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== 経歴・概要 ==
== 経歴・概要 ==
<!-- 関連サイトや文献からのそのままの引用は著作権を侵害する恐れがあるので工夫して引用してください -->
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[[自動車整備工場]]を営む両親のもと、3人兄弟の長男として育つ。[[奈良育英中学校・高等学校|奈良育英高等学校]]卒業。高校時代、映画では[[相米慎二]]監督作品、小説では[[中上健次]]作品を軸に色々な監督や作家の作品を見たり読んだりしていた<ref name="yahoo1809">{{Cite news|url=https://news.yahoo.co.jp/feature/1093/ |title=「テレビからこぼれているものを書きたい」――人気脚本家・坂元裕二が語る連ドラの役割 |newspaper=Yahoo!ニュース |date=2018-09-23 |accessdate=2020-11-10 }}</ref>。
[[自動車整備工場]]を営む両親のもと、3人兄弟の長男として育つ。[[奈良育英中学校・高等学校|奈良育英高等学校]]卒業。高校時代、映画では[[相米慎二]]監督作品、小説では[[中上健次]]作品を軸に色々な監督や作家の作品を見たり読んだりしていた<ref name="yahoo1809">{{Cite news|url=https://news.yahoo.co.jp/feature/1093/ |title=「テレビからこぼれているものを書きたい」――人気脚本家・坂元裕二が語る連ドラの役割 |newspaper=Yahoo!ニュース |date=2018-09-23 |accessdate=2020-11-10 }}</ref>。


