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「大陸」の版間の差分

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{{Redirect|大州|その他|大州 (曖昧さ回避)}}
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{{multiple image
{{複数の問題
| align = right
|独自研究=2016年10月8日 (土) 07:08 (UTC)
| direction = vertical
|出典の明記=2023年3月}}<!-- 学術用語集には「大州」「大洲」とも掲載されていない。continent の訳語としての「大州」の用例はあるようだが、一般的な用語・訳語は「大陸」であり、「大陸」との統合を検討すべきだと思われる。ノートを参照。 -->
| width = 300
{{統合提案|大州|t=ノート:大陸#記事「大州」との統合提案およびリダイレクトの整理について|date=2024年8月}}
| header = 大陸と大州
{{工事中|8月25日17時頃 (JST) まで|time=2024年8月25日 (日) 07:00 (UTC)}}
[[ファイル:Whole world - land and oceans_12000.jpg|thumb|300px|大陸と海洋]]
| image1 = Whole world - land and oceans 12000.jpg
| caption1 = 大陸と海洋
[[ファイル:Continental models.gif|thumb|300px|大陸を色分けで表した[[GIF動画]]。さまざまな考え方を反映するために一部が統合または分割される。例として、[[ヨーロッパ]]と[[アジア]]を合わせて[[ユーラシア]]として表した赤系統部分、南北[[アメリカ大陸]]を1つの大陸と考える緑系統部分がある。]]
| image2 = Continental models-ja.gif
| caption2 = 大州を色分けしたアニメーション地図
}}
{{色}}
{{色}}
{{読み仮名|'''大陸'''|たいりく}}とは、[[地]]の[[地殻]]上に存在する塊である一般的には[[ユーラシア大陸]][[アフリカ大陸]][[北アメリカ大陸]][[南アメリカ大陸]][[オーストラリア大陸]][[南極大陸]]の6つの[[|陸上]]部分を指すが、これは相対的な判断よるもので厳格な基準は設られていない<ref>[http://www.britannica.com/EBchecked/topic/134805/continent Continent] (2009年). In ''Encyclopædia Britannica''. Retrieved 12 December 2009.</ref><ref name="NatlGeo">{{cite web
[[地理学]]的には、'''大陸'''たいりくとは、[[陸|陸地]]のうち[[面積]]の大きなものをいう<ref name="改訂新版世界大百科事典_大"/>通例、[[ユーラシア大陸|ユーラシア]][[アフリカ大陸|アフリカ]][[北アメリカ大陸|北アメリカ]][[南アメリカ大陸|南アメリカ]][[オーストラリア大陸|オーストラリア]][[南極大陸|南極]]の六大陸を指す<ref name="日国_大陸"/>。大きさ明確な基準があるわではない<ref name="AGCJ_大陸"/>、地形的には、周囲を[[海]]に囲まれた陸地のうち<ref name="AGCJ_大陸"/>、[[グリーンランド島]]より面積の大きいものを大陸と呼び、それ以下のものは[[島]]と呼ぶのが慣例となっている<ref name="AGCJ_大陸"/><ref name="帝国書院"/>。[[地質学]]的には、[[珪長質]]な[[大陸地殻]]が存在する地域をいう<ref name="AGCJ_大陸"/>。この意味では、陸としての大きさは関係なく{{sfn|田村|2024|p=36}}、海面下にある[[大陸棚]]も大陸の一部とみなされる<ref name="AGCJ_大陸"/><ref name="JGU"/>。
|url=http://travel.nationalgeographic.com/places/continents/
|title=Continents: What is a Continent?
|publisher=[[ナショナルジオグラフィック協会]]
|language=英語
|accessdate=2010-04-29
}} "Most people recognize seven continents—Asia, Africa, North America, South America, Antarctica, Europe, and Australia, from largest to smallest—although sometimes Europe and Asia are considered a single continent, Eurasia."</ref>。衝突や分裂など大陸の動きは、かつては[[大陸移動説]]として説明された[[プレートテクトニクス]]で理論化され、[[地質学]]の研究課題となっている。


一方、大陸を中心として地球上の陸地をいくつかの地理的[[地域]]に大きく分けた<ref name="新明解_州"/>、'''大州'''(たいしゅう<ref name="日国_大州"/>)または'''州'''(しゅう)という別の概念も用いられる。大陸部だけでなく、その周辺の島々も含まれる点で、大州は大陸とは区別される<ref name="Benesse"/>{{sfn|神沼|2023|p=14}}。日本語圏では、[[アジア州]]、[[アフリカ州]]、[[ヨーロッパ州]]、[[北アメリカ州]]、[[南アメリカ州]]、[[オセアニア州]](大洋州)の[[六大州]]を指すのが最も一般的であるが、世界的には、[[五大州]]や[[七大州]]に区分される場合もあり、その数と内訳は各自の立脚する歴史・文化的背景の相違によって異同および変遷が認められる<ref name="宮丸"/>。
'''大州'''(たいしゅう)は、[[地球]]の[[陸地]]を、[[大陸]]を中心としたいくつかの領域に区分したもの。単に'''州'''ともいう。一般には'''大陸'''ということも多いが、{{疑問点範囲|正確には大陸だけでなく、周辺の[[島]]々を含む|date=2015年5月22日 (金) 16:39 (UTC)|title=周辺の島々を含む意味でも、一般的な用語は「大陸」だと思われる。学術用語集には「大州」「大洲」ともに掲載されていない。|talksection=当記事の単独立項は妥当か}}。英語ではふつう区別せずcontinentという。対義語は[[大洋]]。
{{TOC limit}}


== 定義とその適用 ==
== 語誌 ==
=== 大陸 ===
慣習的に、「大陸とは有意な[[水域]]で切り離された、充分に広く、連続的で、おのおのが独立していると認識される[[陸地]]」と言える<ref>{{cite book
語源は「大きな陸地」<ref>{{Cite book |和書 |title=日本語源広辞典[増補版] |author=増井金典 |authorlink=増井金典 |publisher=[[ミネルヴァ書房]] |chapter=大陸 |date=2012-08}}</ref>。[[対義語]]は[[大洋]]・[[海洋]]<ref>{{Cite book |和書 |title=三省堂 反対語対立語辞典 |chapter=大陸 |editor=[[三省堂編修所]] |publisher=[[三省堂]] |page=260 |date=2017-07}}</ref>。
|last=Lewis
|first=Martin W.
|authorlink=
|coauthors=Kären E. Wigen
|title=The Myth of Continents: a Critique of Metageography
|year=1997
|publisher=University of California Press
|location=Berkeley
|id=ISBN 0-520-20742-4, ISBN 0-520-20743-2
|pages=21
|chapter=
|quote=
}}</ref>。しかし、一般に言われる6つの大陸は必ずしも[[海]]で分断された離散的な状態にあるわけではない。広さも恣意的な判断に基づき、最大の島[[グリーンランド]]の面積は2,166,086km<sup>2</sup>であり、大陸に分類されるオーストラリアの面積7,617,930km<sup>2</sup>と比較した際に大陸とはみなされない理由は明確に説明されていない。また、おのおのの独立という点では理想的な基準を満たすために[[大陸棚]]や[[島弧]]の存在は考慮されず、南北アメリカは[[パナマ地峡]]でつながっているために合わせて1つの大陸とする考えがあるなど、定義上の矛盾もある。アジア・ヨーロッパ・アフリカも自然な地形では分断されておらず、このうちアジアとヨーロッパは地峡さえない状態でつながっており、定義から大きく逸脱している。[[海洋]]と大陸の関係では、大陸は1つ以上の主要な{{仮リンク|大洋|en|World Ocean|preserve=1}}と接しており、逆に大洋は大陸やさまざまな地理的基準によっておのおのが区分されている。<ref>"[http://www.answers.com/Ocean#Encyclopedia Ocean]". ''[[コロンビア百科事典]]'' (2006年). New York: Columbia University Press. Retrieved 20 February 2007.</ref><ref name="UNAoO">"[http://www.oceansatlas.com/unatlas/about/physicalandchemicalproperties/background/seemore1.html Distribution of land and water on the planet] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20120216030249/http://www.oceansatlas.com/unatlas/about/physicalandchemicalproperties/background/seemore1.html |date=2012年2月16日 }}." ''[http://www.oceansatlas.com/ UN Atlas of the Oceans]'' (2004年). Retrieved 20 February 2007.</ref>


「陸」の字義は、小高い地形が連なる大地(おか・陸地)で、そこから水面より高く上がって平らな土地(陸上)の意に転じる{{sfn|加納|2014|p=1304}}。六は陸の原字で、土が集まって盛り上がった形を表す{{sfn|加納|2014|p=1304}}。
=== <!-- 大州の -->語法 ===
複合語では[[連濁]]により「~だいしゅう」と読むこともあるが、単独では「たいしゅう」と読む。


中国の古い文献『[[書経]]』「[[禹貢]]」<ref name="日国_大陸"/>に([[黄河]]が[[渤海 (海域)|渤海]]に注ぐ途上<ref name="黄海の海岸"/>)「至于大陸」、『[[爾雅]]』「釈地」{{sfn|荒川|1999|p=58}}{{sfn|荒川|1997|p=273}}<ref name="明治漢語"/>に「高平曰[[陸]]、大陸曰[[阜]]」{{sfn|荒川|1999|p=67}}、『[[夢渓筆談]]』「雑誌一」{{sfn|荒川|1999|p=58}}に「所謂大陸者、皆濁泥所湮耳」{{sfn|荒川|1999|p=67}}など「大陸」の用例がみえる(成立年代未詳)が、これらは「陸地」くらいの意味にすぎず{{sfn|荒川|1999|p=67}}、現在広く使われている「大陸」という語の直接の起源であるとは考えられない{{sfn|荒川|1997|p=273}}。
通常、カタカナの地名には「大州」や「州」はつけず、漢字の略称には「州」をつけ、数を数えるばあいには、5「大州」などと言うことが多い。ただし、大州以外にも「○州」「○洲」という地名は多い。


一方、英語の [[#continent|continent]] に対応する訳語としては、比較的新しく{{sfn|荒川|1997|p=231}}日本で成立したもので{{sfn|荒川|1999|p=58}}、開化期の[[文部省]]編『地理初歩』([[明治]]6年/1873年)に載る「西半球ニアル、大陸ハ、北亜米利加、南亜米利加ト、亜細亜ノ、小部分ナリ<ref name="地理初歩"/>」が初出とされ<ref name="日国_大陸"/>、明治初期に西洋の近代的な地理学概念を導入する際に造られた[[和製漢語|新漢語]]の一つとされる<ref name="明治漢語"/>。中国語文献では、日本語の影響を大きく受けた英華辞典『新爾雅』(1903年){{sfn|荒川|1997|pp=266-267}}などが比較的早い例で、現代の中国でも「[[:zh:亚洲大陆|亚洲大陆]]」のようにいうことがある{{sfn|荒川|1997|p=231}}。なお、[[ジェームス・カーティス・ヘボン|ヘボン]]編『[[和英語林集成]]』では、第三版(1886年)に「大陸」の語が掲載されている{{sfn|荒川|1997|p=273}}。
=== 大陸の範囲 ===
大陸を指す最も狭義の概念は切れ目がない<ref>"continent n. 5. a." (1989年) ''[[オックスフォード英語辞典]]'', 2nd edition. [[オックスフォード大学出版局]] ; "continent<sup>1</sup> n." (2006年) ''The Concise Oxford English Dictionary'', 11th edition revised. (Ed.) Catherine Soanes and Angus Stevenson. Oxford University Press; "continent<sup>1</sup> n." (2005年) ''The New Oxford American Dictionary'', 2nd edition. (Ed.) Erin McKean. Oxford University Press; "continent [2, n] 4 a" (1996) ''Webster's Third New International Dictionary, Unabridged''. ProQuest Information and Learning ; "continent" (2007年) ''[[ブリタニカ百科事典]]''. Retrieved 14 January 2007, from Encyclopædia Britannica Online.</ref>主要な陸地ということになる。この考え方では、海岸線が大陸の淵となり、[[イギリス]]や[[アイルランド]]が自国と対して使う「大陸(the Continent)」は[[大陸ヨーロッパ]]を意味する<ref>{{Cite web
|url = http://encarta.msn.com/dictionary_/continent.html
|title = Encarta World English Dictionary
|accessdate = 2008-08-05
|date = 2007
|language = 英語
|publisher = Bloomsbury Publishing Plc.
|archiveurl = https://webcitation.org/5kwRKDyZ6?url=http://encarta.msn.com/dictionary_/continent.html
|archivedate = 2009-10-31
|url-status=dead|url-status-date=2017-09
}}</ref>が、[[アイスランド]]などの島を含まないこと、同様な意味で[[日本]]などから見た[[中国大陸]]<ref>{{Cite web|和書
|url=http://www.hue.ac.jp/exam/images/sen2tiri.pdf
|format=PDF
|title=平成21年度 地理B入試問題 問6
|accessdate=2010-04-24
|date=2010年
|language=日本語
|publisher=[[広島経済大学]]
}}</ref>や、[[オーストラリア]]の[[タスマニア]]が「オーストラリア大陸」に加えられない事象が例になる。また[[太平洋]]の[[ハワイ諸島]]や[[カナダ]]領土を挟む[[アラスカ]]を除いた[[アメリカ合衆国]]の48[[アメリカ合衆国の州|州]]を「[[アメリカ合衆国本土]]」(continental United States)と呼称することもこの用法に当たる。


日本語で単に「大陸」といった場合、前後の文脈によって、[[日本]]から対岸の[[アジア大陸]](とりわけ[[中国大陸]])を指したり、あるいは同じく[[イギリス]]から[[ヨーロッパ大陸]]([[大陸ヨーロッパ]])を指したりすることもある<ref name="日国_大陸"/>。また、日本から遠く隔たったヨーロッパ大陸や[[北アメリカ大陸]]を指していう場合もある<ref name="明治漢語"/>。
[[地質学]]や[[自然地理学]]の見地からは、海面下の水深が浅い領域である大陸棚<ref>"continent [2, n] 6" (1996) ''Webster's Third New International Dictionary, Unabridged''. ProQuest Information and Learning. "a large segment of the earth's outer shell including a terrestrial continent and the adjacent continental shelf"</ref>とそこにある島々(大陸島)も連続した陸地として扱われ、構造的に大陸の境界内に入る<ref>{{cite book
|last=Monkhouse
|first=F. J.
|coauthors=John Small
|title=A Dictionary of the Natural Environment
|year=1978
|publisher=Edward Arnold
|location=London
|id=
|pages= 67–68
|quote=structurally it includes shallowly submerged adjacent areas (continental shelf) and neighbouring islands
}}</ref>。この視点では、大陸の境界は海岸線に関わらず大陸棚の縁となり<ref name=Ollier>Ollier, Cliff D. (1996年). Planet Earth. In Ian Douglas (Ed.), ''Companion Encyclopedia of Geography: The Environment and Humankind''. London: Routledge, p. 30. "Ocean waters extend onto continental rocks at continental shelves, and the true edges of the continents are the steeper continental slopes. The actual shorelines are rather accidental, depending on the height of sea-level on the sloping shelves."</ref>、イギリス諸島やアイルランドはヨーロッパ大陸の一部となり、[[ニューギニア島]]はオーストラリア大陸と一体となって[[サフル大陸]](またはオーストラリア‐ニューギニア)を形成する。


=== 大州・州 ===
[[文化的]]な構図から勘案すると、大陸という概念は大陸棚のような地形的境界を越える可能性がある。たとえば、この考え方では[[アイスランド]]はヨーロッパ大陸の、[[マダガスカル]]はアフリカ大陸の一部と受け取ることができる。これをさらに拡大すると、オーストラリア大陸が[[ニュージーランド]]など全[[オセアニア]]諸島を含み込んだ[[オーストララシア]]までに至る。その結果、地球上のすべての地域はもれなくいずれかの大陸に含まれることになる<ref>{{cite book
==== 字義・語釈 ====
|last=Lewis
「州」の原義は「川中の島([[中州]])」で<ref name="産経国際書会"/>、水に周囲を取り巻かれた地を意味する{{sfn|加納|2014|p=580}}。のち、海に囲まれた大きな陸地(例えば[[本州]])をも表すようになり<ref name="産経国際書会"/>、さらに、人の集まり住む土地<ref name="日国_州"/>(州里)や、その行政区画の単位<ref name="産経国際書会"/>(中国の[[九州 (中国)|九州]])までも意味するようになった。元々の中州の意味に限定した字として「洲」が使われるが、「州」と「洲」は通用する{{sfn|加納|2014|p=580}}。
|first=Martin W.
|authorlink=
|coauthors=Kären E. Wigen
|title=The Myth of Continents: a Critique of Metageography
|year=1997
|publisher=University of California Press
|location=Berkeley
|id=ISBN 0-520-20742-4, ISBN 0-520-20743-2
|pages=40
|chapter=
|quote=The joining of Australia with various Pacific islands to form the quasi continent of Oceania ...
}}</ref>。


1857年、{{仮リンク|ロンドン伝道会|en|London Missionary Society}}宣教師{{仮リンク|ウィリアム・ミュアヘッド|en|William Muirhead|zh|慕维廉}}が中国の上海で出版された月刊誌『{{仮リンク|六合叢談|zh|六合丛谈}}』に寄稿した記事では、地理名称の「釈名」に「広陸曰洲、環水曰島」とあり、一般に単独で用いる場合には「大州」、複合する場合には「州」が使われている{{sfn|荒川|1999|p=58}}{{sfn|荒川|2018|pp=206-207}}。同著『地理全志』(1854年)でも「大州」「州」が使われており{{sfn|荒川|2018|p=207}}、その上編の首編「地理名称」では、「州」は「土地の最大なるもの」、「島」は「水中にあり、州よりも小さいもの」と定義された{{sfn|荒川|1999|pp=59-60}}。
=== 仏教の四大洲 ===
{| class="floatright wikitable"
|+ 四洲・四大洲
|-
! 方角 !! 形 !! 漢訳名 !! 音訳名 !! サンスクリット名
|-
| style="text-align:center;" | 南
| 三角形
| 贍部洲(せんぶしゅう)
| 閻浮提(えんぶだい)
| {{lang|sa|Jambū}}
|-
| style="text-align:center;" | 東
| 半月形
| 勝身洲(しょうしんしゅう)
| 弗婆提(ほつばだい)
| {{lang|sa|Pūrvavideha}}
|-
| style="text-align:center;" | 西
| 円形
| 牛貨洲(ごけしゅう)
| 瞿陀尼(くだに)
| {{lang|sa|Aparagodānīya}}
|-
| style="text-align:center;" | 北
| 正方形
| 倶盧洲(くるしゅう)
| 鬱単越(うったんおつ)
| {{lang|sa|Uttarakuru}}
|}


中国では後述するイエズス会士以来、「五大州」の「州」または「[[:zh:洲|洲]]」が「大陸」の意味で使われており{{sfn|荒川|1999|p=58}}、[[アメリカ合衆国長老教会|アメリカ長老会]]宣教師{{仮リンク|カルヴィン・ウィルソン・マティア|en|Calvin Wilson Mateer|zh|狄考文|label=C・W・マティア}}が1904年に著した術語集においても continent の訳語は「大洲」となっている{{sfn|荒川|2018|p=207}}<ref name="Mateer"/>。
[[仏教]]では、世界の中心にある[[須弥山]]を取り囲む4つの巨大な島の[[漢訳]]名に「洲」が使われた。4つの洲を総称して[[四洲]](ししゅう)・[[四大洲]](しだいしゅう)という。四洲・四大洲は全世界の意味でも使われた。


==== 大州概念の歴史 ====
各大洲には、2つずつの中洲(ちゅうしゅう)と500ずつの小洲(しょうしゅう)がある。
[[File:Shumisen.jpg|thumb|left|須弥山世界観の概念図]]
[[仏教]]の伝統的な世界観では、大地の中央にそびえる[[須弥山]](しゅみせん)を七重の山地が取り巻き、その最も外側に広がる大海原の四方には、東に勝身洲、西に牛賀洲、南に贍部洲、北に倶盧洲という四つの大陸(大きな島)が存在するとされ{{sfn|筑波大学附属図書館|2007|p=10}}、これらを総称して'''四大洲'''(しだいしゅう)または'''四洲'''(ししゅう)と呼んだ<ref name="日国_四大洲"/>。このうち南の[[閻浮提|贍部洲]](せんぶしゅう)だけが現実に存在する陸地とされた{{sfn|筑波大学附属図書館|2007|p=10}}。


[[中世]]から近世初期の日本において{{sfn|石﨑|2018|p=81}}、この世界は[[本朝]](日本)、[[震旦]](中国)、[[天竺]]の3つの国からなるとした{{sfn|石﨑|2018|p=81}}{{sfn|筑波大学附属図書館|2007|p=8}}{{sfn|ポロヴニコヴァ|2013|pp=64, 70, 80}}、いわゆる[[三国]](さんごく)世界観は、これら須弥山や贍部洲といった仏教的な世界観と密接に結びついていた{{sfn|石﨑|2018|p=180}}。それが[[近世]]に入って、ヨーロッパ人の世界観に基づく[[近代]]的な西洋地理学の知識が日本にも流入するようになると{{sfn|石﨑|2018|p=81}}、それまで日本人の一般的な世界地理認識であった{{sfn|筑波大学附属図書館|2007|p=18}}三国世界観は徐々に瓦解していった{{sfn|石﨑|2018|p=1}}。
須弥山の南の[[贍部洲]]は人間の住む世界で、実際の地理では[[インド亜大陸]]にあたる。


[[File:Kunyu Wanguo Quantu (坤輿萬國全圖).jpg|thumb|upright=1.5|マテオ・リッチ『坤輿万国全図』の日本写本]]
{{天}}
近世初頭、[[イエズス会]]宣教師{{sfn|石﨑|2018|p=107}}[[マテオ・リッチ]]らが漢訳し、北京で刊行され、日本にも伝来した世界図『[[坤輿万国全図]]』(1602年刊)は、地図上で世界を大きく5つの部分に分け{{sfn|石﨑|2018|p=89}}、図の右端の解説文に「以地勢分輿地為五大州。曰[[ヨーロッパ|欧邏巴]]、曰[[リビア (曖昧さ回避)|利未亜]]、曰[[アジア|亜細亜]]、曰[[南北アメリカ|南北亜墨利加]]、曰[[メガラニカ|墨瓦蠟泥加]]{{sfn|吉野|2015|p=134}}」と記し、'''五大州'''を明確に示している{{sfn|三好|2010|p=181}}。これが近世以降の日本における五大州の概念の端緒とされ{{sfn|石﨑|2018|p=89}}、日本人が新しい枠組みで世界を認識する一つの大きな画期となった{{sfn|筑波大学附属図書館|2007|p=18}}。


[[西川如見]]は『[[日本水土考]]』(1700年)の中で、「三大界」と称した三大陸を分割する区画として5つの「洲」(大州)を示し、その「洲」の中に世界の国々が属していると説明している{{sfn|吉野|2015|p=153}}。つまり、この認識に立てば「五大州=五大陸」ではない{{sfn|吉野|2015|p=153}}。これは、在華宣教師たちが用いた「大州」と同じ認識である{{sfn|吉野|2015|p=153}}。
=== ヨーロッパとアジア ===
{{右|
[[Image:Rumeli_hisari.jpg|thumb|none|ボスポラス海峡。ヨーロッパからアジアを望む。]]
[[Image:LocationSovietUnion.png|thumb|none|ソ連の範囲(1945年~1991年)。]]
}}


{{quotation|渾地の図を閲するに大瀛海の裏、陸土自ら相絶えて三大界と成れり。第一界は、中帯赤道の北に在りて、径度極めて大なる者を便ち分画して三洲と作す。曰く{{ruby|亜細亜|アサイア}}、曰く{{ruby|欧邏巴|エウロッパ}}、曰く{{ruby|利未亜|リミア}}。第二界は利未亜の西に在りて、赤道の南北に横はる者を{{ruby|亜墨利加|アメリカ}}と曰ふ。第三界は赤道の南に在りて広く相連れる者を{{ruby|墨瓦臘尼|メガラニ}}と曰ふ。総て是を五大洲と為すなり。萬国各々五大洲の内に在り、亦許多の島嶼は各々その界洲に属す。俗の所謂世界とは異なり。|西川如見 著『日本水土考』(元禄13年/1700年){{sfn|吉野|2015|p=136}}}}
地理学的には1つの大陸であるユーラシアをアジアとヨーロッパに分けることが多いのは、両者が[[ボスポラス海峡]]で完全に分かれていると思われていて、黒海の反対側で繋がっていることが広く知られていなかったギリシア古代の名残りである。これがヨーロッパとアジアを別とみなす欧米の感覚が維持されたためこのような分類がされている。


同じく西川如見著『[[増補華夷通商考]]』(1708年)に掲載された「地球萬国一覧之図」{{sfn|三好|2010|p=186}}、[[寺島良安]]著『[[和漢三才図会]]』(1713年)に載る「山海與地全図」{{sfn|石﨑|2018|pp=105, 120}}、[[新井白石]]の『[[西洋紀聞]]』(1715年){{sfn|吉野|2015|p=137}}、[[前野良沢]]著『和蘭{{読み|管蠡秘言|かんれいひげん}}』(1777年){{sfn|吉野|2015|p=138}}では、リッチ系世界図の五大州区分を基本的に踏襲しつつ、南北アメリカを二州に分け{{sfn|三好|2010|p=186}}{{sfn|石﨑|2018|p=120}}、'''六大州'''として説明している{{sfn|石﨑|2018|p=120}}。ただし、近世中期の日本における[[節用集]]の世界図には大州を明確に区別していないものが散見され、それらの区別を明確にした世界図が近世後期に普及するまでは、日本の一般庶民は世界が五大州や六大州からなるとは認識していなかったと思われる{{sfn|ポロヴニコヴァ|2013|pp=70-71}}。
ヨーロッパ[[最高峰]]は通常[[モンブラン]] (4810 m) とされるが、[[カフカス山脈]]の[[エルブルス山]] (5642 m) は山脈のヨーロッパ側に位置し、こちらをヨーロッパ最高峰とすることもある。


なお、新井白石や[[司馬江漢]]、[[山片蟠桃]]は、未知の南方大陸・[[メガラニカ]]を大州の一つに数えて六大州説を唱えることに慎重な立場をとった{{sfn|吉野|2015|pp=150-151}}。五大州説に関しても、アジア、ヨーロッパ、アフリカは陸続きであり、なぜ3つの州に分けるのかという問いを、山片蟠桃と[[渡辺崋山]]は著作の中で述べている{{sfn|吉野|2015|p=152}}。[[三浦梅園]]は、大陸と大州の区別を理解した上で、自著『帰山録』(1778年)の中で「蜂の腰のように細い部分で連続している南北アメリカ州が二つに分かれることもあるであろう。また、ヨーロッパ州と陸続きであるアフリカ州も地中海が入り込んでいるので、これも同様に考えることも許される。しかし、なぜヨーロッパ州とアジア州は別になるのか。{{sfn|吉野|2015|p=153}}」という趣旨の疑問を問いかけている。
かつては広大な[[ソビエト連邦|ソ連]]が両者にまたがり存在していたため、各国を大州に分けるときには、便宜上、ソ連全体をヨーロッパからもアジアからも除外し、1つの大州のようにあつかうことがあった。現在は、[[ロシア]]以外の旧ソ連諸国は本来位置する大州に分け、今も両大州にまたがるロシアはヨーロッパに分けることが多い。旧ソ連15ヶ国のうちヨーロッパに属するのは、ロシア、[[ウクライナ]]、[[ベラルーシ]]、[[モルドバ|モルドヴァ]]、[[バルト三国]]の7ヶ国で、アジアに属するのは[[中央アジア]]の5ヶ国と[[コーカサス#コーカサスの国々|南カフカス]]の3ヶ国の計8ヶ国である(但し南カフカス3ヶ国に関してはヨーロッパとされることもある)。


