々決勝第2戦[[全北現代モータース|全北現代]]対[[セレッソ大阪]]戦で、一部の全北サポーターが「日本の大地震をお祝います」と[[東日本大震災]]の犠牲者と日本人を揶揄する横断幕を掲げて応援を行った<ref>{{cite news |title=サッカー・アジアCLの日韓チームの対戦で「日本の大地震をお祝いします」との横断幕 |newspaper=FNN |date=2011-09-28 |url=http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00208500.html |archiveurl=http://megalodon.jp/2011-0928-2015-07/www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00208500.html |archivedate=2011-09-28|accessdate=2011-09-30}}</ref><ref>{{cite news |title=韓国で「東日本大震災を祝う」の幕 C大阪が抗議 |newspaper=産経新聞 |date=2011-09-28 |url=http://sankei.jp.msn.com/sports/news/110928/scr11092812310007-n1.htm |accessdate=2011-09-30}}</ref>が、その後も[[長崎県]]の[[対馬]]では、[[大韓民国#国民|韓国人]]が神社の絵馬に「[[地震]]起きて死ね」「[[津波]]がまた来ますように」「日本征伐」といった落書きをする事例が頻発した<ref>[http://www.j-cast.com/2014/05/23205613.html 対馬の神社で奉納絵馬に韓国人が反日落書き 「地震起きて死ね」「対馬まで韓国領土」「慰安婦に謝罪せよ」…] [[ジェイ・キャスト#J-CASTニュース|J-CASTニュース]] 2014年5月23日</ref>。
[[2014年]][[9月10日]]、有田は自身の[[Twitter]]で「[[自由民主党 (日本)|自民党]]ベテラン議員が「[[在日米軍|米軍]]に[[ヤンキー|ヤンキーゴーホーム]]と叫ぶのもヘイトスピーチ」とある会議で発言した。「ヘイトスピーチ」を規制するプロジェクトチームに関係している議員だから、驚き、しかしこれが現実だと思うしかなかった。[[国会議員]]が「[[アサッテ君]]」の息子である小学生と同程度の認識とは情けない」と自民党ベテラン議員(誰なのかは不明)に対する批判的なツイートをした<ref>[https://twitter.com/aritayoshifu/status/509503227381813248]有田芳生Twitter、17:46 - 2014年9月9日</ref>。
{{See|反日|反米}}


韓国のニュースサイトが「『日本猿』という呼称があるように、日本は[[サル|猿]]のように卑怯な国家である」「天罰が下って初めて日本人は己の愚かさを知る。[[東日本大震災]]に継ぎ、[[富士山]]を中心に近いうちにもう一度必ず天罰は下る」などと、日本を侮辱する記事を掲載し、日本でも騒ぎになった。当該記事のコメント欄には「汚らしい日本」「放射能で猿3万匹が消え、全ての人類は嬉しかったです。天罰」などと大震災の犠牲者をも猿になぞらえるなどして賛同する韓国人の意見が寄せられていた。「日本ではこの記事があまりにひどいため、多くの人に知ってもらうため「拡散」させようという呼びかけが始まっている」という<ref>[http://www.j-cast.com/2012/08/20143378.html 「大震災に続きもう一度天罰が下る」 竹島がらみで韓国ネットニュースが妄言]J-CASTニュース 2012年8月20日</ref>。
=== 反ヘイトスピーチ活動 ===
==== 排外主義・レイシズム反対集会 ====
2013年[[3月14日]]に[[民主党 (日本 1998-)|民主党]]の有田芳生らが呼びかけ人になり、[[参議院]][[議員会館]]で[[排外主義・レイシズム反対集会|排外・人種侮蔑デモに抗議する国会集会]]が実施され
た<ref>[http://www.tokyo-sports.co.jp/blogwriter-watanabe/5504/ 危ない動きに国会議員らが立ち上がる | ニュースのフリマ]</ref>。[[5月7日]]には第二回目の集会が実施された。民主党の[[大野元裕]]や[[小西洋之]]らが登壇した。学術界からは師岡康子([[大阪経済大学]])が報告を行った<ref>[http://news.donga.com/Main/3/all/20130508/54983975/1 日지식인들 ‘배외주의자들과의 전쟁’선포(日本の知識人‘排外主義者との戦争’宣言)] 2013年5月8日配信 東亜日報{{ko icon}}</ref><ref>[http://iwj.co.jp/wj/open/archives/77516 ヘイトスピーチで院内集会「『表現の自由』の国際基準、”他人の人権を侵害することは許されない”」 ~差別主義者・排外主義者によるデモに抗議する 第2回国会集会] インディペンデントウェブジャーナル</ref>。


米[[カリフォルニア州]][[グレンデール (カリフォルニア州)|グレンデール市]]に設置されている「慰安婦」像に対する抗議のため2014年1月に同市を訪れ、帰国した地方議員団が同月10日、現地の日本人子弟らが韓国系子弟らから受けているいじめの実態を報告した。現地の学校に通う日本人子弟らが「韓国人の子供に、食べ物につばを入れられた」「韓国の子供たちが、独島([[竹島]]の韓国名)は韓国のものだと怒鳴ってきた」などの被害を相談していることが判明。未然に被害を防ぐため、「外では私の名前を日本語で呼ばないで。話しかけるときは英語で」と親に懇願する子供もいたという。これらの他、「日本人だと分かると、ラーメンにつばを入れられた」「韓国系レストランで、冷めた白いご飯しか出されなかった」といった被害事例もあるという<ref>[http://www.sankei.com/world/news/140215/wor1402150028-n1.html レストランで「ラーメンにつば」「冷えたライス」…慰安婦で在米日本人に嫌がらせ] [[産経新聞]] 2014年2月15日</ref>。
[[11月28日]]には第三回目の集会が実施された。呼びかけ人は民主党、[[公明党|公明]]、[[日本共産党|共産]]、[[社会民主党 (日本 1996-)|社民]]に所属する15名の[[国会議員]]である。この中で有田は、超党派議員による包括的人種差別禁止法を[[議員立法]]で提出し、法整備を行いたいと語っている<ref>[http://news.onekoreanews.net/detail.php?number=74334 統一日報 : 第3回差別撤廃国会集会 2013年12月4日配信]</ref><ref>[http://iwj.co.jp/wj/open/archives/113896 2013/11/28 ヘイトスピーチは「表現の自由」か。レイシストによって「表現の自由」が奪われたマイノリティ ~差別撤廃国会集会 | IWJ Independent Web Journal]</ref>。


=== 反ヘイトスピーチを掲げた活動 ===
なお、このような活動を行う有田の[[事務所]]や[[ツイッター]]には「殺すぞ」という殺人予告や「朝鮮へ帰れ」などという批判が殺到しているという<ref>[http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/126822/ 何が起きた?有田議員に“殺人予告” | 東スポWeb – 東京スポーツ新聞社]</ref>。
==== 対レイシスト行動集団 ====
[[在日特権を許さない市民の会|在特会]]などの[[行動する保守]]のデモが表出してきたことに対し、それらをヘイトスピーチとして位置付け、対抗しようとする行動団体が活発化している。2013年2月に結成された[[野間易通]]が主宰する「レイシストをしばき隊(現・[[対レイシスト行動集団]])」は「死ね」等の罵声のみならず掴み掛かったりなどの暴力を用いて保守系デモへの過激な対抗運動を行っている。汚い罵倒の応酬ではなく他の手段を取るべきとの指摘に対し、野間は差別的表現に対しては上品で冷静な議論ではなく怒りを持って叫ぶのが正常であるとしてこのような運動の正当性を主張している<ref name="asahi20130809">[http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201308090479.html (インタビュー)ヘイトスピーチをたたく 「レイシストをしばき隊」野間易通さん] 朝日新聞 2013年8月10日朝刊</ref>。


[[対レイシスト行動集団|レイシストをしばき隊]]の最初期のメンバーで{{Sfn|神原|2014|p=42}}、対レイシスト行動集団や<ref>{{Cite web|url=http://cracjpn.tumblr.com/post/82180861014/hate |title= HATE CLIP 豊田有恒・祥伝社・朝日新聞「こと韓国相手では、同じ地球人ではなくどこか遠い星の宇宙人だと考えたほうが、対応を誤らないだろう |publisher=C.R.A.C.公式ページ |accessdate=2015-01}}</ref>男組の弁護人{{Sfn|神原|2014|p=148}}を務める[[神原元]]は、「属性を理由とする差別的表現」ではない単なる「罵倒」や「罵声」は[[ヘイトスピーチ]]ではないと論じた{{Sfn|神原|2014|pp=50-52}}。神原は、[[日本弁護士連合会]]第47回人権擁護大会シンポジウム(2004年10月)基調報告書「多民族・多文化の共生する社会を目指して」にある「外国人・民族的少数者の人権基本法要綱試案」<ref>{{Cite web|url=http://www.g-jinkenho.net/modules/sections/index.php?op=viewarticle&artid=17 |title=「外国人人権法連絡会」結成に向けて 参考資料4 外国人・民族的少数者の人権基本法要綱試案 |author=外国人人権法連絡会 |date=2006-05-29 <!-- ドメイン取得年月日を記した。(whois) -->|accessdate=2015-02}}</ref>を叩き台に{{Sfn|神原|2014|p=128}}、日本におけるヘイトスピーチの法規制を模索しており{{Sfn|神原|2014|pp=115-135}}、「リベラル原則を堅持する我々の立場からは、「日本の誇り」はヘイト・スピーチ規制法の保護法益たり得ないことを強調」している{{Sfn|神原|2014|p=128}}。
==== 有志の弁護士らの活動 ====
[[2013年]][[3月29日]]、[[日本弁護士連合会]]前会長の[[宇都宮健児]]ら有志の[[弁護士]]12人が、[[新大久保]]での[[反韓デモ]]に対して「これ以上放置できない」として[[東京弁護士会]]に人権救済を申し立てた。また弁護士らは「[[日本の警察|警察]]には[[外国人]]の安全を守る責任があるというのに、適切な対策を取っていない」として、[[警視庁]]に対して周辺[[住民]]の安全確保を申し入れた<ref>[http://www.asahi.com/special/news/articles/TKY201303290464.html 朝日新聞デジタル:新大久保の反韓デモ、救済申し立て 「身に危険の恐れ」]2013年3月29日21時59分</ref>。


井出実は『ヘイトスピーチに抗する人びと』{{Sfn|神原|2014}}に対する書評において、野間易通のスタンスを「被害者に寄り添い支援する運動を否定するのではなく、「ヘイト・スピーチは社会的な公正さを破壊するものだから、NGなんだ」ということだ。」と要約し、「それは怒りを率直に伝えるうえで、とてもシンプルで当たり前のものだ。」と評した<ref>井出実「当事者として民主主義に向き合う」しんぶん赤旗2015年2月8日。</ref>。
2013年7月26日には、[[東京第二弁護士会]]が「現代日本のヘイトスピーチ」というシンポジウムを開催している<ref>[http://niben.jp/news/ippan/2013/130726162548.html シンポジウム「現代日本のヘイトスピーチ」 東京第二弁護士会公式サイト]</ref>。


主宰の[[野間易通]]は、「穏健な口調で論理的に訴えようが、マイノリティへの憎悪感情に基づいたものであればいずれもヘイト・スピーチでありヘイト・クライムである。そして、むしろ実際には多くのヘイトはそのような態度を取るのだ。」としている{{Sfn|野間|2014|p=7}}。ヘイトスピーチの嵐は「ネット右翼にとっては「反日」「親韓・親朝鮮勢力」である民主党という明確な敵を得て、自民党が下野している3年の間にモンスターのように成長した。そのエネルギーを十分に吸収する形で成立したのが、第2次安倍内閣だった。」とし、「安倍や安倍内閣の閣僚、あるいは地方議員まで含めた自民党の政治家たちの発言がネット右翼のそれと大差ないのは、彼らがネット右翼に媚びているからではない。ネット右翼の思想そのものが、彼らの政治信条にそのままダイレクトにフィードバックしている。」と見解、「「首相それ自体がネトウヨ」という状態」は「地道にネットにデマを書き、歴史修正主義にもとづいて地方の役所に申し入れをし、排外主義にもとづいて議員にロビイングをまめに行い、少人数でも決してめげずにデモをつづける。こうしたことをおよそ15年にわたって地道に、マメに続けてきた成果が、第2次安倍内閣にはそのまま結実しているように見える。」と述べた<ref>{{Cite journal|url=http://lite-ra.com/2014/11/post-658_4.html |title=C.R.A.C.野間易通「ネット右翼の15年〜『自由』が民主主義を壊していく」第1回 もはや首相自体が「ネトウヨ」である──安倍“ヘイト”政権が誕生した日|journal=リテラ|date=2014-11-26}}</ref>。
2013年7月には、[[大阪弁護士会]]がヘイトスピーチを伴う[[デモ活動|デモ]]に対して、「[[日本国憲法第13条|憲法第13条]]が保障する[[個人の尊厳]]や[[人格権]]を根本から傷つける」と批判する声明を発表している<ref>[http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2013/07/03/0200000000AJP20130703003600882.HTML ヘイトスピーチは表現の自由を逸脱=大阪弁護士会声明 2013年7月3日]聯合ニュース</ref>。大阪弁護士会が、2014年5月に発行した「大阪地域司法計画 2014」の中でヘイトスピーチについて「外国人に対する誹謗中傷を含んだ街宣活動が頻繁に行われている」「[[子ども]]の成長に極めて深刻な悪影響を及ぼす」「表現の自由との関係に配慮しつつも、法規制についての検討・研究を行う」と言及している<ref>[http://www.osakaben.or.jp/05_menu/01_tiikishihou/pdf/tiikishihou_2014.pdf 「大阪地域司法計画2014」について(PDF)]大阪弁護士会公式サイト</ref>。


==== 日本共産党 ====
==== 男組 ====
かつて存在した高橋直輝主宰の政治運動団体である。「日本の反レイシズム運動のフロントに立つべく志を持つ男が結集した集団」と称し<ref>[http://otokogumi.org/ 男組とは? 男組公式サイト]</ref>、暴行・傷害などの[[犯罪]]を犯しながら「『男組はレイシストに合法的手段で「超圧力」をかけ続ける』という方針を取る」と公式サイトで主張している。
[[日本共産党]]は、「ヘイトスピーチを許さないために、人種差別禁止を明確にした理念法としての[[特別法]]の制定をめざ」すとしている<ref name=kyosan2014>{{Cite web|url=http://www.jcp.or.jp/web_policy/2014/11/post-666.html |title=2014年総選挙各分野政策 44、ヘイトスピーチ 民族差別をあおるヘイトスピーチを許さない |publisher=[[日本共産党]] |date=2014-11 |accessdate=2014-12-19}}</ref>。また、[[安倍晋三]]、[[橋下徹]]らの「侵略戦争美化・合理化の歴史認識」や<ref name=kyosan2013>{{Cite web |url=http://www.jcp.or.jp/web_policy/2013/06/2013-27.html |title=2013年参議院選挙各分野政策 41、いのち・人権の保障 |publisher=[[日本共産党]] |date=2013-06 |accessdate=2014-12-19}}</ref>、2009年2月に[[在日特権を許さない市民の会]]の関西支部長らと共に写真に写った[[山谷えり子]]、2011年に[[ネオナチ]]の団体の代表と共に写真に写った[[高市早苗]]、[[稲田朋美]]ら、「ヘイトスピーチに関連する勢力や極右勢力と政権与党幹部との〝癒着〟がヘイトスピーチの温床になってい」ると主張している<ref name=kyosan2014 />。

