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金史

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

金史』(きんし)は、元朝トクト(脱脱)らの撰になる金代の歴史書(紀伝体)である。本紀19巻・志39巻・表4巻・列伝71巻の通計135巻。女真族の興起から金朝の建立と滅亡に至るまでが記述されている。後に『金国語解』1巻が付けられた。

概要

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本書編纂の由来は、元朝のクビライの統治する中統2年(1261年)に、朝と金朝の二史の編纂が審議されたことに始まる。朱子学の正統論が問題となり、なかなか史書の形式が決まらず、書物の完成には時間がかかった。

その後、トゴン・テムル至正3年(1343年)3月に遼朝・金朝・宋朝の三史の編纂を命令の後、中書右丞相トクトを都総裁官(最高責任者)、翰林学士欧陽玄ら6人を総裁官(実質上の責任者)とすると、編纂に従事させることになった。こうして至正5年(1345年)10月、遼朝・金朝・宋朝の三史が完成した。

中国の歴代正史がそうであるように、『金史』もまた多くの史書を下敷きとして成立している。その主だったものを挙げておくと、以下のようになる。

  • 皇帝関係
    完顔勗の『始祖以下十帝実録』3巻のほか、歴代皇帝の実録である『太祖実録』『太宗実録』『熙宗実録』『海陵実録』『世宗実録』『章宗実録』『宣宗実録』などがある。衛紹王にだけは実録がなかったため、特別に王鶚が遺事を蒐集した。
  • その他の資料
    利用した資料は多いが、特に金末の記録として名高いのが、元好問の『王辰雑編』、劉祁の『帰潜志』、王鶚の『汝南遺事』、楊奐の『天興近鑒』である。

金・遼・宋の三朝史のうち『宋史』『遼史』は慌ただしく編纂され、多くの誤りが存在する。『金史』は、

  1. 比較的均質な『実録』が存在したこと
  2. 元好問らの残した比較的信頼できる資料による増訂が行われたこと
  3. 元初から何度も編纂が重ねられたこと

などから、比較的綺麗にまとめられた。そのため、三朝史のうち『金史』が最良といわれている。しかし『金史』にも前後矛盾した記事があり、ほかにも重複や史実の誤り、過度の省略、年次の逆転、人物名の混乱などが存在しないわけではない。後に、清の施国祁は『金史詳校』10巻を著すと、『金史』の4000条あまりを校勘・補正し、学界に便益をもたらした。

『金史』の版本はいくつか存在する。既に元の至正年間に印刷出版されたほか、朝には南北両監本(南監本と北監本)が生まれ、次いで清朝にも四庫本(『四庫全書』収録)や武英殿本(『武英殿聚珍版』所収)が生まれた。清朝の編纂物は、一般に原本の改竄があり、版本としては不適当であるとされる。

近代以後、1935年商務印書館の出版した百衲本『金史』は、至正年間の135巻(そのうち80巻が初版、55巻が復刻本)と同じ構成であり、長い間最高権威としての地位を保持していた。ただ1975年中華書局から、新式校点を施した『金史』が出版され、以後にはこの中華書局本が利用されることになった。中華書局本は、百衲本『金史』を底本に、監本・殿本などの各種版本によって校訂を加えたほか、各種資料による補正も附されたものである。また百衲本以前の版本と異なり、句読点を附した点も画期的であった。

内容

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本紀

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  1. 本紀第一 - 世紀
  2. 本紀第二 - 太祖
  3. 本紀第三 - 太宗
  4. 本紀第四 - 熙宗
  5. 本紀第五 - 海陵
  6. 本紀第六 - 世宗
  7. 本紀第七 - 世宗中
  8. 本紀第八 - 世宗下
  9. 本紀第九 - 章宗
  10. 本紀第十 - 章宗二
  11. 本紀第十一 - 章宗三
  12. 本紀第十二 - 章宗四
  13. 本紀第十三 - 衛紹王
  14. 本紀第十四 - 宣宗
  15. 本紀第十五 - 宣宗中
  16. 本紀第十六 - 宣宗下
  17. 本紀第十七 - 哀宗
  18. 本紀第十八 - 哀宗下
  19. 本紀第十九 - 世紀補

