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バンコマイシン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
レッドマン症候群から転送)
バンコマイシン
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
胎児危険度分類
法的規制
  • S4 (Au), POM (UK), ℞-only (U.S.)
薬物動態データ
生物学的利用能ごくわずか (口腔)
代謝代謝されずそのまま排出
半減期4–11 時間 (大人)
6-10 日(腎機能が低下した大人)
排泄腎臓
データベースID
CAS番号
1404-90-6
ATCコード A07AA09 (WHO) J01XA01 (WHO)
PubChem CID: 14969
DrugBank APRD01287
KEGG D00212
化学的データ
化学式C66H75Cl2N9O24
分子量1449.3 g·mol-1
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バンコマイシン (Vancomycin、VCM) は、グリコペプチド系抗生物質のひとつ[1]

真正細菌細胞壁合成酵素の基質であるD-アラニル-D-アラニンに結合して細胞壁合成酵素を阻害し、菌の増殖を阻止する働きがある[1]。大部分のグラム陽性菌に殺菌作用をもち、腸球菌に対しては静菌作用がある。

ペニシリン等のβ-ラクタム系抗生物質とは作用機序が異なるため、ほとんどの抗生物質が効かないメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) を殺菌できる[1]。このため、過去には最強の抗生物質といわれたこともあった[要出典]。塩酸バンコマイシンは内服してもほとんど吸収されることがないため、などの消化管内の静菌・殺菌に有効である。内服または点滴静注で使用される。点滴静注による急速投与が原因となり、Red neck (Red man) syndromeと呼ばれる皮膚合併症や血圧低下などを来たす場合がある。

腎毒性があるため、投与中は血中濃度を測定し、治療域に維持する投与量にすることが推奨される。腎機能の低下した患者に対する投与は注意が必要であり、薬物動態理論を用いた投与設計を行う。しかし、薬物動態理論を用いた投与設計を日常診療として行うには、感染制御専門薬剤師による助言が必要なことが多く、実際に投与開始時から行っている施設は少ない。一般の病院では、同系統で腎機能障害が軽いとされているテイコプラニン (TEIC) か別の系統であるリネゾリドを用いることになる。この場合には、バンコマイシン耐性の腸球菌に対しても有効なリネゾリドの使用頻度が高くなり、リネゾリド耐性菌が増加する可能性が懸念される。

1956年イーライリリー・アンド・カンパニーが開発し、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) の治療に用いられてきたが、1986年イギリスフランスバンコマイシンに耐性のある腸球菌 (VRE) の存在が報告され、さらに病原性の高いバンコマイシン低度耐性黄色ブドウ球菌 (VISA) (1996年)とバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌 (VRSA)(2002年)の存在が報告された。

薬理作用

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細胞壁合成阻害薬に分類される。ムレイン単体生合成を阻害する。同様にムレイン単体生合成を阻害するものにホスホマイシンがある[2]

特徴

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MRSA感染が疑われる黄色ブドウ球菌菌血症患者において、ST合剤治療群ではバンコマイシン治療群に比べ、30日死亡率は1.90倍高かった[3]

全合成

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キリアコス・コスタ・ニコラウらを含む複数のグループによって、全合成が達成されている[1][4][5][6]

出典

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  1. ^ a b c d 高柳大「バンコマイシンの全合成研究 -K.C.Nicolaou研究室に留学して-」『有機合成化学協会誌』第60巻第3号、有機合成化学協会、240-249頁、doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.60.240 
  2. ^ βラクタム系抗生物質はムレイン分子間架橋を阻害するため、薬理作用は異なる
  3. ^ Paul M et al. Trimethoprim-sulfamethoxazole versus vancomycin for severe infections caused by meticillin resistant Staphylococcus aureus: Randomised control trial. BMJ 2015 May 14; 350:h2219. doi:10.1136/bmj.h2219
  4. ^ Evans D. A.; Wood M. R.; Trotter B. W.; Richardson T. I.; Barrow J. C.; Katz J. L. (1998). “Total Syntheses of Vancomycin and Eremomycin Aglycons”. Angew. Chem. Int. Ed. 37: 2700–2704. doi:10.1002/(SICI)1521-3773(19981016)37:19<2700::AID-ANIE2700>3.0.CO;2-P. 
  5. ^ Nicolaou K. C.; Mitchell H. J.; Jain N. F.; Winssinger N.; Hughes R.; Bando T. (1999). “Total Synthesis of Vancomycin”. Angew. Chem. Int. Ed. 38: 240–244. doi:10.1002/(SICI)1521-3773(19990115)38:1/2<240::AID-ANIE240>3.0.CO;2-5. 
  6. ^ Organic Synthesis Highlights IV Hans-Günther Schmalz - 26 september 2008 John Wiley & Sons - Uitgever

外部リンク

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