「カリウム」の版間の差分
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{{出典の明記|date=2010年3月}} |
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{{Elementbox_isotopes_decay3 | mn=40 | sym=K | na=0.012 % | hl=[[1 E16 s|1.248(3) × 10<sup>9</sup>]] [[年|y]] | |
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dm1=[[ベータ崩壊|β<sup>-</sup>]] | de1=1.311 | pn1=40 | ps1=[[カルシウム|Ca]] | |
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dm2=[[電子捕獲|ε]] | de2=1.505 | pn2=40 | ps2=[[アルゴン|Ar]] | |
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dm3=[[陽電子放出|β<sup>+</sup>]] | de3=1.505 | pn3=40 | ps3=[[アルゴン|Ar]] |
dm3=[[陽電子放出|β<sup>+</sup>]] | de3=1.505 | pn3=40 | ps3=[[アルゴン|Ar]]}} |
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{{Elementbox_isotopes_stable | mn=41 | sym=K | na=6.73 % | n=22}} |
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'''カリウム''' ({{lang-en-short|potassium}}) は[[原子番号]]19の[[元素]]。[[元素記号]]は '''K'''。[[アルカリ金属]]元素の一つで、[[典型元素]]である。[[医学|医]][[薬学]]や[[栄養学]]などの分野では[[英語]]の'''ポタシウム'''(ポタッシウム)が使われることもある。和名では、'''加里'''(カリ)または'''剥荅叟母'''(ぽたしうむ)という当て字がされる。[[生物]]にとっての[[必須元素]]の一つ。[[植物]]の生育にも欠かせないため、[[肥料]]3要素の一つにも数えられる。 |
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又、カリウムの単体金属を指す。[[消防法]]第2条第7項及び別表第一第3類1号により第3類危険物に指定されている<ref>{{cite web | url = http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO186.html | title = 消防法 | publisher = [[総務省]] | accessdate = 2011-5-15}}</ref>。 |
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'''カリウム'''({{lang-en-short|potassium}})は[[原子番号]]19の[[元素]]。[[元素記号]]は'''K'''。[[アルカリ金属]]元素の一つで、[[典型元素]]である。[[医学|医]][[薬学]]や[[栄養学]]などの分野では[[英語]]の'''ポタシウム'''(ポタッシウム)が使われることもある。和名では、'''加里'''(カリ)または'''剥荅叟母'''(ぽたしうむ)という当て字がされる。[[生物]]にとっての[[必須元素]]の一つ。[[植物]]の生育にも欠かせないため、[[肥料]]3要素の一つにも数えられる。 |
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又、カリウムの単体金属を指す。 |
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[[消防法]]第2条第7項及び別表第一第3類1号により第3類危険物に指定されている。 |
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== 単体の特徴 == |
== 単体の特徴 == |
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[[File:FlammenfärbungK.png|thumb|left|カリウムの炎色反応]] |
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銀白色の[[金属]]で、常温・常圧で安定な結晶構造は[[体心立方構造]] (BCC) である。比重は0.86で水より軽い。[[融点]]は63.7{{℃}}、[[沸点]]は774{{℃}}。軟らかい金属で、反応性は[[ナトリウム]]より高い。[[水]]、[[ハロゲン元素]]と激しく発火して反応する。[[空気]]中においても[[酸素]]との接触により反応熱で自然発火することもある<ref name=daijiten>『化学大辞典』 共立出版、1993年</ref>。[[アルコール]]とも反応して[[アルコキシド]]を生成する<ref name=Cotton> F.A. コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年</ref>。高温では[[水素]]とも反応し[[水素化カリウム]]を生成する。炎色反応は淡紫色。 |
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銀白色の[[金属]]で、常温・常圧で安定な結晶構造は[[体心立方構造]] (BCC) である<ref name=basic24>[[#櫻井鈴木中尾2003|櫻井、鈴木、中尾 (2003)]] 24頁。</ref>。比重は0.86で水より軽く、[[リチウム]]に次いで2番目に比重の軽い金属である。[[融点]]は63.7 {{℃}}、[[沸点]]は774 {{℃}}<ref name=basic24/>。[[ナイフ]]で簡単に切れる軟らかい金属である。アルカリ金属類の窒素以外の試薬に対する反応性は[[電気陰性度]]が低いほど高くなるため、カリウムは、より電気陰性度の大きい[[リチウム]]、[[ナトリウム]]よりも反応性が高く、より電気陰性度の小さい[[ルビジウム]]、[[セシウム]]よりは反応性が低い<ref>[[#コットンウィルキンソン1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 249-250頁。</ref>。切断してすぐのカリウムの断面は銀色の外観をしているが、空気によってただちに灰色へと変色していく<ref name=webelements/>。[[水]]、[[ハロゲン元素]]と激しく発火して反応する。カリウムと水との反応においては、反応によって[[水素]]が発生し、さらに発生した水素が引火するに足る反応熱を生じるため爆発の危険がある<ref name=Vollhardt361/>。[[空気]]中においても[[酸素]]との接触により反応熱で自然発火することもある<ref name=daijiten>『化学大辞典』 共立出版、1993年</ref>。そのため金属カリウムの保管は空気や水から遮断する必要があり、他のアルカリ金属と同様に鉱油や[[ケロシン]]のようなアルカリ金属類と直接反応をしない[[炭化水素]]中やアルゴンで満たしたガラスアンプル中などで保管される<ref name=murakami/>。[[アルコール]]とも反応して[[アルコキシド]]を生成する<ref name=Cotton>[[#コットンウィルキンソン1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 253頁。</ref>。高温では[[水素]]とも反応し[[水素化カリウム]]を生成する。 |
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[[炎色反応]]において、カリウムおよびその化合物は淡紫色を呈する。主要な輝線は波長404.5 nmの紫色のスペクトル線および、波長769.9 nmと766.5 nmの赤色の対となったスペクトル線(双子線)である<ref name=chitani83>[[#千谷1959|千谷 (1959)]] 83頁。</ref>。ナトリウムと共存していると、ナトリウムの強い黄色の発色によって覆い隠されることもあるが、[[コバルトガラス]]を使うことでこのナトリウムの強く黄色い炎色を除去することができる<ref>{{cite web | publisher = About.com | title = Qualitative Analysis – Flame Tests | author = Anne Marie Helmenstine | url = http://chemistry.about.com/library/weekly/aa110401a.htm | accessdate = 2011-5-9}}</ref>。溶液中のカリウム濃度は、一般に{{仮リンク|フレーム測光法|en|Photoelectric flame photometer}}や[[原子吸光|原子吸光分析]]、[[誘導結合プラズマ|誘導結合プラズマ発光分光分析]]、{{仮リンク|イオン選択電極|en|Ion selective electrode}}によって測定される。 |
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== 同位体 == |
== 同位体 == |
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{{main|カリウムの同位体}} |
{{main|カリウムの同位体}} |
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カリウムは宇宙において、より軽い元素から合成される([[元素合成]])。カリウムの安定同位体は、[[超新星]]においてより軽い元素が急速に[[中性子捕獲]]することによって[[R過程]]を経由して形成される([[超新星元素合成]])<ref>{{citation | author = A.G.W. Cameron | title = Stellar Evolution, Nuclear Astrophysics, and Nucleogenesis | journal = CRL-41 | month = June | year = 1957}} "http://www.fas.org/sgp/eprint/CRL-41.pdf"</ref>。 |
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[[質量数]]40のカリウム([[カリウム40]])は[[放射性同位体]]である。[[半減期]]はおよそ12.5億年であるため、[[地球]]創生時にとりこまれたものが未だに[[自然|自然界]]に残存している(元をただせば[[超新星|超新星爆発]]で核反応がおこって生成・放出されたものとされる)。[[大気]]中に存在する[[アルゴン]]の多くの部分は、このカリウム40の崩壊により生成したものだと考えられている。また、大気中のアルゴン40の一部は[[宇宙線]]([[太陽]]からの[[放射線]])と反応することによりカリウム40となる。このためカリウム40は[[炭素14]]とともに常時生成されている。人体に含まれる量が多いため、人間の[[内部被曝]]源として、炭素14と並んで大きな部分を占める。 |
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カリウムには24種類の同位体が存在することが知られている。これらの内、自然に産出するものはカリウム39 (93.3 %)、[[カリウム40]] (0.0117 %)、[[カリウム41]] (6.7 %) の3つである。 |
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[[File:Potassium-40-decay-scheme.svg|thumb|left|カリウム40の崩壊]] |
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これらのうち、[[質量数]]40のカリウム40は[[放射性同位体]]である。[[半減期]]はおよそ12.5億年である<ref name=NUBASE>{{citation | first = Audi | last = Georges |title = The NUBASE Evaluation of Nuclear and Decay Properties | journal = Nuclear Physics A | volume = 729 | pages = 3–128 | publisher = Atomic Mass Data Center | year = 2003 | doi = 10.1016/j.nuclphysa.2003.11.001}}</ref>ため、[[地球]]創生時にとりこまれたものが未だに[[自然|自然界]]に残存している(元をただせば[[超新星|超新星爆発]]で核反応がおこって生成・放出されたものとされる)。カリウム40の内11.2 %は、[[電子捕獲]]もしくは[[陽電子放出]](β<sup>+</sup>崩壊)によって[[アルゴン40]]へと[[放射性崩壊|崩壊]]する。[[大気]]中に存在する[[アルゴン]]の多くの部分は、このカリウム40の崩壊により生成したものだと考えられている。また、大気中のアルゴン40の一部は[[宇宙線]]([[太陽]]からの[[放射線]])と反応することによりカリウム40となる。このためカリウム40は[[炭素14]]とともに常時生成されている。また、カリウム40の内88.8 %は陰電子崩壊(β<sup>-</sup> 崩壊)によって非放射性の安定同位体である[[カルシウム40]]となる。 |
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カリウム40は、カリウムが商用の代用塩として大量に用いられるほどに自然界から十分な量が産出し、教室での実演のための放射線源に用いられる。このようにカリウムは大量に存在する上に生体に含まれる量も多いため、健康な動物や人間にとって[[炭素14]]よりも大きな最大の[[内部被曝]]源である。70 kgの体重の人間において、1秒間にカリウム40はおよそ4,400個崩壊する<ref>{{cite web | url = http://www.fas.harvard.edu/~scdiroff/lds/QuantumRelativity/RadioactiveHumanBody/RadioactiveHumanBody.html | title = background radiation – potassium-40 – γ radiation | accessdate = 2011-5-15}}</ref>。天然カリウムの活性は31 [[ベクレル|Bq]]/gである<ref>{{citation | url = http://books.google.de/books?id=KRVXMiQWi0cC&pg=PA32 | page = 32 | title = Radioactive fallout in soils, crops and food: a background review | isbn = 9789251028773 | author1 = Winteringham, F. P. W | author2 = Effects, F.A.O. Standing Committee on Radiation | author3 = Land And Water Development Division, Food and Agriculture Organization of the United Nations | author4 = Agriculture, Joint FAO/Iaea Division of Nuclear Techniques in Food and | date = 1989-12-31 | accessdate = 2011-5-15}}</ref>。 |
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== 産出 == |
== 産出 == |
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[[File:PotassiumFeldsparUSGOV.jpg|thumb|left|upright|カリウムを含んでいる[[長石]]]] |
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工業原料としてのカリウム資源はほぼすべて塩化カリウムの形で採取される。年間生産量は2650万トン(2002年)である。主な産地はカナダ (31%)、ロシア連邦、ベラルーシ。推定埋蔵量は100億トン。カリウムは植物の成長に必須であるため、塩化カリウムの95%はそのまま、もしくは硫酸カリウムの形で肥料(カリ肥料)として用いられる。残りの5%が水酸化カリウムを経由して、炭酸カリウムとなる。 |