[[File:1581 Bunting clover leaf map.jpg|thumb|left|ヨーロッパ、アジア、アフリカの3州の三位一体を示した世界地図]]
== 概念の歴史 ==
ヨーロッパ州とアジア州が区別される理由については、現代においても明確に説明できることではないが、{{harvp|吉野|2015}}は、おそらく西洋の[[キリスト教]]的な世界観が背景にあるのではないかと考えている{{sfn|吉野|2009|p=111(28)}}{{sfn|吉野|2015|pp=153-155}}。具体的には、中世ヨーロッパでは聖地[[エルサレム]]を中心とする円形の世界図([[TO図]])が一般的な形式であったことや、1581年の{{仮リンク|ハインリッヒ・ブンティヒ|de|Heinrich Bünting}}の著作中に挿入された旧世界の地図(左図参照)が、三つ葉のクローバーの葉の形をもってヨーロッパ、アジア、アフリカの3大州の[[三位一体]]を示していることを根拠としている{{sfn|吉野|2015|pp=153-154}}。上述したマテオ・リッチの『坤輿万国全図』にも「ヨーロッパは天主の聖教を奉じる国々であることをもって他の大州とは区別される」という趣旨の記述があり、同じくキリスト教の教理に従ったものであるとする{{sfn|吉野|2015|pp=154-155}}。この区分法が[[#数と区分|現在の大州区分]]にも受け継がれていることは、別の見方をすれば、[[ヨーロッパ中心主義]]の名残とも考えられる{{sfn|Lewis|Wigen|1997|pages=104–123}}。
=== 初期の大陸概念 ===
[[ファイル:Strabo.jpg|thumb|right|240px|古代ギリシアの地理学者[[ストラボン]]の肖像。手する地球儀にはヨーロッパ(Europa)とアジア(Asia)が見られる。]]
[[ファイル:T and O map Guntherus Ziner 1472.jpg|thumb|200px|中世ヨーロッパの[[TO図]]。[[ノア (聖書)|ノア]]の3人の息子たちが治めた3つの大陸が記されている。]]
最初の大陸区分は、[[古代ギリシア]]の船員たちが名づけた「アジア」と「ヨーロッパ」だった。ただしこれは単純に[[エーゲ海]]、[[ダーダネルス海峡]]、[[マルマラ海]]、[[ボスポラス海峡]]および[[黒海]]の両岸のことを指していた<ref name=Toynbee>[[アーノルド・J・トインビー]] (1954年). ''A Study of History''. London: Oxford University Press, v. 8, pp. 711-12.</ref>。当初は海岸のみを指していたこれらの言葉は、のちに広大な背景地にまで及ぶようになった<ref>{{cite book
|last=Tozer
|first=H. F.
|title=A History of Ancient Geography
|year=1897
|publisher=University Press
|location=Cambridge
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}}</ref>。しかし、これらの区分はせいぜい航海によってたどりつけた土地までの範囲に留まり、「その限界を超えて、決して分割が叶わないユーラシアを仕切るためのいかなる説得力を持つ地理的な特徴を内陸部に見出すことは、ギリシアの地理学者たちの手に余った」と評されている<ref name=Toynbee/>。


伝説上の南方大陸は、『大日本永代節用無盡蔵』(1864年)に「{{読み仮名|樺豪斯多辣里州|カバアウスタラリシウ}}」がオセアニア州に相当する大州として記載され、次第に伝説上の存在ではなく実在するオーストラリア州として認識されるようになっていく{{sfn|ポロヴニコヴァ|2013|pp=76-77}}。
次に古代ギリシアの思想家たちは、アフリカ(当時はリビアと呼ばれていた)が果たしてアジアの一部なのか、それとも異なる場所なのかを議論し、そこが異なる3番目の土地だという考えが優勢となった<ref>{{cite book
|last=Tozer
|first=H. F.
|title=A History of Ancient Geography
|year=1897
|publisher=University Press
|location=Cambridge
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}}</ref>。ギリシア的観点に立つと、エーゲ海は世界の中心であり、東にアジア、西と北にヨーロッパ、そして南にアフリカが位置した<ref>{{cite book
|last=Lewis
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|coauthors=Kären E. Wigen
|title=The Myth of Continents: a Critique of Metageography
|year=1997
|publisher=University of California Press
|location=Berkeley
|id=ISBN 0-520-20742-4, ISBN 0-520-20743-2
|pages=21–22
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}}</ref>。大陸間の境界は明瞭されなかった。早くから、ヨーロッパとアジアは黒海から[[グルジア]]を流れる[[リオニ川]](当時はファシス河と呼ばれた)に沿って分けられた。その後、この線は黒海を起点に[[ケルチ海峡]]、[[アゾフ海]]を通って[[ロシア]]の[[ドン川]]を遡上する形と変化した<ref>{{cite book
|last=Tozer
|first=H. F.
|title=A History of Ancient Geography
|year=1897
|publisher=University Press
|location=Cambridge
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}}</ref>。アジアとアフリカの境界は[[ナイル川]]に置かれた。しかし紀元前5世紀の[[ヘロドトス]] <ref>[[ヘロドトス]]. Translated by George Rawlinson (2000年). ''[[歴史 (ヘロドトス)|The Histories of Herodotus of Halicarnassus]]'' {{Cite web|和書|url=http://www.omphaloskepsis.com/ebooks/pdf/hrdts.pdf |title=アーカイブされたコピー |accessdate=2016-02-08 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20120205214255/http://www.omphaloskepsis.com/ebooks/pdf/hrdts.pdf |archivedate=2012-02-05 |url-status=dead|url-status-date=2017-09}}. Ames, Iowa: Omphaloskepsis, book 2, p. 18.</ref>は、これでは[[エジプト]]がアジアとリビア(アフリカ)に分断されてしまうため反対し、同地はあくまでアジアだとの主張の元に境界をエジプトの西側国境線に置いた。また彼は、実質的に陸続きのこの3地域をわざわざ分けることに疑問を呈し<ref>[[ヘロドトス]]. Translated by George Rawlinson (2000年). ''[[歴史 (ヘロドトス)|The Histories of Herodotus of Halicarnassus]]'' {{Cite web|和書|url=http://www.omphaloskepsis.com/ebooks/pdf/hrdts.pdf |title=アーカイブされたコピー |accessdate=2016-02-08 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20120205214255/http://www.omphaloskepsis.com/ebooks/pdf/hrdts.pdf |archivedate=2012-02-05 |url-status=dead|url-status-date=2017-09}}. Ames, Iowa: Omphaloskepsis, book 4, p. 38. "I cannot conceive why three names ... should ever have been given to a tract which is in reality one"</ref>、この論争は2500年後の現在でも取り沙汰される。


==== 教科書類にみえる用例 ====
紀元前3世紀の[[エラトステネス]]は、地理学者たちが主張するナイル川やドン川で区分される大陸部分に着目し、川で区分される大陸を「島」、地峡で分けられる大陸を「半島」と考えた。彼以後の地理学者たちは、アジアをヨーロッパの区分をカスピ海と黒海の間の地峡に、アジアとアフリカの区分を地中海沿岸の{{仮リンク|バルダビル湖|en|Lake Bardawil}}河口から[[紅海]]の間に置いた<ref>[[ストラボン]]、訳:Horace Leonard Jones (1917年). 『[[地理誌]]』 [http://penelope.uchicago.edu/Thayer/E/Roman/Texts/Strabo/] Harvard University Press, book 1, ch. 4.[http://penelope.uchicago.edu/Thayer/E/Roman/Texts/Strabo/1D*.html]</ref>。
明治中頃の[[文部省]]編『尋常小学読本 七』(明治20年/1887年)では、大陸の区分の仕方こそ現代の一般的なものとは異なるものの、大陸と大州の概念を明確に区別し、[[島国]]の日本を六大州の一つであるアジア州の中に位置づけている。


{{quotation|陸 の、尤も 大 なる 分ち を 大陸 と 云ひて、此 世界 には、東大陸 西大陸 及び 濠太剌利大陸 の 三 大陸 あり。又、大陸 の 大 なる 分ち を 大洲 と 云ひ、西大陸 は、北亞米利加 と 南亞米利加 と の 二 大洲 に 分れ、東大陸 は、亞細亞 亞非利加 歐羅巴 の 三 大洲 に 分れ、濠太剌利大陸 は、只 濠太剌利 の 一 大洲 より 成れり。我が 日本 國 は、東大陸 の 東方 なる 島 國 にして、亞細亞洲 の 中 に 在る なり。|文部省編輯局 編著『尋常小学読本 巻之七』(明治20年5月)「地球」<ref name="尋常小学読本1887"/>}}
[[古代ローマ]]から[[中世]]の間、[[シナイ半島]]をアジアとアフリカの境界に置く地理学者はわずかで、ほとんどは依然としてナイル川もしくはエジプトの西境を基準に置いていた。中世には世界は[[TO図]]の形式で描かれ、Tが3つの大陸を分割する水域として表現されるようになったが、18世紀中ごろまで境界をエジプトとリビアの間(Great Catabathmus)に求める流儀はしぶとく残っていた<ref>Goddard, Farley Brewer (1884年). "Researches in the Cyrenaica". ''The American Journal of Philology'', 5 (1) p. 38.</ref>。


明治後期の中学地理教科書、[[松島剛]]著『日本中地理学』(明治35年/1902年)では、大陸、大州、島嶼を次のように説明している。
=== ヨーロッパのアメリカ大陸到達 ===
[[クリストファー・コロンブス]]が[[大西洋]]を航海し[[西インド諸島]]に到達した1492年は、ヨーロッパ人のアメリカ大陸探査の口火となった。ただし、コロンブス自身は4度アメリカへ渡ったにもかかわらず、彼はそこがアジアの一部だと生涯信じていた。


{{Quotation|(前略)陸地は之を大別して、東大陸、西大陸の二とす。更に東大陸を分ちて、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、オーストラリアの四大洲とし、西大陸を分ちて、北アメリカ、南アメリカの二大洲とす。(中略)陸地の大なるものは、之を大陸と稱すれども、其外の小陸地は、總て之を島嶼と稱す、然れども島嶼の大なるものは日本の幾十倍なるものあり。(後略)|松島剛 著『日本中地理学』(明治35年11月)「第二 大洋、大洲、島嶼」<ref name="日本中地理学"/>}}
1501年、[[アメリゴ・ヴェスプッチ]]と{{仮リンク|ゴンサロ・コエーリョ|en|Gonçalo Coelho}}が、彼らがインディアスと考えていた地を南下し[[インド洋]]へ抜ける海路を目指していた。[[ブラジル]]海岸を航海する一行は、この地が当時考えられていたアジアよりもはるかに南に伸び、その広さも大陸と呼ぶにふさわしい規模であることを確認した<ref name=OGorman>{{cite book
|last = O'Gorman
|first = Edmundo
|authorlink = Edmundo O'Gorman
|title = The Invention of America
|publisher = Indiana University Press
|year= 1961
|pages = 106–112
}}</ref>。ヨーロッパへの帰路、探検の報告はヴェスプッチの名前で『Mundus Novus』(「新世界」の意)という名で1502年または1503年に出版された<ref name="formisano1">Formisano, Luciano (Ed.) (1992年). ''Letters from a New World: Amerigo Vespucci's Discovery of America''. New York: Marsilio, pp. xx-xxi. ISBN 0-941419-62-2.</ref>。これには別人の加筆も疑われている<ref name="Zerubavel1">Zerubavel, Eviatar (2003年). ''Terra Cognita: The Mental Discovery of America''. New Brunswick: Transaction Publishers, pp. 77–79. ISBN 0-7658-0987-7.</ref>が、ヴェスプッチの言葉「私は南の地に大陸を発見した。そこには、私たちのヨーロッパやアジア、アフリカと比べてもよりたくさんの人々や動物たちが息づいている」<ref name="formisano2">Formisano, Luciano (Ed.) (1992年). ''Letters from a New World: Amerigo Vespucci's Discovery of America''. New York: Marsilio, p. 45. ISBN 0-941419-62-2.</ref>という言葉で明白な通り、彼はその大陸を既知の3大陸と区別している。


明治末期の文部省『尋常小学地理 巻二』(明治43年/1910年)では、六大州の一つであるオーストラリア州は「大洋州」と表記されている。
[[ファイル:Waldseemuller map 2.jpg|thumb|300px|ヴァルトゼーミュラー1507年作の世界地図『Universalis Cosmographia』。初めてアメリカ大陸をアジアと分けて示した。]]
数年後にはオリヴェリアーナ([[ペーサロ]])の地図(1504 - 1505年ごろ)のように「新世界」を南アメリカと名づけた地図は作成されたが、まだ北アメリカはアジアとつながっていた<ref name=Zerubavel1/>。しかし1507年に[[マルティン・ヴァルトゼーミュラー]]が出版した地図『{{仮リンク|ヴァルトゼーミュラー地図|en|Waldseemüller map|label=Universalis Cosmographia|preserve=1}}』では、新大陸が水域でアジアと分けられた。この地図に添えられた付録冊子『宇宙誌入門([[:en:Cosmographiae Introductio|Cosmographiae Introductio]])』でヴァルトゼーミュラーは、地球の陸地は4つに分けられ、ヨーロッパ、アジア、アフリカに次ぐ4番目の大陸をヴェスプッチのファーストネームにちなんで「アメリカ」と名づけたと記している<ref name="Zerubavel2">Zerubavel, Eviatar (2003). ''Terra Cognita: The Mental Discovery of America''. New Brunswick: Transaction Publishers, pp. 80–82. ISBN 0-7658-0987-7.</ref>。


{{quotation|陸地は之を大別して亞細亞洲・大洋洲・歐羅巴洲・{{ruby|亞弗利加|あふりか}}洲・北亞米利加洲・南亞米利加洲の六大洲とす。地球を東西兩半󠄁球に分てば亞細亞洲・大洋洲・歐羅巴洲・亞弗利加洲の四大洲は東半󠄁球に入り、北亞米利加洲・南亞米利加洲の二大洲は西半󠄁球に入る。六大洲中、亞細亞は東半󠄁球の北部を占めて、面積最も廣大に、大洋洲は{{underline2|オーストラリヤ}}及び數多の島嶼より成りて、其の東南に位し、面積最も小なり。歐羅巴は亞細亞の西に續きて共に一大陸をなし、亞弗利加は{{underline2|スエズ}}地峽によりて東北僅に亞細亞に連󠄀り、北は地中海を隔てて歐羅巴に對し、北亞米利加と南亞米利加とは{{underline2|パナマ}}地峽によりて相接續す。|文部省 編著『尋常小学地理 巻二』(明治43年12月)「第十三 世界 一」<ref name="尋常小学地理1910"/>}}
=== 英語continent ===
1500年代から、名詞「continent」は[[ラテン語]] ''terra continens''を語源とし<ref>"continent<sup>1</sup> n." (2006年) ''The Concise Oxford English Dictionary'', 11th edition revised. (Ed.) Catherine Soanes and Angus Stevenson. Oxford University Press.</ref>、連続している大地(continent land)の意味から派生する形で生まれた<ref name=oed>"continent n." (1989) ''オックスフォード英語辞典'', 2nd edition. オックスフォード大学出版局.</ref>。しかし当初は「接続または連続した土地」以外にも「本土」の意味にも使われ<ref name=oed/>、必ずしも広大な陸地を意味していなかった。1600年代、[[マン島]]・[[アイルランド]]・[[ウェールズ]]に対する「本土」また1745年には[[スマトラ島]]を指して「本土」として使われた例がある<ref name=oed/>。[[ギリシア語]]やラテン語の翻訳では「continent」は世界を3分したパーツとして訳されたが、この本来の意味に忠実な形で用いられることは無かった<ref>{{cite book
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|first=Martin W.
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|coauthors=Kären E. Wigen
|title=The Myth of Continents: a Critique of Metageography
|year=1997
|publisher=University of California Press
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}}</ref>。


[[昭和]]初期の中学地理教科書、[[守屋荒美雄]]著『新選地理 世界之部(甲表用)』(昭和7年/1932年)では、大洋州は主たる表記が「オセアニア州」に交代している<ref name="新選地理1932"/>。
一方で「continent」は連続する大地の一部を指して用いられることもあり、他方ではヘロドトスの提言を再評価する地理学者たちは、実質的に一つの広大な陸地をわざわざ別の大陸に分ける必要がないと主張した。1600年代中ごろ、{{仮リンク|ピーター・ヘイリン|en|Peter Heylin}}は著書『Cosmographie』にて「大陸は広大な面積を持つ陸地を指し、必ずしも他の土地と海で隔てられなければならないわけではない。ヨーロッパ、アジア、アフリカは完全に大陸だ」と筆した。1727年に[[イーフレイム・チェンバーズ]]が書いた『[[サイクロペディア|サイクロペディア、または諸芸諸学の百科事典]]』(Cyclopaedia, or an Universal Dictionary of Arts and Sciences)には、「世界は基本的に2つの超大陸に分けることができる。[[旧大陸]]と[[新大陸]]だ」という記述がある。{{仮リンク|エマニュエル・ボーエン|en|Emanuel Bowen}}は1752年製作の地図において、大陸を「広く乾燥した充分な面積を持つ土地であり、多くの国が国境を接してつながり、水域によって分断されない」と定義し、ヨーロッパ・アジア・アフリカは合わせて1つの大陸であり、また別にアメリカがあるとした<ref>Bowen, Emanuel. (1752年). ''A Complete Atlas, or Distinct View of the Known World''. London, p. 3.</ref>。しかし、ヨーロッパの伝統的な考えから、ヨーロッパとアジア・アフリカは世界を構成するパーツでありながらそれぞれが大陸とする見方に固執した。


[[令和]]6年(2024年)現在、日本の[[地理教育]]では、世界は6つの大陸と6つの'''州'''に区分されると教えられている<ref name="Benesse"/><ref name="育伸社2024"/>。他方で、後者を州ではなく'''大州'''としている教科用地図帳<ref name="二宮書店_詳解現代地図2025"/>出版社もある。
=== 複数の大陸概念 ===
18世紀末ころには、地理学者の中に南北アメリカを別な大陸と見なし、世界を5つに区分する考えを持つ者が現れだしたが、19世紀にも依然4大陸の概念が一般的だった<ref name=lewis30>{{cite book
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|coauthors=Kären E. Wigen
|title=The Myth of Continents: a Critique of Metageography
|year=1997
|publisher=University of California Press
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}}</ref>。


=== continent ===
ヨーロッパ人によるオーストラリア発見は1606年だったが、当初そこはアジアの一部と見なされていた。これを独立した大陸とし世界を6大陸とする考えが一部の地理学者から提案されたのは18世紀末のことであった<ref name=lewis30/>。[[オックスフォード英語辞典]]も依然あいまいな表現に止まる<ref>"continent n. 5. a." (1989) ''オックスフォード英語辞典'', 2nd edition. [[オックスフォード大学出版局|Oxford University Press]]. "the great island of Australia is sometimes reckoned as another [continent]"</ref>中、1813年にサミュエル・バトラーが「地理学者の中には別な大陸名をつけて権威づけるものがいる、広大な面積を持つ島[[ニューホランド (オーストラリア)|ニューホランド]]」とオーストラリアを記した。
英語の名詞 continent は、「連続している陸地<ref name="oed">"continent n." (1989) ''[[Oxford English Dictionary]]'', 2nd edition. [[Oxford University Press]].</ref>」を意味する語 continent land から派生する形で<ref name=oed>"continent n." (1989) ''[[Oxford English Dictionary]]'', 2nd edition. [[Oxford University Press]].</ref>、ラテン語の語源 ''terra continens'' から翻訳され<ref>"continent<sup>1</sup> n." (2006) ''The Concise Oxford English Dictionary'', 11th edition revised. (Ed.) Catherine Soanes and Angus Stevenson. [[Oxford University Press]].</ref>、1500年代から使用されている。当初は「連続している広い陸地」 (a connected or continuous tract of land) 以外に「[[本土]]」 (mainland) の意味でも用いられ<ref name="oed"/>、広大な陸地に対して適用されるばかりでなく、1600年代には[[マン島]]、[[アイルランド島]]および[[ウェールズ]]、1745年には[[スマトラ島]]の本島(または本土)に対して言及された用例がある<ref name="oed"/>。 continent という語は、世界の3つの部分 (parts) について書かれたギリシャ語やラテン語の文章を翻訳する際に用いられたが、原語では英語の continent と全く同義の語は使用されていなかった{{sfn|Lewis|Wigen|1997|p=29}}。


continent という語は、連続した陸地の比較的に小さな地域を表すのに使われた一方で、地理学者たちは、かつて[[ヘロドトス]]が抱いた、なぜ一つの広大な陸地が別々の continent に分割されなければならないのかという疑問を再び持ち出した。1650年ごろ、{{仮リンク|ピーター・ヘイリン|en|Peter Heylyn}}は自著『コスモグラフィー』の中で「continentとは、世界の他の部分からいかなる海によっても隔てられていない、大量の土地である。例えば、ヨーロッパ、アジア、アフリカの全大陸のようなものである」と書いた。1727年、[[イーフレイム・チェンバーズ]]が著した『[[サイクロペディア]]』には「世界は通常、[[旧大陸]]と[[新大陸]]の2つの大きな大陸に区分けされる」と記されている。1752年の地図帳で、{{仮リンク|エマニュエル・ボウエン|en|Emanuel Bowen}}は continent を「多くの国々を含む広大な陸地のことで、水によって分かれることなく一体となっているものである。このように、ヨーロッパ、アジア、アフリカは一つの大きな大陸であり、アメリカはもう一つの大陸である」と定義した<ref>Bowen, Emanuel. (1752). ''A Complete Atlas, or Distinct View of the Known World''. London, p. 3.</ref>。しかし、ヨーロッパ、アジア、アフリカを世界の「一部分」とみなす古い考え方は、結局のところ、これらを別々の continent とみなすことで根強く残っている。
[[メガラニカ]]と名づけられた[[対蹠地]]として1000年以上前から存在を予言されていた南極大陸は1820年に発見され、1838年に行われたアメリカ合衆国の探検調査にて[[チャールズ・ウィルクス]]が最後の大陸と特定した。1849年には大陸として確認されたが、ほとんどの地図には記載されず、これは[[第二次世界大戦]]以後にようやく反映された<ref>{{cite book
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|title=The Myth of Continents: a Critique of Metageography
|year=1997
|publisher=University of California Press
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}}</ref>。


== 西洋的大陸概念の変遷 ==
19世紀中ごろから、アメリカ合衆国で発行される地図はヨーロッパのそれと異なり、南北アメリカを別の大陸と扱うものがだんだんと増え、二次世界大戦以降の1950年代にはほとんどがそのようになり<ref name=lewis32>{{cite book
この節では、日本語で「大陸」や「大州」と訳出される continent という概念の歴史について説明する。文章中に出現する「大陸」「大州」は、あくまで訳語として言及しているにすぎず、厳密な意味での「大陸」や「大州」という概念の歴史を示しているわけではない。「大州」の概念史については、[[#大州概念の歴史|大州概念の歴史]]を参照。
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|title=The Myth of Continents: a Critique of Metageography
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}}</ref>、現代的な[[地質学]]や[[プレートテクトニクス]]の理解と一致した。これに南極が加わり7大陸の概念が確立した。


=== 初期の旧大陸概念 ===
ただし、[[ラテンアメリカ]]には南北アメリカ大陸をまとめる考えが根強く、またアジアとヨーロッパをユーラシア大陸とみなす概念も依然残っている。
[[File:Strabo.jpg|thumb|left|upright=1|''Europa'' と ''Asia'' と書かれた地球儀を手にする古代ギリシアの地理学者[[ストラボン]]]]
continent は、ギリシャ語で「陸地、堅固な大地」("landmass, terra firma")を意味する {{lang|grc|ἤπειρος}} を翻訳した語で、当初は[[エピロス]]の固有名詞として、後には特にアジア([[小アジア]])を指して使用された<ref name="Greek-English"/>。


今日的な意味の大陸を最初に区別して呼んだのは、[[古代ギリシア]]の船乗りたちであった。彼らは、[[エーゲ海]]から[[ダーダネルス海峡]]、[[マルマラ海]]、[[ボスポラス海峡]]を経て[[黒海]]に至る水路の両側の陸地に[[エウロペ]](ヨーロッパ)と[[アシア]](アジア)という名を与えた<ref name="歴史の研究"/>。この呼称は当初、海岸近くの土地にのみ適用されたが、のちには[[後背地]]にまで適用範囲が拡大していった{{sfn|Tozer|1897|p=69}}。しかし、この区分は航行可能な水路の終点までしか適用されず、「その地点から先では、[[ヘレニック]]地理学者は、自然の風景のなかに、[[ポセイドン]]の[[三叉戟]]が切りさいていなかった、分かつことのできない[[ユーラシア|エウラシア]]を分かつ、はっきりした線を提供することができる内陸の特色を指摘することは決してできなかった<ref name="歴史の研究"/>」のであった。
== 大陸の数 ==
大陸をどう数えるかについては複数の方法がある。
<center>
{| class="wikitable" align="center"
! colspan="9" | 区分法
|-
|style="background-color:#FFFFFF" colspan="9"|[[Image:Continents vide couleurs.png|center|300px]]<center><small>様々な大陸の色分け図。同系統の色で示された地域は統合または分割される領域を示す。</small></center>
|-
|'''7大陸'''<br><ref name=NatlGeo_atlas>[http://www.nationalgeographic.com/xpeditions/atlas/index.html?Parent=world&Mode=d&SubMode=w World], ''[[ナショナルジオグラフィック協会]] - [http://www.nationalgeographic.com/xpeditions/ Xpeditions Atlas].'' 2006. Washington, DC: National Geographic Society.</ref><ref name = AoCA/><ref name=EB>"[http://www.britannica.com/ebc/article-9361501 Continent]". ''ブリタニカ百科事典''. 2006. Chicago: Encyclopædia Britannica, Inc.</ref><ref name=Oxford1>''The New Oxford Dictionary of English.'' 2001. New York: Oxford University Press.</ref><ref name=Encarta>"[http://encarta.msn.com/encyclopedia_761553387/Continent.html Continent]". ''[[エンカルタ|MSN Encarta Online Encyclopedia 2006]].''. [https://webcitation.org/5kwRKkaEZ Archived] 2009-10-31.</ref><ref name=Oxford2>"Continent". McArthur, Tom, ed. 1992. ''The Oxford Companion to the English Language''. New York: Oxford University Press; p. 260.</ref>
||<center><small><span style="background: #00cc00;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[北アメリカ大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #008000;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[南アメリカ大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #0040ff;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[南極大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #fed52e;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[アフリカ大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #c10000;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[ヨーロッパ大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #f33e01;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[アジア大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #c04080;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[オーストラリア大陸]]</center>
|-
|'''6大陸'''<br><ref name=EB /><ref name=Columbia>"[http://www.bartleby.com/65/co/continent.html Continent]". ''[http://www.bartleby.com/65/ The Columbia Encyclopedia]''. 2001. New York: Columbia University Press - Bartleby.</ref>
||<center><small><span style="background: #00cc00;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[北アメリカ大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #008000;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[南アメリカ大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #0040ff;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[南極大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #fed52e;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[アフリカ大陸]]</center>
|colspan="2" |<center><small><span style="background: #c10000;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span><span style="background: #f33e01;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[ユーラシア大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #c04080;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[オーストラリア大陸]]</center>
|-
|'''6大陸'''<br><ref name="OU">Océano Uno, Diccionario Enciclopédico y Atlas Mundial, "Continente", page 392, 1730. ISBN 84-494-0188-7</ref><ref name="LCC">Los Cinco Continentes (The Five Continents), Planeta-De Agostini Editions, 1997. ISBN 84-395-6054-0</ref><!-- NOTE: Both references mention ''Oceanía'' instead of ''Australia''. -->
|colspan="2" |<center><small><span style="background: #00cc00;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span><span style="background: #008000;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[アメリカ大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #0040ff;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[南極大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #fed52e;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[アフリカ大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #c10000;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[ヨーロッパ大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #f33e01;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[アジア大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #c04080;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[オーストラリア大陸]]</center>
|-
|'''5大陸'''<br><ref name="Columbia"/><ref name="OU"/><ref name="LCC"/><!-- NOTE: Both references mention ''Oceanía'' instead of ''Australia''. -->
|colspan="2" |<center><small><span style="background: #00cc00;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span><span style="background: #008000;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[アメリカ大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #0040ff;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[南極大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #fed52e;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[アフリカ大陸]]</center>
|colspan="2" |<center><small><span style="background: #c10000;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span><span style="background: #f33e01;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[ユーラシア大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #c04080;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[オーストラリア大陸]]</center>
|-
|'''4大陸'''<br><ref name="Columbia"/><ref name="OU"/><ref name="LCC"/><!-- NOTE: Both references mention ''Oceanía'' instead of ''Australia''. -->
|colspan="2" |<center><small><span style="background: #00cc00;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span><span style="background: #008000;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[アメリカ大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #0040ff;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[南極大陸]]</center>
|colspan="3" |<center><small><span style="background: #fed52e;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span><span
style="background: #c10000;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span><span style="background: #f33e01;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[アフロ・ユーラシア大陸]]</center>
||<center><small><span style="background: #c04080;">&nbsp;&nbsp;&nbsp;</span></small>&nbsp;[[オーストラリア大陸]]</center>
|}
</center>
「[[オセアニア]]」や「[[オーストララシア]]」はオーストラリアを示す名称としてしばしば用いられ、[[カナダ]]の地図帳『Atlas of Canada』もオセアニア表記である<ref name=AoCA>[http://atlas.gc.ca/site/english/maps/reference/international/world/referencemap_image_view The World - Continents] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20060221064548/http://atlas.gc.ca/site/english/maps/reference/international/world/referencemap_image_view |date=2006年2月21日 }}, [http://atlas.nrcan.gc.ca/site/english/index.html ''Atlas of Canada'']</ref>。中南米と[[イベリア半島]]を指し[[イベロアメリカ]]という用語も使われる<ref>{{cite web
|url=http://www.oei.es/index.php
|title=Official Web-site for the Organization of Ibero-American States
|accessdate=2010-04-25
|language=スペイン語
|publisher=OEI
}}</ref>。


