コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

赤石岳

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
小赤石岳から転送)
赤石岳
千枚岳から望む赤石岳
標高 3,120.53[1] m
所在地 日本の旗 日本
位置 北緯35度27分40秒 東経138度09分26秒 / 北緯35.4611度 東経138.1572度 / 35.4611; 138.1572座標: 北緯35度27分40秒 東経138度09分26秒 / 北緯35.4611度 東経138.1572度 / 35.4611; 138.1572}
山系 赤石山脈
種類 氷食尖峰隆起
赤石岳の位置(日本内)
赤石岳
赤石岳 (日本)
赤石岳の位置(長野県内)
赤石岳
赤石岳 (長野県)
赤石岳の位置(静岡県内)
赤石岳
赤石岳 (静岡県)
プロジェクト 山
テンプレートを表示

赤石岳(あかいしだけ)は赤石山脈長野県静岡県にまたがる標高3,120.5 mである[2][注釈 1]南アルプス国立公園内にあり[3]日本百名山[4]及び新日本百名山[5]に選定されている。

概要

[編集]

北岳間ノ岳悪沢岳に次いで、南アルプスで4番目の高さである。山頂には一等三角点(点名が「赤石岳」)が設置されており[1]、一等三角点としては最高所のものとなっている[6][注釈 2]。山頂直下の南に赤石岳避難小屋があり、約700 m北に小赤石岳のピークがある。

稜線の東側斜面にはいくつかの圏谷が見られ、これは日本国内では最南端の氷河の痕跡である[7]。南西斜面には「ゴーロ帯」と呼ばれる岩石氷河の地形が見られる[8]。山頂付近では線状凹地が見られる[9]。山体は輝緑凝灰岩火砕岩などから構成される[6]。また、小赤石岳から赤石岳山頂にかけては森林限界ハイマツ帯で、多くの高山植物のお花畑が広がっていて、ライチョウの生息地となっている。山域にも分布する赤石山脈が和名の由来である「アカイシリンドウ」[6]は、環境省レッドリストの絶滅危惧IB類(EN)の指定を受けている[10]亜高山帯には、ダケカンバシラビソトウヒツガなどの原生林が広がる[6]ニホンカモシカツキノワグマニホンジカなどの哺乳類が生息する。静岡県側の周辺の山域は、特種東海製紙の井川社有林となっている[11]

山名の由来

[編集]

山腹の南斜面は大井川支流赤石沢の源流になっている。山名は赤石沢に多い山体の一部を構成する赤色のラジオラリアチャート岩盤に由来し、明治以降に称されるようになったとされている[6][12][13]。なお、異説として山全体が他の山に比べて赤く見えることに由来するという説もある[13]

赤石山脈の名はこの山から転用されたものである。1820年文政3年)の『駿河記』で「赤石嶽」と表記されていた[6]。日本の天文学者の秋山万喜夫は、1999年2月5日に発見した小惑星に「赤石岳」と命名している。

登山

[編集]

明治時代には地質学者のハインリッヒ・エドムント・ナウマン植物学者の河野齢蔵ウォルター・ウェストン小島烏水などが登頂している[14]1957年(昭和32年)に第12回静岡国体の登山部門が南アルプスが会場になって以降、この山域への登山者が増加した[15]

歴史

[編集]

登山ルート

[編集]

各方面からの登山道が開設されている[20]

