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「自動車」の版間の差分

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{{分割提案|日本の自動車}}
[[ファイル:Southern Motorway Auckland traffic - copyright-free photo released to public domain.jpg|thumb|right|250px|[[現在|現代]]の[[高速道路]]を実際に走る 数々の自動車の状況。[[乗用車]](数名程度の人を乗せて走るための車)が圧倒的に多い。乗用車の群れの中に、[[貨物自動車|トラック(貨物自動車)]]や[[タンクローリー]]や[[バス (交通機関)|バス]]などがいくらか混じる。ニュージーランド、2019年]]
{{右|
[[File:Supermarket car park - geograph.org.uk - 2101935.jpg|thumb|250px|[[スーパーマーケット]]の[[駐車場]]に客が駐車した多数の乗用車。[[日用品]]の[[買い物]]のために使われている自動車の例。アメリカ、2010年]]
[[画像:Automobiles.jpg|none|300px|thumb|自動車のイメージ]]
[[ファイル:ToTokankoKC-30.JPG|thumb|250px|[[観光バス]]の例。多くの人を運べる自動車。千葉県、2008年]]
[[画像:高機動車-02.jpg|none|300px|thumb|高機動車([[陸上自衛隊]])]]
<!--[[File:FPeR55WVIAATBKh.jpg|thumb|250px|バス]]-->
}}
'''自動車'''じどうしゃ、[[英語|英]]:automobile/car)とは、[[原動機]]の[[動力]]によって[[車輪]]を回転させ、[[軌条]]によらなで進を変更できる陸上を移動する[[機械]]である人や荷物を運搬するため使用される。
{{読み仮名_ruby不使用|'''自動車'''|じどうしゃ|{{lang-en-short|links=no|automobile}}、{{lang|en|motorcar}}、{{lang|en|motor vehicle}}、{{lang|en|car}}}}は、[[原動機]]の動力によって[[車輪]]を回転させ、[[軌条]]や[[架線]]を用ずに[[道|路]]上をる[[車両|車]]{{r|"kb泉"|"kb林"|"kb平百"|kb-Brit|kb-MyPedia|kb-Nipp}}広義は[[オートバイ|自動二輪車]]([[オートバイ]])も含むが、本項では四輪自動車ついて述べる。


== 構造 ==
== 概要 ==
自動車は、[[大辞泉]]では[[原動機]]の動力によって[[車輪]]を回転させ、[[軌条]]や[[架線]]を用いず[[道路|路]]上を走る[[車両|車]]、と説明されている。
自動車の構造としては、金属などの丈夫な素材で[[ボディ]]を形成し、ボディ内部に座席や貨物室などの空間を備え、最前部に運転席を備える。ボディの最前部や最後部、また上部や下部に走行に必要な機関や機器、制御装置などが組み込まれている形となっている。
[[角川書店|角川]]の[[1989年]]の[[国語辞典]]には「[[発動機]]の動力で軌道なしに走る四輪車」と記載されている<ref>
{{Cite book| 和書|editor1-first=敏雄|editor1-last=石綿|editor1-link=石綿敏雄|editor2-first=俊雄|editor2-last=山田|editor2-link=山田俊雄|title = 角川最新国語辞典|origdate = 1987-02|edition = 再版|date = 1989-10|publisher = [[角川書店]]|isbn = 4-04-012300-X}}</ref>。


自動車は、[[18世紀]]に[[蒸気機関]]を用いた蒸気自動車として登場し、[[19世紀]]には[[イギリス]]や[[フランス]]で[[都市]]間を[[移動]]するための[[バス (交通機関)|バス]]に用いられるようになっていた。19世紀後半、[[1870年代]]から[[1880年代]]にかけては[[オーストリア]]や[[ドイツ]]で[[ガソリン]]の[[内燃機関]]を用いた自動車の制作や[[特許]]取得が行われた。[[1896年]]に[[米国]]の[[ヘンリー・フォード]]もガソリン自動車を開発し、[[1903年]]に自分の[[名前|名]]を冠した[[フォード・モーター]]社を設立し、まずは2気筒[[自動車エンジン|エンジン]]の小さな車の製造・販売を開始、[[1905年]]には4気筒エンジン車を販売開始、[[1908年]]には改良のうえ、価格も比較的安く設定した[[フォード・モデルT]]を発売し、大人気となった。モデルTは[[1909年]]の1年間だけでも1万台を超える数が売れ、米国で急速に自動車が普及してゆくことになる。米国ではそれまで街の[[大通り]]を走る車と言えば(裕福な人々が所有し、[[御者]]付きの)[[馬車]]ばかりだったのだが、その後 わずか10年ほどのうちに馬車の所有者たちはそれを自動車へと換えてゆき、米国の通りの景色は一変することになった。[[1910年代|1910]] - [[1920年代]]には安価な[[大衆車]]も普及しはじめた。→[[#歴史]]
=== 動作原理 ===
自動車は、[[蒸気自動車]]では[[石炭]]、[[石油]]などの燃料を[[外燃機関]]で[[燃焼]]及び[[ガソリン]]などの燃料を[[内燃機関]]で燃焼するなどの反応によりエネルギーを取り出し、走行のための動力源とする。エンジン内部には潤滑と冷却のために、[[エンジンオイル]]が巡らされている。動力はエンジンのクランクシャフトと呼ばれる軸の回転として出力され、この回転を[[クラッチ]]、[[トランスミッション]]、デファレンシャルギア等の制御装置と、それらを連結する各種[[シャフト]](プロペラシャフト、ドライブシャフト等)を経て伝達し最終的に[[タイヤ]]を[[駆動]]・回転させ、[[路面]]との[[摩擦力]]を用いて推進力とする。駆動輪の数により、[[二輪駆動]]、[[四輪駆動]]がある。


自動車は基本的には、[[人間|人]]や[[貨物]]を運ぶための[[実用]]の[[道具]]として用いられるものであり、交通手段の一つとして[[通勤]]・[[通学]]、客の送迎、[[顧客]]先訪問、[[旅行|旅]]の際に使用される事がある。[[貨物輸送]]に関してはトラック([[貨物自動車]])等を用いて、[[多種多様]]な荷物が運ばれており、<!--陸上輸送に関して-->[[鉄道]]が[[鉄道駅|駅]]から駅への輸送しかできないのに対して、自動車は[[玄関|戸口]]から戸口へ(=[[建物]]から建物へ)と輸送できるという特徴がある{{r|kb-Nipp}}。→[[#自動車の利用]]
=== 動力源 ===
内燃機関と呼ばれる[[エンジン]]は、[[ピストン]]の往復運動を[[クランクシャフト]]で回転運動に変換して出力する[[レシプロエンジン]]が一般的で、[[ディーゼルサイクル]]を使う[[ディーゼルエンジン]]、[[オットーサイクル]]を使う[[ガソリンエンジン]]があり、それぞれに[[4ストローク機関|4サイクル]]と[[2ストローク機関|2サイクル]]がある。


また自動車は、実用性を離れて、愛着の対象となって[[趣味]]的に所有されたり{{r|kb-Nipp}}、運転を楽しむため(スポーツ・ドライビングや[[ツーリング]])に用いられたり、[[メンテナンス|整備]]すること("機械いじり")を楽しむために用いられることもある。また[[高級車]]の場合[[ステータスシンボル]]として利用される場合などもある。→[[#自動車文化]]
レシプロエンジンは、シリンダー配置やクランクピン形状により、[[直列型エンジン|直列(インライン)]]、[[V型エンジン|V型]]、[[水平対向エンジン|対向式]]、V型派生の[[W型エンジン|W型]]などに分類される。戦前のディーゼルエンジンには、ひとつのシリンダーに2つのピストンが向き合い、シリンダーヘッドを持たない、真の[[ボクサー]]エンジンである、[[:en:Junkers Jumo 205|上下対向式]]もあった。


自動車は[[世界]]中で大量に普及したため、[[大気汚染]]の原因となったり、その石油資源の消費量によって[[石油危機]]時のリスク要因となったり、道路上の自動車の[[渋滞|過密状態]]などの問題を引き起こしている{{r|kb-Nipp}}。課題の解決に向けた努力も続けられており、大気汚染防止のために行政は[[自動車排出ガス規制|排出ガス規制]]を行い、自動車メーカーは消費する石油を減らすこと、つまり[[燃費]]の向上([[省エネルギー|省燃費]]エンジンの開発)を行い、[[電気自動車]]、[[ハイブリッド・カー]]、[[水素自動車]]などの開発・販売も行われている。
レシプロ以外では、世界で唯一、「[[マツダ]]」のみが生産している、繭形のハウジングと、その内部で遊星運動をする、三角形のローターで構成される、[[ロータリーエンジン]]が知られている。


専用の[[軌道 (鉄道)|軌道]]を必要としないことから、経路と進路の自由度が高いという特徴がある。
連続燃焼サイクルの[[ガスタービンエンジン]]は、レーシングカーやレコードブレーカー、少数の試作車を除き、実用化されていない。もっとも広義の自動車という意味では、[[戦車]]などの軍用車両分野では広く実用化されている
自動車を動かすこと・操ることを[[運転]]と言い、ほとんどの国で、[[公道]]での自動車の運転には[[運転免許]]が必要とされている。自動車の最初期の段階からすでに[[ヒューマンエラー|運転を誤る]]事故([[交通事故]])が発生していた。自動車によって、怪我をさせられたり命を失ってしまう人やその家族という[[被害者]]が生じ、同時に運転者が[[加害者]]として生きていかなければならなくなることは、自動車普及後の社会が抱え続けている重い課題のひとつである。最近では単純な[[オートパイロット|自動運転技術]]を超える、本格的な[[人工知能]]と高度なセンサー類を用いて[[オートノミー|自律]]走行が可能な[[自動運転車]]も研究されており、AIならば人間が運転するよりも事故率が劇的に減るであろうと期待されてもいて、一部ではすでに([[社会実験]]的な)導入が開始されており、世界での本格的な普及開始の時期が近付いている。→[[#負の影響]]


自動車の生産は、[[部品]]となる様々な工業製品があってはじめて可能となるので、他の様々な工業の振興、一次的工業品の製造とも関連する{{r|kb-Nipp}}。その規模の大きさ、影響の大きさによって、政府にとっては自動車の製造は(一国の)経済を支える重要な産業となりうる。現在のところ、一握りの先進国が自動車の生産を[[独占]]してしまっているような状況にある{{r|kb-Nipp}}。多くの[[開発途上国]]の政府が、自動車製造を行うために懸命の努力を行っている(例えば、先進国の自動車メーカーや政府と交渉し、自動車を輸入するだけでなく、自国内に製造工場などを設けさせる努力を続けている)のは、経済的な影響が大きいからである{{r|kb-Nipp}}。→[[#自動車産業]]
燃料供給方法では、ガソリンエンジンでは、[[キャブレター]]と[[燃料噴射装置|インジェクション]]に別れる。インジェクションには、機械式と電子式とがあり、それぞれ、ポート噴射と直接噴射(筒内噴射)方式に分類される。


公共交通機関の発達していない田舎などでは特に一人当たりの所有率が一般的に高い{{要出典|date=2020年7月28日}}。→[[#自動車の普及]]
ガソリンエンジンをベースに、[[液化石油ガス|液化石油ガス(LPG)]]や、代替燃料である[[天然ガス|圧縮天然ガス(CNG)]]、[[エタノール]]に対応させたものも増えつつある。


<gallery mode="packed-hover" height="250" perrow="6" caption="自動車の例 (それぞれの説明はマウスでカーソルを画像の下の方へ、またはJavascriptオンで画像をクリック。モバイルアプリでは画像を開いてから閉じる。)">
ディーゼルエンジンの場合は燃焼の仕組みから、すべて高圧の燃焼室内への直接噴射となる。
ファイル:1925 Ford Model T touring.jpg|20世紀初頭の自動車の急激な普及のきっかけとなった[[フォード・モデルT|フォード・モデルT(T型フォード)]]。
燃焼室形状の違いにより、シリンダーヘッドに燃焼室を持つ副室式(インダイレクト インジェクション = I.D.I.)と、シリンダーヘッドは平坦で、ピストン頂部の深いへこみを燃焼室とする、直噴式(ダイレクト インジェクション = D.I.)とに分類される。副室式には細長い形状の予燃焼室式と球形の過流室式(リカルド式)とがある。
ファイル:ISUZU GIGA, Full-cab Aluminum-Wing Truck.jpg|[[貨物自動車|貨物自動車(貨物車)]]の例。多くの荷物を運べる。
ファイル:YellowJeepCrossingRiver.JPG|自動車は一般に軌条(鉄道)を必要としないが、さらに、道路すら離れて走ることができる車([[オフロード]]車)もあり、街から離れた、[[道路]]があまり整備されていない場所への移動に便利である。オフロード車([[:en:Off-road vehicle]])の多くは[[総輪駆動]]である。写真は川を渡りかかっているオフロード車。
ファイル:Komatsu HD325 002.JPG|特殊作業車の例、[[露天掘り]]の鉱山などで使われる、特に大型の[[ダンプカー]]。35[[トン]]ほどの荷物を運べる。
ファイル:Danica Patrick Car 2010 Indy 500 Practice Day 7.JPG|特殊な車の一例、[[サーキット]]で[[自動車競技|競走]]するための[[レーシングカー]]。
</gallery><!-- -->{{clear}}


== 歴史 ==
一方、[[電気自動車]]のように燃料や内燃機関を使用しない自動車、二種以上の動力源を併用する[[ハイブリッドカー]]もある。[[ハイブリッドカー]]には、エンジン動力を発電のみに用い、走行用動力は電気モーターのみとした、シリーズ(直列)式と、エンジンと電気モーターを併用する、パラレル(並行)式がある。
[[ファイル:FardierdeCugnot20050111.jpg|thumb|right|160px|フランス陸軍の技術大尉が1760~70年代に開発した[[キュニョーの砲車]]のレプリカ]]
=== 蒸気自動車 ===
最初の自動車は[[蒸気機関]]で動く[[蒸気自動車]]で、[[1769年]]に[[フランス陸軍]]の技術大尉[[ニコラ=ジョゼフ・キュニョー]]が製作した[[キュニョーの砲車]]であると言われている<ref name=":0">{{Cite web|和書|title=自動車誕生から今日までの自動車史(前編)|url=https://gazoo.com/article/car_history/130530_1.html|website=GAZOO.com|accessdate=2020-06-17|language=|first=|last=|publisher=[[トヨタ自動車]]}}</ref>。この自動車は前輪荷重が重すぎて旋回が困難だったため、時速約3キロしか出なかったにもかかわらず、[[パリ]]市内を試運転中に塀に衝突して[[交通事故|自動車事故]]の第一号となった<ref>[http://inventors.about.com/library/weekly/aacarssteama.htm The History of the Automobile - Steam Cars, About.com]</ref><ref name=":0" />。

[[イギリス]]では[[1827年]]ごろから[[路線バス|定期バス]]として都市部および、都市間で広く用いられ、[[1860年]]ごろには[[フランス]]でも用いられるようになった。1885年に、フランスのレオン・セルボレが開発し[[1887年]]に自動車に搭載したフラッシュ・[[ボイラー]]により蒸気自動車は2分でスタートできるまでに短縮された。[[1900年]]ごろには[[アメリカ合衆国]]で、[[石炭]]の代わりに[[石油]]を使った蒸気自動車が作られ、さらに普及していった。この頃は蒸気自動車の方がガソリン自動車よりも騒音が少なく運転が容易だった。アメリカ合衆国では1920年代後半まで蒸気自動車が販売されていた。

[[1865年]]にイギリスで[[赤旗法]]が施行された。当時普及しはじめた蒸気自動車は、道路を傷め馬を驚かすと敵対視されており、住民の圧力によってこれを規制する「赤旗法」が成立したのである。この法律により、蒸気自動車は郊外では[[時速]]4[[マイル]](6.4&nbsp;km/h)、市内では時速2マイル(3.2&nbsp;km/h)に速度を制限され、人や動物に予告するために、赤い旗を持った歩行者が先導しなければならなくなった。その結果、イギリスでの蒸気自動車の製造・開発は、この赤旗法が廃止される[[1896年]]まで停滞することになり、それに続くガソリン自動車の開発においても、[[ドイツ]]やフランスが先行する事になる。

日本では[[1904年]]([[明治]]37年)に、電気技師の山羽虎夫が制作した蒸気自動車が最初で、これが日本産自動車の第1号だといわれている{{sfnp|浅井建爾|2015|p=56}}<ref name=":0" />。

=== ガソリン自動車 ===
[[ファイル:1885Benz.jpg|thumb|right|160px|初期のガソリン自動車、1885年型ベンツ。3輪である。]]
[[ファイル:MW2 05 02 24 klein.jpg|thumb|right|160px|同じく初期のガソリン自動車のマルクスカー(1888年)]]
[[1870年]]、[[ユダヤ人|ユダヤ系]][[オーストリア人]]の[[ジークフリート・マルクス]](Siegfried Samuel Marcus)によって初の[[ガソリン]]自動車「第一マルクスカー」が発明された。[[1876年]]、[[ドイツ人]]の[[ニコラウス・オットー]]が石炭ガスで動作する効率的な[[内燃機関]]の[[オットーサイクル]]を発明すると、[[ゴットリープ・ダイムラー]]がこれを液体燃料を用いる[[ガソリンエンジン]]へと改良して二輪車や馬車に取り付け、走行試験を行った。[[1885年]]にダイムラーによる特許が出されている。1885年、ドイツの[[カール・ベンツ]]は、ダイムラーとは別にエンジンを改良して、車体から設計した3輪自動車をつくった<ref> [http://www.jmf.or.jp/kawaraban/kawara162.pdf 熱力学とエンジンの話]日機連かわら版162号 2020年8月3日</ref>。ベンツ夫人はこの自動車を独力で運転し、製造者以外でも訓練さえすれば運転できる乗り物であることを証明した。ベンツは最初の自動車販売店を作り、生産した自動車を数百台販売した。また、ダイムラーも自動車会社を興した。現在、ガソリン式自動車の発明者はダイムラーとベンツの両者とされることが多い。

[[1898年]](明治31年)には、フランスから日本に輸入されたガソリン自動車「パナール・ルヴァッソール」が、日本国内最初の自動車として登場した<ref name="po">『ポプラディア大図鑑 WONDA 自動車・船・飛行機』(2014年7月、ポプラ社発行)132 - 133ページ『自動車の歴史』より。</ref>。

日本国産のガソリン自動車は、[[1907年]](明治40年)に誕生した「タクリー号」が最初であった{{sfnp|浅井建爾|2015|p=56}}<ref name=":0" />。名称の由来は、道を「がたくり、がたくり」と音を立てて走ることから<ref name="po">『ポプラディア大図鑑 WONDA 自動車・船・飛行機』(2014年7月、ポプラ社発行)132 - 133ページ『自動車の歴史』より。</ref>。

=== 蒸気・ガソリン・電気の3方式並立の時代からガソリン車時代へ ===
19世紀の自動車は手作りであるため非常に高価なものであり、[[貴族]]や[[富裕層]]だけが所有できるものであった。そして彼らは自分たちが持っている自動車で競走をすることを考えた。このころに行われた初期の自動車レースで活躍したのが、[[ルノー]]、[[プジョー]]、[[シボレー]]、[[フォード]]といった現在も残るブランドたちであった。このころはまだガソリン自動車だけでなく蒸気自動車や[[電気自動車]]も相当数走っており、どの自動車が主流ということもなかったが、[[1897年]]の[[フランス]]での自動車レースでガソリン自動車が蒸気自動車に勝利し、[[1901年]]にはアメリカの[[テキサス州]]で油田が発見されてガソリンの供給が安定する一方、当時の電気自動車や蒸気自動車は構造上の問題でガソリン自動車を超えることができず、20世紀初頭には急速に衰退していった<ref>「自動車、そして人」p21 財団法人日本自動車教育振興財団 1997年10月1日第1刷</ref>。

=== 共有、個人所有、シェアリングの歴史 ===
;共有の歴史
当初は自動車を所有するのはごくごく少数の貴族や富裕層にとどまっていた。所有者に重いコストがのしかかる乗り物という存在を、所有せず活用する、という発想は古くからあり、例えば古代ローマにも馬車を現代のタクシーのように従量式で使う手法も存在したことがあったともいう<ref group="注">[[:en:taxi]]など。</ref>。1620年にはフランスで貸馬車業が登場し(言わば、現代のレンタカーに当たる)、1662年には[[ブレーズ・パスカル]]が史上初の'''[[バス (交通機関)|バス]]'''とされる[[5ソルの馬車]]を発明しパリで営業を開始した。1831年にはゴールズワージー・ガーニー、ウォルター・ハンコックが蒸気式の自動車で[[バス (交通機関)|乗り合いバス]]の運行を開始した。
[[ファイル:Erste Benzin-Omnibus der Welt.jpg|thumb|160px|right|内燃機関によるバスとして最初のもの(1895年)]]
1871年にはドイツ人の[[:de:Wilhelm Bruhn|ヴィルヘルム・ブルーン]]によってタクシーメーターが発明され、1897年には[[ゴットリープ・ダイムラー]]が世界初のメーター付き'''[[タクシー]]'''(ガソリン車)Daimler Victoriaを製造した。レンタカーの最古の歴史ははっきりしないが、米国における最初の'''[[レンタカー]]'''業者は、初の量産車とされるT型フォードを用いて1916年から営業した、と言われることはある。その最初のレンタカー業者とされるネブラスカの男Joe Saundersは、車にメーターを取り付け 1マイルあたり10セントの方式で貸したという<ref>[http://www.carrentaldir.com/history-of-car-rentals.html]</ref>。

;大量生産と大衆による所有と個人所有にかかる諸費用の膨張
[[ファイル:Late model Ford Model T.jpg|thumb|right|160px|[[フォード・モデルT|フォード・T型]](1908年発売)]]
[[ファイル:Citroen trefle.jpg|thumb|right|160px|[[:fr:Citroën Type C|シトロエン・TypeC]](1922年発売)]]
米国で1908年、[[フォード・モーター|フォード]]が[[フォード・モデルT|フォード・T型]]を発売した<ref name=":0" />。フォードは、流れ作業による[[大量生産]]方式を採用し自動車の価格を引き下げることに成功した。これにより裕福層の所有物であった自動車を、大衆が所有することが可能となり[[自動車産業]]が大きく発展するさきがけとなった。ヨーロッパでは1910年ごろに、大衆の自動車に対する欲求を満たすように、[[オートバイ|二輪車]]の部品や技術を用いて製造された小型軽量車、いわゆる「[[サイクルカー]]」が普及していった。1922年にフォードと同様の生産方法を用いた小型大衆車が発売され、本格的に自動車が普及していく事になった。また、それに伴いサイクルカーは姿を消していき、大衆車の普及によって、一般市民が自動車を所有することが可能となり、'''[[自家用自動車]]'''(自家用車)が普及すると、それに伴って自動車の利用が一般化、いわゆる[[モータリゼーション]]が起きた。世界で初めてモータリゼーションが起こったのは[[1920年代]]の[[アメリカ合衆国]]であり、次いで[[西ヨーロッパ]]諸国においても起こり、日本でも[[1970年]]ごろにモータリゼーションがはじまった。個人用自動車の普及は、鉄道や船といった[[公共交通機関]]に頼っていた時代に比べて利用者に圧倒的に高い自由度をもたらし、個人の行動半径を大きく拡大させることとなった<ref>「自動車、そして人」p122 財団法人日本自動車教育振興財団 1997年10月1日第1刷。</ref>。

だが現代では、自動車を個人が所有するには、払わなければならない費用は、車両の価格だけで済まず、それ以外に'''[[自動車税]]'''・'''[[自動車重量税]]'''・'''[[自賠責保険]]料'''・'''[[車検]]代'''・'''消耗品等の費用'''・'''[[ガソリン]]代'''・'''[[駐車場]]代'''・'''[[任意保険]]料'''などの費用がかかる<ref>[https://www.cosmo-mycar.com/column/car-erabikata/kurumanoijihi/ コスモMyカーリース「車の維持費って年間でいくら必要?」]</ref>。ナイル株式会社が2022年に公表した、「自家用車にかかる費用が家計を圧迫していると感じるか?」という設問で行ったアンケートの結果によると、 62.4%(730人)が(自動車にかかる費用が家計を圧迫していると)「感じる」と答えた<ref>[https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000135.000055900.html 【自家用車にかかる費用についての調査】月々の費用負担は1~2万円が33.9%、1万円未満が27.9%。]</ref>。

;カーシェアリングやライドシェア
[[1970年代]]にはスイスなどで'''[[カーシェアリング]]'''も始まった。カーシェアはその後世界各国に広がり、
2000年代には、アメリカやヨーロッパなどでは'''[[Uber]]'''('''ウーバー''')など、自家用車による有償[[相乗り|ライドシェア]]を認める地域も増えてきているなど、自動車を個人所有せず快適に利用する方法は多様化してきている。日本では有償での旅客運送に[[第二種運転免許]]の取得や[[事業用自動車]]登録が原則必須であり、自家用車によるライドシェアの展開は過疎地に限られていたが、2024年4月より限定的ながら解禁されることとなった<ref>{{Cite web|和書|date=2023-12-20 |url= https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA18C7U0Y3A211C2000000/ |title= 「ライドシェア」24年4月に限定解禁 全面導入に業界抵抗|publisher=日本経済新聞|accessdate=2024-02-04}}</ref>。

=== 機械の生産方式や人々の労働への影響 ===
なお自動車で採用された大量生産の手法が、[[ライン生産方式]]という効率的な手法を、自動車産業に限らず様々な製造業において広めてゆくことになった。これは企業経営者にとっては好都合な手法であったが、それは同時に[[分業]]が徹底される結果を生み、工場で多くの労働者が、まるでただの機械や道具のように扱われ、同一の単調な作業ばかりを繰り返すことを強制され、働くことに喜びを見出しにくくなる、労働者に精神的な不幸をもたらすという負の事態も引き起こした。一時期はあまりに効率重視で作業の細分化がゆきすぎ、それこそひとりの労働者が、ボルトを1個~数個締める作業ばかりを繰り返すなどというひどい方式になってしまい、労働者への精神的な悪影響が大きくなりすぎ、それが学者などからも指摘されるようになり、その後長い年数をかけて、作業を細分化しすぎないように、ある程度はまとまった範囲の任務を与える、という方式を採用する工場も増えてきた。たとえば一人の担当者が、せめてエンジン部分はまとめて責任を持って一人で組み立てることで、その人なりに「自分の作品を仕上げた」と感じられるようにする、などといった方式である。

=== 2000年代における技術開発の動向 ===
[[中華人民共和国|中国]]など新興国の経済成長や人口増加で、世界全体の自動車販売台数は増えている。これに伴い[[化石燃料]]の消費増や[[大気汚染]]が問題となり、各国政府は自動車に対して[[排気ガス]]などの規制を強化。自動車メーカーは[[温室効果ガス]]や大気汚染物質の排出が少ない又は皆無で、石油資源を節約できる[[低公害車]]の開発・販売に力を入れる。

近年は、[[公害]]や[[地球温暖化]]の対策として、[[電気自動車]]や[[燃料電池車]]等の[[ゼロエミッション車]]の開発が進んでいる。特に2015年に[[フォルクスワーゲン]]グループにて発覚した排ガス不正でディーゼルエンジンの悪影響が露呈されてから、欧州各国では近い将来ガソリン車およびディーゼル車などの販売を禁止する法案が賛成多数の情勢にある。オランダとノルウェーでは2025年、ドイツでは2030年に施行するべく、そうした法案が提出され始めている<ref>{{Cite web|和書|url=https://news.mynavi.jp/techplus/article/20160419-a253/|title=2025年までにガソリン車/ディーゼル車販売禁止の法律提出 - オランダ|publisher=[[マイナビニュース]]|date=2016-04-19|accessdate=2019-09-03}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://m.huffingtonpost.jp/2016/06/07/norway-set-to-completely-ban_n_10332130.html|title=「2025年までにガソリン車を全廃」ノルウェーの政党間で合意へ イーロン・マスク氏も歓迎|publisher=[[ハフポスト]]|date=2016-06-07|accessdate=2019-09-03}}</ref><ref>http://irorio.jp/daikohkai/20161013/356840/</ref>。

近年は情報通信技術(ICT)が急速に進歩している。このため自動車メーカーや大手ICT企業は、[[インターネット]]で外部と接続された[[コネクテッドカー]]や、[[人工知能]](AI)を応用した[[自動運転車]]の研究・開発も急いでいる。

かつては[[サイエンス・フィクション|SF]]作品中の存在であった「[[空飛ぶクルマ|空飛ぶ車]]」の開発も進んでいる。日本では、[[トヨタ自動車]]グループの支援を受ける有志団体「[[CARTIVATOR]](カーティベーター)が、2018年の試作機完成を目指していた<ref>[https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170828-00050071-yom-bus_all 「空飛ぶクルマ」開発、目指すは東京五輪聖火台]『[[読売新聞]]』朝刊2017年8月29日(経済面)</ref>。

== 分類・種類 ==
自動車の分類法はいくつもあるが、おおまかに言うと、構造(ハードウェア)による分類と使用目的(ソフト)による分類がある{{r|kb-Nipp}}。

理屈の上では使用目的と構造の組み合わせがマトリックス(縦横の表)のように多数あるわけだが、実際には全ての組み合わせが用いられるではなく、使用目的ごとに適している構造は(全ての構造ではなく)いくつかの目的に適した構造に絞られることになり、また多くの使用者・購入者から評価される典型的な組み合わせや傾向のようなものが生じ、ただしそれはまったく固定しているわけではなく、時代とともにそれが緩やかに変遷を経てきた歴史がある。

特定の国に限らない分類としては、基本的には、たとえば、目的によって「乗用車(数名の人を運ぶための自動車) / 貨物車(貨物を運ぶための自動車)/ 特殊な車(それ以外の目的の自動車)」と分ける方法がある。またたとえば、大きさによって「小型車 / 中型車 / 大型車」などと分ける方法が、基本的にはある。

なお自動車が登場する以前の馬車の時代に、馬車がその姿(形状)によって分類され、すでに分類法やその分類用語が確立していたので、(馬を排したとは言え)自動車の車体に関してもそれに沿った分類法が採用されてきた歴史がある。「セダン」「クーペ」「ワゴン」などという分類法はもともとは馬車の分類法を継承したものである。→[[#普通自動車の分類]]

=== 法規上の分類 ===
それぞれの国で法規によって[[排気量]]や車体の大きさ、輸送能力などによって分類されている。それが税区分や通行区分、[[運転免許]]の区分の基準とされる。

日本においては、[[道路交通法]]第三条により、[[大型自動車]]、[[中型自動車]]、[[準中型自動車]]、[[普通自動車]]、大型[[特殊自動車]]、小型特殊自動車、[[大型自動二輪車]]、[[普通自動二輪車]]の8種類に分類され、[[道路運送車両法]]第三条により、普通自動車、[[小型自動車]]、[[軽自動車]]、大型特殊自動車および小型特殊自動車に分類されている。

日本では上位概念で「自動車」が明確に定義されており、動力(原動機、電動機など)により駆動される物や牽引される物は名前や形状に関わらず自動車とされる。スーツケースに動力を付けた「電動スーツケース」を日本国内の公道で運用した者が2024年に逮捕されている<ref>電動スーツケースを無免許運転か 全国初の摘発「乗り物と思わず」 朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASS6V2FKLS6VPTIL00QM.html</ref>。一方でオーストラリアでは上位概念で自動車が定義されて無く、ピクニックテーブルにエンジンを取り付けた「エンジン付き移動式ピクニックテーブル」などの運行を取り締まる事ができずに、地元警察は「危険だから」という理由で運行しないことを呼びかけている<ref>[「エンジン付き移動式ピクニックテーブル」の使用が西オーストラリアで深刻な問題に https://buzzap.jp/news/20151119-motorised-picnic-table/]</ref>。

{{see also|日本における自動車}}

=== 統計上の分類 ===
国際的な[[統計品目番号]]では第87類の「鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品及び附属品」に分類される<ref name="87r">[https://www.customs.go.jp/tariff/kaisetu/data/87r.pdf 第87類「鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品及び附属品 」財務省関税局] 、2020年6月25日閲覧。</ref>。

* [[トラクターユニット|トラクター]](87.01) - 他の車両、機器又は貨物をけん引したり押すための車輪式又は無限軌道式の車両<ref name="87r" />。
* 10人以上の人員(運転手を含む)の輸送用の自動車 (87.02) - 原動機付き[[バス (交通機関)|バス]]、客車、[[トロリーバス]]及び[[ジャイロバス]]を含む<ref name="87r" />。
* 乗用自動車その他の自動車(87.02のものを除く)(87.03) - 乗用自動車([[リムジン]]、[[タクシー]]、[[スポーツカー]]及び[[レーシングカー]])、特殊運搬車([[救急車]]、囚人護送車及び[[霊柩車]]等)、移動住宅車([[キャンピングカー]]等)などを含む<ref name="87r" />。
* [[貨物自動車]](87.04) - [[ダンプカー]]、シャトルカー等を含む<ref name="87r" />。
* [[特殊用途自動車]](87.05) - 救難車、[[クレーン車]]、[[消防車]]、[[コンクリートミキサー車]]、道路清掃車、[[散水車]]、工作車及びレントゲン車等を含む<ref name="87r" />。
* 原動機付きシャシ(87.06) - 自動車用の[[シャシ (自動車)|シャシ]]のフレーム又は結合したシャシボディの骨組に原動機等を装備したもので車体を有しない自動車が含まれる<ref name="87r" />。

=== 普通自動車の分類 ===
==== 姿形による分類 ====
もとは馬車の形状による分類用語である。その後、馬車にはなかった分類用語が追加されてきた歴史がある。

なお、自動車メーカーが[[差別化]]([[付加価値]])として商品につける商品名([[商標]])においてはこの限りではなく、2ボックス形状のセダン、4ドア・5ドアのクーペ、ハッチバック形状のワゴン、[[ワンボックスカー|ワンボックス]]形状のワゴンなど、下記の形状と異なるものも多い。

* '''[[セダン]]''':[[ローエンド]]の[[大衆車]]では2ドアも多いが、原則4ドアの車。[[ボンネット (自動車)|ボンネット]]+[[運転席|キャビン]]+[[トランク (自動車)|トランクルーム]]で構成されるスリーボックスカー。
* '''[[クーペ]]''':もとは基本形のセダンをフランス語で「クペ」したもの、つまりセダンが少し「切られて」短くなった形。(4ドアから2ドア分減って)原則<u>2ドア</u>のスリーボックス車。かつてはトランクルームに2名分の[[補助席]]を備えるものもあった。現在は長さやドア数だけでは区別できなくなっている。
* '''[[ワゴン]]''': (もとは[[荷馬車]][[:en:Wagon]]を指す用語で)荷室が主となっている自動車。
** 主に荷物を運ぶために使われる車は'''[[バン (自動車)|バン]]'''と呼ばれるが、アメリカ合衆国発祥の'''[[ミニバン]]'''は乗用車に分類される。
** '''[[ステーションワゴン]]''':(ワゴン車の一種ではあるが)後部には乗員の座席とひとつづきの荷室を備えているツーボックスカーで、主に人を乗せる為に使われる車。荷室に収納式の補助席(ジャンプシート)を2名分持つものもある
* '''[[ハッチバック]]''':トランクルームを省略し、キャビンと荷室を一体化させた車で、跳ね上げ式のバックドア(背面扉)を持つ車。結果として3ドアもしくは5ドアとなる。

[[屋根]]による分類法は次のようなものがある。
* '''[[オープンカー]]''' : 屋根のない車。カブリオレ、[[クーペ#その他の呼称|ドロップヘッドクーペ]]、スパイダー、ロードスター、[[ポルシェ|スピードスター]]などの商標がある。
* '''[[ハードトップ]]''' : 本来は幌屋根に対する「脱着可能な硬い屋根」である[[機械要素|部品]]を指す言葉であった。その後、スリーボックスで主に側面中央の窓柱([[ピラー|Bピラー]])を持たない車を指す用語に。
* '''[[ソフトトップ]]''' : [[幌|屋根]]を持つ車。[[フェートン (車両)|フェートン]]という呼称は廃れたが、[[スポーツカー]]や[[クロスカントリー (自動車)|クロスカントリー]]カーではまだ見られる。
* '''[[コンバーチブル]]''' : 可動式の屋根を持ち、屋根の開・閉、どちらでも走行可能な車。以前はソフトトップ車の名称であったが、'''[[クーペカブリオレ]]'''の登場によってハードトップが主流となっている。
* '''オープントップ''' : [[ピラー]]や各ドアの窓枠、基本骨格などは通常の車と同じで、屋根のみを開閉式の[[幌#自動車における幌|幌]]としたもの。キャンバストップなどの商標で知られる。[[オープントップバス]]には覆いを持たないものもある。
* '''グラストップ''' : オープントップの幌部分を大型の[[ガラス]]屋根としたもの。[[サンルーフ|一部が開閉する]]ものもある。
* '''デタッチャブルトップ''' : 屋根の一部のみを取り外し式としたもので、ハードトップの類型と見ることもできる。商標では、[[タルガトップ]]、[[ホンダ・CR-X#3代目・CR-Xデルソル EG1/2/EJ4型(1992年-1999年)|トランストップ]]、[[:en:T-top|Tトップ]]、[[Tバールーフ]]など。

==== スペースによる分類 ====
自動車メーカーが消費者を満足させるために、乗用車(普通自動車)に関してさまざまな形状のものを開発してきた結果、1980年代~2000年代以降、従来の分類法や分類用語では分類しきれない車や、あるいは複数のカテゴリに該当するような車が増え、消費者も自動車メーカーも自動車誌等も、従来の分類法やカテゴリ名に困惑を感じることが増え、メーカーや販売会社と消費者のコミュニケーションでも混乱が生じるようになった。そうした困惑や混乱を回避するために、多種多様な普通自動車をざっくりと以下のように分類する方法が考えだされ、それが採用されることが増えた。

*'''[[ワンボックスカー]]'''(モノスペースカー):全体が一つの大きな箱(ボックス)状になっている車。内部的には、エンジンルーム、キャビン(=室内スペース)、荷物室があっても、見た目は大きな一つの箱のように見える車。

*'''ツーボックスカー'''([[ファストバック]]カー、カムバックカー): キャビンと荷物室が1つの大きなボックスで、エンジンルームが別のボックスとして飛びだしているように見える車。

*'''スリーボックスカー'''([[ノッチバック]]カー):キャビンが1つ大きなボックスとして真ん中にあり、そこから前後に(キャビンよりは高さが低い)エンジンルームと荷物室のボックスが飛び出している形状の車。

== 構造 ==
自動車はその歴史のなかで様々な構造が現れ、変遷を繰り返してきた。ここでは現在市販されている自動車として一般的なものを示す。したがって、いくつかの自動車には例外があり、特に[[モータースポーツ|競技]]用や、[[特殊自動車]]などについては構造が大きく異なる例もある。

=== 車体構造 ===
車体の[[強度]]部材に用いられる材料は[[鋼|鋼鉄]]が主流で、近年では[[高張力鋼|超高張力鋼板]]の使用部位が広範にわたっており、[[アルミニウム合金]]や[[炭素繊維強化プラスチック]]などの[[複合材料]]を用いたものも市販されるようになってきている。骨格部材以外のパネル部分には[[合成樹脂]]を用いる例も増えてきている。

構造は大きく分けて[[フレーム形式 (自動車)|フレーム形式]]と[[モノコック]]形式とに分けられる。フレーム形式は独立した骨格部材の上に、車室を構成する構造物が載せられたもので、古くから自動車の車体構造として用いられ、現在でも[[貨物自動車]]を中心に採用されている。モノコック形式は車室を構成する外殻自体が強度部材として作られた構造で、[[20世紀]]半ば頃から自動車の車体構造として普及しはじめ、現在の乗用車と小型[[商用車]](LCV)のほとんどで採用されている。

現在は[[内燃機関]]か、[[電動機|電気モーター]]を用いるものが主流である。内燃機関では、[[ピストン]]の往復運動を[[クランクシャフト]]で回転運動に変換して出力する[[ディーゼルエンジン]]や[[ガソリンエンジン]]などの[[レシプロエンジン]]が一般的である。それぞれに[[4ストローク機関|4サイクル]]と[[2ストローク機関|2サイクル]]があるが、現在では4サイクルが主流となっている。

