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[[File:Leaf 1 web.jpg|thumb|250px]] |
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{{出典の明記|date=2011年5月}} |
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[[ファイル:Leaf 1 web.jpg|thumb|250px]] |
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'''葉'''(は)は、一般的には、[[植物]]がもっている、[[光合成]]や[[呼吸]]を行う[[器官]]のことをいう。扁平で、[[葉脈]]が張り巡らされており、葉の隅々まで行き渡っている。 |
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'''葉'''(は、{{lang-en-short|leaf}}{{Efn|以降注記なしの立体[[ラテン文字]]は英名を示す。}})は、[[陸上植物]]の植物体を構成する軸性器官である[[茎]]に側生する器官である{{Sfn|清水|2001|p=119}}。[[維管束植物]]の[[胞子体]]においては[[根]]および[[茎]]とともに基本器官の一つで、[[シュート頂]]から[[外生発生|外生]]的に形成される[[側生器官]]である{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1069a}}。普通、茎に側生する扁平な構造で{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1069a}}、維管束からなる[[脈系]]を持つ{{Sfn|清水|2001|p=119}}。[[コケ植物]]の[[茎葉体]]([[配偶体]])が持つ扁平な構造も葉と呼ばれる{{Sfn|長谷部|2020|p=31}}{{Sfn|清水|2001|p=119}}{{Sfn|加藤|1999|p=19}}。 |
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[[植物学]]においては、茎頂([[茎]]の先端)で形成される側生器官のことをさすため、上記のものの他に、[[萼片]]、[[花びら]]、[[雄しべ]]、[[心皮]]([[雌しべ]]のもとになるもの)、[[苞]]、鱗片葉などを含む。これらの一部については「[[葉#特殊な構造|特殊な構造]]」に説明がある。 |
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一般的な文脈における「葉」は下に解説する[[普通葉]]を指す{{Sfn|清水|2001|p=120}}。葉は発達した[[炭酸同化|同化]]組織により[[光合成]]を行い、活発な物質転換や水分の[[蒸散]]などを行う{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1069a}}。 |
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ここでは、[[サクラ]]や[[クスノキ]]など、[[広葉樹]]の葉を、広葉樹([[双子葉植物]])を典型と見なして説明する。なお、[[コケ植物門|コケ類]]にも葉のような[[構造]]が見られる。 |
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葉の起源や形、機能は多様性に富み、古くから葉の定義や[[茎]]との関係は議論の的であった{{Sfn|清水|2001|p=119}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1069a}}。[[ゲーテ]]以降、葉を抽象的な概念に基づいて定義しようという試みが[[形態学 (生物学)|形態学]]者によりなされてきたが、[[ユリウス・フォン・ザックス|ザックス]]以降、[[発生 (生物学)|発生]]過程や[[生理学|生理]]的機能、物質[[代謝]]、そして[[遺伝子]]の[[発現]]や機能などに解明の重点が置かれている{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1069a}}。茎と同様に[[シュート頂分裂組織]]に |
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== 構造と特徴 == |
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由来するが、軸状構造で[[無限成長]]性を持つ茎とは異なり、葉は一般的に[[向背軸|背腹性]]を示し、[[有限成長]]性で[[腋芽]]を生じない{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1069a}}{{Efn|[[薄嚢シダ類]]の[[羽葉]]には、無限成長性を示すものも知られる{{Sfn|長谷部|2020|p=146}}。}}。維管束植物の茎はほぼ必ず葉を持ち、茎を伸長させる分裂組織は葉の形成も行っているため、葉と茎をまとめて'''[[シュート (植物)|シュート]]'''として扱う{{Sfn|清水|2001|p=167}}。 |
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[[File:Leaf morphology.svg|thumb|350px|right|葉の形態用語]] |
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[[File:Leaf Structure.svg|center|600px|葉の構造]] |
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葉は[[光合成]]のための器官である。薄く広くできているのは、[[太陽光|太陽の光]]を効率よく吸収し、[[ガス交換]]することができるための[[適応]]と見られる。 |
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なお、[[コンブ]]や[[ワカメ]]のような[[褐藻類]]でも、付着器・茎状部・葉状部という高度な組織分化がみられる例があり{{Sfn|川井|2000|p=260}}、それぞれ俗に根・茎・葉と呼ばれることもあるが、[[陸上植物]]とは別の[[スーパーグループ]]に属すため{{Sfn|長谷部|2020|p=5}}、進化的起源や構造は大きく異なり、真の葉とは区別される。 |
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葉は[[茎]]から出て、平らに広がった部分で、通常はそこから[[芽]]が出たりすることはない部分である。一定の[[寿命]]があって、時間が来ると根本から切り放され、放棄される。つまり、枯れたり[[落葉]]したりする。 |
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== 進化的起源 == |
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ただし[[サンセベリア]]や[[ベゴニア]]等一部の種は葉の組織の生長・再生能を失っておらず、葉の切片から発芽させて株分け(葉挿し)することができる。 |
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葉の進化的起源は系統によって異なり、[[コケ植物]]の[[茎葉体]](配偶体)が持つ'''葉 ({{lang|en|phyllid}})'''、[[小葉植物]]の[[胞子体]]が持つ'''小葉'''{{Efn|複葉の各裂片も小葉 {{lang|en|leaflet}} と呼ばれるが、別の用語である{{Sfn|清水|2001|p=119}}。}}、そして[[種子植物]]の胞子体が持つ'''大葉'''は独立に進化してきた{{Sfn|清水|2001|p=119}}{{Sfn|長谷部|2020|p=31}}{{Sfn|長谷部|2020|p=152}}。このうちコケ植物の葉は配偶体に形成される点で、他の葉とは根本的に異なっている{{Sfn|加藤|1999|p=32}}。大葉は形態の変異に富み、針葉などもこれに含まれる{{Sfn|清水|2001|p=119}}。また、大葉植物の内部系統でも、葉は最大で11回独立に進化してきたと考えられている{{Sfn|西田|2017|p=96}}。特に、[[大葉シダ植物]][の胞子体が持つ'''[[羽葉]]'''や[[トクサ類]]の'''[[楔葉]]'''は被子植物の大葉とは異なる起源を持っていると考えられている{{Sfn|西田|2017|p=85}}。大葉シダ植物の中では[[マツバラン目]]では、葉を持たず、茎には[[葉状突起]]が側生する{{Sfn|長谷部|2020|p=171}}。 |
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葉の起源を含む包括的な維管束植物の形態進化は[[ヴァルター・マックス・ツィンマーマン]]が提唱した仮説、'''[[テローム説]]'''によって解釈される{{Sfn|長谷部|2020|p=70}}{{Sfn|西田|2017|pp=93–94}}。古典形態学の概念では生物がある「原型」を変形させることで進化したと考えらえており、テローム説もその流れに則っている{{Sfn|長谷部|2020|p=71}}。陸上に進出した当時の陸上植物は[[二又分枝]]を行う軸により植物体が構成されていた{{Sfn|長谷部|2020|p=70}}。ツィンマーマンはそれに基づき、そういった植物は[[形而上学]]的な単位である「テローム」及び「メソム」と呼ばれる軸から体が構成されていたと考え、それが癒合や扁平化などの変形をし陸上植物の根や茎や葉を形づくったと考えた{{Sfn|西田|2017|pp=93–94}}{{Sfn|長谷部|2020|p=71}}。二又分枝の末端の枝をテローム、それ以外のテロームを繋ぐ軸をメソムと呼び、二又分枝の体制はそれらの軸を単位として構成されていたとした{{Sfn|長谷部|2020|p=71}}。 |
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[[種 (分類学)|種]]や[[機能]]によって様々な[[形状]]がある。多くの場合、扁平で、光を受けやすくなるように水平に広がる。[[枝]]とのつなぎの部分は、葉全体を支えるためにやや太くなり、葉本体、枝と区別がつく場合には、[[葉柄]]とよばれる。葉本体を'''[[葉身]]'''とよぶ。葉身は様々な形をしているが、楕円形、あるいはそれに類するものがもっとも普通である。様々な形、特徴のものがあり、種ごとの特徴になっている。 |
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また、[[前川文夫]]は葉の系統学的解釈について、自身の提唱した[[葉類説]](ようるいせつ、{{en|concept of leaf-class}})に基づいて説明しようと試みた{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1428d}}。この学説では、同じ系統発生上の起源を持つ葉を[[葉類]](ようるい、{{en|leaf class}})として類型化し、構造や機能に基づいて類型化した葉態と合わせて植物が二元的に分類された{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1428c}}。 |
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葉の付け根にある付属体を[[托葉]]という。これは小さな葉のようなものであることが多いが、例外的に大きなものや、[[刺]]や[[巻きひげ]]に変化していることもある。托葉が存在しなかったり、存在していてもすぐに脱落することも多い。 |
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=== 大葉 === |
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[[単子葉植物]]では、細長い葉の形のものが多い。特に[[イネ科]]の植物は、やや硬く、立ち上がった細長い葉をもつものが多く、[[草原]]での生活に適応しているといわれる。光が根本まで入りやすく、植物体全体で光合成ができる形である。 |
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[[File:Rhacophyton1.jpg|thumb|250px|大葉シダ植物の[[基部系統|基部]]で分岐した[[ラコフィトン]] {{snamei||Rhacophyton}} の化石。主軸と側軸に分かれているが、枝は二又分枝を行っている。]] |
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{{See also|大葉植物#大葉|羽葉|トクサ類#葉}} |
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'''{{Vanchor|大葉}}'''(だいよう、{{small|または}}大成葉、{{lang|en|megaphyll, macrophyll}})は葉身に多数の葉脈が形成される葉である{{Sfn|西田|2017|p=92}}。種子植物の大葉と大葉シダ植物の'''[[羽葉]]'''(うよう、{{lang|en|frond}})、そして大葉シダ植物のうち基部[[トクサ類]]がもつ'''[[楔葉]]'''(けつよう、{{lang|en|sphenophyll}}、{{small|または}}輪葉{{Sfn|岩槻|1975|pp=170-173}}、輪生葉{{Sfn|長谷部|2020|pp=153-157}}とも)が大葉に含まれる{{Sfn|Kenrick|Crane|1997|pp=294–297}}。これらの葉はかつては相同であると考えられたこともあったが{{Sfn|Kenrick|Crane|1997|pp=294–297}}、現在では何れも進化的起源や性質が異なると考えられている{{Sfn|長谷部|2020|p=152}}。大葉植物(特に被子植物と大葉シダ植物)の[[葉跡]]{{Efn|茎から葉に繋がる維管束}}の上側の髄と皮層を繋いでいる部分には一次木部細胞に接して柔細胞が形成されている{{Sfn|長谷部|2020|pp=158–159}}。[[大葉シダ植物]]の[[羽葉]]では茎から葉原基に向かって葉跡が伸長する{{Sfn|長谷部|2020|pp=158–159}}。羽葉の葉跡の上にある柔組織を'''葉隙'''(ようげき、{{lang|en|leaf gap}})と呼ぶ{{Sfn|長谷部|2020|pp=158–159}}。それに対し、被子植物の葉は葉跡が葉原基から茎に向かって伸長する'''求基的葉'''である{{Sfn|長谷部|2020|pp=158–159}}{{Sfn|西田|2017|p=155}}。被子植物の葉跡の上にある柔組織は'''空隙'''(くうげき、{{lang|en|lacuna}})と呼ぶ{{Sfn|長谷部|2020|pp=158–159}}。それぞれの葉の起源も形成過程も異なるため、葉隙と空隙は相同ではないと考えられている{{Sfn|長谷部|2020|pp=158–159}}。 |
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葉隙や空隙の存在は小葉との識別点とされてきたが、葉隙の有無は完全に系統を反映しているわけではない{{Sfn|西田|2017|p=92}}。[[トクサ類]]や[[種子植物]]の[[真正中心柱]]では葉柄に入る葉跡が多数あり、それぞれが茎の維管束から仮軸分枝によって供給されるため葉隙はなく、[[メシダ科]]など[[薄嚢シダ類]]でも[[網状中心柱]]が小型化すると葉跡が仮軸分枝するため、見かけ上葉隙がなくなる{{Sfn|西田|2017|p=92}}。また、トクサ類の[[楔葉]]は節に[[輪生]]し、小葉のように葉跡は1本であるが、古い時代のものでは脈が又状分岐するのもある{{Sfn|岩槻|1975|pp=170-173}}{{Sfn|加藤|1999|pp=28-29}}。構造が単純化した現生の[[トクサ属]]のものは[[葉緑体]]を持たず[[光合成]]は行わないようになっており、葉の基部が隣同士で融合して[[袴]]状の[[葉鞘]]を作るものがある{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。しかし化石植物の楔葉はそれより大型であり、[[プセウドボルニア]] {{snamei||Pseudobornia}} では2回[[二又分枝]]した軸に細かい葉片が鳥の羽状につく形態であった{{Sfn|西田|2017|pp=148-154}}。かつては葉隙の有無に焦点が当てられていたこともあり、葉隙ができないトクサ類の楔葉は小葉であるとされていた{{Sfn|西田|2017|p=91}}。 |
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[[マツ]]など[[裸子植物]]では、[[針]]のように細い形の葉をもったものが多く、まとめて[[針葉樹]]と呼ばれる。それに対して、[[被子植物]]では広い葉のものが多く、そのような[[樹木]]は[[広葉樹]]という。 |
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大葉植物の葉はテローム説における'''癒合'''および'''扁平化'''により形成されたという解釈がなされている{{Sfn|長谷部|2020|p=144}}{{Sfn|西田|2017|p=88}}。大葉の完成には、テローム軸が癒合および扁平化することに加えて'''背腹性'''と'''左右相称性'''の獲得が必要であった{{Sfn|西田|2017|p=158}}。現生大葉植物のステム群である[[トリメロフィトン類]] {{sname||Trimerophytopsida}} では、二又分枝の2本の枝に強弱が生じ[[不等二又分枝]]を行うか、無限成長をする主軸と側軸の分化が起こり、[[単軸分枝]]するようになった{{Sfn|長谷部|2020|p=144}}{{Sfn|西田|2017|p=88}}。また、側軸が平面に展開する傾向がある{{Sfn|西田|2017|p=88}}。この2つの性質は大葉の形成途上と考えることができ{{Sfn|西田|2017|p=88}}、葉の祖先である軸が側生器官の特徴を獲得した段階であると考えられる{{Sfn|西田|2017|p=158}}。軸の癒合による葉面形成はトリメロフィトン類ではまだ進んでおらず、そこから派生した各系統で葉面形成が起こったと考えられている{{Sfn|西田|2017|p=96}}。 |
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== 特殊な構造 == |
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植物が葉を変形させて、様々な用途に対応することは、色々な場合に見られる。特に、ほとんど全ての植物に共通するのは、[[生殖]]への対応である。[[種子植物]]の属する系統では、[[胞子]]は葉の上に生じるため、それに絡む様々な葉の変形が見られる。[[花]]や、その要素である花びら、雄しべ、雌しべも葉の変形であり、従って、[[果実]]も葉に由来するものと考えられる。 |
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テローム説では二又分枝を行っていた植物が持つテローム軸が癒合し、扁平化することで大葉植物が持つ扁平な葉が形成されたと考えられているが、すでに出来上がった枝が癒合することはないため、テローム説を現代的な生物学に対応させて考えれば、複数の器官の集まりである枝系を作っていた発生遺伝子系が1つの器官である葉を作る発生遺伝子系へと進化したと解釈できる{{Sfn|長谷部|2020|p=144}}。しかし、現生植物の葉でシュート頂分裂組織で機能する遺伝子制御系が機能していても、葉にシュート頂分裂組織の遺伝子系が[[流用 (生物学)|流用]]されているだけかもしれないという可能性が否定できず、側枝から葉が進化した証拠としては乏しい{{Sfn|長谷部|2020|p=146}}。また上記の通り、大葉は多数回起源であり、それぞれの葉形成の仕組みが共通しているとは必ずしも言えない{{Sfn|長谷部|2020|p=148}}。 |
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植物にとって、葉は[[環境]]との重要な接点であり、また、一番弱い部分でもある。そのため、生育環境などによって、様々な形の葉があり、一見して葉と思えない場合もある。 |
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中期[[デボン紀]]から後期デボン紀にかけての種子植物の祖先における扁平な葉身の獲得は、葉の進化において鍵となるイベントであった{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=553}}。この扁平な葉身は光の捕捉効率を最大化させるとともに、背腹性を獲得し、葉に[[向軸側]]と[[背軸側]]の2領域を作り出した{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=553}}。向背軸極性を決めるのは[[YABBY]]遺伝子群と[[KANADI]]遺伝子群である{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=558}}。YABBY遺伝子群は被子植物の葉形成に関わり現生裸子植物でも保存されているが、種子植物以外には存在しない{{Sfn|長谷部|2020|p=148}}{{Sfn|長谷部|2020|p=176}}。そのため、大葉形成の遺伝子系は[[種子植物]]か[[木質植物]]の共通祖先でできあがった可能性がある{{Sfn|長谷部|2020|p=176}}。 |
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乾燥に対しては、葉は弱い部分でもあり、様々な適応を見せる。普通、分厚く、小さくなったり、あるいは葉に水をためる仕組みを発達させるものが多い。特に、乾燥地に生育して、そのような葉や茎に水を蓄える植物を[[多肉植物]]という。特に葉の適応として特殊なのは、[[サボテン]]などに見るように、葉を同化器官として使わなくなり、[[棘]]にしてしまったものがある。 |
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[[大葉シダ植物]]においては、化石植物群である[[コエノプテリス類]] {{Sname||Coenopteridales}} の[[スタウロプテリス科]]と[[ジゴプテリス科]]では茎と羽葉の分化が不十分で、不完全な背腹性を獲得していた{{Sfn|西田|2017|p=156}}。葉柄に当たる部分の維管束はまだ放射相称で[[葉態枝]](ようたいし、{{En|phyllophore}})と呼ばれ、分枝が進んだ頂端付近の羽軸や小羽軸で背腹性が生じる{{Sfn|西田|2017|p=156}}。現在の大葉シダ植物が持つ[[羽葉]]では背腹性および左右相称性を獲得している{{Sfn|西田|2017|p=155}}。 |
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[[食虫植物]]では、葉が様々な形に変形し、[[昆虫]]を捕らえ、消化吸収する仕組みを発達させている。特に、[[ウツボカズラ]]のように袋となったもの、[[ハエトリソウ]]のように罠になったものは目立った形をしている。 |
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=== 小葉 === |
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[[つる植物]]では、木に登り、体を支えるための構造として、巻きひげやひっかかるための鈎を発達させるものがあるが、葉を変形させてそのような部分にしている場合もある。 |
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[[File:Microphyll evolution omygod.svg|thumb|250px|突起仮説に基づく小葉の起源。]] |
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{{See also|小葉植物#小葉}} |
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'''{{Vanchor|小葉}}'''(しょうよう、{{small|または}}小成葉、{{lang|en|microphyll}})は原生中心柱や板状中心柱から葉隙を形成せず生じ、通常1本のみの葉脈が通る葉である{{Sfn|長谷部|2020|p=128}}{{Sfn|西田|2017|p=92}}。小葉植物の葉の起源は、突起仮説に基づいた解釈が有力だと考えられている{{Sfn|長谷部|2020|p=128}}{{Sfn|西田|2017|pp=93–94}}。ほかにテローム説の1つであるテローム軸の退縮説、胞子嚢を頂生する軸の退化説がある{{Sfn|西田|2017|pp=93–94}}{{Sfn|Kenrick|Crane|1997|pp=288–292}}。後二者の仮説は証拠に乏しいが、完全に否定されたわけではなく、今後の小葉類の[[分子発生学]]的研究による解明が俟たれる{{Sfn|西田|2017|pp=93–94}}。 |
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'''突起仮説'''は[[1935年]]、[[フレデリック・バウアー]]によって提唱されたもので、軸の表面に生じた棘状の突起が進化の過程で大きくなり、そこに維管束が入り込むことによって形成されたとするものである{{Sfn|長谷部|2020|p=128}}{{Sfn|西田|2017|pp=93–94}}{{Sfn|Kenrick|Crane|1997|pp=288–292}}。これは化石証拠が得られている{{Sfn|西田|2017|pp=93–94}}。すなわち、[[小葉植物]]の[[ステムグループ|ステム群]]である[[ゾステロフィルム類]]の[[ソードニア]] {{snamei||Sawdonia}} では維管束を持たない突起のみが存在し、[[ヒカゲノカズラ綱|現生小葉植物]]の[[姉妹群]]である[[ドレパノフィクス類]]の[[アステロキシロン]] {{Snamei||Asteroxylon}} では維管束は突起の付け根まで伸び、[[古生リンボク目]]の[[レクレルキア]] {{snamei||Leclercqia}} や現生小葉植物では小葉中に1本の葉脈がみられる{{Sfn|長谷部|2020|p=128}}{{Sfn|西田|2017|pp=93–94}}。 |
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== 葉脈 == |
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{{Main|葉脈}} |
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葉にはたくさんの筋が入っているのが普通である。これは、茎から葉に入った[[維管束]]であり、[[葉脈]]と呼ばれる。普通は葉柄から葉の先端へと中心になる脈([[主脈]]、[[中肋]]とも)が走り、その途中で側方へと枝の脈([[側脈]])が伸びる。側脈からはまた枝が出て、それぞれの先でぶつかり、全体として鳥の羽の筋のような(羽状)、あちこちで網目を作る([[網状脈]])形になることが多い。 |
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=== 葉状突起 === |
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[[単子葉植物]]では、主脈と側脈が共に葉の根元から先端へと向かい([[平行脈]])、それらをつなぐ細い脈が横に走る形になるものが多い。 |
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[[File:Tmesipteris lanceolata.jpg|thumb|200px|{{snamei||Tmesipteris lanceolata}} の葉状突起。]] |
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{{See also|マツバラン科#葉状突起}} |
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大葉シダ植物[[ハナヤスリ亜綱]]の[[マツバラン目]]では、葉を持たず、茎には'''葉状突起'''(ようじょうとっき、{{lang|en|foliar appendage}})が側生する{{Sfn|長谷部|2020|p=171}}{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|p=101}}。[[マツバラン属]] {{snamei||Psilotum}} の葉状突起には維管束がないが、[[イヌナンカクラン属]] {{snamei||Tmesipteris}} の葉状突起は葉隙がなく、1本の維管束が伸びている{{Sfn|長谷部|2020|p=171}}。また、[[ソウメンシダ]] {{snamei||Psilotum complanatum}} では分枝した維管束が葉状突起の基部まで伸びている{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|p=101}}。これは小葉植物の小葉と類似しているが、別起源である{{Sfn|長谷部|2020|p=171}}。 |
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=== コケ植物の葉 === |
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[[シダ植物門]]や[[イチョウ]]では、葉脈は二又分枝的なものが多い。特にイチョウでは、葉脈はほぼ完全に二又分枝の繰り返しからなる。これは原始的特徴と考えられている。 |
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{{See|茎葉体}} |
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[[コケ植物]]の'''葉''' ({{lang|en|'''phyllid''', phyllidium}}){{Sfn|日本植物学会|1990|p=519}}は、ほかの陸上植物が持つ胞子体に形成される葉とは[[配偶体]]にできる点で大きく異なり、普通1細胞層からなり、維管束がなく中肋という軸で支持され、維管束植物の葉とは起源も形態も本質的に異なるものである{{Sfn|清水|2001|p=119}}{{Sfn|伊藤|2012|p=114}}{{Sfn|加藤|1999|p=32}}。しかし、茎葉体の頂端細胞から切り出された派生細胞から生じる点は、維管束植物のシュート頂に形成される葉原基と類似しており、[[平行進化]]の結果と考えられる{{Sfn|加藤|1999|p=32}}。 |
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== 外部形態 == |
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葉脈の断面を見ると、葉の表側には[[道管]]を中心とする[[木部]]が、裏面側に師管を中心とする[[師部]]がある。これは、葉の表側が茎の中心を向いていること、茎では木分が中心側にあることを考えれば、当然の配置である。 |
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{{See also|葉柄|葉身}} |
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[[File:Leaf, Bud, and Stem Diagram.svg|thumb|250px|葉の概略図(1–6までが葉) <hr>{{ordered list |
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| [[葉先]](葉尖、{{lang|en|leaf apex}}){{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1420i}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1424e}}{{Efn|葉頂{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1420i}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1424e}}と呼ばれ、葉頭や葉端などの訳語も知られる<ref>{{cite kotobank|葉先}}</ref>。なお、それに対して葉身の基部は[[葉脚]]または葉底 ({{lang|en|leaf base}}) と呼ばれるが、{{lang|en|leaf base}} の語は葉柄も含む葉全体の基部を表す[[葉基]]に対しても用いられる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1420i}}。}} |
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| [[中央脈]] ({{lang|en|central vein}}){{Sfn|清水|2001|p=134}}{{Efn|中脈{{Sfn|清水|2001|p=134}}{{Sfn|郡場|1951|p=141}}、主脈{{Sfn|清水|2001|p=134}}、一次脈 ({{lang|en|primary vein}}){{Sfn|清水|2001|p=136}}とも呼ばれる。}} |
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| [[側脈]] ({{lang|en|lateral vein}}){{Efn|図中の矢印は[[一次側脈]] ({{lang|en|primary lateral vein}}) で{{Sfn|清水|2001|p=134}}、二次脈 ({{lang|en|secondary vein}}) と呼ばれることもある{{Sfn|清水|2001|p=136}}。そこから分枝した脈は二次側脈 ({{lang|en|secondary lateral vein}}) または三次脈 ({{lang|en|tertiary vein}}) と呼ばれる{{Sfn|清水|2001|p=136}}。}} |
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| [[葉身]] ({{lang|en|lamina}}) |
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| [[葉縁]] ({{lang|en|leaf margin}}){{Efn|葉縁の突起は[[鋸歯]] ({{lang|en|serration}}) と呼ばれる。}} |
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| [[葉柄]] ({{lang|en|petiole}}) |
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| [[側芽]]({{lang|en|lateral bud}}){{Efn|この場合特に[[腋芽]] {{lang|en|axillary bud}}}} |
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| [[茎]] ({{lang|en|stem}}){{Efn|葉・側芽を合わせて[[シュート (植物)|シュート]]と呼ぶ}} |
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}}]] |
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葉緑体を持ち、光合成を行う葉を'''{{Vanchor|普通葉}}'''(ふつうよう、{{lang|en|foliage leaf}})と呼ぶ{{Sfn|清水|2001|p=120}}{{Sfn|原|1994|p=36}}。普通葉の多くは扁平であるが、針葉樹の'''{{Vanchor|針状葉}}'''(しんじょうよう、{{lang|en|needle leaf}})や[[ネギ属]] {{snamei||Allium}}([[ヒガンバナ科]])や[[イグサ属]] {{snamei||Juncus}}([[イグサ科]])が持つ'''{{Vanchor|管状葉}}'''(かんじょうよう、{{lang|en|tubular leaf}})も普通葉に含まれる{{Sfn|清水|2001|p=120}}。また、1個体に異なる形態の普通葉が生じる現象を'''[[異形葉性]]'''(いけいようせい、{{lang|en|heterophylly}})と呼ぶ{{Sfn|清水|2001|p=164}}{{Efn|環境条件によって異なる形態の葉を形成することを'''ヘテロフィリー''' {{lang|en|heterophylly}}、環境条件が一定でも成長過程で異なる形態の葉を形成することを'''ヘテロブラスティー''' {{lang|en|heteroblasty}} と呼び分け、それらを総称して「異形葉性」と呼ぶこともある{{Sfn|長谷部|2020|p=184}}。}}。より広義には、普通葉の形態に限らずその種の特徴として常に2種類以上の異なる形態の葉を持つことを指す{{Sfn|清水|2001|p=164}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=62f}}。異形葉性を示す葉を'''[[異形葉]]'''(いけいよう、{{lang|en|heterophyll}})という{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=62f}}。 |
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葉の構成部分は基部から順に、[[托葉]]、[[葉柄]]、[[葉身]]の3部に大別される{{Sfn|清水|2001|p=120}}{{Sfn|原|1994|p=36}}。'''托葉'''(たくよう、{{lang|en|stipule}})は葉の基部付近の茎または葉柄上に生じる葉身とは異なる葉的な器官で{{Sfn|清水|2001|p=120}}、'''葉柄'''(ようへい、{{lang|en|petiole}})は茎と葉身を繋ぎ、葉身を支持する{{Sfn|清水|2001|p=122}}。被子植物の葉が持ち、普通扁平な光合成を行う主要な部分を'''{{Vanchor|葉身}}'''(ようしん、{{lang|en|lamina, blade}})という{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=553}}{{Sfn|清水|2001|p=122}}。葉身の組織は[[葉脈]]、[[葉肉]]、[[表皮]]からなる{{Sfn|清水|2001|p=122}}。 |
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茎の維管束が葉へと入るため、葉の上側では茎の維管束に隙間が生じる。これを[[葉隙]]という。 |
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托葉や葉柄を欠く葉も多い{{Sfn|清水|2001|p=120}}{{Sfn|清水|2001|p=122}}{{Sfn|原|1994|p=37}}。葉柄を欠く葉を'''[[無柄葉]]'''(むへいよう、{{lang|en|sessile leaf}})という{{Sfn|清水|2001|p=122}}。また、葉身を欠くものもあり、'''[[偽葉]]'''(ぎよう、{{lang|en|phyllode}})と呼ばれる{{Sfn|原|1994|p=37}}{{Sfn|清水|2001|p=142}}。 |