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[[単体]]のカリウムは、カリウムのその強い反応性のために自然中からは産出しない<ref name=HollemanAF>{{citation | publisher = Walter de Gruyter | year = 1985 | edition = 91–100 | pages = | isbn = 3-11-007511-3 | title = Lehrbuch der Anorganischen Chemie | first = Arnold F. | last = Holleman | coauthors = Wiberg, Egon; Wiberg, Nils; | chapter = Potassium | language = German}}</ref>。カリウムは様々な化合物として[[地殻]]のおよそ2.6 %を占めており、地殻の2.8 %を占めるナトリウムに次いで地殻中で7番目に存在量の多い元素である([[地殻中の元素の存在度]]も参照)<ref>{{citation | url = http://books.google.de/books?id=iXfhFnoQBQ0C&pg=PA80 | publisher = Cengage Learning | year = 2007 | title = Physical geology: exploring the Earth | first1 = James Stewart | last1 = Monroe | first2 = Reed | last2 = Wicander | first3 = Richard W. | last3 = Hazlett | page = 80 | isbn = 9780495011484}}</ref>。例えば[[花崗岩]]はカリウムをおおよそ5 %と、地殻の平均量以上を含んでいる。金属カリウムは非常に電気的に陽性であり([[電気陰性度]])、また非常に反応性が高いため、鉱石から直接生産することは難しい<ref name=webelements>{{cite web | publisher = Webelements | title = Potassium: Key Information | url = http://www.webelements.com/webelements/elements/text/K/key.html | author = Mark Winter | accessdate = 2011-5-8}}</ref>。 |
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工業原料としてのカリウム資源はほぼすべて塩化カリウムの形で採取される。年間生産量は3500万トン(K<sub>2</sub>O 換算、2008年)である<ref name=nirs>{{cite web | title = 自然起源放射性物質データベース(窒素肥料・リン酸肥料・カリ肥料) | url = http://www.nirs.go.jp/db/anzendb/NORMDB/PDF/24.pdf | publisher = 独立行政法人 放射線医学総合研究所 | format = pdf | pages = pp.10-11 | accessdate = 2011-5-8}}</ref>。2008年において、主な産地はカナダ (30.0 %)、ロシア連邦 (19.2 %)、ベラルーシ (14.2)<ref name=nirs/>。推定埋蔵量は K<sub>2</sup>O 換算でおよそ180億トン<ref name=nirs/>。カリウムは植物の成長に必須であるため、塩化カリウムの90 %以上はそのまま、もしくは硫酸カリウムの形で肥料(カリ肥料)として用いられる<ref name=jetoc>{{cite web | url = http://www.jetoc.or.jp/safe/doc/J7447-40-7.pdf | title = SIDS 初期評価プロファイル 塩化カリウム | publisher = 一般社団法人 日本化学物質安全・情報センター | format = pdf | pages = p.2 | accessdate = 2011-5-8}}</ref>。残りは水酸化カリウムを経由して、炭酸カリウムとなる。 |
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== 商業生産 == |
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[[File:Museo de La Plata - Silvita.jpg|thumb|left|ニューメキシコで産出された[[シルバイト]]]] |
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純粋なカリウム金属は、19世紀初期に[[ハンフリー・デービー]]がカリウムを単離した頃からほとんど変わらないプロセスで、[[水酸化カリウム]]の電気分解によって単離される<ref name=webelements/>。熱的な方法もまた、塩化カリウムを用いたカリウム生産において用いられる。 |
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いくつかの[[鉱石]]はカリウム含有量が非常に高く、例えば{{仮リンク|カーナライト|en|Carnallite}}や{{仮リンク|ラングバイナイト|en|Langbeinite}}、{{仮リンク|ポリハライト|en|Polyhalite}}、{{仮リンク|カリ岩塩|en|Sylvite}}などがあり、これらのカリウム鉱石を用いて、商業生産の可能な範囲においてカリウム塩類は抽出される<ref name=indus>{{citation | url = http://books.google.com/books?id=zNicdkuulE4C&pg=PA723 | title =Industrial minerals & rocks: commodities, markets, and uses | publisher = Society for Mining, Metallurgy, and Exploration | year = 2006| first1 = Michel | last1 =Prud'homme | first2 = Stanley T.| last2 = Krukowski | chapter = Potash | pages = 723–740 | isbn = 9780873352338}}</ref>。主要なカリウム源は、[[カナダ]]、[[ロシア]]、[[ベラルーシ]]、[[ドイツ]]、[[イスラエル]]、[[アメリカ]]、[[ヨルダン]]および世界中の様々な場所で採掘されている<ref>{{citation | url = http://books.google.de/books?id=EHx51n3T858C | title = Potash: deposits, processing, properties and uses | isbn = 9780412990717 | author1 = Garrett, Donald E | date = 1995-12-31}}</ref>。カナダの行政区、[[サスカチュワン州]]の地下3,000[[フィート]]には、地球上で最大のカリウム鉱床が発見されている。サスカチュワンのいくつかの大きな鉱山は1960年代から操業しており、{{仮リンク|ブレアモア|en|Blairmore, Alberta}}地層において、鉱山に縦穴貫通孔を通すために湿った砂を凍らせる手法を創始した。サスカチュワンの主要なカリウム採掘会社は{{仮リンク|ポタッシュ・コープ|en|Potash Corporation of Saskatchewan}}がある<ref>{{citation | title = Encyclopedia of the Great Plains | author = David J. Wishart | url = http://books.google.de/books?id=rtRFyFO4hpEC&pg=PA433 | page = p.433 | publisher = University of Nebraska Press | year = 2004 | isbn = 9780803247871}}</ref>。 |
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[[海]]はもう一つの主要なカリウム源であるが、単位量当たりのカリウム含有量は0.39 g/Lとナトリウムが10.8 g/Lであるのと比べて非常に低い<ref name=USGSCS2008>{{cite web | url = http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/potash/mcs-2008-potas.pdf | first = Joyce A. | last = Ober | publisher = United States Geological Survey | title = Mineral Commodity Summaries 2008:Potash | accessdate = 2008-11-20}}</ref><ref>{{citation | url = http://books.google.de/books?id=NXEmcGHScV8C&pg=PA3 | publisher = Springer | year = 2009 | title = Seawater Desalination: Conventional and Renewable Energy Processes | first1 = Giorgio | last1 = Micale | first2 = Andrea | last2 = Cipollina | first3 = Lucio | last3 = Rizzuti | page = 3 | isbn = 9783642011498}}</ref><ref name=USGSYB2006>{{cite web | url = http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/potash/myb1-2006-potas.pdf | first = Joyce A. | last = Ober | publisher = United States Geological Survey | title = Mineral Yearbook 2006:Potash | accessdate = 2008-11-20}}</ref>。 |
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[[File:Wintershall Monte Kali 12.jpg|thumb| left |カリウム鉱山の採掘の結果生じた、主として塩化ナトリウムからなる[[ボタ山]](ドイツ)。]] |
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カリウム塩類をナトリウムおよびマグネシウム化合物から分離するために、いくつかの方法が用いられている。カリウムの分離によって生じるナトリウムやマグネシウムの副産物は、地下に保存されるか[[ボタ山]]に積み上げられる。大部分の採掘されたカリウム鉱石は処理されて最終的に塩化カリウムとなる。塩化カリウムは鉱山産業において、カリ (potash)、カリの塩 (muriate of potash) もしくは単純に MOP として呼ばれる。 |
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[[試薬]]グレードの金属カリウムは、1[[ポンド]]あたりおよそ10[[アメリカ合衆国ドル|ドル]](1キロあたり22ドル)で売られている。純度の低いものは相応に安く販売される。カリウム金属市場は、金属カリウムの長期保管が困難であるために不安定である。金属カリウムは、カリウムの表面において[[超酸化カリウム]]が形成されることを防ぐために、乾燥した不活性ガスもしくは無水の鉱油中で保存しなければならない。この超酸化物は引っ掻かれた際に爆発を起こす、感圧性の爆薬である。超酸化物の形成の結果生じる爆発は、通常、消火の難しい火災を起こす<ref>{{cite web | url = http://www.galliumsource.com/index.html | title = Potassium Metal 98.50% Purity | publisher = Galliumsource.com | date = | accessdate = 2010-10-16}}</ref>。 |
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キログラム単位よりも多い量のカリウムは、1キロあたり700ドルと、非常に大きなコストが生じる。これは、[[危険物]]の輸送に必要なコストのためである<ref>{{cite web | url = http://www.mcssl.com/store/gallium-source/potassium-metal | title = 004 – Potassium Metal | publisher = Mcssl.com | date = | accessdate = 2010-10-16}}</ref>。 |
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== 生理作用 == |
== 生理作用 == |
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カリウムは人体で8番目もしくは9番目に多く含まれる元素であり、体重のおよそ0.2 %を占めている(すなわち60 kgの成人においておよそ120 g<!--約200g-->のカリウムが含まれる)<ref>{{citation | doi = 10.1016/0883-2889(92)90208-V | title = A simple calibration of a whole-body counter for the measurement of total body potassium in humans | year = 1992 | last1 = Abdelwahab | first1 = M | last2 = Youssef | first2 = S | last3 = Aly | first3 = A | last4 = Elfiki | first4 = S | last5 = Elenany | first5 = N | last6 = Abbas | first6 = M | journal = International Journal of Radiation Applications and Instrumentation. Part A. Applied Radiation and Isotopes | volume = 43 | issue = 10 | pages = 1285–1289}}</ref>。それは[[硫黄]]および[[塩素]]と同程度の含有量であり、主要な[[ミネラル]]でカリウムより多く含まれているのは[[カルシウム]]および[[リン]]のみである<ref>{{citation | author = Chang, Raymond | title = Chemistry | url = http://books.google.com/books?id=huSDQAAACAAJ | accessdate = 29 May 2011 | date = 1 July 2007 | publisher = McGraw-Hill Higher Education | isbn = 9780071105958 | page = 52}}</ref>。 |
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カリウムは人体に不可欠の[[電解質]]であり、カリウム[[イオン]]として約200gほど存在する。主に[[細胞]]内に分布している。[[細胞内液]]で100-150mmol/L程度なのに対し[[細胞外液]]での濃度は3.5–4.5m[[モル濃度|mol/L]]程度と非常に小さく保たれている。[[筋肉]]や[[神経細胞]]はカリウム[[イオンチャネル]]が開いているとき、細胞内から細胞外へと濃度勾配の方向にカリウムイオン電流が流れ、[[膜電位]](細胞外に対する細胞内電位)を負の向きに変化させる。すなわち、活動電位が生じて細胞膜が脱分極している場合は再分極させることになる。 |
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=== 神経伝達 === |
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経口摂取される場合は吸収は緩やかであり、全身の細胞で速やかに取り込まれることと、過剰分は腎臓でのK<sup>+</sup>調節機能により排泄されるので、体外濃度は常に低レベルに維持される。一日の所要量は1–2g/日とされる。2005年4月の厚生労働省「日本人の食事摂取基準」生活習慣病予防の観点からみた望ましい摂取量では3500mg/日と勧告されている。 |
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[[File:Scheme sodium-potassium pump-en.svg|thumb|right|400px|ナトリウム-カリウムポンプによるイオンの輸送]] |
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{{main|イオンチャネル|膜電位|活動電位}} |
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カリウムは人体に不可欠の[[電解質]]であり、[[脳]]および[[神経]]などにおける[[ニューロン]]の情報伝達に重要な役割を果たしている。カリウムは[[イオン]]([[カチオン|陽イオン]])として主に[[細胞]]内に分布しており、その濃度は[[細胞内液]]が100-150 m[[モル濃度|mol/L]]と高濃度に保たれているのに対し、[[細胞外液]]の濃度は3.5–4.5 m[[モル濃度|mol/L]]程度と非常に小さく保たれている。これは、いわゆる[[Na+/K+-ATPアーゼ|ナトリウム-カリウムイオンポンプ]]の働きによるものである<ref>{{citation | last = Campbell | first = Neil | title = Biology | year = 1987 | isbn = 0-8053-1840-2 | page = 795 | publisher = Benjamin/Cummings Pub. Co. | location = Menlo Park, Calif.}}</ref>。このイオンポンプは、[[ATP]] を1つ消費して、ナトリウムイオン3つを細胞外へと運び出し、カリウムイオン2つを細胞内へと運び込む。このイオンポンプの働きによって細胞の内外にイオン濃度差が生じ、[[細胞膜]]上に電気的な勾配を発生させる。この電気勾配は通常時は静止電位と呼ばれる値に保たれているが、カリウム[[イオンチャネル]]が開くとカリウムイオン濃度の高い細胞内からカリウムイオン濃度の低い細胞外へと濃度勾配の方向にカリウムイオンが移動し、またナトリウムイオンチャネルが開くと同様にナトリウム濃度の高い細胞外からナトリウムイオン濃度の低い細胞内へとナトリウムイオンが移動する。カリウムイオンはナトリウムイオンよりもイオン半径が大きいため、このイオン半径の違いによって細胞膜のイオンポンプおよびイオンチャネルはこれらを区別することができ、一方を通過させて一方を通過させないように選択的に機能することが可能である<ref>{{citation | pmid = 17472437 | title = Structural and thermodynamic properties of selective ion binding in a K+ channel | last1 = Lockless | first1 = S. W. | last2 = Zhou | first2 = M. | last3 = MacKinnon | first3 = R. | journal = PLoS Biol | year = 2007 | volume = 5 | issue = 5 | page = e121}}</ref>。このイオンチャネルの開閉による細胞内外のイオン濃度のバランスの変化によって[[膜電位]](細胞外に対する細胞内電位)が変化し、それによって[[活動電位]]が発生(いわゆる「点火」)する。この活動電位が伝導することで情報が伝達されていく。活動電位が生じて細胞膜が脱分極(ナトリウムイオンの移動によって正の膜電位が発生)している場合には、カリウムイオンチャネルが開くことで再分極(膜電位が静止電位に戻る)させることになる。 |
