「エイリアン (映画)」の版間の差分
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|作品名 = エイリアン |
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|原題 = Alien |
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|監督 = [[リドリー・スコット]] |
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|脚本 = [[ダン・オバノン]] |
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|原案 = ダン・オバノン<br />[[ロナルド・シャセット]] |
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|製作 = ゴードン・キャロル<br />[[デヴィッド・ガイラー]]<br />[[ウォルター・ヒル]] |
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|製作総指揮 = [[ロナルド・シャセット]] |
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|出演者 = [[トム・スケリット]]<br />[[シガニー・ウィーバー]]<br />[[ヴェロニカ・カートライト]]<br />[[ハリー・ディーン・スタントン]]<br />[[ジョン・ハート]]<br />[[イアン・ホルム]]<br />[[ヤフェット・コットー]] |
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|音楽 = [[ジェリー・ゴールドスミス]] |
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|撮影 = デレク・ヴァンリント |
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|編集 = [[テリー・ローリングス]]<br />ピーター・ウェザリー<br />デヴィッド・クロウザー(ディレクターズ・カット版) |
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|配給 = [[20世紀フォックス]] |
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|公開 = {{flagicon|USA}} [[1979年]][[5月25日]]<br />{{flagicon|JPN}} 1979年[[7月21日]] |
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|上映時間 = 118分 |
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|製作国 = {{USA}} |
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|言語 = [[英語]] |
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|製作費 = $11,000,000<ref name=boxoffice>{{cite web|url=http://www.boxofficemojo.com/movies/?id=alien.htm|publisher=[[Amazon.com]]|work=[[Box Office Mojo]]|title=Alien|accessdate=2012-06-05}}</ref> |
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|興行収入 = $104,931,801<ref name=boxoffice/> |
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|前作 = |
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|次作 = [[エイリアン2]] |
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| allcinema_id = 2752 |
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| kinejun_id = 1119 |
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| amg_id = 1503 |
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『'''エイリアン'''』(''Alien'')は、[[1979年]]の[[アメリカ合衆国の映画]]。航行中の大型宇宙船という閉鎖空間の中で異星生物([[エイリアン (架空の生物)|エイリアン]])に襲われる乗組員の恐怖と葛藤を描く。エイリアンのデザインは、 |
『'''エイリアン'''』(''Alien'')は、[[1979年]]の[[アメリカ合衆国の映画]]。航行中の大型[[宇宙船]]という閉鎖空間の中で異星生物([[エイリアン (架空の生物)|エイリアン]])に襲われる乗組員の恐怖と葛藤を描く。エイリアンのデザインは、{{要出典範囲|[[シュールリアリズム]]のデザイナー|date=2013年1月}}[[H.R.ギーガー]]が担当した。[[リドリー・スコット]]や[[シガニー・ウィーバー]]の出世作であると共に[[サイエンス・フィクション|SF]][[ホラー]]の古典として知られ、続編や[[スピンオフ#スピンオフ (作品制作)|スピンオフ]]が製作されている。 リドリー・スコット自身による本作の前日譚となる[[3D映画]]『[[プロメテウス (映画)|プロメテウス]]』が[[2012年]]6月に世界各国で公開された。 |
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[[1980年]]の[[第52回アカデミー賞]]では[[視覚効果賞]]を受賞。同年第11回[[星雲賞]]映画演劇部門賞受賞。 |
[[1980年]]の[[第52回アカデミー賞]]では[[視覚効果賞]]を受賞。同年第11回[[星雲賞]]映画演劇部門賞受賞。 |
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公開時の[[キャッチコピー]]は「 |
公開時の[[キャッチコピー]]は「宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない」。 |
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== ストーリー == |
== ストーリー == |
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宇宙貨物船ノストロモ号は、他恒星系から地球へ帰還する途中、未知の異星文明の物と思われる電波信号を受信した。[[ファーストコンタクト|人類初となる異星人との遭遇]]のために小惑星に降り立った乗組員たちは、宇宙船と[[化石]]化した[[宇宙人]](スペース・ジョッキー)を発見、調査を進めるうちに[[エイリアン (架空の生物)#エッグチェンバー|巨大な卵のような物体]]が無数に乱立する空間へ辿り着く。航海士のケインがこの物体に近づくと、中から[[エイリアン (架空の生物)#フェイスハガー|蜘蛛に似た生物]]が飛び出して彼のヘルメットのゴーグルを突き破り顔に張り付いた。急いでノストロモ号へ帰還する一行。電波信号は解析の結果、宇宙人が発した何らかの警告であることが判明した。 |
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{{ネタバレ}} |
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宇宙貨物船ノストロモ号は、他恒星系から地球へ帰還する途中、未知の異星文明の物と思われる電波信号を受信した。[[ファーストコンタクト|人類初となる異星人との遭遇]]のために惑星LV-426に降り立った乗組員たちは、宇宙船と[[化石]]化した[[宇宙人]](スペース・ジョッキー、Engineer)を発見、調査を進めるうちに[[エイリアン (架空の生物)#エッグチェンバー|巨大な卵のような物体]]が無数に乱立する空間へ辿り着く。航海士のケインがこの物体に近づくと、中から[[エイリアン (架空の生物)#フェイスハガー|蜘蛛に似た生物]]が飛び出して彼のヘルメットのゴーグルを突き破り顔に張り付いた。急いでノストロモ号へ帰還する一行。電波信号は解析の結果、宇宙人が発した何らかの警告であることが判明した。 |
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ケインの顔面に張り付いた生物は、力づくや外科措置では引き剥がせなかったが、やがてはがれ落ちて死んだ。その後のケインに異常は見られず回復したかに思われたが、乗組員たちとの食事中に突然苦しみ出した彼の胸部を食い破って[[エイリアン (架空の生物)#チェストバスター|奇怪な寄生生物]]が出現、逃走する。ケインは体内にエイリアンの幼体を産み付けられていたのである。 |
ケインの顔面に張り付いた生物は、力づくや外科措置では引き剥がせなかったが、やがてはがれ落ちて死んだ。その後のケインに異常は見られず回復したかに思われたが、乗組員たちとの食事中に突然苦しみ出した彼の胸部を食い破って[[エイリアン (架空の生物)#チェストバスター|奇怪な寄生生物]]が出現、逃走する。ケインは体内にエイリアンの幼体を産み付けられていたのである。 |
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乗組員たちが捜索する間に脱皮し、より大型に変貌していた[[エイリアン (架空の生物)#ビッグチャップ|エイリアン]]はブレッ |
乗組員たちが捜索する間に脱皮し、より大型に変貌していた[[エイリアン (架空の生物)#ビッグチャップ|エイリアン]]はブレットを殺害し、通気口へ身を潜める。乗組員たちは科学担当のアッシュのアドバイスに従い、エイリアンをエアロックから宇宙へ放出する事に決定。しかし、エイリアンの能力は彼らの想像を遥かに上回り、単身潜入した船長のダラスは返り討ちとなる。 |
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残ったリプリーらは善後策を協議。リプリーは有効な対策を提示できないアッシュに不満を抱き、直接ノストロモ号のコンピュータ「マザー」に解決策を問いかけるが、そこで彼女は、コンピュータが乗組員たちがエイリアンに勝てないと見ていること、さらに、雇用主である企業は「生きているエイリアンの捕獲」を最優先事項としていることを知る。真相を知ったリプリーをアッシュが襲い殺害しようとするが、駆けつけたランバート達がこれを阻止、アッシュは「破壊」された。彼の正体は企業が乗組員たちを監視するために送り込んだアンドロイドだった。 |
残ったリプリーらは善後策を協議。リプリーは有効な対策を提示できないアッシュに不満を抱き、直接ノストロモ号のコンピュータ「マザー」に解決策を問いかけるが、そこで彼女は、コンピュータが乗組員たちがエイリアンに勝てないと見ていること、さらに、雇用主である企業は「生きているエイリアンの捕獲」を最優先事項としていることを知る。真相を知ったリプリーをアッシュが襲い殺害しようとするが、駆けつけたランバート達がこれを阻止、アッシュは「破壊」された。彼の正体は企業が乗組員たちを監視するために送り込んだアンドロイドだった。 |
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乗組員達は本船を爆破し、脱出用シャトルで地球圏へ逃れる計画を立てるが、エイリアンはランバートとパーカーを殺害、残るはリプリーただ一人になった。彼女はノストロモ号の自爆装置を起動し、船のマスコットである猫のジョーンズをつれて逃げるが、シャトルへの通路上にエイリアンを発見。脱出を中断し、自爆装置の解除操作を行うリプリーだが間に合わず、カウントダウンは止まらない。仕方なく戻ったリプリーは、エイリアンが通路から立ち去っていることを確認し、ジョーンズと共にシャトルへ乗船、ただちに発進させる。直後、ノストロモ号は自爆、全ては終わったかに思われたが… |
乗組員達は本船を爆破し、脱出用シャトルで地球圏へ逃れる計画を立てるが、エイリアンはランバートとパーカーを殺害、残るはリプリーただ一人になった。彼女はノストロモ号の自爆装置を起動し、船のマスコットである猫のジョーンズをつれて逃げるが、シャトルへの通路上にエイリアンを発見。脱出を中断し、自爆装置の解除操作を行うリプリーだが間に合わず、カウントダウンは止まらない。仕方なく戻ったリプリーは、エイリアンが通路から立ち去っていることを確認し、ジョーンズと共にシャトルへ乗船、ただちに発進させる。直後、ノストロモ号は自爆、全ては終わったかに思われたが…。 |
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== キャスト == |
== キャスト == |
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; [[トム・スケリット]] - ダラス |
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;[[エレン・リプリー]] - [[シガニー・ウィーバー]] |
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: ノストロモ号[[船長]]。ケイン・ブレットの死亡後、エイリアンを退治する為に自ら[[ダクト]]に潜入するが、エイリアンに襲われ行方不明となる<ref group="脚注">ダラスがエイリアンに襲われた場所には火炎放射器だけが落ちていて、血痕がなかった。</ref>。 |
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:航海士。ノストロモ号の乗組員の中で唯一生き残る。シリーズを通じての主人公。 |
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: [[ディレクターズ・カット]]版では自爆時にはまだ生きており、地下でブレットと共に繭にされていた。リプリーに[[火炎放射器]]で焼かれ死亡。なお、[[スピンオフ]]であるAVPシリーズの『[[AVP2 エイリアンズVS.プレデター|AVP2]]』には同名の人物が登場する。 |
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;ダラス - [[トム・スケリット]] |
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; [[シガニー・ウィーバー]] - [[エレン・リプリー]] |
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:ノストロモ号船長。ケイン・ブレッドの死亡後、エイリアンを退治する為に自らダクトに潜入するが、エイリアンに襲われ行方不明となる。<ref>ダラスがエイリアンに襲われた場所には火炎放射器だけが落ちていて、血痕がなかった。</ref> |
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: [[航海士]]。責任感が強く行動力に富む。ノストロモ号の乗組員の中で唯一生き残る。シリーズを通じての主人公。 |
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:ディレクターズ・カット版では自爆時にはまだ生きており、地下でブレットと共に繭にされていた。リプリーに火炎放射器で焼かれ死亡。なお、[[スピンオフ]]であるAVPシリーズの[[AVP2 エイリアンズVS.プレデター|2作目]]には同名の人物が登場する。 |
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; [[ヴェロニカ・カートライト]] - ランバート |
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;アッシュ - [[イアン・ホルム]] |
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: 航海士。女性。地球へ脱出するために、脱出用シャトルの発進準備中にエイリアンに遭遇、パーカーと共に殺された。 |
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:科学・医療担当者。エイリアンの分析を行い、クルー達にアドバイスを行うが、対応は常に後手に回り幾人もの乗組員を失う結果となる。その正体はウェイランド社の密命を受けたアンドロイドで、エイリアンを持ち帰るという真の目的をリプリーが知ったため、彼女に襲いかかる。 |
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; [[ハリー・ディーン・スタントン]] - ブレット |
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;ランバート - [[ヴェロニカ・カートライト]] |
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: [[機関員]]。パーカーの相棒で口調は「そのとおり」。猫のジョーンズを捜している最中にエイリアンに襲われ死亡。 |
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:航海士。女性。地球へ脱出する為に、脱出用シャトルの発進準備中にエイリアンに遭遇、パーカーと共に殺された。 |
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: ディレクターズ・カット版ではダラスと同様に[[繭]]にされていたが、先に襲われ、かつ脳を破壊されたため、原型をとどめていなかった。最後は、ダラスと共に火炎放射器で焼かれた。 |
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;パーカー - [[ヤフェット・コットー]] |
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; [[ジョン・ハート (俳優)|ジョン・ハート]] - ケイン |
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:機関員。黒人。自分とブレッドの給料が少ないことに不満に思っていた。ランバートと共にエイリアンに遭遇。火炎放射器を使うタイミングを逸し、殺された。 |
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: 副長。エッグチェンバーに近づき、中から出たフェイスハガーに寄生され、最後は胸部からのチェストバスター出により死亡。遺体は[[宇宙葬]]にされた。 |
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; [[イアン・ホルム]] - アッシュ |
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:機関員。パーカーの相棒で口調は「そのとおり」。猫のジョーンズを捜している最中にエイリアンに襲われ死亡。 |
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: 科学・医療担当の[[アンドロイド]]。エイリアンの分析を行い、クルー達にアドバイスを行うが、対応は常に後手に回り幾人もの乗組員を失う結果となる。その正体はウェイランド社の密命を受けたアンドロイドで、エイリアンを持ち帰るという真の目的をリプリーが知ったため、彼女に襲いかかる。直後にランバートとパーカーに取り押さえられ、尚も暴れたためにパーカーによって破壊される。エイリアンを「完全な生物」と称え、リプリー達が生き残れないことを予測し同情の笑みを浮かべる悪態をつき、完全に機能を停止した。 |
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:ディレクターズ・カット版ではダラスと同様に繭にされていたが、先に襲われ、かつ脳を破壊されたため、変態が早く原型をとどめていなかった。最後は、ダラスと共に火炎放射器で焼かれた。 |
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:『2』によれば型式は「ハイパーダインシステムズ 120-A/2」 。アッシュ達、[[人造人間]]の分類呼称は映画作品シリーズ内では「アンドロイド」のみだが派生作品のゲームなどでは「シンセティック(synthetics)・合成人間」と呼ばれているケースがある。 |
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;ケイン - [[ジョン・ハート (俳優)|ジョン・ハート]] |
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; [[ヤフェット・コットー]] - パーカー |
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:航海士。エッグチェンバーに近づき、中から出たフェイスハガーに寄生され、最後は胸部からのチェストバスター出により死亡。遺体は宇宙葬にされた。 |
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: 機関員。黒人。自分とブレットの給料が少ないことに不満に思っていた。度々故障や損傷をしたノストロモ号をブレットと共に修理したほか、ブレットがエイリアンに殺害された後、エイリアンを倒すために即席の火炎放射器を作成するなど、機械修理だけでなく兵器の取り扱いも得意である。ランバートと共にエイリアンに遭遇。ランバートとエイリアンの距離が近かったため、火炎放射器を使うタイミングを逃し殺された。 |
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===日本語吹き替え=== |
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!役名 |
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![[ゴールデン洋画劇場]] |
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|[[郷田ほづみ]] |
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! [[レーザーディスク|LD]] |
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|[[西沢利明]] |
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! [[ディレクターズ・カット|DC]]DVD・[[Blu-ray Disc|BD]] |
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| トム・スケリット || ダラス || [[前田昌明]] || [[西沢利明]] || [[富山敬]] || [[大塚明夫]] || [[郷田ほづみ]] |
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|リプリー |
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|[[野際陽子]] |
