HOAP (ロボット)
HOAPシリーズは、富士通オートメーションによって開発された研究用ヒューマノイドロボットのプラットフォーム[1]。HOAPとは「Humanoid for Open Architecture Platform」の略称[2]。
「人間協調・共存型ロボットシステム」(HRP)の[3]仮想ロボットシミュレータの計算結果を検証するために開発された[4] 小型ヒューマノイドをベースに、低価格化とオープンアーキテクチャを実現して商品化したもの[5]。
歴史
[編集]2001年、富士通は本格的な研究開発用人間型ロボットとして国内で初めてHOAP-1を商品化した[2]。2003年にHOAP-2が[6]、2005年にHOAP-3が発売された[7]。
HOAP-1
[編集]HOAP-1の身長は480mm、重量は約6.0kg。DCブラシレスモータを使用。OSはRT Linuxを採用し、ユーザが自由にプログラミングできる。USBによる体内バスで分散制御を行っており、機能拡張が可能。シミュレータが添付され、プログラム開発の動作検証を行うことができる[2]。
HOAP-2の仕様
[編集]HOAP-2の身長は500mm、重量は約7.0kg。腰、首、手に自由度の追加とモータユニットの強化を行い、モータに電流制御モードを追加して滑らかな動作が可能となった[2]。2003年12月には運動生成ソフトウェア「NueROMA」も販売し、ニューラルネットワークを用いて力学的専門知識がなくても運動生成が可能となった[8]。 2007年にはHOAP-2のモデルがロボカップ#シミュレーションリーグに採用された[9]。
HOAP-2の機能
[編集]NueROMAはニューロン自体には非線形性を持たず摂動を用いて神経振動子を実現し[10]、物のある方向に顔を向けて掴み[6]字を書く[11]、相撲の四股を踏むなどが可能[12]。HOAP-2を用いた研究の例としては、ステレオカメラによる距離計測でボール付近へ移動しパターゴルフを実現する研究や[13]ホワイトボードに書かれた文字を消す技能の獲得を通じた人型ロボットにおけるハイブリッド制御の研究が挙げられる[14]。
HOAP-3
[編集]HOAP-3の身長は60cm、体重は8.8kg。可動軸を首、手に追加し、CCDセンサー、マイク、スピーカー、LED、測距センサー、把持力センサーを追加。音声認識、音声合成、画像認識、無線制御などが行える[7]。
出典
[編集]- ^ 村瀬有一 et al. 2005, p. 48.
- ^ a b c d 木村公一 & 村瀬有一 2004, p. 11.
- ^ 中村仁彦 et al. 2001, p. 28.
- ^ 中村仁彦 et al. 2001, p. 35.
- ^ 木村公一 & 村瀬有一 2004, p. 10.
- ^ a b 富士通オートメーション株式会社 2003.
- ^ a b 富士通オートメーション株式会社 2005.
- ^ 木村公一 & 村瀬有一 2004, p. 12.
- ^ 内種岳詞, 山本将司 & 畠中利治 2011, p. 1021.
- ^ 永嶋史朗 2004, p. 182.
- ^ 株式会社富士通研究所 2003.
- ^ 永嶋史朗 2004, p. 185.
- ^ 谷田浩平 et al. 2010, p. 2P1-D07.
- ^ 佐藤冬樹 et al. 2010, p. 426.
