「ハニヤス」の版間の差分
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{{記紀の人・神 |
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[[Image:Creation myths of Japan 4.svg|thumb|right|200px|イザナミの病と死によって生まれた神々(『古事記』に基づく) [[メディア:Creation myths of Japan 4.svg|SVGで表示(対応ブラウザのみ)]]]] |
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|時 = [[神代 (日本神話)|神代]] |
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{{基礎情報 日本の神 |
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<!--日本書紀--> |
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| 名 = 波邇夜須毘古神 |
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|紀名 = 埴安神<ref name="日本神名辞典-ハニヤスノカミ"/> |
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| 世代名 = |
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|紀読 = はにやすのかみ<ref name="日本神名辞典-ハニヤスノカミ"/> |
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| 先代= |
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|紀名1 = |
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|紀読1 = |
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| 神祇 = <!-- 天神、地祇、天津神、国津神など -->[[天津神・国津神|天津神]] |
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|紀名2 = 埴山姫<ref name="日本神名辞典-ハニヤマヒメ"/> |
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| 全名 = 波邇夜須毘古神 |
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|紀読2 = はにやまひめ<ref name="日本神名辞典-ハニヤマヒメ"/> |
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| 別名 = |
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|紀名3 = 埴山姫神<ref name="日本神名辞典-ハニヤマヒメノカミ"/> |
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| 別称 = 埴安彦 |
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|紀読3 = はにやまひめのかみ<ref name="日本神名辞典-ハニヤマヒメノカミ"/> |
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| 神階 = |
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|紀性 = |
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| 神格 = <!-- 太陽、月、山、海など司るもの -->[[土]] |
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|紀生 = |
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|紀没 = |
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|紀氏 = |
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|紀父 = |
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| 親 = <!-- まぐあいによって生まれない場合 -->[[伊邪那美命]] |
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|紀母 = |
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| 兄弟姉妹 = [[金山毘古神]]、[[金山毘売神]]、波邇夜須毘売神、[[弥都波能売神]]、[[和久産巣日神]] 等 |
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|紀兄 = |
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|紀姉 = |
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|紀弟 = |
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|紀妹 = |
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|紀妻 = |
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|紀夫 = |
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|紀子 = |
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|紀備 = |
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<!--古事記--> |
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|記名 = 波邇夜須 |
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|記読 = はにやす |
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|記名1 = 波邇夜須毘古神<ref name="日本神名辞典-ハニヤスビコノカミ"/> |
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|記読1 = はにやすびこのかみ<ref name="日本神名辞典-ハニヤスビコノカミ"/> |
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|記名2 = 波邇夜須毘売神<ref name="日本神名辞典-ハニヤスビメノカミ"/> |
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|記読2 = はにやすびめのかみ<ref name="日本神名辞典-ハニヤスビメノカミ"/> |
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|記名3 = |
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|記読3 = |
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|記性 = |
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|記生 = |
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|記氏 = |
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|記父 = |
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|記母 = |
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|記兄 = |
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|記姉 = |
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|記弟 = |
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|記妹 = |
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|記妻 = |
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|記夫 = |
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|記子 = |
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|記備 = |
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| 三書 = [[先代旧事本紀]] |
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| 三名 = 埴安彦<ref name="日本神名辞典-ハニヤスビコ"/> |
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| 三読 = はにやすびこ<ref name="日本神名辞典-ハニヤスビコ"/> |
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| 三名1 = 埴安姫<ref name="日本神名辞典-ハニヤスヒメ"/> |
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| 三読1 = はにやすひめ<ref name="日本神名辞典-ハニヤスヒメ"/> |
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| 三備 = 巻一[[陰陽本紀]] |
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}} |
}} |
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[[Image:Creation myths of Japan 4.svg|thumb|right|200px|イザナミの病と死によって生まれた神々(『古事記』に基づく) [[メディア:Creation myths of Japan 4.svg|SVGで表示(対応ブラウザのみ)]]]] |
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{{基礎情報 日本の神 |
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| 名 = 波邇夜須毘売神 |
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| 世代名 = |
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| 先代= |
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| 次代= |
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| 神祇 = <!-- 天神、地祇、天津神、国津神など -->[[天津神・国津神|天津神]] |
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| 全名 = 波邇夜須毘売神 |
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| 別名 = |
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| 別称 = 埴安姫、埴山姫、埴山媛、埴安姫神、埴山姫神 |
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| 神階 = |
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| 神格 = <!-- 太陽、月、山、海など司るもの -->[[土]] |
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| 陵所 = |
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| 父 = |
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| 母 = |
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| 親 = <!-- まぐあいによって生まれない場合 -->[[伊邪那美命]] |
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| 兄弟姉妹 = 金山毘古神、金山毘売神、波邇夜須毘売神、弥都波能売神、和久産巣日神 等 |
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| 配偶者 = [[軻遇突智]] |
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| 子 = [[稚産霊]] |
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| 宮 = |
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| 神社 = [[畝尾坐健土安神社]]、[[波爾移麻比禰神社]] 等 |
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| 関連氏族 = [[中臣氏|中臣連]] |
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}} |
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'''埴安神'''(はにやすのかみ)は、[[日本神話]]に登場する[[土]]の[[神 (神道)|神]]である。『[[古事記]]』によると'''波邇夜須毘古神'''(はにやすびこのかみ)と'''波邇夜須毘売神'''(はにやすびめのかみ)という男女二柱の神が存在する。なお[[孝元天皇]]妃の[[埴安媛]]は[[凡河内国造]]の一族で別人である。 |
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'''ハニヤス'''は、[[日本神話]]に登場する神。『[[古事記]]』では'''ハニヤスビコ'''・'''ハニヤスヒメ'''という一対の神として登場し、『[[日本書紀]]』では'''ハニヤマヒメ'''や'''ハニヤスノカミ'''の異称で登場する。[[祝詞]]ではハニヤマヒメ。土の神、土壌の神、肥料の神、農業神として祀られるほか、陶芸の神、鎮火の神、土木工事や造園工事の守護神、便所の神としても祭祀される。 |
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== 概要 == |
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『[[古事記]]』では、[[火之夜芸速男神]]を産んで死ぬ間際の[[伊邪那美命]]の[[糞|大便]]から'''波邇夜須毘古神'''・'''波邇夜須毘売神'''の二神が化生したとする。『[[日本書紀]]』では'''埴安神'''と表記される。他に、神社の祭神で'''埴山彦神'''・'''埴山姫神'''の二神を祀るとするものもある。 |
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==概要== |
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なお「ハニ」(埴)とは[[土]]のことである。 |
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記紀には[[イザナミ]]の大便からハニヤスが化生したという挿話がある。[[イザナギ]]とイザナミによる[[神産み]]により様々な自然物の神々を誕生させる過程で、イザナミは[[カグツチ|火の神]]を生む<!--ここは「産む」と変換すると記紀解釈上の問題が起きるため「生む」としておく-->際に大火傷をしてしまい、死に至る。その死の間際の苦しみのなか、イザナミは嘔吐や脱糞・失禁をする。その吐瀉物からは鉱山の神[[カナヤマヒコ]]が、大便からは土の神ハニヤスが、小便からは水の神[[ミヅハノメ]]が生まれる。記紀ではこのようなハニヤスの誕生譚が語られるのみで、その後のハニヤスの動向は描かれない。 |
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古代語の「ハニ」は、土器や陶器のもとになる粘土を示す語であり、ハニヤスは粘土を神格化したものと考えられている。記紀の語るハニヤス誕生譚では、火の神、(金属)鉱石の神、粘土の神、水の神、食物の神が連続して誕生しており、一連のエピソードは火によって人類が金属加工技術や土器・陶器の焼成技術を獲得したことや、焼畑農業のような原始的な農耕文化の誕生を象徴していると考えられている。このためハニヤスは陶芸上達・陶工の守護神として祭祀されることもある。 |
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== 関連項目 == |
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ハニヤスは「土の神」として土壌一般の守護神とも考えられており、農耕・開墾・田畑の守護神ともされる。大便から生まれたことから、農業神の一種として農耕に役立つ肥料の神として祭祀されたり、便所の神として祀られることもある。土に関わる土木業・造園業の守護神ともされる。 |
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『[[延喜式]]』所載の[[祝詞]]には、記紀と異なり、荒ぶる火の神の害から民を守るために、イザナミが火鎮めの神としてハニヤスを生んだという挿話がある。このためハニヤスは「鎮火の神」としても祀られ、[[愛宕神社]]や[[秋葉神社]]など火除の神社でも重要な祭神となっている。ハニヤスが鎮火の神功を有するのは、古代には火災の消火に土や泥が用いられていたことを象徴しているとも考えられている。 |
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===さまざまな呼称・表記=== |
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;ハニヤスヒメ、ハニヤスビメ、ハニヤスヒメノカミ、ハニヤスビメノカミ |
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*波邇夜須毘賣神(『[[古事記]]』)<ref name="日本神名辞典-ハニヤスビメノカミ"/> |
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*埴安姫(『[[先代旧事本紀]]』「[[陰陽本紀]]」)<ref name="日本神名辞典-ハニヤスヒメ"/> |
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;ハニヤスビコ、ハニヤスヒコノカミ |
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*波邇夜須毘古神(『[[古事記]]』)<ref name="日本神名辞典-ハニヤスビコノカミ"/> |
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*埴安彦(『[[先代旧事本紀]]』「[[陰陽本紀]]」)<ref name="日本神名辞典-ハニヤスビコ"/> |
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;ハニヤスノカミ |
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*埴安神(『日本書紀』第五段第六の一書)<ref name="日本神名辞典-ハニヤスノカミ"/> |
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*土安神([[畝尾坐健土安神社]](奈良県)、[[本居宣長]]『[[古事記伝]]』)<ref name="古事記伝-五-274"/> |
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;ハニヤマヒメ、ハニヤマビメ、ハニヤマヒメノカミ、ハニヤマヒミノカミ |
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*埴山姫(『日本書紀』第五段第二の一書、第五段第三の一書、『[[延喜式]]』「祝詞・鎮火祭」)<ref name="日本神名辞典-ハニヤマヒメ"/> |
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*埴山媛(『日本書紀』第五段第四の一書) |
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*埴山姫神(『先代旧事本紀』、[[榛名神社]])<ref name="日本神名辞典-ハニヤマヒメノカミ"/> |
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*波尓移麻比弥(『[[延喜式神名帳]]』)<ref name="日本の神仏-ハニヤマヒミノカミ"/> |
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*波爾移麻比禰([[波爾移麻比禰神社]]) |
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;その他、同一視される神 |
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*ハニウダノカミ(土生田神) - 新潟県・土生田神社(式内社)の祭神<ref name="日本の神仏-ハニウダノカミ"/>。 |
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*ハニウノカミ(波尓布神)<ref name="日本の神仏-ハニウノカミ"/> |
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*ハニウメヤノカミ(埴生女屋神) - 『[[三代実録]]』に登場。徳島県・[[上一宮大粟神社]]の祭神<ref name="日本の神仏-ハニウメヤノカミ"/> |
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*健土安神(タケハニヤスノカミ) - 『[[三代実録]]』<ref name="日本の神仏-ハニヤスノカミ"/>。[[#同名・関連名の人物]]参照。 |
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==古事記== |
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<!--日本神話において「生む」と「産む」は難しいところがあり、ここでは明らかに哺乳類のようにお産をしたものを「産む」、それ以外(不明を含め)を「生む」の字を当てている。--> |
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『[[古事記]]』では、[[天地開闢 (日本神話)|天地開闢]]と[[別天神]]・[[神世七代]]に続いて、[[イザナギ]](伊邪那岐命)と[[イザナミ]](伊邪那美命)による[[国生み]]・[[神生み]]{{refnest|group="注"|日本神話では、しばしば「ウム・生む・産む」が問題となる。「産む」は女性(女神)による胎生を指し、たとえば火の神カグツチは生まれる時に母イザナミの女陰を焼いており、明らかにイザナミが産んだ(胎生)神である。しかしハニヤスはイザナミが排泄した大便が神に化生(化成)したのであり、明らかに胎生ではない。記紀の古語ではこの両方を包括して「ウム・ウムス」と表現し、自動詞としての「ウム」と他動詞としての「生む」のどちらにも用いられる。これを本居宣長は「ムスヒ」(ムス=生成する・ヒ=霊力)と説明した<ref name="古事記と日本書紀-90"/>。また、この場合にイザナミはハニヤスの「母」と言えるのかという問題がある。神は雌雄の性別を問わずに単体で万物をウムことが可能である<ref name="語ろう-110"/>。たとえば、アマテラスやスサノヲは、男神イザナギが目や耳を洗い流したときに生まれる(『日本書紀』神代上第五段第六の一書)。その発生にはイザナミは直接関与していないように思われるが、スサノヲはイザナミを「亡き母」(妣)と慕う<ref name="口語古事記-35-8"/>。さらに、スサノヲとアマテラスのウケヒ([[アマテラスとスサノオの誓約]])では、アマテラスがスサノヲの剣を噛み砕いて吐き出したときに生まれた[[宗像三女神]]は、スサノヲの所有物から生まれたのだからスサノヲの子だと説明される(『日本書紀』神代上第六段本書)。}}が語られる。イザナミは、さまざまな神を生んだあと、火の神を出産する。ところが分娩の際に陰部に大火傷を負い、この世を去ってしまう{{refnest|group="注"|イザナギとイザナミは国造りの最中であり、その途中でイザナミが死んだために国造りは未完に終わったと考えられる<ref name="広-イザナキ"/>。}}。その死の間際、火傷に苦しんだイザナミは嘔吐、脱糞、失禁をして、その吐瀉物・排泄物が神となる。ハニヤスはこのうち大便が神として化成したもので、ハニヤスビコ・ハニヤスヒメの1対の神として登場する。 |
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===古事記の原文=== |
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*以下の原文に頻出する「以<sub>レ</sub>音」という注意書きは、「この部分だけは文字そのものに意味がある漢文ではなく、日本語の音に漢字にあてはめただけで、文字そのものの意味は関係ない」ということ。たとえば「屎成神」は、「糞が神に成った」という意味であり、「屎」「成」「神」はそれぞれ漢字元来の意味を保持している。これに対して、「波邇夜須」は日本語固有名詞の「ハニヤス」の音に漢字をあてはめただけであり、(海の)「波」、(暗い)「夜」などの字義は失われている。 |
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{| style="width:90%;background-color:rgba( 75, 151, 144, 0.08 );margin:0 auto;border: 1px #404040 solid;padding:1.0em;width:90%;" |
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|- |
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| style="border-bottom: 1px #404040 solid;" colspan=2 |([[国史大系]]第7巻)『古事記』上巻 |
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|原文<ref>国立国会図書館デジタルコレクション 国史大系第7巻.古事記.{{NDLJP|991097}} コマ番号21</ref> |
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|訓み下し文<ref name="新編古事記-40"/>(一部を除き注釈を割愛) |
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|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
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| 次生<sub>二</sub><ruby>火之夜藝<rt>ヒノヤギ</rt></ruby><ruby>速<rt>ハヤ</rt></ruby><ruby>男<rt>ヲ</rt></ruby><ruby>神<rt>ノカミ</rt></ruby><sub>一</sub>。<span style="font-size:0.8em;">夜藝二字以<sub>レ</sub>音</span> |
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| 次に<ruby>[[火之夜芸速男神]]<rt>ひのやぎはやをのかみ</rt></ruby>を生みき。 |
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|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
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|亦名謂<sub>二</sub><ruby>火之<rt>ヒノ</rt></ruby><ruby>炫<rt>カゝ</rt></ruby><ruby>毘古<rt>ビコ</rt></ruby><ruby>神<rt>ノカミ</rt></ruby><sub>一</sub>。 |
|||
|亦の名は<ruby>[[火之炫毘古神]]<rt>ひのかかびこのかみ</rt></ruby>と謂ひ、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|亦名謂<sub>二</sub><ruby>火之迦具<rt>ヒノカグ</rt></ruby><ruby>土<rt>ツチ</rt></ruby><ruby>神<rt>ノカミ</rt></ruby><sub>一</sub>。<span style="font-size:0.8em;">迦具二字以<sub>レ</sub>音</span> |
|||
|亦の名は<ruby>[[火之迦具土神]]<rt>ひのかぐつちのかみ</rt></ruby>と謂ふ。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|因<sub>レ</sub>生<sub>二</sub>此子<sub>一</sub>。 |
|||
|此の子を生みしに因りて、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|<ruby>美蕃登<rt>ミホト</rt></ruby><span style="font-size:0.8em;">此三字以<sub>レ</sub>音</span>見<sub>レ</sub>炙而病臥在。 |