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また、右心房にある[[洞結節|洞房結節]]から発生する[[活動電位]]によって心拍の調節が行われているが、そのためには適切なカリウムイオン濃度が必要である。静脈注射、あるいは何らかの異常によりカリウムイオンの血中濃度が過剰になる[[高カリウム血症]]となった場合、洞房結節のペースメーキングに変調を生じさせ、致死的な[[不整脈]]を引き起こしたり、心停止に至ることもある。また、心臓等の外科手術で心停止が必要な場合には塩化カリウムが用いられる。 |
また、右心房にある[[洞結節|洞房結節]]から発生する[[活動電位]]によって心拍の調節が行われているが、そのためには適切なカリウムイオン濃度が必要である。静脈注射、あるいは何らかの異常によりカリウムイオンの血中濃度が過剰になる[[高カリウム血症]]となった場合、洞房結節のペースメーキングに変調を生じさせ、致死的な[[不整脈]]を引き起こしたり、心停止に至ることもある。また、心臓等の外科手術で心停止が必要な場合には塩化カリウムが用いられる。 |
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カリウムイオンチャネルの KirBac3.1 の解析によって、これに含まれる5本のイオンチャネル (KcsA, KirBac1.1, KirBac3.1, KvAP, MthK) は全て[[原核生物]]に由来していることが明らかとなった<ref name=pmid16253415>{{citation | first1 = Mikko | last1 = Hellgren | first2 = Lars | last2 = Sandberg | first3 = Olle | last3 = Edholm | title = A comparison between two prokaryotic potassium channels (K<sub>ir</sub>Bac1.1 and KcsA) in a molecular dynamics (MD) simulation study | journal = Biophysical Chemistry | volume = 120 | issue = 1 | pages = 1–9 | year = 2006 | pmid = 16253415 | doi = 10.1016/j.bpc.2005.10.002}}</ref>。 |
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=== 摂取 === |
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経口摂取される場合は吸収は緩やかであり、全身の細胞で速やかに取り込まれることと、過剰分は腎臓での K<sup>+</sup> 調節機能により排泄されるので、体外濃度は常に低レベルに維持される。一日の所要量は1–2 g/日とされる。2005年4月の厚生労働省「日本人の食事摂取基準」生活習慣病予防の観点からみた望ましい摂取量では3500 mg/日と勧告されている。カリウムは5つの[[味覚]]のうち3つを刺激する。希薄溶液では[[甘味]]を感じ、より濃度が濃くなると[[苦味]]を感じ、最終的には[[塩味]]を感じる。 |
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生命を維持するために必要なカリウムの摂取量は、様々な食品を食べることで通常は十分に賄われる。そのため、カリウムの血中濃度の低下によるカリウム欠乏症の徴候や症状などがはっきりとするようなケースは健康な個人においては希である。カリウムの豊富な食品として、[[パセリ]]や乾燥させた[[アンズ]]、[[粉ミルク]]、[[チョコレート]]、[[種実類|木の実]](特に[[アーモンド]]と[[ピスタチオ]])、[[ジャガイモ]]、[[タケノコ]]、[[バナナ]]、[[アボカド]]、[[ダイズ]]、[[糠]]などに特に多く含まれるが、大部分の[[果実]]、[[野菜]]、[[肉]]、[[魚]]において人体に十分な量が含まれている<ref>{{citation | url = http://apjcn.nhri.org.tw/server/info/books-phds/books/foodfacts/html/data/data5b.html | title = Potassium Food Charts | publisher = Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition | accessdate = 2011-05-18}}</ref>。 |
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[[高血圧]]についての疫学的研究および動物実験の結果、カリウム含有量の高い食品の摂取によって高血圧のリスクを低減できることが示され、高血圧を原因としない場合の[[脳卒中]]についても恐らくは低減される。また、[[ラット]]において、カリウムの欠乏は[[チアミン]](ビタミンB<sub>1</sub>)摂取量の不足と組み合わされることで[[心臓病]]に罹患することが示された<ref name=Folis1942>{{citation | last = Folis | first = R. H. | year = 1942 | title = Myocardial Necrosis in Rats on a Potassium Low Diet Prevented by Thiamine Deficiency | journal = Bull. Johns-Hopkins Hospital | volume = 71 | page = 235}}</ref>。そのため、カリウムの摂取制限における最適摂取量に関していくつかの議論が存在する。例えば、2004年に{{仮リンク|アメリカ医学研究所|en|Institute of Medicine}}はカリウムの{{仮リンク|食事摂取量基準|en|Dietary Reference Intake}}を4,000 mg (100 m[[化学当量|Eq]])と指定したが、大部分の[[アメリカ人]]の一日のカリウム摂取量はその半分でしかなく、この基準では大部分のアメリカ人が正式にはカリウムの摂取が不十分であると考えられる<ref>{{citation | title = Racial differences in blood pressure in Evans County, Georgia: relationship to sodium and potassium intake and plasma renin activity | journal = Journal of Chronicle Diseases | volume = 33 | issue = 2 | pages = 87-94 | year = 1980 | pmid = 6986391 | doi = 10.1016/0021-9681(80)90032-6 | last1 = Grim | first1 = C.E. | last2 = Luft | first2 = F.C. | last3 = Miller | first3 = J.Z. | last4 = Meneely | first4 = G.R. | last5 = Battarbee | first5 = H.D. | last6 = Hames | first6 = C.G. | last7 = Dahl | first7 = L.K.}}</ref>。同様に[[欧州連合]]、特に[[ドイツ]]と[[イタリア]]においても、カリウム摂取量の不足はいくぶんか一般的である<ref>{{citation | url = http://content.karger.com/ProdukteDB/produkte.asp?Aktion=ShowPDF&ProduktNr=223977&Ausgabe=230671&ArtikelNr=83312&filename=83312.pdf | format = PDF | last = Karger | first = S. | journal = Annals of Nutrition and Metabolism | year = 2004 | volume = 48 | issue = 2 (suppl) | pages = 1-16 | title = Energy and nutrient intake in the European Union | doi = 10.1159/000083041}}</ref>。2011年のイタリアの研究者の[[メタアナリシス]]による報告によると、一日に1.46 g以上カリウムを摂取することで脳卒中のリスクを21 %低減させるとされる<ref>{{citation | last1 = D'Elia | first1 = L. | last2 = Barba | first2 = G. | last3 = Cappuccio | first3 = F. | last4 = Strazzullo | year = 2011 | title = Potassium Intake, Stroke, and Cardiovascular Disease: A Meta-Analysis of Prospective Studies | journal = The Journal of the American College of Cardiology | volume = 57 | pages = 1210-1219 | doi = 10.1016/j.jacc.2010.09.070 | issue = 10 | first4 = P. | unused_data = first4 P.}}</ref>。 |
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=== 医学的なサプリメントと病気 === |
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医薬品におけるカリウムの[[サプリメント]]は{{仮リンク|ループ利尿薬|en|Loop diuretic}}や{{仮リンク|サイアザイド利尿薬|en|Thiazide}}と併用して広く使われている。これは、利尿剤がその薬効として尿によって体内からナトリウムと水を排出するが、その副作用としてカリウムも尿と共に排出されてしまうため、その失われたカリウムを補給することを目的としている。典型的な医薬用サプリメントは、一回につき10 mg当量(400 mg、およそカップ一杯の牛乳や6[[オンス]]のオレンジジュースに含まれるカリウムと同じ量)から20 mg当量 (800 mg) の範囲で服用される。サプリメントのカリウム濃度が非常に高濃度になるとカリウムイオンが細胞組織を殺してしまい、また胃や腸の粘膜も傷付けるため、高濃度のカリウムがゆっくりと浸出するようなタブレットやカプセルの形でも用いられる。このような理由により、アメリカの法律では[[処方箋]]の不要なカリウム錠はそのカリウムの含有量が99 mgまでに規制されている。 |
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非医薬的用途としてもカリウムのサプリメントは利用されている。塩化カリウムのようなカリウム塩は水によく溶けるものの、濃度の高い溶液では前述のように苦味と塩味を刺激するため、高濃度のカリウムが含まれるようなサプリメント飲料にとって障害となることがある。そのため、このようなサプリメント飲料の口当たりをよくする研究が行われている<ref name=bitter>{{citation | author1 = Institute of Medicine (U.S.). Committee on Optimization of Nutrient Composition of Military Rations for Short-Term, High-Stress Situations | author2 = Institute of Medicine (U.S.). Committee on Military Nutrition Research | title = Nutrient composition of rations for short-term, high-intensity combat operations | url = http://books.google.com/books?id=kFatoIBbMboC&pg=PT287 | accessdate = 29 May 2011 | year = 2006 | publisher = National Academies Press | isbn = 9780309096416 | pages = 287-}}</ref><ref>{{citation | author = Shallenberger, R. S. | title = Taste chemistry | url = http://books.google.com/books?id=8_bjyjgClq0C&pg=PA120 | accessdate = 29 May 2011 | year = 1993 | publisher = Springer | isbn = 9780751401509 | pages = 120-}}</ref>。 |
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前述のようにカリウムは生体の神経伝達において非常に重要な役割を担っているため、一般的に[[嘔吐]]、[[下痢]]、[[多尿症]]などによって引き起こされる体液中のカリウムの不足は、[[低カリウム血症]]として知られている致命的な状態を引き起こすことがある<ref>{{citation | publisher = Lippincott Williams & Wilkins | url = http://books.google.com/books?id=_XavFllbnS0C&pg=PA812 | publisher = Lippincott Williams & Wilkins | page = 812 | chapter = Potassium | title = Pediatric critical care medicine | isbn = 9780781794695 | last1 = Slonim | first1 = Anthony D. | last2 = Pollack | first2= Murray M. | year = 2006}}</ref>。カリウム欠乏の徴候としては、筋力の低下、[[イレウス]](腸閉塞)、[[心電図]]の異常、[[反射 (生物学)|反射]]機能の低下が見られ、重度のケースでは呼吸困難や[[アルカローシス]]、[[不整脈]]が見られる<ref>{{citation | url = http://books.google.com/books?id=c4xAdJhIi6oC&pg=PT257 | page = 257 | chapter = hypokalemia | title = Essentials of Nephrology, 2/e|publisher=BI Publications | isbn = 9788172253233 | last1 = Visveswaran | first1 = Kasi | date = 2009}}</ref>。[[腎臓病]]の患者においては、逆にカリウムの大量摂取が健康を悪化させることがある。[[人工透析]]を受けている[[慢性腎不全]]患者においては、カリウムの摂取量に関して厳しい制限が行われる必要がある。これは、カリウムの排出を腎臓が制御しているためで、腎不全によってこの機能が低下すると摂取したカリウムの排出が困難になり、体内のカリウム濃度が高まることで[[高カリウム血症]]が引き起こされ、致命的な[[不整脈]]を誘発する危険があるためである<ref>{{cite book | 和書 | author = 中屋豊 | title = よくわかる栄養学の基本としくみ | pages = 167頁 | year = 2009 | publisher = 秀和システム | isbn = 9784798022871}}</ref>。 |
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== 用途 == |
== 用途 == |
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カリウムはほかの多くの元素と同じように、金属カリウム単体としてよりも、カリウム化合物としての用途のほうが重要である。しかし、同じ[[アルカリ金属]]であるナトリウムがカリウムとほぼ同じような用途を持つため、より安価なナトリウム塩で代替可能な用途も多く[[コスト]]面で劣るカリウムの用途は非常に限られている。例えば、2008年度の水酸化ナトリウムの日本における消費量は986,744トンであるが、同年の水酸化カリウムの日本における消費量は28,044トンでしかない<ref>[http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/result/ichiran/02_kagaku.html 経済産業省生産動態統計・生産・出荷・在庫統計]平成20年年計による 2011年6月10日閲覧。</ref>。 |
