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「名鉄3500系電車 (2代)」の版間の差分

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2022年12月19日 (月) 06:57時点における版

名鉄3500系電車(めいてつ3500けいでんしゃ)とは、1993年平成5年)に登場した名古屋鉄道通勤形電車である。

なお本項では、車体・性能・システムが類似し、同じグループとして運用されている3700系電車(3代)3100系電車についても記述する。

概要

従来投入されてきた6000系列の後継発展車種として、VVVFインバータ制御電気指令式ブレーキ等の新機軸を導入のうえ登場した通勤形電車である。3500系・3700系・3100系ともに車体普通鋼[注釈 1]で、座席はオールロングシートである。

主電動機主制御器ともに最初は東洋電機製造製のみであったが、増備車では主電動機に三菱電機製、主制御器に東芝製と三菱電機製が加わった。かご形三相誘導電動機回転子の構造が単純なため、短時間の過負荷による温度上昇に強く、定格出力は170 kWであるが短時間ならば実効出力で250 kW以上を発揮できる。また、許容回転数も高い。この高出力な電動機によって、歯車比の大きい通勤車ながらも高速性能は大幅に向上し、就役当初から名古屋本線優等列車で120 km/h運転を実施した[注釈 2]。ただし、高速性能を最重視していることもあり、逆に起動加速度は2.0 km/h/sと、新幹線車両を除く日本のVVVF車両としては最低ランクに位置する[注釈 3]。なお、特急車の2000系2200系においても、搭載主電動機や基本的な走行性能は本系列をベースとしている。

総数136両が製造され、名鉄では6000系に次ぐ2位だが、それを僅か4年間で投入しており、新造ペースに関しては現有車両の中で1位である。また6000系も瀬戸線在籍車を中心に廃車が進んだことから、瀬戸線の6000系が全廃された2014(平成26)年度以降は3500系が名鉄最多車両となった。全系列では3500系・3700系両系列で4両編成39本156両、3100系2両編成23本46両の合計62本202両が在籍している。

就役後の変化として、1993年から1997年製造の車両は登場時は種別・行先表示器6000系以来の種別=漢字1文字(「快急」を除く)、行先表示=日本語のみの方式であったが、2005年までに種別を2文字表記とし種別・行先ともに英文字を併記した方式へ変更された。また、EB装置や折りたたみ式の転落防止幌なども順次取り付けられている。当初から全車が装着しているボルスタレス台車は、1995年からヨーダンパが設置され、さらに2004年からは電動車のみ許容荷重を高めた台車に交換された。

系列別概要

3500系

名鉄3500系電車 (2代)
名鉄3500系電車 (1次車)
(2007年11月3日 / 中小田井)
基本情報
運用者 名古屋鉄道
製造所 日本車輌製造
製造年 1993年 - 1996年
製造数 34編成136両
主要諸元
編成 4両編成
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500V
架空電車線方式
最高運転速度 120 km/h
設計最高速度 130 km/h
起動加速度 2.0 km/h/s (70km/hまで)
減速度(常用) 3.5 km/h/s
減速度(非常) 4.0 km/h/s
編成定員 552名(座席180〈実質152〉名、
補助席設置編成212〈実質184〉名)
編成重量 122.2 - 123.6 t
全長 先頭車 18,900 mm
中間車 18,830 mm
全幅 2,740 mm
全高 冷房装置上面 3,880 mm
パンタグラフ折畳 4,030 mm
主電動機 かご形三相誘導電動機 TDK-6380-A・MB-5059-B
主電動機出力 170kW × 4
駆動方式 TD継手式中実軸並行カルダン
歯車比 5.65
編成出力 1,360 kW
制御方式 VVVFインバータ制御
制御装置

機器更新車:東洋電機製造RG6020-A-MIGBT素子) その他:東洋電機製造元設計
GTOサイリスタ素子)

制動装置 回生制動併用全電気指令式電磁直通空気制動
(常用段数:7段)
保安装置 M式ATS
テンプレートを表示

1993年6月から1996年6月まで製造された、片側3扉で全車両の座席がロングシートの4両固定編成で、豊橋方から ク3500形(Tc1) - モ3550形(M2) - モ3650形(M1) - ク3600形(Tc2) の順に組成される。

主電動機の出力を170 kWに増強し、GTOサイリスタ素子(4,500 V/4,000 A)を用いたVVVFインバータ制御を導入した[注釈 4]。また、三菱電機のMBS-A方式電気指令式ブレーキを採用しているため、旧来のHSC方式電磁直通ブレーキを有する6000系・6500系などとの併結運転はできない。電気指令式ブレーキの採用で、名鉄の車両としては初めて一つの主幹制御器で加速・減速操作を行うワンハンドル式が採用された[注釈 5]。主幹制御器のノッチ力行5段・中立・常用制動7段・非常制動となっている。

