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逆川 (水戸市)

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
逆川


逆川。小門橋から見た下流。
水系 一級水系 那珂川
種別 一級河川
延長 5.8(又は6) km
流域面積 10.3(又は11.2。又は約12) km2
水源 東山団地調整池
河口・合流先 桜川
流域 茨城県水戸市
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逆川(さかさがわ)は、茨城県水戸市を流れるである。

概要

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水戸市を流れる逆川は一級水系那珂川に含まれるである[1][注釈 1]。那珂川に合流する桜川の右支川で、茨城県が一級河川として管理している[1]。総延長は5.8キロメートル、流域面積は10.3平方キロメートルで、全域が水戸市内に収まる[3]。(流域面積11.2平方キロメートルとする資料[4]、延長6キロメートル・流域面積約12平方キロメートルとする資料もある[5][6]。)

流域には史跡笠原水道や、水辺を巡る木造の遊歩道などを設けた逆川緑地がある[7][8][9]

"逆川"の名の由来として、付近の他の川が東やに流れるのに対し、この川はに流れていることがひとつの説としてあげられている。他に那珂川が大で増水した水が逆川まで逆流してきた出来事に由来しているとの説もある[3][10]

現在の流路と周辺

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逆川(水戸市)[11]・概略図
Spring
東山団地調整池
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笠原・東野線/市道橋
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名称不明の橋
jbippan
第3米沢橋
jbken
県道50号/中水門橋
Normal
県庁
jbippan
第2米沢橋
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笠原・萱場線/笠原橋
jbkoku
国道50号バイパス/米沢高架橋・逆川橋
jbippan
米沢橋
jbken
県道235号/新米沢橋
Normal
逆川緑地(新米沢橋付近から本郷橋までの範囲)
jbippan
塩橋
Normal
笠原水道
jbippan
水神橋
jbippan
小門橋
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ふれあい橋
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千波・御茶園線(御茶園通り)/本郷橋
jbippan
南町・千波線(さくら通り)/逆川橋
jbippan
舟付橋
Normal
県民文化センター
Normal
県近代美術館
Normal
市役所
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駅南線(駅南通り)/駅南中橋
jbippan
駅南出合橋
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桜川

現在の逆川の源流は水戸市東野町の県営東山アパートの東山団地調整池である。米沢町、笠原町の住宅地の脇を北流しつつ周辺の湧水を集めて流量を増し、千波町の逆川緑地を経て、中心市街地の中央2丁目で桜川と合流する[10][12]。茨城県の管理区域は調整池の至近の市道から桜川との合流点までの間である[13]

逆川の周辺の主要な建物としては下流方向を向いて、左に茨城県庁舎茨城県立県民文化センター茨城県近代美術館がある。右には2016年からの新築工事を終え、2019年1月4日より全面開庁した水戸市役所の本庁舎がある[14][15]

ギャラリー

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逆川緑地

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概要

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逆川緑地
逆川緑地全体空中写真
分類 都市緑地
所在地
座標 北緯36度21分29秒 東経140度27分45秒 / 北緯36.35806度 東経140.46250度 / 36.35806; 140.46250座標: 北緯36度21分29秒 東経140度27分45秒 / 北緯36.35806度 東経140.46250度 / 36.35806; 140.46250
面積 13.86 m2(2015年4月1日現在の開設済面積)
開園 1995年5月1日
設計者 森緑地設計事務所
運営者 水戸市
指定管理者水戸市公園管理協会(2018年現在)
現況 年中開放
設備・遊具 遊具広場、芝生広場、自然観察場、トイレ、史跡「笠原水道」
駐車場 あり
告示 1988年9月27日(計画変更:1997年3月18日)
公式サイト 逆川緑地(一般財団法人水戸市公園管理協会ホームページ)
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逆川の新米沢橋下付近から本郷橋下までの両岸には公園として整備された逆川緑地(さかさがわりょくち)が拡がっている。2015年時点での開設済面積は13.86平方キロメートルである。都市計画法による公園の分類は都市緑地である[16][17]。1986年度から段階的に整備が始まり、2007年時点での総事業費は約75億円である[18][19]