|||
|みほとを<ruby>炙<rt>や</rt></ruby>かえて病み<ruby>臥<rt>ふ</rt></ruby>して在り。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|<ruby>多具理<rt>タグリ</rt></ruby><ruby>邇<rt>ニ</rt></ruby><span style="font-size:0.8em;">此四字以<sub>レ</sub>音</span>生<sub>レ</sub>神。 |
|||
|たぐりに成りし神の |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|名<sub>二</sub><ruby>金山<rt>カナヤマ</rt></ruby><ruby>毘古<rt>ビコ</rt></ruby><ruby>神<rt>ノカミ</rt></ruby><sub>一</sub>。<span style="font-size:0.8em;">訓<sub>レ</sub>金云<sub>二</sub>迦那<sub>一</sub>、下效<sub>レ</sub>此</span> |
|||
|名は<ruby>[[金山毘古神]]<rt>かなやまびこのかみ</rt></ruby>。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|次<ruby>金山<rt>カナヤマ</rt><ruby>毘賣<rt>ビメ</rt></ruby></ruby><ruby>神<rt>ノカミ</rt></ruby>。 |
|||
|次に、<ruby>[[金山毘売神]]<rt>かなやまびめのかみ</rt></ruby>。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|次於<sub>レ</sub><ruby>屎<rt>クソ</rt></ruby>成神名<sub>二</sub><span style="color:red;"><ruby><u>'''波邇夜須毘古'''</u><rt>ハニヤスビコ</rt></ruby><ruby><u>'''神'''</u><rt>ノカミ</rt></ruby></span>。<span style="font-size:0.8em;">此神名以<sub>レ</sub>音</span> |
|||
|次に、<ruby>屎<rt>くそ</rt></ruby>に成りし神の名は、<ruby><u>[[波邇夜須毘古神]]</u><rt>はにやすびこのかみ</rt></ruby>。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|次<span style="color:red;"><ruby><u>'''波邇夜須毘賣'''</u><rt>ハニヤスビメ</rt></ruby><ruby><u>'''神'''</u><rt>ノカミ</rt></ruby></span>。<span style="font-size:0.8em;">此神名亦以<sub>レ</sub>音。</span> |
|||
|次に、<ruby><u>[[波邇夜須毘売神]]</u><rt>はにやすびめのかみ</rt></ruby>。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|次於<sub>レ</sub><ruby>尿<rt>ユマリ</rt></ruby>成神名<sub>二</sub><ruby>彌都波能賣<rt>ミツハノメ</rt></ruby><ruby>神<rt>ノカミ</rt></ruby><sub>一</sub>。 |
|||
|次に、<ruby>尿<rt>ゆまり</rt></ruby>に成りし神の名は、<ruby>[[弥都波能売神]]<rt>みつはのめのかみ</rt></ruby>。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|次<ruby>和久產巢日<rt>ワクムスビ</rt></ruby><ruby>神<rt>ノカミ</rt></ruby>。 |
|||
|次に、<ruby>[[和久産巣日神]]<rt>わくむすひのかみ</rt></ruby>。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|此神之子、謂<sub>二</sub><ruby>豐<rt>トヨ</rt></ruby><ruby>宇氣毘賣<rt>トヨウケビメ</rt></ruby><ruby>神<rt>ノカミ</rt></ruby><sub>一</sub>。<span style="font-size:0.8em;">自<sub>レ</sub>宇以下四字以<sub>レ</sub>音</span> |
|||
|此の神の子は、<ruby>[[豊宇気毘売神]]<rt>とようけびめのかみ</rt></ruby>と謂ふ。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|故、<ruby>伊邪那美<rt>イザナミ</rt></ruby><ruby>神<rt>ノカミ</rt></ruby>者。 |
|||
|<ruby>故<rt>かれ</rt></ruby>、<ruby>[[伊邪那美神]]<rt>いざなみのかみ</rt></ruby>は、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|因<sub>レ</sub>生<sub>二</sub>火神<sub>一</sub>。 |
|||
|火の神を生みしに因りて、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|遂<ruby>神避<rt>カムサリ</rt></ruby>坐也。 |
|||
|遂に神避り<ruby>坐<rt>ま</rt></ruby>しき。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;font-size:0.8em;" |
|||
|自<sub>二</sub><ruby>天鳥船<rt>アメノトリフネ</rt></ruby><sub>一</sub>至<sub>二</sub><ruby>豐宇氣毘賣神<rt>トヨウケビメノカミ</rt></ruby><sub>一</sub>、<ruby>幷<rt>アハセテ</rt></ruby><ruby>八神<rt>ヤハシラ</rt></ruby>。 |
|||
|[[天鳥船]]より豊宇気毘売神に至るまでは、<ruby>幷<rt>あは</rt></ruby>せて八はしらの神ぞ。 |
|||
|- |
|||
| style="line-height:2.0em;" colspan=2 |(現代語訳) |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|(イザナミは)次に<ruby>[[火之夜芸速男神]]<rt>ひのやぎはやをのかみ</rt></ruby>を産んだ。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|その名は別名<ruby>[[火之炫毘古神]]<rt>ひのかかびこのかみ</rt></ruby>ともいい、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|また別名<ruby>[[火之迦具土神]]<rt>ひのかぐつちのかみ</rt></ruby>ともいう。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|この子(火の神)を産んだことが原因で、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|陰部を火傷して病に伏せってしまった。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|(伏せている間に、苦しんで)嘔吐すると、その吐瀉物が神になった。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|その名を<ruby>[[金山毘古神]]<rt>かなやまびこのかみ</rt></ruby>、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|次に(吐瀉物から)<ruby>[[金山毘売神]]<rt>かなやまびめのかみ</rt></ruby>が生まれた。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|次に、(苦しんで)大便を漏らすと、それが<ruby><u>[[波邇夜須毘古神]]</u><rt>はにやすびこのかみ</rt></ruby>という名の神になった。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|次に(大便から)<ruby><u>[[波邇夜須毘売神]]</u><rt>はにやすびめのかみ</rt></ruby>が生まれた。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|次に、(苦しんで)小便を漏らすと、それが<ruby>[[弥都波能売神]]<rt>みつはのめのかみ</rt></ruby>という名の神になった。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|次に、<ruby>[[和久産巣日神]]<rt>わくむすひのかみ</rt></ruby>が生まれた。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|この神の子どもは<ruby>[[豊宇気毘売神]]<rt>とようけびめのかみ</rt></ruby>という。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|こうして<ruby>[[伊邪那美神]]<rt>いざなみのかみ</rt></ruby>は |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|火の神を産んだことが原因で |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|とうとう神去って(死んで)しまった。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|(注)[[天鳥船]]から豊宇気毘売神までを数えると、全文で8神となる。 |
|||
|- |
|||
|} |
|||
上記の抜粋部分の前に、イザナミは[[鳥之石楠船神]](=[[天鳥船]])と[[大気都比売神]]を産んでいる。古事記では当該部で神の数を「8」としているのだが、登場する神々の名を数え上げると、(1)アメノトリフネ、(2)オオゲツヒメ、(3)ヒノカグツチ、(4)カナヤマビコ、(5)カナヤマビメ、(6)ハニヤスヒコ、(7)ハニヤスヒメ、(8)ミツハノメ、(9)ワクムスヒ、(10)トヨウケヒメ、と10神となる。<ref name="語ろう-115"/> |
|||
この数の矛盾については古くから知られている。[[本居宣長]]はカナヤマビコ・カナヤマビメ、ハニヤスヒコ・ハニヤスヒメの男女対偶をなす神を、男女一組で「1」神と数えることで「8」に整合すると説いた<ref name="語ろう-115"/>。しかし『古事記』内では、このような男女ペアの神を別々に数えて「2」とする箇所もあり、本居宣長の解釈では一貫的な整合性はない<ref name="語ろう-115"/>。 |
|||
[[平田篤胤]]は、本居宣長の説を紹介しつつ、男女ペアの場合でなくとも数え方が異なる例が多数みられることを示し、[[分霊]](ワケミタマ)かどうかで数え方が変わるのではないかとの仮説を示している<ref name="平田篤胤-一神"/>。中山修也([[文教大学]]文学教授)は、本居説には無理があるとしつつ、『古事記』編纂の過程で複数の編纂者の手が入り、相互に矛盾が生じた可能性を指摘した<ref name="語ろう-115"/>。 |
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==日本書紀== |
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『日本書紀』の叙述スタイルは、メインストーリーと言うべきテキスト(「本書」)と、異伝と言うべきテキスト(「一書」)が、本文を形成する体裁になっている<ref name="日本書紀の世界-43"/><ref name="古事記と日本書紀-110"/>。異伝を示すには、「一書曰」(あるふみにいわく)のほか、「一云」「或本」なども用いられる<ref name="日本書紀の世界-43"/><ref name="古事記と日本書紀-110"/>。 |
|||
メインストーリー(「本書」)を数える場合には「段」が用いられる<ref name="六国史-81"/>。ひとつのメインストーリー(本書)に対して、複数の異伝(一書)が併記されるケースもある<ref name="六国史-81"/>。特に神代をテーマとする一巻と二巻では、文量のうえではこれらの「一書」(異伝)が大部分を占めている<ref name="日本書紀の世界-17"/><ref name="日本書紀の世界-44"/>。とくに神代に「一書」が多いのは、『日本書紀』の編纂者が、むりに「正史」一つに絞るのではなく、さまざまな諸説をそのままのすがたで後世に伝えようとしたものとみられている<ref name="六国史-81"/>。 |
|||
「第四段」のイザナギ・イザナミによる[[大八島|大八州]](日本列島)の[[国生み]]のエピソードでは、10種類の「一書」が示される<ref name="六国史-81"/>。続く「第五段」の[[アマテラス]]・[[ツクヨミ]]・[[ヒルコ]]・[[スサノヲ]]の4神出生章では11種の「一書」が列記される<ref name="六国史-81"/>。 |
|||
『古事記』との大きな差異として、『日本書紀』のメインストーリーである「本書」では、火の神の出産で大火傷を負い瀕死となったイザナミがその死の間際にさまざまな神を生み出すエピソードがない<ref name="六国史-84"/>。この挿話は、11種の「一書」(異伝)のうち、「第二の一書」・「第三の一書」・「第四の一書」・「第五の一書」・「第六の一書」で叙述され、そのうち「第二」・「第三」・「第四」・「第六」にハニヤスが登場する<ref name="日本神名辞典-ハニヤスビメノカミ"/>{{refnest|group="注"|あいだの「第五の一書」は、イザナミが火の神を生んで焼け死に、[[紀伊国]][[熊野]]の有馬村(現代の[[熊野市]]有馬町)に葬られて祭祀されている、というもの。他の一書と一線を画する内容である。<ref name="新釈全訳日本書紀-103-5"/>}}。このうち「第二」・「第三」・「第四」の一書では神名が「ハニヤマヒメ」になっている<ref name="クソマル-91"/>。また「第四」の一書では『古事記』同様、イザナミの大便が神になる<ref name="クソマル-91"/>。 |
|||
===巻一「神代紀・上」第五段の一部抜粋=== |
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====第二の一書==== |
|||
{| style="width:90%;background-color:rgba( 160, 40, 58, 0.08 );margin:0 auto;border: 1px #404040 solid;padding:1.0em;width:90%;" |
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|- |
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| style="border-bottom: 1px #404040 solid;" colspan=2 |([[国史大系]]第1巻)『日本書紀』巻一(神代紀・上)第五段・第二の一書 |
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|- |
|||
|原文<ref>国立国会図書館デジタルコレクション 国史大系第1巻.日本書紀.{{NDLJP|991091}} コマ番号13</ref> |
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|訓み下し文<ref name="岩波日本書紀-38"/> |
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|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 次生火神軻遇突智、 |
|||
| 次に火の神<ruby>[[軻遇突智]]<rt>かぐつち</rt></ruby>を生む。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 時伊弉冉尊爲軻遇突智所焦而終矣。 |
|||
| 時に<ruby>[[伊弉冉]]<rt>いざなみ</rt></ruby><ruby>尊<rt>のみこと</rt></ruby>、<ruby>軻遇突智<rt>かぐつち</rt></ruby>が為に、<ruby>焦<rt>や</rt></ruby>かれて<ruby>終<rt>かむさ</rt></ruby>りましぬ。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 其且終之間{{refnest|group="※"|「かむさる」は、「神としてこの世を去る」ことを意味し、死ぬことを指したもの。「かみさる」に充てる漢字が、第二の一書では「終」、第三の一書では「神退」と「神避」、第五の一書では「神退去」、第六の一書は「化去」となっている。なお『日本書紀』のメインストーリーである「本書」では、イザナミが火の神を生む逸話はなく、イザナミは死なない。<ref name="新釈全訳日本書紀-101-7"/>}} |
|||
| <ruby>其<rt>そ</rt></ruby>の<ruby>終<rt>かむさ</rt></ruby>りまさむとする間に、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 臥生土神<span style="color:red;"><u>埴山姫</u></span>及水神罔象女。 |
|||
| 臥しながら<ruby>土神<rt>つちのかみ</rt></ruby><span style="color:red;"><ruby><u>[[埴山姫]]</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></span>及び<ruby>水神<rt>みづのかみ</rt></ruby><ruby>[[ミヅハノメ|罔象女]]<rt>みつはのめ</rt></ruby>を生む。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 即軻遇突智娶埴山姬、 |
|||
| 即ち軻遇突智、埴山姫を<ruby>娶<rt>ま</rt></ruby>きて、{{refnest|group="※"|イザナギとイザナミによる神生み以降で、男女として交接するのはカグツチとハニヤマヒメが最初となる<ref name="通釈-178"/>。平田篤胤はカグツチとハニヤマヒメが同母兄妹であることを指摘し、こうした近親相姦は人間世界では禁忌であるが、神の世界については「人智を以て料知へき事にはあらず」とした<ref name="通釈-178"/>。}} |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 生稚産靈、 |
|||
| <ruby>[[稚産霊]]<rt>わくむすひ</rt></ruby>を生む。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 此神頭上生蚕與桑、 |
|||
| 此の神の<ruby>頭<rt>かしら</rt></ruby>の上に、蚕と桑と生れり。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 臍中生五穀。 |
|||
| <ruby>臍<rt>ほそ</rt></ruby>の中に<ruby>[[五穀]]<rt>いつくさのたなつもの</rt></ruby><ruby>生<rt>な</rt></ruby>れり。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|罔象、此云。 |
|||
|罔象、此れをば<ruby>美都波<rt>みつは</rt></ruby>と云ふ。 |
|||
|- |
|||
| style="line-height:2.0em;" colspan=2 |(現代語訳) |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|(イザナミは)次に火の神<ruby>[[軻遇突智]]<rt>かぐつち</rt></ruby>を生んだ。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|その時に<ruby>[[伊弉冉]]<rt>いざなみ</rt></ruby>は、<ruby>[[軻遇突智]]<rt>かぐつち</rt></ruby>のために火傷を負い、死んだ。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|その死のうという時に |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|横たわったまま、土の神<span style="color:red;"><ruby><u>[[埴山姫]]</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></span>と水の神<ruby>[[ミヅハノメ|罔象女]]<rt>みつはのめ</rt></ruby>を生んだ。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"|<ruby>[[軻遇突智]]<rt>かぐつち</rt></ruby>は<ruby>[[埴山姫]]<rt>はにやまひめ</rt></ruby>を娶って、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| <ruby>[[稚産霊]]<rt>わくむすひ</rt></ruby>を生んだ。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| この神(稚産霊)の頭上に、[[カイコ]]と[[クワ]](カイコの餌)が生じた。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| ヘソの中には[[五穀]]([[稲]]・[[麦]]・[[粟]]・[[稗]]・[[豆]])が生まれた。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| 罔象はここではミツハという。 |
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|- |
|||
| colspan=2 | <references group="※"/> |
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|- |
|||
|} |
|||
====第三の一書==== |
|||
{| style="width:90%;background-color:rgba( 160, 40, 58, 0.08 );margin:0 auto;border: 1px #404040 solid;padding:1.0em;width:90%;" |
|||
|- |
|||
| style="border-bottom: 1px #404040 solid;" colspan=2 |([[国史大系]]第1巻)『日本書紀』巻一(神代紀・上)第五段・第三の一書 |
|||
|- |
|||
|原文<ref>国立国会図書館デジタルコレクション 国史大系第1巻.日本書紀.{{NDLJP|991091}} コマ番号13</ref> |
|||
|訓み下し文<ref name="岩波日本書紀-38"/> |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 伊弉冉尊生火産靈時、 |
|||
| <ruby>[[伊弉冉]]<rt>いざなみ</rt></ruby><ruby>尊<rt>のみこと</rt></ruby>、<ruby>[[火産霊]]<rt>ほむすひ</rt></ruby>を生む時に、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 為子所焦而神退矣、 |
|||
| 子の為に<ruby>焦<rt>や</rt></ruby>かれて、<ruby>神<rt>かむ</rt></ruby><ruby>退<rt>さ</rt></ruby>りましぬ。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 亦云神避矣。 |
|||
| 亦は<ruby>云<rt>い</rt></ruby>はく、<ruby>神<rt>かむ</rt></ruby><ruby>避<rt>さ</rt></ruby>るといふ。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 其且神退之時、 |
|||
| 其の<ruby>神<rt>かむ</rt></ruby><ruby>退<rt>さ</rt></ruby>りまさむとする時に、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 則生水神罔象女及土神<span style="color:red;"><u>埴山姫</u></span>、 |
|||
| 則ち<ruby><rt></rt></ruby><ruby>水神<rt>みづのかみ</rt></ruby><ruby>[[ミヅハノメ|罔象女]]<rt>みつはのめ</rt></ruby>、及び<ruby>土神<rt>つちのかみ</rt></ruby><span style="color:red;"><ruby><u>[[埴山姫]]</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></span>を生み、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 又生天吉葛。 |
|||
| 又<ruby>天吉葛<rt>あまのよさつら</rt></ruby>を生みたまふ。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 天吉葛、 |
|||
| <ruby>天吉葛<rt>あまのよさつら</rt></ruby>、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 此云阿摩能與佐圖羅、 |
|||
| <ruby>此<rt>これ</rt></ruby>をば<ruby>阿摩能与佐図羅<rt>あまのよさつら</rt></ruby>と云ふ。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 一云與曾豆羅。 |
|||
| <ruby>一<rt>ある</rt></ruby>に<ruby>云<rt>い</rt></ruby>はく、<ruby>与曾豆羅<rt>よそつら</rt></ruby>と云ふ。 |
|||
|- |
|||
| style="line-height:2.0em;" colspan=2 |(現代語訳) |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| <ruby>[[伊弉冉]]<rt>いざなみ</rt></ruby>が、<ruby>[[火産霊]]<rt>ほむすひ</rt></ruby>を生む時に、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| 子のために焼かれ、<ruby>神退<rt>かむさ</rt></ruby>った(死んだ)。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| これを<ruby>神避<rt>かむさ</rt></ruby>ったともいう。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| その<ruby>神退<rt>かむさ</rt></ruby>ろう(死なれよう)とするときに、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| 水の神<ruby>[[ミヅハノメ|罔象女]]<rt>みつはのめ</rt></ruby>と土の神<span style="color:red;"><ruby><u>[[埴山姫]]</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></span>を生み、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| また、<ruby>天吉葛<rt>あまのよさつら</rt></ruby>{{refnest|group="※"|天吉葛(=アマノヨサヅラ=ヨソヅラ)とは、古語で「天」=[[高天原]]に存在する、「よい(=便利な)[[つる植物]]」を意味し、神格化された植物と考えられている<ref>[[小学館]]『[[日本国語大辞典]]』「あまの吉葛」([[JapanKnowledge]]版)</ref><ref name="小学日本書紀-40上8"/>。「天」「吉」いずれも美称辞とし、葛類の祖神とみる説もある<ref name="新釈全訳日本書紀-103-1"/>。具体的には様々な解釈があり、[[クズ]]のように食材としての[[デンプン]]を採るための植物(農耕が定着する以前には重要な植物だった)とする説<ref name="岩波日本書紀-39-14"/><ref name="小学日本書紀-40上8"/><ref name="新釈全訳日本書紀-103-1"/>のほか、祝詞(後述)との関連で(水を汲む道具としての)[[ヒョウタン]]と解釈する説([[忌部正通]]『[[神代巻口訣]]』)もある<ref name="新釈全訳日本書紀-103-1"/>。}}をお生みになった。 |
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|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| ここでは<ruby>天吉葛<rt>あまのよさつら</rt></ruby>は、アマノヨサヅラという。 |
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|- style="line-height:2.0em;" |
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|colspan="2"| あるいはヨソヅラという。 |
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|- |
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| colspan=2 | <references group="※"/> |
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|- |
|||
|} |
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====第四の一書==== |
|||
{| style="width:90%;background-color:rgba( 160, 40, 58, 0.08 );margin:0 auto;border: 1px #404040 solid;padding:1.0em;width:90%;" |
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|- |
