ウポポイ
座標: 北緯42度33分37秒 東経141度21分55.9秒 / 北緯42.56028度 東経141.365528度
ウポポイ(Upopoy)は、北海道白老郡白老町にある「民族共生象徴空間」の愛称[1]。主要施設として国立アイヌ民族博物館、国立民族共生公園、慰霊施設を整備しており、アイヌ文化の復興・創造・発展のための拠点となるナショナルセンターである[2][3]。「ウポポイ」とはアイヌ語で「(おおぜいで)歌うこと」を意味している[4]。
沿革
[編集]1997年(平成9年)に「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律(アイヌ文化振興法)」(2020年(令和元年)廃止)が施行してアイヌ文化の伝承活動の裾野拡大に向けた取り組みを展開していたが、アイヌ文化の伝承者が少なくなり、アイヌ語や伝統工芸など存立の危機に直面している分野があるほか、アイヌの歴史や文化について日本国民の幅広い理解が進んでいないという基本的な課題も未だにある[5]。このような背景から2009年(平成21年)の「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」報告において「民族共生の象徴となる空間」の整備が提言され、アイヌ文化を復興・創造・発展させる拠点であり、先住民族の尊厳を尊重した多様な文化を持つ社会を築いていくための象徴として複合的な意義や目的を有する空間を整備することとなった[5]。
なお、当初の開業予定日は2020年(令和2年)4月24日であったが、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、同年5月29日に一旦開業を延期した[6]。その後も5月29日の開業予定を凍結し、新たな開業時期は未定とした[7][8]。地元住民を対象とした内覧会を開催後[9]、国土交通省は感染症対策の基本的対処方針や各種ガイドラインに基づく取組みを十分に講じた上で記念式典を7月11日に開催し、翌日の7月12日に開業すると発表した[10][11]。7月12日に開業してから半年後の入場者数は約20万人で、新型コロナウイルスの影響もあり目標の4割にとどまっている[12]。開業1年後の来場者数は目標の4分の1の約25万人であった[13]。
年表
[編集]- 2007年(平成19年):国際連合総会にて「先住民族の権利に関する国際連合宣言」採択[14]。
- 2008年(平成20年):衆議院・参議院において「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」を全会一致で採択[14]。
- 2009年(平成21年):「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」報告において「民族共生の象徴となる空間」の整備を提言[14]。
- 2014年(平成26年):「『民族共生の象徴となる空間』の整備及び管理運営に関する基本方針」を閣議決定。民族共生象徴空間を白老町に整備することが決定[14]。
- 2015年(平成27年):文化庁が国立のアイヌ文化博物館(仮称)基本計画を策定。
- 2016年(平成28年):民族共生象徴空間交流促進官民応援ネットワーク設立[15]。
- 2017年(平成29年):国立アイヌ民族博物館の基本設計概要を公表[16]。運営主体を「公益財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構」に指定[14]。
- 2018年(平成30年):アイヌ民族博物館(ポロトコタン)休館[17]。公益財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構と一般財団法人アイヌ民族博物館が合併し、公益財団法人アイヌ民族文化財団と名称変更[14]。民族共生象徴空間の愛称が「ウポポイ」に決定[4]。
- 2019年(令和元年):「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」施行。慰霊施設完成[18]。
- 2020年(令和2年):日本国内における2019新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2度の延期を経て[19][20][21]記念式典を7月11日に開催し、7月12日に開業[22][23]。水曜日のカンパネラのコムアイが歌うテレビCMが放映された[24]。
利用案内
[編集]- 開園時間(国立アイヌ民族博物館・国立民族共生公園)
- 平日:9:00 - 18:00
- 休日:9:00 - 20:00
- 夏期:9:00 - 20:00
- 冬期:9:00 - 17:00
- 公開時間(慰霊施設)
- 夏期:9:00 - 17:00
- 冬期:9:00 - 16:00
- 閉園日(国立アイヌ民族博物館・国立民族共生公園・慰霊施設)
- 月曜日(祝日または休日の場合は翌日以降の平日)