[[火花点火内燃機関]]の燃料にはガソリンが用いられるのが主流となっているが、環境性能や単価を理由に[[液化石油ガス]](LPG)や[[天然ガス|液化天然ガス]](LNG)、[[エタノール]]等の[[アルコール燃料]]が用いられる場合もある。近年では、内燃機関と電気モーターを組み合わせたハイブリッドカー、電気自動車などが普及してきている。
<gallery>
ファイル:Honda RA005E engine 2005.jpg|ガソリンエンジン
ファイル:Honda Insight IMA.jpg|ハイブリッドカー([[ホンダ・インサイト]])のエンジン
ファイル:Bollee mancel.jpg|蒸気自動車
</gallery>

=== 動力伝達 ===
{{main|駆動列}}
動力は、ガソリン自動車の場合は、原動機が効率的に出力を発揮する回転速度から、走行に適した回転速度へと[[トランスミッション|変速機]]によって減速あるいは増速される。変速機は、運転者が複数の減速比から選択して操作する[[マニュアルトランスミッション]](MT)と、自動的に選択または変化する[[オートマチックトランスミッション]](AT)に大別できる。MTは基本的に減速比を切り替える際などには[[クラッチ]]を操作する必要があるが、このクラッチ操作を自動化したものは[[セミオートマチックトランスミッション]]と呼ばれる。近年は、MTの基本構造を持ちながらクラッチ操作と変速操作が自動制御された、[[セミオートマチックトランスミッション|自動制御式マニュアルトランスミッション(AMT)]]も普及し始めている。

[[電気自動車]]の場合は、原動機の効率的な回転速度の範囲が広いため[[歯車比|減速比]]を切り替えない変速機を採用し、原動機を逆回転させることが可能なので後退ギアを持たない場合がほとんどである。

マニュアルトランスミッションの場合、前進の変速比は3段から6段程度が一般的だが、[[副変速機]]を用いて変速段数を2倍とする例も[[貨物自動車|貨物車]]を中心に少なくない。


オートマチックトランスミッションは、[[トルクコンバータ]]と[[遊星歯車機構|プラネタリーギア]]を組み合わせたものが広く普及している。日本の乗用車では、CVTと呼ばれる[[無段変速機]]の採用例が増えてきている。いずれの方式においても、運転者の操作によって「Lレンジ」などのように減速比の範囲を限定する機構や、「マニュアルモード」、「ホールドモード」、「スポーツモード」などと呼ばれる任意の減速比に固定できる機構を備えている。
=== 変速機 ===
前進、後退、速度域の制御は[[トランスミッション]]が行い、[[シフトレバー|シフト&セレクトレバー]]によって、任意にギアの組み合わせを選択する[[マニュアルトランスミッション]](MT)、停止から最高速まで自動選択式の[[オートマチックトランスミッション]](AT)、マニュアルトランスミッションを用い、[[クラッチ]]操作のみを自動化した、[[セミオートマチックトランスミッション]]、さらに、変速操作も自動制御する[[オートマチックトランスミッション#自動制御式マニュアルトランスミッション|自動制御式マニュアルトランスミッション(AMT)]]とに大別される。


セミオートマチックトランスミッションは日本の法規ではAT車に分類され、日本車の例では[[トヨタ・MR-S]]の[[シーケンシャルマニュアルトランスミッション#SMT(トヨタ)|SMT]]がある。
前進の変速比は2速から8速程度が一般的だが、副変速機を用い、変速段数を2倍とする場合もある。


=== 操舵装置 ===
オートマチックトランスミッションは、[[トルクコンバーター]]と[[遊星歯車機構|プラネタリーギア]]を組み合わせたものと、有効径を連続可変とした2つのプーリーと金属ベルトを組み合わせた、[[無段変速機|CVT]](Continuously Variable Transmission)と呼ばれる無段(階)変速機が一般的である。
操舵は前輪の方向を変えて車体を旋回させる前輪操舵方式が一般的で、その機構全体を指して[[ステアリング]]と呼ぶ。操作部を「ハンドル」あるいは「ステアリング・ホイール」と呼ぶ。ハンドルの回転は[[ボール・ナット]]や[[ラック・アンド・ピニオン]]などの機構を介して車輪を左右に押す作用に換えられる。近年は油圧や電動モーターを用いて運転者のハンドル操作を助力する[[パワーステアリング]]が広く普及している。


<!--旋回中は内側の車輪のほうが小さな半径の弧を描く軌跡を通過するため、これに合わせて--><!-- ← 半径の差は、後輪でデフが必要な理由の説明にはなるが、前輪における角度差の説明としてはあまり適切ではない-->旋回時の各瞬間に、それぞれの車輪がその動いている方向を向くようにすると、前輪の左右では舵角が異なる。例えばハンドルを右に切ると右タイヤの方が舵角が大きくなる。これについての機構を[[アッカーマン・ジャントー|アッカーマン機構]]と呼ぶ。
推進力(回転)のOFF/ONは[[クラッチ]]が行い、クラッチペダル等の操作部を操って手動操作するものをマニュアル・クラッチ、あるいは単にクラッチと呼ぶ。手動操作を伴わないクラッチをオートマチック([[AT]])、ノークラ、あるいはよく使用される自動クラッチ機構の名称を取って[[トルクコンバータ|トルコン]]などと呼ばれる。
推進方向の制御は、タイヤの向きを変更する事で行う、向きを変える機構をステアリング(システム)と称し、ステアリングを操作する操作部を[[ハンドル]]と呼び、手に握る部分をステアリング・ホイールと呼ぶ。i wish i could translate this into whatever language this is


=== 制動・拘束装置 ===
=== 制動・拘束装置 ===
速度を落とす、停止す等のフット[[ブレーキ]]で行うブレーキペダルに加えられた力を、[[油圧]]や[[空気圧]]を介して[[摩擦]]材を回転部分に押しつけ、回転自車の速度を熱に変換してスピードを落とす。市販車のほとんどが、エンジンの吸気管負圧圧、空気圧を利用した、ペダル踏力を軽減する倍力装置を有している。
主た[[ブレーキ|動]]操作、足踏み式の[[ブレーキペダル|ペダル]]で行う[[フットブレーキ]]がほとんどである。ペダルに加えられた力[[油圧]]や[[気圧|空気圧]]を介してブレーキ装置に伝達し、[[摩擦]]材を回転部分に押しつけ、[[運エネルギー]][[エネルギー]]に変換して速度を落とす。市販車のほとんどが、[[空気ブレーキ|エアブレーキ]]以外の液圧式では、エンジンの[[インテークマニホールド|吸気管]][[負圧]]や油圧を利用した、ペダル踏力を軽減する[[ブレーキブースター|倍力装置]]を有している。


下り坂などで、フットブレーキに頼り過ぎると[[フェード現象]]で制動力が著しく低下したり、[[ベーパーロック現象]]でペダル踏力が全く伝わらなくなってしまうことがある。これらを防ぐために[[エンジンブレーキ]]を利用することが[[自動車教習所|運転免許教習]]でも指導されているが、[[車両総重量]]が大きくエンジンブレーキだけでは抑速や減速効果が得られにくい[[大型自動車|大型]]の貨物自動車では、[[排気ブレーキ]]や[[リターダ]]を搭載する車種も多い。
長時間の停車には機械式、または空気式のパーキングブレーキを用いる。


高速からの制動には、放熱性に優れるディスクブレーキが有効であるが、重量が大きい車両の制動や、勾配での駐車などには、自己倍力作用の働きで拘束力の大きいドラムブレーキが有利となる。
高速からの制動には、放熱性に優れる[[ディスクブレーキ]]が有効であるが、重量が大きい車両の制動や、勾配での駐車などには、自己倍力作用の働きで拘束力の大きい[[ドラムブレーキ]]が有利となる<ref>[http://www.sei-brake.co.jp/necchuu/brake/brake42.html S&Eブレーキ株式会社 ブレーキ雑学講座 「雑学講座42 ディスクブレーキとドラムブレーキ」]</ref>


[[駐車]]時に車体が動き出さないように拘束する[[パーキングブレーキ]]はワイヤ式または空気式のものが多い。乗用車の場合はブレーキ装置を制動用のものと共用する構造がほとんどであるが、制動用のディスクブレーキの内周に拘束用の[[ドラムブレーキ]]を備えるものもある。従来貨物車ではトランスミッション(変速機)出力部にドラムブレーキを備え、[[プロペラシャフト]]を拘束するセンターブレーキが一般的であったが、法改正により常用ブレーキを兼用する「ホイールパーク式」/「マキシブレーキ」と呼ばれる、ホイールを直接拘束する方式に移行した。
近代的な自動車には、この他に安全性を高める[[照明|ライト]]類、[[アンチロック・ブレーキ・システム|ABS]]、[[シートベルト]]、[[エアバッグ]]等の装備、[[環境]]性を高める[[消音器|マフラー]]、[[触媒]]、[[排気]]フィルタ等の装備。未舗装道路でも推進力を確実に確保する四輪駆動、[[トラクションコントロール]]等の装備、快適性を高める[[エア・コンディショナー|エアコン]]、[[ナビゲーションシステム]]、[[ETC]]などの装備、以上を始めとする多彩な装備が搭載されている。


=== 運転装置 ===
部品はボンネットを開けると見る事ができるものもある。エンジンやバッテリーが搭載されており、制御回路と共にライトなどが搭載されている。[[自動車用フューエルタンク|燃料タンク]]は車両後部にあることが多い。機関部の熱を避け引火の危険を抑えるためである。
運転者の座席は座部と背もたれを備えた椅子形のものが主流である。運転席の正面には操舵用のハンドルと[[アクセルペダル]]と[[ブレーキペダル]]、あるいは[[クラッチペダル]]が備えられているのが標準的な自動車の構造である。ハンドルは[[円 (数学)|円]]形が一般的だが、[[オート三輪]]では[[オートバイ]]や[[スクーター]]のような棒状のハンドルも存在した。また、腿まわりの空間的余裕が増える楕円形のハンドルを採用している車種もある。駐車ブレーキを操作する装置は、レバーを引き上げる方式のものが主流であるが、古いトラックや[[ワンボックスカー]]では杖状のレバーを車体前方の奥から手前に引き寄せる方式のものもある。また、近年では足踏み式のものや電気的に作動する押しボタン式も採用されるようになった。変速機の操作レバーはMTの場合は[[シフトレバー]]、ATの場合はセレクトレバーと呼ばれる。いずれの場合も運転席の脇、車体中央側の床に設置されているフロアシフトが大半を占める。古い[[タクシー]]やトラック、ワンボックスカーでは[[ステアリングコラム]]にシフトレバーを設置したコラムシフトのMTも多く存在した。一時期のAT車ではミニバンを中心に、ステアリングコラムにセレクトレバーを備える車種は珍しくないものとなっていたが、近年は[[ダッシュボード (自動車)|インストルメントパネル]]にセレクトレバーを配置したものが多い。


== 自動車の利用 ==
[[ハンドル]]をひねると[[トラクションコントロール]]や[[サスペンション]]、[[車軸懸架サスペンション]](リジットアクスル)、[[独立式懸架サスペンション]]、[[ストラット式サスペンション]]、[[ダブルウィッシュボーン式サスペンション]]、[[マルチリンク式サスペンション]]、[[エアサスペンション]]などのサスペンションが連動する仕組みとなっている。
=== 乗用車としての利用 ===
{{see also|モータリゼーション}}
[[File:Metropolitan Expressway Takaido entrance 1.jpg|thumb|right|200px|首都高速道路]]
自動車は人や物を輸送でき、また道路さえ整備されていれば様々な場所に行くことができる。これはかつての[[馬車]]で行われていた用途の継続でもあった。道路の全国的な整備が、[[先進国]]への仲間入りとも言える。


[[アメリカ]]は、1908年に[[大衆車]]のパイオニアである[[フォード・モデルT|フォードT型]]を発売、1911年には[[自動車専用道路]]の先駆けとなる[[公園道路|パークウェイ]]が整備された。[[イタリア]]では、1924年に[[ミラノ]]から[[ヴァレーセ]]までの約50kmに、交差点のない幅10mの[[アウトストラーダ]]を完成させている<ref name="gazooroad">{{Cite web|和書|date=2015-04-17|url= https://gazoo.com/article/car_history/150417_1.html |title= アウトバーンとハイウェイ(1933年) |website=GAZOO|publisher=トヨタ自動車|accessdate=2020-07-05}}</ref>。[[ドイツ]][[ナチ党]]の[[アドルフ・ヒトラー]]は、1933年に「休日には低所得者層が自動車に乗って[[ピクニック]]に出かけられる」暮らしが必要であると提え、[[モータリゼーション]]推進を宣言<ref name="gazooroad"/>。[[アウトバーン]]の整備や伝説的大衆車[[フォルクスワーゲン・タイプ1|フォルクスワーゲンビートル]]の開発に着手した。日本は、元々馬車文化が未熟であったために道路整備は難航したが<ref>{{Cite web|和書|url= https://www.mlit.go.jp/road/michi-re/4-2.htm |title= 近代における道路政策|website=国土交通省HP|publisher= 国土交通省|accessdate=2020-07-05}}</ref>、戦後に入って[[首都高速道路]]が建設されるなど、欧米に劣らぬ勢いを見せた<ref name="gazooroad"/>。
[[タイヤ]]を[[鋼|スチール]]ホイール、[[アルミホイール]]、あるいは[[マグネシウムホイール]]にはめ込み、[[車輪]]として地面に接触し、これが回転して前進・後退の力を伝達するとともに、[[ステアリング]]の機能も持たされる。


=== 商用車としての利用 ===
== 内装 ==
[[File:Sixth Avenue - panoramio (40).jpg|thumb|right|200px|街中のスクールバスとタクシー]]
=== 運転席 ===
他方の利用として、自動車を用いたサービス業が多様に存在し、市民の生活にとって大きな役割を担っている。これには大きく分けて「自動車で何かをする」形態と、「自動車に何かをする」形態がある。
{{節スタブ}}


前者の例として、[[旅客輸送]]や[[貨物輸送]]を行うサービス全般を[[運輸業]]と呼ぶ。旅客であれば[[タクシー]]や[[ハイヤー]]、また[[バス (交通機関)|バス]]などとして運営され、バスは多くの人員の輸送が可能であることから、形態に応じて[[路線バス]]、[[観光バス]]、[[高速バス]]、[[定期観光バス]]などと様々なものがある。貨物輸送に関しては運送会社がトラックを用いて輸送する。
== 歴史 ==
直接的な輸送サービスの提供ではないが、自動車を賃貸する[[レンタカー]]や[[カーリース]]もある。
{{右|

[[Image:1885Benz.jpg|thumb|none|240px|1885年型ベンツ]]
後者の例としては自動車の整備を行う[[自動車整備業]]、自動車への燃料補給などを行う[[水素ステーション]]などがある。
[[Image:1923 Ford Model T Roadster 3b36638r.jpg|thumb|none|240px|フォード・T型]]

=== 緊急車両・特殊車両としての利用 ===
[[File:JGSDF Ambulance , 陸上自衛隊 1トン半救急車 - panoramio.jpg|thumb|right|200px|[[陸上自衛隊]]の救急車]]
国民の安全や治安維持のために、自動車を利用する例がある。

[[パトロールカー]] (パトカー) は、[[犯罪]]や[[交通違反]]の取り締まりのために使用される。パトロールを行うことで犯罪の抑制に繋がるという重要なメリットも持ち合わせている<ref>{{Cite web|和書|date=2016-08-23|url=https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/about_mpd/shokai/katsudo/koban/patrol_car.html|title=パトカーの活動状況|website=警視庁HP|publisher=警視庁 |accessdate=2020-07-07}}</ref>。[[消防車]]は、[[火災]]その他[[災害]]に際してその鎮圧や防御を行う際に使用される。この用途は古くから馬車や[[人力車]]などで担われていた。[[救急車]]は、[[疾病]]または災害などによって発生した傷病者を治療可能な[[医療施設]]まで迅速に搬送するために使用される。一般道を利用しながら早急に目的地へ到着しなければならないため、市民の協力が重要とされる<ref>{{Cite web|和書|date=2019-09-10|url=https://gazoo.com/article/daily/190910.html|title=知っておきたい! 近づいてくる救急車のよけ方|website=GAZOO|publisher=トヨタ自動車 |accessdate=2020-07-07}}</ref>。

また[[特殊車両]]としては、国の平和・安全のために使用される[[装甲車]]や、[[建設工事]]に使用される[[クレーン車]]や[[ブルドーザー]]、輸送に使用される[[タンクローリー]]や[[牽引自動車|トレーラー]]などがあり、いずれも国民が健康で文化的な最低限度の生活を送るためには必要不可欠な自動車である。

== 自動車文化 ==
{{独自の研究|section=1|date=2022年4月}}
<!--『{{要出典範囲|自動車の魅力やまたその愛好家たちによって生まれた文化を「自動車文化」と定義づける|date=2022年4月}}』と誰が言ったかを明示すべき。
出典が示されていない。投稿者によるエッセーのような内容。

{{要出典範囲|自動車は多彩な車種・形状があり、また用途によって様々な自動車が使い分けられる。自動車で走ると言っても、整備された道路・行程だけでなく条件の悪い道路・行程などもあり、様々な楽しみ方がある。また[[デザイン]]性や機能性、[[自動車エンジン|エンジン]]性能、[[メカニカル]]な側面など、様々な魅力を自動車は有しているため、自動車に乗ること、集めることなどを趣味にする人は多い。特に遠方の行楽地に向かう際に自動車による移動そのものを主目的の一つとしたり、目的地を決めずにただ自動車を運転する周遊旅行は一般に「ドライブ<ref group="注">オートバイによる同様の行為は「[[ツーリング (オートバイ)|ツーリング]]」、自転車によるものは「[[サイクリング]]」あるいは「[[ポタリング]]」である。</ref>」あるいは「遠乗り」と呼ばれ、最もスタンダードな自動車の楽しみ方である。|date=2022年4月}}
-->

自動車愛好家については「[[カーマニア]]」を参照。

この項では、自動車に関して長い歴史を有する「欧米諸国」と「日本」双方の文化比較を基軸として述べていく。

「自動車の魅力」というと[[スポーツカー]]や[[スーパーカー]]、[[ハイパーカー]]といった[[ハイエンド]]なタイプに焦点が当てられがちであるが、そういった部類のみでは語ることができないほど、自動車文化は多様性に富んでいる。
『{{要検証|date=2022年4月}}{{要出典範囲|[[エンスージアスト]]の多くは、様々なタイプの自動車に対して関心を持っている|date=2022年4月}}』<ref name="carlife">
出典として挙げてあるサイトは、百科事典の出典としては不適切。

{{Cite web|和書|date=2017-04-22|url= https://www.leon.jp/peoples/7837 |title= 白洲次郎、S.マックイーン、J.レノン……いいオトコが愛したクルマたちとは? |website= LEON|publisher=主婦と生活社|accessdate=2020-07-07}}</ref>。<!--
出典として挙げられたウェブページ LEONには、「自己のライフスタイルを映し出す鏡」などという表現は無い。投稿者による独自の作文。-->
<!--ただし、前述の自動車は趣味としての使用をコンセプトにしているため、自動車愛好家のメインアイテムとなっていることも事実である。また自動車選びは、他の趣味と同様に”自己のライフスタイルを映し出す鏡”のような存在でもある<ref name="carlife"/>。-->

=== 自動車文化の形成 ===
==== 欧米 ====
[[File:1957-05-12 Mille Miglia Ferrari 335S 0646 Portago Nelson.jpg|thumb|right|200px|[[:en:Ferrari 335 S|フェラーリ335S]]を運転する[[アルフォンソ・デ・ポルターゴ|第11代ポルターゴ侯爵]](ミッレミリア1957)。ヨーロッパ貴族と自動車の関係は深い。]]
[[ヨーロッパ]]各国([[イギリス]]、イタリア、[[フランス]]、ドイツなど)では、[[王立自動車クラブ]]に代表されるように、[[20世紀]]初頭から[[貴族]]や[[富裕層]]らによって自動車を趣味・娯楽の対象として扱う側面が発達し(かつての[[乗馬]]、[[馬術]]の延長線上にあった)、のちに一般大衆にまでその貴族趣味的な気韻を持った、[[ハイカルチャー]]とも言うべき自動車文化が浸透していった<ref name=":0" /><ref name="gqcar">{{Cite web|和書|date=2017-06-19|url= https://www.gqjapan.jp/car/story/20170619/20170608/the-100-heads-up-Issues-032 |title= 米欧カーカルチャーはなぜ違う?──ボンジョルノ西川淳のコラム・スペチアーレ 貴族趣味 vs カジュアル |website=GQ JAPAN|publisher=コンデナスト・ジャパン|accessdate=2020-07-05}}</ref><ref>{{Cite web|和書|date=2019-09-23|url=https://genroq.jp/2019/09/23/44255/|title= グッドウッド・リバイバル・ミーティング2019に見る、ヨーロッパ自動車文化の奥深さ|website=GENROQ Web|publisher=株式会社三栄|accessdate=2020-07-05}}</ref>。それは、[[18世紀]]後半から[[19世紀]]に生まれた英国の新興富裕層が、貴族以上に貴族らしくあるために自分自身に磨きをかける「[[ダンディズム]](≒[[ノブレス・オブリージュ|貴族精神]])」と呼ばれる思想に準拠している<ref name="tokudaiji">{{Cite web|和書|url= https://www.ahead-magazine.com/archives/?p=1716 |title=特集 カッコイイを考える <徳大寺有恒とジャガー の関係性>|website=ahead magazine archives |publisher=株式会社レゾナンス|accessdate=2020-07-10}}</ref>。[[自動車競技|自動車レース]]黎明期の時代においては、[[サーキット]]がそういった[[ジェントルマン]]たちの社交場にもなっていた<ref name="lexus ">{{Cite web|和書|date=2017-08-25|url=https://lexus.jp/magazine/20170825/83/spo_lex_motorsport.html |title= モータースポーツ讃歌 —サーキットはジェントルマンの社交場である|website=VISIONARY MAGAZINE BY LEXUS|publisher=レクサス|accessdate=2020-07-05}}</ref>。ただし貴族趣味的とはいえ、彼らは自動車の価格(大衆車/[[高級車]]などの類別)や、またそれらから生じる[[社会的地位|ステータス]]を重視していたのではなく、純粋に趣味・娯楽の対象として自動車を求めていた<ref name ="precious">{{Cite web|和書|date=2019-10-31|url=https://precious.jp/articles/-/13482 |title=美しくとも危険な芳香漂う---男の生き様は名車と共に!切っても切れない車と男の関係性|website=MEN'S Precious|publisher=小学館|accessdate=2020-07-29}}</ref>。

その一方で、”欧州では、[[縦列駐車]]する時はぶつけて止める”といった世説が出るほど、自動車を「移動手段の道具」として割り切って捉える思想もヨーロッパには根強くある<ref name="webcgfrance">{{Cite web|和書|date=2014-02-13|url= https://www.webcg.net/articles/-/30265 |title=【マッキナあらモーダ!】第334回:”クルマをぶつけて止める”伝説を検証してみる|website=webCG|publisher=株式会社webCG|accessdate=2020-07-18}}</ref><ref>{{Cite web|和書|date=2017-09-26|url=https://www.webcartop.jp/2017/09/156024/ |title=ヨーロッパでは縦列駐車時にバンパーをぶつけるのが当たり前ってホント?|website=WEB CARTOP|publisher=交通タイムス社|accessdate=2020-07-18}}</ref>。実際に走行している自動車の多くは、日本に比べて車体が汚損している傾向にあり、この思想は[[サイクルカー]](ヴォワチュレット)や[[バブルカー]]、[[ミニカー (車両)|マイクロカー]]のその極端とも言える[[理性主義|合理主義]]的な簡素な造りにも表れている。因みにこの文化は、その地の自動車愛好家にとっては非常に難儀なものであり、フランスにおいては都市部での治安の悪さも含め、駐車場所には特に気を使わけなければならないという話もある<ref name="webcgfrance"/><ref>{{Cite web|和書|date=2017-05-08|url=https://gazoo.com/ilovecars/daily/170508.html|title=「日本だからクラシックカーに乗れる」フランス人パティシエのシトロエン愛|website=GAZOO|publisher=トヨタ自動車|accessdate=2020-07-18}}</ref>。

[[アメリカ]]は、[[フォード・モーター|フォード]]によって自動車をいち早く大衆化させたことから、よりカジュアルで[[商業主義]]的な文化が目立つ<ref name="gqcar"/>。特にその傾向は戦後になってから顕著に表れはじめ、1940 - 1950年代における、[[ドラッグレース]]や[[ストックカー]]といった単純明快なルールを持つ自動車レースの誕生は好例である。また、人種の多様性から多地域の自動車文化が数多く混在していることも特徴の一つである。それは[[カスタム]]文化に顕著に表れており、[[白人]]由来の[[ホットロッド]]、[[チカーノ|メキシコ系]]由来の[[ローライダー]]、[[アジア系アメリカ人|アジア系]]由来の[[スポーツコンパクト]]などがある<ref>{{Cite web|和書|date=2019-06-14|url= https://fika.cinra.net/article/201906-kuruma |title= 『ワイスピ』のルーツを宇野維正が解説 カスタムカー文化を紐解く |website=Fika |publisher=株式会社CINRA|accessdate=2020-07-18}}</ref>。自動車の美しさを競うコンテストや展示会も世界的な規模で開催される。ただし、いずれも大衆性やエンターテインメント性を意識したものであることは確かであり、[[権威主義]]的な面は少ない<ref name="gqcar"/>。また[[大量生産]]方式から生まれた[[インダストリアルデザイン]]は、後の自動車デザインにおける核となり、「自動車の消費」という概念を誕生させることになる<ref>{{Cite web|和書|date=2014-09-19|url= https://gazoo.com/article/car_history/140919_1.html |title= <カーオブザセンチェリー>T型フォード(1908年)|website= GAZOO|publisher=トヨタ自動車|accessdate=2020-07-18}}</ref>。

==== 日本 ====
[[File:Kishichiro Okura.jpg|thumb|right|200px|日本人初のレーサー、大倉喜七郎男爵。日本初のオーナーズクラブ『日本自動車倶楽部』(1910年)の創設にも貢献し、日本における自動車文化の基礎を作った<ref>{{Cite web|和書|url= http://www.jahfa.jp/wp/wp-content/uploads/2018/12/2018-okura.pdf |title= 大倉喜七郎 日本の自動車レースと自動車文化を先駆 |website= 日本自動車殿堂 |publisher=JAHFA|accessdate=2020-07-07}}</ref>。]]
<!--自動車文化を直接的に示すものではなく、またWikipeida内に「日本への自動車の渡来」「日本における自動車の年表」のページがあるため、そちらに移動させた方が適切。
日本に最初に渡来した自動車は、[[1899年]](明治32年)に、当時の皇太子(後の[[大正天皇]])の御成婚を祝して[[サンフランシスコ]]在留邦人会が献上した電気自動車であると見られる。最初の日本製ガソリン自動車は、1907年に東京自動車製作所が製造したものであった。1911年には[[橋本増次郎]]が東京に[[快進社]]自動車工場を設立。1919年には久保田鉄工(現[[クボタ]])の社長の息子だった[[久保田篤次郎]]が、大阪に実用自動車製造を設立した。世界的な恐慌の煽りを受け、この両社が26年に統合され、33年に[[日産自動車|日産]]自動車となった。また三菱造船神戸造船所が[[1917年]]にイタリアのフィアット・ゼーロに学んで三菱A型乗用車を完成させており、[[三菱自動車]]の遠い先祖といえる。[[1918年]]には[[大日本帝国陸軍|陸軍]]が定めた一定の規格に合致するトラックに補助金を出す軍用自動車保護法が施行されており、これは自動車工業の発達を促す日本で初めての法律だった。これにより[[東京瓦斯電気工業]]がTGE(Tokyo Gas Electric)トラックの生産を開始し、[[石川島造船所]]もイギリスのウーズレー車の製造権を得、初め乗用車を国産化していたが、まもなくトラックに転じ、後にはバスも製造した。この両社は33年から提携するようになり、37年には合併され、第二次世界大戦後に[[いすゞ自動車]]となった<ref name="nippo" >[https://kotobank.jp/word/%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A-74374 日本大百科全書(ニッポニカ) 自動車]</ref>。
-->
日本の自動車文化は、明治 - 大正期にかけて[[欧化主義]]の名残があったことや、20世紀半ばまで[[華族|華族制度]]が存在したこと、また同じく20世紀半ばまで大衆車が普及せず[[上流階級|上流層]]のみしか自動車を所有できなかったことなどの理由から、必然的にヨーロッパにおける文化形成と似た道を辿ることとなった。これは自動車に限らず、[[ゴルフ]]、[[テニス]]、[[乗馬]]など当時輸入された西洋由来のハイカルチャーはみな同様の過程を経た。

[[1898年]]1月、日本に初めて四輪自動車が渡来したとされる(諸説あり。[[日本への自動車の渡来]]を参照)。[[1902年]]、[[川田龍吉]]男爵が[[横浜市|横浜]]でロコモビル社製の蒸気自動車[[スタンレー・スチーマー]]を購入、通勤で乗るなど個人的に使用した。ここで川田は日本初のオーナードライバー(自家用車所有者)になったされる<ref>[https://www.jsme.or.jp/kikaiisan/heritage_035_jp.html ロコモビル(国内最古の自家用乗用自動車)] 日本機械学会</ref>。[[1907年]]には、美術品コレクターで冒険家の英国人トーマス・ベイツ・ブロウ<ref>[https://www.fondation-baur.ch/jp/27 トーマス・ベイツ・ブロウ] バウアー財団東洋美術館</ref>が[[1904年]]製の[[スイフト・モーター・カンパニー|スイフト]]7HPで[[京都市|京都]]から[[軽井沢町|軽井沢]]を目指す自動車旅行を敢行したことが記録されている<ref>[https://www.japansociety.org.uk/review?review=505 Biographical Portraits, Volume X] The Japan Society</ref>。[[1908年]]8月1日には、[[皇族]]の[[有栖川宮威仁親王]]が「ダラック号」(''[[:w:Darracq|Darracq]]'' )を先頭にガソリン自動車を連ねて遠乗り会を敢行、その目的地は[[谷保天満宮]]であり、これが日本初のドライブツアー(カーミーティング)とされる<ref>{{Cite web|和書|url= https://kunimachi.jp/2012/08/01/タクリー号(国産初のガソリン車)実動レプリカ/ |title= タクリー号(国産初のガソリン車)実動レプリカお披露目 |publisher= NPO法人 国立市観光まちづくり協会 |accessdate=2020-08-26}}</ref>。1907年7月6日、[[大倉財閥]]一族の[[大倉喜七郎]]男爵は、英国[[ブルックランズ|ブルックランズ・グランプリ]]で[[フィアット]]を駆り2位に入賞、ここで大倉は日本人初のレーサーとなった。その3年後の[[1910年]]には、大倉を中心に日本初の[[オーナーズクラブ]]『日本自動車倶楽部』が結成される。事務局は[[帝国ホテル]]に置かれ、会長に[[大隈重信]]、メンバーには大倉喜七郎、[[伊東巳代治]]、[[寺内正毅]]、[[後藤新平]]、[[渋沢栄一]]、[[尾崎行雄]]といった政財界の名士が名を連ね、欧米各国の[[大使]]、[[公使]]も参加、このクラブは一大[[サロン]]となった<ref name ="japan">{{Cite journal|和書 |author=小林英夫 |title=日本で自動車はどう乗られたのか |url=https://hdl.handle.net/2065/46851 |journal=アジア太平洋討究 |issn=1347-149X |publisher=早稲田大学アジア太平洋研究センター |year=2015 |month=dec |issue=25 |pages=29-48 |naid=120005694993}}</ref>。当時の自動車所有者はほとんど入会したためにその影響力は大きく、[[自動車税]]の決定など行政的な業務も行なった<ref name ="japan"/>。

その後も[[華族]]や[[エスタブリッシュメント]]の[[ハイカラ]]たちを中心に、日本の自動車文化は形成されていった。戦前の著名な自動車愛好家に、[[三井八郎右衛門#11代高公|三井高公]]、[[細川護立]]、[[鍋島直泰]]、[[小早川元治]]、[[福澤駒吉]]、[[白洲次郎]]、[[藤山一郎]]などが知られている。戦後に入ってもなお、伝統的な西洋式の自動車趣味は多くの人物によって継承され、失われることはなかった。[[小林彰太郎]]、[[式場壮吉]]、[[福澤幸雄]]、[[徳大寺有恒]]、[[夏木陽介]]などは、そういった際に名が挙げられる著名人である<ref name="lexus "/><ref>{{Cite web|和書|date=2018-05-23|url= https://serai.jp/hobby/315388 |title=「テリーが惚れた偉大なるクルマ賢人たち」(テリー伊藤のクルマコラム 第12回) |website= サライ.jp|publisher=小学館|accessdate=2020-07-09}}</ref>。中でも[[自動車評論家]]の小林彰太郎は、自身が[[ライオン (企業)|ライオン]]創業者の一族出身でありながらも自動車評論家を生業とし、1962年に雑誌『CARグラフィック』(現・[[カーグラフィック]])を創刊。当時では大衆の高嶺の花であった輸入車の魅力を積極的に発信し、また自身も英国流の自動車趣味を実践したことで、日本における自動車文化の普及に貢献した<ref>{{Cite web|和書|url= http://www.jahfa.jp/wp/wp-content/uploads/2017/02/2013-kobayashi.pdf |title= 自動車実学に徹したモータージャーナリスト 小林 彰太郎 |website= 日本自動車殿堂|publisher=JAHFA|accessdate=2020-07-07}}</ref>。

第二次世界大戦後に日本を占領した連合軍は自動車の開発を制限し、特に乗用車は事実上の禁止となった。この制限は[[1949年]](昭和24)に解除され、1952年ごろからは先進国のメーカーと技術提携して外国車をノックダウン生産、しだいに国産化して技術の吸収に努めるメーカーが増えていった<ref name="nippo" />。

[[1960年代]]以降一般大衆に自動車が普及するようになると、[[サブカルチャー]]としての側面も現れはじめる。中でも[[チューニングカー]]や[[VIPカー]]、[[痛車]]などのカスタム文化は現在では世界中に影響を与えるまでに発展している<ref>{{Cite web|和書|date=2016-10-21|url=https://www.redbull.com/jp-ja/how-to-stance-your-car |title=英国で独自の進化を遂げる改造車シーン! |website= Red Bull|publisher=Red Bull.com|accessdate=2020-07-10}}</ref>。また、この文化は非常にユニークなものである一方で、速度超過、[[改造車#違法改造車対策|違法改造]]、[[走り屋]]、[[暴走族]]といった各種違法行為、或いは騒音、運転マナーの悪さといった迷惑行為との関連が少なからずあり(これもまた一種の文化と化している)、そういった面から自動車に対して[[ヤンキー (不良少年)|不良]]なイメージを連想させることがある<ref>{{Cite web|和書|date=2018-09-07|url=http://orm-web.net/wheels/-bosozoku.php|title= ~BOSOZOKU~ 米国に伝播し美化された、間違った日本の自動車文化|website=ON THE ROAD MAGAZINE web|publisher=株式会社オンザロード|accessdate=2020-07-05}}</ref>(「[[VIPカー#マイナスイメージ]]」も参照)。これらの文化の形成過程については、「[[チューニングカー#日本における歴史]]」などを参照のこと。

日本は、草創期から自動車生産を開始し<ref group="注">1907年には純国産の実用化されたガソリン車が開発されている。</ref>、また同じく草創期から[[輸入車|外国車]]を比較的多く輸入していたこと、或いは戦後の[[日本車|国産車]]の普及などもあって自動車と接する機会は多く、ヨーロッパやアメリカに次いで自動車文化が定着しやすい環境にあった<ref name=":0" /><ref name ="japan"/> 。そのため他の[[アジア]]各国や[[アフリカ]]諸国と比べて文化が十分成熟の域に達していると言える<ref>{{Cite web|和書|date=2017-07-01|url=http://news.searchina.net/id/1638925|title= 成熟した日本の自動車文化に比べ、メンツを求める我が国はまだ未熟=中国報道|website=Serchina|publisher=モーニングスター株式会社|accessdate=2020-07-05}}</ref>。[[軽自動車]]やチューニングカー、(見世物としての)[[ドリフト走行]]などは日本発祥であり、1970年代には[[スーパーカー#1970年代のスーパーカーブーム|スーパーカーブーム]]も到来している。上記でも触れたように[[カーマニア]]を対象とした自動車雑誌やテレビ番組も多数ある(「[[:Category:日本の自動車雑誌]]」、「[[:Category:自動車番組]]」を参照)。ただし近年の日本では、カーマニアと一般大衆の間における自動車に対する興味の差が非常に大きくなっていることも指摘されている<ref>{{Cite web|和書|date=2018-05-21|url= https://www.webcg.net/articles/-/38750 |title=カーマニア人間国宝への道 第91回:日本独自のクルマ観は世界を変える? |website=web CG|publisher=株式会社webCG|accessdate=2020-07-05}}</ref>。

[[カルチュア・コンビニエンス・クラブ|CCC]]会長の[[増田宗昭]]は、「プレミアエイジ(60歳以上の富裕層)」の人々に自動車を楽しんでもらいたいとして<ref>{{Cite web|和書|date=2014-02-06|url= https://gendai.media/articles/-/38278 |title= ピニンファリーナ × 増田宗昭「デザインとビジネス」【後編】 |website= 現代ビジネス|publisher=講談社|accessdate=2020-07-09}}</ref>、同社が展開する商業施設において自動車関連の展示会やイベントを頻繁に開催しており、また一方では、[[カー用品]]店「[[オートバックスセブン|オートバックス]]」に対して、生活提案型商業施設のコンセプトを取り入れた店舗づくりも行っている。このように、近年の日本における自動車関連産業では、店舗内に[[カフェ]]を設置したり、より集客の見込める場所に店舗を設置することで、自動車に興味のある人以外も取り込んでいこうとする姿勢が見られている<ref>{{Cite web|和書|date=2018-11-22|url= https://trafficnews.jp/post/82142/2 |title= 「脱・カー用品店」なオートバックス誕生 本、雑貨、カフェ…旗艦店大改装の狙い |website= 乗り物ニュース|publisher=メディア・ヴァーグ|accessdate=2020-07-07}}</ref>。

[[トヨタ自動車]]会長[[豊田章男]]は、「愛車」にこだわる理由として、''”数ある工業製品の中で『愛』がつくのは自動車だけだから”''であるという<ref name="gazooai">{{Cite web|和書|date=2017-11-01|url=https://gazoo.com/article/event/171031.html|title=イチローさんも登場!モリゾウが「クルマ愛」を語る「WE LOVE CARS 2017」|website=GAZOO|publisher=トヨタ自動車|accessdate=2020-07-05}}</ref>。例えば冷蔵庫を「愛機」とは呼ばず、家は「愛家(ラブホーム)」ではなく「マイホーム(私の家)」と呼び『愛』はつかない、と述べている<ref name="gazooai"/>。

=== カーデザイン ===
{{Otheruses2| |自動車のデザインを手がける人物や工房|カーデザイナー|コーチビルダー|カロッツェリア}}
カーデザインの重要性は自動車の誕生時から常に認識されており、自動車文化の形成にも大きな役割を果たしてきた。その変遷は製造技術の発達や[[空気力学]]の発展、或いは人々の思想などにも強く関わっている<ref>{{Cite web|和書|url= http://www.mikipress.com/m-base/2020/03/5-3.html |title=石井守のデザイン論 「第5回 日本のカーデザインの変遷と展望(前編)」|publisher=三樹書房|accessdate=2020-08-17}}</ref>。

以下に並べるデザインの変遷は、あくまでも概略かつ主流を示しており、いずれの時代にもこれらに反するデザインや折衷的なスタイリングを持った自動車が見られるということには留意である。

