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日本の民族問題

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日本の民族問題(にほんのみんぞくもんだい)では、日本における民族政策や民族的出身に基づく差別などに関して概説する。個々の問題の詳細については当該項目を参照されたい。

概要

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日本政府によると肌の色にもとづく人種差別は無いとしているがアメリカ合衆国は人種にもとづく捜査、職務質問が行われるレイシャル・プロファイリングが疑われる事例があると注意を呼びかけている[1]

部落問題、特別永住者と人種差別撤廃条約

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朝鮮排華事件で焼け落ちた中華街

部落問題は、近世以降の歴史的な問題であり、社会的少数者である部落出身者への職業や世系(descent)による差別である[2]。しかし、20世紀前半、部落民は日本民族とは人種的に違い、奴隷朝鮮人、さらにはイスラエルの失われた支族の末裔であるといったことが信じられていた[3]。1965年の同和対策審議会で「ただ、世人の偏見を打破するために断言しておかなければならないのは同和地区の住民は異人種でも異民族でもなく、疑いもなく日本民族、日本国民であるということである。すなわち、同和問題は、日本民族、日本国民のなかの身分的差別をうける少数集団の問題である。同和地区は、中世末期ないしは近世初期において、封建社会の政治的、経済的、社会的諸条件に規制せられ、一定地域に定着して居住することにより形成された集落である。」と答申され[4]、異民族起源説は政治的には完全に否定された。

また、その後の研究では部落民は徳川幕府の政策により形成され、江戸時代を通じて追放者をこの身分に含めていくことによって増加し続けたが、それ以前はまったく、あるいはほとんど存在しなかったとされ[3]、1615年以前は部落民の祖先となる人々に対する差別は特に無かったとする[5][信頼性要検証]近世政治起源説がある。但し、鎌倉時代には被差別部落の形成が始まり室町時代には差別は表面化していたとする説もまた存在し[6]被差別部落の起源については論争がある。近代以降の内地(日本本土)については北海道旧土人保護法風葬#京都帝国大学による風葬骨持ち去り問題などもしばしば話題にのぼる。さらに、戦前は大日本帝国として外地の複数の民族を抱え込んだために、朝鮮排華事件のような中国人虐殺事件が起きることもあった。人類館事件皇民化政策も併せて参照。

一方、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)」では世界人権宣言の具現化を目指し、人種、およびそれに関連するあらゆる差別撤廃に取り組むよう世界に要請している。この条約において、民族差別人種差別は、これらの明確な区分が難しいこともあり[7]、民族的若しくは種族的出身(national or ethnic origin)に基づく差別を含めて「人種差別 (Racial discrimination)」 として定義されている(第1条第1項)。また、この条約、および監視機関である国際連合人権高等弁務官事務所人種差別撤廃委員会Committee on the Elimination of Racial Discrimination)において人種差別だけでなく、カースト等の社会階層 (social stratification) 問題も含めて包括的に扱うため[8]、第1条第1項において「職業や世系による差別」が「この条約における人種差別の定義」に含められた[9]。これをもって国連[10] や国連との協議資格を有する部落解放同盟系のNGO反差別国際運動 (IMADR)などで、部落問題を「条約上の人種差別」としてとらえることがある[11]

また、2002年8月の国連人種差別撤廃委員会の会合(CERD/C/SR.1531)において「世系による差別」をテーマに議論が行われ、人種差別撤廃条約第1条中の「世系」は人種のみを指すものではなく(人種由来でない世系差別も対象にする)、また「世系」(descent)という語句はその語句自身の持つ意味を重視すべきであり、日本政府から提出された最初(1997年1月14日)と二回目(1999年1月14日)の報告書に見られるように、人種や民族、出身国と混同すべきではない、とする2001年4月の同委員会の立場(CERD/C/304/Add.114)を改めて表明した[12][13]

他方、日本国憲法第15条で国民固有の権利とされる公務員の選定・罷免権(外国人参政権、外国人の公務員管理職への登用等)に関する問題、各種学校民族学校である朝鮮学校への公的支援問題といった、元大日本帝国臣民でありサンフランシスコ平和条約発効により日本国籍を離脱し外国人となった韓国・朝鮮籍特別永住者に関係する人権・権利問題を、その歴史的背景と関連付けて日本の民族差別問題として扱うことがあるが、「人種差別撤廃条約」においては政府による市民非市民間の区別、排除、制限、選別問題は人種差別としては取り扱われない[14]。外国籍市民への不当な差別については国際人権規約やILO条約などに照らして扱われる場合が多い。