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=== 作風 ===
=== 作風 ===
*[[スタジオジブリ]]出版部発行の冊子『熱風』におけるロングインタビューの中で坂元は自分が描く登場人物に関して、「正しい、正しくない」「共感できる、できない」「頑張った、頑張ってない」という視点ではなく、「面白さ」「優しさ」「滑稽さ」「怖さ」といった、人が無意識に人に見せる細やかな瞬間に[[フォーカス]]を当てた「どこか子供じみた観点」から全ての登場人物の人物像を描くようにしていると答えている<ref name="neppu">{{Cite journal |和書 |title=特集/坂元裕二 ロング・インタビュー テレビドラマ「カルテット」で描きたかったこと |journal=熱風 |volume=15 |issue=6 |date=2017-06-09 |publisher=スタジオジブリ出版部 |pages=3-23 }}</ref>。加えて、主人公と対立したり、邪魔をする登場人物に関しては「本当はいい人なのか、結局悪い人なのか」ではなく「主人公と[[コミュニケーション]]が取れない人」という認識で描いていると話している<ref name="neppu"/>。また、物語が終わった後も登場人物が今もどこかで生きていると感じてもらうために、説明的な描写の有無がどうこうというより、語りすぎない[[余白]]の部分を大事にしていると答えている<ref name="neppu"/>。
*[[スタジオジブリ]]出版部発行の冊子『熱風』におけるロングインタビューの中で坂元は自分が描く登場人物に関して、「正しい、正しくない」「共感できる、できない」「頑張った、頑張ってない」という視点ではなく、「面白さ」「優しさ」「滑稽さ」「怖さ」といった、人が無意識に人に見せる細やかな瞬間に[[フォーカス]]を当てた「どこか子供じみた観点」から全ての登場人物の人物像を描くようにしていると答えている<ref name="neppu">{{Cite journal |和書 |title=特集/坂元裕二 ロング・インタビュー テレビドラマ「カルテット」で描きたかったこと |journal=熱風 |volume=15 |issue=6 |date=2017-06-09 |publisher=スタジオジブリ出版部 |pages=3-23 }}</ref>。加えて、主人公と対立したり、邪魔をする登場人物に関しては「本当はいい人なのか、結局悪い人なのか」ではなく「主人公と[[コミュニケーション]]が取れない人」という認識で描いていると話している<ref name="neppu"/>。また、物語が終わった後も登場人物が今もどこかで生きていると感じてもらうために、説明的な描写の有無がどうこうというより、語りすぎない[[余白]]の部分を大事にしていると答えている<ref name="neppu"/>。
*脚本を書き始めた当初から現在までテレビという器からちょっとこぼれているラベリングできない個人の声やテーマが宿っている作品、見た人が新鮮な感情になる作品を書いていたいという意識はあったが、特に『[[Mother (テレビドラマ)|Mother]]』以降殆どのドラマは各局のプロデューサーと一緒に視聴率をなるべく気にしない形で無理矢理でも自由に作らせてもらっている感覚があるとインタビューにおいて答えている<ref name="yahoo1809" /><ref name="neppu"/>。また、前提としてテレビは[[公共]]のものなんだということを意識したうえで、それでもまずは放送する自分たちが「新しい」「見たことがない」と思えるものを作りたいと考えている各局にいる何人かのプロデューサーが自分へ「一緒に仕事をしないか?」と連絡をくれるおかげで、自分が興味のあるテーマや[[プロダクション]]を深く共有したり自由に脚本を書かせてもらえてるので、少なくともそういう声をかけてくれる人たちがいてくれてる間はドラマの脚本を書き続けていきたいと話している<ref name="yahoo1809" /><ref name="neppu"/>。
*脚本を書き始めた当初から現在までテレビという器からちょっとこぼれているラベリングできない個人の声やテーマが宿っている作品、見た人が新鮮な感情になる作品を書いていたいという意識はあったが、特に『[[Mother (テレビドラマ)|Mother]]』以降殆どのドラマは各局のプロデューサーと一緒に企画を成立させる段階から視聴率をなるべく気にしない形で無理矢理でも自由に作らせてもらっている感覚があるとインタビューにおいて答えている<ref name="yahoo1809" /><ref name="neppu"/>。また、前提としてテレビは[[公共]]のものなんだということを意識したうえで、それでもまずは放送する自分たちが「見たことがない」「面白い」と思えるものを作りたいと考えている各局にいる何人かのプロデューサーが自分へ「一緒に仕事をしないか?」と連絡をくれるおかげで、自分が興味のあるテーマや[[プロダクション]]を深く共有したり自由に脚本を書かせてもらえてるので、少なくともそういう声をかけてくれる人たちがいてくれてる間はドラマの脚本を書き続けていきたいと話している<ref name="yahoo1809" /><ref name="neppu"/>。