肩書に「組長」「[[若頭]]」等の呼称を使用し、「超圧力」を標榜してしばき隊以上に暴力的な手段に訴える点に特徴がある。組旗として、黒字に白塗りの髑髏を浮き出させ、バックに[[韓国刀]]と[[日本刀]]をクロスさせた意匠の旗を掲げ<ref>[http://a0.img.mobypicture.com/5051e3e368237f9a01161d3bcb231abd_view.jpg 画像]</ref>隊列を組み、ときには刺青を顕示して周囲を威圧し、恐怖心で相手方の意志を消滅せしめるスタイルのデモを行う<ref name="otokogumi-top">男組公式ページ(http://otokogumi.org/) 「構成員一覧」に組長・若頭など肩書きとメンバーの名前。「活動履歴」には逮捕や刑事裁判のことも書かれている。</ref><ref>週刊金曜日 2013年9月27日号 見開きp10-11 右上に高橋他3人が上半身裸で刺青を誇示するポーズを取る写真。左上に注釈『入れ墨を入れた「男組」。「在特会は肉弾戦でぶっつぶす」』</ref>。野間は男組のような団体の[[暴力]]性が対抗運動には必要であるとし、運動により多くの暴力的団体が現れるべきと指摘している<ref>[http://otokogumi.org/wp/?p=44 男組Webへの感想] 男組 公式サイト アナウンスページ 2013-11-09</ref>。

[[2013年]][[9月29日]]には、同月8日に新大久保で行われたデモ<ref>[http://calendar.zaitokukai.info/skantou/scheduler.cgi?mode=view&no=308 東京韓国学校無償化撤廃デモin新大久保]</ref>において在特会側のデモ参加者の顔を叩き首を絞めたとして、同組の「組長」高橋直輝と「本部長」木本拓史の2名が[[暴行罪]]で[[逮捕]]され、[[罰金]]20万円と罰金10万円の[[略式手続|略式命令]]が下された<ref>[http://www.sponichi.co.jp/society/news/2013/09/29/kiji/K20130929006712310.html 嫌韓デモに暴行容疑、対立グループの2人逮捕] スポニチ 2013-09-29</ref><ref>[http://www.peeep.us/6254354e 反ヘイトスピーチの男ら逮捕 デモ参加者暴行容疑]テレ朝news 2013-09-29</ref><ref>[http://www.peeep.us/54e059e3 排外デモ参加者に暴行=容疑で反対グループ男ら逮捕-警視庁]時事ドットコム 2013-09-29</ref><ref>[http://www.peeep.us/756a9bd0 在特会デモ:参加者に暴行の2容疑者逮捕 警視庁]毎日新聞 2013-09-29</ref><ref>[http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130929/crm13092913560003-n1.htm 在日排斥デモ参加者に暴行容疑 反対グループ男ら逮捕 警視庁公安部] [[産経新聞]]ニュース2013年9月29日</ref>。

また11月18日には、前述の同組の2名が、11月1日に行われた「[[山本太郎]]抗議デモ」の際にデモ参加者の在特会関係者に執拗に付きまとい、殴るなどの暴行を振るったとして逮捕され<ref>[http://www.peeep.us/35e28e4d 在特会VS反在特会:山本議員抗議デモでトラブル3人逮捕] 毎日新聞 2013-11-18</ref><ref>[https://web.archive.org/web/20131118231005/http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00258064.html 山本太郎参院議員の辞職求める抗議行動の際に殴り合い 3人逮捕] FNNニュース 2013-11-18</ref><ref>[http://otokogumi.org/wp/?p=168 男組組長 高橋直輝、本部長 木本拓史の公判における弁護側弁論要旨] 男組 公式サイト アナウンスページ</ref><ref name="otokogumi-top"/>、[[傷害罪]]で[[懲役]]10ヶ月・[[執行猶予]]3年の[[判決 (日本法)|判決]]が下された<ref>[https://twitter.com/nippondanji8/status/437891082630602752 私どもの傷害事件について本日、東京地方裁判所において実刑10ヶ月、執行猶予3年の判決が下されました。]</ref>。

[[2014年]][[1月18日]]には、別の男組の1名が在特会のデモ参加者に[[自転車]]等で体当たりしたとして暴行容疑で逮捕された<ref>[http://megalodon.jp/2014-0415-2135-39/sankei.jp.msn.com/affairs/news/140118/crm14011821090009-n1.htm 在特会デモに突入、東大生を逮捕 暴行容疑で警視庁] [[産経新聞]] 2014年1月18日</ref>。2014年[[5月25日]]には男組のメンバー10名がJR[[西川口駅]]([[埼玉県]][[川口市]])の[[改札]]前で、在特会の移民受け入れ反対デモに参加しようとした在特会の会員1名を取り囲み、そのうち1名が在特会会員の顔面を殴って骨折させたとして、殴られた在特会会員とともに暴行容疑で逮捕された<ref>[http://mainichi.jp/select/news/20140527k0000m040057000c.html ヘイトスピーチ:埼玉でデモ もみ合いで2人に暴行容疑] 毎日新聞 2014年5月26日</ref><ref>[http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140526/crm14052619000026-n1.htm デモで2人逮捕 対立グループ同士がけんか 埼玉県警](産経新聞 2014年5月26日配信)</ref><ref>[http://otokogumi.org/wp/?p=232 男組公式サイト アンチレイシズムを共に闘う皆様へ(2014年5月28日 AT 1:49 PM)]</ref>。

2014年7月16日、高橋、木本ら主要構成員8名が、前年[[10月26日]]午後2時15分ごろ、[[大阪市営地下鉄]][[大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線|長堀鶴見緑地線]][[西大橋駅]]構内で、近くの新町南公園のデモに参加しようとしていた47歳の男性を集団で取り囲んで壁に押し付け、大声で恫喝するなど暴行や[[脅迫]]を加えたとし、[[暴力行為等処罰ニ関スル法律|暴力行為等処罰法]]違反容疑で[[大阪府警察|大阪府警]][[警備部]]などに逮捕された<ref name="mainichi20140716">[http://megalodon.jp/2014-0716-1646-26/headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140716-00000071-mai-soci <暴行容疑>嫌韓デモ反対団体8容疑者を逮捕 大阪府警] 毎日新聞 2014-07-16</ref><ref>[https://web.archive.org/web/20140716045823/http://webnews.asahi.co.jp/abc_1_001_20140716002.html 【逮捕】ヘイトスピーチ参加者を暴行容疑] 朝日放送 2014-07-16</ref><ref>[http://web.archive.org/web/20140716071103/http://news.livedoor.com/article/detail/9049224/ 反ヘイト名乗る「男組」幹部ら8人逮捕 右派系男性への暴行容疑] 産経ニュース(2014年07月16日15時33分)</ref>。また、府警はメンバーの自宅などの関係先である[[大阪府]]、[[東京都]]、[[静岡県]]など7都府県10カ所を[[捜索|家宅捜索]]した<ref name="mainichi20140716"/>。その後、4名が同罪で起訴され有罪となった<ref>[http://otokogumi.org/wp/?p=276 男組公式サイト 2014年7月25日 ]</ref><ref>[http://www.iza.ne.jp/kiji/life/news/140731/lif14073115500015-n1.html ヘイトスピーチ、法規制に慎重論 「表現の自由」侵害懸念、海外で見直しも] 産経新聞 2014-07-31</ref>。逮捕された添田と木本は3度目の逮捕であり、執行猶予期間中であった<ref>[http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140716/waf14071611500020-n1.htm 反ヘイト名乗る「男組」幹部ら8人逮捕 右派系男性への暴行容疑] 産経ニュース 2014年7月16日</ref>。男組は[[YouTube]]の公式チャンネルにこの様子を撮影した動画をアップロードしていたが、現在はプライバシー侵害の申し立てを理由に削除されている<ref>[https://www.facebook.com/otokogumi.skull/posts/598193186925019 男組 - 【お知らせ】] ([[2013年]][[11月20日]]) - [[2015年]][[1月12日]]閲覧</ref>。

2015年3月28日付で解散した<!--<ref>[https://twitter.com/search?q=%E7%94%B7%E7%B5%84%E3%80%80%E8%A7%A3%E6%95%A3%E3%80%80from%3Aaritayoshifu&src=typd 男組 解散 from:aritayoshifu - Twitter検索]</ref>-->。

==== 友だち守る団 ====
2013年5月、[[戦争]]中の[[慰安婦]]をめぐる[[橋下徹|橋下]][[大阪市長|市長]]の発言を支持する団体が街宣活動をしていたところに、対抗運動団体「友だち守る団」がヘイトスピーチだと言いがかりをつけてメンバー20人で襲い掛かり、そのうち1人が[[警備]]にあたっていた[[日本の警察官|警察官]]ともみ合いになり、逮捕された<ref>[http://megalodon.jp/2013-0527-0723-20/www3.nhk.or.jp/kansai-news/20130526/4852851.html 慰安婦問題街宣で小競り合い]NHK ONLINE</ref>。それを受けて同月に団体は解散。

2014年6月には「凛七星」を名乗る元代表の[[大韓民国#国民|韓国人]]の男性が大阪市内で集会をしていた在特会メンバーに「この世におれんようになるぞ」と脅した<ref>[https://web.archive.org/web/20140605112201/http://www.saga-s.co.jp/news/national/10203/70786 「反差別」元代表を再逮捕] 佐賀新聞 2014年06月04日</ref><ref>[http://www.peeep.us/08bc8ab7 【脅迫】ヘイトスピーチした男性を脅した男を逮捕] 朝日放送 2014年6月5日</ref>として、脅迫の疑いで再逮捕された。その後、[[脅迫罪]]で[[起訴]]され<ref>[http://www.yamatopress.com/c/35/183/9081/ 大阪地裁で在日韓国人生活保護不正受給詐欺裁判即日結審判決は8月8日] やまと新聞 2014-07-11</ref>、有罪となった<ref name="otokogumi-ann-geillrim">[http://otokogumi.org/wp/?p=408 凛七星氏の裁判に対する声明] 2014年9月8日</ref>。
この男性のそもそもの逮捕容疑は平成23年6月から24年2月にかけて、収入がないと大阪市に嘘の申告をし、[[生活保護]]費約112万円を不正に騙し取ったというもので<ref>[http://www.sankei.com/west/news/140415/wst1404150068-n1.html ヘイトスピーチ反対の市民団体元代表を逮捕、生活保護費の不正受給容疑 大阪府警]産経新聞 2014年4月16日</ref>、それに対して[[桜井誠 (活動家)|桜井誠]]は、[[在日特権を許さない市民の会|在特会]]の活動に[[人種差別]]だと言いがかりをつけるのは、いわゆる[[在日特権]]を死守するための[[言論統制|言論弾圧]]が目的ではないのかと非難している。

==== 有田芳生ら、排外主義・レイシズム反対集会 ====
ヘイトスピーチに対して、法規制の実現を目指す[[国会議員#参議院議員|参議院議員]]の[[有田芳生]]は、既存の運動体・[[政党]]を「合法主義(法規に反しない手段で社会変革を成す立場)の余り闘わない」「きれい事と口先だけの[[人権派]]」と批判し、「ぎりぎりまでやってくれる」としばき隊らを称賛している<ref name="newsweek20140624">ニューズウィーク日本版 2014年6月24日号 p32-35「反差別」という差別が暴走する</ref>。

2013年[[3月14日]]に[[民主党 (日本 1998-)|民主党]]の有田芳生らが呼びかけ人になり、[[参議院]][[議員会館]]で[[排外主義・レイシズム反対集会|排外・人種侮蔑デモに抗議する国会集会]]が実施された<ref>[http://www.tokyo-sports.co.jp/blogwriter-watanabe/5504/ 危ない動きに国会議員らが立ち上がる | ニュースのフリマ]</ref>。[[5月7日]]には第二回目の集会が実施された。民主党の[[大野元裕]]や[[小西洋之]]らが登壇した。学術界からは師岡康子([[大阪経済法科大学]])が報告を行った<ref>[http://news.donga.com/Main/3/all/20130508/54983975/1 日지식인들 ‘배외주의자들과의 전쟁’선포(日本の知識人‘排外主義者との戦争’宣言)] 2013年5月8日配信 東亜日報{{ko icon}}</ref>。

なお、このような活動を行う有田の[[事務所]]や[[Twitter]]には「殺すぞ」という殺人予告や「朝鮮へ帰れ」などという批判が殺到しているという<ref>[http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/126822/ 何が起きた?有田議員に“殺人予告” | 東スポWeb – 東京スポーツ新聞社]</ref>。


==== のりこえねっと ====
==== のりこえねっと ====
のりこえねっと -ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク-とは、「在日韓国・朝鮮人らに対するヘイトスピーチに対抗し、乗り越えよう」と呼びかける団体である。[[2013年]][[9月25日]]に結成され、[[東京]]・[[新大久保駅#駅周辺|新大久保]]で発足会見が開かれた<ref>[http://www.asahi.com/national/update/0925/TKY201309250152.html 朝日新聞デジタル:反ヘイトスピーチ団体が発足 デモなどの差別運動へ警告 - 社会]</ref>。共同代表は「のりこえねっと」公式サイトを参照<ref>[http://www.norikoenet.org/representative.html のりこえねっと共同代表]</ref>。
{{Infobox 組織
| 名称 = のりこえねっと -ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク-
| 画像 =
| 画像サイズ = 250px
| 画像説明 =
| 略称 = のりこえねっと
| 設立 = [[2013年]]9月25日
| 廃止 =
| 種類 =
| 地位 =
| 目的 =
| 本部 = {{JPN}}[[東京都]][[新宿区]][[大久保 (新宿区)|大久保]]2丁目7−1大久保フジビル 311 ペンの事務所気付
| 位置 = [[人種差別|反人種・民族差別]]
| 貢献 =
| メンバー =
| 言語 = [[日本語]]
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| 人物 =
| 機関紙 =
| 設立者 =
| 関連組織 =
| スタッフ =
| ボランティア =
| 予算 =
| ウェブサイト = [http://www.norikoenet.org/index.html のりこえねっと公式サイト]
| }}
'''のりこえねっと -ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク-'''とは、「在日韓国・朝鮮人らに対するヘイトスピーチに対抗し、乗り越えよう」と呼びかける団体である。[[2013年]][[9月25日]]に結成され、[[東京]]・[[新大久保]]で発足会見が開かれた<ref>[http://www.asahi.com/national/update/0925/TKY201309250152.html 朝日新聞デジタル:反ヘイトスピーチ団体が発足 デモなどの差別運動へ警告 - 社会]</ref>。共同代表は「のりこえねっと」公式サイトを参照<ref>[http://www.norikoenet.org/representative.html のりこえねっと共同代表]</ref>。