==== 1960年代以前のカーデザイン ====
{{Triple image aside|right|097 EW-E328H BMW (7247564700).jpg|200|1952 Jaguar C-Type Original (XKC027).jpg|200|Cazalieres FR Meiners IT Automobile Club de France Alfa Romeo Giulia TZ 1 1964 (27455028880).jpg|200|1930年代のスポーツカー<ref group ="注">手前から[[:en:BMW 328|BMW・328]]、[[アルファロメオ・8C]]。</ref>|1940 - 1950年代のスポーツカー<ref group ="注">手前が[[ジャガー・Cタイプ]]、左奥が[[ジャガー・XK120]]、右奥が[[ポルシェ・356]]。</ref>|1950 - 1960年代のスポーツカー<ref group ="注">手前から[[アルファロメオ・ジュリア#TZ/TZ2|アルファロメオ・TZ]]、[[:en:Maserati 200S|マセラティ・250S]]、[[フェラーリ・250GT SWB]]、[[アストンマーティン・DB4]]。</ref>}}
自動車黎明期と言える[[1900年代]]までのデザインは、[[直線]]と[[平面]]のみで構成された、極めて古風でシンプルなスタイリングが特徴であった。そのほとんどは[[馬車]]・[[自転車]]の延長とも言えるような簡素な造りであったため、”[[:en: Horseless carriage|馬なし馬車]]”とも呼ばれていた<ref name="airflow">{{Cite web|和書|url= https://gazoo.com/article/car_history/150515_1.html |title=【技術革新の足跡】デソート・エアフロー――空気を形に(1934年)|publisher=トヨタ自動車|accessdate=2020-08-17}}</ref>。ただし1891年に[[パナール|パナール・ルヴァッソール]]によってフロントエンジン(システム・パナール)方式が確立されたことで、徐々に自動車らしいデザインへと変化していく<ref name=":0"/>。まもなくして、馬車時代から続投した[[コーチビルダー]]による[[貴族]]らしい装飾が施された豪華な自動車(=[[高級車]])が誕生し<ref name=":0"/>、また[[モータースポーツ]]の発生により[[レーシングカー]]も生まれたことで、本格的な自動車文化の礎が築かれていった。

[[1920年代]]に入ると、「[[流線形車両|流線型デザイン]]」の誕生によってカーデザインは大きな進展を迎える。その発端は、エンジン性能の向上によって過激さを増していたモータースポーツの世界において、[[空気力学|空力]]を意識したデザインがレーシングカーに続々と起用されていったことにはじまる(ただし空力の意識の発生は1900年前後の[[自動車の速度記録|速度記録車]]から既に見られはじめている<ref>{{Cite web|和書|date=2020-05-14|url=https://www.redbull.com/jp-ja/history-of-land-speed-record-cars |title=【地上最速を目指す旅】自動車最高速度記録の歴史|website=Red Bull|publisher=Red Bull.com|accessdate=2020-08-17}}</ref><ref>{{Cite web|和書|date=2019-08-21|url= https://carsmeet.jp/2019/08/21/117075/ |title= 空気の壁を切り裂く流線型は自動車のスピードともに【GALLERIA AUTO MOBILIA】#014 |website=CARS MEET WEB|publisher=株式会社ネコ・パブリッシング |accessdate=2020-08-17}}</ref>)。それは「ポインテッドテール」や「[[ボート]]テール」と呼ばれる、窄まったリアの形状に代表される([[ブガッティ・タイプ35]]が著名<ref>{{Cite web|和書|url=https://gazoo.com/catalog/maker/FRANCE_BUGATTI/T35/192601/|title=ブガッティ T35|publisher=トヨタ自動車|accessdate=2020-08-18}}</ref>)。その中で[[エドムント・ルンプラー]]や[[パウル・ヤーライ]]によって空気抵抗を低減するボディ構造が確立されると、[[1930年代]]から一般的な乗用車にもそれに似た涙滴(ティアドロップ)型のボディが積極的に起用されはじめた<ref name="airflow"/>。また泥除けの機能として装着されていた[[フェンダー (自動車)|フェンダー]]に関しても、プレス成型技術の発展もあってより流麗で立体的な[[渦巻]]状のデザインに変貌し、タイヤ全体を覆うモダンなスタイリングも出現([[:en:Fender skirts|フェンダースカート]])、それらは曲線的な美しさを印象づける重要な要素として機能しはじめた。特にその前後のフェンダーの終点部分は斜め下に向かって流れるように落ち込むため、ボディ全体を尻下がりのスタイリングに印象づけた。これら一連の特徴による、丸みと曲線で構成された自動車デザインは「流線型デザイン([[:en:Streamliner|Streamliner]], [[:en:Streamline Moderne|Streamline Moderne]])」と呼ばれ、この時代に大流行したデザイン様式となった<ref name ="artscape">{{Cite web|和書|url=https://artscape.jp/artword/index.php/流線型デザイン|title=アートワード「流線型デザイン」 |website=アートスケープ |publisher=DNP 大日本印刷|accessdate=2020-08-17}}</ref>(インダストリアルデザインの発展にも寄与することになる)。

[[File:Peugeot 402 Darl'Mat.jpg|thumb|right|200px|”Art Deco Automobiles”としてカテゴライズされる3台の[[:en:Peugeot 402|プジョー・402]] [[:en: Darl'mat|ダルマット]](1936 - 1939)。ボディはプルートー社による。]]
このスタイリングの誕生は、[[流体力学]]理論に基づいた[[空気抵抗]]の低減と、イタリアの[[未来派|フトゥリズモ]]による「[[未来派#未来主義創立宣言より|速度の美]]」の表現、そしてフランスの[[アール・デコ]]様式による装飾芸術という、[[モダニズム]]を根幹とした”芸術性と合理性の融合”にあった<ref name ="artscape"/>。それは[[機械化]]の波の中で新たな芸術性を模索した結果の一つの完成形とも言え、その曲線美から生み出されるスピード感やダイナミズムは自動車が芸術品として捉えられる大きな契機となった<ref name ="artscape"/>。そのため、この時代はコーチビルダーの全盛期となり、数多くのデザイナーが自動車(高級車)のボディで美しさを競い合った。この1930年代における豪奢と前衛、エレガンスが同居したデザインの一部高級車(主に[[フランス車]])は、”Art Deco Automobiles”(アール・デコ・オートモビルズ)、或いは”Flamboyant”(フラムボワイヤン)と呼ばれ、かつては上流階級の[[社交界]]における花形的存在として君臨したほか、現在では[[耽美主義]]的な側面を持ったダイナミックな芸術作品群として認識されている<ref>{{Cite web|url= https://www.mfah.org/exhibitions/sculpted-steel-art-deco-automobiles-and-motorcycle/ |title= Sculpted in Steel: Art Deco Automobiles and Motorcycles, 1929–1940 |publisher=The Museum of Fine Arts, Houston |accessdate=2020-08-17}}</ref>。その美しさに魅了された者の中には[[美学|美学者]]や[[芸術家]]も含まれ、日本では[[濱徳太郎]]が、欧米では、''”[[アンドレ・ドラン]]が「どんな芸術作品よりも、[[ブガッティ]]は美しい」と述べると、[[マン・レイ]]が深く頷いた”''、といった逸話も残っている<ref>{{Cite web|和書|url= https://www.autocar.jp/news/2020/03/13/489829/ |title=【パリで活躍した日本人自動車画家】追悼 吉田秀樹 アウトガレリア・ルーチェ企画展 |publisher=AUTOCAR JAPAN|accessdate=2020-08-17}}</ref>。

前述の「流線型デザイン」は、その名称が取り沙汰されなくなった[[1940年代]]に至っても、曲線と丸みを帯びたスタイリングとして、カーデザインの主流を保っていた。ただし1947年の[[:en:Cisitalia#Cisitalia 202|チシタリア・202]]や1949年の[[:en: 1949 Ford|フォード・1949]]などの登場によって「フラッシュサイド<ref group="注">別名スラブサイド、フルワイズ、[[ポンツーン#ドイツ発祥|ポントンボディ]]。フェンダーとボディが独立せず、一体になっている構造のこと。</ref>」ボディが大々的にフィーチャーされ、多くの自動車メーカーが採用しはじめた<ref>{{Cite web|和書|url= https://www.carsensor.net/contents/editor/category_849/_59700.html |title= 自動車デザインの流れを変えた 美しく、高級なスポーツモデル CISITALIA 202SC |publisher=カーセンサー|accessdate=2020-08-17}}</ref>。この変革によって自動車はより近代的なデザインとなり、ボディ全体としてまとまりを見せるスタイリングが[[1950年代]]以降の主流となる。[[前照灯]]とフェンダーはボディと一体化され、それによってボディサイドは隆起や凹凸がない滑らかな形状となった。この特徴は2020年現在でも主流となっている形態である。

{{Triple image aside|right|Paris - Bonhams 2013 - Rolls-Royce 40 50HP silver ghost tourer - 1921 - 006.jpg|200|1938 Rolls-Royce Wraith sedan (26963238950).jpg|200|Rolls Royce Silver Cloud III (1964) - 9503285165.jpg|200|1921年 - 1965年の[[ロールス・ロイス]]におけるデザインの変遷。左から[[ロールス・ロイス・シルヴァーゴースト|シルヴァーゴースト・ツアラー]] (1921年製) 、[[ロールス・ロイス・レイス|レイス]] (1938年製) 、[[ロールス・ロイス・シルヴァークラウド#シルヴァークラウドIII|シルヴァークラウドIII]] (1964年製) 。後継車種である1965年の[[ロールス・ロイス・シルヴァーシャドウ|シルヴァーシャドウ]]からモノコック製のモダンな箱型ボディとなったことから、シルヴァークラウドIIIは伝統的なデザインを有したロールス・ロイス最後の車種と言われている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.carsensor.net/contents/editor/category_849/_59487.html |title=ロールス・ロイス伝統のスタイルを飾った最後の1台 ロールス・ロイス シルヴァークラウドⅢ |publisher=リクルート|accessdate=2020-08-17}}</ref>。}}
[[1960年代]]以前、特に1920 - 1960年代の自動車の多くは、先述のようにプレスラインの少ないシンプルな造形、かつ曲線を纏ったダイナミックなスタイリングを有しており、これらは芸術性の高いカーデザインとして、展示会や[[オークション]]などでも高い評価を受けている。1960年代までの欧州における高級車やスポーツカーは、その主な顧客である富裕層のマーケットが自動車文化の歴史が長い欧米の[[保守|保守層]]に未だ限定的であったことから<ref name ="silvershadow">{{Cite web|和書|url= https://www.wakuimuseum.com/home/history/19.html |title= ロールスロイス&ベントレーの歴史 Post War:第二次大戦後篇 チャプター19「シルヴァー・シャドウとTシリーズ」 |publisher=WAKUI MUSEUM|accessdate=2020-08-17}}</ref>、そのスタイリングはしばしば「[[品位 (人品)|エレガント]]」、「[[紳士]]的」とも形容される<ref name ="roma">{{Cite web|和書|url=https://precious.jp/articles/-/15364 |title=フェラーリ・ローマの「時を超えるエレガンス」|publisher=Men’s Precious|accessdate=2020-08-17}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://otokonokakurega.com/find/secret-base/classic-car/20292/ |title=まさにエレガント。クラシックな佇まいに惚れて「ベントレーS2サルーン」(1960/イギリス)|わたしが クラシックカーに乗り続ける、その理由。 |publisher=男の隠れ家デジタル|accessdate=2020-08-23}}</ref><ref name ="jaguar">{{Cite web|和書|url=https://therakejapan.com/special/taking-out-the-jaguars-with-the-mechanists/ |title=メカニック、ジャガーを試す |publisher=THE LAKE JAPAN|accessdate=2020-08-17}}</ref>。これは戦前のアメリカの高級車やスポーツカーにおいても、欧州ほど純粋・明瞭ではないものの、同じく主流として存在していたデザイン性であった。また世界各国で開催されている「[[コンクール・デレガンス]]」は、この貴族趣味的な文化やデザイン性と密接に関連したクラシックカーイベントである。生前に[[エンツォ・フェラーリ]]が''”LA CORSA PIÙ BELLA DEL MONDO(世界で最も美しい自動車レース)”''と形容した<ref>{{Cite web|url= https://www.bresciatourism.it/cosa-fare/mille-miglia/ |title=Mille Miglia |publisher=bresciatourism|accessdate=2020-08-17}}</ref>伝説的な[[公道コース|公道自動車レース]]、「[[ミッレミリア]]」(1927 - 1957)の参加車両も、この時代までのスタイリングを纏ったスポーツカー/レーシングカーである。それというのもレーシングカーに関しては、1960年代後半から[[スポーツカー (モータースポーツ)|プロトタイプ]]のボディ構造が生産台数の緩和などによって本格的にサーキット仕様に傾いていったため<ref>{{Cite web|和書|url=https://classicporsche.jp/articles/detail/704 |title=伝説のマシン ポルシェ917が誕生するまで│917-001のヒストリー |publisher=classic PORSCHE|accessdate=2020-08-23}}</ref>、自動車レースで優勝争いが行われたレーシングカーに、趣味として愛玩するレベルのデザイン性と実用性が備わっているのが、1960年代までであった(これは資産価値にも多大な影響を与える)。そのため「[[タルガ・フローリオ]]」や「[[:en:Tour de France Automobile|トゥル・ド・フランス・オートモビル]]」など、他の著名な公道レースもこの時代に栄華を極めた(いずれもクラシックカーラリーとして後に復活を遂げている)。

[[アウディ]]の[[主任|チーフ]]デザイナーであった[[:en:Stefan Sielaff|シュテファン・ジーラフ]]は、''”今日、車のデザインは複雑なシェイプとラインの組み合わせが主流になっています。それで顧客の興味、関心を引こうというわけです。ですが、彼らの興味はすぐに冷めてしまいます。...よいデザインとは、細部で凝っているけれど全体で見るとシンプル、そういう方向です。もしあなたが2本のラインと面で1台の車をデザインできるなら、その車は未来永劫、傑作と呼ばれるものになるでしょう”''と述べており<ref name="bentley">{{Cite web|和書|url= https://octane.jp/articles/detail/2181/5/1/1 |title= もっとも速く、もっとも美しい|ベントレーにおける「最良の答え」を示した伝説のモデルとは? 5ページ|publisher=Octane|accessdate=2020-08-17}}</ref>、またそういった傑作を時代の変化に合わせながらも見事に創り続けているのが、[[ポルシェ・911]]であるとも話している<ref name="bentley"/>。ポルシェ・911は、デザインコンセプトを1948年の[[ポルシェ・356|356]]から継承していることで知られており<ref>{{Cite web|和書|url=https://wired.jp/2017/04/11/porsche-911-ulf-poschardt/ |title=名車「ポルシェ911」、時代を超越したデザインの進化がわかるフォトギャラリー |publisher=WIRED|accessdate=2020-08-17}}</ref>、その普遍性に魅了された者は数多くいる<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.porsche.com/japan/jp/aboutporsche/christophorusmagazine/archive/385/articleoverview/article04/ |title=Porsche スタイル |publisher=ポルシェジャパン|accessdate=2020-08-17}}</ref>。

1960年代以降になると、欧州の高級車やスポーツカーは、伝統にこだわらず常に新しいものを求める新たな顧客(富裕層)の台頭によって、そのイメージやコンセプトが変化、デザイン性も大きく揺らいでいくことになる<ref name ="silvershadow"/>(=カジュアル化。アメリカでは、1950年代に同様の理由から欧州よりも一足早く本格的なデザインの変化が訪れるが、こちらはその変化によって逆に「アメ車」としてのアイデンティティを確立させることに成功している<ref name ="uscar">{{Cite web|和書|url= https://www.amemaga.com/amevin_vol004_1950_1960/ |title= アメリカ車のイメージが確立され、ビッグ3が大躍進を遂げる |publisher=アメ車MAGAZINE.com|accessdate=2020-08-26}}</ref>([[#1960年代以降のカーデザイン|後述]]))。そのため、[[1990年代]]以降における、1960年代以前に製造されたクラシックカーへの関心の高まりや世界的な価格高騰は、人々が未だ紳士的な生活をしていた古き時代への[[ノスタルジア]]によるものだという意見もある<ref name ="jaguar"/>。[[英国王室]]では、重要な式典における自動車の起用に際して、現行車種ではなく1960年代以前の古典的なデザインを有した[[イギリス車]]が抜擢されることも多い<ref>{{Cite web|url=https://www.cnn.co.jp/amp/article/35123459.html|title=英女王乗せたロールス・ロイスが競売に、2.9億円で落札予想|publisher=CNN|accessdate=2020-08-19}}</ref><ref>{{Cite web|url= https://www.lux-review.com/the-best-royal-wedding-cars-of-all-time/ |title=THE BEST ROYAL WEDDING CARS OF ALL TIME |publisher=AI Global Media |accessdate=2020-08-17}}</ref>。

==== 1960年代以降のカーデザイン ====
1950年代初頭、アメリカの自動車ブランドの経営陣たちは、戦後の好景気と自動車の大衆化に煽られて、従来のコンサバティブなデザインからの完全な脱却を図ろうとしていた<ref>{{Cite web|url=https://www.allpar.com/history/chrysler-years/chrysler-1955-56.html |title=The Hundred Million Dollar Look: Chrysler for 1955-56 |publisher=Allpar|accessdate=2020-08-17}}</ref>。そこで1950年代中頃から後半にかけて誕生したのが、「[[フルサイズ]]」としてカテゴライズされる、異彩を放った高級車群である<ref>{{Cite web|和書|url= https://gazoo.com/article/car_history/131115_1.html |title= 50年代アメリカ車黄金期(1959年)|publisher=トヨタ自動車|accessdate=2020-08-17}}</ref>。これらは、車高が低く、幅広・長大でエッジの効いたボディ、豪勢な[[テールフィン]]など、今までの主流のデザインとは一線を画していた(ただし初期デザインに関しては、フェンダーの峰やボンネットの隆起など、フロントマスクに未だクラシカルな趣が残されていた)。その特徴の多くは国内のより安価な乗用車に対しても適用されていったが、後にそれらからテールフィンが取り除かれ、フロントノーズもフェンダーの峰が無くなり「フラットデッキ」化が図られたことで、隆起・丸みのない完全にモダンな箱型のデザインへと移行していく<ref>{{Cite web|和書|url= http://www.mikipress.com/m-base/2013/04/post-37.html |title=クルマの博物誌 「第6回 少年が目を奪われたカーデザインの節目"フラットデッキ"化」 |publisher=三樹書房|accessdate=2020-08-17}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.chrysler.co.jp/history/ |title=CHRYSLER HISTORY |publisher=FCA Japan|accessdate=2020-08-17}}</ref>。アメリカ国内におけるこれらのスタイリングの流行は国外に多大な影響を与え、特に後者の角張った箱型のデザインは1960年代以降の世界的な主流となった<ref name="design">{{Cite web|和書|url= https://car-me.jp/articles/8126 |title= なぜ近頃のクルマは、丸っこいのか?角ばったクルマは過去の遺物? |publisher=CarMe|accessdate=2020-08-17}}</ref>。その起因は、製造技術の進化によって角張ったデザインでも十分な強度を確保できるようになったという技術的な理由の他に、好景気によって自動車をステータスシンボルとして扱うようになったことでデザインに対して強さや大きさを求めはじめたという心理的な理由などからであった<ref name="design"/>。これら一連のデザインがいわゆる「アメ車」のイメージを確立させたとも言われ<ref name ="uscar"/>、テールフィン時代のアメリカ車は、[[ベトナム戦争]]泥沼化以前のアメリカにおける"娯楽に時間を費やした楽しい時代"の象徴として<ref name= "matsutoya">{{Cite web|和書|url= https://www.nettam.jp/column/mobility-culture/5/ |title= 車と音楽について語ろう。 |website= ネットTAM|publisher=トヨタ自動車|accessdate=2020-08-17}}</ref>、またフラットデッキ時代のアメリカ車は、ローライダーなどのカスタムや映画の[[カーチェイス]]に使用されるような頑丈・屈強で[[アウトロー]]な自動車として([[マッスルカー]]など)<ref>{{Cite web|和書|url= https://www.automesseweb.jp/2018/08/30/64075/amp |title=アメ車を象徴であるマッスルカー!7200ccなんて大排気量エンジンもあった |publisher=交通タイムス社|accessdate=2020-08-17}}</ref>、或いは一貫して見られるその重厚感から「[[アメリカン・ドリーム]]」を具現化するものとしてイメージされている<ref>{{Cite web|和書|url=https://bestcarweb.jp/news/entame/178403/amp |title=ドイツ車を超えた? 憧れの超名門高級車 キャデラックの最新事情 |publisher=ベストカーWeb|accessdate=2020-08-17}}</ref>。

1960年代後半からはマイナーなコーチビルダーの消滅が顕著に見られはじめた。それは、この時期あたりからモノコック構造がスポーツカーや高級車にも普及しはじめ、ボディの架装という概念が無くなりつつあったためである<ref>{{Cite web|和書|url= https://menomeonline.com/blog/column/026/ |title=026 Rolls-Royce/涌井清春 ロールス・ロイスの光ベントレーの風に魅せられて |publisher=目の眼|accessdate=2020-08-17}}</ref>。或いは、同じく1960年代後半から3次元[[CAD]]が自動車製造業界に参入したことで、自動車設計の[[デジタル化]]も徐々に見られるようになっている<ref>田口正和「自動車開発におけるCAD/CAM/CAE/CAPEの活用」(2010, 工業技術:東洋大学工業技術研究所報告p.5-8)</ref>。

{{Double image aside|right|Countach Autostadt.jpg|200|Ferrari 512 BBi (Kirchzarten) jm20682.jpg|200|ウェッジシェイプを纏った1970年代のスーパーカー、[[ランボルギーニ・カウンタック#LP400|ランボルギーニ・カウンタックLP400]]と[[フェラーリ・512BB#512BBi|フェラーリ・512BBi]]。}}
[[1970年代]]になると、[[ジョルジェット・ジウジアーロ|ジウジアーロ]]や[[マルチェロ・ガンディーニ|ガンディーニ]]による「ウェッジシェイプ」デザインが注目を浴びる<ref>{{Cite web|和書|date=2011-05-21|url=https://clicccar.com/2011/05/21/24622/ |title=クルマを横から見るとわかることがあるんです【CAR STYLING VIEWS 3:サイドビュー】|website=クリッカー|publisher=株式会社三栄|accessdate=2020-08-17}}</ref>。空気抵抗の低減を目的とした「フラッシュサーフェス<ref group="注">ボディ表面から突起や凹凸をなるべく少なくして、空力特性や見栄えを向上させる構造のこと。1970年代のウェッジシェイプ化に伴って注目されはじめ、1980年代から量産車にも普及。2020年現在までの主流となっている。 </ref>」化の確立とも言える[[近未来]]的でシャープなスタイリングは、スポーツカー業界を席巻した。その特徴は、ノーズ全体が[[くさび#くさび形|くさび形]](三角形)をした平滑な前傾型ノーズや、ウエストラインが後方にかけて持ち上がっていく、その前傾姿勢の形状にある。[[ダウンフォース]]を生み出し高速性能を向上させるほか、重心が後ろ側に加わった戦闘態勢のようなスタイリングにより、スピード感や躍動感が演出される効果があった<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.autocar.jp/news/2020/07/21/545736/3/ |title=【時代はくりかえす】なぜ車体後部がギュッと持ち上がったデザインのクルマ増えた? 水平基調に戻る動きも 3ページ|publisher=AUTOCAR JAPAN|accessdate=2020-08-17}}</ref>。また[[前照灯]]をボディ内に格納する[[リトラクタブル・ヘッドライト]]は、フラッシュサーフェスを成し遂げ、かつノーズの傾斜を強めるのに最適な構造であったため、ウェッジシェイプデザインと見事に融合し、その双方の流行を加速させた<ref>{{Cite web|url= https://heacockclassic.com/articles/pop-up-headlights-seventy-years-of-hidden-history/ |title= Pop-Up Headlights – Seventy Years of Hidden History |publisher=Heacock Classic|accessdate=2020-08-17}}</ref>。日本ではこのスタイリングが1970年代の少年らに大人気となり、「スーパーカーブーム」を引き起こした。因みに「スーパーカー」という名称もこの時点で誕生したため、この時代以前の高性能車に対して「スーパーカー」と呼ぶことはほとんどない<ref>{{Cite web|和書|url= https://car-me.jp/articles/14078 |title= スーパーカーはいつ生まれた?|publisher=CarMe|accessdate=2020-08-17}}</ref>。

[[1980年代]]以降は、1970年代の2度の[[オイルショック]]による[[ガソリン]]価格高騰や[[排ガス規制]]によって空力の重要性が量産車にも意識されはじめたことに加え、プレス成型技術も進化したことから、空気抵抗を意識しながらも室内を広く設計できる、「丸」と「角」を組み合わせたデザインへと自動車業界全体が徐々にシフトしていく<ref name="design"/>。そのため、角張った箱型のデザインは姿を消しはじめ、ウェッジシェイプも以前のような明確なエッジを用いなくなり、滑らかなものとなった。また[[鉄]]・[[メッキ]]製であった前後[[バンパー]]は[[合成樹脂|樹脂]]製となり、ボディ全体の一体感がより増すことになる<ref>{{Cite web|和書|url= https://gazoo.com/article/daily/170528.html |title=日本のクルマはこんなに変化! 進化の歴史を振り返る |publisher=トヨタ自動車|accessdate=2020-08-17}}</ref>。1990年代後半には、[[オートマチックトランスミッション|AT]]の普及や電子制御化によるイージードライブが自動車の[[ブラックボックス (代表的なトピック)|ブラックボックス]]化を加速させたために、デザインに「プロダクト・セマンティクス(製品意味論)」を注視しはじめ、ヘッドライトに有機的な意匠([[人間]]の目や[[猛禽類]]の目をモチーフにしたデザイン)を取り入れていく<ref>{{Cite web|url= https://www.jama.or.jp/library/jamagazine/jamagazine_pdf/201310.pdf |title=JAMAGAZINE 2013 October #47|publisher=日本自動車工業会|accessdate=2020-08-17}}</ref>。また自動車部品の[[標準化]]やプラットフォームの共通化も1990年代から加速の一途を辿っている<ref>宇山通「自動車部品標準化の経路に関する1考察」(2016年, 九州産業大学『経営学論集』第26巻第3号,1‐31頁)</ref><ref>{{Cite web|和書|url= https://xtech.nikkei.com/dm/article/COLUMN/20120623/224711/ |title= 日産の設計革命、脱プラットホーム共有化戦略 |publisher=日経BP|accessdate=2020-08-17}}</ref>。

[[2000年代]]には、大衆車や量産車においてもウェッジシェイプ化が加速したほか<ref>{{Cite web|和書|url= https://www.autocar.jp/news/2020/07/21/545736/ |title=【時代はくりかえす】なぜ車体後部がギュッと持ち上がったデザインのクルマ増えた? 水平基調に戻る動きも 1ページ|publisher=AUTOCAR JAPAN|accessdate=2020-08-17}}</ref>、従来の「丸」や「角」といった業界全体のトレンドがなくなり、デザインの多様化が進んだ<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.mikipress.com/m-base/2020/05/6-3.html|title=石井守のデザイン論 「第6回(最終回)日本のカーデザインの変遷と展望(後篇)」|publisher=三樹書房|accessdate=2020-08-17}}</ref>。ただし安全規則が増えたことでフロント部分ないしボディ全体が膨らみ・厚みを持つようになり、以前のように自由なデザイン性を見出すことは難しくなった<ref name="">{{Cite web|和書|url= https://kuruma-news.jp/post/106252 |title= ボンネットがぽっこりデザインのクルマ、なぜ増えた? 古いと薄く、新しいと分厚い理由とは |publisher=メディア・ヴァーグ|accessdate=2020-08-17}}</ref>。加えて、[[コンピュータ]]によって空力性能の解析が著しく発展したことにより、デザインの幅が却って狭まることに繋がった<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.honda.co.jp/tech-story/engineer/engineer-talk/aero/sp/part2.html |title=空力 Part 2 |publisher=HONDA|accessdate=2020-08-17}}</ref>。その他に、異型ヘッドライト<ref group ="注">1980年代から普及した、丸型や角型以外の形状をしたヘッドライトのこと。1980 - 1990年代までは、主に横長の[[長方形]]や[[台形]]、或いは[[楕円]]形のようなデザインが多かった。ヘッドライトカバーが[[ガラス]]製から[[合成樹脂|樹脂]]製に変わったことで、より複雑な形状が見られるようになる。</ref>の高度化によって縦に引き伸ばされたような前照灯の巨大化とその[[LED]]化によって照明類のデザインの自由度が増したことで、各メーカーは前照灯や[[尾灯]]でその自動車の個性を見出しはじめ、かつてのボディの造形に注力する姿勢は相対的に少なくならざるを得なかった<ref>{{Cite web|和書|url=https://clicccar.com/2011/05/14/21782/?amp |title=ヘッドライトは“機能”それとも“装飾”?(後編)【CAR STYLING VIEWS 2】|publisher=Clicccar|accessdate=2020-08-17}}</ref>。

[[2010年代]]に入ると、今までの単なる直線的なプレスラインを使用しなくとも、ボディに奥行きを持つ立体的かつ複雑なシェイプを持たせることが可能になり、それによってシンプルな造形でありつつもボディ各部に波打つような局部的な陰影が発生するようになった<ref>{{Cite web|和書|url=https://kuruma-news.jp/post/142528 |title= 複雑デザインに陰り、いまはシンプルが人気? クルマのボディにあった凹凸が減った理由
|publisher=メディア・ヴァーグ|accessdate=2020-08-17}}</ref>。或いは、1990年代から[[古典|クラシック]]、[[ローテク|ローテクノロジー]]を注視する兆しが各分野で見られはじめており、[[パイクカー]]の発売を筆頭に、2010年代になると高級車やスポーツカーにおいても、かつての伝統的なクラシックカーのイメージを彷彿させるデザイン性が潮流となっている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.leon.jp/cars/7994 |title= 世界的カーデザイナー、和田智が語るカーデザインの潮流 |publisher=LEON|accessdate=2020-08-17}}</ref>。[[2020年代]]以降は、[[自動運転車|自動運転]]の実用化により、[[インテリアデザイン]]の造形がより注目されるようになる可能性や<ref>{{Cite web|和書|url=https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00756/ |title=自動運転で変わる内装・HMI開発 |publisher=日経BP|accessdate=2020-08-17}}</ref>、完全自動運転によって自動車事故が全く起こり得なければ、カーデザインに対して自由度が格段に上昇するという可能性もあり<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.design365life.jp/0000173283/ |title=住まいとクルマの融合体。『Honda 家モビ Concept』が東京モーターショー2017に出展中
|publisher=d365|accessdate=2020-08-17}}</ref>、自動車の存在意義が左右される新たなデザイン時代に突入しようとしている。
{{Gallery
| File:EXODUS FROM CLEVELAND TO THE SUBURBS - NARA - 550089.jpg|1973年の[[クリーブランド]]の様子。走行するほぼ全ての自動車が箱型デザインであることがわかる。
|File:Car of the Year Denmark 2006.JPG|2006年の[[デンマーク]]における、[[カー・オブ・ザ・イヤー]]の選考対象車。大部分がウェッジシェイプを占め、またフロント部分ないしボディ全体が膨らみ・厚みを持つようになっている。
|File:Festival automobile international 2016 - Mazda RX-Vision - 023.jpg|コンセプトカーの[[マツダ・RX-VISION]](2016年)。ボディ各部に波打つような陰影が見られる。
}}
}}
==== インテリアデザイン ====
初期には[[蒸気機関]]で動く[[蒸気自動車]]が存在した。これは蒸気機関車のようなレール上を走るものではなく、動く方向がある程度変えられるものである。その後、蒸気機関に多数の改良が加えられ、比較的小型のボイラーで高温・高圧の蒸気を使ったものが作られるようになった。
[[File:Jaguar MK-IX 1960 Interior.jpg|thumb|right|200px|洗練された[[ジャガー・マークVII/VIII/IX|ジャガー・MK-IX]](1960年製)のインテリア]]
自動車における[[インテリアデザイン]]には、装飾の効果的な使用や素材の質感により生み出される重厚感、機能性・合理性の追求による[[ミニマリズム]]、或いは[[ダッシュボード (自動車)|ダッシュボード]]上に埋め込まれた[[-meter|計器]]類によるメカニカルな魅力、[[ステアリング・ホイール]]の曲線美、といった自由な表現力を見出すことができる。近年では安全性や耐久性もデザイン設計における大きな指標となっている。また自動車は運転が主な使用法であるために、エクステリア以上にインテリアは重要な地位を占めており、車外の景色との調和性も考慮される。


=== モータースポーツ ===
1769年、フランス陸軍の技術大尉[[ニコラ=ジョゼフ・キュニョー]]が製作した[[キュニョーの砲車‎|蒸気自動車]]は、前輪荷重が重すぎて全然曲がらない造りで、時速約3キロしか出なかったにもかかわらず、パリ市内を試運転中に塀に衝突。これが最初の自動車とされており、また自動車事故の第一号だった。<!--その後、キュニョーは牢に入れられてしまった。-->最初の蒸気自動車は蒸気機関で動いた最初の乗り物だった。[[蒸気機関車]]よりも[[蒸気船]]よりも蒸気自動車が先だったのである。往復運動(レシプロ運動)を回転運動にしたのもこれが最初だった。
{{main|自動車競技}}
自動車を操縦し、より高速なスコアタイムを目指すことはスポーツの一種として認識されており、[[モータースポーツ]]と呼ばれる。とにかく速く走るためのスポーツ専用車である[[フォーミュラカー]]で走ることが全てではなく、市販車や自作車でのレース、また長時間の運転となる[[耐久レース]]、一般公道で行われる[[ラリー]]や、自然のままの過酷な道を走破する[[ラリーレイド]]など、多彩なものが世界各国で開催されている。[[フォーミュラ1]](F1)や[[インディ500]]、[[ル・マン24時間レース]]、[[ダカール・ラリー]]といったものは特に著名な国際大会である。またその中でも、1929年から[[モナコ公国]]で行われているF1レース「[[モナコグランプリ]]」は、[[グリマルディ家|モナコ公爵家]]が後援、観覧し、トロフィーも公爵家から直接授与されることから、自動車レースの古き伝統、格式を保守している大会として知られている。


日本における自動車イベントのはじまりは1911年に[[目黒競馬場]]で行われた飛行機と自動車の競争とされるが、自動車同士のレースは1914年が始まりで、同じく目黒競馬場で4台のアメリカ車を走らせた<ref name ="cg91">[https://www.webcg.net/articles/amp/43858 第91回:自動車競走時代の熱狂 多摩川スピードウェイが育てたレースの夢] webCG</ref>。アメリカで人気を集めていた興行をそのまま日本に持ち込んだものであったが、客は集まらず大赤字になる<ref name ="cg91"/>。その後アメリカでモーターレース興行を行っていた藤本軍次が日本で本格的なレース興行を行いたいと企画、[[大正]]期には東京近郊の[[埋立地]]の特設コースで計11回のレースが行われたとされる<ref name ="cg91"/>。1936年には、日本初の常設サーキットとして[[多摩川]][[河川敷]]に『[[多摩川スピードウェイ]]』が創設された。第一回大会では、三井高公男爵が輸入したブガッティやベントレーをはじめ、[[ホンダ]]創業以前の[[本田宗一郎]]が自作車でレースに参戦したほか、[[日産自動車|日産]]創業者の[[鮎川義介]]がスタンドでレースを観戦するなど、日本自動車レースの幕開けとも言えるレースであった<ref>{{Cite web|和書|date=2017-01-13|url=https://gazoo.com/article/car_history/170113_1.html |title= 多摩川スピードウェイ――自動車競走の時代 (1936年) |website= GAZOO|publisher=トヨタ自動車|accessdate=2020-07-07}}</ref>。その後1957年の[[群馬県]][[北軽井沢]]での『[[浅間高原自動車テストコース]]』開設に続き、1962年には[[三重県]][[鈴鹿市]]に本格レーシングコース『[[鈴鹿サーキット]]』が登場した。翌年に当サーキットで「[[1963年日本グランプリ (4輪)|第一回日本グランプリ]]」が開催され、これが日本における本格的な自動車レースのはじまりとなった。1965年には[[千葉県]][[船橋市]]に『[[船橋サーキット]]』が、翌1966年には[[静岡県]][[小山町]]に『[[富士スピードウェイ]]』が開設されている。『船橋サーキット』では、[[浮谷東次郎]]、[[生沢徹]]、[[黒澤元治]]といった名ドライバーたちがしのぎを削ったが、たった2年で閉鎖されたことから「伝説のサーキット」とも言われるようになった<ref>{{Cite web|和書|date=2015-07-29|url= https://www.webcartop.jp/2015/07/12175/ |title= クルマ好きなら知っておきたい自動車文化遺産「船橋サーキット」 |website=WEB CARTOP|publisher=株式会社交通タイムス社|accessdate=2020-07-07}}</ref>。また1965年は、F1世界選手権[[1965年メキシコグランプリ|メキシコグランプリ]]で、ホンダが[[フェラーリ]]や[[チーム・ロータス|ロータス]]を抑え初優勝を飾った年でもある。
[[イギリス]]では[[1827年]]ごろから[[路線バス|定期バス]]として都市部及び、都市間で広く用いられ、[[1860年]]ごろには[[フランス]]でも用いられるようになった。1885年に、フランスの[[レオン・セルボレ]]が開発し1887年に自動車に搭載した[[フラッシュ・ボイラー]]により蒸気自動車は2分でスタートできるまでに短縮された。[[1900年]]ごろには[[アメリカ合衆国]]で、[[石炭]]の代わりに[[石油]]を使った蒸気自動車が作られ、さらに普及していった。この頃は街では電気自動車が静かで性能もよく最も用いられており、次いで蒸気自動車で、ガソリン自動車ほどうるさくなく運転が容易だった。アメリカ合衆国では、1920年代後半まで蒸気自動車が販売されていた。最終的に淘汰されたとは言え、蒸気自動車無くして、現在の[[モータリゼーション]]は無かったと言えよう。
{{Gallery
|ファイル:Fernando Alonso 2012 Bahrain.jpg|フォーミュラ1(F1)
|ファイル:2017 Rally Portugal - 6.jpg|[[世界ラリー選手権]](WRC)
|ファイル:2017 Indianapolis 500-Mile Race - 29.jpg|[[世界3大レース]]の1つである[[インディアナポリス500]]
}}


=== 自動車趣味 ===
[[1865年]]にイギリスで赤旗法が施行された。当時普及しはじめた蒸気自動車は、[[道路]]を傷め馬を驚かすと敵対視されており、住民の圧力によってこれを規制する赤旗法が成立した。この法律により、蒸気自動車は郊外では4[[マイル]](6.4km)/h、市内では2マイル(3.2km)/hに速度を制限され、人や動物に警告する為に、赤い旗を持った歩行者が先導しなければならなくなった。
趣味としては、自動車を走行させるだけに限らず、[[プラモデル]]や[[ミニカー (玩具)|ミニチュアカー]]などといった精巧な自動車の[[スケールモデル|ミニチュア]]の製作や収集、また部品の収集や[[写真]]の撮影など多岐に渡る。走行する自動車に関する趣味としては、様々な自動車に乗車することを趣味にしたり、自動車の[[改造車|改造]]やメンテナンスを趣味にすることもある。改造車の形態としては、アート化に重点を置いたローライダーや[[デコトラ]]、スピード化に重点を置いたチューニングカーやスポーツコンパクトといったものまで多様に存在する(詳細は「[[:Category:改造車の形態]]」を参照)。


