大谷駅 (滋賀県)
大谷駅 | |
---|---|
改札口(2023年9月) | |
おおたに Otani | |
◄OT33 追分 (1.6 km) (1.7 km) 上栄町 OT35► | |
所在地 | 滋賀県大津市大谷町23番5号 |
駅番号 | OT 34[1] |
所属事業者 | 京阪電気鉄道 |
所属路線 | ▲京津線 |
キロ程 | 5.0 km(御陵起点) |
駅構造 | 地上駅(停留場) |
ホーム | 2面2線 |
乗降人員 -統計年度- |
372人/日 -2019年[2]- |
開業年月日 | 1912年(大正元年)8月15日[3] |
備考 | 無人駅 |
大谷駅(おおたにえき)は、滋賀県大津市大谷町にある、京阪電気鉄道京津線の停留場[4]。駅番号はOT34[1]。
かつては当駅の北西(現在の名神高速道路蝉丸トンネル西口付近)に、官設鉄道(国有鉄道)東海道本線の大谷駅(大谷停車場)が存在した[5]。
概要
[編集]標高は159mで、京阪電気鉄道の全駅の中では鋼索線も含めて最も高い位置にある。ホームは40パーミルの勾配上にあり[6]、山岳鉄道を除き、日本の普通鉄道・軌道では日本一の急傾斜の停留場である[7][6]。
歴史
[編集]官設鉄道
[編集]- 1879年(明治12年)8月18日:官設鉄道の京都 - 当駅間開通に伴い開業[8]。
- 1880年(明治13年)7月15日:逢坂山隧道開通により、当駅 - 馬場(後に2代目大津駅を経て現・膳所駅) - 大津(初代)間開業[8]。
- 1909年(明治42年)10月12日 - 国有鉄道線路名称(明治42年鉄道院告示第54号)制定により東海道本線の所属となる[9]。
- 1921年(大正10年)8月1日:東海道本線の大津(2代目) - 京都間の線路変更に伴い廃止[3][8][10]。
京阪電気鉄道
[編集]- 1912年(大正元年)8月15日:京津電気軌道の三条大橋 - 札ノ辻間開通に伴い[11]、京津電気軌道の停留場が開業[3]。東海道本線との乗換駅になる。
- 1925年(大正14年)2月1日:京津電気軌道が京阪電気鉄道と合併し、京阪電気鉄道京津線の停留場となる[12][13]。
- 1930年(昭和5年)11月9日:労働組合関係者による電車脅迫脱線事件が起きる(京阪京津線電車脅迫脱線事件を参照)[14]。
- 1932年(昭和7年)4月7日:「京津国道(國道2號=現・国道1号)」の改良工事に伴い移設[6][13][15]。
- 1943年(昭和18年)10月1日:阪神急行電鉄と京阪電気鉄道の合併に伴い、京阪神急行電鉄(現・阪急電鉄)の停留場となる[12]。
- 1945年(昭和20年)
- 1949年(昭和24年)12月1日:京阪神急行電鉄の会社分離に伴い、京阪電気鉄道の停留場となる[12]。
- 1996年(平成8年)11月16日:駅をびわ湖浜大津寄りに71m移設[13][16]。
- 2002年(平成14年)3月1日:京津線に「スルッとKANSAI」導入のため自動改札機・自動精算機を設置、使用開始[17][18]。
- 2007年(平成19年)4月1日:大津線に「PiTaPa」を導入[11][19]。
- 2019年(平成31年): 磁気券用自動改札機撤去[要出典]。
鉄道省
[編集]大谷駅 | |
---|---|
東海道線ホームと逢坂山隧道(1912年以前) | |
おおたに[20] Ōtani | |
◄大津 (3.1 km) (8.5 km) 山科► | |
所在地 | 滋賀県大津市大谷町 |
所属事業者 | 鉄道省 |
所属路線 | 東海道本線(旧線) |
キロ程 |
505.0 km(東京起点) 大津から3.1 km |
駅構造 | 地上駅 |
ホーム | 2面2線 |
開業年月日 | 1879年(明治12年)8月18日 |
廃止年月日 | 1921年(大正10年)8月1日[8] |
備考 | 東海道線の付け替えに伴い廃止 |
京都 - 大津(この大津駅は現在のびわ湖浜大津駅に近接した位置にあった)間の鉄道全通に先駆け、京都 - 当駅間(8哩10鎖81節≒13.09 km)が延伸開業した際に設けられた。この際のルート選定では、当時東山や逢坂山を横断するトンネルの開削技術がまだなく、また東山を直接越えると急勾配が発生してしまう(後にこのルートで開業した京阪京津線には、碓氷峠とほぼ同じ66.7パーミルの勾配が生まれた)ことから、京都から現在の奈良線のルートで稲荷駅まで南下した後、東へ稲荷山の山すそを迂回するものが採用された[21]。
駅は逢坂山隧道のすぐ西側、蝉丸神社の近くに設けられ、相対式ホーム2面2線となっており、中線が1本存在した。上下線間の連絡は、1892年(明治25年)4月以降は跨線人道橋によって行っていた[22]。
明治はじめ、京都駅 - 大津駅(のちのびわ湖浜大津駅)間鉄道開業前年の1879年(明治12年)8月の京都駅 - 当駅間開業時に開設、1921年(大正10年)8月に廃止された。