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== 葉の組織 == |
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葉の表面と裏面には[[表皮組織]]がある。表皮組織は[[クチクラ]]が発達し、内部を乾燥などから守る働きがある。裏面の表皮には、あちこちに[[気孔]]という穴があり、ガス交換、[[蒸散]]などの働きを担っている。気孔は唇状に配置する2つの孔辺細胞の間にあり、この細胞の働きで開閉する。 |
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普通葉の形状から[[木本]]植物を大別した場合、[[広葉樹]](こうようじゅ、{{lang|ne|broad-leaved tree, hardwood}})と[[針葉樹]](しんようじゅ、{{lang|en|needle-leaved tree, acicular tree}})に分けられる{{Sfn|清水|2001|pp=23–24}}。基本的には系統関係と対応しているため、[[イチョウ]] {{snamei||Ginkgo biloba}}([[イチョウ科]])、[[ソテツ]] {{snamei||Cycas revoluta}}([[ソテツ科]])、[[ナギ]] {{snamei||Nageia nagi}} および[[イヌマキ]] {{snamei||Podocarpus macrophyllus}}([[マキ科]])といった[[裸子植物]]は広葉をもつが広葉樹ではない{{Sfn|清水|2001|pp=23–24}}。このうち、[[マキ]]や[[ナギ]]は、鱗状葉を持つ[[ヒノキ]]や[[イブキ]]([[ヒノキ科]])、針状葉を持つ[[マツ科]]や旧[[スギ科]]とともに針葉樹に含まれる{{Sfn|清水|2001|pp=23–24}}。[[ガンコウラン]]や[[ツガザクラ]]などの針状の葉([[エリカ葉]])を持つ広葉樹もある{{Sfn|清水|2001|pp=23–24}}{{Sfn|原|1994|p=42}}。[[イチョウ]]や[[ソテツ]]、[[ヤシ類]]はどちらにも含まれない{{Sfn|清水|2001|pp=23–24}}。また、針葉樹の葉は形態によって'''針形葉'''、'''線形葉'''、'''鱗形葉'''に分けられる{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=74}}(下記「[[#針葉樹の普通葉]]」節を参照)。 |
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表皮の間には、同化組織が詰まっている。[[双子葉植物]]では、一般に葉の表面側には縦長の細胞が密に並んだ'''柵状組織'''(さくじょうそしき)が、裏面側に細胞が隙間を作りながら並ぶ'''海綿状組織'''(かいめんじょうそしき)が配置する。 |
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被子植物で最長の葉は[[ラフィアヤシ]] {{Snamei||Raphia farinifera}} で、20 m になるが[[掌状複葉]]であるためいくつかの小葉に分かれており、[[複葉|単葉]]では[[インドクワズイモ]] {{snamei||Alocasia macrorrhizos}} が最大で最長となる<ref>{{Cite book|和書|author=湯浅浩史|author-link=湯浅浩史|title=世界の葉と根の不思議:環境に適した進化のかたち|publisher=誠文堂新光社|isbn=978-4416212110|page=8}}</ref>。[[大葉シダ植物]]では葉頂端幹細胞により無限成長を行う種が知られ、[[コシダ属]]の一種 {{Snamei||Dicranopteris taiwanensis}} や、{{snamei||Sticheropsis truncata}}(ともに[[ウラジロ科]])では1個の葉が30 m 以上の樹上まで伸びる{{Sfn|熊沢|1979|p=189}}。 |
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== 落葉 == |
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[[ファイル:Momijien 2005 005.jpg|thumb|紅葉した[[カエデ]]の葉]] |
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[[ファイル:Autumn leaves on ground.jpg|thumb|170px|黄葉の落葉]] |
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{{Main|落葉性}} |
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樹木によっては、一定の[[季節]]に一斉に全ての葉を放棄するものがある。[[温帯]]では、[[冬]]前に行うものが多いが、これを[[落葉]]という。落葉の有無により、[[落葉樹]]と[[常緑樹]]に区別する。落葉に際しては葉が枯れるので、[[黄色]]から[[茶色]]になることが一般的だが、特にはっきりとした色を発色するものがあり、黄色くなるものを[[黄葉]]、赤くなるのを[[紅葉]]という。 |
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=== 複葉 === |
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葉を落とす時期は、[[温帯]]では冬期の前が多いが、[[熱帯]]の乾燥地では、[[乾季]]の前に葉を落とす。また、常緑樹であっても、葉の寿命がくれば葉を落とす。葉の寿命は往々にして複数年にわたるが、温帯では、新芽が出る時期は初夏であり、この頃に古い葉を落とす例が多い。特殊な例としては、[[南西諸島]]等で植栽に用いられるの[[デイゴ]]([[マメ科]])は、花を咲かせる枝に限って葉を落とす。また、[[アコウ (植物)|アコウ]]([[クワ科]])は、不定期に木全体の葉を落とし、新芽を出す。また、一般の落葉樹でも、落葉の時期でなくとも、乾燥がひどかったり、葉が[[塩害]]にあった時など、不特定の時期にも葉を落とす場合がある。 |
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[[File:2011.06-382-550,551 Drumstick tree(Moringa oleifera),lf,e-s greenhouse Radix Serre@Wageningen University,NL fri24jun2011.jpg|thumb|200px|[[ワサビノキ]] {{snamei||Moringa oleifera}} の3回[[奇数羽状複葉]]。]] |
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{{See|複葉}} |
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葉身が複数の小部分に分かれた葉のことを'''[[複葉]]'''(ふくよう、{{lang|en|compound leaf}})とよぶ。それに対し、葉身が1枚の連続した面からなる葉を'''単葉'''(たんよう、{{lang|en|simple leaf}})と呼ぶ{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=896i}}。複葉は単葉の葉身の切れ込みが深くなり、主脈の部分にまで達した状態であると解釈される{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1200h}}。 |
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複葉における、分かれている葉身の各片を'''小葉'''(しょうよう、{{lang|en|leaflet}})、小葉が付着する中央の軸部を'''{{vanchor|葉軸}}'''(ようじく、{{lang|en|rachis}})と呼ぶ{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1200h}}{{Sfn|清水|2001|p=126}}。小葉が柄を介して葉軸につく場合、その柄は'''{{vanchor|小葉柄}}'''(しょうようへい、{{lang|en|petiolule}})と呼ばれる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1200h}}{{Sfn|清水|2001|p=126}}。葉片が単葉か複葉の一部かは[[腋芽]]の有無によって区別され、複葉の小葉柄の基部には腋芽ができない{{Sfn|清水|2001|p=126}}。 |
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落葉を行う場合、葉柄のつけ根で葉がきれいに落ちるが、これは、ここに[[離層]]と呼ばれる切り離し面ができるためである。これは植物が自ら作るものである。[[押し葉標本]]を作ると葉がボロボロ落ちる木があるが、これも標本の枝中の水分が乾き切って死ぬ前に、離層を作ってしまうためである。したがって、葉を落とさないためには、枝を切り落としてすぐ、熱湯などで枝を殺してしまうとよいとも言う。 |
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[[大葉シダ植物]]の複葉(羽葉)の場合、小葉に当たる部分は'''[[羽片]]'''(うへん、{{lang|en|pinna}})と呼ばれる{{Sfn|清水|2001|p=132}}。 |
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常緑植物でも一部の種、[[針葉樹]]の[[スギ]]や[[ニオイヒバ]]、メギ科の[[ナンテン]]、[[ベンケイソウ科]]の多肉植物などで、冬には紅葉するが枯れて落葉はせず、春には再び緑色に戻るものがある。赤い色素は紫外線を吸収する作用があり、光合成活動が低下している時期に過剰な光による組織への悪影響(光阻害)を防止する効果があると考えられている。 |
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== 葉の形 |
=== 葉縁の形質 === |
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{{Main|葉縁}} |
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茎の頂端より、外生的に隆起し、初期の項端分裂組織による伸長と、その後の茎部細胞の増殖及び葉縁分裂組織により平面的に拡大していく。無限伸長せず、背腹性がある。 |
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{{multiple images |
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|direction = horizontal |
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|align = center |
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|total_width = 1000 |
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|image1 = Bladrande.JPG |
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|caption1 = 鋸歯の形状<hr />A 全縁、B 毛縁、C–E 鋸歯縁、F 重鋸歯縁、G 歯牙縁、H 円鋸歯状縁、I 微突形、J 条裂 |
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|image2 = Bladindskæringer.JPG |
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|caption2 = 分裂葉の形状<hr />A 全縁の不分裂葉、B 浅裂、C 深裂、D 全裂、E 波状縁、F 欠刻縁、G 掌状葉、H 三裂葉 |
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}} |
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葉縁にみられる鋸の歯のような細かな切れ込みを'''[[鋸歯]]'''(きょし、{{lang|en|serration, teath}})という{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=329c}}。鋸歯を持たず、切れ込みもないことを'''全縁'''(ぜんえん、{{lang|en|entire}})という{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=329c}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1424e}}{{Sfn|清水|2001|p=276}}。 |
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凹凸が大きく葉全体の形にかかわるほどの切れ込みがある単葉を'''[[分裂葉]]'''(ぶんれつよう、{{lang|en|lobed leaf}})と呼ぶ{{Sfn|清水|2001|p=126}}。この突出部を'''裂片'''(れっぺん、{{lang|en|lobe}})という{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1424e}}。それに対して裂片のない葉を'''不分裂葉'''という{{Sfn|清水|2001|p=127}}。切れ込みが浅いものを'''浅裂'''(せんれつ、{{lang|en|lobed, lobate}})、やや深く切れ込むものを'''中裂'''(ちゅうれつ、{{lang|en|cleft}})深く裂けていれば'''深裂'''(しんれつ、{{lang|en|parted, partile}})、完全に裂けたものを'''全裂'''(ぜんれつ、{{lang|en|dissected}})という{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1424e}}。裂片が放射状に配置し、[[掌]]のようになったものを'''掌状'''(しょうじょう、{{lang|en|palmate}})、裂片が左右に列をなし、鳥の羽のようになったものを'''羽状'''(うじょう、{{lang|en|pinnate}})という{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1424e}}。裂ける深さと形を組み合わせて、葉の形状を表現することが多く、例えば[[ヤツデ]]の葉は'''掌状深裂'''、[[ヨモギ]]の葉は'''羽状深裂'''する。 |
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例外的に、[[カニクサ]]や[[ウラジロ]]など一部のシダ類には葉の項端分裂組織が活動を続け蔓状に長く伸びていくものがある、後述するように葉が茎からの派生形態であると見た場合、茎としての特性を残した祖先的な形質と考えられる。 |
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== 葉 |
=== 有鞘葉 === |
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[[File:Eriophorum vaginatum Blattscheiden2.jpg|thumb|200px|[[ワタスゲ]] {{snamei||Eriophorum vaginatum}} の稈の基部に見られる鞘葉。]] |
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原始的陸上植物は葉を持たず、維管束を含む二又分枝する茎だけからできていたと考えられている。そこから、葉という構造がどのようにして生じたかについては、いくつかの説があるが、上記に述べたような葉に関しては、[[テローム説]]がほぼ定説となっている。これは、そのような古代植物の枝が細かく分かれ、平面に並んで、その枝の間を組織が埋める形で葉ができたとするものである。葉脈は茎に由来すると考えれば、二又分枝するものが原始的であり、次第にその形を整えたものと考える訳である。 |
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[[単子葉植物]]の葉の多くは'''有鞘葉'''(ゆうしょうよう、{{lang|en|sheathing leaf}})となるものが多い{{Sfn|清水|2001|p=124}}。有鞘葉は扁平な部分と基部の'''{{Vanchor|葉鞘}}'''(ようしょう、{{lang|en|leaf sheath}})からなる{{Sfn|清水|2001|p=124}}。葉鞘は[[イネ科]]、[[カヤツリグサ科]]、[[ツユクサ科]]、[[ショウガ科]]、[[ラン科]]などに一般的で、[[ユリ科]]の一部にも見られる{{Sfn|清水|2001|p=124}}。 |
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葉鞘はつねに地上茎の節から生じるわけではなく、[[地下茎]]から直接生じて順次内側の葉鞘を包み、筒状となって地上茎のように見えることがある{{Sfn|清水|2001|p=124}}。こうした葉鞘の集まりを'''{{Vanchor|偽茎}}'''(ぎけい、{{lang|en|pseiudostem}})と呼ぶ{{Sfn|清水|2001|p=124}}。[[ガマ科]]、[[ショウガ科]]、[[テンナンショウ属]] {{snamei||Arisaema}}([[サトイモ科]])、[[シュロソウ属]] {{snamei||Veratrum}}([[シュロソウ科]])、[[スズラン属]] {{snamei||Convallaria}}([[キジカクシ科]])などに見られる{{Sfn|清水|2001|p=124}}。 |
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[[裸子植物]]では、現生のものはほとんどが針のような葉を持っているが、これも二次的にこの形になり、そのようなもののみが主として生き残ったものと考えるようである。 |
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葉身が発達せず、葉鞘だけの葉を'''{{vanchor|鞘葉}}'''(しょうよう、{{lang|en|sheath leaf}})と呼ぶ{{Sfn|清水|2001|p=124}}。鞘葉は[[イグサ科]]の[[イグサ]] {{snamei||Juncus decipiens}} や[[ミヤマイ]] {{snamei||Juncus beringensis}}、[[カヤツリグサ科]]の[[ワタスゲ]] {{snamei||Eriophorum vaginatum}} や[[ホタルイ]] {{snamei||Schoenoplectiella hotarui}}、[[カンガレイ]] {{snamei||Schoenoplectiella triangulatus}}、[[フトイ]] {{snamei||Schoenoplectus tabernaemontani}}、[[ハリイ属]] {{snamei||Eleocharis}} などに見られる{{Sfn|清水|2001|p=124}}。これらでは[[稈]]の基部に小数個の鞘葉が重なり合っている{{Sfn|清水|2001|p=124}}。また、[[ホシクサ属]] {{snamei||Eriocaulon}}([[ホシクサ科]])では茎の下部に常に1個の鞘葉がある{{Sfn|清水|2001|p=124}}。 |
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== 大葉類と小葉類 == |
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以上、広葉樹の葉を中心に話を進めたが、全く異なった型の葉をもつものがある。シダ植物の[[ヒカゲノカズラ植物門|ヒカゲノカズラ類]]である。彼らの葉は小さく、葉脈は主脈が入るだけで分枝しない。また、茎の維管束には葉の上の隙間が生じない。このような点から、これらの葉は全く異なった起源を持つものと考えられ、それらの植物を'''[[小葉類]]'''という。この仲間では、その葉は茎の突起として始まり、その中に維管束が入り込むようになったとも考えられている。 |
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また、有鞘葉のうち[[花序]]に腋生するものを'''{{Vanchor|苞鞘}}'''(ほうしょう、{{lang|en|bract sheath}})という{{Sfn|清水|2001|p=152}}。[[スゲ属]] {{snamei||Carex}} の苞は苞鞘であることも無鞘であることもあり、[[シバスゲ節]] {{lang|la|sect.}} {{snamei|Praecoces}} や[[シオクグ節]] {{lang|la|sect.}} {{snamei|Paludosae}} の小穂の苞は少なくとも最下が苞鞘である{{Sfn|清水|2001|p=152}}。 |
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これに対して、これまで説明したような葉を持つ仲間を'''大葉類'''([[真葉植物]])という。現生の植物の大部分は大葉類である。 |
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== 葉 |
=== 根生葉 === |
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{{See|根出葉}} |
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葉の茎周りの配列様式を'''葉序'''(ようじょ)という。主な葉序を説明する。 |
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'''根生葉'''(こんせいよう、{{small|または}}根出葉、{{lang|en|radical leaf}})は地上茎の基部の節に付き、根から生じているように見える葉である{{Sfn|清水|2001|p=140}}。大葉シダ植物や草本性被子植物に多い{{Sfn|清水|2001|p=140}}。バラの花冠状に放射状に重なり合ってつき、地表に密着して越冬する根生葉を'''[[ロゼット葉]]'''(ロゼットよう、{{lang|en|rosette leaf}})と呼ぶ{{Sfn|清水|2001|p=140}}。 |
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; 互生葉序 |
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: 葉が位置をずらして様々な方向に出ること。単に'''互生'''ともいう。この出方が多い。また、実際には互生でありながら、節の間がつまって対生や輪生のように見える場合があり、偽対生・偽輪生などということがある。 |
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:* '''二列互生''' 葉が茎の左右から交互に出る葉序。 |
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:* '''螺生''' 連続する二枚の葉のなす角度(開度)が一定の互生。螺旋葉序ともいう。大多数の螺生では開度は[[黄金角]]に近いとされているが、例外もそれなりに知られている<ref>熊沢正夫 『植物器官学』(1979)</ref>。 |
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:* '''コクサギ型''' 一般には葉が左に2枚、右に2枚というふうに2つずつ交互に出る互生葉序とされているが、本来の定義は、開度が180°、90°、180°、270°の周期で順につく互生葉序であり<ref>{{Citation|和書 |
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| last = 前川 |
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| first = 文夫 |
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| author-link = 前川文夫 |
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| contribution = コクサギ型葉序と其意義 |
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| contribution-url = https://doi.org/10.15281/jplantres1887.61.7 |
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| year = 1948 |
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| magazine = 植物学雑誌 |
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| publisher = [[日本植物学会]] |
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| volume = 61 |
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| number = 715-716 |
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| pages = 7-10 |
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| doi = 10.15281/jplantres1887.61.7 }}</ref>、葉柄のねじれによって左右に2枚ずつ出ているように見える。 |
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: 二列互生と螺生の開度はシンパー・ブラウン則に従うことが知られている。その詳細は以下の通り<ref>日本植物学会編 『植物学の百科事典』</ref>。 |
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: 葉がa枚で茎の周りをb周するとき、フィボナッチ数列の第k項と自然数nを用いて、 |
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: <math>\dfrac{b}{a}=\dfrac{F_k}{nF_{k}+F_{k-1}}</math> |
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: と表される。 |
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: 多くの植物では、n=2であり、このとき、上式はフィボナッチ数列の一つ飛びの項(1/2、1/3、2/5、3/8……)となる。 |
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; 対生葉序 |
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: 葉が茎から出るとき、茎の同じ高さから、向き合うように2枚の葉が出ること。単に'''対生'''ともいう。対生のものは分類群としても限られており、それだけに同定に際しては重要な手がかりになる。 |
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:* '''十字対生''' 対生葉序の一種で、隣りの節から出た葉が互いに直交しているもの。上から見ると葉が十字に出ているように見える。 |
|||
:* '''二列対生''' 対生葉序の一種で、平面的に対生していること。 |
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; [[輪生葉序]] |
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: 茎の同じ高さから複数の葉が出るものを言う。単に[[輪生]]ともいう。対生を含んでいう場合と含まない場合がある。また、葉の枚数により三輪生、四輪生などということもある。 |
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; 束生(そくせい) |
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: 枝の先に葉が集まること。上記のどれの場合でも、それらが枝先に集まって付くものをこう呼ぶ。 |
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なお、根生葉に対し伸長した地上茎に側生する葉は'''茎生葉'''(けいせいよう、{{small|または}}茎葉、{{lang|en|cauline leaf}})と呼ぶ{{Sfn|清水|2001|p=140}}。 |
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== 葉の形 == |
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{{main|en:Glossary of leaf morphology}} |
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[[維管束植物]]の'''葉の形'''は[[多様性]]に富み、[[分類学]]上も重視されるので、それを表現する[[用語]]は多岐にわたる。 |
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=== 葉柄と葉身 === |
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{{Main|葉柄}} |
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葉は茎から分かれて側方に伸び、普通は薄くて広く、葉脈がそこに枝分かれして伸びる部分をもつ。この広がった部分が葉の本体であるとして、これを'''葉身'''(ようしん)という。茎と葉身をつなぐ部分を[[葉柄]]という。 |
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=== 楯状葉 === |
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葉柄は茎と葉身を繋ぐ部分で、太くて、大抵茎に面する側がやや扁平になっている。葉が落ちる場合、茎と接する部分で[[離層]]という切れる面が生じて、そこから落ちる。また、茎と葉柄の上側の接する所に芽ができるものが多い。葉柄ははっきりしないもの、葉身が茎に直接に繋がっているように見えるものもある。 |
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葉柄の先に雨傘状の葉身を持つ葉を'''楯状葉'''(盾状葉、じゅんじょうよう、{{lang|en|peltate leaf}})という{{Sfn|熊沢|1979|p=157}}{{Sfn|小倉|1954|p=139}}。[[ハス]]や[[ジュンサイ]]、[[ノウゼンハレン]]、[[サンカヨウ属]]、[[ミヤオソウ属]]、[[テンジクアオイ属]]、[[ハスノハカズラ属]]などで見られるほか、[[ヤブレガサ]]や[[タイミンガサ]]のように葉身が放射状に分裂しているものもある{{Sfn|熊沢|1979|p=157}}{{Sfn|小倉|1954|p=139}}。また、楯状葉葉身の葉縁の拡大があまり進行せず、葉身の葉縁方向への平面成長が進んだ形態は、杯状葉または嚢状葉と呼ばれる{{Sfn|熊沢|1979|p=158}}。'''{{vanchor|杯状葉}}'''(盃状葉、はいじょうよう、{{lang|en|aecidial leaf}})は[[奇形]]として知られており、[[ラッパイチョウ]]や[[ハズ|クロトン]]、[[シナガワハギ]]などによく観察されている{{Sfn|熊沢|1979|p=158}}{{Sfn|熊沢|1979|p=159}}{{Sfn|小倉|1954|p=139}}。 |
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=== 葉 |
=== 針葉樹の普通葉 === |
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[[File:Agathis philippinensis - young tree.JPG|thumb|200px|幅広い葉を持つ {{snamei||Agathis dammara}}([[ナンヨウスギ科]])]] |
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[[ファイル:Bladform.JPG|thumb|280px|図1. 葉身の形状]] |
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古くから針葉樹類と言われた[[裸子植物]]の系統は{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|p=405}}、分子系統解析が進んだ現在では[[マツ科]]と残りの[[針葉樹類]](広義の[[ヒノキ目]])の2系統が含まれることが分かっている{{Sfn|長谷部|2020|p=199}}<ref>{{Cite web|author=Christopher J. Earle|url=https://www.conifers.org/zz/gymnosperms.php|title=Gymnosperms|website=The Gymnosperm Database|accessdate=2023-06-29}}</ref>。現生針葉樹類の普通葉は全て単葉である{{Sfn|長谷部|2020|p=199}}{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|p=413}}。その中でも、多くの針葉樹類の葉は細くて先細りとなるため、'''針葉'''(しんよう、{{lang|en|needles}})と表現される{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|p=413}}。ただし、[[ナギモドキ属]] {{snamei||Agathis}} や[[ナンヨウスギ属]] {{snamei||Araucaria}}([[ナンヨウスギ科]])、[[マキ科]]([[ナギ属]] {{snamei||Nageia}})では著しく幅の広い葉を持つ{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|p=413}}{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|p=414}}。ヒノキ科以外の多くの針葉樹類の葉は長枝に発生し、[[螺旋葉序]]または[[互生葉序]]となる{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|p=413}}。[[ヒノキ科]]では全て[[十字対生]]葉序か[[輪生葉序]]である{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|p=413}}。 |
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葉身は多くの場合、薄く広がって扁平である。葉身の全体の形は、普通は葉柄の側は幅が狭く、次第に幅が広がり、先端に行くと再び狭まって終わる。葉の幅が最も広くなる場所が葉の中央付近の場合、'''楕円形'''(図1 C、D)という。葉の幅が最も広い位置が葉柄の側に近ければ、'''披針形'''、丸みがあれば'''卵形'''(図1 H)という。逆に葉先近くで幅が広い場合、'''倒披針形'''(図1 G)、丸みがあれば'''倒卵形'''(図1 F)という。他に'''針形'''、'''心形'''、'''腎形'''、'''へら形'''などの表現がされることもある。 |
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現生針葉樹の葉は、その形態によって針形葉、線形葉、鱗形葉と呼び分けられる{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=74}}。{{Harvtxt|Laubenfels|1953}} は現生針葉樹類の葉を、その3つにナギなどの幅広い葉を加えた4つのタイプに分類した{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|p=414}}。 |
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これらの表現は、葉の長さに対する幅の程度によって変化し、例えば楕円形に対しては'''広楕円形'''(図1 C)、'''狭楕円形'''(図1 D)、'''線形'''(図1 E)などの表現がある。 |
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針状で扁平ではないものを'''{{vanchor|針形葉}}'''(しんけいよう、{{small|または}}針状葉、針葉、{{lang|en|needle leaf}})という{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=74}}{{Sfn|清水|2001|p=120}}{{Sfn|原|1994|p=42}}。[[スギ]]は針形葉が螺旋状につき、葉の基部が小枝と一体化している{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=74}}。[[マツ属]] {{snamei||Pinus}} ではシュートに長枝と短枝が分化し、針形葉が短枝に分類群ごとに1–5本の一定の数ずつつく{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=74}}{{Sfn|長谷部|2020|p=209}}{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|p=413}}。この短枝は俗に「松葉」と呼ばれる{{Sfn|長谷部|2020|p=209}}。[[クロマツ]]では短枝に2本の針形葉、[[ダイオウマツ]]は短枝に3本の針形葉、[[ゴヨウマツ]]は短枝に5本の針形葉をつける{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=74}}。また、マツの葉は[[等面葉]]である{{Sfn|原|1994|p=42}}。 |