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| style="border-bottom: 1px #404040 solid;" colspan=2 |([[国史大系]]第1巻)『日本書紀』巻一(神代紀・上)第五段・第四の一書 |
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|- |
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|原文<ref>国立国会図書館デジタルコレクション 国史大系第1巻.日本書紀.{{NDLJP|991091}} コマ番号13</ref> |
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|訓み下し文<ref name="岩波日本書紀-38"/> |
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|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 伊弉冉尊、 |
|||
| <ruby>[[伊弉冉]]<rt>いざなみ</rt></ruby><ruby>尊<rt>のみこと</rt></ruby>、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 且生火神軻遇突智之時、 |
|||
| <ruby>火神<rt>ひのかみ</rt></ruby><ruby>[[軻遇突智]]<rt>かぐつち</rt></ruby>を生まむとする時に、 |
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|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 悶熱懊悩、因爲吐。 |
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| <ruby>悶熱<rt>あつか</rt></ruby>ひ<ruby>懊悩<rt>なや</rt></ruby>む。<ruby>因<rt>よ</rt></ruby>りて<ruby>吐<rt>たぐり</rt></ruby>す。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 此化爲神、名曰<ruby>金山彦<rt>かなやまびこ</rt></ruby>。 |
|||
| <ruby>此<rt>こ</rt></ruby>れ神と<ruby>化為<rt>な</rt></ruby>る。名を<ruby>[[金山彦]]<rt>かなやまびこ</rt></ruby>と<ruby>曰<rt>まう</rt></ruby>す。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 次小便、化爲神、名曰<ruby>罔象女<rt>みつはのめ</rt></ruby>。 |
|||
| 次に<ruby>小便<rt>ゆまり</rt></ruby>まる{{refnest|group="※"|「-まる」は「排泄する」の意<ref name="口語訳古事記-24"/>。『[[今昔物語集]]』「此の殿に候ふ女童の大路に屎(くそ)まり居て候」<ref name="糞尿学-33"/>。この語は現代語の「[[おまる]]」などに残っている<ref name="口語訳古事記-24"/>。}}。神と<ruby>化為<rt>な</rt></ruby>る。名を<ruby>[[罔象女神|罔象女]]<rt>みつはのめ</rt></ruby>と<ruby>曰<rt>まう</rt></ruby>す。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 次大便、化爲神、名曰<span style="color:red;"><ruby><u>埴山媛</u><rt>はにやまびめ</rt></ruby></span>。 |
|||
| 次に<ruby>大便<rt>くそ</rt></ruby>まる。神と<ruby>化為<rt>な</rt></ruby>る。名を<ruby>[[埴山姫|埴山媛]]<rt>はにやまびめ</rt></ruby>と<ruby>曰<rt>まう</rt></ruby>す。 |
|||
|- |
|||
| style="line-height:2.0em;" colspan=2 |(現代語訳) |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| <ruby>[[伊弉冉]]<rt>いざなみ</rt></ruby>が、 |
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|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| まさに火の神<ruby>[[軻遇突智]]<rt>かぐつち</rt></ruby>を生むという時に、 |
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|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| 熱さに苦しんで、そのためにヘドを吐いた。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| これが神となった。名付けて<ruby>[[金山彦]]<rt>かなやまびこ</rt></ruby>という。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| 次に小便した。これが神となった。名付けて<ruby>[[ミヅハノメ|罔象女]]<rt>みつはのめ</rt></ruby>という。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| 次に大便した。これが神となった。名付けて<span style="color:red;"><ruby><u>[[埴山姫|埴山媛]]</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></span>という。 |
|||
|- |
|||
| colspan=2 | <references group="※"/> |
|||
|- |
|||
|} |
|||
====第六の一書==== |
|||
{| style="width:90%;background-color:rgba( 160, 40, 58, 0.08 );margin:0 auto;border: 1px #404040 solid;padding:1.0em;width:90%;" |
|||
|- |
|||
| style="border-bottom: 1px #404040 solid;" colspan=2 |([[国史大系]]第1巻)『日本書紀』巻一(神代紀・上)第五段・第六の一書 |
|||
|- |
|||
|原文<ref>国立国会図書館デジタルコレクション 国史大系第1巻.日本書紀.{{NDLJP|991091}} コマ番号13</ref> |
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|訓み下し文<ref name="岩波日本書紀-38"/> |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 伊弉諾尊與伊弉冉尊、 |
|||
| <ruby>[[伊弉諾尊]]<rt>いざなぎのみこと</rt></ruby>と<ruby>[[伊弉冉尊]]<rt>いざなみのみこと</rt></ruby>と、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 共生大八洲國。。 |
|||
| 共に<ruby>[[大八洲国]]<rt>おほやしまのくに</rt></ruby>を生みたまふ。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 然後、伊弉諾尊曰、 |
|||
| <ruby>然<rt>しかり</rt></ruby>して後に、<ruby>[[伊弉諾尊]]<rt>いざなぎのみこと</rt></ruby>の<ruby>曰<rt>のたま</rt></ruby>はく、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 「我所生之國、 |
|||
| 「我が生める国、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 唯有朝霧而薫滿之哉。」 |
|||
| <ruby>唯<rt>ただ</rt></ruby>朝霧のみ有りて、<ruby>薫<rt>かお</rt></ruby>り満てるかな」 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 乃吹撥之氣、化爲神、 |
|||
| <ruby>乃<rt>すなは</rt></ruby>ち吹き<ruby>撥<rt>はら</rt></ruby>ふ<ruby>気<rt>いき</rt></ruby>、神と<ruby>化為<rt>な</rt></ruby>る。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 號曰級長戸邊命。 |
|||
| <ruby>号<rt>みな</rt></ruby>を<ruby>[[級長戸辺命]]<rt>しなとべのみこと</rt></ruby>と<ruby>曰<rt>まう</rt></ruby>す。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 亦曰級長津彦命、是風神也。 |
|||
| 亦は<ruby>[[級長津彦命]]<rt>しなつひこのみこと</rt></ruby>と<ruby>曰<rt>まう</rt></ruby>す。<ruby>是<rt>これ</rt></ruby>、<ruby>風神<rt>かぜのかみ</rt></ruby>なり。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 又飢時生兒、號倉稻魂命。 |
|||
| 又、<ruby>飢<rt>やは</rt></ruby>しかりし時に生めりし<ruby>児<rt>みこ</rt></ruby>を、<ruby>[[倉稲魂命]]<rt>うかのみたまのみこと</rt></ruby>と<ruby>号<rt>まう</rt></ruby>す。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 又、生海神等號少童命、 |
|||
| 又、生めりし<ruby>海神<rt>わたつみのかみ</rt></ruby><ruby>等<rt>たち</rt></ruby>を、<ruby>[[少童命]]<rt>わたつみのみこと</rt></ruby>と<ruby>号<rt>まう</rt></ruby>す。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 山神等號山祇、 |
|||
| <ruby>山神<rt>やまのかみ</rt></ruby><ruby>等<rt>たち</rt></ruby>を<ruby>山祇<rt>やまつみ</rt></ruby>と<ruby>号<rt>まう</rt></ruby>す。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 水門神等號速秋津日命、 |
|||
| <ruby>水門<rt>みなと</rt></ruby><ruby>神<rt>のかみ</rt></ruby><ruby>等<rt>たち</rt></ruby>を<ruby>[[速秋津日命]]<rt>はやあきつひのみこと</rt></ruby>と<ruby>号<rt>まう</rt></ruby>し、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 木神等號句句廼馳、 |
|||
| <ruby>木神<rt>きのかみ</rt></ruby><ruby>等<rt>たち</rt></ruby>を<ruby>[[句句廼馳]]<rt>くくのち</rt></ruby>と<ruby>号<rt>まう</rt></ruby>し、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 土神號<span style="color:red;"><u>埴安神</u></span>。 |
|||
| <ruby>土神<rt>つちのかみ</rt></ruby>を<span style="color:red;"><ruby><u>[[埴安神]]</u><rt>はにやすのかみ</rt></ruby></span>と<ruby>号<rt>まう</rt></ruby>す。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 然後、悉生萬物焉。 |
|||
| 然して後に、<ruby>悉<rt>ふつく</rt></ruby>に<ruby>万物<rt>よろづのもの</rt></ruby>を生む。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 至於火神軻遇突智之生也、 |
|||
| 火神<ruby>[[軻遇突智]]<rt>かぐつち</rt></ruby>が<ruby>生<rt>うま</rt></ruby>るるに至りて、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 其母伊弉冉尊、見焦而化去。 |
|||
| 其の母<ruby>[[伊弉冉尊]]<rt>いざなみのみこと</rt></ruby>、<ruby>焦<rt>や</rt></ruby>かれて<ruby>化去<rt>かむさ</rt></ruby>りましぬ。 |
|||
|- |
|||
| style="line-height:2.0em;" colspan=2 |(現代語訳) |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| <ruby>[[伊弉諾尊]]<rt>いざなぎのみこと</rt></ruby>と<ruby>[[伊弉冉尊]]<rt>いざなみのみこと</rt></ruby>とは、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| 協力して<ruby>[[大八洲国]]<rt>おほやしまのくに</rt></ruby>(日本列島)を生み出された。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| そして<ruby>[[伊弉諾尊]]<rt>いざなぎのみこと</rt></ruby>は、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| 「われらの生んだ国は、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| 朝霧のみが立ち込めている。(よい薫りで満ちている。){{refnest|group="注"|[[国学者]][[飯田武郷]]『[[日本書紀通釈]]』によると、古語の「カヲル」(加乎留)は、雲や霧が立ちこめ棚引いているの意という<ref name="新釈全訳日本書紀-103-8"/>。}}」 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| と言って、ただちにその霧を吹き払うと、その息が神となった。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| 名付けて<ruby>[[級長戸辺命]]<rt>しなとべのみこと</rt></ruby>といい、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| または<ruby>[[級長津彦命]]<rt>しなつひこのみこと</rt></ruby>という。これは風の神である。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| また、飢えた時に生んだ子は<ruby>[[倉稲魂命]]<rt>うかのみたまのみこと</rt></ruby>という。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| また、生んだ海の神たちを名付けて<ruby>[[少童命]]<rt>わたつみのみこと</rt></ruby>といい、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| 山の神たちを名付けて<ruby>山祇<rt>やまつみ</rt></ruby>といい、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| <ruby>海峡<rt>みなと</rt></ruby>の神たちを名付けて<ruby>[[速秋津日命]]<rt>はやあきつひのみこと</rt></ruby>といい、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| 木の神たちを名付けて<ruby>[[句句廼馳]]<rt>くくのち</rt></ruby>という。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| 土の神名付けて<span style="color:red;"><ruby><u>[[埴安神]]</u><rt>はにやすのかみ</rt></ruby></span>という。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| その後にことごとく万物を生んだ。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| 火の神<ruby>[[軻遇突智]]<rt>かぐつち</rt></ruby>が生まれるに至って、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| その母<ruby>[[伊弉冉尊]]<rt>いざなみのみこと</rt></ruby>は、身を焼かれてお隠れになった。 |
|||
|- |
|||
| colspan=2 | <references group="※"/> |
|||
|- |
|||
|} |
|||
===日本書紀の記述=== |
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細部の異同はあるものの「第二」「第三」「第四」は、土の神の誕生に先立って、イザナミが火の神を生む時に火傷を負い瀕死となっている。「第六」では順序が違い、火の神の誕生とイザナミの火傷は土の神たちの誕生より後である。『古事記』はイザナミは陰部(ホト)に火傷を負ったと明記するが、『日本書紀』では火傷した部位を具体的に表現していない<ref name="岩波日本書紀-39-6"/>。儒教の影響下にある編纂者が、陰部に直接言及することを回避したものと推定される<ref name="岩波日本書紀-39-6"/>。 |
|||
『古事記』では、怒れるイザナギは火の神カグツチを斬り殺し、その死体から新たな神々が誕生する。『日本書紀』「本書」と「第一」から「第五」の一書ではそのような展開はなく、「第六」から「第八」の一書に描かれるのみである<ref name="新釈全訳日本書紀-105-8"/>。 |
|||
==祝詞== |
|||
『[[延喜式]]』第八巻「祝詞」には様々な[[祝詞]]が収録されており、そのうち鎮火の祝詞にハニヤスが登場する。そこには記紀とは異なるハニヤスの誕生譚が描かれている<ref name="古事類苑-土神"/><ref name="武郷-1-220"/>。イザナミは、悪神である火の神が荒ぶるのを防ぐために、鎮火の神として水の神とハニヤスを生み、さらに鎮火の道具を産む<ref name="日本の神仏-ハニヤスノカミ"/><ref name="神道史-ハニヤマヒメ"/><ref name="神道縮刷-ハニヤマヒメ"/>。 |
|||
国生み・神生みに続いてイザナミは火の神である[[ホムスビ|火結神]](カグツチと同一視される){{refnest|group="注"|「火結神」(ホムスビ)は『日本書紀』第三の一書に登場する「火産霊」(ホムスヒ)と同一。<ref name="祝詞新講-注火結"/>}}を出産、その際に女陰部に火傷をして死んでしまう<ref name="祝詞新講-訳"/>。イザナミは岩戸に籠もり{{refnest|group="注"|古代の貴人の葬送では死者を石棺に葬る。「岩戸に籠もる」はこれを示唆している。<ref name="祝詞新講-注石隠"/>}}、イザナギに「7日7晩の間{{refnest|group="注"|ここでいう「7日7晩」は、文字通りの7日間というよりは、「長い間」の意味とみられる。日本語では「八」がしばしば「多数」を意味するように、記紀では「七」を多数の意味で用いられている。「七日七夜」は仏教の[[初七日]]の忌みにも通じる。<ref name="祝詞新講-注七夜"/>}}、ここを開けないでください」と告げる。しかし7日も姿を見せないことを不審に思ったイザナギは岩戸を開けてしまう<ref name="祝詞新講-訳"/>。そこには女陰を焼かれたイザナミがいた。イザナミは約束に反して岩戸を開けたイザナギに「自分は[[夜見国]]を治めることにするので、イザナギは現世の国を治めなさい」と告げて去ってしまう<ref name="祝詞新講-訳"/>。ところはイザナミは、何かを思い出して、[[黄泉比良坂]]まで引き返してきて次のように告げる<ref name="祝詞新講-訳"/>。 |
|||
===鎮火の祝詞=== |
|||
{| style="width:90%;background-color:rgba( 0, 71, 193, 0.08 );margin:0 auto;border: 1px #404040 solid;padding:1.0em;width:90%;" |
|||
|- |
|||
| style="border-bottom: 1px #404040 solid;" colspan=2 |鎮火の祝詞(一部抜粋) |
|||
|- |
|||
|原文<ref name="古事類苑-土神"/> |
|||
|訓み下し文<ref name="祝詞新講-訓"/> |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 吾名妋命<sub>能</sub>所知食上津國<sub>邇</sub> |
|||
| 「<ruby>吾<rt>あ</rt></ruby>が<ruby>名妋<rt>なせ</rt></ruby><ruby>命<rt>みこと</rt></ruby>の知ろし<ruby>食<rt>め</rt></ruby>す<ruby>上津国<rt>うはつくに</rt></ruby>{{refnest|group="※"|イザナギが治める現世国は「上津国」、イザナミがゆく夜見国(黄泉国)は「下津国」。<ref name="祝詞新講-注上津"/>}}に、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 心惡子<sub>乎</sub>生置<sub>氐</sub>來<sub>奴止</sub>宣<sub>氐</sub>、 |
|||
| style="padding-left:1.0em;"| 心<ruby>悪<rt>あ</rt></ruby>しき子を生み置きて来ぬ」と<ruby>宣<rt>の</rt></ruby>りたまひて、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 返坐<sub>氐</sub>更生子、 |
|||
| 返り坐して更に<ruby>子<rt>みこ</rt></ruby>を生み給ふ、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 水神、{{refnest|group="※"|この「水の神」は『古事記』のミズハノメ、『日本書紀』のミツハノメである<ref name="祝詞新講-371ヒサゴ"/>。}} |
|||
| 水<sub>ノ</sub>神、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 瓠、{{refnest|group="※"|「瓠」(ヒサゴ)は[[ひょうたん]]のこと。『日本書紀』第三の一書には、イザナミは水の神ミツハノメ、土の神ハニヤマヒメを生んだあと、「天吉葛」(あまのよさつら)を生んだとある。『日本書紀』注釈書の『神代巻口訣』には「天吉葛者瓠也」とあり、また[[飯田武郷]]も天吉葛は瓠としている。ここではひょうたんは水を汲むための容器として登場する。水を汲むための「柄杓」(ひしゃく)と「瓠」(ひさご)とは源を一とする語とみられる。<ref name="祝詞新講-371ヒサゴ"/>}} |
|||
| <ruby>瓠<rt>ひさご</rt></ruby>、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 川菜、{{refnest|group="※"|『和名類聚抄』に「水苔加波奈一云河苔」とあり、「川菜」は「水苔」のこと。乾燥させると水をよく吸い、植木を移し替えるときにはその根をミズゴケに水を吸わせたもので覆って保護する。古建築では、鎮火のまじないとして、木に苔の彫刻をする。<ref name="祝詞新講-371ヒサゴ"/>}} |
|||
| <ruby>川菜<rt>かはな</rt></ruby>、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| <span style="color:red;"><ruby><u>埴山姫</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></span>、 |
|||
| <span style="color:red;"><ruby><u>埴山姫</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></span>、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 四種物<sub>乎</sub>生給<sub>氐</sub>、 |
|||
| 四<ruby>種<rt>くさ</rt></ruby>の物を生み給ひて、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 此<sub>能</sub>心惡子<sub>乃</sub>心荒<sub>比曾波</sub>、{{refnest|group="※"|「(荒)比曾波」に「(荒れ)びなば」と訓をふるのは無理がある、との指摘が古くからある。伝本の中には「曾」が「南」の草書のように見えるものもあり、「(荒)比南波」であれば「(荒れ)びなば」と読める。国学者[[井上頼圀]](18369-1914)は、「曾」は「奈」か「勢」の誤記だと推定した。また、「曾」の古義は「勢」であったとする講もあり、「(荒)比勢波」であれば「(荒れ)びせば」と読める。<ref name="祝詞新講-注心荒"/>}} |
|||
| 「此の心悪しき子の心<ruby>荒<rt>あら</rt></ruby>びなば、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 水神、瓠{{refnest|group="※"|ここは「乎持氐」(を持ちて)が省略されている。<ref name="祝詞新講-372ヒサゴ"/>}}、 <span style="color:red;"><u>埴山姫</u></span>、川菜<sub>乎</sub>持<sub>氐</sub>、 |
|||
| style="padding-left:1.0em;"| 水<sub>ノ</sub>神、<ruby>瓠<rt>ひさご</rt></ruby>、<ruby>川菜<rt>かはな</rt></ruby>、 <span style="color:red;"><ruby><u>埴山姫</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></span>を持ちて、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 鎭奉<sub>禮止</sub>、事教悟給<sub>支</sub>、 |
|||
| style="padding-left:1.0em;"| 鎮め<ruby>奉<rt>まつ</rt></ruby>れ」と事<ruby>教<rt>をし</rt></ruby>へ<ruby>悟<rt>さと</rt></ruby>し給ひき。 |
|||
|- |
|||
| style="line-height:2.0em;" colspan=2 |(現代語訳) |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| 「私(イザナミ)の愛しい夫(イザナギ)が司る地上の国に、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2" style="padding-left:1.0em;"| 悪い子([[ホムスビ]])を生み置いて気がかりだ」と仰せられて |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| そこ([[黄泉比良坂]]<ref name="祝詞新講-注返坐"/>)から(現世に<ref name="祝詞新講-注返坐"/>)引き返して(生き返って<ref name="日本古代神祇事典-ハニヤマヒメ"/>)更に子をお生みになった。{{refnest|group="※"|古代陵墓の石室・石棺が「黄泉国」であるならば、現世にある陵墓の入口から石室までの通路(坂になっている)部分は黄泉比良坂に相当すると考えられる<ref name="祝詞新講-注枚坂"/>。}} |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| それは水の神([[ミツハノメ]])と、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| 水を汲むためのヒサゴ([[ひょうたん]])、{{refnest|group="※"|飯田武郷は、ヒョウタンが水に浮き、水に漬けても腐らず、水を汲むのに適しているのはイザナミの神力によるものだと考えられた、と指摘した<ref name="通釈-181"/>。}} |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| それから<span style="color:red;"><ruby><u>埴山姫</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></span>と、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| 火消しに用いる川菜([[ミズゴケ]])であった。 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| (イザナミは)この四種のものをお生みになって、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| 「この心の悪い子が暴れ(て現世に害を及ぼす<ref name="祝詞新講-注心悪"/>)ならば、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2" style="padding-left:1.0em;"|水の神はひょうたんで水をかけ、 <span style="color:red;"><ruby><u>埴山姫</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></span>は川菜を持って |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2" style="padding-left:1.0em;"|これを鎮めよ」と教え悟し置かれたことである。 |
|||
|- |
|||
| colspan=2 | <references group="※"/> |
|||
|- |
|||
|} |
|||