*作品に出演している役者の芝居の魅力や役者としての凄みが発揮されることを最優先事項に[[キャラクター]]や[[シチュエーション]]、[[シークエンス]]を作り上げていくことが多い作風のため、メインキャストに限らずなるべく“当て書き”で脚本を書き下ろしている<ref name="crea.bunshun.jp/articles"/><ref name="neppu"/>。また、「ある特定の[[個人]](手紙をくれた視聴者や知り合いの子供、友人)」の存在から物語におけるいくつかのテーマを決定するケースも多く、その場合、物語を展開させていく中でどうしても迷った際はその特定個人を思い浮かべながら書き進めるようにしている<ref name="crea.bunshun.jp/articles">{{Cite web|url=https://crea.bunshun.jp/articles/-/20996 |title= 脚本家・坂元裕二が語る創作の秘密 脚本家・坂元裕二インタビュー (1)「10代の人たちに観てもらいたい」 |date=2018-10-19 |publisher=crea |accessdate=2022-11-09 }}</ref><ref name="neppu"/>。<!--COの理由については上述-->
*作品に出演している役者の芝居の魅力や役者としての凄みが発揮されることを最優先事項に[[キャラクター]]や[[シチュエーション]]、[[シークエンス]]を作り上げていくことが多い作風のため、メインキャストに限らずなるべく“当て書き”で脚本を書き下ろしている<ref name="crea.bunshun.jp/articles"/><ref name="neppu"/>。また、「ある特定の[[個人]](手紙をくれた視聴者や知り合いの子供、友人)」の存在から物語におけるいくつかのテーマを決定するケースも多く、その場合、物語を展開させていく中でどうしても迷った際はその特定個人を思い浮かべながら書き進めるようにしている<ref name="crea.bunshun.jp/articles">{{Cite web|url=https://crea.bunshun.jp/articles/-/20996 |title= 脚本家・坂元裕二が語る創作の秘密 脚本家・坂元裕二インタビュー (1)「10代の人たちに観てもらいたい」 |date=2018-10-19 |publisher=crea |accessdate=2022-11-09 }}</ref><ref name="neppu"/>。<!--COの理由については上述-->
*映像作品の脚本執筆に関して、物語上に存在する言葉によって物語の芯や核となる複雑な部分の縁や外側を少しずつ埋めていくことで、登場人物が喋らなかったことや安易な形では言語化できない、しにくい複雑な感情を複雑なまま伝えられるように意識して脚本の執筆を行うことが多い。そのため、物語の中で誰か特定の人物、1人の人物が喋っている言葉の意味そのものが作品のテーマに対してなにか決定的な1つの答えを結論づけたりすることはなく、言葉の量が増えたり、逆に言葉の量が極端に減ったり、[[リズム]]が変わったり、あえて強い言葉が発せられているような場面においても、その役の複雑で大事な感情を安易な形で[[ラベリング]]してしまわないように登場人物が無意識に複雑な感情や核心部分を役の内面に抱え込んだり隠したり守ったり逆説的に浮き彫りにする行為としてそういった場面が描かれていることがあると述べている<ref name="tvbros201812"/>。また、クランクイン直後の撮影の現場から監督が映像で送ってくれる役者の芝居に影響を受ける形で送稿前の脚本、場合によってはその先の物語の展開そのものを変えることがある<ref name="eure202102mitusima"/><ref name="tvbros201812">「脚本家・坂元裕二 ロングインタビュー」、「TV Bros.」2018年12月号 東京ニュース通信社。</ref>。
*映像作品の脚本執筆に関して、物語上に存在する言葉によって物語の芯や核となる複雑な部分の縁や外側を少しずつ埋めていくことで、登場人物が喋らなかったことや安易な形では言語化できない、しにくい複雑な感情を複雑なまま伝えられるように意識して脚本の執筆を行うことが多い。そのため、物語の中で誰か特定の人物、1人の人物が喋っている言葉の意味そのものが作品のテーマに対してなにか決定的な1つの答えを結論づけたりすることはなく、言葉の量が増えたり、逆に言葉の量が極端に減ったり、[[リズム]]が変わったり、あえて強い言葉が発せられているような場面においても、その役の複雑で大事な感情を安易な形で[[ラベリング]]してしまわないように登場人物が無意識に複雑な感情や核心部分を役の内面に抱え込んだり隠したり守ったり逆説的に浮き彫りにする行為としてそういった場面が描かれていることがあると述べている<ref name="tvbros201812"/>。また、クランクイン直後の撮影の現場から監督が映像で送ってくれる役者の芝居に影響を受ける形で送稿前の脚本、場合によってはその先の物語の展開そのものを変えることがある<ref name="eure202102mitusima"/><ref name="tvbros201812">「脚本家・坂元裕二 ロングインタビュー」、「TV Bros.」2018年12月号 東京ニュース通信社。</ref>。