また、[[旧車|クラシックカーや旧車]]・ヴィンテージカーなどと呼ばれる、過去に製造された車両を[[レストア|復元]]・保存する愛好家もいる。クラシックカーに関しては文化的・歴史的・資産的価値が認められることもあり、それらを使用した展示会や走行会は、愛好家と地方行政とが密に連携することで[[地域おこし|地域活性化]]の一環とされることもあ(もとより公道を走行するイベントでは、行政との連携が必須である)。また、特に価値を認められたクラシックカーは、各種[[競売|オークション]]などで極めて高い値で取引されることもある([[円 (通貨)|日本円]]にして数千万円から数十億円の値が付くこともある。詳しくは「[[オークションで落札された高額な車の一覧]]」を参照)。ヨーロッパはクラシックカーに対する造詣が深いとも言われているが<ref>{{Cite web|和書|date=2019-12-01|url=https://carview.yahoo.co.jp/news/detail/4581f4b94d94765741735a99faf22e8c57b3290c/|title=初めてドイツを訪れて感じた、クルマ文化と根底にある「2つの価値観の違い」とは? |website=Carview!|publisher=株式会社カービュー|accessdate=2020-07-05}}</ref>、年々[[自動車排出ガス規制|排ガス規制]]が厳しくなっており、[[パリ]]では2016年から「1997年以前に製造された自動車(いわゆるクラシックカー)」の平日の市内走行を全面禁止とする<ref>{{Cite web|和書|date=2016-06-12|url=https://m.huffingtonpost.jp/autoblog-japan/paris-oldcar_b_10423380.html|title= パリの路上から、20年以上前に生産された古いクルマが消える?|website=ハフポスト日本版|publisher=ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン株式会社|accessdate=2020-07-05}}</ref>など、自動車を取り巻く状況は刻々と変化している。
イギリスでの蒸気自動車の製造、開発は、この赤旗法が廃止される[[1896年]]まで停滞することになり、それに続くガソリン自動車の開発においても、[[ドイツ]]やフランスが先行する事になる。


自動車を格納する[[ガレージ]]は、自動車の[[メンテナンス]]場所としても使われる。<!--閉塞感、というのは否定的な言葉で不適切かと。-->趣味の拠点として独り籠って利用されることもあるため「隠れ家」とも形容され、しばしば男性の憧れの対象となる。[[バラエティ番組]]『[[所さんの世田谷ベース]]』は、これらの魅力を前面に出した番組である。また最近では、[[居間|リビング]]などの居住空間からガラスを通して自動車を眺めることができるビルドインガレージもある<ref>{{Cite web|和書|date=2020-05-05|url= https://otokonokakurega.com/find/secret-base/13211/ |title=ガラス張りの向こうのガレージ。愛車を眺めながら、リビングで過ごす極上のひと時〈鹿児島県 H邸〉木の家のビルトインガレージ |website= 男の隠れ家デジタル|publisher=株式会社三栄|accessdate=2020-07-18}}</ref>。
[[1876年]]、ドイツの[[ニコラウス・オットー]]が[[ガソリン]]で動作する[[内燃機関]]([[ガソリンエンジン]])を発明すると、[[ゴットリープ・ダイムラー]]がこれを改良。二輪車や馬車に取り付け、走行試験を行った。[[1885年]]にダイムラーによる特許が出されている。


[[バス (交通機関)|バス]](「[[バスファン]]」を参照)や[[貨物自動車|トラック]]、[[タクシー]]を趣味にするものもいる。書店販売上の分類などでは別の範疇に含まれることも多いが、これも広義での自動車趣味である。
1885年、ドイツの[[カール・ベンツ]]は、ダイムラーとは別にエンジンを改良。車体から設計した3輪自動車をつくった。ベンツ夫人は夫の隙を狙いこの自動車を自力で運転し、製造者以外でも訓練さえすれば運転できる乗り物であることを証明した。ベンツは最初の自動車販売店を作り、生産した自動車を数百台販売した。また、ダイムラーも自動車会社を興した。現在、ガソリン式自動車の発明者はダイムラーとベンツの両人とされることが多い。


[[リゾート地]]は、美しい風景や快適な気候といった良好なドライブ環境に加え、自動車に重要な[[インフラ]]も単なる地方や田舎に比べて十分に整備されているといった理由から、自動車関連のイベントが数多く開催されている。ドライブを主目的とした[[観光道路]]や[[有料道路]]などもしばしば点在している。また歴史的なリゾート地の多くは、かつて貴族や上流階級の人々が休暇を楽しんだ場所でもあることから、伝統的な自動車文化とも深い繋がりがあり、その[[オマージュ]]としてクラシックカーのイベントが行われることも多い(同じく貴族文化へのオマージュとして、欧米では[[宮殿]]や[[城]]、[[ゴルフ場]]などを舞台にイベントが行われることも多い)<ref name ="concours">{{Cite web|和書|date=2015-09-24|url= https://www.leon.jp/cars/2614 |title= クルマオヤジは美人に目がなくて |website= LEON|publisher=主婦と生活社|accessdate=2020-07-10}}</ref>。1931年には、高級別荘地として開発した[[鎌倉山]]への主要交通機関として、[[京浜急行線|日本初の有料道路・自動車専用道路]]が設置されている。その後は1932年の[[関西]]初となる「[[宝塚尼崎電気鉄道|宝塚-尼崎自動車専用道路]]」([[バス専用道路]])、1933年の[[軽井沢]]における「[[鬼押ハイウェー]]」などが、最初期の有料道路・自動車専用道路である。自動車展示施設としては、日本では有名なものに「フェラーリ美術館」([[神奈川県]][[御殿場市]]。2007年閉館)、「[[河口湖自動車博物館・飛行舘|河口湖自動車博物館]]」([[山梨県]][[富士河口湖町]]。毎年8月のみ開館)などがある(全国各地にある自動車博物館については「[[:Category:日本の自動車博物館]]」を参照)。
初期の自動車は手作りであるため非常に高価なものであり、貴族や大金持ちだけが所有できるものであった。そして彼らは自分たちが持っている自動車で競走をすることを考えた。このころに行われた初期の自動車レースで活躍したのが、今日も[[フォーミュラ1|F1]]や[[ル・マン24時間レース]]などで活躍する[[ルノー]]である。


このように、自動車は単に人や物資を輸送するだけの存在に留まらない。ただし若者の「自動車離れ<ref group="注">この場合の「自動車」とは、趣味・娯楽として利用される「自動車」のこと。</ref>」は、近年になって、日本はもとよりヨーロッパなどにおいても顕著に表れはじめている(詳しくは「[[若者の車離れ]]」を参照)。
[[1907年]]には、[[フォード・モーター|フォード]]が[[フォード・モデルT|フォード・T型]]を発売した。フォードは、流れ作業による大量生産方式を採用し自動車の価格を引き下げることに成功した。これにより裕福層の所有物であった自動車を、大衆が所有することが可能となり[[自動車産業]]は巨大なものとなっていった。
{{Gallery
|ファイル:Apperson Chummy Restored By Louie Floyd Apperson.jpg|愛好家により[[廃車 (自動車)|廃車]]の状態から修理・復元されたクラシックカー
|ファイル:Tokyo Auto Salon 2019 (46716680542).jpg|日本発祥の文化である自動車のチューニング([[東京オートサロン]]2019)
|File:2015-09-12 Goodwood Ferrari 212 0215EL.jpg|往年の自動車レースの雰囲気を再現する[[:en:Charles Gordon-Lennox, 11th Duke of Richmond|第11代リッチモンド公爵]]主催のユニークなイベント、[[:en:Goodwood Revival|グッドウッド・リバイバル]](2015年、イギリス)
}}


=== 自動車とファッション ===
ヨーロッパでは1910年ごろに、大衆の自動車に対する欲求を満たすように、二輪車の部品や技術を用いて製造された小型軽量車、いわゆるサイクルカーが普及していった。
自動車は[[ファッション]]と密接な関係がある<ref>{{Cite web|和書|date=2013-05-26|url=https://style.nikkei.com/article/DGXNASFE21008_R20C13A5000000/ |title=自動車×ファッション 創造力はぐくむ遊び心とは |website=NIKKEI STYLE アート&レビュー|publisher=日本経済新聞 |accessdate=2020-07-07}}</ref><ref>{{Cite web|和書|date=2019-11-17|url=https://www.leon.jp/cars/12966 |title=ファッションの先端を行く街で見えてくる、クルマのトレンドとは? |website=LEON|publisher=主婦と生活社 |accessdate=2020-07-07}}</ref>。


自動車は、本質的には馬車から派生した移動手段の道具であるが、その長い歴史の中で他の様々な文化、事物からモチーフを得ながら独自に発展していった。それは貴族文化やダンディズム、サブカルチャー、或いは[[航空機]]、[[船舶]]など実に様々である。これらは現代においても、乗車する際に身につける[[装身具|アクセサリー]]などにその名残として残されている場合がある。また逆に自動車が服飾品に影響を与えることもあり、[[腕時計]]は特に著名な例である。加えて、自動車のエクステリアが女性のファッションに例えられることもあり、[[イベントコンパニオン]]はその代表例として挙げられる<ref>{{Cite web|和書|date=2016-01-23|url= https://gazoo.com/article/daily/160123.html |title= コンパニオンだけじゃない! クルマと共に羽ばたいた女性たち【東京オートサロン2016】 |website=GAZOO |publisher=トヨタ自動車|accessdate=2020-07-26}}</ref>。
[[1922年]]に、フォードと同様の生産方法を用いたシトロエン・5CVやオースチン・セブンなどの小型大衆車が発売され、本格的に自動車が普及していく事になった。また、それに伴いサイクルカーは姿を消していく事になる。


[[ファッション雑誌]]などでは自動車を広告塔として利用する例がある。[[ファッションデザイナー]]で知られる[[ラルフ・ローレン]]は、2017年に、自宅[[ガレージ]]にて自身のカーコレクションを用いた[[ファッションショー]]を開催している<ref>{{Cite web|和書|date=2017-09-15|url =https://www.vogue.co.jp/collection/news/2017-09-15/ralph-lauren |title=ラルフ ローレン、自慢のスーパーカーを披露! プライベートガレージでのリュクスなショーの全貌とは?|website=VOGUE JAPAN|publisher=コンデナスト・ジャパン|accessdate=2020-07-10}}</ref>。また自動車ブランドと[[ファッションブランド一覧|服飾ブランド]]が共同で作品を製作することがあり、[[モーターショー]]などで披露されている<ref name="collabo">{{Cite web|和書|date=2007-10-28|url=https://www.webcg.net/articles/-/554|title=自動車メーカーとファッションブランドなどのコラボに注目【みどころナビ】|website=webCG|publisher=株式会社webCG |accessdate=2020-07-07}}</ref>。運転の際に使用されるドライビンググローブやドライビングシューズなどについても、ヨーロッパ各国の服飾ブランドで数多く販売されている。また[[ポルシェ]]が「[[ポルシェデザイン]]」と称する服飾ブランドを個別に展開、或いはフェラーリやベントレーが[[香水]]をプロデュースするなど、自動車ブランドが服飾部門を別途に立ち上げることもある<ref name="collabo"/>。イタリアの[[ピニンファリーナ]]や日本の[[奥山清行|KEN OKUYAMA DESIGN]]といった[[カロッツェリア]]は、自動車のデザインから[[建築]]や[[家具]]、[[眼鏡]]、[[化粧品]]に至るまで、様々な分野の[[プロダクトデザイン]]を手掛けている。
[[電気自動車]]や燃料電池を動力源とした自動車もあり、前者は今でも[[トロリーバス]]として存在している車両もある。


[[スイス]]高級時計で知られる[[ショパール]]は、1988年からミッレミリアの公式スポンサーとなり、毎年リミテッドモデルをリリースしている<ref name="chopard">{{Cite web|和書|url=https://www.chopard.jp/mille-miglia-history/ |title=ミッレミリアの世界へようこそ |website=ショパール 公式HP|publisher=LE PETIT-FILS DE L.-U. CHOPARD & CIE S.A. |accessdate=2020-07-07}}</ref>。同社社長の[[:en:Karl-Friedrich Scheufele|カール・フリードリヒ・ショイフレ]]は、''”上質な車の愛好家は得てして上質なタイムピースを好みます。その逆もまた然り。どちらにおいても、最高の精度とスポーティなエレガンスが最も大切な要素であるからです”''と述べる<ref name="chopard"/>。同じくスイス高級時計の[[タグ・ホイヤー]]は、古くからレーシングスピリッツを重視していたが、1971年に[[スクーデリア・フェラーリ]]とパートナーシップを結び、そして同年のレース映画『[[栄光のル・マン]]』の制作中に[[スティーブ・マックイーン]]が同社モデル「モナコ」を着用したことで、自動車業界の一躍人気時計ブランドとなる<ref>{{Cite web|和書|date=2016-11-28|url=https://www.gqjapan.jp/watch/news/20161116/tag-heuer-goes-evolution-nov03 |title=時を制するものが、時代を制する ── タグ・ホイヤーがモータースポーツを進化させた
== 自動車の種類 ==
|website=GQ Japan|publisher=コンデナスト・ジャパン |accessdate=2020-07-07}}</ref>。また上記でも述べたラルフ・ローレンは、”Art Deco Automobiles”時代の名車[[ブガッティ・タイプ57SC アトランティーク・クーペ]]をコンセプトにした腕時計を製作している<ref>{{Cite web|和書|date=2015-08-11|url=https://www.gqjapan.jp/watch/news/20150605/the-world-of-ralph-lauren-watches |title=ラルフ ローレンが紡ぐクルマと時計の物語|website=GQ Japan|publisher=コンデナスト・ジャパン |accessdate=2020-07-07}}</ref>。他にも、数多くの高級腕時計メーカーが自動車との関わりを持っている。
自動車が誕生して、まだ百数十年であるが、すでに産業の中核となって久しい。その区別は、当初は技術的観点からはじまった。販売する対象が一般大衆になり、販売の観点から、さまざまな区別がなされるようになった。一般化により法的規制もなされ、特に税や許可(ライセンス)の観点からの区分がはじまる。これらは、それぞれが独立したものではなく、相互に影響を及ぼしている。また、固定したものではなく、時代によって変遷があるため、種類・分類を理解のためには歴史の流れの視点で見ることが必要となる。法令による区分は最も変化しないが、技術的観点、販売の観点の区分では、従来区分に加えて新区分の追加が常におこなわれるため、その変化が大きい。


{{Gallery
分類(区分)の主要な観点
|File:Paolo Monti - Servizio fotografico (Milano, 1963) - BEIC 6347062.jpg|[[ジャケット]]とドライビング[[手袋|グローブ]]
* 技術的観点
|File:PIloti (5742953102).jpg|[[パイロット (航空)|パイロット]][[ゴーグル]]・パイロット[[キャップ (帽子)|キャップ]]に[[革ジャン|レザージャケット]]を着用したドライバー/[[コ・ドライバー]]
* 販売(マーケティング)の観点
|File:Chopard Mille Miglia 2018.jpg|ショパール「ミッレミリア2018」
* 各国の法令(免許制度、税制、排ガス規制など)の観点
|File:TAG Heuer Monaco 40th Anniversary re-edition.JPG|タグ・ホイヤー「モナコ/40周年記念復刻モデル」
* 歴史的流れからの観点
}}


=== 自動車の位置づけの変化 ===
19世紀末の自動車産業の創成期から自動車業界では、それまで主流となっていた交通機関である馬車の種類を当てはめて区別されることが主流だった。馬車の種類の呼称の多くは欧州でつくられたもので、現在でも使われている。1910年代から1920年代で米国自動車産業は成長し、その後も第二次世界大戦からの復興に労力を費やした欧州と比べ米国の成長は著しく、1950年代には米国自動車産業は世界の中心となっていた。特に販売の観点からの区分は、米国で長らく販売第一位を保っているGMの影響は大きく、1950年代からGMが主導した車種多様化による販売上の差別化によりカテゴリー呼称も多様化した。この流れは現在までつづいており、常に新しい需要を喚起するようなものが導入され、変化に富んでいる。
<!--
独自研究


{{要出典範囲|自動車に限らず、古くから「モノ」とステータスは相互関係にある。かつての人々は先天的に[[社会的地位]]が固定されていたため、それに付随して、個々の階級の人々が使用する「モノ」に対しても自ずと社会的地位が発生した。これが[[ステータスシンボル]]([[ブランド]])として大衆に認知されるようになる。|date=2022年4月}}-->
== 社会に及ぼす影響 ==
<!--「{{要出典範囲|近代ヨーロッパにおいては、[[ブルジョワジー]](新興富裕層)が[[上流階級]]のライフスタイルを模倣し、そのステータスに準じた[[プリンシプル]]、[[教養]]を身に付けた|date=2022年4月}}。」--><!--『{{要出典範囲|この貴族文化から生まれたステータスシンボルの典型例として英国車が挙げられる。|date=2022年4月}}』と誰が言った?-->
自動車は使用者に多くの便益を与えるが、反面、生命・健康・安全歩行などの市民の基本的権利を侵害する存在である。この損失は社会全体が被るものであり、[[社会的費用]]ととらえることができる。
<!--
出典として挙げられているのは、ただの宣伝サイト。百科事典の出典としては不適切。イギリス車の販売会社のただの金儲け目的の、商業的宣伝サイト。
しかも出典として挙げてあるサイトに書かれていない文章を投稿者が勝手に投稿している。-->
<!--
出典に書かれていない文章。


 伝統的なブリティッシュネスを保守しているために[[御用達#イギリス王室|ロイヤル・ワラント]]を授与された、[[ランドローバー]]やベントレーなどの[[高級車]]ブランド、或いは[[ジャガー (自動車)|ジャガー]]や[[アストンマーティン]]といった古典的スポーツカーブランドである<ref>{{Cite web|date=2020-02-12|url= https://genroq.jp/2020/02/12/64208/ |title= ジャガーのデザインが大きく変わってゆく理由とは? 最新のブリティッシュネスを求めて |website=GENROQ Web|publisher=株式会社三栄|accessdate=2020-07-18}}</ref>。--><!--ただしこの文化では、あくまでも"自身の使用していた「モノ」が自然とステータスシンボルに転じた"という無頓着な立場をとっており、"周囲に対して故意にステータスを誇示する"のは恥とされた(「ダンディズム」思想・「[[スローン・スクエア#スローン・レンジャー|スローン]]」主義)<ref name="tokudaiji"/><ref>{{Cite web|date=2019-12-30|url= https://www.fujingaho.jp/lifestyle/fashion-jewelry-watch/a30333282/britishstyle-191230/ |title= 英国生まれのスタイルなら、間違いありません【前編】大人のファッションを考えます |website=婦人画報 |publisher=ハースト婦人画報社|accessdate=2020-07-12}}</ref>。-->
自動車が社会に及ぼす原因は、自動車が自走することに起因する[[交通事故]]と、自動車が燃料を燃焼することに起因する排気ガスの排出や騒音などによる[[環境問題]]が主な問題である。また自動車が高性能な乗り物へと改良されるようになるに連れますます過激な乗り方を好む者が現われたのも関係があるが、個々の運転者による[[交通マナー]]という概念が生まれ、社会がそれを求めるようになったという背景もある。見方を変えれば近代化による交通の発達により、自動車が自由に使える人とそうでない人による様々な格差という点も現代になってから注目されるようになった。
<!--
出典として挙げてあるウェブサイトには掲載されていない文章。


しかし[[競争社会]]・[[大衆社会]]に突入し、誰もが後天的に社会的地位を獲得し得るようになると、他者との差別化を目に見える形で反映させるために、かつてのプリンシプルや教養を無視し、あからさまにステータスを誇示するようになる([[成金]]趣味)<ref>{{Cite web|date=2009-08-04|url= https://www.recordchina.co.jp/newsinfo.php?id=34026&ph=0&d=0000 |title=誰だ、成金を「新貴族」などと呼んだのは? 灰色の金を得ただけ、礼儀・教養なし—中国紙|website= Record China|publisher=株式会社Record China|accessdate=2020-07-12}}</ref>。-->
=== 交通問題 ===
<!-- リンク切れ。
自動車が走行する道というのは、市街地においては人も歩行するために使用するものであるため、どうしても交通が干渉してしまう。そのため自動車が走行するための秩序や環境を整備する必要が第一に迫られた。自動車が世間に登場した際、歩行者と自動車の交通空間が明確にされておらず、歩行者が歩行する中を自動車が走行することになった。最初はそれで問題がなかったが、次第に自動車の交通量が増えていくと、歩行者との干渉が問題となり、[[歩道]]と[[車道]]というふうに明確に区別された。さらに自動車が増えると交差点での行き来が問題となったため、[[交通信号]]が整備され、法律によっても自動車が整備されるようになった。また自動車の登場により平坦な路面が求められるようになったため、自動車が走ることを考えて路面は[[アスファルト]]や[[タイル]]で舗装されるようになった。自動車が高性能化し高速走行が可能になるようになると、高速に自動車が走行できるよう[[高速道路]]が整備されるようになった。
日本では[[高度経済成長期]]から[[バブル景気|バブル期]]に至り、社会的地位の象徴を「モノ」に求める思想が過度に増幅された<ref>{{Cite web|date=2019-12-24|url= https://dime.jp/genre/822890/ |title= いつの時代もステータスが大事!?30年前に話題になった「瞬間貴族」とは何者だったのか? |website= @DIME|publisher=小学館|accessdate=2020-07-12}}</ref>-->


リクルート社のリクルート社自動車総研が行った(日本の[[中古自動車]]購買層に対する)アンケート調査の結果だとして示したグラフによると、2018年時点のデータとしては「自動車はステータスシンボルだ」と思っている人々は40%程度。「どちらともいえない」と思っている人も40%程度。「自動車はステータスシンボルだとは、あまり思わない」「そうは思わない」が20%程度である<ref>{{Cite web|和書|date=2020-01-28|url= https://www.carsensor.net/contents/editor/category_1585/_64654.html |title= 車が再びステータスシンボルに! あなたはトレンドを追う派? はみ出す派? |website= カーセンサー|publisher=リクルート|accessdate=2020-07-12}}</ref>(ただし信憑性については疑義がある<ref group ="注">このサイトは、統計調査をやる場合に絶対に示すべき母集団に関するデータ(調査対象人数(わずか10~20人程度なのか、1000人なのか、1万人なのか)、調査対象の属性、調査場所(ウェブなのか、紙媒体なのか、店頭なのか))などを全く明かしていない。このような基礎データすら明かしていない状態で主張されている数値の信憑性はかなり低い。</ref>)。
このように自動車が走行するための条件は20世紀の早いうちにある程度整備されるようになってきたが、質量の大きい自動車という乗り物が歩行者のすぐ傍を通り、時には干渉するということから[[交通事故]]が未だ大きな問題となっている。交通事故は時に死者を出し、交通が妨げられることによって経済にも影響を及ぼすこともある。
<!--
出典に書かれていない情報。


「自動車業界にも反映され、[[スペシャルティカー]]や[[ハイソカー]]、スーパーカーの誕生にも寄与した」
他にも[[渋滞]]や[[違法駐車]]も自動車に関する交通問題である。更に広い観点で見れば、近代の社会は、特に郊外において自動車の使用が前提となりがちであり、都市の[[郊外化]]にも拍車を掛けている。そのため都市の分散によって自動車が使用できる人とそうでない人との格差が生まれることも新たな問題となっている。
-->
<!--
百科事典の出典としては不適切。


<ref>{{Cite web|date=2019-06-12|url= https://carview.yahoo.co.jp/news/detail/c3e0efa36fc18a1e4eca4178d20b4315ab9d88be/ |title= 昭和のナンパ師御用達!歴史に名を残すデートカー3選 |website=carview! |publisher=株式会社カービュー|accessdate=2020-07-12}}</ref>。
=== 環境問題 ===
-->
自動車は環境にも影響を与える。自動車の走行するための燃料となる[[化石燃料]]は、燃焼時に[[二酸化炭素]]を主に排出するが、[[石炭]]や、とりわけ質の悪い燃料では二酸化炭素以外の[[窒素酸化物]]や[[硫黄酸化物]]などが[[黒煙]]と共に大量に排出する。そのため[[地球温暖化]]への関与や[[大気汚染]]の原因とも言われており、こうした排出の削減が、自動車の増加と共に叫ばれるようになった。そのため燃費の向上による燃料の有効活用や触媒による窒素酸化物、硫黄酸化物の分解の技術も向上している。大量に自動車の走行する道路沿いでは大気汚染だけでなく走行による[[振動]]とそれに伴う[[騒音]]と言った様々な[[公害]]が大きな問題となる。


[[マーケティング]]・[[コンサルタント]]の堀好伸は、現代の日本の若者たちは(昭和時代の若者とは異なって)'''自動車も買わない'''し、酒も飲まない、と指摘している<ref name="fnn7160">{{Cite web|和書|date=2019-04-28|url= https://www.fnn.jp/articles/-/7160 |title= 平成の間に変わったステータス !「モノを買う」より「仲間たちと共感したい」若者たち |website=FNNプライムオンライン |publisher=フジニュースネットワーク|accessdate=2020-07-12}}</ref>。堀好伸の分析によると、現代日本の若者は「モノを買う」「モノを所有する」などということではなく、「価値観を共有できる仲間同士で[[共感]]しあう」ことを好むようになった<ref name="fnn7160" />といい、「自らの価値観でモノやコトを<u>仲間と共有</u>して、<u>一緒に楽しいことを創り上げる</u>時代」になっている、という<ref name="fnn7160" />。
さらに自動車の買い換えサイクルが生まれるようになると、使い終わった古い自動車の廃棄処分の問題も生まれた。そのため自動車のリサイクルというのも大きな問題である。


== スポーツ、趣味としての自動車 ==
=== 自動車と映像作品 ===
[[File:Sean Connery and a Aston Martin DB5.JPG|thumb|right|200px|[[ショーン・コネリー]]([[蝋人形]]) と[[アストンマーティン・DB5]]]]
自動車は多彩な車種・形状があり、また用途によって様々な自動車が使い分けられる。単に走ると言っても、整備されたコースだけでなく条件の悪いコースなどもあり、様々な楽しみ方がある。そのような様々な観点から自動車を乗ること、集めることなどを趣味にする人も多い。自動車を操縦しより高速なスコアタイムを目指すことはスポーツの一種として認識されており、[[モータースポーツ]]と呼ばれる。とにかく速く走るためのスポーツ専用の自動車である[[フォーミュラカー]]で走ることが全てではなく、市販車や自作車でのレース、また長時間の運転となる[[耐久レース]]など、多彩なものが世界各国で開催されている。[[フォーミュラ1]](F1)や[[インディ・レーシング・リーグ]](IRL)、[[ル・マン24時間レース]]といったレーシング大会は特に著名な国際大会である。
レース映画や[[カーアクション映画]]などの自動車を主題とした映画は、長年に亘り世界中で人気である(「[[:Category:自動車を題材とした映画作品]]」を参照)。


一方で、自動車を直接的な主題としていない映画においても、自動車の魅力を効果的に利用した類のものがある。著名な例としては、『[[ジェームズ・ボンド#映画|007 シリーズ]]』(1962年 - )の[[ボンドカー]]がある<ref>{{Cite web|和書|date=2015-05-15|url= https://openers.jp/lounge/lounge_movie/12797|title=映画のなかのクルマたち──Part.1 |website=OPENERS|publisher=スマートメディア・リミテッド |accessdate=2020-07-07}}</ref>。ドラマでもそのような例は多くあり、『[[刑事コロンボ]]』(1968年 - 2003年)の[[プジョー・403]]や『[[相棒]]シリーズ』(2000年 - )の[[日産自動車]]などがある。また[[ミュージック・ビデオ]]や[[CM]]などにおいても、自動車の魅力を効果的に利用した作品は少なくない。
趣味としては、走行する自動車だけに過ぎず、[[ミニカー]]と呼ばれる精巧な自動車の[[ミニチュア]]の製作や収集、また部品の収集や[[写真]]の撮影など多岐に渡る。走行する自動車に関する趣味としては、様々な自動車に乗車することを趣味にしたり、自動車の改造やメンテナンスを趣味にすることもある。このように、自動車は単に人や物資を輸送するだけの存在に留まらない。


=== 自動車とサウンド・音楽 ===
<!--== 最新の技術動向 ==
{{Listen|filename=2006 Porsche Cayman S engine sound.wav|title=2006年式ポルシェ・ケイマンS|description=2006年式[[ポルシェ・ケイマン|ポルシェ・ケイマンS]]のエンジンサウンド([[水平対向6気筒]][[DOHC]]24バルブ)}}
* [[ハイブリッドカー]]
{{Listen|filename=Lexus LFA revving 1LR-GUE (2009).ogg|title=2009年式レクサス・LFA|description="天使の咆哮"とも称される2009年式(市販型[[プロトタイプ]])[[レクサス・LFA]]のエンジンサウンド([[V型10気筒]]DOHC40バルブ([[トヨタ・LRエンジン#1LR-GUE型|1LR-GUE型]])}}
* [[燃料電池車]]
* [[電気自動車]]
* [[LPG自動車]]
* [[CNG自動車]]
* [[圧縮空気自動車]]
* [[バイフューエル]]
* [[コモンレールシステム]] (ディーゼルエンジン)
* [[ガソリン直噴エンジン]]
* [[ULEV]]、[[ZLEV]]
* [[HCCI]](予混合気圧縮自着火)
* [[バイオディーゼル|バイオディーゼル燃料]]
* [[ガイアックス|高濃度アルコール含有燃料]]
* [[排気再循環|排気再循環(EGR)]]
* [[クルーズコントロール]]
* [[SH-AWD]]
* [[イモビライザー]]
* [[フレックス燃料車]]
* [[4WAS]] (4輪アクティブステアリング)
*[[ロボットカー]]//単に羅列したところでこの情報は価値があるのでしょうか。-->
==産業==
自動車はそれ自体が様々な役目を持つ乗り物であり多く使用されているが、巨大なために製造にも多くの人員や技術が必要である。そのため自動車はありとあらゆる産業を支えている反面、自動車そのものが大きな産業となっている。


[[ガソリンエンジン]]の[[内燃機関]]より自然に発生するエンジンサウンドは、物理・工学的な技術によって芸術的な音が生まれるというその特異なメカニズムから、幾多の自動車ファンを魅了してきた。そのため自動車ブランドの多くは、エンジン音にも積極的な[[チューニングカー|チューニング]]を施している。中でもフェラーリに代表される[[V型12気筒|V12エンジン]]や、[[フォーミュラ1カー |F1カー]]などから発せられる高音のエンジンサウンドは、旧来から魅力的とされてきた<ref name="sound">{{Cite web|和書|date=2020-04-02|url= https://www.leon.jp/items/8028 |title= フェラーリのエンジンサウンドはなぜ美しいのか?
=== 製造・廃棄 ===
|website=LEON|publisher=主婦と生活社 |accessdate=2020-07-07}}</ref>{{#tag:ref|ただし近年のF1については、レギュレーションの変更や技術の向上などによってエンジン音の静音化が進んでおり、この音の変化に対して否定的な意見を持つ者もいる<ref>{{Cite web|和書|date=2014-03-23 |url= https://number.bunshun.jp/articles/amp/802829?page=1 |title= 耳栓なしで会話ができるほど静かに。今季のF1はエンジン音も大変貌。|website=Sports Graphic Number Web|publisher=文藝春秋|accessdate=2020-07-07}}</ref>。|group="注"}}。
自動車の製造に関わる産業は巨大なものとなっている。世界的に見て自動車産業で成立している大規模な例としては、アメリカの[[デトロイト]]や、ドイツの[[ライン川]]流域が挙げられ、鋼鉄板の生成からボディプレス、電装品の製造、組み立てなどを地域全体で行っている。


昨今のトレンドである[[電気自動車]]では、エンジン音が存在しないため、電子的な合成音を使って魅力的なエンジンサウンドを作りだそうとするブランドが増えている<ref name="sound"/>。その中でも2019年6月に発表された[[BMW]]のEV[[コンセプトカー]]、”[[:fr:BMW Vision M Next |Vision M Next]]”では、エンジンサウンドの制作に作曲家[[ハンス・ジマー]]が起用されており<ref>{{Cite web|和書|date=2020-02-13|url= https://ampmedia.jp/2020/02/13/sonic-branding/ |title= ブランディングは音で感情揺さぶる時代へ、海外で関心高まる「ソニック・ブランディング」の最新動向 |website=AMP|publisher=ブラーブメディア|accessdate=2020-07-07}}</ref>、このようにエンジン音に対する概念は変化しつつある。
また製造と同様に廃棄に関してもリサイクルという観点から非常に大きな産業となっている。


自動車の車内は、一定の空間を保有しながらそれでいて閉鎖的であるため、[[音楽]]を楽しむには好適な環境であり、ドライブの魅力にも大きな役割を果たしている。そのため、[[カーオーディオ]]は自動車関連用品の中でも重要な位置を占めている。
=== 自動車販売 ===
自動車の販売は基本的に[[自動車ディーラー]]と呼ばれる販売代理店で行われる。また[[中古車]]を扱う店もある。


自動車を題材とした音楽作品については、「[[:Category:自動車を題材とした楽曲]]」を参照。音楽の存在を重視した自動車映画としては、『[[チキ・チキ・バン・バン]]』(1968年)や『[[ワイルド・スピードシリーズ]]』(2001年 - )、『[[ベイビー・ドライバー]]』(2017年)などがある。
=== サービス ===
自動車は人や物を輸送でき、また道路さえ整備されていれば様々な場所に行くことができる。そのため自動車を用いたサービスが多種存在する。


== 負の影響 ==
[[旅客輸送]]や[[貨物輸送]]を行うサービス全般を[[運輸業]]と呼ぶ。旅客であれば[[タクシー]]や[[ハイヤー]]、また[[バス (交通機関)|バス]]などとして運営され、バスは多くの人員の輸送が可能であることから、形態に応じて[[路線バス]]、[[観光バス]]、[[高速バス]]、[[定期観光バス]]などと様々なものがある。貨物輸送に関しては[[運送会社]]がトラックを用いて輸送する。
自動車は使用者に多くの便益を与えるが、地球環境の破壊の恐れや、人間の健康を害したり、生命を奪ってしまうことすらある。


=== 交通事故 ===
自動車を用いたサービス以外に、自動車の整備を行う[[自動車整備業]]もサービスに分類できる。
{{seealso|交通事故}}
[[ファイル:Two-car collision in the USA.jpg|thumb|交通事故で大破した車]]
自動車が社会に及ぼす悪影響の中で特に大きなものは、'''交通事故'''で、怪我人や死者やその家族という被害者と、事故を起こした車を運転していた加害者を作りだしてしまう。
交通事故は出来る限りゼロに近付けるべきであり、特に'''死亡事故'''はゼロに近付ける努力を精一杯するべきだ、とされている。日本の警察は交番などに、その地域で、日々、交通事故によって怪我を負った人や死亡した人の数を掲示し、人々に注意を喚起し、意識を変え、運転に慎重になってもらおうと努力している。


負傷(怪我)と分類される場合でも、被害者は実際には重い[[障害]]を負って生涯苦しむ人が含まれている。まして被害者が死亡してしまった場合、遺族の悲しみは計り知れない。また死亡した人に子供がいれば、その子供は交通遺児となり、「親を失った子」としてその後の人生を生きなければならず、親が生きていたらできたはずのことができない人生となる。加害者となった者も、([[自賠責保険]]や[[任意保険]]などで)被害者に金銭的に補償すればそれで全てが済むというような生易しいものではない。たとえば、運転時にいわゆる「[[ながら運転]]」をしていた場合、危険を予見できたにもかかわらず、道路交通法で定められている「注意義務」を怠ったことによって罪が重いが、そうでなくても、ただほんの一瞬注意を怠ってしまった、ということでも[[自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律#過失運転致死傷罪|過失運転致死傷罪]]が適用される可能性があり、運転者(加害者)は刑務所で服役しなければならない可能性がある。また、自動車保険を利用して被害者に対して金銭的に補償しても、さらに運転者が刑務所で服役しても、遺児にとって大切な親が生き返るわけでもなく、結果として加害者となった者は一生涯、被害者の人生を狂わせてしまったことに対する<u>道義的な責任</u>を感じ続けなければならなくなる。加害者は、「自分は人を殺してしまった」、「残された家族の人生も壊してしまった」などと苦しむようになり<ref>[https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-42744292]</ref>、加害者の人生も、大きく変わってしまうのである。自動車によって頻繁に起きるようになった交通事故は、ただの金銭問題や経済問題といったレベルをはるかに超えて、人々の人生を狂わせ、苦しめ続けている。
== 分類 ==
自動車の分類は、[[乗用車]]、[[貨物車]]、[[特殊作業車]]に分類することができる。乗用車は人員を輸送するための自動車であり、自動車の中では最も数も種類も多く、自動車が登場した当初はこの乗用車のみであった。貨物車は自動車の大部分の容積を占める貨物室や、貨物台を備えており、貨物の輸送を前提に作られたものである。特殊作業車は、各種の仕事に応じて専用に作られた自動車であり、例えば土砂を掘削するための[[ショベルカー]]や、[[アスファルト]]の舗装を行うための[[ロードローラー]]などがこれに含まれる。特殊作業車は、黄色や緑などの派手な色で塗装されることが多い。


なお(一部に、人命を軽視する者や、人の命まで金銭に換算して済ましてしまおう、という者がいるが、それがそもそも非常に不謹慎である、と一般にされている。それでも金銭に換算して理解しようとする者にその金銭を示すと)交通事故関連の損失は、日本だけに限った場合でも、<u>毎年6.7兆円</u>に及んでいる<ref>[https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-t58-3.pdf 日本学術会議『交通事故ゼロの社会を目指して』]</ref>。
また、[[排気量]]による分類、車体の大きさによる分類もされることがあり、各国において[[運転免許]]の階級によるライセンスの及ぶ範囲を区別するために使用される。


自動車の前に馬車が普及していたヨーロッパや米国では、車(馬車)が非常に危険だということは理解されていて、歩行者と車の走行場所の完全な分離(歩車分離)が馬車時代から進み、自動車が走行する車道と、歩行者の歩く歩道の距離が何倍もとってあり、その結果事故が少ない。またヨーロッパでは「歩行者優先」が徹底されていて、歩行者がいたら、自動車運転者はほぼ絶対的に停車する。ところが日本は後進国の段階、馬車すらも普及していない状態、つまり歩行者(や人が引く荷車)しかなかった道に、いきなり自動車が人の動線を侵害するように導入されてしまった。おまけに、ヨーロッパの走行状態を知らない人々が住む日本では「歩行者優先」の原則が十分理解されず、自動車の運転者が傲慢に歩行者の歩行を妨害するようなことがまかり通るようになってしまい、それが放置されるようになってしまった。最近では海外の交通状況を理解する日本人も増えるようになり、日本でも歩行者優先意識の啓発、あるいは歩行者優先の原則の絶対厳守とその原則を守らない運転者に対して厳罰を科すことが望まれるようになりつつある。歩道のガードの拡充、十分な幅の自転車専用レーンの確保などの道路インフラ整備が必要とされている。[[東名飲酒運転事故]]以前は[[飲酒運転]]も横行していた。速度超過、事故を誘発する違法駐車、横断歩行者の妨害等などの交通[[犯罪]]が蔓延している現状がある。またスマートフォンの普及などが原因となって、2010年代後半には'''[[ながら運転]]'''による深刻な事故が統計的に明白に急増したので、「ながら運転」による事故に関しては日本政府も厳罰化した改正案を2019年5月8日に閣議決定し、法案として提出した<ref>[https://www.think-sp.com/2019/03/08/dokoho-kaiseian-sumaho-2019-3-8/]</ref>。
== 各国における自動車 ==
===日本===
==== 歴史 ====
{{節スタブ}}


また日本など高齢化が進む社会([[高齢化社会]])では、全ドライバーに占める高齢ドライバーの割合が増え、ブレーキペダルとアクセルペダルの「踏み間違い」や道路の[[逆走事故]]が頻発するようになってきた。高齢者は、実際には客観的に測定して運転技能が落ちているにもかかわらず、本人は逆に「自分の運転には絶対に自信がある」などと言うようになり、こうした高齢者による自信過剰が原因で、より一層重大で深刻な事故が起きていることが判ってきている<ref>[https://seniorguide.jp/article/1058760.html]</ref>。
==== 自動車の資格 ====
* [[運転免許]]
** [[国際運転免許証]]
** [[指定自動車教習所指導員]]
* [[駐車監視員]]
* [[運行管理者]]
* [[モータースポーツライセンス]]
** [[スーパーライセンス]]
* [[自動車整備士]]
** [[自動車検査員]]
** [[自動車整備主任者]]
** [[整備管理者]]
** [[職業訓練指導員 (自動車車体整備科)]]
** [[職業訓練指導員 (自動車整備科)]]
* [[内燃機関組立て技能士]]
** [[職業訓練指導員 (自動車製造科)]]
** [[職業訓練指導員 (内燃機関科)]]