続いて、古代ギリシアの思想家たちは、アフリカ(当時は[[古代リビュア|リビア]]と称した)は果たしてアジアの一部分なのか、それとも世界を三分する別の一部分なのかについて議論し、結局、世界は3つの部分に分けられるとする考えが優勢となった{{sfn|Tozer|1897|p=67}}。ギリシア的観点に立つと、エーゲ海が世界の中心であり、東にアジア、西と北にヨーロッパ、そして南にアフリカが位置している{{sfn|Lewis|Wigen|1997|pp=21-22}}。大陸間の境界は定まっていなかったが、早くから、ヨーロッパとアジアの境界は黒海から[[グルジア]]を流れる[[リオニ川]](当時はファシス川の名で知られた)に沿って引かれる線とみなされていた。のちに、この境界線は、黒海から[[ケルチ海峡]]、[[アゾフ海]]を通り、[[ロシア]]の[[ドン川]](当時はタナイス川の名で知られた)沿いに引かれるようになった{{sfn|Tozer|1897|p=68}}。アジアとアフリカとの境界は、一般的に[[ナイル川]]とされていた。しかし、紀元前5世紀の歴史家[[ヘロドトス]]は、これでは[[古代エジプト|エジプト]]がアジアとリビア(アフリカ)に分断されてしまうとして反対し、あくまでエジプトはアジアの一部であるとの主張に基づき、両大陸の境界線をエジプトの西側の国境線とした。彼はまた、実質的に一つの広大な陸地であるものをわざわざ3つに区分することに疑問を呈した。この議論は、2500年近く経った今もなお続いている。ヘロドトスは次のようにヨーロッパが他の2つの大陸よりも大きいと考えていた。
== 大陸の区分 ==
各大陸が水域によって区分されているという理想的な基準は、歴史的そして現実的には当てはまっていないと見なされている。この基準に合致するものは、かろうじてオーストラリア大陸と南極大陸のみである。いくつかの大陸は完全に独立した陸塊ではなく「そこそこの大きさの地面」<ref>{{cite book
|last=Lewis
|first=Martin W.
|authorlink=
|coauthors=Kären E. Wigen
|title=The Myth of Continents: a Critique of Metageography
|year=1997
|publisher=University of California Press
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|id=ISBN 0-520-20742-4, ISBN 0-520-20743-2
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}}</ref>と認識されている。アジアとアフリカは[[シナイ半島]]でつながり、南北アメリカの間にはパナマ地峡がある。どちらの[[地峡]]も大陸と比べれば非常に狭いもので、しかも人工の[[運河]]([[スエズ運河]]と[[パナマ運河]])によって両大陸は切り離されていると言うこともできる。


{{bquote|さて私には、リビア、アジア、ヨーロッパを区切って分離した人々のやり方が不思議に思われてならない。この三者の相違は決して小さくないからである。長さ(東西)からいえば、ヨーロッパは他の二者を合せた長さにわたって延びており、幅(南北)については比較にもならぬほど(の大きさ)であると私には考えられるのである。<ref name="ヘロドトス_歴史"/>|||ヘロドトス|『[[歴史 (ヘロドトス)|歴史]]』}}
一方、ユーラシア大陸をアジアとヨーロッパに分ける考えは異例であり、そこには水域は何もない。この点からユーラシア大陸を含む6大陸という数え方が生まれている。この地理的な考えはヨーロッパとアジアをまたぐ[[ロシア]]では[[ユーラシア主義]]思想とも結びつけられ<ref>{{Cite web|和書
|url=http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/publictn/51/hama.pdf
|format=PDF
|title=N.S.トゥルベツコイのユーラシア思想
|author=[[浜由樹子]]
|publisher=[[北海道大学]]スラブ研究センター
|language=日本語
|accessdate=2010-04-24
}}</ref>、[[日本]]でもこの考えが主流である<ref>{{citation
|contribution=大陸
|title=マルチ辞書
|publisher=三省堂
|contribution-url=http://dictionary.www.infoseek.co.jp/?ii=0&lp=0&sm=3&sc=1&gr=ml&qt=%C2%E7%CE%A6&sv=KO&se=on| accessdate=2008-02-17
}}</ref><ref name="koujien">{{Cite book|和書
|year=1999
|title=広辞苑
|edition=第五版第一刷
|publisher=岩波書店
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|chapter=【大陸】
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}}</ref>。それに対し2つの大陸に分ける考えは[[ヨーロッパ中心主義]]の残滓もあり、「物理的、文化的そして歴史的な多様性では、[[中国]]や[[インド]]はヨーロッパの個別国ではなく全体に匹敵する。もし[[フランス]]と比類するならば、インド全体ではなくその中の一州、たとえば[[ウッタル・プラデーシュ州]]を並べる方が完全ではないとしてもより適切である」<ref>{{cite book
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}}</ref><!-- 英語版にはここに要出典:November 2009があるが、れは「フランスとインドの州を比較する文章がここにつく理由がわからない」というコメントとともにつけられたもので、出典についての疑義ではないためコメントアウトする。 -->という意見もあるが、歴史的また文化的な理由からヨーロッパではユーラシアを2大陸に分ける考えが本流である。


紀元前3世紀の学者[[エラトステネス]]は、一部の地理学者たちが大陸を河川(ナイル川とドン川)で区切り、その大陸を「島」とみなしている一方、他方の地理学者たちが大陸を[[地峡]]で区切り、その大陸を「半島」と呼んでいることを述べた<ref name="ストラボン_地理誌"/>。後者の地理学者たちは、ヨーロッパとアジアとの境界を黒海と[[カスピ海]]との間の地峡に定め、アジアとアフリカとの境界を[[地中海]]に面したエクレグマ({{仮リンク|バルダウィル湖|en|Lake Bardawil}}の河口近く)とエリュトラ海([[紅海]])との間に定めた<ref name="ストラボン_地理誌"/>。
陸峡を挟む南北アメリカ大陸はユーラシアよりも明瞭に区分されるが、それでも以前はまとめて1つの大陸として認識されており、[[第二次世界大戦]]以前のアメリカ合衆国でも支配的だった<ref>{{cite book
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|quote=While it might seem surprising to find North and South America still joined into a single continent in a book published in the United States in 1937, such a notion remained fairly common until World War II. [...] By the 1950s, however, virtually all American geographers had come to insist that the visually distinct landmasses of North and South America deserved separate designations.
}}</ref>。現在でも[[米州機構]]にこの概念が残っている。この、アメリカ大陸を1つとみなす考えは、[[スペイン]]や[[ポルトガル]]および[[ラテンアメリカ]]諸国の概念から来ている。しかし19世紀ごろ、アメリカ合衆国との混同を避けるために使われ始めた[[アメリカ州]](Americas)という言葉に見られる複数形から示唆されるように、このころには[[新世界]]は2つの大陸で成り立っているという認識が広まった。この区分は[[近代オリンピック]]の[[オリンピックシンボル|シンボルマーク]]に使われており、大陸を表す環は南極を除き5つがデザインされている<ref name=OU /><ref name=LCC /><ref name="IOC">[http://multimedia.olympic.org/pdf/en_report_1303.pdf ''The Olympic symbols.''] [[国際オリンピック委員会]]. 2002. Lausanne: Olympic Museum and Studies Centre. The five rings of the [[オリンピックシンボル]] represent the five inhabited, participating continents ([http://moscow2001.olympic.org/en/pdf/members_by_continent.pdf Africa, America, Asia, Europe, and Oceania] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20090324234948/http://moscow2001.olympic.org/en/pdf/members_by_continent.pdf|date=2009年3月24日}}); thus, Antarctica is excluded from the flag. Also see [http://www.acnolympic.org Association of National Olympic Committees]: [http://www.acnoa.info] [http://www.ocasia.org] [http://www.eurolympic.org] [http://www.crwflags.com/fotw/flags/int@paso.html] [http://www.oceaniasport.com]</ref>。


紀元1世紀、ローマの著作家・[[ガイウス・プリニウス・セクンドゥス|大プリニウス]]は、「全地球はヨーロッパ、アジア、アフリカの3つの部分に分かれている」と書き、こう付け加えた。
もし大陸の定義を離散的な陸塊とし、接触する場所がある陸地はまとめて考えるとするならば、アジア・アフリカ・ヨーロッパは[[アフロ・ユーラシア大陸]]という呼称のように1つの大陸と見なさなければならなくなる。この場合、南北アメリカもひとつと数えられ、地球の大陸は4つとなる。さらに、[[更新世]]の[[氷期]]によって[[海水準変動]]が起こっていた時期を考えれば、より広い範囲で[[大陸棚]]を介した[[陸橋 (生物地理)|陸橋]]で大陸はつながっていた。この時期、ニューギニアはオーストラリア大陸の一部であり、アメリカ大陸とアフロ・ユーラシア大陸は[[ベーリング海峡]]を通じて連なっていた。[[グレートブリテン島]]など大陸周辺の島もことごとく大陸と一体化していた。この時代に冒頭の大陸と定義できる陸地は3つだけだった。


{{bquote|それではヨーロッパから始める。このヨーロッパは、すべての国民を征服した民族を{{読み仮名|哺|はぐ}}くんだ地であり、陸地の図抜けて美しい部分であるが、大抵の大家たちが、それは世界の三分の一ではなく、その全域をタナイス河からガデス海峡へ引いた線によって二つの部分に分かち、その半分を占めると考えたのも理由のないことではない。<ref name="プリニウス_博物誌"/>{{efn2|読み仮名は筆者注。}}|||大プリニウス|『[[博物誌]]』}}
=== 区分例 ===
{{大州|px=300}}
分け方は数種あるが、表の五大州・六大州・七大州が代表的である。五大州・六大州では[[南極]]を無視することが一般的である。[[アメリカ合衆国]]では五大州、ヨーロッパや[[中南米]]では六大州に分けることが多い。


[[ファイル:T and O map Guntherus Ziner 1472.jpg|thumb|upright=1|200px|[[ノア (聖書)|ノア]]の息子たちの領地としての3つの大陸—アジアは[[セム]]に、ヨーロッパは[[ヤペテ]]に、アフリカは[[ハム (聖書)|ハム]]に—を示す中世ヨーロッパの[[TO図]]]]
ほかに、以下のような変化種がある。
[[西ローマ帝国]]の滅亡後、そこでラテン語とカトリック教会と結びついて発展した文化は、「[[ヨーロッパ]]」という概念と関連づけられるようになった。 ローマ時代から[[中世]]の間、[[スエズ地峡]]をアジアとアフリカの境界とする著作家もいたが、ほとんどの著作家はナイル川またはエジプトの西側国境を両大陸の境界とみなし続けた<!-- 訳者注:出典候補は英国の歴史家Edward Gibbonの著作 -->。中世には、Tの字で3つの大陸を区切る水域を表現した、[[TO図]]の形式で世界を描いたもの(右図参照)が普通であった{{sfn|宇田川|2016|pp=14-15}}が、18世紀半ばまでには「アジアとアフリカをナイル川で分ける、あるいは、さらに西方の大カタバトモス(エジプトと[[リビア]]の間の境界)に求める<ref name="古代エジプト国境"/>という流儀は、それでもほとんど廃れてしまっていた」<ref>Goddard, Farley Brewer (1884). "Researches in the Cyrenaica". ''The American Journal of Philology'', 5 (1) p. 38.</ref>。


* アジアとヨーロッパを合わせて[[ユーラシ]](欧亜州)とする。
=== ヨーロッパ人の新大陸メリカ到達 ===
{{see also|大航海時代|アメリカ大陸の発見}}
* オセアニアを[[オーストラリア]](豪州)に替える。(オーストラリア以外のオセアニアの位置づけははっきりしない)
1492年、[[クリストファー・コロンブス]]は[[大西洋]]を横断して[[カリブ海]]まで航海し、ヨーロッパ人による[[アメリカ大陸]]探検の口火を切った。しかし、コロンブスはアメリカ大陸へ4回も航海したにもかかわらず、自身が新大陸に到達したとは決して信じることなく、そこはアジアの一部だと生涯信じていた。
* オセアニアを無視する、あるいはアジアに含める。(オーストラリアが大陸と認識される以前の歴史的なもの)


1501年、[[アメリゴ・ヴェスプッチ]]と{{仮リンク|ゴンサロ・コエーリョ|en|Gonçalo Coelho}}は、彼らがアジア大陸の南端と考えていた地([[インディアス]])を迂回し、[[インド洋]]へと抜けようとして、[[フェルナンド・デ・ノローニャ]]付近を通過した。[[ブラジル]]の海岸に差しかかった一行は、[[南アメリカ大陸]]の東岸に沿って南下し、この地が当時考えられていたアジアよりもはるかに南の方まで延びた、大陸と呼ぶにふさわしい広さをもつ連続した陸地であることを確認した<ref name="OGorman"/>。ヨーロッパに帰還すると、《ムンドゥス・ノーヴス》(「新世界」の意)という手紙形式の航海記(冊子)が、ヴェスプッチの名で1503年初めに出版された{{sfn|レスター|2015|p=359}}<ref name="formisano1"/>。この手紙は別の作家によって内容の追加や変更が加えられたものとみられる{{sfn|Zerubavel|2003|pp=77-79}}{{sfn|レスター|2015|pp=362-363}}が、誰がその言葉を著したかにかかわらず、同書簡中の「私はそれら南の地域で、我らのヨーロッパ、あるいはアジアやアフリカよりもっと多くの人間や動物の住む大陸を発見した{{sfn|レスター|2015|p=360}}」という一文は、ヴェスプッチの言によるものとみられており、アメリカの一部を他の3大陸と同様の大陸として初めて明示的に確認したものとして知られる。
したがって、五大州・六大州・七大州には表に載せたもの以外もある。


それから数年のうちに、オリヴェリアーナ([[ペーザロ]])の地図(1504年から1505年頃)のように、「[[新世界]]」という名称を南アメリカの名称とした世界地図が登場するようになった。しかし、この頃の地図では、まだ北アメリカはアジアとつながっており、南アメリカは別の大陸として描かれていた{{sfn|Zerubavel|2003|pp=77-79}}。
[[Image:Olympic flag.svg|thumb|100px|五輪旗。]]


[[File:Waldseemuller map 2.jpg|thumb|left|upright=1.4|初めてアメリカ大陸をアジアと分けて示した、ヴァルトゼーミュラー作の世界地図『ユニヴァーサリス・コスモグラフィア』(1507年)]]
五大陸・六大州と言った場合、五大州・六大州の意味で使うこともあるが、地理学的な大陸である[[ユーラシア大陸]]、[[アフリカ大陸]]、[[北アメリカ大陸]]、[[南アメリカ大陸]]、[[オーストラリア大陸]]、[[南極大陸]](五大陸では南極大陸を無視するか南北[[アメリカ大陸]]を合わせる)の意味で使うことも多い。
1507年、[[マルティン・ヴァルトゼーミュラー]]は世界地図『[[ヴァルトゼーミュラー地図|ユニヴァーサリス・コスモグラフィア]]』を出版した。これは、南北アメリカがアジアから分離され、水域に囲まれていることを示した{{sfn|レスター|2015|p=23}}初めての地図であった。主要図の上に描かれた小さな挿入図は、(ヨーロッパを中心に置いた一般的な世界地図で)アメリカを地図の左端に、アジアを右端に配置するのとは反対に、アメリカがアジアの東にあり、海によってアジアと隔てられていることを明確に示していた。ヴァルトゼーミュラーは、同地図の付録冊子『{{仮リンク|天地学入門|en|Cosmographiae Introductio}}』{{sfn|レスター|2015|pp=13-14}}の中で、地球の陸地は4つの部分に分けられ、ヨーロッパ、アジア、アフリカに次ぐ4番目の部分をヴェスプッチのファーストネームにちなんで「[[アメリカ (曖昧さ回避)|アメリカ]]」と名付けたことを記している{{sfn|Zerubavel|2003|pp=80-82}}{{sfn|レスター|2015|p=16}}。地図上では、「AMERICA」の文字がアメリカ大陸の上に並んでいる{{sfn|レスター|2015|loc=カラー口絵11}}。


=== 四大陸を越えて ===
[[近代オリンピック]]の[[オリンピックシンボル|五輪旗]]が表す「五大陸」は、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、オーストラリアである。
[[File:Thevenot - Hollandia Nova detecta 1644.png|thumb|upright=1.2|[[アベル・タスマン]]と{{仮リンク|ウィレム・ヤンスゾーン|en|Willem Janszoon}}の航海に基づき、{{仮リンク|ジョアン・ブラウ|en|Joan Blaeu}}が1659年に作成したニューホランドの地図(当画像は1663年の仏語版)]]
18世紀後半から、南北アメリカを北アメリカと南アメリカの2つの大陸とみなし、合わせて5つの大陸で世界は成り立っているとみる地理学者が一部に現れたが、全体としては19世紀に入るまで、4大陸とする見方が主流だった{{sfn|Lewis|Wigen|1997|p=30}}。


ヨーロッパ人は1606年に[[オーストラリア大陸|オーストラリア]]を発見していたが、しばらくの間、そこはアジアの一部とみなされていた。これを独立した大陸とみなし、世界を6大陸(あるいは、南北アメリカを1つの大陸とみなす場合には5大陸)に区分する見方が一部の地理学者の間で出始めたのは、18世紀後半のことであった{{sfn|Lewis|Wigen|1997|p=30}}。1813年、{{仮リンク|サミュエル・バトラー|en|Samuel Butler (schoolmaster)|label=サミュエル・バトラー}}はオーストラリアを「[[ニューホランド (オーストラリア)|ニューホランド]]という広大な島で、地理学者の中には、もう一つの大陸という称号を授け、権威づけて呼ぶ者がいる」と書き、その数十年後の『[[オックスフォード英語辞典]]』も同じように両義に取れる曖昧な表現にとどまった<ref name="OED_2ed"/>。世界の「大区分」としての[[オセアニア]]という概念が、大陸としてのオーストラリアという概念に置き換わったのは1950年代のことであった<ref name="lewis32b"/>。
=== 大州の境界 ===
大州の境界は、純粋に地理学的な境界だけでなく、文化的な境界や、歴史的経緯にも影響されている。もとより便宜的な区分なので、境界が陸上だったり、海であっても小さな島がある場合、細部がはっきりしないこともある。ここに書いた境界は絶対的なものではない。


[[南極大陸]]は、1820年に{{仮リンク|ロシアの第一次南極探検隊|en|First Russian Antarctic Expedition}}によって発見され、1838年に[[アメリカ合衆国探検遠征隊|アメリカの探検隊]]の[[チャールズ・ウィルクス]]によって大陸として記述された。“Antarctic”(北極の[[対蹠地]])として数千年にわたり巨大な陸地が存在すると[[南方大陸|予想されていた]]ものの最後に確認された大陸となった。早くも1849年の地図帳には
{| class="sortable wikitable"
Antarctica を大陸と明示したものもあったが、[[第二次世界大戦]]後まで、そのように記載された地図帳はほとんどなかった{{sfn|Lewis|Wigen|1997}}。
|-
! 大州(1) !! 大州(2) !! class="unsortable" |
|-
| アジア || ヨーロッパ
| [[ダーダネルス海峡]]~[[マルマラ海]]~[[ボスポラス海峡]]~[[黒海]]~[[カフカス山脈]]~[[カスピ海]]~[[ウラル川]]~[[ウラル山脈]]~[[カラ海]]。
|-
| ヨーロッパ || アフリカ
| [[ジブラルタル海峡]]。[[マルタ]]はヨーロッパ。
|-
| アジア || アフリカ
| [[スエズ地峡]](時に[[スエズ運河]])。
|-
| アジア || 北アメリカ
| [[ベーリング海峡]]~[[カムチャツカ半島]]と[[アリューシャン列島]]の間。
|-
| ヨーロッパ || 北アメリカ
| [[デンマーク海峡]]([[アイスランド]]と[[グリーンランド]]の間)。
|-
| アジア || オセアニア
| [[スラウェシ島]]と[[ニューギニア島]]の間~[[フィリピン]]と[[パラオ]]の間~[[火山列島]]と[[マリアナ諸島]]の間。
|-
| アメリカ || オセアニア
| 北東は[[ハワイ]]、南東は[[イースター島]]までがオセアニア。[[ガラパゴス諸島]]は南アメリカ。
|-
| 北アメリカ || 南アメリカ
| [[パナマ地峡]](時に[[パナマ運河]])。[[カリブ諸島]]は北アメリカ。
|-
| 南極 || 他の大州
| [[南緯]]60°の[[緯線]]。
|}


やがて、世界を諸大州に区分するという西洋の考え方は、世界の他の地域の概念に取って代わって世界中に広まり、大陸という概念は文化的・政治的な意味を帯びるようになった。19世紀、[[明治]]時代の日本の指導者たちは、[[アジア人]]であることを自己認識し始め、西洋諸国に対するアジアの連帯という概念を思い描きながら、他の「アジア」諸国との関係を再構築した。このアジアのアイデンティティの概念とアジアの連帯という概念は、後に中国やベトナムなど、この地域の他の国々にも取り入れられた<ref name="Concept_of_Asia"/>。
=== 複数の大州にまたがる国 ===
[[File:transcontinental nations.svg|thumb|複数の大州にまたがる国の一覧]]


19世紀半ば以降、アメリカ合衆国で発行される地図帳は、北アメリカと南アメリカを別々の大陸として扱うことが以前よりも一般的になったものの、ヨーロッパで発行される地図帳は通常、北アメリカと南アメリカを1つの大陸として扱っており、アメリカの地図帳も第二次世界大戦までは、それらを1つの大陸として扱ったものが、まだ珍しくなかった{{sfn|Lewis|Wigen|1997|p=32}}。1950年代以降、アメリカの地理学者の多くはアメリカ大陸を2つの大陸に区分けし{{sfn|Lewis|Wigen|1997|p=32}}、これに南極大陸を加えて7大陸モデルとした。しかし、このアメリカ大陸の区分けは、[[ラテンアメリカ]]の人々にとっては決して魅力的なものではなかった。彼らは、自分たちの地域を {{lang|es|América}} という一つの大陸とみなしており、そこでは(他の国々でも散見されるように)6大陸の概念が支配的なままである<ref name="Siobhan_Brier"/>。
{{main|{{仮リンク|複数の大州にまたがる国一覧|en|List of transcontinental countries}}}}
各国を大州に分けるときは、大州(1)に属するとされる。


ヨーロッパとアジアを合わせて[[ユーラシア]]と呼び、1つの大陸とみなす地理学者もおり<ref name="NationalGeographic_20080306"/>、このモデルでは、世界は6つの大陸に分けられ、北アメリカと南アメリカは別の大陸とみなされる。
{| class="wikitable"

== 数と区分 ==
実際には大陸の数を確定する公式的な唯一の見解は存在しない。2つの大きな陸塊をひとまとめにして1つの大陸とみなすのか2つとみなすのかについて、特に[[ヨーロッパ]]と[[アジア]]([[ユーラシア大陸]])、[[北アメリカ]]と[[南アメリカ]]([[アメリカ大陸]])の区分の仕方は、それぞれの言語圏や文化圏により異なる。

