黄金の鳥
『黄金の鳥』(おうごんのとり、独:Der goldene Vogel) は、グリム兄弟によるグリム童話のひとつ(KHM番号[注 1]57)で、3人の王子が黄金の鳥を探し求める話である[1]。
パウル・セビオが収集したフランス民話では、『金色のクロウタドリ』となっている。アンドリュー・ラングはこのバージョンを『みどりいろの童話集』に収めている[2]。
アールネ・トンプソンのタイプ・インデックスではAT番号550『金色の鳥』に分類される。このタイプの民話には、他に『グリップという鳥』『The Greek Princess and the Young Gardener』『イワン王子と火の鳥と灰色狼』『How Ian Direach got the Blue Falcon』『The Nunda , Eater of People』などがある[3]。
あらすじ
[編集]王様の持っているリンゴの木は、毎年、黄金のリンゴを実らせる。しかし毎年、夜の間に黄金のリンゴが1個、盗まれていた。
王様は三人の王子を見張りに立たせた。第一と第二の王子は寝入ってしまったが、最も若い第三の王子は寝ずの番を続け、リンゴ泥棒が黄金の鳥であることを知る。彼は黄金の鳥を射落とそうとするが、羽が落ちただけであった。
だがその黄金の羽はあまりにすばらしく、王様は黄金の鳥が欲しくてたまらなくなった。王様は黄金の鳥を捕らえるために三人の王子を次々に旅立たせた。
三人の王子たちは、人語を話すキツネに出会う。キツネは彼らに「灯火が明るい楽しげな宿でなく、悪い宿を選ぶこと」という助言を与える。
第一と第二の王子は、キツネの助言を無視して心地良さそうな宿に泊まってしまい、居心地の良さにおぼれて探索を断念する。
第三の王子はキツネの助言に従う。しかし、「黄金の鳥は金のカゴではなく木のカゴに入れなければいけない」というキツネの助言に背いてしまう。その結果、黄金の鳥は黄金の城を目ざめさせ、王子は逆に捕えられてしまう。
第三の王子は、生命を助けて欲しければ黄金の馬を連れて来いと命ぜられる。
キツネは第三の王子に「黄金の馬には黄金の鞍ではなく木の鞍を置くように」と助言する。しかし、王子は同じ失敗を繰り返す。
第三の王子は、黄金の城で姫と出会う。
キツネは第三の王子に「姫には両親への別れの挨拶をさせないように」と助言する。しかし、王子は同じ失敗を繰り返す。
姫の父は第三の王子に、生命を助けて欲しければ丘を除去するようにと命令する。
キツネが丘を取り除き、さらにキツネは第三の王子に全てのもの(黄金の鳥、黄金の馬、姫)を得る方法を助言する。そしてさらにキツネは第三の王子に「自分の首を切り落としてくれ」と頼んだ。
王子がそれを拒絶すると、キツネは「吊るし肉(gallowsflesh)を買って、井戸の端に座ること」についての警告をする。
第三の王子は、彼の兄たちが絞首台に掛けられることになっていることを知り、彼らの自由を買いとる。助けられた二人の兄王子は、第三の王子が得たものを発見する。そして第三の王子が井戸の端に座ったとき、兄たちは彼を井戸に突き落とした。二人の兄王子は黄金の鳥と馬、姫を連れ帰り、父王に成功を報告する。しかし、黄金の鳥と馬、姫は第三の王子の死に深く悲しみ、生気を失う。
だが第三の王子はキツネの手で救われていた。
第三の王子は乞食の姿に身をやつして父王の城に戻り、黄金の鳥と馬、姫は第三の王子に気付いて生気を取り戻す。
二人の兄王子は死刑になり、第三の王子は姫と結婚する。
最後に、第三の王子はキツネの望み通り、彼の首をはねる。するとキツネにかかっていた魔法が解け、キツネは姫の兄であったことが明らかにされる。
ヴァリエーション
[編集]- 『金色のクロウタドリ』
- 医師から「父王の病気を治すためには金色のクロウタドリが必要だ」と告げられた3人の王子が旅立つ。兄ふたりは、いかなる警告も受けることなく宿屋へ至る。最も若い王子が宿を通り過ぎた後で、彼を援助する人語を話すウサギと出会う。馬は、単に購入されるだけの存在である。そして、彼は陶器の乙女(王女の像)を得るために2つの使命を実行する必要はなかった。また、話の終わりにウサギが変化することはない。
アニメ
[編集]グリム童話 金の鳥 | |
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監督 | 平田敏夫 |
脚本 | 田代淳二 |
原作 | グリム兄弟(『黄金の鳥』) |
製作 | 今田智憲 |
出演者 |
三輪勝恵 藤田淑子 木ノ葉のこ 富山敬ほか |
音楽 | クニ河内 |
撮影 | 石川欽一 |
編集 | 望月徹 |
製作会社 | 東映動画 |
配給 | 東映 |
公開 | 1987年3月14日 |
上映時間 | 52分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
前作 | まんがイソップ物語(1983年) |
『グリム童話 金の鳥』のタイトルで、「東映まんがまつり」より、1987年3月14日公開。52分。製作されたのは1984年だが、一般公開はかなり遅れた。製作にはマッドハウスも関わっている。
キャッチコピーは「こころに愛と勇気と明るさを! 楽しさいっぱいのものがたり!!」[4]。
