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アベリサウルス科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アベリサウルス類から転送)
アベリサウルス科
生息年代: 中生代中期ジュラ紀後期白亜紀 170–66 Ma
カルノタウルス復元骨格
カルノタウルス復元骨格(ケノーシャ群立郡立恐竜発見博物館)
地質時代
約1億7000万 ~ 約6604万年前

(中生代中期ジュラ紀後期白亜紀)

分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
階級なし : 真竜盤類 Eusaurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
下目 : ケラトサウルス下目 Ceratosauria
: アベリサウルス科 Abelisauridae

本文参照

アベリサウルス科 (Abelisauridae)は、ケラトサウルス下目に属する獣脚類恐竜分類群の一つ。アベリサウルス科は白亜紀の間、南の超大陸ゴンドワナ大陸に生息していた。そして今日、彼らの化石はアフリカ大陸南米インドおよびマダガスカルにおいて一般的である。単離したポルトガルの後期ジュラ紀から報告されている[1]。そしてヨーロッパのアベリサウルス科の存在はフランスのジュラ紀のアルコヴェナトルで確認された[2]。アベリサウルス科の化石記録上の最初の出現は、ジュラ紀中期初期であった。そして6600万年前の中生代の終わりまで少なくとも2つの属が生き残っていた[3]。一般的に白亜紀末の南半球の支配者として認知されているが、一部の地域では陸棲ワニ類(例えばバウルスクスなど)に支配権を奪われていた可能性がある[4][5]

多くの獣脚類のように、アベリサウルス類は動物食性の二足歩行動物だった。彼らは太短い前肢および溝や孔だらけの頭骨によって特徴付けられる。カルノタウルスに代表されるような多くのアベリサウルス類は、前肢が痕跡程度で、頭骨はより短く、目の上に骨質の突起が伸びる。ほとんどの既知のアベリサウルス類は全長が5から9mの間である。アフリカ、ケニアトゥルカナ北部で発見された未命名の新種は、全長11〜12mになる可能性がある[6]。よく知られるようになる以前、アベリサウルス類の断片的な化石は南米のティラノサウルス類と誤同定されることがあった[7][2]マジュンガサウルスヴィアヴェナトル(Viavenator)を元に脳や内耳の研究が進められている[8]

社会性

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パタゴニアからはアベリサウルス科の足跡化石(差し渡し28センチメートル)が見つかっている。それによると彼らには一定の社会性があった可能性がある[9]

記載

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5属のアベリサウルス類のサイズ比較。カルノタウルス、エクリクシナトサウルス、スコルピオヴェナトル、アウカサウルス、マジュンガサウルス

アベリサウルス類の後肢は典型的なケラトサウルス類のそれで、足根骨踵骨は互いに癒合し、脛骨とも癒合して脛足根骨となっている。脛骨は大腿骨よりも短く、後肢をずんぐりさせている。足には3本の機能趾(第2、第3、第4)と接地しない第1趾がある[10]

頭骨

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アベリサウルスの頭骨

また頭骨のプロポーションは多様である。アベリサウルス類の頭骨は一般的にとても高く短い。 例えばカルノタウルスでは高さと長さが同じくらいである。 前上顎骨がとても高いので、口吻が鈍く、多くの他の獣脚類のように先細りになっていない [6]

2種類の頭骨要素、涙骨後眼窩骨は、眼窩の前後から突出し、ほぼ2つの区画に分かれている。眼球は上部の区画に位置し、カルノタウルスではわずかに外側に傾いており、おそらくある程度の両眼視野を提供していた。涙骨と前眼窩骨も眼窩上で合わさり、眼の上に隆起または角を形成した[6]

頭骨の広範囲に渡って多くの長い溝や孔や突起が見られる。他のケラトサウルス類のように、前頭骨が癒合している。カルノタウルス亜科は一般的に骨質の突起を頭骨に有する。カルノタウルスは目の上に外側に伸びる一対の角をもつ。 それと近縁なアウカサウルスも同じ部分により小さな突起をもつ。 マジュンガサウルスラジャサウルスは頭頂部に一つの角またはドームを備える。これらの構造物は、現生動物の角のように、種の認識か威嚇の為のディスプレイだったと考えられている[10][11][12]アルコヴェナトルは後眼窩骨(とおそらく涙骨)の背側に、頭骨の高さより厚く上に立ち上がる、のある頑丈な骨の隆起をもつ [2]。 おそらく、この皺だらけの目の上の峰は、生体ではケラチンに覆われたディスプレイ用の構造だった。

前肢

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Drawing of the hand bones of Carnotaurus
カルノタウルスの前肢[13]

アベリサウルス類の前肢に関する情報はエオアベリサウルス、アウカサウルス、カルノタウルス、およびマジュンガサウルスから知られており、それが退化機関だったことがうかがえる[14]。 前腕の骨は極端に短く、上腕骨に対してカルノタウルスは25%、アウカサウルスは33%の長さしかない。腕全体はまっすぐに固定されていて、肘は動かすことができなかった[14]

