「静脈注射」の版間の差分
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{{Infobox medical intervention |
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{{出典の明記|date=2019年7月}} |
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| name = |
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[[File:Infuuszakjes.jpg|right|thumb|200px|<div style="text-align:center;">点滴装置</div>]] |
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| image = ICU IV 1.jpg |
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[[File:Intravenous_charge_up.jpg|thumb|200px|点滴]] |
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| caption = 静脈ライン([[静脈路]])から[[ボーラス投与|ボーラス注射]]を受けている。 |
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'''点滴静脈注射'''(てんてきじょうみゃくちゅうしゃ、[[英語]]:intravenous drip, '''DIV''', '''IVD''')とは、ボトルやバッグに入れて吊した[[薬剤]]を、[[静脈]]内に留置した[[注射器|注射針]]から少量ずつ(一滴ずつ)投与する方法で、経静脈投与(静脈[[注射]]、静注と略すことがある)の一種である。単に'''点滴'''とも称される。また、そのための[[医療機器]]である点滴装置も「点滴」と呼ばれることがある。{{see also|[[輸液]]}} |
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| synonyms = 点滴 |
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| alt = Photo of a person being administered fluid through an intravenous line or {{仮リンク|cannula|en|cannula|label=cannula}} in the arm |
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| pronounce = |
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| ICD10 = |
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| ICD9 = 38.93 |
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| ICD9unlinked = |
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| other_codes = |
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'''点滴静脈注射'''(てんてきじょうみゃくちゅうしゃ、{{Lang-en-short|Intravenous Therapy}})は、ヒトの静脈に直接水分や薬物、栄養素を投与する医療技術である。単に'''点滴'''(drip、英略語: '''IV''')とも呼ばれる<ref>{{Cite web |url=https://media.gosh.nhs.uk/documents/IV_infusions_C0321_FINAL_Jul20.pdf |title=What is an intravenous (IV) infusion and why do I need one? Information for young people |publisher=Great Ormond Street Hospital (NHS) |access-date=2023-09-13 |date=2020-12-02}}</ref>。[[投与経路]]としての[[静脈]]は一般に、水分補給や、[[意識レベル]]の低下などにより、{{仮リンク|経口|en|per os|label=経口(英: per os、英略語: p.o.)|redirect=1}}で食物や水を摂取できない、あるいは摂取しようとしない人への栄養補給に用いられる。また、[[血液製剤]]や[[電解質異常]]を是正するための[[電解質]]など、薬物投与やその他の治療にも使用される。静脈内点滴治療の試みは、1400年代にはすでに記録されていたが、広く行われるようになったのは、安全で効果的な使用法が開発された1950年代になってからであった。 |
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静脈内投与は、薬剤や{{仮リンク|補液|en|fluid replacement|redirect=1}}が[[循環系]]に直接導入され、速やかに全身に行き渡るため、最も早く投与できる方法である。このため、一部の{{仮リンク|レクリエーショナルドラッグ|en|recreational drug use|redirect=1}}の摂取にも静脈内投与が用いられている。多くの治療薬は"[[ボーラス投与]]"すなわち1回で急速投与されるが、持続注入([[シリンジポンプ]]による)または点滴(自然滴下又は[[輸液ポンプ]]による)として投与されることもある。薬剤を静脈内に投与する行為、または後で使用するために静脈ラインを留置する行為は、熟練した[[医療従事者]]のみが行うべき手技である。最も単純な[[静脈路確保|静脈路]]は、[[注射針]]で[[皮膚]]を貫通させて静脈に入れ、[[注射器]]または[[末梢静脈カテーテル|静脈ライン]]に接続するというものである。これを用いて目的の治療を行う。注射針では静脈に外傷が生じる危険性があるため、患者が短期間に何度もこのような治療を受ける可能性がある場合は、一方の端を静脈内に入れる[[カテーテル]]を挿入し、もう一方の端にチューブを接続してその後の治療を容易に行うことができる。これが一般的な点滴方法である。場合によっては、同じ静脈ラインを通して複数の薬剤や治療介入を行うこともある。 |
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== 目的 == |
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* [[輸液]]・[[輸血]]を行う。 |
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** 容量がおおよそ50 mLを超える注射製剤は点滴静注で投与される。 |
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* 緩やかに、徐々に薬剤を投与する。 |
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** 時間をかけてゆっくり投与することで、血中薬剤濃度の急激な上昇を抑え、副作用を回避する。一部の薬剤では致死的な不整脈([[塩化カリウム]]や[[リドカイン]]などで起きる)や[[アナフィラキシー・ショック]]を起こすことがあり、必ず点滴静注を行わなければならない。 |
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* 持続的に薬剤を投与する。 |
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** 持続的に薬剤を投与することで、[[薬理作用]]を保った血中濃度を維持することができる。 |
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点滴ラインの終点が心臓に近い太い静脈であれば「[[中心静脈ライン]]」、腕など末梢の細い静脈であれば「[[末梢静脈カテーテル|末梢静脈ライン]]」に分類される。点滴ラインは末梢静脈から心臓の近くまで通すこともでき、これは{{仮リンク|末梢挿入型中心静脈カテーテル|en|Peripherally inserted central catheter|label=|redirect=1}}または略称でPICCラインと呼ばれる。長期的な点滴治療が必要な場合は、静脈に何度も穴を開けなくても静脈に何度も簡単にアクセスできるように、[[ポート (医療)|ポート]]を埋め込むこともある。また、カテーテルを胸部から距離の離れた[[内頸静脈|首の静脈]]や[[鎖骨下静脈|鎖骨の下の静脈]]に挿入することもあり、これは皮下トンネルという。使用するカテーテルの具体的な種類と挿入部位は、投与したい物質と挿入希望部位の静脈の健康状態に左右される。 |
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== 手技 == |
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=== 点滴装置 === |
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点滴装置は、[[ガラス]][[瓶]]あるいは[[合成樹脂]]製バッグに無菌充填された薬液と、患者の静脈に刺入される注射針が、「点滴ライン」あるいは「点滴セット」と称される専用のチューブで繋がれたものより成る(組み立てる順番は後述する)。 |
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点滴ラインの挿入は、必然的に皮膚に穴を開けることになるため、痛みを伴うことがある。感染症や炎症({{仮リンク|静脈炎|en|phlebitis|redirect=1}}と呼ばれる)も、点滴の一般的な副作用である。静脈炎は、同じ静脈を繰り返し点滴に使用する場合に起こりやすく、最終的には静脈が点滴に適さない硬い索状物になることもある。静脈外への治療薬の意図しない投与は、点滴漏れと呼ばれ、他の副作用を引き起こすことがある。 |
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静脈であっても相応の[[血圧]]が存在するので、圧力をかけるため薬液は重力差を使って高い位置に吊す必要がある。点滴ラインの途中には「チャンバー」と呼ばれる太くなった箇所があり、ここに薬液が滴下される(「点滴」という呼称はここから来ている)。これにより薬液中の微小な気泡が除去されると共に、時間当たりの注入量(=注入速度)を測ることができる。 |
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{{TOC limit|3}} |
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==適応== |
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注入速度は「ローラークレンメ」という[[ころ]]状の部品でチューブを圧迫し、狭窄させることによって調節するが、正確な管理が要求される場合は[[輸液ポンプ]]が用いられる。点滴ではないが、微量の薬剤を持続的に投与する方法としては、[[注射器]]を少しずつ押す[[シリンジポンプ]]も用いられる。急速に薬剤を注入するときは、加圧バッグで薬液を圧迫する方法も採られる(野外での応急手当で設備が存在しない環境の場合、手で押す)。 |
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===医学的な適応=== |
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{{Multiple image |
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| width = 160 |
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| image1 = Intravenuos administration.jpg |
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| alt1 = Photograph of an intravenous line inserted in the wrist. |
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| image2 = Infuuszakjes.jpg |
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| alt2 = Photograph of two intravenous solution bags hanging from a pole. |
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| footer = 左: 手首に留置された静脈ライン。 |
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右: 点滴棒に吊るされた2つの輸液バッグ。 |
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静脈路は、全身に投与しなければならない薬剤や補液の投与、特に迅速な投与が必要な場合に使用される。[[静脈内投与]]のもう一つの用途は、肝臓での[[初回通過効果]]代謝の回避である。静脈内に注入できる物質には、{{仮リンク|血漿増量剤|en|volume expander|redirect=1}}、[[血液製剤]]、[[代替血液]](2023年現在実用化されていない)、薬剤、栄養剤などがある |
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====輸液==== |
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{{Main|{{仮リンク|血漿増量剤|en|volume expander|redirect=1}}|緩衝液}}輸液は、「{{仮リンク|血漿増量剤|en|volume expander|redirect=1}}」または体液補充の一環として、静脈内ルートから投与されることがある。血漿増量は、より多くの水分を必要とする身体の特定部位をターゲットとして設計された、液体をベースとする溶液または懸濁液の投与による。すなわち、{{仮リンク|晶質液|en|crystalloids|redirect=1}}と[[膠質液]]である。晶質液は、[[ミネラル]]やその他の水溶性分子の[[水溶液]]である。膠質液は[[ゼラチン]]のような大きな不溶性分子を含む。血液そのものは膠質液と考えられている<ref name="CCRP2020">{{Cite journal |last1=Noonpradej |first1=Seechad |last2=Akaraborworn |first2=Osaree | name-list-style=vanc |title=Intravenous Fluid of Choice in Major Abdominal Surgery: A Systematic Review |journal=Critical Care Research and Practice |date=3 August 2020 |volume=2020 |pages=1–19 |doi=10.1155/2020/2170828|pmid=32832150 |pmc=7421038 |doi-access=free }}</ref>。 |
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最も一般的に使用される晶質液は、0.9%濃度の[[塩化ナトリウム]]溶液である[[生理食塩水]]で、血液と{{仮リンク|等張|en|Isotonicity|redirect=1}}である。[[乳酸リンゲル液]]および近縁の[[酢酸リンゲル液]]は、軽度の{{仮リンク|低張|en|hypotonic|redirect=1}}液で、重度の[[熱傷]]を負った患者にしばしば使用される。膠質液は血液中の[[膠質浸透圧]]を高く保つが、晶質液では血液希釈のために膠質浸透圧が低下する<ref name="gregory">{{Cite web |last1=Martin |first1=Gregory S. | name-list-style=vanc |title=An Update on Intravenous Fluids |url=http://www.medscape.com/viewarticle/503138 |website=Medscape |publisher=WebMD |access-date=25 August 2020}}</ref>。晶質液は膠質液よりも一般的にかなり安価である<ref name="gregory" />。 |
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=== 注射針・カテーテル === |
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; 翼状針 |
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: 一時的かつ短時間の点滴静注には'''翼状針'''(翼付静脈針)が用いられる。注射針の両脇に体表に固定しやすくするための翼([[ポリ塩化ビニル]]製)が付いている。容器・点滴ライン・翼状針を全て組み立てて中に薬液を通してから針を刺す。 |
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; 留置針 |
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: 持続的に点滴静注を行う場合には、'''留置針'''(金属製の注射針に[[テフロン]]ないし[[ポリウレタン]]製の柔らかい外筒を付けたもので、血管に刺入後に金属の針を抜くと外筒のみが留置される)を用い、これを留置した後で容器+点滴ラインを接続する。点滴静注終了後に留置針を残す場合は、閉塞を防ぐために[[ヘパリン]]([[抗凝固薬]])希釈液で点滴ルートを満たす[[ヘパリンロック]]が行われている。また、ヘパリンの代わりに生理食塩液で満たす[[生食ロック]]も汎用されている。 |
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; 中心静脈カテーテル |
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: 中心静脈から点滴静注を行う場合は、専用のカテーテルを留置する。'''中心静脈カテーテル'''は長さ30 - 70 cm程度の細い管で、静脈内に持続的に留置するため表面がコーティングされている。複数の内腔をもつカテーテルもあり(ダブルルーメンカテーテルなど)、混注不可能な薬剤を同時に投与するために用いられる。また皮下埋込式リザーバを用いるとカテーテル一式を完全に体内に埋め込むことが可能で、外来[[化学療法]]などに利用されている。 |
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{{仮リンク|アシドーシス|en|acidosis|redirect=1}}または{{仮リンク|アルカローシス|en|alkalosis|redirect=1}}を是正するために使用される[[緩衝液]]も、静脈内投与される。{{仮リンク|血漿増量剤|en|volume expander|redirect=1}}または薬剤が添加される基本輸液として使用される[[乳酸リンゲル液]]には、ある程度の緩衝作用がある。緩衝液として静脈内投与される溶液には、他に{{仮リンク|炭酸水素ナトリウム注射液|en|intravenous sodium bicarbonate|redirect=1}}がある<ref>{{Cite journal |last1=Fujii |first1=Tomoko |last2=Udy |first2=Andrew |last3=Licari |first3=Elisa |last4=Romero |first4=Lorena |last5=Bellomo |first5=Rinaldo | name-list-style=vanc |title=Sodium bicarbonate therapy for critically ill patients with metabolic acidosis: A scoping and a systematic review |journal=Journal of Critical Care |date=June 2019 |volume=51 |pages=184–191 |doi=10.1016/j.jcrc.2019.02.027|pmid=30852347 |s2cid=73725286 }}</ref>。 |
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== 静脈路 == |
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留置針やカテーテルによって確保された静脈内への薬剤投与経路を、静脈路(静脈ルート)という。静脈路は即効性を期待する投与経路として重要だが、[[血圧]]の急に下がるような緊急時にはむしろ確保が難しくなる(末梢の静脈が虚脱するため)。そのため、ルートが[[血栓]]で閉塞しないことだけを目的に少量の輸液を持続して行ったり、ヘパリンロックを行う場合もある。 |
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==== 薬物療法と治療 ==== |
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[[ファイル:Glass IV.jpg|right|thumb|2つの点滴バ<nowiki/>ッグ(それぞれ[[ブドウ糖]]溶液<nowiki/>と抗生剤の[[レボフロキサシン]]が入っている)と点滴棒に吊るされた紙の記録用紙の写真|alt=Photograph of two intravenous solution bags (containing glucose and levofloxacin, respectively) and a paper log sheet hanging from a pole.]] |