ここでは、火の神[[ホムスビ]](=カグツチ)は、荒ぶり害をなす恐るべき存在として描かれている<ref name="祝詞新講-377"/>。イザナミは、この恐怖の火の神を鎮めて衆生を守るためにわざわざ黄泉国から舞い戻り{{refnest|group="注"|記紀のイザナミは、衆生を守るどころか、「毎日1000人を殺す」と宣言して災禍の源と化す。}}、鎮火の神としてミツハノメとハニヤスの2女神を生み、さらに鎮火の道具としてヒョウタンとミズゴケの2物を生んだ<ref name="祝詞新講-377"/><ref name="日本古代神祇事典-ハニヤマヒメ"/><ref name="武郷-1-220"/><ref name="平田篤胤-鎮火"/>。 |
|||
===祝詞の解説=== |
|||
祝詞のハニヤスには水を吸わせたミズゴケ(川菜)を用いて火を消し止める役割が与えられているが、土の神であるハニヤスに鎮火の霊験があるのは、古代には消火のために土や泥が用いられたことを示唆している<ref name="祝詞新講-372ヒサゴ"/><ref name="神道史-ハニヤマヒメ"/>。川底の泥土やそこに生える川藻を消火に用いたとも考えることができる<ref name="祝詞新講-372ヒサゴ"/>。さらに、建造物の壁に泥土を塗り込めると耐火性が得られる<ref name="祝詞新講-372ヒサゴ"/>。 |
|||
[[平田篤胤]]は、ひょうたんで水を汲んでかけたり水草(川菜)を用いるのは、火傷の治療や痛み止めの術を示していると考えた<ref name="通釈-181"/>。飯田武郷は、火傷の対処方法として水草の汁をもみだして火傷痕に塗るのを自身も見聞したとして、平田篤胤の説に理解を示した<ref name="通釈-181"/>。 |
|||
神話学者[[松村武雄]](1883-1969)は、記紀類と[[祝詞]]では文書の性格が異なるとした<ref name="武郷-1-1日目"/>。記紀や[[風土記]]・『[[古語拾遺]]』の主目的は神々について「説明」「叙述」しようとするのにとどまるのに対し、祝詞では神々を動かして人間が求める結果を得ることを主目的としている<ref name="武郷-1-1日目"/>{{refnest|group="注"|「祝詞は、人の子に觀照させるための文學ではなくて、神の靈能をして人の子の欲する作用動向を採らしめるための呪詞である。<ref name="武郷-1-222"/>」}}。それゆえに、記紀では単にイザナミがハニヤスらの諸神を生んだという事実しか示されないが、祝詞ではハニヤスを生んだ意図・目的が語られる<ref name="武郷-1-1日目"/>。記紀と祝詞の記述の「太(はなは)だ微妙<ref name="武郷-1-1日目"/>」な差異はこれによって生じるのである<ref name="武郷-1-1日目"/>。松村武雄は、ハニヤスについての祝詞の記述からは、「神話的叙述部の本源的な意図・目的<ref name="武郷-1-220"/>」の「ほのかな残影<ref name="武郷-1-220"/>」がうかがい知れるとした<ref name="武郷-1-1日目"/>。そのうえで、ハニヤスの誕生に関わる『古事記』『日本書紀』「祝詞」の記述には呼応性があるとした<ref name="武郷-1-228"/>。記紀や風土では過去の事象(神々の行動)を解釈しようとする意図が働いているのに対して、祝詞では事象を現在の問題として信仰心情がそのまま表出されている<ref name="武郷-1-216"/>。 |
|||
==神名解説== |
|||
[[国学者]][[本居宣長]](1730-1801)はハニヤスの神名について「義は埴黏(ハニネヤス)なり<ref name="古事記伝-五-274"/>」とした<ref name="クソマル-91"/>。すなわち「ハニ・ヤス」は、語源的には「粘土を・こねたり練ったりして粘り気をだす」を意味する「ハニ・ネヤス」(埴黏す)の詰まったものと考えられる<ref name="古事記伝-五-274"/><ref name="日本神名辞典-ハニヤスビコノカミ"/><ref name="神道史-ハニヤスヒメ"/><ref name="神道縮刷-ハニヤスノカミ"/><ref name="読み解き-ハニヤスヒコ"/>。 |
|||
===「ハニ」と「黄土」「埴」=== |
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[[File:LoessVicksburg.jpg|180px|thumb|黄色の顔料にもなった[[黄土]]]] |
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「ハニ」とは古語で黄色がかった粘土のことを指し、漢字では「黄土」「埴」などがあてられてきた。平安時代の9世紀末に編纂された、最古の漢和辞典とされる『[[新撰字鏡]]』には、「埴黏土也波爾」とある<ref name="神道史-ハニヤスヒメ"/><ref name="通釈-175"/>。10世紀成立の『[[和名類聚抄]]』では「土黄にして細密なるを埴と曰ふ、和名、{{読み仮名|波爾|はに}}」とある<ref name="平田篤胤-丹土"/><ref name="通釈-175"/><ref name="神道史-ハニヤスヒメ"/><ref name="アジア女神-ハニヤスビメ"/><ref name="岩波日本書紀-39-7"/>{{refnest|group="注"|『[[和名類聚抄]]』(二十巻本)地部・塵土類、「埴 釈名云土黄而細密曰埴常職反[和名波爾]」。この部分は『和名類聚抄』が『釈名』を孫引きしている。<ref name="新釈全訳日本書紀-101-9"/>}}。 |
|||
『[[万葉集]]』には「ハニ」または「ハニフ」という音に「黄土」または「埴生」の字をあてた和歌がいくつか所載されている<ref name="アジア女神-ハニヤスビメ"/><ref name="祝詞新講-371ヒサゴ"/><ref name="神道史-ハニヤスヒメ"/><ref name="通釈-175"/>。この赤黄色みを帯びた粘土「ハニ」は、瓦や土器・陶器の材料になったほか、黄色の染料としても用いられた<ref name="アジア女神-ハニヤスビメ"/><ref name="祝詞新講-371ヒサゴ"/><ref name="岩波日本書紀-39-7"/>。 |
|||
:{| style="background-color:#fffff2;padding:1.0em;border:1px solid #aa9d00;" |
|||
|- |
|||
|(例)『万葉集』巻六、932番歌(詠み手:[[車持千年]]) |
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|- |
|||
|白波之(しらなみの) 千重来縁流(千重に来よる) 住吉能(すみのえの) 岸乃黄土粉(岸のハニフに) 二寶比天由香名(にほひて行かな) |
|||
|- |
|||
| 大意:白波が何重にもおしよせる住之江(大阪市[[住吉区]])の岸の黄色い土で(衣を)染めて行きたい。 |
|||
|- |
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|} |
|||
:{| style="background-color:#fffff2;padding:1.0em;border:1px solid #aa9d00;" |
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|- |
|||
|(例)『万葉集』巻七、1146番歌(詠み人知らず) |
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|- |
|||
|目頬敷(めづらしき) 人乎吾家尓(ひとをわぎへに) 住吉之(すみのえの) 岸乃黄土(きしのハニフを) 将見因毛欲得(みむよしもがも) |
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|- |
|||
| 大意:愛しい女と我が家で暮らし、あの有名な住之江の岸の黄色い土を眺めたい。 |
|||
|- |
|||
|} |
|||
これらの和歌は、大阪の[[住吉区]](古名:住之江)で採れた、赤黄色みを帯びた粘土のことを詠んだものである。同地所在の[[住吉大社]]には、祭祀に用いる神器をつくるために[[畝傍山]]([[奈良県]][[橿原市]])の山頂から埴土を採ってくるという祭礼行事があり、これを「{{読み仮名|埴使い|はにつかい}}」という<ref name="神道史-ハニツカイ"/>。 |
|||
「ハニ」は単にねばつち、あるいは土一般を指すとも考えられる<ref name="岩波日本書紀-39-7"/>。ほかに、「ハニ」を「{{読み仮名|生土|はに}}」とみる説もある<ref name="通釈-175"/><ref name="祝詞新講-371ヒサゴ"/>。 |
|||
===「ハニ」と「赤土」「埴」=== |
|||
[[File:Periodo kofun, guardiano di tomba haniwa, 250-538 dc ca..JPG|100px|thumb|「ハニ」と同音をもつ[[埴輪]]]] |
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『古事記』や『日本書紀』「第四の一書」は、大便がハニヤスに化成したとしており、大便の外見からの連想で赤土の粘土とみることもある<ref name="読み解き-ハニヤスヒコ"/><ref name="わかる-176"/><ref name="ビジュアル-064"/>。 |
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本居宣長や[[平田篤胤]](1776-1843)は、漢籍『[[書経]]』「禹貢」には「厥土赤埴墳」とある<ref name="古事記伝-五-274"/><ref name="平田篤胤-丹土"/>ことを指摘した。平田篤胤は、『古事記』の注釈書『[[古史伝]]』のなかで、ハニヤスと赤土の関連性を指摘した<ref name="平田篤胤-丹土"/>。平田篤胤によれば、『和名類聚抄』にある「土黄にして細密なる埴」(ハニ)から、「ハ」音(「波」)を省略した「ニ」(邇)という語がうまれ、「ニ」は土の色に関わらず「細密な土」を意味するようになった<ref name="平田篤胤-丹土"/>。古典籍には「赤土」(アカニ)、「青土」などの表現も数多くみられるが、上代には赤色が貴ばれたので、やがて「ニ」(邇)は主に赤土を指すようになったのだという<ref name="平田篤胤-丹土"/>。 |
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「ニ」は「丹」にも通じるので、「ハニフ」(埴生)から「ハ」音が脱落して「ニフ」(丹生)と言うようにもなった<ref name="平田篤胤-丹土"/>。したがって、ハニヤスヒメとニフツヒメ(丹生都比売、[[丹生都比売神社]]の祭神)には関連があるのだという<ref name="平田篤胤-丹土"/>。 |
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ハニを赤土粘土と見る場合には、「ハニ」は陶芸には向くが耕作には不適の土壌だといえる<ref name="うん古典-堲"/>{{refnest|group="注"|[[兵庫県]][[神河町]]には「堲(はに)岡」という古名が伝わる。この古地名の由来について、『[[播磨国風土記]]』に[[出雲神話]]の主要人物神である[[オオナムチ]]と[[スクナヒコナ]]の挿話が収められている。ある時、オオナムチとスクナヒコナは、遠くに行くのに「クソをしない」「ハニ(粘土)を担ぐ」のどちらが長く我慢できるか、賭けをする。オオナムチは「クソをしない」を選び、体の小さいスクナヒコナが「ハニを担ぐ」を選ぶ。数日後に、オオナムチは我慢ができなくなってクソをする。しかしそこに生えていた小笹がクソを弾きあげて、着物にクソが付着してしまったので、その地を「ハジカ」村と呼ぶようになった。スクナヒコナは笑いながら、担いでいたハニをそこにあった岡に投げつける。そのためその地を「堲(はに)岡」と呼ぶようになったという。<ref name="うん古典-21"/><ref name="うん古典-我慢"/><ref name="角川地名-埴岡郷"/><ref name="クソマル-77"/> 古代文学者の[[三浦佑之]](1946-)は、『播磨国風土記』では2神が競争して国を奪い取ろうとする挿話に富むと指摘した。オオナムチとスクナヒコナの我慢比べ競争もその一形態である。ここでは、大便をした方が競争に敗れており、日本古代神話ではクソをする行為は国奪いに失敗することを象徴しているという。別掲のタケハニヤスヒコの反乱でも、反乱軍は敗れてクソを漏らす。<ref name="クソマル-77"/>}}。 |
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===「ヤス」と「ねやす」「黏」=== |
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「ネヤス」については、『[[新撰字鏡]]』には「埏」(ねやす)という漢字の解説として「埏謂<sub>レ</sub>作<sub>二</sub>泥物<sub>一</sub>也禰也須」(「埏」は泥で物を作ることを言い、「禰也須」(ネヤス」とも書く)と記す<ref name="古事記伝-五-274"/><ref name="通釈-175"/>。本居宣長は、中国古典の『[[説文解字]]』に「埴<sub>ハ</sub>黏土也」とあることを示し、『[[書経]]』や『[[史記]]』にもこうした表現があることを指摘する<ref name="古事記伝-五-274"/>。[[本居宣長]]によれば、「ネヤス」は「令黏」(ねやしむる)の意味であり、この用法は「令肥」(こやしむる)の「コヤス」と同格である<ref name="古事記伝-五-274"/>。 |
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「ヤス」(安、夜須)を美称とみる説もある<ref name="神道史-ハニヤスヒメ"/><ref name="読み解き-ハニヤスヒコ"/>。 |
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===「ハニヤス」と「ハニヤマ」=== |
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[[File:Fujiwara-kyo CosmosField01.jpg|thumb|right|天香久山]] |
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『日本書紀』に登場するハニヤスの神名は、第二・第三・第四の一書では「ハニヤマヒメ」、第六の一書では「ハニヤスノカミ」となっている。これについては、原初的な神名「ハニヤマ」が、のちに「ハニヤス」に改められたのかもしれない、と考える説がある<ref name="通釈-175"/><ref name="新釈全訳日本書紀-105-6"/>。 |
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本居宣長は、「ハニヤマ」という神名は大便の様相が「山」に似ていることから生じたのではないかと論じた<ref name="クソマル-91"/>。 |
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[[国学者]][[飯田武郷]](1828-1900)は、著書『[[日本書紀通釈]]』の中で、「ハニヤマ」が原初的な神名で、後に「ハニヤス」に転じた可能性を指摘した<ref name="新釈全訳日本書紀-105-6"/>。飯田武郷は、「ハニ」が粘土を指すという通説を認めつつ、物の生える土を「生土」(ハニ)と呼んだ可能性を指摘、そして往古の時代に多く物が生えていたのは山であるから、「ハニヤマ」(埴山)という語ができたと論じた<ref name="通釈-175"/>。 |
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『日本書紀』巻三「神武天皇紀」には、[[天香久山]]山上の地名として「埴安」が登場する。[[神武東征]]の終盤、一行は難敵の前に苦戦する。9月5日の夜、神武天皇の夢に天神が現れ、「[[天香具山]]の「ハニ」(粘土)で祭具を拵えて神事を行えば勝つ」とのお告げが下る<ref name="通釈-175"/><ref name="新釈全訳日本書紀-105-6"/>。これを実行し、戦いに勝利して天下に「安定」をもたらしたのち、神武天皇は粘土を採取した天香久山の山上に「埴安」(ハニヤス)という地名を与えた<ref name="新釈全訳日本書紀-105-6"/><ref name="日本の神仏-ハニヤスノカミ"/>。本居宣長は、この「埴安」の「安」は「安定」からくるものではなく、「ねやす」に由来するとした<ref name="古事記伝-五-274"/>。 |
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{| style="width:90%;background-color:rgba( 160, 40, 58, 0.08 );margin:0 auto;border: 1px #404040 solid;padding:1.0em;width:90%;" |
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|- |
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| style="border-bottom: 1px #404040 solid;" colspan=2 |([[国史大系]]第1巻)『日本書紀』巻三(神武天皇即位前紀)戊午年九月 |
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|- |
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|原文<ref>国立国会図書館デジタルコレクション 国史大系第3巻.日本書紀.{{NDLJP|991091}} コマ番号13</ref> |
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|訓み下し文<ref name="岩波日本書紀-218"/> |
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|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
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| 夢有天神訓之曰 |
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| <ruby>夢<rt>みゆめ</rt></ruby>に<ruby>天神<rt>あまつかみ</rt></ruby><ruby>有<rt>ま</rt></ruby>して<ruby>訓<rt>をし</rt></ruby>へまつりて<ruby>曰<rt>のたま</rt></ruby>はく、 |
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|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
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| 「宜取天香山社中土香山、 |
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| 「<ruby>[[天香久山|天香山]]<rt>あまのかぐやま</rt></ruby>の<ruby>社<rt>やしろ</rt></ruby>の中の<ruby>土<rt>はに</rt></ruby>を取りて、 |
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|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
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| 以造天平瓮八十枚幷造厳瓮{{refnest|group="※"|「天平瓮」はものを盛る皿状の器、「厳瓮」は液体を容れる瓶・碗状の器。<ref name="ルーツ-ハニヤス"/>}} |
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| <ruby>天平瓮<rt>あまのひらか</rt></ruby><ruby>八十枚<rt>やそち</rt></ruby>を造り、<ruby>併<rt>あは</rt></ruby>せて<ruby>厳瓮<rt>いつへ</rt></ruby>を造りて、 |
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|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
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| 而敬祭天神地祇、 |
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| <ruby>天神<rt>あまつやしろ</rt></ruby><ruby>地祇<rt>くにつやしろ</rt></ruby>を<ruby>敬<rt>ゐやま</rt></ruby>ひ祭れ。 |
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|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
| 亦為厳呪詛。 |
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| また<ruby>厳呪詛<rt>いつのかしり</rt></ruby>をせよ。 |
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|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
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| 如此、則虜自平伏。」 |
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| <ruby>如此<rt>かくのごとく</rt></ruby>せば、<ruby>虜<rt>あた</rt></ruby><ruby>自<rt>おの</rt></ruby>づからに<ruby>平<rt>む</rt></ruby>き<ruby>伏<rt>したが</rt></ruby>ひなむ」 |
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|- |
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| style="line-height:2.0em;" colspan=2 |(現代語訳) |
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|- style="line-height:2.0em;" |
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|colspan="2"| 夢に天神があらわれて教えて言うには |
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|- style="line-height:2.0em;" |
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|colspan="2"| 「[[天香具山]]の神社の境内の<ruby>土<rt>はに</rt></ruby>をとって、 |
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|- style="line-height:2.0em;" |
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|colspan="2"| それで<ruby>天平瓮<rt>あまのひらか</rt></ruby>(皿上の神器<ref name="クソマル-94"/>)80枚と<ruby>厳瓮<rt>いつへ</rt></ruby>(神酒を容れる瓶状の神器<ref name="クソマル-94"/>)を造り、 |
|||
|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| 天神地祇を敬い祭れ。 |
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|- style="line-height:2.0em;" |
|||
|colspan="2"| また、厳重に潔斎をして呪詛祈祷をせよ。 |
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|- style="line-height:2.0em;" |
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|colspan="2"| そうすれば、敵はおのずから平定されるだろう。」 |
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|- |
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| colspan=2 | <references group="※"/> |
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|- |
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|} |
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そこで神武天皇は、[[椎根津彦]]と[[弟猾]]を天香山に派遣し、山頂の土を採取させた。その埴土(はにつち)で八十平瓮(やそひらか)、天手抉(あまのたくじり)80枚、厳瓮(いつへ)を造らせ、[[丹生川上神社|丹生川の川上]]で天神地祇を祭祀した。その後、敵を倒して天下を平定した神武天皇は、遠征中に訪れたあちこちに合戦にちなんだ地名をつける。 |
|||
{| style="width:90%;background-color:rgba( 160, 40, 58, 0.08 );margin:0 auto;border: 1px #404040 solid;padding:1.0em;width:90%;" |
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|- |
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| style="border-bottom: 1px #404040 solid;" colspan=2 |([[国史大系]]第1巻)『日本書紀』巻三(神武天皇即位前紀)己未年二月 |
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|- |
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|原文<ref>国立国会図書館デジタルコレクション 国史大系第3巻.日本書紀.{{NDLJP|991091}} コマ番号13</ref> |
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|訓み下し文<ref name="岩波日本書紀-218"/> |
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|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|天皇、以前年秋九月、 |
|||
|天皇、<ruby>前<rt>さきの</rt></ruby>年の秋<ruby>九月<rt>ながつき</rt></ruby>を以て、 |
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|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|潜取天香山之埴土、 |
|||
|<ruby>潜<rt>ひそか</rt></ruby>に[[天香具山|天香山]]の<ruby>埴土<rt>はにつち</rt></ruby>を取りて、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|以造八十平瓮、 |
|||
|<ruby>八十<rt>やそ</rt></ruby>の平瓮を造りて、 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|躬自齋戒祭諸神、 |
|||
|<ruby>躬自<rt>みづか</rt></ruby>ら<ruby>齋戒<rt>ものいみ</rt></ruby>して<ruby>諸神<rt>もろもろのかみたち</rt></ruby>を祭りたまふ。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|遂得安定區宇、 |
|||
|<ruby>遂<rt>つひ</rt></ruby>に<ruby>区宇<rt>あめのした</rt></ruby>を<ruby>安定<rt>しづ</rt></ruby>むること得たまふ。 |
|||
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;" |
|||
|故號取土之處、曰<span style="color:red;"><u>埴安</u></span>。 |
|||
|<ruby>故<rt>かれ</rt></ruby>、<ruby>土<rt>はにつち</rt></ruby>取りし<ruby>処<rt>ところ</rt></ruby>を<ruby>号<rt>なづ</rt></ruby>けて、<span style="color:red;"><ruby><u>埴安</u><rt>はにやす</rt></ruby></span>と<ruby>曰<rt>い</rt></ruby>ふ。 |
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|- |
|||
| style="line-height:2.0em;" colspan=2 |(現代語訳) |
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|- style="line-height:2.0em;" |
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|colspan="2"| 天皇は前年の秋の九月に |
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|- |
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|colspan="2"| 隠密に[[天香具山|天香山]]の埴土を採り、 |
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|- |
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|colspan="2"| それで八十平瓮をつくり、 |
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|- |
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|colspan="2"| 自ら潔斎して神々を祀った。 |
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|- |
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|colspan="2"| そして今、遂に天下を平定した。 |
