コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

華北政務委員会

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

華北政務委員会(かほく-せいむいいんかい)は、中華民国1940年3月30日に成立した行政組織。前身は中華民国臨時政府であり、臨時政府が汪兆銘政権に参加したことにより華北政務委員会に改編された。

概要

[編集]

『華北政務委員会組織条例』に依拠し汪兆銘政権の委託を受け河北山東山西3省及び北京天津青島3市地域の防共、治安維持、経済政策を汪兆銘政権に代わり実行し、下部省及び市政府を監督すると定められ、条例に定められていない河南地区も華北政務委員会が実質的な行政実務を行っていた。1942年1月に蘇北淮北地区が蘇淮特別区行政公署として、汪兆銘政権の直轄となった。

委員の構成

[編集]

委員は17~21名。1名が委員長に指定され、5~9名が常務委員となった。その下には、顧問、参議、咨議、専員、調査員がそれぞれ若干名置かれた。

歴代委員長

[編集]
  • 王克敏:1940年3月 - 6月
  • 王揖唐:1940年6月 - 1943年2月
  • 朱深:1943年2月 - 7月(死去)
  • 王克敏:1943年7月 - 1945年2月
  • 王蔭泰:1945年2月 - 8月

政務委員会直属機関(1940年3月 - 1943年11月)

[編集]

華北政務委員会設立から1943年11月までは、6総署(内政・財政・治安・教育・実業・建設)2庁(政務・秘書)などが直属機関として設けられた。また最高法院華北分院も、事実上は華北政務委員会に属していた。

内務総署

[編集]

督弁、署長を各1名、参事を若干名置いた。下部機関として4局(総務・民政・礼俗・衛生)が置かれた。1943年3月、治安総署に属していた警政局も内務総署に属し、5局体制となった。

歴代総署督弁
  • 王克敏:1940年3月 - 6月〔兼任〕
  • 王揖唐:1940年6月 - 1943年2月〔兼任〕
  • 斉燮元:1943年2月 - 11月〔兼任〕  

財務総署

[編集]

督弁、署長を各1名、参事を若干名置いた。下部機関として4局(総務・税務・会計・庫蔵)のほか、中国聯合準備銀行、華北統税総局、華北禁煙総局が置かれた。

総署督弁

治安総署

[編集]

督弁、署長を各1名、参事を若干名置いた。下部機関として7局(総務・軍咨・軍務・軍学・軍需・宣導・警政)2処(軍医・軍法)が置かれた。1943年3月、警政局は内務総署に属した。

総署督弁
  • 斉燮元:1940年3月 - 1943年11月〔1943年2月より内務総署督弁兼任〕

教育総署

[編集]

督弁、署長を各1名、参事を若干名置いた。下部機関として3局(総務・教育・文化)が置かれた。

歴代総署督弁

実業総署

[編集]

督弁、署長を各1名、参事を若干名置いた。下部機関として7局(総務・農林・工商・漁牧・鉱業・労工・合作)のほか、華北合作事業総会が置かれた。

総署督弁
  • 王蔭泰:1940年3月 - 1943年11月

建設総署

[編集]

督弁、署長を各1名、参事を若干名置いた。下部機関として5局(総務・経理・公路・水利・都市)のほか、企画委員会が置かれた。

歴代総署督弁
  • 殷同:1940年3月 - 1942年12月〔死去〕
  • 余晋龢:1943年1月 - 11月

政務庁

[編集]

庁長を1名、参事を若干名置いた。下部機関として1室(秘書室)5局(外務・法制・審計・情報・交通)が置かれた。

歴代庁長
  • 朱深:1940年3月 - 7月
  • 祝惺元:1940年7月 - 1942年3月
  • 夏粛初:1942年4月 - 1943年2月
  • 張仲直:1943年2月 - 11月

秘書庁

[編集]

庁長を1名、参事を若干名置いた。下部機関として2処(文案・事務)1室(機要)が置かれた。

歴代庁長
  • 王克敏:1940年5月 - 6月〔兼任〕
  • 瞿益鍇:1940年6月 - 7月〔代理〕
  • 夏粛初:1940年7月 - 1942年4月
  • 李元暉:1942年4月 - 1943年2月
  • 張仲直:1943年2月 - 3月〔兼任〕
  • 祝書元:1943年3月 - 11月〔代理〕

最高法院華北分院

[編集]

民事1庭、刑事2庁、検察署が置かれた。

院長

政務委員会直属機関(1943年11月 - 1945年8月)

[編集]

1943年11月10日、華北政務委員会臨時常務委員会で機構改革案と人事調整案が承認され、翌11日に中央政治委員会第129次会議で追認された。これにより、政務・秘書の2庁が廃止、総務・内務・財務の3庁が改めて設置され、また6総署は治安・経済・農務・教育・工務の5総署に再編された。

総務庁

[編集]