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  1. 志第一 - 天文
  2. 志第二 - 暦上
  3. 志第三 - 暦下
  4. 志第四 - 五行
  5. 志第五 - 地理上
  6. 志第六 - 地理中
  7. 志第七 - 地理下
  8. 志第八 - 河渠
  9. 志第九 - 礼一
  10. 志第十 - 礼二
  11. 志第十一 - 礼三
  12. 志第十二 - 礼四
  13. 志第十三 - 礼五
  14. 志第十四 - 礼六
  15. 志第十五 - 礼七
  16. 志第十六 - 礼八
  17. 志第十七 - 礼九
  18. 志第十八 - 礼十
  19. 志第十九 - 礼十一
  20. 志第二十 - 楽上
  21. 志第二十一 - 楽下
  22. 志第二十二 - 儀衛上
  23. 志第二十三 - 儀衛下
  24. 志第二十四 - 輿服
  25. 志第二十五 - 兵
  26. 志第二十六 - 刑
  27. 志第二十七 - 食貨一
  28. 志第二十八 - 食貨二
  29. 志第二十九 - 食貨三
  30. 志第三十 - 食貨四
  31. 志第三十一 - 食貨五
  32. 志第三十二 - 選挙一
  33. 志第三十三 - 選挙二
  34. 志第三十四 - 選挙三
  35. 志第三十五 - 選挙四
  36. 志第三十六 - 百官一
  37. 志第三十七 - 百官二
  38. 志第三十八 - 百官三
  39. 志第三十九 - 百官四

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  1. 表第一 - 宗室表
  2. 表第二 - 交聘表上
  3. 表第三 - 交聘表中
  4. 表第四 - 交聘表下

