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== 日本のETC ==
== 日本のETC ==
[[日本]]では一般に'''イーティーシー'''と呼ばれる<ref group="注釈">2001年に行なわれた国土交通省主催のETC愛称コンテストによって国土交通省は'''イーテック'''という愛称を付与したがほとんど浸透していない。 ※参考:[http://web.archive.org/web/20011230184244/http://www.mlit.go.jp/road/press/press01/20010717/20010717.html 「ETC愛称コンテスト」の開催について] - 国土交通省 2001年7月17日(2001年7月17日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])・[http://web.archive.org/web/20020612073529/http://www.mlit.go.jp/road/press/press01/20011128/20011128.html ETC(ノンストップ自動料金支払いシステム)の全国展開について] - 国土交通省 2001年11月28日(2002年6月12日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref> ほか、「ノンストップ自動料金'''支払い'''システム」と呼ばれることもある。「ETC」およびETCロゴは[[道路システム高度化推進機構|(一財)ITSサービス高度化機構(ITS-TEA)]]の[[商標|登録商標]]である。
[[日本]]では一般に'''イーティーシー'''と呼ばれる<ref group="注釈">2001年に行なわれた国土交通省主催のETC愛称コンテストによって国土交通省は'''イーテック'''という愛称を付与したがほとんど浸透していない。 ※参考:[http://web.archive.org/web/20011230184244/http://www.mlit.go.jp/road/press/press01/20010717/20010717.html 「ETC愛称コンテスト」の開催について] - 国土交通省 2001年7月17日(2001年7月17日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])・[http://web.archive.org/web/20020612073529/http://www.mlit.go.jp/road/press/press01/20011128/20011128.html ETC(ノンストップ自動料金支払いシステム)の全国展開について] - 国土交通省 2001年11月28日(2002年6月12日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref> ほか、「ノンストップ自動料金'''支払い'''システム」と呼ばれることもある。「ETC」およびETCロゴは[[道路システム高度化推進機構|(一財)ITSサービス高度化機構(ITS-TEA)]]の[[商標|登録商標]]である。
2015年時点で、5000万台以上の自動車にETC車載機が取り付けられており、高速道路におけるETC利用率は90%を超えている。
2015年時点で、5000万台以上の自動車にETC車載機が取り付けられており、高速道路におけるETC利用率は90%を超えている。



2017年9月4日 (月) 13:55時点における版

ETCレーンの設置事例。中央のレーンがETC対応。 - 東名高速道路御殿場IC第一入口
ETCレーンを知らせる標識(通称「手形標識」)

電子料金収受システム英語: Electronic Toll Collection System :エレクトロニック・トール・コレクション・システム, 略称ETC)とは、高度道路交通システムのひとつ。有料道路を利用する際に料金所で停止することなく通過できるノンストップ自動料金収受システムである。

概要

ETCは無線通信を利用して通行車両の料金の収受を行うシステムである。

世界各国で同様の料金収受システムが構築されている。ただし、課金システムや料金所の構造は一致していない。

高度道路交通システム(ITS)の一翼を担う道路交通技術であり[1]、ETC車載器を搭載する車が、有料道路の渋滞の原因ともなっている料金所を停止することなく、通行料金を精算できるシステムであることから、高速道路における交通渋滞の緩和に役立てられている[2]。また、ETCの導入によって曜日や時間帯ごとの混雑に応じた料金設定が技術的に容易となり、過剰な混雑を軽減するための料金設定の組み合わせを行うことが可能となった[3]

機構

ETC車載器 本体部
首都高速出口に設置されているフリーフローETC

ETC車載器(以下、車載器)を導入した自動車が料金所のETCレーンに進入すると、無線通信により車載器と料金所の間で料金精算に必要な情報(車両の情報、ETCカードの番号、入口料金所、出口料金所、通行料金など)が交換される。通信が正しく行われ、情報に問題がなければ、ETCレーンに設置された発進制御棒(以下、開閉バー)が開き、車両は停止せずにそのままレーンを通過できる[4]。ETCレーンを通過する際はETCカードをあらかじめ車載器に挿入し、車載器によるカードの認証を終えている必要がある。車載器がカードの認証を終えていない場合、または通信中に何らかの異常があった場合や情報が正しくない場合などには開閉バーが開かず、料金所を通過できない。なお、無線通行をしない場合は「一般」または「ETC/一般」の表示があるレーンを利用する。この場合、対応している有料道路であればETCカードを料金精算に利用できる(ETCレーンがない場合を参照)。

車載器には、あらかじめ設置する車両の情報を登録しなければならない(セットアップ。後述)。

料金所にはアンテナや車両検知器などの「路側装置」が設置されており、ETCカードをセットした車載器と交信が行われ課金情報を送信する。「路側装置」より利用明細が「中央処理装置」に送られ、課金情報をもとにユーザーに請求が行われる[5]

また、前払い方式を導入している道路は、車両の利用区間を確認する為、料金所のない出口に「フリーフローETC」が設置されていることから、入口のETCレーンを通過した後も走行中はETCカードを抜いてはならない。

通信に利用している周波数は5.8GHz帯で、ISMバンドアマチュア無線と共用している。通信速度は1,024kbpsで、ASKを使ったDSRC(Dedicated Short Range Communication:専用狭域通信)という通信方式が使われている。高速道路本線上または都市高速の出口などに設置されている「フリーフローETC」は180km/h、料金所のETCレーンでは80km/hの速度で通過しても通信が可能である。

ただし、ETCカードの挿し忘れや通信エラーなどで、開閉バーが開かなくても衝突せずに確実に停止可能な速度で料金所のレーンを通過しなければ危険である。各事業者は、ETCシステム利用規程などで定め、20 km/h以下の低速で料金所を通過するよう、周知活動を行った。しかし、速度超過でのレーン進入に起因するETCのブースや開閉バーを破壊する事例が相次いだため、NEXCO中日本を皮切りにNEXCO西日本東日本をはじめ首都高速阪神高速など多くの高速道路会社で、開閉バーの開くタイミングを遅らせることで過剰な速度での通行を防ぐ対策を順次実施している。

一旦停止を必要とする「スマートインターチェンジ」も実用化に向けて各地で実験が進められ、その一部は2006年10月1日から恒久化されている。

フリーフローETCシステムとは、車両を停止もしくは速度を落とさなくても料金収受が可能なETCシステムで、画像処理装置と車載器位置検出装置により通信を行い、ETCゲートが不要となり、渋滞緩和やコスト削減が期待できる次世代ETCのこと。首都高速道路阪神高速名二環などの一部で使用されている。

料金所の路側機器

ETC対応レーンの路側装置は、手前進入口側より順に以下のように設置されている。 ただし、これは一例であり料金が対距離料金制か均一料金か、対距離の入口か出口かによって設備構成に多少の違いがある。

