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女性差別

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

女性差別(じょせいさべつ)とは、女性に対する性差別である。男尊女卑(だんそんじょひ)とも呼ばれる。対義語は男性差別という。女性差別撤廃を目指す思想や運動をフェミニズムという。

事例

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日本

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日本は、男女格差が世界で最も大きい国の一つとされ、世界経済フォーラムが世界男女格差レポートにて公表しているジェンダー・ギャップ指数ではG7で最下位、G20サウジアラビアトルコに次いでワースト3位である[1][注釈 1]

日本の女性労働者の待遇改善問題は、裁判所による政策形成の歴史とも重なる。すなわち、行政府が男女の雇用機会均等に向けて動かない中で、裁判所が判例を通じて性差別を是正していった事例として挙げられる[3]

司法による格差是正の動きは、1950年代後半から1960年代に始まった。当時、労働に関する法令としては労働基準法があったが、労働基準法は賃金について女性を理由とした差別を禁止していたのみであり、採用や解雇(例えば、当時は女性の早期退職は社会では当然の慣行となっていた)といった、その他の労働面における差別を訴える法律が存在しなかった。そして、賃金についても、企業は女性を男性と異なる職に就けることによって、差別化を行っていた[3]

こうした状況の中、まず日本国憲法第14条法の下の平等)を理由とした格差是正が試みられた。しかし、私人間効力がない(私人間には憲法が直接は適用されない)ことを理由にこの動きは失敗した[3]。ところが、裁判所は1966年の住友セメント事件民法90条(公序良俗違反私人間効力の間接効力を参照)を利用することによってこの状況を打破した[3]。この動きは全国に広がり、各地の裁判所で民法90条を使用して女性の早期退職、結婚退職、出産退職が是正されていった[3]。国会で男女雇用機会均等法を制定したのは、1985年のことであった[3]

女性労働問題については、パート労働者の待遇改善の歴史とも重なる。非正規雇用を参照されたい[4]

以下では、日本における事例を挙げる。なお、戦前においては、参政権や教育を受ける権利も議論となっていた。戦後においても、差別を助長する服装指導、頭髪指導を実施している中学校高等学校も存在する。女性参政権男女共学性差別なども参照。

韓国

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祖先祭祀の方法などが女性差別的であるという意見がある[16]

また、未亡人離婚した女性への差別は、先進国アラブ諸国と比べても、韓国は著しいという調査がある[17]

中国

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ニューヨーク・タイムズは、中国女性の社会的地位についての記事を掲載し、中国における職場や家庭内での性差別、愛人などの横行が、女性の選択余地のなさを反映していると指摘した[18]

ChinaHR.comが行ったアンケートによると、6割近い女性が求職中に企業側から性差別を受けたことがあり、この割合は男性求職者をはるかに超えるという。そのほか、求職者が女性の場合は婚姻の有無や年齢、外見などへの要求が厳しいとされている[18]

求人の際に女性は「未婚のみ」と条件が付けられることが行われている[19]。また、「隠婚族」という言葉がある[19]

ロシア

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ロシア連邦では労働法により、船長、列車やトラックの運転手、大工、潜水士など38業界、456種類の専門職に女性が就くことを禁止している。旧ソビエト連邦以来、こうした職業に伴う危険や健康リスクから女性を保護するための規制とされているが、不満を抱いて訴訟を起こす女性もいる[20][21]

ヨーロッパ

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イスラム教信者移民が増えた結果、「処女でないことを理由とした結婚の無効」など従来の欧州の価値観からみて女性差別と指摘される問題が起こった[22]

もっとも、キリスト教もまた、本来強烈な男尊女卑を教義の中核に置いていたことが指摘されている[23][24]。聖書上の根拠としては、コリントの信徒への手紙一11章9節、エフェソの信徒への手紙5章22節などが知られる[25]。特に1804年フランス民法典婚姻法はキリスト教的男尊女卑の典型的な現れであった[26]フランス革命政府が女性の権利を著しく制限していると批判したオランプ・ド・グージュは1793年に処刑され、女性の参政権は20世紀中葉まで拒否され続けた[27]。現在では改正されたものの、フランス法の男尊女卑は21世紀のフランス社会になお影響を残していると言われている[28]

