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退位の礼

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
退位の礼
Ceremonies of the Abdication from the Throne
退位礼正殿の儀の様子
種類 国事行為
(天皇の退位に伴い行われる儀式)
退位礼正殿の儀
頻度 天皇の退位に伴い行われる
会場 皇居宮殿正殿・松の間
会場所在地 東京都千代田区千代田1-1
開催国 日本の旗 日本
前回 〈第125代天皇明仁
2019年平成31年)4月30日午後5時
参加者
主催 日本国政府
ウェブサイト
www.kunaicho.go.jp
退位した上皇明仁(左)と、皇位を継承した第126代天皇徳仁(右) 退位した上皇明仁(左)と、皇位を継承した第126代天皇徳仁(右)
退位した上皇明仁(左)と、皇位を継承した第126代天皇徳仁(右)

退位の礼(たいいのれい)は、第125代天皇明仁(現:上皇)の退位に伴って行われた皇室儀礼[1]

唯一の国事行為たる儀式である退位礼正殿の儀(たいいれいせいでんのぎ)が、天皇の退位等に関する皇室典範特例法の施行日である天皇退位の日・2019年平成31年)4月30日に皇居宮殿正殿・松の間で行われた。

概要

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退位の礼を行う根拠は「天皇の退位等に関する皇室典範特例法施行令」第一条で、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法第二条の規定による天皇の退位に際しては、退位の礼を行う。」としていることにある。

退位の礼の具体的な儀式としては、退位当日の2019年(平成31年)4月30日に「退位礼正殿の儀(たいいれいせいでんのぎ)」が国事行為として、皇居宮殿正殿で行われた[2]

後鳥羽天皇
光格天皇

かつて平安時代末期から鎌倉時代にかけて、天皇が退位して上皇(太上天皇の略称)となり、実質的な権力を以て院政を敷く「院政期」が存在した。しかし、江戸時代光格天皇の退位(仁孝天皇への譲位)を最後に天皇の退位は2019年まで途絶えた。よって、天皇の退位に伴う儀式が行われるのは、光格天皇の「譲国の儀(じょうこくのぎ)」が行われた1817年文化14年)以来、202年ぶりのことである。今回の譲位は、一世一元の制が定められた明治以降、かつ、憲政史上初めてである(戦前の大日本帝国憲法旧皇室典範や、戦後施行された現在の日本国憲法皇室典範も退位に関する規定がなかった)。また光格天皇の「譲国の儀」の際は、首都)が平安京京都)であり同地の皇居・桜町殿(現在の京都仙洞御所)で行われたことから[3]1869年(明治2年)の東京奠都後の現在の皇居で、天皇の退位に伴う儀式が行われるのも史上初めてであった。

退位の礼の当日は、前日4月29日の昭和の日と翌日の5月1日の天皇の即位の日(「天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律」による特例)に挟まれたことにより国民の休日となった。

退位礼正殿の儀

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式の模様(ライブ配信映像)

退位の礼の儀式は退位礼正殿の儀(たいいれいせいでんのぎ)のみであり、国事行為である。2019年(平成31年)4月30日午後5時から、宮殿正殿松の間で行われた。

参列者は翌日の即位の礼の儀式、即位後朝見の儀に準じる。

天皇が剣璽御璽国璽を伴って松の間に入場し、ほかに皇后美智子、皇太子徳仁親王・皇太子妃雅子をはじめとする皇族三権の長両院議長〈大島理森伊達忠一〉、内閣総理大臣安倍晋三〉、最高裁判所長官大谷直人〉)らが揃い、内閣総理大臣が天皇退位特例法に基づく天皇の退位があることを報告し、天皇への感謝の意を盛り込んだ「国民代表の辞」を読み上げた後、退位礼正殿の儀に先だって開かれた定例閣議第4次安倍改造内閣)で決定された天皇の「おことば」があった。

国民代表の辞

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「おことば」

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退位関連儀式の日程

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退位前

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  1. 賢所に退位及びその期日奉告の儀
    2019年(平成31年)3月12日〔賢所
  2. 皇霊殿神殿に退位及びその期日奉告の儀
    同日〔皇霊殿・神殿〕
    賢所・皇霊殿・神殿を総称して宮中三殿という。天皇は黄櫨染御袍をまとい、宮中三殿に参入して、自らが退位することと、その期日が4月30日であることを奉告する「御告文(おつげぶみ)」を読み上げた[4]
  3. 神宮神武天皇山陵及び昭和天皇以前四代の天皇山陵に勅使発遣の儀
    同日〔御所
    伊勢神宮及び神武孝明明治大正昭和の各天皇の(みささぎ)に退位を奉告する勅使を派遣する儀式[4]
  4. 神宮に奉幣の儀
    3月15日〔伊勢神宮 内宮・外宮〕
    豊受大神宮三重県伊勢市