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腕や脚などの皮下を走る[[静脈]]に留置するルート。手軽に確保できるため頻用されるが、[[浸透圧]]の高い輸液を行うと血管炎を起こしてしまうため、高カロリー輸液には適さない(末梢静脈路から投与できる[[ブドウ糖]]液の濃度は、高浸透圧による血管障害のため10%程度が上限とされている)。末梢静脈から行う栄養はPPN(Peripheral Parenteral Nutrition)と呼ばれる。 |
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医薬品は一般的に生理食塩水やブドウ糖溶液に混和されて投与されることもある<ref name="Flynn2007" />('''混注'''と呼ばれる)。 |
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=== 中心静脈路 === |
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[[上大静脈]]または[[下大静脈]]に留置するルート。これらは体内で最も太く血液量が多い静脈であり、中心静脈 (central vein; CV) と称される。高濃度の薬剤を投与することが可能であり、また血管外への逸脱を起こしにくく確実性の高い投与経路である。その特長を生かして[[高カロリー輸液]] (TPN:Total Parenteral Nutrition) や、血管炎をきたしやすい薬剤(一部の[[抗がん剤]]など)の投与に用いられる。またカテーテルを通して中心静脈の血圧(中心静脈圧)を測定することが可能であり、[[体液]]量の増減や鬱血性[[心不全]]の程度を把握するのに役立つ。 |
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{{仮リンク|経口投与|en|Oral administration|label=経口薬|redirect=1}}など他の投与経路と比較すると、静脈内投与経路は輸液や薬液を全身に最も速く送達する方法である<ref>{{Cite web |title=What is an IV Vitamin Therapy? A Complete Guide by Nepenthe |url=https://www.nepenthewellness.com/complete-guide-to-iv-vitamin-therapy/ |access-date=2022-09-02 |language=en-US}}</ref>。極度の高血圧([[高血圧緊急症]]と呼ばれる)では、臓器障害を防ぐために血圧をコントロールしながら速やかに低下させるために、[[降圧剤]]の静脈内投与が行われることがある<ref name="JEM2012">{{Cite journal |last1=Peacock |first1=W. Frank |last2=Hilleman |first2=Daniel E. |last3=Levy |first3=Phillip D. |last4=Rhoney |first4=Denise H. |last5=Varon |first5=Joseph |name-list-style=vanc |title=A systematic review of nicardipine vs labetalol for the management of hypertensive crises |journal=The American Journal of Emergency Medicine |date=July 2012 |volume=30 |issue=6 |pages=981–993 |doi=10.1016/j.ajem.2011.06.040|pmid=21908132 }}</ref>。[[心房細動]]では、正常な心臓のリズムを回復させるために[[アミオダロン]]の静脈内投与が行われることがある<ref>{{Cite journal |last1=Vardas |first1=Panos E. |last2=Kochiadakis |first2=George E. |name-list-style=vanc |title=Amiodarone for the Restoration of Sinus Rhythm in Patients with Atrial Fibrillation |journal=Cardiac Electrophysiology Review |date=September 2003 |volume=7 |issue=3 |pages=297–299 |doi=10.1023/B:CEPR.0000012400.34597.00|pmid=14739732 }}</ref>。[[バンコマイシン]]のように、血液中の薬物濃度をより迅速に高めるために、投与[[レジメン]]を開始する前に薬の[[ローディング]]用量または[[ボーラス投与|ボーラス]]用量を投与する場合もある<ref>{{Cite journal |last1=Álvarez |first1=Rocío |last2=López Cortés |first2=Luis E. |last3=Molina |first3=José |last4=Cisneros |first4=José M. |last5=Pachón |first5=Jerónimo |name-list-style=vanc |title=Optimizing the Clinical Use of Vancomycin |journal=Antimicrobial Agents and Chemotherapy |date=May 2016 |volume=60 |issue=5 |pages=2601–2609 |doi=10.1128/AAC.03147-14|pmid=26856841 |pmc=4862470 |s2cid=9560849 }}</ref>。 |
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中心静脈カテーテルは[[大腿静脈]]、[[内頚静脈]]、[[鎖骨下静脈]]などから挿入し、中心静脈に留置される。手技はやや煩雑で、[[合併症]]の危険を伴う(後述)。また、中心静脈ルートが[[細菌]]等に感染した場合、致死的な[[敗血症]]の原因となることがある。[[正中静脈]]から挿入するキット(PICC; Peripherally inserted central catheter)も存在する。 |
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薬物が十分に吸収されなかったり、血流に入る前に代謝されたりする可能性がある経口投与とは異なり、静脈内投与の[[バイオアベイラビリティ]]は定義上100%である<ref name="Flynn2007">{{Cite book | last=Flynn | first=Edward | name-list-style=vanc | title=xPharm: The Comprehensive Pharmacology Reference | chapter=Pharmacokinetic Parameters | publisher=Elsevier | year=2007 | isbn=978-0-08-055232-3 | doi=10.1016/b978-008055232-3.60034-0 | pages=1–3}}</ref>。薬によっては、経口バイオアベイラビリティがほとんどないものもある。このため、ある種の薬剤は静脈内投与でしか投与できない。他の[[投与経路]]では十分な吸収が得られないからである<ref name="BCcampus">{{Cite book |last1=Doyle |first1=GR |last2=McCutcheon |first2=JA |title=Clinical Procedures for Safer Patient Care |date=13 November 2015 |publisher=BCcampus |location=Victoria, BC |url=https://opentextbc.ca/clinicalskills/chapter/6-9-iv-main-and-mini-bag-medications/ |chapter=7.5}}</ref>。例えば、重度の[[脱水 (医療)|脱水症]]の場合、早期回復のために静脈内投与による治療が必要となる<ref>{{Cite web |last=C |first=Dr |date=2022-08-24 |title=Intravenous Rehydration: Risks, Benefits, And Uses |url=https://www.medsnews.com/health/intravenous-rehydration-risks-benefits-and-uses/ |access-date=2022-08-24 |website=Meds News – Health & Medicine Information |language=en}}</ref>。[[フロセミド]]のように、経口薬のバイオアベイラビリティが人によって予測できないことも、静脈内投与が必要な理由である<ref>{{Cite journal |last1=Boles Ponto |first1=Laura L. |last2=Schoenwald |first2=Ronald D. |name-list-style=vanc |title=Furosemide (Frusemide) A Pharmacokinetic/Pharmacodynamic Review (Part I) |journal=Clinical Pharmacokinetics |date=1 May 1990 |volume=18 |issue=5 |pages=381–408 |doi=10.2165/00003088-199018050-00004|pmid=2185908 |s2cid=32352501 }}</ref>。また、吐き気や嘔吐がある場合、下痢がひどい場合などは、薬が消化管から十分に吸収されない可能性があるため、経口薬はあまり好ましくない。このような場合、患者が経口剤に耐えられるようになるまで、静脈内投与のみを行うことがある。静脈内投与から経口投与への切り替えは、一般的に静脈内投与よりも費用と時間の節約になるため、通常は可能な限り早く行われる。薬剤を経口剤に変更できる可能性があるかどうかは、病院内で使用する適切な抗生物質療法を選択する際に考慮されることがある。点滴治療が必要な場合は、退院できる可能性は低いからである<ref>{{Cite journal |last1=Wetzstein |first1=GA |name-list-style=vanc |title=Intravenous to oral (iv:po) anti-infective conversion therapy. |journal=Cancer Control |date=March 2000 |volume=7 |issue=2 |pages=170–6 |doi=10.1177/107327480000700211 |pmid=10783821|doi-access=free }}</ref>。 |
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== 合併症 == |
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=== 共通 === |
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; カテーテル感染 |
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: 共通して抱えているのが[[感染]]である。薬剤の調製や注入の際に混入した病原体が、プラスティックのルートに付着し繁殖する。末梢静脈では[[静脈炎]]が、中心静脈ではカテーテル熱と呼ばれる断続的な高熱が出現する。感染が疑われる場合には速やかにカテーテルを抜去する。ヘパリンロックに使う希釈液を病棟でまとめて調製し、使用都度ごとに注射器に取る使用法において、希釈液の汚染によりカテーテル感染が起こるとの報告がある。 |
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[[アプレピタント]]など一部の薬剤は、静脈内投与に適した形に化学的に修飾され、[[ホスアプレピタント]]などの[[プロドラッグ]]となっている。これは薬物動態学的な理由や、活性型に代謝されるまで薬効を遅らせるためである<ref>{{Cite journal |last1=Patel |first1=P |last2=Leeder |first2=JS |last3=Piquette-Miller |first3=M |last4=Dupuis |first4=LL |name-list-style=vanc |title=Aprepitant and fosaprepitant drug interactions: a systematic review. |journal=British Journal of Clinical Pharmacology |date=October 2017 |volume=83 |issue=10 |pages=2148–2162 |doi=10.1111/bcp.13322 |pmid=28470980|pmc=5595939 }}</ref>。 |
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;電解質異常 |
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:輸液製剤の選択や、点滴量の決定への誤りの結果、不適切な輸液製剤の選択、および量の計算の誤り、そもそも点滴を要しないにもかかわらず、過量の点滴を行ったことにより生じる。 |
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====血液製剤==== |
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{{Main|血液製剤|輸血|代替血液}} |
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; 静脈炎 |
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[[血液製剤]]とは、輸血に使用するために[[供血者]]から採取される血液のあらゆる成分のことである<ref>{{Cite web|url=https://www.nhlbi.nih.gov/health-topics/blood-transfusion|title=Blood Transfusion {{!}} National Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI)|website=www.nhlbi.nih.gov|access-date=2019-06-16}}</ref>。輸血は、外傷による大量出血の際に使用されたり、手術中に失われた血液を補うために使用されたりする。輸血は、血液疾患による重度の貧血や血小板減少症の治療にも用いられる。初期の輸血は[[全血]]から成っていたが、現代の医療では、一般的に、{{仮リンク|赤血球濃厚液|en|packed red blood cells|redirect=1}}、{{仮リンク|新鮮凍結血漿|en|fresh frozen plasma|redirect=1}}または{{仮リンク|クリオプレピシテート|en|cryoprecipitate|redirect=1}}などの成分輸血のみが使用される<ref>{{Cite journal |last1=Avery |first1=Pascale |last2=Morton |first2=Sarah |last3=Tucker |first3=Harriet |last4=Green |first4=Laura |last5=Weaver |first5=Anne |last6=Davenport |first6=Ross | name-list-style=vanc |title=Whole blood transfusion versus component therapy in adult trauma patients with acute major haemorrhage |journal=Emergency Medicine Journal |date=June 2020 |volume=37 |issue=6 |pages=370–378 |doi=10.1136/emermed-2019-209040|pmid=32376677 |s2cid=218532376 |url=https://qmro.qmul.ac.uk/xmlui/handle/123456789/64119 |doi-access=free }}</ref>。 |
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: 末梢静脈では高浸透圧の濃い[[輸液]]などで血管痛が生じ、ひいては[[血管炎]]に至る。 |
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; 血管外漏出 |
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: 血管への穿刺が不確実な場合や血管壁が脆弱な場合、薬液が血管外に漏れるいわゆる「点滴漏れ」が起こる。穿刺部周囲に[[浮腫]]を生じ、痛みを伴う。組織障害性の強い[[造影剤]]や[[化学療法]]剤が漏出した場合は[[壊死]]を起こす事もある。 |
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=== |
====栄養==== |
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{{Main|高カロリー輸液}} |
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; 誤穿刺 |
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[[ファイル:Patient lying in hospital bed in intensive care unit in Germany in 2015.jpg|thumb|このドイツの病院の[[集中治療室]]の患者は、以前に腹部の外科手術を受け、[[敗血症性ショック|重度の敗血症]]を合併したため、食事ができなかった。[[抗生物質]]、[[高カロリー輸液|中心静脈栄養]]、[[鎮痛剤]]を[[シリンジポンプ]](背景右側)による持続注射された。]] |
|||
: カテーテルを挿入する際に体腔に誤穿刺する。鎖骨下静脈の穿刺では[[気胸]]を生じることがある。誤挿入したまま薬液を注入して、[[胸腔]]や[[腹腔]]・[[後腹膜]]腔に薬液貯留をきたす事もある。[[動脈]]を誤穿刺したあと[[血腫]]を生じ[[気管]]や[[食道]]を圧迫して[[呼吸困難]]になることもある。通常は入れないが右房までカテーテルを挿入しカテ先が貫いて[[心タンポナーデ]]になったり、[[洞結節]]などを刺激して[[不整脈]]を生じる事もある。どんなに上手な人がやっても一定の確率で合併症は起こり得る。 |
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[[高カロリー輸液|静脈栄養]]とは、必要な栄養素を静脈ラインから投与することである。これは、[[食事]]や[[消化]]によって栄養を摂取することができない人に行われる。静脈栄養を受けている人には、[[塩類]]、[[ブドウ糖]]、[[アミノ酸]]、[[脂質]]、[[ビタミン]]などを含む[[高カロリー輸液|静脈栄養剤]]が投与される。使用される静脈栄養剤の正確な処方は、投与される人の特定の栄養ニーズによって異なる。栄養を静脈内にのみ投与する場合は、完全静脈栄養({{Lang-en-short|Total Parenteral Nutrition: TPN}})と呼ばれ、栄養の一部のみを静脈内に投与する場合は、部分静脈栄養法({{Lang-en-short|Partial Parenteral Nutrition: PPN}})または補完的静脈栄養法({{Lang-en-short|Supplemental Parenteral Nutrition: SPN}})と呼ばれる<ref>{{Cite book |last1=Halter |first1=Jeffrey B. |last2=Ouslander |first2=Joseph G. |last3=Studenski |first3=Stephanie |last4=High |first4=Kevin P. |last5=Asthana |first5=Sanjay |last6=Supiano |first6=Mark A. |last7=Ritchie |first7=Christine | display-authors=6 | name-list-style=vanc |editor1-last=Edmonson |editor1-first=Karen G. |editor2-last=Davis |editor2-first=Kim J. |title=Hazzard's geriatric medicine and gerontology |publisher=McGraw Hill |location=New York |isbn=978-0-07-183345-5 |edition=Seventh |chapter=Chapter 35|date=23 December 2016 }}</ref>。 |
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; カテーテル切断 |
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: カテーテルを引き千切った場合、カテーテルが心臓やその他の血管内に閉塞してしまう事があり、[[手術]]や[[血管内治療]]で取り出す必要がある。中心静脈圧は正常で10 cm水柱圧あるので、また[[サイフォン|サイフォンの原理]]もあり、カテーテルの切断部から[[失血]]する事故も報告されている。 |
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====画像診断==== |
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{{Main|造影剤}} |