運転技能が落ちた高齢者ドライバーほど逆に自分の運転に「自信」を持つという恐ろしいデータも明らかになってきて、もはや高齢者ドライバーの「自覚」に期待したり、(自発的な)免許の自主返納に期待することは無理だ、高齢者に期待することが事故を引き起こす環境を放置する結果を生んでいる、ということも指摘されるようになってきている。(フジテレビの情報番組などをはじめとして)日本では高齢化が進み悲惨な事故が既に急増したので、高齢者ドライバーに関しては(アクセルを踏み込む異状操作時に作動したり、障害物に突進する場合に作動する)自動ブレーキ車限定の免許」(現在のところ。また将来的には「自動運転車限定の免許」)に強制的に変えるなどの法的・行政的な対策が必要だ、との指摘が行われるようになっている。
====種類====
主に路上を走る車輌として、トラック、バス、乗用車、特殊車輌があり、他に路上外を走る車輌がある。種類は機能的な分類以外に、さまざまな用途の側面からなされている。たとえば、車の販売上、たとえば、規制や税といった観点である。このような法規制での観点からは国によって自動車の種類は異なる。それぞれの観点で便宜を受ける対象者に利用されるのが区別の目的であるためであり、それぞれの区別に対して統一的な一貫性があるものではなく、規制のために用いられる区分は販売ディーラーと購入者の用いる区別とまったく同一ではないし、車輌を製作する側と販売する側の区別もまったく同一というものではない。また、車輌の大きなカテゴリーが異なれば、おなじユーザーといっても観点は異なる。一例として、販売/購入の観点からはトラックやバスでは、積載可能な荷物の容量や乗員数が大きな区分とされる一方、乗用車では、別の観点、つまりボディスタイルや排気量、その他で区別される。法令では、規制と税金の観点から区分がなされ、排気量の区分も税の観点からのものがベースとなっている。


2010年代後半、先進国の大手自動車メーカーやIT企業などが主導して、自動運転車、しかもA.I.(人工知能)と高性能のセンサーを多数活用した高度な自動運転車の開発にしのぎを削っており、すでに一部の地域では実験的に走行が始まっており、2020年代には本格的に販売され、普及が進んでゆくと予想されており、性能の良いAIを用いた自動運転車ならば、人間が運転するよりも事故率を数百分の1や数千分の1程度にまで減らすことができる、といった予想もあり、自動運転車の普及によって、交通事故で苦しむ人々が減ることが望まれている。
以下にあげる区分はその一部である。


==== 形態別 ====
=== 大気汚染と環境破壊 ===
{{see also|化石燃料#化石燃料の使用が引き起こす公害・環境問題}}
* 小型・普通[[乗用車]]
[[内燃機関]]自動車(ICEV)は[[化石燃料]]を燃やし、[[二酸化炭素]](CO<sub>2</sub>)や[[窒素酸化物]](NO<sub>x</sub>)、[[硫黄酸化物]](SO<sub>x</sub>)、[[黒煙]]を大量に排出し、環境や人々の健康に大きな悪影響を与える。
** [[セダン]]
*** [[スポーツセダン]]
** [[リムジン]]
** [[コンパクトカー]]
*** [[ハッチバック]]
*** [[トールワゴン]]
** [[ハードトップ]]
** [[ステーションワゴン]]
*** [[スポーツワゴン]]
*** [[プレミアムワゴン]]
** [[ミニバン]]
*** [[ワンボックスカー]]
** [[SUV]]
*** [[クロスオーバーSUV]]
** [[クーペ]]
*** [[オープンカー]]
*** [[ロードスター]]
*** [[カブリオレ]]
*** [[コンバーチブル]]
*** [[タルガトップ]]
*** [[Tバールーフ]]
*** [[クーペカブリオレ]]
* 大型乗用車 - [[バス (車両)]]
** [[マイクロバス]]
* [[軽自動車]] - [[排気量]]や寸法に制限あり
** [[軽トールワゴン]]
** [[軽トラック]]
** [[軽ボンネットバン]]
* [[ミニカー (車両)|ミニカー]] - 排気量50ccまたは出力0.6kw以下の原動機を使用する一人乗り普通車
* [[貨物自動車]] - トラック、バン(箱形の屋根付きの貨物自動車)、[[ライトバン]]、タンク車、トレーラーヘッド(牽引車、トラクターとも言う)
** [[ピックアップトラック]]
** [[キャブオーバー]]
** [[セミキャブオーバー]]
* [[特種用途自動車]](いわゆる8ナンバー) - キャンピングカー、[[救急車]]、[[消防車]]、[[霊柩車]]など
* [[特殊自動車]](特殊な用途のために特殊な構造をしたもの)
** [[小型特殊自動車]](9ナンバー) - [[産業機械]]([[フォークリフト]]など)、[[農業機械]]([[コンバイン]]、[[耕運機]]、[[トラクター]]など)、土木[[建設機械]]([[ロードローラー]]など)
** [[大型特殊自動車]](0、9ナンバー) - 大型建設機械([[クレーン]]、[[バックホー|パワーショベル]])
* [[オート三輪]]
* [[全地形対応車]]
* [[代燃車]]
* [[デュアル・モード・ビークル|デュアル・モード・ビークル(DMV)]]


[[大気汚染]]は[[ぜんそく]]や肺疾患などを引き起し、肺がんの原因ともなっている。また、大量に自動車の走行する道路沿いでは、走行による[[騒音]]や振動などの様々な問題も引き起こす。
* ドア数
** 2ドア
** 3ドア
** 4ドア
** 5ドア
** 6ドア以上


二酸化炭素は[[地球温暖化]]の最大の原因とされ、窒素酸化物・硫黄酸化物などは[[酸性雨]]の原因にもなっており、これらの排出の削減が急務である。
==== サイズ・排気量別 ====
ロータリーエンジンを搭載した自動車はこの限りでない(税法上、排気量=単室容積×ローター数×1.5とする。[[ロータリーエンジン#自動車用]]も参照)。
* 軽自動車(現在の法令では660cc以下)
** 一般的な車種では最も小さいサイズ。エンジン排気量が小さいため、高速走行や長時間走行は辛いものの、取り回しが非常に楽で、政策的に[[自動車税]]などの諸税や保険料などの維持費が安くされているメリットがある。このことから、[[公共交通機関]]の便が悪い地方を中心に生活用に普及している。
** もともとは室内空間が狭かったが、最近では広い室内を売りにしたモデルが売れ行きをのばしている。
** [[中古車]]市場での人気や需要が高いため、中古価格は上のクラスの小型車よりも高価である。
** 2005年頃からの石油価格の高騰で、軽自動車の売れ行きが伸び、日本での最量販クラスになりつつある。
* 1000ccクラス
** 小型車、あるいは[[コンパクトカー]]、[[リッターカー]]とも呼ばれる、軽自動車のすぐ上に属するクラス。ヨーロッパの[[Aセグメント]]に相当。本体価格は軽自動車とほとんど同じ、大きさは軽自動車より一回り大きい程度であるが、燃費と取り回しに優れ、エンジン排気量が大きくなった分、高速走行も一応こなせる。ただ、一般に室内がそれほど広くなく、長時間走行は辛い上に、税金や保険料が軽自動車の4倍以上に跳ね上がるデメリットがある。
** 近年は小型車の品質が向上したため、中型車からこのクラスに乗り換える人が増えており([[ダウンサイジング]])、[[ホンダ・フィット]]や[[トヨタ・ヴィッツ]]などの各社の戦略車がしのぎを削る。
** 欧州での最量販クラス。
* 1500ccクラス
** [[大衆車]]と呼ばれる、日本では中の下(北米では[[サブコンパクトカー]])のクラス。ヨーロッパの[[Bセグメント]]に相当。小型車よりも居住性が改善され、エンジン排気量もさらに上がるため、高速走行や相応の長時間走行をこなせる性能を有する。
** かつては一般的なファミリーカーとして君臨していた。
** [[トヨタ・カローラ]]や[[日産・ティーダ]](旧・サニー)などに代表される各社の主軸車種がしのぎを削る主戦場。しかし、女性を中心とする若いユーザーは小型車や軽自動車を選ぶ傾向があり、ファミリーカーとしての役目はこのクラスから2000ccのミニバンへ移っており、大衆車のユーザー層は高齢化しつつある。
* 2000ccクラス
** 日本では中の上(北米では[[コンパクトカー]])のクラス。ヨーロッパの[[Cセグメント]]に相当。日本国内での使用を前提とすれば、日常の取り回しや使い勝手と、居住性、高速走行や長時間走行をこなせる性能をバランス良く有する。
** 日本でタクシー用に使われるサイズの主流。
** 大きさや性能などの全体的なバランスが取れていることから、市販車ベースのラリー競技用などのモータースポーツにも使われることが多い。
** 近年の日本では、ファミリーカーとしてこのクラスに属する中型[[ミニバン]]が高い人気を誇る。
** 北米での最量販クラス。
* 2500~3000ccクラス
** 日本では上の下(北米では中型車)のクラス。ヨーロッパの[[Dセグメント]]から[[Eセグメント]]に相当。豪華志向の車種が多い。車体が大きくなってくるため、取り回しは悪くなる。
** 日本では、個人で所有する一般的な乗用車の上限あたり。
* 3000cc以上
** 日本では[[ハイエンド]]に属するクラス。ヨーロッパのEセグメントから[[Fセグメント]]に相当。最新技術や装備がふんだんに盛り込まれた豪華志向車や、高性能なスポーツカーなど。そのため燃費は良いとはいえず、税金、保険などを含めた維持費もかかる。
** ほとんどは重役用車や、重役用ハイヤーのような社用車、芸能やスポーツ選手、企業家など特定業種の[[富裕層]]・[[成功者]](いわゆる[[セレブリティ]])の[[ステータス]]という位置づけが持つような車で、後部座席に座るような[[高級車]]や非常に[[走行性能]]、[[静粛性能]]の高い車種が多い。特にスポーツ選手は「体が資本」という考え方から、安全性に優れるとされる大型高級車に乗る人が多い。 [[メルセデス・ベンツ]]や[[BMW]]、[[ポルシェ]]などに代表される高級車ブランド各社の主軸車種が、富裕層をターゲットにしのぎを削る主戦場。
**ただし、アメリカ車のスポーツカーは5000cc以上は当たり前であり、[[シボレー・コルベット]]は5700ccクラス。[[ダッジ・バイパー]]に至っては8275ccである。


1970年代から先進国の政府によって大規模な[[自動車排出ガス規制]]が行われるようになった。その結果ようやく自動車メーカーは、排ガス中に有害物質の少ないエンジンや低燃費のエンジンを本腰を入れて開発するようになった。また、大気汚染問題を根本的に解決すべく、[[電気自動車]]などの[[ゼロエミッション車]]の開発も進むようになり、2010年代では電気自動車も本格的に販売台数が伸び、ヨーロッパや中国では2020年代にさらに排ガス規制が厳格化し、電気自動車の普及の推進(や販売台数、販売割合の義務化)がされるよう予定が欧州議会や欧州の各国政府の主導で組まれており、環境にも健康にも優しい電気自動車の開発・販売や購入に対し様々な優遇措置がとられるようになっており(2012年時点ですでに行われていた)、各自動車メーカーも「脱ガソリンエンジン」「電気自動車開発」でしのぎを削っている。
==== 法令上の定義 ====
[[道路交通法]]、[[道路運送車両法]]の各法令における「自動車」の定義は、上記一般的なものとは多少異なる。


;石油の大量消費
; 道路交通法
2018年には生産台数が1億台へ達すると予測されているが、仮に1.36トン車の984リットルで計算すると必要なエネルギーはガソリン984億リットル相当となり、これは日本の年間ガソリン消費量55百万キロリットル(550億リットル)<ref>日本エネルギー経済研究所 [http://oil-info.ieej.or.jp/data/oilnow2013.pdf 石油はいま 2013 OIL NOW] </ref>の約2倍である。
: 「原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転する車であって、[[原動機付自転車]]、[[自転車]]及び[[身体障害者]]用の[[車いす]]並びに[[歩行補助車]]その他の小型の車で政令で定めるもの(以下「歩行補助車等」という。)以外のものをいう。」(同法第2条第1項第9号)
: すなわち同法令上は、[[オートバイ|自動二輪車]]も「自動車」に該当する。ただし、原動機付自転車に該当するもの(50cc以下)は「自動車」には含まれない。また、[[路面電車]]・[[トロリーバス]]も該当しない。
; 道路運送車両法
: 「原動機により陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの又はこれにより牽引して陸上を移動させることを目的として製作した用具であつて、次項に規定する原動機付自転車以外のものをいう。」(同法第2条第2項)
: 前者と同様に、自動二輪車は「二輪の軽自動車、あるいは、二輪の小型自動車」として扱われる。ただし、原動機付自転車に該当するもの(125cc以下)は「自動車」には含まれない。
: [[道路運送法]]、[[道路法]]の各法令においても道路運送車両法と同様の定義が用いられる。


=== 自動車利用犯罪 ===
なお、[[原動機付自転車]]の定義には、道路交通法と道路運送車両法との各法令の間で定義に差異がある。詳細は同項目を参照。
自動車が生活に密着していなかった頃は、犯罪者の居住地域と犯罪地域は密接な状態にあったが、自動車が普及するにつれ、この前提は崩れている。他の交通機関でも犯罪を犯した地域からの脱出は可能であるが、公共交通では移動時間帯が限られている点や、(駅にカメラが設置されている鉄道や、運転手が目撃者となり得るタクシーなど)匿名性を保つことが困難な点などの関係で、犯罪者が犯罪を犯した地域から離れる場合の手段として自動車を用いたものが増えていることが、毎年発表される警察白書から確認できる。この問題には、高速道路での移動や盗難車による移動も含まれる。この問題に対し[[自動車ナンバー自動読取装置]]設置などの対策が施されているが、高価な装置であることなどの理由から設置場所は限られており、犯罪者側もナンバーを見難くするカバーを付ける者や偽造ナンバーを付ける者がいるなど、完全な対策になってはいない。


==== JISによる規定 ====
=== その他 ===
[[ファイル:Chang'an avenue in Beijing.jpg|thumb|交通[[渋滞]]]]
[[JIS]]ではJISD0101自動車の種類に関する用語(制定年月日1964/03/01、最新改正年月日1993/02/01)において自動車について定義している。[[原動機]]、[[かじ取り装置]]などを備えたもので、それに[[乗車]]して地上を[[走行]]([[走向]])できる[[車両]]と定義され、[[架線]]に接続された車両([[トロリーバス]]など)を含み、地上でも[[レール]]([[軌条]])の上を走行(走向)するものを含まないとされている。また、自動車は使用場所により、路上走行[自動]車(road vehicle)と路上外走行[自動]車(off road vehicle)にわけられ、路上走行[自動]車に属するものとして[[モータービークル|モータビークル]]、[[トレーラー|トレーラ]]、[[連結車両]]、[[モペット]]、[[モーターサイクル|モータサイクル]]が明示されている(詳細は[http://www.jisc.go.jp/app/JPS/JPSO0020.html JIS検索]を参照)。
*自動車増に追いつかない道路などのインフラ整備状況と、交通[[渋滞]]によるアイドリング・徐行による排気ガスの増加やエネルギー効率の低下、また時間のロスによる経済的・個人的損失
*逼迫する燃料需給。増加するガソリン需要に対応すべく[[オイルサンド]]の開発が進行中であるが、それによる[[環境負荷]]の増加
*[[バイオディーゼル]]や[[バイオマスエタノール]]などの[[代替燃料]]の需要増による[[2007年-2008年の世界食料価格危機#食料のバイオ燃料への転用|食料供給への影響]]
*[[ロードサイド店舗]]の増加に伴い、駅前の商店が衰退したことによる[[買い物難民]]の発生


などである。
JISの上記定義は、JIS文書内で使用する用語の規定であり、法令として定めているものではない。しかしながら、原案は[[自動車技術会|社団法人自動車技術会]]が作成しているため、特に技術面での自動車業界が踏襲してきた区分をまとめたものとなっている。そのため、業界でも[[自動車工業会]]の文書等、公的文書に近いものではこれに一定範囲で倣(なら)っているものである。


[[乗り物酔い]]、シックカー症候群については[[シックハウス症候群]]をそれぞれ参照。
<small>注:上記[]で囲まれた文字は通常省略されるもの。たとえば、路上走行[自動]車とは「路上走行車と表現される場合もあれば路上走行自動車と表現される場合もあるが路上走行車と表現されることのほうが多い」という意味でJISで使用されている。</small>


== 関連項目 ==
== 自動車の普及 ==
=== 自動車生産台数の推移 ===
{{Commons|Automobile|{{PAGENAME}}}}
{{multiple image
{{Wiktionary|自動車}}
| align = right
* [[モータービークル]]
| direction = vertical
* [[自動車用語一覧]]
| width = 300
* [[自動車工学]]
| header = 世界の自動車生産の推移<ref name=USDOT>U.S. DOT [https://www.bts.gov/content/world-motor-vehicle-production-selected-countries Table 1-23: World Motor Vehicle Production, Selected Countries] </ref>
* [[自動車工業]]
| header_align = center
** [[大型自動車]]
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** [[中型自動車]]
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** [[普通自動車]]
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** [[特定大型自動車]]
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** [[小型自動車]]
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** [[オートバイ]]
| image1 = Motor Vehicle Production 1950 2013 JA.png
** [[自転車]]
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* [[全地形対応車]]
| caption1 = {{center|各国の自動車生産台数(千台)}}
* [[水陸両用車]]
| image2 = Motor Vehicle Production Share 1950 2013 JA.png
* [[運転免許]]、[[自動車教習所]]
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* [[自動車保険]]
| caption2 = {{center|生産台数シェア}}
* [[自動車の整備]]
}}
** [[車検]]
** [[自動車整備士]]
{{main|自動車産業}}
20世紀に入り、フォード・モデルT(販売1908年 - 1927年)の発売から[[アメリカ合衆国|米国]]での普及が始まり、その後[[ヨーロッパ|欧州]]でも比較的廉価な車が発売された。[[第二次世界大戦]]後には戦時中に[[兵器製造]]に従事していた各企業による自動車生産が始まり、特に[[アドルフ・ヒトラー]]の[[国民車構想]]の産物である[[フォルクスワーゲン・タイプ1|フォルクスワーゲン]](1938年 - 2003年)は量産記録を打ち立てた。1970年代には日本においても大衆車が普及し[[日本車]]の海外輸出も始まり生産台数を伸ばし始め、同時に[[大韓民国|韓国]]や[[マレーシア]]などでも自動車生産が始まった。以下で述べる生産台数はメーカー国籍別ではなく、地理的に生産された国での数値である。
* [[車台番号]]
* [[カー・オブ・ザ・イヤー]]
** [[日本カー・オブ・ザ・イヤー]]
** [[RJCカー・オブ・ザ・イヤー]]
** [[ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー]]
** [[北米カー・オブ・ザ・イヤー]]
* [[NCAP]]
** [[ユーロNCAP]]
** [[自動車アセスメント|JNCAP]]
* [[モータースポーツ]]
* [[寒冷地仕様]]
* [[自動車排出ガス規制|排ガス規制]]
** [[自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法|NOx規制]]
* [[自動車馬力規制|馬力規制]]
* [[工業製品の自主規制]]
* [[パークアンドライド]]
* [[キスアンドライド]]
* [[自動車の車種名一覧]]
* [[自動車製造者の一覧]]
* [[高度道路交通システム]]
** [[VICS]]
* [[カーオーディオ]]
* [[ナンバープレート (自動車)]]
* [[東京モーターショー]]
* [[自動車部品生産システム展]]
* [[カー用品店]]
* [[日本車]]
** [[日本国内専用車]]
* [[輸入車]]
** [[フランス車]]
** [[ドイツ車]]
** [[韓国車]]
** [[イタリア車]]
** [[アメリカ車]]
* [[セグメント (自動車)|セグメント(階級区分)]]
* [[中古車]]
** [[クラシックカー]]
** [[旧車]]
* [[自動車における廃車]]
* [[アルコール検知機]]
* [[自動速度違反取締装置]]
* [[自動車評論家]]
* [[自動車漫画]]
* [[新車販売キャンペーン]]


自動車の生産台数は1950年には約1058万台<ref>1950年から1990年までの数値は英版[[:en:List_of_countries_by_motor_vehicle_production]]より。</ref>で、その約8割は第二次世界大戦による戦災を逃れた米国によるものであった。[[ビッグスリー]]の地元であり、また後に日・独などのメーカーが進出した米国は、その後半世紀にわたり世界で最大の生産国であった。60年代には[[西ドイツ|西独]]・[[フランス|仏]]・[[イギリス|英]]・[[イタリア|伊]]などの生産が立ち上がり、1960年の生産台数は1649万台となった。70年代には日本における自動車の増産も始まり、1970年の生産台数は2942万台、1980年には3856万台<ref> The Minerals, Metals & Materials Society (TMS) [http://www.tms.org/pubs/journals/jom/0308/kanari-0308.html End-ofLife Vehicle Recycling in the European Union] </ref>、90年代には韓国ついで[[中華人民共和国|中国]]での生産が増加し、1990年4855万台、2000年には約5837万台<ref>International Organization of Motor Vehicle (OICA) [http://www.oica.net/category/production-statistics/2000-statistics/ 2000 Production Statistics] </ref>、2010年には7758万台<ref>OICA [http://www.oica.net/category/production-statistics/2010-statistics/ 2010 Production Statistics] </ref>2013年には8730万台<ref>OICA [http://www.oica.net/category/production-statistics/2013-statistics/ 2013 Production Statistics] </ref>と増加し続けている。2018年には1億台に達するとの予測も出ている<ref>The Wall Street Journal http://online.wsj.com/articles/SB10001424052702304858104579262412636884466 Global Car Sales Seen Rising to 85 Million in 2014] </ref>。
== 外部リンク ==

* [http://www.jama.or.jp/ 社団法人日本自動車工業会]
日本における自動車生産は第二次世界大戦前は主に米国企業によるいわゆる[[アメ車]]の[[ノックダウン生産]]、戦後には戦災で破綻した物流システムを整えるべくトラックやバスの生産が優先された。乗用車の生産台数がトラック・バスを追い抜いたのは1968年であった。1960年の世界の生産台数は1649万台であったが、日本の生産台数は約76万台(内訳、乗用車17万台、トラック59万台、バス8千台)であった。1960年当時には、それまで三輪車や二輪車を生産していた鈴木自動車、富士重工、ダイハツ、東洋工業、本田などの企業が四輪車の生産に乗り出していた<ref name=Hokudai>小野浩、「[https://hdl.handle.net/2115/31994 戦後の日本の自動車産業の発展]」『經濟學研究』 1995年 45巻 1号 p.68-76, 北海道大学經濟學部</ref>。「マイカー元年」と言われた1966年には229万台<ref>曽穎、「[https://hdl.handle.net/10191/6407 日本自動車産業の外資政策史 : 草創期から戦後復興期まで]」『現代社会文化研究』 2007年 39巻 p.109-124, {{issn|1345-8485}}, 新潟大学大学院現代社会文化研究科</ref><ref name=diff>出典元、北海道大学、新潟大学、JAMA-日本自動車工業会で数値に開きあり。</ref>(内、乗用車98万台<ref> [http://www.jama.or.jp/lib/jamagazine/199912/03.html 「国民車構想とモータリゼーションの進展」]{{リンク切れ|date=2019年10月}}</ref><ref name=diff/>)でその内輸出は約26万台であった<ref name=Hokudai/>。1980年には約1千万台に達し米国を上回った<ref> 文部科学省[http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpaa198201/hpaa198201_2_006.html 「技術革新の進展とその成果」] </ref>。1980年の日本の自動車輸出台数は597万台であった<ref name=Hokudai/>。1991年には過去最高の約1325万台を生産したが、以降は1千万台前後で推移している<ref name=USDOT/>。輸出は1985年がピークで673万台であった<ref name=Hokudai/>。
* [http://www.jaf.or.jp/ 社団法人日本自動車連盟 (JAF)]

* [http://home.att.ne.jp/iota/number/plate/ ナンバープレートの管轄状況]
2009年には中国が1379万台で2位日本の793万台を大きく引き離し世界最大の自動車生産国となった。2013年は中国が2212万台、米国1105万台、日本963万台、[[ドイツ]]572万台、韓国452万台、[[インド]]388万台、[[ブラジル]]374万台、[[メキシコ]]305万台、[[タイ王国|タイ]]253万台、[[カナダ]]238万台、[[ロシア]]218万台となっている
<ref>[[国際自動車工業連合会]](OICA)[http://oica.net/category/production-statistics/] </ref>。自動車メーカーの国籍はともあれ、中国で突出した台数が生産されている。2013年の自動車生産台数の4台に1台は中国で生産された。

地域別でみるとEU27カ国では16カ国で1618万台生産されており、多い国はドイツ572万台、[[スペイン]]216万台、フランス174万台、英国160万台、[[チェコ]]113万台、[[スロバキア]]98万台などで、これら6カ国でEU生産の82%が生産された。その他の地域で約百万台規模の生産のある国は、[[トルコ]]113万台、[[インドネシア]]121万台である。[[BRICS]]の一員である[[南アフリカ共和国|南アフリカ]]では約50万台の生産があった<ref>日本自動車工業会 [http://www.jama.or.jp/world/world/world_t2.html 「世界各国/地域の四輪車生産台数」] </ref>。

=== 自動車保有(普及)台数 ===
第二次世界大戦による大量破壊の翌年の1946年における自動車登録台数は約5千万台<ref name=grid>[[:en:UNEP/GRID-Arendal]] [http://www.grida.no/publications/other/ipcc_tar/?src=/climate/ipcc_tar/wg3/099.htm Historic and Future Trends] </ref>で、1955年に1億台を超え、1967年には2億台、1979年には4億台、1986年には5億台となり、24年後の2010年には10億台を超えた<ref name=unep>United Nations Environment Programme UNEP [http://www.unep.org/transport/pcfv/PDF/Ghana_2012/VehiclePopulation_Trends.pdf Vehicle Population and International Trend Sep., 2012] </ref>。

この間に各国で[[旅客輸送|人]]・[[貨物輸送|物資輸送]]の主体が[[鉄道]]から自動車へと転換し、総人口の増加、自動車普及率の向上とも相まって自動車登録台数が飛躍的に増加していった。

{| class="wikitable" style="text-align:center"
|+
登録台数<ref name=unep/>・自動車保有率の推移
|-
! 年度||登録台数||[[世界人口]]<ref>特記ない限り人口は世界人口の頁より。</ref>||1台あたりの<br>人口||備考
|-
| 1945||0.5億台||23.5億人||47|| 人口は<br>[http://www.wolframalpha.com/input/?i=world+population+in+1945 World population in 1945]による。
|-
| 1955||1億台||27.7億人||27.7||
|-
| 1960||||30億人||24.4<ref name=econ>Joyce Dargay et al, Institute for Transport Studies, University of Leeds [http://www.econ.nyu.edu/dept/courses/gately/DGS_Vehicle%20Ownership_2007.pdf Vehicle Ownership and Income Growth, Wroldwide: 1960 - 2030] </ref>||
|-
| 1967||2億台||34.2億人||17.1||1966年の人口値
|-
| 1979||4億台||44.5億人||11.1||1980年の人口値
|-
| 1986||5億台||48.6億人||9.7||1985年の人口値
|-
| 2002||8億台||62.4億人||7.7<ref name=econ/>||
|-
| 2010||10億台||69億人||6.9||
|-
| 2030||20億台||83億人||4.2|| 17億台とする予測もある。その場合4.9人に1台。
|}
1台あたりの人口の数値は1960年と2002年のもの以外は登録台数の有効桁数を一桁で計算しているので、大まかな数値である。

[[ファイル:World vehicles per capita.svg|thumb|right|各国の1千人あたりの自動車台数(2009年)<br> {{legend|#002b00|601+}}
{{legend|#005500|501-600}}
{{legend|#008000|301-500}}
{{legend|#00aa00|151-300}}
{{legend|#00d400|101-150}}
{{legend|#00ff00|61-100}}
{{legend|#55ff55|41-60}}
{{legend|#80ff80|21-40}}
{{legend|#aaffaa|11-20}}
{{legend|#d5ffd5|0-10}}
]]
20世紀末からは中国の経済成長に伴い、中国での自動車生産も始まり21世紀初頭には米国に次ぐ自動車保有国となった。2010年の中国の自動車登録台数は前年比27.5%増と大幅な伸びを示しているが<ref name=unep/>、中国における人口あたりの普及率は未だに低く、さらなる増加が見込まれている。中国に並ぶ人口大国のインドでも経済成長が著しく大きく登録者台数を伸ばしているが自動車保有台数は中国の約3分の1である。中国についで増加台数の多い国はブラジルで2010年には250万台増加した<ref name=unep/>。

2012年末における世界の乗用車、トラック・バスを含む四輪車保有台数は約11億台で、6.3人に1台の保有率となっている。11億台の内訳は乗用車が7億7332万台、トラック・バスが3億4123万台で、乗用車の普及率は9.1人に1台となっている。自動車の普及の著しい北アメリカ、西ヨーロッパ、日本、[[オーストラリア|豪州]]では乗用車の普及率は約2人に1台であるが、米国に次ぐ自動車保有国である中国では人口あたりの乗用車保有率は約26人あたり1台である<ref name=jama2t1>日本自動車工業会 [http://www.jama.or.jp/world/world/world_2t1.html 「世界各国の四輪車保有台数(2012年末)」] </ref><ref name=jama2t2>日本自動車工業会 [http://www.jama.or.jp/world/world/world_2t2.html 「主要国の四輪車普及率」] </ref>。

参考までに二輪車([[自転車]]を除く)の保有台数(2011年または2012年)は全世界で約2億台から4億台<ref name=ICCT>International Council on Clean Transportation [http://www.theicct.org/sites/default/files/publications/EU_vehiclemarket_pocketbook_2013_Web.pdf European Vehicle Market Statistics - Pocketbook 2013] </ref>と推定されており、中国に約1億台(1台あたり13人、以下同)、インドネシアに約7598万台(3人/台)、タイ1924万台(4人/台)、[[台湾]]1514万台(1.5人/台<ref group="注">出典元に記載がないため、記載されている台数と台湾の頁の人口より算出。</ref>)、日本1199万台(11人/台)、マレーシア1059万台(3人/台)、イタリア858万台(7人/台)となっている<ref>日本自動車工業会 [http://www.jama.or.jp/world/world/world_2t4.html 「世界各国/地域の二輪車保有台数」] </ref>。

自動車の地域別保有台数を以下の表で示す<ref name=ICCT/>。
:なおICCTの2013年の報告書では自動車をLight-duty(軽量車両)とHeavy-duty(重量車両)に2分して集計している。米国の環境庁([[アメリカ合衆国環境保護庁|EPA]])によるLight-dutyの分類は車重8500[[ポンド (質量)|ポンド]](約3.8トン)以下の自動車であり<ref>EPA [http://www.epa.gov/oms/standards/weights.htm Vehicle Weight Classification] </ref>、ほぼ日本で普通免許で運転できる自動車に相当する。Heavy-dutyはバスや大型トラックといった業務用の車両と見なせる。前述した日本自動車工業会による乗用車とトラック・バスとの分類とは異なることに留意。

{| class="wikitable" style="text-align:center"
|+ 国・地域別の自動車保有台数 2010年実績と2030年予測 (単位:百万台)
|-
! || colspan="4" |2010年保有台数 ||colspan="4" |2030年予測||colspan="2" |対10年度増減率
|-
! ||軽量車||重量車||合計||シェア||軽量||重量||合計||シェア||軽量||重量
|-
| カナダ||19||3||22||2%||30||4||34||2%||59%||23%
|-
| 米国||231||12||'''243'''||24%||280||15||'''295'''||17%||21%||27%
|-
| メキシコ||22||3||25||2%||39||5||43||3%||75%||60%
|-
| 中南米||20||8||28||3%||37||14||51||3%||83%||74%
|-
| ブラジル||28||2||30||3%||50||3||53||3%||80%||33%
|-
| EU27カ国||239||35||'''274'''||27%||313||41||'''354'''||21%||31%||17%
|-
| EU外欧州||28||6||34||3%||60||8||69||4%||116%||40%
|-
| ロシア||34||6||40||4%||80||7||87||5%||136%||17%
|-
| 中国||59||17||76||7%||189||32||'''221'''||13%||221%||87%
|-
| 日本||58||17||75||7%||57||16||73||4%||-1%||-6%
|-
| 韓国||15||5||20||2%||29||11||40||2%||95%||116%
|-
| インド||15||5||20||2%||105||19||'''124'''||7%||600%||276%
|-
| アジアその他||40||18||58||6%||89||34||123||7%||122%||89%
|-
| 中近東(エジプトを含む)||26||7||33||3%||68||17||85||5%||161%||142%
|-
| アフリカ||21||10||31||3%||33||15||48||3%||56%||49%
|-
| オーストラリア||12||3||15||1%||19||3||23||1%||61%||16%
|-
| 合計||867||157||1024||100%||1,479||243||1,722||100%||71%||55%
|}

2010年の集計では米国と[[欧州連合|EU]]27カ国が2大自動車保有地域である。EU27カ国の大半は独・仏・英・伊・西(=スペイン)の5カ国であり、新車登録の75%はこの5カ国によるものである<ref name=ICCT/>。EU27カ国には世界の27%の2.7億台、米国には同24%の2.4億台があった。これに続くのが国土面積や人口で比較にならないが中国と日本である。それぞれ76百万台、75百万台で約7%のシェアであった。次は日本より人口が1割強多く最大の国土を持つ[[ロシア]]で保有台数は約4千万台であった。

2030年にかけては、EU27カ国および米国では2-3割の増加でそれぞれ3.5億台、3.0億台、中国は約3倍の2.2億台、インドは約6倍の1.2億台となると推定されている。ついでロシア87百万台、2010年比微減となると予想される日本の73百万台、1.8倍の53百万台となるブラジルなどが続く。経済成長の著しい韓国では2030年には普及率が日本など自動車先進国と並び倍増の4千万台となると予想されている。

=== 自動車社会ロサンゼルスの現状 ===
最多の保有台数(全4輪車1台あたり1.2人)である米国のなかでも保有率が高いのが[[ロサンゼルス]]である。なお米国の普及率を乗用車のみでみると1台あたり2.6人と他の自動車普及国がほぼ2.0人かそれ以下であるのに対して普及率が低くでている<ref name=jama2t2/>。これは米国では乗用車に分類されない[[ピックアップトラック|ピックアップ]]と呼ばれるトラックが自家用として広く普及しているためである。

自動車社会である[[ロサンゼルス郡 (カリフォルニア州)|ロサンゼルス郡]]は、面積が[[東京都]]の約4.6倍の約1万平方キロで、人口は東京都の約4分の3の約1千万人<ref>US Census Bureau [http://quickfacts.census.gov/qfd/states/06/06037.html Los Angeles County, California] </ref>で、約700万台(2008年末)の登録車両がある<ref>Los Angeles Almanac [http://www.laalmanac.com/transport/tr02.htm Vehicle Registrations] </ref>。運転出来ない若年層を考慮すると平均ではほぼ1人に1台の状態である。ロサンゼルス市にはかつて[[路面電車]]が走っていたが、20世紀半ばには廃止され([[アメリカ路面電車スキャンダル]])1940年のパサデナフリーウェイ(Arroyo_Seco_Parkway)を皮切りに高速道路が整備され自動車社会へと変わっていった。これにより街自体が人の移動を車によるものとの前提で開発され、広大な駐車場を備えた[[スーパーマーケット]]や[[ショッピングセンター]]が近郊の[[小売|小売業]]を駆逐していき、ちょっとした買い物でも車で移動せざるを得ない状態になっている。1990年代には地下鉄([[ロサンゼルス郡都市圏交通局]])の開業が始まったが、整備状況は限られている。

ロサンゼルス郡では[[高速道路]]網(Freeway)も張り巡らされており、多くの一般道も片側3車線前後であるが、朝夕の通勤退社時には高速一般道ともに大きく渋滞している。道路の整備は米国の他州はもちろん各国に比べ進んではいるが、[[地下鉄]]や[[バス (交通機関)|バス]]などの[[公共交通機関]]が未熟な為に約84%が通勤に乗用車を運転しており公共機関の利用者は6%に留まり、全米で最悪の交通渋滞との評価が下されている<ref>USA Today [http://www.usatoday.com/story/money/cars/2013/05/04/worst-traffic-cities/2127661/ Ten cities with the worst traffic] </ref><ref group="注">Google Mapでロサンゼルスの午前6時版から午前9時半、午後3時から午後7時の間のトラフィックを見るとピーク時には大半の高速道路で渋滞が見られる。</ref>。

[[カリフォルニア州]]ではガソリン価格は米国平均よりも高く、[[自動車排出ガス規制|排気ガス規制]]もより厳しい独自のものを設定しており、より小型の車やハイブリッドカーが選択される傾向が他州よりも強い。

=== 日本の自動車保有台数 ===
日本には1898年(明治31年)ごろから自動車が輸入されはじめ、[[道路法]]が成立した1919年(大正8年)には自動車台数は5000台に達していた{{sfnp|武部健一|2015|p=163}}。[[大正時代]]の[[関東大震災]]を挟んで急増し、1926年(大正15年)で3万2000台に達し、1932年(昭和7年)には10万台を超えた{{sfnp|武部健一|2015|p=172}}。1945年(昭和20年)における二輪車・小型特殊車両を除いた自動車保有台数は、14万台弱、保有率は0.2%に過ぎなかったが{{sfnp|浅井建爾|2015|p=56}}{{sfnp|浅井建爾|2001|pp=260-261}}、敗戦後の自動車の普及はめざましく、1950年(昭和25年)には35.9万台、1955年(昭和30年)には92.2万台となる{{sfnp|浅井建爾|2001|pp=260-261}}。1956年(昭和31年)には戦後の復興を遂げ「もはや戦後ではない」といわれるようになり、前年1955年には[[経済産業省|通産省]]が「国民車構想」を発表した。1958年(昭和33年)に[[スバル・360]]が発売され60年代前半には各社から軽自動車が発売された。1960年(昭和35年)は230万台、1965年(昭和40年)には724万台となり、わずか10年間で約8倍に急増した{{sfnp|浅井建爾|2015|p=56}}{{sfnp|浅井建爾|2001|pp=260-261}}。1966年(昭和41年)は「マイカー元年」と呼ばれ[[トヨタ・カローラ]]・[[日産・サニー]]などの大衆車が発売され自動車が普及し始めた<ref>日本自動車工業会 [http://www.jama.or.jp/lib/jamagazine/199912/03.html 「国民車構想とモータリゼーション」] </ref>。

1966年(昭和41年)のトラック・バスなどの大型車も含めた自動車保有台数は約884万台で、翌1967年には1095万台、1971年(昭和46年)に2045万台、1982年(昭和57年)に4130万台、1997年(平成10年)に6984万台となった以降は微増となり<ref>資源エネルギー庁 エネルギー白書2006 [http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2006html/2-1-2.html 「第212-3-12 車種別保有台数の推移」] </ref>2004年以降は7500万台前後で推移し、2014年は2輪車を除いた保有台数は7721万台、保有率は60.6%であった<ref name=airia>自動車検査登録情報協会 [http://www.airia.or.jp/number/pdf/03_1.pdf 「自動車保有台数推移表」] </ref>{{sfnp|浅井建爾|2015|p=57}}。この保有台数は国別では米国、中国に次ぐ3番目で、人口あたりの保有台数では米国や西ヨーロッパ諸国とほぼ同率である。2030年にかけては海外では引き続き増加していくが、日本では微減すると予想されている<ref name=ICCT/>。