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細かく形の特徴を表す時には、葉身の葉柄の側を'''脚'''、先端側を'''頭'''という。 |
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幅が狭く扁平なものを'''{{Vanchor|線形葉}}'''(せんけいよう、{{small|または}}線状葉、線葉)という{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=75}}。中脈が明らかで、背軸面には[[気孔]]が'''[[気孔帯]]'''がみられることが多い{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=75}}。[[モミ]]、[[ツガ]]([[マツ科]])、[[カヤ]]、[[イヌガヤ]]([[イチイ科]])などには2本の気孔帯が認められる{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=75}}。[[イヌマキ]]([[マキ科]])の線形葉は中脈が顕著である{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=75}}。[[コウヤマキ]]([[コウヤマキ科]])の線形葉は短枝につく2本の葉が[[合着]]したものである{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=75}}。 |
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葉先が尖っている場合、'''鋭頭'''、丸まっている場合は'''鈍頭'''、葉先が特に細く伸び出しているものを'''鋭尖頭'''という。さらに、その先端が尖っているかどうかで'''鋭端'''、'''鈍端'''という表現もあり、例えば急鋭尖頭鈍端と言えば、葉先が急に細くなって少し伸びており、その先端は丸くなっていることを表す。また、葉先が丸みを帯びる場合は'''円頭'''、凹になっていれば'''凹頭'''、凸になっていれば'''凸頭'''という。 |
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扁平な葉が十字対生して茎を包んでいるものを'''{{Vanchor|鱗形葉}}'''(りんけいよう、{{small|または}}鱗状葉、鱗葉、{{lang|en|scale like leaf}})と呼ぶ{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=76}}{{Sfn|清水|2001|p=144}}{{Efn|下記の[[葉#鱗片葉|鱗片葉]]とは異なる{{Sfn|清水|2001|p=144}}}}。[[ヒノキ科]]の普通葉に多く{{Sfn|清水|2001|p=144}}、[[ヒノキ]]や[[サワラ (植物)|サワラ]]、[[アスナロ]]や[[コノテガシワ]]に見られる{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=76}}。[[ビャクシン]]の葉は普通、鱗形葉であるが、ときどき針形葉を交じる{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=76}}。 |
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葉身と葉柄の接する部分は葉身の幅が狭くなっている場合が多いが、そのまま次第に葉身と繋がる場合と急に葉身がなくなって区別が明確な場合がある。なだらかに繋がることを「'''流れる'''」と表現する。その部分の葉身が丸みを帯びているなら'''円脚'''、より幅広く真っ直ぐになった部分で葉柄と繋がっているのを'''切脚'''といった言い方がある。また、葉柄に繋がる葉身が左右不対称のものを'''斜脚'''という。葉柄と繋がる葉身が、葉柄の方向へ接続部分を越えて突き出している場合、そのような部分を'''耳'''という。左右の耳が融合すれば、葉柄は葉の中ほどの裏側に付くことになる。このような状態を'''楯状'''という(例;[[ハス]])。 |
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== 葉の特殊化 == |
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葉は地上の茎に付属し、扁平で光合成を行うのが典型であるが、付く位置や形、機能においてさまざまな特殊化がみられる{{Sfn|清水|2001|p=140}}。こうした葉と相同と考えられるものの光合成を担うわけではない器官と普通葉とを合わせて総称的に'''{{Vanchor|葉的器官}}'''(ようてききかん、{{lang|en|phyllome, foliar appendage}}、'''フィロム'''{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=553}})と呼ぶこともある{{Sfn|原|1994|p=42}}。葉的器官には普通葉や芽鱗、苞、花器官などが含まれる{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=553}}。 |
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{{Main|葉縁}} |
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[[ファイル:Bladrande.JPG|thumb|280px|図2. 縁の形状1(鋸歯)]] |
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[[ファイル:Bladindskaeringer.svg|thumb|280px|図3. 縁の形状2(裂けた葉)]] |
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葉身の周辺にノコギリの歯のような凹凸があるものがあるが、このような凹凸を[[鋸歯]](きょし)という(図2)。鋸歯の形や大きさは種によって様々である。凹凸が大きくて葉全体の形にかかわるほどの場合、裂けていると見る(図3)。全く裂けないものを'''全縁'''(ぜんえん、図3 A)、切れ込みが浅いものを'''浅裂'''(せんれつ、図3 B)、深く裂けていれば'''深裂'''(しんれつ、図3 C)、完全に裂けたものを'''全裂'''(ぜんれつ、図3 D)という。また、裂ける形が手のひら(掌)のようなものを'''掌状'''、鳥の羽のようなものを'''羽状'''という。裂ける深さと形を組み合わせて、葉の形状を表現することが多く、例えば[[ヤツデ]]の葉は掌状に深裂(「'''掌状深裂'''」とも)、[[ヨモギ]]の葉は羽状に深裂(「'''羽状深裂'''」とも)するなどという。 |
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=== 鱗片葉 === |
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{{See also|苞}} |
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葉身が深く裂け、葉脈に達すると、葉身はいくつかの部分に分かれてしまう。このような葉を'''複葉'''(ふくよう)と呼び、それに対して、葉身がひとつながりの葉を'''単葉'''(たんよう)という。 |
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[[File:Pinus sylvestris female strobilus and cone en.svg|thumb|350px|[[ヨーロッパアカマツ]] {{snamei||Pinus sylvestris}} の[[球果]]の断面図。]] |
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普通光合成を行わず、普通葉に比べ著しく小型化した葉を'''[[鱗片葉]]'''(りんぺんよう、{{lang|en|scale leaf, scaly leaf}})と呼ぶ{{Sfn|清水|2001|p=144}}。[[裸子植物]]の鱗片葉は雄性胞子嚢穂(雄性球花)、[[イチイ科]]の雌性胞子嚢穂(雌性球花)、[[マツ科]]の[[長枝]]等にみられる{{Sfn|清水|2001|p=144}}。 |
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鱗片葉はさらに特殊化し、その位置により様々に呼び分けられる{{Sfn|清水|2001|p=144}}。[[芽]]を覆う鱗片葉は'''[[芽鱗]]'''(がりん、{{lang|en|bud scale}})、花芽を腋にもつ鱗片葉は'''[[苞]]'''(ほう、{{small|または}}苞葉、{{lang|en|bract}})と呼ばれる{{Sfn|清水|2001|p=144}}。苞は位置や形により、[[総苞]]、[[苞]]、[[小苞]]、[[苞鞘]]、[[苞穎]]などに分けられる{{Sfn|清水|2001|p=148}}。 |
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複葉の葉で、分かれている葉身の各部分を'''小葉'''(しょうよう)という。複葉の葉では、でたらめに葉が分かれるものは少なく、大抵の場合、同じ形の小葉が規則的に繋がったような形になる。つまり、大きいのが分かれたと見るより、小さいのが並んでいると見た方が分かりやすい。そこで、小葉の並び方で様々な呼び名が付けられている。また、小葉の形は葉の形と同じように表現する。 |
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[[生殖シュート]]において、[[胞子嚢]]とそれに由来する構造以外の要素は葉に由来すると考えられている{{Sfn|清水|2001|p=26}}。[[萼片]]、[[花弁]]、[[雄蕊]]、[[心皮]]といった被子植物の[[花]]を構成する鱗片葉を'''{{Vanchor|花葉}}'''(かよう、{{lang|en|floral leaf}}){{Sfn|清水|2001|p=26}}{{Sfn|清水|2001|p=144}}{{Sfn|原|1994|p=44}}{{Sfn|小倉|1954|p=144}}または'''花器官'''(はなきかん、{{lang|en|floral organ}})という{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=553}}。雄蕊や雌蕊は'''[[胞子葉]]'''(ほうしよう、{{lang|en|sporophyll}})が変形してできたものである{{Sfn|加藤|1997|p=80}}。また、裸子植物の[[雌性胞子嚢穂]](雌性[[球花]]、[[球果]])を構成する鱗片葉は'''[[種鱗]]'''(しゅりん、{{lang|en|ovuliferous scale, seed scale}})と'''[[苞鱗]]'''(ほうりん、{{lang|en|bract scale}})の2種類からなり、それらが癒合して'''[[種鱗複合体]]'''(しゅりんふくごうたい、{{lang|en|seed scale complex}})を構成する{{Sfn|清水|2001|p=144}}{{Sfn|清水|2001|p=108}}{{Sfn|熊沢|1979|pp=31-32}}。種鱗複合体は'''果鱗'''(かりん、{{lang|en|fructiferous scale, cone scale}})や'''苞鱗種鱗複合体'''とも呼ばれる{{Sfn|清水|2001|p=144}}{{Sfn|清水|2001|p=108}}。 |
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葉柄の延長になる軸('''葉軸''')から、左右に小葉がいくつか並ぶものを'''羽状複葉'''(うじょうふくよう)という。軸の先端にある小葉を'''頂小葉'''、左右に並ぶ小葉を'''側小葉'''という。頂小葉があれば、小葉全体の数は大抵奇数になるので'''奇数羽状'''、それがなければ'''偶数羽状'''という。 |
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シュートの下部に形成される鱗片葉は'''{{Vanchor|低出葉}}'''(ていしゅつよう、{{lang|en|cataphyll}}、{{lang-de-short|Niederblätter}})と呼ばれる{{Sfn|清水|2001|p=142}}{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|p=493}}。低出葉には[[鞘葉]]、[[芽鱗]]、芽鱗に似た托葉だけの葉、[[実生]]の[[上胚軸]]の下部に作られる鱗片葉などがある{{Sfn|清水|2001|p=142}}。鞘葉は単子葉類の茎の下部にみられる{{Sfn|清水|2001|p=142}}。芽鱗は[[鱗芽]]をもつ木本に普通にみられる{{Sfn|清水|2001|p=142}}。托葉だけの葉は[[キジムシロ属]]の[[キジムシロ]] {{snamei||Potentilla fragarioides}}、[[イワキンバイ]] {{snamei||Potentilla ancistrifolia}} {{lang|la|[[変種|var.]]}} {{snamei|dickinsii}}、[[ミツモトソウ]] {{snamei||Potentilla cryptotaeniae}} などにみられる{{Sfn|清水|2001|p=142}}。[[クスノキ科]]の[[タブノキ属]] {{snamei||Machilus}}、[[クロモジ属]] {{snamei||Lindera}}{{Efn|旧[[シロモジ属]] {{snamei||Parabenzoin}} を含む}}などの実生では、[[子葉]]の間から伸びた上胚軸が地上に出ると互生する鱗片葉を形成する{{Sfn|清水|2001|p=142}}。この鱗片葉は次第に普通葉へ移行する{{Sfn|清水|2001|p=142}}。多くの被子植物では、シュート発生の際に周期的に低出葉の形成が起こる{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|p=493}}。また、こうして作られた側枝の最下の低出葉は'''{{Vanchor|前出葉}}'''(ぜんしゅつよう、{{lang|en|prophyll, fore-leaf}})と呼ばれる{{Sfn|清水|2001|p=142}}。前出葉は側芽に最初に作られ、特殊な形態を示すことが多い{{Sfn|清水|2001|p=142}}。[[ミカン属]] {{snamei||Citrus}} の葉腋に出る刺や[[イネ科]]の[[小穂]]の第一[[苞穎]]および第二苞頴、[[スゲ属]]の[[果胞]]および小穂の柄の基部に生じる[[鞘葉]]は前出葉である{{Sfn|清水|2001|p=142}}。 |
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小葉が左右1枚、先端1枚のものを'''三出複葉'''(さんしゅつふくよう)という。多くの場合、これは'''羽状複葉'''の側小葉が一対のみになったものと見られる(例;[[クズ]])。しかし、三枚の小葉がほとんど同じ形になって、その区別が難しいものもある(例;[[カタバミ]])。 |
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[[シュート (植物)|シュート]]の上部に形成される[[花葉]]以外の特殊な葉を'''{{Vanchor|高出葉}}'''(こうしゅつよう、{{lang|en|hypsophyll}})と呼ぶ{{Sfn|清水|2001|p=142}}。高出葉は狭義には[[総苞片]]、[[苞]]、[[小苞]]などの鱗片葉が含まれるほか、広義にはシュートの上部にあって変質や退化した葉も含まれる{{Sfn|清水|2001|p=142}}。[[ウスユキソウ属]] {{snamei||Leontopodium}}([[キク科]])の[[頭花]]群の下に伸びる[[毛状突起|毛]]深い苞、[[トウダイグサ属]] {{snamei||Euphorbia}}([[トウダイグサ科]])の[[杯状花序]]の基部にある対生葉、[[ネコノメソウ属]] {{snamei||Chrysoplenium}}([[ユキノシタ科]])の花序に含まれる苞以外の黄色い部分などがその例である{{Sfn|清水|2001|p=142}}。 |
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小葉が葉柄の先端の1点から3枚を超えて出るものを'''掌状複葉'''(しょうじょうふくよう)という(例;[[トチノキ]])。 |
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=== エリカ葉 === |
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さらに細かく分かれたものもある。葉柄に続く軸から左右交互に枝が伸び、その枝に沿って左右に小葉が並ぶものは、羽状複葉の葉が羽状に並んでいることになるので、これを'''二回羽状複葉'''という。[[シダ植物]]では三回、四回羽状複葉のものもある。 |
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[[File:Erica carnea sl10.jpg|thumb|200px|{{snamei||Erica carnea}} の葉の背軸面。]] |
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'''エリカ葉'''(エリカよう、{{lang|en|ericoid leaf}})は[[ツツジ科]]の[[ガンコウラン属]] {{snamei||Empetrum}} や[[ツガザクラ属]] {{snamei||Phyllodoce}}、[[エリカ属]] {{snamei||Erica}} などが持つ小さく針状の葉で、'''重複葉'''(ちょうふくよう、{{lang|en|duplicate leaf}})とも呼ばれる{{Sfn|清水|2001|p=144}}{{Sfn|原|1994|p=42}}{{Sfn|熊沢|1979|p=262}}。葉縁付近の[[背軸側]](腹側)に襞状の突起ができ、葉の背軸側に空洞部分ができることで気孔をその空洞の内側にのみ持つようになっている{{Sfn|原|1994|p=42}}。左右の葉縁が背軸側に折れ曲がったように見えるが、実際は発生の途上に背軸側の[[基本組織]]中に新たに生じた[[分裂組織]]から二次的に作られたものである{{Sfn|清水|2001|p=144}}。この部分を重複葉身(ちょうふくようしん、{{lang|en|duplicate blade}})という{{Sfn|清水|2001|p=144}}。気孔が分布する空洞に面していない部分は厚い[[クチクラ]]に覆われ、クチクラ蒸散を極度に減らしている{{Sfn|原|1994|p=67}}。また、気孔の分布する空洞部分と外界を連絡する溝の両側は[[毛状突起|毛]]が覆い、空気の流通を妨げている{{Sfn|原|1994|p=67}}。逆に葉の[[向軸側]]の表皮下には日射の強い[[森林限界|高山]]において光合成効率を上げるため[[柵状組織]]が発達している{{Sfn|原|1994|p=67}}。こうした構造により[[蒸散]]を最小限に抑え{{Sfn|原|1994|p=43}}、高山に適応している{{Sfn|原|1994|p=42}}。 |
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=== 水生植物の葉 === |
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三出複葉の場合も、三つ股の枝の先にさらに3枚の小葉をもつ'''二回三出複葉'''のもの、さらにそれが3つに分かれた三回三出複葉などがある。 |
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{{multiple images |
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|direction = vertical |
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|align = right |
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|total_width = 200 |
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|image1=Hydrilla verticillata is it- in Hyderabad W2 IMG 8305.jpg |
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|caption1=[[沈水植物]]の[[マツモ]] {{snamei|Hydrilla verticillata}} |
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|image2=Marsilea quadrifolia, Romania (35284800302).jpg |
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|caption2=[[デンジソウ]] {{snamei||Marsilea quadrifolia}} の浮水葉 |
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|image3=SagittariaSagittifoliaIreland.JPG |
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|caption3=[[セイヨウオモダカ]] {{snamei||Sagittaria sagittifolia}} の抽水葉と浮水葉 |
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}} |
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[[水生植物]]の葉は水辺環境に適応して特殊化しており、水面との位置関係により沈水葉、浮水葉、抽水葉が区別される{{Sfn|清水|2001|p=146}}。また、[[ホテイアオイ]] {{snamei||Eichhornia crassipes}}([[ミズアオイ科]])などの[[浮遊植物]]では'''浮き袋'''(うきぶくろ、{{lang|en|air bladder}})を持つ{{Sfn|清水|2001|p=146}}。 |
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;{{Vanchor|沈水葉}} |
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小葉の基部に関節があったりすると、単葉と見誤る場合がある。また、逆に、単葉が並んだ枝が羽状複葉に見える場合もあり、区別には注意が必要である。そのような場合、それが葉であれば、枝との接点に芽があるはずである。花や実が付くのは枝なので、それに気を付けるとよい。 |
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'''沈水葉'''(ちんすいよう、{{lang|en|submerged leaf}})は、水中にある'''沈水性'''(ちんすいせい、{{lang|en|submergence}})を持つ葉である{{Sfn|清水|2001|p=146}}。一般に軟弱で、機械的組織の発達が悪い{{Sfn|清水|2001|p=146}}。[[バイカモ]] {{snamei||Ranunculus nipponicus}} {{lang|la|var.}} {{snamei|submersus}}([[キンポウゲ科]])、[[マツモ]] {{snamei||Ceratophyllum demersum}}([[マツモ科]])、[[タヌキモ]] {{snamei||Utricularia vulgaris}}([[タヌキモ科]])、[[クロモ (水草)|クロモ]] {{snamei||Hydrilla verticillata}}や[[セキショウモ]] {{snamei||Vallisneria asiatica}}([[トチカガミ科]])、[[エビモ]] {{snamei||Potamogeton crispus}}([[ヒルムシロ科]])など見られ、これらは全ての葉が沈水性を持つ{{Sfn|清水|2001|p=146}}。バイカモの沈水葉は葉身が発達せず、軸状の裂片が立体的に分枝する構造をしている{{Sfn|加藤|1999|p=31}}。 |
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;{{Vanchor|浮水葉}} |
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'''浮水葉'''(ふすいよう、{{small|または}}浮葉、{{lang|en|floating leaf}})は、水面に浮かぶ'''浮水性'''(ふすいせい、{{lang|en|floatage}})を持つ葉である{{Sfn|清水|2001|p=146}}。気孔は水面と反対の[[向軸面]]にある{{Sfn|清水|2001|p=146}}。[[デンジソウ]] {{snamei||Marsilea quadrifolia}}([[大葉シダ植物]][[デンジソウ科]])、[[ヒツジグサ]] {{snamei||Nymphaea tetragona}}([[スイレン科]])、[[ジュンサイ]] {{snamei||Brasenia schreberi}}([[ハゴロモモ科]])、[[ヒシ]] {{snamei||Trapa jeholensis}}([[ミソハギ科]])、[[トチカガミ]] {{snamei||Hydrocharis dubia}}([[トチカガミ科]])、[[ヒルムシロ]] {{snamei||Potamogeton distinctus}}([[ヒルムシロ科]])、[[アサザ]] {{snamei||Nymphoides peltata}} や[[ガガブタ]] {{snamei||Nymphoides indica}}([[ミツガシワ科]])などが持つが、若い葉では沈水性を持つことが殆どである{{Sfn|清水|2001|p=146}}。[[イチョウバイカモ]] {{snamei||Ranunculus nipponicus}} (キンポウゲ科)は多くが沈水葉だが、僅かに水面上か水中にある扇形の浮水葉を持つ{{Sfn|清水|2001|p=146}}。 |
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;{{Vanchor|抽水葉}} |
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'''抽水葉'''(ちゅうすいよう、{{small|または}}挺水葉、{{lang|en|emergent leaf}})は、水面に抜き出る'''抽水性'''(ちゅうすいせい、{{lang|en|emergence}})を持つ葉である{{Sfn|清水|2001|p=146}}。浅水域に生える、[[ハス]] {{snamei||Nelumbo nucifera}}([[ハス科]])、[[コウホネ]] {{snamei||Nuphar japonica}}(スイレン科)、[[オモダカ]] {{snamei||Sagittaria trifolia}} や[[クワイ]] {{snamei||Sagittaria trifolia}} {{lang|la|'Caerulea'}}([[オモダカ科]])、[[ガマ]] {{snamei||Typha latifolia}}([[ガマ科]])などが持つ{{Sfn|清水|2001|p=146}}。ハスやコウホネは若い葉は浮水性を持つ{{Sfn|清水|2001|p=146}}。 |
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;{{Vanchor|根葉}} |
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[[水生シダ類]]の[[サンショウモ]] {{snamei||Salvinia natans}} の葉は異形葉性を示し、水面に浮かぶ2枚の浮葉(気葉)のほかに、水中に分枝した[[根]]状の'''根葉'''(こんよう、{{lang|en|root leaf}})を持つ{{Sfn|熊沢|1979|p=232}}{{Sfn|小倉|1954|p=145}}。これは沈水葉の1つである{{Sfn|加藤|1999|p=31}}。 |
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=== 貯蔵葉 === |
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なお、[[押し葉標本|植物標本]]を作る場合、シダ植物では葉1枚で標本とすることもあるが、被子植物では、枝と葉の関係や、葉が対生するかどうかなども重要なので、[[植物採集|採集]]の際は少なくとも枝を含めて葉1枚を切り取らねばならない。複葉の一部を切り取った標本が時折見かけられるが、その種の特徴を表すという意味では、ほとんど価値がない。 |
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[[File:Onion with sprouts (cut).JPG|thumb|left|150px|[[タマネギ]] {{snamei||Allium cepa}} の鱗茎葉の断面。]] |
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[[柔細胞]]が多量の貯蔵物質を具え、多肉質になった葉を'''貯蔵葉'''(ちょぞうよう、{{lang|en|storage leaf}})という{{Sfn|清水|2001|p=148}}。[[ユリ属]] {{snamei||Lilium}} や[[ネギ属]] {{snamei||Allium}} の[[鱗茎]]([[地下茎]])は肥厚した貯蔵葉が集合してでき、'''{{Vanchor|鱗茎葉}}'''(りんけいよう、{{lang|en|bulb leaf}})と呼ばれる{{Sfn|清水|2001|p=148}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=929e}}。[[クロユリ]] {{snamei||Fritillaria camtschatcensis}}([[ユリ科]])のもつ鱗茎葉は米粒から豆粒大の立体形をしている{{Sfn|清水|2001|p=148}}。 |
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=== 捕虫葉 === |
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[[食虫植物]]が持つ、[[昆虫]]などの[[動物]]を捕らえるように変形した葉を'''{{Vanchor|捕虫葉}}'''(ほちゅうよう、{{lang|en|insectivorous leaf}})という{{Sfn|清水|2001|p=148}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1315d}}。捕虫葉の形は様々で、様々な捕虫の方法がある{{Sfn|清水|2001|p=148}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1315d}}。[[モウセンゴケ]]類 {{snamei||Drosera}} の捕虫葉は葉縁や葉の表面に長い[[腺毛]]を持ち、触れると粘液を出して葉身を巻き込み虫を捕まえる{{Sfn|清水|2001|p=148}}。[[ムシトリスミレ]] {{snamei||Pinguicula vulgaris}} や[[コウシンソウ]] {{snamei||Pinguicula ramosa}}([[タヌキモ科]])の捕虫葉は表面に腺毛と無柄の腺が密生し、前者からは粘液、無柄腺からは[[消化液]]を分泌し、虫を捕らえる{{Sfn|清水|2001|p=148}}。 |
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[[ファイル:Riet ligula Phragmites australis.jpg|thumb|[[ヨシ]]の葉鞘]] |
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[[ファイル:Scallion Negi.jpg|thumb|[[ネギ]]の単面葉]] |
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; [[根生葉]](根出葉、根葉) |
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: 地面に広がって立ち上がっていない葉をいう。[[セイヨウタンポポ]]等。 |
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; [[ロゼット|ロゼット葉]](座葉) |
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: 根生葉がやや平らに[[螺旋]]状に広がるものをいう。冬の根出葉がこの姿を取るものが多い。[[多年草]]や[[越年草]]に見られる。[[オオマツヨイグサ]]等。 |
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; 葉鞘(ようしょう) |
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: 葉の基部は茎に巻き付いていて、茎に見えるもの([[ツユクサ]]、[[ヨシ]]など)。 |
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; 偽茎(ぎけい) |
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: [[地下茎]]から伸びた葉鞘が、地上で何重にもなっていて茎に見えるもの([[ミョウガ]]の食用部分、[[ネギ]]の食用部分の根元側の同心円になっている部分など)。本物の茎は地下にあり短い場合が多い。 |
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; 単面葉 |
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: 葉身が普通の葉(両面葉)の裏側に相当する組織しかもたない葉([[ネギ]]、[[アヤメ]]など、一部の単子葉植物がもつ)。なお、単面葉でも、葉の基部(葉鞘)では表側と裏側をもつ。裏側しかもたないのは、葉の葉身部分。普通の葉は、芽のうちは巻いていて裏側が見えている。単面葉の場合、巻いたままの葉がそのまま大きくなったと思えば、葉の裏側だけが見えているのが理解できる。ただし正確には、裏側だけが見えているというのは間違いで、裏側しかもたず表側は存在しない。例えば、ネギの葉身(葉の緑色の部分)は単面葉であるが、成熟したネギの葉身は筒状になるため、筒の外側が裏面、筒の内側が表面と誤解される場合があるが、実際は、内部が細胞で詰まった棒状の葉が、成熟前に葉の内部の細胞が死ぬことで筒状になる。つまり外側は裏面であるのは正しいが、筒の内側は表面ではない(あえていうなら葉の内部)。また、アヤメの葉身は葉が折りたたまれて表側がくっついたような形をしているが、実際は表側がくっつくことで単面葉ができる訳ではなく、裏側しか持たない葉が扁平に成長して、あたかも表側がくっついたような形になる。 |
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; [[苞]] |
|||
: 花や花序の下にあり、[[蕾|つぼみ]]を包んでいた葉。 |
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; [[子葉]] |
|||
: 植物が種子から芽を出して、初めに出る葉のこと。双葉ともいう(紛らわしいことであるが子葉が1枚でも「双葉」)。子葉が1枚の単子葉植物と2枚の双子葉植物がある。但し、双子葉植物の中には、子葉が地中にあるもの([[ソラマメ]]など)、子葉が1枚のもの([[ニリンソウ]]など)といった変わったものもある。 |
|||
; 葉針 |
|||
: 葉が刺に変化したもの(サボテン類など)。 |
|||
; 捕虫葉 |
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: 食虫植物に見られるような虫を捕らえる機能のある葉。 |
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; 多肉葉 |
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: 多量の水分を含んで厚くなった葉のこと。多肉葉を持つ植物は乾燥に強い植物が多い([[マツバボタン]]、[[ポーチュラカ]]など)。[[ベンケイソウ科]]の種では多肉葉に生長点が付属しており、脱落するとここから発芽して新たな個体になる、[[むかご]]の機能を有する。 |
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捕虫葉が嚢状に変化して、'''{{Vanchor|捕虫嚢}}'''(ほちゅうのう、{{lang|en|insectivorous sac}})を形成するものもある{{Sfn|清水|2001|p=148}}{{Sfn|熊沢|1979|p=261}}。'''{{Vanchor|嚢状葉}}'''(のうじょうよう、{{lang|en|pitcher}}){{Sfn|原|1994|p=43}}{{Sfn|小倉|1954|p=145}}または'''嚢状捕虫葉'''{{Sfn|熊沢|1979|p=259}}とも呼ばれる。[[タヌキモ属]]の葉は葉身が小さな捕虫嚢となっており、内部を減圧することで虫を吸い込む{{Sfn|清水|2001|p=148}}。[[ウツボカズラ属]] {{snamei||Nepenthes}} の葉は葉の先が[[葉巻きひげ]]となり、その先が捕虫嚢となっている{{Sfn|清水|2001|p=148}}。[[サラセニア属]]では葉柄が漏斗状の捕虫嚢となっている{{Sfn|清水|2001|p=148}}。特に[[ムラサキヘイシソウ]] {{snamei||Sarracenia purpurea}} では、その形成過程が明らかになっている{{Sfn|長谷部|2020|p=59}}。シロイヌナズナのような平面葉と同様に向背軸を規定する遺伝子が発現するが、葉の基部側の細胞分裂の方向が変化することにより、嚢状葉が形成される{{Sfn|長谷部|2020|p=59}}。ウツボカズラ属やサラセニア属の捕虫嚢内部には毛が生えて虫の脱出を防いでいる{{Sfn|清水|2001|p=148}}。 |
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===葉の変形=== |
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* [[棘 (植物)|棘]] |
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=== 葉巻きひげ === |
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* [[巻きひげ]]([[:en:Tendril|Tendril]]) - 葉などが変形して他のものに巻き付き自立を助けるように進化したもの。 |