のりこえねっと設立宣言では、現在の日本における「[[在日韓国・朝鮮人]]を標的とするヘイトスピーチ」は「[[ナチス]]時代の[[ユダヤ人]]などへの迫害、かつての[[南アフリカ]]での[[アパルトヘイト]]や[[アメリカ合衆国|アメリカ]]南部における[[クー・クラックス・クラン|KKK]]団の[[私刑|リンチ]]を想起させるような激しい侮辱と憎悪表現」であるとし、日本の「[[戦後]]体制が[[政策]]的に作り出してきた差別そのもの」と主張している。また「ヘイトスピーチは、当面の標的とする在日韓国・朝鮮人だけではなく、女性を敵視し、[[琉球人|ウチナーンチュ]]、[[被差別部落]]の出身者、[[婚外子]]、[[社会]]が障害となっている人たち(いわゆる「[[障がい者]]」)、[[性的少数者]]などの、[[社会的少数者]]にも攻撃を加えてきた」とも表明している<ref>[http://www.norikoenet.org/declaration.html 設立宣言],ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク公式サイト、2014年6月26日閲覧。</ref>。共同代表の[[辛淑玉]]は日本のヘイトスピーチ団体は「反論できない立場の相手に、ウソついて陥れる」と批判している<ref>のりこえねっと編「ヘイトスピーチってなに? レイシズムってどんなこと? 」[[七つ森書館]]、2014年04月</ref>。会は当面の活動として、差別禁止法の立法化活動、講演会や学習会、反レイシズムを呼び掛ける情報の発信などを行っていくとのことである。
のりこえねっと設立宣言では、現在の日本における「[[在日韓国・朝鮮人]]を標的とするヘイトスピーチ」は「[[国家社会主義ドイツ労働者党|ナチス]]時代の[[ユダヤ人]]などへの迫害、かつての[[南アフリカ共和国|南アフリカ]]での[[アパルトヘイト]]や[[アメリカ合衆国|アメリカ]]南部における[[クー・クラックス・クラン|KKK]]団の[[私刑|リンチ]]を想起させるような激しい侮辱と憎悪表現」であるとし、日本の「[[戦後]]体制が[[政策]]的に作り出してきた差別そのもの」と主張している。また「ヘイトスピーチは、当面の標的とする在日韓国・朝鮮人だけではなく、女性を敵視し、[[琉球人 (曖昧さ回避)|ウチナーンチュ]]、[[部落問題|被差別部落]]の出身者、[[嫡出|婚外子]]、[[社会]]が障害となっている人たち(いわゆる「[[障害者|障がい者]]」)、[[性的少数者]]などの、[[社会的少数者]]にも攻撃を加えてきた」とも表明している<ref>[http://www.norikoenet.org/declaration.html 設立宣言],ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク公式サイト、2014年6月26日閲覧。</ref>。共同代表の[[辛淑玉]]は日本のヘイトスピーチ団体は「反論できない立場の相手に、ウソついて陥れる」と批判している<ref>のりこえねっと編「ヘイトスピーチってなに? レイシズムってどんなこと? 」[[七つ森書館]]、2014年04月</ref>。会は当面の活動として、差別禁止法の立法化活動、講演会や学習会、反レイシズムを呼び掛ける情報の発信などを行っていくとのことである。


[[ニューズウィーク]]日本版[[2014年]][[6月24日]]号の「『反ヘイト』という名のヘイト」記事で「ヘイトデモ」参加者が「反ヘイト活動家」に殴られたと書かれ、また「ヘイトデモ参加者」が「反ヘイト団体からの暴力を恐れて」いることなどが[[報道]]された。これについてのりこえねっとは、殴ったのではなく「顔を押さえた」ことが事実であり、ニューズウィーク日本版は「[[嫌韓]]記事を掲載し、問題のある雑誌」であり、ヘイトスピーチの側に立っており、許せないと抗議した<ref>[http://www.norikoenet.org/protest_against_newsweek.html#seimei ニューズウィーク日本版への抗議声明文],ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク公式サイト、2014年6月26日閲覧。</ref>。
[[ニューズウィーク]]日本版[[2014年]][[6月24日]]号の「『反ヘイト』という名のヘイト」記事で「ヘイトデモ」参加者が「反ヘイト活動家」に殴られたと書かれ、また「ヘイトデモ参加者」が「反ヘイト団体からの暴力を恐れて」いることなどが[[報道]]された。これについてのりこえねっとは、殴ったのではなく「顔を押さえた」ことが事実であり、ニューズウィーク日本版は「[[嫌韓]]記事を掲載し、問題のある雑誌」であり、ヘイトスピーチの側に立っており、許せないと抗議した<ref>[http://www.norikoenet.org/protest_against_newsweek.html#seimei ニューズウィーク日本版への抗議声明文],ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク公式サイト、2014年6月26日閲覧。</ref>。


==== 差別反対東京アクション ====
==== 差別反対東京アクション ====
差別反対東京アクションと銘打ち、[[2013年]][[10月21日]]から[[ヘイトスピーチ]]に反対し[[東京都]]に対して現状の改善を求める運動が毎週月曜日に[[東京都庁]]前で行われており、多いときには100人が集まる。通行人に「韓国人中国人は死ね」などと野次を飛ばされることもある<ref>[http://www.mindan.org/front/newsDetail.php?category=2&newsid=18903 <ヘイトスピーチ>東京都の対処求め半年…庁舎前アピール]</ref><ref>[http://senkyo.mainichi.jp/news/20140202ddm041010118000c.html 都知事選・現場から:小さな声、聞いて 差別反対/同性愛/ぜんそく患者 - 毎日新聞]</ref><ref>[http://ta4ad.net/ 差別反対 東京アクション]</ref><ref>[http://www.bengo4.com/topics/1095/ 「なんで止めないんだよ!」 ヘイトスピーチへの行政対応を求める「都庁前アピール」|弁護士ドットコムニュース]</ref>。
{{See also|差別反対東京アクション}}
<!-- この件に関しては2014年8月の時点では記述するには出典状況が曖昧なので一旦コメントアウトします。意見はノートにて ==== 反差別のプラカードを掲げる運動 ====
在特会らのデモに対して、街頭で抗議の意思を表す者もいる。「カウンター」と称されるこれらの抗議を行う者は、ネットの呼びかけなどで集って、街頭から差別に反対する声を上げたり、プラカードを掲げることを行っている<ref>「ヘイトスピーチ考えるシンポ」朝日新聞朝刊 2014年6月14日版</ref><ref>「2013(5)ヘイトスピーチ  耳を覆う暴言 店はガラガラ」 東京新聞朝刊 2013年12月27日版</ref><ref>有田芳生『ヘイトスピーチとたたかう!』文藝春秋 2013年 ISBN 978-4000247160</ref>。 -->


==== ヘイトスピーチを呼び掛けるパレード ====
==== ヘイトスピーチと排外主義に加担しい出版関係者の会 ====
2014年3月、いわゆる「ヘイト本」の氾濫を憂う出版関係者ら約20名が「[[ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会]]」を結成し{{Sfn|ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会|2014|pp=142-144}}、同年11月、『NOヘイト! 出版の製造者責任を考える』を出版した{{Sfn|ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会|2014|pp=1-144}}。共著者の一人である加藤直樹は著書『[[九月、東京の路上で]]』において、ヘイトスピーチと[[関東大震災#流言による殺傷事件|関東大震災時の流言による殺傷事件]]とを関連付けている{{Sfn|加藤|2014|pp=5-7, 214-215}}。
* 2013年[[7月14日]]には、[[関西]]で反ヘイトスピーチを呼び掛ける有志が「仲良くしようぜパレード in 大阪」と称すパレードを実施した。 和服、チマチョゴリ、沖縄のエイサー隊など様々な民族衣装を着た参加者が集まって御堂筋を歩いた。参加者は主催者発表で約700人<ref>[http://nakapare2014.wordpress.com/%E4%BB%B2%E3%83%91%E3%83%AC%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%81%BE%E3%81%A7/%E4%BB%B2%E3%83%91%E3%83%AC%E3%81%AE%E6%88%90%E7%AB%8B%E3%81%A1/ 仲パレ公式サイト]2014年7月20日閲覧。</ref>。
**2014年7月20日には、2回目となる「OSAKA AGAINST RACISM 仲良くしようぜパレード2014」が開催された。パレード参加者は約1500人<ref>[http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39922?page=3 多様性を祝おう! "OSAKA AGAINST RACISM 仲良くしようぜパレード2014" 2014年07月23日(水)]現代ビジネス</ref>。
* 2013年[[9月22日]]には、ヘイトスピーチと人種差別の撤廃を訴える「東京大行進」と称されるデモが[[新宿]]で開催され、[[ツイッター]]などでの呼びかけに応じた約1200人が参加した<ref>[http://www.asahi.com/national/update/0922/TKY201309220106.html 朝日新聞デジタル:ヘイトスピーチやめよう 差別反対訴え新宿でデモ - 社会 2013年9月22日]</ref>。2014年秋には、第2回を行う見込み。
** [[2014年]][[4月27日]]に開催された[[ゲイ・パレード#東京レインボープライド《TRP》|東京レインボープライド2014]]に東京大行進の公式フロート車『TOKYO NO H8』が参加している<ref>[http://www.tokyorainbowpride.com/web/blog/2014/04/11/%E3%80%90%E9%80%9F%E5%A0%B1%E3%80%91%E3%83%95%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%88%E5%87%BA%E8%B5%B0%E9%A0%86%E7%95%AA%E6%B1%BA%E5%AE%9A%EF%BC%81/ 東京レインボープライド2014 公式サイト] 2014年7月20日閲覧。</ref>。


==== 在特会側反応 ====
==== ====
2013年[[7月14日]]には、[[関西]]で反ヘイトスピーチを呼び掛ける有志が「仲良くしようぜパレード in 大阪」と称すパレードを実施した。 和服、チマチョゴリ、沖縄のエイサー隊など様々な民族衣装を着た参加者が集まって御堂筋を歩いた。参加者は主催者発表で約700人<ref>[http://nakapare2014.wordpress.com/%E4%BB%B2%E3%83%91%E3%83%AC%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%81%BE%E3%81%A7/%E4%BB%B2%E3%83%91%E3%83%AC%E3%81%AE%E6%88%90%E7%AB%8B%E3%81%A1/ 仲パレ公式サイト]2014年7月20日閲覧。</ref>。 2014年7月20日には、2回目となる「OSAKA AGAINST RACISM 仲良くしようぜパレード2014」が開催された。パレード参加者は約1500人<ref>[http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39922?page=3 多様性を祝おう! "OSAKA AGAINST RACISM 仲良くしようぜパレード2014" 2014年07月23日(水)]現代ビジネス</ref>。
在特会の[[桜井誠 (活動家)|桜井誠]]は、こうしたしばき隊らの活動こそが「日本人に対する差別」([[日本人]]差別)であると主張している<ref>[http://ameblo.jp/doronpa01/entry-11616677799.html 9・22 有田ヨシフ差別デモに抗議される皆様にお願い 2013年09月19日(木)]桜井誠公式ブログ</ref>。また、しばき隊・男組の構成員は「[[不逞鮮人]]」<ref>[http://ameblo.jp/doronpa01/entry-11864458044.html 埼玉移民反対デモへの襲撃事件について 2014年05月29日(木)]桜井誠公式ブログ</ref>であり、[[反天皇制運動連絡会|反天連]]と同一の「[[反日]][[極左]]」であるとも主張してもおり<ref>[http://ameblo.jp/doronpa01/entry-11902999966.html 在特会 夏の陣! 共闘協力の輪を広げよう!! 2014年08月01日(金)]桜井誠公式サイト</ref>また、自身の[[Twitter]]及びブログ上でしばき隊・男組を「[[準暴力団]]」「広域犯罪組織」などと批判している<ref>[https://mobile.twitter.com/Doronpa01/status/420843626113945600 桜井のTwitter]([[2014年]][[1月8日]])</ref><ref>[https://mobile.twitter.com/Doronpa01/status/493942953224581120 桜井のTwitter](2014年7月29日)</ref>


2013年[[9月22日]]には、ヘイトスピーチと人種差別の撤廃を訴える「東京大行進」と称されるデモが[[新宿]]で開催され、[[Twitter]]などでの呼びかけに応じた約1200人が参加した<ref>[http://www.asahi.com/national/update/0922/TKY201309220106.html 朝日新聞デジタル:ヘイトスピーチやめよう 差別反対訴え新宿でデモ - 社会 2013年9月22日]</ref>。[[2014年]][[4月27日]]に開催された[[ゲイ・パレード#東京レインボープライド《TRP》|東京レインボープライド2014]]に東京大行進の公式フロート車『TOKYO NO H8』が参加している<ref>[http://www.tokyorainbowpride.com/web/blog/2014/04/11/%E3%80%90%E9%80%9F%E5%A0%B1%E3%80%91%E3%83%95%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%88%E5%87%BA%E8%B5%B0%E9%A0%86%E7%95%AA%E6%B1%BA%E5%AE%9A%EF%BC%81/ 東京レインボープライド2014 公式サイト] 2014年7月20日閲覧。</ref>。
在特会は、2013年4月26日に「[[日本の警察|警察]]に許可を得たデモであるにもかかわらず、デモに抗議する者たちから妨害を受けた」とされることや、妨害者に自らが「ヘイト」「レイシスト」と批判されたことが、[[人権蹂躙|人権侵害]]に当たるなどと主張し、[[日本弁護士連合会]]に[[人権]]救済を申し立てた<ref>[http://www.asahi.com/national/update/0426/TKY201304260220.html?ref=recc 在特会、人権救済申し立て「デモで抗議側から妨害受け」] 2013年4月28日閲覧</ref>。