駅跡は逢坂山トンネル坑口とともにしばらく残っていて、京阪京津線の電車内から見ることができたが、現在は名神高速道路の盛り土に埋まっている。なお、太平洋戦争中は旧トンネル内で航空機部品工場として使用された逸話がある。
東側の旧トンネル入り口は現在も残っているが、そのトンネル内で京都大学防災研究所附属地震予知研究センターが地震観測所として使用(地震計を設置して観測)[23]しているため、入り口は固く閉ざされている。なお、旧トンネル入り口付近には「鉄道記念物 旧逢坂山ずい道東口跡地」という標柱と解説を記した案内板がある。
駅構造
[編集]京阪電気鉄道
[編集]配線図 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
|
相対式ホーム2面2線[24]を有する地上駅であり、無人駅となっている[3]。改札口は大津方面行きホーム京都方にあり、反対側の京都方面行きホームへは構内踏切で連絡している。
当停留場は40パーミルの勾配上にあり[4][7][6][25]、日本の普通鉄道・軌道では最大の急傾斜である[7][6]。当駅のホームに設置されているベンチは、この勾配を考慮して脚の長さが左右で異なっている[4][25][26]。「軌道建設規程」(大正12年12月29日内務省・鉄道省令)により軌道の停留場の勾配は10パーミル以下にしなければならないと定められているが[27]、当駅は内務大臣(当時)の特別の許可を受けている[6]。また、この勾配は車両を4両化する際にホームを延長する場所がなかったため特例で認められている[27]。なお、2021年にロサンゼルス・エンゼルス所属(当時)の大谷翔平がMVPを受賞した際、京阪の公式Twitterでは当駅のベンチの画像を掲載して(右肩上がりの意味が込められている)大谷のMVP受賞を祝福している[28]。
のりば
[編集]ホーム | 路線 | 方向 | 行先 | 備考 |
---|---|---|---|---|
改札口側 | ▲京津線 | 上り | びわ湖浜大津方面[29] | |
反対側 | 下り | 三条京阪・太秦天神川方面[29] | 御陵駅より地下鉄東西線へ直通 |
-
全景(2017年10月)
-
改札口(2006年9月)
-
ホーム(2006年9月)
-
勾配のため脚の長さが異なるベンチ(2023年3月)
利用状況
[編集]以下は、京阪電気鉄道開業百周年記念誌『京阪百年のあゆみ』資料編「駅別乗降人員の推移」による(2007年は調査中止によりデータなし)[30]。2019年以降はバリアフリー新法に基づく各年の「移動等円滑化取組報告書(軌道停留場)」の「一日当たりの利用者数」による[31]。
1日平均乗降人員:356人(2009年11月10日)
- 1980年代のピーク時は1,100人を超え、1990年代半ばまでは800人前後の乗降客数だったが、2002年には500人を割り込み、以降は400人前後で推移している。また、京阪電鉄の全駅で最も利用者数が少ない。
1日平均乗降人員は以下の通り。
年度 | 1日平均 乗降人員 |
---|---|
1950年 | 692 |
1960年 | 669 |
1965年 | 520 |
1970年 | 740 |
1975年 | 935 |
1980年 | 1,100 |
1981年 | 1,074 |
1982年 | 1,133 |
1983年 | 966 |
1984年 | 895 |
1985年 | 874 |
1986年 | 933 |
1987年 | 859 |
1988年 | 770 |
1989年 | 840 |
1990年 | 888 |
1992年 | 804 |
1995年 | 669 |
1998年 | 557 |
2000年 | 654 |
年度 | 1日平均 乗降人員 |
---|---|
2002年 | 449 |
2003年 | 393 |
2004年 | 418 |
2005年 | 373 |
2006年 | 432 |
2007年 | ― |
2008年 | 440 |
2009年 | 356 |
2010年 | |
2011年 | |
2012年 | |
2013年 | |
2014年 | |
2015年 | |
2016年 | |
2017年 | |
2018年 | |
2019年 | 333 |
2020年 | 277 |
2021年 | 283 |
停留場周辺
[編集]地形的には逢坂峠より西で山科盆地の縁だが、滋賀県に属する。駅の近くには老舗のうなぎ料理店[32]や峠の茶屋があるだけに見えるが、名神高速道路蝉丸トンネル西口の上を通って北側へ続く道沿いには大谷団地や琵琶湖乗馬倶楽部がある。
隣の停留場
[編集]かつて存在した路線
[編集]脚注
[編集]- ^ a b 平凡社 2021, p. 35.
- ^ 「G-5 京阪電車市内各駅の乗降人員」『大津市統計年鑑(令和4年版)』、大津市役所、2023年3月、66頁。
- ^ a b c d 川島 2009, p. 58.
