ホンダ・シャリィ
シャリィ(Chaly)は本田技研工業がかつて製造販売したオートバイである。本項ではほぼ同一コンセプトならびに車体を持つスクータータイプのシャレット(Chalet)についても解説を行う。
車両解説
[編集]初めて2輪車に乗る人でも安心して乗れるやさしい操作とすぐれた運転性・乗降性ならびに家族みんなで楽しめるホームバイクをコンセプト[注 1]として1972年に発売[2]。
車体は低床バックボーンフレームを採用し、乗降時のまたぎ高さを40cmに、さらにシート高も70cmと低く乗りやすさを追求した[2]。サスペンションは前輪をテレスコピック、後輪をスイングアームとし、前後タイヤホイールサイズは3.50-10[3]。ブレーキは前後ともリーディングトレーリングで、最小回転半径は1.6mである。
スーパーカブと基本設計を共用する前傾80°空冷4ストロークSOHC単気筒エンジンを搭載。内径x行程=39.0×41.4(mm)・排気量49㏄とした1人乗り原動機付自転車モデルが型式名CF50、内径x行程=47.0×41.4(mm)・排気量72㏄とした2人乗り原付二種モデルが型式名CF70とされた[3]。燃料供給はキャブレターでタンク容量は2.8L[3]。組み合わせられるトランスミッションは、原則的に常時噛合式3段マニュアルトランスミッションであるが、CF50のみ常時噛合式2段もしくは3速オートマチックトランスミッションが設定された。またマニュアルトランスミッション車のクラッチはすべて自動遠心式で、手動モデルは未製造である[注 2]。
上述した搭載エンジンならびにトランスミッションに加え装備品により車種バリエーションを展開したほか、車名は英文字表記はChalyのまま日本語表記は以下の変更が実施された。
遍歴
[編集]- 1972年7月18日発表 同月20日発売[2]
月間生産目標2,000台で以下の3モデルを設定
型式名 | CF50-I | CF50-II | CF70 |
---|---|---|---|
排気量(㏄) | 49 | 72 | |
トランスミッション | 2段ロータリー | 3段ロータリー | |
前ブレーキ | 右ハンドル | ||
後ブレーキ | 左ハンドル | 右足ペダル | |
標準本体価格 | 73,000円 | 75,000円 | 78,000円 |
月間生産目標9,000台で以下のマイナーチェンジを実施
- CF50-Iを廃止
- CF70をCF70-IIへ変更
- 大型フロントバスケットを装備するCF50-III・CF70-IIIを新たに設定
- 前後ブレーキライニングの摩耗表示を設置
- イグニッションキイを両面タイプへ変更
- メーター照明を透過光式へ変更
- 標準本体価格を以下に変更
- CF50-II:102,000円
- CF50-III:105,000円
- CF70-II:105,000円
- CF70-III:108,000円
月間生産目標12,000台で以下のマイナーチェンジを実施
- エンジンのトルク特性を変更
- フューエルタンクキャップに燃料計を追加
- 方向指示器作動時に戻し忘れ防止ブザーを追加
- リヤキャリアの形状を変更
- 標準本体価格を以下に変更
- CF50-II:112,000円
- CF50-III:115,000円
- CF70-II:117,000円
- CF70-III:120,000円
- 1981年1月20日発表 同月21日発売[4]
年間販売目標140,000台で以下のマイナーチェンジを実施
- 大型フロントバスケットを標準装備化しCF50-III・CF70-IIIを発展的解消した上で車名をシャリイ50・シャリイ70へ変更
- 50モデルに3速オートマチックトランスミッションならびにオートチョークを装備したシャリイ50 ATを追加
- 50モデルのエンジンの性能向上
- 点火装置をマグネトー→CDIへ変更
- カムチェーンにオートテンショナーを追加
- ヘッドライトを速度計ケース一体丸型からバスケット下へ移設し角型化
- 標準本体価格を以下に変更
- シャリー50:123,000円
- シャリー50 AT:129,000円
- シャリー70:128,000円
年間販売目標36,000台で以下のマイナーチェンジを実施
- シャリイ50 ATを廃止
- マニュアルトランスミッションを停車時のみロータリー式となる方式へ変更
- 燃料計を速度計と一体大型化
- 50モデルのエンジンの性能向上
- 70モデルのエンジンの性能向上
- タイヤをチューブレス化
- 標準本体価格を以下に変更
- シャリイ50:133,000円
- シャリイ70:143,000円
なおシャリイ70は本マイナーチェンジにより最終モデルとなった。
- 1983年11月9日発表 同月10日発売[9]
シャリイ50に以下の変更を実施
- 30Km以上で点灯する速度警告灯を装備
- 標準本体価格を135,000円へ変更
- 1988年2月24日発表 同月25日発売[5]
以下のマイナーチェンジを実施
- シャリイ70を廃止
- シャリイ50は車名をシャリィ50とした上で以下の変更を実施
車名をシャリィとした上で以下の変更を実施
- カラーリング変更
- 年間販売目標を6,500台とし標準本体価格を159,000円[注 4]へ変更
- カラーリングならびにスタンド形状を変更
- 年間販売目標を5,500台とし標準本体価格を169,000円[注 4]へ変更
- 1995年3月9日発表 同月10日発売[6]
車名をシャリーとした上で以下の変更を実施
- カラーリングを変更
- 年間販売目標を4,000台とし標準本体価格を179,000円[注 4]へ変更
なお本モデルは1997年にもカラーリング変更のマイナーチェンジを実施しているが、1998年に施行された平成10年排出ガス規制には未適応であることから、継続生産車両の期限となる1999年8月31日をもって生産終了となった。
シャレット
[編集]1978年5月17日発表、同月18日発売[12]。型式名NY50。月間販売目標を5,000台とし標準本体価格は99,000円とされた。
車体ならびにサスペンションの基本コンポーネンツはシャリーと共用するが[注 5]、相違は搭載するエンジンを内径x行程=40.0x39.6(mm)・圧縮比7.5・最高出力1.8ps/4,000rpm・最大トルク0.44kg-m/4,500rpmの空冷2ストロークピストンバルブ単気筒へ、動力伝達機構をVベルト式無段変速機へ変更した点にある[12]。またシャリー1979年モデルに先駆けて方向指示器戻し忘れ防止ブザーならびにパーキングブレーキを兼ねるブレーキロックレバーを装備した。
シャリイ50 AT発売に伴い1980年で生産終了。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b 1976年4月1日プレスリリース
- ^ a b c d 1972年7月18日プレスリリース
- ^ a b c d e 1976年4月1日プレスリリース主要諸元
- ^ a b c d e f g h 1981年1月20日プレスリリース
- ^ a b 1988年2月24日プレスリリース
- ^ a b 1995年3月9日プレスリリース
- ^ a b c d 1979年2月20日プレスリリース
- ^ 1983年4月28日プレスリリース
- ^ 1983年11月9日プレスリリース
- ^ 1992年1月29日プレスリリース
- ^ 1993年5月25日プレスリリース
- ^ a b 1978年5月17日プレスリリース
関連項目
[編集]- スーパーカブ系横型単気筒エンジンを搭載するモデル
外部リンク
[編集]- 本田技研工業公式HP 2輪製品アーカイブ