[[日本城タクシー]]は、法務省の啓発ポスターから借用した「ヘイトスピーチ、許さない。」と書かれた黄色のステッカーをタクシー車両に貼って営業している<ref>{{Cite news|url=http://digital.asahi.com/articles/ASH2B3PHDH2BPTIL00C.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASH2B3PHDH2BPTIL00C |title=大阪)「ヘイトスピーチ許さない」タクシーにステッカー |author=中野晃 |newspaper=朝日新聞 |date=2015-02-16 |accessdate=2015-05}}</ref><ref>{{Cite journal|url=http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43336 |title=G2レポート・安田浩一 「ヘイトな馬鹿に鉄槌を」【前編】 大阪・日本城タクシー社長を突き動かした2つの「差別」風景 |author=安田浩一、G2 |journal=現代ビジネス |date=2015-05-18 |accessdate=2015-05}}</ref>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
*{{Cite book|和書|date=2014-02-01|author=[[エリック・ブライシュ]]|title=[[ヘイトスピーチ 表現の自由はどこまで認められるか]]|translator=[[明戸隆浩]], [[池田和弘]], [[河村賢]], [[小宮友根]], [[鶴見太郎]], [[山本武秀]] |publisher=[[明石書店]] |isbn=978-4-7503-3959-4 |ref={{SfnRef|ブライシュ|2014}} }}
*赤坂正浩『憲法講義(人権)』信山社、2011年
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*市川正人『表現の自由の法理』日本評論社、2003年
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*佐藤幸治『日本国憲法論』成文堂、2011年
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* 小谷順子「憎悪表現(ヘイト・スピーチ)の規制の合憲性をめぐる議論」(SYNODOS JOURNAL2013.5.23)[http://webronza.asahi.com/synodos/2013052300001.html]
*小林直樹「[http://www.naragakuen-u.jp/social_science/pdfs/jss01_kobayashi.pdf 差別的表現の規制問題―日本・アメリカ合衆国の比較から―]」『社会科学雑誌』創刊号、2008年12月、奈良産業大学社会科学学会 87-148頁
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*日弁連「[http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/organization/data/sympo_keynote_report041007.pdf 第47回人権擁護大会シンポジウム第1分科会基調報告書 多民族・多文化の共生する社会をめざして―外国人の人権基本法を制定しよう―]」2004年、p372-374、p386-394
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*長谷部恭男『憲法・第五版』新世社、2011年
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*反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)「知ってほしい ─ ヘイトスピーチについて使ってほしい ─ 国連勧告を 人種差別撤廃委員会一般的勧告35と日本」一般財団法人[[アジア・太平洋人権情報センター]]、2014年.
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* 師岡康子『[[ヘイト・スピーチとは何か]]』(岩波書店2013)
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*{{Cite book|和書|author=[[前田朗]]|title=なぜ、いまヘイト・スピーチなのか―差別、暴力、脅迫、迫害―|publisher=三一書房|date=2013-11-10|isbn=978-4-380-13009-0|ref={{SfnRef|前田|2013}} }}
*{{Cite book|和書|title=ヘイトスピーチとネット右翼|author=[[安田浩一]]、[[岩田温]]、[[古谷経衡]]、[[森鷹久]] |publisher=[[オークラ出版]] |date=2013-11-04 |isbn=978-4775520673 |ref={{Sfnref|安田、岩田、古谷、森|2013}} }}
*山崎公士「[http://dspace.lib.niigata-u.ac.jp/dspace/bitstream/10191/16430/1/36(3-4)_113-153.pdf 日本における差別禁止法の制定―国際人権法の視点から]」『法政理論』36(3):113–153.2004.
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*{{Cite book|和書|title=[[九月、東京の路上で]] |author=加藤直樹 |publisher=[[ころから]] |date=2014-03-11 |isbn=978-4-907239-05-3 |ref={{SfnRef|加藤|2014}} }}
*{{Cite book|和書|title=ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件――〈ヘイトクライム〉に抗して |author=[[中村一成]] |publisher=[[岩波書店]] |date=2014-02-25 |isbn=978-4000259644 |ref={{Sfnref|中村|2014}} }}
*{{Cite book|和書|title=NOヘイト! 出版の製造者責任を考える |author1=[[加藤直樹]] |author2=[[神原元]] |author3=[[明戸隆浩]]|editor=[[ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会]] |publisher=[[木瀬貴吉]], [[ころから]] |date=2014-10-30 |isbn=978-4-907239-10-7 |ref={{SfnRef|ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会|2014}} }}
*{{Cite book|和書|title=ヘイト・スピーチに抗する人びと|author=[[神原元]] |publisher=[[新日本出版社]] |date=2014-12-10 |isbn=978-4406058612 |ref={{Sfnref|神原|2014}} }}
*{{Cite book|和書|title=「在日特権」の虚構 増補版|author=[[野間易通]] |publisher=[[河出書房新社]] |date=2015-12-10 |isbn=978-4309246109 |ref={{Sfnref|野間|2015}} }}
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[差別用語]] - [[放送禁止用語]]
* [[ヘイトクライム]]
* [[ヘイトクライム]]
* [[人種差別]]
* [[人種差別]]
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* [[名誉毀損]]
* [[名誉毀損]]
* [[言論の自由]] - [[表現の自由]]
* [[言論の自由]] - [[表現の自由]]
* [[差別用語]] - [[放送禁止用語]]
* [[偏向報道]] - [[表現の自主規制]] - [[報道におけるタブー]]
* [[偏向報道]] - [[表現の自主規制]] - [[報道におけるタブー]]
* [[反日]] - [[反日感情]] - [[嫌韓]] - [[嫌中]]
* [[反日]] - [[反日感情]] - [[嫌韓]] - [[嫌中]]
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== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
<!--ヘイトスピーチに関連があり、特に有用な情報のみ追加してください。-->
<!--ヘイトスピーチに関連があり、特に有用な情報のみ追加してください。-->
*[http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/conv_j.html 人種差別撤廃条約(外務省サイト)]
*[http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/conv_j.html 人種差別撤廃条約 (外務省サイト)]
*[http://synodos.jp/society/4013 憎悪表現(ヘイト・スピーチ)の規制の合憲性をめぐる議論]
*[http://www.norikoenet.org/ のりこえねっと(ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク)]


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2015年5月27日 (水) 15:45時点における版

日本のヘイトスピーチ(にほんのヘイトスピーチ)では、日本におけるヘイトスピーチ(憎悪表現)について述べる。

定義と様態

ヘイトスピーチhate speech)とは、人種宗教性的指向性別思想障害職業、などを誹謗、中傷、差別などし、さらには他人をそのように煽動する言論であるとされるが[1][2]、紛れのない判定基準は存在しない[3]日本語では「憎悪表現」[4][5][1]「憎悪宣伝」「差別的表現」「差別表現」[1][6]「差別言論」[6]「差別煽動」[7][8][9]、「差別煽動表現」[10][11]などと訳される。

様態

憎悪表現が”地域の平穏を乱すことをもって規制されるべき”と議論する場合には「憎悪を煽る表現」とも呼ばれる[12][13]。「喧嘩言葉[14]と同様に相手方の内部に憎悪を生み出すような言論(表現)類型と考えられており、話者(表現者)の側の憎悪感情が問題とされる[15]。また、「憎悪と敵意に満ちた言論」[16]、「憎悪にもとづく発言」とも解説される[17]

国外ではヘイトスピーチ規制の対象は言論(speech)以外に表現(expression)全般に及び[18]、例えば宗教的象徴を中傷する漫画や動画の公開や[19]、歴史的経緯を踏まえた上で民家の庭先で十字架を焼却する行為[20]国旗の焼却行為や反戦の腕章を身につけること、デモ行進ビラ配布行為といった非言語による意思表示形態[16]なども「スピーチ」に含まれるとされ、議論の対象となっている。

知恵蔵mini』(朝日新聞出版)では「匿名化され、インターネットなどの世界で発信されることが多い。定義は固まっていないが、主に人種国籍思想性別障害職業、外見など、個人や集団が抱える欠点と思われるものを誹謗・中傷、貶す、差別するなどし、さらには他人をそのように煽動する発言(書き込み)のこと」を指すとされ、インターネットにおける書き込みも「スピーチ」に含むと解説している[17]。それに続けて「ヘイトスピーチを行う目的は自分の」表現を挑発的に押し付ける「ことにあり、あらゆる手法を用いて他者を低めようとし」、表現に対する批判「にまともに耳を貸すことはない。」「憎悪、無力感、不信などを被害者に引き起こし、相互理解を深めようとする努力を無にする、不毛かつ有害な行為」と解説する。ヘイトスピーチ規制は全世界的に広がっているが、規制の少ない国としてアメリカ日本が列挙されている[17]。また、同辞典2013年5月13日更新では「憎悪に基づく差別的な言動」であり、「人種や宗教、性別、性的指向など自ら能動的に変えることが不可能な、あるいは困難な特質を理由に、特定の個人や集団をおとしめ、暴力や差別をあおるような主張をすることが特徴」と解説された[17]。また朝日新聞2013年10月7日夕刊では「特定の人種や民族への憎しみをあおるような差別的表現」と定義され、在日韓国・朝鮮人への街頭活動が例とされた[17]

憎悪バイアスをもたらす表現形態として、ジェンダー論の立場からは、ポルノグラフィ規制論とも関係する[21]。個人に対する嫌がらせ表現などは侮辱罪ストーカー規制法などの対象となる。ほかに差別や偏見を動機した暴行等の犯罪ヘイトクライムといい、これも問題となっている[16]。日本の市民団体によると、日本におけるヘイトスピーチの対象は在日、反原発運動、広島の平和運動、生活保護など多岐にわたるとする[22]

反ヘイトスピーチを掲げる一部論者は、ヘイトスピーチとなる要素として、マイノリティに向けられていること[23][24][25][26]、個人では変更困難な属性に基づくこと[25][27][26]、表現の暴力であること[25]といった点を挙げている。 ヘイトスピーチという語が新聞に掲載されたのは2012年には1回だったとされるが[28]2013年に反レイシズム運動(カウンター)や西欧の法規制をメディアが取り上げ[29][30]、国会の質疑にかけられ[31][32][33][34]認知が高まり、2013年の新語・流行語大賞トップテンに選ばれた[28][35]

法規定

2015年現在、日本では、ヘイトスピーチ自体を取り締まる一般法、特別法、条例は制定されていないが、民法上の不法行為などに問われる。民法709条民法1条(信義則)や民法90条(公序良俗)の判断基準として憲法14条人種差別撤廃条約、自由権規約の趣旨を考慮するのが判例の立場である(私人間効力における間接適用説))。

差別[36]人権侵害的言論を規制する意図を背景に、人権擁護法案等で諸々の検討がなされているが、言論の自由の侵害の危険性、国家による言論統制の危険性[37]、世論やメディアの行き過ぎた「自己検閲」の危険性[37]など、法案の合憲性、内容や運用方法、制度の必要性や危険性などを巡って議論となっている。日本国憲法第21条では表現の自由が保障されており、ヘイトスピーチ法規制については米国とともに国際的に規制のゆるやかな地域となっている[17]

また、日本の刑法では「特定人物や特定団体に対する偏見に基づく差別的言動」は侮辱罪名誉毀損罪の対象であり、差別的言動の被害が具体的になれば、事例によっては脅迫罪業務妨害罪の対象となるが[38]、特定しきれない漠然とした集団(民族国籍宗教・性的指向等)に対するものについては、侮辱罪や名誉毀損罪には該当しない[38]

日本国憲法や条約(批准済み)の中には以下のように人権保護を目的とした規定が複数存在するが、これらはいずれも直接的には行政府を拘束し規制するのが主目的であり、私人間には民法709条等の個別の規定の解釈適用を通じてその趣旨を実現するとする解釈が判例・通説の立場である[39]。また、日本政府も私人間については「私人間の関係において差別行為が生じた場合には、法務省の人権擁護機関において、その救済のため速やかに適切な措置がとられることとなっている。また、私法的関係については、民法により、不法行為が成立する場合は、このような行為を行った者に損害賠償責任が発生するほか、差別行為は、私的自治に対する一般的制限規定である民法第90条にいう公序良俗に反する場合には、無効とされる場合がある。更に、差別行為が刑罰法令に触れる場合は、当該刑罰法令に違反した者は処罰されることとなっている。 」としている(児童の権利に関する条約締結時日本政府回答)[40]

  • 1979年に批准した市民的及び政治的権利に関する国際規約が第20条第2項で、「差別扇動の言動は法を以って禁止する」、同規約第2条第2項は「規約締結各国は規約で認められる権利を実現するために適切な国内法制がない場合は整備する」とあるが、日本では既に憲法第14条第1項にて人種、信条、性別、社会的身分または門地により差別されないと定めているというのが日本政府の立場である[41]
  • 1995年に批准した人種差別撤廃条約第4条では「人種的優越または憎悪に基く思想のあらゆる流布、人種差別の扇動を『法律で処罰すべき犯罪であること』を宣言すること」(a項)と、「人種差別を助長し及び扇動する団体、及び組織的宣伝活動その他のすべての宣伝活動を、『違法であるとして禁止するもの』とすること」(b項)とされているが、日本では憲法の保障する集会、結社、表現の自由等を不当に制約するおそれ、言論を不当に萎縮させるおそれ、刑罰の構成要件とするには刑罰の対象となる行為とそうでないものの境界がはっきりしないなどの点から憲法に抵触しない限度において義務を履行する旨留保を行っている。日本のほかにもアメリカスイスが留保を付しており、イギリスフランスでは解釈宣言を行っている[42]
  • 日本国憲法第14条第1項では「すべて国民、法の下に平等であって、人種信条性別社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と、国民(日本国民)の平等権について明記されているが、この条文は直接的には私人間に適用されず、その趣旨は、民法709条等の個別の規定の解釈適用を通じて、他の憲法原理や私的自治の原則との調和を図りながら実現されるべきものであると解されるとされている[43]

ヘイトスピーチ規制とデモ規制

ヘイトスピーチ関連デモに特化して規制をする法はないが、日本におけるデモ規制に関する法令としては、静穏保持法騒音規制法など拡声機による騒音等を規制するもの、また地方公共団体では公安条例、また拡声機暴騒音規制条例が制定されている。2005年に広島県では不当街宣行為規制条例が成立している。公衆に著しく迷惑をかける暴力的行為については迷惑防止条例が全都道府県で制定されている。また破壊活動防止法では破壊的団体に対して6ヶ月間以内の期限と地域を定めてデモ活動を禁止させることができる規定が存在する。

法理上の議論

憎悪表現の法規制の必要性の是非については、ヘイトスピーチが憲法上保護されるべき「表現の自由」の域を超えた人権侵害に当たるとして法規制が必要であるとする意見がある一方で「表現の自由」に基づく正当な言論活動までもが規制される危険性から法規制はすべきではなく、現行法とカウンターデモで対処すべきであるという意見が出されている[44]

表現の自由の優越的地位と関連法理

日本の法学では、差別的表現に対する表現の自由の優越的地位に関連する法理として以下のものが検討されている。

  • 明白かつ現在の危険の法理(ブランデンバーグ原則)
  • 言論には言論で対抗する対抗言論の原則[45]
  • 規制による過度の自主規制(萎縮効果)[45]
  • 表現の自由の規制は広汎なものであってはならず、禁止対象を明確に示していなければならない(明確性の原則)[45]

憲法学者の市川正人は、表現の自由が真に根づいたとは言い難い日本国において差別的表現処罰法が有する効果をも考慮に入れて慎重に検討すべきであると論じた[45]