主な区分の概要は下記の通り。

[[File:Continents vide couleurs.png|center|600px]]{{center|各大州を色分けして示した地図。同系色で塗られた領域は結合または分割される地域を表す。}}
{| class="wikitable sortable" style="margin:auto"
|-
|-
! style="text-align:center;" | 数
! 国 !! 大州(1) !! 大州(2) !! 大州(2)の地域
! style="text-align:center;" | 類別
! style="text-align:center;" colspan="7" class="unsortable" | 区分
! style="text-align:center;" class="unsortable" | 出典
! style="text-align:center;" class="unsortable" | 備考
|-
|-
! {{Hs|4!}} 四
| {{RUS}} || ヨーロッパ || アジア || [[シベリア]]より東方
! 大陸
| colspan="3" |{{small|{{color strip|w=0.5|#fed52e|#f33e01|#c10000}}}} [[アフロ・ユーラシア大陸|アフロ・ユーラシア]]<br />([[旧大陸]]または[[世界島]])
| colspan="2" |{{small|{{color strip|w=0.5|#0c0|green}}}} [[アメリカ大陸|アメリカ]]([[新大陸]])
| {{small|{{color strip|w=0.5|#c04080}}}} [[オーストラリア大陸|オーストラリア]]
| {{small|{{color strip|w=0.5|#0040ff}}}} [[南極大陸|南極]]
| <ref name="世界の一部_ru"/>
| 一つの連続した大陸塊
|-
|-
! rowspan="4" | {{Hs|5!}} 五
| {{KAZ}} || アジア || ヨーロッパ || [[ウラル川]]西岸
! rowspan="3" | 大陸
| rowspan="3" | {{small|{{color strip|w=0.5|#fed52e}}}} [[アフリカ大陸|アフリカ]]
| colspan="2" rowspan="2" |{{small|{{color strip|w=0.5|#f33e01|#c10000}}}} [[ユーラシア大陸|ユーラシア]]
|{{small|{{color strip|w=0.5|#0c0}}}} [[北アメリカ大陸|北アメリカ]]
|{{small|{{color strip|w=0.5|green}}}} [[南アメリカ大陸|南アメリカ]]
| rowspan="3" | {{small|{{color strip|w=0.5|#c04080}}}} オーストラリア
| {{n/a}}
| <ref name="日国_五大州"/>
|
|-
|-
| colspan="2" rowspan="2" |{{small|{{color strip|w=0.5|#0c0|green}}}} アメリカ
| {{TUR}} || アジア || ヨーロッパ || [[イスタンブール]]、[[トラキア|東トラキア]]
| {{small|{{color strip|w=0.5|#0040ff}}}} 南極
| <ref name="UCSB_ScienceLine"/>
| 自然地理学的地域
|-
|-
| {{small|{{color strip|w=0.5|#f33e01}}}} [[アジア大陸|アジア]]
| {{GRE}} || ヨーロッパ || アジア || [[エーゲ海]]東部の島々、[[カステロリゾ島]]
| {{small|{{color strip|w=0.5|#c10000}}}} [[ヨーロッパ大陸|ヨーロッパ]]
| style="background:#ececec;color:#2c2c2c;vertical-align:middle;font-size:smaller;text-align:center;" class="table-na" rowspan="2" | N/A
| <ref name="日国_五大州"/>
|
|-
|-
! 大州
| {{ESP}} || ヨーロッパ || アフリカ || [[セウタ]]、[[メリリャ]]、[[カナリア諸島]]など
| {{small|{{color strip|w=0.5|#fed52e}}}} [[アフリカ]]
| {{small|{{color strip|w=0.5|#f33e01}}}} [[アジア]]
| {{small|{{color strip|w=0.5|#c10000}}}} [[ヨーロッパ]]
| colspan="2" |{{small|{{color strip|w=0.5|#0c0|green}}}} [[アメリカ州|アメリカ]]
| {{small|{{color strip|w=0.5|#c04080}}}} [[オセアニア]]
| <ref name="広辞苑_五大州"/>
| [[オリンピックシンボル|五輪マーク]]{{flagicon|IOC}}の由来
|-
|-
! rowspan="3" | {{Hs|6!}} 六
| {{POR}} || ヨーロッパ || アフリカ || [[マデイラ諸島]]
! 大陸
| rowspan="3" |{{small|{{color strip|w=0.5|#fed52e}}}} アフリカ
| colspan="2" |{{small|{{color strip|w=0.5|#f33e01|#c10000}}}} ユーラシア
| {{small|{{color strip|w=0.5|#0c0}}}} 北アメリカ
| {{small|{{color strip|w=0.5|green}}}} 南アメリカ
| {{small|{{color strip|w=0.5|#c04080}}}} オーストラリア
| {{small|{{color strip|w=0.5|#0040ff}}}} 南極
| <ref name="改訂新版世界大百科事典_大陸"/><ref name="JGU"/><ref name="奥平"/><ref name="Columbia"/>
| 地球科学的大陸
|-
|-
! rowspan="2" | 大州
| {{ITA}} || ヨーロッパ || アフリカ || [[パンテッレリーア島]]、[[ペラージェ諸島]]
| rowspan="2" | {{small|{{color strip|w=0.5|#f33e01}}}} アジア
| rowspan="2" | {{small|{{color strip|w=0.5|#c10000}}}} ヨーロッパ
| colspan="2" |{{small|{{color strip|w=0.5|#0c0|green}}}} アメリカ
| rowspan="2" | {{small|{{color strip|w=0.5|#c04080}}}} オセアニア
| {{small|{{color strip|w=0.5|#0040ff}}}} 南極
| <ref name="UNSD"/>
| [[国連による世界地理区分|国連統計部の大州区分]]
|-
|-
| {{EGY}} || アリカ || アジア || [[シナイ半島]]
| {{small|{{color strip|w=0.5|#0c0}}}} [[北リカ]]
| {{small|{{color strip|w=0.5|green}}}} [[南アメリカ]]
| {{n/a}}
| <ref name="日国_六大州"/><ref name="広辞苑_六大州"/>
|
|-
|-
!rowspan="2" | {{Hs|7!}} 七
| {{IDN}} || アジア || オセアニア || [[イリアンジャヤ|西パプア]]
! 大陸
|-
| rowspan="2" |{{small|{{color strip|w=0.5|#fed52e}}}} アフリカ
| {{USA}} || 北アメリカ || オセアニア || [[ハワイ州|ハワイ]]、[[合衆国領有小離島]]
| rowspan="2" |{{small|{{color strip|w=0.5|#f33e01}}}} アジア
| rowspan="2" |{{small|{{color strip|w=0.5|#c10000}}}} ヨーロッパ
| rowspan="2" |{{small|{{color strip|w=0.5|#0c0}}}} 北アメリカ
| rowspan="2" |{{small|{{color strip|w=0.5|green}}}} 南アメリカ
| {{small|{{color strip|w=0.5|#c04080}}}} オーストラリア
| rowspan="2" |{{small|{{color strip|w=0.5|#0040ff}}}} 南極
| <ref name="UCSB_ScienceLine"/><ref name="日本大百科全書"/><ref name="EB"/><ref name="NationalGeographic_20231130"/>
| 全大陸区分の構成要素
|-
|-
! 大州
| {{PAN}} || 北アメリカ || 南アメリカ || パナマ地峡以東
| {{small|{{color strip|w=0.5|#c04080}}}} オセアニア
|-
| <ref name="UCSB_ScienceLine"/><ref name="大辞泉_七大州"/>
| {{CHI}} || 南アメリカ || オセアニア || [[イースター島]]
| 全大州区分の構成要素
|}
|}
* '''4大陸''': ヨーロッパ、アジア、アフリカは[[アフロ・ユーラシア大陸]]として、北アメリカと南アメリカは[[アメリカ大陸]]として、単一の大陸とみなすべきだと考える人もいる。これに[[オーストラリア大陸]]と[[南極大陸]]を加えて4大陸とする。この4大陸モデルは、スエズ運河やパナマ運河のような人工的な地形の切れ目を大陸間の境界とは認めず、厳密に一つの連続した大きな陸地という自然地形の観点から大陸を区分している。
* '''5大陸''': 典型的には、[[ユーラシア大陸|ユーラシア]]、[[アフリカ大陸|アフリカ]]、[[北アメリカ大陸|北アメリカ]]、[[南アメリカ大陸|南アメリカ]]、[[オーストラリア大陸|オーストラリア]]の5大陸を指す。南北アメリカを1つの大陸とみなす場合、代わりにユーラシアを[[ヨーロッパ大陸|ヨーロッパ]]と[[アジア大陸|アジア]]の2つに分けて数えるか、[[南極大陸]]を加えるかして5大陸モデルとする。
[[File:Olympic flag.svg|thumb|right|結び合う五つの輪で五大陸を表象するオリンピックシンボル]]
* '''5大州''': [[オリンピックシンボル]]([[1914年]]制定)が結び合う5色の五輪で表象する、人類が居住する世界の5つの大陸、すなわち、[[ヨーロッパ]]、[[アジア]]、[[アフリカ]]、[[アメリカ州|アメリカ]]、[[オセアニア]]の5大州を指し<ref name="北方山草"/><ref name="体育史研究"/>、人類が定住していない{{sfn|宇田川|2016|p=57}}南極大陸は除外される。
* '''6大陸(伝統的)''': 南北アメリカを1つの大陸とみなし、ヨーロッパとアジアを区別する5大陸モデルに南極大陸を加えたもの<ref name="Siobhan_Brier"/>。この6大陸モデルは、[[イベロアメリカ]]<ref name="世界の一部_ru"/>、[[フランス語圏|フランコフォニー]]、そのほか[[ロマンス諸語]]を話す欧州諸国([[イタリア]]、[[ギリシャ]]、[[ルーマニア]]など)で一般的に使用されている。
* '''6大陸(地学的)''': 典型的な5大陸モデルに南極大陸を加えたもの。[[プレートテクトニクス]]理論の[[大陸プレート]]とほぼ連関し、ヨーロッパとアジアは[[ユーラシア]]として単一の大陸とみなされ、アメリカは2つの大陸(北アメリカと南アメリカ)に分けられる。この6大陸モデルは、[[NIS諸国|旧ソビエト連邦諸国]]<ref name="世界の一部_ru"/>、[[東ヨーロッパ|東欧]]諸国、[[日本]]<ref name="Benesse"/>および[[大韓民国|韓国]]で一般的に使用されている。
* '''6大州''': 典型的な5大州モデルに南極州を加えたもの。あるいは、[[アメリカ州]]を[[北アメリカ]]と[[南アメリカ]]の2大州に分けたもの。前者は[[国連による世界地理区分|国連統計部で使用される大州区分]]で、後者は日本の学校の地理教育で教えられる6大州モデル<ref name="Benesse"/>。
* '''7大陸/7大州''': [[英語圏]]([[アメリカ合衆国|米国]]<ref name="Siobhan_Brier"/><ref name="Nathan_Chandler"/>、[[イギリス|英国]]<ref name="BBC_7C"/>、[[オーストラリア|豪州]]<ref name="Alice_Springs"/>など)、[[ゲルマン諸語]]を話す欧州諸国、および[[インド]]、[[中華人民共和国|中国]]<ref name="木全"/>、[[台湾]]<ref name="獨立評論"/>、[[パキスタン]]、[[フィリピン]]などで一般的な大陸/大州モデル。このモデルは、いくつかの国際団体で使用されている。

7大州モデルを構成する要素は以下の通り。

* '''[[アジア]]''': [[スエズ地峡]]でアフリカと接し、[[ウラル山脈]]でヨーロッパと、[[ベーリング海峡]]で北アメリカと、それぞれ隔てられている。東は[[太平洋]]、西は[[黒海]]と[[地中海]]、南は[[インド洋]]、北は[[北極海]]に面している。
* '''[[アフリカ]]''': [[スエズ地峡]]でアジアと接し、[[ジブラルタル海峡]]でヨーロッパと隔てられ、南は[[喜望峰]]まで広がっている。東は[[インド洋]]、西は[[大西洋]]、北は[[地中海]]に面している。
* '''[[北アメリカ]]''': [[パナマ地峡]]で南アメリカと接し、[[ベーリング海峡]]でアジアと隔てられ、東は[[大西洋]]、西は[[太平洋]]、北は[[北極海]]に面している。
* '''[[南アメリカ]]''': [[パナマ地峡]]で北アメリカと接し、[[ドレーク海峡]]で南極大陸と隔てられ、東は[[大西洋]]、西は[[太平洋]]、北は大西洋と[[カリブ海]]に面している。
* '''[[ヨーロッパ]]''': [[地中海]]でアフリカと、[[ウラル山脈]]でアジアと、それぞれ隔てられ、西は[[大西洋]]に面している。
* '''[[オセアニア]]''': [[東南アジア]]、[[インド洋]]、[[太平洋]]の中間に位置する。オセアニアの代わりに[[オーストララシア]]という区分が使用されることもある。
* '''[[南極地方]]''': [[南極]]を取り囲むように位置し、南アメリカとは[[ドレーク海峡]]で、周辺の大陸とは[[南極海]]と隣接する大洋で隔てられている。

そのほか、北アメリカ大陸のうち、アメリカ合衆国と[[カナダ]](時に[[メキシコ]]も含む)を除いた諸国を[[中央アメリカ]]に区分する分け方もある{{sfn|宇田川|2016|pp=16-17}}。また、民族・文化・言語的な側面から、主に[[英語]]を話すアメリカ合衆国とカナダを[[アングロアメリカ]]とし、主に[[スペイン語]]を話すメキシコ以南の国々を[[ラテンアメリカ]]に区分することもある{{sfn|宇田川|2016|pp=16-17}}<ref name="おさらい"/>。

=== 大州の境界 ===
七大州の境界は確定してはいないが、地理的には概ね次のような線で結ばれる。
*アジア州とヨーロッパ州:[[ウラル山脈]]−[[ウラル川]]−[[カスピ海]]−[[コーカサス山脈]]−[[黒海]]−[[ボスポラス海峡]]−[[マルマラ海]]−[[ダーダネルス海峡]]{{sfn|宇田川|2016|pp=14-15}}{{sfn|神沼|2023|p=17}}
*アジア州とアフリカ州:[[地中海]]−[[スエズ運河]]([[スエズ地峡]])−[[紅海]]−[[マンデブ海峡]]−[[アデン湾]]−[[アラビア海]]<ref name="欧亜境界"/>
*アジア州とオセアニア州:[[ティモール海]]−[[アラフラ海]]−[[セラム海]]−[[ハルマヘラ海]]
*アジア州と北アメリカ州:[[ベーリング海峡]]
*ヨーロッパ州とアフリカ州:[[ジブラルタル海峡]]−[[地中海]]<ref name="欧亜境界"/>
*ヨーロッパ州と北アメリカ州:[[デンマーク海峡]]−[[グリーンランド海]]
*北アメリカ州と南アメリカ州:[[パナマ運河]]([[パナマ地峡]]){{sfn|宇田川|2016|pp=14, 16-17}}
*南アメリカ州と南極州:[[ドレーク海峡]]

なお、上記とは別に、政治・文化・歴史的な経緯から、それぞれ異なる境界が用いられることがある。たとえば、[[トルコ]]は地理的には国土の95%がアジア州に含まれるが、[[欧州サッカー連盟]] (UEFA) に加盟していたり、[[欧州連合]] (EU) の加盟候補国であったりするなど、しばしば国全体がヨーロッパ州に区分されることがある<ref name="おさらい"/>。

{{see also|{{仮リンク|複数の大州にまたがる国の一覧|en|List of transcontinental countries}}}}

=== もう一つの隠れた大陸 ===
2017年、ニュージーランドの地質学者{{仮リンク|ニック・モーティマー|en|Nick Mortimer}}が率いる研究チームが、[[ニュージーランド]]や[[ニューカレドニア]]を含む、大部分が海面下に沈む大陸「[[ジーランディア]]」を既知の七大陸に比肩する隠れた大陸であるとする論文を発表し<ref name="NatureDigest_20170401"/>、新聞・雑誌やネット上で話題を呼んだ{{sfn|吉田|2023|p=74}}。ジーランディアは、面積が約500万平方キロメートル(オーストラリア大陸の約半分)とされるが、海面上に出ているのは、全体の6%にあたるニュージーランドの[[北島 (ニュージーランド)|北島]]・[[南島 (ニュージーランド)|南島]]、およびニューカレドニアの島々だけであり、残りの94%は水没した状態である{{sfn|吉田|2023|pp=70-71}}。


== 面積と人口 ==
== 面積と人口 ==
{{multiple image
[[ファイル:ContinentStatistics.svg|thumb|500px|各大陸の面積と人口の比較。凡例:
| align = center
{{Flatlist|{{リスト
| caption_align = center
| total_width = 900
| image1 = ContinentStatistics.svg
| caption1 = 各大州の面積と人口を比較したグラフ(縦軸の単位は、面積が千万キロ平米、人口が十億人){{flatlist | {{リスト
|1={{Legend2|#f33e01|アジア}}
|1={{Legend2|#f33e01|アジア}}
|2={{Legend2|#fed52e|アフリカ}}
|2={{Legend2|#fed52e|アフリカ}}
493行目: 277行目:
|5={{Legend2|#0040ff|南極}}
|5={{Legend2|#0040ff|南極}}
|6={{Legend2|#c10000|ヨーロッパ}}
|6={{Legend2|#c10000|ヨーロッパ}}
|7={{Legend2|#c04080|オーストラリア}}
|7={{Legend2|#c04080|オセアニア}}
}}}}]]
}}}}
| image2 = Lambert-azimuthal-equal-area.jpg
以下の表で、7大陸法で区分したそれぞれの大陸の面積と人口についての統計を示す。
| caption2 = [[ランベルト正積方位図法]]で描かれた地図
{| class="wikitable sortable" style="text-align:right"
}}
{| class="wikitable floatleft sortable static-row-numbers" style="text-align:right;"
|+ 各大州の面積<ref name="BBCSF"/>・推計人口{{nobold|{{UN population|ref}}}}および各大陸の面積
|- class="static-row-header" style="text-align:center;vertical-align:bottom;"
! scope="col" rowspan=2 | 大州
! scope="col" colspan=2 | 大州面積
! scope="col" colspan=2 | 大州人口
! scope="col" colspan=2 | 大陸面積
! scope="col" rowspan=2 | 大陸
|- class="static-row-header" style="text-align:center;vertical-align:bottom;"
! scope="col" | {{nobold|km{{sup|2}}}}
! scope="col" | {{nobold|%}}
! scope="col" | {{nobold|{{UN population|Year}}(推計)}}
! scope="col" | {{nobold|%}}
! scope="col" | {{nobold|km{{sup|2}}}}
! scope="col" | {{nobold|%}}
|- class="static-row-header" style="text-align:center;vertical-align:bottom;"
|-
|-
! scope=row data-sort-value="あしあ" | [[アジア]]
! 大陸
| {{n+p|disp=table|sigfig=3|44,579,000|149,767,000}}
! 面積 (km<sup>2</sup>)
| {{n+p|disp=table|sigfig=3|{{UN population|Asia}}|{{UN population|World}}}}
! 全陸地に<br />占める割合
| {{n+p|disp=table|sigfig=3|50,439,819|137,373,857}}
! 人口<br />2008年
! scope=row data-sort-value="ゆうらしあ" | [[ユーラシア大陸|ユーラシア]]
! 全人口に<br />占める割合
! 人口密度<br />人/km<sup>2</sup>
|-
|-
! scope=row data-sort-value="あふりか" | [[アフリカ]]
! [[アジア大陸]]
| {{n+p|disp=table|sigfig=3|30,244,000|149,767,000}}
| 43,820,000 || 29.5% || 3,879,000,000 || 60% || 86.70
| {{n+p|disp=table|sigfig=3|{{UN population|Africa}}|{{UN population|World}}}}
| {{n+p|disp=table|sigfig=3|29,370,907|137,373,857}}
! scope=row data-sort-value="あふりか" | [[アフリカ大陸|アフリカ]]
|-
|-
! scope=row data-sort-value="きたあめりか" | [[北アメリカ]]
! [[アフリカ大陸]]
| {{n+p|disp=table|sigfig=3|24,239,000|149,767,000}}
| 30,370,000 || 20.4% || 922,011,000 || 14% || 29.30
| {{n+p|disp=table|sigfig=2|{{UN population|North America}}|{{UN population|World}}}}
| {{n+p|disp=table|sigfig=3|20,090,075|137,373,857}}
! scope=row data-sort-value="きたあめりか" | [[北アメリカ大陸|北アメリカ]]
|-
|-
! [[アメリカ大陸]]
! scope=row data-sort-value="みなみあめりか" | [[アメリカ]]
| {{n+p|disp=table|sigfig=3|17,814,000|149,767,000}}
| 42,330,000 || 28.5% || 910,720,588 || 14% || 21.0
| {{n+p|disp=table|sigfig=2|{{UN population|South America}}|{{UN population|World}}}}
| {{n+p|disp=table|sigfig=3|17,609,548|137,373,857}}
! scope=row data-sort-value="みなみあめりか" | [[南アメリカ大陸|南アメリカ]]
|-
|-
! scope=row data-sort-value="なんきよく" | [[南極]]
! [[北アメリカ大陸]]
| {{n+p|disp=table|sigfig=2|14,200,000|149,767,000}}
| 24,490,000 || 16.5% || 528,720,588 || 8% || 21.0
| {{n+p|disp=table|sigfig=1|{{UN population|Antarctica}}|{{UN population|World}}}}
| {{n+p|disp=table|sigfig=2|12,272,800|137,373,857}}
! scope=row data-sort-value="なんきよく" | [[南極大陸]]
|-
|-
! scope=row data-sort-value="よおろつは" | [[ヨーロッパ]]
! [[南アメリカ大陸]]
| {{n+p|disp=table|sigfig=2|10,180,000|149,767,000}}
| 17,840,000 || 12.0% || 382,000,000 || 6% || 20.8
| {{n+p|disp=table|sigfig=2|{{UN population|Europe}}|{{UN population|World}}}}
| {{n+p|disp=table|sigfig=3|50,439,819|137,373,857}}
! scope=row data-sort-value="ゆうらしあ" | [[ユーラシア大陸|ユーラシア]]
|-
|-
! scope=row data-sort-value="おせあにあ" | [[オセアニア]]
! [[南極大陸]]
| {{n+p|disp=table|sigfig=2|8,511,000|149,767,000}}
| 13,720,000 || 9.2% || 1,000 || 0.00002% || 0.00007
| {{n+p|disp=table|sigfig=1|{{UN population|Oceania}}|{{UN population|World}}}}
|-
| {{n+p|disp=table|sigfig=2|7,591,608|137,373,857}}
! [[ヨーロッパ大陸]]
! scope=row data-sort-value="おおすとらりあ" | [[オーストラリア大陸|オーストラリア]]
| 10,180,000 || 6.8% || 731,000,000 || 11% || 69.7
|- class="static-row-header " style="font-weight:bold;"
|-
! scope=row | 総計
! [[オーストラリア大陸]]
! {{n+p|disp=table|sigfig=1|149,767,000|149,767,000}}
| 9,008,500 || 5.9% || 22,000,000 || 0.5% || 3.6
! {{n+p|disp=table|sigfig=1|{{UN population|World}}|{{UN population|World}}}}
! {{n+p|disp=table|sigfig=3|137,373,857|137,373,857}}
! scope=row | 総計
|}
|}
左記の表では、7大州区分に基づく各大州の面積と人口、および6大陸区分に基づく各大陸の面積を掲載している。一部の構成比(%)合計は100%にならない。
全大陸の面積は総計148,647,000km<sup>2</sup>であり、地球表面(510,065,600 km<sup>2</sup>)の29.1%を占める。


各大州の面積は概算値であり、海岸線や内陸水域の影響を考慮していない。参考値として、地球の陸地面積は147,244,000 km<sup>2</sup>、地球表面の総面積は510,066,000 km<sup>2</sup>、世界最大の島である[[グリーンランド島]]の面積は2,175,600 km<sup>2</sup>である<ref>{{Cite book |和書 |title=[[理科年表]] 2024 |editor=[[国立天文台]] |publisher=[[丸善出版]] |date=2023-11 }}</ref>。
== 最高地点と最低地点 ==
{{See also|七大陸最高峰}}
以下の表で、7大陸法で区分したそれぞれの大陸の最高標高地点(最高峰)と最低標高地点を示す。
{| class="wikitable sortable"
! 大陸 !! 最高標高地点 !! 標高 (m) !! 国または地域 !! 最低標高地点 !! 標高 (m) !! 国または地域
|-
| [[アジア大陸]] || [[エベレスト]] || 8,848 || {{CHN}}<br />{{NPL}}||[[死海]] || -422 || {{ISR}}<br />{{PLE}}<br />{{JOR}}
|-
| [[南アメリカ大陸]] || [[アコンカグア]] || 6,960 || {{ARG}} || [[カルボン湖]] || -105 || {{ARG}}
|-
| [[北アメリカ大陸]] || [[デナリ|マッキンリー]] || 6,198 || {{USA}} || [[ヤコブスハブン氷河]]の[[圏谷]]下部 † || -1512<ref>Plummer, Joel. [https://www.cresis.ku.edu/~plummer/jakob.html#Bed_1 Jakobshavn Bed Elevation] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20100627071506/https://www.cresis.ku.edu/~plummer/jakob.html |date=2010年6月27日 }}, Center for the Remote Sensing of the Ice Sheets, Dept of Geography, University of Kansas.</ref> || {{GRL}}
|-
| [[アフリカ大陸]] || [[キリマンジャロ]] || 5,895 || {{TAN}} || [[アッサル湖]] || -155 || {{DJI}}
|-
| [[ヨーロッパ大陸]] || [[エルブルス山]] || 5,633 || {{RUS}} || [[カスピ海]] || -28 || {{AZE}}<br />{{KAZ}}<br />{{RUS}}<br />(+{{IRN}}<br />{{TKM}})
|-
| [[南極大陸]] || [[ヴィンソン・マシフ]] || 4,892 || {{ATA}} || [[ベントリー氷河底地溝]] † || -2540 || {{ATA}}
|-
| [[オセアニア]] || [[プンチャック・ジャヤ]] || 4,884 || {{INA}} || [[エーア湖]] || -15 || {{AUS}}
|-
|}
† 北アメリカ大陸と南極大陸の最低標高地点は厚さ数キロメートルの氷河に覆われている。露出した地点に限れば、北アメリカの場合[[デスヴァレー (カリフォルニア州)| デスヴァレー]](-86メートル)、南極大陸では{{仮リンク|ヴェストフォール丘陵|en|Vestfold Hills|preserve=1|label=ベストフォードヒルズ}}(-50メートル)の湖が該当する。


島嶼部を除いた各大陸の面積の出典は、ユーラシア、アフリカ、北アメリカおよび南アメリカの各大陸については、[[アメリカ地質調査所]] (USGS) のウェブサイト [https://rmgsc.cr.usgs.gov/gie/gie.shtml Global Island Explorer] による “Continental Mainlands” の数値、南極大陸については、{{仮リンク|英国南極研究所|en|British Antarctic Survey}}による[[棚氷]]および周辺の島嶼を除いた数値<ref>{{Cite web |url=https://lima.usgs.gov/documents/antarctica_in_context.pdf |title=Antarctica in Context |author=British Antarctic Survey |publisher=United States Geological Survey |format=PDF |accessdate=2024-08-17}}</ref>、オーストラリア大陸については、{{仮リンク|ジオサイエンス・オーストラリア|en|Geoscience Australia|label=オーストラリア地質調査所}}による[[タスマニア島]](64,519 km<sup>2</sup>)を除いた数値<ref>{{Cite web |url=https://www.ga.gov.au/scientific-topics/national-location-information/dimensions/area-of-australia-states-and-territories |title=Area of Australia - States and Territories |author=Geoscience Australia |publisher=Geoscience Australia |date=27 June 2014 |accessdate=2024-08-17}}</ref>である(ちなみに、前記の Global Island Explorer では、同大陸の面積は 7,618,696 km<sup>2</sup>と、やや大きい数値となっている)。全大州および全大陸の総面積は、各大州・大陸の面積値を単純に合計した値であり、出典に明記された数値ではない。
ヨーロッパとアジアの地質学的境界を{{仮リンク|パラテーチス海|en|Paratethys}}の名残りである[[クマ=マヌィチ窪地]]に求める意見もある。これに則ると[[エルブルス山]]がある[[コーカサス山脈]]はアジアの領域に入り、そのためヨーロッパ最高標高地点は{{仮リンク|グライエアルプス山脈|en|Graian Alps|label=グライアンアルプス|preserve=1}}の[[モンブラン]](4,810メートル)となる。


各大州の人口は{{仮リンク|国際連合統計部|en|United Nations Statistics Division|label=国連統計部}}発表の{{UN population|Year}}の推計人口に基づく。
== 地質学 ==
{{further|[[プレートテクトニクス]]}}
{{未検証|date=2007年9月|section=1}}
地質学は、地理学と異なる「大陸」の定義下でこの用語を使う。それによれば、[[変成岩]]や[[火成岩]]、広くは[[花崗岩]]の岩盤で構成された部分を大陸[[地殻]]とする。より厳密に定義されたものでは、15億年から38億年前の[[先カンブリア時代]]に安定した「盾」状の地殻部分である[[クラトン]](安定陸塊)を指す意見もある。クラトンそのものは、古代の山岳帯が初期の[[沈み込み帯]]や{{仮リンク|大陸衝突帯|en|continental collision}}またはプレートテクトニクスの上昇部分での活動帯で造られ、これが集まったものであり、その表面は形成されたばかりの薄い[[堆積岩]]が覆っている。地質学で言う大陸は、その周辺をある程度活発な造山帯・海溝または[[三角州]]や海底プレートに形成された[[珊瑚礁]]や積もった[[堆積物]]などが付着した「付加体」<ref>{{Cite web|和書
|url=http://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/~spg/mountain.pdf
|format=PDF
|title=日本の高山の特徴
|author=田村茂樹
|publisher=[[京都大学]] Jambo Africa!
|language=日本語
|accessdate=2010-04-24
}}</ref>で周辺を覆われている。縁辺部の外側は地球のプレート配置によって、大陸棚や[[玄武岩]]質の[[海盆]]が広がるか、もしくはほかの大陸地殻と隣り合っている状態にある。大陸地殻の周辺は必ずしも水域ではない。地質学的な時間スケールで見れば、大陸地殻はやがて海洋地殻の下にもぐりこむか、大陸地殻同士が衝突するかの結末を迎える。現在の地球地殻は、他の時代に比べて陸地部分が多く「(標高が)高く乾いた」変則的な状態にあると言える。