ETCレーンの路側機器の例。導入している高速道路会社や導入時期により複数のタイプが存在する
  1. 車両検知器1
  2. 車両検知器2
  3. 無線アンテナと運用表示板
  4. 車両検知器3
  5. 収受ブース
  6. 路側表示板
  7. 車両検知器4
  8. 開閉バー
  9. 監視カメラ

車載器の種類

ETC車載器 ビルトインタイプ

ETCの車載器をハードウェアの形式で分類すると、無線通信を行うアンテナ部を別ユニットで持ち、ETCカードと併せて3つのパーツから成り立つ3ピース(アンテナ分離型)と、アンテナ部を内蔵した2ピース(アンテナ一体型)の二つのタイプがある。

ソフトウェアの機能で分類すると、カードの入れ忘れなどをブザーで知らせるタイプと、音声で料金などを案内するタイプの二つがある。
利用履歴を、連動したカーナビゲーションで管理できるものもある。

また2009年以降、車載器のDSRC通信を利用してITSスポットでのETC2.0サービスを利用する為の機能を搭載した機器も開発・発売されている。対応車載器は「ETC2.0対応車載器」または「DSRC車載器」として従来型ETCとは差別化している。通常のETC車載器として利用できるだけでなく対応カーナビゲーションと連動させることでサービスを利用する事が出来るものや、カーナビゲーションを必要としない発話型車載器が発売されている。[6](後述の#ETC2.0対応車載器も参照のこと)

セットアップ

車載器には、あらかじめ設置する車両の情報を登録しなければならない。これをセットアップといい、車載器がセットアップされていない場合、無線通行は利用できない。車両の入れ替え、車載器の譲渡などで車載器を別の車に移す場合には再セットアップ(作業自体は通常のセットアップと同じ)を行う必要がある[注釈 1]。セットアップが行ってあればどのETCカードでも利用可能であり、料金は利用時に挿入されているETCカードの契約者が支払う。なお、セットアップは有料で、セットアップ店というITS-TEAに登録された店舗でしか行えないようになっている。

セットアップ方法は以下の2通り。

  • オンラインセットアップ
ITS-TEAとセットアップ店間で、情報をオンラインで送受信する。ETCカードがあれば当日から利用できる。
  • オフラインセットアップ
セットアップ情報を郵便かFAXで伝達する。完了までおおむね1週間ほどかかる。

セットアップは以下の流れで行われる。

  1. セットアップ店にて「セットアップ申込書」を記入しITS-TEAに申請する
  2. ITS-TEAが「セットアップ情報」を生成しセットアップ店に伝達する
  3. セットアップ情報が書き込まれた「ETCセットアップカード」を車載器に読み込ませる[7]
  4. 「セットアップ証明書」が渡される

日本のETC

日本では一般にイーティーシーと呼ばれる[注釈 2] ほか、「ノンストップ自動料金支払いシステム」と呼ばれることもある。「ETC」およびETCロゴは(一財)ITSサービス高度化機構(ITS-TEA)登録商標である。 2015年時点で、5000万台以上の自動車にETC車載機が取り付けられており、高速道路におけるETC利用率は90%を超えている。

日本で有料道路の利用者がETCシステムを利用するためには、利用者がETC車載器を購入して車に装備してセットアップし、並行してクレジットカード会社にETCカードの発行を申請して、車載器に挿入する準備が必要となる。有料道路を利用すると、通行料金は自動的にクレジットカード会社を通して口座から引き落とされる仕組みである[8]。車載器、ETCカード共に、「(一財)ITSサービス高度化機構(ITS-TEA)」(旧・一般財団法人道路システム高度化推進機構)がクレジット会社やセットアップ店を通じて利用申請を受け付け、情報配信している[8]。 日本のETCシステムは、インターチェンジにETC専用ゲートを整備しなければならず、さらに料金割引制度を受けたい高速道路利用者が、ETC車載器・ETCカード・セットアップ費用を用意しなければいけないなど、金銭的な負担、ハード依存が大きい。そのため、世界で最も高価かつ複雑なシステムで、こんなに高価になってしまったのは、旧建設省、旧運輸省警察庁などの省益がぶつかりあった結果で、もっと安価にすることも出来た筈だと指摘する論評もある[9]。そのため一部の出版社や識者からは、ETC機器を製造販売する組織の既得権益ではないかという声が挙がっている[10]

1997年平成9年)に小田原厚木道路小田原料金所で業務用車輛を対象に試験が開始され、2001年(平成13年)11月30日には、日本の高速道路において一般利用が開始された。日本では国土交通省が推進している。

2015年(平成27年)11月末現在、日本では累計6975万台の車両にETC車載器が取り付けられた(ただし、このうち再セットアップ件数が1788万台あるので、実台数は5187万台程度であると推定される)[11]。2015年12月時点におけるETC利用率は全国平均で90.3%であり、首都高速道路では週平均で93%を超えている[12]

日本での歴史

日本では、1997年3月小田原厚木道路小田原料金所で業務用車輛を対象に試験が開始された[13]。同年12月には東京湾アクアライン路線バスを対象に試験を実施[13]1999年10月にはORSEが車載器と路上アンテナの相互接続試験を開始し、またデンソー製車載器が初合格した。2000年4月24日には、東関東自動車道での試験が実施され、2000年7月1日には福岡高速道路榎田出入口に試験的に先行導入。2001年3月30日に千葉、沖縄地区において一般利用が開始された。同年7月23日、三大都市圏の一部区間において、同年11月30日には全国の高速道路において一般利用が開始された。

現況

一般利用開始後も当初は、利用登録料や車載器工事費の負担があり、ETCカードの発行申し込みが必要になるなど手続きが煩雑であるため普及が鈍かった。しかし、額面が3万円や5万円の高額なハイウェイカードの偽造問題による廃止や以前の法人向け割引である別納割引に代わりETCの利用が条件の大口・多頻度割引に移行したこと、これを含め後述のETC割引制度が拡充されたこと、更には車載器の価格低下等があり、主に深夜に長時間走行する長距離トラック、それに高速バスや観光バスを中心に急速に普及した。

2006年4月1日以降ハイウェイカードの利用が全面的に停止されたため、普及がさらに加速され、2014年4月現在の利用率は89%に達している。また、2012年1月1日以降[注釈 3] から首都高速道路阪神高速道路[注釈 4] の通行料金制度が、均一料金制から距離別料金制へ移行し、ETC非搭載車の首都高速・阪神高速の通行料金が事実上値上げとなるため、ETC車のさらなる増加が予想される。詳しい通行料金制度などは首都高速道路#2012年1月1日実施予定の距離別料金または阪神高速道路#2012年開始予定の対距離料金制を参照のこと。

ただ、高速道路の利用頻度が少ないドライバーやクレジットカードを持つことができないドライバーは車載器を所有しづらい。普及にも限界があり、利用率95%程度が上限であろうと考えられている。