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金属カリウムは光電子素子として用いられるほか、自給式[[ガスマスク]]の酸素発生用に[[超酸化カリウム]]、また二酸化炭素吸収剤として[[過酸化カリウム]]が使われている。また熱交換媒体として[[原子炉]]の冷却材などに、[[カリウムナトリウム合金]]が使われる。低融点合金としてはカリウムナトリウム合金が、原子炉の冷却剤に最も多く使用される。この合金は[[希ガス]]などから、わずかに含まれる[[二酸化炭素]]や[[水]]、あるいは[[酸素]]を高度に除去するための反応剤としても使われる。金属カリウムを主成分とした合金では、−78{{℃}}という最も低い融点を持つ金属が知られている。 |
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=== 肥料 === |
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ほかの多くの元素と同じように、金属カリウム単体としてよりも、カリウム化合物としての用途のほうが重要である。しかし、同じ[[アルカリ金属]]であるナトリウムがカリウムとほぼ同じような用途を持つために、[[コスト]]面で劣るカリウムの用途は非常に限られたものとなっている。カリウムの使用量はナトリウムの1/1000程度でしかない。カリウムの用途としては、[[臭化カリウム]]として[[写真]]の製版や、[[医薬品]]の鎮静剤などとして使われたり、[[クロム酸カリウム]]は[[花火]]や[[染色]]材料、[[ヨウ化カリウム]]は殺菌[[消毒薬]]などに使われ、[[保存料]]として[[硝酸カリウム]]が利用される。また、生物にとって比較的大量に摂取する必要のある元素であるため、[[食品添加物]]や、[[飼料]]、[[肥料]]といった用途に広く用いられる。 |
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[[File:Patentkali (Potassium sulfate with magnesium).jpg|thumb|硫酸カリウムおよび硫酸マグネシウムからなる肥料]] |
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カリウムイオンは植物にとって重要な主要栄養元素の一つであり、様々なタイプの土壌に含まれている<ref name=greenwood73>[[#greenwood1997|greenwood (1997)]] p.73</ref>。近代の高収穫率な農業においては、土壌中のカリウムは自然に供給されるよりも非常に速い割合で消費されるため、肥料としてカリウムを人工的に土壌に補給する必要がある。大部分の種類の農作物に含まれるカリウム量は通常収穫量の0.5から2 %の範囲であり、それだけの量のカリウムが収穫ごとに土壌から持ち出される。カリウム肥料は[[農業]]や[[園芸]]、[[水耕栽培]]などの耕作、栽培において、塩化物 (KCl) や硫酸塩 (K<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>)、硝酸塩 (KNO<sub>3</sub>) のような形で利用される。世界で生産されるカリウム製品のおよそ93 %(2005年<ref name=USGSYB2006/>)が肥料として消費されており、そのうち90 %は塩化カリウムとして供給されている<ref name=greenwood73/>。塩化カリウムはカーナライト (KCl•MgCl<sub>2</sub>•6H<sub>2</sub>O) 鉱石などから、塩化カリウムと[[塩化マグネシウム]]の溶解度差を利用して水中で分離することによって製造される<ref name=chitani108>[[#千谷1959|千谷 (1959)]] 108頁。</ref>。塩化物に敏感な作物や、硫黄分を必要とするような作物に対しては硫酸カリウムが用いられる。硫酸カリウムは{{仮リンク|ラングバイナイト|en|Langbeinite}} (MgSO<sub>4</sub>・KCl・3H<sub>2</sub>O) や{{仮リンク|カイナイト|en|Kainite}} ((Mg, K)SO<sub>4</sub>) のような鉱石の[[複分解]]によって生産される<ref>[[#足立岩倉馬場2004|足立、岩倉、馬場 (2004)]] 52頁。</ref>。硝酸カリウムの肥料としての消費量は非常に少ない<ref name=Kent>{{citation | pages = 1111-1157 | first = Amit H. | last = Roy | url = http://books.google.com/books?id=AYjFoLCNHYUC&pg=PA167 | isbn = 9780387278438 | publisher = Springer | title = Kent and Riegel's handbook of industrial chemistry and biotechnology | year = 2007}}</ref>。肥料成分の表記は通常、窒素、リン、カリウムの順に示され、カリウム量は K<sub>2</sub>O として表される<ref>{{citation|url=http://www.mate.pref.mie.lg.jp/sehikijun/pdf/4-sehiryou.pdf|title=施肥量決定の考え方、方法等|publisher=三重県中央農業改良普及センター|page=78|accessdate=2011-6-29}}</ref>。 |
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=== 食品 === |
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[[放射性同位体]]のカリウム40は、電子捕獲により[[アルゴン]]40に変化するが、この事は[[放射年代測定]](カリウム-アルゴン法)に利用されている。 |
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前述のように、カリウムイオンは人の生命と健康を支えるのに重要な役目を果たす栄養素である。[[高血圧]]を抑えるためにナトリウムの摂取量を制限している人々によって、[[食塩]]の代替として塩化カリウムが用いられる(代用塩)。[[アメリカ合衆国農務省]]は、トマトペースト、[[オレンジジュース]]、[[テンサイ]]、ホワイトビーンズ、ジャガイモ、バナナその他多くのカリウムをよく含む食品をリストアップし、カリウム含有量をランク付けしている<ref>{{cite news | title = Potassium Content of Selected Foods per Common Measure, sorted by nutrient content | publisher = USDA National Nutrient Database for Standard Reference, Release 20 | url = http://www.nal.usda.gov/fnic/foodcomp/Data/SR20/nutrlist/sr20w306.pdf}}</ref>。 |
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[[酒石酸カリウムナトリウム]](KNaC<sub>4</sub>H<sub>4</sub>O<sub>6</sub>、ロッシェル塩)は[[ベーキングパウダー]]の主成分であり、鏡に銀メッキをする際にも用いられる。[[臭素酸カリウム]]は強力な[[酸化剤]] (E924) であり、パン生地や[[魚肉練り製品]]の改良剤として用いられていた<ref>{{citation | url = http://books.google.com/books?id=XqKF7PqV02cC&pg=PA86 | page = 86 | chapter = Bleaching and Maturing Agents | title = How Baking Works: Exploring the Fundamentals of Baking Science | isbn = 9780470392676 | author1 = Figoni, Paula I | year = 2010 | publisher = John Wiley and Sons}}</ref>。また、亜硫酸水素カリウム (KHSO<sub>3</sub>) は[[ワイン]]や[[ビール]]などの防腐剤として用いられていたが、肉には用いられなかった<ref>{{citation | url = http://books.google.com/books?id=eblAtwEXffcC&pg=PA4 | publisher = Academic Press | pages = 4–6 | chapter = Uses and Exposure to Sulfites in Food | title = Advances in food research | isbn = 9780120164301 | author1 = Chichester, C. O. | date = 1986-07}}</ref>。亜硫酸水素カリウムは織物や麦わらの漂白剤としてや、皮なめし剤としても用いられていた。 |
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=== 工業 === |
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[[File:Cobalt yellow.jpg|thumb|150px|硝酸コバルトカリウム(コバルト・イエロー)]] |
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純粋なカリウム蒸気は数種類の[[磁気センサ]]に用いられる<ref>{{citation | publisher = Wiley-Blackwell | url = http://books.google.com/books?id=R_Y925b97ncC&pg=PA164 | chapter = Optical Pumped Magnetometer | pages = 164 | title = An introduction to geophysical exploration | isbn = 9780632049295 | author1 = Kearey, Philip | author2 = Brooks, M | author3 = Hill, Ian | year = 2002}}</ref>。また、[[光電子素子]]としても用いられる。ナトリウムとカリウムの合金(NaK、[[ナトリウムカリウム合金]])は熱交換媒体として[[原子炉]]の冷却材などに低融点合金として用いられる液体であり、[[希ガス]]や溶媒からわずかに含まれる[[二酸化炭素]]や[[水]]、あるいは[[酸素]]を高度に除去するための反応剤、乾燥剤としても用いられる。ナトリウムカリウム合金はまた、{{仮リンク|反応性蒸留|en|Reactive distillation}}においても用いられる<ref>{{citation | doi = 10.1021/ba-1957-0019.ch018 | volume = 19 | isbn = 9780841200203 | chapter = 18 | pages = 169–173 | journal = Advances in Chemistry | last2 = Werner | first2 = R. C. | last1 = Jackson | first1 = C. B. | date = 1957-01-01 | url = http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/ba-1957-0019.ch018 | title = The Manufacture of Potassium and NaK | issn = 9780841221666}}</ref>。ナトリウム、カリウム、[[セシウム]]をそれぞれ12 %、47 %、41 %含んだ三元合金は、合金としては最低の-78 {{℃}}の融点を持つ<ref name=greenwood76>[[#greenwood1997|greenwood (1997)]] p.76</ref>。 |
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全てのカリウム化合物は強いイオン性を有しているため、カリウムはしばし有用な陰イオンを保持させるのに用いられ、その一例として、[[クロム酸カリウム]] (K<sub>2</sub>CrO<sub>4</sub>) がある。クロム酸カリウムは黄色の染料やインク、爆薬や花火、皮なめし剤、[[ハエ取り紙]]、安全[[マッチ]]<ref>{{citation | doi = 10.1021/ed017p515 | title = Ignition of the safety match | year = 1940 | last1 = Siegel | first1 = Richard S. | journal = Journal of Chemical Education | volume = 17 | issue = 11 | pages = 515}}</ref><!--クロム酸カリウムは安全マッチの頭薬としての用途においてはマイナーな化合物に見える-->など様々な用途に用いられるが、これらはカリウムイオンの特性というよりはむしろクロム酸イオンの特性であり、カリウムイオンはクロム酸イオンを保持する役目を担っている。 |
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[[File:Potassium hydroxide.jpg|thumb|right|200px|水酸化カリウム]] |
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[[水酸化カリウム]]は強塩基であり、強酸や弱酸を中和して[[pH]]をコントロールするために用いられる。また、カリウム塩類の生産や、[[エステル]]の[[加水分解]]反応、洗剤産業における[[油脂]]の[[けん化]]などにも用いられる<ref>{{citation | publisher = Greenwood Publishing Group | url = http://books.google.com/books?id=UnjD4aBm9ZcC&pg=PA4 | chapter = Personal Cleansing Products: Bar Soap | title = Chemical composition of everyday products | isbn = 9780313325793 | author1 = Toedt, John | author2 = Koza, Darrell | author3 = Cleef-Toedt, Kathleen Van | date = 2005}}</ref>。 |
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[[File:Potassium nitrate.jpg|thumb|right|200px|硝酸カリウム]] |
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[[硝酸カリウム]](KNO<sub>3</sub>、[[硝石]])は、[[火薬]](黒色火薬)において[[酸化剤]]として働き、また肥料としても重要である。歴史的には、[[チリ硝石]]の主成分である[[硝酸ナトリウム]]に塩化カリウムを反応させる「転化法」と呼ばれる方法によって工業生産されていたが、[[ハーバー・ボッシュ法]]による[[空気]]から化学的に窒素を固定する手法([[窒素固定#化学的窒素固定|化学的窒素固定法]])が確立してからは、炭酸カリウムもしくは水酸化カリウムを硝酸に溶解させる方法で作られるようになった<ref name=chitani114>[[#千谷1959|千谷 (1959)]] 114頁。</ref>。また、[[グアノ]]や[[蒸発岩]]などの天然鉱石からも得られる。 |
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[[File:Potassium-permanganate-sample.jpg|thumb|right|200px|過マンガン酸カリウム]] |
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[[シアン化カリウム]](KCN、青酸カリ)は[[銅]]や[[貴金属]](特に[[金]]や[[銀]])を[[錯体]]を形成することによって溶解させる用途に使われ、それらの金属の{{仮リンク|電鋳|en|Electroforming}}や[[電解めっき]]、金鉱山の採掘にも用いられる。シアン化カリウムはまた、有機合成において[[ニトリル]]類を合成するためにも用いられ、さらには、[[シアン化銀]]と共に[[メッキ]]浴としても用いられる<ref>{{cite book | 和書 | editor = 職業能力開発総合大学校能力開発研究センター | title = めっき科電気めっき作業法-2級技能士コース | publisher = 職業訓練教材研究会 | year = 2005 | page = 223 | isbn = 4786330043}}</ref>。シアン化カリウムはこのように多くの用途を有する有用な化合物であるが、生物に対して非常に強い毒性を示す<ref>{{cite book | 和書 | author = 加藤俊二 | title = 身の回りを化学の目で見れば | year = 1986 | publisher = 化学同人 | page = 162 | isbn = 4759801553}}</ref>。[[炭酸カリウム]](K<sub>2</sub>CO<sub>3</sub>、ポタッシュ)は穏やかな乾燥剤として用いられ、ガラスや[[石鹸]]、カラー[[テレビ]]の[[ブラウン管]]、[[蛍光灯]]、織物の染料や顔料の製造にも利用される。[[過マンガン酸カリウム]] (KMnO<sub>4</sub>) は酸化剤や漂白剤、浄化物質として利用され、[[サッカリン]]の製造にも用いられる。[[塩素酸カリウム]] (KClO<sub>3</sub>) はマッチや爆薬に加えられる。[[臭化カリウム]] (KBr) は、以前は[[写真]]の定着剤や[[医薬品]]の鎮静剤として用いられていた<ref name=greenwood73>[[#greenwood1997|greenwood (1997)]] p.73</ref>。また、[[フェリシアン化カリウム]]や[[フェロシアン化カリウム]]も写真の作成に利用される。[[ヘキサフルオロケイ酸カリウム]] (K<sub>2</sub>SiF<sub>6</sub>) は[[琺瑯]]や[[陶器]]の釉薬、特殊ガラスなどの用途に利用される。[[ヨウ化カリウム]] (KI) は殺菌[[消毒薬]]などに使われる。 |