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|- |
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|colspan="2"| そこで、その土を採った場所を<span style="color:red;"><ruby><u>埴安</u><rt>はにやす</rt></ruby></span>というのである。 |
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|- |
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| colspan=2 | <references group="※"/> |
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|- |
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|} |
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飯田武郷は『日本書紀』第四の一書をひき、金属鉱石の神カナヤマヒコ(金山)は天香山(香山)の異称で、土の神ハニヤマ(埴山)・ハニヤス(埴安)もまた天香山の地名であると考えれば、カナヤマもハニヤスも天香山に由緒がある神なのかもしれない、とした<ref name="通釈-184"/>。([[埴安池]]も参照) |
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===「ヒメ」と「ヒコ」=== |
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『[[古事記]]』にはハニヤスヒコとハニヤスヒメが男女一対の神として登場する。ところが本文に付された注釈には、一連の神生みで誕生した神の数を「あわせて八神」としているのに、名前があげられたものを単純に数えると10になり、本文との齟齬がある<ref name="語ろう-115"/>。この矛盾について、[[本居宣長]]は、男女一対になっているカナヤマヒコとカナヤマヒメ、ハニヤスヒコとハニヤスヒメの2組は、男女一組で「一神」と数えることで、「あわせて八神」と整合すると説いた<ref name="語ろう-115"/><ref name="平田篤胤-一神"/>{{refnest|group="注"|ただし、記紀では男女ペアになる「○○ヒコ」と「○○ヒメ」を「2神」や「2柱」と数えることもあり、一貫性がない<ref name="語ろう-115"/>。平田篤胤は、本居宣長の説を紹介しつつ、男女ペアの場合でなくとも数え方が異なる例が多数みられることを示し、[[分霊]](ワケミタマ)かどうかで数え方が変わるのではないかとの仮説を示している<ref name="平田篤胤-一神"/>。}}。 |
|||
一方、『[[日本書紀]]』の第二・第三・第四の一書に登場するのは、男女対ではなく、女神ハニヤマヒメだけである。第六の一書は「ハニヤマノカミ」であり性の言及を欠くものの、いずれにせよ土の神としては一神だけである<ref name="通釈-175"/>。 |
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[[飯田武郷]]は、『日本書紀』には土の神ハニヤスヒコに相当する男神が登場しないことや、第二の一書でハニヤマヒメがカグツチと結婚していること、『[[延喜式神名帳]]』にはハニヤスヒメを祭祀する神社はあるのにハニヤスヒコを祀る神社が一社も無いことなどを指摘し、元来は女神の「ハニヤスヒメ」ただ一神だったのだろうと推定した<ref name="通釈-175"/><ref name="通釈-178"/>。原初の神名が「ハニヤス」だったか「ハニヤマ」であったかは定かではないが、いずれにせよ原初の一神を、ヒコ・ヒメの男女2神に分けたというのが通説になっている<ref name="神道縮刷-ハニヤスビコノカミ"/>。 |
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飯田武郷は、考証を進める必要があると前置きしつつ、『古事記』編者が誤って[[孝元天皇]]の皇子[[武埴安彦命|建波邇夜須毘古命]](タケハニヤスヒコノミコト)をハニヤスヒメの対の神として書き加えてしまったのかもしれない、との仮説を示した<ref name="通釈-175"/>。([[#同名・関連名の人物]]参照) |
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==神話解題== |
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===火による大地母神の死と技術の誕生=== |
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火は、その効用によって人類の発展に重大な影響を及ぼしており、世界中で古くから神聖なものとして崇拝の対象となってきた<ref name="祝詞新講-374"/>。世界各地の創世神話では、火生みに関する逸話を伝えるものも多い<ref name="祝詞新講-374"/><ref name="アジア女神-ハニヤスビメ"/><ref name="アジア女神-54"/>。 |
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記紀に示される日本神話の中でイザナミは、[[国生み]]に続いて、海、風、山、川、草、木などの自然物を産んだのち、火を産む<ref name="祝詞新講-374"/><ref name="アジア女神-54"/><ref name="キーン文学史1-68"/>。この火の神[[カグツチ]]の出産によって重篤な火傷を負ったイザナミの排泄物から、鉱山・金属の神[[カナヤマヒコ]]、土の神ハニヤス、水の神[[ミツハノメ]]、農作物の神[[ワクムスビ]]らが化生する<ref name="語ろう-115"/><ref name="祝詞新講-374"/><ref name="アジア女神-ハニヤスビメ"/><ref name="アジア女神-54"/>。 |
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金属の神と粘土の神の化生譚は、鉱石から金属や金器が錬成されたり、粘土を焼成することで土器や陶器ができあがるという、火の効用を神格化したものと考えられている<ref name="祝詞新講-374"/><ref name="アジア女神-54"/>。火傷によってイザナミが死に、これに怒ったイザナギがカグツチを剣で斬り殺すのは、火を用いた冶金・鍛工によって金属が刀剣になることを示しているとも考えられる<ref name="祝詞新講-374"/>。 |
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また、土と水から農作物が発生するためには、光や熱の作用が欠かせない<ref name="祝詞新講-374"/>。『万葉集』にも春に野原を焼く情景を詠んだ和歌が登場するように、古くは[[焼畑農業]]が営まれており、火は農作物の発生に関わっていた<ref name="祝詞新講-374"/>。光は「日」(ヒ)、熱は「火」(ヒ)で表されるように、「ヒ」は光と熱の両方を示す語であり、土の神・水の神から穀物が生まれるのも火の神の効用である<ref name="祝詞新講-374"/>。 |
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しかしイザナミは火傷によって苦しんで死んでしまう。大地母神が死ぬ時に火が関わり、大地母神の死によって金属鉱石、粘土、水、作物が発生する<ref name="アジア女神-ハニヤスビメ"/>。そして火の作用によって金属器、土器・陶器、焼畑農耕といった、人類の文化が誕生する<ref name="アジア女神-ハニヤスビメ"/>。こうした伝承は、人類の文化や技術は、母なる大地の死と表裏一体であることを表している<ref name="アジア女神-54"/>。 |
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古代には、粘土を焼いて作った土器は祭祀に用いられた<ref name="神道史-ハニヤスヒメ"/>{{refnest|group="注"|『日本書紀』神武天皇紀にも示されるように、粘土(ハニ)からつくられる土器(天平瓮、厳瓮)は戦勝祈願などの祭祀にも用いられた。神武天皇紀では「自此始有厳瓮之置也」とあり、神武天皇が天香山の粘土で戦勝祈願を行って以来、神事に厳瓮を用いるようになったと説く(『日本書紀』神武天皇紀戊午年九月)<ref name="新釈全訳日本書紀-316"/>。『日本書紀』ではほかにも[[崇神天皇]]の10年9月に、逆賊の鎮圧に出発する際、「忌瓮」を用いて神事を執行する<ref name="新釈全訳日本書紀-316"/>。このとき反乱を率いているのは[[武埴安彦命]](タケハニヤスヒコ)である<ref name="新釈全訳日本書紀-393"/>。}}。祭祀は五穀豊穣を祈願して営まれるから、粘土は火の作用によって農作物に帰趨するとも言える<ref name="神道史-ハニヤスヒメ"/>。 |
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===何故糞尿が神となるのか=== |
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神話学者[[松村武雄]](1883-1969)は、イザナミの排泄物から土の神・水の神・穀物神という重要物を司る神が生じたことについて、「苟(いやしく)も『神』として崇拝される霊格が、ものもあらうに糞尿から生(な)り出でましたと考へられたことは、一見頗(すこぶ)る奇怪<ref name="武郷-2-370"/>」とし、知る限り世界に例がないとした<ref name="武郷-2-370"/>。[[日本文学]]研究者の[[ドナルド・キーン]](1922-2019)は、『古事記』には西洋人からみると困惑するような内容が多々あるとしつつ{{refnest|group="注"|たとえば、神の数が多いこと、名前が出るだけの神が多いこと、イザナギ・イザナミが子孫の神々ほど崇拝の対象になっていないこと、この2神の交接により生まれた神よりもイザナギが黄泉の穢れを落とした時に生まれた神のほうが高貴であること、ツクヨミの出番が全く無いこと、獣や魚がほとんど登場しないこと、などを挙げている<ref name="キーン文学史1-71"/>。}}、「イザナミの糞尿から神が生まれるのにも首をひねる<ref name="キーン文学史1-71"/>」と評した。古典エッセイストの[[大塚ひかり]](1961-)は、記紀では「うんこから神が生まれる<ref name="うん古典-2"/>」と指摘し、「『古事記』におけるうんこというのは単に汚れたものとばかりは思えぬ要素がある」と指摘した{{refnest|group="注"|たとえば、[[神武天皇]]の后となる[[ヒメタタライスズヒメ]]は、その母[[玉櫛媛]]が「うんこ中に神に性器をつつかれ<ref name="うん古典-イスズ"/>」たことで孕んだ娘である。}}。 |
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糞便から神々が誕生するという神話が創造されたのは、大便と粘土、尿と水の外見が似ていたからだとする説がある<ref name="武郷-2-371"/>。たとえば本居宣長は「如此(かく)御名を負せたるは、屎(くそ)の形状(ありさま)の、埴(はに)を泥夜志(ねやし)たるに似たればなり<ref name="古事記伝-五-274"/>」と述べ、外観からの連想だとした<ref name="クソマル-91"/>。 |
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一方、松村武雄は、大便と粘土の外観の類似性から古代人が連想したのだろうとする説について、他民族に類例がみられないとして疑問を呈した<ref name="武郷-2-371"/>。その上で、古代農業で用いられた主要な肥料は糞尿だったとし{{refnest|group="注"|歴史学者[[喜田貞吉]]は(1871-1939)は、[[大和民族]]は古くから[[農耕民族]]であったとした上で、古代農業の主要な肥料は糞尿だったと指摘した<ref name="武郷-2-371"/>。}}、したがって農耕神が糞尿から化生するのは「寧ろ一つの必然」とした<ref name="武郷-2-371"/>。ドナルド・キーンも「昔の農業では糞尿が大切だったのだろうと指摘する学者もいる」とした<ref name="キーン文学史1-71"/>。 |
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松村武雄は、女神イザナミは様々なものを生みだすことに生涯を費やした末に、死に際してもなおまだ様々なものを生み出すことを強いられるとし、「悲しくも気の毒」と評した<ref name="武郷-2-371"/>。さらにまた、イザナミは、鎮火の祝詞では死後もなお衆生を火災から守護するため働く一方で([[#鎮火の神として]]参照)、記紀では黄泉国の女王となって数多の穢れ・災厄・死を主宰する邪神と化すことを指摘、「この偉大な女神に於ける内性・職能の変化と対立との度ぎつさ・{{読み仮名|厳厲|げんれい}}さに瞠目せざるを得ない{{refnest|group="注"|「厳厲」はきびしくはげしいこと<ref>『精選版日本語大辞典』([[小学館]])。([https://kotobank.jp/word/厳厲-493315 コトバンク版])。</ref>。}}」とした<ref name="武郷-2-372"/>。 |
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===五行との関連=== |
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平田篤胤は、風火金水土の神々が相次いで生れ出るさまと[[五行思想]]の関連を指摘した<ref name="平田篤胤-五行"/>。 |
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==信仰== |
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ハニヤスはしばしば農耕に関わる神として祀られている<ref name="ルーツ-ハニヤス"/><ref name="わかる-176"/>。その性格は、作物を育む土壌<ref name="ルーツ-ハニヤス"/>、水田の泥、土壌に与える肥料だったり<ref name="ビジュアル-064"/>、あるいは田畑を水害から護る畦や堤防だったり<ref name="ルーツ-ハニヤス"/>、はたまた豊作祈願のための祭具の神であったりするのだが<ref name="ルーツ-ハニヤス"/>、いずれにせよ「土の神」として豊穣に神功のある農業神ということになる<ref name="ルーツ-ハニヤス"/>。 |
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ハニヤスが土器・陶器の材料となる粘土を神格化したものだと考えるならば、粘土は農耕には不適でさえある。しかし、土器や陶器はもともと日用品ではなく儀式に用いる特別な祭具であり、その祭祀は豊穣祈願のために執行されたはずである。この意味ではハニヤスは農業祭礼に関わる神であるといえる<ref name="ルーツ-ハニヤス"/>。 |
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ところで、ハニヤスが大便から化生したとは示さず、単に土の神だとしか述べていない書もある。カグツチはイザナギに斬られてハニヤスと結婚する暇はなかったり、鎮火の祝詞ではハニヤスには火の神を退治する役割が与えられている。これらを重視するならばハニヤスと農作物を直結することは難しい<ref name="通釈-178"/>。 |
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===土の神・土壌と肥料の神として=== |
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記紀の諸伝による異同はあるものの、『古事記』では土の神ハニヤスや水の神ミツハノメに続いて豊穣の神ワクムスビやトヨウケビメが生じ、『日本書紀』第二の一書では土の神ハニヤスが五穀の神ワクムスビを生む<ref name="通釈-178"/>。これらの物語は、農作物の発生に土と水が関わっていることを表していると考えられる<ref name="通釈-178"/>。また、ハニヤスとミツハノメがイザナミの糞尿から誕生するのは、糞尿が肥料として農作物の生育を助けることと関連があると考えられる<ref name="通釈-178"/><ref name="世界神話土壌神-270"/>。 |
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===土の神・畦畔と堤防の神として=== |
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土は、田畑の畦畔や河川の堰堤のように、水害から農耕を護り、用水するための人工構築物の材料でもある<ref name="ルーツ-ハニヤス"/>。このため農耕地域では、ハニヤスは畦や堤の守り神として祀られている<ref name="ルーツ-ハニヤス"/>。とくに九州地方では水田の畦の守護神「ハニヤマヒメ」として祭祀されることが多い<ref name="ルーツ-ハニヤス"/>。 |
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===土の神・陶芸の神として=== |
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[[鈴木重胤]](1812-1863)は、記紀ではハニヤスを「土神」と表現しているものの、土・大地全般の神というわけではない、とした<ref name="通釈-175"/>。古語の「ハニ」は土器の材料となる粘土を指し、粘土(埴土)を練り、形を整えて、火で焼くことで土器や陶器ができあがる<ref name="読み解き-ハニヤスヒコ"/>。これを神格化したのがハニヤスである<ref name="通釈-175"/><ref name="日本神名辞典-ハニヤスビコノカミ"/><ref name="神道史-ハニヤスヒメ"/>。 |
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古代の土器や陶器は祭礼に用いられる祭器であり、その材料である粘土を神格化したハニヤスは陶磁器の祖神だと考えられている<ref name="読み解き-ハニヤスヒコ"/><ref name="通釈-175"/>。 |
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この場合、粘土は農耕には不適でさえある<ref name="ルーツ-ハニヤス"/>。しかし、古代の神祇において主要なテーマは五穀豊穣祈願であるから、そこで用いられる陶磁器祭器は、結局のところ豊作祈願につながっているとも言える<ref name="読み解き-ハニヤスヒコ"/>。 |
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===土の神・土木工事と造園の神として=== |
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現代ではハニヤスは農業の神としてだけでなく、土一般に関わるものとして、開墾守護、土木工事の安全や造園業の守護神としても祀られている<ref name="ルーツ-ハニヤス"/><ref name="わかる-176"/><ref name="ビジュアル-064"/>。 |
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===鎮火の神として=== |
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[[愛宕神社]]・[[秋葉神社]]・[[榛名神社]]など火伏せ(鎮火)の霊験があるとする神社では、ハニヤスは鎮火の神として祭祀されている<ref name="日本の神仏-ハニヤスノカミ"/>。 |
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===厠の神=== |
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[[卜部神道]]では、ハニヤマヒメとミツハノメが「厠の神」として祀られる<ref name="小学国語-かわや"/>。 |
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===祭神となっている主な神社=== |
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[[File:畝尾坐健土安神社拝殿 - DGYGae0UIAABNnZ.jpg|thumb|right|畝尾坐健土安神社]] |
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[[File:榛名神社 Haruna shrine - panoramio.jpg|thumb|right|榛名神社]] |
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[[File:Atago-jinja (Kyoto) entrance.JPG|thumb|right|愛宕神社]] |
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[[日本土壌肥料学会]]の2015年「土壌と東西の神々、日本の土地神」によれば、日本国内でハニヤス神を奉斎する神社の数は、「ハニヤスヒメ」286社、「ハニヤス」129社、「ハニヤスヒコ」24社である<ref name="土壌神々V3"/>。このうち、「ハニヤスヒコ」と「ハニヤスヒメ」の二神を祀る神社は12社ある<ref name="土壌神々V3"/>。 |
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なかでも「ハニヤス」を祀る神社は[[福岡県]]に集中しており、129社のうち100社が福岡県内にある<ref name="土壌神々V3"/>。「ハニヤスヒメ」を祀る神社は全国にみられるが、福岡県・群馬県・福島県に多い<ref name="土壌神々V3"/>。 |
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:※ここは、各種文献の「ハニヤス」等の神の解説内で社名をあげられているものに限った。 |
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;ハニヤスノカミ |
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*[[畝尾坐健土安神社]]([[大和国]][[十市郡]]/[[奈良県]][[橿原市]])<ref name="日本の神仏-ハニヤスノカミ"/> - [[式内大社]] |
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*[[榛名神社]]([[上野国]][[群馬郡]]/[[群馬県]][[高崎市]])<ref name="日本の神仏-ハニヤスノカミ"/><ref name="ビジュアル-064"/><ref name="わかる-176"/> - [[式内社]] |
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*[[波爾移麻比禰神社]]([[阿波国]][[美馬郡]]/[[徳島県]][[美馬市]])<ref name="日本の神仏-ハニヤスノカミ"/><ref name="アジア女神-ハニヤスビメ"/> - [[式内社]] |
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*[[馬岡新田神社]]([[阿波国]][[美馬郡]]/[[徳島県]][[三好市]])<ref name="日本の神仏-ハニヤスノカミ"/><ref name="アジア女神-ハニヤスビメ"/> - [[式内社]] |
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*[[波爾布神社]]([[近江国]][[高島郡 (滋賀県)|高島郡]]/[[滋賀県]][[高島市]])<ref name="日本の神仏-ハニヤスノカミ"/> - [[式内社]] |
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*[[形原神社]]([[三河国]][[宝飯郡]]/[[愛知県]][[蒲郡市]])<ref name="日本の神仏-ハニヤスノカミ"/> - [[式内社]] |
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*[[大井神社 (島田市)|大井神社]]([[静岡県]][[島田市]]))<ref name="日本の神仏-ハニヤスノカミ"/><ref name="ビジュアル-064"/><ref name="わかる-176"/> |
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*迩弊姫神社([[石見国]][[安濃郡 (島根県)|安濃郡]]/[[島根県]][[太田市]])<ref name="わかる-176"/><ref name="ビジュアル-064"/> - 式内社 |
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;ハニヤスビメノカミ |
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*堤治神社([[尾張国]][[中島郡]]/愛知県[[一宮市]](旧[[尾西市]]))<ref name="日本の神仏-ハニヤスビメノカミ"/> |
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;ハニヤマヒメ |
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*[[愛宕神社]]([[京都府]][[京都市]][[右京区]])<ref name="わかる-176"/><ref name="社寺縁起-愛宕神社"/> - 火伏せ・鎮火の神社 |
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*[[馬岡新田神社]]([[阿波国]][[美馬郡]]/[[徳島県]][[三好市]])<ref name="日本の神仏-ハニヤマヒメ"/><ref name="アジア女神-ハニヤスビメ"/> - [[式内社]] |
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*榛名神社([[埼玉県]][[富士見市]])<ref name="日本の神仏-ハニヤマヒメ"/> |
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*[[埴生神社 (成田市)|埴生神社]]([[千葉県]][[成田市]])<ref name="ビジュアル-064"/> |
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;ハニウメヤノカミ |
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*[[上一宮大粟神社]]([[阿波国]][[名方郡]]/[[徳島県]][[神山町]]) - ハニウメヤノカミ(埴生女屋神)はハニヤスと同一視される神。[[阿波国]]の神として『[[日本三代実録]]』に登場する<ref name="日本の神仏-ハニウメヤノカミ"/>。 |
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;ハニウダノカミ |
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*土生田神社([[越後国]][[蒲原郡]]/[[新潟県]][[田上町]]) - ハニウダノカミ(土生田神)はハニヤスと同一視される神。[[越後国]][[蒲原郡]]の式内社・土生田神社の祭神<ref name="日本の神仏-ハニウダノカミ"/>。 |
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==同名・関連名の人物== |
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*[[埴安媛|'''ハニヤスヒメ''']] - 記紀には、8代[[孝元天皇]]の妃の一人として、同じ名を持つ「[[埴安媛|ハニヤスヒメ]]」が登場する<ref name="日本古代神祇事典-ハニヤスヒメ"/>。『古事記』孝元記では「波邇夜須毘売」で、『日本書紀』孝元紀では「埴安媛」<ref name="日本古代神祇事典-ハニヤスヒメ"/>。父親は[[河内国|河内]]の豪族で、「[[河内青玉繋|青玉]]」(『古事記』)ないし「[[河内青玉繋|青玉繋]]」(『日本書紀』)である<ref name="日本古代神祇事典-ハニヤスヒメ"/>。、[[武埴安彦命|タケハニヤスヒコノミコト]](建波邇夜須毘古命または武埴安彦)の母<ref name="日本古代神祇事典-ハニヤスヒメ"/>。 |
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*[[武埴安彦命|タケ'''ハニヤスヒコ'''ノミコト]] - 孝元天皇の皇子で、母は上記のハニヤスヒメ<ref name="日本古代神祇事典-ハニヤスヒメ"/>。記紀によると、叔父の[[崇神天皇]]に対する反乱を起こして鎮圧される{{refnest|group="注"|彼らは反乱を起こすに先立ち、密かに天香具山の土を採取して占いを行う。天香具山はヤマトの国(倭国)の象徴であり、その土を盗むのは国を盗むことを意味する。彼らが土を盗んだという事実を知った天皇は、反乱の企てを察知する。この逸話は、神武天皇がヤマトの国を攻め奪る前に天香具山の土を盗んで土器を焼き、神事を行った故事に呼応している。<ref name="クソマル-94"/>}}。負け戦となったときに反乱軍はクソを漏らして逃走する<ref name="うん古典-王"/>{{refnest|group="注"|亦其卒怖走、屎漏于褌」(『日本書紀』神武天皇紀十年九月条)<ref name="新釈全訳日本書紀-394"/>}}。[[大塚ひかり]](1961-)は、「タケハニヤス」という名は「勇ましいうんこ王」の意味になり、合戦の勝者が敗者に対し、クソを漏らした故事にちなんでクソと同一視される「ハニ」という汚名を与えたのではないか、とする<ref name="うん古典-王"/>{{refnest|group="注"|『日本書紀』では、この地を「屎褌」(くそばかま)と呼ぶようになり、これが転訛して「[[樟葉]]」(現在の[[大阪市]][[枚方市]][[くずは]]一帯)になったとする<ref name="新釈全訳日本書紀-394"/>。}}。 |
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==関連項目== |
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農学博士[[陽捷行]](1943-)は、世界のさまざまな神話を概観し、ハニヤスはエジプト神話の[[ゲブ]]・ギリシャ神話の[[ガイア]]と並んで「最も具体的な土神のにおいが強い」と評した<ref name="世界神話土壌神-276"/>。 |
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===日本の土の神=== |
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陽捷行は「日本神話ほど、土にかかわる神の数が多い神話はない」と指摘する<ref name="世界神話土壌神-276"/>{{refnest|group="注"|陽捷行によれば、『日本書紀』第5段第10の一書に登場する磐土命(いはつつ)、底土命(そこつつ)、赤土命(あかつつ)も土の神<ref name="世界神話土壌神-276"/>。}}。 |