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医用画像診断は、体内の部位を互いに明確に区別できることに依存している。これを実現する方法の1つが、静脈への[[造影剤]]の投与である<ref>{{Cite journal |last1=Runge |first1=VM |last2=Ai |first2=T |last3=Hao |first3=D |last4=Hu |first4=X |name-list-style=vanc |title=The developmental history of the gadolinium chelates as intravenous contrast media for magnetic resonance. |journal=Investigative Radiology |date=December 2011 |volume=46 |issue=12 |pages=807–16 |doi=10.1097/RLI.0b013e318237913b |pmid=22094366|s2cid=8425664 }}</ref>。採用する特定の画像診断技術によって、血管やその他の構造物をより鮮明に映し出すための適切な造影剤の特性が決定される。一般的な造影剤は末梢静脈に投与され、そこから循環系全体に分布して撮影部位に到達する<ref>{{Cite journal |last1=Rawson |first1=JV |last2=Pelletier |first2=AL |title=When to Order a Contrast-Enhanced CT. |journal=American Family Physician |date=1 September 2013 |volume=88 |issue=5 |pages=312–6 |pmid=24010394}}</ref>。 |
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===他の用途=== |
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====スポーツ==== |
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点滴による水分補給は、以前は[[アスリート]]にとって一般的な手法だった<ref name="usada"/>。[[世界アンチ・ドーピング機構]]は、医学的免除がある場合を除き、12時間あたり100mLを超える[[静脈内注射]]を禁止している<ref name="usada"/>。{{仮リンク|アメリカアンチドーピング機構|en|United States Anti-Doping Agency|redirect=1}}は、静脈注射療法が内在する危険性だけではなく、「静脈注射は、[[血液検査]]の結果([[エリスロポエチン]]注射や{{仮リンク|血液ドーピング|en|blood doping|redirect=1}}が行われている場合の[[ヘマトクリット値]]など)を変えたり、アンチ・ドーピング検査をくぐり抜けるために禁止物質を体内からより速やかに排出されるように、[[尿検査]]の結果を(希釈によって)誤魔化したりする目的で行われる可能性がある」と指摘している<ref name="usada">{{Cite web |title=IV Infusion: Explanatory Note |url=https://www.usada.org/iv-infusions-explanatory-note/ |website=U.S. Anti-Doping Agency (USADA) |access-date=24 July 2018 |date=5 January 2018}}</ref>。この種の治療を提供する「ブティック静注クリニック」に通って出場停止処分を受けた選手には、2017年のサッカー選手[[サミル・ナスリ]]<ref>{{Cite news |author1=Press Association |title=Samir Nasri's doping ban extended from six to 18 months after appeal by Uefa |url=https://www.theguardian.com/football/2018/aug/01/samir-nasri-doping-ban-extended-18-months |access-date=2 August 2018 |work=The Guardian |date=1 August 2018 |language=en}}</ref>、2018年の水泳選手[[ライアン・ロクテ]]がいる<ref>{{Cite magazine2 |last1=Caron |first1=Emily | name-list-style = vanc |title=Ryan Lochte suspended 14 months for anti-doping violation |magazine=[[スポーツ・イラストレイテッド|Sports Illustrated]] |date=23 July 2018 |url=https://www.si.com/olympics/2018/07/23/ryan-lochte-suspended-anti-doping-rule-violation-iv-infusion-photo |access-date=24 July 2018 |language=en}}</ref>。 |
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====二日酔い治療==== |
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1960年代、米国[[メリーランド州]]の医師ジョン・マイヤーズは「[[マイヤーズカクテル]]」を開発した<ref>{{Cite web |title=マイヤーズカクテル(ビタミン・ミネラル点滴) {{!}} 点滴療法研究会 |url=https://www.iv-therapy.org/medical/info05/ |access-date=2023-10-03 |language=ja}}</ref>。これはビタミンとミネラルを配合した非処方箋の点滴で、{{仮リンク|二日酔いの薬|en|hangover cure|redirect=1}}や[[滋養強壮|滋養強壮薬]]として販売されていた<ref name="Hess2014"/>。同様の治療を提供する初の「静注ブティック」クリニックが2008年に東京に開業した<ref name="Hess2014"/>。このようなクリニックは、[[ELLE (雑誌)]]にその顧客が「裏の顔は大酒飲みの健康オタク」と評され、2010年代には華やかな[[セレブリティ|セレブ]]の顧客によって宣伝されている<ref name="Hess2014">{{Cite web |last1=Hess |first1=Amanda | name-list-style = vanc |title=The Party Girl Drip |url=https://www.elle.com/beauty/health-fitness/advice/a14177/iv-therapy-boutiques/ |website=Elle |access-date=24 July 2018 |date=23 April 2014}}</ref>。点滴療法はまた、[[急性アルコール中毒]]の人々に、アルコール摂取によって生じる電解質とビタミンの欠乏を是正するために使用されている<ref>{{Cite journal |last1=Flannery |first1=Alexander H. |last2=Adkins |first2=David A. |last3=Cook |first3=Aaron M. | name-list-style=vanc |title=Unpeeling the Evidence for the Banana Bag: Evidence-Based Recommendations for the Management of Alcohol-Associated Vitamin and Electrolyte Deficiencies in the ICU |journal=Critical Care Medicine |date=August 2016 |volume=44 |issue=8 |pages=1545–1552 |doi=10.1097/CCM.0000000000001659|pmid=27002274 |s2cid=22431890 }}</ref>。これらの輸液は黄色なので{{仮リンク|バナナバッグ|en|Banana bag|redirect=1}}と呼ばれることもある<ref name="PPMHP">{{cite book |title=Principles of Psychopharmacology for Mental Health Professionals |author1=Jeffrey E Kelsey |author2=D Jeffrey Newport |author3=Charles B Nemeroff |name-list-style=amp |chapter=Alcohol Use Disorders |pages=196–197 |publisher=Wiley-Interscience |year=2006 |isbn=978-0-471-79462-2}}</ref>。これらの「カクテル」には医学的に何らかの予防または治療効果を示す[[エビデンス (医学)|エビデンス]]がほとんどない<ref>{{Cite web |title=A closer look at vitamin injections {{!}} Science-Based Medicine |url=https://sciencebasedmedicine.org/a-closer-look-at-vitamin-injections/ |website=sciencebasedmedicine.org |date=2013-05-24 |access-date=2023-10-03 |language=en-US}}</ref>。 |
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====その他==== |
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一部の国では、非処方のブドウ糖の静脈内投与が、滋養強壮目的で行われているが、ブドウ糖溶液が処方薬である米国などでは、日常的な医療の一部ではない<ref name=NYT />。店頭の診療所で密かに行われているような不適切な静脈内ブドウ糖投与(「リンゲル」{{Efn|実際の[[リンゲル液]]とは組成が全く異なる。}}と呼ばれる)は、不適切な手技とミスによりリスクが高まる<ref name=NYT>{{Cite news|author1=Jiha Ham|title=A Life Upended After an IV Glucose Treatment Popular Among Asian Immigrants|url=https://www.nytimes.com/2015/03/21/nyregion/despite-warnings-asian-immigrants-rely-on-glucose-injections-as-a-cure-for-ailments.html|access-date=March 21, 2015|work=The New York Times|date=March 20, 2015|quote=Although many doctors warn Asian immigrants in New York that the effects of injecting glucose differ little from drinking sugary water, many Asians, especially of older generations, still use the intravenous solution. In their homelands, it is commonly prescribed by doctors as a method to cure colds, fevers and sometimes an upset stomach.}}</ref>。[[静脈路]]はまた、[[ヘロイン]]や[[フェンタニル]]、[[コカイン]]、[[メタンフェタミン]]、[[ジメチルトリプタミン]]などの[[レクリエーショナルドラッグ]]の自己投与のために、医療機関外で使用されることがある<ref>{{Cite journal |last1=Han |first1=Y |last2=Yan |first2=W |last3=Zheng |first3=Y |last4=Khan |first4=MZ |last5=Yuan |first5=K |last6=Lu |first6=L | name-list-style=vanc |title=The rising crisis of illicit fentanyl use, overdose, and potential therapeutic strategies. |journal=Translational Psychiatry |date=11 November 2019 |volume=9 |issue=1 |pages=282 |doi=10.1038/s41398-019-0625-0 |pmid=31712552|pmc=6848196 |doi-access=free }}</ref>。 |
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点滴静脈注射は、[[獣医学]]領域でも行われる<ref name=Fluid-Therapy>{{Cite book|first5=Anda|first4=Jiwoong|first3=Page|first2=Julien|first1=Edward|last5=Young|last4=Her|last3=Yaxley|last2=Guillaumin|last1=Cooper|title=Small Animal Fluid Therapy|year=2022 |isbn=978-1-78924-338-3|id={{ISBN2|978-1-78924-339-0}}. {{ISBN2|978-1-78924-340-6}}|url=https://www.cabidigitallibrary.org/doi/10.1079/9781789243406.0000|publisher={{仮リンク|Centre for Agriculture and Bioscience International|en|Centre for Agriculture and Bioscience International|label=CABI}} (Centre for Agriculture and Bioscience International)|doi=10.1079/9781789243406.0000 |s2cid=251612116 }}</ref>。 |
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==投与方法の種類== |
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===ボーラス=== |
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{{Main|ボーラス投与}} |
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一部の薬剤は[[ボーラス投与|ボーラス]]投与が可能で、これは「ワンショット」とも呼ばれる<ref>{{Cite web |title=静脈注射【ナース専科】 |url=https://medical-term.nurse-senka.jp/terms/1412 |website=ナース専科 |access-date=2023-10-03 |last=SMS}}</ref>。薬剤を入れたシリンジを点滴回路の三方活栓に接続し、薬剤を投与する<ref name="CCM2010">{{Cite journal|last1=Kanji|first1=Salmaan|last2=Lam|first2=Jason|last3=Johanson|first3=Christel|last4=Singh|first4=Avinder|last5=Goddard|first5=Rob|last6=Fairbairn|first6=Jennifer|last7=Lloyd|first7=Tammy|last8=Monsour|first8=Danny|last9=Kakal|first9=Juzer|date=September 2010|title=Systematic review of physical and chemical compatibility of commonly used medications administered by continuous infusion in intensive care units|journal=Critical Care Medicine|volume=38|issue=9|pages=1890–1898|doi=10.1097/CCM.0b013e3181e8adcc|pmid=20562698|display-authors=6|name-list-style=vanc|s2cid=205539703}}</ref>。ボーラスは、急速に投与することもあれば(注射器の[[注射桿]]を素早く押し込む)、数分かけてゆっくりと投与することもある<ref name=CCM2010 />。正確な投与手技は、薬剤やその他の要因によって異なる<ref name=CCM2010 />。場合によっては、ボーラスの直後に「プレーン」の輸液(すなわち、薬剤を添加していない輸液)を投与して、薬剤をさらに点滴の中で推し進めて血流に送り込む。この処置は「[[フラッシュ]]」と呼ばれる{{Efn|例: [[心肺蘇生]]時の[[アドレナリン]]投与直後の[[生理食塩水]]ボーラス投与}}。フラッシュに生理食塩水を用いる場合は{{仮リンク|生食フラッシュ|en|Saline flush|redirect=1}}と呼ばれる<ref>{{Cite journal|author=大森 智史|year=2023|title=薬語図鑑-基礎薬学用語を現場で使える知識に訳してみました 第2部 臨床現場で見聞きする用語編 71 フラッシュ・ロック -フラッシュやロックに用いるのは生食? ヘパリン?|url=https://webview.isho.jp/journal/detail/pdf/10.15104/ph.2023040129|journal=薬局|volume=74|page=268|doi=10.15104/ph.2023040129}}</ref>。[[塩化カリウム]]など一部の薬剤は、血中濃度の急上昇に伴う毒性が高いため、ボーラスでは投与できない<ref name="CCM2010" />。 |
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===持続投与=== |
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点滴は、[[βラクタム系]]を含む一部の[[抗生物質]]のように、薬剤の血中濃度を長期にわたって一定に保つことが望ましい場合に行われることがある<ref name="Dhaese" />。血中薬物濃度の変動(すなわち、[[ピーク値|ピーク薬物濃度]]と[[トラフ値|トラフ薬物濃度]]の変動)を抑制するために、前の輸液が終了した直後に次の輸液を開始する持続投与が行われることもある<ref name="Dhaese">{{Cite journal |last1=Dhaese |first1=Sofie |last2=Heffernan |first2=Aaron |last3=Liu |first3=David |last4=Abdul-Aziz |first4=Mohd Hafiz |last5=Stove |first5=Veronique |last6=Tam |first6=Vincent H. |last7=Lipman |first7=Jeffrey |last8=Roberts |first8=Jason A. |last9=De Waele |first9=Jan J. | display-authors=6 | name-list-style=vanc |title=Prolonged Versus Intermittent Infusion of β-Lactam Antibiotics: A Systematic Review and Meta-Regression of Bacterial Killing in Preclinical Infection Models |journal=Clinical Pharmacokinetics |date=25 July 2020 |volume=59 |issue=10 |pages=1237–1250 |doi=10.1007/s40262-020-00919-6|pmid=32710435 |s2cid=220732187 }}</ref>。また、[[フロセミド]]のように、同じ理由で間欠的なボーラス注射の代わりに持続投与が行われることもある<ref>{{Cite journal |last1=Chan |first1=Jeffrey Shi Kai |last2=Kot |first2=Thompson KA Ming |last3=Ng |first3=Marcus |last4=Harky |first4=Amer | name-list-style=vanc |title=Continuous Infusion Versus Intermittent Boluses of Furosemide in Acute Heart Failure: A Systematic Review and Meta-Analysis |journal=Journal of Cardiac Failure |date=November 2019 |volume=26 |issue=9 |pages=786–793 |doi=10.1016/j.cardfail.2019.11.013|pmid=31730917 |s2cid=208063606 }}</ref>。間欠的、すなわち一定時間おきの点滴は、(持続点滴で一般的なように)長時間の薬液の安定性に懸念がある場合や、[[バンコマイシン]]など、同じ静脈ラインで同時に投与すると配合禁忌のある医薬品を投与できるようにする場合に行われることがある<ref name="EJDMP2018">{{Cite journal |last1=Elbarbry |first1=Fawzy | name-list-style=vanc |title=Vancomycin Dosing and Monitoring: Critical Evaluation of the Current Practice |journal=European Journal of Drug Metabolism and Pharmacokinetics |date=June 2018 |volume=43 |issue=3 |pages=259–268 |doi=10.1007/s13318-017-0456-4|pmid=29260505 |s2cid=13071392 }}</ref> |