客室内の設備として、名鉄では特急車以外で初採用となる号車番号表示器とLED車内案内表示装置を車端部に設置した。号車番号表示は途中駅から行き先が分かれる列車に便利な機能で、案内表示器には次駅の案内などのほかその時々の速度を数字と電車をかたどったグラフで示す機能もある。座席配置は6500系8次車・6800系6次車と同一で、座面形状が変更された。ラッシュ対策のため、特に利用客が固まる乗降扉の両脇1人分ずつには座席を設けず立席スペースとし[注釈 6]、扉間が6人掛け、中間車の車端部が4人掛けとしてある[注釈 7]。しかし実質座席定員が少ないとの指摘を受け、1996年製造の4次車からは1両につき8か所に1人用の補助席を追加した[注釈 8]。これは初期製造車の一部にも設置されている(後述)。また、運転席背後には当初から座席を設けず車椅子スペースとしている。客室化粧板は6750系2次車から採用されている格子模様のクリーム色だが、天井板が6500系8次車などでは白色であったのに対し、本系列からはクリーム色となった。4両編成34本136両が在籍する。

落成当時、赤い車体に乗降口扉の上半分が灰色に塗られていたが、2000年以後、他の部分と同じ赤色に塗り直された。これは3700・3100系も同じである。また座席モケットは、当初はストライプ入りのライトパープルのものであったが、後に全車が6000系列と同様のブラウンパープルのものに交換された。さらに、2019年からは3500系と3100系のそれぞれ一部編成において、3300系と同様のものへの交換が進められている。(後述)

車体は6500系の6518編成以降をベースとするが、先頭車前面には電気指令式ブレーキを意味する「ECB」 (Electric Command Brake) のプレート[注釈 9]が取り付けられ、また正面下部にはスカート(排障器)を設置した。また、正面上部には車両番号が表記されている。正面の車両番号表示は、名鉄における完全新製車では1954年以来、車体更新車でも1966年以来行われていなかった。

一方で、起動加速度が1990年代に製造された鉄道車両としては著しく低い2.0 km/h/sとなっているが、これは当時の名鉄では基本的に高速性能を重視する方針だったこともあった(主電動機の特性上、通常の場合は高速性能と加速性能は相反するため、高速性能を強化すると加速性能が犠牲になる)。

1次車 3501F – 3504F

1991年より犬山線などに暫定的に投入されていた100系200番台が本来の使用目的である名古屋市交通局名古屋市営地下鉄鶴舞線への直通運用に充当されることになったため、その代替用として1993年6月から7月にかけて4編成16両が製造された。当初はまだ3100系が製造されておらず、本系列自体も車両数が少なく柔軟な運用が組みにくかった[注釈 10]ため、急行にはあまり運用されず普通列車を中心に運用されていた[注釈 11]

このグループのみ6000系などと同じ従来型の列車無線アンテナを装備する。なお、本系列の全体定員は座席を切り詰めたことにより100系[注釈 12]よりも僅かに多くなっている。

2次車 3505F – 3511F

1994年3月から4月にかけて7編成28両が製造された。基本的な仕様は1次車に準拠するが、この増備車より列車無線アンテナの形状が変わり以後の新造車両ではこのタイプのものが採用されている。

3509Fの岐阜方先頭車のク3609は1995年9月より試験的に折り畳み式補助椅子を設置し、翌年の増備車で本格採用されたほか、1997年には3509Fの他の3両と3508Fにも設置された。

3次車 3512F – 3521F

1995年4月に3512F – 3517F、6月に3518F – 3521Fの計10編成40両が製造された。前述の通り、この増備車からは主制御器や主電動機の製造会社が従来の東洋電機製造製に加えて東芝製と三菱電機製を採用した車両も現れたが、主制御器については東芝製・三菱電機製についてもOEM方式で共通化した関係で、東洋電機製造製とほぼ同じ物を採用している。そのため磁励音はこの両社で製造した主制御器についても東洋電機製造製と同じとなっている。また、1995年以降からの東洋電機製造のVVVFインバータ装置などの電装品には、会社名を表すTDK刻印ロゴから、プレート式のものに変更となった。

この増備で、広見線新可児 - 御嵩間や尾西線新一宮 - 森上間などの支線にも入線するようになった。ちなみに1995年度の名鉄での新製車両は本系列のみでクロスシート車の新製は皆無であった。この3次車導入により、6000系16両が瀬戸線に転属、3780系の一部が代替廃車された。