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*[[ウヒヂニ]]・[[スヒヂニ]]<ref name="土壌神々V3"/> - 『古事記』では兄「宇比地邇神」と妹「須比智邇神」、『日本書紀』では兄「埿土煮尊」と妹「沙土煮尊」。日本神話の[[天地開闢 (日本神話)|天地開闢]]のとき出現した[[神世七代]]の3代であり、イザナギ・イザナミよりも前に出現。記紀に「男女一対」として登場した神としては最初の存在<ref name="土壌神々V3"/>。日本各地では「ウヒヂニ」を祀る神社が101社、「スヒヂニ」を祀る神社が71社(うち9割がウヒヂニも祀る)<ref name="土壌神々V3"/>。 |
|||
*[[アメノサツチ]]・[[クニノサツチ]]<ref name="土壌神々V3"/> - 『古事記』では「天之狭土神」と「国之狭土神」。[[オオヤマツミ]](山の神)と[[カヤノヒメ]](草原の女神)の子。日本各地では「アメノサツチ」を祀る神社が6社、「クニノサツチ」を祀る神社が32社<ref name="土壌神々V3"/>。 |
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*オオツチミオヤノカミ<ref name="土壌神々V3"/> - [[スサノヲ]]の子で、土・田地の守護神。中国・四国地方を中心に43社で祭祀される<ref name="土壌神々V3"/>。 |
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===世界の土に関する信仰=== |
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*[[社_(中国)]]<ref name="土壌神々-漢"/> - [[甲骨文字]]以前の古代中国で、漢字の「社」は土地神を表していたと推定される<ref name="土壌神々-漢"/>。 |
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*{{仮リンク|土地公|zh|土地公}} - 土地神が世俗化され、「土地公(土地爺)」・「土地婆」となったもの<ref name="土壌神々-漢"/>。[[城隍神]]・[[后土]]参照。 |
|||
*[[クロノス]]([[ギリシャ神話]])<ref name="土壌神々-洋"/>、[[サートゥルヌス]]([[ローマ神話]])<ref name="土壌神々-洋"/> - 大地母神[[ガイア]]の子<ref name="土壌神々-洋"/>。孫の[[プロメーテウス]]は土から人間を創り出し、火を与え、その火から人間の文明や技術が生じる<ref name="土壌神々-洋"/>。 |
|||
*[[四元素]]説・[[四体液説]]では、「土」は暗いイメージが与えられており、[[メランコリー]]の源泉とされる<ref name="土壌神々-洋"/>。 |
|||
*[[アダム]]<ref name="土壌神々-世"/> - [[旧約聖書]]で、土から作られたとされる<ref name="土壌神々-世"/>。 |
|||
*[[マルドゥク]]<ref name="土壌神々-世"/> - [[メソポタミア神話]]の農業神 |
|||
*[[エンキ]]<ref name="土壌神々-世"/> - [[メソポタミア神話]]の「地の王」・湿地の神で、農耕や工芸などを司る。 |
|||
*[[クル (シュメール神話)]]<ref name="土壌神々-世"/> - [[シュメール]]神話の神 |
|||
*[[ゲブ]]<ref name="土壌神々-世"/> - [[エジプト神話]]の大地神で、天空神[[ヌト]]とともに豊穣神[[イシス]]らを生む。 |
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*[[プリティヴィー]]<ref name="土壌神々-世"/> - [[インド神話]]の地母神。[[仏教]]では[[地天]]となる<ref name="土壌神々-世"/>。 |
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===その他=== |
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* [[日本の神の一覧]] |
* [[日本の神の一覧]] |
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* [[畝尾坐健土安神社]] - 主祭神の健土安比売命と同一視される。 |
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==脚注== |
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* [[埴安池]] |
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===注釈=== |
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<references group="注"/> |
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===出典=== |
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{{Reflist|colwidth=30em |
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|refs= |
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<!--古事記--> |
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*<ref name="新編古事記-40">『古事記』(新編日本古典文学全集 1)、pp.40-41</ref> |
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*<ref name="口語古事記-35-8">『口語訳 古事記 完全版』p.35下註8</ref> |
|||
*<ref name="口語訳古事記-24">『口語訳 古事記 完全版』、p.24、足注55。</ref> |
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<!--日本書紀--> |
|||
*<ref name="岩波日本書紀-38">岩波文庫『日本書紀(一)』、p.38</ref> |
|||
*<ref name="岩波日本書紀-39-6">岩波文庫『日本書紀(一)』、p.39、注6</ref> |
|||
*<ref name="岩波日本書紀-39-7">岩波文庫『日本書紀(一)』、p.39、注7</ref> |
|||
*<ref name="岩波日本書紀-39-14">岩波文庫『日本書紀(一)』、pp.39-40、注14</ref> |
|||
*<ref name="岩波日本書紀-218">岩波文庫『日本書紀(一)』、p.218</ref> |
|||
*<ref name="新釈全訳日本書紀-101-7">『新釈全訳 日本書紀 上巻(巻第一{{〜}}巻第七)』、p.101、注7</ref> |
|||
*<ref name="新釈全訳日本書紀-101-9">『新釈全訳 日本書紀 上巻(巻第一{{〜}}巻第七)』、p.101、注9</ref> |
|||
*<ref name="新釈全訳日本書紀-103-1">『新釈全訳 日本書紀 上巻(巻第一{{〜}}巻第七)』、p.103、注1</ref> |
|||
*<ref name="新釈全訳日本書紀-103-5">『新釈全訳 日本書紀 上巻(巻第一{{〜}}巻第七)』、p.103、注5及び注6</ref> |
|||
*<ref name="新釈全訳日本書紀-103-8">『新釈全訳 日本書紀 上巻(巻第一{{〜}}巻第七)』、p.103、注8</ref> |
|||
*<ref name="新釈全訳日本書紀-105-6">『新釈全訳 日本書紀 上巻(巻第一{{〜}}巻第七)』、p.105、注6</ref> |
|||
*<ref name="新釈全訳日本書紀-105-8">『新釈全訳 日本書紀 上巻(巻第一{{〜}}巻第七)』、p.105、注8</ref> |
|||
*<ref name="新釈全訳日本書紀-316">『新釈全訳 日本書紀 上巻(巻第一{{〜}}巻第七)』、p.316およびp.317注16</ref> |
|||
*<ref name="新釈全訳日本書紀-393">『新釈全訳 日本書紀 上巻(巻第一{{〜}}巻第七)』、p.393</ref> |
|||
*<ref name="新釈全訳日本書紀-394">『新釈全訳 日本書紀 上巻(巻第一{{〜}}巻第七)』、pp.394-395</ref> |
|||
*<ref name="小学日本書紀-40上8">小学館([[新編日本古典文学全集]] 2)『日本書紀』、p.40上注8</ref> |
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<!--祝詞--> |
|||
*<ref name="祝詞新講-訓">『新版 祝詞新講』、pp.362-363「原文書き下し」</ref> |
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*<ref name="祝詞新講-訳">『新版 祝詞新講』、pp.363-364「口語訳」</ref> |
|||
*<ref name="祝詞新講-注火結">『新版 祝詞新講』、p.367 注「火結神」</ref> |
|||
*<ref name="祝詞新講-注石隠">『新版 祝詞新講』、p.367 注「石隠り坐して」</ref> |
|||
*<ref name="祝詞新講-注七夜">『新版 祝詞新講』、pp.367-369 注「夜は七夜昼は七日」</ref> |
|||
*<ref name="祝詞新講-注上津">『新版 祝詞新講』、p.370 注「上津国・下津国」</ref> |
|||
*<ref name="祝詞新講-注枚坂">『新版 祝詞新講』、pp.370-371 注「与美津枚坂」</ref> |
|||
*<ref name="祝詞新講-注心悪">『新版 祝詞新講』、p.371 注「心悪しき子」</ref> |
|||
*<ref name="祝詞新講-注返坐">『新版 祝詞新講』、p.371 注「返り坐して」</ref> |
|||
*<ref name="祝詞新講-371ヒサゴ">『新版 祝詞新講』、p.371「水の神瓢川菜埴山姫」</ref> |
|||
*<ref name="祝詞新講-注心荒">『新版 祝詞新講』、p.372 注「心荒びなば」</ref> |
|||
*<ref name="祝詞新講-372ヒサゴ">『新版 祝詞新講』、p.372「水神瓢埴山姫川菜を持ちて鎮め奉れ」</ref> |
|||
*<ref name="祝詞新講-374">『新版 祝詞新講』、pp.374-375</ref> |
|||
*<ref name="祝詞新講-377">『新版 祝詞新講』、p.377</ref> |
|||
<!--古典籍--> |
|||
*<ref name="六国史-81">『六国史』、p.81</ref> |
|||
*<ref name="六国史-84">『六国史』、p.84</ref> |
|||
*<ref name="通釈-175">『日本書紀通釈』、pp.175-176。{{NDLJP|992400}}、コマ番号93-94。</ref> |
|||
*<ref name="通釈-178">『日本書紀通釈』、pp.178-180。{{NDLJP|992400}}、コマ番号95-96。</ref> |
|||
*<ref name="通釈-181">『日本書紀通釈』、pp.181-182。{{NDLJP|992400}}、コマ番号96-97。</ref> |
|||
*<ref name="通釈-184">『日本書紀通釈』、p.184。{{NDLJP|992400}}、コマ番号98。</ref> |
|||
*<ref name="古事類苑-土神">『古事類苑』、p.152「土神」</ref> |
|||
*<ref name="古事記伝-五-274">『古事記伝』巻五、p.274。</ref> |
|||
*<ref name="平田篤胤-丹土">『[[古史伝]]』巻四、pp.21-24。{{NDLJP|772142}}コマ番号23-26。</ref> |
|||
*<ref name="平田篤胤-鎮火">『[[古史伝]]』巻四、pp.24-28。{{NDLJP|772142}}コマ番号26-30。</ref> |
|||
*<ref name="平田篤胤-一神">『[[古史伝]]』巻四、pp.28-29。{{NDLJP|772142}}コマ番号30-31。</ref> |
|||
*<ref name="平田篤胤-五行">『[[古史伝]]』巻四、pp.29-32。{{NDLJP|772142}}コマ番号31-34。</ref> |
|||
<!--神道--> |
|||
*<ref name="神道史-ハニツカイ">『神道史大辞典』、pp.816-817「はにつかい」([[岩井宏實]])</ref> |
|||
*<ref name="神道史-ハニヤスヒメ">『神道史大辞典』、p.817「はにやすひめのかみ」([[藤本頼生]])</ref> |
|||
*<ref name="神道史-ハニヤマヒメ">『神道史大辞典』、p.817「はにやまひめのかみ」([[藤本頼生]])</ref> |
|||
<!--記紀研究--> |
|||
*<ref name="日本書紀の世界-17">『日本書紀の世界』(講談社学術文庫)、p.17</ref> |
|||
*<ref name="日本書紀の世界-43">『日本書紀の世界』(講談社学術文庫)、pp.43-44</ref> |
|||
*<ref name="日本書紀の世界-44">『日本書紀の世界』(講談社学術文庫)、p.44</ref> |
|||
*<ref name="古事記と日本書紀-90">『古事記と日本書紀』(講談社学術文庫)、pp.90-92</ref> |
|||
*<ref name="古事記と日本書紀-110">『古事記と日本書紀』(講談社学術文庫)、p.110</ref> |
|||
*<ref name="武郷-1-1日目">『日本神話の研究 第一巻 ―序説篇―』、pp.216-226「神話的叙述及び祈請的叙述の呪的効能」。</ref> |
|||
*<ref name="武郷-1-216">『日本神話の研究 第一巻 ―序説篇―』、p.216。</ref> |
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*<ref name="武郷-1-220">『日本神話の研究 第一巻 ―序説篇―』、p.220。</ref> |
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*<ref name="武郷-1-222">『日本神話の研究 第一巻 ―序説篇―』、p.222。</ref> |
|||
*<ref name="武郷-1-228">『日本神話の研究 第一巻 ―序説篇―』、pp.228-230。</ref> |
|||
*<ref name="武郷-2-370">『日本神話の研究 第二巻 ―個分的研究篇(上)―』、p.370。</ref> |
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*<ref name="武郷-2-371">『日本神話の研究 第二巻 ―個分的研究篇(上)―』、p.371。</ref> |
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*<ref name="武郷-2-372">『日本神話の研究 第二巻 ―個分的研究篇(上)―』、p.372。</ref> |
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<!--事典類--> |
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*<ref name="広-イザナキ">『日本史広辞典』、p.112「いざなきのみこと・いざなみのみこと」</ref> |
|||
*<ref name="日本神名辞典-ハニヤスノカミ">『日本神名辞典』、p.306「埴安神」</ref> |
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*<ref name="日本神名辞典-ハニヤスビコ">『日本神名辞典』、p.306「埴安彦」</ref> |
|||
*<ref name="日本神名辞典-ハニヤスビコノカミ">『日本神名辞典』、p.306「波邇夜須毘古神」</ref> |
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*<ref name="日本神名辞典-ハニヤスヒメ">『日本神名辞典』、p.306「埴安姫」</ref> |
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*<ref name="日本神名辞典-ハニヤスビメノカミ">『日本神名辞典』、p.306「波邇夜須毘売神」</ref> |
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*<ref name="日本神名辞典-ハニヤマヒメ">『日本神名辞典』、p.306「埴山姫」</ref> |
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*<ref name="日本神名辞典-ハニヤマヒメノカミ">『日本神名辞典』、p.306「埴山姫神」</ref> |
|||
*<ref name="日本古代神祇事典-ハニヤスヒメ">『日本古代神祇事典』、p.669「はにやすひめ(埴安媛)」および「はにやすひめ(波邇夜須毘売)」</ref> |
|||
*<ref name="日本古代神祇事典-ハニヤマヒメ">『日本古代神祇事典』、p.669「はにやまひめ(埴山姫)」</ref> |
|||
*<ref name="神道縮刷-ハニヤスノカミ">『神道大辞典(縮刷版)』、p.1190「ハニヤスノカミ」</ref> |
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*<ref name="神道縮刷-ハニヤスビコノカミ">『神道大辞典(縮刷版)』、p.1190「ハニヤスビコノカミ」</ref> |
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*<ref name="神道縮刷-ハニヤマヒメ">『神道大辞典(縮刷版)』、p.1190「ハニヤマヒメ」</ref> |
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*<ref name="アジア女神-54">『アジア女神大全』、p.54</ref> |
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*<ref name="アジア女神-ハニヤスビメ">『アジア女神大全』、p.127「波邇夜須毘売神」</ref> |
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*<ref name="日本の神仏-ハニウダノカミ">『日本の神仏の辞典』、p.1053、「土生田神」(中嶋・池谷)。</ref> |
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*<ref name="日本の神仏-ハニウノカミ">『日本の神仏の辞典』、p.1053、「波尓布神」。</ref> |
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*<ref name="日本の神仏-ハニヤスノカミ">『日本の神仏の辞典』、p.1053、「埴安神」(中嶋宏子)。</ref> |
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*<ref name="日本の神仏-ハニヤスビメノカミ">『日本の神仏の辞典』、p.1053、「波邇夜須毘賣神」(中嶋・池谷)。</ref> |
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*<ref name="日本の神仏-ハニヤマヒミノカミ">『日本の神仏の辞典』、p.1053、「波尓移麻比弥」。</ref> |
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*<ref name="日本の神仏-ハニヤマヒメ">『日本の神仏の辞典』、p.1053、「埴山姫」(中嶋・池谷)。</ref> |
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*<ref name="日本の神仏-ハニウメヤノカミ">『日本の神仏の辞典』、p.1053、「埴生女屋神」(中嶋・池谷)。</ref> |
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*<ref name="小学国語-かわや">『[[日本国語大辞典]]』、[[小学館]]、「かわやの神」。([[JapanKnowledge]]にて閲覧。)</ref> |
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*<ref name="角川地名-埴岡郷">『角川日本地名大辞典28兵庫県』、p.1201「埴岡郷」。</ref> |
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<!--文学書--> |
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*<ref name="キーン文学史1-68">『日本文学史 古代・中世篇一』、p.68。</ref> |
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*<ref name="キーン文学史1-71">『日本文学史 古代・中世篇一』、p.71。</ref> |
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<!--神道系一般書--> |
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*<ref name="読み解き-ハニヤスヒコ">『日本の神様読み解き事典』、p.183、「波邇夜須毘古神/埴安彦尊」。</ref> |
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*<ref name="語ろう-110">『日本神話を語ろう イザナキ・イザナミの物語』、p.110。</ref> |
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*<ref name="語ろう-115">『日本神話を語ろう イザナキ・イザナミの物語』、pp.115-117、「『古事記』の編集」。</ref> |
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*<ref name="わかる-176">『古事記と日本の神々がわかる本』、pp.176-177、「波邇夜須毘古神・波邇夜須毘売神」。</ref> |
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*<ref name="ビジュアル-064">『日本の神々完全ビジュアルガイド』、pp.064-065、「波邇夜須毘古神・波邇夜須毘売神」。</ref> |
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*<ref name="社寺縁起-愛宕神社">『社寺縁起伝説辞典』、p.13、「愛宕神社」(古川千佳)。</ref> |
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*<ref name="ルーツ-ハニヤス">『日本神話の神々 ―そのルーツとご利益』、pp.93-96「埴安彦神・埴安姫神」。</ref> |
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*<ref name="土壌神々V3">「土壌と東西の神々 V-3 日本の土地神」</ref> |
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*<ref name="土壌神々-漢">「土壌と東西の神々」pp.149-150「5.中国古代における土地神」</ref> |
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*<ref name="土壌神々-洋">「土壌と東西の神々」pp.150-151「6.西洋の土神」</ref> |
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*<ref name="土壌神々-世">「土壌と東西の神々」pp.151-152「7.世界の神話と土壌」</ref> |
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*<ref name="世界神話土壌神-270">「世界の神話と主な宗教に見られる土壌と大地」p.270</ref> |
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*<ref name="世界神話土壌神-276">「世界の神話と主な宗教に見られる土壌と大地」p.276</ref> |
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<!--うんこ系--> |
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*<ref name="糞尿学-33">『江戸の糞尿学』、p.33。</ref> |
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*<ref name="うん古典-2">『うん古典 うんこで読み解く日本の歴史』、p.2。</ref> |
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*<ref name="うん古典-イスズ">『うん古典 うんこで読み解く日本の歴史』、pp.15-17「うんこ中に神に魅入られた美女」。</ref> |
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*<ref name="うん古典-21">『うん古典 うんこで読み解く日本の歴史』、pp.21-22。</ref> |
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*<ref name="うん古典-我慢">『うん古典 うんこで読み解く日本の歴史』、pp.24-25「うんこを我慢するか、堲を担ぐのを我慢するか…語呂合わせの重要性」。</ref> |
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*<ref name="うん古典-堲">『うん古典 うんこで読み解く日本の歴史』、pp.25-26「うんこと堲」。</ref> |
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*<ref name="うん古典-王">『うん古典 うんこで読み解く日本の歴史』、pp.26-28「うんこ王」。</ref> |
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*<ref name="クソマル-77">『クソマルの神話学』、pp.77-82「1 国占めと「クソマル」」。</ref> |
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*<ref name="クソマル-91">『クソマルの神話学』、pp.91-93「1 「クソ」と「ハニ」」。</ref> |
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*<ref name="クソマル-94">『クソマルの神話学』、pp.94-97「2 日本神話における土と国」。</ref> |
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===書誌情報=== |
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====古事記==== |
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*『古事記』(新編日本古典文学全集 1)、校注・訳:[[山口佳紀]]・[[神野志隆光]]、[[小学館]]、1997年(第1刷第1刷)、2007年(第1版第7刷)。ISBN 4-09-658001-5 |
|||
*『口語訳 古事記 完全版』、訳・注釈:[[三浦佑之]]、[[文藝春秋]]、2002年(第1刷)、2020年(第28刷)。ISBN 978-4-16-321010-0 |
|||
*[[岩波文庫]]『古事記』、校注:[[倉野憲司]]、[[岩波書店]]、1963年(第1刷)、2020年(第91刷)。ISBN 4-00-300011-0 |
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====日本書紀==== |
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*『新釈全訳 日本書紀 上巻(巻第一{{〜}}巻第七)』、[[講談社]]、訳・校注:[[神野志隆光]]・[[金沢英之]]・福田武史・[[三上喜孝]]、2021年。ISBN 978-4-06-515359-8 |
|||
*『日本書紀』([[新編日本古典文学全集]] 2)、校注・訳:[[小島憲之]]・[[直木孝次郎]]・[[西宮一民]]・[[蔵中進]]・[[毛利正守]]、[[小学館]]、1994年(第1刷第1刷)、2006年(第1版第4刷)。ISBN 4-09-658002-3 |
|||
*[[岩波文庫]]『日本書紀(一)』、校注:[[坂本太郎 (歴史学者)|坂本太郎]]・[[家永三郎]]・[[井上光貞]]・[[大野晋]]、[[岩波書店]]、1994年(第1刷)、2021年(第34刷)。ISBN 4-00-300041-2 |
|||
*[[中公文庫]]『日本書紀 上』、監訳:[[井上光貞]]、訳:[[川副武胤]]・[[佐伯有清]]、[[中央公論社]]、2020年(初版)。ISBN 978-4-12-206893-3 |
|||
*[[河出文庫]]『現代語訳 日本書紀』、訳:[[福永武彦]]、[[河出書房新社]]、2005年(初版)、2013年(13刷)。ISBN 978-4-309-40764-7 |
|||
*[[講談社学術文庫]]『全現代語訳 日本書紀 上』、[[宇治谷孟]]、1988年(第1刷)、2019年(第66刷)。ISBN 4-06-158833-8 |
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====記紀研究==== |
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*『[[古事記伝]] 神代之部』(本居宣長全集第一古事記傳)、著:[[本居宣長]]、校訂:[[本居豊穎]]、刊:[[吉川半七]]、明治34年(1901)年。 |
|||
*『[[古史伝]].四』、著:[[平田篤胤]]、平田以志、明治20年(1990年)。{{NDLJP|772142}} |