緑地内には湧水で出来た湿地を木造の遊歩道で散策できるエリアや、遊具を置いたエリア、芝生広場などがある[9]

緑地の中、水神橋近くには茨城県指定の史蹟「笠原水道」がある。笠原水道は水戸藩第2代藩主徳川光圀水戸城下への飲料水供給のために整備した上水道である。史蹟にある水源には「龍頭栓」と呼ぶ蛇口が設置されており、市民の水くみに供している。また、小門橋近くの「いきののたちの広場」には笠原水道の遺物である、水を城下に運んだ岩樋の一部が展示されている[7]

緑地内には周回2.2キロメートルのウォーキングコースも設定されている[20]

また同じ市内の千波公園偕楽園等いくつかの公園等を一括した300ヘクタールのエリアを「偕楽園公園」と総称し、これは市街地に近い都市公園としてはニューヨークセントラル・パークに次ぐ世界第2位の広さを持つものであると、1999年から茨城県及び水戸市により広報されているが、逆川緑地はこの総称「偕楽園公園」の一角に加えられている[21]

整備史

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逆川緑地の整備は、水戸市の第3次総合計画(計画年度は1986年度から1995年度)で整備が決められ、1986年度から段階的に整備が行われた[22][18]1988年9月18日に都市計画法による告示(茨城県告示第1271号)がされた[17][23]1995年5月1日より市民への供用が開始される[16]1997年3月27日 都市計画法による変更計画が告示(茨城県告示第368号)された[17][24]2007年にほぼ完成した[19]

緑地内施設

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下記中の"右岸"、"左岸"は下流方向に向かって見た岸の方向。

ギャラリー

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橋梁

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逆川には上流から以下の橋が架けられている[11]。(以下文中の左右は下流方向を向かっての位置。)

ギャラリー

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歴史

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逆川の千波湖流入状況(「茨城縣管内全圖」(1919)中の水戸市街図より)

逆川と桜川の合流点すぐ近くに拡がる千波湖大正時代から昭和前期にかけての干拓で面積を縮小するまでは水戸駅の先まで拡がっていた。千波湖が今より広かった時期では逆川は千波湖に直接流入しており、その流入点は現在の舟付橋と駅南中橋の間である[53][54]。 源流部においてもかっては、東茨城郡緑岡村笠原新田(現水戸市平須町)の六番池と、東茨城郡吉田村(現水戸市東野町)の東野溜池のふたつがあった。それぞれの源流から発した流れは吉田村大字東野字西谷津で合流していた[55][56]

図:明治期の逆川上流周辺
(農業環境技術研究所「歴史的農業環境閲覧システム」より)

「図:明治期の逆川上流周辺」は明治期の逆川上流の周辺地図である。 この図は明治期に大日本帝国陸軍参謀本部陸地測量部が作成した地図である迅速測図(じんそくそくず)に現在の道路、川等を重ね合わせインターネットで公開している農業環境技術研究所の「歴史的農業環境閲覧システム」から、当時の逆川上流周辺を抜き出したもので、現在の水戸市では笠原町、平須町、米沢町、東野町にあたる部分である。 地図中の細い赤線は現在の道路を示しており、細い青色の線は現在の川、池を示している。現在の逆川源流の東山団地調整池は地図の中央やや左にあり、特に太い青線で示されている。当時の逆川の源流の1つであった六番池は地図の北西に描かれている。『東茨城郡郷土史』は東野村には3つの溜池がある、と記述している[56]。その3つは「図:明治期の逆川上流周辺」では、現在の東山団地調整池と重なる部分に1つ、その南に2つが確認できる[57]。3つの溜池の内、もっとも東にある溜池(所在地: 水戸市東野南谷津295。現在"東野市民運動場”がある近く)を”南谷津池"と呼ぶ(資料によっては"雨谷津池"と表記している)[58][59][60]。"南谷津池"の西にある溜池(所在地: 水戸市東野西堀切313。現在"茨自販健保組合運動場"がある近く)を”西谷津池"と呼ぶ(資料によっては”谷津池”と表記している)[58][59][60][61]。逆川を愛する会が編集・発行した『逆川はどんな川?』に載っている、過去の逆川を知る住民が描いた逆川の地図では、溜池(東野池)は吉田村から緑岡村へ東西に通る道の南側(「図:明治期の逆川上流周辺」で云うと、現東山団地調整池の南にある道の更に南側)に描かれており、位置的には"西谷津池"又は"南谷津池"が比定する[62]