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|[[戸田恵子]] |
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|[[田島令子]] |
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| シガニー・ウィーバー || リプリー || [[野際陽子]] || [[田島令子]] || [[幸田直子]] || [[戸田恵子]] || 幸田直子 |
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|ランバート |
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|[[榊原良子]] |
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|[[鈴木ほのか]] |
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|[[鈴木弘子]] |
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| ヴェロニカ・カートライト || ランバート ||colspan=2|[[鈴木弘子]] || [[榊原良子]] || [[安永沙都子]] || [[鈴木ほのか]] |
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|[[穂積隆信]] |
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| イアン・ホルム || アッシュ || [[富田耕生]] ||colspan=2|[[田中信夫]] || [[羽佐間道夫]] || [[岩崎ひろし]] |
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|マザー |
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|[[久保田民絵]] |
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|リリース、初放送年日 |
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|2003年 |
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|1980年 |
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|1992年 |
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|1981年 |
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|} |
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*フジテレビ - 1980年初回放送「[[ゴールデン洋画劇場]]」 |
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== スタッフ == |
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*LD(レーザーディスク) - 1981年発売 |
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* 製作総指揮 - [[ロナルド・シャセット]] |
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*VHS・DVD - 1983年発売 |
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* 製作 - ゴードン・キャロル、デイヴィッド・ガイラー、[[ウォルター・ヒル]] |
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*テレビ朝日 - 1992年初回放送「[[日曜洋画劇場]]」 |
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* 監督 - [[リドリー・スコット]] |
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*ディレクターズ・カット版DVD・Blu-ray Disc - 2003年発売 |
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* 原案 - [[ダン・オバノン]]、ロナルド・シャセット |
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* 脚本 - ダン・オバノン |
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* 撮影 - デレク・ヴァンリント |
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* 美術 - マイケル・シーモア、([[ロジャー・クリスチャン]] ※アンクレジット) |
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* クリーチャーデザイン - [[H.R.ギーガー]] |
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* クリーチャー造形 - H.R.ギーガー、ロジャー・ディッケン |
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* クリーチャー効果 - カルロ・ランバルディ |
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* 音楽 - [[ジェリー・ゴールドスミス]] |
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* 提供 - [[20世紀フォックス]]、ブランディワインプロダクションズリミテッド |
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==スタッフ== |
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== 異なるエンディング == |
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*製作総指揮 - [[ロナルド・シャセット]] |
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エンディングシーンは当初3種類あり、「エイリアンの存在にリプリーは気付かず一緒に地球に帰還する」、「エイリアンとともに宇宙の藻屑となる」そして採用案である「エイリアンを倒し無事地球に帰還する」のそれぞれが用意されていた。アメリカでは第1案の結末で劇場公開された映画館もある{{要出典|date=2012-06}}。 |
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*製作 - ゴードン・キャロル、デイヴィッド・ガイラー、[[ウォルター・ヒル]] |
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*監督 - [[リドリー・スコット]] |
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*原案 - [[ダン・オバノン]]、ロナルド・シャセット |
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*脚本 - ダン・オバノン |
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*撮影 - デレク・ヴァンリント |
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*美術 - マイケル・シーモア、([[ロジャー・クリスチャン]] ※ノンクレジット) |
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*クリーチャーデザイン - [[H.R.ギーガー]] |
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*クリーチャー造形 - H.R.ギーガー、ロジャー・ディッケン |
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*クリーチャー効果 - カルロ・ランバルディ |
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*音楽 - [[ジェリー・ゴールドスミス]] |
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*提供 - [[20世紀フォックス]]、ブランディワインプロダクションズリミテッド |
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== 原案 == |
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『エイリアン』の原案はダン・オバノンによって生み出された。[[南カリフォルニア大学]]在学中の1974年、[[ジョン・カーペンター]]と組んで『[[ダーク・スター]]』を製作したオバノンは、より本格的なSFホラーの製作を望んでおりオリジナルの脚本を温めていた。それは『メモリー』という題で、「宇宙船が未知の惑星に降り立ち、謎の生命体を発見する。乗組員がそれに寄生され、やがて体内から怪物が誕生する」という内容であった。当初は38ページに満たない未完成の脚本で、怪物の姿が漠然としていたことから展開に行き詰っていた<ref name="Nathan_p16">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.16]]</ref>。 |
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そんな折、オバノンに接触してきたのがロナルド・シャセットである。彼は[[フィリップ・K・ディック]]の短編作品『追憶売ります』の映画権を取得していたものの、まだ仕事がなかった。『ダーク・スター』を見てオバノンを同好の士と考えたシャセットはオバノンに会いたいと手紙を書く。南カリフォルニア大学のキャンバスで『メモリー』を拝見したシャセットは「『メモリー』を完成させたら自分が[[ロジャー・コーマン]]の元に持ち込むので、自分の『追憶売ります』を翻案する作業の手助けをして欲しい」と共同作業を提案した<ref name="Nathan_pp16-19">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、pp.16-19]]</ref><ref group="脚注">この構想が[[ポール・バーホーベン]]監督の『[[トータル・リコール]]』として実現するのは1990年のことである。</ref>。 |
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この頃、『[[デューン/砂の惑星#製作|デューン/砂の惑星]]』を企画中であった[[アレハンドロ・ホドロフスキー]]から、オバノンに同作の特殊効果担当の依頼が舞い込む。オバノンは許諾し製作チームに加わった。これにより『メモリー』の脚本は一時的に宙に浮くこととなる。チームには宇宙船のデザインに[[クリス・フォス]]、コスチュームデザインとして[[ジャン・ジロー]]、さらにサダムIV世役に指名されていた[[サルバドール・ダリ]]の推薦により、後にH.R.ギーガーが加わっていた。しかし『デューン/砂の惑星』は資金難から製作半ばにして中止となり、オバノンは無一文となってしまう。胃の病を発症していた彼はシャセットの家に転がり込み一週間もふさぎ込んでいたが、未完のままの『メモリー』を完成させるようシャセットに提案され、再び脚本を練り始めた<ref name="Nathan_p19">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.19]]</ref><ref name="Scanlon_p7">[[#スキャンロン(2012)|スキャンロン(2012)、p.7]]</ref>。 |
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オバノンは『メモリー』とは別に『[[グレムリン]]』という脚本を構想していた。それは「東京から帰る[[B-17 (航空機)|B-17]]の中にグレムリンが侵入し、乗組員を一人、また一人と殺していく。怪物を倒さない限り乗組員は故郷へ帰れない」という骨子であった。その要素を応用してはどうかというシャセットの助言を受け、オバノンは『メモリー』に適用させた。すなわち舞台を爆撃機から宇宙船へ、グレムリンを異星の怪物に変更したのである<ref name="Scanlon_p7" />。完成したそれは宇宙空間における『[[テン・リトル・インディアンズ]]』と呼べる内容となった。この時点で脚本の基本的な流れは完成版と同一であったが、乗組員が発見するのは遺棄船ではなく「ピラミッド」であることや、卵ではなく「胞子ポッド」から出てきた寄生体に襲われる、宇宙船の名前が「スナーク号」であるといった差異がある<ref name="Nathan_p101">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.101]]</ref>。題名は『メモリー』から『スタービースト』へと変更された<ref name="Nathan_p20">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.20]]</ref>。 |
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『スタービースト』の内容は[[ロジャー・コーマン]]の目を引いたが、企画が形になる前に、二人の友人であった独立系映画監督の[[マーク・ハガード]]が『スタービースト』の脚本を評価し、出資者探しを買って出ることになった。オバノンは視覚的な側面からプレゼンテーションを行うために、『ダーク・スター』で知己であったロン・コッブにイラストを依頼する。コッブはこの時点ではまだ『スタービースト』を『ダーク・スター』のような低予算映画になるだろうと楽観視しており、何枚かのイラストを提供した<ref name="Scanlon_p7" />。商業的な映画に相応しいものとして、オバノンは思案をめぐらせ『エイリアン』というタイトルをひねり出した<ref name="Nathan_pp21-22">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、pp.21-22]]</ref>。 |
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1976年、ハガードは「ブランディワイン・プロダクション」という会社と契約を成立させ、『エイリアン』の脚本は買い取られた。ブランディワインはゴードン・キャロル、デヴィット・ガイラー、そしてウォルター・ヒルの3人によって運営される制作会社であった<ref name="Sammon_p121">[[#サモン(2001)|サモン(2001)、p.121]]</ref><ref name="Scanlon_p7" />。ヒルは脚本の内容を酷評しながらも一部のシーンに可能性を見出し、他の二人と共に20世紀フォックスの製作主任であった[[アラン・ラッド・ジュニア]]にこの脚本を売り込む。スリラーに定評のあるヒルが売り込んだということでラッドは少しだけ興味を示したが、映画化決定の許可は下りなかった。ラッド自身はこの映画が作られる見込みはほぼないと考えていた<ref name="Nathan_p24">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.24]]</ref>。 |
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しかし同社の『スターウォーズ』が大ヒットしたことで状況は一変する。SFジャンル物は売れないという定説が覆され、SFブームが到来したのである。そんな時、フォックスの手元に唯一あったSF作品の脚本が『エイリアン』であった。こうして1977年10月31日<ref name="Nathan_p172">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.172]]</ref>、エイリアンの製作許可が降りた<ref name="Nathan_p24" />。 |
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== プリプロダクション == |
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ヒルとガイラーが行ったのは脚本の手直しであった<ref name="Scanlon_p7" />。7名いたクルーは全員男性だったが、2名が女性に変更され、全員の名前が変更された。原案にあったシーンはほぼそのままであったが、台詞の口調を抑えたものにするといった変更がなされた。また、アッシュをアンドロイドにしたのも二人のアイディアである。リプリーにあたる役を女性にするよう提案したのはラッドであった<ref name="Nathan_p29">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.29]]</ref>。改稿は8回にもおよんだ<ref name="Nathan_p26">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.26]]</ref>。 |
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これらの改変にオバノンは終生不満を漏らしていたものの、視覚デザインコンサルタントとして映画に携わることはできた。またシャセットはエグゼクティブプロデューサーに任命された<ref name="Nathan_p25">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.25]]</ref>。しかしラッドはオバノンを重要人物とみなさず、一時は映画のセット立ち入る許可すら与えなかった。そのためオバノンは原案者でありながらこっそり現場に忍び込むこともあったという<ref name="Nathan_p65">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.65]]</ref>。 |
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しかし肩書きがどうであれ、オバノンにとって一流のスタッフとの仕事がエキサイティングな経験であることは確かであった。1977年7月11日<ref name="Nathan_p172" />、オバノンはギーガーに電話をかけ、新しい映画製作に携わっていることを伝え、要となる未知の生物のデザインを依頼した<ref name="Giger_p10">[[#ギーガー(2004)|ギーガー(2004)、p.10]]</ref>。オバノンが1000ドルの小切手と共にギーガーに送った手紙には、まず人間に幼生を産み付ける第1形態、人間の体を突き破って現れる第2形態、そして成長した第3形態へと変化するアイディアが記されており、初期段階からエイリアンのアイディアは固まっていた<ref name="Nathan_p86">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.86]]</ref>。 |
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監督は当初ヒルが自ら務める予定であったが、SF映画向きではないことを理由に辞退し、『[[ロング・ライダーズ]]』の監督を務めることになった。そこでブランディワインは監督の候補を捜し始める。[[ピーター・イェーツ]]、[[ロバート・アルドリッチ]]、[[ジャック・クレイトン]]、そしてリドリー・スコットの4名が候補に挙がった。イェーツは20世紀フォックスに推されていたが、彼は「格下のB級映画」を撮ることを嫌ったほか、アルドリッチもクレイトンも価値を見出さず監督を拒否した。なお、原案者であるオバノンは監督候補には入っていなかった<ref name="Nathan_p29">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.29]]</ref>。 |
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当時スコットは既にCM映像監督として成功を収め、自分のCM制作会社である「リドリー・スコット・アソシエーツ」 (RSA) を設立し活躍していたが、映画監督としては『デュエリスト/決闘者』を撮ったのみだった。同作で共同プロデューサーであったイヴォール・パウエルは熱心なSF愛好家でもあり、その撮影中スコットにSFコミック雑誌『[[メタル・ユルラン]](ヘビーメタル)』を貸して読むよう薦めた。『[[2001年宇宙の旅]]』を除けばSFに関心はなかったスコットであったが、その世界観に魅了され特にジャン・ジローの『[[アルザック]]』を好んだ<ref name="Nathan_p35">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.35]]</ref>。 |
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パウエルから「監督第二作目の作風が今後作る三作分の内容に影響を及ぼす」とアドバイスされたスコットは、次なる作品として『[[トリスタンとイゾルデ]]』を題材に選び、[[パラマウント映画]]の下で映画化の準備を進めていた<ref name="Sammon_p115-118">[[#サモン(2001)|サモン(2001)、pp.115-118]]</ref>。彼の脳裏には『トリスタンとイゾルデ』の中で『ヘビーメタル』の荒涼とした様式美溢れる世界観を実現させようという構想があった。だが、当時公開されたばかりの『スターウォーズ』を初週に観覧し衝撃を受ける。そこにはまさに彼が撮ろうとしていた映像表現が存在していた。スコットは『スターウォーズ』を絶賛しつつも、先を越されたことに強い挫折感を味わった<ref name="Sammon_p118-120">[[#サモン(2001)|サモン(2001)、pp.118-120]]</ref>。 |
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一方、カンヌ映画祭で『デュエリスト/決闘者』を観覧し、スコットの才能を評価した人物がいた。フォックス・ヨーロッパの社長サンディ・ライバーソンである。彼はフォックス内で使えそうな企画を探し、監督の定まっていない『エイリアン』の企画を発見、スコットの手元に送って監督してみないかと誘いをかける。『ヘビーメタル』のようなSFのデザインを表現したかったスコットにとってまさに格好の題材であること、さらに機能的で無駄のない粗筋や、地位による待遇の違いに嘆く[[労働階級]]の姿が描かれている点なども好印象であった。1978年2月<ref name="Nathan_p172" />、ライバーソンの仲介でラッドと面接したスコットは正式に監督として契約を結んだ。当初組まれた予算は420万ドルに過ぎなかったが、スコットは自ら絵コンテを描いて会社と交渉し、850万ドルの予算を勝ち取った<ref name="Nathan_p126">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.126]]</ref>。またパラマウントに対しては『トリスタンとイゾルデ』の企画から手を引くことを告げた<ref name="Sammon_p125">[[#サモン(2001)|サモン(2001)、p.125]]</ref>。 |