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輸液を適切に計算して投与しないと、急性輸液反応<ref>{{Cite web |title=急性輸液反応:バイオキーワード集|実験医学online:羊土社 |url=https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/2103.html |website=www.yodosha.co.jp |access-date=2023-10-03}}</ref>と呼ばれる副作用が生じることがある。このため、バンコマイシン<ref name=EJDMP2018 />や[[モノクローナル抗体]]など、多くの薬剤には推奨最大注入速度が設定されている<ref>{{Cite journal |last1=Bylsma |first1=Lauren C. |last2=Dean |first2=Rebecca |last3=Lowe |first3=Kimberly |last4=Sangaré |first4=Laura |last5=Alexander |first5=Dominik D. |last6=Fryzek |first6=Jon P. | name-list-style=vanc |title=The incidence of infusion reactions associated with monoclonal antibody drugs targeting the epidermal growth factor receptor in metastatic colorectal cancer patients: A systematic literature review and meta‐analysis of patient and study characteristics |journal=Cancer Medicine |date=September 2019 |volume=8 |issue=12 |pages=5800–5809 |doi=10.1002/cam4.2413|pmid=31376243 |pmc=6745824 |doi-access=free }}</ref>。これらの注入時の反応は、バンコマイシンの「[[レッドマン症候群]]」のように、重篤なものとなることがある<ref name=EJDMP2018 />。 |
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===側管=== |
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輸液と同時に静脈内投与する追加の薬剤は、点滴キットに三方活栓から接続することができる。これは'''側管'''と呼ばれる<ref>{{Cite web |url=https://www.pmda.go.jp/files/000209346.pdf |title=三方活栓の取扱い時の注意について |access-date=2023-10-03 |publisher=医薬品医療機器総合機構}}</ref>。側管から点滴を行う場合、主管の輸液が側管に流れ込むのではなく、側管の輸液が主管に流れ込むように、主管の輸液は側管より低い位置に保持される。主管の輸液は、側管の輸液をチューブから洗い流すために必要である<ref name="CCM2010" />。ボーラス輸液または側管の輸液を主管の輸液と同じラインで投与する場合は、溶液の配合の適合性を考慮する必要がある<ref name="CCM2010" />。この配合の適合性の問題は「'''配合変化'''」と呼ばれ<ref>{{Cite web |title=注射薬における配合変化の影響 {{!}} 2020年 {{!}} 記事一覧 {{!}} 医学界新聞 {{!}} 医学書院 |url=https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2020/PA03397_05 |website=www.igaku-shoin.co.jp |access-date=2023-10-03 |language=ja}}</ref>、配合を回避すべき場合は「'''配合禁忌'''」と呼ばれる<ref>{{Cite web |title=配合禁忌(はいごうきんき)とは? 意味や使い方 |url=https://kotobank.jp/word/%E9%85%8D%E5%90%88%E7%A6%81%E5%BF%8C-598714 |website=コトバンク |access-date=2023-10-03 |language=ja |first=精選版 |last=日本国語大辞典,デジタル大辞泉,日本大百科全書(ニッポニカ),百科事典マイペディア,世界大百科事典内言及}}</ref>。配合禁忌は、分子安定性の問題、溶解度の変化、または一方の薬剤の分解によって生じる可能性がある<ref name="CCM2010" /> |
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==器材と方法== |
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=== 点滴セット === |
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[[ファイル:Infusion Set 01.jpg|サムネイル|点滴セット。輸液バッグに接続する針からカテーテルに接続する部分まで加工・滅菌済みの製品が用いられている。]] |
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点滴装置は、[[ガラス]][[瓶]]あるいは[[合成樹脂]]製バッグに無菌充填された薬液と、薬液ボトルに刺入される針と、[[合成樹脂|合成樹脂製]]のチューブ、[[末梢静脈カテーテル|留置針]]に接続するためのコネクタが一体となった、「点滴ライン」あるいは「点滴セット」より成る。点滴セットは感染を防ぐために滅菌済みであり、輸液や留置針に接続する際は、[[無菌操作]]が要求される<ref>{{Cite web |title=無菌操作を厳重に行うのはなぜ?|点滴静脈内注射 {{!}} 看護roo![カンゴルー] |url=https://www.kango-roo.com/learning/5456/ |website=看護roo! |date=2020-09-26 |access-date=2023-10-07}}</ref>。 |
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=== 三方活栓 === |
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点滴セットの途中からは他の薬剤を投与したり、別の点滴セットを接続するための開口部が存在するが、非使用時は切り替えバルブで開口部が閉鎖されるようになっている。この部分を'''三方活栓'''という。医療現場では略語の'''三活'''が用いられることもある<ref>{{Cite web |title=「側管からivするときの三活の向きは?」輸液管理に欠かせない三方活栓が一目でわかる!【看護師はやの勉強ノート】vol.13|レバウェル看護 お役立ち情報 |url=https://kango-oshigoto.jp/media/article/16817/ |website=レバウェル看護 お役立ち情報 |access-date=2023-05-22 |language=ja}}</ref>。さらに開口部に汚染防止のためのフタがついていることもあるが、フタと三方活栓との間隙が清掃困難であるために、むしろ汚染しやすいとされ<ref>{{Cite journal|author=近藤 真紀|year=2000|title=三方活栓の注入口が直接的な血流感染因子となるのかについての検討:高濃度の菌液注入後の三方活栓の培養実験結果からの考察|url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsei1986/15/4/15_4_316/_pdf/-char/ja|journal=環境感染|volume=15|pages=316-324}}</ref>、フタや三方活栓そのものが撤廃されて注入用のポートのみを有する点滴セットが主流となりつつある<ref>{{Cite web |title=中心静脈カテーテルの管理について知りたい。|レバウェル看護 技術Q&A(旧ハテナース) |url=https://kango-oshigoto.jp/hatenurse/article/944/ |website=看護師の技術Q&A |access-date=2023-10-07}}</ref>。 |
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===静脈アクセスの種類=== |
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[[ファイル:Intravenous_therapy_2007-SEP-13-Singapore.JPG|サムネイル|点滴チューブに接続された三方活栓。]] |
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{{Main|静脈路確保}} |
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==== 注射針 ==== |
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[[静脈路確保]]の最も単純な方法は、[[注射針]]を皮膚から直接[[静脈]]に刺す方法である。この針に注射器を直接接続することで、「[[ボーラス投与]]」、すなわち、薬剤の単回急速投与が可能になる。あるいは、[[末梢静脈カテーテル|カテーテルを留置]]してからチューブに接続し、点滴を行うこともできる{{Sfn|Kowalak|2009|pp=344-348}}。 静脈路の種類と場所(すなわち、[[中心静脈カテーテル|中心ライン]]か[[末梢静脈カテーテル|末梢ライン]]か、どの静脈にラインを留置するか)は、末梢静脈への循環を制限する末梢血管収縮を引き起こす薬剤であるかどうかによって影響を受ける<ref>{{Cite journal |last1=Raehl |first1=CL |name-list-style=vanc |title=Endotracheal drug therapy in cardiopulmonary resuscitation. |journal=Clinical Pharmacy |date=July 1986 |volume=5 |issue=7 |pages=572–9 |pmid=3527527}}</ref>。 |
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==== カテーテル・カニューレ ==== |
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[[ファイル:Intravenous_attempt.jpg|右|サムネイル|18ゲージ[[末梢静脈カテーテル]]を挿入する[[看護師]]。[[上腕]]は[[駆血帯]]で縛って静脈を浮き出させている。]] |
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金属製の針ではなく、合成樹脂製の柔らかい[[カテーテル]](又は{{仮リンク|カニューレ|en|cannula|redirect=1}}とも呼ばれる)も良く用いられる。[[末梢静脈カテーテル]]は、[[病院|病院内]]、[[病院前救護|プレホスピタルケア]]、および外来診療で利用される最も一般的な静脈アクセス法である{{Sfn|Kowalak|2009|pp=349-354 }}。カニューレは腕、一般的には手首または{{仮リンク|肘正中静脈|en|median cubital vein|redirect=1}}に留置する{{Sfn|Kowalak|2009|pp=349-354 }}。[[駆血帯]]は、手足の静脈からの血液流出を制限し、静脈を膨らませて、静脈の位置を確認しやすくし、静脈にラインを留置しやすくするために使用される{{Sfn|Kowalak|2009|pp=349-354 }}。駆血帯を使用する場合は、薬剤の注入前に駆血帯を外し、{{仮リンク|血管外漏出|en|Extravasation (intravenous)|redirect=1}}を防ぐ。カテーテルの皮膚の外側に残る部分は接続ハブと呼ばれ、[[注射器]]や点滴ラインと接続したり、ヘパリン添加生理食塩水または単なる生理食塩水で「'''ロック'''」される{{Sfn|Kowalak|2009|pp=349-354 }}。ロックとは、カテーテルを使用しない間に、カテーテル内での血液凝固によるカテーテル閉塞を防ぐために、上述の輸液をカテーテル内で陽圧充填した状態でカテーテルに「フタ」をしておくものである{{Sfn|Kowalak|2009|pp=349-354 }}。ポート付きカテーテルは上部に注入ポートがあり、しばしば薬剤の投与に使用される {{Sfn|Kowalak|2009|pp=349-354 }}。 |
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針とカテーテルの太さ、大きさの規格には、[[バーミンガムワイヤーゲージ|バーミンガム・ゲージ]]と[[フレンチ (医学)|フレンチ・ゲージ]]がある{{Sfn|Kowalak|2009|pp=188-191,349}}。バーミンガムゲージの14は相当太いカテーテル(心肺蘇生用)であり、24~26は最小である{{Sfn|Kowalak|2009|pp=188-191,349}}。最も一般的なサイズは、16ゲージ([[献血]]や[[輸血]]に使用される中型ライン)、18ゲージおよび20ゲージ(輸液や採血用の汎用ライン)、22ゲージ(小児用の汎用ライン)である{{Sfn|Kowalak|2009|pp=188-191,349}}。12~14ゲージの末梢ラインは、大量の輸液を迅速に行うことができるため、[[救急医療]]で人気がある{{Sfn|Kowalak|2009|pp=188-191,349}}。これらのラインは、しばしば「大径(large bore)」または「外傷ライン(trauma line)」と呼ばれる{{Sfn|Kowalak|2009|pp=188-191,349}}。 |
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[[ファイル:Injection 23.JPG|サムネイル|翼状針]] |
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==== 翼状針 ==== |
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'''翼状針'''(よくじょうしん)は注射針と薬液投与用のカテーテルが一体となったものである<ref name=":1">{{Cite web |title=翼状針 – 輸液製剤協議会 |url=https://www.yueki.com/faq/word40/index.html |website=www.yueki.com |access-date=2023-10-07}}</ref>。金属針を体内に留置するため、柔らかい末梢静脈カテーテルのように長時間の留置には不向きだが、短時間の処置に用いられている<ref name=":1" />。採血専用の製品もある<ref>{{Cite web |title=翼状針 |url=http://nikkenkyo.or.jp/shinjuku/first/yokuzyoushin |website=日本健康管理協会 |access-date=2023-10-07 |language=ja}}</ref>。 |
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====末梢ライン==== |
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[[ファイル:Pediatric patients receiving chemotherapy.jpg|thumb|left|小児では、手、足、または{{仮リンク|肘窩|en|antecubital fossa|redirect=1}}に[[静脈路確保]]を行う際に四肢を固定するためにアームボードを使用することが推奨される<ref>{{Cite book |title=Roberts and Hedges' Clinical Procedures in Emergency Medicine E-Book | first1 = James R. | last1 = Roberts | first2 = Jerris R. | last2 = Hedges | name-list-style = vanc |edition=6th |publisher=Elsevier Health Sciences |year=2013 |isbn=9781455748594 | url = https://books.google.com/books?id=slyLreFkHuIC&pg=PA349 | page = 349 }}</ref>。]] |
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{{Main|末梢静脈カテーテル}}末梢静脈カテーテルは、腕、手、足などの{{仮リンク|末梢血管系|en|Peripheral vascular system|label=末梢静脈|redirect=1}}に挿入する{{Sfn|Kowalak|2009|pp=344-348}}。この方法で投与された薬剤は、静脈を通って心臓に到達し、そこから循環系を通じて全身に行き渡る。末梢静脈の太さにより、安全に投与できる薬剤の量と速度が制限される<ref name="PICChist">{{Cite journal |last1=Rivera |first1=AM |last2=Strauss |first2=KW |last3=van Zundert |first3=A |last4=Mortier |first4=E | name-list-style=vanc |title=The history of peripheral intravenous catheters: how little plastic tubes revolutionized medicine. |journal=Acta Anaesthesiologica Belgica |date=2005 |volume=56 |issue=3 |pages=271–82 |pmid=16265830}}</ref>。末梢ラインは、皮膚から{{仮リンク|末梢静脈|en|peripheral vein|redirect=1}}に挿入される短い[[カテーテル]]で構成される{{Sfn|Kowalak|2009|pp=344-348}}。これは通常、金属製の{{仮リンク|トロカール|en|trocar|label=内針|redirect=1}}に柔軟なプラスチック製の{{仮リンク|カニューレ|en|cannula|label=外筒|redirect=1}}が被さった形状である{{Sfn|Kowalak|2009|pp=344-348}}。外筒と内針の先端を合わせたら、両者を静脈内の適切な位置まで進め、固定する。その後、内針を引き抜いて廃棄する{{Sfn|Kowalak|2009|pp=344-348}}。最初の外筒挿入後、そこから直接採血することもある{{Sfn|Kowalak|2009|pp=344-348}}。 |
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[[ファイル:Blausen 0181 Catheter CentralVenousAccessDevice NonTunneled.png|thumb|非トンネル型中心静脈カテーテルの図解|alt=Labelled computer-drawn illustration of parts of an inserted non-tunneled central intravenous line]] |
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====中心静脈ライン==== |
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{{Main|中心静脈カテーテル}} |
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中心静脈ラインは、カテーテルがより太い中枢側の静脈(胴体内の静脈)、通常は[[上大静脈]]、[[下大静脈]]、または心臓の[[右心房]]に挿入される[[静脈アクセス]]である<ref name="Marino's" />。中心静脈アクセスにはいくつかのタイプがあり、カテーテルが体外からいわゆる[[中心静脈]]に到達する経路に基づいて分類される<ref name="Marino's">{{Cite book|和書 |last1=Marino |first1=Paul L. |name-list-style=vanc |title=Marino's the ICU book |year=2014 |chapter=2. Central Venous Access |publisher=LWW |location=Philadelphia |isbn=978-1451121186 |edition=Fourth |pages=17-22 }}</ref>。 |
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==== PICCライン ==== |
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{{Main|{{仮リンク|末梢挿入型中心静脈カテーテル|en|Peripherally inserted central catheter|label=|redirect=1}}}} |
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{{仮リンク|末梢挿入型中心静脈カテーテル|en|Peripherally inserted central catheter|label=末梢挿入型中心静脈カテーテル(Peripherally inserted central catheter)|redirect=1}}(PICCライン、ピックラインとも呼ばれる)は、中心静脈カテーテルの一種であり、[[シース]]を通して末梢静脈に挿入されたカテーテルを心臓に向けて慎重に送り、上大静脈または右心房に末端を留置する<ref name="PICCbook">{{Cite book|和書 |editor1-last=Sandrucci |editor1-first=Sergio |editor2-last=Mussa |editor2-first=Baudolino |name-list-style=vanc |title=Peripherally inserted central venous catheters |date=5 July 2014 |publisher=Springer |location=Milan |isbn=978-88-470-5665-7 |chapter=Chapter 1,5,6}}</ref>。これらのラインは通常、腕の末梢静脈に留置され、[[超音波検査|超音波]]ガイド下で[[セルディンガー法]]を用いて留置されることもある<ref name="PICCbook" />。挿入時に透視を行わなかった場合は、カテーテルの先端が正しい位置にあることを確認するために[[X線撮影|X線検査]]が行われる<ref name="PICCbook" />。カテーテルの先端が正しい位置にあるかどうかを判断するために、[[心電図]]で判断する場合もある<ref name="PICCbook" />。 |