明治期笠原水道水源(浴徳泉の図『茨城常盤公園攬勝図誌』松平俊雄著)。図中央から図左下の橋へ流れる逆川
「浴徳泉 在笠原山」図(松平雪江 編『庶物會要.第4冊』)。図左下に逆川

現在笠原水道水源のある地近くには、人々の信仰が篤かった"笠原不動尊”が在り、水戸藩初代徳川頼房の時代から不動尊周囲の山林が保護されていた。それは木々の枝を折るのを禁じるほどに厳しいものであった。寛文期に徳川光圀により城下への上水道整備の命が出されると、設計を承った平賀保秀は不動尊近くの谷からの湧水を水源とすることを進言し、笠原水道の整備が為された[63]

光圀はまた逆川の近くに「漱石所(そうせきしょ)」という茶屋をつくり、逆川で曲水の宴などを催した[64]

明治に出版された水戸の名所・情勢を紹介した『水戸』(伊東利男著)では逆川について、次のように述べて、その清らかさと俗世間を離れた静かで趣深い周囲の佇まいを称えている[65][66]

逆川は其山麓を繞る、水清冽にして砂礫玉の如く一橋斜めに之を度りて人を林中に導く幽静閑雅自ら塵寰に遠かるを覚つ — 伊東利男、『水戸』1901年

大正時代に千波湖が干拓された後は桜川へ合流するように河道が改修された[10]

周辺の水田への灌漑用として大正年間に以下の水門が設けられている[67][68]

下流から。括弧内は所在地の当時の字名。

  • 本郷水門(千波町本郷)
  • 笠原水門(笠原町不動山)
  • 米沢堰(米沢町上組)
  • 丸山水門(米沢町中組)
  • 中水門(米沢町下組)
  • 下水門(米沢町代官山下)

昭和30年頃までの逆川を知る者は、水門のあるところには多くの魚がいたが、昭和30年頃から川から生物の姿が乏しくなった、と述べている[69][62]

昭和50年代後半に川底を深くし、岸をコンクリートで覆う工事がなされる。川の周辺も宅地化が著しくなるが下水処理が不十分のまま生活排水が川に流れ込むようになり、水質汚濁が著しくなる[10]。水戸市は市内の環境改善のため、公共下水道の普及を最重要施策として取り組み、2012年度末で市内の普及率56.1パーセントを超えた。この時期以降から、逆川の水質が改善していると見なされるようになった[70][71]。2008年度から2016年度まではBODは5mg/l以下であり水質基準を達成している。

1986年度から逆川緑地の整備事業が始まり、1995年5月1日より利用が始まった[16][18][22]

2001年10月22日から11月27日においては、水戸市立博物館において逆川と逆川緑地の歴史・自然を紹介する特別展『逆川緑地 湧き水が育む小さなドジョウたち』が開催されている[72]

2003年7月、逆川西側と県庁舎の間の土地に巨大複合商業施設の建設計画が報道される。仮称『水戸メガモール』とされたこの施設は、南北約1.5キロメートル、東西約0.3キロメートルのおよそ31ヘクタールの国内最大級規模との触れ込みで、実現の際には逆川の上中流域の景観が大きく変貌するものであった。当時の加藤浩一水戸市長は2004年11月に計画容認の意向を示した。が、翌月事業者のひとつに暴力団との関わりが明らかになると計画は崩壊し、結局『水戸メガモール』は幻に終わった[73][74][75]