  • 南アルプス縦走ルート - 赤石山脈の主稜線に沿った登山道。北側からは塩見岳、三伏峠、小河内岳、高山裏避難小屋、荒川中岳、荒川小屋、大聖寺平(だいしょうじだいら)、小赤石岳を経て赤石岳に致る。南側からは聖平、聖岳兎岳、百間平、赤石岳岳避難小屋を経て、赤石岳に至る。
  • 椹島ロッジ(さわらじま)からのルート - 椹島ロッジから千枚岳の南尾根の清水平、蕨段、駒鳥池を通り、千枚小屋、千枚岳、悪沢岳、中岳避難小屋、荒川中岳を経て荒川前岳で赤石山脈の主稜線に合流する。
  • 赤石岳東尾根からのルート - 椹島ロッジから赤石岳東尾根(大倉尾根)の赤石小屋、富士見平、ラクダの背を経て小赤石岳と赤石岳との鞍部で赤石山脈の主稜線に合流する。
  • 小渋川からのルート - 天竜川支流小渋川を何度も渡渉し、広河原小屋、船窪を経て、大聖寺平で赤石山脈の主稜線に合流する。
  • しらびそ峠からのルート - しらびそ峠から林道経由で天竜川支流の遠山川の北股沢の大沢渡を渡渉し、大沢山荘、唐松峠を経て大沢岳で赤石山脈の主稜線に合流する。
上河内岳から望む赤石岳、山頂部に赤石岳避難小屋がある

周辺の山小屋

[編集]

南アルプスの南部の大部分は特種東海製紙の所有地となっており、多くの山小屋はすべて特種東海製紙の子会社である特種東海フォレストが運営管理している[21]畑薙第一ダムから椹島(さわらじま)ロッジ及び二軒小屋ロッジの登山口までの区間で、特種東海フォレストがリムジンバスを運行している。名目上は特種東海フォレスト経営の各宿泊施設の「送迎バス」という扱いになっている。大部分の山小屋で、営業期間外は、緊急避難用として、一部が開放されている。

名称 所在地 収容
人数
キャンプ
指定地
備考
赤石小屋 赤石岳の東尾根の富士見平の下 100 テント15張  
赤石岳避難小屋 赤石岳南の山頂直下 40
荒川小屋 荒川前岳と小赤石岳との鞍部 100 テント30張
百間洞山の家 赤石岳と大沢岳との鞍部の百間洞上部 60 テント20張
椹島ロッジ 大井川の東俣林道の標高1,120mの椹島登山口 200 テント20張 入浴施設あり
広河原小屋 小渋川の最上部の大聖寺平への尾根の取付 30 テント5張 無人

地理

[編集]
上空から望む南アルプス、左下に赤石岳
恵那山から望む南アルプス(左から荒川岳赤石岳大沢岳、中盛丸山、兎岳聖岳上河内岳)と富士山(聖岳と上河内岳との間の稜線越し)

日本で7番目に高い山であり、赤石山脈(南アルプス)で4番目に高い山である。

周辺の山

[編集]

赤石山脈の主稜線の南部にある。北側から延びる主稜線は、山頂で西南西に向きを変え大沢岳へと延びる。山頂の北側0.7 kmには、小赤石岳(標高 3,081 m)の小ピークがある。北側にある荒川岳との鞍部は大聖寺平と呼ばれている。小赤石岳と赤石岳の間から東側に尾根(大倉尾根)が延びる[22]。西側の大沢岳との間にある平坦な地点は百間平と呼ばれ、隆起準平原の地形が見られる[15]

山容 山名 標高[23]
(m)
三角点等級
基準点名[1]
赤石岳からの
方角と距離(km)
備考
赤石岳から望む荒川三山(右端が悪沢岳) 悪沢岳 3,141 北北東 4.9 日本百名山
荒川岳から望む小赤石岳 小赤石岳 3,081 北北東 0.7
聖岳から望む赤石岳 赤石岳 3,120.53  一等
「赤石岳」
0 日本百名山
赤石岳から望む山並み、左から兎岳、小兎岳、中盛丸山、大沢岳 大沢岳 2,819.84  三等
「大沢岳」
西南西 3.6
小兎岳から望む兎岳 兎岳 2,818 (三等)「兎岳」
2799.80 m
南西 4.9
赤石岳登山道の東尾根(大倉尾根)から望む聖岳と兎岳 聖岳 3,013 南南西 4.6 日本百名山
奥聖岳から望む笊ヶ岳と富士山 笊ヶ岳 2,629.39  二等
「笊ケ岳」
南南東 10.1 日本二百名山
赤石岳からの雲海に浮かぶ富士山と朝焼け 富士山 3,776.24[24] (二等)「富士山」
3,775.63 m
東 53.0 日本の最高峰
日本百名山