典型的なケラトサウルス類のように、アベリサウルス類の前肢は4本指であるが、類似点はそれしかない。手根骨は存在せず、中手骨が直接前腕部についている。第1と第4指には指骨がなく、第2と第3指には第2指骨だけがある。外側の指は極端に短く、可動性はない。エオアベリサウルスの末節骨は非常に小さく、カルノタウルス亜科では存在しない[14]

ノアサウルスやケラトサウルスのようなより原始的な親戚では、より長く可動性のある腕があり、指と爪もある[15]。古生物学者アレクサンダー・バルガス(Alexander O. Vargas)は、このグループ内の前肢の進化の主な理由は、前肢の発達を調整する二つの遺伝子 HOXA11HOXD11 の機能喪失、つまり遺伝子的欠陥であると示唆した[16]

分布

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アベリサウルスのイラストレーション

アベリサウルス上科は白亜紀における典型的な生物群集とみなされるが、最初期のアベリサウルス類化石はジュラ紀中期のアルゼンチンから知られており、その時期マダガスカルにも生息していた可能性もある[17][18]。アベリサウルス類の可能性がある化石(ばらけた左の脛骨、右の大腿骨、右の脛骨)はタンザニアの後期ジュラ紀のテンダグル層でも発見されている[19]。アベリサウルス類化石は主に、ゴンドワナ大陸を成していた南半球から知られる。1985年に記載された時はカルノタウルスとアベリサウルスだけが知られていた。どちらも白亜紀後期の南米のものである。アベリサウルス類は白亜紀後期にはインドとマダガスカルにも分布していた。インドとマダガスカルは白亜紀においては近くに接していた。 アフリカ大陸からアベリサウルス類が見つからないことは、約1億年前にゴンドワナからアフリカが分離した後にアベリサウルス類が進化した事を示していると考えられていたが[20]、ルゴプスやその他のアベリサウルス類の化石が白亜紀中頃のアフリカから発見された事により、その仮説は否定された[21][22]。白亜紀中頃のアベリサウルス類は今日、南米からよく知られており、このグループがゴンドワナ大陸の分裂前に存在していた事を示唆している[23][24][25]。 2014年、フランス南部で見つかったアルコヴェナトルが記載され、ヨーロッパ初のアベリサウルス類の存在の明確な証拠となった。アルコヴェナトルはマダガスカルのマジュンガサウルスおよびインドのアベリサウルス類に非常に類似しているが、南米のアベリサウルス類とは似ていない。アルコヴェナトル、マジュンガサウルス、そしてインドのアベリサウルス類は新たなるクレードマジュンガサウルス亜科を構成した[2]

分類

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カルノタウルスの復元図

古生物学者ホセ・ボナパルテとフェルナンド・ノバスは1985年にアベリサウルスを記載する際にアベリサウルス科を命名した。その名称は、アベリサウルスを発見したロベルト・アベルへの献名と古代ギリシャ語でトカゲを意味する単語を組み合わせたものである[26]

アベリサウルス科はケラトサウリアとアベリサウルス上科の下位分類群である。アベリサウルス上科にはノアサウルス科も内包される。 系統分類学にはいくつかの定義がある。元々はアベリサウルスとカルノタウルスの最近共通祖先とその全ての子孫を含むノードベースの分類群として定義されていた[27][28]

後に、それはノアサウルスよりもアベリサウルス(またはより標本の完全性の高いカルノタウルス)に近縁な全ての動物を含むステムベースのタクソンとして再定義された[12]。ノードベースの定義には、アベリサウルスよりも基盤的であると考えられているルゴプスやイロケレシアなどの動物は含まれず、ステムベースの定義にはそれらが含まれる[29]。アベリサウルス科の中にはサブグループ、カルノタウルス亜科とマジュンガサウルス亜科があり、カルノタウルス亜科内でカルノタウルスとアウカサウルスはカルノタウルス族に統合される[21]

共有派生形質

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カルノタウルスの骨格図

アベリサウルス類の完全な骨格は、カルノタウルスやアウカサウルスのような最も派生的なものでのみ記載されており、グループ全体の骨格の特徴を定義付けることをより困難にしている。ただし、ほとんどは少なくともいくつかの頭骨から知られているため、既知の共有形質は主に頭骨から得られる[10]。多くのアベリサウルス類の頭骨の特徴はカルカロドントサウルス類と共通している。これらの共通の特徴は、南アメリカでアベリサウルス類がカルカロドントサウルス類に取って代わったように思われるという事とともに、2つのグループに系統関係があるという示唆をもたらした[27]。しかしながら、そのような関係を示唆する発見はこれまでになされていない。頭骨を除けば、アベリサウルス類とカルカロドノサウルス類は非常に異なっており、むしろアベリサウルス類はケラトサウルスに、カルカロドントサウルス類はアロサウルスに似ている[10]