行政指定

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逆川は2018年現在全区間が、那珂川水系の中の一級河川に定められ、かつ、全域が国により「指定区間」とされ茨城県が管理している。それらの指定の経過は以下のとおり。

  • 1966年(昭和41年)4月1日
    • 1966年3月28日公告、同年4月1日施行の「河川法第四条第一項の水系及び一級河川を指定する政令の一部を改正する政令(現題名「河川法第四条第一項の水系を指定する政令」)」により那珂川水系が一級水系に指定されると同時に、逆川も上流端を、"水戸市千波町字谷中八百四十四番地先の小門橋"、下流端を"桜川への合流点"とした区間が一級河川に指定された[76]
  • 1971年(昭和46年)3月20日
    • 建設省告示第396号で逆川の上記の一級河川としての区間が指定区間として指定された[77]
  • 1977年(昭和52年)4月18日
    • 建設省告示第729号で一級河川としての区間で上流端が、"水戸市笠原町ハツム地一千九百四十九番地の先の市道橋"、と変更され全区間が一級河川となった[78]。更に同日の建設省告示第730号で全区間が指定区間として指定された[79]

また、環境基準に関しては、逆川は桜川全域に含まれる河川として「生活環境の保全に関する環境基準(河川)」が"C類型"の達成期間が"ロ"に[80]、「水生生物の保全に係る水質環境基準」が"生物B"の達成期間が"イ"に指定されている[81]

地形・地質

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水戸市の多くの地は東茨城台地の北東部にあたる水戸台地(上市台地、緑岡台地とも)呼ばれる台地上にある。台地を開析したのは那珂川の藤井川、田野川、桜川で、逆川は桜川の支谷である。逆川は水戸市の側の台地(緑岡台地とも)を北流し、桜川に合流する。逆川の流れによって台地は、下流に向かって左側を千波・緑岡・笠原地区に、右側を、元吉田、米沢、吉沢地区に分けられる[82][83]。河道は直線的で、小規模な河岸段丘を形成している。軟岩が露出している箇所は無い。現在の水源地は東山団地調整池で、南から北に流れつつ周辺の湧水の流入で流量を増やすが、それでも流量は少ない[10][84]

逆川周辺の台地の地質は基盤は"水戸層"とも呼ばれる凝灰質の不透水性の粘土層、その上に透水性の高い・レキ層("上市層"とも呼ぶ)、その上に関東ローム層が重なったものである。笠原水道水源に代表される逆川周辺の湧水は、水戸層と上市層の間に溜まった地下水等の場所から湧き出たものである。逆川の環境保護活動をしている団体により、逆川緑地内で以下の6つの湧水箇所が見いだされている[83][84][85][86][87]

  • さくら通り(市道南町・千波線)下の竹藪付近(本郷橋寄り)
  • さくら通り下の竹藪付近(小門橋寄り)
  • 「いきものたちの広場」の池近く
  • 小門橋付近の湿性植物観察エリア奥
  • 笠原水道水源地
  • 塩橋の下流向かって右岸の里山との境界付近
  • 米沢橋の下流向かって右岸斜面竹藪の中

生物環境

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水生生物

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逆川は生活排水が流れ込む上流部と、湧水の流入量が増える中・下流部より水質が異なっている。その為、源流から笠原付近の上中流域ではミズムシワラジムシの仲間)、ユスリカヒルといった汚れた水でも生息可能な生物が多く見られ、魚の姿はあまり見られない。またアメリカザリガニも多くいる。流れが逆川緑地に移るとコイオイカワカワムツヨシノボリドジョウなどの魚が現れる。ドジョウの中には「環境省レッドリスト」で絶滅危惧種ⅠB類に指定されているホトケドジョウも見られ、流れ込む周辺の清涼な湧水がホトケドジョウの生息を可能にしていると考えられる。後述のサケの遡上姿が見られるのもこの辺りである。川底に泥、砂が多くなる桜川の合流付近はモクズガニ、ウグイの姿が見られる[88][89]