|||
*『[[日本書紀通釈]]』、著:[[飯田武郷]]、[[明治書院]]、明治35年(1905年)。{{NDLJP|992400}} |
|||
*『日本神話の研究 第一巻 ―序説篇―』著:[[松村武雄]]、[[培風館]]、昭和29年(1954年)。 |
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*『日本神話の研究 第二巻 ―個分的研究篇(上)―』著:[[松村武雄]]、[[培風館]]、昭和31年(1956年)。 |
|||
*『六国史』、著:[[坂本太郎 (歴史学者)|坂本太郎]]、編:[[日本歴史学会]]、[[吉川弘文館]]、昭和45年(1970年)第1刷、昭和61年(1986年)第4刷。ISBN 4-642-06527-X |
|||
*『古事記と日本書紀』([[講談社現代新書]] 1436)、著:[[神野志隆光]]、講談社、1999年(第1刷)、2020年(第23刷)。ISBN 4-06-149436-8 |
|||
*『複数の「古代」』([[講談社現代新書]] 1914)、著:[[神野志隆光]]、講談社、2007年(第1刷)。{{ISBN2| 978-4-06-2879149}} |
|||
*『日本書紀の世界』([[講談社学術文庫]] 2220)、著:[[山田英雄 (日本史学者)|山田英雄]]、[[講談社]]、2014年(1979年刊行『日本書紀』の文庫版)。ISBN 978-4-06-292220-3 |
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====神道・日本神話==== |
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*『[[古事類苑]]』(洋装本)神祇部第1巻、明治30年(1897年)。 |
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*『神道大辞典(縮刷版)』、編輯:[[下中彌三郎]]、初版:[[平凡社]](昭和12年(1937年))、縮刷復刻版:[[臨川書店]](昭和61年(1986年))。ISBN 4-653-01347-0 |
|||
*『日本の神話』、著:[[肥後和男]]、雪華社、昭和43年(1968年)。{{国立国会図書館書誌ID|000001106281}} |
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*『日本の神々』([[中公新書]]372)、著:[[松前健]]、[[中央公論社]]、昭和49年(1974年)。{{国立国会図書館書誌ID|000001241832}} |
|||
*『日本神名辞典』、[[神社新報社]]、初版:平成6年(1994年)、第2版:平成7年(1995年)。ISBN 4-915265-66-8 |
|||
*『日本古代神祇事典』、編:[[吉田和典]]、[[中日出版社]]、平成12年(2000年)。ISBN 4-88519-158-0 |
|||
*『日本の神仏の辞典』、編:[[大島建彦]]・[[薗田稔]]・[[圭室文雄]]・[[山本節]]、[[大修館書店]]、2001年。ISBN 4-469-01268-8 |
|||
*『日本神話の神々 ―そのルーツとご利益』、著:[[戸部民夫]]、[[三修社]]、2003年。ISBN 978-4384031263 |
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*『クソマルの神話学』、著:[[東ゆみこ]]、[[蒼土社]]、2003年。ISBN 4-7917-6066-2 |
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*『神道史大辞典』、編:[[薗田稔]]・[[橋本政宣]]、[[吉川弘文館]]、平成16年(2004年)。ISBN 4-642-01340-7 |
|||
*『日本 神さま事典』、編:[[三橋健 (神道学者)|三橋健]]・[[白山芳太郎]]・島田潔 ・新井大祐、[[大法輪閣]]、第1版:平成17年(2005年)、第3版:平成21年(2009年)。ISBN 978-4-8046-1224-9<!--実際の本には「987-・・・」と印字されているが、978の誤植と思われる。--> |
|||
*『新版 祝詞新講』、著:[[次田潤]]、、[[戎光祥出版]]、平成20年(2008年)。ISBN 978-4-900901-85-8 |
|||
*『社寺縁起伝説辞典』、編:[[志村有弘]]・[[奥山芳広]]、[[戎光祥出版]]、平成21年(2009年)。ISBN 978-4-900901-00-1 |
|||
*『日本の神様読み解き事典』、編著:[[川口謙二]]、[[柏書房]]、1999年(第1刷)、2009年(第9刷)。ISBN 4-7601-1824-1 |
|||
*『アジア女神大全』、編著:[[吉田敦彦]]+<!--クレジットで「+」となっている-->[[松村一男]]、[[青土社]]、2011年。ISBN 978-4-7917-6550-8 |
|||
*『日本神話を語ろう イザナキ・イザナミの物語』([[歴史文化ライブラリー]]325)、著:[[中村修也]]、[[吉川弘文館]]、2011年。ISBN 978-4-642-05725-7 |
|||
*『古事記と日本の神々がわかる本』、著:[[吉田邦博]]、[[学研パブリッシング]]、2015年。ISBN 978-4-05-406340-2 |
|||
*「土壌と東西の神々」、著:谷山一郎(元[[農業環境技術研究所]])・浅川晋([[名古屋大学]]農学部)・奈良吉則([[農業環境健康研究所]])・程為国([[山形大学]]農学部)・齋藤雅典([[東北大学]]大学院農学研究科)・[[陽捷行]]([[農業環境健康研究所]])、[[日本土壌肥料学会]]、『日本土壌肥料学雑誌』87(2)、pp.147-152、2016年。 |
|||
**「V 土壌と東西の神々 V-3 日本の土地神」(日本土壌肥料学会講演要旨集61巻)、著:奈良吉主(公益財団法人[[農業・環境・健康研究所]])・浅山雅司([[神社本庁]]総合研究所)・陽捷行(公益財団法人農業・環境・健康研究所)、[[日本土壌肥料学会]]、2015年。 |
|||
*「世界の神話と主な宗教に見られる土壌と大地」、著:[[陽捷行]]([[農業環境健康研究所]])([[日本土壌肥料学会]]、『日本土壌肥料学雑誌』87(4)、pp.267-277、2016年。 |
|||
*『マンガでわかる日本の神様』、監修:[[東條英利]]、[[誠文堂新光社]]、2017年、2019年(第3刷)。ISBN 978-4-416-71711-0 |
|||
*『神話のなかのヒメたち もうひとつの古事記』、著:産経新聞取材班、[[産経新聞出版]]、2018年。ISBN 978-4-8191-1336-6 |
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====日本史==== |
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*[[中公文庫]]『日本の歴史 1 神話から歴史へ』、著:[[井上光貞]]、[[中央公論新社]]、1973年(初版)、2005年(改版)、2020年(改版9刷)。ISBN 978-4-12-204547-7 |
|||
*『[[角川日本地名大辞典|角川日本地名大辞典28兵庫県]]』、編:「角川日本地名辞典」編纂委員会、[[角川書店]]、1988年。ISBN 4-04-001280-1 |
|||
*『日本史広辞典』、編:日本史広辞典編集委員会、[[山川出版社]]、1997年(第1版第1刷)。ISBN 4-634-62010-3 |
|||
*『江戸の糞尿学』、著:[[永井義男]]、[[作品社]]、2016年(第1刷)、2020年(第8刷)。ISBN 978-4-86182-555-2 |
|||
*『うん古典 うんこで読み解く日本の歴史』、著:[[大塚ひかり]]、[[新潮社]]、2021年。ISBN 978-4-10-335094-1 |
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====文学史==== |
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*[[中公文庫]]『日本文学史 古代・中世篇一』、著:[[ドナルド・キーン]]、訳:[[土屋政雄]]、[[中央公論新社]]、2013年(初版)。ISBN 978-4-12-205752-4 |
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====ポップカルチャー==== |
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*『日本の神々完全ビジュアルガイド』(The Quest for Hisoryシリーズ)、監修:[[椙山林継]]、[[カンゼン]]、2010年(初版)、2014年(第2刷)。ISBN 978-4-86255-068-2 |
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{{日本神話}} |
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[[Category:日本の神]] |
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2023年1月26日 (木) 14:14時点における版
ハニヤス | |
---|---|
時代 | 神代 |
『日本書紀』 | |
名 | 埴安神[1] |
よみ | はにやすのかみ[1] |
異称2 | 埴山姫[2] |
よみ2 | はにやまひめ[2] |
異称3 | 埴山姫神[3] |
よみ3 | はにやまひめのかみ[3] |
『古事記』 | |
名 | 波邇夜須 |
よみ | はにやす |
異称1 | 波邇夜須毘古神[4] |
よみ1 | はにやすびこのかみ[4] |
異称2 | 波邇夜須毘売神[5] |
よみ2 | はにやすびめのかみ[5] |
『先代旧事本紀』 | |
名 | 埴安彦[6] |
よみ | はにやすびこ[6] |
異称1 | 埴安姫[7] |
よみ1 | はにやすひめ[7] |
備考 | 巻一陰陽本紀 |
ハニヤスは、日本神話に登場する神。『古事記』ではハニヤスビコ・ハニヤスヒメという一対の神として登場し、『日本書紀』ではハニヤマヒメやハニヤスノカミの異称で登場する。祝詞ではハニヤマヒメ。土の神、土壌の神、肥料の神、農業神として祀られるほか、陶芸の神、鎮火の神、土木工事や造園工事の守護神、便所の神としても祭祀される。
概要
記紀にはイザナミの大便からハニヤスが化生したという挿話がある。イザナギとイザナミによる神産みにより様々な自然物の神々を誕生させる過程で、イザナミは火の神を生む際に大火傷をしてしまい、死に至る。その死の間際の苦しみのなか、イザナミは嘔吐や脱糞・失禁をする。その吐瀉物からは鉱山の神カナヤマヒコが、大便からは土の神ハニヤスが、小便からは水の神ミヅハノメが生まれる。記紀ではこのようなハニヤスの誕生譚が語られるのみで、その後のハニヤスの動向は描かれない。
古代語の「ハニ」は、土器や陶器のもとになる粘土を示す語であり、ハニヤスは粘土を神格化したものと考えられている。記紀の語るハニヤス誕生譚では、火の神、(金属)鉱石の神、粘土の神、水の神、食物の神が連続して誕生しており、一連のエピソードは火によって人類が金属加工技術や土器・陶器の焼成技術を獲得したことや、焼畑農業のような原始的な農耕文化の誕生を象徴していると考えられている。このためハニヤスは陶芸上達・陶工の守護神として祭祀されることもある。
ハニヤスは「土の神」として土壌一般の守護神とも考えられており、農耕・開墾・田畑の守護神ともされる。大便から生まれたことから、農業神の一種として農耕に役立つ肥料の神として祭祀されたり、便所の神として祀られることもある。土に関わる土木業・造園業の守護神ともされる。
『延喜式』所載の祝詞には、記紀と異なり、荒ぶる火の神の害から民を守るために、イザナミが火鎮めの神としてハニヤスを生んだという挿話がある。このためハニヤスは「鎮火の神」としても祀られ、愛宕神社や秋葉神社など火除の神社でも重要な祭神となっている。ハニヤスが鎮火の神功を有するのは、古代には火災の消火に土や泥が用いられていたことを象徴しているとも考えられている。
さまざまな呼称・表記
- ハニヤスヒメ、ハニヤスビメ、ハニヤスヒメノカミ、ハニヤスビメノカミ
- ハニヤスビコ、ハニヤスヒコノカミ
- ハニヤスノカミ
- ハニヤマヒメ、ハニヤマビメ、ハニヤマヒメノカミ、ハニヤマヒミノカミ
- 埴山姫(『日本書紀』第五段第二の一書、第五段第三の一書、『延喜式』「祝詞・鎮火祭」)[2]
- 埴山媛(『日本書紀』第五段第四の一書)
- 埴山姫神(『先代旧事本紀』、榛名神社)[3]
- 波尓移麻比弥(『延喜式神名帳』)[9]
- 波爾移麻比禰(波爾移麻比禰神社)
- その他、同一視される神
- ハニウダノカミ(土生田神) - 新潟県・土生田神社(式内社)の祭神[10]。
- ハニウノカミ(波尓布神)[11]
- ハニウメヤノカミ(埴生女屋神) - 『三代実録』に登場。徳島県・上一宮大粟神社の祭神[12]
- 健土安神(タケハニヤスノカミ) - 『三代実録』[13]。#同名・関連名の人物参照。
古事記
『古事記』では、天地開闢と別天神・神世七代に続いて、イザナギ(伊邪那岐命)とイザナミ(伊邪那美命)による国生み・神生み[注 1]が語られる。イザナミは、さまざまな神を生んだあと、火の神を出産する。ところが分娩の際に陰部に大火傷を負い、この世を去ってしまう[注 2]。その死の間際、火傷に苦しんだイザナミは嘔吐、脱糞、失禁をして、その吐瀉物・排泄物が神となる。ハニヤスはこのうち大便が神として化成したもので、ハニヤスビコ・ハニヤスヒメの1対の神として登場する。
古事記の原文
- 以下の原文に頻出する「以レ音」という注意書きは、「この部分だけは文字そのものに意味がある漢文ではなく、日本語の音に漢字にあてはめただけで、文字そのものの意味は関係ない」ということ。たとえば「屎成神」は、「糞が神に成った」という意味であり、「屎」「成」「神」はそれぞれ漢字元来の意味を保持している。これに対して、「波邇夜須」は日本語固有名詞の「ハニヤス」の音に漢字をあてはめただけであり、(海の)「波」、(暗い)「夜」などの字義は失われている。
(国史大系第7巻)『古事記』上巻 | |
原文[18] | 訓み下し文[19](一部を除き注釈を割愛) |
次生二火之夜藝速男神一。夜藝二字以レ音 | 次に火之夜芸速男神を生みき。 |
亦名謂二火之炫毘古神一。 | 亦の名は火之炫毘古神と謂ひ、 |
亦名謂二火之迦具土神一。迦具二字以レ音 | 亦の名は火之迦具土神と謂ふ。 |
因レ生二此子一。 | 此の子を生みしに因りて、 |
美蕃登此三字以レ音見レ炙而病臥在。 | みほとを炙かえて病み臥して在り。 |
多具理邇此四字以レ音生レ神。 | たぐりに成りし神の |
名二金山毘古神一。訓レ金云二迦那一、下效レ此 | 名は金山毘古神。 |
次金山毘賣神。 | 次に、金山毘売神。 |
次於レ屎成神名二波邇夜須毘古神。此神名以レ音 | 次に、屎に成りし神の名は、波邇夜須毘古神。 |
次波邇夜須毘賣神。此神名亦以レ音。 | 次に、波邇夜須毘売神。 |
次於レ尿成神名二彌都波能賣神一。 | 次に、尿に成りし神の名は、弥都波能売神。 |
次和久產巢日神。 | 次に、和久産巣日神。 |
此神之子、謂二豐宇氣毘賣神一。自レ宇以下四字以レ音 | 此の神の子は、豊宇気毘売神と謂ふ。 |
故、伊邪那美神者。 | 故、伊邪那美神は、 |
因レ生二火神一。 | 火の神を生みしに因りて、 |
遂神避坐也。 | 遂に神避り坐しき。 |
自二天鳥船一至二豐宇氣毘賣神一、幷八神。 | 天鳥船より豊宇気毘売神に至るまでは、幷せて八はしらの神ぞ。 |
(現代語訳) | |
(イザナミは)次に火之夜芸速男神を産んだ。 | |
その名は別名火之炫毘古神ともいい、 | |
また別名火之迦具土神ともいう。 | |
この子(火の神)を産んだことが原因で、 | |
陰部を火傷して病に伏せってしまった。 | |
(伏せている間に、苦しんで)嘔吐すると、その吐瀉物が神になった。 | |
その名を金山毘古神、 | |
次に(吐瀉物から)金山毘売神が生まれた。 | |
次に、(苦しんで)大便を漏らすと、それが波邇夜須毘古神という名の神になった。 | |
次に(大便から)波邇夜須毘売神が生まれた。 | |
次に、(苦しんで)小便を漏らすと、それが弥都波能売神という名の神になった。 | |
次に、和久産巣日神が生まれた。 | |
この神の子どもは豊宇気毘売神という。 | |
こうして伊邪那美神は | |
火の神を産んだことが原因で | |
とうとう神去って(死んで)しまった。 | |
(注)天鳥船から豊宇気毘売神までを数えると、全文で8神となる。 |
上記の抜粋部分の前に、イザナミは鳥之石楠船神(=天鳥船)と大気都比売神を産んでいる。古事記では当該部で神の数を「8」としているのだが、登場する神々の名を数え上げると、(1)アメノトリフネ、(2)オオゲツヒメ、(3)ヒノカグツチ、(4)カナヤマビコ、(5)カナヤマビメ、(6)ハニヤスヒコ、(7)ハニヤスヒメ、(8)ミツハノメ、(9)ワクムスヒ、(10)トヨウケヒメ、と10神となる。[20]
この数の矛盾については古くから知られている。本居宣長はカナヤマビコ・カナヤマビメ、ハニヤスヒコ・ハニヤスヒメの男女対偶をなす神を、男女一組で「1」神と数えることで「8」に整合すると説いた[20]。しかし『古事記』内では、このような男女ペアの神を別々に数えて「2」とする箇所もあり、本居宣長の解釈では一貫的な整合性はない[20]。
平田篤胤は、本居宣長の説を紹介しつつ、男女ペアの場合でなくとも数え方が異なる例が多数みられることを示し、分霊(ワケミタマ)かどうかで数え方が変わるのではないかとの仮説を示している[21]。中山修也(文教大学文学教授)は、本居説には無理があるとしつつ、『古事記』編纂の過程で複数の編纂者の手が入り、相互に矛盾が生じた可能性を指摘した[20]。
日本書紀
『日本書紀』の叙述スタイルは、メインストーリーと言うべきテキスト(「本書」)と、異伝と言うべきテキスト(「一書」)が、本文を形成する体裁になっている[22][23]。異伝を示すには、「一書曰」(あるふみにいわく)のほか、「一云」「或本」なども用いられる[22][23]。
メインストーリー(「本書」)を数える場合には「段」が用いられる[24]。ひとつのメインストーリー(本書)に対して、複数の異伝(一書)が併記されるケースもある[24]。特に神代をテーマとする一巻と二巻では、文量のうえではこれらの「一書」(異伝)が大部分を占めている[25][26]。とくに神代に「一書」が多いのは、『日本書紀』の編纂者が、むりに「正史」一つに絞るのではなく、さまざまな諸説をそのままのすがたで後世に伝えようとしたものとみられている[24]。
「第四段」のイザナギ・イザナミによる大八州(日本列島)の国生みのエピソードでは、10種類の「一書」が示される[24]。続く「第五段」のアマテラス・ツクヨミ・ヒルコ・スサノヲの4神出生章では11種の「一書」が列記される[24]。
『古事記』との大きな差異として、『日本書紀』のメインストーリーである「本書」では、火の神の出産で大火傷を負い瀕死となったイザナミがその死の間際にさまざまな神を生み出すエピソードがない[27]。この挿話は、11種の「一書」(異伝)のうち、「第二の一書」・「第三の一書」・「第四の一書」・「第五の一書」・「第六の一書」で叙述され、そのうち「第二」・「第三」・「第四」・「第六」にハニヤスが登場する[5][注 3]。このうち「第二」・「第三」・「第四」の一書では神名が「ハニヤマヒメ」になっている[29]。また「第四」の一書では『古事記』同様、イザナミの大便が神になる[29]。
巻一「神代紀・上」第五段の一部抜粋
第二の一書
(国史大系第1巻)『日本書紀』巻一(神代紀・上)第五段・第二の一書 | |
原文[30] | 訓み下し文[31] |
次生火神軻遇突智、 | 次に火の神軻遇突智を生む。 |
時伊弉冉尊爲軻遇突智所焦而終矣。 | 時に伊弉冉尊、軻遇突智が為に、焦かれて終りましぬ。 |
其且終之間[※ 1] | 其の終りまさむとする間に、 |
臥生土神埴山姫及水神罔象女。 | 臥しながら土神埴山姫及び水神罔象女を生む。 |
即軻遇突智娶埴山姬、 | 即ち軻遇突智、埴山姫を娶きて、[※ 2] |
生稚産靈、 | 稚産霊を生む。 |
此神頭上生蚕與桑、 | 此の神の頭の上に、蚕と桑と生れり。 |
臍中生五穀。 | 臍の中に五穀生れり。 |
罔象、此云。 | 罔象、此れをば美都波と云ふ。 |
(現代語訳) | |
(イザナミは)次に火の神軻遇突智を生んだ。 | |
その時に伊弉冉は、軻遇突智のために火傷を負い、死んだ。 | |
その死のうという時に | |
横たわったまま、土の神埴山姫と水の神罔象女を生んだ。 | |
軻遇突智は埴山姫を娶って、 | |
稚産霊を生んだ。 | |
この神(稚産霊)の頭上に、カイコとクワ(カイコの餌)が生じた。 | |
ヘソの中には五穀(稲・麦・粟・稗・豆)が生まれた。 | |
罔象はここではミツハという。 | |
|
第三の一書
(国史大系第1巻)『日本書紀』巻一(神代紀・上)第五段・第三の一書 | |
原文[34] | 訓み下し文[31] |
伊弉冉尊生火産靈時、 | 伊弉冉尊、火産霊を生む時に、 |
為子所焦而神退矣、 | 子の為に焦かれて、神退りましぬ。 |
亦云神避矣。 | 亦は云はく、神避るといふ。 |
其且神退之時、 | 其の神退りまさむとする時に、 |
則生水神罔象女及土神埴山姫、 | 則ち水神罔象女、及び土神埴山姫を生み、 |
又生天吉葛。 | 又天吉葛を生みたまふ。 |
天吉葛、 | 天吉葛、 |
此云阿摩能與佐圖羅、 | 此をば阿摩能与佐図羅と云ふ。 |
一云與曾豆羅。 | 一に云はく、与曾豆羅と云ふ。 |
(現代語訳) | |
伊弉冉が、火産霊を生む時に、 | |
子のために焼かれ、神退った(死んだ)。 | |
これを神避ったともいう。 | |
その神退ろう(死なれよう)とするときに、 | |
水の神罔象女と土の神埴山姫を生み、 | |
また、天吉葛[※ 1]をお生みになった。 | |
ここでは天吉葛は、アマノヨサヅラという。 | |
あるいはヨソヅラという。 | |
第四の一書
(国史大系第1巻)『日本書紀』巻一(神代紀・上)第五段・第四の一書 | |
原文[39] | 訓み下し文[31] |
伊弉冉尊、 | 伊弉冉尊、 |
且生火神軻遇突智之時、 | 火神軻遇突智を生まむとする時に、 |
悶熱懊悩、因爲吐。 | 悶熱ひ懊悩む。因りて吐す。 |
此化爲神、名曰金山彦。 | 此れ神と化為る。名を金山彦と曰す。 |
次小便、化爲神、名曰罔象女。 | 次に小便まる[※ 1]。神と化為る。名を罔象女と曰す。 |
次大便、化爲神、名曰埴山媛。 | 次に大便まる。神と化為る。名を埴山媛と曰す。 |
(現代語訳) | |
伊弉冉が、 | |
まさに火の神軻遇突智を生むという時に、 | |
熱さに苦しんで、そのためにヘドを吐いた。 | |
これが神となった。名付けて金山彦という。 | |
次に小便した。これが神となった。名付けて罔象女という。 | |
次に大便した。これが神となった。名付けて埴山媛という。 | |
第六の一書
(国史大系第1巻)『日本書紀』巻一(神代紀・上)第五段・第六の一書 | |
原文[42] | 訓み下し文[31] |
伊弉諾尊與伊弉冉尊、 | 伊弉諾尊と伊弉冉尊と、 |
共生大八洲國。。 | 共に大八洲国を生みたまふ。 |
然後、伊弉諾尊曰、 | 然して後に、伊弉諾尊の曰はく、 |
「我所生之國、 | 「我が生める国、 |
唯有朝霧而薫滿之哉。」 | 唯朝霧のみ有りて、薫り満てるかな」 |
乃吹撥之氣、化爲神、 | 乃ち吹き撥ふ気、神と化為る。 |
號曰級長戸邊命。 | 号を級長戸辺命と曰す。 |
亦曰級長津彦命、是風神也。 | 亦は級長津彦命と曰す。是、風神なり。 |
又飢時生兒、號倉稻魂命。 | 又、飢しかりし時に生めりし児を、倉稲魂命と号す。 |
又、生海神等號少童命、 | 又、生めりし海神等を、少童命と号す。 |
山神等號山祇、 | 山神等を山祇と号す。 |
水門神等號速秋津日命、 | 水門神等を速秋津日命と号し、 |
木神等號句句廼馳、 | 木神等を句句廼馳と号し、 |
土神號埴安神。 | 土神を埴安神と号す。 |
然後、悉生萬物焉。 | 然して後に、悉に万物を生む。 |
至於火神軻遇突智之生也、 | 火神軻遇突智が生るるに至りて、 |
其母伊弉冉尊、見焦而化去。 | 其の母伊弉冉尊、焦かれて化去りましぬ。 |
(現代語訳) | |
伊弉諾尊と伊弉冉尊とは、 | |
協力して大八洲国(日本列島)を生み出された。 | |
そして伊弉諾尊は、 | |
「われらの生んだ国は、 | |
朝霧のみが立ち込めている。(よい薫りで満ちている。)[注 4]」 | |
と言って、ただちにその霧を吹き払うと、その息が神となった。 | |
名付けて級長戸辺命といい、 | |
または級長津彦命という。これは風の神である。 | |
また、飢えた時に生んだ子は倉稲魂命という。 | |
また、生んだ海の神たちを名付けて少童命といい、 | |
山の神たちを名付けて山祇といい、 | |
海峡の神たちを名付けて速秋津日命といい、 | |
木の神たちを名付けて句句廼馳という。 | |
土の神名付けて埴安神という。 | |
その後にことごとく万物を生んだ。 | |
火の神軻遇突智が生まれるに至って、 | |
その母伊弉冉尊は、身を焼かれてお隠れになった。 | |
日本書紀の記述
細部の異同はあるものの「第二」「第三」「第四」は、土の神の誕生に先立って、イザナミが火の神を生む時に火傷を負い瀕死となっている。「第六」では順序が違い、火の神の誕生とイザナミの火傷は土の神たちの誕生より後である。『古事記』はイザナミは陰部(ホト)に火傷を負ったと明記するが、『日本書紀』では火傷した部位を具体的に表現していない[44]。儒教の影響下にある編纂者が、陰部に直接言及することを回避したものと推定される[44]。
『古事記』では、怒れるイザナギは火の神カグツチを斬り殺し、その死体から新たな神々が誕生する。『日本書紀』「本書」と「第一」から「第五」の一書ではそのような展開はなく、「第六」から「第八」の一書に描かれるのみである[45]。
祝詞
『延喜式』第八巻「祝詞」には様々な祝詞が収録されており、そのうち鎮火の祝詞にハニヤスが登場する。そこには記紀とは異なるハニヤスの誕生譚が描かれている[46][47]。イザナミは、悪神である火の神が荒ぶるのを防ぐために、鎮火の神として水の神とハニヤスを生み、さらに鎮火の道具を産む[13][48][49]。
国生み・神生みに続いてイザナミは火の神である火結神(カグツチと同一視される)[注 5]を出産、その際に女陰部に火傷をして死んでしまう[51]。イザナミは岩戸に籠もり[注 6]、イザナギに「7日7晩の間[注 7]、ここを開けないでください」と告げる。しかし7日も姿を見せないことを不審に思ったイザナギは岩戸を開けてしまう[51]。そこには女陰を焼かれたイザナミがいた。イザナミは約束に反して岩戸を開けたイザナギに「自分は夜見国を治めることにするので、イザナギは現世の国を治めなさい」と告げて去ってしまう[51]。ところはイザナミは、何かを思い出して、黄泉比良坂まで引き返してきて次のように告げる[51]。
鎮火の祝詞
鎮火の祝詞(一部抜粋) | |
原文[46] | 訓み下し文[54] |
吾名妋命能所知食上津國邇 | 「吾が名妋命の知ろし食す上津国[※ 1]に、 |
心惡子乎生置氐來奴止宣氐、 | 心悪しき子を生み置きて来ぬ」と宣りたまひて、 |
返坐氐更生子、 | 返り坐して更に子を生み給ふ、 |
水神、[※ 2] | 水ノ神、 |
瓠、[※ 3] | 瓠、 |
川菜、[※ 4] | 川菜、 |
埴山姫、 | 埴山姫、 |
四種物乎生給氐、 | 四種の物を生み給ひて、 |
此能心惡子乃心荒比曾波、[※ 5] | 「此の心悪しき子の心荒びなば、 |
水神、瓠[※ 6]、 埴山姫、川菜乎持氐、 | 水ノ神、瓠、川菜、 埴山姫を持ちて、 |
鎭奉禮止、事教悟給支、 | 鎮め奉れ」と事教へ悟し給ひき。 |
(現代語訳) | |
「私(イザナミ)の愛しい夫(イザナギ)が司る地上の国に、 | |
悪い子(ホムスビ)を生み置いて気がかりだ」と仰せられて | |
そこ(黄泉比良坂[59])から(現世に[59])引き返して(生き返って[60])更に子をお生みになった。[※ 7] | |
それは水の神(ミツハノメ)と、 | |
水を汲むためのヒサゴ(ひょうたん)、[※ 8] | |
それから埴山姫と、 | |
火消しに用いる川菜(ミズゴケ)であった。 | |
(イザナミは)この四種のものをお生みになって、 | |
「この心の悪い子が暴れ(て現世に害を及ぼす[63])ならば、 | |
水の神はひょうたんで水をかけ、 埴山姫は川菜を持って | |
これを鎮めよ」と教え悟し置かれたことである。 | |
|
ここでは、火の神ホムスビ(=カグツチ)は、荒ぶり害をなす恐るべき存在として描かれている[64]。イザナミは、この恐怖の火の神を鎮めて衆生を守るためにわざわざ黄泉国から舞い戻り[注 8]、鎮火の神としてミツハノメとハニヤスの2女神を生み、さらに鎮火の道具としてヒョウタンとミズゴケの2物を生んだ[64][60][47][65]。
祝詞の解説
祝詞のハニヤスには水を吸わせたミズゴケ(川菜)を用いて火を消し止める役割が与えられているが、土の神であるハニヤスに鎮火の霊験があるのは、古代には消火のために土や泥が用いられたことを示唆している[58][48]。川底の泥土やそこに生える川藻を消火に用いたとも考えることができる[58]。さらに、建造物の壁に泥土を塗り込めると耐火性が得られる[58]。
平田篤胤は、ひょうたんで水を汲んでかけたり水草(川菜)を用いるのは、火傷の治療や痛み止めの術を示していると考えた[62]。飯田武郷は、火傷の対処方法として水草の汁をもみだして火傷痕に塗るのを自身も見聞したとして、平田篤胤の説に理解を示した[62]。
神話学者松村武雄(1883-1969)は、記紀類と祝詞では文書の性格が異なるとした[66]。記紀や風土記・『古語拾遺』の主目的は神々について「説明」「叙述」しようとするのにとどまるのに対し、祝詞では神々を動かして人間が求める結果を得ることを主目的としている[66][注 9]。それゆえに、記紀では単にイザナミがハニヤスらの諸神を生んだという事実しか示されないが、祝詞ではハニヤスを生んだ意図・目的が語られる[66]。記紀と祝詞の記述の「太(はなは)だ微妙[66]」な差異はこれによって生じるのである[66]。松村武雄は、ハニヤスについての祝詞の記述からは、「神話的叙述部の本源的な意図・目的[47]」の「ほのかな残影[47]」がうかがい知れるとした[66]。そのうえで、ハニヤスの誕生に関わる『古事記』『日本書紀』「祝詞」の記述には呼応性があるとした[68]。記紀や風土では過去の事象(神々の行動)を解釈しようとする意図が働いているのに対して、祝詞では事象を現在の問題として信仰心情がそのまま表出されている[69]。
神名解説
国学者本居宣長(1730-1801)はハニヤスの神名について「義は埴黏(ハニネヤス)なり[8]」とした[29]。すなわち「ハニ・ヤス」は、語源的には「粘土を・こねたり練ったりして粘り気をだす」を意味する「ハニ・ネヤス」(埴黏す)の詰まったものと考えられる[8][4][70][71][72]。
「ハニ」と「黄土」「埴」
「ハニ」とは古語で黄色がかった粘土のことを指し、漢字では「黄土」「埴」などがあてられてきた。平安時代の9世紀末に編纂された、最古の漢和辞典とされる『新撰字鏡』には、「埴黏土也波爾」とある[70][73]。10世紀成立の『和名類聚抄』では「土黄にして細密なるを埴と曰ふ、和名、
『万葉集』には「ハニ」または「ハニフ」という音に「黄土」または「埴生」の字をあてた和歌がいくつか所載されている[75][56][70][73]。この赤黄色みを帯びた粘土「ハニ」は、瓦や土器・陶器の材料になったほか、黄色の染料としても用いられた[75][56][76]。
(例)『万葉集』巻六、932番歌(詠み手:車持千年) 白波之(しらなみの) 千重来縁流(千重に来よる) 住吉能(すみのえの) 岸乃黄土粉(岸のハニフに) 二寶比天由香名(にほひて行かな) 大意:白波が何重にもおしよせる住之江(大阪市住吉区)の岸の黄色い土で(衣を)染めて行きたい。
(例)『万葉集』巻七、1146番歌(詠み人知らず) 目頬敷(めづらしき) 人乎吾家尓(ひとをわぎへに) 住吉之(すみのえの) 岸乃黄土(きしのハニフを) 将見因毛欲得(みむよしもがも) 大意:愛しい女と我が家で暮らし、あの有名な住之江の岸の黄色い土を眺めたい。
これらの和歌は、大阪の住吉区(古名:住之江)で採れた、赤黄色みを帯びた粘土のことを詠んだものである。同地所在の住吉大社には、祭祀に用いる神器をつくるために畝傍山(奈良県橿原市)の山頂から埴土を採ってくるという祭礼行事があり、これを「
