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ベヨネース列岩

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ベヨネーズ列岩から転送)
ベヨネース列岩

空中写真(1978年)
国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成
所在地 日本の旗 日本東京都
所在海域 太平洋フィリピン海
座標 北緯31度53分14秒 東経139度55分03秒 / 北緯31.88722度 東経139.91750度 / 31.88722; 139.91750
面積 0.01 km²
海岸線長km
最高標高 11[1] m
ベヨネース列岩の位置(日本内)
ベヨネース列岩
     
プロジェクト 地形
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位置

ベヨネース列岩(ベヨネースれつがん)は、伊豆諸島の岩礁群。東京都に属し、ベヨネース岩礁ハロースとも呼ばれている。欧名は「英語: Bayonnaise Rocks[2]

2016年時点で、所属市町村未定[3]のため本籍を置くことはできず、東京都の直轄であり、都の出先機関である東京都八丈支庁が所管している[3][4]

命名の由来からすれば「ヨネー」(フランス語発音:[ba.jɔ.nɛz])となるが、国土地理院発行の地形図気象庁の「火山データベース」、海上保安庁「海域火山データベース」[注 1]でもヨネー列岩を採用している(本稿でもそれに倣う)。

地理

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伊豆諸島南部、東京から南に408キロメートル、青ヶ島の南約65キロメートルに位置し、3個の烏帽子形の大岩礁と数個の小岩礁から成る[1]。東8キロメートルに位置する海底カルデラ明神礁カルデラ」のカルデラ縁上に位置するが、形成時期は明神礁カルデラより古い。植生はほとんどない[1]。渡り鳥の休息地でもある。近海はカツオなどの大型魚を狙う人々の釣り場であり、八丈島から釣り船で6時間ほどである[1]。また付近の海底にあるベヨネース海丘で海底熱水鉱床が発見されており、などを含んでいる[2]。最高標高は9.9メートルで[5]、周囲に風や波を避けるものはなく、よほどのでなければ上陸は困難である[1]

気象庁は「ベヨネース列岩」を活火山名として登録しているが、事実上の活火山は先カルデラ火山(ベヨネース列岩など)、明神礁カルデラ、後カルデラ火山(明神礁、高根礁など)を総括した明神火山となっており[6]、有史以降の火山活動は主に明神礁で見られ[7]、1998年の調査では、その火口中央付近から気泡が出ているのが確認された[5]

歴史

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1846年フランス海軍コルベット「J・R・バヨネーズ」が発見、名前はこれに由来する。1869年に波浪礁を記録[注 2]1896年以降、火山活動による海面異常や海底噴火がみられ、1906年[5]1946年(高さ100m[8]。)、1952年 - 1953年には付近の明神礁で新島も出現した[注 2]。この新島は青ヶ島からも遠望できるほどに成長した[注 2]

1953年10月5日にアメリカの海洋観測船「ベアード」の調査団長がゴムボートで上陸、岩石採取に成功する。この岩石は日本にも寄贈された[要説明]

本列岩は波浪で上陸困難だったことから、波浪の巣という意味で別名「ハロース」とも呼ばれるようになった[10]

海上保安庁は測量船「昭洋」を用いて1993年6月と1999年1月に観測し、前者は無人測量船「マンボウII」が火口頂部付近から噴出する気泡を確認し、最浅部は50m、後者は自航式ブイ「マンボウ」が測った最浅部は47mであった[注 2]

2017年および2023年には、噴火活動と海水の変色が確認され[5]航行警報および噴火警報が発表された[11]