2023年5月21日 (日) 09:19時点における版

坂元さかもと 裕二ゆうじ
プロフィール
別名 大野おおの 大福だいふく
誕生日 (1967-05-12) 1967年5月12日(57歳)
出身地 日本の旗 日本大阪府
主な作品
テレビドラマ東京ラブストーリー
二十歳の約束
ラストクリスマス
西遊記
わたしたちの教科書
Mother
それでも、生きてゆく
最高の離婚
Woman
問題のあるレストラン
いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう
カルテット
anone
大豆田とわ子と三人の元夫
初恋の悪魔
映画世界の中心で、愛をさけぶ
西遊記
花束みたいな恋をした
ゲームリアルサウンド 〜風のリグレット〜
受賞
受賞参照
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坂元 裕二(さかもと ゆうじ、1967年5月12日 - )は、日本脚本家作詞家戯曲家

大阪府出身。妻は森口瑤子[1]1998年結婚)。2016年から2023年にかけて東京芸術大学大学院映像研究科の教授を務めた[2]

経歴・概要

自動車整備工場を営む両親のもと、3人兄弟の長男として育つ。奈良育英高等学校卒業。高校時代、映画では相米慎二監督作品、小説では中上健次作品を軸に色々な監督や作家の作品を見たり読んだりしていた[3]

高校卒業後、フリーターをしながら脚本を学ぶ。1987年、「第1回フジテレビヤングシナリオ大賞」を19歳で受賞しデビュー[3]。同時期にディレクターズ・カンパニーが行っていた脚本募集にも応募し、そちらでは採用されなかったためすぐに自立して生活ができるテレビの道へ進むために上京した[3]。上京後はテレビ局のアシスタントをしながら脚本の腕を磨いた[3]

1991年、23歳の時に脚本を担当した『東京ラブストーリー』(フジテレビ)が大ヒットし、最高視聴率は32%。「月曜日の夜9時は街から女性(もしくはOL)たちが消えた」と言われるほどの社会現象となる。ラブストーリーの執筆依頼が次々舞い込むようになり、トレンディドラマの旗手として脚光を浴びた[4]

また、松たか子小室哲哉織田裕二などの楽曲の作詞も手掛けた。(主な作詞提供アーティスト参照)

1996年、「明らかにテレビ(業界)が嫌で逃亡してしまった」という理由で脚本家業を休養し、一時的にテレビ業界から離れる[3][4]。当初は飯野賢治率いる株式会社ワープに所属してゲーム関連の仕事に携わり、『リアルサウンド 〜風のリグレット〜』などのシナリオを手掛け、1998年に同社を退社。映画やゲームのシナリオ執筆や脚本構成・脚本協力の仕事をしながら、知人であった文芸誌編集長から勧められ小説の執筆も並行して行っていたが、3年間一つの小説を書き続けた結果いつのまにか原稿用紙2000枚ほどの分量になってしまい、終わらせ方もわからず出版には至らなかった[3]。『きらきらひかる』(フジテレビ)のドラマ版(脚本は井上由美子)を見たことでそのドラマに刺激を受け、それがドラマ脚本の世界に戻るきっかけの1つになった[3]。また、この休養期間中に森口との結婚や長女の誕生を経験した[3]

ドラマ脚本業を再開し『リモート』、『チェイス〜国税査察官〜』、『西遊記』、『太陽と海の教室』、『あなたの隣に誰かいる』、『トップキャスター』、『愛し君へ』など様々なジャンルの脚本執筆・構成を担当した[5][6]

2004年伊藤ちひろと共に行定勲監督の映画『世界の中心で、愛をさけぶ』の脚本制作を担当し、大ヒットを記録した。

また、ドラマ脚本業の再開後はフジテレビ以外でも連続・単発ドラマのオリジナル脚本を書き下ろすようになり[3]、テレビ局の贈収賄事件を扱うキャスターを主人公とした『トップキャスター』、「いじめや問題を隠蔽する組織構造」をテーマに置いた『わたしたちの教科書』、脱税コンサルタントと国税査察官の攻防を描いた『チェイス〜国税査察官〜』、ネグレクトや過剰な母性神話による抑圧を扱った『Mother』、犯罪被害者家族と加害者家族の交流を描いた『それでも、生きてゆく』、シングルマザー生活保護を扱った『Woman』、結婚や家族の在り方をテーマに置いたコメディ調の『最高の離婚』、職場における性加害やパワハラの告発とコメディ調で飲食経営の発展を描いた『問題のあるレストラン』など、かつてのトレンディドラマのイメージを大きく転換させた書き下ろしのオリジナルドラマを次々と発表し、最初期の作風とはまた違った側面において高い評価・注目を集める[5]