なお、各大州の人口統計データに関して、[[国連による世界地理区分|国連が定めた地理区分]]では、[[スエズ地峡]]と[[シナイ半島]]を含む[[エジプト]]全域をアフリカの一部としているほか、[[アゼルバイジャン]]、[[アルメニア]]、[[インドネシア]]、[[カザフスタン]]、[[キプロス]]、[[ジョージア (国)|ジョージア]]、および[[東トラキア]]を含む[[トルコ]]の全域をアジアの一部に、[[シベリア]]を含む[[ロシア]]全域をヨーロッパの一部に、[[ハワイ州]]を含む[[アメリカ合衆国]]と[[パナマ]]の全域を北アメリカの一部に、[[イースター島]]を含む[[チリ]]全域を南アメリカの一部に含めていることに注意されたい。
[[ファイル:Plates tect2 ja.svg|thumb|250px|大陸や海洋の下に潜む地球のプレート群]]
{{clear}}
大陸を例えて、より重い玄武岩質の海洋地殻とは異なり、大陸地殻にへばりついた「いかだ」のようなもので、プレートテクトニクスが起こす沈み込みで破壊されることを免れているという言及もある。この仮説は、大陸クラトンを構成する岩石の年代が非常に古いことを説明できる。この定義では、東ヨーロッパやインドなどといった地域は、古代の独立した箇所([[東ヨーロッパ・クラトン]]やインドクラトンなど)であった事から他のユーラシア大陸とは異なる大陸塊と言える。これらの大陸塊とユーラシアの境界が、[[ウラル山脈]]や[[ヒマラヤ]]などの新しい造山帯である。


== 自然地理 ==
大陸地殻には、クラトンに至らない多くの微小大陸がある。ゴンドワナやジーランドなど古の大陸の断片にあたるニュージーランドや[[ニューカレドニア]]・マダガスカルなど、または{{仮リンク|マスカリン海台|en|Mascarene Plateau|label=マスカレン海台|preserve=1}}北部や[[セーシェル]]などがこれに当たる。[[カリブ海]]の諸島は花崗岩質だが、ほとんどの大陸は花崗岩と玄武岩質の表層を持っている。ただし、このような線引きで島と微小大陸を区別できない。たとえば、ケルゲレン海台はゴンドワナ大陸の分裂に関与したと考えられるため微小大陸に相当するが、その地質はおもに火成岩であり<ref>[http://www.utexas.edu/opa/news/99newsreleases/nr_199905/nr_continent990528.html UT Austin scientist plays major rule in study of underwater "micro-continent".] Retrieved on 2007-07-03</ref><ref>http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/353277.stm Retrieved on 2007-07-03</ref>微小大陸ではないアイスランドやハワイ諸島と同じである。ブリテン諸島、[[スカンジナビア半島]]の一部、[[ニューファンドランド島]]は過去同じ大陸の一部分であり、内海(イアペタス海)が広がって分断された。これらも大陸断片にあたる<ref>{{Cite web|和書
=== 気候 ===
|url=http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/rika-b/htmls/supconti/wilson.html
{{main|大陸性気候}}
|title=ウィルソンサイクルとイアペタス海
海岸から離れた大陸(特に[[アジア大陸]])の内陸部で顕著に現れる'''[[大陸性気候]]'''では、地表面の温度が[[太陽高度]]に従って大きく変化し、[[気温]]の[[日較差]]([[昼]]と[[夜]]の気温差)と[[年較差]]([[夏]]と[[冬]]の気温差)が極めて大きい<ref name="AGCJ_大陸気候"/>。大気中に供給される[[水蒸気]]の量が少なく、空気と地面は[[乾燥]]しており、年間[[降水量]]が少なく、[[粒子状物質|塵埃]]が多いために大気の混濁度が強い<ref name="AGCJ_大陸気候"/>。大陸性気候の強弱の度合いは、'''大陸度'''({{lang-en-short|continentality}})という指数で数量的に示される<ref name="AGCJ_大陸気候"/>。
|publisher=[[岐阜大学]]
|language=日本語
|accessdate=2010-04-24
}}</ref>。


'''{{center|ケッペンによる世界の大陸性気候 (D) の地域分布図}}'''
[[プレートテクトニクス]]は、大陸を定義する別の方法を提案する。今日、ヨーロッパをアジアの大部分を合わせユーラシア大陸としているが、これを[[ユーラシアプレート]]を基準に見るとインド、アラビア半島、そしてロシア東部は除外される。インドは[[楯状地]]を中央に含み[[ヒマラヤ山脈]]を北端とする単独のプレートである。南北アメリカは比較的近年の火山活動によって形成された陸峡で繋がった、プレート的には別々の大陸となる。そして北米は[[カナダ楯状地]]の端にグリーンランドを、そして西の境界でアジア(ロシア)東部を含むことになる。ただし、地質学者たちはこのプレート配置を取り上げてアジア東部の一部を北アメリカに加えるといったような主張はしていない。通常「大陸」は地理的な意味にて用いられ、大陸岩石やプレート境界といった定義はあくまで補充的に適宜用いられるに過ぎない。
[[File:Koppen-Geiger Map D present.svg|center|800px]]

{| class="wikitable sortable static-row-numbers" style="text-align:right; margin:auto"
== その他の大陸 ==
|+ 大陸別の[[気候区]]の割合(H. Wagnerによる)<ref>{{Cite book |和書 |title=データブック オブ・ザ・ワールド 2024年版 ―世界各国要覧と最新統計― |page=9 |editor=二宮書店編集部 |publisher=[[二宮書店]] |date=2024-01 |isbn=978-4-8176-0518-4 }}</ref>
現在知られている大陸とは別に、別な観点に立った大陸と呼ぶ対象もある。地質学的記録を遡ったことにより、[[超大陸]]と呼ばれる、単一の[[クラトン]]や大陸塊をしのぐ大きさを誇った陸地が、かつての地球上に存在したと考えることが今日では妥当とされるようになった。これらには、[[ローラシア大陸]]、[[ゴンドワナ大陸]] <ref name="GifuChouTairiku">{{Cite web|和書
|- class="static-row-header" style="text-align:center;vertical-align:bottom;"
|url=http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/rika-b/htmls/supconti/index.html
! scope="col" rowspan=2 | 区分
|title=超大陸
! scope="col" colspan=2 | 陸地全域
|publisher=[[岐阜大学]]教育学部
! scope="col" | ユーラシア
|language=日本語
! scope="col" | アフリカ
|accessdate=2010-04-24
! scope="col" | 北アメリカ
}}</ref>、[[バールバラ大陸]]<ref>{{Cite web|和書
! scope="col" | 南アメリカ
|url=http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/rika-b/htmls/supconti/vaal.html
! scope="col" | オーストラリア
|title=太古代の大陸バールバラ
! scope="col" | 南極大陸
|publisher=[[岐阜大学]]教育学部
|- class="static-row-header" style="text-align:center;vertical-align:bottom;"
|language=日本語
! scope="col" | {{nobold|百万km{{sup|2}}}}
|accessdate=2010-04-24
! scope="col" | {{nobold|%}}
}}</ref>、[[ケノーランド大陸]]、[[コロンビア大陸]]、[[ロディニア大陸]]<ref name="GifuChouTairiku" />そして[[パンゲア大陸]]<ref>{{Cite web|和書
! scope="col" | {{nobold|%}}
|url=http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/rika-b/htmls/supconti/pangea.html
! scope="col" | {{nobold|%}}
|title=超大陸パンゲア
! scope="col" | {{nobold|%}}
|publisher=[[岐阜大学]]教育学部
! scope="col" | {{nobold|%}}
|language=日本語
! scope="col" | {{nobold|%}}
|accessdate=2010-04-24
! scope="col" | {{nobold|%}}
}}{{リンク切れ|date=2017年10月}}</ref>などがこれに当たる。理論上、現在のユーラシア大陸もこれに該当する。
;おもな太古の大陸
{{main|en:Paleocontinent}}
{| class="wikitable"
! 超大陸 !! 存在した年(単位:億年前)
|-
|-
! scope=row data-sort-value="Af" | [[熱帯雨林気候]] (Af)
|style="background-color:lightgreen"| (大陸[[クラトン]]の形成)|| 40.31~
| 14.0 || 9.4
| 3.5 || 19.8 || 2.8 || 26.9 || 7.9 || {{n/a}}
|-
|-
! scope=row data-sort-value="Aw" | [[サバナ気候]] (Aw)
|style="background-color:orange"| [[バールバラ大陸|バールバラ超大陸]] ||~36.36–28.03
| 15.7 || 10.5
| 3.9 || 18.8 || 2.4 || style="font-weight:bold;" | 36.5 || 9.0 || {{n/a}}
|-
|-
! scope=row data-sort-value="BS" | [[ステップ気候]] (BS)
|style="background-color:lightgreen"| {{仮リンク|コンゴ・クラトン|en|Congo_Craton}} || ~36.00-
| 21.2 || 14.3
| 15.9 || 21.5 || 10.7 || 6.7 || 25.8 || {{n/a}}
|-
|-
! scope=row data-sort-value="BW" | [[砂漠気候]] (BW)
|style="background-color:orange"| {{仮リンク|ウル大陸|en|Ur_(continent)}} || ~31.00–28.03
| 17.9 || 12.0
| 10.2 || style="font-weight:bold;" | 25.2 || 3.7 || 7.3 || style="font-weight:bold;" | 31.4 || {{n/a}}
|-
|-
! scope=row data-sort-value="Cs" | [[地中海性気候]] (Cs)
|style="background-color:orange"| [[ケノーランド大陸]] || ~27.20–21.00
| 2.5 || 1.7
| 2.2 || 1.3 || 0.8 || 0.3 || 7.9 || {{n/a}}
|-
|-
! scope=row data-sort-value="Cw" | [[温帯冬季少雨気候]] (Cw)
|style="background-color:orange"| {{仮リンク|アークティカ大陸|en|Arctica}} || ~27.20–21.00
| 11.3 || 7.5
| 9.6 || 13.1 || 2.0 || 6.7 || 6.8 || {{n/a}}
|-
|-
! scope=row data-sort-value="Cf" | [[温帯湿潤気候]] (Cf)
|style="background-color:lightgreen"| {{仮リンク|スクラヴィア・クラトン|en|Sclavia Craton}}|| ~26.65-23.30
| 9.3 || 6.2
| 5.7 || 0.3 || 10.7 || 14.0 || 11.2 || {{n/a}}
|-
|-
! scope=row data-sort-value="Df" | [[亜寒帯湿潤気候]] (Df)
|style="background-color:lightgreen"| [[シベリア大陸|シベリア・クラトン]]|| ~26.95-
| style="font-weight:bold;" | 24.5 || style="font-weight:bold;" | 16.5
| style="font-weight:bold;" | 25.8 || {{n/a}} || style="font-weight:bold;" | 43.4 || {{n/a}} || {{n/a}} || {{n/a}}
|-
|-
! scope=row data-sort-value="Dw" | [[亜寒帯冬季少雨気候]] (Dw)
|style="background-color:lightgreen"| [[インド亜大陸]]|| ~25.25-
| 7.2 || 4.8
| 13.4 || {{n/a}} || {{n/a}} || {{n/a}} || {{n/a}} || {{n/a}}
|-
|-
! scope=row data-sort-value="ET" | [[ツンドラ気候]] (ET)
|style="background-color:lightgreen"| [[アトランティカ大陸]]|| ~21.1-1.14
| 10.3 || 6.4
| 9.8 || {{n/a}} || 17.3 || 1.6 || {{n/a}} || 3.6
|-
|-
! scope=row data-sort-value="EF" | [[氷雪気候]] (EF)
|style="background-color:lightgreen"| [[ヌーナ大陸]]|| 19.50-5.92
| 15.0 || 10.7
| {{n/a}} || {{n/a}} || 6.2 || {{n/a}} || {{n/a}} || style="font-weight:bold;" | 96.4
|}

=== 地形 ===
地球上の陸地の総面積は約1億4900万[[平方キロメートル]]であり、地表(地球表面)全体の29.1%を占める{{sfn|小池ほか|2017|p=229}}。海面下の大陸([[大陸棚]]と[[大陸斜面]])も合わせると、その面積は約2億440万平方キロメートルであり、地表全体の40%を占める{{sfn|小池ほか|2017|p=229}}。一方、[[海洋底]]の総面積は約3億650万平方キロメートルであり、地表全体の60%を占める{{sfn|小池ほか|2017|p=229}}。

大陸の地形は概略的には、
* 海抜高度500メートル未満の[[低地]]
および海抜高度500メートル以上の
* 高原状を成す[[台地]]
* 尾根と谷の入り組んだ[[山地]]
* 山地のうち細長く延びた[[山脈]]
の4つに区分される{{sfn|岩田|2013|pp=158, 162}}。

海面下の海水を無いものとして取り払って海底地形に着目した場合、水深200メートルまでの[[大陸棚]]も低地として大陸の一部とみなされ、水深およそ3500メートルまでの範囲に広がる[[大陸棚外縁]]と[[大陸斜面]]は、おおよそ大陸の地形と海洋の地形の境界にあたる{{sfn|岩田|2013|p=162}}。

海抜高度2000メートル以上の山脈は、環太平洋地帯(地質学的区分の[[環太平洋造山帯]]に相当)と、[[地中海]]の北側から[[インド]]北部にかけての帯状地帯(同じく[[アルプス・ヒマラヤ造山帯]]に相当)、[[中央アジア]]から[[シベリア]]東部、[[北東アジア]]にかけての地域、および[[南極大陸]]に分布する{{sfn|岩田|2013|p=162}}。海抜高度2000メートル以上の高い山地・[[高原]]の多くは山脈の周辺に分布するが、[[アフリカ大陸]]東部と南極大陸にも広がる{{sfn|岩田|2013|p=162}}。海抜高度2000メートル以下の低い山地・台地は、アフリカ大陸の大部分、[[ユーラシア大陸]]の東半分、[[南アメリカ大陸]]や[[オーストラリア大陸]]の一部など、世界中に分布する{{sfn|岩田|2013|p=162}}。

'''{{center|世界の地形を高度別に彩色した地図}}'''
[[File:Elevation.jpg|center|800px]]
{| class="wikitable sortable static-row-numbers" style="text-align:right; margin:auto"
|+ 各大陸の高度別面積の割合([[理科年表]]1958年版より)<ref>{{Cite book |和書 |title=データブック オブ・ザ・ワールド 2024年版 ―世界各国要覧と最新統計― |page=4 |editor=二宮書店編集部 |publisher=[[二宮書店]] |date=2024-01 |isbn=978-4-8176-0518-4 }}</ref>
|- class="static-row-header" style="text-align:center;vertical-align:bottom;"
! scope="col" rowspan=2 | 高度
! scope="col" | 全大陸
! scope="col" | アジア{{efn-ua|name=亜州}}
! scope="col" | ヨーロッパ{{efn-ua|name=欧州}}
! scope="col" | アフリカ
! scope="col" | 北アメリカ
! scope="col" | 南アメリカ
! scope="col" | オーストラリア{{efn-ua|name=豪州}}
! scope="col" | 南極大陸
|- class="static-row-header" style="text-align:center;vertical-align:bottom;"
! scope="col" | {{nobold|%}}
! scope="col" | {{nobold|%}}
! scope="col" | {{nobold|%}}
! scope="col" | {{nobold|%}}
! scope="col" | {{nobold|%}}
! scope="col" | {{nobold|%}}
! scope="col" | {{nobold|%}}
! scope="col" | {{nobold|%}}
|-
|-
! scope=row data-sort-value="0199" | 200m未満
|style="background-color:orange" | [[コロンビア超大陸]]([[ヌーナ大陸]]) || ~18.20–13.50
| 25.3 || 24.6 || style="font-weight:bold;" | 52.7 || 9.7 || 29.9 || style="font-weight:bold;" | 38.2 || 39.3 || 6.4
|-
|-
! scope=row data-sort-value="0200" | 200〜500m
|style="background-color:lightgreen"| [[ローレンシア大陸]] || 18.16-
| style="font-weight:bold;" | 26.8 || 20.2 || 21.2 || style="font-weight:bold;" | 38.9 || style="font-weight:bold;" | 30.7 || 29.8 || style="font-weight:bold;" | 41.6 || 2.8
|-
|-
! scope=row data-sort-value="0500" | 500〜1000m
|style="background-color:lightgreen"| [[バルティカ大陸]] || 18.00-
| 19.4 || style="font-weight:bold;" | 25.9 || 15.2 || 28.2 || 12.0 || 19.2 || 16.9 || 5.0
|-
|-
! scope=row data-sort-value="1000" | 1000〜2000m
|style="background-color:lightgreen"| {{仮リンク|キンメリア大陸|en|Cimmeria (continent)}} || 12.50–
| 15.2 || 18.0 || 5.0 || 19.5 || 16.6 || 5.6 || 2.2 || 22.0
|-
|-
! scope=row data-sort-value="2000" | 2000〜3000m
|style="background-color:orange"| [[ロディニア超大陸]] || ~10.71–7.50
| 7.5 || 5.2 || 2.0 || 2.7 || 9.1 || 2.2 || 0.0 || style="font-weight:bold;" | 37.6
|-
|-
! scope=row data-sort-value="3000" | 3000〜4000m
|style="background-color:lightgreen" | 前ローラシア大陸 || 10.71–5.92
| 3.9 || 2.0 || 0.0 || 1.0 || 1.7 || 2.8 || 0.0 || 26.2
|-
|-
! scope=row data-sort-value="4000" | 4000〜5000m
|style="background-color:lightgreen" | 前ゴンドワナ大陸 || 10.71–6.20
| 1.5 || 4.1 || 0.0 || 0.0 || 0.0 || 2.2 || 0.0 || 0.0
|-
|-
! scope=row data-sort-value="5000" | 5000m以上
|style="background-color:lightgreen" | {{仮リンク|アヴァロニア|en|Avalonia}} || 6.30-0.560
| 0.4 || 1.1 || {{n/a}} || 0.0 || 0.0 || 0.0 || {{n/a}} || {{n/a}}
|- class="static-row-header" style="text-align:center;vertical-align:bottom;"
! scope=row data-sort-value="" | 平均高度 (m)
! 875 !! 960 !! 340 !! 750 !! 720 !! 590 !! 340 !! 2200
|- style="text-align:left;"
| colspan=9 |
; 注釈
{{notelist-ua|refs=
{{efn-ua|name=亜州|[[コーカサス|カフカス]]を含む。}}
{{efn-ua|name=欧州|カフカスを除く。}}
{{efn-ua|name=豪州|[[ニューギニア島|ニューギニア]]などを含む。}}
}}
|}

==== 最高地点と最低地点 ====
世界を7つに区分した各大州の最高地点([[最高峰]])と最低地点([[海抜高度]])を以下の表に示す。
{{see also|七大陸最高峰}}
{| class="wikitable sortable"
|-
|-
! rowspan="2" | 大州
|style="background-color:orange" | [[パノティア大陸|パノティア超大陸]] (Vendian大陸)|| ~6.20–~5.55
! colspan="3" | 最高地点
! colspan="3" | 最低地点
! rowspan="2" | 平均高度 (m)
|-
|-
! 最高点 !! 標高 (m) !! 国・地域 !! 最低点 !! 標高 (m) !! 国・地域
|style="background-color:lightgreen" | [[ゴンドワナ大陸]] || ~6.20–~1.32
|-
|-
| アジア || [[エベレスト]] || 8,848|| {{CHN}}<br/>{{NPL}} || [[死海]] || -422 || {{ISR}}<br/>{{PLE}}<br/>{{JOR}} || 950
|style="background-color:lightgreen" | [[ユーラメリカ大陸]] || 4.33-0.56
|-
|-
| 南アメリカ || [[アコンカグア]] || 6,962 || {{ARG}}|| [[カルボン湖]] || -105 || {{ARG}} || 600
|style="background-color:orange" | [[パンゲア超大陸]] || ~3.35 (~2.99) –1.73
|-
|-
| 北アメリカ || [[デナリ]] || 6,190 || {{USA}} || [[ヤコブスハブン氷河]]<br/>([[圏谷]]下部){{efn-la|name=北米・南極}} || -1,512 || {{GRL}} || 700
|style="background-color:lightgreen" | ゴンドワナ大陸 || ~2.53–~0.56
|-
|-
| アフリカ || [[キリマンジャロ]] || 5,895 || {{TAN}} || [[アッサル湖]] || -155 || {{DJI}} || 750
|style="background-color:lightgreen" | [[ローラシア大陸]] || ~2.53–~0.56
|-
| ヨーロッパ || [[エルブルス山]]{{efn-la|name=欧亜}} || 5,642 || {{RUS}} || [[カスピ海]] || -28 || {{AZE}}<br/>{{IRN}}<br/>{{KAZ}}<br/>{{TKM}}<br/>{{RUS}} || 340
|-
| 南極大陸 || [[ヴィンソン・マシフ]] || 4,892 || {{ATA}} || [[ベントリー氷河底地溝]]{{efn-la|name=北米・南極}} || -2,540 || {{ATA}} || 2,350
|-
| オセアニア || [[プンチャック・ジャヤ]] || 4,884 || {{INA}} || [[エーア湖]] || -15 || {{AUS}} || 350
|}
|}
; 注釈
{{notelist-la|refs=
{{efn-la|name=北米・南極|これらの北アメリカと南極大陸の最低地点は、厚さ数キロメートルの氷河に覆われている。地表が露出した地点に限れば、北アメリカでは[[デスヴァレー (カリフォルニア州)|デスヴァレー]](-86メートル)が、南極大陸では{{仮リンク|ヴェストフォール丘陵|en|Vestfold Hills|preserve=1|label=ベストフォードヒルズ}}(-50メートル)の湖が、これに該当する。}}
{{efn-la|name=欧亜|ヨーロッパとアジアの地質学的境界を{{仮リンク|パラテーチス海|en|Paratethys}}の名残りである[[クマ=マヌィチ窪地]]に求める意見もある。この意見に則った場合、[[エルブルス山]]がある[[コーカサス山脈]]はアジアの領域に入るため、ヨーロッパの最高地点は[[グライエアルプス山脈|グライアンアルプス]]の[[モンブラン]](4,810メートル)となる。}}
}}


== 地球科学 ==
{{Col|* {{仮リンク|アークティカ大陸|en|Arctica}}
=== 学説史 ===
* {{仮リンク|アバロニア大陸|en|Avalonia}}
{{main|大陸移動説|海洋底拡大説|プレートテクトニクス|ウィルソンサイクル}}
* [[大アドリア大陸]]|* {{仮リンク|コンゴ大陸|en|Congo craton}}
[[File:Pangea animation 03.gif|thumb|[[パンゲア大陸|パンゲア]]の分裂以後の[[大陸移動説|大陸の移動]]]]
* {{仮リンク|カラハリ大陸|en|Kalahari craton}}
1910年代、ドイツの気象学者・地球物理学者[[アルフレート・ヴェーゲナー]]は、[[世界地図]]の大陸の配置を観察して、[[南アメリカ大陸]]の東海岸線が[[アフリカ大陸]]の西海岸線とぴったり一致しているように見えることに気づいた{{sfn|ウェゲナー|2020|p=13}}。彼よりもずっと前から同様の着想を得ていた学者は[[アブラハム・オルテリウス]]{{sfn|吉田|2023|p=24}}や{{仮リンク|アントニオ・スナイダー=ペレグリニ|en|Antonio Snider-Pellegrini}}など何名かいたが、この観察結果を利用して'''[[大陸移動説]]'''(大陸漂移説)を提唱する学術論文を発表し、著書『[[大陸と海洋の起源]]』を上梓して{{sfn|吉田|2023|p=24}}、世界的に有名な学説に押し上げたのは、彼が最初の一人といえる<ref name="AGCJ_大陸漂移説"/>。当時、彼の唱えた学説は、[[第二紀]]の初めに超大陸[[パンゲア大陸|パンゲア]]が分裂して以来、その結果として生じた大陸塊が地球の表面に沿って漂流しているというものだった。
* [[ロディニア大陸]]}}{{clear|left}}
;未来に予想される超大陸
* [[アメイジア大陸]]
* [[パンゲア・ウルティマ大陸]]
;亜大陸
大陸の一部を指して[[亜大陸]]と呼称する用例もある。特に、異なるプレートに乗る陸地が大陸と接続しているような場合に用いられ、[[インド亜大陸]]や[[アラビア半島]]が顕著な例に当たる。[[北アメリカプレート]]北東部にあるグリーンランドは、大陸と接続こそしていないが亜大陸と認識される場合もある。南北アメリカ大陸を単一の大陸と見なす場合、ふたつの亜大陸がつながっているという見方もある<ref>[[:Image:MapaAméricaJonghe.JPG|English map of 1770 by Jonghe]]</ref><ref>[http://buscon.rae.es/dpdI/ DPD]: [http://buscon.rae.es/dpdI/América América]</ref><ref>[http://www.priberam.pt/dlpo/dlpo.aspx Dicionário da língua portuguesa]: Contiente</ref><ref>In Ibero-America, North America usually designates a region (''subcontinente'' in Spanish) of the Americas containing Canada, the U.S., and Mexico, and often Greenland, Saint Pierre and Miquelon, and Bermuda; the land bridge of Central America is generally considered a subregion of North America.[http://mx.encarta.msn.com/encyclopedia_761562468/Norteam%C3%A9rica.html Norteamérica (Mexican version)] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20070223062106/http://mx.encarta.msn.com/encyclopedia_761562468/Norteam%C3%A9rica.html |date=2007年2月23日 }}/[http://es.encarta.msn.com/encyclopedia_761562468/Norteam%C3%A9rica.html (Spaniard version)]. ''Encarta Online Encyclopedia.''. [https://webcitation.org/5kwRLFsmt Archived] 2009-10-31.</ref>。
;微小大陸
微小大陸({{lang-en-short|microcontinent}})とは、大陸地殻としては海中に没しているものの、比較的水深の浅い場所に広い面積を持つ領域であり、これを単純に水没した大陸とする見方がある。ニュージーランドから[[ニューカレドニア]]付近の海域にある[[ジーランディア]]は典型的な例で、ほかに[[インド洋]]南部の[[ケルゲレン海台]]もこれに当たる。
;大陸断片
大陸断片([[:en:continental fragment|continental fragment]])とは、かつては大陸と一体だった大地が断裂して島状になった地形を指し、これを比較的小さな大陸ととらえた用語である。[[マダガスカル島]]はこの例に当たる最大の島で、「第8の大陸」と呼称されることもある。
;[[伝説上の大陸]]
[[アトランティス]]、[[ヒュペルボレイオス]]の伝説や[[トゥーレ]]、[[レムリア]]・[[ムー大陸]]などが例に挙げられる。