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== 撮影 == |
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撮影は1978年の7月5日から10月21日のおよそ3か月半に渡って行われた<ref name="Nathan_p172" />。オバノンの薦めで『[[悪魔のいけにえ]]』(1974年)を見たスコットはこの作品を目安としてデザイナーに指示を与えた。また、もっとも感銘を受けたホラーとして『[[エクソシスト (映画)|エクソシスト]]』(1973年)を挙げ、何度も見直し研究を重ねた<ref name="Nathan_p35" />。ほか、『2001年宇宙の旅』にも影響を受けている。 |
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スタジオはイギリス、ロンドンの郊外にある[[シェパートン・スタジオ]]が使用された。ハリウッドに比べ費用が安く済むこと、イギリスには優れた美術スタッフや、製作に必要なプラモデルメーカーがいることなどが理由であった<ref name="Nathan_p25" />。撮影のためにスタジオ内のA、B、C、D、Hの5つのサウンド・ステージが使用され、ノストロモ号のセットはCに、遺棄船のセットはHに造られた。Hは当時ヨーロッパ最大級のサウンド・ステージであり、60m × 100mもの広さがあった<ref name="Giger_p14">[[#ギーガー(2004)|ギーガー(2004)、p.14]]</ref>。 |
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スコット側からは、『デュエリスト/決闘者』に引き続きパウエルが共同プロデューサーとして、撮影にデレク・バンリント、プロダクション・デザイナーにマイケル・シーモアなどRSAに縁のある人物が参加した。 |
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そのほか、編集には[[テリー・ローリングス]]、『[[スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望|スターウォーズ]]』で美術監督を務めた[[:en:Leslie Dilley|レスリー・ディレイ]]、セットを製作した[[ロジャー・クリスチャン]]、衣装を担当したジョン・モロ、『[[キングコング (1976年の映画)|キングコング]]』の造形に携わった[[:en:Carlo Rambaldi|カルロ・ランバルディ]]、特殊効果担当として『[[スペース1999]]』に参加していた[[ブライアン・ジョンソン (特殊効果)|ブライアン・ジョンソン]]と[[:en:Nick Allder|ニック・アルダー]]が加わった。またオバノンはコッブに加えて『デューン』で製作を共にしたフォスとギーガーらデザイナーを企画に呼び集めた。 |
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撮影は徹底した秘密主義の下で行われ、いたるところに「見学者立ち入り禁止」の立て札、張り紙が掲示された<ref name="Nathan_p38">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.38]]</ref>。予算圧縮のためフォックス上層部からの圧力に晒され続けたスコットは不機嫌な精神状態が続き、時には八つ当たりでセットを破壊してしまったこともあった<ref name="Nathan_p57">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.57]]</ref>。多くのスタッフが製作現場を緊張に満ちて不愉快だったと証言している<ref name="Sammon_p138">[[#サモン(2001)|サモン(2001)、p.138]]</ref>。後年スコットは「あの時の自分は余裕がなかった。撮影現場に緊張感をもたらした原因の一つは自分の突き放した態度にもあっただろう」と当時を振り返っている<ref name="Sammon_p139">[[#サモン(2001)|サモン(2001)、p.139]]</ref>。 |
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== 配役 == |
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キャスティングの選考はアメリカで行われ、スコットとキャロルが面接した。通常このようなSF映画にはB級俳優を配するのが普通であったが、スコットは個性的な役者を集めることで一段高い演出を目指した<ref name="Sammon_p135">[[#サモン(2001)|サモン(2001)、p.135]]</ref>。SF映画に出ることを懐疑的に思った俳優を引き止めるようなことはせず、[[ウィリアム・ハート]]や[[ジョン・ハード]]は出演を見合わせた。シャセットの意向で、多国籍的な雰囲気を出すため配役のうち二人はイギリス人となった<ref name="Nathan_pp68-69">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、pp.68-69]]</ref>。 |
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; リプリー |
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: リプリー役の選考は難航した。キャスティングディレクターのマリー・ゴールドバーグは候補として二人を挙げていた。一人目が[[メリル・ストリープ]]である。しかし彼女は婚約者の[[ジョン・カザール]]を亡くしたばかりであり、キャロルは出演依頼をためらった。 |
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: もう一人の候補がシガニー・ウィーバーである。彼女は『[[アニー・ホール]]』やイスラエルのドラマ『Madman』に端役で出演した程度で映画ではほぼ無名であった。[[シェイクスピア]]を目標に[[ブロードウェイ (ニューヨーク)|ブロードウェイ]]で活動し、[[マイク・ニコルズ]]や[[ウディ・アレン]]との仕事を望んでいた彼女にとって、SF映画への出演は興味をそそられる物ではなかった。彼女は建物を間違え、面接に遅刻するという失敗も犯している<ref name="Nathan_pp122">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.122]]</ref>。脚本を読んだ彼女の感想は一言「地味な感じ」であり、その素っ気無い態度に「役が欲しくないのか」とスタッフを不思議がらせたほどであった<ref name="Commentary_P">Blu-ray Disc版『エイリアン』の特典「音声解説(完全版)」より。</ref>。 |
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: シェパートン・スタジオで行われたスクリーンテストはおおむね満足のいくものであったが、不安だったラッドはフォックス社内から秘書や管理職など5 - 6人ほどの女性を呼び集めて映像を批評させた。彼女たちは[[ジェーン・フォンダ]]や[[フェイ・ダナウェイ]]の名を挙げてウィーバーの演技を賞賛し、手ごたえを感じたラッドは彼女をリプリー役に抜擢した<ref name="Nathan_pp122-125">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、pp.122-125]]</ref><ref name="Commentary_P" />。ギャラは3万ドルであった<ref name="Nathan_pp122-125" />。 |
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; ダラス |
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: トム・スケリットはダラス役として読み合わせが行われており、出演もスムーズに決定した<ref name="Nathan_pp68-69" />。 |
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: ダラスとリプリーは当初の案では恋人同士であったが、怪物がうろついている状況でラブロマンスを展開するなどありえない、と考えたスコットにより削除された<ref name="Nathan_p135">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.135]]</ref>。 |
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; ケイン |
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: ケイン役には当初からジョン・ハートが考えられていたが、ハートが別の映画に出演したため、[[ジョン・フィンチ]]が抜擢された。しかし、フィンチは[[糖尿病]]を患っており、撮影初日に体調を崩し降板した<ref name="Nathan_pp68-69" />。 |
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: 一方、ハートは撮影先である[[南アフリカ共和国]]に入国を拒否され、映画そのものが中止となっていた。これは当局が反アパルトヘイト活動をしていた前述のジョン・ハードとハートを取り違えたのが原因とされている<ref name="Commentary_P" />。スコットより説得を受けたハートは予定通りケイン役を演じることになった。 |
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:後にハートは『[[スペースボール]]』に同じ役でカメオ出演し、宇宙のファーストフード店で、食事中に体内に寄生していたエイリアンに腹を食い破られた男という設定で[[セルフパロディ]]を演じている。この時は「またか」と嘆いている上に、"Himself(本人)"とクレジットされた。 |
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; アッシュ |
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: イアン・ホルムはシャセットの意向によって加えられたイギリス人の一人となった。ホルムは初めての映画撮影に緊張するウィーバーを気遣い、毎週[[ケント (イングランド)|ケント州]]にある自分の農場に招待した<ref name="Nathan_p127">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.127]]</ref>。 |
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:首の千切れたアッシュとの会話シーンは当初、「エイリアンとコミュニケーションを試みたことがあるのか」という内容で、エイリアンを一方的に危険視することに疑問を投げかけるものであったが、特殊効果に不満を持ったスコットの意向で撮り直され、台詞もエイリアンの性質を賞賛する内容に変更された<ref name="Commentary_P" />。アッシュの体から見えるロボットの部品は、[[パスタ]]、ガラス玉、偽の[[キャビア]]、濃縮[[牛乳]]が使われている。元々広告で食材を扱う経験があったスコットならではの材料であった<ref name="Nathan_p75">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.75]]</ref>。 |
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:アッシュがリプリーを殺そうと丸めた雑誌を彼女の口に押し込もうとするシーンでは、彼がアンドロイドであるゆえに性器を持たないことや、レイプの代替行為であることの暗示となっている<ref name="Nathan_p75" /><ref name="Commentary_P" />。なお彼が丸めた雑誌は『[[平凡パンチ]]』で、表紙の写真は[[山口百恵]]である。宇宙船ノストロモ号が日系企業の所有ものだからだということが後に監督によって語られている。 |
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; パーカー |
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: ヤフェット・コットーは非常に情熱的で、アイディアがあると監督に率直に意見をぶつけた。パーカーがエイリアンに殺されるシーンは彼にとっては特に不服であり、自分の役は最後まで生き残るべきだと監督に抗議するほどだった<ref name="Nathan_p71">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.71]]</ref>。一方、役者同士のコミュニケーションでは、コットーはウィーバーに対して感情的に接し精神的な圧迫を加えていた。これは後半でリプリーがエイリアン対策を主導するシーンを際立たせるためで、スコットの指示による<ref name="Nathan_p131">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.131]]</ref><ref name="Commentary">Blu-ray Disc版『エイリアン』の特典「音声解説 リドリー・スコット監督」より。</ref>。 |
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; ランバート |
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: ヴェロニカ・カートライトは当初リプリー役でオーディションを受けたが、ランバートを演じることになった。 |
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: 冒頭の目覚めのシーンでは女性陣は乳首にテーピングを施しただけであった。このシーンは全裸で撮る予定だったが、カートライトによれば、少なくとも5か国での上映ができなくなることから劇中の形になった<ref name="Nathan_p45">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.45]]</ref><ref name="Commentary_P" />。 |
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: ランバートに用意されていた死亡シーンは「エイリアンをエアロックに追い込む最中、事故による減圧で死ぬ」といったものであったが、一部が撮影されただけで採用されなかった<ref name="Nathan_p68">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.68]]</ref>。またランバートの最期のシーンにおいて、足の間をエイリアンの尾が上がっていくカットで写っているのはランバートではなくブレットであり、身につけている服が違う<ref name="Commentary_P" />。これはブレットがエイリアンに殺されるシーンでカットされた部分を流用したため。 |
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; ジョーンズ |
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: ジョーンズ役の猫は4匹いた。猫を抱き上げるたびにウィーバーは目の充血に悩まされ、一時は降板すら覚悟した。原因は汗として使われた[[グリセリン]]と猫の毛が混合したためであった<ref name="Nathan_p70">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.70]]</ref>。 |
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: 猫がエイリアンに警戒するシーンでは、板の後ろに[[ジャーマン・シェパード・ドッグ]]を隠しておき、タイミングを見計らって板を取り払い猫に演技をさせている<ref name="Commentary" />。 |
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: リプリーがジョーンズを探すシーンでは、「あのような危機的状況で猫を探すのか」という意見を覚悟していたスコットであったが、予想に反しそういった批判はほとんどなかったという<ref name="Commentary" />。 |
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: エイリアンがいる船内を自由に動く、エイリアンの眼前で放置される、ケージに入れられる際に泣き声を上げるなど、エイリアンに寄生されているのではないかという疑念を抱かせるよう意図的な構成になっているが、結果的には使われない伏線に終わった<ref name="Commentary" />。 |
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== 美術 == |
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監督に着任したスコットにとって目下最大の懸念事項は、主役であるエイリアンのデザインであった。既にコッブがおこしたデザインが存在していたものの、その内容はと言えば、2本足で立ち、鉤爪のついた4本の腕があり、頭部からは触覚と目が突き出るように生えているという奇妙な外見で、スコットを満足させるものではなかった<ref name="Nathan_pp22-23">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、pp.22-23]]</ref><ref name="Scanlon_p86">[[#スキャンロン(2012)|スキャンロン(2012)、p.86]]</ref>。 |
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1978年2月8日、オバノンはスコットにギーガーの画集『ネクロノミコンIV』を見せる。そこに描かれていた機械とも生き物とも似付かぬ存在にスコットは衝撃を受け「このデザインを形にすることができれば映画は成功する」との確信を抱いた<ref name="Nathan_pp38-39">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、pp.38-39]]</ref><ref name="Sammon_pp128-129">[[#サモン(2001)|サモン(2001)、pp.128-129]]</ref>。スコットはスイスに飛び、ギーガーを招聘。2月14日からギーガーは交渉を開始した。彼は「この映画はエイリアンこそが主演俳優なのだ」と主張しデザイン料として然るべき高額なギャラを要求したため、フォックスとの間で長い話し合いがもたれた。契約が成立したのは3月30日のことであり、この日から製作に加わることとなる<ref name="Nathan_p172" />。しかし、ギーガーが描く異質な世界に拒否感を示した者もおり、キャロルは当初「ギーガーは異常だ」と評している<ref name="Nathan_p86" />。 |
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撮影中のギーガーは常に黒ずくめの服を着ていたため、一部のスタッフは彼を「[[ドラキュラ]]伯爵」と渾名した<ref name="Nathan_p84">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.84]]</ref>。彼の指揮する美術チームは150人にもなる大所帯で、「モンスター部門」と呼ばれた<ref name="Nathan_p90">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.90]]</ref><ref name="Giger_p34">[[#ギーガー(2004)|ギーガー(2004)、p.34]]</ref>。 |
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ギーガーは異星人の遺棄船やエイリアンのデザインを受け持つことになったが、徹底した完璧主義者であり、自身の作品に強烈な自負を持っていた彼は製作現場で度々スタッフと衝突し、上層部に対しても自分の要求を曲げなかった。4月5日になってこの対立は決定的となり、フォックスはそれまでのギャラを支払いギーガーを解雇した。契約成立から1週間のことである<ref name="Nathan_p.86">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.86]]</ref>。これについてギーガー自身は、契約では彼のサインした契約書がなければセットの製作はできなかったが、必要なデザインが既に仕上がっており、サイン済みの契約書が手元にある以上もはや用はなかったのだろう、と推測している。しかしギーガーは自分がすぐに必要とされることを予見して、[[チューリッヒ]]でデザイン作業を続行した<ref name="Giger_p14" />。 |
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その予測は的中し、指揮者のいない現場は早速迷走をはじめ、本来のデザインとは程遠いセットになっていった。結局、彼の必要性を上層部も認めざるを得ず、5月末になってギーガーは現場に復帰している<ref name="Nathan_pp85-86">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、pp.85-86]]</ref><ref name="Giger_p14" />。出来損ないのセットは放置されず、現場の美術スタッフのモチベーションを高めるため、そして新しいセット製作の準備が整うまでの時間稼ぎのため、あえて完成まで製作された後でスクラップ処分になった。これはギーガーにとってはまったく理解に苦しむ出来事であったという<ref name="Giger_p16">[[#ギーガー(2004)|ギーガー(2004)、p.16]]</ref>。 |
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宇宙服のデザインはジャン・ジロー(メビウス)が手がけた。彼は次の仕事のためフランスに帰るまでという条件付であり、参加していた期間は数日程度だった<ref name="Scanlon_p7" />。実際の製作はジョン・モロが担当している<ref name="Commentary_P" />。リプリーの衣装に限り、実際に[[NASA]]で使われていた古着の軍用フライトスーツを流用している<ref name="Nathan_p127" /><ref name="Commentary_P" />。 |