脚本を書き下ろしたオリジナルドラマは海外からの評価も高く、『Mother』は韓国トルコでそれぞれリメイク版が制作、放送される。加えて、フランス中華人民共和国スペインウクライナタイランドなどでもそれぞれの国でリメイク作品の制作[7][8][9]・放送が行われている。さらにそのリメイクされたドラマ群も重ねてヒットし、高視聴率及び多数のドラマ賞を受賞するなどの高評価を受け、2019年時点でアジア10カ国、世界35カ国以上で展開されるなど日本国外で異例の広がりを見せている[7][10]。『Mother』に続き『Woman』はトルコ、フランス、韓国でリメイク版が制作・放送され、世界25カ国以上に展開されている[11]。また、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』はトルコ、『問題のあるレストラン』は中華人民共和国、『最高の離婚』は韓国においてそれぞれリメイク版の制作・放送が行われ、『Mother』『Woman』『anone』の三作品はフランスカンヌで開催されている世界中からテレビ局関係者が集まり世界各国のドラマや番組の権利を購入するイベント「MIPCOM」において「日本のドラマの中でぜひ購入したい作品」として『Woman』や『anone』は最高賞のグランプリを、『Mother』は審査員特別賞を受賞している[12]

初期の群像ラブストーリーを執筆していた時代は「自分が書きたいテーマではないなという気持ちが正直あった」と明かすが[4]、加えて「これまでに脚本を書いた作品は全部が全部心を込めたものばかりで、昔のも今のも同じだけ大事に思っている」と発言している[13]

また、作風に変化があったとしても「テレビという器からちょっとこぼれているラベリングできない個人の声やテーマが宿っている作品、見た人が新鮮な感情になる作品を書きたい」という根本的な部分については今も昔も変わらないと話しており[3]、復帰以降に坂元が脚本を書き下ろした社会派と紹介されるいくつかの作品においても坂元が最初期に執筆した群像劇ドラマのような役者・登場人物同士の軽快なやりとりや芝居のあるシーンなどが存在する作品も多く、ある特定のジャンルに該当する作品は少ない[14]

2012年9月22日、朗読劇『不帰の初恋、海老名SA』を公演。以降定期的に坂元が直接役者に出演を依頼し、役者と共に朗読劇の公演を行っている。(関わった作品参照)

2016年4月、東京芸術大学大学院映像研究科教授に就任し、脚本業の多忙化に伴い2023年4月に任期を終えた[15]

2017年6月、朗読劇のシナリオの一部を書籍としてまとめた『往復書簡 初恋と不倫』がリトルモアから出版された[16]。本書は簡体字版、繁体字[17]でも往復書簡集という形で書籍化され、往復書簡集でありシナリオ本という形式でありながら中国最大の書評サイト「豆瓣読書」[18] 2020年度外国語文学のランキングにおいて三位に選出された[19]

2018年3月、連続ドラマ『anone』最終回後に、自身のInstagramで同作品を最後に数年の間は単発・連続ドラマの脚本執筆をお休みし、大学院の授業、舞台や映画など他の形態での活動のみに絞りますと報告した。この件については4年前から決めており、周囲のお世話になっている人たちや仕事仲間に説明した上で4年間、1月期に各1本の連続ドラマ執筆を手掛けていた。また、テレビドラマの脚本の執筆を辞めるのではなく「テレビの世界では、仮にもしいま仕事が決まったとしても、それは早くて2年後の放送分。いま何も決めていないということは、しばらく休むことになるんです」として、あくまで自身のスケジュールの関係で連ドラの仕事を休むという結果になったと説明している[3]

2018年9月、小泉今日子が代表を務める制作事務所株式会社明後日による企画・制作で、自身初の戯曲である『またここか』(豊原功補演出)を書き下ろし、「第63回岸田國士戯曲賞」の最終候補にあがる。