60年代後半からの急激な自動車の増加に対して道路整備は立ち遅れ、各地で交通渋滞や交通事故の増加が問題となった。また排気ガスによる大気汚染も70年代に深刻化した。日本においては1970年代から高速道路(高規格幹線道路)の整備が始まったが、急増する保有台数に追いついておらず、日本の高速道路の整備状況は米国とはもちろん、ドイツ、フランス、中国、イギリス、韓国よりも低い水準である<ref>経済産業省 [http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoryu/butsuryu_shisaku/pdf/001_03_02.pdf 「物流を取り巻く現状について」平成24年11月6日」] </ref>。

なお二輪車では、[[原動機付自転車|原付]]を除く125cc超の二輪車は1966年には約88万台であったが<ref name=airia/>、2013年には125cc超が4倍の約354万台となった他、原付第一種が666万台、第二種が163万台で二輪車の合計は1182万台であった<ref>日本自動車工業会 [http://www.jama.or.jp/industry/two_wheeled/two_wheeled_3t1.html 「二輪車保有台数」] </ref>。

2013年の四輪と二輪の合計は8791万台で国民1.4人に1台の普及率となっている。

20世紀末から日本の登録台数は頭打ちであるが、小型車、特に軽自動車がシェアを拡大してきている。軽自動車は技術の進歩に加えて、従来の取り回しの良さと経済性で弱点が少ないことから、90年代以降着実に台数を伸ばしている。

==== 都道府県別の自動車普及率 ====
2013年の日本の自動車普及率は対人口では1台あたり1.7人、乗用車に限ると2.1人であり、これは100人あたり59.7台、46.6台となる<ref name=jama2t2/>。以上は自家用、業務用、軽から大型まですべてを含む数値である。

2013年の世帯あたりの自家用乗用車(軽自動車も含む)の普及率をみると、日本平均は1世帯あたり1.08台で各家庭にほぼ1台の割合となっている。世帯あたりの人数は、2010年では最大が山形県の3.16人で最低が[[北海道]]の2.27人で全国平均は2.59人であった<ref>厚生労働省 [http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21-01.pdf 「国民生活基礎調査(平成22年)の結果から」] </ref>。

世帯ベースで各地域をみると保有台数の多い県は上位10地域で、福井県(1.77台)、富山県(1.73台)、群馬県(1.68台)、山形県(1.68台)、[[岐阜県]](1.65台)、栃木県(1.65台)、茨城県(1.63台)、長野県(1.59台)、福島県(1.56台)、新潟県(1.56台)などで、その他の大半の県で1台以上となっている。1台を切るのは5地域のみで、少ない方から東京都(0.48台)、大阪府(0.68台)、神奈川県(0.75台)、京都府(0.86台)、兵庫県(0.94台)と、当然ではあるが、公共輸送機関の発達した[[人口密度]]の高い([[過密|人口都市集中]]の激しい)都道府県で保有台数が少なくなっている<ref>日本自動車工業会 [http://www.jama.or.jp/industry/four_wheeled/four_wheeled_3g4.html 「都道府県別自家用乗用車の100世帯当たり保有台数(2013年3月末)」] </ref>。なおこの5都府県に続いてすくないのが北海道(1.008台)、千葉県(1.02台)であった。国土面積の約2割以上を占める広大な北海道で世帯当たりの保有数が少ないのは世帯あたりの人数が最小であることも影響している。

=== 登録台数予測 ===
将来の登録台数予測はいくつかの機関から出されており、2030年の自動車登録台数は17億から20億台との推定が出ている<ref name=econ/>。自動車は2030年にかけて中国、中近東、インドで大きく普及し、総普及台数は17億台に達すると見られている<ref name=ICCT/>。2050年には25億台となるとの予測も出されている<ref name=huff>Huffingtonpost [http://www.huffingtonpost.ca/2011/08/23/car-population_n_934291.html Number of cars worldwide surpasses 1 billion.] </ref>。

二輪車も2010年の約4億台から2030年には9億台へ達すると推定されている<ref name=ICCT/>。

仮に中国で乗用車の普及率が先進国並の2人に1台となると2012年時点の人口13.4億人では6.7億台となり、約6億台が増加することとなる。これは2013年の世界の自動車生産実績8730万台の約7年分に相当し、2013年の中国の自動車生産実績2212万台の27年分である。

== 自動車産業 ==
{{main|自動車産業}}

全世界での自動車生産台数は非常に大きく、しかも自動車を構成する数多くの部品を製造するには非常に多くの人員が必要となる事から、自動車は巨大[[産業]]である。自動車産業内での企業間の競争は激しく、価格競争の激化や経営内容悪化や淘汰などが起き、1980年代以降、[[多国籍企業]]グループへの集約が進んでいる。

自動車製造には数万点におよぶ部品(鋼材、[[ガラス]]、[[座席]]、[[電子機器]]、[[ねじ]]など)が必要であり、消費者からは直接的には見えない諸企業(鉄鋼産業・[[ガラス]]産業・[[合成樹脂]]メーカー、[[電子機器]]メーカー、ソフトウェア製造業まで、数え切れないほどの企業)の売上にも影響を及ぼし、製造には大規模な設備投資が必要となることが多く、その企業や工場だけでなく、協力会社なども集まってきて[[企業城下町]]を形成するなど、自動車企業・工場の立地場所周辺への経済的効果は非常に大きいといえる。

近年はグローバル競争が激しくなってきていることや、年々排ガスや安全の基準が厳しくなっていること、自動運転や電気自動車の研究開発など、個別の企業でそれらに対処するのは難しくなってきているため、M&Aや提携をするケースが増えている。

=== 自動車ブランド・グループ ===
{{Imageframe|caption ='''著名な自動車ブランドの創設者たち'''
| content = {{image array|perrow = 5|width=100|height=150|text=y
| image1 = Carl-Benz coloriert.jpg
| caption1 =[[カール・ベンツ|K. ベンツ]]([[メルセデス・ベンツ]])
| image2 = Armand Peugeot.jpg
| caption2 =[[アルマン・プジョー|A. プジョー]]([[プジョー]])
| image3 = Louis Renault en 1936.jpg
| caption3 =[[ルイ・ルノー (実業家)|L. ルノー]]([[ルノー]])
| image4 = Agnelli.jpg
| caption4 = [[ジョヴァンニ・アニェッリ (シニア)|G. アニェッリ]]([[フィアット]])
| image5 = Horch.gif
| caption5 =[[:en:August Horch|A. ホルヒ]]([[アウディ]])
| image6 = Henry ford 1919.jpg
| caption6 = [[ヘンリー・フォード|H. フォード]]([[フォード・モーター|フォード]])
| image7 = Starley-Rover bicycle.jpg
| caption7 = [[ジョン・ケンプ・スターレー|J. K. スターレー]]([[ローバー (自動車)|ローバー]])
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| caption8 = [[ヘンリー・ロイス|H. ロイス]]([[ロールス・ロイス]])
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| caption9 = [[エットーレ・ブガッティ|E. ブガッティ]]([[ブガッティ]])
| image10 = Enzo Ferrari - Wheel of a racing car.jpg
| caption10 = [[エンツォ・フェラーリ|E. フェラーリ]]([[フェラーリ]])
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| caption11 = [[豊田喜一郎]]([[トヨタ自動車|トヨタ]])
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| caption12 =[[鮎川義介]]([[日産自動車|日産]])
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| caption13 = [[フェルディナント・ポルシェ|F. ポルシェ]]([[ポルシェ]])
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| caption14 = [[本田宗一郎]]([[本田技研工業|ホンダ]])
| image15 = Chung Ju-yung (Cropped).jpg
| caption15 = [[鄭周永]]([[現代自動車|ヒュンダイ]])
}}}}
自動車ブランド・メーカーや自動車製造者についての詳細な情報は、
*「[[:Category:自動車メーカー・ブランド]]」
*「[[自動車製造者の一覧]]」
*「[[自動車の車種名一覧]]」を参照。
{{-}}

==== 代表的な自動車グループ ====
[[2022年]]現在は以下の通り。
{| class="wikitable" style="text-align:left; font-size:small"
|-
!グループ名
!所属する企業・ブランド
!所属はしていないが資本関係の深い企業・グループ
|-
![[トヨタグループ]]
|[[トヨタ自動車]]/[[レクサス]]/[[日野自動車]]/[[ダイハツ工業]]
|[[SUBARU]]/[[スズキ (企業)|スズキ]]/[[いすゞ自動車]]
|-
![[ルノー・日産・三菱アライアンス]]
|[[ルノー]]/[[日産自動車]]/[[三菱自動車工業]]/[[インフィニティ (日産自動車)|インフィニティ]]/[[ダットサン]]/[[ルノーサムスン自動車|ルノーサムスン]]/[[アルピーヌ]]/[[ダチア (自動車)|ダチア]]/[[ラーダ (自動車)|ラーダ]]
|
|-
![[フォルクスワーゲン・グループ]]
|[[フォルクスワーゲン]]/[[アウディ]]/[[ポルシェ]]/[[ランボルギーニ]]/[[シュコダ・オート]]/[[セアト]]/[[ベントレー]]/[[ブガッティ]]/[[スカニア]]/[[MAN Truck & Bus|MAN]]
|
|-
![[ステランティス]]
|[[フィアット]]/[[アルファロメオ]]/[[アバルト]]/[[ランチア]]/[[マセラティ]]/[[クライスラー]]/[[ジープ]]/[[ダッジ]]/[[ラム・トラックス]]/[[プジョー]]/[[シトロエン]]/[[DSオートモビルズ|DS]]/[[オペル]]/[[ボクスホール]]
|[[フェラーリ]]
|-
![[ゼネラル・モーターズ|GMグループ]]
|[[シボレー]]/[[ビュイック]]/[[キャデラック]]/[[GMC]]
|[[上汽通用五菱汽車]]
|-
![[現代自動車グループ|現代-起亜グループ]]
|[[現代自動車]]/[[起亜自動車]]/[[ジェネシス (ヒョンデ)|ジェネシス]]/[[アイオニック (ヒョンデ)|アイオニック]]
|
|-
![[フォード・モーター|フォード]]
|[[フォード・モーター|フォード]]/[[リンカーン (自動車)|リンカーン]]
|
|-
![[BMW]]
|[[BMW]]/[[ミニ (BMW)|MINI]]/[[ロールス・ロイス]]
|
|-
![[タタ・グループ]]
|[[タタ・モーターズ]]/[[ジャガーランドローバー]]/[[タタ大宇]]/[[タタ・イスパノ]]
|[[マルコポーロ_(企業)|マルコポーロ]]
|-
![[浙江吉利控股集団|吉利]]
|[[吉利汽車]]/[[上海華普汽車]]/[[ボルボ・カーズ]]/[[プロトン (自動車)|プロトン]]/[[ロータス・カーズ]]/テラフージア/ロンドンEVカンパニー/yuan cheng auto
|[[ダイムラー (自動車メーカー)|ダイムラー]]
|}

=== 乗用車の世界シェア ===
2017年時点。出典:<ref>[https://focus2move.com/world-car-group-ranking/ Renault Nissan Aliance Finaly Tops The World' Ranking]</ref><ref>[https://focus2move.com/world-cars-brand-ranking-2016/ World Car Brand Ranking in 2016-Top50] Focus 2 move</ref>。

==== グループ別 ====
* 1位 [[ルノー=日産アライアンス|ルノー・日産・三菱アライアンス]] - 11.3%
* 2位 [[フォルクスワーゲングループ]] - 11.2%
* 3位 [[トヨタグループ]] - 10.9%
* 4位 [[現代自動車グループ|現代-起亜グループ]] - 7.3%
* 5位 [[ゼネラル・モータース|GM]] - 6.6%
* 6位 [[フォード]] - 6.0%
* 7位 [[ホンダ]] - 5.3%
* 8位 [[フィアット・クライスラー・オートモービルズ|FCA]] - 5.0%
* 9位 [[グループPSA|PSA]] - 4.8%
* 10位 [[スズキ (企業)|スズキ]] - 3.5%
* 11位 [[ダイムラー (自動車メーカー)|ダイムラー]] - 2.9%
* 12位 [[BMW]] - 2.5%
* 13位 [[浙江吉利控股集団|吉利]] - 2.3%
* 14位 [[上海汽車]] - 2.2%
* 15位 [[マツダ]] - 1.8%
* 16位 [[長安汽車]] - 1.6%
* 17位 [[タタ・グループ]] - 1.4%
* 18位 [[東風汽車集団]] - 1.3%
* 19位 [[上汽通用五菱汽車]] - 1.2%
* 20位 [[北京汽車]] - 1.1%

==== ブランド別 ====
* 1位 [[トヨタ]]{{flagicon|JPN}} - 9.2%
* 2位 [[フォルクスワーゲン]]{{flagicon|GER}} - 7.1%
* 3位 [[フォード]]{{flagicon|USA}} - 6.8%
* 4位 [[日産自動車|日産]]{{flagicon|JPN}} - 5.4%
* 5位 [[ヒュンダイ]]{{flagicon|KOR}} - 5.3%
* 6位 [[ホンダ]]{{flagicon|JPN}} - 5.2%
* 7位 [[シボレー]]{{flagicon|USA}} - 4.5%
* 8位 [[起亜]]{{flagicon|KOR}} - 3.6%
* 9位 [[ルノー]]{{flagicon|FRA}} - 2.6%
* 10位 [[メルセデス・ベンツ]]{{flagicon|GER}} - 2.5%
* 11位 [[プジョー]]{{flagicon|FRA}} - 2.2%
* 12位 [[BMW]]{{flagicon|GER}} - 2.2%
* 13位 [[アウディ]]{{flagicon|GER}} - 2.0%
* 14位 [[マツダ]]{{flagicon|JPN}} - 1.7%
* 15位 [[フィアット]]{{flagicon|ITA}} - 1.7%
* 16位 [[ビュイック]]{{flagicon|USA}} - 1.6%
* 17位 [[ジープ]]{{flagicon|USA}} - 1.6%
* 18位 [[スズキ (企業)|スズキ]]{{flagicon|JPN}} - 1.5%
* 19位 長安汽車{{flagicon|CHN}} - 1.5%
* 20位 [[マルチ・スズキ・インディア]]{{flagicon|JPN}}/{{flagicon|IND}} - 1.5%

=== 関連業種 ===
<!-- 詳細な話は長くなるので、要点のみを記述。詳細な話は、各種主要な項目にて行うこと。 -->
* 給油([[ガソリンスタンド]])
* 修理([[レストア]])
* [[中古車]]の販売、輸出({{ill2|自動車輸出国一覧|en|List of countries by vehicle exports}}、{{ill2|日本の中古車輸出|en|Japanese used vehicle exporting}})
* 洗浄({{ill2|オート・ディテーリング|en|Auto detailing}})
* [[運輸業]](物流、[[旅客]])

== 自動車関連の専門職 ==
自動車関連の仕事・職業のひとつに[[自動車整備士]]がある。
各国で状況は異なるので、[[自動車整備士]]という記事で詳しく説明する。

{{Main|自動車整備士}}
<!--
この記事ではなく、[[自動車整備士]]の記事で説明すべき。

=== 自動車整備士の種類 ===
自動車整備士の種類は、一級、二級、三級及び特殊整備士に分類されます。それぞれの級に要求される技能のレベル、整備士の種類は次のとおり<ref>[https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk9_000011.html 自動車整備士になるには] 国交省</ref>。

# 一級自動車整備士 《高度な自動車の整備ができること。》
#* 一級大型自動車整備士
#* 一級小型自動車整備士
#* 一級二輪自動車整備士
# 二級自動車整備士 《一般的な整備ができること。》
#* 二級ガソリン自動車整備士
#* 二級ジーゼル自動車整備士
#* 二級自動車シャシ整備士
#* 二級二輪自動車整備士
# 三級自動車整備士 《各装置の基本的な整備ができること。》
#* 三級自動車シャシ整備士
#* 三級自動車ガソリン・エンジン整備士
#* 三級自動車ジーゼル・エンジン整備士
#* 三級二輪自動車整備士
# 特殊整備士 《各々の分野で専門的な知識・技能を有すること。》
#* 自動車タイヤ整備士
#* 自動車電気装置整備士
#* 自動車車体整備士
-->

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Reflist|group="注"}}
=== 出典 ===
{{Reflist|2|refs=
<!--※以下は辞事典。-->
<!--
<ref name=kb>{{Cite web |title=自動車 |url=https://kotobank.jp/word/自動車-74374 |publisher=[[コトバンク]] |accessdate=2020-05-04 }}</ref>
-->
<ref name="kb泉">{{Cite web|和書|title=自動車 |url=https://kotobank.jp/word/自動車-74374 |author=[[小学館]]『デジタル[[大辞泉]]』|publisher=コトバンク |accessdate=2020-05-04 }}</ref>
<ref name="kb林">{{Cite web|和書|title=自動車 |url=https://kotobank.jp/word/自動車-74374 |author=[[三省堂]]『[[大辞林]]』第3版 |publisher=コトバンク |accessdate=2020-05-04 }}</ref>
<ref name="kb平百">{{Cite web|和書|title=自動車 |url=https://kotobank.jp/word/自動車-74374 |author=[[日立デジタル平凡社]]『[[世界大百科事典]]』第2版 |publisher=コトバンク |accessdate=2020-05-04 }}</ref>
<ref name=kb-Brit>{{Cite web|和書|title=自動車 |url=https://kotobank.jp/word/自動車-74374 |author=『[[ブリタニカ百科事典|ブリタニカ国際大百科事典]] 小項目事典』|publisher=コトバンク |accessdate=2020-05-04 }}</ref>
<ref name=kb-MyPedia>{{Cite web|和書|title=自動車 |url=https://kotobank.jp/word/自動車-74374 |author=[[平凡社]]『[[百科事典マイペディア]]』|publisher=コトバンク |accessdate=2020-05-04 }}</ref>
<ref name=kb-Nipp>{{Cite web|和書|title=自動車 |url=https://kotobank.jp/word/自動車-74374 |author=[[高島鎮雄]]、[[伊東和彦]]、小学館『[[日本大百科全書]](ニッポニカ)』|publisher=コトバンク |accessdate=2020-05-04 }}</ref>
<!--
<ref name="kb泉_普通乗用自動車">{{Cite web |title=普通乗用自動車 |url=https://kotobank.jp/word/普通乗用自動車-669338 |author=小学館『デジタル大辞泉』|publisher=コトバンク |accessdate=2020-05-04 }}</ref>
<ref name="kb泉_普通乗用車">{{Cite web |title=普通乗用車 |url=https://kotobank.jp/word/普通乗用車-669339 |author=小学館『デジタル大辞泉』|publisher=コトバンク |accessdate=2020-05-04 }}</ref>
-->
<!--
<ref name=OED_automobile>{{Cite web |title=automobile |url=https://www.etymonline.com/word/automobile#etymonline_v_45463 |publisher=[[オンライン・エティモロジー・ディクショナリー|Online Etymology Dictionary]] |accessdate=2020-05-04 }}</ref>
<ref name=OED_motorcar>{{Cite web |title=motorcar |url=https://www.etymonline.com/word/motorcar#etymonline_v_45077 |publisher=Online Etymology Dictionary |accessdate=2020-05-04 }}</ref>
<ref name="OED_vehicle (n.)">{{Cite web |title=vehicle (n.) |url=https://www.etymonline.com/search?q=motor+vehicle |publisher=Online Etymology Dictionary |accessdate=2020-05-04 }}</ref>
<ref name=OED_car>{{Cite web |title=car |url=https://www.etymonline.com/word/car#etymonline_v_5353 |publisher=Online Etymology Dictionary |accessdate=2020-05-04 }}</ref>
-->
<ref name="nippo" >[https://kotobank.jp/word/%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A-74374 日本大百科全書(ニッポニカ) 自動車]</ref>
}}


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
*<!--あさい-->{{Cite book |和書 |author=浅井建爾(''cf.'' PHP[https://www.php.co.jp/fun/people/person.php?name=%E6%B5%85%E4%BA%95%E5%BB%BA%E7%88%BE&p=MzgyMA==])|date=2001-11-06 |title=道と路がわかる辞典 読む・知る・愉しむ |edition=初版 |publisher=[[日本実業出版社]] |oclc=122921520 |ref={{SfnRef|浅井建爾|2001}} }}ISBN 4-534-03315-X、ISBN 978-4-534-03315-4。
* [[宇沢弘文]]著『自動車の社会的費用』岩波書店[岩波新書]、1974年発行、ISBN 4-00-411047-5。
* {{Cite book |和書 |author=浅井建爾|date=2015-10-09 |title=日本の道路がわかる辞典 知れば知るほどおもしろい |edition=初版 |publisher=日本実業出版社 |oclc=931928195 |ref={{SfnRef|浅井建爾|2015}} }}ISBN 4-534-05318-5、ISBN 978-4-534-05318-3。
*<!--たけべ-->{{Cite book |和書 |author=武部健一(''cf.'' 日本の研究.com[https://research-er.jp/researchers/view/603220])|date=2015-05-23 |title=道路の日本史 |publisher=[[中央公論新社]] |series=[[中公新書]] 2321 |oclc=1041276556 |ref={{SfnRef|武部健一|2015}} }}ISBN 4-12-102321-8、ISBN 978-4-12-102321-6。


== 関連項目 ==
[[Category:自動車|*]]
{{関連項目過剰|date=2021年10月}}
[[Category:道路交通|しとうしや]]
{{Sisterlinks|commons=Automobile}}
[[Category:大気汚染|しとうしや]]
;構造・基本性能等
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;組織
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:* [[日本自動車連盟]](JAF)
:* [[日本自動車工業会]]
:* [[日刊自動車新聞]]
:* [[日本道路交通情報センター]](JARTIC)
:* [[交通安全協会]]
;法規制等
:* [[リコール (自動車)]]
:* [[自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律]](自動車運転死傷行為処罰法)
:* [[工業製品の自主規制]]
:* [[自動車排出ガス規制]]
:* [[自動車教習所]]
:** [[運転免許試験場]]
:** [[運転免許]]
:*** [[日本の運転免許]]
;各国別
:* [[日本車]]
:* [[アメリカ車]]
:* [[イギリス車]]
:* [[イタリア車]]
:* [[韓国車]]
:* [[スウェーデン車]]
:* [[ドイツ車]]
:* [[フランス車]]
:* [[中国の自動車産業]]
;各種一覧
:* [[自動車用語一覧]]
:* [[自動車製造者の一覧]]
:* [[自動車の車種名一覧]]
:* [[乗り物をあらわす記号と絵文字]]


== 外部リンク ==
{{Link FA|eo}}
サイト
{{自動車}}
* [http://www.jama.or.jp/ 一般社団法人日本自動車工業会(JAMA)]
* [http://www.jaf.or.jp/ 一般社団法人日本自動車連盟(JAF)]
*[http://www.jahfa.jp/ 特定非営利活動法人日本自動車殿堂(JAHFA)]


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2024年10月7日 (月) 22:36時点における最新版

現代高速道路を実際に走る 数々の自動車の状況。乗用車(数名程度の人を乗せて走るための車)が圧倒的に多い。乗用車の群れの中に、トラック(貨物自動車)タンクローリーバスなどがいくらか混じる。ニュージーランド、2019年
スーパーマーケット駐車場に客が駐車した多数の乗用車。日用品買い物のために使われている自動車の例。アメリカ、2010年
観光バスの例。多くの人を運べる自動車。千葉県、2008年

(じどうしゃ、英: automobilemotorcarmotor vehiclecar)は、原動機の動力によって車輪を回転させ、軌条架線を用いずに上を走る[1][2][3][4][5][6]。広義には自動二輪車オートバイ)も含むが、本項では四輪自動車について述べる。

概要

[編集]

自動車は、大辞泉では原動機の動力によって車輪を回転させ、軌条架線を用いず上を走る、と説明されている。 角川1989年国語辞典には「発動機の動力で軌道なしに走る四輪車」と記載されている[7]

自動車は、18世紀蒸気機関を用いた蒸気自動車として登場し、19世紀にはイギリスフランス都市間を移動するためのバスに用いられるようになっていた。19世紀後半、1870年代から1880年代にかけてはオーストリアドイツガソリン内燃機関を用いた自動車の制作や特許取得が行われた。1896年米国ヘンリー・フォードもガソリン自動車を開発し、1903年に自分のを冠したフォード・モーター社を設立し、まずは2気筒エンジンの小さな車の製造・販売を開始、1905年には4気筒エンジン車を販売開始、1908年には改良のうえ、価格も比較的安く設定したフォード・モデルTを発売し、大人気となった。モデルTは1909年の1年間だけでも1万台を超える数が売れ、米国で急速に自動車が普及してゆくことになる。米国ではそれまで街の大通りを走る車と言えば(裕福な人々が所有し、御者付きの)馬車ばかりだったのだが、その後 わずか10年ほどのうちに馬車の所有者たちはそれを自動車へと換えてゆき、米国の通りの景色は一変することになった。1910 - 1920年代には安価な大衆車も普及しはじめた。→#歴史

自動車は基本的には、貨物を運ぶための実用道具として用いられるものであり、交通手段の一つとして通勤通学、客の送迎、顧客先訪問、の際に使用される事がある。貨物輸送に関してはトラック(貨物自動車)等を用いて、多種多様な荷物が運ばれており、鉄道から駅への輸送しかできないのに対して、自動車は戸口から戸口へ(=建物から建物へ)と輸送できるという特徴がある[6]。→#自動車の利用

また自動車は、実用性を離れて、愛着の対象となって趣味的に所有されたり[6]、運転を楽しむため(スポーツ・ドライビングやツーリング)に用いられたり、整備すること("機械いじり")を楽しむために用いられることもある。また高級車の場合ステータスシンボルとして利用される場合などもある。→#自動車文化

自動車は世界中で大量に普及したため、大気汚染の原因となったり、その石油資源の消費量によって石油危機時のリスク要因となったり、道路上の自動車の過密状態などの問題を引き起こしている[6]。課題の解決に向けた努力も続けられており、大気汚染防止のために行政は排出ガス規制を行い、自動車メーカーは消費する石油を減らすこと、つまり燃費の向上(省燃費エンジンの開発)を行い、電気自動車ハイブリッド・カー水素自動車などの開発・販売も行われている。

専用の軌道を必要としないことから、経路と進路の自由度が高いという特徴がある。 自動車を動かすこと・操ることを運転と言い、ほとんどの国で、公道での自動車の運転には運転免許が必要とされている。自動車の最初期の段階からすでに運転を誤る事故(交通事故)が発生していた。自動車によって、怪我をさせられたり命を失ってしまう人やその家族という被害者が生じ、同時に運転者が加害者として生きていかなければならなくなることは、自動車普及後の社会が抱え続けている重い課題のひとつである。最近では単純な自動運転技術を超える、本格的な人工知能と高度なセンサー類を用いて自律走行が可能な自動運転車も研究されており、AIならば人間が運転するよりも事故率が劇的に減るであろうと期待されてもいて、一部ではすでに(社会実験的な)導入が開始されており、世界での本格的な普及開始の時期が近付いている。→#負の影響

自動車の生産は、部品となる様々な工業製品があってはじめて可能となるので、他の様々な工業の振興、一次的工業品の製造とも関連する[6]。その規模の大きさ、影響の大きさによって、政府にとっては自動車の製造は(一国の)経済を支える重要な産業となりうる。現在のところ、一握りの先進国が自動車の生産を独占してしまっているような状況にある[6]。多くの開発途上国の政府が、自動車製造を行うために懸命の努力を行っている(例えば、先進国の自動車メーカーや政府と交渉し、自動車を輸入するだけでなく、自国内に製造工場などを設けさせる努力を続けている)のは、経済的な影響が大きいからである[6]。→#自動車産業

公共交通機関の発達していない田舎などでは特に一人当たりの所有率が一般的に高い[要出典]。→#自動車の普及

歴史

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フランス陸軍の技術大尉が1760~70年代に開発したキュニョーの砲車のレプリカ

蒸気自動車

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最初の自動車は蒸気機関で動く蒸気自動車で、1769年フランス陸軍の技術大尉ニコラ=ジョゼフ・キュニョーが製作したキュニョーの砲車であると言われている[8]。この自動車は前輪荷重が重すぎて旋回が困難だったため、時速約3キロしか出なかったにもかかわらず、パリ市内を試運転中に塀に衝突して自動車事故の第一号となった[9][8]

イギリスでは1827年ごろから定期バスとして都市部および、都市間で広く用いられ、1860年ごろにはフランスでも用いられるようになった。1885年に、フランスのレオン・セルボレが開発し1887年に自動車に搭載したフラッシュ・ボイラーにより蒸気自動車は2分でスタートできるまでに短縮された。1900年ごろにはアメリカ合衆国で、石炭の代わりに石油を使った蒸気自動車が作られ、さらに普及していった。この頃は蒸気自動車の方がガソリン自動車よりも騒音が少なく運転が容易だった。アメリカ合衆国では1920年代後半まで蒸気自動車が販売されていた。

1865年にイギリスで赤旗法が施行された。当時普及しはじめた蒸気自動車は、道路を傷め馬を驚かすと敵対視されており、住民の圧力によってこれを規制する「赤旗法」が成立したのである。この法律により、蒸気自動車は郊外では時速4マイル(6.4 km/h)、市内では時速2マイル(3.2 km/h)に速度を制限され、人や動物に予告するために、赤い旗を持った歩行者が先導しなければならなくなった。その結果、イギリスでの蒸気自動車の製造・開発は、この赤旗法が廃止される1896年まで停滞することになり、それに続くガソリン自動車の開発においても、ドイツやフランスが先行する事になる。

日本では1904年明治37年)に、電気技師の山羽虎夫が制作した蒸気自動車が最初で、これが日本産自動車の第1号だといわれている[10][8]

ガソリン自動車

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初期のガソリン自動車、1885年型ベンツ。3輪である。
同じく初期のガソリン自動車のマルクスカー(1888年)

1870年ユダヤ系オーストリア人ジークフリート・マルクス(Siegfried Samuel Marcus)によって初のガソリン自動車「第一マルクスカー」が発明された。1876年ドイツ人ニコラウス・オットーが石炭ガスで動作する効率的な内燃機関オットーサイクルを発明すると、ゴットリープ・ダイムラーがこれを液体燃料を用いるガソリンエンジンへと改良して二輪車や馬車に取り付け、走行試験を行った。1885年にダイムラーによる特許が出されている。1885年、ドイツのカール・ベンツは、ダイムラーとは別にエンジンを改良して、車体から設計した3輪自動車をつくった[11]。ベンツ夫人はこの自動車を独力で運転し、製造者以外でも訓練さえすれば運転できる乗り物であることを証明した。ベンツは最初の自動車販売店を作り、生産した自動車を数百台販売した。また、ダイムラーも自動車会社を興した。現在、ガソリン式自動車の発明者はダイムラーとベンツの両者とされることが多い。

1898年(明治31年)には、フランスから日本に輸入されたガソリン自動車「パナール・ルヴァッソール」が、日本国内最初の自動車として登場した[12]

日本国産のガソリン自動車は、1907年(明治40年)に誕生した「タクリー号」が最初であった[10][8]。名称の由来は、道を「がたくり、がたくり」と音を立てて走ることから[12]

蒸気・ガソリン・電気の3方式並立の時代からガソリン車時代へ

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19世紀の自動車は手作りであるため非常に高価なものであり、貴族富裕層だけが所有できるものであった。そして彼らは自分たちが持っている自動車で競走をすることを考えた。このころに行われた初期の自動車レースで活躍したのが、ルノープジョーシボレーフォードといった現在も残るブランドたちであった。このころはまだガソリン自動車だけでなく蒸気自動車や電気自動車も相当数走っており、どの自動車が主流ということもなかったが、1897年フランスでの自動車レースでガソリン自動車が蒸気自動車に勝利し、1901年にはアメリカのテキサス州で油田が発見されてガソリンの供給が安定する一方、当時の電気自動車や蒸気自動車は構造上の問題でガソリン自動車を超えることができず、20世紀初頭には急速に衰退していった[13]

共有、個人所有、シェアリングの歴史

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共有の歴史

当初は自動車を所有するのはごくごく少数の貴族や富裕層にとどまっていた。所有者に重いコストがのしかかる乗り物という存在を、所有せず活用する、という発想は古くからあり、例えば古代ローマにも馬車を現代のタクシーのように従量式で使う手法も存在したことがあったともいう[注 1]。1620年にはフランスで貸馬車業が登場し(言わば、現代のレンタカーに当たる)、1662年にはブレーズ・パスカルが史上初のバスとされる5ソルの馬車を発明しパリで営業を開始した。1831年にはゴールズワージー・ガーニー、ウォルター・ハンコックが蒸気式の自動車で乗り合いバスの運行を開始した。

内燃機関によるバスとして最初のもの(1895年)

1871年にはドイツ人のヴィルヘルム・ブルーンによってタクシーメーターが発明され、1897年にはゴットリープ・ダイムラーが世界初のメーター付きタクシー(ガソリン車)Daimler Victoriaを製造した。レンタカーの最古の歴史ははっきりしないが、米国における最初のレンタカー業者は、初の量産車とされるT型フォードを用いて1916年から営業した、と言われることはある。その最初のレンタカー業者とされるネブラスカの男Joe Saundersは、車にメーターを取り付け 1マイルあたり10セントの方式で貸したという[14]

大量生産と大衆による所有と個人所有にかかる諸費用の膨張
フォード・T型(1908年発売)
シトロエン・TypeC(1922年発売)

米国で1908年、フォードフォード・T型を発売した[8]。フォードは、流れ作業による大量生産方式を採用し自動車の価格を引き下げることに成功した。これにより裕福層の所有物であった自動車を、大衆が所有することが可能となり自動車産業が大きく発展するさきがけとなった。ヨーロッパでは1910年ごろに、大衆の自動車に対する欲求を満たすように、二輪車の部品や技術を用いて製造された小型軽量車、いわゆる「サイクルカー」が普及していった。1922年にフォードと同様の生産方法を用いた小型大衆車が発売され、本格的に自動車が普及していく事になった。また、それに伴いサイクルカーは姿を消していき、大衆車の普及によって、一般市民が自動車を所有することが可能となり、自家用自動車(自家用車)が普及すると、それに伴って自動車の利用が一般化、いわゆるモータリゼーションが起きた。世界で初めてモータリゼーションが起こったのは1920年代アメリカ合衆国であり、次いで西ヨーロッパ諸国においても起こり、日本でも1970年ごろにモータリゼーションがはじまった。個人用自動車の普及は、鉄道や船といった公共交通機関に頼っていた時代に比べて利用者に圧倒的に高い自由度をもたらし、個人の行動半径を大きく拡大させることとなった[15]

だが現代では、自動車を個人が所有するには、払わなければならない費用は、車両の価格だけで済まず、それ以外に自動車税自動車重量税自賠責保険車検消耗品等の費用ガソリン駐車場任意保険などの費用がかかる[16]。ナイル株式会社が2022年に公表した、「自家用車にかかる費用が家計を圧迫していると感じるか?」という設問で行ったアンケートの結果によると、 62.4%(730人)が(自動車にかかる費用が家計を圧迫していると)「感じる」と答えた[17]

カーシェアリングやライドシェア

1970年代にはスイスなどでカーシェアリングも始まった。カーシェアはその後世界各国に広がり、 2000年代には、アメリカやヨーロッパなどではUberウーバー)など、自家用車による有償ライドシェアを認める地域も増えてきているなど、自動車を個人所有せず快適に利用する方法は多様化してきている。日本では有償での旅客運送に第二種運転免許の取得や事業用自動車登録が原則必須であり、自家用車によるライドシェアの展開は過疎地に限られていたが、2024年4月より限定的ながら解禁されることとなった[18]

機械の生産方式や人々の労働への影響

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なお自動車で採用された大量生産の手法が、ライン生産方式という効率的な手法を、自動車産業に限らず様々な製造業において広めてゆくことになった。これは企業経営者にとっては好都合な手法であったが、それは同時に分業が徹底される結果を生み、工場で多くの労働者が、まるでただの機械や道具のように扱われ、同一の単調な作業ばかりを繰り返すことを強制され、働くことに喜びを見出しにくくなる、労働者に精神的な不幸をもたらすという負の事態も引き起こした。一時期はあまりに効率重視で作業の細分化がゆきすぎ、それこそひとりの労働者が、ボルトを1個~数個締める作業ばかりを繰り返すなどというひどい方式になってしまい、労働者への精神的な悪影響が大きくなりすぎ、それが学者などからも指摘されるようになり、その後長い年数をかけて、作業を細分化しすぎないように、ある程度はまとまった範囲の任務を与える、という方式を採用する工場も増えてきた。たとえば一人の担当者が、せめてエンジン部分はまとめて責任を持って一人で組み立てることで、その人なりに「自分の作品を仕上げた」と感じられるようにする、などといった方式である。

2000年代における技術開発の動向

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中国など新興国の経済成長や人口増加で、世界全体の自動車販売台数は増えている。これに伴い化石燃料の消費増や大気汚染が問題となり、各国政府は自動車に対して排気ガスなどの規制を強化。自動車メーカーは温室効果ガスや大気汚染物質の排出が少ない又は皆無で、石油資源を節約できる低公害車の開発・販売に力を入れる。

近年は、公害地球温暖化の対策として、電気自動車燃料電池車等のゼロエミッション車の開発が進んでいる。特に2015年にフォルクスワーゲングループにて発覚した排ガス不正でディーゼルエンジンの悪影響が露呈されてから、欧州各国では近い将来ガソリン車およびディーゼル車などの販売を禁止する法案が賛成多数の情勢にある。オランダとノルウェーでは2025年、ドイツでは2030年に施行するべく、そうした法案が提出され始めている[19][20][21]

近年は情報通信技術(ICT)が急速に進歩している。このため自動車メーカーや大手ICT企業は、インターネットで外部と接続されたコネクテッドカーや、人工知能(AI)を応用した自動運転車の研究・開発も急いでいる。

かつてはSF作品中の存在であった「空飛ぶ車」の開発も進んでいる。日本では、トヨタ自動車グループの支援を受ける有志団体「CARTIVATOR(カーティベーター)が、2018年の試作機完成を目指していた[22]

分類・種類

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自動車の分類法はいくつもあるが、おおまかに言うと、構造(ハードウェア)による分類と使用目的(ソフト)による分類がある[6]

理屈の上では使用目的と構造の組み合わせがマトリックス(縦横の表)のように多数あるわけだが、実際には全ての組み合わせが用いられるではなく、使用目的ごとに適している構造は(全ての構造ではなく)いくつかの目的に適した構造に絞られることになり、また多くの使用者・購入者から評価される典型的な組み合わせや傾向のようなものが生じ、ただしそれはまったく固定しているわけではなく、時代とともにそれが緩やかに変遷を経てきた歴史がある。

特定の国に限らない分類としては、基本的には、たとえば、目的によって「乗用車(数名の人を運ぶための自動車) / 貨物車(貨物を運ぶための自動車)/ 特殊な車(それ以外の目的の自動車)」と分ける方法がある。またたとえば、大きさによって「小型車 / 中型車 / 大型車」などと分ける方法が、基本的にはある。

なお自動車が登場する以前の馬車の時代に、馬車がその姿(形状)によって分類され、すでに分類法やその分類用語が確立していたので、(馬を排したとは言え)自動車の車体に関してもそれに沿った分類法が採用されてきた歴史がある。「セダン」「クーペ」「ワゴン」などという分類法はもともとは馬車の分類法を継承したものである。→#普通自動車の分類

法規上の分類

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それぞれの国で法規によって排気量や車体の大きさ、輸送能力などによって分類されている。それが税区分や通行区分、運転免許の区分の基準とされる。

日本においては、道路交通法第三条により、大型自動車中型自動車準中型自動車普通自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、大型自動二輪車普通自動二輪車の8種類に分類され、道路運送車両法第三条により、普通自動車、小型自動車軽自動車、大型特殊自動車および小型特殊自動車に分類されている。

日本では上位概念で「自動車」が明確に定義されており、動力(原動機、電動機など)により駆動される物や牽引される物は名前や形状に関わらず自動車とされる。スーツケースに動力を付けた「電動スーツケース」を日本国内の公道で運用した者が2024年に逮捕されている[23]。一方でオーストラリアでは上位概念で自動車が定義されて無く、ピクニックテーブルにエンジンを取り付けた「エンジン付き移動式ピクニックテーブル」などの運行を取り締まる事ができずに、地元警察は「危険だから」という理由で運行しないことを呼びかけている[24]