系統解析

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マジュンガサウルスの既知の要素

以下のクラドグラムは2014年のトルトーサらによるものである[2]

アベリサウルス科

クリプトプス

ルゴプス

ゲヌサウルス

MCF-PVPH-237 アベリサウルス類

ゼノタルソサウルス

タラスコサウルス

ラ・ボウンカルデのアベリサウルス類(La Boucharde abelisaurid)

 
マジュンガサウルス亜科

プシューのアベリサウルス類(Pourcieux abelisaurid)

アルコヴェナトル

マジュンガサウルス

インドサウルス

ラヒオリサウルス

ラジャサウルス

ブラキロストラ

イロケレシア

 

エクリクシナトサウルス

 

スコルピオヴェナトル

 
カルノタウルス亜科

アベリサウルス

アウカサウルス

ピクノネモサウルス

キルメサウルス

カルノタウルス

イロケレシアは元々アベリサウルス上科の姉妹群として記載されていた[23]。ただし、セレノは暫定的にノアサウルス類よりもアベリサウルスに近い位置に配置した。この結果は他のいくつかの分析とも合致する[10][24][30]。 したがって、ステムベースの定義が使用される場合、イロケレシアおよびルゴプスは基盤的アベリサウルス類である。ただし、アベリサウルスよりも基盤的であるため、ノードベースの定義が採用されている場合、それらはアベリサウルス科の外に位置付けられる。エクリクシナトサウルスも2004年に報告されたため、セレノの分析には含まれていなかった。しかし、ホルヘ・カルボらによって行われた独立した分析は、エクリクシナトサウルスがアベリサウルス類であることを示している[24]

何人かの科学者はアルゼンチンのゼノタルソサウルスとインドのコンプソスクスを基盤的アベリサウルス類に含める[31][32]。しかし他の研究者は、それらはアベリサウルス上科の外部に位置付けている[33]。フランスのゲヌサウルスとタラスコサウルスもまたアベリサウルス類と言われるが、 どちらも断片的であり恐らく基盤的ケラトサウリアであると思われる[10]

アベリサウルス類に近縁なエオアベリサウルスの骨格

2008年のスコルピオヴェナトルの記載に伴って、南米のアベリサウルスル類にフォーカスした別の系統解析が発表された。その結果、イロケレシアを含む全ての南米のアベリサウルス類(アベリサウルスを除く)がカルノタウルス亜科のサブクレードとしてグループ化され、ブラキロストラと名付けられた[34]。同年、サンプソンらは新しく広範なケラトサウリアの系統解析を発表した[35]。エオアベリサウルスの説明で、これらの分析を組み合わせて、10個の新しい特徴を追加された。以下のクラドグラムはその分析に基づく[36]

ケラトサウリア 

ベルベロサウルス

デルタドロメウス

スピノストロフェウス

リムサウルス

エラフロサウルス

 ネオケラトサウリア 
 ケラトサウルス科 

ケラトサウルス

ゲニオデクテス

 アベリサウルス上科 
 ノアサウルス科 

ラエヴィスクス

マシアカサウルス

ノアサウルス

ヴェロキサウルス

 アベリサウルス科 

エオアベリサウルス

ルゴプス

アベリサウルス

 カルノタウルス亜科 

マジュンガサウルス

インドサウルス

ラジャサウルス

 ブラキロストラ 

イロケレシア

エクリクシナトサウルス

スコルピオヴェナトル

 カルノタウルス族 

カルノタウルス

アウカサウルス

Timeline of descriptions of genera
21st century in paleontology20th century in paleontology2090s in paleontology2080s in paleontology2070s in paleontology2060s in paleontology2050s in paleontology2040s in paleontology2030s in paleontology2020s in paleontology2010s in paleontology2000s in paleontology1990s in paleontology1980s in paleontology1970s in paleontology1960s in paleontology1950s in paleontology1940s in paleontology1930s in paleontologyThanos simonattoiArcovenatorRahiolisaurusSkorpiovenatorKryptopsEkrixinatosaurusRugopsRajasaurusAucasaurusPycnonemosaurusQuilmesaurusIlokelesiaTarascosaurusXenotarsosaurusCarnotaurusAbelisaurusMajungasaurusIndosuchusIndosaurus21st century in paleontology20th century in paleontology2090s in paleontology2080s in paleontology2070s in paleontology2060s in paleontology2050s in paleontology2040s in paleontology2030s in paleontology2020s in paleontology2010s in paleontology2000s in paleontology1990s in paleontology1980s in paleontology1970s in paleontology1960s in paleontology1950s in paleontology1940s in paleontology1930s in paleontology

出典・脚注

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