以下に挙げたのは"『河川生物生息実態調査報告書』(2010年3月)水戸市"、"『平成16年度自然環境調査(河川生物編)結果報告書』(2005年3月)水戸市"、"『平成26年度 自然環境調査(市内東部地区) 』水戸市"の出典から抽出された、逆川で確認された魚類及び底生生物である[90]

魚類(26種)

注1)ヤリタナゴは『茨城県版レッドデータブック(茨城における絶滅のおそれのある野生生物)』で2010年に危急種、2016年に絶滅危惧Ⅱ類に指定されている[91]

注2)国外外来種

底生生物(22種)

注)上の内、水質の指標生物であるものには以下の表示をつけている

  • 「水環Ⅱ」は"水質環境Ⅱ"のことで、"少し汚い水環境"であることを示す。
  • 「水環Ⅲ」は"水質環境Ⅲ"のことで、"汚い水環境"であることを示す。
  • 「水環Ⅳ」は"水質環境Ⅳ"のことで、"大変汚い水"であることを示す。

サケの遡上

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2005年11月、那珂川から迷い込んだと思われるサケが遡上する姿が桜川・逆川で確認され、新聞で報道された。以後2017年まで毎年秋にサケの遡上が確認され、逆川の水質改善の成果と捉えられている[92][93][94][95]。逆川に来たサケは主にふれあい橋から水神橋の間で産を行っている[95]。2005年に遡上した時の調査では26個の採卵中1個が生存卵であった[96]。サケの遡上数は桜川との合流点より下流にある柳堤堰の開閉により変動が見られる。柳堤堰は水戸市柳町・本町にある備前堀への導水のためので、2005年は工事により堰が開放されており、サケが遡上しやすい環境であった。その後も柳堤堰を長く開けていた年はサケの遡上数が多いことが分かってきたことから、サケの生活環に合わせ、11月から3月は堰の開放するようになった[95]。また、逆川でのサケの稚魚放流事業が2009年から行われている[97]

なお逆川は水質が今よりもずっと清浄であった時期であってもサケが来るような川では無かったとされ、茨城新聞紙上において市民より"それは何故か?"との問いが投げかけられた[98]。それに対し国交省霞ヶ浦導水工事事務所員は、"河川改修以前の逆川は段差がある小さな川であった為、サケが遡上出来なかったのでは"との見解を紙上で返している[99]

鳥類

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2011年の水戸市立博物館特別展示『逆川緑地』の図録では、逆川緑地には現在88種の野が確認できている、としている。この多種な鳥が生息するのは、逆川緑地がヨシ原、林、落葉樹林林といった多様な植生を持っているからとしている[100]

以下は水戸市立博物館が2010年9月から2011年8月に行った逆川緑地で見られる野鳥調査で紹介されている鳥である。

植物

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逆川は流量が少ない為、水生植物の生息は広くは見られない。それでも、ササバモ等の沈水植物も見られる[101]。陸上においては、逆川緑地において、ヨシ原、林、落葉樹林林といった多様な植生が見られる[100]

水質

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かっての逆川は流れ込む湧水の為、清らかな川であったが、そこに周辺の宅地化により生活排水が流入し始めた等により、1980年代頃からひどく汚濁した川となった[102][69][103]。しかし、周辺の公共下水道の普及率が高まるにつれ、水質改善が進んでいる[104]

逆川のph(水素イオン濃度)BOD(生物化学的酸素要求量)COD(化学的酸索要求量)SS(浮遊物質量)DO(溶存酸素量)の歴年変化は以下グラフ[要曖昧さ回避]のとおりである。調査は水戸市が逆川の中流付近(米沢町)と河口の2カ所で行ったもので、表に示した数値は調査年度(4月から3月)での平均値である。

逆川が「生活環境の保全に関する環境基準(河川)」により指定されているC類型の2018年5月現在の基準値は下表のとおりでph、BOD、DOについてはグラフ上で表示もした[137]