2021年1月29日公開された映画『花束みたいな恋をした』において脚本を担当した。監督は土井裕泰、主演は菅田将暉有村架純 [20]

人物・エピソード 

  • フジテレビの月9ドラマである『ラブジェネレーション』のために大瀧詠一が書き下ろした「幸せな結末」の歌い出しである〝髪をほどいた 君のしぐさが 泣いているようで胸が騒ぐよ〟というワンフレーズの作詞に関して、当時この曲のレコーディングをしている時に坂元が演出の永山耕三に呼び出され、その歌い出しのフレーズだけ手伝ったというエピソードがある[21]
  • 高校時代はとんねるずのファンで、18歳の頃深夜ラジオ『とんねるずのオールナイトニッポン』をよく聴いていた。ディレクターズ・カンパニーの脚本募集以外の候補として『フジテレビヤングシナリオ大賞』を選んで応募したのも、「入賞すればフジテレビでとんねるずに会えるのでは?」という期待から始まったものだった。また、妻の森口瑤子も坂元と同じく高校時代とんねるずのファンであった[22]
  • フジテレビ制作の深夜単発ドラマ『男湯』及びその続編である『男湯2』の脚本を担当した大野大福とは坂元裕二の別名義である[23]
  • 海外や国内のヒップホップやその文化に関心があり、執筆中の息抜きによく聴いている[4]
  • 2014年から約5年間、小さな飲食店の立ち上げ・経営に関わっていた経験がある[24]。坂元は2021年のインタビューの中で「『問題のあるレストラン』というドラマを作るときに、それが飲食店の話だったから(取材も兼ねて)このタイミングで自分の念願も果たしちゃおうと思って、ドラマ制作と同時に始めてみたんです」と答えている[24]

作風

  • スタジオジブリ出版部発行の冊子『熱風』におけるロングインタビューの中で坂元は自分が描く登場人物に関して、「正しい、正しくない」「共感できる、できない」「頑張った、頑張ってない」という視点ではなく、「面白さ」「優しさ」「滑稽さ」「怖さ」といった、人が無意識に人に見せる細やかな瞬間にフォーカスを当てた「どこか子供じみた観点」から全ての登場人物の人物像を描くようにしていると答えている[25]。加えて、主人公と対立したり、邪魔をする登場人物に関しては「本当はいい人なのか、結局悪い人なのか」ではなく「主人公とコミュニケーションが取れない人」という認識で描いていると話している[25]。また、物語が終わった後も登場人物が今もどこかで生きていると感じてもらうために、説明的な描写の有無がどうこうというより、語りすぎない余白の部分を大事にしていると答えている[25]
  • 脚本を書き始めた当初から現在までテレビという器からちょっとこぼれているラベリングできない個人の声やテーマが宿っている作品、見た人が新鮮な感情になる作品を書いていたいという意識はあったが、特に『Mother』以降殆どのドラマは各局のプロデューサーと一緒に企画を成立させる段階から視聴率をなるべく気にしない形で無理矢理でも自由に作らせてもらっている感覚があるとインタビューにおいて答えている[3][25]。また、前提としてテレビは公共のものなんだということを意識したうえで、それでもまずは放送する自分たちが「見たことがない」「面白い」と思えるものを作りたいと考えている各局にいる何人かのプロデューサーが自分へ「一緒に仕事をしないか?」と連絡をくれるおかげで、自分が興味のあるテーマやプロダクションを深く共有したり自由に脚本を書かせてもらえてるので、少なくともそういう声をかけてくれる人たちがいてくれてる間はドラマの脚本を書き続けていきたいと話している[3][25]
  • 作品に出演している役者の芝居の魅力や役者としての凄みが発揮されることを最優先事項にキャラクターシチュエーションシークエンスを作り上げていくことが多い作風のため、メインキャストに限らずなるべく“当て書き”で脚本を書き下ろしている[26][25]。また、「ある特定の個人(手紙をくれた視聴者や知り合いの子供、友人)」の存在から物語におけるいくつかのテーマを決定するケースも多く、その場合、物語を展開させていく中でどうしても迷った際はその特定個人を思い浮かべながら書き進めるようにしている[26][25]
  • 映像作品の脚本執筆に関して、物語上に存在する言葉によって物語の芯や核となる複雑な部分の縁や外側を少しずつ埋めていくことで、登場人物が喋らなかったことや安易な形では言語化できない、しにくい複雑な感情を複雑なまま伝えられるように意識して脚本の執筆を行うことが多い。そのため、物語の中で誰か特定の人物、1人の人物が喋っている言葉の意味そのものが作品のテーマに対してなにか決定的な1つの答えを結論づけたりすることはなく、言葉の量が増えたり、逆に言葉の量が極端に減ったり、リズムが変わったり、あえて強い言葉が発せられているような場面においても、その役の複雑で大事な感情を安易な形でラベリングしてしまわないように登場人物が無意識に複雑な感情や核心部分を役の内面に抱え込んだり隠したり守ったり逆説的に浮き彫りにする行為としてそういった場面が描かれていることがあると述べている[27]。また、クランクイン直後の撮影の現場から監督が映像で送ってくれる役者の芝居に影響を受ける形で送稿前の脚本、場合によってはその先の物語の展開そのものを変えることがある[24][27]