2009年3月から始まった地方高速上限1,000円割引とそれに合わせて復活した台数限定の助成制度で購入希望者が殺到。車載器の生産が追いつかない状態が続き、仕入れ価格がメーカー希望小売価格を上回るほどに高騰したため、助成がすでに終了した2009年7月時点でも入手が困難な状態が続いていた。2009年9月頃になって、ようやく需要と供給が安定してカー用品店でも在庫が目立つ状況になった。このため、2009年前半よりは入手しやすくなっている。

2010年時点でのETC設置費用は、ETC車載機が6,000円~8,000円(売れ筋価格帯)、セットアップ料金3,150円、自動車への取り付け工事費3,000円~5,000円、合計で1万3,000円から1万5,000円程度である。

民主党高速道路無料化をマニフェストで提唱し、2010年度には高速道路無料化社会実験を一部路線で実施した。完全無料化が実施されると、無料化対象外の都市高速道路や地方道路公社路線を除いてETC車載器の需要がなくなるため、メーカー側は政権交代前後の時期に生産を控えていた。

2011年8月現在では東日本大震災の影響もあり6月まで実施されていた上述の高速1000円社会実験も停止された。

利用率の推移(統計)

ETC運用初期の料金所の状況の一例。ETC専用レーン(中央)の状況と比較して、一般レーン(両側)は渋滞している(2004年4月撮影)
ETCの普及の推移[14]
年・月 利用台数/日 利用率 うちETC2.0利用台数/日 うちETC2.0利用率 備考
2001年4月 7.2千台 -   
2002年4月 114.6千台 2.0%   
2003年4月 361.3千台 5.6%   
2004年4月 1,256千台 17.3%   
2005年4月 2,831千台 37.9%   
2006年4月 4,436千台 58.5%   
2007年4月 5,132千台 66.7%   
2008年4月 5,595千台 72.8%   
2009年4月 5,974千台 79.4%   
2010年4月 6,608千台 84.2%   
2011年4月 6,874千台 81.4%   
2012年4月 6,756千台 86.8%   
2013年4月 7,043千台 88.2%   
2014年4月 6,993千台 89.1%   
2015年4月 7,057千台 89.2%   
2016年4月 7,225千台 89.8% 121千台  1.5%
2017年4月 7,411千台 90.5% 1,070千台  13.1%

年表

  • 1994年9月 : 建設省、道路四公団によって、ノンストップ自動料金徴収システム共同研究推進委員会が設置される。
  • 1997年3月 : ETCの通信方式に関する電技審答申が出る。
  • 2001年11月30日 : ETC期間限定特別割引開始(申込:2002年6月30日まで。利用:2004年6月30日まで)。
  • 2002年7月19日 : ETC前払割引サービス開始。
  • 2002年11月 : ETCノンストップ走行時の障害者割引の適用開始(要申込)。
  • 2003年7月19日 : 高速道路の長距離割引社会実験開始(2004年3月18日終了)。
    • 現行のETC深夜割引とは異なる、300km以上の利用に対する割引率の上乗せという内容であった。
  • 2004年3月 : 高速道路網を形成する路線のほぼ全ての料金所に整備を完了。
  • 2004年11月1日 : ETC深夜割引開始。
  • 2005年1月11日 : ETC通勤割引およびETC早朝夜間割引開始。
  • 2005年4月1日 : 別納割引を廃止し、大口・多頻度割引に変更。
    • 利用者への周知不徹底により、開閉バーと車が接触するトラブルが2,000件以上発生。
  • 2005年4月1日 : ETCマイレージサービス開始。
  • 2005年10月: ETC利用率が50%を突破[14]

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  • 2005年11月11日 : 二輪車によるETCの一般モニターによる試験利用開始。
  • 2005年11月29日 : ETCパーソナルカード申込受付開始。
  • 2005年12月20日 : ETC前払割引サービスの内、前払金の支払(積み増し)の受付など一部サービスを終了。
  • 2005年12月25日 : ETC車載器のセットアップ累計台数が1,000万台を突破[15]
  • 2006年9月 : 首都高速道路の月間ETC利用率が70%を突破。
  • 2006年11月1日 : 全国の高速道路において二輪車によるETCの一般利用開始。
  • 2006年頃から : ETC非搭載の二輪車との接触事故を防ぐため、バーの長さを短くする。
  • 2007年11月 : ETC車載器のセットアップ累計台数が2,000万台を突破[16]
  • 2008年4月 : 首都高速道路の月間ETC利用率が80%を突破。
  • 2008年12月 : 全国でのETC利用率が75%を突破[14]
  • 2009年3月 : 政府の経済対策の一環として休日特別割引(俗に言う地方高速上限1,000円)を2年間限定で開始。
    • 割引内容が複雑との批判も多いが、携帯電話の割引内容や航空運賃の複雑さと同様であるとの意見もある。割引内容の周知のために、高速道路会社は問い合わせ体制を強化のほか、無料で割引条件等を詳しく掲載した無料パンフレットを、サービスエリア・パーキングエリア・料金事務所で配布している。
  • 2009年5月 : ETC車載器のセットアップ累計台数が3,000万台を突破[16]
  • 2009年5月 : 全国でのETC利用率が80%を突破[14]
  • 2010年9月 : ETC車載器のセットアップ累計台数が4,000万台を突破[16]
  • 2012年1月 : 首都高速道路の月間ETC利用率が90%を突破。
  • 2012年1月 : 全国でのETC利用率が85%を突破[14]
  • 2012年8月 : ETC車載器のセットアップ累計台数が5,000万台を突破[17]
  • 2014年3月 : ETC車載器のセットアップ累計台数が6,000万台を突破[17]
  • 2016年6月 : 全国でのETC利用率が90%を突破[14]

ETCレーン走行時の事故と対策

バーが遅れて開くことを知らせる標識
ETCカード未挿入を知らせるアンテナの標識

開閉バーは通信不良や車載器・路側機の故障・装着ミスなどで開かないことがある。また、環状のルートを経由しUターンしたような状態で、最初に入ったICから出るか、進行方向が限定されるICにおいて車両の走行ルートとの整合がとれない場合も開閉バーは開かないことがある。車両が電波を乱反射させることによって起こるマルチパス、利用の周波数がISM機器やアマチュア無線と共用のために起こりやすい混信によって通信不良があり、常に確実な通信ができることは保証されていない。さらに、ETCカードの入れ忘れや有効期限切れなどでバーが開かず、後続車に追突される事故も発生している[18]

利用規程には、開かない場合に衝突しないように通行するよう定められており、開閉バーが開かずに衝突などの事故が発生した場合、開かない原因が運転者にない場合でも事故の責任は一般に運転者が負う。例えば開閉バーを折損した場合、標準的な物で1本あたり6万5,000円を請求されることがある[19]。なお「ETCゲート車両損傷お見舞金制度」のあるETCカードもある[20]