生活環境の保全に関する環境基準(河川)「C類型」基準値(2018年5月現在)
pH BOD SS DO
6.5以上8.5以下 5mg/l以下 50mg/l以下 5mg/l以上

pH(1991年度から)

BOD(1984年度から)

COD(1991年度から)

SS(1991年度から)

DO(1991年度から)

通常、清浄な水質とされるのはBOD、COD、SSの場合は低い時で、DOの場合は高い値の時である。そこで日本で「水質が最も良好な河川(国土交通省発表)」のひとつに選ばれている高知県仁淀川[138]と逆川の2015年度水質データ(平均値)[139][140]を比較すると下表のようになる。

逆川と仁淀川の2015年度水質データ(平均値)比較表 単位(mg/l)
河川名 測定地点 BOD CDO SS DO
逆川 桜川合流点前 3.1 5.6 10 11
仁淀川 中島水位観測所
(仁淀川大橋上流約100m)
0.5 1.2 2 10

逆川が属する桜川水域は、逆川と沢渡川を含め「生活環境の保全に関する環境基準(河川)」(以下「生活環境項目」と称す)の「C類型」に1998年3月30日に指定されている[80]。このC類型は生活環境項目において6つある類型中、最も清浄な水質基準を定められている類型を上とした4番目に位置し、水道利用には適さずコイフナ等のβ中腐水性水域の水産生物や工業用水としての利用目的に適応しているとされる類型である。基準の達成期間は4段階ある設定中2番目の速さである「5年以内に可及的速やかに達成」の"ロ"に指定されている[80][141][142][137]。逆川は2008年度から2016年度まではBODの基準を達成している[143] [144] [145] [146] [147] [148] [149] [139] [150] [151]

また生活環境項目の中で更に、水生生物等の生育環境保全の為に定められた「水生生物の保全に係る水質環境基準」(以下「水生生物保全環境基準」と称す)においては、逆川が属する桜川水域は、逆川と沢渡川を含め「生物B」に2011年3月31日に指定されている[81]。この生物Bの類型は、コイ、フナ等比較的高温域を好む水生生物及びこれらの餌生物が生息する水域に区分されている。桜川水域に定められた達成期間は「ただちに達成」とする"イ"である[81][152]。水生生物保全環境基準の生物B類型の基準値は以下である(2018年5月現在)[137]。桜川水域としては2011年度(平成23年度)の指定から2017年度まで基準を達成している[153][154][155][156][157][158]

水生生物の保全に係る水質環境基準「生物B」基準値(2018年5月現在)
全亜鉛 ノニルフェノール LAS
0.03mg/l以下 0.002mg/l以下 0.05mg/l以下

災害

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水害

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1949年刊の『水戸市水害誌』は逆川について、この川は水深が浅く、豪雨時には増水し周辺の水田を冠水させ、また千波湖に直接流れ込んでいた時代では千波湖溢水の要因にもなった、旨を記述している[159]1938年(昭和13年)6月28日から30日の大雨が起こした茨城県内の歴史的大水害では、那珂川、千波湖、桜川の氾濫と共に逆川も氾濫し、水戸市内の下市地区を大規模に冠水させた[160]。昭和50年代後半に川底を深くする工事がなされている[10]

東北地方太平洋沖地震での被害

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2011年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震東日本大震災)では水戸市は震度6弱を記録し、死者7人、負傷者84人、全壊住宅164棟等の被害が発生した[161][162]。この地震で逆川緑地では路面の損壊や、地盤の液状化の痕跡が見られた[163]

利水

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2014年12月末現在において逆川の工業用としての取水許可が1件ある[164]。水戸市では千波湖の浄化のため逆川緑地の湧水を千波湖に導水している[165][166]