受賞 

作品

テレビドラマ

映画

短編作品

舞台

演劇
朗読劇

イベント

ゲーム

テレビアニメ

漫画

書籍

※ その他、脚本を手がけた各テレビドラマ・映画が書籍化されている。

主な作詞提供アーティスト


脚注

  1. ^ 奇跡の54歳!森口瑤子、超可愛い私服ロングワンピ姿でタクシー待ちする様子に絶賛の嵐”. スポーツ報知 (2021年6月9日). 2021年6月9日閲覧。
  2. ^ 坂元裕二 / SAKAMOTO YUJIさん(@skmtyj)のInstagramアカウント”. Instagram. 2023年3月25日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m “「テレビからこぼれているものを書きたい」――人気脚本家・坂元裕二が語る連ドラの役割”. Yahoo!ニュース. (2018年9月23日). https://news.yahoo.co.jp/feature/1093/ 2020年11月10日閲覧。 
  4. ^ a b c d プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK G)2018年11月13日放送分。
  5. ^ a b 「あの脚本家の、心に残るテレビドラマ 社会派編」『GINZA』(2019年8月号、32P、マガジンハウス)
  6. ^ 「テレビ・トラベラー 昭和・平成テレビドラマ批評大全」『国書刊行会』2012年06月11日。 
  7. ^ a b 「日本のドラマはどこに向かっているのか」脚本家・坂元裕二氏、海外展開に希望 マイナビニュース 2019年4月24日、2019年11月4日閲覧
  8. ^ 映画『花束みたいな恋をした』公式サイト staff profile坂元裕二”. 映画『花束みたいな恋をした』製作委員会. 2021年2月5日閲覧。
  9. ^ 女性をめぐる社会問題に注目!日本のドラマ「Mother」中国語版リメイク”. 人民網日本版 (2020年4月2日). 2020年8月21日閲覧。
  10. ^ 長谷川朋子 (2019年2月12日). “あの芦田愛菜の出世作『Mother』が海外でも天才子役を輩出”. mi-mollet. エンタメ番長 揃い踏み 「それ、気になってた!」. 2020年11月10日閲覧。
  11. ^ 쇼박스, 백신 접종률 상승·웹툰 드라마화…성장성 가시화 -하이 이데일리 2021年6月14日、2021年6月15日閲覧
  12. ^ 坂元裕二 / SAKAMOTO YUJIさん(@skmtyj)のInstagramアカウント”. Instagram. 2018年3月22日閲覧。
  13. ^ 坂元裕二 / SAKAMOTO YUJIさん(@skmtyj)のInstagramアカウント”. Instagram. 2018年11月22日閲覧。
  14. ^ 坂元裕二、ドラマで開花した作家性は映画にどう引き継がれる? 『花束みたいな恋をした』への期待”. 2019年11月9日閲覧。
  15. ^ 坂元裕二 / SAKAMOTO YUJIさん(@skmtyj)のInstagramアカウント”. Instagram. 2023年3月25日閲覧。
  16. ^ 『往復書簡 初恋と不倫』 坂元裕二”. リトルモア ブックス. リトルモア (2017年6月26日). 2021年12月11日閲覧。
  17. ^ リトルモアWEB Twitter”. リトルモアWEB (2021年1月5日). 2021年12月12日閲覧。