[[File:Plates tect2 en.svg|thumb|left|upright=1.6|大陸と海洋底を構成する主要なプレート]]
== 金星の大陸 ==
1960年代に[[大西洋中央海嶺]]周辺の[[古地磁気]]異常の発見{{sfn|吉田|2023|pp=26-27}}や深海底の掘削調査から、海洋底が[[中央海嶺]]の両側へ拡大していくという'''[[海洋底拡大説]]'''が提唱された{{sfn|田村|2024|pp=219-223}}。現在は大西洋を隔てて向かい合う東西の2つの大陸が、元々は中央海嶺付近で互いに接しており、海洋底の拡大とともに分裂して移動した科学的証拠が示されたのである{{sfn|田村|2024|pp=224}}。
[[金星]]の地形において、地球の大陸に匹敵する大きさの高地も「大陸 ([[ラテン語|la]]: terra)」 と呼ばれる。面積順に、アフロディーテ大陸<ref name=gifuNASA>{{Cite web|和書
|url=http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/html/kyo/tenmon/venus/nasa/03.html
|title=金星画像集(NASA)
|publisher=[[岐阜大学]]教育学部
|language=日本語
|accessdate=2010-04-24
}}</ref>、イシュタール大陸<ref name=gifuNASA />、ラダ大陸の3つがある。金星では少なくともプレートテクトニクスは機能しておらず<ref>{{Cite web|和書
|url=http://www.eps.s.u-tokyo.ac.jp/jp/gakubu/geoph/solid/plate.html
|title=プレート・テクトニクス
|publisher=[[東京大学]]大学院理学系研究科地球惑星科学専攻
|language=日本語
|accessdate=2010-04-24
}}</ref>、どのようなメカニズムで高地が生まれたものかは今後の研究に委ねられている。


こうして、大陸が[[地質時代|地質学的な時間スケール]]で地球の表面を移動するという学説は、20世紀中に広く受け入れられるようになった。この大陸移動のメカニズムは、今日では'''[[プレートテクトニクス]]'''によって説明される。同理論によると、現在の地球の表面は十数枚の主要な[[プレート]]と数十枚の{{仮リンク|構造プレートの一覧|en|List of tectonic plates|label=マイクロプレート}}で覆われており{{sfn|吉田|2023|pp=9, 17-18}}{{sfn|田村|2024|p=80}}、[[マントル対流]]にのって硬いプレート([[リソスフェア]])が球面上で回転するように移動するとされる{{sfn|吉田|2023|p=28}}<ref name="AGCJ_プレートテクトニクス"/>{{sfn|田村|2024|pp=224-225}}。プレートの移動によって地球表面の大陸が離合集散を繰り返す一連の過程は、超大陸サイクルと呼ばれる{{sfn|吉田|2015|pp=697, 703}}{{sfn|鳥海ほか|2018|p=39}}。そのうち、超大陸が分裂して海ができ、やがてその海が閉じ始めて再び超大陸が形成される過程(内転パターン)を'''[[ウィルソンサイクル]]'''という{{sfn|鳥海ほか|2018|p=39}}{{sfn|吉田|2015|p=703}}。
==画像==

<gallery widths="200" heights="200">
=== 地史 ===
ファイル:Two-point-equidistant-asia.jpg|ユーラシア大陸
[[File:Paleoglobe NO 1590 mya-vector-colors.svg|thumb|upright=1.5|約16億年前の超大陸コロンビア]]
ファイル:Africa satellite orthographic.jpg|アフリカ大陸
{{see also|古大陸}}
ファイル:North America satellite orthographic.jpg|北アメリカ大陸
上記の学説から導き出される帰結として、地質学的なスケールで見ると、大陸の数や大きさは様々に変化する。
ファイル:South America satellite orthographic.jpg|南アメリカ大陸

ファイル:Australia satellite plane.jpg|オーストラリア大陸
地質学的な過去には、'''[[古大陸]]'''{{enlink|paleocontinent}}と呼ばれる、現在とは別の諸大陸が存在した。また、[[地球史|地球の歴史]]上、地表に巨大な大陸が1つしか存在しなかった時代があったことが明らかになっており、そのような[[超大陸]]は少なくとも3回{{efn2|これ以外にも、不確定ではあるが、30億年前までに誕生したといわれる超大陸{{仮リンク|ウル大陸|en|Ur (continent)|label=ウル}}、約25億年前に存在したとされる超大陸[[ケノーランド大陸|ケノーランド]]、原生代初期の超大陸[[ヌーナ大陸|ヌーナ]]などがある{{sfn|鳥海ほか|2018|p=38}}。}}形成されたことが明らかとなっている{{sfn|吉田|2023|p=61}}。
ファイル:Antarctica 6400px from Blue Marble.jpg|南極大陸

</gallery>
最古の超大陸[[コロンビア大陸|コロンビア]]<ref name="東北大 地史復元"/>は、[[ローレンシア大陸|ローレンシア]]、[[バルティカ大陸|バルティカ]]、[[シベリア大陸|シベリア]]、[[アマゾニア]]を含む{{sfn|吉田|2023|pp=63-64}}、[[太古代]]から[[原生代]]初期にかけての地球上の[[クラトン]]のほとんどが集まって{{sfn|吉田|2023|pp=63-64}}、約18億年前から16億年前に形成され{{sfn|吉田|2023|p=61}}、約15億年前から約14億年前に分裂が始まった{{sfn|吉田|2023|p=65}}と考えられている。

[[File:Rodinia 900Ma.jpg|thumb|left|upright=1|約9億年前の超大陸ロディニア]]
次の超大陸[[ロディニア大陸|ロディニア]]は、{{仮リンク|グレンビル造山運動|en|Grenville orogeny}}によって約10億年前から9億5000万年前までに形成され{{sfn|吉田|2023|p=65}}、約8億年前から約7億年前にかけて{{sfn|吉田|2023|p=66}}、おそらく大規模な[[マントルプルーム|マントル上昇流]]による大陸地殻の隆起および水平方向への引き伸ばし(リフティング)によって分裂したのではないか{{sfn|吉田|2023|p=66}}と考えられている。この上昇流が新しい海嶺と海洋底([[古太平洋]])を生むと同時に、ローレンシア大陸から{{仮リンク|東ゴンドワナ大陸|en|East Gondwana}}が分離し、やがて{{仮リンク|西ゴンドワナ大陸|en|West Gondwana}}と衝突して{{仮リンク|汎アフリカ造山運動|en|Pan-African orogeny|label=汎アフリカ造山帯}}を形成し、両大陸が集まってゴンドワナ(後述するゴンドワナと区別するため、別名[[パノティア大陸|パノティア]]ともいう)をなしたと考えられている{{sfn|吉田|2023|p=66}}。

ロディニアから分裂したゴンドワナ、ローレンシア、シベリア、バルティカの各大陸は、やがて移動し集合していき、約3億年前の[[石炭紀]]に再び合体して、南北に延びる超大陸[[パンゲア大陸|パンゲア]]の原形が形成され始め、2億4000万年前の[[三畳紀]]になる頃には、その輪郭が明瞭になった{{sfn|吉田|2023|pp=66-68}}。パンゲアの北半分は[[ローラシア大陸|ローラシア]]と呼ばれ、現在の[[北アメリカ大陸]]と[[ユーラシア大陸]]の領域に相当し、南半分は[[ゴンドワナ大陸|ゴンドワナ]]と呼ばれ、現在の[[アフリカ大陸]]、[[南アメリカ大陸]]、[[南極大陸]]、[[オーストラリア大陸]]、[[インド亜大陸]]に相当する{{sfn|吉田|2023|pp=66, 68}}。

[[File:Pangaea 200Ma.jpg|thumb|upright=1.5|約2億年前の超大陸パンゲア]]
約1億8000万年前から1億7000万年前の[[中生代]][[ジュラ紀]]の頃、ゴンドワナは大陸地殻のリフティングによって分裂を開始した{{sfn|吉田|2023|p=68}}。まず、1億3000万年前にアフリカ大陸と南アメリカ大陸が分裂し、次に1億2000万年前に南極大陸とオーストラリア大陸からインド亜大陸が分裂し始め、最後に約1億年前から南極大陸とオーストラリア大陸が分裂し始めた{{sfn|吉田|2023|p=68}}。さらに、約8300万年前から[[ジーランディア]]がゴンドワナから分裂し始めたが、徐々に沈降していき、現在では大部分が海中に沈んで[[#水没大陸|水没大陸]]となっている{{sfn|吉田|2023|pp=70-71}}。

「次の超大陸」は、現在から約2億5000万年後に出現すると予測されているが、さまざまな大陸移動のシナリオが提唱されており、主なものとして4つの説が知られている{{sfn|吉田|2023|p=154}}。一つ目は、アメリカの地質学者{{仮リンク|クリストファー・スコテーゼ|en|Christopher Scotese}}が提唱した[[パンゲア・ウルティマ大陸|パンゲア・ウルティマ]](「パンゲアの最終形」の意){{sfn|吉田|2023|pp=154-155}}、二つ目は、イギリスの地球物理学者[[ロイ・リバモア]]が1990年代末に提唱した{{仮リンク|ノヴォ・パンゲア大陸|en|Novopangaea|label=ノヴォ・パンゲア}}(「新しいパンゲア」の意){{sfn|吉田|2023|pp=155-156}}、三つ目は、カナダの地質学者{{仮リンク|ポール・F・ホフマン|en|Paul F. Hoffman|label=ポール・ホフマン}}が1990年代初頭に提唱した[[アメイジア大陸|アメイジア]](「アメリカ+アジア」の合成地名){{sfn|吉田|2023|pp=156-157}}、そして四つ目は、リスボン大学(当時)の研究者[[ジョアン・ドゥアルテ]]が提唱した[[オーリカ大陸|オーリカ]](「オーストラリア+アメリカ」の合成地名)である{{sfn|吉田|2023|pp=156-157}}。

{{see also|地球の未来}}

=== 地質 ===
{{main|大陸地殻|造山帯|クラトン}}
地球科学者たちは、{{仮リンク|固体地球|en|Solid earth}}の表層部は、その{{仮リンク|化学組成|en|Chemical composition|redirect=1}}の違いや[[地球物理学]]的な性質から、2種類の異なる[[地殻]]で構成されると考えている{{sfn|巽|2003|p=6}}。主に上部が[[花崗岩]]質、下部が[[玄武岩]]質の岩石で構成される、[[安山岩]]質の平均組成をもつ、厚さ30 kmから40 kmほど{{efn2|大陸地域における平均的な値{{sfn|柳|2008|p=7}}。山岳地域([[ヒマラヤ山脈|ヒマラヤ]]や[[アンデス山脈|アンデス]]など)では60 km以上にも達するところがある<ref name="AGCJ_地殻"/>。}}の'''[[大陸地殻]]'''と、より厚さの薄い[[玄武岩]]質の[[海洋地殻]]である<ref name="AGCJ_大陸"/>{{efn2|ただし、これらの厚い[[地殻]]を構成していると考えられる岩石の種類は、岩石試料を直接採取可能な大陸地殻の表層部以外は、[[地震波]]速度の違いから間接的に確認されているにすぎない<ref name="AGCJ_シマ"/>{{sfn|柳|2008|p=2}}。}}。地質学によって定義される大陸地殻は、[[六大陸]]のほか、グリーンランドのような[[島]]、日本列島のような[[島弧]]、セーシェル諸島のような[[海台]]を含む、地形的な広がりを見せている{{sfn|柳|2008|p=7}}。

[[File:Erdkruste-i.png|thumb|left|upright=1.0|地殻の模式図: 1. 大陸地殻 2. 海洋 3. 上部マントル 4. 海洋地殻]]
[[地殻]]は[[アイソスタシー]]によって密度の高い[[マントル]]の上に浮いている{{sfn|巽|2003|p=137}}。そのうち大陸地殻は海洋地殻と比較して、[[ケイ素]]などの軽い元素に富み、[[鉄]]などの重い元素に乏しい{{sfn|巽|2012|p=22}}ため、厚くて[[密度]]が小さく{{efn2|海洋地殻の平均密度が約3.0 g/cm<sup>3</sup>であるのに対して、大陸地殻の平均密度は約2.7g/cm<sup>3</sup>と、明らかに小さい{{sfn|巽|2012|p=22}}。}}、海洋地殻よりも高地をなす<ref name="AGCJ_大陸"/>{{sfn|巽|2012|p=22}}。このことは、なぜ大陸が深海盆底に囲まれた高い地形を形成するのかを説明している{{sfn|佐野|2017|pp=104-109}}{{sfn|田村|2024|pp=45-50}}。地表の総面積の7割は海洋であるが、地殻の量的には、むしろ大陸地殻が海洋地殻よりも圧倒的に多く、体積比で約7倍、質量比で約4倍の差がある{{sfn|巽|2012|pp=15, 23}}。

大陸を大陸地殻と定義するならば、大陸と海洋の境界は海面下にあり、その境界部分は地形や地質構造の変化が大きい{{sfn|小池ほか|2017|p=282}}。深海底または深海平原と大陸とを分かつ海底部分である<ref name="AGCJ_大陸縁辺部"/>、{{仮リンク|大陸縁辺部|en|Continental margin}}は、水深6000メートル超の[[海溝]]があり{{sfn|小池ほか|2017|p=282}}、[[地震]]や[[火山活動]]が活発な{{仮リンク|アクティブ・マージン|en|Active margin|label=活動的縁辺部}}(太平洋型)と、不活発な[[パッシブ・マージン|非活動的縁辺部]](大西洋型)とに大別される<ref name="AGCJ_大陸縁辺部"/><ref name="大陸縁辺部_JOGMEC"/>。

活動的縁辺部{{enlink|active margin}}は、陸側から[[大陸棚]]、[[大陸斜面]]、海溝底に落ち込む海溝陸側斜面(大陸斜面の基部)<ref name="大陸縁辺部_JOGMEC"/>、非常に深い[[海溝]]、深海盆底の順に配列し{{sfn|小池ほか|2017|p=282}}、大陸同士の{{仮リンク|大陸衝突帯|en|Collision zone|label=衝突帯}}や[[沈み込み帯]]による[[造山運動]]によって特徴づけられる。この太平洋型大陸縁辺部は、後背陸地側が[[島弧]]と[[縁海]]からなるマリアナ型(島弧型)と、大陸縁弧になっているチリ型(陸弧型)とに分けられる<ref name="大陸縁辺部_JOGMEC"/>。このような活動的縁辺部に沿って、より軽い火山列や微小大陸が[[付着成長|付加成長]]して、大陸は'''[[造山帯]]'''を形成する。例として、現在の東アジアは、[[シベリア大陸|シベリア剛塊]]の南側と東側に大陸塊や島弧が次々に衝突し、堆積物が付加することで成長して形成されてきたとされる{{sfn|柳|2008|pp=4-5}}。

[[File:Continental shelf ja.png|thumb|upright=1.5|大西洋型大陸縁辺部の地質構造の模式図<br/>{{legend|#CB9866|堆積物}}{{legend|#996633|岩石}}{{legend|#663300|マントル}}]]
一方、非活動的縁辺部{{efn2|受動的縁辺部ともいう{{sfn|小池ほか|2017|pp=229, 282}}。}}{{enlink|passive margin}}は、浅く平坦な大陸棚、狭い大陸斜面、より傾斜の緩やかな{{仮リンク|コンチネンタルライズ|en|Continental rise}}から深海平原へと続いている{{sfn|小池ほか|2017|p=282}}。伸張によって薄く引き伸ばされた{{sfn|吉田|2023|p=73}}大陸地殻は、標高が低くなって{{sfn|吉田|2023|p=73}}海面下に大陸棚を形成し、大陸棚は堆積物で覆われた緩やかな斜面で先細りになり、その先の海洋地殻と接続している。ほとんどの非活動的縁辺部は、最終的には活動的縁辺部に移行する。

[[File:Cratons JA.svg|thumb|upright=1.5|left|原生代以前に形成されたクラトンの分布図]]
[[太古代]]から[[原生代]]にかけて形成{{sfn|鳥海ほか|2018|p=170}}されて以来、数十億年間{{sfn|鳥海ほか|2018|p=96}}、[[造山運動]]の影響をほとんど受けていない、古い安定した陸塊を'''[[クラトン]]'''{{efn2|この語は、特に[[太古代]](始生代)のクラトンに限定して用いられることもある<ref name="山口大"/><ref name="mond_how"/>。}}(別名:安定地塊、安定大陸、剛塊)という<ref name="山口大"/>{{sfn|佐野|2017|p=136}}。典型的には、クラトンは[[楯状地]]とその周りを囲む平坦な[[プラットフォーム (地質学)|プラットフォーム]](卓状地)で構成される。楯状地は、古い結晶質の[[基盤岩]](15億年から38億年前のもの)が広範囲に地表に露出した地域である。楯状地の周りを囲むプラットフォームも、古い基盤岩から成るが、より新しい[[堆積岩]]に覆われている{{sfn|Levin|2010|p=83}}。大陸は[[付加体]]地殻の「いかだ」に喩えられ、密度の高い玄武岩質の海洋地殻が約2億年ほどで沈み込む{{sfn|小池ほか|2017|p=282}}のとは違って、プレートテクトニクスによりプレートが沈み込む過程で破壊されることを免れている。大陸クラトンを構成している岩石の年代の古さ(少なくとも5億年から40億年前)は、このことを物語っている{{sfn|Levin|2010|p=194}}。

大陸地殻でできているが、クラトンを含まない微小大陸や{{仮リンク|大陸断片|en|Continental fragment}}は数多くある。これらの中には、[[ゴンドワナ大陸]]などの古い安定大陸の断片であるものもあり、[[ニュージーランドの地理|ニュージーランド]]や{{仮リンク|ニューカレドニアの地理|en|Geography of New Caledonia|label=ニューカレドニア}}を含む[[ジーランディア]]<ref name="Mortimer_et_al_2017"/>、[[マダガスカル島]]、および[[セーシェル]]を含む北[[マスカリン海台]]などは、その例である。[[カリブ海]]にあるいくつかの島のように、花崗岩が組成の大部分を占める島もあるが、すべての大陸は花崗岩と玄武岩の両方の地殻を含んでおり、このような定義ではどの島が微小大陸とみなされるのか、明確な境界はない。たとえば、[[ケルゲレン海台]]は大部分が火成岩であるが、ゴンドワナランドの分裂に関連しており、微小大陸とみなされている<ref name="UT Austin"/><ref name="BBC_1999-05-27"/>。一方、同じく火成岩からなる[[アイスランドの地理|アイスランド]]や[[ハワイ諸島|ハワイ]]はそうではない。[[ブリテン諸島]]、[[セイロン島]]、[[ボルネオ島]]、[[ニューファンドランド島]]は、かつての[[ローラシア大陸]]の縁辺部に位置し、その縁辺部を満たす[[内海]]によって、大陸塊本体から隔てられているだけである。

== 関連する概念 ==
=== 超大陸 ===
[[File:Afro-Eurasia.png|thumb|upright=1.2|超大陸アフロ・ユーラシア]]
{{main|超大陸}}
現在の大陸とは別に、大陸という用語の範囲と意味には、過去の地質時代の大陸も含まれる。'''[[超大陸]]'''({{lang-en-short|supercontinent}})は、主として地質学的記録の早い時期に存在した証拠が確認されており、世界の[[クラトン|安定陸塊]]または大陸核の大部分を構成する陸塊である。超大陸の厳密な定義はないが、地球上のすべて、あるいは、ほとんど(目安として約70%以上<ref name="AGCJ_超大陸"/>)の大陸が同時に一箇所に集合して形成された大陸塊をいう{{sfn|吉田|2023|p=61}}<ref name="AGCJ_超大陸"/>。年代の古い順に並べると、[[バールバラ大陸]]、[[ケノーランド大陸]]<ref name="AGCJ_超大陸"/>、[[コロンビア大陸]]<ref name="AGCJ_超大陸"/>、[[ロディニア大陸]]<ref name="山口大"/>、[[パノティア大陸]]<ref name="AGCJ_超大陸"/>、そして[[パンゲア大陸]]<ref name="山口大"/>が、これに含められる。これらの超大陸は、時間の経過とともに分裂し、現在の大陸を形成する大きな陸塊となった。

=== 亜大陸 ===
[[File:India 78.40398E 20.74980N.jpg|thumb|left|インド亜大陸]]
{{main|亜大陸}}
地理的に他の地域とは区切られた大陸の一部分を'''[[亜大陸]]'''({{lang-en-short|subcontinent}})と呼ぶことがある。特に厳密に定義された用語ではないが、異なる[[プレート]]に乗る陸地が大陸と接続しているような場合に用いられる。最も広く認められている例は[[インド亜大陸]]である<ref name="Baldwin"/>。

このほか、[[アラビア半島]]や[[南部アフリカ]]なども亜大陸とみなされることがある<ref name="Baldwin"/>。また、[[北アメリカプレート]]の北東部にある[[島の一覧 (面積順)|世界最大の島]]である[[グリーンランド島]]は、大陸と接続こそしていないが、比較的大きいために亜大陸といわれる場合がある。

さらに、南北アメリカ大陸を単一の大陸とみなす場合、2つの亜大陸―[[北アメリカ大陸]]と[[南アメリカ大陸]]―がつながっているとの見方もできる。同様に[[ユーラシア大陸]]は[[ヨーロッパ大陸]]と[[アジア大陸]]の2つの亜大陸から構成されているとみることもできる。

=== 水没大陸 ===
[[File:Zealandia, topographic map.jpg|thumb|太平洋に沈む最大の水没大陸[[ジーランディア]]]]
{{see also|伝説上の大陸}}
大陸地殻の一部の領域は、大部分が海中に沈んでおり、水没した大陸とみなされることがある。顕著な例としては、主にニュージーランドとニューカレドニアで海面上に姿を現している[[ジーランディア]]<ref name="地質学会要旨2018"/>や、ほぼ全部が海に沈んでいるインド洋南部の[[ケルゲレン海台]]などが挙げられる。

=== 微小大陸 ===
隆起したり移動したりして大陸塊本土から離れた大陸地殻の断片上に位置している一部の島は、比較的小さいため大陸とはみなされないが、'''微小大陸'''({{lang-en-short|microcontinent}})とみなされることがある。最も大きな微小大陸の例に挙げられる[[マダガスカル島]]は通例、アフリカの島とみなされるが、その特徴的な{{仮リンク|分岐進化|en|Divergent evolution}}により、生物学的観点から「第8の大陸」と呼ばれている。

=== 大陸島 ===
{{main|大陸島}}
地史的に大陸と陸続きになったことがある、[[大陸棚]]にある島は、[[島嶼生物学]]の用語で'''[[大陸島]]'''または'''陸島'''({{lang-en-short|continental island}})と呼ばれる。[[グレートブリテン島]]や[[日本列島]]などが、これに該当する。

== 金星と火星の大陸 ==
調査・研究が比較的進んでいる[[地球型惑星]]の[[金星]]と[[火星]]の地形について、地球の大陸に匹敵する大きさの高地には「大陸」({{lang-la-short|terra}})の名が付いている。

[[金星の地形一覧|金星の地形]]については、金星探査機「[[マゼラン (探査機)|マゼラン]]」に搭載された[[合成開口レーダー]]による観測の結果{{sfn|柳|2008|p=104}}、[[アフロディーテ大陸]]と[[イシュタル大陸]]が発見され{{sfn|柳|2008|p=104}}、{{仮リンク|ラダ大陸|en|Lada Terra}}と合わせて3つの大陸が知られている。[[火星の地形一覧|火星の地形]]については、{{仮リンク|アラビア大陸|en|Arabia Terra}}など、いくつかが知られている。

ただし、地質学的にみると、{{仮リンク|火星の地質|en|Geology of Mars|label=火星の地殻}}を構成する岩石は[[玄武岩]]質で、これは地球でいう[[海洋地殻]]に相当し、大陸地殻は存在しないことが、[[火星探査機]]による火星表面の化学分析から分かっている{{sfn|田村|2024|p=109}}。金星についても、詳しいことは計画中の金星探査機「{{仮リンク|ヴェリタス (探査機)|en|VERITAS (spacecraft)|label=ヴェリタス}}」{{sfn|吉田|2023|pp=192-193}}などによる今後の調査と研究が待たれるが、{{仮リンク|ヒプソメトリ|en|Hypsometry|label=ヒプソメトリック・カーブ}}(地形の高度と面積の比を描いた曲線)が1つの極大しか示さないことから、金星表面の岩石も火星と同様に一様であろうと考えられている{{sfn|田村|2024|pp=107-109}}。

なお、金星と火星では、地球で見られる[[中央海嶺]]や[[島弧]]-[[海溝]]系のような線状の変動的な地形は見つかっていない{{sfn|田村|2024|pp=109-110}}。これは、金星、火星ともに[[プレートテクトニクス]]が働いていないことを示唆している{{sfn|田村|2024|p=110}}<ref name="日経サイエンス1996"/>。

プレートテクトニクスが成立するには、表面に海すなわち[[水]]が存在することが必須とされる{{sfn|田村|2024|p=115}}。海水が入り込むとプレートが割れやすく、プレートテクトニクスが作動しやすくなるためである{{sfn|巽|2012|p=104}}。現在の[[太陽系]]において、海と陸の両方を有する惑星は唯一、[[地球]]だけであると考えられている{{sfn|巽|2012|p=1}}{{sfn|田村|2024|p=253}}。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{notelist2}}
=== 出典 ===
=== 出典 ===
{{reflist|30em|refs=
{{Reflist|2}}
<ref name="AGCJ_シマ">{{harvnb|地学団体研究会|2024|p=635}}「シマ」([[金森博雄]] 執筆項)</ref>
<ref name="AGCJ_大陸">{{harvnb|地学団体研究会|2024|pp=853-854}}「大陸」([[山下昇]]・浜田盛久・飯塚毅 執筆項)</ref>
<ref name="AGCJ_大陸縁辺部">{{harvnb|地学団体研究会|2024|p=854}}「大陸縁辺部」(浜田盛久 執筆項)</ref>
<ref name="AGCJ_大陸気候">{{harvnb|地学団体研究会|2024|p=854}}「大陸気候」([[倉嶋厚]]・[[田中博 (気象学者)|田中博]] 執筆項)</ref>
<ref name="AGCJ_大陸漂移説">{{harvnb|地学団体研究会|2024|pp=854-855}}「大陸漂移説」([[山下昇]]・[[野村哲]] 執筆項)</ref>
<ref name="AGCJ_地殻">{{harvnb|地学団体研究会|2024|p=906}}「地殻」(吉井敏尅 執筆項)</ref>
<ref name="AGCJ_超大陸">{{harvnb|地学団体研究会|2024|p=952}}「超大陸」(角替敏昭 執筆項)</ref>
<ref name="AGCJ_プレートテクトニクス">{{harvnb|地学団体研究会|2024|p=1324}}「プレートテクトニクス」([[杉村新]] 執筆項)</ref>
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* {{Cite journal |和書 |author=吉野政治 |title=五大州―鎖国時代の世界地理認識― |journal=同志社女子大學學術研究年報 |volume=60 |publisher=同志社女子大学教育・研究推進センター |date=2009-12 |pages=118(21)-107(32) |naid=110007583425 |ref={{SfnRef|吉野|2009}}}}
* {{Cite book |和書 |author=吉野政治 |title=蘭書訳述語攷叢 |chapter=第二篇 地理学・地学のことば アジア州とヨーロッパ州 ―一州か二州か― |pages=133-160 |publisher=和泉書院 |date=2015-05 |isbn=978-4-7576-0746-0 |ref={{SfnRef|吉野|2015}}}}


== 関連項目 ==
== 関連文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=神沼克伊 |authorlink=神沼克伊 |title=地球科学者と巡る世界のジオパーク |publisher=[[丸善出版]] |date=2023-10 |isbn=978-4-621-30832-5 |ref={{SfnRef|神沼|2023}}}}
{{ウィキポータルリンク|地理学|[[ファイル:Gnome-globe.svg|34px|Portal:地理学]]}}
* {{Cite book |和書 |translator=竹花秀春 |editor1=尾崎憲和 |editor2=田島進 |title=世界6大陸 発見の旅 地球MAPS |publisher=日経ナショナル ジオグラフィック社 |date=2018-07 |isbn=978-4-86313-411-9}}
* [[国の一覧 (大陸別)]]