また、安全速度の20 km/hを越えた危険な速度で通過しようとしてバーが開かないために急ブレーキをした場合、違反行為となる。これによって後続車が追突した場合、交通事故刑事民事行政責任を問われる。また、追突した側も責任を問われる。安全な速度でETCレーンに進入することのほかに、進入前に何らかの方法で車載器がカードを認識しているか確認する必要がある[注釈 5]。また、一部区間では、ICの直前にカード未挿入を知らせるためのアンテナが設置されている場合もある。また、NEXCO3社では安全対策として、ETCレーンのバーの開閉速度を0.5〜1秒遅くし、過剰な速度での通行ができなくする対策を2009年3月下旬から順次開始した。

料金所の構造によっては、交代などで収受員がレーンを横断する場合がある。その際通過する車両に接触、衝突される事故が2001年のETCシステム稼動(導入)以来2006年までに27件発生し、この中には死亡事故も含まれている[注釈 6]。2009年現在、各高速道路会社は対策として、収受員専用の歩道橋や地下通路を料金所に設置する等の料金所安全対策工事を進めている。

ETCカード

ETCカードはキャッシュカードの国際規格(ISO/IEC 7810 ID-1)と同等サイズのプラスチックカードにICチップと車載器との接続のための端子を埋め込んだ物である。

ICチップにはあらかじめカード固有の情報が書き込まれている。また、ETC利用時に必要な情報について、車載器がICチップの情報を読み書きする。料金の履歴を保存することができ、この履歴は車載器の操作で合成音声で読み上げたり、専用のプリンタを用いて明細を印字することができる。

ETCカードには以下の種類がある。

ETCクレジットカード

クレジットカードの発行会社が、ETC利用者に貸与するETCカード。次項のETCパーソナルカードが登場するまで、個人の利用者はETCクレジットカードを利用するしかなかった。

  • ETCクレジットカードの申し込みは、クレジットカードと同時に新規に申し込む場合を除いて、あらかじめETCカードの発行に対応するクレジットカードを所持する必要がある。提携先の意向により非対応にされているカードもあるので注意を要する。カードショッピング機能がないカード「JAF ETC会員証」もあるが、通常のクレジットカードと同様、契約には審査が必要である。(2011年3月末日で発行終了)[21]
  • ETCクレジットカードは通常、主契約のクレジットカードとは別にETC専用のものが発行され、クレジットカードが親、ETCカードが子の関係となる。後述の通り、ETCカード支払いも親カードの利用残高に合算される。
    • カード会社によっては、通常のクレジットカード上にETC専用またはICクレジットと共用の接触ICチップを搭載した一体型を発行している。一体型のカードについては、カード、または車両とカードが同時に盗難に遭った場合の危険性や再発行までの不便さが親子分離型と比べて増大する。
  • 上記のETCカードを車内に置いた状態で車両ごと盗難に遭った場合の不正利用については、通常のクレジットカード同様の盗難補償が適用される場合と、会員の過失としてカード利用を停止するまでの実損額を会員負担とするカード会社がある。あらかじめ規約で確認することが望ましい。
  • 通行料金は、ETCカード申込み時に指定したクレジットカードのショッピング一括払いの利用として取り扱われ、ほかのクレジットカード利用分と合わせて金融機関の口座から引き落とされる。リボルビング払い専用カードでは、ETC利用分もリボルビング払いとなるものが多い。
  • NEXCO東日本三菱UFJニコスと提携して発行する「E-NEXCO pass」や、NEXCO中日本が同じく三菱UFJニコスと提携して発行する「プレミアムドライバーズカード」ではポイントを高速道路料金の支払いに還元することができる。
  • イオンクレジットサービスが発行するETCカードには「ETCゲート車両損傷お見舞金制度」がある。
  • ETCクレジットカード申込み時に、カード会社が斡旋して、車載器本体とセットアップを合わせて1万円以下で提供するサービスがある。
  • ETCマイレージサービスが利用できる。

ETCパーソナルカード

パーソナルカード

クレジットカードの契約ができない、あるいは契約を望まない高速道路利用者からの、ETCを利用したいと言う要望に応えて企画された、ETC利用者識別情報カードである。ETCシステムの全国一般運用開始からほぼ4年後の2005年11月29日、発行が開始された。高速道路6社[注釈 7] が共同で発行し、ETC利用者に貸与する。通常クレジットカードの発行に必要な「審査」に代わり、デポジット(預託金)を預託することで発行されることが、一般のETCカードとの違いである。

  • カードのサイズ等は一般のETCカードと同一であり、当然、車載器も同じものである。
  • 通常のETCカードと同様、ETCマイレージサービスが利用でき、各種割引サービスが受けられる。
  • ETCパーソナルカードの契約には6社を代表する、ETCカード事務局に利用申込書を提出する。このとき、月平均利用の見込み額、年間の最高利用月見込み額を申告する。ETCカード事務局は、内容を審査の上、申込者にデポジットの金額を通知する[注釈 8]。申込者は通知された金額を郵便振替又はコンビニエンスストアで払い込み、これをETCカード事務局が確認した後、申込者にETCパーソナルカードが貸与される。
  • デポジットは前払金ではなく、支払いには充当されない。解約の場合には、未払金の支払いの後、デポジットが返還される。
  • 通行料金は毎月末日を締め日として1か月ごとに集計され、翌月27日に、申し込み時に指定した銀行の預金口座、または郵便貯金の通常貯金口座から引き落とされる。特に指定する場合を除いてNEXCO中日本が6社を代表して収納事務を行う。
  • 年会費1,234円が必要となる。これも通行料には充当されない。なお、2009年3月1日から2011年3月31日までの新規入会者は、初年度の年会費が無料である[22][23]。このキャンペーンの背景には、要望に応えてETCパーソナルカードを企画したものの、思ったより普及が進まず、アンケート調査の結果、デポジット制の面倒くささや理解のしにくさもさることながら、年会費の高さが普及を阻害していることが、はっきりしたためである。
  • 利用額の実績が申告より多い場合、デポジットの追加払込を要求されることがある。追加払込を拒否したり、月初からの累計がデポジット額の80%を超えた時点でサービスは停止する。したがって、デポジット額を少なく抑えるために過少申告すると、月の途中でETCを使えなくなって利用者自身が不便をこうむることになる。ただし短期的、例えば1ヶ月だけ申告より利用額の実績が多くなった場合には、その旨を事務局に説明すればデポジット額の80%を超えない限り、即サービスを停止されることはない。
  • 上述の通り、ETCパーソナルカードの申し込み先は、クレジットカード会社ではなく、高速道路6社である。発行にクレジットカードの契約は不要で、加入審査をパスするための担保は信用供与ではなく、預託金による物的保証である。よって、信用情報機関の利用や登録も行われない。