統計上の分類

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国際的な統計品目番号では第87類の「鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品及び附属品」に分類される[25]

普通自動車の分類

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姿形による分類

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もとは馬車の形状による分類用語である。その後、馬車にはなかった分類用語が追加されてきた歴史がある。

なお、自動車メーカーが差別化付加価値)として商品につける商品名(商標)においてはこの限りではなく、2ボックス形状のセダン、4ドア・5ドアのクーペ、ハッチバック形状のワゴン、ワンボックス形状のワゴンなど、下記の形状と異なるものも多い。

  • セダンローエンド大衆車では2ドアも多いが、原則4ドアの車。ボンネット+キャビン+トランクルームで構成されるスリーボックスカー。
  • クーペ:もとは基本形のセダンをフランス語で「クペ」したもの、つまりセダンが少し「切られて」短くなった形。(4ドアから2ドア分減って)原則2ドアのスリーボックス車。かつてはトランクルームに2名分の補助席を備えるものもあった。現在は長さやドア数だけでは区別できなくなっている。
  • ワゴン: (もとは荷馬車en:Wagonを指す用語で)荷室が主となっている自動車。
    • 主に荷物を運ぶために使われる車はバンと呼ばれるが、アメリカ合衆国発祥のミニバンは乗用車に分類される。
    • ステーションワゴン:(ワゴン車の一種ではあるが)後部には乗員の座席とひとつづきの荷室を備えているツーボックスカーで、主に人を乗せる為に使われる車。荷室に収納式の補助席(ジャンプシート)を2名分持つものもある
  • ハッチバック:トランクルームを省略し、キャビンと荷室を一体化させた車で、跳ね上げ式のバックドア(背面扉)を持つ車。結果として3ドアもしくは5ドアとなる。

屋根による分類法は次のようなものがある。

スペースによる分類

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自動車メーカーが消費者を満足させるために、乗用車(普通自動車)に関してさまざまな形状のものを開発してきた結果、1980年代~2000年代以降、従来の分類法や分類用語では分類しきれない車や、あるいは複数のカテゴリに該当するような車が増え、消費者も自動車メーカーも自動車誌等も、従来の分類法やカテゴリ名に困惑を感じることが増え、メーカーや販売会社と消費者のコミュニケーションでも混乱が生じるようになった。そうした困惑や混乱を回避するために、多種多様な普通自動車をざっくりと以下のように分類する方法が考えだされ、それが採用されることが増えた。

  • ワンボックスカー(モノスペースカー):全体が一つの大きな箱(ボックス)状になっている車。内部的には、エンジンルーム、キャビン(=室内スペース)、荷物室があっても、見た目は大きな一つの箱のように見える車。
  • ツーボックスカーファストバックカー、カムバックカー): キャビンと荷物室が1つの大きなボックスで、エンジンルームが別のボックスとして飛びだしているように見える車。
  • スリーボックスカーノッチバックカー):キャビンが1つ大きなボックスとして真ん中にあり、そこから前後に(キャビンよりは高さが低い)エンジンルームと荷物室のボックスが飛び出している形状の車。

構造

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自動車はその歴史のなかで様々な構造が現れ、変遷を繰り返してきた。ここでは現在市販されている自動車として一般的なものを示す。したがって、いくつかの自動車には例外があり、特に競技用や、特殊自動車などについては構造が大きく異なる例もある。

車体構造

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車体の強度部材に用いられる材料は鋼鉄が主流で、近年では超高張力鋼板の使用部位が広範にわたっており、アルミニウム合金炭素繊維強化プラスチックなどの複合材料を用いたものも市販されるようになってきている。骨格部材以外のパネル部分には合成樹脂を用いる例も増えてきている。

構造は大きく分けてフレーム形式モノコック形式とに分けられる。フレーム形式は独立した骨格部材の上に、車室を構成する構造物が載せられたもので、古くから自動車の車体構造として用いられ、現在でも貨物自動車を中心に採用されている。モノコック形式は車室を構成する外殻自体が強度部材として作られた構造で、20世紀半ば頃から自動車の車体構造として普及しはじめ、現在の乗用車と小型商用車(LCV)のほとんどで採用されている。

現在は内燃機関か、電気モーターを用いるものが主流である。内燃機関では、ピストンの往復運動をクランクシャフトで回転運動に変換して出力するディーゼルエンジンガソリンエンジンなどのレシプロエンジンが一般的である。それぞれに4サイクル2サイクルがあるが、現在では4サイクルが主流となっている。

火花点火内燃機関の燃料にはガソリンが用いられるのが主流となっているが、環境性能や単価を理由に液化石油ガス(LPG)や液化天然ガス(LNG)、エタノール等のアルコール燃料が用いられる場合もある。近年では、内燃機関と電気モーターを組み合わせたハイブリッドカー、電気自動車などが普及してきている。

動力伝達

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動力は、ガソリン自動車の場合は、原動機が効率的に出力を発揮する回転速度から、走行に適した回転速度へと変速機によって減速あるいは増速される。変速機は、運転者が複数の減速比から選択して操作するマニュアルトランスミッション(MT)と、自動的に選択または変化するオートマチックトランスミッション(AT)に大別できる。MTは基本的に減速比を切り替える際などにはクラッチを操作する必要があるが、このクラッチ操作を自動化したものはセミオートマチックトランスミッションと呼ばれる。近年は、MTの基本構造を持ちながらクラッチ操作と変速操作が自動制御された、自動制御式マニュアルトランスミッション(AMT)も普及し始めている。

電気自動車の場合は、原動機の効率的な回転速度の範囲が広いため減速比を切り替えない変速機を採用し、原動機を逆回転させることが可能なので後退ギアを持たない場合がほとんどである。

マニュアルトランスミッションの場合、前進の変速比は3段から6段程度が一般的だが、副変速機を用いて変速段数を2倍とする例も貨物車を中心に少なくない。

オートマチックトランスミッションは、トルクコンバータプラネタリーギアを組み合わせたものが広く普及している。日本の乗用車では、CVTと呼ばれる無段変速機の採用例が増えてきている。いずれの方式においても、運転者の操作によって「Lレンジ」などのように減速比の範囲を限定する機構や、「マニュアルモード」、「ホールドモード」、「スポーツモード」などと呼ばれる任意の減速比に固定できる機構を備えている。

セミオートマチックトランスミッションは日本の法規ではAT車に分類され、日本車の例ではトヨタ・MR-SSMTがある。

操舵装置

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操舵は前輪の方向を変えて車体を旋回させる前輪操舵方式が一般的で、その機構全体を指してステアリングと呼ぶ。操作部を「ハンドル」あるいは「ステアリング・ホイール」と呼ぶ。ハンドルの回転はボール・ナットラック・アンド・ピニオンなどの機構を介して車輪を左右に押す作用に換えられる。近年は油圧や電動モーターを用いて運転者のハンドル操作を助力するパワーステアリングが広く普及している。

旋回時の各瞬間に、それぞれの車輪がその動いている方向を向くようにすると、前輪の左右では舵角が異なる。例えばハンドルを右に切ると右タイヤの方が舵角が大きくなる。これについての機構をアッカーマン機構と呼ぶ。

制動・拘束装置

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主たる制動操作は、足踏み式のペダルで行うフットブレーキがほとんどである。ペダルに加えられた力は油圧空気圧を介してブレーキ装置に伝達し、摩擦材を回転部分に押しつけ、運動エネルギー熱エネルギーに変換して速度を落とす。市販車のほとんどが、エアブレーキ以外の液圧式では、エンジンの吸気管負圧や油圧を利用した、ペダル踏力を軽減する倍力装置を有している。

下り坂などで、フットブレーキに頼り過ぎるとフェード現象で制動力が著しく低下したり、ベーパーロック現象でペダル踏力が全く伝わらなくなってしまうことがある。これらを防ぐためにエンジンブレーキを利用することが運転免許教習でも指導されているが、車両総重量が大きくエンジンブレーキだけでは抑速や減速効果が得られにくい大型の貨物自動車では、排気ブレーキリターダを搭載する車種も多い。

高速からの制動には、放熱性に優れるディスクブレーキが有効であるが、重量が大きい車両の制動や、勾配での駐車などには、自己倍力作用の働きで「拘束力」の大きいドラムブレーキが有利となる[26]

駐車時に車体が動き出さないように拘束するパーキングブレーキはワイヤ式または空気式のものが多い。乗用車の場合はブレーキ装置を制動用のものと共用する構造がほとんどであるが、制動用のディスクブレーキの内周に拘束用のドラムブレーキを備えるものもある。従来貨物車ではトランスミッション(変速機)出力部にドラムブレーキを備え、プロペラシャフトを拘束するセンターブレーキが一般的であったが、法改正により常用ブレーキを兼用する「ホイールパーク式」/「マキシブレーキ」と呼ばれる、ホイールを直接拘束する方式に移行した。

運転装置

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運転者の座席は座部と背もたれを備えた椅子形のものが主流である。運転席の正面には操舵用のハンドルとアクセルペダルブレーキペダル、あるいはクラッチペダルが備えられているのが標準的な自動車の構造である。ハンドルは形が一般的だが、オート三輪ではオートバイスクーターのような棒状のハンドルも存在した。また、腿まわりの空間的余裕が増える楕円形のハンドルを採用している車種もある。駐車ブレーキを操作する装置は、レバーを引き上げる方式のものが主流であるが、古いトラックやワンボックスカーでは杖状のレバーを車体前方の奥から手前に引き寄せる方式のものもある。また、近年では足踏み式のものや電気的に作動する押しボタン式も採用されるようになった。変速機の操作レバーはMTの場合はシフトレバー、ATの場合はセレクトレバーと呼ばれる。いずれの場合も運転席の脇、車体中央側の床に設置されているフロアシフトが大半を占める。古いタクシーやトラック、ワンボックスカーではステアリングコラムにシフトレバーを設置したコラムシフトのMTも多く存在した。一時期のAT車ではミニバンを中心に、ステアリングコラムにセレクトレバーを備える車種は珍しくないものとなっていたが、近年はインストルメントパネルにセレクトレバーを配置したものが多い。

自動車の利用

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乗用車としての利用

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首都高速道路

自動車は人や物を輸送でき、また道路さえ整備されていれば様々な場所に行くことができる。これはかつての馬車で行われていた用途の継続でもあった。道路の全国的な整備が、先進国への仲間入りとも言える。

アメリカは、1908年に大衆車のパイオニアであるフォードT型を発売、1911年には自動車専用道路の先駆けとなるパークウェイが整備された。イタリアでは、1924年にミラノからヴァレーセまでの約50kmに、交差点のない幅10mのアウトストラーダを完成させている[27]ドイツナチ党アドルフ・ヒトラーは、1933年に「休日には低所得者層が自動車に乗ってピクニックに出かけられる」暮らしが必要であると提え、モータリゼーション推進を宣言[27]アウトバーンの整備や伝説的大衆車フォルクスワーゲンビートルの開発に着手した。日本は、元々馬車文化が未熟であったために道路整備は難航したが[28]、戦後に入って首都高速道路が建設されるなど、欧米に劣らぬ勢いを見せた[27]

商用車としての利用

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街中のスクールバスとタクシー

他方の利用として、自動車を用いたサービス業が多様に存在し、市民の生活にとって大きな役割を担っている。これには大きく分けて「自動車で何かをする」形態と、「自動車に何かをする」形態がある。

前者の例として、旅客輸送貨物輸送を行うサービス全般を運輸業と呼ぶ。旅客であればタクシーハイヤー、またバスなどとして運営され、バスは多くの人員の輸送が可能であることから、形態に応じて路線バス観光バス高速バス定期観光バスなどと様々なものがある。貨物輸送に関しては運送会社がトラックを用いて輸送する。 直接的な輸送サービスの提供ではないが、自動車を賃貸するレンタカーカーリースもある。

後者の例としては自動車の整備を行う自動車整備業、自動車への燃料補給などを行う水素ステーションなどがある。

緊急車両・特殊車両としての利用

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陸上自衛隊の救急車

国民の安全や治安維持のために、自動車を利用する例がある。

パトロールカー (パトカー) は、犯罪交通違反の取り締まりのために使用される。パトロールを行うことで犯罪の抑制に繋がるという重要なメリットも持ち合わせている[29]消防車は、火災その他災害に際してその鎮圧や防御を行う際に使用される。この用途は古くから馬車や人力車などで担われていた。救急車は、疾病または災害などによって発生した傷病者を治療可能な医療施設まで迅速に搬送するために使用される。一般道を利用しながら早急に目的地へ到着しなければならないため、市民の協力が重要とされる[30]

また特殊車両としては、国の平和・安全のために使用される装甲車や、建設工事に使用されるクレーン車ブルドーザー、輸送に使用されるタンクローリートレーラーなどがあり、いずれも国民が健康で文化的な最低限度の生活を送るためには必要不可欠な自動車である。

自動車文化

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自動車愛好家については「カーマニア」を参照。

この項では、自動車に関して長い歴史を有する「欧米諸国」と「日本」双方の文化比較を基軸として述べていく。

「自動車の魅力」というとスポーツカースーパーカーハイパーカーといったハイエンドなタイプに焦点が当てられがちであるが、そういった部類のみでは語ることができないほど、自動車文化は多様性に富んでいる。 『[要検証]エンスージアストの多くは、様々なタイプの自動車に対して関心を持っている[要出典][31]

自動車文化の形成

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欧米

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フェラーリ335Sを運転する第11代ポルターゴ侯爵(ミッレミリア1957)。ヨーロッパ貴族と自動車の関係は深い。

ヨーロッパ各国(イギリス、イタリア、フランス、ドイツなど)では、王立自動車クラブに代表されるように、20世紀初頭から貴族富裕層らによって自動車を趣味・娯楽の対象として扱う側面が発達し(かつての乗馬馬術の延長線上にあった)、のちに一般大衆にまでその貴族趣味的な気韻を持った、ハイカルチャーとも言うべき自動車文化が浸透していった[8][32][33]。それは、18世紀後半から19世紀に生まれた英国の新興富裕層が、貴族以上に貴族らしくあるために自分自身に磨きをかける「ダンディズム(≒貴族精神)」と呼ばれる思想に準拠している[34]自動車レース黎明期の時代においては、サーキットがそういったジェントルマンたちの社交場にもなっていた[35]。ただし貴族趣味的とはいえ、彼らは自動車の価格(大衆車/高級車などの類別)や、またそれらから生じるステータスを重視していたのではなく、純粋に趣味・娯楽の対象として自動車を求めていた[36]

その一方で、”欧州では、縦列駐車する時はぶつけて止める”といった世説が出るほど、自動車を「移動手段の道具」として割り切って捉える思想もヨーロッパには根強くある[37][38]。実際に走行している自動車の多くは、日本に比べて車体が汚損している傾向にあり、この思想はサイクルカー(ヴォワチュレット)やバブルカーマイクロカーのその極端とも言える合理主義的な簡素な造りにも表れている。因みにこの文化は、その地の自動車愛好家にとっては非常に難儀なものであり、フランスにおいては都市部での治安の悪さも含め、駐車場所には特に気を使わけなければならないという話もある[37][39]

アメリカは、フォードによって自動車をいち早く大衆化させたことから、よりカジュアルで商業主義的な文化が目立つ[32]。特にその傾向は戦後になってから顕著に表れはじめ、1940 - 1950年代における、ドラッグレースストックカーといった単純明快なルールを持つ自動車レースの誕生は好例である。また、人種の多様性から多地域の自動車文化が数多く混在していることも特徴の一つである。それはカスタム文化に顕著に表れており、白人由来のホットロッドメキシコ系由来のローライダーアジア系由来のスポーツコンパクトなどがある[40]。自動車の美しさを競うコンテストや展示会も世界的な規模で開催される。ただし、いずれも大衆性やエンターテインメント性を意識したものであることは確かであり、権威主義的な面は少ない[32]。また大量生産方式から生まれたインダストリアルデザインは、後の自動車デザインにおける核となり、「自動車の消費」という概念を誕生させることになる[41]

日本

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日本人初のレーサー、大倉喜七郎男爵。日本初のオーナーズクラブ『日本自動車倶楽部』(1910年)の創設にも貢献し、日本における自動車文化の基礎を作った[42]

日本の自動車文化は、明治 - 大正期にかけて欧化主義の名残があったことや、20世紀半ばまで華族制度が存在したこと、また同じく20世紀半ばまで大衆車が普及せず上流層のみしか自動車を所有できなかったことなどの理由から、必然的にヨーロッパにおける文化形成と似た道を辿ることとなった。これは自動車に限らず、ゴルフテニス乗馬など当時輸入された西洋由来のハイカルチャーはみな同様の過程を経た。

1898年1月、日本に初めて四輪自動車が渡来したとされる(諸説あり。日本への自動車の渡来を参照)。1902年川田龍吉男爵が横浜でロコモビル社製の蒸気自動車スタンレー・スチーマーを購入、通勤で乗るなど個人的に使用した。ここで川田は日本初のオーナードライバー(自家用車所有者)になったされる[43]1907年には、美術品コレクターで冒険家の英国人トーマス・ベイツ・ブロウ[44]1904年製のスイフト7HPで京都から軽井沢を目指す自動車旅行を敢行したことが記録されている[45]1908年8月1日には、皇族有栖川宮威仁親王が「ダラック号」(Darracq )を先頭にガソリン自動車を連ねて遠乗り会を敢行、その目的地は谷保天満宮であり、これが日本初のドライブツアー(カーミーティング)とされる[46]。1907年7月6日、大倉財閥一族の大倉喜七郎男爵は、英国ブルックランズ・グランプリフィアットを駆り2位に入賞、ここで大倉は日本人初のレーサーとなった。その3年後の1910年には、大倉を中心に日本初のオーナーズクラブ『日本自動車倶楽部』が結成される。事務局は帝国ホテルに置かれ、会長に大隈重信、メンバーには大倉喜七郎、伊東巳代治寺内正毅後藤新平渋沢栄一尾崎行雄といった政財界の名士が名を連ね、欧米各国の大使公使も参加、このクラブは一大サロンとなった[47]。当時の自動車所有者はほとんど入会したためにその影響力は大きく、自動車税の決定など行政的な業務も行なった[47]

その後も華族エスタブリッシュメントハイカラたちを中心に、日本の自動車文化は形成されていった。戦前の著名な自動車愛好家に、三井高公細川護立鍋島直泰小早川元治福澤駒吉白洲次郎藤山一郎などが知られている。戦後に入ってもなお、伝統的な西洋式の自動車趣味は多くの人物によって継承され、失われることはなかった。小林彰太郎式場壮吉福澤幸雄徳大寺有恒夏木陽介などは、そういった際に名が挙げられる著名人である[35][48]。中でも自動車評論家の小林彰太郎は、自身がライオン創業者の一族出身でありながらも自動車評論家を生業とし、1962年に雑誌『CARグラフィック』(現・カーグラフィック)を創刊。当時では大衆の高嶺の花であった輸入車の魅力を積極的に発信し、また自身も英国流の自動車趣味を実践したことで、日本における自動車文化の普及に貢献した[49]

第二次世界大戦後に日本を占領した連合軍は自動車の開発を制限し、特に乗用車は事実上の禁止となった。この制限は1949年(昭和24)に解除され、1952年ごろからは先進国のメーカーと技術提携して外国車をノックダウン生産、しだいに国産化して技術の吸収に努めるメーカーが増えていった[50]

1960年代以降一般大衆に自動車が普及するようになると、サブカルチャーとしての側面も現れはじめる。中でもチューニングカーVIPカー痛車などのカスタム文化は現在では世界中に影響を与えるまでに発展している[51]。また、この文化は非常にユニークなものである一方で、速度超過、違法改造走り屋暴走族といった各種違法行為、或いは騒音、運転マナーの悪さといった迷惑行為との関連が少なからずあり(これもまた一種の文化と化している)、そういった面から自動車に対して不良なイメージを連想させることがある[52](「VIPカー#マイナスイメージ」も参照)。これらの文化の形成過程については、「チューニングカー#日本における歴史」などを参照のこと。

日本は、草創期から自動車生産を開始し[注 2]、また同じく草創期から外国車を比較的多く輸入していたこと、或いは戦後の国産車の普及などもあって自動車と接する機会は多く、ヨーロッパやアメリカに次いで自動車文化が定着しやすい環境にあった[8][47] 。そのため他のアジア各国やアフリカ諸国と比べて文化が十分成熟の域に達していると言える[53]軽自動車やチューニングカー、(見世物としての)ドリフト走行などは日本発祥であり、1970年代にはスーパーカーブームも到来している。上記でも触れたようにカーマニアを対象とした自動車雑誌やテレビ番組も多数ある(「Category:日本の自動車雑誌」、「Category:自動車番組」を参照)。ただし近年の日本では、カーマニアと一般大衆の間における自動車に対する興味の差が非常に大きくなっていることも指摘されている[54]

CCC会長の増田宗昭は、「プレミアエイジ(60歳以上の富裕層)」の人々に自動車を楽しんでもらいたいとして[55]、同社が展開する商業施設において自動車関連の展示会やイベントを頻繁に開催しており、また一方では、カー用品店「オートバックス」に対して、生活提案型商業施設のコンセプトを取り入れた店舗づくりも行っている。このように、近年の日本における自動車関連産業では、店舗内にカフェを設置したり、より集客の見込める場所に店舗を設置することで、自動車に興味のある人以外も取り込んでいこうとする姿勢が見られている[56]

トヨタ自動車会長豊田章男は、「愛車」にこだわる理由として、”数ある工業製品の中で『愛』がつくのは自動車だけだから”であるという[57]。例えば冷蔵庫を「愛機」とは呼ばず、家は「愛家(ラブホーム)」ではなく「マイホーム(私の家)」と呼び『愛』はつかない、と述べている[57]

カーデザイン

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カーデザインの重要性は自動車の誕生時から常に認識されており、自動車文化の形成にも大きな役割を果たしてきた。その変遷は製造技術の発達や空気力学の発展、或いは人々の思想などにも強く関わっている[58]

以下に並べるデザインの変遷は、あくまでも概略かつ主流を示しており、いずれの時代にもこれらに反するデザインや折衷的なスタイリングを持った自動車が見られるということには留意である。

1960年代以前のカーデザイン

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1930年代のスポーツカー[注 3] 1940 - 1950年代のスポーツカー[注 4] 1950 - 1960年代のスポーツカー[注 5]
1930年代のスポーツカー[注 3]
1940 - 1950年代のスポーツカー[注 4]
1950 - 1960年代のスポーツカー[注 5]

自動車黎明期と言える1900年代までのデザインは、直線平面のみで構成された、極めて古風でシンプルなスタイリングが特徴であった。そのほとんどは馬車自転車の延長とも言えるような簡素な造りであったため、”馬なし馬車”とも呼ばれていた[59]。ただし1891年にパナール・ルヴァッソールによってフロントエンジン(システム・パナール)方式が確立されたことで、徐々に自動車らしいデザインへと変化していく[8]。まもなくして、馬車時代から続投したコーチビルダーによる貴族らしい装飾が施された豪華な自動車(=高級車)が誕生し[8]、またモータースポーツの発生によりレーシングカーも生まれたことで、本格的な自動車文化の礎が築かれていった。

1920年代に入ると、「流線型デザイン」の誕生によってカーデザインは大きな進展を迎える。その発端は、エンジン性能の向上によって過激さを増していたモータースポーツの世界において、空力を意識したデザインがレーシングカーに続々と起用されていったことにはじまる(ただし空力の意識の発生は1900年前後の速度記録車から既に見られはじめている[60][61])。それは「ポインテッドテール」や「ボートテール」と呼ばれる、窄まったリアの形状に代表される(ブガッティ・タイプ35が著名[62])。その中でエドムント・ルンプラーパウル・ヤーライによって空気抵抗を低減するボディ構造が確立されると、1930年代から一般的な乗用車にもそれに似た涙滴(ティアドロップ)型のボディが積極的に起用されはじめた[59]。また泥除けの機能として装着されていたフェンダーに関しても、プレス成型技術の発展もあってより流麗で立体的な渦巻状のデザインに変貌し、タイヤ全体を覆うモダンなスタイリングも出現(フェンダースカート)、それらは曲線的な美しさを印象づける重要な要素として機能しはじめた。特にその前後のフェンダーの終点部分は斜め下に向かって流れるように落ち込むため、ボディ全体を尻下がりのスタイリングに印象づけた。これら一連の特徴による、丸みと曲線で構成された自動車デザインは「流線型デザイン(Streamliner, Streamline Moderne)」と呼ばれ、この時代に大流行したデザイン様式となった[63](インダストリアルデザインの発展にも寄与することになる)。

”Art Deco Automobiles”としてカテゴライズされる3台のプジョー・402 ダルマット(1936 - 1939)。ボディはプルートー社による。

このスタイリングの誕生は、流体力学理論に基づいた空気抵抗の低減と、イタリアのフトゥリズモによる「速度の美」の表現、そしてフランスのアール・デコ様式による装飾芸術という、モダニズムを根幹とした”芸術性と合理性の融合”にあった[63]。それは機械化の波の中で新たな芸術性を模索した結果の一つの完成形とも言え、その曲線美から生み出されるスピード感やダイナミズムは自動車が芸術品として捉えられる大きな契機となった[63]。そのため、この時代はコーチビルダーの全盛期となり、数多くのデザイナーが自動車(高級車)のボディで美しさを競い合った。この1930年代における豪奢と前衛、エレガンスが同居したデザインの一部高級車(主にフランス車)は、”Art Deco Automobiles”(アール・デコ・オートモビルズ)、或いは”Flamboyant”(フラムボワイヤン)と呼ばれ、かつては上流階級の社交界における花形的存在として君臨したほか、現在では耽美主義的な側面を持ったダイナミックな芸術作品群として認識されている[64]。その美しさに魅了された者の中には美学者芸術家も含まれ、日本では濱徳太郎が、欧米では、アンドレ・ドランが「どんな芸術作品よりも、ブガッティは美しい」と述べると、マン・レイが深く頷いた”、といった逸話も残っている[65]

前述の「流線型デザイン」は、その名称が取り沙汰されなくなった1940年代に至っても、曲線と丸みを帯びたスタイリングとして、カーデザインの主流を保っていた。ただし1947年のチシタリア・202や1949年のフォード・1949などの登場によって「フラッシュサイド[注 6]」ボディが大々的にフィーチャーされ、多くの自動車メーカーが採用しはじめた[66]。この変革によって自動車はより近代的なデザインとなり、ボディ全体としてまとまりを見せるスタイリングが1950年代以降の主流となる。前照灯とフェンダーはボディと一体化され、それによってボディサイドは隆起や凹凸がない滑らかな形状となった。この特徴は2020年現在でも主流となっている形態である。

1921年 - 1965年のロールス・ロイスにおけるデザインの変遷。左からシルヴァーゴースト・ツアラー (1921年製) 、レイス (1938年製) 、シルヴァークラウドIII (1964年製) 。後継車種である1965年のシルヴァーシャドウからモノコック製のモダンな箱型ボディとなったことから、シルヴァークラウドIIIは伝統的なデザインを有したロールス・ロイス最後の車種と言われている[67]。 1921年 - 1965年のロールス・ロイスにおけるデザインの変遷。左からシルヴァーゴースト・ツアラー (1921年製) 、レイス (1938年製) 、シルヴァークラウドIII (1964年製) 。後継車種である1965年のシルヴァーシャドウからモノコック製のモダンな箱型ボディとなったことから、シルヴァークラウドIIIは伝統的なデザインを有したロールス・ロイス最後の車種と言われている[67]。 1921年 - 1965年のロールス・ロイスにおけるデザインの変遷。左からシルヴァーゴースト・ツアラー (1921年製) 、レイス (1938年製) 、シルヴァークラウドIII (1964年製) 。後継車種である1965年のシルヴァーシャドウからモノコック製のモダンな箱型ボディとなったことから、シルヴァークラウドIIIは伝統的なデザインを有したロールス・ロイス最後の車種と言われている[67]。
1921年 - 1965年のロールス・ロイスにおけるデザインの変遷。左からシルヴァーゴースト・ツアラー (1921年製) 、レイス (1938年製) 、シルヴァークラウドIII (1964年製) 。後継車種である1965年のシルヴァーシャドウからモノコック製のモダンな箱型ボディとなったことから、シルヴァークラウドIIIは伝統的なデザインを有したロールス・ロイス最後の車種と言われている[67]

1960年代以前、特に1920 - 1960年代の自動車の多くは、先述のようにプレスラインの少ないシンプルな造形、かつ曲線を纏ったダイナミックなスタイリングを有しており、これらは芸術性の高いカーデザインとして、展示会やオークションなどでも高い評価を受けている。1960年代までの欧州における高級車やスポーツカーは、その主な顧客である富裕層のマーケットが自動車文化の歴史が長い欧米の保守層に未だ限定的であったことから[68]、そのスタイリングはしばしば「エレガント」、「紳士的」とも形容される[69][70][71]。これは戦前のアメリカの高級車やスポーツカーにおいても、欧州ほど純粋・明瞭ではないものの、同じく主流として存在していたデザイン性であった。また世界各国で開催されている「コンクール・デレガンス」は、この貴族趣味的な文化やデザイン性と密接に関連したクラシックカーイベントである。生前にエンツォ・フェラーリ”LA CORSA PIÙ BELLA DEL MONDO(世界で最も美しい自動車レース)”と形容した[72]伝説的な公道自動車レース、「ミッレミリア」(1927 - 1957)の参加車両も、この時代までのスタイリングを纏ったスポーツカー/レーシングカーである。それというのもレーシングカーに関しては、1960年代後半からプロトタイプのボディ構造が生産台数の緩和などによって本格的にサーキット仕様に傾いていったため[73]、自動車レースで優勝争いが行われたレーシングカーに、趣味として愛玩するレベルのデザイン性と実用性が備わっているのが、1960年代までであった(これは資産価値にも多大な影響を与える)。そのため「タルガ・フローリオ」や「トゥル・ド・フランス・オートモビル」など、他の著名な公道レースもこの時代に栄華を極めた(いずれもクラシックカーラリーとして後に復活を遂げている)。

アウディチーフデザイナーであったシュテファン・ジーラフは、”今日、車のデザインは複雑なシェイプとラインの組み合わせが主流になっています。それで顧客の興味、関心を引こうというわけです。ですが、彼らの興味はすぐに冷めてしまいます。...よいデザインとは、細部で凝っているけれど全体で見るとシンプル、そういう方向です。もしあなたが2本のラインと面で1台の車をデザインできるなら、その車は未来永劫、傑作と呼ばれるものになるでしょう”と述べており[74]、またそういった傑作を時代の変化に合わせながらも見事に創り続けているのが、ポルシェ・911であるとも話している[74]。ポルシェ・911は、デザインコンセプトを1948年の356から継承していることで知られており[75]、その普遍性に魅了された者は数多くいる[76]

1960年代以降になると、欧州の高級車やスポーツカーは、伝統にこだわらず常に新しいものを求める新たな顧客(富裕層)の台頭によって、そのイメージやコンセプトが変化、デザイン性も大きく揺らいでいくことになる[68](=カジュアル化。アメリカでは、1950年代に同様の理由から欧州よりも一足早く本格的なデザインの変化が訪れるが、こちらはその変化によって逆に「アメ車」としてのアイデンティティを確立させることに成功している[77]後述))。そのため、1990年代以降における、1960年代以前に製造されたクラシックカーへの関心の高まりや世界的な価格高騰は、人々が未だ紳士的な生活をしていた古き時代へのノスタルジアによるものだという意見もある[71]英国王室では、重要な式典における自動車の起用に際して、現行車種ではなく1960年代以前の古典的なデザインを有したイギリス車が抜擢されることも多い[78][79]

1960年代以降のカーデザイン

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1950年代初頭、アメリカの自動車ブランドの経営陣たちは、戦後の好景気と自動車の大衆化に煽られて、従来のコンサバティブなデザインからの完全な脱却を図ろうとしていた[80]。そこで1950年代中頃から後半にかけて誕生したのが、「フルサイズ」としてカテゴライズされる、異彩を放った高級車群である[81]。これらは、車高が低く、幅広・長大でエッジの効いたボディ、豪勢なテールフィンなど、今までの主流のデザインとは一線を画していた(ただし初期デザインに関しては、フェンダーの峰やボンネットの隆起など、フロントマスクに未だクラシカルな趣が残されていた)。その特徴の多くは国内のより安価な乗用車に対しても適用されていったが、後にそれらからテールフィンが取り除かれ、フロントノーズもフェンダーの峰が無くなり「フラットデッキ」化が図られたことで、隆起・丸みのない完全にモダンな箱型のデザインへと移行していく[82][83]。アメリカ国内におけるこれらのスタイリングの流行は国外に多大な影響を与え、特に後者の角張った箱型のデザインは1960年代以降の世界的な主流となった[84]。その起因は、製造技術の進化によって角張ったデザインでも十分な強度を確保できるようになったという技術的な理由の他に、好景気によって自動車をステータスシンボルとして扱うようになったことでデザインに対して強さや大きさを求めはじめたという心理的な理由などからであった[84]。これら一連のデザインがいわゆる「アメ車」のイメージを確立させたとも言われ[77]、テールフィン時代のアメリカ車は、ベトナム戦争泥沼化以前のアメリカにおける"娯楽に時間を費やした楽しい時代"の象徴として[85]、またフラットデッキ時代のアメリカ車は、ローライダーなどのカスタムや映画のカーチェイスに使用されるような頑丈・屈強でアウトローな自動車として(マッスルカーなど)[86]、或いは一貫して見られるその重厚感から「アメリカン・ドリーム」を具現化するものとしてイメージされている[87]

1960年代後半からはマイナーなコーチビルダーの消滅が顕著に見られはじめた。それは、この時期あたりからモノコック構造がスポーツカーや高級車にも普及しはじめ、ボディの架装という概念が無くなりつつあったためである[88]。或いは、同じく1960年代後半から3次元CADが自動車製造業界に参入したことで、自動車設計のデジタル化も徐々に見られるようになっている[89]

ウェッジシェイプを纏った1970年代のスーパーカー、ランボルギーニ・カウンタックLP400とフェラーリ・512BBi。 ウェッジシェイプを纏った1970年代のスーパーカー、ランボルギーニ・カウンタックLP400とフェラーリ・512BBi。
ウェッジシェイプを纏った1970年代のスーパーカー、ランボルギーニ・カウンタックLP400フェラーリ・512BBi

1970年代になると、ジウジアーロガンディーニによる「ウェッジシェイプ」デザインが注目を浴びる[90]。空気抵抗の低減を目的とした「フラッシュサーフェス[注 7]」化の確立とも言える近未来的でシャープなスタイリングは、スポーツカー業界を席巻した。その特徴は、ノーズ全体がくさび形(三角形)をした平滑な前傾型ノーズや、ウエストラインが後方にかけて持ち上がっていく、その前傾姿勢の形状にある。ダウンフォースを生み出し高速性能を向上させるほか、重心が後ろ側に加わった戦闘態勢のようなスタイリングにより、スピード感や躍動感が演出される効果があった[91]。また前照灯をボディ内に格納するリトラクタブル・ヘッドライトは、フラッシュサーフェスを成し遂げ、かつノーズの傾斜を強めるのに最適な構造であったため、ウェッジシェイプデザインと見事に融合し、その双方の流行を加速させた[92]。日本ではこのスタイリングが1970年代の少年らに大人気となり、「スーパーカーブーム」を引き起こした。因みに「スーパーカー」という名称もこの時点で誕生したため、この時代以前の高性能車に対して「スーパーカー」と呼ぶことはほとんどない[93]

1980年代以降は、1970年代の2度のオイルショックによるガソリン価格高騰や排ガス規制によって空力の重要性が量産車にも意識されはじめたことに加え、プレス成型技術も進化したことから、空気抵抗を意識しながらも室内を広く設計できる、「丸」と「角」を組み合わせたデザインへと自動車業界全体が徐々にシフトしていく[84]。そのため、角張った箱型のデザインは姿を消しはじめ、ウェッジシェイプも以前のような明確なエッジを用いなくなり、滑らかなものとなった。またメッキ製であった前後バンパー樹脂製となり、ボディ全体の一体感がより増すことになる[94]。1990年代後半には、ATの普及や電子制御化によるイージードライブが自動車のブラックボックス化を加速させたために、デザインに「プロダクト・セマンティクス(製品意味論)」を注視しはじめ、ヘッドライトに有機的な意匠(人間の目や猛禽類の目をモチーフにしたデザイン)を取り入れていく[95]。また自動車部品の標準化やプラットフォームの共通化も1990年代から加速の一途を辿っている[96][97]

2000年代には、大衆車や量産車においてもウェッジシェイプ化が加速したほか[98]、従来の「丸」や「角」といった業界全体のトレンドがなくなり、デザインの多様化が進んだ[99]。ただし安全規則が増えたことでフロント部分ないしボディ全体が膨らみ・厚みを持つようになり、以前のように自由なデザイン性を見出すことは難しくなった[100]。加えて、コンピュータによって空力性能の解析が著しく発展したことにより、デザインの幅が却って狭まることに繋がった[101]。その他に、異型ヘッドライト[注 8]の高度化によって縦に引き伸ばされたような前照灯の巨大化とそのLED化によって照明類のデザインの自由度が増したことで、各メーカーは前照灯や尾灯でその自動車の個性を見出しはじめ、かつてのボディの造形に注力する姿勢は相対的に少なくならざるを得なかった[102]

2010年代に入ると、今までの単なる直線的なプレスラインを使用しなくとも、ボディに奥行きを持つ立体的かつ複雑なシェイプを持たせることが可能になり、それによってシンプルな造形でありつつもボディ各部に波打つような局部的な陰影が発生するようになった[103]。或いは、1990年代からクラシックローテクノロジーを注視する兆しが各分野で見られはじめており、パイクカーの発売を筆頭に、2010年代になると高級車やスポーツカーにおいても、かつての伝統的なクラシックカーのイメージを彷彿させるデザイン性が潮流となっている[104]2020年代以降は、自動運転の実用化により、インテリアデザインの造形がより注目されるようになる可能性や[105]、完全自動運転によって自動車事故が全く起こり得なければ、カーデザインに対して自由度が格段に上昇するという可能性もあり[106]、自動車の存在意義が左右される新たなデザイン時代に突入しようとしている。

インテリアデザイン

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洗練されたジャガー・MK-IX(1960年製)のインテリア

自動車におけるインテリアデザインには、装飾の効果的な使用や素材の質感により生み出される重厚感、機能性・合理性の追求によるミニマリズム、或いはダッシュボード上に埋め込まれた計器類によるメカニカルな魅力、ステアリング・ホイールの曲線美、といった自由な表現力を見出すことができる。近年では安全性や耐久性もデザイン設計における大きな指標となっている。また自動車は運転が主な使用法であるために、エクステリア以上にインテリアは重要な地位を占めており、車外の景色との調和性も考慮される。

モータースポーツ

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自動車を操縦し、より高速なスコアタイムを目指すことはスポーツの一種として認識されており、モータースポーツと呼ばれる。とにかく速く走るためのスポーツ専用車であるフォーミュラカーで走ることが全てではなく、市販車や自作車でのレース、また長時間の運転となる耐久レース、一般公道で行われるラリーや、自然のままの過酷な道を走破するラリーレイドなど、多彩なものが世界各国で開催されている。フォーミュラ1(F1)やインディ500ル・マン24時間レースダカール・ラリーといったものは特に著名な国際大会である。またその中でも、1929年からモナコ公国で行われているF1レース「モナコグランプリ」は、モナコ公爵家が後援、観覧し、トロフィーも公爵家から直接授与されることから、自動車レースの古き伝統、格式を保守している大会として知られている。