4次車 3522F – 3526F

1996年2月に5編成20両が製造された。ク3609でテストされていた折り畳み式補助椅子が本格採用され、各車両に8名分ずつ設置された。またドアチャイムが設置され、以後の新造車で標準装備となったほか、6000系などの一部の車両にも改造で取り付けられた。さらには冷房装置を低騒音型のものに[注釈 13]、冷房装置などサービス機器に電力を供給するSIVをGTOサイリスタ方式からIGBT方式のものに変更した。

室内では天井中央部の高さが僅か10 mmであるが高くなった。なお、全編成とも制御装置、主電動機ともに東洋電機製である。

5次車 3527F – 3534F

1996年4月に8編成32両が製造された。基本的な仕様は4次車に準拠する。

上記4次車とこの5次車の増備により、6000系の5 – 8次車の中間車のみ12両を瀬戸線に転用させることで、HL車全廃・モ800形(初代)営業運転終了・7300系の一部廃車といった動きがあり、名鉄の1,500 V線区での冷房化率は100 %となった[注釈 14]。さらに、6000系列については豊橋までの定期運用が消滅した[注釈 15]

この増備をもって本系列の製造は終了し、1997年からの新製は下記の3700系となった。また、7000系から連綿と引き継がれてきた卵形小断面車体の製造も特急車を除いて最後となった。

機器更新・内装変更

2017年度より制御機器の更新工事(東洋電機製造製RG-6020-A-M)が順次実施されており、行先表示器のフルカラーLED化、ドアチャイムの新設、車内案内表示装置の更新といった改装も同時に行われている[2]。なお、3511編成はこれに先行した2013年に試験的な機器更新が行われており[2]、この時車内案内装置が交換されていたのは編成両端の運転台側の2基だけであった[3]。ただし、3511編成の車内案内装置は試験であった為、2019年2月頃に元の車内案内装置に戻ったが、後述の3513Fと同様の体質改善工事が行われた際に再び車内案内装置が更新された。

3519Fにおいて3300系3312F以降の位置同等の位置に優先席スペースの移設、モケット交換が実施された。

2019年度には3513Fに従来の更新内容の他に内装更新、室内灯のLED化、非常梯子の設置[4]、 中間車への車椅子スペースの設置[5]などの体質改善工事が行われた[6]

3700系

名鉄3700系電車 (3代)
名鉄3700系電車 (2次車)
(2008年6月14日 / 鳴海 - 本星崎)
基本情報
運用者 名古屋鉄道
製造所 日本車輌製造
製造年 1997年 - 1998年
製造数 5編成20両
主要諸元
編成 4両編成
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500 V
架空電車線方式
最高運転速度 120 km/h
設計最高速度 130 km/h
起動加速度 2.0 km/h/s (70km/hまで)
減速度(常用) 3.5 km/h/s
減速度(非常) 4.0 km/h/s
編成定員 536名(座席208名)
編成重量 123.0 t (1次車)
121.4 t (2次車)
全長 先頭車 18,900 mm
中間車 18,830 mm
全幅 2,740 mm
全高 冷房装置上面 4,010 mm
パンタグラフ折畳 4,055 mm
主電動機 かご形三相誘導電動機 TDK-6380-B
主電動機出力 170 kW × 4
駆動方式 TD継手式中実軸並行カルダン
歯車比 5.65
編成出力 1,360 kW
制御方式 VVVFインバータ制御
GTOサイリスタ素子
制御装置 東洋電機製造製 RG645-A-M[1]
制動装置 回生制動併用全電気指令式電磁直通空気制動
(常用段数:7段)
保安装置 M式ATS
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3500系の改良型で、1997年から1998年にかけて4両編成5本20両が製造された。編成は豊橋方から ク3700形(Tc1) - モ3750形(M2) - モ3850形(M1) - ク3800形(Tc2)である。3700系という形式称号は名鉄では3代目となる。

動力系や室内などは3500系に準ずるが、パンタグラフには従来タイプの菱形ではなくシングルアーム式のものが採用されたほか、車体断面形状もそれまでの卵形から側板が垂直の角張った形状となり、屋根高さが100 mm高い3,600 mmとなった。側窓の天地寸法は40 mm拡大されて880 mmとなったが、屋根は肩部のR(曲率半径)が小さく上面のRが大きいため幕板部分が広い。また本系列から車体の長さを従来の18,100 mmから18,230 mmに、連結面間隔も730 mmから600 mmに変更した。床面高さは10 mm下げられ、1,100 mmとなった。