ETCコーポレートカード

NEXCO各社が発行し、大口・多頻度割引の利用者に貸与するETCカード。

  • NEXCO各社に申込書を提出し、信用保証または預託金の納付などの必要な手続きの後、ETCコーポレートカードの貸与を受ける。
  • 法人だけでなく、個人でも利用が可能。
  • 1台の車両に対して1枚のETCコーポレートカードが貸与される。カードと車両の組み合わせは貸与の時点で決まっており、再発行手続き中などで発行会社が特に他車での利用を承認している場合を除いて、カードに表示された車両で利用しなければならない。異なる車両で利用した場合に不通過の措置はないが、割引の不適用などのペナルティがある。また、違反を繰り返した場合は割引制度の利用停止の措置を受けることがある。
  • 通行料金は毎月末日を締め日として1か月ごとにカードを発行した道路会社から請求され、翌月末までに支払う。
  • ETCマイレージサービスは利用できない。
  • 事業者によっては、ETCコーポレートカード専用の割引制度がある。

ETCレンタルカード

トヨタレンタリースでは、同社のレンタカー顧客にETCレンタルカード貸与サービスを提供している。利用料金は期間・使用額などに関わらず一律1回324円(2017年7月現在)で、利用者は同社の営業所でチェックアウト(借出)時に利用契約書に署名し、チェックイン(返車)時に実際に使用した道路料金を営業所の端末で読み出して精算すればよく、日本国内に金融拠点(銀行やクレジットカード口座)を持たない外国人でも簡単に使用できる。

ETCレーン

3車線あり、第2車線は「ETC専用」、第3車線は「ETC / 一般」となっている。ここでは、上記の2車線がETCを利用できる。 - 東名高速道路吉田IC
左側の車線が「ETC専用」レーンとなっている。また、右側の車線は「一般」レーンである。 - 福岡高速道路堤西料金所

ETCの設備を備えた車線(ETCレーン)は以下の形態で運用される。単にETCレーンという場合、「ETC専用」および「ETC / 一般」で運用されている車線を指す。 登場初期は「ETC」(「専用」などの表記なし)と表示されていた。

  • ETC専用 (背景紫色に白文字(ETC専用又はETC))
    • ETC無線通行専用の車線。この状態の場合、車載器未搭載など無線通行ができない車(一般車)の誤進入を防ぐため、車線の通行可否を表す信号灯が消灯している[注釈 9]。都心部や交通量が多い料金所では混雑時に「ETC / 一般」レーンに切り替わることがある。なお、収受員のブースがない純粋な「ETC専用」レーンが設置されることがある[注釈 10]
  • ETC / 一般 (ETC / 一般)
    • ETC無線通行車と一般車の両方に対応する車線。混在レーンともいう。「ETC専用」レーンと同様に開閉バーが備えられており、一般車の場合は通行券を受け取るか係員に料金を支払うと開閉バーが開く。なお、この車線ではETC無線通行車と一般車の利用が混在しており、後者については料金支払い等のため一時停止する。また、料金所によってはETCカードを挿入したままの場合、(回数券等で)係員に料金を支払ってもETCが作動し別途課金されることがある。[24]
  • 一般 (背景緑色に白文字(一般))
    • ETC無線通行の運用をしない車線。通行方法はETCレーンがない場合を参照。ETCに対応する有料道路でETC無線通行設備がない料金所の車線もこの表示がされている。基本的に有人のスポットが設けられているが、一部料金所では精算機を導入して無人化している所もある。この場合もETCカードを投入して精算可能となっている。

ほとんどの料金所には、ETCレーンの方向予告標識と車両を誘導する舗装がある。誘導舗装の多くは「^」型が薄青色の地に白色で表示されている()標示である。また一部のインターチェンジの入口ランプウェイ・出口付近やサービスエリア (SA) ・パーキングエリア (PA) の出口付近にはETCカードの未挿入を警告する予告アンテナが設置されている。さらに一部の本線料金所には、車線運用を予告する表示器が前述の方向予告標識の上部に設置されている。

ETCレーンがない場合

ETCに対応している有料道路において料金所にETCレーンがない場合、またはあっても利用できない場合、もしくはやむを得ず「一般」レーンを利用する場合は、以下の手順で通行すればETCカードで料金の精算ができる。

  • 対距離料金(入口発券・出口精算方式)の場合
    • 入口料金所にETCレーンがない場合
      • 入口料金所では通行券を受け取る。出口料金所では一般レーンに進入し、収受員に通行券とETCカードを渡す(自動精算機が設置された一般レーンの場合は、通行券挿入口に通行券を挿入後、ETCカード挿入口にETCカードを挿入する。出口でETC専用レーンに進入した場合、ETCカードに入口情報が無いため、開閉バーは開かない)。この場合、ETC割引制度も適用可能だが、車載器を搭載していることを証明する書類を支払時に提示する必要がある(ETC割引を適用する為には車載器搭載が必須の為)。
    • 出口料金所にETCレーンがない場合
      • 一般レーンに進入し、収受員にETCカードを渡す(自動精算機が設置された一般レーンの場合は、通行券挿入口に通行券を挿入後、ETCカード挿入口にETCカードを挿入する)。入口料金所を正常に無線通行していた場合、カードに入口情報が記録されているので通行券は不要である。
  • 均一料金(単純支払方式)の場合
    • 収受員にETCカードを渡す(自動精算機が設置された一般レーンの場合は、精算機のETCカード挿入口にETCカードを挿入する)。

ETCレーンの閉鎖

ETCレーンが閉鎖中の状況 - 日光宇都宮道路大沢料金所

ETCに対応している有料道路において、下記のような理由においてETCレーンが閉鎖される場合がある。

  1. ETCカードの未挿入による通信トラブル、ETC未搭載およびカード有効期限切れ車両の誤進入
  2. 車両接触等による事故
  3. 路側機器の故障・点検・工事
  4. 路側機器の経年劣化による故障未然防止処置
  5. 人件費削減のため

1の理由による場合が最も多い。首都高速では、ETCカードの未挿入によるものが54%、車載器未搭載車両の誤進入が32%、ETCカードの有効期限切れが8%を占めており、この3原因で94%にのぼっている[25]。また、3,4の理由による場合はNEXCO・都市高速各社または地方道路公社各社の公式サイトでETCレーン閉鎖情報がリリースされる。

ETCレーンが閉鎖されている場合、赤信号が点灯し、黒幕〈    〉の表示や白背景赤字で「×閉鎖中」もしくは黄色背景黒文字で「試験中」と表示される。または、一部の都市高速では「×」印表示の色違い点滅や、黄色背景赤文字で「閉×鎖」(福岡都市高速及び北九州都市高速の場合)・赤背景白文字で「進入禁止」(名古屋高速の場合)・上部に黒背景赤文字で「閉鎖中」、下部に「×」(阪神高速の場合)と表示される。

ETC専用スマートIC

一旦停止型ETC

前述のノンストップタイプとは別に、通過時に一旦停止を求められるタイプのものもあり、それらはスマートインターチェンジ(一部除く)やETC対応駐車場などで運用されている。 料金所設備構成としては通常のものと比べ、発進制御棒の仕様が違っていたり信号灯や運用表示部がない(一部を除く)など簡素な造りとなっているのが特徴である。