「ハニ」は単にねばつち、あるいは土一般を指すとも考えられる[76]。ほかに、「ハニ」を「
「ハニ」と「赤土」「埴」
『古事記』や『日本書紀』「第四の一書」は、大便がハニヤスに化成したとしており、大便の外見からの連想で赤土の粘土とみることもある[72][79][80]。
本居宣長や平田篤胤(1776-1843)は、漢籍『書経』「禹貢」には「厥土赤埴墳」とある[8][74]ことを指摘した。平田篤胤は、『古事記』の注釈書『古史伝』のなかで、ハニヤスと赤土の関連性を指摘した[74]。平田篤胤によれば、『和名類聚抄』にある「土黄にして細密なる埴」(ハニ)から、「ハ」音(「波」)を省略した「ニ」(邇)という語がうまれ、「ニ」は土の色に関わらず「細密な土」を意味するようになった[74]。古典籍には「赤土」(アカニ)、「青土」などの表現も数多くみられるが、上代には赤色が貴ばれたので、やがて「ニ」(邇)は主に赤土を指すようになったのだという[74]。
「ニ」は「丹」にも通じるので、「ハニフ」(埴生)から「ハ」音が脱落して「ニフ」(丹生)と言うようにもなった[74]。したがって、ハニヤスヒメとニフツヒメ(丹生都比売、丹生都比売神社の祭神)には関連があるのだという[74]。
ハニを赤土粘土と見る場合には、「ハニ」は陶芸には向くが耕作には不適の土壌だといえる[81][注 11]。
「ヤス」と「ねやす」「黏」
「ネヤス」については、『新撰字鏡』には「埏」(ねやす)という漢字の解説として「埏謂レ作二泥物一也禰也須」(「埏」は泥で物を作ることを言い、「禰也須」(ネヤス」とも書く)と記す[8][73]。本居宣長は、中国古典の『説文解字』に「埴ハ黏土也」とあることを示し、『書経』や『史記』にもこうした表現があることを指摘する[8]。本居宣長によれば、「ネヤス」は「令黏」(ねやしむる)の意味であり、この用法は「令肥」(こやしむる)の「コヤス」と同格である[8]。
「ハニヤス」と「ハニヤマ」
『日本書紀』に登場するハニヤスの神名は、第二・第三・第四の一書では「ハニヤマヒメ」、第六の一書では「ハニヤスノカミ」となっている。これについては、原初的な神名「ハニヤマ」が、のちに「ハニヤス」に改められたのかもしれない、と考える説がある[73][86]。
本居宣長は、「ハニヤマ」という神名は大便の様相が「山」に似ていることから生じたのではないかと論じた[29]。
国学者飯田武郷(1828-1900)は、著書『日本書紀通釈』の中で、「ハニヤマ」が原初的な神名で、後に「ハニヤス」に転じた可能性を指摘した[86]。飯田武郷は、「ハニ」が粘土を指すという通説を認めつつ、物の生える土を「生土」(ハニ)と呼んだ可能性を指摘、そして往古の時代に多く物が生えていたのは山であるから、「ハニヤマ」(埴山)という語ができたと論じた[73]。
『日本書紀』巻三「神武天皇紀」には、天香久山山上の地名として「埴安」が登場する。神武東征の終盤、一行は難敵の前に苦戦する。9月5日の夜、神武天皇の夢に天神が現れ、「天香具山の「ハニ」(粘土)で祭具を拵えて神事を行えば勝つ」とのお告げが下る[73][86]。これを実行し、戦いに勝利して天下に「安定」をもたらしたのち、神武天皇は粘土を採取した天香久山の山上に「埴安」(ハニヤス)という地名を与えた[86][13]。本居宣長は、この「埴安」の「安」は「安定」からくるものではなく、「ねやす」に由来するとした[8]。
(国史大系第1巻)『日本書紀』巻三(神武天皇即位前紀)戊午年九月 | |
原文[87] | 訓み下し文[88] |
夢有天神訓之曰 | 夢に天神有して訓へまつりて曰はく、 |
「宜取天香山社中土香山、 | 「天香山の社の中の土を取りて、 |
以造天平瓮八十枚幷造厳瓮[※ 1] | 天平瓮八十枚を造り、併せて厳瓮を造りて、 |
而敬祭天神地祇、 | 天神地祇を敬ひ祭れ。 |
亦為厳呪詛。 | また厳呪詛をせよ。 |
如此、則虜自平伏。」 | 如此せば、虜自づからに平き伏ひなむ」 |
(現代語訳) | |
夢に天神があらわれて教えて言うには | |
「天香具山の神社の境内の土をとって、 | |
それで天平瓮(皿上の神器[90])80枚と厳瓮(神酒を容れる瓶状の神器[90])を造り、 | |
天神地祇を敬い祭れ。 | |
また、厳重に潔斎をして呪詛祈祷をせよ。 | |
そうすれば、敵はおのずから平定されるだろう。」 | |
そこで神武天皇は、椎根津彦と弟猾を天香山に派遣し、山頂の土を採取させた。その埴土(はにつち)で八十平瓮(やそひらか)、天手抉(あまのたくじり)80枚、厳瓮(いつへ)を造らせ、丹生川の川上で天神地祇を祭祀した。その後、敵を倒して天下を平定した神武天皇は、遠征中に訪れたあちこちに合戦にちなんだ地名をつける。
(国史大系第1巻)『日本書紀』巻三(神武天皇即位前紀)己未年二月 | |
原文[91] | 訓み下し文[88] |
天皇、以前年秋九月、 | 天皇、前年の秋九月を以て、 |
潜取天香山之埴土、 | 潜に天香山の埴土を取りて、 |
以造八十平瓮、 | 八十の平瓮を造りて、 |
躬自齋戒祭諸神、 | 躬自ら齋戒して諸神を祭りたまふ。 |
遂得安定區宇、 | 遂に区宇を安定むること得たまふ。 |
故號取土之處、曰埴安。 | 故、土取りし処を号けて、埴安と曰ふ。 |
(現代語訳) | |
天皇は前年の秋の九月に | |
隠密に天香山の埴土を採り、 | |
それで八十平瓮をつくり、 | |
自ら潔斎して神々を祀った。 | |
そして今、遂に天下を平定した。 | |
そこで、その土を採った場所を埴安というのである。 | |
飯田武郷は『日本書紀』第四の一書をひき、金属鉱石の神カナヤマヒコ(金山)は天香山(香山)の異称で、土の神ハニヤマ(埴山)・ハニヤス(埴安)もまた天香山の地名であると考えれば、カナヤマもハニヤスも天香山に由緒がある神なのかもしれない、とした[92]。(埴安池も参照)
「ヒメ」と「ヒコ」
『古事記』にはハニヤスヒコとハニヤスヒメが男女一対の神として登場する。ところが本文に付された注釈には、一連の神生みで誕生した神の数を「あわせて八神」としているのに、名前があげられたものを単純に数えると10になり、本文との齟齬がある[20]。この矛盾について、本居宣長は、男女一対になっているカナヤマヒコとカナヤマヒメ、ハニヤスヒコとハニヤスヒメの2組は、男女一組で「一神」と数えることで、「あわせて八神」と整合すると説いた[20][21][注 12]。
一方、『日本書紀』の第二・第三・第四の一書に登場するのは、男女対ではなく、女神ハニヤマヒメだけである。第六の一書は「ハニヤマノカミ」であり性の言及を欠くものの、いずれにせよ土の神としては一神だけである[73]。
飯田武郷は、『日本書紀』には土の神ハニヤスヒコに相当する男神が登場しないことや、第二の一書でハニヤマヒメがカグツチと結婚していること、『延喜式神名帳』にはハニヤスヒメを祭祀する神社はあるのにハニヤスヒコを祀る神社が一社も無いことなどを指摘し、元来は女神の「ハニヤスヒメ」ただ一神だったのだろうと推定した[73][33]。原初の神名が「ハニヤス」だったか「ハニヤマ」であったかは定かではないが、いずれにせよ原初の一神を、ヒコ・ヒメの男女2神に分けたというのが通説になっている[93]。
飯田武郷は、考証を進める必要があると前置きしつつ、『古事記』編者が誤って孝元天皇の皇子建波邇夜須毘古命(タケハニヤスヒコノミコト)をハニヤスヒメの対の神として書き加えてしまったのかもしれない、との仮説を示した[73]。(#同名・関連名の人物参照)
神話解題
火による大地母神の死と技術の誕生
火は、その効用によって人類の発展に重大な影響を及ぼしており、世界中で古くから神聖なものとして崇拝の対象となってきた[94]。世界各地の創世神話では、火生みに関する逸話を伝えるものも多い[94][75][95]。
記紀に示される日本神話の中でイザナミは、国生みに続いて、海、風、山、川、草、木などの自然物を産んだのち、火を産む[94][95][96]。この火の神カグツチの出産によって重篤な火傷を負ったイザナミの排泄物から、鉱山・金属の神カナヤマヒコ、土の神ハニヤス、水の神ミツハノメ、農作物の神ワクムスビらが化生する[20][94][75][95]。
金属の神と粘土の神の化生譚は、鉱石から金属や金器が錬成されたり、粘土を焼成することで土器や陶器ができあがるという、火の効用を神格化したものと考えられている[94][95]。火傷によってイザナミが死に、これに怒ったイザナギがカグツチを剣で斬り殺すのは、火を用いた冶金・鍛工によって金属が刀剣になることを示しているとも考えられる[94]。
また、土と水から農作物が発生するためには、光や熱の作用が欠かせない[94]。『万葉集』にも春に野原を焼く情景を詠んだ和歌が登場するように、古くは焼畑農業が営まれており、火は農作物の発生に関わっていた[94]。光は「日」(ヒ)、熱は「火」(ヒ)で表されるように、「ヒ」は光と熱の両方を示す語であり、土の神・水の神から穀物が生まれるのも火の神の効用である[94]。
しかしイザナミは火傷によって苦しんで死んでしまう。大地母神が死ぬ時に火が関わり、大地母神の死によって金属鉱石、粘土、水、作物が発生する[75]。そして火の作用によって金属器、土器・陶器、焼畑農耕といった、人類の文化が誕生する[75]。こうした伝承は、人類の文化や技術は、母なる大地の死と表裏一体であることを表している[95]。
古代には、粘土を焼いて作った土器は祭祀に用いられた[70][注 13]。祭祀は五穀豊穣を祈願して営まれるから、粘土は火の作用によって農作物に帰趨するとも言える[70]。
何故糞尿が神となるのか
神話学者松村武雄(1883-1969)は、イザナミの排泄物から土の神・水の神・穀物神という重要物を司る神が生じたことについて、「苟(いやしく)も『神』として崇拝される霊格が、ものもあらうに糞尿から生(な)り出でましたと考へられたことは、一見頗(すこぶ)る奇怪[99]」とし、知る限り世界に例がないとした[99]。日本文学研究者のドナルド・キーン(1922-2019)は、『古事記』には西洋人からみると困惑するような内容が多々あるとしつつ[注 14]、「イザナミの糞尿から神が生まれるのにも首をひねる[100]」と評した。古典エッセイストの大塚ひかり(1961-)は、記紀では「うんこから神が生まれる[101]」と指摘し、「『古事記』におけるうんこというのは単に汚れたものとばかりは思えぬ要素がある」と指摘した[注 15]。
糞便から神々が誕生するという神話が創造されたのは、大便と粘土、尿と水の外見が似ていたからだとする説がある[103]。たとえば本居宣長は「如此(かく)御名を負せたるは、屎(くそ)の形状(ありさま)の、埴(はに)を泥夜志(ねやし)たるに似たればなり[8]」と述べ、外観からの連想だとした[29]。
一方、松村武雄は、大便と粘土の外観の類似性から古代人が連想したのだろうとする説について、他民族に類例がみられないとして疑問を呈した[103]。その上で、古代農業で用いられた主要な肥料は糞尿だったとし[注 16]、したがって農耕神が糞尿から化生するのは「寧ろ一つの必然」とした[103]。ドナルド・キーンも「昔の農業では糞尿が大切だったのだろうと指摘する学者もいる」とした[100]。
松村武雄は、女神イザナミは様々なものを生みだすことに生涯を費やした末に、死に際してもなおまだ様々なものを生み出すことを強いられるとし、「悲しくも気の毒」と評した[103]。さらにまた、イザナミは、鎮火の祝詞では死後もなお衆生を火災から守護するため働く一方で(#鎮火の神として参照)、記紀では黄泉国の女王となって数多の穢れ・災厄・死を主宰する邪神と化すことを指摘、「この偉大な女神に於ける内性・職能の変化と対立との度ぎつさ・
五行との関連
平田篤胤は、風火金水土の神々が相次いで生れ出るさまと五行思想の関連を指摘した[106]。
信仰
ハニヤスはしばしば農耕に関わる神として祀られている[89][79]。その性格は、作物を育む土壌[89]、水田の泥、土壌に与える肥料だったり[80]、あるいは田畑を水害から護る畦や堤防だったり[89]、はたまた豊作祈願のための祭具の神であったりするのだが[89]、いずれにせよ「土の神」として豊穣に神功のある農業神ということになる[89]。
ハニヤスが土器・陶器の材料となる粘土を神格化したものだと考えるならば、粘土は農耕には不適でさえある。しかし、土器や陶器はもともと日用品ではなく儀式に用いる特別な祭具であり、その祭祀は豊穣祈願のために執行されたはずである。この意味ではハニヤスは農業祭礼に関わる神であるといえる[89]。
ところで、ハニヤスが大便から化生したとは示さず、単に土の神だとしか述べていない書もある。カグツチはイザナギに斬られてハニヤスと結婚する暇はなかったり、鎮火の祝詞ではハニヤスには火の神を退治する役割が与えられている。これらを重視するならばハニヤスと農作物を直結することは難しい[33]。
土の神・土壌と肥料の神として
記紀の諸伝による異同はあるものの、『古事記』では土の神ハニヤスや水の神ミツハノメに続いて豊穣の神ワクムスビやトヨウケビメが生じ、『日本書紀』第二の一書では土の神ハニヤスが五穀の神ワクムスビを生む[33]。これらの物語は、農作物の発生に土と水が関わっていることを表していると考えられる[33]。また、ハニヤスとミツハノメがイザナミの糞尿から誕生するのは、糞尿が肥料として農作物の生育を助けることと関連があると考えられる[33][107]。
土の神・畦畔と堤防の神として
土は、田畑の畦畔や河川の堰堤のように、水害から農耕を護り、用水するための人工構築物の材料でもある[89]。このため農耕地域では、ハニヤスは畦や堤の守り神として祀られている[89]。とくに九州地方では水田の畦の守護神「ハニヤマヒメ」として祭祀されることが多い[89]。
土の神・陶芸の神として
鈴木重胤(1812-1863)は、記紀ではハニヤスを「土神」と表現しているものの、土・大地全般の神というわけではない、とした[73]。古語の「ハニ」は土器の材料となる粘土を指し、粘土(埴土)を練り、形を整えて、火で焼くことで土器や陶器ができあがる[72]。これを神格化したのがハニヤスである[73][4][70]。
古代の土器や陶器は祭礼に用いられる祭器であり、その材料である粘土を神格化したハニヤスは陶磁器の祖神だと考えられている[72][73]。
この場合、粘土は農耕には不適でさえある[89]。しかし、古代の神祇において主要なテーマは五穀豊穣祈願であるから、そこで用いられる陶磁器祭器は、結局のところ豊作祈願につながっているとも言える[72]。
土の神・土木工事と造園の神として
現代ではハニヤスは農業の神としてだけでなく、土一般に関わるものとして、開墾守護、土木工事の安全や造園業の守護神としても祀られている[89][79][80]。
鎮火の神として
愛宕神社・秋葉神社・榛名神社など火伏せ(鎮火)の霊験があるとする神社では、ハニヤスは鎮火の神として祭祀されている[13]。
厠の神
卜部神道では、ハニヤマヒメとミツハノメが「厠の神」として祀られる[108]。
祭神となっている主な神社
日本土壌肥料学会の2015年「土壌と東西の神々、日本の土地神」によれば、日本国内でハニヤス神を奉斎する神社の数は、「ハニヤスヒメ」286社、「ハニヤス」129社、「ハニヤスヒコ」24社である[109]。このうち、「ハニヤスヒコ」と「ハニヤスヒメ」の二神を祀る神社は12社ある[109]。
なかでも「ハニヤス」を祀る神社は福岡県に集中しており、129社のうち100社が福岡県内にある[109]。「ハニヤスヒメ」を祀る神社は全国にみられるが、福岡県・群馬県・福島県に多い[109]。
- ※ここは、各種文献の「ハニヤス」等の神の解説内で社名をあげられているものに限った。
- ハニヤスノカミ
- ハニヤスビメノカミ
- ハニヤマヒメ
- ハニウメヤノカミ
- ハニウダノカミ
同名・関連名の人物
- ハニヤスヒメ - 記紀には、8代孝元天皇の妃の一人として、同じ名を持つ「ハニヤスヒメ」が登場する[113]。『古事記』孝元記では「波邇夜須毘売」で、『日本書紀』孝元紀では「埴安媛」[113]。父親は河内の豪族で、「青玉」(『古事記』)ないし「青玉繋」(『日本書紀』)である[113]。、タケハニヤスヒコノミコト(建波邇夜須毘古命または武埴安彦)の母[113]。
- タケハニヤスヒコノミコト - 孝元天皇の皇子で、母は上記のハニヤスヒメ[113]。記紀によると、叔父の崇神天皇に対する反乱を起こして鎮圧される[注 18]。負け戦となったときに反乱軍はクソを漏らして逃走する[114][注 19]。大塚ひかり(1961-)は、「タケハニヤス」という名は「勇ましいうんこ王」の意味になり、合戦の勝者が敗者に対し、クソを漏らした故事にちなんでクソと同一視される「ハニ」という汚名を与えたのではないか、とする[114][注 20]。
関連項目
農学博士陽捷行(1943-)は、世界のさまざまな神話を概観し、ハニヤスはエジプト神話のゲブ・ギリシャ神話のガイアと並んで「最も具体的な土神のにおいが強い」と評した[116]。
日本の土の神
陽捷行は「日本神話ほど、土にかかわる神の数が多い神話はない」と指摘する[116][注 21]。
- ウヒヂニ・スヒヂニ[109] - 『古事記』では兄「宇比地邇神」と妹「須比智邇神」、『日本書紀』では兄「埿土煮尊」と妹「沙土煮尊」。日本神話の天地開闢のとき出現した神世七代の3代であり、イザナギ・イザナミよりも前に出現。記紀に「男女一対」として登場した神としては最初の存在[109]。日本各地では「ウヒヂニ」を祀る神社が101社、「スヒヂニ」を祀る神社が71社(うち9割がウヒヂニも祀る)[109]。
- アメノサツチ・クニノサツチ[109] - 『古事記』では「天之狭土神」と「国之狭土神」。オオヤマツミ(山の神)とカヤノヒメ(草原の女神)の子。日本各地では「アメノサツチ」を祀る神社が6社、「クニノサツチ」を祀る神社が32社[109]。
世界の土に関する信仰
- 社_(中国)[117] - 甲骨文字以前の古代中国で、漢字の「社」は土地神を表していたと推定される[117]。
- 土地公 - 土地神が世俗化され、「土地公(土地爺)」・「土地婆」となったもの[117]。城隍神・后土参照。
- クロノス(ギリシャ神話)[118]、サートゥルヌス(ローマ神話)[118] - 大地母神ガイアの子[118]。孫のプロメーテウスは土から人間を創り出し、火を与え、その火から人間の文明や技術が生じる[118]。
- 四元素説・四体液説では、「土」は暗いイメージが与えられており、メランコリーの源泉とされる[118]。
- アダム[119] - 旧約聖書で、土から作られたとされる[119]。
- マルドゥク[119] - メソポタミア神話の農業神
- エンキ[119] - メソポタミア神話の「地の王」・湿地の神で、農耕や工芸などを司る。
- クル (シュメール神話)[119] - シュメール神話の神
- ゲブ[119] - エジプト神話の大地神で、天空神ヌトとともに豊穣神イシスらを生む。
- プリティヴィー[119] - インド神話の地母神。仏教では地天となる[119]。
その他
脚注
注釈
- ^ 日本神話では、しばしば「ウム・生む・産む」が問題となる。「産む」は女性(女神)による胎生を指し、たとえば火の神カグツチは生まれる時に母イザナミの女陰を焼いており、明らかにイザナミが産んだ(胎生)神である。しかしハニヤスはイザナミが排泄した大便が神に化生(化成)したのであり、明らかに胎生ではない。記紀の古語ではこの両方を包括して「ウム・ウムス」と表現し、自動詞としての「ウム」と他動詞としての「生む」のどちらにも用いられる。これを本居宣長は「ムスヒ」(ムス=生成する・ヒ=霊力)と説明した[14]。また、この場合にイザナミはハニヤスの「母」と言えるのかという問題がある。神は雌雄の性別を問わずに単体で万物をウムことが可能である[15]。たとえば、アマテラスやスサノヲは、男神イザナギが目や耳を洗い流したときに生まれる(『日本書紀』神代上第五段第六の一書)。その発生にはイザナミは直接関与していないように思われるが、スサノヲはイザナミを「亡き母」(妣)と慕う[16]。さらに、スサノヲとアマテラスのウケヒ(アマテラスとスサノオの誓約)では、アマテラスがスサノヲの剣を噛み砕いて吐き出したときに生まれた宗像三女神は、スサノヲの所有物から生まれたのだからスサノヲの子だと説明される(『日本書紀』神代上第六段本書)。
- ^ イザナギとイザナミは国造りの最中であり、その途中でイザナミが死んだために国造りは未完に終わったと考えられる[17]。
- ^ あいだの「第五の一書」は、イザナミが火の神を生んで焼け死に、紀伊国熊野の有馬村(現代の熊野市有馬町)に葬られて祭祀されている、というもの。他の一書と一線を画する内容である。[28]
- ^ 国学者飯田武郷『日本書紀通釈』によると、古語の「カヲル」(加乎留)は、雲や霧が立ちこめ棚引いているの意という[43]。
- ^ 「火結神」(ホムスビ)は『日本書紀』第三の一書に登場する「火産霊」(ホムスヒ)と同一。[50]
- ^ 古代の貴人の葬送では死者を石棺に葬る。「岩戸に籠もる」はこれを示唆している。[52]
- ^ ここでいう「7日7晩」は、文字通りの7日間というよりは、「長い間」の意味とみられる。日本語では「八」がしばしば「多数」を意味するように、記紀では「七」を多数の意味で用いられている。「七日七夜」は仏教の初七日の忌みにも通じる。[53]
- ^ 記紀のイザナミは、衆生を守るどころか、「毎日1000人を殺す」と宣言して災禍の源と化す。
- ^ 「祝詞は、人の子に觀照させるための文學ではなくて、神の靈能をして人の子の欲する作用動向を採らしめるための呪詞である。[67]」
- ^ 『和名類聚抄』(二十巻本)地部・塵土類、「埴 釈名云土黄而細密曰埴常職反[和名波爾]」。この部分は『和名類聚抄』が『釈名』を孫引きしている。[77]
- ^ 兵庫県神河町には「堲(はに)岡」という古名が伝わる。この古地名の由来について、『播磨国風土記』に出雲神話の主要人物神であるオオナムチとスクナヒコナの挿話が収められている。ある時、オオナムチとスクナヒコナは、遠くに行くのに「クソをしない」「ハニ(粘土)を担ぐ」のどちらが長く我慢できるか、賭けをする。オオナムチは「クソをしない」を選び、体の小さいスクナヒコナが「ハニを担ぐ」を選ぶ。数日後に、オオナムチは我慢ができなくなってクソをする。しかしそこに生えていた小笹がクソを弾きあげて、着物にクソが付着してしまったので、その地を「ハジカ」村と呼ぶようになった。スクナヒコナは笑いながら、担いでいたハニをそこにあった岡に投げつける。そのためその地を「堲(はに)岡」と呼ぶようになったという。[82][83][84][85] 古代文学者の三浦佑之(1946-)は、『播磨国風土記』では2神が競争して国を奪い取ろうとする挿話に富むと指摘した。オオナムチとスクナヒコナの我慢比べ競争もその一形態である。ここでは、大便をした方が競争に敗れており、日本古代神話ではクソをする行為は国奪いに失敗することを象徴しているという。別掲のタケハニヤスヒコの反乱でも、反乱軍は敗れてクソを漏らす。[85]
- ^ ただし、記紀では男女ペアになる「○○ヒコ」と「○○ヒメ」を「2神」や「2柱」と数えることもあり、一貫性がない[20]。平田篤胤は、本居宣長の説を紹介しつつ、男女ペアの場合でなくとも数え方が異なる例が多数みられることを示し、分霊(ワケミタマ)かどうかで数え方が変わるのではないかとの仮説を示している[21]。
- ^ 『日本書紀』神武天皇紀にも示されるように、粘土(ハニ)からつくられる土器(天平瓮、厳瓮)は戦勝祈願などの祭祀にも用いられた。神武天皇紀では「自此始有厳瓮之置也」とあり、神武天皇が天香山の粘土で戦勝祈願を行って以来、神事に厳瓮を用いるようになったと説く(『日本書紀』神武天皇紀戊午年九月)[97]。『日本書紀』ではほかにも崇神天皇の10年9月に、逆賊の鎮圧に出発する際、「忌瓮」を用いて神事を執行する[97]。このとき反乱を率いているのは武埴安彦命(タケハニヤスヒコ)である[98]。
- ^ たとえば、神の数が多いこと、名前が出るだけの神が多いこと、イザナギ・イザナミが子孫の神々ほど崇拝の対象になっていないこと、この2神の交接により生まれた神よりもイザナギが黄泉の穢れを落とした時に生まれた神のほうが高貴であること、ツクヨミの出番が全く無いこと、獣や魚がほとんど登場しないこと、などを挙げている[100]。
- ^ たとえば、神武天皇の后となるヒメタタライスズヒメは、その母玉櫛媛が「うんこ中に神に性器をつつかれ[102]」たことで孕んだ娘である。
- ^ 歴史学者喜田貞吉は(1871-1939)は、大和民族は古くから農耕民族であったとした上で、古代農業の主要な肥料は糞尿だったと指摘した[103]。
- ^ 「厳厲」はきびしくはげしいこと[104]。
- ^ 彼らは反乱を起こすに先立ち、密かに天香具山の土を採取して占いを行う。天香具山はヤマトの国(倭国)の象徴であり、その土を盗むのは国を盗むことを意味する。彼らが土を盗んだという事実を知った天皇は、反乱の企てを察知する。この逸話は、神武天皇がヤマトの国を攻め奪る前に天香具山の土を盗んで土器を焼き、神事を行った故事に呼応している。[90]
- ^ 亦其卒怖走、屎漏于褌」(『日本書紀』神武天皇紀十年九月条)[115]
- ^ 『日本書紀』では、この地を「屎褌」(くそばかま)と呼ぶようになり、これが転訛して「樟葉」(現在の大阪市枚方市くずは一帯)になったとする[115]。
- ^ 陽捷行によれば、『日本書紀』第5段第10の一書に登場する磐土命(いはつつ)、底土命(そこつつ)、赤土命(あかつつ)も土の神[116]。
出典
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- ^ 『日本国語大辞典』、小学館、「かわやの神」。(JapanKnowledgeにて閲覧。)
- ^ a b c d e f g h i j k 「土壌と東西の神々 V-3 日本の土地神」
- ^ 『日本の神仏の辞典』、p.1053、「波邇夜須毘賣神」(中嶋・池谷)。
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- ^ a b c 「世界の神話と主な宗教に見られる土壌と大地」p.276
- ^ a b c 「土壌と東西の神々」pp.149-150「5.中国古代における土地神」
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- ^ a b c d e f g h 「土壌と東西の神々」pp.151-152「7.世界の神話と土壌」
書誌情報
古事記
- 『古事記』(新編日本古典文学全集 1)、校注・訳:山口佳紀・神野志隆光、小学館、1997年(第1刷第1刷)、2007年(第1版第7刷)。ISBN 4-09-658001-5
- 『口語訳 古事記 完全版』、訳・注釈:三浦佑之、文藝春秋、2002年(第1刷)、2020年(第28刷)。ISBN 978-4-16-321010-0
- 岩波文庫『古事記』、校注:倉野憲司、岩波書店、1963年(第1刷)、2020年(第91刷)。ISBN 4-00-300011-0
日本書紀
- 『新釈全訳 日本書紀 上巻(巻第一〜巻第七)』、講談社、訳・校注:神野志隆光・金沢英之・福田武史・三上喜孝、2021年。ISBN 978-4-06-515359-8
- 『日本書紀』(新編日本古典文学全集 2)、校注・訳:小島憲之・直木孝次郎・西宮一民・蔵中進・毛利正守、小学館、1994年(第1刷第1刷)、2006年(第1版第4刷)。ISBN 4-09-658002-3
- 河出文庫『現代語訳 日本書紀』、訳:福永武彦、河出書房新社、2005年(初版)、2013年(13刷)。ISBN 978-4-309-40764-7
- 講談社学術文庫『全現代語訳 日本書紀 上』、宇治谷孟、1988年(第1刷)、2019年(第66刷)。ISBN 4-06-158833-8
記紀研究
- 『六国史』、著:坂本太郎、編:日本歴史学会、吉川弘文館、昭和45年(1970年)第1刷、昭和61年(1986年)第4刷。ISBN 4-642-06527-X
- 『古事記と日本書紀』(講談社現代新書 1436)、著:神野志隆光、講談社、1999年(第1刷)、2020年(第23刷)。ISBN 4-06-149436-8
- 『複数の「古代」』(講談社現代新書 1914)、著:神野志隆光、講談社、2007年(第1刷)。ISBN 978-4-06-2879149
- 『日本書紀の世界』(講談社学術文庫 2220)、著:山田英雄、講談社、2014年(1979年刊行『日本書紀』の文庫版)。ISBN 978-4-06-292220-3
神道・日本神話
- 『古事類苑』(洋装本)神祇部第1巻、明治30年(1897年)。
- 『神道大辞典(縮刷版)』、編輯:下中彌三郎、初版:平凡社(昭和12年(1937年))、縮刷復刻版:臨川書店(昭和61年(1986年))。ISBN 4-653-01347-0
- 『日本の神話』、著:肥後和男、雪華社、昭和43年(1968年)。国立国会図書館書誌ID:000001106281
- 『日本の神々』(中公新書372)、著:松前健、中央公論社、昭和49年(1974年)。国立国会図書館書誌ID:000001241832
- 『日本神名辞典』、神社新報社、初版:平成6年(1994年)、第2版:平成7年(1995年)。ISBN 4-915265-66-8
- 『日本古代神祇事典』、編:吉田和典、中日出版社、平成12年(2000年)。ISBN 4-88519-158-0
- 『日本神話の神々 ―そのルーツとご利益』、著:戸部民夫、三修社、2003年。ISBN 978-4384031263
- 『クソマルの神話学』、著:東ゆみこ、蒼土社、2003年。ISBN 4-7917-6066-2
- 『神道史大辞典』、編:薗田稔・橋本政宣、吉川弘文館、平成16年(2004年)。ISBN 4-642-01340-7
- 『日本 神さま事典』、編:三橋健・白山芳太郎・島田潔 ・新井大祐、大法輪閣、第1版:平成17年(2005年)、第3版:平成21年(2009年)。ISBN 978-4-8046-1224-9
- 『新版 祝詞新講』、著:次田潤、、戎光祥出版、平成20年(2008年)。ISBN 978-4-900901-85-8
- 『社寺縁起伝説辞典』、編:志村有弘・奥山芳広、戎光祥出版、平成21年(2009年)。ISBN 978-4-900901-00-1
- 『日本の神様読み解き事典』、編著:川口謙二、柏書房、1999年(第1刷)、2009年(第9刷)。ISBN 4-7601-1824-1
- 『アジア女神大全』、編著:吉田敦彦+松村一男、青土社、2011年。ISBN 978-4-7917-6550-8
- 『日本神話を語ろう イザナキ・イザナミの物語』(歴史文化ライブラリー325)、著:中村修也、吉川弘文館、2011年。ISBN 978-4-642-05725-7
- 『古事記と日本の神々がわかる本』、著:吉田邦博、学研パブリッシング、2015年。ISBN 978-4-05-406340-2
- 「土壌と東西の神々」、著:谷山一郎(元農業環境技術研究所)・浅川晋(名古屋大学農学部)・奈良吉則(農業環境健康研究所)・程為国(山形大学農学部)・齋藤雅典(東北大学大学院農学研究科)・陽捷行(農業環境健康研究所)、日本土壌肥料学会、『日本土壌肥料学雑誌』87(2)、pp.147-152、2016年。
- 「V 土壌と東西の神々 V-3 日本の土地神」(日本土壌肥料学会講演要旨集61巻)、著:奈良吉主(公益財団法人農業・環境・健康研究所)・浅山雅司(神社本庁総合研究所)・陽捷行(公益財団法人農業・環境・健康研究所)、日本土壌肥料学会、2015年。
- 『マンガでわかる日本の神様』、監修:東條英利、誠文堂新光社、2017年、2019年(第3刷)。ISBN 978-4-416-71711-0
- 『神話のなかのヒメたち もうひとつの古事記』、著:産経新聞取材班、産経新聞出版、2018年。ISBN 978-4-8191-1336-6
日本史
- 中公文庫『日本の歴史 1 神話から歴史へ』、著:井上光貞、中央公論新社、1973年(初版)、2005年(改版)、2020年(改版9刷)。ISBN 978-4-12-204547-7
- 『角川日本地名大辞典28兵庫県』、編:「角川日本地名辞典」編纂委員会、角川書店、1988年。ISBN 4-04-001280-1
- 『日本史広辞典』、編:日本史広辞典編集委員会、山川出版社、1997年(第1版第1刷)。ISBN 4-634-62010-3
- 『江戸の糞尿学』、著:永井義男、作品社、2016年(第1刷)、2020年(第8刷)。ISBN 978-4-86182-555-2
- 『うん古典 うんこで読み解く日本の歴史』、著:大塚ひかり、新潮社、2021年。ISBN 978-4-10-335094-1
文学史
- 中公文庫『日本文学史 古代・中世篇一』、著:ドナルド・キーン、訳:土屋政雄、中央公論新社、2013年(初版)。ISBN 978-4-12-205752-4
ポップカルチャー
- 『日本の神々完全ビジュアルガイド』(The Quest for Hisoryシリーズ)、監修:椙山林継、カンゼン、2010年(初版)、2014年(第2刷)。ISBN 978-4-86255-068-2