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====トンネル型カテーテル==== |
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[[ファイル:Hickman line catheter with 2 lumens.jpg|thumb|upright=0.7|トンネル型カテーテルの一種であるヒックマンカテーテルは、胸部の皮膚から挿入し、首の静脈([[内頸静脈|内頚静脈]])に挿入する。|alt=Photograph of an inserted Hickman line, which is a type of tunneled catheter, inserted in the chest.トンネル型カテーテルの一種であるヒックマンラインを胸部に挿入した写真。トンネル型カテーテルの一種であるヒックマンラインを胸部の皮膚から挿入し、トンネル状にして喉の頸静脈に挿入する。]] |
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トンネル型カテーテルは[[中心静脈カテーテル]]の一種で、皮膚の下に挿入されてから[[中心静脈]]に到達するまでにかなりの距離がある。トンネル型ラインを使用すると、皮膚表面の細菌が静脈内に直接移動できないため、他の[[静脈アクセス]]と比較して感染のリスクが低下する<ref>{{Cite journal |last1=Agarwal |first1=Anil K. |last2=Haddad |first2=Nabil |last3=Boubes |first3=Khaled |name-list-style=vanc |title=Avoiding problems in tunneled dialysis catheter placement |journal=Seminars in Dialysis |date=November 2019 |volume=32 |issue=6 |pages=535–540 |doi=10.1111/sdi.12845|pmid=31710156 |s2cid=207955194 }}</ref>。トンネル型中心静脈ラインには、{{仮リンク|ヒックマンカテーテル|en|Hickman line|redirect=1}}やブロビアックカテーテルなどがある。トンネル型ラインは、[[慢性腎不全|腎機能が低下した人]]の[[人工透析|血液透析]]に必要な長期静脈アクセスの選択肢である<ref name="JVA2016">{{Cite journal |last1=Roca-Tey |first1=Ramon |name-list-style=vanc |title=Permanent Arteriovenous Fistula or Catheter Dialysis for Heart Failure Patients |journal=The Journal of Vascular Access |date=March 2016 |volume=17 |issue=1_suppl |pages=S23–S29 |doi=10.5301/jva.5000511|pmid=26951899 |s2cid=44524962 }}</ref>。 |
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====埋め込み型ポート==== |
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{{Main|ポート (医療)}} |
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[[ポート (医療)|埋め込み型ポート]]とは、薬剤投与のための皮膚から突出する外部コネクタを持たない中心ラインのことである。その代わり、ポートは[[シリコンゴム]]で覆われた小さな[[リザーバー]]で構成されており、このリザーバーを皮下に埋め込む。薬剤の投与は、皮膚とシリコン製のポートカバーを通してリザーバーに薬剤を注入することによって行われる。注射針が抜かれると、リザーバーカバーは自ら再密閉する。ポートカバーは、その寿命の間、数百回の注射針刺入に対して機能するように設計されている。ポートは腕または胸部に設置される<ref>{{Cite journal |last1=Li |first1=Guanhua |last2=Zhang |first2=Yu |last3=Ma |first3=Hongmin |last4=Zheng |first4=Junmeng |name-list-style=vanc |title=Arm port vs chest port: a systematic review and meta-analysis |journal=Cancer Management and Research |date=3 July 2019 |volume=11 |pages=6099–6112 |doi=10.2147/CMAR.S205988|pmid=31308748 |pmc=6613605 |s2cid=196610436 |doi-access=free }}</ref>。 |
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===自然滴下/輸液ポンプ=== |
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輸液のための点滴ラインの設置および管理に使用される機器は、通常、患者の身長より高い位置に吊るされた輸液バッグと、薬剤を投与するための滅菌チューブの点滴セットで構成されている{{Sfn|Kowalak|2009|pp=316-321, 344-348}}。基本的な "自然滴下"点滴では、バッグを人の背丈より高い位置に吊るし、静脈に刺した針に取り付けたチューブを通して薬液を重力で滴下するだけである{{Sfn|Kowalak|2009|pp=316-321, 344-348}}。追加の装置がなければ、投与速度を正確に制御することはできない。このため、流量を調節するための[[クランプ]]を組み込んだ点滴セットもある{{Sfn|Kowalak|2009|pp=316-321, 344-348}}。点滴セットには、「{{仮リンク|Y管 (点滴)|en|Y-Set (intravenous therapy)|label=Y管|redirect=1}}」と呼ばれる、同じラインを通して他の輸液を投与できるパーツ(側管とも呼ばれる)が組み込まれている場合もある{{Sfn|Kowalak|2009|pp=316-321, 344-348}}。[[空気塞栓]]の原因となる空気の血流への流入を防ぎ、滴下流量を視覚的に推定できる{{仮リンク|ドリップチャンバー|en|drip chamber|redirect=1}}を採用しているシステムもある{{Sfn|Kowalak|2009|pp=316-321, 344-348}}。 |
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[[ファイル:Infusionspumpe.JPG|left|thumb|upright=0.75|[[輸液ポンプ]]|alt=Photograph of a simple, single infusion IV pump]] |
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[[輸液ポンプ]]を使用すると、流量と総輸液量を正確に制御することができる{{Sfn|Kowalak|2009|pp=316-321, 344-348}}。ポンプは、投与する輸液の数と大きさに基づいてプログラムされ、点滴が空にならないように、すべての薬液が完全に投与されるようにする{{Sfn|Kowalak|2009|pp=316-321, 344-348}}。ポンプは主に、一定の流量が重要な場合、または投与速度の変化が臨床上、[[有意]]な結果を生じる場合に利用される{{Sfn|Kowalak|2009|pp=316-321, 344-348}}。 |
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{{Main|輸液ポンプ}} |
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===手技=== |
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手技に伴う痛みを軽減するために、穿刺の約45分前に[[局所麻酔薬]]({{仮リンク|リドカイン・プロピトカイン配合剤クリーム|en|EMLA|label=エムラクリーム|redirect=1}}や[[テトラカイン]]外用薬など)を静脈穿刺部位の皮膚に塗布してもよい{{Sfn|Kowalak|2009|pp=344-348 }}。{{仮リンク|冷却スプレー|en|Vapocoolant|redirect=1}}は、[[静脈路確保]]の際の疼痛を軽減する可能性がある<ref>{{Cite journal|date=April 2016|title=Vapocoolants (cold spray) for pain treatment during intravenous cannulation|url=http://espace.library.uq.edu.au/view/UQ:387354/UQ387354_OA.pdf|journal=The Cochrane Database of Systematic Reviews|volume=2016|issue=4|pages=CD009484|doi=10.1002/14651858.CD009484.pub2|pmc=8666144|pmid=27113639|vauthors=Griffith RJ, Jordan V, Herd D, Reed PW, Dalziel SR}}</ref>。 |
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{{Anchors|Blown vein}}カテーテルが正しく挿入されていなかったり、静脈が特にもろくて破れたりすると、血液が周囲の組織に漏れることがある{{Sfn|Kowalak|2009|pp=355-359}}。このような状況も、点滴漏れ、静脈の破裂、または「組織化(tissuing)」として知られている{{Sfn|Kowalak|2009|pp=355-359}}。このカテーテルを使用して薬剤を投与すると、薬剤が{{仮リンク|血管外漏出|en|extravasation|label=血管外に漏出|redirect=1}}し、[[浮腫]]を引き起こし、痛みや組織の損傷を引き起こし、薬剤によっては[[壊死]]を起こすこともある{{Sfn|Kowalak|2009|pp=355-359}}。[[静脈路確保]]を試みる際は、損傷した静脈からの薬剤の滲出を防ぐために、「漏れた」部位の近位に新しいアクセス部位を見つけなければならない{{Sfn|Kowalak|2009|pp=355-359}}。このため、最初のカテーテルは四肢の最も遠位の適切な静脈に留置することが望ましい{{Sfn|Kowalak|2009|pp=355-359}}。 |
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==副作用== |
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===痛み=== |
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静脈ラインの留置は、皮膚を貫くときに痛みを伴い、医学的に[[侵襲|侵襲的]]と考えられる。このため、他の[[投与経路]]で十分な場合には、[[静脈内投与]]は通常好まれない。軽度または中等度の脱水の治療も、点滴ラインによる非経口的水分補給よりも、[[経口補水療法]]が優先される<ref name="ACEPfive">{{Citation |author1 = American College of Emergency Physicians |author1-link = American College of Emergency Physicians |title = Five Things Physicians and Patients Should Question |publisher = American College of Emergency Physicians |work = {{仮リンク|Choosing Wisely|en|Choosing Wisely|label=Choosing Wisely}}: an initiative of the {{仮リンク|ABIM Foundation|en|ABIM Foundation|label=ABIM Foundation}} |url = http://www.choosingwisely.org/doctor-patient-lists/american-college-of-emergency-physicians/ |access-date = January 24, 2014 |archive-date = March 7, 2014 |archive-url = https://web.archive.org/web/20140307012443/http://www.choosingwisely.org/doctor-patient-lists/american-college-of-emergency-physicians/ |url-status = dead }}</ref><ref>{{Cite journal | vauthors = Hartling L, Bellemare S, Wiebe N, Russell K, Klassen TP, Craig W | title = Oral versus intravenous rehydration for treating dehydration due to gastroenteritis in children | journal = The Cochrane Database of Systematic Reviews | issue = 3 | pages = CD004390 | date = July 2006 | volume = 2006 | pmid = 16856044 | doi = 10.1002/14651858.CD004390.pub2 | pmc = 6532593 }}</ref>。救急外来での小児の脱水の治療は、点滴ラインの疼痛と合併症のために、点滴療法よりも経口療法の方が良好な転帰を示す<ref name="ACEPfive"/>。 |
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ある種の薬剤には、静脈内投与に伴う特有の痛みの感覚もある。これには[[塩化カリウム]]が含まれ、静脈内投与すると灼熱感や痛みを感じることがある<ref name=AJM2020>{{Cite journal |last1=Heng |first1=Shu Yun |last2=Yap |first2=Robert Tze-Jin |last3=Tie |first3=Joyce |last4=McGrouther |first4=Duncan Angus |name-list-style=vanc |title=Peripheral Vein Thrombophlebitis in the Upper Extremity: A Systematic Review of a Frequent and Important Problem |journal=The American Journal of Medicine |date=April 2020 |volume=133 |issue=4 |pages=473–484.e3 |doi=10.1016/j.amjmed.2019.08.054|pmid=31606488 |s2cid=204545798 }}</ref> 。薬物特有の副作用の発生率は、アクセスの種類([[末梢静脈]]か[[中心静脈]]か)、投与速度、または投与する薬物の量に影響されることがある。薬剤を静脈ラインから急速に投与しすぎると、[[発赤]]や[[発疹]]、[[発熱]]などの一連の漠然とした症状が現れることがある;これは「急性輸液反応」と呼ばれ<ref>{{Cite web |title=急性輸液反応:バイオキーワード集|実験医学online:羊土社 |url=https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/2103.html |website=www.yodosha.co.jp |access-date=2023-10-06}}</ref>、軽症ならば薬剤の投与速度を低下させることで反応を軽減できる<ref>{{Cite web |title=注入に伴う反応 {{!}} CTCAE ver.5.0(日本語版) {{!}} 合併症・副作用 {{!}} HOKUTO |url=https://hokuto.app/ctcae/EYdMmzjPdSJROTGSYCG8 |website=臨床支援アプリHOKUTO |access-date=2023-10-06 |last=臨床支援アプリHOKUTO}}</ref>。バンコマイシンが関与する場合、これは一般に、急速投与後に起こる急激な[[潮紅]]にちなんで「[[レッドマン症候群]]」と呼ばれる<ref>{{Cite journal |last1=Bruniera |first1=FR |last2=Ferreira |first2=FM |last3=Saviolli |first3=LR |last4=Bacci |first4=MR |last5=Feder |first5=D |last6=da Luz Gonçalves Pedreira |first6=M |last7=Sorgini Peterlini |first7=MA |last8=Azzalis |first8=LA |last9=Campos Junqueira |first9=VB |last10=Fonseca |first10=FL |display-authors=6 |name-list-style=vanc |title=The use of vancomycin with its therapeutic and adverse effects: a review. |journal=European Review for Medical and Pharmacological Sciences |date=February 2015 |volume=19 |issue=4 |pages=694–700 |pmid=25753888}}</ref>。 |
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===感染と炎症=== |
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[[ファイル:Staphylococcus on catheter.png|サムネイル|[[カテーテル]]に付着した[[ブドウ球菌]]とそれらが分泌する[[バイオフィルム]]の[[電子顕微鏡]]写真。バイオフィルムは抗生物質の作用を阻害する。]] |
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静脈ラインの留置には皮膚を貫通する必要があるため、感染のリスクがある{{Sfn|Kowalak|2009|pp=358, 373 }}。[[コアグラーゼ陰性ブドウ球菌]]や''{{仮リンク|カンジダ・アルビカンス|en|Candida albicans|redirect=1}}''などの皮膚常在菌がカテーテル周囲の挿入部位から侵入したり、汚染された器具から誤って細菌がカテーテル内部に侵入したりすることがある{{Sfn|Kowalak|2009|pp=358, 373 }}。[[静脈アクセス]]部位の感染は通常局所的で、目に見えやすい[[腫脹]]、発赤、発熱を引き起こす{{Sfn|Kowalak|2009|pp=358, 373 }}。しかし、病原菌が血流に入り込んで[[敗血症]]を引き起こすこともあり、突然生命を脅かすこともある{{Sfn|Kowalak|2009|pp=358, 373 }}。中心静脈ラインは、中枢の循環に直接細菌を送り込む可能性があるため、敗血症のリスクが高くなる{{Sfn|Kowalak|2009|pp=358, 373 }}。留置期間が長いラインも感染のリスクを高める{{Sfn|Kowalak|2009|pp=358, 373 }}。 |
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静脈の炎症も起こることがあり、[[血栓性静脈炎]]または単に静脈炎と呼ばれる。この炎症は、感染、カテーテル自体、または投与される特定の輸液や薬物によって引き起こされることがある。静脈炎を繰り返すと、静脈に沿って瘢痕組織が形成されることがある。末梢静脈ラインは、感染症や静脈炎などの合併症の危険性があるため、いつまでも静脈内に留置しておくことはできない。しかし、最近の研究では、臨床的に適切な場合にのみ点滴を交換しても、[[ルーチン]]の点滴交換と比較して、合併症のリスクが増加しないことが判明している<ref>{{Cite journal|vauthors= Webster J, Osborne S, Rickard CM, Marsh N|date=23 January 2019|title=Clinically-indicated replacement versus routine replacement of peripheral venous catheters|journal=The Cochrane Database of Systematic Reviews|volume=1|issue=1 |pages=CD007798|doi=10.1002/14651858.CD007798.pub5|issn=1469-493X|pmc=6353131|pmid=30671926}}</ref>。適切な無菌的手技で留置する場合、末梢静脈ラインを72~96時間ごとを超える頻度で交換することは推奨されない<ref>{{Cite journal | vauthors = O'Grady NP, Alexander M, Burns LA, Dellinger EP, Garland J, Heard SO, Lipsett PA, Masur H, Mermel LA, Pearson ML, Raad II, Randolph AG, Rupp ME, Saint S | display-authors=6 | title = Guidelines for the prevention of intravascular catheter-related infections | journal = Clinical Infectious Diseases | volume = 52 | issue = 9 | pages = e162-93 | date = May 2011 | pmid = 21460264 | pmc = 3106269 | doi = 10.1093/cid/cir257 }}</ref>。 |