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[[超酸化カリウム]]は橙色固体であり、持ち運び可能な酸素源として自給式[[ガスマスク]]に用いられる。気体の酸素よりも少ない容積しか占有しないため、鉱山や[[潜水艦]]、[[宇宙船]]において呼吸のための酸素供給システムとしても広く用いられている<ref name=greenwood74>[[#greenwood1997|greenwood (1997)]] p.74</ref><ref>{{citation | url = http://books.google.com/books?id=oiWFhoRzPBQC&pg=PA93 | title = The history of underwater exploration | first = Robert F. | last = Marx | publisher = Courier Dover Publications | year = 1990 | isbn = 9780486264875}}</ref>。また、[[過酸化カリウム]]は二酸化炭素吸収剤として利用される。 |
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: 4 KO<sub>2</sub> + 2 CO<sub>2</sub> → 2 K<sub>2</sub>CO<sub>3</sub> + 3 O<sub>2</sub>↑ |
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{{仮リンク|硝酸コバルトカリウム|en|Potassium cobaltinitrite}} (K<sub>3</sub>[Co(NO<sub>2</sub>)<sub>6</sub>]) はオーレオリンもしくはコバルトイエローと呼ばれる色の[[絵の具]]として用いられる<ref name=Getts>{{citation | publisher = Courier Dover Publications | url = http://books.google.com/books?id=bdQVgKWl3f4C&pg=PA109 | title = Painting materials: A short encyclopaedia | isbn = 9780486215976 | author1 = Gettens, Rutherford John | author2 = Stout, George Leslie | year = 1966 | pages = 109–110}}</ref>。 |
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==== 反応試薬 ==== |
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[[カリウムアミド]]は、強い求核性を有するアミドアニオン (NH<sub>2</sub><sup>+</sup>) 源として芳香族求核置換反応などに利用される強塩基性の化合物であり、液体アンモニアにカリウムを反応させることで得られる<ref>[[#櫻井鈴木中尾2003|櫻井、鈴木、中尾 (2003)]] 128頁。</ref>。また、[[有機金属化合物]]であるアルキル化カリウムは、しばし反応の中間体として利用されている。しかし、単離されたアルカリ金属のアルキル化合物は少なく、その例外的なものとして[[メチルカリウム]] (CH<sub>3</sub>K) がある。これは[[メチル水銀]]とナトリウム-カリウム合金との反応によって得られ、副生成物としてナトリウムアマルガムが形成される。カリウムの金属有機化合物はイオン性物質であるため炭化水素などの有機溶媒への溶解性はそれほど高くない。また、反応性が強く空気中で発火し、水と激しく反応する<ref>[[#コットンウィルキンソン1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 264頁。</ref>。カリウムの[[アルコキシド]]は強塩基性の求核剤としてハロアルカンの脱離反応などに利用される<ref>[[#ボルハルトショアー2004|ショアー、ボルハルト (2004)]] 359-361頁。</ref>。代表的なものに[[クライゼン縮合]]に利用される[[カリウム tert-ブトキシド]]がある。このようなカリウムのアルコキシドは、水素化カリウムもしくは金属カリウムとアルコールとを反応させることによって合成される。[[水素化カリウム]]は、アルコールのヒドロキシ基から[[プロトン]]を引き抜くことが可能なほどの強力な塩基であり、反応後の副生成物が水素しか発生しない利点を有している<ref>[[#ボルハルトショアー2004|ショアー、ボルハルト (2004)]] 360頁。</ref>。 |
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==== 化学分析 ==== |
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臭化カリウムは、[[赤外分光法]]において分析試料の錠剤を作るためのマトリックスとして用いられる(臭化カリウム錠剤法)<ref>{{cite book | 和書 | editor = 薬事日報社 | title = 医薬部外品原料規格-2006追補 | year = 2009 | publisher = 薬事日報社 | page = 16 | isbn = 4840811016}}</ref>。[[フェリシアン化カリウム]](ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、赤血塩) K<sub>3</sub>[Fe(CN)<sub>6</sub>] は、チオクローム法と呼ばれるチアミン(ビタミンB<sub>1</sub>)の分析において、チアミンを酸化させる酸化剤として用いられる<ref>{{cite book | 和書 | editor = 厚生労働省 | title = 食品衛生検査指針 理化学編 2005 | year = 2005 | publisher = 日本食品衛生協会 | pages = 76-77 | isbn = 4889250034}}</ref>。また、フェリシアン化カリウムは[[フェロシアン化カリウム]](ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム)K<sub>4</sub>[Fe(CN)<sub>6</sub>] とともに、鉄イオンの[[定性分析]]にも用いられる<ref>{{cite book | 和書 | author = 萩中淳 | title = 分析科学 | year = 2007 | publisher = 化学同人 | page = 294 | isbn = 4759812520}}</ref>。[[二クロム酸カリウム]] (K<sub>2</sub>Cr<sub>2</sub>O<sub>7</sub>) や過マンガン酸カリウムは、その強い酸化力を利用して酸化還元滴定における1次標準物質として用いられる<ref>{{cite book | 和書 | author = 本浄高治 | title = 基礎分析化学 | year = 1998 | publisher = 化学同人 | pages = 80-82 | isbn = 4759808205}}</ref>。 |
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=== 同位体の用途 === |
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前述のカリウム40がアルゴン40へと崩壊する特性は、一般的に岩の[[放射年代測定]]に利用されている([[カリウム-アルゴン法]])。岩石が[[マグマ]]から形成された時点では岩石中にアルゴン40は含まれていないが、岩石が形成されて以降は岩石中のカリウム40の崩壊によってアルゴン40が生成し岩石中に蓄積されていく。岩石中のアルゴン40の存在量は、岩石が形成されてからの時間に比例して増加していくため、岩石中のカリウム40の濃度と蓄積されたアルゴン40の量を測定することで岩石の年代を推定することができる。年代測定に最も適した鉱石には、[[白雲母]]、[[黒雲母]]、[[深成岩]]/[[変成岩|広域変成岩]]の[[普通角閃石|角閃石]]や[[火山岩]]の[[長石]]などがある。火山流や浅い貫入に由来する岩石試料もまた、例えば加熱されて試料中のアルゴンが失われたりするような変化を受けていないそのままの状態の試料であれば、全て年代測定することができる<ref>{{citation | url = http://books.google.de/books?id=k90iAnFereYC&pg=PA207 | pages = 203–208 | chapter = Theory and Assumptions in Potassium–Argon Dating | title = Isotopes in the Earth Sciences | isbn = 9780412537103 | author1 = Bowen, Robert | author2 = Attendorn, H. G. | date = 1988-07-31}}</ref><ref name=NUBASE/>。年代測定以外では、カリウムの同位体は[[風化]]の研究における[[放射性トレーサー]]として幅広く用いられる。また、カリウムが[[生命]]維持のために必要とされる[[栄養素]]であるため、[[生物地球化学的循環]]の研究にも用いられる。 |
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== 歴史 == |
== 歴史 == |
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[[File:Sir Humphry Davy, Bt by Thomas Phillips.jpg|thumb|right|ハンフリー・デービー]] |
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[[1807年]]、[[イギリス]]の[[ハンフリー・デービー]]が[[水酸化カリウム]](苛性カリ)を[[電気分解]]することによって発見した。この元素は電気分解によって分離された最初の金属であった。デービーはこの元素が草木灰 (potash) に多く含まれることから、「ポタシウム (potassium)」と名付けた。potashは、草木を壺 (pot) で焼いて灰 (ash) とすることから作られた合成語である。 |
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カリウムは、[[草木]]を焼いた[[灰]]として古来から利用されてきたが、これがナトリウム塩とは根本的に異なる物質であるという事は理解されていなかった。元素としてのカリウムや、他の塩類から分離された独立した要素としてのカリウム塩類は[[古代ローマ]]時代には知られておらず、元素の[[ラテン語]]名は[[古典ラテン語]]でなく、むしろ{{仮リンク|新ラテン語|en|New Latin}}であった。ラテン語のカリウムという名称は、[[アラビア語]]で「植物の灰」を意味する '''al -qalyah ({{lang-ar|القَلْيَه}})''' に由来しており、現在元素名として用いられている[[ドイツ語]]の「Kalium」は、このラテン語の名称を音訳したものである<ref name=murakami>{{cite book | 和書 | title = 元素を知る事典: 先端材料への入門 | author = 村上雅人 | publisher = 海鳴社 | year = 2004 | page = 100 | isbn = 9784875252207}}</ref>。似た発音の[[アルカリ]]とは語源が同じである(より一般的な[[フスハー|標準アラビア語]]においては {{lang-ar|بوتاسيوم}} として知られている)。カリウムは、[[カノ]]の[[ハウサ人]]による濃青色の織物を生産するために、[[灰]]と[[インディゴ]]、[[湯]]を混ぜ合わせて使われていた秘密の成分であった<ref>{{cite news | url = http://edition.cnn.com/2010/WORLD/africa/11/26/nigeria.dye.tradition/index.html | work = CNN | title = Nigeria's 500-year-old dye tradition under threat | date = 2010-11-26}}</ref>。 |
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[[1807年]]、[[イギリス]]の[[ハンフリー・デービー]]が新しく発見された[[ボルタ電池]]を用いて、[[水酸化カリウム]](苛性カリ)を[[電気分解]](溶融塩電解)することによって発見した。この元素は電気分解によって分離された最初の金属であった<ref name=Enghag2004>{{citation | author = Enghag, P. | year = 2004 | title = Encyclopedia of the elements | publisher = Wiley-VCH Weinheim | isbn = 3527306668 | chapter = 11. Sodium and Potassium}}</ref>。デービーはこの元素が草木灰 (potash) に多く含まれることから、「ポタシウム (potassium)」と名付けた<ref>Davy (1808) p.32</ref>。potash は、草木を壺 (pot) で焼いて灰 (ash) とすることから作られた合成語である。植物はほとんどナトリウムを含有しないため potash は主にカリウム塩であり、残りの成分は主に水溶性の低いカルシウム塩である。 |
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[[ドイツ語]]のカリウムという名称は、[[ラテン語]]あるいは[[アラビア語]]で植物の灰を意味する'''qali'''、'''kalijan'''に由来する。カリウム以後、新たに発見された金属元素にはラテン語の派生名詞中性語尾'''-ium'''を付ける習慣が一般化した。非金属に-iumがつけられるのは[[ヘリウム]]だけである。 |
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その数年後、デービーはカリウムを単離したのと類似した技術によって、植物塩でない、鉱石より誘導された[[水酸化ナトリウム]]から金属ナトリウムを単離し、カリウムとナトリウムの元素、塩類が違う物質であることを示した<ref>Davy (1808) pp.1-44</ref><ref name=200disco>{{citation | doi = 10.1134/S1061934807110160 | title = History of the discovery of potassium and sodium (on the 200th anniversary of the discovery of potassium and sodium) | year = 2007 | last1 = Shaposhnik | first1 = V. A. | journal = Journal of Analytical Chemistry | volume = 62 | issue = 11 | pages = 1100–1102}}</ref><ref name=disco>{{citation | doi = http://www.jstor.org/stable/228541}}</ref><ref name=weeks>{{citation | doi = 10.1021/ed009p1231 | title = The discovery of the elements. XI. Some elements isolated with the aid of potassium and sodium: Zirconium, titanium, cerium, and thorium | year = 1932 | last1 = Weeks | first1 = Mary Elvira | journal = Journal of Chemical Education | volume = 9 | issue = 7 | pages = 1231}}</ref>。このデービーによる発見まで、カリウムやその塩がナトリウムとは全く別の物質であることは知られていなかった。 |
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== カリウムの化合物 == |
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記事カテゴリ [[:Category:カリウムの化合物|カリウムの化合物のカテゴリ]]も参照。 |
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カリウム以後、新たに発見された金属元素にはラテン語の派生名詞中性語尾 '''-ium''' を付ける習慣が一般化した。非金属に -ium がつけられるのは[[ヘリウム]]だけである。 |
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=== 硝酸・硫酸・炭酸塩 === |