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冒頭におけるタイトルデザインは骨や肉を組み合わせたデザインが考案されていたが使用されなかった<ref name="Nathan_p43">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.43]]</ref>。実際に採用された「一文字ずつ完成していくタイトルロゴ」は広告との整合性を考えスコットが依頼したもので、[[スティーブ・フランクフルト]]と[[リチャード・グリーンバーグ]]がデザインしている<ref name="Commentary" />。 |
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== 特殊効果 == |
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=== ノストロモ号 === |
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ノストロモ号の外観はロン・コッブとクリス・フォスの2名がそれぞれデザイン案を起こした。フォスの描く宇宙船は現実の要素を取り入れた物が多く、豊かな色彩と流線型が特徴だった。フォスはノストロモ号の外観や内装、遺棄船など数多くのデザイン案を描いたが、結局すべて未採用に終わった<ref name="Nathan_pp48-49">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、pp.48-49]]</ref>。フォスはギーガーと共に解雇され復帰することはなかったが、コンセプト・アーティストとしてクレジットには名を連ねている。 |
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一方でコッブは機能性とリアリティを重視し、直線的なデザインを好んだ。ギーガーの生物的なデザインと完全な対称性を示すことも考慮され、彼のデザインが採用された。ノストロモ号の形状は逆さの台形のような形状を経て、最終的に精製設備を備えた巨大工場のようなデザインにまとめられた。尖塔のような外観は子供のころに見た工場の風景をヒントにスコット自らが追加した<ref name="Nathan_pp48-49" />。 |
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船内のデザインもコッブの手によって行われ、この案を元に[[ロジャー・クリスチャン]]が造形した。航空機やヘリの廃材、[[パレット]]を活用してノストロモ号の内部を作り上げた<ref name="Nathan_p52">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.52]]</ref>。この出来はコッブを満足させ、ウィーバーも「ロケ地で撮影しているかのようだった」と賞賛した<ref name="Nathan_p65" />。 |
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ノストロモ号のセットは意図的に天井のある状態で作られた。これは俳優に圧迫感を与えることでよりリアルな演技を引き出すためである<ref name="Scanlon_p36">[[#スキャンロン(2012)|スキャンロン(2012)、p.36]]</ref>。セットは全てが繋がっており、外に出るには長い通路を歩く必要があった<ref name="Nathan_p61">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.61]]</ref>。ノストロモ号の構造は3階層、あるいは5 - 6階層を想定されていたが<ref name="Nathan_p50">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.50]]</ref>、予算の制約からセットは1層のみで作られ<ref name="Nathan_p65" /><ref name="Commentary" />、拡張は断念せざるを得なかった。また船の離着陸のシーンにおいては俳優が自ら椅子を揺らし、カメラも揺らして撮影されている<ref name="Commentary_P" />。狭い通路のために照明機材を置けず、セットの間接照明を利用して撮影されたこともあった<ref name="Nathan_p61" />。 |
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撮影に使用されたミニチュアモデルは全長約5m、重量250kgにもなるもので、ブライアン・ジョンソンが製作した<ref name="Sammon_p65">[[#サモン(2001)|サモン(2001)、p.65]]</ref>。製作には既製のプラモデル・キットが大量に使用され手間を省いている<ref name="Scanlon_p12">[[#スキャンロン(2012)|スキャンロン(2012)、p.12]]</ref>。精製施設とノストロモ号本体を繋ぐジョイント部分には『スターウォーズ』の[[R2-D2]]の脚部の予備が使用されている<ref name="Nathan_p65" />。 |
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=== 小惑星 === |
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小惑星はセットとミニチュアを組み合わせて撮影された。セットでは砂塵として巻き上げた[[バーミキュライト]]がスタッフを痛めつけ<ref name="Commentary" />、スモークを作るために使用された[[ドライアイス]]のせいで[[二酸化炭素]]が充満した。宇宙服は手足が非常に動かしにくかった上、当時の技術では呼吸しやすい衣装を製作できず、スケリットやカートライトらは呼吸困難に悩まされた。特にハートの消耗は激しく、常に看護師が待機し非常時に備えていた<ref name="Nathan_p90" />。映像中のヘルメットの曇りはそのためであるが、リアルであると考えた監督の意向で特に対策はとられなかった<ref name="Commentary" />。 |
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セットは最初に1.5インチ/1フィートの縮尺で雛形となる模型が作られた。これを[[石膏]]で型取りし、一定間隔で均等にスライスする。それぞれのパーツを方眼紙の上で24倍の大きさに拡大し、木製の模型を作る。模型同士に網を被せて間を補完し、細かい部分は発泡スチロールで形を整える。最後に石膏を染みこませた[[コウマ|ジュート]]の布を掛け、左官ごてで仕上げるという手順で製作された<ref name="Giger_p20">[[#ギーガー(2004)|ギーガー(2004)、p.20]]</ref><ref name="Scanlon_p65">[[#スキャンロン(2012)|スキャンロン(2012)、p.65]]</ref>。 |
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小惑星および遺棄船のミニチュアはピーター・ボイジーが製作した。ボイジーは優れた腕を見せ、レベルの高いギーガーの要求を過不足なく実現させていった。小惑星のミニチュアは骨やパイプをプラスティシン(塑像用粘土)で埋め合わせ作られている<ref name="Giger_p16" /><ref name="Scanlon_p60">[[#スキャンロン(2012)|スキャンロン(2012)、p.60]]</ref>。宇宙葬にされるミニチュアのケインの遺体もボイジーが製作した。 |
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宇宙から見た小惑星の外観においても工夫が施された。複数の塗料をタンクに流し、混然とした色合いになったものを撮影し特殊シートに現像する。このシートを白く塗装したボールに投影して立体的な質感が表現された<ref name="Scanlon_p65" />。 |
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=== 遺棄船 === |
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ギーガーのデザインした異星人の遺棄船 (Derelict Ship) は、「目立たないし、機能的ではない」とオバノンには不評であった。彼が気に入っていたのはフォスが描いた「青銅のロブスター」と通称されるデザインである。だが、スコットはその異質さ、背景と一体化してゆっくりと姿を見せる点を気に入り採用した<ref name="Nathan_pp90-91">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、pp.90-91]]</ref>。初稿では遺棄船のほかにピラミッドが登場し、エイリアンの卵はそこで見つかることになっていたが、映画の長さが3時間を越えてしまうため圧縮された<ref name="Nathan_p101" />。 |
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小惑星表面のミニチュアは質感がアップに耐えられるものではなかったため、遺棄船の外観はミニチュアをスコットの古いビデオカメラで撮影し、それをスクリーンに映したものを撮影した<ref name="Commentary" />。 |
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遺棄船のセット製作にはシーモアの助手として参加したレスリー・ディリーが腕を振るった。生物的な内装を表現するため、セットには食肉処理場へ特注した大量の動物の骨が使用されている。遺棄船入り口のセットは長さ18m、高さ10.5mで、木製の枠と石膏で作られた。内部のセットは高さ12m、長さ21mで、木とファイバーグラスで製作された<ref name="Scanlon_p85">[[#スキャンロン(2012)|スキャンロン(2012)、p.85]]</ref>。 |
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この大規模セットのため、予算は1100万ドルにまで増大した<ref name="Nathan_p89">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.89]]</ref>。それでも時間や予算の関係から妥協を余儀なくされることが多く、「通路」のセットの天井は遺棄船外観のセットをそのまま流用して手間を省き<ref name="Giger_p32">[[#ギーガー(2004)|ギーガー(2004)、p.32]]</ref>、「卵貯蔵室」へと続く「シャフト」のセットは未完成のままで製作が中止となった<ref name="Giger_p40">[[#ギーガー(2004)|ギーガー(2004)、p.40]]</ref>。また「操縦室」と「卵の貯蔵室」は同じセットを使いまわしており、操縦室から座席とターンテーブルを取り去って造られている<ref name="Giger_p34" /><ref name="Scanlon_p85" />。貯蔵室においても「妊婦の腹の膨らみ」をイメージした丸みのある部分は再現されず、ギーガーの不興を買った。 |
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エッグを覆う青いレーザーの幕は[[ザ・フー]]のボーカリスト、[[ロジャー・ダルトリー]]が関係している。彼はたまたまシェパートン・スタジオの隣の別荘でツアーに使うレーザーを試していたところであり、それが縁で機材を提供した<ref name="Nathan_p82">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.82]]</ref>。現場ではアントン・ファーストがレーザーを使った演出を担当した<ref name="Commentary_P" /><ref group="脚注">ファーストは後に[[ティム・バートン]]監督『[[バットマン (映画)|バットマン]]』(1989年)で[[アカデミー美術賞]]を受賞する。</ref> |
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=== スペースジョッキー === |
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異星人「スペースジョッキー」を登場させるか否かにはかなりの議論があったが、最終的には製作が決定した。8メートルあるこの異星人の製作には50万ドルが費やされている。監督であるスコットのほか、ギーガーを異常だと評したキャロルもこの時には彼の腕を認めるようになっており、賛成に廻っている<ref name="Nathan_pp95-98">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、pp.95-98]]</ref>。 |
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スペースジョッキーは石膏で造った原型を透明[[ポリエステル]]で型取りし、表面は[[ラテックス]]で仕上げられている。望遠鏡のような部分は発泡スチロールと発砲プラスチックで造られた<ref name="Giger_p34" />。この場面では[[プロップ]]を大きく見せるために、[[宇宙服]]姿のノストロモ乗員は子供が演じている。因みに演じた子供の内2人はスコット監督の実の子供([[ジェイク・スコット (映画監督)|ジェイク・スコット]]とルーク・スコット)で、それぞれがダラス(ジェイク)とケイン(ルーク)を演じている。ランバートはカメラマンの子供が演じた<ref name="Nathan_p98">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p98]]</ref><ref name="Commentary" />。 |
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=== エッグ === |
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エッグは当初オーソドックスな[[鶏卵]]の形でデザインされ、卵を保持する台座はスイスの卵パックの形状をそのまま流用していた<ref name="Giger_pp8-10">[[#ギーガー(2004)|ギーガー(2004)、pp.8-10]]</ref><ref name="Scanlon_p102">[[#スキャンロン(2012)|スキャンロン(2012)、p.102]]</ref>。次に改められたデザインは完成稿に近かったが、卵の開口部は[[女性器]]を模しており、陰核や陰唇にいたるまで作りこまれていた。その露骨な形状にスタッフからは笑いが起こったほどであった。結局開口部はキリスト教的な十字型に変更され、花のように開く仕組みとなった。エッグは当初6個のみ製作される予定だったが、ギーガーの反対もあり最終的には130個が製作された。チェストバスターが収まる「主役」のエッグは石膏の原型を元に、開口部はラテックス、本体は透明ポリエステルで作られた。開口部は油圧で動作し、内部には新鮮な[[羊]]の内臓が、チェストバスターが飛び出すシーンには長さ12mの[[豚]]の腸が使用されている<ref name="Nathan_p81">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.81]]</ref>。背景となるその他のエッグは石膏もしくはポリエステルで製作されている<ref name="Giger_p46">[[#ギーガー(2004)|ギーガー(2004)、p.46]]</ref>。 |
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一部のシーンはカメラを置く関係から、エッグを逆さまにして撮影された。ケインにフェイスハガーが襲い掛かるシーンの直前で、水滴が上へ登るのはこのため。エッグチェンバーの中で蠢くフェイスハガーのシルエットは、ゴム手袋をはめたスコット監督自身の手のシルエットである<ref name="Nathan_p103">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.103]]</ref><ref name="Commentary_P" />。 |
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=== フェイスハガー === |
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最初の構想では卵から尾をバネのように使って飛び出す機能を持っており、ギーガーは「邪悪なビックリ箱」と名づけていた。サイズは人間の上半身ほどもあったが、何度かの改稿を経て人の頭を覆う程度の大きさに落ち着いた<ref name="Scanlon_p93">[[#スキャンロン(2012)|スキャンロン(2012)、p.93]]</ref>。美術スタッフのロジャー・ディッケン (Roger Dicken) は気難しい性格でギーガーのデザインを受け入れず、「不快なほどに発育不全」と評した<ref name="Nathan_p106">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.106]]</ref>。この評価に激怒したギーガーはフェイスハガーの造形を自ら買って出作業に取り掛かったが、上からエイリアン本体の製作に取り掛かるよう命じられたためフェイスハガーとチェストバスターの造形はディッケンの担当となった<ref name="Giger_p54">[[#ギーガー(2004)|ギーガー(2004)、p.54]]</ref>。 |
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フェイスハガーの作業にはシャセットも携わった。彼はギーガーのデザインを元に立体化作業を開始したが、本体と指の繋がり方に悩み行き詰まった。助けを求められたコッブは短時間でフェイスハガーの仮想の骨格を書き上げ、造形作業を助けた<ref name="Commentary_P" />。着色の段階になり「人間の肌の色をした異星生物は斬新ではないか」と考えたシャセットの提案により、そのままの色で完成となった<ref name="Commentary_P" />。劇中のフェイスハガーの観察シーンではプラスチックで作った外殻に新鮮な[[カキ (貝)|カキ]]や[[ハマグリ]]を敷き詰めて生々しさを表現している<ref name="Commentary_P" />。 |
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=== チェストバスター === |
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デザインにあたり、リドリー・スコットはギーガーに[[フランシス・ベーコン (芸術家)|フランシス・ベーコン]]が描いた『キリスト磔刑図のための3つの習作』を参考にするよう要請したが、これを受けて上がってきたデザインは「退化した丸裸の七面鳥」と形容されるものであった<ref name="Giger_pp56-57">[[#ギーガー(2004)|ギーガー(2004)、pp.56-57]]</ref><ref name="Scanlon_p94">[[#スキャンロン(2012)|スキャンロン(2012)、p.94]]</ref>。このデザイン案は没となり、以降は『ネクロノミコンIV』のデザインを基本とした造形が行われた<ref name="Nathan_pp88-89">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、pp.88-89]]</ref>。 |
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ケインの胸からチェストバスターが飛び出すシーンでは、「このシーンをリアルに撮れなければ映画の存在意義がない」とするスコットの意向で、細心の注意が払われた<ref name="Nathan_p108">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.108]]</ref>。3台のカメラを用意し、あらかじめどのカメラでカットを繋いでいくかを綿密に設定した。また俳優達には何が起こるか意図的に詳細を伝えておらず、彼らから本物の驚きを引き出そうとした<ref name="Nathan_p13">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.13]]</ref><ref name="Commentary_P" />。特にランバート役のカートライトは驚きの余り足がおぼつかなくなり、足元に溜まった血糊で足を滑らせて転倒している。因みに本編で使用されたチェストバスターが飛び出してきた際にランバートが悲鳴を上げるシーンは、カートライトが驚いて転倒する直前のものである。また、ケインの血がランバートにかかったのは全くの偶然だった。最初のテイクではシャツが破れず中断されたが、次のテイクでは成功。そのため一連のシーンはワンテイクだけで成功している<ref name="Commentary_P" />。 |
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チェストバスターは胸を突き破るシーン、クルーを見回すシーン、走り去るシーン用の3種類が製作された。尾はフェイスハガーのものが流用されたが、ギーガーはこれを「恐竜のようだ」とあまり好まなかった<ref name="Nathan_p108" /><ref name="Giger_p56">[[#ギーガー(2004)|ギーガー(2004)、p.56]]</ref>。操演はディッケンとアルダーの二人が担当した<ref name="Nathan_p109">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.109]]</ref>。 |
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=== エイリアン === |
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時間が押し迫っていたため、デザインはほぼ『ネクロノミコンIV』のそれを踏襲しており、何度かデザインが起こされたものの、皮膚の細かいディティールや背中の突起が寝ていることを除けばほぼ変化はない。なお、昆虫のような楕円形の目だけはスコットの提言を受け削除された<ref name="Nathan_p111">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.111]]</ref>。 |
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スーツの仕様に関してはいくつか案が出された。大道芸人や空手家の起用や<ref name="Scanlon_p88">[[#スキャンロン(2012)|スキャンロン(2012)、p.88]]</ref>、一つのスーツの中に子供と大人が入り別々に腕を動かすというアイディアは問題が多過ぎ実現しなかった。全自動のロボットにするという案は俳優が負傷する恐れがあり却下された<ref name="Giger_p58">[[#ギーガー(2004)|ギーガー(2004)、p.58]]</ref><ref name="Nathan_p111" />。 |