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[[File:印度鞭藤 Flagellaria indica 20210527105931 07.jpg|thumb|150px|[[トウツルモドキ]] {{snamei||Flagellaria indica}} の葉巻きひげ。]] |
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* 結球 - 葉球(白菜、キャベツなど)と[[鱗茎]](たまねぎなど)。 |
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植物が持つ[[巻きひげ]]のうち、托葉や葉柄、小葉や葉身の一部を変形させてできたものを'''葉巻きひげ'''(はまきひげ、{{small|または}}葉性巻きひげ{{Sfn|原|1994|p=43}}、{{lang|en|leaf tendril}})という{{Sfn|清水|2001|p=148}}。[[バイモ]] {{snamei||Fritillaria verticillata}}([[ユリ科]])の上部の葉の先や葉全体が、[[トウツルモドキ]] {{snamei||Flagellaria indica}}([[トウツルモドキ科]])では葉の先が巻きひげとなる{{Sfn|清水|2001|p=148}}。[[マメ科]]の[[ソラマメ属]]や[[レンリソウ属]]では頂小葉が巻きひげに置き換わった羽状複葉である'''[[巻きひげ羽状複葉]]'''を形成する{{Sfn|清水|2001|p=130}}。[[シオデ属]] {{snamei||Smilax}}([[サルトリイバラ科]])では托葉、[[ボタンヅル]] {{snamei||Clematis apiifolia}} では葉柄、[[カザグルマ]] {{snamei||Clematis patens}}(ともに[[キンポウゲ科]])では小葉柄が巻きひげとなる{{Sfn|清水|2001|p=148}}。なお、葉巻きひげに対し、葉ではなく茎が変形してできた巻きひげになったものは[[茎巻きひげ]]と呼ばれる{{Sfn|清水|2001|p=202}}。 |
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* ''[[ヒドロトリックス ガードネリー|Heteranthera gardneri]]''では葉鞘の一部が長く突出しており、あたかも輪生であるかのように見える。 |
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=== 葉針 === |
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'''葉針'''(ようしん、{{lang|en|leaf spine/needle/thorn}})は、葉全体または複葉の小葉、托葉などが硬化して鋭い突起に変形したものである{{Sfn|清水|2001|p=146}}。光合成の機能を持たない{{Sfn|清水|2001|p=146}}。特に托葉が変化した葉針を'''{{Vanchor|托葉針}}'''(たくようしん、{{lang|en|stipular spine}})という{{Sfn|清水|2001|p=146}}。葉針に対し、茎が変化したものは[[茎針]]{{Sfn|清水|2001|p=146}}、根が変化したものは[[根針]]といい、相似器官である{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1425a}}。 |
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[[多肉植物]]である[[サボテン]]([[サボテン科]])の刺は葉針の一種である{{Sfn|清水|2001|p=146}}{{Sfn|熊沢|1979|p=274}}。また、[[メギ]] {{snamei||Berberis thunbergii}} や[[ヘビノボラズ]] {{snamei||Berberis sieboldii}}([[メギ科]])では、長枝上に単一または三岐した葉針を生じ、その腋に短枝を形成し、普通葉をつける{{Sfn|清水|2001|p=146}}。[[ニセアカシア]] {{snamei||Robinia pseudoacacia}}([[マメ科]])は托葉針を持つ{{Sfn|清水|2001|p=146}}。 |
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=== 多肉葉 === |
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[[File:Fenestraria (7161394650).jpg|thumb|200px|窓を持つ[[フェネストラリア属]]の[[五十鈴玉]] {{Snamei||Fenestraria rhopalophylla}} {{la|subsp.}} {{snamei|aurantiaca}}]] |
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上記のように多肉植物は葉を矮小化させるものもある一方、葉を多肉化させ、'''多肉葉'''を形成するものもある{{Sfn|熊沢|1979|p=275}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=877e}}。多肉葉は[[ハマミズナ科]]、[[ベンケイソウ科]]、[[リュウゼツラン科]]、[[ワスレグサ科]][[ツルボラン亜科]]の[[アロエ属]]などに知られる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=877e}}。リュウゼツランやアロエの葉では、葉肉が貯水組織となっている{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1426d}}。 |
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[[ハマミズナ科]]の葉は高度に多肉化することが多く、[[マツバギク]] {{Snamei||Lampranthus spectabilis}} や[[リトープス属]] {{Snamei||Lithops}}、[[コノフィツム属]] {{snamei||Conophytum}} などがよく知られる{{Sfn|熊沢|1979|p=275}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=877e}}。[[フェネストラリア属]] {{Snamei||Fenestraria}} では、太い棒状の等面葉を形成する{{Sfn|熊沢|1979|p=276}}。リトープス属、コノフィツム属、フェネストラリア属などの多肉葉の頂端は[[葉緑体]]を欠く'''窓'''({{en|[[:en:Leaf window|leaf window]]}})となって半透明を呈す{{Sfn|熊沢|1979|p=276}}。窓は[[キク科]]の[[ミドリノスズ]] {{snamei||Senecio rowleyanus}} や[[弦月 (植物)|弦月]] {{Snamei||Curio radicans}}{{Sfn|熊沢|1979|p=276}}、[[ワスレグサ科]][[ツルボラン亜科]]の[[ハオルチア属]] {{snamei||Haworthia}}{{Sfn|熊沢|1979|p=276}}<ref name="Fenster">{{cite kotobank|word=窓植物|encyclopedia=世界大百科事典(旧版)|accessdate=2024-11-29}}</ref>、[[コショウ科]]の[[ペペロミア・コルメラ]] {{snamei||Peperomia columella}} などにも見られる<ref name="Fenster"/>。このような植物は、'''窓植物'''(レンズ植物)と呼ばれる<ref name="Fenster"/>。 |
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[[ベンケイソウ科]]の[[クラッスラ属]] {{Snamei||Crassula}} では、背腹性が明瞭で背軸側に同化組織が偏っている多肉葉が[[球果]]のように密に重なり合って茎に着生する{{Sfn|熊沢|1979|p=277}}。 |
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=== 偽葉 === |
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{{See|葉柄#偽葉}} |
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[[アカシア属]]は、他のマメ科と同様に[[羽状複葉]]を持つものが見られる一方、単葉状の葉を形成する種が知られ、この葉を'''[[偽葉]]'''(ぎよう、{{en|phyllode}})または'''仮葉'''(かよう)という{{Sfn|清水|2001|pp=142–145}}{{Sfn|熊沢|1979|p=205}}。[[ナガバアカシア]] {{snamei||Acacia longifolia}} や[[サンカクバアカシア]] {{snamei||Acacia cultriformis}} の成葉は扁平な偽葉、[[スギバアカシア]] {{snamei||Acacia verticillata}} には針状の偽葉が形成される{{Sfn|熊沢|1979|p=205}}。これは葉身が退化し、葉柄が変化して形成されたものであると考えられている{{Sfn|熊沢|1979|p=205}}。それを裏付けるように、植物体が発芽してすぐは羽状複葉を形成するが、その後に形成される葉は次第に葉柄が左右から圧し潰されたように扁平で薄い構造となり、その先端の複葉部分が退化する{{Sfn|熊沢|1979|p=205}}。葉柄部分だけでなく、葉軸全体が扁平となって形成されたと考えた研究者もいる{{Sfn|熊沢|1979|p=205}}。 |
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[[カタバミ属]]でも仮葉は知られる{{Sfn|清水|2001|pp=142–145}}{{Sfn|熊沢|1979|p=206}}。扁平な偽葉を持つ {{snamei||Oxalis fruticosa}} や、仮葉の先端に3小葉を付ける {{snamei||Oxalis rusciformis}} などの例がある{{Sfn|熊沢|1979|p=206}}。 |
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== 内部形態 == |
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[[File:Leaf Structure.svg|thumb|600px|葉の構造]] |
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棒状の概形で放射状の構造を持つ根や茎と異なり、葉は'''[[左右相称]]'''で、'''[[向背軸|背腹性]]'''を持つ{{Sfn|原|1994|p=59}}{{Sfn|清水|2001|p=158}}。上側は[[向軸面]]、下側は[[背軸面]]と呼ばれる{{Sfn|原|1994|p=59}}。 |
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葉の[[組織系]]は[[ユリウス・フォン・ザックス|ザックス]]の分類 ([[1875年|1875]]) に基づき、[[表皮系]]、[[基本組織系]]、[[維管束系]]の3つに分けられる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1069a}}{{Sfn|清水|2001|p=158}}{{Sfn|原|1994|p=95}}{{Sfn|原|1972|p=178}}。 |
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=== 表皮系 === |
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'''[[表皮系]]'''(ひょうひけい、{{lang|en|epidermal system}})は[[表皮細胞]]、[[気孔]]や[[水孔]]を作る[[孔辺細胞]]、[[毛状突起]](毛、鱗片など)などの構造からなる{{Sfn|清水|2001|p=158}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1069a}}。表皮系は[[前表皮]]に由来する{{Sfn|原|1972|p=179}}。 |
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植物体の表面はふつう1層の表皮細胞からなる'''[[表皮]]'''(ひょうひ、{{lang|en|epidermis}})で覆われる{{Sfn|清水|2001|p=158}}{{Sfn|原|1972|p=179}}。ただし複数の細胞層からなる表皮もあり、'''多層表皮'''(たそうひょうひ、{{lang|en|multiseriate epidermis}})と呼ばれる{{Sfn|清水|2001|p=158}}。表皮細胞の外壁には長鎖[[脂肪酸]]または[[蝋]]を主成分とする[[クチクラ]]({{lang|en|cuticule}})が分泌され'''[[クチクラ層]]'''({{lang|en|cuticular layer}})を形成することで体表からの水分蒸散を防いでいる{{Sfn|清水|2001|p=158}}{{Sfn|長谷部|2020|p=89}}。クチクラを構成する脂質は陸上植物の中で多様性がある{{Sfn|長谷部|2020|p=89}}。コケ植物の配偶体および胞子体、小葉植物と大葉シダ植物の配偶体ではクチクラは発達しない{{Sfn|長谷部|2020|p=89}}。被子植物でも、乾燥地域に生育する植物ではクチクラの発達がよい{{Sfn|長谷部|2020|p=89}}。維管束植物のクチクラには疎水性細胞外生体高分子である[[クチン]]が含まれている{{Sfn|長谷部|2020|p=89}}。[[コケ植物]]のクチクラには[[スベリン]]様の疎水性細胞外生体高分子を持つ{{Sfn|長谷部|2020|p=89}}。 |
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'''[[気孔]]'''(きこう、{{lang|en|stoma}})は2つの[[孔辺細胞]]に囲まれた小間隙で、光合成や[[呼吸]]、[[蒸散]]などのガス交換のための[[空気]]や[[水蒸気]]の通路である{{Sfn|清水|2001|p=158}}。 |
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=== 基本組織系 === |
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葉の'''[[基本組織系]]'''は'''{{Vanchor|葉肉}}'''(ようにく、{{lang|en|mesophyll}})と呼ばれ{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1069a}}、上下両表皮間に挟まれた[[柔組織]]からなる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1426d}}{{Sfn|原|1994|p=61}}。[[葉緑体]]に富み、[[炭酸同化|同化]]やガス交換に適した組織への分化が起こっている{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1069a}}{{Sfn|原|1972|p=178}}。葉肉は普通葉では[[同化組織]]、貯蔵葉では[[貯蔵組織]]や[[貯水組織]]からなり、鱗片葉ではほとんど発達しない{{Sfn|清水|2001|p=160}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1426d}}。 |
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被子植物の典型的な普通葉では葉肉は向軸側が[[柵状組織]]、背軸側が[[海綿状組織]]に分化する{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1426d}}。'''[[柵状組織]]'''(さくじょうそしき、{{lang|en|palisade tissue}})は向軸側にあり、葉面に垂直な方向に比較的密に並んだ細胞からなる{{Sfn|清水|2001|p=160}}。この表皮直下に1層から数細胞層を構成する細胞を'''柵状柔細胞'''(さくじょうじゅうさいぼう、{{lang|en|palisade parenchyma cell}})という{{Sfn|原|1994|p=61}}。'''[[海綿状組織]]'''(かいめんじょうそしき、{{lang|en|spongy tissue}})は背軸側にあり、形や並び方が不規則で、[[細胞間隙]]に富んだ組織である{{Sfn|清水|2001|p=160}}{{Sfn|原|1972|p=180}}。これを構成する細胞を'''海綿状柔細胞'''(かいめんじょうじゅうさいぼう、{{lang|en|spongy parenchyma cell}})といい、柵状柔細胞から背軸側表皮の間を埋めている{{Sfn|原|1994|p=61}}。柵状組織の厚さは陰葉より陽葉でよく発達する{{Sfn|原|1972|p=180}}。 |
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向軸面に柵状柔細胞、背軸面に海綿状柔細胞が分布し、背腹性がある普通葉を'''{{Vanchor|両面葉}}'''(りょうめんよう、{{lang|en|bifacial leaf}})という{{Sfn|清水|2001|p=124}}{{Sfn|原|1994|p=65}}。[[ネギ属]] {{snamei||Allium}}([[ヒガンバナ科]])や[[アヤメ属]] {{snamei||Iris}}([[アヤメ科]])の葉は[[円筒]]形または二つ折れとなり、外観では背軸側のみが見える'''{{Vanchor|単面葉}}'''(たんめんよう、{{lang|en|unifacial leaf}})と呼ばれる{{Sfn|清水|2001|p=124}}{{Sfn|原|1994|p=65}}。アヤメ属は両面の表皮下に柵状組織、海綿状組織がある{{Sfn|清水|2001|p=161}}。[[スイセン属]] {{snamei||Narcissus}}([[ヒガンバナ科]])では上下表皮下に柵状組織、中央に海綿状組織がある{{Sfn|清水|2001|p=161}}。また、[[マツ科]]の針状葉は維管束の特徴で背腹性が分かるが、外観では区別ができないようになっており、'''{{Vanchor|等面葉}}'''(とうめんよう、{{lang|en|equifacial leaf}})と呼ばれる{{Sfn|原|1994|p=65}}。[[針葉樹類]]や[[イネ科]]の葉は柔細胞が葉肉中にほぼ均等に分布する{{Sfn|清水|2001|p=161}}。 |
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表皮下にある、葉肉の最外層の1から数細胞層の組織を'''[[下皮]]'''(かひ、{{lang|en|hypodermis}})という{{Sfn|清水|2001|p=161}}。下皮は葉緑体を持たず、多層表皮の内側の層に似ているが、発生学上表皮と異なり、葉肉と同一の起源を持つ{{Sfn|清水|2001|p=161}}。針葉樹類の下皮は、多くは1–2層の[[木部繊維|繊維]]状の[[厚壁細胞]]からなる{{Sfn|清水|2001|p=161}}。[[マツ属]] {{snamei||Pinus}}([[マツ科]])、[[スギ]] {{snamei||Cryptomeria japonica}}([[ヒノキ科]])、[[コウヤマキ]] {{snamei||Sciadopitys verticillata}}([[コウヤマキ科]])では気孔を除いた全周にあるが、[[ツガ属]] {{snamei||Tsuga}} では葉の両縁部分にのみ見られる{{Sfn|清水|2001|p=161}}。[[イチイ科]]にはない{{Sfn|清水|2001|p=161}}。被子植物は下皮を持たないことが多いが、[[モチノキ属]] {{snamei||Ilex}}([[モチノキ科]])では背軸面表皮の下に内側の葉肉細胞より少し大きな厚壁細胞からなる下皮を持つ{{Sfn|清水|2001|p=161}}。 |
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葉肉の最内層にあり、維管束を囲む厚壁細胞あるいは柔細胞からなる1層の表皮状の細胞層を'''[[内皮 (植物)|内皮]]'''(ないひ、{{lang|en|endodermis}})という{{Sfn|清水|2001|p=161}}。[[大葉シダ植物]]や[[裸子植物]]の葉には内皮があるが、被子植物にはない{{Sfn|清水|2001|p=161}}。また、針葉樹類の針葉には、内皮と維管束の間に[[柔細胞]]と[[仮道管]]が入り混じった'''{{Vanchor|移入組織}}'''(いにゅうそしき、{{lang|en|transfusion tissue}})がある{{Sfn|清水|2001|p=161}}。移入組織は維管束と葉肉を連絡する補助的な通道組織であると考えられる{{Sfn|清水|2001|p=161}}。 |
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=== 維管束系 === |
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{{See|葉脈}} |
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葉の'''[[維管束系]]'''(いかんそくけい、{{lang|en|vascular syetem}})は'''[[葉脈]]'''(ようみゃく、{{lang|en|vein, nerve}})と呼ばれる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1069a}}{{Sfn|原|1972|p=178}}。葉脈は茎の[[維管束]]と接続し、その部分を'''[[葉跡]]'''(ようせき、{{lang|en|foliar trace, leaf trace}})という{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1069a}}。葉肉内における葉脈の分岐の仕方を'''[[脈系]]'''(みゃくけい、{{lang|en|venation}})といい、脈系は系統によって多様である{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1069a}}。 |
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=== C<sub>4</sub>植物の葉 === |
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[[File:Zea mays leaf.jpg|thumb|250px|[[トウモロコシ]] {{snamei||Zea mays}} の葉の断面。維管束鞘の周囲に葉肉細胞が放射状に配置するクランツ構造を示す。]] |
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{{See|C4型光合成}} |
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[[C4植物|C<sub>4</sub>植物]]の葉には、[[維管束鞘]]が2重となっており、'''{{Vanchor|メストム鞘}}'''(メストムしょう、{{lang|en|mestome sheath}})と呼ばれる{{Sfn|原|1994|p=66}}。これを欠くC<sub>4</sub>植物もある{{Sfn|原|1994|p=67}}。その外側には比較的大きな柔細胞からなる'''{{Vanchor|環状葉肉}}'''(かんじょうようにく、{{lang|en|kranz}})がある{{Sfn|原|1994|p=66}}。こちらは必ず存在し、葉緑体に富んでいる{{Sfn|原|1994|p=67}}。維管束の外側を維管束鞘が、その外側を葉肉細胞が放射状に取り囲むこの構造を、ドイツ語の「花環 {{lang|de|Kranz}}」から'''{{Vanchor|クランツ構造}}'''(クランツこうぞう、{{lang|en|Kranz anatomy}})という{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=683e}}。以外の葉肉細胞では柵状柔細胞と海綿状柔細胞の区別が不明瞭である{{Sfn|原|1994|p=67}}。また、葉脈間の距離が[[C3植物|C<sub>3</sub>植物]]に比べて短く、空気間隙も少ない{{Sfn|原|1994|p=67}}。 |
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== 発生 == |
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[[File:Regulation of adaxial–abaxial polarity in Arabidopsis ja.png|thumb|250px|[[シロイヌナズナ]] {{snamei||Arabidopsis thaliana}} の葉における[[向背軸]]形成の遺伝子発現の制御。]] |
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葉はシュート頂において'''{{Vanchor|葉原基}}'''(ようげんき、{{lang|en|leaf primordia}})として[[外生発生|外生]]的に形成され、発達する{{Sfn|原|1994|p=142}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1069a}}。その発生位置によって葉の配列様式([[葉序]])が決定する{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1422b}}。葉原基から葉身・葉柄・托葉が分化し、同時に表皮系・基本組織系・維管束系の組織分化が進行する{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1069a}}。 |
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多くの種子植物の葉は、頂端成長を極めて一時的に行い、多くの裸子植物や単子葉類では 0.5 mm 以下、真正双子葉類では数 mm 以下の時に頂端分裂細胞の活動を停止する{{Sfn|熊沢|1979|p=188}}。その一方、[[大葉シダ植物]]の[[薄嚢シダ類]]では[[羽葉]]の頂端に頂端幹細胞を持ち、特に[[ウラジロ科]]や[[カニクサ科]]では[[無限成長]]を行うことが知られている{{Sfn|長谷部|2020|p=146}}。また、[[裸子植物]]でも[[ウェルウィッチア属]]では、子葉の後に形成される1対の帯状の本葉が永続光合成器官として、基部にある分裂組織により生涯かけて無限成長を行う{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|p=462}}。 |
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=== 葉原基の形成 === |
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葉は、まず[[シュート頂分裂組織]](茎頂分裂組織、{{lang|en|SAM}})の側方に葉原基として形成される{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=555}}。葉原基に関わる細胞の分裂と肥大によってシュート頂の外形に小さな膨らみとして発生({{en|initiation}})する{{Sfn|原|1994|p=142}}。[[種子植物]]のシュート頂分裂組織の細胞は外側からL1、L2、L3の3層の異なる安定的な組織層として組織化されている{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=555}}{{Efn|一方、[[大葉シダ植物]]の頂端では、表層の細胞1層から始まり葉原基形成が起こる{{Sfn|熊沢|1979|p=186}}。}}。葉原基形成にはL1層での[[オーキシン極性輸送]]が必須である{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=555}}。多くの[[被子植物]]では、葉原基はシュート頂側面の表面付近の1層から数細胞層の[[並層分裂]]に由来する{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1422b}}。特に[[真正双子葉類]]では通常L2の細胞に最初の並層分裂がみられるが、[[イネ科]]などでは外側の2層の細胞分裂に由来する{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1422b}}。発生した葉原基はシュート頂に突起状に盛り上がり、'''葉原基突起'''(ようげんきとっき、{{en|leaf buttress}})となる{{Sfn|原|1994|p=142}}。 |
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1つの葉原基が発生してから次の葉原基が発生するまでの時間を'''葉間期'''(ようかんき、{{lang|en|plastochron}}、プラストクロン)という{{Sfn|原|1972|p=72}}。[[対生葉序]]では葉原基が同時に2個形成されるため、次の1対が作られるまでの時間を葉間期とする{{Sfn|原|1972|p=72}}。シュート頂分裂組織から葉原基が突起すると茎頂は最小の大きさとなり、このときを'''最小期'''(さいしょうき、{{lang|en|minimal area phase}})という{{Sfn|原|1972|p=73}}。逆に葉原基が分離する直前の茎頂は最大の大きさになり、このときを'''最大期'''(さいだいき、{{lang|en|maximal area phase}})という{{Sfn|原|1972|p=73}}。[[ヒョウタンボク属]]では葉間期は1.5–5.5日であることが分かっている{{Sfn|原|1972|p=73}}。 |
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モデル植物である[[シロイヌナズナ]]を用いた研究では、シュート頂分裂組織で発現している[[1型KNOX遺伝子]]{{Efn|[[ホメオボックス]]転写因子をコードする{{Sfn|長谷部|2020|p=145}}。クラスⅠ ''KNOX'' 遺伝子とも{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1422b}}。}}が、葉原基では発現しないことが分かっており、1型KNOX遺伝子の転写が抑制されることにより有限成長を行う葉に分化すると考えられている{{Sfn|長谷部|2020|p=145}}。1型KNOX遺伝子は[[サイトカイニン]]量を増やし、[[ジベレリン]]量を抑制することで細胞分裂を促進し、細胞分化を抑制することで分裂能を維持している{{Sfn|長谷部|2020|p=145}}。また、葉原基とシュート頂の境界では [[CUP-SHAPED COTYLEDON]]遺伝子(CUC)が発現し、1型KNOX遺伝子の発現境界を規定している{{Sfn|長谷部|2020|p=145}}。 |
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=== 葉面の成長 === |
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葉原基ははじめ葉[[頂端分裂組織]](ようちょうたんぶんれつそしき、{{en|apical meristem of leaf}})を形成し先端成長(頂端成長、{{En|apical growth}})を始めるが、[[大葉シダ植物]]以外ではすぐにその活動が衰退する{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1422b}}{{Sfn|原|1994|p=143}}{{Sfn|熊沢|1979|p=188}}。次に葉原基で向背軸が決定され、それぞれの側で発現する遺伝子が互いに両者を抑制しあうことによって形成される{{Sfn|長谷部|2020|p=59}}。この過程に働く遺伝子群について、1型YABBY遺伝子群の働きでシュート頂分裂の制御系が抑制され、葉のアイデンティティが付与される一方、[[HD-ZIPⅢ]]遺伝子群や[[KANADI]]遺伝子群の働きによって背腹性が確立する{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1422b}}。続いて、向軸側と背軸側両方の遺伝子の制御によって[[葉縁]]部で[[細胞分裂]]活性が高くなる{{Sfn|長谷部|2020|p=59}}。それにより、向軸側と背軸側の境界部分が細胞成長し、扁平な葉面が成長する{{Sfn|長谷部|2020|p=59}}。 |
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=== 複葉や楯状葉の形成 === |
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複葉原基では、本来シュート頂分裂組織で発現し葉原基では発現しない[[1型KNOX遺伝子]]や[[CUP-SHAPED COTYLEDON]]遺伝子の発現がみられる{{Sfn|長谷部|2020|p=145}}。葉原基基部の周縁部 ({{lang|en|marginal blastozone}}) にて1型KNOX遺伝子などの働きにより小葉原基が生じ、葉形が複雑化する{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1422b}}。 |
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楯状葉では、裏側を規定する遺伝子が葉原基の基部では葉の表側に発現していることで細胞分裂活性の高い領域が円形になり、形成されると推定されている{{Sfn|長谷部|2020|p=59}}。 |
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=== 単子葉類の葉の形成 === |
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[[イネ科]]などに典型的な、単子葉類の形成する細長い葉は葉原基基部に分裂組織が残り、細胞が増殖することによって最初に突起した部分を押し上げるようにして葉原基の伸長が起こる{{Sfn|原|1994|p=144}}。 |
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=== 大葉シダ植物の葉 === |
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また、被子植物の成熟した葉は[[分裂組織]]や幹細胞を持たないが、[[小葉植物]]の[[イワヒバ科]]、[[大葉シダ植物]]の[[トクサ類]]と[[薄嚢シダ類]]の葉の頂端には2面切り出しの幹細胞が存在する{{Sfn|長谷部|2020|p=85}}{{Sfn|長谷部|2020|p=162}}。また、典型的な薄嚢シダの葉縁にある周縁分裂組織は4面切り出し、[[コケシノブ科]]の葉縁では1面切り出しの幹細胞が存在する{{Sfn|長谷部|2020|p=85}}。 |
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1つの[[腋芽]]とセットとなって1つの単位を形成し、成長と組織形成が[[求基的]]に進む[[被子植物]]の葉と異なり、[[大葉シダ植物]]の羽葉では'''[[ワラビ巻き]]'''から生じて[[求頂的]]に成長する{{Sfn|西田|2017|p=155}}{{Sfn|長谷部|2020|p=162}}。薄嚢シダ類の葉の頂端にはレンズ型(3面体)の頂端幹細胞(頂端細胞)があり、これが頂端成長を行って全ての葉細胞の母細胞となる{{Sfn|長谷部|2020|p=162}}{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=253–254}}{{Sfn|熊沢|1979|p=188}}。また、葉縁にも幹細胞を持つ'''周縁分裂組織'''(しゅうえんぶんれつそしき、{{lang|en|marginal meristem}})が形成される{{Sfn|長谷部|2020|p=162}}{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=253–254}}。特に[[ウラジロ科]]の[[ウラジロ]]や[[コシダ]]、[[カニクサ科]]の[[カニクサ]]、[[コバノイシカグマ科]]の[[ワラビ]]や[[ユノミネシダ]]などでは数年に亘って頂端幹細胞が分裂を続け、葉の先端部分が無限成長して羽片を作り続けることから、種子植物より茎的な性質を保持している{{Sfn|岩槻|1992|p=12}}{{Sfn|長谷部|2020|p=146}}。 |
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モデル植物である[[リチャードミズワラビ]]を用いた研究では、茎頂端幹細胞周辺と同様に、葉頂端幹細胞周辺でも[[1型KNOX遺伝子]]が発現していることが分かっている{{Sfn|長谷部|2020|p=146}}。 |
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=== コケ植物の葉 === |
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被子植物とは異なる発生機構によって形成されている{{Sfn|長谷部|2020|p=59}}。 |
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[[蘚類]]、特に[[モデル植物]]である[[ヒメツリガネゴケ]] {{snamei||Physcomitrella patens}}([[ヒョウタンゴケ科]])の茎葉体は、配偶体の別のステージである[[カウロネマ]]細胞が形成した側枝始原細胞から、約5%の確率で[[オーキシン]]の作用により転写因子ABPが誘導され、茎葉体頂端幹細胞になることで形成される{{Sfn|長谷部|2020|p=31}}。茎葉体頂端幹細胞から切り出された細胞は[[セグメント細胞]]と呼ばれ、[[並層分裂]]を行って先端側と基部側の2つの娘細胞を形成する{{Sfn|長谷部|2020|p=34}}。そのうち先端側の細胞が垂層分裂を行い、形成された茎葉体頂端幹細胞に近い方の細胞が'''葉頂端幹細胞'''となる{{Sfn|長谷部|2020|p=34}}。葉頂端幹細胞は2面切り出しの頂端幹細胞で{{Sfn|長谷部|2020|p=85}}、1枚の全ての葉を形成する{{Sfn|長谷部|2020|p=34}}。 |
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=== 胚発生 === |
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[[種子植物]][[胞子体]]の[[個体発生]]において、最初に形成される葉を'''[[子葉]]'''(しよう、{{lang|en|cotyledon}})という{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=653b}}{{Sfn|清水|2001|p=213}}。かつての植物分類体系では、子葉の枚数に基づいて被子植物を子葉が2枚の[[双子葉類]]と子葉が1枚の[[単子葉類]]に分類してきたが、[[分子系統解析]]により双子葉は[[共有原始形質]]であり、系統的には正しくないことが分かっている{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=653b}}。双子葉植物の子葉は[[対生]]し、ふつう同形で主軸の子葉節につく{{Sfn|清水|2001|p=213}}。 |