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* [[硝酸カリウム]] KNO<sub>3</sub> 天然に産出するものは[[硝石]]と呼ばれる。 |
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* [[硫酸カリウム]] K<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> |
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* [[炭酸カリウム]] K<sub>2</sub>CO<sub>3</sub> |
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* [[過炭酸カリウム]] K<sub>2</sub>CO<sub>4</sub> |
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長い間、カリウムの大きな用途はガラス、石鹸と漂白剤の製造に限られていた<ref>{{citation | doi = 10.1021/ed003p749 | title = Historical notes upon the domestic potash industry in early colonial and later times | year = 1926 | last1 = Browne | first1 = C. A. | journal = Journal of Chemical Education | volume = 3 | issue = 7 | pages = 749}}</ref>。1840年[[ユストゥス・フォン・リービッヒ]]によって、カリウムが植物のために必要な元素であり、しかも大部分の土壌においてカリウムが欠乏していることが発見され<ref>{{citation | url = http://books.google.com/?id=Ya85AAAAcAAJ | title = Die organische Chemie in ihrer Anwendung auf Agricultur und Physiologie | author1 = Liebig, Justus von | year = 1840}}</ref>、カリウム塩類の需要は急激に増加した。モミの木から作られる木の灰がカリウム源として使われていたが、ドイツの[[シュタースフルト]]近郊において塩化カリウムを含んだ鉱床が発見され、1968年にドイツでカリウム肥料の工業規模の生産が始まった<ref>{{citation | url = http://books.google.com/?id=EYpIAAAAYAAJ | title = Die Stassfurter Kalisalze in der Landwirthschalt: Eine Besprechung ... | author1 = Cordel, Oskar | year = 1868}}</ref><ref>{{citation | url = http://books.google.com/?id=J8Q6AAAAcAAJ | title = Die Kalidüngung in ihren Vortheilen und Gefahren | author1 = Birnbaum, Karl | year = 1869}}</ref><ref>{{citation | url = http://books.google.de/books?id=qPkoOU4BvEsC&pg=PA417 | title = Fertilizer Manual | isbn = 9780792350323 | author1 = Organization, United Nations Industrial Development | author2 = Center, Int'l Fertilizer Development | date = 1998-03-31}}</ref><ref>{{citation | url = http://books.google.de/books?id=qPkoOU4BvEsC&pg=PA46 | title = Fertilizer Manual | isbn = 9780792350323 | author1 = Organization, United Nations Industrial Development | author2 = Center, Int'l Fertilizer Development | date = 1998-03-31}}</ref>。その他のカリウム鉱床は、1960年代までにカナダで大きなものが発見され、それは支配的な生産者となった<ref>{{citation | jstor = 3103338 | pages = 187–208 | last1 = Miller | first1 = H. | title = Potash from Wood Ashes: Frontier Technology in Canada and the United States | volume = 21 | issue = 2 | journal = Technology and Culture | year = 1980 | doi = 10.2307/3103338}}</ref><ref>{{citation | doi = 10.2113/gsecongeo.74.2.353 | title = Potash and politics | year = 1979 | last1 = Rittenhouse | first1 = P. A. | journal = Economic Geology | volume = 74 | issue = 2 | pages = 353–357}}</ref>。 |
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=== ハロゲン化物 === |
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* [[フッ化カリウム]] KF |
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* [[フッ化水素カリウム]] KHF<sub>2</sub> |
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* [[塩化カリウム]] KCl |
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* [[臭化カリウム]] KBr |
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* [[ヨウ化カリウム]] KI |
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== 危険性 == |
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=== 酸化物・水酸化物 === |
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[[File:Potassium water 20.theora.ogv|thumb|金属カリウムと水との反応。カリウムと水との反応で生じた水素がピンクもしくは薄紫色で燃焼している(この炎色はカリウムの蒸気によるものである)。強アルカリ性の水酸化カリウムは水溶液として生成する。]] |
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* [[水酸化カリウム]](苛性カリ) KOH |
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カリウムは水と激しく反応し、水酸化カリウムと水素ガスを発生させる<ref name=Vollhardt361>[[#ボルハルトショアー2004|ショアー、ボルハルト (2004)]] 361頁。</ref>。 |
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* [[酸化カリウム]] K<sub>2</sub>O |
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: 2K(s) + 2H<sub>2</sub>O(l) → 2KOH(aq) + H<sub>2</sub>↑ (g) |
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この反応は発熱反応であり、その発熱量は発生した水素を引火させるのに十分な熱量である。そのため、酸素存在下において爆発する恐れがある。また、反応によって生じる水酸化カリウムは皮膚に炎症を起こすほどの強アルカリである。 |
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* [[超酸化カリウム]] KO<sub>2</sub> |
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カリウムの微細粒子は空気中において室温で発火し、加熱されればバルク金属でも発火する。発火したカリウムに水をかけると、カリウムの比重は0.89 g/cm<sup>3</sup>と水より軽いために燃焼しているカリウムが水に浮かび大気中の酸素にさらに曝されることになり、また、水とカリウムの反応によって水素と反応熱が生成されるため、カリウムの火はより一層悪化する。そのため、通常の消火活動ではカリウムによる火に対して、効果がないか悪化させることとなる。カリウムの火の消火には、乾燥した[[塩化ナトリウム]](食卓塩)、炭酸ナトリウム(ソーダ灰)、および二酸化ケイ素(砂)が効果的である。また、金属火災用に設計された一部の粉末[[消火器]]や、[[窒素]]および[[アルゴン]]も効果的である。 |
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=== その他 === |
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* [[水素化カリウム]] KH |
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* [[硫化カリウム]] K<sub>2</sub>S |
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* [[硫化水素カリウム]](水硫化カリウム) KSH |
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* [[過マンガン酸カリウム]] KMnO<sub>4</sub> |
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* [[クロム酸カリウム]] K<sub>2</sub>CrO<sub>4</sub> |
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* [[塩素酸カリウム]] KClO<sub>3</sub> - [[酸化剤]]。[[マッチ]]や[[火薬]]などに使用される。 |
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* [[シアン化カリウム]](青酸カリ) KCN - [[めっき]]に利用される。猛毒。 |
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* [[二クロム酸カリウム]] K<sub>2</sub>Cr<sub>2</sub>O<sub>7</sub> |
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* [[フェロシアン化カリウム]](ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム) K<sub>4</sub>[Fe(CN)<sub>6</sub>] |
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* [[フェリシアン化カリウム]](ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、赤血塩) K<sub>3</sub>[Fe(CN)<sub>6</sub>] |
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カリウムはハロゲンと激しく反応し、[[臭素]]と反応すると爆発する。[[硫酸]]ともまた爆発的に反応する。燃焼によってカリウムは[[過酸化物]]や[[超酸化物]]を形成し、これらは[[油]]のような有機物もしくは金属カリウムと激しく反応するかもしれない<ref>{{citation | url = http://www.hss.doe.gov/nuclearsafety/ns/techstds/standard/hdbk1081/hbk1081d.html | title = DOE HANDBOOK-Alkali Metals Sodium, Potassium, NaK, and Lithium | publisher = Hss.doe.gov | date = | accessdate = 2010-10-16}}</ref>。 |
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== 脚注・参考文献 == |
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カリウムは空気中の水蒸気と反応するため通常乾燥した鉱油中で保管されるが、[[リチウム]]やナトリウムと異なり無期限に鉱油中に保存してはいけない。半年から1年以上保管されると、刺激に敏感な過酸化物が金属カリウム上や保管容器のフタの下に形成され、フタを開けた際に爆発する。そのため、カリウムは酸素を含まない不活性な気体もしくは真空下で保存しない限り、3か月以上は保管しないことが推奨される<ref>{{citation | url = http://www.ncsu.edu/ehs/www99/right/handsMan/lab/Peroxide.pdf | title = Danger: peroxidazable chemicals | author = Thomas K. Wray | publisher = Environmental Health & Public Safety (North Carolina State University) | accessdate = 2011-5-16}}</ref>。 |
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金属カリウムの非常に高い反応性のため、完全に皮膚や目を保護し、カリウムとカリウムを扱う人との間に防爆壁を置くことが望ましく、それほどまでに非常に慎重に取り扱わなければならない。 |
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== 出典 == |
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{{reflist}} |
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== 参考文献 == |
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* {{cite book | 和書 | author = 足立吟也、岩倉千秋、馬場 章夫 | year = 2004 | title = 新しい工業化学-環境との調和をめざして | ref = 足立岩倉馬場2004 | isbn = 4759809554}} |
|||
* {{cite book | 和書 | author = F.A. コットン, G. ウィルキンソン | others = 中原 勝儼 | title = コットン・ウィルキンソン無機化学(上) | publisher = 培風館 | year = 1987 | edition = 原書第4版 | isbn = 4563041920 | ref = #コットンウィルキンソン1987}} |
|||
* {{cite book | 和書 | author = 櫻井武、鈴木晋一郎、中尾安男 | year = 2003 | title = ベーシック無機化学 | publisher = 化学同人 | ref = 櫻井鈴木中尾2003 | isbn = 4759809031}} |
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* {{cite book | 和書 | author = N.E.ショアー、K.P.C.ボルハルト |other = 村橋俊一ほか | year = 2004 | title = ボルハルト・ショアー現代有機化学(上) | publisher = 化学同人 | edition = 第4版 | ref = ボルハルトショアー2004 | isbn = 4759809635}} |
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* {{cite book | 和書 | author = 千谷利三 | year = 1959 | title = 新版 無機化学(上巻) | publisher = 産業図書 | ref = 千谷1959}} |
|||
* {{citation | last = Greenwood | first = Norman N | coauthor = Earnshaw, Alan | year = 1997 | title = Chemistry of the Elements | edition = 2 | place = Oxford | publisher = Butterworth-Heinemann | isbn = 0080379419 | ref = greenwood1997}} |
|||