室内の構成は3500系と同様であるが、車体断面形状が変わったことで天井は両隅から中央に向かって緩やかに高くなっており、天井の高さが2,235 mmに拡大された。冷房吹出口は1200系と同様のラインフロー式となり、中央部の化粧板は、1次車がクリーム色、2次車がグレーベージュとなっている。座席が扉脇まで延長され、折りたたみ式の補助席は廃止された。扉間の座席は9人掛けとなったが、1人当りの幅は440 mmで、その後の標準である470 mm(8人掛け)に比べると狭い。ただし車端部は470 mmを確保している。座面の形状は3500系と同様だが、車体断面形状の変更で背摺りの傾斜が若干大きくなった。車体を延長した分だけ、妻面の壁が3500系と比べて厚くなり、そこにLED表示器、消火器非常コックなどを収めている。また、側窓の天地寸法拡大によって、荷棚受け金具の形状にも変化が見られる[注釈 16]

3500系と同様に電気指令式ブレーキを装備するため、先頭車前面に「ECB」のプレートが装着されているが、そのデザインは変化している。冷房装置は、客室容積の拡大と吹き出し方式の変更に伴い6000系の能力アップに採用された12,500 kcal/hの集約分散式を各車3基搭載するが、室外機カバーの形状は異なる。扉付近に大径のラインデリアを併用する点も1200系と同様である。

また車内のLED表示器の文字の書体も3500系とは異なる。種別・行先表示器の表示内容の変遷は前記した。電動空気圧縮機(CP)は、次項の3100系と同様C-1500型に、補助電源装置(SIV)も出力75 kVAの新設計品へと変更された。これらのCP、SIVともその後の新形式では標準装備となっている。

1次車 3701F・3702F

1997年に2編成8両が製造された。

この2本と下記の3100系1次車の製造によって7300系が全廃された。

2次車 3703 – 3705F

1998年3月に3編成12両が製造された。前面窓の位置を80 mm上げ[注釈 17]、新造時から種別・行先表示器にローマ字を併記した字幕を採用し前面・側面ともに1次車よりも表示窓が拡大されている。

この3編成と3100系2次車の製造によって7000系が編成単位で廃車されるようになった。

本系列は5本が落成したのみで製造を終了し、以後本線系の4両編成通勤形車両は2004年3300系に移行した。

3100系

名鉄3100系電車
名鉄3100系電車 (2次車)
(2008年12月28日 / 木曽川堤 - 黒田)
基本情報
運用者 名古屋鉄道
製造所 日本車輌製造
製造年 1997年 - 2000年
製造数 23編成46両
主要諸元
編成 2両編成
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500V
架空電車線方式
最高運転速度 120 km/h
設計最高速度 130 km/h
起動加速度 2.0 km/h/s (70km/hまで)
減速度(常用) 3.5 km/h/s
減速度(非常) 4.0 km/h/s
編成定員 258名(座席96名)
編成重量 63.5 - 64.4 t
全長 18,900 mm
全幅 2,740 mm
全高 冷房装置上面 4,010 mm
パンタグラフ折畳 4,055 mm
主電動機 かご形三相誘導電動機 TDK-6380-B・MB-5059-B
主電動機出力 170 kW × 4
駆動方式 TDドライブ
歯車比 5.65
編成出力 680 kW
制御方式 VVVFインバータ制御
IGBT素子)(2000A/600A 1700V/360A)
制御装置 3101F~3106F・3116F~3120F:東芝製 SVF032-A0
3107F~3115F:三菱電機製 MAP-174-15V66
3121F~3123F:三菱電機製 MAP-174-15V66A
制動装置 回生制動併用全電気指令式電磁直通空気制動
(常用段数:7段)
保安装置 M式ATS
テンプレートを表示

3700系の2両編成版で、名鉄初のIGBT-VVVF車両として1997年(平成9年)から2000年(平成12年)にかけて23本46両が製造された。編成は豊橋方から ク3100形(Tc) - モ3200形(Mc) である。

車体や客室設備は上記の3700系とほぼ同様であり、名鉄の公式サイト等では同系の2両組成版と位置づけている。

しかし制御システムは異なり、VVVFインバータ装置を3500・3700系のGTO素子からIGBT素子(1C1M×4群、個別制御方式)に変更し、故障時に対処しやすくなるなど、きめ細かい制御を可能にした。このシステムは、後の新造車にも一部改良の上で採用されている。制御装置は三菱電機製と東芝製のものが採用された。