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園芸界では、双子葉植物の[[実生]]において、展開した地上生子葉または地表性子葉を'''双葉'''(ふたば)といい、それに対して[[普通葉]]を'''本葉'''(ほんば)という{{Sfn|清水|2001|p=216}}。 |
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=== 葉序 === |
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{{See|葉序}} |
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'''[[葉序]]'''(ようじょ、{{lang|en|phyllotaxis}})は、茎に対する葉の配列様式である{{Sfn|清水|2001|p=152}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1423f}}。葉序は節につく葉の枚数により、1節に1枚葉がつく[[互生葉序]]と1節に2個以上の葉がつく[[輪生葉序]]に分けられる{{Sfn|清水|2001|p=152}}。輪生葉序のうち、1節に2個ちょうどの葉をつける葉序を特に[[対生葉序]]と呼び分けることも多く、葉序は普通、'''互生葉序'''(ごせいようじょ、{{lang|en|alternate phyllotaxis}})、'''対生葉序'''(たいせいようじょ、{{lang|en|opposite phyllotaxis}})、'''輪生葉序'''({{lang|en|verticillate phyllotaxis}})の3つに大別される{{Sfn|清水|2001|p=152}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1423f}}。 |
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葉原基形成の際の、シュート頂分裂組織におけるL1層での[[オーキシン極性輸送]]が葉序を生み出す要因となっている{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=555}}。 |
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== 葉上生 == |
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[[File:Helwingia japonica m.jpg|thumb|200px|[[ハナイカダ]] {{snamei||Helwingia japonica}}の葉上にみられる雄花序]] |
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葉は有限成長する側生器官であるため、他の器官を付けないのが普通であるが、葉上に[[花序]]や[[不定芽]]を付けることがあり、このような性質を'''葉上生'''(ようじょうせい、{{small|葉上形成}}、{{lang|en|epiphylly}})という{{Sfn|清水|2001|p=164}}{{Sfn|熊沢|1979|p=181}}。 |
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[[ハナイカダ属]] {{snamei||Helwingia}}([[ハナイカダ科]])や[[ビャクブ]] {{Snamei||Stemona japonica}}([[ビャクブ科]])は普通葉と花序が発生初期に原基が分かれることなく同時に成長し、葉上に花序ができる{{Sfn|清水|2001|p=164}}。[[シナノキ属]] {{snamei||Tilia}}([[アオイ科]])では[[苞]]上に花序が生じるように見える{{Sfn|清水|2001|p=164}}。芽の下側にあって脇芽を戴く葉を'''{{Vanchor|蓋葉}}'''(がいよう、{{lang|en|subtending leaf}})といい、これらは蓋葉と脇芽が癒合してできたものである{{Sfn|清水|2001|p=224}}{{Sfn|熊沢|1979|p=172}}。そのため、これは不定芽とは異なる{{Sfn|熊沢|1979|p=172}}。 |
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=== 葉上不定芽 === |
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'''葉上芽'''(ようじょうが、{{small|または}}葉上不定芽、{{lang|en|epiphyllous bud}})は脱分化により葉に生じた[[不定芽]]である{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1207e}}{{Sfn|清水|2001|p=222}}{{Sfn|熊沢|1979|p=172}}。 |
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[[コダカラベンケイ]] {{snamei||Kalanchoe daigremontiana}} や[[セイロンベンケイ]] {{snamei||Kalanchoe pinnata}}、[[キンチョウ (植物)|キンチョウ]] {{snamei||Kalanchoe tubiflora}}、{{snamei||Kalanchoe scandens}}([[ベンケイソウ科]])などでは普通葉の葉縁に不定芽が生じる{{Sfn|清水|2001|p=164}}{{Sfn|熊沢|1979|p=177}}。この不定芽は[[受精卵]]と同様な形態的変化の過程をとって[[体細胞]]から生じる[[不定胚]]を経て形成される{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1207e}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1207h}}。また、{{snamei||Begonia phyllomaniaca}} も自然状態で葉の表面脈上に無数の不定芽や葉片状形成物を生じる{{Sfn|熊沢|1979|p=178}}。 |
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単子葉類にも葉上不定芽の例は多く知られ、[[ショウジョウバカマ]] {{snamei||Heloniopsis orientalis}}([[シュロソウ科]])は葉の先端付近に不定芽を生じる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1207e}}{{Sfn|熊沢|1979|p=178}}。ショウジョウバカマの不定芽は中央脈維管束の木部に近い数個の細胞が分裂し、[[カルス (植物)|カルス]]状の隆起から[[内生的]]に形成される{{Sfn|熊沢|1979|p=178}}。[[ヤチラン]] {{snamei||Malaxis paludosa}} は葉の先端付近の葉縁に不定芽を生じ、脱落して別個体となる{{Sfn|熊沢|1979|p=178}}。[[カラスビシャク]] {{snamei||Pinellia ternata}}([[サトイモ科]])も葉身の基部や[[葉鞘]]頂端部に、[[スルガテンナンショウ]] {{snamei||Arisaema yamatense}} では葉鞘頂端部に、離脱しない多肉質の[[珠芽]]を生じる{{Sfn|熊沢|1979|p=181}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1207e}}。 |
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[[薄嚢シダ類]]でも多数、葉上不定芽を生じる例が知られている{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1207e}}{{Sfn|清水|2001|p=222}}{{Sfn|熊沢|1979|p=174}}。[[クモノスシダ]] {{snamei||Asplenium ruprechtii}} や[[ヒメイワトラノオ]] {{snamei||Asplenium capillipes}}、[[チャセンシダ]]、[[ヌリトラノオ]]、[[ヒノキシダ]]([[チャセンシダ科]])、[[フジシダ]] {{snamei||Monachosorum maximowiczii}} や[[オオフジシダ]] {{snamei||Monachosorum nipponicum}}([[コバノイシカグマ科]])、[[ツルデンダ]] {{snamei||Polystichum craspedosorum}}([[オシダ科]])では葉の先端に近い表面から不定芽を生じ、独立して新たな個体となる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1207e}}{{Sfn|熊沢|1979|p=174}}。[[ミズワラビ]] {{snamei||Ceratopteris thalictroides}}([[イノモトソウ科]])は葉縁に、[[コモチシダ]] {{snamei||Woodwardia orientalis}}([[シシガシラ科]])は葉の表面脈上に多数の不定芽を生じる{{Sfn|熊沢|1979|p=175}}。これらは葉縁に残存分裂組織 ({{lang|en|residual meristem}}) があるためであると解されている{{Sfn|熊沢|1979|p=175}}。普通向軸面からのみ不定芽が生じるが、{{snamei||Tectaria cicutaria}}{{Efn|[[シノニム|syn.]] {{snamei|Aspidium cicutarium}}}}([[ナナバケシダ科]])や[[チリメンシダ]] {{snamei||Dryopteris erythrosora}} {{lang|la|f.}} {{snamei|prolifica}}(オシダ科)では背軸面からの発生が知られている{{Sfn|熊沢|1979|p=176}}。また、[[アナコロプテリス]] {{snamei||Anachoropteris}}([[絶滅|†]][[アナコロプテリス科]]{{Sfn|西田|2017|p=295}})、[[ボトリオプテリス]] {{snamei||Botryopteris}}(†[[ボトリオプテリス科]]{{Sfn|西田|2017|p=295}})、[[ホラゴケ属]] {{snamei||Trichomanes}}([[コケシノブ科]])などでは葉柄の途中から、[[イヌチャセンシダ]] {{snamei||Asplenium tripteropus}} や[[トキワシダ]] {{snamei||Asplenium yoshinagae}}、[[オクタマシダ]] {{snamei||Asplenium pseudo-wilfordii}}(チャセンシダ科)、[[ヒメムカゴシダ]] {{snamei||Monachosorum arakii}}(コバノイシカグマ科)では羽片の基部中軸向軸側の付近からの不定芽が知られている{{Sfn|熊沢|1979|p=176}}。 |
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{{Multiple image |
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|direction = horizontal |
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|align = center |
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|total_width = 800 |
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|image1=Kalanchoe delagoensis 2018-10-06 01.jpg |
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|caption1=[[キンチョウ (植物)|キンチョウ]] {{snamei||Kalanchoe delagoensis}} の葉縁にできた不定芽 |
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|image2=Pinellia ternata bulbil.jpg |
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|caption2=[[カラスビシャク]] {{snamei||Pinellia ternata}} の葉上不定芽 |
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|image3=Woodwardia orientalis komotisd02.jpg |
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|caption3=[[コモチシダ]] {{snamei||Woodwardia orientalis}} の葉上不定芽 |
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}} |
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== 生理機能 == |
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葉は、茎とともに陸上植物の地上部を構成する基本器官の1つである{{Sfn|加藤|1999|p=19}}。[[#内部形態|上記]]のように発達した[[炭酸同化|同化]]組織により光合成を行い、活発な物質転換や水分の[[蒸散]]などを行う生理機能を持っている{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1069a}}。 |
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木本植物では幹と太い枝が植物体の骨格をなすが、発生的にも生理的にも最も活発な部位は末端部であり、そこに葉を密生する{{Sfn|加藤|1999|p=19}}。1個体当たりで多くの葉をつけるが、[[胸高直径]]わずか28 cm の[[アメリカハナノキ]] {{snamei||Acer rubrum}} には99,284枚の葉がついていたという研究結果が知られる{{Sfn|クレイン|2014|p=52}}。そのため巨樹では30–50万枚の葉をつけると推測されている{{Sfn|クレイン|2014|p=52}}。 |
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=== 光合成 === |
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葉は植物の体において、主な[[光合成]]の場となる{{Sfn|加藤|1999|p=19}}{{Sfn|清水|2001|p=120}}{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=44}}。光合成の基質として使用される[[二酸化炭素]](CO<sub>2</sub>)は、普通空気中から気孔を通って葉の内部に取り入れられる{{Sfn|加藤|1999|p=20}}。取り込まれた二酸化炭素は細胞間隙を移動し、葉肉細胞に取り入れられる{{Sfn|加藤|1999|p=20}}。光合成の代謝過程は葉の柵状組織と海綿状組織の葉肉細胞で起こり{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=245}}、特に前者で活発に行われる{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=44}}。 |
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光合成を行う細胞の二酸化炭素の需要と、孔辺細胞による二酸化炭素の供給の協調作用が純CO<sub>2</sub>吸収として測定される光合成速度に影響する{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=245}}。 |
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光合成は葉の構造的特性と機能的特性に影響される{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=246}}。葉の内部構造や葉の方向は光合成のための[[光吸収]]を最大化するようになっている{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=246}}。また、葉肉細胞では細胞間隙に面する細胞壁が大きく、気体の交換がしやすいようになっている{{Sfn|加藤|1999|p=19}}。この表面積を大きくする構造は車のエンジンを冷却するために襞状をしたラジエーターに喩えられることもある{{Sfn|加藤|1999|p=19}}。 |
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また、葉は生育環境に対し馴化する{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=246}}。陸上植物は生育する環境の光条件に応じて形態的、生理的に異なった性質を持つ葉を作ることが多い{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=100d}}。弱光下で形成された葉を'''{{Vanchor|陰葉}}'''(いんよう、{{lang|en|shade leaf}})、強光下で形成された葉を'''{{Vanchor|陽葉}}'''(ようよう、{{lang|en|sun leaf}})という{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=100d}}。これは1つの種が複数の形態を持つ葉をつける不等葉性の一つである{{Sfn|熊沢|1979|p=286}}。種によって陰葉と陽葉の分化の程度は異なる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=100d}}。陰葉と陽葉のどちらが分化するかは、葉が発生するシュート頂ではなく既に成熟している葉に対する光環境で決まる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=100d}}。木本植物だけでなく、[[オオアレチノギク]]や[[セイタカアワダチソウ]]のような草本植物でも陰葉と陽葉を分化することが明らかにされている{{Sfn|熊沢|1979|p=287}}。 |
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陰葉と陽葉には以下のような違いがある。 |
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{| class="sortable wikitable" |
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! !! 陰葉 !! 陽葉 |
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|- |
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! rowspan=3 | 形態的特徴 |
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| (相対的に)面積が大きい{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=100d}} |
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| (相対的に)面積が小さい{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=100d}} |
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|- |
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| 厚さが薄い{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=100d}}{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=249}}{{Sfn|塩井|井上|近藤|2009|p=270}} |
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| 厚さが分厚い{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=100d}}{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=249}}{{Sfn|塩井|井上|近藤|2009|p=270}} |
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|- |
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| 柵状組織の発達が悪い{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=100d}}{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=249}}{{Sfn|原|1972|p=180}} |
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| 柵状組織が発達し、多層になる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=100d}}{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=249}}{{Sfn|原|1972|p=180}} |
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|- |
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! rowspan=3 | 生化学的特徴 |
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|- |
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| [[クロロフィルa]]/[[クロロフィルb|b]]比が小さい{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=100d}}{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=249}} |
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|クロロフィルa/b比が大きい{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=100d}}{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=249}} |
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|- |
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| 弱光下でも光合成効率をあげられるように、<br />反応中心あたりのクロロフィル量が多い{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=249}} |
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| [[ルビスコ]]を多く持ち、炭酸同化を増加させ、[[キサントフィルサイクル]]の構成要素の<br />プールを大きくすることにより過剰エネルギーを放散する{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=249}} |
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|- |
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! rowspan=2 | 生理的特徴 |
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| [[光飽和]]時の葉面積当たりの[[光合成速度]]が小さい{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=100d}}{{Sfn|塩井|井上|近藤|2009|p=270}} |
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| 光飽和時の葉面積当たりの光合成速度が大きい{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=100d}}{{Sfn|塩井|井上|近藤|2009|p=270}} |
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|- |
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| 葉面積当たりの呼吸速度が小さく、[[光補償点]]が低い{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=100d}} |
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| 葉面積当たりの呼吸速度が大きく、光補償点が高い{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=100d}} |
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|} |
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単位葉面積当たりの重さを'''比葉重'''(ひようじゅう、{{lang|en|LMA, leaf matter per area}})といい、単位はg/m<sup>2</sup>である{{Sfn|塩井|井上|近藤|2009|p=270}}。比葉重の大きな葉は物理的な強度が高い傾向にある{{Sfn|塩井|井上|近藤|2009|p=270}}。陰葉より、強風などのストレスを受ける開けた環境の陽葉の方が比葉重が大きい{{Sfn|塩井|井上|近藤|2009|p=270}}。また、草本植物に比べ木本植物の方が比葉重は大きく、木本の中でも落葉樹より常緑樹の方が比葉重が大きい{{Sfn|塩井|井上|近藤|2009|p=270}}。常緑樹の葉は長い場合10年もの寿命を持つことがあり、長期間にわたって生存できるため、比葉重が大きい葉を作る{{Sfn|塩井|井上|近藤|2009|p=270}}。 |
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また、ギャップ形成などにより植物が置かれた環境が変わると、植物はその環境に適応する。葉が生育環境に適した性質を持つように生化学的および形態学的に調節された発生学的過程を'''馴化'''(順化、じゅんか、{{lang|en|acclimation}})という{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=249}}。馴化は新たに展開する葉においても、既に成熟した葉においても起こりうる{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=249}}。 |
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=== 蒸散と排水 === |
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葉の裏では、'''[[気孔]]'''を通じて'''[[蒸散]]'''(じょうさん、{{en|transpiration}})が行われる{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=44}}<ref name="Kuwagata">{{Cite journal|author1=桑形恒男|author2=渡辺力|author3=三枝信子|title=大気と陸域生態系の相互作用 : 水と二酸化炭素の交換過程に着目して|journal=天気 |volume=54 |issue=3 |pages=203–206 |date=2007}}</ref>。2個の孔辺細胞の働きにより開閉し、蒸散量の調整を行う{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=44}}。葉で蒸散が行われると、根で吸収された水が吸い上げられる{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=45}}。夏の日中などの蒸散が激しく行われるときには、水の吸い上げが追いつかず、葉は一時的に萎れる{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=45}}。 |
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一方、蒸散が活発でないときには根から押し上げられた水が、[[陽圧]]によって[[葉縁]]の[[鋸歯]]にある[[水孔]]などの'''[[排水組織]]'''(はいすいそしき、{{en|hydathode}})から水滴として排出される{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=45}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1081e}}。この現象を'''[[排水 (植物)|排水]]'''(はいすい、{{en|guttation}})または出滴(しゅってき)という{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1081e}}。蒸散速度が低くなる、(特に夏の)夜から早朝にかけてよく観察される{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=45}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1081e}}。葉内間隙の気相を維持する機能があると考えられている{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1081e}}。 |
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=== 運動 === |
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[[マメ科]]植物の葉は、[[太陽光線]]の強さに応じて角度を変化させる調位運動や[[就眠運動]]を行う{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1426}}<ref name="Ryu">{{Cite journal|author1=劉恵國|author2=玉泉幸一郎|author3=齋藤明|date=1997|title=クズの葉の調位運動に関する研究(I): 小葉の方位調節と葉温の日変化|journal=九州大学農学部演習林報告|volume=76|pages=11–24|doi=10.15017/10928}}</ref>。クズの葉は、早朝と夕方には太陽光線に葉を向け({{en|diaheliotropism}})、一方日中は太陽光線を避けて葉を立てる({{en|paraheliotropism}}){{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=45}}<ref name="Ryu"/>。これにより、葉の温度を低減させる効果があると考えられている<ref name="Ryu"/>。 |
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この調位運動や睡眠運動には、[[葉柄]]基部が肥大化した'''[[葉枕]]'''(ようちん、{{En|pulvinus}})と呼ばれる構造が関与している{{Sfn|清水|2001|p=122}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1426}}{{Sfn|Taiz|Zeiger|2017|p=249}}。マメ科のほかに[[カタバミ属]]や[[ヤマノイモ科]]にも知られる{{Sfn|清水|2001|p=122}}。特にマメ科の[[オジギソウ]] {{snamei||Mimosa pudica}}では、葉身が刺激を受けると葉枕細胞の透過性が高まり、[[活動電位]]が生じ振動傾性運動を起こすことが知られている{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1426}}。 |
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[[食虫植物]]の[[ハエトリグサ]] {{snamei||Dionaea muscipula}}([[モウセンゴケ科]])では、捕虫葉の葉身の向軸側にある感覚毛に[[ハエ]]などの[[昆虫]]が2回触れると葉を閉じ、捕食して消化する{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1315d}}。 |
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=== 落葉 === |
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{{Multiple image |
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|align=right |
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|total_width=400 |
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|image1=Høstfarver.JPG |
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|caption1=様々な色を呈す落葉{{Efn|左上から時計回りに、[[シラタマミズキ]] {{snamei|Cornus alba}}([[ミズキ科]])、[[カラコギカエデ]] {{snamei||Acer ginnala}}([[ムクロジ科]])、[[ユリノキ]] {{snamei||Liriodendron tulipifera}}、交雑[[ポプラ]] {{snamei|Populus tremula}} × {{snamei|tremuloides}}、[[ナナカマド属]]の1種 {{Snamei||Sorbus decora}}([[バラ科]])、[[セイヨウカンボク]] {{Snamei||Viburnum opulus}}([[レンプクソウ科]])}} |
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|image2=Dead leaves of sawtooth oak remain on branches even in winter.jpg |
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|caption2=落葉せずに木に残る[[クヌギ]]([[ブナ科]])の枯葉 |
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}} |
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{{Main|落葉性|{{ill2|葉痕|en|Leaf scar}}}} |
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ほとんどの植物で葉は[[二次肥大成長]]を行わないため{{Efn|[[ハナワラビ]]類の葉跡には形成層が形成され、二次維管束を分化する{{Sfn|加藤|1999|pp=50–51}}。}}、個体とは別に寿命を持ち、あるタイミングで茎との境界に[[離層]]を分化して母体から脱落することが多い{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1069a}}{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=77}}{{Sfn|熊沢|1979|p=204}}。このように、葉が脱離する現象を'''[[落葉]]'''(らくよう、{{en|leaf abscission}})という{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434b}}{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=77}}。この際、茎の表面に'''[[葉痕]]'''(ようこん、{{en|leaf scar}})を残す{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1069a}}{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=77}}{{Sfn|熊沢|1979|p=205}}。落葉に伴い、葉色が変化して紅葉や黄葉を伴うものも多い{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434b}}。 |
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葉の生理的寿命が近づくと、葉内の養分がより若い葉に向けて転流したのち、離層が発達して物質の流通が制限される{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434b}}。その後離層細胞内で新たに合成された[[細胞壁分解酵素]]の分泌により、離層細胞の分離や崩壊が起こり、葉が脱離する{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434b}}。これに伴い、茎側の断面は[[コルク層]]で被覆される{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434b}}。脱離の過程は離層周辺の[[オーキシン]]量と[[エチレン]]量により制御されている{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434b}}。 |