* {{citation | first = Humphry | last = Davy | title = On some new phenomena of chemical changes produced by electricity, particularly the decomposition of the fixed alkalies, and the exhibition of the new substances which constitute their bases; and on the general nature of alkaline bodies | pages = 1–44 | year = 1808 | volume = 98 | journal = Philosophical Transactions of the Royal Society of London | url = http://books.google.com/?id=gpwEAAAAYAAJ&pg=PA57&q | doi = 10.1098/rstl.1808.0001}} |
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== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
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{{元素周期表}} |
{{元素周期表}} |
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{{カリウムの化合物}} |
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{{カリウムのオキソ酸塩}} |
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{{DEFAULTSORT:かりうむ}} |
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[[Category:カリウム|*]] |
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[[Category:元素]] |
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2011年6月29日 (水) 15:55時点における版
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外見 | |||||||||||||||||||||||||||||||
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銀白色 カリウムのスペクトル線 | |||||||||||||||||||||||||||||||
一般特性 | |||||||||||||||||||||||||||||||
名称, 記号, 番号 | カリウム, K, 19 | ||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | アルカリ金属 | ||||||||||||||||||||||||||||||
族, 周期, ブロック | 1, 4, s | ||||||||||||||||||||||||||||||
原子量 | 39.0983(1) | ||||||||||||||||||||||||||||||
電子配置 | [Ar] 4s1 | ||||||||||||||||||||||||||||||
電子殻 | 2, 8, 8, 1(画像) | ||||||||||||||||||||||||||||||
物理特性 | |||||||||||||||||||||||||||||||
相 | 固体 | ||||||||||||||||||||||||||||||
密度(室温付近) | 0.862 g/cm3 | ||||||||||||||||||||||||||||||
融点での液体密度 | 0.828 g/cm3 | ||||||||||||||||||||||||||||||
融点 | 336.53 K, 63.38 °C, 146.08 °F | ||||||||||||||||||||||||||||||
沸点 | 1032 K, 759 °C, 1398 °F | ||||||||||||||||||||||||||||||
三重点 | 336.35 K (63 °C), kPa | ||||||||||||||||||||||||||||||
融解熱 | 2.33 kJ/mol | ||||||||||||||||||||||||||||||
蒸発熱 | 76.9 kJ/mol | ||||||||||||||||||||||||||||||
熱容量 | (25 °C) 29.6 J/(mol·K) | ||||||||||||||||||||||||||||||
原子特性 | |||||||||||||||||||||||||||||||
酸化数 | 1(強塩基性酸化物) | ||||||||||||||||||||||||||||||
電気陰性度 | 0.82(ポーリングの値) | ||||||||||||||||||||||||||||||
イオン化エネルギー | 第1: 418.8 kJ/mol | ||||||||||||||||||||||||||||||
第2: 3052 kJ/mol | |||||||||||||||||||||||||||||||
第3: 4420 kJ/mol | |||||||||||||||||||||||||||||||
原子半径 | 227 pm | ||||||||||||||||||||||||||||||
共有結合半径 | 203±12 pm | ||||||||||||||||||||||||||||||
ファンデルワールス半径 | 275 pm | ||||||||||||||||||||||||||||||
その他 | |||||||||||||||||||||||||||||||
結晶構造 | 体心立方 | ||||||||||||||||||||||||||||||
磁性 | 常磁性 | ||||||||||||||||||||||||||||||
電気抵抗率 | (20 °C) 72 nΩ⋅m | ||||||||||||||||||||||||||||||
熱伝導率 | (300 K) 102.5 W/(m⋅K) | ||||||||||||||||||||||||||||||
熱膨張率 | (25 °C) 83.3 μm/(m⋅K) | ||||||||||||||||||||||||||||||
音の伝わる速さ (微細ロッド) |
(20 °C) 2000 m/s | ||||||||||||||||||||||||||||||
ヤング率 | 3.53 GPa | ||||||||||||||||||||||||||||||
剛性率 | 1.3 GPa | ||||||||||||||||||||||||||||||
体積弾性率 | 3.1 GPa | ||||||||||||||||||||||||||||||
モース硬度 | 0.4 | ||||||||||||||||||||||||||||||
ブリネル硬度 | 0.363 MPa | ||||||||||||||||||||||||||||||
CAS登録番号 | 7440-09-7 | ||||||||||||||||||||||||||||||
主な同位体 | |||||||||||||||||||||||||||||||
詳細はカリウムの同位体を参照 | |||||||||||||||||||||||||||||||
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カリウム (英: potassium) は原子番号19の元素。元素記号は K。アルカリ金属元素の一つで、典型元素である。医薬学や栄養学などの分野では英語のポタシウム(ポタッシウム)が使われることもある。和名では、加里(カリ)または剥荅叟母(ぽたしうむ)という当て字がされる。生物にとっての必須元素の一つ。植物の生育にも欠かせないため、肥料3要素の一つにも数えられる。 又、カリウムの単体金属を指す。消防法第2条第7項及び別表第一第3類1号により第3類危険物に指定されている[1]。
単体の特徴
銀白色の金属で、常温・常圧で安定な結晶構造は体心立方構造 (BCC) である[2]。比重は0.86で水より軽く、リチウムに次いで2番目に比重の軽い金属である。融点は63.7 °C、沸点は774 °C[2]。ナイフで簡単に切れる軟らかい金属である。アルカリ金属類の窒素以外の試薬に対する反応性は電気陰性度が低いほど高くなるため、カリウムは、より電気陰性度の大きいリチウム、ナトリウムよりも反応性が高く、より電気陰性度の小さいルビジウム、セシウムよりは反応性が低い[3]。切断してすぐのカリウムの断面は銀色の外観をしているが、空気によってただちに灰色へと変色していく[4]。水、ハロゲン元素と激しく発火して反応する。カリウムと水との反応においては、反応によって水素が発生し、さらに発生した水素が引火するに足る反応熱を生じるため爆発の危険がある[5]。空気中においても酸素との接触により反応熱で自然発火することもある[6]。そのため金属カリウムの保管は空気や水から遮断する必要があり、他のアルカリ金属と同様に鉱油やケロシンのようなアルカリ金属類と直接反応をしない炭化水素中やアルゴンで満たしたガラスアンプル中などで保管される[7]。アルコールとも反応してアルコキシドを生成する[8]。高温では水素とも反応し水素化カリウムを生成する。
炎色反応において、カリウムおよびその化合物は淡紫色を呈する。主要な輝線は波長404.5 nmの紫色のスペクトル線および、波長769.9 nmと766.5 nmの赤色の対となったスペクトル線(双子線)である[9]。ナトリウムと共存していると、ナトリウムの強い黄色の発色によって覆い隠されることもあるが、コバルトガラスを使うことでこのナトリウムの強く黄色い炎色を除去することができる[10]。溶液中のカリウム濃度は、一般にフレーム測光法や原子吸光分析、誘導結合プラズマ発光分光分析、イオン選択電極によって測定される。
同位体
カリウムは宇宙において、より軽い元素から合成される(元素合成)。カリウムの安定同位体は、超新星においてより軽い元素が急速に中性子捕獲することによってR過程を経由して形成される(超新星元素合成)[11]。
カリウムには24種類の同位体が存在することが知られている。これらの内、自然に産出するものはカリウム39 (93.3 %)、カリウム40 (0.0117 %)、カリウム41 (6.7 %) の3つである。
これらのうち、質量数40のカリウム40は放射性同位体である。半減期はおよそ12.5億年である[12]ため、地球創生時にとりこまれたものが未だに自然界に残存している(元をただせば超新星爆発で核反応がおこって生成・放出されたものとされる)。カリウム40の内11.2 %は、電子捕獲もしくは陽電子放出(β+崩壊)によってアルゴン40へと崩壊する。大気中に存在するアルゴンの多くの部分は、このカリウム40の崩壊により生成したものだと考えられている。また、大気中のアルゴン40の一部は宇宙線(太陽からの放射線)と反応することによりカリウム40となる。このためカリウム40は炭素14とともに常時生成されている。また、カリウム40の内88.8 %は陰電子崩壊(β- 崩壊)によって非放射性の安定同位体であるカルシウム40となる。
カリウム40は、カリウムが商用の代用塩として大量に用いられるほどに自然界から十分な量が産出し、教室での実演のための放射線源に用いられる。このようにカリウムは大量に存在する上に生体に含まれる量も多いため、健康な動物や人間にとって炭素14よりも大きな最大の内部被曝源である。70 kgの体重の人間において、1秒間にカリウム40はおよそ4,400個崩壊する[13]。天然カリウムの活性は31 Bq/gである[14]。
産出
単体のカリウムは、カリウムのその強い反応性のために自然中からは産出しない[15]。カリウムは様々な化合物として地殻のおよそ2.6 %を占めており、地殻の2.8 %を占めるナトリウムに次いで地殻中で7番目に存在量の多い元素である(地殻中の元素の存在度も参照)[16]。例えば花崗岩はカリウムをおおよそ5 %と、地殻の平均量以上を含んでいる。金属カリウムは非常に電気的に陽性であり(電気陰性度)、また非常に反応性が高いため、鉱石から直接生産することは難しい[4]。
工業原料としてのカリウム資源はほぼすべて塩化カリウムの形で採取される。年間生産量は3500万トン(K2O 換算、2008年)である[17]。2008年において、主な産地はカナダ (30.0 %)、ロシア連邦 (19.2 %)、ベラルーシ (14.2)[17]。推定埋蔵量は K2O 換算でおよそ180億トン[17]。カリウムは植物の成長に必須であるため、塩化カリウムの90 %以上はそのまま、もしくは硫酸カリウムの形で肥料(カリ肥料)として用いられる[18]。残りは水酸化カリウムを経由して、炭酸カリウムとなる。
商業生産
純粋なカリウム金属は、19世紀初期にハンフリー・デービーがカリウムを単離した頃からほとんど変わらないプロセスで、水酸化カリウムの電気分解によって単離される[4]。熱的な方法もまた、塩化カリウムを用いたカリウム生産において用いられる。
いくつかの鉱石はカリウム含有量が非常に高く、例えばカーナライトやラングバイナイト、ポリハライト、カリ岩塩などがあり、これらのカリウム鉱石を用いて、商業生産の可能な範囲においてカリウム塩類は抽出される[19]。主要なカリウム源は、カナダ、ロシア、ベラルーシ、ドイツ、イスラエル、アメリカ、ヨルダンおよび世界中の様々な場所で採掘されている[20]。カナダの行政区、サスカチュワン州の地下3,000フィートには、地球上で最大のカリウム鉱床が発見されている。サスカチュワンのいくつかの大きな鉱山は1960年代から操業しており、ブレアモア地層において、鉱山に縦穴貫通孔を通すために湿った砂を凍らせる手法を創始した。サスカチュワンの主要なカリウム採掘会社はポタッシュ・コープがある[21]。
海はもう一つの主要なカリウム源であるが、単位量当たりのカリウム含有量は0.39 g/Lとナトリウムが10.8 g/Lであるのと比べて非常に低い[22][23][24]。
カリウム塩類をナトリウムおよびマグネシウム化合物から分離するために、いくつかの方法が用いられている。カリウムの分離によって生じるナトリウムやマグネシウムの副産物は、地下に保存されるかボタ山に積み上げられる。大部分の採掘されたカリウム鉱石は処理されて最終的に塩化カリウムとなる。塩化カリウムは鉱山産業において、カリ (potash)、カリの塩 (muriate of potash) もしくは単純に MOP として呼ばれる。
試薬グレードの金属カリウムは、1ポンドあたりおよそ10ドル(1キロあたり22ドル)で売られている。純度の低いものは相応に安く販売される。カリウム金属市場は、金属カリウムの長期保管が困難であるために不安定である。金属カリウムは、カリウムの表面において超酸化カリウムが形成されることを防ぐために、乾燥した不活性ガスもしくは無水の鉱油中で保存しなければならない。この超酸化物は引っ掻かれた際に爆発を起こす、感圧性の爆薬である。超酸化物の形成の結果生じる爆発は、通常、消火の難しい火災を起こす[25]。
キログラム単位よりも多い量のカリウムは、1キロあたり700ドルと、非常に大きなコストが生じる。これは、危険物の輸送に必要なコストのためである[26]。
生理作用
カリウムは人体で8番目もしくは9番目に多く含まれる元素であり、体重のおよそ0.2 %を占めている(すなわち60 kgの成人においておよそ120 gのカリウムが含まれる)[27]。それは硫黄および塩素と同程度の含有量であり、主要なミネラルでカリウムより多く含まれているのはカルシウムおよびリンのみである[28]。
神経伝達
カリウムは人体に不可欠の電解質であり、脳および神経などにおけるニューロンの情報伝達に重要な役割を果たしている。カリウムはイオン(陽イオン)として主に細胞内に分布しており、その濃度は細胞内液が100-150 mmol/Lと高濃度に保たれているのに対し、細胞外液の濃度は3.5–4.5 mmol/L程度と非常に小さく保たれている。これは、いわゆるナトリウム-カリウムイオンポンプの働きによるものである[29]。このイオンポンプは、ATP を1つ消費して、ナトリウムイオン3つを細胞外へと運び出し、カリウムイオン2つを細胞内へと運び込む。このイオンポンプの働きによって細胞の内外にイオン濃度差が生じ、細胞膜上に電気的な勾配を発生させる。この電気勾配は通常時は静止電位と呼ばれる値に保たれているが、カリウムイオンチャネルが開くとカリウムイオン濃度の高い細胞内からカリウムイオン濃度の低い細胞外へと濃度勾配の方向にカリウムイオンが移動し、またナトリウムイオンチャネルが開くと同様にナトリウム濃度の高い細胞外からナトリウムイオン濃度の低い細胞内へとナトリウムイオンが移動する。カリウムイオンはナトリウムイオンよりもイオン半径が大きいため、このイオン半径の違いによって細胞膜のイオンポンプおよびイオンチャネルはこれらを区別することができ、一方を通過させて一方を通過させないように選択的に機能することが可能である[30]。このイオンチャネルの開閉による細胞内外のイオン濃度のバランスの変化によって膜電位(細胞外に対する細胞内電位)が変化し、それによって活動電位が発生(いわゆる「点火」)する。この活動電位が伝導することで情報が伝達されていく。活動電位が生じて細胞膜が脱分極(ナトリウムイオンの移動によって正の膜電位が発生)している場合には、カリウムイオンチャネルが開くことで再分極(膜電位が静止電位に戻る)させることになる。
また、右心房にある洞房結節から発生する活動電位によって心拍の調節が行われているが、そのためには適切なカリウムイオン濃度が必要である。静脈注射、あるいは何らかの異常によりカリウムイオンの血中濃度が過剰になる高カリウム血症となった場合、洞房結節のペースメーキングに変調を生じさせ、致死的な不整脈を引き起こしたり、心停止に至ることもある。また、心臓等の外科手術で心停止が必要な場合には塩化カリウムが用いられる。
カリウムイオンチャネルの KirBac3.1 の解析によって、これに含まれる5本のイオンチャネル (KcsA, KirBac1.1, KirBac3.1, KvAP, MthK) は全て原核生物に由来していることが明らかとなった[31]。
摂取
経口摂取される場合は吸収は緩やかであり、全身の細胞で速やかに取り込まれることと、過剰分は腎臓での K+ 調節機能により排泄されるので、体外濃度は常に低レベルに維持される。一日の所要量は1–2 g/日とされる。2005年4月の厚生労働省「日本人の食事摂取基準」生活習慣病予防の観点からみた望ましい摂取量では3500 mg/日と勧告されている。カリウムは5つの味覚のうち3つを刺激する。希薄溶液では甘味を感じ、より濃度が濃くなると苦味を感じ、最終的には塩味を感じる。