「東映まんがまつり」で長編名作アニメが公開されたのは、1983年3月13日公開の『まんがイソップ物語』以来4年振りだが、本作が事実上最後となり、以後はテレビアニメやテレビ特撮の劇場用新作のみの構成となる。
スタッフ
[編集]- 製作 - 今田智憲
- 企画 - 勝田稔男
- 製作担当 - 菅原吉郎
- 監督 - 平田敏夫
- 脚本 - 田代淳二
- キャラクターデザイン・作画監督 - 大橋学
- 画面構成 - 福島敦子、新川信正
- ミュージカル・アニメーション - 南家こうじ
- 美術監督 - 石川山子
- 撮影監督 - 石川欽一
- 音楽 - クニ河内
- 編集 - 望月徹
- 設定 - 丸山正雄
- 製作協力 - マッドハウス
主題歌
[編集]- 「地球はパーティー」
- 作詞・作曲 - クニ河内 / 唄 - 三輪勝恵、こおろぎ'73
- 「ユア・ラブソング」
- 作詞・作曲 - クニ河内 / 唄 - 松木里江
- 「ジュモン ナンモン ユメミルモン」
- 作詞・作曲・唄 - クニ河内
キャラクター
[編集]- ハンス(声:三輪勝恵)
- 主人公。第三の王子。身の丈ほどもある大きな剣を持っている。お人好しな性格の少年。父親の命を受け、金の鳥を探しに行く道中、ルルと出会ったことから、魔女との対決に向かっていく。
- ルル(声:藤田淑子)
- 紫色のキツネ。衣服を纏い、二足歩行をし、人語を解する。度々ハンスを助けてくれる。ヨーヨーが得意。
- ローランド姫(声:木ノ葉のこ)
- 白バラ城の姫。可愛らしい見た目とは裏腹に、忍び込んできたハンスを押さえつけるなど、勝ち気な少女。行方不明の兄を捜している。
- 魔女(声:富山敬)
- 金が大好きな我が儘な魔女。金の鳥を溺愛し、金の鳥を傷つけたハンスに恨みを抱く。
- カネマッチ王(声:滝口順平)
- 魔女と結託し、戦争を起こしまくっている王。魔女の作り出す、魔法の兵隊を引き連れ、あちこち戦争を仕掛けている。
- カイゼル王(声:宮内幸平)
- ハンスと兄たちの父親。毎夜、金のりんごが盗まれることに腹を立て、息子たちに見張り番を命じる。
- クロイラー王子(声:古川登志夫)
- カイゼル王の長男で、第一の王子。長身で身なりを気にするナルシスト。
- ワルナー王子(声:山本圭子)
- カイゼル王の次男で、第二の王子。いつも棒付きキャンディーをなめている肥満体。
- 大とり(声:八奈見乗児)
- ハンスとルルが落ちた谷底にいる巨大なピンクの鳥。ワインが大好きで、ワインと引き換えに、ハンスたちを背に乗せる。
- 山猫A(声:田の中勇)、山猫B(声:塩屋浩三)、山猫C(声:田中和実)
- 魔女の手下である三匹の山猫。コウモリのような翼で飛び回る。
- 白バラ王(声:青野武)
- ローランド姫の父親。忍び込んできたハンスを即座に死刑にしようとするなど、短気な性格。
- 金の鳥
- 魔女が溺愛している黄金の鳥。ハンスによって、羽を一枚奪われる。不思議な力を持っているようで……。
同時上映
[編集]いずれのTVブローアップ版であり、「長編アニメ」と「TVブローアップ作品」のみで構成されたのは1976年冬興行以来にして最後、そして「TVブローアップ作品」が公開されたのも、今回が事実上最後となる。
映像ソフト
[編集]関連項目
[編集]- The Water of Life
- The Golden Mermaid
- 勇士と若返りのりんごと命の水(The Bold Knight)
- 太陽の妹 (The Sister of the Sun)
- 笑っている目と泣いている目、または脚の悪いキツネの話(Laughing Eye and Weeping Eye)
- 九羽のクジャクと金のリンゴ(くじゃくと金のりんご)(The Nine Peahens and the Golden Apples)
- 金の頭をもったさかな(The Golden-Headed Fish)
- 小さな緑のカエル(小さなみどりいろのかえる)(The Little Green Frog)
- Prâslea the Brave and the Golden Apples
- ベンスルダトゥの物語(ベンサダーチューの物語)(The Story of Bensurdatu)
- The Brown Bear of the Green Glen
- The King of England and his Three Sons
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ グリム童話に付けられる通し番号。
出典
[編集]- ^ Jacob and Wilheim Grimm, Household Tales, "The Golden Bird"
- ^ Andrew Lang, The Green Fairy Book, "The Golden Blackbird"
- ^ Heidi Anne Heiner,"Tales Similar to the Firebird"
- ^ 「アニメチラシ大カタログ」(勁文社)36頁 2000年
外部リンク
[編集]- The Golden Blackbird A fairytale interpretation following v. Franz's school
- ラング童話集