脚注

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注釈

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  1. ^ ただし、立教大学本川裕は、日本の女性の幸福度が男性を上回る程度が世界最高峰にあることを看過しており、ミスリーディングだとしている[2]

出典

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  1. ^ 男性を「ソクラテスみたい」と褒めるべし 日本の女性誌の助言に冷笑 AFP BB NEWS 2019年12月5日
  2. ^ 本川裕世界120位「女性がひどく差別される国・日本」で男より女の幸福感が高いというアイロニー PRESIDENT Online 2021年4月7日、2023年8月10日閲覧
  3. ^ a b c d e f 『裁判と社会―司法の「常識」再考』著:ダニエル・H・フット 訳:溜箭将之 NTT出版 2006年10月 ISBN 9784757140950
  4. ^ 水町勇一郎『均等待遇の国際比較とパート活用の鍵―ヨーロッパ、アメリカ、そして日本』2004年10月、独立行政法人 労働政策研究・研修機構
  5. ^ 参議院会議録情報
  6. ^ 平成26年(2014)人口動態統計の年間推計、厚生労働省
  7. ^ a b 提言 男女共同参画社会の形成に向けた民法改正 日本学術会議
  8. ^ a b 「選択的夫婦別姓・婚外子の相続分差別 Q&A」日本弁護士連合会
  9. ^ 「原告『女性を間接差別』 国側『同姓は広く浸透』夫婦別姓認めぬ規定、最高裁で弁論」、日経新聞、2015年11月5日
  10. ^ 民法改正を考える会、「よくわかる民法改正」、朝陽会
  11. ^ a b 上告理由書、平成26年(ネオ)第309号上告提起事件、2014年6月4日
  12. ^ a b 「『夫婦同姓強制は合憲』判決はなぜ『鈍感』か?」、HUFF POST SOCIETY、2015年12月24日。
  13. ^ 「『再婚禁止と夫婦別姓規定』最高裁判決に注目集まる 憲法を軽視してきた永田町の『非常識』」、Business Journal、2015年11月13日
  14. ^ "Japan upholds rule that married couples must have same surname ", The Guardian, December 16, 2015.
  15. ^ 「選択的夫婦別姓 国民的議論を深めよう」、日本農業新聞、2015年12月24日。
  16. ^ 2006年4月3日付しんぶん赤旗
  17. ^ 「未亡人・離婚女性への差別、韓国が最も過酷」『中央日報』2008年6月25日付配信
  18. ^ a b 困惑する中国女性 増える性差別=ニューヨーク・タイムズ紙 大紀元 2010年12月9日
  19. ^ a b 遠藤誉「第5回 <A女>の影に潜む「隠婚族」の女たち 「仕事にマイナスになるから」結婚をひた隠す」『日経ビジネスオンライン』日経BP社、2008年4月11日付配信
  20. ^ ロシア連邦:雇用差別と闘う女性航海士アムネスティ国際事務局(2017年9月9日)
  21. ^ ロシアの女性、456職種で就業制限=世銀調査NNAアジア経済ニュース(2015年9月15日)
  22. ^ 山口昌子「【緯度経度】「処女性」は結婚の条件?」『産経新聞』産経新聞社、2008年6月9日付配信
  23. ^ 男と女について”. 中原キリスト教会 (2021年4月25日). 2023年9月20日閲覧。
  24. ^ 松本暉男『近代日本における家族法の展開』弘文堂、1975年、169-171頁、中村敏子『女性差別はどう作られてきたか』集英社〈集英社新書〉、2021年p. 21-29
  25. ^ 栗生武夫『婚姻立法における二主義の抗争』弘文堂書房、1928年、32頁
  26. ^ 栗生武夫『婚姻立法における二主義の抗争』弘文堂書房、1928年、34頁
  27. ^ 辻村みよ子・齊藤笑美子『ジェンダー平等を実現する法と政治 フランスのパリテ法から学ぶ日本の課題』花伝社、2023年20-22頁
  28. ^ "2日に一人の割合で女性が配偶者に殺される国フランス"、Yahoo!ニュース2019年12月6日、2023年8月10日閲覧

関連項目

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