庁長、次長を各1名、参事を若干名置いた。下部機関として1室(秘書室)4局(総務・外務・統計・情報)が置かれた。

歴代庁長
  • 王蔭泰:1943年11月 - 1945年2月〔兼任〕
  • 蘇体仁:1945年2月 - 8月〔兼任〕

内務庁

[編集]

庁長を1名置いた。下部機関として2局(民政・警政)が置かれた。

歴代庁長
  • 王蔭泰:1943年11月 - 1945年2月〔兼任〕
  • 蘇体仁:1945年2月 - 8月〔兼任〕

財務庁

[編集]

庁長を1名置いた。下部機関として3局(主計・審計・印刷)が置かれた。

歴代庁長
  • 張仲直:1943年11月 - 1945年2月〔代理〕
  • 汪時璟:1945年2月 - 8月〔兼任〕

治安(綏靖)総署

[編集]

督弁、署長を各1名、参事を若干名置いた。下部機関として7局(総務・軍咨・軍務・軍学・軍需・宣導)2処(軍医・軍法)が置かれた。1943年12月30日、最高国防会議第36次会議において、治安総署から綏靖総署に改名された。

歴代総署督弁

経済総署

[編集]

督弁、署長を各1名、参事を若干名置いた。下部機関として6局(総務・実業・金融・税務・労工・物価)が置かれた。

総署督弁
  • 汪時璟:1943年11月 - 1945年8月〔1945年2月より財務庁長兼任〕

農務総署

[編集]

督弁、署長を各1名、参事を若干名置いた。下部機関として5局(総務・農産・糧政・林牧・合作)が置かれた。

歴代総署督弁
  • 王蔭泰:1943年11月 - 1945年2月〔兼任〕
  • 陳曽栻:1945年2月 - 8月

教育総署

[編集]

督弁、署長を各1名、参事を若干名置いた。下部機関として4局(総務・文化・教育・保健)が置かれた。

歴代総署督弁
  • 王謨:1943年11月 - 1944年7月
  • 王克敏:1944年7月 - 1945年2月
  • 文元模:1945年2月 - 8月

工務総署

[編集]

督弁、署長を各1名、参事を若干名置いた。下部機関として4局(総務・水利・公路・都市計画)が置かれた。

歴代総署督弁
  • 蘇体仁:1943年11月 - 1945年2月
  • 唐仰杜:1945年2月 - 8月

最高法院華北分院

[編集]

改組以前からそのまま継続された。

院長
  • 張孝栘:1943年11月 - 1945年8月

諮問機関

[編集]

1942年(民国31年)3月30日に当時の委員長・王揖唐により創設された諮詢会議がある。委員長の諮詢に応じると共に、決議により政務委員会に建議する諮問機関で、在野の元老要人の政治に対する協力体制を整備したものと位置づけられる[1][2]

専任の委員は7名で、時期により下記の顔触れとなっている。また、華北政務委員会の委員長・常務委員も諮詢会議の構成員とされる。

(1) 1942年3月30日任命(創設時)[1][3]

王克敏龔心湛靳雲鵬呉毓麟章宗祥曹汝霖張鳴岐

(2) 1944年5月19日任命[4]

靳雲鵬・章宗祥・斉燮元曽毓雋・曹汝霖・張鳴岐・湯薌銘[5]

行政区画

[編集]

汪兆銘政権崩壊直前の下部行政区画は下記の通り。

外交

[編集]

下記の国から大使級の人員が送られていた。

脚注

[編集]
  1. ^ a b 『時事年鑑 昭和18年版』時事通信社、1942年、545頁。
  2. ^ 東洋協会調査部調査資料第49輯、13-14頁では、昭和16年(1941)年5月5日に諮問会議が創設されたように書かれているが、ここでは前掲『時事年鑑 昭和18年版』の記述(『外交時報』など他多数の資料にも同様の記述あり)に従う。
  3. ^ 曹汝霖は自身以外の委員を許世英・龔心湛・張鳴岐・章宗祥・曽毓雋・梁鴻志、そして失念したもう1名としている。しかし、当時の許は重慶国民政府振務委員会委員長代理であり、親日政権側には一度も付いたことがない人物である。梁鴻志も華北政務委員会で任職した記録は無い。曽毓雋は後に諮詢会議委員となっているものの、会議創設時は委員ではない。また、王克敏と靳雲鵬を見落としているのも不可解である。以上、曹汝霖著、曹汝霖回想録刊行会編訳『一生之回憶』、1967年、283頁。
  4. ^ 『同盟時事月報』8巻5号通号216号、1944年6月14日、同盟通信社、89頁。
  5. ^ この当時の王克敏は委員長に就任している。龔心湛は前年の1943年12月14日死去。呉毓麟はこの直後、1944年秋に死去。

参考文献

[編集]
  • 郭卿友主編『中華民国時期軍政職官誌 下』甘粛人民出版社、1990年。ISBN 7-226-00582-4 
  • 劉寿林ほか編『民国職官年表』中華書局、1995年。ISBN 7-101-01320-1 

関係項目

[編集]