国連人権委員会特別報告

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2005年7月3日から11日まで、日本の人権NGO反差別国際運動(IMADR・2005年当時の事務局長は武者小路公秀)の案内で、国連人権委員会任命の特別報告者、ドゥドゥ・ディエン(セネガル国籍)が人権状況の調査の為に来日した。同報告者は各地の人権団体の案内で被差別部落大阪市浪速区西成区)、ウトロ地区京都朝鮮中高級学校部落解放同盟中央本部、北海道ウタリ協会(現・北海道アイヌ協会)、沖縄・嘉手納基地や、名護市の普天間基地の代替施設建設予定地を訪問し、ヒアリングを中心とした9日間の調査を行った。同報告者は2006年1月に報告書を発表し、調査の結果、日本には人種差別と外国人嫌悪が存在しているとし、日本政府に「日本社会に人種差別および外国人嫌悪が存在することを正式にかつ公的に認めること、人種主義、差別および外国人嫌悪を禁止する国内法の採択」を勧告した。

さらに、アイヌ民族や朝鮮半島出身者への差別解消策として、歴史教科書を改善するよう提案し、国連総会に提示する考えを示した。また、取材に対し「日本政府は今回の訪問に協力的だったが、当局者の多くは民族主義人種差別の深刻さを理解していない。政治家が民族主義的な態度で民衆の感情を煽っていることを憂慮する」と述べ、石原慎太郎都知事の所謂「三国人発言」に対して政府が何らの態度表明も行わない事に懸念を示した。2005年11月には、同・特別報告者が国連総会第3委員会(人権)に於いて日本における人種差別を問題にし、包括的な人種差別禁止法の制定を訴えた。

国連人権委員会の勧告に強制力は無く、自国において深刻な人権侵害が存在すると疑われる国も委員会の構成国となっている事などから、調査対象とされた多くの他国政府は勧告を無視しており、日本政府も公式の反応を示していない。またアイヌ旧琉球王国領域の住民は、北方領土問題尖閣諸島問題のほか基地問題(普天間高江)などを抱える地域と関係が深いことにも留意を要する。 国際社会では、敵対国や領土問題等をかかえる利害関係国が殊更違いを強調するなど民族対立扇動分断工作や離間工作に利用する間接侵略シャープパワー)も珍しくなく[15][16][17][18][19][20][21][22][23]、この報告書に関しては、その中立性に対して『産経新聞』などの一部マスコミや保守層から、ポリシー・ロンダリングを疑う声が上げられた。

産経新聞では、「調査をアレンジした武者小路公秀ピースおおさかの会長でもあり、金正日の思想を普及しようとするチュチェ思想国際研究所と関係の深い人物である」ことを挙げて、「日本に悪意を抱く人物が人権を武器として、国連を利用し日本に言いがかりをつけることがよくある」と報じている[24]人民戦線戦術も参照)。

沖縄地域の構造的差別

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2013年12月3日外務省主任分析官で自らを沖縄人と自認する佐藤優ハフィントンポスト日本版において、「日本による構造化された差別」が沖縄には存在し、石破茂の「デモはテロと変らない」発言にみられる在京エリートとマスメディアが沖縄の差別構造に無自覚であることが沖縄人としての自己同一性を強め、日本人であるという自己意識を捨て民族としての沖縄人を確立しなくてはならないと考える沖縄人の出現を促していると述べた。また同氏は係る状況を国際基準で見た場合「民族問題の初期段階」であると分析している[25]

日本国内の少数民族

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日本国内で生活し、日本国籍をもつ者にも、日本固有の意識(「日本人」としての意識或いは大和民族和人など)とは異なった民族的自覚を持ち続ける人々がある。日本国民としての国籍を有するものは、個人の権利・義務が、民族としてではなく一国民(個人)として憲法上保障されている。