環境活動

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逆川の環境改善・保護への取組に以下のようなものがある。

  • 第二期水環境改善緊急活動計画 桜川清流ルネッサンスⅡ
    • "桜川清流ルネッサンスⅡ"は、桜川水域と千波湖の水環境の改善の為に流域の国・自治体と住民が連携して活動する事業である。国土交通省の"第二期水環境改善緊急行動計画"で計画対象の河川等として桜川・沢渡川(堀川)・逆川・千波湖が選定され、2007年に行動計画を策定した。2016年に計画を改定し、「清らかな 水に戻そう 桜川」をキャッチフレーズに行政担当者と住民が集う"桜川清流ルネッサンスⅡ地域協議会"を主体として、桜川・沢渡川(堀川)・逆川・千波湖の水質改善、親水空間整備のための目標設定、各機関が連携しての施策の策定、実施を行っている。逆川においては、BOD値5mg/l以下、現在の流量の確保・維持、水辺のゴミを減らし親水空間の向上を目標に置かれている[167][168][169][170]
  • 逆川緑地のホタルの再生活動
    塩橋下流側右岸にあるホタル再生地
    • 逆川緑地のある場所は昭和30年代までは水田が拡がっていて、ホタルが飛んでいた。このホタルを再生するための活動が市民の手で2006年から始まった。再生場所に選ばれたのは塩橋近くの広場で、ホタルとホタルの幼虫の餌になるカワニナ等が生息しやすくするために、水路の造成と除草が行われた。2007年7月7日、500個の卵が整備された再生場に放流され、翌年ゲンジホタルヘイケボタルの発生が確認された。以降もホタル生息の為の環境整備は、地域の環境保全団体である「逆川を愛する会」「逆川こどもエコクラブ」が中心として行われ、ホタルの発生が継続して確認されている[171][172]
  • 「逆川ごみローラー作戦」「桜川水系クリーン作戦」
    • 逆川や逆川緑地では2000年頃までは捨てられたゴミが目立っていた。この状況に団体・企業・行政・市民が「逆川ごみローラー作戦」「桜川水系クリーン作戦」などの名称で清掃作業に取り組んでいる。清掃に取り組んでいる者には前出の「逆川を愛する会」「逆川こどもエコくらぶ」の他、水戸市元吉田の酒造会社明利酒類プロサッカークラブの水戸ホーリーホックなどがいる。明利酒類はかってはの仕込み水として逆川の水を使っていたとも言い、明利酒類の清掃活動は2000年から継続して行われている。これらの者の活動でゴミは少なくなってきている[173][174][175][176][177]

「逆川を愛する会」は2011年に環境省の水・土環境保全活動功労者表彰を受けた[178]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 那珂川水系には栃木県茂木町を流れる、同じ漢字の川、"逆川"(さかがわ)があるが、こちらは本記事の逆川よりも規模が大きな川である[2]
  2. ^ 1985年度、1986年度、1988年、1989年度、1990年度のBDOのデータは『水戸市の環境 平成3年度版』掲載の経年変化グラフより取得

出典

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  147. ^ 水戸市市民環境部環境課『水戸市の環境 平成23年度現況報告(平成24年度版)』水戸市市民環境部環境課、2013年、33頁。 
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参考文献

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図書・地図

[編集]