ETCが利用できない道路

高速自動車国道都市高速道路ではETC整備が完了しており、すべての料金所でETC無線通行またはETCカードでの支払いが可能となっている。しかし、それ以外の有料道路ではETCカードすら利用できないところが多い。以下にETCが利用できない主な道路、料金所を挙げるが、これらは例示であり、すべてを尽くしているわけではない。特に道路公社管理の有料道路の多くでは利用できないと考えたほうがよい。 外見はNEXCO管理の高速道路や有料道路のように見えても、実際の管理は各府県の道路公社が行っている場合もあり、ETCの利用可否を事前に確認する必要がある(ETCが使えない道路では起点や料金所手前予告標識に「ETCは利用できません。」と書いてあるところもあれば、料金所で初めてその旨の標識を置いている所もある)。

ETCカードが利用できない主な道路・料金所

料金所にETCレーン及びカードリーダー機器が未整備のため、ETCの利用ができない。 以下は、2014年3月現在の状況。

その他の有料道路

ETCカード手渡し処理のみの主な道路・料金所

ETCレーンが未整備のため、料金所内で一旦停止・料金所係員への手渡し(あるいは自動収受機併設のカードリーダーにカードを挿入し精算)での処理のみであり、ノンストップでの通行はできない。このうち京奈和自動車道・京都縦貫自動車道・椎田道路のETCレーン未整備の料金所では、ETCカードでの支払いによって各種時間帯割引の対象となる。以下は、2016年8月現在の状況。

高速道路
その他の有料道路

二輪車用ETC

ETC二輪車用車戴器 本体部(日本無線JRM-12、アンテナ一体型)

2013年現在、二輪車用車載器は日本無線(JRC)とミツバサンコーワが開発し、販売している[27]。ETC車載器を販売しているバイクメーカー等は同社からOEM供給を受けている。 発売当初はアンテナ分離型の1機種のみであったが、アンテナ一体型の機種が2008年10月に発表された[28]

車載器の取り付けは、車載器取扱店で行う必要があり、四輪車のようにセットアップ済車載器を購入して利用者が取り付けることは認められていない。また、ETCカードの発行・車載器の取り付け・セットアップが1か所で完了するETCワンストップサービスも行われていない。ORSE(道路システム高度化推進機構・当時)及び各道路会社による期間限定で車載器導入の助成措置が行われていたが、それでも導入コストが高く、四輪車用車載器で見られた0円キャンペーンなども行われなかった。

このように四輪車に比べてETC導入時のコストが高く、セットアップ時のサービスが悪いこともあって普及率は低い。二輪車ETCの一般運用が始まった翌年の2007年に行われた日本二輪車協会(現:全国二輪車安全普及協会)のアンケートで「ETCを利用している」と答えたのはわずか8.3%であった[29]。また、2013年時点で四輪車は87.6%の普及率に対し、二輪車は13%程度にとどまっている。これに対して国土交通大臣が、二輪車のETC利用の推移が「極めて低い」と普及が遅れていることを認め、普及促進について発言がなされた[30]

四輪車のETCと同じシステムを使用しているため、ETCに対応している道路は四輪車と同様に通行することができる。何らかの理由でバーが開かなかった場合、後続車の追突が重大な事故につながる危険性が高いため、二輪車用のレーンを設置している料金所もある。通常の四輪車用レーンを通過する場合は、エラーの発生時に通り抜けられるよう、バーの隙間部分を通行するのが好ましい。なお、エラーが発生した場合は通過後、安全なところに停車し申告することが求められる。

導入までの経緯

2001年に四輪車のETC一般運用が開始されてからも、二輪車におけるETCの運用は目処が立っていなかった。同乗者がいたり、あらかじめダッシュボード等に通行券や現金を用意できる四輪車と異なり、二輪車での手渡しによる料金支払いは面倒であるため、二輪車へのETC導入を求める声は大きかった。

ETC利用の料金優遇が、ETC車載器による無線通行のみに限定され、ETCカードを手渡ししての支払いは対象外になった結果、時間帯によっては割引が適用された大型車よりも、車載器が存在しない二輪車の通行料金の方が高額となっていた。特例措置として2007年11月30日まで、二輪車の利用者は一部のETC割引を車載器なしで受けることができた。なお、車載器を持たない利用者向けのETCマイレージ割引の新規登録は2006年11月30日までで終了している。

二輪車用車載器は、小型で防水性耐振動性を備える必要があるため、技術的課題が多くコストがかさむ。しかも、ユーザー数が四輪車よりも少なく市場規模が小さい。そのため、積極的に開発に取り組んだメーカーは少なく、二輪車用ETCを発売したのは当初JRC1社のみだった。

エラー時に開かなかったバーへの接触転倒を防止するため通過が可能なようにバーを短くし、二輪車専用レーンや誘導標示などの改修をおこない、四輪車の一般運用開始から3年以上が経った2005年4月28日バイク便などのプロライダーが参加しての試験運用実施[31] ののち、同年11月1日道路新産業開発機構(HIDO)がおこなった、首都圏・名古屋圏・近畿圏の三大都市圏で5,000台の一般モニターによる試行運用を経て、四輪車から遅れること約5年後の翌2006年11月1日に一般運用が始まった[32]

ETC2.0

SAに設置されたITSスポット

ETC2.0とは、道路沿いに設置されたITSスポット(ETC2.0サービスが行われる場所)と対応車載器(DSRC通信対応機)との相互通信、高速・大容量通信により、従来より広範囲の渋滞・規制情報提供や安全運転支援などが受け取ることのできるサービスである[33][34][35]

サービス開始時にはスポット通信サービス・DSRCサービスなどと呼ばれていたが、2014年10月「ETC2.0」の名称へと改められた。

2011年3月30日から、東北地方と新潟・関東地方の一部を除いた日本全国およそ1,300局のπ/4シフトQPSK基地局でサービスが開始、同年8月12日には日本全国およそ1,600局で利用可能となった。また、約50か所のSA、PA、道の駅でインターネットに接続して情報を得る事ができる[36]

沿革

  • 2009年
01月22日 - DSRC車載器による実験モニターを募集開始
  • 2010年
「スポット通信サービス・DSRCサービス」と呼ばれていたサービスを「ITSスポットサービス」と表現する」と発表
  • 2011年
03月30日 - 北海道、関東(NEXCO中日本及び首都高速管内)及び中部以西でのITSスポットサービスを開始
07月14日 - 関東地方のNEXCO東日本管内での東日本大震災の影響で延期していたITSスポットサービスを開始
08月12日 - 東北地域での東日本大震災の影響で延期していたITSスポットサービスを開始(全国でのサービス開始)
  • 2013年
11月01日 - 走行経路確認社会実験モニターを募集
  • 2014年
10月03日 - 名称を「ETC2.0」に変更
  • 2015年
11月27日 - ETC2.0車両運行管理支援サービス社会実験モニターを募集
  • 2016年
04月01日 - ETC2.0割引を首都圏中央連絡自動車道で導入