== 外部リンク ==
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2024年11月2日 (土) 13:11時点における最新版

大陸と大州
大陸と海洋
大州を色分けしたアニメーション地図

地理学的には、大陸(たいりく)とは、陸地のうち面積の大きなものをいう[1]。通例、ユーラシアアフリカ北アメリカ南アメリカオーストラリア南極の六大陸を指す[2]。大きさに明確な基準があるわけではないが[3]、地形的には、周囲をに囲まれた陸地のうち[3]グリーンランド島より面積の大きいものを大陸と呼び、それ以下のものはと呼ぶのが慣例となっている[3][4]地質学的には、珪長質大陸地殻が存在する地域をいう[3]。この意味では、陸としての大きさは関係なく[5]、海面下にある大陸棚も大陸の一部とみなされる[3][6]

一方、大陸を中心として地球上の陸地をいくつかの地理的地域に大きく分けた[7]大州(たいしゅう[8])または(しゅう)という別の概念も用いられる。大陸部だけでなく、その周辺の島々も含まれる点で、大州は大陸とは区別される[9][10]。日本語圏では、アジア州アフリカ州ヨーロッパ州北アメリカ州南アメリカ州オセアニア州(大洋州)の六大州を指すのが最も一般的であるが、世界的には、五大州七大州に区分される場合もあり、その数と内訳は各自の立脚する歴史・文化的背景の相違によって異同および変遷が認められる[11]

語誌

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大陸

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語源は「大きな陸地」[12]対義語大洋海洋[13]

「陸」の字義は、小高い地形が連なる大地(おか・陸地)で、そこから水面より高く上がって平らな土地(陸上)の意に転じる[14]。六は陸の原字で、土が集まって盛り上がった形を表す[14]

中国の古い文献『書経』「禹貢[2]に(黄河渤海に注ぐ途上[15])「至于大陸」、『爾雅』「釈地」[16][17][18]に「高平曰、大陸曰[19]、『夢渓筆談』「雑誌一」[16]に「所謂大陸者、皆濁泥所湮耳」[19]など「大陸」の用例がみえる(成立年代未詳)が、これらは「陸地」くらいの意味にすぎず[19]、現在広く使われている「大陸」という語の直接の起源であるとは考えられない[17]

一方、英語の continent に対応する訳語としては、比較的新しく[20]日本で成立したもので[16]、開化期の文部省編『地理初歩』(明治6年/1873年)に載る「西半球ニアル、大陸ハ、北亜米利加、南亜米利加ト、亜細亜ノ、小部分ナリ[21]」が初出とされ[2]、明治初期に西洋の近代的な地理学概念を導入する際に造られた新漢語の一つとされる[18]。中国語文献では、日本語の影響を大きく受けた英華辞典『新爾雅』(1903年)[22]などが比較的早い例で、現代の中国でも「亚洲大陆」のようにいうことがある[20]。なお、ヘボン編『和英語林集成』では、第三版(1886年)に「大陸」の語が掲載されている[17]

日本語で単に「大陸」といった場合、前後の文脈によって、日本から対岸のアジア大陸(とりわけ中国大陸)を指したり、あるいは同じくイギリスからヨーロッパ大陸大陸ヨーロッパ)を指したりすることもある[2]。また、日本から遠く隔たったヨーロッパ大陸や北アメリカ大陸を指していう場合もある[18]

大州・州

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字義・語釈

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「州」の原義は「川中の島(中州)」で[23]、水に周囲を取り巻かれた地を意味する[24]。のち、海に囲まれた大きな陸地(例えば本州)をも表すようになり[23]、さらに、人の集まり住む土地[25](州里)や、その行政区画の単位[23](中国の九州)までも意味するようになった。元々の中州の意味に限定した字として「洲」が使われるが、「州」と「洲」は通用する[24]

1857年、ロンドン伝道会英語版宣教師ウィリアム・ミュアヘッド英語版中国語版が中国の上海で出版された月刊誌『六合叢談中国語版』に寄稿した記事では、地理名称の「釈名」に「広陸曰洲、環水曰島」とあり、一般に単独で用いる場合には「大州」、複合する場合には「州」が使われている[16][26]。同著『地理全志』(1854年)でも「大州」「州」が使われており[27]、その上編の首編「地理名称」では、「州」は「土地の最大なるもの」、「島」は「水中にあり、州よりも小さいもの」と定義された[28]

中国では後述するイエズス会士以来、「五大州」の「州」または「」が「大陸」の意味で使われており[16]アメリカ長老会宣教師C・W・マティア英語版中国語版が1904年に著した術語集においても continent の訳語は「大洲」となっている[27][29]

大州概念の歴史

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須弥山世界観の概念図

仏教の伝統的な世界観では、大地の中央にそびえる須弥山(しゅみせん)を七重の山地が取り巻き、その最も外側に広がる大海原の四方には、東に勝身洲、西に牛賀洲、南に贍部洲、北に倶盧洲という四つの大陸(大きな島)が存在するとされ[30]、これらを総称して四大洲(しだいしゅう)または四洲(ししゅう)と呼んだ[31]。このうち南の贍部洲(せんぶしゅう)だけが現実に存在する陸地とされた[30]

中世から近世初期の日本において[32]、この世界は本朝(日本)、震旦(中国)、天竺の3つの国からなるとした[32][33][34]、いわゆる三国(さんごく)世界観は、これら須弥山や贍部洲といった仏教的な世界観と密接に結びついていた[35]。それが近世に入って、ヨーロッパ人の世界観に基づく近代的な西洋地理学の知識が日本にも流入するようになると[32]、それまで日本人の一般的な世界地理認識であった[36]三国世界観は徐々に瓦解していった[37]

マテオ・リッチ『坤輿万国全図』の日本写本

近世初頭、イエズス会宣教師[38]マテオ・リッチらが漢訳し、北京で刊行され、日本にも伝来した世界図『坤輿万国全図』(1602年刊)は、地図上で世界を大きく5つの部分に分け[39]、図の右端の解説文に「以地勢分輿地為五大州。曰欧邏巴、曰利未亜、曰亜細亜、曰南北亜墨利加、曰墨瓦蠟泥加[40]」と記し、五大州を明確に示している[41]。これが近世以降の日本における五大州の概念の端緒とされ[39]、日本人が新しい枠組みで世界を認識する一つの大きな画期となった[36]

西川如見は『日本水土考』(1700年)の中で、「三大界」と称した三大陸を分割する区画として5つの「洲」(大州)を示し、その「洲」の中に世界の国々が属していると説明している[42]。つまり、この認識に立てば「五大州=五大陸」ではない[42]。これは、在華宣教師たちが用いた「大州」と同じ認識である[42]

渾地の図を閲するに大瀛海の裏、陸土自ら相絶えて三大界と成れり。第一界は、中帯赤道の北に在りて、径度極めて大なる者を便ち分画して三洲と作す。曰く亜細亜アサイア、曰く欧邏巴エウロッパ、曰く利未亜リミア。第二界は利未亜の西に在りて、赤道の南北に横はる者を亜墨利加アメリカと曰ふ。第三界は赤道の南に在りて広く相連れる者を墨瓦臘尼メガラニと曰ふ。総て是を五大洲と為すなり。萬国各々五大洲の内に在り、亦許多の島嶼は各々その界洲に属す。俗の所謂世界とは異なり。 — 西川如見 著『日本水土考』(元禄13年/1700年)[43]

同じく西川如見著『増補華夷通商考』(1708年)に掲載された「地球萬国一覧之図」[44]寺島良安著『和漢三才図会』(1713年)に載る「山海與地全図」[45]新井白石の『西洋紀聞』(1715年)[46]前野良沢著『和蘭管蠡秘言かんれいひげん』(1777年)[47]では、リッチ系世界図の五大州区分を基本的に踏襲しつつ、南北アメリカを二州に分け[44][48]六大州として説明している[48]。ただし、近世中期の日本における節用集の世界図には大州を明確に区別していないものが散見され、それらの区別を明確にした世界図が近世後期に普及するまでは、日本の一般庶民は世界が五大州や六大州からなるとは認識していなかったと思われる[49]

なお、新井白石や司馬江漢山片蟠桃は、未知の南方大陸・メガラニカを大州の一つに数えて六大州説を唱えることに慎重な立場をとった[50]。五大州説に関しても、アジア、ヨーロッパ、アフリカは陸続きであり、なぜ3つの州に分けるのかという問いを、山片蟠桃と渡辺崋山は著作の中で述べている[51]三浦梅園は、大陸と大州の区別を理解した上で、自著『帰山録』(1778年)の中で「蜂の腰のように細い部分で連続している南北アメリカ州が二つに分かれることもあるであろう。また、ヨーロッパ州と陸続きであるアフリカ州も地中海が入り込んでいるので、これも同様に考えることも許される。しかし、なぜヨーロッパ州とアジア州は別になるのか。[42]」という趣旨の疑問を問いかけている。

ヨーロッパ、アジア、アフリカの3州の三位一体を示した世界地図

ヨーロッパ州とアジア州が区別される理由については、現代においても明確に説明できることではないが、吉野 (2015)は、おそらく西洋のキリスト教的な世界観が背景にあるのではないかと考えている[52][53]。具体的には、中世ヨーロッパでは聖地エルサレムを中心とする円形の世界図(TO図)が一般的な形式であったことや、1581年のハインリッヒ・ブンティヒドイツ語版の著作中に挿入された旧世界の地図(左図参照)が、三つ葉のクローバーの葉の形をもってヨーロッパ、アジア、アフリカの3大州の三位一体を示していることを根拠としている[54]。上述したマテオ・リッチの『坤輿万国全図』にも「ヨーロッパは天主の聖教を奉じる国々であることをもって他の大州とは区別される」という趣旨の記述があり、同じくキリスト教の教理に従ったものであるとする[55]。この区分法が現在の大州区分にも受け継がれていることは、別の見方をすれば、ヨーロッパ中心主義の名残とも考えられる[56]

伝説上の南方大陸は、『大日本永代節用無盡蔵』(1864年)に「樺豪斯多辣里州カバアウスタラリシウ」がオセアニア州に相当する大州として記載され、次第に伝説上の存在ではなく実在するオーストラリア州として認識されるようになっていく[57]

教科書類にみえる用例

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明治中頃の文部省編『尋常小学読本 七』(明治20年/1887年)では、大陸の区分の仕方こそ現代の一般的なものとは異なるものの、大陸と大州の概念を明確に区別し、島国の日本を六大州の一つであるアジア州の中に位置づけている。

陸 の、尤も 大 なる 分ち を 大陸 と 云ひて、此 世界 には、東大陸 西大陸 及び 濠太剌利大陸 の 三 大陸 あり。又、大陸 の 大 なる 分ち を 大洲 と 云ひ、西大陸 は、北亞米利加 と 南亞米利加 と の 二 大洲 に 分れ、東大陸 は、亞細亞 亞非利加 歐羅巴 の 三 大洲 に 分れ、濠太剌利大陸 は、只 濠太剌利 の 一 大洲 より 成れり。我が 日本 國 は、東大陸 の 東方 なる 島 國 にして、亞細亞洲 の 中 に 在る なり。 — 文部省編輯局 編著『尋常小学読本 巻之七』(明治20年5月)「地球」[58]

明治後期の中学地理教科書、松島剛著『日本中地理学』(明治35年/1902年)では、大陸、大州、島嶼を次のように説明している。

(前略)陸地は之を大別して、東大陸、西大陸の二とす。更に東大陸を分ちて、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、オーストラリアの四大洲とし、西大陸を分ちて、北アメリカ、南アメリカの二大洲とす。(中略)陸地の大なるものは、之を大陸と稱すれども、其外の小陸地は、總て之を島嶼と稱す、然れども島嶼の大なるものは日本の幾十倍なるものあり。(後略) — 松島剛 著『日本中地理学』(明治35年11月)「第二 大洋、大洲、島嶼」[59]

明治末期の文部省『尋常小学地理 巻二』(明治43年/1910年)では、六大州の一つであるオーストラリア州は「大洋州」と表記されている。

陸地は之を大別して亞細亞洲・大洋洲・歐羅巴洲・亞弗利加あふりか洲・北亞米利加洲・南亞米利加洲の六大洲とす。地球を東西兩半󠄁球に分てば亞細亞洲・大洋洲・歐羅巴洲・亞弗利加洲の四大洲は東半󠄁球に入り、北亞米利加洲・南亞米利加洲の二大洲は西半󠄁球に入る。六大洲中、亞細亞は東半󠄁球の北部を占めて、面積最も廣大に、大洋洲はオーストラリヤ及び數多の島嶼より成りて、其の東南に位し、面積最も小なり。歐羅巴は亞細亞の西に續きて共に一大陸をなし、亞弗利加はスエズ地峽によりて東北僅に亞細亞に連󠄀り、北は地中海を隔てて歐羅巴に對し、北亞米利加と南亞米利加とはパナマ地峽によりて相接續す。 — 文部省 編著『尋常小学地理 巻二』(明治43年12月)「第十三 世界 一」[60]

昭和初期の中学地理教科書、守屋荒美雄著『新選地理 世界之部(甲表用)』(昭和7年/1932年)では、大洋州は主たる表記が「オセアニア州」に交代している[61]

令和6年(2024年)現在、日本の地理教育では、世界は6つの大陸と6つのに区分されると教えられている[9][62]。他方で、後者を州ではなく大州としている教科用地図帳[63]出版社もある。

continent

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英語の名詞 continent は、「連続している陸地[64]」を意味する語 continent land から派生する形で[64]、ラテン語の語源 terra continens から翻訳され[65]、1500年代から使用されている。当初は「連続している広い陸地」 (a connected or continuous tract of land) 以外に「本土」 (mainland) の意味でも用いられ[64]、広大な陸地に対して適用されるばかりでなく、1600年代にはマン島アイルランド島およびウェールズ、1745年にはスマトラ島の本島(または本土)に対して言及された用例がある[64]。 continent という語は、世界の3つの部分 (parts) について書かれたギリシャ語やラテン語の文章を翻訳する際に用いられたが、原語では英語の continent と全く同義の語は使用されていなかった[66]

continent という語は、連続した陸地の比較的に小さな地域を表すのに使われた一方で、地理学者たちは、かつてヘロドトスが抱いた、なぜ一つの広大な陸地が別々の continent に分割されなければならないのかという疑問を再び持ち出した。1650年ごろ、ピーター・ヘイリン英語版は自著『コスモグラフィー』の中で「continentとは、世界の他の部分からいかなる海によっても隔てられていない、大量の土地である。例えば、ヨーロッパ、アジア、アフリカの全大陸のようなものである」と書いた。1727年、イーフレイム・チェンバーズが著した『サイクロペディア』には「世界は通常、旧大陸新大陸の2つの大きな大陸に区分けされる」と記されている。1752年の地図帳で、エマニュエル・ボウエン英語版は continent を「多くの国々を含む広大な陸地のことで、水によって分かれることなく一体となっているものである。このように、ヨーロッパ、アジア、アフリカは一つの大きな大陸であり、アメリカはもう一つの大陸である」と定義した[67]。しかし、ヨーロッパ、アジア、アフリカを世界の「一部分」とみなす古い考え方は、結局のところ、これらを別々の continent とみなすことで根強く残っている。

西洋的大陸概念の変遷

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この節では、日本語で「大陸」や「大州」と訳出される continent という概念の歴史について説明する。文章中に出現する「大陸」「大州」は、あくまで訳語として言及しているにすぎず、厳密な意味での「大陸」や「大州」という概念の歴史を示しているわけではない。「大州」の概念史については、大州概念の歴史を参照。

初期の旧大陸概念

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EuropaAsia と書かれた地球儀を手にする古代ギリシアの地理学者ストラボン

continent は、ギリシャ語で「陸地、堅固な大地」("landmass, terra firma")を意味する ἤπειρος を翻訳した語で、当初はエピロスの固有名詞として、後には特にアジア(小アジア)を指して使用された[68]

今日的な意味の大陸を最初に区別して呼んだのは、古代ギリシアの船乗りたちであった。彼らは、エーゲ海からダーダネルス海峡マルマラ海ボスポラス海峡を経て黒海に至る水路の両側の陸地にエウロペ(ヨーロッパ)とアシア(アジア)という名を与えた[69]。この呼称は当初、海岸近くの土地にのみ適用されたが、のちには後背地にまで適用範囲が拡大していった[70]。しかし、この区分は航行可能な水路の終点までしか適用されず、「その地点から先では、ヘレニック地理学者は、自然の風景のなかに、ポセイドン三叉戟が切りさいていなかった、分かつことのできないエウラシアを分かつ、はっきりした線を提供することができる内陸の特色を指摘することは決してできなかった[69]」のであった。

続いて、古代ギリシアの思想家たちは、アフリカ(当時はリビアと称した)は果たしてアジアの一部分なのか、それとも世界を三分する別の一部分なのかについて議論し、結局、世界は3つの部分に分けられるとする考えが優勢となった[71]。ギリシア的観点に立つと、エーゲ海が世界の中心であり、東にアジア、西と北にヨーロッパ、そして南にアフリカが位置している[72]。大陸間の境界は定まっていなかったが、早くから、ヨーロッパとアジアの境界は黒海からグルジアを流れるリオニ川(当時はファシス川の名で知られた)に沿って引かれる線とみなされていた。のちに、この境界線は、黒海からケルチ海峡アゾフ海を通り、ロシアドン川(当時はタナイス川の名で知られた)沿いに引かれるようになった[73]。アジアとアフリカとの境界は、一般的にナイル川とされていた。しかし、紀元前5世紀の歴史家ヘロドトスは、これではエジプトがアジアとリビア(アフリカ)に分断されてしまうとして反対し、あくまでエジプトはアジアの一部であるとの主張に基づき、両大陸の境界線をエジプトの西側の国境線とした。彼はまた、実質的に一つの広大な陸地であるものをわざわざ3つに区分することに疑問を呈した。この議論は、2500年近く経った今もなお続いている。ヘロドトスは次のようにヨーロッパが他の2つの大陸よりも大きいと考えていた。

さて私には、リビア、アジア、ヨーロッパを区切って分離した人々のやり方が不思議に思われてならない。この三者の相違は決して小さくないからである。長さ(東西)からいえば、ヨーロッパは他の二者を合せた長さにわたって延びており、幅(南北)については比較にもならぬほど(の大きさ)であると私には考えられるのである。[74]

—ヘロドトス,『歴史

紀元前3世紀の学者エラトステネスは、一部の地理学者たちが大陸を河川(ナイル川とドン川)で区切り、その大陸を「島」とみなしている一方、他方の地理学者たちが大陸を地峡で区切り、その大陸を「半島」と呼んでいることを述べた[75]。後者の地理学者たちは、ヨーロッパとアジアとの境界を黒海とカスピ海との間の地峡に定め、アジアとアフリカとの境界を地中海に面したエクレグマ(バルダウィル湖英語版の河口近く)とエリュトラ海(紅海)との間に定めた[75]

紀元1世紀、ローマの著作家・大プリニウスは、「全地球はヨーロッパ、アジア、アフリカの3つの部分に分かれている」と書き、こう付け加えた。

それではヨーロッパから始める。このヨーロッパは、すべての国民を征服した民族をはぐくんだ地であり、陸地の図抜けて美しい部分であるが、大抵の大家たちが、それは世界の三分の一ではなく、その全域をタナイス河からガデス海峡へ引いた線によって二つの部分に分かち、その半分を占めると考えたのも理由のないことではない。[76][注 1]

—大プリニウス,『博物誌

ノアの息子たちの領地としての3つの大陸—アジアはセムに、ヨーロッパはヤペテに、アフリカはハムに—を示す中世ヨーロッパのTO図

西ローマ帝国の滅亡後、そこでラテン語とカトリック教会と結びついて発展した文化は、「ヨーロッパ」という概念と関連づけられるようになった。 ローマ時代から中世の間、スエズ地峡をアジアとアフリカの境界とする著作家もいたが、ほとんどの著作家はナイル川またはエジプトの西側国境を両大陸の境界とみなし続けた。中世には、Tの字で3つの大陸を区切る水域を表現した、TO図の形式で世界を描いたもの(右図参照)が普通であった[77]が、18世紀半ばまでには「アジアとアフリカをナイル川で分ける、あるいは、さらに西方の大カタバトモス(エジプトとリビアの間の境界)に求める[78]という流儀は、それでもほとんど廃れてしまっていた」[79]

ヨーロッパ人の新大陸アメリカ到達

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1492年、クリストファー・コロンブス大西洋を横断してカリブ海まで航海し、ヨーロッパ人によるアメリカ大陸探検の口火を切った。しかし、コロンブスはアメリカ大陸へ4回も航海したにもかかわらず、自身が新大陸に到達したとは決して信じることなく、そこはアジアの一部だと生涯信じていた。

1501年、アメリゴ・ヴェスプッチゴンサロ・コエーリョ英語版は、彼らがアジア大陸の南端と考えていた地(インディアス)を迂回し、インド洋へと抜けようとして、フェルナンド・デ・ノローニャ付近を通過した。ブラジルの海岸に差しかかった一行は、南アメリカ大陸の東岸に沿って南下し、この地が当時考えられていたアジアよりもはるかに南の方まで延びた、大陸と呼ぶにふさわしい広さをもつ連続した陸地であることを確認した[80]。ヨーロッパに帰還すると、《ムンドゥス・ノーヴス》(「新世界」の意)という手紙形式の航海記(冊子)が、ヴェスプッチの名で1503年初めに出版された[81][82]。この手紙は別の作家によって内容の追加や変更が加えられたものとみられる[83][84]が、誰がその言葉を著したかにかかわらず、同書簡中の「私はそれら南の地域で、我らのヨーロッパ、あるいはアジアやアフリカよりもっと多くの人間や動物の住む大陸を発見した[85]」という一文は、ヴェスプッチの言によるものとみられており、アメリカの一部を他の3大陸と同様の大陸として初めて明示的に確認したものとして知られる。

それから数年のうちに、オリヴェリアーナ(ペーザロ)の地図(1504年から1505年頃)のように、「新世界」という名称を南アメリカの名称とした世界地図が登場するようになった。しかし、この頃の地図では、まだ北アメリカはアジアとつながっており、南アメリカは別の大陸として描かれていた[83]

初めてアメリカ大陸をアジアと分けて示した、ヴァルトゼーミュラー作の世界地図『ユニヴァーサリス・コスモグラフィア』(1507年)

1507年、マルティン・ヴァルトゼーミュラーは世界地図『ユニヴァーサリス・コスモグラフィア』を出版した。これは、南北アメリカがアジアから分離され、水域に囲まれていることを示した[86]初めての地図であった。主要図の上に描かれた小さな挿入図は、(ヨーロッパを中心に置いた一般的な世界地図で)アメリカを地図の左端に、アジアを右端に配置するのとは反対に、アメリカがアジアの東にあり、海によってアジアと隔てられていることを明確に示していた。ヴァルトゼーミュラーは、同地図の付録冊子『天地学入門英語版[87]の中で、地球の陸地は4つの部分に分けられ、ヨーロッパ、アジア、アフリカに次ぐ4番目の部分をヴェスプッチのファーストネームにちなんで「アメリカ」と名付けたことを記している[88][89]。地図上では、「AMERICA」の文字がアメリカ大陸の上に並んでいる[90]

四大陸を越えて

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アベル・タスマンウィレム・ヤンスゾーン英語版の航海に基づき、ジョアン・ブラウ英語版が1659年に作成したニューホランドの地図(当画像は1663年の仏語版)

18世紀後半から、南北アメリカを北アメリカと南アメリカの2つの大陸とみなし、合わせて5つの大陸で世界は成り立っているとみる地理学者が一部に現れたが、全体としては19世紀に入るまで、4大陸とする見方が主流だった[91]

ヨーロッパ人は1606年にオーストラリアを発見していたが、しばらくの間、そこはアジアの一部とみなされていた。これを独立した大陸とみなし、世界を6大陸(あるいは、南北アメリカを1つの大陸とみなす場合には5大陸)に区分する見方が一部の地理学者の間で出始めたのは、18世紀後半のことであった[91]。1813年、サミュエル・バトラーはオーストラリアを「ニューホランドという広大な島で、地理学者の中には、もう一つの大陸という称号を授け、権威づけて呼ぶ者がいる」と書き、その数十年後の『オックスフォード英語辞典』も同じように両義に取れる曖昧な表現にとどまった[92]。世界の「大区分」としてのオセアニアという概念が、大陸としてのオーストラリアという概念に置き換わったのは1950年代のことであった[93]

南極大陸は、1820年にロシアの第一次南極探検隊英語版によって発見され、1838年にアメリカの探検隊チャールズ・ウィルクスによって大陸として記述された。“Antarctic”(北極の対蹠地)として数千年にわたり巨大な陸地が存在すると予想されていたものの最後に確認された大陸となった。早くも1849年の地図帳には Antarctica を大陸と明示したものもあったが、第二次世界大戦後まで、そのように記載された地図帳はほとんどなかった[94]

やがて、世界を諸大州に区分するという西洋の考え方は、世界の他の地域の概念に取って代わって世界中に広まり、大陸という概念は文化的・政治的な意味を帯びるようになった。19世紀、明治時代の日本の指導者たちは、アジア人であることを自己認識し始め、西洋諸国に対するアジアの連帯という概念を思い描きながら、他の「アジア」諸国との関係を再構築した。このアジアのアイデンティティの概念とアジアの連帯という概念は、後に中国やベトナムなど、この地域の他の国々にも取り入れられた[95]

19世紀半ば以降、アメリカ合衆国で発行される地図帳は、北アメリカと南アメリカを別々の大陸として扱うことが以前よりも一般的になったものの、ヨーロッパで発行される地図帳は通常、北アメリカと南アメリカを1つの大陸として扱っており、アメリカの地図帳も第二次世界大戦までは、それらを1つの大陸として扱ったものが、まだ珍しくなかった[96]。1950年代以降、アメリカの地理学者の多くはアメリカ大陸を2つの大陸に区分けし[96]、これに南極大陸を加えて7大陸モデルとした。しかし、このアメリカ大陸の区分けは、ラテンアメリカの人々にとっては決して魅力的なものではなかった。彼らは、自分たちの地域を América という一つの大陸とみなしており、そこでは(他の国々でも散見されるように)6大陸の概念が支配的なままである[97]

ヨーロッパとアジアを合わせてユーラシアと呼び、1つの大陸とみなす地理学者もおり[98]、このモデルでは、世界は6つの大陸に分けられ、北アメリカと南アメリカは別の大陸とみなされる。

数と区分

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実際には大陸の数を確定する公式的な唯一の見解は存在しない。2つの大きな陸塊をひとまとめにして1つの大陸とみなすのか2つとみなすのかについて、特にヨーロッパアジアユーラシア大陸)、北アメリカ南アメリカアメリカ大陸)の区分の仕方は、それぞれの言語圏や文化圏により異なる。

主な区分の概要は下記の通り。

各大州を色分けして示した地図。同系色で塗られた領域は結合または分割される地域を表す。
類別 区分 出典 備考
大陸     アフロ・ユーラシア
旧大陸または世界島
   アメリカ新大陸   オーストラリア   南極 [99] 一つの連続した大陸塊
大陸   アフリカ    ユーラシア   北アメリカ   南アメリカ   オーストラリア [100]
   アメリカ   南極 [101] 自然地理学的地域
  アジア   ヨーロッパ N/A [100]
大州   アフリカ   アジア   ヨーロッパ    アメリカ   オセアニア [102] 五輪マークオリンピックの旗の由来
大陸   アフリカ    ユーラシア   北アメリカ   南アメリカ   オーストラリア   南極 [1][6][103][104] 地球科学的大陸
大州   アジア   ヨーロッパ    アメリカ   オセアニア   南極 [105] 国連統計部の大州区分
  北アメリカ   南アメリカ [106][107]
大陸   アフリカ   アジア   ヨーロッパ   北アメリカ   南アメリカ   オーストラリア   南極 [101][108][109][110] 全大陸区分の構成要素
大州   オセアニア [101][111] 全大州区分の構成要素
結び合う五つの輪で五大陸を表象するオリンピックシンボル