列伝

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  1. 列伝第一 后妃上 - 始祖明懿皇后・徳帝思皇后・安帝節皇后・献祖恭靖皇后・昭祖威順皇后・景祖昭粛皇后・世祖翼簡皇后・粛宗靖宣皇后・穆宗貞恵皇后・康宗敬僖皇后・太祖聖穆皇后・太宗欽仁皇后・熙宗悼平皇后海陵嫡母徒単氏海陵母大氏海陵后徒単氏・海陵諸嬖(元妃大氏昭妃阿里虎貴妃定哥麗妃石哥・柔妃弥勒・昭妃阿懶・修儀高氏・昭媛察八・蒲察叉察
  2. 列伝第二 后妃下 - 睿宗欽慈皇后・睿宗貞懿皇后・世宗昭徳皇后・顕宗孝懿皇后・章宗欽懐皇后・衛紹王后徒単氏・宣宗皇后王氏・哀宗皇后徒単氏
  3. 列伝第三 始祖以下諸子 - 完顔斡魯完顔輩魯完顔謝庫徳完顔謝夷保完顔抜達完顔謝里忽完顔烏古出完顔跋黒完顔劾孫完顔麻頗完顔謾都訶完顔斡帯完顔斡賽完顔斡者完顔昂
  4. 列伝第四 宗室 - 完顔勗完顔宗秀完顔隈可完顔胡十門完顔合住完顔掴保完顔衷完顔斉完顔朮魯完顔胡石改完顔宗賢完顔撻懶完顔卞完顔膏完顔弈完顔阿喜
  5. 列伝第五 - 石顕桓赧散達烏春臘醅麻産鈍恩留可阿疎奚王回離保
  6. 列伝第六 - 歓都冶訶
  7. 列伝第七 太祖諸子 - 完顔宗雋完顔宗傑完顔宗強完顔宗敏
  8. 列伝第八 - 撒改習不失石土門
  9. 列伝第九 - 斡魯斡魯古勃菫婆盧火闍母
  10. 列伝第十 - 婁室銀朮可麻吉抜離速習古廼
  11. 列伝第十一 - 阿離合懣完顔宗道完顔宗雄完顔希尹完顔谷神
  12. 列伝第十二 - 完顔宗翰完顔宗望
  13. 列伝第十三 - 盧彦倫毛子廉李三錫孔敬宗李師夔沈璋左企弓虞仲文左泌
  14. 列伝第十四 - 完顔宗磐完顔宗固完顔宗本完顔杲完顔宗幹
  15. 列伝第十五 - 完顔宗弼張邦昌劉豫完顔昌
  16. 列伝第十六 - 劉彦宗時立愛韓企先
  17. 列伝第十七 - 酈瓊李成孔彦舟徐文施宜生張中孚張中彦宇文虚中王倫
  18. 列伝第十八 - 完顔済安完顔道済斜卯阿里突合速烏延浦盧渾赤盞暉大撻不野阿離補
  19. 列伝第十九 - 鶻謀琶迪姑迭阿徒罕夾谷謝奴阿勒根没都魯黄掴敵古本蒲察胡盞夾谷吾里補王伯龍高彪温迪罕蒲里特伯徳特離補耶律懐義蕭王家奴田顥趙隇
  20. 列伝第二十 - 郭薬師耶律塗山烏延胡里改烏延吾里補蕭恭完顔習不主紇石烈胡剌耶律恕郭企忠烏孫訛論顔盞門都僕散渾坦鄭建充烏古論三合移剌温蕭仲恭高松完顔光英完顔元寿完顔矧思阿補
  21. 列伝第二十一 - 張通古張浩張玄素耶律安礼納合椿年祁宰
  22. 列伝第二十二 - 完顔杲耨盌温敦思忠完顔昂高楨白彦敬張景仁
  23. 列伝第二十三 世宗諸子 - 完顔永中完顔永蹈完顔永功完顔永徳完顔永成完顔永升
  24. 列伝第二十四 - 李石完顔福寿独吉義烏延蒲離黒烏延蒲轄奴李師雄尼厖古鈔兀孛朮魯定方夾谷胡剌蒲察斡論夾谷査剌
  25. 列伝第二十五 - 紇石烈志寧僕散忠義徒単合喜
  26. 列伝第二十六 - 紇石烈良弼完顔守道石琚唐括安礼移剌道
  27. 列伝第二十七 - 蘇保衡翟永固魏子平孟浩梁粛移剌慥移剌子敬
  28. 列伝第二十八 - 趙元移剌道高徳基馬諷完顔兀不喝劉徽柔賈少沖移剌斡里朶阿勒根彦忠張九思高衎楊邦基丁暐仁
  29. 列伝第二十九 - 完顔撒改龐迪温迪罕移室懣神土懣移剌成石抹卞楊仲武蒲察世傑蕭懐忠移剌按荅孛朮魯阿魯罕趙興祥石抹栄敬嗣暉
  30. 列伝第三十 - 毛碩李上達曹望之大懐貞盧孝倹盧庸李偲徒単克寧
  31. 列伝第三十一 - 鄆王琮瀛王瓌霍王従彝瀛王従憲温王玠完顔洪裕完顔洪靖完顔洪熙完顔洪衍完顔洪輝完顔洪烈完顔按辰完顔従恪完顔守忠完顔玄齢完顔守純独吉思忠完顔承裕僕散揆臨喜抹撚史扢搭完顔宗浩
  32. 列伝第三十二 - 夾谷清臣完顔襄夾谷衡完顔安国瑤里孛迭
  33. 列伝第三十三 - 移剌履張万公蒲察通粘割斡特剌程輝劉瑋董師中王蔚馬恵迪馬琪楊伯通尼厖古鑑
  34. 列伝第三十四 - 黄久約李晏李愈王賁許安仁梁襄路伯達