憲法学者の長谷部恭男は、特定の民族や社会階層等に関する差別的言論への規制について、言論内容の外延を規定することの困難、従属的地位にあるとされる人々の表現活動が直接に抑圧されるわけではないこと、従属性の固定化という観念が不明確であること、差別的言論の範囲が拡大しかねない懸念等から一般的支持を得ていないと指摘している[46]

「表現の自由」萎縮の危険性

憲法学者の赤坂正浩は、明白かつ現在の危険の法理やブランデンバーグ原則を踏まえて、「犯罪や違法行為を煽動する表現を国家から妨害されない市民の権利」としての「煽動的表現の自由」、および「マイノリティに対する差別・排斥・憎悪・侮辱等を内容とする表現を国家から妨害されない市民の権利」としての「差別的表現の自由」を論じ、特に日本ではメディアの過度の自主規制が表現の自由に対して萎縮効果を及ぼす面があることにも注意すべきであると論じている[47]

言論の衰退を招く危険性

青山学院大学特任教授の猪木武徳は、ヘイトスピーチには紛れのない基準が存在せず、一般的に被害者とされる少数の暴力的な集団が多数の普通の社会生活を送る人々を脅す例もあり、ヘイトスピーチ規制による国家による言論統制も警戒する必要があるとしている。また、はっきり意識されないまま、社会が醸し出す「空気」によって言論の自由が侵される危険性を指摘。異論を唱えにくい雰囲気が、「正義」の装いをまとって国民を知らず知らずのうちに思わぬ方向へと誘い込んでしまうこともありうると述べている。さらに、「合法的な仮面をかぶった専制精神」により、「「世論」とそれに迎合するメディアが、いつの間にか「力ある立場の人」の意向を忖度し、その反応を事前に予想して、自ら進んで「自己検閲」をしてしまう」危険性をあげている[37]

判例

2009年に発生した京都朝鮮学校公園占用抗議事件において、刑事事件として侮辱罪威力業務妨害罪、および器物損壊罪の成否が裁判で争われた。被告4名のうち3名については2011年平成23年)4月21日京都地裁判決での有罪が確定、1名については2012年(平成24年)2月23日最高裁上告棄却により刑が確定した。

一方民事裁判の中では、判決理由において京都地方裁判所在日特権を許さない市民の会(在特会)・主権回復を目指す会(主権会)の街宣を、原告(注:朝鮮学校側)の教育事業を妨害し、原告の名誉を毀損する不法行為に該当し、かつ、人種差別撤廃条約上の「人種差別」に該当すると言及しており、判決では被告ら(注:在特会・主権会)に対する損害賠償請求を認める判決を出している[48]。判決では「民法に基づき、具体的な損害が発生して初めて賠償を科すことが可能」とし、現行法では損害賠償及び街宣差し止めは具体的な被害者及び具体的な損害を立証することが必要とされた。ただし、具体的な損害には無形損害も含まれるとされ、2014年7月には大阪高等裁判所において1審を支持する判決が言い渡され、被告側が上告したが、2014年12月に最高裁は上告棄却し、1審・2審判決が確定した。

週刊朝日橋下徹大阪市長に関する連載記事の第1回において、橋下の父が大阪府八尾市被差別部落出身であるという情報を掲載した問題について、2015年2月18日、大阪地裁における損害賠償請求訴訟で原告(橋下徹)と被告(朝日新聞出版佐野眞一)の間に和解が成立した[49]。橋下に対して朝日新聞出版が解決金を支払う内容で、この件は橋下が自身に対して向けられたヘイトスピーチであるとしていた[50]

各所の見解・対応

国連

国連人権委はジュネーヴで2014年7月15日、16日に対日審査が行われ、日本社会で韓国人や中国人への人種差別的な言動が広がっていることについて現行の刑法や民法で防ぐのは難しいとの認識を示し、法的整備を求め2014年7月24日差別をあおるすべての宣伝活動の禁止を勧告した[51]

人種差別撤廃委員会は2014年8月29日ヘイトスピーチを法律で規制するよう日本国政府に勧告した。街宣活動やインターネット上で人種差別をあおる行為に対する捜査や訴追が不十分であると指摘。(1)街宣活動での差別行為への断固とした対応、(2)ヘイトスピーチに関わった個人や組織の訴追、(3)ヘイトスピーチや憎悪を広めた政治家公務員の処罰、(4)教育などを通じた人種差別問題への取り組みなどを勧告した[52][53]

行政府

閣僚

2013年5月7日5月9日にかけて参議院でヘイトスピーチについて問われ、安倍晋三首相は「一部の国、民族を排除する言動があるのは極めて残念なことだ。日本人は和を重んじ、排他的な国民ではなかったはず。どんなときも礼儀正しく、寛容で謙虚でなければならないと考えるのが日本人だ」[31]、「日本の国旗がある国で焼かれようとも、我々はその国の国旗を焼くべきではないし、その国のリーダーの写真を辱めるべきではない。それが私たちの誇りではないか」[32]と語り、法務大臣谷垣禎一は「憂慮に堪えない。品格ある国家という方向に真っ向から反する」[33]と語った。さらに谷垣は5月10日の記者会見で、ヘイトスピーチについて「人々に不安感や嫌悪感を与えるというだけでなく、差別意識を生じさせることにもつながりかねない。甚だ残念だ。差別のない社会の実現に向け、一層積極的に取り組んでいきたい」と述べた[34]

これらに対し、在特会側は「1万3000人に増えた会員数がその成果だ。」と反論した[54]。一方で、「安倍首相が言いたいのは<あの連中は、日本の国旗を焼く連中だ、日本の敵だ、しかし、私たち日本人は、そんな低レベルに合わせるべきでない>ということです。5月7日の発言は、ヘイト・スピーチを批判するのではなく、かえって差別や偏見を助長するものと多くの被害者が受け止めています。」という在日の見解も生じた[55]

2013年10月7日菅義偉官房長官は、在特会主権会に関する朝鮮学校訴訟の判決についての質問で「最近、ヘイトスピーチと呼ばれる差別的発言で商店の営業や学校の授業などが妨害されていることは、極めて憂慮すべきものがある」と述べた[56]

外務省

2013年1月、外務省人種差別撤廃条約の第4条、「人種的優越又は憎悪に基づく思想の流布、人種差別の扇動等の処罰義務」の(a)(b)の留保について、「人種差別思想の流布等に対し、正当な言論までも不当に萎縮させる危険を冒してまで処罰立法措置をとることを検討しなければならないほど、現在の日本が人種差別思想の流布や人種差別の煽動が行われている状況にあるとは考えていない」との見解を発表している[57]

法務省

法務省は2015年1月よりヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動を展開している。具体的には「ヘイトスピーチ、許さない。」「特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動を見聞きしたことがありますか。こうした言動は、人としての尊厳を傷つけたり、差別意識を生じさせることになりかねず、許されるものではありません」と呼びかける内容のポスターを約16,000枚作成・配布するほか、学校や企業などでの啓発機会の拡大に努めるとしている[58][59]

公安調査庁では、2011年(平成23年)度版「内外情勢の回顧と展望」にて、集会やデモで差別的な罵倒や誹謗中傷を行う市民団体を「排外主張を掲げ執拗な糾弾活動を展開する右派系グループ」と位置づけ、動向を監視していることを明らかにしている[60]。2014年(平成24年)度版では、「右派系グループを「レイシスト」(差別主義者)、その訴えを「ヘイトスピーチ」と非難する「対抗勢力」」との小競り合いが掲載された[61]。2015年(平成27年度)では、「右派系グループは,人種差別的な言動などを用いて在日外国人排斥を主張する活動が,いわゆる「ヘイトスピーチ」(憎悪表現)であるとして社会的批判が高まっため,こうした言動を控えつつ,日韓国交断絶」を訴える活動を活発化させた。」とした[62]

日本学術会議

内閣府の特別機関である日本学術会議は、2014年9月、「最近の対外的緊張関係の解消と日本における多文化共生の確立に向けて」と題した報告のなかで、ヘイトスピーチは国際関係悪化の原因だと指摘、在日外国人らへの差別をあおるヘイトスピーチなどの排外的言動を問題視する報告を発表した[63][64]

立法府

自由民主党

2014年8月28日、自民党はヘイトスピーチ対策等に関する検討プロジェクトチームの第一回会合をおこない、「国連人種差別撤廃委員会の対日審査について外務省よりヒアリング」「国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律について警察庁よりヒアリング」を議題とした[65]

2014年10月15日の会合では「いわゆる京都朝鮮第一初級学校事件について」「自由権規約委員会及び人種差別撤廃委員会による対日政府報告審査に対する最終見解について」を議題とした[66]

2014年11月4日の会合では「前回からの課題について 警察庁・外務省より説明」を議題とし[67]毎日新聞は「韓国での対日ヘイトスピーチの実態や韓国政府による規制の検討状況を調査するよう関係省庁に求めた」と報道し、「韓国政府に対日ヘイトスピーチ対策を促す狙い」と判断した[68]

自民党の「ヘイトスピーチ対策等に関する検討プロジェクトチーム」は日本国内での規制を検討するにあたり、韓国での対日ヘイトスピーチの実態や韓国政府による規制の検討状況を調査するよう関係省庁に求めている。座長の平沢勝栄は「(韓国側が)自分のことを棚に上げて日本にだけ(批判を)言うのは理屈に合わない」と語った[69]

民主党・社民党

2015年5月22日、民主党は「人種等を理由とする不当な行為」を禁止(罰則なし)、実態を調査し、首相に意見、勧告できる審議会を内閣府に設置、国や地方自治体に差別防止策の実施を求める、人種差別的な街宣活動を規制する「人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律案」を社民党と共同で参議院に提出した[70][71]

公明党

2014年9月30日、公明党はヘイトスピーチ問題対策プロジェクトチームを発足させた。座長の遠山清彦は「複雑な要素が入った難しい問題だが、人権を重視する公明党の立場から、さまざまな観点で検討を進めたい」としている[72]。2015年2月6日、プロジェクトチームの遠山清彦高木美智代國重徹らが、新大久保の韓国料理店経営者や在日本大韓民国民団東京本部の関係者と面会し、嫌韓デモによる被害の実態聴取を行った[73]。党代表の山口那津男は基本的人権、特に表現の自由や思想信条の自由は日本国民に限らず広く外国人にも認められている、との認識を示している[74]

日本共産党

日本共産党は、「ヘイトスピーチを許さないために、人種差別禁止を明確にした理念法としての特別法の制定をめざす」としている[75]。また、安倍晋三橋下徹らの「侵略戦争美化・合理化の歴史認識」や[76]、2009年2月に在日特権を許さない市民の会の関西支部長らと共に写真に写った山谷えり子、2011年にネオナチの団体の代表と共に写真に写った高市早苗稲田朋美ら、「ヘイトスピーチに関連する勢力や極右勢力と政権与党幹部との〝癒着〟がヘイトスピーチの温床になってい」ると主張している[75]

政党別アンケート

2014年12月14日に執行された第47回総選挙に際して毎日新聞が全候補者を対象に行った候補者アンケートにおいて、「特定の民族や人種に対する憎悪表現(ヘイトスピーチ)を法律で規制することに賛成ですか、反対ですか。」という設問が用意された。「賛成」と回答したのは候補者の70%、当選者の60%だったのに対し、「反対」と回答したのは候補者の16%、当選者の17%だった。また当該アンケートに基づくボートマッチ「えらぼーと」の利用者181,575人の回答は「賛成」が55%、「反対」が32%となった[77]

2014年11月29日、「外国人人権法連絡会」が、各党に行ったアンケートにおいて、「国としてヘイトスピーチ対策を取る必要性について」聞いた。回答結果は、「人種差別撤廃基本法」などの法整備については、生活の党と新党改革は回答無し。自民は「検討中」、公明は「どちらでもない」。維新と次世代は「未定」。共産、社民、民主が「賛成」[78]

地方自治体

首長等

  • 沖縄県知事翁長雄志は、那覇市長時代の2013年10月9日の記者会見の中で、2014年1月27日のオスプレイ配備抗議行動の際にヘイトスピーチを受けたということと関連して「琉球人は出て行け、中国スパイ、翁長出てこい」と言われた、と語り、「政治の世界にいる人間には慣れているが、一般県民はびっくりして大変な状況でした」と語った。また「周辺を見渡しましたら、そこで買い物をしている人たちは一顧だにしない。まったく正常な中に異常な行動の姿があるのを見て、何かわけのわからない、嫌な予感がありました」と語った。また京都地裁の判決と関連して、ヘイトスピーチについて「それぞれいろいろな思いがあるんでしょうけれども」と留意しながら「日本の国の品位という意味でも、国民一人一人の品位という意味でも、慎んでやるべきだと」と語った。また「表現の自由との関連もあるし、今の民主主義というか、法律ではなかなか解決しにくい分野だな」と語り、市庁の周りでの市長に対する抗議行動に関して、周辺住民の迷惑と関連して「激しい行動とともにスピーカーでやるやりかた、そこまで来ることの原因も含めて、今の現状は憂うべきところがある」と語った[79]
  • 大阪府門真市は、特定の人種への差別を扇動するヘイトスピーチを繰り返す排外主義団体には、既存条例を活用し、公民館公園など市施設を使わせない方針を明らかにしていると2014年4月9日の「毎日新聞」は報道した[80]。しかし、「市の考え方と異なる表現や誤解を招く紙面構成」であるとして同市は毎日新聞社に対して申し入れを行った。市の公式見解としては「日本国憲法を擁護する立場として、表現の自由は保障すべきものと考えており、市内公共施設の使用について、原則的には団体や個人を特定し、使用制限を行うものではありません。そのような中、市民の安全と尊厳を守ることを土台として、公共施設の使用の許可申請書の内容等を総合的に判断し、各施設の管理に関する条例及び規則等に抵触する場合については、不許可とします」と記している[81]
  • 神奈川県川崎市の市長福田紀彦は、2014年5月31日の住民座談会の中で、ヘイトスピーチを伴うデモに対して、「ヘイトスピーチの話って聞くたびに、なんていうのか、怒りを通り越して情けないという思いがいたします」と語り、「昔からこういう風に続いてきている差別というのもしっかりと根絶していくには、子どもたちの教育というものもしっかりやっていくということも、私は重要なことだと思っていますので、そういう風に進めていきたいと思っています」と語った[82]
  • 大阪市市長橋下徹は、2014年7月10日の記者会見で、ヘイトスピーチを伴うデモに対して「表現の自由もあり、スピーチ自体の制限や罰則は難しい」としながらも「やり過ぎで問題だ。言葉が表現の自由をこえている」「発言内容を証拠保全し、表現について第三者委員会で議論し、結果を公表する」という考えを示した[83][84]
    • 2014年9月19日の記者会見で橋下は、「日本人に対するヘイトスピーチについても同じような態度で臨むのかと言いますけど、そりゃ臨みますよ。日本人に対するヘイトスピーチなんていうのは週刊朝日が僕に対してやったじゃないですか。同じように週刊朝日や朝日新聞に対しても徹底的に抗議してね、謝らせましたよ。今訴訟をやってますが。だから日本人に対するヘイトスピーチにも僕は同じ姿勢でやってるつもりですよ」と述べ、日本人によるヘイトスピーチだけではなく日本人に対するヘイトスピーチも存在することを前提に、規制の必要性について語った[50]
    • 2014年9月25日、橋下は「特別永住者制度がおかしいと言うなら日本政府に言うべきだ。公権力を持たない人たちを攻撃するのは、ひきょうで格好悪い」と発言した[85]
    • 2014年10月20日、橋下は在日特権を許さない市民の会会長(当時)の桜井誠との会見[86][87][88]の後、ヘイトスピーチや差別をなくす方法として在日韓国・朝鮮人らの特別永住者制度を見直す考えを示した[89]
  • 東京都知事舛添要一は、2014年7月18日の記者会見で、ヘイトスピーチに関して「根本的に人権に対する挑戦」と語り、「人権啓発キャンペーンのようなところで徹底的にこれは、そういうことは止めるべきである」と語った。また「言論の自由はめちゃくちゃ重い」ということに留意しながらも、ヘイトスピーチの規制については、「大体の国民のコンセンサスが生まれれば、これはむしろ、東京都が条例ということよりも国権の最高機関である国会できちんと法律をつくるなり、刑法を改正するなりやっていただくと良いと思います」と語った[90]
    • 韓国外遊から帰国した舛添要一は記者会見での質疑応答で「そもそも論ですが、韓国の反日運動というのがありまして、例えば今上天皇昭和天皇の張りぼてを作って侮辱する、肖像画を踏みつける、国旗を国会議員が踏みつける。デモでも、「キルジャップ」ということをやっている。日本に核爆弾を落とすと、こういうことがかなりある。これがまず反韓国感情の源と言っても過言ではない。(中略)知事にお聞きしたいのですが、天皇陛下や国旗が侮辱されていることについてどう思われるのか、これがヘイトスピーチじゃないかと」と、ヘイトスピーチ対策に関して質問され、「よその国が反日運動し、われわれを、ジャップという言葉で呼ぶということに対しては極めて不快で、快く思いません。どの国の国民も同じことをやられると不快だと思いますから、たとえばこういうことについて野放しにしてよいのだろうかと。韓国は韓国のやることですから、われわれがどうこう言う話ではありません。これは韓国が法律でやればよい」と答えている[91]
    • 毎日新聞が2014年8月5日に行ったインタビュー記事では、舛添は「頻発する在日コリアンらに対するヘイトスピーチ(憎悪表現)を巡り、自民党の政調会で立法措置を含めた対策を検討するよう同党側に要請した」と報道し、「国会できちんと法律を作ることが、問題に対応することになる」「そういう動きを加速化させるよう仲間の国会議員に言ってある。全体で網をかけた方がいい」との舛添の発言を引用し、「表現の自由に抵触しない範囲で法整備が必要との見解を示した」と報道した[92]