外部リンク
[編集]- 公式ウェブサイト
- 中村仁彦、比留川博久、山根克、梶田秀司、横井一仁、藤江正克、高西淳夫、藤原清司 ほか「仮想ロボットプラットフォーム」『日本ロボット学会誌』第19巻第1号、日本ロボット学会、2001年、28-36頁、CRID 1390001204727165952、doi:10.7210/jrsj.19.28、ISSN 02891824、NAID 10007545432、NCID AN00141189、OCLC 9660669084、国立国会図書館書誌ID:5634076、2024年1月8日閲覧。
- 株式会社富士通研究所「世界初! 構成を動的に変更可能なニューラルネットを用いた ヒューマノイドロボットの動作学習に成功」『PRESS RELEASE』、Fujitsu Japan、2003年、2024年1月8日閲覧。
- 富士通オートメーション株式会社「可動軸を増やし表現力を強化した「HOAP-2」新発売」『PRESS RELEASE』、川崎営業所 営業統括部 営業部 営業課 HOAP担当、2003年、 オリジナルの2003年4月24日時点におけるアーカイブ、2024年1月8日閲覧。
- 富士通オートメーション株式会社「ヒューマノイドロボット 「HOAP-2」」『PRESS RELEASE』、川崎営業所 営業統括部 営業部 営業課 HOAP担当、2003年、 オリジナルの2003年4月24日時点におけるアーカイブ、2024年1月8日閲覧。
- 木村公一、村瀬有一「「HOAP」シリーズの事業化」『日本ロボット学会誌』第22巻第1号、日本ロボット学会、2004年、10-12頁、CRID 1390282679702815488、doi:10.7210/jrsj.22.10、ISSN 02891824、NAID 10011947655、NCID AN00141189、OCLC 9660678069、国立国会図書館書誌ID:6824611、2024年1月8日閲覧。
- 永嶋史朗「ヒューマノイドロボット動作生成システム-NueROMA-」『日本ロボット学会誌』第22巻第2号、日本ロボット学会、2004年、182-185頁、CRID 1390001204725259136、doi:10.7210/jrsj.22.182、ISSN 02891824、NAID 10012680780、NCID AN00141189、OCLC 9660982997、国立国会図書館書誌ID:6886309、2024年1月8日閲覧。
- 村瀬有一、永嶋史朗、安川裕介、Zaier Riadh、境克司、木村公一、舘野茂夫、石川日吉 ほか「小型ヒューマノイドロボットプラットフォーム―HOAP‐1,‐2およびNueROMA―」『日本ロボット学会誌』第23巻第1号、日本ロボット学会、2005年、48-49頁、CRID 1390282679702519424、doi:10.7210/jrsj.23.48、ISSN 02891824、NAID 10014102995、NCID AN00141189、OCLC 9661038592、国立国会図書館書誌ID:7220142、2024年1月8日閲覧。
- 富士通オートメーション株式会社「小型ヒューマノイドロボット「HOAP-3」新発売」『PRESS RELEASE』、川崎営業所 営業統括部 営業部 営業課 HOAP担当、2005年、 オリジナルの2005年7月7日時点におけるアーカイブ、2024年1月8日閲覧。
- 富士通オートメーション株式会社「ヒューマノイドロボット 「HOAP-3」」『富士通オートメーション株式会社』、富士通オートメーション株式会社、2005年、 オリジナルの2005年7月8日時点におけるアーカイブ、2024年1月8日閲覧。
- 谷田浩平、杉山正治、小枝正直、吉川恒夫「2P1-D07 ヒューマノイドロボットによるパターゴルフ動作の研究」『ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集』第0号、日本機械学会、2010年、_2P1-D07_1-_2P1-D07_4、CRID 1390001205938070656、doi:10.1299/jsmermd.2010._2p1-d07_1、ISSN 2424-3124、NAID 110008742123、NCID AA11902933、OCLC 9648221137、国立国会図書館書誌ID:028080529、2024年1月8日閲覧。
- 佐藤冬樹、西井達哉、高橋準、吉田祐貴、三橋勝、Petar Kormushev、金宮好和「HOAP-2 によるホワイトボードに書かれた文字を消す作業の実現」『システムインテグレーション部門講演会』第11号、仙台、2010年、426-429頁、hdl:10044/1/26094、2024年1月8日閲覧。
- 内種岳詞、山本将司、畠中利治「RoboCup 3D Soccer Simulation における歩行動作獲得」『日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集』第27巻第0号、日本知能情報ファジィ学会、2011年、241-241頁、CRID 1390001205674445440、doi:10.14864/fss.27.0.241.0、ISSN 1341-9080、NAID 130004591844、NCID AN00141189、OCLC 9655864686、国立国会図書館書誌ID:000008338575、2024年1月8日閲覧。