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スコットがエイリアンのスーツに入る人間として望んだのは、[[レニ・リーフェンシュタール]]が撮影した[[ヌバ族]]の写真のような、長身の人間であった<ref name="Giger_p58" />。だが実際の候補者探しは難航した。そんな折、キャスティングディレクターはたまたま[[パブ]]で酒を飲んでいた長身のアフリカ人(出自についてはナイジェリア人<ref name="Sammon_p130">[[#サモン(2001)|サモン(2001)、p.130]]</ref>、[[ケニヤ]]の[[マサイ族]]<ref name="Nathan_p111" />、[[ツチ]]<ref>{{Cite web|url=http://video.foxjapan.com/blu-ray/premium/alien/interview/|title=「エイリアン・アンソロジー」オフィシャルサイト スペシャル・インタビュー|accessdate=2012-11-23}} </ref>など諸説ある)、ボラジ・バデジョ (Bolaji Badejo) に目をつけ、出演を依頼した。彼はグラフィック・デザインを学んでいた大学生で、[[太極拳]]と[[パントマイム]]の知識があった。劇中のエイリアンのゆったりした歩行は彼の技術が反映されている<ref name="Nathan_pp111-115">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、pp.111-115]]</ref><ref name="Scanlon_p88" />。また、スタントシーンではエディ・パウエル (Eddie Powell) とロイ・スキャメル (Roy Scammell) がエイリアンを演じた<ref name="Sammon_p130" /><ref name="Commentary_P" />。黒人の代役を白人が務めるということで、スタントシーンの撮影をバデジョは楽しそうに観覧していたという<ref name="Giger_p70">[[#ギーガー(2004)|ギーガー(2004)、p.70]]</ref>。 |
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スーツの製作はギーガー自身が担当した。ボイジーは多忙を極めていたため、助っ人としてエディ・バトラーが加わり、のちにパティ・ロジャーズ、シャーリィ・デニーの二人が作業を補佐した。スーツは構想段階では半透明で、骨格や消化器官が透けて見える予定であった<ref name="Giger_p54">[[#ギーガー(2004)|ギーガー(2004)、p.54]]</ref><ref name="Giger_p58" />。時間の許す限りギリギリまで試行錯誤が繰り返されたが、スーツや鋳型の耐久性に問題があり、すぐに破損してしまう問題があった。金属製の鋳型を用いれば解決する問題であったが、それを製作している余裕がなかったため半透明の構想を断念し、ラテックスを用いることに決まった。スーツはボラジ・バデジョの体から石膏型をとったほか、スタントマンの体型にあわせた複製も製造された<ref name="Giger_p66">[[#ギーガー(2004)|ギーガー(2004)、p.66]]</ref>。 |
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複雑なエイリアンのギミックを実現させるため、頭部の製作はカルロ・ランバルディが担当した。作業はシェパートン・スタジオではなく[[ロサンゼルス]]にあるランバルディの仕事場で行われた。フード内に見える人間の[[頭蓋骨]]は本物であり、ギーガーが自ら埋め込んだ<ref name="Sammon_p130-131">[[#サモン(2001)|サモン(2001)、p.130-131]]</ref>。これに[[ガラス繊維|ファイバーグラス]]を巻き、[[アルミニウム]]で内部の支えをつくった。顔の筋肉はケーブルで、特徴的な2重顎はエアシリンダーでそれぞれ動作する。歯茎と顎をつなぐ[[腱]]は[[コンドーム]]が使われている<ref name="Nathan_pp115-116">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、pp.115-116]]</ref>。別個に製作されたにも拘わらず、ランバルディの手による頭部はギーガーの要求を充分に満たす出来栄えであり、イギリス側で作られた予備の頭部との差は歴然であったという<ref name="Giger_p68">[[#ギーガー(2004)|ギーガー(2004)、p.68]]</ref>。頭は機械が仕込まれたものが一つ、仕込まれていないものが二つ、完全自動式兼遠隔操作可能なもの、半自動式、プラスティック製のスタント用の計6種が製造された<ref name="Giger_p68" />。 |
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脚本上の問題点として、オバノンは「なぜクルーがエイリアンを殺さないのか」という疑問点を指摘していた。そこでコッブは「エイリアンの血が強酸性である」という設定を考案し、容易に殺せない理由を付加した<ref name="Nathan_p104">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.104]]</ref><ref name="Commentary_P" />。フェイスハガーの酸によって船体が溶けるシーンは[[クロロフォルム]]、[[アセトン]]、[[酢酸]]を混ぜた液体を使い、銀色に塗った発泡スチロールを溶かして撮影された<ref name="Nathan_p104" />。 |
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== ポストプロダクション == |
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ポストプロダクションに突入した時点ですら、スコットは満足せず、ノストロモ号のミニチュアモデルの撮影をやり直した<ref name="Nathan_p65" /><ref name="Sammon_p137">[[#サモン(2001)|サモン(2001)、p.137]]</ref>。10月から11月にかけて撮り直しや追加シーンの撮影が17日間行われた<ref name="Nathan_p172" /><ref name="Sammon_p125" />。撮影終盤にはスタッフは1日17時間、週に6 - 7日間働き通しであったという<ref name="Sammon_p137" />。 |
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またオバノンはクレジットの表記について、ガイラーとヒルの名を入れるべきかどうかについて[[全米脚本家組合]](WGA)を巻き込み仲裁調停を引き起こした。WGAはオバノンの主張を支持したものの、周囲のスタッフはガイラーとヒルの名前を入れるべきだと説得した。最終的にオバノンはこれを受け入れ、二人の名は脚本家としてクレジットされることになった<ref name="Sammon_p140">[[#サモン(2001)|サモン(2001)、p.140]]</ref>。 |
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== 音楽 == |
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リドリー・スコットは楽曲に組曲『[[惑星 (組曲)|惑星]]』、それも[[冨田勲]]が編曲した[[惑星 (冨田勲のアルバム)|シンセサイザー版]]の起用を望んでいたが、ラッドの勧めでジェリー・ゴールドスミスに依頼することになった<ref name="Nathan_p57" /><ref name="Sammon_p131">[[#サモン(2001)|サモン(2001)、p.131]]</ref>。 |
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最初にゴールドスミスが作った曲は瑞々しいものだったが、それゆえに没になった。次に作られた曲は静的で不気味なものであり、スタッフを満足させた。作曲に要した時間はわずか10分に過ぎなかった<ref name="Nathan_p57" />。 |
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目覚めのシーンではゴールドスミスの過去の作品である『[[フロイド/隠された欲望]]』の曲が流用されている。また、クレジット画面では[[ハワード・ハンソン]]の『[[交響曲第2番 (ハンソン)|交響曲第2番 ロマンティック]]』が使用されている<ref name="Nathan_p57" /><ref name="Sammon_p132">[[#サモン(2001)|サモン(2001)、p.132]]</ref>。これを不満としたゴールドスミスはフォックスに説明を求めたが、結局覆ることはなかった<ref name="Nathan_p57" />。 |
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なお冨田勲の『惑星』は撮影現場で使用されている。テンションの高い演技が必要とされるウィーバーのため、スコットは現場にスピーカーを配置し、『惑星』の中の一曲「火星」を流して聞かせた。一方、音を後で全て付け直さなければならなかったため、音声係の負担は増大した<ref name="Nathan_p139">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.139]]</ref><ref name="Commentary" />。 |
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== エンディング == |
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スコットは最後のナルキッソス号でのシーンのため、4日のスケジュール延長を会社に要求した。会社は難色を示したものの、スコットは今までの定石を引っくり返すと会社を説得した<ref name="Commentary_P" />。スコットの目論見通り「解決したと見せかけてさらにもう一幕がある」という手法は成功し、以降のホラー映画に新しい定番をもたらした<ref name="Nathan_p139" />。 |
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本人の意向により、ウィーバーは次に何が起こるのか知らされずに撮影が進められた<ref name="Nathan_p138">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.138]]</ref><ref name="Commentary_P" />。全裸のリプリーを目の当たりにしたエイリアンが己との違いに気づき、彼女に見入るといったシーンも予定されていたもののアイディアだけで終わった<ref name="Nathan_p139" /><ref name="Commentary_P" /><ref group="脚注">ウィーバーも、脱出用シャトル内で[[コールドスリープ|冷凍冬眠]]を行うために服を脱ぐシーンは、下着姿ではなく全裸で撮影する予定があったことをアクターズスタジオインタビューで語っている。</ref>。下着姿で宇宙服を身につけるシーンにその名残が残っている<ref name="Nathan_p139" />。 |
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エンディングシーンは当初3種類あり、「エイリアンの存在にリプリーは気付かず一緒に地球に帰還する」、「エイリアンとともに宇宙の藻屑となる」そして採用案である「エイリアンを倒し無事地球に帰還する<ref group="脚注">日本語字幕では原語の Frontier に「銀河系」という単語をあてているが、Frontier に銀河系の意味はなく、「国境」「辺境地帯」とするのが正しい。</ref> 」のそれぞれが用意されていた。アメリカでは第1案の結末で劇場公開された映画館もある{{要出典|date=2012-06}}。 |
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== エイリアン・フェミニズム == |
== エイリアン・フェミニズム == |
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[[File:Sigourney Weaver 1989 Academy Awards.jpg|thumb|それまでの「ハリウッド的な」美女ではない男性的なヒロインの登場は、当時のフェミニズム運動と重なり合う<ref>石塚倫子 前掲論文 31頁。</ref>]] |
[[File:Sigourney Weaver 1989 Academy Awards.jpg|thumb|それまでの「ハリウッド的な」美女ではない男性的なヒロインの登場は、当時のフェミニズム運動と重なり合う<ref>石塚倫子 前掲論文 31頁。</ref>。]] |
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ホラーSFである「エイリアン」には、恋愛要素が薄いにもかかわらず、妊娠・出産のメタファーを中心に「濃厚なセクシュアリティが漂っている」<ref>{{Cite journal |和書 |author = 石塚倫子 |title = SF映画『エイリアン』のメッセージ再考 : 怪物表象に見られるセクシャル・ポリティクス |date = 2002 |publisher = 宇都宮共和大学 |
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ホラーSFである「エイリアン」には、恋愛要素が薄いにもかかわらず、妊娠・出産のメタファーを中心に「濃厚なセクシュアリティが漂っている」<ref>{{Cite journal|和書|author = 石塚倫子|title = SF映画『エイリアン』のメッセージ再考 :怪物表象に見られるセクシャル・ポリティクス|date = 2002|publisher = 宇都宮共和大学 |
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|journal = 那須大学論叢 |number = 3 |naid = 110007124170 |pages = 25-35}} 26頁。</ref>。 |
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|journal = 那須大学論叢|number = 3|naid = 110007124170|pages = 25-35}} 26頁。</ref>。 |
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[[内田樹]]はこの生殖のメタファーを「体内の蛇」のモチーフをもちいて考察している。それによると本作における「宇宙船のクルーがエイリアンの幼体からその子孫を体内にうえつけられ、それが体を破って外に出てくる」という流れは、[[ヨーロッパ]]全域で流布している「体内の蛇」と呼ばれる[[民間説話]]をなぞったものであり、この説話を[[フェミニズム]]に結びつけたことにオリジナリティがあるという。 |
[[内田樹]]はこの生殖のメタファーを「体内の蛇」のモチーフをもちいて考察している。それによると本作における「宇宙船のクルーがエイリアンの幼体からその子孫を体内にうえつけられ、それが体を破って外に出てくる」という流れは、[[ヨーロッパ]]全域で流布している「体内の蛇」と呼ばれる[[民間説話]]をなぞったものであり、この説話を[[フェミニズム]]に結びつけたことにオリジナリティがあるという。 |
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本作でのエイリアンは男性社会のメタファーであり、男性器のような頭部を持ち、口から精液のような粘液をしたたらせている<ref> |
本作でのエイリアンは男性社会のメタファーであり、男性器のような頭部を持ち、口から精液のような粘液をしたたらせている<ref name="EigaHihou3_p71">[[#映画秘宝3(2012)|映画秘宝EX(2012)、p.71]]</ref>。エイリアンは女性を妊娠させようとする男性の性欲の象徴であり、主人公の[[エレン・リプリー]]はそれに対抗するフェミニズム志向の女性の役割を果たしている。リプリーはそれまでのSF映画のヒロインと違い強い女であり、男性クルーと対等で船長代行を務め会社の陰謀を探る。リプリーの姿は1970年代後半に製作された女性の自立や台頭をあつかった映画とともに語られることがある<ref name="EigaHihou3_p71">[[#映画秘宝3(2012)|映画秘宝EX(2012)、p.71]]</ref>。 |
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映画公開当時、男性に依存しない勇敢な女性が自力で(男性性の象徴である)エイリアンを退治するというこの映画を、女性たちはフェミニズムの勝利の物語として賞賛したのだ、と評価されることが多い{{信頼性要検証|date=2012年6月}}。しかし内田樹は、本作は女性からだけでなく保守的な(反フェミニスト的な)男性からも支持されていることを指摘し、「戦闘的フェミニストの勝利」という劇的な結末を演出するために結末以前の部分では「ヒロインがエイリアンから徹底的に陵辱される」という描写で埋め尽くされていると述べている<ref>[[難波江和英]]・[[内田樹]] 『現代思想のパフォーマンス』 [[光文社]]、2004年、137-142頁。ISBN 978-4334032777。 内田樹『女は何を欲望するか?』角川書店、2008年 ISBN 978-4-044-710090-9 も参照</ref>。映画のクライマックスで下着姿のリプリーに襲いかかろうとするエイリアンは男社会に虐げられてきた女性の縮図である<ref> |
映画公開当時、男性に依存しない勇敢な女性が自力で(男性性の象徴である)エイリアンを退治するというこの映画を、女性たちはフェミニズムの勝利の物語として賞賛したのだ、と評価されることが多い{{信頼性要検証|date=2012年6月}}。しかし内田樹は、本作は女性からだけでなく保守的な(反フェミニスト的な)男性からも支持されていることを指摘し、「戦闘的フェミニストの勝利」という劇的な結末を演出するために結末以前の部分では「ヒロインがエイリアンから徹底的に陵辱される」という描写で埋め尽くされていると述べている<ref>[[難波江和英]]・[[内田樹]] 『現代思想のパフォーマンス』 [[光文社]]、2004年、137-142頁。ISBN 978-4334032777。 内田樹『女は何を欲望するか?』角川書店、2008年 ISBN 978-4-044-710090-9 も参照</ref>。映画のクライマックスで下着姿のリプリーに襲いかかろうとするエイリアンは男社会に虐げられてきた女性の縮図である<ref name="EigaHihou3_p71">[[#映画秘宝3(2012)|映画秘宝EX(2012)、p.71]]</ref>。 |
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リプリーにあたる役を男性から女性に変更した際、性別を意識した台詞の改変はほとんど行われなかった。ウィーバー自身はリプリーがフェミニズムに関連付けて語られることには慎重であり、「いいキャラクターはいいキャラクター、性別なんて関係ない」と述べている<ref name="Nathan_p136">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.136]]</ref>。 |
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== 配役・演出 == |
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{{雑多な内容の箇条書き|date=2012年4月}} |
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* ウィーバーによると、脱出用シャトル内で[[コールドスリープ|冷凍冬眠]]を行うために服を脱ぐシーンは、下着姿ではなく全裸で撮影する予定だったとのこと(アクターズスタジオインタビューより)。 |
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* 船の離着陸のシーンでは、予算の関係から俳優が自ら椅子を揺らしている。 |
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* Engineerの登場シーンでは、[[プロップ]]を大きく見せるために、[[宇宙服]]姿のノストロモ乗員は子供が演じている。因みに演じた子供の内2人はスコット監督の実の子供([[ジェイク・スコット (映画監督)|ジェイク・スコット]]とルーク・スコット)で、それぞれがダラス(ジェイク)とケイン(ルーク)を演じている。 |
|||
*エッグチェンバーの中で蠢くフェイスハガーのシルエットは、スコット監督自身の手のシルエットである。 |
|||
* ケインの胸からチェストバスターが飛び出すシーンでは、俳優達に何が起こるか意図的に詳細を伝えておらず、彼らの驚きは本物であったとDVDコメンタリーで述べられている。また成体エイリアンの姿もセットで遭遇するまで伏せられていた。特にランバート役のカートライトは驚きの余り足がおぼつかなくなり、足元に溜まった血糊で足を滑らせて転倒している。因みに本編で使用されたチェストバスターが飛び出してきた際にランバードが悲鳴を上げるシーンは、カートライトが驚いて転倒する直前のものである。また、ケインの血がランバートにかかったのは全くの偶然だった。 |
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* 脱出用シャトルは、発進後に前進ではなくブレーキをかけることでノストロモ号から離脱した。遠ざかるノストロモ号がシャトルの前方窓から見えるのはこのため。 |
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== |
== 設定 == |
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; 小惑星 |
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{{雑多な内容の箇条書き|date=2012年4月}} |
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: 銀河系の外縁、ゼータ第2星団 (Zeta II Reticuli) にある星を巡る[[小惑星]]。謎の遺棄船が存在していた。大気組成は[[窒素]]、[[メタン]]、高濃度の[[炭酸ガス]]が主成分。気温は零下。劇中では単に小惑星と呼ばれ、LV-426の名称で呼ばれるのは『2』から。 |
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*ケインを演じたジョン・ハートは『[[スペースボール]]』に同じ役でカメオ出演し、宇宙のファーストフード店で、食事中に体内に寄生していたエイリアンに腹を食い破られた男という設定で[[セルフパロディ]]を演じている。この時は「またか」と嘆いている上に、"Himself(本人)"とクレジットされた。 |
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: ディレクターズ・カットの追加シーンでは約1,200km<ref group="脚注">直径、周囲、距離のいずれなのかは不明。日本語音声では「周囲」となっている。</ref>。[[自転周期]]は約2時間。[[重力]]0.86Gとされている。 |
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*アッシュがリプリーを殺そうと丸めた雑誌を彼女の口に押し込もうとするシーンがあるが、その雑誌は「[[平凡パンチ]]」で、表紙の写真は[[山口百恵]]である。宇宙船ノストロモ号が日系企業の所有ものだからだという事が後に監督によって語られている。ちなみに、その会社の名前は[[ウェイランド・ユタニ]]である。またアッシュ達人造人間の分類呼称は映画作品シリーズ内では「アンドロイド」のみだが派生作品のゲームなどでは「synthetics(シンセティック・合成人間)」と呼ばれているケースが有る。 |