サービス内容

サービスは大別すると4つある[37][38]

  • ETC
すべての「ETC2.0対応車載器(DSRC車載器)」にETC機能が搭載されているため、ETC車載器として利用することが出来る。
  • 渋滞回避支援(ダイナミックルートガイダンス )
現行の電波ビーコン・光ビーコン(VICS)よりも情報量が多いため、より広範な地域の交通情報が得られるようになった。ETC2.0に対応したカーナビゲーションを接続している場合、情報を元に最適ルートの選択を行い、ドライバーの渋滞回避を支援する[39]
  • 安全運転・災害時支援
「渋滞、追突注意」「落下物」「急カーブ」「事故・規制」「トンネル出口の天候」など平常時の情報や、「地震・津波」など災害時の情報を、読み上げ音声と図や撮影画像(発話専用機種を除く)で事前に案内。
  • 観光サービス
  • 料金割引サービス
首都圏において、首都圏中央連絡自動車道経由で首都高速道路を利用しなかった場合、走行料金を割引にするサービス。
  • 今後、ITSスポットでの双方向通信により経路情報を活用したサービスも予定されている[40]

ETC2.0対応車載器

サービスを利用するには、ETC2.0に対応した車載器(DSRC車載器)が必要で、ETC同様(一財)ITSサービス高度化機構(ITS-TEA)に登録された店舗にてセットアップを行う必要がある。

(セットアップについてはETC#セットアップも参照)

ETC2.0に対応するカーナビゲーションと連動させることで、これらの情報が画面に表示される。インターネット接続では地図情報のほか、映像・音楽配信のサービスも検討されている。

また、カーナビゲーションを必要としない発話型車載器も発売されており、情報は音声によって読み上げられる。映像出力されない為、画像情報サービスは受けられない等一部機能の制約がある。

不正通行の増加

ETCレーンでの不正通行は以下のように3分類される。うち、強行突破が9割程度を占める。

  • 車種格下げ強要:車検証に基づく料金車種区分で、普通車から中型車のように、車載器を載せ替え前より料金の高い車種区分の車に載せ換えたにもかかわらず、車載器の再セットアップを行わず不正に通行する
  • 強行突破
  • 車載器未搭載:車載器を搭載していないにもかかわらず、搭載していると虚偽の申告をしてETC割引を受ける

ETCがあまり普及していなかった2001年度の不正通行車は、以下いずれも延べ数で、日本道路公団で9万9,276台、首都高速6万6,160台、阪神高速11万7,146台、本四連絡橋813台で、合計28万3,395台だった。ETC通行車両全体に占める不正通行車の率(不正通行率)は0.1%程度であり、鉄道におけるキセル乗車率に比べると相当小さいものである[41]。国交省によれば、高速道路の不正通行件数は2001年に約28万3,000件、2003年度に約47万1,000件、2004年に約69万件、2005年に94万8,000件と急増。2006年にはETC利用率が2001年度の利用の60%を超え、約96万1,000件となった。これはETC専用ゲートの設置により心理的に料金所の突破がしやすくなったためではないかとされている。

また、2010年に入って、前方を走る車(主に大型自動車)にピッタリと付く形で追走する、俗に『カルガモ走法』と呼ばれる手口で、ETCの支払いを免れていた人物が逮捕されている[42]

以上のような不正通行により、道路整備特別措置法違反(30万円以下の罰金)や電子計算機使用詐欺で検挙・書類送検起訴される事例が発生している[43]

京都市内の僧侶がETCの不正通行を行ったとして検挙された事例では、一審の京都簡裁は、故意に不正を行ったかには合理的疑いがあるとして被告人を無罪としたが、二審の大阪高裁は、カードが誤って挿入されていたことに気付くことは可能だったとして、被告人の故意を認定し、罰金200万円の逆転有罪判決を言い渡した。さらに2013年2月最高裁で確定した[44]

ETC割引制度

NEXCO各社管轄の高速自動車国道首都高速等の高速道路をETC搭載車が、ある特定の条件で利用すると通行料が割引になる。

ETC車載器リース制度など

国土交通省が創設し、2005年4月28日から2008年度まで毎年施行されていたETC車載器購入者を対象とした助成金制度。「四輪車ETCらくらく導入キャンペーン」と銘打って行われており、平成20年(2008年)度は7月31日まで、先着20万台限定でETC車載器1台当たり5,250円の助成金を給付することとされたが、同年6月5日に20万台に達したため、このキャンペーンは終了した[45]

実際の運用としてはETC車載器リース制度取扱い店が購入者に代わって助成金を受け、その分購入者に割引して販売しているケースが多かった。

なお、リース制度という名称となっているが、実質は割賦・分割販売がほとんどであり、助成金給付の条件としては「2年以上、2回以上の支払い」となっている。

同様の制度は二輪車でも行われていた。2006年11月1日 - 2007年1月31日の期間限定で、限定数はなく、ETC車載器1台あたり1万5,750円の助成金を給付された。「二輪車ETCらくらく導入キャンペーン」と銘打って行われており、2008年度は2009年1月30日まで、先着2万台限定でETC車載器1台あたり1万5,750円の助成金を給付する。当初は1万台限定だったものが、好評だったために、六会社からの協力を得て1万台を追加したもの。この二輪車対象の助成制度も、2008年10月14日に終了した[46]

また、2009年3月12日より高速道路交流推進財団による助成制度が施行された[47]。助成額は2008年までの助成制度と同額の四輪車5,250円、二輪車1万5,750円。四輪車に対する助成は115万台に達したので、2009年4月28日に終了した。二輪車に対する助成も5万台に達したため、同年7月9日に終了した。

二輪車に対する助成制度は継続的に実施されており、告知された場合、主催者の予想を上回る速度で申し込みが発生し、予定台数を早々と達成して早期終了することが多い。2016年に実施されたNEXCO三社が主催した二輪車向け助成キャンペーンでは、ETC車載器1台の新規購入に対して15,000円を助成するという内容で、先着50,000台の枠が用意され、4月26日より受付を開始したが、6月末には早くも助成枠が払底する状態となった[注釈 11]。しかし、7月以降に日本無線からETC2.0対応機器の発売があったことなどを理由に予定台数を超過している中で受付を引き続き行い、8月31日まで受け付けた分については台数にかかわらず助成金を交付する旨の発表を行っている。[注釈 12]

有料道路以外での利用

ETCを使用した決済システムは有料道路以外でも一部に導入例がある。

2003年9月から、丸ビル駐車場にて初めて導入された。また、2005年より駐車場ETC社会実験を実施しており、現在では会員登録の上で、3箇所にて利用可能である[48][49]パーク24も「タイムズETCサービス」を開始している[50]。阪神高速道路でも「まちかどeサービス」を開始した[51]