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静脈炎は、静脈内薬物使用者<ref>{{Cite journal |last1=Jaffe |first1=Richard B. |name-list-style=vanc |title=Cardiac and vascular involvement in drug abuse |journal=Seminars in Roentgenology |date=July 1983 |volume=18 |issue=3 |pages=207–212 |doi=10.1016/0037-198x(83)90024-x|pmid=6137064 }}</ref>および化学療法を受けている患者<ref>{{Cite journal |last1=Lv |first1=Luyu |last2=Zhang |first2=Jiaqian |name-list-style=vanc |title=The incidence and risk of infusion phlebitis with peripheral intravenous catheters: A meta-analysis |journal=The Journal of Vascular Access |date=May 2020 |volume=21 |issue=3 |pages=342–349 |doi=10.1177/1129729819877323|pmid=31547791 |s2cid=202745746 }}</ref>に特によくみられ、静脈は時間の経過とともに硬化してアクセスが困難になり、時には硬くて痛みを伴う「静脈索"venous cord".」が形成されることがある。索の存在は、点滴治療に伴う不快感や疼痛の原因であり、索のある部位には静脈ラインを留置できないため、静脈ラインの留置がより困難になる<ref>{{Cite journal |last1=Mihala |first1=G |last2=Ray-Barruel |first2=G |last3=Chopra |first3=V |last4=Webster |first4=J |last5=Wallis |first5=M |last6=Marsh |first6=N |last7=McGrail |first7=M |last8=Rickard |first8=CM |display-authors=6 |name-list-style=vanc |title=Phlebitis Signs and Symptoms With Peripheral Intravenous Catheters: Incidence and Correlation Study. |journal=Journal of Infusion Nursing |date=2018 |volume=41 |issue=4 |pages=260–263 |doi=10.1097/NAN.0000000000000288 |pmid=29958263|s2cid=49613143 }}</ref>。 |
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===点滴漏れ=== |
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{{Seealso|浸潤|{{仮リンク|血管外漏出|en|extravasation|redirect=1}}}} |
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[[ファイル:Гематома (синяк) в результате непопадания иглы в вену при установке каппельницы 1.jpg|サムネイル|点滴漏れや[[静脈路確保]]失敗後に発生する[[皮下血腫]](あざ)]] |
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点滴漏れは、輸液または薬剤が目的の静脈ではなく周囲の組織に入ることで起こる。これは、静脈自体が破れた場合、血管内留置器具の挿入中に静脈が損傷した場合、または静脈の透過性が増加した場合にも発生する。点滴漏れはまた、針による静脈の穿刺部位が最も注入抵抗の少ない部位-たとえば挿入したままのカテーテル-になり、静脈に瘢痕による狭窄ないしは閉塞が生じた場合にも起こる。また、静脈ラインを挿入する際に、[[駆血帯]]を速やかに外さなければ起こることもある。浸潤は、皮膚の冷感や蒼白、局所の腫脹や浮腫を特徴とする。静脈ラインを外し、患肢を挙上して溜まった液体が排出されるようにすることで治療する。患部周辺に[[ヒアルロニダーゼ]]を注射することで、輸液/薬剤の拡散を早めることができる<ref>{{Cite journal |last1=Reynolds |first1=PM |last2=MacLaren |first2=R |last3=Mueller |first3=SW |last4=Fish |first4=DN |last5=Kiser |first5=TH |name-list-style=vanc |title=Management of extravasation injuries: a focused evaluation of noncytotoxic medications. |journal=Pharmacotherapy |date=June 2014 |volume=34 |issue=6 |pages=617–32 |doi=10.1002/phar.1396 |pmid=24420913|s2cid=25278254 }}</ref>{{Efn|日本では2023年現在、この用法のヒアルロニダーゼ製剤は販売されていない。}}。点滴漏れは、点滴の最も一般的な副作用のひとつであり<ref>{{Cite journal | vauthors = Schwamburger NT, Hancock RH, Chong CH, Hartup GR, Vandewalle KS | title = The rate of adverse events during IV conscious sedation | journal = General Dentistry | volume = 60 | issue = 5 | pages = e341-4 | year = 2012 | pmid = 23032244 }}</ref>、漏れた薬液が周囲組織に損傷を与える薬剤、例えば刺激性物質または[[化学療法剤|化学療法薬]]でない限り、通常は重篤ではない。漏れた薬液が組織傷害性の場合、{{仮リンク|血管外漏出|en|extravasation|redirect=1}}と呼ばれ、その部分の壊死を引き起こすことがある<ref>{{Cite journal | vauthors = Hadaway L | title = Infiltration and extravasation | journal = The American Journal of Nursing | volume = 107 | issue = 8 | pages = 64–72 | date = August 2007 | pmid = 17667395 | doi = 10.1097/01.NAJ.0000282299.03441.c7 }}</ref>。 |
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===その他の合併症=== |
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投与される輸液が体温より低い場合、[[低体温症]]が起こりうる。心臓への温度変化が急激な場合、致死的不整脈である[[心室細動]]が起こる可能性がある<ref>{{Cite journal |last1=Campbell |first1=Gillian |last2=Alderson |first2=Phil |last3=Smith |first3=Andrew F |last4=Warttig |first4=Sheryl |name-list-style=vanc |title=Warming of intravenous and irrigation fluids for preventing inadvertent perioperative hypothermia |journal=Cochrane Database of Systematic Reviews |date=13 April 2015 |volume=2015 |issue=4 |pages=CD009891 |doi=10.1002/14651858.CD009891.pub2|pmid=25866139 |pmc=6769178 }}</ref>。さらに、{{仮リンク|等張|en|isoosmolar|label=血液と浸透圧が等し|redirect=1}}くない溶液を投与した場合、[[電解質異常|電解質のバランスが崩れる]]可能性がある。病院では、定期的な[[血液検査]]で電解質濃度を積極的に監視している<ref>{{Cite journal |last1=Wang |first1=W |name-list-style=vanc |title=Tolerability of hypertonic injectables. |journal=International Journal of Pharmaceutics |date=25 July 2015 |volume=490 |issue=1–2 |pages=308–15 |doi=10.1016/j.ijpharm.2015.05.069 |pmid=26027488}}</ref>。低体温が起こると、[[血小板]]機能低下や血管反応性低下などにより、出血が増加するので産科などの出血時には[[輸血・輸液加温器]]の使用が推奨されている<ref>{{Cite journal|和書|last=稲田|first=英一|date=2018|title=産科危機的出血への対応|url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/38/5/38_712/_article/-char/ja/|journal=日本臨床麻酔学会誌|volume=38|issue=5|pages=712–717|doi=10.2199/jjsca.38.712}}</ref>。 |
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==歴史== |
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===発見と開発=== |
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[[ファイル:James Blundell (physician).jpg|左|サムネイル|ジェームズ・ブランデル]] |
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点滴による治療物質投与の最初の試みは、1492年、[[インノケンティウス8世 (ローマ教皇)|教皇インノケンティウス8世]]が病に倒れ、健康な人の血液を投与されたことであると記録されている<ref name="Millam">{{Cite journal|last=Millam|first=D.|date=1996|title=The history of intravenous therapy|url=https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8708844|journal=Journal of Intravenous Nursing: The Official Publication of the Intravenous Nurses Society|volume=19|issue=1|pages=5–14|issn=0896-5846|pmid=8708844}}</ref><ref name=":0" />。この場合の治療はうまくいかず、教皇は治癒することなく、[[供血者]]も死に至った<ref name="Millam" /><ref name=":0" />。この話には異論もあり、当時の医療関係者には[[輸血]]という発想はあり得なかったとか、血液循環に関する完全な記述が発表されたのは100年以上経ってからであったと主張する者もいる<ref name=":0" />。この話は、当時の文献の翻訳に誤りがあった可能性や、意図的な捏造の可能性があるとされているが、今でも正確であると考える人もいる<ref name=":0">{{Cite journal |last1=Lindeboom |first1=G. A. |name-list-style=vanc |title=The Story of a Blood Transfusion to a Pope |journal=Journal of the History of Medicine and Allied Sciences |date=1954 |volume=IX |issue=4 |pages=455–459 |doi=10.1093/jhmas/IX.4.455|pmid=13212030 }}</ref>。医学生や看護学生向けの主要な医学史教科書のひとつは、この話全体が反ユダヤ主義的な捏造であると主張している<ref>{{Cite book|和書 |last1=Duffin |first1=Jacalyn |name-list-style=vanc |title=History of medicine: a scandalously short introduction |date=2010 |publisher=University of Toronto Press |location=Toronto [Ont.] |isbn=9780802098252 |pages=198–199 |edition=2nd |url= |deadurl=https://archive.org/details/historyofmedicin0000duff/page/198/mode/2up}}</ref>。 |
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1656年、イギリスの[[建築家]][[クリストファー・レン]]卿と[[自然哲学者]][[ロバート・ボイル]]がこのテーマに取り組んだ<ref name=":2" />。「私は生きている犬にワインとエールを静脈から血の塊に注入した。酔っ払うまで大量に注入したが、すぐに尿に排出された」とレンが述べた。犬は生き延びて太り、後に飼い主から盗まれた。ボイルはこの記録の著者をレンとした<ref name=":2">{{Cite journal|last=Dagnino|first=Jorge|date=2009-10-01|title=Wren, Boyle, and the Origins of Intravenous Injections and the Royal Society of London|url=https://doi.org/10.1097/ALN.0b013e3181b56163|journal=Anesthesiology|volume=111|issue=4|pages=923–924|doi=10.1097/aln.0b013e3181b56163|issn=0003-3022}}</ref>。 |
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イギリスの医師[[リチャード・ロウアー]]は、動物から動物へ、動物から人間への静脈内輸血({{仮リンク|異種輸血|en|xenotransfusion|redirect=1}})が可能であることを示した。彼は外科医{{仮リンク|エドモンド・キング|en|Sir Edmund King|redirect=1}}と協力して、精神を病んだ男性に羊の血液を輸血した。ロウアーは科学の進歩に興味があったが、同時に、新鮮な血液を注入するか、古い血液を除去することで、この男性を救うことができると信じていた。輸血に同意してくれる人を見つけるのは難しかったが、風変わりな学者であるアーサー・コガが同意し、1667年11月23日に[[王立協会]]の前でロウアーとキングによって輸血が行われた<ref>Felts, J. H. (2000). Richard Lower: anatomist and physiologist. Annals of internal medicine, 133(6), 485.</ref>。輸血はフランスとイタリアで一定の人気を集めたが、医学的・神学的な論争が起こり、その結果フランスでは輸血が禁止された。 |
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1831年に[[エディンバラ|エジンバラ]]の医師{{仮リンク|トーマス・ラッタ|en|Thomas Latta|redirect=1}}が[[コレラ]]治療のための静脈内補液の使用を研究した1800年代まで、注射療法の試みで成功したという記録はほとんどなかった<ref name="Millam" /><ref>{{Cite journal |last=MacGillivray |first=Neil | name-list-style = vanc |year=2009 |title=Dr Thomas Latta: the father of intravenous infusion therapy |journal={{仮リンク|Journal of Infection Prevention|en|Journal of Infection Prevention|label=Journal of Infection Prevention}} |volume=10 |issue=Suppl. 1 |pages=3–6 |doi=10.1177/1757177409342141 |doi-access=free }}</ref>。静脈注射に広く使用されるようになった最初の溶液は、単純な「生理食塩水のような溶液」であり、その後、[[牛乳]]、[[砂糖]]、[[蜂蜜]]、[[卵黄]]など、様々な他の液体を用いた実験が行われた<ref name="Millam" />。1830年代、英国の産科医であった[[ジェームズ・ブランデル]]は、分娩中または分娩後に大量出血した女性の治療に血液の静脈内投与を用いた<ref name="Millam" /><ref>{{Cite journal|last=Blundell|date=1829-06|title=OBSERVATIONS ON TRANSFUSION OF BLOOD.|url=https://doi.org/10.1016/S0140-6736(02)92543-2|journal=The Lancet|volume=12|issue=302|pages=321–324|doi=10.1016/s0140-6736(02)92543-2|issn=0140-6736}}</ref>。これは[[血液型]]が理解される以前のことであり、予測不可能な結果を招いた{{Efn|血液型不適合輸血であれば、致死的である。}}。 |
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===近現代=== |
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[[ファイル:Justinejohnstone 2b.jpg|サムネイル|[[ジャスティン・ジョンストン]]。点滴療法に関する研究で業績を残しただけでなく、舞台女優としても活躍した<ref>{{Cite web |title=Justine Johnstone – Broadway Cast & Staff {{!}} IBDB |url=https://www.ibdb.com/broadway-cast-staff/justine-johnstone-47120 |website=www.ibdb.com |access-date=2023-10-07}}</ref>。]] |