7大州モデルを構成する要素は以下の通り。

そのほか、北アメリカ大陸のうち、アメリカ合衆国とカナダ(時にメキシコも含む)を除いた諸国を中央アメリカに区分する分け方もある[120]。また、民族・文化・言語的な側面から、主に英語を話すアメリカ合衆国とカナダをアングロアメリカとし、主にスペイン語を話すメキシコ以南の国々をラテンアメリカに区分することもある[120][121]

大州の境界

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七大州の境界は確定してはいないが、地理的には概ね次のような線で結ばれる。

なお、上記とは別に、政治・文化・歴史的な経緯から、それぞれ異なる境界が用いられることがある。たとえば、トルコは地理的には国土の95%がアジア州に含まれるが、欧州サッカー連盟 (UEFA) に加盟していたり、欧州連合 (EU) の加盟候補国であったりするなど、しばしば国全体がヨーロッパ州に区分されることがある[121]

もう一つの隠れた大陸

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2017年、ニュージーランドの地質学者ニック・モーティマー英語版が率いる研究チームが、ニュージーランドニューカレドニアを含む、大部分が海面下に沈む大陸「ジーランディア」を既知の七大陸に比肩する隠れた大陸であるとする論文を発表し[125]、新聞・雑誌やネット上で話題を呼んだ[126]。ジーランディアは、面積が約500万平方キロメートル(オーストラリア大陸の約半分)とされるが、海面上に出ているのは、全体の6%にあたるニュージーランドの北島南島、およびニューカレドニアの島々だけであり、残りの94%は水没した状態である[127]

面積と人口

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各大州の面積と人口を比較したグラフ(縦軸の単位は、面積が千万キロ平米、人口が十億人)
  •       アジア
  •       アフリカ
  •       北アメリカ
  •       南アメリカ
  •       南極
  •       ヨーロッパ
  •       オセアニア
各大州の面積[128]・推計人口[129][130]および各大陸の面積
大州 大州面積 大州人口 大陸面積 大陸
km2 % 2021年(推計) % km2 %
アジア 44,579,000 29.8% 4,694,576,167 59.4% 50,439,819 36.7% ユーラシア
アフリカ 30,244,000 20.2% 1,393,676,444 17.6% 29,370,907 21.4% アフリカ
北アメリカ 24,239,000 16.2% 595,783,465 7.5% 20,090,075 14.6% 北アメリカ
南アメリカ 17,814,000 11.9% 434,254,119 5.5% 17,609,548 12.8% 南アメリカ
南極 14,200,000 9.5% 0 0% 12,272,800 8.9% 南極大陸
ヨーロッパ 10,180,000 6.8% 745,173,774 9.4% 50,439,819 36.7% ユーラシア
オセアニア 8,511,000 5.7% 44,491,724 0.6% 7,591,608 5.5% オーストラリア
総計 149,767,000 100% 7,909,295,151 100% 137,373,857 100% 総計

左記の表では、7大州区分に基づく各大州の面積と人口、および6大陸区分に基づく各大陸の面積を掲載している。一部の構成比(%)合計は100%にならない。

各大州の面積は概算値であり、海岸線や内陸水域の影響を考慮していない。参考値として、地球の陸地面積は147,244,000 km2、地球表面の総面積は510,066,000 km2、世界最大の島であるグリーンランド島の面積は2,175,600 km2である[131]

島嶼部を除いた各大陸の面積の出典は、ユーラシア、アフリカ、北アメリカおよび南アメリカの各大陸については、アメリカ地質調査所 (USGS) のウェブサイト Global Island Explorer による “Continental Mainlands” の数値、南極大陸については、英国南極研究所英語版による棚氷および周辺の島嶼を除いた数値[132]、オーストラリア大陸については、オーストラリア地質調査所英語版によるタスマニア島(64,519 km2)を除いた数値[133]である(ちなみに、前記の Global Island Explorer では、同大陸の面積は 7,618,696 km2と、やや大きい数値となっている)。全大州および全大陸の総面積は、各大州・大陸の面積値を単純に合計した値であり、出典に明記された数値ではない。

各大州の人口は国連統計部英語版発表の2021年の推計人口に基づく。

なお、各大州の人口統計データに関して、国連が定めた地理区分では、スエズ地峡シナイ半島を含むエジプト全域をアフリカの一部としているほか、アゼルバイジャンアルメニアインドネシアカザフスタンキプロスジョージア、および東トラキアを含むトルコの全域をアジアの一部に、シベリアを含むロシア全域をヨーロッパの一部に、ハワイ州を含むアメリカ合衆国パナマの全域を北アメリカの一部に、イースター島を含むチリ全域を南アメリカの一部に含めていることに注意されたい。

自然地理

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気候

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海岸から離れた大陸(特にアジア大陸)の内陸部で顕著に現れる大陸性気候では、地表面の温度が太陽高度に従って大きく変化し、気温日較差の気温差)と年較差の気温差)が極めて大きい[134]。大気中に供給される水蒸気の量が少なく、空気と地面は乾燥しており、年間降水量が少なく、塵埃が多いために大気の混濁度が強い[134]。大陸性気候の強弱の度合いは、大陸度: continentality)という指数で数量的に示される[134]

ケッペンによる世界の大陸性気候 (D) の地域分布図
大陸別の気候区の割合(H. Wagnerによる)[135]
区分 陸地全域 ユーラシア アフリカ 北アメリカ 南アメリカ オーストラリア 南極大陸
百万km2 % % % % % % %
熱帯雨林気候 (Af) 14.0 9.4 3.5 19.8 2.8 26.9 7.9
サバナ気候 (Aw) 15.7 10.5 3.9 18.8 2.4 36.5 9.0
ステップ気候 (BS) 21.2 14.3 15.9 21.5 10.7 6.7 25.8
砂漠気候 (BW) 17.9 12.0 10.2 25.2 3.7 7.3 31.4
地中海性気候 (Cs) 2.5 1.7 2.2 1.3 0.8 0.3 7.9
温帯冬季少雨気候 (Cw) 11.3 7.5 9.6 13.1 2.0 6.7 6.8
温帯湿潤気候 (Cf) 9.3 6.2 5.7 0.3 10.7 14.0 11.2
亜寒帯湿潤気候 (Df) 24.5 16.5 25.8 43.4
亜寒帯冬季少雨気候 (Dw) 7.2 4.8 13.4
ツンドラ気候 (ET) 10.3 6.4 9.8 17.3 1.6 3.6
氷雪気候 (EF) 15.0 10.7 6.2 96.4

地形

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地球上の陸地の総面積は約1億4900万平方キロメートルであり、地表(地球表面)全体の29.1%を占める[136]。海面下の大陸(大陸棚大陸斜面)も合わせると、その面積は約2億440万平方キロメートルであり、地表全体の40%を占める[136]。一方、海洋底の総面積は約3億650万平方キロメートルであり、地表全体の60%を占める[136]

大陸の地形は概略的には、

  • 海抜高度500メートル未満の低地

および海抜高度500メートル以上の

  • 高原状を成す台地
  • 尾根と谷の入り組んだ山地
  • 山地のうち細長く延びた山脈

の4つに区分される[137]

海面下の海水を無いものとして取り払って海底地形に着目した場合、水深200メートルまでの大陸棚も低地として大陸の一部とみなされ、水深およそ3500メートルまでの範囲に広がる大陸棚外縁大陸斜面は、おおよそ大陸の地形と海洋の地形の境界にあたる[138]

海抜高度2000メートル以上の山脈は、環太平洋地帯(地質学的区分の環太平洋造山帯に相当)と、地中海の北側からインド北部にかけての帯状地帯(同じくアルプス・ヒマラヤ造山帯に相当)、中央アジアからシベリア東部、北東アジアにかけての地域、および南極大陸に分布する[138]。海抜高度2000メートル以上の高い山地・高原の多くは山脈の周辺に分布するが、アフリカ大陸東部と南極大陸にも広がる[138]。海抜高度2000メートル以下の低い山地・台地は、アフリカ大陸の大部分、ユーラシア大陸の東半分、南アメリカ大陸オーストラリア大陸の一部など、世界中に分布する[138]

世界の地形を高度別に彩色した地図
各大陸の高度別面積の割合(理科年表1958年版より)[139]
高度 全大陸 アジア[A] ヨーロッパ[B] アフリカ 北アメリカ 南アメリカ オーストラリア[C] 南極大陸
% % % % % % % %
200m未満 25.3 24.6 52.7 9.7 29.9 38.2 39.3 6.4
200〜500m 26.8 20.2 21.2 38.9 30.7 29.8 41.6 2.8
500〜1000m 19.4 25.9 15.2 28.2 12.0 19.2 16.9 5.0
1000〜2000m 15.2 18.0 5.0 19.5 16.6 5.6 2.2 22.0
2000〜3000m 7.5 5.2 2.0 2.7 9.1 2.2 0.0 37.6
3000〜4000m 3.9 2.0 0.0 1.0 1.7 2.8 0.0 26.2
4000〜5000m 1.5 4.1 0.0 0.0 0.0 2.2 0.0 0.0
5000m以上 0.4 1.1 0.0 0.0 0.0
平均高度 (m) 875 960 340 750 720 590 340 2200
注釈
  1. ^ カフカスを含む。
  2. ^ カフカスを除く。
  3. ^ ニューギニアなどを含む。

最高地点と最低地点

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世界を7つに区分した各大州の最高地点(最高峰)と最低地点(海抜高度)を以下の表に示す。

大州 最高地点 最低地点 平均高度 (m)
最高点 標高 (m) 国・地域 最低点 標高 (m) 国・地域
アジア エベレスト 8,848 中華人民共和国の旗 中国
ネパールの旗 ネパール
死海 -422 イスラエルの旗 イスラエル
パレスチナ国の旗 パレスチナ
ヨルダンの旗 ヨルダン
950
南アメリカ アコンカグア 6,962 アルゼンチンの旗 アルゼンチン カルボン湖 -105 アルゼンチンの旗 アルゼンチン 600
北アメリカ デナリ 6,190 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ヤコブスハブン氷河
圏谷下部)[a]
-1,512 グリーンランドの旗 グリーンランド 700
アフリカ キリマンジャロ 5,895 タンザニアの旗 タンザニア アッサル湖 -155 ジブチの旗 ジブチ 750
ヨーロッパ エルブルス山[b] 5,642 ロシアの旗 ロシア カスピ海 -28 アゼルバイジャンの旗 アゼルバイジャン
イランの旗 イラン
カザフスタンの旗 カザフスタン
トルクメニスタンの旗 トルクメニスタン
ロシアの旗 ロシア
340
南極大陸 ヴィンソン・マシフ 4,892 南極の旗 南極 ベントリー氷河底地溝[a] -2,540 南極の旗 南極 2,350
オセアニア プンチャック・ジャヤ 4,884 インドネシアの旗 インドネシア エーア湖 -15 オーストラリアの旗 オーストラリア 350
注釈
  1. ^ a b これらの北アメリカと南極大陸の最低地点は、厚さ数キロメートルの氷河に覆われている。地表が露出した地点に限れば、北アメリカではデスヴァレー(-86メートル)が、南極大陸ではベストフォードヒルズ英語版(-50メートル)の湖が、これに該当する。
  2. ^ ヨーロッパとアジアの地質学的境界をパラテーチス海英語版の名残りであるクマ=マヌィチ窪地に求める意見もある。この意見に則った場合、エルブルス山があるコーカサス山脈はアジアの領域に入るため、ヨーロッパの最高地点はグライアンアルプスモンブラン(4,810メートル)となる。

地球科学

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学説史

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パンゲアの分裂以後の大陸の移動

1910年代、ドイツの気象学者・地球物理学者アルフレート・ヴェーゲナーは、世界地図の大陸の配置を観察して、南アメリカ大陸の東海岸線がアフリカ大陸の西海岸線とぴったり一致しているように見えることに気づいた[140]。彼よりもずっと前から同様の着想を得ていた学者はアブラハム・オルテリウス[141]アントニオ・スナイダー=ペレグリニ英語版など何名かいたが、この観察結果を利用して大陸移動説(大陸漂移説)を提唱する学術論文を発表し、著書『大陸と海洋の起源』を上梓して[141]、世界的に有名な学説に押し上げたのは、彼が最初の一人といえる[142]。当時、彼の唱えた学説は、第二紀の初めに超大陸パンゲアが分裂して以来、その結果として生じた大陸塊が地球の表面に沿って漂流しているというものだった。

大陸と海洋底を構成する主要なプレート

1960年代に大西洋中央海嶺周辺の古地磁気異常の発見[143]や深海底の掘削調査から、海洋底が中央海嶺の両側へ拡大していくという海洋底拡大説が提唱された[144]。現在は大西洋を隔てて向かい合う東西の2つの大陸が、元々は中央海嶺付近で互いに接しており、海洋底の拡大とともに分裂して移動した科学的証拠が示されたのである[145]

こうして、大陸が地質学的な時間スケールで地球の表面を移動するという学説は、20世紀中に広く受け入れられるようになった。この大陸移動のメカニズムは、今日ではプレートテクトニクスによって説明される。同理論によると、現在の地球の表面は十数枚の主要なプレートと数十枚のマイクロプレート英語版で覆われており[146][147]マントル対流にのって硬いプレート(リソスフェア)が球面上で回転するように移動するとされる[148][149][150]。プレートの移動によって地球表面の大陸が離合集散を繰り返す一連の過程は、超大陸サイクルと呼ばれる[151][152]。そのうち、超大陸が分裂して海ができ、やがてその海が閉じ始めて再び超大陸が形成される過程(内転パターン)をウィルソンサイクルという[152][153]

地史

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約16億年前の超大陸コロンビア

上記の学説から導き出される帰結として、地質学的なスケールで見ると、大陸の数や大きさは様々に変化する。

地質学的な過去には、古大陸 (paleocontinentと呼ばれる、現在とは別の諸大陸が存在した。また、地球の歴史上、地表に巨大な大陸が1つしか存在しなかった時代があったことが明らかになっており、そのような超大陸は少なくとも3回[注 2]形成されたことが明らかとなっている[155]

最古の超大陸コロンビア[156]は、ローレンシアバルティカシベリアアマゾニアを含む[157]太古代から原生代初期にかけての地球上のクラトンのほとんどが集まって[157]、約18億年前から16億年前に形成され[155]、約15億年前から約14億年前に分裂が始まった[158]と考えられている。

約9億年前の超大陸ロディニア

次の超大陸ロディニアは、グレンビル造山運動英語版によって約10億年前から9億5000万年前までに形成され[158]、約8億年前から約7億年前にかけて[159]、おそらく大規模なマントル上昇流による大陸地殻の隆起および水平方向への引き伸ばし(リフティング)によって分裂したのではないか[159]と考えられている。この上昇流が新しい海嶺と海洋底(古太平洋)を生むと同時に、ローレンシア大陸から東ゴンドワナ大陸英語版が分離し、やがて西ゴンドワナ大陸英語版と衝突して汎アフリカ造山帯英語版を形成し、両大陸が集まってゴンドワナ(後述するゴンドワナと区別するため、別名パノティアともいう)をなしたと考えられている[159]

ロディニアから分裂したゴンドワナ、ローレンシア、シベリア、バルティカの各大陸は、やがて移動し集合していき、約3億年前の石炭紀に再び合体して、南北に延びる超大陸パンゲアの原形が形成され始め、2億4000万年前の三畳紀になる頃には、その輪郭が明瞭になった[160]。パンゲアの北半分はローラシアと呼ばれ、現在の北アメリカ大陸ユーラシア大陸の領域に相当し、南半分はゴンドワナと呼ばれ、現在のアフリカ大陸南アメリカ大陸南極大陸オーストラリア大陸インド亜大陸に相当する[161]

約2億年前の超大陸パンゲア

約1億8000万年前から1億7000万年前の中生代ジュラ紀の頃、ゴンドワナは大陸地殻のリフティングによって分裂を開始した[162]。まず、1億3000万年前にアフリカ大陸と南アメリカ大陸が分裂し、次に1億2000万年前に南極大陸とオーストラリア大陸からインド亜大陸が分裂し始め、最後に約1億年前から南極大陸とオーストラリア大陸が分裂し始めた[162]。さらに、約8300万年前からジーランディアがゴンドワナから分裂し始めたが、徐々に沈降していき、現在では大部分が海中に沈んで水没大陸となっている[127]

「次の超大陸」は、現在から約2億5000万年後に出現すると予測されているが、さまざまな大陸移動のシナリオが提唱されており、主なものとして4つの説が知られている[163]。一つ目は、アメリカの地質学者クリストファー・スコテーゼ英語版が提唱したパンゲア・ウルティマ(「パンゲアの最終形」の意)[164]、二つ目は、イギリスの地球物理学者ロイ・リバモアが1990年代末に提唱したノヴォ・パンゲア英語版(「新しいパンゲア」の意)[165]、三つ目は、カナダの地質学者ポール・ホフマン英語版が1990年代初頭に提唱したアメイジア(「アメリカ+アジア」の合成地名)[166]、そして四つ目は、リスボン大学(当時)の研究者ジョアン・ドゥアルテが提唱したオーリカ(「オーストラリア+アメリカ」の合成地名)である[166]

地質

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地球科学者たちは、固体地球英語版の表層部は、その化学組成英語版の違いや地球物理学的な性質から、2種類の異なる地殻で構成されると考えている[167]。主に上部が花崗岩質、下部が玄武岩質の岩石で構成される、安山岩質の平均組成をもつ、厚さ30 kmから40 kmほど[注 3]大陸地殻と、より厚さの薄い玄武岩質の海洋地殻である[3][注 4]。地質学によって定義される大陸地殻は、六大陸のほか、グリーンランドのような、日本列島のような島弧、セーシェル諸島のような海台を含む、地形的な広がりを見せている[168]

地殻の模式図: 1. 大陸地殻 2. 海洋 3. 上部マントル 4. 海洋地殻

地殻アイソスタシーによって密度の高いマントルの上に浮いている[172]。そのうち大陸地殻は海洋地殻と比較して、ケイ素などの軽い元素に富み、などの重い元素に乏しい[173]ため、厚くて密度が小さく[注 5]、海洋地殻よりも高地をなす[3][173]。このことは、なぜ大陸が深海盆底に囲まれた高い地形を形成するのかを説明している[174][175]。地表の総面積の7割は海洋であるが、地殻の量的には、むしろ大陸地殻が海洋地殻よりも圧倒的に多く、体積比で約7倍、質量比で約4倍の差がある[176]

大陸を大陸地殻と定義するならば、大陸と海洋の境界は海面下にあり、その境界部分は地形や地質構造の変化が大きい[177]。深海底または深海平原と大陸とを分かつ海底部分である[178]大陸縁辺部英語版は、水深6000メートル超の海溝があり[177]地震火山活動が活発な活動的縁辺部英語版(太平洋型)と、不活発な非活動的縁辺部(大西洋型)とに大別される[178][179]

活動的縁辺部 (active marginは、陸側から大陸棚大陸斜面、海溝底に落ち込む海溝陸側斜面(大陸斜面の基部)[179]、非常に深い海溝、深海盆底の順に配列し[177]、大陸同士の衝突帯英語版沈み込み帯による造山運動によって特徴づけられる。この太平洋型大陸縁辺部は、後背陸地側が島弧縁海からなるマリアナ型(島弧型)と、大陸縁弧になっているチリ型(陸弧型)とに分けられる[179]。このような活動的縁辺部に沿って、より軽い火山列や微小大陸が付加成長して、大陸は造山帯を形成する。例として、現在の東アジアは、シベリア剛塊の南側と東側に大陸塊や島弧が次々に衝突し、堆積物が付加することで成長して形成されてきたとされる[180]

大西洋型大陸縁辺部の地質構造の模式図
  堆積物
  岩石
  マントル

一方、非活動的縁辺部[注 6] (passive marginは、浅く平坦な大陸棚、狭い大陸斜面、より傾斜の緩やかなコンチネンタルライズ英語版から深海平原へと続いている[177]。伸張によって薄く引き伸ばされた[182]大陸地殻は、標高が低くなって[182]海面下に大陸棚を形成し、大陸棚は堆積物で覆われた緩やかな斜面で先細りになり、その先の海洋地殻と接続している。ほとんどの非活動的縁辺部は、最終的には活動的縁辺部に移行する。

原生代以前に形成されたクラトンの分布図

太古代から原生代にかけて形成[183]されて以来、数十億年間[184]造山運動の影響をほとんど受けていない、古い安定した陸塊をクラトン[注 7](別名:安定地塊、安定大陸、剛塊)という[185][187]。典型的には、クラトンは楯状地とその周りを囲む平坦なプラットフォーム(卓状地)で構成される。楯状地は、古い結晶質の基盤岩(15億年から38億年前のもの)が広範囲に地表に露出した地域である。楯状地の周りを囲むプラットフォームも、古い基盤岩から成るが、より新しい堆積岩に覆われている[188]。大陸は付加体地殻の「いかだ」に喩えられ、密度の高い玄武岩質の海洋地殻が約2億年ほどで沈み込む[177]のとは違って、プレートテクトニクスによりプレートが沈み込む過程で破壊されることを免れている。大陸クラトンを構成している岩石の年代の古さ(少なくとも5億年から40億年前)は、このことを物語っている[189]

大陸地殻でできているが、クラトンを含まない微小大陸や大陸断片英語版は数多くある。これらの中には、ゴンドワナ大陸などの古い安定大陸の断片であるものもあり、ニュージーランドニューカレドニア英語版を含むジーランディア[190]マダガスカル島、およびセーシェルを含む北マスカリン海台などは、その例である。カリブ海にあるいくつかの島のように、花崗岩が組成の大部分を占める島もあるが、すべての大陸は花崗岩と玄武岩の両方の地殻を含んでおり、このような定義ではどの島が微小大陸とみなされるのか、明確な境界はない。たとえば、ケルゲレン海台は大部分が火成岩であるが、ゴンドワナランドの分裂に関連しており、微小大陸とみなされている[191][192]。一方、同じく火成岩からなるアイスランドハワイはそうではない。ブリテン諸島セイロン島ボルネオ島ニューファンドランド島は、かつてのローラシア大陸の縁辺部に位置し、その縁辺部を満たす内海によって、大陸塊本体から隔てられているだけである。

関連する概念

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超大陸

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超大陸アフロ・ユーラシア

現在の大陸とは別に、大陸という用語の範囲と意味には、過去の地質時代の大陸も含まれる。超大陸: supercontinent)は、主として地質学的記録の早い時期に存在した証拠が確認されており、世界の安定陸塊または大陸核の大部分を構成する陸塊である。超大陸の厳密な定義はないが、地球上のすべて、あるいは、ほとんど(目安として約70%以上[193])の大陸が同時に一箇所に集合して形成された大陸塊をいう[155][193]。年代の古い順に並べると、バールバラ大陸ケノーランド大陸[193]コロンビア大陸[193]ロディニア大陸[185]パノティア大陸[193]、そしてパンゲア大陸[185]が、これに含められる。これらの超大陸は、時間の経過とともに分裂し、現在の大陸を形成する大きな陸塊となった。

亜大陸

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インド亜大陸

地理的に他の地域とは区切られた大陸の一部分を亜大陸: subcontinent)と呼ぶことがある。特に厳密に定義された用語ではないが、異なるプレートに乗る陸地が大陸と接続しているような場合に用いられる。最も広く認められている例はインド亜大陸である[194]

このほか、アラビア半島南部アフリカなども亜大陸とみなされることがある[194]。また、北アメリカプレートの北東部にある世界最大の島であるグリーンランド島は、大陸と接続こそしていないが、比較的大きいために亜大陸といわれる場合がある。

さらに、南北アメリカ大陸を単一の大陸とみなす場合、2つの亜大陸―北アメリカ大陸南アメリカ大陸―がつながっているとの見方もできる。同様にユーラシア大陸ヨーロッパ大陸アジア大陸の2つの亜大陸から構成されているとみることもできる。

水没大陸

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太平洋に沈む最大の水没大陸ジーランディア

大陸地殻の一部の領域は、大部分が海中に沈んでおり、水没した大陸とみなされることがある。顕著な例としては、主にニュージーランドとニューカレドニアで海面上に姿を現しているジーランディア[195]や、ほぼ全部が海に沈んでいるインド洋南部のケルゲレン海台などが挙げられる。

微小大陸

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隆起したり移動したりして大陸塊本土から離れた大陸地殻の断片上に位置している一部の島は、比較的小さいため大陸とはみなされないが、微小大陸: microcontinent)とみなされることがある。最も大きな微小大陸の例に挙げられるマダガスカル島は通例、アフリカの島とみなされるが、その特徴的な分岐進化英語版により、生物学的観点から「第8の大陸」と呼ばれている。

大陸島

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地史的に大陸と陸続きになったことがある、大陸棚にある島は、島嶼生物学の用語で大陸島または陸島: continental island)と呼ばれる。グレートブリテン島日本列島などが、これに該当する。

金星と火星の大陸

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調査・研究が比較的進んでいる地球型惑星金星火星の地形について、地球の大陸に匹敵する大きさの高地には「大陸」(: terra)の名が付いている。

金星の地形については、金星探査機「マゼラン」に搭載された合成開口レーダーによる観測の結果[196]アフロディーテ大陸イシュタル大陸が発見され[196]ラダ大陸英語版と合わせて3つの大陸が知られている。火星の地形については、アラビア大陸英語版など、いくつかが知られている。

ただし、地質学的にみると、火星の地殻英語版を構成する岩石は玄武岩質で、これは地球でいう海洋地殻に相当し、大陸地殻は存在しないことが、火星探査機による火星表面の化学分析から分かっている[197]。金星についても、詳しいことは計画中の金星探査機「ヴェリタス英語版[198]などによる今後の調査と研究が待たれるが、ヒプソメトリック・カーブ英語版(地形の高度と面積の比を描いた曲線)が1つの極大しか示さないことから、金星表面の岩石も火星と同様に一様であろうと考えられている[199]

なお、金星と火星では、地球で見られる中央海嶺島弧海溝系のような線状の変動的な地形は見つかっていない[200]。これは、金星、火星ともにプレートテクトニクスが働いていないことを示唆している[201][202]

プレートテクトニクスが成立するには、表面に海すなわちが存在することが必須とされる[203]。海水が入り込むとプレートが割れやすく、プレートテクトニクスが作動しやすくなるためである[204]。現在の太陽系において、海と陸の両方を有する惑星は唯一、地球だけであると考えられている[205][206]

脚注

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注釈

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  1. ^ 読み仮名は筆者注。
  2. ^ これ以外にも、不確定ではあるが、30億年前までに誕生したといわれる超大陸ウル英語版、約25億年前に存在したとされる超大陸ケノーランド、原生代初期の超大陸ヌーナなどがある[154]
  3. ^ 大陸地域における平均的な値[168]。山岳地域(ヒマラヤアンデスなど)では60 km以上にも達するところがある[169]
  4. ^ ただし、これらの厚い地殻を構成していると考えられる岩石の種類は、岩石試料を直接採取可能な大陸地殻の表層部以外は、地震波速度の違いから間接的に確認されているにすぎない[170][171]
  5. ^ 海洋地殻の平均密度が約3.0 g/cm3であるのに対して、大陸地殻の平均密度は約2.7g/cm3と、明らかに小さい[173]
  6. ^ 受動的縁辺部ともいう[181]
  7. ^ この語は、特に太古代(始生代)のクラトンに限定して用いられることもある[185][186]

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参考文献

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関連文献

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外部リンク

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