※上記資料復刻版:伊東利男『水戸(案内)(県別郷土歴史叢書. 明治の茨城 ; 第2巻)』千秋社、1983年11月。ISBN 4884770722 

  • 水戸まちづくりの会「第4章 逆川の橋」『水戸の橋ものがたり』水戸まちづくりの会、2011年3月、55-72頁。 

※上記資料では塩橋、水神橋、小門橋、ふれあい橋、本郷橋が紹介されている。

  • 水戸市緑岡住民の会『緑岡の今と昔 住民の会結成10周年記念』2006年3月。 
  • 逆川を愛する会『逆川はどんな川?』逆川を愛する会、2004年10月。 
  • 大森昌衛、蜂須紀夫「10 水戸の台地」『茨城の地質をめぐって(日曜の地学8)』築地書館、1979年9月。ISBN 4806710083 
  • 茨城における絶滅のおそれのある野生生物 動物編 2016年改訂版(茨城県版レッドデータブック)』茨城県、2016年3月https://www.pref.ibaraki.jp/seikatsukankyo/shizen/chojyuhogo/documents/rdbkakuron5.pdf2018年6月17日閲覧 
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  • 『農業用ため池実態調査報告書』茨城県農地部農地計画課、1981年3月。 
  • 茨城県農業用排水施設現況調査書(農業用排水ため池施設台帳). 茨城県農地部農地計画課. (1992-3) 
  • 茨城県農地部耕地第一課『茨城県利水現況調査報告書 昭和37年度溜池の部』茨城県農地部耕地第一課、1962年3月。 
  • 茨城県企画開発部『利水現況調査報告書 昭和38年』茨城県企画開発部、1964年。 
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  • 水戸市役所『水戸市水害誌』水戸市役所、1949年3月。 
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  • 水戸市市民環境部環境課『水戸市の環境 平成27年度現況報告(平成28年度版)』水戸市市民環境部環境課、2017年。 
  • 水戸市市民環境部環境課『水戸市の環境 平成28年度現況報告(平成29年度版)』水戸市市民環境部環境課、2018年。 
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  • 茨城県『公共用水域及び地下水の水質測定結果 平成28年度』茨城県、2017年。 

雑誌

[編集]
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  • 茨城県告示第1271号」(PDF)『茨城県報』第7485号、茨城県、1988年9月18日、4頁。 
  • 梶田昌徳「水戸の塩街道」『茨城の民俗』第10号、1971年、36-42頁。 
  • 「建設省告示第396号」『官報』号外第21号、1971年3月20日。 
  • 「建設省告示第729号」『官報』号外24号、1977年4月18日。 
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  • 茨城県告示第354号」(PDF)『茨城県報』号外第50号、1998年3月30日、1頁。 
  • 茨城県告示第353号」(PDF)『茨城県報』第2270号、茨城県、2011年3月31日、23頁。 
  • 小菅次男「水戸市桜川・逆川に遡上したサケの追跡調査」『茨城生物』第26号、2006年3月、9-12頁。 

新聞

[編集]
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  • “売り場面積7万4000平方メートル「水戸メガモール」の出店計画”. 茨城新聞: p. 10. (2003年7月3日). 2003-7-3 
  • “2004「県央」回顧 記者ノート(2)水戸メガモール”. 茨城新聞: p. 19. (2004年12月19日) 
  • “水戸メガモール事業者計画きょう取り下げへ”. 茨城新聞: p. 24. (2005年1月31日) 
  • “水戸 桜川にサケ遡上 那珂川から迷い込む?”. 茨城新聞: p. 17. (2005年11月10日) 
  • “サケの遡上、「毎日増えている」 産卵行動も 水戸の逆川”. 読売新聞(茨城東版): p. 33. (2005年11月19日) 
  • “サケの稚魚200匹、小4児童ら放流 水戸・逆川”. 朝日新聞(茨城版): p. 29. (2018年3月7日) 
  • “サケ 元気に帰ってきて 水戸 児童ら稚魚放流”. 読売新聞(茨城東版): p. 33. (2018年3月27日) 
  • “県民の声 サケ遡上の理由専門家は見解を”. 茨城新聞: p. 23. (2005年12月22日) 
  • “県民の声 柳堤堰の開放でサケ多数目撃か”. 茨城新聞: p. 21. (2006年3月10日) 
  • “水への感謝込め笠原水道水源を清掃 明利酒類の社員ら”. 朝日新聞(茨城版): p. 27. (2000年8月3日) 
  • “明利酒類社員ら、逆川周辺を清掃 水戸”. 茨城新聞: p. 19. (2017年10月17日) 
  • “水戸の桜川水系「サケ遡上守れ」300人が清掃に汗”. 茨城新聞: p. 17. (2013年12月13日) 
  • “環境保全活動に力 県内団体・個人表彰 環境省”. 茨城新聞: p. 15. (2011年12月27日) 

Web

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関連項目

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外部リンク

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