3500系・3700系と同じく電気指令式ブレーキを装備するため、先頭車前面に「ECB」のプレートが装着されている[注釈 18]。また、従来2両組成車の場合、制御付随車(ク)に搭載されてきた補助電源装置は、本形式から制御電動車(モ)に搭載されるようになり、補助電源装置が故障した際、VVVF装置の1群を開放して補助電源装置として使用できるよう、補助電源装置一体型のVVVFインバータ装置とした。このため、当形式から「VVVFインバータ装置」の表記が、「車両制御装置」となった。メーカー・装置表記は共に山側にある(東芝車は装置表記が海側にもあるが、メーカーの表記は山側にしかない)。なお、この方式を採用したのは大手私鉄では初で、JRを含めると223系1000番台に次いで2例目となる。

基本的に自動放送装置などは搭載されていない[注釈 19]。 本形式にも車内案内表示装置が搭載され、1700系と併結して快速特急・特急の運用に入った際にのみ、特別車についての案内も表示される他、種別の表示が赤色文字となる[注釈 20]。なお、2200系と併結して快速特急・特急運用に入った場合や3500・3700系および3300系と併結して急行・快速急行に入った場合でも通常通りの表示(上記の1700系を除く)[注釈 21]となる。 また、2004年5月には当時落成して間もない2000系と併結しての試運転も行った。

2019年6月には、1次車3107編成を皮切りに、白をベースとした2200系に似せた車体塗装に変更し、座席表皮を3300系と同様のものに交換した編成が登場した[7]。特急形やステンレス車と併結した際に統一感を持たせることを目的としたもので[8]、3100系のみに施工する予定である[8]

1次車 3101F – 3110F

1997年3月から4月にかけて10編成20両が製造された。

2次車 3111F – 3119F

1998年3月から4月にかけて9編成18両が製造された。3700系2次車と同様の改良がなされている。

3次車 3120F – 3123F

2000年4月に4編成8両が製造された。前年に落成した1600系に準じた変更がなされ、運転台モニタの設置や主幹制御器の右手操作型への変更、100系でも採用されている発車予告ブザーの設置、車外スピーカーの設置がされているほか、新製時より転落防止外幌を装備する。また客室側窓の巻上げカーテンはフリーストップ式となった。

前照灯は当初シールドビームであったが、のちにこの3次車の全車両がHIDに交換され、以後の新造車両では標準装備となった。また、車体側面の車両番号の表記位置がやや上の位置にずれている。また1700系と併結して運用に入った際にのみモニタに特別車の開閉図と走行モーターが表示される。

この3次車8両の導入を受け、同数の6000系[注釈 22]瀬戸線の輸送力増強のため同線に転出した。

本系列の製造はこれをもって終了し、以降の本線系通勤形2両編成の製造は2004年登場の3150系に移行した。

2002年登場の300系以降、通勤形車両はステンレス鋼製の車体を採用するようになったため、長年の名鉄の象徴であった「赤い電車」の新製は3次車・3123Fが最後となった(改造車も含めると1380系が最後)。この3次車をもって、TD駆動車の製造も終了し、300系からはWN駆動に移行した。同時に乗務員室のドアヒンジが車両客室側にある最後の車両でもあった[注釈 23]

運用

3500系使用の全車一般車特急
(2022年3月11日 / 豊田本町)

3500系・3700系は3300系9500系と、3100系は3150系9100系と共通運用が組まれ、これらを組み合わせた2 - 8両編成で本線系統で幅広く使用されている。

快速急行以下での使用が中心で、2008年12月のダイヤ改正以降における豊橋駅発着の急行・一部特別車特急用車両の特急・快速特急の運用は、基本的に本グループ(3300・3150・2200・1700-2300系も含む。2019年以降は9500・9100系も含まれる)で運用される。2両編成の3100系については3150系とともに主に急行・快速急行の運用や平日の朝夕ラッシュ時、名古屋本線・常滑線・犬山線の岐阜駅・新鵜沼駅 - 豊橋駅間の特急で2200系-2300系6両編成に増結して8両とする運用もされる。

2011年3月改正からは4連車と2連車とを併結した6両編成による全車一般車特急運用が深夜(名鉄名古屋駅23:57発東岡崎行きや中部国際空港駅23:31発岐阜行き)に設定[注釈 24]されたほか、2015年6月20日からは1800系・1850系の運用と入れ替わる形で日中の全車一般車特急運用も1往復設定された[9]