- 年末年始(12月29日から1月3日)
- 入場料
- 大人(一般):1,200円
- 大人(団体):960円
- 高校生(一般):600円
- 高校生(団体):480円
- 中学生以下:無料
- 障がい者手帳等提示:無料(介護者1名無料)
- 年間パスポート:大人(一般)2,000円、高校生(一般)1,000円
主要施設
[編集]国立アイヌ民族博物館
[編集] 国立アイヌ民族博物館 National Ainu Museum | |
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施設情報 | |
専門分野 | アイヌ文化 |
館長 | 佐々木史郎 |
事業主体 | 公益財団法人アイヌ民族文化財団 |
管理運営 | 公益財団法人アイヌ民族文化財団 |
建物設計 | 久米設計[26] |
延床面積 | 8,618.04 m²[26] |
開館 | 2020年7月12日 |
所在地 |
〒059-0902 日本 北海道・白老郡白老町若草町2丁目3-2 |
位置 | 北緯42度33分37秒 東経141度21分55.9秒 / 北緯42.56028度 東経141.365528度 |
最寄駅 | 白老駅 |
最寄IC | 白老IC |
外部リンク | 国立アイヌ民族博物館 |
プロジェクト:GLAM |
アイヌの歴史とアイヌ文化を主題とした日本国内初の国立博物館。
概要
- 1階
- 総合案内
- シアター
- 交流室
- ミュージアムショップ
- ライブラリ
- 2階
- パノラミックロビー
- 基本展示室
- 特別展示室
国立民族共生公園
[編集]国立民族共生公園は、自然の中で培われてきたアイヌ文化を五感で感じることができる体験型フィールドミュージアムとなっている。いざないの回廊、歓迎の広場、エントランス棟は入場料を支払わなくても利用可能なエリアであり、エントランス棟にはアイヌ工芸品を扱うショップ、レストランやカフェがある。
概要
- 体験交流ホール
- 体験学習館
- 工房
- 伝統的コタン
- いざないの回廊
- 歓迎の広場
- エントランス棟
- チキサニ広場
-
体験学習館
-
工房
慰霊施設
[編集]ポロト湖東側の高台にあり、中核区域にある国立アイヌ民族博物館や国立民族共生公園からは約1,200 m離れている。
大学が研究目的で盗掘したアイヌの遺骨や副葬品などについて、関係者の理解や協力の下で集約し、アイヌの人々による尊厳ある慰霊の実現およびアイヌの人々による受入体制が整うまでの間に適切な管理を行うための施設となっている[27][28]。
概要
- 墓所(外観のみ公開)
- 慰霊行事施設
- モニュメント
関連区域
[編集]関連区域は、中核区域(国立アイヌ民族博物館・国立民族共生公園)の周辺にあり、中核区域と一体となってアイヌ文化を体験することができる広域的なフィールドミュージアムの機能を有する区域である[5]。
アクセス・駐車場
[編集]- 札幌市内・登別温泉から道南バス「高速おんせん号」または新千歳空港から道南バス「高速登別温泉エアポート号」で「ウポポイ前」バス停下車
- 白老駅北口から徒歩約10分、または白老町交流促進バスで「民族共生象徴空間 ウポポイ前」バス停下車
- 駐車場
- 普通車第1駐車場(場内):246台
- 普通車第2駐車場(白老駅北):311台
- 普通車臨時駐車場
- 大型バス第1駐車場:50台
- 大型バス第2駐車場:38台
- 駐輪場
- 慰霊施設普通車駐輪場:66台
脚注
[編集]- ^ “寒風の中 サケずらり アイヌ伝統の保存食作り”. 産経ニュース (2021年12月13日). 2021年12月13日閲覧。
- ^ “文化復興で課題浮上 ウポポイ 開業から10日 白老”. 苫小牧民報. (2020年7月22日) 2020年8月6日閲覧。
- ^ “ウポポイについて”. ウポポイ公式サイト (2020年). 2020年8月6日閲覧。
- ^ a b “アイヌ文化との共生拠点、愛称は「ウポポイ」”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2018年12月12日) 2020年6月29日閲覧。
- ^ a b c “民族共生の象徴となる空間”. 内閣官房アイヌ総合政策室. 2020年6月30日閲覧。
- ^ “ウポポイ開業、5月29日に延期 政府が発表”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (2020年4月8日). オリジナルの2020年4月8日時点におけるアーカイブ。 2020年4月8日閲覧。
- ^ “ウポポイ再延期 国交相「時期はあらためて検討」 6月中に町民向け内覧会”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (2020年5月8日). オリジナルの2020年6月24日時点におけるアーカイブ。 2020年6月25日閲覧。