  35. 列伝第三十五 - 裴満亨斡勒忠張大節張亨韓錫鄧儼巨構賀揚庭閻公貞焦旭劉仲洙李完馬百禄楊伯元劉璣康元弼移剌益
  36. 列伝第三十六 - 完顔匡完顔綱
  37. 列伝第三十七 - 徒単鎰賈鉉孫鐸孫即康李革
  38. 列伝第三十八 - 孟鑄宗端脩完顔閭山路鐸完顔伯嘉朮虎筠寿張煒高竑李復亨
  39. 列伝第三十九 - 完顔承暉抹撚尽忠僕散端耿端義李英孛朮魯徳裕烏古論慶寿
  40. 列伝第四十 - 僕散安貞田琢完顔弼蒙古綱必蘭阿魯帯
  41. 列伝第四十一 - 完顔仲元完顔阿隣完顔霆烏古論長寿完顔佐石抹仲温烏古論礼浦察阿里奥屯襄完顔蒲剌都夾谷石里哥朮甲臣嘉紇石烈桓端完顔阿里不孫完顔鉄哥納蘭胡魯剌
  42. 列伝第四十二 - 納坦謀嘉鄒谷高霖孟奎烏林荅与郭俁温迪罕達王拡移剌福僧奥屯忠孝蒲察思忠紇石烈胡失門完顔宇斡勒合打蒲察移剌都
  43. 列伝第四十三 - 程寀任熊祥孔璠范拱張用直劉枢王翛楊伯雄蕭貢温迪罕締達張翰任天寵
  44. 列伝第四十四 - 張暐賈益謙劉炳朮虎高琪移剌塔不也
  45. 列伝第四十五 - 高汝礪張行信
  46. 列伝第四十六 - 胥鼎侯摯把胡魯師安石
  47. 列伝第四十七 - 完顔素蘭翼陳規許古
  48. 列伝第四十八 - 楊雲翼趙秉文韓玉馮璧李献甫雷淵程震
  49. 列伝第四十九 - 古里甲石倫完顔訛可撒合輦強伸烏林荅胡土思烈紇石烈牙吾塔
  50. 列伝第五十 - 完顔合達移剌蒲阿
  51. 列伝第五十一 - 完顔賽不白撒赤盞合喜
  52. 列伝第五十二 - 白華斜卯愛実石抹世勣
  53. 列伝第五十三 - 完顔奴申崔立李琦聶天驥赤盞尉忻
  54. 列伝第五十四 - 徒単兀典石盞女魯歓蒲察官奴完顔承立
  55. 列伝第五十五 - 徒単益都粘哥荊山王賓国用安時青
  56. 列伝第五十六 - 苗道潤王福移剌衆家奴武仙張甫張進靖安民郭文振胡天作張開燕寧
  57. 列伝第五十七 - 粘葛奴申完顔大婁室完顔中婁室完顔小婁室烏古論鎬張天綱完顔仲徳
  58. 列伝第五十八 世戚 - 石家奴裴満忽撻裴満忽睹徒単恭烏古論蒲魯虎唐括徳温烏古論粘没曷蒲察阿虎迭烏林荅暉蒲察鼎寿徒単思忠徒単繹烏林荅復烏古論元忠烏古論誼唐括貢烏林荅琳徒単公弼徒単銘徒単四喜
  59. 列伝第五十九 忠義一 -
  60. 列伝第六十 忠義二 -
  61. 列伝第六十一 忠義三 -
  62. 列伝第六十二 忠義四 -
  63. 列伝第六十三 文芸上 - 韓昉蔡松年呉激馬定国任詢趙可郭長倩蕭永祺胡礪王競楊伯仁鄭子聃党懐英
  64. 列伝第六十四 文芸下 - 趙渢周昂王庭筠劉昂李経劉従益呂中孚張建李純甫王郁宋九嘉龐鋳李献能王若虚王元節麻九疇李汾元徳明
  65. 列伝第六十五 孝友 隠逸 -
  66. 列伝第六十六 循吏 -
  67. 列伝第六十七 酷吏 佞幸 - 高閭山蒲察合住蕭肄張仲軻李通馬欽高懐貞蕭裕胥持国
  68. 列伝第六十八 列女 -
  69. 列伝第六十九 宦者 方伎 - 梁珫宋珪劉完素張従正李慶嗣紀天錫張元素馬貴中武禎李懋胡徳新
  70. 列伝第七十 逆臣 - 完顔秉徳唐括弁完顔宗言大興国徒単阿里出虎僕散思恭徒単貞李老僧完顔元宜紇石烈執中
  71. 列伝第七十一 叛臣 - 張覚耶律余睹移剌窩斡
  72. 列伝第七十二 外国上 - 西夏
  73. 列伝第七十三 外国下 - 高麗

金国語解

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  • 官称
  • 人事
  • 物象
  • 物類
  • 姓氏

附録

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  • 進金史表
  • 修史官員
  • 金史公文

外部リンク

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