生命を維持するために必要なカリウムの摂取量は、様々な食品を食べることで通常は十分に賄われる。そのため、カリウムの血中濃度の低下によるカリウム欠乏症の徴候や症状などがはっきりとするようなケースは健康な個人においては希である。カリウムの豊富な食品として、パセリや乾燥させたアンズ、粉ミルク、チョコレート、木の実(特にアーモンドとピスタチオ)、ジャガイモ、タケノコ、バナナ、アボカド、ダイズ、糠などに特に多く含まれるが、大部分の果実、野菜、肉、魚において人体に十分な量が含まれている[32]。
高血圧についての疫学的研究および動物実験の結果、カリウム含有量の高い食品の摂取によって高血圧のリスクを低減できることが示され、高血圧を原因としない場合の脳卒中についても恐らくは低減される。また、ラットにおいて、カリウムの欠乏はチアミン(ビタミンB1)摂取量の不足と組み合わされることで心臓病に罹患することが示された[33]。そのため、カリウムの摂取制限における最適摂取量に関していくつかの議論が存在する。例えば、2004年にアメリカ医学研究所はカリウムの食事摂取量基準を4,000 mg (100 mEq)と指定したが、大部分のアメリカ人の一日のカリウム摂取量はその半分でしかなく、この基準では大部分のアメリカ人が正式にはカリウムの摂取が不十分であると考えられる[34]。同様に欧州連合、特にドイツとイタリアにおいても、カリウム摂取量の不足はいくぶんか一般的である[35]。2011年のイタリアの研究者のメタアナリシスによる報告によると、一日に1.46 g以上カリウムを摂取することで脳卒中のリスクを21 %低減させるとされる[36]。
医学的なサプリメントと病気
医薬品におけるカリウムのサプリメントはループ利尿薬やサイアザイド利尿薬と併用して広く使われている。これは、利尿剤がその薬効として尿によって体内からナトリウムと水を排出するが、その副作用としてカリウムも尿と共に排出されてしまうため、その失われたカリウムを補給することを目的としている。典型的な医薬用サプリメントは、一回につき10 mg当量(400 mg、およそカップ一杯の牛乳や6オンスのオレンジジュースに含まれるカリウムと同じ量)から20 mg当量 (800 mg) の範囲で服用される。サプリメントのカリウム濃度が非常に高濃度になるとカリウムイオンが細胞組織を殺してしまい、また胃や腸の粘膜も傷付けるため、高濃度のカリウムがゆっくりと浸出するようなタブレットやカプセルの形でも用いられる。このような理由により、アメリカの法律では処方箋の不要なカリウム錠はそのカリウムの含有量が99 mgまでに規制されている。
非医薬的用途としてもカリウムのサプリメントは利用されている。塩化カリウムのようなカリウム塩は水によく溶けるものの、濃度の高い溶液では前述のように苦味と塩味を刺激するため、高濃度のカリウムが含まれるようなサプリメント飲料にとって障害となることがある。そのため、このようなサプリメント飲料の口当たりをよくする研究が行われている[37][38]。
前述のようにカリウムは生体の神経伝達において非常に重要な役割を担っているため、一般的に嘔吐、下痢、多尿症などによって引き起こされる体液中のカリウムの不足は、低カリウム血症として知られている致命的な状態を引き起こすことがある[39]。カリウム欠乏の徴候としては、筋力の低下、イレウス(腸閉塞)、心電図の異常、反射機能の低下が見られ、重度のケースでは呼吸困難やアルカローシス、不整脈が見られる[40]。腎臓病の患者においては、逆にカリウムの大量摂取が健康を悪化させることがある。人工透析を受けている慢性腎不全患者においては、カリウムの摂取量に関して厳しい制限が行われる必要がある。これは、カリウムの排出を腎臓が制御しているためで、腎不全によってこの機能が低下すると摂取したカリウムの排出が困難になり、体内のカリウム濃度が高まることで高カリウム血症が引き起こされ、致命的な不整脈を誘発する危険があるためである[41]。
用途
カリウムはほかの多くの元素と同じように、金属カリウム単体としてよりも、カリウム化合物としての用途のほうが重要である。しかし、同じアルカリ金属であるナトリウムがカリウムとほぼ同じような用途を持つため、より安価なナトリウム塩で代替可能な用途も多くコスト面で劣るカリウムの用途は非常に限られている。例えば、2008年度の水酸化ナトリウムの日本における消費量は986,744トンであるが、同年の水酸化カリウムの日本における消費量は28,044トンでしかない[42]。
肥料
カリウムイオンは植物にとって重要な主要栄養元素の一つであり、様々なタイプの土壌に含まれている[43]。近代の高収穫率な農業においては、土壌中のカリウムは自然に供給されるよりも非常に速い割合で消費されるため、肥料としてカリウムを人工的に土壌に補給する必要がある。大部分の種類の農作物に含まれるカリウム量は通常収穫量の0.5から2 %の範囲であり、それだけの量のカリウムが収穫ごとに土壌から持ち出される。カリウム肥料は農業や園芸、水耕栽培などの耕作、栽培において、塩化物 (KCl) や硫酸塩 (K2SO4)、硝酸塩 (KNO3) のような形で利用される。世界で生産されるカリウム製品のおよそ93 %(2005年[24])が肥料として消費されており、そのうち90 %は塩化カリウムとして供給されている[43]。塩化カリウムはカーナライト (KCl•MgCl2•6H2O) 鉱石などから、塩化カリウムと塩化マグネシウムの溶解度差を利用して水中で分離することによって製造される[44]。塩化物に敏感な作物や、硫黄分を必要とするような作物に対しては硫酸カリウムが用いられる。硫酸カリウムはラングバイナイト (MgSO4・KCl・3H2O) やカイナイト ((Mg, K)SO4) のような鉱石の複分解によって生産される[45]。硝酸カリウムの肥料としての消費量は非常に少ない[46]。肥料成分の表記は通常、窒素、リン、カリウムの順に示され、カリウム量は K2O として表される[47]。
食品
前述のように、カリウムイオンは人の生命と健康を支えるのに重要な役目を果たす栄養素である。高血圧を抑えるためにナトリウムの摂取量を制限している人々によって、食塩の代替として塩化カリウムが用いられる(代用塩)。アメリカ合衆国農務省は、トマトペースト、オレンジジュース、テンサイ、ホワイトビーンズ、ジャガイモ、バナナその他多くのカリウムをよく含む食品をリストアップし、カリウム含有量をランク付けしている[48]。
酒石酸カリウムナトリウム(KNaC4H4O6、ロッシェル塩)はベーキングパウダーの主成分であり、鏡に銀メッキをする際にも用いられる。臭素酸カリウムは強力な酸化剤 (E924) であり、パン生地や魚肉練り製品の改良剤として用いられていた[49]。また、亜硫酸水素カリウム (KHSO3) はワインやビールなどの防腐剤として用いられていたが、肉には用いられなかった[50]。亜硫酸水素カリウムは織物や麦わらの漂白剤としてや、皮なめし剤としても用いられていた。
工業
純粋なカリウム蒸気は数種類の磁気センサに用いられる[51]。また、光電子素子としても用いられる。ナトリウムとカリウムの合金(NaK、ナトリウムカリウム合金)は熱交換媒体として原子炉の冷却材などに低融点合金として用いられる液体であり、希ガスや溶媒からわずかに含まれる二酸化炭素や水、あるいは酸素を高度に除去するための反応剤、乾燥剤としても用いられる。ナトリウムカリウム合金はまた、反応性蒸留においても用いられる[52]。ナトリウム、カリウム、セシウムをそれぞれ12 %、47 %、41 %含んだ三元合金は、合金としては最低の-78 °Cの融点を持つ[53]。
全てのカリウム化合物は強いイオン性を有しているため、カリウムはしばし有用な陰イオンを保持させるのに用いられ、その一例として、クロム酸カリウム (K2CrO4) がある。クロム酸カリウムは黄色の染料やインク、爆薬や花火、皮なめし剤、ハエ取り紙、安全マッチ[54]など様々な用途に用いられるが、これらはカリウムイオンの特性というよりはむしろクロム酸イオンの特性であり、カリウムイオンはクロム酸イオンを保持する役目を担っている。
水酸化カリウムは強塩基であり、強酸や弱酸を中和してpHをコントロールするために用いられる。また、カリウム塩類の生産や、エステルの加水分解反応、洗剤産業における油脂のけん化などにも用いられる[55]。
硝酸カリウム(KNO3、硝石)は、火薬(黒色火薬)において酸化剤として働き、また肥料としても重要である。歴史的には、チリ硝石の主成分である硝酸ナトリウムに塩化カリウムを反応させる「転化法」と呼ばれる方法によって工業生産されていたが、ハーバー・ボッシュ法による空気から化学的に窒素を固定する手法(化学的窒素固定法)が確立してからは、炭酸カリウムもしくは水酸化カリウムを硝酸に溶解させる方法で作られるようになった[56]。また、グアノや蒸発岩などの天然鉱石からも得られる。
シアン化カリウム(KCN、青酸カリ)は銅や貴金属(特に金や銀)を錯体を形成することによって溶解させる用途に使われ、それらの金属の電鋳や電解めっき、金鉱山の採掘にも用いられる。シアン化カリウムはまた、有機合成においてニトリル類を合成するためにも用いられ、さらには、シアン化銀と共にメッキ浴としても用いられる[57]。シアン化カリウムはこのように多くの用途を有する有用な化合物であるが、生物に対して非常に強い毒性を示す[58]。炭酸カリウム(K2CO3、ポタッシュ)は穏やかな乾燥剤として用いられ、ガラスや石鹸、カラーテレビのブラウン管、蛍光灯、織物の染料や顔料の製造にも利用される。過マンガン酸カリウム (KMnO4) は酸化剤や漂白剤、浄化物質として利用され、サッカリンの製造にも用いられる。塩素酸カリウム (KClO3) はマッチや爆薬に加えられる。臭化カリウム (KBr) は、以前は写真の定着剤や医薬品の鎮静剤として用いられていた[43]。また、フェリシアン化カリウムやフェロシアン化カリウムも写真の作成に利用される。ヘキサフルオロケイ酸カリウム (K2SiF6) は琺瑯や陶器の釉薬、特殊ガラスなどの用途に利用される。ヨウ化カリウム (KI) は殺菌消毒薬などに使われる。
超酸化カリウムは橙色固体であり、持ち運び可能な酸素源として自給式ガスマスクに用いられる。気体の酸素よりも少ない容積しか占有しないため、鉱山や潜水艦、宇宙船において呼吸のための酸素供給システムとしても広く用いられている[59][60]。また、過酸化カリウムは二酸化炭素吸収剤として利用される。
- 4 KO2 + 2 CO2 → 2 K2CO3 + 3 O2↑
硝酸コバルトカリウム (K3[Co(NO2)6]) はオーレオリンもしくはコバルトイエローと呼ばれる色の絵の具として用いられる[61]。
反応試薬
カリウムアミドは、強い求核性を有するアミドアニオン (NH2+) 源として芳香族求核置換反応などに利用される強塩基性の化合物であり、液体アンモニアにカリウムを反応させることで得られる[62]。また、有機金属化合物であるアルキル化カリウムは、しばし反応の中間体として利用されている。しかし、単離されたアルカリ金属のアルキル化合物は少なく、その例外的なものとしてメチルカリウム (CH3K) がある。これはメチル水銀とナトリウム-カリウム合金との反応によって得られ、副生成物としてナトリウムアマルガムが形成される。カリウムの金属有機化合物はイオン性物質であるため炭化水素などの有機溶媒への溶解性はそれほど高くない。また、反応性が強く空気中で発火し、水と激しく反応する[63]。カリウムのアルコキシドは強塩基性の求核剤としてハロアルカンの脱離反応などに利用される[64]。代表的なものにクライゼン縮合に利用されるカリウム tert-ブトキシドがある。このようなカリウムのアルコキシドは、水素化カリウムもしくは金属カリウムとアルコールとを反応させることによって合成される。水素化カリウムは、アルコールのヒドロキシ基からプロトンを引き抜くことが可能なほどの強力な塩基であり、反応後の副生成物が水素しか発生しない利点を有している[65]。
化学分析
臭化カリウムは、赤外分光法において分析試料の錠剤を作るためのマトリックスとして用いられる(臭化カリウム錠剤法)[66]。フェリシアン化カリウム(ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、赤血塩) K3[Fe(CN)6] は、チオクローム法と呼ばれるチアミン(ビタミンB1)の分析において、チアミンを酸化させる酸化剤として用いられる[67]。また、フェリシアン化カリウムはフェロシアン化カリウム(ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム)K4[Fe(CN)6] とともに、鉄イオンの定性分析にも用いられる[68]。二クロム酸カリウム (K2Cr2O7) や過マンガン酸カリウムは、その強い酸化力を利用して酸化還元滴定における1次標準物質として用いられる[69]。
同位体の用途
前述のカリウム40がアルゴン40へと崩壊する特性は、一般的に岩の放射年代測定に利用されている(カリウム-アルゴン法)。岩石がマグマから形成された時点では岩石中にアルゴン40は含まれていないが、岩石が形成されて以降は岩石中のカリウム40の崩壊によってアルゴン40が生成し岩石中に蓄積されていく。岩石中のアルゴン40の存在量は、岩石が形成されてからの時間に比例して増加していくため、岩石中のカリウム40の濃度と蓄積されたアルゴン40の量を測定することで岩石の年代を推定することができる。年代測定に最も適した鉱石には、白雲母、黒雲母、深成岩/広域変成岩の角閃石や火山岩の長石などがある。火山流や浅い貫入に由来する岩石試料もまた、例えば加熱されて試料中のアルゴンが失われたりするような変化を受けていないそのままの状態の試料であれば、全て年代測定することができる[70][12]。年代測定以外では、カリウムの同位体は風化の研究における放射性トレーサーとして幅広く用いられる。また、カリウムが生命維持のために必要とされる栄養素であるため、生物地球化学的循環の研究にも用いられる。
歴史
カリウムは、草木を焼いた灰として古来から利用されてきたが、これがナトリウム塩とは根本的に異なる物質であるという事は理解されていなかった。元素としてのカリウムや、他の塩類から分離された独立した要素としてのカリウム塩類は古代ローマ時代には知られておらず、元素のラテン語名は古典ラテン語でなく、むしろ新ラテン語であった。ラテン語のカリウムという名称は、アラビア語で「植物の灰」を意味する al -qalyah (アラビア語: القَلْيَه) に由来しており、現在元素名として用いられているドイツ語の「Kalium」は、このラテン語の名称を音訳したものである[7]。似た発音のアルカリとは語源が同じである(より一般的な標準アラビア語においては アラビア語: بوتاسيوم として知られている)。カリウムは、カノのハウサ人による濃青色の織物を生産するために、灰とインディゴ、湯を混ぜ合わせて使われていた秘密の成分であった[71]。
1807年、イギリスのハンフリー・デービーが新しく発見されたボルタ電池を用いて、水酸化カリウム(苛性カリ)を電気分解(溶融塩電解)することによって発見した。この元素は電気分解によって分離された最初の金属であった[72]。デービーはこの元素が草木灰 (potash) に多く含まれることから、「ポタシウム (potassium)」と名付けた[73]。potash は、草木を壺 (pot) で焼いて灰 (ash) とすることから作られた合成語である。植物はほとんどナトリウムを含有しないため potash は主にカリウム塩であり、残りの成分は主に水溶性の低いカルシウム塩である。
その数年後、デービーはカリウムを単離したのと類似した技術によって、植物塩でない、鉱石より誘導された水酸化ナトリウムから金属ナトリウムを単離し、カリウムとナトリウムの元素、塩類が違う物質であることを示した[74][75][76][77]。このデービーによる発見まで、カリウムやその塩がナトリウムとは全く別の物質であることは知られていなかった。
カリウム以後、新たに発見された金属元素にはラテン語の派生名詞中性語尾 -ium を付ける習慣が一般化した。非金属に -ium がつけられるのはヘリウムだけである。
長い間、カリウムの大きな用途はガラス、石鹸と漂白剤の製造に限られていた[78]。1840年ユストゥス・フォン・リービッヒによって、カリウムが植物のために必要な元素であり、しかも大部分の土壌においてカリウムが欠乏していることが発見され[79]、カリウム塩類の需要は急激に増加した。モミの木から作られる木の灰がカリウム源として使われていたが、ドイツのシュタースフルト近郊において塩化カリウムを含んだ鉱床が発見され、1968年にドイツでカリウム肥料の工業規模の生産が始まった[80][81][82][83]。その他のカリウム鉱床は、1960年代までにカナダで大きなものが発見され、それは支配的な生産者となった[84][85]。
危険性
カリウムは水と激しく反応し、水酸化カリウムと水素ガスを発生させる[5]。
- 2K(s) + 2H2O(l) → 2KOH(aq) + H2↑ (g)
この反応は発熱反応であり、その発熱量は発生した水素を引火させるのに十分な熱量である。そのため、酸素存在下において爆発する恐れがある。また、反応によって生じる水酸化カリウムは皮膚に炎症を起こすほどの強アルカリである。
カリウムの微細粒子は空気中において室温で発火し、加熱されればバルク金属でも発火する。発火したカリウムに水をかけると、カリウムの比重は0.89 g/cm3と水より軽いために燃焼しているカリウムが水に浮かび大気中の酸素にさらに曝されることになり、また、水とカリウムの反応によって水素と反応熱が生成されるため、カリウムの火はより一層悪化する。そのため、通常の消火活動ではカリウムによる火に対して、効果がないか悪化させることとなる。カリウムの火の消火には、乾燥した塩化ナトリウム(食卓塩)、炭酸ナトリウム(ソーダ灰)、および二酸化ケイ素(砂)が効果的である。また、金属火災用に設計された一部の粉末消火器や、窒素およびアルゴンも効果的である。
カリウムはハロゲンと激しく反応し、臭素と反応すると爆発する。硫酸ともまた爆発的に反応する。燃焼によってカリウムは過酸化物や超酸化物を形成し、これらは油のような有機物もしくは金属カリウムと激しく反応するかもしれない[86]。
カリウムは空気中の水蒸気と反応するため通常乾燥した鉱油中で保管されるが、リチウムやナトリウムと異なり無期限に鉱油中に保存してはいけない。半年から1年以上保管されると、刺激に敏感な過酸化物が金属カリウム上や保管容器のフタの下に形成され、フタを開けた際に爆発する。そのため、カリウムは酸素を含まない不活性な気体もしくは真空下で保存しない限り、3か月以上は保管しないことが推奨される[87]。
金属カリウムの非常に高い反応性のため、完全に皮膚や目を保護し、カリウムとカリウムを扱う人との間に防爆壁を置くことが望ましく、それほどまでに非常に慎重に取り扱わなければならない。
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