    勅使ら30人が、木製の辛櫃に入った絹や木綿などの奉納品を携え伊勢神宮内宮を訪れ、正宮で御祭文を読み上げ、退位とその日程を報告した[5][6]
  5. 神武天皇山陵及び昭和天皇以前四代の天皇山陵に奉幣の儀
    同日〔各山陵
    神武天皇 畝傍山東北陵(奈良県橿原市

    午前中に伊勢神宮外宮(豊受大神宮)、昭和天皇陵(東京都八王子市)、孝明天皇陵(京都市)で、午後は伊勢神宮内宮、明治天皇陵(京都市)、大正天皇陵(八王子市)で、儀式が行われた[6]
  6. 神武天皇山陵に親謁の儀
    3月26日〔神武天皇山陵〕
  7. 神宮に親謁の儀
    4月18日 〔伊勢神宮〕
  8. 昭和天皇山陵に親謁の儀
    4月23日〔昭和天皇山陵〕
  9. 退位礼当日賢所大前の儀
    4月30日 午前10時より[7]〔賢所〕
  10. 退位礼当日皇霊殿神殿に奉告の儀
    同日 賢所大前の儀 終了後[7]〔皇霊殿・神殿〕
  11. 退位礼正殿の儀退位の礼
    同日 午後5時より、およそ10分[7]〔宮殿 正殿〕

退位後

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  1. 大正天皇山陵に親謁の儀
    2019年(令和元年)6月6日〔大正天皇山陵〕
  2. 孝明天皇山陵に親謁の儀
    6月12日〔孝明天皇山陵〕
  3. 明治天皇山陵に親謁の儀
    同日〔明治天皇山陵〕


11. のみ憲法に基づく国事行為で、そのほかの儀式は皇室行事と位置づけている[8]

装束

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退位の礼出席者の服装は、剣璽等承継の儀に準じ、洋装で、天皇はモーニングコートであった。

以下は、退位関連儀式出席者の装束である。

退位関連儀式参加者の服装

※楽師は宮内庁式部職

黄櫨染(天皇の束帯の色) (webcolor)
  16進表記 #d99502
黄丹(皇太子の束帯の色) (webcolor)
  16進表記 #F47A55

退位の礼と憲法

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2018年(平成30年)12月10日、原告241名が「天皇の退位等に関する皇室典範特例法の規定による明仁の退位と徳仁の即位に伴う『退位の礼』『即位の礼』、『大嘗祭』などの実施が政教分離を定めた憲法の規定(日本国憲法第20条)に違反する」として、国(日本国政府)を相手取り公金支出の差し止めと損害賠償を求め、東京地方裁判所に提訴した[9]

脚注

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  1. ^ “皇位継承儀式、日程など基本方針を閣議決定”. 朝日新聞デジタル. (2018年4月3日). https://www.asahi.com/articles/ASL4332VBL43ULFA003.html 2018年10月12日閲覧。 
  2. ^ 2019年(令和元年)5月22日宮内庁告示第6号「退位礼正殿の儀を行われた件
  3. ^ 歴史上の実例
  4. ^ a b 天皇陛下退位へ、一連の儀式始まる 「御告文」読み上げ”. 朝日新聞デジタル (2019年3月12日). 2019年3月13日閲覧。
  5. ^ 伊勢神宮で『奉幣の儀』 天皇陛下の使い“勅使”が4月30日の退位報告 - FNNニュース2019年3月16日[リンク切れ]
  6. ^ a b 伊勢神宮などで「奉幣の儀」=天皇陛下の退位を報告 - 時事通信2019年3月15日[リンク切れ]
  7. ^ a b c 退位の儀式始まる 天皇陛下、午後に「退位礼正殿の儀」”. 日本経済新聞 (2019年4月30日). 2019年4月30日閲覧。
  8. ^ 退位に向けた儀式が始まる 天皇陛下、賢所で「御告文」 - エキサイトニュース2019年3月12日[リンク切れ]
  9. ^ 大嘗祭に税金使うのは「違憲」 政教分離原則に反すると提訴2019年1月21日閲覧

関連項目

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外部リンク

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