地方議会

2014年に入ってから各地の地方議会で、ヘイトスピーチの国による法規制などを求める意見書の採択が行われるようになっている。2015年2月時点で、都道府県議会では神奈川県長野県奈良県鳥取県福岡県で、市区町村議会ではさいたま市上尾市宮代町(以上埼玉県)・葛飾区東村山市国立市東久留米市(以上東京都)・須坂市塩尻市佐久市東御市安曇野市(以上長野県)・名古屋市愛知県)・京都市向日市(以上京都府)・堺市大阪府)・三郷町奈良県)・美波町徳島県)・土佐清水市高知県)で、それぞれ意見書が採択されている[93][94]

2015年5月22日、大阪市は「人種・民族に係る特定の属性を有する個人・集団を、社会から排除すること」を審査会が問題行為として認定すれば、個人名、団体名を公表、また訴訟費用の貸付を行うとしたヘイトスピーチ抑止条例案を市議会に提出した[95]

弁護士

2013年3月29日日本弁護士連合会前会長の宇都宮健児ら有志の弁護士12人が、新大久保での反韓デモに対して「これ以上放置できない」として東京弁護士会に人権救済を申し立てた。また弁護士らは「警察には外国人の安全を守る責任があるというのに、適切な対策を取っていない」として、警視庁に対して周辺住民の安全確保を申し入れた[96]

2013年7月26日には、第二東京弁護士会が「現代日本のヘイトスピーチ」というシンポジウムを開催している[97]

2013年7月には、大阪弁護士会がヘイトスピーチを伴うデモに対して、「憲法第13条が保障する個人の尊厳人格権を根本から傷つける」と批判する声明を発表している[98]。ただし日本国憲法が保障しているのは当然ながら日本国民の権利である。大阪弁護士会が、2014年5月に発行した「大阪地域司法計画 2014」の中でヘイトスピーチについて「外国人に対する誹謗中傷を含んだ街宣活動が頻繁に行われている」「子どもの成長に極めて深刻な悪影響を及ぼす」「表現の自由との関係に配慮しつつも、法規制についての検討・研究を行う」と言及している[99]

日本弁護士連合会は、2015年5月13日、「人種的憎悪や人種的差別を煽動・助長する言動(ヘイトスピーチ)など人種差別の実態調査」「人種差別禁止の理念などを定めた「基本法」の制定」「人権侵害からの救済などを目的とする「国内人権機関」と、個人が国際機関に人権救済を求める「個人通報制度」の創設」の3点を求める意見書を国に提出した[100]

学識経験者

ミルドベリー大学教授のエリック・ブライシュは「反マイノリティの発言を標的にして精緻に作られた法制度が、むしろ人種的・宗教的マジョリティの支配を批判するマイノリティに適用されてしまう、というものがある。(中略)しかし、最悪のシナリオは、最も可能性の高いシナリオというわけではない。」とし[101]、「どの程度の自由レイシストに与えるべきなのか。その最終的な答えはこれである。歴史を見て、文脈と影響に注意せよ。原則を練り上げ、友人を説得し、議員に訴えよ。そして、うまくつきあっていける価値バランスとともに歩んで行くのだ。」と結論した[102]

バード大学教授でジャーナリストのイアン・ブルマはヘイトスピーチの規制は間違っていると主張、「法律で特定の意見を禁止することが賢明だろうか。特定の意見の表明を禁じても、その意見はなくならない。水面下で表現され続け、さらに有害なものになる。中東やほかの地域でテロの社会的・政治的基盤を成すものは、外国人差別的な言論を公的に禁じただけでは、決して消えない」とした[103]

九州大学准教授の施光恒は安倍政権が「ヘイトスピーチ」規制に力を入れる理由として、近い将来の移民受け入れのための条件整備の側面を指摘している[104]。また「ヘイトスピーチ」という英語(カタカナ語)を使うのでなく、「何が不当なのか」という問題の本質に目を向けるためにも、日本語で正確に表現したほうがいいとも主張している。例を挙げれば「ジャパニーズ・オンリー」は飲食店などで掲示されればヘイトスピーチとなりうるが、その印象が外国人地方参政権の問題を巡り対立する一方の側に不当に有利に働きかねない、と危惧している[105]

青山学院大学教授の福井義高は、慰安婦南京事件で日本を擁護する歴史認識までがヘイトスピーチだとして処罰されうる欧州のようなヘイト規制を、日本で招いてはならないとした[106]

政治学者の五野井郁夫は「なぜヘイトスピーチは蔓延するのか?」と題し、「架空の「在日特権」」等「「抽象的な言葉が人を傷つけるとき、それが可能になるのは」、わたしたちの日本語として流通している言葉の体系が蔑視表現や差別を「まさに人を傷つける力を蓄積し、かつ隠蔽している」ものとなっているためである。それゆえ「人種差別的な誹謗をする人は、そういった誹謗を引用し、言語を介してそのような発言をしてきた人たちの仲間になっていく」というサイクルが出来上がるのだ。」と論じた[107]

社会学者の明戸隆浩は、ブライシュ著書の訳者解説において、日本では戦中言論統制の反省から表現の自由が支持されることが多いが、「日本ではアメリカと違って反人種差別にかかわる規範がほとんど形成されてこなかった」ことを確認すべきであると主張している[6]。また、ヘイトスピーチの日本における文脈として、京都朝鮮学校事件等における在特会によるヘイトスピーチ人種差別撤廃条約に対する日本政府の「消極的な姿勢」を挙げた[108]

日本においてヘイトスピーチとされた事例および様態

在特会などの右派系市民団体

在日特権を許さない市民の会(在特会)など、「行動する保守」と言われる右派市民団体が主催する反韓デモにおいて、過激なプラカードや過激なコールが頻繁に行われている。李明博竹島上陸事件や対馬仏像盗難事件以降、在日を含む韓国人に対する抗議デモの側面が強まってからはこの傾向は特に顕著になり、在特会会長の桜井誠自ら「在日韓国人をテポドンにくくりつけ、韓国に打ち込みましょう!」とデモの最中に叫んだ[109]

なお、桜井誠は2011年5月に京都市内で開催した、在特会の講演会の中で阪神教育事件などの在日朝鮮人が戦後直後に起こした事件などを例にあげ「必ずこの国には殺戮戦が訪れる。在日韓国人・朝鮮人・そして反日極左、今ここで工作活動やってるバカとね、本気で命のやりとをやって叩き殺さなきゃいけない時が 必ず来るんです」「泣いて許しを乞う相手を貴方達本当に一刀両断で斬り捨てることが出来るか?と。大変厳しい選択です。朝鮮人であってもまだ子供です。この子供をでも生かしておいたらね、また同じ事を繰り返される」など、ジェノサイドを煽る発言まで行っている[110]

2009年4月11日、埼玉県蕨市で「カルデロン一家追放デモ」が行われた。中村一成安田浩一はこの事件が差別デモが深刻化した端緒として捉えている[111][112][113]

2009年12月4日には、在特会・主権会会員らが京都朝鮮第一初級学校京都市南区)の勧進橋児童公園の不正占用に抗議するとして、同校校門前で街宣を行った。抗議者側のメンバーらは学校に向けて「北朝鮮のスパイ養成機関、朝鮮学校を日本から叩き出せ~」「約束というものは人間同士がするものなんですよ。人間と朝鮮人では約束は成立しません」等と叫んだ。アボジ会(父親会)副会長は「非常に断片的で、それゆえに相手を傷つける言葉を、ある意味的確なタイミングで使うわけです。もっと怖かったのは言葉と言葉が通じ合わない。人間としての会話が成立していないということでした」と語っている[114]。初級学校側は街宣を行った在特会・主権会側のメンバーを刑事告訴[115]、抗議者側のメンバーは逮捕された。桜井誠の自宅も家宅捜索を受けている[116][117]

2011年4月21日には、京都地裁で街宣を行った在特会・主権会側のメンバー4名に執行猶予付きの実刑判決を言い渡している[118]

また、朝鮮学校側は在特会・主権会のメンバーらを相手に民事裁判を行い、京都地裁が2013年10月7日に原告(初級学校側)の主張を認め、街宣禁止(移転後の所在地を中心とした半径200メートル以内も含めて)と1225万円賠償(仮執行宣言付き)を在特会・主権会側に命令した。なお京都地裁判決は、裁判所人種差別撤廃条約の直接の名宛人として国際法上の義務を負うとの解釈を示した初めての事例であった[119]が、大阪高裁ではこの判断は覆され間接適用説から判決理由が判示された[120]。この事件については、国際連合人種差別撤廃委員会が取り上げ、また2011年4月8日にアメリカ国務省が発表した「2010年国別人権報告書」で言及された[121]

一方で、在特会側も初級学校側を告発し、初級学校の前校長が、京都市が管理する公園を無許可で占用したとして、都市公園法違反で書類送検されている[122]

2013年2月9日東京都新宿区新大久保で実施された、行動する保守系の団体が主催した李明博竹島上陸事件への抗議デモでは、参加者に、「朝鮮人をガス室に送れ」というシュプレヒコールや「朝鮮人 首吊レ 毒飲メ 飛ビ降リロ」「犯罪民族朝鮮人は日本から出て行け」「よい韓国人も悪い韓国人もどちらも殺せ」「畜生、ケダモノ。人非人の言葉がこれほど当てはまる民族は、朝鮮民族以外にありません」「朝鮮人をガス室に送れ」「在日韓国人をテポドンにくくりつけて、韓国に打ち込みましょう!」と書かれたプラカードを掲げる者が出た[123][124]

2013年2月24日には、在特会らが大阪市生野区の鶴橋で行った街宣の中で女子中学生が登場し「まず日本人の人に聞きます。ここにいるチョンコが、憎くて憎くてたまらない人は何人いますかーっ!手ぇ挙げてくださーいっ!」「もう殺してあげたい/いつまでも調子にのっとったら/南京大虐殺じゃなくて鶴橋大虐殺を実行しますよ!/日本人の怒りが爆発したら、それくらいしますよ!/大虐殺を実行しますよ/実行される前に自国に戻ってください/ここは日本です。朝鮮半島じゃありません/いいかげん、帰れ!」などと叫んだ[125][126]。この件に関しては、英国の大衆紙「デイリー・メール[127]台湾の大手ニュースサイトの「東森新聞雲」[128]など、海外でも報じられた。

行動する保守系の団体が2013年3月に大阪市内で行った日韓国交断絶国民大行進というデモではコーラーが「街中で韓国・朝鮮人を見かけたら、石を投げつけ、朝鮮人の女はレイプしてもいいんですよ! 我々がやられてきたことです。朝鮮人をぶち殺しましょう! 」と叫んでいる。このことは日本では勿論、韓国国内でも報じられ、強い非難の声が上がった[129]

なお、在特会のヘイトスピーチの対象は在日韓国人だけでなく、被差別部落出身者にも向けられている。在特会副会長の男が2011年に奈良県御所市水平社博物館の前で街宣と称して「この目の前にある穢多博物館ですか、非人博物館ですか、水平社博物館ですか、なんかねえ、よく分からんこの博物館」「いい加減出てきたらどうだ、穢多ども」と叫んだ際には、水平社博物館側が後日に民事訴訟を起こして、在特会側が敗訴している。裁判所は副会長の男に対して、水平社博物館に慰謝料150万円を支払うよう命じた[130]

また、在特会は在日中国人に対するヘイトスピーチを行っているとも指摘される。2012年10月には在特会らは「史上最大の反中デモ」と称して池袋でデモを行っているが、参加者の中には「ゴキブリシナ人を日本から叩き出せ」などと叫ぶ者もいた。デモ終了後に桜井誠らは「パトロール」と称して、華僑の商店の多い一角に向かって、そこで「日本が戦前大陸に行ったことが侵略なら、てめえらが日本にいること自体が侵略なんだよ!」と叫んでいる[131]