- ^ a b c “【湖国の鉄道さんぽ】地下鉄→登山電車→路面電車 京阪京津線は3つの顔”. 産経ニュース. (2020年6月9日) 2022年2月13日閲覧。
- ^ 参謀本部陸地測量部 (1912年8月25日). “2万分1地形図「膳所」”. 今昔マップ on the Web. 2023年9月7日閲覧。
- ^ a b c d e f 沿線お出かけ情報(おけいはんねっと) 湖都から古都へ鉄の路 びわ湖浜大津~追分<京津線> - 京阪電気鉄道
- ^ a b c 平凡社 2021, p. 34.
- ^ a b c d 結解 2020, p. 100.
- ^ 『官報 1909年10月12日』「國有鐵道線路名稱」(明治42年10月12日鐵道院告示第54號)
- ^ 『官報 1921年07月28日』「東海道本線大津京都間變更線路及奈良線稻荷桃山間新設線路ニ依ル運輸營業開始」(大正10年)7月28日鐵道省告示第99號)
- ^ a b 寺田 2013, p. 276.
- ^ a b c 寺田 2013, p. 275.
- ^ a b c d e 京阪電気鉄道 2011b, p. 147
- ^ 短銃を持った壮漢ら、電車を暴走させて破壊『大阪毎日新聞』昭和5年11月10日(『昭和ニュース事典第2巻 昭和4年-昭和5年』本編p168 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年)
- ^ a b c 今尾恵介『日本鉄道旅行地図帳 9号 関西2』新潮社、2009年1月19日、32頁。ISBN 978-4-10-790027-2。
- ^ 京阪電気鉄道 2011a, p. 252.
- ^ 京阪電気鉄道 2011a, p. 258.
- ^ 「運輸事業」『第80期事業報告書』、京阪電気鉄道、2002年6月、9頁。
- ^ 京阪電気鉄道 2011a, p. 262.
- ^ 歴史的仮名遣(字音仮名遣)では「おほたに」表記。
- ^ 結解 2020, p. 101.
- ^ 『鉄道線路各種建造物明細録』第1篇、逓信省鉄道庁、1892年12月26日、632-633頁
- ^ “逢坂山観測所(京都大学防災研究所附属 地震予知研究センター)”. 京都大学防災研究所附属 地震予知研究センター. 2022年4月2日閲覧。
- ^ 川島 2009, p. 15.
- ^ a b “地下鉄→登山電車→路面電車!?まるで鉄道のトライアスロン 京都―滋賀を走る京阪京津線”. まいどなニュース (2021年3月21日). 2022年2月13日閲覧。
- ^ “地下鉄!?登山列車!?路面電車!?有人なのに自動運転!?トリビアだらけの変わった電車「京阪京津線800系」の魅力”. @DIME (2020年9月18日). 2022年2月13日閲覧。
- ^ a b c “京津線「直角」に曲がる電車 山越えの知恵、くねる軌道”. NIKKEI STYLE (2011年8月5日). 2022年2月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月13日閲覧。
- ^ “大谷翔平のMVP受賞 鉄道会社からの“右肩上がり”な祝福ツイートが話題 「縁起よろし」”. Hint-Pot (2021年11月20日). 2022年2月13日閲覧。
- ^ a b “大谷駅|駅構内図”. 京阪電気鉄道. 2022年9月19日閲覧。
- ^ 京阪電気鉄道 2011a, pp. 104–105.
- ^ “バリアフリー設備”. 京阪電気鉄道. 2023年9月11日閲覧。
- ^ “日本を知る、地域を考える@滋賀県大津市<後編>”. テレ東プラス (2019年9月8日). 2022年2月13日閲覧。
- ^ “琵琶湖乗馬俱楽部”. 琵琶湖乗馬俱楽部. 2022年4月2日閲覧。
参考文献
[編集]- 川島令三『東海道ライン 全線・全駅・全配線』 第6巻 米原駅 - 大阪エリア、講談社〈【図説】日本の鉄道〉、2009年8月20日。ISBN 978-4-06-270016-0。
- 寺田裕一『データブック日本の私鉄』(改訂新版)ネコ・パブリッシング、2013年1月19日。ISBN 978-4-7770-1336-4。
- 結解善幸『路線百科 東海道本線』交通新聞社〈DJ鉄ぶらブックス 031〉、2020年10月30日。ISBN 978-4-330-08020-8。
- 地理情報開発(編)「京阪電鉄大津線(京津線・石山坂本線)」『日本路面電車地図鑑』、平凡社、2021年6月20日、32-35頁、ISBN 978-4-582-94606-2。
- 京阪電気鉄道株式会社経営統括室経営政策担当 編『京阪百年のあゆみ』京阪電気鉄道、2011年3月24日。OCLC 752013969。全国書誌番号:21919484。
- 京阪電気鉄道株式会社経営統括室経営政策担当 編『京阪百年のあゆみ 資料編』京阪電気鉄道、2011年3月24日。OCLC 752013971。全国書誌番号:21919482。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 大谷駅 - 京阪電気鉄道
- おけいはん.ねっと|駅情報局:大谷駅
- 京阪電車大津線公式webサイト keihan-o2.com 第12回: 京津線 大谷駅 - ウェイバックマシン(2008年10月11日アーカイブ分)