  18. ^ BookLive、会員数7,000万人の中国の大手SNSサービス「豆瓣(ドウバン)」において、日本の電子書籍サービスとして初のコミック配信を開始”. BookLive. BookLive (2014年1月23日). 2021年12月11日閲覧。
  19. ^ 豆瓣 BOOKS OF THE YEAR”. 豆瓣読書. 豆瓣読書 (2021年1月5日). 2021年12月11日閲覧。
  20. ^ 『花束みたいな恋をした』公式サイト”. 2021年1月15日閲覧。
  21. ^ ニッポン放送『大滝詠一 Happy Endingの世界』2020年3月22日放送分
  22. ^ 「とんねるずにお礼が言いたくて」脚本家・坂元裕二がゲスト出演! 石橋貴明との意外な接点とは?”. フジテレビュー!!. フジテレビ (2020年8月4日). 2020年11月10日閲覧。
  23. ^ “脚本家 坂元裕二劇場”. 日本映画専門チャンネル. (2021年4月1日). https://www.nihon-eiga.com/osusume/sakamotoyuji/ 2020年4月1日閲覧。 
  24. ^ a b c 「リモートインタビュー 満島ひかりが聞く 坂元裕二」、『ユリイカ 詩と批評』2021年2月号・第53巻第2号(通巻770号)「特集・坂元裕二」、青土社、pp. 38-51。
  25. ^ a b c d e f g 「特集/坂元裕二 ロング・インタビュー テレビドラマ「カルテット」で描きたかったこと」『熱風』第15巻第6号、スタジオジブリ出版部、2017年6月9日、3-23頁。 
  26. ^ a b 脚本家・坂元裕二が語る創作の秘密 脚本家・坂元裕二インタビュー (1)「10代の人たちに観てもらいたい」”. crea (2018年10月19日). 2022年11月9日閲覧。
  27. ^ a b 「脚本家・坂元裕二 ロングインタビュー」、「TV Bros.」2018年12月号 東京ニュース通信社。
  28. ^ “【コンフィデンスアワード】ドラマ作品賞は『いつ恋』 最終回15分の長回しが絶賛”. ORICON NEWS (oricon ME). https://www.oricon.co.jp/news/2070493/full/ 2022年5月28日閲覧。 
  29. ^ “17年1月期“最も質の高いドラマ”は『カルテット』〜「第7回コンフィデンスドラマ賞」で最多5部門受賞”. ORICON NEWS (oricon ME). (2017年4月28日). https://www.oricon.co.jp/news/2089901/full/ 2020年11月10日閲覧。 
  30. ^ “【2017年間ドラマ賞】脚本賞は『カルテット』坂元裕二氏「そろそろ出所した巻さんが、みんなと再会を果たす頃でしょうか”. ORICON NEWS (oricon ME). (2018年2月26日). https://www.oricon.co.jp/news/2106373/full/ 2018年2月26日閲覧。 
  31. ^ 【特集】第92回ドラマアカデミー賞 結果発表 | ザテレビジョンザテレビジョンKADOKAWA、2017年5月10日閲覧。
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  33. ^ BookLive、会員数7,000万人の中国の大手SNSサービス「豆瓣(ドウバン)」において、日本の電子書籍サービスとして初のコミック配信を開始”. BookLive. BookLive (2014年1月23日). 2021年12月11日閲覧。
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外部リンク