源流の河川

[編集]

以下の源流となる河川は、太平洋へ流れる。渓谷部にはイワナアマゴなどが生息する。

交通・アクセス

[編集]

赤石岳の山容

[編集]

赤石岳登山

[編集]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ GNSS測量等の点検・補正調査による2014年4月1日の国土地理院『日本の山岳標高一覧-1003山-』における改定値。なお、旧版での標高は3,120m。
  2. ^ 一等三角点のある日本一低い山は、蘇鉄山である。

出典

[編集]
  1. ^ a b c 基準点成果等閲覧サービス”. 国土地理院 (2014年3月13日). 2014年6月24日閲覧。 “基準点コード TR15338115201(標高改算 20140313)”
  2. ^ “標高値を改定する山岳一覧 資料1”. 国土地理院. https://www.gsi.go.jp/common/000091072.pdf 2014年3月26日閲覧。 
  3. ^ a b 南アルプス国立公園”. 環境省. 2010年12月13日閲覧。
  4. ^ a b c 深田久弥『日本百名山』朝日新聞出版、1982年7月、311-314頁。ISBN 4-02-260871-4 
  5. ^ 岩崎元郎『新日本百名山登山ガイド・下』山と溪谷社、2006年4月、76-79頁。ISBN 4-635-53047-7 
  6. ^ a b c d e f g 日本山岳会『新日本山岳誌』ナカニシヤ出版、2005年11月、1060-1061頁。ISBN 4-779-50000-1 
  7. ^ 赤石岳周辺”. 静岡市. 2016年11月19日閲覧。
  8. ^ 岩石氷河”. 静岡市. 2016年11月19日閲覧。
  9. ^ 線状凹地”. 静岡市. 2016年11月19日閲覧。
  10. ^ 絶滅危惧情報”. 環境省 (2007年8月). 2012年8月27日閲覧。
  11. ^ 井川社有林”. 特種東海製紙. 2012年8月27日閲覧。
  12. ^ a b 徳久球雄 編『コンサイス日本山名辞典』(修訂版)三省堂、1992年10月、4頁。ISBN 4-385-15403-1 
  13. ^ a b 〈改訂版〉南アルプス学・概論”. 静岡市. 2019年10月2日閲覧。
  14. ^ a b 『日本の山1000』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1992年8月、460-461頁。ISBN 4635090256 
  15. ^ a b 山下春樹『赤石・聖・荒川三山を歩く』山と溪谷社、1998年7月15日、138-139 頁。ISBN 4-635-17121-3 
  16. ^ a b c 山と溪谷社 編『目で見る日本登山史(日本登山史年表)』山と溪谷社、2005年10月、7,8,14 頁。ISBN 4-635-17814-5 
  17. ^ a b c 『日本三百名山』毎日新聞社、1997年3月、243頁。ISBN 4620605247 
  18. ^ ウォルター・ウェストン 著、岩波文庫 編『日本アルプスの登山と探検』山と溪谷社、2005年10月、373 頁。ISBN 4-00-334741-2 
  19. ^ a b 菊地俊朗 「ウェストンが来る前から、山はそこにあった」 信濃毎日新聞社
  20. ^ 南アルプス登山情報”. 静岡市. 2016年11月19日閲覧。
  21. ^ 平成28年度 南アルプス登山観光情報” (PDF). 静岡市. 2016年11月19日閲覧。
  22. ^ 『塩見・赤石・聖岳』昭文社山と高原地図〉、2012年3月16日。ISBN 978-4398758415 
  23. ^ 日本の主な山岳標高(静岡県)”. 国土地理院. 2012年8月27日閲覧。
  24. ^ 富士山情報コーナー”. 国土交通省富士砂防事務所. 2012年8月27日閲覧。

参考文献

[編集]

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]