日本における自動車イベントのはじまりは1911年に目黒競馬場で行われた飛行機と自動車の競争とされるが、自動車同士のレースは1914年が始まりで、同じく目黒競馬場で4台のアメリカ車を走らせた[107]。アメリカで人気を集めていた興行をそのまま日本に持ち込んだものであったが、客は集まらず大赤字になる[107]。その後アメリカでモーターレース興行を行っていた藤本軍次が日本で本格的なレース興行を行いたいと企画、大正期には東京近郊の埋立地の特設コースで計11回のレースが行われたとされる[107]。1936年には、日本初の常設サーキットとして多摩川河川敷に『多摩川スピードウェイ』が創設された。第一回大会では、三井高公男爵が輸入したブガッティやベントレーをはじめ、ホンダ創業以前の本田宗一郎が自作車でレースに参戦したほか、日産創業者の鮎川義介がスタンドでレースを観戦するなど、日本自動車レースの幕開けとも言えるレースであった[108]。その後1957年の群馬県北軽井沢での『浅間高原自動車テストコース』開設に続き、1962年には三重県鈴鹿市に本格レーシングコース『鈴鹿サーキット』が登場した。翌年に当サーキットで「第一回日本グランプリ」が開催され、これが日本における本格的な自動車レースのはじまりとなった。1965年には千葉県船橋市に『船橋サーキット』が、翌1966年には静岡県小山町に『富士スピードウェイ』が開設されている。『船橋サーキット』では、浮谷東次郎生沢徹黒澤元治といった名ドライバーたちがしのぎを削ったが、たった2年で閉鎖されたことから「伝説のサーキット」とも言われるようになった[109]。また1965年は、F1世界選手権メキシコグランプリで、ホンダがフェラーリロータスを抑え初優勝を飾った年でもある。

自動車趣味

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趣味としては、自動車を走行させるだけに限らず、プラモデルミニチュアカーなどといった精巧な自動車のミニチュアの製作や収集、また部品の収集や写真の撮影など多岐に渡る。走行する自動車に関する趣味としては、様々な自動車に乗車することを趣味にしたり、自動車の改造やメンテナンスを趣味にすることもある。改造車の形態としては、アート化に重点を置いたローライダーやデコトラ、スピード化に重点を置いたチューニングカーやスポーツコンパクトといったものまで多様に存在する(詳細は「Category:改造車の形態」を参照)。

また、クラシックカーや旧車・ヴィンテージカーなどと呼ばれる、過去に製造された車両を復元・保存する愛好家もいる。クラシックカーに関しては文化的・歴史的・資産的価値が認められることもあり、それらを使用した展示会や走行会は、愛好家と地方行政とが密に連携することで地域活性化の一環とされることもあ(もとより公道を走行するイベントでは、行政との連携が必須である)。また、特に価値を認められたクラシックカーは、各種オークションなどで極めて高い値で取引されることもある(日本円にして数千万円から数十億円の値が付くこともある。詳しくは「オークションで落札された高額な車の一覧」を参照)。ヨーロッパはクラシックカーに対する造詣が深いとも言われているが[110]、年々排ガス規制が厳しくなっており、パリでは2016年から「1997年以前に製造された自動車(いわゆるクラシックカー)」の平日の市内走行を全面禁止とする[111]など、自動車を取り巻く状況は刻々と変化している。

自動車を格納するガレージは、自動車のメンテナンス場所としても使われる。趣味の拠点として独り籠って利用されることもあるため「隠れ家」とも形容され、しばしば男性の憧れの対象となる。バラエティ番組所さんの世田谷ベース』は、これらの魅力を前面に出した番組である。また最近では、リビングなどの居住空間からガラスを通して自動車を眺めることができるビルドインガレージもある[112]

バス(「バスファン」を参照)やトラックタクシーを趣味にするものもいる。書店販売上の分類などでは別の範疇に含まれることも多いが、これも広義での自動車趣味である。

リゾート地は、美しい風景や快適な気候といった良好なドライブ環境に加え、自動車に重要なインフラも単なる地方や田舎に比べて十分に整備されているといった理由から、自動車関連のイベントが数多く開催されている。ドライブを主目的とした観光道路有料道路などもしばしば点在している。また歴史的なリゾート地の多くは、かつて貴族や上流階級の人々が休暇を楽しんだ場所でもあることから、伝統的な自動車文化とも深い繋がりがあり、そのオマージュとしてクラシックカーのイベントが行われることも多い(同じく貴族文化へのオマージュとして、欧米では宮殿ゴルフ場などを舞台にイベントが行われることも多い)[113]。1931年には、高級別荘地として開発した鎌倉山への主要交通機関として、日本初の有料道路・自動車専用道路が設置されている。その後は1932年の関西初となる「宝塚-尼崎自動車専用道路」(バス専用道路)、1933年の軽井沢における「鬼押ハイウェー」などが、最初期の有料道路・自動車専用道路である。自動車展示施設としては、日本では有名なものに「フェラーリ美術館」(神奈川県御殿場市。2007年閉館)、「河口湖自動車博物館」(山梨県富士河口湖町。毎年8月のみ開館)などがある(全国各地にある自動車博物館については「Category:日本の自動車博物館」を参照)。

このように、自動車は単に人や物資を輸送するだけの存在に留まらない。ただし若者の「自動車離れ[注 9]」は、近年になって、日本はもとよりヨーロッパなどにおいても顕著に表れはじめている(詳しくは「若者の車離れ」を参照)。

自動車とファッション

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自動車はファッションと密接な関係がある[114][115]

自動車は、本質的には馬車から派生した移動手段の道具であるが、その長い歴史の中で他の様々な文化、事物からモチーフを得ながら独自に発展していった。それは貴族文化やダンディズム、サブカルチャー、或いは航空機船舶など実に様々である。これらは現代においても、乗車する際に身につけるアクセサリーなどにその名残として残されている場合がある。また逆に自動車が服飾品に影響を与えることもあり、腕時計は特に著名な例である。加えて、自動車のエクステリアが女性のファッションに例えられることもあり、イベントコンパニオンはその代表例として挙げられる[116]

ファッション雑誌などでは自動車を広告塔として利用する例がある。ファッションデザイナーで知られるラルフ・ローレンは、2017年に、自宅ガレージにて自身のカーコレクションを用いたファッションショーを開催している[117]。また自動車ブランドと服飾ブランドが共同で作品を製作することがあり、モーターショーなどで披露されている[118]。運転の際に使用されるドライビンググローブやドライビングシューズなどについても、ヨーロッパ各国の服飾ブランドで数多く販売されている。またポルシェが「ポルシェデザイン」と称する服飾ブランドを個別に展開、或いはフェラーリやベントレーが香水をプロデュースするなど、自動車ブランドが服飾部門を別途に立ち上げることもある[118]。イタリアのピニンファリーナや日本のKEN OKUYAMA DESIGNといったカロッツェリアは、自動車のデザインから建築家具眼鏡化粧品に至るまで、様々な分野のプロダクトデザインを手掛けている。

スイス高級時計で知られるショパールは、1988年からミッレミリアの公式スポンサーとなり、毎年リミテッドモデルをリリースしている[119]。同社社長のカール・フリードリヒ・ショイフレは、”上質な車の愛好家は得てして上質なタイムピースを好みます。その逆もまた然り。どちらにおいても、最高の精度とスポーティなエレガンスが最も大切な要素であるからです”と述べる[119]。同じくスイス高級時計のタグ・ホイヤーは、古くからレーシングスピリッツを重視していたが、1971年にスクーデリア・フェラーリとパートナーシップを結び、そして同年のレース映画『栄光のル・マン』の制作中にスティーブ・マックイーンが同社モデル「モナコ」を着用したことで、自動車業界の一躍人気時計ブランドとなる[120]。また上記でも述べたラルフ・ローレンは、”Art Deco Automobiles”時代の名車ブガッティ・タイプ57SC アトランティーク・クーペをコンセプトにした腕時計を製作している[121]。他にも、数多くの高級腕時計メーカーが自動車との関わりを持っている。

自動車の位置づけの変化

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リクルート社のリクルート社自動車総研が行った(日本の中古自動車購買層に対する)アンケート調査の結果だとして示したグラフによると、2018年時点のデータとしては「自動車はステータスシンボルだ」と思っている人々は40%程度。「どちらともいえない」と思っている人も40%程度。「自動車はステータスシンボルだとは、あまり思わない」「そうは思わない」が20%程度である[122](ただし信憑性については疑義がある[注 10])。

マーケティングコンサルタントの堀好伸は、現代の日本の若者たちは(昭和時代の若者とは異なって)自動車も買わないし、酒も飲まない、と指摘している[123]。堀好伸の分析によると、現代日本の若者は「モノを買う」「モノを所有する」などということではなく、「価値観を共有できる仲間同士で共感しあう」ことを好むようになった[123]といい、「自らの価値観でモノやコトを仲間と共有して、一緒に楽しいことを創り上げる時代」になっている、という[123]

自動車と映像作品

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ショーン・コネリー蝋人形) とアストンマーティン・DB5

レース映画やカーアクション映画などの自動車を主題とした映画は、長年に亘り世界中で人気である(「Category:自動車を題材とした映画作品」を参照)。

一方で、自動車を直接的な主題としていない映画においても、自動車の魅力を効果的に利用した類のものがある。著名な例としては、『007 シリーズ』(1962年 - )のボンドカーがある[124]。ドラマでもそのような例は多くあり、『刑事コロンボ』(1968年 - 2003年)のプジョー・403や『相棒シリーズ』(2000年 - )の日産自動車などがある。またミュージック・ビデオCMなどにおいても、自動車の魅力を効果的に利用した作品は少なくない。

自動車とサウンド・音楽

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ガソリンエンジン内燃機関より自然に発生するエンジンサウンドは、物理・工学的な技術によって芸術的な音が生まれるというその特異なメカニズムから、幾多の自動車ファンを魅了してきた。そのため自動車ブランドの多くは、エンジン音にも積極的なチューニングを施している。中でもフェラーリに代表されるV12エンジンや、F1カーなどから発せられる高音のエンジンサウンドは、旧来から魅力的とされてきた[125][注 11]

昨今のトレンドである電気自動車では、エンジン音が存在しないため、電子的な合成音を使って魅力的なエンジンサウンドを作りだそうとするブランドが増えている[125]。その中でも2019年6月に発表されたBMWのEVコンセプトカー、”Vision M Next”では、エンジンサウンドの制作に作曲家ハンス・ジマーが起用されており[127]、このようにエンジン音に対する概念は変化しつつある。

自動車の車内は、一定の空間を保有しながらそれでいて閉鎖的であるため、音楽を楽しむには好適な環境であり、ドライブの魅力にも大きな役割を果たしている。そのため、カーオーディオは自動車関連用品の中でも重要な位置を占めている。

自動車を題材とした音楽作品については、「Category:自動車を題材とした楽曲」を参照。音楽の存在を重視した自動車映画としては、『チキ・チキ・バン・バン』(1968年)や『ワイルド・スピードシリーズ』(2001年 - )、『ベイビー・ドライバー』(2017年)などがある。

負の影響

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自動車は使用者に多くの便益を与えるが、地球環境の破壊の恐れや、人間の健康を害したり、生命を奪ってしまうことすらある。

交通事故

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交通事故で大破した車

自動車が社会に及ぼす悪影響の中で特に大きなものは、交通事故で、怪我人や死者やその家族という被害者と、事故を起こした車を運転していた加害者を作りだしてしまう。 交通事故は出来る限りゼロに近付けるべきであり、特に死亡事故はゼロに近付ける努力を精一杯するべきだ、とされている。日本の警察は交番などに、その地域で、日々、交通事故によって怪我を負った人や死亡した人の数を掲示し、人々に注意を喚起し、意識を変え、運転に慎重になってもらおうと努力している。

負傷(怪我)と分類される場合でも、被害者は実際には重い障害を負って生涯苦しむ人が含まれている。まして被害者が死亡してしまった場合、遺族の悲しみは計り知れない。また死亡した人に子供がいれば、その子供は交通遺児となり、「親を失った子」としてその後の人生を生きなければならず、親が生きていたらできたはずのことができない人生となる。加害者となった者も、(自賠責保険任意保険などで)被害者に金銭的に補償すればそれで全てが済むというような生易しいものではない。たとえば、運転時にいわゆる「ながら運転」をしていた場合、危険を予見できたにもかかわらず、道路交通法で定められている「注意義務」を怠ったことによって罪が重いが、そうでなくても、ただほんの一瞬注意を怠ってしまった、ということでも過失運転致死傷罪が適用される可能性があり、運転者(加害者)は刑務所で服役しなければならない可能性がある。また、自動車保険を利用して被害者に対して金銭的に補償しても、さらに運転者が刑務所で服役しても、遺児にとって大切な親が生き返るわけでもなく、結果として加害者となった者は一生涯、被害者の人生を狂わせてしまったことに対する道義的な責任を感じ続けなければならなくなる。加害者は、「自分は人を殺してしまった」、「残された家族の人生も壊してしまった」などと苦しむようになり[128]、加害者の人生も、大きく変わってしまうのである。自動車によって頻繁に起きるようになった交通事故は、ただの金銭問題や経済問題といったレベルをはるかに超えて、人々の人生を狂わせ、苦しめ続けている。

なお(一部に、人命を軽視する者や、人の命まで金銭に換算して済ましてしまおう、という者がいるが、それがそもそも非常に不謹慎である、と一般にされている。それでも金銭に換算して理解しようとする者にその金銭を示すと)交通事故関連の損失は、日本だけに限った場合でも、毎年6.7兆円に及んでいる[129]

自動車の前に馬車が普及していたヨーロッパや米国では、車(馬車)が非常に危険だということは理解されていて、歩行者と車の走行場所の完全な分離(歩車分離)が馬車時代から進み、自動車が走行する車道と、歩行者の歩く歩道の距離が何倍もとってあり、その結果事故が少ない。またヨーロッパでは「歩行者優先」が徹底されていて、歩行者がいたら、自動車運転者はほぼ絶対的に停車する。ところが日本は後進国の段階、馬車すらも普及していない状態、つまり歩行者(や人が引く荷車)しかなかった道に、いきなり自動車が人の動線を侵害するように導入されてしまった。おまけに、ヨーロッパの走行状態を知らない人々が住む日本では「歩行者優先」の原則が十分理解されず、自動車の運転者が傲慢に歩行者の歩行を妨害するようなことがまかり通るようになってしまい、それが放置されるようになってしまった。最近では海外の交通状況を理解する日本人も増えるようになり、日本でも歩行者優先意識の啓発、あるいは歩行者優先の原則の絶対厳守とその原則を守らない運転者に対して厳罰を科すことが望まれるようになりつつある。歩道のガードの拡充、十分な幅の自転車専用レーンの確保などの道路インフラ整備が必要とされている。東名飲酒運転事故以前は飲酒運転も横行していた。速度超過、事故を誘発する違法駐車、横断歩行者の妨害等などの交通犯罪が蔓延している現状がある。またスマートフォンの普及などが原因となって、2010年代後半にはながら運転による深刻な事故が統計的に明白に急増したので、「ながら運転」による事故に関しては日本政府も厳罰化した改正案を2019年5月8日に閣議決定し、法案として提出した[130]

また日本など高齢化が進む社会(高齢化社会)では、全ドライバーに占める高齢ドライバーの割合が増え、ブレーキペダルとアクセルペダルの「踏み間違い」や道路の逆走事故が頻発するようになってきた。高齢者は、実際には客観的に測定して運転技能が落ちているにもかかわらず、本人は逆に「自分の運転には絶対に自信がある」などと言うようになり、こうした高齢者による自信過剰が原因で、より一層重大で深刻な事故が起きていることが判ってきている[131]

運転技能が落ちた高齢者ドライバーほど逆に自分の運転に「自信」を持つという恐ろしいデータも明らかになってきて、もはや高齢者ドライバーの「自覚」に期待したり、(自発的な)免許の自主返納に期待することは無理だ、高齢者に期待することが事故を引き起こす環境を放置する結果を生んでいる、ということも指摘されるようになってきている。(フジテレビの情報番組などをはじめとして)日本では高齢化が進み悲惨な事故が既に急増したので、高齢者ドライバーに関しては(アクセルを踏み込む異状操作時に作動したり、障害物に突進する場合に作動する)自動ブレーキ車限定の免許」(現在のところ。また将来的には「自動運転車限定の免許」)に強制的に変えるなどの法的・行政的な対策が必要だ、との指摘が行われるようになっている。

2010年代後半、先進国の大手自動車メーカーやIT企業などが主導して、自動運転車、しかもA.I.(人工知能)と高性能のセンサーを多数活用した高度な自動運転車の開発にしのぎを削っており、すでに一部の地域では実験的に走行が始まっており、2020年代には本格的に販売され、普及が進んでゆくと予想されており、性能の良いAIを用いた自動運転車ならば、人間が運転するよりも事故率を数百分の1や数千分の1程度にまで減らすことができる、といった予想もあり、自動運転車の普及によって、交通事故で苦しむ人々が減ることが望まれている。

大気汚染と環境破壊

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内燃機関自動車(ICEV)は化石燃料を燃やし、二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、黒煙を大量に排出し、環境や人々の健康に大きな悪影響を与える。

大気汚染ぜんそくや肺疾患などを引き起し、肺がんの原因ともなっている。また、大量に自動車の走行する道路沿いでは、走行による騒音や振動などの様々な問題も引き起こす。

二酸化炭素は地球温暖化の最大の原因とされ、窒素酸化物・硫黄酸化物などは酸性雨の原因にもなっており、これらの排出の削減が急務である。

1970年代から先進国の政府によって大規模な自動車排出ガス規制が行われるようになった。その結果ようやく自動車メーカーは、排ガス中に有害物質の少ないエンジンや低燃費のエンジンを本腰を入れて開発するようになった。また、大気汚染問題を根本的に解決すべく、電気自動車などのゼロエミッション車の開発も進むようになり、2010年代では電気自動車も本格的に販売台数が伸び、ヨーロッパや中国では2020年代にさらに排ガス規制が厳格化し、電気自動車の普及の推進(や販売台数、販売割合の義務化)がされるよう予定が欧州議会や欧州の各国政府の主導で組まれており、環境にも健康にも優しい電気自動車の開発・販売や購入に対し様々な優遇措置がとられるようになっており(2012年時点ですでに行われていた)、各自動車メーカーも「脱ガソリンエンジン」「電気自動車開発」でしのぎを削っている。

石油の大量消費

2018年には生産台数が1億台へ達すると予測されているが、仮に1.36トン車の984リットルで計算すると必要なエネルギーはガソリン984億リットル相当となり、これは日本の年間ガソリン消費量55百万キロリットル(550億リットル)[132]の約2倍である。

自動車利用犯罪

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自動車が生活に密着していなかった頃は、犯罪者の居住地域と犯罪地域は密接な状態にあったが、自動車が普及するにつれ、この前提は崩れている。他の交通機関でも犯罪を犯した地域からの脱出は可能であるが、公共交通では移動時間帯が限られている点や、(駅にカメラが設置されている鉄道や、運転手が目撃者となり得るタクシーなど)匿名性を保つことが困難な点などの関係で、犯罪者が犯罪を犯した地域から離れる場合の手段として自動車を用いたものが増えていることが、毎年発表される警察白書から確認できる。この問題には、高速道路での移動や盗難車による移動も含まれる。この問題に対し自動車ナンバー自動読取装置設置などの対策が施されているが、高価な装置であることなどの理由から設置場所は限られており、犯罪者側もナンバーを見難くするカバーを付ける者や偽造ナンバーを付ける者がいるなど、完全な対策になってはいない。

その他

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交通渋滞

などである。

乗り物酔い、シックカー症候群についてはシックハウス症候群をそれぞれ参照。

自動車の普及

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自動車生産台数の推移

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世界の自動車生産の推移[133]
各国の自動車生産台数(千台)
生産台数シェア

20世紀に入り、フォード・モデルT(販売1908年 - 1927年)の発売から米国での普及が始まり、その後欧州でも比較的廉価な車が発売された。第二次世界大戦後には戦時中に兵器製造に従事していた各企業による自動車生産が始まり、特にアドルフ・ヒトラー国民車構想の産物であるフォルクスワーゲン(1938年 - 2003年)は量産記録を打ち立てた。1970年代には日本においても大衆車が普及し日本車の海外輸出も始まり生産台数を伸ばし始め、同時に韓国マレーシアなどでも自動車生産が始まった。以下で述べる生産台数はメーカー国籍別ではなく、地理的に生産された国での数値である。

自動車の生産台数は1950年には約1058万台[134]で、その約8割は第二次世界大戦による戦災を逃れた米国によるものであった。ビッグスリーの地元であり、また後に日・独などのメーカーが進出した米国は、その後半世紀にわたり世界で最大の生産国であった。60年代には西独などの生産が立ち上がり、1960年の生産台数は1649万台となった。70年代には日本における自動車の増産も始まり、1970年の生産台数は2942万台、1980年には3856万台[135]、90年代には韓国ついで中国での生産が増加し、1990年4855万台、2000年には約5837万台[136]、2010年には7758万台[137]2013年には8730万台[138]と増加し続けている。2018年には1億台に達するとの予測も出ている[139]

日本における自動車生産は第二次世界大戦前は主に米国企業によるいわゆるアメ車ノックダウン生産、戦後には戦災で破綻した物流システムを整えるべくトラックやバスの生産が優先された。乗用車の生産台数がトラック・バスを追い抜いたのは1968年であった。1960年の世界の生産台数は1649万台であったが、日本の生産台数は約76万台(内訳、乗用車17万台、トラック59万台、バス8千台)であった。1960年当時には、それまで三輪車や二輪車を生産していた鈴木自動車、富士重工、ダイハツ、東洋工業、本田などの企業が四輪車の生産に乗り出していた[140]。「マイカー元年」と言われた1966年には229万台[141][142](内、乗用車98万台[143][142])でその内輸出は約26万台であった[140]。1980年には約1千万台に達し米国を上回った[144]。1980年の日本の自動車輸出台数は597万台であった[140]。1991年には過去最高の約1325万台を生産したが、以降は1千万台前後で推移している[133]。輸出は1985年がピークで673万台であった[140]

2009年には中国が1379万台で2位日本の793万台を大きく引き離し世界最大の自動車生産国となった。2013年は中国が2212万台、米国1105万台、日本963万台、ドイツ572万台、韓国452万台、インド388万台、ブラジル374万台、メキシコ305万台、タイ253万台、カナダ238万台、ロシア218万台となっている [145]。自動車メーカーの国籍はともあれ、中国で突出した台数が生産されている。2013年の自動車生産台数の4台に1台は中国で生産された。

地域別でみるとEU27カ国では16カ国で1618万台生産されており、多い国はドイツ572万台、スペイン216万台、フランス174万台、英国160万台、チェコ113万台、スロバキア98万台などで、これら6カ国でEU生産の82%が生産された。その他の地域で約百万台規模の生産のある国は、トルコ113万台、インドネシア121万台である。BRICSの一員である南アフリカでは約50万台の生産があった[146]

自動車保有(普及)台数

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第二次世界大戦による大量破壊の翌年の1946年における自動車登録台数は約5千万台[147]で、1955年に1億台を超え、1967年には2億台、1979年には4億台、1986年には5億台となり、24年後の2010年には10億台を超えた[148]

この間に各国で物資輸送の主体が鉄道から自動車へと転換し、総人口の増加、自動車普及率の向上とも相まって自動車登録台数が飛躍的に増加していった。

登録台数[148]・自動車保有率の推移
年度 登録台数 世界人口[149] 1台あたりの
人口
備考
1945 0.5億台 23.5億人 47 人口は
World population in 1945による。
1955 1億台 27.7億人 27.7
1960 30億人 24.4[150]
1967 2億台 34.2億人 17.1 1966年の人口値
1979 4億台 44.5億人 11.1 1980年の人口値
1986 5億台 48.6億人 9.7 1985年の人口値
2002 8億台 62.4億人 7.7[150]
2010 10億台 69億人 6.9
2030 20億台 83億人 4.2 17億台とする予測もある。その場合4.9人に1台。

1台あたりの人口の数値は1960年と2002年のもの以外は登録台数の有効桁数を一桁で計算しているので、大まかな数値である。

各国の1千人あたりの自動車台数(2009年)
  601+
  501-600
  301-500
  151-300
  101-150
  61-100
  41-60
  21-40
  11-20
  0-10

20世紀末からは中国の経済成長に伴い、中国での自動車生産も始まり21世紀初頭には米国に次ぐ自動車保有国となった。2010年の中国の自動車登録台数は前年比27.5%増と大幅な伸びを示しているが[148]、中国における人口あたりの普及率は未だに低く、さらなる増加が見込まれている。中国に並ぶ人口大国のインドでも経済成長が著しく大きく登録者台数を伸ばしているが自動車保有台数は中国の約3分の1である。中国についで増加台数の多い国はブラジルで2010年には250万台増加した[148]

2012年末における世界の乗用車、トラック・バスを含む四輪車保有台数は約11億台で、6.3人に1台の保有率となっている。11億台の内訳は乗用車が7億7332万台、トラック・バスが3億4123万台で、乗用車の普及率は9.1人に1台となっている。自動車の普及の著しい北アメリカ、西ヨーロッパ、日本、豪州では乗用車の普及率は約2人に1台であるが、米国に次ぐ自動車保有国である中国では人口あたりの乗用車保有率は約26人あたり1台である[151][152]

参考までに二輪車(自転車を除く)の保有台数(2011年または2012年)は全世界で約2億台から4億台[153]と推定されており、中国に約1億台(1台あたり13人、以下同)、インドネシアに約7598万台(3人/台)、タイ1924万台(4人/台)、台湾1514万台(1.5人/台[注 12])、日本1199万台(11人/台)、マレーシア1059万台(3人/台)、イタリア858万台(7人/台)となっている[154]

自動車の地域別保有台数を以下の表で示す[153]

なおICCTの2013年の報告書では自動車をLight-duty(軽量車両)とHeavy-duty(重量車両)に2分して集計している。米国の環境庁(EPA)によるLight-dutyの分類は車重8500ポンド(約3.8トン)以下の自動車であり[155]、ほぼ日本で普通免許で運転できる自動車に相当する。Heavy-dutyはバスや大型トラックといった業務用の車両と見なせる。前述した日本自動車工業会による乗用車とトラック・バスとの分類とは異なることに留意。
国・地域別の自動車保有台数 2010年実績と2030年予測 (単位:百万台)
2010年保有台数 2030年予測 対10年度増減率
軽量車 重量車 合計 シェア 軽量 重量 合計 シェア 軽量 重量
カナダ 19 3 22 2% 30 4 34 2% 59% 23%
米国 231 12 243 24% 280 15 295 17% 21% 27%
メキシコ 22 3 25 2% 39 5 43 3% 75% 60%
中南米 20 8 28 3% 37 14 51 3% 83% 74%
ブラジル 28 2 30 3% 50 3 53 3% 80% 33%
EU27カ国 239 35 274 27% 313 41 354 21% 31% 17%
EU外欧州 28 6 34 3% 60 8 69 4% 116% 40%
ロシア 34 6 40 4% 80 7 87 5% 136% 17%
中国 59 17 76 7% 189 32 221 13% 221% 87%
日本 58 17 75 7% 57 16 73 4% -1% -6%
韓国 15 5 20 2% 29 11 40 2% 95% 116%
インド 15 5 20 2% 105 19 124 7% 600% 276%
アジアその他 40 18 58 6% 89 34 123 7% 122% 89%
中近東(エジプトを含む) 26 7 33 3% 68 17 85 5% 161% 142%
アフリカ 21 10 31 3% 33 15 48 3% 56% 49%
オーストラリア 12 3 15 1% 19 3 23 1% 61% 16%
合計 867 157 1024 100% 1,479 243 1,722 100% 71% 55%

2010年の集計では米国とEU27カ国が2大自動車保有地域である。EU27カ国の大半は独・仏・英・伊・西(=スペイン)の5カ国であり、新車登録の75%はこの5カ国によるものである[153]。EU27カ国には世界の27%の2.7億台、米国には同24%の2.4億台があった。これに続くのが国土面積や人口で比較にならないが中国と日本である。それぞれ76百万台、75百万台で約7%のシェアであった。次は日本より人口が1割強多く最大の国土を持つロシアで保有台数は約4千万台であった。

2030年にかけては、EU27カ国および米国では2-3割の増加でそれぞれ3.5億台、3.0億台、中国は約3倍の2.2億台、インドは約6倍の1.2億台となると推定されている。ついでロシア87百万台、2010年比微減となると予想される日本の73百万台、1.8倍の53百万台となるブラジルなどが続く。経済成長の著しい韓国では2030年には普及率が日本など自動車先進国と並び倍増の4千万台となると予想されている。

自動車社会ロサンゼルスの現状

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最多の保有台数(全4輪車1台あたり1.2人)である米国のなかでも保有率が高いのがロサンゼルスである。なお米国の普及率を乗用車のみでみると1台あたり2.6人と他の自動車普及国がほぼ2.0人かそれ以下であるのに対して普及率が低くでている[152]。これは米国では乗用車に分類されないピックアップと呼ばれるトラックが自家用として広く普及しているためである。

自動車社会であるロサンゼルス郡は、面積が東京都の約4.6倍の約1万平方キロで、人口は東京都の約4分の3の約1千万人[156]で、約700万台(2008年末)の登録車両がある[157]。運転出来ない若年層を考慮すると平均ではほぼ1人に1台の状態である。ロサンゼルス市にはかつて路面電車が走っていたが、20世紀半ばには廃止され(アメリカ路面電車スキャンダル)1940年のパサデナフリーウェイ(Arroyo_Seco_Parkway)を皮切りに高速道路が整備され自動車社会へと変わっていった。これにより街自体が人の移動を車によるものとの前提で開発され、広大な駐車場を備えたスーパーマーケットショッピングセンターが近郊の小売業を駆逐していき、ちょっとした買い物でも車で移動せざるを得ない状態になっている。1990年代には地下鉄(ロサンゼルス郡都市圏交通局)の開業が始まったが、整備状況は限られている。

ロサンゼルス郡では高速道路網(Freeway)も張り巡らされており、多くの一般道も片側3車線前後であるが、朝夕の通勤退社時には高速一般道ともに大きく渋滞している。道路の整備は米国の他州はもちろん各国に比べ進んではいるが、地下鉄バスなどの公共交通機関が未熟な為に約84%が通勤に乗用車を運転しており公共機関の利用者は6%に留まり、全米で最悪の交通渋滞との評価が下されている[158][注 13]

カリフォルニア州ではガソリン価格は米国平均よりも高く、排気ガス規制もより厳しい独自のものを設定しており、より小型の車やハイブリッドカーが選択される傾向が他州よりも強い。

日本の自動車保有台数

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日本には1898年(明治31年)ごろから自動車が輸入されはじめ、道路法が成立した1919年(大正8年)には自動車台数は5000台に達していた[159]大正時代関東大震災を挟んで急増し、1926年(大正15年)で3万2000台に達し、1932年(昭和7年)には10万台を超えた[160]。1945年(昭和20年)における二輪車・小型特殊車両を除いた自動車保有台数は、14万台弱、保有率は0.2%に過ぎなかったが[10][161]、敗戦後の自動車の普及はめざましく、1950年(昭和25年)には35.9万台、1955年(昭和30年)には92.2万台となる[161]。1956年(昭和31年)には戦後の復興を遂げ「もはや戦後ではない」といわれるようになり、前年1955年には通産省が「国民車構想」を発表した。1958年(昭和33年)にスバル・360が発売され60年代前半には各社から軽自動車が発売された。1960年(昭和35年)は230万台、1965年(昭和40年)には724万台となり、わずか10年間で約8倍に急増した[10][161]。1966年(昭和41年)は「マイカー元年」と呼ばれトヨタ・カローラ日産・サニーなどの大衆車が発売され自動車が普及し始めた[162]

1966年(昭和41年)のトラック・バスなどの大型車も含めた自動車保有台数は約884万台で、翌1967年には1095万台、1971年(昭和46年)に2045万台、1982年(昭和57年)に4130万台、1997年(平成10年)に6984万台となった以降は微増となり[163]2004年以降は7500万台前後で推移し、2014年は2輪車を除いた保有台数は7721万台、保有率は60.6%であった[164][165]。この保有台数は国別では米国、中国に次ぐ3番目で、人口あたりの保有台数では米国や西ヨーロッパ諸国とほぼ同率である。2030年にかけては海外では引き続き増加していくが、日本では微減すると予想されている[153]

60年代後半からの急激な自動車の増加に対して道路整備は立ち遅れ、各地で交通渋滞や交通事故の増加が問題となった。また排気ガスによる大気汚染も70年代に深刻化した。日本においては1970年代から高速道路(高規格幹線道路)の整備が始まったが、急増する保有台数に追いついておらず、日本の高速道路の整備状況は米国とはもちろん、ドイツ、フランス、中国、イギリス、韓国よりも低い水準である[166]

なお二輪車では、原付を除く125cc超の二輪車は1966年には約88万台であったが[164]、2013年には125cc超が4倍の約354万台となった他、原付第一種が666万台、第二種が163万台で二輪車の合計は1182万台であった[167]

2013年の四輪と二輪の合計は8791万台で国民1.4人に1台の普及率となっている。

20世紀末から日本の登録台数は頭打ちであるが、小型車、特に軽自動車がシェアを拡大してきている。軽自動車は技術の進歩に加えて、従来の取り回しの良さと経済性で弱点が少ないことから、90年代以降着実に台数を伸ばしている。

都道府県別の自動車普及率

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2013年の日本の自動車普及率は対人口では1台あたり1.7人、乗用車に限ると2.1人であり、これは100人あたり59.7台、46.6台となる[152]。以上は自家用、業務用、軽から大型まですべてを含む数値である。

2013年の世帯あたりの自家用乗用車(軽自動車も含む)の普及率をみると、日本平均は1世帯あたり1.08台で各家庭にほぼ1台の割合となっている。世帯あたりの人数は、2010年では最大が山形県の3.16人で最低が北海道の2.27人で全国平均は2.59人であった[168]

世帯ベースで各地域をみると保有台数の多い県は上位10地域で、福井県(1.77台)、富山県(1.73台)、群馬県(1.68台)、山形県(1.68台)、岐阜県(1.65台)、栃木県(1.65台)、茨城県(1.63台)、長野県(1.59台)、福島県(1.56台)、新潟県(1.56台)などで、その他の大半の県で1台以上となっている。1台を切るのは5地域のみで、少ない方から東京都(0.48台)、大阪府(0.68台)、神奈川県(0.75台)、京都府(0.86台)、兵庫県(0.94台)と、当然ではあるが、公共輸送機関の発達した人口密度の高い(人口都市集中の激しい)都道府県で保有台数が少なくなっている[169]。なおこの5都府県に続いてすくないのが北海道(1.008台)、千葉県(1.02台)であった。国土面積の約2割以上を占める広大な北海道で世帯当たりの保有数が少ないのは世帯あたりの人数が最小であることも影響している。

登録台数予測

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将来の登録台数予測はいくつかの機関から出されており、2030年の自動車登録台数は17億から20億台との推定が出ている[150]。自動車は2030年にかけて中国、中近東、インドで大きく普及し、総普及台数は17億台に達すると見られている[153]。2050年には25億台となるとの予測も出されている[170]

二輪車も2010年の約4億台から2030年には9億台へ達すると推定されている[153]

仮に中国で乗用車の普及率が先進国並の2人に1台となると2012年時点の人口13.4億人では6.7億台となり、約6億台が増加することとなる。これは2013年の世界の自動車生産実績8730万台の約7年分に相当し、2013年の中国の自動車生産実績2212万台の27年分である。

自動車産業

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全世界での自動車生産台数は非常に大きく、しかも自動車を構成する数多くの部品を製造するには非常に多くの人員が必要となる事から、自動車は巨大産業である。自動車産業内での企業間の競争は激しく、価格競争の激化や経営内容悪化や淘汰などが起き、1980年代以降、多国籍企業グループへの集約が進んでいる。

自動車製造には数万点におよぶ部品(鋼材、ガラス座席電子機器ねじなど)が必要であり、消費者からは直接的には見えない諸企業(鉄鋼産業・ガラス産業・合成樹脂メーカー、電子機器メーカー、ソフトウェア製造業まで、数え切れないほどの企業)の売上にも影響を及ぼし、製造には大規模な設備投資が必要となることが多く、その企業や工場だけでなく、協力会社なども集まってきて企業城下町を形成するなど、自動車企業・工場の立地場所周辺への経済的効果は非常に大きいといえる。

近年はグローバル競争が激しくなってきていることや、年々排ガスや安全の基準が厳しくなっていること、自動運転や電気自動車の研究開発など、個別の企業でそれらに対処するのは難しくなってきているため、M&Aや提携をするケースが増えている。

自動車ブランド・グループ

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自動車ブランド・メーカーや自動車製造者についての詳細な情報は、

代表的な自動車グループ

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2022年現在は以下の通り。

グループ名 所属する企業・ブランド 所属はしていないが資本関係の深い企業・グループ
トヨタグループ トヨタ自動車/レクサス/日野自動車/ダイハツ工業 SUBARU/スズキ/いすゞ自動車
ルノー・日産・三菱アライアンス ルノー/日産自動車/三菱自動車工業/インフィニティ/ダットサン/ルノーサムスン/アルピーヌ/ダチア/ラーダ
フォルクスワーゲン・グループ フォルクスワーゲン/アウディ/ポルシェ/ランボルギーニ/シュコダ・オート/セアト/ベントレー/ブガッティ/スカニア/MAN
ステランティス フィアット/アルファロメオ/アバルト/ランチア/マセラティ/クライスラー/ジープ/ダッジ/ラム・トラックス/プジョー/シトロエン/DS/オペル/ボクスホール フェラーリ
GMグループ シボレー/ビュイック/キャデラック/GMC 上汽通用五菱汽車
現代-起亜グループ 現代自動車/起亜自動車/ジェネシス/アイオニック
フォード フォード/リンカーン
BMW BMW/MINI/ロールス・ロイス
タタ・グループ タタ・モーターズ/ジャガーランドローバー/タタ大宇/タタ・イスパノ マルコポーロ
吉利 吉利汽車/上海華普汽車/ボルボ・カーズ/プロトン/ロータス・カーズ/テラフージア/ロンドンEVカンパニー/yuan cheng auto ダイムラー

乗用車の世界シェア

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2017年時点。出典:[171][172]

グループ別

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ブランド別

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関連業種

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自動車関連の専門職

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自動車関連の仕事・職業のひとつに自動車整備士がある。 各国で状況は異なるので、自動車整備士という記事で詳しく説明する。

脚注

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注釈

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  1. ^ en:taxiなど。
  2. ^ 1907年には純国産の実用化されたガソリン車が開発されている。
  3. ^ 手前からBMW・328アルファロメオ・8C
  4. ^ 手前がジャガー・Cタイプ、左奥がジャガー・XK120、右奥がポルシェ・356
  5. ^ 手前からアルファロメオ・TZマセラティ・250Sフェラーリ・250GT SWBアストンマーティン・DB4
  6. ^ 別名スラブサイド、フルワイズ、ポントンボディ。フェンダーとボディが独立せず、一体になっている構造のこと。
  7. ^ ボディ表面から突起や凹凸をなるべく少なくして、空力特性や見栄えを向上させる構造のこと。1970年代のウェッジシェイプ化に伴って注目されはじめ、1980年代から量産車にも普及。2020年現在までの主流となっている。
  8. ^ 1980年代から普及した、丸型や角型以外の形状をしたヘッドライトのこと。1980 - 1990年代までは、主に横長の長方形台形、或いは楕円形のようなデザインが多かった。ヘッドライトカバーがガラス製から樹脂製に変わったことで、より複雑な形状が見られるようになる。
  9. ^ この場合の「自動車」とは、趣味・娯楽として利用される「自動車」のこと。
  10. ^ このサイトは、統計調査をやる場合に絶対に示すべき母集団に関するデータ(調査対象人数(わずか10~20人程度なのか、1000人なのか、1万人なのか)、調査対象の属性、調査場所(ウェブなのか、紙媒体なのか、店頭なのか))などを全く明かしていない。このような基礎データすら明かしていない状態で主張されている数値の信憑性はかなり低い。
  11. ^ ただし近年のF1については、レギュレーションの変更や技術の向上などによってエンジン音の静音化が進んでおり、この音の変化に対して否定的な意見を持つ者もいる[126]
  12. ^ 出典元に記載がないため、記載されている台数と台湾の頁の人口より算出。
  13. ^ Google Mapでロサンゼルスの午前6時版から午前9時半、午後3時から午後7時の間のトラフィックを見るとピーク時には大半の高速道路で渋滞が見られる。

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参考文献

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関連項目

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外部リンク

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