公安調査庁は『内外情勢の回顧と展望(平成23年1月)』において、「排外的主張を掲げ執拗な糾弾活動を展開する右派系グループ」とするコラムにおいてこれらの動きを紹介している[132]

反ヘイトスピーチ運動に対する在特会側の反応

在特会は、2013年4月26日に「警察に許可を得たデモであるにもかかわらず、デモに抗議する者たちから妨害を受けた」とされることや、妨害者に自らが「ヘイト」「レイシスト」と批判されたことが、人権侵害に当たるなどと主張し、日本弁護士連合会人権救済を申し立てた[133]

アイヌ民族について

北海道アイヌ民族に属する5名が原告、アイヌ民族に関する資料を出版した出版社を被告とした判例がある。出版社が発行した資料にはアイヌ民族に対する差別表現や個人の病歴などの医療情報が実名とともに掲載されていた。原告らは民族的マイノリティとしての人格と名誉、名誉感情を侵害されたとして、原告らが名誉棄損に基づく謝罪と慰謝料を請求した事例である(アイヌ差別図書事件)。

当事件は「民族的少数者としての人格権」は不法行為に基づく損害賠償請求等による法的救済の対象となるかが争われた事件である。札幌地裁は「本件各図書の編集、出版、発行によって、作成当時のみならず現在に至るまでのアイヌ民族全体に対する差別表現がされたとみる余地があるとしても、その対象は、原告ら個人でなく、アイヌ民族全体である」「原告らは、これらの直接の被害者に対する権利侵害があったことによって、人格権の侵害を受けたというものであって、民族的少数者としての人格権の侵害は間接的被害にすぎない」として、原告らが主張する「民族的少数者としての人格権」を否定した[134]

沖縄在日米軍に係るヘイトスピーチ、ヘイトクライム 

米軍の軍用機オスプレイ沖縄県の米軍基地配備に反対する者らに向けられたヘイトスピーチが行われているという指摘もある。那覇市長翁長雄志は、2013年10月の記者会見の中で、東京で行われた反オスプレイデモに自身も参加した際に沿道から「琉球人出ていけ。中国スパイ。オナガ、出て来い」という暴言、ヘイトスピーチを自分に向けられたと語っている[135]

無防備地域宣言沖縄ネットワークの事務局長、西岡信之は、オスプレイ東京行動に対する行動する保守の「中国、韓国のスパイ、反日左翼を東京湾に沈めろ!」「沖縄土人ではなく沖縄を守れ!」などの言論による攻撃を「沖縄における憎悪犯罪」として挙げている[136]

一方で、沖縄県では市民活動家を自称する者によって、在日米軍基地に反対する団体の一部構成員が、アメリカ軍兵士やその家族、子供に対して「ファック・ユー!(「くたばれ」の意。元々は「お前を強姦してやるぞ」という意。)や、「ヤンキー・ゴー・ホーム!(1952年の流行語)」などの罵声を浴びせるヘイトスピーチが続いているとされる。ヘイトスピーチは米軍兵だけではなくその家族に対しても向けられているとされ、この様子を評して夕刊フジでは常軌を逸しているとしている。この事態に対して沖縄の警察は対処していないという。[137][44]。この件に関して、ジャーナリスト大高未貴は、反韓デモが盛んになるにつれて「ヘイトスピーチ」という言葉はマスコミにより盛んに使用されるようになったが、その一方、それ以前からあった沖縄の米軍兵士やその家族・子供に対するヘイトスピーチやヘイトクライムについては、そういったマスコミが取り上げることはないと、その偏向ぶりを指摘している[137]。在沖縄海兵隊バトラー基地の政務外交部の次長は大高の取材に対し、基地のゲートを通過する車両に向けヘイトスピーチを繰り返す抗議団体の実情を見せた上で「われわれは兵士ですから耐えられます。しかし、家族はそうではありません。勤務地更新のとき、妻や子供たちに『もう日本は嫌だ』とせがまれる兵士が増え、沖縄での更新を希望する兵士は激減しています」と述べた[137]

在沖縄米軍海兵隊のロバート・エルドリッジ政務外交部次長は、普天間飛行場周辺で行われている辺野古移設反対運動はヘイトスピーチであるとの認識を示している。エルドリッジはインターネット番組「チャンネル桜」に出演。反対運動について「県民、日本国民を代表しているとは思っていないので安心してください」と述べた上で、「ご存じのように普天間周辺でいろいろなヘイトスピーチをされている方がいる」と指摘。反対運動を批判した。琉球新報はこれを「抗議行動は「ヘイトスピーチ」 海兵隊幹部、また暴言」という見出しで報じた[138]

沖縄米軍基地反対派によるヘイトクライム 

「テキサス親父」の通称で知られる米国人トニー・マラーノ普天間飛行場や辺野古周辺を自ら取材している。「そこには60~70代とみられる数人の左翼活動家が『オスプレイ配備反対』というパネルを首からブラ下げて、赤いメガホンで大声で叫んでいた。近づくと、手も触れていないのに、『助けてください』『暴力を受けています』などと事実無根の被害を訴え始めた。表向き、彼らは『平和』や『人権』を主張していたが、まったく対話も会話もできない連中だった」「えたいの知れない死体写真を車のガラスに押し付ける者もいるという」「これは完全な『ヘイトスピーチ』だ。いや、それ以上の『ヘイトクライム』といったレベル」であるという。前述のエルドリッジ政務外交部次長が一部のメディアからの批判に晒されていることにも触れ、事実を指摘したエルドリッジを批判するのはおかしいと主張している[139]

2015年3月27日沖縄県読谷村で公園で遊んでいた6歳のアメリカ人と日本人のハーフの女児がマスクとサングラスをした5人の男に押し倒され、腹部を踏みつけられるなどの暴行を受けた。男たちは「なんでこんなところにアメリカ人がおる?」と凄んだという。沖縄教育オンブズマン協会会長は「米軍基地に対する怒りのはけ口がハーフの女の子に向けられたのかも知れない。平和運動の名のもとに事実上のヘイトスピーチが横行している実態がある。」と語っている[140]

メディアとヘイトスピーチ

2008年には毎日新聞社の英語版メディアが、日本人の文化について、低俗及び誇張や虚構に基づく「日本人差別的」な配信を行っていたことが発覚している。

戦後70年に際して予定される首相談話に関連して、東京新聞朝日新聞毎日新聞各紙は、「侵略の定義は定まっていない」と国会で答弁した安倍首相を牽制する社説を掲載した。阿比留瑠比はこれらを取り上げ、安倍首相と同趣旨の発言が過去に社民党の村山富市首相(当時)や民主党の玄葉光一郎外相(当時)等によってもなされているにもかかわらず、三紙が安倍首相だけを執拗に攻撃するのは「偏見や無知に基づく不公正で不適切な見解」であると批判し、「特定個人を標的にした悪意あるヘイトスピーチ(憎悪表現)だといわれても仕方あるまい」と結んでいる[141]

朝日新聞3月16日、毎日新聞3月18日夕刊、東京新聞3月29日でヘイトスピーチの語と共に西欧では犯罪であることを報道した[29]

産経新聞2015年2月11日朝刊7面の曽野綾子の連載コラム欄で「労働力不足と移民「適度な距離」保ち受け入れを」と題し「南アフリカ共和国の実情を知って以来、私は、居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった。」とする記事を掲載[142]、「ロイター」や「ウォール・ストリート・ジャーナル」が批判的に報じ、アフリカ日本協議会や南アフリカのモハウ・ペコ駐日大使が抗議文を送るなど、非難が集まった[143][144][145][146]。産経新聞執行役員東京編集局長の小林毅は「当該記事は曽野綾子氏の常設コラムで、曽野氏ご本人の意見として掲載しました。コラムについてさまざまなご意見があるのは当然のことと考えております。産経新聞は、一貫してアパルトヘイトはもとより、人種差別などあらゆる差別は許されるものではないとの考えです」とコメントした[145]。曽野がブログで「もし記事に誤りがあるなら、私はそれを正します。私も人間ですから、過ちを犯します。しかしこの記事について、誤りがあるとは私は思いません」と書いたことはウォール・ストリート・ジャーナルで報じられた[144][146][147]。曽野は『新潮45』2015年4月号の連載コラムで「第四十七回 『たかが』の精神」の題で、たかが一作家の自分の考えに対して「肩書一つ正確には書けなかった新聞や通信社が、こうやってヘイト・スピーチを繰り返し、そこに覆面のツイッターが群衆として加わって圧力をかけ、どれだけの人数か知らないが、無記名という卑怯さを利用して、自分たちは人道主義者、曽野綾子は人種差別主義者、というレッテルを貼ることに無駄な時間を費やしている、その仕組みを今度初めて見せてもらって大変ためになった。私は覆面でものを言う人とは無関係でいるくらいの自由はあるだろう。」と綴った[148]

大江健三郎の言説は産経新聞により批判されている。特集記事で拓殖大客員研究員の岩田温が在特会がヘイトなら日本人を醜いとした大江の演説も「紛れもなくヘイトスピーチ」でダブルスタンダートであるとし[106]、2015年の憲法記念日横浜で開かれた「護憲集会」で演壇に上った際、批判の矛先を向けた安倍晋三を「安倍」と呼び捨てにしたこと対し、編集長の乾正人は「どんなに相手の考え方や性格が嫌いでも、一国の首相を呼び捨てで非難するのは、大江さんが大嫌いなはずの「ヘイトスピーチ」そのものです。」と評した[149]

慰安婦問題とヘイトスピーチ

元東京大学教授の酒井信彦は、「朝日新聞では最近、『ヘイトスピーチ(憎悪表現)』『排外主義』といった言葉が頻繁に使われている。私の印象では、同紙が慰安婦問題の大誤報を認めたあたりから目立ち始めた気がする」と指摘し、「ヘイトスピーチも問題だが、一連のヘイトスピーチ批判にも、自分たちと異なる意見に対して、レッテルを貼って封殺しようとする危険性を感じている」と警戒をあらわにしている[150](時期については#国連も参照のこと)。また、「韓国では日本に対するヘイトスピーチが、以前から盛大に行われている」ことを朝日新聞はほとんど報道していないと指摘した上で、「朝日新聞は、慰安婦問題の大誤報で、日本にとんでもない冤罪をなすりつけたのだから、これも明らかな日本と日本民族に対するヘイトスピーチである」と述べている[151]

『朝日新聞』の慰安婦誤報問題に関連し、2015年1月26日、「(朝日新聞の報道により)誤った事実が国際社会に広まり、日本国民の人格権や名誉を著しく傷つけられた」として、自民党の長尾敬衆院議員や、上智大学の渡部昇一名誉教授(原告団長)、作曲家のすぎやまこういちらの著名人、一般市民ら約8700人が、朝日新聞社に1人当たり1万円の慰謝料と謝罪広告を求める訴訟を東京地裁に起こした。原告団の一人で拓殖大学の藤岡信勝客員教授は「日本や日本人全体が傷つけられ、侮辱され、道徳性を踏みにじられ、精神的苦痛を味わっている。海外でイジメられている子供もいる。裁判という手段を使って、朝日に対して、日本人全体への謝罪を要求したい」と述べた[152]

2015年2月18日には、朝日報道によって「嫌がらせを受けるなど精神的苦痛を負った」などとして、在米邦人ら2000人が朝日新聞に慰謝料などを求める訴訟を東京地裁に起こした。米国で聞き取り調査を行った高橋史朗明星大学教授は記者会見で「いじめの具体例は私が聴いただけでも10件以上ある」と説明した。日本人子弟が学校で中国系の生徒から日本人であることを責められたり、韓国人の男子から顔につばを吐きかけられたりしているという[153]

出版業界

2010年代以降、嫌韓的な指向を持つ読者を取り込むべく、反日的な韓国の姿を強く批判・非難するような書籍が相次いで書店に並ぶようになった。これらの書籍は「嫌韓本」と呼ばれており、元時事通信ソウル特派員の室谷克実が書いた『呆韓論』は発売2か月で20万部を超えるベストセラーになり、韓国人歯科医師シンシアリーが書いた『韓国人による恥韓論』は10万部を超えた[154]。雑誌も「嫌韓」記事を掲載すると、売り上げが2割アップするという話もある[154]

一部の出版業界の関係者は2013年3月に「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」(出版社の編集・営業、フリーの編集者、書店員など約20人)を設立したが、「ヘイト」かどうかの線引きに難しさも感じていると言う[155][156]。また河出書房新社北原みのり朴順梨雨宮処凛野間易通などの協力をもとに、2014年5月に「今、この国を考える ―『嫌』でもなく『呆』でもなく―」という選書フェアを開催して、「近隣諸国をあげつらうばかり」の出版界の流れに対抗していくという[157]民団新聞によれば、「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」は、河出書房新社の選書フェアと呼応しつつ、日本出版労働組合連合会と共闘している[156]。関東大震災での朝鮮人虐殺をテーマにした『九月、東京の路上で』[158]は初版2200部が、発売2カ月で3刷となった[155]

産経新聞論説委員の黒田勝弘は「『韓国たたき』が流行っている。『韓国は売春大国であり、強姦天国』だとか『不良食品があふれる国』『トイレにいって手を洗わない男が多い』『課外地獄で子どもたちの自殺が急増』『サムソンも危ない』など、悪い点だけ指摘する本が次々にベストセラーになっている」一方、「僕は30年以上、韓国に住んでいますけれども、一般の人々は反日の感情は後退していますね。」と、韓国の反日の高まりを否定し「韓国では以前から『日本の失敗は韓国の喜び』だった。これがいまや『韓国の失敗は日本の喜び』になったようだ。私はそういう風景をユーモアで『日本の韓国化』と言うのだが、このような日本の言論の低質化は見るに耐えない」と述べた[154]。また、古谷経衡は「韓国は「反日」というのは僕も否定しないが、実際には憧れ・関心半分、嫌い半分の「半日」だと思う。」とコメント。「『日本は韓国・在日に乗っ取られている』と主張する彼らこそ、日本を過小評価する『反日』なのではないか」とした。「嫌韓本」はブームについて「最初は読者も真面目に驚いていたのが、やがてネタは消費しつくされてしまうし、話自体も検証の仕様もないもの」とコメントしている[159]

産経新聞の阿比留瑠比は嫌韓本について、日本社会の右傾化や排外主義の高まりだと戒める向きがあるが、それは違い、むしろ韓国に対する関心と認識が深まったがゆえのものであり、嫌韓本が売れる理由は韓国の反日の正体を知り、適切に付き合い、適度に距離を置くためのヒントが提供されているからではないか、としている[160]

その他

辛淑玉は「最近、あちこちで文句を言うと、『出てけ』とか『帰れ』と言われる。『ハイわかりました。朝鮮人はみんな帰ります。天皇つれて帰ります』と言ってやる。だけど、アイツ働かないからな(笑)」「自衛官は普通の仕事に就けなかった人たちなので、治安維持をまかせると危険」などの差別的発言を過去に行っている。その後も、暴力事件で逮捕された男組メンバーを擁護した際には「男は生物学的に不良品の率が高いと思っている」と性差別的な意見を述べた。(詳細は辛淑玉#発言参照)

