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点耳剤

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
点耳剤を投与する様子

点耳剤(てんじざい)あるいは点耳薬(てんじやく)[注釈 1]は、外耳または中耳に投与する外用薬である。処方箋などでは「EDR」と略記することがある[2]

剤形

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ネオマイシンポリミキシンBの複合剤 (en。赤字で「For use in ears only(点耳専用)」と明記されている。

外耳炎中耳炎などに適用する抗菌薬ステロイド剤などがあり、液状や半固形の薬剤、あるいは使用時に固形の製剤を溶解・懸濁するタイプがある[3]。耳垢塞栓には、耳垢を軟化させる耳垢除去剤英語版が用いられる。日本では、セフメノキシム英語版塩酸塩「(商標名)ベストロン」、ホスホマイシンナトリウム「ホスミシンS」、オフロキサシン「タリビッド」、塩酸ロメフロキサシン「ロメフロン」、クロラムフェニコール「クロロマイセチン」などの点耳抗菌薬が臨床使用されている[4]。点耳剤と同じ有効成分を使用した点眼剤があるが、濃度や添加剤の有無などが異なるため、相互に代用することはできない。点眼剤と容器形状が類似した点耳剤には、誤用防止のため赤枠内に赤字で「目に入れない」と注意書きが記されている[5]。水性点耳剤には精製水あるいは適切な水性溶媒、非水性点耳剤には主に植物油が使用され、適切な有機溶媒が用いられる場合がある[6]。綿棒などで外耳道を拭き、患部のある耳を上に向け、薬液を滴下する。2~3分そのままの姿勢でいることで、薬液が患部に到達する[7]。薬液を耳に注入し、5~10分ほどとどめておくことを「耳浴」という。古くから行われている治療法であるが、漫然と行うことによりかえって症状を悪化させる弊害も指摘されている[8]

冷蔵した薬剤を点耳すると回転性のめまいを生じることがある。外耳道中耳周辺の温度が急速に低下し、前庭が刺激されることに起因するためで、体温程度に温めて使用することで軽減することができる[9]

外耳の湿疹皮膚炎に対しては、糖質コルチコイドベタメタゾンリン酸エステルナトリウムと抗生物質フラジオマイシン硫酸塩を有効成分とする軟膏剤(販売名「眼・耳科用リンデロンA軟膏」)が処方されることがある。この軟膏剤は眼科・耳鼻科共通である[10]

脚注

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注釈

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  1. ^ 日本薬局方の製剤総則では「点耳剤」の表記で記載されている[1]

出典

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  1. ^ (案)第十八改正日本薬局方 (PDF)
  2. ^ 投与剤形一覧 (PDF)医薬品医療機器総合機構
  3. ^ (山本 2017, p. 160)
  4. ^ 中耳炎・外耳炎に点耳薬、有効成分が従来の5倍”. 日経メディカル (2023年6月16日). 2024年9月13日閲覧。
  5. ^ 点鼻薬・点耳薬の使い方」(PDF)『お薬のしおり』第74巻、東京医科大学病院薬剤部、2007年11月、2024年9月14日閲覧 
  6. ^ (河島 2005, pp. 234–235)
  7. ^ 点耳・耳浴療法のおはなし (PDF)キョーリン製薬
  8. ^ 関谷 忠雄「耳浴療法の功罪」(PDF)『耳鼻咽喉科臨床』第66巻第6号、耳鼻咽喉科臨床学会、1973年、693-694頁、2024年9月17日閲覧 
  9. ^ 患者指導ワンポイント Lesson8 点耳薬の使い方」『日経ドラッグインフォメーション』第182巻、日経BP、2012年12月10日、2024年9月13日閲覧 
  10. ^ 眼・耳科用リンデロンA軟膏(医薬品医療機器総合機構)

参考文献

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  • 河島進 編『わかりやすい物理薬剤学』廣川書店、2005年。ISBN 978-4-567-48265-3 
  • 山本昌・岡本浩一・尾関哲也 編『製剤学』(改訂第7版)南江堂、2017年。ISBN 978-4-524-40347-9