岩(島)の改称

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2012年3月15日の東京都議会予算特別委員会の質疑において、吉田康一郎議員(中野区)が、ベヨネース列岩の個々の岩(島)に命名をするとともに、「ベヨネース」という洋名についても、日本語由来の名称を付けるべきと提案した[10]。この折、吉田都議は、列岩の総称に「波浪巣島」「波浪巣岩」、3個の大きな烏帽子形の岩に「北烏帽子岩」「中烏帽子岩」「南烏帽子岩」、小さな岩礁に国に倣って「東小岩」「西上小岩」等の名称を提案しつつ、都民に広く名称案を募り、知事を長とする選考委員会で選定することを求めた。これに対し、当時の石原慎太郎東京都知事は「大賛成でありまして、責任を持ってやりたいと思います。」と答弁した[12][10]。しかし、現在に至るまで正式な改名はなされていない[10]

脚注

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  1. ^ 【火山の概要】(『日本周辺海域火山通覧』より[5](前略)比高は約1,400mで、山麓には多数の崩壊地形が見られる。また、西側外輪山の一部としてベヨネース列岩を持つ。ベヨネース列岩は3個の烏帽子型の岩と数個の小礁から成り、玄武岩で構成されている(SiO2 52%)。明神礁は最浅水深50mの円錐形の山体であり、1870~1970年までの100年間に11回の噴火を起こし、現在、最も活発に活動している部分である。大噴火時には多量のデイサイト質軽石(SiO2 63~69%)を噴出している[5]
  2. ^ a b c d e 明神礁(ベヨネース列岩)の火山名の表記は、典拠に完全に一致する場合に限定[5][9]。)
    • 概要:溶岩+降下テフラ
    • 火山地形:Ca
    • 年代[5]
      • 1869年波浪礁
      • 1906年噴煙
      • 1915年2月浅瀬、4月海中噴火、6~7月海中噴火
      • 1934年海中黄変色・硫黄臭
      • 1946年2月新島、4月新島複数、10月新島高さ100m、12月新島沈下、波浪礁
      • 1952年9月爆発新島出現・消滅、10月新島再出現
      • 1953年3~4月大爆発多数・新島一時水没、8~9月大爆発多数・新島水没
      • 1960年7月海中噴火、軽石抛出

    ::"※"=火山地形略記号 CA:カルデラ。

出典

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  1. ^ a b c d e 清水 2015, p. 108.
  2. ^ a b 清水 2015, p. 106.
  3. ^ a b 13. 東京都 §402 青ヶ島村ベネース列岩(平成28年度面積=0.0ha)」『平成28年 全国都道府県市区町村別面積調』(PDF)国土交通省 国土地理院、37頁https://www.gsi.go.jp/KOKUJYOHO/MENCHO/backnumber/GSI-menseki20161001.pdf2024年7月25日閲覧 
  4. ^ 清水 2015, p. 148.
  5. ^ a b c d e f g h 明神礁、ベヨネース列岩、Beyonesu Rocks (Bayonnaise)”. www1.kaiho.mlit.go.jp. 海域火山データベース. 海上保安庁 海洋情報部. 2024年7月25日閲覧。 “Beyonnaise Rocks、標高9.9 m(1997年海上保安庁測量 世界測地系による)”
  6. ^ 伊藤弘志ほか「日本周辺海域火山通覧(第4版)」(pdf)『海洋情報部研究報告』第48巻、海上保安庁、2012年、41-73頁、2020年3月20日閲覧 
  7. ^ 気象庁「ベヨネース列岩 有史以降の火山活動」
  8. ^ 「1946年2月新島、4月新島複数、10月新島高さ100m、12月新島沈下、波浪礁」[注 2]
  9. ^ 『第四紀火山カタログ』(日本火山学会発行)
  10. ^ a b c d 清水 2015, p. 109.
  11. ^ 海底火山「ベヨネース列岩」で変色水、噴火の可能性 気象庁が警報」『朝日新聞DIGITAL』2023年1月26日。2023年2月8日閲覧。
  12. ^ 平成24年 予算特別委員会速記録第4号 吉田康一郎(民主党)”. 東京都議会議会局管理部広報課. 2016年9月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月25日閲覧。

参考文献

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  • 清水浩史『秘島図鑑』河出書房新社、2015年7月30日、221頁。ISBN 978-4-309-27615-1 

関連項目

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外部リンク

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