吉水神社の宮司が、自身のブログ等を通して中国人のマナーの悪さや韓国が日本の悪口外交を展開している点、また、韓国における整形美容広告の問題点を報じた記事などをもとに「中国人、韓国人は日本に来るな!」「世界から嫌われるシナ人の下品さ!」「韓国人は整形しても心の汚さは変わらない!」といった主張を行っており、ヘイトスピーチであるとの批判がある[161]

日本に対する国外のヘイトスピーチ

カタールのドーハで行なわれたAFCアジアカップ2011準決勝の日本対韓国戦で、韓国代表の奇誠庸が前半にPKで得点した後、ゴールパフォーマンスで「」の物真似を行った。「猿」は近年の韓国社会において日本人を侮辱するときに多用される蔑称であることから、その行為が内外で波紋を呼んだ。(詳細は奇誠庸#猿真似パフォーマンス騒動参照)

韓国の全州ワールドカップ競技場で行われたAFCチャンピオンズリーグ2011準々決勝第2戦全北現代セレッソ大阪戦で、一部の全北サポーターが「日本の大地震をお祝います」と東日本大震災の犠牲者と日本人を揶揄する横断幕を掲げて応援を行った[162][163]が、その後も長崎県対馬では、韓国人が神社の絵馬に「地震起きて死ね」「津波がまた来ますように」「日本征伐」といった落書きをする事例が頻発した[164]

韓国のニュースサイトが「『日本猿』という呼称があるように、日本はのように卑怯な国家である」「天罰が下って初めて日本人は己の愚かさを知る。東日本大震災に継ぎ、富士山を中心に近いうちにもう一度必ず天罰は下る」などと、日本を侮辱する記事を掲載し、日本でも騒ぎになった。当該記事のコメント欄には「汚らしい日本」「放射能で猿3万匹が消え、全ての人類は嬉しかったです。天罰」などと大震災の犠牲者をも猿になぞらえるなどして賛同する韓国人の意見が寄せられていた。「日本ではこの記事があまりにひどいため、多くの人に知ってもらうため「拡散」させようという呼びかけが始まっている」という[165]

カリフォルニア州グレンデール市に設置されている「慰安婦」像に対する抗議のため2014年1月に同市を訪れ、帰国した地方議員団が同月10日、現地の日本人子弟らが韓国系子弟らから受けているいじめの実態を報告した。現地の学校に通う日本人子弟らが「韓国人の子供に、食べ物につばを入れられた」「韓国の子供たちが、独島(竹島の韓国名)は韓国のものだと怒鳴ってきた」などの被害を相談していることが判明。未然に被害を防ぐため、「外では私の名前を日本語で呼ばないで。話しかけるときは英語で」と親に懇願する子供もいたという。これらの他、「日本人だと分かると、ラーメンにつばを入れられた」「韓国系レストランで、冷めた白いご飯しか出されなかった」といった被害事例もあるという[166]

反ヘイトスピーチを掲げた活動

対レイシスト行動集団

在特会などの行動する保守のデモが表出してきたことに対し、それらをヘイトスピーチとして位置付け、対抗しようとする行動団体が活発化している。2013年2月に結成された野間易通が主宰する「レイシストをしばき隊(現・対レイシスト行動集団)」は「死ね」等の罵声のみならず掴み掛かったりなどの暴力を用いて保守系デモへの過激な対抗運動を行っている。汚い罵倒の応酬ではなく他の手段を取るべきとの指摘に対し、野間は差別的表現に対しては上品で冷静な議論ではなく怒りを持って叫ぶのが正常であるとしてこのような運動の正当性を主張している[167]

レイシストをしばき隊の最初期のメンバーで[168]、対レイシスト行動集団や[169]男組の弁護人[170]を務める神原元は、「属性を理由とする差別的表現」ではない単なる「罵倒」や「罵声」はヘイトスピーチではないと論じた[171]。神原は、日本弁護士連合会第47回人権擁護大会シンポジウム(2004年10月)基調報告書「多民族・多文化の共生する社会を目指して」にある「外国人・民族的少数者の人権基本法要綱試案」[172]を叩き台に[173]、日本におけるヘイトスピーチの法規制を模索しており[174]、「リベラル原則を堅持する我々の立場からは、「日本の誇り」はヘイト・スピーチ規制法の保護法益たり得ないことを強調」している[173]

井出実は『ヘイトスピーチに抗する人びと』[175]に対する書評において、野間易通のスタンスを「被害者に寄り添い支援する運動を否定するのではなく、「ヘイト・スピーチは社会的な公正さを破壊するものだから、NGなんだ」ということだ。」と要約し、「それは怒りを率直に伝えるうえで、とてもシンプルで当たり前のものだ。」と評した[176]

主宰の野間易通は、「穏健な口調で論理的に訴えようが、マイノリティへの憎悪感情に基づいたものであればいずれもヘイト・スピーチでありヘイト・クライムである。そして、むしろ実際には多くのヘイトはそのような態度を取るのだ。」としている[177]。ヘイトスピーチの嵐は「ネット右翼にとっては「反日」「親韓・親朝鮮勢力」である民主党という明確な敵を得て、自民党が下野している3年の間にモンスターのように成長した。そのエネルギーを十分に吸収する形で成立したのが、第2次安倍内閣だった。」とし、「安倍や安倍内閣の閣僚、あるいは地方議員まで含めた自民党の政治家たちの発言がネット右翼のそれと大差ないのは、彼らがネット右翼に媚びているからではない。ネット右翼の思想そのものが、彼らの政治信条にそのままダイレクトにフィードバックしている。」と見解、「「首相それ自体がネトウヨ」という状態」は「地道にネットにデマを書き、歴史修正主義にもとづいて地方の役所に申し入れをし、排外主義にもとづいて議員にロビイングをまめに行い、少人数でも決してめげずにデモをつづける。こうしたことをおよそ15年にわたって地道に、マメに続けてきた成果が、第2次安倍内閣にはそのまま結実しているように見える。」と述べた[178]

男組

かつて存在した高橋直輝主宰の政治運動団体である。「日本の反レイシズム運動のフロントに立つべく志を持つ男が結集した集団」と称し[179]、暴行・傷害などの犯罪を犯しながら「『男組はレイシストに合法的手段で「超圧力」をかけ続ける』という方針を取る」と公式サイトで主張している。

肩書に「組長」「若頭」等の呼称を使用し、「超圧力」を標榜してしばき隊以上に暴力的な手段に訴える点に特徴がある。組旗として、黒字に白塗りの髑髏を浮き出させ、バックに韓国刀日本刀をクロスさせた意匠の旗を掲げ[180]隊列を組み、ときには刺青を顕示して周囲を威圧し、恐怖心で相手方の意志を消滅せしめるスタイルのデモを行う[181][182]。野間は男組のような団体の暴力性が対抗運動には必要であるとし、運動により多くの暴力的団体が現れるべきと指摘している[183]

2013年9月29日には、同月8日に新大久保で行われたデモ[184]において在特会側のデモ参加者の顔を叩き首を絞めたとして、同組の「組長」高橋直輝と「本部長」木本拓史の2名が暴行罪逮捕され、罰金20万円と罰金10万円の略式命令が下された[185][186][187][188][189]

また11月18日には、前述の同組の2名が、11月1日に行われた「山本太郎抗議デモ」の際にデモ参加者の在特会関係者に執拗に付きまとい、殴るなどの暴行を振るったとして逮捕され[190][191][192][181]傷害罪懲役10ヶ月・執行猶予3年の判決が下された[193]

2014年1月18日には、別の男組の1名が在特会のデモ参加者に自転車等で体当たりしたとして暴行容疑で逮捕された[194]。2014年5月25日には男組のメンバー10名がJR西川口駅埼玉県川口市)の改札前で、在特会の移民受け入れ反対デモに参加しようとした在特会の会員1名を取り囲み、そのうち1名が在特会会員の顔面を殴って骨折させたとして、殴られた在特会会員とともに暴行容疑で逮捕された[195][196][197]

2014年7月16日、高橋、木本ら主要構成員8名が、前年10月26日午後2時15分ごろ、大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線西大橋駅構内で、近くの新町南公園のデモに参加しようとしていた47歳の男性を集団で取り囲んで壁に押し付け、大声で恫喝するなど暴行や脅迫を加えたとし、暴力行為等処罰法違反容疑で大阪府警警備部などに逮捕された[198][199][200]。また、府警はメンバーの自宅などの関係先である大阪府東京都静岡県など7都府県10カ所を家宅捜索した[198]。その後、4名が同罪で起訴され有罪となった[201][202]。逮捕された添田と木本は3度目の逮捕であり、執行猶予期間中であった[203]。男組はYouTubeの公式チャンネルにこの様子を撮影した動画をアップロードしていたが、現在はプライバシー侵害の申し立てを理由に削除されている[204]

2015年3月28日付で解散した。

友だち守る団

2013年5月、戦争中の慰安婦をめぐる橋下市長の発言を支持する団体が街宣活動をしていたところに、対抗運動団体「友だち守る団」がヘイトスピーチだと言いがかりをつけてメンバー20人で襲い掛かり、そのうち1人が警備にあたっていた警察官ともみ合いになり、逮捕された[205]。それを受けて同月に団体は解散。

2014年6月には「凛七星」を名乗る元代表の韓国人の男性が大阪市内で集会をしていた在特会メンバーに「この世におれんようになるぞ」と脅した[206][207]として、脅迫の疑いで再逮捕された。その後、脅迫罪起訴され[208]、有罪となった[209]。 この男性のそもそもの逮捕容疑は平成23年6月から24年2月にかけて、収入がないと大阪市に嘘の申告をし、生活保護費約112万円を不正に騙し取ったというもので[210]、それに対して桜井誠は、在特会の活動に人種差別だと言いがかりをつけるのは、いわゆる在日特権を死守するための言論弾圧が目的ではないのかと非難している。

有田芳生ら、排外主義・レイシズム反対集会

ヘイトスピーチに対して、法規制の実現を目指す参議院議員有田芳生は、既存の運動体・政党を「合法主義(法規に反しない手段で社会変革を成す立場)の余り闘わない」「きれい事と口先だけの人権派」と批判し、「ぎりぎりまでやってくれる」としばき隊らを称賛している[211]

2013年3月14日民主党の有田芳生らが呼びかけ人になり、参議院議員会館排外・人種侮蔑デモに抗議する国会集会が実施された[212]5月7日には第二回目の集会が実施された。民主党の大野元裕小西洋之らが登壇した。学術界からは師岡康子(大阪経済法科大学)が報告を行った[213]

なお、このような活動を行う有田の事務所Twitterには「殺すぞ」という殺人予告や「朝鮮へ帰れ」などという批判が殺到しているという[214]

のりこえねっと

のりこえねっと -ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク-とは、「在日韓国・朝鮮人らに対するヘイトスピーチに対抗し、乗り越えよう」と呼びかける団体である。2013年9月25日に結成され、東京新大久保で発足会見が開かれた[215]。共同代表は「のりこえねっと」公式サイトを参照[216]

のりこえねっと設立宣言では、現在の日本における「在日韓国・朝鮮人を標的とするヘイトスピーチ」は「ナチス時代のユダヤ人などへの迫害、かつての南アフリカでのアパルトヘイトアメリカ南部におけるKKK団のリンチを想起させるような激しい侮辱と憎悪表現」であるとし、日本の「戦後体制が政策的に作り出してきた差別そのもの」と主張している。また「ヘイトスピーチは、当面の標的とする在日韓国・朝鮮人だけではなく、女性を敵視し、ウチナーンチュ被差別部落の出身者、婚外子社会が障害となっている人たち(いわゆる「障がい者」)、性的少数者などの、社会的少数者にも攻撃を加えてきた」とも表明している[217]。共同代表の辛淑玉は日本のヘイトスピーチ団体は「反論できない立場の相手に、ウソついて陥れる」と批判している[218]。会は当面の活動として、差別禁止法の立法化活動、講演会や学習会、反レイシズムを呼び掛ける情報の発信などを行っていくとのことである。

ニューズウィーク日本版2014年6月24日号の「『反ヘイト』という名のヘイト」記事で「ヘイトデモ」参加者が「反ヘイト活動家」に殴られたと書かれ、また「ヘイトデモ参加者」が「反ヘイト団体からの暴力を恐れて」いることなどが報道された。これについてのりこえねっとは、殴ったのではなく「顔を押さえた」ことが事実であり、ニューズウィーク日本版は「嫌韓記事を掲載し、問題のある雑誌」であり、ヘイトスピーチの側に立っており、許せないと抗議した[219]

差別反対東京アクション

差別反対東京アクションと銘打ち、2013年10月21日からヘイトスピーチに反対し東京都に対して現状の改善を求める運動が毎週月曜日に東京都庁前で行われており、多いときには100人が集まる。通行人に「韓国人中国人は死ね」などと野次を飛ばされることもある[220][221][222][223]

ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会

2014年3月、いわゆる「ヘイト本」の氾濫を憂う出版関係者ら約20名が「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」を結成し[224]、同年11月、『NOヘイト! 出版の製造者責任を考える』を出版した[225]。共著者の一人である加藤直樹は著書『九月、東京の路上で』において、ヘイトスピーチと関東大震災時の流言による殺傷事件とを関連付けている[226]

その他

2013年7月14日には、関西で反ヘイトスピーチを呼び掛ける有志が「仲良くしようぜパレード in 大阪」と称すパレードを実施した。 和服、チマチョゴリ、沖縄のエイサー隊など様々な民族衣装を着た参加者が集まって御堂筋を歩いた。参加者は主催者発表で約700人[227]。 2014年7月20日には、2回目となる「OSAKA AGAINST RACISM 仲良くしようぜパレード2014」が開催された。パレード参加者は約1500人[228]

2013年9月22日には、ヘイトスピーチと人種差別の撤廃を訴える「東京大行進」と称されるデモが新宿で開催され、Twitterなどでの呼びかけに応じた約1200人が参加した[229]2014年4月27日に開催された東京レインボープライド2014に東京大行進の公式フロート車『TOKYO NO H8』が参加している[230]

日本城タクシーは、法務省の啓発ポスターから借用した「ヘイトスピーチ、許さない。」と書かれた黄色のステッカーをタクシー車両に貼って営業している[231][232]

脚注

  1. ^ a b c 小谷順子「Hate Speech規制をめぐる憲法論の展開―1970年代までのアメリカにおける議論」『静岡大学法政研究』第14巻1号(2009)
  2. ^ 知恵蔵mini
  3. ^ 雰囲気「迎合」が言論の衰退招く 青山学院大学特任教授・猪木武徳 産経新聞 2015.2.12 05:01
  4. ^ 「憎悪表現とは何か」菊池久一(頸草書房2001)
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参考文献

関連項目

外部リンク

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