  • 「先住民族」の定義 →先住民を参照
  • 「民族(Ethnic group)」の定義→民族集団を参照(主として言語・文化・歴史・共同体意識などに基づく集団)
  • 「民族(Nation)」の定義 →ネイションを参照(産業化・近代化に直面した集団が「ナショナリズムの運動」を経て獲得した政治的地位(ある国における「"少数民族"としての認知」または自前の国家を獲得した場合は「国民」)。

少数民族とされる集団(民族集団との意見のあるものを含む)

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各集団[注釈 1] が抱える問題は、当該記事を参照のこと。なお、日本政府が公式に日本の先住民として認識しているのはアイヌのみである[26]

縄文人の系統

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分子人類学で用いられる、D-M55C-M8M7aなどの共通点が見られ、近世以前から、歴史的に和人社会と強い結びつきが見られた。北方領土問題尖閣諸島問題のほか基地問題(普天間高江)などを抱える地域と関係が深いことにも留意を要するが、生活格差の解消や文化の保存・継承が今後の課題である[27][28]

北樺太出身の民族

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アジア系

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欧米系や混血その他

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脚注

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注釈

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  1. ^ 少数民族の項目にもあるとおり、日本語の「民族」は多義的かつ曖昧な概念である。詳細は民族および少数民族を参照