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: なお「ζ<sup>2</sup> Reticuli 」は実在しており、[[レチクル座]]内で最も地球に近い(39光年)星である。 |
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* 時限自爆装置が稼動するとコンピュータ「マザー」が「この船はTマイナスX分以内に破壊される」と自爆までの時間を読み上げるが、これは間違いである。「T」は通常、[[ロケット]]の打ち上げに代表されるようなイベントの時刻を表し、それ以前の''時刻''を「TマイナスX分(秒)」で表すので、「TマイナスX分以内に破壊される」では意味を成さない。なお、第二作では「X分以内に」となっている。 |
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; スペースジョッキー |
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: 小惑星で発見された正体不明の異星人。身長約4.9m、体重約272kg<ref name="AVP2Database">Blu-ray Disc版『エイリアンvsプレデター2』の特典「ウェイランド・ユタニ社データベース」より。</ref>。象のような鼻をもち、伸びた先端は胸骨と一体化するかのように埋没している。操縦席らしきものに着座したままミイラ化していた。彼らの宇宙船には大量のエイリアンの卵が積載されていた。エイリアンの創造主ではないかと考えられているが詳細は不明<ref name="AVP2Database" />。 |
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: 『プロメテウス』にも同型の異星人が登場しており、象のような鼻はマスクであり中身は人間と同様の顔があると設定された。 |
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; ノストロモ号 |
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: ウェイラン・ユタニ社が所有する商業牽引船。本体部分と巨大な4つの塔のような燃料精製所で構成される。2000万トンの[[鉱石]]を積載し地球に帰還する途中、小惑星からの信号を受信し調査に向かう。作品の舞台となるのは本体部分で、精製施設の内部は登場していない。メインフレームコンピューターは「MU/TH/R(6000) 182モデル」であり、「マザー」と通称される<ref name="AVP2Database" />。エイリアンの脅威から逃れるためリプリーの判断で自爆させられた。『2』によれば自爆による損害は4,200万ドルにおよぶ(鉱石の価値を除く)。 |
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: ノストロモ号の規模は本体が全長240m、精製施設が全長3.2km、全幅2.4kmとの想定で撮られた<ref name="Scanlon_p10">[[#スキャンロン(2012)|スキャンロン(2012)、p.10]]</ref>。本作以降に定められた設定では全長334m、全幅215メートル、全高98メートル。[[ロッキード・マーティン]]社製CM-88Bバイソン「M級ジャガーノート」宇宙貨物船を2116年に改装した船とされている<ref name="Nathan_p55">[[#ネイサン(2012)|ネイサン(2012)、p.55]]</ref><ref group="脚注">「Mクラス」の設定は『2』冒頭の査問会シーンでも登場している。</ref><ref group="脚注">後発の設定であり、劇中には具体的な年代を明記したシーンはない。なおBlu-ray Disc版パッケージ裏の表記では2087年となっている。</ref>。スペック自体はデザイン草案の段階からコッブが練り上げデザイン画に書き込んでいる<ref name="Scanlon_p24">[[#スキャンロン(2012)|スキャンロン(2012)、p.24]]</ref>。 |
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: デザインはコッブおよびスコット。名称は「スナーク号」「リヴァイアサン号」など変遷したが、スコットによってノストロモ号と命名された。これはイギリスの小説家[[ジョゼフ・コンラッド]]の小説『ノストローモ』(''[[:en:Nostromo|Nostromo]]'')(1908年執筆)に由来する<ref name="Sammon_p134">[[#サモン(2001)|サモン(2001)、p.134]]</ref><ref group="脚注">スコットが2年前に監督した『デュエリスト/決闘者』もコンラッドの作品が原作である。</ref>。 |
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: 自爆装置は核融合炉の冷却剤濃度を減少させ臨界をもたらして爆破させる仕組み<ref name="Nathan_p55" />。時限自爆装置が稼動するとコンピュータ「マザー」が「この船はTマイナスX分以内に破壊される」と自爆までの時間を読み上げるが、これは間違いである。「T」は通常、[[ロケット]]の打ち上げに代表されるようなイベントの時刻を表し、それ以前の'''時刻'''を「TマイナスX分(秒)」で表すので、「TマイナスX分以内に破壊される」では意味を成さない。『2』では「X分以内に」となっている。 |
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; ナルキッソス号 |
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: ノストロモ号の脱出艇。右舷下部に搭載されている。デザインはコッブ。名称はコンラッドの作品『ナーシサス号の黒人』(''[[:en:The Nigger of the 'Narcissus'|The Nigger of the 'Narcissus']]'')(1975年執筆)に由来<ref name="Sammon_p134" />。普段はダラスが一人で音楽を聴く個人スペースとして使用されている。 |
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: ナルキッソス号は発進後に前進ではなくブレーキをかけることでノストロモ号から離脱した。遠ざかるノストロモ号がシャトルの前方窓から見えるのはこのため。 |
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: 設定ではロッキード・マーティン社製スターキャブ級シャトルクラフト。左舷下部には第2脱出艇の「[[サルマキス]]」も搭載されているが劇中では未登場<ref name="Nathan_p55" /><ref group="脚注">脱出艇が二つあるとリプリーが自爆を解除しようとするシーンや危険を承知でナルキッソス号に戻るシーンが矛盾する。</ref> |
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; ウェイラン・ユタニ社 |
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: 詳細は[[ウェイランド湯谷社]]を参照。劇中では会社とのみ呼ばれる。ウェイラン'''ド'''となったのは『2』から。 |
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== 脚注 == |
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<references group="脚注" /> |
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== 出典 == |
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{{Reflist|3}} |
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== 参考資料 == |
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=== ノベライズ === |
=== ノベライズ === |
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* {{Cite book|和書|author=[[アラン・ディーン・フォスター]]|translator=[[深町眞理子]]|date=1979-5-31|title=エイリアン|publisher=[[角川文庫]]|isbn=978-4-0427-2401-8}} |
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=== ドキュメンタリーブック === |
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*『ギーガーズ・エイリアン』[[H・R・ギーガー]]著、[[リブロポート|トレヴィル]](1986年11月) ISBN 978-4845702459 |
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*『ギーガーズ・エイリアン(復刊)』[[H・R・ギーガー]]著、[[河出書房新社]](2004年8月20日) ISBN 978-4309905945 |
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=== ムック === |
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* {{Cite book|和書|date=2012-6-25|title=映画秘宝EX 映画の必修科目03 異次元SF映画100|publisher=[[洋泉社]]|isbn=978-4-8624-8959-3|ref=映画秘宝3(2012)}} |
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<references/> |
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=== 映像作品 === |
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* {{cite video|people=リドリー・スコット(監督)|date=2012-7|title=エイリアン|medium=映画|location=カリフォルニア州|publisher=20世紀フォックス}} (Blu-ray版) |
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* {{cite video|people=[[ストラウス兄弟]](監督)|date=2007-12|url=http://movies.foxjapan.com/avp2/|title=AVP2 エイリアンズVS.プレデター|medium=映画|location=カリフォルニア州|publisher=20世紀フォックス}} (Blu-ray版) |
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=== ドキュメンタリーブック === |
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* {{Cite book|和書|author=H・R・ギーガー|date=1986-11|title=ギーガーズ・エイリアン|publisher=[[リブロポート|トレヴィル]]|isbn=978-4-8457-0245-9|}} |
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* {{Cite book|和書|author=H・R・ギーガー|date=2004-8-20|title=ギーガーズ・エイリアン(復刊)|publisher=[[河出書房新社]]|isbn=978-4-3099-0594-5|ref=ギーガー(2004)}} |
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* {{Cite book|和書|author=[[ポール・M・サモン]]|translator=尾之上浩司|date=2001-4-10|title=リドリー・スコットの世界|publisher=[[扶桑社]]|isbn=978-4-5940-3096-4|ref=サモン(2001)}} |
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* {{Cite book|和書|author=ポール・スキャンロン、マイケル・グロス|translator=池谷律代|date=2012-7-30|title=ブック・オブ・エイリアン|publisher=[[小学館集英社プロダクション]]|isbn=978-4-7968-7123-5|ref=スキャンロン(2012)}} |
|||
* {{Cite book|和書|author=イアン・ネイサン|translator=富永和子ほか|date=2012-8-20|title=エイリアン・コンプリートブック|publisher=[[竹書房]]|isbn=978-4-8124-4936-3|ref=ネイサン(2012)}} |
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== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
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* [http://www.foxjapan.com/movies/alien/ エイリアン・フェスティバル] |
* [http://www.foxjapan.com/movies/alien/ エイリアン・フェスティバル] |
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* {{Movielink|allcinema|2752|エイリアン}} |
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* {{Movielink|kinejun|1119|エイリアン}} |
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* {{Movielink|allmovie|1503|Alien}} |
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* {{Movielink|imdb|0078748|Alien}} |
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{{エイリアン&プレデター}} |
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2013年1月31日 (木) 12:34時点における版
エイリアン | |
---|---|
Alien | |
監督 | リドリー・スコット |
脚本 | ダン・オバノン |
原案 |
ダン・オバノン ロナルド・シャセット |
製作 |
ゴードン・キャロル デヴィッド・ガイラー ウォルター・ヒル |
製作総指揮 | ロナルド・シャセット |
出演者 |
トム・スケリット シガニー・ウィーバー ヴェロニカ・カートライト ハリー・ディーン・スタントン ジョン・ハート イアン・ホルム ヤフェット・コットー |
音楽 | ジェリー・ゴールドスミス |
撮影 | デレク・ヴァンリント |
編集 |
テリー・ローリングス ピーター・ウェザリー デヴィッド・クロウザー(ディレクターズ・カット版) |
配給 | 20世紀フォックス |
公開 |
1979年5月25日 1979年7月21日 |
上映時間 | 118分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
製作費 | $11,000,000[1] |
興行収入 | $104,931,801[1] |
次作 | エイリアン2 |
『エイリアン』(Alien)は、1979年のアメリカ合衆国の映画。航行中の大型宇宙船という閉鎖空間の中で異星生物(エイリアン)に襲われる乗組員の恐怖と葛藤を描く。エイリアンのデザインは、シュールリアリズムのデザイナー[要出典]H.R.ギーガーが担当した。リドリー・スコットやシガニー・ウィーバーの出世作であると共にSFホラーの古典として知られ、続編やスピンオフが製作されている。 リドリー・スコット自身による本作の前日譚となる3D映画『プロメテウス』が2012年6月に世界各国で公開された。
1980年の第52回アカデミー賞では視覚効果賞を受賞。同年第11回星雲賞映画演劇部門賞受賞。
公開時のキャッチコピーは「宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない」。
ストーリー
宇宙貨物船ノストロモ号は、他恒星系から地球へ帰還する途中、未知の異星文明の物と思われる電波信号を受信した。人類初となる異星人との遭遇のために小惑星に降り立った乗組員たちは、宇宙船と化石化した宇宙人(スペース・ジョッキー)を発見、調査を進めるうちに巨大な卵のような物体が無数に乱立する空間へ辿り着く。航海士のケインがこの物体に近づくと、中から蜘蛛に似た生物が飛び出して彼のヘルメットのゴーグルを突き破り顔に張り付いた。急いでノストロモ号へ帰還する一行。電波信号は解析の結果、宇宙人が発した何らかの警告であることが判明した。
ケインの顔面に張り付いた生物は、力づくや外科措置では引き剥がせなかったが、やがてはがれ落ちて死んだ。その後のケインに異常は見られず回復したかに思われたが、乗組員たちとの食事中に突然苦しみ出した彼の胸部を食い破って奇怪な寄生生物が出現、逃走する。ケインは体内にエイリアンの幼体を産み付けられていたのである。
乗組員たちが捜索する間に脱皮し、より大型に変貌していたエイリアンはブレットを殺害し、通気口へ身を潜める。乗組員たちは科学担当のアッシュのアドバイスに従い、エイリアンをエアロックから宇宙へ放出する事に決定。しかし、エイリアンの能力は彼らの想像を遥かに上回り、単身潜入した船長のダラスは返り討ちとなる。
残ったリプリーらは善後策を協議。リプリーは有効な対策を提示できないアッシュに不満を抱き、直接ノストロモ号のコンピュータ「マザー」に解決策を問いかけるが、そこで彼女は、コンピュータが乗組員たちがエイリアンに勝てないと見ていること、さらに、雇用主である企業は「生きているエイリアンの捕獲」を最優先事項としていることを知る。真相を知ったリプリーをアッシュが襲い殺害しようとするが、駆けつけたランバート達がこれを阻止、アッシュは「破壊」された。彼の正体は企業が乗組員たちを監視するために送り込んだアンドロイドだった。
乗組員達は本船を爆破し、脱出用シャトルで地球圏へ逃れる計画を立てるが、エイリアンはランバートとパーカーを殺害、残るはリプリーただ一人になった。彼女はノストロモ号の自爆装置を起動し、船のマスコットである猫のジョーンズをつれて逃げるが、シャトルへの通路上にエイリアンを発見。脱出を中断し、自爆装置の解除操作を行うリプリーだが間に合わず、カウントダウンは止まらない。仕方なく戻ったリプリーは、エイリアンが通路から立ち去っていることを確認し、ジョーンズと共にシャトルへ乗船、ただちに発進させる。直後、ノストロモ号は自爆、全ては終わったかに思われたが…。
キャスト
- トム・スケリット - ダラス
- ノストロモ号船長。ケイン・ブレットの死亡後、エイリアンを退治する為に自らダクトに潜入するが、エイリアンに襲われ行方不明となる[脚注 1]。
- ディレクターズ・カット版では自爆時にはまだ生きており、地下でブレットと共に繭にされていた。リプリーに火炎放射器で焼かれ死亡。なお、スピンオフであるAVPシリーズの『AVP2』には同名の人物が登場する。
- シガニー・ウィーバー - エレン・リプリー
- 航海士。責任感が強く行動力に富む。ノストロモ号の乗組員の中で唯一生き残る。シリーズを通じての主人公。
- ヴェロニカ・カートライト - ランバート
- 航海士。女性。地球へ脱出するために、脱出用シャトルの発進準備中にエイリアンに遭遇、パーカーと共に殺された。
- ハリー・ディーン・スタントン - ブレット
- 機関員。パーカーの相棒で口調は「そのとおり」。猫のジョーンズを捜している最中にエイリアンに襲われ死亡。
- ディレクターズ・カット版ではダラスと同様に繭にされていたが、先に襲われ、かつ脳を破壊されたため、原型をとどめていなかった。最後は、ダラスと共に火炎放射器で焼かれた。
- ジョン・ハート - ケイン
- 副長。エッグチェンバーに近づき、中から出たフェイスハガーに寄生され、最後は胸部からのチェストバスター出により死亡。遺体は宇宙葬にされた。
- イアン・ホルム - アッシュ
- 科学・医療担当のアンドロイド。エイリアンの分析を行い、クルー達にアドバイスを行うが、対応は常に後手に回り幾人もの乗組員を失う結果となる。その正体はウェイランド社の密命を受けたアンドロイドで、エイリアンを持ち帰るという真の目的をリプリーが知ったため、彼女に襲いかかる。直後にランバートとパーカーに取り押さえられ、尚も暴れたためにパーカーによって破壊される。エイリアンを「完全な生物」と称え、リプリー達が生き残れないことを予測し同情の笑みを浮かべる悪態をつき、完全に機能を停止した。
- 『2』によれば型式は「ハイパーダインシステムズ 120-A/2」 。アッシュ達、人造人間の分類呼称は映画作品シリーズ内では「アンドロイド」のみだが派生作品のゲームなどでは「シンセティック(synthetics)・合成人間」と呼ばれているケースがある。
- ヤフェット・コットー - パーカー
- 機関員。黒人。自分とブレットの給料が少ないことに不満に思っていた。度々故障や損傷をしたノストロモ号をブレットと共に修理したほか、ブレットがエイリアンに殺害された後、エイリアンを倒すために即席の火炎放射器を作成するなど、機械修理だけでなく兵器の取り扱いも得意である。ランバートと共にエイリアンに遭遇。ランバートとエイリアンの距離が近かったため、火炎放射器を使うタイミングを逃し殺された。
日本語吹き替え
俳優 | 役名 | フジテレビ | LD | VHS・DVD | テレビ朝日 | DCDVD・BD |
---|---|---|---|---|---|---|
トム・スケリット | ダラス | 前田昌明 | 西沢利明 | 富山敬 | 大塚明夫 | 郷田ほづみ |
シガニー・ウィーバー | リプリー | 野際陽子 | 田島令子 | 幸田直子 | 戸田恵子 | 幸田直子 |
ヴェロニカ・カートライト | ランバート | 鈴木弘子 | 榊原良子 | 安永沙都子 | 鈴木ほのか | |
ハリー・ディーン・スタントン | ブレット | 青野武 | 北村弘一 | 穂積隆信 | 千田光男 | 樋浦勉 |
ジョン・ハート | ケイン | 仲村秀生 | 櫻田達雄 | 納谷六朗 | 牛山茂 | 森田順平 |
イアン・ホルム | アッシュ | 富田耕生 | 田中信夫 | 羽佐間道夫 | 岩崎ひろし | |
ヤフェット・コットー | パーカー | 飯塚昭三 | 渡部猛 | 郷里大輔 | 麦人 | 大川透 |
"マザー" | 久保田民絵 | 佐々木優子 | 小宮和枝 |
- フジテレビ - 1980年初回放送「ゴールデン洋画劇場」
- LD(レーザーディスク) - 1981年発売
- VHS・DVD - 1983年発売
- テレビ朝日 - 1992年初回放送「日曜洋画劇場」
- ディレクターズ・カット版DVD・Blu-ray Disc - 2003年発売
スタッフ
- 製作総指揮 - ロナルド・シャセット
- 製作 - ゴードン・キャロル、デイヴィッド・ガイラー、ウォルター・ヒル