回送列車では2両編成を4本連結した8両編成や、2000系との併結も行われている。

支線区では、西尾線にはこれまで2000年頃のごく僅かな期間を除いて入線実績がなかったが、2008年6月のダイヤ改正以降、定期運用が設定された。また、2021年5月22日のダイヤ改正により、広見線新可児御嵩間に朝のみ3100系(3150系・9100系)による定期運用が設定された。三河線知立 - 猿投間ではワンマン化以降定期運用はないが、イベントなど[注釈 25]のため増発して6000系だけでは車両不足になった際には車掌が乗務して入線する。2003年3月27日のダイヤ改正以降は、前日限りで定期営業運転を終了した旧3300系に代わって築港線で2両単独で運用されていた。しかし平日は混雑することから、2009年10月3日のダイヤ改正・運用変更以降は築港線は5000系などの4両編成による運行とされた。また、以前は小牧線三河線知立 - 碧南間や尾西線津島以北にも乗り入れていたが、ワンマン運転開始に伴い定期運用がなくなった[注釈 26]。なお、定期・臨時を含め、現存する名鉄路線(瀬戸線以外)では豊田線のみ唯一運行したことがない。

ラッピング車両

本系列、特に側面がフラットな3700系と3100系にはタイアップなどの一環としてラッピングが行われる場合がある。以下はその事例である。

  • パトトレイン - 2003年春より1年間、愛知県警による防犯PRのため3701Fと3106Fにパトカー風のラッピングが施された。「パト電」という愛称もある。
  • ネスレ「キットカット」 - 2005年2006年の受験シーズンには3702Fと3703Fにネスレキットカット」ラッピングが施された。
  • カモン岡崎キャンペーン - 2021年4月から名鉄と岡崎市とのタイアップキャンペーンで3508Fに岡崎観光伝道師の東海オンエアのラッピングが施された[10]
  • 『ONE PIECE RED FILM RED』-2022年7月25日から9月20日までワンピース映画とのコラボにより、3524Fにラッピングが施された。

ポケモンキャンペーン

ポケモンXY号
(2014年8月15日 / 勝幡)

ポケモン映画とのタイアップやスタンプラリーイベントの一環として、2007年から2016年まで2000系2200系とともにラッピングが行われた。

列車名 期間 編成 備考
2007年 ドキドキぼうけんランド号 5月27日 - 9月2日 3703編成 [11]
2008年 ポケモン ダイヤモンド・パール号 3月8日 - 8月31日 3701編成 [12]
2009年 ポケモン ダイヤモンド・パール2009号 3月2日 - 8月31日 3701編成 [13]
2010年 ポケモン ダイヤモンド・パール2010号 3月4日 - 8月31日 3702編成 [14]
2011年 ビクティニ号 3月19日 - 8月31日 3705編成 [15]
2012年 ケルディオ号 3月4日 - 9月2日 3529編成 [16][17]
2013年 イーブイ★フレンズ号 4月28日 - 9月1日 3512編成 [18]
2014年 ポケモンXY号 3月23日 - 8月31日 3526編成 [19]
2015年 ポケモンおでましトレイン 3月29日 - 8月31日 3506編成 [20]
2016年 ポケモントレイン 7月4日 - 8月31日 3513編成 [21]

さくらTRAIN

受験生を応援するキャンペーンの一部として2013年から運行されているラッピング電車。車内には受験生を応援するメッセージが掲示されている[22]

期間 編成 ラッピング 備考
2013年 1月11日 - 2月28日 3704編成 2013年版 [22]
2014年 1月14日 - 3月12日 3704編成 [23]
2015年 1月12日 - 2月28日 3704編成 [24]
2016年 1月10日 - 3月25日 3702編成 2016年版 [25]
2017年 1月7日 - 3月25日 3705編成 2017年版 [26][27]

編成表

2008年末時点の車両番号を基本として記載する[28]。2017年4月1日現在、3500系は34編成136両が、3700系は5編成20両が、3100系は23編成46両の合計202両が在籍している[29]

凡例
Tc …制御車、Mc …制御電動車、M …電動車
VVVF…制御装置、SIV…補助電源装置、CP…電動空気圧縮機、PT…集電装置
3500系
← 豊橋
岐阜 →
製造次数 落成日[28] 備考 ワンマン対応
形式 ク3500 モ3550 モ3650 ク3600
区分 Tc1 M2 M1 Tc2
車両番号
3501 3551 3651 3601 1次車 1993/6/23 2017年8月機器更新[30]
3502 3552 3652 3602 1993/6/23 2020年2月機器更新・内装変更[4]
3503 3553 3653 3603 1993/7/3 2017年10月機器更新[30]
3504 3554 3654 3604 1993/7/3 2018年1月機器更新[30]
3505 3555 3655 3605 2次車 1994/4/1 2018年3月機器更新[30]
3506 3556 3656 3606 1994/4/1 2018年7月機器更新[31][32]
3507 3557 3657 3607 1994/4/3 2017年12月機器更新[30][33]
3508 3558 3658 3608 1994/4/4 2018年11月機器更新[31][33]
3509 3559 3659 3609 1994/4/4
3510 3560 3660 3610 1994/4/13 2021年3月機器更新[34]
3511 3561 3661 3611 1994/4/20 2013年2月機器更新[2][6]