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植物の個体が、生活史中ですべての成葉を脱落させる時期を持つ性質を'''[[落葉性]]'''(らくようせい、{{en|deciduous}})といい、その性質を持ち、ある時期には全く緑葉を付けなくなる[[木本植物]]を[[落葉樹]](らくようじゅ、{{en|deciduous tree}})という{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434e}}{{Sfn|清水|2001|p=22}}。葉の寿命が1年以内である落葉樹に対し、葉の寿命が1年から数年で、年間を通して緑葉を付ける性質を'''常緑性'''(じょうりょくせい、{{en|evergreen}})といい、そのような樹木は'''常緑樹'''(じょうりょくじゅ、{{en|evergreen tree}})と呼ばれる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434d}}{{Sfn|清水|2001|p=23}}。 |
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落葉樹で落葉が起こるのは生育に不適な時期であることが多い{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434e}}{{Sfn|清水|2001|p=23}}。[[四季]]を持つ[[温帯]]では生育に不適な時期が寒期([[冬]])であることが多く、寒期に落葉する性質を'''夏緑性'''(かりょくせい、{{en|summer green}})といい、そのような落葉樹を'''[[夏緑樹]]'''(かりょくじゅ、{{en|summer green tree}})という{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434e}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434d}}{{Sfn|清水|2001|p=23}}。この生育に不適な時期は乾燥期や光条件が悪い時期であることもある{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434e}}。落葉樹林の林床に生える多年生草本では、光条件が良くなる冬に葉をつけるものが知られる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434e}}。気候帯によっては温暖で湿潤な冬季に葉を展開し、乾燥した夏季に落葉するのもみられ、'''冬緑性'''(とうりょくせい、{{en|winter green}})と呼ばれる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434e}}。[[熱帯]]から[[亜熱帯]]にかけて、二季性の気候下で乾季に落葉するものは'''雨緑'''(うりょく、{{en|rain green}})と呼ばれ、そのような樹木を'''[[雨緑樹]]'''(うりょくじゅ、{{en|rain green tree}})という{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434d}}{{Sfn|清水|2001|p=23}}。落葉樹のうち、落葉の時期にも少数の緑葉を残すものは'''半落葉性'''と呼ばれる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434e}}{{Sfn|清水|2001|p=23}}。落葉のタイミングも種によって異なり、[[クヌギ]] {{snamei||Quercus acutissima}} や[[カシワ]] {{snamei||Quercus dentata}}(ともに[[ブナ科]])のように、離層形成が遅いためしばらく枯葉が残り続けるものも知られる{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=78}}{{Sfn|林|2020|p=365}}。[[ヤマコウバシ]] {{snamei|Lindera glauca}}([[クスノキ科]])のように、葉は枯れても落葉せずに枯死した葉がそのまま越冬するものも見られる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434d}}{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=78}}。[[熱帯]]では、年中落葉が続く種もあれば、周期的に落葉する種もある{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434b}}。 |
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落葉樹と違って目立たないが、常緑樹であっても落葉は起こっている{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434d}}。葉は次々に更新され、[[東アジア]]では普通、2–3年かけて入れ替えられる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434d}}{{Sfn|清水|2001|p=23}}。この常緑樹の落葉は主に春から初夏にかけて起こり{{Sfn|清水|2001|p=23}}{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=77}}、新葉が展開するとともに旧葉が落下する{{Sfn|清水|2001|p=23}}。草本植物でも落葉は見られる{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=77}}。例えば、[[セイタカアワダチソウ]]では茎の成長とともに上部に葉が展開し、下部の葉が落下する{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=77}}。 |
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{{要出典範囲|特殊な例としては、[[南西諸島]]等で植栽に用いられるの[[デイゴ]]([[マメ科]])は、花を咲かせる枝に限って葉を落とす。また、[[アコウ (植物)|アコウ]]([[クワ科]])は、不定期に木全体の葉を落とし、新芽を出す。また、一般の落葉樹でも、落葉の時期でなくとも、乾燥がひどかったり、葉が[[塩害]]にあった時など、不特定の時期にも葉を落とす場合がある。|date=2024-12}} |
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{{要出典範囲|常緑植物でも一部の種、[[針葉樹]]の[[スギ]]や[[ニオイヒバ]]、メギ科の[[ナンテン]]、[[ベンケイソウ科]]の多肉植物などで、冬には紅葉するが枯れて落葉はせず、春には再び緑色に戻るものがある。|date=2024-12}} |
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File:20150228Ailanthus altissima1.jpg|[[ニワウルシ]] |
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File:Bladlitteken van Juglans regia.jpg|クルミ |
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File:Acer platanoides sl4.jpg|[[ノルウェーカエデ]] {{snamei|Acer platanoides}} |
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ファイル:Cyathea mertensiana (Kunze) Copel 2.jpg|[[マルハチ]]({{snamei|Cyathea mertensiana}}、円形の葉痕に維管束が逆八の字) |
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File:Sigillaria sp.4 - Carbonifero.JPG|[[フウインボク]](Sigillaria sp.)の化石 |
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File:Bark1.JPG|[[ヒトデカズラ]] |
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ファイル:Philodendron bipinnatifidum.jpg|[[フィロデンドロン]] |
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=== 紅葉 === |
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{{Multiple image |
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|total_width=400 |
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|image1=Acer palmatum, -Japan 01.jpg |
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|caption1=紅葉した[[イロハモミジ]] {{snamei||Acer palmatum}} の葉 |
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|image2=2024-10-24 - vivid yellow ginkgo leaf on distant twig against a blue sky - DSM4694.jpg |
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|caption2=黄葉した[[イチョウ]] {{snamei||Ginkgo biloba}} の葉 |
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[[秋]]に葉が赤く色付く現象を'''[[紅葉]]'''という{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=467i}}{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=77}}。落葉に先立って葉柄基部に離層が形成され、糖類の移動が妨げられることで葉に色素が蓄積することが、紅葉の起こりやすい条件であると考えられている{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=467i}}。この色素は[[アントシアン]]や[[フロバフェン]]{{Efn|[[タンニン]]が縮合したもの。}}で、葉に蓄積した糖や[[アミノ酸]]から作られる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=467i}}。一方、葉内の[[クロロフィル]]や[[蛋白質]]が秋の落葉前に分解されて移動する結果、残された[[カロテノイド]]を主体とする黄色色素により葉が黄色を呈する現象を'''黄葉'''という{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=467i}}{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=77}}。これにより[[窒素]]や[[リン]]などの栄養素が回収される{{Sfn|クレイン|2014|p=53}}。アントシアン形成とカロテノイドの多寡により葉は様々な色調を呈し{{Sfn|岩瀬|大野|2004|p=77}}、紅葉と黄葉は同じ葉に起こることもある{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=467i}}。日本では紅葉は[[カエデ属]]、黄葉は[[イチョウ]]や[[カバノキ属]]に顕著である{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=467i}}{{Sfn|クレイン|2014|p=53}}。 |
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==== 葉の色と生理 ==== |
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多くの植物で光合成を行う普通葉は、[[葉緑体]]を含むため、緑色を呈することが多い。しかし、種や条件により他の色を呈するものも知られる。 |
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例えば、上記の紅葉のほかに、多年生の木本植物などの芽が[[休眠]]を打破して形成される新葉(しんよう)には、赤く色付くものがある<ref name=redleaf/>。例えば、[[バラ]]、[[ハゼノキ]]、[[アラカシ]]、[[タブノキ]]、[[アカメガシワ]]、[[テイカカズラ]]、[[ヒサカキ]]、[[フジ (植物)|フジ]]など様々な分類群で見られる<ref name=redleaf/>。[[スイバ]]や[[ノゲシ]]のように、越冬葉が赤くなるものも知られる<ref name=redleaf/>。ほかにも[[ポインセチア]]の[[苞]]は、花粉を媒介する虫をおびき寄せるために赤く変色し、期間が過ぎると緑となる<ref>{{Cite web |url=https://getnews.jp/archives/1989816 |title=クリスマスに人気のポインセチア、なぜ赤い? |access-date=2024-03-22 |date=2017-12-06 |website=ガジェット通信 GetNews |language=ja}}</ref>。 |
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新葉や落葉前の紅葉を含む、赤く色付いた葉の究極要因として、2つの仮説が考えられている<ref name="Higuchi">{{Cite journal|url=https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400196219.pdf|author=樋口裕美子|title=秋にモミジが |
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赤くなるのはなぜ?|page=6|journal=淡青|volume=45|publisher=東京大学|date=2022}}</ref><ref name=redleaf>{{Cite journal |author=井出純哉 |date=2023-03-01 |title=植物の赤い新葉の機能: 赤色は植食性昆虫に対する警告色なのか |url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/61/3/61_610210/_article/-char/ja/ |journal=化学と生物 |volume=61 |issue=3 |pages=139–144 |doi=10.1271/kagakutoseibutsu.61.139 |issn=0453-073X}}</ref>。1つは、葉を過度の光から保護するためであると考えられている<ref name="Higuchi"/><ref name=redleaf/>。クロロフィルが分解されて光合成活性が低下した葉に光が過剰に当たると、細胞損傷や早期の落葉を引き起こす可能性がある<ref name="Higuchi"/>。これを防いで葉から幹への栄養素の移動を促進するために、短波長の光を吸収するアントシアニンを合成し、入射光の量を和らげていると考えられている<ref name="Higuchi"/><ref name=redleaf/>。 |
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もう1つの仮説は、植物を食べる昆虫への警告であると考えられている<ref name="Higuchi"/><ref name=redleaf/>。葉に防御物質が多く含まれていたり、栄養価に乏しかったりするため、昆虫に近寄らないように指示する信号となっていると説明される<ref name="Higuchi"/>。これは特に秋に産んだ越冬卵が春に孵化して葉を食害する[[アブラムシ]]などの昆虫を想定したものである<ref name="Higuchi"/>。これにより、[[草食動物|植食者]]による食害を防ぐ効果があるとされる<ref name=redleaf/>。 |
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File:Inflorescence 1.jpg|[[ポインセチア]]の[[苞]] |
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File:Rotkohl (Brassica oleracea convar).JPG|半分にカットされた[[赤キャベツ]] |
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File:Coleus-1.jpg|[[コリウス]] |
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File:Heuchera Starry Night garden show.jpg|{{ill2|ツボサンボ属|en|Heuchera}} の {{Snamei|Heuchera}} 'Starry Night' |
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File:Red Shiso field 2.jpg|栽培中の赤ジソ(福井市) |
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=== 生理障害と病理 === |
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{{節スタブ|date=2023年11月}} |
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キュウリでは、未展開の若葉時に[[カルシウム]]不足により「落下傘葉」と呼ばれる葉の形態を示すことが知られている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.takii.co.jp/tsk/bugs/acu/seiri/rakkasanha/|title=落下傘葉|date=2003-02-07|website=タキイ種苗|accessdate=2024-12-11}}</ref>。[[ブドウ]]では、[[マグネシウム]]欠乏により、[[葉肉]]が黄色くなり、[[葉脈]]だけが緑色に残る「トラ葉」と呼ばれる形態を示す<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.knsk-osaka.jp/faq/norin_kaju/2014031000906/|title=ブドウなどで発生する生理障害について教えてほしい。|website=大阪府立環境農林水産総合研究所|accessdate=2024-12-11}}</ref>。 |
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== 生態系における葉 == |
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{{節スタブ|date=2023年11月}} |
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[[大葉シダ植物]]や[[被子植物]]の葉上には[[カビゴケ]] {{snamei||Leptolejeunea elliptica}} や[[ヨウジョウゴケ]] {{snamei||Cololejeunea goebelii}} のような[[生葉上苔類]](せいようじょうたいるい、{{lang|en|epiphyllous liverworts}})が生育する<ref>{{Cite book|和書|author=秋山弘之|author-link=秋山弘之|section=コケ植物の分布と分化|others=日本植物分類学会 監修|editor1=戸部博|editor2=田村実|title=新しい植物分類学Ⅱ |publisher=[[講談社]]|date=2012-08-10|isbn=978-4061534490|page=41}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.digital-museum.hiroshima-u.ac.jp/~main/index.php?title=%E7%94%9F%E8%91%89%E4%B8%8A%E8%8B%94%E9%A1%9E&mobileaction=toggle_view_desktop|title=生葉上苔類|website=広島大学デジタルミュージアム|publisher=[[広島大学]]|accessdate=2024-12-11}}</ref>。 |
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また、葉面に分布する気孔からの蒸散は、植生地における潜熱の大部分を陸域生態系から大気へ輸送するのに機能する<ref name="Kuwagata"/>。そのため、植物からの蒸散は大気-陸域生態系の水交換において最も重要なプロセスとなる<ref name="Kuwagata"/>。それ以外にも、雨や露などで濡れた葉面からの遮断蒸発も大気への水輸送に寄与する<ref name="Kuwagata"/>。 |
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森林では、樹木の葉や枝が落下し、[[土壌生物]]によってほとんど分解されないまま堆積する[[落葉落枝層]]を形成する{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1434f}}。この落葉落枝の供給は森林や水圏生態系の物質循環に重要な役割を担っている<ref>{{Cite journal|author1=田中仁志|author2=木本達也|author3=木持謙|author4=須藤隆一|date=2018|title=野外実験池を用いたクヌギ(落葉広葉樹)およびスギ(常緑針葉樹)の落葉が負荷源として形成される水質の特徴|journal=日本水処理生物学会誌|volume=54 |issue=3 |pages=83–94|doi=10.2521/jswtb.54.83}}</ref>。 |
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=== 被食と防衛 === |
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[[File:Lonicera leaf miner kz.jpg|thumb|200px|[[ハモグリバエ]]の食害を受けた[[ニオイニンドウ]] {{snamei||Lonicera periclymenum}}([[スイカズラ科]])]] |
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葉は[[昆虫]]など様々な[[動物]]に摂食される<ref name="Nobuchi">{{Cite journal|author=野淵輝|date=1988|title=熱帯の森林害虫(2) 加害様式|journal=熱帯林業|volume=12 |pages=56–58|doi=10.32205/ttf.12.0_56}}</ref><ref name="Yakushigawa">{{Cite journal|author=薬師川穂|author2=池田武文|author3=大島一正|date=2016|title=リーフマイナー潜入葉の解剖学的特性|journal=第127回日本森林学会大会 学術講演集原稿|doi=10.11519/jfsc.127.0_335}}</ref>。一方植物では、昆虫に食害されると、食害された葉などから食害を行った虫の天敵となる捕食者を誘引するための[[植食者誘導性植物揮発性物質]]を放出するものも知られている{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=671a}}。 |
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一般的に葉を摂食する昆虫を'''食葉性害虫'''({{en|defoliator}})という<ref name="Nobuchi"/>。中には、[[アゲハチョウ科]]([[鱗翅目]])のように、その[[幼虫]]が特定の植物のみを食草として摂食するものも知られる<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.brh.co.jp/research/lab01/|title=チョウが食草を見分けるしくみを探る|author=昆虫食性進化研究室 |website=[[JT生命誌研究館]]|accessdate=2024-12-11}}</ref>{{Efn|このような食性は[[狭食性]]と呼ばれる<ref name="Suzuki">{{Cite journal|author1=鈴木邦雄|author2=上原千春|title=日本産オトシブミ科(鞘遡目)の宿主植物(1)オトシブミ亜科とアシナガオトシブミ亜科|journal=富山市科学文化センター研究報告|volume=20|pp、35-56(1997}}}</ref>}}。葉肉中に潜り込み、葉肉細胞を摂食する[[昆虫]]も知られ、[[リーフマイナー]]({{en|leaf miner}}、ハモグリ)と呼ばれる<ref name="Nobuchi"/><ref name="Yakushigawa"/>。[[クルミホソガ]]([[鱗翅目]])や[[ハモグリバエ]]([[双翅目]])などが知られる。通常の昆虫に食べられた箇所の細胞は褐変し、枯死するのに対し、リーフマイナーが摂食した葉は緑色が維持される<ref name="Yakushigawa"/>。 |
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[[オトシブミ科]]([[鞘翅目]])の[[オトシブミ亜科]]および[[アシナガオトシブミ亜科]]の全て、[[チョッキリゾウムシ亜科]]の一部では、宿主植物の葉を巻いて[[揺籃]]を作り、その中に産卵する<ref name="Higuchi"/><ref name="Suzuki"/>。揺籃は切って落とされ、孵化した幼虫がそれを食べて成長する<ref name="Higuchi"/>。[[鱗翅目]]でも揺籃を作るものがあり<ref name="Higuchi"/>、{{ill2|ハマキガ科|en|Tortricidae}}などに知られる。 |
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== 人間とのかかわり == |
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{{節スタブ|date=2023年6月}} |
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{{未検証|date=2023年6月|section=1}} |
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=== 食用 === |
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{{See also|葉菜類}} |
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種々の草本植物の葉が[[葉菜類]]として栽培され、食用に供される。普通は貯蔵根が食用となる根菜類である[[ダイコン]]や[[ワサビ]]も、葉の部分を食用としてそれぞれ「大根葉」、「葉ワサビ」として親しまれる。 |
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特定の木本植物の葉や芽、[[薄嚢シダ類]]の若い[[羽葉|葉]]は[[山菜]]として食される。特に後者は[[フィドルヘッド]]と呼ばれ、各地で食用とされる。日本では、樹木の若い芽として、[[タラノキ]]{{Sfn|伊沢|野口|2022|p=99}}や[[コシアブラ]]が、シダ類の若い葉(ワラビ巻き)として[[ゼンマイ]]や[[ワラビ]]、[[クサソテツ]]などが食用となる{{Sfn|伊沢|野口|2022|p=64}}。 |
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[[桜餅]]に用いられる[[サクラ]]の葉のように、樹木の成葉を[[塩漬け]]などに加工して、食用にする場合もある<ref>{{Cite news|和書|author=後藤裕子|url=https://www.yomiuri.co.jp/otekomachi/20240326-OYT8T50029/|title=桜餅の葉っぱを食べる?食べない?和菓子専門家に正解を聞いた|date=2024-03-27|newspaper=読売新聞|accessdate=2024-12-11}}</ref>。 |
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[[チャノキ]]([[ツバキ科]])の葉からの抽出物は、[[茶]]として飲まれる。[[トチュウ]]([[トチュウ科]])、[[ビワ]]([[バラ科]]){{Sfn|伊沢|野口|2022|p=124}}、[[アマチャヅル]]([[ウリ科]])、[[クワ]]([[クワ科]]){{Sfn|伊沢|野口|2022|p=72}}のように、それ以外の植物の葉から抽出されたものも、[[茶外茶]]と総称される茶として飲用に供される。 |
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[[イチョウ]]の葉(イチョウ葉)や[[ヨモギ]]の葉(艾葉)のように、薬効があるとして抽出物が医薬品として用いられるものもある{{Sfn|クレイン|2014|p=306}}{{Sfn|伊沢|野口|2022|p=22}}{{Sfn|伊沢|野口|2022|p=140}}。 |
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=== 文化 === |
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;料理の装飾 |
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伝統的な[[日本料理]]においては、食用葉のほかに、盛りつけのあしらいとして、青[[カエデ]]、[[ナンテン]]、[[アジサイ]]、[[キク]]、[[柿|カキ]]、[[キュウリ]]などの葉を用いることがある(かいしき)。また、盛り付けのさいに、装飾を兼ね庖丁で細工が施されて、接触をさける仕切りに用いたり、にぎり寿司などをのせたりすることもある(バラン→[[ハラン (植物)|ハラン]])。 |
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== 用途 == |
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;料理 |
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:伝統的な[[日本料理]]においては、食用葉のほかに、盛りつけのあしらいとして、青[[カエデ]]、[[ナンテン]]、[[アジサイ]]、[[キク]]、[[柿|カキ]]、[[キュウリ]]などの葉を用いることがある(かいしき)。また、盛り付けのさいに、装飾を兼ね庖丁で細工が施されて、接触をさける仕切りに用いたり、にぎり寿司などをのせたりすることもある(バラン。→[[ハラン]])。 |
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;[[包装]] |
;[[包装]] |
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:[[笹寿司]]や[[ |
:[[笹寿司]]や[[柿の葉寿司]]、[[柏餅]]などのように食品を包むのに用いられる。紀元前3300年頃のミイラである[[アイスマン]]の遺留品からは、楓の葉に包んだ[[火種]]が発見されている。 |
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;行事や信仰・文化 |
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: [[薄嚢シダ類]]である[[ウラジロ]]の葉は、[[正月飾り]]として用いられる<ref>{{Cite book|和書|author=西田治文|author-link=西田治文|chapter=フサシダ科・ストロマトプテリス科・ウラジロ科|editor1=岩槻邦男|editor1-link=岩槻邦男|editor2=大場秀章|editor2-link=大場秀章|editor3=清水建美|editor3-link=清水建美|editor4=堀田満、ギリアン・プランス、ピーター・レーヴン|title=朝日百科 植物の世界[12] シダ植物・コケ植物・地衣類・藻類・植物の形態|publisher=[[朝日新聞社]]|date=1997-10-01|pages=73–76}}</ref>。[[ナギ]]の葉は、「梛守り(なぎまもり)」として各地の神社で[[お守り]]として頒布される。[[四つ葉のクローバー]]は幸運の象徴とされる<ref>{{Cite book|author=Harry Oliver |date=2010 |title=Black Cats & Four-Leaf Clovers: The Origins of Old Wives' Tales and Superstitions in Our Everyday Lives. Penguin|isbn=9781101442814}}</ref>。また、日本では[[シュロ]]の葉から作った[[バッタ]]を模したものや、[[笹舟]]など、葉を使った玩具を作る文化がある<ref>{{Cite news|和書|url=https://www.ryoutan.co.jp/articles/2021/08/91986/|title=シュロの葉で本物そっくりにバッタ作り 夏休み中の親子に上夜久野公民館が教室|newspaper=両丹日日新聞|date=2021-08-11|accessdate=2024-12-11}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.thr.mlit.go.jp/yamagata/river/enc/genre/02-reki/reki0210_001.html |title=笹船|website=最上川文化館|publisher=東北地方整備局|accessdate=2024-12-11}}</ref>。 |
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=== 飼料 === |
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[[家畜]]の[[飼料]]([[牧草]])として、[[ネズミムギ]]やチモシーとして知られる[[オオアワガエリ]] {{Snamei||Phleum pratense}} など[[イネ科]]草本の(主に)葉や、[[アルファルファ]]と呼ばれる[[ムラサキウマゴヤシ]] {{snamei||Medicago sativa}} などの[[マメ科]]草本の葉が用いられることが多い<ref>{{Cite kotobank|word=牧草|author=宮崎昭|encyclopedia=改訂新版 世界大百科事典|accessdate=2024-12-11}}</ref>。場合によっては、[[クワ]]のような木本植物の葉が[[ヤギ]]などの飼育に用いられることもある<ref name="shimotsuke">{{Cite news|和書|url=https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/789768|title=「メェメェ」「小メェメェ」すくすく さくら・ふれあい保育園の園児らヤギ育てる|newspaper=下野新聞|date=2023-09-14|accessdate=2024-12-11}}</ref>。 |
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[[絹]]を採るための[[カイコ]]の飼育([[養蚕]])では、餌として[[マグワ]]の葉が用いられる{{Sfn|伊沢|野口|2022|p=72}}<ref name="shimotsuke"/>。 |
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=== 鑑賞用 === |
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{{see|観葉植物}} |
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色付いた葉を持つ植物は、「カラーリーフプランツ」として観賞用に利用される{{Efn|カラーリーフプランツ {{en|color leaf plants}} は[[和製英語]]である<ref name="imidas"/>。}}<ref name="imidas">{{Cite web |url=https://imidas.jp/genre/detail/L-123-0038.html |title=カラーリーフプランツ | 時事用語事典 |access-date=2024-03-22 |website=情報・知識&オピニオン imidas}}</ref><ref>{{Cite book|author1=土橋豊|author2=椎野昌宏 |和書|title=カラーリーフプランツ:葉の美しい熱帯・亜熱帯の観葉植物547品目の特徴と栽培法|publisher= 誠文堂新光社 |date=2017-02-03 |isbn=978-4416615775|page=17}}</ref>。新葉や紅葉のように一時的なものだけでなく、成葉で発現するものも知られる<ref name="imidas"/>。色は赤、黄、白、斑入りなど様々なものが用いられる<ref name="imidas"/>。 |
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=== バイオミメティクス === |
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生物の持つ機能や構造を真似て工学的に利用することを[[バイオミメティクス]]というが、その中でも[[ハス]]の葉の撥水する機能は「[[ロータス効果]]」と呼ばれ、汚れが付着しにくい微細構造へと応用されている{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1075f}}。 |
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=== 意匠 === |
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[[イチョウ]](銀杏紋)や[[フタバアオイ]]([[葵紋]])など、特徴的な形の葉は紋章やロゴマークなどのデザインにもなる{{Sfn|クレイン|2014|p=38}}。 |
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== 脚注 == |