- 監督 - リドリー・スコット
- 原案 - ダン・オバノン、ロナルド・シャセット
- 脚本 - ダン・オバノン
- 撮影 - デレク・ヴァンリント
- 美術 - マイケル・シーモア、(ロジャー・クリスチャン ※ノンクレジット)
- クリーチャーデザイン - H.R.ギーガー
- クリーチャー造形 - H.R.ギーガー、ロジャー・ディッケン
- クリーチャー効果 - カルロ・ランバルディ
- 音楽 - ジェリー・ゴールドスミス
- 提供 - 20世紀フォックス、ブランディワインプロダクションズリミテッド
原案
『エイリアン』の原案はダン・オバノンによって生み出された。南カリフォルニア大学在学中の1974年、ジョン・カーペンターと組んで『ダーク・スター』を製作したオバノンは、より本格的なSFホラーの製作を望んでおりオリジナルの脚本を温めていた。それは『メモリー』という題で、「宇宙船が未知の惑星に降り立ち、謎の生命体を発見する。乗組員がそれに寄生され、やがて体内から怪物が誕生する」という内容であった。当初は38ページに満たない未完成の脚本で、怪物の姿が漠然としていたことから展開に行き詰っていた[2]。
そんな折、オバノンに接触してきたのがロナルド・シャセットである。彼はフィリップ・K・ディックの短編作品『追憶売ります』の映画権を取得していたものの、まだ仕事がなかった。『ダーク・スター』を見てオバノンを同好の士と考えたシャセットはオバノンに会いたいと手紙を書く。南カリフォルニア大学のキャンバスで『メモリー』を拝見したシャセットは「『メモリー』を完成させたら自分がロジャー・コーマンの元に持ち込むので、自分の『追憶売ります』を翻案する作業の手助けをして欲しい」と共同作業を提案した[3][脚注 2]。
この頃、『デューン/砂の惑星』を企画中であったアレハンドロ・ホドロフスキーから、オバノンに同作の特殊効果担当の依頼が舞い込む。オバノンは許諾し製作チームに加わった。これにより『メモリー』の脚本は一時的に宙に浮くこととなる。チームには宇宙船のデザインにクリス・フォス、コスチュームデザインとしてジャン・ジロー、さらにサダムIV世役に指名されていたサルバドール・ダリの推薦により、後にH.R.ギーガーが加わっていた。しかし『デューン/砂の惑星』は資金難から製作半ばにして中止となり、オバノンは無一文となってしまう。胃の病を発症していた彼はシャセットの家に転がり込み一週間もふさぎ込んでいたが、未完のままの『メモリー』を完成させるようシャセットに提案され、再び脚本を練り始めた[4][5]。
オバノンは『メモリー』とは別に『グレムリン』という脚本を構想していた。それは「東京から帰るB-17の中にグレムリンが侵入し、乗組員を一人、また一人と殺していく。怪物を倒さない限り乗組員は故郷へ帰れない」という骨子であった。その要素を応用してはどうかというシャセットの助言を受け、オバノンは『メモリー』に適用させた。すなわち舞台を爆撃機から宇宙船へ、グレムリンを異星の怪物に変更したのである[5]。完成したそれは宇宙空間における『テン・リトル・インディアンズ』と呼べる内容となった。この時点で脚本の基本的な流れは完成版と同一であったが、乗組員が発見するのは遺棄船ではなく「ピラミッド」であることや、卵ではなく「胞子ポッド」から出てきた寄生体に襲われる、宇宙船の名前が「スナーク号」であるといった差異がある[6]。題名は『メモリー』から『スタービースト』へと変更された[7]。
『スタービースト』の内容はロジャー・コーマンの目を引いたが、企画が形になる前に、二人の友人であった独立系映画監督のマーク・ハガードが『スタービースト』の脚本を評価し、出資者探しを買って出ることになった。オバノンは視覚的な側面からプレゼンテーションを行うために、『ダーク・スター』で知己であったロン・コッブにイラストを依頼する。コッブはこの時点ではまだ『スタービースト』を『ダーク・スター』のような低予算映画になるだろうと楽観視しており、何枚かのイラストを提供した[5]。商業的な映画に相応しいものとして、オバノンは思案をめぐらせ『エイリアン』というタイトルをひねり出した[8]。
1976年、ハガードは「ブランディワイン・プロダクション」という会社と契約を成立させ、『エイリアン』の脚本は買い取られた。ブランディワインはゴードン・キャロル、デヴィット・ガイラー、そしてウォルター・ヒルの3人によって運営される制作会社であった[9][5]。ヒルは脚本の内容を酷評しながらも一部のシーンに可能性を見出し、他の二人と共に20世紀フォックスの製作主任であったアラン・ラッド・ジュニアにこの脚本を売り込む。スリラーに定評のあるヒルが売り込んだということでラッドは少しだけ興味を示したが、映画化決定の許可は下りなかった。ラッド自身はこの映画が作られる見込みはほぼないと考えていた[10]。
しかし同社の『スターウォーズ』が大ヒットしたことで状況は一変する。SFジャンル物は売れないという定説が覆され、SFブームが到来したのである。そんな時、フォックスの手元に唯一あったSF作品の脚本が『エイリアン』であった。こうして1977年10月31日[11]、エイリアンの製作許可が降りた[10]。
プリプロダクション
ヒルとガイラーが行ったのは脚本の手直しであった[5]。7名いたクルーは全員男性だったが、2名が女性に変更され、全員の名前が変更された。原案にあったシーンはほぼそのままであったが、台詞の口調を抑えたものにするといった変更がなされた。また、アッシュをアンドロイドにしたのも二人のアイディアである。リプリーにあたる役を女性にするよう提案したのはラッドであった[12]。改稿は8回にもおよんだ[13]。
これらの改変にオバノンは終生不満を漏らしていたものの、視覚デザインコンサルタントとして映画に携わることはできた。またシャセットはエグゼクティブプロデューサーに任命された[14]。しかしラッドはオバノンを重要人物とみなさず、一時は映画のセット立ち入る許可すら与えなかった。そのためオバノンは原案者でありながらこっそり現場に忍び込むこともあったという[15]。
しかし肩書きがどうであれ、オバノンにとって一流のスタッフとの仕事がエキサイティングな経験であることは確かであった。1977年7月11日[11]、オバノンはギーガーに電話をかけ、新しい映画製作に携わっていることを伝え、要となる未知の生物のデザインを依頼した[16]。オバノンが1000ドルの小切手と共にギーガーに送った手紙には、まず人間に幼生を産み付ける第1形態、人間の体を突き破って現れる第2形態、そして成長した第3形態へと変化するアイディアが記されており、初期段階からエイリアンのアイディアは固まっていた[17]。
監督は当初ヒルが自ら務める予定であったが、SF映画向きではないことを理由に辞退し、『ロング・ライダーズ』の監督を務めることになった。そこでブランディワインは監督の候補を捜し始める。ピーター・イェーツ、ロバート・アルドリッチ、ジャック・クレイトン、そしてリドリー・スコットの4名が候補に挙がった。イェーツは20世紀フォックスに推されていたが、彼は「格下のB級映画」を撮ることを嫌ったほか、アルドリッチもクレイトンも価値を見出さず監督を拒否した。なお、原案者であるオバノンは監督候補には入っていなかった[12]。
当時スコットは既にCM映像監督として成功を収め、自分のCM制作会社である「リドリー・スコット・アソシエーツ」 (RSA) を設立し活躍していたが、映画監督としては『デュエリスト/決闘者』を撮ったのみだった。同作で共同プロデューサーであったイヴォール・パウエルは熱心なSF愛好家でもあり、その撮影中スコットにSFコミック雑誌『メタル・ユルラン(ヘビーメタル)』を貸して読むよう薦めた。『2001年宇宙の旅』を除けばSFに関心はなかったスコットであったが、その世界観に魅了され特にジャン・ジローの『アルザック』を好んだ[18]。
パウエルから「監督第二作目の作風が今後作る三作分の内容に影響を及ぼす」とアドバイスされたスコットは、次なる作品として『トリスタンとイゾルデ』を題材に選び、パラマウント映画の下で映画化の準備を進めていた[19]。彼の脳裏には『トリスタンとイゾルデ』の中で『ヘビーメタル』の荒涼とした様式美溢れる世界観を実現させようという構想があった。だが、当時公開されたばかりの『スターウォーズ』を初週に観覧し衝撃を受ける。そこにはまさに彼が撮ろうとしていた映像表現が存在していた。スコットは『スターウォーズ』を絶賛しつつも、先を越されたことに強い挫折感を味わった[20]。
一方、カンヌ映画祭で『デュエリスト/決闘者』を観覧し、スコットの才能を評価した人物がいた。フォックス・ヨーロッパの社長サンディ・ライバーソンである。彼はフォックス内で使えそうな企画を探し、監督の定まっていない『エイリアン』の企画を発見、スコットの手元に送って監督してみないかと誘いをかける。『ヘビーメタル』のようなSFのデザインを表現したかったスコットにとってまさに格好の題材であること、さらに機能的で無駄のない粗筋や、地位による待遇の違いに嘆く労働階級の姿が描かれている点なども好印象であった。1978年2月[11]、ライバーソンの仲介でラッドと面接したスコットは正式に監督として契約を結んだ。当初組まれた予算は420万ドルに過ぎなかったが、スコットは自ら絵コンテを描いて会社と交渉し、850万ドルの予算を勝ち取った[21]。またパラマウントに対しては『トリスタンとイゾルデ』の企画から手を引くことを告げた[22]。
撮影
撮影は1978年の7月5日から10月21日のおよそ3か月半に渡って行われた[11]。オバノンの薦めで『悪魔のいけにえ』(1974年)を見たスコットはこの作品を目安としてデザイナーに指示を与えた。また、もっとも感銘を受けたホラーとして『エクソシスト』(1973年)を挙げ、何度も見直し研究を重ねた[18]。ほか、『2001年宇宙の旅』にも影響を受けている。
スタジオはイギリス、ロンドンの郊外にあるシェパートン・スタジオが使用された。ハリウッドに比べ費用が安く済むこと、イギリスには優れた美術スタッフや、製作に必要なプラモデルメーカーがいることなどが理由であった[14]。撮影のためにスタジオ内のA、B、C、D、Hの5つのサウンド・ステージが使用され、ノストロモ号のセットはCに、遺棄船のセットはHに造られた。Hは当時ヨーロッパ最大級のサウンド・ステージであり、60m × 100mもの広さがあった[23]。
スコット側からは、『デュエリスト/決闘者』に引き続きパウエルが共同プロデューサーとして、撮影にデレク・バンリント、プロダクション・デザイナーにマイケル・シーモアなどRSAに縁のある人物が参加した。
そのほか、編集にはテリー・ローリングス、『スターウォーズ』で美術監督を務めたレスリー・ディレイ、セットを製作したロジャー・クリスチャン、衣装を担当したジョン・モロ、『キングコング』の造形に携わったカルロ・ランバルディ、特殊効果担当として『スペース1999』に参加していたブライアン・ジョンソンとニック・アルダーが加わった。またオバノンはコッブに加えて『デューン』で製作を共にしたフォスとギーガーらデザイナーを企画に呼び集めた。
撮影は徹底した秘密主義の下で行われ、いたるところに「見学者立ち入り禁止」の立て札、張り紙が掲示された[24]。予算圧縮のためフォックス上層部からの圧力に晒され続けたスコットは不機嫌な精神状態が続き、時には八つ当たりでセットを破壊してしまったこともあった[25]。多くのスタッフが製作現場を緊張に満ちて不愉快だったと証言している[26]。後年スコットは「あの時の自分は余裕がなかった。撮影現場に緊張感をもたらした原因の一つは自分の突き放した態度にもあっただろう」と当時を振り返っている[27]。
配役
キャスティングの選考はアメリカで行われ、スコットとキャロルが面接した。通常このようなSF映画にはB級俳優を配するのが普通であったが、スコットは個性的な役者を集めることで一段高い演出を目指した[28]。SF映画に出ることを懐疑的に思った俳優を引き止めるようなことはせず、ウィリアム・ハートやジョン・ハードは出演を見合わせた。シャセットの意向で、多国籍的な雰囲気を出すため配役のうち二人はイギリス人となった[29]。
- リプリー
- リプリー役の選考は難航した。キャスティングディレクターのマリー・ゴールドバーグは候補として二人を挙げていた。一人目がメリル・ストリープである。しかし彼女は婚約者のジョン・カザールを亡くしたばかりであり、キャロルは出演依頼をためらった。
- もう一人の候補がシガニー・ウィーバーである。彼女は『アニー・ホール』やイスラエルのドラマ『Madman』に端役で出演した程度で映画ではほぼ無名であった。シェイクスピアを目標にブロードウェイで活動し、マイク・ニコルズやウディ・アレンとの仕事を望んでいた彼女にとって、SF映画への出演は興味をそそられる物ではなかった。彼女は建物を間違え、面接に遅刻するという失敗も犯している[30]。脚本を読んだ彼女の感想は一言「地味な感じ」であり、その素っ気無い態度に「役が欲しくないのか」とスタッフを不思議がらせたほどであった[31]。
- シェパートン・スタジオで行われたスクリーンテストはおおむね満足のいくものであったが、不安だったラッドはフォックス社内から秘書や管理職など5 - 6人ほどの女性を呼び集めて映像を批評させた。彼女たちはジェーン・フォンダやフェイ・ダナウェイの名を挙げてウィーバーの演技を賞賛し、手ごたえを感じたラッドは彼女をリプリー役に抜擢した[32][31]。ギャラは3万ドルであった[32]。
- ダラス
- トム・スケリットはダラス役として読み合わせが行われており、出演もスムーズに決定した[29]。
- ダラスとリプリーは当初の案では恋人同士であったが、怪物がうろついている状況でラブロマンスを展開するなどありえない、と考えたスコットにより削除された[33]。
- ケイン
- ケイン役には当初からジョン・ハートが考えられていたが、ハートが別の映画に出演したため、ジョン・フィンチが抜擢された。しかし、フィンチは糖尿病を患っており、撮影初日に体調を崩し降板した[29]。
- 一方、ハートは撮影先である南アフリカ共和国に入国を拒否され、映画そのものが中止となっていた。これは当局が反アパルトヘイト活動をしていた前述のジョン・ハードとハートを取り違えたのが原因とされている[31]。スコットより説得を受けたハートは予定通りケイン役を演じることになった。
- 後にハートは『スペースボール』に同じ役でカメオ出演し、宇宙のファーストフード店で、食事中に体内に寄生していたエイリアンに腹を食い破られた男という設定でセルフパロディを演じている。この時は「またか」と嘆いている上に、"Himself(本人)"とクレジットされた。
- アッシュ
- イアン・ホルムはシャセットの意向によって加えられたイギリス人の一人となった。ホルムは初めての映画撮影に緊張するウィーバーを気遣い、毎週ケント州にある自分の農場に招待した[34]。
- 首の千切れたアッシュとの会話シーンは当初、「エイリアンとコミュニケーションを試みたことがあるのか」という内容で、エイリアンを一方的に危険視することに疑問を投げかけるものであったが、特殊効果に不満を持ったスコットの意向で撮り直され、台詞もエイリアンの性質を賞賛する内容に変更された[31]。アッシュの体から見えるロボットの部品は、パスタ、ガラス玉、偽のキャビア、濃縮牛乳が使われている。元々広告で食材を扱う経験があったスコットならではの材料であった[35]。
- アッシュがリプリーを殺そうと丸めた雑誌を彼女の口に押し込もうとするシーンでは、彼がアンドロイドであるゆえに性器を持たないことや、レイプの代替行為であることの暗示となっている[35][31]。なお彼が丸めた雑誌は『平凡パンチ』で、表紙の写真は山口百恵である。宇宙船ノストロモ号が日系企業の所有ものだからだということが後に監督によって語られている。
- パーカー
- ヤフェット・コットーは非常に情熱的で、アイディアがあると監督に率直に意見をぶつけた。パーカーがエイリアンに殺されるシーンは彼にとっては特に不服であり、自分の役は最後まで生き残るべきだと監督に抗議するほどだった[36]。一方、役者同士のコミュニケーションでは、コットーはウィーバーに対して感情的に接し精神的な圧迫を加えていた。これは後半でリプリーがエイリアン対策を主導するシーンを際立たせるためで、スコットの指示による[37][38]。
- ランバート
- ヴェロニカ・カートライトは当初リプリー役でオーディションを受けたが、ランバートを演じることになった。
- 冒頭の目覚めのシーンでは女性陣は乳首にテーピングを施しただけであった。このシーンは全裸で撮る予定だったが、カートライトによれば、少なくとも5か国での上映ができなくなることから劇中の形になった[39][31]。
- ランバートに用意されていた死亡シーンは「エイリアンをエアロックに追い込む最中、事故による減圧で死ぬ」といったものであったが、一部が撮影されただけで採用されなかった[40]。またランバートの最期のシーンにおいて、足の間をエイリアンの尾が上がっていくカットで写っているのはランバートではなくブレットであり、身につけている服が違う[31]。これはブレットがエイリアンに殺されるシーンでカットされた部分を流用したため。
- ジョーンズ
- ジョーンズ役の猫は4匹いた。猫を抱き上げるたびにウィーバーは目の充血に悩まされ、一時は降板すら覚悟した。原因は汗として使われたグリセリンと猫の毛が混合したためであった[41]。
- 猫がエイリアンに警戒するシーンでは、板の後ろにジャーマン・シェパード・ドッグを隠しておき、タイミングを見計らって板を取り払い猫に演技をさせている[38]。
- リプリーがジョーンズを探すシーンでは、「あのような危機的状況で猫を探すのか」という意見を覚悟していたスコットであったが、予想に反しそういった批判はほとんどなかったという[38]。
- エイリアンがいる船内を自由に動く、エイリアンの眼前で放置される、ケージに入れられる際に泣き声を上げるなど、エイリアンに寄生されているのではないかという疑念を抱かせるよう意図的な構成になっているが、結果的には使われない伏線に終わった[38]。
美術
監督に着任したスコットにとって目下最大の懸念事項は、主役であるエイリアンのデザインであった。既にコッブがおこしたデザインが存在していたものの、その内容はと言えば、2本足で立ち、鉤爪のついた4本の腕があり、頭部からは触覚と目が突き出るように生えているという奇妙な外見で、スコットを満足させるものではなかった[42][43]。
1978年2月8日、オバノンはスコットにギーガーの画集『ネクロノミコンIV』を見せる。そこに描かれていた機械とも生き物とも似付かぬ存在にスコットは衝撃を受け「このデザインを形にすることができれば映画は成功する」との確信を抱いた[44][45]。スコットはスイスに飛び、ギーガーを招聘。2月14日からギーガーは交渉を開始した。彼は「この映画はエイリアンこそが主演俳優なのだ」と主張しデザイン料として然るべき高額なギャラを要求したため、フォックスとの間で長い話し合いがもたれた。契約が成立したのは3月30日のことであり、この日から製作に加わることとなる[11]。しかし、ギーガーが描く異質な世界に拒否感を示した者もおり、キャロルは当初「ギーガーは異常だ」と評している[17]。
撮影中のギーガーは常に黒ずくめの服を着ていたため、一部のスタッフは彼を「ドラキュラ伯爵」と渾名した[46]。彼の指揮する美術チームは150人にもなる大所帯で、「モンスター部門」と呼ばれた[47][48]。
ギーガーは異星人の遺棄船やエイリアンのデザインを受け持つことになったが、徹底した完璧主義者であり、自身の作品に強烈な自負を持っていた彼は製作現場で度々スタッフと衝突し、上層部に対しても自分の要求を曲げなかった。4月5日になってこの対立は決定的となり、フォックスはそれまでのギャラを支払いギーガーを解雇した。契約成立から1週間のことである[49]。これについてギーガー自身は、契約では彼のサインした契約書がなければセットの製作はできなかったが、必要なデザインが既に仕上がっており、サイン済みの契約書が手元にある以上もはや用はなかったのだろう、と推測している。しかしギーガーは自分がすぐに必要とされることを予見して、チューリッヒでデザイン作業を続行した[23]。
その予測は的中し、指揮者のいない現場は早速迷走をはじめ、本来のデザインとは程遠いセットになっていった。結局、彼の必要性を上層部も認めざるを得ず、5月末になってギーガーは現場に復帰している[50][23]。出来損ないのセットは放置されず、現場の美術スタッフのモチベーションを高めるため、そして新しいセット製作の準備が整うまでの時間稼ぎのため、あえて完成まで製作された後でスクラップ処分になった。これはギーガーにとってはまったく理解に苦しむ出来事であったという[51]。
宇宙服のデザインはジャン・ジロー(メビウス)が手がけた。彼は次の仕事のためフランスに帰るまでという条件付であり、参加していた期間は数日程度だった[5]。実際の製作はジョン・モロが担当している[31]。リプリーの衣装に限り、実際にNASAで使われていた古着の軍用フライトスーツを流用している[34][31]。
冒頭におけるタイトルデザインは骨や肉を組み合わせたデザインが考案されていたが使用されなかった[52]。実際に採用された「一文字ずつ完成していくタイトルロゴ」は広告との整合性を考えスコットが依頼したもので、スティーブ・フランクフルトとリチャード・グリーンバーグがデザインしている[38]。
特殊効果
ノストロモ号
ノストロモ号の外観はロン・コッブとクリス・フォスの2名がそれぞれデザイン案を起こした。フォスの描く宇宙船は現実の要素を取り入れた物が多く、豊かな色彩と流線型が特徴だった。フォスはノストロモ号の外観や内装、遺棄船など数多くのデザイン案を描いたが、結局すべて未採用に終わった[53]。フォスはギーガーと共に解雇され復帰することはなかったが、コンセプト・アーティストとしてクレジットには名を連ねている。
一方でコッブは機能性とリアリティを重視し、直線的なデザインを好んだ。ギーガーの生物的なデザインと完全な対称性を示すことも考慮され、彼のデザインが採用された。ノストロモ号の形状は逆さの台形のような形状を経て、最終的に精製設備を備えた巨大工場のようなデザインにまとめられた。尖塔のような外観は子供のころに見た工場の風景をヒントにスコット自らが追加した[53]。
船内のデザインもコッブの手によって行われ、この案を元にロジャー・クリスチャンが造形した。航空機やヘリの廃材、パレットを活用してノストロモ号の内部を作り上げた[54]。この出来はコッブを満足させ、ウィーバーも「ロケ地で撮影しているかのようだった」と賞賛した[15]。
ノストロモ号のセットは意図的に天井のある状態で作られた。これは俳優に圧迫感を与えることでよりリアルな演技を引き出すためである[55]。セットは全てが繋がっており、外に出るには長い通路を歩く必要があった[56]。ノストロモ号の構造は3階層、あるいは5 - 6階層を想定されていたが[57]、予算の制約からセットは1層のみで作られ[15][38]、拡張は断念せざるを得なかった。また船の離着陸のシーンにおいては俳優が自ら椅子を揺らし、カメラも揺らして撮影されている[31]。狭い通路のために照明機材を置けず、セットの間接照明を利用して撮影されたこともあった[56]。
撮影に使用されたミニチュアモデルは全長約5m、重量250kgにもなるもので、ブライアン・ジョンソンが製作した[58]。製作には既製のプラモデル・キットが大量に使用され手間を省いている[59]。精製施設とノストロモ号本体を繋ぐジョイント部分には『スターウォーズ』のR2-D2の脚部の予備が使用されている[15]。
小惑星
小惑星はセットとミニチュアを組み合わせて撮影された。セットでは砂塵として巻き上げたバーミキュライトがスタッフを痛めつけ[38]、スモークを作るために使用されたドライアイスのせいで二酸化炭素が充満した。宇宙服は手足が非常に動かしにくかった上、当時の技術では呼吸しやすい衣装を製作できず、スケリットやカートライトらは呼吸困難に悩まされた。特にハートの消耗は激しく、常に看護師が待機し非常時に備えていた[47]。映像中のヘルメットの曇りはそのためであるが、リアルであると考えた監督の意向で特に対策はとられなかった[38]。
セットは最初に1.5インチ/1フィートの縮尺で雛形となる模型が作られた。これを石膏で型取りし、一定間隔で均等にスライスする。それぞれのパーツを方眼紙の上で24倍の大きさに拡大し、木製の模型を作る。模型同士に網を被せて間を補完し、細かい部分は発泡スチロールで形を整える。最後に石膏を染みこませたジュートの布を掛け、左官ごてで仕上げるという手順で製作された[60][61]。