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静脈内注射法は、1890年代後半にイタリアの医師{{仮リンク|グイード・バチェリ|en|Guido Baccelli|redirect=1}}によって拡大され<ref>See, for example, the Nobel Prize Nomination Database: https://www.nobelprize.org/nomination/redirector/?redir=archive/</ref>、1930年代にサミュエル・ヒルシュフェルト、ハロルド・T・ハイマン、{{仮リンク|ジャスティン・ジョンストン|en|Justine Johnstone|redirect=1}}<ref>{{Cite book | last = Stanley | first = Autumn | name-list-style = vanc | title = Mothers and daughters of invention: notes for a revised history of technology | url = https://books.google.com/books?id=uRJt7QqA7GEC | access-date = 2011-06-05 | year = 1995 | publisher = Rutgers University Press | isbn = 978-0-8135-2197-8 | pages = 141–142 | quote = Wanger and colleagues had in effect invented the modern I.V.-drip method of drug delivery [...] }}</ref><ref>{{Cite web |first=Laura |last=Geggel |name-list-style=vanc |date=3 December 2012 |url=http://well.blogs.nytimes.com/2012/12/03/spotlight-on-a-rare-condition/ |title=A Royal Spotlight on a Rare Condition |work=[[ニューヨーク・タイムズ|The New York Times]] |access-date=2023-09-13}}</ref>によってさらに開発されたが、1950年代までは広く利用されていなかった。今日では静脈内注射で行われている水分補給が、{{仮リンク|マーフィー点滴|en|Murphy drip|redirect=1}}([[注腸|直腸点滴]])で行われていた時代(およそ1910年代から1920年代)もあったが、静脈内投与がそれらの投与方法に徐々にとってかわっていった。しかし、高濃度の栄養剤や抗がん剤などは末梢静脈から投与した場合は、血管を痛めてしまう問題があった。1929年、[[ドイツ]]の[[外科学|外科]][[研修医]][[ヴェルナー・フォルスマン]]が、プラスチック製の[[尿道カテーテル]]を自分の右腕の{{仮リンク|尺側皮静脈|en|Basilic vein|redirect=1}}に挿入し、[[右心房]]まで到達させた(初のヒトでの[[中心静脈カテーテル]])<ref name=":7">{{Cite journal|last=Mueller|first=Richard L.|last2=Sanborn|first2=Timothy A.|date=1995-01-01|title=The history of interventional cardiology: Cardiac catheterization, angioplasty, and related interventions|url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0002870395900551|journal=American Heart Journal|volume=129|issue=1|pages=146–172|language=en|doi=10.1016/0002-8703(95)90055-1|issn=0002-8703}}</ref>。しかし、上司に無許可であったために叱責され、彼は病院を解雇されてしまった<ref name=":7" />。だが、この手技の医学上の貢献が後に評価され、1956年に[[ノーベル医学賞]]を授与された<ref>{{Cite web |title=耳寄りな心臓の話(第5話)『わが身にカテーテルを通す』 |はあと文庫|心日本心臓財団刊行物|公益財団法人 日本心臓財団 |url=https://www.jhf.or.jp/publish/bunko/05.html |website=www.jhf.or.jp |access-date=2023-04-13}}</ref><ref name=":12">{{Cite book|和書 |title=ICUブック |url=https://www.worldcat.org/oclc/931498024 |publisher=メディカルサイエンス・インターナショナル |date=2015 |location=東京 |isbn=978-4-89592-831-1 |oclc=931498024 |first=Paul L. |last=Marino |edition=第4版 |translator=稲田英一 |page=3}}</ref>。 |
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プラスチック製のカニューレを挿入し、針を引き抜く方法は、1945年に技術導入された<ref name="mayo">{{Cite journal|last=Narr|first=Bradly J.|last2=Southorn|first2=Peter A.|date=1 October 2008|title=The Massa or Rochester Plastic Needle|url=https://www.mayoclinicproceedings.org/article/S0025-6196(11)60624-1/fulltext|journal=Mayo Clinic Proceedings|volume=83|issue=10|pages=1165–1167|language=en|accessdate=16 April 2019|DOI=10.4065/83.10.1165|PMID=18828978|ISSN=0025-6196}}</ref>。1970年代から1980年代にかけて、プラスチック製カニューレの使用が日常化し、その挿入は看護スタッフに委ねられることが多くなった<ref name="Rivera">{{Cite journal|date=2005|title=The history of peripheral intravenous catheters : How little plastic tubes revolutionized medicine|journal=Acta Anaesthesiol. Belg.|volume=56|issue=3|pages=271–82|PMID=16265830}}</ref>。 |
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フォルスマンの貢献により、静脈内注射で使用できる薬剤と血管の選択肢が広がったが、中心静脈にカテーテルを入れるためには小手術で目標血管そのものに直接カテーテルを入れるか、太い針で血管を穿刺して、その中からカテーテルを入れる必要があった。1953年、[[スウェーデン]]の[[放射線医学|放射線科医]]、{{仮リンク|スヴェン・イヴァー・セルディンガー|en|Sven Ivar Seldinger}}が血管を細い針で穿刺して、その中からまず、ワイヤーを留置し、そのワイヤーをガイドにして太いカテーテルを入れる手技を開発し、これによってカテーテル留置の安全性と確実性が高まった<ref name="Seldinger">{{Cite journal|last=Seldinger SI|year=1953|title=Catheter replacement of the needle in percutaneous arteriography; a new technique|journal=Acta Radiologica|volume=39|issue=5|pages=368–76|DOI=10.3109/00016925309136722|PMID=13057644}}</ref>。 |
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{{Main|セルディンガー法}} |
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1960年代には、必要な栄養をすべて点滴で補給するというコンセプトが真剣に検討され始めた。最初の静脈栄養は、[[タンパク加水分解物]]およびブドウ糖から成っていた<ref name="Millam" />。これに続いて1975年に、[[完全静脈栄養]]、すなわちタンパク質、脂肪、および炭水化物を含む栄養剤を形成するために添加される静脈内{{仮リンク|脂肪乳剤|en|fat emulsion|redirect=1}}およびビタミンが開発された<ref name="Millam" />。 |
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== 脚注 == |
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{{脚注ヘルプ}} |
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=== 注釈 === |
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{{Notelist}} |
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=== 出典 === |
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==参考文献== |
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* {{Cite book|洋書 |title=Lippincott's nursing procedures. |date=2009 |publisher=Lippincott Williams & Wilkins |location=Philadelphia |isbn=978-0781786898 |edition=5th |url=https://archive.org/details/lippincottsnursi0000unse/mode/2up?view=theater |year=2009 |author=Kowalak |ref=harv |first=Jennifer P. |last=Kowalak}} |
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* {{Cite book |last1=Marino |first1=Paul L. |name-list-style= |title=Marino's the ICU book |year=2014 |chapter= |publisher=LWW |location=Philadelphia |isbn=978-1451121186 |edition=Fourth|洋書 |ref=harv}} |
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==関連文献== |
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* Royal College of Nursing, ''[https://www.rcn.org.uk/clinical-topics/infection-prevention-and-control/standards-for-infusion-therapy Standards for Infusion Therapy]'' ([https://web.archive.org/web/20180903205051/https://www.rcn.org.uk/-/media/royal-college-of-nursing/documents/publications/2016/december/005704.pdf?la=en&hash=37F253A9C126155D23B5AC6A6C719C8521BECF81 Archive of the 4th edition (December 2016)] via the Internet Wayback Machine) |
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== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
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* [[注射]] |
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* [[投与経路]] |
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* [[静脈路確保]] |
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* [[輸液]] |
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* [[輸血]] |
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* [[高カロリー輸液]] |
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* [[バクスターの公式]] |
* [[バクスターの公式]] |
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*{{仮リンク|生命維持|en|Life support|redirect=1}} |
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* [[:en:Central venous catheter]] |
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* {{仮リンク|ニードルレスコネクタ|en|Needleless connector|redirect=1}} |
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* [[:en:Peripheral parenteral nutrition]] |
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* {{仮リンク|Rehydrex|en|Rehydrex|label=Rehydrex}}- 海外で販売されている{{仮リンク|血漿増量剤|en|Volume expander|redirect=1}}の一種 |
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* [[:en:Peripherally inserted central catheter]] |
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* [[:en:Total parenteral nutrition]] |
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== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
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{{Commonscat|Intravenous therapy}} |
* {{Commonscat-inline|Intravenous therapy}} |
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* [https://www.jspen.or.jp/ 日本静脈経腸栄養学会 (JSPEN)] |
* [https://www.jspen.or.jp/ 日本静脈経腸栄養学会 (JSPEN)] |
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{{Intravenous therapy}}{{剤形}}{{麻酔}}{{救急医学}}{{Normdaten}} |
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2023年10月27日 (金) 22:20時点における版
静脈注射 | |
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治療法 | |
シノニム | 点滴 |
ICD-9-CM | 38.93 |
点滴静脈注射(てんてきじょうみゃくちゅうしゃ、英: Intravenous Therapy)は、ヒトの静脈に直接水分や薬物、栄養素を投与する医療技術である。単に点滴(drip、英略語: IV)とも呼ばれる[1]。投与経路としての静脈は一般に、水分補給や、意識レベルの低下などにより、経口(英: per os、英略語: p.o.)で食物や水を摂取できない、あるいは摂取しようとしない人への栄養補給に用いられる。また、血液製剤や電解質異常を是正するための電解質など、薬物投与やその他の治療にも使用される。静脈内点滴治療の試みは、1400年代にはすでに記録されていたが、広く行われるようになったのは、安全で効果的な使用法が開発された1950年代になってからであった。
静脈内投与は、薬剤や補液が循環系に直接導入され、速やかに全身に行き渡るため、最も早く投与できる方法である。このため、一部のレクリエーショナルドラッグの摂取にも静脈内投与が用いられている。多くの治療薬は"ボーラス投与"すなわち1回で急速投与されるが、持続注入(シリンジポンプによる)または点滴(自然滴下又は輸液ポンプによる)として投与されることもある。薬剤を静脈内に投与する行為、または後で使用するために静脈ラインを留置する行為は、熟練した医療従事者のみが行うべき手技である。最も単純な静脈路は、注射針で皮膚を貫通させて静脈に入れ、注射器または静脈ラインに接続するというものである。これを用いて目的の治療を行う。注射針では静脈に外傷が生じる危険性があるため、患者が短期間に何度もこのような治療を受ける可能性がある場合は、一方の端を静脈内に入れるカテーテルを挿入し、もう一方の端にチューブを接続してその後の治療を容易に行うことができる。これが一般的な点滴方法である。場合によっては、同じ静脈ラインを通して複数の薬剤や治療介入を行うこともある。
点滴ラインの終点が心臓に近い太い静脈であれば「中心静脈ライン」、腕など末梢の細い静脈であれば「末梢静脈ライン」に分類される。点滴ラインは末梢静脈から心臓の近くまで通すこともでき、これは末梢挿入型中心静脈カテーテルまたは略称でPICCラインと呼ばれる。長期的な点滴治療が必要な場合は、静脈に何度も穴を開けなくても静脈に何度も簡単にアクセスできるように、ポートを埋め込むこともある。また、カテーテルを胸部から距離の離れた首の静脈や鎖骨の下の静脈に挿入することもあり、これは皮下トンネルという。使用するカテーテルの具体的な種類と挿入部位は、投与したい物質と挿入希望部位の静脈の健康状態に左右される。
点滴ラインの挿入は、必然的に皮膚に穴を開けることになるため、痛みを伴うことがある。感染症や炎症(静脈炎と呼ばれる)も、点滴の一般的な副作用である。静脈炎は、同じ静脈を繰り返し点滴に使用する場合に起こりやすく、最終的には静脈が点滴に適さない硬い索状物になることもある。静脈外への治療薬の意図しない投与は、点滴漏れと呼ばれ、他の副作用を引き起こすことがある。
適応
医学的な適応
静脈路は、全身に投与しなければならない薬剤や補液の投与、特に迅速な投与が必要な場合に使用される。静脈内投与のもう一つの用途は、肝臓での初回通過効果代謝の回避である。静脈内に注入できる物質には、血漿増量剤、血液製剤、代替血液(2023年現在実用化されていない)、薬剤、栄養剤などがある
輸液
輸液は、「血漿増量剤」または体液補充の一環として、静脈内ルートから投与されることがある。血漿増量は、より多くの水分を必要とする身体の特定部位をターゲットとして設計された、液体をベースとする溶液または懸濁液の投与による。すなわち、晶質液と膠質液である。晶質液は、ミネラルやその他の水溶性分子の水溶液である。膠質液はゼラチンのような大きな不溶性分子を含む。血液そのものは膠質液と考えられている[2]。
最も一般的に使用される晶質液は、0.9%濃度の塩化ナトリウム溶液である生理食塩水で、血液と等張である。乳酸リンゲル液および近縁の酢酸リンゲル液は、軽度の低張液で、重度の熱傷を負った患者にしばしば使用される。膠質液は血液中の膠質浸透圧を高く保つが、晶質液では血液希釈のために膠質浸透圧が低下する[3]。晶質液は膠質液よりも一般的にかなり安価である[3]。
アシドーシスまたはアルカローシスを是正するために使用される緩衝液も、静脈内投与される。血漿増量剤または薬剤が添加される基本輸液として使用される乳酸リンゲル液には、ある程度の緩衝作用がある。緩衝液として静脈内投与される溶液には、他に炭酸水素ナトリウム注射液がある[4]。
薬物療法と治療
医薬品は一般的に生理食塩水やブドウ糖溶液に混和されて投与されることもある[5](混注と呼ばれる)。
経口薬など他の投与経路と比較すると、静脈内投与経路は輸液や薬液を全身に最も速く送達する方法である[6]。極度の高血圧(高血圧緊急症と呼ばれる)では、臓器障害を防ぐために血圧をコントロールしながら速やかに低下させるために、降圧剤の静脈内投与が行われることがある[7]。心房細動では、正常な心臓のリズムを回復させるためにアミオダロンの静脈内投与が行われることがある[8]。バンコマイシンのように、血液中の薬物濃度をより迅速に高めるために、投与レジメンを開始する前に薬のローディング用量またはボーラス用量を投与する場合もある[9]。
薬物が十分に吸収されなかったり、血流に入る前に代謝されたりする可能性がある経口投与とは異なり、静脈内投与のバイオアベイラビリティは定義上100%である[5]。薬によっては、経口バイオアベイラビリティがほとんどないものもある。このため、ある種の薬剤は静脈内投与でしか投与できない。他の投与経路では十分な吸収が得られないからである[10]。例えば、重度の脱水症の場合、早期回復のために静脈内投与による治療が必要となる[11]。フロセミドのように、経口薬のバイオアベイラビリティが人によって予測できないことも、静脈内投与が必要な理由である[12]。また、吐き気や嘔吐がある場合、下痢がひどい場合などは、薬が消化管から十分に吸収されない可能性があるため、経口薬はあまり好ましくない。このような場合、患者が経口剤に耐えられるようになるまで、静脈内投与のみを行うことがある。静脈内投与から経口投与への切り替えは、一般的に静脈内投与よりも費用と時間の節約になるため、通常は可能な限り早く行われる。薬剤を経口剤に変更できる可能性があるかどうかは、病院内で使用する適切な抗生物質療法を選択する際に考慮されることがある。点滴治療が必要な場合は、退院できる可能性は低いからである[13]。
アプレピタントなど一部の薬剤は、静脈内投与に適した形に化学的に修飾され、ホスアプレピタントなどのプロドラッグとなっている。これは薬物動態学的な理由や、活性型に代謝されるまで薬効を遅らせるためである[14]。
血液製剤
血液製剤とは、輸血に使用するために供血者から採取される血液のあらゆる成分のことである[15]。輸血は、外傷による大量出血の際に使用されたり、手術中に失われた血液を補うために使用されたりする。輸血は、血液疾患による重度の貧血や血小板減少症の治療にも用いられる。初期の輸血は全血から成っていたが、現代の医療では、一般的に、赤血球濃厚液、新鮮凍結血漿またはクリオプレピシテートなどの成分輸血のみが使用される[16]。
栄養
静脈栄養とは、必要な栄養素を静脈ラインから投与することである。これは、食事や消化によって栄養を摂取することができない人に行われる。静脈栄養を受けている人には、塩類、ブドウ糖、アミノ酸、脂質、ビタミンなどを含む静脈栄養剤が投与される。使用される静脈栄養剤の正確な処方は、投与される人の特定の栄養ニーズによって異なる。栄養を静脈内にのみ投与する場合は、完全静脈栄養(英: Total Parenteral Nutrition: TPN)と呼ばれ、栄養の一部のみを静脈内に投与する場合は、部分静脈栄養法(英: Partial Parenteral Nutrition: PPN)または補完的静脈栄養法(英: Supplemental Parenteral Nutrition: SPN)と呼ばれる[17]。
画像診断
医用画像診断は、体内の部位を互いに明確に区別できることに依存している。これを実現する方法の1つが、静脈への造影剤の投与である[18]。採用する特定の画像診断技術によって、血管やその他の構造物をより鮮明に映し出すための適切な造影剤の特性が決定される。一般的な造影剤は末梢静脈に投与され、そこから循環系全体に分布して撮影部位に到達する[19]。
他の用途
スポーツ