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=== 注釈 === |
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<!-- == 参考文献 == --> |
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=== 出典 === |
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== 参考文献 == |
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== 関連項目 == |
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* [[根]] |
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* [[枝#植物の枝]] |
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* {{ill2|陽葉|de|Sonnenblatt}}、{{ill2|陰葉|de|Schattenblatt}} - 太陽に当たりやすい葉と当たりにくい葉について、陰葉は面積が広く薄いなどの形態の違いがある。 |
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* {{ill2|無柄|en|Sessility (botany)}} - 葉柄を持たない事。 |
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* [[トライコーム]](毛状突起) - 葉の表面の産毛。 |
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== 外部リンク == |
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{{Wiktionary|は|はっぱ|葉|leaf}} |
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* [http://staff.fukuoka-edu.ac.jp/fukuhara/keitai/ 植物形態学] - [[福岡教育大学]]教育学部 福原達人 |
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* [https://staff.fukuoka-edu.ac.jp/fukuhara/keitai/4-3.html 植物形態学 4-3. 葉] - 福原達人([[福岡教育大学]]教育学部) |
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* [https://hosho.ees.hokudai.ac.jp/tsuyu/top/dct/morph-j.html#leaf 植物形態学 (plant morphology)] - 露崎史朗([[北海道大学]]大学院環境科学研究院) |
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{{植物学}} |
{{植物学}} |
2024年12月15日 (日) 20:30時点における最新版
葉(は、英: leaf[注釈 1])は、陸上植物の植物体を構成する軸性器官である茎に側生する器官である[1]。維管束植物の胞子体においては根および茎とともに基本器官の一つで、シュート頂から外生的に形成される側生器官である[2]。普通、茎に側生する扁平な構造で[2]、維管束からなる脈系を持つ[1]。コケ植物の茎葉体(配偶体)が持つ扁平な構造も葉と呼ばれる[3][1][4]。
一般的な文脈における「葉」は下に解説する普通葉を指す[5]。葉は発達した同化組織により光合成を行い、活発な物質転換や水分の蒸散などを行う[2]。
葉の起源や形、機能は多様性に富み、古くから葉の定義や茎との関係は議論の的であった[1][2]。ゲーテ以降、葉を抽象的な概念に基づいて定義しようという試みが形態学者によりなされてきたが、ザックス以降、発生過程や生理的機能、物質代謝、そして遺伝子の発現や機能などに解明の重点が置かれている[2]。茎と同様にシュート頂分裂組織に 由来するが、軸状構造で無限成長性を持つ茎とは異なり、葉は一般的に背腹性を示し、有限成長性で腋芽を生じない[2][注釈 2]。維管束植物の茎はほぼ必ず葉を持ち、茎を伸長させる分裂組織は葉の形成も行っているため、葉と茎をまとめてシュートとして扱う[7]。
なお、コンブやワカメのような褐藻類でも、付着器・茎状部・葉状部という高度な組織分化がみられる例があり[8]、それぞれ俗に根・茎・葉と呼ばれることもあるが、陸上植物とは別のスーパーグループに属すため[9]、進化的起源や構造は大きく異なり、真の葉とは区別される。
進化的起源
[編集]葉の進化的起源は系統によって異なり、コケ植物の茎葉体(配偶体)が持つ葉 (phyllid)、小葉植物の胞子体が持つ小葉[注釈 3]、そして種子植物の胞子体が持つ大葉は独立に進化してきた[1][3][10]。このうちコケ植物の葉は配偶体に形成される点で、他の葉とは根本的に異なっている[11]。大葉は形態の変異に富み、針葉などもこれに含まれる[1]。また、大葉植物の内部系統でも、葉は最大で11回独立に進化してきたと考えられている[12]。特に、大葉シダ植物[の胞子体が持つ羽葉やトクサ類の楔葉は被子植物の大葉とは異なる起源を持っていると考えられている[13]。大葉シダ植物の中ではマツバラン目では、葉を持たず、茎には葉状突起が側生する[14]。
葉の起源を含む包括的な維管束植物の形態進化はヴァルター・マックス・ツィンマーマンが提唱した仮説、テローム説によって解釈される[15][16]。古典形態学の概念では生物がある「原型」を変形させることで進化したと考えらえており、テローム説もその流れに則っている[17]。陸上に進出した当時の陸上植物は二又分枝を行う軸により植物体が構成されていた[15]。ツィンマーマンはそれに基づき、そういった植物は形而上学的な単位である「テローム」及び「メソム」と呼ばれる軸から体が構成されていたと考え、それが癒合や扁平化などの変形をし陸上植物の根や茎や葉を形づくったと考えた[16][17]。二又分枝の末端の枝をテローム、それ以外のテロームを繋ぐ軸をメソムと呼び、二又分枝の体制はそれらの軸を単位として構成されていたとした[17]。
また、前川文夫は葉の系統学的解釈について、自身の提唱した葉類説(ようるいせつ、concept of leaf-class)に基づいて説明しようと試みた[18]。この学説では、同じ系統発生上の起源を持つ葉を葉類(ようるい、leaf class)として類型化し、構造や機能に基づいて類型化した葉態と合わせて植物が二元的に分類された[19]。
大葉
[編集]大葉(だいよう、または大成葉、megaphyll, macrophyll)は葉身に多数の葉脈が形成される葉である[20]。種子植物の大葉と大葉シダ植物の羽葉(うよう、frond)、そして大葉シダ植物のうち基部トクサ類がもつ楔葉(けつよう、sphenophyll、または輪葉[21]、輪生葉[22]とも)が大葉に含まれる[23]。これらの葉はかつては相同であると考えられたこともあったが[23]、現在では何れも進化的起源や性質が異なると考えられている[10]。大葉植物(特に被子植物と大葉シダ植物)の葉跡[注釈 4]の上側の髄と皮層を繋いでいる部分には一次木部細胞に接して柔細胞が形成されている[24]。大葉シダ植物の羽葉では茎から葉原基に向かって葉跡が伸長する[24]。羽葉の葉跡の上にある柔組織を葉隙(ようげき、leaf gap)と呼ぶ[24]。それに対し、被子植物の葉は葉跡が葉原基から茎に向かって伸長する求基的葉である[24][25]。被子植物の葉跡の上にある柔組織は空隙(くうげき、lacuna)と呼ぶ[24]。それぞれの葉の起源も形成過程も異なるため、葉隙と空隙は相同ではないと考えられている[24]。
葉隙や空隙の存在は小葉との識別点とされてきたが、葉隙の有無は完全に系統を反映しているわけではない[20]。トクサ類や種子植物の真正中心柱では葉柄に入る葉跡が多数あり、それぞれが茎の維管束から仮軸分枝によって供給されるため葉隙はなく、メシダ科など薄嚢シダ類でも網状中心柱が小型化すると葉跡が仮軸分枝するため、見かけ上葉隙がなくなる[20]。また、トクサ類の楔葉は節に輪生し、小葉のように葉跡は1本であるが、古い時代のものでは脈が又状分岐するのもある[21][26]。構造が単純化した現生のトクサ属のものは葉緑体を持たず光合成は行わないようになっており、葉の基部が隣同士で融合して袴状の葉鞘を作るものがある[21][27]。しかし化石植物の楔葉はそれより大型であり、プセウドボルニア Pseudobornia では2回二又分枝した軸に細かい葉片が鳥の羽状につく形態であった[27]。かつては葉隙の有無に焦点が当てられていたこともあり、葉隙ができないトクサ類の楔葉は小葉であるとされていた[28]。
大葉植物の葉はテローム説における癒合および扁平化により形成されたという解釈がなされている[29][30]。大葉の完成には、テローム軸が癒合および扁平化することに加えて背腹性と左右相称性の獲得が必要であった[31]。現生大葉植物のステム群であるトリメロフィトン類 Trimerophytopsida では、二又分枝の2本の枝に強弱が生じ不等二又分枝を行うか、無限成長をする主軸と側軸の分化が起こり、単軸分枝するようになった[29][30]。また、側軸が平面に展開する傾向がある[30]。この2つの性質は大葉の形成途上と考えることができ[30]、葉の祖先である軸が側生器官の特徴を獲得した段階であると考えられる[31]。軸の癒合による葉面形成はトリメロフィトン類ではまだ進んでおらず、そこから派生した各系統で葉面形成が起こったと考えられている[12]。
テローム説では二又分枝を行っていた植物が持つテローム軸が癒合し、扁平化することで大葉植物が持つ扁平な葉が形成されたと考えられているが、すでに出来上がった枝が癒合することはないため、テローム説を現代的な生物学に対応させて考えれば、複数の器官の集まりである枝系を作っていた発生遺伝子系が1つの器官である葉を作る発生遺伝子系へと進化したと解釈できる[29]。しかし、現生植物の葉でシュート頂分裂組織で機能する遺伝子制御系が機能していても、葉にシュート頂分裂組織の遺伝子系が流用されているだけかもしれないという可能性が否定できず、側枝から葉が進化した証拠としては乏しい[6]。また上記の通り、大葉は多数回起源であり、それぞれの葉形成の仕組みが共通しているとは必ずしも言えない[32]。
中期デボン紀から後期デボン紀にかけての種子植物の祖先における扁平な葉身の獲得は、葉の進化において鍵となるイベントであった[33]。この扁平な葉身は光の捕捉効率を最大化させるとともに、背腹性を獲得し、葉に向軸側と背軸側の2領域を作り出した[33]。向背軸極性を決めるのはYABBY遺伝子群とKANADI遺伝子群である[34]。YABBY遺伝子群は被子植物の葉形成に関わり現生裸子植物でも保存されているが、種子植物以外には存在しない[32][35]。そのため、大葉形成の遺伝子系は種子植物か木質植物の共通祖先でできあがった可能性がある[35]。
大葉シダ植物においては、化石植物群であるコエノプテリス類 Coenopteridales のスタウロプテリス科とジゴプテリス科では茎と羽葉の分化が不十分で、不完全な背腹性を獲得していた[36]。葉柄に当たる部分の維管束はまだ放射相称で葉態枝(ようたいし、phyllophore)と呼ばれ、分枝が進んだ頂端付近の羽軸や小羽軸で背腹性が生じる[36]。現在の大葉シダ植物が持つ羽葉では背腹性および左右相称性を獲得している[25]。
小葉
[編集]小葉(しょうよう、または小成葉、microphyll)は原生中心柱や板状中心柱から葉隙を形成せず生じ、通常1本のみの葉脈が通る葉である[37][20]。小葉植物の葉の起源は、突起仮説に基づいた解釈が有力だと考えられている[37][16]。ほかにテローム説の1つであるテローム軸の退縮説、胞子嚢を頂生する軸の退化説がある[16][38]。後二者の仮説は証拠に乏しいが、完全に否定されたわけではなく、今後の小葉類の分子発生学的研究による解明が俟たれる[16]。
突起仮説は1935年、フレデリック・バウアーによって提唱されたもので、軸の表面に生じた棘状の突起が進化の過程で大きくなり、そこに維管束が入り込むことによって形成されたとするものである[37][16][38]。これは化石証拠が得られている[16]。すなわち、小葉植物のステム群であるゾステロフィルム類のソードニア Sawdonia では維管束を持たない突起のみが存在し、現生小葉植物の姉妹群であるドレパノフィクス類のアステロキシロン Asteroxylon では維管束は突起の付け根まで伸び、古生リンボク目のレクレルキア Leclercqia や現生小葉植物では小葉中に1本の葉脈がみられる[37][16]。
葉状突起
[編集]大葉シダ植物ハナヤスリ亜綱のマツバラン目では、葉を持たず、茎には葉状突起(ようじょうとっき、foliar appendage)が側生する[14][39]。マツバラン属 Psilotum の葉状突起には維管束がないが、イヌナンカクラン属 Tmesipteris の葉状突起は葉隙がなく、1本の維管束が伸びている[14]。また、ソウメンシダ Psilotum complanatum では分枝した維管束が葉状突起の基部まで伸びている[39]。これは小葉植物の小葉と類似しているが、別起源である[14]。
コケ植物の葉
[編集]コケ植物の葉 (phyllid, phyllidium)[40]は、ほかの陸上植物が持つ胞子体に形成される葉とは配偶体にできる点で大きく異なり、普通1細胞層からなり、維管束がなく中肋という軸で支持され、維管束植物の葉とは起源も形態も本質的に異なるものである[1][41][11]。しかし、茎葉体の頂端細胞から切り出された派生細胞から生じる点は、維管束植物のシュート頂に形成される葉原基と類似しており、平行進化の結果と考えられる[11]。
外部形態
[編集]葉緑体を持ち、光合成を行う葉を普通葉(ふつうよう、foliage leaf)と呼ぶ[5][48]。普通葉の多くは扁平であるが、針葉樹の針状葉(しんじょうよう、needle leaf)やネギ属 Allium(ヒガンバナ科)やイグサ属 Juncus(イグサ科)が持つ管状葉(かんじょうよう、tubular leaf)も普通葉に含まれる[5]。また、1個体に異なる形態の普通葉が生じる現象を異形葉性(いけいようせい、heterophylly)と呼ぶ[49][注釈 11]。より広義には、普通葉の形態に限らずその種の特徴として常に2種類以上の異なる形態の葉を持つことを指す[49][51]。異形葉性を示す葉を異形葉(いけいよう、heterophyll)という[51]。
葉の構成部分は基部から順に、托葉、葉柄、葉身の3部に大別される[5][48]。托葉(たくよう、stipule)は葉の基部付近の茎または葉柄上に生じる葉身とは異なる葉的な器官で[5]、葉柄(ようへい、petiole)は茎と葉身を繋ぎ、葉身を支持する[52]。被子植物の葉が持ち、普通扁平な光合成を行う主要な部分を葉身(ようしん、lamina, blade)という[33][52]。葉身の組織は葉脈、葉肉、表皮からなる[52]。
托葉や葉柄を欠く葉も多い[5][52][53]。葉柄を欠く葉を無柄葉(むへいよう、sessile leaf)という[52]。また、葉身を欠くものもあり、偽葉(ぎよう、phyllode)と呼ばれる[53][54]。
普通葉の形状から木本植物を大別した場合、広葉樹(こうようじゅ、broad-leaved tree, hardwood)と針葉樹(しんようじゅ、needle-leaved tree, acicular tree)に分けられる[55]。基本的には系統関係と対応しているため、イチョウ Ginkgo biloba(イチョウ科)、ソテツ Cycas revoluta(ソテツ科)、ナギ Nageia nagi およびイヌマキ Podocarpus macrophyllus(マキ科)といった裸子植物は広葉をもつが広葉樹ではない[55]。このうち、マキやナギは、鱗状葉を持つヒノキやイブキ(ヒノキ科)、針状葉を持つマツ科や旧スギ科とともに針葉樹に含まれる[55]。ガンコウランやツガザクラなどの針状の葉(エリカ葉)を持つ広葉樹もある[55][56]。イチョウやソテツ、ヤシ類はどちらにも含まれない[55]。また、針葉樹の葉は形態によって針形葉、線形葉、鱗形葉に分けられる[57](下記「#針葉樹の普通葉」節を参照)。
被子植物で最長の葉はラフィアヤシ Raphia farinifera で、20 m になるが掌状複葉であるためいくつかの小葉に分かれており、単葉ではインドクワズイモ Alocasia macrorrhizos が最大で最長となる[58]。大葉シダ植物では葉頂端幹細胞により無限成長を行う種が知られ、コシダ属の一種 Dicranopteris taiwanensis や、Sticheropsis truncata(ともにウラジロ科)では1個の葉が30 m 以上の樹上まで伸びる[59]。
複葉
[編集]葉身が複数の小部分に分かれた葉のことを複葉(ふくよう、compound leaf)とよぶ。それに対し、葉身が1枚の連続した面からなる葉を単葉(たんよう、simple leaf)と呼ぶ[60]。複葉は単葉の葉身の切れ込みが深くなり、主脈の部分にまで達した状態であると解釈される[61]。
複葉における、分かれている葉身の各片を小葉(しょうよう、leaflet)、小葉が付着する中央の軸部を葉軸(ようじく、rachis)と呼ぶ[61][62]。小葉が柄を介して葉軸につく場合、その柄は小葉柄(しょうようへい、petiolule)と呼ばれる[61][62]。葉片が単葉か複葉の一部かは腋芽の有無によって区別され、複葉の小葉柄の基部には腋芽ができない[62]。
大葉シダ植物の複葉(羽葉)の場合、小葉に当たる部分は羽片(うへん、pinna)と呼ばれる[63]。
葉縁の形質
[編集]葉縁にみられる鋸の歯のような細かな切れ込みを鋸歯(きょし、serration, teath)という[64]。鋸歯を持たず、切れ込みもないことを全縁(ぜんえん、entire)という[64][43][65]。
凹凸が大きく葉全体の形にかかわるほどの切れ込みがある単葉を分裂葉(ぶんれつよう、lobed leaf)と呼ぶ[62]。この突出部を裂片(れっぺん、lobe)という[43]。それに対して裂片のない葉を不分裂葉という[66]。切れ込みが浅いものを浅裂(せんれつ、lobed, lobate)、やや深く切れ込むものを中裂(ちゅうれつ、cleft)深く裂けていれば深裂(しんれつ、parted, partile)、完全に裂けたものを全裂(ぜんれつ、dissected)という[43]。裂片が放射状に配置し、掌のようになったものを掌状(しょうじょう、palmate)、裂片が左右に列をなし、鳥の羽のようになったものを羽状(うじょう、pinnate)という[43]。裂ける深さと形を組み合わせて、葉の形状を表現することが多く、例えばヤツデの葉は掌状深裂、ヨモギの葉は羽状深裂する。
有鞘葉
[編集]単子葉植物の葉の多くは有鞘葉(ゆうしょうよう、sheathing leaf)となるものが多い[67]。有鞘葉は扁平な部分と基部の葉鞘(ようしょう、leaf sheath)からなる[67]。葉鞘はイネ科、カヤツリグサ科、ツユクサ科、ショウガ科、ラン科などに一般的で、ユリ科の一部にも見られる[67]。
葉鞘はつねに地上茎の節から生じるわけではなく、地下茎から直接生じて順次内側の葉鞘を包み、筒状となって地上茎のように見えることがある[67]。こうした葉鞘の集まりを偽茎(ぎけい、pseiudostem)と呼ぶ[67]。ガマ科、ショウガ科、テンナンショウ属 Arisaema(サトイモ科)、シュロソウ属 Veratrum(シュロソウ科)、スズラン属 Convallaria(キジカクシ科)などに見られる[67]。
葉身が発達せず、葉鞘だけの葉を鞘葉(しょうよう、sheath leaf)と呼ぶ[67]。鞘葉はイグサ科のイグサ Juncus decipiens やミヤマイ Juncus beringensis、カヤツリグサ科のワタスゲ Eriophorum vaginatum やホタルイ Schoenoplectiella hotarui、カンガレイ Schoenoplectiella triangulatus、フトイ Schoenoplectus tabernaemontani、ハリイ属 Eleocharis などに見られる[67]。これらでは稈の基部に小数個の鞘葉が重なり合っている[67]。また、ホシクサ属 Eriocaulon(ホシクサ科)では茎の下部に常に1個の鞘葉がある[67]。
また、有鞘葉のうち花序に腋生するものを苞鞘(ほうしょう、bract sheath)という[68]。スゲ属 Carex の苞は苞鞘であることも無鞘であることもあり、シバスゲ節 sect. Praecoces やシオクグ節 sect. Paludosae の小穂の苞は少なくとも最下が苞鞘である[68]。
根生葉
[編集]根生葉(こんせいよう、または根出葉、radical leaf)は地上茎の基部の節に付き、根から生じているように見える葉である[69]。大葉シダ植物や草本性被子植物に多い[69]。バラの花冠状に放射状に重なり合ってつき、地表に密着して越冬する根生葉をロゼット葉(ロゼットよう、rosette leaf)と呼ぶ[69]。
なお、根生葉に対し伸長した地上茎に側生する葉は茎生葉(けいせいよう、または茎葉、cauline leaf)と呼ぶ[69]。
楯状葉
[編集]葉柄の先に雨傘状の葉身を持つ葉を楯状葉(盾状葉、じゅんじょうよう、peltate leaf)という[70][71]。ハスやジュンサイ、ノウゼンハレン、サンカヨウ属、ミヤオソウ属、テンジクアオイ属、ハスノハカズラ属などで見られるほか、ヤブレガサやタイミンガサのように葉身が放射状に分裂しているものもある[70][71]。また、楯状葉葉身の葉縁の拡大があまり進行せず、葉身の葉縁方向への平面成長が進んだ形態は、杯状葉または嚢状葉と呼ばれる[72]。杯状葉(盃状葉、はいじょうよう、aecidial leaf)は奇形として知られており、ラッパイチョウやクロトン、シナガワハギなどによく観察されている[72][73][71]。
針葉樹の普通葉
[編集]古くから針葉樹類と言われた裸子植物の系統は[74]、分子系統解析が進んだ現在ではマツ科と残りの針葉樹類(広義のヒノキ目)の2系統が含まれることが分かっている[75][76]。現生針葉樹類の普通葉は全て単葉である[75][77]。その中でも、多くの針葉樹類の葉は細くて先細りとなるため、針葉(しんよう、needles)と表現される[77]。ただし、ナギモドキ属 Agathis やナンヨウスギ属 Araucaria(ナンヨウスギ科)、マキ科(ナギ属 Nageia)では著しく幅の広い葉を持つ[77][78]。ヒノキ科以外の多くの針葉樹類の葉は長枝に発生し、螺旋葉序または互生葉序となる[77]。ヒノキ科では全て十字対生葉序か輪生葉序である[77]。
現生針葉樹の葉は、その形態によって針形葉、線形葉、鱗形葉と呼び分けられる[57]。Laubenfels (1953) は現生針葉樹類の葉を、その3つにナギなどの幅広い葉を加えた4つのタイプに分類した[78]。
針状で扁平ではないものを針形葉(しんけいよう、または針状葉、針葉、needle leaf)という[57][5][56]。スギは針形葉が螺旋状につき、葉の基部が小枝と一体化している[57]。マツ属 Pinus ではシュートに長枝と短枝が分化し、針形葉が短枝に分類群ごとに1–5本の一定の数ずつつく[57][79][77]。この短枝は俗に「松葉」と呼ばれる[79]。クロマツでは短枝に2本の針形葉、ダイオウマツは短枝に3本の針形葉、ゴヨウマツは短枝に5本の針形葉をつける[57]。また、マツの葉は等面葉である[56]。
幅が狭く扁平なものを線形葉(せんけいよう、または線状葉、線葉)という[80]。中脈が明らかで、背軸面には気孔が気孔帯がみられることが多い[80]。モミ、ツガ(マツ科)、カヤ、イヌガヤ(イチイ科)などには2本の気孔帯が認められる[80]。イヌマキ(マキ科)の線形葉は中脈が顕著である[80]。コウヤマキ(コウヤマキ科)の線形葉は短枝につく2本の葉が合着したものである[80]。
扁平な葉が十字対生して茎を包んでいるものを鱗形葉(りんけいよう、または鱗状葉、鱗葉、scale like leaf)と呼ぶ[81][82][注釈 12]。ヒノキ科の普通葉に多く[82]、ヒノキやサワラ、アスナロやコノテガシワに見られる[81]。ビャクシンの葉は普通、鱗形葉であるが、ときどき針形葉を交じる[81]。
葉の特殊化
[編集]葉は地上の茎に付属し、扁平で光合成を行うのが典型であるが、付く位置や形、機能においてさまざまな特殊化がみられる[69]。こうした葉と相同と考えられるものの光合成を担うわけではない器官と普通葉とを合わせて総称的に葉的器官(ようてききかん、phyllome, foliar appendage、フィロム[33])と呼ぶこともある[56]。葉的器官には普通葉や芽鱗、苞、花器官などが含まれる[33]。
鱗片葉
[編集]普通光合成を行わず、普通葉に比べ著しく小型化した葉を鱗片葉(りんぺんよう、scale leaf, scaly leaf)と呼ぶ[82]。裸子植物の鱗片葉は雄性胞子嚢穂(雄性球花)、イチイ科の雌性胞子嚢穂(雌性球花)、マツ科の長枝等にみられる[82]。
鱗片葉はさらに特殊化し、その位置により様々に呼び分けられる[82]。芽を覆う鱗片葉は芽鱗(がりん、bud scale)、花芽を腋にもつ鱗片葉は苞(ほう、または苞葉、bract)と呼ばれる[82]。苞は位置や形により、総苞、苞、小苞、苞鞘、苞穎などに分けられる[83]。
生殖シュートにおいて、胞子嚢とそれに由来する構造以外の要素は葉に由来すると考えられている[84]。萼片、花弁、雄蕊、心皮といった被子植物の花を構成する鱗片葉を花葉(かよう、floral leaf)[84][82][85][86]または花器官(はなきかん、floral organ)という[33]。雄蕊や雌蕊は胞子葉(ほうしよう、sporophyll)が変形してできたものである[87]。また、裸子植物の雌性胞子嚢穂(雌性球花、球果)を構成する鱗片葉は種鱗(しゅりん、ovuliferous scale, seed scale)と苞鱗(ほうりん、bract scale)の2種類からなり、それらが癒合して種鱗複合体(しゅりんふくごうたい、seed scale complex)を構成する[82][88][89]。種鱗複合体は果鱗(かりん、fructiferous scale, cone scale)や苞鱗種鱗複合体とも呼ばれる[82][88]。
シュートの下部に形成される鱗片葉は低出葉(ていしゅつよう、cataphyll、独: Niederblätter)と呼ばれる[54][90]。低出葉には鞘葉、芽鱗、芽鱗に似た托葉だけの葉、実生の上胚軸の下部に作られる鱗片葉などがある[54]。鞘葉は単子葉類の茎の下部にみられる[54]。芽鱗は鱗芽をもつ木本に普通にみられる[54]。托葉だけの葉はキジムシロ属のキジムシロ Potentilla fragarioides、イワキンバイ Potentilla ancistrifolia var. dickinsii、ミツモトソウ Potentilla cryptotaeniae などにみられる[54]。クスノキ科のタブノキ属 Machilus、クロモジ属 Lindera[注釈 13]などの実生では、子葉の間から伸びた上胚軸が地上に出ると互生する鱗片葉を形成する[54]。この鱗片葉は次第に普通葉へ移行する[54]。多くの被子植物では、シュート発生の際に周期的に低出葉の形成が起こる[90]。また、こうして作られた側枝の最下の低出葉は前出葉(ぜんしゅつよう、prophyll, fore-leaf)と呼ばれる[54]。前出葉は側芽に最初に作られ、特殊な形態を示すことが多い[54]。ミカン属 Citrus の葉腋に出る刺やイネ科の小穂の第一苞穎および第二苞頴、スゲ属の果胞および小穂の柄の基部に生じる鞘葉は前出葉である[54]。
シュートの上部に形成される花葉以外の特殊な葉を高出葉(こうしゅつよう、hypsophyll)と呼ぶ[54]。高出葉は狭義には総苞片、苞、小苞などの鱗片葉が含まれるほか、広義にはシュートの上部にあって変質や退化した葉も含まれる[54]。ウスユキソウ属 Leontopodium(キク科)の頭花群の下に伸びる毛深い苞、トウダイグサ属 Euphorbia(トウダイグサ科)の杯状花序の基部にある対生葉、ネコノメソウ属 Chrysoplenium(ユキノシタ科)の花序に含まれる苞以外の黄色い部分などがその例である[54]。
エリカ葉
[編集]エリカ葉(エリカよう、ericoid leaf)はツツジ科のガンコウラン属 Empetrum やツガザクラ属 Phyllodoce、エリカ属 Erica などが持つ小さく針状の葉で、重複葉(ちょうふくよう、duplicate leaf)とも呼ばれる[82][56][91]。葉縁付近の背軸側(腹側)に襞状の突起ができ、葉の背軸側に空洞部分ができることで気孔をその空洞の内側にのみ持つようになっている[56]。左右の葉縁が背軸側に折れ曲がったように見えるが、実際は発生の途上に背軸側の基本組織中に新たに生じた分裂組織から二次的に作られたものである[82]。この部分を重複葉身(ちょうふくようしん、duplicate blade)という[82]。気孔が分布する空洞に面していない部分は厚いクチクラに覆われ、クチクラ蒸散を極度に減らしている[92]。また、気孔の分布する空洞部分と外界を連絡する溝の両側は毛が覆い、空気の流通を妨げている[92]。逆に葉の向軸側の表皮下には日射の強い高山において光合成効率を上げるため柵状組織が発達している[92]。こうした構造により蒸散を最小限に抑え[93]、高山に適応している[56]。
水生植物の葉
[編集]水生植物の葉は水辺環境に適応して特殊化しており、水面との位置関係により沈水葉、浮水葉、抽水葉が区別される[94]。また、ホテイアオイ Eichhornia crassipes(ミズアオイ科)などの浮遊植物では浮き袋(うきぶくろ、air bladder)を持つ[94]。
- 沈水葉
沈水葉(ちんすいよう、submerged leaf)は、水中にある沈水性(ちんすいせい、submergence)を持つ葉である[94]。一般に軟弱で、機械的組織の発達が悪い[94]。バイカモ Ranunculus nipponicus var. submersus(キンポウゲ科)、マツモ Ceratophyllum demersum(マツモ科)、タヌキモ Utricularia vulgaris(タヌキモ科)、クロモ Hydrilla verticillataやセキショウモ Vallisneria asiatica(トチカガミ科)、エビモ Potamogeton crispus(ヒルムシロ科)など見られ、これらは全ての葉が沈水性を持つ[94]。バイカモの沈水葉は葉身が発達せず、軸状の裂片が立体的に分枝する構造をしている[95]。
- 浮水葉
浮水葉(ふすいよう、または浮葉、floating leaf)は、水面に浮かぶ浮水性(ふすいせい、floatage)を持つ葉である[94]。気孔は水面と反対の向軸面にある[94]。デンジソウ Marsilea quadrifolia(大葉シダ植物デンジソウ科)、ヒツジグサ Nymphaea tetragona(スイレン科)、ジュンサイ Brasenia schreberi(ハゴロモモ科)、ヒシ Trapa jeholensis(ミソハギ科)、トチカガミ Hydrocharis dubia(トチカガミ科)、ヒルムシロ Potamogeton distinctus(ヒルムシロ科)、アサザ Nymphoides peltata やガガブタ Nymphoides indica(ミツガシワ科)などが持つが、若い葉では沈水性を持つことが殆どである[94]。イチョウバイカモ Ranunculus nipponicus (キンポウゲ科)は多くが沈水葉だが、僅かに水面上か水中にある扇形の浮水葉を持つ[94]。
- 抽水葉
抽水葉(ちゅうすいよう、または挺水葉、emergent leaf)は、水面に抜き出る抽水性(ちゅうすいせい、emergence)を持つ葉である[94]。浅水域に生える、ハス Nelumbo nucifera(ハス科)、コウホネ Nuphar japonica(スイレン科)、オモダカ Sagittaria trifolia やクワイ Sagittaria trifolia 'Caerulea'(オモダカ科)、ガマ Typha latifolia(ガマ科)などが持つ[94]。ハスやコウホネは若い葉は浮水性を持つ[94]。
- 根葉
水生シダ類のサンショウモ Salvinia natans の葉は異形葉性を示し、水面に浮かぶ2枚の浮葉(気葉)のほかに、水中に分枝した根状の根葉(こんよう、root leaf)を持つ[96][97]。これは沈水葉の1つである[95]。
貯蔵葉
[編集]柔細胞が多量の貯蔵物質を具え、多肉質になった葉を貯蔵葉(ちょぞうよう、storage leaf)という[83]。ユリ属 Lilium やネギ属 Allium の鱗茎(地下茎)は肥厚した貯蔵葉が集合してでき、鱗茎葉(りんけいよう、bulb leaf)と呼ばれる[83][98]。クロユリ Fritillaria camtschatcensis(ユリ科)のもつ鱗茎葉は米粒から豆粒大の立体形をしている[83]。
捕虫葉
[編集]食虫植物が持つ、昆虫などの動物を捕らえるように変形した葉を捕虫葉(ほちゅうよう、insectivorous leaf)という[83][99]。捕虫葉の形は様々で、様々な捕虫の方法がある[83][99]。モウセンゴケ類 Drosera の捕虫葉は葉縁や葉の表面に長い腺毛を持ち、触れると粘液を出して葉身を巻き込み虫を捕まえる[83]。ムシトリスミレ Pinguicula vulgaris やコウシンソウ Pinguicula ramosa(タヌキモ科)の捕虫葉は表面に腺毛と無柄の腺が密生し、前者からは粘液、無柄腺からは消化液を分泌し、虫を捕らえる[83]。
捕虫葉が嚢状に変化して、捕虫嚢(ほちゅうのう、insectivorous sac)を形成するものもある[83][100]。嚢状葉(のうじょうよう、pitcher)[93][97]または嚢状捕虫葉[101]とも呼ばれる。タヌキモ属の葉は葉身が小さな捕虫嚢となっており、内部を減圧することで虫を吸い込む[83]。ウツボカズラ属 Nepenthes の葉は葉の先が葉巻きひげとなり、その先が捕虫嚢となっている[83]。サラセニア属では葉柄が漏斗状の捕虫嚢となっている[83]。特にムラサキヘイシソウ Sarracenia purpurea では、その形成過程が明らかになっている[102]。シロイヌナズナのような平面葉と同様に向背軸を規定する遺伝子が発現するが、葉の基部側の細胞分裂の方向が変化することにより、嚢状葉が形成される[102]。ウツボカズラ属やサラセニア属の捕虫嚢内部には毛が生えて虫の脱出を防いでいる[83]。
葉巻きひげ
[編集]植物が持つ巻きひげのうち、托葉や葉柄、小葉や葉身の一部を変形させてできたものを葉巻きひげ(はまきひげ、または葉性巻きひげ[93]、leaf tendril)という[83]。バイモ Fritillaria verticillata(ユリ科)の上部の葉の先や葉全体が、トウツルモドキ Flagellaria indica(トウツルモドキ科)では葉の先が巻きひげとなる[83]。マメ科のソラマメ属やレンリソウ属では頂小葉が巻きひげに置き換わった羽状複葉である巻きひげ羽状複葉を形成する[103]。シオデ属 Smilax(サルトリイバラ科)では托葉、ボタンヅル Clematis apiifolia では葉柄、カザグルマ Clematis patens(ともにキンポウゲ科)では小葉柄が巻きひげとなる[83]。なお、葉巻きひげに対し、葉ではなく茎が変形してできた巻きひげになったものは茎巻きひげと呼ばれる[104]。
葉針
[編集]葉針(ようしん、leaf spine/needle/thorn)は、葉全体または複葉の小葉、托葉などが硬化して鋭い突起に変形したものである[94]。光合成の機能を持たない[94]。特に托葉が変化した葉針を托葉針(たくようしん、stipular spine)という[94]。葉針に対し、茎が変化したものは茎針[94]、根が変化したものは根針といい、相似器官である[105]。
多肉植物であるサボテン(サボテン科)の刺は葉針の一種である[94][106]。また、メギ Berberis thunbergii やヘビノボラズ Berberis sieboldii(メギ科)では、長枝上に単一または三岐した葉針を生じ、その腋に短枝を形成し、普通葉をつける[94]。ニセアカシア Robinia pseudoacacia(マメ科)は托葉針を持つ[94]。
多肉葉
[編集]上記のように多肉植物は葉を矮小化させるものもある一方、葉を多肉化させ、多肉葉を形成するものもある[107][108]。多肉葉はハマミズナ科、ベンケイソウ科、リュウゼツラン科、ワスレグサ科ツルボラン亜科のアロエ属などに知られる[108]。リュウゼツランやアロエの葉では、葉肉が貯水組織となっている[109]。
ハマミズナ科の葉は高度に多肉化することが多く、マツバギク Lampranthus spectabilis やリトープス属 Lithops、コノフィツム属 Conophytum などがよく知られる[107][108]。フェネストラリア属 Fenestraria では、太い棒状の等面葉を形成する[110]。リトープス属、コノフィツム属、フェネストラリア属などの多肉葉の頂端は葉緑体を欠く窓(leaf window)となって半透明を呈す[110]。窓はキク科のミドリノスズ Senecio rowleyanus や弦月 Curio radicans[110]、ワスレグサ科ツルボラン亜科のハオルチア属 Haworthia[110][111]、コショウ科のペペロミア・コルメラ Peperomia columella などにも見られる[111]。このような植物は、窓植物(レンズ植物)と呼ばれる[111]。
ベンケイソウ科のクラッスラ属 Crassula では、背腹性が明瞭で背軸側に同化組織が偏っている多肉葉が球果のように密に重なり合って茎に着生する[112]。
偽葉
[編集]アカシア属は、他のマメ科と同様に羽状複葉を持つものが見られる一方、単葉状の葉を形成する種が知られ、この葉を偽葉(ぎよう、phyllode)または仮葉(かよう)という[113][114]。ナガバアカシア Acacia longifolia やサンカクバアカシア Acacia cultriformis の成葉は扁平な偽葉、スギバアカシア Acacia verticillata には針状の偽葉が形成される[114]。これは葉身が退化し、葉柄が変化して形成されたものであると考えられている[114]。それを裏付けるように、植物体が発芽してすぐは羽状複葉を形成するが、その後に形成される葉は次第に葉柄が左右から圧し潰されたように扁平で薄い構造となり、その先端の複葉部分が退化する[114]。葉柄部分だけでなく、葉軸全体が扁平となって形成されたと考えた研究者もいる[114]。
カタバミ属でも仮葉は知られる[113][115]。扁平な偽葉を持つ Oxalis fruticosa や、仮葉の先端に3小葉を付ける Oxalis rusciformis などの例がある[115]。
内部形態
[編集]棒状の概形で放射状の構造を持つ根や茎と異なり、葉は左右相称で、背腹性を持つ[116][117]。上側は向軸面、下側は背軸面と呼ばれる[116]。
葉の組織系はザックスの分類 (1875) に基づき、表皮系、基本組織系、維管束系の3つに分けられる[2][117][118][119]。
表皮系
[編集]表皮系(ひょうひけい、epidermal system)は表皮細胞、気孔や水孔を作る孔辺細胞、毛状突起(毛、鱗片など)などの構造からなる[117][2]。表皮系は前表皮に由来する[120]。
植物体の表面はふつう1層の表皮細胞からなる表皮(ひょうひ、epidermis)で覆われる[117][120]。ただし複数の細胞層からなる表皮もあり、多層表皮(たそうひょうひ、multiseriate epidermis)と呼ばれる[117]。表皮細胞の外壁には長鎖脂肪酸または蝋を主成分とするクチクラ(cuticule)が分泌されクチクラ層(cuticular layer)を形成することで体表からの水分蒸散を防いでいる[117][121]。クチクラを構成する脂質は陸上植物の中で多様性がある[121]。コケ植物の配偶体および胞子体、小葉植物と大葉シダ植物の配偶体ではクチクラは発達しない[121]。被子植物でも、乾燥地域に生育する植物ではクチクラの発達がよい[121]。維管束植物のクチクラには疎水性細胞外生体高分子であるクチンが含まれている[121]。コケ植物のクチクラにはスベリン様の疎水性細胞外生体高分子を持つ[121]。