2021年3月機器再更新・内装変更[34]

2021/3/1[35]
3512 3562 3662 3612 3次車 1995/4/1 2022年4月機器更新・内装変更 
3513 3563 3663 3613 1995/4/1 2019年9月機器更新・内装変更[4][6] 2021/12/24
3514 3564 3664 3614 1995/4/5 2019年10月機器更新[4]
3515 3565 3665 3615 1995/4/5
3516 3566 3666 3616 1995/4/26 2020年10月機器更新・内装変更[36] 2020/10/30[35]
3517 3567 3667 3617 1995/4/26 2022年7月機器更新・内装変更
3518 3568 3668 3618 1995/6/21 2022年2月機器更新・内装変更
3519 3569 3669 3619 1995/6/12 2022年3月機器更新
3520 3570 3670 3620 1995/6/19
3521 3571 3671 3621 1995/6/19 2022年12月機器更新
3522 3572 3672 3622 4次車 1996/2/28 2022年9月機器更新
3523 3573 3673 3623 1996/2/28  
3524 3574 3674 3624 1996/3/6  
3525 3575 3675 3625 1996/3/6 2020年8月機器更新[37]
3526 3576 3676 3626 1996/3/12  
3527 3577 3677 3627 5次車 1996/4/3  
3528 3578 3678 3628 1996/4/3  
3529 3579 3679 3629 1996/4/3  
3530 3580 3680 3630 1996/4/3  
3531 3581 3681 3631 1996/4/24  
3532 3582 3682 3632 1996/4/24  
3533 3583 3683 3633 1996/5/20  
3534 3584 3684 3634 1996/6/1  
搭載機器 SIV,CP VVVF,PT SIV,CP,PT        
3700系
← 豊橋
岐阜 →
製造次数 落成日 備考
形式 ク3700 モ3750 モ3850 ク3800
区分 Tc1 M2 M1 Tc2
車両番号
3701 3751 3851 3801 1次車 1997/4/1
3702 3752 3852 3802 1997/4/1
3703 3753 3853 3803 2次車 1998/4/1
3704 3754 3854 3804 1998/4/1
3705 3755 3855 3805 1998/4/1
搭載機器 SIV,CP VVVF,PT SIV,CP,PT       
3100系
← 豊橋
岐阜 →
製造次数 落成日 備考
形式 ク3100 モ3200
区分 Tc Mc
車両番号
3101 3201 1次車 1997/4/1  
3102 3202 1997/4/1 2021年7月塗装変更 
3103 3203 1997/4/1 2019年12月塗装変更[4]
3104 3204 1997/4/1 2019年7月塗装変更[4]
3105 3205 1997/4/1  
3106 3206 1997/4/1 2019年11月塗装変更[4]
3107 3207 1997/4/1 2019年6月塗装変更[4][7]
3108 3208 1997/4/16 2020年1月塗装変更[4]
3109 3209 1997/4/1 2020年3月塗装変更[4]
3110 3210 1997/4/1 2019年9月塗装変更[4]
3111 3211 2次車 1998/4/1 2020年1月塗装変更[4]
3112 3212 1998/4/1 2020年1月塗装変更[4]
3113 3213 1998/4/1  
3114 3214 1998/4/1  
3115 3215 1998/4/1  
3116 3216 1998/4/1  
3117 3217 1998/4/1  
3118 3218 1998/4/1 2021年5月塗装変更 
3119 3219 1998/4/1  
3120 3220 3次車 2000/4/7  
3121 3221 2000/4/7  
3122 3222 2000/4/7  
3123 3223 2000/4/7  
搭載機器 CP VVVF/SIV,PT      