小惑星および遺棄船のミニチュアはピーター・ボイジーが製作した。ボイジーは優れた腕を見せ、レベルの高いギーガーの要求を過不足なく実現させていった。小惑星のミニチュアは骨やパイプをプラスティシン(塑像用粘土)で埋め合わせ作られている[51][62]。宇宙葬にされるミニチュアのケインの遺体もボイジーが製作した。
宇宙から見た小惑星の外観においても工夫が施された。複数の塗料をタンクに流し、混然とした色合いになったものを撮影し特殊シートに現像する。このシートを白く塗装したボールに投影して立体的な質感が表現された[61]。
遺棄船
ギーガーのデザインした異星人の遺棄船 (Derelict Ship) は、「目立たないし、機能的ではない」とオバノンには不評であった。彼が気に入っていたのはフォスが描いた「青銅のロブスター」と通称されるデザインである。だが、スコットはその異質さ、背景と一体化してゆっくりと姿を見せる点を気に入り採用した[63]。初稿では遺棄船のほかにピラミッドが登場し、エイリアンの卵はそこで見つかることになっていたが、映画の長さが3時間を越えてしまうため圧縮された[6]。
小惑星表面のミニチュアは質感がアップに耐えられるものではなかったため、遺棄船の外観はミニチュアをスコットの古いビデオカメラで撮影し、それをスクリーンに映したものを撮影した[38]。
遺棄船のセット製作にはシーモアの助手として参加したレスリー・ディリーが腕を振るった。生物的な内装を表現するため、セットには食肉処理場へ特注した大量の動物の骨が使用されている。遺棄船入り口のセットは長さ18m、高さ10.5mで、木製の枠と石膏で作られた。内部のセットは高さ12m、長さ21mで、木とファイバーグラスで製作された[64]。
この大規模セットのため、予算は1100万ドルにまで増大した[65]。それでも時間や予算の関係から妥協を余儀なくされることが多く、「通路」のセットの天井は遺棄船外観のセットをそのまま流用して手間を省き[66]、「卵貯蔵室」へと続く「シャフト」のセットは未完成のままで製作が中止となった[67]。また「操縦室」と「卵の貯蔵室」は同じセットを使いまわしており、操縦室から座席とターンテーブルを取り去って造られている[48][64]。貯蔵室においても「妊婦の腹の膨らみ」をイメージした丸みのある部分は再現されず、ギーガーの不興を買った。
エッグを覆う青いレーザーの幕はザ・フーのボーカリスト、ロジャー・ダルトリーが関係している。彼はたまたまシェパートン・スタジオの隣の別荘でツアーに使うレーザーを試していたところであり、それが縁で機材を提供した[68]。現場ではアントン・ファーストがレーザーを使った演出を担当した[31][脚注 3]
スペースジョッキー
異星人「スペースジョッキー」を登場させるか否かにはかなりの議論があったが、最終的には製作が決定した。8メートルあるこの異星人の製作には50万ドルが費やされている。監督であるスコットのほか、ギーガーを異常だと評したキャロルもこの時には彼の腕を認めるようになっており、賛成に廻っている[69]。
スペースジョッキーは石膏で造った原型を透明ポリエステルで型取りし、表面はラテックスで仕上げられている。望遠鏡のような部分は発泡スチロールと発砲プラスチックで造られた[48]。この場面ではプロップを大きく見せるために、宇宙服姿のノストロモ乗員は子供が演じている。因みに演じた子供の内2人はスコット監督の実の子供(ジェイク・スコットとルーク・スコット)で、それぞれがダラス(ジェイク)とケイン(ルーク)を演じている。ランバートはカメラマンの子供が演じた[70][38]。
エッグ
エッグは当初オーソドックスな鶏卵の形でデザインされ、卵を保持する台座はスイスの卵パックの形状をそのまま流用していた[71][72]。次に改められたデザインは完成稿に近かったが、卵の開口部は女性器を模しており、陰核や陰唇にいたるまで作りこまれていた。その露骨な形状にスタッフからは笑いが起こったほどであった。結局開口部はキリスト教的な十字型に変更され、花のように開く仕組みとなった。エッグは当初6個のみ製作される予定だったが、ギーガーの反対もあり最終的には130個が製作された。チェストバスターが収まる「主役」のエッグは石膏の原型を元に、開口部はラテックス、本体は透明ポリエステルで作られた。開口部は油圧で動作し、内部には新鮮な羊の内臓が、チェストバスターが飛び出すシーンには長さ12mの豚の腸が使用されている[73]。背景となるその他のエッグは石膏もしくはポリエステルで製作されている[74]。
一部のシーンはカメラを置く関係から、エッグを逆さまにして撮影された。ケインにフェイスハガーが襲い掛かるシーンの直前で、水滴が上へ登るのはこのため。エッグチェンバーの中で蠢くフェイスハガーのシルエットは、ゴム手袋をはめたスコット監督自身の手のシルエットである[75][31]。
フェイスハガー
最初の構想では卵から尾をバネのように使って飛び出す機能を持っており、ギーガーは「邪悪なビックリ箱」と名づけていた。サイズは人間の上半身ほどもあったが、何度かの改稿を経て人の頭を覆う程度の大きさに落ち着いた[76]。美術スタッフのロジャー・ディッケン (Roger Dicken) は気難しい性格でギーガーのデザインを受け入れず、「不快なほどに発育不全」と評した[77]。この評価に激怒したギーガーはフェイスハガーの造形を自ら買って出作業に取り掛かったが、上からエイリアン本体の製作に取り掛かるよう命じられたためフェイスハガーとチェストバスターの造形はディッケンの担当となった[78]。
フェイスハガーの作業にはシャセットも携わった。彼はギーガーのデザインを元に立体化作業を開始したが、本体と指の繋がり方に悩み行き詰まった。助けを求められたコッブは短時間でフェイスハガーの仮想の骨格を書き上げ、造形作業を助けた[31]。着色の段階になり「人間の肌の色をした異星生物は斬新ではないか」と考えたシャセットの提案により、そのままの色で完成となった[31]。劇中のフェイスハガーの観察シーンではプラスチックで作った外殻に新鮮なカキやハマグリを敷き詰めて生々しさを表現している[31]。
チェストバスター
デザインにあたり、リドリー・スコットはギーガーにフランシス・ベーコンが描いた『キリスト磔刑図のための3つの習作』を参考にするよう要請したが、これを受けて上がってきたデザインは「退化した丸裸の七面鳥」と形容されるものであった[79][80]。このデザイン案は没となり、以降は『ネクロノミコンIV』のデザインを基本とした造形が行われた[81]。
ケインの胸からチェストバスターが飛び出すシーンでは、「このシーンをリアルに撮れなければ映画の存在意義がない」とするスコットの意向で、細心の注意が払われた[82]。3台のカメラを用意し、あらかじめどのカメラでカットを繋いでいくかを綿密に設定した。また俳優達には何が起こるか意図的に詳細を伝えておらず、彼らから本物の驚きを引き出そうとした[83][31]。特にランバート役のカートライトは驚きの余り足がおぼつかなくなり、足元に溜まった血糊で足を滑らせて転倒している。因みに本編で使用されたチェストバスターが飛び出してきた際にランバートが悲鳴を上げるシーンは、カートライトが驚いて転倒する直前のものである。また、ケインの血がランバートにかかったのは全くの偶然だった。最初のテイクではシャツが破れず中断されたが、次のテイクでは成功。そのため一連のシーンはワンテイクだけで成功している[31]。
チェストバスターは胸を突き破るシーン、クルーを見回すシーン、走り去るシーン用の3種類が製作された。尾はフェイスハガーのものが流用されたが、ギーガーはこれを「恐竜のようだ」とあまり好まなかった[82][84]。操演はディッケンとアルダーの二人が担当した[85]。
エイリアン
時間が押し迫っていたため、デザインはほぼ『ネクロノミコンIV』のそれを踏襲しており、何度かデザインが起こされたものの、皮膚の細かいディティールや背中の突起が寝ていることを除けばほぼ変化はない。なお、昆虫のような楕円形の目だけはスコットの提言を受け削除された[86]。
スーツの仕様に関してはいくつか案が出された。大道芸人や空手家の起用や[87]、一つのスーツの中に子供と大人が入り別々に腕を動かすというアイディアは問題が多過ぎ実現しなかった。全自動のロボットにするという案は俳優が負傷する恐れがあり却下された[88][86]。
スコットがエイリアンのスーツに入る人間として望んだのは、レニ・リーフェンシュタールが撮影したヌバ族の写真のような、長身の人間であった[88]。だが実際の候補者探しは難航した。そんな折、キャスティングディレクターはたまたまパブで酒を飲んでいた長身のアフリカ人(出自についてはナイジェリア人[89]、ケニヤのマサイ族[86]、ツチ[90]など諸説ある)、ボラジ・バデジョ (Bolaji Badejo) に目をつけ、出演を依頼した。彼はグラフィック・デザインを学んでいた大学生で、太極拳とパントマイムの知識があった。劇中のエイリアンのゆったりした歩行は彼の技術が反映されている[91][87]。また、スタントシーンではエディ・パウエル (Eddie Powell) とロイ・スキャメル (Roy Scammell) がエイリアンを演じた[89][31]。黒人の代役を白人が務めるということで、スタントシーンの撮影をバデジョは楽しそうに観覧していたという[92]。
スーツの製作はギーガー自身が担当した。ボイジーは多忙を極めていたため、助っ人としてエディ・バトラーが加わり、のちにパティ・ロジャーズ、シャーリィ・デニーの二人が作業を補佐した。スーツは構想段階では半透明で、骨格や消化器官が透けて見える予定であった[78][88]。時間の許す限りギリギリまで試行錯誤が繰り返されたが、スーツや鋳型の耐久性に問題があり、すぐに破損してしまう問題があった。金属製の鋳型を用いれば解決する問題であったが、それを製作している余裕がなかったため半透明の構想を断念し、ラテックスを用いることに決まった。スーツはボラジ・バデジョの体から石膏型をとったほか、スタントマンの体型にあわせた複製も製造された[93]。
複雑なエイリアンのギミックを実現させるため、頭部の製作はカルロ・ランバルディが担当した。作業はシェパートン・スタジオではなくロサンゼルスにあるランバルディの仕事場で行われた。フード内に見える人間の頭蓋骨は本物であり、ギーガーが自ら埋め込んだ[94]。これにファイバーグラスを巻き、アルミニウムで内部の支えをつくった。顔の筋肉はケーブルで、特徴的な2重顎はエアシリンダーでそれぞれ動作する。歯茎と顎をつなぐ腱はコンドームが使われている[95]。別個に製作されたにも拘わらず、ランバルディの手による頭部はギーガーの要求を充分に満たす出来栄えであり、イギリス側で作られた予備の頭部との差は歴然であったという[96]。頭は機械が仕込まれたものが一つ、仕込まれていないものが二つ、完全自動式兼遠隔操作可能なもの、半自動式、プラスティック製のスタント用の計6種が製造された[96]。
脚本上の問題点として、オバノンは「なぜクルーがエイリアンを殺さないのか」という疑問点を指摘していた。そこでコッブは「エイリアンの血が強酸性である」という設定を考案し、容易に殺せない理由を付加した[97][31]。フェイスハガーの酸によって船体が溶けるシーンはクロロフォルム、アセトン、酢酸を混ぜた液体を使い、銀色に塗った発泡スチロールを溶かして撮影された[97]。
ポストプロダクション
ポストプロダクションに突入した時点ですら、スコットは満足せず、ノストロモ号のミニチュアモデルの撮影をやり直した[15][98]。10月から11月にかけて撮り直しや追加シーンの撮影が17日間行われた[11][22]。撮影終盤にはスタッフは1日17時間、週に6 - 7日間働き通しであったという[98]。
またオバノンはクレジットの表記について、ガイラーとヒルの名を入れるべきかどうかについて全米脚本家組合(WGA)を巻き込み仲裁調停を引き起こした。WGAはオバノンの主張を支持したものの、周囲のスタッフはガイラーとヒルの名前を入れるべきだと説得した。最終的にオバノンはこれを受け入れ、二人の名は脚本家としてクレジットされることになった[99]。
音楽
リドリー・スコットは楽曲に組曲『惑星』、それも冨田勲が編曲したシンセサイザー版の起用を望んでいたが、ラッドの勧めでジェリー・ゴールドスミスに依頼することになった[25][100]。
最初にゴールドスミスが作った曲は瑞々しいものだったが、それゆえに没になった。次に作られた曲は静的で不気味なものであり、スタッフを満足させた。作曲に要した時間はわずか10分に過ぎなかった[25]。
目覚めのシーンではゴールドスミスの過去の作品である『フロイド/隠された欲望』の曲が流用されている。また、クレジット画面ではハワード・ハンソンの『交響曲第2番 ロマンティック』が使用されている[25][101]。これを不満としたゴールドスミスはフォックスに説明を求めたが、結局覆ることはなかった[25]。
なお冨田勲の『惑星』は撮影現場で使用されている。テンションの高い演技が必要とされるウィーバーのため、スコットは現場にスピーカーを配置し、『惑星』の中の一曲「火星」を流して聞かせた。一方、音を後で全て付け直さなければならなかったため、音声係の負担は増大した[102][38]。
エンディング
スコットは最後のナルキッソス号でのシーンのため、4日のスケジュール延長を会社に要求した。会社は難色を示したものの、スコットは今までの定石を引っくり返すと会社を説得した[31]。スコットの目論見通り「解決したと見せかけてさらにもう一幕がある」という手法は成功し、以降のホラー映画に新しい定番をもたらした[102]。
本人の意向により、ウィーバーは次に何が起こるのか知らされずに撮影が進められた[103][31]。全裸のリプリーを目の当たりにしたエイリアンが己との違いに気づき、彼女に見入るといったシーンも予定されていたもののアイディアだけで終わった[102][31][脚注 4]。下着姿で宇宙服を身につけるシーンにその名残が残っている[102]。
エンディングシーンは当初3種類あり、「エイリアンの存在にリプリーは気付かず一緒に地球に帰還する」、「エイリアンとともに宇宙の藻屑となる」そして採用案である「エイリアンを倒し無事地球に帰還する[脚注 5] 」のそれぞれが用意されていた。アメリカでは第1案の結末で劇場公開された映画館もある[要出典]。
エイリアン・フェミニズム
ホラーSFである「エイリアン」には、恋愛要素が薄いにもかかわらず、妊娠・出産のメタファーを中心に「濃厚なセクシュアリティが漂っている」[105]。
内田樹はこの生殖のメタファーを「体内の蛇」のモチーフをもちいて考察している。それによると本作における「宇宙船のクルーがエイリアンの幼体からその子孫を体内にうえつけられ、それが体を破って外に出てくる」という流れは、ヨーロッパ全域で流布している「体内の蛇」と呼ばれる民間説話をなぞったものであり、この説話をフェミニズムに結びつけたことにオリジナリティがあるという。
本作でのエイリアンは男性社会のメタファーであり、男性器のような頭部を持ち、口から精液のような粘液をしたたらせている[106]。エイリアンは女性を妊娠させようとする男性の性欲の象徴であり、主人公のエレン・リプリーはそれに対抗するフェミニズム志向の女性の役割を果たしている。リプリーはそれまでのSF映画のヒロインと違い強い女であり、男性クルーと対等で船長代行を務め会社の陰謀を探る。リプリーの姿は1970年代後半に製作された女性の自立や台頭をあつかった映画とともに語られることがある[106]。
映画公開当時、男性に依存しない勇敢な女性が自力で(男性性の象徴である)エイリアンを退治するというこの映画を、女性たちはフェミニズムの勝利の物語として賞賛したのだ、と評価されることが多い[信頼性要検証]。しかし内田樹は、本作は女性からだけでなく保守的な(反フェミニスト的な)男性からも支持されていることを指摘し、「戦闘的フェミニストの勝利」という劇的な結末を演出するために結末以前の部分では「ヒロインがエイリアンから徹底的に陵辱される」という描写で埋め尽くされていると述べている[107]。映画のクライマックスで下着姿のリプリーに襲いかかろうとするエイリアンは男社会に虐げられてきた女性の縮図である[106]。
リプリーにあたる役を男性から女性に変更した際、性別を意識した台詞の改変はほとんど行われなかった。ウィーバー自身はリプリーがフェミニズムに関連付けて語られることには慎重であり、「いいキャラクターはいいキャラクター、性別なんて関係ない」と述べている[108]。
設定
- 小惑星
- 銀河系の外縁、ゼータ第2星団 (Zeta II Reticuli) にある星を巡る小惑星。謎の遺棄船が存在していた。大気組成は窒素、メタン、高濃度の炭酸ガスが主成分。気温は零下。劇中では単に小惑星と呼ばれ、LV-426の名称で呼ばれるのは『2』から。
- ディレクターズ・カットの追加シーンでは約1,200km[脚注 6]。自転周期は約2時間。重力0.86Gとされている。
- なお「ζ2 Reticuli 」は実在しており、レチクル座内で最も地球に近い(39光年)星である。
- スペースジョッキー
- 小惑星で発見された正体不明の異星人。身長約4.9m、体重約272kg[109]。象のような鼻をもち、伸びた先端は胸骨と一体化するかのように埋没している。操縦席らしきものに着座したままミイラ化していた。彼らの宇宙船には大量のエイリアンの卵が積載されていた。エイリアンの創造主ではないかと考えられているが詳細は不明[109]。
- 『プロメテウス』にも同型の異星人が登場しており、象のような鼻はマスクであり中身は人間と同様の顔があると設定された。
- ノストロモ号
- ウェイラン・ユタニ社が所有する商業牽引船。本体部分と巨大な4つの塔のような燃料精製所で構成される。2000万トンの鉱石を積載し地球に帰還する途中、小惑星からの信号を受信し調査に向かう。作品の舞台となるのは本体部分で、精製施設の内部は登場していない。メインフレームコンピューターは「MU/TH/R(6000) 182モデル」であり、「マザー」と通称される[109]。エイリアンの脅威から逃れるためリプリーの判断で自爆させられた。『2』によれば自爆による損害は4,200万ドルにおよぶ(鉱石の価値を除く)。
- ノストロモ号の規模は本体が全長240m、精製施設が全長3.2km、全幅2.4kmとの想定で撮られた[110]。本作以降に定められた設定では全長334m、全幅215メートル、全高98メートル。ロッキード・マーティン社製CM-88Bバイソン「M級ジャガーノート」宇宙貨物船を2116年に改装した船とされている[111][脚注 7][脚注 8]。スペック自体はデザイン草案の段階からコッブが練り上げデザイン画に書き込んでいる[112]。
- デザインはコッブおよびスコット。名称は「スナーク号」「リヴァイアサン号」など変遷したが、スコットによってノストロモ号と命名された。これはイギリスの小説家ジョゼフ・コンラッドの小説『ノストローモ』(Nostromo)(1908年執筆)に由来する[113][脚注 9]。
- 自爆装置は核融合炉の冷却剤濃度を減少させ臨界をもたらして爆破させる仕組み[111]。時限自爆装置が稼動するとコンピュータ「マザー」が「この船はTマイナスX分以内に破壊される」と自爆までの時間を読み上げるが、これは間違いである。「T」は通常、ロケットの打ち上げに代表されるようなイベントの時刻を表し、それ以前の時刻を「TマイナスX分(秒)」で表すので、「TマイナスX分以内に破壊される」では意味を成さない。『2』では「X分以内に」となっている。
- ナルキッソス号
- ノストロモ号の脱出艇。右舷下部に搭載されている。デザインはコッブ。名称はコンラッドの作品『ナーシサス号の黒人』(The Nigger of the 'Narcissus')(1975年執筆)に由来[113]。普段はダラスが一人で音楽を聴く個人スペースとして使用されている。
- ナルキッソス号は発進後に前進ではなくブレーキをかけることでノストロモ号から離脱した。遠ざかるノストロモ号がシャトルの前方窓から見えるのはこのため。
- 設定ではロッキード・マーティン社製スターキャブ級シャトルクラフト。左舷下部には第2脱出艇の「サルマキス」も搭載されているが劇中では未登場[111][脚注 10]
- ウェイラン・ユタニ社
- 詳細はウェイランド湯谷社を参照。劇中では会社とのみ呼ばれる。ウェイランドとなったのは『2』から。
脚注
- ^ ダラスがエイリアンに襲われた場所には火炎放射器だけが落ちていて、血痕がなかった。
- ^ この構想がポール・バーホーベン監督の『トータル・リコール』として実現するのは1990年のことである。
- ^ ファーストは後にティム・バートン監督『バットマン』(1989年)でアカデミー美術賞を受賞する。
- ^ ウィーバーも、脱出用シャトル内で冷凍冬眠を行うために服を脱ぐシーンは、下着姿ではなく全裸で撮影する予定があったことをアクターズスタジオインタビューで語っている。
- ^ 日本語字幕では原語の Frontier に「銀河系」という単語をあてているが、Frontier に銀河系の意味はなく、「国境」「辺境地帯」とするのが正しい。
- ^ 直径、周囲、距離のいずれなのかは不明。日本語音声では「周囲」となっている。
- ^ 「Mクラス」の設定は『2』冒頭の査問会シーンでも登場している。
- ^ 後発の設定であり、劇中には具体的な年代を明記したシーンはない。なおBlu-ray Disc版パッケージ裏の表記では2087年となっている。
- ^ スコットが2年前に監督した『デュエリスト/決闘者』もコンラッドの作品が原作である。
- ^ 脱出艇が二つあるとリプリーが自爆を解除しようとするシーンや危険を承知でナルキッソス号に戻るシーンが矛盾する。
出典
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- ^ 石塚倫子 前掲論文 31頁。
- ^ 石塚倫子「SF映画『エイリアン』のメッセージ再考 :怪物表象に見られるセクシャル・ポリティクス」『那須大学論叢』第3号、宇都宮共和大学、2002年、25-35頁、NAID 110007124170。 26頁。
- ^ a b c 映画秘宝EX(2012)、p.71
- ^ 難波江和英・内田樹 『現代思想のパフォーマンス』 光文社、2004年、137-142頁。ISBN 978-4334032777。 内田樹『女は何を欲望するか?』角川書店、2008年 ISBN 978-4-044-710090-9 も参照
- ^ ネイサン(2012)、p.136
- ^ a b c Blu-ray Disc版『エイリアンvsプレデター2』の特典「ウェイランド・ユタニ社データベース」より。
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参考資料
ノベライズ
- アラン・ディーン・フォスター 著、深町眞理子 訳『エイリアン』角川文庫、1979年5月31日。ISBN 978-4-0427-2401-8。
ムック
- 『映画秘宝EX 映画の必修科目03 異次元SF映画100』洋泉社、2012年6月25日。ISBN 978-4-8624-8959-3。
映像作品
- リドリー・スコット(監督) (2012-7). エイリアン (映画). カリフォルニア州: 20世紀フォックス.
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:|date=
の日付が不正です。 (説明) (Blu-ray版) - ストラウス兄弟(監督) (2007-12). AVP2 エイリアンズVS.プレデター (映画). カリフォルニア州: 20世紀フォックス.
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の日付が不正です。 (説明) (Blu-ray版)
ドキュメンタリーブック
- H・R・ギーガー『ギーガーズ・エイリアン』トレヴィル、1986年11月。ISBN 978-4-8457-0245-9。
- H・R・ギーガー『ギーガーズ・エイリアン(復刊)』河出書房新社、2004年8月20日。ISBN 978-4-3099-0594-5。
- ポール・M・サモン 著、尾之上浩司 訳『リドリー・スコットの世界』扶桑社、2001年4月10日。ISBN 978-4-5940-3096-4。
- ポール・スキャンロン、マイケル・グロス 著、池谷律代 訳『ブック・オブ・エイリアン』小学館集英社プロダクション、2012年7月30日。ISBN 978-4-7968-7123-5。
- イアン・ネイサン 著、富永和子ほか 訳『エイリアン・コンプリートブック』竹書房、2012年8月20日。ISBN 978-4-8124-4936-3。
外部リンク
- エイリアン・フェスティバル
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