- ^ “アイヌ文化発信拠点「ウポポイ」開業再延期 国交省 コロナ影響”. NHK NEWS WEB. 日本放送協会 (2020年5月8日). 2020年5月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月8日閲覧。
- ^ “白老 ウポポイ内覧会始まる、開業へ高まる期待”. 苫小牧民報 (北海道ニュースリンク協議会). (2020年6月9日) 2020年6月30日閲覧。
- ^ “ウポポイ 開業は7月12日 開園記念式典11日に”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (2020年6月19日). オリジナルの2020年6月24日時点におけるアーカイブ。 2020年6月25日閲覧。
- ^ “北海道の「ウポポイ」7月12日開業、2度の延期経て”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2020年6月19日) 2020年6月19日閲覧。
- ^ ウポポイ開業半年、入場者数は目標の4割 コロナが影響:朝日新聞デジタル、2021年1月14日(2021年7月11日閲覧)
- ^ ウポポイ開業1年 来場者数は目標の4分の1 コロナの影響大きく. 毎日新聞(2021年7月12日). 2021年12月12日閲覧
- ^ a b c d e f “ウポポイについて”. ウポポイ(民族共生象徴空間). 2020年6月30日閲覧。
- ^ “民族共生象徴空間交流促進官民応援ネットワーク | AKARENGA(あかれんが)”. 2020年6月30日閲覧。
- ^ “国立アイヌ民族博物館建設(北海道白老町)/基本設計完了、17年度着工へ”. 日刊建設工業新聞 (日刊建設工業新聞社). (2017年3月31日) 2020年6月29日閲覧。
- ^ “ポロトコタン・アイヌ民族博物館 休館のお知らせ” (PDF). 一般財団法人アイヌ民族博物館 (2017年6月). 2019年9月12日閲覧。
- ^ “ウポポイ(民族共生象徴空間)慰霊施設”. 北海道開発局. 2020年6月30日閲覧。
- ^ 『「民族共生象徴空間」(愛称:ウポポイ)の開業及び開園記念式典の延期について』(PDF)(プレスリリース)国土交通省、2020年4月7日 。2020年6月30日閲覧。
- ^ 『「民族共生象徴空間」(愛称:ウポポイ)の開業及び開園記念式典の延期について』(PDF)(プレスリリース)国土交通省、2020年5月8日 。2020年6月30日閲覧。
- ^ 『「民族共生象徴空間」(愛称:ウポポイ)の開業及び開園記念式典について』(PDF)(プレスリリース)国土交通省、2020年6月19日 。2020年6月30日閲覧。
- ^ “菅氏、3カ月半ぶり出張 アイヌ文化で観光アピール”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2020年7月11日) 2020年7月12日閲覧。
- ^ “アイヌ文化施設「ウポポイ」開業 宇梶剛士もPR”. nikkansports.com. 共同通信社 (日刊スポーツ新聞社). (2020年7月12日). オリジナルの2020年7月12日時点におけるアーカイブ。 2020年11月3日閲覧。
- ^ 「ウポポイ、ウポポイ~」と歌うウポポイ(民族共生象徴空間)のCMソングは? - CDJournal(2020年10月6日)2020年10月21日閲覧
- ^ ウポポイ開業セレモニー開催―宇梶剛士さんAKB48坂口渚沙さんらが出演 - 北海道ファンマガジン
- ^ a b “国立アイヌ民族博物館完成 ~北海道初の国立博物館が完成しました~” (PDF). 国土交通省. 2020年6月30日閲覧。
- ^ “北海道・アイヌ民族の遺骨 故郷の土に返したい:東京新聞 TOKYO Web”. 東京新聞 TOKYO Web. 2022年3月8日閲覧。
- ^ “施設情報 - 慰霊施設”. ウポポイ(民族共生象徴空間) NATIONAL AINU MUSEUM and PARK. 2022年3月8日閲覧。
- ^ “ポロト自然休養林”. 林野庁. 2020年7月1日閲覧。
関連文献
[編集]- 「特集:ウポポイの/での研究」『境界研究』第12号、スラブ・ユーラシア研究センター、2022年、2024年5月18日閲覧。
関連項目
[編集]- 野外博物館
- 日本における2019年コロナウイルス感染症による社会・経済的影響
- 宇梶剛士・坂口渚沙 - PRアンバサダー。
- TEAM NACS - オフィシャルサポーター。
- ウポポイオータムスプリント
外部リンク
[編集]- ウポポイ(民族共生象徴空間)
- ウポポイ(民族共生象徴空間)National Ainu Museum & Park (upopoy) - Facebook
- ウポポイ(民族共生象徴空間) (@ainumuseumpark) - Instagram
- ウポポイ民族共生象徴空間 - YouTubeチャンネル
- 公益財団法人アイヌ民族文化財団 公式サイト
- 『ウポポイ』 - コトバンク