その他、ガソリンスタンド、乗船などでの決済にも利用されている[52]。ファーストフードのドライブスルーなどでも実験が行われている。

中国のETC

中華人民共和国でも各地で導入されつつあり、例えば北京市では、呼び名こそETCと同じであるが、料金の徴収方法が日本とは違い、後払い制ではなくデビットカードの様に「速通カード」と呼ばれるICカードに、予め人民元をチャージしておく方式である。

ETC機器製造・販売者

車載器

デンソーとパナソニックの上位2社でシェア6割を占める[53][54]

以下は、自社製造ではなく、OEM供給を受けて販売している。

かつて製造していたメーカー

路側機

車両検知器

ETC以外の電子課金システム

各国でETCに相当する電子課金システムが運用されているが、料金所にバーがないシステム、車載器を必要としないシステムなどもありETC方式とは異なっている。

イタリア

1989年に、イタリアのアウトストラーダでテレパス (TELEPASS) という無線式料金収受システムが導入され、後のETCの先駆けとなった[57]

アメリカ

アメリカでは、基本的に「高速道路」は無料であるが、一部有料道路もあり、そのほか橋・トンネルなど通行料金を設定している所でETCと同様のシステムを導入している。 全米統一システムはなく、各州が幾つかのシステムを導入しており、カリフォルニア州では「FasTrack」、フロリダ州では「Sun Pass」といった具合である。最大規模のものはニューヨーク州マサチューセッツ州ニュージャージー州ペンシルヴァニア州デラウェア州メリーランド州ウエストヴァージニア州などで導入されている「E-ZPass」である。

カリフォルニア州のFasTrackは主に高速道路の優先レーンや橋の課金に使われており、利用者は州のDMV(陸運局)の外郭サービス機関にクレジットカード番号と使用自動車のライセンス番号などの情報を送ると、無料で車載トランスポンダ(「タグ」と呼ばれる)が送られてくる。タグは電池方式の完全独立・可搬式で取り付け工事などは不要であり、利用者は普段は車のグローブボックスに収納して地上局通過時のみ取り出したり、ダッシュボードに両面(ベルクロ)テープで固定したりする。利用料金は$30程度を単位とするデポジット方式で、残高が一定額($10程度)を下回ると自動的に登録クレジットカードから支払われる。開閉ゲートはないので減速は不要で、頭上の地上器とタグが交信できないとライセンスプレートの写真が自動撮影され、ライセンス番号に一致するタグの登録がないと後日罰金を含めた支払請求書が送られてくる。ライセンス番号に登録されたタグがあればその口座に課金され、1台のタグに複数のライセンス(車)を登録することも可能なので、例えば1台の物理タグしかなくても家族全員の使用する車それぞれでFasTrackを使用できる。

シンガポール

シンガポールでは1998年から無線通信によって課金を行うERPのシステムが導入されている[3]。ERPはETCに相当するシステムで、車載器にICカードを挿入しておくと、料金所でガントリー(路側器)がそれを検知して無線通信によって料金を口座から引き落とすシステムである[3]

ERPでは将来的にはグローバル・ポジショニングシステム(GPS)を利用して車の位置情報から課金を行えるよう検討が進んでいる[3]

脚注

注釈

  1. ^ レーン通行時にナンバープレートを認識しており、車載器の情報と一致しなければレーンを通過させない運用が可能。ただし、2007年現在運用されていない。
  2. ^ 2001年に行なわれた国土交通省主催のETC愛称コンテストによって国土交通省はイーテックという愛称を付与したがほとんど浸透していない。 ※参考:「ETC愛称コンテスト」の開催について - 国土交通省 2001年7月17日(2001年7月17日時点のアーカイブ)・ETC(ノンストップ自動料金支払いシステム)の全国展開について - 国土交通省 2001年11月28日(2002年6月12日時点のアーカイブ
  3. ^ 当初は2009年度から実施予定だったが、経済情勢悪化などの事情から実施が見送られていた。
  4. ^ 京都線を除く。
  5. ^ 車載器がカーナビゲーションシステムに接続されている場合は画面表示の視認、独立型の車載器ではLED表示の視認による確認など。
  6. ^ 中央自動車道八王子IC出口料金所では2006年に同様の事故が発生した。
  7. ^ 東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社、首都高速道路株式会社、阪神高速道路株式会社、本州四国連絡高速道路株式会社の以上6社。
  8. ^ 月平均利用見込み額の4倍の額、年間の最高利用月見込み額を2万円単位で切り上げた額のいずれか高い額となる。ただし、最低額は4万円。
  9. ^ ETCレーンの表示が出ていれば信号灯が点灯していなくても通行できるが、都市高速では一部で青信号()が点灯していることがある。また、新東名高速道路のETC専用レーンは紫色の信号灯()を表示している。
  10. ^ 既設のブースが撤去される場合もある。その他にも、当初は交通量の増加に備えて確保し運用していなかった車線をETC専用レーンとしたところもある。
  11. ^ 特に受け付け開始からの1ヶ月で枠の半分にあたる25,000台を超える申し込みがあった
  12. ^ 最終的な見込み台数は75,000台~80,000台と予想されている「想定以上の申し込み」で対象台数上乗せ...二輪車ETC購入助成”. ウェビックバイクニュース. 2016年8月3日閲覧。

出典

  1. ^ 浅井建爾 2001, p. 191.
  2. ^ 浅井建爾 2001, p. 186.
  3. ^ a b c d 金本良嗣、藤原徹『プログレッシブ経済学シリーズ 都市経済学 第2版』東洋経済新報社、2016年、109頁
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  5. ^ ETC料金収受システム(2010年12月19日時点のアーカイブ) - 東芝科学館
  6. ^ ETC総合情報ポータルサイト - 一般財団法人ITSサービス高度化機構(2015年12月11日閲覧)
  7. ^ Car Watch ETC車載器の再セットアップに挑戦する”. Car Watch. インプレス. 2017年8月27日閲覧。
  8. ^ a b 浅井建爾 2001, p. 187.
  9. ^ 清水草一 (2015年8月2日). “ETC2.0はスマホに勝てるのか? その将来は”. 乗り物ニュース. http://trafficnews.jp/post/42042/3/ 2016年9月24日閲覧。 
  10. ^ 杉谷剛 (2008年7月). “あなたもETC“利権ゲート”を通っている”. Foresight(フォーサイト). 新潮社. 2017年8月27日閲覧。
  11. ^ 車載器セットアップ件数(2015年11末) (PDF) (2015年12月22日時点のアーカイブ
  12. ^ ETC利用状況の推移 (PDF) - 国土交通省
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参考文献

  • 浅井建爾『道と路がわかる辞典』(初版)日本実業出版社、2001年11月10日。ISBN 4-534-03315-X 

関連項目

外部リンク