気孔(きこう、stoma)は2つの孔辺細胞に囲まれた小間隙で、光合成や呼吸、蒸散などのガス交換のための空気や水蒸気の通路である[117]。
基本組織系
[編集]葉の基本組織系は葉肉(ようにく、mesophyll)と呼ばれ[2]、上下両表皮間に挟まれた柔組織からなる[109][122]。葉緑体に富み、同化やガス交換に適した組織への分化が起こっている[2][119]。葉肉は普通葉では同化組織、貯蔵葉では貯蔵組織や貯水組織からなり、鱗片葉ではほとんど発達しない[123][109]。
被子植物の典型的な普通葉では葉肉は向軸側が柵状組織、背軸側が海綿状組織に分化する[109]。柵状組織(さくじょうそしき、palisade tissue)は向軸側にあり、葉面に垂直な方向に比較的密に並んだ細胞からなる[123]。この表皮直下に1層から数細胞層を構成する細胞を柵状柔細胞(さくじょうじゅうさいぼう、palisade parenchyma cell)という[122]。海綿状組織(かいめんじょうそしき、spongy tissue)は背軸側にあり、形や並び方が不規則で、細胞間隙に富んだ組織である[123][124]。これを構成する細胞を海綿状柔細胞(かいめんじょうじゅうさいぼう、spongy parenchyma cell)といい、柵状柔細胞から背軸側表皮の間を埋めている[122]。柵状組織の厚さは陰葉より陽葉でよく発達する[124]。
向軸面に柵状柔細胞、背軸面に海綿状柔細胞が分布し、背腹性がある普通葉を両面葉(りょうめんよう、bifacial leaf)という[67][125]。ネギ属 Allium(ヒガンバナ科)やアヤメ属 Iris(アヤメ科)の葉は円筒形または二つ折れとなり、外観では背軸側のみが見える単面葉(たんめんよう、unifacial leaf)と呼ばれる[67][125]。アヤメ属は両面の表皮下に柵状組織、海綿状組織がある[126]。スイセン属 Narcissus(ヒガンバナ科)では上下表皮下に柵状組織、中央に海綿状組織がある[126]。また、マツ科の針状葉は維管束の特徴で背腹性が分かるが、外観では区別ができないようになっており、等面葉(とうめんよう、equifacial leaf)と呼ばれる[125]。針葉樹類やイネ科の葉は柔細胞が葉肉中にほぼ均等に分布する[126]。
表皮下にある、葉肉の最外層の1から数細胞層の組織を下皮(かひ、hypodermis)という[126]。下皮は葉緑体を持たず、多層表皮の内側の層に似ているが、発生学上表皮と異なり、葉肉と同一の起源を持つ[126]。針葉樹類の下皮は、多くは1–2層の繊維状の厚壁細胞からなる[126]。マツ属 Pinus(マツ科)、スギ Cryptomeria japonica(ヒノキ科)、コウヤマキ Sciadopitys verticillata(コウヤマキ科)では気孔を除いた全周にあるが、ツガ属 Tsuga では葉の両縁部分にのみ見られる[126]。イチイ科にはない[126]。被子植物は下皮を持たないことが多いが、モチノキ属 Ilex(モチノキ科)では背軸面表皮の下に内側の葉肉細胞より少し大きな厚壁細胞からなる下皮を持つ[126]。
葉肉の最内層にあり、維管束を囲む厚壁細胞あるいは柔細胞からなる1層の表皮状の細胞層を内皮(ないひ、endodermis)という[126]。大葉シダ植物や裸子植物の葉には内皮があるが、被子植物にはない[126]。また、針葉樹類の針葉には、内皮と維管束の間に柔細胞と仮道管が入り混じった移入組織(いにゅうそしき、transfusion tissue)がある[126]。移入組織は維管束と葉肉を連絡する補助的な通道組織であると考えられる[126]。
維管束系
[編集]葉の維管束系(いかんそくけい、vascular syetem)は葉脈(ようみゃく、vein, nerve)と呼ばれる[2][119]。葉脈は茎の維管束と接続し、その部分を葉跡(ようせき、foliar trace, leaf trace)という[2]。葉肉内における葉脈の分岐の仕方を脈系(みゃくけい、venation)といい、脈系は系統によって多様である[2]。
C4植物の葉
[編集]C4植物の葉には、維管束鞘が2重となっており、メストム鞘(メストムしょう、mestome sheath)と呼ばれる[127]。これを欠くC4植物もある[92]。その外側には比較的大きな柔細胞からなる環状葉肉(かんじょうようにく、kranz)がある[127]。こちらは必ず存在し、葉緑体に富んでいる[92]。維管束の外側を維管束鞘が、その外側を葉肉細胞が放射状に取り囲むこの構造を、ドイツ語の「花環 Kranz」からクランツ構造(クランツこうぞう、Kranz anatomy)という[128]。以外の葉肉細胞では柵状柔細胞と海綿状柔細胞の区別が不明瞭である[92]。また、葉脈間の距離がC3植物に比べて短く、空気間隙も少ない[92]。
発生
[編集]葉はシュート頂において葉原基(ようげんき、leaf primordia)として外生的に形成され、発達する[129][2]。その発生位置によって葉の配列様式(葉序)が決定する[130]。葉原基から葉身・葉柄・托葉が分化し、同時に表皮系・基本組織系・維管束系の組織分化が進行する[2]。
多くの種子植物の葉は、頂端成長を極めて一時的に行い、多くの裸子植物や単子葉類では 0.5 mm 以下、真正双子葉類では数 mm 以下の時に頂端分裂細胞の活動を停止する[131]。その一方、大葉シダ植物の薄嚢シダ類では羽葉の頂端に頂端幹細胞を持ち、特にウラジロ科やカニクサ科では無限成長を行うことが知られている[6]。また、裸子植物でもウェルウィッチア属では、子葉の後に形成される1対の帯状の本葉が永続光合成器官として、基部にある分裂組織により生涯かけて無限成長を行う[132]。
葉原基の形成
[編集]葉は、まずシュート頂分裂組織(茎頂分裂組織、SAM)の側方に葉原基として形成される[133]。葉原基に関わる細胞の分裂と肥大によってシュート頂の外形に小さな膨らみとして発生(initiation)する[129]。種子植物のシュート頂分裂組織の細胞は外側からL1、L2、L3の3層の異なる安定的な組織層として組織化されている[133][注釈 14]。葉原基形成にはL1層でのオーキシン極性輸送が必須である[133]。多くの被子植物では、葉原基はシュート頂側面の表面付近の1層から数細胞層の並層分裂に由来する[130]。特に真正双子葉類では通常L2の細胞に最初の並層分裂がみられるが、イネ科などでは外側の2層の細胞分裂に由来する[130]。発生した葉原基はシュート頂に突起状に盛り上がり、葉原基突起(ようげんきとっき、leaf buttress)となる[129]。
1つの葉原基が発生してから次の葉原基が発生するまでの時間を葉間期(ようかんき、plastochron、プラストクロン)という[135]。対生葉序では葉原基が同時に2個形成されるため、次の1対が作られるまでの時間を葉間期とする[135]。シュート頂分裂組織から葉原基が突起すると茎頂は最小の大きさとなり、このときを最小期(さいしょうき、minimal area phase)という[136]。逆に葉原基が分離する直前の茎頂は最大の大きさになり、このときを最大期(さいだいき、maximal area phase)という[136]。ヒョウタンボク属では葉間期は1.5–5.5日であることが分かっている[136]。
モデル植物であるシロイヌナズナを用いた研究では、シュート頂分裂組織で発現している1型KNOX遺伝子[注釈 15]が、葉原基では発現しないことが分かっており、1型KNOX遺伝子の転写が抑制されることにより有限成長を行う葉に分化すると考えられている[137]。1型KNOX遺伝子はサイトカイニン量を増やし、ジベレリン量を抑制することで細胞分裂を促進し、細胞分化を抑制することで分裂能を維持している[137]。また、葉原基とシュート頂の境界では CUP-SHAPED COTYLEDON遺伝子(CUC)が発現し、1型KNOX遺伝子の発現境界を規定している[137]。
葉面の成長
[編集]葉原基ははじめ葉頂端分裂組織(ようちょうたんぶんれつそしき、apical meristem of leaf)を形成し先端成長(頂端成長、apical growth)を始めるが、大葉シダ植物以外ではすぐにその活動が衰退する[130][138][131]。次に葉原基で向背軸が決定され、それぞれの側で発現する遺伝子が互いに両者を抑制しあうことによって形成される[102]。この過程に働く遺伝子群について、1型YABBY遺伝子群の働きでシュート頂分裂の制御系が抑制され、葉のアイデンティティが付与される一方、HD-ZIPⅢ遺伝子群やKANADI遺伝子群の働きによって背腹性が確立する[130]。続いて、向軸側と背軸側両方の遺伝子の制御によって葉縁部で細胞分裂活性が高くなる[102]。それにより、向軸側と背軸側の境界部分が細胞成長し、扁平な葉面が成長する[102]。
複葉や楯状葉の形成
[編集]複葉原基では、本来シュート頂分裂組織で発現し葉原基では発現しない1型KNOX遺伝子やCUP-SHAPED COTYLEDON遺伝子の発現がみられる[137]。葉原基基部の周縁部 (marginal blastozone) にて1型KNOX遺伝子などの働きにより小葉原基が生じ、葉形が複雑化する[130]。
楯状葉では、裏側を規定する遺伝子が葉原基の基部では葉の表側に発現していることで細胞分裂活性の高い領域が円形になり、形成されると推定されている[102]。
単子葉類の葉の形成
[編集]イネ科などに典型的な、単子葉類の形成する細長い葉は葉原基基部に分裂組織が残り、細胞が増殖することによって最初に突起した部分を押し上げるようにして葉原基の伸長が起こる[139]。
大葉シダ植物の葉
[編集]また、被子植物の成熟した葉は分裂組織や幹細胞を持たないが、小葉植物のイワヒバ科、大葉シダ植物のトクサ類と薄嚢シダ類の葉の頂端には2面切り出しの幹細胞が存在する[140][141]。また、典型的な薄嚢シダの葉縁にある周縁分裂組織は4面切り出し、コケシノブ科の葉縁では1面切り出しの幹細胞が存在する[140]。
1つの腋芽とセットとなって1つの単位を形成し、成長と組織形成が求基的に進む被子植物の葉と異なり、大葉シダ植物の羽葉ではワラビ巻きから生じて求頂的に成長する[25][141]。薄嚢シダ類の葉の頂端にはレンズ型(3面体)の頂端幹細胞(頂端細胞)があり、これが頂端成長を行って全ての葉細胞の母細胞となる[141][142][131]。また、葉縁にも幹細胞を持つ周縁分裂組織(しゅうえんぶんれつそしき、marginal meristem)が形成される[141][142]。特にウラジロ科のウラジロやコシダ、カニクサ科のカニクサ、コバノイシカグマ科のワラビやユノミネシダなどでは数年に亘って頂端幹細胞が分裂を続け、葉の先端部分が無限成長して羽片を作り続けることから、種子植物より茎的な性質を保持している[143][6]。
モデル植物であるリチャードミズワラビを用いた研究では、茎頂端幹細胞周辺と同様に、葉頂端幹細胞周辺でも1型KNOX遺伝子が発現していることが分かっている[6]。
コケ植物の葉
[編集]被子植物とは異なる発生機構によって形成されている[102]。
蘚類、特にモデル植物であるヒメツリガネゴケ Physcomitrella patens(ヒョウタンゴケ科)の茎葉体は、配偶体の別のステージであるカウロネマ細胞が形成した側枝始原細胞から、約5%の確率でオーキシンの作用により転写因子ABPが誘導され、茎葉体頂端幹細胞になることで形成される[3]。茎葉体頂端幹細胞から切り出された細胞はセグメント細胞と呼ばれ、並層分裂を行って先端側と基部側の2つの娘細胞を形成する[144]。そのうち先端側の細胞が垂層分裂を行い、形成された茎葉体頂端幹細胞に近い方の細胞が葉頂端幹細胞となる[144]。葉頂端幹細胞は2面切り出しの頂端幹細胞で[140]、1枚の全ての葉を形成する[144]。
胚発生
[編集]種子植物胞子体の個体発生において、最初に形成される葉を子葉(しよう、cotyledon)という[145][146]。かつての植物分類体系では、子葉の枚数に基づいて被子植物を子葉が2枚の双子葉類と子葉が1枚の単子葉類に分類してきたが、分子系統解析により双子葉は共有原始形質であり、系統的には正しくないことが分かっている[145]。双子葉植物の子葉は対生し、ふつう同形で主軸の子葉節につく[146]。
園芸界では、双子葉植物の実生において、展開した地上生子葉または地表性子葉を双葉(ふたば)といい、それに対して普通葉を本葉(ほんば)という[147]。
葉序
[編集]葉序(ようじょ、phyllotaxis)は、茎に対する葉の配列様式である[68][148]。葉序は節につく葉の枚数により、1節に1枚葉がつく互生葉序と1節に2個以上の葉がつく輪生葉序に分けられる[68]。輪生葉序のうち、1節に2個ちょうどの葉をつける葉序を特に対生葉序と呼び分けることも多く、葉序は普通、互生葉序(ごせいようじょ、alternate phyllotaxis)、対生葉序(たいせいようじょ、opposite phyllotaxis)、輪生葉序(verticillate phyllotaxis)の3つに大別される[68][148]。
葉原基形成の際の、シュート頂分裂組織におけるL1層でのオーキシン極性輸送が葉序を生み出す要因となっている[133]。
葉上生
[編集]葉は有限成長する側生器官であるため、他の器官を付けないのが普通であるが、葉上に花序や不定芽を付けることがあり、このような性質を葉上生(ようじょうせい、葉上形成、epiphylly)という[49][149]。
ハナイカダ属 Helwingia(ハナイカダ科)やビャクブ Stemona japonica(ビャクブ科)は普通葉と花序が発生初期に原基が分かれることなく同時に成長し、葉上に花序ができる[49]。シナノキ属 Tilia(アオイ科)では苞上に花序が生じるように見える[49]。芽の下側にあって脇芽を戴く葉を蓋葉(がいよう、subtending leaf)といい、これらは蓋葉と脇芽が癒合してできたものである[150][151]。そのため、これは不定芽とは異なる[151]。
葉上不定芽
[編集]葉上芽(ようじょうが、または葉上不定芽、epiphyllous bud)は脱分化により葉に生じた不定芽である[152][153][151]。
コダカラベンケイ Kalanchoe daigremontiana やセイロンベンケイ Kalanchoe pinnata、キンチョウ Kalanchoe tubiflora、Kalanchoe scandens(ベンケイソウ科)などでは普通葉の葉縁に不定芽が生じる[49][154]。この不定芽は受精卵と同様な形態的変化の過程をとって体細胞から生じる不定胚を経て形成される[152][155]。また、Begonia phyllomaniaca も自然状態で葉の表面脈上に無数の不定芽や葉片状形成物を生じる[156]。
単子葉類にも葉上不定芽の例は多く知られ、ショウジョウバカマ Heloniopsis orientalis(シュロソウ科)は葉の先端付近に不定芽を生じる[152][156]。ショウジョウバカマの不定芽は中央脈維管束の木部に近い数個の細胞が分裂し、カルス状の隆起から内生的に形成される[156]。ヤチラン Malaxis paludosa は葉の先端付近の葉縁に不定芽を生じ、脱落して別個体となる[156]。カラスビシャク Pinellia ternata(サトイモ科)も葉身の基部や葉鞘頂端部に、スルガテンナンショウ Arisaema yamatense では葉鞘頂端部に、離脱しない多肉質の珠芽を生じる[149][152]。
薄嚢シダ類でも多数、葉上不定芽を生じる例が知られている[152][153][157]。クモノスシダ Asplenium ruprechtii やヒメイワトラノオ Asplenium capillipes、チャセンシダ、ヌリトラノオ、ヒノキシダ(チャセンシダ科)、フジシダ Monachosorum maximowiczii やオオフジシダ Monachosorum nipponicum(コバノイシカグマ科)、ツルデンダ Polystichum craspedosorum(オシダ科)では葉の先端に近い表面から不定芽を生じ、独立して新たな個体となる[152][157]。ミズワラビ Ceratopteris thalictroides(イノモトソウ科)は葉縁に、コモチシダ Woodwardia orientalis(シシガシラ科)は葉の表面脈上に多数の不定芽を生じる[158]。これらは葉縁に残存分裂組織 (residual meristem) があるためであると解されている[158]。普通向軸面からのみ不定芽が生じるが、Tectaria cicutaria[注釈 16](ナナバケシダ科)やチリメンシダ Dryopteris erythrosora f. prolifica(オシダ科)では背軸面からの発生が知られている[159]。また、アナコロプテリス Anachoropteris(†アナコロプテリス科[160])、ボトリオプテリス Botryopteris(†ボトリオプテリス科[160])、ホラゴケ属 Trichomanes(コケシノブ科)などでは葉柄の途中から、イヌチャセンシダ Asplenium tripteropus やトキワシダ Asplenium yoshinagae、オクタマシダ Asplenium pseudo-wilfordii(チャセンシダ科)、ヒメムカゴシダ Monachosorum arakii(コバノイシカグマ科)では羽片の基部中軸向軸側の付近からの不定芽が知られている[159]。
生理機能
[編集]葉は、茎とともに陸上植物の地上部を構成する基本器官の1つである[4]。上記のように発達した同化組織により光合成を行い、活発な物質転換や水分の蒸散などを行う生理機能を持っている[2]。
木本植物では幹と太い枝が植物体の骨格をなすが、発生的にも生理的にも最も活発な部位は末端部であり、そこに葉を密生する[4]。1個体当たりで多くの葉をつけるが、胸高直径わずか28 cm のアメリカハナノキ Acer rubrum には99,284枚の葉がついていたという研究結果が知られる[161]。そのため巨樹では30–50万枚の葉をつけると推測されている[161]。
光合成
[編集]葉は植物の体において、主な光合成の場となる[4][5][162]。光合成の基質として使用される二酸化炭素(CO2)は、普通空気中から気孔を通って葉の内部に取り入れられる[163]。取り込まれた二酸化炭素は細胞間隙を移動し、葉肉細胞に取り入れられる[163]。光合成の代謝過程は葉の柵状組織と海綿状組織の葉肉細胞で起こり[164]、特に前者で活発に行われる[162]。
光合成を行う細胞の二酸化炭素の需要と、孔辺細胞による二酸化炭素の供給の協調作用が純CO2吸収として測定される光合成速度に影響する[164]。
光合成は葉の構造的特性と機能的特性に影響される[165]。葉の内部構造や葉の方向は光合成のための光吸収を最大化するようになっている[165]。また、葉肉細胞では細胞間隙に面する細胞壁が大きく、気体の交換がしやすいようになっている[4]。この表面積を大きくする構造は車のエンジンを冷却するために襞状をしたラジエーターに喩えられることもある[4]。
また、葉は生育環境に対し馴化する[165]。陸上植物は生育する環境の光条件に応じて形態的、生理的に異なった性質を持つ葉を作ることが多い[166]。弱光下で形成された葉を陰葉(いんよう、shade leaf)、強光下で形成された葉を陽葉(ようよう、sun leaf)という[166]。これは1つの種が複数の形態を持つ葉をつける不等葉性の一つである[167]。種によって陰葉と陽葉の分化の程度は異なる[166]。陰葉と陽葉のどちらが分化するかは、葉が発生するシュート頂ではなく既に成熟している葉に対する光環境で決まる[166]。木本植物だけでなく、オオアレチノギクやセイタカアワダチソウのような草本植物でも陰葉と陽葉を分化することが明らかにされている[168]。
陰葉と陽葉には以下のような違いがある。
陰葉 | 陽葉 | |
---|---|---|
形態的特徴 | (相対的に)面積が大きい[166] | (相対的に)面積が小さい[166] |
厚さが薄い[166][169][170] | 厚さが分厚い[166][169][170] | |
柵状組織の発達が悪い[166][169][124] | 柵状組織が発達し、多層になる[166][169][124] | |
生化学的特徴 | ||
クロロフィルa/b比が小さい[166][169] | クロロフィルa/b比が大きい[166][169] | |
弱光下でも光合成効率をあげられるように、 反応中心あたりのクロロフィル量が多い[169] |
ルビスコを多く持ち、炭酸同化を増加させ、キサントフィルサイクルの構成要素の プールを大きくすることにより過剰エネルギーを放散する[169] | |
生理的特徴 | 光飽和時の葉面積当たりの光合成速度が小さい[166][170] | 光飽和時の葉面積当たりの光合成速度が大きい[166][170] |
葉面積当たりの呼吸速度が小さく、光補償点が低い[166] | 葉面積当たりの呼吸速度が大きく、光補償点が高い[166] |
単位葉面積当たりの重さを比葉重(ひようじゅう、LMA, leaf matter per area)といい、単位はg/m2である[170]。比葉重の大きな葉は物理的な強度が高い傾向にある[170]。陰葉より、強風などのストレスを受ける開けた環境の陽葉の方が比葉重が大きい[170]。また、草本植物に比べ木本植物の方が比葉重は大きく、木本の中でも落葉樹より常緑樹の方が比葉重が大きい[170]。常緑樹の葉は長い場合10年もの寿命を持つことがあり、長期間にわたって生存できるため、比葉重が大きい葉を作る[170]。
また、ギャップ形成などにより植物が置かれた環境が変わると、植物はその環境に適応する。葉が生育環境に適した性質を持つように生化学的および形態学的に調節された発生学的過程を馴化(順化、じゅんか、acclimation)という[169]。馴化は新たに展開する葉においても、既に成熟した葉においても起こりうる[169]。
蒸散と排水
[編集]葉の裏では、気孔を通じて蒸散(じょうさん、transpiration)が行われる[162][171]。2個の孔辺細胞の働きにより開閉し、蒸散量の調整を行う[162]。葉で蒸散が行われると、根で吸収された水が吸い上げられる[172]。夏の日中などの蒸散が激しく行われるときには、水の吸い上げが追いつかず、葉は一時的に萎れる[172]。
一方、蒸散が活発でないときには根から押し上げられた水が、陽圧によって葉縁の鋸歯にある水孔などの排水組織(はいすいそしき、hydathode)から水滴として排出される[172][173]。この現象を排水(はいすい、guttation)または出滴(しゅってき)という[173]。蒸散速度が低くなる、(特に夏の)夜から早朝にかけてよく観察される[172][173]。葉内間隙の気相を維持する機能があると考えられている[173]。
運動
[編集]マメ科植物の葉は、太陽光線の強さに応じて角度を変化させる調位運動や就眠運動を行う[174][175]。クズの葉は、早朝と夕方には太陽光線に葉を向け(diaheliotropism)、一方日中は太陽光線を避けて葉を立てる(paraheliotropism)[172][175]。これにより、葉の温度を低減させる効果があると考えられている[175]。
この調位運動や睡眠運動には、葉柄基部が肥大化した葉枕(ようちん、pulvinus)と呼ばれる構造が関与している[52][174][169]。マメ科のほかにカタバミ属やヤマノイモ科にも知られる[52]。特にマメ科のオジギソウ Mimosa pudicaでは、葉身が刺激を受けると葉枕細胞の透過性が高まり、活動電位が生じ振動傾性運動を起こすことが知られている[174]。
食虫植物のハエトリグサ Dionaea muscipula(モウセンゴケ科)では、捕虫葉の葉身の向軸側にある感覚毛にハエなどの昆虫が2回触れると葉を閉じ、捕食して消化する[99]。
落葉
[編集]ほとんどの植物で葉は二次肥大成長を行わないため[注釈 18]、個体とは別に寿命を持ち、あるタイミングで茎との境界に離層を分化して母体から脱落することが多い[2][177][178]。このように、葉が脱離する現象を落葉(らくよう、leaf abscission)という[179][177]。この際、茎の表面に葉痕(ようこん、leaf scar)を残す[2][177][114]。落葉に伴い、葉色が変化して紅葉や黄葉を伴うものも多い[179]。
葉の生理的寿命が近づくと、葉内の養分がより若い葉に向けて転流したのち、離層が発達して物質の流通が制限される[179]。その後離層細胞内で新たに合成された細胞壁分解酵素の分泌により、離層細胞の分離や崩壊が起こり、葉が脱離する[179]。これに伴い、茎側の断面はコルク層で被覆される[179]。脱離の過程は離層周辺のオーキシン量とエチレン量により制御されている[179]。
植物の個体が、生活史中ですべての成葉を脱落させる時期を持つ性質を落葉性(らくようせい、deciduous)といい、その性質を持ち、ある時期には全く緑葉を付けなくなる木本植物を落葉樹(らくようじゅ、deciduous tree)という[180][181]。葉の寿命が1年以内である落葉樹に対し、葉の寿命が1年から数年で、年間を通して緑葉を付ける性質を常緑性(じょうりょくせい、evergreen)といい、そのような樹木は常緑樹(じょうりょくじゅ、evergreen tree)と呼ばれる[182][183]。
落葉樹で落葉が起こるのは生育に不適な時期であることが多い[180][183]。四季を持つ温帯では生育に不適な時期が寒期(冬)であることが多く、寒期に落葉する性質を夏緑性(かりょくせい、summer green)といい、そのような落葉樹を夏緑樹(かりょくじゅ、summer green tree)という[180][182][183]。この生育に不適な時期は乾燥期や光条件が悪い時期であることもある[180]。落葉樹林の林床に生える多年生草本では、光条件が良くなる冬に葉をつけるものが知られる[180]。気候帯によっては温暖で湿潤な冬季に葉を展開し、乾燥した夏季に落葉するのもみられ、冬緑性(とうりょくせい、winter green)と呼ばれる[180]。熱帯から亜熱帯にかけて、二季性の気候下で乾季に落葉するものは雨緑(うりょく、rain green)と呼ばれ、そのような樹木を雨緑樹(うりょくじゅ、rain green tree)という[182][183]。落葉樹のうち、落葉の時期にも少数の緑葉を残すものは半落葉性と呼ばれる[180][183]。落葉のタイミングも種によって異なり、クヌギ Quercus acutissima やカシワ Quercus dentata(ともにブナ科)のように、離層形成が遅いためしばらく枯葉が残り続けるものも知られる[184][185]。ヤマコウバシ Lindera glauca(クスノキ科)のように、葉は枯れても落葉せずに枯死した葉がそのまま越冬するものも見られる[182][184]。熱帯では、年中落葉が続く種もあれば、周期的に落葉する種もある[179]。
落葉樹と違って目立たないが、常緑樹であっても落葉は起こっている[182]。葉は次々に更新され、東アジアでは普通、2–3年かけて入れ替えられる[182][183]。この常緑樹の落葉は主に春から初夏にかけて起こり[183][177]、新葉が展開するとともに旧葉が落下する[183]。草本植物でも落葉は見られる[177]。例えば、セイタカアワダチソウでは茎の成長とともに上部に葉が展開し、下部の葉が落下する[177]。
特殊な例としては、南西諸島等で植栽に用いられるのデイゴ(マメ科)は、花を咲かせる枝に限って葉を落とす。また、アコウ(クワ科)は、不定期に木全体の葉を落とし、新芽を出す。また、一般の落葉樹でも、落葉の時期でなくとも、乾燥がひどかったり、葉が塩害にあった時など、不特定の時期にも葉を落とす場合がある。[要出典]
常緑植物でも一部の種、針葉樹のスギやニオイヒバ、メギ科のナンテン、ベンケイソウ科の多肉植物などで、冬には紅葉するが枯れて落葉はせず、春には再び緑色に戻るものがある。[要出典]
紅葉
[編集]秋に葉が赤く色付く現象を紅葉という[186][177]。落葉に先立って葉柄基部に離層が形成され、糖類の移動が妨げられることで葉に色素が蓄積することが、紅葉の起こりやすい条件であると考えられている[186]。この色素はアントシアンやフロバフェン[注釈 19]で、葉に蓄積した糖やアミノ酸から作られる[186]。一方、葉内のクロロフィルや蛋白質が秋の落葉前に分解されて移動する結果、残されたカロテノイドを主体とする黄色色素により葉が黄色を呈する現象を黄葉という[186][177]。これにより窒素やリンなどの栄養素が回収される[187]。アントシアン形成とカロテノイドの多寡により葉は様々な色調を呈し[177]、紅葉と黄葉は同じ葉に起こることもある[186]。日本では紅葉はカエデ属、黄葉はイチョウやカバノキ属に顕著である[186][187]。
葉の色と生理
[編集]多くの植物で光合成を行う普通葉は、葉緑体を含むため、緑色を呈することが多い。しかし、種や条件により他の色を呈するものも知られる。
例えば、上記の紅葉のほかに、多年生の木本植物などの芽が休眠を打破して形成される新葉(しんよう)には、赤く色付くものがある[188]。例えば、バラ、ハゼノキ、アラカシ、タブノキ、アカメガシワ、テイカカズラ、ヒサカキ、フジなど様々な分類群で見られる[188]。スイバやノゲシのように、越冬葉が赤くなるものも知られる[188]。ほかにもポインセチアの苞は、花粉を媒介する虫をおびき寄せるために赤く変色し、期間が過ぎると緑となる[189]。
新葉や落葉前の紅葉を含む、赤く色付いた葉の究極要因として、2つの仮説が考えられている[190][188]。1つは、葉を過度の光から保護するためであると考えられている[190][188]。クロロフィルが分解されて光合成活性が低下した葉に光が過剰に当たると、細胞損傷や早期の落葉を引き起こす可能性がある[190]。これを防いで葉から幹への栄養素の移動を促進するために、短波長の光を吸収するアントシアニンを合成し、入射光の量を和らげていると考えられている[190][188]。
もう1つの仮説は、植物を食べる昆虫への警告であると考えられている[190][188]。葉に防御物質が多く含まれていたり、栄養価に乏しかったりするため、昆虫に近寄らないように指示する信号となっていると説明される[190]。これは特に秋に産んだ越冬卵が春に孵化して葉を食害するアブラムシなどの昆虫を想定したものである[190]。これにより、植食者による食害を防ぐ効果があるとされる[188]。
生理障害と病理
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キュウリでは、未展開の若葉時にカルシウム不足により「落下傘葉」と呼ばれる葉の形態を示すことが知られている[191]。ブドウでは、マグネシウム欠乏により、葉肉が黄色くなり、葉脈だけが緑色に残る「トラ葉」と呼ばれる形態を示す[192]。
生態系における葉
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
大葉シダ植物や被子植物の葉上にはカビゴケ Leptolejeunea elliptica やヨウジョウゴケ Cololejeunea goebelii のような生葉上苔類(せいようじょうたいるい、epiphyllous liverworts)が生育する[193][194]。
また、葉面に分布する気孔からの蒸散は、植生地における潜熱の大部分を陸域生態系から大気へ輸送するのに機能する[171]。そのため、植物からの蒸散は大気-陸域生態系の水交換において最も重要なプロセスとなる[171]。それ以外にも、雨や露などで濡れた葉面からの遮断蒸発も大気への水輸送に寄与する[171]。
森林では、樹木の葉や枝が落下し、土壌生物によってほとんど分解されないまま堆積する落葉落枝層を形成する[195]。この落葉落枝の供給は森林や水圏生態系の物質循環に重要な役割を担っている[196]。
被食と防衛
[編集]葉は昆虫など様々な動物に摂食される[197][198]。一方植物では、昆虫に食害されると、食害された葉などから食害を行った虫の天敵となる捕食者を誘引するための植食者誘導性植物揮発性物質を放出するものも知られている[199]。
一般的に葉を摂食する昆虫を食葉性害虫(defoliator)という[197]。中には、アゲハチョウ科(鱗翅目)のように、その幼虫が特定の植物のみを食草として摂食するものも知られる[200][注釈 20]。葉肉中に潜り込み、葉肉細胞を摂食する昆虫も知られ、リーフマイナー(leaf miner、ハモグリ)と呼ばれる[197][198]。クルミホソガ(鱗翅目)やハモグリバエ(双翅目)などが知られる。通常の昆虫に食べられた箇所の細胞は褐変し、枯死するのに対し、リーフマイナーが摂食した葉は緑色が維持される[198]。
オトシブミ科(鞘翅目)のオトシブミ亜科およびアシナガオトシブミ亜科の全て、チョッキリゾウムシ亜科の一部では、宿主植物の葉を巻いて揺籃を作り、その中に産卵する[190][201]。揺籃は切って落とされ、孵化した幼虫がそれを食べて成長する[190]。鱗翅目でも揺籃を作るものがあり[190]、ハマキガ科などに知られる。
人間とのかかわり
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
この節の内容の信頼性について検証が求められています。 |
食用
[編集]種々の草本植物の葉が葉菜類として栽培され、食用に供される。普通は貯蔵根が食用となる根菜類であるダイコンやワサビも、葉の部分を食用としてそれぞれ「大根葉」、「葉ワサビ」として親しまれる。
特定の木本植物の葉や芽、薄嚢シダ類の若い葉は山菜として食される。特に後者はフィドルヘッドと呼ばれ、各地で食用とされる。日本では、樹木の若い芽として、タラノキ[202]やコシアブラが、シダ類の若い葉(ワラビ巻き)としてゼンマイやワラビ、クサソテツなどが食用となる[203]。
桜餅に用いられるサクラの葉のように、樹木の成葉を塩漬けなどに加工して、食用にする場合もある[204]。
チャノキ(ツバキ科)の葉からの抽出物は、茶として飲まれる。トチュウ(トチュウ科)、ビワ(バラ科)[205]、アマチャヅル(ウリ科)、クワ(クワ科)[206]のように、それ以外の植物の葉から抽出されたものも、茶外茶と総称される茶として飲用に供される。
イチョウの葉(イチョウ葉)やヨモギの葉(艾葉)のように、薬効があるとして抽出物が医薬品として用いられるものもある[207][208][209]。
文化
[編集]- 料理の装飾
伝統的な日本料理においては、食用葉のほかに、盛りつけのあしらいとして、青カエデ、ナンテン、アジサイ、キク、カキ、キュウリなどの葉を用いることがある(かいしき)。また、盛り付けのさいに、装飾を兼ね庖丁で細工が施されて、接触をさける仕切りに用いたり、にぎり寿司などをのせたりすることもある(バラン→ハラン)。
- 行事や信仰・文化
- 薄嚢シダ類であるウラジロの葉は、正月飾りとして用いられる[210]。ナギの葉は、「梛守り(なぎまもり)」として各地の神社でお守りとして頒布される。四つ葉のクローバーは幸運の象徴とされる[211]。また、日本ではシュロの葉から作ったバッタを模したものや、笹舟など、葉を使った玩具を作る文化がある[212][213]。
飼料
[編集]家畜の飼料(牧草)として、ネズミムギやチモシーとして知られるオオアワガエリ Phleum pratense などイネ科草本の(主に)葉や、アルファルファと呼ばれるムラサキウマゴヤシ Medicago sativa などのマメ科草本の葉が用いられることが多い[214]。場合によっては、クワのような木本植物の葉がヤギなどの飼育に用いられることもある[215]。
絹を採るためのカイコの飼育(養蚕)では、餌としてマグワの葉が用いられる[206][215]。
鑑賞用
[編集]色付いた葉を持つ植物は、「カラーリーフプランツ」として観賞用に利用される[注釈 21][216][217]。新葉や紅葉のように一時的なものだけでなく、成葉で発現するものも知られる[216]。色は赤、黄、白、斑入りなど様々なものが用いられる[216]。
バイオミメティクス
[編集]生物の持つ機能や構造を真似て工学的に利用することをバイオミメティクスというが、その中でもハスの葉の撥水する機能は「ロータス効果」と呼ばれ、汚れが付着しにくい微細構造へと応用されている[218]。
意匠
[編集]イチョウ(銀杏紋)やフタバアオイ(葵紋)など、特徴的な形の葉は紋章やロゴマークなどのデザインにもなる[219]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 以降注記なしの立体ラテン文字は英名を示す。
- ^ 薄嚢シダ類の羽葉には、無限成長性を示すものも知られる[6]。
- ^ 複葉の各裂片も小葉 leaflet と呼ばれるが、別の用語である[1]。
- ^ 茎から葉に繋がる維管束
- ^ 葉頂[42][43]と呼ばれ、葉頭や葉端などの訳語も知られる[44]。なお、それに対して葉身の基部は葉脚または葉底 (leaf base) と呼ばれるが、leaf base の語は葉柄も含む葉全体の基部を表す葉基に対しても用いられる[42]。
- ^ 中脈[45][46]、主脈[45]、一次脈 (primary vein)[47]とも呼ばれる。
- ^ 図中の矢印は一次側脈 (primary lateral vein) で[45]、二次脈 (secondary vein) と呼ばれることもある[47]。そこから分枝した脈は二次側脈 (secondary lateral vein) または三次脈 (tertiary vein) と呼ばれる[47]。
- ^ 葉縁の突起は鋸歯 (serration) と呼ばれる。
- ^ この場合特に腋芽 axillary bud
- ^ 葉・側芽を合わせてシュートと呼ぶ
- ^ 環境条件によって異なる形態の葉を形成することをヘテロフィリー heterophylly、環境条件が一定でも成長過程で異なる形態の葉を形成することをヘテロブラスティー heteroblasty と呼び分け、それらを総称して「異形葉性」と呼ぶこともある[50]。
- ^ 下記の鱗片葉とは異なる[82]
- ^ 旧シロモジ属 Parabenzoin を含む
- ^ 一方、大葉シダ植物の頂端では、表層の細胞1層から始まり葉原基形成が起こる[134]。
- ^ ホメオボックス転写因子をコードする[137]。クラスⅠ KNOX 遺伝子とも[130]。
- ^ syn. Aspidium cicutarium
- ^ 左上から時計回りに、シラタマミズキ Cornus alba(ミズキ科)、カラコギカエデ Acer ginnala(ムクロジ科)、ユリノキ Liriodendron tulipifera、交雑ポプラ Populus tremula × tremuloides、ナナカマド属の1種 Sorbus decora(バラ科)、セイヨウカンボク Viburnum opulus(レンプクソウ科)
- ^ ハナワラビ類の葉跡には形成層が形成され、二次維管束を分化する[176]。
- ^ タンニンが縮合したもの。
- ^ このような食性は狭食性と呼ばれる[201]
- ^ カラーリーフプランツ color leaf plants は和製英語である[216]。
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- 清水建美『図説 植物用語事典』八坂書房、2001年7月30日、132頁。ISBN 4-89694-479-8。
- リンカーン・テイツ (Lincoln Taiz)、エドゥアルト・ザイガー (Eduardo Zeiger)、イアン・M・モーラー (Ian Max Møller)、アンガス・マーフィー (Angus Murphy) 著、西谷和彦、島崎研一郎 訳『テイツ/ザイガー 植物生理学・発生学 原著第6版 (原著:Plant Physiology and Development, Sixth Edition)』講談社、2017年2月24日(原著2015年)。ISBN 978-4-06-153896-2。
- 原襄『植物の形態』裳華房〈基礎生物学選書〉、1972年11月25日。
- 原襄『植物形態学』朝倉書店、1994年7月16日。ISBN 978-4254170863。
- 西田治文『化石の植物学 ―時空を旅する自然史』東京大学出版会、2017年6月24日。ISBN 978-4130602518。
- 日本植物学会『学術用語集 植物学編(増訂版)』文部省、1990年3月20日。ISBN 462103376X。
- 長谷部光泰『陸上植物の形態と進化』裳華房、2020年7月1日。ISBN 978-4785358716。
- 林将之『山溪ハンディ図鑑14 増補改訂 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類』山と溪谷社、2020年1月5日。ISBN 978-4-635-07044-7。
関連項目
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[編集]- 植物形態学 4-3. 葉 - 福原達人(福岡教育大学教育学部)
- 植物形態学 (plant morphology) - 露崎史朗(北海道大学大学院環境科学研究院)