出典

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  1. ^ 日本の警察に人種プロファイリングの疑い、米大使館が警告”. REUTERS. 2024年3月24日閲覧。
  2. ^ (英語) Caste, Ethnicity and Nationality: Japan Finds Plenty of Space for Discrimination, The South Asia Human Rights Documentation Centre, 18 June 2001. "During the Tokugawa era, Japan's population was ranked in four tiers based on neo-Confucian ideology. Modern day Buraku people descended from the two lowest groups... (中略) Ethnically, linguistically, culturally and religiously, the Burakumin, who make up about two percent of the population, are indistinguishable".
  3. ^ a b Ian Neary, 3 Burakumin in contemporary Japan Origins p. 52 in Japan’s minorities : the illusion of homogeneity, ed. Michael Weiner, Routledge, London, 1997 ISBN 9780415152181
  4. ^ 同和対策審議会答申, 昭和40年8月11日.
  5. ^ (英語) William H. Newell, The Comparative Study of Caste in India and Japan, Asian Survey, 1, (Dec., 1961), p. 3-10. "Owing to the heterogeneous composition of this lowcaste group, no physical differences can be detected between the Eta and ordinary Japanese, nor is there any national Eta culture".
  6. ^ 第36回部落解放研究京都市集会-第1分科会 部落の歴史
  7. ^ A. Metraux (1950) "United Nations Economic and Security Council Statement by Experts on Problems of Race" in American Anthropologist 53(1): 142–145).
  8. ^ CERD General Recommendation No. 29: Article 1, paragraph 1 of the Convention (Descent)”. UN OHCHR (2002年11月1日). 2008年6月5日閲覧。. "Confirming the consistent view of the Committee that the term "descent" in article 1, paragraph 1, the Convention does not solely refer to "race" and has a meaning and application which complement the other prohibited grounds of discrimination",
  9. ^ International Convention on the Elimination of All Forms of Racial Discrimination Archived 2011年8月21日, at the Wayback Machine., Article 1, "1. In this Convention, the term "racial discrimination" shall mean any distinction, exclusion, restriction or preference based on race, colour, descent, or national or ethnic origin which has the purpose or effect of nullifying or impairing the recognition, enjoyment or exercise, on an equal footing, of human rights and fundamental freedoms in the political, economic, social, cultural or any other field of public life".
  10. ^ (英語) SECRETARY-GENERAL URGES NGOS TO WORK AGAINST RACISM WHERE IT LURKS 'IN EVERY SOCIETY', World Conference against Racism, Racial Discrimination, Xenophobia and Related Intolerance, 30 August 2001 (世界人種差別撤廃会議でのコフィー・アナンの挨拶).
  11. ^ 司法における人種差別, 反差別国際運動 (IMADR).「*注記: ここで「人種差別」とは、人種差別撤廃条約第1条に定義されているような「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づく」差別を意味するものとします。したがって、世系すなわち門地/社会的出自による差別である部落差別も、同条約の定義にもとづく「人種差別」としてIMADRではとらえています。」
  12. ^ THEMATIC DISCUSSION ON DISCRIMINATION BASED ON DESCENT, SUMMARY RECORD OF THE 1531st MEETING, COMMITTEE ON THE ELIMINATION OF RACIAL DISCRIMINATION, CERD/C/SR.1531, 16/08/2002. "20. ... it was clear that the term "descent" mentioned in article 1 of the Convention did not refer exclusively to race. The Committee had reiterated its position that the term "descent" had its own meaning and was not to be confused with race or ethnic or national origin when considering the initial and second reports of Japan (CERD/C/304/Add.114, para. 8)".
  13. ^ CONSIDERATION OF REPORTS SUBMITTED BY STATES PARTIES UNDER ARTICLE 9 OF THE CONVENTION - JAPAN, COMMITTEE ON THE ELIMINATION OF RACIAL DISCRIMINATION, CERD/C/304/Add.114, 27 April 2001. "8. With regard to the interpretation of the definition of racial discrimination contained in article 1 of the Convention, the Committee, unlike the State party, considers that the term “descent” has its own meaning and is not to be confused with race or ethnic or national origin. The Committee therefore recommends that the State party ensure that all groups including the Burakumin community are protected against discrimination and afforded full enjoyment of the civil, political, economic, social and cultural rights contained in article 5 of the Convention".
  14. ^ International Convention on the Elimination of All Forms of Racial Discrimination Archived 2011年8月21日, at the Wayback Machine., Article 1, "2. This Convention shall not apply to distinctions, exclusions, restrictions or preferences made by a State Party to this Convention between citizens and non-citizens".
  15. ^ 偽情報で世界を攪乱 ロシアの「積極工作」INTELLIGENCE MIND Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン) 小谷賢日本大学危機管理学部教授) 2022/01/08 06:00:00
  16. ^ 「ロシアの工作」ウクライナ侵攻と共に増す情報戦 数々の権謀術数にソ連時代からの影が付きまとう ウクライナ侵攻、危機の本質 | 東洋経済オンライン 2022/03/04 7:00
  17. ^ ロシアの偽情報工作の歴史は? - 日本経済新聞 2022年4月8日
  18. ^ ロシアの「次の」情報工作にどう対応する 日本の「防諜」態勢に問題 春名幹男 インテリジェンス・ナウ 2022年7月7日 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト
  19. ^ ロシア、他国干渉のためひそかに3億ドル支出=米当局 14 Sept 2022 BBCニュース
  20. ^ ロシアの「影響工作」費用、2014年以降に3億ドル超か 19 Sept 2022 ForbesJapan
  21. ^ ワグネルが暗躍するハイブリッド戦、ウクライナだけではなく日本も「戦時中」 廣瀬陽子慶應義塾大学教授に聞く、ChatGPTの普及や訪日外国人急増もリスクに 2023.6.27(火) - JBpress
  22. ^ 江戸幕府の北方防衛蝦夷地は日本ではない」かのような異様な刷り込み 文科省の教科書修正報道 執筆動機「誰もやらないのであれば私が」 - ZAKZAK:夕刊フジ公式サイト 2023.11/14 11:00
  23. ^ ロシアはウクライナでなく日本攻撃を準備していた...FSB内通者のメールを本誌が入手 2022年11月25日(金)17時40分ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
  24. ^ 『産経新聞』2005年11月13日朝刊「妙」 報告の陰に連携
  25. ^ 佐藤優 「沖縄は本気で抵抗している」 2013年12月3日 ハフィントンポスト 2014年9月20日閲覧
  26. ^ 人種差別撤廃委員会の最終見解(CERD/C/JPN/CO/7-9)に対する日本政府コメント(2016年8月)
  27. ^ マーク・ウィンチェスター「「近現代アイヌ思想史研究:佐々木昌雄の叙述を中心に (PDF) 一橋大学大学院、2009年(博士論文):p71 - 72を参照
  28. ^ 北海道アイヌ協会公式サイト-私たちについて
  29. ^ 民団中央は同胞社会で民族性を守り、真の和解と団結の道を歩まねばならない 朝鮮新報

関連項目

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外部リンク

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