点滴による水分補給は、以前はアスリートにとって一般的な手法だった[20]。世界アンチ・ドーピング機構は、医学的免除がある場合を除き、12時間あたり100mLを超える静脈内注射を禁止している[20]。アメリカアンチドーピング機構は、静脈注射療法が内在する危険性だけではなく、「静脈注射は、血液検査の結果(エリスロポエチン注射や血液ドーピングが行われている場合のヘマトクリット値など)を変えたり、アンチ・ドーピング検査をくぐり抜けるために禁止物質を体内からより速やかに排出されるように、尿検査の結果を(希釈によって)誤魔化したりする目的で行われる可能性がある」と指摘している[20]。この種の治療を提供する「ブティック静注クリニック」に通って出場停止処分を受けた選手には、2017年のサッカー選手サミル・ナスリ[21]、2018年の水泳選手ライアン・ロクテがいる[22]。
二日酔い治療
1960年代、米国メリーランド州の医師ジョン・マイヤーズは「マイヤーズカクテル」を開発した[23]。これはビタミンとミネラルを配合した非処方箋の点滴で、二日酔いの薬や滋養強壮薬として販売されていた[24]。同様の治療を提供する初の「静注ブティック」クリニックが2008年に東京に開業した[24]。このようなクリニックは、ELLE (雑誌)にその顧客が「裏の顔は大酒飲みの健康オタク」と評され、2010年代には華やかなセレブの顧客によって宣伝されている[24]。点滴療法はまた、急性アルコール中毒の人々に、アルコール摂取によって生じる電解質とビタミンの欠乏を是正するために使用されている[25]。これらの輸液は黄色なのでバナナバッグと呼ばれることもある[26]。これらの「カクテル」には医学的に何らかの予防または治療効果を示すエビデンスがほとんどない[27]。
その他
一部の国では、非処方のブドウ糖の静脈内投与が、滋養強壮目的で行われているが、ブドウ糖溶液が処方薬である米国などでは、日常的な医療の一部ではない[28]。店頭の診療所で密かに行われているような不適切な静脈内ブドウ糖投与(「リンゲル」[注釈 1]と呼ばれる)は、不適切な手技とミスによりリスクが高まる[28]。静脈路はまた、ヘロインやフェンタニル、コカイン、メタンフェタミン、ジメチルトリプタミンなどのレクリエーショナルドラッグの自己投与のために、医療機関外で使用されることがある[29]。
投与方法の種類
ボーラス
一部の薬剤はボーラス投与が可能で、これは「ワンショット」とも呼ばれる[31]。薬剤を入れたシリンジを点滴回路の三方活栓に接続し、薬剤を投与する[32]。ボーラスは、急速に投与することもあれば(注射器の注射桿を素早く押し込む)、数分かけてゆっくりと投与することもある[32]。正確な投与手技は、薬剤やその他の要因によって異なる[32]。場合によっては、ボーラスの直後に「プレーン」の輸液(すなわち、薬剤を添加していない輸液)を投与して、薬剤をさらに点滴の中で推し進めて血流に送り込む。この処置は「フラッシュ」と呼ばれる[注釈 2]。フラッシュに生理食塩水を用いる場合は生食フラッシュと呼ばれる[33]。塩化カリウムなど一部の薬剤は、血中濃度の急上昇に伴う毒性が高いため、ボーラスでは投与できない[32]。
持続投与
点滴は、βラクタム系を含む一部の抗生物質のように、薬剤の血中濃度を長期にわたって一定に保つことが望ましい場合に行われることがある[34]。血中薬物濃度の変動(すなわち、ピーク薬物濃度とトラフ薬物濃度の変動)を抑制するために、前の輸液が終了した直後に次の輸液を開始する持続投与が行われることもある[34]。また、フロセミドのように、同じ理由で間欠的なボーラス注射の代わりに持続投与が行われることもある[35]。間欠的、すなわち一定時間おきの点滴は、(持続点滴で一般的なように)長時間の薬液の安定性に懸念がある場合や、バンコマイシンなど、同じ静脈ラインで同時に投与すると配合禁忌のある医薬品を投与できるようにする場合に行われることがある[36]
輸液を適切に計算して投与しないと、急性輸液反応[37]と呼ばれる副作用が生じることがある。このため、バンコマイシン[36]やモノクローナル抗体など、多くの薬剤には推奨最大注入速度が設定されている[38]。これらの注入時の反応は、バンコマイシンの「レッドマン症候群」のように、重篤なものとなることがある[36]。
側管
輸液と同時に静脈内投与する追加の薬剤は、点滴キットに三方活栓から接続することができる。これは側管と呼ばれる[39]。側管から点滴を行う場合、主管の輸液が側管に流れ込むのではなく、側管の輸液が主管に流れ込むように、主管の輸液は側管より低い位置に保持される。主管の輸液は、側管の輸液をチューブから洗い流すために必要である[32]。ボーラス輸液または側管の輸液を主管の輸液と同じラインで投与する場合は、溶液の配合の適合性を考慮する必要がある[32]。この配合の適合性の問題は「配合変化」と呼ばれ[40]、配合を回避すべき場合は「配合禁忌」と呼ばれる[41]。配合禁忌は、分子安定性の問題、溶解度の変化、または一方の薬剤の分解によって生じる可能性がある[32]
器材と方法
点滴セット
点滴装置は、ガラス瓶あるいは合成樹脂製バッグに無菌充填された薬液と、薬液ボトルに刺入される針と、合成樹脂製のチューブ、留置針に接続するためのコネクタが一体となった、「点滴ライン」あるいは「点滴セット」より成る。点滴セットは感染を防ぐために滅菌済みであり、輸液や留置針に接続する際は、無菌操作が要求される[42]。
三方活栓
点滴セットの途中からは他の薬剤を投与したり、別の点滴セットを接続するための開口部が存在するが、非使用時は切り替えバルブで開口部が閉鎖されるようになっている。この部分を三方活栓という。医療現場では略語の三活が用いられることもある[43]。さらに開口部に汚染防止のためのフタがついていることもあるが、フタと三方活栓との間隙が清掃困難であるために、むしろ汚染しやすいとされ[44]、フタや三方活栓そのものが撤廃されて注入用のポートのみを有する点滴セットが主流となりつつある[45]。
静脈アクセスの種類
注射針
静脈路確保の最も単純な方法は、注射針を皮膚から直接静脈に刺す方法である。この針に注射器を直接接続することで、「ボーラス投与」、すなわち、薬剤の単回急速投与が可能になる。あるいは、カテーテルを留置してからチューブに接続し、点滴を行うこともできる[46]。 静脈路の種類と場所(すなわち、中心ラインか末梢ラインか、どの静脈にラインを留置するか)は、末梢静脈への循環を制限する末梢血管収縮を引き起こす薬剤であるかどうかによって影響を受ける[47]。
カテーテル・カニューレ
金属製の針ではなく、合成樹脂製の柔らかいカテーテル(又はカニューレとも呼ばれる)も良く用いられる。末梢静脈カテーテルは、病院内、プレホスピタルケア、および外来診療で利用される最も一般的な静脈アクセス法である[48]。カニューレは腕、一般的には手首または肘正中静脈に留置する[48]。駆血帯は、手足の静脈からの血液流出を制限し、静脈を膨らませて、静脈の位置を確認しやすくし、静脈にラインを留置しやすくするために使用される[48]。駆血帯を使用する場合は、薬剤の注入前に駆血帯を外し、血管外漏出を防ぐ。カテーテルの皮膚の外側に残る部分は接続ハブと呼ばれ、注射器や点滴ラインと接続したり、ヘパリン添加生理食塩水または単なる生理食塩水で「ロック」される[48]。ロックとは、カテーテルを使用しない間に、カテーテル内での血液凝固によるカテーテル閉塞を防ぐために、上述の輸液をカテーテル内で陽圧充填した状態でカテーテルに「フタ」をしておくものである[48]。ポート付きカテーテルは上部に注入ポートがあり、しばしば薬剤の投与に使用される [48]。
針とカテーテルの太さ、大きさの規格には、バーミンガム・ゲージとフレンチ・ゲージがある[49]。バーミンガムゲージの14は相当太いカテーテル(心肺蘇生用)であり、24~26は最小である[49]。最も一般的なサイズは、16ゲージ(献血や輸血に使用される中型ライン)、18ゲージおよび20ゲージ(輸液や採血用の汎用ライン)、22ゲージ(小児用の汎用ライン)である[49]。12~14ゲージの末梢ラインは、大量の輸液を迅速に行うことができるため、救急医療で人気がある[49]。これらのラインは、しばしば「大径(large bore)」または「外傷ライン(trauma line)」と呼ばれる[49]。
翼状針
翼状針(よくじょうしん)は注射針と薬液投与用のカテーテルが一体となったものである[50]。金属針を体内に留置するため、柔らかい末梢静脈カテーテルのように長時間の留置には不向きだが、短時間の処置に用いられている[50]。採血専用の製品もある[51]。
末梢ライン
末梢静脈カテーテルは、腕、手、足などの末梢静脈に挿入する[46]。この方法で投与された薬剤は、静脈を通って心臓に到達し、そこから循環系を通じて全身に行き渡る。末梢静脈の太さにより、安全に投与できる薬剤の量と速度が制限される[53]。末梢ラインは、皮膚から末梢静脈に挿入される短いカテーテルで構成される[46]。これは通常、金属製の内針に柔軟なプラスチック製の外筒が被さった形状である[46]。外筒と内針の先端を合わせたら、両者を静脈内の適切な位置まで進め、固定する。その後、内針を引き抜いて廃棄する[46]。最初の外筒挿入後、そこから直接採血することもある[46]。
中心静脈ライン
中心静脈ラインは、カテーテルがより太い中枢側の静脈(胴体内の静脈)、通常は上大静脈、下大静脈、または心臓の右心房に挿入される静脈アクセスである[54]。中心静脈アクセスにはいくつかのタイプがあり、カテーテルが体外からいわゆる中心静脈に到達する経路に基づいて分類される[54]。
PICCライン
末梢挿入型中心静脈カテーテル(Peripherally inserted central catheter)(PICCライン、ピックラインとも呼ばれる)は、中心静脈カテーテルの一種であり、シースを通して末梢静脈に挿入されたカテーテルを心臓に向けて慎重に送り、上大静脈または右心房に末端を留置する[55]。これらのラインは通常、腕の末梢静脈に留置され、超音波ガイド下でセルディンガー法を用いて留置されることもある[55]。挿入時に透視を行わなかった場合は、カテーテルの先端が正しい位置にあることを確認するためにX線検査が行われる[55]。カテーテルの先端が正しい位置にあるかどうかを判断するために、心電図で判断する場合もある[55]。
トンネル型カテーテル
トンネル型カテーテルは中心静脈カテーテルの一種で、皮膚の下に挿入されてから中心静脈に到達するまでにかなりの距離がある。トンネル型ラインを使用すると、皮膚表面の細菌が静脈内に直接移動できないため、他の静脈アクセスと比較して感染のリスクが低下する[56]。トンネル型中心静脈ラインには、ヒックマンカテーテルやブロビアックカテーテルなどがある。トンネル型ラインは、腎機能が低下した人の血液透析に必要な長期静脈アクセスの選択肢である[57]。
埋め込み型ポート
埋め込み型ポートとは、薬剤投与のための皮膚から突出する外部コネクタを持たない中心ラインのことである。その代わり、ポートはシリコンゴムで覆われた小さなリザーバーで構成されており、このリザーバーを皮下に埋め込む。薬剤の投与は、皮膚とシリコン製のポートカバーを通してリザーバーに薬剤を注入することによって行われる。注射針が抜かれると、リザーバーカバーは自ら再密閉する。ポートカバーは、その寿命の間、数百回の注射針刺入に対して機能するように設計されている。ポートは腕または胸部に設置される[58]。
自然滴下/輸液ポンプ
輸液のための点滴ラインの設置および管理に使用される機器は、通常、患者の身長より高い位置に吊るされた輸液バッグと、薬剤を投与するための滅菌チューブの点滴セットで構成されている[59]。基本的な "自然滴下"点滴では、バッグを人の背丈より高い位置に吊るし、静脈に刺した針に取り付けたチューブを通して薬液を重力で滴下するだけである[59]。追加の装置がなければ、投与速度を正確に制御することはできない。このため、流量を調節するためのクランプを組み込んだ点滴セットもある[59]。点滴セットには、「Y管」と呼ばれる、同じラインを通して他の輸液を投与できるパーツ(側管とも呼ばれる)が組み込まれている場合もある[59]。空気塞栓の原因となる空気の血流への流入を防ぎ、滴下流量を視覚的に推定できるドリップチャンバーを採用しているシステムもある[59]。
輸液ポンプを使用すると、流量と総輸液量を正確に制御することができる[59]。ポンプは、投与する輸液の数と大きさに基づいてプログラムされ、点滴が空にならないように、すべての薬液が完全に投与されるようにする[59]。ポンプは主に、一定の流量が重要な場合、または投与速度の変化が臨床上、有意な結果を生じる場合に利用される[59]。
手技
手技に伴う痛みを軽減するために、穿刺の約45分前に局所麻酔薬(エムラクリームやテトラカイン外用薬など)を静脈穿刺部位の皮膚に塗布してもよい[60]。冷却スプレーは、静脈路確保の際の疼痛を軽減する可能性がある[61]。
カテーテルが正しく挿入されていなかったり、静脈が特にもろくて破れたりすると、血液が周囲の組織に漏れることがある[62]。このような状況も、点滴漏れ、静脈の破裂、または「組織化(tissuing)」として知られている[62]。このカテーテルを使用して薬剤を投与すると、薬剤が血管外に漏出し、浮腫を引き起こし、痛みや組織の損傷を引き起こし、薬剤によっては壊死を起こすこともある[62]。静脈路確保を試みる際は、損傷した静脈からの薬剤の滲出を防ぐために、「漏れた」部位の近位に新しいアクセス部位を見つけなければならない[62]。このため、最初のカテーテルは四肢の最も遠位の適切な静脈に留置することが望ましい[62]。
副作用
痛み
静脈ラインの留置は、皮膚を貫くときに痛みを伴い、医学的に侵襲的と考えられる。このため、他の投与経路で十分な場合には、静脈内投与は通常好まれない。軽度または中等度の脱水の治療も、点滴ラインによる非経口的水分補給よりも、経口補水療法が優先される[63][64]。救急外来での小児の脱水の治療は、点滴ラインの疼痛と合併症のために、点滴療法よりも経口療法の方が良好な転帰を示す[63]。
ある種の薬剤には、静脈内投与に伴う特有の痛みの感覚もある。これには塩化カリウムが含まれ、静脈内投与すると灼熱感や痛みを感じることがある[65] 。薬物特有の副作用の発生率は、アクセスの種類(末梢静脈か中心静脈か)、投与速度、または投与する薬物の量に影響されることがある。薬剤を静脈ラインから急速に投与しすぎると、発赤や発疹、発熱などの一連の漠然とした症状が現れることがある;これは「急性輸液反応」と呼ばれ[66]、軽症ならば薬剤の投与速度を低下させることで反応を軽減できる[67]。バンコマイシンが関与する場合、これは一般に、急速投与後に起こる急激な潮紅にちなんで「レッドマン症候群」と呼ばれる[68]。
感染と炎症
静脈ラインの留置には皮膚を貫通する必要があるため、感染のリスクがある[69]。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌やカンジダ・アルビカンスなどの皮膚常在菌がカテーテル周囲の挿入部位から侵入したり、汚染された器具から誤って細菌がカテーテル内部に侵入したりすることがある[69]。静脈アクセス部位の感染は通常局所的で、目に見えやすい腫脹、発赤、発熱を引き起こす[69]。しかし、病原菌が血流に入り込んで敗血症を引き起こすこともあり、突然生命を脅かすこともある[69]。中心静脈ラインは、中枢の循環に直接細菌を送り込む可能性があるため、敗血症のリスクが高くなる[69]。留置期間が長いラインも感染のリスクを高める[69]。
静脈の炎症も起こることがあり、血栓性静脈炎または単に静脈炎と呼ばれる。この炎症は、感染、カテーテル自体、または投与される特定の輸液や薬物によって引き起こされることがある。静脈炎を繰り返すと、静脈に沿って瘢痕組織が形成されることがある。末梢静脈ラインは、感染症や静脈炎などの合併症の危険性があるため、いつまでも静脈内に留置しておくことはできない。しかし、最近の研究では、臨床的に適切な場合にのみ点滴を交換しても、ルーチンの点滴交換と比較して、合併症のリスクが増加しないことが判明している[70]。適切な無菌的手技で留置する場合、末梢静脈ラインを72~96時間ごとを超える頻度で交換することは推奨されない[71]。
静脈炎は、静脈内薬物使用者[72]および化学療法を受けている患者[73]に特によくみられ、静脈は時間の経過とともに硬化してアクセスが困難になり、時には硬くて痛みを伴う「静脈索"venous cord".」が形成されることがある。索の存在は、点滴治療に伴う不快感や疼痛の原因であり、索のある部位には静脈ラインを留置できないため、静脈ラインの留置がより困難になる[74]。
点滴漏れ
点滴漏れは、輸液または薬剤が目的の静脈ではなく周囲の組織に入ることで起こる。これは、静脈自体が破れた場合、血管内留置器具の挿入中に静脈が損傷した場合、または静脈の透過性が増加した場合にも発生する。点滴漏れはまた、針による静脈の穿刺部位が最も注入抵抗の少ない部位-たとえば挿入したままのカテーテル-になり、静脈に瘢痕による狭窄ないしは閉塞が生じた場合にも起こる。また、静脈ラインを挿入する際に、駆血帯を速やかに外さなければ起こることもある。浸潤は、皮膚の冷感や蒼白、局所の腫脹や浮腫を特徴とする。静脈ラインを外し、患肢を挙上して溜まった液体が排出されるようにすることで治療する。患部周辺にヒアルロニダーゼを注射することで、輸液/薬剤の拡散を早めることができる[75][注釈 3]。点滴漏れは、点滴の最も一般的な副作用のひとつであり[76]、漏れた薬液が周囲組織に損傷を与える薬剤、例えば刺激性物質または化学療法薬でない限り、通常は重篤ではない。漏れた薬液が組織傷害性の場合、血管外漏出と呼ばれ、その部分の壊死を引き起こすことがある[77]。
その他の合併症
投与される輸液が体温より低い場合、低体温症が起こりうる。心臓への温度変化が急激な場合、致死的不整脈である心室細動が起こる可能性がある[78]。さらに、血液と浸透圧が等しくない溶液を投与した場合、電解質のバランスが崩れる可能性がある。病院では、定期的な血液検査で電解質濃度を積極的に監視している[79]。低体温が起こると、血小板機能低下や血管反応性低下などにより、出血が増加するので産科などの出血時には輸血・輸液加温器の使用が推奨されている[80]。
歴史
発見と開発
点滴による治療物質投与の最初の試みは、1492年、教皇インノケンティウス8世が病に倒れ、健康な人の血液を投与されたことであると記録されている[81][82]。この場合の治療はうまくいかず、教皇は治癒することなく、供血者も死に至った[81][82]。この話には異論もあり、当時の医療関係者には輸血という発想はあり得なかったとか、血液循環に関する完全な記述が発表されたのは100年以上経ってからであったと主張する者もいる[82]。この話は、当時の文献の翻訳に誤りがあった可能性や、意図的な捏造の可能性があるとされているが、今でも正確であると考える人もいる[82]。医学生や看護学生向けの主要な医学史教科書のひとつは、この話全体が反ユダヤ主義的な捏造であると主張している[83]。
1656年、イギリスの建築家クリストファー・レン卿と自然哲学者ロバート・ボイルがこのテーマに取り組んだ[84]。「私は生きている犬にワインとエールを静脈から血の塊に注入した。酔っ払うまで大量に注入したが、すぐに尿に排出された」とレンが述べた。犬は生き延びて太り、後に飼い主から盗まれた。ボイルはこの記録の著者をレンとした[84]。
イギリスの医師リチャード・ロウアーは、動物から動物へ、動物から人間への静脈内輸血(異種輸血)が可能であることを示した。彼は外科医エドモンド・キングと協力して、精神を病んだ男性に羊の血液を輸血した。ロウアーは科学の進歩に興味があったが、同時に、新鮮な血液を注入するか、古い血液を除去することで、この男性を救うことができると信じていた。輸血に同意してくれる人を見つけるのは難しかったが、風変わりな学者であるアーサー・コガが同意し、1667年11月23日に王立協会の前でロウアーとキングによって輸血が行われた[85]。輸血はフランスとイタリアで一定の人気を集めたが、医学的・神学的な論争が起こり、その結果フランスでは輸血が禁止された。
1831年にエジンバラの医師トーマス・ラッタがコレラ治療のための静脈内補液の使用を研究した1800年代まで、注射療法の試みで成功したという記録はほとんどなかった[81][86]。静脈注射に広く使用されるようになった最初の溶液は、単純な「生理食塩水のような溶液」であり、その後、牛乳、砂糖、蜂蜜、卵黄など、様々な他の液体を用いた実験が行われた[81]。1830年代、英国の産科医であったジェームズ・ブランデルは、分娩中または分娩後に大量出血した女性の治療に血液の静脈内投与を用いた[81][87]。これは血液型が理解される以前のことであり、予測不可能な結果を招いた[注釈 4]。
近現代
静脈内注射法は、1890年代後半にイタリアの医師グイード・バチェリによって拡大され[89]、1930年代にサミュエル・ヒルシュフェルト、ハロルド・T・ハイマン、ジャスティン・ジョンストン[90][91]によってさらに開発されたが、1950年代までは広く利用されていなかった。今日では静脈内注射で行われている水分補給が、マーフィー点滴(直腸点滴)で行われていた時代(およそ1910年代から1920年代)もあったが、静脈内投与がそれらの投与方法に徐々にとってかわっていった。しかし、高濃度の栄養剤や抗がん剤などは末梢静脈から投与した場合は、血管を痛めてしまう問題があった。1929年、ドイツの外科研修医ヴェルナー・フォルスマンが、プラスチック製の尿道カテーテルを自分の右腕の尺側皮静脈に挿入し、右心房まで到達させた(初のヒトでの中心静脈カテーテル)[92]。しかし、上司に無許可であったために叱責され、彼は病院を解雇されてしまった[92]。だが、この手技の医学上の貢献が後に評価され、1956年にノーベル医学賞を授与された[93][94]。
プラスチック製のカニューレを挿入し、針を引き抜く方法は、1945年に技術導入された[95]。1970年代から1980年代にかけて、プラスチック製カニューレの使用が日常化し、その挿入は看護スタッフに委ねられることが多くなった[96]。
フォルスマンの貢献により、静脈内注射で使用できる薬剤と血管の選択肢が広がったが、中心静脈にカテーテルを入れるためには小手術で目標血管そのものに直接カテーテルを入れるか、太い針で血管を穿刺して、その中からカテーテルを入れる必要があった。1953年、スウェーデンの放射線科医、スヴェン・イヴァー・セルディンガーが血管を細い針で穿刺して、その中からまず、ワイヤーを留置し、そのワイヤーをガイドにして太いカテーテルを入れる手技を開発し、これによってカテーテル留置の安全性と確実性が高まった[97]。
1960年代には、必要な栄養をすべて点滴で補給するというコンセプトが真剣に検討され始めた。最初の静脈栄養は、タンパク加水分解物およびブドウ糖から成っていた[81]。これに続いて1975年に、完全静脈栄養、すなわちタンパク質、脂肪、および炭水化物を含む栄養剤を形成するために添加される静脈内脂肪乳剤およびビタミンが開発された[81]。
脚注
注釈
出典
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関連文献
- Royal College of Nursing, Standards for Infusion Therapy (Archive of the 4th edition (December 2016) via the Internet Wayback Machine)
関連項目
- バクスターの公式
- 生命維持
- ニードルレスコネクタ
- Rehydrex- 海外で販売されている血漿増量剤の一種
外部リンク
- ウィキメディア・コモンズには、静脈注射に関するカテゴリがあります。
- 日本静脈経腸栄養学会 (JSPEN)