脚注

注釈

  1. ^ 当時すでにJR各社を始め他社局では、通勤形車両の車体素材としてステンレス鋼製アルミニウム合金製が主流となっており、名鉄が1990年代一杯までVVVFインバータ制御の通勤車を普通鋼製車体で新製投入し続けたことは、西鉄阪神などと並んで希少な事例である(3500系と製造時期をほぼ同じくする西武9000系は、当初機器流用の抵抗制御車として登場し、後年VVVF制御に改造)。
  2. ^ 高速域の加速力は1000-1200系4M2T編成に匹敵し、平坦均衡速度は150 km/h以上となる(主電動機回転数を度外視した場合)。
  3. ^ 現在の設定における比較。設計上は2.8 km/h/sまで可能であるほか、その後登場した小牧線および上飯田線直通用の300系瀬戸線用の4000系は同一の出力・歯車比で加速度3.0 km/h/sの性能を確保している。
  4. ^ 制御器一基で8個の主電動機を駆動する1C8M方式。VVVFインバータ制御自体の導入は100系の6連化用中間車の方が僅かに早かったが、そちらは1C4M方式で電磁直通ブレーキである。
  5. ^ 名鉄における電気指令式ブレーキの初採用は、1991年に落成した8500系気動車であった。
  6. ^ 名鉄は第一次オイルショック後の1974年にも、一部の2扉AL車・HL車の扉付近からクロスシートを撤去し立席スペースを増やす策を取っている。
  7. ^ 公称座席定員はそれぞれさらに1人分ずつ多いが、その場合1人当りの幅は最低基準の400 mmとなる。
  8. ^ 施錠機構が無い簡易な構造。そのため混雑時の使用を牽制する表示が添えられている。なお、この補助席は2014年度から順次撤去されている。
  9. ^ デザイン文字を「VVVF」とする案もあったが、当時既に近鉄1420系電車などの登場から10年近く経過し他社ではVVVFインバータ制御が普及していて新味に乏しかったことと、名鉄ではむしろブレーキ方式の相違を明確に示す必要があるとの判断からこの表示に決定した。
  10. ^ 4両単独か、本系列を2本併結した8両。
  11. ^ 当時の急行運用は100系の運用をそのまま置き換えたため、常滑 - 新可児が中心で、120 km/hでの運転は行われず運用最高速度は110 km/hであった
  12. ^ 4両編成時代は540名であった。
  13. ^ 型式が従来の RPU-3004AJ から RPU-3004R に変わった。
  14. ^ ただし、各務原線田神駅 - 新岐阜駅(現在の名鉄岐阜駅)間に当時乗り入れていた美濃町線電車は除く。
  15. ^ 後の1998年4月11日から1999年5月9日まで、土休日ダイヤの夕方1往復(新岐阜→豊橋→御嵩)に限り定期運用が復活したことはある。
  16. ^ 従来は5700系・5300系、7000系白帯車、1200系などが逆への字形である以外、すべてストレートな形状であった。本形式からは更にS字に近い屈曲となった。
  17. ^ 当時の文献の一部に前面窓を上方に拡大した旨の記述があるが、正しくは窓ガラス自体は従来と同一寸法で、窓の位置を80 mm、窓下の手摺りを30 mm上げただけである。他には雨樋の前方に水切りが延長され、前面両隅の台枠部分の処理が異なる。
  18. ^ 装着は3100系までであり、それ以降の新造車両にはプレートは装着されていない。
  19. ^ 2200系1700 - 2300系との併結時はこれらの編成からの自動放送と車内メロディが流れる。
  20. ^ 3500・3700系も含め、通常は種別にかかわらず全文橙色文字で表示
  21. ^ 特別車についての案内表示はなく、種別も橙色で表示
  22. ^ 内訳は4両編成の6035Fと当時4連だった6037Fと6038Fの中間車で、後者は改番の上、当時2+2の編成で残っていた6031Fと6032Fの中間に組み込まれた。これによって瀬戸線に所属する6000系はすべて4両固定編成となった。
  23. ^ ただし国鉄JR)ならびに地下鉄直通用の車両と閑散線区用に投入されたレールバスは、ドアヒンジが車両端側にあった。
  24. ^ これ以前にも2005年3月22日 - 2008年12月26日まで、中部国際空港駅23時32分発金山行き全車一般車特急での定期運用が設定されていたほか、3500系については登場時 - 1995年4月改正まで平日に限り、朝に新岐阜駅(当時)→東岡崎駅間で全車一般席特急での定期運用が1本存在した。なお、当該列車は豊橋行きとして運転され、東岡崎駅で1200系6両と車両交換され、同駅より一部指定席扱いとなっていた。
  25. ^ 豊田スタジアムのイベントや豊田おいでんまつりなど
  26. ^ これらの路線ではワンマン対応車両での運用になった(小牧線については同時に豊田線と同様に地下鉄直通規格の20m4ドア車に統一された。300系の代走として3300系が小牧以北で使われたことはある。尾西線名鉄一宮 - 玉ノ井では朝に4両編成の定期運用が残っている)。なお、広見線新可児 − 御嵩間については同区間で使用される6000系ワンマン対応車が検査で不足した場合に、3100系や3150系、9100系が稀に日中に入線することがある。

出典

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外部リンク

関連項目